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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】微小循環状態の指標を得る装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1477 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
A61B5/1477
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503022
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2021066804
(87)【国際公開番号】W WO2022012872
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】20185601.0
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523015426
【氏名又は名称】エラスムス・ユニバーシティ・メディカル・センター・ロッテルダム
【氏名又は名称原語表記】ERASMUS UNIVERSITY MEDICAL CENTER ROTTERDAM
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガンガラム-パンディ,ノラニ・フリダヤナンド
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ベテリンゲン,ビレム
(72)【発明者】
【氏名】グース,トーマス・ヘイスベルトゥス
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK05
4C038KK08
4C038KL05
4C038KL09
4C038KM01
4C038KM03
4C038KX01
4C038KY04
4C038KY07
(57)【要約】
本発明は、患者の微小循環状態の指標を得る装置(1、1’)および方法に関する。装置(1、1’)は、第1の二酸化炭素レベル、特に組織二酸化炭素レベルを示すデータを測定する少なくとも1つの第1のセンサ(13)と、第2の二酸化炭素レベル、特に経皮的に測定された動脈血二酸化炭素レベルを示すデータを測定する少なくとも1つの第2のセンサ(12)と、好ましくは敗血症患者において、組織二酸化炭素レベルおよび経皮的に測定された動脈血二酸化炭素レベルに基づいて、微小循環の測度、特に組織灌流の変化を求める制御ユニット(4)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の微小循環状態の指標を得る装置であって、
第1の二酸化炭素レベル、特に組織二酸化炭素レベルを示すデータを測定する少なくとも1つの第1のセンサ(13)であって、前記患者の組織と接触される測定領域を含むとともに、前記測定領域が38℃未満に保たれる、第1の温度での経皮二酸化炭素測定に適合された、少なくとも1つの第1のセンサ(13)と、
第2の二酸化炭素レベル、特に動脈血二酸化炭素レベルを示すデータを測定する少なくとも1つの第2のセンサ(12)であって、前記患者の組織と接触される測定領域を含むとともに、前記測定領域が38℃超に加熱される、前記第1の温度よりも高い第2の温度での経皮二酸化炭素測定に適合された、少なくとも1つの第2のセンサ(12)と、
皮膚灌流の変化を検出する制御ユニット(4)であって、前記第1のセンサ(13)からの、測定または推定された第1の二酸化炭素レベル値、特に組織二酸化炭素レベル値を受ける少なくとも1つの入力部と、前記第2のセンサ(12)からの、測定または推定された第2の二酸化炭素レベル値、特に動脈血二酸化炭素レベル値を受ける少なくとも1つの入力部と、受けた入力に基づいて患者の微小循環状態の指標を出力する少なくとも1つの出力インターフェースと、を有する、制御ユニット(4)と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記第1のセンサ(13)は、第1の検知ユニット(13)であり、前記第2のセンサ(12)は、前記第1の検知ユニット(12)とは異なる第2の検知ユニット(12)である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置(1、1’)は、特に、第2の二酸化炭素レベル、特に前記動脈血二酸化炭素レベル、および/または、前記第1の二酸化炭素レベル、特に前記組織二酸化炭素レベルを補正するために、血液の温度、酸素レベルもしくはpH値および/または別の血液パラメータなどの、さらなるパラメータを示すデータを測定するように適合された少なくとも1つの追加センサ(5)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項4】
前記センサ(12、13、5)は、連続測定および/または間欠測定および/または交互測定に適合されている、先行する請求項の1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のセンサ(13)および前記第2のセンサ(12)は、共通のハウジング(6)内に配置される、先行する請求項の1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のセンサ(13)および前記第2のセンサ(12)は、皮膚の一部、特に、耳たぶ、指先、手のひら、足および/または胸部に配置されるように適合されている、先行する請求項の1項に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ユニット(4)は、第1の温度での前記第1の二酸化炭素レベルの測定をもたらすように適合されているとともに、前記測定領域が、前記第1の温度よりも高い、特に38℃超である前記第2の温度に加熱される、前記第2の二酸化炭素レベルの測定をもたらすように適合されており、
前記制御ユニットは、前記皮膚の測定側を特定の温度に保つ少なくとも1つの加熱素子を制御するように適合されており、
