(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】血管新生疾患の治療に使われる1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 405/14 20060101AFI20230808BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230808BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230808BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230808BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230808BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230808BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C07D405/14 CSP
A61P27/02
A61P9/10
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/496
A61K31/551
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502982
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(85)【翻訳文提出日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 GB2021051810
(87)【国際公開番号】W WO2022013555
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523015264
【氏名又は名称】エクソネイト リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】バクスター、アンドリュー ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】モーリス、ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063AA05
4C063BB01
4C063CC78
4C063DD75
4C063EE01
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
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4C086GA02
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZC75
(57)【要約】
特に眼内若しくは眼上での異常な血管形成又は血管新生促進性VEGF
xxxアイソフォームの異常な生産過剰に関連する状態の抗血管形成治療、及び抗血管形成治療に使用するための化合物は記載されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Xが、CF
3、メチル、Cl又はシクロプロピルであり、且つn=1又は2であるとするとき、式(I)の化合物:
【化1】
又はその、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物若しくはプロドラッグ。
【請求項2】
X=CF
3、メチル、Cl又はシクロプロピルであり;且つn=1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
X=CF
3である、請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
眼血管新生の治療又は予防に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に定義された式(I)の化合物。
【請求項5】
眼血管新生の治療又は予防は、異常な血管形成又は血管新生促進性VEGF
xxxアイソフォームの異常な生産過剰に関連する眼疾患の治療又は予防を含む、請求項4に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
加齢黄斑変性の治療又は予防に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に定義された式(I)の化合物。
【請求項7】
糖尿病性黄斑浮腫の治療又は予防に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に定義された式(I)の化合物。
【請求項8】
糖尿病性網膜症の治療又は予防に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に定義された式(I)の化合物。
【請求項9】
網膜静脈閉塞症の治療又は予防に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に定義された式(I)の化合物。
【請求項10】
未熟児網膜症の治療又は予防に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に定義された式(I)の化合物。
【請求項11】
眼神経変性障害の治療又は予防に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に定義された式(I)の化合物。
【請求項12】
地図状萎縮などの眼変性疾患の治療又は予防に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に定義された式(I)の化合物。
【請求項13】
眼透過性亢進障害の治療又は予防に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に定義された式(I)の化合物。
【請求項14】
眼上皮変性障害の治療又は予防に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に定義された式(I)の化合物。
【請求項15】
局所治療又は予防を含む、請求項4~14のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物、任意選択的に1つ又は複数の他の活性成分、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物、任意選択的に1つ又は複数の他の活性成分、及び薬学的に許容される担体を含む、眼内注射に適切な形態の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物、任意選択的に1つ又は複数の他の活性成分、及び薬学的に許容される担体を含む、眼への局所投薬に適切な形態の医薬組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の式(I)の化合物、又は請求項16に記載の医薬組成物の治療有効量を被験者に投薬することを含む、それを必要とする前記被験者における眼血管新生の治療又は予防のための方法。
【請求項20】
前記眼血管新生は、異常な血管形成、又は血管新生促進性VEGF
xxxアイソフォームの異常な生産過剰を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記眼血管新生は加齢黄斑変性である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記眼血管新生は糖尿病性黄斑浮腫である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記眼血管新生は糖尿病性網膜症である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記眼血管新生は網膜静脈閉塞症である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記眼血管新生は、未熟児網膜症の治療又は予防を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
被験者の眼神経変性障害を治療又は予防する方法であって、それを必要とする前記被験者に、請求項1に記載の式(I)の化合物、又は請求項16に記載の医薬組成物の治療有効量を投薬することを含む方法。
【請求項27】
被験者の眼変性障害を治療又は予防する方法であって、それを必要とする前記被験者に、請求項1に定義された式(I)の化合物、又は請求項16に記載の医薬組成物の治療有効量を投薬することを含む方法。
【請求項28】
前記眼神経変性障害は地図状萎縮である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
被験者の眼透過性亢進障害を治療又は予防する方法であって、それを必要とする前記被験者に、請求項1に記載の式(I)の化合物、又は請求項16に記載の医薬組成物の治療有効量を投薬することを含む方法。
【請求項30】
被験者の眼上皮変性障害を治療又は予防する方法であって、それを必要とする前記被験者に、請求項1に記載の式(I)の化合物、又は請求項16に記載の医薬組成物の治療有効量を投薬することを含む方法。
【請求項31】
前記投薬は局所投薬を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記投薬は局所投薬を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記投薬は局所投薬を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記投薬は局所投薬を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記投薬は局所投薬を含む、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に眼内若しくは眼上での異常な血管形成又は血管新生促進性VEGFxxxアイソフォームの異常な生産過剰に関連する状態、例えば、眼血管新生、脈絡膜血管新生、加齢黄斑変性及び糖尿病性網膜症の抗血管形成治療、及び抗血管形成治療に使用するための化合物に関する。
【0002】
本発明はまた、眼内の透過性亢進障害、例えば、糖尿病性黄斑浮腫の治療法、及び透過性亢進障害の治療に使用するための化合物に関する。
【0003】
本発明はまた、眼変性、例えば地図状萎縮若しくは緑内障を治療又は予防する方法、及びそのような方法において使用するための化合物に関する。
【背景技術】
【0004】
