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特表2023-535226均質な色及び/又は透光性勾配を有する歯科用ミリングブロックの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】均質な色及び/又は透光性勾配を有する歯科用ミリングブロックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/77 20170101AFI20230808BHJP
   A61K 6/15 20200101ALI20230808BHJP
   A61K 6/80 20200101ALI20230808BHJP
   A61C 13/083 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A61C5/77
A61K6/15
A61K6/80
A61C13/083
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505671
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 IB2021056521
(87)【国際公開番号】W WO2022023871
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】20188292.5
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ゲーツィンガー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シュナグル,ハンス アール.
【テーマコード(参考)】
4C089
4C159
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089CA02
4C089CA06
4C159GG04
4C159GG08
4C159GG15
4C159RR11
4C159SS01
(57)【要約】
本発明は、均質な色及び/又は透光性勾配を有する歯科用ミリングブロックを製造する方法に関する。この方法は、z方向及びx/y方向を有するキャビティを有するモールドを提供する工程と、キャビティを高さHまで第1の粉末で部分的に充填する工程であって、第1の粉末が、上面及び下面を有する体積VP1を有する、充填する工程と、第1の粉末の上に高さHまで第2の粉末を導入する工程であって、第2の粉末が、上面及び下面を有する体積VP2を有し、第1の粉末の上面が、第2の粉末の下面と接触しており、中間領域を形成する、導入する工程と、少なくとも1つの回転可能な混合要素を有するミキサーユニットを提供する工程と、回転する混合要素を中間領域にz方向に導入する工程と、混合要素を回転させることによって中間領域に配置された粉末を混合する工程と、粉末から回転する混合要素を取り出す工程と、粉末を圧縮する工程と、任意に、圧縮された粉末に熱を加える工程と、を含み、第1の粉末は、その物理的特性及び/又は化学組成及び/又は色によって第2の粉末とは異なる。本発明はまた、この方法に従って得られる歯科用ミリングブロックを用いて歯科用修復物を製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用ミリングブロックを製造する方法であって、
z方向及びx/y方向を有するキャビティを有するモールドを提供する工程と、
前記キャビティを高さHまで第1の粉末で部分的に充填する工程であって、前記第1の粉末が、上面及び下面を有する体積VP1を有する、充填する工程と、
前記第1の粉末の上に高さHまで第2の粉末を導入する工程であって、前記第2の粉末が、上面及び下面を有する体積VP2を有し、前記第1の粉末の前記上面が、前記第2の粉末の前記下面と接触しており、中間領域を形成する、導入する工程と、
少なくとも1つの回転可能な混合要素を有するミキサーユニットを提供する工程と、
前記混合要素を回転させながら前記中間領域にz方向に導入する工程と、
前記混合要素を回転させることによって前記中間領域に配置された前記粉末を混合する工程と、
前記混合要素を回転させながら前記粉末から前記混合要素を取り出す工程と、
前記粉末を圧縮する工程と、
任意に、前記圧縮された粉末に熱を加える工程と、を含み、
前記第1の粉末が、その物理的特性及び/又は化学組成及び/又は色によって前記第2の粉末とは異なる、方法。
【請求項2】
前記第1の粉末及び前記第2の粉末が、15°~35°の安息角によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の粉末が、層又は円錐の形態で適用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の粉末及び/又は前記第2の粉末が、以下の特徴:
a)前記粉末の粉末粒子の主な形状が球状であること、
b)4m/g~20m/gのBET表面を有すること、
c)前記第1及び第2の粉末の前記粉末粒子が、アグロメレート又はより小さい粒子のアグリゲートであること、
d)25μm~150μmの粉末粒径d50を有すること、
e)0.9g/cm~2g/cmの嵩密度を有すること、
の単独又は組み合わせで特徴付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記中間領域において混合される前記粉末が、前記モールドの前記キャビティのx/y方向の寸法の95%未満又は80%未満まで及ぶ、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの混合要素が、前記混合工程中に、z方向において、高さHの90%未満又は60%未満の距離にわたって移動される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合工程が、調整されることで、z方向及びx/y方向における前記粉末のその物理的特性及び/又は化学組成及び/又は色に関して勾配を得る、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記勾配が、z方向において、高さHの少なくとも20%にわたって、又は少なくとも40%にわたって及ぶ、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粉末VP1及びVP2の体積が、互いに60%以下異なる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの混合要素が、前記高さHで回転速度RSを有し、前記高さHで回転速度RSを有し、RSがRSとは異なる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ミキサーユニットが、少なくとも2つの個別に回転可能な又は個別に成形された混合要素を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記混合要素の回転方向及び/又は回転速度が個別に調整可能である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記モールドの前記キャビティ内に、前記第1及び第2の粉末とは異なる更なる粉末を充填する工程を含まない、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
歯科用修復物を製造する方法であって、
請求項1~13のいずれか一項に記載の歯科用ミリングブロックを製造する工程と、
前記圧縮された粉末に熱を加えて、熱処理された歯科用ミリングブロックを得る工程と、
前記熱処理された歯科用ミリングブロックから歯科用修復物を機械加工する工程と、
前記歯科用修復物を焼結する工程と、を含む、方法。
【請求項15】
歯科用ミリングブロックを製造するためのパーツキットであって、請求項1~13のいずれか一項に記載のモールドと、請求項1~13のいずれか一項に記載のミキサーユニットと、請求項1~13のいずれか一項に記載の第1及び第2の粉末と、を含む、パーツキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均質な色及び/又は透光性勾配を有する歯科用ミリングブロックを製造する方法に関する。歯科用ミリングブロックは、審美性の高い歯科用修復物を製造するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
審美性の高い歯科用修復物を製造するためには、患者の口腔内における個々に色のついた歯の状況を考慮する必要がある。
【0003】
一方、歯の自然な外観を再現するために、色勾配を有する歯科用ミリングブロックが市販されており、これをミリング加工及び焼結して歯科用修復物が製造される。
【0004】
これらの種類の歯科用ミリングブロックを製造するための様々な概念が、当該技術分野において説明されている。
【0005】
1つの概念は、多孔質の歯科用ミリングブロックに適用される着色液の使用に焦点を当てている。適用プロセス中、着色液中に存在する着色用イオンが多孔質の歯科用ミリングブロックに吸収されることにより、一種の色勾配が生じる。
【0006】
例えば、中国特許第104909745(B)号(Chengdu Besmile Biotech.)には、均一な色勾配の酸化ジルコニウム陶材ブロックを得るための調製方法が記載されている。その調製方法は、(1)CeO、Fe、ZrO、Y、Pr11及びErの原料を計量する工程と、(2)ポリマーバインダーを添加し、造粒する工程と、(3)造粒物を成形する工程と、(4)静水圧冷間プレスを行う工程と、(5)陶材ブロックブランクを予備焼結する工程と、(6)予備焼結された陶材ブロックブランクを染色容器に平坦に配置し、特定の条件を適用して染色する工程と、(7)染色された陶材ブロックを焼結して、均一な色勾配の歯科用酸化ジルコニウム陶材ブロックを得る工程と、を含む。
【0007】
中国特許公開第108585845(A)号(Bloomden Bioceramics)には、色及び透過性が徐々に変化する酸化ジルコニウムセラミックブランクを調製する方法が記載されている。その方法は、(1)溶解性イットリウム溶液を調製し、予備焼結された酸化ジルコニウムセラミックの一方の側を溶液の液面に浸漬させ、酸化ジルコニウムセラミックの他方の側に負圧を加え、液面が液位0に低下するまで、予め設定された圧力-時間曲線に従って溶液液面の低下速度を制御する工程と、(2)16vita色を満たすユーザーメイドの16色染色溶液又は26vita色を満たすユーザーメイドの26色染色溶液を調製し、乾燥した酸化ジルコニウムセラミックを180°裏返し、酸化ジルコニウムセラミックの一方の側を染色溶液液面に浸漬させ、酸化ジルコニウムセラミックの他方の側に負圧を加え、液面が液位0に低下するまで、予め設定された圧力-時間曲線に従って液面の低下速度を制御する工程と、を含む。
【0008】
米国特許出願公開第2019/0233340(A1)号(Kimら)には、歯科用途で使用するためのセラミック体を着色する方法について記載されている。この方法は、第1及び第2の端面及び側面を含む多孔質セラミック体を得る工程と、セラミック体の様々な部分をケーシング材料と接触させる工程と、希釈液を浸透させて第1の多孔質領域を占有する工程と、ケーシングを調整する工程と、液体着色組成物を浸透させて第2の多孔質領域を占有する工程と、を含み、ケーシング材料は、液体着色組成物及び希釈液が第1の端面及び側面に浸透するのを防止する。
【0009】
別の概念は、様々な色の粉末組成物を互いに層形成し、その後、粉末組成物を圧縮することに焦点を当てている。
【0010】
欧州特許公開第3108849(A1)号(3M)は、交互に配置された組成物B及びEを有する2つの異なる層を含む多孔質多層着色ジルコニア歯科用ミルブランクに関し、組成物Bを有する個々の層の厚さは下から上に減少し、組成物Eを有する個々の層の厚さは上から下に減少する。
【0011】
米国特許第10,245,127(B2)号(Kimら)には、第1の材料混合工程、第2の材料混合工程、第3の材料混合工程、圧縮成形工程、及び焼成工程を含む、人工歯のための多層ジルコニアブロックを製造する方法が記載されている。この方法は、酸化イットリウムを含有する多層ジルコニアブロックを提供すると考えられており、酸化イットリウムの量は、製造方法において調整され、したがって、着色溶液での含浸後に天然歯の色に類似した色を示す。
