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特表2023-535151熱エネルギー貯蔵用多温度ヒートポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】熱エネルギー貯蔵用多温度ヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/04 20060101AFI20230808BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20230808BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20230808BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
F24H4/04
F28D20/00 A
F25B27/00 H
F25B1/00 396E
F25B1/00 396Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502777
(86)(22)【出願日】2021-06-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 US2021039287
(87)【国際公開番号】W WO2022015489
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】16/928,352
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523013776
【氏名又は名称】フォトン・ボールト・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】PHOTON VAULT LLC
【住所又は居所原語表記】1448 Asterbell Dr,San Ramon,CA 94582 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ケントウェル・リー・マコーミック
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AC12
3L122AC25
(57)【要約】
本発明のいくつかの態様によれば、ヒートポンプは、第1及び第2温度範囲において第1及び第2熱源からそれぞれ熱を抽出する第1及び第2熱抽出部を含み、第2温度範囲は、平均して第1温度範囲よりも高い。流体ビアによって、作動流体が第1熱抽出部から第2熱抽出部そして蓄熱部まで連続して流れる経路が画定される。このビアには減圧段が結合され、減圧段は蓄熱部と第1熱抽出部との間にある流体回路上に連続して配置される。さらに、圧縮器又は復熱器のいずれか(又は両方)がビアに結合され、第1熱抽出部と第2熱抽出部との間にある流体回路上に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプであって、
A.第1温度範囲で作動流体と第1熱源とを熱結合させてそこから熱を取り出す第1熱抽出部と、
B.平均して前記第1温度範囲よりも高い第2温度範囲で前記作動流体と第2熱源とを熱結合させてそこから熱を取り出す第2熱抽出部と、
C.蓄熱部と、
D.前記第1熱抽出部、前記第2熱抽出部、及び前記蓄熱部に結合されるビアであって、前記作動流体が前記第1熱抽出部から前記第2熱抽出部そして前記蓄熱部まで連続して直接的又は間接的に流れる流体回路を画定するビアと、
E.前記ビアに結合され、前記蓄熱部と前記第1熱抽出部との間にある前記流体回路上に連続して配置される減圧段と、
F.前記ビアに結合され、前記第1熱抽出部と前記第2熱抽出部との間にある前記流体回路上に配置される第1圧縮器及び復熱器の少なくとも一方と、
を備えるヒートポンプ。
【請求項2】
前記第1温度範囲及び前記第2温度範囲の両方が重複していない、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項3】
前記復熱器及び前記第1圧縮器の両方を備え、前記復熱器が前記流体回路上に配置されて前記蓄熱部を出る作動流体から熱を取り出すと共に、その熱を前記第1熱抽出部から出る作動流体に伝達する、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項4】
前記第1圧縮器が、前記第2熱抽出部よりも下流にある流体回路上に配置される、請求項3に記載のヒートポンプ。
【請求項5】
前記作動流体が、C6Kペルフルオロケトン、プロパン、ブタン、イソブタン、ブテン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、D4、D5、D6、MDM、MD2M、MD3M、MD4Mその他の炭化水素、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロケトン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン又はシロキサンのいずれかである、請求項3又は4に記載のヒートポンプ。
【請求項6】
前記復熱器が向流で動作するフィン付きチューブ熱交換器である、請求項3に記載のヒートポンプ。
【請求項7】
前記第1熱抽出部内での熱結合が前記作動流体に蒸発のエネルギーを与える、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項8】
前記ビアに結合される1個以上の追加の熱抽出部を備え、前記追加の熱抽出部を介して、前記作動流体が前記第2熱抽出部と前記蓄熱部との間を流れる、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項9】
前記蓄熱部に熱エネルギーを蓄積させるために投入サイクルで動作可能であり、かつ、前記蓄熱部から熱エネルギーを除去するために排出サイクルで動作可能である、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項10】
前記第1熱抽出部が低温熱源からの熱を前記作動流体に伝達する熱交換器を備える、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項11】
