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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】新規使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20230808BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 13/04 20060101ALI20230808BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 31/7042 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 31/7034 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 31/7056 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 31/70 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 31/382 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K45/00
A61P9/00
A61P9/10
A61P13/12
A61P3/00
A61P3/06
A61P3/10
A61P3/04
A61P7/10
A61P9/04
A61P9/12
A61P9/10 101
A61P29/00
A61P21/02
A61P27/12
A61P13/04
A61P13/00
A61K38/26
A61K31/7042
A61K31/7034
A61K31/7056
A61K31/70
A61K31/357
A61K31/351
A61K31/381
A61K31/382
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505377
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 US2021043230
(87)【国際公開番号】W WO2022026417
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】63/056,706
(32)【優先日】2020-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】リ,ポン
(72)【発明者】
【氏名】キャス,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー,グレッチェン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA20
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA18
4C084DB35
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA421
4C084ZA422
4C084ZA451
4C084ZA452
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC311
4C084ZC312
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086BB01
4C086BB02
4C086BB03
4C086CA01
4C086CB06
4C086EA02
4C086EA08
4C086EA11
4C086GA02
4C086GA04
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4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA59
4C086ZA70
4C086ZA81
4C086ZA94
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC21
4C086ZC31
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、環状ヌクレオチドおよび/またはナトリウム・グルコース共輸送体2によって媒介される疾患または障害を治療するための方法、処置および物質を提供する。特に、本開示は、さらなる治療薬と組み合わせて、PDE1阻害剤を用いて、そのような疾患および障害を治療する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルカゴン機能の変化および/または環状ヌクレオチド(例えば、cAMPまたはcGMP)シグナル伝達の変化に関連する疾患、障害または状態の治療および/または予防のため方法であって、該治療および/または予防を必要としている患者への、PDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載の式I、Ia、II、III、IV、V、VIおよび/またはVIIで示されるPDE1阻害剤)の薬学的有効量および循環グルカゴンを増加させる活性薬剤(例えば、SGLT2阻害剤および/またはグルカゴン)の薬学的有効量の投与を含む、方法。
【請求項2】
状態、疾患または障害が、環状ヌクレオチド(例えば、cAMPまたはcGMP)シグナル伝達の変化(例えば、減少)に関連している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
状態、疾患または障害が、グルカゴン機能の変化に関連している、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
状態、疾患または障害が、環状ヌクレオチド(例えば、cAMPまたはcGMP)シグナル伝達の変化およびグルカゴン機能の変化に関連している、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
状態、疾患または障害が、心血管状態、心血管疾患もしくは心血管障害、腎状態、腎疾患もしくは腎障害、または代謝状態、代謝疾患もしくは代謝障害である、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
状態、疾患または障害が、狭心症、脳卒中、腎不全、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧、糖尿病関連高血圧症、アテローム動脈硬化症関連高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、炎症性疾患もしくは障害、線維症(例えば、心室細動もしくは上室細動に関連しているかまたはこれによって誘導された心筋線維症)、妊娠期間の心臓リモデリング(すなわち、周産期心筋症)、心肥大、血管リモデリング、結合組織疾患もしくは障害(例えば、マルファン症候群)、慢性心不全、急性心不全、心筋梗塞の結果生じる心不全、心筋虚血、心筋低酸素症、再灌流傷害、左心室機能不全(例えば、心筋梗塞、心室拡大)、血管漏出(すなわち、低酸素症の結果生じる)、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、および/または筋委縮性側索硬化症から選択される心血管状態、心血管疾患または心血管障害である、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
状態、疾患または障害が、腎状態、腎疾患または腎障害(例えば、腎線維症、慢性腎疾患、腎不全、糸球体硬化症および腎炎、ならびに、糖尿病、腎臓の損傷、高血圧および癌性増殖の結果生じる腎障害(例えば、多発性嚢胞腎))である、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
状態、疾患または障害が、代謝疾患、代謝障害または代謝状態(例えば、1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、高コレステロール、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、高血糖症、食後高血糖症、過体重、肥満症、メタボリック症候群、妊婦糖尿病、インスリン抵抗性、真性糖尿病の結果生じる状態、例えば、白内障および微小血管および大血管疾患、例えば腎症、網膜症、ニューロパチー、組織虚血、動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中および末梢動脈閉塞性疾患、膵β細胞の変性または膵β細胞の機能性の低下、異所性脂肪の異常蓄積の結果生じる状態、高インスリン血症(hyperinsulemia)、移植後新規発生糖尿病(NODAT)、移植後メタボリック症候群(PTMS)、限局性分節性糸球体硬化症、NODATおよび/またはPTMSの結果生じる状態(例えば、微小血管および大血管疾患およびイベント、移植片拒絶、感染症、ならびに死)、高尿酸血症、腎結石、低ナトリウム血症、末梢性体液貯留および末梢性浮腫)である、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
PDE1阻害剤が、
(1)遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式I:
【化1】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(ii) R4は、HまたはC1-4アルキルであり、R2およびR3は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、R2およびR3は共にメチルであるか、または、R2はHであり、R3はイソプロピルである)、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2は、Hであり、R3およびR4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し(好ましくは、R3およびR4が一緒になってシス配置を有しており、例えば、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している);
(iii) R5は、例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つに結合しており、式A:
【化2】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R8、R9、R11およびR12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ハロゲンで置換されていてもよいピリジル(例えば、ピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、それぞれ、R8、R9またはR10は存在しない)
で示される部分であり;
(iv) R6は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)であり;
(v) nは0または1であり;
(vi) nが1である場合、Aは、-C(R1314)-である(ここで、R13およびR14は、独立して、HまたはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである)];
(2)遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式II:
【化3】
[式中、
(i) Xは、C1-6アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
(ii) Yは、単結合、アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
(iii) Zは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリダ-2-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R1、-N(R2)(R3)、または、NもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であり;
(iv) R1は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、-OHまたは-OC1-6アルキル(例えば、-OCH3)であり;
(v) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキルであり;
(vi) R4およびR5は、独立して、H、C1-6アルキル、または1個以上のハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)またはC1-6アルコキシで置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(vii) ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上のハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Zは、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル、5-フルオロピリダ-2-イル、6-フルオロピリダ-2-イル、3-フルオロピリダ-2-イル、4-フルオロピリダ-2-イル、4,6-ジクロロピリダ-2-イル)、ハロC1-6アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリダ-2-イル)またはC1-6アルキル(例えば、5-メチルピリダ-2-イル)で置換されている、ヘテロアリール、例えばピリジルであるか、または、Zは、1個以上のハロ(例えば、4-フルオロフェニル)で置換されている、アリール、例えばフェニルである]
