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▶ カールスバーグ アグシャセルスガーブの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】低ジアセチル酵母
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/16 20060101AFI20230809BHJP
   C12C 11/02 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20230809BHJP
   C12N 15/60 20060101ALN20230809BHJP
   C12N 15/61 20060101ALN20230809BHJP
   C12N 15/01 20060101ALN20230809BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20230809BHJP
【FI】
C12N1/16 G
C12C11/02
C12N15/54 ZNA
C12N15/60
C12N15/61
C12N15/01 Z
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022580234
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2021067882
(87)【国際公開番号】W WO2022002960
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】20183134.4
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520229688
【氏名又は名称】カールスバーグ アグシャセルスガーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】レングラー,クローズ
(72)【発明者】
【氏名】カッツ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フォースター,ヨッヒェン
(72)【発明者】
【氏名】フェネシー,ロス
(72)【発明者】
【氏名】グジャルマンセン,クレス
(72)【発明者】
【氏名】チャイルヤン,アンナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4B128
【Fターム(参考)】
4B065AA79X
4B065AA79Y
4B065AC14
4B065BB14
4B065BB16
4B065BB26
4B065BD16
4B065BD18
4B065CA05
4B065CA06
4B065CA09
4B065CA17
4B065CA27
4B065CA29
4B065CA42
4B128CP38
(57)【要約】
本発明は、発酵中に低レベルのジアセチルを生産する有用な特性を有するサッカロマイセス・パストリアヌス種の酵母株に関する。これらの株を用いてモルトおよび/または穀類に基づく飲料を生成する方法、ならびにこの方法により生成される飲料もまた、提供される。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのゲノム内で、
a.ILV2をコードする最大で2の機能遺伝子であって、ILV2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:32のScILV2またはSEQ ID NO:38のSeILV2、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする、機能遺伝子;ならびに
b.ILV3をコードする少なくとも5の機能遺伝子、例えば少なくとも6の機能遺伝子であって、ILV3をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:35のScILV3またはSEQ ID NO:41のSeILV3、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする、機能遺伝子。
をコードする酵母株。
【請求項2】
前記酵母株はそのゲノム内で、ILV5をコードする少なくとも4の機能遺伝子、例えばILV5をコードする少なくとも5の機能遺伝子をコードし、ILV5をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:34のScILV5またはSEQ ID NO:40のSeILV5、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする、請求項1に記載の酵母株。
【請求項3】
ILV2、ILV3および/またはILV5をコードする前記遺伝子は、それらの天然プロモーターから発現される、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項4】
ILV2、ILV3、ILV5、ILV6、BAT1および/またはBAT2をコードする前記遺伝子は、それらの天然プロモーターから発現される、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項5】
前記酵母株は異種DNAを含まない、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項6】
前記酵母株は遺伝子操作の工程を受けていない、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項7】
前記酵母株はILV3をコードする最大で15の機能遺伝子、例えばILV3をコードする5~10の機能遺伝子、例えばILV3をコードする5~6の機能遺伝子を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項8】
前記酵母株は、ILV5をコードする、最大で15の機能遺伝子、例えばILV5をコードする4~10の機能遺伝子、例えばILV5をコードする4~5の機能遺伝子を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項9】
前記酵母株は、ILV6をコードする最大で4の機能遺伝子を有し、ILV6をコードする各遺伝子はSEQIDNO:33のScILV6またはSEQ ID NO:39のSeILV6、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項10】
前記酵母株はBAT1をコードする少なくとも3の機能遺伝子、例えば少なくとも4の機能遺伝子を有し、BAT1をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:36のScBAT1またはSEQ ID NO:42のSeBAT1、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項11】
前記酵母株はBAT2をコードする少なくとも4の機能遺伝子、例えば少なくとも5の機能遺伝子を有し、BAT2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:37のScBAT2またはSEQ ID NO:43のSeBAT2、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項12】
ILV2およびILV6をコードする前記酵母株における機能遺伝子の合計は、ILV5およびILV3をコードする機能遺伝子の合計より低い、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項13】
ILV5およびILV3対ILV2の前記酵母株における機能遺伝子比は少なくとも1、例えば少なくとも1.5、例えば少なくとも2、例えば少なくとも2.5、または例えば少なくとも3である、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項14】
ILV5およびILV3対ILV2およびILV6の前記酵母株における機能遺伝子比は少なくとも1、例えば少なくとも1.2、例えば少なくとも1.4、例えば少なくとも1.6、例えば少なくとも1.8または例えば少なくとも2である、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項15】
前記酵母株は、1つ以上のILV2遺伝子における突然変異またはその欠失を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項16】
前記酵母株は、1つ以上のILV2遺伝子におけるフレームシフト突然変異を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項17】
前記酵母株は、1つ以上のILV2遺伝子の発現低下または発現なしという結果になる突然変異を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項18】
前記酵母株は、1つ以上のILV6遺伝子における突然変異またはその欠失を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項19】
前記酵母株は、1つ以上のILV6遺伝子におけるフレームシフト突然変異を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項20】
前記酵母株は、1つ以上のILV6遺伝子の発現低下または発現なしという結果になる突然変異を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項21】
前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、前記試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記発酵試験液は、前記試験液の外観エキス含量が、先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項22】
前記時点は、前記試験液の外観エキス含量が、先行する24時間で、0.40°プラート、例えば0.30°プラート、例えば0.20°プラート超減少しなかった最早時点である、請求項21に記載の酵母株。
【請求項23】
前記試験液は、前記最早時点で、最大で55ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチル、例えば最大で45ppbのジアセチルを含む、請求項21~22のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項24】
前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、前記試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は、前記試験液の外観エキス含量が先行する12時間で0.25°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項25】
前記時点は、前記試験液の外観エキス含量が先行する12時間で0.20°プラート、例えば0.15°プラート、例えば0.10°プラート超減少しなかった最早時点である、請求項24に記載の酵母株。
【請求項26】
前記試験液は、前記最早時点で、最大で55ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチル、例えば最大で45ppbのジアセチルを含む、請求項24~25のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項27】
前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、前記試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は、次の24時間で前記試験液の外観エキス含量が0.50°プラート超減少しない最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で60ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項28】
前記時点は、次の24時間で、前記試験液の外観エキス含量が、0.40°プラート、例えば0.30°プラート、例えば0.20°プラート超減少しない最早時点である、請求項27に記載の酵母株。
【請求項29】
前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、前記試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は前記試験液の外観エキス含量が次の12時間で0.25°プラート超減少しない最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で65ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項30】
前記時点は前記試験液の外観エキス含量が、次の12時間で、0.20°プラート、例えば0.15°プラート、例えば0.10°プラート超減少しない最早時点である、請求項29に記載の酵母株。
【請求項31】
前記試験液は前記最早時点で最大で115ppbのジアセチルを含む、請求項27~30のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項32】
前記酵母株は発酵試験液を生成することができ、前記試験液は、インキュベーションの開始後5日以内の任意の時点で、最大で265ppbのジアセチルを含み、7~800万の酵母細胞/mlの範囲が前記試験液に添加される、請求項21~31のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項33】
前記酵母株は、前記試験液における、最大で6日、例えば最大で5日、例えば最大で4日間のインキュベーション後に、最大で50ppbのジアセチルを含む発酵試験液を生成することができる、請求項21~32のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項34】
前記酵母株は、前記試験液において、最大で16℃の温度で、最大で5日、例えば最大で4日間のインキュベーション後に、最大で50ppbのジアセチルを含む発酵試験液を生成することができる、請求項21~33のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項35】
前記酵母株は、前記試験液における所定の時間の間のインキュベーション後に、最大で60ppbのジアセチルを含む第1の発酵試験液を生成することができ、前記所定の時間は、同じ条件下でインキュベートされるW-34/78酵母株が、前記試験液におけるインキュベーション後に最大で60ppbのジアセチルを含む第2の発酵試験液を生成するのに必要とされる時間よりも少なくとも12時間、例えば少なくとも24時間少ない、請求項21~34のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項36】
前記酵母株は、前記酵母株を前記試験液中でインキュベートした場合、少なくとも4.0mL/Lエタノール/°プラートを生成させることができる、請求項21~35のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項37】
前記酵母株は、前記酵母株を前記試験液中で、4~6日の範囲の間、例えば、およそ4日間インキュベートした場合、少なくとも4.0mL/Lエタノール/°プラートを生成させることができる請求項21~36のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項38】
前記酵母株は、メリビオースを唯一の炭素源として有する培地上で増殖することができる、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項39】
前記試験液は、前記最早時点での溶液において、最大で1000万細胞/ミリリットル、例えば最大で950万細胞/ミリリットル、例えば最大で900万細胞/ミリリットル、例えば最大で850万細胞/ミリリットルを含む、請求項21~31のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項40】
前記試験液はおよそ16°プラートの外観エキス含量を有する麦汁である、請求項21~39のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項41】
前記試験液は少なくとも40g/kgのマルトースを含む、請求項21~40のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項42】
前記発酵は12℃~18℃の範囲の温度で起こる、請求項21~41のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項43】
前記発酵は最大で16℃の温度で起こる、請求項21~42のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項44】
前記発酵は、7,000,000~20,000,000生酵母細胞/mL試験液の範囲での接種後に起こる、請求項21~43のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項45】
前記水性抽出物は最大で6日、例えば最大で5日、例えば最大で4日間、前記酵母株により発酵される、請求項21~44のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項46】
前記水性抽出物は少なくとも12°プラート、例えば少なくとも15°プラートの外観エキス含量を有する、請求項21~45のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項47】
前記水性抽出物は麦汁である、請求項21~46のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項48】
