(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】トラップされたイオンの平衡位置で振動電場の振幅を減少するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G06N 10/40 20220101AFI20230808BHJP
【FI】
G06N10/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503440
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 SE2020050748
(87)【国際公開番号】W WO2022019815
(87)【国際公開日】2022-01-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522222788
【氏名又は名称】アルパイン クオンタム テクノロジーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ALPINE QUANTUM TECHNOLOGIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンズ, ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリッヒ, マルクス
(57)【要約】
イオントラップ(501)の振動電気四極子場のゼロ位置で準静的電気双極子場の大きさを減少する方法(300)であって、方法は、トラッピング電場に少なくとも1つのイオン(102、502)をトラップするステップであり、トラッピング電場は、電場振幅を備える、ステップと、干渉分光法シーケンスを用いるステップであり、トラッピング電場振幅が第1のトラッピング電場振幅を備えるとき、第1のレーザー(505)パルスを適用することと、トラッピング電場振幅が第1の電場振幅と異なる第2のトラッピング電場振幅を備えるとき、第2のレーザー(505)パルスを適用することと、イオン(102、502)の状態を測定することと、を含むステップと、干渉分光法シーケンスを繰り返して、イオン(102、502)の状態の複数の測定値を取得するステップと、トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、決定された確率に基づいてトラッピング電場を調整するステップと、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオントラップの振動電気四極子場のゼロ位置で準静的電気双極子場の大きさを減少する方法であって、前記方法が、
トラッピング電場に1つ又は複数のイオンをトラップするステップであり、前記トラッピング電場が、前記振動電気四極子場を備え、前記トラッピング電場が、前記振動電場の電場振幅の関数である電場振幅を備える、ステップと、
前記1つ又は複数のトラップされたイオンの1つの平衡位置の変化を誘発し、干渉分光法シーケンスを用いて前記変化を測定するステップであり、
前記トラッピング電場の振幅が第1のトラッピング電場振幅を備えるとき、第1のレーザーパルスを前記1つ又は複数のトラップされたイオンの前記1つに適用することと、
前記トラッピング電場の振幅が前記第1の電場振幅と異なる第2のトラッピング電場振幅を備えるとき、第2のレーザーパルスを前記1つ又は複数のトラップされたイオンの前記1つに適用することと、
前記第1及び第2のレーザーパルスの前記適用の後、前記1つ又は複数のトラップされたイオンの前記1つの状態を測定することと、
を含むステップと、
前記干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、前記1つ又は複数のトラップされたイオンの前記状態の複数の測定値を取得するステップと、
前記干渉分光法シーケンスの間、前記1つ又は複数のトラップされたイオンの前記状態の前記複数の測定値に基づいて、前記1つ又は複数のトラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、
前記決定された確率に基づいて前記トラッピング電場を調整し、前記イオントラップの前記振動電気四極子場の前記ゼロ位置で前記準静的電気双極子場の前記大きさを減少するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記トラッピング電場が、静電場をさらに備え、前記トラッピング電場の振幅が、前記静電場の電場振幅をさらに備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記干渉分光法シーケンスを繰り返すステップが、
単一のトラップされたイオンに干渉分光法シーケンスを複数回実行することと、
前記振動電場に複数のイオンをトラップして、前記イオンの各々に前記干渉分光法シーケンスを実行することと、
の一方又は組み合わせによって複数回実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のレーザーパルスが、共振pi/2パルスを備え、前記第2のレーザーパルスが、共振pi/2パルスを備える、
請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のレーザーパルス及び前記第2のレーザーパルスが、コヒーレントなレーザーパルスであり、前記第1のレーザーパルス及び前記第2のレーザーパルスが、pi/2の位相差を有する、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のレーザーパルスが、前記第1のレーザーパルスの後少なくとも予め定められた遅延で用意される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、前記イオンの前記状態の複数の測定値を取得するステップと、
前記干渉分光法シーケンスの間、前記イオンの前記状態の前記複数の測定値に基づいて、前記トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、
が、第1の複数の回数実行され、前記第1の複数の回数におけるこれらのステップの繰り返しごとに、前記第1のレーザーパルスと前記第2のレーザーパルスとの間の異なる位相差が用いられ、
前記トラッピング電場を調整するステップが、前記確率の前記第1の複数の測定値に基づく、
請求項1~3及び6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、前記イオンの前記状態の複数の測定値を取得するステップと、
前記干渉分光法シーケンスの間、前記イオンの前記状態の前記複数の測定値に基づいて、前記トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、
が、第2の複数の回数実行され、前記第2の複数の回数におけるこれらのステップの繰り返しごとに、異なるトラップ剛性変化が、前記第1及び第2のレーザーパルスの間に前記トラッピング電場の振幅に適用され、前記トラップ剛性変化が、前記第1のトラッピング電場振幅及び前記第2のトラッピング電場振幅に依存し、
前記トラッピング電場を調整するステップが、前記確率の前記第2の複数の測定値に基づく、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の複数の回数の各々のために、
前記干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、前記イオンの前記状態の複数の測定値を取得するステップと、
前記干渉分光法シーケンスの間、前記イオンの前記状態の前記複数の測定値に基づいて、前記トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、
前記干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、前記イオンの前記状態の複数の測定値を取得するステップと、
前記干渉分光法シーケンスの間、前記イオンの前記状態の前記複数の測定値に基づいて、前記トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、
が、前記第2の複数の回数繰り返され、その結果、複数の確率が異なる位相差及び異なるトラップ剛性変化の組み合わせで取得され、
前記トラッピング電場を調整するステップが、前記決定された確率のすべてに基づく、
請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
初回、
前記干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、前記イオンの前記状態の複数の測定値を取得するステップと、
前記干渉分光法シーケンスの間、前記イオンの前記状態の前記複数の測定値に基づいて、前記トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、
が実行され、前記方法が、第1の方向に沿って前記第1及び第2のレーザーパルスを用意するステップを含み、
次回、
前記干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、前記イオンの前記状態の複数の測定値を取得するステップと、
前記干渉分光法シーケンスの間、前記イオンの前記状態の前記複数の測定値に基づいて、前記トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、
が実行され、前記方法が、前記第1の方向と異なる第2の方向に沿って前記第1及び第2のレーザーパルスを用意するステップを含み、
前記トラッピング電場を調整するステップが、初回及び次回に決定された前記確率に基づく、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の方向の各々が、
前記振動電場の完全に面内の方向ベクトルと、
前記振動電場の面外の成分を有する方向ベクトルと、
