(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】慢性疼痛管理のための植え込み型髄腔内薬物送達システム
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
A61M37/00 560
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517823
(86)(22)【出願日】2021-05-29
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 US2021035047
(87)【国際公開番号】W WO2021243318
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】522466201
【氏名又は名称】ベア バイオメディカル リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】フェントン ポール
(72)【発明者】
【氏名】フッド ロバート ライル
(72)【発明者】
【氏名】ポルティーヨ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ラム サケス
(72)【発明者】
【氏名】フランツ ダグ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA75
4C267BB12
4C267CC05
(57)【要約】
本開示は、流量制御のための制限されたチャネルに接続され、かつ薬物をリザーバから髄腔内スペースまたは他の所望の身体組織に送達する柔軟な強化カテーテルに接続されているリザーバを形成する生体適合性のハウジングによって囲まれた、圧縮可能なベローズ内に収容された不活性ガスの圧縮および膨張によって駆動される、改良された植え込み型薬物送達デバイス、方法およびシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み型髄腔内薬物送達デバイスであって、
ハウジングと;
不活性ガスを充填されたガスチャンバを含む、該ハウジングによって包囲された圧縮可能なベローズ、および
該ベローズの底部に結合され、リニア位置センサと近位側で位置合わせされたベローズセンサアーム
を含むセンサアセンブリと;
該ハウジングの内壁および該ベローズの外壁によって形成されたリザーバと
を含み、該リザーバが流体を収容し、該リザーバが、終端部位への該流体の送達のためにカテーテルと流体接続している、該植え込み型髄腔内薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記流体が一定の流量で終端部位に送達される、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
カテーテルへの流体の制限的流れのための、前記リザーバと流体接続した微細加工された毛管路をさらに含む、請求項1または2記載のデバイス。
【請求項4】
前記リザーバがブラダーを含み、該ブラダーがエラストマー材料でできている、請求項1~3のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項5】
前記センサアセンブリが、前記ベローズの拡張または圧縮した状態を検出することによってリザーバ中の流体の量を検出する、請求項1~4のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項6】
前記ベローズが最大限に拡張しているとき、リザーバが空である、請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
前記ベローズが最大限に圧縮されているとき、リザーバが満杯である、請求項5記載のデバイス。
【請求項8】
データ情報記憶媒体を含み、データ情報が、外部トランスポンダの使用によってデバイスから経皮的に取得されうる、請求項1~5のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項9】
IDDS状態に関連する埋め込まれたRFIDチップデータ情報を含む、請求項8記載のデバイス。
【請求項10】
外部トランスポンダが、リザーバ内に収容された流体の量に関するデータ情報をセンサアセンブリから取得する、請求項8または9記載のデバイス。
【請求項11】
前記リザーバと流体連通した穿孔可能なセプタムをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項12】
前記穿孔可能なセプタムが、穿孔可能なセプタムを位置確認するために触知することができる一段高いリムによって囲まれている、請求項11記載のデバイス。
【請求項13】
