(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】材料の表面ヘイズを検出するための方法およびセットアップ
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20230809BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20230809BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
G01B11/30 102Z
H01L21/66 J
G01N21/956 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529773
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 CN2021140282
(87)【国際公開番号】W WO2022267401
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】202110706036.1
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515267736
【氏名又は名称】ベイジン トンメイ クリスタル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ユ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ジジェン
(72)【発明者】
【氏名】リ、ハイミアオ
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
4M106
【Fターム(参考)】
2F065AA49
2F065BB03
2F065GG04
2F065GG21
2F065HH04
2F065HH12
2F065JJ01
2F065JJ08
2F065LL22
2F065LL26
2F065MM16
2G051AA51
2G051AB03
2G051AB07
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2G051BA10
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2G051CA02
2G051CB05
2G051DA08
4M106AA01
4M106BA05
4M106CA18
4M106CA21
4M106CA24
4M106DB02
4M106DB03
4M106DB08
(57)【要約】
本発明は、材料の表面ヘイズを検出する方法であって、目視可能な表面欠陥のない材料を特定するために材料に対して行われる任意の予備検査と、材料の表面ヘイズを検出するための表面ヘイズ検査と、を含み、表面ヘイズ検査セットアップにおいて、光フィルタモジュールが、検出器への光路における材料のフォトルミネセンス信号をフィルタリングして、フォトルミネセンス信号が検出器に検知されるのを回避するよう構成される、材料の表面ヘイズを検出する方法を提供する。本発明は、さらに、材料の表面ヘイズを検出するためのセットアップを提供する。本発明による表面ヘイズの検出方法とセットアップを用いることにより、材料の表面ヘイズ値および/または分布を正確に取得することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の表面ヘイズを検出する方法であって、
任意選択で、視認可能な表面欠陥がない材料を特定するために前記材料に対して行われる予備検査と、
前記材料の前記表面ヘイズを検出するための表面ヘイズ検査と
を備え、
光フィルタモジュールは、表面ヘイズ検査セットアップにおいて、検出器への光路にある前記材料のフォトルミネセンス信号をフィルタリングして、前記フォトルミネセンス信号が前記検出器で検出されるのを回避するように構成される、
方法。
【請求項2】
前記表面ヘイズ検査が、任意の波長のレーザ、好ましくは660nm以下、より好ましくは490nm以下の波長の単波長レーザであってよい入射光を前記材料に照射することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルタリングにより、フォトルミネセンス波長未満の波長を有する光、好ましくは前記フォトルミネセンス波長から20nmを引いた波長以下の波長を有する光を前記フォトルミネセンス信号の検出で検出できるようにする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタリングにより、入射光波長±20nmの範囲の波長、好ましくは前記入射光波長±10nmの範囲の波長、より好ましくは前記入射光波長と等しい波長を有する光を前記フォトルミネセンス信号の検出で検出できるようにする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記材料は表面が平滑な任意の材料であり、好ましくは、前記材料は半導体材料、ガラス、またはセラミックであり、より好ましくは、前記材料は半導体ウエハであり、さらにより好ましくは、前記半導体ウエハは1.12~1.53eV、好ましくは1.35~1.43eVのバンドギャップを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記半導体ウエハが、化合物半導体ウエハ、好ましくは直接バンドギャップ半導体ウエハ、より好ましくはInPウエハまたはGaAsウエハから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
材料の表面ヘイズを検出するためのセットアップであって、
前記材料を保持するためのサンプルホルダを有する材料装填装置と、
入射光を照射するレーザ源を有するレーザスキャン装置であって、好ましくは、前記入射光は任意の波長のレーザ、好ましくは660nm以下、より好ましくは490nm以下の波長の単波長レーザであってよい、レーザスキャン装置と、
検出器を有する信号検査装置であって、前記検出器は、好ましくは、280~1100nmの波長の光信号に応答する検出器、好ましくは、可視光検出器である検出器、より好ましくは、Si検出器または集積型検出器である、信号検査装置と、
前記信号検査装置によって検出された前記光信号を解析するための、ソフトウェアを有するデータ解析装置と
を備え、
前記材料の表面ヘイズを検出するための前記セットアップは、前記材料のフォトルミネセンス信号をフィルタリングするための光フィルタモジュールをさらに備え、前記光フィルタモジュールは、検出されるべき前記光信号の伝搬方向において前記検出器の前に構成される、
セットアップ。
【請求項8】
前記光フィルタモジュールは、フォトルミネセンス波長未満、好ましくは前記フォトルミネセンス波長から20nmを引いた波長以下の波長を有する光を選択的に透過させることが可能な光学部材を有する、請求項7に記載のセットアップ。
【請求項9】
前記光フィルタモジュールは、入射光波長±20nmの範囲の波長、好ましくは前記入射光波長±10nmの前記範囲の波長、より好ましくは前記入射光波長と等しい波長を有する光を選択的に透過させることが可能な光学部材を備える、請求項7に記載のセットアップ。
【請求項10】
前記光フィルタモジュールは、フィルタ、フィルタコーティングおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタコーティング、バンドパスフィルタコーティングおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、前記光フィルタモジュールは、バンドパスフィルタ、バンドパスフィルタコーティングまたはそれらの組み合わせを備え、好ましくは、前記光フィルタモジュールは、個々のモジュール、または光学検出器の表面上のフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせであってよい、請求項7~9のいずれか一項に記載のセットアップ。
【請求項11】
前記光フィルタモジュールは、50%を超える、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の信号光透過率を有する、請求項7~10のいずれか一項に記載のセットアップ。
【請求項12】
前記材料の表面ヘイズを検出するための前記セットアップは、表面が平滑な任意の材料を検出するために使用され、前記材料は、好ましくは、半導体材料、ガラス、またはセラミックであり、前記材料は、より好ましくは、半導体ウエハであり、前記半導体ウエハは、より好ましくは、バンドギャップが1.12~1.53eV、好ましくは1.35~1.43eVである半導体材料でできたウエハ、好ましくは単原子半導体または化合物半導体のウエハ、好ましくは直接バンドギャップ半導体材料のウエハ、より好ましくはInPまたはGaAsのウエハである、請求項7~11のいずれか一項に記載のセットアップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料検出の分野に関する。より具体的には、本発明は、材料の表面を検出するための方法およびセットアップに関し、より詳細には、材料の表面ヘイズを検出するための方法およびセットアップに関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の発展に伴い、材料(半導体ウエハ、ガラス、セラミックスなど)の表面平滑性が強く必要とされる分野がある。例えば、電子・通信分野では、半導体ウエハの表面品質に対する要件がよりますます厳しさを増している。1950年代に電子部品が作られて以来、半導体材料は現代の生産と日常生活に広く使用されており、その重要性は自明である。半導体デバイスの微細化および高集積化が続くに伴い、基板の表面状態がデバイスの特性に与える影響はますます大きくなっている。特に、基板の表面粗さが大きいと、キャリア移動度に影響を与えるため、その結果、移動度が低下し、遅延時間が必要以上により長くなる。さらに、基板の表面粗さが大きいと、表面でのキャリアの再結合速度もまた増加するため、非平衡キャリアの寿命が短くなり、デバイスの性能も低下する。電子デバイスのピークパフォーマンスを最大限に引き出すためには、基板の表面状態を良好に保つことが重大であることは明らかである。
【0003】
材料表面の「表面ヘイズ」(または「ヘイズ」)とは、材料(例えば、ウエハ)の表面モフォロジー(すなわち、微細な凹凸)や表面または表面近くに高濃度で存在する不完全性に起因する無指向性の光散乱現象のことを指す。一般に、「表面ヘイズ」は、表面粒子径の検出限界の下方のスケールでの凹凸品質を特徴付けるために使用される。基板など表面が平滑な材料の製造プロセスでは、表面ヘイズの発生は避けられない。表面ヘイズは、材料の表面の微細な凹凸に起因するもので、材料の性能に直接影響を与え、例えば、基板のエピタキシャル品質を損ない、その結果、得られるエピタキシャル層やデバイスの品質に影響を与えることになる。したがって、生産時には、材料の表面ヘイズ分布や値を正確に取得することが、材料の表面品質を管理および向上させるために最も重要である。