の1つを有する、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び第2の方向が、相互に直交する方向である、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、
前記電場振幅が固定電場振幅を備えるとき、第1のレーザーパルスを前記トラップされたイオンに適用し、
前記電場振幅が前記固定電場振幅を備え、前記第2のレーザーパルスが第1の位相と異なる第2の位相を有するとき、第2のレーザーパルスを前記トラップされたイオンに適用し、
前記第1及び第2のレーザーパルスの前記適用の後、前記イオンの状態を測定することによって、
干渉分光法を用いて、遷移共振周波数からのレーザーの離調を測定するステップと、
前記レーザーの前記離調を測定するプロセスを複数回繰り返して、前記イオンの前記状態の複数の測定値を取得するステップと、
前記イオンの前記状態の前記複数の測定値に基づいて、前記トラップされたイオンが所与の状態にある固定電場振幅確率を決定するステップと、
をさらに含み、
前記レーザーの離調が、前記固定電場振幅確率に基づいて与えられる、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記第1及び第2の波形パルスの間で変化する電場振幅で前記トラップされたイオンの前記状態を決定することと、前記固定電場振幅で前記トラップされたイオンの前記状態を決定することと、を交互に行うステップを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のレーザーパルスの適用の間の前記振動電場の振幅の二乗及び前記第2のレーザーパルスの適用の間の前記振動電場の振幅の二乗の平均が、動作モードの間、前記イオントラップの前記振動場の振幅の二乗に等しい、
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
イオントラップの振動電気四極子場のゼロ位置で準静的電気双極子場の大きさを減少するように構成されるシステムであって、前記システムが、
少なくとも1つのイオンをトラップするためのトラッピング電場を生成するように構成される複数の電極を備え、前記トラッピング電場が、前記振動電気四極子場を備え、前記トラッピング電場が、前記振動電場の電場振幅の関数である電場振幅を備え、
前記システムが、レーザーパルスを前記トラップされたイオンに適用するように構成される第1のレーザー及び検出器を備え、
前記電場振幅が第1の電場振幅を備えるとき、第1のレーザーパルスを前記トラップされたイオンに適用し、前記電場振幅が前記第1の電場振幅と異なる第2の電場振幅を備えるとき、第2のレーザーパルスを前記トラップされたイオンに適用するように前記レーザーを制御し、
前記第1及び第2のレーザーパルスの前記適用の後、前記イオンの前記状態を測定するように前記検出器を制御することによって、
前記システムが、少なくとも1つのトラップされたイオンの平衡位置の変化を誘発し、干渉分光法シーケンスを用いて前記変化を測定するために干渉分光法を用いるように構成され、
前記システムが、
前記干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、前記イオンの前記状態の複数の測定値を取得し、
前記干渉分光法シーケンスの間、前記イオンの前記状態の前記複数の測定値に基づいて、前記トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定し、
前記確率に基づいて前記トラッピング電場を調整し、前記振動電気四極子場の前記ゼロ位置で前記準静的電気双極子場の前記大きさを減少する、
ようにさらに構成されているシステム。
【請求項17】
ソフトウェア命令を格納したコンピュータ可読媒体であって、前記ソフトウェア命令がプロセッサによって実行されるとき、前記プロセッサに制御信号を生成させ、請求項16に記載のシステムに、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法を実行させる、
コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
請求項16に記載のシステムを備える光クロック。
【請求項19】
請求項16に記載のシステムを備える量子コンピューティングシステム。
【請求項20】
請求項16に記載のシステムを備える量子シミュレータシステム。
【請求項21】
請求項16に記載のシステムを備えるトラップされたイオン電場センサ。
【請求項22】
請求項16に記載のシステムを備えるトラップされたイオン力センサ。
【発明の詳細な説明】
【分野】
【0001】
本開示は、振動電気四極子場のゼロの位置の準静的双極子電場の大きさを減少するための方法、システム及びソフトウェア命令に関するものである。本出願はまた、光クロック、量子コンピューティングシステム、量子シミュレータシステム、トラップされたイオン電場センサ、トラップされたイオン量子ネットワークノード及びシステムを備えるトラップされたイオン力センサに関するものである。特に、この開示は、トラッピング電場において、振動四極子場のゼロの双極子電場の形で、不完全性を識別するために、及び、識別された不完全性を用いて、上述のゼロで双極子場の大きさを減少するために、トラップされたイオンの平衡位置の電場依存を利用することに関するものである。
【概要】
【0002】
本開示の第1の態様によれば、イオントラップの振動電気四極子場のゼロ位置で準静的電気双極子場の大きさを減少する方法が提供され、方法は、トラッピング電場に1つ又は複数のイオンをトラップするステップであり、トラッピング電場は、振動電気四極子場を備え、トラッピング電場は、振動電場の電場振幅の関数である電場振幅を備える、ステップと、1つ又は複数のトラップされたイオンの1つの平衡位置の変化を誘発し、干渉分光法シーケンスを用いて前記変化を測定するステップであり、トラッピング電場の振幅が第1のトラッピング電場振幅を備えるとき、第1のレーザーパルスを1つ又は複数のトラップされたイオンの1つに適用することと、とラッピング電場の振幅が第1の電場振幅と異なる第2のトラッピング電場振幅を備えるとき、第2のレーザーパルスを1つ又は複数のトラップされたイオンの1つに適用することと、第1及び第2のレーザーパルスの適用の後、1つ又は複数のトラップされたイオンの1つの状態を測定することと、を含むステップと、干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、1つ又は複数のトラップされたイオンの状態の複数の測定値を取得するステップと、干渉分光法シーケンスの間、イオンの状態の複数の測定値に基づいて、1つ又は複数のトラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、を含む。
【0003】
1つ又は複数の実施形態において、方法は、決定された確率に基づいてトラッピング電場を調整し、イオントラップの振動電気四極子場のゼロ位置で準静的電気双極子場の大きさを減少するステップをさらに含んでもよい。1つ又は複数の実施形態において、方法は、システムの1つ又は複数のパラメータを調整するステップをさらに含んでもよく、1つ又は複数のトラップされたイオンは、望ましくない電場影響を動作不能にするために実施される。いずれの方法でも、トラップされたイオン又はイオンが干渉分光法シーケンスの間、状態を変化する確率は、イオントラップの振動電気四極子場のゼロで準静的電気双極子場の大きさを表し、問題のシステムに対する影響は、トラッピング電場を調整するか又はシステムのパラメータを調整することによって減少可能である。
【0004】
1つ又は複数の実施形態において、トラップされたイオンが所与の状態にある確率を決定するステップは、干渉分光法シーケンスの間、第1の状態から第2の状態へ移動するイオンの統計可能性を計算することを含んでもよい。1つ又は複数の実施形態において、イオンの状態は、対になってない原子価電子がある電子状態を参照してもよい。1つ又は複数の実施形態において、イオンの状態は、原子イオン内の1つ又は複数の原子価電子の電子状態又は分子イオンの分子軌道状態を参照してもよい。1つ又は複数の実施形態において、イオンの状態は、原子イオンの原子超微細状態又は分子イオンの分子超微細状態を参照してもよい。1つ又は複数の実施形態において、電場を調整するステップは、1つ又は複数の補償電極に印加される電圧を変えることと、トラッピング電場を生成するように構成される1つ又は複数の電極を移動することと、トラッピング電場を生成するように構成される1つ又は複数の電極の電圧を変えることと、のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0005】
1つ又は複数の実施形態において、トラッピング電場は、静電場をさらに備えてもよく、とラッピング電場の振幅は、静電場の電場振幅をさらに備える。
【0006】
1つ又は複数の実施形態において、干渉分光法シーケンスを繰り返すステップは、同じトラップされたイオンに干渉分光法シーケンスを複数回実行することと、振動電場に複数のイオンをトラップして、イオンの各々に干渉分光法シーケンスを実行することと、の一方又は組み合わせによって複数回実行されてもよい。
【0007】
1つ又は複数の実施形態において、第1のレーザーパルスは共振pi/2パルスを備えてもよく、第2のレーザーパルスは共振pi/2パルスを備えてもよい。
【0008】
1つ又は複数の実施形態において、第1のレーザーパルス及び第2のレーザーパルスは、コヒーレントなレーザーパルスでもよく、第1のレーザーパルス及び第2のレーザーパルスは、pi/2の位相差を有してもよい。
【0009】
1つ又は複数の実施形態において、第2のレーザーパルスは、第1のレーザーパルスの後少なくとも予め定められた遅延で用意されてもよい。
【0010】
1つ又は複数の実施形態において、干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、イオンの状態の複数の測定値を取得するステップと、干渉分光法シーケンスの間、イオンの状態の複数の測定値に基づいて、トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、は、第1の複数の回数実行されてもよく、第1の複数の回数におけるこれらのステップの繰り返しごとに、第1のレーザーパルスと第2のレーザーパルスとの間の異なる位相差が用いられ、トラッピング電場を調整するステップは、確率の第1の複数の測定値に基づいてもよい。
