(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】改変ヌクレオチドを含む脂質ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20230808BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230808BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230808BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230808BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230808BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230808BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230808BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230808BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20230808BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230808BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230808BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20230808BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20230808BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20230808BHJP
C12N 15/88 20060101ALN20230808BHJP
A61K 38/20 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K9/51
A61K9/14
A61K47/18
A61P37/04
A61P43/00 105
A61P35/00
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/10
A61K47/68
A61K47/62
A61K47/65
C12N15/24 ZNA
C12N15/88 Z
A61K38/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505388
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 US2021043214
(87)【国際公開番号】W WO2022020811
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523026950
【氏名又は名称】ストランド セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ベクラフト, ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ソーウェル, ライアン
(72)【発明者】
【氏名】クラナ, ジャスプリート
(72)【発明者】
【氏名】北田 輔
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA65
4C076AA94
4C076BB02
4C076BB11
4C076BB12
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB25
4C076BB27
4C076BB31
4C076CC07
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD09
4C076DD52
4C076DD52A
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076EE59
4C076EE59M
4C076FF02
4C076FF31
4C084AA13
4C084BA44
4C084DA12
4C084MA05
4C084MA38
4C084MA43
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA05
4C084NA07
4C084NA12
4C084NA13
4C084ZB021
4C084ZB091
4C084ZB211
4C084ZB261
(57)【要約】
本開示は、(i)1種または複数種の脂質、および(ii)インターロイキン(IL)-12分子をコードする配列を含む改変mRNAを含む脂質ナノ粒子であって、脂質ナノ粒子が、免疫原性細胞死を誘発することができる、脂質ナノ粒子、ならびにそれを使用する処置方法に関する。一部の態様では、改変RNAは、半減期延長部分をさらに含む。一部の態様では、半減期延長部分は、Fc、アルブミンもしくはその断片、アルブミン結合部分、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、XTEN、またはそれらの任意の組合せを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1種または複数種の脂質、および(ii)インターロイキン(IL)-12分子をコードする配列を含む改変mRNAを含む脂質ナノ粒子であって、前記脂質ナノ粒子が、免疫原性細胞死を誘発することができる、脂質ナノ粒子。
【請求項2】
前記1種または複数種の脂質が、カチオン性脂質を含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項3】
前記カチオン性脂質が、式I:
【化5】
の化合物およびその塩であり、式中、各R
1は、独立して、無置換アルキルであり、各R
2は、独立して、無置換アルキルであり、各R
3は、独立して、水素、または置換もしくは無置換アルキルであり、各mは、独立して、3、4、5、6、7、または8である、
請求項1または2に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項4】
少なくとも1つのR
1が、C
11H
23である、請求項3に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項5】
少なくとも1つのR
3が、水素である、請求項3または4に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項6】
少なくとも1つのmが、3である、請求項3~5のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項7】
各R
1が、独立して、無置換アルキルであり、各R
2が、独立して、無置換アルキルであり、各R
3が、水素であり、各mが、3である、請求項3~6のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項8】
前記カチオン性脂質が、構造:
【化6】
を有するN1,N3,N5-トリス(3-(ジドデシルアミノ)プロピル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミド(TT3)およびその塩であり、式中、mは、3である、
請求項2~7のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項9】
TT3、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール、およびC14-PEG2000を含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項10】
前記改変RNAが、改変5’-キャップを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項11】
前記改変5’-キャップが、m
2
7,2’-OGpp
spGRNA、m
7GpppG、m
7Gppppm
7G、m
2
(7,3’-O)GpppG、m
2
(7,2’-O)GppspG(D1)、m
2
(7,2’-O)GppspG(D2)、m
2
7,3’-OGppp(m
1
2’-O)ApG、(m
7G-3’mppp-G;これは、3’O-Me-m7G(5’)ppp(5’)Gと等価に指定され得る)、N7,2’-O-ジメチル-グアノシン-5’-三リン酸-5’-グアノシン、m
7Gm-ppp-G、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-G(5’)ppp(5’)G、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-m
3’-OG(5’)ppp(5’)G、7mG(5’)ppp(5’)N,pN2p、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp、7mG(5’)-ppp(5’)NlmpN2 mp、m(7)Gpppm(3)(6,6,2’)Apm(2’)Apm(2’)Cpm(2)(3,2’)Up、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、2-アジド-グアノシン、N1-メチルプソイドウリジン、m7G(5’)ppp(5’)(2’OMeA)pG、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項10に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項12】
前記改変RNAが、環状RNAである、請求項1~9のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項13】
前記改変RNAが、半減期延長部分をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項14】
前記半減期延長部分が、Fc、アルブミンもしくはその断片、アルブミン結合部分、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、XTEN、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項15】
前記IL-12分子が、IL-12、IL-12サブユニット、または免疫調節機能を保持する変異体IL-12分子からなる群より選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項16】
前記IL-12が、配列番号1と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項17】
前記IL-12分子が、IL-12αサブユニットおよび/またはIL-12βサブユニットを含む、請求項16に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項18】
前記IL-12αサブユニットが、配列番号2と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項19】
前記IL-12βサブユニットが、配列番号3と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項20】
前記IL-12αサブユニットおよび前記IL-12βサブユニットが、リンカーによって連結されている、請求項17に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項21】
前記リンカーが、少なくとも約2、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、または少なくとも約20アミノ酸のアミノ酸リンカーを含む、請求項20に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項22】
前記リンカーが、(GS)リンカーを含む、請求項21に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項23】
前記GSリンカーが、(Gly4Ser)nまたはS(Gly4Ser)nの式を有し、式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、または100からなる群より選択される正の整数である、請求項22に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項24】
前記(Gly4Ser)nリンカーが、(Gly4Ser)3または(Gly4Ser)4である、請求項23に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項25】
前記IL12分子が、配列番号4または配列番号5と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項26】
前記改変mRNAが、配列番号6と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項27】
前記改変RNAが、配列番号7と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項28】
前記改変RNAが、調節エレメントをさらに含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項29】
前記調節エレメントが、少なくとも1つの翻訳エンハンサーエレメント(TEE)、翻訳開始配列、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位またはそのシード、連結ヌクレオシドの3’テーリング領域、AUリッチエレメント(ARE)、転写後制御モジュレーター、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項28に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項30】
連結ヌクレオシドの前記3’テーリング領域が、ポリAテール、ポリA-Gカルテット、またはステムループ配列を含む、請求項29に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項31】
前記改変RNAが、少なくとも1つの改変ヌクレオシドを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項32】
前記少なくとも1つの改変ヌクレオシドが、6-アザ-シチジン、2-チオ-シチジン、α-チオ-シチジン、プソイド-イソ-シチジン、5-アミノアリル-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、α-チオ-ウリジン、4-チオ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン、デオキシ-チミジン、プソイド-ウリジン、イノシン、α-チオ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、O6-メチル-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、N1-メチルアデノシン、2-アミノ-6-クロロ-プリン、N6-メチル-2-アミノ-プリン、6-クロロ-プリン、N6-メチル-アデノシン、α-チオ-アデノシン、8-アジド-アデノシン、7-デアザ-アデノシン、ピロロ-シチジン、5-メチル-シチジン、N4-アセチル-シチジン、5-メチル-ウリジン、5-ヨード-シチジン、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項31に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項33】
前記改変RNAが、配列番号8と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項34】
前記改変RNAが、配列番号9と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項35】
約30~500nmの直径を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項36】
約50~400nmの直径を有する、請求項1~35のいずれかに記載の脂質ナノ粒子。
【請求項37】
約70~300nmの直径を有する、請求項1~36のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項38】
約100~200nmの直径を有する、請求項1~37のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項39】
約100~175nmの直径を有する、請求項1~38のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項40】
約100~120nmの直径を有する、請求項1~39のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項41】
前記脂質ナノ粒子および前記改変RNAが、約1:2~約2:1の質量比を有する、請求項1~40のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項42】
前記脂質ナノ粒子および前記改変RNAが、1:2、1:1.5、1:1.2、1:1.1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.5:1、または2:1の質量比を有する、請求項41に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項43】
前記脂質および前記改変RNAが、約1:1の質量比を有する、請求項42に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項44】
請求項1~43のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項45】
前記医薬組成物が、腫瘍内、髄腔内、筋肉内、静脈内、皮下、吸入、皮内、リンパ内、眼内、腹腔内、胸膜内、脊髄内、血管内、鼻、経皮、舌下、粘膜下、経皮的、または経粘膜投与のために製剤化されている、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
がんの処置を必要とする対象においてがんを処置するための方法であって、有効量の請求項1~43のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子または請求項44もしくは45に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項47】
前記対象が、がんを有するか、またはがんを有すると疑われるヒト患者である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ヒト患者が、黒色腫、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーム、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮がん、唾液腺癌、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝臓癌、胃がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがんを有する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記脂質ナノ粒子または前記医薬組成物が、単回用量で前記対象に投与される、請求項46~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記医薬組成物が、腫瘍内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射によって前記対象に投与される、請求項46~49のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2020年7月24日に出願された米国仮出願第63/056,382号の優先権の利益を主張し、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
EFS-WEBを介して電子的に提出された配列表への言及
電子的に提出された配列表(名称:4597_004PC01_Seqlisting__ST25.txt;サイズ:28,633バイト;および作成日:2021年7月21日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
NK細胞および細胞傷害性T細胞の両方を活性化するその能力に起因して、IL12タンパク質は、1994年以後、前途有望な抗がん治療薬として研究されている。Nastala, C. L. et al., J Immunol 153: 1697-1706 (1994)を参照されたい。しかし、高い期待にもかかわらず、初期臨床研究は、満足な結果を与えなかった。Lasek W. et al., Cancer Immunol Immunother 63: 419-435, 424 (2014)。IL12の反復投与は、ほとんどの患者において、適応応答、および血液中のIL12誘導インターフェロンガンマ(IFN-γ)レベルの進行性の減少をもたらした。同上。また、IL12誘導抗がん活性が、IFNγの二次分泌によって主に媒介されることが認識されたが、IL12による他のサイトカイン(例えば、TNF-α)またはケモカイン(IP-10またはMIG)と併せたIFN-γの同時誘導は、重篤な毒性を引き起こした。同上。
負のフィードバックおよび毒性に加えて、臨床背景におけるIL12療法のわずかな有効性は、ヒトにおける強い免疫抑制環境によって引き起こされ得る。同上。IFN-γの毒性を最小化し、IL12の有効性を改善するために、科学者らは、IL12療法に対する異なる用量および時間プロトコールなどの異なるアプローチを試みた。Sacco, S. et al., Blood 90: 4473-4479 (1997);Leonard, J. P. et al., Blood 90: 2541-2548 (1997);Coughlin, C. M. et al., Cancer Res. 57: 2460-2467 (1997);Asselin-Paturel, C. et al., Cancer 91: 113-122 (2001);およびSaudemont, A. et al., Leukemia 16: 1637-1644 (2002)を参照されたい。それにもかかわらず、これらのアプローチは、患者の生存に顕著な影響を及ぼさなかった。Kang, W. K., et al., Human Gene Therapy 12: 671-684 (2001)。そのため、IL12を使用して腫瘍を処置するための改善された治療アプローチに対する当技術分野における必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Asselin-Paturel,C.ら、Cancer(2001)91:113~122
【非特許文献2】Saudemont,A.ら、Leukemia(2002)16:1637~1644
【非特許文献3】Kang,W.K.ら、Human Gene Therapy(2001)12:671~684
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の簡潔な概要
本開示は、(i)1種または複数種の脂質、および(ii)インターロイキン(IL)-12分子をコードする配列を含む改変mRNAを含む脂質ナノ粒子であって、脂質ナノ粒子が、免疫原性細胞死を誘発することができる、脂質ナノ粒子を提供する。一部の態様では、1種または複数種の脂質は、カチオン性脂質を含む。一部の態様では、カチオン性脂質は、式I:
【化1】
の化合物およびその塩[式中、各R
1は、独立して、無置換アルキルであり、各R
2は、独立して、無置換アルキルであり、各R
3は、独立して、水素、または置換もしくは無置換アルキルであり、各mは、独立して、3、4、5、6、7、または8である]である。一部の態様では、少なくとも1つのR
1は、C
11H
23である。一部の態様では、少なくとも1つのR
3は、水素である。一部の態様では、少なくとも1つのmは、3である。
【0006】
一部の態様では、カチオン性脂質は、構造:
【化2】
を有するN1,N3,N5-トリス(3-(ジドデシルアミノ)プロピル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミド(TT3)およびその塩[式中、mは、3である]である。一部の態様では、脂質ナノ粒子は、TT3、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール、およびC14-PEG2000を含む。
【0007】
一部の態様では、改変RNAは、改変5’-キャップを含む。一部の態様では、改変5’-キャップは、m2
7,2’-OGppspGRNA、m7GpppG、m7Gppppm7G、m2
(7,3’-O)GpppG、m2
(7,2’-O)GppspG(D1)、m2
(7,2’-O)GppspG(D2)、m2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApG、(m7G-3’mppp-G;これは、3’O-Me-m7G(5’)ppp(5’)Gと等価に指定され得る)、N7,2’-O-ジメチル-グアノシン-5’-三リン酸-5’-グアノシン、m7Gm-ppp-G、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-G(5’)ppp(5’)G、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-m3’-OG(5’)ppp(5’)G、7mG(5’)ppp(5’)N,pN2p、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp、7mG(5’)-ppp(5’)NlmpN2 mp、m(7)Gpppm(3)(6,6,2’)Apm(2’)Apm(2’)Cpm(2)(3,2’)Up、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、2-アジド-グアノシン、N1-メチルプソイドウリジン、m7G(5’)ppp(5’)(2’OMeA)pG、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0008】
一部の態様では、改変RNAは、環状RNAである。
【0009】
一部の態様では、改変RNAは、半減期延長部分をさらに含む。一部の態様では、半減期延長部分は、Fc、アルブミンもしくはその断片、アルブミン結合部分、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、XTEN、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0010】
一部の態様では、IL-12分子は、IL-12、IL-12サブユニット、または免疫調節機能を保持する変異体IL-12分子からなる群より選択される。一部の態様では、IL-12は、配列番号1と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12分子は、IL-12αサブユニットおよび/またはIL-12βサブユニットを含む。一部の態様では、IL-12αサブユニットは、配列番号2と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12βサブユニットは、配列番号3と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0011】
一部の態様では、IL-12αサブユニットおよびIL-12βサブユニットは、リンカーによって連結されている。一部の態様では、リンカーは、少なくとも約2、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、または少なくとも約20アミノ酸のアミノ酸リンカーを含む。一部の態様では、リンカーは、(GS)リンカーを含む。一部の態様では、GSリンカーは、(Gly4Ser)nまたはS(Gly4Ser)nの式[式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、または100からなる群より選択される正の整数である]を有する。一部の態様では、(Gly4Ser)nリンカーは、(Gly4Ser)3または(Gly4Ser)4である。
【0012】
一部の態様では、IL12分子は、配列番号4または配列番号5と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、改変mRNAは、配列番号6と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の態様では、改変RNAは、配列番号7と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0013】
一部の態様では、改変RNAは、調節エレメントをさらに含む。一部の態様では、調節エレメントは、少なくとも1つの翻訳エンハンサーエレメント(TEE)、翻訳開始配列、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位またはそのシード、連結ヌクレオシドの3’テーリング領域、AUリッチエレメント(ARE)、転写後制御モジュレーター、およびそれらの組合せからなる群より選択される。一部の態様では、連結ヌクレオシドの3’テーリング領域は、ポリAテール、ポリA-Gカルテット、またはステムループ配列を含む。
【0014】
一部の態様では、改変RNAは、少なくとも1つの改変ヌクレオシドを含む。一部の態様では、少なくとも1つの改変ヌクレオシドは、6-アザ-シチジン、2-チオ-シチジン、α-チオ-シチジン、プソイド-イソ-シチジン、5-アミノアリル-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、α-チオ-ウリジン、4-チオ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン、デオキシ-チミジン、プソイド-ウリジン、イノシン、α-チオ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、O6-メチル-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、N1-メチルアデノシン、2-アミノ-6-クロロ-プリン、N6-メチル-2-アミノ-プリン、6-クロロ-プリン、N6-メチル-アデノシン、α-チオ-アデノシン、8-アジド-アデノシン、7-デアザ-アデノシン、ピロロ-シチジン、5-メチル-シチジン、N4-アセチル-シチジン、5-メチル-ウリジン、5-ヨード-シチジン、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0015】
一部の態様では、改変RNAは、配列番号8と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の態様では、改変RNAは、配列番号9と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0016】
一部の態様では、脂質ナノ粒子は、約30~500nmの直径を有する。一部の態様では、脂質ナノ粒子は、約50~400nmの直径を有する。一部の態様では、脂質ナノ粒子は、約70~300nmの直径を有する。一部の態様では、脂質ナノ粒子は、約100~200nmの直径を有する。一部の態様では、脂質ナノ粒子は、約100~175nmの直径を有する。一部の態様では、脂質ナノ粒子は、約100~120nmの直径を有する。一部の態様では、脂質ナノ粒子および改変RNAは、約1:2~約2:1の質量比を有する。一部の態様では、脂質ナノ粒子および改変RNAは、1:2、1:1.5、1:1.2、1:1.1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.5:1、または2:1の質量比を有する。一部の態様では、脂質および改変RNAは、約1:1の質量比を有する。