(3)遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式III:
【化4】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R4は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iv) R5は、独立して-C(=O)-C1-6アルキル(例えば、-C(=O)-CH3)およびC1-6-ヒドロキシアルキル(例えば、1-ヒドロキシエチル)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(v) R6およびR7は、独立して、H、または、独立してC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)およびハロゲン(例えば、FまたはCl)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)、例えば、非置換フェニル、または1個以上のハロゲン(例えば、F)で置換されているフェニル、または1個以上のC1-6アルキルおよび1個以上のハロゲンで置換されているフェニル、または1個のC1-6アルキルおよび1個のハロゲンで置換されているフェニル、例えば、4-フルオロフェニルまたは3,4-ジフルオロフェニルまたは4-フルオロ-3-メチルフェニルであり;
(vi) nは、1、2、3または4である];
(4)遊離形態または塩形態の、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式IV:
【化5】
[式中、
(iv) R1は、C1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、または-NH(R2)(ここで、R2は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば4-フルオロフェニルである)であり;
(v) X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(vi) R3、R4およびR5は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であるか;または、R3は、Hであり、R4およびR5は一緒になってトリメチレン架橋を形成し(好ましくは、R4およびR5は一緒になってシス配置を有しており、例えば、R4およびR5を担持している炭素はそれぞれR配置およびS配置を有している)、
(vii) R6、R7およびR8は、独立して、
H、
1-4アルキル(例えば、メチル)、
ヒドロキシで置換されているピリダ-2-イル、または
-S(O)2-NH2
であり;
ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、それぞれ、R6、R7および/またはR8は存在しない;また、X、YおよびZがすべてCである場合、R6、R7またはR8の少なくとも1つは-S(O)2-NH2、またはヒドロキシで置換されているピリダ-2-イルである];
(5)遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式1a:
【化6】
[式中、
(iv) R2およびR5は、独立して、Hまたはヒドロキシであり、R3およびR4は一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成している[好ましくは、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している]か;または、R2およびR3はそれぞれメチルであり、R4およびR5はそれぞれHであるか;または、R2、R4およびR5はHであり、R3はイソプロピルであり[好ましくは、R3を担持している炭素はR配置を有している];
(v) R6は、(ハロ置換されていてもよい)フェニルアミノ、(ハロ置換されていてもよい)ベンジルアミノ、C1-4アルキル、またはC1-4アルキルスルフィドであり;例えば、フェニルアミノまたは4-フルオロフェニルアミノであり;
(vi) R10は、C1-4アルキル、メチルカルボニル、ヒドロキシエチル、カルボン酸、スルホンアミド、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)フェニル、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)ピリジル(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)であり;
XおよびYは、独立して、CまたはNである];
(6)遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式V:
【化7】
[式中、
(iv) R1は、-NH(R4)であり(ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルである);
(v) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチル、イソブチルまたはネオペンチル)であり;
(vi) R3は、-SO2NH2または-COOHである];
(7)遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式VI:
【化8】
[式中、
(iv) R1は、-NH(R4)であり(ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルである);
(v) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(vi) R3は、H、ハロゲン(例えば、ブロモ)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロゲンで置換されていてもよいアリール(例えば、4-フルオロフェニル)、ハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、6-フルオロピリダ-2-イルまたはピリダ-2-イル)、またはアシル(例えば、アセチル)である];
(8)遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式VII:
【化9】
[式中、
(viii) R1は、-NH(R5)であり、ここで、R5は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニルであり、例えば、4-フルオロフェニルであり;
(ix) R2およびR3は、各々、独立して、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(x) R4は、ハロゲンで置換されていてもよいアリール(例えば、4-フルオロフェニル)またはハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル)である]
から選択される化合物である、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記:
【化10】
から選択される、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
循環グルカゴンを増加させる活性薬剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、グルカゴン、アチグリフロジン(atigliflozin)、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジン、イプラグリフロジン、ルセオグリフロジン、レモグリフロジン(例えば、レモグリフロジンエタボナート)、セルグリフロジン(例えば、セルグリフロジンエタボナート)、ソタグリフロジン、トホグリフロジンおよびフロリジンから選択される、上記方法のいずれか。
【請求項12】
循環グルカゴンを増加させる活性薬剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、グルカゴン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジンから選択される、上記方法のいずれか。
【請求項13】
循環グルカゴンを増加させる活性薬剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、ダパグリフロジンである、上記方法のいずれか。
【請求項14】
循環グルカゴンを増加させる活性薬剤が、遊離形態のダパグリフロジンである、上記方法のいずれか。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の方法において投与するための、PDE1阻害剤の薬学的有効量およびSGLT2阻害剤の薬学的有効量を含む、薬学的併用療法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年7月26日に出願された米国仮出願第63/056,706号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)の優先権および利益を主張する国際出願である。
【0002】
開示の分野
本開示の分野は、グルカゴンの循環レベルの低下ならびにその後の心臓および腎臓を含む末端器官に対する直接的および間接的な有益な効果の喪失に関連する疾患または障害を治療するための方法、処置および物質に関する。本開示は、グルカゴンの循環レベルを調節するかまたはグルカゴン受容体活性を調節し、cAMPの細胞内レベルを直接的または間接的に増加させる治療薬と組み合わせて、環状ヌクレオチド加水分解を遅らせるPDE1阻害剤を用いて、そのような疾患および障害を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
ホスホジエステラーゼ(PDE)の11のファミリーが同定されているが、Ca2+/カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ(CaM-PDE)であるファミリーIのPDEのみがCa2+/カルモジュリンによって活性化され、カルシウム/カルモジュリン環状ヌクレオチド(例えば、cGMPおよびcAMP)依存性シグナル伝達経路を介することが示されている。3つの既知のCaM-PDE遺伝子であるPDE1A、PDE1BおよびPDE1Cはすべて、中枢神経系組織で発現している。PDE1Aは、脳、肺、腎臓および心臓で発現している。PDE1Bは主に中枢神経系で発現しているが、単球および好中球でも検出され、これらの細胞の炎症反応に関与していることが示されている。PDE1Cは、嗅上皮、小脳顆粒細胞、線条体、腎臓、心臓および血管平滑筋で発現している。PDE1Cは、ヒト平滑筋の増殖および機能の主要な制御因子であることが示されている。
【0004】
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼは、細胞内cAMPおよびcGMPシグナル伝達を、これらの環状ヌクレオチドを細胞内のシグナル伝達経路に関して不活性なそれぞれの5'-一リン酸(5'AMPおよび5'GMP)に加水分解することにより、ダウンレギュレートする。cAMPおよびcGMPはともに中心的な細胞内セカンドメッセンジャーであり、多くの細胞機能を制御する役割を果たしている。PDE1AおよびPDE1BはcAMPよりもcGMPを優先的に加水分解するが、PDE1CはcGMPとcAMPの加水分解がほぼ等しいことを示す。
【0005】
心不全(HF)における心機能不全の主要構成要素は、機能的予備能を制限する環状アデノシン3',5'-一リン酸および環状グアノシン3',5'-一リン酸(cAMP、cGMP)と結合したセカンドメッセンジャーシグナル伝達欠陥に存在する。サイクリックAMPは、プロテインキナーゼA(PKA)およびcAMPによって活性化された交換タンパク質(EPAC)を刺激し、興奮収縮連関(excitation-contraction coupling)およびサルコメア機能を急性的に増強する。サイクリックGMPは、プロテインキナーゼGを活性化することにより、このシグナル伝達のブレーキとして作用する。両環状ヌクレオチドは、血管および線維芽細胞関連活性(relevant vascular and fibroblast activity)を有しており、血管の緊張を減少させ、透過性および増殖性を変化させ、線維化を抑制する。これらの環状ヌクレオチドの分解(加水分解)は、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)によって行われる。PDE1活性は、真性糖尿病、アテローム動脈硬化症、心圧負荷ストレス(cardiac pressure-load stress)および心不全などの慢性疾患状態において、ならびに硝酸塩への長期暴露に反応して、変化すると考えられている。
【0006】
