(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】術後外科疼痛の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20230808BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20230808BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230808BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20230808BHJP
C07K 14/33 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P29/02 ZNA
A61P25/22
A61K38/48
C07K14/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502977
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 GB2021051838
(87)【国際公開番号】W WO2022013575
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517340507
【氏名又は名称】イプセン バイオファーム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IPSEN BIOPHARM LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エバンス,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】カリニチェフ,ミハイル
(72)【発明者】
【氏名】ポンス,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】コルネット,シルビー
(72)【発明者】
【氏名】レズミ,ステファン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084DA33
4C084DC02
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA081
4C084ZA082
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA11
4H045DA83
4H045EA20
4H045FA71
(57)【要約】
術後外科疼痛の処置
本発明は、患者における術後外科疼痛を処置する際に使用するためのクロストリジウム神経毒素に関し、前記方法は、手術の5日超前にクロストリジウム神経毒素を患者に投与することを含み、かつ、クロストリジウム神経毒素は、以下に投与される:i)皮内;又はii)髄腔内。
対応する処置の方法及びクロストリジウム神経毒素の投与用量もまた提供される。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における術後外科疼痛を処置する際に使用するためのクロストリジウム神経毒素、ここで前記方法は、手術の5日超前にクロストリジウム神経毒素を患者に投与することを含み、かつ、クロストリジウム神経毒素は、以下に投与される:
i)皮内;又は
ii)髄腔内。
【請求項2】
患者における術後外科疼痛を処置するための方法、ここで前記方法は、手術の5日超前にクロストリジウム神経毒素を患者に投与することを含み、かつ、クロストリジウム神経毒素は、以下に投与される:
i)皮内;又は
ii)髄腔内。
【請求項3】
請求項1に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2に記載の方法、ここで、クロストリジウム神経毒素は、手術の6~50日前に;好ましくは手術の10~20日前に、投与される。
【請求項4】
請求項1~3に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2若しくは3に記載の方法、ここで、クロストリジウム神経毒素は、手術の14~16日前に、好ましくは手術の約15日前に投与される。
【請求項5】
請求項1、3、若しくは4のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~4のいずれか一項に記載の方法、ここで、クロストリジウム神経毒素の投与は実質的に、患者による術後外科疼痛知覚を低減し、かつ、低減された術後外科疼痛知覚は、手術の直後の24時間、維持される。
【請求項6】
請求項1若しくは3~5のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~5のいずれか一項に記載の方法、ここで、実質的に全ての低減された術後外科疼痛知覚は、手術の直後の3日間、手術の直後の5日間、手術の直後の7日間、好ましくは手術の直後の8日間、維持される。
【請求項7】
請求項5若しくは6に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項5若しくは6に記載の方法、ここで、手術の直後の規定された時点で観察される疼痛知覚の前記低減されたレベルは、クロストリジウム神経毒素の投与後のいずれかの時点で観察される低減された疼痛知覚の最大レベルの少なくとも50%、好ましくはクロストリジウム神経毒素の投与後のいずれかの時点で観察される低減された疼痛知覚の最大レベルの少なくとも75%である。
【請求項8】
術後不安を低減又は抑制する際に使用するためのクロストリジウム神経毒素、ここで前記方法は、手術前にクロストリジウム神経毒素を患者に投与することを含み、ここで、クロストリジウム神経毒素は、以下に投与される:
i)皮内;又は
ii)髄腔内。
【請求項9】
術後不安を低減又は抑制するための方法、ここで前記方法は手術前にクロストリジウム神経毒素を患者に投与することを含み、ここで、クロストリジウム神経毒素は、以下に投与される:
i)皮内;又は
ii)髄腔内。
【請求項10】
請求項8に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項9に記載の方法、ここで、クロストリジウム神経毒素は、手術の5日以上前に投与され;好ましくはここで、クロストリジウム神経毒素は、手術の5日超前に投与される。
【請求項11】
請求項8若しくは10に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項9若しくは10に記載の方法、ここで、クロストリジウム神経毒素の投与は実質的に、患者による術後不安知覚を低減し、かつ、前記低減された術後不安知覚は手術の直後の24時間、維持される。
【請求項12】
請求項11に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項11に記載の方法、ここで、実質的に全ての低減された術後不安知覚は手術の直後の2日間、手術の直後の5日間、手術の直後の7日間、好ましくは手術の直後の9日間、維持される。
【請求項13】
請求項1、3~8、若しくは10~12のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~12のいずれか一項に記載の方法、ここで、クロストリジウム神経毒素は、術後外科疼痛を処置し、かつ術後不安を低減又は抑制する。
【請求項14】
請求項1、3~8、若しくは13のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは13のいずれか一項に記載の方法、ここで、前記術後外科疼痛は、外科的介入により引き起こされ、かつ、クロストリジウム神経毒素は、外科的介入の部位に対して遠位の部位において投与される。
【請求項15】
請求項14に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項14に記載の方法、ここで、外科的切開の遠位部位は、外科的介入の部位から少なくとも15cm、50cm、又は100cmである。
【請求項16】
請求項1、3~8、若しくは10~15のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~15のいずれか一項に記載の方法、ここで、投与後、クロストリジウム神経毒素は、逆行輸送によって脊髄まで移動し及び前記脊髄中でSNAREタンパク質切断(SNAP-25タンパク質切断)を行う。
【請求項17】
請求項1、3~8、若しくは10~16のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~16のいずれか一項に記載の方法、ここで、クロストリジウム神経毒素は皮内部位において投与され、かつ、クロストリジウム神経毒素の投与後に、前記皮内部位において又はその近位で、前記クロストリジウム神経毒素による最小限のSNAREタンパク質切断(SNAP-25タンパク質切断)が観察されるか又は全く観察されない。
【請求項18】
請求項1、3~8、若しくは10~16のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~16のいずれか一項に記載の方法、ここで、クロストリジウム神経毒素は、脊髄の髄腔内空間における部位において投与され、かつ、クロストリジウム神経毒素の投与後に、前記部位において又はその近位で、前記クロストリジウム神経毒素による最小限のSNAREタンパク質切断(SNAP-25タンパク質切断)が観察されるか又は全く観察されない。
【請求項19】
請求項1、3~8、若しくは10~18のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~18のいずれか一項に記載の方法、ここで、外科的介入は、皮膚及び/又は筋膜及び/又は筋肉までの切開を含み、好ましくはここで、外科的介入は皮膚までの切開を含む。
【請求項20】
請求項1、3~8、若しくは10~19のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~19のいずれか一項に記載の方法、ここで、クロストリジウム神経毒素は、ボツリヌス神経毒素(BoNT)である。
【請求項21】
請求項1、3~8、若しくは10~20のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~20のいずれか一項に記載の方法、ここで、クロストリジウム神経毒素は、ボツリヌス神経毒素血清型A(BoNT/A)である。
【請求項22】
請求項1、3~8、若しくは10~21のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~21のいずれか一項に記載の方法、ここで、術後外科疼痛は、急性の術後外科疼痛である。
【請求項23】
請求項1、3~8、若しくは10~22のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~22のいずれか一項に記載の方法、ここで、術後外科疼痛は、慢性の術後外科疼痛である。
【請求項24】
請求項1、3~8、若しくは10~23のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~23のいずれか一項に記載の方法、ここで、前記用途又は前記方法は、クロストリジウム神経毒素の筋肉内投与を含まない。
【請求項25】
請求項1、3~8、若しくは10~24のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~24のいずれか一項に記載の方法、ここで、患者は、100~500Uのクロストリジウム神経毒素を投与され;好ましくは、患者は200Uのクロストリジウム神経毒素を投与される。
【請求項26】
請求項1、3~8、若しくは10~25のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~25のいずれか一項に記載の方法、ここで、患者は、総用量1~3ngのクロストリジウム神経毒素を投与される。
【請求項27】
請求項1、3~8、若しくは10~26のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~26のいずれか一項に記載の方法、ここで、患者は、kg(体重)当たり80~250pgのクロストリジウム神経毒素を投与される。
【請求項28】
請求項1、3~8、若しくは10~27のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~27のいずれか一項に記載の方法、ここで、クロストリジウム神経毒素は、二以上の投与部位において投与され;好ましくは、患者は、投与部位当たり2.5~30Uのクロストリジウム神経毒素を投与され;より好ましくは、患者は、投与部位当たり20Uのクロストリジウム神経毒素を投与される。
【請求項29】
請求項1、3~8、若しくは10~28のいずれか一項に記載の用途のクロストリジウム神経毒素又は請求項2~7若しくは9~28のいずれか一項に記載の方法、ここで、クロストリジウム神経毒素は、二以上の投与部位において投与され;好ましくは、患者は投与部位当たり10~170pgのクロストリジウム神経毒素;より好ましくは投与部位当たり1~14pg/kg体重を投与される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術に起因する外科疼痛(例えば術後外科疼痛)及び/又は手術誘発性の不安(例えば術後不安)の処置に関する。より詳細には、本発明は、クロストリジウム神経毒素の投与を含む処置の方法を提供し、とりわけ、ボツリヌス神経毒素を用いて術後外科疼痛及び不安を処置する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
術後外科疼痛は、外科手技に起因する不快な感覚である。術後外科疼痛は、外科的介入、外科手技そのもの、創傷の閉鎖、及び外科手技中に加えられるいずれかの力による、組織に対する損傷によって引き起こされ得る。手術の後の外科疼痛(例えば術後外科疼痛)はまた、手術に伴う要因にも由来し得る。例えば、患者はその患者の手術用のテーブルへの配置の仕方に起因して背部痛を煩う場合があり、又は胸部領域における外科的介入に起因して胸部痛が起こる場合がある。また、呼吸管の挿入は刺激を引き起こし得るため、全身麻酔後に咽喉痛が起こる場合もある。しかしながら、最もよく見られるのは外科的介入からの皮膚及び筋肉への切り込みによって引き起こされる術後外科疼痛である。
【0003】
例えば、外科的介入(又はより特には、外科的切開)は、疼痛を引き起こす「侵害刺激」を表す場合がある。侵害刺激、即ち組織損傷を引き起こし得る刺激は、侵害受容性の求心性末端からの神経伝達物質の放出及び感覚末端からのサブスタンスP及びカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)等の神経ペプチドの放出を活性化し得る。これらの侵害性の情報はその後、末梢神経系から中枢神経系へと伝達され、そこでその個体により疼痛が知覚される。
【0004】
術後外科疼痛は外科的介入の部位における炎症と神経組織損傷との組み合わせによって引き起こされ得る。なんらかの炎症及び/又は神経組織損傷が、術後外科疼痛に加えて起こる。例えば、組織外傷に反応して活性化された肥満細胞の脱顆粒の結果として、プロテアーゼ、サイトカイン、及びセロトニンを含む種々の物質の放出が起こり得る。これらの物質は、一次求心性ニューロンを増感させ(下側閾値において活性化し)て、疼痛過敏を生み出し得る。組織は広範囲にわたって神経支配されるため、身体のどの領域も手術からの神経損傷に敏感である。
【0005】
術後不安は、疲労、集中及び睡眠の困難、及び筋肉の緊張が挙げられるがそれらに限定されない、身体的症候及び行動変化を経験している患者に付随し得る。さらに患者は、不穏状態、易怒性、恐れ又は心配の制御の困難、恐怖、及びパニックが挙げられる、不安の感情的症候を経験する場合もある。術後不安は、麻酔の影響、手術そのもの、術後外科疼痛、及び/又は病院環境からくるストレスによって引き起こされる場合もある。例えば、手術患者はしばしば、手術前及び手術後共に、相当程度の精神的、身体的、及び感情的ストレス(例えば、手術前の手術の予想に起因するストレス)下にあり、こうしたストレスは不安の症候として表れる。
【0006】
外科的(例えば術後)疼痛の処置のための既存の方法は典型的に、神経伝達物質及びペプチドを標的とし、及び非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、オピオイド、局所麻酔ブロック、又はそれらの組み合わせ使用が挙げられる。しかしながら、これらの処置方法は様々な副作用を生じ、及び明らかに、しばしば依存性(例えば嗜癖)を誘発する。加えて、これらの処置方法は急性の術後外科疼痛の緩和を提供するに過ぎず、例えば、投与後の短期間だけ外科疼痛の緩和を提供し、そのため連続的/反復的投与を必要とし(鎮痛剤に対する患者依存性/嗜癖の問題を悪化させる)。急性の術後外科疼痛を効果的に管理しなければ、患者が慢性的な術後外科疼痛を発症する機会を増加させかねない。(薬の連続投与を必要とする)このような疼痛管理の方法はまた、しばしば薬剤耐性をもたらす。術後外科疼痛を管理するための先行の方法に伴うさらなる問題としては、鎮痛効果を提供するための高用量の鎮痛薬投与の必要性が挙げられ、しばしばその用量に合わせて増大する副作用を伴う。
【0007】
このように、現在の外科疼痛の処置方法は、術後外科疼痛、特に中程度から重度の術後外科疼痛を管理する/緩和するためには適切(例えば十分)でもないし、患者が経験する術後不安の適切な管理も提供しない(後者は一般に代替の/付加的な薬剤を必要とする)。したがって、術後外科疼痛及び/又は術後不安を処置するための代替の/改善された方法がますます必要とされている。
【0008】
本発明は、例えば単回(例えば急性)投与後であっても、術後外科疼痛/不安の長期持続的な処置(慢性の術後外科疼痛のための軽減傾向を包含)のための方法を提供することによって、これらの問題の一つ以上に対処する。本発明の好ましい態様は、患者を手術に供する前に処置(投与)を開始することが、患者が手術を切り抜ける際の効果的な術後外科疼痛又は術後不安の管理(有利には、そうでなければ全身的/局所的麻酔の効果が弱まったように感じられ得る術後外科疼痛又は術後不安を軽減すること)を可能とするという驚くべき観察に基礎を置き、及びクロストリジウム神経毒素系の処置に一意的に適した詳細な手術前投与時点が提供される。
【発明の概要】
【0009】
より詳細には、本発明は、手術の5日超前の、皮内又は髄腔内投与による手術前のクロストリジウム神経毒素(ボツリヌス神経毒素等)の投与が、術後外科疼痛を処置し及び術後不安を低減又は抑制するという驚くべき知見に基礎を置く。先行技術の方法では、クロストリジウム神経毒素が手術の時間の近くに且つ代替投与経路によって投与された場合の最適な鎮痛作用が報告されていたため、これは完全に予想外であった。
【0010】
有利には、本発明者らは、クロストリジウム神経毒素を手術の5日超前に皮内又は髄腔内投与によって投与することによって、クロストリジウム神経毒素が手術後1時間という早い時点で術後外科疼痛を処置することにおいて有効であり、及び手術後数日間(さらには数週間)に渡り、連続投与の必要なくかつ伝統的な鎮痛/麻酔薬に伴う副作用もなく、術後外科疼痛を管理/処置し続けることを実証した。このように、クロストリジウム神経毒素は、(手術中に使用される)いずれかの「全身的」又は「局所的」麻酔の効果が弱まるなか、術後外科疼痛の緩和を提供することができる。換言すれば、手術前(手術の5日超前)の投与は、有利には、手術中に使用された主な麻酔剤/鎮痛剤の効果が先細りになるため患者がそうでなければ術後外科疼痛又は術後不安を知覚し始め得る時点で、クロストリジウム神経毒素の鎮痛効果を生じさせる(例えば、最大の有効性/効果に到達させる)。したがって、術後外科疼痛が生ずる前に、術後外科疼痛を処置して、患者におけるいずれかの付随する(潜在的に顕著な)不快及び苦痛を防止することができる。下記により詳細に述べるように、術後外科疼痛(例えば急性の中程度から重度の術後外科疼痛)のこのような早期の管理は、有利には慢性の術後外科疼痛の開始を軽減し得る。
【0011】
このことは、クロストリジウム神経毒素を手術の時間近くに(又は周術期に)投与する場合に観察される処置と対照的である(周術期投与の場合には、手術後にクロストリジウム神経毒素のいずれかの外科疼痛処置効果が提供されるまで、明らかな遅滞期、又は「活性化期」が観測される)。
【0012】
本発明者らによる、なおさらに驚くべき観察は、クロストリジウム神経毒素が皮内に投与される場合に、クロストリジウム神経毒素は特に有効な(例えば迅速な)術後外科疼痛/術後不安処置となるということである。事実、本発明者らは、皮内投与が、皮下投与及び筋肉内投与等の代替投与経路と比較した場合に、増大された術後外科疼痛及び/又は術後不安の緩和を提供し得るということを観察した。クロストリジウム神経毒素は、他の兆候においては通常は有効性の点でいかなる明らかな不利益もなくこのような代替投与経路(例えば皮下/筋肉内投与)によって投与されるため、このことは全体的に予想外であった。
【0013】
本発明者らによる別の有利な知見は、クロストリジウム神経毒素が、投与の部位に対して遠位の部位において効果を発揮することが可能であるということである。例えば、外科的介入の部位における又はその近位におけるクロストリジウム神経毒素の投与の後、本発明者らは、脊髄においてSNAREタンパク質切断(例えばSNAP-25タンパク質切断)を観測し、(及び外科的介入の部位において又はその近位においては最小限のSNAREタンパク質切断を観測又は全くSNAREタンパク質切断を観測せず)、このことは、クロストリジウム神経毒素が、逆行性の輸送によって投与部位から脊髄まで移動することを示唆している。このことは、患者に不快感を引き起こし得る(いずれかの)外傷の部位(例えば外科的介入の部位)から離れた部位でクロストリジウム神経毒素を投与すること、及びしたがって、患者によって知覚されるいずれかのさらなる疼痛を最小限に抑えることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一態様において、本発明は、患者における術後外科疼痛を処置する際に使用するためのクロストリジウム神経毒素を提供し、前記方法は、手術の5日超前にクロストリジウム神経毒素を患者に投与することを含み、かつここで、クロストリジウム神経毒素は、以下に投与される:
i)皮内;又は
ii)髄腔内。
【0015】
換言すると、本発明の一態様は、患者における術後外科疼痛を処置するための方法を提供し、前記方法は、手術の5日超前にクロストリジウム神経毒素を患者に投与することを含み、ここで、クロストリジウム神経毒素は、以下に投与される:
i)皮内;又は
ii)髄腔内。
【0016】
一態様において、本発明は、術後疼痛を処置する際に使用するためのクロストリジウム神経毒素を提供し、前記方法は、手術の5日超前にクロストリジウム神経毒素を患者に、(例えば皮内)投与することを含む。換言すると、本発明の一態様は、術後疼痛を処置する方法を提供し、前記方法は、手術の5日超前にクロストリジウム神経毒素を患者に(例えば皮内)投与することを含む。
【0017】
関連の観察において、クロストリジウム神経毒素の(手術前の)前投与は、手術後の患者における不安(術後不安)の開始を低減する又は抑制/防止する(例えば完全に防止する)ということが分かった。したがって、本発明によって提供されるなおさらに驚くべき技術的効果は、クロストリジウム神経毒素の術前投与に起因して達成可能な抗不安の効果である。
【0018】
このように、本発明の別の態様は、術後不安を低減又は抑制する際に使用するためのクロストリジウム神経毒素を提供し、前記方法は、手術前にクロストリジウム神経毒素を患者に投与することを含み、ここで、クロストリジウム神経毒素は、以下に投与される:
i)皮内;又は
ii)髄腔内。
【0019】
換言すると、本発明の一態様は、術後不安を低減又は抑制するための方法を提供し、前記方法は、手術前にクロストリジウム神経毒素を患者に投与することを含み、ここで、クロストリジウム神経毒素は、以下に投与される:
i)皮内;又は
ii)髄腔内。
【0020】
好ましくは、術後不安を低減又は抑制するための方法は、手術の5日以上前にクロストリジウム神経毒素を投与することを含み;例えば、クロストリジウム神経毒素は、手術の5日超前に投与されてよい。
【0021】
本発明の別の態様は、術後不安を低減又は抑制する際に使用するためのクロストリジウム神経毒素を提供し、前記方法は、手術前(手術の5日以上前等)に、クロストリジウム神経毒素を患者に、(例えば皮内)投与することを含む。換言すると、本発明の一態様は、術後不安を低減又は抑制する方法を提供し、前記方法は、手術前にクロストリジウム神経毒素を患者に(例えば皮内)投与することを含む。
【0022】
好ましくは、術後不安を低減又は抑制するための方法は、手術の5日以上前にクロストリジウム神経毒素を投与することを含み;例えば、クロストリジウム神経毒素は、手術の5日超前に投与されてよい。
【0023】
好ましくは、クロストリジウム神経毒素は、皮内に投与され得る。
【0024】
加えて又は或いは、クロストリジウム神経毒素は、髄腔内に投与(例えば、髄腔内投与/注射)されてもよい。
【0025】
ここで、本発明の様々な追加の(任意選択の)実施形態を説明する。なお、下記の実施形態の各々は、本明細書に記載されるいずれの方法又は用途のためのクロストリジウム神経毒素に適用され得る。
【0026】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素の投与は、筋肉内投与を含まない。
【0027】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、手術の5~50日前に、例えば手術の6~50日前に、任意で手術の5~40日前に、投与されてよい。例えば、クロストリジウム神経毒素は、手術の5~30日前に;好ましくは手術の5~20日前に;より好ましくは手術の5~15日前に、投与されてよい。
【0028】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、手術の>5日前に(好ましくは、本明細書に記載される術後外科疼痛を処置するための方法において)、任意で単回投与工程において、投与されてよい。例えば、クロストリジウム神経毒素は、(好ましくは本明細書に記載される術後外科疼痛を処置するための方法において)、手術の10~20日前に;手術の14~16日前に、任意で単回投与工程において、投与されてよい。
【0029】
クロストリジウム神経毒素は、手術の15日以上前に、好ましくは手術の約15日前に投与されてよい。
【0030】
好ましい実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、(好ましくは、本明細書に記載される術後外科疼痛を処置するための方法において)、手術の>5日~≦15日前に、任意で単回投与工程において、投与されてよい。
【0031】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、(好ましくは、本明細書に記載される術後外科疼痛を処置するための方法において)、手術の5日以上前に、投与される。
【0032】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、(好ましくは、本明細書に記載される術後外科疼痛を処置するための方法において)、手術の12日以上前に、投与される。
【0033】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、手術の15日以上前に皮内に投与される。好ましい実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、手術の約15日前に皮内に投与される。
【0034】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、手術の15日以上前に髄腔内に投与される。好ましい実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、手術の約15日前に髄腔内に投与される。
【0035】
クロストリジウム神経毒素は、鎮痛効果の提供を通して、術後外科疼痛を処置する。故に、用語「処置する(treat)」又は「処置すること(treating)」は、本明細書で使用するとき、鎮痛的処置を包含することが意図されている。用語「処置する」又は「処置すること」は、患者がもはや外科疼痛を知覚しないように(又はクロストリジウム神経毒素で処置されていない対照患者と比較してより少ない外科疼痛を知覚するように)、術後外科疼痛を処置することを包含する。
【0036】
同様に、クロストリジウム神経毒素は、抗不安効果の提供を通して、術後不安を抑制する。故に、用語「抑制する(suppress)」又は「抑制すること(suppressing)」は、クロストリジウム神経毒素の投与によって提供される抗不安効果を介した患者における術後不安(例えばその症候)の抑制を包含する。この抑制は、術後外科疼痛処置に付随して、及び例えばその結果として、提供され得る。故に、いかなる理論にも拘泥されないが、クロストリジウム神経毒素は、クロストリジウム神経毒素の鎮痛効果によって抗不安効果を提供し得る。クロストリジウム神経毒素は、手術のために採用された麻酔の効果、手術そのもの、術後外科疼痛、及び/又は(例えば病院環境からくる)ストレスに伴う(又はそれらから生ずる)術後不安の症候を抑制し得る。
【0037】
したがって、クロストリジウム神経毒素は、治療上効果的な量又は予防上効果的な量(好ましくは予防上効果的な量)で被験者に投与されてよい。「治療上効果的な量」とは、術後外科疼痛及び/又は術後不安を処置するために被験者に単独又は併用投与された場合に、術後外科疼痛及び/又は術後不安のそのような処置を行うのに十分である、クロストリジウム神経毒素のいずれかの量である。「予防上効果的な量」とは、被験者に単独又は併用投与された場合に、術後外科疼痛及び/又は術後不安の開始を阻害する又は遅延させる、クロストリジウム神経毒素いずれかの量である。幾つかの実施形態では、予防上効果的な量は、術後不安の開始を完全に防止する。開始を「阻害すること」とは、術後外科疼痛及び/又は術後不安の可能性を少なくすること、又は開始を完全に防止することのいずれかを意味する。
