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特表2023-535165リチウム二次電池用正極バインダー、これを含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極バインダー、これを含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20230808BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20230808BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20230808BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230808BHJP
   C08F 20/34 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/136
H01M4/134
H01M4/36 A
C08F20/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503023
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 KR2021010544
(87)【国際公開番号】W WO2022035174
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0100226
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-チャン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソキン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】クォンナム・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ギ・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ジ-フン・ペク
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ホン・イ
【テーマコード(参考)】
4J100
5H050
【Fターム(参考)】
4J100AL08P
4J100AL66Q
4J100BA32P
4J100BA32Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100DA55
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA43
5H050AA08
5H050BA16
5H050CA11
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA11
5H050EA23
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
完全にカチオン性単量体のみから構成され、電池の充放電時に発生するリチウムポリスルフィドを捕獲することによって電池の性能を向上させることができる、リチウム二次電池用正極バインダー、これを含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池が開示される。前記リチウム二次電池用正極バインダーは、カチオンを1つ以上含むカチオン性(メタ)アクリレート系単量体から誘導される構造単位を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンを1つ以上含むカチオン性(メタ)アクリレート系単量体から誘導される構造単位を含むリチウム二次電池用正極バインダー。
【請求項2】
前記カチオンは、窒素カチオン、酸素カチオン及び硫黄カチオンから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極バインダー。
【請求項3】
前記カチオン性(メタ)アクリレート系単量体は、下記化学式1で表されるカチオン性単量体及び下記化学式2で表される架橋形態のカチオン性単量体のいずれか1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極バインダー;
【化1】
前記化学式1において、R、R及びRは、それぞれ独立に水素又は炭素数1~4のアルキル基であり、Xは、ハロゲン基又はビストリフルオロメタンスルホニルイミド(TFSI)であり、m及びnは、それぞれ独立に0~4の整数であり、
【化2】
前記化学式2において、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素又は炭素数1~4のアルキル基であり、Xはハロゲン基又はビストリフルオロメタンスルホニルイミド(TFSI)であり、o及びqはそれぞれ独立に0~4の整数であり、pは0~8の整数である。
【請求項4】
前記カチオン性(メタ)アクリレート系単量体は、前記化学式2で表される架橋形態のカチオン性単量体を含むことを特徴とする、請求項3に記載のリチウム二次電池用正極バインダー。
【請求項5】
前記カチオン性(メタ)アクリレート系単量体は、前記化学式1で表されるカチオン性単量体、及び前記化学式2で表される架橋形態のカチオン性単量体を含むことを特徴とする、請求項3に記載のリチウム二次電池用正極バインダー。
【請求項6】
前記カチオン性(メタ)アクリレート系単量体は、前記化学式1で表されるカチオン性単量体、及び前記化学式2で表される架橋形態のカチオン性単量体を0.5~2:2~0.5の重量比で含むことを特徴とする、請求項5に記載のリチウム二次電池用正極バインダー。