【0004】
現在、表面検査技術は主にレーザ散乱に基づくものであり、そのような技術に基づく方法またはセットアップにより、微細な表面特性を検出することができる。このような特性を検査する場合、被検査材料の表面にレーザをある角度で照射し、同時に被検査試料または検出器を高速回転させ、検出器であらゆる方向に散乱した光を収集し、最後に収集した光信号を解析して材料の表面特性情報を取得する。この方法は、材料表面のパーティクルや比較的粗さの大きな材料の検出には非常に効率的であるが、表面ヘイズなどの微小な粗さを効果的かつ正確に検出することは不可能である。これは、先行技術における表面ヘイズの信号検出が、表面吸収などの様々な要因によってしばしば妨害され、表面ヘイズ検査結果の精度に影響を与えることに起因する。正確な表面検査を達成するために、表面ヘイズの信号を正確に取得することは、常に困難であった。
【0005】
上述のように、表面ヘイズを検出するために、既存の表面検査方法やセットアップを使用する場合、問題が生じる可能性がある。従来の表面検査方法またはセットアップは、主に材料(ウエハなど)の表面にある粗さ(例えば、パーティクル)を検出するために設計されている。10-6(ppm)オーダーの値で表される表面ヘイズなどの微細な凹凸の信号は、従来の測定器ではノイズ信号との区別がたいてい困難である。従って、表面ヘイズの信号が捕捉されていても、ノイズ信号が排除されていないため、検出結果は「誤った」表面ヘイズとなる可能性がある。このような検査結果は、ウエハ表面の品質管理上、ほとんど参考にはならない。
【0006】
本発明者らは、従来の表面検査装置を用いた材料、特に化合物半導体ウエハの表面ヘイズ検査は、有効で重要な基準がない可能性があることを見出した。先行技術の方法では、レーザ照射下での半導体材料のフォトルミネセンスに起因する表面干渉が考慮されていないためである。
【0007】
また、本発明者らは、材料の進歩に伴い、既存の検査セットアップを用いて材料表面の表面ヘイズ検査を行う場合、材料のフォトルミネセンスが正確な検出に影響を与える無視できない要因の1つとなる可能性があることを見いだした。
【0008】
フォトルミネセンスとは、外部の光源の照射により、材料がエネルギーを吸収して励起され、発光する現象を指す。半導体のフォトルミネセンスは、次のように作用する。不純物のない半導体材料の場合でも、材料の価電子帯は電子で満たされており、熱や光に起因する励起で価電子帯の上部にある電子が伝導帯に励起され、固有伝導となる。その後、伝導帯の電子が伝導帯から格子緩和を経て価電子帯に自発的に移行し、同時に、特定波長の光子が放出される。以上が半導体材料のフォトルミネセンスが起こるプロセスである。セラミックスやガラス(例えば、発光材料をドープした発光ガラスなど)の場合、光子を吸収した後、同様のフォトルミネセンスプロセスもまた存在する。
【0009】
当技術分野において周知のように、材料のフォトルミネセンス波長は、材料それ自身のバンドギャップサイズによって決まり、それらの固有の関係は以下の式(I)で記述される。
λem=1240/Eg (I)
ここで、λemは、フォトルミネセンス波長であり、nmで表される。Egは材料のバンドギャップサイズで、eVで表される。
【0010】
上式において、バンドギャップEgは、
図1に示すように、材料に依存する。実際には、測定する材料が一旦決まれば、この式でフォトルミネセンス波長を算出することができる。
【0011】
シリコン(Si)(バンドギャップ1.12eV)、ゲルマニウム(Ge)(バンドギャップ0.67eV)などの間接バンドギャップ半導体材料は、フォトルミネセンスを発生することが不可能であるため、元素系半導体材料の代表としてみなされないことが見出された。
【0012】
しかしながら、本発明者らは、化合物半導体材料、特に、ガリウムヒ素(GaAs)(バンドギャップ1.42eV)、リン化インジウム(InP)(バンドギャップ1.35eV)などのIII-V族化合物半導体を含む直接バンドギャップ半導体材料の場合、一般の検出条件の下では、そのような材料のフォトルミネセンスが表面ヘイズ検査に与える影響は無視できないことを見いだした。直接バンドギャップ半導体は、光遷移プロセスにおいて初期状態と最終状態の波動ベクトルが変わらないと考えられ、発光効果が高く、そのフォトルミネセンス波長が従来のSi検出器(またはシリコン光検出器)の感度範囲に正確に入るため、ルミネセンス効果が表面ヘイズ検査に著しく影響すると考えられる。同じように、セラミックスやガラス(例えば、発光材料をドープしたガラスなどの発光ガラス)の場合にもまた、上記のような問題が生じる可能性がある。
【0013】
化合物半導体は、アナログやデジタルの携帯電話、ポケットベル(登録商標)、基地局、無線ローカルエリアネットワーク(無線LAN)、衛星通信、マイクロ波通信など、多くの分野で広く使用されている。5Gなどの通信技術の登場により、これらの製品の応用価値は増加し続けている。そのような材料でできたウエハでは、品質管理がより重要な役割を果たす。
【0014】
しかしながら、当該分野において、材料(例えば、ウエハ、特に化合物半導体ウエハ)の表面ヘイズを正確に検出するための有効な方法が急速に必要となっている。
【0015】
CN111272773Aは、半導体ウエハの表面欠陥を検出するための高解像度システム、およびこれに関連するシフト照明に基づく欠陥検査方法とセットアップを開示している。しかしながら、これは、半導体の表面パーティクルを検出することを目的としており、表面ヘイズを検出するものではない。
【0016】
CN105870033Aは、研磨された半導体ウエハの表面スクラッチを検出する方法を開示し、半導体ウエハの表面にパルスレーザを照射し、ウエハ表面のスクラッチの迅速な検出を達成するためにエネルギー損傷閾値を規定している。この方法は、スクラッチの信号強度がパーティクルと同じオーダーであるため、その信号を容易に捕捉することができる。しかしながら、表面ヘイズ検査については言及していない。
【0017】
CN112461861Aは、研磨された単結晶シリコンウエハの表面品質を評価する方法を開示しており、その中で、表面ヘイズ検査は、当技術分野において一般に使用されている散乱光とレーザ発光との光強度の比によって特徴付けられる。それにもかかわらず、検出器で検出される散乱光の光信号が完全に表面ヘイズに由来していない可能性(つまり、検出される光信号にまだ干渉信号が含まれている可能性)を考慮せず、主に研磨した単結晶シリコンウエハを対象としている。したがって、この発明特許に開示されたような方法では、正確な表面ヘイズ検査、特に化合物半導体ウエハまたは直接バンドギャップ半導体ウエハの正確な表面ヘイズ検査にはまだ欠点がある。
【0018】
以上の解析から、材料(半導体基板、特に化合物半導体基板や直接バンドギャップ半導体基板など)の表面ヘイズ分布および/または値を正確に検出するために、既存の一般的な検査方法を使用すると、材料の表面ヘイズ分布および/または値の正確な結果を取得できないという問題が生じる可能性がある。
【0019】
本発明者は、材料の表面ヘイズ特性が適格であるか否かの評価基準は、当該分野における材料の異なる用途に応じて変化するが、干渉信号に起因して、検出された表面ヘイズ分布および値が材料表面の実際の条件よりも高くなることがあることや、表面ヘイズの実際の条件(特に表面ヘイズの低い場合)が干渉信号によってマスクされて検出不能なことがあり、そのような場合、表面ヘイズ検査によって得られる結果は実際には「誤って」いることを見出した。あるいは、このような誤った結果によって、検査材料が許容不可とみなされることがある。したがって、このような検査結果は、材料の品質管理上、重要な基準とはならない。さらに、このような検査結果は、前記問題の発生源をトレースする際に何の参考にもならない。
【0020】
そのため、正確な表面ヘイズ分布および/または値を取得するためには、材料表面ヘイズ(その分布および/または値を有する)を検出する方法やセットアップに改善を加える必要がある。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、先行技術の上記欠点の1つまたは複数を克服することを目的とし、材料の表面ヘイズを検出するための改善された方法およびセットアップを提供する。
【0022】
本発明の一態様は、材料の表面ヘイズを検出するための方法を提供する。この方法は、目視可能な表面欠陥がない材料を特定するために前記材料に対して行われる任意の予備検査と、前記材料の前記表面ヘイズを検出するための表面ヘイズ検査とを含む。
【0023】
光フィルタモジュールは、表面ヘイズ検査セットアップにおいて、検出器までの光路にある材料のフォトルミネセンス信号をフィルタリングし、フォトルミネセンス信号が検出器で検出されるのを回避するように構成されている。
【0024】
いくつかの実施形態において、表面ヘイズ検査は、材料に入射光を照射することを含み、入射光は、任意の波長のレーザであってもよく、好ましくは、≦660nm、より好ましくは≦490nmの波長を有する単波長レーザである。
【0025】
いくつかの実施形態において、フィルタリングは、信号検査が、フォトルミネセンス波長未満の波長を有する光、好ましくはフォトルミネセンス波長から20nmを引いた値以下の波長を有する光を検出することを可能にする。
【0026】
いくつかの実施形態において、フィルタリングにより、入射光波長±20nmの範囲の波長、好ましくは入射光波長±10nmの範囲、より好ましくは入射光波長と等しい波長を有する光が信号検出工程で検出されることが可能になる。
【0027】
いくつかの実施形態において、材料は表面が平滑な任意の材料であり、好ましくは、材料は半導体材料、ガラス、またはセラミックであり、より好ましくは、材料は半導体ウエハであり、さらにより好ましくは、半導体ウエハは1.12~1.53eV、好ましくは1.35~1.43eVのバンドギャップを有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、半導体ウエハは、化合物半導体ウエハ、好ましくは直接バンドギャップ半導体ウエハ、より好ましくはInPウエハまたはGaAsウエハから選択される。
【0029】
本発明の別の態様は、材料の表面ヘイズを検出するためのセットアップを提供する。このセットアップは、前記材料を保持するためのサンプルホルダを有する材料装填装置と、入射光を照射するレーザ源を有するレーザスキャン装置であって、好ましくは、前記入射光は任意の波長のレーザ、好ましくは660nm以下、より好ましくは490nm以下の波長の単波長レーザであってよい、レーザスキャン装置と、検出器を有する信号検査装置であって、前記検出器は、好ましくは、280~1100nmの波長の光信号に応答する検出器、好ましくは、可視光検出器である検出器、より好ましくは、Si検出器または集積型検出器である、信号検査装置と、前記信号検査装置によって検出された前記信号を解析するための、ソフトウェアを有するデータ解析装置とを備える。