心臓線維芽細胞では、ATIIおよびTGFβによる刺激後にPDE1Aが高度にアップレギュレートされる。さらに、PDE1阻害剤は、ATIIまたはTGFβ誘導心臓筋線維芽細胞活性化、ECM産生および線維化促進遺伝子発現を低下させることが報告されており、PDE1阻害がcAMPを介した抗線維化作用も媒介することを示唆している。PDE1アイソザイムは腎臓にも多く存在する。したがって、特定のPDE1阻害剤によって誘導されるcAMPレベルの増加は、腎疾患の治療に有益であり得る。
【0007】
例えば、腎線維症は、慢性腎疾患または末期腎疾患をもたらす真性糖尿病誘発性の腎不全、糸球体硬化症および腎炎などの腎疾患の進行に重要な因子である。環状アデノシン一リン酸(cAMP)および環状グアノシン一リン酸(cGMP)は、一酸化窒素/ANP/グアニリルシクラーゼ/cGMP依存性プロテインキナーゼ経路およびcAMP/Epac/アデニリルシクラーゼ/cAMP依存性プロテインキナーゼ経路など、多くの複雑なメカニズムを通じて、いくつかの既知の腎疾患を抑制することが示唆されている。これらの多様なメカニズムから、腎不全の治療または予防のための新しい薬理学的治療法を発展させることが提案されている。
【0008】
真性糖尿病(DM)と心不全および腎疾患を包含する特定の疾患との間には強い関連性が存在する。DMにおけるグルカゴンのレベル増加は、インスリンに対する対抗制御的な役割に変化があるため、有害であると考えられてきた。しかしながら、グルカゴンの生理的役割は幅広く、グルカゴンは、心臓および腎臓の両方におけるようにグルカゴン受容体を発現する臓器の維持に重要な役割を果たしている。例えば、グルカゴンは心不全の治療に治療上有用であり、血管抵抗を減少させながら心係数および心拍出量を増加させることが示されている。これらの効果は、心臓ではグルカゴン受容体活性化およびそれに続く細胞内サイクリックAMPシグナル伝達の増加によって媒介されると考えられる。腎臓では、グルカゴンは血管拡張を誘導し、腎血漿流量、糸球体濾過量および電解質排泄を増加させる。
【0009】
ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤などの特定のDM治療薬は、グルカゴンレベルを上昇させることが知られており、DMの有無にかかわらず、ヒトの心不全および腎不全の治療に有益な効果をもたらすことが示されている。逆に、他のDM治療薬、例えばジペプチジルペプチダーゼ4阻害薬は、グルカゴンを減少させ、それらの使用が心不全を誘発し得るという懸念を生じさせる。したがって、グルコース調節への影響からグルカゴンの血行力学的作用を切り離すことが重要である。例えば、SGLT2阻害剤の血行力学的作用は、グルコース調節への影響とは無関係であることが提案されており、グルカゴン分泌の増加を介して間接的に心臓に作用して、心筋代謝、イオン輸送体、線維化、アディポカインおよび血管機能を変化させる可能性がある。また、これらの作用は、腎機能の保護にも有益であり得る。
【0010】
代謝性疾患、心疾患および腎疾患を患っている患者のためのさらなる治療選択肢が必要とされている。このような疾患を治療するための新しくてより安全で選択的な戦略が必要である。
【発明の概要】
【0011】
概要
細胞内cAMPのグルカゴン受容体媒介性増加を増強および維持するための少なくとも1つのPDE1阻害剤、ならびに循環グルカゴンレベルを調節するかまたはグルカゴン受容体活性を調節する少なくとも1つの薬剤(例えば、グルカゴン、SGLT2阻害剤、または血漿中の循環グルカゴンを直接的もしくは間接的に増加させ得る他の薬剤)の投与によってグルカゴン機能の変化に伴う疾患または障害を処置するための方法が、本明細書において提供される。
【0012】
最近、本発明者らは、PDE1Cが心臓組織における優勢なPDE1アイソフォームである哺乳動物において、PDE1阻害が、これらの阻害剤の心血管系における環状ヌクレオチドシグナル伝達を増強する能力を介して、急性の陽性の変力作用、変弛緩作用および動脈血管拡張作用を有することを見出した。また、最近の研究では、環状ヌクレオチドであるcAMPおよびcGMPが、腎線維症、慢性腎疾患、腎線維症、腎不全、糸球体硬化症および腎炎などの腎障害の進行に重要な役割を果たすことも示されている。
【0013】
グルカゴンは、歴史的に心不全を治療するために投与されてきた。グルカゴンの投与は、心係数(心拍出量および心収縮力)の増加により、および/または末梢血管抵抗の減少により、心血管機能に陽性作用を及ぼすことができる。SGLT2阻害剤は、グルカゴンの循環レベルを上昇させることも知られており、心機能および腎機能の両方の維持に重要な役割を果たすことが判明している。
【0014】
理論に縛られることなく、グルカゴンの循環レベルを調節することにより、PDE1阻害剤をグルカゴンまたはグルカゴン機能を高める他の薬剤と組み合わせて使用して、PDE1阻害剤の有効量および/またはグルカゴンもしくはグルカゴン調節剤(例えば、SGLT2阻害剤)の有効量を減少させるか、または、グルカゴンもしくはグルカゴン調節剤の望ましくない副作用(例えば、真菌感染症、尿路感染症、浸透圧利尿および糖尿病性ケトアシドーシス)を軽減することができると考えられる。
【0015】
したがって、第1の態様において、本開示は、グルカゴン機能の変化によって媒介される疾患、障害または状態の治療または予防のための方法であって、該治療および予防を必要とする患者へ、PDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載の式I、Ia、II、III、IV、V、VIおよび/またはVIIで示されるPDE1阻害剤)の薬学的有効量および循環グルカゴンを増加させる第2の活性薬剤(例えば、SGLT2阻害剤および/またはグルカゴン)の薬学的有効量を投与することを含む、方法を提供する。例えば、グルカゴン機能の変化によって媒介される疾患または状態は、真性糖尿病(例えば、2型真性糖尿病)、腎線維症、慢性腎疾患、腎線維症、腎不全、糸球体硬化症、腎炎、心不全(例えば、慢性心不全、急性心不全、または心筋梗塞の結果生じる心不全)、狭心症、脳卒中、腎不全、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧、糖尿病関連高血圧症、アテローム動脈硬化症関連高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、炎症性疾患もしくは障害、線維症、心肥大、血管リモデリング、結合組織疾患もしくは障害(例えば、マルファン症候群)、慢性心不全、心筋虚血、心筋低酸素症、再灌流傷害、左心室機能不全(例えば、心筋梗塞、心室拡大)、血管漏出(すなわち、低酸素症の結果生じる))、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、または筋委縮性側索硬化症であり得る。
【0016】
第2の態様において、本開示は、PDE1阻害剤(例えば、式I、Ia、II、III、IV、V、VIおよび/またはVIIのいずれかによる化合物)と、循環グルカゴンを増加させる第2の活性薬剤(例えば、SGLT2阻害剤および/またはグルカゴン)を含む併用療法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本開示によるPDE1阻害剤とグルカゴンとの共投与による心筋細胞サルコメア短縮の平均変化を示す。
図2図2は、本開示によるPDE1阻害剤とグルカゴンとの共投与による心筋細胞におけるピーク細胞内Ca2+トランジエント振幅を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
開示の詳細な説明
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の治療および予防の方法において使用するためのPDE1阻害剤は、選択的PDE1阻害剤である。
【0019】
開示の化合物
一の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の治療および予防の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式I:
【化1】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(ii) R4は、HまたはC1-4アルキルであり、R2およびR3は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、R2およびR3は共にメチルであるか、または、R2はHであり、R3はイソプロピルである)、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2は、Hであり、R3およびR4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し(好ましくは、R3およびR4が一緒になってシス配置を有しており、例えば、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している);
(iii) R5は、例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つに結合しており、式A:
【化2】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R8、R9、R11およびR12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ハロゲンで置換されていてもよいピリジル(例えば、ピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、それぞれ、R8、R9またはR10は存在しない)
で示される部分であり;
(iv) R6は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)であり;
(v) nは0または1であり;
(vi) nが1である場合、Aは、-C(R1314)-である(ここで、R13およびR14は、独立して、HまたはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである)]
で示される化合物であることを提供する。
【0020】
別の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式1a:
【化3】
[式中、
(i) R2およびR5は、独立して、Hまたはヒドロキシであり、R3およびR4は一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成している[好ましくは、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している]か;または、R2およびR3はそれぞれメチルであり、R4およびR5はそれぞれHであるか;または、R2、R4およびR5はHであり、R3はイソプロピルであり[好ましくは、R3を担持している炭素はR配置を有している];
(ii) R6は、(ハロ置換されていてもよい)フェニルアミノ、(ハロ置換されていてもよい)ベンジルアミノ、C1-4アルキル、またはC1-4アルキルスルフィドであり;例えば、フェニルアミノまたは4-フルオロフェニルアミノであり;
(iii) R10は、C1-4アルキル、メチルカルボニル、ヒドロキシエチル、カルボン酸、スルホンアミド、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)フェニル、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)ピリジル(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)であり;
XおよびYは、独立して、CまたはNである]
であることを提供する。
【0021】
別の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の治療および予防の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式II:
【化4】
[式中、
(i) Xは、C1-6アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
(ii) Yは、単結合、アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
(iii) Zは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリダ-2-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R1、-N(R2)(R3)、または、NもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であり;
(iv) R1は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、-OHまたは-OC1-6アルキル(例えば、-OCH3)であり;
(v) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキルであり;