【請求項7】
前記正極バインダーは、バインダーの総重量に対して前記カチオンを1つ以上含むカチオン性(メタ)アクリレート系単量体から誘導される構造単位5~15重量%、及び溶媒85~95重量%を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極バインダー。
【請求項8】
前記化学式1で表されるカチオン性単量体は、下記化学式1aで表されるカチオン性単量体または下記化学式1bで表されるカチオン性単量体であることを特徴とする、請求項3に記載のリチウム二次電池用正極バインダー。
【化3】
【請求項9】
前記化学式2で表される架橋形態のカチオン性単量体は、下記化学式2aで表される架橋形態のカチオン性単量体または下記化学式2bで表される架橋形態のカチオン性単量体であることを特徴とする、請求項3に記載のリチウム二次電池用正極バインダー。
【化4】
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の正極バインダー;及び正極活物質;を含むリチウム二次電池用正極。
【請求項11】
前記正極活物質は、前記硫黄-炭素複合体であることを特徴とする、請求項10に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項12】
前記正極バインダーは、正極総重量100重量部に対して1~50重量部で含まれることを特徴とする、請求項10又は11に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極;リチウムメタル負極;前記正極と負極との間に介在する電解質;及び分離膜;を含むリチウム二次電池。
【請求項14】
前記リチウム二次電池は、リチウム-硫黄電池であることを特徴とする、請求項13に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年8月11日付け韓国特許出願第10-2020-0100226号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用正極バインダー、これを含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池に関し、さらに詳しくは、完全にカチオン性単量体のみから構成され、電池の充放電時に発生するリチウムポリスルフィドを捕獲することによって、電池の性能を向上させることができる、リチウム二次電池用正極バインダー、これを含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギー貯蔵技術への関心がますます高まるにつれて、携帯電話、タブレット(tablet)、ラップトップ(laptop)及びビデオカメラ、さらには電気自動車(EV)及びハイブリッド電気自動車(HEV)のエネルギーまで適用分野が拡大されながら、電気化学素子に関する研究及び開発が徐々に増大している。電気化学素子はこのような側面から最も注目を集めている分野であり、その中でも充放電が可能なリチウム-硫黄電池のような二次電池の開発は関心の焦点となっており、最近ではこのような電池を開発するにおいてエネルギー密度を高めるために、新しい電極と電池の設計に関する研究開発につながっている。
【0004】
このような電気化学素子、その中で、リチウムメタルを負極として用い、硫黄を正極として用いるリチウム-硫黄電池(Li-S battery)は、従来のリチウムイオン電池に比べて高い理論容量とエネルギー密度(通常、約2,500Wh/kg)を有しており、かつ自然から容易に得ることができるだけでなく、価格の低い硫黄を正極として用いるため経済性まであり、リチウムイオン電池を代替することができる次世代二次電池として脚光を浴びている。このようなリチウム-硫黄電池内では、放電時に硫黄の還元反応とリチウムメタルの酸化反応が起こり、このとき、硫黄は環構造のSから線形構造のリチウムポリスルフィド(Lithium Polysulfide、LiPS)を形成するようになり、このような-硫黄電池は、ポリスルフィドが完全にLiSに還元されるまで段階的放電電圧を示すことが特徴である。
【0005】
しかし、リチウム-硫黄電池の商業化において最大の障害は、硫黄系の化合物を正極活物質として用い、リチウムのようなアルカリ金属を負極活物質として用いる電池において充放電時に体積変化が大きく起こる点(-80%)、そして、充放電時に発生するリチウムポリスルフィド(LiPS、Li)の溶出及びシャトル現象である。すなわち、言い換えれば、リチウム-硫黄電池の最大の問題点は、充放電時に正極で生成されるリチウムポリスルフィドが液体電解質に溶出しながら、非可逆的な容量の減少及び負極での副反応を引き起こすことである。
【0006】
より具体的に、正極として用いられる硫黄が放電時に還元されながら生成されるリチウムポリスルフィドは、特にエーテル系液体電解質に対して高い溶解度を有し、大きさが小さいため分離膜を通過することができ、負極として用いられるリチウムメタルと接する場合、副反応を起こして界面を不安定にするなどの問題を発生させ、その結果、正極活物質の非可逆的損失による容量の減少及び副反応によるリチウムメタル表面への硫黄粒子の蒸着による電池寿命の減少が発生することになる。したがって、電池駆動時に正極で生成されるリチウムポリスルフィドが液体電解質に溶出しないように捕獲することができる技術が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それで、本発明の目的は、完全にカチオン性単量体のみから構成され、電池の充放電時に発生するリチウムポリスルフィドを捕獲することによって電池の性能を向上させることができる、リチウム二次電池用正極バインダー、これを含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、カチオンを1つ以上含むカチオン性(メタ)アクリレート系単量体から誘導される構造単位を含むリチウム二次電池用正極バインダーを提供する。