前記水性抽出物は最大で3500mg/L、例えば最大で3000mg/L、例えば最大で2500mg/Lのアミノ酸を含む、請求項21~47のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項49】
前記発酵水性抽出物は最大で60ppbのジアセチル、例えば最大で55ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチル、例えば最大で45ppbのジアセチル、例えば最大で40ppbのジアセチルを含む、請求項21~48のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項50】
前記発酵水性抽出物は、前記最早時点での溶液において、最大で1000万細胞/ミリリットル、例えば最大で950万細胞/ミリリットル、例えば最大で900万細胞/ミリリットル、例えば最大で850万細胞/ミリリットルを含む、請求項21~49のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項51】
前記発酵水性抽出物は少なくとも4%ABV、例えば少なくとも5%ABVのアルコール含量を有する、請求項21~50のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項52】
前記発酵水性抽出物は少なくとも25mg/Lのプロパノール、例えば少なくとも30mg/Lのプロパノールを含む、請求項21~51のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項53】
前記発酵水性抽出物は最大で8mg/Lのイソブタノール、例えば最大で6mg/Lのイソブタノールを含む、請求項21~52のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項54】
前記発酵水性抽出物は少なくとも2.0、例えば少なくとも2.5.例えば少なくとも3.0、例えば少なくとも4.0、例えば少なくとも5.0、例えば少なくとも5.5のイソブタノール対プロパノール比を含む、請求項21~53のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項55】
発酵水性抽出物を生成する方法であって、
i)モルトおよび/または穀類の水性抽出物を提供する工程;
ii)サッカロマイセス・パストリアヌス種の酵母株を提供する工程であって、前記酵母株は請求項1~54のいずれか一項に記載される、工程;ならびに
iii)工程i)で提供される水性抽出物を工程ii)の前記酵母株により発酵させ、よって、発酵水性抽出物を得る工程
を含む方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法により調製された発酵水性抽出物。
【請求項57】
飲料を生成するための方法であって、
i.請求項55に記載の発酵水性抽出物を調製する工程、ならびに
ii.前記発酵水性抽出物を加工処理して飲料にする工程
を含む、方法。
【請求項58】
加工処理の前記工程は、下記の1つ以上を含む、請求項57に記載の方法:
i.濾過、
ii.炭酸化、
iii.熟成、または
iv.瓶詰め。
【請求項59】
請求項57~58のいずれか一項に記載の方法により調製された飲料。
【請求項60】
前記飲料は少なくとも25mg/Lのプロパノール、例えば少なくとも30mg/Lのプロパノールを含む、請求項59に記載の飲料。
【請求項61】
前記飲料は最大で8mg/Lのイソブタノール、例えば最大で6mg/Lのイソブタノールを含む、請求項59~60のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項62】
前記飲料はビールである、請求項59~61のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項63】
前記抽出物または前記飲料は少なくとも3.0、例えば少なくとも4.0、例えば少なくとも5.0、例えば少なくとも5.5のイソブタノール対プロパノール比を有する、請求項56に記載の発酵水性抽出物または請求項59~62のいずれか一項に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール生産の分野、特に、ラガー・ビール生産の分野に関する。より特定的には、発明は低ジアセチル酵母を提供し、これは、ビール生産中、特に、ラガー・ビールの生産における高速で効率的な発酵に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
ラガー・ビールはしばしば、新鮮で清浄な香味プロファイルにより特徴付けられる。ジアセチルは多くの発酵製品の香味プロファイルに寄与する。しかしながら、その典型的なバターのような香味はラガースタイルビールでは異臭と考えられ、この化合物の除去は醸造所における時間およびエネルギー消費に大きな影響を有する。
【0003】
ラガー・ビールは通常、麦汁-炭水化物に富む液体-のラガー酵母による発酵により調製される。ラガー酵母は一般に、上面発酵酵母といくつかの点で異なる。ラガー酵母は一般に、サッカロマイセス・パストリアヌス種に属す。頻繁に、ラガー酵母は「下面発酵酵母」とも呼ばれ、というのも、それらは、発酵中底に沈降するからである。酵母の沈降、または綿状沈殿はまた、処理時間に影響する可能性があり、というのも、酵母は、次回の醸造のためにそれを収集するには、十分沈降する必要があるからである。そんなに綿状にならない(徐々に沈降する)ラガー酵母のためには、これは冷却を必要とし、よって、追加の処理時間という結果になる。さらに、ラガー酵母株は一般に、7℃~18℃の範囲の温度で最も良好に使用される。一般に、サッカロマイセス・セレビシエ種に属する、上面発酵酵母と対照的に、ラガー酵母はメリビオースを唯一の炭素源として使用することができ、典型的には、37℃で増殖できない。
【0004】
発酵中、ジアセチルは酵母細胞によって排出されるアセト乳酸の非酵素的酸化により形成されるが、しかしながら、熟成期間中、ジアセチルは酵母細胞により再び取り込まれ、代謝される。発酵管理の一部は、確実に、完成したビールが設定閾値未満のジアセチルを含むよう着手される。完成したビール中のジアセチル含量を低減させる問題はラガー・ビールでとりわけ顕著であり、というのも、発酵がより低い温度で起こり、これにより、ラガー酵母によるジアセチルのより遅い再取り込みおよび代謝という結果になる。
【0005】
ビールにおけるジアセチルの味覚認識の下限は一般に、50ppbのジアセチルであると考えられ、完成したビールにおいてジアセチル濃度をこのレベルに低減させる必要性は従来、醸造プロセスが完了する前に、ラガー・ビールの熟成に必要とされるかなりの量の余分な時間を付加する。
【発明の概要】
【0006】
以上で概説されるように、従来のサッカロマイセス・パストリアヌスラガー酵母株による7℃~18℃の温度での麦汁の発酵では、味覚認識の50ppb限界を軽く超える麦汁中のジアセチルレベルという結果になる。その結果として、これらのレベルを低減させ、確実に、完成したビールのジアセチル含量を設定閾値未満にするために、酵母によるいくらか追加の熟成日数が必要とされていた。
【0007】
興味深いことに、本発明はサッカロマイセス・パストリアヌス酵母株の新規ハイブリッドバリアントを提供し、これらは、低レベルのジアセチルを生成し、および/または前記ジアセチルを発酵中、18℃以下で直ちに消費し、その結果として、これらの株により生成されるビールは熟成のための時間をほとんど必要としない。特に、麦汁を発明の酵母株により発酵させる場合、総ジアセチルレベルは、糖発酵が完了した時点で、すなわち発酵中、糖レベルがおおよそ安定した時点で≦60ppb、好ましくは≦50ppbである。一般に、現在のラガー株と比較すると、少なくとも1日または少なくとも2日の発酵時間の低減が観察される。
【0008】
本発明はまた、S.パストリアヌス酵母株を使用することにより、18℃以下での発酵後のビールの熟成にほとんど時間を必要としない、飲料を生成する方法を提供し、それは、心地よい味覚を有する。
【0009】
1つの態様では、本発明は発酵水性抽出物を生成する方法を提供し、前記方法は下記工程を含む:
i)モルトおよび/または穀類の水性抽出物を提供する工程;
ii)サッカロマイセス・パストリアヌス種の酵母株を提供する工程であって、前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記発酵試験液は前記発酵試験液の外観エキス含量が、先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチル、好ましくは最大で50ppbのジアセチルを含み、前記発酵は18℃以下、好ましくは12~16℃の温度で起こる、工程;ならびに
iii)工程i)で提供される水性抽出物を工程ii)の前記酵母株により発酵させ、よって、発酵水性抽出物を得る工程。
【0010】
本明細書では、「水性抽出物」という用語は、モルトおよび/または穀物粒の水性抽出物、例えば、麦汁を示すために使用され、これは飲料、例えばビールを製造するために使用され、一方、「試験液」という用語は、発酵のために使用される微生物の特性を評価するために使用されるより厳格に規定される組成を有する溶液を示す。
【0011】
別の態様では、本発明は飲料を生成するための方法を提供し、前記方法は下記工程を含む:
i.モルトおよび/または穀類の水性抽出物を提供する工程;
ii.サッカロマイセス・パストリアヌス種の酵母株を提供する工程であって、前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は前記試験液の外観エキス含量が、先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチル、好ましくは最大で50ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、工程;
iii.工程i)で提供される水性抽出物を前記酵母株により発酵させ、よって、発酵水性抽出物を得る工程;ならびに
iv.前記発酵水性抽出物を加工処理して飲料にする工程。
【0012】
別の態様では、本発明は飲料を生成するための方法を提供し、前記方法は下記工程を含む:
i.モルトおよび/または穀類の水性抽出物を提供する工程;
ii.サッカロマイセス・パストリアヌス種の酵母株を提供する工程であって、前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は前記試験液の外観エキス含量が、先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチル、好ましくは最大で50ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる工程;
iii.工程i)で提供される水性抽出物を前記酵母株により発酵させ、よって、発酵水性抽出物を得る工程;ならびに
iv.前記発酵水性抽出物を加工処理して飲料にする工程であって、加工処理の工程は、下記の1つ以上を含む、工程:
1.濾過、
2.炭酸化、
3.熟成、または
4.瓶詰め。
【0013】
別の態様では、本発明は酵母株を提供し、前記酵母株は、少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有する試験液中での前記酵母株のインキュベーション後、発酵試験液を生成することができ、前記試験液は前記試験液の外観エキス含量が、前記抽出物中での前記酵母株のインキュベーション後先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチル、好ましくは最大で50ppbのジアセチルを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)16℃および(B)18℃での50Lトライアルからの、ハイブリッド酵母株ZDA1および対照酵母株Hybrid酵母7とインキュベートした麦汁のジアセチルおよび°プラートレベルを示す。図1C図1Bと同じだが、ZDA1株のみ、および総ジアセチルについての異なる軸を用いた、18℃でのプロットである。結果は実施例1において記載される。
図2】16°での10HLトライアルからの、ハイブリッド酵母株ZDA1および対照酵母株Hybrid酵母7とインキュベートした麦汁のジアセチルレベルを示す(図2A)。°プラートが、加えて、ハイブリッド酵母株ZDA1(図2B)に対して示される。結果は実施例4において記載される。
図3】本発明による酵母株ZDA2(89-84393 ZDA F1)により調製されたビールと比較した9つの異なる市販のビールにおけるイソブタノールあたりのプロパノールの比を示す。全てのビールが5%ABVに近い。
図4A】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV2タンパク質配列の配列比較を示す。
図4B】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV2タンパク質配列の配列比較を示す。
図4C】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV2タンパク質配列の配列比較を示す。
図4D】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV2タンパク質配列の配列比較を示す。
図4E】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV2タンパク質配列の配列比較を示す。
図4F】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV2タンパク質配列の配列比較を示す。
図5A】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV6タンパク質配列の配列比較を示す。
図5B】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV6タンパク質配列の配列比較を示す。
図5C】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV6タンパク質配列の配列比較を示す。
図6A】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV3タンパク質配列の配列比較を示す。
図6B】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV3タンパク質配列の配列比較を示す。
図6C】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV3タンパク質配列の配列比較を示す。
図6D】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV3タンパク質配列の配列比較を示す。
図6E】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV3タンパク質配列の配列比較を示す。
図7A】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV5タンパク質配列の配列比較を示す。
図7B】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV5タンパク質配列の配列比較を示す。
図7C】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV5タンパク質配列の配列比較を示す。
図7D】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のILV5タンパク質配列の配列比較を示す。
図8A】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のBAT1タンパク質配列の配列比較を示す。
図8B】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のBAT1タンパク質配列の配列比較を示す。
図8C】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のBAT1タンパク質配列の配列比較を示す。
図8D】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のBAT1タンパク質配列の配列比較を示す。
図8E】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のBAT1タンパク質配列の配列比較を示す。
図9A】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のBAT2タンパク質配列の配列比較を示す。
図9B】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のBAT2タンパク質配列の配列比較を示す。
図9C】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のBAT2タンパク質配列の配列比較を示す。
図9D】WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2間のBAT2タンパク質配列の配列比較を示す。
図10】16℃での商業規模トライアルからの、酵母株ZDA2および対照酵母株Hybrid酵母7とインキュベートした麦汁の°プラートおよびジアセチルレベルを示す。結果は実施例8において記載される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書では、「1つの(a)」は、それが使用される文脈によって、1つ以上を意味することができる。
【0016】
本明細書では、「およそ」という用語は本明細書では、±10%、好ましくは±5%、さらにより好ましくは±2%を意味する。
【0017】
「ビール」という用語は、本明細書では、麦汁の発酵により調製された飲料を示す。好ましくは、前記発酵は酵母により実施される。
【0018】
「グリーン・ビール」という用語は、本明細書では、好ましくは酵母による麦汁の発酵後に直接得られる溶液を示す。よって、「グリーン・ビール」はラガーリング前に得られる。言い換えれば、グリーン・ビールは、糖発酵が完了した直後に得られる溶液である。一般的に言って、ビールは香味および芳香の完熟に到達した時にはもはや「グリーン」とは考えられない。