【0011】
1つ又は複数の実施形態において、干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、イオンの状態の複数の測定値を取得するステップと、干渉分光法シーケンスの間、イオンの状態の複数の測定値に基づいて、トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、は、第2の複数の回数実行されてもよく、第2の複数の回数におけるこれらのステップの繰り返しごとに、異なるトラップ剛性変化は、第1及び第2のレーザーパルスの間にトラッピング電場の振幅に適用され、トラップ剛性変化は、第1の電場振幅と第2の電場振幅との間に差に依存し、トラッピング電場を調整するステップは、確率の第2の複数の測定値に基づいてもよい。
【0012】
1つ又は複数の実施形態において、第1の複数の回数の各々のために、干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、イオンの状態の複数の測定値を取得するステップと、干渉分光法シーケンスの間、イオンの状態の複数の測定値に基づいて、トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、イオンの状態の複数の測定値を取得するステップと、干渉分光法シーケンスの間、イオンの状態の複数の測定値に基づいて、トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、は、第2の複数の回数繰り返されてもよく、その結果、複数の確率が、異なる位相差及び異なるトラップ剛性変化の組み合わせで取得され、トラッピング電場を調整するステップは、決定された確率のすべてに基づいてもよい。
【0013】
1つ又は複数の実施形態において、初回、干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、イオンの状態の複数の測定値を取得するステップと、干渉分光法シーケンスの間、イオンの状態の複数の測定値に基づいて、トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、が実行され、方法は、第1の方向に沿って第1及び第2のレーザーパルスを用意するステップを含んでもよく、次回、干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、イオンの状態の複数の測定値を取得するステップと、干渉分光法シーケンスの間、イオンの状態の複数の測定値に基づいて、トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップと、が実行され、方法が、第1の方向と異なる第2の方向に沿って第1及び第2のレーザーパルスを用意するステップを含んでもよく、トラッピング電場を調整するステップが、初回及び次回に決定された確率に基づいてもよい。第1の時間の干渉分光法シーケンスの複数の繰り返し及び次の時間の干渉分光法シーケンスの複数の繰り返しは、順次実行されてもよく、すなわち、第1の時間の繰り返しのすべてが実行され、続けて、次の時間の繰り返しのすべてが実行されてもよいし、又は、交互に実行されてもよく、すなわち、第1の時間の第1の繰り返しの1つ又は複数が行われ、続けて、次の時間の繰り返しの1つ又は複数が行われ、続けて、第1の時間の繰り返しの1つ又は複数が行われるなどでもよいことを認識されたい。
【0014】
1つ又は複数の実施形態において、第1及び第2の方向の各々は、振動電場の完全に面内の方向ベクトルと、振動電場の面外の成分を有する方向ベクトルと、の1つを有してもよい。これらの実施形態において、方法は、線形ポールトラップとして配置されるシステムによって実行されてもよい。
【0015】
1つ又は複数の実施形態において、第1及び第2の方向は、相互に直交する方向でもよい。
【0016】
1つ又は複数の実施形態において、方法は、電場振幅が固定電場振幅を備え、第1のレーザーパルスが第1の位相を有するとき、第1のレーザーパルスをトラップされたイオンに適用し、電場振幅が固定電場振幅を備え、第2のレーザーパルスが第1の位相と異なる第2の位相を有するとき、第2のレーザーパルスをトラップされたイオンに適用し、第1及び第2のレーザーパルスの適用の後、イオンの状態を測定することによって、干渉分光法を用いて、遷移共振周波数からのレーザーの離調(detuning、デチューニング)を測定するステップと、レーザーの離調を測定するプロセスを複数回繰り返して、イオンの状態の複数の測定値を取得するステップと、イオンの状態の複数の測定値に基づいて、トラップされたイオンが所与の状態にある固定電場振幅確率を決定するステップと、をさらに含み、レーザーの離調は、固定電場振幅確率に基づいて与えられてもよい。
【0017】
1つ又は複数の実施形態において、方法は、第1及び第2の波形パルスの間で変化する電場振幅でトラップされたイオンの状態を決定することと、固定電場振幅でトラップされたイオンの状態を決定することと、を交互に行うステップを含んでもよい。1つ又は複数の実施形態において、電場振幅が変化するか又は固定するかにかかわらず、同じ予め定められた遅延が用いられてもよい。
【0018】
1つ又は複数の実施形態において、第1のレーザーパルスが適用される間のイオントラップの振動電場の振幅の二乗及び第2のレーザーパルスが適用される間のイオントラップの振動電場の振幅の二乗の平均は、動作モードの間、イオントラップの振動電場の振幅の二乗に等しくてもよい。1つ又は複数の実施形態において、イオンの状態は、蛍光検出によって測定されてもよい。1つ又は複数の実施形態において、蛍光検出は、量子論理分光実験の量子論理遷移段階によって先行されてもよい。1つ又は複数の実施形態において、イオントラップは、線形ポールトラップ又はリングポールトラップを備える。
【0019】
本開示の第2の態様によれば、イオントラップの振動電気四極子場のゼロ位置で準静的電気双極子場の大きさを減少するように構成されるシステムが提供され、システムは、1つ又は複数のイオンをトラップするためのトラッピング電場を生成するように構成される複数の電極を備え、トラッピング電場は、振動電気四極子場を備え、トラッピング電場は、振動電場の電場振幅の関数である電場振幅を備え、システムは、レーザーパルスをトラップされたイオンに適用するように構成される第1のレーザー及び検出器を備え、電場振幅が第1の電場振幅を備えるとき、第1のレーザーパルスを1つ又は複数のトラップされたイオンの1つに適用し、電場振幅が第1の電場振幅と異なる第2の電場振幅を備えるとき、第2のレーザーパルスを1つ又は複数のトラップされたイオンの1つに適用するようにレーザーを制御し、第1及び第2のレーザーパルスの適用の後、1つ又は複数のトラップされたイオンの1つの状態を測定するように検出器を制御することによって、システムは、1つ又は複数のトラップされたイオンの1つの平衡位置の変化を誘発し、干渉分光法シーケンスを用いて前記変化を測定するために干渉分光法を用いるように構成され、システムは、干渉分光法シーケンスを複数回繰り返して、1つ又は複数のトラップされたイオンの状態の複数の測定値を取得し、干渉分光法シーケンスの間、イオンの状態の複数の測定値に基づいて、1つ又は複数のトラップされたイオンが状態を変化する確率を決定し、確率に基づいてトラッピング電場を調整し、振動電気四極子場のゼロ位置で準静的電気双極子場の大きさを減少するようにさらに構成されている。
【0020】
第3の態様によれば、ソフトウェア命令を格納したコンピュータ可読媒体が開示され、ソフトウェア命令がプロセッサによって実行されるとき、プロセッサに制御信号を生成させ、第2の態様のシステムに第1の態様の方法を実行させる。
【0021】
本開示の第4の態様によれば、第2の態様のシステムを備える光クロックが提供される。
【0022】
本開示の第5の態様によれば、第2の態様のシステムを備える量子コンピューティングシステムが提供される。
【0023】
本開示の第6の態様によれば、第2の態様のシステムを備える量子シミュレータシステムが提供される。
【0024】
本開示の第7の態様によれば、第2の態様のシステムを備えるトラップされたイオン電場センサが提供される。
【0025】
本開示の第8の態様によれば、第2の態様のシステムを備えるトラップされたイオン力センサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下、1つ又は複数の実施形態は、添付の図面を単に例として参照して記載されている。
【
図1】
図1A-1Bは、イオントラップの振動電場を生成するように構成される電気四極子配置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、イオントラップの振動電気四極子場のゼロ位置で準静的電気双極子場の大きさを減少する方法の一例の実施形態を示す図である。
【
図4】
図4は、イオントラップの振動電気四極子場のゼロ位置で準静的電気双極子場の大きさを減少する方法の第2の例の実施形態を示す図である。
【
図5】
図5は、線形イオントラップを備える一例のシステムを示す図である。
【
図6】
図6は、実質的に軸線方向に沿って見る図面におけるイオントラップを備える一例のシステムを示す図である。
【
図7】
図7は、レーザーパルスの一例のパルスシーケンス及び前記パルスシーケンスの間の対応する電場振幅を示す図である。
【
図8】
図8は、レーザーパルスの間にトラッピング電場振幅を変えないとき、干渉分光法を実行する実験結果を示す図である。
【
図9】
図9は、レーザーパルスの間にトラッピング電場振幅を変えるとき、干渉分光法を実行する実験結果を示す図である。
【
図10】
図10は、φ
mmに応じて、電場オフセットを変えること及びトラップ剛性変化の1次元の実験結果を示す図である。
【
図11】
図11は、φ
mmに応じて、電場オフセットを変えること及びトラップ剛性変化の2次元の実験結果を示す図である。
【
図12】