糖尿病性黄斑浮腫(DMO、DMEとしても知られている)及び加齢黄斑変性(AMD)は、黄斑の中心領域に影響を及ぼす視力低下を引き起こす疾患であり、高所得国における失明の主要原因である(Bressler、2004)。DMOは、血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor)の血管新生促進性アイソフォームの発現が増加した結果、内外の血液網膜バリアが破壊されることによって生じる(Perrinら、2005)。この結果、新生血管の増殖、並びに血管から網膜への液体及びタンパク質の漏出、そして網膜色素上皮細胞を介した網膜への液体輸送が増加し、網膜浮腫及び視力低下が引き起こされる。滲出型AMD(wet-AMD又はwAMDとしても知られている)は、AMDの最も重症な型であり(Ferrisら、1984)、主に黄斑下の脈絡膜循環から生じ、脈絡膜血管新生(CNV)によって特徴付けられる。CNVは、脈絡膜から網膜色素上皮(RPE)への新生血管の異常な増殖であり(Patzら,1977)、RPEの下及びRPEを介して血液及び漿液が漏出し、最終的に光受容体の喪失、網膜剥離及び黄斑部瘢痕の緻密化のために視力低下を引き起こすと考えられている(Fineら、2000;Campochiaroら、2006)。血管形成及び血管漏出の重要な因子である血管内皮増殖因子(VEGF)(Dvorakら、1995)は、DMO及びCNVの進行中に増加し(Spilsburyら、2000;Andersonら、2002;Dasら、2003)、滲出性AMDの治療のためのリード治療標的となっている。
【0005】
VEGFは、複数のアイソフォームのファミリーを形成するために選択的スプライシングされる複雑な遺伝子である(Leungら、1989;Jingjingら、1999)。それぞれのアイソフォームは生物学的特性、活性及び機能において異なる(Houckら、1991)。ほとんどの細胞は、VEGF121、VEGF165、及びVEGF189のアイソフォームを一般的に発現するが、VEGF145及びVEGF206は比較的珍しい。VEGFアイソフォームの大部分はエクソン1~5を含むが(例外はVEGF111(Mineurら、2007))、ヘパリン硫酸(HS)結合ドメインをコードするエクソン6及び7の異なる部分を含む。
【0006】
2002年、第8エクソンの差動スプライシングは、近位スプライスサイト(PSS)から66塩基下流の遠位スプライスサイト(DSS)まで実証された(Batesら、2002;Woolardら、2004年)。この領域での選択的スプライシングによって、その抗血管形成(Perrinら、2005)及び抗透過性特性で注目される第2のアイソフォームのファミリー(VEGFxxxb)は生成した。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第03/012105号パンフレットには、選択的スプライシングされたアイソフォーム及びその治療上の重要性が記載されている。
【0007】
病的な血管増殖の間、血管新生促進性、透過性促進アイソフォームは選択的に増加し(Batesら、2002;Perrin、2005、Vareyら、2008;Pritchard-Jonesら、2007)、VEGFxxx及びVEGFxxxbは別々の制御経路を有し得ることを示唆する。VEGF165b及びVEGF121bなどのこれらの抗血管形成アイソフォームは、強力に抗血管形成性であり、そして網膜及び脈絡膜血管新生の動物モデルにおいて、眼内注射後にVEGF媒介血管透過性を阻害し(Huaら、2008、Vedら、2016)、内皮、網膜上皮細胞及び網膜神経細胞保護を生じることが示された(Beazley Long 2015、Magnussenら、2010)。血管新生促進性、透過性促進性アイソフォームから抗血管形成性、抗透過性、サイト-及び神経保護性アイソフォームへのスイッチングスプライシングは、血管漏出、血管増殖、又は神経若しくは上皮細胞変性が病態の主要因となる眼疾患患者に対する潜在的治療アプローチとなるであろう。
【0008】
2004年12月に血管新生AMDの治療のためにFDAの承認を受けた最初の治療法は、VEGF165、VEGF189及びVEGF206特異的アプタマーであるペガプチニブナトリウム(Pegaptanib Sodium)(Macugen(登録商標))であった。臨床試験において、ペガプチニブは投与量依存的に重度の視力低下のリスクを低減し、血管新生AMDの進行を遅らせたが、視力の大幅な改善には至らなかった。2006年、新規ヒト化抗VEGF抗体フラグメントであるラニビズマブ(Ranibizumab)(Lucentis(登録商標))が、血管新生AMDの治療薬としてFDAから承認された。この承認は、3つの臨床試験の結果に基づいており、Lucentis(登録商標)(0.5mg)で毎月治療した患者の約95%が視力を維持し(15文字未満の損失として画定された)、40%以下が1年後に視力を改善した(15文字以上の増加として画定された)のに対し、偽対照治療群は11%であった(Rosenfeldら、2006;Brownら、2006;Brownら、2009)。現在の治療レジメンでは、Lucentisを毎月程度の頻度で眼内注射によって投薬する必要がある(Brownら、2009;Schmidt-Erfuthら、2011)。このような眼内注射は、眼圧を上昇させ(Goodら、2010)、軽度ではあるが眼内炎や他の重篤な副作用のリスクをもたらす(Jagerら、2004)。さらに、Lucentis(登録商標)が誘導されたた抗VEGF抗体のベビシズマブ(Avastin(登録商標))は、VEGF165と同等の効力を持ち、血管新生促進性及び抗血管形成VEGFアイソフォームの両方を標的とするVEGF165bと結合することが示された(Vareyら、2008)。これらの治療法は全て、疾患患者の硝子体に定期的に薬剤を注射することを必要とする。このように侵襲的で不快、且つ損傷を与える可能性のある処置が必要なのは、注射せずにRPE及び他の網膜組織に浸透できる、VEGFを標的とする抗血管形成剤の開発がまだできていないためである。分子を目の奥に到達させる方法の問題を解決することから生じる局所的治療法の開発は、これら及び他の網膜又は眼血管新生/透過性亢進疾患を有する患者に実質的利益を提供する重要な新規アプローチとなるであろう。
【0009】
VEGFの抗血管形成アイソフォーム及び血管形成アイソフォームの両方が同一遺伝子に由来するため、アイソフォームファミリーの制御は、選択的スプライシングの制御の結果である。我々は、近位スプライスサイトでのVEGFのスプライシングを制御する経路の一部を特定し、RNA結合タンパク質SRSF1(Nowak ら、2008;Aminら、2011)及びそのキナーゼSRPK1(Sanfordら、2005)が、細胞が近位スプライスサイトを使用し、したがってVEGFの血管新生促進性アイソフォームを生成するという決定に必要な主要コンポーネントであることが示された(Nowakら、2008;Nowakら、2010)。SRPK1のノックダウンは、腫瘍においてインビボでVEGF媒介血管形成を強力に減少させ、SRPK1の阻害はインビボで血管形成を減少させた(Aminら、2011)。
【0010】
国際公開第2008/110777号パンフレット、国際公開第2009/106855号パンフレット、国際公開第2010/058227号パンフレット、国際公開第2011/148200号パンフレット、及び国際公開第2019/064512号パンフレット(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、VEGFxxxbアイソフォームに有利に発現を誘導する薬剤の治療的及び他の生理学的使用について記載している。SRPK阻害剤は、原理的にそのような薬剤を構成することができる。
国際公開第2005/063293号パンフレットは、SRPIN340、並びにその誘導体及び類似体を含むSRPK阻害剤の分類を記載している。
【0011】
国際公開第2014/060763号パンフレットは、特に抗血管形成剤、神経保護剤、透過性亢進障害の治療又は予防に用いるための薬剤、疼痛の治療剤並びに子癇前症のリスク低減又は治療のための薬剤として用いるための、SRPK1を標的とするSRPK阻害剤を記載している。
VEGFxxxbアイソフォームの発現を誘導する薬剤の開発は、例えば、血管新生AMDの治療のみならず、VEGFxxxbが関与する他の全ての疾患における新時代を意味する。しかしながら、これを達成するためには、強力なSRPK1阻害剤であり、且つ眼球を透過する分子を開発する必要があるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、新規低分子阻害剤は、特に局所抗血管形成剤、神経保護剤、透過性亢進障害の治療又は予防に用いる薬剤、及び眼線維症の治療又は予防のための薬剤としての使用に関して、驚くべきことに且つ予想外であることに、SRPK1阻害活性を維持しながら、局所治療薬として眼への高い透過性を有するという我々の知見に基づくものである。本発明はまた、少なくとも部分的に、これらの低分子量化合物を、CNVの進行及び血管形成(抗血管形成ではない)VEGFの発現を阻害するために局所的に使用することができるという驚くべき知見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様において、本発明は、Xが、CF
3、メチル、Cl又はシクロプロピルであり、且つn=1又は2であるとするとき、式(I)の化合物:
【化1】
又はその、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物若しくはプロドラッグ、を提供する。
【0014】
本発明はまた、眼血管新生の治療又は予防に使用するための式(I)の化合物を提供する。
【0015】
式(I)の化合物及びその、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物又はプロドラッグは、それ自体が化合物として新規であり(同様に、本明細書に記載の予防及び治療におけるそれらの使用)、それらは本発明の一態様を構成するものである。
【0016】
本発明で使用される化合物は、サイズ、厚さ、内容物及び機能の点でヒトの眼と同様の特性を有する動物からの眼において、眼血管新生の有効な治療又は予防、或いは眼血管新生の局所治療又は予防を可能にする眼全体への透過性を有することは驚くべきことであり予想外である。
【0017】
新規化合物を含む医薬組成物、及び新規化合物及びそれらを含む医薬組成物の、抗透過性及び/又は抗血管形成治療(異常又は過剰な眼血管形成又は透過性によって特徴付けられる障害及び疾患の治療及び予防を含む)、眼透過性亢進障害の治療、眼神経障害及び神経変性障害の治療、眼上皮変性障害の治療における使用は、本発明のさらなる態様を構成している。
【0018】
したがって、本発明は、(i)本明細書で定義された異常又は過剰な眼血管形成によって特徴付けられる障害及び疾患を治療又は予防する方法;(ii)本明細書で定義された眼透過性亢進障害を治療又は予防する方法;(iii)本明細書で定義された眼神経変性障害を治療又は予防する方法;(iv)及び眼上皮変性障害を治療又は予防する方法であって;式(I)の化合物を、それを必要としている患者へ投薬することを含む方法も提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法のいずれかについて、式(I)の化合物は、それを必要とする患者に治療有効量で投薬される。