【0030】
ここで、材料の表面ヘイズを検出するためのセットアップは、フィルタ、フィルタコーティング、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される光フィルタモジュールをさらに備え、好ましくは、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタコーティング、バンドパスフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、光フィルタモジュールは、バンドパスフィルタ、バンドパスフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせを備え、好ましくは、光フィルタモジュールは、別個のモジュール、または光検出器の表面上の1つまたは複数のフィルタコーティングであってもよく、光フィルタモジュールは、材料のフォトルミネセンス信号のフィルタリングに使用され、光フィルタモジュールは、検出される光信号の伝搬方向において、検出器の前に配置される。
【0031】
いくつかの実施形態において、光フィルタモジュールは、フォトルミネセンス波長未満、好ましくは(フォトルミネセンス波長-20nm)以下の波長を有する光を選択的に透過させることが可能な光学部材を備える。
【0032】
いくつかの実施形態において、光フィルタモジュールは、入射光波長±20nmの範囲の波長、好ましくは入射光波長±10nmの範囲の波長、より好ましくは入射光波長と等しい波長を有する光を選択的に透過することが可能な光学部材を備える。
【0033】
いくつかの実施形態において、光フィルタモジュールは、フィルタ、フィルタコーティング、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタコーティング、バンドパスフィルタコーティング、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、光フィルタモジュールは、バンドパスフィルタ、バンドパスフィルタコーティング、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、光フィルタモジュールは、分離モジュール、または光学検出器の表面のフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、光フィルタモジュールは、>50%、好ましくは≧95%、より好ましくは≧99%の信号光透過率を有する。
【0035】
いくつかの実施形態において、材料の表面ヘイズを検出するためのセットアップは、滑らかな表面を有する任意の材料を検出するために使用され、好ましくは、材料は、半導体材料、ガラスまたはセラミックであり、より好ましくは、材料は、半導体ウエハであり、より好ましくは、半導体ウエハは、1.12~1.53eV、好ましくは1.35~1.43eVのバンドギャップを有する半導体材料でできたウエハ、好ましくは単原子半導体または化合物半導体でできたウエハ、好ましくは直接バンドギャップ半導体材料でできたウエハ、より好ましくはInPまたはGaAsでできたウエハである。
【0036】
本発明の方法とセットアップにより、表面ヘイズ検査において、材料のフォトルミネセンスに起因する干渉を除去または低減することで、分布および/または値に関して信頼でき、かつ正確な表面ヘイズ検査が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】結晶性材料のエネルギーバンドを示す模式図である。
【
図3】本発明に記載の材料の表面ヘイズを検出するためのセットアップの模式図であり、各番号は以下の部材のうちの1つを指定する。1:レーザ源、2:静電チャック、3:(静電チャック2上に載せた)検査される材料、4:光フィルタモジュール、5:検出器、6:入射信号光、7:検出される信号光、8:データ解析装置。
【
図4】実施例1に示すように、本発明の光フィルタモジュールを用いて、N型InP(硫黄ドープ)ウエハに対して行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図5】実施例1に示すように、N型InP(硫黄ドープ)ウエハに対して、光フィルタモジュールを使用せずに行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図6】実施例2に示すように、本発明の光フィルタモジュールを用いて、N型InP(硫黄ドープ)ウエハに対して行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図7】実施例2に示すように、N型InP(硫黄ドープ)ウエハに対して、光フィルタモジュールを用いずに行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図8】実施例3に示すように、本発明の光フィルタモジュールを用いて、Un型InP(ノンドープ)ウエハに対して行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図9】実施例3で示したUn型InP(ノンドープ)ウエハの表面ヘイズ検査を光フィルタモジュールを使用せずに行った結果を示す。
【
図10】実施例4に示すように、本発明の光フィルタモジュールを用いて、N型GaAs(シリコンドープ)ウエハに対して行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図11】実施例4に示すように、N型GaAs(シリコンドープ)ウエハに対して、光フィルタモジュールを使用せずに行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図12】実施例5に示すように、本発明の光フィルタモジュールを用いて、N型InP(硫黄ドープ)ウエハに対して行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図13】実施例5に示すように、N型InP(硫黄ドープ)ウエハに対して、光フィルタモジュールを使用せずに行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図14】実施例6に示すように、本発明の光フィルタモジュールを用いて、N型InP(硫黄ドープ)ウエハに対して行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図15】実施例6に示すように、N型InP(硫黄ドープ)ウエハに対して、光フィルタモジュールを使用せずに行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図16】実施例7に示すように、本発明の光フィルタモジュールを用いて、N型InP(硫黄ドープ)ウエハに対して行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図17】実施例7に示すように、光フィルタモジュールを使用しないN型InP(硫黄ドープ)ウエハに対して行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図18】実施例8に示すように、本発明の光フィルタモジュールを用いて、N型InP(硫黄ドープ)ウエハに対して行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【
図19】実施例8に示すように、N型InP(硫黄ドープ)ウエハに対して、光フィルタモジュールを使用せずに行った表面ヘイズ検査の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について詳細に記述する。なお、以下の実施形態は例示的に過ぎず、本発明を限定するものとして解釈してはならない。本発明の保護範囲は、請求項のみによって規定される。また、本発明の実施において、以下の実施形態で記述したすべての機能が必ずしも含まれるとは限らない。さらに、本発明の文脈では、これらの特徴の複数の組み合わせがあり、一般的な定義と好ましい定義は互いに組み合わせることが可能である。そのような組み合わせによって形成される新しい技術的解決策もまた、本開示に包含される。
【0039】
図2に示すように、本発明の一態様は、材料の表面ヘイズを検出するための方法を提供する。この方法は、以下の表面ヘイズ検査のために目視可能な表面欠陥がない材料を特定するために前記材料に対して行われる任意の予備検査と、前記材料の前記表面ヘイズを検出するための表面ヘイズ検査とを含む。
【0040】
ここで、光フィルタモジュールは、表面ヘイズ検査セットアップにおいて、検出器への光路における材料のフォトルミネセンス信号をフィルタリングし、フォトルミネセンス信号が検出されるのを回避するように構成される。
【0041】
いくつかの実施形態において、表面ヘイズ検査は、表面ヘイズ検査セットアップを介して実行される。表面ヘイズ検査セットアップには、光フィルタモジュールが備わっており、材料のフォトルミネセンス信号をフィルタリングすることができるが、目的の信号の検出には影響を与えない。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「表面ヘイズ」(または「ヘイズ」)は、高濃度の表面または表面の近くの表面トポグラフィ(すなわち、微小な粗さ)および不完全性に起因する無方向性光散乱事象を指す。一般的に「表面ヘイズ」は、表面パーティクルの検出限界以下のスケールの表面の凹凸状態を記述するのに使用される。したがって、(予備検査で)表面粒度検出に合格した試料のみが、表面ヘイズのスキャンおよび検出の対象となる。ヘイズの値や分布は、材料表面の微細な凹凸の度合いを反映している。
【0043】
いくつかの実施形態において、材料は、半導体材料、ガラス、またはセラミックである。いくつかの実施形態において、好ましくは、材料は、半導体ウエハ、特に、洗浄および乾燥された半導体ウエハである。いくつかの実施形態において、ガラスは発光性であり、好ましくは発光材料が添加されたガラスである。
【0044】
本明細書で使用される「ウエハ」という用語は、半導体材料または非半導体材料から形成された基板(エピタキシャル層を含むまたは含まない)を指す。ウエハの例としては、単結晶シリコン、単結晶ゲルマニウム、ガリウムヒ素、またはリン化インジウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ウエハは基板(すなわち、ベアウエハ)である。また、いくつかの実施形態において、ウエハは、基板上に形成された異なる材料の1つまたは複数の層を含んでもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、半導体ウエハは、半導体基板である。他の実施形態において、半導体ウエハはまた、エピタキシャルウエハであってもよい。