図12は、用いられる質問時間に依存して減少可能な、単一方向に沿ったオフセット場の大きさの程度を表現する実験結果を示す図である。
【詳細な説明】
【0027】
イオンは、電場の配置を用いて、イオントラップのさまざまな構成でトラップ可能である。これらの配置は、少なくとも1つの振動電場(例えば、無線周波数、RF、四極子場)を備えることができ、いくつかの例では、1つの静電場を含むこともできる。
図1A-
図1Bは、イオンがどのように振動電場でトラップされるかの一例を示す。この例では、第1の瞬間で、斜めに対向する電極は、同じ極性に帯電する。
図1Aに示すように、第1の電極対101A、101Bは正に帯電し、第2の電極対101C、101Dは負に帯電する。正に帯電するイオン102を仮定すると、トラップの中心の近くのイオン102は、負に帯電する電極101C、101Dの方へ引きつけられ、イオン102は、正に帯電する電極101A、101Bから拒絶される。
図1Bに示すように、第2の瞬間で、第1の電極対101A、101Bが負に帯電し、第2の電極対101C、101Dが正に帯電するように、電極101A、101B、101C、101Dの電荷は反対でもよい。これにより、次に、イオンは電極101A、101Bに引きつけられ、電極101C、101Dから拒絶される。
図1Aの構成と
図1Bの構成との間を交互にすることによって、
図2に単純化して示されるように、イオンが動的にトラップされるように、イオンに作用する時間平均の力は、トラップの中心の方にあってもよい。
【0028】
図1A-
図1Bに示される例がイオントラップの簡略化した2次元の例であることを認識されたい。3次元のトラッピングを提供するために、
図1A-
図1Bの例の面外にいくつかの異なる選択肢を用いることができる。線形イオントラップの配置において、静(DC)電場は、3次元のイオンの両側に配置された類似の帯電を有する電極によって生成されてもよい。
【0029】
図2に示されるトラップされたイオンの時間平均の位置は、トラップされたイオンの平衡位置と呼ばれる。トラップされたイオンの平衡位置で、時間平均電場はゼロである。通常、イオントラップは、トラップされたイオンの平衡位置を、振動するトラッピング電場のゼロと一致させるように構成される。トラップの不完全性及び外部の場源は、イオントラップの中心の近くのゆっくり変化する(準静的な)望ましくない双極性電場を引き起こしうる。振動場のゼロ位置での準静的オフセット場により、トラップされたイオンの平衡位置は、
【数1】
によって振動場のゼロからシフトされる。
【0030】
イオンの永続運動によって定義される直交方向がiの添え字を付けられる場合、uiはi方向の振動場のゼロ位置からのイオン平衡位置の変位であり、qはイオン電荷であり、Eiはi方向の準静的オフセット場の成分であり、mはイオン質量であり、ωiはi方向のイオンの永続運動の周波数である。その結果、トラップされたイオンは、その平衡位置で振動電場を経験する。この望ましくない振動場により、イオンは、過剰な微動と呼ばれる、振動場の周波数で追加の運動を示す。この望ましくない場はまた、イオンのエネルギー準位のシュタルク効果も悪化させる。
【0031】
イオンの望ましくないオフセット場の影響が正確に測定可能である場合、望ましくないオフセットされた電場に関する情報を決定してもよく、そこから、望ましくないオフセットされた電場を動作不能にするために、システムに変化をもたらすことが可能でもよい。イオンの望ましくないオフセット場の影響が正確に測定可能である場合、これらの影響を減少するためにシステムに変化をもたらしてもよいこともまた可能でもよく、これは望ましくないオフセット場の大きさの減少を含んでもよい。
【0032】
技術、例えば、微動の結果としてイオン蛍光の変調の測定、及び、微動の結果として遷移スペクトルの共振のサイドバンドの強さを測定することを用いて、過剰な微動を測定することができる。しかしながら、上述した技術は、後述するシステム及び方法の技術と比較して、より低い解像度の不利な点を被る。イオン蛍光測定の不利な点の1つは、測定結果が用いたレーザー場の放射圧に感度が高いということである。サイドバンドの方法の不利な点の1つは、一方向の測定結果がオフセット場の成分の符号についてではなく、オフセット場の成分の大きさについての情報を与えるということである。これらの不利な点は、後述する技術にはあてはまらない。
【0033】
後述する技術は、従来の技術を用いて達成されるより短い質問時間で、より高い精度の望ましくないオフセットされた電場の決定を提供することができる。
【0034】
トラッピング場の振幅が変えられるとき、望ましくないオフセット場に感度が高い他の影響は、トラップされたイオン平衡位置の変化である。トラッピング場の振幅の変化によって、イオンの永続周波数は、ω
i1→ω
i2に変化し、イオンの平衡位置は、
【数2】
に変化する。
【0035】
平衡位置のこの変化Δuは、イメージングシステムを用いて検出可能である。物体面におけるこの種の技術の解像度は、トラップされたイオンの位置が決定可能な解像度によって制限され、その解像度は回折限界である。さらに、この技術は、物体面からのイオンの動きに対する感度がより低く、これは、焦点がぼけることを引き起こす。この技術は、本願明細書において提示される技術より、イオン平衡位置の変化Δuに対して、及び、それを生じるオフセットされた電場Eに対して感度がより低い。
【0036】
図3は、イオンをトラップするのに用いられる振動電場のゼロ位置でのオフセット場の大きさを減少する方法300を示す。
【0037】
振動電場は、RF周波数で振動してもよい。しかしながら、振動電場がトラップされたイオンのトラップを維持するのに適している任意の周波数で振動してもよいことを認識されたい。例えば、振動電場は、10kHzと10GHzとの間の周波数で振動してもよい。いくつかの例において、振動電場は、1と100MHzとの間の周波数で振動してもよい。いくつかの例において、振動電場は、5と20MHzとの間の周波数で振動してもよい。
【0038】
振動する四極子電場は、
図1を参照して記載されているように、4つの電極によって生成されてもよく、4つの電極のうちの正反対である第1の電極対は、各々、第1の電圧を有するように構成され、4つの電極のうち正反対である第2の電極対は、各々、第1の電圧と異なる第2の電圧を有するように構成される。第1の電極対の極性が第2の電極対の極性と反対であるように、すなわち、第1の電極対が正に帯電するとき、第2の電極対は負に帯電し、逆もまた同じであるように、電極は構成される。電極の電位の大きさは、後述するように、動作の間変化してもよい。1つ又は複数の例では、第1の電極対の電圧は、固定値に設定されてもよく、一方、RF電圧は、第2の電極対に印可される。
【0039】
四極子が電場のタイプの構造を参照するために本願明細書においてしばしば用いられているが、電場の他の配置を実施してもよいことを認識されたい。その代わりに、例えば、八極子電場又はさらにより高い次数を実施してもよい。さらに他の例において、四極子、八極子又はより高い次数の電場の組み合わせを実施してもよい。さらに、電場配置の四極子、八極子又は他の次数の任意の参照は、電場に寄与し、以て、振動電場のゼロの位置で双極子電場の大きさを減少するように構成される1つ又は複数の補償電極の使用を排除しない。
【0040】
振動電場のゼロの位置の双極子のオフセットされた電場の大きさを減少することによって、電場振幅のイオンの平衡位置の依存は減少する。電場振幅の平衡位置の依存を減少することが、イオンの過剰な微動を減少し、イオンの状態の望ましくないシュタルク効果も減少することが有利である。
【0041】
本願明細書において、イオンは、原子イオン又は分子イオンのいずれかを参照してもよく、いずれの場合においても、イオンは、単一の原子価電子又は複数の原子価電子を備えてもよい。イオンは、超微細構造を有してもよい。
【0042】
方法は、トラッピング電場に少なくとも1つのイオンをトラップするステップ301を含んでもよく、トラッピング電場は、振動電気四極子場を備え、静的四極子電場をさらに備えてもよい。トラッピング電場は、振動電場の電場振幅及び静電場の電場振幅の関数である電場振幅を備える。このように、トラッピング電場振幅を変えることの参照が振動電場振幅及び静電場振幅の一方又は両方を変えることを参照してもよいことを認識されたい。振動及び静電場振幅は、これらの場を生成するように構成される電極に印加される電圧の振幅を変えることによって変えられてもよい。トラッピング電場振幅の変化によって、イオンの永続周波数は、ωi1→ωi2に変化する。このように、式2を参照し、これは、イオン平衡位置の変化Δuを生じさせる。
【0043】
方法は、少なくとも1つのトラップされたイオンの平衡位置の変化を誘発し、干渉分光法シーケンスを用いて前記変化を測定するステップをさらに含む。式2から分かるように、イオンの永続周波数をωi1→ωi2に変えることにより、結果として、オフセットされた電場Eが存在する場合、トラップされたイオンの平衡位置のシフトΔuが生ずる。永続周波数は、トラッピング場を生成する電極に印加された電圧の振幅を変えることによって変えられる。
【0044】
干渉分光法シーケンスを実行することは、トラップされたイオンに第1のレーザーパルスを適用するステップ303と、その後、トラップされたイオンに第2のレーザーパルスを適用するステップ305と、を含む。レーザーパルスは、1つ又は複数のレーザーによって提供されてもよい。レーザーパルスの適用は、イオンの状態の変化を引き起こす。特に、イオンの2つの異なる状態は、レーザー場が2つの状態を共振して結合するところと考えられてもよい。換言すれば、レーザー場は、2つの状態の間の遷移に共振する。いくつかの例において、イオンは、複数の初期状態で準備されてもよく、レーザーは、複数の初期状態から対応する複数の最終状態への遷移を引き起こしてもよい。
【0045】