【0019】
式(I)の特定の化合物及び式(I)の化合物の好ましい例示的なサブクラスは、本発明における使用のために特に言及され得る。
【0020】
言及され得る式(I)の化合物の例には、
n=1であり、且つXはCF3、又はClであるもの;及び
n=2であり、且つXはCF3、又はClであるものが含まれる。
【0021】
本発明の化合物は、SRPK1特異的阻害剤であり、したがって、SRPK1が関与する眼の任意の疾患又は状態を治療又は予防する方法において使用され得る。そのような状態及び治療を、次に説明する。
【0022】
抗血管形成治療
本発明の化合物は、眼の抗血管形成治療において使用され得る。抗血管形成治療は、好ましくは、異常な血管形成又は血管新生促進性VEGFアイソフォーム(VEGFxxx)の異常な生産過剰に関連する任意の疾患又は障害の治療又は予防を含む。このような疾患及び障害としては、例えば、糖尿病性網膜症、トラコーマ、水晶体後過形成(retrolental hyperplasia)、血管新生緑内障、加齢黄斑変性、血管腫、眼損傷又は感染に伴う角膜血管形成、増殖性糖尿病性網膜症が挙げられる。また、本発明による抗血管形成治療は、例えば美容目的の血管発達を抑制するために健常者に行われる非治療的な処置を含んでもよい。異常な血管形成に関連する疾患及び障害、並びに抗血管新生治療に関するさらなる詳細については、その内容は参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/110777号パンフレットを参照のこと。
【0023】
特に、本発明の化合物は、網膜血管新生又は脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜症又は加齢黄斑変性を含み得るがこれらに限定されない、眼血管新生の治療又は予防に使用され得る。さらに、本発明の化合物は、悪性眼新生物又は癌、例えばブドウ膜メラノーマの治療又は予防に使用することができる。
【0024】
微小血管透過性亢進障害、上皮細胞生存性の障害
SRPK1阻害剤としての本発明の化合物は、選択的スプライシングされたVEGFxxxbアイソフォームが関与している他の疾患の治療における治療薬としても使用され得る。例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2010/058227号パンフレットにおいて、VEGFxxxbは、様々な微小血管透過性亢進障害、上皮細胞生存性の障害、上皮濾過膜のフェネストレーション(fenestrations)の障害に対して活性であることが示されている。
【0025】
微小血管透過性亢進、VEGFxxxアイソフォームの血管新生促進性透過性促進性の調節障害、上皮細胞生存性及び透過性の障害、及び/又は上皮濾過膜のフェネストレーションの性質(例えば数密度及び/又はサイズ)の障害は、多数の重大な眼疾患の根底にある。
【0026】
そのような状態の例には、例えば、増殖性及び非増殖性の糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、滲出性加齢黄斑変性及び網膜静脈閉塞症(中心及び分枝)が含まれる。
【0027】
上皮細胞生存性を支援する治療が有効であろう障害の例は、以下の通りである。
【0028】
加齢黄斑変性(AMD)(ウェット型又はドライ型)、中心性漿液性脈絡網膜症、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、増殖性糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、虹彩血管新生、未熟児網膜症、中心及び分枝網膜静脈閉塞症、炎症性/感染性網膜血管新生/浮腫(例えば、後部ブドウ膜炎、サルコイド、トキソプラズマ症、ヒストプラズマ症、Vogt-小柳-原田(Vogt-Koyanagi-Harada)疾患、慢性ブドウ膜炎、結核、梅毒、点状及び多発性内膜症)、網膜芽腫、眼メラノーマ、眼腫瘍、網膜剥離、近視性血管新生、アンギオドストリーク、イールズ(Eales)疾患、虚血性網膜症(網膜動脈閉塞症、高安症(Takayasu’s)、頸動脈閉塞症)、脈絡膜破裂又はそれらの任意の組合せ。最も好ましい実施形態において、目の奥の状態は、加齢黄斑変性(AMD)である。
【0029】
本発明は、黄斑ジストロフィーの治療において使用され得る。これには、以下のものが含まれる。スターガート(Stargardt)疾患/眼底黄点症;スターガート様黄斑ジストロフィー;常染色体優性「ブルアイ」黄斑ジストロフィー;ベスト(Best)黄斑ジストロフィー;成人卵黄様ジストロフィー;パターン(Pattern)ジストロフィー;ドイン(Doyne)ハニカム網膜ジストロフィー;ノースカロライナ(North Carolina)黄斑ジストロフィー;MCDR1類似の常染色体優性黄斑ジストロフィー;難聴を伴うノースカロライナ様黄斑ジストロフィー;進行性二焦点脈絡膜萎縮;ソースビー(Sorsby)眼底ジストロフィー;中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィー;優性嚢胞様黄斑ジストロフィー;若年網膜隔離症;オカルト(Occult)黄斑ジストロフィー;非家系性オカルト黄斑ジストロフィー。
【0030】
障害は、特に、網膜上皮の障害、例えば、地図状萎縮、又は加齢黄斑変性であり得る。
微小血管透過性亢進障害、上皮細胞生存性の障害、上皮濾過膜のフェネストレーションの障害、及びそれらの治療に関するさらなる詳細については、その内容は参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2010/058227号パンフレットを参照のこと。
【0031】
活性化合物
本発明の化合物は、式(I)で定義されたとおりであり、キナーゼSRPK1の阻害剤であることが示されており、したがって、VEGFxxxb及び/又はSRPK1が関与していることが示されている本明細書に記載の疾患の治療において有用である。本発明の化合物は、SRPK1特異的阻害剤であり得る。
【0032】
本発明の化合物は、任意の公知の方法によって合成され得る。例示的な合成法は、以下の実施例に記載されている。
【0033】
同時投薬
本発明の化合物は、所望であれば、1つ又は複数の追加の活性剤、例えば、限定されないが、コリンエステラーゼ阻害剤、ドーパミンアゴニスト(例えばL-ドーパ)、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤、抗コリン剤、アセチルコリンアゴニスト、セロトニンアゴニスト、AMPA受容体アゴニスト、GABA受容体アゴニスト、NMDA受容体アゴニスト、b-アドレノセプターアゴニスト、ジゴキシン、ドブタミン、抗炎症剤、神経栄養因子、スタチン、アデノシンA2a受容体アンタゴニスト、アルドース還元酵素阻害剤、免疫調節剤、カンナビノイドアゴニスト、インターフェロン又は三環系抗鬱剤から選択される1つ又は複数の薬剤と一緒に投薬されてもよい。
【0034】
定義
本明細書における式(I)の定義において、
「塩」は、本発明による化合物によって形成される医薬的に許容される塩である限り、特に限定されない。このような塩としては、例えば、無機酸塩、有機酸塩、無機塩基塩、有機塩基塩、及び酸性又は塩基性アミノ酸塩が挙げられる。好ましい無機酸塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、及びリン酸塩が挙げられる。好ましい有機酸塩の例としては、酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、及びp-トルエンスルホン酸塩が挙げられる。
【0035】
好ましい無機塩基塩の例としては、ナトリウム塩及びカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩;並びにアンモニウム塩が挙げられる。好ましい有機塩基塩の例としては、ジエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩が挙げられる。
【0036】
好ましい酸性アミノ酸塩の例としては、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩が挙げられる。好ましい塩基性アミノ酸塩の例としては、アルギニン塩、リジン塩及びオルニチン塩が挙げられる。
【0037】
空気中に放置すると、本発明の化合物は、水分を吸収することがあり、吸収した水分に付着したり、水和物に変換されたりすることがある。いくつかの実施形態において、水和物は半水和物を含み得る。そのような水和物も本発明に含まれる。
【0038】
さらに、本発明の化合物は、いくつかの他の溶媒を吸収して、溶媒和物に変換されることがある。そのような溶媒和物もまた本発明に含まれる。
【0039】
本発明の化合物の溶媒和物を調製するためには、原則として任意の有機溶媒は使用され得る。
【0040】
溶媒和物は、1種又は複数種の有機溶媒と一緒に水も含むことができる。
【0041】
したがって、例えば、溶媒は、ケトン、アルコール、エーテル、エステル、芳香族溶媒、及び可能であれば、それらの相互の混合物、他の有機溶媒及び/又は水との混合物から選択され得る。
【0042】
式(I)の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグの形態は、本発明において使用され得る。「薬学的に許容されるプロドラッグ」とは、正常な医学的及び獣医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずにヒト及び下等動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に相応し、その意図する使用に対して有効な化合物のプロドラッグ、並びに可能であればその化合物の双性イオン形態が意味される。「プロドラッグ」という用語は、例えば血中での加水分解によって、インビボで急速に変換され、上記式の親化合物が得られる化合物を意味する。代謝切断によって、インビボで迅速に変換され得る官能基は、カルボキシル基と反応性のある基の分類を形成する。化合物の代謝切断可能な基がインビボで切断されることが容易であるため、そのような基を有する化合物はプロドラッグとして作用する。プロドラッグに関する徹底的な考察は、参照により本明細書に組み込まれる、以下に提供される:Design of Prodrugs,H.Bundgaard,ed.,Elsevier,1985;Methods in Enzymology,K.Widder et al,Ed.,Academic Press,42,p.309-396,1985;A Textbook of Drug Design and Development,Krogsgaard-Larsen and H.Bundgaard,ed.,Chapter 5;Design and Applications of Prodrugs p.113-191,1991;Advanced Drug Delivery Reviews,H.Bundgard,8,p.l-38,1992;Journal of Pharmaceutical Sciences,77,p.285,1988;Chem.Pharm.Bull.,N.Nakeya et al,32,p.692,1984;Pro-drugs as Novel Delivery Systems,T.Higuchi and V.Stella,Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series,and Bioreversible Carriers in Drug Design,Edward B.Roche,ed.,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987。
