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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】医療外科用チューブ
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504316
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 GB2021000083
(87)【国際公開番号】W WO2022018394
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】2011418.7
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509342843
【氏名又は名称】スミスズ メディカル インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ザレンボ
(72)【発明者】
【氏名】エリ ジョセフ マッケルウェイン
(72)【発明者】
【氏名】マーク ヘンリー ファウスト
(72)【発明者】
【氏名】マリー シューパート
(57)【要約】
カフ付き気管切開チューブは、シャフトに沿って長手方向に延在し、患者側端のところでシール用カフ13に通じる、インフレーションルーメン16を備えるシャフト10を有する。チューブは、幅が異なる2組のループ26A及び26Bになるように巻かれた金属ワイヤー25によって設けられた補強部材をさらに備える。ループ26は、シャフト10を部分的に取り巻いて、インフレーションルーメン16のすくそばまで延在するが、インフレーションルーメン16を横断することがない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(10)と、前記シャフトの軸に対して平行に延在する実質的にまっすぐな線に沿って当該医療外科用チューブの壁に収まる、前記シャフトに沿って延在する細長い部材(16)とを備え、前記シャフトの長さの少なくとも一部に沿って延在する補強部材(25)をさらに備える医療外科用チューブであって、
前記補強部材(25)が、前記シャフト(10)を取り巻いて延在する複数の部分(26)を有し、前記複数の部分(26)が、前記細長い部材(16)のすぐそばまで延在するが、前記細長い部材(16)を横断しないことを特徴とする、
医療外科用チューブ。
【請求項2】
請求項1に記載の医療外科用チューブであって、
前記補強部材(25)の前記複数の部分が、前記シャフト(10)の周縁部の一部を取り巻いて延在する複数のループ(26)であることを特徴とする、
医療外科用チューブ。
【請求項3】
請求項2に記載の医療外科用チューブであって、
前記補強部材(25)が、反対向きに前記シャフト(10)を取り巻いて延在し、両側から前記細長い部材(16)のすぐそばまで延在する、2組のループ(26A及び26B)を含むことを特徴とする、
医療外科用チューブ。
【請求項4】
請求項3に記載の医療外科用チューブであって、
一方の組に属する前記ループ(26A)が、他方の組に属する前記ループ(26B)より幅広であることを特徴とする、
医療外科用チューブ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の医療外科用チューブであって、
前記補強部材が、金属ワイヤー(25)から製作されることを特徴とする、
医療外科用チューブ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の医療外科用チューブであって、
前記シャフト(10)の前記壁が、シリコーンから製作されることを特徴とする、
医療外科用チューブ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の医療外科用チューブであって、
当該医療外科用チューブが、当該医療外科用チューブの患者側端(11)の付近に膨張可能なカフ(13)を備え、前記細長い部材が、一方の端部のところで前記膨張可能なカフに通じるインフレーションルーメン(16)であることを特徴とする、
医療外科用チューブ。
【請求項8】
請求項7に記載の医療外科用チューブであって、
当該医療外科用チューブが、気管チューブであり、前記膨張可能なカフが、シール用カフ(13)であることを特徴とする、
医療外科用チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトと、シャフトの軸に対して平行に延在する実質的にまっすぐな線に沿って当該医療外科用チューブの壁に収まる、シャフトに沿って延在する細長い部材とを備え、シャフトの長さの少なくとも一部に沿って延在する補強部材をさらに備える型の医療外科用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