【0012】
更に別の概念は、粉末組成物を混合するためのミキサーの使用を示唆している。
【0013】
米国特許第10,441,391(B2)号(Volklら)は、粉末形態の原料を混合し、得られた混合物をプレスし、続いて熱処理に供することにより、着色ジルコニアブランクを製造する方法を記載している。混合される粉末混合物の1つは、着色物質を含有する。第1の粉末層の導入後、別の着色の少ない材料がモールドに充填されて、第1の層と混合した中間層を形成する。続いて、第1の層よりも高い酸化イットリウム含量を有する更なる層がモールド内に充填される。
【0014】
異なる層又は領域を有する更なる歯科用ミリングブロックは、例えば、米国特許第10,219,880号(Rolfら)に記載されている。この歯科用ミルブランクは、第1透光性及び第1色調を有する第1硬質修復用材料の第1層と、第2透光性及び第2色調を有する第2硬質修復用材料の第2層とを含み、(1)第1透光性が第2透光性と異なる、(2)第1色調が第2色調と異なる、のうち少なくとも一方が真である。第1層及び第2層は、歯科用ミルブランクの第1対称面にわたる第1曲線を有する第1界面を形成し、第1曲線は、ゼロではない曲率を有し、歯科用ミルブランクの第2面の全長に沿った第1直線を有し、第2面は、第1対称面に対して直交する。
【0015】
米国特許第10,028,809(A1)号(Jahnsら)は、異なる量の正方晶相及び立方晶ジルコニア結晶相を含む、少なくとも2つの幾何学的に画定された材料セクションA及びBを含む、多孔質歯科用ミリングブロックに関する。
【発明の概要】
【0016】
説明した方法は、いずれも完全に満足のいくものではない。既存の方法を簡略化又は改善するのに役立ち得る代替法が依然として必要とされている。
【0017】
特に、異なる粉末成分の様々な層が依然として視認されることがある。
【0018】
したがって、より均質な色勾配を有する歯科用ミリングブロックが必要とされている。
【0019】
可能であれば、そのような歯科用ミリングブロックを製造する方法は、あまり複雑ではない必要がある。
【0020】
一実施形態では、本発明は、歯科用ミリングブロックを製造する方法であって、
i.z方向及びx/y方向を有するキャビティを有するモールドを提供する工程と、
ii.キャビティを高さHまで第1の粉末で部分的に充填する工程であって、第1の粉末が、上面及び下面を有する体積VP1を有する、充填する工程と、
iii.第1の粉末の上に高さHまで第2の粉末を導入する工程であって、第2の粉末が、上面及び下面を有する体積VP2を有し、
第1の粉末の上面が、第2の粉末の下面と接触しており、中間又は界面領域を形成する、導入する工程と、
iv.少なくとも1つの回転可能な混合要素を有するミキサーユニットを提供する工程と、
v.回転する混合要素を、典型的には時間tstartにおいて、中間領域にz方向に導入する工程と、
vi.混合要素を回転させることによって、典型的には時間tmix(x,y,z)の間、中間領域に配置された粉末を混合し、それによって、すでに混合された領域から未混合領域への回転する混合要素の移動により連続的な移行領域を形成し、時間tmix(x’,y’,z’)の間、混合を継続する工程と、
vii.典型的には時間tendにおいて、粉末から回転する混合要素を取り出す工程と、
viii.好ましくは10MPa~300MPaの圧力を0.5秒~5分間適用することによって粉末を圧縮する工程と、
ix.任意に、好ましくは加熱勾配を適用し、続いて周囲条件で800℃~1,100℃の滞留温度を5分間~300分間適用することによって、圧縮された粉末に熱を加える工程と、を含み、
第1の粉末は、その物理的特性及び/又は化学組成及び/又は色によって第2の粉末とは異なる、方法を特徴とする。
【0021】
本発明はまた、本明細書に記載の歯科用ミリングブロックから機械加工することによって得られる歯科用修復物を製造する方法、及びそのような方法によって得られる歯科用修復物を対象とする。
【0022】
本発明の更なる態様は、本明細書に記載のモールドと、本明細書に記載のミキサーユニットと、本明細書の第1及び第2の粉末と、を含む、パーツキットに関する。
【0023】
別段の定義のない限り、本明細書では、以下の用語は、以下に記載の意味を有する。
【0024】
用語「歯科用修復物」は、欠損した歯の構造を修復するために歯科分野で使用される物品を意味する。歯科用修復物は、典型的には、三次元の内側表面及び外側表面を有する。表面は、典型的には、凸状及び凹状構造を含む。陶器又は敷石などの他の物品と比較して、歯科用修復物は、小さく繊細なものである。歯科用修復物の厚さは、非常に薄い、例えば、縁部及びリム(0.1mm未満)から、かなり厚い、例えば、咬合領域(最大8又は16mm)まで変化し得る。歯科用ブリッジ内のクラウン部分を架橋するセクションは、最大20mmの厚さを有し得る。外側表面は、典型的には全体的な凸状形状を有するが、内側表面は、典型的には全体的な凹状形状を有する。
【0025】
本明細書に記載の歯科用修復物は、焼結後に、イットリウム安定化ジルコニアを含む多結晶セラミック材料を含むか、又はこれから本質的になる。
【0026】
歯科用修復物の例としては、クラウン(モノリシックなクラウン等)、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、前装、クラウン及びブリッジフレームワーク、アバットメント、歯列矯正器具(例えば、ブラケット、バッカルチューブ、クリート及びボタン)、並びにこれらの一部が挙げられる。
【0027】
歯の表面は、歯科用物品又は歯科用修復物ではないものとみなされる。
【0028】
歯科用修復物は、患者の健康に有害である成分を含有せず、ひいては歯科用修復物外に移動し得る有害かつ毒性の成分を含まない必要がある。
【0029】
「歯科用ミルブランク又は歯科用ミリングブロック」とは、そこから歯科用修復物を、サブトラクティブプロセス、例えばミリング加工以外に研削加工、ドリル加工等によって機械加工することができ、典型的にはこれらのプロセスによって機械加工する、材料の中実なブロック(三次元の物品)を意味する。歯科用ミルブランクは、幾何学的に画定された形状を有し、典型的には、2つの対向する平坦な表面を有している。いわゆる「自由成形表面」は、「幾何学的に画定された」とはみなされない。この点で、歯科用修復物(例えば、クラウン又はブリッジ)の形状自体は、歯科用ミルブランクとはみなされない。
【0030】
「ジルコニア物品」とは、x、y、z寸法のうちの少なくとも1つが、少なくとも約5mmである三次元物品を意味するものとし、この物品は、少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%のジルコニアから構成される。
【0031】
「セラミック」とは、熱を加えることによって製造される無機の非金属材料を意味する。セラミックは、通常、硬く、多孔質かつ脆性であり、ガラス又はガラスセラミックとは対照的に、本質的に純粋な結晶質構造を示す。
【0032】
「結晶質」とは、三次元で周期的なパターンで配置される原子から構成される(即ち、X線回折により測定して、長範囲結晶構造を有する)固体を意味する。結晶構造としては、正方晶系、単斜晶系、立方晶系のジルコニア及びこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
「均質な色及び/又は透光性勾配」とは、階段状又は千鳥状ではなく、線形の色若しくは透光性のセット、又は色及び透光性の組み合わせを意味する。勾配は、1次元、2次元、又は3次元において、軸状、放射状、又は円錐状であり得る。
【0034】
所望であれば、均質な色勾配の存在は、視覚的に、又は実施例の項に記載される画像解析ソフトウェア(例えば、ImageJ)を使用することによってより正確に、検査することができる。
【0035】
「モールド」は、典型的には後に圧縮又は固化される材料で充填されることが意図された中空のキャビティを有するブロックである。
【0036】
「粉末」とは、振盪され又は傾けられる際に自由に流動することができる多数の粒子から構成された乾燥したバルクを意味する。
【0037】
「粒子」とは、幾何学的に測定できる形状を有する固体である物質を意味する。その形状は規則的であっても不規則的であってもよい。粒子は、典型的には、例えば粒径及び粒径分布に関して分析され得る。
【0038】
粉末の粒径(d50)は、粒径分布の累積曲線から得ることができる。それぞれの測定は、市販の粒度計を用いて行うことができる。「D」は粉末粒子の直径を表し、「50」は粒子の体積百分率を指す。場合によっては、50%を「0.5」と表現することもある。例えば、「(d50)=1μm」とは、粒子の50%が1μm以下のサイズを有することを意味する。
【0039】
「密度」とは、物体の質量の体積に対する比を意味する。密度の単位は、典型的には、g/cmである。物体の密度は、例えば、その体積を求め(例えば、計算により又はアルキメデスの原理若しくは方法を適用することにより)、かつその質量を測定することによって、算出することができる。
【0040】
サンプルの体積は、サンプルの全体の外側寸法に基づいて求めることができる。サンプルの密度は、測定されたサンプル体積及びサンプル質量から算出することができる。材料の総体積は、サンプルの質量及び使用した材料の密度から計算することができる。サンプル中の気泡の総体積は、サンプル体積の残部であると想定される(100%から材料の総体積を減算したもの)。
【0041】
「多孔質材料」は、セラミックの技術分野では、空隙、細孔、又は気泡によって形成される部分容積を含む材料を指す。
【0042】
用語「焼結(sintering)」又は「焼成(firing)」は互換的に使用される。多孔質セラミック物品は、焼結工程の際、即ち適した温度が適用されると、収縮する。適用される焼結温度は、選択されたセラミック材料に応じて異なる。ジルコニア系セラミックの場合、典型的な焼結温度範囲は1,100℃~1,600℃である。高い加熱速度で焼結が行われる場合、より高い温度が必要とされ得る。焼結は、典型的には、多孔質材料を、より高い密度を有する、あまり多孔質ではない材料(又はより少ない気泡を有する材料)に高密度化することを含み、いくつかの事例では、材料相の組成の変化(例えば、非晶質相から結晶質相への部分的変換)を含むこともある。
【0043】
歯科用ジルコニア物品は、「3つのボールのパンチ試験」、ISO 6872:2015に従って測定して、歯科用セラミックの2軸曲げ強度が、8MPa~80MPa又は15MPa~55MPaの範囲内であるような程度まで、歯科用ジルコニア物品が加熱(900℃~1,100℃の温度範囲)で典型的には1時間~3時間処理された場合に、「予備焼結した」と分類される。
【0044】
予備焼結した歯科用セラミックは、通常、多孔質構造を有し、その密度(通常、イットリウム安定化ジルコニアセラミックで約3.0g/cm)は、完全に焼結した歯科用セラミックフレームワーク(通常、イットリウム安定化ジルコニアセラミックで約6.1g/cm)と比較して低い。
【0045】
「着色用イオン」とは、着色用イオンが水中に溶解する(例えば、約0.6モル/L)場合、肉眼で見えるスペクトル範囲(例えば、380nm~780nm)に吸収を有し、これにより着色した(肉眼で見える)溶液を生じることができるイオン、及び特に、着色用溶液で処理された後に焼結したジルコニア物品中で着色効果を生じるイオンを意味するものとする。着色用イオンはまた、ジルコニア物品の製造に使用される粉末が圧縮される前に、粉末中に(典型的には塩又は酸化物の成分として)存在してもよい。
【0046】
「蛍光剤又は成分」とは、可視光領域(380nm~780nm)での発光として測定可能な蛍光をもたらすことが可能な薬剤を意味するものとする。
【0047】
「機械加工」とは、機械による材料のミリング加工、研削、切断、カービング、又は成形を意味する。ミリング加工は、通常、研削よりも速く、費用対効果が高い。「機械加工可能な物品」は、三次元形状を有し、かつ機械加工されるのに十分な強度を有する物品である。
【0048】