前記低温熱源が前記作動流体を蒸発させるのに十分な熱エネルギーを提供する、請求項10に記載のヒートポンプ。
【請求項12】
前記低温熱源が、産業プロセスからの廃熱、環境からの熱エネルギー、及び太陽熱エネルギーから収集された温水のいずれかである、請求項11に記載のヒートポンプ。
【請求項13】
前記作動流体が、C6Kペルフルオロケトン、プロパン、ブタン、イソブタン、ブテン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、D4、D5、D6、MDM、MD2M、MD3M、MD4Mその他の炭化水素、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロケトン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン、又はシロキサンのいずれかである、請求項10に記載のヒートポンプ。
【請求項14】
前記第2熱抽出部が前記第2熱源による前記作動流体の直接及び間接加熱のいずれかを与える、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項15】
前記第2熱抽出部が前記第2熱源からの熱を前記作動流体に伝達する熱交換器を備える、請求項14に記載のヒートポンプ。
【請求項16】
前記第2熱源が高温太陽熱集熱器である、請求項15に記載のヒートポンプ。
【請求項17】
前記蓄熱部が砂を含む、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項18】
投入サイクルで動作する請求項1に記載のヒートポンプであって、
A.前記作動流体が、前記第1熱抽出部内において前記第1熱源から熱を吸収する際に液体から気体に相変化し、
B.前記作動流体が前記第1圧縮器及び前記復熱器のいずれかにおいて昇温し、
C.前記作動流体が前記第2熱抽出部において前記第2熱源から追加の熱を吸収し、
D.前記作動流体が前記熱源に熱を供給し、及び
E.前記作動流体が前記第1熱抽出部に再度入る前に前記減圧段で圧力降下を受ける、
前記ヒートポンプ。
【請求項19】
前記作動流体が熱シンクと熱交換する排出サイクルで動作する、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項20】
前記熱シンクが熱機関及び熱抽出部のいずれかである、請求項19に記載のヒートポンプ。
【請求項21】
前記ビアに結合され、前記第2熱抽出部と前記蓄熱部との間にある前記流体回路上に配置される第2圧縮器を備える、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項22】
前記復熱器と、前記第1圧縮器及び前記第2圧縮器とを備え、前記復熱器は、投入サイクル中に前記蓄熱部を出る作動流体から熱を取り出すと共に、その熱を、前記第1熱抽出部を出る前記作動流体に伝達するように前記流体回路上に配置される、請求項21に記載のヒートポンプ。
【請求項23】
前記第1圧縮器が前記復熱器よりも下流にある前記流体回路上に配置され、前記第2圧縮器が前記第2熱抽出部よりも下流にある前記流体回路上に配置される、請求項22に記載のヒートポンプ。
【請求項24】
前記作動流体が低分子量炭化水素、シロキサン及びヒドロフルオロカーボンのいずれかである、請求項21に記載のヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、熱エネルギー貯蔵用の高温熱エネルギーを生成する多温度ヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
エネルギー貯蔵は、エネルギー供給を調節するために重要な能力である。再生可能エネルギーは断続的であることが多く、需要に対して電力供給が少なすぎたり多すぎたりすることがある。エネルギーの供給を平準化するためには、エネルギーを貯蔵しかつ取り出すメカニズムが必要である。例えば、大量の太陽電池があるため、日中は豊富な電気エネルギーを利用できることが多い。また、昼間は様々な温度の熱を回収する機会がある。しかし、全ての熱源が同じというわけではない。熱単位を収集するための単位経済性は、温度によって実質的に変動する可能性がある。例えば、周囲温度で熱を集めるのは比較的安価である。しかし、集光型太陽エネルギーによる高温の熱は、技術的には実現可能であるが、極めて高価である。
【0003】
ヒートポンプは、温度熱源及び電気エネルギーから高温の熱を生成する効率的な手段である。従来のヒートポンプサイクルは、次の工程を含む:(a)作動流体を蒸発させることによって低温の蓄熱体から熱を取り出し、(b)作動流体を圧縮して温度を上昇させ、(c)高温の熱を放出することによって流体を凝縮して液体状態に戻し、(d)拡張弁で圧力をその初期値まで低下させる。
【0004】
従来のヒートポンプは室内暖房に有効であるが、太陽エネルギー収集に利用するにはいくつかの課題がある:
a.ヒートポンプ-熱機関の複合サイクルの効率は100%を大きく下回り、エネルギー貯蔵の経済性を困難なものにする。
b.広い温度範囲では、典型的には大きな圧力比が必要となり、高価な多段圧縮が必要となる。
c.従来のヒートポンプでは集熱と排熱は定温プロセスであるが、熱源及び蓄熱装置は広い温度範囲にわたる熱の吸収及び放出に適していることが多い。
【0005】
エネルギー貯蔵のためのヒートポンプのいくつかの構成が従来技術に記載されている。太陽熱アシストヒートポンプは1970年代に開発され、近年、Aktas,外,「Designing a novel solar-assisted heat pump system with modification of a thermal energy storage unit」,Proceedings of the Institution of Mechanical Engineers Part A Journal of Power and Energy,May,2019で改訂された。これは、太陽熱集熱器とヒートポンプの並列動作、又は太陽熱集熱器とヒートポンプの直列動作のいずれかからなる。いずれの場合も、重複しない温度範囲から熱を取り出すという試みはなかった。
【0006】
欧州特許第2241737号において、Hemrle外は、単一の低温リザーバから、2つの貯蔵タンク間で移送される蓄熱液に熱を送り込む蓄熱システムを記載している。