カテーテルが柔軟な強化カテーテルを含む、請求項1~12のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項14】
前記流体が薬物および/または注入液を含む、請求項1~13のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項15】
植え込み型髄腔内薬物送達デバイスであって、
ハウジングと;
該デバイスによって送達される流体のためのリザーバを形成する、該ハウジングによって包囲された圧縮可能なベローズ、および
該ベローズの底部に結合され、リニア位置センサと近位側で位置合わせされたベローズリザーバセンサアーム
を含むセンサアセンブリと;
該ハウジングの内壁および該ベローズの外壁によって形成された、不活性ガスを充填されたチャンバと
を含み、該リザーバが流体を収容し、該リザーバが、終端部位への該流体の送達のためにカテーテルと流体接続している、該植え込み型髄腔内薬物送達デバイス。
【請求項16】
前記流体が一定の流量で終端部位に送達される、請求項15記載のデバイス。
【請求項17】
カテーテルへの流体の制限的流れのための、前記リザーバと流体接続した微細加工された毛管路をさらに含む、請求項15または16記載のデバイス。
【請求項18】
前記チャンバがブラダーを含み、該ブラダーがエラストマー材料でできている、請求項15~17のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項19】
前記センサアセンブリが、前記ベローズの拡張または圧縮した状態を検出することによってリザーバ中の流体の量を間接的に検出する、請求項15~18のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項20】
前記ベローズが最大限に拡張しているとき、リザーバが満杯である、請求項19記載のデバイス。
【請求項21】
前記ベローズが最大限に圧縮されているとき、リザーバが空である、請求項19記載のデバイス。
【請求項22】
前記デバイス上の生成または記憶されたデータ情報が、外部トランスポンダの使用によって該デバイスから経皮的に取得される、請求項15~19のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項23】
IDDS状態に関連するデータ情報を含むRFIDチップをさらに含む、請求項22記載のデバイス。
【請求項24】
外部トランスポンダが、前記リザーバ内に収容された流体の量に関するデータ情報をセンサアセンブリから取得する、請求項22または23記載のデバイス。
【請求項25】
前記リザーバと流体連通した穿孔可能なセプタムをさらに含む、請求項15~24のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項26】
前記穿孔可能なセプタムが、該穿孔可能なセプタムを位置確認するために触知することができる一段高いリムによって囲まれている、請求項25記載のデバイス。
【請求項27】
カテーテルが柔軟な強化カテーテルを含む、請求項15~26のいずれか一項記載のデバイス。
【請求項28】
前記流体が薬物を含む、および/または注入液である、請求項15~27のいずれか一項記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、全体として参照により本明細書に組み入れられる、2021年5月29日に出願された米国特許仮出願第63/032,359号への優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、改良された植え込み型髄腔内薬物送達システム(IDDS)、方法およびシステムに関する。より具体的に、本開示は、サイズおよび重量を減らすとともにカテーテル長を短縮したIDDSポンプを可能にする、圧縮可能なガス充填または薬物充填ベローズによって駆動されるデバイス、方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
慢性疼痛は、癌、背部の外傷および他の状態を有する患者が、多くの場合、その状態を解消するために特別な処置を必要とすることが多い潜行性の状態である。重症例においては、経口、筋内注射または静脈内送達法などの初期治療送達法が有効性を失い、医師が、薬物および他の治療を脊椎腔の中またはその近くに配置する方法に切り替えることが非常に一般的である。難治性の慢性疼痛の場合に脊椎腔中に配置される一般的な治療は、TENSユニットとして知られる電子刺激デバイスと、薬物を髄腔内送達するための植え込み型ポンプである。髄腔内またはくも膜下薬物送達においては、鎮痛薬および/または痙縮に使用される薬物が、注入口、リザーバ、低流量薬液注入ポンプおよび送達カテーテルから構成される髄腔内薬物送達システム(IDDS)を介して脊髄液(髄腔)に直接導入される。
【0004】