「周囲条件」は、本明細書に記載の組成物が、保管及び取扱い中に通常さらされる条件を意味する。周囲条件は、例えば、圧力900mbar~1,100mbar、温度10℃~40℃及び相対湿度10%~100%としてもよい。実験室においては、周囲条件は、典型的には20℃~25℃、1000mbar~1025mbar及び相対湿度40%~60%に調整される。
【0049】
組成物が特定の成分を本質的な特徴として含有しない場合、この組成物はこの成分を「本質的又は実質的に含まない」。したがって、この成分は、それだけで、又は他の成分若しくは他の成分の含有物質(ingredient)との組み合わせでのいずれによっても、組成物に意図的に添加されない。特定の成分を本質的に含まない組成物は、通常はその成分を全く含有しない。しかしながら、例えば用いられる原料中に含まれる不純物のために、少量のこの成分が存在するのを回避できないこともある。
【0050】
本明細書で使用される「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、互換的に使用される。また、本明細書において、端点による数値範囲の記述は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0051】
「及び/又は」は、一方又は両方を意味する。例えば、成分A及び/又は成分Bという表現とは、成分Aのみ、成分Bのみ、又は成分A及び成分Bの両方を指す。
【0052】
用語に「(s)」を付加することは、その用語が単数形及び複数形を含むべきであることを意味する。例えば、「添加剤(additive(s))」という用語は、1つの添加剤及び2つ以上の添加剤(例えば2つ、3つ、4つなど)を意味する。
【0053】
特に指示のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている、例えば下に記載するものなどの含有物質の量、物性の測定値を表す全ての数は、全ての例で「約」という用語により修飾されていると理解されるべきである。
【0054】
「含む」又は「含有する」という用語及びそれらの変形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲で記載される場合、限定的な意味を有しない。用語「含む(comprise)」は、用語「本質的に~からなる(consist essentially of)」及び「~からなる(consist of)」を含むものとする。「から本質的になる」は、特定の更なる成分、つまり物品又は組成物の本質的な特性に実質的に影響を及ぼさない成分が存在し得ることを意味する。「からなる」は、更なる成分が存在するべきではないことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1A】本明細書に記載の方法に使用することができる異なるミキサーを示す。
図1B】本明細書に記載の方法に使用することができる異なるミキサーを示す。
図1C】本明細書に記載の方法に使用することができる異なるミキサーを示す。
図1D】本明細書に記載の方法に使用することができる異なるミキサーを示す。
図1E】本明細書に記載の方法に使用することができる異なるミキサーを示す。
図1F】本明細書に記載の方法に使用することができる異なるミキサーを示す。
図2A】本明細書に記載の方法に使用することができるミキサーの配置の異なるパターンを示す。
図2B】本明細書に記載の方法に使用することができるミキサーの配置の異なるパターンを示す。
図2C】本明細書に記載の方法に使用することができるミキサーの配置の異なるパターンを示す。
図2D】本明細書に記載の方法に使用することができるミキサーの配置の異なるパターンを示す。
図3A】本明細書に記載の方法に使用することができるミキサーの別の配置を示す。
図3B】本明細書に記載の方法に使用することができるミキサーの別の配置を示す。
図4A】可能な混合プロファイル(混合要素の回転速度とモールドのキャビティ内のそのx/z位置との間の関係)を例示する。
図4B】可能な混合プロファイル(混合要素の回転速度とモールドのキャビティ内のそのx/z位置との間の関係)を例示する。
図4C】可能な混合プロファイル(混合要素の回転速度とモールドのキャビティ内のそのx/z位置との間の関係)を例示する。
図4D】可能な混合プロファイル(混合要素の回転速度とモールドのキャビティ内のそのx/z位置との間の関係)を例示する。
図5A】更なる混合プロファイルをより詳細に例示する。
図5B】更なる混合プロファイルをより詳細に例示する。
図6】本発明ではない実施形態の混合プロファイルを例示する。
図7A】本発明ではない歯科用ミリングブロックの画像を示す。
図7B】本発明ではない歯科用ミリングブロックの画像を示す。
図7C】本発明の歯科用ミリングブロックの画像及び関連するプロットプロファイルを示す。
図7D】本発明の歯科用ミリングブロックの画像及び関連するプロットプロファイルを示す。
図8】異なるジルコニア粉末の顕微鏡写真(バイナリフォーマット)を示す。
図9A】実施例1の焼結体の画像及び関連するプロットプロファイルを示す。
図9B】実施例1の焼結体の画像及び関連するプロットプロファイルを示す。
図10A】実施例2の実験構成、実施例2の焼結体の画像、及び関連するプロットプロファイルを示す。
図10B】実施例2の実験構成、実施例2の焼結体の画像、及び関連するプロットプロファイルを示す。
図10C】実施例2の実験構成、実施例2の焼結体の画像、及び関連するプロットプロファイルを示す。
図11】実施例3で得られた焼結体のSEM像を示す。
図12A】実施例4の実験構成、比較例1の焼結体の画像、及び関連するプロットプロファイルを示す。
図12B】実施例4の実験構成、比較例1の焼結体の画像、及び関連するプロットプロファイルを示す。
図12C】実施例4の実験構成、比較例1の焼結体の画像、及び関連するプロットプロファイルを示す。
図12D】実施例4の実験構成、比較例1の焼結体の画像、及び関連するプロットプロファイルを示す。
図13A】比較例1の実験構成及び焼結体の画像を示す。
図13B】比較例1の実験構成及び焼結体の画像を示す。
図13C】比較例1の実験構成及び焼結体の画像を示す。
図13D】比較例1の実験構成及び焼結体の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本明細書に記載の組成物は、いくつかの有利な特性を有することが判明した。
【0057】
粉末組成物を混合するために混合要素を使用することは、概ね知られている。しかしながら、驚くべきことに、より大きな体積の特定の領域又は位置にのみ配置された粉末を制御された様式で混合し、それによって粉末組成物内に勾配を生成することも可能であることが判明した。
【0058】
特に、これは、粉末組成物を混合するために使用される混合要素が、混合工程中に回転しているだけでなく、混合される粉末組成物に混合要素が導入される工程においてすでに回転しており、混合された粉末組成物から混合要素が取り出される際に回転し続ける場合に達成することができる。
【0059】
回転している間、混合要素は、粉末組成物の上部領域から、混合される2つの粉末が互いに接触する中間又は界面領域まで、粉末をすでに運んでいる。同様に、混合要素を回転させながら、すでに混合された粉末を粉末組成物の上部領域に運び、これは、滑らかな勾配に寄与する。
【0060】
混合要素が粉末組成物中に導入される際に回転していない場合、粉末組成物はすでにわずかに圧縮されていることがあり、これは後の混合プロセス中に生産性に反するものとなり得る。
【0061】
混合要素が混合された粉末組成物から取り出される際に回転していない場合、混合された粉末組成物は、混合されることが意図されていない粉末組成物の他の領域に散逸又は移動されることが多いことが観察された。
【0062】
したがって、混合される粉末組成物の領域に導入される際に回転するだけでなく、混合要素が混合された粉末組成物から取り出される際にも回転する、混合要素を使用することによって、混合される粉末組成物の画定された領域において均質な粉末勾配を得ることができる。
【0063】
この効果が少量の粉末組成物についても達成できることは驚くべきことであった。
【0064】
本明細書に記載される発明は、歯科用ミリングブロックの製造方法に関する。この方法は、いくつかの工程を含む。
【0065】
第1の工程では、第1の粉末(例えば粉末A)の第1の体積VP1がモールドのキャビティ内に充填される。
【0066】
モールドは、垂直z方向、及びz方向に垂直である水平x/y方向を有するキャビティを有する。z方向には、混合される粉末を受け入れるためのモールドのキャビティへの開口部がある。モールドのキャビティの形状及びサイズは、典型的には、製造される歯科用ミリングブロックの形状に本質的に対応する。多くの場合、モールドのキャビティは、円筒形又は立方形又は直方形の形状を有する。所望であれば、馬蹄形、楕円形、球形等を含む他の形状も使用することができる。歯科用ミリングブロックを製造する場合、モールドのキャビティの容積は、典型的には、2mL~2,000mL又は5mL~500mL又は10mL~300mLの範囲である。
【0067】
モールドのキャビティへの粉末組成物の充填は、振動フィーダー、スクリューフィーダーを含む様々な手段を用いて、又は充填シューを使用することによって行うことができ、充填シューを使用することは、モールドの層ごとの充填を容易にするので、好ましい場合がある。
【0068】
更なる工程では、第2の粉末(例えば粉末B)の第2の体積VP2がキャビティ内に第1の粉末の上に充填される。
【0069】
第1の粉末は、モールドのキャビティ内に高さHまで充填される。高さHは、第1の粉末の上部レベルを表す。高さHは、典型的には、1mm~99mm又は1mm~90mm又は2mm~80mm又は2mm~70mmの範囲内である。
【0070】
第2の粉末は、モールドのキャビティ内に高さHまで充填される。高さHは、モールドのキャビティ内に充填された粉末組成物の上部レベルを表す。高さHは、典型的には、25mm~100mm又は30mm~90mm又は40mm~80mmの範囲である。
【0071】
モールドのキャビティ内に粉末を充填するために使用される手段又は要素に応じて、特に第1の粉末のx及びy方向における高さは均一でない場合がある。高さは、x及びyの関数とすることができる:H1(x,y),2(x,y)。モールドのキャビティに充填された粉末組成物の上面は、典型的には平坦である。
【0072】
一実施形態によれば、第1の粉末及び第2の粉末は、典型的には互いに平行な層を形成する。製造される歯科用ミリングブロックの高さzがx/y方向の寸法よりも小さい場合、例えば歯科用ミリングブロックが円盤形の形状を有する場合、粉末を層ごとに充填することが好ましい場合がある。
【0073】
別の実施形態によれば、第1の粉末はモールド内で高さHを有する円錐を形成し、第2の粉末は、第1の粉末の上に適用されて高さHまで円錐表面とモールド境界との間の残りの空間を充填し、第2の粉末の追加の層は上部に高さHまで適用される。
【0074】
第1の粉末をモールドに円錐形に充填することは、内側の象牙質部分と、象牙質部分よりも透光性を有する外側のエナメル質部分とを有する天然歯の外観をより良好に再現する又は模倣するのに役立ち得るので、望まれる場合がある。第1の粉末が、後に製造される歯科用修復物の象牙質部分を模倣することが意図された円錐を形成する場合、焼結後の第1の粉末の色及び/又は透光性は、典型的には、第2の粉末と比較してより濃い及び/又はより透光性が低い。
【0075】
必要に応じて、例えば振動又はスクリューフィーダーを使用することによって、更に複雑な表面形状を製造することができる。
【0076】
一実施形態によれば、2つの異なる粉末A及びBのみが使用されるが、追加の粉末、例えば、第3の体積を有する粉末C及び/又は第4の体積を有する粉末Dをモールドに充填することが望ましい場合もある。
【0077】
粉末VP1及びVP2の個々の体積は、同じであっても異なっていてもよい。それらが異なる場合、体積は、典型的には、5%~60%又は10%~50%又は15%~40%以下、互いに異なる。
【0078】
使用される粉末の体積は、典型的には、製造される歯科用ミリングブロックのサイズ及び体積に応じて異なる。
【0079】
粉末が粉末形態でモールドのキャビティ内に充填されるので、体積は粉末のバルク体積を指す。個々の粉末のバルク体積は、典型的には、0.9g/cm~2g/cm又は1g/cm~1.8g/cmの範囲である。