【0046】
本明細書で使用される「基板」という用語は、特定の格子面を持ち、電気的、光学的、機械的特性が適切な清浄な単結晶ウエハを指し、このウエハはその上にエピタキシャル層を成長させるために使用されるものである。
【0047】
いくつかの実施形態において、半導体ウエハは、フォトルミネセンス特性を有する。
【0048】
本明細書で使用される「予備検査」という用語は、ウエハ表面の粒度検査またはチェックを指す。予備検査は、当技術分野において一般的に知られている様々な方法またはセットアップによって行うことができる。いくつかの実施形態において、予備検査は、光アシスト検査である。
【0049】
本明細書で使用される「光アシスト検査」という用語は、高強度光の下でウエハ表面を視覚的に確認することを指す。
【0050】
いくつかの実施形態において、予備検査に使用される光源の輝度は、当技術分野において検査に使用される従来の輝度範囲内に入る。好ましくは、輝度は300,000ルクス以上である。より好ましくは、輝度が400,000ルクス以上であることである。
【0051】
本明細書で使用される「輝度」という用語は、単位面積あたりに受ける可視光の光束、すなわち光の強度をルクス(lx)で表したものを指し、物体表面が照らされている光強度および/または程度を示すのに使用される物理量である。
【0052】
半導体ウエハの場合、ウエハ表面の過度な粗さは、小さな局所的な光散乱(表面ヘイズを有する)の検出に影響を与えることが当技術分野において知られている。この予備検査は、最終製品(すわなち、研磨、洗浄、乾燥等の処理が施されたウエハ)から大きな欠陥(例えば、目視可能な欠陥)のない半導体ウエハを選択し、さらに表面ヘイズを検出するために行われ、これにより、ウエハ品質をさらに向上させることができる。本願では、予備検査を行い、目視可能な表面欠陥のない材料を選択または特定し、その材料をさらに表面ヘイズについて検出する。換言すると、目視可能な表面欠陥があるウエハは直接不合格とされ、表面ヘイズ検出はさらに行われないことになる。
【0053】
本明細書で使用される「目視可能な欠陥」という用語は、高強度光下で目視可能なウエハ表面の欠陥、例えば、スクラッチ、化学残留物、オレンジピール状欠陥、輝点、パーティクル、ツインラメラ、エッジブレイク、クラック、浅い穴、ナイフマーク、スジ、コロージョンピット、汚れ、研磨不良部分、マイクロプロトルージョンなどを指す。したがって、目視可能な表面欠陥を有しない材料(すわなち、半導体ウエハ)とは、その表面に上記のような欠陥が見られないことを意味する。
【0054】
本明細書で使用される「洗浄」という用語は、材料(例えば、ウエハ)の表面に付着した不要な残留物を除去することを指す。
【0055】
いくつかの実施形態において、予備検査は任意である。いくつかの実施形態において、予備検査は行われない。いくつかの実施形態において、セラミックやガラスなどの一部の材料については、予備検査工程を省略してもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、本発明の方法によれば、検査される材料が半導体ウエハである場合、予備検査の前に、ウエハを洗浄または乾燥するなどの追加の工程も含まれる。これらの工程は、当技術分野における従来の方法および装置を用いて実施することができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、表面ヘイズ検査に使用されるセットアップは、当技術分野において一般に使用される表面検出セットアップであってもよい。好ましくは、表面ヘイズ検査は、KLAサーフスキャン、KLAキャンデラシリーズまたはUnity Lightspeed検査システムなど、当技術分野において一般に使用されるウエハ表面検出システムを使用して行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
いくつかの実施形態において、表面ヘイズ検査は、検出されるウエハに入射光を照射することを含み、この入射光は、ウエハ表面検出のために当技術分野において一般に使用されている波長を有するレーザであってもよい。いくつかの実施形態において、入射光は短波長レーザである。いくつかの実施形態において、入射光は、スペクトルの赤色または青紫色バンド内に入る、任意の波長を有する単波長レーザであってよい。いくつかの実施形態において、入射光は、≦660nm、好ましくは≦490nmの波長を有するレーザである。いくつかの実施形態において、入射光は、波長<490nmを有する。入射光として、好ましくは波長≦490nmの青紫色レーザを用いることで、表面検査の検出性を改善させることができることが見出されている。より好ましくは、入射光は、405nm、473nmまたは488nmの波長を有するレーザであり、特に好ましくは、入射光は、473nmの波長を有するレーザである。いくつかの実施形態において、655nmの波長を有するレーザもまた入射光として使用してもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、表面ヘイズ検査は、信号検出を含む。信号検出は、1100nm以下、好ましくは280~1100nm、より好ましくは280~980nm、特に好ましくは350~850nmであってよい、任意の波長の光信号を検出することが好ましい。信号検出は、入射光と等しい波長を有する光信号を検出することが好ましい。
【0060】
本明細書で使用される「フォトルミネセンス」という用語は、外部光源に露光した際に材料がエネルギーを吸収して励起され、発光を与える現象を指す。半導体材料を一例にとると、フォトルミネセンスは、光によって電子が励起されて価電子帯から伝導帯に遷移し、格子緩和によって価電子帯に戻ると同時に、光子が放出されるプロセスである。
【0061】
本明細書で使用される「フォトルミネセンス信号」という用語は、材料のフォトルミネセンスによって発生する光信号を指す。
【0062】
被検出材料がエネルギーバンド構造を有する場合、適切な光フィルタモジュールを選択するために、上記式(I)を用いて被検出材料の発光波長を決定することができる。セラミックスや半導体材料などの結晶性材料の場合、Egは材料それ自身のバンドギャップ幅であり、ガラス、特に発光材料を用いたガラスなどの非晶性材料の場合、Egは発光材料のバンドギャップ幅である。
【0063】
本明細書で使用される「バンドギャップ幅」という用語は、材料の伝導帯の最低エネルギーレベルと価電子帯の最高エネルギーレベルとの間のエネルギー差を指す。
【0064】
本発明者らは、表面状態の検査を行う場合、被検査材料のフォトルミネセンスが表面ヘイズの正確な検出に影響を与えることを見出した。特に、被検査材料の表面ヘイズ信号が低い場合に、その傾向が顕著になる。したがって、表面ヘイズを正確に検出するためには、材料のフォトルミネセンス信号の干渉をフィルタリングによって除去、低減する必要がある。
【0065】
本明細書で使用される「フィルタリング」という用語は、望ましくない光信号(被検材料のフォトルミネセンスによって発生した光信号など)を実質的に除去し、それによって表面ヘイズの検出に対する干渉や影響を実質的に排除または低減することを指す。
【0066】
非表面ヘイズ信号(本発明によれば、通常、材料のフォトルミネセント信号を指す)を効果的に除去するために、いくつかの実施形態において、表面ヘイズ検査中にウエハのフォトルミネセント信号がフィルタリングされて除去される。
【0067】
いくつかの実施形態において、表面ヘイズ検査において、フィルタリングにより、フォトルミネセンス波長未満の波長、好ましくはフォトルミネセンス波長から20nmを引いた値以下の波長の光のみが信号検査工程で検出されるようにすることができる。信号検査工程では、入射光と同等の波長を有する光のみが検出されることが好ましい。
【0068】
あるいは、いくつかの実施形態において、表面ヘイズ検査において、フィルタリングにより、入射光波長プラスマイナス(±)20nmの範囲、好ましくは入射光波長プラスマイナス10nmの範囲、より好ましくは入射光の波長と等しい波長を有する光のみが、信号検出工程で検出できる。
【0069】
いくつかの実施形態において、表面ヘイズ検査において、フィルタリングは、光フィルタモジュールを選択することを含む。いくつかの実施形態において、例えば、半導体ウエハの表面ヘイズ検査の場合、光フィルタモジュールの選択は、a)上記式(I)を用いて半導体のフォトルミネセンス波長λemを算出し、b)λem未満の波長の光を透過させる光フィルタモジュールを選択するようにして実施される。
【0070】
光フィルタモジュールは、フィルタおよび/またはフィルタコーティングを含むことが好ましい。いくつかの実施形態において、フィルタリングは、入射光波長(λex)以上かつフォトルミネセンス波長(λem)未満のカットオフ波長を有するローパスフィルタまたはフィルタコーティングを選択することを含んでいる。カットオフ波長は、(λex+20)nm以上、(λem-20)nm以下であることが好ましい。いくつかの実施形態において、フィルタリングは、(λex±20)nmの波長、好ましくは(λex±10)nmの波長、より好ましくは入射光の波長と等しい波長の光を透過するバンドパスフィルタまたはフィルタコーティングを選択することを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、本発明の方法によれば、被検査材料は、表面が平滑な任意の材料である。好ましくは、前記材料は、半導体材料、ガラス、またはセラミックスから選択され、より好ましくは、前記材料は半導体ウエハである。いくつかの実施形態において、前記ガラスは発光ガラスであり、発光材料がドープされたガラスであることが好ましい。半導体ウエハは、1.12~1.53eVのバンドギャップを有することが好ましく、1.35~1.43eVのバンドギャップを有することがより好ましい。いくつかの実施形態において、半導体ウエハの材料は、元素系半導体材料または化合物半導体材料から選択され、化合物半導体材料であることが好ましい。いくつかの実施形態において、半導体ウエハの材料は、直接バンドギャップ半導体材料から選択され、好ましくは、1.12~1.53eV、より好ましくは1.35~1.43eVのバンドギャップを有する直接バンドギャップ半導体材料が選択される。半導体ウエハの材料は、InPまたはGaAsであることが好ましい。
【0072】
いくつかの実施形態において、本発明の方法によれば、入射光源が473nmの波長を有し、光フィルタモジュールが、<460nmおよび>485nmのカットオフバンドを有するバンドパスフィルタまたはフィルタコーティングであり、したがって、460~485nmの透過帯があり、473nmの波長における透過率が100%であることが、特に好ましい。このような条件は、III-V族の化合物半導体のウエハ、例えばガリウムヒ素(GaAs)やリン化インジウム(InP)などのウエハの表面ヘイズを検出するために使用することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記表面ヘイズ検査は、材料装填工程と、データ解析工程とを備える。