【0009】
また、本発明は、前記正極バインダー;及び正極活物質;を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用正極;リチウムメタル負極;前記正極と負極との間に介在する電解質;及び分離膜;を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るリチウム二次電池用正極バインダー、これを含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池によれば、完全にカチオン性単量体のみから構成され、電池の充放電時に発生するリチウムポリスルフィドを捕獲することによって電池の性能を向上させることができる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例によりリチウム二次電池用正極バインダーが製造される過程を示す反応式である。
図2】本発明の一実施例によりリチウム二次電池用正極バインダーが製造される過程を示す反応式である。
図3】本発明の一実施例により求核置換反応によって製造されたカチオン性単量体のH NMR分析結果を示すグラフである。
図4】本発明の一実施例によりイオン交換反応によって製造されたカチオン性単量体の13C NMR分析結果を示すグラフである。
図5】本発明の一実施例により求核置換反応によって製造されたカチオン性単量体のH NMR分析結果を示すグラフである。
図6】本発明の一実施例によりイオン交換反応によって製造されたカチオン性単量体の13C NMR分析結果を示すグラフである。
図7】本発明の一実施例及び比較例に係るリチウム-硫黄電池の放電容量及び寿命特性を比較対比したグラフである。
図8】本発明の一実施例に係るリチウム-硫黄電池の容量-電圧グラフである。
図9】通常のバインダーを正極に適用したリチウム-硫黄電池の容量-電圧グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前記のように、リチウム二次電池、その中で、特にリチウム-硫黄電池において、正極として用いられる硫黄が放電時に還元されながら生成されるリチウムポリスルフィドは、特にエーテル系液体電解質に対して高い溶解度を有し、大きさが小さいため分離膜を通過することができ、負極として用いられるリチウムメタルに会う場合、副反応を起こして界面を不安定にするなどの問題を発生させ、その結果、正極活物質の非可逆的損失による容量の減少及び副反応によるリチウムメタル表面への硫黄粒子の蒸着による電池寿命の減少が発生することになる。したがって、電池駆動時に正極で生成されるリチウムポリスルフィドが液体電解質に溶出しないように捕獲することができる技術が必要であり、それで、本願出願人は、カチオン性の単量体のみを含むリチウム二次電池用正極バインダー、これを含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池を発明するに至った。
【0014】
すなわち、基本的にリチウムポリスルフィドはリチウムカチオンとポリスルフィドアニオンとからなるため、極性を帯びる作用基と容易に相互作用することができ、特に、正電荷を帯びる作用基と強く相互作用することが知られている。したがって、バインダーに正電荷またはカチオンを導入することで、充放電の過程で発生するリチウムポリスルフィドを捕獲することができるので、電池の性能を改善できるという利点がある。また、架橋構造のバインダーを用いる場合、充放電過程で発生する体積変化を減らすことができるので、正極内部構造の維持に役立つ(すなわち、構造的安定性付与)利点がある。
【0015】
以下、本発明に係るリチウム二次電池用正極バインダー、これを含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池について詳しく説明する。
【0016】
正極バインダー
本発明に係るリチウム二次電池用正極バインダーは、カチオン性の単量体(monomer)のみを含むもので、具体的には、カチオンを1つ以上含むカチオン性(メタ)アクリレート系単量体から誘導される構造単位を含むものであってもよい。このとき、前記カチオンは窒素カチオン、酸素カチオン及び硫黄カチオンから選択される1種以上であるものであってもよいが、LiPS吸着度などが最も優れた窒素カチオンを基本的に含むことが好ましい。一方、前記(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを表す。
【0017】
リチウム二次電池(具体的には、リチウム-硫黄電池)において正極バインダーは、正極活物質と導電材などの結合及び集電体への結合に助力する成分として、カチオン性の化合物を一部添加する形態のバインダーが報告されているが、この場合、リチウムポリスルフィドによる問題を根本的に解決することは不可能であった。それで、本出願人は、本発明のように完全にカチオン性単量体のみで構成された形態のリチウム二次電池用正極バインダーを開発したものであり、この場合、既存のバインダーに比べて非常に高いカチオン濃度を有するので、リチウムポリスルフィドを非常に優れながらも効果的に捕獲及び吸着することができる。
【0018】