【0017】
本開示は、本明細書に開示される脂質ナノ粒子、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。一部の態様では、医薬組成物は、腫瘍内、髄腔内、筋肉内、静脈内、皮下、吸入、皮内、リンパ内、眼内、腹腔内、胸膜内、脊髄内、血管内、鼻、経皮(percutaneous)、舌下、粘膜下、経皮的(transdermal)、または経粘膜投与のために製剤化されている。
【0018】
本開示は、それを必要とする対象におけるがんを処置するための方法であって、有効量の本明細書に開示される脂質ナノ粒子または医薬組成物を対象に投与することを含む、方法も含む。一部の態様では、対象は、がんを有するか、またはがんを有すると疑われるヒト患者である。一部の態様では、ヒト患者は、黒色腫、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん(cervical cancer)、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーム、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮がん、唾液腺癌、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝臓癌、胃がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがんを有する。一部の態様では、脂質ナノ粒子または医薬組成物は、単回用量で対象に投与される。一部の態様では、医薬組成物は、腫瘍内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射によって対象に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1Aは、自己複製性mRNAおよび改変RNAの間のIL-12発現レベルを示す。Y軸は、B16.F10細胞系における発現レベルを示し、X軸は、トランスフェクション後の時間を示す。
図1Bは、自己複製性mRNAおよび改変RNAの間のIL-12発現レベルを示す。Y軸は、4T1細胞系における発現レベルを示す。
【0020】
【
図2】
図2Aは、処置することが非常に困難なマウスモデルにおける改変RNAおよび自己複製性RNAの有効性(腫瘍サイズ)を示す。上部の線は、対照についてであり、下部の2本の線は、modRNA-IL-12およびrepRNA-IL-12についてである。
図2Bは、改変RNA-IL-12およびrepRNA-IL-12の間の有効性(腫瘍サイズ)を示す。
【0021】
【
図3】
図3は、改変RNAおよび複製性RNAにおけるIL-12ペイロードの発現を示す。
【0022】
【
図4】
図4は、B16-F10細胞が皮下導入された後、modRNA-IL12またはrepRNA-IL12を投与されたマウスの生存の確率を示す。mRNAは、約350mm
3の腫瘍サイズで、単回用量として投薬された。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本出願が支配する。文脈によって他に必要とされない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は、単数を含むものとする。
【0024】
本開示全体を通して、「a」または「an」実体という用語は、その実体の1つまたは複数を指し、例えば、「ポリヌクレオチド(a polynucleotide)」は、1つまたは複数のポリヌクレオチドを表すと理解される。そのため、「a」(または「an」)、「1つまたは複数」および「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では、互換可能に使用することができる。
【0025】
さらにまた、「および/または」は、本明細書で使用される場合、他のものの有無にかかわらず、2つの特定された特性または構成要素のそれぞれの特定の開示として取られるべきである。したがって、「および/または」という用語は、本明細書で「Aおよび/またはB」などの語句において使用される場合、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「および/または」という用語は、「A、B、および/またはC」などの語句において使用される場合、以下の態様:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)のそれぞれを包含することが意図される。
【0026】
「約」という用語は、本明細書では、およそ、大体、おおよそ、またはその範囲内を意味するために使用される。「約」という用語が数値範囲と併せて使用される場合、これは、示される数値の上および下の境界を拡張することによって、その範囲を修飾する。一般に、「約」という用語は、本明細書では、他に示されない限り、上方または下方(より高いまたはより低い)10パーセントの変動によって、述べられた値の上および下に数値を修飾するために使用される。
【0027】
数または一連の数の前の「少なくとも」という用語は、「少なくとも」という用語に隣接する数、ならびに文脈から明確な場合、論理的に含まれ得るすべてのその後の数または整数を含むことが理解される。例えば、核酸分子中のヌクレオチドの数は、整数でなければならない。例えば、「21ヌクレオチド核酸分子の少なくとも18ヌクレオチド」は、18、19、20、または21ヌクレオチドが示された性質を有することを意味する。少なくともが、一連の数または範囲の前に存在する場合、「少なくとも」が一連または範囲の数のそれぞれを修飾することができることが理解される。「少なくとも」はまた、整数に限定されない(例えば、「少なくとも5%」は、有効桁数を考慮せずに、5.0%、5.1%、5.18%を含む)。
【0028】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書で使用される場合、ホスホジエステル連結によって接続されたヌクレオチドの配列を意味する。ポリヌクレオチドは、本明細書では、5’から3’方向の向きで存在する。本開示のポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)分子またはリボ核酸(RNA)分子であり得る。ヌクレオチド塩基は、本明細書では、一文字コード:アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、イノシン(I)、およびウラシル(U)によって示される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、他に示されない限り、ペプチドおよびタンパク質の両方を包含する。
【0030】
「コード配列」または「コードする」配列という用語は、本明細書では、特定のタンパク質、例えば、IL-12などを「コードする」DNAまたはRNA領域(転写された領域)を意味するために使用される。コード配列は、プロモーターなどの適切な調節領域の制御下に置かれた場合、in vitroまたはin vivoで、ポリペプチドに転写(DNA)および翻訳(RNA)される。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンによって決定される。コード配列としては、限定されるものではないが、原核生物または真核生物由来のcDNA、原核生物または真核生物由来のゲノムDNA、および合成DNA配列を挙げることができる。転写終止配列は、コード配列に対して3’に位置し得る。
【0031】
コザックコンセンサス配列、コザックコンセンサスまたはコザック配列は、真核生物mRNAに存在する配列として公知であり、開始コドン(AUG)の3塩基上流にコンセンサス(gcc)gccRccAUGG(ここで、Rは、プリン(アデニンまたはグアニン)である)を有し、これに、別の「G」が続く。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、コザックコンセンサス配列と少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれよりも高い配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、コザックコンセンサス配列を含む。
【0032】
「RNA」という用語は、本明細書では、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味するために使用される。「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離されたRNA、例えば、部分的にまたは完全に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え的に生成されたRNA、例えば、1つまたは複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または変更によって天然に存在するRNAと異なる改変RNAを含む。「mRNA」という用語は、「メッセンジャーRNA」を意味し、DNA鋳型を使用することによって生成される「転写物」に関し、ペプチドまたはタンパク質をコードする。典型的には、mRNAは、5’-UTR、タンパク質コード領域、および3’-UTRを含む。mRNAは、細胞およびin vitroにおいて限定的な半減期のみを有する。本発明の文脈では、mRNAは、DNA鋳型からin vitro転写によって生成され得る。in vitro転写の方法論は、当業者に公知である。例えば、市販の各種のin vitro転写キットがある。本開示の一部の態様では、RNA、好ましくは、mRNAは、5’-キャップ構造で改変されている。
【0033】
「配列同一性」という用語は、本明細書では、配列を比較することによって決定される、2つもしくはそれよりも多くのアミノ酸(ポリペプチドまたはタンパク質)配列、または2つもしくはそれよりも多くの核酸(ポリヌクレオチド)配列の間の関係を意味するために使用される。ある特定の態様では、配列同一性は、2つの所与の配列番号の全長またはその部分に基づいて算出される。その部分は、両方の配列番号の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%、または任意の他の特定されたパーセンテージを意味し得る。「同一性」という用語は、場合によって、そのような配列のストリング間の一致によって決定される、アミノ酸または核酸配列間の配列関係性の程度も意味し得る。
【0034】
ある特定の態様では、同一性を決定するための方法は、試験される配列間の最大の一致を与えるように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムにおいて体系化されている。
【0035】
「実質的な相同性」または「実質的な類似性」は、核酸またはその断片を指す場合、別の核酸(またはその相補鎖)による適切なヌクレオチドの挿入または欠失とともに最適に整列された場合に、配列の少なくとも約95~99%のヌクレオチド配列同一性が存在することを示すことを意味する。
【0036】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、1~24個の炭素原子の分枝または非分枝の飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル(tetracedcyl)、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。アルキル基はまた、置換または無置換であり得る。アルキル基は、限定されるものではないが、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、シリル、スルホキソ、スルホニル、スルホキシド、またはチオールを含む、1つまたは複数の基で置換され得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、例えば本明細書に開示されるポリヌクレオチドを含む遺伝子治療組成物の「有効量」、「治療有効量」および「十分量」という用語は、ヒトを含む対象に投与された場合に、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を生じるのに十分な量を指し、例えば、「有効量」またはそれに対する同義語は、それが適用されている文脈に依存する。
【0038】
所与の治療剤または組成物の量は、そのような量に対応し、さまざまな要因、例えば、所与の薬剤、医薬製剤、投与の経路、疾患または障害の種類、処置される対象(例えば、年齢、性別、および/または体重)または宿主の正体などに応じて変わる。
【0039】
「半減期」という用語は、分子の活性、量または数の半分が排除されるのに必要な期間に関する。本発明の文脈では、RNAの半減期は、前記RNAの安定性について表す。
【0040】
脂質ナノ粒子
本開示は、脂質ナノ粒子を使用する生物学的に活性な分子の細胞への送達に関する。一部の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子によって封入されたIL-12を発現する改変RNAまたは環状RNA、その組成物、およびがんを有するか、またはがんを有すると疑われる対象を処置するためのその組成物の使用に関する。
【0041】
脂質ナノ粒子(LNP)は、本明細書で使用される場合、ベシクル、例えば、連続的な脂質二重層を有する球状ベシクルを指す。脂質ナノ粒子は、薬学的療法を標的化された場所に送達する方法において使用することができる。LNPの非限定的な例としては、リポソーム、双頭型両親媒性化合物(bolaamphihile)、固体脂質ナノ粒子(SLN)、ナノ構造脂質担体(NLC)、および単層膜構造(例えば、アーケオソーム(archaeosome)およびミセル)が挙げられる。
【0042】
一部の態様では、脂質ナノ粒子は、1種または複数種の脂質を含む。脂質は、本明細書で使用される場合、限定されるものではないが、脂肪酸のエステルを含む有機化合物の群を指し、一部の態様では、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶性であることによって特徴付けられる。それらは、通常、少なくとも3つのクラスに分けられる:(1)脂肪および油ならびにワックスを含む「単純脂質」;(2)リン脂質および糖脂質を含む「複合脂質」;ならびに(3)ステロイドなどの「誘導脂質」。脂質の非限定的な例としては、トリグリセリド(例えば、トリステアリン)、ジグリセリド(例えば、ベヘン酸グリセロール(glycerol bahenate))、モノグリセリド(例えば、モノステアリン酸グリセロール)、脂肪酸(例えば、ステアリン酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、およびワックス(例えば、パルミチン酸セチル)が挙げられる。一部の態様では、LNP中の1種または複数種の脂質は、カチオン性脂質を含む。
【0043】
カチオン性脂質は、本明細書で使用される場合、生理学的pHなどの選択されたpHで正味の正電荷を持ついくつかの脂質種のいずれかを指す。そのような脂質としては、限定されるものではないが、N1,N3,N5-トリス(3-(ジドデシルアミノ)プロピル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミド(TT3)、N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);リポフェクタミン;1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA);ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODMA)、ジステアリルジメチルアンモニウム(DSDMA)、N,N-ジオレイル-N,N,-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N-N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)およびN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ(dimyristyloxprop)-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)が挙げられる。
【0044】
一部の態様では、カチオン性脂質は、式I:
【化3】
およびその塩[式中、各R
1は、独立して、無置換アルキルであり、各R
2は、独立して、無置換アルキルであり、各R
3は、独立して、水素、または置換もしくは無置換アルキルであり、各mは、独立して、3、4、5、6、7、または8である]によって表される。一部の態様では、各R
1は、独立して、無置換アルキルであり、各R
2は、独立して、無置換アルキルであり、R
3は、水素であり、各mは、3である。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
1は、無置換C
1~24アルキルである。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
1は、無置換C
1~18アルキルである。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
1は、無置換C
1~12アルキルである。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
1は、無置換C
6~18アルキルである。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
1は、無置換C
6~12アルキルである。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
1は、無置換C
8~12アルキルである。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
1は、無置換C
10~12アルキルである。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
1は、無置換C
11アルキルである。
【0045】
一部の態様では、少なくとも1つのR2は、無置換C1~24アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR2は、無置換C1~18アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR2は、無置換C1~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR2は、無置換C6~18アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR2は、無置換C6~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR2は、無置換C8~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR2は、無置換C10~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR2は、無置換C11アルキルである。
【0046】
一部の態様では、少なくとも2つのR1は、無置換C1~24アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR1は、無置換C1~18アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR1は、無置換C1~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR1は、無置換C6~18アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR1は、無置換C6~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR1は、無置換C8~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR1は、無置換C10~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR1は、無置換C11アルキルである。
【0047】
一部の態様では、少なくとも2つのR2は、無置換C1~24アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR2は、無置換C1~18アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR2は、無置換C1~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR2は、無置換C6~18アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR2は、無置換C6~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR2は、無置換C8~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR2は、無置換C10~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR2は、無置換C11アルキルである。
【0048】
一部の態様では、R1のすべての実例は、無置換C1~24アルキルである。一部の態様では、R1のすべての実例は、無置換C1~18アルキルである。一部の態様では、R1のすべての実例は、無置換C1~12アルキルである。一部の態様では、R1のすべての実例は、無置換C6~18アルキルである。一部の態様では、R1のすべての実例は、無置換C6~12アルキルである。一部の態様では、R1のすべての実例は、無置換C8~12アルキルである。一部の態様では、R1のすべての実例は、無置換C10~12アルキルである。一部の態様では、R1のすべての実例は、無置換C11アルキルである。
【0049】
一部の態様では、R2のすべての実例は、無置換C1~24アルキルである。一部の態様では、R2のすべての実例は、無置換C1~18アルキルである。一部の態様では、R2のすべての実例は、無置換C1~12アルキルである。一部の態様では、R2のすべての実例は、無置換C6~18アルキルである。一部の態様では、R2のすべての実例は、無置換C6~12アルキルである。一部の態様では、R2のすべての実例は、無置換C8~12アルキルである。一部の態様では、R2のすべての実例は、無置換C10~12アルキルである。一部の態様では、R2のすべての実例は、無置換C11アルキルである。
【0050】
一部の態様では、少なくとも1つのR3は、水素である。一部の態様では、少なくとも1つのR3は、置換または無置換アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR3は、置換または無置換C1~18アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR3は、置換または無置換C1~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR3は、置換または無置換C1~6アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR3は、置換または無置換C1~4アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR3は、置換または無置換C2~4アルキルである。一部の態様では、少なくとも1つのR3は、置換または無置換メチルである。
【0051】
一部の態様では、少なくとも1つのR3は、置換アルキルであり、ここで、置換アルキルは、ハロゲンで置換されている。一部の態様では、少なくとも1つのR3は、置換アルキルであり、ここで、置換アルキルは、フッ素で置換されている。一部の態様では、少なくとも1つのR3は、置換アルキルであり、ここで、置換アルキルは、ハロゲン化アルキルで置換されている。
【0052】
一部の態様では、少なくとも2つのR3は、水素である。一部の態様では、少なくとも2つのR3は、置換または無置換アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR3は、置換または無置換C1~18アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR3は、置換または無置換C1~12アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR3は、置換または無置換C1~6アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR3は、置換または無置換C1~4アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR3は、置換または無置換C2~4アルキルである。一部の態様では、少なくとも2つのR3は、置換または無置換メチルである。
【0053】
一部の態様では、少なくとも2つのR3は、置換アルキルであり、ここで、置換アルキルは、ハロゲンで置換されている。一部の態様では、少なくとも2つのR3は、置換アルキルであり、ここで、置換アルキルは、フッ素で置換されている。一部の態様では、少なくとも2つのR3は、置換アルキルであり、ここで、置換アルキルは、ハロゲン化アルキルで置換されている。
【0054】
一部の態様では、R3のすべての実例は、水素である。一部の態様では、R3のすべての実例は、置換または無置換アルキルである。一部の態様では、R3のすべての実例は、置換または無置換C1~18アルキルである。一部の態様では、R3のすべての実例は、置換または無置換C1~12アルキルである。一部の態様では、R3のすべての実例は、置換または無置換C1~6アルキルである。一部の態様では、R3のすべての実例は、置換または無置換C1~4アルキルである。一部の態様では、R3のすべての実例は、置換または無置換C2~4アルキルである。一部の態様では、R3のすべての実例は、置換または無置換メチルである。
【0055】
一部の態様では、R3のすべての実例は、置換アルキルであり、ここで、置換アルキルは、ハロゲンで置換されている。一部の態様では、R3のすべての実例は、置換アルキルであり、ここで、置換アルキルは、フッ素で置換されている。一部の態様では、R3のすべての実例は、置換アルキルであり、ここで、置換アルキルは、ハロゲン化アルキルで置換されている。
【0056】
一部の態様では、少なくとも1つのmは、3である。一部の態様では、少なくとも1つのmは、4である。一部の態様では、少なくとも1つのmは、5である。一部の態様では、少なくとも1つのmは、6である。一部の態様では、少なくとも1つのmは、7である。一部の態様では、少なくとも1つのmは、8である。一部の態様では、少なくとも2つのmは、3である。一部の態様では、少なくとも2つのmは、4である。一部の態様では、少なくとも2つのmは、5である。一部の態様では、少なくとも2つのmは、6である。一部の態様では、少なくとも2つのmは、7である。一部の態様では、少なくとも2つのmは、8である。
【0057】
一部の態様では、mのすべての実例は、3である。一部の態様では、mのすべての実例は、4である。一部の態様では、mのすべての実例は、5である。一部の態様では、mのすべての実例は、6である。一部の態様では、mのすべての実例は、7である。一部の態様では、mのすべての実例は、8である。
【0058】
本開示の一部の態様では、カチオン性脂質は、
【化4】
【0059】
[式中、すべての実例がm=3]によって表されるTT3である。式IおよびTT3の組成物、合成および使用は、WO2016187531A1に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
TT3は、本明細書で使用される場合、さまざまな生物学的に活性な薬剤の細胞への送達のための脂質ナノ粒子を形成することができる。加えて、本開示は、負荷されていないTT3-LNPが、in vivoおよびin vitroで、がん細胞において免疫原性細胞死(ICD)を誘導することができることも実証する。免疫原性細胞死は、本明細書で記載される場合、樹状細胞(DC)の活性化および結果として生じる特異的T細胞応答の活性化を通して有効な免疫応答を誘導することができる細胞死の形態を指す。本開示の一部の態様では、免疫原性細胞死を受ける細胞は、腫瘍細胞である。免疫原性腫瘍細胞死は、有効な抗腫瘍免疫応答を誘発することができる。本開示の一部の態様では、脂質ナノ粒子は、レポーター遺伝子のみをコードする改変RNA(modRNA)を封入しているTT3-LNP(TT3-LNP-modRNA)を含む。改変RNAは、TT3-LNPと相乗的に働いて、TT3-LNP単独と比較して、腫瘍細胞においてより高いレベルのICDを誘導することができる。本開示の一部の態様では、脂質ナノ粒子は、IL-12分子をコードするmodRNAを封入しているTT3-LNPを含む。免疫調節性サイトカインであるIL-12は、局所腫瘍に対して強力な免疫応答を誘発する。TT3-LNP、modRNAおよびIL-12発現の組合せは、部位における腫瘍細胞の相乗的阻害に有効であるだけでなく、全身的な抗腫瘍免疫応答も誘発して、遠位腫瘍細胞を死滅させ、腫瘍の再発を防止する。
【0061】
本開示の一部の態様では、カチオン性脂質は、DOTAPである。DOTAPは、本明細書で使用される場合、脂質ナノ粒子を形成することもできる。DOTAPは、一過性のまたは安定な遺伝子発現のために、酵母人工染色体(YAC)を含むDNAの真核細胞への非常に効率的なトランスフェクションのために使用することができ、RNA、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、リボヌクレオタンパク質(RNP)複合体、およびタンパク質などの他の負に帯電した分子の哺乳動物細胞の研究試料への効率的な移入のためにも好適である。
【0062】
本開示の一部の態様では、カチオン性脂質は、リポフェクタミンである。リポフェクタミンは、本明細書で使用される場合、分子細胞生物学において使用される、Invitrogenによって製造および販売される一般的なトランスフェクション試薬である。これは、リポフェクションによるRNA(mRNAおよびsiRNAを含む)またはプラスミドDNAのin vitro細胞培養物へのトランスフェクション効率を増加させるために使用される。リポフェクタミンは、水性環境下でリポソームまたは脂質ナノ粒子を形成することができる脂質サブユニットを含有し、これが、トランスフェクションペイロード、例えば、modRNAを封入する。RNA含有リポソーム(それらの表面において正に帯電)は、リポソームの細胞膜との融合を媒介する中性共脂質(neutral co-lipid)に起因して、生細胞の負に帯電した形質膜と融合することができ、複製または発現のために、核酸カーゴ分子が細胞質を横断するのを可能にする。
【0063】
本開示の一部の態様では、LNPは、主に、カチオン性脂質と共に他の脂質成分から構成される。これらとしては、典型的には、限定されるものではないが、ホスファチジルコリン(PC)(例えば、1,s-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、および1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、ステロール(例えば、コレステロール)、およびポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲート(例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[フォレート(ポリエチレングリコール)-2000(DSPE-PEG2000)および1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000(C14-PEG2000))に属する他の脂質分子が挙げられる。表1は、例示的なLNP、TT3-LNPおよびDOTAP-LNPの処方を示す。
表1.