(vi) R4およびR5は、独立して、H、C1-6アルキル、または1個以上のハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)またはC1-6アルコキシで置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(vii) ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上のハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Zは、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル、5-フルオロピリダ-2-イル、6-フルオロピリダ-2-イル、3-フルオロピリダ-2-イル、4-フルオロピリダ-2-イル、4,6-ジクロロピリダ-2-イル)、ハロC1-6アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリダ-2-イル)またはC1-6アルキル(例えば、5-メチルピリダ-2-イル)で置換されている、ヘテロアリール、例えばピリジルであるか、または、Zは、1個以上のハロ(例えば、4-フルオロフェニル)で置換されている、アリール、例えばフェニルである]
で示される化合物であることを提供する。
【0022】
さらに別の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の治療および予防の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式III:
【化5】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R4は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iv) R5は、独立して-C(=O)-C1-6アルキル(例えば、-C(=O)-CH3)およびC1-6-ヒドロキシアルキル(例えば、1-ヒドロキシエチル)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(v) R6およびR7は、独立して、H、または、独立してC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)およびハロゲン(例えば、FまたはCl)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)、例えば、非置換フェニル、または1個以上のハロゲン(例えば、F)で置換されているフェニル、または1個以上のC1-6アルキルおよび1個以上のハロゲンで置換されているフェニル、または1個のC1-6アルキルおよび1個のハロゲンで置換されているフェニル、例えば、4-フルオロフェニルまたは3,4-ジフルオロフェニルまたは4-フルオロ-3-メチルフェニルであり;
(vi) nは、1、2、3または4である]
で示される化合物であることを提供する。
【0023】
さらに別の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の治療および予防の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式IV:
【化6】
[式中、
(i) R1は、C1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、または-NH(R2)(ここで、R2は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば4-フルオロフェニルである)であり;
(ii) X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(iii) R3、R4およびR5は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であるか;または、R3は、Hであり、R4およびR5は一緒になってトリメチレン架橋を形成し(好ましくは、R4およびR5は一緒になってシス配置を有しており、例えば、R4およびR5を担持している炭素はそれぞれR配置およびS配置を有している)、
(iv) R6、R7およびR8は、独立して、
H、
1-4アルキル(例えば、メチル)、
ヒドロキシで置換されているピリダ-2-イル、または
-S(O)2-NH2
であり;
ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、それぞれ、R6、R7および/またはR8は存在しない;また、X、YおよびZがすべてCである場合、R6、R7またはR8の少なくとも1つは-S(O)2-NH2、またはヒドロキシで置換されているピリダ-2-イルである]
であることを提供する。
【0024】
別の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式V:
【化7】
[式中、
(i) R1は、-NH(R4)であり(ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルである);
(ii) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチル、イソブチルまたはネオペンチル)であり;
(iii) R3は、-SO2NH2または-COOHである]
であることを提供する。
【0025】
別の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式VI:
【化8】
[式中、
(i) R1は、-NH(R4)であり(ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルである);
(ii) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R3は、H、ハロゲン(例えば、ブロモ)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロゲンで置換されていてもよいアリール(例えば、4-フルオロフェニル)、ハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、6-フルオロピリダ-2-イルまたはピリダ-2-イル)、またはアシル(例えば、アセチル)である]
であることを提供する。
【0026】
別の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式VII:
【化9】
[式中、
(i) R1は、-NH(R5)であり、ここで、R5は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニルであり、例えば、4-フルオロフェニルであり;
(ii) R2およびR3は、各々、独立して、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R4は、ハロゲンで置換されていてもよいアリール(例えば、4-フルオロフェニル)またはハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル)である]
であることを提供する。
【0027】
一の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤(例えば、式I、Ia、II、III、IV、V、VIおよび/またはVIIで示される化合物)の投与であって、該阻害剤が、下記の化合物:
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
である、投与を提供する。
【0028】
一の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化14】
である、投与を提供する。
【0029】
別の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化15】
である、投与を提供する。
【0030】
さらに別の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化16】
である、投与を提供する。
【0031】
さらに別の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化17】
である、投与を提供する。
【0032】
さらに別の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化18】
である、投与を提供する。
【0033】
一の実施態様において、上記の式(例えば、式I、Ia、II、III、IV、V、VIおよび/またはVII)のいずれかで示される選択的PDE1阻害剤は、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介、特にPDE1B媒介)加水分解を阻害する化合物であり、例えば、好ましい化合物は、遊離形態または塩形態で、固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにて、1μM未満、好ましくは500nM未満、好ましくは50nM未満、好ましくは5nM未満のIC50を有する。
【0034】
他の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の方法による治療のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、下記の化合物:
【化19】
である、投与を提供する
【0035】
本明細書に記載の方法および治療における使用に適しているPDE1阻害剤のさらなる例は、国際公開第2006133261号A2;米国特許第8,273,750号;米国特許第9,000,001号;米国特許第9,624,230号;国際公開第2009075784号A1;米国特許第8,273,751号;米国特許第8,829,008号;米国特許第9,403,836号;国際公開第2014151409号A1、米国特許第9,073,936号;米国特許第9,598,426号;米国特許第9,556,186号;米国特許出願公開第2017/0231994号A1、国際公開第2016022893号A1、および米国特許出願公開第2017/0226117号A1(それぞれ、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に見ることができる。
【0036】
本明細書に記載の方法および治療における使用に適しているPDE1阻害剤のさらにさらなる例は、国際公開第2018007249号A1;米国特許出願公開第2018/0000786号;国際公開第2015118097号A1;米国特許第9,718,832号;国際公開第2015091805号A1;米国特許第9,701,665号;米国特許出願公開第2015/0175584号A1;米国特許出願公開第2017/0267664号A1;国際公開第2016055618号A1;米国特許出願公開第2017/0298072号A1;国際公開第2016170064号A1;米国特許出願公開第2016/0311831号A1;国際公開第2015150254号A1;米国特許出願公開第2017/0022186号A1;国際公開第2016174188号A1;米国特許出願公開第2016/0318939号A1;米国特許出願公開第2017/0291903号A1;国際公開第2018073251号A1;国際公開第2017178350号A1;米国特許出願公開第2017/0291901号A1;国際公開第2018/115067号;米国特許出願公開第2018/0179200号A;米国特許出願公開第20160318910号A1;米国特許第9,868,741号;国際公開第2017/139186号A1;国際公開第2016/040083号;米国特許出願公開第2017/0240532号;国際公開第2016033776号A1;米国特許出願公開第2017/0233373号;国際公開第2015130568号;国際公開第2014159012号;米国特許第9,034,864号;米国特許第9,266,859号;国際公開第2009085917号;米国特許第8,084,261号;国際公開第2018039052号;米国特許出願公開20180062729号;および国際公開第2019027783号(それぞれ、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に見ることができる。出典明示により本明細書の一部とされる文書の記載が本開示における記載と矛盾するか、または互換性がない場合には、本開示の記載が支配的であると理解されるものとする。
【0037】
PDE1阻害剤のさらに別の例および好適な使用方法は、国際出願PCT/US2019/033941号および米国仮出願第62/789,499号(これらは両方とも出典明示により本明細書の一部とする)に開示されている。
【0038】
別段の指定がない場合、または文脈から明らかでない場合、本明細書における以下の用語は、以下の意味を有する:
【0039】
(a) 「選択的PDE1阻害剤」とは、本明細書で用いられる場合、PDE1の阻害に対して他のPDEアイソフォームの阻害よりも少なくとも100倍の選択性を有するPDE1阻害剤をいう。
【0040】
(b) 「アルキル」とは、本明細書で用いられる場合、飽和または不飽和炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは1~6個の炭素原子を有しており、直鎖または分枝鎖であってよく、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、モノ置換、ジ置換またはトリ置換されていてもよい。
【0041】
(c) 「シクロアルキル」とは、本明細書で用いられる場合、飽和または不飽和非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは3~9個の炭素原子を含んでおり、それらのうち少なくともいくつかが非芳香族単環式または二環式または架橋の環状構造を形成しており、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。シクロアルキルがNおよびOおよび/またはSから選択される1個以上の原子を含んでいてもよい場合、該シクロアルキルはヘテロシクロアルキルであってもよい。