【0007】
米国特許第10288357号において、Laughlin外は、低温側熱リザーバと高温側熱リザーバとの間に熱を送り出し、放出サイクル中に高温側熱リザーバと外部熱源との組み合わせを使用するエネルギー貯蔵及び取出しシステムを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第2241737号明細書
【特許文献2】米国特許第10288357号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Aktas,外,「Designing a novel solar-assisted heat pump system with modification of a thermal energy storage unit」,Proceedings of the Institution of Mechanical Engineers Part A Journal of Power and Energy,May,2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のことから、本発明の目的は、改善されたヒートポンプ及びその操作方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、様々な温度の複数のエネルギー源からエネルギーを収集するために効果的に使用できる当該ヒートポンプ及び方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、太陽光その他の高温のエネルギー源からエネルギーを収集するために効果的に使用できる当該ヒートポンプ及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明によって達成される目的のうち、いくつかの側面において、本発明は、ヒートポンプであって、第1温度範囲で作動流体と第1熱源とを熱結合させてそこから熱を取り出す第1熱抽出部と、第2温度範囲で作動流体と第2熱源とを熱結合させてそこから熱を取り出す第2熱抽出部と、蓄熱部とを備えるヒートポンプを提供する。第2温度範囲は、平均して、第1温度範囲よりも高い。第1熱抽出部、第2熱抽出部、及び蓄熱部に結合されるビアによって、作動流体が流れる流体回路が画定される。第1熱抽出部から第2熱抽出部そして蓄熱部へと連続して進む流れは、このような各部から次の部まで直接的又は間接的(例えば、1個以上の中間部を経由して)に流れてもよい。このビアには減圧段が結合され、減圧段は蓄熱部と第1熱抽出部との間にある流体回路上に連続して配置される。さらに、圧縮器又は復熱器のいずれか(又は両方)がビアに結合され、第1熱抽出部と第2熱抽出部との間にある流体回路に配置される。
【0014】
本発明の関連する態様は、前記第1温度範囲及び第2温度範囲が別個の、すなわち、重複していない、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0015】
本発明の他の関連する態様は、上記復熱器及び上記圧縮器の両方を備え、前記復熱器が流体回路上に配置されて前記蓄熱部を出る作動流体から熱を取り出すと共に、その熱を第1熱抽出部から出る作動流体に伝達する、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0016】
本発明のさらに他の関連する態様は、前記第1圧縮器が、前記第2熱抽出部よりも下流にある流体回路上に配置される、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。本発明の他の関連する態様によれば、前記第1圧縮器は、前記第2熱抽出部よりも上流にある流体回路上に配置される。
【0017】
本発明のさらに他の関連する態様は、前記作動流体が、C6Kペルフルオロケトン、プロパン、ブタン、イソブタン、ブテン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、D4、D5、D6、MDM、MD2M、MD3M、MD4Mその他の炭化水素、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロケトン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン又はシロキサンである、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0018】
本発明の他の関連する態様は、前記復熱器が向流で動作するフィン付きチューブ熱交換器である、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0019】
本発明のさらに他の関連する態様は、前記第1熱源と前記第1熱抽出部内の作動流体との熱結合が作動流体を蒸発させ、及び/又はその流体に蒸発のエネルギーを与える、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0020】
本発明の他の関連する態様は、ビアに結合される1個以上の追加の熱抽出部を備え、前記追加の熱抽出部を介して、前記作動流体が前記第2熱抽出部と前記蓄熱部との間を流れる、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0021】
本発明のさらに他の関連する態様は、前記蓄熱部に熱エネルギーを蓄積させるために投入サイクルで動作可能であり、かつ、前記蓄熱部から熱エネルギーを除去するために排出サイクルで動作可能である、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0022】
本発明のさらに他の関連する態様は、前記第1熱抽出部が低温熱源からの熱を前記作動流体に伝達する熱交換器を備える、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0023】
本発明の他の関連する態様は、前記低温熱源が前記作動流体を蒸発させるのに十分な熱エネルギーを提供する、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0024】