【表1】
【0064】
脂質ナノ粒子の粒子サイズは、薬物放出速度、生体内分布、粘膜接着、ナノ粒子の内部への水の細胞取り込みおよび緩衝液交換、ならびにタンパク質拡散に影響を及ぼし得る。本開示の一部の態様では、LNPの直径は、30~500nmの範囲である。本開示の一部の態様では、LNPの直径は、約30~約500nm、約50~約400nm、約70~約300nm、約100~約200nm、約100~約175nm、または約100~約120nmの範囲である。本開示の一部の態様では、LNPの直径は、100~120nmの範囲である。本開示の一部の態様では、LNPの直径は、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、101nm、102nm、103nm、104nm、105nm、106nm、107nm、108nm、109nm、110nm、111nm、112nm、113nm、114nm、115nm、116nm、117nm、118nm、119nm、または120nmであり得る。
【0065】
ゼータ電位は、脂質ナノ粒子表面の有効な電荷の尺度である。ゼータ電位の大きさは、粒子の安定性についての情報を提供する。本開示の一部の態様では、LNPのゼータ電位は、3~6mvの範囲である。本開示の一部の態様では、LNPのゼータ電位は、3mv、3.1mv、3.2mv、3.3mv、3.4mv、3.5mv、3.6mv、3.7mv、3.8mv、3.9mv、4mv、4.1mv、4.2mv、4.3mv、4.4mv、4.5mv、4.6mv、4.7mv、4.8mv、4.9mv、5mv、5.1mv、5.2mv、5.3mv、5.4mv、5.5mv、5.6mv、5.7mv、5.8mv、5.9mv、または6mvであり得る。
【0066】
一部の態様では、本開示は、脂質ナノ粒子により封入されたmodRNAに関する。本開示の一部の態様では、LNPおよびmodRNAの間の質量比は、1:2~2:1の範囲である。一部の態様では、LNPおよびmodRNAの間の質量比は、1:2、1:1.9、1:1.8、1:1.7、1:1.6、1:1.5、1:1.4、1:1.3、1:1.2、1:1.1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、または2:1であり得る。本開示の一部の態様では、LNPおよびmodRNAの間の質量比は、1:1であり得る。
【0067】
改変RNA
一部の態様では、改変RNAは、メッセンジャーRNAである。本明細書で使用される場合、「メッセンジャーRNA」(mRNA)という用語は、目的のポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチドを指し、in vitro、in vivo、in situまたはex vivoで、翻訳されて、目的のコードされるポリペプチドを産生することができる。本開示の一部の態様では、改変RNAは、合成である。
【0068】
一部の態様では、改変RNAは、翻訳可能領域、および1、2、または2つより多くの改変を含む。一部の態様では、改変核酸は、対応する未改変核酸と比べて、核酸が導入される細胞において低減された分解を示す。
【0069】
一部の態様では、改変は、ヌクレオチドの糖部分に位置し得る。一部の態様では、改変は、ヌクレオチドのリン酸骨格に位置し得る。
【0070】
一部の態様では、例えば、タンパク質産生の正確なタイミングが所望される場合、細胞に導入される改変核酸が細胞内で分解されることが望ましい。したがって、一部の態様では、改変RNAは、分解ドメインを含み、これは、細胞内で指示された様式で作用され得る。
【0071】
一部の態様では、改変RNAは、改変5’-キャップ、半減期延長部分、または調節エレメントの少なくとも1つを含む。
【0072】
一部の態様では、改変5’-キャップは、5’-キャップ構造なしの同じRNAと比較した場合に、RNAの安定性を増加させ、RNAの翻訳効率を増加させ、RNAの翻訳を延長し、RNAの総タンパク質発現を増加させる。
【0073】
一部の態様では、改変RNAは、環化(例えば、環状mRNA)またはコンカテマー化されて、翻訳適格性分子を生成して、ポリA結合タンパク質および5’末端結合タンパク質の間の相互作用を支援する。環化またはコンカテマー化のメカニズムは、少なくとも3つの異なる経路:1)化学的経路、2)酵素的経路、および3)リボザイム触媒経路を通して起こり得る。新しく形成された5’/3’連結は、分子内または分子間であり得る。
【0074】
第1の経路では、核酸の5’末端および3’末端は、一緒に接近している場合に、分子の5’末端および3’末端の間に新しい共有結合的連結を形成する化学反応性基を含有する。有機溶媒中で、合成mRNA分子の3’末端上の3’-アミノ末端ヌクレオチドが5’-NHS-エステル部分において求核攻撃を受けて、新しい5’/3’アミド結合を形成するように、5’末端は、NHS-エステル反応性基を含有していてもよく、3’末端は、3’-アミノ末端ヌクレオチドを含有していてもよい。
【0075】
第2の経路では、T4 RNAリガーゼを使用して、5’-リン酸化核酸分子を核酸の3’-ヒドロキシル基に酵素的に連結させて、新しいホスホロジエステル連結を形成することができる。反応の例では、1μgの核酸分子を、製造業者のプロトコールに従って、1~10単位のT4 RNAリガーゼ(New England Biolabs、Ipswich、Mass.)と共に37℃で1時間インキュベートする。ライゲーション反応は、並置された5’および3’領域の両方と塩基対合して、酵素的ライゲーション反応を支援することができる分割オリゴヌクレオチドの存在下で起こり得る。
【0076】
第3の経路では、cDNA鋳型の5’または3’末端のいずれかは、in vitro転写の間に、生じた核酸分子が核酸分子の5’末端を核酸分子の3’末端にライゲーションすることができる活性リボザイム配列を含有し得るように、リガーゼリボザイム配列をコードする。リガーゼリボザイムは、群Iイントロン、群Iイントロン、デルタ肝炎ウイルス、ヘアピンリボザイムに由来し得るか、またはSELEX(指数関数的富化によるリガンドの系統的進化)によって選択されてもよい。リボザイムリガーゼ反応は、0~37℃の温度で1~24時間かかり得る。
【0077】
一部の態様では、複数の別個の核酸、改変RNAまたは一次構築物は、3’末端で改変されるヌクレオチドを使用して、3’末端を通して一緒に連結されてもよい。化学的コンジュゲーションを使用して、細胞への送達の化学量論を制御することができる。例えば、グリオキシル酸回路の酵素であるイソクエン酸リアーゼおよびリンゴ酸シンターゼは、1:1の比でHepG2細胞に供給されて、細胞の脂肪酸代謝を変更することができる。この比は、ある核酸または改変RNA種上の3’-アジド末端ヌクレオチド、ならびに反対側の核酸または改変RNA種上のC5-エチニルまたはアルキニル含有ヌクレオチドを使用して、核酸または改変RNAを化学的に連結させることによって制御され得る。改変ヌクレオチドは、製造業者のプロトコールに従って、ターミナルトランスフェラーゼ(New England Biolabs、Ipswich、Mass.)を使用して転写後に付加される。3’-改変ヌクレオチドの付加後、2つの核酸または改変RNA種は、水溶液中、銅の存在下または非存在下で合わされて、文献に記載されているクリックケミストリーメカニズムを介して新しい共有結合的連結を形成し得る。
【0078】
一部の態様では、2つより多くのポリヌクレオチドが、官能化リンカー分子を使用して、一緒に連結され得る。例えば、官能化サッカライド分子は、3’-官能化mRNA分子(すなわち、3’-マレイミドエステル、3’-NHS-エステル、アルキニル)上の同族部分と反応する複数の化学反応性基(SH-、NH2-、N3など)を含有するように化学的に改変され得る。改変サッカライド上の反応性基の数は、化学量論的な様式で制御され得、コンジュゲートされた核酸またはmRNAの化学量論比を直接制御することができる。
【0079】
一部の態様では、タンパク質産生をさらに増強するために、本開示の核酸、改変RNA、ポリヌクレオチドまたは一次構築物は、他のポリヌクレオチド、色素、挿入剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン(Sapphyrin))、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ、タンパク質、例えば、糖タンパク質、またはペプチド、例えば、共リガンドに対する特異的親和性を有する分子、または抗体、例えば、がん細胞、内皮細胞もしくは骨細胞などの特定された細胞型に結合する抗体、ホルモンおよびホルモン受容体、非ペプチド種、例えば、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補助因子、または薬物にコンジュゲートされるように設計することができる。
【0080】
コンジュゲーションは、増加した安定性および/または半減期をもたらし得、細胞、組織または生物体における特異的部位に核酸、改変RNA、ポリヌクレオチドまたは一次構築物を標的化するのに特に有用であり得る。
【0081】
一部の態様では、一次構築物は、目的の1つもしくは複数のポリペプチド、またはその断片をコードするように設計される。目的のポリペプチドとしては、限定されるものではないが、ポリペプチド全体、1つまたは複数の核酸によって独立してコードされ得る複数のポリペプチドまたはポリペプチドの断片、複数の核酸、前述のいずれかの核酸の断片またはバリアントが挙げられ得る。本明細書で使用される場合、「目的のポリペプチド」という用語は、本発明の一次構築物においてコードされるように選択された任意のポリペプチドを指す。本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、ほとんどの場合にペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸残基(天然または非天然)のポリマーを意味する。用語は、本明細書で使用される場合、任意のサイズ、構造または機能の、タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを指す。一部の例では、コードされるポリペプチドは、約50アミノ酸よりも小さく、その結果、ポリペプチドは、ペプチドと称される。ポリペプチドがペプチドである場合、これは、少なくとも約2、3、4、または少なくとも5アミノ酸残基長である。したがって、ポリペプチドとしては、遺伝子産物、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片、および他の等価物、バリアント、ならびに前述のアナログが挙げられる。ポリペプチドは、単一分子であってもよく、または二量体、三量体もしくは四量体などの多分子の複合体であってもよい。それらは、単一鎖、または抗体もしくはインスリンなどの多鎖ポリペプチドも含み得、会合または連結されていてもよい。最も一般的なジスルフィド連結は、多鎖ポリペプチドにおいて見出される。ポリペプチドという用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学アナログであるアミノ酸ポリマーにも適用され得る。
【0082】
「ポリペプチドバリアント」という用語は、ネイティブまたは参照配列とはそれらのアミノ酸配列が異なる分子を指す。アミノ酸配列バリアントは、ネイティブまたは参照配列と比較して、アミノ酸配列内のある特定の位置に置換、欠失および/または挿入を有し得る。通常は、バリアントは、ネイティブまたは参照配列と少なくとも約50%の同一性(相同性)を有し、好ましくは、それらは、ネイティブまたは参照配列と、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも90%同一(相同)である。
【0083】
したがって、参照配列に関して置換、挿入および/または付加、欠失、ならびに共有結合性改変を含有する目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本発明の範囲内に含まれる。例えば、配列タグまたはアミノ酸、例えば、1つまたは複数のリシンは、本発明のペプチド配列に(例えば、N末端またはC末端で)付加され得る。配列タグは、ペプチドの精製または局在化のために使用することができる。リシンは、ペプチドの溶解度を増加させるため、またはビオチン化を可能にするために使用することができる。あるいは、ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列のカルボキシおよびアミノ末端領域に位置するアミノ酸残基は、必要に応じて欠失されて、トランケートされた配列を提供することができる。あるいは、ある特定のアミノ酸(例えば、C末端またはN末端残基)は、配列の使用に応じて、例えば、可溶性であるか、または固体担体に連結されたより大きい配列の一部としての配列の発現に応じて、欠失されていてもよい。
【0084】
当業者によって認識されるように、タンパク質断片、機能性タンパク質ドメイン、および相同タンパク質も、本発明の目的のポリペプチドの範囲内であるとみなされる。例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、または100アミノ酸長よりも長い参照タンパク質の任意のタンパク質断片(他は同一であるが、参照ポリペプチド配列よりも少なくとも1つのアミノ酸残基だけ短いポリペプチド配列を意味する)が本明細書に提供される。別の例では、本明細書に記載される配列のいずれかと約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、または約100%同一である、約20、約30、約40、約50、または約100アミノ酸のストレッチを含む任意のタンパク質を、本発明に従って利用することができる。ある特定の実施形態では、本発明に従って利用されるポリペプチドは、本明細書に提供または言及される配列のいずれかに示されるように、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも多くの変異を含む。
【0085】
一部の態様では、改変RNAは、改変5’-キャップ、半減期延長部分、調節エレメント、またはそれらの組合せを含む。
【0086】
一部の態様では、改変5’-キャップは、m2
7,2’-OGppspGRNA、m7GpppG、m7Gppppm7G、m2
(7,3’-O)GpppG、m2
(7,2’-O)GppspG(D1)、m2
(7,2’-O)GppspG(D2)、m2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApG、(m7G-3’mppp-G;これは、3’O-Me-m7G(5’)ppp(5’)Gと等価に指定され得る)、N7,2’-O-ジメチル-グアノシン-5’-三リン酸-5’-グアノシン、m7Gm-ppp-G、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-G(5’)ppp(5’)G、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-m3’-OG(5’)ppp(5’)G、7mG(5’)ppp(5’)N,pN2p、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp、7mG(5’)-ppp(5’)NlmpN2 mp、m(7)Gpppm(3)(6,6,2’)Apm(2’)Apm(2’)Cpm(2)(3,2’)Up、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、2-アジド-グアノシン、N1-メチルプソイドウリジン、m7G(5’)ppp(5’)(2’OMeA)pG、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0087】
本開示は、5’キャップおよび本開示の改変RNAの両方を含むポリヌクレオチド(例えば、IL12Bポリペプチド、IL12Aポリペプチド、ならびに/またはIL12BおよびIL12A融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)も含む。
【0088】
天然mRNAの5’キャップ構造は、核外輸送に関与し、mRNA安定性を増加させ、mRNAキャップ結合タンパク質(CBP)を結合し、これは、CBPのポリ(A)結合タンパク質との会合を通して細胞におけるmRNA安定性および翻訳適格性の原因となり、成熟環状mRNA種を形成する。キャップは、mRNAスプライシングの間に5’近位のイントロンの除去をさらに支援する。
【0089】
内因性mRNA分子は、5’末端キャップされ、mRNA分子の末端グアノシンキャップ残基および5’末端転写センスヌクレオチドの間に5’-ppp-5’-三リン酸連結を生成し得る。次いで、この5’-グアニル酸キャップは、メチル化されて、N7-メチル-グアニル酸残基を生成し得る。mRNAの5’末端の末端および/または前末端(anteterminal)転写ヌクレオチドのリボース糖も、必要に応じて、2’-O-メチル化され得る。グアニル酸キャップ構造の加水分解および切断による5’-キャップ除去(decapping)は、分解のために、mRNA分子などの核酸分子を標的化し得る。
【0090】
本開示によれば、5’末端キャップは、内因性キャップまたはキャップアナログを含み得る。本開示によれば、5’末端キャップは、グアニンアナログを含み得る。有用なグアニンアナログとしては、限定されるものではないが、イノシン、Nl-メチル-グアノシン、2’フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、および2-アジド-グアノシンが挙げられる。
【0091】
一部の態様では、5’末端キャップ構造は、CapO、Capl、ARC A、イノシン、Nl-メチル-グアノシン、2’フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、2-アジドグアノシン、Cap2、Cap4、5’メチルGキャップ、またはそれらのアナログである。
【0092】
非限定的な追加のキャップとしては、参照により本明細書に組み込まれる2017年11月23日公開のWO/2017/201350に開示されている5’キャップが挙げられる。
【0093】
一部の態様では、半減期延長部分は、Fc、アルブミンもしくはその断片、アルブミン結合部分、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、XTEN、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0094】
一部の態様では、半減期延長部分は、Fcを含む。一部の態様では、半減期延長部分は、アルブミンまたはその断片を含む。
【0095】
一部の態様では、調節エレメントは、少なくとも1つの翻訳エンハンサーエレメント(TEE)、翻訳開始配列、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位またはそのシード、連結ヌクレオシドの3’テーリング領域、AUリッチエレメント(ARE)、転写後制御モジュレーター、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0096】
一部の態様では、調節エレメントは、ポリA領域をさらに含む。一部の態様では、本開示の改変RNA(例えば、IL12Bポリペプチド、IL12Aポリペプチド、ならびに/またはIL12BおよびIL12A融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)は、ポリAテールをさらに含む。一部の態様では、ポリAテール上の末端基は、安定化のために組み込まれ得る。他の実施形態では、ポリAテールは、des-3’ヒドロキシルテールを含む。RNAプロセシングの間に、アデニンヌクレオチドの長い鎖(ポリAテール)は、安定性を増加させるために、mRNA分子などのポリヌクレオチドに付加され得る。
【0097】
転写直後に、転写物の3’末端は、切断されて、3’ヒドロキシルが遊離し得る。次いで、ポリAポリメラーゼは、アデニンヌクレオチドの鎖をRNAに付加する。ポリアデニル化と呼ばれるプロセスは、例えば、およそ80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240または250残基長を含む、およそ80~およそ250残基長の間であり得るポリAテールを付加する。
【0098】
ポリAテールはまた、構築物が核から輸送された後に付加され得る。
【0099】
本開示によれば、ポリAテール上の末端基は、安定化のために組み込まれ得る。本開示のポリヌクレオチドは、des-3’ヒドロキシルテールを含み得る。それらは、Junjie Li, et al.(Current Biology, Vol. 15, 1501-1507, August 23, 2005、この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって教示される構造部分または2’-Oメチル改変も含み得る。さらなるポリAテールについて、参照により本明細書に組み込まれる2017年11月23日公開のWO/2017/201350も参照されたい。
【0100】
一部の態様では、改変RNAは、本明細書に記載される任意の改変または改変の組合せを含む。
【0101】
末端構造改変:非翻訳領域(UTR)
遺伝子の非翻訳領域(UTR)は、転写されるが、翻訳されない。5’UTRは、転写開始部位で開始し、開始コドンまで続くが、開始コドンを含まない一方で、3’UTRは、停止コドンの直後に開始し、転写終結シグナルまで続く。核酸分子および翻訳の安定性の観点から、UTRが果たす調節的役割についての証拠が増えている。UTRの調節特性は、本開示の改変RNAに組み込まれて、分子の安定性を増強することができる。特定の特性も組み込まれて、それらが望ましくない臓器部位に誤って指向される場合に、転写物の制御された下方調節を確実にすることができる。
【0102】
5’UTRおよび翻訳開始
天然5’UTRは、翻訳開始のために役割を果たす特性を有する。それらは、リボソームが多くの遺伝子の翻訳を開始するプロセスに関与することが一般に公知であるコザック配列のようなシグネチャーを保有する。コザック配列は、開始コドン(AUG)の3塩基上流にコンセンサスCCR(A/G)CCAUGG(ここで、Rは、プリン(アデニンまたはグアニン)である)を有し、これに、別の「G」が続く。5’UTRは、伸長因子結合に関与する二次構造を形成することも公知である。
【0103】
伸長因子結合に関与する5’UTR二次構造は、5’UTRまたは3’UTR中の他のRNA結合分子と相互作用して、遺伝子発現を調節することができる。例えば、5’UTRにおいて二次構造化エレメントに結合する伸長因子EIF4A2は、マイクロRNA媒介抑制のために必要である(その全体が参照により本明細書に組み込まれるMeijer H A et al., Science, 2013, 340, 82-85)。5’UTRにおける異なる二次構造が、隣接領域に組み込まれて、特定の組織または細胞においてmRNAを安定化するか、または選択的に不安定にすることができる。
【0104】
特定の標的臓器の豊富に発現した遺伝子において典型的に見出される特性を操作することによって、本発明の核酸またはmRNAの安定性およびタンパク質産生を増強することができる。例えば、アルブミン、血清アミロイドA、アポリポタンパク質A/B/E、トランスフェリン、アルファフェトプロテイン、エリスロポエチン、または第VIII因子などの肝臓で発現されるmRNAの5’UTRの導入を使用して、肝細胞系または肝臓におけるmmRNAなどの核酸分子の発現を増強することができる。同様に、その組織における発現を改善するための他の組織特異的mRNA由来の5’UTRの使用は、筋肉(MyoD、ミオシン、ミオグロビン、ミオゲニン、ヘルクリン(Herculin))に対して、内皮細胞(Tie-1、CD36)に対して、骨髄性細胞(C/EBP、AML1、G-CSF、GM-CSF、CD11b、MSR、Fr-1、i-NOS)に対して、白血球(CD45、CD18)に対して、脂肪組織(CD36、GLUT4、ACRP30、アディポネクチン)に対して、および肺上皮細胞(SP-A/B/C/D)に対して可能である。
【0105】
他の非UTR配列が、5’UTR(または3’UTR)に組み込まれてもよい。例えば、イントロンまたはイントロン配列の部分は、本発明の核酸またはmRNAの隣接領域に組み込まれてもよい。イントロン配列の組み込みは、タンパク質産生、およびmRNAレベルを増加させ得る。
【0106】
本開示の一部の態様では、GTX遺伝子由来のIRES配列の少なくとも1つの断片を、5’UTRに含んでいてもよい。非限定的な例として、断片は、GTX遺伝子のIRES由来の18ヌクレオチド配列であってもよい。別の非限定的な例として、GTX遺伝子のIRES配列由来の18ヌクレオチド配列断片は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドの5’UTRにおいてタンデムに反復されていてもよい。18ヌクレオチド配列は、5’UTRにおいて、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、または10回よりも多く反復されてもよい。