【0074】
図3に示すように、本発明の別の態様は、材料の表面ヘイズを検出するためのセットアップを提供し、このセットアップは、以下を備える。
材料3を保持するためのサンプルホルダ(例えば、静電チャック2)を有する材料装填装置、
入射光6を照射するためのレーザ源1を有するレーザスキャン装置、
検出器5を有する信号検出装置、および
信号検査装置によって検出された信号を解析するためのテスト用ソフトウェアを有するデータ解析装置8。ここで、材料の表面ヘイズを検出するためのセットアップは、材料3のフォトルミネセンス信号をフィルタリングするための光フィルタモジュール4をさらに備え、光フィルタモジュール4は、検出される光信号7の伝搬方向において検出器5の前に配置される。
【0075】
本明細書で使用される「サンプルホルダ」という用語は、検出プロセスにおいて検出される試料を保持し固定化するセットアップを指す。いくつかの実施形態において、サンプルホルダは、当技術分野において表面検出に一般に使用されているものである。サンプルホルダは静電チャックであることが好ましい。被検出材料がウエハの場合、サンプルホルダはウエハチャックとなる。
【0076】
いくつかの実施形態において、材料装填装置は、サンプルホルダに検出される材料を自動的に装填するための材料クランプ手段(マニュピュレータ、および背面または端面接触クランプ手段を有するが、これらに限定されない)をさらに有する。
【0077】
いくつかの実施形態において、任意に、本発明の材料の表面ヘイズを検出するためのセットアップは、予備検査装置を備えている。いくつかの実施形態において、予備検査装置は、当技術分野において材料(例えば、半導体ウエハ)の予備検査に一般に使用されるセットアップである。いくつかの実施形態において、予備検査装置は、光アシスト検査に有用なセットアップである。いくつかの実施形態において、予備検査セットアップは、光源、好ましくは高強度光源である。好ましくは、高強度光源は、高輝度ハロゲン光であってよいが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、予備検査装置は、300,000lx以上、好ましくは400,000lx以上の輝度を有する光源を備えている。
【0078】
いくつかの実施形態において、レーザスキャン装置において、入射光を照射するためのレーザ源は、決定された波長を有するレーザを照射することができる。いくつかの実施形態において、レーザ源は、好ましくは、スペクトルの赤色または青紫色帯域内の波長を有するレーザを照射し、好ましくは、スペクトルの青紫色帯域内の波長を有する。いくつかの実施形態において、レーザ源は、≦660nm、好ましくは≦490nmの波長を有するレーザを照射する。青紫色帯のスペクトル波長、特に490nm未満の波長のレーザ源を用いることで、表面検査の検出性を改善できることを見出した。好ましくは、レーザ源は、405nm、473nmまたは488nmの波長を有するレーザを放出することができる。いくつかの実施形態において、レーザ源は、655nmの波長を有するレーザを照射することが可能である。いくつかの実施形態において、好ましくは、レーザ源は、473nmの波長を有するレーザを照射することが可能である。
【0079】
いくつかの実施形態において、信号検出装置は、受信機および検出器を有するが、これらに限定されず、当技術分野において一般に使用される装置である。信号検出装置は、検出器であることが好ましく、より好ましくは、信号検出装置は集積型検出器である。いくつかの実施形態において、検出器は、当技術分野においてウエハ表面検出に従来から使用されているものであってよい。検出器は、検出したい半導体の表面に入射光を照射し、得られた散乱光信号を収集して検出するために使用される。検出器は、1100nm以下の波長の光信号に応答することがより好ましく、好ましくは280~1100nm、より好ましくは280~980nm、さらにより好ましくは350~850nmである。検出器は、可視光応答型検出器であることがより好ましく、Si-検出器であることがさらにより好ましい。
【0080】
本発明の実施形態において、データ解析装置は、信号検出装置によって検出された信号を解析するためのテスト用ソフトウェアを含み、テスト用ソフトウェアは、当技術分野において既知の市販のソフトウェアである。いくつかの実施形態において、テスト用ソフトウェアは、市販の表面検出デバイスに統合されている。
【0081】
本発明者らは、表面ヘイズを正確に検査するためには、検出対象となる材料(半導体基板など)のフォトルミネセンス信号を、検出器で検出できない程度に、あるいは検出器による表面ヘイズ信号の検出に影響を与えない程度に除去し、表面ヘイズによって発生する光信号を検出器で正確に捕捉して表面ヘイズ分布や値の正確な結果を得られるようにすればよいことを見出した。本発明の光フィルタモジュールを使用して、望ましくない攪乱信号(すなわち、非表面ヘイズ信号、例えば、好ましくは、フォトルミネセンス信号)を効果的にフィルタリング、除去、または低減することができるため、半導体材料のフォトルミネセンス信号の検査への影響を(特に表面ヘイズの低い場合に)最小化または排除しつつ、表面ヘイズ信号を正確に収集および検出器で検出することが可能である。逆に、本発明の光フィルタモジュールがなければ(例えば、先行技術の表面検査装置が使用される場合)、表面ヘイズ信号は、材料(例えば、半導体ウエハ)の表面ヘイズの実際の値および/または分布を正確に取得できない(または、場合によっては取得できない)ように、フォトルミネセンス信号によって干渉され、またはマスクされることさえあると容易に理解できるだろう。
【0082】
本発明によれば、光フィルタモジュールは、所望の範囲に入る波長の光を透過させ、所望しない波長の光を「遮断」するために使用される。
【0083】
いくつかの実施形態において、光フィルタモジュールは、特定波長の光を選択的に透過する1つまたは複数の光学部材を備える。
【0084】
いくつかの実施形態において、光フィルタモジュールは、フォトルミネセンス波長(λem)未満の波長の光を選択的に透過させる光学部材を備える。光フィルタモジュールは、(λem-20)nm以下の波長の光を選択的に透過する光学部材を備えることが好ましい。
【0085】
いくつかの実施形態において、光フィルタモジュールは、(λex±20)nmの波長範囲を有する光を選択的に透過させる光学部材を備える。光フィルタモジュールは、(λex±10)nmの波長範囲を有する光を選択的に透過する光学部材を備えることが好ましい。光フィルタモジュールは、λexと等しい波長の光を選択的に透過させる光学部材を備えることがより好ましい。
【0086】
本発明によれば、光フィルタモジュールは、フィルタ、フィルタコーティングまたはそれらの組み合わせから選択されることが好ましく、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタコーティング、バンドパスフィルタコーティングまたはそれらの組み合わせが選択されることが好ましい。いくつかの実施形態において、光フィルタモジュールは、ローパスフィルタ、ローパスフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせを備えることが好ましい。いくつかの実施形態において、光フィルタモジュールは、バンドパスフィルタ、バンドパスフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせを備えることが好ましい。
【0087】
本明細書で使用される「フィルタ」と「フィルタコーティング」という用語は、いずれも特定の照射波長帯の光を選択的に透過させるために使用される光フィルタモジュールを指す。
【0088】
本明細書で使用される「ローパスフィルタまたはコーティング」という用語は、特定の値より小さい波長の光を透過し、前記値と等しいまたは大きい波長の光をカットすることができる光フィルタモジュールを指す。
【0089】
本明細書で使用される「バンドパスフィルタまたはフィルム」という用語は、特定の範囲内の波長の光を透過し、前記範囲を超える波長の光を遮断することができる光フィルタモジュールを指す。
【0090】
いくつかの実施形態において、フィルタまたはフィルタコーティングは、当技術分野において知られている任意のタイプのものであってよい。光フィルタは、検出されるべき光信号の伝搬方向において、当技術分野において従来から知られている方法で、検出器の前に構成されることが好ましい。いくつかの実施形態において、フィルタは、材料装填装置と信号検出装置との間に構成される。フィルタコーティングは、検出器に関して当技術分野において従来より知られた方法によって検出器上に配置されることが好ましい。フィルタコーティングは、検出器の表面にメッキされていることが好ましい。
【0091】
いくつかの実施形態において、選択されたローパスフィルタまたはフィルタコーティングのカットオフ波長は、励起光波長(λex)以上、フォトルミネセンス波長(λem)未満である。選択されたローパスフィルタまたはフィルタコーティングのカットオフ波長は、(λex+20)nm以上、(λem-20)nm以下であることが好ましい。
【0092】
いくつかの実施形態において、選択されたバンドパスフィルタまたはフィルタフィルムの透過波長は、(λex±20)nmであり、透過波長は、(λex±10)nmであることが好ましい。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明の光フィルタモジュールは、フィルタまたはフィルタコーティングを備えていてもよい。他の実施形態において、光フィルタモジュールは、同じまたは異なるタイプの2つまたは複数のフィルタを備えていてもよい。他の実施形態において、光フィルタモジュールは、同じまたは異なるタイプの2つまたは複数のフィルタコーティングを備えていてもよい。他の実施形態において、本発明の光フィルタモジュールは、少なくとも1つのフィルタと少なくとも1つのフィルタコーティングの組み合わせを備えていてもよく、フィルタとフィルタコーティングは同じタイプでも異なるタイプでもよく、異なる透過波長を有していてもよい。
【0094】
同一または異なる種類の、様々な透過波長を持つ1つまたは複数のフィルタおよび/またはフィルタコーティングを備える光フィルタモジュールを使用することにより、望ましくない波長の干渉光信号(フォトルミネセンス信号を有するがこれに限定されない)をフィルタリングすることができ、より正確な表面ヘイズの検出結果を達成することができる。
【0095】