本発明のさらに他の関連する態様は、前記低温熱源が、産業プロセスからの廃熱、環境からの熱エネルギー、及び太陽熱エネルギーから収集された温水のいずれかである、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0025】
本発明の他の関連する態様は、前記作動流体が、C6Kペルフルオロケトン、プロパン、ブタン、イソブタン、ブテン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、D4、D5、D6、MDM、MD2M、MD3M、MD4Mその他の炭化水素、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロケトン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン、又はシロキサンのいずれかである、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0026】
本発明のさらに他の関連する態様は、前記第2熱抽出部が前記第2熱源による前記作動流体の直接及び間接加熱のいずれかを与える、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0027】
本発明のさらに関連する態様は、前記第2熱抽出部が前記第2熱源からの熱を前記作動流体に伝達する熱交換器を備える、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0028】
本発明の他の関連する態様は、前記第2熱源が高温太陽熱集熱器である、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0029】
本発明のさらに他の関連する態様は、前記蓄熱部が砂を含む、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0030】
本発明のさらに他の関連する態様は、投入サイクルで動作する、例えば上記のようなヒートポンプであって、前記作動流体が、(i)前記第1熱抽出部内において前記第1熱源から熱を吸収する際に液体から気体に相変化し、(ii)前記第1圧縮器及び前記復熱器のいずれかにおいて昇温し、(iii)前記第2熱抽出部において前記第2熱源から追加の熱を吸収し、(iv)前記熱源に熱を供給し、及び(v)前記第1熱抽出部に再度入る前に減圧段で圧力降下を受けるヒートポンプを提供する。
【0031】
本発明の他の関連する態様は、前記作動流体が熱シンクと熱交換する排出サイクルで動作する、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0032】
本発明のさらに他の関連する態様は、前記熱シンクが熱機関及び熱抽出部のいずれかである、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0033】
本発明のさらに他の関連する態様は、ビアに結合される第2圧縮器を備え、前記第2圧縮器は、前記第2熱抽出部と前記蓄熱部との間にある流体回路上に配置される、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0034】
本発明のさらに他の関連する態様は、前記復熱器と、前記第1圧縮器及び前記第2圧縮器とを備え、前記復熱器は、投入サイクル中に前記蓄熱部を出る前記作動流体から熱を取り出すと共に、その熱を、前記第1熱抽出部を出る前記作動流体に伝達するように前記流体回路上に配置される、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0035】
本発明のさらに他の関連する態様は、前記第1圧縮器が前記復熱器よりも下流にある流体回路上に配置され、前記第2圧縮器が前記第2熱抽出部よりも下流にある流体回路上に配置される、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0036】
本発明のさらに他の関連する態様は、前記作動流体が、C6Kペルフルオロケトン、プロパン、ブタン、イソブタン、ブテン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、D4、D5、D6、MDM、MD2M、MD3M、MD4Mその他の炭化水素、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロケトン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン、又はシロキサンのいずれかである、例えば上記のようなヒートポンプを提供する。
【0037】
本発明の上記及び他の態様は、次の説明及び図面から明らかである。
【0038】
以下の図面を参照することによって本発明をより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、熱源間の温度を上昇させるために圧縮器を用いた二重熱源ヒートポンプの模式図である。
図2図2は、熱源間の温度を上昇させるために復熱器及び圧縮器を用いた二重熱源ヒートポンプの模式図である。
図3図3は、熱源間の昇温を与える復熱器を有する二重熱源を示す模式図である。
図4図4は、熱源間の温度を上昇させるための圧縮器と、蓄熱前の温度を上昇させるための第2圧縮器とを有する二重熱源を示す模式図である。
図5図5は、復熱器と圧縮器の両方が熱源間の温度を上昇させ、第2圧縮器が蓄熱前の温度を上昇させる二重熱源を示す模式図である。
図6図6は、図1に関連して説明する加熱-圧縮-加熱サイクルを受ける作動流体の代表的な圧力-エンタルピー図である。
図7図7は、図2に関連して説明する加熱-復熱-圧縮-加熱サイクルを受ける作動流体の代表的な圧力-エンタルピー図である。
図8図8は、図3に関連して説明する加熱-復熱-加熱-圧縮サイクルを受ける作動流体の代表的な圧力-エンタルピー図である。
図9図9は、図4に関連して説明する加熱-圧縮-加熱-圧縮のサイクルを受ける作動流体の代表的な圧力-エンタルピー図である。
図10図10は、図5に関連して説明する加熱-復熱-圧縮-加熱-圧縮のサイクルを受ける作動流体の代表的な圧力-エンタルピー図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
例示実施形態の詳細な説明