【0038】
好ましくは、治療上及び/又は予防上効果的な量は、筋麻痺に繋がらない量である。用語「筋麻痺」とは好ましくは、長期筋麻痺を指し、それは、投与後の短期間の間、一過性の筋麻痺は起こり得るためである。
【0039】
用語「被験者」、「個体」、及び「患者」は、本明細書において哺乳類被験者を指すために交換可能に使用され得る。一実施形態では、「被験者」とは、ヒト、仲間動物(例えばイヌ、ネコ、及び/又はウサギ等のペット)、家畜(例えばブタ、ヒツジ、ウシ、及び/又はヤギ)、及び/又はウマである。好ましい実施形態では、被験者(患者)はヒトである。
【0040】
本発明は具体的に術後外科疼痛に関し、これは炎症性疼痛及び神経因性疼痛等の他のタイプの疼痛とは明確に異なる。これについては、炎症性疼痛は典型的に、感染、刺激物、又は過活性化された免疫応答から生じ、神経因性疼痛は典型的に、神経系障害/症候群から生ずる。それに対して本発明は、これらの刺激から生ずる疼痛に関連しない。
【0041】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素の投与は、炎症性疼痛に優先して術後外科疼痛を処置する。一実施形態では、クロストリジウム神経毒素の投与は、最小限の炎症性疼痛を処置するか炎症性疼痛を全く処置しない。一実施形態では、クロストリジウム神経毒素の投与は、術後外科疼痛を処置し、かつ最小限の炎症性疼痛を処置するか又は炎症性疼痛を全く処置しない。
【0042】
「外科的介入」への言及は、身体の一部を切開に供する(任意で身体の損傷部分を除去又は修復する)ことを含む、被験者における外傷又は疾病の処置に関わる医学的手技を意味する。侵襲性のレベル(例えば必要とされる外科的切開のレベル)は手術の種類間で異なり得るが、手術が完了すると被験者において術後外科疼痛及び/又は術後不安を引き起こす侵襲性のレベルを有する手術が包含されることが意図される。術後外科疼痛は典型的に、患者において皮膚及び/又は筋膜及び/又は筋肉及び/又は骨及び/又は臓器を切り開く外科的切開によって引き起こされる。故に、外科疼痛は典型的に、外科的介入の部位において又はその近位で経験される。
【0043】
外科的介入は、皮膚及び/又は筋膜及び/又は筋肉までの切開を含み得る。好ましくは、外科的介入は、皮膚までの切開を含む。
【0044】
外科的介入は、医師により行われ得るものに限定されないが、例えば口腔外科的介入も含む。外科的介入の非限定例としては、虫垂切除、乳房生検、豊胸術又は胸部縮小術、頬部除皺術、胆嚢摘出術、冠動脈バイパス術、(例えば創傷、熱傷、又は感染の)デブリードマン、皮膚移植、臓器移植、及び扁桃摘出術が挙げられる。
【0045】
好ましくは、「術後」とは、手術に続き(例えば手術後)最大1日で始まる期間を指し得る。換言すると、用語「術後」とは、手術後1日以下で始まる期間を指し得る。例えば、用語「術後」は、手術後1~20時間;任意で手術後2~15時間;任意で手術後5~10時間で始まる時点を指し得る。このような時間は、患者に投与される手術用麻酔からの鎮痛効果が減衰する(例えば先細りする)及びしたがって患者が外科疼痛を知覚し始める経時的な境界において始まる期間を表し得る。
【0046】
さらに、「手術の(operative)」は本明細書では「手術(surgery)」の意味で使用されるため、用語「術後(post-operative)」は用語「手術後(post-surgical)」と交換可能に使用され得る。
【0047】
同様に、用語「術後外科疼痛」は、手術に続き(例えば手術後)最大1日で始まる期間の間に知覚される(又はより詳細には、知覚され始める)、外科疼痛を指し得る。換言すると、用語「術後外科疼痛」は、手術後1日以下で始まる期間の間に患者によって知覚される外科疼痛を指し得る。例えば、用語「術後外科疼痛」は、手術後1~20時間;任意で手術後2~15時間;任意で手術後5~10時間で始まる期間の間に知覚される疼痛を指し得る。
【0048】
前記期間は、手術後、1~50週間;例えば5~45週間、10~40週間、又は10~35週間であってもよい。
【0049】
これは、用語「周術期」と対比をなし、用語「周術期」は例えば、患者が手術を受けている時(例えば、患者が手術室にいる時)又はその前後の期間、好適には手術前少なくとも1時間に始まり及び/又は手術後1時間未満に終わる期間を指し得る。
【0050】
本発明の手術後の処置は、周術期の及び/又は術後の処置戦略と組み合わされて有効性を改善し、及び好ましくは(例えば、外科疼痛を発現するリスクの高い患者において)持続期間又は術後外科疼痛の抑制を増大してもよい。
【0051】
一実施形態では、本発明の方法は、患者にさらなる鎮痛剤を周術期に及び/又は術後に(好ましくは術後に)投与することを含み得る。換言すると、手術中(例えば、手術前少なくとも1時間に始まり及び/又は手術後1時間未満に終わる期間の間)、さらなる鎮痛剤が投与されてよい。一実施形態では、手術の後に(例えば手術後10、20、40、又は50週に)、さらなる鎮痛剤が投与されてもよい。
【0052】
術後外科疼痛は、例えば手術の侵害刺激(好ましくは外科的切開)によって誘発される、神経伝達物質の侵害受容性の求心性末端からの放出及び/又はサブスタンスP及びカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)等の神経ペプチドの感覚末端からの放出によって引き起こされる疼痛であり得る。例えば、(侵害性の刺激に起因する)侵害性の情報は、その後末梢神経系から中枢神経系へと伝達され得る。そしてそこで、外科疼痛が患者により知覚される。
【0053】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、サブスタンスP及びCGRP等の疼痛神経調節物質のエクソサイトーシスの阻害を通して、外科疼痛を処置する。
【0054】
術後外科疼痛は、外科的介入の部位における炎症又は神経組織損傷、又はそれらの組み合わせによって、引き起こされ得る。なんらかの炎症及び/又は神経組織損傷が術後外科疼痛に加えて起こる。例えば、組織外傷に反応して活性化された肥満細胞の脱顆粒の結果として、プロテアーゼ、サイトカイン、及びセロトニンを含む種々の物質の放出が起こり得る。これらの物質は、一次求心性ニューロンを増感させ(下側閾値において活性化し)て、疼痛過敏を生み出し得る。組織は広範囲にわたって神経支配されるため、身体のあらゆる領域は手術からの神経損傷に敏感であり得る。
【0055】
換言すると、疼痛は、侵害受容性の疼痛である場合があるが、例えばその場合、組織損傷から術後外科疼痛が起こり、及び侵害性の刺激に反応した侵害受容器(疼痛受容体)の活性化によって知覚される。
【0056】
一実施形態では、術後外科疼痛は、神経因性疼痛(例えば、体性感覚神経系に影響を及ぼす損傷又は疾病によって引き起こされる疼痛)である場合がある。例えば、術後外科疼痛は、末梢神経障害(末梢疼痛としても知られる)である場合があり、例えばその場合、疼痛は、脳及び脊髄(末梢神経)の外側の神経に対する損傷に起因する。
【0057】
術後外科疼痛は、アロディニア等の他のタイプの疼痛として顕在化する場合もある。アロディニアは、「他の疼痛」を意味する。それは、通常は痛くない刺激に起因する疼痛である。「触覚」アロディニア(別名、静的触覚アロディニア又は機械的アロディニア)の被害者は、ベッド上に外科的切開の(身体)部位を休めることに伴う、又は前記部位に接触する衣服を着用することに伴う、接触に対して疼痛を経験し得る。故に、アロディニアは、感覚過敏症(通常は疼痛を起こさせない刺激からの増大された疼痛)に対して、「通常は疼痛を起こせない刺激に起因する疼痛」とみなされる。
【0058】
術後外科疼痛は、好ましくは急性の術後外科疼痛、例えば、(手術後)三箇月間未満続き得る外科疼痛のタイプであり得る。
【0059】
一実施形態では、術後外科疼痛は、慢性の術後外科疼痛であり;例えば、(手術後)三箇月間超続く場合があり、及び(例えば、外科的切開に起因する)組織損傷が癒えた後に知覚され続ける場合がある、外科疼痛のタイプである。
【0060】
より詳細には、用語「慢性の術後外科疼痛」は、本明細書で使用するとき、好ましくは、基礎にある侵襲(例えば、外科的切開からの筋肉への損傷)の解決を超えて三箇月間超持続する疼痛、例えば手術後三箇月間を超えて持続する疼痛を指す。「慢性の術後外科疼痛」は、例えば、急性の術後外科疼痛(例えば、典型的に三箇月間未満続く外科疼痛のタイプ)の不十分な処置(又は処置の欠如)から発現し得る。術後の「急性の外科疼痛」のよくない管理は、このような急性の外科疼痛が慢性の術後外科疼痛となる機会を増大させ得る。故に、有利には、(有利には、手術の短時間後の鎮痛有効性を提供する手術前投与に起因して)早期の段階で急性の術後外科疼痛を管理することによって、本発明は(the prevent invention)は、慢性の術後外科疼痛の発生を軽減する。
【0061】
慢性の術後外科疼痛は、傷跡(外科的切開の部位に形成された傷跡)において又はその周辺で知覚され得る。好ましい実施形態では、慢性の術後外科疼痛は、慢性の傷跡疼痛である。用語「慢性の傷跡疼痛」は、組織瘢痕の結果として発現する疼痛を指す。「慢性の傷跡疼痛」は、皮膚及び/又は筋肉組織及び/又は神経組織への損傷並びに神経の再生から発現し得る。
【0062】
好ましい実施形態では、術後外科疼痛は、外科的介入の部位で知覚される外科疼痛及び/又は外科的介入の部位に対して近位の部位で知覚される外科疼痛であり、好ましくはここで、外科疼痛は外科的介入を通して損傷された組織(例えば皮膚、筋肉)内で知覚される。術後外科疼痛はまた、生検に供された身体に対して内部の組織/臓器の部位で知覚される外科疼痛であってもよい。
【0063】
好ましくは、クロストリジウム神経毒素の投与は、手術後の患者による外科疼痛知覚のレベルを低減させる。例えば、患者による外科疼痛知覚のレベルは、手術前に(例えば手術の5日以上前に)クロストリジウム神経毒素を投与されなかった(対照)患者における外科疼痛知覚のレベルと比較して、手術後に低減され得る。
【0064】
一実施形態では、患者による術後外科疼痛知覚は、手術後24時間以内に低減される。換言すると、クロストリジウム神経毒素の投与は、患者の術後外科疼痛知覚を手術後24時間以内に低減し得る。例えば、クロストリジウム神経毒素の投与は、患者の術後の疼痛知覚を、手術後6時間以内に、好ましくは手術後1時間以内に、低減し得る。
【0065】
患者の術後外科疼痛知覚は、手術後少なくとも3日間、手術後少なくとも6日間又は手術後少なくとも9日間;例えば、手術後少なくとも15日間;別の例では、手術後少なくとも30日間、低減され得る。好ましい実施形態では、患者の術後外科疼痛は、手術後最大3か月間(3か月を含む)、低減され得る。
【0066】
患者による低減された術後外科疼痛知覚は、手術後少なくとも5日間、手術後少なくとも7日間又は手術後少なくとも9日間、好ましくは手術後少なくとも9日間、維持され得る。
【0067】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素の投与は、患者による術後外科疼痛知覚を実質的に低減し、かつここで、低減された術後外科疼痛知覚は手術の直後の24時間維持される。別の実施形態では、患者による術後外科疼痛知覚は実質的に低減され、かつ手術の直後の2日間維持される。一実施形態では、実質的に全ての低減された術後外科疼痛知覚は手術の直後の3日間維持される。一実施形態では、実質的に全ての低減された術後外科疼痛知覚は手術の直後の4日間維持される。一実施形態では、実質的に全ての低減された術後外科疼痛知覚は手術の直後の5日間維持される。一実施形態では、実質的に全ての低減された術後外科疼痛知覚は手術の直後の6日間維持される。一実施形態では、実質的に全ての低減された術後外科疼痛知覚は手術の直後の7日間維持される。好ましくは、実質的に全ての低減された術後外科疼痛知覚は手術の直後の8日間維持される。
【0068】
一実施形態では、手術の直後の(先行する段落において前述したような)規定された時点で観察される疼痛知覚の低減されたレベルは、クロストリジウム神経毒素の投与後のいずれかの時点で観察される低減された疼痛知覚の最大レベルの少なくとも50%である。例えば、手術の直後の(先行する段落において前述したような)規定された時点で観測される疼痛知覚の低減されたレベルは、クロストリジウム神経毒素の投与後のいずれかの時点で観察される低減された疼痛知覚の最大レベルの少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%である。
【0069】
より詳細には、(術後外科疼痛に関する)「低減された」への言及は好ましくは、クロストリジウム神経毒素が投与された被験者(例えば患者)によって、クロストリジウム神経毒素を投与されていない(又はプラセボを投与された)(同様に手術に供された)被験者によって受容される外科疼痛のレベルと比較した場合に、より低いレベルの外科疼痛が知覚されることを意味する。例えば、外科疼痛知覚のレベルは、クロストリジウム神経毒素の投与後、クロストリジウム神経毒素を投与されていない(又はプラセボを投与された)(同様に手術に供された)被験者と比較した場合に、少なくとも15%、25%、35%、45%、55%、65%、75%、85%、又は95%だけ低減され得る。例えば、外科疼痛知覚のレベルは、クロストリジウム神経毒素の投与後、クロストリジウム神経毒素を投与されていない(又はプラセボを投与された)(同様に手術に供された)被験者と比較した場合に、少なくとも75%;好ましくは少なくとも85%;より好ましくは少なくとも95%だけ低減され得る。
【0070】
疼痛知覚を評価するための様々な手段は、当業者には既知である。例えば、機械的アロディニア(静的又は動的のいずれか)の評価は、本明細書に参照により援用されるPogatzki-Zahn et. al.(Pain Rep. 2017 Mar;2(2): e588)に記載されているようなヒト疼痛研究において日常的に使用されている。
【0071】
被験者における疼痛知覚を評価するための好適な(但し非限定例)方法としては、以下が挙げられる:数値評価スケール(Numerical Rating Scale:NRS)スコア;但し、当業者は、感覚閾値、疼痛知覚閾値、静的機械的アロディニア、動的機械的アロディニア、時間的加重、圧痛閾値、条件刺激性疼痛調節(conditioned pain modulation)、及び温度閾値等の、付加的に又は代替的に使用され得る他の方法を承知している。
【0072】
疼痛知覚の尺度の他の非限定例としては、以下が挙げられる:各スケジュールされた時点におけるSF-36スコアにおけるベースラインからの変化;研究中に摂取された救急薬の量、及び救急薬の最初の摂取までの時間。これらは、「探索的」評価項目又は疼痛知覚評価尺度とみなされ得る。
【0073】
故に、好ましい実施形態では、クロストリジウム神経毒素の投与後の術後外科疼痛知覚を、以下のうちの一つ以上によって評価し得る:(a)数値評価スケール(Numerical Rating Scale:NRS);(b)刺激誘起NRS;(c)痛みのあるエリアの温度;(d)痛みのあるエリアのサイズ;(e)鎮痛効果の開始までの時間;(f)ピークの鎮痛効果;(g)ピーク鎮痛効果までの時間;(h)鎮痛効果の持続時間;及び(i)SF-36クオリティオブライフ。
【0074】
当業者は、疼痛知覚を評価するためのこうした方法を承知している。便宜上、数値評価スコア(Numerical Rating Score)及びクオリティオブライフ質問事項ショート形式36(quality of life questionnaire Short Form-36)について下記にさらに説明する。
【0075】
数値評価スケール(Numerical Rating Scale:NRS):典型的に、本発明による外科疼痛知覚は、数値評価スケール(Numerical Rating Scale:NRS)を使用している。NRSは、被験者外科疼痛知覚を評価するための11点スケールである。被験者に、彼らの外科疼痛強度に最もよく適合する0~10の数字を与えるように依頼する。ゼロは「外科疼痛が全くない状態」を表し、上限値10は、「考え得る最悪の外科疼痛」を表す。
【0076】
NRSは、自発性の平均的外科疼痛、自発性の最悪外科疼痛、及び自発性の現在外科疼痛を含む、外科疼痛の多数の面を評価するのに使用され得る。自発性の平均的外科疼痛は、被験者に、ある期間、例えば少なくとも6時間、12時間、24時間、又は少なくとも48時間に渡る被験者の平均的外科疼痛(例えば知覚される外科疼痛)を最もよく説明する数字を選ぶように依頼することによって評価される。自発性の最悪外科疼痛は、特定の期間、例えば少なくともそれまでの6時間、12時間、24時間、又はそれまでの48時間の間の最悪な状態での被験者の外科疼痛を最もよく説明する数字を選ぶように、被験者に依頼することによって評価される。自発性の現在外科疼痛は、評価の時点で被験者がどれくらいの外科疼痛の状態にあるかを最もよく説明する数字を選ぶように被験者に依頼することによって評価される。
【0077】
NRSはまた、様々な異なる刺激に反応した被験者の外科疼痛知覚を評価するのにも使用することができる。刺激に反応した外科疼痛知覚を評価するために、被験者は、痛みのあるエリアに加えられた種々の性質の刺激に付されることとなる。被験者は、投薬前及び刺激後に彼らの現在NRSスコアは何かを問われることとなる。
【0078】
使用される刺激の例としては、以下が挙げられる:(i)軽く触れること(これは、本明細書に記載されるようなフォンフレイフィラメントの適用後に放射状桿(radial spokes)上の痛みのあるエリアの表面における疼痛を測定することによって評価することができる);(ii)圧力(圧痛閾値)、これは、本明細書に記載されるような圧力痛覚計を用いて増大する圧力をかけながら、被験者にNRSスコアを与えるように依頼することによって評価することができる;及び(iii)温度(これは、本明細書に記載されるような、痛みのあるエリアに適用する熱極を用いて、暖かい、冷たい、及び熱い刺激に対するNRSスコアについて被験者に問うことよって評価することができる)。
【0079】
好ましくは、本明細書に記載されるクロストリジウム神経毒素の投与は、手術後の患者のNRSスコアを、クロストリジウム神経毒素を投与されていない対照患者のNRSスコアと比較した場合に、(例えば、≧7の評点から≦6の評点へと)減少させる。
【0080】
クオリティオブライフ質問事項ショート形式36(SF-36):SF-36クオリティオブライフ質問事項は、被験者の外科疼痛知覚を評価するために使用され得る。SF-36は、被験者の健康の、36項目の被験者報告式調査である。SF-36は、八つのスケール化されたスコア(活力、身体機能、体の痛み、全体的健康観、身体的役割機能、精神的役割機能、社会的役割機能、及び心の健康)から成る。各スケールは、各質問が等しい重みを有するという仮定の下に、0~100のスケールに直接変換される。SF-36において記録されるスコアが高いほど、身体障害が少ない。
【0081】
外科疼痛の処置についての臨床試験において一般に試験される関連パラメータは、当該技術分野において既知であり、当業者よって容易に選択され得る。こうしたパラメータの例としては、本明細書に記載されるような、NRS;刺激誘起NRS;痛みのあるエリアの温度;痛みのあるエリアのサイズ;鎮痛効果の開始までの時間;ピーク鎮痛効果;ピーク鎮痛効果までの時間;鎮痛効果の持続時間;及び/又はSF-36クオリティオブライフが挙げられるがそれらに限定されない。これらのパラメータを評価するための方法もまた、当該技術分野において既知であり、当業者により日常的な方法及び手技を用いて行うことができる。
【0082】
好ましくは、本明細書に記載されるクロストリジウム神経毒素の投与は、手術後の患者のSF-36スコアを、クロストリジウム神経毒素を投与されていない対照患者のSF-36スコアと比較した場合に、(例えば≦50のスコアから≧50のスコアへと)増大させる。
【0083】
ここで「術後不安」について言うと、それ(即ち、術後不安)への言及は、患者が疲労、集中及び睡眠の困難、及び筋肉の緊張を含むがそれらに限定されない身体的症候及び行動変化を経験する状態を指し得る。さらに、患者は、不穏状態、易怒性、恐れ又は心配の制御の困難、恐怖、及びパニックを含む不安の感情的症候を経験し得る。術後不安は、麻酔の効果、手術そのもの、術後外科疼痛、及び病院環境からくるストレスによって引き起こされ得る。
【0084】
故に、一実施形態では、術後不安は術後外科疼痛によって引き起こされる。
【0085】
術後不安は、パニック障害、恐怖症、心的外傷後ストレス障害、社交不安障害(社交恐怖症)、又は全般性不安障害(GAD)(例えば、あなたに、1つの特定の事象というよりもむしろ、広範な状況及び問題について不安を感じさせる長期の状態)として定義され得る。
【0086】
一実施形態では、術後の不安を低減又は抑制する際に使用するためのクロストリジウム神経毒素又は手術前にクロストリジウム神経毒素を患者に投与することを含む方法は、手術の5日以上前に投与され、好ましくはここで、クロストリジウム神経毒素は手術の5日超前に投与される。
【0087】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素の投与は、患者による術後不安知覚を実質的に低減し、かつここで、前記低減された術後不安知覚は手術の直後の24時間、維持される。一実施形態では、実質的に全ての低減された術後不安知覚は、手術の直後の2日間、維持される。一実施形態では、実質的に全ての低減された術後不安知覚は、手術の直後の3日間、維持される。一実施形態では、実質的に全ての低減された術後不安知覚は、手術の直後の4日間、維持される。一実施形態では、実質的に全ての低減された術後不安知覚は、手術の直後の5日間、維持される。一実施形態では、実質的に全ての低減された術後不安知覚は、手術の直後の6日間、維持される。一実施形態では、実質的に全ての低減された術後不安知覚は、手術の直後の7日間、維持される。一実施形態では、実質的に全ての低減された術後不安知覚は、手術の直後の8日間、維持される。好ましくは、実質的に全ての低減された術後不安知覚は、手術の直後の9日間、維持される。
【0088】
好ましくは、本明細書に記載されるクロストリジウム神経毒素の投与は、手術後の不安の症候を、クロストリジウム神経毒素を投与されていない対照患者の症候と比較した場合に(例えば30%、50%、75%、又は95%だけ)、低減する。術後不安の症候の例としては、不穏状態、易怒性、恐れ又は心配の制御の困難、恐怖、及びパニックが挙げられる。
【0089】
より詳細には、(術後不安に関する)「低減された」への言及は好ましくは、クロストリジウム神経毒素を投与された被験者(例えば患者)によって、クロストリジウム神経毒素を投与されていない(又はプラセボを投与された)(同様に手術に供された)被験者によって知覚される不安のレベルと比較した場合に、より低いレベルの不安が知覚されることを意味する。例えば、不安知覚のレベルは、クロストリジウム神経毒素の投与後、クロストリジウム神経毒素を投与されていない(又はプラセボを投与された)(同様に手術に供された)被験者と比較した場合に、少なくとも15%、25%、35%、45%、55%、65%、75%、85%、又は95%だけ低減され得る。例えば、不安知覚のレベルは、クロストリジウム神経毒素の投与後、クロストリジウム神経毒素を投与されていない(又はプラセボを投与された)(同様に手術に供された)被験者と比較した場合に、少なくとも75%;好ましくは少なくとも85%;より好ましくは少なくとも95%だけ低減され得る。
【0090】
一実施形態では、患者によって経験される術後不安は、手術後24時間以内に抑制される。換言すると、クロストリジウム神経毒素の投与は、手術後24時間以内に患者の術後不安を低減又は抑制し得る。例えば、患者の術後不安は、手術後2時間以内に、手術後4時間以内に、又は手術後24時間以内に;好ましくは手術後4時間以内に、低減又は抑制され得る。
【0091】
本発明者らは、クロストリジウム神経毒素が、手術後疼痛の処置並びに術後不安の抑制の両方のために投与され得ることを実証した。故に、一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、術後の疼痛を処置し、かつ術後不安を低減又は抑制する。
【0092】
総合すれば、本発明は有利にも、そうでなければ外科手術/手術後に知覚される外科疼痛及び不安の両方のレベルを低減することを通じて、患者の全体的な「術後の健康な状態」を向上させ、及びこのようして患者の生活の質を向上させる。
【0093】
故に、一実施形態では、クロストリジウム神経毒素の投与は、術後の健康な状態を促進する。
【0094】
本発明により包含されるクロストリジウム神経毒素のさらなる詳細を、技術的背景情報と共に、下記に示す。
【0095】
クロストリジウム属の細菌は極めて強力な及び特異的なタンパク質毒素を産生し、この毒素は、それらが送達されるニューロン及び他の細胞を毒し得る。このようなクロストリジウム毒素の例としては、クロストリジウム・テタニ(TeNT)によって及びクロストリジウム・ボツリヌム(BoNT)血清型A~Gによって産生される神経毒素、並びにクロストリジウム・バラティ及びクロストリジウム・ブチリカムによって産生されるものが挙げられる。
【0096】
(例えば、自然における)クロストリジウム神経毒素は、末梢神経系における、特に神経筋接合部における、コリン作用性伝達を阻害することによって、筋麻痺を引き起こし、及びそのため死に至らしめ得る。自然においては、クロストリジウム神経毒素は、一本鎖ポリペプチドとして合成され、この一本鎖ポリペプチドは、タンパク質切断事象によって翻訳後に修飾されて、ジスルフィド結合によって互いに連結された二本のポリペプチド鎖を形成する。切断は、しばしば活性化部位と呼ばれる、特異的な切断部位において起こり、この部位は鎖間ジスルフィド結合を提供するシステイン残基間に位置する。この二鎖形態こそが、毒素の活性形態である。これら2本の鎖は、重鎖(H鎖)及び軽鎖(L鎖)と呼ばれ、重鎖は100kDa程度の分子量を有し、及び軽鎖は50kDa程度の分子量を有する。H鎖は、N末端転送成分(HNドメイン)とC末端標的化成分(HCドメイン)とを含む。切断部位は、L鎖とHNドメインとの間に位置する。
【0097】
クロストリジウム神経毒素の作用様式は、以下の五つの明確な工程に依拠する:(1)HCドメインの、その標的ニューロンの細胞膜への結合、それに続く(2)結合された毒素の、エンドソームを介した細胞中への取り込み(internalization)、(3)エンドソーム膜を横切るHNドメインによる及びサイトゾルへの、L鎖の転送(translocation)、(4)無細胞毒性のプロテアーゼ機能を提供するL鎖による、SNAREタンパク質として知られる細胞内輸送タンパク質のタンパク質分解性の切断、及び(5)標的細胞からの細胞分泌の阻害。
【0098】
無細胞毒性のプロテアーゼは、SNAREタンパク質として知られる細胞内輸送タンパク質(例えば、SNAP-25、VAMP、又はシンタキシン)をタンパク質分解的に切断することによって作用する(Gerald K (2002) "Cell and Molecular Biology”(4th edition) John Wiley & Sons, Inc.参照)。頭文字SNAREは、用語、可溶性NSF接着蛋白質受容体(Soluble NSF Attachment Receptor)に由来し、ここで、NSFは、N-エチルマレイミド感受性因子(N-ethyl maleimide-Sensitive Factor)を意味する。SNAREタンパク質は、細胞内小胞融合に不可欠であり、及びしたがって、細胞からの小胞輸送を介した分子の分泌に不可欠である。このプロテアーゼ機能は、亜鉛依存性のエンドペプチダーゼ活性であり、及びSNAREタンパク質に対する高い基質特異性を示す。したがって、一旦所望の標的細胞に送達されると、無細胞毒性のプロテアーゼは、標的細胞からの細胞分泌を阻害することができる。クロストリジウム神経毒素のL鎖プロテアーゼは、SNAREタンパク質を切断する無細胞毒性のプロテアーゼである。
【0099】
それらのユニークな特性のおかげで、ボツリナム毒素等のクロストリジウム神経毒素は、特に運動及び自律神経障害に対する、広範な治療用途において、例えば活動亢進性神経末端の活性を通常のレベルまで回復させるために、成功裏に利用されてきた。これまでに少なくとも七つの抗原的に異なるBoNT血清型、即ち、BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/Gが記述されている(Rossetto, O. et al., "Botulinum Neurotoxins: genetic, structural and mechanistic insights.” Nature Reviews Microbiology 12.8(2014): 535-549)。
【0100】
この多様性にかかわらず、依然としてBoNT/Aが療法において選択される血清型であり、三つの通常入手可能な市販の製剤(Botox(登録商標)、Dysport(登録商標)、及びXeomin(登録商標))があり、一方1つのBoNT/B製品のみが市場において入手可能である(Neurobloc(登録商標)/Myobloc(登録商標))。今日まで、クロストリジウム株から精製された毒素であるこれらのBoNT/A及びBoNT/B製品は、とりわけ、(BoNT/Aについての)痙縮、膀胱機能障害、又は多汗症(例えば、それらの全体が本明細書に参照により援用されるhttps://www.medicines.org.uk/emc/medicine/112、https://www.medicines.org.uk/emc/medicine/870、https://www.medicines.org.uk/emc/medicine/2162参照)から、(BoNT/Bについての)痙性斜頸(例えば、それらの全体が本明細書に参照により援用されるhttps://www.medicines.org.uk/emc/medicine/20568参照)までに渡る用途のために、ヒトにおいて使用するために規制当局から現在承認されているたった二つのBoNT血清型である。