方法は、第1及び第2のレーザーパルスの適用の後、イオンの状態を測定するステップ307をさらに含む。本願明細書では、状態を測定するステップは、2つの測定値が取得されるように第1及び第2のレーザーパルスの各々の後に個々にではなく、第1及び第2のレーザーパルスの両方の適用の後(すなわち、全パルスシーケンスが完了した後)に実行されるということを認識されたい。干渉分光法の後のイオンの最終状態は、任意の適切な技術を用いて測定可能である。1つ又は複数の実施形態において、イオンの最終状態は、蛍光測定を用いて測定されてもよい。トラップされたイオンの最終状態はまた、量子論理分光法で用いられる技術を用いて測定されてもよく、以て、イオンの状態は、第2のイオンの状態に結合され、第2のイオンの状態の次の蛍光測定は、イオンの状態を明らかにする。イオンによって経験される第1のレーザーパルスの間及び第2のレーザーパルスの間のレーザー場の位相差φは、以下を有するイオンの最終状態を決定する。
【数3】
ここで、p
eは励起状態eのイオンを発見する確率である。これは理想の関係を記載するが、実験的な不完全性は、パルス長のエラー及びデコヒーレンスを含んでもよく、このように、確率変動は、本当の実験条件では提示された式と異なりうることを認識されたい。位相差φは、
(i)2つのレーザーパルスの間のレーザー場の位相差φ
laserを制御すること、及び、
(ii)2つのレーザーパルスの適用の間にイオンの位置を変えることによって調整されてもよい。イオンがΔuだけ変位する場合、これは、
【数4】
の位相差に対する寄与を導入し、ここで、k
iは、i方向のレーザー場の波ベクトルの成分である。したがって、
【数5】
である。
【0046】
干渉分光法シーケンスが実行されるたびに、その場合のイオンの状態が決定される。少なくとも1つのトラップされたイオンの平衡位置の変化を誘発するステップ及び少なくとも1つのトラップされたイオンの最終状態を測定するステップのプロセスを複数回繰り返すことにより、トラップされたイオンが所与の状態にある確率を計算することができる。少なくとも1つのトラップされたイオンの平衡位置の変化を誘発するステップ及び少なくとも1つのトラップされたイオンの最終状態を測定するステップのプロセスを複数回繰り返すことは、イオンの状態を初期化するステップ302と、第1のレーザーパルスを適用するステップ303と、第1のトラッピング電場振幅から第2のトラッピング電場振幅にトラッピング電場振幅を変えるステップ304と、第2のレーザーパルスを適用するステップ305と、トラッピング電場振幅を第1のトラッピング電場振幅に戻すステップ306と、イオンの状態を測定するステップ307と、のN回繰り返されるステップのループとして表現されてもよい。
【0047】
方法300はまた、トラップされたイオンが所与の状態にある確率を決定するステップ308Aを含む。これは、例えば、イオンの状態がeである複数の測定値の一部を計算することを含んでもよい。
【0048】
一般に、より低い状態からより高い状態にイオンを励起することについて述べてもよいことを認識されたい。しかしながら、イオンは、同様に、より高い状態からより低い状態に入れられてもよい。さらに、イオンがより高いかより低い状態に入れられるかにかかわらず、いずれかの状態にあるイオンの確率はステップ308Aにおいて決定されてもよい。
【0049】
干渉分光法シーケンスが終了した後のイオンの最終状態は、イオン位置の変化Δuに依存するので、干渉分光法を用いて過剰な微動を引き起こし、シュタルクシフトを悪化させる望ましくないオフセットされた電場Eを測定することができる。第1及び第2のレーザーパルスの間でトラッピング電場振幅を変えることによって、イオンの平衡位置の変化Δuが誘発され、2つのパルスの間イオンによって経験されるレーザー場の間の位相シフトは、寄与
【数6】
を有する。
【0050】
望ましくないオフセットされた電場Eに関する情報は、少なくとも1つのトラップされたイオンの平衡位置の変化Δuを誘発するステップと、第1及び第2のレーザーパルスを適用するステップ303、305と、前記変化を複数回測定するステップ307と、イオンが所与の状態にある確率を決定するステップ308Aと、によって決定されてもよい。式5及び6を結合して、公知であるか又は個別に決定されてもよい、式の他の変数及び定数を考慮することによって、方向
【数7】
における望ましくないオフセットされた電場Eの成分は決定可能である。
【0051】
イオンが所与の状態にある確率を計算した後、方法は、情報の1つ又は複数の部分、例えば、φmm又は方向dのEの成分を計算することができる。方法は、後述するように、イオンが所与の状態にある確率及び/又は計算された情報の1つ又は複数の部分に基づいて、方向dのEの大きさを減少するために、トラッピング電場を調整するステップ309を含んでもよい。これは、振動するトラッピング電場のゼロの位置の望ましくないオフセットされた電場Eの大きさを減少することができる。
【0052】
トラッピング電場を調整するステップ309は、トラッピング電場を生成するように構成される1つ又は複数の電極で静電圧を印加又は変えることと、トラップされたイオンに対して、トラッピング電場を生成するように構成される電極の1つ又は複数を移動することと、1つ又は複数の補償電極で電圧を印加又は変えることによってトラッピング電場を調整することと、トラップされたイオンに対して補償電極の1つ又は複数を移動することと、のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0053】
上述した対策のいずれかを講じることは、イオンの周りの局所電場を変え、記載されているようにイオンが所与の状態にある確率に基づいて行われた場合、振動するトラッピング電場のゼロの位置の望ましくないオフセットされた電場Eの大きさを減少することが有利である。
【0054】
図4は、
図3に提示されるシーケンスのより単純なバージョンを示す。第1のレーザーパルスの適用の前のイオンの状態が以前の測定ステップから周知であるので、
図4において、初期化ステップ302は繰り返されない。これは、イオンが状態|e>に励起される確率を決定する(ステップ308A)代わりに、その代わりに状態が変化する確率が決定される(ステップ308B)ことを意味する。第1の測定において、イオンが所与の状態にある確率を決定するステップ308Aは、308Aが初期化ステップの後実行されるとき、イオンがその状態を変える確率を決定するステップに直接的に同等でもよいことを認識されたい。
【0055】
導入されてもよい他の簡略化は、シーケンスの間、トラッピング電場の振幅の1つの変化のみの適用である(ステップ306は除去される)。この場合、繰り返しは、トラッピング場振幅が減少する(及び、イオンがΔuだけ変位する)繰り返しとトラッピング場振幅が増加する(及び、イオンが-Δuだけ変位する)繰り返しとの間で交互に生じてもよい。いずれの場合においても、干渉分光法測定値は、位相オフセットφmm及び-φmmそれぞれに対して感度が高い。これは、ステップ307の間与えることができる。
【0056】
図5及び
図6は、上述した方法を実行するように構成される線形イオントラップ及びレーザー形状を備える一例のシステム500を示す。
図5及び
図6において表現される一例のイオントラップは、四極子電場配置を用いた線形イオントラップ501を備える。しかしながら、限定されるものではないが、ハイパボリックイオントラップ、線形イオントラップ、リングイオントラップ、円筒イオントラップ、平面イオントラップ、ホイールイオントラップ又はサンドイッチイオントラップのような任意の適切なイオントラップの配置を用いることができることを認識されたい。この例では、
88Sr
+イオン502は、線形イオントラップ501に限定され、その後記載されている実験的な詳細は
88Sr
+イオンをトラップするのに適している。この配置では、他のイオンを用いることができ、同じか異なる実験的なパラメータを用いて、例えば、異なる電極構成、異なるレーザー装置及び異なるレーザー周波数を用いてイオンをトラップしてもよいことを認識されたい。
【0057】
この例では、電圧は、4つの金でコーティングしたブレード電極503に印加され、x及びyの放射方向にイオンを限定する。これらの4つのブレード電極503への電圧は、xy面に振動電場を生成するように構成される。静電圧は、2つの金でコーティングしたエンドキャップ電極504に印可され、z軸線方向にイオンを限定する。他の任意の適切な電極設計を用いてもよい。図面において定義される座標軸は、イオンの永続運動及び電極503、504の形状によって定義される。このように、電極503は、xy面に振動電場を生成するように構成される。電極503はまた、放射モードωx及びωyの非低下(non-degeneracy)を生成する静電場を生成してもよい。z方向に沿って限定を提供する静電場を生成するように構成される電極504は、z方向に沿って正反対に配置される。静電場を生成するように構成される電極504が正反対の配置で開始してもよいが、これらの電極504の正確な相対的な位置は、振動電気四極子場のゼロ位置で準静的電気双極子場の大きさを減少するために調整されてもよいことを認識されたい。電極503の相対的な位置はまた、振動電気四極子場のゼロ位置で準静的電気双極子場の大きさを減少するために調整されてもよい。
【0058】
以下のセクションにおいて、方向ベクトルは、フォーマット(x、y、z)で参照される。この例において、3つの674nmのレーザービーム505が提供され、(0、0、1)、(-1、1、-√2)及び(-1、-1、0)の非正規化の伝搬方向でイオンを照明する。これらの独立して制御可能なレーザービームは、単一レーザーによって提供されてもよいし、又は、複数のレーザーによって提供されてもよい。1つ又は複数の実施形態において、軸線(0、0、1)レーザービーム505は、エンドキャップ電極の1つ又は複数のホールを通して伝搬するように構成されてもよい。
【0059】
第1のレーザー、例えば、(-1、-1、0)に沿って配置されるレーザーは、振動電場の面の波数ベクトルkを有する第1及び第2のレーザーパルスを提供するように構成されてもよい。1つ又は複数の実施形態において、さらなるレーザーは、干渉分光法シーケンスのレーザーパルスを提供するように構成される振動電場の面の他の方向に沿って、又は、その面の成分を有して提供されてもよい。上述したように、レーザー場の波数ベクトルkが用いられ、そこから、d方向の電場Eに関する情報が取得されてもよいとき、イオン502が所与の状態にある確率は計算可能である。各レーザーは、1つ又は複数のレーザーパルスシーケンスを別々に提供するように構成され、レーザーパルスが異なるk方向に沿って提供されるときイオンが所与の状態にある確率を決定し、異なるd方向の電場に関する情報は、オフセットされた電場Eの2D(2次元)又は3D(3次元)測定が決定可能なように決定されてもよいように、システムは構成されてもよい。測定値が、振動電場の面内の成分d