【0042】
(d) 「ヘテロシクロアルキル」とは、特記しない限り、飽和または不飽和非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは3~9個の炭素原子を含んでおり、それらのうち少なくともいくつかが非芳香族単環式または二環式または架橋の環状構造を形成しており、少なくとも1個の炭素原子がN、OまたはSに置き換わっており、該ヘテロシクロアルキルは、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。
【0043】
(e) 「アリール」とは、本明細書で用いられる場合、単環式または二環式芳香族炭化水素であり、好ましくはフェニルであり、例えばアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、カルボキシ、またはさらなるアリールもしくはヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)で置換されていてもよい。
【0044】
(f) 「ヘテロアリール」とは、本明細書で用いられる場合、芳香環を構成する原子の1個以上が炭素ではなくて硫黄または窒素である芳香族部分であり、例えばピリジルまたはチアジアゾリルであり、例えばアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。
【0045】
本開示化合物、例えば本明細書に記載のPDE1阻害剤は、遊離形態または塩形態で、例えば酸付加塩として、存在し得る。本明細書では、特記しない限り、「本開示化合物」などの文言は、何らかの形態の化合物、例えば遊離形態または酸付加塩形態の化合物、または化合物が酸性置換基を含有する場合には塩基付加塩形態の化合物を包含すると解されるべきである。本開示化合物は、医薬品としての使用を目的としているので、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば遊離の本開示化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の単離または精製に有用であり得、したがって、該塩も包含される。
【0046】
本開示化合物は、場合によっては、プロドラッグ形態でも存在し得る。プロドラッグ形態は、体内で本開示化合物に変換される化合物である。例えば、本開示化合物がヒドロキシ置換基またはカルボキシ置換基を含有する場合、これらの置換基は、生理学的に加水分解可能で許容されるエステルを形成し得る。本明細書で用いる場合、「生理学的に加水分解可能で許容されるエステル」とは、生理学的条件下で加水分解可能であり、自体が投与されるべき用量で生理学的に許容される酸(ヒドロキシ置換基を有する本開示化合物の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本開示化合物の場合)を生成する、本開示化合物のエステルを意味する。したがって、本開示化合物がヒドロキシ基を含有する場合、例えば化合物-OHである場合、該化合物のアシルエステルプロドラッグ、すなわち、化合物-O-C(O)-C1-4アルキルは、体内で加水分解して、一方では生理学的に加水分解可能なアルコール(化合物-OH)を形成し、他方では酸(例えば、HOC(O)-C1-4アルキル)を形成することができる。別法として、本開示化合物がカルボン酸を含有する場合、例えば化合物-C(O)OHである場合、該化合物の酸エステルプロドラッグ、化合物-C(O)O-C1-4アルキルは、加水分解して、化合物-C(O)OHおよびHO-C1-4アルキルを形成することができる。したがって、理解されるように、この用語は、慣用の医薬プロドラッグ形態を包含する。
【0047】
別の実施態様において、本開示は、さらに、PDE1阻害剤を、循環グルカゴンを増加させる薬剤(例えば、グルカゴンおよび/またはナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤)と組み合わせて、それぞれが遊離形態または薬学的に許容される塩形態で、薬学的に許容される担体と混合して含む医薬組成物を提供する。用語「組み合わせ」とは、本明細書で用いられる場合、PDE1阻害剤と循環グルカゴンを増加させる薬剤との同時(simultaneous)、連続(sequential)または同時期(contemporaneous)投与を包含する。別の実施態様において、本開示は、このような化合物を含有する医薬組成物を提供する。いくつかの実施態様において、PDE1阻害剤と循環グルカゴンを増加させる薬剤の組み合わせにより、該薬剤を、単独の単剤療法として投与した場合に有効であろう量よりも低い量で投与することができる。
【0048】
別の実施態様において、本開示は、さらに、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本開示化合物を薬学的に許容される担体と混合して含む医薬組成物を提供する。
【0049】
別の実施態様において、本開示は、さらに、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の本開示化合物を薬学的に許容される担体と混合して含む医薬組成物を提供する。
【0050】
いくつかの実施態様において、本開示化合物は、それらの代謝速度に影響を与えるように、例えば、インビボでの半減期を増加させるように修飾され得る。いくつかの実施態様において、該化合物は、本明細書に開示された該化合物の代謝速度を低下させるために、重水素化またはフッ素化され得る。
【0051】
さらに別のさらなる実施態様において、本明細書に開示された該化合物は、医薬組成物の形態、例えば経口投与のための医薬組成物の形態、例えば、錠剤またはカプセル剤の剤形、または非経口投与のための医薬組成物の形態であり得る。いくつかの実施態様において、該化合物は、持続放出(sustained release)をもたらすために、注射による投与のための長時間作用性デポー組成物の形態で提供される。いくつかの実施態様において、経口投与用またはデポーとしての固体薬物は、活性化合物の遅延放出を提供するために、適切なポリマーマトリックス中にあり得る。
【0052】
本開示化合物およびその薬学的に許容される塩は、本明細書に記載および例示した方法を用いて、およびそれに類似した方法によって、および化学技術分野において既知の方法によって、製造され得る。これらのプロセスのための出発物質は、市販されていない場合、既知の化合物の合成と同様または類似の技術を使用して、化学技術分野から選択される手順によって製造され得る。本開示化合物の出発物質および製造方法は、上記の出典明示によりで引用されて本明細書の一部とされる特許出願に記載されている。
【0053】
本開示化合物には、それらのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体、ならびにそれらの多形体、水和物、溶媒和物および複合体が含まれる。本開示の範囲内のいくつかの個々の化合物は、二重結合を含み得る。本開示における二重結合の表現は、二重結合のE異性体およびZ異性体の両方を含むことを意味する。さらに、本開示の範囲内のいくつかの化合物は、1つ以上の不斉中心を含み得る。本開示は、光学的に純粋な立体異性体のいずれか、および立体異性体の組み合わせの使用を含む。
【0054】
本開示化合物がその安定な同位体および不安定な同位体を包含することも意図されている。安定な同位体は、同じ種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して、1個のさらなる中性子を含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物は非同位体類似体の薬物動態を測定するための有用性も有すると考えられる。例えば、本開示化合物のある位置の水素原子を重水素(非放射性の安定な同位体)に置き換えることができる。既知の安定な同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるが、これらに限定されない。別法として、同じ種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して、さらなる複数の中性子を含有している放射性同位体である不安定な同位体、例えば123I、131I、125I、11C、18Fは、I、CおよびFの対応する豊富な種と置き換わってもよい。本開示の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本開示の化合物の放射線画像処理および/または薬物動態学的研究に有用である。
【0055】
本開示は、さらに、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)の阻害剤を提供する。様々な化学構造を有する多くのSGLT2阻害剤が知られている。例えば、本開示のSGLT2阻害剤としては、アチグリフロジン(atigliflozin)、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジン、イプラグリフロジン、ルセオグリフロジン、レモグリフロジン(例えば、レモグリフロジンエタボナート)、セルグリフロジン(例えば、セルグリフロジンエタボナート)、ソタグリフロジン、トホグリフロジン、およびフロリジンが挙げられる。
【0056】
いくつかの実施形態において、本開示で用いられるSGLT2阻害剤は、SGLT1に対してSGLT2に選択的であり、例えば、ダパグリフロジンである。本開示に従って使用するのに適したSGLT2阻害剤は、C-アリールグルコシドまたはO-アリールグルコシドを含む。C-アリールグルコシドおよびO-アリールグルコシドは、糖尿病の治療に有効である。米国特許第6,774,112号(出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)を参照。本開示の方法で用いることができるC-アリールグルコシド(C-グルコシドともいう)SGLT2阻害剤の例としては、米国特許第6,515,117号、米国特許第6,414,126号および米国特許第6,774,112号、ならびに米国特許出願公開第2006/0063722号、米国特許出願公開第2005/0209166号および米国特許出願公開第2006/0074031号(各々の開示内容は、出典明示によりそれらの全体として本明細書の一部とする)に開示されているものが挙げられる。本開示の方法で用いることができるO-グルコシドSGLT2阻害剤の例としては、米国特許第6,908,905号および米国特許第6,815,428号、米国特許出願公開第2006/0194809号、ならびに国際公開第03/01180号(各々の開示内容は、出典明示によりそれらの全体として本明細書の一部とする)に開示されているものが挙げられる。SGLT2阻害剤のさらなる例は、国際公開第2001/027128号、国際公開第2003/099836号、国際公開第2008/002824号、国際公開第2006/034489号、米国特許出願公開第2005/0209166号、米国特許出願公開第2007/0054867号、米国特許出願公開第2005/0209166号、国際公開第2006/117360号、米国特許出願公開第2009/0118201号、米国特許出願公開第2008/0113922号、米国特許出願公開第2009/0030198号、国際公開第2005/012326号、国際公開第2004013118号、国際公開第2005/012326号、国際公開第2008/069327号、国際公開第2009/035969号、米国特許出願公開第2008/0132563号、国際公開第2005/092877号、国際公開第2006/064033号、国際公開第2006/117359号、国際公開第2007/025943号、国際公開第2007/028814号、国際公開第2007/031548号、国際公開第2007/093610号、国際公開第2007/128749号、国際公開第2008/049923号、国際公開第2008/055870号、国際公開第2008/055940号、国際公開第2009/022020号、国際公開第2009/022008号、国際公開第2014/016381号、国際公開第2006/120208号、国際公開第2011/039108号、国際公開第2004/007517号、国際公開第2004/080990号、国際公開第2007/114475号、国際公開第2010/023594号、国際公開第2007/140191号、国際公開第2008/013280号(各々の開示内容は、出典明示によりそれらの全体として本明細書の一部とする)に開示されている。
【0057】
本開示の方法で用いることができるSGLT2阻害剤を開示する他の開示および刊行物は、以下の通りである:K. Tsujihara et al., Chem. Pharm. Bull., 44:1174-1180 (1996);M. Hongu et al., Chem. Pharm. Bull., 46:22-33 (1998);M. Hongu et al., Chem. Pharm. Bull., 46:1545-1555 (1998);およびA. Oku et al., Diabetes, 48:1794-1800 (1999)、ならびに日本国特許第10245391号(大日本インキ化学工業株式会社)(各々の開示内容は、出典明示によりそれらの全体として本明細書の一部とする)。
【0058】