【0107】
ヌクレオチドは、変異され、置き換えられ、および/または5’(または3’)UTRから除去され得る。例えば、開始コドン上流の1つまたは複数のヌクレオチドが、別のヌクレオチドで置き換えられ得る。置き換えられるヌクレオチド(単数または複数)は、開始コドン上流の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、または60ヌクレオチドよりも多くであり得る。別の例として、開始コドン上流の1つまたは複数のヌクレオチドが、UTRから除去され得る。
【0108】
5’UTR、3’UTRおよび翻訳エンハンサーエレメント(TEE)
一部の態様では、改変RNAの5’UTRは、少なくとも1つの翻訳のエンハンサーポリヌクレオチド、翻訳エンハンサーエレメント、翻訳のエンハンサーエレメント(まとめて「TEE」と称する)を含む。一部の態様では、TEEは、転写プロモーターおよび開始コドンの間に位置する。一部の態様では、5’UTRに少なくとも1つのTEEを有する改変RNAは、5’UTRにキャップを含む。一部の態様では、少なくとも1つのTEEは、キャップ依存性またはキャップ非依存性翻訳を受ける改変RNAの5’UTRに位置していてもよい。
【0109】
「翻訳のエンハンサーエレメント(translational enhancer element)」または「翻訳エンハンサーエレメント(translation enhancer element)」(本明細書で、まとめて「TEE」と称する)という用語は、mRNAから産生されるポリペプチドまたはタンパク質の量を増加させる配列を指す。
【0110】
一態様では、TEEは、限定されるものではないが、キャップ依存性またはキャップ非依存性翻訳などの核酸の翻訳活性を促進し得るUTR中の保存されたエレメントである。これらの配列の保存は、ヒトを含む14種にわたって、Panek et al(Nucleic Acids Research, 2013, 1-10;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって以前に示されている。
【0111】
一部の態様では、改変RNAは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国出願第2014/0147454号に開示されるものと少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性を有する少なくとも1つのTEEを有する。一部の態様では、改変RNAは、そのそれぞれが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第US20090226470号、第US20070048776号、第US20130177581号および第US20110124100号、国際特許公開第WO1999024595号、WO2012009644号、WO2009075886号およびWO2007025008号、欧州特許公開第EP2610341A1号およびEP2610340A1号、米国特許第6,310,197号、米国特許第6,849,405号、米国特許第7,456,273号、米国特許第7,183,395号に記載されるTEEと少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性を有する少なくとも1つのTEEを含む。
【0112】
一部の態様では、改変RNAの5’UTRは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、または60よりも多くのTEE配列を含んでいてもよい。一部の態様では、改変RNAの5’UTRにおけるTEE配列は、同じまたは異なるTEE配列である。一部の態様では、TEE配列は、ABABAB、もしくはAABBAABBAABB、もしくはABCABCABC、またはそれらのバリアントなどのパターンで、1回、2回、または3回よりも多く反復される。これらのパターンでは、各文字A、B、またはCは、ヌクレオチドレベルで異なるTEE配列を表す。
【0113】
一部の態様では、2つのTEE配列を分離するスペーサーは、限定されるものではないが、本明細書に記載されるmiR配列(例えば、miR結合部位およびmiRシード)などの改変RNAの翻訳を調節する当技術分野において公知の他の配列を含む。一部の態様では、2つのTEE配列を分離するために使用される各スペーサーは、異なるmiR配列またはmiR配列の構成要素(例えば、miRシード配列)を含む。
【0114】
一部の態様では、本発明の改変RNAの5’UTRにおいて使用されるTEEは、限定されるものではないが、そのそれぞれが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,468,275号および国際特許公開第WO2001055369号に記載されるものなどのIRES配列である。
【0115】
一部の態様では、本明細書に記載されるTEEは、改変RNAの5’UTRおよび/または3’UTRに位置する。一部の態様では、3’UTRに位置するTEEは、5’UTRに位置するか、および/またはそこへの組み込みのために記載されるTEEと同じおよび/または異なる。
【0116】
一部の態様では、改変RNAの3’UTRは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、または60よりも多くのTEE配列を含み得る。一部の態様では、本開示の改変RNAの3’UTRにおけるTEE配列は、同じまたは異なるTEE配列である。TEE配列は、ABABAB、もしくはAABBAABBAABB、もしくはABCABCABC、またはそれらのバリアントなどのパターンで、1回、2回、または3回よりも多く反復される。これらのパターンでは、各文字A、B、またはCは、ヌクレオチドレベルで異なるTEE配列を表す。
【0117】
一部の態様では、3’UTRは、2つのTEE配列を分離するスペーサーを含む。一部の態様では、スペーサーは、15ヌクレオチドのスペーサー、および/または当技術分野において公知の他のスペーサーである。一部の態様では、3’UTRは、3’UTRにおいて、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回および少なくとも9回、または9回よりも多く反復されるTEE配列-スペーサーモジュールを含んでいてもよい。
【0118】
一部の態様では、2つのTEE配列を分離するスペーサーは、限定されるものではないが、本明細書に記載されるmiR配列(例えば、miR結合部位およびmiRシード)などの改変RNAの翻訳を調節する当技術分野において公知の他の配列を含む。一部の態様では、2つのTEE配列を分離するために使用される各スペーサーは、異なるmiR配列またはmiR配列の構成要素(例えば、miRシード配列)を含む。
【0119】
マイクロRNA結合部位の組み込み
一部の態様では、改変RNAは、センサー配列をさらに含む。センサー配列としては、例えば、マイクロRNA結合部位、転写因子結合部位、構造化mRNA配列および/またはモチーフ、内因性核酸結合分子の偽受容体(pseudo-receptor)として作用するように操作された人工結合部位が挙げられる。少なくとも1つのセンサー配列を含むポリヌクレオチドの非限定的な例は、米国出願第2014/0147454号に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
一部の態様では、標的細胞または組織のマイクロRNA(miRNA)プロファイリングは、細胞または組織におけるmiRNAの存在または非存在を決定するために実行される。
【0121】
マイクロRNA(またはmiRNA)は、核酸分子の3’UTRに結合し、核酸分子の安定性を低減すること、または翻訳を阻害することのいずれかによって遺伝子発現を下方調節する19~25ヌクレオチド長の非コードRNAである。一部の態様では、改変RNAは、1つまたは複数のマイクロRNA標的配列、マイクロRNA配列、またはマイクロRNAシードを含む。そのような配列は、米国公開US2005/0261218および米国公開US2005/0059005に教示されるものなどの任意の公知のマイクロRNAに対応し得、これらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。非限定的な例として、ヒトゲノムにおける公知のマイクロRNA、それらの配列およびシード配列は、米国出願第2014/0147454号に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
マイクロRNA配列は、「シード」領域、すなわち、成熟マイクロRNAの2~8位の領域の配列を含み、この配列は、miRNA標的配列に対して完全なワトソン-クリック相補性を有する。マイクロRNAシードは、成熟マイクロRNAの2~8または2~7位を含む。一部の態様では、マイクロRNAシードは、7ヌクレオチド(例えば、成熟マイクロRNAのヌクレオチド2~8)を含み、ここで、対応するmiRNA標的におけるシード相補的部位は、マイクロRNAの1位と反対側のアデニン(A)に隣接する。一部の態様では、マイクロRNAシードは、6ヌクレオチド(例えば、成熟マイクロRNAのヌクレオチド2~7)を含み、ここで、対応するmiRNA標的におけるシード相補的部位は、マイクロRNAの1位と反対側のアデニン(A)に隣接する。例えば、Grimson A, Farh K K, Johnston W K, Garrett-Engele P, Lim L P, Bartel D P; Mol Cell. 2007 Jul. 6; 27(1):91-105を参照されたい。マイクロRNAシードの塩基は、標的配列と完全な相補性を有する。問題のマイクロRNAが利用可能であることを条件として、マイクロRNA標的配列を本発明の核酸またはmRNAの3’UTRに操作することによって、分解または低減された翻訳のために分子を標的化することができる。このプロセスは、核酸分子送達の際のオフターゲット効果の危険を低減する。マイクロRNA、マイクロRNA標的領域、およびそれらの発現パターンの特定、ならびに生物学における役割が報告されている(Bonauer et al., Curr Drug Targets 2010 11:943-949;Anand and Cheresh Curr Opin Hematol 2011 18:171-176;Contreras and Rao Leukemia 2012 26:404-413 (2011 Dec. 20. doi: 10.1038/leu.2011.356);Bartel Cell 2009 136:215-233;Landgraf et al, Cell, 2007 129:1401-1414;Gentner and Naldini, Tissue Antigens. 2012 80:393-403およびそれらのすべての参考文献;これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0123】
例えば、mRNAが肝臓に送達されることを意図しないが、そこに行き着く場合には、肝臓中で豊富なマイクロRNAであるmiR-122は、miR-122の1つまたは複数の標的部位が改変核酸、増強された改変RNAまたはリボ核酸の3’UTRに操作される場合に、目的の遺伝子の発現を阻害することができる。異なるマイクロRNAに対する1つまたは複数の結合部位の導入を操作して、改変核酸、増強された改変RNAまたはリボ核酸の長寿命、安定性、およびタンパク質翻訳をさらに減少させることができる。本明細書で使用される場合、「マイクロRNA部位」という用語は、マイクロRNA標的部位もしくはマイクロRNA認識部位、またはマイクロRNAが結合もしくは会合する任意のヌクレオチド配列を指す。「結合すること(binding)」は、従来のワトソン-クリックハイブリダイゼーションの規則に従い得るか、またはマイクロRNA部位の、もしくはそこに隣接する標的配列とのマイクロRNAの任意の安定な会合を反映し得ることが理解されるべきである。
【0124】
逆に、本発明の改変核酸、増強された改変RNAまたはリボ核酸の目的のために、特定の組織におけるタンパク質発現を増加させるために、それらが天然に存在するマイクロRNA結合部位を操作して配列外にする(すなわち、そこから除去する)ことができる。例えば、miR-122結合部位が除去されて、肝臓におけるタンパク質発現が改善され得る。
【0125】
一部の態様では、改変RNAは、限定されるものではないが、正常なおよび/またはがん性細胞(例えば、HEP3BまたはSNU449)などの特定の細胞に細胞傷害性のまたは細胞保護的なmRNA治療薬を指向させるために、3’UTRに少なくとも1つのmiRNA結合部位を含む。
【0126】
マイクロRNAがmRNA、およびそれによってタンパク質発現を調節することが公知である組織の例としては、限定されるものではないが、肝臓(miR-122)、筋肉(miR-133、miR-206、miR-208)、内皮細胞(miR-17-92、miR-126)、骨髄性細胞(miR-142-3p、miR-142-5p、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27)、脂肪組織(let-7、miR-30c)、心臓(miR-1d、miR-149)、腎臓(miR-192、miR-194、miR-204)、および肺上皮細胞(let-7、miR-133、miR-126)が挙げられる。
【0127】
具体的には、マイクロRNAは、免疫細胞(造血細胞とも呼ばれる)、例えば、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞およびマイクロファージ)、マクロファージ、単球、Bリンパ球、Tリンパ球、顆粒球(granuocyte)、ナチュラルキラー細胞などにおいて差次的に発現されることが公知である。免疫細胞特異的マイクロRNAは、免疫原性、自己免疫、感染に対する免疫応答、炎症、ならびに遺伝子治療および組織/臓器移植後の望まない免疫応答に関与する。免疫細胞特異的マイクロRNAは、造血細胞(免疫細胞)の発生、増殖、分化およびアポトーシスの多くの態様も調節する。例えば、miR-142およびmiR-146は、免疫細胞において排他的に発現され、特に骨髄樹状細胞において豊富である。外因性核酸分子に対する免疫応答が、送達された遺伝子構築物の3’UTRへmiR-142結合部位を付加することによって遮断され、組織および細胞におけるより安定な遺伝子移入を可能にしたことが当技術分野において実証された。miR-142は、抗原提示細胞における外因性mRNAを効率的に分解し、形質導入された細胞の細胞傷害性排除を抑制する(Annoni A et al., blood, 2009, 114, 5152-5161;Brown B D, et al., Nat med. 2006, 12(5), 585-591;Brown B D, et al., blood, 2007, 110(13): 4144-4152、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0128】
多くのマイクロRNA発現研究が、さまざまながん細胞/組織および他の疾患におけるマイクロRNAの差次的発現をプロファイルするために、当技術分野において実行されている。一部のマイクロRNAは、ある特定のがん細胞において異常に過剰発現され、他のものは、過小発現される。例えば、マイクロRNAは、がん細胞(WO2008/154098、US2013/0059015、US2013/0042333、WO2011/157294);がん幹細胞(US2012/0053224);膵臓がんおよび疾患(US2009/0131348、US2011/0171646、US2010/0286232、米国特許第8,389,210号);喘息および炎症(米国特許第8,415,096号);前立腺がん(US2013/0053264);肝細胞癌(WO2012/151212、US2012/0329672、WO2008/054828、米国特許第8,252,538号);肺がん細胞(WO2011/076143、WO2013/033640、WO2009/070653、US2010/0323357);皮膚T細胞性リンパ腫(WO2013/011378);結腸直腸がん細胞(WO2011/0281756、WO2011/076142);がん陽性リンパ節(lympho node)(WO2009/100430、US2009/0263803);鼻咽頭癌(EP2112235);慢性閉塞性肺疾患(US2012/0264626、US2013/0053263);甲状腺がん(WO2013/066678);卵巣がん細胞(US2012/0309645、WO2011/095623);乳がん細胞(WO2008/154098、WO2007/081740、US2012/0214699)、白血病およびリンパ腫(WO2008/073915、US2009/0092974、US2012/0316081、US2012/0283310、WO2010/018563、これらのそれぞれの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)において差次的に発現される。
【0129】
少なくとも1つのマイクロRNA部位は、改変RNAの3’UTRに操作され得る。一部の態様では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、またはそれよりも多くのマイクロRNA部位が、改変RNAの3’UTRに操作されてもよい。一部の態様では、改変RNAに組み込まれたマイクロRNA部位は、同じまたは異なるマイクロRNA部位である。一部の態様では、改変RNAに組み込まれたマイクロRNA部位は、身体の同じまたは異なる組織を標的にする。非限定的な例として、改変核酸mRNAの3’UTRにおける組織、細胞型または疾患特異的マイクロRNA結合部位の導入により、特定の細胞型(例えば、肝細胞、骨髄性細胞、内皮細胞、がん細胞など)における発現の程度を低減することができる。
【0130】
一部の態様では、マイクロRNA部位は、3’UTRの5’末端付近、3’UTRの5’末端および3’末端のほぼ中間、ならびに/または3’UTRの3’末端付近で操作される。一部の態様では、マイクロRNA部位は、3’UTRの5’末端付近、ならびに3’UTRの5’末端および3’末端のほぼ中間で操作される。一部の態様では、マイクロRNA部位は、3’UTRの3’末端付近、ならびに3’UTRの5’末端および3’末端のほぼ中間で操作される。一部の態様では、マイクロRNA部位は、3’UTRの5’末端付近、および3’UTRの3’末端付近で操作される。
【0131】
一部の態様では、改変メッセンジャーRNAは、公知のシード配列と100%の同一性を有するか、またはシード配列と100%未満の同一性を有するマイクロRNA結合領域部位を含む。シード配列は、部分的に変異されて、マイクロRNA結合親和性を減少させることができ、そのようにして、そのmRNA転写物の低減された下方モジュレーションをもたらす。本質では、標的mRNAおよびマイクロRNAシードの間の一致または不一致の程度は、タンパク質発現をモジュレートするマイクロRNAの能力をより細かく調整するレオスタットとして作用し得る。加えて、マイクロRNA結合部位の非シード領域における変異は、タンパク質発現をモジュレートするマイクロRNAの能力にも影響を及ぼし得る。
【0132】
RNA結合タンパク質(RBP)のためのRNAモチーフ
RNA結合タンパク質(RBP)は、限定されるものではないが、RNAスプライシング、局在化、翻訳、ターンオーバー、ポリアデニル化、キャッピング、改変、排出、および局在化などの同時転写のおよび転写後の遺伝子発現の多くの態様を調節することができる。限定されるものではないが、RNA認識モチーフ(RR)およびhnRNP K相同(KH)ドメインなどのRNA結合ドメイン(RBD)は、典型的には、RBPおよびそれらのRNA標的の間の配列の会合を調節する(Ray et al. Nature 2013. 499:172-177;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。一部の態様では、カノニカルなRBDは、短いRNA配列を結合する。一部の態様では、カノニカルなRBDは、RNA構造を認識する。
【0133】
RNA結合タンパク質ならびに関連する核酸およびタンパク質配列の非限定的な例は、米国出願第2014/0147454号に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
一部の態様では、目的のmRNAの安定性を増加させるために、HuRをコードするmRNAを、目的のmRNAと一緒に、細胞または組織に共トランスフェクトまたは共注入する。これらのタンパク質はまた、in vitroで目的のmRNAに繋留され、次いで、細胞に一緒に投与され得る。ポリAテール結合タンパク質PABPは、真核生物翻訳開始因子eIF4Gと相互作用して、翻訳開始を刺激する。mRNA薬物と共にこれらのRBPをコードするか、および/またはこれらのタンパク質をin vitroでmRNA薬物に繋留するmRNAの共投与、ならびにタンパク質結合mRNAを細胞へ投与することは、mRNAの翻訳効率を増加させることができる。同じ概念は、mRNAの、さまざまな転写因子および促進因子をコードするmRNAとの、ならびにそれら自体のタンパク質との共投与に拡張して、RNA安定性および/または翻訳効率に影響を及ぼし得る。
【0135】
一部の態様では、改変RNAは、限定されるものではないが、RNA結合ドメイン(RBD)などの少なくとも1つのRNA結合モチーフを含む。
【0136】
一部の態様では、連結ヌクレオシドの第1の領域および/または少なくとも1つの隣接領域は、少なくとも1つのRBDを含む。一部の態様では、連結ヌクレオシドの第1の領域は、スプライシング因子に関連するRBDを含み、少なくとも1つの隣接領域は、安定性および/または翻訳因子についてのRBDを含む。
【0137】
3’UTRにおける他の調節エレメント
マイクロRNA結合部位に加えて、異なる組織および細胞においてmRNA安定性および翻訳を調節する天然mRNAの3’-UTRにおける他の調節配列を、除去するか、または改変メッセンジャーRNAに導入することができる。そのようなシス調節エレメントとしては、限定されるものではないが、シス-RNP(リボヌクレオタンパク質)/RBP(RNA結合タンパク質)調節エレメント、AUリッチエレメント(AUE)、構造化ステムループ、構成的減衰エレメント(constitutive decay element)(CDE)、GCの豊富さ、および他の構造化mRNAモチーフが挙げられ得る(Parker B J et al., Genome Research, 2011, 21, 1929-1943、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、CDEは、ロキン(Roquin)タンパク質とのそれらの相互作用を通してmRNA分解を媒介する調節モチーフのクラスである。特に、CDEは、マクロファージにおけるサイトカイン産生を制限する、発生および炎症の調節因子をコードする多くのmRNAにおいて見出される(Leppek K et al., 2013, Cell, 153, 869-881、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0138】
一部の態様では、改変mRNAは、栄養要求性である。本明細書で使用される場合、「栄養要求性」という用語は、タンパク質発現が実質的に防止または低減されるように、空間的または時間的キューに応答してmRNAの分解または不活性化を誘発する、促進する、または誘導する少なくとも1つの特性を含むmRNAを指す。そのような空間的または時間的キューとしては、特定の組織または臓器または細胞環境など、翻訳されるmRNAの場所が挙げられる。温度、pH、イオン強度、水分含有量などを含むキューも企図される。
【0139】
3’UTRおよびAUリッチエレメント
3’UTRは、アデノシンおよびウリジンがそれらに埋め込まれたストレッチを有することが公知である。これらのAUリッチシグネチャーは、高いターンオーバー速度を有する遺伝子において特に普及している。それらの配列の特性および機能的性質に基づいて、AUリッチエレメント(ARE)は、3つのクラスに分類され得る(Chen et al, 1995)。クラスI AREは、Uリッチ領域内にAUUUAモチーフのいくつかの分散したコピーを含有する。C-MycおよびMyoDは、クラスI AREを含有する。クラスII AREは、2つまたはそれよりも多くの重複するUUAUUUA(U/A)(U/A)九量体を有する。この種類のAREを含有する分子としては、GM-CSFおよびTNF-aが挙げられる。クラスIII AREは、あまり十分に定義されていない。これらのUリッチ領域は、AUUUAモチーフを含有しない。c-Junおよびミオゲニンが、このクラスの2つの十分に研究された例である。AREに結合するほとんどのタンパク質は、メッセンジャーを不安定にすること公知であるが、ELAVファミリーのメンバー、最も注目すべきことに、HuRは、mRNAの安定性を増加させることが実証されている。HuRは、3つのクラスすべてのAREに結合する。HuR特異的結合部位を核酸分子の3’UTRに操作することで、HuR結合、したがって、in vivoでのメッセージの安定化をもたらす。