IIと、振動電場の面外の成分d
Lと、を有する方向dのオフセット場Eに感度が高く、E
IIの値が、振動電場の面内にあると考えられる場合、方向d
IIの電場の成分を分解することが必要であることを認識されたい。軸線レーザーはまた、
図3又は
図4の方法300を用いてz方向の望ましくない電場を測定するために用いられてもよい。理想的な線形ポールトラップでは、軸線方向に沿った振動場は存在しないが、その不完全性、例えば、機械加工の不完全性は、軸線方向に沿ったこの種の振動場を引き起こしうることを認識されたい。この望ましくない場は、軸線方向成分を有する波数ベクトルを有するレーザービームを用いて本願明細書において開示される技術を用いて精査されてもよい。望ましくない電場の測定値がx、y及びz方向において求められる場合、異なる方向dが互いに対して直交するように、2つのレーザーパルス及びトラッピング場振幅の変化を提供するように構成されるレーザーが配置されると、特に有利となりうることを認識されたい。異なる方向dがイオンの永続運動によって定義されるx、y及びz軸線に整列するように、1つ又は複数のレーザーパルスシーケンス及びトラッピング場振幅の変化の両方を提供するように構成されるレーザーが配置されると、特に有利となりうる。
【0060】
ドップラー冷却レーザー、例えば、
図5の(1、-1、√2)方向のレーザー505が提供されてもよい。ドップラー冷却レーザーは、イオンの動きを遅くし、以て、干渉分光法結果が式3によって記載される程度を増加させるように構成されるレーザーを提供するように構成されてもよい。
図6の(1、1、0)方向のレーザー505のような、システムの放射永続周波数が低下したとき、追加のドップラー冷却レーザービームが使用されてもよい。
【0061】
システム500のレーザー505の1つは、リポンプレーザーを備えてもよい。リポンプレーザーは、ドップラー冷却レーザービームによって駆動される望ましくない状態に対する光ポンピングに対処するように構成されてもよい。システム500のレーザーの1つは、クエンチレーザーを備えてもよい。クエンチレーザー505は、励起状態からグラウンド状態にイオンを遷移するように構成されてもよい。ドップラー冷却、リポンプ及びクエンチレーザービーム505は、ともに伝搬するように構成されてもよい。実験的なセットアップの制約のため、イオンへの光アクセスは制限されてもよい。ともに伝搬するレーザービーム505を提供することによって、ビームがともに焦束可能となり、以て、利用できるセットアップ空間を効率的に利用することができる。
【0062】
説明の便宜上、特定の例を用いて、ストロンチウム88イオンは、光ポンピングによってそのグラウンド状態5S1/2の特定のサブレベルで初期化されてもよい。674nmのレーザー光のパルスは、状態5S1/2mJ=1/2から4D5/2mJ=-3/2にイオンを遷移してもよい。1033nmのレーザー光のパルスは、4D5/2から5P3/2にイオンを遷移してもよく、5P3/2からイオンは、5S1/2のいずれのサブレベルに低下してもよい。最初に状態5S1/2mJ=-1/2にある場合、プロセスはイオンに影響を及ぼさない。このプロセスを(典型的には10回)繰り返すことによって、イオンが最初に状態5S1/2mJ=1/2にある場合、おそらく5S1/2mJ=-1/2で終わる。1092nmのレーザー場は、このプロセスの間オンにされ、状態4D3/2に対する光ポンピングを防止する。
【0063】
システム500はまた、1つ又は複数の補償電極を備えてもよい。補償電極506は、システム500の全トラッピング電場の変化を引き起こすために異なる電圧が印加可能な追加電極を備えてもよい。或いは、補償電極506は、システム500の全トラッピング電場の変化を引き起こすために移動してもよい。1つ又は複数の補償電極506の各々は、電圧が印加される一対のロッドを備えてもよい。補償電極506のロッドの各々は、振動電場を生成するように構成される電極の1つに隣り合って配置されてもよい。いくつかの実施形態において、補償電極の一対のロッドの第1のロッドは、第1の振動電場生成電極に隣り合って配置されてもよく、補償電極のロッドの一対の第2のロッドは、第2の振動電場生成電極に隣り合って配置されてもよい。第1の対の振動電場生成電極は、印可される固定電圧を有するように構成されてもよく、第2の対の振動電場生成電極は、印可される時間的に変化する電圧を有するように構成されてもよいことを認識されたい。第1の振動電場生成電極は、印可される固定電圧を有するように構成される電極の1つでもよく、第2の振動電場生成電極は、印加される時間的に変化する電圧を有するように構成される電極の1つでもよい。
【0064】
システム500は、干渉分光法シーケンスの測定ステップ307の間、イオン502によって放出される光子の数を表す測定値を提供するように構成される光子収集デバイス(図示せず)をさらに備えてもよい。1つ又は複数の実施形態において、光子収集デバイスは、光電子倍増管(PMT)を備えてもよいし、又は、他の光子収集デバイスを備えてもよい。
【0065】
上述したように、干渉分光法シーケンスは、イオンの状態の複数の測定値を取得するために複数回繰り返される。次に、トラップされたイオンが所与の状態にある確率が決定可能である。同じイオンの状態を複数回決定することは、イオントラップの単一のトラップされたイオンに干渉分光法シーケンスを繰り返し実行することを含んでもよい。単一のトラップされたイオンに干渉分光法シーケンスを繰り返し実行するステップは、同じトラップされたイオンに干渉分光法シーケンスを複数回実行することを含んでもよいか、又は、トラップの第1のトラップされたイオンに干渉分光法シーケンスを実行し、トラップからそのトラップされたイオンを除去し、同じトラップに新規なイオンをトラップし、次に干渉分光法シーケンスを繰り返すことを含んでもよい。これらの方法の組み合わせをとってもよい。或いは、複数のイオンがイオントラップにトラップされる場合、干渉分光法シーケンスを複数回実行するステップは、複数のトラップされたイオンの各々又はサブセットに実行し、複数の測定値を同時に取得することによって達成されてもよい。方法は、複数のトラップされたイオンに複数回繰り返されてもよく、以て、前記技術の組み合わせを利用することをさらに認識されたい。二準位系{|g>、|e}において、状態|g>に初期化され、レーザー場共振の|g>⇔e>遷移に対する適用は、状態を結合し、システムの状態を、|g>と|g>及び|e>の重畳状態と状態|e>との間で振動させる。pi/2パルスによって、状態|g>又は状態|e>は、等しい|g>及び|e>成分を有する重畳状態に発展する。発生する結果のいずれかが、重畳状態とレーザー場との間の位相関係に依存したとしても、等しい|g>及び|e>成分を有する重畳状態へのpi/2パルスの適用によって、システムは、状態|g>に、状態|e>に、|g>及び|e>の異なる重畳状態に発展してもよいか、又は、同じ重畳状態のままでもよい。
【0066】
図7は、少なくとも1つのトラップされたイオンの平衡位置の変化を誘発し、干渉分光法を用いて前記変化を測定するプロセスのための簡略化した一例のパルスシーケンス701を示す。第1の期間702において、トラッピング電場振幅が第1の電場振幅706である間、システムは、開始状態に初期化される。第2の期間703において、トラッピング電場が第1の電場振幅706であるとき、pi/2パルスはイオンに適用される。第3の期間704において、トラッピング電場が第1の電場振幅と異なる第2の電場振幅707であるとき、第2のpi/2パルスはイオンに適用される。最終的な期間705において、電場振幅が第1の電場振幅706である間、イオンの状態は検出される。
【0067】
予め定められた遅延は、第1及び第2のレーザーパルスの間に提供されてもよい。予め定められた遅延は、トラッピング電場が、第1の電場振幅から第2の電場振幅に変えられるのに十分な時間でもよい。1つ又は複数の実施形態において、予め定められた時間遅延は、1μsと20msとの間でもよい。予め定められた時間遅延は、5μsと20μsとの間でもよい。予め定められた時間遅延は、10μsでもよい。
【0068】
1つ又は複数の実施形態において、第1のレーザーパルス及び第2のレーザーパルスは、コヒーレントなレーザーパルスでもよい。第1及び第2のレーザーパルスは、pi/2(π/2)の位相差φlaserを有してもよい。
【0069】
より詳しくは、1つ又は複数の実施形態において、第1のレーザーパルスは共振pi/2パルスを備えてもよく、第2のレーザーパルスは共振pi/2パルスを備えてもよく、レーザー場の位相間の差はφ
laser=pi/2でもよい。2つのpi/2パルスを含む実験は、ラムゼー干渉分光法実験と呼ばれてもよい。パルス間の他の位相差が用いられてもよく、例えば、3
*pi/2の位相差が用いられてもよいことを認識されたい。レーザー場波数ベクトルkの方向に沿ったΔuの大きさがレーザー波長よりはるかに小さく、φ
mm<<2
*piのとき、位相差φ
laser=pi/2又はφ
laser=3
*pi/2が用いられるとき、イオンが所与の状態にある確率は、φ
mmの変化に最も強く反応してもよい。なぜなら、この点で、φ
mmに関する確率p
eの変化率が最も大きいからである。オフセットされた電場がなく、位相差φ
laser=pi/2又はφ
laser=3
*pi/2が用いられるとき、0.5の確率が予想されてもよい。いくつかの実施形態において、φ
mm及び、そこから望ましくない電場Eについての情報は、第1及び第2のレーザーパルスの間の位相差φ
laserがpi/2及び3
*pi/2であるとき、イオンが所与の状態にある確率の測定値に基づいて推定されてもよい。位相差がpi/2であるときにイオンが所与の状態にある確率はp
eと呼ばれ、位相差が3
*pi/2であるときにイオンが所与の状態にある確率はp
e’と呼ばれる場合、位相φ
mmは、
【数8】