【0101】
その自然の標的細胞を殺すことによって作用する細胞毒性のプロテアーゼ(例えばリジン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素)に対して、クロストリジウム神経毒素は、その自然の標的細胞の細胞機能を一過性に無能力化することによって作用する無細胞毒性のプロテアーゼである。重要なことに、無細胞毒性のプロテアーゼは、それが作用する自然の標的細胞を殺さない。クロストリジウム神経毒素(例えば、Dysport(商標)、Neurobloc(商標)、及びBotox(商標)等の名前で販売されているボツリヌス神経毒素)に加えて、無細胞毒性のプロテアーゼの最もよく知られている例の一部として、IgAプロテアーゼ(例えば、WO99/032272参照)、及びアンタレアーゼプロテアーゼ(例えば、WO2011/022357参照)が挙げられる。
【0102】
用語「クロストリジウム神経毒素」は、本明細書で使用するとき、ニューロンに入り込み及び神経伝達物質の放出を阻害するいずれかのポリペプチドを意味する。このプロセスは、低親和性又は高親和性受容体に対する神経毒素の結合、神経毒素の取り込み(internalization)、神経毒素のエンドペプチダーゼ部分の細胞質への転送(translocation)、及び神経毒素基質の酵素的修飾を包含する。より具体的には、用語「神経毒素」は、ニューロンに入り込み及び神経伝達物質の放出を阻害するクロストリジウム菌によって産生されるいずれかのポリペプチド(クロストリジウム神経毒素)、及び組み替え技術又は化学技術によって産生されるこのようなポリペプチドを包含する。好ましくは、クロストリジウム神経毒素はボツリヌス神経毒素(BoNT)である。
【0103】
BoNT血清型A~Gは、特異的な中和抗血清による不活性化に基づいて区別され得るが、このような血清型による分類は、アミノ酸レベルにおけるパーセント配列同一性と相関がある。所与の血清型のBoNTタンパク質は、アミノ酸配列パーセント同一性に基づく異なる亜型へとさらに分けられる。
【0104】
BoNT/A神経毒素アミノ酸配列の例は、配列番号1(UniProtアクセッション番号A5HZZ9)及び配列番号13として提供され、それらは配列番号12として提供されるヌクレオチド配列によってコードされる。BoNT/B神経毒素アミノ酸配列の例は、配列番号2(UniProtアクセッション番号B1INP5)として提供される。BoNT/C神経毒素アミノ酸配列の例は、配列番号3(UniProtアクセッション番号P18640)として提供される。BoNT/D神経毒素アミノ酸配列の例は、配列番号4(UniProtアクセッション番号P19321)として提供される。BoNT/E神経毒素アミノ酸配列の例は、配列番号5(アクセッション番号WP_003372387)として提供される。BoNT/F神経毒素アミノ酸配列の例は、配列番号6(UniProtアクセッション番号Q57236)又は配列番号9(UniProt/UniParcアクセッション番号UPI0001DE3DAC)として提供される。BoNT/G神経毒素アミノ酸配列の例は、配列番号7(アクセッション番号WP_039635782)として提供される。BoNT/D-C神経毒素アミノ酸配列の例は、配列番号8(アクセッション番号BAM65681)として提供される。BoNT/X神経毒素アミノ酸配列の例は、配列番号11(アクセッション番号BAQ12790.1)として提供される。好ましくはBoNTはBoNT/Aであり、より好ましくは野生型BoNT/Aである。
【0105】
用語「HCドメイン」は、本明細書で使用するとき、標的細胞の表面に位置する受容体に対する神経毒素の結合を可能にする、50kDa程度の分子量を有する神経毒素重鎖の、機能的に異なる領域を指す。HCドメインは、二つの構造的に異なるサブドメイン、「HCNサブドメイン」(HCドメインのN末端部分)及び「HCCサブドメイン」(HCドメインC末端部分、Hccドメインとも呼ばれる)から成り、それらの各々は、25kDa程度の分子量を有する。HCCドメインは、クロストリジウム神経毒素タンパク質受容体に結合することができる。
【0106】
用語「LHNドメイン」は、本明細書で使用するとき、HCドメインとは異なる神経毒素領域を指し、及びエンドペプチダーゼドメイン(「L」又は「軽鎖」)とエンドペプチダーゼの細胞質への転送を担っているドメイン(重鎖のHNドメイン)とから成る。エンドペプチダーゼドメイン(「L」又は「軽鎖」)は、SNAREタンパク質を切断することができる。
【0107】
代表的なL、H
N、H
CN、及びH
CCドメインを表1に示す。
【表1】
【0108】
血清亜型によってわずかな変動が起こり得るため、上記で特定した参照配列はガイドとみなすべきである。例として、US 2007/0166332(その全体が参照により本明細書に援用される)は、わずかに異なるクロストリジウム配列を引用している。
【0109】
用語「活性化ループ」とは、タンパク質分解性の切断部位を含むポリペプチドドメインを指す。神経毒素の活性化ループは、WO2016156113(その全体が参照により本明細書に援用される)等、当該技術分野において記述されている。
【0110】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、又は配列番号11のいずれかに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るか又はそれを含む。
【0111】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、配列番号1に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るか又はそれを含む。
【0112】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、配列番号1(例えばBoNT/A)のアミノ酸配列から成るか又はそれを含む。
【0113】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素はキメラ神経毒素である。
【0114】
用語「キメラ神経毒素」とは、本明細書で使用するとき、第1の神経毒素由来の1以上のドメイン及び第2の神経毒素由来の1以上のドメインを含む神経毒素を意味する。例えば、キメラ神経毒素は、第1の神経毒素血清型又は亜型由来のLHNドメイン及び第2の神経毒素血清型又は亜型由来のHCドメインを含み得る。キメラ神経毒素の別の例は、第1の神経毒素血清型又は亜型由来のLHNHCNドメイン及び第2の神経毒素血清型又は亜型由来のHCCドメインを含む神経毒素である。キメラ神経毒素のさらなる例は、第1の神経毒素血清型又は亜型からのLHNドメイン及び第2の神経毒素血清型又は亜型からの活性化ループを含む神経毒素である。キメラ神経毒素の例は、どちらもその全体が参照により本明細書に援用されるWO2017191315及びWO2016156113において提供される。
【0115】
例えば、キメラ神経毒素は、第2の神経毒素からのHCドメインに共有結合された第1の神経毒素からのLHNドメインを含み得るが、好ましくはここで、前記第1の神経毒素と第2の神経毒素とは異なっており、ここで、前記LHNドメインのC末端アミノ酸残基は、前記第1の神経毒素においてLHNドメインとHCドメインとを分離する310ヘリックスの1番目のアミノ酸残基に相当し、かつここで、前記HCドメインのN末端アミノ酸残基は、前記第2の神経毒素においてLHNドメインとHCドメインとを分離する310ヘリックスの2番目のアミノ酸残基に相当する。
【0116】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、BoNT/BからのHCドメインとBoNT/A、BoNT/C、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、又はBoNT/GからのLHNドメインとを含むキメラ神経毒素である。
【0117】
例えば、一実施形態では、HCドメインは、配列番号2(例えばBoNT/B)のアミノ酸残基860~1291に対応するアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るか又はそれを含み、及びLHNドメインは、以下から成る群から選択されるアミノ酸配列から成るか又はそれを含む:
・配列番号1(例えばBoNT/A)のアミノ酸残基1~872、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有する配列、
・配列番号3のアミノ酸残基1~867、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有する配列、
・配列番号4のアミノ酸残基1~863、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有する配列、
・配列番号5のアミノ酸残基1~846、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有する配列、
・配列番号6のアミノ酸残基1~865、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有する配列、
・配列番号7のアミノ酸残基1~864、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有する配列、
・配列番号8のアミノ酸残基1~863、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有する配列、及び
・配列番号9のアミノ酸残基1~862、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有する配列。
【0118】
好ましい実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、BoNT/BからのHCドメイン及びBoNT/AからのLHNドメインを含むキメラ神経毒素である。
【0119】
より好ましい実施形態では、HCドメインは、配列番号2のアミノ酸残基860~1291に対応するアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るか又はそれを含み、及びLHNドメインは、配列番号1のアミノ酸残基1~872に対応するアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0120】
クロストリジウム神経毒素がBoNT/BからのHCドメインを含む実施形態(例えば、ここで、クロストリジウム神経毒素は、BoNT/B、又はBoNT/BからのHCドメインを含むキメラ神経毒素である)では、クロストリジウム神経毒素は、「修飾重鎖」を提供する(例えばHCドメイン中の)重鎖のアミノ酸配列における1以上の修飾を有し得るが、好ましくはここで、前記修飾重鎖は、未変性の(native)神経毒素よりも高い(又は低い)親和性をもって標的神経細胞に結合する。HCドメインにおけるこのような修飾としては、標的神経細胞のガングリオシドへの結合を変更し得るHCCドメインのガングリオシド結合部位におけるアミノ酸残基の修飾、及び/又は標的神経細胞のタンパク質受容体への結合を変更し得るHCCドメインのタンパク質受容体結合部位におけるアミノ酸残基の修飾を挙げることができる。このような修飾神経毒素の例は、いずれもその全体が参照により本明細書に援用されるWO2006027207及びWO2006114308に記載されている。
【0121】
重鎖のアミノ酸配列に1以上の修飾を有するクロストリジウム神経毒素を、本明細書では「修飾クロストリジウム神経毒素」という。
【0122】
本発明による修飾クロストリジウム神経毒素の一実施形態では、BoNT/BからのHCCドメインは、前記BoNT血清型の天然のHCCドメインと比較して修飾されている。
【0123】
好ましい実施形態では、BoNT/B神経毒素からのHCCドメインは、前記HCCドメインのヒトSytIIに対する結合親和性を、天然のBoNT/BのHCCドメインと比較して増大させる少なくとも一つのアミノ酸残基の突然変異を含む。なお、好ましくは、前記少なくとも一つのアミノ酸残基突然変異は、前記HCCドメインのヒトSytIIに対する結合親和性を、天然のBoNT/BHCCドメインに比較して少なくとも50%だけ増大させる。
【0124】
BoNT/BHCCドメインにおけるこのような好適なアミノ酸残基突然変異は、当該技術分野において、いずれもその全体が参照により本明細書に援用されるWO2013180799及びWO2016154534に記載されている。
【0125】
特に、BoNT/BHCCドメインのヒトSytIIに対する結合親和性を天然のBoNT/BHCCドメインと比較して少なくとも50%増大させるのに好適な前記少なくとも一つのアミノ酸残基突然変異は、以下から成る群から選択されるアミノ酸残基の置換、付加、又は欠失である:1118M、1183M、1191M、1191I、1191Q、1191T、1199Y、1199F、1199L、1201V、1191C、1191V、1191L、1191Y、1199W、1199E、1199H、1178Y、1178Q、1178A、1178S、1183C、1183P、及びそれらのいずれかの組み合わせ。好ましくは、BoNT/BHCCドメインにおける前記少なくとも一つのアミノ酸残基の突然変異は、以下から成る群から選択される二つのアミノ酸残基の置換、付加、又は欠失から成る:1191M及び1199L、1191M及び1199Y、1191M及び1199F、1191Q及び1199L、1191Q及び1199Y、1191Q及び1199F、1191M及び1199W、1191M及び1178Q、1191C及び1199W、1191C及び1199Y、1191C及び1178Q、1191Q及び1199W、1191V及び1199W、1191V及び1199Y、又は1191V及び1178Q。なお好ましくは、BoNT/BHCCドメインにおける前記少なくとも一つのアミノ酸残基の突然変異は、以下の三つのアミノ酸残基の置換、付加、又は欠失から成る:1191M、1199W、及び1178Q。より好ましくは、BoNT/BHCCドメインにおける前記少なくとも一つのアミノ酸残基の突然変異は、以下の二つのアミノ酸残基の置換、付加、又は欠失から成る:1191M及び1199Y。
【0126】
より好ましい実施形態では、BoNT/BHCCドメインのヒトSytIIに対する結合親和性を天然のBoNT/BHCCドメインと比較して少なくとも50%増大させるのに好適な前記少なくとも一つのアミノ酸残基の突然変異は、以下から成る群から選択されるアミノ酸残基の置換である:V1118M、Y1183M、E1191M、E1191I、E1191Q、E1191T、S1199Y、S1199F、S1199L、S1201V、E1191C、E1191V、E1191L、E1191Y、S1199W、S1199E、S1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P、及びそれらのいずれかの組み合わせ。好ましくは、BoNT/BHCCドメインにおける前記少なくとも一つのアミノ酸残基の突然変異は、以下から成る群から選択される二つのアミノ酸残基の置換から成る:E1191M及びS1199L、E1191M及びS1199Y、E1191M及びS1199F、E1191Q及びS1199L、E1191Q及びS1199Y、E1191Q及びS1199F、E1191M及びS1199W、E1191M及びW1178Q、E1191C及びS1199W、E1191C及びS1199Y、E1191C及びW1178Q、E1191Q及びS1199W、E1191V及びS1199W、E1191V及びS1199Y、又はE1191V及びW1178Q。なお好ましくは、BoNT/BHCCドメインにおける前記少なくとも一つのアミノ酸残基の突然変異は、以下の三つのアミノ酸残基の置換から成る:E1191M、S1199W、及びW1178Q。より好ましくは、BoNT/BHCCドメインにおける前記少なくとも一つのアミノ酸残基の突然変異は、以下の二つのアミノ酸残基の置換から成る:E1191M及びS1199Y。
【0127】
好ましい実施形態では、修飾されるBoNT/BHCCドメインは、配列番号2のアミノ酸残基1082~1291(天然のBoNT/BHCCドメイン)、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列に対応する。
【0128】
一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒素は、上述したように、キメラ型及び修飾型の両方であり得る。例えば、好ましい実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、アミノ酸配列配列番号10、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む(又はそれから成る)。
【0129】
一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒素は、前述したようにキメラ及び修飾の両方であり得る。例えば、好ましい実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、アミノ酸配列配列番号10(例えばBoNT/ABMY)、又はそれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む(又はそれから成る)。
【0130】
本発明のクロストリジウム神経毒素は、組替え技術を用いて製造することができる。故に、一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒素は、組換え型のクロストリジウム神経毒素である。
【0131】
このような組換え型の神経毒素の採用は有利なことに、例えば、いずれかの所与の手術のために適切と思われるような作用抗力及び作用持続のような特性に基づいて選択される、クロストリジウム神経毒素の本発明に記載される方法における採用の選択肢を広げ得る。適切な(既知の)組換え型のクロストリジウム神経毒素としては、好ましくは未修飾BoNT/A(例えばDysport(登録商標))と比較した場合により長い作用持続を有する修飾ボツリヌス神経毒素A(BoNT/A)が挙げられる。前記作用持続は、少なくとも1.25倍、1.5倍、1.75倍、2.0倍、又は2.25倍長くなり得る。修飾BoNT/Aの作用持続は、6~9か月の間であり得る。例えば、作用持続は、少なくとも:4.5か月間(開始から)、5.0か月間、5.5か月間、6か月間、6.5か月間、7.0か月間、7.5か月間、8.0か月間、8.5か月間、又は9.0か月間であり得る。
【0132】
好適な修飾BoNT/Aポリペプチド類(及び存在する場合、それをコードするヌクレオチド配列)は、WO2015/004461A1及びWO2017/191315に記載され、その両方がその全体として本明細書に参照により援用される。
【0133】
より詳細には、一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、修飾組換えBoNT/A神経毒素である。一実施形態では、修飾BoNT/Aは、以下から選択される一以上のアミノ酸残基における修飾を含み:ASN886、ASN905、GLN915、ASN918、GLU920、ASN930、ASN954、SER955、GLN991、GLU992、GLN995、ASN1006、ASN1025、ASN1026、ASN1032、ASN1043、ASN1046、ASN1052、ASP1058、HIS1064、ASN1080、GLU1081、GLU1083、ASP1086、ASN1188、ASP1213、GLY1215、ASN1216、GLN1229、ASN1242、ASN1243、SER1274、及びTHR1277、好ましくはここで、前記修飾は、以下から選択される:(i)酸性表面に暴露されたアミノ酸残基の塩基性アミノ酸残基による置換;(ii)酸性表面に暴露されたアミノ酸残基の無電荷アミノ酸残基による置換;(iii)無電荷表面に暴露されたアミノ酸残基の塩基性アミノ酸残基による置換;(iv)塩基性アミノ酸残基の挿入、及び(v)酸性表面に暴露されたアミノ酸残基の欠失。
【0134】
前記修飾は、配列番号1として示される未修飾BoNT/Aと比較した場合の修飾であってよく、ここでアミノ酸残基の番号付けは、配列番号1とのアラインメントによって決定される。配列番号1(並びに、本明細書に記載される修飾BoNT/Aポリペプチドに対応する配列番号)の1位におけるメチオニン残基の存在は任意選択であるため、当業者は、アミノ酸残基の番号付けを決定する際にメチオニン残基の存在/非存在を考慮するであろう。例えば、配列番号1がメチオニンを含む場合、位置の番号付けは上記した通りとなる(例えばASN886は配列番号1のASN886となる)。あるいは、配列番号1にメチオニンが存在しない場合は、アミノ酸残基の番号付けは、-1だけ修正されるべきである(例えばASN886は配列番号1のASN885となる)。同様の考慮は、本明細書に記載されるその他のポリペプチド配列の1位におけるメチオニンが存在する/存在しない場合にも適用され、及び当業者は正しいアミノ酸残基の番号付けを、当該技術分野において日常的な技術を用いて容易に決定するであろう。同じことが本明細書に記載されるあらゆる他のBoNT(例えば上述したキメラBoNT)にも当てはまる。
【0135】
修飾に関して指定されるアミノ酸残基は、表面に暴露されたアミノ酸残基である。
【0136】
修飾BoNT/Aは、配列番号14、16、18、及び20から選択される核酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされ得る。例えば、配列番号14、16、18、及び20から選択される核酸配列に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有する核酸配列。好ましくは、本発明において使用するための修飾BoNT/Aは、配列番号14、16、18又は20を含む(又はそれらから成る)核酸配列によってコードされ得る。修飾BoNT/Aは、配列番号15、17、19、及び21から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。例えば、配列番号15、17、19、及び21から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列。好ましくは、本発明において使用するための修飾BoNT/Aは、配列番号15、17、19、及び21から選択されるポリペプチド配列を含み(より好ましくはそれらから成り)得る。
【0137】
用語「一以上のアミノ酸残基」は、修飾BoNT/Aの文脈で使用するとき、好ましくは指定されたアミノ酸残基のうちの少なくとも2、3、4、5、6、又は7個を意味する。故に、修飾BoNT/Aは、指定されたアミノ酸残基における少なくとも2、3、4、5、6、又は7(好ましくは7)の修飾を含み得る。修飾BoNT/Aは、1~30、3~20、又は5~10のアミノ酸修飾を含み得る。より好ましくは、用語「一以上のアミノ酸残基」は、修飾BoNT/Aの文脈で使用するとき、指定されたアミノ酸残基の全てを意味する。
【0138】
好ましくは、指定されたアミノ酸残基における一以上のアミノ酸修飾以外は、修飾BoNT/Aは、配列番号1と比較した場合に、いかなるさらなるアミノ酸修飾も含有しない。
【0139】
最も好ましくは、修飾BoNT/Aは、以下から選択される一以上のアミノ酸残基における修飾を含む(より好ましくはそれから成る):ASN886、ASN930、SER955、GLN991、ASN1026、ASN1052、及びGLN1229。修飾BoNT/Aは、配列番号14に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされ得る。例えば、配列番号14に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有する核酸配列。好ましくは、本発明において使用するための修飾BoNT/Aは、配列番号14を含む(又はそれから成る)核酸によってコードされ得る。修飾BoNT/Aは、配列番号15に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。例えば、配列番号15に対して少なくとも80%、90%、95%、又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド配列。好ましくは、本発明において使用するための修飾BoNT/Aは、配列番号15を含み(より好ましくはそれから成り)得る。
【0140】
前記修飾は、以下から選択され得る:(i)酸性表面に暴露されたアミノ酸残基の塩基性アミノ酸残基による置換;(ii)酸性表面に暴露されたアミノ酸残基の無電荷アミノ酸残基による置換;(iii)無電荷表面に暴露されたアミノ酸残基の塩基性アミノ酸残基による置換;(iv)塩基性アミノ酸残基の挿入;及び(v)酸性表面に暴露されたアミノ酸残基の欠失。
【0141】
上記で指定されたような修飾は、対応する未修飾BoNT/Aと比較した場合に増大された正の表面電荷及び増大された等電点を有する修飾BoNT/Aをもたらす。
【0142】
等電点(pI)は、所与のタンパク質の特異的な性質である。より詳細には、等電点(pI)は、タンパク質がゼロの正味電荷を示すpH値として定義される。pIの増大は、タンパク質がゼロの正味電荷を示すためにより高いpH値が必要であるということを意味する。故に、pIの増大は、所与のpHにおけるタンパク質の正味の正電荷の増大を表す。逆に、pIの低下は、タンパク質がゼロの正味電荷を示すためにより低いpH値が必要であることを意味する。故に、pIの低下は、所与のpHにおけるタンパク質の正味の正電荷の低下を表す。
【0143】
タンパク質のpIを決定する方法は、当該技術分野において既知であり、及び当業者にはよく知られている。例として、タンパク質のpIは、タンパク質中に存在する各アミノ酸の平均pKa値から算出することができる(「計算pI」)。こうした計算は、ExPASy製のCompute pI/MW Tool(https://web.expasy.org/compute_pi/)等の、当該技術分野において既知のコンピュータプログラムを用いて行うことができ、このCompute pI/MW Toolは本発明によるpIを算出するための好ましい方法である。異なる分子間のpI値の比較は、同じ計算技術/プログラムを用いて行うべきである。適切な場合、タンパク質の計算pIは、等電点電気泳動の技術を用いて実験的に確かめることができる(「観察pI」)。この技術は、電気泳動を使用してタンパク質をそれらのpIによって分離する。等電点電気泳動は典型的に、固定pH勾配を有するゲルを用いて行われる。電場を適用したとき、タンパク質は、それがゼロ正味電荷を有するようなpHに到達するまでpH勾配を通して移動し、この点がタンパク質のpIである。等電点電気泳動よって与えられる結果は典型的に、本質的に比較的低解像度であり、及びしたがって、(上述したような)計算pIによって与えられる結果が、より使用に適していると本発明者らは考えている。
【0144】
本明細書を通して、「pI」は、特に記述しない限り「計算pI」を意味する。タンパク質のpIは、その表面に表示される塩基性及び/又は酸性基の数を変更することによって増加又は低下し得る。このことは、タンパク質の一以上のアミノ酸を修飾することによって達成することができる。例えば、pIの増加は、酸性残基の数を減少させることによって、又は塩基性残基の数を増加させることによって、提供され得る。
【0145】
本発明の修飾BoNT/Aは、未修飾BoNT/A(例えば配列番号1)のpI値よりも少なくとも0.2、0.4、0.5、又は1pIユニットだけ高いpI値を有し得る。好ましくは、修飾BoNT/Aは、少なくとも6.6、例えば少なくとも6.8のpIを有し得る。
【0146】
20の標準アミノ酸の特性を下記の表に示す。
【表A】
【0147】
以下のアミノ酸は、荷電アミノ酸と見なされる:アスパラギン酸(負)、グルタミン酸(負)、アルギニン(正)、及びリジン(正)。
【0148】
pH7.4では、アスパラギン酸(pKa3.1)及びグルタミン酸(pKa4.1)の側鎖は、負の電荷を有する一方で、アルギニン(pKa12.5)及びリジン(pKa10.8)の側鎖は、正の電荷を有する。アスパラギン酸及びグルタミン酸は、酸性アミノ酸残基と言われる。アルギニン及びリジンは塩基性アミノ酸残基と言われる。
【0149】
以下のアミノ酸は無電荷の極性(それらが水素結合に関与し得ることを意味する)アミノ酸とみなされる:アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、及びトリプトファン。以下のアミノ酸は無電荷の疎水性アミノ酸と見なされる:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、及びグリシン。
【0150】
アミノ酸の挿入では、追加のアミノ酸残基(通常は存在しないもの)をBoNT/Aポリペプチド配列に組み込み、それにより前記配列におけるアミノ酸残基の総数を増加させる。アミノ酸の欠失では、アミノ酸残基をクロストリジウム毒素アミノ酸配列から除去し、それにより前記配列におけるアミノ酸残基の総数を減少させる。
【0151】
好ましくは、修飾は置換であり、置換は有利には、修飾BoNT/Aにおいて同数のアミノ酸残基を維持する。アミノ酸の置換では、BoNT/Aポリペプチド配列の一部を形成するアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換える。置き換えアミノ酸残基は、上述したような20の標準アミノ酸の一つであってよい。あるいは、アミノ酸置換における置き換えアミノ酸は、非標準アミノ酸(上述した20の標準セットの一部ではないアミノ酸)であってもよい。例として、置き換えアミノ酸は、塩基性非標準アミノ酸、例えばL-オルニチン、L-2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、又はリジン、アルギニン、及びオルニチンのD-異性体)であり得る。非標準アミノ酸をタンパク質に導入するための方法は、当該技術分野において既知であり、及び大腸菌栄養要求性発現宿主を用いる組換え型のタンパク質合成が挙げられる。