より具体的に、前記カチオン性(メタ)アクリレート系単量体は、下記化学式1で表されるカチオン性単量体及び下記化学式2で表される架橋形態のカチオン性単量体のいずれか一つ以上を含むものであってもよく、前記化学式2で表される架橋形態のカチオン性単量体を含むことが好ましく、前記化学式1で表されるカチオン性単量体と前記化学式2で表される架橋形態のカチオン性単量体とをともに含むことがより好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
前記化学式1において、R、R及びRはそれぞれ独立に水素又は炭素数1~4のアルキル基、好ましくはそれぞれメチル基であり、Xはハロゲン基(F、Cl、BrまたはI)またはビストリフルオロメタンスルポニルイミド(TFSI)であり、m及びnはそれぞれ独立に0~4の整数である。
【0021】
【化2】
【0022】
前記化学式2において、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素又は炭素数1~4のアルキル基、好ましくはそれぞれメチル基であり、Xはハロゲン基又はビストリフルオロメタンスルホニルイミド(TFSI)であり、o及びqはそれぞれ独立に0~4の整数であり、pは0~8の整数である。このとき、pは2~4の整数であることが好ましい。
【0023】
一方、前記カチオン性(メタ)アクリレート系単量体が前記化学式1で表されるカチオン性単量体、及び前記化学式2で表される架橋形態のカチオン性単量体を含む場合、前記化学式1で表されるカチオン性単量体と前記化学式2で表される架橋形態のカチオン性単量体は、0.5~2:2~0.5の重量比で含むことができる。
【0024】
また、前記正極バインダーは溶媒を含むものであってもよく、このとき、前記正極バインダーは、バインダー総重量に対して前記カチオンを1つ以上含むカチオン性(メタ)アクリレート系単量体から誘導される構造単位5~15重量%及び溶媒85~95重量%を含むことができる。その他に、前記正極バインダーは、通常のリチウム二次電池用正極バインダーに含まれ得る通常の添加剤を、本発明の目的を阻害しない限度内でさらに含むことができる。
【0025】
前記化学式1で表されるカチオン性単量体の例としては、下記化学式1aで表されるカチオン性単量体及び下記化学式1bで表されるカチオン性単量体が挙げられるが、これに制限されない。
【0026】
【化3】
【0027】
また、前記化学式2で表されるカチオン性単量体の例としては、下記化学式2aで表される架橋形態のカチオン性単量体及び下記化学式2bで表される架橋形態のカチオン性単量体が挙げられるが、これらに制限されない。
【0028】
【化4】
【0029】
一方、前述のように、本発明のリチウム二次電池用正極バインダーは、前記化学式1で表されるカチオン性単量体及び前記化学式2で表される架橋形態のカチオン性単量体のいずれか1つ以上を含むものであってもよいので、例えば、本発明のリチウム二次電池用正極バインダーは、前記化学式1aで表されるカチオン性単量体と、前記化学式2aで表されるカチオン性単量体とを含むものであってもよく、前記化学式1bで表されるカチオン性単量体と、前記化学式2aで表されるカチオン性単量体とを含むものであってもよく、前記化学式1a、1b、2a及び2bで表されるカチオン性単量体の全てを含むものであってもよいなど、少なくとも本発明のカチオン性単量体が1つ以上含まれるものであれば、特に制限なく単独または組み合わせて用いることができる。
【0030】
以上、説明した本発明のリチウム二次電池用正極バインダーは、溶媒の存在下で窒素、酸素及び硫黄のいずれか1つ以上を含む(メタ)アクリレート系化合物とハロゲン化アルキル化合物を求核置換反応(S2反応)させ、カチオンに対する対イオンとしてハロゲンアニオンが含まれたカチオン性単量体が製造される段階を経て製造されることができ、前記反応が終了した後に溶媒を除去する段階及び反応生成物を洗浄して未反応物を精製する段階がさらに行われることができる(この製造方法による場合、前記化学式1aで表されるカチオン性単量体または前記化学式2aで表されるカチオン性単量体が製造されることができる)。
【0031】
前記窒素、酸素及び硫黄のいずれか1つ以上を含む(メタ)アクリレート系化合物の例としては、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、1-ビニルイミダゾール2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート及び2-(ジメチルアミノ)エチル2-(ヒドロキシメチル)-アクリレートなどが挙げられるが、窒素、酸素及び硫黄のいずれか1つ以上を含む(メタ)アクリレート系の化合物であれば特に制限なく用いられることができる。また、前記ハロゲン化アルキル化合物としては、ヨウ化エチル(Ethyl iodide)、1,4-ジブロモブテン(1,4-dibromobutane)などの通常のハロゲン化アルキル化合物が挙げられる。
【0032】
前記ハロゲン化アルキル化合物の使用量は、前記窒素、酸素及び硫黄のいずれか1つ以上を含む(メタ)アクリレート系化合物1当量に対して0.5~1当量であってもよい。その他に、前記求核置換反応(S2反応)は30~70℃で12~24時間行われることができ、前記溶媒の除去は回転蒸発器など当業界において通常される方式を利用することができ、前記洗浄はジエチルエテールなどの有機溶媒により行われることができる。
【0033】
一方、前記ハロゲン化アルキル化合物が前記(メタ)アクリレート系化合物1当量に対して0.5当量で用いられる場合には、カチオン性単量体が架橋形態で製造されることができる(この場合、前記化学式2aで表されるカチオン性単量体または前記化学式2bで表されるカチオン性単量体が製造されることができる)。
【0034】