【0140】
3’UTRのAUリッチエレメント(ARE)の導入、除去または改変を使用して、本発明の核酸またはmRNAの安定性をモジュレートすることができる。特定の核酸またはmRNAを操作する場合、AREの1つまたは複数のコピーが導入されて、本発明の核酸またはmRNAをより不安定にし、それによって、得られるタンパク質の翻訳を抑制し、その産生を減少させることができる。同様に、AREは、特定されそして除去されるか、または変異されて、細胞内安定性を増加させ、したがって、得られるタンパク質の翻訳および産生を増加させることができる。トランスフェクション実験を、本発明の核酸またはmRNAを使用して、関連する細胞系で実行することができ、タンパク質産生を、トランスフェクション後のさまざまな時点でアッセイすることができる。例えば、細胞を、異なるARE操作分子でトランスフェクトすることができ、関連するタンパク質に対してELISAキットを使用することによって、トランスフェクションの6時間、12時間、24時間、48時間、および7日後で産生されたタンパク質をアッセイすることができる。
【0141】
3’UTRおよび三重ヘリックス
一部の態様では、改変RNAは、改変核酸、増強された改変RNAまたはリボ核酸の3’末端に三重ヘリックスを含む。一部の態様では、改変RNAの3’末端は、三重ヘリックスを単独で、またはポリAテールと組み合わせて含む。
【0142】
一部の態様では、改変RNAは、少なくとも、第1および第2のUリッチ領域、第1および第2の領域の間の保存されたステムループ領域、ならびにAリッチ領域を含む。一部の態様では、第1および第2のUリッチ領域ならびにAリッチ領域は、会合して、核酸の3’末端に三重ヘリックスを形成する。この三重ヘリックスは、核酸を安定化させ、核酸の翻訳効率を増強し、および/または3’末端を分解から保護し得る。例示的な三重ヘリックスとしては、限定されるものではないが、転移関連の肺腺癌転写物1(MALAT1)、MEN-βおよびポリアデニル化核(PAN)RNAの三重ヘリックス配列が挙げられる(Wilusz et al., Genes & Development 2012 26:2392-2407を参照されたい;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0143】
ステムループ
一部の態様では、改変RNAは、ステムループ、例えば、限定されるものではないが、ヒストンステムループを含む。一部の態様では、ステムループは、限定されるものではないが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第WO2013103659号に記載される配列番号7~17などの約25または約26ヌクレオチド長であるヌクレオチド配列である。ヒストンステムループは、コード領域に対して、3’に位置していてもよい(例えば、コード領域の3’末端)。非限定的な例として、ステムループは、本明細書に記載される核酸の3’末端に位置していてもよい。
【0144】
一部の態様では、ヒストンステムループを含む改変RNAは、少なくとも1つの鎖終結ヌクレオシドの付加によって安定化され得る。理論に拘束されることを望まないが、少なくとも1つの鎖終結ヌクレオシドの付加は、核酸の分解を遅らせる可能性があり、したがって、核酸の半減期を増加させることができる。
【0145】
一部の態様では、鎖終結ヌクレオシドは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第WO2013103659号に記載されているものである。一部の態様では、鎖終結ヌクレオシドは、3’-デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’-デオキシウリジン、3’-デオキシシトシン、3’-デオキシグアノシン、3’-デオキシチミン、2’,3’-ジデオキシヌクレオシド、例えば、2’,3’-ジデオキシアデノシン、2’,3’-ジデオキシウリジン、2’,3’-ジデオキシシトシン、2’,3’-ジデオキシグアノシン、2’,3’-ジデオキシチミン、2’-デオキシヌクレオシド、または-O-メチルヌクレオシドである。
【0146】
一部の態様では、改変RNAは、ヒストンステムループ、ポリAテール配列、および/または5’キャップ構造を含む。一部の態様では、ヒストンステムループは、ポリAテール配列の前および/または後である。ヒストンステムループおよびポリAテール配列を含む核酸は、本明細書に記載される鎖終結ヌクレオシドを含んでいてもよい。
【0147】
一部の態様では、改変RNAは、ヒストンステムループおよび5’キャップ構造を含む。5’キャップ構造としては、限定されるものではないが、本明細書に記載されるもの、および/または当技術分野において公知のものが挙げられ得る。
【0148】
5’キャッピング
mRNAの5’キャップ構造は、核外輸送に関与し、mRNA安定性を増加させ、mRNAキャップ結合タンパク質(CBP)を結合し、これは、CBPのポリ(A)結合タンパク質との会合を通して細胞におけるmRNA安定性および翻訳適格性の原因となり、成熟環状mRNA種を形成する。キャップは、mRNAスプライシングの間に5’近位のイントロンの除去をさらに支援する。
【0149】
内因性mRNA分子は、5’末端キャップされ、mRNAの末端グアノシンキャップ残基および5’末端転写センスヌクレオチドの間に5’-ppp-5’-三リン酸連結を生成し得る。次いで、この5’-グアニル酸キャップは、メチル化されて、N7-メチル-グアニル酸残基を生成してもよい。mRNAの5’末端の末端および/または前末端転写ヌクレオチドのリボース糖も、必要に応じて、2’-O-メチル化されてもよい。グアニル酸キャップ構造の加水分解および切断による5’-キャップ除去は、分解のために、mRNA分子などの核酸分子を標的化してもよい。
【0150】
本開示のRNAへの改変は、キャップ除去を防止する非加水分解性キャップ構造を生成し、したがって、mRNAの半減期を増加させ得る。キャップ構造の加水分解は、5’-ppp-5’ホスホロジエステル連結の切断を必要とするので、改変ヌクレオチドが、キャッピング反応の間に使用され得る。例えば、New England Biolabs(Ipswich、Mass.)からのワクシニアキャッピング酵素を、製造業者の指示に従って、α-チオ-グアノシンヌクレオチドと共に使用して、5’-ppp-5’キャップにおけるホスホロチオエート連結を作り出してもよい。α-メチル-ホスホネートおよびセレノ-リン酸ヌクレオチドなどの追加の改変グアノシンヌクレオチドを使用してもよい。
【0151】
追加の改変としては、限定されるものではないが、糖環の2’-ヒドロキシル基におけるmRNAの5’末端および/または5’前末端ヌクレオチドのリボース糖の2’-O-メチル化(上に言及される通り)が挙げられる。複数の別個の5’-キャップ構造を使用して、mRNA分子などの核酸分子の5’-キャップを生成し得る。
【0152】
本明細書で合成キャップアナログ、化学キャップ、化学キャップアナログ、または構造的もしくは機能的キャップアナログとも称されるキャップアナログは、それらの化学構造において天然の(すなわち、内因性、野生型、または生理学的)5’-キャップとは異なるが、キャップ機能を保持している。キャップアナログは、化学的に(すなわち、非酵素的に)もしくは酵素的に合成され、および/または核酸分子に連結されてもよい。
【0153】
例えば、アンチリバースキャップアナログ(ARCA)キャップは、5’-5’-三リン酸基によって連結された2つのグアニンを含有し、ここで、一方のグアニンは、N7メチル基、ならびに3’-O-メチル基(すなわち、N7,3’-O-ジメチル-グアノシン-5’-三リン酸-5’-グアノシン(m7G-3’mppp-G;これは3’O-Me-m7G(5’)ppp(5’)Gと等価に指定され得る)を含有する。他方の未改変グアニンの3’-O原子は、キャップされた核酸分子(例えば、mRNAまたはmmRNA)の5’末端ヌクレオチドに連結される。N7-および3’-O-メチル化グアニンは、キャップされた核酸分子(例えば、mRNAまたはmmRNA)の末端部分を提供する。
【0154】
別の例示的なキャップは、mCAPであり、これは、ARCAと類似するが、グアノシン上に2’-β-メチル基を有する(すなわち、N7,2’-O-ジメチル-グアノシン-5’-三リン酸-5’-グアノシン、m7Gm-ppp-G)。
【0155】
一部の態様では、キャップは、ジヌクレオチドキャップアナログである。一部の態様では、ジヌクレオチドキャップアナログは、異なるリン酸位置で、ボラノホスフェート基またはホスホロセレノエート基で改変された、例えば、その内容が、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,519,110号に記載されるジヌクレオチドキャップアナログである。
【0156】
一部の態様では、キャップアナログは、当技術分野において公知のおよび/または本明細書に記載されるキャップアナログのN7-(4-クロロフェノキシエチル)置換ジヌクレオチド(dicucleotide)形態である。キャップアナログのN7-(4-クロロフェノキシエチル)置換ジヌクレオチド形態の非限定的な例としては、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-G(5’)ppp(5’)GおよびN7-(4-クロロフェノキシエチル)-m3’-OG(5’)ppp(5’)Gキャップアナログが挙げられる(例えば、Kore et al. Bioorganic & Medicinal Chemistry 2013 21:4570-4574に記載されるさまざまなキャップアナログおよびキャップアナログを合成する方法を参照されたい;この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。一部の態様では、本発明のキャップアナログは、4-クロロ/ブロモフェノキシエチルアナログである。
【0157】
キャップアナログは、in vitro転写反応において核酸分子の同時に起こるキャッピングを可能にするが、転写物の最大20%がキャップされないままである。この、および内因性の細胞転写機構によって産生される核酸の内因性5’-キャップ構造とのキャップアナログの構造の相違は、低減された翻訳適格性および低減された細胞安定性をもたらし得る。
【0158】
一部の態様では、5’-キャップまたは5’-キャップアナログを有するRNAを提供することは、前記5’-キャップまたは5’-キャップアナログの存在下でDNA鋳型のin vitro転写によって達成され、ここで、前記5’-キャップは、生成したRNA鎖に転写と同時に(co-transcriptionally)組み込まれる。
【0159】
一部の態様では、RNAは、例えば、in vitro転写によって生成されてもよく、5’-キャップは、キャッピング酵素、例えば、ワクシニアウイルスのキャッピング酵素を使用して、転写後にRNAに付着されてもよい。一部の態様では、改変RNAは、より真正の5’-キャップ構造を生成するために、酵素を使用して転写後にキャップされる。本明細書で使用される場合、「より真正の」という語句は、構造的または機能的のいずれかで、内因性のまたは野生型の特性を厳密に反映させるか、または模倣する特性を指す。すなわち、「より真正の」特性は、先行技術の合成特性もしくはアナログなどと比較して、内因性の、野生型の、天然のもしくは生理学的な細胞機能および/もしくは構造のより良好な代表であるか、またはこれは、対応する内因性の、野生型の、天然のもしくは生理学的な特性よりも1つもしくは複数の点で優れている。本発明のより真正の5’キャップ構造の非限定的な例は、当技術分野において公知の合成5’キャップ構造(または野生型の、天然のもしくは生理学的な5’キャップ構造)と比較して、数ある中でも、キャップ結合タンパク質の増強された結合、増加した半減期、5’エンドヌクレアーゼに対する低減された感受性、および/または低減された5’キャップ除去を有するものである。例えば、組換えワクシニアウイルスキャッピング酵素および組換え2’-O-メチルトランスフェラーゼ酵素は、mRNAの5’末端ヌクレオチドおよびグアニンキャップヌクレオチドの間にカノニカルな5’-5’-三リン酸連結を作り出すことができ、ここで、キャップグアニンは、N7メチル化を含有し、mRNAの5’末端ヌクレオチドは、2’-O-メチルを含有する。このキャップは、例えば、当技術分野において公知の他の5’キャップアナログ構造と比較して、より高い翻訳適格性および細胞安定性、ならびに細胞炎症促進性サイトカインの低減された活性化をもたらす。キャップ構造としては、7mG(5’)ppp(5’)N,pN2p、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp、7mG(5’)-ppp(5’)NlmpN2 mpおよびm(7)Gpppm(3)(6,6,2’)Apm(2’)Apm(2’)Cpm(2)(3,2’)Upが挙げられる。
【0160】
一部の態様では、5’末端キャップとしては、内因性キャップまたはキャップアナログが挙げられる。一部の態様では、5’末端キャップは、グアニンアナログを含む。有用なグアニンアナログとしては、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、および2-アジド-グアノシンが挙げられる。
【0161】
一部の態様では、5’キャップは、5’-5’三リン酸連結を含む。一部の態様では、5’キャップは、三リン酸改変を含む5’-5’三リン酸連結を含む。一部の態様では、5’キャップは、2’-Oまたは3’-O-リボースメチル化ヌクレオチドを含む。一部の態様では、5’キャップは、改変グアノシンヌクレオチドまたは改変アデノシンヌクレオチドを含む。一部の態様では、5’キャップは、7-メチルグアニレートを含む。例示的なキャップ構造としては、m7G(5’)ppp(5’)G、m7,2’O-mG(5’)ppSp(5’)G、m7G(5’)ppp(5’)2’O-mG、およびm7,3’O-mG(5’)ppp(5’)2’O-mAが挙げられる。
【0162】
一部の態様では、改変RNAは、改変5’キャップを含む。5’キャップにおける改変は、mRNAの安定性を増加させ、mRNAの半減期を増加させてもよく、mRNA翻訳効率を増加させ得る。一部の態様では、改変5’キャップは、以下の改変の1つまたは複数を含む:キャップされたグアノシン三リン酸(GTP)の2’および/もしくは3’位の改変、糖環の酸素(炭素環を生じた)のメチレン部分(CH2)による置き換え、キャップ構造の三リン酸架橋部分での改変、または核酸塩基(G)部分での改変。
【0163】
改変され得る5’キャップ構造としては、限定されるものではないが、米国出願第2014/0147454号およびWO2018/160540に記載されるキャップが挙げられ、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0164】
IRES配列
一部の態様では、改変RNAは、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む。特徴的なピコルナウイルスRNAと最初に特定されたIRESは、5’キャップ構造の非存在下でタンパク質合成を開始するのに重要な役割を果たす。IRESは、単独のリボソーム結合部位として作用してもよく、またはmRNAの複数のリボソーム結合部位の1つとしての役割を果たしてもよい。1つよりも多くの機能的リボソーム結合部位を含有する核酸またはmRNAは、リボソーム(「多シストロン性核酸分子」)によって独立して翻訳されるいくつかのペプチドまたはポリペプチドをコードし得る。核酸またはmRNAがIRESと共に提供される場合、必要に応じて、第2の翻訳可能領域がさらに提供される。本発明に従って使用することができるIRES配列の例としては、限定されないが、ピコルナウイルス(例えば、FMDV)、ペスチウイルス(pest virus)(CFFV)、ポリオウイルス(PV)、脳心筋炎ウイルス(ECMV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、豚コレラウイルス(CSFV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、またはコオロギ麻痺ウイルス(CrPV)由来のものが挙げられる。
【0165】
末端構造改変:ポリAテール
RNAプロセシングの間、アデニンヌクレオチドの長い鎖(ポリAテール)は、通常、分子の安定性を増加させるためにメッセンジャーRNA(mRNA)分子に付加される。転写直後に、転写物の3’末端は、切断されて、3’ヒドロキシルが遊離する。次いで、ポリAポリメラーゼは、アデニンヌクレオチドの鎖をRNAに付加する。ポリアデニル化と呼ばれるプロセスは、100~250残基長の間であるポリAテールを付加する。
【0166】
一部の態様では、3’テールの長さは、30ヌクレオチド長よりも長い。一部の態様では、ポリAテールは、35ヌクレオチド長よりも長い。一部の態様では、長さは、少なくとも40ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも45ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも55ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも60ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも60ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも80ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも90ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも100ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも120ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも140ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも160ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも180ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも200ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも250ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも300ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも350ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも400ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも450ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも500ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも600ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも700ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも800ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも900ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも1000ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも1100ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも1200ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも1300ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも1400ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも1500ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも1600ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも1700ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも1800ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも1900ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも2000ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも2500ヌクレオチドである。一部の態様では、長さは、少なくとも3000ヌクレオチドである。
【0167】
一部の態様では、改変RNAは、ポリA-Gカルテットを含むように設計される。Gカルテットは、DNAおよびRNAの両方におけるGリッチ配列によって形成され得る4つのグアニンヌクレオチドの環状水素結合アレイである。この態様では、Gカルテットは、ポリAテールの末端に組み込まれる。得られる核酸またはmRNAは、安定性、タンパク質産生、およびさまざまな時点での半減期を含む他のパラメーターについてアッセイされてもよい。ポリA-Gカルテットが、120ヌクレオチドのポリAテールを単独で使用して見られるタンパク質産生の少なくとも75%と同等のタンパク質産生をもたらすことが発見された。
【0168】
一部の態様では、改変RNAは、ポリAテールを含み、鎖終結ヌクレオシドの付加によって安定化される。一部の態様では、ポリAテールを有する改変RNAは、5’キャップ構造をさらに含む。
【0169】
一部の態様では、改変RNAは、ポリA-Gカルテットを含む。一部の態様では、ポリA-Gカルテットを有する改変RNAは、5’キャップ構造をさらに含む。
【0170】
一部の態様では、ポリAテールまたはポリA-Gカルテットを含む改変RNAは、3’-デオキシヌクレオシド、2’,3’-ジデオキシヌクレオシド 3’-O-メチルヌクレオシド、3’-O-エチルヌクレオシド、3’-アラビノシド、ならびに当技術分野において公知のおよび/または本明細書に記載される他の改変ヌクレオシドで終結するオリゴヌクレオチドの付加によって安定化される。
【0171】
改変ヌクレオシド
一部の態様では、改変RNAは、1つまたは複数の改変ヌクレオシドを含む。一部の態様では、1つまたは複数の改変ヌクレオシドは、6-アザ-シチジン、2-チオ-シチジン、α-チオ-シチジン、プソイド-イソ-シチジン、5-アミノアリル-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、α-チオ-ウリジン、4-チオ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン、デオキシ-チミジン、プソイド-ウリジン、イノシン、α-チオ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、O6-メチル-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、N1-メチルアデノシン、2-アミノ-6-クロロ-プリン、N6-メチル-2-アミノ-プリン、6-クロロ-プリン、N6-メチル-アデノシン、α-チオ-アデノシン、8-アジド-アデノシン、7-デアザ-アデノシン、ピロロ-シチジン、5-メチル-シチジン、N4-アセチル-シチジン、5-メチル-ウリジン、5-ヨード-シチジン、およびそれらの組合せを含む。
【0172】
一部の態様では、改変RNAにおける1つまたは複数のウリジンは、改変ヌクレオシドによって置き換えられる。一部の態様では、ウリジンを置き換える改変ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチル-プソイドウリジン(m1ψ)または5-メチル-ウリジン(m5U)である。
【0173】
一部の態様では、改変RNAは、米国出願番号2014/0147454号、国際出願WO2018160540、国際出願WO2015/196118、または国際出願WO2015/089511に記載される改変RNAを含み、これらは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0174】