【0019】
「ジアセチル」という用語は、本明細書では、下記式の化学化合物を示す:
【化1】
【0020】
試料中のジアセチルの濃度は、欧州醸造委員会(European Brewing Convention)法EBC9.24.2に従い、ガスクロマトグラフィーにより測定することができ、これは、総ジアセチルを決定するための、60℃で90分間の試料のインキュベーション期間を含み、前駆体アセト乳酸および遊離ジアセチルの総合計が反映される。本開示を通して、ここで開示される酵母株により生成されるジアセチルについて記載する場合、「ジアセチル」という用語は別記されない限り「総ジアセチル」を示す。よって、試料のジアセチル濃度は総ジアセチル濃度、すなわち前駆体アセト乳酸および遊離ジアセチルの総合計を示す。
【0021】
「穀類」という用語は、本明細書では、可食粒が得られるイネ科の任意の植物、例えばコムギ、アワ、コメ、オオムギ、カラスムギ、ライ麦、ライコムギ、ソルガム、およびトウモロコシを示す。
【0022】
「グレイン」という用語は、本明細書では、内部種子とも呼ばれる、穀類穎花を含む穀類の種子を示す。加えて、グレインは外穎および内穎を含み得る。ほとんどのオオムギ品種において、外穎および内穎は穎花に付着しており、脱穀後、グレインの一部となる。しかしながら、裸オオムギ品種もまた生じる。これらにおいて、穎花は外穎および内穎を有さず、コムギのように脱穀されて遊離する。「グレイン」および「カーネル」という用語は本明細書で同じ意味で使用される。
【0023】
「麦汁」という用語により、モルトおよび/または穀物粒および任意で追加のアジャンクトの液体抽出物が意味される。麦汁は一般に、熱水によるマッシング後のビール粕から残留糖および他の化合物を抽出するプロセスにおいて、マッシング、任意で続いて「スパージング」により得られる。スパージングは、典型的には、ろ過槽、マッシュフィルタ、または別の装置において実施され、ビール粕からの抽出水の分離が可能になる。マッシング後に得られる麦汁は一般に「第一麦汁」と呼ばれ、一方、スパージング後に得られる麦汁は一般に「第二麦汁」と呼ばれる。特定されない場合、麦汁という用語は第一麦汁、第二麦汁、または両方の組み合わせであってもよい。従来のビール生産中、麦汁はホップと一緒に煮沸される。ホップなしの麦汁はまた、「スィート麦汁」とも呼ばれ得、一方、ホップと共に煮沸させた麦汁は「煮沸麦汁」または単純に麦汁と呼ばれ得る。
【0024】
「水性抽出物」という用語は、本明細書では、モルトおよび/または穀物粒の任意の水性抽出物を示す。よって、この非限定的な例は所定量の発酵性糖を有する麦汁とすることができる。
【0025】
「発酵水性抽出物という用語」は、本明細書では、微生物、例えば酵母株と共にインキュベートし、糖発酵が完了した場合の、任意の水性抽出物を示す。糖発酵は、発酵中、°プラートにより測定される糖レベルがもはや著しく低減されない時点で完了したと考えられる。好ましくは、糖発酵は、糖レベルが24時間の期間中0.5°プラートを超えて変化しなかった時、または、糖レベルが、12時間の期間中0.25°プラートを超えて変化しなかった時、完了したと考えることができる。発酵水性抽出物は例えば、発酵させたモルトおよび/または穀類系抽出物とすることができる。
【0026】
「試験液」という用語は、本明細書では、任意の水性液体または溶液を示す。試験液は、あらかじめ決められたレベルの特定化合物を含み得る。よって、この非限定的な例は特定の糖含量を有する麦汁とすることができる。
【0027】
「発酵試験液」という用語は、本明細書では、微生物、例えば酵母株とインキュベートし、糖発酵が完了した任意の試験液を示す。
【0028】
「°プラート」という用語は、本明細書では、プラートスケールで測定された密度を示す。プラートスケールは、ビールまたは麦汁の密度を抽出物の重量パーセンテージの観点から測定するための、経験的に導かれた比重計スケールである。スケールは密度を100gの麦汁あたりのグラム抽出物として表す。プラートは例えば、Anton Paar製のAlcolyzerまたはハンドヘルド装置を用いて測定することができる。
【0029】
「外観エキス含量」は、本明細書では、°プラートで測定した所定のビールまたは麦汁の密度を示す。密度は、糖含量により主に決定されるので、外観エキス含量は溶液または抽出物の糖含量を示す。溶液の外観エキス含量は、例えば、ハンドヘルドAnton-PAARシリアル番号DMを用いて測定することができる。
【0030】
「アルコール度数(ABV)」という用語は、本明細書では、所定の体積のアルコール飲料中のアルコール(エタノール)の量を示す(体積パーセントとして表される)。それは、20℃の100mLの溶液中に存在する純粋エタノールのミリリットル数として規定される。ABVはAlcolyzerを用いて測定することができる。
【0031】
「RDF」または「真性発酵度合い」という用語は、本明細書では、麦汁中の糖が発酵されてビール中のアルコールとなった度合いを示し、発酵度とも呼ばれる。RDFは発酵されたエキスのパーセンテージを表す。50~60%のRDFはそれらの元のエキスの40%超が未発酵なままであるフルボディのビールを表し、一方、80%を超えるRDFはそれらの元のエキスの20%未満が未発酵のままである高希薄化ビールを表す。食感は大部分はRDFパーセンテージによって決まり;RDFパーセンテージが高くなるほど、ビールはより軽く、よりドライになる。
【0032】
「綿状沈殿」という用語は、本明細書では、微粒子、例えば酵母細胞が凝集して綿状物にされるプロセスを示す。次いで、綿状物が液体上面まで浮き(クリーミング)、液体の底面まで沈降し(沈降)、または容易に液体から濾過され得る。酵母専門家およびブルーワーはしばしば、酵母綿状沈殿挙動を、発酵プロセス中に酵母株について観察される綿状沈殿の程度に従い、「高」、「中」、または「低」と分類する。高綿状株は懸濁した酵母がより少ないよりブライトなビールを生産することができ、濾過がより容易になる。綿状沈殿はより低い温度により増加させることができ、そのため、低綿状酵母では、追加の冷却工程が、発酵が完了した後に必要とされる可能性がある。そのため、高綿状酵母は低綿状酵母と比較すると処理時間を低減させる可能性があり、というのも、よりブライトな、容易に濾過されたビールを達成するのに、冷却が必要とされないからである。綿状沈殿は例えば、発酵後の溶液中の酵母細胞の数を計数することにより、例えば、発酵水性抽出物または試験液を含む容器の上3/4部分からとった試料中の酵母細胞の数を計数することにより決定することができる。
【0033】
「発酵」という用語は、本明細書では、水性抽出物または試験液を微生物、例えば酵母株と共にインキュベートすることを示す。
【0034】
「モルト」という用語は、本明細書では、モルト化した穀物粒を示す。「緑モルト」という用語はキルン乾燥の工程に供されていない発芽穀物粒を示す。いくつかの実施形態では、緑モルトは、粉砕緑モルトである。「キルン乾燥モルト」という用語は、本明細書では、キルン乾燥により乾燥された発芽穀物粒を示す。いくつかの実施形態では、キルン乾燥モルトは粉砕キルン乾燥モルトである。一般に、前記穀物粒は制御された環境条件下で発芽させられている。
【0035】
「炭素源」という用語は、本明細書では、任意の有機分子を示し、これはエネルギーを酵母に提供すること、および、細胞生合成のための炭素を提供することができる。特に、前記炭素源は、炭水化物であってもよく、より好ましくは、炭素源は単糖、二糖、三糖、四糖および/または短いオリゴ糖であってもよい。酵母により発酵させることができる炭素源はしばしば、発酵性糖と呼ばれ、例えば、限定はされないが、グルコース、フルクトース、マルトース、マルトトリオースおよびスクロースが挙げられる。
【0036】
アミノ酸は本明細書では、IUPAC1文字および3文字コードを使用して命名することができる。別記されない限り、「アミノ酸」という用語は標準アミノ酸を示す。
【0037】
「機能遺伝子」という用語は、本明細書では、転写され、翻訳されると、遺伝子は内在性である、野生株の対応する遺伝子によりコードされるタンパク質と少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%、例えば100%配列同一性を有するタンパク質を発現する遺伝子を示す。機能遺伝子により発現されるタンパク質は、遺伝子は内在性である、野生株の対応する遺伝子によりコードされるタンパク質の機能的相同体でなければならず、すなわち、それは同じ型の酵素活性を有さなければならず、前記活性は、遺伝子は内在性である、野生株の対応する遺伝子によりコードされるタンパク質と同様のレベルになければならない。特に、「機能遺伝子」という用語は、ほとんど~全く酵素活性を有さないトランケートされたタンパク質産物をコードする遺伝子を包含しない。好ましくは「遺伝子」という用語は、本明細書では、機能遺伝子を示す。
【0038】
「機能コピー数」という用語は、本明細書では、酵母株内の機能遺伝子の総数を示す。「機能コピー数」は本明細書では「活性コピー数」と同じ意味で使用される。
【0039】
「機能的相同体」という用語は、本明細書では、基準ポリペプチドと少なくとも1つの生物学的機能を共有するポリペプチドを示す。一般に、前記機能的相同体はまた、基準ポリペプチドとかなりの配列同一性を共有する。好ましくは、基準ポリペプチドの機能的相同体は、基準タンパク質と同じ生物学的機能を有し、基準ポリペプチドと高レベルの配列同一性を共有するポリペプチドである。
【0040】
「天然プロモーター」という用語は、本明細書では、そのヌクレオチド配列が、遺伝子は内在性である、野生株のプロモーターに対し少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%、例えば100%配列同一性を有するプロモーターを示す。よって、その天然プロモーター下で発現された遺伝子は通常内在性レベルで発現される。
【0041】
「配列同一性」という用語は、本明細書では、それらの対配列比較に基づく、2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド配列間、すなわち候補配列(例えば、変異配列)と基準配列(例えば、野生型配列)の間の関連性を記載する。本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)、好ましくはバージョン5.0.0以降(https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/で入手可能)において実行されるNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mo/. Biol. 48: 443-453)を使用して決定される。使用されるパラメータは10のギャップ開始ペナルティ、0.5のギャップ伸長ペナルティ、およびEBLOSUM62(30BLOSUM62のEMBOSSバージョン)代替行列である。「最長同一性」と標識されたNeedleのアウトプット(-nobriefオプションを使用して得られる)がパーセント同一性として使用され、下記のように計算される:(同一残基×100)/(アライメントの長さ-アライメントにおけるギャップの総数)。Needleman-Wunschアルゴリズムはまた、基準配列以外の配列内の所定のアミノ酸が基準配列の所定の位置に対応するかどうかを決定するために使用される。本発明の目的のために、2つのヌクレオチド配列間の配列同一性は、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)、好ましくはバージョン5.0.0以降において実行される、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970、上記)を使用して決定される。使用されるパラメータは10のギャップ開始ペナルティ、0.5のギャップ伸長ペナルティ、およびDNAFULL(NCBINUC4.4のEMBOSSバージョン)代替行列である。「最長同一性」と標識されたNeedleのアウトプット(-nobriefオプションを使用して得られる)がパーセント同一性として使用され、下記のように計算される:(同一デオキシリボヌクレオチド×100)/(アライメントの長さ-アライメントにおけるギャップの総数)。配列同一性は常に、全長基準配列と比較して測定され、すなわち、ギャップまたはミスマッチのないトランケートされたタンパク質は、基準配列に対し100%配列同一と考えられない。
【0042】
「突然変異」という用語は、本明細書では、遺伝子のコードおよび非コード領域における挿入、欠失、置換、トランスバージョン、および点変異を含む。点変異は1つの塩基対の変更に関する可能性があり、未熟成終止コドン、フレームシフト突然変異、スプライス部位の突然変異またはアミノ酸置換という結果となり得る。突然変異を含む遺伝子は「突然変異遺伝子」と呼ばれ得る。前記突然変異遺伝子が、野生型と異なる配列を有するポリペプチドをコードする場合、前記ポリペプチドは「突然変異ポリペプチド」および/または「突然変異タンパク質」と呼ばれ得る。突然変異ポリペプチドは、それが野生型配列とは異なるアミノ酸配列を含む場合、突然変異を保有していると記載され得る。
【0043】
「欠失」という用語は、本明細書では全遺伝子、または遺伝子の一部のみ、または染色体の一部分の欠失であり得る。
【0044】
「終止コドン」という用語は、本明細書では、遺伝コードにおけるヌクレオチドトリプレットを示し、これはmRNA内で、翻訳の終結という結果になる。「終止コドン」という用語は、本明細書ではまた、mRNA内の終止コドンをコードする遺伝子内のヌクレオチドトリプレットを示す。DNA内の終止コドンは、典型的には、下記配列の1つを有する:TAG、TAAまたはTGA。
【0045】
「増殖」という用語は、本明細書で酵母と関連して使用されるように、酵母細胞が増加するプロセスを示す。よって、酵母細胞が増殖している間、酵母細胞の数は増加する。酵母細胞の数は任意の有用な方法により決定され得る。
【0046】
「利用することができる」という用語は、本明細書では、特定化合物を細胞生合成のために炭素および/または窒素源として使用する酵母の能力を示す。
【0047】
酵母株
本開示は、少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物中でインキュベートした場合、驚いたことに、18℃以下での発酵中、低レベルの総ジアセチルを生成し、および/または、ジアセチルを直ちに消費する、酵母株、例えばサッカロマイセス・パストリアヌス酵母株に関する。
【0048】
ビールの生産のために異なる型の酵母が使用され、最も顕著なのは、サッカロマイセス・パストリアヌスおよびサッカロマイセス・セレビシエである。ラガー・ビールは典型的には、サッカロマイセス・パストリアヌス種の酵母を使用して発酵される。よって、本発明によるサッカロマイセス・パストリアヌスは、例えば、ラガー・ビールの生産に有用な任意の酵母であってもよい。特に、サッカロマイセス・パストリアヌスは下面発酵酵母株であり得る。サッカロマイセス・パストリアヌスはS.セレビシエとS.ユーバヤヌスの間のハイブリッドであることが好ましい。前記サッカロマイセス・パストリアヌスはマルトースおよびメリビオースを利用することができることがまた好ましい。よって、好ましくは、サッカロマイセス・パストリアヌスは酵母株であり、これはS.セレビシエとS.ユーバヤヌスの間のハイブリッドである。前記サッカロマイセス・パストリアヌスはマルトースおよびメリビオースを利用することができることがまた好ましい。
【0049】
1つの態様では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は前記酵母株の試験液中でのインキュベーション後に、発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記発酵試験液は前記試験液の外観エキス含量が、前記抽出物中での前記酵母株のインキュベーション後先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチル、好ましくは最大で50ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる。
【0050】
よって、本発明によるサッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は好ましくは、下記工程を含む方法において試験される場合、発酵試験液を生成することができ:
a)試験液を提供する工程であって、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物である工程
b)前記サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株を前記試験液と共に、18℃以下、好ましくは12~18℃、より好ましくは16℃の温度で、インキュベートする工程
c)前記試験液の外観エキス含量が、前記インキュベーション中、先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点を決定する工程、ならびに
d)前記最早時点でのジアセチルのレベルを決定する工程、
前記試験液は前記最早時点で、最大で60ppbのジアセチル、好ましくは最大で50ppbのジアセチルを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は試験液中での前記酵母株とのインキュベーション後に、発酵試験液を生成することができ、試験液は以下で記載される試験液のいずれかであってもよく、好ましくは、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、発酵試験液は、前記試験液中での前記酵母株とのインキュベーション後、先行する24時間で、前記試験液の外観エキス含量が0.50°プラート超減少しなかった、例えば0.40°プラート超減少しなかった、例えば0.30°プラート超減少しなかった、例えば0.20°プラート超減少しなかった最早時点で、以下で記載される最大レベルのジアセチルを含み、前記発酵は、以下で特定される温度で起こる。特に、前記試験液の外観エキス含量は、先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった。
【0052】