前記制御ユニットは、前記加熱素子、前記第1のセンサおよび/または前記第2のセンサを制御する出力部を含む、先行する請求項の1項に記載の装置。
【請求項8】
前記制御ユニット(4)は、前記第2のセンサ(12)による測定によって得られた経皮二酸化炭素分圧tcPCOに基づいた動脈血二酸化炭素分圧PaCOの評価に適合されており、前記測定領域は、38℃超の温度、および/または、動脈化を達成する温度に加熱される、先行する請求項の1項に記載の装置。
【請求項9】
前記制御ユニット(4)は、前記第1のセンサ(13)による測定によって得られた経皮二酸化炭素分圧PcCOに基づいた組織二酸化炭素分圧PcCOの評価に適合されており、前記測定領域は、38℃未満に保たれる、先行する請求項の1項に記載の装置。
【請求項10】
前記制御ユニットは、
前記第1の二酸化炭素レベルと前記第2の二酸化炭素レベルとの差、特に前記組織二酸化炭素レベルと前記動脈血二酸化炭素レベルとの差、
前記第1の二酸化炭素レベルと前記第2の二酸化炭素レベルとの比率、特に前記組織二酸化炭素レベルと前記動脈血二酸化炭素レベルとの比率、
および/または
前記第1の二酸化炭素レベルおよび前記第2の二酸化炭素レベルに基づいた、例えば、前記組織二酸化炭素レベルおよび前記動脈血二酸化炭素レベルに基づいた指数
に基づいて、患者の微小循環状態の指標を求めるように適合されている、先行する請求項の1項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御ユニット(4)の前記出力インターフェースは、モニタまたはディスプレイなどの出力デバイスに接続されるかまたは接続可能である、先行する請求項の1項に記載の装置。
【請求項12】
コンピュータによって組織灌流の指標を得る方法であって、
第1のセンサから、第1の二酸化炭素レベル、特に組織二酸化炭素レベル、好ましくは、経皮的に測定された組織PcCO値を提供するステップと、
第2のセンサから、第2の二酸化炭素レベル、特に、動脈血二酸化炭素レベル、好ましくは、経皮的に測定された動脈血PaCO値を提供するステップと、
好ましくは敗血症患者において、前記第1の二酸化炭素レベルおよび前記第2の二酸化炭素レベルに基づいて、例えば、前記組織二酸化炭素レベルおよび前記動脈血二酸化炭素レベルに基づいて、微小循環についての測度を求めるステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
第1の温度で前記第1の二酸化炭素レベルを測定するステップと、
測定領域が、前記第1の温度よりも高い、好ましくは38℃超である第2の温度に加熱される、前記第2の二酸化炭素レベルを測定するステップと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
好ましくは、pHレベルおよび/または温度を示すデータを測定することによって、酸素レベル、pHレベルおよび/または温度を示すさらなるデータが提供される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータプログラム製品であって、前記製品がコンピュータ上で実行されると、請求項12から15の1項に記載の方法のステップを行う、ソフトウェアコード部分を含むデジタルの内部メモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の微小循環状態の指標を得る装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
敗血症、出血および心停止などの、いくつかの臨床的症状は、組織灌流の減少を引き起こし、最小血管にさえも影響する。長期の微小循環悪化は最終的に、患者の予後をさらに悪くさせる機能障害または臓器不全さえも引き起こす。
【0003】
血流に細菌が入り、全身感染を引き起こすと、その感染に身体が反応し、これが敗血症と呼ばれる。敗血症は、新生児、子供および成人の集中治療室(ICU)での罹患率および死亡率の主な原因の1つである。敗血症の発生は、高度の新生児ICUにおいて約25%である。早産、免疫学的欠陥、および、ライン/血管内カテーテルなどの複数挿入点を含む、多数の要因が、多くの場合、血流への有機体の浸透を引き起こす。
【0004】
臨床モニタリングが患者の継続的な監視を行う。しかしながら、現行のモニタリング技術は、敗血症、特にその発症を正確に検出することができない。敗血症の実際の臨床徴候は広く様々であるが、敗血症は現在、臨床症状、逸脱している検査値および陽性血液培養の組み合わせとして定義されている。
【0005】
敗血症が疑われる場合、血液培養が採取される。血液培養における微生物増殖および同定に必要とされる時間に起因して、採取後すぐに抗生物質治療が開始され、血液培養は、血液培養中に見られる特定の微生物的特徴を確認および評価するとともに治療を調整する役割を果たす。不運にも、患者の臨床状態は、採血と敗血症の確認との間の時間遅延によりひどく悪化しかねない。抗生物質治療の即時開始にもかかわらず、死亡率および罹患率は著しい。敗血症の早期検出またはさらにはその発症の確認が依然として課題となっている。
【0006】
敗血症は、重病を引き起こす、細菌などの有機体による全身性血流感染症である。敗血症では、微小循環の機能障害が初期段階において現れる。微小循環が低酸素状態のままであるとともに二酸化炭素を除去することが不可能なまま、血流が細動脈から細静脈へと分流することになる。皮膚の二酸化炭素レベルは著しく増加し、酸素レベルは減少する。
【0007】
いくつかの研究では、敗血症は初期段階において微小循環に影響を及ぼすことが指摘されている。微小循環状態の継続的な監視は、微小循環状態の変化の可能性を検出するとともにそれら変化を敗血症と関連付けるための付加価値を有する。身体のすべての細胞が酸素を消費し、二酸化炭素を生成する。血液は、肺から組織へ酸素を運び、組織からの二酸化炭素の除去を促し、その後、二酸化炭素は吐き出される。末梢組織における、より低い酸素濃度およびより高い二酸化炭素濃度に起因して、循環している血液から組織中に酸素が拡散する。
【0008】