気管チューブは、患者の換気、呼吸又は自発呼吸を可能にするために使用される。気管切開チューブは外科手術によって頸部に形成された開口部を介して、一方の端部が気管の中に配置され、他方の端部が頸部表面に隣接する患者の外側に配置されるように気管に挿入される。気管切開チューブは、手術室内で行われる外科的カットダウン法、又は、緊急時に行われ得る輪状甲状靭帯切開術等の様々な技法によって挿入することができる。
【0003】
気管切開チューブは一般に、より長期的な換気のために使用され、又は、口若しくは鼻を介してエアウェイを挿入することができない場合に使用される。患者は、気管切開チューブを介して呼吸しながら意識を保つ場合が多く、気管切開チューブは、大気に通じるように開かれてもよいし、又は管によって、何らかの形態の人工呼吸器に接続されてもよい。チューブは、フランジによって所定位置にしっかりと固定され、フランジは、チューブの機器側端で固定され、チューブの両側で外側に延在するように位置決めされる。患者の解剖学的構造は、年齢及び体格によってかなり異なる。
【0004】
気管切開チューブは、様々な材料から製造することができ、通常、PVC、ポリウレタン又はシリコーン等、曲げることが可能なプラスチック材料から製作される。シリコーンチューブは、可とう性が非常に高いものであり、当該チューブが接触した組織への外傷及びダメージを少なくすることができるので、長期的な使用に関しては特に有利である。しかしながら、柔らかいというシリコーンの性質は、それを回避するための対策が採用されない限り、外圧によって容易にキンクして閉塞する可能性があることを意味する。大抵の場合、シリコーンチューブは、当該チューブに沿って延在する剛性が高い螺旋状部材によって補強される。一般的に、補強部材は、金属ワイヤーである。気管切開チューブには、膨張可能なシール用カフも備え付けられることが多く、膨張可能なシール用カフは、気体が閉じ込められて気管切開チューブの内腔に沿って流れるように気管との間にシールを形成するために、気管切開チューブの患者側端の付近で気管切開チューブを取り巻いて膨張するものである。シール用カフは、チューブに沿って延在するインフレーションルーメンによって膨張させる。チューブが補強される場合、インフレーションラインは、チューブの壁の厚みの中を通って延在することができないので、補強ワイヤーの外側に沿って延在する。これにより、チューブの外側の長さに沿って突起が延在する。これに伴う課題は、突起がチューブの滑らかな外面を乱し、ストーマ及び気管の領域内の組織に不快感又は外傷を生じさせ得るという点である。これは、小児及び新生児への使用を意図したチューブに伴う特有の課題であり得る。吸引用若しくは気体採取用ルーメン又はケーブル若しくはワイヤー等、長さに沿って延在する他の細長い部材を有する、カフなしチューブにも同じ課題が存在する。
【0005】
英国特許出願公開第933307号明細書においては、シール用カフへのインフレーションガスの供給を可能にすることと、螺旋状補強部材として働くことという2つの目的の両方を果たすために、螺旋状インフレーションラインをチューブの壁の厚みに組み込むことが提案される。英国特許出願公開第2552250号明細書には、独立した螺旋状補強用ワイヤーと、この補強材に対して平行に巻かれたインフレーションラインとを有する、チューブが記載されている。これらの配置様式に伴う課題は、十分な補強を達成するためにインフレーションラインを非常に近いピッチで巻かれなければならず、結果として、巻数が多くなり、全長も大きくなるという点である。インフレーションラインの長さは長いので、インフレーションラインには、インフレーションラインに沿った気体の流れに対する高い耐性が備わって、シール用カフの膨張及び収縮が困難になる。この課題は、シリコーンカフを有するチューブ等、液体を使用して膨張させるチューブの場合にはさらに悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許出願公開第933307号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第2552250号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、代替的な医療外科用チューブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、補強部材が、シャフトを取り巻いて延在する複数の部分を有し、複数の部分が、細長い部材のすぐそばまで延在するが、細長い部材を横断しないことを特徴とする、上記に特定した種類の医療外科用チューブが提供される。