【0152】
一実施形態では、置換は、以下からから選択される:酸性アミノ酸残基の塩基性アミノ酸残基による置換、酸性アミノ酸残基の無電荷アミノ酸残基による置換、及び無電荷アミノ酸残基の塩基性アミノ酸残基による置換。一実施形態では、ここで、置換は、酸性アミノ酸残基の無電荷アミノ酸残基による置換であり、酸性アミノ酸残基は、その対応する無電荷アミドアミノ酸残基により置き換えられる(即ち、アスパラギン酸がアスパラギンにより置き換えられ、及びグルタミン酸がグルタミンにより置き換えられる)。
【0153】
好ましくは、塩基性アミノ酸残基は、リジン残基又はアルギニン残基である。換言すると、置換は、リジン又はアルギニンによる置換である。最も好ましくは、修飾はリジンによる置換である。
【0154】
本発明による修飾の後、修飾BoNT/Aは、未修飾BoNT/A(例えば配列番号1)が結合する標的細胞受容体に結合可能である。
【0155】
すぐ上で述べた好適な修飾(組換え型)BoNT/A神経毒素は、例えば長い作用持続を有していたが、比較的早く作用し及び/又は短い作用期間を有し得る好適な修飾(組換え型)BoNT/E神経毒素について、以下に述べる。これもまた、本発明の、クロストリジウム神経毒素に基づく療法によって提供される有利な柔軟性を実証している。例えば、(例えば、術後の疼痛が長く存在するとは予想されないような)低侵襲性の手術のためには、より短い作用持続を提供するようなBoNT/Eを採用し得る。
【0156】
BoNT/E(例えばrBoNT/E)は、配列番号5に対して少なくとも70%(好ましくは少なくとも80%;より好ましくは少なくとも90%)の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得るが、但しこのポリペプチド配列は、以下のアミノ酸のうちの1以上(例えば、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8、好ましくは8個全て)を含む(ここで、アミノ酸位置の番号付けはBoNT/Eタンパク質のN末端メチオニンアミノ酸残基で始まり、C末端アミノ酸残基で終わる):177位のグリシン;198位のセリン;340位のアラニン;773位のロイシン;963位のロイシン;964位のグルタミン;967位のアラニン;1195位のアスパラギン。
【0157】
前記アミノ酸は、野生型BoNT/Eポリペプチド配列(UniProtQ00496の配列等)に対する置換(例えば突然変異)であり得る。例えば、177位のグリシンは、アルギニンからグリシンへの置換(R177G)であってよく;198位のセリンは、C198S置換であってよく;340位のアラニンは、R340A置換であってよく;773位のロイシンは、I173L置換であってよく;963位のロイシンは、F963L置換であってよく;964位のグルタミンは、E964Q置換であってよく;967位のアラニンは、R967A置換であってよく;及び/又は1195位のアスパラギンは、挿入(例えば、UniProtQ00496のポリペプチド配列等の野生型BoNT/E配列のG1194とN1195との間の挿入)であってよい。
【0158】
一実施形態では、上述したような前記1以上のアミノ酸の存在は、前記アミノ酸を欠いたBoNT/Eタンパク質と比較して改善された溶解性を有するBoNT/Eタンパク質を提供する。前記改善された溶解性は、大腸菌発現系等の異種性の発現系におけるタンパク質の収率を増大させる。
【0159】
一実施形態では、上述したような前記1以上のアミノ酸の存在は、前記アミノ酸を欠いたBoNT/Eタンパク質と比較して改善された効力を有するBoNT/Eタンパク質を提供する。前記改善された抗力は好ましくは、改善された生体内効力(より好ましくは、ヒト被験者における改善された生体内効力)であり得る。
【0160】
一実施形態では、BoNT/Eは、本明細書に参照により援用される、WO 2014/068317 A1に記載された(又はそれに記載されたヌクレオチド配列によってコードされる)ものである。
【0161】
好ましくは、(例えば、本明細書に記載されるような用途の)クロストリジウム神経毒素は、少なくとも一つの薬剤的に許容可能な担体と共に、医薬組成物の一部である。「薬剤的に許容可能な担体」とは本明細書では、その医薬組成物のその他の成分、特にクロストリジウム神経毒素、との適合性を有し、及びヒト患者に対して有害ではないいずれかの成分を意味する。薬剤的に許容可能な担体は、所望の投与経路に基づいて、標準的な薬務に従って、選択することができ、及び限定されないが、賦形剤、希釈剤、アジュバント、推進薬(propellants)、及び塩が挙げられる。
【0162】
したがって、本発明はさらに、ヒト患者における術後外科疼痛及び/又は不安の処置の用途の医薬組成物に関し、ここで前記組成物は、本発明のクロストリジウム神経毒素と少なくとも一つの薬剤的に許容可能な担体とを含み、及び患者に投与すべきクロストリジウム神経毒素の用量は、上述の通りである。本発明の医薬組成物をヒト患者に投与することを含む、術後外科疼痛及び/又は不安を処置する対応する用途及び方法もまた包含される。別の実施形態では、本発明は、術後の健康な状態を促進する用途の医薬組成物に関し、ここで、術後の健康な状態は、低減された術後外科疼痛及び不安である。
【0163】
本発明のクロストリジウム神経毒素は好ましくは、皮内投与用に配合され得る。
【0164】
好ましい投与経路は、皮内投与による。好ましくは、皮内投与は皮内注射を意味する。
【0165】
好ましくは、術後外科疼痛及び/又は術後不安を処置する前記BoNTは、精製BoNTである。本明細書で使用するとき、用語「精製BoNT」は、その神経毒素を自然に産生するクロストリジウム株(天然起源のクロストリジウム株)から精製された又は組換え技術を用いて精製されたボツリヌス神経毒素を意味する。精製BoNT/Aは、複合化タンパク質と関連される(associated with)場合もあり又は複合化タンパク質を伴わない(free from)場合もあるが、好ましくは複合化タンパク質を伴わない。故に、一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、無毒性神経毒素関連タンパク質(NAP)としても知られるBoNT複合化タンパク質と関連される。換言すると、クロストリジウム神経毒素は、BoNT複合化タンパク質と関連され又は組み合わされてヒト患者に投与される。したがって、一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、1以上のBoNT複合化タンパク質と複合化される。市販の精製及び複合化タンパク質関連BoNT/Aの例としては、Botox(登録商標)、Dysport(登録商標)(BoNT複合化タンパク質と関連)及びXeomin(登録商標)(精製)が挙げられる。
【0166】
別の実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、BoNT複合化タンパク質を伴わない(又はそれと関連されない若しくは組み合わされない)。換言すると、クロストリジウム神経毒素は、BoNT複合化タンパク質と関連されずに又は組み合わされずにヒト患者に投与される。
【0167】
クロストリジウム神経毒素の用量は、ナノグラムにおいて測定され得る。
【0168】
本発明によるクロストリジウム神経毒素の用量は、活性二鎖クロストリジウム神経毒素の、即ち、神経毒素が関連され得る複合化タンパク質の量を含まない、用量として理解されるべきである。換言すると、それは、前記神経毒素が患者に、複合化タンパク質と関連されて投与されても複合化タンパク質なしで投与されても、活性二鎖クロストリジウム神経毒素の用量を指す。熟練専門家には周知の通り、活性二鎖クロストリジウム神経毒素は、膜(例えば細胞膜)受容体に結合して、軽鎖を細胞質中に転送させることができ、及びSNAREタンパク質を切断することができ、一方で複合化タンパク質は、このような生物活性を示さない(即ち「活性」ではない)。
【0169】
加えて又は或いは、クロストリジウム神経毒素の用量は、クロストリジウム神経毒素の「ユニット(U)」において測定され得る。例えば、ユニットにおける用量の測定は、BoNT/A(又はより特には、例えばDysport(登録商標))を投与される場合に、特に好適であり得る。
【0170】
実際、熟練専門家には周知の通り、クロストリジウム神経毒素の効力は、LD50(致死量50)ユニットを達成するのに要する神経毒素の量(例えばナノグラム)と関係があり;1LD50ユニットは、(マウスにおいて測定されるような)半数致死腹腔内用量として定義される。しかしながら、現在市場にあるBoNT医薬製剤は異なる量の150kD神経毒素を含有するが、LD50ユニットもまた異なる。さらに、これらの製剤において、神経毒素は、複合化タンパク質としても知られる、無毒性神経毒素関連タンパク質(NAP)と関連される(即ち組み合わされる)場合もあり、されない場合もある。換算を容易にするために(Field et. al, “AbobotulinumtoxinA (Dysport(R)), OnabotulinumtoxinA (Botox(R)), and IncobotulinumtoxinA (Xeomin(R)) Neurotoxin Content and Potential Implications for Duration of Response in Patients” Toxins 2018, 10(12), 535に報告されている通り):
・100ユニットのBotox(登録商標)(OnabotulinumtoxinAとしても知られる)は、約0.9ngの150kD BoNT/Aを複合化タンパク質と共に含有する;
・500ユニットのDysport(登録商標)(AbobotulinumtoxinAとしても知られる)は、約2.69ngの150kD BoNT/Aを複合化タンパク質と共に含有する;1ユニットのDysport(登録商標)は約5.38pgのBoNT/Aを含有する;
・100ユニットのXeomin(登録商標)(IncobotulinumtoxinAとしても知られる)は、約0.40ngの150kD BoNT/Aを含有し、複合化タンパク質は含有しない。
【0171】
なお、換算値は、わずかに変動する場合がある。例えば、Frevert, 2012(“Content of botulinum neurotoxin in Botox(R)/Vistabel(R), Dysport(R)/Azzalure(R), and Xeomin(R)/Bocouture(R)”; Drugs R D. 2010;10(2):67-73)に報告されている換算値は以下の通りである。
・100ユニットのBotox(登録商標)(OnabotulinumtoxinAとしても知られる)は、約0.73ngの150kD BoNT/Aを複合化タンパク質と共に含有する;
・100ユニットのDysport(登録商標)(AbobotulinumtoxinAとしても知られる)は、約0.65ngの150kD BoNT/Aを複合化タンパク質と共に含有する;
・100ユニットのXeomin(登録商標)(IncobotulinumtoxinAとしても知られる)は、約0.44ngの150kD BoNT/Aを含有するが、複合化タンパク質は含有しない;
・100ユニットのNeurobloc/Myobloc(登録商標)(RimabotulinumtoxinBとしても知られる)は、約0.2ng~約1ngの150kD BoNT/Bを複合化タンパク質と共に含有する。
【0172】
クロストリジウム神経毒素の量は、熟練専門家によって、タンパク質を好ましくはナノグラムレベルで定量するために当該技術分野において従来使用されている方法(特に、同位体希釈質量分析法(Munoz et. al, Quantification of protein calibrants by amino acid analysis using isotope dilution mass spectrometry, Anal. Biochem. 2011, 408, 124-131)又は蛍光定量アッセイ(Poras et al., Detection and Quantification of Botulinum Neurotoxin Type A by a Novel Rapid In Vitro Fluorimetric Assay, Appl Environ Microbiol. 2009 Jul;75(13): 4382-4390)等の質量分析法が挙げられる)に従い、測定され得る。
【0173】
皮内投与は、30ゲージ針等の針による皮内注射を含み得るが、好ましくはここで、針(30ゲージ針等)は、外科的介入の部位(側腹部上であり得る)において皮膚の表面に対して約5°~15°の角度で皮膚の真皮内に挿入される。注射の深さ(皮膚の表面に対する深さ)は、約0.2~0.3(好ましくは約0.25)インチであってよい。
【0174】
クロストリジウム神経毒素は、外科的介入に供される(例えば、外科的切開又は外科的切開の部位に近位の)身体上の部位において投与されてよい。
【0175】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素は、(皮内注射又は髄腔内注射等を介して)患者の外科的介入の部位において(例えば、患者の外科的介入の部位における1以上投与部位において)投与されてよい。
【0176】
クロストリジウム神経毒素は、1以上の部位において、例えば、外科的介入の部位に対して近位の1以上の部位において、投与されてよい。「外科的介入の部位に対して近位の」部位は、外科的介入の部位から最大15cm;例えば、外科的介入の部位から最大10cm;好ましくは外科的介入の部位から最大5cm;より好ましくは外科的介入の部位から最大1cmに位置し得る。
【0177】
一実施形態では、投与に続き、クロストリジウム神経毒素は、逆行輸送によって脊髄まで移動し、及び前記脊髄においてSNAREタンパク質切断(SNAP-25タンパク質切断)を行う。
【0178】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素が皮内部位に投与される場合、クロストリジウム神経毒素の投与後に、前記皮内部位において又はその近位で、前記クロストリジウム神経毒素による最小限のSNAREタンパク質切断(SNAP-25タンパク質切断)が観察されるか又は全く観察されない。一実施形態では、観察は、クロストリジウム神経毒素の投与後の5~7日間行われ、及びクロストリジウム神経毒素の投与後に、前記皮内部位において又はその近位で、前記クロストリジウム神経毒素による最小限のSNAREタンパク質切断(SNAP-25タンパク質切断)が観察されるか又は全く観察されない。
【0179】
一実施形態では、クロストリジウム神経毒素が髄腔内部位に投与される場合、クロストリジウム神経毒素の投与後に、前記髄腔内部位において又はその近位で、前記クロストリジウム神経毒素による最小限のSNAREタンパク質切断(SNAP-25タンパク質切断)が観察されるか又は全く観察されない。一実施形態では、観察はクロストリジウム神経毒素の投与後の5~7日間行われ、及びクロストリジウム神経毒素の投与に続いて、前記髄腔内部位において又はその近位で、前記クロストリジウム神経毒素による最小限のSNAREタンパク質切断(SNAP-25タンパク質切断)が観察されるか又は全く観察されない。
【0180】
故に、クロストリジウム神経毒素は、術後外科疼痛及び術後不安を処置するために外科的介入の部位の遠位で投与され得る。
【0181】
故に、好ましい実施形態では、外科的介入によって術後外科疼痛が引き起こされる場合、クロストリジウム神経毒素が、外科的介入の部位に対して遠位の部位において(例えば、患者の切開の部位に対して遠位の1以上の投与部位において)、(皮内注射又は髄腔内注射等を介して)投与されてよい。
【0182】
クロストリジウム神経毒素は、外科的介入の部位に対して遠位の1以上の部位において、例えば、外科的介入の部位から少なくとも15cm;外科的介入の部位から少なくとも50cm、又は外科的介入の部位から少なくとも100cmの部位において、投与されてよい。
【0183】
本発明が手術前投与を対象とし、つまりは、「外科的介入の部位における又はその近位の」投与への言及が、手術が始まると(例えばその後に)外科的介入に供されることになる部位における又はその近位での投与を指すということを、当業者は理解するであろう。「外科的介入の部位に対して遠位の部位における」投与への言及は、手術が始まると(例えばその後に)外科的介入に供されることになる部位の遠位での投与を指す。
【0184】
クロストリジウム神経毒素は、最大15(好ましくは最大10)の部位(例えば、外科的介入の部位に対して近位の部位)において投与されてよい。こうした部位は、外科的介入の部位の周囲を縦走して(traverse)いてもよい。
【0185】
好ましい実施形態では、ヒト患者において外科疼痛を処置するために投与されるべき本発明のクロストリジウム神経毒素の用量(即ち、治療量)は、約0.00025ng~約3ngの範囲である。
【0186】
好ましい実施形態では、クロストリジウム神経毒素の治療量は、約0.0003ng~約2ng、好ましくは約0.0004ng~約1.5ng、約0.0005ng~約1ng、なお好ましくは約0.0006ng~約0.5ngの前記クロストリジウム神経毒素の範囲である。
【0187】
例えば、BoNT/Aを含むクロストリジウム神経毒素の用量(例えば、総用量)は好ましくは、約1ng~約2ngの範囲である。
【0188】
患者は、100~500Uのクロストリジウム神経毒素を投与されてよい。例えば、患者は150~300Uのクロストリジウム神経毒素;好ましくは175~250U;より好ましくは約200Uを投与されてよい。
【0189】
患者は、患者の体重1キログラム(kg)当たり80~250ピコグラム(pg)のクロストリジウム神経毒素(例えば850~250pg/kg)を投与されてよい。例えば、患者は、100~200pg/kg、115~175pg/kg、又は130~150pg/kgを投与されてよい。
【0190】
上述したように、クロストリジウム神経毒素は、1以上の投与部位において、例えば二以上の投与部位において、投与されてよい。一実施形態では、患者は、投与部位当たり2.5~30Uのクロストリジウム神経毒素を投与されてよく;好ましくはここで、患者は、投与部位当たり20Uのクロストリジウム神経毒素を投与される。例えば、10の投与部位が投与部位当たり20Uの投与を受けて、200Uの合計投与を提供してもよい。
【0191】
患者は、クロストリジウム神経毒素を、投与部位当たり10~170pgの総用量で投与されてよい。好ましい実施形態では、患者は、クロストリジウム神経毒素を、投与部位当たり1~14pg/kg(体重)の用量で投与されてよい。
【0192】
別の実施形態では、クロストリジウム神経毒素の治療量は好ましくは、約0.001ng~約2ngの範囲である。さらには、例えば、クロストリジウム神経毒素の治療量は好ましくは、約0.0003ng~約0.05ngの範囲である。
【0193】
そうは言っても、必要とされる用量範囲は、クロストリジウム神経毒素の正確な性質、特定の被験者(例えばヒト被験者)における最大許容用量、皮膚の状態、投与経路、処方の性質、患者の年齢、患者の体重、患者の状態の性質、程度、又は重篤性、存在するならば禁忌、及び治療する医師の判断に依存することが理解されよう。これらの投薬レベルにおける変動は、最適化のために標準の経験的手順を用いて調整され得る。
【0194】
一実施形態では、患者は、単一のボツリヌス神経毒素血清型(例えばBoNT/A)に基づく単独療法を投与される。故に、一実施形態では、本発明は単一のボツリヌス神経毒素血清型(例えばBoNT/A)の使用を採用する。
【0195】
本発明の様々な方法に関する実施形態は、他の方法、クロストリジウム神経毒素、例えば遺伝子操作されたクロストリジウム神経毒素(単鎖形態か二鎖形態か)、用途、又は医薬組成物に等しく適用されることが意図されており、またその逆も当てはまる。
【0196】
配列相同性
【0197】
グローバル法、ローカル法、及び例えば、セグメントアプローチ法等のハイブリッド法が挙げられるがそれらに限定されない、様々な配列アラインメント方法のいずれかを使用して、パーセント同一性を決定することができる。パーセント同一性を決定するためのプロトコルは、当業者の技術範囲内の日常的な手技である。グローバル法は、分子の始まりから終わりまでの配列をアラインメントして個々の残基対のスコアを足し合わせ、及びギャップペナルティを課すことによって、最良のアラインメントを決定する。非限定的な方法としては、例えば、CLUSTAL W、例えば、Julie D. Thompson et al., CLUSTAL W: Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting, Position- Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice, 22(22) Nucleic Acids Research 4673-4680(1994)参照;及び反復改良法、例えば、Osamu Gotoh, Significant Improvement in Accuracy of Multiple Protein. Sequence Alignments by Iterative Refinement as Assessed by Reference to Structural Alignments, 264(4) J. Mol. Biol. 823-838(1996)参照、が挙げられる。ローカル法は、入力された配列の全てに共通する1以上の保存されたモチーフを特定することによって配列をアラインメントする。非限定的な方法としては、例えば、マッチボックス(Match-box)、例えば、Eric Depiereux and Ernest Feytmans, Match-Box: A Fundamentally New Algorithm for the Simultaneous Alignment of Several Protein Sequences, 8(5) CABIOS 501-509(1992)参照;ギブスサンプリング(Gibbs sampling)、例えば、C. E. Lawrence et al., Detecting Subtle Sequence Signals: A Gibbs Sampling Strategy for Multiple Alignment, 262(5131) Science 208-214 (1993)参照;アラインM(Align-M)、例えば、Ivo Van Walle et al., Align-M - A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences, 20(9) Bioinformatics:1428-1435 (2004)参照、が挙げられる。
【0198】
このように、パーセント配列同一性は、従来の方法によって決定される。例えば、Altschul et al., Bull. Math. Bio. 48: 603-16, 1986及びHenikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-19, 1992参照のこと。短く言えば、二つのアミノ酸配列をアラインメントして、ギャップオープニングペナルティ10、ギャップエクステンションペナルティ1、及び下記に示すようなHenikoff及びHenikoff(ibid.)の「blosum62」スコアリングマトリックスを用いて、アラインメントスコアを最適化する(アミノ酸は標準的な1文字コードによって特定される)。
【0199】
二以上の核酸又はアミノ酸配列間の「パーセント配列同一性」は、それらの配列に共通する同一の位置の数の関数である。故に、%同一性は、同一のヌクレオチド/アミノ酸の数をヌクレオチド/アミノ酸の総数で割って100を掛けたものとして計算され得る。%配列同一性の計算はまた、ギャップの数及び二以上の配列のアラインメントを最適化するために導入される必要のある各ギャップの長さを考慮に入れてもよい。二以上の配列間の配列比較及びパーセント同一性の決定は、当業者には馴染みのBLAST等の特殊な数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。
【数1】
【0200】
パーセント同一性はその後、以下のように計算される:
[同一性の一致(identical matches)の総数×100]/[より長い配列の長さ+二つの配列をアラインメントするためにより長い配列に導入されるギャップの数]。
【0201】
実質的に相同のポリペプチドは、1以上のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有することを特徴とする。これらの変化は好ましくは、ポリペプチドの折りたたみ又は活性に有意に影響を与えない保存的アミノ酸置換(下記参照)等の置換である、小さな性質(minor nature)の変化であり、典型的には1~約30のアミノ酸の、小さな欠失、及びアミノ末端メチオニン残基、約20~25残基までの小さなリンカーペプチド、又はアフィニティタグ等の小さなアミノ末端又はカルボキシ末端の延長である。
【0202】
保存的アミノ酸置換
塩基性:アルギニン;リジン;ヒスチジン
酸性:グルタミン酸;アスパラギン酸
極性:グルタミン;アスパラギン
疎水性:ロイシン;イソロイシン;バリン
芳香族:フェニルアラニン;トリプトファン;チロシン
小:グリシン;アラニン;セリン;トレオニン;メチオニン
【0203】
20の標準アミノ酸に加えて、非標準アミノ酸(4-ヒドロキシプロリン、6-N-メチルリジン、2-アミノイソ酪酸、イソバリン、及びα-メチルセリン等)が、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基を置換してもよい。限定数の非保存的アミノ酸、遺伝暗号によってコードされないアミノ酸、及び非天然アミノ酸が、ポリペプチドアミノ酸残基を置換してもよい。本発明のポリペプチドはまた、非天然起源のアミノ酸残基を含むこともできる。
【0204】
非天然起源のアミノ酸としては、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノ-プロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシ-プロリン、N-メチルグリシン、アロ-トレオニン、メチル-トレオニン、ヒドロキシ-エチルシステイン、ヒドロキシエチルホモ-システイン、ニトロ-グルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニル-アラニン、4-アザフェニル-アラニン、及び4-フルオロフェニルアラニンが挙げられるがそれらに限定されない。非天然起源のアミノ酸残基をタンパク質に組み込むための幾つかの方法が当該技術分野において既知である。例えば、化学的にアミノアクリル化されたサプレッサーtRNAを用いてノンセンス突然変異が抑制されるインビトロ系を採用することができる。アミノ酸を合成し及びtRNAをアミノアクリル化するための方法は当該技術分野において既知である。ノンセンス突然変異を含有するプラスミドの転写及び翻訳は、大腸菌S30抽出物と市販の酵素等の試薬とを含む無細胞系において行われる。タンパク質はクロマトグラフィによって精製される。例えば、Robertson et al., J. Am. Chem. Soc. 113:2722, 1991;Ellman et al., Methods Enzymol. 202:301, 1991; Chung et al., Science 259:806-9, 1993;及びChung et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10145-9, 1993)を参照のこと。2番目の方法では、翻訳は、アフリカツメガエル卵母細胞において変異型mRNA及び化学的にアミノアクリル化されたサプレッサーtRNA(Turcatti et al., J. Biol. Chem. 271:19991-8, 1996)のマイクロ注射によって行われる。3番目の方法では、置き換えられるべき天然アミノ酸(例えば、フェニルアラニン)の非存在下及び所望の非天然起源のアミノ酸(例えば、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、又は4-フルオロフェニルアラニン)の存在下で、大腸菌細胞が培養される。非天然起源のアミノ酸が、その天然の対応物の代わりにポリペプチドに組み込まれる。Koide et al., Biochem. 33: 7470-6, 1994参照のこと。天然起源のアミノ酸残基は、インビトロ化学修飾によって非天然起源の種に変換され得る。化学修飾は、部位由来の変異誘発と組み合わされて置換の範囲をさらに拡張し得る(Wynn and Richards, Protein Sci. 2: 395-403, 1993)。
【0205】
限定数の非保存アミノ酸、遺伝暗号によってコードされないアミノ酸、非天然起源のアミノ酸(non-naturally occurring amino acids)、及び非天然アミノ酸(unnatural amino acids)が、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基を置換し得る。
【0206】