皮膚の加熱により、動脈化と呼ばれるプロセスである、加熱された皮膚において酸素レベルが上昇するとともに二酸化炭素レベルが減少するような程度に、血流が増加する。皮膚が十分に加熱され、皮膚および微小循環状態が可能になると、動脈血酸素レベルおよび二酸化炭素レベルに対応する酸素レベルおよび二酸化炭素レベルを皮膚表面において測定することができる。この原理が、患者の経皮血液ガス監視に適用される。
【0009】
酸素レベルおよび二酸化炭素レベルを経皮的に測定する様々な技法がある。現在、光センサおよび電気化学センサが、経皮酸素測定および経皮二酸化炭素測定に広く使用されている。
【0010】
典型的に、かかるセンサは、pH電極、参照電極、電解質溶液、膜および加熱素子を収容する。経皮二酸化炭素測定のための他の技術は、光学技術を含む。
【0011】
センサは、皮膚に固定され得る。加熱素子は、灌流を改善するのに十分な温度、特に40℃超の温度、より詳細には42℃~45℃の温度に皮膚を温める。酸素および二酸化炭素は、表皮を通って拡散し、センサの半透膜を通過し、電解質溶液で満たされたセンサチャンバ内に入る。
【0012】
電気化学センサの場合、ガラス電極がpH値の変化を測定する。電極の出力が、二酸化炭素分圧を示す信号に変換される。信号は、読み出され得るかまたは表示され得る。
【0013】
欧州特許第2470066(B1)号によれば、患者における組織灌流の指標が、二酸化炭素センサにより、該センサを37.5℃超の温度に加熱することなく測定された、皮膚二酸化炭素分圧cPCO(以下PcCOと示される)と、以下PaCOと示される動脈二酸化炭素圧(arterial pressure of carbon dioxide)aPCOまたは以下PetCOと示される呼気終末二酸化炭素分圧EtPCOとの差を計算することによって得られ得る。
【0014】
換気血流不均衡のある患者において、呼気終末二酸化炭素分圧は、適切な参照値ではないであろう。これらの場合、呼気終末二酸化炭素圧は、動脈血二酸化炭素圧を表さない。
【0015】
新生児などの特定の患者群では、1回換気量が少ないことにより、呼気終末二酸化炭素測定がより困難になるとともにより低い精度となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の一目的は、技術水準の欠点を回避することであり、特に、敗血症を指摘および/または予測するために、微小循環状態の指標を得る装置および方法であって、特に、許容可能な反応時間内で結果を提供する非侵襲的かつ信頼性の高い測定を可能にする、装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、この目的は、独立請求項による装置および方法によって達成される。特に、装置は、患者の微小循環状態の指標を得るのに適している。装置は、第1の二酸化炭素レベル、特に組織二酸化炭素レベルを示すデータを測定する少なくとも1つの第1のセンサと、第2の二酸化炭素レベル、特に動脈血二酸化炭素レベルを示すデータを測定する少なくとも1つの第2のセンサと、を有する。
【0018】
第1のセンサは好ましくは、好ましくは測定領域が38℃未満に保たれる、第1の温度での経皮測定に適合されている。
【0019】
第2のセンサは好ましくは、第1の温度とは異なる測定領域の第2の温度での経皮測定に適合されている。第2の温度は典型的に、第1の温度よりも高く、例えば、38℃よりも高い。好ましくは、第2の二酸化炭素レベルは、加熱式経皮センサにより測定される。
【0020】
制御ユニットは、第1の二酸化炭素レベル、特に組織二酸化炭素レベルと、第2の二酸化炭素レベル、特に経皮血液(transcutaneous blood)二酸化炭素レベルとに基づいて、微小循環状態の測度を求めるために提供される。
【0021】
特に、組織灌流の変化は、敗血症の早期検出のために求められる。
制御ユニットは、測定または推定された第1の二酸化炭素レベル値、特に組織二酸化炭素レベルに対応する値を受ける少なくとも1つの入力部と、測定または推定された第2の二酸化炭素レベル値、特に動脈血二酸化炭素レベルに対応する値を受ける少なくとも1つの入力部と、受けた入力に基づいて患者の微小循環状態の指標を提示する少なくとも1つの出力インターフェースと、を有する。
【0022】
本出願において「微小循環状態」とは、微小循環灌流およびガス拡散の状態を意味する。
【0023】
動脈血二酸化炭素レベルを示すデータを測定するセンサは、全体状態すなわち全身状態の指標のためのセンサであり得る。
【0024】
組織二酸化炭素レベルを示すデータを測定するセンサは、患者に見られる局所状態を示すセンサ、例えば、皮膚二酸化炭素レベルを示すデータを測定するセンサであり得る。
【0025】
センサは、一度にまたは順次に、1つの測定された量または複数の測定された量を検出し得る。測定されたデータは、1つまたは複数のパラメータ、および/または時系列の測定された量に対応し得る。
【0026】
微小循環の測度は、血管新生、血流および組織灌流の程度、ひいては微小循環状態の程度を示す。
【0027】
特に、制御ユニットは、2つのセンサの測定に基づいて組織灌流の変化を求めるように適合されている。
【0028】
制御ユニットは特に、皮膚および他の末梢組織における動脈化の減少および血流の減少に起因して微小循環が悪化する、敗血症患者において、微小循環の測度を求めるように適合されている。
【0029】
経皮的に測定された二酸化炭素レベルは、皮膚が局所的に加熱された場合の動脈血二酸化炭素レベルに対応する。これは、皮膚を通しての酸素および二酸化炭素の拡散が、微小循環に影響を及ぼす要因によって影響を受けることが知られている、敗血症がある場合であっても、皮膚拡散に作用する影響を軽減するのに十分な動脈化をもたらす。
【0030】
組織灌流が低下する場合であっても、動脈血二酸化炭素レベルと加熱された経皮二酸化炭素レベルとには良好な対応があること、すなわち、敗血症の新生児患者においてさえも、上昇温度で経皮的に測定された二酸化炭素レベルは、動脈血試料における動脈血二酸化炭素分圧に対応することが見い出されている。
【0031】
対照的に、皮膚への加熱の適用が全くないかまたは少ない経皮二酸化炭素測定は、敗血症などの、皮膚拡散に直接影響を及ぼす変化に感度が高い。
【0032】