【0080】
第1の粉末及び第2の粉末は、その物理的特性及び/又は化学組成及び/又は色に関して互いに異なっており、化学組成及び/又は色の違いが好ましい場合がある。
【0081】
粉末の化学成分は、本明細書で以下更に記載される。化学組成は、焼結した製品の透光性にも影響を及ぼし得る。
【0082】
好ましい実施形態によれば、粉末は色に関して互いに異なる。色の違いは、例えば、異なる量の着色成分を使用することによって、又は異なる着色成分を使用することによって、又は両方の混合物を使用することによって達成され得る。
【0083】
別の実施形態によれば、粉末は、セラミック成分及び安定化成分を含み、安定化成分の含量に関して互いに異なる。
【0084】
歯科用ミリングブロックを製造するための方法は、ミキサーユニットを提供する工程も含む。ミキサーユニットは、典型的には、混合要素を含むか又は混合要素が取り付けられたミキサーシャフトを駆動するためのモーターを含む。ミキサーシャフトの形状に応じて、混合要素は、ミキサーシャフトの一部を形成することができる。
【0085】
混合要素は、少なくともモールドのz方向において、混合される粉末の制御された局所的な移送又は移動を可能にする形態又は形状を有する必要がある。混合要素は、異なる形状、例えば、螺旋状又は渦巻き状、単一ブレード形状、複数ブレード形状、スクリュー形状、オーガー形状又はこれらの組み合わせの形状を有することができる。混合要素がブレード形状を有する場合、ブレードは典型的には角がある。
【0086】
ミキサーシャフトは、少なくとも1つの混合要素を含む。ミキサーシャフトが2つ以上の混合要素(例えば、2個~8個又は3個~6個)を含む場合、混合要素は典型的には互いに対称に配置される。しかしながら、混合要素が異なる高さでミキサーシャフトに配置されるか、又は対称的でないことも可能である。
【0087】
従来技術に記載されているミキサーと比較して、本明細書に記載されているミキサーシャフトは、かなり短い。ミキサーシャフトの典型的な長さは、0.5cm~15cm又は1cm~10cm又は2cm~8cm又は3cm~6cmの範囲である。
【0088】
混合要素の可能な形状が図1A図1Fに示されている。図1Aは、4つのブレードを有するロータ形状の混合要素を有するミキサーを示す。図1Bは、2つのブレードを有するロータ形状の混合要素を有するミキサーを示す。図1Cは、中空螺旋状の混合要素を有するミキサーを示す。図1Dは、交差した螺旋状の要素を有するミキサーを示す。図1Eは、スクリューコンベア形状又はオーガー形状の混合要素を有するミキサーを示す。図1Fは、ミキサーシャフトから間隔を置いて配置された2つの角のあるブレードを有するミキサーを示す。
【0089】
ミキサーユニットは、2つ以上のミキサーシャフトを含むことができる。ミキサーシャフトの数及びそれに対応する混合要素の数は特に限定されないが、典型的には、混合される粉末を収容するモールドのキャビティのサイズ及び寸法に関連する。混合される粉末のサイズ又は体積がより大きい場合、ミキサーユニットが2個~30個又は3個~20個のミキサーシャフトを含むと有益となり得る。
【0090】
ミキサーシャフトは、異なるパターンで配置してもよい。円形、三角形、正方形、長方形、又は多角形(例えば、5、6、7又は8)のパターンの配置が有益となり得る。それは、混合される粉末の本質的に完全な領域をカバーするパターンが使用される場合、好ましい場合がある。この点において、異なるサイズの混合要素の使用が有用であり得る。このような配置は、水平方向における混合要素の移動がもはや必要とされないことがあり、混合プロセスをより短い時間で行うことができるので、有利であり得る。
【0091】
ミキサーシャフトが配置され得る可能なパターンが、図2A図2Dに示されている。図2Aは、x/y方向に円形キャビティ(薄灰色領域)を有するモールド(濃灰色領域)を示す。キャビティ内には、x/y及びz方向に移動可能な二重ブレード混合要素を有するミキサーが配置されている。図2Bでは、混合要素はより大きく、x/y方向に移動可能ではない。図2Cでは、モールド内に丸みを帯びた縁部を有する長方形キャビティが示されている。キャビティ内には、二重ブレード混合要素を有する4個のミキサーが配置されている。混合要素は、本質的にz方向にのみ移動可能である。図2Dには、モールド内に円形キャビティが示されている。キャビティ内には、二重ブレード混合要素を有する22個のミキサーが配置されている。混合要素は、本質的にz方向にのみ移動可能である。
【0092】
ミキサーは、粉末及びモールドに対して少なくともz方向に移動可能である必要がある。ミキサーが更にx又はy方向に移動可能であると有利である場合もある。ミキサーがz、x、及びy方向に個別に移動可能であると有利である場合もある。
【0093】
ミキサーシャフトが少数(例えば、2~4)又は1つしかない場合、一又は複数のミキサーシャフトが個々に水平に(モールドのキャビティのx/y方向に)移動可能であると有益である場合もある。より多くのミキサーシャフトが存在する場合、ミキサーシャフトが個別に回転可能であると有利である場合もある。ミキサーシャフトの個別の回転は、時計回り又は反時計回りであり得る。ミキサーシャフトが回転する遊星歯車のようなものであることも可能である。ミキサーシャフト上の混合要素の長さ及び/又は位置は異なっていてもよい。
【0094】
図3A及び図3Bは、本明細書に記載の方法に使用することができるミキサーの配置を示す。図3Aは、z方向にモールドを示す。モールドのキャビティ内(その容積は下部パンチによって調整される)には、高さHまでの円錐の第1の粉末(濃灰色)が配置される。第1の粉末の上には、高さHまで第2の粉末が配置される。第2の粉末内には、3つの個別の回転するミキサーが配置され、1つのミキサーは時計回りに回転し、他の2つのミキサーは反時計回りに回転する。図3Bは、同じ構成を示すが、ミキサーの配置が異なっている。5つのミキサー(同じ方向に回転する)が示されており、これらは、第2の粉末の、中間又は界面領域近くの異なるレベルに配置されている。
【0095】
中間領域において混合される粉末は、典型的には、モールドに充填される粉末組成物の全体的な高さの90%まで、又は80%まで、又は70%まで、又は60%まで、又は50%まで及ぶ。
【0096】
混合される粉末の中間領域に混合要素が導入されると、混合要素は、典型的には、z方向において、第1の粉末の高さHの50%を超える距離にわたって移動されない。
【0097】
使用される回転速度は、典型的には、混合要素の形状及びサイズにも関連する。より大きなサイズの混合要素の場合、典型的には、より遅い回転速度が使用される。本明細書に記載の粉末を混合するためには、個々のミキサーシャフトについて10回転/分~10,000回転/分又は20回転/分~1,000回転/分又は30回転/分~800回転/分の範囲の回転速度が有用であることが判明した。
【0098】
回転速度が速すぎると、粉末組成物中の所望の色及び/又は組成勾配に悪影響を及ぼすことがある。かなり低速の回転速度を使用することは、混合プロセスを、混合される粉末組成物の特定の領域に限定するのに有益であり得る。これは、個々のミキサーシャフトの回転速度及び/又は方向が全製造方法中に調整される場合、有利であり得る。混合要素の垂直移動は、水平移動と組み合わされてもよい。
【0099】
混合要素が粉末に導入される際、回転速度は、典型的には、第1及び第2の粉末の中間領域を混合するために使用される回転速度と比較して遅い。粉末組成物から混合要素が取り出される際、回転速度はまた、典型的には、第1及び第2の粉末の中間領域を混合するために使用される回転速度と比較して遅い。
【0100】
一実施形態によれば、回転する混合要素は、粉末組成物内に移動され、粉末組成物外に部分的に移動され、再び粉末組成物内に部分的に移動され、粉末組成物から取り出される。これを行うことにより、個々のミキサーの回転速度、移動速度、及び配置と位置とのバリエーションを所望に応じて変更することができる。
【0101】
個々のミキサーシャフト及び混合要素の速度、方向、及び位置は、典型的には電子的に制御される(例えば、機械制御)。制御ユニットは、個々のミキサーシャフト及び/又は混合要素の回転速度、時間、及び位置を有効にすることができる。
【0102】
概して、混合工程は、調整されることで、第1の粉末及び第2の粉末の中間領域において少なくともz方向に化学組成及び/又は色に関して均質な勾配を有する歯科用ミリングブロックを得る。
【0103】
しかしながら、z方向及びx/y方向において化学組成及び/又は色に関して均質な勾配を有する歯科用ミリングブロックを製造することも可能である。
【0104】
勾配は、典型的には、歯科用ミリングブロックのz方向において、第1の粉末と第2の粉末とを合わせた高さに対して少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%にわたって及ぶ。
【0105】
使用することができる混合プロファイルの例を、図4A図4Dに概略的に示す。図において、回転速度がy軸上に与えられ、粉末組成物内の混合要素の位置がx軸上に与えられる。
【0106】
図4A図4Dは、本発明の実施形態について、混合要素の回転速度(ω)と、モールドのキャビティ内のそのz及びx位置との間の可能な関係を例示する。ミキサーの回転速度は、一定(図4A図4C)でも、段階的(図4D)でもよい。ミキサーのx方向の移動は段階的であり得る(図4A図4D)。ミキサーのz方向の移動は、図5Aに示されるように線形(内外に)であっても、図4A図4Dに示されるように様々な異なるスキームに従ってもよい。
【0107】
図5Aは、z方向におけるモールドのための構成を示す。モールドのキャビティ内に、15mmの高さHまで充填された円錐の第1の粉末が存在する(濃灰色)。第1の粉末の上には、35mmの高さHまで充填された第2の粉末が存在する(薄灰色)。回転するミキサーを、600回転/分で回転させながら、z方向に1mm/秒の速度で粉末組成物中に導入する。特定の時間後、回転するミキサーを1mm/秒の速度で粉末組成物から取り出す。
【0108】
図5Bには、異なる構成が示されている。第1及び第2の粉末が層状にモールドのキャビティに充填され、異なる形状の混合要素が使用される。混合要素の回転速度は、粉末組成物に入るときはかなり低速であり、粉末組成物の中間領域に達するとプラトーまで上昇する。方法中に中間領域での回転速度を上昇させることは、全体的な混合時間の短縮に寄与し得る。言い換えれば、少なくとも1つの混合要素は、粉末に導入される際の高さHで回転速度RSを有し、高さHで回転速度RSを有し、RSはRSと異なり、具体的にはRS>RSである。
【0109】
図6には、本発明ではない実施形態が示されている。混合要素は、混合工程中にのみ回転し、粉末組成物に導入され粉末組成物から取り出される際には回転しない。
【0110】
焼結後の本発明ではない歯科用ミリングブロックの写真を図7A及び図7Bに示す。図7Aでは、モールドのキャビティ内に配置された粉末は全く混合されなかった。図7Bでは、モールドのキャビティ内に配置された粉末は混合されたが、ミキサーは、粉末組成物への導入中及び粉末組成物からの取り出し中には回転せず、粉末組成物の中間領域での混合中にのみ回転した。
【0111】
焼結後の本発明の歯科用ミリングブロックの写真を図7Cに示す。モールドのキャビティ内に配置された粉末が混合された。ミキサーは、粉末組成物への導入中、中間領域における粉末組成物の混合中、及び粉末組成物からの取り出し中に回転した。図7Dは、関心領域についてImageJソフトウェアのプロットプロファイル関数を使用することによって得られたプロファイルを示す。滑らかな色変化が示されている。
【0112】
更なる工程では、モールドのキャビティ内に配置された粉末が圧縮される。圧縮体は、典型的にはいわゆるグリーン体と呼ばれる。
【0113】
圧縮工程を容易にするため、所望であれば、プレス助剤を添加することができる。適したプレス助剤としては、結合剤、潤滑剤、及びこれらの混合物が挙げられる。粉末へのプレス助剤の添加は、典型的には、粉末がモールドに充填される前に行われる。
【0114】
加える圧力は、典型的には、5MPa~400MPa又は100MPa~250MPaの範囲である。
【0115】
あるいは、加える圧力は、プレスされた本体が特定の密度、例えばジルコニア粉末の圧縮物品の場合、2.8g/cm~3.5g/cmの密度に達するように設定される。