本発明のポリペプチドにおける必須アミノ酸は、部位特異性変異誘発又はアラニンスキャニング変異誘発(Cunningham and Wells, Science 244: 1081-5, 1989)等の、当該技術分野において既知の手技に従って特定することができる。生物的相互作用の部位はまた、推定上の接触部位アミノ酸の突然変異と併せて、核磁気共鳴、結晶学、電子回折、又は光親和性標識のような技術によって決定されるような、構造の物理分析によって決定することができる。例えば、de Vos et al., Science 255:306-12, 1992; Smith et al., J. Mol. Biol. 224: 899-904, 1992; Wlodaver et al., FEBS Lett. 309: 59-64, 1992参照のこと。必須アミノ酸の同一性もまた、本発明のポリペプチドの関連成分(例えば、転送又はプロテアーゼ成分)との相同性の分析から推定することができる。
【0207】
Reidhaar-Olson and Sauer(Science 241:53-7, 1988)又はBowie and Sauer(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2152-6, 1989)によって開示されているもの等の変異誘発及びスクリーニングの既知の方法を用いて、複数のアミノ酸置換を行い及び試験することができる。短く言うと、これらの著者は、ポリペプチドにおける二以上の位置を同時に無作為化して機能性ポリペプチドに関して選択し、及びその後、変異誘発されたポリペプチドの配列決定をして各位置における許容可能な置換のスペクトルを決定する方法を開示している。使用可能な他の方法としては、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al., Biochem. 30: 10832-7, 1991; Ladner et al., U.S. Patent No. 5,223,409; Huse, WIPO Publication WO 92/06204)及び領域特異的変異誘発(Derbyshire et al., Gene 46:145、1986; Ner et al., DNA 7:127, 1988)が挙げられる。
【0208】
別途規定しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者に通常理解されているのと同一の意味を有する。Singleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 20 ED., John Wiley and Sons, New York(1994)、及びHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, NY(1991)は当業者に、本開示において使用される用語の多くの全般的な辞書を提供する。
【0209】
本開示は、本明細書に開示される例示の方法及び材料に限定されず、及び本開示の実施形態の実用又は試験において本明細書に記載されるものと類似の又は同等のあらゆる方法及び材料を使用することができる。数値範囲はその範囲を規定する数を包含する。別途指定しない限り、いずれの核酸配列も5’から3’の向きにおいて左から右に記述され;アミノ酸配列はそれぞれ、アミノからカルボキシの向きにおいて左から右に記述されている。
【0210】
本明細書で与えられる見出しは、本開示の種々の態様又は実施形態の限定ではない。
【0211】
アミノ酸は本明細書において、アミノ酸の名称、三文字省略形、又は一文字省略形を使用して言及される。用語「タンパク質」は、本明細書で使用するとき、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを包含する。本明細書で使用するとき、用語「アミノ酸配列」とは、用語「ポリペプチド」及び/又は用語「タンパク質」の同義語である。ある場合には、用語「アミノ酸配列」は、用語「ペプチド」と同義である。ある場合には、用語「アミノ酸配列」は、用語「酵素」と同義である。用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、本明細書において交換可能に使用される。本開示及び特許請求の範囲において、アミノ酸残基のための従来の一文字コード及び三文字コードが使用される場合がある。IUPACIUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature(JCBN)に準拠して定義されるようなアミノ酸のための3文字コード。ポリペプチドは、遺伝暗号の縮重に起因して二つ以上のヌクレオチド配列によってコードされ得るということも理解される。
【0212】
明細書を通して、用語の他の定義が出現する場合もある。例示の実施形態をより詳細に述べる前に、本開示は記載された特定の実施形態に限定されず、及びそのため変動し得るということを理解すべきである。本開示の範囲は添付特許請求の範囲によってのみ規定されることとなるため、本明細書で使用される専門用語は特定の実施形態のみを記述することを目的とし、及び限定することを意図していないということもまた理解されるべきである。
【0213】
本明細書に値の範囲が与えられる場合、文脈が別途明確に規定しない限り、その範囲の上限及び下限の間にあるその単位の10分の1までの各介在値もまた具体的に開示されていると理解すべきである。いずれかの記述された値の間にあるより小さな各範囲又は記述された範囲内の介在値及びその記述された範囲中のいずれかの他の記述された又は介在する値は、本開示内に包含される。表現「aからbまで(a~b)」によって本明細書に示された数値のいずれかの範囲は、aからbまで延在する数値の範囲を意味する(即ち、厳密な端点a及びbを包含する)ということをさらに理解すべきである。
【0214】
それに加えて、用語「約」は、本明細書では、それが共に使用されている数字の数値のプラス又はマイナス(±)5%、好ましくは±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.1%として理解すべきである。
【0215】
本明細書及び添付特許請求の範囲において使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に規定しない限り、複数の指示物を包含することに留意しなければならない。故に、例えば、「ボツリヌス神経毒素(a botulinum neurotoxin)」への言及は、複数のこのような候補剤を包含し、及び「ボツリヌス神経毒素(the botulinum neurotoxin)」への言及は、1以上のクロストリジウム神経毒素及び当業者に既知のそれらの等価物を包含する、等である。
【0216】
本明細書で議論された出版物は、本出願の出願日よりも前のそれらの開示について単独で提供されている。本明細書において、このような出版物が、本明細書に添付される特許請求の範囲に対する先行技術を構成するとの承認と解釈されるべきものは存在しない。
【0217】
ここで以下の図面及び実施例を参照しながら、本発明の実施形態を単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【
図1】外科的切開に沿う注射部位の概略を示し、ここで、Dysport、生理食塩水、又は参照化合物Exparel(登録商標;ブピバカイン)を注射した。
【
図2】歩行活動についてのオープンフィールド試験のために使用されたアリーナの概略を示す。
【
図3】生理食塩水、Exparel(対照剤)、又は異なる濃度のDysport(100、200、及び400U)のいずれかの皮内注射の周術期投与からの、術後外科疼痛及び不安の軽減に対する効果を示す。外科疼痛知覚の測定法としてのフォンフレイアッセイ(Von Frey assay)を行った。その結果を(A)に示す。グラフを横断する水平線は、26gに設定され、外科疼痛を感じないことに対するベースライン(例えば、それより上では被験者の術後外科疼痛が処置されたとみなされ得る閾値)を示している。疼痛は、機械的感度が0~15gである場合は中程度/重度、15~26gの場合は低度/中程度と定義することができ、及び26gを超える場合、疼痛はほとんど/全く感じられない。ブタがExparel又はDysportの周術期皮内投与後にハンドラーに接近するのにかかる時間(秒)を(B)に示す。Exparel又はDysporの周術期投与後の苦痛挙動を点数化した。これを(C)に示す。
【
図4】生理食塩水、Exparel(対照剤)、又は異なる濃度のDysport(100、200、及び400U)のいずれかの周術期皮内注射後に、動物が5分間に歩いた平均グループ総歩行距離(メートル)(A)及びオープンフィールド装置の中央帯に費やした時間の平均百分率(B)を示す。
【
図5】手術の15日前(A)、5日前(B)、又は1日前(C)における生理食塩水(対照)対BoNT/A(Dysport)皮内投与の、フォンフレイアッセイを示す。
【
図6】手術の15日前(A)、5日前(B)、又は1日前(C)における生理食塩水又はDysport(200U/ブタ)のいずれかの皮内投与後の、ブタがハンドラーに接近するまでの潜時(秒)を示す。棒グラフ(A~C)における各時点(日)について、左の棒(色の薄い方)はDysport処置についての結果を示し、及び右の棒(色の濃い方)は、生理食塩水処置についての結果を示す。
【
図7】手術の15日前(A)、5日前(B)、又は1日前(C)における生理食塩水又はDysportのいずれかの皮内投与後の、ブタの苦痛挙動スコアを示す。棒グラフ(A~C)中の各時点(日)について、左の棒(色の薄い方)はDysport処置についての結果を示し、及び右の棒(色の濃い方)は生理食塩水処置についての結果を示す。
【
図8】手術の15日前(A)、5日前(B)、又は1日前(C)における生理食塩水又はDysportのいずれかの皮内投与後の、ブタの総歩行距離(メートル)を示す。
【
図9】手術の15日前(A)、5日前(B)、又は1日前(C)における生理食塩水又はDysportのいずれかの皮内投与後の、5分間のうちオープンフィールド装置の中央帯に費やした時間の経時変化(個別値及び中央値)を示す。
【
図10】皮内(A)、皮下(B)、又は筋肉内(C)注射により投与した場合の、生理食塩水対BoNT/A(Dysport)のフォンフレイアッセイを示す。試験された各注射経路について、ブタ一頭当たり合計200UのDysportが投与された。
【
図11】皮内(A)、皮下(B)、又は筋肉内(C)注射によって生理食塩水又はBoNT/A(Dysport)を投与した場合の、ブタがハンドラーに接近するまでの潜時(秒)を示す。試験された各注射経路について、ブタ一頭当たり合計200UのDysportが投与された。
【
図12】皮内(a)、皮下(b)、又は筋肉内(c)注射によって生理食塩水又はBoNT/A(Dysport)を投与した場合の、ブタの苦痛挙動スコアを示す。試験された各注射経路について、ブタ一頭当たり合計200UのDysportが投与された。
【
図13】生理食塩水又はDysportの皮内、皮下、又は筋肉内投与後の、動物がオープンフィールド内を5分間に歩いた総距離(メートル)の経時変化を示す(個別値及び平均値±SEM)。
【
図14】生理食塩水又はDysportの皮内、皮下、又は筋肉内投与後の、オープンフィールド装置の中央帯に費やした時間(百分率)の経時変化を示す(個別値及び平均値±SEM)。
【
図15】細動脈周辺の小神経(A)、立毛筋で終わる神経(B)、及び真皮における小~中サイズの神経(C)を有する皮膚試料におけるSNAP-25の免疫組織化学染色を示す。
【
図16】未処置の場合のブタの脊髄における切断SNAP-25の免疫組織化学染色(A)、及びDysportで処置されたブタの、同側の角(ipsilateral horn)における切断SNAP-25染色(B)、又は対側の角(contralateral horn)における切断SNAP-25染色(C)を示す。
【
図17】未処置(A、C)又はDysportの皮内注射の投与(B、D)のいずれかの場合の、ブタの脊髄におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)及びサブスタンスPの発現レベルを示す。
【
図18】未処置又はDysportの皮内注射による投与のいずれかの場合の、ブタの脊髄におけるIba1(A、B)及びグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)(C、D)の発現レベルを示す。
【
図19】手術の15日前における生理食塩水(対照)若しくはBoNT/A(Dysport)皮内投与又は手術当日(D1)のExparel皮内投与の、及びブタが左脚を外科的切開に供される場合の、フォンフレイアッセイを示す(A)、*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001、対生理食塩水グループ、一元配置分散分析法とそれに続くチューキー試験を使用。#p<0.05;##p<0.01、####p<0.0001、Dysport対Exparelグループ、一元配置分散分析法とそれに続くチューキー試験を使用。$$p<0.01:手術後の時点対-4日目、対応t検定を使用)。(B)は、手術の15日前の生理食塩水(対照)の皮内投与若しくはBoNT/A(Dysport)皮内投与又は手術当日(D1)のExparel皮内投与後の、及びブタが左脚を外科的切開に供される場合の、ブタがハンドラーに接近するまでの潜時(秒)を示す($$p<0.01:手術後時点対-4日目、対応t検定を使用。£££p<0.001:-16日対-4日、対応t検定を使用。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、処置対生理食塩水グループ、一元配置分散分析法とそれに続くチューキー試験を使用)。(C)は、手術の15日前における生理食塩水(対照)の皮内投与若しくはBoNT/A(Dysport)皮内投与又は手術当日(D1)のExparel皮内投与後の、及びブタが左脚を外科的切開に供される場合の、ブタの苦痛挙動スコアを示す(*p<0.05、***p<0.001、及び****p<0.0001、対生理食塩水グループ、一元配置分散分析法とそれに続くチューキー試験を使用。$$p<0.01、$p<0.05:手術後の時点対-4日目、対応t検定を使用)。
【
図20】免疫組織化学染色のために採取された組織試料(ホルマリン固定パラフィン包理組織)の概要、及び組織試料が脊髄から採取されたその具体的な領域を示す。
【
図21】左脚に外科的切開を受けたブタにおける、皮膚(A)、筋肉(B)、及び後根神経節(C)における切断SNAP-25についての免疫組織化学染色を示す。
【
図22】左脚に外科的切開を受けたブタの脊髄における腰椎L5-L6の同側の後角における切断SNAP-25染色(A)及び拡大図(B)を示す。
【
図23】切断SNAP-25染色の強度を判定するために使用された採点スケールを示す。切断SNAP-25染色は1~3のスケール上で採点された。グレード0=切断SNAP-25染色なし、グレード1=低い強度の切断SNAP-25染色、グレード2=平均的切断SNAP-25強度染色、及びグレード3=高い強度の切断SNAP-25染色(A)。
図23にはまた、脊髄の異なる領域:腰椎L5-L6、L3-L4、L1-L2、及び胸部及び頸部領域についての染色強度の定量も示される。染色強度は、「H-スコア」の方法によって測定され、陽性の脊髄の部分の%×後角における染色強度によって計算された(B)。
【
図24】採取した組織試料における切断SNAP-25染色の存在「陽性」又は非存在「陰性」の概要を提供する。
【0219】
配列表
【0220】
最初のMetアミノ酸残基又は対応する開始コドンが以下の配列番号のいずれかにおいて示される場合、前記残基/コドンは任意選択である。
【0221】
配列番号1 - BoNT/A1, 受入番号 A5HZZ9, アミノ酸配列
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKNAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNSISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTQEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNNSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNNIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDQGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL
【0222】
配列番号2 - BoNT/B1, 受入番号 B1INP5, アミノ酸配列
MPVTINNFNYNDPIDNNNIIMMEPPFARGTGRYYKAFKITDRIWIIPERYTFGYKPEDFNKSSGIFNRDVCEYYDPDYLNTNDKKNIFLQTMIKLFNRIKSKPLGEKLLEMIINGIPYLGDRRVPLEEFNTNIASVTVNKLISNPGEVERKKGIFANLIIFGPGPVLNENETIDIGIQNHFASREGFGGIMQMKFCPEYVSVFNNVQENKGASIFNRRGYFSDPALILMHELIHVLHGLYGIKVDDLPIVPNEKKFFMQSTDAIQAEELYTFGGQDPSIITPSTDKSIYDKVLQNFRGIVDRLNKVLVCISDPNININIYKNKFKDKYKFVEDSEGKYSIDVESFDKLYKSLMFGFTETNIAENYKIKTRASYFSDSLPPVKIKNLLDNEIYTIEEGFNISDKDMEKEYRGQNKAINKQAYEEISKEHLAVYKIQMCKSVKAPGICIDVDNEDLFFIADKNSFSDDLSKNERIEYNTQSNYIENDFPINELILDTDLISKIELPSENTESLTDFNVDVPVYEKQPAIKKIFTDENTIFQYLYSQTFPLDIRDISLTSSFDDALLFSNKVYSFFSMDYIKTANKVVEAGLFAGWVKQIVNDFVIEANKSNTMDKIADISLIVPYIGLALNVGNETAKGNFENAFEIAGASILLEFIPELLIPVVGAFLLESYIDNKNKIIKTIDNALTKRNEKWSDMYGLIVAQWLSTVNTQFYTIKEGMYKALNYQAQALEEIIKYRYNIYSEKEKSNINIDFNDINSKLNEGINQAIDNINNFINGCSVSYLMKKMIPLAVEKLLDFDNTLKKNLLNYIDENKLYLIGSAEYEKSKVNKYLKTIMPFDLSIYTNDTILIEMFNKYNSEILNNIILNLRYKDNNLIDLSGYGAKVEVYDGVELNDKNQFKLTSSANSKIRVTQNQNIIFNSVFLDFSVSFWIRIPKYKNDGIQNYIHNEYTIINCMKNNSGWKISIRGNRIIWTLIDINGKTKSVFFEYNIREDISEYINRWFFVTITNNLNNAKIYINGKLESNTDIKDIREVIANGEIIFKLDGDIDRTQFIWMKYFSIFNTELSQSNIEERYKIQSYSEYLKDFWGNPLMYNKEYYMFNAGNKNSYIKLKKDSPVGEILTRSKYNQNSKYINYRDLYIGEKFIIRRKSNSQSINDDIVRKEDYIYLDFFNLNQEWRVYTYKYFKKEEEKLFLAPISDSDEFYNTIQIKEYDEQPTYSCQLLFKKDEESTDEIGLIGIHRFYESGIVFEEYKDYFCISKWYLKEVKRKPYNLKLGCNWQFIPKDEGWTE
【0223】
配列番号3 - BoNT/C1, 受入番号 P18640, アミノ酸配列
MPITINNFNYSDPVDNKNILYLDTHLNTLANEPEKAFRITGNIWVIPDRFSRNSNPNLNKPPRVTSPKSGYYDPNYLSTDSDKDPFLKEIIKLFKRINSREIGEELIYRLSTDIPFPGNNNTPINTFDFDVDFNSVDVKTRQGNNWVKTGSINPSVIITGPRENIIDPETSTFKLTNNTFAAQEGFGALSIISISPRFMLTYSNATNDVGEGRFSKSEFCMDPILILMHELNHAMHNLYGIAIPNDQTISSVTSNIFYSQYNVKLEYAEIYAFGGPTIDLIPKSARKYFEEKALDYYRSIAKRLNSITTANPSSFNKYIGEYKQKLIRKYRFVVESSGEVTVNRNKFVELYNELTQIFTEFNYAKIYNVQNRKIYLSNVYTPVTANILDDNVYDIQNGFNIPKSNLNVLFMGQNLSRNPALRKVNPENMLYLFTKFCHKAIDGRSLYNKTLDCRELLVKNTDLPFIGDISDVKTDIFLRKDINEETEVIYYPDNVSVDQVILSKNTSEHGQLDLLYPSIDSESEILPGENQVFYDNRTQNVDYLNSYYYLESQKLSDNVEDFTFTRSIEEALDNSAKVYTYFPTLANKVNAGVQGGLFLMWANDVVEDFTTNILRKDTLDKISDVSAIIPYIGPALNISNSVRRGNFTEAFAVTGVTILLEAFPEFTIPALGAFVIYSKVQERNEIIKTIDNCLEQRIKRWKDSYEWMMGTWLSRIITQFNNISYQMYDSLNYQAGAIKAKIDLEYKKYSGSDKENIKSQVENLKNSLDVKISEAMNNINKFIRECSVTYLFKNMLPKVIDELNEFDRNTKAKLINLIDSHNIILVGEVDKLKAKVNNSFQNTIPFNIFSYTNNSLLKDIINEYFNNINDSKILSLQNRKNTLVDTSGYNAEVSEEGDVQLNPIFPFDFKLGSSGEDRGKVIVTQNENIVYNSMYESFSISFWIRINKWVSNLPGYTIIDSVKNNSGWSIGIISNFLVFTLKQNEDSEQSINFSYDISNNAPGYNKWFFVTVTNNMMGNMKIYINGKLIDTIKVKELTGINFSKTITFEINKIPDTGLITSDSDNINMWIRDFYIFAKELDGKDINILFNSLQYTNVVKDYWGNDLRYNKEYYMVNIDYLNRYMYANSRQIVFNTRRNNNDFNEGYKIIIKRIRGNTNDTRVRGGDILYFDMTINNKAYNLFMKNETMYADNHSTEDIYAIGLREQTKDINDNIIFQIQPMNNTYYYASQIFKSNFNGENISGICSIGTYRFRLGGDWYRHNYLVPTVKQGNYASLLESTSTHWGFVPVSE
【0224】
配列番号4 - BoNT/D, 受入番号 P19321, アミノ酸配列
MTWPVKDFNYSDPVNDNDILYLRIPQNKLITTPVKAFMITQNIWVIPERFSSDTNPSLSKPPRPTSKYQSYYDPSYLSTDEQKDTFLKGIIKLFKRINERDIGKKLINYLVVGSPFMGDSSTPEDTFDFTRHTTNIAVEKFENGSWKVTNIITPSVLIFGPLPNILDYTASLTLQGQQSNPSFEGFGTLSILKVAPEFLLTFSDVTSNQSSAVLGKSIFCMDPVIALMHELTHSLHQLYGINIPSDKRIRPQVSEGFFSQDGPNVQFEELYTFGGLDVEIIPQIERSQLREKALGHYKDIAKRLNNINKTIPSSWISNIDKYKKIFSEKYNFDKDNTGNFVVNIDKFNSLYSDLTNVMSEVVYSSQYNVKNRTHYFSRHYLPVFANILDDNIYTIRDGFNLTNKGFNIENSGQNIERNPALQKLSSESVVDLFTKVCLRLTKNSRDDSTCIKVKNNRLPYVADKDSISQEIFENKIITDETNVQNYSDKFSLDESILDGQVPINPEIVDPLLPNVNMEPLNLPGEEIVFYDDITKYVDYLNSYYYLESQKLSNNVENITLTTSVEEALGYSNKIYTFLPSLAEKVNKGVQAGLFLNWANEVVEDFTTNIMKKDTLDKISDVSVIIPYIGPALNIGNSALRGNFNQAFATAGVAFLLEGFPEFTIPALGVFTFYSSIQEREKIIKTIENCLEQRVKRWKDSYQWMVSNWLSRITTQFNHINYQMYDSLSYQADAIKAKIDLEYKKYSGSDKENIKSQVENLKNSLDVKISEAMNNINKFIRECSVTYLFKNMLPKVIDELNKFDLRTKTELINLIDSHNIILVGEVDRLKAKVNESFENTMPFNIFSYTNNSLLKDIINEYFNSINDSKILSLQNKKNALVDTSGYNAEVRVGDNVQLNTIYTNDFKLSSSGDKIIVNLNNNILYSAIYENSSVSFWIKISKDLTNSHNEYTIINSIEQNSGWKLCIRNGNIEWILQDVNRKYKSLIFDYSESLSHTGYTNKWFFVTITNNIMGYMKLYINGELKQSQKIEDLDEVKLDKTIVFGIDENIDENQMLWIRDFNIFSKELSNEDINIVYEGQILRNVIKDYWGNPLKFDTEYYIINDNYIDRYIAPESNVLVLVQYPDRSKLYTGNPITIKSVSDKNPYSRILNGDNIILHMLYNSRKYMIIRDTDTIYATQGGECSQNCVYALKLQSNLGNYGIGIFSIKNIVSKNKYCSQIFSSFRENTMLLADIYKPWRFSFKNAYTPVAVTNYETKLLSTSSFWKFISRDPGWVE
【0225】
配列番号5 - BoNT/E1, 受入番号 WP_003372387, アミノ酸配列
MPKINSFNYNDPVNDRTILYIKPGGCQEFYKSFNIMKNIWIIPERNVIGTTPQDFHPPTSLKNGDSSYYDPNYLQSDEEKDRFLKIVTKIFNRINNNLSGGILLEELSKANPYLGNDNTPDNQFHIGDASAVEIKFSNGSQDILLPNVIIMGAEPDLFETNSSNISLRNNYMPSNHGFGSIAIVTFSPEYSFRFNDNSMNEFIQDPALTLMHELIHSLHGLYGAKGITTKYTITQKQNPLITNIRGTNIEEFLTFGGTDLNIITSAQSNDIYTNLLADYKKIASKLSKVQVSNPLLNPYKDVFEAKYGLDKDASGIYSVNINKFNDIFKKLYSFTEFDLATKFQVKCRQTYIGQYKYFKLSNLLNDSIYNISEGYNINNLKVNFRGQNANLNPRIITPITGRGLVKKIIRFCKNIVSVKGIRKSICIEINNGELFFVASENSYNDDNINTPKEIDDTVTSNNNYENDLDQVILNFNSESAPGLSDEKLNLTIQNDAYIPKYDSNGTSDIEQHDVNELNVFFYLDAQKVPEGENNVNLTSSIDTALLEQPKIYTFFSSEFINNVNKPVQAALFVSWIQQVLVDFTTEANQKSTVDKIADISIVVPYIGLALNIGNEAQKGNFKDALELLGAGILLEFEPELLIPTILVFTIKSFLGSSDNKNKVIKAINNALKERDEKWKEVYSFIVSNWMTKINTQFNKRKEQMYQALQNQVNAIKTIIESKYNSYTLEEKNELTNKYDIKQIENELNQKVSIAMNNIDRFLTESSISYLMKLINEVKINKLREYDENVKTYLLNYIIQHGSILGESQQELNSMVTDTLNNSIPFKLSSYTDDKILISYFNKFFKRIKSSSVLNMRYKNDKYVDTSGYDSNININGDVYKYPTNKNQFGIYNDKLSEVNISQNDYIIYDNKYKNFSISFWVRIPNYDNKIVNVNNEYTIINCMRDNNSGWKVSLNHNEIIWTLQDNAGINQKLAFNYGNANGISDYINKWIFVTITNDRLGDSKLYINGNLIDQKSILNLGNIHVSDNILFKIVNCSYTRYIGIRYFNIFDKELDETEIQTLYSNEPNTNILKDFWGNYLLYDKEYYLLNVLKPNNFIDRRKDSTLSINNIRSTILLANRLYSGIKVKIQRVNNSSTNDNLVRKNDQVYINFVASKTHLFPLYADTATTNKEKTIKISSSGNRFNQVVVMNSVGNNCTMNFKNNNGNNIGLLGFKADTVVASTWYYTHMRDHTNSNGCFWNFISEEHGWQEK
【0226】
配列番号6 - BoNT/F1, 受入番号 Q57236, アミノ酸配列
MPVVINSFNYNDPVNDDTILYMQIPYEEKSKKYYKAFEIMRNVWIIPERNTIGTDPSDFDPPASLENGSSAYYDPNYLTTDAEKDRYLKTTIKLFKRINSNPAGEVLLQEISYAKPYLGNEHTPINEFHPVTRTTSVNIKSSTNVKSSIILNLLVLGAGPDIFENSSYPVRKLMDSGGVYDPSNDGFGSINIVTFSPEYEYTFNDISGGYNSSTESFIADPAISLAHELIHALHGLYGARGVTYKETIKVKQAPLMIAEKPIRLEEFLTFGGQDLNIITSAMKEKIYNNLLANYEKIATRLSRVNSAPPEYDINEYKDYFQWKYGLDKNADGSYTVNENKFNEIYKKLYSFTEIDLANKFKVKCRNTYFIKYGFLKVPNLLDDDIYTVSEGFNIGNLAVNNRGQNIKLNPKIIDSIPDKGLVEKIVKFCKSVIPRKGTKAPPRLCIRVNNRELFFVASESSYNENDINTPKEIDDTTNLNNNYRNNLDEVILDYNSETIPQISNQTLNTLVQDDSYVPRYDSNGTSEIEEHNVVDLNVFFYLHAQKVPEGETNISLTSSIDTALSEESQVYTFFSSEFINTINKPVHAALFISWINQVIRDFTTEATQKSTFDKIADISLVVPYVGLALNIGNEVQKENFKEAFELLGAGILLEFVPELLIPTILVFTIKSFIGSSENKNKIIKAINNSLMERETKWKEIYSWIVSNWLTRINTQFNKRKEQMYQALQNQVDAIKTVIEYKYNNYTSDERNRLESEYNINNIREELNKKVSLAMENIERFITESSIFYLMKLINEAKVSKLREYDEGVKEYLLDYISEHRSILGNSVQELNDLVTSTLNNSIPFELSSYTNDKILILYFNKLYKKIKDNSILDMRYENNKFIDISGYGSNISINGDVYIYSTNRNQFGIYSSKPSEVNIAQNNDIIYNGRYQNFSISFWVRIPKYFNKVNLNNEYTIIDCIRNNNSGWKISLNYNKIIWTLQDTAGNNQKLVFNYTQMISISDYINKWIFVTITNNRLGNSRIYINGNLIDEKSISNLGDIHVSDNILFKIVGCNDTRYVGIRYFKVFDTELGKTEIETLYSDEPDPSILKDFWGNYLLYNKRYYLLNLLRTDKSITQNSNFLNINQQRGVYQKPNIFSNTRLYTGVEVIIRKNGSTDISNTDNFVRKNDLAYINVVDRDVEYRLYADISIAKPEKIIKLIRTSNSNNSLGQIIVMDSIGNNCTMNFQNNNGGNIGLLGFHSNNLVASSWYYNNIRKNTSSNGCFWSFISKEHGWQEN