一方、電池駆動過程で副反応が相対的に少なくカチオンとさらに解離がよく行われるビストリフルオロメタンスルホニルイミド(TFSI)アニオンにイオン交換となるように、前記反応が終結した後には、前記ハロゲンアニオンが含まれたカチオン性単量体にリチウム塩(LiTFSI)を加えてイオン交換反応させ、カチオンに対する対イオンとしてビストリフルオロメタンスルホニルイミド(TFSI)アニオンが含まれたカチオン性単量体が製造される段階がさらに含まれることができ、必要に応じて、未反応物を精製する段階がさらに含まれることができる(この製造方法による場合、前記化学式1bで表されるカチオン性単量体または前記化学式2bで表されるカチオン性単量体が製造されることができ、前記ハロゲン化アルキル化合物が前記(メタ)アクリレート系化合物1当量に対して0.5当量で用いられる場合には、前記化学式2bで表されるカチオン性単量体のみが製造されることができる)。
【0035】
前記イオン交換反応は、常温で12~24時間行われることができ、前記イオン交換反応後の精製は、イオン交換反応後に沈んでいる生成物をテトラヒドロフランなどの有機溶媒に溶かした後、精製水(DI water)に沈殿させる過程を通じて行われることができる。
【0036】
一方、図1及び図2は、本発明の一実施例によりリチウム二次電池用正極バインダーが製造される過程を示す反応式であり、図1を通じては、前記化学式1aで表されるカチオン性単量体と前記化学式1bで表されるカチオン性単量体が順次製造される過程を確認することができ、図2を通じては、前記化学式2aで表されるカチオン性単量体と前記化学式2bで表されるカチオン性単量体が順次製造される過程を確認することができる。
【0037】
リチウム二次電池用正極
本発明に係るリチウム二次電池用正極は、以上において説明した正極バインダー及び正極活物質を含む。
【0038】
このような本発明のリチウム二次電池用正極は、正極バインダーに含まれたカチオンとリチウムポリスルフィドの静電気的引力により優れた電池性能を示すことができ、特に、従来のリチウム-硫黄電池などのリチウム二次電池において一般に用いられているPVDFバインダーを含む正極を改善したものである。
【0039】
すなわち、言い換えれば、本発明の正極バインダーをリチウム-硫黄電池の正極に含めると、リチウム-硫黄電池の充放電時に硫黄の体積変化を抑制することができ、何よりも電池駆動時に正極で生成されるリチウムポリスルフィドが液体電解質に溶出しないように、リチウムポリスルフィドを捕獲及び吸着する役割を果たし、電池の性能を向上させることができる。
【0040】
前記リチウム二次電池用正極において、前記正極バインダーは正極総重量100重量部に対して1~50重量部、好ましくは3~15重量部で含むことができる。前記バインダーの含有量が1重量部未満であると、正極活物質と集電体との接着力が不十分になったり、リチウムポリスルフィドを捕獲する能力が減少したりする場合があり、50重量部を超えると接着力は向上するが、その分、正極活物質の含有量が減少して電池容量が低くなる可能性がある。
【0041】
前記正極活物質は硫黄(S)原子を含むことが好ましく、硫黄-炭素複合体であることがさらに好ましい。前記硫黄-炭素複合体は、硫黄の電気伝導度が5.0×10-14S/cm程度に不導体に近く、電極で電気化学反応が容易でなく、非常に大きな過電圧により実際の放電容量及び電圧が理論にはるかに及ばないという点を考慮して、電気伝導性を有する炭素材を融合させたものである(すなわち、炭素材の気孔に硫黄が担持された構造体)。
【0042】
このような硫黄-炭素複合体に含まれる硫黄は、無機硫黄(S)、LiSn(n≧1)、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー[(C、x=2.5~50、n≧2]からなる群から選択された1種以上であってもよく、このうち、無機硫黄(S)を適用することが好ましい。また、前記硫黄-炭素複合体を構成する炭素材は多孔性構造であるか、又は比表面積が高いもので、当業界において通用されるものであれば特に制限なく適用することができ、例えば、前記多孔性構造を有する炭素材としては、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)などの炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;及び活性炭素からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されず、その形態は、球型、棒型、針状型、板状型、チューブ型またはバルク型などで、リチウム二次電池に通常用いられるものであれば制限なく適用することができる。
【0043】
前記硫黄-炭素複合体は、その粒子の大きさが10~50μmであってもよい。前記硫黄-炭素複合体の粒子の大きさが10μm未満の場合、粒子間抵抗が増えてリチウム-硫黄電池の電極に過電圧が発生することがあり、50μmを超える場合は単位重量当たりの表面積が小さくなり、電極内電解液とのウェッティング(wetting)面積及びリチウムイオンとの反応サイト(site)が減少し、複合体サイズ対比電子の伝達量が少なくなり、反応が遅くなり、電池の放電容量が減少することができる。
【0044】
一方、前記リチウム二次電池用正極には導電材をさらに含むことができる。
【0045】
前記導電材は、リチウム二次電池の内部環境で副反応を誘発せず、当該電池に化学的変化を誘発することなく、かつ優れた電気伝導性を有するものであれば特に制限されず、代表的には黒鉛又は導電性炭素を用いることができ、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;結晶構造がグラフェンやグラファイトである炭素系物質;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスキー;酸化チタンなどの導電性酸化物;及びポリフェニレン誘導体などの導電性高分子;を単独でまたは2種以上混合して用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0046】