十分な皮膚加熱なしに、経皮二酸化炭素測定は、動脈化のない場合、組織二酸化炭素値を評価する。したがって、加熱された皮膚および加熱されない皮膚の双方において二酸化炭素が測定される、経皮測定の組み合わせにより、皮膚二酸化炭素拡散の測定、特にその状況の監視が可能となる。
【0033】
装置は、第1の二酸化炭素レベルと第2の二酸化炭素レベルとの関係を検出し、その変化をシグナリングして微小循環状態の変化を示す。具体的には、第1の温度で測定された二酸化炭素レベルと、第1の温度よりも高い第2の温度で測定された二酸化炭素レベルとの差測定を用いて、例えば敗血症によって引き起こされる微小循環悪化の程度を検出する。
【0034】
加熱された経皮二酸化炭素レベルおよび組織二酸化炭素レベルの独立した測定によって、微小循環状態の確実な検出を行うことが可能となる。
【0035】
微小循環状態の変化は、血流、動脈化または組織灌流の著しい乱れの前兆である可能性がある。したがって、その変化は、変化の時間的経過に応じて、問題がその後起こり得ることを示す。したがって、好ましくは、制御ユニットは、微小循環の測度の予測に適合され、好ましくは、測定された変化の時間的傾向に応じての敗血症の予測に適合されている。
【0036】
第1のセンサおよび/または第2のセンサは、化学センサ、光化学センサ、光センサ、電気センサ、電気化学センサ、光電気センサ、圧力センサおよび/または温度センサを含み得る。
【0037】
第1のセンサおよび第2のセンサは、種々の状態下で作動する、特に種々の状態下で間欠的に作動する同じ検知ユニットによって形成され得る。
【0038】
この場合、検知ユニットは例えば、第1の温度で組織血液(tissue blood)二酸化炭素レベルを示すデータを測定するセンサとして、また、第1の温度よりも高い第2の温度で動脈血二酸化炭素レベルを示すデータを測定するセンサとして使用され得る。
【0039】
検知ユニットは、温度サイクルに用いられるのに適し得る、特に経皮ガス測定のための温度制御式検知ユニットとすることができ、そのため、第1の時間期間の間、第1の二酸化炭素レベルを示すデータが取得され、第2の時間期間の間、第2の二酸化炭素レベルを示すデータが取得され得る。このように、温度を交互に循環させることができる。
【0040】
検知ユニットはまた、酸素および二酸化炭素の複合経皮センサを含み得る。
装置の代替的な実施形態では、組織二酸化炭素レベルを示すデータを測定するセンサは、第1の検知ユニットであり、動脈血二酸化炭素レベルを示すデータを測定するセンサは、第1の検知ユニットとは異なる第2の検知ユニットである。第1の検知ユニットおよび/または第2の検知ユニットは、温度制御され得る。加熱程度または加熱性は、2つの検知ユニットに関して異なり得る。
【0041】
第1の検知ユニットおよび/または第2の検知ユニットは、加熱素子を含み得る。
2つ以上の別個の検知ユニットにより、同時に異なるデータの測定が可能である。同時にまたは少なくとも適時に測定されたデータにより、データの合理的な比較が可能である。
【0042】
その場合、2つ以上の検知ユニットは好ましくは、同時測定の妨害を減らすために互いの間を少なくとも1cmの距離をあけて配置される。
【0043】
動脈血二酸化炭素レベルおよび組織二酸化炭素レベルを求めるいくつかの代替的な方法がある。
【0044】
第1のおよび/または第2のセンサは、血液試料を分析するように適合され得る。血液試料は、患者から採取され得る。試料は、動脈または毛細血管から採取され得る。第2のセンサでは、血液はまた動脈カテーテルから採取することができる。代替的に、連続的な動脈内測定または血管内測定を行ってもよい。
【0045】
血液試料はまた、下記に説明されるように、経皮測定を較正するために採取され得る。
第1の検知ユニットが第1のセンサ素子とともに、マイクロニードルを含み得る。マイクロニードルは、組織に、好ましくは皮膚表面から0.2~1mmの距離までのところに適用され得る。マイクロニードルは、二酸化炭素がニードル先端に達するように、細動脈および/または毛細血管ループに達し得る。
【0046】
マイクロニードルは、加熱式または非加熱式であり得る。測定部位の周りの身体部位が加熱されるか、または加熱されない。
【0047】
マイクロニードルは、光ファイバを含み得、および/または蛍光透視法を用い得る。
マイクロニードルは、液体中の二酸化炭素濃度を測定するために、光ファイバ、化学センサ、または、電気化学プローブを含み得る。
【0048】
第1の検知ユニットはまた、組織二酸化炭素レベルの評価のために分光法を用いるように適合され得る。分光法は、組織中で行われ得、したがって、侵襲的手技として行われ得る。
【0049】
したがって、好ましい実施形態では、第2のセンサは、二酸化炭素レベルの経皮測定に適合された、特に、加熱式経皮測定に適合されたセンサを含む。
【0050】
この用途の情況において、「加熱式」測定とは、測定領域が通常の体温を超える温度、例えば38℃以上に加熱されることを意味する。「加熱式」測定時、測定領域は特に、血液レベルに測定可能なほど近い二酸化炭素レベルのガス拡散を可能にさせるような程度に皮膚の動脈化を達成する温度に加熱される。
【0051】
好ましくは、検知ユニットは加熱素子を含む。
第2の検知ユニットは、pH電極、参照電極、電解質溶液および膜を含み得る。好ましくは、第2の検知ユニットは、加熱素子を含み得る。
【0052】
好ましい実施形態では、第1のセンサは、組織(または経皮)二酸化炭素分圧PcCOの経皮測定に適合されたセンサを含む。
【0053】
好ましくは、装置は、二酸化レベル(dioxide levels)の非加熱式または低加熱式経皮測定に適合された、組織二酸化炭素レベルを示すデータを測定する経皮センサを備える。
【0054】
「非加熱式」測定に関して、測定領域は同様に加熱され得るが、皮膚の動脈化を達成する温度には加熱されず、特に、測定領域は38℃まで加熱され得る。
【0055】
第1の検知ユニットは、pH電極、参照電極、電解質溶液および膜を含み得る。任意選択的に、第1の検知ユニットは、加熱素子を含み得る。皮膚の温度を安定させることは一般に、再現可能なデータを考慮する。
【0056】