異なる半導体材料に対して選択される光フィルタまたはコーティングは、表1に示すものを用いることができる(ただし、これらに限定されない)。
【0096】
表1:半導体材料別に選択可能なバンドパスフィルタまたはフィルムの透過波長範囲とローパスフィルタまたはコーティングのカットオフ波長範囲
【表1】
【0097】
いくつかの実施形態において、光フィルタモジュールは、≧50%の透過率を有し、≧95%の透過率を有することが好ましく、≧99%の透過率を有することがより好ましい。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明の光フィルタモジュールは、異なる半導体材料でできたウエハの表面ヘイズ分布および値を自動的にかつ選択的に取得するために、検出される半導体ウエハ(半導体基板など)の材料に応じて、適切なフィルタを自動的に選択できる。いくつかの実施形態において、本発明の光フィルタモジュールは、フィルタ選択装置を備えていてもよく、検査されるウエハの半導体材料タイプの情報を与えられた後、コンピュータは自動的に適切な光フィルタモジュール(例えば、フィルタまたはフィルタコーティング)を選択し、適切な光学部品を自動的に変更して検出できる状態にする。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の材料の表面ヘイズを検査するためのセットアップは、1.12~1.53eV、より好ましくは1.35~1.42eVのバンドギャップを有する半導体材料のウエハを検査するのに有用である。いくつかの実施形態において、本発明の検査セットアップは、元素系半導体材料または化合物半導体材料でできたウエハ、好ましくは化合物半導体材料でできたウエハの表面ヘイズを検出するために使用される。いくつかの実施形態において、本発明の検査セットアップは、直接バンドギャップ半導体材料でできたウエハ、好ましくは1.12~1.53eV、より好ましくは1.35~1.42eVのバンドギャップを有する直接バンドギャップ半導体材料でできたウエハの表面ヘイズを検査するために使用される。いくつかの実施形態において、本発明の検査セットアップは、InPまたはGaAsのウエハを検査するために使用される。
[実施例]
[実施例1]
【0100】
3インチ(7.62センチメートル)N型InP(硫黄ドープ)ウエハの表面ヘイズ検査を実施した。ウエハを洗浄および乾燥後、さらに以下の工程で処理した。
1.予備検査
【0101】
洗浄したウエハを高強度光源(山田光学工業から購入)を用いて検査した。輝度は400,000lx以上であった。検査では、ウエハ表面に任意の目視可能な欠陥(スクラッチ、化学残留物、オレンジピール状の欠陥など)がないかどうかを判断するために、ウエハを時計回り、次に反時計回りにゆっくりと回転させながら高強度光源下で慎重に観察した。目視可能な欠陥がない、すなわち、予備検査に合格したウエハについて、表面ヘイズを検査した。
2.表面ヘイズ検査
【0102】
UnitySC社(フランス)の4Seeシリーズの検査システムLIGHTSpEEDを使用した。
a.予備検査に合格したウエハは、検査システムのウエハホルダ(すなわち、ウエハ静電チャック)に載せた。入射光として、波長473nmの青色レーザを使用した。
b.被検査ウエハがバンドギャップ1.35eVを有するInP材でできていることから、材料のフォトルミネセンス波長をλem=1240/1.35=918nmと算出することによって、光フィルタモジュールを選択した。したがって、波長918nmの光信号をフィルタリング可能な光フィルタモジュール、すなわちカットオフ波長が918nm未満のローパスフィルタを選択することができる。具体的には、この例では、カットオフ波長550nm、透過帯域透過率95%のローパスフィルタを使用した。
c.信号の検査および解析
【0103】
検出する光信号の伝搬方向において、信号検査装置(すわなち、Si検出器)の前に適切な光フィルタモジュールを選択し、構成した。その後、レーザスキャン装置でウエハをスキャンし、光フィルタモジュールを通過した散乱光信号をSi検出器で検査し、検出された信号データをデータ解析装置(内蔵テスト用ソフトウェアを含む)で解析した。表面ヘイズ検査の結果を
図4に示した。
【0104】
光フィルタモジュールを使用しない場合は、予備検査に合格した同じウエハの表面ヘイズ検査を同じ条件で行った。その結果を
図5に示した。
【0105】
図5は、光フィルタモジュールを使用せずに検出したN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図5に示すように、ウエハ表面の表面ヘイズ分布はぼやけて観察された。a、b、c、およびdの領域で高い強度の表面ヘイズが観察され、強度値はそれぞれ2.223ppm、2.134ppm、1.324ppm、および1.153ppmであり、したがって、ウエハ全体の表面ヘイズの中央値は、1.877ppmであった。一般的に、InPウエハの表面ヘイズ強度の中央値が0.15ppm以下の場合、ウエハの表面ヘイズは許容範囲内とみなす。したがって、上記の結果から、このウエハは許容不可とみなされる。
【0106】
図4は、本発明の光フィルタモジュールを用いて検出された同N型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図4に示すように、ウエハのa、b、c、およびdの領域で高い強度の表面ヘイズが観察されたが、しかしながら、その強度値はそれぞれ0.253ppm、0.142ppm、0.041ppm、および0.023ppmであった。さらに、ウエハ表面の表面ヘイズ分布は、特に表面ヘイズの境界線が明瞭に観察できる領域dで非常に明瞭であった。ウエハ全体の表面ヘイズの中央値は、0.036ppmであった。したがって、上記ウエハは、実際には表面ヘイズが許容範囲にあるウエハであった。
【0107】
図4と
図5とを比較することにより、
図5に示すa、b、c、およびdとマーク付けされたウエハのそれぞれの領域で検出された表面ヘイズ値は、実際にはウエハ材料のフォトルミネセンスに起因する誤った結果であり、ウエハのフォトルミネセンスに起因する干渉に起因して、表面ヘイズ分布が不明瞭であることが観察できた。これに対し、本発明の光フィルタモジュールを使用した後は、
図4に示すように、ウエハのフォトルミネセンス信号が効果的に除去されていたため、より正確な表面ヘイズ分布図(
図4)およびより正確な表面ヘイズ値を取得でき、ウエハの品質評価をより確実に行うことが容易になる。
【0108】
本明細書で使用される光フィルタモジュールが、任意で中心波長473nmのバンドパスフィルタ(またはその他のフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせ)である場合も、同様の結果が得られる可能性がある。
[実施例2]
【0109】
3インチ(7.62センチメートル)N型InP(硫黄ドープ)ウエハの表面ヘイズ検査を実施した。ウエハを洗浄および乾燥後、さらに以下の工程で処理した。
1.予備検査
【0110】
洗浄したウエハを高強度光源(山田光学工業から購入)を用いて検査した。輝度は400,000lx以上であった。光アシスト検査のプロセスと基準は、実施例1で記述したものと同じであった。予備検査に合格したウエハを使用して、表面ヘイズ検査を行った。
2.表面ヘイズ検査
【0111】
UnitySC社(フランス)の4Seeシリーズの検査システムLIGHTSpEEDを使用した。
a.予備検査に合格したウエハは、検査システムのウエハホルダ(すなわち、ウエハ静電チャック)に載せた。入射光として、波長473nmの青色レーザを使用した。
b.被検査ウエハがバンドギャップ1.35eVのInP材でできていることから、材料のフォトルミネセンス波長をλem=1240/1.35=918nmと算出することによって、光フィルタモジュールを選択した。したがって、波長918nmの光信号をフィルタリング可能な光フィルタモジュール、すなわちカットオフ波長が918nm未満のローパスフィルタを選択することができる。具体的には、この例では、カットオフ波長550nm、透過帯域透過率90%のローパスフィルタを使用した。
c.信号の検査および解析
【0112】
検出する光信号の伝搬方向において、信号検査装置(すわなち、Si検出器)の前に適切な光フィルタモジュールを選択し、構成した。その後、レーザスキャン装置でウエハをスキャンし、光フィルタモジュールを通過した散乱光信号をSi検出器で検査し、検出された信号データをデータ解析装置(内蔵テスト用ソフトウェアを有する)で解析した。表面ヘイズ検査後に得られた結果を
図6に示した。
【0113】
光フィルタモジュールを使用しない場合は、予備検査に合格した同じウエハの表面ヘイズ検査を同じ条件で行った。その結果を
図7に示した。
【0114】
図7は、光フィルタモジュールを使用せずに検出したN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図7に示すように、ウエハの中央領域では、3.562ppmという高い表面ヘイズ値が観察された。一般的に、InPウエハの表面のヘイズ強度の中央値が0.15ppm以下であれば、ウエハの表面ヘイズは許容範囲内とみなされる。したがって、この検査結果から、このウエハの表面ヘイズ特性は許容できないものとみなした。
【0115】
図6は、本発明の光フィルタモジュールを用いて検出されたN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図6に示すように、このウエハは、高強度の表面ヘイズ領域が観察されず、均一な表面を有しており、表面ヘイズの値は0.024ppmであった。このように、実際にウエハの表面ヘイズ特性は許容範囲内であった。
【0116】
図6と
図7とを比較すると、
図7に示すようなウエハの中央領域の強度が「高い」表面ヘイズ分布は、実際はウエハ材料のフォトルミネセンスに起因する誤った結果であったことがわかる。これに対し、本発明の光フィルタモジュールを使用した後は、ウエハのフォトルミネセンス信号が効果的に除去されていたため、より正確な表面ヘイズ分布図(
図6)およびより正確な表面ヘイズ値を取得することができた。
【0117】
本明細書で使用される光フィルタモジュールが、任意で中心波長473nmのバンドパスフィルタ(またはその他のフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせ)である場合も、同様の結果が得られる可能性がある。
[実施例3]
【0118】
3インチ(7.62センチメートル)N型InP(ノンドープ)ウエハの表面ヘイズ検査を実施した。ウエハを洗浄および乾燥後、さらに以下の工程で処理した。
1.予備検査
【0119】
洗浄したウエハを高強度光源(山田光学工業から購入)を用いて検査した。輝度は400,000lx以上であった。光アシスト検査のプロセスと基準は、実施例1で記述したものと同じであった。予備検査に合格したウエハを使用して、表面ヘイズ検査を行った。
2.表面ヘイズ検査
【0120】