複数の外部熱源からの、例えば別個の重複しない温度範囲にある熱を、送出された熱及びエネルギーを熱エネルギー貯蔵リザーバに供給する単一の作動流体回路に抽出する、本発明に係るヒートポンプ及びその作動方法を以下に説明し、図面で示す。これらのヒートポンプは、投入と放出の2つのモードで動作する。投入時には、熱エネルギーが熱エネルギー貯蔵部に蓄積される。放出時には、熱エネルギーが取り出される。
【0041】
本発明に係るヒートポンプは、異なる熱源、例えば、低温源(例えば周囲空気)及び高温源(例えば太陽熱収集器)からの熱を、後の使用、例えば、発電又はプロセス加熱のために容易に貯蔵できる熱エネルギーの単一のストリームに収集するために経済的に実行可能な手段を提供する。
【0042】
低温熱源からの熱は、いくつかの実施形態では、作動流体に蒸発のエネルギーを提供するために使用されるのに対し、高エネルギー源からの熱は、熱発生器の全体的な電気効率を向上させるためにその流体をさらに加熱するために使用される。いくつかの実施形態では、本発明に係るヒートポンプは、さらに高い温度の熱源から追加のエネルギーを収集し、全体的な効率をさらに向上させることができる。複数の熱源の組み合わせによって、生成された電気の経済的効率のために最適化できる熱源を開発することが可能になる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態は、熱源間に圧縮及び/又は回収段を有するヒートポンプ回路構成を拡張して、熱回収段間で作動流体の温度を上昇させる。熱が収集されたら、作動流体は、減圧段を横断して蒸発段に再度入る前に、その熱エネルギーを蓄熱部に排出する。
【0044】
図面を参照すると、作動流体が、該流体を部材から部材へと運ぶビアによって画定される流体回路を流通し、かつ、(a)複数の熱源から熱を取り出し、(b)収集した熱の温度を上昇させ、(c)熱を蓄熱部に送り、(d)後の時間に熱エネルギーを蓄熱部から回収する、本発明の実施形態が示されている。以下の説明は、作動流体が、流体の沸点に相当する第1温度(又は温度範囲)、及びその第1温度とは異なる、典型的には、実質的に異なる、それよりも高い第2温度(又は温度範囲)で熱を吸収する際の当該作動流体のための流体回路内におけるビアによって画定される流路を示す。その後、回路内の流体は、吸収された熱をエネルギー貯蔵デバイスに蓄積させる。なお、作動流体の流路に追加の部材を含めることができ、当該部材は、これらの例で詳述する発明の異なる実施形態を表すものであることが分かるであろう。
【0045】
図1図5に示されかつ以下で説明するヒートポンプの部材は、図面に例示されかつ以下で説明するように、流体経路(又は回路)を画定し、その経路に沿って作動流体を運ぶのに適した公知のタイプの配管、チューブ又は他の構造体によって結合される。その経路及び構造体は、従来通り、図面において実線によって示す(典型的には方向矢印で)。
【0046】
図示した部材の周囲又は中を通ることができる(実際にはそれらの1つ以上と一体であってもよい)ビアは、作動流体がそれらの中又は周囲を流れるときに作動流体と選択されたそれぞれの部材(熱抽出部及び/又はそれらの各熱源、蓄熱部、復熱器など)とを熱結合させるように、少なくとも回路の一部に沿って熱伝導性である。ビアは、作動流体が不必要な熱損失なしに他の部材によって圧縮/加圧され、拡張/減圧され、ルート化され、そうでなければ流体機械的に操作されることを可能にするように、回路に沿って他の部材(圧縮器、ポンプ、弁など)と流動的に結合される(ただし他の部材からは熱的に絶縁されている)。これらの点で、ビアの製造及び使用は、本明細書の教示に照らして当業者の権限に属するものである。
【0047】
図1は、本発明の一実施形態に係るヒートポンプの流体回路を示す概略図である。低温熱源100は、サイクルを開始するための熱エネルギーを提供する。可能な熱源としては、工業プロセスからの廃熱、周囲の大気温度から収集された熱エネルギー、及び太陽熱エネルギーから収集された温水が挙げられるが、これらに限定されない。熱源は、従来の公知の方法でその教示に従って構成されるように、第1熱交換器110と熱的に結合するように配置される。
【0048】
低温熱源からのエネルギーは、熱交換器110において作動流体と交換される。図示された実施形態では、作動流体は、沸点が低いため低温(例えば40℃)及び大気圧を超える圧力で蒸発させることができるイソブタンである。図示された実施形態では、熱交換器は作動流体を実質的に、好ましくは完全に蒸発させ、現在気体である作動流体の温度をさらに上昇させるために追加の熱を供給することができる。n-ブタン、プロパン、イソブテンのような低分子量炭化水素やHFC-227のような冷媒ガスなどの他の作動流体も可能である。図示された実施形態では、熱交換器はシェル及びチューブ設計のものであるが、その代わりに又はそれに加えて当業者の技術常識の範囲内で他の設計を使用してもよい。他の可能な熱交換器の種類としては、いくつか例を挙げると、プレート熱交換器、フレーム熱交換器及びスパイラルチューブ熱交換器がある。熱交換器は、当該技術分野における慣例によってその教示に一致して構成されるように、ビアを介して圧縮器120に接続される(すなわち、ここで及び本明細書の他の箇所において同様の文脈で使用されるときに、「流動的に結合される」)。
【0049】
圧縮器120において、作動流体の圧力を上昇させる。圧縮器は、非限定的な例として、遠心、軸方向、スクリュー、スクロール及びピストンを含めた、当該技術分野で知られている任意のタイプのものであることができる。通常の用途では、これらの技術の全ては、次の関係が成り立つほぼ断熱的な条件下で圧縮される:
1-γγ=一定
ここで、γは作動流体の断熱指数であり、Pは圧力であり、Tは温度である。実用的な作動流体の断熱指数は、気相では1を超える。上記の関係から、圧力の上昇には温度の上昇が必要である。温度を上昇させた後、圧縮器は作動流体を高温熱源130に搬送する。ここで及び本明細書の他の箇所で同様の文脈で使用されるときに、「搬送する」とは、当該技術分野における慣例に従ってその教示に一致して構成されるように、ビアを介して作動流体をルートに沿って送ることを意味する。
【0050】