から推定可能である。
【0070】
この方法で測定値の2つのセットを用いたφmmの推定は、パルス強度におけるエラーに、及び、デコヒーレンスによって生じるエラーにロバストであるという利点を有しうる。N/2の繰り返しがpeを決定するために行われ、N/2の繰り返しがpe’を決定するために行われる場合、φmm<<2πかつpe≒pe’≒0.5のとき、不確定性は、Δpe≒Δpe’≒1/√(2N)であり(通常の近似値を用いた量子投影ノイズに起因)、統計不確定性は、Δφmm≒1/√Nである。
【0071】
本願明細書において、位相差が参照される場合、その位相差の単位はラジアンであることを認識されたい。本願明細書において「ラジアン」の省略は、読みやすさの容易さのために、かつ、当業者の実行に従って提供されるものであり、本願明細書において参照される位相差が他の任意の単位で測定されるのを示唆することを意図するわけではない。
【0072】
図8は、トラップされたイオンに実行される干渉分光法のための一例のデータセット800を示し、第1及び第2のレーザーパルスの間の位相差は、x軸線801に沿って提供され、イオンが所与の状態(この場合、状態|e>)にある確率は、y軸線802に沿って提供される。
図8の例において、トラッピング電場振幅変化は、第1及び第2のレーザーパルスの間に提供されなかった。この例では、所与の状態にある確率は、式5から予想されるように、レーザーパルスの間の位相差φ
laserに依存する。実験結果は、3つの異なるオフセットされた電場ベクトルE(パルスシーケンスの全体にわたって一定に保たれる)によって示され、その値は、補償電極に印加される電圧に依存し、電圧17.05V、17.80V及び18.55Vが用いられた。したがって、オフセットされた電場Eが
図8において測定されるシステムに存在してもよいが、平衡位置の変化Δuは、この例で誘発されず、それゆえ、望ましくない電場Eに関する情報を決定することができない。
【0073】
図9もまた、トラップされたイオンに実行される干渉分光法のための一例のデータセット900を示し、第1及び第2のレーザーパルスの間の位相差φ
laserは、x軸線901に沿って提供され、イオンが所与の状態(この場合、状態|e>)にある確率が、y軸線902に沿って提供される。
図9の例において、第1及び第2のレーザーパルスの間のトラッピング電場振幅の変化は、
図7の例のパルスシーケンスに示すように提供された。この例では、決定された、イオンが所与の状態にある確率は、異なるオフセットされた電場Eで異なり、オフセットされた電場Eによって、振動は、位相φ
mmだけシフトされる。
【0074】
図10は、補償電極に印加される電圧に対する変化及びしたがってオフセットされた電場Eに対する変化とともに、位相差φ
mmが、どのように変化するかの結果を表現する例のデータセット1000を示す。この依存性の結果は、第1のレーザーパルスの適用と第2のレーザーパルスの適用との間にトラッピング電場振幅の3つの異なる変化のために示される。これらの振幅変化は、第1のレーザーパルスの適用と第2のレーザーパルスの適用との間にトラップ電極に適用されるRF信号の電力を変えることによって導入される。6dB、7dB及び8dBの電力変化が用いられる。オフセットされた電場Eに対するφ
mmの感度が、RF信号の電力の変化を増加させることによって、及びしたがって、式6における(ω
i2
-2-ω
i1
-2)に対するその影響に起因して、トラッピング電場振幅の変化を増加させることによって、増強可能であることが分かる。変化(ω
i2
-2-ω
i1
-2)は、トラップ剛性変化と呼ばれてもよい。3つの空間方向があるので、トラップ剛性変化は3つの成分を有することを認識されたい。例えば、最小RF電力変化によってもたらされ、ここで表現される最小のトラップ剛性変化のために、広範囲にわたる電圧は、補償電極に印可される電圧を決定するために走査可能であり、ゼロ又はゼロに近い位相φ及びゼロ又はゼロに近い方向dに沿ったオフセットされた電場成分を達成し、方向dに沿って測定は感度が高い。より大きいトラップ剛性変化を用いると、感度の増強を可能にしうるし、以て、オフセットされた電場Eの大きさ及びイオン平衡位置の振動電場の振幅の減少を提供するより最適な補償電極電圧を識別するのを助ける。式5は、周期的であるので、位相差|φ
mm|>πを測定することができない。したがって、いくつかの例では、大きなトラップ剛性変化でトラップされたイオンが所与の状態にある複数の確率(φ
mmの関数である)を取得することによって提供される感度の増強は、質問されうるオフセットされた電場値の全範囲を減少することを代償にして、行われてもよい。あまりに大きいトラッピング電場振幅の変化を用いる場合、φ
mm=0な状況に陥ることは可能であり、その間、測定の感度が高い方向dに沿ったオフセットされた電場の大きさは、ゼロから遠く離れ、約17.7V.の補償電極電圧を用いた実際の最適トラッピング電場の代わりに、例えば、
図10の約16.7V又は18.7Vである。これは、トラップ剛性変化を変えることによって点検可能である。方向dに沿ったEの成分が0である点に到達する場合、すべてのトラップ剛性変化のために、φ
mm=0である。
【0075】
実線は、全体に実験データに対するフィットを表現する。位相φmmは、補償電極に印加される電圧によって線形に変化する。なぜなら、φmmは、方向dのオフセット場Eの成分に線形に依存し、Eの成分は、補償電極に印加される電圧に線形に依存するからである。
【0076】
したがって、いくつかの実施形態において、方法は、干渉分光法シーケンスを繰り返すステップと、トラップされたイオンが干渉分光法シーケンスの間、状態を変化する確率を決定するステップと、を第1の複数の回数含んでもよい。第1の複数の回数におけるステップのこのグループの繰り返しごとに、第1のレーザーパルスと第2のレーザーパルスとの間の異なる位相差φ
laserが用いられてもよい。この情報を用いて、
図9に示されるようなデータを取得してもよい。トラッピング電場を調整するステップは、トラップされたイオンが所与の状態にある確率の第1の複数の測定値に基づいてもよい。
【0077】
さらに、いくつかの実施形態において、方法は、干渉分光法シーケンスを繰り返すステップと、トラップされたイオンが干渉分光法シーケンスの間、状態を変化する確率を決定するステップと、を第2の複数の回数含んでもよい。第2の複数の回数におけるステップのこのグループの繰り返しごとに、第1のレーザーパルスと第2のレーザーパルスとの間の異なるトラップ剛性変化が用いられてもよい。トラップ剛性変化は、
図10を参照して述べられる第1のレーザーパルスと第2のレーザーパルスとの間に振動場を生成するのに用いられるRF信号の電力のデシベル(dB)の減衰に関連しうる。トラッピング電場を調整するステップは、トラップされたイオンが所与の状態にある確率の第2の複数の測定値に基づいてもよい。
【0078】
第1及び第2のレーザーパルスの間の位相差φlaserを変化させること、及び、トラップ剛性変化を変化させることは、それぞれ、複数の第1及び第2の回数又は測定値として記載されるが、この命名法は、説明の便宜のために提供されていることを認識されたい。命名法は、複数のトラップ剛性変化の測定値の前に複数の位相の測定が実行されなければならないことを要求するものではないし、又は、測定値の一方のセットが、測定値の他方のセットから情報を取得するため実行するように提供されなければならないことを要求するものでもない。
【0079】
いくつかの実施形態において、第1の複数の回数の各々のために、干渉分光法シーケンスを実行するステップと、トラップされたイオンが所与の状態にある確率を決定するステップと、が実行され、同じステップは、第2の複数の回数繰り返される。このようにして、イオンが所与の状態にある複数の確率は、異なる位相差及び異なるトラップ剛性変化の組み合わせで取得される。トラッピング電場を調整するステップは、次に、決定された確率のすべて又はそれらの確率のサブセットに基づいてもよい。このデータを取得することは、
図10に示されるようなデータの収集及び使用を可能にしてもよい。
【0080】
少なくとも1つのトラップされたイオンの平衡位置の変化Δuを誘発し、干渉分光法を用いて前記変化を測定し、トラップされたイオンが所与の状態にある確率を決定することは、方向dに沿ったオフセットされた電場Eに関する情報を提供するということが上述した式において記載及び示されてきた。このため、オフセットされた電場Eの大きさの増強された減少を提供するために、1つ又は複数の実施形態において、方法は、第1の方向d1及び第1の方向と異なる第2の方向d2の少なくとも各々に沿って、Eに感度が高い前記確率を決定する方法を実行するステップを含んでもよい。トラッピング電場を調整するステップは、次に、第1の方向に沿った確率p1の測定値及び第2の方向に沿った確率p2の測定値に基づいてもよい。方法は、第3の方向d3に沿って等しく実施され、第3の方向に沿った確率p3を決定し、3次元の情報を提供してもよい。
【0081】
第1の方向及び第2の方向は、線形ポールトラップの場合、(-1、-1、0)方向に沿うような、振動電場の完全に面内にある波数ベクトルkを備えてもよいし、又は、方向(-1、1、-√2)のような、振動電場の面外の成分を有する波数ベクトルkを備えてもよい。レーザーパルスの方向が振動電場の面外の成分を有する波数ベクトルkを備える場合、それは、振動電場の面に対する投影を備えてもよい。他の例において、方向ベクトルは、振動電場の面に対する投影を備えなくてもよい。第1及び第2の方向の波数ベクトルkの間の相対角度は、任意の相対角度でもよいが、いくつかの実施形態において、2つのベクトルの間の角度は直交してもよい。
【0082】
図11は、aからlとしてラベル付けされた複数のサブグラフを示す。サブ図面iからlは、分解サイドバンドの従来の方法によって取得した結果に対応する。サブ図面は、水平方向(y軸線)に沿った電場を生じる補償電極の電圧及び垂直方向(x軸線)電場に沿った電場を生ずる補償電極の電圧を示す。サブ図面aからhの各ピクセルの暗さの程度は、
図11の右側に示すように、位相シフトφ