UnitySC社(フランス)の4Seeシリーズの検査システムLIGHTSpEEDを使用した。
a.予備検査に合格したウエハは、検査システムのウエハホルダ(すなわち、ウエハ静電チャック)に載せた。入射光として、波長473nmの青色レーザを使用した。
b.被検査ウエハがバンドギャップ1.35eVのInP材でできていることから、材料のフォトルミネセンス波長をλem=1240/1.35=918nmと算出することによって、光フィルタモジュールを選択した。したがって、波長918nmの光信号をフィルタリング可能な光フィルタモジュール、すなわちカットオフ波長が918nm未満のローパスフィルタを選択することができる。具体的には、この例では、カットオフ波長550nm、透過帯域透過率90%のローパスフィルタを使用した。
c.信号の検査および解析
【0121】
検出する光信号の伝搬方向において、信号検査装置(すわなち、Si検出器)の前に適切な光フィルタモジュールを選択し、構成した。その後、レーザスキャン装置でウエハをスキャンし、光フィルタモジュールを通過した散乱光信号をSi検出器で検査し、検出された信号データをデータ解析装置(内蔵テスト用ソフトウェアを有する)で解析した。表面ヘイズ検査後に得られた結果を
図8に示した。
【0122】
光フィルタモジュールを使用しない場合は、予備検査に合格した同じウエハの表面ヘイズ検査を同じ条件で行った。その結果を
図9に示した。
【0123】
図9は、光フィルタモジュールを使用せずに検出したN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図9に示すように、ウエハの中央領域では、4.026ppmという高い表面ヘイズ値が観察された。一般的に、InPウエハの表面のヘイズ強度の中央値が0.15ppm以下であれば、ウエハの表面ヘイズは許容範囲内とみなされる。したがって、この検査結果から、このウエハの表面ヘイズ特性は許容できないものとみなした。
【0124】
図8は、本発明の光フィルタモジュールを用いて検出されたN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図8に示すように、このウエハは、高強度の表面ヘイズ領域が観察されず、均一な表面を有しており、表面ヘイズの値は、0.028ppmであった。このように、実際にウエハの表面ヘイズ特性は許容範囲内であった。
【0125】
図8と
図9とを比較すると、
図9に示すようなウエハの中央領域の強度が「高い」表面ヘイズ分布は、実際はウエハ材料のフォトルミネセンスに起因する誤った結果であったことがわかる。これに対し、本発明の光フィルタモジュールを使用した後は、ウエハのフォトルミネセンス信号が効果的に除去されていたため、より正確な表面ヘイズ分布図(
図8)およびより正確な表面ヘイズ値を取得することができた。
【0126】
本明細書で使用される光フィルタモジュールが、任意で中心波長473nmのバンドパスフィルタ(またはその他のフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせ)である場合も、同様の結果が得られる可能性がある。
[実施例4]
【0127】
4インチ(10.16センチメートル)N型GaAs(シリコンドープ)ウエハの表面ヘイズ検査を実施した。ウエハを洗浄および乾燥後、さらに以下の工程で処理した。
1.予備検査
【0128】
洗浄したウエハを高強度光源(山田光学工業から購入)を用いて検査した。輝度は400,000lx以上であった。光アシスト検査のプロセスと基準は、実施例1で記述したものと同じであった。予備検査に合格したウエハを使用して、表面ヘイズ検査を行った。
2.表面ヘイズ検査
【0129】
UnitySC社(フランス)の4Seeシリーズの検査システムLIGHTSpEEDを使用した。
a.予備検査に合格したウエハは、検査システムのウエハホルダ(すなわち、ウエハ静電チャック)に載せた。入射光として、波長473nmの青色レーザを使用した。b.検査対象ウエハがバンドギャップ1.42eVのGaAs材でできていることから、材料のフォトルミネセンス波長をλem=1240/1.42=873nmと算出することによって、光フィルタモジュールを選択した。したがって、波長873nmの光信号をフィルタリング可能な光フィルタモジュール、すなわちカットオフ波長が873nm未満のローパスフィルタを選択することができる。具体的には、この例では、カットオフ波長550nm、透過帯域透過率90%のローパスフィルタを使用した。
c.信号の検査および解析
【0130】
検出する光信号の伝搬方向において、信号検査装置(すわなち、Si検出器)の前に適切な光フィルタモジュールを選択し、構成した。その後、レーザスキャン装置でウエハをスキャンし、光フィルタモジュールを通過した散乱光信号をSi検出器で検査し、検出された信号データをデータ解析装置(内蔵テスト用ソフトウェアを有する)で解析した。表面ヘイズ検査後に得られた結果を
図10に示した。
【0131】
光フィルタモジュールを使用しない場合は、予備検査に合格した同じウエハの表面ヘイズ検査を同じ条件で行った。その結果を
図11に示した。
【0132】
図11は、光フィルタモジュールを使用せずに検出したN型GaAsウエハの表面ヘイズを示す。
図11に示すように、表面ヘイズの強度が高い領域がウエハ上に蝶状に複数散在しており、その強度値は0.852ppmであった。当技術分野において一般的に認識されているように、GaAsウエハの表面ヘイズ値が0.250ppm未満であれば、表面ヘイズ検査に合格したものとみなされる。したがって、この検査結果から、このウエハの表面ヘイズ特性は許容できないものとみなした。
【0133】
図10は、本発明の光フィルタモジュールを用いて検出されたN型GaAsウエハの表面ヘイズを示す。
図10に示すように、このウエハは、高強度の表面ヘイズ領域が観察されず、均一な表面を有しており、表面ヘイズの値は0.176ppmであった。このように、実際にウエハの表面ヘイズ特性は許容範囲内であった。
【0134】
図10と
図11とを比較すると、
図11に示すように、ウエハ上に散在する表面ヘイズの強度が高い複数の領域は、ウエハ材料のフォトルミネセンス信号に起因する誤った結果であったことがわかる。これに対して、本発明の光フィルタモジュールを使用した後は、ウエハのフォトルミネセンス信号が効果的に除去されていた。すなわち、
図10と
図11との比較から自明であるように、光フィルタモジュールを使用した後は、表面ヘイズの高い蝶状の散在領域が観察されず、より正確な表面ヘイズ分布図とより正確な表面ヘイズ値とを取得することができた。
【0135】
本明細書で使用される光フィルタモジュールが、任意で中心波長473nmのバンドパスフィルタ(またはその他のフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせ)である場合も、同様の結果が得られる可能性がある。
[実施例5]
【0136】
3インチ(7.62センチメートル)N型InP(硫黄ドープ)ウエハの表面ヘイズ検査を実施した。ウエハを洗浄および乾燥後、さらに以下の工程で処理した。
1.予備検査
【0137】
洗浄したウエハを高強度光源(山田光学工業から購入)を用いて検査した。輝度は400,000lx以上であった。光アシスト検査のプロセスと基準は、実施例1で記述したものと同じであった。予備検査に合格したウエハを使用して、表面ヘイズ検査を行った。
2.表面ヘイズ検査
【0138】
UnitySC社(フランス)の4Seeシリーズの検査システムLIGHTSpEEDを使用した。
a.予備検査に合格したウエハは、検査システムのウエハホルダ(すなわち、ウエハ静電チャック)に載せた。入射光として、波長473nmの青色レーザを使用した。
b.被検査ウエハがバンドギャップ1.35eVのInP材でできていることから、材料のフォトルミネセンス波長をλem=1240/1.35=918nmと算出することによって、光フィルタモジュールを選択した。したがって、波長918nmの光信号をフィルタリング可能な光フィルタモジュール、すなわちカットオフ波長が918nm未満のローパスフィルタを選択することができる。具体的には、本実施例では、カットオフ波長490~540nm、透過帯域透過率90%のローパスフィルタを使用した。
c.信号の検査および解析
【0139】
検出する光信号の伝搬方向において、信号検査装置(すなわち、Si検出器)の前に適切な光フィルタモジュールを選択し、構成した。その後、レーザスキャン装置でウエハをスキャンし、光フィルタモジュールを通過した散乱光信号をSi検出器で検査し、検出された信号データをデータ解析装置(内蔵テスト用ソフトウェアを有する)で解析した。表面ヘイズ検査後に得られた結果を
図12に示した。
【0140】
光フィルタモジュールを使用しない場合は、予備検査に合格した同じウエハの表面ヘイズ検査を同じ条件で行った。その結果を
図13に示した。
【0141】
図13は、光フィルタモジュールを使用せずに検出したN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図13に示すように、ウエハの中央領域では、1.791ppmという高い表面ヘイズ値が観察された。当技術分野において一般的に認識されているように、InP系ウエハの表面ヘイズ強度値が0.150ppm未満であれば、表面ヘイズ検査に合格したものとみなされる。したがって、この検査結果から、このウエハの表面ヘイズ特性は許容できないものとみなした。
【0142】
図12は、本発明の光フィルタモジュールを用いて検出されたN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図6に示すように、このウエハは、高強度の表面ヘイズ領域が観察されず、均一な表面を有しており、表面ヘイズの値は、0.041ppmであった。このように、実際にウエハの表面ヘイズ特性は許容範囲内であった。
【0143】
図12と
図13とを比較すると、
図13に示すようなウエハの中央領域の強度が「高い」表面ヘイズ分布は、実際はウエハ材料のフォトルミネセンスに起因する誤った結果であったことがわかる。これに対し、本発明の光フィルタモジュールを使用した後は、ウエハのフォトルミネセンス信号が効果的に除去されていたため、より正確な表面ヘイズ分布図(
図12)およびより正確な表面ヘイズ値を取得することができた。
【0144】
本明細書で使用される光フィルタモジュールが、任意で中心波長473nmのバンドパスフィルタ(またはその他のフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせ)である場合も、同様の結果が得られる可能性がある。
[実施例6]
【0145】
3インチ(7.62センチメートル)N型InP(硫黄ドープ)ウエハの表面ヘイズ検査を実施した。ウエハを洗浄および乾燥後、さらに以下の工程で処理した。
1.予備検査
【0146】