非加熱式経皮センサにより測定された皮膚二酸化炭素レベルと、加熱式センサにより測定された皮膚二酸化炭素レベルとの差は(動脈血二酸化炭素レベルの指標として)、皮膚における二酸化炭素拡散に関する情報を提供する。これは同様に、微小循環状態の測度である。敗血症では微小循環状態が悪化し、したがって、現行の方法よりも可能な限り早く本発明により検出されることができる。
【0057】
特に、装置は、加熱式経皮センサとして、また、非加熱式または低加熱式経皮センサとして使用される検知ユニットを備え得る。
【0058】
したがって、加熱することなくまたは限られた加熱により、組織二酸化炭素レベルを示すデータを測定するために、また、加熱された場合の動脈血炭素レベルを示すデータを測定するために同じセンサユニットが使用され得る。
【0059】
好ましくは、装置は、第1のセンサおよび第2のセンサに加え、特に経皮血液二酸化炭素レベルおよび/または組織二酸化炭素レベルの補正および/または較正のために、血液の温度、酸素レベル、pH値および/または別の血液パラメータなどの、患者の状態を判断するためのさらなるパラメータを示すデータを測定する少なくとも1つのさらなるセンサを備える。
【0060】
追加センサは、動脈血酸素レベルおよび/または組織酸素レベルを示すデータを測定するように適合され得る。酸素レベルを示す追加センサは、経皮電気化学センサ、化学-光学センサ、光センサ、または、針を含む侵襲的センサを含み得る。
【0061】
追加センサは、温度、好ましくは皮膚の温度の測定に適合され得る。
追加センサはまた、装置が新生児に用いられる場合、胎児ヘモグロビンを測定するように適合され得る。
【0062】
追加センサは、心拍および/または心拍変動を測定するように適合され得る。
追加センサは、脈拍および/または脈拍変動を測定するように適合され得る。
【0063】
追加センサは、ECG値などの電気的活動、および/または筋滑動および/または血流および/または呼吸ガス流を測定するように適合され得る。
【0064】
装置は、加熱素子を備え得る。
第1のセンサおよび/または第2のセンサ、および/または、該当する場合、追加センサは、連続測定および/または間欠測定および/または交互測定に適合され得る。
【0065】
連続測定により経時的にパラメータを分析することが可能となる。ゆっくりと変化することが分かっているパラメータ、または、急激な変化が関係しないパラメータに関して、連続測定は、データが数秒または数分ごとなどの所定の時間間隔で収集されることを意味し得る。
【0066】
好ましい実施形態では、第2のセンサおよび第1のセンサは、特に、測定が異なる温度で交互に行われる場合、妨害されない測定を確実にするために、好ましくは、動脈化の安定した有無を保証するタイムラグ、例えば、少なくとも10分のタイムラグでの交互の測定に適合されている。
【0067】
装置の別の実施形態では、第1のセンサ、および/または第2のセンサ、および/または、該当する場合、追加センサは、共通のハウジング内に収容される。
【0068】
装置は、患者にまたは患者の内部に、特に皮膚に配置され得る、センサハウジングを含み得る。センサハウジングは、第1のセンサ、第2のセンサ、および、該当する場合、追加センサを収容し得る。センサハウジングを配置することによって、すべてのセンサが患者に対して適切に位置決めされ、特に、すべてのセンサが皮膚に面し得る。
【0069】
センサは、温度センサなどの同じセンサ素子を使用および/または共有する、および/または同じ加熱素子を使用および/または共有する、複合センサとして設計され得る。
【0070】
有益には、第1のセンサおよび第2のセンサは、皮膚または他の末梢組織、例えば、皮膚の一部、特に、上肢もしくは下肢、耳たぶ、指先、手のひら、足および/または胸部におけるどこにでも配置されるように適合されている。
【0071】
有利には、制御ユニットは、第1の温度での第1の二酸化炭素レベルの測定をもたらすことが可能であるとともに、測定領域が、第1の温度よりも高い、特に38℃超である第2の温度に加熱される、第2の二酸化炭素レベルの測定をもたらすことが可能である。
【0072】
好ましくは、制御ユニットは、第1のセンサにより組織PcCOの経皮測定をもたらすことが可能である。
【0073】
好ましくは、制御ユニットは、第2のセンサにより動脈血PaCOの経皮測定をもたらすことが可能である。
【0074】
好ましくは、制御ユニットは、第1のセンサ、第2のセンサ、および、皮膚の測定側を特定の温度に保つ少なくとも1つの加熱素子を制御することが可能である。
【0075】
好ましくは、制御ユニットは、加熱素子、第1のセンサおよび/または第2のセンサを制御する出力部を含む。
【0076】
有利には、制御ユニットは、好ましくは第2のセンサによる測定によって得られた経皮二酸化炭素分圧に基づいた動脈血二酸化炭素分圧PaCOの評価に適合されており、測定領域は、38℃超、または、測定領域の動脈化を生じさせる温度に加熱される。
【0077】
有利には、制御ユニットは、好ましくは第1のセンサによる測定によって得られた経皮二酸化炭素分圧に基づいた組織二酸化炭素分圧PcCOの評価に適合されており、測定領域は、動脈化が測定領域において達成されないように、ある温度、例えば38℃未満に保たれる。
【0078】
装置の好ましい実施形態では、制御ユニットは、第1の二酸化炭素レベルと第2の二酸化炭素レベルとの差、特に、組織二酸化炭素レベルと動脈血二酸化炭素レベルとの差、第1の二酸化炭素レベルと第2の二酸化炭素レベルとの比率、特に、組織二酸化炭素レベルと動脈血二酸化炭素レベルとの比率、および/または、第1の二酸化炭素レベルおよび第2の二酸化炭素レベルに基づいた、例えば、組織二酸化炭素レベルおよび動脈血二酸化炭素レベルに基づいた指数を求めるように適合されており、好ましくは、組織二酸化炭素レベルおよび/または動脈血二酸化炭素レベルは、経皮的に測定される。
【0079】
指数は、組織二酸化炭素レベルおよび経皮二酸化炭素レベルなどの第1の二酸化炭素レベルおよび第2の二酸化炭素レベル、ならびに、任意選択的にさらなる測定されたまたは所定のパラメータに基づいて、計算によって求められ得る。
【0080】
制御ユニットはまた、経時的に、組織二酸化炭素レベル、経皮二酸化炭素レベル、差、比率および/または指数などの、第1の二酸化炭素レベルおよび第2の二酸化炭素レベルを監視、特に表示するように、また、経時変化を求めるように適合され得る。