【0116】
更なる工程では、多孔質歯科用ミルブランクを得るために、所望であれば、圧縮された粉末に熱処理又は予備焼結工程を適用することができる。
【0117】
熱処理の温度は、典型的には、800℃~1,100℃、又は900℃~1,000℃の範囲である。熱処理は、典型的には、10時間~150時間、又は35時間~100時間の持続時間にわたって適用される。
【0118】
粉末をプレス又は予備焼結した後に得られた物品を、任意の所望の形状に機械加工又はスライスすることができる。
【0119】
歯科用ミリングブロックを製造するために使用される粉末は、その物理的-機械的特性によって特徴付けることができる。
【0120】
本明細書に記載の方法で使用される粉末は、自由流動性である必要がある。自由流動性とは、粉末の粒子が互いに付着せず、凝集せずに流れることを意味する。粉末の流動性は、その安息角によっても説明することができる。値が低いほど、個々の粉末粒子が有する凝集力は低い。15°~35°の範囲の安息角を有する粉末を使用することは、層状混合を容易にするので、有利であることが判明した。
【0121】
加えて、粉末は、以下の特徴:
a)粉末の粉末粒子の主な形状が球状であること、
b)4m/g~20m/gの範囲のBET表面を有すること、
c)粉末粒子が、アグロメレート又はより小さい粒子のアグリゲートであること、
d)25μm~150μmの範囲の粉末粒径d50を有すること、
e)0.9g/cm~2g/cmの嵩密度を有すること、
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0122】
特徴(a)及び(b)、又は(a)及び(d)、又は(b)及び(c)、又は(a)、(b)、及び(c)の組み合わせが有利である場合がある。
【0123】
粒子の主な(50%を超える)形状は、典型的には球状である。球状に成形された粒子は、典型的には粉砕された粒子よりも流動性が良い。球状に成形された粒子は、噴霧乾燥によって製造することができる。
【0124】
上記範囲のBET表面を有する粉末を使用することは、典型的には、その後の組成物のより均質な焼結を可能にするので、有益であり得る。
【0125】
粉末の粒径d50は高すぎない必要があり、そうでなければ、滑らかな色及び/又は組成勾配を得ることがより困難になる場合がある。類似又は同一の粒径(d50)を有する粉末を使用することも、混合工程中に滑らかな色及び/又は組成勾配の生成を促進するのに有用であり得る。
【0126】
より具体的には、混合される粉末は、以下の特性に関して、所与の%以下で互いに異なる必要がある。BET表面:20%以下;粒径d50:20%以下;安息角:20%以下。
【0127】
歯科用ミリングブロックを製造するために、セラミック粉末を含む、様々な種類の粉末を使用することができる。セラミック粉末の例としては、特にジルコニア粉末及びアルミナ粉末が挙げられる。歯科用ミリングブロックを製造するためにセラミック粉末を使用することは、その高い強度によって好ましい場合がある。
【0128】
一実施形態によれば、製造される歯科用ミリングブロックは、歯科用ジルコニアミリングブロックである。
【0129】
歯科用ジルコニアミリングブロックを製造するために使用される粉末組成物は、セラミック成分及び安定化成分を含む。任意に、着色成分及び蛍光成分が存在し得る。
【0130】
セラミック成分は、典型的には、Zr、Hf、Alの酸化物及びこれらの混合物から選択される。
【0131】
したがって、ジルコニアに加えて、ジルコニア歯科用ミリングブロックの材料は、典型的にはHf及び任意にAlの酸化物を、典型的にはごく少量(例えば、ハフニアについては3重量%未満、アルミナについては0.15重量%未満)で含む。
【0132】
安定化成分は、典型的には、Y、Mg、Ca、Ceの酸化物、及びこれらの混合物(例えば、Y、MgO、CaO、CeO)から選択され、Yの酸化物が好ましい。
【0133】
存在する場合、着色成分は、典型的には、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Er、Pr、Tb、Ndの酸化物から選択され、特に、Mn、Er、Pr、Tb、Coの酸化物及びこれらの混合物(例えば、MnO、Er、Tb、CoO)から選択される。
【0134】
存在する場合、蛍光剤は、典型的には、Biの酸化物又は水酸化物、及びこれらの混合物から選択される。
【0135】
セラミック成分は、典型的には、歯科用ミリングブロックの重量に対して、80重量%~95重量%、又は85重量%~95重量%、又は90重量%~95重量%の量で存在する。
【0136】
安定化成分は、典型的には、歯科用ミリングブロックの重量に対して、3重量%~12重量%、又は5重量%~10重量%、又は6重量%~10重量%の量で存在する。
【0137】
存在する場合、着色成分は、典型的には、歯科用ミリングブロックの重量に対して、0.01重量%~2重量%、又は0.02重量%~1.5重量%、又は0.03重量%~1.2重量%の量で存在する。
【0138】
存在する場合、蛍光剤は、典型的には、歯科用ミリングブロックの重量に対して、0重量%~1重量%、又は0.005重量%~0.8重量%、又は0.01重量%~0.1重量%の量で存在する。
【0139】
重量%は、それぞれの酸化物又はセラミック成分、安定化成分、着色成分、及び蛍光剤の量に基づいて計算される。
【0140】
審美的歯科用物品を得るために、以下の濃度が有用であることが判明した。
セラミック成分:80重量%~95重量%、又は85重量%~95重量%、
安定化成分:3重量%~12重量%、又は5重量%~11重量%、
着色成分:0重量%~2重量%、又は0.01重量%~1.5重量%、
蛍光剤:0重量%~1重量%、又は0.005重量%~0.8重量%、
重量%は、多孔質歯科用ミリングブロックの重量に対するものである。
【0141】
一実施形態によれば、歯科用ミリングブロックを製造するために使用される粉末は、以下:
ZrO含量:70モル%~98モル%、又は80モル%~97モル%、
HfO含量:0モル%~2モル%、又は0.1モル%~1.8モル%、
含量:1モル%~15モル%、又は1.5モル%~10モル%、又は2モル%~5モル%、
Al含量:0モル%~1モル%、又は0.005モル%~0.5モル%、又は0.01モル%~0.1モル%
として特徴付けることができる。
【0142】
更なる実施形態によれば、歯科用ミリングブロックを製造するために使用される粉末は、以下:
ZrO含量:90モル%~98モル%、
HfO含量:0モル%~2モル%、
含量:3モル%~5モル%。
Al含量:0モル%~0.1モル%
として特徴付けられる。
【0143】
より高いY含量は、典型的には、材料を最終密度まで焼結した後、ジルコニアセラミック材料中の立方晶相の増加をもたらす。立方晶相の含量が高くなると、より良好な又はより高い透光性に寄与し得る。
【0144】
一実施形態によれば、多孔質歯科用ジルコニア物品の材料は、約3、4、又は5モル%のイットリアを含有する。これらの材料は、本明細書に記載される焼成プロセスにおいて審美的ジルコニア歯科用修復物を製造するのに特に有用であることが判明した。
【0145】
別の実施形態では、歯科用ミリングブロックを製造するために使用される粉末は、以下:
ZrO+HfO:90重量%~95重量%、
:4重量%~10重量%、
Al:0重量%~0.15重量%、
着色酸化物:0.01重量%~2重量%、
を含み、重量%は、それぞれの粉末の重量に対するものである。
【0146】
アルミナが存在する必要はないが、少量のアルミナの存在は、焼結後のジルコニア物品のより良好な水熱安定性に寄与し得るため、有益であり得る。しかしながら、アルミナの量が多すぎると、焼結後のジルコニア物品の透光性に悪影響を及ぼし得る。したがって、アルミナは、0重量%~0.15重量%、又は0.001重量%~0.12重量%、又は0.01重量%~0.1重量%の量で存在してもよい。
【0147】
本明細書に記載の歯科用ミリングブロックを製造することに関して、化学組成及び/又は色に関して互いに異なる少なくとも2つの粉末が使用され、それぞれの粉末は、イットリア含量及び/又は着色成分の量若しくは性質に関して互いに異なってもよい。
【0148】
一実施形態によれば、粉末Aは、粉末Bのイットリア含量よりも低いイットリア含量を有する。焼結後、それぞれの組成物は異なる透光性を有する。イットリア含量がより高い領域は、典型的には、イットリア含量がより低い領域よりも透光性を有する。
【0149】
別の実施形態によれば、粉末Aは粉末Bよりも高い含量の着色成分を有する。
【0150】
好適な粉末は、以下の配合及び特性を有することができる。
【0151】
第1の粉末
セラミック成分:80重量%超、
安定化成分:1モル%~5モル%又は2モル%~3モル%の量のイットリア、
着色成分:0重量%~2重量%(着色成分のそれぞれの酸化物を基準として)、
4m/g~20m/gの範囲のBET表面を有すること、
25μm~150μmの範囲の粒径d50を有すること、
15°~35°の安息角を有すること。
【0152】
第2の粉末
セラミック成分:80重量%超、
安定化成分:1モル%~5モル%又は4モル%~5モル%の量のイットリア、
着色成分:0重量%~2重量%(着色成分のそれぞれの酸化物を基準として)、
4m/g~20m/gの範囲のBET表面を有すること、
25μm~150μmの範囲の粒径d50を有すること、
15°~35°の安息角を有すること。
【0153】
しかしながら、本明細書に記載の歯科用ミリングブロックを製造するために、第1及び第2の粉末は、少なくともそれぞれの粉末中に存在する安定化成分及び/又は着色成分の量に関して互いに異なる。
【0154】
粉末を圧縮し、任意による予備焼結工程の後、予備焼結された歯科用ミリングブロックの材料は、典型的には、以下の特徴:BET表面:5m~20m、密度:2.5g/cm~4g/cm、平均粒径:50nm~200nm、の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。特徴a)及びb)、a)及びc)、a)、b)、及びc)の組み合わせが好ましい場合がある。
【0155】
材料が上記指定の範囲のBET表面を有する歯科用ジルコニアミリングブロックを使用することは、後の焼結プロセスの前及び最中に材料の適切な焼結活性を保証するので、場合によっては有利である。
【0156】
特定の理論に束縛されるものではないが、BET表面が高すぎる場合、焼結される多孔質歯科用ジルコニア物品中には多すぎる細孔が存在すると考えられる。これは、物品の焼結に悪影響を及ぼし、適切な強度及び/又は透光性を有する歯科用ジルコニア物品を得ることがより困難になる場合がある。他方、BET表面が低すぎる場合、多孔質ジルコニア物品は、適切な焼結活性を有さないと考えられる。これは、第1の熱処理工程中の多孔質歯科用ジルコニア物品の焼結挙動(例えば、焼結収縮、残存焼結助剤の脱ガス)に悪影響を及ぼすことがある。BET表面に言及するとき、この文脈では、焼成された歯科用ミリングブロックの表面を意味し、ブロックの製造に使用される粉末組成物の表面ではない。
【0157】
あるいは、又は加えて、予備焼結された歯科用ミリングブロックの材料は、以下のパラメータ:
a)2軸曲げ強度:多孔質状態での測定に適合したISO6872:2015に従って測定して(測定セットアップ:3.6mmパンチ直径、荷重速度0.1mm/分、サンプル厚2mm、支持ボール直径6mm、支持するボールの直径14mm)15MPa~55MPa、
b)ビッカース硬度:15~150(HV 0.5)又は20~140(HV 0.5)、
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0158】
所望であれば、それぞれの特徴は、実施例の項に記載の通りに測定することができる。
【0159】
材料のビッカース硬度が低すぎると、機械加工性が品質に悪影響を及ぼすことがあり(加工品の縁部の欠け又は破損)並びに歯科用修復物又はモノリシックな修復物のフレームを個別化するための手作業での再加工の容易さが損なわれることがある。材料のビッカース硬度が高すぎる場合、工作工具の摩耗が増し、工具寿命を許容できないレベルまで短縮させる場合があり、又は工具が加工品を破損及び破壊することがある。
【0160】