髄腔は通常、腰部からアクセスされる。経口、皮下または静脈内送達される薬物で同じ有効性またはバイオアベイラビリティを生み出すには、その同じ鎮痛剤が髄腔内送達される場合よりも高い投与量が必要であることはよく知られている。髄腔内送達はより少ない薬物しか要しないため、有害な副作用の多くが有意に軽減される。加えて、髄腔内送達しかできない特定の薬物もある。そのような薬物の1つが、血液脳関門を通過することができないために髄腔内投与されなければならないジコノチド(痛みを軽減するのに効果的であることができる非オピオイド)である。
【0005】
髄腔内疼痛管理の薬物分野においては、多種多様な鎮痛薬が使用されている。髄腔内送達の理論的根拠は鎮痛効果のためのより低い投与量であるため、同じ効果を得るために必要な量は、他の送達形態、たとえば経口、静脈内、皮下、経皮などと比較して大幅に減少する。量の減少は、医師が、体内に植え込まれるデバイスを利用することを許す。量の有意な減少の結果として、植え込み型ポンプ設計は、より低い頻度でのリザーバ充填しか要しない。現在、植え込まれたポンプのリザーバを補充するための標準的な実施は月1回ベースである。しかし、注入によるリザーバ充填の頻度は週1回から数ヶ月に1回の範囲である場合もある。
【0006】
減少した量および減少した投与量は、他のルート、たとえば経口、静脈内、経皮および皮下法によって送達される鎮痛薬の他の望ましくない副作用の多くを解消する。たとえば、オピオイドは、一般的な髄腔内送達される鎮痛剤である。この薬物クラスは、腸内のオピエート受容体および腸管の運動性へのその影響により、便秘を生じさせることが周知である。この同じ薬物クラスが髄腔内送達されると、腸の運動性は損なわれないままである。また、悪性と非悪性の両方の疼痛および痙縮の場合に、植え込み型薬物送達デバイスが使用される適応症が数多くある。
【0007】
一般に、植え込み型薬物送達デバイスは、他の保存療法が失敗し、非髄腔内療法レジメン(すなわち、経口、皮下、筋内、静脈内または経皮)が症状を十分に抑制していない場合および/または非髄腔内レジメンが重大な副作用を生じさせている場合に考慮されるべきである。現在、米国食品薬物局(FDA)によって髄腔内投与を認められている唯一の薬物はモルヒネ、ジコノチドおよびバクロフェンである。しかし、最近の文献が、FDA認可薬物に耐性を有しない患者の場合に、他の多くのオピオイドおよび非オピオイド薬物の使用を支持している。他の薬物は、無菌性および正しい濃度を確保するために、特別な調剤薬局を通して取得されなければならない。これは、複数の薬物が植え込み型薬物送達システムで使用される場合に特に重要である。注目すべきことに、癌疼痛の治療に有用である可能性がある、レシニフェラトキシンなどの新規な非オピオイド薬物に関する研究が進行中である。
【0008】
慢性疼痛管理の場合に一般的な髄腔内療法は、脊椎の硬膜下区域(くも膜下区域とも記される)および髄腔の中にカテーテルを配置することである。髄腔への注入は、脊髄カテーテルを、定流量ポンプまたはプログラム可能な可変流量ポンプのいずれかである植え込み型送達デバイスに接続することによって達成される。接続されたならば、医師は、ボーラス送達で滴定し、患者の鎮痛効果レベルをモニタすることにより、適切な薬物投与量を決定する。適切な投与量および送達が決定されたならば、送達システムリザーバが、セルフシール式セプタムを介する注入によって充填される。固定流量タイプのデバイスにおいては、リザーバが充填されるとき、デバイス中のガスチャンバを圧縮することによってポンプ動作が制御される。プログラム可能なポンプも類似のやり方で作動するが、流量は、植え込まれたデバイスに搭載されたマイクロ電子制御システムとの経皮的通信を介して調節されることができる。プログラム可能なタイプのシステムは、作動するためにバッテリパワーを必要とするが、定流量デバイスの動作は電流を必要としない。したがって、プログラム可能なデバイスは、必要に応じて流量を再考し、調節するために、また、バッテリ残量をモニタするために、医師による継続的なレビューを必要とする。バッテリ寿命が尽きると、バッテリを交換するために外科的処置が必要になる。
【0009】
製造者による規制および推奨事項は、髄腔内薬物送達システムが6ヶ月ごとに充填されることを要求するが、間隔は変動し得る。一般に、IDDSは、非常に費用効果的であることがわかっている。癌を除く慢性疼痛患者において、IDDSは、約2年で、従来の医学的管理よりも効果的になる。しかし、癌疼痛患者においては、痛みの動的な性質のせいで、IDDSはわずか3ヶ月で費用効果的になることができる。
【0010】
植え込み型の皮下定流量ポンプによる薬物の注入は、米国特許第3,731,681号(特許文献1)、米国特許第5,731,681号(特許文献2)、米国特許第6,852,106号(特許文献3)および米国特許第9,937,290号(特許文献4)によって教示されている。類似のアーキテクチャおよび機能性を利用する、送達カテーテルを備えたポンプ機構が開示されている。これらの植え込み型ポンプは、構成のとおりで有用ではあるが、いくつかの問題を抱えている。