【0043】
組成物及び投薬
本発明による化合物は、活性剤及び任意の適切な追加成分を含む組成物の形態で投薬され得る。組成物は、例えば、好適には局所投薬用(例えば、点眼薬又はクリーム若しくはローションとして)の医薬組成物(メディカメント)であり得る。
【0044】
本発明に関連する「医薬組成物」又は「メディカメント」という用語は、活性剤を含み、さらに1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含む組成物を意味する。組成物は、投薬及び投与形態の性質に応じて、例えば、希釈剤、アジュバント、賦形剤、ビヒクル、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、香料、調香剤、抗菌剤、抗真菌剤、潤滑剤及び分散剤から選択される成分をさらに含んでもよい。組成物は、例えば、懸濁液、散剤、乳剤、溶液、カシェ剤、顆粒剤及びリポソーム製剤を含む液体製剤の形態であってよい。技術及び製剤は一般に、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,Easton,PA,latest editionに見られ得る。
【0045】
液体形態の製剤には、溶液、懸濁液、及びエマルションが含まれる。例として、局所投薬用の水又は水-プロピレングリコール溶液は挙げられ得る。液体製剤は、ポリエチレングリコール水溶液中に溶液で配合することもできる。
【0046】
また、使用直前に局所投薬のための液体形態製剤に変換することを意図した固体形態製剤も含まれる。そのような液体形態には、溶液、懸濁液、及びエマルションが含まれる。これらの特定の固体形態製剤は、単位投与形態で提供されるのが最も便利であり、そのようなものとして、単一液体投与単位を提供するために使用される。或いは、液体形態への変換後、注射器、ティースプーン、又は他の容量容器若しくは器具を用いるように液体形態製剤の所定の容量を測定することによって、複数の個々の液体投与を得ることができるように、十分な固体が提供されてもよい。液体形態に変換されることを意図した固体形態製剤は、活性材に加えて、香料、着色剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含んでもよい。液体形態製剤を調製するために利用される液体は、水、等張水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコールなど、並びにそれらの混合物であってよい。
【0047】
組成物は、局所適用を意図した製剤であってもよい。製剤は、局所適用後の活性剤の放出、従って利用可能性を制御するためのゲル化製剤であってもよい。製剤は、1つ又は複数のゲル化剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んでもよい。製剤は、1つ又は複数の界面活性剤、例えば非イオン性液体ポリマーを含んでもよく、その例としては、Tyloxapol、及びBASFからのPluronics(登録商標)ポロキサマーが挙げられる。製剤は、1つ又は複数の可溶化剤、例えばブドウ糖又はソルビトールを含んでもよい。製剤は、1つ又は複数の抗菌剤若しくは防腐剤、例えば塩化ベンザルコニウムを含んでもよい。前述のゲル化剤、界面活性剤、可溶化剤及び抗菌剤は、純粋に例として挙げられたものであり、これらの機能を果たす他の薬剤が知られていることは理解されよう。
【0048】
活性剤(例えば、式(I)の化合物)の投与は、患者の要求、状態の性質、重症度及び程度、患者の年齢及び状態、使用される化合物、並びに当業者に公知の他の因子に応じて変化させてもよい。
【0049】
いくつかの例において、治療は、化合物の最適投与量より少ない投与量で開始される。その後、状況下で最適な効果に達するまで、投与量を少量ずつ増加させる。便宜上、1日の総投与量は、所望により日中に分割して投与してよい。例えば、1日の総投与量は、1日の間に2回、3回又は4回に分けて投薬されてよい。1日の総投与量は、1日~14日の範囲の投与期間、又は必要に応じてそれ以上の投与期間で投薬されてよい。例えば、慢性眼障害の長期治療の場合、1日の総投与量は、少なくとも2年、例えば少なくとも3年、例えば少なくとも4年、例えば少なくとも5年、例えば少なくとも10年、例えば少なくとも15年、例えば少なくとも20年の投与期間にわたって投薬されてもよい。
【0050】
活性剤の投薬のための投与レジメンは、例えば、活性剤の最大30mg、例えば最大20mg、例えば最大10mg、例えば最大500μg、例えば最大400μg、例えば最大300μg、例えば最大200μg、例えば最大100μg、例えば最大50μg、例えば最大20μg、例えば10μgの1日の総投与量を含み得る。
【0051】
活性剤の投薬のための投与レジメンは、例えば、活性剤の少なくとも10μg、例えば少なくとも20μg、例えば少なくとも50μg、例えば少なくとも60μg、例えば少なくとも100μg、例えば少なくとも200μg、例えば少なくとも300μg、例えば少なくとも400μg、例えば少なくとも500μg、例えば少なくとも1mg、例えば少なくとも10mg、例えば少なくとも20mg、例えば少なくとも30mgの1日の総投与量を含み得る。
【0052】
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物若しくはプロドラッグは、治療有効量で投薬されてよい。本明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、治療される疾患又は障害の症状の緩和が含まれる、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医が求める組織系、動物又はヒトにおける生物学的又は薬学的反応を引き出す活性化合物又は医薬剤の量を意味する。
【0053】
CNVの治療のための局所投薬のための式(I)の化合物の治療有効量は、少なくとも約5μg/送達ビヒクル10μLであってよい。或いは、治療有効量は、少なくとも約100μg/mL、例えば少なくとも約200μg/mL、少なくとも約300μg/mL、少なくとも約400μg/mL、少なくとも約500μg/mL、少なくとも約600μg/mL、少なくとも約700μg/mL、少なくとも約800μg/mL、少なくとも約900μg/mL、又は少なくとも約1000μg/mLであってよい。或いは、治療有効量は、少なくとも約1mg/mL、例えば少なくとも約1.5mg/mL、例えば少なくとも約2mg/mL、少なくとも約3mg/mL、少なくとも約4mg/mL、少なくとも約5mg/mLであってよい。或いは、治療有効量は、約5mg/mL未満、例えば約4mg/mL未満、約3mg/mL未満、約2mg/mL未満、約1.5mg/mL未満、約1mg/mL未満であってよい。治療有効量は、例えば1~14日の範囲の投与期間、毎日投薬されてよい。治療有効量は、例えば慢性眼障害の長期的治療において、生涯にわたって毎日投薬されてよい。治療有効量は、例えば1日2回又は1日4回など、1日の間に分割して投薬され得る1日の総投与量であってもよい。
【0054】
「治療又は予防」
本明細書で使用される「治療又は予防」という表現及び類似の用語は、一般的な医学及び精神医学の実践に従って利用可能な検査のいずれかに従って判断される、予防、治癒及び緩和ケアを含む、障害の除去又は回避、或いはその症状の緩和を意図した全ての形態の医療を指す。特定の結果を得るために合理的な期待を持って行うが、常にそうなるとは限らない介入は、「治療又は予防」という表現に含まれる。障害の進行を遅らせたり止めたりすることに成功した介入は、「治療又は予防」という表現に含まれる。
【0055】
本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「治療する」、「治療」などの用語は、疾患、状態、又は障害と闘う目的で、被験者又は患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトの管理及びケアを含み、症状又は合併症の発症を予防する、症状又は合併症を緩和する、疾患又は障害の進行を遅くする、或いは疾患、状態、又は障害を除去するための本発明の化合物の投薬が含まれる。「治療する」又は「治療」という用語は、(a)疾患状態を抑制すること、すなわち、その発症を阻止すること、及び/又は(b)疾患状態を緩和すること、すなわち疾患状態の退行を引き起こすことをさらに含む。
【0056】
本明細書で使用する場合、「予防」は、臨床的な疾患状態の発生の確率を低減することを目的とした、哺乳動物、特にヒトにおける不顕性疾患状態の予防治療を含む。患者は、一般集団と比較して臨床的な疾患状態に罹患するリスクを高めることが知られている因子に基づいて、予防治療のために選択される。
本明細書で使用する場合、「予防法(prophylaxis)」は、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の少なくとも1つの治療有効量を患者に投薬することによって、疾患状態のリスクを低減及び/又は最小化するため、及び/又は再発のリスクを低減するための疾患状態の保護治療である。患者は、一般集団と比較して臨床的な疾患状態に罹患するリスクを高めることが知られている要因に基づいて、予防法治療のために選択され得る。予防法治療の場合、臨床的な疾患状態の条件は、まだ提示されていなくてもよい。「予防法」治療は、(a)一次予防法と、(b)二次予防法とに分けられる。一次予防法は、臨床的な疾患状態をまだ呈していない患者において、疾患状態のリスクを低減又は最小化する治療として定義されるのに対して、二次予防は、同一又は類似の臨床的な疾患状態の再発又は二度目の発生のリスクを最小化又は低減する治療として定義される。
【0057】
「罹患しやすい(Susceptible to)」
本明細書で使用される「罹患しやすい」という表現、及び類似の用語は、特に、個体又は障害に関する既知のリスク因子を用いて評価した、医学的又は精神医学的障害、又は人格変化を発症するリスクが通常よりも高い個体を指す。そのような個体は、例えば、薬物が処方され、及び/又は特別な食事、ライフスタイル若しくは同様の推奨がその個体に対してなされる程度に、1つ又は複数の特定の障害又は人格変化を発症する実質的なリスクを有するものとして分類され得る。
【0058】
哺乳類