材料の2軸曲げ強度が低すぎる場合、ミリング加工の際又は歯科技工士による手作業での仕上げ加工の際に、材料が亀裂を生じやすい場合があることが判明した。他方、材料の2軸曲げ強度が高すぎる場合、ミリング加工機による材料の加工は、適切な実施では不可能であることが多い。使用されるミリング加工工具又はミリング加工された材料は、欠けたり、又は破損したりしやすいことがある。このような場合には、材料の成形は、例えばCerec(商標)研削機(Sirona)を使用した研削によって行う必要があった。
【0161】
歯科用ミリングブロックは、典型的には、ミリング加工機内での歯科用ミリングブロックの取り付けを可能にする形態で顧客に提供される。
【0162】
ジルコニア歯科用ミルブランクの上面又は下面のいずれかは、典型的には、ミリング加工機内の歯科用ミリングブロックの正しい方向付けを容易にするマーキング要素(例えば、プリンティング又はカービング)を含んでいる。
【0163】
機械加工装置、特にこのような装置のクランプ器具への歯科用ジルコニアミルブランクの取り付け又は固定は、ブランクにそのための適した手段を提供することによって行うこともできる。好適な手段としては、フレーム、ノッチ、スタブ、マンドレル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0164】
別の実施形態では、歯科用ミリングブロックは、保持装置に固定されるか保持装置内に収容される。歯科用ミリングブロックを収容する保持装置は、次いで、ブランクを機械加工装置に取り付けるための手段として機能することができる。歯科用ミリングブロックの保持装置への固定は、クランピング、接着、ねじ込み、及びこれらの組み合わせによってなされ得る。有用な保持装置としては、フレーム(開閉式)、スタブ、又はマンドレルが挙げられる。保持装置を使用することは、機械加工装置による歯科用物品の製造を容易にすることができる。有用な保持装置の例は、米国特許第8,141,217(B2)号(Gublerら)、国際公開第02/45614(A1)号(ETH Zurich)、独国特許第20316004(U1)号(Stuehrenberg)、米国特許第7,985,119(B2)号(Baslerら)又は国際公開第01/13862号(3M)に記載されている。保持装置の説明に関するこれら文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
歯科用ミリングブロックは、典型的にはブランク又は直方形又は円盤形の形状を有する。
【0166】
歯科用ミリングブロックが直方形の形状を有する場合、ジルコニア歯科用ミリングブロックは、典型的には以下の寸法を有する。x寸法:12mm~45mm又は15mm~40mm、y寸法:12mm~70mm又は15mm~60mm、z寸法:10mm~40mm又は15mm~25mm。
【0167】
歯科用ミリングブロックが円盤形の形状を有する場合、歯科用ジルコニアミルブランクは、典型的には以下の寸法を有する。x、y寸法:90mm~110mm又は95mm~105mm、z寸法:5mm~35mm又は10mm~30mm。
【0168】
以下に、場合により好ましい更なる実施形態を記載する。
【0169】
実施形態1
第1及び第2の粉末が、15°~35°の安息角及び25μm~150μmの粉末粒径d50によって特徴付けられる、本明細書に記載の歯科用ミリングブロックを製造する方法。
【0170】
実施形態2
第1及び第2の粉末が、15°~35°の安息角及び25μm~150μmの粉末粒径d50によって特徴付けられ、混合される粉末が、以下の特性に関して、所与の%以下で互いに異なる、本明細書に記載の歯科用ミリングブロックを製造する方法。粒径d50:20%以下;安息角:20%以下。
【0171】
実施形態3
混合要素がz方向において高さHの80%未満の距離にわたって移動され、少なくとも1つの混合要素が螺旋状又はオーガー形状を有する、本明細書に記載の歯科用ミリングブロックを製造する方法。
【0172】
実施形態4
少なくとも1つの混合要素が、x/y方向に移動されるか又は移動可能であり、中間領域において混合される粉末が、キャビティのx/y方向においてキャビティの寸法の90%未満まで及ぶ、本明細書に記載の歯科用ミリングブロックを製造する方法。
【0173】
実施形態5
第1の粉末が円錐の形態で適用され、第1及び第2の粉末が15°~35°の安息角を有する、本明細書に記載の歯科用ミリングブロックを製造する方法。
【0174】
実施形態6
第1及び第2の粉末が、15°~35°の安息角及び25μm~150μmの粉末粒径d50によって特徴付けられ、少なくとも1つの混合要素が、x/y方向に移動されるか又は移動可能であり、中間領域において混合される粉末が、キャビティのx/y方向においてキャビティの寸法の90%未満まで及ぶ、本明細書に記載の歯科用ミリングブロックを製造する方法。
【0175】
実施形態7
第1及び第2の粉末が15°~35°の安息角によって特徴付けられ、少なくとも1つの混合要素が高さHで回転速度RSを有し、高さHで回転速度RSを有し、RSはRSとは異なる、本明細書に記載の歯科用ミリングブロックを製造する方法。
【0176】
実施形態8
第1及び第2の粉末が15°~35°の安息角によって特徴付けられ、少なくとも1つの混合要素が高さHで回転速度RSを有し、高さHで回転速度RSを有し、RS>RSである、本明細書に記載の歯科用ミリングブロックを製造する方法。
【0177】
先行技術に記載の方法とは対照的に、本発明によれば、粉末組成物の特定の部分のみが混合され、全量は混合されない。
【0178】
更に、本明細書に記載の方法は、典型的には、以下の工程:a)第1及び/又は第2の粉末の表面にパターンを提供する工程;b)第2の粉末の上に第3の粉末を適用する工程であって、第3の粉末が第1及び第2の粉末とはその化学組成が異なる、適用する工程、を単独又は組み合わせて含まない。
【0179】
本発明はまた、歯科用修復物を製造する方法にも関する。
【0180】
この方法は、
本明細書に記載の方法に従って歯科用ミリングブロックを製造する工程と、
圧縮された粉末に熱を加えて、熱処理された歯科用ミリングブロックを得る工程と、
熱処理された歯科用ミリングブロックから歯科用修復物を機械加工する工程と、
歯科用修復物を焼結する工程と、を含む。
【0181】
機械加工は、DentsplySirona製のCercon(商標)等、市販のミリング加工装置を使用して行うことができる。必要に応じて、焼結は、以下の熱処理工程のいずれかを適用することによって行うことができる。a)焼結温度1,350℃~1,600℃、加熱速度1℃/秒~7℃/秒;b)焼結温度1,350℃~1,600℃、加熱速度1℃/分~30℃/分。
【0182】
歯科用修復物は、歯科用クラウン、ブリッジ、ベニア、インレー又はオンレーの形状を含む様々な形状を有してもよい。
【0183】
本発明はまた、本明細書に記載のモールドと、本明細書に記載のミキサーユニットと、本明細書に記載の第1の粉末及び第2の粉末と、を含む、パーツキットに関する。
【0184】
本発明の歯科用組成物中で使用される全ての成分は、十分に生体適合性とされ、すなわち、この組成物は、生体組織内で、有毒反応、有害反応又は免疫反応を引き起こさない。
【0185】
本明細書に引用した特許、特許文献、及び刊行物の全開示は、それぞれが個別に組み込まれたかのごとく、それらの全体が参照により組み込まれる。本発明に対する様々な改変及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。上記の明細書、例及びデータは、本発明の組成物の製造及び使用並びに方法の説明を提供する。本発明は、本明細書に開示されている実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の多くの代替的な実施形態が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、なされ得ることを認めるであろう。
【0186】
以下の実施例は本発明の範囲を例示するために示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0187】
特に指示がない限り、全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。更に、特に指示のない限り、全ての実験は周囲条件(23℃、海抜基準で1013mbar)で実施した。
【0188】
方法
元素組成
所望であれば、元素組成は、蛍光X線分光計(XRF)により、例えば、リガク製のZSX Primus IIを用いて測定することができる。この方法は、固体、例えば、ジルコニアセラミック又はガラス材料の分析に特に好適である。
【0189】
蛍光
所望であれば、例えば薄層クロマトグラフィープレートの検査に使用されるUV光ボックスの中に、サンプルを置く。蛍光は、黒色の背景に対して、サンプルを照らし出すことによって、肉眼により検出できる。
【0190】
BET表面
所望であれば、多孔質物品のBET表面は、以下のように測定され得る:総孔容積及び平均孔径は、N吸着等温線及びBET表面積分析を使用することで分析できる。サンプルチューブ内に挿入するため、より大きいサンプルから約0.1g~2gのサンプルを切り出してもよい(必要であれば)。全てのサンプルを、分析前に120℃で1時間超、真空脱気する。次いで、Belsorb II(Robotherm Prazisionsmesstechnik,Bochum,Germanyによって配給)を用い、9mmのセルで2cmのバルブ及び5mmのガラスロッドで、サンプルをNガスの吸着及び脱着によって分析した。液体窒素の温度で、吸収データポイントを0.1p/p0~0.99p/p0で収集し、脱着ポイントを、0.99p/p0~0.5p/p0で収集する。比表面積Sは、p/p0 0.25~0.3でのBET法によって算出される(算出に関する詳細は、Belsorb Analysis Software User Manual Operating Manual,Chapter 12,Bel Japan.INCを参照されたい)。
【0191】
密度
所望であれば、焼結した材料の密度は、アルキメデス法により測定することができる。この測定は、密度測定キット(Sartorius AGから「YDK01」の名称)を用いて、精密天びん(Sartorius AG(Gottingen,Germany)から「BP221S」の名称)上で行われる。この手順において、まずサンプルを空気中で計量し(A)、次に溶液(B)に浸漬する。溶液は、脱イオン水中の0.05重量%のテンシド溶液である(例えば、「Berol 266」,Fa.Hoesch)。密度は、式ρ=(A/(A-B))ρ0を用いて算出される(式中、ρ0は水の密度である)。
【0192】
材料が規則的な形状(例えば、直方形)を有する場合、密度は、サンプルの寸法x、y、及びz(例えば、スライディングキャリパー(Mitutoyo,Japanから「IP67」の名称)を用いて)と、サンプルの重量m(例えば、精密天びん(Sartorius AG(Gottingen,Germany)製の「BP221S」の名称)を用いて)と、を測定することによって簡易に決定することができる。密度は、式ρ=m/(xz)を用いて算出される。
【0193】
粉末の嵩密度
嵩密度は、粉末の供給者によって提供される材料データシートから得ることができるか、又はDIN EN ISO 23145-2に従って決定することができ、この場合、造粒粉末又は非造粒粉末の非タップ密度は、定容測定法によって決定される。
【0194】
多孔率
所望であれば、多孔率は以下のように求めることができる。多孔率=(1-(多孔質材料の密度/焼結した材料の密度))×100。上記(「密度」の項)のように、多孔質材料の密度は、重量と体積の除算により算出することができる。容積は幾何学的測定によって得ることができる。
【0195】
細孔容積:
多孔質ジルコニア体の細孔容積Vは、多孔質体の全体積から多孔質体中のジルコニア材料の体積(V=多孔質体の重量/ジルコニア材料の密度)を減算することによって決定することができる(例えば、V=xz):V=V-V。本明細書では、焼結ジルコニア材料の密度は6.08g/cmと定義される。この値は、多孔質ジルコニア体の細孔容積を決定するのに十分に正確であると考えられる。
【0196】
粒径(マイクロサイズ粒子に適している)