前記導電材は、通常、正極活物質を含む正極材全重量100重量部を基準として0.5~50重量部、好ましくは1~30重量部で添加される。導電材の含有量が0.5重量部未満と少なすぎると、電気伝導性の向上効果を期待することが困難であるか、または電池の電気化学的特性が低下することがあり、導電材の含有量が50重量部を超えて多すぎると相対的に正極活物質の量が少なくて容量及びエネルギー密度が低下する可能性がある。正極材に導電材を含める方法は大きく制限されず、正極活物質へのコーティングなど当分野において公知の常法を用いることができる。また、必要に応じて、正極活物質に導電性の第2の被覆層が付加されることにより、前記のような導電材の添加に代えることもできる。
【0047】
本発明の正極には、正極の膨張を抑制する成分として充填剤を選択的に添加することができる。このような充填剤は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、かつ電極の膨張を抑制できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオリフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質;などを用いることができる。
【0048】
前記正極集電体としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ステンレススチール(STS)、アルミニウム(Al)、モリブデニウム(Mo)、クロム(Cr)、カーボン(C)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ITO(In doped SnO)、FTO(F doped SnO)、及びこれらの合金と、アルミニウム(Al)またはステンレススチールの表面にカーボン(C)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)または銀(Ag)を表面処理したものなどを用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。正極集電体の形態は、ホイル、フィルム、シート、打ち抜いたもの、多孔質体、発泡体などの形態であってもよい。
【0049】
リチウム二次電池
また、本発明は、前記リチウム二次電池用正極、リチウムメタル負極、前記正極と負極との間に介在する電解質及び分離膜を含むリチウム二次電池を提供し、前記リチウム二次電池はリチウム-硫黄電池であることが好ましい。
【0050】
一般的に、リチウム二次電池は正極材と集電体で構成された正極、負極材と集電体で構成された負極、及び前記正極と負極との電気的接触を遮断し、リチウムイオンを移動させる分離膜で構成され、これらに含浸されてリチウムイオンの伝導のための電解液を含む。前記負極は、当技術分野において知られている常法により製造することができる。例えば、負極活物質、導電材、バインダー、必要に応じて充填剤などを分散媒(溶媒)に分散、混合させてスラリーを作り、これを負極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延して負極を製造することができる。
【0051】
前記負極活物質としては、リチウム金属やリチウム合金(例えば、リチウムとアルミニウム、亜鉛、ビスマス、カドミウム、アンチモン、シリコン、鉛、スズ、ガリウムまたはインジウムなどのような金属との合金)を用いることができる。前記負極集電体としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ステンレススチール(STS)、銅(Cu)、モリブデニウム(Mo)、クロム(Cr)、カーボン(C)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ITO(In doped SnO)、FTO(F doped SnO)、及びこれらの合金と、銅(Cu)またはステンレススチールの表面にカーボン(C)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)または銀(Ag)を表面処理したものなどを用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。負極集電体の形態は、ホイル、フィルム、シート、打ち抜いたもの、多孔質体、発泡体などの形態であってもよい。
【0052】
前記分離膜は、正極と負極との間に介在してこれらの間の短絡を防止し、リチウムイオンの移動通路を提供する役割を果たす。分離膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなオレフィン系ポリマー、ガラス繊維などをシート、多重膜、微細多孔性フィルム、織布及び不織布などの形態で用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。一方、電解質としてポリマーなどの固体電解質(例えば、有機固体電解質、無機固体電解質など)が用いられる場合には、前記固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。具体的には、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜を用いる。分離膜の気孔径は一般に0.01~10μm、厚さは一般に5~300μmの範囲であってもよい。