【0011】
大部分の既存の植え込み型ポンプは、前腹壁のポケットへの外科的挿入を必要とする、いくぶん重く、嵩のあるデバイスであり、カテーテルは、腹壁の側面を横切りながら皮下を横方向にトンネル状に通されて、脊椎の基部に達し、髄腔に入る。したがって、嵩および重量を減らすために、より小さなサイズの植え込み型ポンプを有することが望ましい。時間の経過とともに発生し得るもう1つの有害事象が、ポンプの位置がずれ得ることであり、これが、カテーテル先端の位置に影響し、加えて、カテーテル先端がデバイスの遠位端または近位端からずれる、または移動するリスクを招く。重量およびサイズの減少は、より小さな手術部位および腹部ポケットを可能にし、それが、デバイス植え込みのための代替位置の範囲をより広くし、より大きなデバイスの皮下植え込みによる美観的悪影響を減らすであろう。より小さなインプラントデバイスは、より小さな組織ポケットに外科的に配置することができ、従来のより大きなデバイスには望ましくない解剖学的部位に配置することができる。植え込みに好ましい場所は、脊椎区域により近い部位である。この位置は、外科医がカテーテルトンネルの長さを減らすことを可能にし、それが、外科的組織切開ならびに結果的な外傷および手術時間を減らす恩恵をもたらす。また、しばしば「デッドスペース」と呼ばれる、カテーテルに収容される流体の量を減らすであろう。
【0012】
このように、植え込みポンプの望ましい特徴は、サイズおよび重量が減少するとともにカテーテル長が短縮するという特徴を含む。植え込みポンプのもう1つの望ましい特徴は、経皮的穿孔またはアクセスなしで、データおよび位置情報に関してデバイスに遠隔でインタロゲートする能力である。特に、デバイスの識別、アクセス履歴、植え込み日、リザーバ中の薬物残量が、デバイスに直接アクセスすることなく確認すべき有用なパラメータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第3,731,681号
【特許文献2】米国特許第5,731,681号
【特許文献3】米国特許第6,852,106号
【特許文献4】米国特許第9,937,290号
【発明の概要】
【0014】
本明細書には、植え込み髄腔内薬液注入ポンプのための装置設計およびそのようなデバイスを使用する方法が開示される。植え込み髄腔内薬液注入ポンプは、ガスチャンバ中の加圧下のガスが、シールされたハウジングに収容された、たとえば薬物および/または注入液を含む流体を収容するリザーバに力を加える結果として作動する。流体は、それがへこむようにガスによって加圧され、これが、流体を毛管からカテーテルに押し出し、さらに、脊髄腔中の注入部位に到達させる。貯蔵される流体を受けるのは、封じ込められた圧縮である。設計はさらに、最小限主義的なロープロファイルで軽量な構造を生じさせる、材料の嵩の減少を特徴とする。
【0015】
このデバイスの主な目的は、痛みを減らすための治療物質を提供することである。しかし、痙縮、糖尿病、癌などの病状を治療するための薬物送達用途を含む、デバイスの他の用途が同じく考慮される。
【0016】
特定の態様は、マイクロチャネルパネルまたは毛管路システムの形態の流量制御機構を提供する。マイクロチャネルパネルは、リザーバから流入する流体を受け、その流体をカテーテルに排出して、毛細流量制御を提供する。流量制御パネルは、マイクロチャネルを精密かつ繰返し精度の高いやり方で形成するために、微細機械加工および/または耐性マスキング技術によって形成されることができる。
【0017】
特定の局面は、ユーザが、植え込まれたポンプからの情報を中継するハンドヘルド型トランスポンダを介して、植え込まれたポンプの構造に埋め込まれたRFIDチップに含まれるデータを照会することにより、植え込まれたポンプに遠隔でインタロゲートすることを可能にする。トランスポンダは識別(ID)コードを送信し、IDコードは正しく、データ、待ち時間およびスループットであり、インプラント、スキャナおよびワイヤレスデータリンクの電磁両立性(EMC)性能と同調される。
【0018】
いくつかの局面においては、センサシステムが、たとえば、ベローズ型リザーバの最下部に取り付けられた二部型ホール効果センサを使用することにより、リザーバ容積状態を間接的に計測する。ホール効果センサの電機子部分がリザーバに付き、センサアセンブリのレシーバリーダチャネルがリザーバのハウジングに取り付けられる。
【0019】
いくつかの態様は、流体注入のための注入可能なセプタムを位置確認するための、皮膚を通して触知することができる触知リングを提供する。リングおよびリングに隣接するリザーバハウジングチャンバ部分は、体外検出システムによって検出可能である物質でできた検出材料を埋め込まれていることができる。検出のタイプは、病院環境で日常的に使用される任意の検出モード、たとえばX線撮影、超音波および磁気イメージングを含むことができる。