【0009】
補強部材の複数の部分は好ましくは、シャフトの周縁部の一部を取り巻いて延在する複数のループである。補強部材は、反対向きにシャフトを取り巻いて延在し、両側から細長い部材のすぐそばまで延在する、2組のループを含むことができる。一方の組に属するループは好ましくは、他方の組に属するループより幅広である。補強部材は、金属ワイヤーから製作されてもよい。シャフトの壁は、シリコーンから製作されてもよい。チューブは、チューブの患者側端の付近に膨張可能なカフを備えることができ、細長い部材は、一方の端部のところでカフに通じるインフレーションルーメンである。チューブは、好ましくは、気管チューブであり、膨張可能なカフは、シール用カフである。
【0010】
次に、添付の図面を参照しながら、例示用の本発明による気管切開チューブについて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】気管切開チューブの側面図である。
図2】気管切開チューブのシャフトの透視図である。
図3】気管切開チューブのシャフトの横断面図である。
図4】気管切開チューブのシャフトへの組付け前の補強部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に図1を参照すると、気管切開チューブ1は、遠位端として前側にある患者側端11と、近位端として後側にある機器側端12とを備える、全体的に曲がった円形断面のシャフト10を有する。患者側端11は、患者の気管内に配置されるようになされ、機器側端11は、気管切開孔の中を通って延在し、患者の外部に配置されるようになされる。患者側端11の付近において、シャフト10は、弾性材料から製造された高圧型の慣用的なシール用カフ13を支持し、シール用カフ13は、収縮したときにはシャフト10に近接して位置し、膨張するときには外側に広がる。シャフト10とカフ13は両方とも、柔らかいシリコーン材料から形成され、シャフトはその長さに沿って、後で詳細に記述する補強要素によって補強される。シャフト10の機器側端12は、慣用的なテーパ形オスコネクタ14を終点とし、慣用的なテーパ形オスコネクタ14は、換気管の一方の端部のところではめ合わせ相手となるテーパ形メスコネクタ(図示なし)と気密接続されるようになされ、又は、患者が自発呼吸しているときには開いた状態のままになるようになされる。チューブ1は、コネクタ14の前方に間隔を空けて配置された半径方向に延在するネックフランジ15を有するものとして示され、ネックフランジ15には、チューブを患者の頸部でしっかりと固定するために頸部用の留め具又はストラップ(図示なし)を留めることができる。この構造により、長さが短いシャフト10をフランジ15より外側に突出させることが可能になる。代替的なチューブにおいて、シャフトはより短いものであってもよく、コネクタは、チューブが患者から大きく突出しないようにフランジに直接配置することもできる。チューブは、インフレーションルーメン16をさらに備え、インフレーションルーメン16は、シャフト10の一方の側に沿って延在し、カフ13の下の患者側端17の付近でカフ13の内部に通じる。機器側端コネクタ14の隣では、インフレーションルーメン16が小口径インフレーションチューブ18の一方の端部に接合されており、インフレーションチューブ18の他方の端部は、複合したインフレーションインジケータ及びバルブ19に接続されている。チューブは、その用途に応じて異なるサイズ、形状及び材料を有し得ることは、理解されよう。
【0013】
図2図4を参照すると、シャフト10の構造がより詳細に示される。シャフト10は、概ね円筒形の形状のシリコーン製の内層20を有し、内層20の壁は、内部平坦部21及び半円形断面の外部リブ22により、一方の側に沿って厚くされる。内層20は、押出、成型又はディッピング等、任意の慣用的な技法によって形成することも可能である。リブ22の中には、インフレーションルーメン16を提供する、円形断面の内腔23が延在する。内腔23は、円形断面を有する必要がなく、楕円形等の他の形状であってもよい。補強部材又は補強要素25は、内層20の外側に沿って延在し、シャフト10を取り巻いて延在する複数の部分を有し、複数の部分は、インフレーションルーメン16のすぐそばまで、すなわち、インフレーションルーメン16に近接して延在するが、インフレーションルーメン16を横断しない。補強要素25は、ステンレス鋼、Nitinol又はNP35N等から製作された円形断面で復元力のある金属ワイヤー等、単一の連続的な要素の形態をとる。補強要素25は、ブストロフェドン方式で、蛇行する方式で、又はジグザグに進む方式で内層20の周りを行ったり戻ったりして取り巻くように巻かれ、前述の方式では、シャフトを取り巻いて延在する複数の部分は、シャフト10の長さに沿って互いに対して間隔を空けて配置された、周縁部の一部にあるループ26になるように形成される。