【0227】
配列番号7 - BoNT/G, 受入番号 WP_039635782, アミノ酸配列
MPVNIKNFNYNDPINNDDIIMMEPFNDPGPGTYYKAFRIIDRIWIVPERFTYGFQPDQFNASTGVFSKDVYEYYDPTYLKTDAEKDKFLKTMIKLFNRINSKPSGQRLLDMIVDAIPYLGNASTPPDKFAANVANVSINKKIIQPGAEDQIKGLMTNLIIFGPGPVLSDNFTDSMIMNGHSPISEGFGARMMIRFCPSCLNVFNNVQENKDTSIFSRRAYFADPALTLMHELIHVLHGLYGIKISNLPITPNTKEFFMQHSDPVQAEELYTFGGHDPSVISPSTDMNIYNKALQNFQDIANRLNIVSSAQGSGIDISLYKQIYKNKYDFVEDPNGKYSVDKDKFDKLYKALMFGFTETNLAGEYGIKTRYSYFSEYLPPIKTEKLLDNTIYTQNEGFNIASKNLKTEFNGQNKAVNKEAYEEISLEHLVIYRIAMCKPVMYKNTGKSEQCIIVNNEDLFFIANKDSFSKDLAKAETIAYNTQNNTIENNFSIDQLILDNDLSSGIDLPNENTEPFTNFDDIDIPVYIKQSALKKIFVDGDSLFEYLHAQTFPSNIENLQLTNSLNDALRNNNKVYTFFSTNLVEKANTVVGASLFVNWVKGVIDDFTSESTQKSTIDKVSDVSIIIPYIGPALNVGNETAKENFKNAFEIGGAAILMEFIPELIVPIVGFFTLESYVGNKGHIIMTISNALKKRDQKWTDMYGLIVSQWLSTVNTQFYTIKERMYNALNNQSQAIEKIIEDQYNRYSEEDKMNINIDFNDIDFKLNQSINLAINNIDDFINQCSISYLMNRMIPLAVKKLKDFDDNLKRDLLEYIDTNELYLLDEVNILKSKVNRHLKDSIPFDLSLYTKDTILIQVFNNYISNISSNAILSLSYRGGRLIDSSGYGATMNVGSDVIFNDIGNGQFKLNNSENSNITAHQSKFVVYDSMFDNFSINFWVRTPKYNNNDIQTYLQNEYTIISCIKNDSGWKVSIKGNRIIWTLIDVNAKSKSIFFEYSIKDNISDYINKWFSITITNDRLGNANIYINGSLKKSEKILNLDRINSSNDIDFKLINCTDTTKFVWIKDFNIFGRELNATEVSSLYWIQSSTNTLKDFWGNPLRYDTQYYLFNQGMQNIYIKYFSKASMGETAPRTNFNNAAINYQNLYLGLRFIIKKASNSRNINNDNIVREGDYIYLNIDNISDESYRVYVLVNSKEIQTQLFLAPINDDPTFYDVLQIKKYYEKTTYNCQILCEKDTKTFGLFGIGKFVKDYGYVWDTYDNYFCISQWYLRRISENINKLRLGCNWQFIPVDEGWTE
【0228】
配列番号8 - BoNT/DC, 受入番号 BAM65681, アミノ酸配列
MTWPVKDFNYSDPVNDNDILYLRIPQNKLITTPVKAFMITQNIWVIPERFSSDTNPSLSKPPRPTSKYQSYYDPSYLSTDEQKDTFLKGIIKLFKRINERDIGKKLINYLVVGSPFMGDSSTPEDTFDFTRHTTNIAVEKFENGSWKVTNIITPSVLIFGPLPNILDYTASLTLQGQQSNPSFEGFGTLSILKVAPEFLLTFSDVTSNQSSAVLGKSIFCMDPVIALMHELTHSLHQLYGINIPSDKRIRPQVSEGFFSQDGPNVQFEELYTFGGSDVEIIPQIERLQLREKALGHYKDIAKRLNNINKTIPSSWSSNIDKYKKIFSEKYNFDKDNTGNFVVNIDKFNSLYSDLTNVMSEVVYSSQYNVKNRTHYFSKHYLPVFANILDDNIYTIINGFNLTTKGFNIENSGQNIERNPALQKLSSESVVDLFTKVCLRLTRNSRDDSTCIQVKNNTLPYVADKDSISQEIFESQIITDETNVENYSDNFSLDESILDAKVPTNPEAVDPLLPNVNMEPLNVPGEEEVFYDDITKDVDYLNSYYYLEAQKLSNNVENITLTTSVEEALGYSNKIYTFLPSLAEKVNKGVQAGLFLNWANEVVEDFTTNIMKKDTLDKISDVSAIIPYIGPALNIGNSALRGNFKQAFATAGVAFLLEGFPEFTIPALGVFTFYSSIQEREKIIKTIENCLEQRVKRWKDSYQWMVSNWLSRITTQFNHISYQMYDSLSYQADAIKAKIDLEYKKYSGSDKENIKSQVENLKNSLDVKISEAMNNINKFIRECSVTYLFKNMLPKVIDELNKFDLKTKTELINLIDSHNIILVGEVDRLKAKVNESFENTIPFNIFSYTNNSLLKDMINEYFNSINDSKILSLQNKKNTLMDTSGYNAEVRVEGNVQLNPIFPFDFKLGSSGDDRGKVIVTQNENIVYNAMYESFSISFWIRINKWVSNLPGYTIIDSVKNNSGWSIGIISNFLVFTLKQNENSEQDINFSYDISKNAAGYNKWFFVTITTNMMGNMMIYINGKLIDTIKVKELTGINFSKTITFQMNKIPNTGLITSDSDNINMWIRDFYIFAKELDDKDINILFNSLQYTNVVKDYWGNDLRYDKEYYMINVNYMNRYMSKKGNGIVFNTRKNNNDFNEGYKIIIKRIIGNTNDTRVRGENVLYFNTTIDNKQYSLGMYKPSRNLGTDLVPLGALDQPMDEIRKYGSFIIQPCNTFDYYASQLFLSSNATTNRIGILSIGSYSFKLGDDYWFNHEYLIPVIKIEHYASLLESTSTHWVFVPASE
【0229】
配列番号9 - BoNT/F7, アミノ酸配列
MPVNINNFNYNDPINNTTILYMKMPYYEDSNKYYKAFEIMDNVWIIPERNIIGKKPSDFYPPISLDSGSSAYYDPNYLTTDAEKDRFLKTVIKLFNRINSNPAGQVLLEEIKNGKPYLGNDHTAVNEFCANNRSTSVEIKESKGTTDSMLLNLVILGPGPNILECSTFPVRIFPNNIAYDPSEKGFGSIQLMSFSTEYEYAFNDNTDLFIADPAISLAHELIHVLHGLYGAKGVTNKKVIEVDQGALMAAEKDIKIEEFITFGGQDLNIITNSTNQKIYDNLLSNYTAIASRLSQVNINNSALNTTYYKNFFQWKYGLDQDSNGNYTVNISKFNAIYKKLFSFTECDLAQKFQVKNRSNYLFHFKPFRLLDLLDDNIYSISEGFNIGSLRVNNNGQNINLNSRIVGPIPDNGLVERFVGLCKSIVSKKGTKNSLCIKVNNRDLFFVASESSYNENGINSPKEIDDTTITNNNYKKNLDEVILDYNSDAIPNLSSRLLNTTAQNDSYVPKYDSNGTSEIKEYTVDKLNVFFYLYAQKAPEGESAISLTSSVNTALLDASKVYTFFSSDFINTVNKPVQAALFISWIQQVINDFTTEATQKSTIDKIADISLVVPYVGLALNIGNEVQKGNFKEAIELLGAGILLEFVPELLIPTILVFTIKSFINSDDSKNKIIKAINNALRERELKWKEVYSWIVSNWLTRINTQFNKRKEQMYQALQNQVDGIKKIIEYKYNNYTLDEKNRLKAEYNIYSIKEELNKKVSLAMQNIDRFLTESSISYLMKLINEAKINKLSEYDKRVNQYLLNYILENSSTLGTSSVQELNNLVSNTLNNSIPFELSEYTNDKILISYFNRFYKRIIDSSILNMKYENNRFIDSSGYGSNISINGDIYIYSTNRNQFGIYSSRLSEVNITQNNTIIYNSRYQNFSVSFWVRIPKYNNLKNLNNEYTIINCMRNNNSGWKISLNYNNIIWTLQDTTGNNQKLVFNYTQMIDISDYINKWTFVTITNNRLGHSKLYINGNLTDQKSILNLGNIHVDDNILFKIVGCNDTRYVGIRYFKIFNMELDKTEIETLYHSEPDSTILKDFWGNYLLYNKKYYLLNLLKPNMSVTKNSDILNINRQRGIYSKTNIFSNARLYTGVEVIIRKVGSTDTSNTDNFVRKNDTVYINVVDGNSEYQLYADVSTSAVEKTIKLRRISNSNYNSNQMIIMDSIGDNCTMNFKTNNGNDIGLLGFHLNNLVASSWYYKNIRNNTRNNGCFWSFISKEHGWQE
【0230】
配列番号10 - BoNT/AB
MY, アミノ酸配列
【化1】
【0231】
配列番号11 - BoNT/X, アミノ酸配列 (GenBank: BAQ12790.1)
MKLEINKFNYNDPIDGINVITMRPPRHSDKINKGKGPFKAFQVIKNIWIVPERYNFTNNTNDLNIPSEPIMEADAIYNPNYLNTPSEKDEFLQGVIKVLERIKSKPEGEKLLELISSSIPLPLVSNGALTLSDNETIAYQENNNIVSNLQANLVIYGPGPDIANNATYGLYSTPISNGEGTLSEVSFSPFYLKPFDESYGNYRSLVNIVNKFVKREFAPDPASTLMHELVHVTHNLYGISNRNFYYNFDTGKIETSRQQNSLIFEELLTFGGIDSKAISSLIIKKIIETAKNNYTTLISERLNTVTVENDLLKYIKNKIPVQGRLGNFKLDTAEFEKKLNTILFVLNESNLAQRFSILVRKHYLKERPIDPIYVNILDDNSYSTLEGFNISSQGSNDFQGQLLESSYFEKIESNALRAFIKICPRNGLLYNAIYRNSKNYLNNIDLEDKKTTSKTNVSYPCSLLNGCIEVENKDLFLISNKDSLNDINLSEEKIKPETTVFFKDKLPPQDITLSNYDFTEANSIPSISQQNILERNEELYEPIRNSLFEIKTIYVDKLTTFHFLEAQNIDESIDSSKIRVELTDSVDEALSNPNKVYSPFKNMSNTINSIETGITSTYIFYQWLRSIVKDFSDETGKIDVIDKSSDTLAIVPYIGPLLNIGNDIRHGDFVGAIELAGITALLEYVPEFTIPILVGLEVIGGELAREQVEAIVNNALDKRDQKWAEVYNITKAQWWGTIHLQINTRLAHTYKALSRQANAIKMNMEFQLANYKGNIDDKAKIKNAISETEILLNKSVEQAMKNTEKFMIKLSNSYLTKEMIPKVQDNLKNFDLETKKTLDKFIKEKEDILGTNLSSSLRRKVSIRLNKNIAFDINDIPFSEFDDLINQYKNEIEDYEVLNLGAEDGKIKDLSGTTSDINIGSDIELADGRENKAIKIKGSENSTIKIAMNKYLRFSATDNFSISFWIKHPKPTNLLNNGIEYTLVENFNQRGWKISIQDSKLIWYLRDHNNSIKIVTPDYIAFNGWNLITITNNRSKGSIVYVNGSKIEEKDISSIWNTEVDDPIIFRLKNNRDTQAFTLLDQFSIYRKELNQNEVVKLYNYYFNSNYIRDIWGNPLQYNKKYYLQTQDKPGKGLIREYWSSFGYDYVILSDSKTITFPNNIRYGALYNGSKVLIKNSKKLDGLVRNKDFIQLEIDGYNMGISADRFNEDTNYIGTTYGTTHDLTTDFEIIQRQEKYRNYCQLKTPYNIFHKSGLMSTETSKPTFHDYRDWVYSSAWYFQNYENLNLRKHTKTNWYFIPKDEGWDED
【0232】
配列番号12 (ヌクレオチド配列, 未修飾 BoNT/A)
ATGCCATTCGTCAACAAGCAATTCAACTACAAAGACCCAGTCAACGGCGTCGACATCGCATACATCAAGATTCCGAACGCCGGTCAAATGCAGCCGGTTAAGGCTTTTAAGATCCACAACAAGATTTGGGTTATCCCGGAGCGTGACACCTTCACGAACCCGGAAGAAGGCGATCTGAACCCGCCACCGGAAGCGAAGCAAGTCCCTGTCAGCTACTACGATTCGACGTACCTGAGCACGGATAACGAAAAAGATAACTACCTGAAAGGTGTGACCAAGCTGTTCGAACGTATCTACAGCACGGATCTGGGTCGCATGCTGCTGACTAGCATTGTTCGCGGTATCCCGTTCTGGGGTGGTAGCACGATTGACACCGAACTGAAGGTTATCGACACTAACTGCATTAACGTTATTCAACCGGATGGTAGCTATCGTAGCGAAGAGCTGAATCTGGTCATCATTGGCCCGAGCGCAGACATTATCCAATTCGAGTGCAAGAGCTTTGGTCACGAGGTTCTGAATCTGACCCGCAATGGCTATGGTAGCACCCAGTACATTCGTTTTTCGCCGGATTTTACCTTCGGCTTTGAAGAGAGCCTGGAGGTTGATACCAATCCGTTGCTGGGTGCGGGCAAATTCGCTACCGATCCGGCTGTCACGCTGGCCCATGAACTGATCCACGCAGGCCACCGCCTGTACGGCATTGCCATCAACCCAAACCGTGTGTTCAAGGTTAATACGAATGCATACTACGAGATGAGCGGCCTGGAAGTCAGCTTCGAAGAACTGCGCACCTTCGGTGGCCATGACGCTAAATTCATTGACAGCTTGCAAGAGAATGAGTTCCGTCTGTACTACTATAACAAATTCAAAGACATTGCAAGCACGTTGAACAAGGCCAAAAGCATCGTTGGTACTACCGCGTCGTTGCAGTATATGAAGAATGTGTTTAAAGAGAAGTACCTGCTGTCCGAGGATACCTCCGGCAAGTTTAGCGTTGATAAGCTGAAGTTTGACAAACTGTACAAGATGCTGACCGAGATTTACACCGAGGACAACTTTGTGAAATTCTTCAAAGTGTTGAATCGTAAAACCTATCTGAATTTTGACAAAGCGGTTTTCAAGATTAACATCGTGCCGAAGGTGAACTACACCATCTATGACGGTTTTAACCTGCGTAACACCAACCTGGCGGCGAACTTTAACGGTCAGAATACGGAAATCAACAACATGAATTTCACGAAGTTGAAGAACTTCACGGGTCTGTTCGAGTTCTATAAGCTGCTGTGCGTGCGCGGTATCATCACCAGCAAAACCAAAAGCCTGGACAAAGGCTACAACAAGGCGCTGAATGACCTGTGCATTAAGGTAAACAATTGGGATCTGTTCTTTTCGCCATCCGAAGATAATTTTACCAACGACCTGAACAAGGGTGAAGAAATCACCAGCGATACGAATATTGAAGCAGCGGAAGAGAATATCAGCCTGGATCTGATCCAGCAGTACTATCTGACCTTTAACTTCGACAATGAACCGGAGAACATTAGCATTGAGAATCTGAGCAGCGACATTATCGGTCAGCTGGAACTGATGCCGAATATCGAACGTTTCCCGAACGGCAAAAAGTACGAGCTGGACAAGTACACTATGTTCCATTACCTGCGTGCACAGGAGTTTGAACACGGTAAAAGCCGTATCGCGCTGACCAACAGCGTTAACGAGGCCCTGCTGAACCCGAGCCGTGTCTATACCTTCTTCAGCAGCGACTATGTTAAGAAAGTGAACAAAGCCACTGAGGCCGCGATGTTCCTGGGCTGGGTGGAACAGCTGGTATATGACTTCACGGACGAGACGAGCGAAGTGAGCACTACCGACAAAATTGCTGATATTACCATCATTATCCCGTATATTGGTCCGGCACTGAACATTGGCAACATGCTGTACAAAGACGATTTTGTGGGTGCCCTGATCTTCTCCGGTGCCGTGATTCTGCTGGAGTTCATTCCGGAGATTGCGATCCCGGTGTTGGGTACCTTCGCGCTGGTGTCCTACATCGCGAATAAGGTTCTGACGGTTCAGACCATCGATAACGCGCTGTCGAAACGTAATGAAAAATGGGACGAGGTTTACAAATACATTGTTACGAATTGGCTGGCGAAAGTCAATACCCAGATCGACCTGATCCGTAAGAAAATGAAAGAGGCGCTGGAGAATCAGGCGGAGGCCACCAAAGCAATTATCAACTACCAATACAACCAGTACACGGAAGAAGAGAAGAATAACATTAACTTCAATATCGATGATTTGAGCAGCAAGCTGAATGAATCTATCAACAAAGCGATGATCAATATCAACAAGTTTTTGAATCAGTGTAGCGTTTCGTACCTGATGAATAGCATGATTCCGTATGGCGTCAAACGTCTGGAGGACTTCGACGCCAGCCTGAAAGATGCGTTGCTGAAATACATTTACGACAATCGTGGTACGCTGATTGGCCAAGTTGACCGCTTGAAAGACAAAGTTAACAATACCCTGAGCACCGACATCCCATTTCAACTGAGCAAGTATGTTGATAATCAACGTCTGTTGAGCACTTTCACCGAGTATATCAAAAACATCATCAATACTAGCATTCTGAACCTGCGTTACGAGAGCAATCATCTGATTGATCTGAGCCGTTATGCAAGCAAGATCAACATCGGTAGCAAGGTCAATTTTGACCCGATCGATAAGAACCAGATCCAGCTGTTTAATCTGGAATCGAGCAAAATTGAGGTTATCCTGAAAAACGCCATTGTCTACAACTCCATGTACGAGAATTTCTCCACCAGCTTCTGGATTCGCATCCCGAAATACTTCAACAGCATTAGCCTGAACAACGAGTATACTATCATCAACTGTATGGAGAACAACAGCGGTTGGAAGGTGTCTCTGAACTATGGTGAGATCATTTGGACCTTGCAGGACACCCAAGAGATCAAGCAGCGCGTCGTGTTCAAGTACTCTCAAATGATCAACATTTCCGATTACATTAATCGTTGGATCTTCGTGACCATTACGAATAACCGTCTGAATAACAGCAAGATTTACATCAATGGTCGCTTGATCGATCAGAAACCGATTAGCAACCTGGGTAATATCCACGCAAGCAACAACATTATGTTCAAATTGGACGGTTGCCGCGATACCCATCGTTATATCTGGATCAAGTATTTCAACCTGTTTGATAAAGAACTGAATGAGAAGGAGATCAAAGATTTGTATGACAACCAATCTAACAGCGGCATTTTGAAGGACTTCTGGGGCGATTATCTGCAATACGATAAGCCGTACTATATGCTGAACCTGTATGATCCGAACAAATATGTGGATGTCAATAATGTGGGTATTCGTGGTTACATGTATTTGAAGGGTCCGCGTGGCAGCGTTATGACGACCAACATTTACCTGAACTCTAGCCTGTACCGTGGTACGAAATTCATCATTAAGAAATATGCCAGCGGCAACAAAGATAACATTGTGCGTAATAACGATCGTGTCTACATCAACGTGGTCGTGAAGAATAAAGAGTACCGTCTGGCGACCAACGCTTCGCAGGCGGGTGTTGAGAAAATTCTGAGCGCGTTGGAGATCCCTGATGTCGGTAATCTGAGCCAAGTCGTGGTTATGAAGAGCAAGAACGACCAGGGTATCACTAACAAGTGCAAGATGAACCTGCAAGACAACAATGGTAACGACATCGGCTTTATTGGTTTCCACCAGTTCAACAATATTGCTAAACTGGTAGCGAGCAATTGGTACAATCGTCAGATTGAGCGCAGCAGCCGTACTTTGGGCTGTAGCTGGGAGTTTATCCCGGTCGATGATGGTTGGGGCGAACGTCCGCTG
【0233】
配列番号13 (ポリペプチド配列, 未修飾 BoNT/A)
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKNAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNSISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTQEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNNSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNNIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDQGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL
【0234】
配列番号14 (ヌクレオチド配列, 修飾 BoNT/A “Cat-A”)
ATGCCATTCGTCAACAAGCAATTCAACTACAAAGACCCAGTCAACGGCGTCGACATCGCATACATCAAGATTCCGAACGCCGGTCAAATGCAGCCGGTTAAGGCTTTTAAGATCCACAACAAGATTTGGGTTATCCCGGAGCGTGACACCTTCACGAACCCGGAAGAAGGCGATCTGAACCCGCCACCGGAAGCGAAGCAAGTCCCTGTCAGCTACTACGATTCGACGTACCTGAGCACGGATAACGAAAAAGATAACTACCTGAAAGGTGTGACCAAGCTGTTCGAACGTATCTACAGCACGGATCTGGGTCGCATGCTGCTGACTAGCATTGTTCGCGGTATCCCGTTCTGGGGTGGTAGCACGATTGACACCGAACTGAAGGTTATCGACACTAACTGCATTAACGTTATTCAACCGGATGGTAGCTATCGTAGCGAAGAGCTGAATCTGGTCATCATTGGCCCGAGCGCAGACATTATCCAATTCGAGTGCAAGAGCTTTGGTCACGAGGTTCTGAATCTGACCCGCAATGGCTATGGTAGCACCCAGTACATTCGTTTTTCGCCGGATTTTACCTTCGGCTTTGAAGAGAGCCTGGAGGTTGATACCAATCCGTTGCTGGGTGCGGGCAAATTCGCTACCGATCCGGCTGTCACGCTGGCCCATGAACTGATCCACGCAGGCCACCGCCTGTACGGCATTGCCATCAACCCAAACCGTGTGTTCAAGGTTAATACGAATGCATACTACGAGATGAGCGGCCTGGAAGTCAGCTTCGAAGAACTGCGCACCTTCGGTGGCCATGACGCTAAATTCATTGACAGCTTGCAAGAGAATGAGTTCCGTCTGTACTACTATAACAAATTCAAAGACATTGCAAGCACGTTGAACAAGGCCAAAAGCATCGTTGGTACTACCGCGTCGTTGCAGTATATGAAGAATGTGTTTAAAGAGAAGTACCTGCTGTCCGAGGATACCTCCGGCAAGTTTAGCGTTGATAAGCTGAAGTTTGACAAACTGTACAAGATGCTGACCGAGATTTACACCGAGGACAACTTTGTGAAATTCTTCAAAGTGTTGAATCGTAAAACCTATCTGAATTTTGACAAAGCGGTTTTCAAGATTAACATCGTGCCGAAGGTGAACTACACCATCTATGACGGTTTTAACCTGCGTAACACCAACCTGGCGGCGAACTTTAACGGTCAGAATACGGAAATCAACAACATGAATTTCACGAAGTTGAAGAACTTCACGGGTCTGTTCGAGTTCTATAAGCTGCTGTGCGTGCGCGGTATCATCACCAGCAAAACCAAAAGCCTGGACAAAGGCTACAACAAGGCGCTGAATGACCTGTGCATTAAGGTAAACAATTGGGATCTGTTCTTTTCGCCATCCGAAGATAATTTTACCAACGACCTGAACAAGGGTGAAGAAATCACCAGCGATACGAATATTGAAGCAGCGGAAGAGAATATCAGCCTGGATCTGATCCAGCAGTACTATCTGACCTTTAACTTCGACAATGAACCGGAGAACATTAGCATTGAGAATCTGAGCAGCGACATTATCGGTCAGCTGGAACTGATGCCGAATATCGAACGTTTCCCGAACGGCAAAAAGTACGAGCTGGACAAGTACACTATGTTCCATTACCTGCGTGCACAGGAGTTTGAACACGGTAAAAGCCGTATCGCGCTGACCAACAGCGTTAACGAGGCCCTGCTGAACCCGAGCCGTGTCTATACCTTCTTCAGCAGCGACTATGTTAAGAAAGTGAACAAAGCCACTGAGGCCGCGATGTTCCTGGGCTGGGTGGAACAGCTGGTATATGACTTCACGGACGAGACGAGCGAAGTGAGCACTACCGACAAAATTGCTGATATTACCATCATTATCCCGTATATTGGTCCGGCACTGAACATTGGCAACATGCTGTACAAAGACGATTTTGTGGGTGCCCTGATCTTCTCCGGTGCCGTGATTCTGCTGGAGTTCATTCCGGAGATTGCGATCCCGGTGTTGGGTACCTTCGCGCTGGTGTCCTACATCGCGAATAAGGTTCTGACGGTTCAGACCATCGATAACGCGCTGTCGAAACGTAATGAAAAATGGGACGAGGTTTACAAATACATTGTTACGAATTGGCTGGCGAAAGTCAATACCCAGATCGACCTGATCCGTAAGAAAATGAAAGAGGCGCTGGAGAATCAGGCGGAGGCCACCAAAGCAATTATCAACTACCAATACAACCAGTACACGGAAGAAGAGAAGAATAACATTAACTTCAATATCGATGATTTGAGCAGCAAGCTGAATGAATCTATCAACAAAGCGATGATCAATATCAACAAGTTTTTGAATCAGTGTAGCGTTTCGTACCTGATGAATAGCATGATTCCGTATGGCGTCAAACGTCTGGAGGACTTCGACGCCAGCCTGAAAGATGCGTTGCTGAAATACATTTACGACAATCGTGGTACGCTGATTGGCCAAGTTGACCGCTTGAAAGACAAAGTTAACAATACCCTGAGCACCGACATCCCATTTCAACTGAGCAAGTATGTTGATAATCAACGTCTGTTGAGCACTTTCACCGAGTATATCAAAAACATCATCAATACTAGCATTCTGAACCTGCGTTACGAGAGCAAGCATCTGATTGATCTGAGCCGTTATGCTAGCAAGATCAACATCGGTAGCAAGGTCAATTTTGACCCGATCGATAAGAACCAGATCCAGCTGTTTAATCTGGAATCGAGCAAAATTGAGGTTATCCTGAAAAAGGCCATTGTCTACAACTCCATGTACGAGAATTTCTCCACCAGCTTCTGGATTCGCATCCCGAAATACTTCAACAAGATTAGCCTGAACAACGAGTATACTATCATCAACTGTATGGAGAACAACAGCGGTTGGAAGGTGTCTCTGAACTATGGTGAGATCATTTGGACCTTGCAGGACACCAAAGAGATCAAGCAGCGCGTCGTGTTCAAGTACTCTCAAATGATCAACATTTCCGATTACATTAATCGTTGGATCTTCGTGACCATTACGAATAACCGTCTGAATAAGAGCAAGATTTACATCAATGGTCGCTTGATCGATCAGAAACCGATTAGCAACCTGGGTAATATCCACGCAAGCAACAAGATTATGTTCAAATTGGACGGTTGCCGCGATACCCATCGTTATATCTGGATCAAGTATTTCAACCTGTTTGATAAAGAACTGAATGAGAAGGAGATCAAAGATTTGTATGACAACCAATCTAACAGCGGCATTTTGAAGGACTTCTGGGGCGATTATCTGCAATACGATAAGCCGTACTATATGCTGAACCTGTATGATCCGAACAAATATGTGGATGTCAATAATGTGGGTATTCGTGGTTACATGTATTTGAAGGGTCCGCGTGGCAGCGTTATGACGACCAACATTTACCTGAACTCTAGCCTGTACCGTGGTACGAAATTCATCATTAAGAAATATGCCAGCGGCAACAAAGATAACATTGTGCGTAATAACGATCGTGTCTACATCAACGTGGTCGTGAAGAATAAAGAGTACCGTCTGGCGACCAACGCTTCGCAGGCGGGTGTTGAGAAAATTCTGAGCGCGTTGGAGATCCCTGATGTCGGTAATCTGAGCCAAGTCGTGGTTATGAAGAGCAAGAACGACAAGGGTATCACTAACAAGTGCAAGATGAACCTGCAAGACAACAATGGTAACGACATCGGCTTTATTGGTTTCCACCAGTTCAACAATATTGCTAAACTGGTAGCGAGCAATTGGTACAATCGTCAGATTGAGCGCAGCAGCcGTACTTTGGGCTGTAGCTGGGAGTTTATCCCGGTCGATGATGGTTGGGGCGAACGTCCGCTG