【0020】
また、いくつかの態様においては、送達カテーテルの不注意による穿刺または脱離に耐えるための強化カテーテルおよびカテーテル取り付け機構が提供される。
【0021】
リザーバハウジングおよびデバイスの他の構成部品には、MRIシステムに干渉しないポリマー材料を使用することができる。たとえば、柔軟なエラストマーブラダーがリザーバに使用され得、多様な適当な植え込み可能な材料、たとえばシリコーン、TPES、ポリウレタンおよび/またはPETGで構成され得る。リザーバハウジングの場合、より硬質の構造的生体適合タイプのポリマー、たとえばPEEK、UHMWPE、ポリアミド、ポリスルホンなどを使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の様々な態様を例示し、詳細な説明といっしょになって、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0023】
【
図1】ハウジングおよび弾性リザーバが閉じた静的満杯位置にある、植え込み型髄腔内薬物送達装置の一例の断面図である。
【
図2】切欠かれたカテーテルとともに示す、アセンブルされた植え込み型髄腔内薬物送達装置の一例の等角上面図および側面図である。
【
図3】ポンプ指標および識別情報を遠隔で取得するために使用される電子インタロゲーションシステムの概略図である。
【
図5】植え込まれた髄腔内薬物送達装置、強化カテーテルおよびポートリザーバに取り付けられたカテーテルの正面図および側面解剖図である。
【
図6】流量制御毛管路システムおよび該流量制御毛管路システムを製造する方法の説明図である。
【
図7】
図7A~Dは、植え込み型薬物送達システムの設計の説明図である。
【
図8】植え込み型薬物送達システムの一例の上面図および等角図である。
【
図9】
図9Aは、植え込み型薬物送達システムの一例の断面図である。
図9Bは、補充機構の一例の拡大断面図である。
【
図11】植え込み型薬物送達システムにおいて用いることができる弁機構の例を示す。
【
図12】デバイスの固定を強化するためにテクスチャ加工された底部を組み込む設計の例を示す。
【
図13】補充機構および補充ニードル設計の一例の動作を示す。
【
図14】
図14Aは、デバイスの流量を制御するために植え込み型薬物送達システムとともに用いることができる弁機構を示す。
図14Bは、弁機構の回転による、低流量から無流量への流量の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
図1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14および/または15を参照すると、本発明の態様の多様な斜視図、概略図、説明図および断面図が示されている。
【0025】
まず
図1を参照すると、植え込み型薬物送達システム(IDDS)アセンブリ100の断面図が示され、図中、ハウジング101は、薬物および/または注入液であることができる流体177をたとえばリザーバ104内に貯蔵する生体適合性装置である。ガスチャンバ110は、リザーバ104内に位置する、不活性ガスを収容する拡張可能なベローズ111であり、不活性ガスは、ガスポート112を介してベローズ111に充填され、ガスポートプラグ113によって永久的にシールされる。流体117は、ノンコアリング注射針115によってセルフシール式の穿孔可能なセプタム103を通してリザーバ中に入れられ、注入されると、リザーバ流入路108を通ってリザーバ104の中へと流れる。
【0026】
セプタム103を取り囲んで、触知リングを含む一段高いリム102があり、触知リングは、ニードルを位置確認し、ニードルを穿孔可能なセプタム103の中へと進めるために、触覚を使用して触知され得る。触知リングはまた、セプタムの機械的位置確認のために、外部の体外リーダに反応する位置センサ116および/または埋め込まれた材料を含むことができる。
【0027】
流体117の流れは、リザーバ流出路109を通過し、フィルタ114に入り、微細加工食刻された毛管路システム105に達し、出口カテーテル107の近位端に結合されている外部出口管106に達する経路をたどる。カテーテルは柔軟な強化カテーテルであり得る。
【0028】
IDDSアセンブリ100はまた、注入を受ける髄腔または髄腔内組織へとトンネル状に通されるカテーテル導管107を介する組織へのボーラス注入のための別個のインライン注入口119を含み得る。
【0029】
また、いくつかの態様においては、IDDS状態に関する埋め込まれた情報およびデータを中継するための、ハウジング101内に位置するRFIDチップ118が含まれる。
【0030】