本発明は、ヒトの治療に有用である以外に、様々な哺乳動物にも有用である。そのような哺乳類には、例えば動物園にいる非ヒト霊長類(例えばサル(apes)、サル(monkeys)及びキツネザル)、ネコ又はイヌのような伴侶動物、イヌ、ウマ及びポニーのような作業及びスポーツ動物、農場動物、例えばブタ、ヒツジ、ヤギ、シカ、ウシ(oxen)及びウシ(cattle)、並びに齧歯動物(例えばウサギ、ラット、マウス、ハムスター、スナネズミ又はモルモット)などの実験動物が含まれる。
【0059】
治療すべき障害又は機能がヒトに限定される場合、治療すべき哺乳類はヒトであると理解されるであろう。治療すべき障害又は機能がその種に排他的である場合、他の哺乳類種にもそれぞれ同じことが当てはまる。
【0060】
本発明の実施形態は、純粋に例示として、添付の図面を参照することによって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】眼の透過性の項で説明した方法によって測定された、化合物1及び他の化合物の透過性を示す。
【
図2】メラニンに結合していない化合物の量を示す。
【
図3a】化学的に類似した化合物(N-(2-(4-((1H-ピラゾール-3-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)-フェニル)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フラン-2-カルボキサミド、化合物Rと呼ぶ)及びパゾパニブと比較した網膜への化合物1の浸透を示す。
【
図3b】種々の眼組織を通しての化合物1の分配を示す。
【
図4】化合物1、化合物R及びSPHINX31(国際公開第2015/159103号パンフレット)に関するex vivo透過性と網膜に見出される化合物の量との間の関係を示す。
【
図5】ELISAから、化合物1が選択的スプライシングをスイッチングして、網膜色素上皮細胞株のVEGF-A
165aアイソフォームの発現を減少させることを示す。
【
図6a】ウェスタンブロット(Western blot)によって測定した糖尿病ラットのVEGF発現に対する化合物1の28日間の隔日点眼の結果を示す。
【
図6c】VEGF-A
165bが増加したことを示す。
【
図6d】総VEGFに対するVEGF-A
165bの割合が化合物1によって増加したことを示す。
【
図7b】CNVのレーザー誘発マウスモデルにおいて、化合物1が参照化合物と同じ病変サイズに対する抗血管形成活性を有することを実証する同一データをグラフ化して示す。
【
図8a】3週間、0.5mg/mL、1.0mg/mL及び1.5mg/mLの点眼によって隔日治療されたカニクイザルの網膜に認められた化合物1の量を示す。
【
図8b】眼内の異なる組織における化合物1の量を示す色強度である。
【
図9】異なる投与量で化合物1を単回点眼した後の水中における化合物1の濃度を示す。
【
図10a】点眼薬として化合物1によって治療したサルにおいて網膜のVEGFレベルが変化することを示す(上:Pan VEGF-A
165、下:VEGF-A
165b)。
【
図10b】各ブロットの未治療の平均値に対するウェスタンブロットのバンドの強度を示す(治療、群あたりN=3、群あたりN=6個の眼、未治療N=6匹、N=12個の眼、平均±SEM)、(Two-Way ANOVA p<0.001、FDRのポストホックBKYテスト
**=p<0.01、
***=p<0.001 VEGF165bと比較、##=p<0.01,###=p<0.001 未治療と比較)。
【
図10c】各試料のpanVEGF対VEGF
365bの比率を示し、減少は、血管形成の少ない状態へのスイッチである(One way ANOVA p<0.01、
**=p<0.01 未治療と比較)(Holm Sidak post hoc)。
【発明を実施するための形態】
【0062】
方法
合成
本発明の化合物は、当業者に公知の任意の合成方法、例えば国際公開第2015/159103号パンフレット及び国際公開第2017/064512号パンフレットに記載されたものに基づいて調製することができる。具体的には、化合物1~3は、以下の例示的な方法論に従って調製した。
【0063】
化合物1
tert-ブチル4-(2-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペラジン-1-カルボキシレート
【化2】
DMF(25mL)中のtert-ブチルピペラジン-1-カルボキシレート(2.90g、15.5mmol)、1-クロロ-2-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(3.99g、15.5mmol)、及び炭酸ナトリウム(4.10g、38.66mmol)の懸濁液を110℃で3時間加熱した。得られた反応混合物を室温まで冷却し、冷水(100mL)でクエンチし、酢酸エチル(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去して、表題の生成物をオレンジ色の液体として得た(5.4g、92%)、これは、全ての分析データが必要な構造に一致し、次のステップで使用するのに十分な純度であった。
【0064】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.41(s,9H),3.12-3.15(m,4H),3.45(br s,4H),7.45(d,J=8.8Hz,1H),7.89(dd,J=2,9.2Hz,1H),8.18(d,J=1.6Hz,1H);LCMS:[M+-56]320.01m/z、純度98.37%。
【0065】
tert-ブチル4-(2-アミノ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペラジン-1-カルボキシレート
【化3】
窒素雰囲気下、0℃の温度で、ヒドラジン水和物(17.87g、357.5mmol)を、メタノール(50mL)中のピペラジン(5.4g、14.3mmol)、塩化鉄(III)(0.46g、2.8mmol)及びチャコール(2.7g)の溶液に滴下して添加した。得られた反応混合物を還流温度まで1時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、セライトのショートパッドを通して濾過し、酢酸エチルで溶出させた。有機濾液を減圧下で濃縮した。残渣を水(50mL)で希釈し、酢酸エチル(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、無水Na
2SO
4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。得られた原材料をn-ペンタン(2×10mL)でトリチュレートして、表題の生成物をオフホワイトの固体として得た(3.5g、71%)。
【0066】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.42(s,9H),2.76-2.78(m,4H),3.50(br s,4H),5.23(br s,2H),6.82(dd,J=1.6,8Hz,1H),6.96-7.01(m,2H);LCMS:[M+-56]290.01m/z、純度98.80%。
【0067】
N-(2-(ピペラジン-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フラン-2-カルボキサミド
【化4】
窒素雰囲気下、0℃温度で、ジクロロメタン(8mL)中のtert-ブチル4-(2-アミノ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペラジン-1-カルボキシレート(2g、5.8mmol)溶液にトルエン中のトリメチルアルミニウムの2M溶液(8.7mL、17.37mmol)を滴下して添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌した後、メチルジクロロメタン(5mL)中の5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-2-フルオレート(1.22g、5.8mmol)の溶液を室温で滴下した。得られた反応溶液を室温でさらに15時間攪拌した。反応をクエンチするために、ロッシェル(Rochelle’s)塩の飽和水溶液を室温で滴下し、溶液を室温でさらに15分攪拌させた。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で希釈し、ジクロロメタンで抽出した(3回)。有機抽出物を組み合わせ、水及び塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去して、表題の生成物を淡黄色固体として得た(1.8g、73%)。
【0068】
1H-NMR(DMSO-d6)δ1.65-1.76(m,2H),1.94(dd,J=2,12.4Hz,2H),2.85-2.88(m,4H),2.97-2.99(m,4H),3.01-3.09(m,1H),3.45-3.51(m,2H),3.91-3.95(m,2H),6.46(dd,J=0.8,3.6Hz,1H),7.26(d,J=3.2Hz,1H),7.43-7.49(m,2H),8.56(d,J=2Hz,1H),9.45(s,1H);LCMS:[MH]+424.22m/z、純度43.56%。
【0069】
N-(2-(4-((1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フラン-2-カルボキサミド
【化5】
メタノール(5mL)中のピペラジン(0.10g、0.23mmol)、1-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボアルデヒド(0.026g、0.23mmol)の溶液を窒素雰囲気下、周囲温度で30分間攪拌した。次に、ナトリウムシアノボロヒドリド(0.44g、0.71mmol)を0℃で反応混合物中に数部分にわけて添加した。得られた反応混合物を室温で2時間撹拌させた。その後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液(20mL)で希釈し、酢酸エチル(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。得られた原材料を、水中10mM重炭酸アンモニウム及びアセトニトリルを移動相とする分取HPLCにより精製して、表題の生成物(化合物1)をオフホワイト固体として得た(0.05g、40.91%)。
【0070】
Mp:148~150°C;1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.71-1.82(m,2H),1.97-2.00(m,2H),2.65-2.67(m,4H),2.92(br s,4H),3.06-3.12(m,1H),3.47-3.54(m,4H),3.78(s,3H),3.98(d,J=9.6Hz,2H),6.15(s,1H),6.47(d,J=3.2Hz,1H),7.25(d,J=3.6Hz,1H),7.47(s,2H),7.62(s,1H),8.61(s,1H),9.47(s,1H).