細胞傷害性ヌクレオシド
一部の態様では、改変RNAは、1つまたは複数の細胞傷害性ヌクレオシドを含む。例えば、細胞傷害性ヌクレオシドは、二官能性改変RNAまたはmRNAなどのポリヌクレオチドに組み込まれ得る。細胞傷害性ヌクレオシド抗がん剤としては、限定されるものではないが、アデノシンアラビノシド、シタラビン、シトシンアラビノシド、5-フルオロウラシル、フルダラビン、フロクスウリジン、FTORAFUR(登録商標)(テガフールおよびウラシルの組合せ)、テガフール((RS)-5-フルオロ-1-(テトラヒドロフラン-2-イル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン)、および6-メルカプトプリンが挙げられる。
【0175】
抗がん剤として、いくつかの細胞傷害性ヌクレオシドアナログが、臨床使用されているか、または臨床試験の対象になっている。そのようなアナログの例としては、限定されるものではないが、シタラビン、ゲムシタビン、トロキサシタビン、デシタビン、テザシタビン、2’-デオキシ-2’-メチリデンシチジン(DMDC)、クラドリビン、クロファラビン、5-アザシチジン、4’-チオ-アラシチジン、シクロペンテニルシトシンおよび1-(2-C-シアノ-2-デオキシ-ベータ-D-アラビノ-ペントフラノシル)-シトシンが挙げられる。そのような化合物の別の例は、リン酸フルダラビンである。これらの化合物は、全身的に投与されてもよく、限定されるものではないが、増殖している正常細胞よりも腫瘍細胞に対する特異性がほとんど、または全くないなどの細胞傷害剤に典型的な副作用を有し得る。
【0176】
細胞傷害性ヌクレオシドアナログのいくつかのプロドラッグも、当技術分野において報告されている。例としては、限定されるものではないが、N4-ベヘノイル-1-ベータ-D-アラビノフラノシルシトシン、N4-オクタデシル-1-ベータ-D-アラビノフラノシルシトシン、N4-パルミトイル-1-(2-C-シアノ-2-デオキシ-ベータ-D-アラビノ-ペントフラノシル)シトシン、およびP-4055(シタラビン5’-エライジン酸エステル)が挙げられる。一般に、これらのプロドラッグは、主に肝臓および体循環において活性薬物に変換され、腫瘍組織における活性薬物の選択的放出をほとんどまたは全く示さない場合がある。例えば、5’-デオキシ-5-フルオロシチジン(最終的に5-フルオロウラシル)のプロドラッグであるカペシタビンは、肝臓および腫瘍組織の両方で代謝される。「生理学的条件下で容易に加水分解可能なラジカル」を含有する一連のカペシタビンアナログは、Fujiu et al.(米国特許第4,966,891号)によって特許請求されており、参照により本明細書に組み込まれる。Fujiuによって記載される一連のものは、5’-デオキシ-5-フルオロシチジンのN4アルキルおよびアラルキルカルバメート、ならびにこれらの化合物が通常の生理学的条件下で加水分解によって活性化されて、5’-デオキシ-5-フルオロシチジンを生じるという含意を含む。
【0177】
一連のシタラビンN4-カルバメートが、Fadl et al(その全体が参照により本明細書に組み込まれるPharmazie. 1995, 50, 382-7)によって報告されており、これらの化合物は、肝臓および血漿においてシタラビンに変換されるように設計された。その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2004/041203は、ゲムシタビンのプロドラッグを開示しており、このプロドラッグの一部は、N4-カルバメートである。これらの化合物は、ゲムシタビンの胃腸毒性を克服するように設計され、胃腸管からの無傷プロドラッグの吸収後、肝臓および血漿における加水分解放出によってゲムシタビンを提供するよう意図された。Nomura et al(その全体が参照により本明細書に組み込まれるBioorg Med. Chem. 2003, 11, 2453-61)は、生体内還元において、酸性条件下でさらなる加水分解を必要とする中間体を生じて、細胞傷害性ヌクレオシド化合物を生じる1-(3-C-エチニル-β-D-リボ-ペントファラノシル)シトシンのアセタール誘導体を記載している。
【0178】
化学療法薬であり得る細胞傷害性ヌクレオチドとしては、限定されるものではないが、ピラゾロ[3,4-D]-ピリミジン、アロプリノール、アザチオプリン、カペシタビン、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メルカプトプリン、6-チオグアニン、アシクロビル、ara-アデノシン、リバビリン、7-デアザ-アデノシン、7-デアザ-グアノシン、6-アザ-ウラシル、6-アザ-シチジン、チミジンリボヌクレオチド、5-ブロモデオキシウリジン、2-クロロ-プリン、およびイノシン、またはそれらの組合せも挙げられる。
【0179】
コード配列
本開示の一部の態様では、改変RNAは、インターロイキン(IL)-12分子をコードする配列を含む。一部の態様では、IL-12分子に含まれるのは、IL-12、IL-12サブユニット、または免疫調節機能を保持する変異体IL-12分子である。
【0180】
一部の態様では、IL-12は、配列番号1と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0181】
一部の態様では、IL-12分子は、IL-12αサブユニットおよび/またはIL-12βサブユニットを含む。一部の態様では、IL-12αサブユニットは、配列番号2と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0182】
一部の態様では、IL-12βサブユニットは、配列番号3と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0183】
一部の態様では、IL-12αサブユニットおよびIL-12βサブユニットは、リンカーによって連結されている。一部の態様では、リンカーは、少なくとも約2、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、または少なくとも約20アミノ酸のアミノ酸リンカーを含む。一部の態様では、リンカーは、(GS)リンカーを含む。一部の態様では、GSリンカーは、(Gly4Ser)nまたはS(Gly4Ser)nの式[式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、または100からなる群より選択される正の整数である]を有する。一部の態様では、(Gly4Ser)nリンカーは、(Gly4Ser)3または(Gly4Ser)4である。
【0184】
一部の態様では、IL12分子は、配列番号4または配列番号5と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0185】
一部の態様では、改変mRNAは、配列番号6と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0186】
一部の態様では、改変RNAは、配列番号7と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0187】
一部の態様では、改変RNAは、配列番号8と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0188】
一部の態様では、改変RNAは、配列番号9と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0189】
一部の態様では、改変RNAは、ヌクレオチド配列を含むか、または表2中の配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の同一性を有するアミノ酸をコードする。
【0190】
追加の配列は、国際出願第WO2017201350号およびWO2018/160540号に開示されており、これらは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
表2
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0191】
一部の態様では、改変RNAは、実験または治療目的の1つまたは複数の遺伝子を含む。一部の態様では、実験または治療目的の遺伝子は、サイトカイン、ケモカイン、またはIL-12以外の増殖因子をコードする。サイトカインは、当技術分野において公知であり、用語それ自体が、免疫系内のある特定の細胞によって分泌され、他の細胞に対する効果を有する小タンパク質の一般化されたグループ分けを指す。サイトカインは、細胞性免疫応答を増強することが公知であり、本明細書で使用される場合、限定されるものではないが、TNFα、IFN-γ、IFN-α、TGFβ、IL-1、IL-2、Il-4、IL-10、IL-13、IL-17、IL-18、およびケモカインを挙げることができる。ケモカインは、他の適用の中でも、感染に対する応答、免疫応答、炎症、外傷、敗血症、がん、および生殖を調べる研究のために有用である。ケモカインは、当技術分野において公知であり、近隣の応答性細胞、典型的には白血球の感染の部位への走化性を誘導するある種類のサイトカインである。ケモカインの非限定的な例としては、CCL14、CCL19、CCL20、CCL21、CCL25、CCL27、CXCL12、CXCL13、CXCL-8、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、およびCXCL10が挙げられる。増殖因子は、当技術分野において公知であり、用語それ自体が、サイトカインという用語と互換可能である場合がある。本明細書で使用される場合、「増殖因子」という用語は、細胞間でシグナル伝達し、細胞の成長を刺激することができる天然に存在する物質を指す。サイトカインは、増殖因子であり得るが、ある特定の種類のサイトカインは、細胞成長に対する阻害効果も有し得、したがって、2つの用語を区別する。増殖因子の非限定的な例としては、アドレノメデュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質(BMP)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、白血病抑制因子(LIF)、インターロイキン-6(IL-6)、マクロファージコロニー刺激因子(m-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、上皮増殖因子(EFG)、エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、エフリンB3、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子-1(FGF1)、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)、線維芽細胞増殖因子3(FGF3)、線維芽細胞増殖因子4(FGF4)、線維芽細胞増殖因子5(FGF5)、線維芽細胞増殖因子6(FGF6)、線維芽細胞増殖因子7(FGF7)、線維芽細胞増殖因子8(FGF8)、線維芽細胞増殖因子9(FGF9)、線維芽細胞増殖因子10(FGF10)、線維芽細胞増殖因子11(FGF11)、線維芽細胞増殖因子12(FGF12)、線維芽細胞増殖因子13(FGF13)、線維芽細胞増殖因子14(FGF14)、線維芽細胞増殖因子15(FGF15)、線維芽細胞増殖因子16(FGF16)、線維芽細胞増殖因子17(FGF17)、線維芽細胞増殖因子18(FGF18)、線維芽細胞増殖因子19(FGF19)、線維芽細胞増殖因子20(FGF20)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)、線維芽細胞増殖因子22(FGF22)、線維芽細胞増殖因子23(FGF23)、胎仔ウシ成長ホルモン(FBS)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、パーセフィン(Peresphin)、アルテミン、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、ヘパトーム由来増殖因子(HDGF)、インスリン、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)、インスリン様増殖因子-2(IGF-2)、インターロイキン-1(IL-1)、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、遊走刺激因子(MSF)、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)、ミオスタチン(GDF-8)、ニューレグリン1(NRG1)、ニューレグリン2(NRG2)、ニューレグリン3(NRG3)、ニューレグリン4(NRG4)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4(NT-4)、胎盤増殖因子(TCGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、および血管内皮増殖因子(VEGF)が挙げられる。
【0192】
医薬組成物
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載される脂質ナノ粒子を含む医薬組成物に関する。本開示の一部の態様では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体(賦形剤)をさらに含んで、標的疾患の処置における使用のための医薬組成物を形成する。「許容される」は、本明細書で使用される場合、担体が、組成物の活性成分と適合性でなければならず、処置される対象に有害であってはならないことを意味する。一部の態様では、担体は、活性成分を安定化することができる。薬学的に許容される賦形剤(担体)としては、緩衝液が挙げられ、これは、当技術分野において周知である。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (2000) Lippincott Williams and Wilkoins, Ed. K. E. Hooverを参照されたい。
【0193】
in vivo投与のために使用される医薬組成物は、無菌でなければならない。これは、例えば、無菌濾過膜を通した濾過によって、容易に達成される。脂質ナノ粒子は、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって穿孔可能な栓を有する静脈内溶液用バッグまたはバイアルに入れられてもよい。
【0194】
本開示の一部の態様では、医薬組成物は、腫瘍内、髄腔内、筋肉内、静脈内、皮下、吸入、皮内、リンパ内、眼内、腹腔内、胸膜内、脊髄内、血管内、鼻、経皮、舌下、粘膜下、経皮的、または経粘膜投与のために製剤化することができる。本開示の一部の態様では、医薬組成物は、腫瘍内注射のために製剤化することができる。腫瘍内注射は、本明細書で使用される場合、腫瘍への直接注射を指す。少量の薬物を使用しながら、高濃度の組成物を、in situで達成することができる。免疫療法の局所送達は、著しい全身曝露およびオフターゲット毒性を防止しながら、複数の併用療法を可能にする。
【0195】
本開示の一部の態様では、医薬組成物は、筋肉内注射、静脈内注射、または皮下注射のために製剤化することができる。
【0196】
本開示の一部の態様では、医薬組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態における、薬学的に許容される担体、緩衝剤、賦形剤、塩、または安定剤を含む。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (2000) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K. E. Hooverを参照されたい。許容される担体および賦形剤、または安定剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに非毒性であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストランを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0197】
一部の態様では、本明細書に記載される医薬組成物は、例えば、Epstein, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688 (1985);Hwang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030 (1980);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されるような当技術分野において公知の方法によって調製され得る脂質ナノ粒子を含み、これらは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。増強された循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。一部の態様では、リポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法によって生成することができる。リポソームは、規定の細孔サイズのフィルターを通して押し出されて、所望の直径を有するリポソームが得られる。
【0198】
本開示の一部の態様では、医薬組成物は、持続放出形式で製剤化される。持続放出調製物の好適な例としては、脂質ナノ粒子を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み、このマトリックスは、成形された物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例としては、限定されるものではないが、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸および7エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPROM DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、イソ酪酸酢酸スクロース、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0199】
一部の態様では、好適な表面活性剤としては、限定されるものではないが、非イオン性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、TWEEN(登録商標)20、40、60、80または85)および他のソルビタン(例えば、SPAN(登録商標)20、30、60、80、または85)が挙げられる。一部の態様では、表面活性剤を有する組成物は、0.05~5%の間の表面活性剤を含む。一部の態様では、組成物は、0.1および2.5%を含む。必要であれば、他の成分、例えば、マンニトールまたは他の薬学的に許容されるビヒクルが添加されてもよいことが認識されるであろう。
【0200】
一部の態様では、医薬組成物は、経口、非経口、もしくは直腸投与、または吸入もしくは吹送による投与のための、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤もしくは懸濁剤、または坐剤などの単位剤形である。
【0201】
錠剤などの固形組成物を調製するために、主な活性成分は、薬学的担体、例えば、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはガムなどの従来の錠剤化成分、および他の薬学的希釈剤、例えば、水と混合して、本発明の化合物またはその非毒性の薬学的に許容される塩の均一な混合物を含有する固形予備処方組成物を形成することができる。これらの予備処方組成物を均質なものと称する場合、活性成分が、組成物全体にわたって均一に分散し、その結果、組成物が、錠剤、丸剤およびカプセル剤などの同様に有効な単位剤形に容易にさらに分割され得ることを意味する。次いで、この固形予備処方組成物は、0.1~約500mgの本発明の活性成分を含有する上に記載される種類の単位剤形にさらに分割される。新規組成物の錠剤または丸剤は、コーティングされるか、または他の方法で配合されて、延長された作用の利益を与える剤形を提供することができる。例えば、錠剤または丸剤は、内側投薬構成要素および外側投薬構成要素を含むことができ、後者は、前者の上を覆うエンベロープの形態にある。2つの構成要素は、胃における崩壊に耐える役目を果たし、内側構成要素が、十二指腸に無傷で通過するか、または放出の遅延を可能にする腸溶性層によって分離され得る。各種の材料を、そのような腸溶性層またはコーティングのために使用することができ、そのような材料としては、いくつかのポリマー酸、ならびにポリマー酸とセラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースなどの材料との混合物が挙げられる。
【0202】
好適な乳剤は、INTRALIPID(商標)、LIPOSYN(商標)、INFONUTROL(商標)、LIPOFUNDIN(商標)、およびLIPIPHYSAN(商標)などの市販の脂肪乳剤を使用して調製され得る。活性成分は、事前に混合された乳剤組成物に溶解させてもよく、あるいは、油(例えば、大豆油、サフラワー油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、またはアーモンド油)に溶解させて、リン脂質(例えば、卵リン脂質、大豆リン脂質、または大豆レシチン)および水と混合する際に乳剤が形成されてもよい。乳剤の張度を調整するために、他の成分、例えば、グリセロールまたはグルコースを添加してもよいことが認識されるであろう。好適な乳剤は、典型的には、最高で20%まで、例えば、5~20%の間の油を含有する。脂肪乳剤は、好適なサイズを有する脂肪液滴を含むことができ、5.5~8.0の範囲のpHを有することができる。
【0203】
吸入または吹送のための医薬組成物は、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒、またはその混合物中の溶液および懸濁物、ならびに粉末を含む。液体または固形組成物は、上で示される好適な薬学的に許容される賦形剤を含有していてもよい。一部の態様では、組成物は、局所または全身効果のために、経口または鼻呼吸経路によって投与される。
【0204】
薬学的に許容される溶媒中の組成物は、気体の使用によって噴霧されてもよい。噴霧される溶液は、噴霧デバイスから直接吸い込まれてもよく、または噴霧デバイスを、フェイスマスク、テントもしくは間欠的陽圧呼吸器に取り付けてもよい。溶液、懸濁物、または粉末組成物は、適切な様式で製剤を送達するデバイスから投与されてもよい。
【0205】
治療適用
本開示の一部の態様では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物は、がんを処置するために使用される。
【0206】
一部の態様では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物のいずれかの有効量は、好適な経路、例えば、腫瘍内投与、静脈内投与(例えば、ボーラスとして、またはある期間にわたる持続注入によって)を介して、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerebospinal)、皮下、関節内、滑膜内、髄腔内、経口、吸入、または局部経路によって、それを必要とする対象に投与される。ジェット噴霧器および超音波噴霧器を含む液体製剤のための市販の噴霧器が、投与のために有用である。液体製剤は、噴霧することができ、凍結乾燥粉末は、再構成後に噴霧することができる。一部の態様では、本明細書に記載される医薬組成物は、フッ化炭素製剤および定量吸入器を使用して、エアロゾル化されるか、または凍結乾燥および破砕された粉末として吸入される。一部の態様では、本明細書に記載される医薬組成物は、腫瘍内注射のために製剤化される。一部の態様では、本明細書に記載される医薬組成物は、局所経路を介して対象に投与され、例えば、腫瘍部位または感染部位などの局所部位に注射される。一部の態様では、対象は、ヒトである。
【0207】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、単独で、または1つもしくは複数の他の活性薬剤と組み合わせてのいずれかで、対象に対して治療効果を付与するために必要な各活性薬剤の量を指す。一部の態様では、治療効果は、低減された腫瘍負荷、がん細胞の低減、または増加した免疫活性である。脂質ナノ粒子が治療効果を達成するかどうかの決定は、当業者に明白であろう。有効量は、当業者によって認識されるように、処置される特定の状態、状態の重症度、年齢、健康状態、サイズ、性別および体重を含む個々の患者のパラメーター、処置の持続期間、併用療法(もしあれば)の性質、投与の特定の経路、ならびに医療従事者の専門知識内の同様な要因に応じて変わる。これらの要因は、当業者に周知であり、慣例的な実験だけで対処することができる。一般に、個々の構成要素またはその組合せの最大用量、すなわち、妥当な医学的判断による最高安全用量が使用されることが好ましい。