前記最大レベルのジアセチルは、前記試験液の外観エキス含量が前記°プラート超減少しなかった最早時点で、好ましくは最大で60ppb、例えば最大で55ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチル、例えば最大で45ppbのジアセチルである。特に、前記最早時点でのジアセチルの前記レベルは最大で45ppbであり得る。
【0053】
以上で記載される通り、酵母の特性を同定する場合、インキュベーションは好ましくは、最大で18℃の温度で、例えば12℃~18℃の範囲または14~16℃の範囲にある温度で実施される。特に、前記インキュベーションはおよそ16℃の温度で実施され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有する試験液中での前記酵母株のインキュベーション後、発酵試験液を生成することができ、前記発酵試験液は、前記抽出物中での前記酵母株のインキュベーション後先行する12時間で、前記試験液の外観エキス含量が0.25°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチル、好ましくは最大で50ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる。
【0055】
よって、本発明によるサッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は好ましくは、下記工程を含む方法において試験される場合、発酵試験液を生成することができ:
a)試験液を提供する工程であって、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物である工程
b)前記サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株を前記試験液と共に最大で18°の温度で、インキュベートする工程、
c)前記試験液の外観エキス含量が前記インキュベーション中の先行する12時間で0.25°プラート超減少しなかった最早時点を決定する工程、ならびに
d)前記最早時点でのジアセチルのレベルを決定する工程、
前記試験液は前記最早時点で、最大で60ppbのジアセチル、好ましくは最大で50ppbのジアセチルを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は前記酵母株の試験液中でのインキュベーション後に、発酵試験液を生成することができ、試験液は以下で記載される試験液のいずれかであってもよく、発酵試験液は、前記抽出物中での前記酵母株のインキュベーション後先行する24時間で、前記試験液の外観エキス含量が0.25°プラート超減少しなかった、例えば0.20°プラート超減少しなかった、例えば0.15°プラート超減少しなかった、例えば0.10°プラート超減少しなかった最早時点で、以下で記載される最大レベルのジアセチルを含み、前記発酵は、以下で特定される温度で起こる。特に、前記試験液の外観エキス含量は先行する12時間で0.25°プラート超減少しなかった。
【0057】
前記最大レベルのジアセチルは、前記試験液の外観エキス含量が前記°プラート超減少しなかった最早時点で、好ましくは最大で60ppbのジアセチル、例えば最大で55ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチル、例えば最大で45ppbのジアセチルである。特に、前記最早時点でのジアセチルの前記最大レベルは50ppbであり得る。
【0058】
前記インキュベーションは好ましくは最大で18℃の温度で、例えば12℃~18℃の範囲の温度で実施される。特に、前記インキュベーションはおよそ16℃の温度で実施され得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は前記試験液の外観エキス含量が次の24時間で0.50°プラート超減少しない最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で60ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる。
【0060】
よって、本発明によるサッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、下記工程を含む方法において試験される場合、好ましくは、発酵試験液を生成することができ:
a)試験液を提供する工程であって、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物である工程、
b)前記サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株を前記試験液と共に最大で18°の温度でインキュベートする工程、
c)前記試験液の外観エキス含量が前記インキュベーション中、次の24時間で0.50°プラート超減少しない最早時点を決定する工程、ならびに
d)前記最早時点でのジアセチルのレベルを決定する工程、
前記試験液は前記最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で60ppbのジアセチルを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は前記酵母株の試験液中でのインキュベーション後に、発酵試験液を生成することができ、試験液は以下で記載される試験液のいずれかであってもよく、発酵試験液は、前記試験液の外観エキス含量が、前記抽出物中での前記酵母株のインキュベーション後、次の24時間で、0.50°プラート超減少しない、例えば0.40°プラート超減少しない、例えば0.30°プラート超減少しない、例えば0.20°プラート超減少しない最早時点で、以下で記載される最大レベルのジアセチルを含み、前記発酵は、以下で特定される温度で起こる。特に、前記試験液の外観エキス含量は次の24時間で0.50°プラート超減少しない。
【0062】
前記最大レベルのジアセチルは、前記試験液の外観エキス含量が前記°プラート超減少しなかった最早時点で、好ましくは、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で115ppbのジアセチル、例えば最大で110ppbのジアセチル、例えば最大で60ppbのジアセチルである。特に、前記最早時点での前記最大レベルのジアセチルは110ppbであり得る。特に、前記最早時点での前記最大レベルのジアセチルは55ppbであり得る。
【0063】
前記インキュベーションは好ましくは最大で18℃の温度で、例えば12℃~18℃の範囲の温度で実施される。特に、前記インキュベーションはおよそ16℃の温度で実施され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は前記試験液の外観エキス含量が次の12時間で0.25°プラート超減少しない最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で65ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる。
【0065】
よって、本発明によるサッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、下記工程を含む方法において試験される場合、好ましくは、発酵試験液を生成することができ:
a)試験液を提供する工程であって、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物である工程、
b)前記サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株を前記試験液と共に最大で18°の温度でインキュベートする工程、
c)前記試験液の外観エキス含量が前記インキュベーション中、次の12時間で0.25°プラート超減少しない最早時点を決定する工程、ならびに
d)前記最早時点でのジアセチルのレベルを決定する工程、
前記試験液は前記最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で65ppbのジアセチルを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は前記酵母株の試験液中でのインキュベーション後に、発酵試験液を生成することができ、試験液は以下で記載される試験液のいずれかであってもよく、発酵試験液は、前記試験液の外観エキス含量が次の12時間で0.25°プラート超減少しない、例えば0.20°プラート超減少しない、例えば0.15°プラート超減少しない、例えば0.10°プラート超減少しない最早時点で、以下で記載される最大レベルのジアセチルを含み、前記発酵は、以下で特定される温度で起こる。特に、前記試験液の外観エキス含量は次の12時間で0.25°プラート超減少しない。
【0067】
前記最大レベルのジアセチルは好ましくは、前記試験液の外観エキス含量が前記°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で115ppbのジアセチル、例えば最大で110ppbのジアセチル、例えば最大で105ppbのジアセチルである。特に、前記最早時点での前記最大レベルのジアセチルは110ppb、例えば最大で55ppbのジアセチルであり得る。
【0068】
前記インキュベーションは好ましくは最大で18℃の温度で、例えば12℃~18℃の範囲の温度で実施される。特に、前記インキュベーションはおよそ16℃の温度で実施され得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は前記酵母株の試験液中でのインキュベーション後に、発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は酵母とのインキュベーションの開始後5日以内の任意の時点で、最大で265ppbのジアセチルを含み、インキュベーションは最大で18℃の温度で実施され、7~1500万の範囲の生酵母細胞/mlが前記試験液に添加される。
【0070】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は前記酵母株の試験液中でのインキュベーション後に、発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記発酵試験液は前記酵母株との最大で6日間のインキュベーション後、最大で50ppbのジアセチルを含む。特に、前記発酵試験液は、前記酵母株との最大で5日間のインキュベーション後、最大で50ppbのジアセチルを含み得る。特に、前記発酵試験液は、前記酵母株との最大で4日間のインキュベーション後、最大で50ppbのジアセチルを含み得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は前記酵母株の試験液中でのインキュベーション後に、発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は、前記試験液との最大で5日間、最大で16℃の温度でのインキュベーション後、最大で50ppbのジアセチルを含む。特に、前記発酵試験液は、前記酵母株との最大で4日間、最大で16℃の温度でのインキュベーション後、最大で50ppbのジアセチルを含み得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は前記酵母株の試験液中でのインキュベーション後に、発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記酵母株は、前記酵母株を前記試験液中でインキュベートした場合、少なくとも4.0mL/Lエタノール/°プラートを生成させることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は前記酵母株の試験液中でのインキュベーション後に、発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記酵母株は、前記酵母株を前記試験液中で、4~6日の範囲の間インキュベートした場合、少なくとも4.0mL/Lエタノール/°プラートを生成させることができる。特に、前記酵母株は前記試験液中で、およそ4日間インキュベートすることができる。
【0074】
非常に好ましい実施形態では、酵母株は、下記ができる酵母株であり:
-試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することであって、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記発酵試験液は、前記試験液の外観エキス含量が、先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチルを含むこと;
-試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することであって、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記発酵液は、前記試験液の外観エキス含量が先行する12時間で0.25°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチル、好ましくは最大で50ppbのジアセチルを含むこと;
-試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することであって、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記発酵試験液は、前記試験液の外観エキス含量が次の24時間で0.50°プラート超減少しない最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で60ppbのジアセチルを含むこと;ならびに
-試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することであって、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記発酵試験液は、前記試験液の外観エキス含量が次の12時間で0.25°プラート超減少しない最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で60ppbのジアセチルを含むこと;
発酵は本明細書において実施例6で記載されるように起こる。
【0075】
いくつかの実施形態では、酵母株は高綿状沈殿を有する。綿状沈殿は、例えば、発酵後の懸濁細胞であり得る。「懸濁細胞」は一般に、発酵試験液を含む容器の上3/4、例えば上2/3、例えば上半分からとった試料中の酵母細胞を計数することにより決定される。発酵が円錐筒タンク内で実施される場合、前記試料は好ましくは円錐上方で取られる。発酵後の溶液中の低い数の細胞は高綿状沈殿を示す。
【0076】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は前記酵母株の試験液中でのインキュベーション後に、発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は、前記試験液の外観エキス含量が、先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点で、溶液中、最大で1000万細胞/ミリリットル、例えば最大で950万細胞/ミリリットル、例えば最大で900万細胞/ミリリットル、例えば最大で850万細胞/ミリリットル、例えば最大で800万細胞/ミリリットルを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株はメリビオースを唯一の炭素源として有する培地上で増殖することができる。
【0078】
好ましい実施形態では、本明細書で開示される酵母株は遺伝子組み換えでない生物である。よって、好ましい実施形態では、前記酵母株は遺伝子操作の工程を受けていない。
【0079】
試験液
いくつかの実施形態では、試験液はおよそ16°プラートの外観エキス含量を有する麦汁である。いくつかの実施形態では、試験液は少なくとも40g/kgのマルトースを含む。
【0080】
試験液は一般に少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物である。よって、試験液は特に麦汁であってもよい。試験液は好ましくは、12~18°プラートの範囲の外観エキス含量、より好ましくは、およそ16°プラートの外観エキス含量を有し得る。試験液は、0.20mg/L~0.40mg/Lの範囲の亜鉛をさらに含むことができ、pHは、4.0~6.0の範囲に調整され得る。
【0081】
試験液の1つの例は、12-25g/Lの範囲のグルコース、60-80g/Lの範囲のマルトース、15-20g/Lの範囲のマルトトリオース、0.20mg/L~0.40mg/Lの範囲の亜鉛、110-250mg/Lの範囲の遊離αアミノ態窒素(FAN)および0.6~0.8のバリン/FAN比を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、試験液はピルスナーモルトから、潜在的オオムギアジャンクトが添加されて製造される。
【0083】
遺伝子型
本発明によるサッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、上記見出し「酵母株」を有するセクションで記載されるように、ジアセチルレベルが低減された発酵試験液を生成することができる表現型を有する。
【0084】
前記表現型特徴に加えて、本発明による酵母株は好ましくは、本明細書において以下で記載される遺伝子型の1つ以上を有し得る。
【0085】
ILV2、ILV6、ILV5、ILV3、BAT1およびBAT2は、ピルビン酸からL-バリンの合成に関与する。ジアセチルの自然産生がこのプロセスにおいて起こり得る。
【0086】
アセト乳酸シンターゼ小サブユニット(ILV6)およびアセト乳酸シンターゼ触媒サブユニット(ILV2)はピルビン酸をαアセト乳酸に変換する。
【0087】
ケトール酸レダクトイソメラーゼ(ILV5)はαアセト乳酸の2,3ヒドロキシ-イソ吉草酸への変換を触媒する。
【0088】
ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(ILV3)は2,3ヒドロキシ-イソ吉草酸の2-ケトイソラテレート(2-keto isolaterate)への変換を触媒する。