【0235】
配列番号15 (ポリペプチド配列, 修飾 BoNT/A “Cat-A”)
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESKHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKKAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNKISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTKEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNKSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNKIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDKGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL
【0236】
配列番号16 (ヌクレオチド配列, 修飾 BoNT/A “Cat-B”)
ATGCCATTCGTCAACAAGCAATTCAACTACAAAGACCCAGTCAACGGCGTCGACATCGCATACATCAAGATTCCGAACGCCGGTCAAATGCAGCCGGTTAAGGCTTTTAAGATCCACAACAAGATTTGGGTTATCCCGGAGCGTGACACCTTCACGAACCCGGAAGAAGGCGATCTGAACCCGCCACCGGAAGCGAAGCAAGTCCCTGTCAGCTACTACGATTCGACGTACCTGAGCACGGATAACGAAAAAGATAACTACCTGAAAGGTGTGACCAAGCTGTTCGAACGTATCTACAGCACGGATCTGGGTCGCATGCTGCTGACTAGCATTGTTCGCGGTATCCCGTTCTGGGGTGGTAGCACGATTGACACCGAACTGAAGGTTATCGACACTAACTGCATTAACGTTATTCAACCGGATGGTAGCTATCGTAGCGAAGAGCTGAATCTGGTCATCATTGGCCCGAGCGCAGACATTATCCAATTCGAGTGCAAGAGCTTTGGTCACGAGGTTCTGAATCTGACCCGCAATGGCTATGGTAGCACCCAGTACATTCGTTTTTCGCCGGATTTTACCTTCGGCTTTGAAGAGAGCCTGGAGGTTGATACCAATCCGTTGCTGGGTGCGGGCAAATTCGCTACCGATCCGGCTGTCACGCTGGCCCATGAACTGATCCACGCAGGCCACCGCCTGTACGGCATTGCCATCAACCCAAACCGTGTGTTCAAGGTTAATACGAATGCATACTACGAGATGAGCGGCCTGGAAGTCAGCTTCGAAGAACTGCGCACCTTCGGTGGCCATGACGCTAAATTCATTGACAGCTTGCAAGAGAATGAGTTCCGTCTGTACTACTATAACAAATTCAAAGACATTGCAAGCACGTTGAACAAGGCCAAAAGCATCGTTGGTACTACCGCGTCGTTGCAGTATATGAAGAATGTGTTTAAAGAGAAGTACCTGCTGTCCGAGGATACCTCCGGCAAGTTTAGCGTTGATAAGCTGAAGTTTGACAAACTGTACaAGATGCTGACCGAGATTTACACCGAGGACAACTTTGTGAAATTCTTCAAAGTGTTGAATCGTAAAACCTATCTGAATTTTGACAAAGCGGTTTTCAAGATTAACATCGTGCCGAAGGTGAACTACACCATCTATGACGGTTTTAACCTGCGTAACACCAACCTGGCGGCGAACTTTAACGGTCAGAATACGGAAATCAACAACATGAATTTCACGAAGTTGAAGAACTTCACGGGTCTGTTCGAGTTCTATAAGCTGCTGTGCGTGCGCGGTATCATCACCAGCAAAACCAAAAGCCTGGACAAAGGCTACAACAAGGCGCTGAATGACCTGTGCATTAAGGTAAACAATTGGGATCTGTTCTTTTCGCCATCCGAAGATAATTTTACCAACGACCTGAACAAGGGTGAAGAAATCACCAGCGATACGAATATTGAAGCAGCGGAAGAGAATATCAGCCTGGATCTGATCCAGCAGTACTATCTGACCTTTAACTTCGACAATGAACCGGAGAACATTAGCATTGAGAATCTGAGCAGCGACATTATCGGTCAGCTGGAACTGATGCCGAATATCGAACGTTTCCCGAACGGCAAAAAGTACGAGCTGGACAAGTACACTATGTTCCATTACCTGCGTGCACAGGAGTTTGAACACGGTAAAAGCCGTATCGCGCTGACCAACAGCGTTAACGAGGCCCTGCTGAACCCGAGCCGTGTCTATACCTTCTTCAGCAGCGACTATGTTAAGAAAGTGAACAAAGCCACTGAGGCCGCGATGTTCCTGGGCTGGGTGGAACAGCTGGTATATGACTTCACGGACGAGACGAGCGAAGTGAGCACTACCGACAAAATTGCTGATATTACCATCATTATCCCGTATATTGGTCCGGCACTGAACATTGGCAACATGCTGTACAAAGACGATTTTGTGGGTGCCCTGATCTTCTCCGGTGCCGTGATTCTGCTGGAGTTCATTCCGGAGATTGCGATCCCGGTGTTGGGTACCTTCGCGCTGGTGTCCTACATCGCGAATAAGGTTCTGACGGTTCAGACCATCGATAACGCGCTGTCGAAACGTAATGAAAAATGGGACGAGGTTTACAAATACATTGTTACGAATTGGCTGGCGAAAGTCAATACCCAGATCGACCTGATCCGTAAGAAAATGAAAGAGGCGCTGGAGAATCAGGCGGAGGCCACCAAAGCAATTATCAACTACCAATACAACCAGTACACGGAAGAAGAGAAGAATAACATTAACTTCAATATCGATGATTTGAGCAGCAAGCTGAATGAATCTATCAACAAAGCGATGATCAATATCAACAAGTTTTTGAATCAGTGTAGCGTTTCGTACCTGATGAATAGCATGATTCCGTATGGCGTCAAACGTCTGGAGGACTTCGACGCCAGCCTGAAAGATGCGTTGCTGAAATACATTTACGACAaTCGTGGTACGCTGATTGGCCAAGTTGACCGCTTGAAAGACAAAGTTAACAATACCCTGAGCACCGACATCCCATTTCAACTGAGCAAGTATGTTGATAATCAACGTCTGTTGAGCACTTTCACCGAGTATATCAAAAACATCATCAATACTAGCATTCTGAACCTGCGTTACGAGAGCAATCATCTGATTGATCTGAGCCGTTATGCTAGCAAGATCAACATCGGTAGCAAGGTCAATTTTGACCCGATCGATAAGAACCAGATCCAGCTGTTTAATCTGGAATCGAGCAAAATTGAGGTTATCCTGAAAAAGGCCATTGTCTACAACTCCATGTACGAGAATTTCTCCACCAGCTTCTGGATTCGCATCCCGAAATACTTCAAGAAGATTAGCCTGAACAACGAGTATACTATCATCAACTGTATGGAGAACAACAGCGGTTGGAAGGTGTCTCTGAACTATGGTGAGATCATTTGGACCTTGCAGGACACCAAAGAGATCAAGCAGCGCGTCGTGTTCAAGTACTCTCAAATGATCAACATTTCCGATTACATTAATCGTTGGATCTTCGTGACCATTACGAATAACCGTCTGAATAAGAGCAAGATTTACATCAATGGTCGCTTGATCGATCAGAAACCGATTAGCAACCTGGGTAATATCCACGCAAGCAACAAGATTATGTTCAAATTGGACGGTTGCCGCGATACCCATCGTTATATCTGGATCAAGTATTTCAACCTGTTTGATAAAGAACTGAATGAGAAGGAGATCAAAGATTTGTATGACAACCAATCTAACAGCGGCATTTTGAAGGACTTCTGGGGCGATTATCTGCAATACGATAAGCCGTACTATATGCTGAACCTGTATGATCCGAACAAATATGTGGATGTCAATAATGTGGGTATTCGTGGTTACATGTATTTGAAGGGTCCGCGTGGCAGCGTTATGACGACCAACATTTACCTGAACTCTAGCCTGTACCGTGGTACGAAATTCATCATTAAGAAATATGCCAGCGGCAACAAAGATAACATTGTGCGTAATAACGATCGTGTCTACATCAACGTGGTCGTGAAGAATAAAGAGTACCGTCTGGCGACCAACGCTTCGCAGGCGGGTGTTGAGAAAATTCTGAGCGCGTTGGAGATCCCTGATGTCGGTAATCTGAGCCAAGTCGTGGTTATGAAGAGCAAGAACGACAAGGGTATCACTAACAAGTGCAAGATGAACCTGCAAGACAACAATGGTAACGACATCGGCTTTATTGGTTTCCACCAGTTCAACAATATTGCTAAACTGGTAGCGAGCAATTGGTACAATCGTCAGATTGAGCGCAGCAGCCGTACTTTGGGCTGTAGCTGGGAGTTTATCCCGGTCGATGATGGTTGGGGCGAACGTCCGCTG
【0237】
配列番号17 (ポリペプチド配列, 修飾 BoNT/A “Cat-B”)
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKKAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFKKISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTKEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNKSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNKIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDKGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL
【0238】
配列番号18 (ヌクレオチド配列, 修飾 BoNT/A “Cat-C”)
ATGCCATTCGTCAACAAGCAATTCAACTACAAAGACCCAGTCAACGGCGTCGACATCGCATACATCAAGATTCCGAACGCCGGTCAAATGCAGCCGGTTAAGGCTTTTAAGATCCACAACAAGATTTGGGTTATCCCGGAGCGTGACACCTTCACGAACCCGGAAGAAGGCGATCTGAACCCGCCACCGGAAGCGAAGCAAGTCCCTGTCAGCTACTACGATTCGACGTACCTGAGCACGGATAACGAAAAAGATAACTACCTGAAAGGTGTGACCAAGCTGTTCGAACGTATCTACAGCACGGATCTGGGTCGCATGCTGCTGACTAGCATTGTTCGCGGTATCCCGTTCTGGGGTGGTAGCACGATTGACACCGAACTGAAGGTTATCGACACTAACTGCATTAACGTTATTCAACCGGATGGTAGCTATCGTAGCGAAGAGCTGAATCTGGTCATCATTGGCCCGAGCGCAGACATTATCCAATTCGAGTGCAAGAGCTTTGGTCACGAGGTTCTGAATCTGACCCGCAATGGCTATGGTAGCACCCAGTACATTCGTTTTTCGCCGGATTTTACCTTCGGCTTTGAAGAGAGCCTGGAGGTTGATACCAATCCGTTGCTGGGTGCGGGCAAATTCGCTACCGATCCGGCTGTCACGCTGGCCCATGAACTGATCCACGCAGGCCACCGCCTGTACGGCATTGCCATCAACCCAAACCGTGTGTTCAAGGTTAATACGAATGCATACTACGAGATGAGCGGCCTGGAAGTCAGCTTCGAAGAACTGCGCACCTTCGGTGGCCATGACGCTAAATTCATTGACAGCTTGCAAGAGAATGAGTTCCGTCTGTACTACTATAACAAATTCAAAGACATTGCAAGCACGTTGAACAAGGCCAAAAGCATCGTTGGTACTACCGCGTCGTTGCAGTATATGAAGAATGTGTTTAAAGAGAAGTACCTGCTGTCCGAGGATACCTCCGGCAAGTTTAGCGTTGATAAGCTGAAGTTTGACAAACTGTACAAGATGCTGACCGAGATTTACACCGAGGACAACTTTGTGAAATTCTTCAAAGTGTTGAATCGTAAAACCTATCTGAATTTTGACAAAGCGGTTTTCAAGATTAACATCGTGCCGAAGGTGAACTACACCATCTATGACGGTTTTAACCTGCGTAACACCAACCTGGCGGCGAACTTTAACGGTCAGAATACGGAAATCAACAACATGAATTTCACGAAGTTGAAGAACTTCACGGGTCTGTTCGAGTTCTATAAGCTGCTGTGCGTGCGCGGTATCATCACCAGCAAAACCAAAAGCCTGGACAAAGGCTACAACAAGGCGCTGAATGACCTGTGCATTAAGGTAAACAATTGGGATCTGTTCTTTTCGCCATCCGAAGATAATTTTACCAACGACCTGAACAAGGGTGAAGAAATCACCAGCGATACGAATATTGAAGCAGCGGAAGAGAATATCAGCCTGGATCTGATCCAGCAGTACTATCTGACCTTTAACTTCGACAATGAACCGGAGAACATTAGCATTGAGAATCTGAGCAGCGACATTATCGGTCAGCTGGAACTGATGCCGAATATCGAACGTTTCCCGAACGGCAAAAAGTACGAGCTGGACAAGTACACTATGTTCCATTACCTGCGTGCACAGGAGTTTGAACACGGTAAAAGCCGTATCGCGCTGACCAACAGCGTTAACGAGGCCCTGCTGAACCCGAGCCGTGTCTATACCTTCTTCAGCAGCGACTATGTTAAGAAAGTGAACAAAGCCACTGAGGCCGCGATGTTCCTGGGCTGGGTGGAACAGCTGGTATATGACTTCACGGACGAGACGAGCGAAGTGAGCACTACCGACAAAATTGCTGATATTACCATCATTATCCCGTATATTGGTCCGGCACTGAACATTGGCAACATGCTGTACAAAGACGATTTTGTGGGTGCCCTGATCTTCTCCGGTGCCGTGATTCTGCTGGAGTTCATTCCGGAGATTGCGATCCCGGTGTTGGGTACCTTCGCGCTGGTGTCCTACATCGCGAATAAGGTTCTGACGGTTCAGACCATCGATAACGCGCTGTCGAAACGTAATGAAAAATGGGACGAGGTTTACAAATACATTGTTACGAATTGGCTGGCGAAAGTCAATACCCAGATCGACCTGATCCGTAAGAAAATGAAAGAGGCGCTGGAGAATCAGGCGGAGGCCACCAAAGCAATTATCAACTACCAATACAACCAGTACACGGAAGAAGAGAAGAATAACATTAACTTCAATATCGATGATTTGAGCAGCAAGCTGAATGAATCTATCAACAAAGCGATGATCAATATCAACAAGTTTTTGAATCAGTGTAGCGTTTCGTACCTGATGAATAGCATGATTCCGTATGGCGTCAAACGTCTGGAGGACTTCGACGCCAGCCTGAAAGATGCGTTGCTGAAATACATTTACGACAATCGTGGTACGCTGATTGGCCAAGTTGACCGCTTGAAAGACAAAGTTAACAATACCCTGAGCACCGACATCCCATTTCAACTGAGCAAGTATGTTGATAATCAACGTCTGTTGAGCACTTTCACCGAGTATATCAAAAACATCATCAATACTAGCATTCTGAACCTGCGTTACGAGAGCAATCATCTGATTGATCTGAGCCGTTATGCTAGCAAGATCAACATCGGTAGCAAGGTCAATTTTGACCCGATCGATAAGAACCAGATCCAGCTGTTTAATCTGGAATCGAGCAAAATTGAGGTTATCCTGAAAAAGGCCATTGTCTACAACTCCATGTACGAGAATTTCTCCACCAGCTTCTGGATTCGCATCCCGAAATACTTCAACAAGATTAGCCTGAACAACGAGTATACTATCATCAACTGTATGGAGAACAACAGCGGTTGGAAGGTGTCTCTGAACTATGGTGAGATCATTTGGACCTTGCAGGACACCAAAGAGATCAAGCAGCGCGTCGTGTTCAAGTACTCTCAAATGATCAACATTTCCGATTACATTAATCGTTGGATCTTCGTGACCATTACGAATAACCGTCTGAAGAAGAGCAAGATTTACATCAATGGTCGCTTGATCGATCAGAAACCGATTAGCAACCTGGGTAATATCCACGCAAGCAACAAGATTATGTTCAAATTGGACGGTTGCCGCGATACCCATCGTTATATCTGGATCAAGTATTTCAACCTGTTTGATAAAGAACTGAATGAGAAGGAGATCAAAGATTTGTATGACAACCAATCTAACAGCGGCATTTTGAAGGACTTCTGGGGCGATTATCTGCAATACGATAAGCCGTACTATATGCTGAACCTGTATGATCCGAACAAATATGTGGATGTCAATAATGTGGGTATTCGTGGTTACATGTATTTGAAGGGTCCGCGTGGCAGCGTTATGACGACCAACATTTACCTGAACTCTAGCCTGTACCGTGGTACGAAATTCATCATTAAGAAATATGCCAGCGGCAACAAAGATAACATTGTGCGTAATAACGATCGTGTCTACATCAACGTGGTCGTGAAGAATAAAGAGTACCGTCTGGCGACCAACGCTTCGCAGGCGGGTGTTGAGAAAATTCTGAGCGCGTTGGAGATCCCTGATGTCGGTAATCTGAGCCAAGTCGTGGTTATGAAGAGCAAGAACGACAAGGGTATCACTAACAAGTGCAAGATGAACCTGCAAGACAACAATGGTAACGACATCGGCTTTATTGGTTTCCACCAGTTCAACAATATTGCTAAACTGGTAGCGAGCAATTGGTACAATCGTCAGATTGAGCGCAGCAGCCGTACTTTGGGCTGTAGCTGGGAGTTTATCCCGGTCGATGATGGTTGGGGCGAACGTCCGCTG
【0239】
配列番号19 (ポリペプチド配列, 修飾 BoNT/A “Cat-C”)
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKKAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNKISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTKEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLKKSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNKIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDKGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL
【0240】
配列番号20 (ヌクレオチド配列, 修飾 BoNT/A “Cat-D”)
ATGCCATTCGTCAACAAGCAATTCAACTACAAAGACCCAGTCAACGGCGTCGACATCGCATACATCAAGATTCCGAACGCCGGTCAAATGCAGCCGGTTAAGGCTTTTAAGATCCACAACAAGATTTGGGTTATCCCGGAGCGTGACACCTTCACGAACCCGGAAGAAGGCGATCTGAACCCGCCACCGGAAGCGAAGCAAGTCCCTGTCAGCTACTACGATTCGACGTACCTGAGCACGGATAACGAAAAAGATAACTACCTGAAAGGTGTGACCAAGCTGTTCGAACGTATCTACAGCACGGATCTGGGTCGCATGCTGCTGACTAGCATTGTTCGCGGTATCCCGTTCTGGGGTGGTAGCACGATTGACACCGAACTGAAGGTTATCGACACTAACTGCATTAACGTTATTCAACCGGATGGTAGCTATCGTAGCGAAGAGCTGAATCTGGTCATCATTGGCCCGAGCGCAGACATTATCCAATTCGAGTGCAAGAGCTTTGGTCACGAGGTTCTGAATCTGACCCGCAATGGCTATGGTAGCACCCAGTACATTCGTTTTTCGCCGGATTTTACCTTCGGCTTTGAAGAGAGCCTGGAGGTTGATACCAATCCGTTGCTGGGTGCGGGCAAATTCGCTACCGATCCGGCTGTCACGCTGGCCCATGAACTGATCCACGCAGGCCACCGCCTGTACGGCATTGCCATCAACCCAAACCGTGTGTTCAAGGTTAATACGAATGCATACTACGAGATGAGCGGCCTgGAAGTCAGCTTCGAAGAACTGCGCACCTTCGGTGGCCATGACGCTAAATTCATTGACAGCTTGCAAGAGAATGAGTTCCGTCTGTACTACTATAACAAATTCAAAGACATTGCAAGCACGTTGAACAAGGCCAAAAGCATCGTTGGTACTACCGCGTCGTTGCAGTATATGAAGAATGTGTTTAAAGAGAAGTACCTGCTGTCCGAGGATACCTCCGGCAAGTTTAGCGTTGATAAGCTGAAGTTTGACAAACTGTACAAGATGCTGACCGAGATTTACACCGAGGACAACTTTGTGAAATTCTTCAAaGTGTTGAATCGTAAAACCTATCTGAATTTTGACAAAGCGGTTTTCaAGATTAACATCGTGCCGAAGGTGAACTACACCATCTATGACGGTTTTAACCTGCGTAACACCAACCTGGCGGCGAACTTTAACGGTCAGAATACGGAAATCAACAACATGAATTTCACGAAGTTGAAGAACTTCACGGGTCTGTTCGAGTTCTATAAGCTGCTGTGCGTGCGCGGTATCATCACCAGCAAAACCAAAAGCCTGGACAAAGGCTACAACAAGGCGCTGAATGACCTGTGCATTAAGGTAAACAATTGGGATCTGTTCTTTTCGCCATCCGAAGATAATTTTACCAACGACCTGAACAAGGGTGAAGAAATCACCAGCGATACGAATATTGAAGCAGCGGAAGAGAATATCAGCCTGGATCTGATCCAGCAGTACTATCTGACCTTTAACTTCGACAATGAACCGGAGAACATTAGCATTGAGAATCTGAGCAGCGACATTATCGGTCAGCTGGAACTGATGCCGAATATCGAACGTTTCCCGAACGGCAAAAAGTACGAGCTGGACAAGTACACTATGTTCCATTACCTGCGTGCACAGGAGTTTGAACACGGTAAAAGCCGTATCGCGCTGACCAACAGCGTTAACGAGGCCCTGCTGAACCCGAGCCGTGTCTATACCTTCTTCAGCAGCGACTATGTTAAGAAAGTGAACAAAGCCACTGAGGCCGCGATGTTCCTGGGCTGGGTGGAACAGCTGGTATATGACTTCACGGACGAGACGAGCGAAGTGAGCACTACCGACAAAaTTGCTGATaTTACCATCATTATCCCGTATATTGGTCCGGCACTGAACATTGGCAACATGCTGTACAAAGACGATTTTGTGGGTGCCCTGATCTTCTCCGGTGCCGTGATTCTGCTGGAGTTCATTCCGGAGATTGCGATCCCGGTGTTGGGTACCTTCGCGCTGGTGTCCTACATCGCGAATAAGGTTCTGACGGTTCAGACCATCGATAACGCGCTGTCGAAACGTAATGAAAAATGGGACGAGGTTTACAAATACATTGTTACGAATTGGCTGGCGAAAGTCaATACCCAGATCGACCTGATCCGTAAGAAAATGAAAGAGGCGCTGGAGAATCAGGCGGAGGCCACCAAAGCAATTATCAACTACCAATACAACCAGTACACGGAAGAAGAGAAGAATAACATTAACTTCAATATCGATGATTTGAGCAGCAAGCTGAATGAATCTATCAACAAAGCGATGATCAATATCAACAAGTTTTTGAATCAGTGTAGCGTTTCGTACCTGATGAATAGCATGATTCCGTATGGCGTCAAACGTCTGGAGGACTTCGACGCCAGCCTGAAAGATGCGTTGCTGAAATACATTTACGACAATCGTGGTACGCTGATTGGCCAAGTTGACCGCTTGAAAGACAAAGTTAACAATACCCTGAGCACCGACATCCCATTTCAACTGAGCAAGTATGTTGATAATCAACGTCTGTTGAGCACTTTCACCGAGTATATCAAAAACATCATCAATACTAGCATTCTGAACCTGCGTTACGAGAGCAATCATCTGATtGATCTGAGCCGTTATGCAAGCAAGATCAACATCGGTAGCAAGGTCAATTTTGACCCGATCGATAAGAACCAGATCCAGCTGTTTAATCTGGAATCGAGCAAAATTGAGGTTATCCTGAAAAACGCCATTGTCTACAACTCCATGTACGAGAATTTCTCCACCAGCTTCTGGATTCGCATCCCGAAATACTTCAACAGCATTAGCCTGAACAACGAGTATACTATCATCAACTGTATGGAGAACAACAGCGGTTGGAAGGTGTCTCTGAACTATGGTGAGATCATTTGGACCTTGCAGGACACCCAAGAGATCAAGCAGCGCGTCGTGTTCAAGTACTCTCAAATGATCAACATTTCCGATTACATTAATCGTTGGATCTTCGTGACCATTACGAATAACCGTCTGAATAACAGCAAGATTTACATCAATGGTCGCTTGATCGATCAGAAACCGATTAGCAACCTGGGTAATATCCACGCAAGCAACAACATTATGTTCAAATTGGACGGTTGCCGCGATACCCATCGTTATATCTGGATCAAGTATTTCAACCTGTTTGATAAAGAACTGAATGAGAAGGAGATCAAAGATTTGTATGACAACCAATCTAACAGCGGCATTTTGAAGGACTTCTGGGGCGATTATCTGCAATACGATAAGCCGTACTATATGCTGAACCTGTATGATCCGAACAAATATGTGGATGTCAATAATGTGGGTATTCGTGGTTACATGTATTTGAAGGGTCCGCGTGGCAGCGTTATGACGACCAACATTTACCTGAACTCTAGCCTGTACCGTGGTACGAAATTCATCATTAAGAAATATGCCAGCGGCAACAAAGATAACATTGTGCGTAATAACGATCGTGTCTACATCAACGTGGTCGTGAAGCGTAAAGAGTACCGTCTGGCGACCAACGCTTCGCAGGCGGGTGTTGAGAAAATTCTGAGCGCGTTGGAGATCCCTCGTGTCCGTCGTCTGAGCCAAGTCGTGGTTATGAAGAGCAAGAACGACCAGGGTATCACTAACAAGTGCAAGATGAACCTGCAAGACCGTCGTGGTAACGACATCGGCTTTATTGGTTTCCACCAGTTCAACAATATTGCTAAACTGGTAGCGAGCAATTGGTACAATCGTCAGATTGAGCGCCGTAGCCGTCGTTTGGGCTGTAGCTGGGAGTTTATCCCGGTCGATGATGGTTGGGGCGAACGTCCGCTG