【0053】
前記電解液としては、非水系電解液(非水系有機溶媒)としてカーボネート、エステル、エーテル又はケトンを単独で又は2種以上混合して用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、n-メチルアセテート、n-エチルアセテート、n-プロピルアセテート、リン酸トリエステル、ジブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリジノン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、2-メチルテトラヒドロフラン(furan)などのようなテトラヒドロフラン誘導体、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン及びその誘導体、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0054】
前記電解液にはリチウム塩をさらに添加して用いることができ(いわゆる、リチウム塩含有非水系電解液)、前記リチウム塩としては非水系電解液に溶解しやすい公知のもの、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiPF(CFCF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記(非水系)電解液には充放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えばピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。必要によっては、不燃性を付与するために四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませてよく、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含ませてもよい。
【0055】
本発明のリチウム二次電池は、当分野の常法により製造することができる。例えば、正極と負極との間に多孔性の分離膜を入れ、非水電解液を投入することによって製造することができる。本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに適用されることはもちろん、中大型デバイスの電源である電池モジュールの単位電池として特に好適に用いられることができる。このような側面から、本発明はまた、前記リチウム二次電池2つ以上が電気的に連結(直列または並列)されて含まれた電池モジュールを提供する。前記電池モジュールに含まれるリチウム二次電池の数量は、電池モジュールの用途及び容量などを考慮して多様に調節することができることは言うまでもない。
【0056】
さらに、本発明は、当分野の通常的な技術により前記電池モジュールを電気的に連結した電池パックを提供する。前記電池モジュール及び電池パックは、パワーツール(Power tool);電気車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、及びプラグ-インハイブリッド電気車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;電気トラック;電気商用車;または電力貯蔵用システムのいずれか1つ以上の中大型デバイス電源として利用可能であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0057】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、これは本発明を例示するに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0058】
以下の実施例では、前記化学式1a、1b、2a及び2bで表されるカチオン性単量体が製造されるので、便宜上、以下に再記載するようにする。
【0059】
【化5】
【0060】
[実施例1]リチウム二次電池用正極バインダーの製造
まず、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートをアセトニトリル溶媒に入れ、45℃で撹拌した後、ここにヨウ化エチルを滴下し、45℃で18時間反応(求核置換反応(S2反応))させた。反応終了後、回転蒸発器を利用して溶媒を除去し、反応生成物をジエチルエーテルで洗浄して未反応物を精製することによって、前記化学式1aで表されるカチオン性単量体を製造した。
【0061】
次いで、LiTFSIと前記製造された化学式1aのカチオン性単量体をそれぞれ精製水(DI water水)に溶かした後、化学式1aのカチオン性単量体が含まれた溶液にLiTFSIが含まれた溶液を滴加し、その後、常温で18時間撹拌(イオン交換反応)し、MCに溶かして精製水と抽出して未反応物を精製することによって、前記化学式1bで表されるカチオン性単量体(正極バインダー)を製造した。
【0062】
[実施例2]リチウム二次電池用正極バインダーの製造
まず、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートをアセトニトリル溶媒に入れ、50℃で撹拌した後、ここに0.5当量の1,4-ジブロモブタンを滴下し、50℃で18時間反応(親核性置換反応(S2反応))させた。反応終了後、回転蒸発器を利用して溶媒を除去し、反応生成物をジエチルエーテルで洗浄して未反応物を精製することによって、前記化学式2aで表される架橋形態のカチオン性単量体を製造した。
【0063】