【0089】
分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(BAT1)はミトコンドリアにおける2-ケトイソラテレート(2-keto isolaterate)のL-バリンへの変換を触媒し、分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(BAT2)はサイトゾルにおける前記反応を触媒する。
【表1】
【表2】
【0090】
酵母細胞が正確な数の遺伝子を「有する」場合、前記細胞は示された数を超える遺伝子は含まないことが理解される。同様に、酵母細胞がXX~YY遺伝子の範囲で「有する」場合、前記酵母細胞はYYを超える遺伝子は含まない。
【0091】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、機能ILV2をコードする最大で5の遺伝子、例えば機能ILV2をコードする最大で4の遺伝子、例えば機能ILV2をコードする1~5の範囲の遺伝子、例えば機能ILV2をコードする1~4の範囲の遺伝子を有し、ILV2をコードする各遺伝子は、SEQ ID NO:32のScILV2またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%配列同一性を共有する機能的相同体をコードし、または、SEQ ID NO:38のSeILV2または、これと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%配列同一性を共有する相同体をコードする。発明の酵母株はILV2をコードする最大で2の機能遺伝子を有し、例えば、酵母株は、ILV2をコードする1~2の範囲、例えば厳密に2の機能遺伝子を有し得ることが好ましい。好ましくは、前記機能遺伝子が、SEQ ID NO:32のScILV2またはSEQ ID NO:38のSeILV2またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%配列同一性を共有する前記のいずれかの機能的相同体をコードする。1つの実施形態では、前記機能遺伝子はSEQ ID NO:32のScILV2、好ましくはScILVをコードする。1つの実施形態では前記機能遺伝子はZDA1、ZDA2および/またはZDA3のILV2をコードし、ZDA1、ZDA2および/またはZDA3のILV2の配列は図4で提供される。
【0092】
いくつかの実施形態では、酵母株は、ILV2をコードする最大で2の機能遺伝子を有し、ILV2をコードする各遺伝子は、SEQ ID NO:32のScILV2またはSEQ ID NO:38のSeILV2、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードし;ILV3をコードする少なくとも4の機能遺伝子、例えばILV3をコードする少なくとも5の機能遺伝子、例えばILV3をコードする少なくとも6の機能遺伝子を有し、ILV3をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:35のScILV3またはSEQ ID NO:41のSeILV3、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードし;ならびにILV5をコードする少なくとも3の機能遺伝子、例えばILV5をコードする少なくとも4の機能遺伝子、例えばILV5をコードする少なくとも5の機能遺伝子を有し、ILV5をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:34のScILV5またはSEQ ID NO:40のSeILV5、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする。
【0093】
いくつかの実施形態では、酵母株は、ILV2をコードする最大で2の機能遺伝子を有し、ILV2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:32のScILV2またはSEQ ID NO:38のSeILV2またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%配列同一性を共有する前記のいずれかの機能的相同体をコードし;ならびに、ILV3をコードする、5~9の範囲の機能遺伝子、例えば、ILV3をコードする、5~7の範囲、例えば6の機能遺伝子を有し、ILV3をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:35のScILV3またはSEQ ID NO:41のSeILV3またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%配列同一性を共有する前記のいずれかの機能的相同体をコードし;ならびにILV5をコードする、4~8の範囲の機能遺伝子、例えば、ILV5をコードする、4~6の範囲、例えば5の機能遺伝子を有し、ILV5をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:34のScILV5またはSEQ ID NO:40のSeILV5またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%配列同一性を共有する前記のいずれかの機能的相同体をコードする。
【0094】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、機能ILV6をコードする最大で4の遺伝子、例えば、機能ILV6をコードする2~4の範囲の遺伝子を有し、ILV6をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:33のScILV6またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%配列同一性を共有する機能的相同体をコードし、または、SEQ ID NO:39のSeILV6またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする。
【0095】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、機能ILV5をコードする少なくとも2の遺伝子、例えば機能ILV5をコードする、少なくとも4の遺伝子、例えば機能ILV5をコードする、少なくとも5の遺伝子を有し、ILV5をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:34のScILV5またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%、最大99%までの配列同一性を共有する機能的相同体をコードし、または、SEQ ID NO:40のSeILV5またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%、最大99%の配列同一性を共有する機能的相同体をコードする。いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は機能ILV5をコードする、最大で20の遺伝子、例えば最大で15の遺伝子、例えば最大で10の対立遺伝子を有し、機能ILV5をコードする遺伝子は前記のいずれかであってもよい。いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は機能ILV5をコードする、5~20の範囲の対立遺伝子、例えば5~15の対立遺伝子、例えば5~10の遺伝子を有し、機能ILV5をコードする遺伝子は前記のいずれかであってもよい。
【0096】
1つの実施形態では、酵母株はILV5をコードする、4~8の範囲の機能遺伝子、例えば、ILV5をコードする、4~6の範囲、例えば5の機能遺伝子を有し、ILV5をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:34のScILV5またはSEQ ID NO:40のSeILV5またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%配列同一性を共有する前記のいずれかの機能的相同体をコードする。1つの実施形態では、酵母株はILV5をコードする、4~8の範囲の機能遺伝子、例えば、ILV5をコードする、4~6の範囲、例えば5の機能遺伝子を有し、各遺伝子はZDA1、ZDA2および/またはZDA3のILV5をコードし、ZDA1、ZDA2および/またはZDA3のILV5の配列は図7で提供される。
【0097】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、機能ILV3をコードする、少なくとも3の遺伝子、例えば機能ILV3をコードする、少なくとも4の遺伝子、例えば、機能ILV3をコードする、少なくとも6の遺伝子を有し、機能ILV3をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:35のScILV3またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%、最大99%の配列同一性を共有する機能的相同体をコードし、または、SEQ ID NO:41のSeILV3、または、これと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%、最大99%の配列同一性を共有する相同体をコードする。いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、ILV3をコードする、最大で20の対立遺伝子、例えば最大で15の対立遺伝子、例えば最大で10の対立遺伝子を有し、機能ILV3をコードする各遺伝子は前記のいずれかであってもよい。いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、機能ILV3をコードする、5~20の範囲の対立遺伝子、例えば5~15の対立遺伝子、例えば5~10遺伝子を有し、機能ILV3をコードする遺伝子は前記のいずれかであってもよい。
【0098】
1つの実施形態では、発明の酵母は、ILV3をコードする、5~9の範囲の機能遺伝子、例えば、ILV3をコードする、5~7の範囲、例えば6の機能遺伝子を有し、ILV3をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:35のScILV3またはSEQ ID NO:41のSeILV3またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%配列同一性を共有する前記のいずれかの機能的相同体をコードする。1つの実施形態では、発明の酵母は、ILV3をコードする、5~9の範囲の機能遺伝子、例えば、ILV3をコードする、5~7の範囲、例えば6の機能遺伝子を有し、各遺伝子はZDA1、ZDA2および/またはZDA3のILV3をコードし、ZDA1、ZDA2および/またはZDA3のILV3の配列は図6で提供される。
【0099】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は機能BAT1をコードする、少なくとも3の遺伝子、例えば、機能BAT1をコードする少なくとも4の遺伝子、例えば機能BAT1をコードする少なくとも5の遺伝子を有し、機能BAT1をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:36のScBAT1またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%、最大99%の配列同一性を共有する機能的相同体をコードし、または、SEQ ID NO:42のSeBAT1またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%、最大99%の配列同一性を共有する機能的相同体をコードする。いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、BAT1をコードする、最大で20の遺伝子、例えば最大で15の遺伝子、例えば最大で10の遺伝子を有し、BAT1をコードする各遺伝子は前記のいずれかであってもよい。いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は機能BAT1をコードする、5~20の範囲の対立遺伝子、例えば5~15の対立遺伝子、例えば5~10の対立遺伝子を有し、機能BAT1をコードする各対立遺伝子は前記のいずれかであってもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は機能BAT2をコードする少なくとも4の遺伝子、例えば機能BAT2をコードする少なくとも5の遺伝子、例えば機能BAT2をコードする少なくとも6の遺伝子を有し、機能BAT2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:37のScBAT2またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%、最大99%の配列同一性を共有する機能的相同体をコードし、または、SEQ ID NO:43のSeBAT2またはこれと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%、最大99%の配列同一性を共有する機能的相同体をコードする。いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、機能BAT2をコードする、最大で20の遺伝子、例えば最大で15の遺伝子、例えば最大で10の遺伝子を有し、機能BAT2をコードする遺伝子は前記のいずれかであってもよい。いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、機能BAT2をコードする、5~20の範囲の遺伝子、例えば5~15の遺伝子、例えば5~10の遺伝子を有し、機能BAT2をコードする各遺伝子は前記のいずれかであってもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、1つ以上のILV2遺伝子における突然変異またはその欠失を保有する。
【0102】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、1つ以上のILV2遺伝子におけるフレームシフト突然変異を保有する。
【0103】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、1つ以上のILV2遺伝子の発現低下または発現なしという結果になる突然変異を保有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、1つ以上のILV6遺伝子における突然変異またはその欠失を保有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、1つ以上のILV6遺伝子におけるフレームシフト突然変異を保有する。
【0106】
いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・パストリアヌス酵母株は、1つ以上のILV6遺伝子の発現低下または発現なしという結果になる突然変異を保有する。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態では、機能ILV2および機能ILV6をコードする遺伝子の合計は機能ILV5および機能ILV3をコードする遺伝子の合計より低く、前記機能ILV2、ILV6、ILV3およびILV5は前記のいずれかであってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、機能ILV2をコードする遺伝子の合計は機能ILV5および機能ILV3をコードする遺伝子の合計より低く、前記機能ILV2、ILV5およびILV3は前記のいずれかであってもよい。1つの実施形態では、機能ILV2および機能ILV6をコードする遺伝子の合計は機能ILV5、機能ILV3、機能BAT1および機能BAT2をコードする遺伝子の合計より低く、前記機能ILV2、ILV6、ILV3、ILV5;BAT1およびBAT2は前記のいずれかであってもよい。言い換えれば、いくつかの実施形態では、ILV5およびILV3をコードする遺伝子の合計はILV2およびILV6をコードする遺伝子の合計より高い。よって、いくつかの実施形態では、ILV5およびILV3をコードする遺伝子の合計はILV2、ILV6、BAT1およびBAT2をコードする遺伝子の合計より高い。
【0108】
いくつかの実施形態では、ILV2遺伝子対ILV5およびILV3遺伝子の遺伝子比は少なくとも1、例えば少なくとも1.5、例えば少なくとも2、例えば少なくとも2.5、例えば少なくとも3であり、前記ILV2、ILV5およびILV3遺伝子は、それぞれ、前記機能ILV2、ILV5およびILV3のいずれかをコードする。
【0109】
いくつかの実施形態では、ILV2およびILV6遺伝子対ILV5およびILV3遺伝子の遺伝子比は少なくとも1、例えば少なくとも1.2、例えば少なくとも1.4、例えば少なくとも1.6、例えば少なくとも1.8または例えば少なくとも2であり、前記ILV2、ILV6、ILV5およびILV3遺伝子は、それぞれ、前記機能ILV2、ILV6、ILV5およびILV3のいずれかをコードする。
【0110】
いくつかの実施形態では、ILV2対ILV5、ILV3、BAT1およびBAT2の遺伝子比は少なくとも1、例えば少なくとも1.5、例えば少なくとも2、例えば少なくとも2.5、例えば少なくとも3、例えば少なくとも4、例えば少なくとも5、例えば少なくとも6であり、前記ILV2、ILV5、ILV3、BAT1およびBAT2遺伝子は、それぞれ、前記機能ILV2、ILV5、ILV3、BAT1およびBAT2のいずれかをコードする。
【0111】
いくつかの実施形態では、ILV2およびILV6対ILV5、ILV3、BAT1およびBAT2の遺伝子比は少なくとも1、例えば少なくとも1.5、例えば少なくとも2、例えば少なくとも2.5、例えば少なくとも3、例えば少なくとも4であり、前記ILV2、ILV6、ILV5、ILV3、BAT1およびBAT2遺伝子は、それぞれ、前記機能ILV2、ILV6、ILV5、ILV3、BAT1およびBAT2のいずれかをコードする。