【0208】
半減期などの経験的な考慮事項は、一般に、投薬量の決定に寄与する。投与の頻度は、治療の間にわたって決定および調整され得、必ずしもそうではないが、一般に、標的疾患/障害の処置および/または抑制および/または回復および/または遅延に基づく。あるいは、脂質ナノ粒子の持続的連続放出製剤が適切であり得る。持続放出を達成するためのさまざまな製剤およびデバイスが、当技術分野において公知である。
【0209】
本開示の一部の態様では、処置は、本明細書に開示される脂質ナノ粒子または医薬組成物の単回注射である。一部の態様では、単回注射は、それを必要とする対象に腫瘍内投与される。
【0210】
本開示の一部の態様では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物のための投薬量は、脂質ナノ粒子の1回または複数の投与が与えられた個体において経験的に決定され得る。個体は、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物の漸増投薬量を与えられる。本明細書の脂質ナノ粒子または医薬組成物の有効性を評価するために、疾患/障害の指標が追跡され得る。数日またはそれよりも長くにわたる反復投与のために、状態に応じて、所望の症状の抑制が起こるまで、あるいは十分な治療レベルが達成されて、標的疾患もしくは障害またはその症状が軽減されるまで、処置は持続される。
【0211】
本開示の一部の態様では、投薬頻度は、1週間ごと、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間ごと、もしくは10週間ごとに1回;あるいは1か月ごと、2か月ごと、もしくは3か月ごと、またはそれよりも長い期間ごとに1回である。この治療の進行は、従来の技法およびアッセイによって容易にモニターされる。使用される脂質ナノ粒子の投薬レジメンは、時間にわたり変えることができる。
【0212】
本開示の一部の態様では、方法は、1用量または複数回用量の本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0213】
本明細書に記載される脂質ナノ粒子の適切な投薬量は、特定の脂質ナノ粒子、疾患/障害の種類および重症度、脂質ナノ粒子が予防または治療目的のために投与されるか、以前の治療、対象の病歴および脂質ナノ粒子への応答、ならびに主治医の裁量に依存する。臨床医は、所望の結果を達成する投薬量に達するまで、本明細書に開示される脂質ナノ粒子または医薬組成物を投与してもよい。一部の態様では、所望の結果は、腫瘍負荷の減少、がん細胞の減少、または増加した免疫活性である。投薬量が所望の結果をもたらしたかどうかを決定する方法は、当業者に明白であろう。1つまたは複数の本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療的または予防的であるか、および当業者に公知の他の要因に応じて、連続的または断続的であり得る。本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物の投与は、事前に選択された期間にわたって本質的に連続的であってもよく、または、例えば、標的疾患もしくは障害が発生する前、その間、もしくはその後のいずれかに、一連の間隔をおいた用量であってもよい。
【0214】
本明細書で使用される場合、「処置すること」という用語は、障害、疾患の症状、または疾患もしくは障害への素因を、治癒する、治す、軽減する、和らげる、変更する、是正する、回復させる、改善する、またはそれに影響を与える目的で、標的疾患もしくは障害、疾患/障害の症状、または疾患/障害への素因を有する対象への、1つまたは複数の活性薬剤を含む組成物の適用または投与を指す。
【0215】
本明細書で使用される場合、標的疾患/障害を軽減することは、疾患の発生もしくは進行を遅延させること、または疾患の重症度を低減することを含む。疾患を軽減することは、必ずしも治癒的結果を必要としない。本明細書で使用される場合、標的疾患または障害の発生を「遅延させること」は、疾患の進行を、延ばす、妨げる、減速させる、遅滞させる、安定化する、および/または遅らせることを意味する。この遅延は、処置される疾患および/または対象の病歴に応じて、さまざまな時間の長さであり得る。疾患の発生を遅延させるもしくは軽減する、または疾患の開始を遅延させる方法は、方法を使用しないときと比較した場合に、所与の時間枠において疾患の1つもしくは複数の症状を発生する確率を低減する、および/または所与の時間枠において症状の程度を低減する方法である。そのような比較は、典型的には、統計学的に有意な結果を与えるのに十分な対象の数を使用した臨床研究に基づく。
【0216】
疾患の「発生」または「進行」は、疾患の初期の症状発現および/または次の進行を意味する。疾患の発生は、当技術分野において周知の標準的な臨床技法を使用して、検出可能で、評価することができる。しかしながら、発生は、予測不可能であり得る進行も指す。本明細書で使用される場合、発生または進行は、症状の生物学的経過を指す。発生は、出現、再発、および開始を含む。本明細書で使用される場合、標的疾患または障害の開始または出現は、初期の開始および/または再発を含む。
【0217】
一部の態様では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれよりも高くin vivoで腫瘍負荷またはがん細胞成長を低減するのに十分な量で、それを必要とする対象に投与される。一部の態様では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれよりも高く免疫活性を増加させるのに有効な量で投与される。
【0218】
一部の態様では、対象は、ヒト、家畜、スポーツ動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、またはラットである。一部の態様では、対象は、ヒトである。一部の態様では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物は、対象におけるT細胞活性などの免疫活性を増強する。
【0219】
一部の態様では、対象は、がんを有するか、がんを有すると疑われるか、またはがんについてのリスクがあるヒトである。一部の態様では、がんは、黒色腫、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーム、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮がん、唾液腺癌、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝臓癌、胃がん、および扁平上皮細胞頭頚部がんを含むさまざまな種類の頭頸部がんからなる群より選択される。一部の態様では、がんは、黒色腫、肺がん、結腸直腸がん、腎細胞がん、尿路上皮癌、またはホジキンリンパ腫であり得る。
【0220】
標的疾患または障害を有する対象は、慣例的な健康診断、例えば、臨床検査、臓器機能検査、CTスキャン、または超音波によって特定することができる。標的疾患または障害を有すると疑われる対象は、疾患または障害の1つまたは複数の症状を示す可能性がある。疾患または障害についてのリスクがある対象は、その疾患または障害に関連するリスク因子の1つまたは複数を有する対象であり得る。疾患または障害のリスクがある対象は、慣例的な医療行為によって特定することもできる。
【0221】
一部の態様では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物は、少なくとも1つの追加の好適な治療剤と共投与される。一部の態様では、少なくとも1つの追加の好適な治療剤は、抗がん剤、抗ウイルス剤、抗細菌剤、または本明細書に記載される脂質ナノ粒子の免疫刺激効果を増強および/もしくは補完する役目を果たす他の薬剤である。一部の態様では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物、および少なくとも1つの追加の治療剤は、逐次的な様式で対象に投与される、すなわち、各治療剤は、異なる時間に投与される。一部の態様では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物、および少なくとも1つの追加の治療剤は、実質的に同時の様式で対象に投与される。
【0222】
一部の態様では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物は、他の生物学的に活性な成分(例えば、異なる抗がん療法)、非薬物療法(例えば、手術)、またはそれらの組合せの投与と組み合わされてもよい。
【0223】
本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物および別の抗がん剤(例えば、化学療法剤)の任意の組合せが、がんを処置するために任意の順番で使用されてもよいことが当業者に認識されるであろう。本明細書に記載される組合せは、限定されるものではないが、腫瘍形成もしくは腫瘍成長を低減すること、がん細胞を低減すること、免疫活性を増加させること、および/またはがんに関連する少なくとも1つの症状を軽減することについての有効性、あるいは組合せの別の薬剤の副作用を緩和することについての有効性を含むいくつかの要因に基づいて選択され得る。例えば、本明細書に記載される併用療法は、組合せの各個々のメンバーに関連する副作用のいずれか、例えば、抗がん剤に関連する副作用を低減し得る。
【0224】
一部の態様では、他の抗がん治療剤は、化学療法、放射線療法、手術療法、免疫療法、またはそれらの組合せである。一部の態様では、化学療法剤は、カルボプラチン、シスプラチン、ドセタキセル、ゲムシタビン、nab-パクリタキセル(nab-paclitexal)、ペメトレキセド、ビノレルビン、またはそれらの組合せである。一部の態様では、放射線療法は、電離放射線、ガンマ線、中性子ビーム放射線療法、電子ビーム放射線療法、陽子療法、近接照射療法、全身放射性同位元素、放射線増感剤、またはそれらの組合せである。一部の態様では、手術療法は、根治的手術(例えば、腫瘍除去手術)、予防的手術、腹腔鏡手術、レーザー手術、またはそれらの組合せである。一部の態様では、免疫療法は、養子細胞移入、治療がんワクチン、またはそれらの組合せである。
【0225】
一部の態様では、化学療法剤は、白金剤(platinating agent)、例えば、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、サトラプラチン、ロバプラチン、トリプラチン、四硝酸塩、ピコプラチン、プロリンダク、アロプラチン、および他の誘導体;トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン/SN38、ルビテカン、ベロテカン、および他の誘導体;トポイソメラーゼII阻害剤、例えば、エトポシド(VP-16)、ダウノルビシン、ドキソルビシン剤(例えば、ドキソルビシン、ドキソルビシンHCl、ドキソルビシンアナログ、またはリポソーム中のドキソルビシンおよびその塩もしくはアナログ)、ミトキサントロン、アクラルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アムルビシン、アムサクリン、ピラルビシン、バルルビシン、ゾルビシン、テニポシド、および他の誘導体;代謝拮抗薬、例えば、葉酸ファミリー(メトトレキセート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、アミノプテリン、および関連物);プリンアンタゴニスト(チオグアニン、フルダラビン、クラドリビン、6-メルカプトプリン、ペントスタチン、クロファラビン、および関連物)およびピリミジンアンタゴニスト(シタラビン、フロクスウリジン、アザシチジン、テガフール、カルモフール、カペシタビン(Capacitabine)、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、5-フルオロウラシル(5FU)、および関連物);アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、メクロレタミン、イホスファミド、トロホスファミド、プレドニムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチン、エストラムスチン、および関連物);ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、フォテムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ストレプトゾシン、および関連物);トリアゼン(例えば、ダカルバジン、アルトレタミン、テモゾロミド、および関連物);アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン、マンノスルファン、トレオスルファン、および関連物);プロカルバジン;ミトブロニトール、およびアジリジン(例えば、カルボコン、トリアジクオン、チオテパ、トリエチレンメラミン(triethylenemalamine)、および関連物);抗生物質、例えば、ヒドロキシウレア、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン剤、ダウノルビシン、エピルビシン、および他の誘導体);アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロンおよび関連物);Streptomycesファミリー(例えば、ブレオマイシン、マイトマイシンC、アクチノマイシン、プリカマイシン);紫外光;ならびにそれらの組合せである。
【0226】
一部の態様では、他の抗がん治療剤は、抗体である。抗体(好ましくは、モノクローナル抗体)は、さまざまなメカニズムを通して、がん細胞に対するそれらの治療効果を達成する。それらは、アポトーシスまたはプログラム細胞死を生じさせる際に直接的な効果を有し得る。それらは、例えば、増殖因子受容体などのシグナル伝達経路の構成要素をブロックし、腫瘍細胞の増殖を効率的に阻むことができる。モノクローナル抗体を発現する細胞では、それらは、抗イディオタイプ抗体形成を引き起こすことができる。間接的な効果としては、単球およびマクロファージなどの細胞傷害を有する細胞を動員することが挙げられる。この種類の抗体媒介性細胞死滅は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)と呼ばれる。抗体は、補体も結合し、補体依存性細胞傷害(CDC)として公知の直接的な細胞毒性をもたらす。手術法と免疫療法薬または方法を組み合わせることは、例えば、Gadri et al. 2009: Synergistic effect of dendritic cell vaccination and anti-CD20 antibody treatment in the therapy of murine lymphoma. J Immunother. 32(4): 333-40において実証されるように、成功裏のアプローチである。以下のリストは、本発明と組み合わせて使用することができる抗がん抗体および可能性がある抗体標的(括弧内)の一部の非限定的な例を提供する:アバゴボマブ(CA-125)、アブシキシマブ(CD41)、アデカツムマブ(EpCAM)、アフツズマブ(CD20)、アラシズマブペゴル(VEGFR2)、アルツモマブペンテテート(CEA)、アマツキシマブ(MORAb-009)、アナツモマブマフェナトックス(TAG-72)、アポリズマブ(HLA-DR)、アルシツモマブ(CEA)、バビツキシマブ(ホスファチジルセリン)、ベクツモマブ(CD22)、ベリムマブ(BAFF)、ベバシズマブ(VEGF-A)、ビバツズマブメルタンシン(CD44 v6)、ブリナツモマブ(CD19)、ブレンツキシマブベドチン(CD30 TNFRSF8)、カンツズマブメルタンシン(ムチンCanAg)、カンツズマブラブタンシン(MUC1)、カプロマブペンデチド(前立腺癌細胞)、カルルマブ(CNT0888)、カツマキソマブ(EpCAM、CD3)、セツキシマブ(EGFR)、シタツズマブボガトクス(EpCAM)、シズツムマブ(IGF-1受容体)、クローディキシマブ(クローディン)、クリバツズマブテトラキセタン(MUC1)、コナツムマブ(TRAIL-R2)、ダセツズマブ(CD40)、ダロツズマブ(インスリン様増殖因子I受容体)、デノスマブ(RANKL)、デツモマブ(Bリンパ腫細胞)、ドロジツマブ(DR5)、エクロメキシマブ(GD3ガングリオシド)、エドレコロマブ(EpCAM)、エロツズマブ(SLAMF7)、エナバツズマブ(PDL192)、エンシツキシマブ(NPC-1C)、エプラツズマブ(CD22)、エルツマキソマブ(HER2/neu、CD3)、エタラシズマブ(インテグリンαvβ3)、ファルレツズマブ(葉酸受容体1)、FBTA05(CD20)、フィクラツズマブ(SCH900105)、フィギツムマブ(IGF-1受容体)、フランボツマブ(糖タンパク質75)、フレソリムマブ(TGF-β)、ガリキシマブ(CD80)、ガニツマブ(IGF-I)、ゲムツズマブオゾガマイシン(CD33)、ゲボキズマブ(IL-1β)、ギレンツキシマブ(炭酸脱水酵素9(CA-IX))、グレンバツムマブベドチン(GPNMB)、イブリツモマブチウキセタン(CD20)、イクルクマブ(VEGFR-1)、イゴボマ(Igovoma)(CA-125)、インダツキシマブラブタンシン(SDC1)、インテツムマブ(CD51)、イノツズマブオゾガマイシン(CD22)、イピリムマブ(CD152)、イラツムマブ(CD30)、ラベツズマブ(CEA)、レクサツムマブ(TRAIL-R2)、リビビルマブ(B型肝炎表面抗原)、リンツズマブ(CD33)、ロルボツズマブメルタンシン(CD56)、ルカツムマブ(CD40)、ルミリキシマブ(CD23)、マパツムマブ(TRAIL-R1)、マツズマブ(EGFR)、メポリズマブ(IL-5)、ミラツズマブ(CD74)、ミツモマブ(GD3ガングリオシド)、モガムリズマブ(CCR4)、モキセツモマブパスドトクス(CD22)、ナコロマブタフェナトクス(C242抗原)、ナプツモマブエスタフェナトクス(5T4)、ナルナツマブ(RON)、ネシツムマブ(EGFR)、ニモツズマブ(EGFR)、ニボルマブ(IgG4)、オファツムマブ(CD20)、オララツマブ(PDGF-R α)、オナルツズマブ(ヒト散乱因子受容体キナーゼ(human scatter factor receptor kinase))、オポルツズマブモナトクス(EpCAM)、オレゴボマブ(CA-125)、オキセルマブ(OX-40)、パニツムマブ(EGFR)、パトリツマブ(HER3)、ペムツモマブ(Pemtumoma)(MUC1)、ペルツズマブ(Pertuzuma)(HER2/neu)、ピンツモマブ(腺癌抗原)、プリツムマブ(ビメンチン)、ラコツモマブ(N-グリコリルノイラミン酸)、ラドレツマブ(フィブロネクチンエクストラドメイン-B)、ラフィビルマブ(狂犬病ウイルス糖タンパク質)、ラムシルマブ(VEGFR2)、リロツムマブ(HGF)、リツキシマブ(CD20)、ロバツムマブ(IGF-1受容体)、サマリズマブ(CD200)、シブロツズマブ(FAP)、シルツキシマブ(IL-6)、タバルマブ(BAFF)、タカツズマブテトラキセタン(アルファ-フェトプロテイン)、タプリツモマブパプトクス(CD19)、テナツモマブ(テネイシンC)、テプロツムマブ(CD221)、チシリムマブ(CTLA-4)、ティガツズマブ(TRAIL-R2)、TNX-650(IL-13)、トシツモマブ(CD20)、トラスツズマブ(HER2/neu)、TRBS07(GD2)、トレメリムマブ(CTLA-4)、ツコツズマブセルモロイキン(EpCAM)、ウブリツキシマブ(MS4A1)、ウレルマブ(4-1BB)、ボロシキシマブ(インテグリンα5β1)、ボツムマブ(腫瘍抗原CTAA16.88)、ザルツムマブ(EGFR)、ザノリムマブ(CD4)。
【0227】
一部の態様では、他の抗がん治療剤は、サイトカイン、ケモカイン、共刺激分子、融合タンパク質、またはそれらの組合せである。ケモカインの例としては、限定されるものではないが、CCR7ならびにそのリガンドのCCL19およびCCL21、さらにまた、CCL2、CCL3、CCL5、およびCCL16が挙げられる。他の例は、CXCR4、CXCR7およびCXCL12である。さらにまた、共刺激分子または調節分子、例えば、B7リガンド(B7.1およびB7.2)などが有用である。例えば、インターロイキン、特に(例えば、IL-1からIL17)、インターフェロン(例えば、IFNアルファ1からIFNアルファ8、IFNアルファ10、IFNアルファ13、IFNアルファ14、IFNアルファ16、IFNアルファ17、IFNアルファ21、IFNベータ1、IFNW、IFNE1およびIFNK)、造血因子、TGF(例えば、TGF-α、TGF-β、およびTGFファミリーの他のメンバー)、限定されるものではないが、41BB、41BB-L、CD137、CD137L、CTLA-4GITR、GITRL、Fas、Fas-L、TNFR1、TRAIL-R1、TRAIL-R2、p75NGF-R、DR6、LT.ベータ.R、RANK、EDAR1、XEDAR、Fn114、Troy/Trade、TAJ、TNFRII、HVEM、CD27、CD30、CD40、4-1BB、OX40、GITR、GITRL、TACI、BAFF-R、BCMA、RELT、およびCD95(Fas/APO-1)を含む受容体の腫瘍壊死因子ファミリーの最終メンバーおよびそれらのリガンド、ならびに他の共刺激分子、グルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質、TNF受容体関連アポトーシス媒介タンパク質(TRAMP)、ならびに細胞死受容体6(DR6)などの他のサイトカインも有用である。特に、CD40/CD40LおよびOX40/OX40Lは、T細胞の生存および増殖に対するそれらの直接的な影響を理由として、併用免疫療法のための重要な標的である。総説について、Lechner et al. 2011: Chemokines, costimulatory molecules and fusion proteins for the immunotherapy of solid tumors. Immunotherapy 3 (11), 1317-1340を参照されたい。
【0228】
一部の態様では、他の抗がん治療薬は、細菌処置である。研究者らは、酸素が不十分な腫瘍の内側を破壊するためにClostridium novyiなどの嫌気性細菌を使用している。次いで、これらは、腫瘍の酸素化された側と接触すると死滅するはずであり、それらが、身体の残りの部分に無害であろうことを意味する。別の戦略は、非毒性プロドラッグを毒性薬物に変換することができる酵素で形質転換された嫌気性細菌を使用することである。腫瘍の壊死および低酸素エリアにおける細菌の増殖により、酵素は、腫瘍中でのみ発現される。したがって、全身的に適用されたプロドラッグは、腫瘍においてのみ毒性薬物に代謝される。これは、非病原性嫌気性生物のClostridium sporogenesで有効であることが実証されている。
【0229】
一部の態様では、他の抗がん治療剤は、キナーゼ阻害剤である。がん細胞の成長および生存は、キナーゼ活性の調節解除と密接に連動する。正常なキナーゼ活性を修復し、したがって腫瘍成長を低減するために、幅広い範囲の阻害剤が使用されている。標的化キナーゼの群は、受容体チロシンキナーゼ、例えば、BCR-ABL、B-Raf、EGFR、HER-2/ErbB2、IGF-IR、PDGFR-α、PDGFR-β、c-Kit、Flt-4、Flt3、FGFR1、FGFR3、FGFR4、CSF1R、c-Met、RON、c-Ret、ALK、細胞質チロシンキナーゼ、例えば、c-SRC、c-YES、Abl、JAK-2、セリン/トレオニンキナーゼ、例えば、ATM、Aurora AおよびB、CDK、mTOR、PKCi、PLK、b-Raf、S6K、STK11/LKB1、ならびに脂質キナーゼ、例えば、PI3K、SK1を含む。小分子キナーゼ阻害剤は、例えば、PHA-739358、ニロチニブ、ダサチニブ、およびPD166326、NSC 743411、ラパチニブ(GW-572016)、カネルチニブ(CI-1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、スーテント(SU11248)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、ならびにレフルノミド(SU101)である。より多くの情報について、例えば、Zhang et al. 2009: Targeting cancer with small molecule kinase inhibitors. Nature Reviews Cancer 9, 28-39を参照されたい。