洗浄したウエハを高強度光源(山田光学工業から購入)を用いて検査した。輝度は400,000lx以上であった。光アシスト検査のプロセスと基準は、実施例1で記述したものと同じであった。予備検査に合格したウエハを使用して、表面ヘイズ検査を行った。
2.表面ヘイズ検査
【0147】
UnitySC社(フランス)の4Seeシリーズの検査システムLIGHTSpEEDを使用した。
a.予備検査に合格したウエハは、検査システムのウエハホルダ(すなわち、ウエハ静電チャック)に載せた。入射光として、波長473nmの青色レーザを使用した。
b.被検査ウエハがバンドギャップ1.35eVのInP材でできていることから、材料のフォトルミネセンス波長をλem=1240/1.35=918nmと算出することによって、光フィルタモジュールを選択した。したがって、波長918nmの光信号をフィルタリング可能な光フィルタモジュール、すなわちカットオフ波長が918nm未満のローパスフィルタを選択することができる。具体的には、本実施例では、カットオフ波長が830~1200nmで、透過率が96%の透過帯域を有するローパスフィルタを使用した。
c.信号の検査および解析
【0148】
検出する光信号の伝搬方向において、信号検査装置(すわなち、Si検出器)の前に適切な光フィルタモジュールを選択し、構成した。その後、レーザスキャン装置でウエハをスキャンし、光フィルタモジュールを通過した散乱光信号をSi検出器で検査し、検出された信号データをデータ解析装置(内蔵テスト用ソフトウェアを有する)で解析した。表面ヘイズ検査後に得られた結果を
図14に示した。
【0149】
光フィルタモジュールを使用しない場合は、予備検査に合格した同じウエハの表面ヘイズ検査を同じ条件で行った。その結果を
図15に示した。
【0150】
図15は、光フィルタモジュールを使用せずに検出したN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図15に示すように、ウエハの中央領域では、1.919ppmという高い表面ヘイズ値が観察された。当技術分野において一般的に認識されているように、InP系ウエハの表面ヘイズ強度値が0.150ppm未満であれば、表面ヘイズ検査に合格したものとみなされる。したがって、この検査結果から、このウエハの表面ヘイズ特性は許容できないものとみなした。
【0151】
図14は、本発明の光フィルタモジュールを用いて検出されたN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図14に示すように、このウエハは、高強度の表面ヘイズ領域が観察されず、均一な表面を有しており、表面ヘイズの値は、0.019ppmであった。このように、実際にウエハの表面ヘイズ特性は許容範囲内であった。
【0152】
図14と
図15を比較すると、
図15に示すようなウエハ中央領域の強度が「高い」表面ヘイズ分布は、実際はウエハ材料のフォトルミネセンスに起因する誤った結果であったことがわかる。これに対し、本発明の光フィルタモジュールを使用した後は、ウエハのフォトルミネセンス信号が効果的に除去されていたため、より正確な表面ヘイズ分布図(
図14)およびより正確な表面ヘイズ値を取得することができた。
【0153】
本明細書で使用される光フィルタモジュールが、任意で中心波長473nmのバンドパスフィルタ(またはその他のフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせ)である場合も、同様の結果が得られる可能性がある。
[実施例7]
【0154】
3インチ(7.62センチメートル)N型InP(硫黄ドープ)ウエハの表面ヘイズ検査を実施した。ウエハを洗浄および乾燥後、さらに以下の工程で処理した。
1.予備検査
【0155】
洗浄したウエハを高強度光源(山田光学工業から購入)を用いて検査した。輝度は400,000lx以上であった。光アシスト検査のプロセスと基準は、実施例1で記述したものと同じであった。予備検査に合格したウエハを使用して、表面ヘイズ検査を行った。
2.表面ヘイズ検査
【0156】
UnitySC社(フランス)の4Seeシリーズの検査システムLIGHTSpEEDを使用した。
a.予備検査に合格したウエハは、検査システムのウエハホルダ(すなわち、ウエハ静電チャック)に載せた。入射光として、波長473nmの青色レーザを使用した。
b.被検査ウエハがバンドギャップ1.35eVのInP材でできていることから、材料のフォトルミネセンス波長をλem=1240/1.35=918nmと算出することによって、光フィルタモジュールを選択した。したがって、波長918nmの光信号をフィルタリング可能な光フィルタモジュール、すなわちカットオフ波長が918nm未満のローパスフィルタを選択することができる。具体的には、この例では、カットオフ波長が860~1300nmで、透過帯域透過率が90%のローパスフィルタを使用した。c.信号の検査および解析
【0157】
検出する光信号の伝搬方向において、信号検査装置(すなわち、Si検出器)の前に適切な光フィルタモジュールを選択し、構成した。その後、レーザスキャン装置でウエハをスキャンし、光フィルタモジュールを通過した散乱光信号をSi検出器で検査し、検出された信号データをデータ解析装置(内蔵テスト用ソフトウェアを有する)で解析した。表面ヘイズ検査後に得られた結果を
図16に示した。
【0158】
光フィルタモジュールを使用しない場合は、予備検査に合格した同じウエハの表面ヘイズ検査を同じ条件で行った。その結果を
図17に示した。
【0159】
図17は、光フィルタモジュールを使用せずに検出したN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図17に示すように、ウエハの中央領域では、1.719ppmという高い表面ヘイズ値が観察された。当技術分野において一般的に認識されているように、InP系ウエハの表面ヘイズ強度値が0.150ppm未満であれば、表面ヘイズ検査に合格したものとみなされる。したがって、この検査結果から、このウエハの表面ヘイズ特性は許容できないものとみなした。
【0160】
図16は、本発明の光フィルタモジュールを用いて検出されたN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図16に示すように、このウエハは、高強度の表面ヘイズ領域が観察されず、均一な表面を有しており、表面ヘイズの値は、0.027ppmであった。このように、実際にウエハの表面ヘイズ特性は許容範囲内であった。
【0161】
図16と
図17を比較すると、
図17に示すようなウエハ中央領域の強度が「高い」表面ヘイズ分布は、実際はウエハ材料のフォトルミネセンスに起因する誤った結果であったことがわかる。これに対し、本発明の光フィルタモジュールを使用した後は、ウエハのフォトルミネセンス信号が効果的に除去されていたため、より正確な表面ヘイズ分布図(
図16)およびより正確な表面ヘイズ値を取得することができた。
【0162】
本明細書で使用される光フィルタモジュールが、任意で中心波長473nmのバンドパスフィルタ(またはその他のフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせ)である場合も、同様の結果が得られる可能性がある。
[実施例8]
【0163】
3インチ(7.62センチメートル)N型InP(硫黄ドープ)ウエハの表面ヘイズ検査を実施した。ウエハを洗浄および乾燥後、さらに以下の工程で処理した。
1.予備検査
【0164】
洗浄したウエハを高強度光源(山田光学工業から購入)を用いて検査した。輝度は400,000lx以上であった。光アシスト検査のプロセスと基準は、実施例1で記述したものと同じであった。予備検査に合格したウエハを使用して、表面ヘイズ検査を行った。
2.表面ヘイズ検査
【0165】
UnitySC社(フランス)の4Seeシリーズの検査システムLIGHTSpEEDを使用した。
a.予備検査に合格したウエハは、検査システムのウエハホルダ(すなわち、ウエハ静電チャック)に載せた。入射光として、波長473nmの青色レーザを使用した。
b.被検査ウエハがバンドギャップ1.35eVのInP材でできていることから、材料のフォトルミネセンス波長をλem=1240/1.35=918nmと算出することによって、光フィルタモジュールを選択した。したがって、波長918nmの光信号をフィルタリング可能な光フィルタモジュール、すなわちカットオフ波長が918nm未満のローパスフィルタを選択することができる。具体的には、本実施例では、カットオフ波長が<460nmおよび>485nmで、透過帯域の透過率が460~485nm(波長473nmの透過率を100%とする)のバンドパスフィルタを使用した。
c.信号の検査および解析
【0166】
検出する光信号の伝搬方向において、信号検査装置(すわなち、Si検出器)の前に適切な光フィルタモジュールを選択し、構成した。その後、レーザスキャン装置でウエハをスキャンし、光フィルタモジュールを通過した散乱光信号をSi検出器で検査し、検出された信号データをデータ解析装置(内蔵テスト用ソフトウェアを有する)で解析した。表面ヘイズ検査後に得られた結果を
図18に示した。
【0167】
光フィルタモジュールを使用しない場合は、予備検査に合格した同じウエハの表面ヘイズ検査を同じ条件で行った。その結果を
図19に示した。
【0168】
図19は、光フィルタモジュールを使用せずに検出したN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図19に示すように、当技術分野において一般的に認識されているように、InP系ウエハの表面ヘイズ強度値が0.150ppm未満であれば、表面ヘイズ検査に合格したものとみなされるが、ウエハ中央領域において2.227ppmという高い表面ヘイズ値が観察された。したがって、この検査結果から、このウエハの表面ヘイズ特性は許容できないものとみなした。
【0169】
図18は、本発明の光フィルタモジュールを用いて検出されたN型InPウエハの表面ヘイズを示す。
図18に示すように、このウエハは、高強度の表面ヘイズ領域が観察されず、均一な表面を有しており、表面ヘイズの値は、0.002ppmであった。このように、実際にウエハの表面ヘイズ特性は許容範囲内であった。
【0170】
図18と
図19を比較すると、
図19に示すようなウエハ中央領域の強度が「高い」表面ヘイズ分布は、実際はウエハ材料のフォトルミネセンスに起因する誤った結果であったことがわかる。これに対し、本発明の光フィルタモジュールを使用した後は、ウエハのフォトルミネセンス信号が効果的に除去されていたため、より正確な表面ヘイズ分布図(
図18)およびより正確な表面ヘイズ値を取得することができた。
【0171】
本明細書で使用される光フィルタモジュールが、任意でカットオフ波長が<918nmのローパスフィルタ(またはその他のフィルタコーティング、またはそれらの組み合わせ)である場合にも、同様の結果が得られる可能性がある。
【国際調査報告】