【0112】
モルトおよび/または穀類に基づく発酵水性抽出物およびその生成方法
発明は上記見出し「酵母株」を有するセクションで記載されるサッカロマイセス・パストリアヌス酵母株、ならびに、前記酵母株を使用して、モルトおよび/または穀類に基づく発酵水性抽出物を調製する方法を提供する。
【0113】
発酵水性抽出物を生成する方法を提供することが発明の一態様であり、前記方法は下記工程を含み:
i)モルトおよび/または穀類の水性抽出物を提供する工程;
ii)酵母株を提供する工程であって、前記酵母株は本明細書において以上で、セクション「酵母株」において記載される酵母株のいずれかであってもよい、工程;ならびに
iii)工程i)で提供される水性抽出物を工程ii)の前記酵母株により発酵させる工程、
よって、発酵水性抽出物が得られる。
【0114】
水性抽出物は、モルトおよび/または穀物粒の任意の水性抽出物であってもよい。よって、この非限定的例は麦汁である。水性抽出物は、例えば、本明細書において下記のこのセクションで記載されるようにマッシングおよび任意でスパージングにより、モルトの抽出物を調製することにより調製され得る。
【0115】
モルトはモルト化した穀物粒、例えばオオムギ粒である。「モルト化」という用語により、制御された環境条件下で起こるプロセスにおけるカーネルの浸漬および発芽、任意で、続いて乾燥工程を含むプロセスであると理解される。前記乾燥工程は好ましくは、高温での発芽カーネルのキルン乾燥とすることができる。キルン乾燥に供した緑モルト、特にWO2018/001882号において記載されるプロセスにより得られたモルトもまた使用することができる。
【0116】
モルト化は、カーネル改変を引き起こす多くの酵素の合成、カーネル栄養分を動員する、および、他のデポリメラーゼを活性化するために死胚乳のデンプンおよび細胞壁を主に脱重合するプロセスに重要である。その後の乾燥プロセスにおいて、香味および色は、化学褐色化反応のために、少なくとも部分的に生成される。
【0117】
浸漬は当業者に公知の任意の従来の方法により実施され得る。1つの非限定的例は乾燥および湿潤条件を交互にしての、10℃~25℃の範囲の温度での浸漬を含む。発芽は当業者に公知の任意の従来の方法により実施され得る。1つの非限定的例は、10~25℃の範囲の温度で、任意で温度を1~4時間の範囲で変化させての発芽を含む。浸漬および発芽はまた、例えば、国際特許出願WO2018/001882号に記載されるように組み合わせ法で実施され得る。
【0118】
キルン乾燥は、従来の温度、例えば少なくとも75℃、例えば80~90℃の範囲、例えば80~85℃の範囲で実施され得る。よって、モルトは、例えば、Briggs et al. (1981)およびHough et al. (1982)により記載される方法のいずれかにより生成され得る。しかしながら、モルトを生成するための任意の他の好適な方法、例えば、特殊モルトの生成方法、例えば、限定はされないが、モルトを焙煎する方法もまた、本発明と共に使用され得る。
【0119】
モルトは例えばミリングによりさらに処理され得る。ミリングは乾燥状態で実施することができ、すなわち、モルトは乾燥状態で、または、緑モルトが使用される場合湿潤状態で粉砕される。
【0120】
モルト、例えば、粉砕モルトはマッシングすることができ、前記モルトの水性抽出物が得られる。飲料を調製するための開始液は、モルトの水性抽出物、例えば、マッシングにより調製されたモルトの水性抽出物であってもよい。
【0121】
よって、本発明によるモルトおよび/または穀類に基づく発酵水性抽出物を調製するための方法は、モルトおよび任意で追加のアジャンクトをマッシングすることにより、水性抽出物、例えば麦汁を生成する工程を含み得る。前記マッシング工程はまた、任意でスパージングを含むことができ、したがって前記マッシング工程は、スパージング工程を含むマッシング工程、または、スパージング工程なしのマッシング工程であってもよい。
【0122】
一般に、水性抽出物の生成はモルトおよび/またはカーネルのミリングにより開始される。追加のアジャンクトが添加される場合、これらはまた、それらの性質によって粉砕され得る。アジャンクトが穀類である場合、それは、例えば、粉砕され得るが、一方、シロップ、糖などは、一般に粉砕されない。ミリングはマッシング相でのカーネル粒子への水アクセスを促進する。マッシング中、モルト化中に開始された基質の酵素脱重合が継続され得る。
【0123】
一般に、水性抽出物は、粉砕モルトおよび水を合わせて、インキュベートすることにより、すなわち、マッシングプロセスにおいて調製される。マッシング中、モルト/液体組成物には、追加の炭水化物リッチアジャンクト組成物、例えば粉砕オオムギ、トウモロコシ、またはコメアジャンクトが補充され得る。モルト化されていない穀類アジャンクトは通常、活性酵素をほとんど、または、全く含まず、モルトまたは外因性酵素を補充して、多糖脱重合などに必要な酵素を提供することが重要となる。
【0124】
マッシング中、粉砕モルトおよび/または粉砕カーネルおよび任意で追加のアジャンクトは、液体部、例えば水とインキュベートされる。インキュベーション温度は一般に、一定に維持される(等温マッシング)か、または徐々に増加され、例えば、連続様式で増加される。どちらの場合にも、モルト/カーネル/アジャンクト中の可溶性物質が前記液体部中に解放される。その後の濾過により、水性抽出物および残留固体粒子が分離され、後者はまた、「カーネル粕」と呼ばれる。このように得られた水性抽出物はまた、「第一麦汁」と呼ばれ得る。追加の液体、例えば水が、スパージングとも呼ばれるプロセス中にカーネル粕に添加され得る。スパージングおよび濾過後、「第二麦汁」が得られ得る。さらなる麦汁が手順を繰り返すことにより調製され得る。麦汁の調製のための好適な手順の非限定的な例がBriggs et al. (1981およびHough et al. (1982)により記載される。
【0125】
上記のように、水性抽出物はまた、モルト化されていないカーネルのみをマッシングすることにより調製され得る。モルト化されていないカーネルは、麦汁生成に有益な酵素、例えば細胞壁を分解することができる酵素またはデンプンを糖に脱重合することができる酵素を欠き、またはこれを限られた量でしか含まない。よって、最大80%、例えば90%または例えば100%までのモルト化されていないカーネル、例えばオオムギ粒がマッシングのために使用される発明の実施形態では、1つ以上の好適な、外部醸造酵素がマッシュに添加されることが好ましい。好適な酵素はリパーゼ、デンプン分解酵素(例えばアミラーゼ)、グルカナーゼ[好ましくは(1-4)-および/または(1-3,1-4)-β-グルカナーゼ]、および/またはキシラナーゼ(例えばアラビノキシラナーゼ(arabinoxylanase))、および/またはプロテアーゼ、または前記酵素の1つ以上を含む酵素混合物、例えばCereflo、Ultraflo、またはOndea Pro(Novozymes)であってもよい。
【0126】
水性抽出物はまた、モルト化された、および、モルト化されていないカーネルの混合物を使用することにより調製され得、その場合、1つ以上の好適な酵素が調製中に添加され得る。モルトが使用される実施形態においてさえ、酵素はまた、添加され得る。より特定的には、カーネルは、マッシングのために、モルトと一緒に任意の組み合わせで使用することができ-外部醸造酵素ありまたはなし-例えば、限定はされないが、カーネル:モルトの割合=およそ100:0、またはおよそ75:25、またはおよそ50:50、またはおよそ25:75である。
【0127】
マッシング後に得られる水性抽出物はまた、「スィート麦汁」とも呼ばれ得る。従来の方法では、スィート麦汁はホップありまたはなしで煮沸され、その後、煮沸麦汁と呼ばれ得る。
【0128】
水性抽出物は加熱または煮沸することができ、その後、これは発明の酵母による発酵に供せられる。発明の1つの態様では、第二およびさらなる麦汁は合わせることができ、よって、加熱または煮沸に供せられ得る。水性抽出物は、任意の好適な時間量、例えば60分~120分の範囲の間、加熱または煮沸することができる。
【0129】
モルトおよび/または穀類に基づく発酵水性抽出物の結末は、モルトおよび/または穀物粒の水性抽出物中に存在する発酵性糖の量および型、ならびに発酵中に使用される酵母株の特性に著しく依存する。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態では、前記水性抽出物は、少なくとも12°プラート、例えば少なくとも15°プラート、例えば5-15°プラートの範囲、例えば10-20°プラートの範囲、例えば15-25°プラートの範囲の外観エキス含量を有する。
【0131】
いくつかの実施形態では、前記水性抽出物は、最大で6日、例えば最高5日間、例えば最高4日間、例えば最高3日間、前記酵母株により発酵される。
【0132】
本発明の酵母株の追加の利点は、それらが、低レベルのアミノ酸を有する麦汁の発酵に有用であることであり得る。よって、いくつかの実施形態では、前記水性抽出物は、最大で3500mg/L、例えば最大で3000mg/L、例えば最大で2500mg/Lのアミノ酸を含む。
【0133】
よって、水性抽出物、例えば麦汁は以上で記載されるように調製され得る。モルトおよび/または穀類に基づく発酵水性抽出物は、本発明による前記酵母株による前記水性抽出物の発酵により調製され得る。
【0134】
いくつかの好ましい実施形態では、前記発酵水性抽出物はグリーン・ビールである。
【0135】
一般論として、アルコール性発酵水性抽出物-例えばビール-は、モルト化されたおよび/またはモルト化されていないカーネルから製造することができる。モルトは、ホップおよび酵母に加えて、飲料、例えばビールの香味および色に寄与する。さらに、モルトは、発酵性糖源および酵素として機能する。モルト化および醸造のための好適な方法の例の非限定的記載が、例えば、Briggs et al. (1981)およびHough et al. (1982)による刊行物において見られ得る。カーネル、モルトおよびビール製品の分析のための多くの、定期的に更新される方法が使用可能であり、例えば、限定はされないが、米国穀物化学者学会(1995)、米国醸造化学者学会(1992)、欧州醸造所協定(1998)、および醸造研究所(1997)である。多くの特定の手順が所定の醸造所のために使用され、最も重要な変更は地方の消費者の好みに関連することが認識される。ビールを生産する任意のそのような方法は本発明と共に使用され得る。
【0136】
麦汁からビールを生産する第1の工程は好ましくは、本明細書において以上で記載される前記麦汁を加熱すること、続いて麦汁冷却および任意でワールプールレストのその後の相を含む。
【0137】
発明の方法はモルトおよび/または穀物粒の水性抽出物を本発明による酵母株により発酵させる工程を含む。前記発酵は未発酵水性抽出物または酵母のための発酵性糖を依然として含む発酵水性抽出物の発酵であってもよい。よって、いくつかの実施形態では、前記発酵は本質的にマッシングの完了の直後または麦汁の加熱後に実施され得る。
【0138】
発酵は、本発明による酵母、すなわち、本明細書において以上で記載される特性の1つ以上を有する酵母を含む発酵タンクにおいて実施され得る。
【0139】
数日の長さの発酵プロセス中、香味物質が発生する。酵母株が特定化合物を変換することができない場合、これらは、発酵工程iii)後に依然として存在するであろう。
【0140】
いくつかの実施形態では、発酵工程iii)は以下で特定される温度のいずれかで起こり、水性抽出物は以下で記載される酵母細胞数のいずれかとインキュベートされており、発酵水性抽出物は以下で記載される最大レベルのジアセチルを含み、発酵が最長5日、例えば最長4日、例えば最長3日後に完了する。特に、発酵は最長4日後に完了する。
【0141】
特定の実施形態では、発明の酵母株を使用する発酵は、同じ条件下でW-34/78酵母株を用いて実施された発酵よりも少なくとも12時間、例えば少なくとも24時間早く、完了し、ジアセチルは60ppb、例えば50ppb未満となる。
【0142】
前記発酵は好ましくは最大で18℃の温度で、例えば12℃~18℃の範囲の温度で実施される。特に、前記発酵はおよそ16℃の温度で実施され得る。
【0143】
前記最大レベルのジアセチルは好ましくは、発酵が完了した時に、最大で60ppbのジアセチル、例えば最大で55ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチル、例えば最大で45ppbのジアセチルである。特に、発酵完了時でのジアセチルの前記レベルは最大で60ppbである。
【0144】
前記発酵は好ましくは、水性抽出物を少なくとも600万生酵母細胞/ミリリットル、例えば少なくとも1000万生酵母細胞/ミリリットル、例えば少なくとも1400万生酵母細胞/ミリリットル、例えば7-800万の範囲の生酵母細胞/ミリリットル、例えば14-1600万の範囲の生酵母細胞/ミリリットルと共にインキュベートすることにより実施される。特に、前記発酵は、水性抽出物を、およそ1500万酵母細胞/ミリリットルと共にインキュベートすることにより実施され得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、前記発酵水性抽出物は、少なくとも4%ABV、例えば少なくとも5%ABV、例えば少なくとも6%ABV、例えば少なくとも7%ABVのアルコール含量を有する。
【0146】
いくつかの実施形態では、前記発酵水性抽出物は少なくとも25mg/Lのプロパノール、例えば少なくとも30mg/Lのプロパノールを含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、前記発酵水性抽出物は最大で8mg/Lのイソブタノール、例えば最大で7mg/Lのイソブタノール、例えば最大で6mg/Lのイソブタノールを含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、前記発酵水性抽出物は、有益なイソブタノール対プロパノール比を含む。特に、イソブタノール対プロパノール比は、少なくとも1.5、例えば少なくとも2.0、例えば少なくとも2.5、例えば少なくとも3.0、例えば少なくとも3.5、例えば少なくとも4.0、例えば少なくとも4.5、例えば少なくとも5.0、例えば少なくとも5.5、例えば少なくとも6.0、例えば少なくとも6.5であってもよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、発明の酵母を用いて得られた発酵水性抽出物は、同じ%ABVで、W-34/78酵母株または酵母株Hybrid酵母7を用いて同じ条件下で実施された発酵よりも、少なくとも1.5%、例えば2%低い真性発酵度合い(RDF)を有する。
【0150】
モルトおよび/または穀類に基づく飲料およびその生成方法
本明細書において以上で記載される、モルトおよび/または穀類に基づく発酵水性抽出物はさらに処理され、飲料とされ得る。
【0151】
発明の一態様は、モルトおよび/または穀類に基づく飲料を生成する方法を提供することであり、前記方法は下記工程を含む:
i.本明細書において以上で、セクション「モルトおよび/または穀類に基づく発酵水性抽出物およびその生成方法」において記載される発酵水性抽出物を調製する工程、ならびに
ii.前記発酵水性抽出物をさらに加工処理して飲料にする工程。
【0152】
本発明のいくつかの実施形態では、モルトおよび/または穀類に基づく飲料は水などの液体で希釈される。
【0153】
任意で、水を使用して、モルトおよび/または穀類に基づく飲料を希釈し、よって、例えば、エタノール含量を調整することができる。本発明の1つの実施形態では水:モルトおよび/または穀類に基づく飲料の割合は0.1~5部水対1部モルトおよび/または穀類に基づく飲料の範囲とすることができる。
【0154】
さらなるプロセスは例えばまた、モルトおよび/または穀類に基づく飲料の冷却および/または濾過を含み得る。また、添加物が添加され得る。さらに、COが添加され得る。最後に、モルトおよび/または穀類に基づく飲料、例えばビールは低温殺菌および/または濾過され得、その後、それはパッケージされる(例えば、瓶詰めまたは缶詰め)。
【0155】
好ましい実施形態では、飲料はビールである。
【0156】
本発明の一態様では、水性抽出物を本発明による前記酵母株を用いて発酵させることにより生成されたモルトおよび/または穀類に基づく飲料は心地よい味覚を有する。
【0157】
本発明による酵母を用いた発酵により生成されたモルトおよび/または穀類に基づく飲料の味覚は、例えば、専門家ビール味覚パネルにより、分析され得る。好ましくは、前記パネルはビール香味の試飲および説明において、アルデヒド、紙のような味覚、古い味覚、エステル、高級アルコール、脂肪酸および硫黄成分に特に焦点を合わせて訓練される。
【0158】
一般に、味覚パネルは、3~30の範囲のメンバー、例えば5~15の範囲のメンバー、好ましくは8~12の範囲のメンバーから構成される。味覚パネルは、様々な香味の存在、例えば紙のような、酸化、エージングされた、及びパンのような香味、ならびにエステル、高級アルコール、硫黄成分の香味およびビールのボディを評価することができる。ビールの全体の味覚は一般に、味覚パネルにより、いくつかの異なる特性に基づき1~9のスケールで格付けされ、5を超える平均格付けはビールが許容される味覚を有することを示す。
【0159】
本発明はまた、以上で記載される方法により調製された、モルトおよび/または穀類に基づく飲料を提供する。
【0160】
いくつかの実施形態では、飲料は少なくとも25mg/Lのプロパノール、例えば少なくとも30mg/Lのプロパノールを含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、飲料は最大で8mg/Lのイソブタノール、例えば最大で6mg/Lのイソブタノールを含む。
【0162】
一般に、発明の酵母株を使用して調製された発酵水性抽出物または飲料は、イソブタノール対プロパノールの特定比、例えば、図2において示される比と同様の比を有する。よって、発酵水性抽出物または飲料がイソブタノール対プロパノールのこの特定比を有する場合、発酵水性抽出物または飲料は発明の酵母株を用いた発酵により生成されたことが示される。特に、前記イソブタノール対プロパノール比は、少なくとも1.5、例えば少なくとも2.0、例えば少なくとも2.5、例えば少なくとも3.0、例えば少なくとも3.5、例えば少なくとも4.0、例えば少なくとも4.5、例えば少なくとも5.0、例えば少なくとも5.1、例えば少なくとも5.2、例えば少なくとも5.3、例えば少なくとも5.4、例えば少なくとも5.5、例えば少なくとも6.0、例えば少なくとも6.5であってもよい。