【0081】
特に、制御ユニットは、特に時間依存データを受信、収集、保存および処理するように適合されている。
【0082】
特に、制御ユニットは、所定のタイムスケールおよび/または選択可能なタイムスケールでの組織灌流の変化を求めるように適合されている。
【0083】
さらに、制御ユニットは、時間依存データの外挿に、および/または、例えば組織灌流状態の予測に適合され得る。
【0084】
制御ユニットは、測定されたおよび/または求められた値を平均および/またはフィルタリングするように、および/または、所定の時間間隔について移動平均を求めるように適合され得る。
【0085】
制御ユニットは、組織二酸化炭素レベルおよび経皮二酸化炭素レベルなどの第1の二酸化炭素レベルおよび第2の二酸化炭素レベル、差、比率、指数および/または推定値を、それぞれの公称値と比較するように適合され得る。
【0086】
制御ユニットは、制御パネル、コンソールまたはデータキャリアリーダなどの入力装置によってデータを受信するように適合され得る。
【0087】
特に、制御ユニットは、アルゴリズム、補正パラメータ、公称値およびトリガ値を受信、保存および処理するように適合され得る。
【0088】
補正パラメータを用いて、測定されたおよび/または求められたデータを規則に従って処理し得る。例えば、薬剤、血管緊張因子、およびセンサの化学ドリフトは、測定されたデータを分析することを考慮され得る。
【0089】
制御ユニットは、センサの乱れ、メンテナンスの必要性、または、新たなセンサ較正の必要性を示すように適合され得る。
【0090】
測定されたおよび/または求められた値とそれぞれの公称値との差が所定のトリガ値を超える場合、制御ユニットは、それぞれの出力情報を生成し得る。
【0091】
制御ユニットは、組織二酸化炭素レベル、経皮二酸化炭素レベル、差、比率、指数および/または推定値の時間経過を分析し得、微小循環状態における臨床状態または臨床状態の可能性を検出し得る。
【0092】
制御ユニットは、微小循環において臨床状態があるかまたは臨床状態が予期される可能性がある場合、警告信号を与え得る。
【0093】
装置は、現在の測定されたおよび/求められた値に基づいて結果を提供し得る。装置は、測定されたおよび/または求められた値の時間展開に基づいて結果を提供し得る。
【0094】
制御ユニットは、時間間隔時に測定されたデータに基づいて、差、比率および/または指数を求めるように適合され得る。好ましくは、制御ユニットは、実行時間間隔の記憶されたデータに基づいた連続測定に適合され得る。このため、装置は、測定データおよび/または参照データを記憶するストレージデバイスを含み得る。
【0095】
したがって、装置は、データの遡及的分析を可能にする。
敗血症による変化は、ゆっくりとしたプロセスによって引き起こされる。したがって、求められる結果は、いくらかの時間、典型的には数分~数時間かかる。しかしながら、装置は、臨床症状が敗血症の臨床徴候を示すよりも潜在的に早く、微小循環状態の指標、したがって敗血症の指標を提供し得る。
【0096】
装置の好適な実施形態では、制御ユニットは、好ましくは、微小循環の測度を表示するために、および/または制御ユニットによって生成される信号を表示するために、モニタまたはディスプレイなどの出力デバイスに接続されるかまたは接続可能である。
【0097】
出力デバイスは、装置の一部であり得る。
出力デバイスは、音響信号および/または光信号を発するように適合され得る。
【0098】
出力デバイスは、測定されたおよび/または求められた値、および/または測定されたおよび/または求められた値の時間依存表現を表示するように適合され得る。
【0099】
出力デバイスは、微小循環の測度を示すように適合され得る。例えば、出力デバイスは、3レベルスケールを含むように設計されているディスプレイを備え得、第1のレベルは「問題なし」を示し、第2のレベルは「問題の可能性」を示し、第3のレベルは「注意:問題あり」を示す。
【0100】
出力デバイスは、推定された測定エラーまたは平均値の標準偏差などの、測定されたおよび/または求められた値の品質の測度を表示するように適合され得る。
【0101】
出力デバイスは、用いられるデータの量に基づき得る、微小循環の測度の量の測度、例えば信頼度指数などを表示するように適合され得る。用いられるデータが多いほど、結果はより信頼できるものとなる。かかる信頼度指数は、ある時間期間にわたる測定データの偏差から得られ得、すなわち、偏差が持続時間期間にわたって比較的低い場合、信頼度指数は高くなる。
【0102】
記載のセンサによって測定された値は、出力デバイスによって表示され得る。したがって、使用者は、追加情報を入手し、微小循環の測度の量を制御することがきる。
【0103】
装置は、患者のベッド側に配置されるスタンドアロン装置であり得る。装置はまた、既存のシステムのための接続要素(hook-up element)であり得る。
【0104】
装置は、既存のシステムの構成要素によって一部が形成され得、例えば、センサまたは出力デバイスを既存のシステムと共有し得る。
【0105】
本発明の目的はまた、第1の二酸化炭素レベル、特に組織二酸化炭素レベルを示すデータを測定する少なくとも1つの第1のセンサを備える、好ましくは上記で説明したような、患者の微小循環状態の指標を得る装置である。
【0106】
装置は、第2の二酸化炭素レベル、特に動脈血二酸化炭素レベルを示すデータを測定する少なくとも1つの第2のセンサをさらに備える。
【0107】
装置は、好ましくは敗血症患者において、第1の二酸化炭素レベル、特に組織二酸化炭素レベル、および、第2の二酸化炭素レベル、特に動脈血二酸化炭素レベルに基づいて、微小循環の測度、特に組織灌流の変化を求める制御ユニットをさらに備える。
【0108】
制御ユニットは、測定または推定された第1の二酸化炭素レベル値、特に組織二酸化炭素レベル値を受ける少なくとも1つの入力部と、測定または推定された第2の酸素レベル値、特に動脈血二酸化炭素レベル値を受ける少なくとも1つの入力部とを有する。
【0109】
制御ユニットは、受けた入力に基づいて患者の微小循環状態の指標を出力する、少なくとも1つの出力インターフェースを有する。
【0110】