ある方向に形成された1組のループ26Aは、反対方向に形成された1組のループ26Bより幅広であり、一般的には、約3倍の幅である。ループ26A及び26Bの閉鎖端は、両側からインフレーションルーメン16のすぐそばまでインフレーションルーメン16に近接して延在し、シャフト10に沿った2組のループ間には縦方向のギャップが残される。補強部材25はあらかじめ成形し、一方の端部から内層20の上に滑らせることができる。代替的には、補強部材25は、内層20の上に補強部材25を横向きにして載せることができるように、2組のループ26A及び26Bを互いから引き離すことによって開くことも可能であり、補強部材が解放されると、補強部材の復元力により、補強部材が内層を取り巻いて収縮する。ワイヤーは円形断面を有する必要がなく、シャフト10の軸と同軸の円筒形の平面において幅広である平坦化されたプロファイルを有することもできる。補強材は金属ワイヤーでなくてもよいが、例えば、MRIスキャンへのチューブの適合を可能にするような剛性が高いプラスチック、セラミック又はガラス繊維から製作されたフィラメントであってもよい。補強材は代替的には、一続きの環状ストリップになるように切断又は成形された、剛性が高い材料から製作された平坦なシートの形態であってもよい。このようなストリップは、連続的なループの形態であってもよいが、代替的には、共通の支柱(spine)から外側に向かって、インフレーションルーメンのところまでシャフトを取り巻いて延在する独立したリブの形態であってもよい。平坦なシート状の補強部材は、平らな状態のときに特定の形状に切り出し、続いて、望ましいチューブ状の形状になるように曲げることも可能である。このようなシート材から形成された補強部材の強度を高めるために、補強部材の片方又は両方の端部のところで、すなわち、カフに通じる開口部の前方及びインフレーションラインに通じる開口部の後方で補強部材の両側をつなげることが可能である。これにより、補強材に沿ったスロットを、側圧を加えることによって開くことがより困難になり、結果として、潰れ及びキンクに対するシャフトの耐性がより高まる。潰れ及びキンクに対してシャフトを強化しながら、チューブに十分な可とう性を与えることを可能にする、様々な代替的補強形態があり得る。
【0014】
シャフトは、内層20と同じシリコーン材料の外層30によって完成され、又は、グレードが異なる同じ材料であってもよい。それらの材料が内層の材料と適合することを条件にして、様々な材料を使用することが可能であり、又は、介在物を使用して様々な材料を接合することも可能である。この外層30は、補強要素25及びリブ22の上に重なって円形断面を有するシャフト10に滑らかな外面を提供し、補強要素25を所定位置に保持するように堆積される。外層30は、オーバーモールド成形又はディッピング等、任意の慣用的な技法によって形成することも可能である。2つの別個の層を有する代わりに、シャフトは、補強部材の周りにオーバーモールド成形された単一の層によって形成することもできる。
【0015】
インフレーションルーメン16は、シャフト10の患者側端11のところで塞がれ、インフレーション内に通じる横方向、半径方向又は側方開口部17は、シール用カフ13内にある場所において、シャフトの外面からスカイブ加工され、又は形成される。インフレーションチューブ18は、シャフトの反対側にある機器側端のところで、インフレーションルーメン16に接合されている。組立て作業には、コネクタ14及びフランジ15を取り付けるステップも含まれる。
【0016】
記載した配置様式は、潰れとキンクとの両方に対して補強されたチューブであって、外面が滑らかで乱れのないものであり得るようにチューブの壁の厚みに封入されたカフインフレーションルーメン又は他の細長い部材を有する、チューブの提供を可能にする。
【0017】
補強要素は、チューブの全長に沿って延在する必要がない。一部の気管切開チューブにおいては、チューブは、気管切開孔の中を通って延在する長さの部分に沿ってのみ補強されることが好ましい場合もある。チューブの患者側端の短い領域は、柔らかい先端を設けるために、無補強の状態のままにすることもできる。チューブの後端は、挿入の容易化及びテーパ形連結部の保持のために、無補強の状態のままにすることもできる。本発明は、気体採取用若しくは吸引用ルーメン又はビデオ映像化用若しくはセンシング用のケーブル等の細長い部材を有する、気管チューブ以外のチューブにも応用することができる。カフ付きチューブには例えば、尿道カテーテル及び血管拡張用カテーテルが挙げられる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】