【0163】
アイテム
発明は、下記アイテムによりさらに規定され得る:
1.発酵水性抽出物を生成する方法であって、下記工程を含む、方法:
i)モルトおよび/または穀類の水性抽出物を提供する工程;
ii)サッカロマイセス・パストリアヌス種の酵母株を提供する工程であって、前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記発酵試験液は、前記試験液の外観エキス含量が、先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる工程;ならびに
iii)工程i)で提供される水性抽出物を工程ii)の前記酵母株により発酵させ、よって、発酵水性抽出物を得る工程。
【0164】
2.そのゲノム内で、下記をコードする酵母株
a.ILV2をコードする最大で2の機能遺伝子であって、ILV2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:32のScILV2またはSEQ ID NO:38のSeILV2、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする、機能遺伝子;ならびに
b.ILV3をコードする、少なくとも5の機能遺伝子、例えば少なくとも6の機能遺伝子であって、ILV3をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:35のScILV3またはSEQ ID NO:41のSeILV3、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする、機能遺伝子。
【0165】
3.モルトおよび/または穀類の水性抽出物中でのインキュベーションで、発酵水性抽出物を生成することができる酵母株であって、前記発酵水性抽出物は少なくとも2.0のイソブタノール対プロパノール比を含む、酵母株。
【0166】
4.アイテム2~3のいずれか一つによる酵母株であって、前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記発酵試験液は、前記試験液の外観エキス含量が、先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbの総ジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、酵母株。
【0167】
5.アイテム1または4による方法または酵母株であって、前記時点は、前記試験液の外観エキス含量が先行する24時間で0.40°プラート、例えば、0.30°プラート、例えば0.20°プラート超減少しなかった最早時点である、方法または酵母株。
【0168】
6.アイテム1および4-5のいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記試験液は前記最早時点で、最大で55ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチル、例えば最大で45ppbのジアセチルを含む、方法または酵母株。
【0169】
7.発酵水性抽出物を生成する方法であって、下記工程を含む方法:
i)モルトおよび/または穀類の水性抽出物を提供する工程;
ii)サッカロマイセス・パストリアヌス種の酵母株を提供する工程であって、前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は、前記試験液の外観エキス含量が先行する12時間で0.25°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる工程;ならびに
iii)工程i)で提供される水性抽出物を前記酵母株により発酵させ、よって、発酵水性抽出物を得る工程。
【0170】
8.アイテム2~6のいずれか一つによる酵母株であって、前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は、前記試験液の外観エキス含量が先行する12時間で0.25°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbの総ジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、酵母株。
【0171】
9.アイテム7~8のいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記時点は、前記試験液の外観エキス含量が先行する12時間で0.20°プラート、例えば0.15°プラート、例えば0.10°プラート超減少しなかった最早時点である、方法または酵母株。
【0172】
10.アイテム7~8のいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記試験液は、前記最早時点で、最大で55ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチル、例えば最大で45ppbのジアセチルを含む、方法または酵母株。
【0173】
11.発酵水性抽出物を生成する方法であって、下記工程を含む方法:
i)モルトおよび/または穀類の水性抽出物を提供する工程;
ii)サッカロマイセス・パストリアヌス種の酵母株を提供する工程であって、前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は、次の24時間で前記試験液の外観エキス含量が0.50°プラート超減少しない最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で60ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる工程;ならびに
iii)工程i)で提供される水性抽出物を前記酵母株により発酵させ、よって、発酵水性抽出物を得る工程。
【0174】
12.アイテム2~6および8~10のいずれか一つによる酵母株であって、前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は、次の24時間で前記試験液の外観エキス含量が0.50°プラート超減少しない最早時点で、最大で120ppbの総ジアセチル、例えば最大で60ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、酵母株。
【0175】
13.アイテム11~12のいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記時点は、次の24時間で、前記試験液の外観エキス含量が、0.40°プラート、例えば0.30°プラート、例えば0.20°プラート超減少しない最早時点である、方法または酵母株。
【0176】
14.発酵水性抽出物を生成する方法であって、下記工程を含む方法:
i)モルトおよび/または穀類の水性抽出物を提供する工程;
ii)サッカロマイセス・パストリアヌス種の酵母株を提供する工程であって、前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は、前記試験液の外観エキス含量が次の12時間で0.25°プラート超減少しない最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で65ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる工程;ならびに
iii)工程i)で提供される水性抽出物を前記酵母株により発酵させ、よって、発酵水性抽出物を得る工程。
【0177】
15.アイテム2~6、8~10および12~13のいずれか一つによる酵母株であって、前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は、前記試験液の外観エキス含量が次の12時間で0.25°プラート超減少しない最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で65ppbの総ジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、酵母株。
【0178】
16.アイテム14~15のいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記時点は前記試験液の外観エキス含量が、次の12時間で、0.20°プラート、例えば0.15°プラート、例えば0.10°プラート超減少しない最早時点である、方法または酵母株。
【0179】
17.アイテム11~15のいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記試験液は前記最早時点で最大で115ppbのジアセチルを含む、方法または酵母株。
【0180】
18.アイテム1および4~17のいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記試験液は、前記最早時点での溶液において、最大で1000万細胞/ミリリットル、例えば最大で950万細胞/ミリリットル、例えば最大で900万細胞/ミリリットル、例えば最大で850万細胞/ミリリットルを含む、方法または酵母株。
【0181】
19.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、工程ii)の試験液または試験液はおよそ16°プラートの外観エキス含量を有する麦汁である、方法または酵母株。
【0182】
20.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、工程ii)の試験液または試験液は少なくとも40g/kgのマルトースを含む、方法または酵母株。
【0183】
21.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、工程ii)における前記発酵または前記発酵は12℃~18℃の範囲の温度で起こる、方法または酵母株。
【0184】
22.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、工程ii)における前記発酵または前記発酵は最大で16℃の温度で起こる、方法または酵母株。
【0185】
23.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、工程ii)における前記発酵または前記発酵は、7,000,000~20,000,000生酵母細胞/mL試験液の範囲の接種後に起こる、方法または酵母株。
【0186】
24.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記水性抽出物は前記酵母株により、最大で6日、例えば最大で5日、例えば最大で4日間発酵される、方法または酵母株。
【0187】
25.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記水性抽出物は少なくとも12°プラート、例えば少なくとも15°プラートの外観エキス含量を有する、方法または酵母株。
【0188】
26.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記水性抽出物は麦汁である、方法または酵母株。
【0189】
27.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記水性抽出物は、最大で3500mg/L、例えば最大で3000mg/L、例えば最大で2500mg/Lのアミノ酸を含む、方法または酵母株。
【0190】
28.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記発酵水性抽出物は最大で60ppbのジアセチル、例えば最大で55ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチル、例えば最大で45ppbのジアセチル、例えば最大で40ppbのジアセチルを含む、方法または酵母株。
【0191】
29.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記発酵水性抽出物は、前記最早時点での溶液において、最大で1000万細胞/ミリリットル、例えば最大で950万細胞/ミリリットル、例えば最大で900万細胞/ミリリットル、例えば最大で850万細胞/ミリリットルを含む、方法または酵母株。
【0192】
30.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記発酵水性抽出物は少なくとも4%ABV、例えば少なくとも5%ABVのアルコール含量を有する、方法または酵母株。
【0193】
31.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記発酵水性抽出物は少なくとも25mg/Lのプロパノール、例えば少なくとも30mg/Lのプロパノールを含む、方法または酵母株。
【0194】
32.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記発酵水性抽出物は最大で8mg/Lのイソブタノール、例えば最大で6mg/Lのイソブタノールを含む、方法または酵母株。
【0195】
33.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記発酵水性抽出物は、少なくとも2.0、例えば少なくとも2.5、例えば少なくとも3.0、例えば少なくとも4.0、例えば少なくとも5.0、例えば少なくとも5.5のイソブタノール対プロパノール比を含む、方法または酵母株。
【0196】
34.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は発酵試験液を生成することができ、前記試験液は、インキュベーションの開始後5日以内の任意の時点で、最大で265ppbのジアセチルを含み、7~800万の範囲の酵母細胞が前記試験液に添加される、方法または酵母株。
【0197】
35.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、前記試験液における、最大で6日、例えば最大で5日、例えば最大で4日間のインキュベーション後に、最大で50ppbのジアセチルを含む発酵試験液を生成することができる、方法または酵母株。
【0198】
36.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、前記試験液において、最大で16℃の温度で、最大で5日、例えば最大で4日間のインキュベーション後に、最大で50ppbのジアセチルを含む発酵試験液を生成することができる、方法または酵母株。
【0199】
37.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は前記試験液における所定の時間の間のインキュベーション後に、最大で60ppbのジアセチルを含む第1の発酵試験液を生成することができ、前記所定の時間は、同じ条件下でインキュベートされるW-34/78酵母株が、前記試験液におけるインキュベーション後に最大で60ppbのジアセチルを含む第2の発酵試験液を生成するのに必要とされる時間よりも少なくとも12時間、例えば少なくとも24時間少ない、方法または酵母株。
【0200】
38.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、前記酵母株を前記試験液中でインキュベートした場合、少なくとも4.0、例えば少なくとも4.7mL/Lエタノール/°プラートを生成させることができる、方法または酵母株。
【0201】
39.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、前記酵母株を前記試験液中で、4~6日の範囲の間、例えば、およそ4日間インキュベートした場合、少なくとも4.0、例えば少なくとも4.7mL/Lエタノール/°プラートを生成させることができる、方法または酵母株。
【0202】
40.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、メリビオースを唯一の炭素源として有する培地上で増殖することができる、方法または酵母株。
【0203】
41.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株はILV2をコードする最大で5の対立遺伝子を有し、ILV2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:32のScILV2またはSEQ ID NO:38のSeILV2、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、方法または酵母株。
【0204】
42.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株はILV2をコードする最大で4の遺伝子を有し、ILV2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:32のScILV2またはSEQ ID NO:38のSeILV2、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、方法または酵母株。
【0205】
43.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株はILV2をコードする最大で2の遺伝子を有し、ILV2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:32のScILV2またはSEQ ID NO:38のSeILV2、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする、方法または酵母株。
【0206】