センサについて、上記で説明したように、それぞれの検知ユニットについてと同様に、いくつかの可能な実施形態がある。
【0111】
第1のセンサは、好ましくは、組織二酸化炭素分圧PcCOをより好ましくは38℃未満の第1の温度で経皮的に測定するように適合された、経皮測定のためのセンサを含み得る。
【0112】
第2のセンサは、好ましくは、動脈血PaCOを経皮的に測定するように適合された、経皮測定のためのセンサを含み得る。第2のセンサは好ましくは、測定領域が好ましくは38℃超に加熱される、第1の温度よりも高い第2の温度での経皮測定に適合されている。特に、センサは、加熱式経皮測定に適合され得る。
【0113】
本発明の目的はまた、以下のステップを含む、組織灌流の指標を得る方法によって達成される。
【0114】
患者の、第1の二酸化炭素レベル、特に組織二酸化炭素レベルが提供され、好ましくは、経皮的に測定された組織PcCO値が提供される。
【0115】
患者の、第2の二酸化炭素レベル、特に動脈血二酸化炭素レベルが提供され、好ましくは、経皮的に測定された動脈血二酸化炭素値tcPCO値が提供される。
【0116】
好ましくは、組織二酸化炭素レベルおよび動脈血二酸化炭素レベルなどの第1の二酸化炭素レベルおよび第2の二酸化炭素レベルが、独立した測定によって提供される。
【0117】
微小循環についての測度が、好ましくは敗血症患者において、組織二酸化炭素レベルおよび動脈血二酸化炭素レベルなどの第1の二酸化炭素レベルおよび第2の二酸化炭素レベルに基づいて求められる。
【0118】
好ましくは、微小循環についての測度は、リアルタイムで表示される。
第1の二酸化炭素レベルおよび第2の二酸化炭素レベルは、データ収集によって提供され得るか、または、好ましくは経皮測定によって測定され得る。上記で説明したように他の測定原理を用いてもよい。
【0119】
好ましくは、第1の二酸化炭素レベルは、第1の温度で測定され、第2の二酸化炭素レベルは、測定領域が、第1の温度よりも高い第2の温度、好ましくは38℃超に加熱されることで、測定される。
【0120】
好ましくは、第2の二酸化炭素レベル、特に動脈血二酸化炭素レベルは、動脈PaCOを経皮的に測定することによって測定され、測定領域が、皮膚の動脈化が達成されるように、38℃超の温度、好ましくは40℃超の温度に加熱され、好ましくは、検知ユニットの加熱素子によって加熱され、および/またはセンサヘッド内に配置される。
【0121】
好ましくは、第1の二酸化炭素レベル、特に組織二酸化炭素レベルは、組織PcCOを経皮的に測定することによって測定される。好ましくは、測定領域は、患者の体温、例えば38℃未満および/または37.5℃に保たれる。測定領域は、皮膚の動脈化を生じさせない温度に保たれる。熱が加えられると、代謝活性が変化し、動脈化が開始する。
【0122】
測定は、同時に行われることができるか、または、好ましくは、動脈化の安定した有無を保証するタイムラグ、例えば、少なくとも10分のタイムラグで交互に測定されることができる。
【0123】
本発明の目的はまた、コンピュータプログラム製品であって、製品がコンピュータ上で実行されると、上記で説明したように組織灌流の指標を得る方法のステップを行う、ソフトウェアコード部分を含むデジタルの内部メモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品によって達成される。
【0124】
コンピュータプログラムは、上記で説明したような装置の制御ユニットにロードされ、および/または、その制御ユニット上で実行され得る。
【0125】
コンピュータプログラムは、中央コンピュータ装置にロードされ、および/または、その中央コンピュータ装置上で実行され得るか、あるいは、患者の動脈血二酸化炭素レベルおよび/または組織二酸化炭素レベルを測定する測定装置にロードされ、および/または、その測定装置上で実行され得る。
【0126】
本発明を、好ましい実施形態および添付の図面を参照しながらさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0127】
図1】装置の第1の例の概略図である。
図2】装置の第2の例の概略図である。
図3】装置の第3の例のセンサヘッドにおける概略図である。
図4図3のセンサヘッドの概略断面図である。
図5】装置の第4の例の概略図である。
図6】装置の第4の例のセンサヘッドの概略断面図である。
図7】装置によって測定された場合の微小循環状態の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0128】
図1は、患者の微小循環状態の指標を得る装置1の第1の例の概略図を示す。装置1は、組織二酸化炭素レベルを示すデータを測定する第1のセンサ13と、動脈血二酸化炭素レベルを示すデータを経皮的に測定する第2のセンサ12と、を備える。
【0129】
第2のセンサ12は、第2の検知ユニットによって形成され、第1のセンサ13は、第2の検知ユニットとは異なる第1の検知ユニットによって形成される。
【0130】
第2のセンサ12および第1のセンサ13は、センサヘッド8を形成する共通のハウジング6内に配置される。
【0131】
装置1は、第1のセンサ13および第2のセンサ12によって測定された値に基づいて、特に、組織二酸化炭素レベルおよび加熱され経皮的に測定された二酸化炭素レベルに基づいて、微小循環の測度、特に、組織灌流の変化または微小循環状態の変化を求める、制御ユニット4を備える。
【0132】
装置1は、特に、動脈血二酸化炭素レベルおよび/または組織二酸化炭素レベルを補正するために、血液の温度、酸素レベル、pH値および/または別の血液パラメータなどの、さらなるパラメータを示すデータを測定する、追加センサ5を備える。
【0133】
センサヘッド8は、ケーブル10によって装置ベース9に接続され得る。制御ユニット4は、装置ベース9内に配置され得る。
【0134】
制御ユニット4は、微小循環の測度を表示するモニタまたはディスプレイなどの出力デバイス7に接続される。出力デバイス7もまた、装置ベース9内に配置され得る。
【0135】
センサヘッド8は、測定側へ方向付け可能である接触面11を含む。この場合、測定側は、患者の皮膚における領域である。
【0136】