高温熱源は、作動流体の温度を上昇させるために、作動流体と直接的に又は当該技術分野で知られているタイプの第2熱交換器(図1には示されていない)を介して連通する(すなわち、ここで及び本明細書の他の箇所で同様の文脈で使用されるときに、「熱結合している」)。ここで及び本明細書の他の箇所で同様の文脈で使用されるときに、当該連通(又は結合)は、当該技術分野における慣習に従ってその教示に一致して構成されるように行われてもよい。図示された実施形態では、高温熱源は、高温太陽熱集熱器である。流体は、高温熱源(又は集熱器)を出て、ビアのそれぞれの部分を構成する配管その他の構造体を介して制御弁140に接続される。
【0051】
制御弁140は、高温熱源を蓄熱器150及び制御弁142に接続する。ここで及び本明細書他の箇所で同様の文脈で使用されるときに、当該接続(又は流体結合)は、当該技術分野における慣習に従ってその教示に一致して構成されるように行ってもよい。投入動作中に、弁140は開いており、弁142を閉じたままの状態で作動流体を蓄熱部内に導通させる。
【0052】
図示された実施形態では、蓄熱器150は砂の容器であり、砂を通して作動流体を搬送するパイプを備える。流体が砂中の流体パイプを通過すると、流体は砂に熱を伝え、その温度は低下する。蓄熱部は、作動流体が蓄熱部を出る前に、蓄熱部から集められた熱の大部分を砂中に排出させるのに十分な長さのものである。他の実施形態では、蓄熱器は、作動流体が多孔質材料を通って浸透する充填床蓄熱システムから構成できる。さらに他の実施形態では、蓄熱部は、熱交換器内の作動流体の作用によって加熱される蓄熱流体から構成できる。蓄熱部150のさらに他の構造は、当業者の教示を考慮してその技術知識内にある。このように構成された蓄熱部は、制御弁140、142、144、146に接続される。熱投入操作中に、制御弁144は、制御弁146を閉じたままの状態で作動流体を減圧装置150に導く。
【0053】
減圧装置150は、制御弁144を熱交換器100に接続する。図示された実施形態では、この減圧装置はエネルギー回収タービンであるが、作動流体に及ぼす流体力学的効果のようなものを有する当該技術分野で知られているタイプの膨張弁その他の装置であることも可能である。蓄熱部150内での作動流体の冷却により、作動流体は、少なくとも部分的に液体状態で熱交換器110に再度入り、そこで蒸発してサイクルが完了する。
【0054】
図6は、図1の回路を横断する作動流体の観点から投入サイクルを描いたものである。図6のx軸は作動流体のエンタルピーである。y軸は圧力である。一定温度100及びエンタルピー110の線も示されている。作動流体の最初の蒸発は符号120として示されている。作動流体は、液体から気体への相変化に伴い、低温熱源から313Kの一定温度で熱を吸収する。蒸発後、作動流体は圧縮130される。この例のサイクルでは、作動流体の温度は、圧縮により313Kから453Kまで昇温する。なお、圧縮はほぼ等方的であるが(すなわち、一定のエントロピー線110に対して平行)、圧縮段での非効率性が熱の形で追加のエネルギーを導入し、それによって作動流体のエンタルピーが等方的圧縮から予想されるものよりわずかに上回ることになる。その後、作動流体は、140で示されるように追加の熱を吸収する。この熱は高温熱源によって供給され、この例では453K~513Kの熱を供給する。加熱サイクルを完了した後、熱は、次に、軌道150に沿って蓄熱システムに伝達される。図に示すように、温度は、200Kの総熱伝達について513Kから313Kの開始温度まで低下する。最後に、工程160は、熱力学的サイクルの完了をもたらす減圧装置におけるほぼ等方的な圧力低下を示す。
【0055】
蓄熱システムに投入されたら、図1の弁140及び144を閉じる。弁142及び146を開いて蓄熱部150をポンプ170及び熱シンク180に接続する。
【0056】
本発明に係るヒートポンプのポンプ、弁及び他の動的機器(例えば、図1図5に例示されるようなもの)の操作は、投入サイクル中に、オペレータ(図示せず)の「手作業によって」、機械によって、例えば、デジタルデータプロセッサ、PLCその他の制御装置若しくはそれらの組み合わせ(図示せず)によって、又は人と機械の組み合わせによって達成でき、これらは全て当該技術分野における慣習に従ってその教示に一致して構成される。
【0057】
流体ポンプ170は、熱シンク180及び弁146に接続される。熱エネルギーを排出するときに、ポンプは、弁146を介して作動流体を伝達する。弁146は、流体ポンプを蓄熱部150と弁144とに接続する。排出の際に、弁146は開いたままであり、作動流体を蓄熱部150に伝達する。蓄熱部150では、作動流体の流れ方向は、排出とは逆方向である。作動流体は、蓄熱部に低温で入り、高温で蓄熱部から出る。蓄熱部は、弁140及び142に接続される。排出時には、弁142は開いたままであり、弁140は閉じたままである。弁142は、熱シンク180に接続される。流体は、弁142から出た後に熱シンク180に入る。蓄熱部から得られた熱エネルギーは、熱シンクによって消費される。図示された実施形態では、熱シンクは、当該技術水準において慣用されているようなランキンサイクルでタービンを使用する熱機関である。他の実施形態では、作動流体から熱を取り出すために熱交換器を使用することができる。熱シンクはポンプ170に接続される。作動流体がポンプに再度入ると、サイクルが継続される。
【0058】
投入サイクルに関して上記したように、本発明に係るヒートポンプのポンプ、弁、及び他の動的機器(例えば、図1図5に例示したようなもの)の動作は、放出サイクル中に、オペレータ(図示せず)による「手作業によって」、機械によって、例えば、デジタルデータ処理装置、PLCその他の制御装置若しくはその組み合わせ(図示せず)によって、又は人と機械の組み合わせによって実行でき、これらは全て当該技術分野の慣例に従ってその教示に一致して構成される。
【0059】
図2は、2つの熱源間の温度差が復熱器と圧縮器との複合作用によって維持される本発明の実施形態を示す。この構成の図示実施形態では、作動流体は、C6Kペルフルオロケトンとしても知られている3M社製のNovec649熱伝達流体である。他の実施形態では、非限定的な例として、低分子量炭化水素、シロキサン、及びヒドロフルオロカーボンなどの様々な作動流体が使用できる。
【0060】
図2のシステムの動作は、図1で説明したのと同様に進行する。低温熱源100、ポンプ105、高温熱源130、弁140、142、144、146、蓄熱部150、減圧器160、ポンプ170、及び熱シンク180は、上記と同様の機能を果たし、同様に接続される。