HPLC純度:100%
MS(ESI-MS):m/z C26H31F3N5O3[MH]+に関する計算値:518.24、実測値:518.12
【0071】
化合物2
tert-ブチル4-(2-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1,4-ジアゼパン-1-カルボキシレート
【化6】
無水DMF(30mL)中の1-クロロ-2-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(2.25g、9.99mmol)、tert-ブチル1,4-ジアゼパン-1-カルボキシレート(2.0g、9.99mmol)及び固体炭酸ナトリウム(3.18g、29.96mmol)の懸濁液を110℃まで17時間加熱した。得られた反応混合物を室温まで冷却し、セライトのショートパッドを通して反応混合物を濾過し、酢酸エチルで溶出させた。有機濾液を減圧下で濃縮した。残渣を水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。得られた原材料を、溶出液として(ヘキサン中90%酢酸エチル)を用いたシリカ上でのカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題の生成物を淡黄色固体として得た(3.78g、97%)。
【0072】
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ1.12-1.20(m,9H),1.80(br s,2H),3.12-3.24(m,2H),3.30-3.38(m,2H,DMSOの残留水分に合体),3.50(t,J=6Hz,2H),3.61-3.69(m,2H),7.35-7.40(m,1H),7.72(d,J=8.8Hz,1H),8.02-8.03(m,1H);LCMS:[M
+-56]334.08m/z、純度100%。
1-(2-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1,4-ジアゼパン
【化7】
窒素雰囲気下、0℃の温度で、ジオキサン中の4 NHCl(25mL)を、ジオキサン(10mL)中のtert-ブチル4-(2-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1,4-ジアゼパン-1-カルボキシレート(3.78g、9.71mmol)の溶液に滴下して添加した。得られた反応混合物を室温で2時間攪拌した。反応完了後、反応混合物を重炭酸ナトリウムの飽和溶液(100mL)に注いだ。生成物を酢酸エチル(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、水及び塩水洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去して、表題の生成物をオレンジ色の液体として得(2.85g、定量的)、これをさらなる精製なしに次のステップで直接使用した。
【0073】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.79-1.81(m,2H),2.78(t,J=5.2Hz,2H),2.97(t,J=5.2Hz,2H),3.19(d,J=4.8Hz,2H),3.46(t,J=5.2Hz,2H),7.36(d,J=9.2Hz,1H),7.72(dd,J=2.4,9.2Hz,1H),8.04(d,J=1.6Hz,1H);LCMS:[MH]+289.96m/z、純度99.97%。
【0074】
1-((1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)メチル)-4-(2-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1,4-ジアゼパン
【化8】
1,2-ジクロロエタン(25mL)中の1-(2-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1,4-ジアゼパン(1.4g、4.84mmol)及び1-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボアルデヒド(5)(0.639g、5.81mmol)の溶液に硫酸ナトリウム(0.343g、2.42mmol)、続いて氷酢酸(0.581g、9.68mmol)を添加した。得られた反応混合物を窒素雰囲気下、周囲温度で3時間攪拌した。次に、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(1.54g、7.26mmol)を0℃の温度で反応混合物中に数部分にわけて添加した。得られた反応混合物を室温で4時間攪拌させた。その後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で希釈し、酢酸エチル(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。得られた原材料を、溶出液として(クロロホルム中4%メタノール)を用いたシリカ上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、表題の生成物をオレンジ色の液体として得た(1.80g、97%)。
【0075】
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ2.01(quin,J=5.2Hz,2H),2.74(t,J=5.2Hz,2H),2.84(t,J=4.8Hz,2H),3.37(t,J=5.6Hz,2H),3.47(t,J=4.4Hz,2H),3.67(s,2H),3.89(s,3H),6.17(d,J=2Hz,1H),7.01(d,J=9.2Hz,1H),7.31(d,J=2Hz,1H),7.56(dd,J=2,8.8Hz,1H),8.03(d,J=1.2Hz,1H);LCMS:[MH]+384.14m/z、純度99.35%。
【0076】
2-(4-((1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)メチル)-1,4-ジアゼパン-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)アニリン
【化9】
窒素雰囲気下、0℃の温度で、ヒドラジン水和物(5.88g、117.38mmol)を、メタノール(30mL)中の1-((1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)メチル)-4-(2-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1,4-ジアゼパン(1.80g、4.70mmol)、塩化鉄(III)(0.125g、0.94mmol)及びチャコール(0.2g)の溶液に滴下して添加した。得られた反応混合物を30分間還流温度まで加熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、セライトのショートパッドを通して濾過し、酢酸エチルで溶出させた。有機濾液を減圧下で濃縮した。残渣を水(50mL)で希釈し、酢酸エチル(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。得られた原材料を、溶出液として(クロロホルム中4%メタノール)を用いたシリカ上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、表題の生成物を無色液体として得た(1.4g、84%)。
【0077】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.81(quin,J=5.6Hz,2H),2.71-2.75(m,4H),3.01-3.07(m,4H),3.58(s,2H),3.77(s,3H),5.07(br s,2H),6.14(d,J=2Hz,1H),6.80(dd,J=1.6,8Hz,1H),6.93(d,J=2Hz,1H),7.04(d,J=8Hz,1H),7.58(d,J=2Hz,1H);LCMS:[MH]+354.22m/z、純度100%。
【0078】
N-(2-(4-((1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)メチル)-1,4-ジアゼパン-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フラン-2-カルボキサミド
【化10】
テトラヒドロフラン(8mL)中の2-(4-((1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)メチル)-1,4-ジアゼパン-1-イル)-5-(トリフルオロメチル)アニリン(0.2g、0.56mmol)及び5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-2-フロ酸(0.133g、0.67mmol)の溶液に、窒素雰囲気下、室温でトリエチルアミン(0.114g、1.13mmol)及びT
3P(0.179g、0.56mmol)を添加した。得られた反応混合物を還流温度まで4時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。有機溶媒を減圧下で除去した。得られた原材料を、イソプロピルアルコール:メタノール(70:30)及びn-ヘプタンを移動相とする分取HPLCにより精製して、表題の生成物(化合物2)を茶色の半固体として得た(0.059g、19.61%)。
【0079】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.64-1.74(m,2H),1.90-1.93(m,4H),2.77-2.79(m,4H),2.98-3.04(m,1H),3.13-3.16(m,4H),3.42-3.47(m,2H),3.58(s,2H),3.77(s,3H),3.91(d,J=9.6Hz,2H),6.13(d,J=2Hz,1H),6.43(d,J=3.2Hz,1H),7.24(d,J=3.6Hz,1H),7.38-7.46(m,2H),7.59(d,J=1.6Hz,1H),8.35(s,1H),9.55(s,1H).
HPLC純度:100%
MS(ESI-MS):m/z C27H33F3N5O3[MH]+に関する計算値:532.25、実測値:532.08
【0080】
化合物3
tert-ブチル4-(4-クロロ-2-ニトロフェニル)-1,4-ジアゼパン-1-カルボキシレート
【化11】
無水DMF(30mL)中の1-ブロモ-4-クロロ-2-ニトロベンゼン(2.36g、9.98mmol)、tert-ブチル1,4-ジアゼパン-1-カルボキシレート(2.0g、9.98mmol)及び固体炭酸ナトリウム(4.14g、29.94mmol)の懸濁液を110℃まで17時間加熱した。得られた反応混合物を室温まで冷却し、セライトのショートパッドを通して反応混合物を濾過し、酢酸エチルで溶出させた。有機濾液を減圧下で濃縮した。残渣を水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。得られた原材料を、溶出液として(100%クロロホルム)を用いたシリカ上でのカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題の生成物をオレンジ色の液体として得た(3.20g、57%)。
【0081】
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ1.39-1.48(m,9H),1.95(br s,2H),3.21-3.43(m,4H),3.51-3.57(m,4H),7.10(d,J=8.8Hz,1H),7.37(dd,J=2.8,9.2Hz,1H),7.69(d,J=2.8Hz,1H);LCMS:[M+-56]299.87m/z、純度100%。