いくつかの実施態様において、本開示は、米国特許第6,414,126号および米国特許第6,515,117号に開示されている、本開示の方法で使用するためのSGLT2阻害剤を提供し、例えば、該SGLT2阻害剤はダパグリフロジン:
【化20】
またはその薬学的に許容される塩、そのすべての立体異性体、またはそのプロドラッグエステルである。
【0059】
他の実施態様において、本開示は、米国特許出願公開第2008/0004336号(その開示内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に開示されている結晶形態を包含する化合物Iの結晶形態を提供する。
【0060】
本開示で用いることができるさらなるSGLT2阻害剤としては、カナグリフロジン(Johnson & Johnson/田辺三菱製薬株式会社);レモグリフロジンエタボナート(Islet Sciences、キッセイ薬品工業株式会社);イプラグリフロジン(アステラス製薬株式会社/寿製薬株式会社);エンパグリフロジン(Boehringer Ingelheim);BI-44847(Boehringer Ingelheim);TS-071(大正製薬株式会社);トホグリフロジン(Roche/中外製薬株式会社);LX-4211(Lexicon Pharmaceuticals);DSP-3235(GlaxoSmithKline/大日本住友製薬株式会社);ISIS-SGLT2Rx(Isis Pharmaceuticals);およびYM543(アステラス製薬株式会社)が挙げられる。さらなるSGLT-2阻害剤は、エルツグリフロジン(PfizerおよびMerck)である。
【0061】
プロドラッグの様々な形態が当技術分野で知られている。このようなプロドラッグの例は、例えば、Design of Prodrugs, edited by H. Bundgaard, (Elsevier, 1985)およびMethods in Enzymology, Vol. 42, p. 309-396, edited by K. Widder, et al. (Academic Press, 1985);A Textbook of Drug Design and Development, edited by Krogsgaard-Larsen and H. Bundgaard, Chapter 5 “Design and Application of Prodrugs”, by H. Bundgaard p. 113-191 (1991);およびH. Bundgaard, Advanced Drug Delivery Reviews, 8, 1-38 (1992);d)H. Bundgaard, et al., Journal of Pharmaceutical Sciences, 77, 285 (1988);およびe)N. Kakeya, et al., Chem Pharm Bull, 32, 692 (1984)に開示されている。
【0062】
そのようなプロドラッグの例は、本開示の化合物のインビボ開裂可能エステルである。カルボキシ基を含む本開示の化合物のインビボ開裂可能エステルは、例えば、ヒトまたは動物の体内で開裂して親酸を生成する、薬学的に許容されるエステルである。カルボキシについて好適な薬学的に許容されるエステルとしては、(1~6C)アルキルエステル、例えば、メチルまたはエチル;(1~6C)アルコキシメチルエステル、例えば、メトキシメチル;(1~6C)アルカノイルオキシメチルエステル、例えば、ピバロイルオキシメチル;フタリジルエステル;(3~8C)シクロアルコキシカルボニルオキシ(1~6C)アルキルエステル、例えば、1-シクロヘキシルカルボニルオキシエチル;1,3-ジオキソラン-2-イルメチルエステル、例えば、5-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イルメチル;(1~6C)アルコキシカルボニルオキシエチルエステル、例えば、1-メトキシカルボニルオキシエチル;アミノカルボニルメチルエステルおよびそのモノ-またはジ-N-((1~6C)アルキル)バージョン、例えば、N,N-ジメチルアミノカルボニルメチルエステルおよびN-エチルアミノカルボニルメチルエステルが挙げられ;本開示の化合物におけるいずれのカルボキシ基においても形成され得る。ヒドロキシ基を含む本開示の化合物のインビボ開裂可能エステルは、例えば、ヒトまたは動物の体内で開裂して親ヒドロキシ基を生成する薬学的に許容されるエステルである。ヒドロキシについて好適な薬学的に許容されるエステルとしては、(1~6C)アルカノイルエステル、例えば、アセチルエステル;およびフェニル基がアミノメチルまたはN置換モノ-もしくはジ-(1~6C)アルキルアミノメチルで置換されていてもよいベンゾイルエステル、例えば、4-アミノメチルベンゾイルエステルおよび4-N,N-ジメチルアミノメチルベンゾイルエステルが挙げられる。
【0063】
本開示の化合物を使用する方法
種々の実施態様において、本開示は、グルカゴン機能の変化および/または環状ヌクレオチド(例えば、cAMPおよび/またはcGMP)シグナル伝達の変化に関連する疾患、障害または状態の治療または予防のための方法であって、該治療または予防を必要とする患者に、PDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載の式I、Ia、II、III、IV、V、VIおよび/またはVIIで示されるPDE1阻害剤)の薬学的有効量および循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤(例えば、グルカゴン、SGLT2阻害剤、または血漿グルカゴンを直接的もしくは間接的に増加させ得る他の薬剤)の薬学的有効量を投与することを含む方法[方法1]を提供する。例えば、本開示は、方法1の以下の実施提要を提供する:
【0064】
1.1 疾患、障害または状態が、環状ヌクレオチド(例えば、cAMPまたはcGMP)シグナル伝達の変化に関連している、方法1。
【0065】
1.2 疾患、障害または状態が、グルカゴン機能の変化に関連している、上記方法のいずれか。
【0066】
1.3 疾患、障害または状態が、環状ヌクレオチド(例えば、cAMPおよび/またはcGMP)シグナル伝達の変化およびグルカゴン機能の変化に関連している、上記方法のいずれか。
【0067】
1.4 状態、疾患または障害が、心血管状態、心血管疾患もしくは心血管障害、腎状態、腎疾患もしくは腎障害、または代謝状態、代謝疾患もしくは代謝障害である、上記方法のいずれか。
【0068】
1.5 状態、疾患または障害が、狭心症、脳卒中、腎不全、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧、糖尿病関連高血圧症、アテローム動脈硬化症関連高血圧症、腎血管性高血圧症、うっ血性心不全、炎症性疾患もしくは障害、線維症(例えば、心室細動もしくは上室細動に関連しているかまたはこれによって誘導された心筋線維症)、妊娠期間の心臓リモデリング(すなわち、周産期心筋症)、心肥大、血管リモデリング、結合組織疾患もしくは障害(例えば、マルファン症候群)、慢性心不全、急性心不全、心筋梗塞の結果生じる心不全、心筋虚血、心筋低酸素症、再灌流傷害、左心室機能不全(例えば、心筋梗塞、心室拡大)、血管漏出(すなわち、低酸素症の結果生じる)、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、および/または筋委縮性側索硬化症から選択される心血管状態、心血管疾患または心血管障害である、上記方法のいずれか。
【0069】
1.6 状態、疾患または障害が、心不全(例えば、慢性心不全、急性心不全、心筋梗塞の結果生じる心不全、うっ血性心不全)である、上記方法のいずれか。
【0070】
1.7 状態、疾患または障害が、慢性心不全である、上記方法のいずれか。
【0071】
1.8 状態、疾患または障害が、急性心不全である、上記方法のいずれか。
【0072】
1.9 状態、疾患または障害が、心筋梗塞の結果生じる心不全である、上記方法のいずれか。
【0073】
1.10 状態、疾患または障害が、うっ血性心不全である、上記方法のいずれか。
【0074】
1.11 状態、疾患または障害が、高血圧症(例えば、本態性高血圧症、肺高血圧症、二次性高血圧症、孤立性収縮期高血圧、糖尿病関連高血圧症、アテローム動脈硬化症関連高血圧症、腎血管性高血圧症)である、上記方法のいずれか。
【0075】
1.12 状態、疾患または障害が、本態性高血圧症である、上記方法のいずれか。
【0076】
1.13 状態、疾患または障害が、肺高血圧症である、上記方法のいずれか。
【0077】
1.14 状態、疾患または障害が、二次性高血圧症である、上記方法のいずれか。
【0078】
1.15 状態、疾患または障害が、孤立性収縮期高血圧である、上記方法のいずれか。
【0079】
1.16 状態、疾患または障害が、糖尿病関連高血圧症である、上記方法のいずれか。
【0080】
1.17 状態、疾患または障害が、アテローム動脈硬化症関連高血圧症である、上記方法のいずれか。
【0081】
1.18 状態、疾患または障害が、腎血管性高血圧症である、上記方法のいずれか。
【0082】
1.19 状態、疾患または障害が、腎状態、腎疾患または腎障害(例えば、腎線維症、慢性腎疾患、腎不全、糸球体硬化症および腎炎、ならびに、糖尿病、腎臓の損傷、高血圧および癌性増殖の結果生じる腎障害(例えば、多発性嚢胞腎))である、上記方法のいずれか。
【0083】
1.20 状態、疾患または障害が、腎線維症である、上記方法のいずれか。
【0084】
1.21 状態、疾患または障害が、慢性腎疾患である、上記方法のいずれか。
【0085】
1.22 状態、疾患または障害が、腎不全である、上記方法のいずれか。
【0086】
1.23 状態、疾患または障害が、真性糖尿病の結果生じる腎状態、腎疾患または腎障害である、上記方法のいずれか。
【0087】
1.24 状態、疾患または障害が、代謝疾患、代謝障害または代謝状態(例えば、1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、高コレステロール、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、高血糖症、食後高血糖症、過体重、肥満症、メタボリック症候群、妊婦糖尿病、インスリン抵抗性、真性糖尿病の結果生じる状態、例えば、白内障および微小血管および大血管疾患、例えば腎症、網膜症、ニューロパチー、組織虚血、動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中および末梢動脈閉塞性疾患、膵β細胞の変性または膵β細胞の機能性の低下、異所性脂肪の異常蓄積の結果生じる状態、高インスリン血症(hyperinsulemia)、移植後新規発生糖尿病(NODAT)、移植後メタボリック症候群(PTMS)、限局性分節性糸球体硬化症、NODATおよび/またはPTMSの結果生じる状態(例えば、微小血管および大血管疾患およびイベント、移植片拒絶、感染症、ならびに死)、高尿酸血症、腎結石、低ナトリウム血症、末梢性体液貯留および末梢性浮腫)である、上記方法のいずれか。
【0088】
1.25 状態、疾患または障害が、1型真性糖尿病である、上記方法のいずれか。
【0089】
1.26 状態、疾患または障害が、2型真性糖尿病である、上記方法のいずれか。
【0090】
1.27 状態、疾患または障害が、妊婦糖尿病である、上記方法のいずれか。
【0091】
1.28 状態、疾患または障害が、耐糖能障害である、上記方法のいずれか。
【0092】
1.29 状態、疾患または障害が、高血糖症である、上記方法のいずれか。
【0093】
1.30 状態、疾患または障害が、真性糖尿病の結果生じる状態(例えば、白内障および微小血管および大血管疾患、例えば腎症、網膜症、ニューロパチー、組織虚血、動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中および末梢動脈閉塞性疾患)である、上記方法のいずれか。
【0094】
1.31 PDE1阻害剤が、0.01mg/kg~100mg/kgの濃度で投与される、上記方法のいずれか。
【0095】
1.32 患者が、ヒトであり、PDE1阻害剤が、1~300mgの経口一日量で投与される、上記方法のいずれか。
【0096】
1.33 PDE1阻害剤が、1mg、3mg、10mg、30mgまたは90mgの投与量で投与される、上記方法のいずれか。
【0097】
1.34 循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤(例えば、グルカゴン、SGLT2阻害剤、または血漿グルカゴンを直接的もしくは間接的に増加させ得る他の薬剤)が、0.001mg/kg対象体体重~約100mg/kg対象体体重の投与量で投与される、上記方法のいずれか。
【0098】
1.35 PDE1阻害剤が、経口投与される、上記方法のいずれか。
【0099】
1.36 PDE1阻害剤が、錠剤またはカプセル剤として投与される、上記方法のいずれか。
【0100】
1.37 PDE1阻害剤が、式I、Ia、II、III、IV、V、VIおよび/またはVIIのいずれかで示される化合物である、上記方法のいずれか。
【0101】
1.38 PDE1阻害剤が、式Iaで示される化合物である、上記方法のいずれか。
【0102】
1.39 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
で示される化合物である、上記方法のいずれか。
【0103】
1.40 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化25】