【0061】
この構成において新たに図示された要素は、復熱器190である。このものは、2つの流路を遮断するように配置される:第1の流路は、弁144から減圧器150まで、第2の流路は、熱交換器110から圧縮器120までである。復熱器の機能は、第1の流路から第2の流路に熱を伝達することである。図示された実施形態では、復熱器は、向流で動作するフィン付きチューブ熱交換器であるが、他の実施形態では、その代わりに又はそれに加えて、作動流体に対して同様の流体力学的効果を有する当該技術分野で知られているタイプの他の装置を使用してもよい。弁144からの作動流体は、減圧器160に伝達される作動流体の温度が実質的に低い温度となるように、向流パターンで復熱器の管を通って搬送される。熱交換器110からの作動流体は、復熱器190のチューブフィンにわたって通過する。その熱は、圧縮器120に搬送されるときに作動流体の温度を上昇させる。
【0062】
熱交換器110は、一方の側においてポンプ105と低温熱源100とに接続される。熱交換器の他方の側は、減圧器160と復熱器190とに接続される。このものは、低温熱源からの熱を搬送して作動流体を蒸発させる。
【0063】
圧縮器120は、復熱器190及び高温熱源に接続される。上記の構成のように、図示された実施形態の圧縮器は遠心分離機であるが、その代わりに又はそれに加えて、他の適切な圧縮技術を当業者の技術常識の範囲内で使用することができる。
【0064】
弁144は、蓄熱部150を復熱器190に接続させる。投入時に、弁144は、作動流体を蓄熱部から復熱器に導通させる。
【0065】
減圧器160は、復熱器190を熱交換器110に接続する。図示された実施形態では、減圧器はタービンである。上記のように、他の技術も可能である。
【0066】
作動流体を熱交換器110に戻すことで、熱投入サイクルが完了する。蓄熱システムに吸収された熱は、図1と同じ機構を使用して回収できる。すなわち、弁140、142、144、146を再構成して、ポンプ170が作動流体を蓄熱部150を通して熱シンク180に循環させることができる。
【0067】
図7は、図2の実施形態の投入サイクルを作動流体の観点から見た図である。図6と同様に、これは、一定温度100と一定エントロピー110の線による、代表的な作動流体の圧力対エンタルピーのプロット図である。なお、図6とは異なり、低圧で始まる一定エントロピー110の線は、作動流体210の相境界を通過していることに留意されたい。これは、混合相物質がロータブレードに衝突してそれらを迅速に侵食するため、多くのタイプの圧縮器技術、特に遠心及び軸流タービンにとって問題となる。サイクルに復熱器140を必要とするのは、作動流体のこの特性のためである。復熱器は、圧縮相150の前に作動流体を353Kから393Kに予熱し、それによってほぼ等方的な圧縮が相境界を横断するのを防止する。図6と同様に、作動流体は、高温源160から473K~513Kの範囲にわたって追加の熱を吸収し、その後、蓄熱部170を通過して、513K~413Kの熱を放出する。図7の符号180は、蓄熱部から出た後に復熱器に入る箇所を特定している。復熱器は、高圧流体から低圧流体190に熱を移動させる。復熱器を出ると、高圧流体は減圧器200に入り、低温熱源からの蒸発120中に熱を吸収することができる低温低圧状態に戻る。その後、作動流体の気相は、130で再び復熱器に入り、サイクルを完了する。
【0068】
図3は、2つの熱源間の温度差が復熱器の作用によって維持され、高温熱源の後に配置された圧縮器によって追加の温度上昇が得られる、本発明の実施形態を示す図である。この構成の図示実施形態では、作動流体は、C6Kペルフルオロケトンとしても知られている3M社製のNovec649熱伝達流体である。他の実施形態では、非限定的な例として、低分子量炭化水素、シロキサン、及びヒドロフルオロカーボンなどの様々な作動流体を使用できる。
【0069】
図3のシステムの動作は、図2で説明したのと同様に進行する。低温熱源100、ポンプ105、熱交換器110、弁142、144、146、蓄熱部150、減圧器160、ポンプ170、及び熱シンク180は、上記と同一の機能を果たし、正確に同じ方法で接続されている。
【0070】
図3の構成と図2とは、図2から圧縮器120が取り除かれ、図3において高温熱源130と弁140との間に新たに圧縮器200が追加されている点で相違する。
【0071】
復熱器120は、第1流路のために弁144及び減圧器160に接続される。その第2流路は、熱交換器110及び高温熱源130に接続される。図2と同様に、復熱器は、第1流路から第2流路に熱を移動させる。
【0072】
高温熱源は、復熱器120及び圧縮器200に接続される。復熱器から出た加熱流体は、高温熱源から直接的に又は熱交換器を介して間接的に追加の熱を受ける。これにより、作動流体が高温熱源を出て圧縮器200に入る際に温度が上昇する。
【0073】
圧縮器200は、高温熱源130及び弁140に接続される。上記図1の圧縮器120と同様に、圧縮器が作動流体に作用することで、作動流体の圧力及び温度が上昇する。
【0074】
弁140は、圧縮器200、蓄熱部150、及び弁142に接続される。投入中に、弁140は開いたままであり、作動流体が蓄熱部内を循環することを可能にする。弁140から出る際に、作動流体は、投入時に図2と同じ部材を同じ順序で循環する。
【0075】
排出時には、流体の流れは図2で説明したのと同じである。流体は、弁142、蓄熱部150、弁144、ポンプ170、及び熱シンク180を通って流れてから、弁142に戻る。弁140及び144は、排出中も閉じたままである。
【0076】
図8は、図3の投入サイクルを作動流体の観点から見た図である。これも、一定温度100及び一定エントロピー110の線による圧力-エンタルピー図である。作動流体の蒸発は、工程120において353Kの温度で生じる。符号130は、140で示されるように、流体を353Kから393Kまで加熱する復熱器への進入を示す。次に、流体は、箇所150で復熱器から出て、高温熱源160を通過して453Kまで温度を上昇させる。圧縮段階170は、温度を513Kまで上昇させる。その後、流体は蓄熱部180に入り、そこで513Kから413Kに冷却される際に熱を放出する。190で、流体は復熱器に再び入り、サイクル200の低圧相に熱を伝達する。流体が冷却されると、流体は圧力回収装置210に入り、この圧力回収装置210が流体を熱交換器に戻し、サイクルを完了させる。