【0241】
配列番号21 (ポリペプチド配列, 修飾 BoNT/A “Cat-D”)
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKNAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNSISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTQEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNNSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNNIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKRKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPRVRRLSQVVVMKSKNDQGITNKCKMNLQDRRGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERRSRRLGCSWEFIPVDDGWGERPL
【実施例】
【0242】
材料及び方法
【0243】
動物モデル
【0244】
以下の研究において体重11~13kgの雄の飼育ブタを使用した。ブタの皮膚は構造、厚み、神経支配、色素沈着、コラーゲン及び脂質組成、創傷治癒、並びに免疫応答の点においてヒトの皮膚と類似しているため、ブタは術後外科疼痛の処置を研究するための好適なモデルである。
【0245】
Dysportの再構成
【0246】
Dysportは、500Uを含有するバイアル中で提供された。投薬のため、500Uのバイアルを生理食塩水(0.9%NaCl)を用いて再構成した。以下のように、試験用量に応じて生理食塩水によるその後の希釈を行った:
3mlシリンジ+21G針で2.5mlの生理食塩水を抜きとり、Dysport500Uバイアルに移した;濃度は200U/ml=400U/2mlであった;材料が溶解されるまで、バイアルを静かに旋回させた。各バイアルを左右に2~3回傾けた(溶液の均質性を確保した);30G針に接続した1mlのシリンジ2本を用いて、2mlをブタに投薬した。この溶液を400Uを投薬するために用いた。
【0247】
200U/2ml用量のための調製:
Dysportを上記で説明したように再構成した;3mlシリンジ及び21G針を用いて2mlの再構成Dysport500Uを抜きとった;3mlシリンジ及び21G針を用いて2mlの生理食塩水を抜きとった;バキュテナーバイアルを用いて前述の2溶液を混合した;混合溶液を左右に5~6回傾けた(溶液の均質性を確保した);30G針に接続された1mlのシリンジ2本を用いて、2mlをブタに投薬した。
【0248】
100U/2ml用量の調製:
Dysportを上記に説明したように再構成した。3mlのシリンジ及び21G針を用いて2mlの再構成Dysport500Uを抜きとった;3mlシリンジ及び21G針を用いて2mlの生理食塩水を抜きとった;バキュテナーバイアルを用いて前述の2溶液を混合した;混合溶液を左右に5~6回傾けた(溶液の均質性を確保した);3mlシリンジ及び21G針を用いてバキュテナーバイアルから調製された溶液2mlを抜きとった;3mlシリンジ及び21G針を用いて2mlの生理食塩水を抜きとった;新しいバキュテナーを用いて前述の2溶液を混合した;混合溶液を左右に5~6回傾けた(溶液の均質性を確保した);30G針に接続した1mlのシリンジ2本を用いて、2mlをブタに投薬した。
【0249】
術後外科疼痛の誘発
【0250】
イソフルラン/酸素混合物によってブタを麻酔した。このイソフルラン/酸素混合物はフェースマスクを通して送達した。切開のエリアをSeptol及びPolydine(Iodo-Vit)溶液を用いて清浄にした。ブタの左側腹部において、尾の端に向かって及び脊柱の横3cmに、長さ6~7cmの皮膚切開を行った(1日目)、又は左脚において長さ7cmの皮膚切開を行った。その後、筋膜を切断し及び筋肉を引っ込めた(Castel et al., Characterization of a porcine model of post-operative pain, Eur. J. Pain. 2014, 18(4), 496-505;本明細書に参照により援用される)。その後、3-0バイクリル糸により皮下組織を縫合した。連続縫合法を用いて3-0絹糸により皮膚を縫合した。切開の閉鎖及び材料注射に続き、ブタは抗生物質(マルボシル10%)を受けた。切開のエリアをシントマイシン3%の薄い層で覆った。手術及び投薬の持続時間に渡り(約20分間)動物を麻酔下に保持した。手術後、回復及び観察のために動物を檻に戻した。
【0251】
処置
【0252】
Dysportの皮内周術期投与
【0253】
周術期投与のために、左側腹部において行われた切開を縫合したすぐ後に動物に注射した。Dysport(供試品)、生理食塩水(陰性対照)、又は参考化合物Exparel(陽性対照)を、1mlシリンジに取り付けられた30G針を用いて及び切開の周辺の10箇所の部位へ、皮内(又はExparelについては皮下)注射した。各部位に一定投薬容積及び一定投薬レベルを注射した。より詳細には、左側腹部における7cmの水平な切開/縫合の各側に沿って4部位(例えば8部位)に(2cm間隔で)注射し、左側腹部における切開/縫合の各端部における部位にも注射した(
図1参照)。以下の実験グループを下記の通り評価した。
【表B】
【0254】
Dysportの皮内術前投与
【0255】
手術前注射のために、(ブタの左側腹部又は左脚のいずれかにおける)切開前の動物に一定合計量2mlを注射するときに、最初にさらなる切開の位置に入れ墨をした。Dysport(供試品)又は生理食塩水(陰性対照)を、1mlシリンジに取り付けられた30G針を用いて及び切開の周辺の10箇所の部位へ皮内注射した。各部位に一定投薬容積及び一定投薬レベルを注射した。投与は、手術の15日前、5日前、又は1日前のいずれかに行った。以下の実験グループ(切開をブタの左側腹部において行った場合)を下記の通り評価した。
【表C】
【0256】
以下の実験グループ(ブタの左脚において切開を行った場合)を下記の通り評価した。
【表D】
【0257】
皮内、筋肉内、又は皮下経路によるDysportの投与
【0258】
切開前15日に動物に注射するときに、さらなる切開の位置に入れ墨した。Dysport(供試品)又は生理食塩水(陰性対照)を、1mlシリンジに取り付けられた30G針を用い及び切開の周辺の10箇所の部位へ、注射した。各部位に一定投薬容積及び一定投薬レベルを注射した。投与は、皮内、皮下、又は筋肉内経路のいずれかにより行った。
【0259】
以下の実験グループを下記の通り評価した。
【表E】
【0260】
von Freyアッセイ
【0261】
Dysport/生理食塩水の注射後の健康な無手術の動物において、1日目の手術後1、2、4、及び6時間に及び10日間1日1回、フォンフレイアッセイを行った。切開線の近位約0.5cm程度において側腹部又は脚の皮膚の表面にフォンフレイフィラメント(Ugo Basile、イタリア)を適用した。フィラメントのグラム数が増加するにつれて、側腹部の又は脚の皮膚にかかる力が増大する。使用される最大の力は60gとした。動物が刺激から逃避するまでフィラメントを適用した。各フィラメントは3~5回適用した。逃避に至らなかった場合には、より太いフィラメントを適用した。逃避に至った場合には、より細いフィラメントを適用した(より太い又はより細いとは、より高い/より太い又はより低い/より細いグラム力を指す)。フィラメントの太さを変えることによって、逃避反応が達成されるために要する力を判定し及び記録した。フォンフレイフィラメントのサイズ及び力を下記の表にまとめる。
【表F】
【0262】
組み入れ基準:ベースラインにおける側腹部での逃避の力が≧26g(好ましくは60g)であった場合、動物を研究に含めた。手術後、側腹部での逃避の力が≦10gであった場合、疼痛(アロディニア)が存在するとみなした。動物がこの基準を満たさなかった場合、この動物は研究から除外した。手術前に比較的低い閾値(≦10g)を示したため、動物一頭を研究から除外した。
【0263】
ベースラインにおける脚での逃避の力が≧13gであった場合、動物を研究に含めた。手術後、脚での逃避の力が≦2gであった場合、疼痛(アロディニア)が存在するとみなした。動物がこの基準を満たさなかった場合、この動物は研究から除外した。
【0264】
接近時間試験
【0265】
ブタの投薬に先立ち、接近時間(AT)試験を行う研究員が初めて檻に入った。誰かが囲い檻に入ったときのブタの正常な挙動は、侵入者から離れ、その後その人に接近することである。ブタがその人に慣れていて心地よく感じているほど、接近するのにかかる時間は短くなる。飼育檻に入った研究員に接近するまでの潜時を秒単位で測定した(終了時間120秒)。この試験は朝、朝の食餌(午前6:30)の後の少なくとも1時間、苦痛挙動スコアの前及び馴化期間中に行われた。
【0266】
苦痛挙動スコア
【0267】
切開後、動物の挙動は変化した。接近されると、動物は、檻に入ってきた研究員から離れ、切開側をガードする傾向があり、及び時には啼鳴を使用した。これは、この種の手術後に観察される主要な現象であり、稀な場合には、動物は落ち着かなくなり又は孤立挙動を示した。苦痛挙動は、0(正常)から7(非常に苦痛がある)まで点数化された。接近時間試験の直後に苦痛挙動スコア試験を行った。朝の時間の間、飼育檻中で動物の全般的挙動をモニタリングした。苦痛挙動スコアによって、動物の健康状態全般の評価も可能である。動物の挙動は、処置を知らされていない観察者によって点数化され、ここで合計スコアは、下記の表に示された全てのセクションの総計である。
【表G】
【0268】
挙動スコアの評価は、特定の順番で行うのではなく、動物の全体的な自発性挙動に従って行った。
【0269】
歩行活動についてのオープンフィールド試験
【0270】
オープンフィールドは、幅2.5m及び長さ4.7mの矩形アリーナである。アリーナの壁は滑らかで高さ1.6mである。試験の朝、全てのグループからの動物を一度に一頭づつ5分間(5)個別にオープンフィールドに誘導した。CCTVカメラを用いて動物の歩行運動活動を記録し、及びAnyMazeソフトウェア(Stoelting Co.)で解析した。オープンフィールド試験は、檻の中で行われた挙動試験(即ち、接近時間、苦痛挙動、及びフォンフレイ)の最後に行った。各オープンフィールド実験の後、以下のパラメータを解析した:合計歩行距離(m)及びエリアの中央(ゾーンE;
図2参照)に費やした時間の百分率。
【0271】
苦痛がある動物及び疼痛下にある動物は通常、檻又はオープンフィールド装置の壁の近くを歩く。苦痛のない動物は、躊躇なくオープンフィールド装置の中央に入ることになる。
【0272】
実施例1 - Dysportの周術期投与は手術(ブタの左側腹部の切開)後の遅延された鎮痛及び抗不安効果を提供する
【0273】
ブタの左側腹部に行った切開の縫合の直後に(即ち、周術期に)、ブタに、生理食塩水、Exparel(266mg一定用量)、又は異なる濃度のDysportのいずれかの皮内注射を投与した。術後外科疼痛の処置の評価としてフォンフレイアッセイによってブタの機械的感度を測定した。生理食塩水処置グループと比較した場合に、Exparelは、1日の持続時間の間、鎮痛効果を示したが、その後は効果的な鎮痛作用を示さなかった。400UのDysportの投与は、手術の2日後に中程度の鎮痛効果を誘発した。ブタが200U又は400UのDysportを投与された場合に、より大きな鎮痛効果が手術の4日後までに誘発された。試験されたDysportの全ての濃度が術後6日に術後外科疼痛を完全に抑制した。このことは、Dysportが術後外科疼痛を処置するために効果的な及び長期に渡る鎮痛効果を提供することを示唆している。このデータは
図3Aの棒グラフに示されている。
【0274】
ブタがハンドラーに接近するまでの潜時を測定した。切開の時点で、ブタに、生理食塩水、Exparel、又は異なる濃度のDysportのいずれかの皮内注射を投与した。手術後2時間までは、全ての処置グループがハンドラーへの接近において遅延を示した。6時間までは、200U又は400UのいずれかのDysportの皮内投与により、ブタがハンドラーに接近するまでにかかる時間が減少し、これらの効果は手術後最大5日間続き、このことは術後の苦痛及び不安様反応性における減少の可能性を示唆している。生理食塩水又はExparelのいずれかで処置されたブタは、ハンドラーへの接近においていかなる改善も示すことができず、このことは、これらの処置が術後の苦痛及び不安様反応性を減少しないことを示唆している。このデータは
図3Bに示されている。
【0275】
ブタの苦痛挙動スコアを測定した。100U、200U、又は400UのDysportのいずれかを投与されたブタは、生理食塩水及びExparel処置グループとは異なり、手術の2日後までに苦痛挙動スコアの減少を示した。このデータは
図3Cに示されている。
【0276】
オープンフィールド試験は、動物が手術前に歩いた総距離と生理食塩水処置に続く手術後に歩いた総距離との間に違いが無かったことを示した。Exparel又はDysportによる処置は、投薬後3日における総歩行距離に影響を与えなかったが、このことは、手術後の動物の運動機能に変化がなかったことを示唆している。このデータは、
図4Aに示されている。400UのDysportで処置された動物は、オープンフィールド装置の中央においてより多くの時間を費やしているものの、この差は統計的に有意ではなかった(
図4B参照)。
【0277】
実施例2 - Dysportの術前投与はブタの左側腹部において外科的切開が行われた場合により速い鎮痛効果を誘発し及び術後の苦痛及び不安様反応性の出現を抑制する
【0278】
Dysportの周術期投与は鎮痛効果の誘発における遅延を示したため、Dysportの術前投与の鎮痛及び抗不安効果を測定した。手術(ブタの左側腹部における切開)の15日前(
図5A参照)、5日前(
図5B参照)、又は1日前(
図5C参照)に、生理食塩水又は200UのDysportのいずれかの皮内注射をブタに投与した。フォンフレイアッセイを用いることによって、Dysportが手術の15日前に投与された場合に、最も速い鎮痛効果を観察したが、この場合、術後外科疼痛は手術の1日後までに減少した。比較すると、Dysportが手術の5日前に投与された場合は、術後外科疼痛は、手術の5日後までに減少した。
【0279】
手術の15日前又は5日前にDysportの皮内注射を投与された場合に、ブタはハンドラーに接近するまでの時間の減少を示した(
図6参照)。同様に、手術の15日前又は5日前にDysportの皮内注射を投与された場合に、ブタは苦痛挙動スコアの減少を示した(
図7参照)。手術の1日前のDysportの投与は、効果的な抗不安の効果としては誘発しなかった。このことは、手術の15日前又は5日前のDysportの術前投与は、術後の苦痛及び不安様反応性の発現を十分に防ぐということを示唆している。
【0280】
いずれの処置グループ(手術の15日前、5日前、又は1日前のDysportの皮内注射)も術後の総歩行距離における差を示さなかった(
図8参照)が、このことは筋肉活動が影響を受けなかったこと、及び毒素の全身的な広がりはなかったことを示唆している。
【0281】
生理食塩水注射動物がオープンフィールド装置の中央に費やした時間の百分率は、手術の前後で似通っている。手術の15日前にDysportで処置された動物は、より多くの時間をオープンフィールド装置の中央に費やした(
図9A参照)。手術の5日前又は1日前のいずれかに投与された場合、生理食塩水処置動物とDysport処置動物との間では、中央帯に費やした時間の百分率に差がなかった(
図9B及び
図9C参照)。
【0282】
実施例3 - Dysportの皮内投与は術後外科疼痛を軽減する及び術後不安の発現を抑制するための有利な経路を提供する
【0283】
手術の15日前の200UのDysport投与の異なる経路(皮内、皮下、及び筋肉内注射)を、術後に鎮痛及び抗不安効果を誘発するその能力について評価した。驚くべきことに、皮内投与が代替経路よりもよい結果を提供した(事実、Dysport投与の皮内経路のみが急速な鎮痛効果を示すことが全般的に観測された(
図10参照)。Dysport投与の皮下及び筋肉内経路はいずれも、鎮痛作用に対する効果をほとんど又は全く示さなかった。ブタは、手術の15日前にDysportの皮内注射を投与された場合に、ハンドラーに接近するまでの時間の減少及び苦痛挙動スコアの減少を示した(
図11及び
図12参照)。このことは、投与の皮内経路が術後外科疼痛を軽減し及び術後の苦痛及び不安様反応性の完全な発現を防ぐことにおいて効果的であることを示唆している。
【0284】
全ての生理食塩水グループにおいて、手術後に記録された歩行距離は、手術前に記録された歩行距離と同じであった。さらに、Dysportによる処置及びその投与の経路(皮内、皮下、又は筋肉内経路)は、手術後の総歩行距離に影響しなかった(
図13参照)。
【0285】
生理食塩水注射動物がオープンフィールド装置の中央に費やした時間の百分率は、手術の前後で似通っていた。動物がオープンフィールド装置の中央で費やした時間の百分率において、異なる投与経路間で差はなかった(
図14参照)。
【0286】
実施例4 - SNAP-25切断はDysport注射の遠位の部位で脊髄の同側の後角において起こる
【0287】
Dysport(皮内注射)の作用機構を評価するために、外科的切開の部位(ブタの左側腹部)における及び脊髄における組織試料の両方において免疫組織化学を行った。皮膚試料の神経では切断SNAP-25は検出されなかった(
図15参照)。意外なことに、脊髄の同側の後角において切断SNAP-25が可視化され(
図16参照)、脊髄におけるBoNT/A活性を示し、及び術後外科疼痛/不安の制御が脊髄における中枢効果を介して提供され得ることを示している。このことはまた、Dysportは、髄腔内投与を介して脊髄に直接投与し得るということを強調している。
【0288】
疼痛調整に関わる二つの神経ペプチドであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)及びサブスタンスPの発現レベルを、脊髄中で、免疫組織化学染色により評価した。いずれの神経ペプチドもその発現レベルにおいて、Dysportで処置されたブタの脊髄において、未処置と比較して差を示さなかった(
図17参照)。
【0289】
小グリア細胞活性化のマーカーであるIba1の発現レベルは、Dysportで処置されたブタの脊髄において、未処置と比較して減少した(
図18A、B参照)。同様に、アストロサイト活性化のマーカーであるGFAPの発現レベルは、Dysportで処置されたブタの脊髄において、未処置と比較して減少した(
図18C、D)。
【0290】
実施例5 - Dysportの術前投与はブタの左脚において外科的切開が行われる場合速い鎮痛効果を誘発し及び術後の苦痛及び不安様反応性の発現を抑える
【0291】
ブタに異なる部位の外科的切開が行われた場合の(左側腹部ではなくて左脚に対する外科的切開)、Dysportの術前投与の鎮痛及び抗不安効果を測定した。ブタは、手術の15日前に生理食塩水又は200UのDysportの、又は手術の当日(1日目)にExparelの、皮内注射を投与された(
図19A参照)、(左脚に対する外科的切開)。フォンフレイアッセイを用いることによって、速い鎮痛効果が観察されたが、ここで術後外科疼痛は手術の1日後までに低減され及び機械的アロディニアの長く続く反転が4日目までに観察された。
【0292】
ブタ(左脚に縫合された切開を有する)は、手術の15日前にDysporの皮内注射を投与された場合に、生理食塩水及びExparelの投与と比較して低減されたハンドラーに接近するまでの時間を示した(
図19B参照)。同様に、ブタ(左脚に縫合された切開を有する)は、手術前15日にDysporの皮内注射を投与された場合に、生理食塩水及びExparelの投与と比較して低減された苦痛挙動スコアを示した(
図19C参照)。このことは、手術(左脚に対する切開)前15日におけるDysportの術前投与が、術後の苦痛及び不安様反応性の発現を十分に防ぐことを示唆している。
【0293】
全体として、この実験は、Dysportが手術の15日前に投与された場合の速い鎮痛及び抗不安効果に対するさらなる支持を提供する。
【0294】
実施例6 - 左脚に外科的切開を受けたブタにおいて脊髄の同側の後角においてSNAP-25切断が起こる
【0295】
Dysportをブタの異なる部位に皮内投与した場合にDysportの作用の同じ機構が起こるかどうかを評価するために、外科的切開の部位(ブタの左脚)及び脊髄の様々な領域における組織試料において免疫組織化学を行った(
図20参照)。切開及びDysportの注射後5~7日に採取した試料における皮膚試料の神経において、切断SNAP-25は検出されなかった(
図21参照)。左側腹部に対して行った外科的切開を有するブタにおける知見と同様に、脊髄の同側の後角において、具体的には腰椎領域L5-L6において、切断SNAP-25が可視化された(
図22参照)。これらの知見は、脊髄におけるBoNT/A活性を示し、及び術後外科疼痛/不安の制御が脊髄における中枢効果を介して提供され得ることを示している。切断SNAP-25染色の同側の後角における局在性は、左側腹部に行われた外科的切開を有するブタにおける切断SNAP-25染色と比較した場合に、異なっていた。
【0296】
切断SNAP-25染色の強度を、1~3のスケール(グレード0=切断SNAP-25染色なし、グレード1=低強度の切断SNAP-25染色、グレード2=平均的切断SNAP-25強度の染色、及びグレード3=高強度の切断SNAP-25染色)で等級付けした(
図23A参照)。前記等級化システムに基づき、左脚に外科的切開を行ったブタは、左側腹部に外科的切開を行ったブタと比較した場合に、より低い強度の同側の後角における切断SNAP-25染色を有していた。
【0297】
切断SNAP-25染色の強度を定量した(
図23B参照)。切断SNAP-25染色強度の尺度としてHスコアを計算した。陽性の脊髄切片の百分率(%)に後角における染色強度を掛けることによってHスコアを計算した。Dysportで処置された(及び左脚に外科的切開を有する)ブタにおいて、腰椎領域L5~L6における脊髄において、脊髄の腰椎領域L3~L4及びL1~L2並びに胸部及び頸部領域(頸部領域は微量の切断SNAP-25染色を有していた)と比較した場合に、切断SNAP-25の最も高い染色(グレード2の切断SNAP-25強度染色と判定された)が観察された。生理食塩水又はExparel注射ブタにおいては切断SNAP-25染色の証拠は存在しなかった。
【0298】
上記の免疫組織化学染色を
図24にまとめるが、これはSNAP-25切断が脊髄の局在化された領域において観察されることを裏付けている。脊髄の局在化領域L5~L6、L3~L4、及びL1~L2、並びに胸部及び頸部領域は切断SNAP-25染色についての試験で陽性となったが、残りの組織(注射部位における皮膚を含む)は切断SNAP-25染色についての試験で陰性となった。
【0299】
上記の明細書で言及された全ての刊行物は、本明細書において参照によって援用される。本発明の記載された方法及びシステムの種々の修正及び変更が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明を具体的な好ましい実施形態と関連付けて説明したが、特許請求される本発明はこうした具体的な実施形態に必要以上に限定されないということを理解すべきである。事実、生化学及び生命工学又は関連分野の当業者に自明である、本発明を実施するための記載された形態の種々の修正が、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0300】
[
図2]
Door entrance: ドア入り口
[
図3]
Saline: 生理食塩水
Withdrawal Force(g): 逃避の力(g)
Day -1: 1日前
D1: 1日目
1h: 1時間
2h: 2時間
4h: 4時間
6h: 6時間
Day 2: 2日目
Day 3: 3日目
Day 4: 4日目
Day 5: 5日目
Day 6: 6日目
B
Time (Seconds): 時間(秒)
Baseline: ベースライン
DBS Score (points): DBSスコア(点)
[
図4]
Total walking distance: 総歩行距離
walking distance (m): 歩行距離(m)
Pre operation no treatment: 術前未処置
Saline: 生理食塩水
Day 3 post operation: 術後3日目
Percentage of time spent in the central zone: 中央帯に費やされた時間の百分率
[
図5、6、7、8、9、10、11、12、13、19]
Experiment 1: 15 days pretreatment: 実験1: 15日処置前
Dysport 200U/pigs: Dysport 200U/ブタ
Withdrawal Force(g): 逃避の力(g)
Day -16: 16日前
Day -15: 15日前
Day -13: 13日前
Day -10: 10日前
Day -4: 4日前
Day -1: 1日前
Day 1: 1日目
1h: 1時間
2h: 2時間
4h: 4時間
6h: 6時間
Day 2: 2日目
Day 3: 3日目
Day 4: 4日目
Day 5: 5日目
Day 6: 6日目
Day 7: 7日目
Day 8: 8日目
Day 9: 9日目
Day 10: 10日目
Experiment 2: 5 days pretreatment: 実験2: 5日処置前
Day -6: 6日前
Experiment 3: 1 day pretreatment: 実験3: 1日処置前
Day -2: 2日前
Time (sec): 時間(秒)
Score: スコア
[
図8]
Cohort 1: コホート1
meters: メートル
Cohort 2: コホート2
Cohort 3: コホート3
[
図9、14]
Center (%): 中央(%)
[
図10、11、12、13、14]
Intra-Dermal (ID) injections: 皮内(ID)注射
Sub Cutis (SC) injections: 皮下(SC)注射
Intra-Muscular (IM) injections: 筋肉内(IM)注射
[
図12]
DBS (points): DBS(点)
[
図13、14]
Open Field-Distance (meter): オープンフィールド距離(メートル)
Baseline: ベースライン
[
図15]
Periarterial: 動脈周辺
Hair erector muscle: 立毛筋
Nerve: 神経
[
図16、17、18]
Untreated: 未処置
Dysport injected ipsi: Dysport注射同側
Dysport injected contra: Dysport注射対側
Substance P: サブスタンスP
Dysport injected: Dysport注射
[
図19]
Study days: 試験日
Operation: 手術
Approaching Time (sec): 接近時間(秒)
DBS Score (points): DBSスコア(点)
[
図20、24]
Block number: ブロック番号
Tissue: 組織
Skin, injection site: 皮膚、注射部位
Gastrocnemius muscle right (contralateral): 腓腹筋右(対側)
Gastrocnemius muscle left (ipsilateral): 腓腹筋左(同側)
Spinal cord: 脊髄
Dorsal root ganglia Lumber L4-L5-L6 right (contralateral): 後根神経節腰椎L4-L5-L6右(対側)
Dorsal root ganglia Lumber L1-L2-L3 right (contralateral): 後根神経節腰椎L1-L2-L3右(対側)
Dorsal root ganglia Lumber L4-L5-L6 left (ipsilateral): 後根神経節腰椎L4-L5-L6左(同側)
Dorsal root ganglia Lumber L1-L2-L3 left (ipsilateral): 後根神経節腰椎L1-L2-L3左(同側)
Thoracic spinal cord: 胸髄
Cervical spinal cord: 頸髄
Lumber: 腰椎
Block: ブロック
Thoracic: 胸部
Cervical: 頸部
[
図23]
Grade: グレード
Grade 0,5: グレード0.5
H-Score: Hスコア
C-SNAP25 Level: C-SNAP25レベル
traces: 微量
H-Score = % of positive spinal cord sections x staining intensity in the dorsal horns: Hスコア=陽性の脊髄切片の百分率(%)×後角における染色強度
[
図24]
Group: グループ
Negative: 陰性
Positive: 陽性
【配列表】
【国際調査報告】