で示される化合物ある、上記方法のいずれか。
【0104】
1.41 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化26】
で示される化合物である、上記方法のいずれか。
【0105】
1.42 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化27】
で示される化合物である、上記方法のいずれか。
【0106】
1.43 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化28】
で示される化合物である、上記方法のいずれか。
【0107】
1.44 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化29】
で示される化合物である、上記方法のいずれか。
【0108】
1.45 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化30】
で示される化合物である、上記方法のいずれか。
【0109】
1.46 患者が、ヒトであり、PDE1阻害剤が、0.01~300mg、例えば、1~90mg、例えば、1mg、3、mg、10mg、30mgまたは90mgの経口一日量で投与され、PDE1阻害剤が、
a.遊離形態または薬学的に許容される塩形態(例えば、一リン酸塩)の、(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン;
b.遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;および
c.遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
から選択される、上記方法のいずれか。
【0110】
1.47 患者が、ヒトである、上記方法のいずれか。
【0111】
1.48 循環グルカゴンレベルを調節するかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、グルカゴン、アチグリフロジン(atigliflozin)、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジン、イプラグリフロジン、ルセオグリフロジン、レモグリフロジン(例えば、レモグリフロジンエタボナート)、セルグリフロジン(例えば、セルグリフロジンエタボナート)、ソタグリフロジン、トホグリフロジンおよびフロリジンから選択される、上記方法のいずれか。
【0112】
1.49 循環グルカゴンレベルを調節するかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、グルカゴン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジンから選択される、上記方法のいずれか。
【0113】
1.50 循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態のダパグリフロジンである、上記方法のいずれか。
【0114】
1.51 循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤が、遊離形態のダパグリフロジンである、上記方法のいずれか。
【0115】
1.52 循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤が、グルカゴンである、上記方法のいずれか。
【0116】
1.53 さらに、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤の薬学的有効量を投与することを含む、上記方法のいずれか。
【0117】
1.54 DPP-4阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、ゲミグリプチン、アナグリプチン、テネリグリプチン、アログリプチン、トレラグリプチン、オマリグリプチン、エボグリプチン、ゴソグリプチンおよび/またはデュトグリプチンを含む、上記の方法。
【0118】
1.55 患者が、すでにDPP-4阻害剤を投与されている、上記方法のいずれか。
【0119】
本開示は、さらに、グルカゴン機能の変化に関連する疾患、障害または状態および/または環状ヌクレオチド(例えば、cAMPおよび/またはcGMP)シグナル伝達の変化によって媒介される疾患、障害または状態の治療方法において用いるための、例えば方法1以降のいずれかにおいて用いるための、PDE1阻害剤と、グルカゴンレベルを増加させるかもしくは調節するかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤(例えば、グルカゴン、SGLT2阻害剤、または血漿グルカゴンを直接的もしくは間接的に増加させ得る他の薬剤)とを提供する。
【0120】
本開示は、さらに、グルカゴン機能の変化に関連する疾患、障害または状態および/または環状ヌクレオチド(例えば、cAMPおよび/またはcGMP)シグナル伝達の変化によって媒介される疾患、障害または状態の治療方法に用いるための医薬、例えば方法1以降のいずれかにおいて用いるための医薬の製造において、PDE1阻害剤、および循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤(例えば、グルカゴン、SGLT2阻害剤、または血漿グルカゴンを直接的もしくは間接的に増加させ得る他の薬剤)を含むかまたはそれらからなる併用療法の使用を提供する。
【0121】
本開示は、さらに、PDE1阻害剤、例えば式I、Ia、II、III、IV、V、VIおよび/またはVIIで示される化合物のいずれか、および循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤(例えば、グルカゴン、SGLT2阻害剤、または血漿グルカゴンを直接的もしくは間接的に増加させ得る他の薬剤)の薬学的有効量を含む、方法1以降のいずれかに用いるための医薬組成物を提供する。
【0122】
PDE1阻害剤との組み合わせ療法
いくつかの実施態様において、PDE1阻害剤は、他の治療様式と組み合わせて投与される。例えば、患者は、開示されているPDE1阻害剤のいずれかと組み合わせて、循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤(例えば、グルカゴン、SGLT2阻害剤、または血漿グルカゴンを直接的もしくは間接的に増加させ得る他の薬剤)を投与され得る。
【0123】
組み合わせは、PDE1阻害剤および1つ以上のさらなる治療剤を含む単一の組成物または薬理学的製剤を投与することによって、あるいは一方の組成物がPDE1阻害剤を含み、他方がさらなる治療剤を含む2つの異なる組成物または製剤を別々に、同時に、または連続的に投与することによって、達成することができる。PDE1阻害剤を用いた治療は、数分から数週間の範囲の間隔で他の薬剤の投与に先行しても後続してもよい。他の薬剤および発現構築物を別々に細胞に適用する実施態様において、一般的に、該薬剤および該発現構築物が依然として細胞に対して有利な複合効果を発揮することができるように、各送達の間にかなりの時間が経過しないようにする。いくつかの実施態様において、いくつかの実施態様において、典型的には、互いに約12~24時間以内、より好ましくは互いに約6~12時間以内に両方の様式で細胞に接触させることが考えられ、約12時間だけの遅延時間が最も好ましい。しかしながら、状況によっては、治療期間を大幅に延長することが望ましく、それぞれの投与の間に数日間(2、3、4、5、6または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)が経過する場合もある。
【0124】
また、PDE1阻害剤またはさらなる治療剤のいずれかを2回以上投与することが望まれることも考えられる。これに関して、様々な組み合わせを使用することができる。例示として、PDE1阻害剤が「A」であり、さらなる治療剤が「B」である場合、合計3回および4回の投与に基づく以下の配列が例示される:
【化31】
【0125】
したがって、種々の実施態様において、本開示は、また、グルカゴン機能の変化に関連する疾患、障害または状態および/または環状ヌクレオチド(例えば、cAMPおよび/またはcGMP)シグナル伝達の変化によって媒介される疾患、障害または状態の治療方法において、例えば方法1以降のいずれかに従って、投与するための、PDE1阻害剤(例えば、式I、II、III、IV、V、VIおよび/またはVIIのいずれかで示される化合物)の薬学的有効量と循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤(例えば、グルカゴン、SGLT2阻害剤、または血漿グルカゴンを直接的もしくは間接的に増加させ得る他の薬剤)の薬学的有効量を含む、医薬組み合わせ[組み合わせ1]療法も提供する。例えば、本開示は、以下の組み合わせを提供する:
【0126】
1.1 PDE1阻害剤と、循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤が、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体との組み合わせまたは関連で、単一の剤形、例えば、錠剤またはカプセル剤にある、組み合わせ1。
【0127】
1.2 PDE1阻害剤と、循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤が、例えば同時または順次投与の説明書と共に、単一のパッケージに入っている、上記組み合わせのいずれか。
【0128】
1.3 PDE1阻害剤が、式I、Ia、II、III、IV、V、VIおよび/またはVIIのいずれかで示される化合物である、上記組み合わせのいずれか。
【0129】
1.4 PDE1阻害剤が、式Iaで示される化合物である、上記組み合わせのいずれか。
【0130】
1.5 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
で示される化合物である、上記組み合わせのいずれか。
【0131】
1.6 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化36】
で示される化合物ある、上記組み合わせのいずれか。
【0132】
1.7 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化37】
で示される化合物である、上記組み合わせのいずれか。
【0133】
1.8 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化38】
で示される化合物である、上記組み合わせのいずれか。
【0134】
1.9 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化39】
で示される化合物である、上記組み合わせのいずれか。
【0135】
1.10 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化40】
で示される化合物である、上記組み合わせのいずれか。
【0136】
1.11 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化41】
で示される化合物である、上記組み合わせのいずれか。
【0137】
1.12 患者が、ヒトであり、PDE1阻害剤が、0.01~300mg、例えば、1~90mg、例えば、1mg、3、mg、10mg、30mgまたは90mgの経口一日量で投与され、PDE1阻害剤が、
a.遊離形態または薬学的に許容される塩形態(例えば、一リン酸塩)の、(6aR,9aS)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-((4-(6-フルオロピリジン-2-イル)フェニル)メチル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン;
b.遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、7,8-ジヒドロ-2-(4-アセチルベンジル)-3-(4-フルオロフェニルアミノ)-5,7,7-トリメチル-[2H]-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;および
c.遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、3-((4-フルオロフェニル)アミノ)-5,7,7-トリメチル-2-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン
から選択される、上記組み合わせのいずれか。
【0138】
1.13 対象体が、ヒトである、上記組み合わせのいずれか。
【0139】
1.14 循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、グルカゴン、アチグリフロジン(atigliflozin)、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジン、イプラグリフロジン、ルセオグリフロジン、レモグリフロジン(例えば、レモグリフロジンエタボナート)、セルグリフロジン(例えば、セルグリフロジンエタボナート)、ソタグリフロジン、トホグリフロジンおよびフロリジンから選択される、上記組み合わせのいずれか。
【0140】