図2は、患者の微小循環状態の指標を得る、第2の例の装置1’の概略図を示す。
装置1’は、第1のセンサ13および第2のセンサ12をそれぞれ含む単一の検知ユニット14を有するセンサヘッド8を備える。温度に応じて、検知ユニット14は、動脈血二酸化炭素レベルを示すかまたは組織二酸化炭素レベルを示すデータを経皮的に測定するように制御される。制御ユニット4によって制御される加熱素子15によって皮膚温度が調節される。したがって、検知ユニット14は、第1の温度で動脈血二酸化炭素レベルを示すデータを測定するセンサとして、また、第2の温度で組織二酸化炭素レベルを示すデータを測定するセンサとして働く。
【0137】
図3および図4に示された装置1は、表面30を有し、図示の実施形態では、この表面の上に膜50が配置され、間に電解質51の薄層がある。この膜50は、人体のうち良好な血流を有する箇所における皮膚、例えば、指、額または耳たぶにおける皮膚に配置される(図4を参照)。
【0138】
図示の装置1は、電気化学検出によって第1および第2の組織二酸化炭素レベルの経皮測定に適合されたセンサユニット19を含む。このため、装置1は好ましくは、微小pH電極24およびAg/AgCl参照電極25を含む(図3を参照)。二酸化炭素レベルは、電解質溶液51の薄層のpHが測定されるという点で、電位差滴定で測定されることができ、この薄層は、良好なガス透過性を有する疎水性膜50を介して皮膚と連通する。皮膚表面における二酸化炭素値の変化は、電解質溶液のpH変化を引き起こす。pHは、電位が小型pH電極24と参照電極25との間で測定されることで測定される。微小pH電極24は、電気的内部デフレクタ16を介して制御ユニット4に導電接続される。
【0139】
装置1は、加熱素子26と、温度センサ27と、を備える。
センサユニット19は、測定領域が38℃未満に保たれる、第1の温度での経皮測定に適合されている。
【0140】
センサユニット19はまた、測定領域が加熱素子26によって38℃超に加熱される、第1の温度よりも高い第2の温度での経皮測定に適合されている。
【0141】
したがって、センサユニット19は、第1の二酸化炭素レベル、特に組織二酸化炭素レベルを示すデータを測定する第1のセンサ、および、第2の二酸化炭素レベル、特に動脈血二酸化炭素レベルを示すデータを測定する第2のセンサである。
【0142】
図5は、患者の微小循環状態の指標を得る装置1の第4の例の概略図を示す。
第1の検知ユニット13と、第2の検知ユニット12と、追加センサ5と、プロセッサまたは制御ユニット4のハウジングと、出力デバイス7とが、共通のハウジング6内に配置され得る。
【0143】
好ましくは、ハウジングは、構成要素の組み合わせ、統合および適切な分離を可能にする。
【0144】
第1の検知ユニット13は、第1の経皮測定デバイスであり得る。第2の検知ユニット12は、第2の経皮測定デバイスであり得、加熱素子を含み得る。
【0145】
追加センサ5は、温度、経皮COを検出し得、および/または外部値についての入力を含み得る。
【0146】
出力デバイス7は、デジタル出力またはアナログ出力を示すディスプレイを含み得る。
図6は、装置1の第4の例における、患者の微小循環状態の指標を得るセンサヘッド8の概略断面図を示す。
【0147】
センサヘッド8が、患者の皮膚103に接触して配置される。
組織二酸化炭素レベルを示すデータを測定する第1の検知ユニット13と、追加センサ5と、動脈血二酸化炭素レベルを示すデータを測定する第2の検知ユニット12と、加熱素子15とが、共通のハウジング6内に配置される。検知ユニット13は、測定領域が38℃未満に保たれる、第1の温度での経皮二酸化炭素測定に適合されている。検知ユニット12は、測定領域が38℃超に加熱される、第1の温度よりも高い第2の温度での経皮二酸化多炭素測定に適合されている。この図には示されていない、プロセッサまたは制御ユニット4および出力デバイス7(図4を参照)も同様に、ハウジング6内に配置され得る。プロセッサ4は、皮膚灌流の変化を検出するようにプログラムされ、また、第1のセンサ13からの、測定または推定された第1の二酸化炭素レベル値、特に組織二酸化炭素レベル値を受ける入力部と、第2のセンサ12からの、測定または推定された第2の二酸化炭素レベル値、特に、動脈血二酸化炭素レベル値を受ける入力部と、受けた入力に基づいて患者の微小循環状態の指標を提示する少なくとも1つの出力インターフェースと、を有する。
【0148】
センサヘッド8は、出力接続部20に接続され、この出力接続部は、外部プロセッサまたは制御装置との接続を確立し得、電源として働き得る。
【0149】
皮膚103には、動脈101および毛細血管102が広がっている。
図7は、敗血症状態下および通常状態下で第1のセンサ13および第2のセンサ12によって測定された微小循環状態の一例の概略図を示す。
【0150】
皮膚動脈101における血液供給は、敗血症時では損なわれていないままである。
しかしながら、毛細血管102における血液供給は、敗血症状態において損なわれている可能性がある。したがって、著しく異なる量の二酸化炭素が皮膚表面から拡散し、これは、皮膚を加熱せずに経皮測定によって検出され得る。
【0151】
驚くべきことに、皮膚の加熱は、敗血症がある場合であっても、皮膚拡散に作用する影響を軽減するのに十分な動脈化をもたらす。したがって、皮膚を加熱するとともに経皮的に測定された二酸化炭素レベルは、動脈血二酸化炭素レベルと相関関係がある。
【0152】
敗血症状態指標は例えば、好ましくは敗血症の予測のために、第1の二酸化炭素レベルと第2の二酸化炭素レベルとの差、例えば、組織二酸化炭素レベルと動脈血二酸化炭素酸素(the arterial carbon dioxide oxygen)レベルとの差、第1の二酸化炭素レベルと第2の二酸化炭素レベルとの比率、例えば、組織二酸化炭素レベルと動脈血二酸化炭素レベルとの比率、および/または、第1の二酸化炭素レベルおよび第2の二酸化炭素レベルに基づいた、例えば、組織二酸化炭素レベルおよび動脈血二酸化炭素レベルに基づいた指数を出力することにより、プロセッサによって出力されることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】