【0077】
図4は、2つの熱源間の温度差が図1のような圧縮器120の作用によって維持され、作動流体が蓄熱部に入る前に追加の圧縮器200が作動流体の温度及び圧力をさらに上昇させる、本発明の実施形態を示す図である。図示された実施形態では、作動流体はイソブタンである。他の実施形態では、低分子量炭化水素、シロキサン、及びヒドロフルオロカーボンなどの様々な作動流体を使用することができる。
【0078】
低温熱源100、ポンプ105、熱交換器110、圧縮器120、弁142、144、146、蓄熱部150、減圧器160、ポンプ170、熱シンク180は、いずれも図1と同一の機能を果たし、同一の方法で接続される。
【0079】
図4の構成では、高温熱源130は、圧縮器120及び圧縮器200に接続される。流体が圧縮器120から圧縮器200まで高温熱源を通過する際に、熱の付加により温度が上昇する。
【0080】
圧縮器200は、高温熱源130及び弁140に接続される。作動流体が圧縮器によって圧縮されると、図1の圧縮器120について上記したように、温度及び圧力がともに上昇する。
【0081】
バルブ140は、圧縮器200と、蓄熱部150と、弁142とに接続される。弁140は、投入操作時には開いたままである。
【0082】
排出動作は、図1で説明したのと同じように進行する。弁140及び144を閉じると共に、弁142及び146を開く。ポンプ180は、作動流体を熱シンク180から弁144まで蓄熱部150内を循環させ、そして弁146を通して流体をポンプに戻す。
【0083】
図9は、図4のサイクルを作動流体の観点から見た図である。他の例と同様に、これは一定温度100及び一定エントロピー110の線による圧力-エンタルピープロット図である。作動流体は、温度313Kで低温熱源から熱を吸収し、気体に戻る。この気体は、セグメント130に沿って圧縮されて温度が373Kに上昇する。高温熱源は、セグメント140で示されるように、373Kから453Kまでの熱を供給する。圧縮器は、セグメント150で453Kから513Kまで温度をさらに上昇させる。その後、熱は、温度が513Kから313Kに低下すると蓄熱部160に供給される。流体は、減圧装置170を通過して蒸発器に戻り、こうしてサイクルを完了する。
【0084】
図5は、2つの熱源間の温度差が復熱器と圧縮器との複合作用によって維持され、第2の圧縮器を使用して、熱エネルギーを蓄熱部に蓄積する前に作動流体の温度を高める、本発明の実施形態を示す図である。この構成の図示実施形態では、作動流体は、C6Kペルフルオロケトンとしても知られている3M社製のNovec649熱伝達流体である。他の実施形態では、低分子量炭化水素、シロキサン、及びヒドロフルオロカーボンなどの様々な作動流体を使用することができる。
【0085】
図5のシステムの動作は、図2で説明した動作と同様に進行する。低温熱源100、ポンプ105、熱交換器110、復熱器190、圧縮器120、弁142、144、146、蓄熱部150、減圧器160、ポンプ170、及び熱シンク180は、全て図2について上記したのと同一の機能を果たし、正確に同一の方法で接続されている。
【0086】
図5の構成では、高温熱源130は、圧縮器120及び圧縮器200に接続される。流体が圧縮器120から圧縮器200まで高温熱源を通過すると、熱の付加により温度が上昇する。
【0087】
圧縮器200は、高温熱源130及び弁140に接続される。作動流体が圧縮器によって圧縮されると、図1の圧縮器120について上記したように温度及び圧力がともに上昇する。
【0088】
弁140は、圧縮器200と、蓄熱器150と、弁142とに接続される。弁140は、投入操作時に開いたままである。
【0089】
排出動作は、図1で説明したのと同じように進行する。弁140及び144を閉じると共に、弁142及び146を開く。ポンプ180は、作動流体を熱シンク180から弁144まで、蓄熱部150内で循環させ、そして弁146を通して流体をポンプに戻す。
【0090】
図10は、図5のサイクルを作動流体の観点から見た図である。他の例と同様に、これは、一定温度100及び一定エントロピー110の線による圧力-エンタルピープロット図である。作動流体は、温度353Kで低温熱源から熱を吸収し、ガスに戻る。ガスは130で復熱器に入り、熱140を吸収して温度を393Kまで上昇させる。圧縮器150は、さらに温度を393Kから433Kに上昇させる。その後、流体は、433K~483Kの熱を供給する高温熱源160に通される。第2圧縮器170は、温度を513Kまでさらに上昇させる。作動流体中の熱は、513Kから413Kまで蓄熱システム180に供給される。190で復熱器に再度入り、熱200を低圧ガスに伝達する。復熱器から出た作動流体は、減圧装置210を通過し、蒸発器に戻り、サイクルを完了する。
【0091】
上で説明し、図面に例示したのは、先に述べた目的を果たすヒートポンプ及び動作方法である。なお、図示された実施形態は本発明の例に過ぎず、ここに示されかつ説明されたものとは異なる他の実施形態も本発明に包含されることが分かるであろう。したがって、例えば、先の例は、本発明に係るヒートポンプのいくつかの選択された部材を説明するものであると共に、当業者であれば、図面に示されかつ上記したものの代わりに又はそれに加えて、例えば圧力及び温度センサ、安全弁、配管及び継手、フィルタ、油分離装置及びシステム内の部材の特定の選択の動作を支援するために必要な他の器具を含めた他の部材がこれらのシステムの流体経路に含まれてもよいことが分かるであろう。さらに、当業者であれば、「圧縮器」、「復熱器」、「熱交換器」、「減圧器」、「ポンプ」、「蓄熱部」、及び「熱シンク」などの部材は、全て、同様の機能を提供する別のデバイスによって実装できることが分かるであろう。
【0092】
最後に、図1~5に記載された構成は、外部源から供給される独立した温度範囲が2つしかないシステムを説明しているが、当業者であれば、これらの説明を本発明の範囲内で拡張して、追加の熱源間の流路に追加の熱交換器及び/又は圧縮器を導入することによって3個以上の熱源を含めることが可能であることは明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】