必要に応じて、体積ごとの粒径(d50)を含む粒径分布は、Fraunhofer近似を適用するMastersizer 2000(Malvern)粒径検出装置を用いたレーザー回折によって決定することができる。測定中に、典型的には超音波を用いて、サンプルを正確に分散させる。水不溶性粒子の場合、典型的には水が分散剤として使用される。
【0197】
平均粒径(予備焼結体又は焼結体)
所望であれば、平均粒径は、直線切片分析を用いて測定することができる。70,000倍の倍率を有するFESEM顕微鏡写真が、粒径測定に使用される。各サンプルについて、焼結体の異なる領域から撮られた3枚又は4枚の顕微鏡写真を使用する。各顕微鏡写真の高さに対してほぼ等しい間隔で離れて配置される10本の水平線を引く。各直線上で観察した粒界切片の数を計数し、これを用いて切片間の平均距離を算出する。各直線についての平均距離に1.56を乗じて粒径を求め、この値を各サンプルの全ての顕微鏡写真の全ての直線にわたって平均する。
【0198】
2軸曲げ強度
所望であれば、予備焼結した材料の2軸曲げ強度は、ISO 6872:2015に従って、以下の修正を加えて測定することができる。予備焼結したサンプルを、ドライカットソーを用いて2±0.1mmの厚さのウェハに切り出す。サンプルの直径は、17±2mmである必要がある。ウェハの平行な大きな面は、炭化ケイ素研磨紙(P2500)を使用して研削される。各ウェハは、14mmの支持直径を有する3つの鋼球(球の直径6mm)の支持体の中心に置かれる。ウェハと接触するパンチ直径は3.6mmである。パンチは、0.1mm/分の速度でウェハ上に押し込まれる。平均強度を測定するために、最低15サンプルを測定する。試験は、Instron5566万能試験機(Instron Deutschland GmbH)を使用して実施することができる。
【0199】
ビッカース硬度
所望であれば、ビッカース硬度は、ISO 14705に従って、以下の修正を加えて測定することができる。予備焼結したサンプルの表面を、炭化ケイ素研磨紙(P2500)を使用して研削する。焼結したサンプルの表面は、20μmダイヤモンド懸濁液で研磨される。試験荷重は、サンプルの硬度レベルに調整する。用いた試験荷重は0.2kg~2kgであることができ、各凹部に15秒間加えることができる。最低10個の凹部を測定し、平均ビッカース硬度を求める。試験は、硬度試験器Leco M-400-G(Leco Instrumente GmbH)によって実施することができる。
【0200】
走査型電子顕微鏡(SEM)画像
所望であれば、粉末及び粉末組成物の様々な状態(例えば、焼結前後)の画像をSEMによって生成することができる。
【0201】
色勾配
所望であれば、着色粉末混合物の色勾配の画像を、ImageJソフトウェア(National Institute of Health及びLaboratory for Optical and Computational Instrumentationで開発されたJavaベースの画像処理プログラム;著作権保護の対象ではない)のプロットプロファイル機能を使用して更に分析することができる。画像プロットが関心領域において薄灰色領域から濃灰色領域への本質的に滑らかな変化を示す場合、色勾配は、典型的には、均質であるとみなされる。
【0202】
より詳細には、デジタル写真が関心領域から撮影される。関心領域は、好ましくは、粉末A及びBの中間領域に対して垂直に、本体から準備されたプレートである。写真は、例えばプレートをライトテーブル上に置くことによって、プレートを通過した遷移光を使用して撮影され得る。写真の画素は、材料の光学特性の局所的尺度であり、画像解析ソフトウェアを使用して解析することができる。ファイル/写真を開き、「直線(straight)」ボタンを使用して写真内の線を選択する。この線は、「解析(analysis)」セクションの「プロットプロファイル(plot profile)」機能を使用することによって解析することができる。グレー値のプロファイルがプロットされ、勾配は平坦又はよりギザギザの曲線として観察され得る。より詳細な解析のために、プロファイルデータのデータを数値化して転送し、必要に応じて更に解析することができる。
【0203】
値/透光性
所望であれば、本明細書に記載の物品の透光性及びL値は、以下の手順で評価することができる:およそ1±0.05mmの厚さ、及び直径少なくとも10mmの測定面積を有する円盤形の形状の試験片を提供する。試験片の調製のために、予備焼結したサンプルは、ドライカットソーを使用して、およそ1.3mmの厚さを有するウェハに鋸引きされる。ウェハの平行な大きな面は、炭化ケイ素研磨紙(P2500)を使用して研削される。研削サンプルを、適切な炉内で焼結し、1±0.05mmの厚さを有する焼結したサンプルにする。焼結したサンプルは、白色及び黒色の背景に対して反射モードで分光光度計(X-Rite Color i7、Grand Rapids,USA)を用いて焼成したまま測定して、材料の不透明度(コントラスト比)を得る。透光性Tは、T=100%-不透明度(パーセント)に従って計算される。より高い透光性の値は、光の透過率がより高く、不透明度がより低いことを示す。
【0204】
流動性/安息角
粉末の流動性は、DIN ISO 4324規格「Pulver und Granulate,Bestimmung des Schuttwinkels」に従った安息角測定によって決定することができる。
【0205】
この測定では、規定された出口直径(φ=10mm)を有する漏斗に所定量の粉末を充填する。出口を開けた後、粉末は、所定の直径(φ=100mm)を有するアクリルガラスプレート上に落下する。ある量の粉末が完全に流れた後、立ったままの円錐の高さを測定する。安息角の計算は以下の式で行われる。
tan□=2xH/100(□=安息角;H=円錐の高さ)。
【0206】
角度が小さいほど、粉末はより流動性である。粉末の分類には、以下の等級を使用することができる。
流動特性 安息角(単位:°)
優秀 30未満
良好 31~35
十分(流動添加剤不要) 36~40
中程度(粉末の流れを止めることができる) 41~45
悪い(流れるよう働きかける必要がある) 46~55
非常に悪い 56~65
不十分 66超
【0207】
材料
【表1】
【0208】
粉末A
粉末A(ZP-A)として、市販の白色(無着色)ジルコニア粉末を用いた。ZP-Aは以下の特性を有していた:BET表面:8m/g、粒径d50:53μm、粉末の嵩密度:1.55g/cm、安息角:24°。
【0209】
粉末B
粉末B(ZP-B)として、Fe成分がドープされた(例えば、可溶性鉄塩を含有する水溶液を加え、乾燥させ、それぞれの粉末組成物をミリング加工することによる)市販のジルコニア粉末を使用した。ZP-Bは以下の特性を有していた:BET表面:8m/g、粒径d50:52μm、粉末の嵩密度:1.64g/cm、安息角:23°。
【0210】
粉末C
粉末C(ZP-C)として、市販の白色(無着色)ジルコニア粉末を用いた。ZP-Cは以下の特性を有していた:BET表面:8m/g、粒径d50:53μm、粉末の嵩密度:1.49g/cm、安息角:25°。
【0211】
粉末D
粉末D(ZP-D)として、市販の白色(無着色)ジルコニア粉末を用いた。ZP-Dは以下の特性を有していた:BET表面:8m/g、粒径d50:53μm、嵩密度:1.50g/cm、安息角:23°。
【0212】
粉末E
粉末E(ZP-E)として、Cr/Fe成分がドープされた(例えば、可溶性Cr/鉄塩を含有する水溶液を加え、乾燥させ、それぞれの粉末組成物をミリング加工することによる)市販のジルコニア粉末を使用した。ZP-Eは以下の特性を有していた:BET表面:8m/g、粒径d50:52μm、粉末の嵩密度:1.55g/cm、安息角:23°。
【0213】
図8は、バイナリフォーマットに変換されたジルコニア粉末ZP-A、ZP-B、ZP-C、ZP-D、及びZP-Eの顕微鏡写真を示し、粉末粒子の主な球状特性を示す。写真は無作為に撮影した。
【0214】
本発明の実施例1
寸法:z方向:35mm、直径:25mmを有するキャビティを有するモールドを準備した。
【0215】
ZP-Aの円錐を最大高さHPA=15mmまでモールドに充填した。ZP-Aの上に、ZP-Bを高さHPB+HPA=35mmまで充填した。
【0216】
モーターと、プラスチック製の混合要素を有するミキサーシャフトと、を含むミキサーユニットを準備した。混合要素は螺旋状であった(高さ:6mm;直径:6.5mm;傾斜:6mm)。ミキサーシャフト及び混合要素は、本質的に、図1Cに示されるミキサーの形状に対応する。
【0217】
ミキサーユニットを上部粉末表面上に置き、始動させた。回転速度は、10回転/秒に等しい600回転/分であった。回転する混合要素を、ZP-Aの体積の領域までz方向において1mm/秒の速度で30mm導入し、1mm/秒の同じ速度で直ちに引き上げた。x及びyにおける位置は一定に保持した。混合要素を有する回転するミキサーシャフトを粉末組成物から取り出した。実験構成を図5Aに示す。
【0218】
得られた粉末混合物を約12MPaの圧力で約2分間圧縮した。この圧縮体を900℃で2時間熱処理した後、中心部を切断してプレートを得た。このプレートを約1,550℃の温度で4分間熱処理した。切断プレートの画像を図9Aに示す。
【0219】
観察
x、y方向の混合ゾーンは、ブロックのx及びyの寸法の約1/3に制限されており、本明細書に記載される方法を使用することによって、かなり小さな全粉末体積内の小さな粉末領域の規定された混合がなされており、それにより、関心領域において滑らかな勾配を得ることが可能である。混合したゾーンを通るz方向の画像のグレー値のプロファイルプロットは、滑らかな色勾配を示す。未混合ゾーンを通るz方向の写真のグレー値のプロファイルプロットは、鋭い色勾配を示す(図9B)。
【0220】
本発明の実施例2
寸法:z方向:35mm、直径:25mmを有するキャビティを有するモールドを準備した。
【0221】
ZP-Aの円錐を最大高さHPA(1.25;1.25)=15mmまでモールドに充填した。ZP-Aの層の上に、ZP-Bの層を高さHPB+HPA=35mmまで充填した。
【0222】
モーターと、プラスチック製の混合要素を有するミキサーシャフトと、を含むミキサーユニットを準備した。混合要素は螺旋状であった(高さ:6mm;直径:6.5mm;傾斜:6mm)。ミキサーシャフト及び混合要素は、本質的に、図1Cに示されるミキサーの形状に対応する。
【0223】
ミキサーユニットを上部粉末表面上に置き、始動させた。回転速度は、10回転/秒に等しい600回転/分であった。モールドの縁部の開始位置(位置1)で、回転する混合要素を、ZP-Aの領域までz方向において1mm/秒の速度で33mmの距離にわたって粉末に導入し、1mm/秒の同じ速度で直ちに引き上げた。ミキサーの位置をx/y方向において全体距離が6mmとして変更したが(位置2)、ミキサーはモールドの縁部に保持した。位置1で使用したのと同じパラメータを用いてz方向の別の混合を行った。これを10回繰り返して、モールドの周囲(位置1~10)を混合した。次いで、より小さい周回路を調整し、zにおける更に6回の混合サイクルを行った(位置11~16)。最後に、ほぼ中央で更に3回の混合サイクルを行った(位置17~19)。実験構成を図10Aに示す。この粉末組成物の螺旋様混合の後、混合要素を有する回転するミキサーシャフトを取り出した。
【0224】
得られた粉末混合物を約82MPaの圧力で約2分間圧縮した。この圧縮体を900℃で2時間熱処理した後、中心部を切断してプレートを得た。このプレートを約1,550℃の温度で4分間熱処理した。切断したプレートの画像を図10Bに示す。
【0225】
観察
ZP-Bの未混合下部領域は、混合粉末ZP-B及びZP-Aの中間領域によって、ZP-Aの未混合上部領域に滑らかに移行した。個々の層は見られなかった。混合したゾーンを通るz方向の画像のグレー値のプロファイルプロットは、滑らかな色勾配を示す。図10Cでは、図10Bの写真が、ソフトウェアImageJを用いてグレー値について解析された。プロットから分かるように、関心領域において、薄灰色領域からより濃灰色領域への滑らかな移行が存在している。
【0226】
本発明の実施例3
寸法:z方向:35mm、直径:25mmを有するキャビティを有するモールドを準備した。
【0227】