【0082】
1-(4-クロロ-2-ニトロフェニル)-1,4-ジアゼパン
【化12】
窒素雰囲気下、0℃の温度で、ジオキサン(20mL)中の4N HClを、ジオキサン(10mL)中のtert-ブチル4-(4-クロロ-2-ニトロフェニル)-1,4-ジアゼパン-1-カルボキシレート(2.20g、6.18mmol)溶液に滴下して添加した。得られた反応混合物を室温で15時間攪拌した。反応完了後、反応混合物を重炭酸ナトリウムの飽和溶液(100mL)に注ぎ、酢酸エチル(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、水及び塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去して、表題の生成物を黄色固体として得(1.7g、定量的)、これをさらなる精製なしに次のステップで直接使用した。
【0083】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ2.73(t,J=5.2Hz,2H),2.88(t,J=4.8Hz,2H),3.10(t,J=4.8Hz,2H),3.36(t,J=5.6Hz,2H),7.23(d,J=9.6Hz,1H),7.49(dd,J=2.8,9.2Hz,1H),7.79(d,J=2.8Hz,1H);LCMS:[MH]+255.96m/z、純度100%。
【0084】
1-(4-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-((1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)メチル)-1,4-ジアゼパン
【化13】
1,2-ジクロロエタン(12mL)中の1-(4-クロロ-2-ニトロフェニル)-1,4-ジアゼパン(0.5g、1.96mmol)及び1-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボアルデヒド(0.258g、2.35mmol)の溶液に、室温で硫酸ナトリウム(0.138g、0.97mmol)、続いて氷酢酸(0.234g、3.91mmol)を添加した。得られた反応混合物を窒素雰囲気下、周囲温度で6時間攪拌した。次に、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(0.621g、2.93mmol)を0℃の温度で反応混合物に数部分にわけて添加した。得られた反応混合物を室温で17時間攪拌させた後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で希釈し、酢酸エチル(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。得られた原材料を、溶出液として(クロロホルム中2%メタノール)を用いたシリカ上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、表題の生成物をオレンジ色の液体として得た(0.78g、定量的)。
【0085】
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ1.70(br s,2H),3.10(br s,4H),3.27-3.30(m,4H),3.92(s,3H),3.97(br s,2H),6.46(br s,1H),7.09(d,J=9.2Hz,1H),7.38-7.45(m,2H),7.70-7.72(m,1H);LCMS:[MH]+350.03
m/z、純度98.32%。
【0086】
5-クロロ-2-(4-((1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)メチル)-1,4-ジアゼパン-1-イル)アニリン
【化14】
窒素雰囲気下、0℃の温度で、ヒドラジン水和物(2.79g、55.74mmol)を、メタノール(30mL)中の1-(4-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-((1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)メチル)-1,4-ジアゼパン(0.78g、2.23mmol)、塩化鉄(III)(0.072g、0.44mmol)及びチャコール(0.1g)の溶液に数回に分けて添加した。得られた反応混合物を30分間還流温度まで加熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、セライトのショートパッドを通して濾過し、酢酸エチルで溶出させた。有機濾液を減圧下で濃縮した。残渣を水(50mL)で希釈し、酢酸エチル(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。得られた原材料を、溶出液として(クロロホルム中2%メタノール)を用いたシリカ上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、表題の生成物を薄茶色の液体として得た(0.5g、70%)。
【0087】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.82(br s,2H),2.78(br s,4H),2.96(t,J=5.6Hz,4H),3.64(br s,2H),3.78(s,3H),5.03(br s,2H),6.18(br s,1H),6.48(d,J=2.4,8.4Hz,1H),6.65(d,J=2.4Hz,1H),6.90(d,J=8.4Hz,1H),7.61(br s,1H);LCMS:[MH]+320.07m/z、純度100%。
【0088】
N-(5-クロロ-2-(4-((1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)メチル)-1,4-ジアゼパン-1-イル)フェニル)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フラン-2-カルボキサミド
【化15】
窒素雰囲気下、0℃の温度で、ジクロロメタン(8mL)中の5-クロロ-2-(4-((1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)メチル)-1,4-ジアゼパン-1-イル)アニリン(0.2g、0.62mmol)溶液にトルエン中のトリメチルアルミニウム(0.93mL、1.88mmol)の2.0M溶液を滴下して添加した。この混合物を室温で1時間攪拌した後、ジクロロメタン(3mL)中のメチル5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-2-フロエート(0.131g、0.62mmol)の溶液を室温、窒素雰囲気下に滴下して添加した。得られた反応混合物を室温で21時間攪拌した。得られた反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)で希釈し、ジクロロメタン(3回)で抽出した。有機抽出物を組み合わせ、塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。得られた原材料を、水中0.1%ギ酸及びアセトニトリルを移動相とする分取HPLCにより精製して、表題の生成物(化合物3)を茶色固体として得た(0.035g、11.24%)。
【0089】
Mp:148~150℃;1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.67-1.71(m,2H),1.87-1.93(m,4H),2.76(br s,2H),2.83(t,J=5.6Hz,2H),3.01-3.04(m,5H),3.44(td,J=8,11.6Hz,2H),3.60(br s,2H),3.77(s,3H),3.91(dd,J=2,11.6Hz,2H),6.14(d,J=2Hz,1H),6.44(dd,J=0.8,3.6Hz,1H),7.13(dd,J=2.8,8.4Hz,1H),7.23(d,J=3.6Hz,1H),7.33(d,J=8.8Hz,1H),7.60(d,J=2Hz,1H),8.29(d,J=2.4Hz,1H),9.61(s,1H).
HPLC純度:98.70%
MS(ESI-MS):m/z C26H33ClN5O3[MH]+に関する計算値:498.23、実測値:498.12
【0090】
インビトロキナーゼアッセイ
キナーゼアッセイは、33P ATPを用いた放射性フィルター結合アッセイを用いてMRC Dundee Kinase Centreによって実施された(Hastie,et al 2006.Nat Protoc.2006;1(2):968-71;Bain,et al 2007.Biochem J.2007 Dec 15;408(3):297-315)。
【0091】
インビボ血管形成アッセイ:レーザー誘発脈絡膜血管新生(CNV)プロトコル
50mg/kgのケタミン及び0.5mg/kgのメデトミジンの混合物の腹腔内注射によって、6~8週齢の雌のC57/B6マウスに麻酔をかけた。5%塩酸フェニレフリン及び1%トロピカミドなどの散大剤を局所(点眼)適用することによって、瞳孔を直ちに散大させた。緑色Merilas532αレーザー(450mW、130ms)を用いて、各眼で1~2乳頭径の距離で、乳頭周囲分布において血管のないクリアスペースの「大きな」網膜血管の間に4つの光凝固病変が見られた。治療時に網膜下気泡のあるクリーンなレーザー病変のみが研究に含まれた。レーザー光凝固直後、動物に2μg/mL、0.2μg/mL、0.066μg/mLの候補化合物、又は点眼製剤対照を表示通りに1日2回、局所点眼した(10μL、動物が液滴を拭き取らないよう30秒間眼を固定)。PBS中1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.2%チロキサポール、3.4%デキストロース、0.006%塩化ベンザルコニウム及び0.025%エチレンジアミンテトラ酢酸と、1%DMSOとを含有する初期眼製剤によって実験を実行し、そしてPBS中7%ポリオキシル40ステアレート及び4%デキストロースを含有する第2の点眼製剤でデータを確認した。
【0092】
1週間後、50mg/kgのケタミン及び0.5mg/kgのメデトミジンの混合物の腹腔内注射によってマウスに麻酔をかけた。5%塩酸フェニレフリン及び1%トロピカミドなどの散大剤を局所(点眼)適用することによって、瞳孔を直ちに散大させた。マウスにナトリウムフルオレセイン(10%)の腹腔内注射を行った。血管造影顕微鏡及びカメラを用いて、各病巣に焦点を合わせた位相差及び緑色蛍光眼底画像を撮影した。マウスをスケジュール1法で死亡させ、網膜剥離及びタンパク質抽出のために眼を未固定にするか、又は固定して核摘出を行い、脈絡膜を染色して検査した。
【0093】
VEGF165a捕捉抗体によるVEGF ELISA