mmの測定値を表現する。図a、c、e及びgは、取得された例の結果を示し、ここで、プローブレーザー、すなわち、第1及び第2のレーザーパルスを提供するレーザーが水平方向(-1、-1、0)に沿って提供される。図b、d、f及びhは、取得された例の結果を示し、ここで、プローブレーザーは、水平レーザーの方向(-1、-1、0)に対して直交する、振動場の面に対する垂直投影を有する方向(-1、1、-√2)に沿って提供される。図a、b、e及びfは、ω
x及びω
yの値がおよそ低下している実験の結果を示す。
図11aからhの結果を取得するために、振動四極子場の振幅は変えられ、一方、静的四極子場の振幅は維持された。図c、g、d及びhは、ω
x及びω
yの値が低下していない実験の結果を示す。図aからdは、第1のトラップ剛性変化が第1及び第2のレーザーパルスの間で用いられる結果を示し、図eからhは、第2のトラップ剛性変化が用いられる結果を示し、第1のトラップ剛性変化は、第2のトラップ剛性変化より少ない。
【0083】
最初に
図11のサブ図面aを参照すると、比較的小さいトラップ剛性変化が用いられ、第1及び第2のレーザーパルスが水平方向に沿って提供される結果が提供される。予想されるように、水平方向(y軸線)に沿ってオフセットされた電場振幅の値を変えることは、結果として、φ
mmの位相の変化を生じる。対照的に、位相は、垂直電場を生じる電極の電圧の変化に対して独立しているか、又は、ほぼ独立している。同じ依存性は、サブ図面eに見ることができ、電極電圧に対するφ
mmのより高い依存性は、この例で用いられる第1の電場振幅と第2の電場振幅とのより大きい差の結果として見ることができる。これらの結果は、
図9及び
図10の結果になぞらえられ、比較可能である。類似の結果は、垂直プローブが用いられて、垂直電場の生成を生じる電極の電圧に対する依存性が明白であるサブ図面b及びfに見ることができる。
【0084】
図11のサブ図面a、e、b、fを参照すると、低下した永続周波数ω
x及びω
yによって、位相φ
mmは、補償電極の1つの電圧に強く依存し、他の補償電極の電圧に弱く依存することが分かる。これは、測定感度の方向dが補償電極によって生成される電場の方向にほぼ整列するからである。
図11のサブ図面c、g、d及びhを参照すると、低下していない永続周波数ω
x及びω
yによって、位相φ
mmは、補償電極の各々の両方の電圧に依存することが分かる。これは、測定感度の方向dが補償電極によって生成される電場の方向にあまり整列しないからである。
【0085】
図11のサブ図面a、e及びi又はサブ図面c、g及びkを参照すると、水平方向に沿った波数ベクトルkを有するレーザービームが用いられるとき、本願明細書において開示される技術は、Eの水平成分に最も感度が高く、一方、従来技術のサイドバンドの方法は、Eの垂直成分に最も感度が高い。両方法を用いて、Eに関する情報は、単一のレーザービームのみを用いて、2次元で決定されてもよい。これは、限られた光アクセスを有するトラップされたイオンシステムのために有利である。同様に、
図11のサブ図面b、f及びj又はサブ図面d、h及びlを参照すると、振動場の面に対する垂直投影を有する波数ベクトルkを有するレーザービームが用いられるとき、本願明細書において開示される技術は、Eの垂直成分に最も感度が高く、一方、従来技術のサイドバンドの方法は、Eの水平成分に最も感度が高い。
【0086】
図12は、本願明細書において開示される方法を用いて達成されてもよい単一方向dに沿った残留する望ましくない場Eの大きさの減少を示す。質問時間の増加とともに、残留する望ましくない電場の大きさは、それが水平になる前に減少する。水平化は、バックグラウンドの電場の時間変化に起因してもよいし、又は、電圧をトラップ電極に印加するのに用いられる電圧源のノイズに起因してもよい。本願明細書において開示される方法を用いて、オフセット場Eは、従来技術を用いて達成されたものより単一方向における低い値まで減少する。単一方向に沿ったオフセット場Eの大きさはまた、従来技術を用いて達成されたものより高速に減少する。第2のy軸線は、振動場のゼロの位置で残留する準静的オフセット場に起因して生ずる、イオン平衡位置で残留する振動場の振幅を示す(第1のy軸線に示される)。
【0087】
この種の測定はまた、Eの3次元情報を取得するために、z方向に沿ってプローブレーザーを用いて行われてもよいことを認識されたい。
【0088】
異なる時間にオフセット場Eを測定することによって、Eのドリフトは、時間とともに測定可能である。このドリフトを考慮することによって、オフセット場Eの大きさは、さらに減少されうる。
【0089】
いくつかの実施形態において、複数の確率測定が行われている場合、例えば、複数の異なる確率が異なる位相差で測定されているか、又は、異なるトラップ剛性変化で測定されている場合、干渉分光法シーケンスはまた、固定電場振幅を用いて行われてもよい。この種の測定から導出される確率を用いて、遷移共振周波数からレーザー場の時間的に変化する離調を修正してもよい。これによって、φmmの推定の系統的オフセットを減少又は修正することができる。
【0090】
1つ又は複数の実施形態において、第1のレーザーパルスが適用される間のイオントラップの振動電場の振幅の二乗及び第2のレーザーパルスが適用される間のイオントラップの振動電場の振幅の二乗の平均は、動作モードの間イオントラップの振動電場の振幅の二乗に等しくてもよい。動作モードは、光クロック又は量子コンピューティングシステムのような、システムが設計される動作モードでもよい。本願明細書において定義される方法は、オフセットされた電場Eの大きさ及びしたがってイオンの平衡位置の振動電場の大きさを減少するために提供され、過剰な微動の望ましくない影響を減少し、エネルギー準位のシュタルクシフトを減少することを認識されたい。次に、トラップされたイオンは、多種多様な用途のいずれかにおいて実施されてもよい。この種の用途は、標準のトラッピング電場振幅の下で動作する。振動電場の振幅の二乗は、システムで消費される電力に比例することを理解されたい。電力損失が大きいほど、イオントラップの加熱は大きく、イオントラップの温度の変化は、イオンのトラッピングに影響を与える。このように、オフセットされた電場Eの大きさを減少しようとするとき、第1及び第2のレーザーパルスにわたりシステムで消費される平均電力を、その通常の動作モードの間、システムで消費される平均電力に等しくすることによって、温度に対する変化を緩和することは有益となりうる。
【0091】
ソフトウェア命令を格納したコンピュータ可読媒体もまた提供され、ソフトウェア命令がプロセッサによって実行されるとき、プロセッサに制御信号を生成させ、
図5及び
図6に示されるようなシステムに上述した方法を実行させる。
【0092】
本願明細書において提示される方法及びシステムは、多種多様なシステム、例えば、電場におけるイオンの正確なトラッピングが必要とされる任意のシステムに適用できる。この種の用途は、これらに限定されるものではないが、光クロック、量子コンピューティングシステム、量子シミュレータシステム、トラップされたイオン電場センサ及びトラップされたイオン力センサを含んでもよい。
【0093】
トラップされたイオンシステムでは、時間とともに変化するオフセットされた電場によって、トラップされたイオンは、時間とともに変化する過剰な微動の量を経験する。これによって、ひいては、(過剰な微動に起因して)遷移におけるドップラーシフトが時間とともに変化する。さまざまなオフセットされた電場はまた、シュタルクシフトを時間とともに変化させる。1つ又は複数のトラップされたイオンを利用するシステムにおいて、記載されている方法を時々適用することによって、変化するオフセットされた電場を制御して保つことができ、遷移周波数を安定して保つことができる。さらに、過剰な微動の量が変化する場合、レーザー場を用いて遷移を引き起こすことができる強さは、時間とともに変化する。
【0094】
トラップされたイオンの光クロックは、安定した遷移周波数及びさらに共振シフトについての正確な知識を必要とする。したがって、本開示の方法及び装置は、改善されたトラップされたイオンの光クロックを提供してもよい。
【0095】
トラップされたイオン量子コンピュータ、シミュレータ、ネットワークノード及び力センサにおいて、高忠実度で異なる遷移を引き起こすことを必要とする。遷移の強さが時間とともに変化する場合、動作の忠実度は減少する。また、ドップラーシフト及びシュタルクシフトが時間とともに変化する場合、これによって、共振はシフトし、これはまた、動作の忠実度を減少させる。これは、それらの動作に有害である。したがって、本願明細書において記載されている利点として、本開示の方法及び装置は、改善されたトラップされたイオン量子コンピュータ、シミュレータ、ネットワークノード及び力センサを提供してもよい。
【0096】
いくつかの例において、イオントラップの振動電気四極子場のゼロ位置で準静的電気双極子場の大きさを減少するために、決定された確率に基づいてトラッピング電場を調整することが必要でなくてもよい。その代わりに、方法は、干渉分光法シーケンスの間、イオンの状態の複数の測定値に基づいて、トラップされたイオンが状態を変化する確率を決定するステップを含んでもよく、確率は、イオントラップの振動電気四極子場のゼロ位置での準静的電気双極子場Eの強さを表し、確率に基づいて、トラップされたイオンが実施されるシステムのパラメータは、望ましくない電場影響を動作不能にするために変化してもよい。トラップされたイオンが実施されるシステムは、任意の関連するシステム、例えば、トラップされたイオンの光クロック、トラップされたイオン量子コンピュータ、シミュレータ、ネットワークノード又は力センサを例えば含む、上述したシステムでもよい。例えば、トラップされたイオンの光クロックの場合、トラッピング電場を調整する代わりに、レーザー場の周波数及び光クロックの周波数を調整してもよい。同様に、トラップされたイオン量子コンピュータ又はシミュレータの場合、トラッピング電場を調整する代わりに、レーザーの周波数を調整してもよく、パルス長を調整してもよい。したがって、複数の干渉分光法シーケンスで決定される確率は、Eの大きさを減少するために用いられるよりはむしろ、オフセット場Eから生じる影響、例えば、遷移の周波数のドップラーシフトを修正するために用いられてもよいことを認識されたい。
【国際調査報告】