ZP-Cの層をHPC=13mmの高さまでモールドに充填した。ZP-Cの層の上に、ZP-Dの層を高さHPC+HPD=13mm+15mm=28mmまで充填した。
【0228】
モーターと、プラスチック製の混合要素を有するミキサーシャフトと、を含むミキサーユニットを準備した。混合要素は螺旋状であった(高さ:6mm;直径:6.5mm;傾斜:6mm)。ミキサーシャフト及び混合要素は、本質的に、図1Cに示されるミキサーの形状に対応する。
【0229】
ミキサーユニットを上部粉末表面上に置き、始動させた。回転速度は、3.33回転/秒に等しい200回転/分であった。回転する混合要素を、ZP-Dの領域までz方向において1mm/秒の速度で23mm導入し、モールドの縁から中心及び背部への螺旋様経路に従って、手動で垂直に移動させた。その後、z位置を約18mmに移動させ、再び、モールドの縁から中心及び背部への螺旋様経路に従って、手動で垂直に移動させた。その後、z位置を約13mmに移動させ、再び、モールドの縁から中心及び背部への螺旋様経路に従って、手動で垂直に移動させた。その後、z位置を約8mmに移動させ、再び、モールドの縁から中心及び背部への螺旋様経路に従って、手動で垂直に移動させた。その後、z位置を約3mmに移動させ、再び、モールドの縁から中心及び背部への螺旋様経路に従って、手動で垂直に移動させた。混合要素を有する回転するミキサーシャフトを、粉末組成物から取り出した。
【0230】
混合工程の後、得られた粉末混合物を約200MPaの圧力で約3分間圧縮した。この圧縮体を約920℃で2時間熱処理した後、中心部を切断してプレートを得た。このプレートを約1,500℃の温度で2時間熱処理した。
【0231】
観察
本発明の実施例2と同様に、それぞれの領域間の滑らかな移行は焼結後にも残っていた。得られた焼結ジルコニア体の微細構造をSEMで更に分析した(図11)。より大きい粒子は、5.5モル%のイットリア含有ジルコニア材料(ZP-D)に関連し、より小さい粒子は、3モル%のイットリア含有材料(ZP-C)に関連する。SEM写真に示されるように、それぞれの粉末の混合は、微細構造レベルで行われた。その際、より大きな粒子は小さな粒子領域に見られ得、小さな粒子は大きな粒子領域に見られ得る。
【0232】
本発明の実施例4
寸法:z方向:35mm、直径:25mmを有するキャビティを有するモールドを準備した。
【0233】
ZP-Aの層をHPA=6mmの高さまでモールドに充填した。ZP-Aの層の上に、ZP-Bの層をHPB=28mm、高さHPB+HPA=34mmまで充填した。
【0234】
モーターと、プラスチック製の混合要素を有するミキサーシャフトと、を含むミキサーユニットを準備した。混合要素はブレード形状であった(高さ:6mm;直径:6.5mm;傾斜:6mm)。ミキサーシャフト及び混合要素は、本質的に、図1Bに示されるミキサーの形状に対応する。ミキサーユニットを上部粉末表面上に置き、始動させた。回転速度は、5回転/秒に等しい300回転/分であった。回転する混合要素を手動でz方向にゆっくりとZP-Bの体積の領域まで導入し、引き上げた。混合要素を有する回転するミキサーシャフトを、粉末組成物から取り出した。混合プロファイルを図12A図12Bに示す。
【0235】
得られた粉末混合物を約82MPaの圧力で約2分間圧縮した。この圧縮体を920℃で2時間熱処理した後、中心部を切断してプレートを得た。このプレートを約1,500℃の温度で2時間熱処理した。切断したプレートの画像を図12Cに示す。
【0236】
観察
本発明の実施例2と同様に、それぞれの領域間の滑らかな移行は焼結後にも残っていた。図12Dでは、図12CBの写真が、ソフトウェアImageJを用いてグレー値について解析された。プロットから分かるように、関心領域において、薄灰色領域からより濃灰色領域への滑らかな移行が存在している。
【0237】
比較例1
本発明の実施例4を繰り返し、ただし、ミキサーシャフトは、粉末組成物への導入及び粉末組成物からの取り出しの際に回転しなかった。
【0238】
実験構成を図13A図13Cに示す。圧縮及び焼結工程後の切断プレートの画像を図13Dに示す。
【0239】
観察
本発明の実施例4と比較して、比較例1の焼結したサンプルは、あまり均一でなく不均質な色勾配を示した。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
【手続補正書】
【提出日】2023-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0239
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0239】
観察
本発明の実施例4と比較して、比較例1の焼結したサンプルは、あまり均一でなく不均質な色勾配を示した。
なお、以上の各実施形態に加えて以下の態様について付記する。
(付記1)
歯科用ミリングブロックを製造する方法であって、
z方向及びx/y方向を有するキャビティを有するモールドを提供する工程と、
前記キャビティを高さH まで第1の粉末で部分的に充填する工程であって、前記第1の粉末が、上面及び下面を有する体積V P1 を有する、充填する工程と、
前記第1の粉末の上に高さH まで第2の粉末を導入する工程であって、前記第2の粉末が、上面及び下面を有する体積V P2 を有し、前記第1の粉末の前記上面が、前記第2の粉末の前記下面と接触しており、中間領域を形成する、導入する工程と、
少なくとも1つの回転可能な混合要素を有するミキサーユニットを提供する工程と、
前記混合要素を回転させながら前記中間領域にz方向に導入する工程と、
前記混合要素を回転させることによって前記中間領域に配置された前記粉末を混合する工程と、
前記混合要素を回転させながら前記粉末から前記混合要素を取り出す工程と、
前記粉末を圧縮する工程と、
任意に、前記圧縮された粉末に熱を加える工程と、を含み、
前記第1の粉末が、その物理的特性及び/又は化学組成及び/又は色によって前記第2の粉末とは異なる、方法。
(付記2)
前記第1の粉末及び前記第2の粉末が、15°~35°の安息角によって特徴付けられる、付記1に記載の方法。
(付記3)
前記第1の粉末が、層又は円錐の形態で適用される、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
前記第1の粉末及び/又は前記第2の粉末が、以下の特徴:
a)前記粉末の粉末粒子の主な形状が球状であること、
b)4m /g~20m /gのBET表面を有すること、
c)前記第1及び第2の粉末の前記粉末粒子が、アグロメレート又はより小さい粒子のアグリゲートであること、
d)25μm~150μmの粉末粒径d50を有すること、
e)0.9g/cm ~2g/cm の嵩密度を有すること、
の単独又は組み合わせで特徴付けられる、付記1~3のいずれか一項に記載の方法。
(付記5)
前記中間領域において混合される前記粉末が、前記モールドの前記キャビティのx/y方向の寸法の95%未満又は80%未満まで及ぶ、付記1~4のいずれか一項に記載の方法。
(付記6)
前記少なくとも1つの混合要素が、前記混合工程中に、z方向において、高さH の90%未満又は60%未満の距離にわたって移動される、付記1~5のいずれか一項に記載の方法。
(付記7)
前記混合工程が、調整されることで、z方向及びx/y方向における前記粉末のその物理的特性及び/又は化学組成及び/又は色に関して勾配を得る、付記1~6のいずれか一項に記載の方法。
(付記8)
前記勾配が、z方向において、高さH の少なくとも20%にわたって、又は少なくとも40%にわたって及ぶ、付記1~7のいずれか一項に記載の方法。
(付記9)
前記粉末V P1 及びV P2 の体積が、互いに60%以下異なる、付記1~8のいずれか一項に記載の方法。
(付記10)
前記少なくとも1つの混合要素が、前記高さH で回転速度RS を有し、前記高さH で回転速度RS を有し、RS がRS とは異なる、付記1~9のいずれか一項に記載の方法。
(付記11)
前記ミキサーユニットが、少なくとも2つの個別に回転可能な又は個別に成形された混合要素を含む、付記1~10のいずれか一項に記載の方法。
(付記12)
前記混合要素の回転方向及び/又は回転速度が個別に調整可能である、付記1~11のいずれか一項に記載の方法。
(付記13)
前記モールドの前記キャビティ内に、前記第1及び第2の粉末とは異なる更なる粉末を充填する工程を含まない、付記1~12のいずれか一項に記載の方法。
(付記14)
歯科用修復物を製造する方法であって、
付記1~13のいずれか一項に記載の歯科用ミリングブロックを製造する工程と、
前記圧縮された粉末に熱を加えて、熱処理された歯科用ミリングブロックを得る工程と、
前記熱処理された歯科用ミリングブロックから歯科用修復物を機械加工する工程と、
前記歯科用修復物を焼結する工程と、を含む、方法。
(付記15)
歯科用ミリングブロックを製造するためのパーツキットであって、付記1~13のいずれか一項に記載のモールドと、付記1~13のいずれか一項に記載のミキサーユニットと、付記1~13のいずれか一項に記載の第1及び第2の粉末と、を含む、パーツキット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用ミリングブロックを製造する方法であって、
z方向及びx/y方向を有するキャビティを有するモールドを提供する工程と、
前記キャビティを高さHまで第1の粉末で部分的に充填する工程であって、前記第1の粉末が、上面及び下面を有する体積VP1を有する、充填する工程と、
前記第1の粉末の上に高さHまで第2の粉末を導入する工程であって、前記第2の粉末が、上面及び下面を有する体積VP2を有し、前記第1の粉末の前記上面が、前記第2の粉末の前記下面と接触しており、中間領域を形成する、導入する工程と、
少なくとも1つの回転可能な混合要素を有するミキサーユニットを提供する工程と、
前記混合要素を回転させながら前記中間領域にz方向に導入する工程と、
前記混合要素を回転させることによって前記中間領域に配置された前記粉末を混合する工程と、
前記混合要素を回転させながら前記粉末から前記混合要素を取り出す工程と、
前記粉末を圧縮する工程と、
任意に、前記圧縮された粉末に熱を加える工程と、を含み、
前記第1の粉末が、その物理的特性及び/又は化学組成及び/又は色によって前記第2の粉末とは異なる、方法
【請求項2】
前記第1の粉末及び/又は前記第2の粉末が、以下の特徴:
a)前記粉末の粉末粒子の主な形状が球状であること、
b)4m/g~20m/gのBET表面を有すること、
c)前記第1及び第2の粉末の前記粉末粒子が、アグロメレート又はより小さい粒子のアグリゲートであること、
d)25μm~150μmの粉末粒径d50を有すること、
e)0.9g/cm~2g/cmの嵩密度を有すること、
の単独又は組み合わせで特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中間領域において混合される前記粉末が、前記モールドの前記キャビティのx/y方向の寸法の95%未満又は80%未満まで及ぶ、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの混合要素が、前記混合工程中に、z方向において、高さHの90%未満又は60%未満の距離にわたって移動される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法
【請求項5】
前記少なくとも1つの混合要素が、前記高さHで回転速度RSを有し、前記高さHで回転速度RSを有し、RSがRSとは異なる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法
【請求項6】
歯科用修復物を製造する方法であって、
請求項1~のいずれか一項に記載の歯科用ミリングブロックを製造する工程と、
前記圧縮された粉末に熱を加えて、熱処理された歯科用ミリングブロックを得る工程と、
前記熱処理された歯科用ミリングブロックから歯科用修復物を機械加工する工程と、
前記歯科用修復物を焼結する工程と、を含む、方法。
【請求項7】
歯科用ミリングブロックを製造するためのパーツキットであって、請求項1~のいずれか一項に記載のモールドと、請求項1~のいずれか一項に記載のミキサーユニットと、請求項1~のいずれか一項に記載の第1及び第2の粉末と、を含む、パーツキット。
【国際調査報告】