図2は、IDDSアセンブリ200の等角上面図および側面図を提供する。ハウジング101、穿孔可能なセプタム103および隣接する触知リング102を含む、アセンブルされたIDDSの主要な外部構成部品が示されている。触知リングは、流体をIDDSの中に送達するために穿孔可能なセプタムの位置を案内するための位置センサ116を有し得る。流体は、その後、出口カテーテル107を介して、髄腔などの身体組織に送達され得る。ハウジング101上のいくつかの位置にある縫合穴201が、手術部位でIDDSを組織に固定するための取り付け点を提供し得る。また、
図2には、ボーラスポート119が示されている。
【0031】
図3は、リザーバ中の流体の量の状態を間接的に計測するために使用することができるセンサアセンブリ300の態様の詳細な切欠き図を提供する。センサの2つの状態301および302が示されている。センサは、不活性ガスを収容するガスチャンバ110を含む、シールされた拡張可能かつ折りたたみ可能なベローズ111を含む。301には、ベローズ111が拡張状態にあり、ガスチャンバ110がガスを充填されているリザーバ満杯状態が示されている。302には、ベローズ111が折りたたまれた状態にあり、ガスチャンバ110の不活性ガスが圧縮されているリザーバ空状態が示されている。ベローズリザーバセンサアーム303が、ベローズ111の底部に取り付けられ、センサアーム303がベローズ111の状態に関連する可動範囲を移動するときセンサアーム303の位置を感知するリニア位置センサ304と、近位側で位置合わせされ得る。ベローズ111の状態は、たとえばリザーバ満杯状態(ベローズが拡張し、ガスチャンバ110が不活性ガスを充填された状態301)からリザーバ空状態(ベローズが折りたたまれ、ガスチャンバ110中の不活性ガスが圧縮された状態302)への流体量の変化を示すために、リニアリーダストリップ304によって外部リーダ(図示せず)へと送信されることができる。
【0032】
図4は、植え込まれたIDDS100内のセンサから情報を取得することができるリモートトランスポンダおよびリーダの概略
図400である。リモートトランスポンダ/リーダはバッテリ駆動式であり得る。取得される情報は、パッシブRFIDチップに埋め込まれた情報および/またはリザーバ流体レベルを含み得る。リモートトランスポンダ/リーダはまた、IDDSのフローリストリクタを制御して、リザーバから組織への可変流量を提供し得る。
【0033】
図5は、薬物送達デバイス200に取り付けられ得る強化カテーテル502を示す一連の説明
図500である。薬物送達デバイスは、カテーテル近位部を介して完全長カテーテル501に結合され得、完全長カテーテルは、組織部位に位置する遠位先端503を有する。図示するように、IDDSは腹壁に取り付けられることができ、トンネル状に通されたカテーテル501は、その遠位先端503が脊髄腔中に位置するように配置され得る。
【0034】
図6は、たとえばMEMSまたはPDMS複製成形を使用して、微細加工食刻された毛管路システムを製造し得るプロセス601を示す。いくつかの態様においては、チャネル603がその上に食刻または形成される膜基板602、近位側で毛管路システムに結合された毛管入口604、および遠位側で毛管路システムに結合された毛管出口605でできた毛管ベッド構造が製造される。
【0035】
図7A~7Dは、植え込み型薬物送達システムの設計の説明図を提供する。設計は、経皮供給口102/103、薬物リザーバ104および標的部位に流体接続することができる送達導管107を含む。デバイスのボディは、様々な形状および寸法にあることができ、リザーバを充填または補充するためにニードルまたは他のデバイスを誘導するための凹部を有することができる。
【0036】
図8は、植え込み型薬物送達システムの一例の上面図および等角図である。この特定の態様において、ハウジング(またはボディ)101は、容易な取り扱いのために構成され、供給口103に通じる凹部を含み、供給口はニードル115によって穿孔することができる。特定の局面において、本明細書に記載される態様のいずれも、植え込みの前後に容易に把持可能であるための人間工学的設計801を有するように構成されたデバイスのハウジングを有することができ、その設計は、デバイスハウジングの1つまたは複数の側面の外側に、デバイスを扱う人の指を受けるための凹みまたはグリップを含む。デバイスは、髄腔内送達ルートを提供するカテーテル107を伴って構成されている。植え込み型薬物送達システムは、縫合のための内側ループ802を有することができる。
【0037】
図9Aは、植え込み型薬物送達システムの一例の断面図である。ボディの凹部は、補充口901およびその弁機構902へのアクセスを提供するように示されている(さらなる詳細に関しては、