96ウェルクリアマイクロプレート(高感度サーモイミュロン又はコスター9018)に、1ウェルあたり10μg/mのLVEGFxxxb又は0.25μg/mLの抗hVEGF165aを100μLコーティングした。プレートをパラフィルムで密封し、室温のシェーカー上で一晩インキュベートした。各ウェルを吸引し、洗浄緩衝液(200μL PBS-Tween 0.05%)で2回、合計3回洗浄を行った。最後の洗浄後、プレートを反転させ、清潔なペーパータオルにブロッティングすることにより、残った洗浄緩衝液を除去した。各ウェルに100μLの試薬希釈液(1% BSA/PBS)を添加することによってプレートをブロッキングし、室温で2時間、シェーカーでインキュベートした。吸引/洗浄を繰り返した。各ウェルに1%BSA/PBS中の標準品又は試料100μLを添加し、パラフィルムで覆い、室温で2時間インキュベートした。吸引/洗浄を繰り返し、試薬希釈液で希釈した100ng/mLの検出抗体(BAF293)100μLを各ウェルに添加し、これをパラフィルムで覆い、室温で2時間インキュベートした。吸引/洗浄を繰り返し、Streptavidin-HRPの作用希釈液(1:200希釈)100μLを各ウェルに添加した。プレートを覆い、室温で30分間インキュベートした。プレートを洗浄し、100μLの基質溶液(DY999からの1:1のA:B)を各ウェルに添加し、室温で20~60分間インキュベートした。50μLの停止溶液(1M HCl)を各ウェルに添加した。450nmに設定したマイクロプレートリーダーを用いて、各ウェルの光学密度を直ちに測定した。
【0094】
メラニン結合アッセイ
1%DMSOを含むPBS中の1μg/mLの試験化合物を、1mg/mLのメラニンと一緒に37℃で1時間インキュベートした。次に、溶液を15kgで15分間回転させ、上清を回収し、化合物をメタノール中に抽出した。その後、質量分析に供し、定量した。
【0095】
ウサギ薬物動態試験
PBS中1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.2%チロキサポール、3.4%デキストロース、0.006%塩化ベンザルコニウム及び0.025%エチレンジアミンテトラ酢酸と、1%DMSOとを含有する初期点眼製剤中80μg/ml(最大溶解度限界)のパゾパニブ及び500μg/mLの化合物Rの単回50μL点眼によって、又はPBS中7%ポリオキシル40ステアレート及び4%デキストロースを含有する点眼製剤中500μg/mLの化合物1の単回50μL点眼によってウサギを治療した。別々の試験で点眼製剤間の差異は確認されなかった。点眼後、指示された時点でウサギを死亡させ、採血、採眼し、網膜を脈絡膜及び強膜から剥離し、切開し、平らに置いた。網膜、RPE/脈絡膜及び強膜の眼区画を7つの異なる領域に分解した。全ての試料の重量を測定した。網膜及び脈絡膜/強膜試料、並びに血漿から、上記と同様に逆相抽出により化合物を抽出し、眼の異なる領域及び血液中を質量分析により決定した。各試料について、化合物R、化合物1及びパゾパニブに関する組織1ミリグラム当たりの量を計算し、平均した。
【0096】
強膜透過性は、PBS中1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.2%チロキサポール、3.4%デキストロース、0.006%塩化ベンザルコニウム及び0.025%エチレンジアミンテトラ酢酸と、1%DMSOとを含有する初期点眼製剤(pH7.4)中、修正ウジング(Ussing)チャンバーアセンブリを用いて測定された。ブタの摘出眼組織を、上強膜側がドナーチャンバーに、網膜側がレシーバーチャンバーに面するようにチャンバー内に装着した。ドナー側には10μg/mLの化合物を、レシーバー側には10μg/mLの化合物を含まない等容積の点眼製剤をチャンバーに充填した。24時間後、チャンバーから組織を取り出し、レシーバー側(「硝子体」)をサンプリングした。組織は強膜、脈絡膜/RPE、及び網膜に分解され、均質化された。Batson et al(2017)に記載されているように、トレーサー(SPHINX7;国際公開第2015/159103号パンフレット)を添加し、アセトニトリル抽出により組織を抽出した。その後、Batson et al(2017)に記載されているように、質量分析によって化合物を分析した。
【0097】
非ヒト霊長類薬物動態試験
PBS中7%ポリ-オキシル-40-ステアレート及び4%デキストロースを含有する点眼剤中0.5mg/mL、1.0mg/mL又は1.5mg/mlの化合物1を35μL点眼することによってカニクイザルを20日間、隔日治療した。1日目の点眼投薬から1時間、4時間、8時間、10時間及び14時間後、並びに試験終了時に血液及び水性試料を採取した。21日目の最終点眼から1時間後に動物を安楽死させ、眼組織及び血液を採取した。網膜を脈絡膜及び強膜から剥離し、切開し、平らに置いた。網膜、RPE/脈絡膜及び強膜の眼区画を7つの異なる領域に分解した。全ての試料の重量を測定した。網膜及び脈絡膜/強膜試料、並びに血漿から、上記と同様に逆相抽出により化合物を抽出し、眼の異なる領域及び血液中を質量分析により決定した。各試料について、組織1ミリグラム当たりの量、又は水溶液及び血液のnMを計算し、平均した。
【0098】
眼の半分からサンプリングした網膜切片を、Gammons et al,2013に記載のようにNP40溶解緩衝液中で均質化した。次いで、抽出物を、ウサギ抗-panVEGF(Santa Cruz A20sc-152;1:500)又はマウス抗-VEGF165b(MAB3045;R&D;1:500)のいずれかを用いてイムノブロットした。
【0099】
結果
以下の実施例は本発明を実証するものである。本発明の化合物は、強力なSRPK1阻害剤であり、高い眼透過性を有する。
【0100】
我々は、高い効力(IC50<10-8M)を有し、脈絡膜血管新生のマウスモデルにおいて抗血管形成性であり、強膜を通してウサギの脈絡膜及び網膜色素上皮層に浸透することができるSRPK1阻害剤を生成することができることを以前に決定している。有効な局所治療薬の開発には、眼内への分子の浸透性を最大化することが重要であると考えた。本発明の化合物は、国際公開第2014/060763号パンフレット及び国際公開第2017/064512号パンフレットに記載の化合物よりも改善された特性を有し、抗血管形成VEGFアイソフォームの過剰発現に依存する眼血管新生及び透過性亢進障害の局所治療に有用である。
【実施例】
【0101】
透過性
化合物がより大きな動物の強膜を通過できるかどうかを決定するために、ブタの強膜を2つのチャンバー間で固定し、下のチャンバーに点眼製剤を添加し、上のチャンバーに化合物を添加して、化合物を強膜に添加した。24時間後、下のチャンバーからの液体(硝子体)及び網膜組織を分離し、メタノール又はアセトニトリル抽出及びHPLCによって化合物を精製した。これにより、高浸透性及び高い効力を併せ持つ化合物を生成できることは明らかになった。特に、本発明の新規化合物(化合物1~3に関して示されたもの)は、SPHINX31の透過性よりもはるかに高い驚くべき高い透過性を有し(
図1;表1)、依然として高い効力を有することが明らかであった(表2)。これは、ピラゾール上のメチル基を欠いた化学的に類似した化合物、例えば上述の化合物Rが有意に低い透過性を有していたことから、特に驚くべきことであった(
図1)。さらに、本発明の化合物はまた、以前にVEGFR2を介してVEGFシグナルを阻害することが示されているが曝露不足のために臨床試験で失敗した化合物(パゾパニブ、レゴラフェニブ、LHA510)よりも実質的に浸透性が高く、局所点眼剤として有効に使用されているが前部に作用する化合物(インドメタシン、セレコキシブ)よりも大きい-
図1を参照のこと。
【表1】
メラニン結合は、眼内での化合物のバイオアベイラビリティに重要であることが提唱されている。本発明の化合物のメラニン結合を測定し、抗血管形成剤として試みられてきた以前のSRPK1阻害剤(SPHINX31;国際公開第2015/159103号パンフレット、及び化合物R)、並びに以前のVEGFR2阻害剤よりもメラニンへの結合が大幅に少ないことが決定された(
図2)。
【0102】
化合物が大きな眼を有する動物のRPEに接近することができるかどうかを決定するために、点眼によってウサギを500g/mLの化合物に曝露し、網膜、強膜、硝子体及び他の眼組織(角膜);水晶体;RPE/脈絡膜における濃度を測定した(
図3a)。1、4、12、又は24時間後に動物を死亡させ、眼を採取した。次に、角膜(100)、水晶体(102)、及び硝子体(110)の個々の切片、並びに眼の後方部分からの強膜(108)、RPE/脈絡膜(106)及び網膜(104)の切片を化合物に関してアッセイをした。本発明の化合物に関して、網膜の浸透は見られた。化合物1に関して得られた結果を
図3a及び3bに示す。透過性は、SPHINX31などの以前に研究されたSRPK1阻害剤の透過性よりも優れており、化合物Rなどの化学的に類似した分子よりも優れた持続的透過性(例えば、4時間)を有していた(
図4)。
【0103】
SRPK1選択性
SRPK1に対する本発明の化合物の阻害活性を測定し、データを表2に示す。全ての化合物は、SPRK1の強力な阻害剤であり、1μMでキナーゼのパネルに対して試験した場合、SRPK1に対して高い選択性を有していた。
【表2】
【0104】
化合物1は、ヒト細胞において抗血管形成アイソフォームへの発現をスイッチする。
化合物1はVEGFアイソフォームのスプライシングをスイッチすることができるかどうかを決定するために、アイソフォーム特異的ELISAによって網膜色素上皮細胞中のVEGFを測定した。
図5は、化合物1による治療は、投与量依存的に血管新生促進性VEGF-A
165aアイソフォームの発現を減少させることを示す。
【0105】
化合物1は、ラット糖尿病性網膜症モデルにおいて、血管新生促進性VEGFアイソフォームから発現をスイッチする。
化合物1は糖尿病モデルにおいてVEGFのスプライシングを効果的にスイッチすることができるかどうかを決定するために、ノルウェーブラウン(Norway Brown)ラットの糖尿病のSTZモデルを使用した。糖尿病動物に化合物1を1日2回4週間点眼治療し、死亡させ、網膜を剥離した。タンパク質を抽出し、VEGF-A
165b及びpanVEGFのイムノブロットに供した。
図6a~
図6dは、糖尿病動物において、健常ラットと比較して、総VEGFは増加しているが、VEGF-A
165bは低下しており、これは化合物1による治療によって逆転したことを示している。
【0106】
化合物1は、インビボで脈絡膜血管新生を阻害する。
我々は以前に、SPHINX31によるSRPK1阻害が、脈絡膜血管新生のマウスモデルにおいて、2μg/mlで最大の効果を有する点眼剤として、これらの化合物が比較的親油性で眼内への浸透性が高いことから、抗血管形成性であることを示した。したがって、この同一モデルで点眼薬としての化合物1の効果を試験した。化合物1は、0.066μg/mLで脈絡膜血管新生を有意に阻害した(
図7b)。
【0107】
化合物1は、非ヒト霊長類において有効量で浸透する。
化合物1は霊長類の網膜に浸透することができるかどうかを決定するために、0.5、1.0又は1.5mg/mLの化合物1を1日2回、21日間、カニクイザルに投与した。
図8は、霊長類の網膜においても、網膜、脈絡膜、硝子体及びその他の眼の組織において、マウスモデルに基づく有効性に必要な濃度よりもはるかに高い濃度で化合物1の有意な濃度が見られたことを示す(
図8a及び
図8b)。治療中に水滴及び血漿を採取し、液体中の化合物1を測定した。3つの投与全てにおいて有意な濃度が見られ、水中での半減期は1.5mg/mLの投薬後2時間であると算出された(
図9)。これらの投与量は、血管形成VEGF-Aアイソフォーム発現を阻害するのに十分であるかどうかを決定するために、網膜組織を、pan-VEGF又はVEGF-A
165b抗体を用いたイムノブロッティングに供した。
図10aは、化合物1によって点眼治療したサルにおいて、網膜のVEGFレベルが変化することを示し、
図10bは、3週間の隔日投与後に総VEGFレベルは減少し、VEGF-A
165bレベルは減少せず、1mg/mlで増加することを示し、そして
図10cは、化合物1を投与したサルの網膜で血管形成性VEGF-Aと抗血管形成性VEGF-Aとの比率が減少することを示す。
【0108】
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