次いで、LiTFSIと前記製造された化学式2aのカチオン性単量体をそれぞれ精製水に溶かした後、化学式2aのカチオン性単量体が含まれた溶液にLiTFSIが含まれた溶液を滴加し、その後、常温で18時間撹拌(イオン交換反応)し、沈んでいる反応生成物をTHFに溶かし、精製水に3回沈殿させて未反応物を精製することによって、前記化学式2bで表される架橋形態のカチオン性単量体(正極バインダー)を製造した。
【0064】
[実験例1]正極バインダー(カチオン性単量体)の化学構造分析
前記実施例1及び2で製造されたカチオン性単量体が正常に合成されたか否かを確認するためにNMR分析を行った。図3及び5は、本発明の一実施例により、求核置換反応によって製造されたカチオン性単量体のH NMR分析結果を示すグラフであり、図4及び6は、本発明の一実施例により、イオン交換反応によって製造されたカチオン性単量体の13C NMR分析結果を示すグラフである。具体的に、図3は、前記実施例1で製造された「化学式1aで表されるカチオン性単量体」のH NMR分析グラフであり、図4は、前記実施例1で製造された「化学式1bで表されるカチオン性単量体」の13C NMR分析グラフであり、図5は、前記実施例2で製造された「化学式2aで表される架橋形態のカチオン性単量体」のH NMR分析グラフであり、図6は、前記実施例2で製造された「化学式2bで表される架橋形態のカチオン性単量体」の13C NMR分析グラフである。
【0065】
まず、実施例1で製造されたカチオン性単量体が正常に合成されたか否かを確認するためにNMR分析を行った結果、図3に示すように、求核性置換反応によって製造されたカチオン性単量体(化学式1a)の化学構造がすべて現れ、図4を通しては、イオン交換後、TFSIアニオンに含まれたCF基が観察されることを確認し、イオン交換反応によって製造されたカチオン性単量体(化学式1b)も正常に合成されたことが分かった。
【0066】
次に、実施例2で製造されたカチオン性単量体が正常に合成されたか否かを確認するためにNMR分析を行った結果、図5に示すように、求核性置換反応によって製造されたカチオン性単量体(化学式2a)の化学構造がすべて現れ、図6を通じては、イオン交換後、TFSIアニオンに含まれたCF基が観察されることを確認し、イオン交換反応によって製造されたカチオン性単量体(化学式2b)も正常に合成されたことが分かった。
【0067】
[実施例3]リチウム二次電池用正極の製造
熱開始剤である3mol%のV-65(製造社:Wako Chemical)と共に、前記実施例1で製造された正極バインダーと前記実施例2で製造された正極バインダーをNMP溶媒に溶かしてプレ-バインダー溶液を製造した(※V-65:2,2’-Azobis(2,4-dimethylvaleronitrile、これはAIBNよりも低い開始温度を有する熱開始剤で、高温で熱処理を行うことができない硫黄正極の特性のため、これを開始剤として使用した)。
【0068】
次いで、正極活物質(Ketjen black:Sulfur=3:7(wt%))、導電材(Super P)及びバインダー物質の質量比が7:2:1となるように正極スラリーを製造し、最後に、前記製造された正極スラリーをアルミニウムホイルにドクターブレードでコーティングした後、60℃の真空オーブンで12時間乾燥させてリチウム二次電池用正極を製造した。
【0069】
[比較例1]リチウム二次電池用正極の製造
PVDFをNMP溶媒に溶かしてバインダー溶液を製造した後、正極活物質(Ketjen black:Sulfur=3:7(wt%))、導電材(Super P)及びバインダー物質の質量比が7:2:1となるようにして正極スラリーを製造し、最後に、前記製造された正極スラリーをアルミニウムホイルにドクターブレードでコーティングした後、60℃の真空オーブンで12時間乾燥させてリチウム二次電池用正極を製造した。
【0070】
[実施例4、比較例2]リチウム-硫黄電池の製造
前記実施例3及び比較例1で製造された正極をリチウムメタル負極と対面するように位置させた後、正極と負極との間にCelgard分離膜を介在した。次いで、DOL/DME溶媒にそれぞれ1M及び0.2M濃度でLiTFSIとLiNOが溶解した電解液をケース内部に注入し、コインセル型のリチウム-硫黄電池を製造した。
【0071】
[実験例2]リチウム二次電池の放電容量及び寿命特性の評価
前記実施例4及び比較例2で製造されたリチウム-硫黄電池について、電流密度を0.2~2C-rateに設定して放電容量及び寿命特性を評価した。図7は、本発明の一実施例及び比較例に係るリチウム-硫黄電池の放電容量及び寿命特性を比較対比したグラフであり、図8は、本発明の一実施例に係るリチウム-硫黄電池の容量-電圧グラフであり、図9は、通常のバインダーを正極に適用したリチウム-硫黄電池の容量-電圧グラフである。
【0072】
前記のように、実施例4及び比較例2で製造されたリチウム-硫黄電池の放電容量及び寿命特性を評価した結果、図7に示すように、カチオン性の単量体を正極バインダーとして適用した実施例4のリチウム-硫黄電池は、通常のバインダーであるPVDFを正極バインダーとして適用した比較例2のリチウム-硫黄電池に比べて優れた放電容量と寿命特性を示した。
【0073】
また、実施例4及び比較例2で製造されたリチウム-硫黄電池の容量-電圧グラフを示す図8及び9を通じては、LiからLiSまでの還元反応が起こる2.1V-1.8Vの区間が、カチオン性の単量体を正極バインダーとして適用した実施例4のリチウム-硫黄電池においてより長く現れることを確認することができ、これを通じて、本発明のカチオン性単量体を正極バインダーとして用いると、リチウムポリスルフィドが正極内部に固定され、追加の反応が起こることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】