図9Bを参照)。弁機構902は、薬物補充路903を介してリザーバ/ベローズ903に流体接続され、リザーバ904を送達構成部品905に流体接続する。第一の構成においては、ガスがベローズを満たす間、送達される溶液がボディの容積に収容される。第二の構成においては、送達される溶液がベローズに収容され、ガスがデバイスボディの容積を満たす。補充口901は穿孔可能なセプタムを含むことができる。ボディは、希ガスまたは類似のガスで満たすことができるキャビティまたはボディ容積906を形成する。特定の局面において、キャビティ906は、デバイスの動作をモニタ、調節または制御するための、RFIDセンサ907および/または他の電子機器を含むことができる。ボディキャビティはまた、デバイスによって送達される薬物のためのリザーバであるベローズ904を含む。
【0038】
図9Bは、用いることができる弁機構の一例を示す。この局面においては、ステムによって接続された上部と底部を有する2ヘッドプランジャ908である。使用中、上部は、補充口901からリザーバ904への流体経路909を遮断し、底部は、リザーバ904から送達構成部品905への流れを許すように配置される。ステムは、充填中には押し下げられ、充填が完了または停止したならばプランジャの動作位置を復元することができるばね機構910を伴って構成されることができる。特定の態様において、送達される薬物は、ハウジングのリザーバ中に貯蔵され、他の態様において、薬物は、ベローズの内側に形成されたキャビティ中に貯蔵されることができる。また、薬物がハウジングのリザーバ中に貯蔵される場合、ガスをベローズに導入することができ、あるいはまた、薬物がベローズ中に貯蔵される場合、ガスをハウジングのリザーバに導入することができる。
【0039】
図10A~10Dは、補充機構の様々な態様の説明図である。補充適合性のために、弁には様々な設計が想定されている。弁機構は、ベローズまたは薬物容積が補充されている間、薬物送達ラインが一時的に遮断されることを可能にする。これは、弁をねじる(
図10C、10D)、送達ラインを圧迫する(
図13を参照)、および/またはバネ式弁を組み込む(
図10A、10B)ことによって達成することができる。補充適合性は、補充中に薬物の大量投与を生じない弁設計によって改善することができる。補充機構の特定の局面は、補充中に補充ニードルの先端を捕捉する機構を含むことができる。
図13は、流量を調節するためのピンチ機構を提供する補充機構および補充ニードル設計を示す。
【0040】
図11は、使用中および補充中に植え込み型薬物送達システムにおいて用いることができるねじれ弁機構の例を示す。特定の局面において、補充路は、送達経路が閉じている間、薬物を供給するニードルまたは類似の器具に対して開いている。充填が完了し、ニードルまたは類似の器具が取り除かれると、補充路を閉じ、次いで送達路を開くことができる。特定の局面において、補充機構はばね式であり、補充が完了したのち送達位置に戻る。特定の局面において、流路は、弁部材を回す、もしくはねじること、または弁部材の垂直運動、またはカテーテルチャネルの狭窄/弛緩により、開閉することができる。
【0041】
図12は、デバイスの固定を強化するためにテクスチャ加工された底部1201を組み込む設計の一例を示す。本明細書に記載されるデバイスは、デバイスの周囲のカテーテルラインのスプール巻きを可能にするための特徴/リップ1202を含むことができ、これは
図12に示され、本明細書に記載される任意のデバイスの設計において実現することができる。加えて、展開されたときデバイスを固定するのに役立つように、ボディは、1、2、3、4またはより多くの縫合ループを伴って構成されることができる。縫合ループは、ボディの角部をはじめとする、デバイス上の様々な位置に配置されることができる。含めることができるもう1つ特徴が、デバイスの動きを減らすための、デバイス上の1つまたは複数のテクスチャ加工された面の包含である(2つ変形態様(グリッドまたはリブの変形態様)が
図13に示されている)。
【0042】
図14A~14Bは、デバイスの流量を制御するために植え込み型薬物送達システムとともに用いることができる弁機構を示す。様々な流量のための弁設計は、オン/オフ(バイナリ)弁、異なる直径のフロースルー穴を有する弁および/または押し下げられたとき弁のねじれ運動を誘発するためのスコアリング/ライフリング(施条)を有する弁を含む。
【0043】
図15は、カテーテル結合設計の例を示す。特定の局面において、IDDSは、
図15に示すように、カテーテルラインの端部にチューニング可能な流量制御弁を含むことができ、その場合、標的への導管との接続部の直径を減らして流量を制限することができる。
【0044】
本開示は、特定の態様に関して記載されてきたが、本明細書に開示される装置および同装置を使用する方法は、当業者によって他の構成へと修飾または変更され得ることが理解されるであろう。したがって、本開示は、広く解釈されるべきであり、添付の特許請求の範囲の範囲および精神によってのみ限定されるべきである。
【0045】
符番表
以下の表は、本明細書中で使用される名称または特徴の符番をリストする。
【国際調査報告】