1.15 循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、グルカゴン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジンから選択される、上記組み合わせのいずれか。
【0141】
1.16 循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態のダパグリフロジンである、上記組み合わせのいずれか。
【0142】
1.17 循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤が、遊離形態のダパグリフロジンである、上記組み合わせのいずれか。
【0143】
1.18 循環グルカゴンレベルを増加させるかまたはグルカゴン受容体を活性化する薬剤が、グルカゴンである、上記組み合わせのいずれか。
【0144】
1.19 対象体が、環状ヌクレオチド(例えば、cAMPまたはcGMP)によって媒介される状態、疾患または障害に罹患している、上記組み合わせのいずれか。
【0145】
1.20 対象体が、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)によって媒介される状態、疾患または障害に罹患している、上記組み合わせのいずれか。
【0146】
1.21 対象体が、環状ヌクレオチド(例えば、cAMPまたはcGMP)およびナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)によって媒介される状態、疾患または障害に罹患している、上記組み合わせのいずれか。
【0147】
1.22 対象体が、心血管状態、心血管疾患もしくは心血管障害、腎状態、腎疾患もしくは腎障害、または代謝状態、代謝疾患または代謝障害に罹患している、上記組み合わせのいずれか
【0148】
1.23 さらに、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤の薬学的有効量を含む、上記組み合わせのいずれか。
【0149】
1.24 DPP-4阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、ゲミグリプチン、アナグリプチン、テネリグリプチン、アログリプチン、トレラグリプチン、オマリグリプチン、エボグリプチン、ゴソグリプチンおよび/またはデュトグリプチンを含む、上記の組み合わせ。
【0150】
本明細書で使用される「PDE1阻害剤」は、cGMPおよびcAMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介)加水分解を選択的に阻害する、例えば固定化金属アフィニティ粒子試薬PDEアッセイにおけるIC50が1μM未満、好ましくは750nM未満、より好ましくは500nM未満、より好ましくは50nM未満である、化合物を説明する。
【0151】
「本開示化合物」もしくは「本開示PDE1阻害剤」という語句または同様の用語は、本明細書に記載のこのような化合物、例えば式I、式II、式III、式IV、式V、式VIおよび/または式VIIで示される化合物を包含する。
【0152】
「治療」および「治療すること」という用語は、疾患の症状の予防および治療または寛解、ならびに疾患の原因の治療を包含するものとして、適宜理解されるべきである。
【0153】
治療方法について、「有効量」という用語は、特定の疾患または障害を治療するための治療有効量を包含することを意図している。
【0154】
「患者」または「対象体」という用語は、ヒトまたは非ヒト(すなわち、動物)患者を含む。特定の実施態様において、本開示は、ヒトおよび非ヒトの両方を包含する。別の実施態様において、本開示は、非ヒトを包含する。他の実施態様において、該用語はヒトを包含する。
【0155】
本開示で使用される「含む(comprising)」という用語は、制限がない(open-ended)ことを意図しており、未記載のさらなる要素または方法ステップを排除しない。
【0156】
本開示の実施に用いられる用量は、もちろん、例えば治療される特定の疾患または状態、使用される特定の本開示化合物、投与様式、および所望の療法に応じて変化する。本開示化合物は、経口、非経口、経皮、または吸入を含む好適な経路によって投与され得るが、好ましくは経口投与される。一般に、例えば上記のような疾患の治療に対する、満足のいく結果は、約0.01~2.0mg/kgのオーダーの用量で経口投与により得られることが示されている。したがって、大きな哺乳動物、例えばヒトでは、経口投与のための指示された一日量は、約0.75~150mgの範囲であり、好都合には1日1回投与されるか、または1日2~4回の分割用量で投与されるか、または徐放性剤形で投与される。したがって、経口投与用の単位剤形は、例えば、薬学的に許容される希釈剤または担体と一緒に本開示化合物約0.2~75または150mg、例えば約0.2または2.0~50、75または100mgを含むことができる。
【0157】
本開示化合物を含む医薬組成物は、慣用の希釈剤または賦形剤、およびガレヌス製剤技術分野で知られている技術を使用して調製することができる。したがって、経口剤形としては、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などを挙げることができる。
【実施例
【0158】
実施例1: IMAPホスホジエステラーゼアッセイキットを用いたインビトロでのPDEIB阻害作用の測定
ホスホジエステラーゼIB(PDEIB)は、環状グアノシン一リン酸(cGMP)を5'-グアノシン一リン酸(5'-GMP)に変換するカルシウム/カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ酵素である。PDEIBは、蛍光分子cGMP-フルオレセインなどの修飾cGMP基質を、対応するGMP-フルオレセインに変換することもできる。cGMP-フルオレセインからのGMP-フルオレセインの生成は、例えばIMAP(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)固定化金属アフィニティ粒子試薬を用いて、定量化することができる。
【0159】
簡単に説明すると、IMAP試薬は、GMP-フルオレセインに見られるがcGMP-フルオレセインに見られない遊離5'-リン酸に高い親和性で結合する。得られたGMP-フルオレセイン-IMAP複合体は、cGMP-フルオレセインに比べて大きい。大きくてゆっくり回転する複合体に結合している小さなフルオロフォアは、蛍光を発するときに放出される光子が、蛍光の励起に使用される光子と同じ極性を保持しているため、結合していないフルオロフォアと区別できる。
【0160】
ホスホジエステラーゼアッセイでは、IMAPに結合できず、したがって蛍光偏光をほとんど保持していないcGMP-フルオレセインは、IMAPに結合すると蛍光偏光(Amp)の大きな増加をもたらすGMP-フルオレセインに変換される。したがって、ホスホジエステラーゼの阻害は、Ampの減少として検出される。
【0161】
酵素アッセイ
【0162】
材料: すべての化学物質は、Molecular Devices(Sunnyvale, CA)から入手可能なIMAP試薬(反応緩衝液、結合緩衝液、FL-GMPおよびIMAPビーズ)を除き、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)から入手できる。
【0163】
アッセイ: 以下のホスホジエステラーゼ酵素を使用することができる:3',5'-環状ヌクレオチド特異的ウシ脳ホスホジエステラーゼ(Sigma, St. Louis, MO)(主にPDEIB)、ならびに、組換え全長ヒトPDE1AおよびPDE1B(それぞれ、r-hPDE1Aおよびr-hPDE1B)(例えば、当業者がHEKまたはSF9細胞において生成することができる)。PDE1酵素は50%グリセロールで2.5U/mlに再構成される。1ユニットの酵素は、30℃にてpH7.5で1分あたり1.0μmの3',5'-cAMPを5'-AMPに加水分解する。酵素1部を反応緩衝液(30μΜ CaCl2、10U/mlのカルモジュリン(Sigma P2277)、10mM Tris-HCl pH7.2、10mM MgCl2、0.1%BSA、0.05%NaN3)1999部に添加して、最終濃度1.25mU/mlとする。平底96ウェルポリスチレンプレートの各ウェルに希釈酵素液99μlを加え、100%DMSOに溶解した試験化合物1μlを添加する。化合物を酵素と混合し、室温で10分間プレインキュベートする。
【0164】
FL-GMP変換反応は、384ウェルマイクロタイタープレートにおいて、4部の酵素および阻害剤ミックスと1部の基質溶液(0.225μΜ)を組み合わせることにより開始される。反応を暗所にて室温で15分間インキュベートする。384ウェルプレートの各ウェルに結合試薬(消泡剤の1:1800希釈液を添加した結合緩衝液中のIMAPビーズの1:400希釈液)60μLを添加し、反応を停止させる。該プレートを室温で1時間インキュベートしてIMAP結合を完了まで進行させ、次いで、Envisionマルチモードマイクロプレートリーダー(PerkinElmer, Shelton, CT)に入れ、蛍光偏光(Amp)を測定する。
【0165】
Ampの減少として測定されるGMP濃度の減少は、PDE活性の阻害を示すものである。IC50値は、0.0037nM~80,000nMの範囲の8~16種類の濃度の化合物の存在下で酵素活性を測定し、次いで、非線形回帰ソフトウェア(XLFit;IDBS, Cambridge, MA)を用いてIC50値を推定することができる薬剤濃度対AmPをプロットすることによって決定される。
【0166】
本開示化合物は、PDE1阻害活性について、本明細書に記載されているかまたは同様に記載されているアッセイで試験される。例えば、化合物1、は、式:
【化42】
で示される特異的PDE1阻害剤として同定される。
【0167】
この化合物は、以下の表に示すように、PDE1に対してサブナノモルレベルで有効であり(上記のアッセイにおけるウシ脳PDE1のIC50は0.058nM)、他のPDEファミリーよりも高い選択性がある:
【0168】
【表1】
【0169】
この化合物はまた、63の受容体、酵素およびイオンチャネルのパネルに対して高度に選択的である。これらのデータ、および本明細書に記載の他のPDE1阻害剤に関するデータは、Li et al., J. Med. Chem. 2016: 59, 1149-1164に記載されている(その記載内容は出典明示により本明細書の一部とする)。
【0170】
実施例2: モルモット心筋細胞におけるPDE1阻害剤とグルカゴンの併用療法
モルモット心筋細胞において、グルカゴンとPDE1阻害剤の共投与の効果を試験するための研究を実施した。心筋細胞は、Liu et al., Circulation Research, 2014に従って単離した。麻酔をかけたモルモットに開胸術を行って心臓を摘出した。大動脈を、37℃の水を循環させる加熱ジャケットを装着したランゲンドルフ装置にカニューレ処置し、8ml/分で5分間逆行性灌流した。灌流液をコラーゲンタイプ2(Worthington)とプロテアーゼタイプ14(Sigma-Aldrich)を含むタイロード液に7~9分間切り替えた。この溶液を改良型Kraft-Bruhe(KB)緩衝液に5分間切り替えた後、ミンチにして濾過し、単一細胞を得た。単離した細胞を、改良型KB緩衝液(Isenberg et al., Pflugers Arch, 1982)で1時間インキュベートした後、補充M199 ACCIT培地(Ellingsen et al., American J Physiology, 1993)に入れた。細胞を室温に保ち、7時間以内に使用した。
【0171】
細胞サルコメア短縮およびCa2+トランジエントの変化を、以前に記載されたカスタマイズされたIonOptixシステム(Hashimoto et al., Circulation, 2018)を用いて測定した。簡単に言うと、1μM Fura-2を用いて15分間細胞を負荷し、少なくとも20分間は洗浄した。ベースライン記録は、上記のタイロード緩衝液に0.1% DMSOを加えて行った。次いで、第1グループの細胞をグルカゴン(1μM)で刺激し、第2グループの細胞をグルカゴンおよび化合物1(1μM)で刺激した。2種類の測定について、3つのベースラインパラメーターを考慮した(拡張期値(diastolic value)、ピーク変化率、およびベースライン値50%までの時間)。平均値から2標準偏差内に入るこれらの細胞のみをさらなる解析に含めた。すべての記録は、1Hzのペーシングで37℃にて行われた。
【0172】
この研究では、細胞を、グルカゴン単独で、または実施例1で定義した化合物1と組み合わせたグルカゴンで刺激した。細胞サルコメア短縮のグループ化された平均変化を図1に示し、ピークCa2+トランジエント振幅を図2に示す。示されるように、化合物1は、サルコメア短縮およびピークCa2+トランジエント振幅の両方に対するグルカゴンの有益な効果を増加させた。
【0173】
本発明者らは、以前、ヒト、イヌ、ウサギおよびモルモットにおいて、化合物1によるPDE1阻害が、心係数(心拍力(cardiac power)、心拍出量および心収縮力)の増加により、および/または全身血管抵抗の減少により、心機能に対して有益な効果を発揮することを示した。今回の結果は、PDE1阻害薬と、SGLT2阻害薬またはグルカゴン単剤のような循環グルカゴンを増やす薬剤とを組み合わせることによって、心不全患者の治療が相乗的に改善し得る(例えば、使用する用量を減らすことができ、副作用が少なくなり、結果が改善される)ことを示唆している。
図1
図2
【国際調査報告】