【0230】
一部の態様では、他の抗がん治療剤は、トール様受容体である。トール様受容体(TLR)ファミリーのメンバーは、自然免疫および適応免疫の間の重要なリンクであり、多くのアジュバントの効果は、TLRの活性化に依拠する。多数の確立されたがんに対するワクチンには、ワクチン応答をブーストするために、TLRに対するリガンドを組み込まれている。TLR2以外に、TLR3、TLR4、特に、TLR7およびTLR8が、受動免疫療法アプローチにおいてがん治療のために検討されている。密接に関連するTLR7およびTLR8は、免疫細胞、腫瘍細胞、および腫瘍微小環境に影響を及ぼすことによって、抗腫瘍応答に寄与し、ヌクレオシドアナログ構造によって活性化され得る。すべてのTLRは、単独で動作する免疫療法薬またはがんワクチンアジュバントとして使用されており、本発明の製剤および方法と相乗的に組み合わされ得る。より多くの情報について、van Duin et al. 2005: Triggering TLR signaling in vaccination. Trends in Immunology, 27(1):49-55を参照されたい。
【0231】
一部の態様では、他の抗がん治療剤は、血管新生阻害剤である。血管新生阻害剤は、腫瘍が生存するために必要な血管の広範な成長(血管新生)を防止する。腫瘍細胞の栄養素および酸素の需要の増加に合わせて腫瘍細胞によって促進される血管新生は、例えば、異なる分子を標的化することによってブロックすることができる。本発明と組み合わされ得る血管新生媒介分子または血管新生阻害剤の非限定的な例は、可溶性VEGF(VEGFアイソフォームのVEGF121およびVEGF165、受容体のVEGFR1、VEGFR2、ならびに共受容体のニューロピリン-1およびニューロピリン-2)1およびNRP-1、アンジオポエチン2、TSP-1およびTSP-2、アンジオスタチンおよび関連分子、エンドスタチン、バソスタチン、カルレティキュリン、血小板因子-4、TIMPおよびCDAI、Meth-1およびMeth-2、IFN-α、-βおよび-γ、CXCL10、IL-4、-12および-18、プロトロンビン(クリングルドメイン-2)、アンチトロンビンIII断片、プロラクチン、VEGI、SPARC、オステオポンチン、マスピン、カンスタチン、プロリフェリン関連タンパク質、レスチン、ならびに例えば、ベバシズマブ、イトラコナゾール、カルボキシアミドトリアゾール、TNP-470、CM101、IFN-α、血小板因子-4、スラミン、SU5416、トロンボスポンジン、VEGFRアンタゴニスト、血管新生抑制ステロイド+ヘパリン、軟骨由来血管新生阻害因子、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、2-メトキシエストラジオール、テコガラン、テトラチオモリブデート、サリドマイド、トロンボスポンジン、プロラクチン(prolactina)Vβ3阻害剤、リノミド、タスキニモドのような薬物であり、総説について、Schoenfeld and Dranoff 2011: Anti-angiogenesis immunotherapy. Hum Vaccin. (9):976-81を参照されたい。
【0232】
一部の態様では、他の抗がん治療剤は、ウイルス系ワクチンである。利用可能なまたは開発中のいくつかのウイルス系がんワクチンがあり、これらは、本開示の製剤と一緒に併用治療アプローチにおいて使用することができる。そのようなウイルスベクターの使用の1つの利益は、免疫応答を開始するそれらの固有の能力であり、ウイルス感染の結果として起こる炎症反応は、免疫活性化に必要な危険シグナルを生じる。理想的なウイルスベクターは、抗腫瘍特異的応答をブーストすることを可能するために、安全であるべきであり、かつ抗ベクター免疫応答を導入してはならない。ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスおよびトリポックスウイルスなどの組換えウイルスは、動物腫瘍モデルにおいて使用されており、それらの有望な結果に基づいて、ヒト臨床試験が開始されている。特に重要なウイルス系ワクチンは、ウイルスの外皮由来のある特定のタンパク質を含有する小粒子のウイルス様粒子(VLP)である。ウイルス様粒子は、ウイルス由来の任意の遺伝子材料を含有せず、感染を引き起こすことができないが、それらは、それらの外皮上に腫瘍抗原を提示するように構築され得る。VLPは、例えば、B型肝炎ウイルス、またはパルボウイルス科(例えば、アデノ随伴ウイルス)、レトロウイルス科(例えば、HIV)、およびフラビウイルス科(例えば、C型肝炎ウイルス)を含む他のウイルス科などのさまざまなウイルスに由来し得る。一般的な総説については、Sorensen and Thompsen 2007: Virus-based immunotherapy of cancer: what do we know and where are we going? APMIS 115(11):1177-93を参照されたい;がんに対するウイルス様粒子については、Buonaguro et al. 2011: Developments in virus-like particle-based vaccines for infectious diseases and cancer. Expert Rev Vaccines 10(11):1569-83;およびGuillen et al. 2010: Virus-like particles as vaccine antigens and adjuvants: application to chronic disease, cancer immunotherapy and infectious disease preventive strategies. Procedia in Vaccinology 2 (2), 128-133に総説されている。
【0233】
一部の態様では、他の抗がん治療剤は、ペプチド系標的療法である。ペプチドは、細胞表面受容体、または腫瘍の周囲の影響を受けた細胞外基質に結合することができる。これらのペプチド(例えば、RGD)に付着する放射性核種は、核種が細胞の近辺で減衰する場合に、最終的に、がん細胞を死滅させる。特に、これらの結合モチーフのオリゴマーまたはマルチマーは、これが増強された腫瘍特異性およびアビディティーをもたらし得るので、非常に興味深いものである。非限定的な例について、Yamada 2011: Peptide-based cancer vaccine therapy for prostate cancer, bladder cancer, and malignant glioma. Nihon Rinsho 69(9): 1657-61を参照されたい。
【0234】
治療における使用のためのキット
本開示は、がん(例えば、黒色腫、肺がん、結腸直腸がん、または腎細胞がん)に対する免疫療法における使用のため、および/またはがんについてのリスクを処置もしくは低減するためのキットも提供する。一部の態様では、キットは、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物を含む1つまたは複数の容器を含む。
【0235】
一部の態様では、キットは、本明細書に記載される方法のいずれかに従った使用についての指示を含む。例えば、含まれる指示は、標的疾患を処置し、その開始を遅延させ、または軽減するための本明細書に記載される医薬組成物の投与の説明を含み得る。一部の態様では、指示は、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物を標的疾患/障害のリスクがある対象に投与する説明を含む。
【0236】
一部の態様では、指示は、投薬量の情報、投薬スケジュール、および投与の経路を含む。一部の態様では、容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量パッケージ)、または部分単位(sub-unit)用量である。一部の態様では、指示は、標識または添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)における書面での指示である。一部の態様では、指示は、機械可読指示(例えば、磁気または光学保存ディスクに入れられた指示)である。
【0237】
一部の態様では、標識または添付文書は、本明細書に開示される脂質ナノ粒子または医薬組成物が、本明細書に記載されるものなどのがんに関連する疾患または障害を処置する、その開始を遅延させる、および/または軽減するために使用されることを示す。指示は、本明細書に記載される方法のいずれかを実施するために提供され得る。
【0238】
一部の態様では、本明細書に記載されるキットは、好適な包装中にある。一部の態様では、好適なパッキングは、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性包装(例えば、密封Mylarまたはプラスチックバッグ)、またはそれらの組合せを含む。一部の態様では、包装は、吸入器、鼻投与デバイス(例えば、アトマイザー)、またはミニポンプなどの注入デバイスなどの特定のデバイスと組み合わせた使用のためのパッケージを含む。一部の態様では、キットは、無菌アクセスポートを含む(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能な栓を有する静脈内溶液用バッグまたはバイアルであり得る)。一部の態様では、容器はまた、無菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能な栓を有する静脈内溶液用バッグまたはバイアルであり得る)。一部の態様では、少なくとも1つの活性薬剤は、本明細書に記載される脂質ナノ粒子または医薬組成物である。
【0239】
一部の態様では、キットは、緩衝液および説明情報などの追加の構成要素をさらに含む。一部の態様では、キットは、容器、および容器上のまたはそれに関連する標識もしくは添付文書を含む。一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるキットの内容物を含む製品を提供する。
【0240】
一般技法
本開示の実施は、他に指示されない限り、当技術分野の技能内である分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技法を用いる。分子クローニング:A Laboratory Manual, second edition(Sambrook, et al., 1989) Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J. Gait, ed., 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press;細胞生物学:A Laboratory Notebook(J. E. Cellis, ed., 1998) Academic Press;Animal Cell Culture(R. I. Freshney, ed. 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press;細胞および組織培養:Laboratory Procedures(A. Doyle, J.B. Giffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons;Method of Enzymology(Academic Press, Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M. Ausubel, et al., eds., 1987):PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis, et al., eds., 1994);Current Protocols in Immunology(J.E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons, 1999);Immunobiology(C.A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies(P. Finch, 1997);抗体:a practical approach(D. Catty, ed., IRL Press, 1988-1989);モノクローナル抗体:a practical approach(P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);抗体の使用:a laboratory manual(E. Harlow and D. Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies(M. Zanette and J.D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995)。さらなる労作なしで、当業者は、上の記載に基づいて、本開示をその最大限度まで利用することができると考えられる。本明細書に引用されるすべての刊行物は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【実施例】
【0241】
(実施例1:改変RNAの構築)
本明細書に開示される改変RNAを構築するために、以下の材料および方法を使用した。
【0242】
鋳型調製
レプリコンRNAのために、ペイロードを含有するVEEレプリコンベクターを調製した。そのようなベクターを調製する方法は、当技術分野において公知である。ベクタープラスミドは、以下の通り、I-SceIを使用してさらに線状化した。簡潔には、1μgのレプリコンプラスミドベクターを、CutSmart緩衝液中、I-SceIで、37℃で1時間処理した。次いで、酵素を、65℃で20分間、熱失活させた。異なる構成要素の濃度および体積を表3(下記)に提供する。
表3. ベクタープラスミドの線状化
【表3】
【0243】
改変RNA(modRNA)鋳型のために、DNAベクターを、T7プロモーター(TAA TAC GAC TCA CTA TA ATG GAC TAC GAC ATA GT;配列番号XX)およびSGPを含有するフォワードプライマーならびに3’-UTR(GAA ATA TTA AAA ACA AAA TCC GAT TCG GAA AAG AA;配列番号XX)のリバースプライマーと共にレプリコンプラスミドを使用して、生成した。フォワードおよびリバースプライマーについてのT
mは、それぞれ、68℃および64℃であった。表4および5(下記)は、PCR反応に関する追加情報を提供する。
表4. PCR設
【表4】
表5. PCRサイクリング条件
【表5】
【0244】
PCR反応におけるプラスミドDNA(鋳型)を、DpnIによって消化した。より具体的には、初期プラスミド1μgあたり1μLのDpnIを、PCR試料に添加し、37℃で1時間インキュベートした。
【0245】
PCR(modRNA鋳型)およびI-SceI処理レプリコンDNA(repRNA鋳型)を、プレキャストゲルにおいてチェックして、複製された構築物の純度(PCR)および完全性(レプリコン鋳型)を確認した。具体的には、20ngのDNAを、1.2%のDNAゲル上にロードし、275Vで7~10分間流した。確認したら、DNAを、20μLの水で溶出させた。
【0246】
in vitro転写
上記のDNAをRNAに転写するために、HiScribe High yield T7キット(New England Biolabs)を、本明細書に記載される改変と伴って使用した。改変RNA(modRNA)合成のために、キットのUTP構成要素を、N1-メチルプソイドウリジン-5’-三リン酸で置き換えた。in vitro転写プロセスを開始するために、キットの構成要素を、氷上で解凍し、混合し、微量遠心分離機中でパルススピンした。試料を、さらなる使用まで、氷上に置いた。
【0247】
同時転写キャッピング法:キャップアナログレプリコンプラスミドおよびmodRNA鋳型を使用する産生のために、表6(下記)に示される構成要素を混合し、微量遠心分離機中でパルススピンし、次いで、400rpmで、サーモミキサーにおいて37℃で3時間、インキュベートした。1μLのアリコートを、品質管理の目的で取り出した。
表6. 同時転写キャッピングの構成要素
【表6】
【0248】
転写後酵素キャッピング法:酵素レプリコンプラスミドを使用する産生のために、反応を、表7(下記)に提供される構成要素を使用して、室温でアセンブルした。
表7. 転写後酵素キャッピングの構成要素
【表7】
【0249】
DNAse処理:鋳型DNAを消化するために、Turbo DNase酵素を使用した。酵素がIVT反応において活性であったので、10×緩衝液を添加する必要はなかった。反応物を、ヌクレアーゼ不含水で50μLに希釈した。次いで、5μLの酵素(2U/μL)を、20μLのIVT反応物に添加した。次いで、混合物を、37℃で30分間インキュベートした。その後、RNAを、Monarch RNAクリーンアップキットを使用して精製した。1μLのアリコートを、品質管理の目的で取り出した。
【0250】
キャッピングおよび2’-O-メチル化:上記の転写後キャッピング法を使用して作製されたIVT mRNAの5’末端上に2’-O-メチル化を有するメチル化グアニンキャップ(キャップ1)構造を調製するために、以下の方法を使用した。最初に、キャップされていないRNAおよびヌクレアーゼ不含水を混合して、13μLの最終体積にした。次いで、混合物を、65℃で5分間加熱した。次いで、混合物を、さらに5分間、氷上に置いた。次いで、表8(下記)に提供される構成要素を、混合物に添加し、37℃で60分間インキュベートした。次に、RNAを、少量のMonarch RNAクリーンアップキットを使用して精製した。
表8. キャッピングおよび2'-O-メチル化の構成要素
【表8】
【0251】
ポリ(A)テール合成:ポリ(A)テールを改変RNAに付加するために、表9(下記)に提供される構成要素を、反応管に添加した。次いで、反応物を、37℃で30分間インキュベートした。次いで、反応を、少量のMonarchクリーンアップキットによりRNAを直接精製することによって、停止した。品質管理として、200ngのRNAを、1.2%のRNAゲル上を流して、RNAのサイズを確認した。それを行うために、RNAを、50%のホルムアルデヒド試料緩衝液で、65℃で5分間変性させ、次いで、直ぐに、少なくとも1分間氷上に置いた。次いで、変性RNAを、ゲル上にロードし、トランスイルミネーターを使用して可視化した。
表9. ポリ(A)テール合成の構成要素
【表9-1】
【表9-2】
【0252】
(実施例2:発現動態のin vitro分析)
本明細書に開示されるRNA構築物の発現効率を評価するために、IL-12タンパク質をコードする自己複製性mRNA(repRNA)および改変mRNA(modRNA)の両方を、本明細書に記載される方法(例えば、実施例1を参照されたい)を使用して構築した。次いで、mRNA構築物を、messengerMAXを使用して2つの異なる細胞系(すなわち、B16.F10および4T1)にトランスフェクトし、コードされたタンパク質の発現レベルを、トランスフェクションの24、48および72時間後に評価した。
【0253】
図1Aに示されるように、IL-12発現を、repRNAまたはmodRNAのいずれかでトランスフェクトされたB16.F10細胞において、早ければ24時間で観察した。トランスフェクション48時間後まで、IL-12発現の有意差を、modRNAでトランスフェクトされた細胞と比較して、repRNAでトランスフェクトされたB16.F10細胞において観察した。増加したIL-12発現は、少なくともトランスフェクション72時間後まで持続した。類似の結果が、4T1細胞系において観察された(
図1Bを参照されたい)。これらの結果は、本明細書に開示される自己複製性mRNAが、改変mRNAよりも高いレベルおよび長い持続期間、コードされるタンパク質を発現することができることを示唆する。
【0254】
(実施例3:抗腫瘍有効性のin vivo分析)
本明細書に開示されるRNA構築物が、in vivoで活性を発揮し得るかどうかを評価するために、黒色腫のマウスモデルを使用した。簡潔には、黒色腫を、B6-F10細胞を動物に接種する(皮下投与を介して)ことによって誘導した。腫瘍が最適サイズ(約350mm3)に達したら、以下の1つの単回高用量を、動物の腫瘍に注射した:以下のうちの1つの投与:(1)対照mRNA;(ii)IL-12をコードする改変mRNA(modRNA-IL12);および(iii)IL-12をコードする自己複製性mRNA(repRNA-IL12)。次いで、腫瘍体積および動物の生存の両方を、処置後のさまざまな時点で評価した。
【0255】
予想通り、対照mRNAで処置された動物は、腫瘍を制御できなかった(
図2Aおよび2Bを参照されたい)。すべての対照動物は、処置後約25日目までに腫瘍で死亡した(
図4を参照されたい)。対照的に、modRNA-IL12またはrepRNA-IL12のいずれかで処置された動物において顕著な腫瘍の低減があった。腫瘍体積の全体的な低減は、2つの群の間で類似していた。repRNA-IL12構築物で処置された動物は、modRNA-IL-12を受けた動物と比較して、わずかに長く生存していた(
図4を参照されたい)。これらの結果は、少なくともin vivoで、本明細書に開示される改変mRNA構築物(例えば、IL-12をコードする)は、高用量で投与された場合に、腫瘍の処置において自己複製性mRNA(例えば、IL-12をコードする)とほぼ同じぐらい有効であることを示唆する。
【0256】
(実施例4:自己複製性mRNAおよび改変mRNAのin vivo送達後のペイロード発現の比較)
本明細書に開示されるRNA構築物のin vivo活性をさらに特徴付けるために、コードされたIL-12タンパク質の発現を、実施例3からの腫瘍動物において評価した。
図3に示されるように、処置後4日目に、対照と比較して、repRNA-IL12またはmodRNA-IL12のいずれかで処置された動物は、送達部位(すなわち、腫瘍)でより高いレベルのIL-12を発現した。しかしながら、IL-12発現は、modRNA-IL12で処置された動物において顕著により高かった。この結果は、実施例2に提供されるin vitroデータと一致すると思われ、本明細書に開示される自己複製性mRNA構築物が、改変mRNA構築物と比較して、コードタンパク質の発現にはるかにより効率的であることを示唆する。
【0257】
概要および要約のセクションではなく、詳細な説明のセクションは、請求項を解釈するために使用されることが意図されることが認識されるべきである。概要および要約のセクションは、本発明者によって企図されるすべてではないが1つまたは複数の本発明の例示的な実施形態を示し得、したがって、本発明および添付の特許請求の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【0258】
本発明を、特定された機能およびその関係の実現を示す機能的ビルディングブロックの助けにより、上に記載した。これらの機能的ビルディングブロックの境界は、説明の便宜上、自由裁量で本明細書に定義されている。特定された機能およびその関係が適切に行われる限り、代替の境界を定義することができる。
【0259】
特定の実施形態の前述の記載は、本発明の一般的な性質を完全に明らかにするので、他の者は、当技術分野における技能内の知識を適用することによって、過度の実験なく、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、そのような特定の実施形態のさまざまな適用に容易に改変および/または適合させることができる。したがって、そのような適合および改変は、本明細書に提示される教示およびガイダンスに基づいて、開示される実施形態の均等物の意味および範囲内であることが意図される。本明細書の表現または専門用語は、説明の目的であって限定の目的ではないことが理解されるべきであり、その結果、本明細書の専門用語または表現は、教示およびガイダンスを踏まえて当業者によって解釈されるべきである。
【0260】
本発明の幅および範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれかによって限定されるべきではないが、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物に従ってのみ定義されるべきである。
【0261】
本出願の特許請求の範囲は、親出願または他の関連出願の特許請求の範囲とは異なる。したがって、出願人は、本出願に関して、親出願または任意の先行出願において行われた特許請求の範囲の任意の放棄を無効にする。したがって、審査官は、回避するために行われた任意のそのような以前の放棄および引用された参考文献を再検討する必要があり得ることが勧告される。さらに、審査官は、本出願において行われた任意の放棄が、親出願にまたは親出願に対して読まれるべきではないことにも気付かされる。
【配列表】
【国際調査報告】