44.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、ILV2をコードする、1~2の範囲、例えば厳密に2の機能遺伝子を有し、ILV2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:32のScILV2またはSEQ ID NO:38のSeILV2、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする、方法または酵母株。
【0207】
45.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、ILV2をコードする、1~2の範囲、例えば厳密に2の機能遺伝子を有し、ILV2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:32のScILV2またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする、方法または酵母株。
【0208】
46.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、ILV6をコードする最大で4の遺伝子を有し、ILV6をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:33のScILV6またはSEQ ID NO:39のSeILV6、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、方法または酵母株。
【0209】
47.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、ILV6をコードする最大で4の機能遺伝子を有し、ILV6をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:33のScILV6またはSEQ ID NO:39のSeILV6、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、方法または酵母株。
【0210】
48.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株はILV5をコードする少なくとも4の遺伝子、例えばILV5をコードする少なくとも5の遺伝子を有し、ILV5をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:34のScILV5またはSEQ ID NO:40のSeILV5、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、方法または酵母株。
【0211】
49.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、そのゲノム内で、ILV5をコードする少なくとも4の機能遺伝子、例えばILV5をコードする少なくとも5の機能遺伝子をコードし、ILV5をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:34のScILV5またはSEQ ID NO:40のSeILV5、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする、方法または酵母株。
【0212】
50.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、ILV5をコードする、最大で15の機能遺伝子、例えばILV5をコードする4~10の機能遺伝子、例えばILV5をコードする4~5の機能遺伝子を有する、方法または酵母株。
【0213】
51.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、ILV5をコードする、4~8の範囲の機能遺伝子、例えば、ILV5をコードする、4~6の範囲、例えば5の機能遺伝子を有し、ILV5をコードする各遺伝子は、SEQ ID NO:34のScILV5またはSEQ ID NO:40のSeILV5またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する前記のいずれかの機能的相同体をコードする、方法または酵母株。
【0214】
52.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、ILV3をコードする少なくとも3の遺伝子、例えば少なくとも4の遺伝子を有し、ILV3をコードする各遺伝子は、SEQ ID NO:35のScILV3またはSEQ ID NO:41のSeILV3、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、方法または酵母株。
【0215】
53.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株はILV3をコードする最大で15の機能遺伝子、例えばILV3をコードする5~10の機能遺伝子、例えばILV3をコードする5~6の機能遺伝子を有する、方法または酵母株。
【0216】
54.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株はILV3をコードする、5~9の範囲の機能遺伝子、例えば、ILV3をコードする、5~7の範囲、例えば6の機能遺伝子を有し、ILV3をコードする各遺伝子は、SEQ ID NO:35のScILV3またはSEQ ID NO:41のSeILV3またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する前記のいずれかの機能的相同体をコードする、方法または酵母株。
【0217】
55.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株はBAT1をコードする少なくとも3の遺伝子、例えば少なくとも4の遺伝子を有し、BAT1をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:36のScBAT1またはSEQ ID NO:42のSeBAT1、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、方法または酵母株。
【0218】
56.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株はBAT1をコードする少なくとも3の機能遺伝子、例えば少なくとも4の機能遺伝子を有し、BAT1をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:36のScBAT1またはSEQ ID NO:42のSeBAT1、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、方法または酵母株。
【0219】
57.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株はBAT2をコードする少なくとも4の遺伝子、例えば少なくとも5の遺伝子を有し、BAT2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:37のScBAT2またはSEQ ID NO:43のSeBAT2、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、方法または酵母株。
【0220】
58.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株はBAT2をコードする少なくとも4の機能遺伝子、例えば少なくとも5の機能遺伝子を有し、BAT2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:37のScBAT2またはSEQ ID NO:43のSeBAT2、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、方法または酵母株。
【0221】
59.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、ILV2およびILV6をコードする前記酵母株における遺伝子の合計はILV5およびILV3をコードする遺伝子の合計より低い、方法または酵母株。
【0222】
60.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、ILV2をコードする前記酵母株における遺伝子の合計はILV5およびILV3をコードする遺伝子の合計より低い、方法または酵母株。
【0223】
61.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、ILV5およびILV3対ILV2の前記酵母株における遺伝子比は少なくとも1、例えば少なくとも1.5、例えば少なくとも2、例えば少なくとも2.5または例えば少なくとも3である、方法または酵母株。
【0224】
62.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、ILV5およびILV3対ILV2の前記酵母株における機能遺伝子比は少なくとも1、例えば少なくとも1.5、例えば少なくとも2、例えば少なくとも2.5、例えば少なくとも3である、方法または酵母株。
【0225】
63.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、ILV5およびILV3対ILV2およびILV6の前記酵母株における遺伝子比は少なくとも1、例えば少なくとも1.2、例えば少なくとも1.4、例えば少なくとも1.6、例えば少なくとも1.8または例えば少なくとも2である、方法または酵母株。
【0226】
64.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、ILV5およびILV3対ILV2およびILV6の前記酵母株における機能遺伝子比は少なくとも1、例えば少なくとも1.2、例えば少なくとも1.4、例えば少なくとも1.6、例えば少なくとも1.8または例えば少なくとも2である、方法または酵母株。
【0227】
65.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、ILV2、ILV3および/またはILV5をコードする遺伝子は、それらの天然プロモーターから発現される、方法または酵母株。
【0228】
66.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、ILV2、ILV3、ILV5、ILV6、BAT1および/またはBAT2をコードする遺伝子は、それらの天然プロモーターから発現される、方法または酵母株。
【0229】
67.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、1つ以上のILV2遺伝子における突然変異またはその欠失を保有する、方法または酵母株。
【0230】
68.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、1つ以上のILV2遺伝子におけるフレームシフト突然変異を保有する、方法または酵母株。
【0231】
69.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、1つ以上のILV2遺伝子の発現低下または発現なしという結果になる突然変異を保有する、方法または酵母株。
【0232】
70.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、1つ以上のILV6遺伝子における突然変異またはその欠失を保有する、方法または酵母株。
【0233】
71.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、1つ以上のILV6遺伝子におけるフレームシフト突然変異を保有する、方法または酵母株。
【0234】
72.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は、1つ以上のILV6遺伝子の発現低下または発現なしという結果になる突然変異を保有する、方法または酵母株。
【0235】
73.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は異種DNAを含まない、方法または酵母株。
【0236】
74.前記アイテムのいずれか一つによる方法または酵母株であって、前記酵母株は遺伝子操作の工程を受けていない、方法または酵母株。
【0237】
75.前記アイテムのいずれか一つによる方法により調製された発酵水性抽出物。
【0238】
76.飲料を生成するための方法であって、下記工程を含む、方法:
i.前記アイテムのいずれか一つに従い発酵水性抽出物を調製する工程、ならびに
ii.前記発酵水性抽出物を加工処理して飲料にする工程。
【0239】
77.アイテム76による方法であって、加工処理の工程は、下記の1つ以上を含む、方法:
i.濾過、
ii.炭酸化、
iii.熟成、または
iv.瓶詰め。
【0240】
78.アイテム76~77のいずれか一つによる方法により調製された飲料。
【0241】
79.アイテム78による飲料であって、前記飲料は少なくとも25mg/Lのプロパノール、例えば少なくとも30mg/Lのプロパノールを含む、飲料。
【0242】
80.アイテム78~79のいずれか一つによる飲料であって、前記飲料は最大で8mg/Lのイソブタノール、例えば最大で6mg/Lのイソブタノールを含む、飲料。
【0243】
81.アイテム78~80のいずれか一つによる飲料であって、前記飲料はビールである、飲料。
【0244】
82.アイテム75による発酵水性抽出物またはアイテム78-81のいずれか一つによる飲料であって、前記抽出物または前記飲料は、少なくとも3.0、例えば少なくとも4.0、例えば少なくとも5.0、例えば少なくとも5.5のイソブタノール対プロパノール比を有する、抽出物または飲料。
【0245】
83.酵母株であって、前記酵母株は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有する試験液中での前記酵母株のインキュベーション後、発酵試験液を生成することができ、前記試験液は、前記試験液の外観エキス含量が、前記抽出物中での前記酵母株のインキュベーション後先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチルを含む、酵母株。
【0246】
84.アイテム83によるサッカロマイセス・パストリアヌス酵母株であって、酵母株はアイテム1~72のいずれか一つにおいて規定される通りである、酵母株。
【0247】
実施例
材料および方法
麦汁調製
一般に、下記実験例で使用する麦汁は、70%のピルスナーモルトおよび30%のオオムギアジャンクトを2.7Lの水/kgモルトにおいてマッシングすることにより製造した。
【0248】
マッシングレジームを下記表1に示した:
【表3】
このマッシングレジームの変更により、依然として発酵に好適な麦汁が生成され得る。
【0249】
マッシング後、麦汁を60分間、煮沸させた。確実に、麦汁が発酵に好適なものとなるには、好ましくは、下記範囲内の含量を有するべきである:
・グルコース 12-25g/L
・マルトース 60-80g/L
・マルトトリオース 15-20g/L
・亜鉛 0.16~0.18mg/L
・遊離αアミノ態窒素(FAN) 110-250mg/L
・バリン/FAN 0.6~0.8
【0250】
参考のために、70%のピルスナーモルトおよび30%のオオムギアジャンクトから製造した麦汁の平均含量を下記表2において提供する。下記パラメータのいくつかの外側にある麦汁は、依然として、良好なビールを生成すると予測される。
【表4】
【0251】
酵母の綿状沈殿を助けるために、下記実施例のいくつかにおいて記載されるように、追加の亜鉛が麦汁に発酵前に添加され得る。
【0252】
ドロップレットPCR
ゲノムDNAを二倍体酵母株および一倍体胞子クローンから、Epicentre製のMasterPureゲノムDNA精製キットを使用して、調製した。各最終DNA調製物の濃度を50ng/マイクロリットルDNAにミリQ水を使用して調整した。DNAをNanoDrop2000分光光度計(Thermo Scientific)を使用して定量した。
【0253】
BioradドロップレットPCR(QX200)およびサッカロマイセス・ユーバヤヌスおよびサッカロマイセス・セレビシエILV2遺伝子にアニールするように設計されたプローブを使用する。これらのプローブを使用して、一倍体胞子クローンおよび対照二倍体酵母株におけるゲノムDNAを標的にした。この方法を使用して、発明者らは2つのバリアントILV2遺伝子間の比を定量的に決定することができた。S.ユーバヤヌスおよびS.セレビシエILV2アレルを区別するために、TaqManアッセイに基づく種特異的デジタルPCR反応を設計した。このために、標的特異性プライマーをS.ユーバヤヌスおよびS.セレビシエについてのILV2遺伝子の相同領域において設計し、同じフォワードおよびリバースプライマーが、両方のILV2種コピーを同時に増幅できることが意味される。種特異的プローブを単一ヌクレオチド以外同一となるように設計し、S.ユーバヤヌスおよびS.セレビシエ型のILV2アレル間の識別が可能になった。S.セレビシエについての種特異的プローブはS.セレビシエILV2野生型配列におけるヌクレオチド位置1515でTを有し、一方、S.ユーバヤヌスについての種特異的プローブはS.ユーバヤヌスILV2野生型配列におけるヌクレオチド位置1515でCを有する。下記プライマーおよびプローブが、S.ユーバヤヌスILV2アレルとS.セレビシエILV2アレルの間で区別するために開発された:
S.セレビシエおよびS.ユーバヤヌスILV2の両方を同時に増幅する標的特異性ILV2プライマー:
標的特異性フォワードプライマー(5’-GCCAACGACACAGGAAGAC-3’)(SEQ ID NO:1)
標的特異性リバースプライマー(5’-GTACCTAAACCACCTGATGT-3’)(SEQ ID NO:2)。

S.セレビシエおよびS.ユーバヤヌスILV2コピーの間の識別を可能にする種特異的プローブ:
S.セレビシエILV2アレル特異的プローブ(5’-TGGGCTGCTCAACAC-3’)(SEQID:3)-5’FAMおよび3’BHQ1で標識される
S.ユーバヤヌスILV2アレル特異的プローブ(5’-ACGTACGGAATGTGGATT-3’)(SEQ ID NO:4)-5’HEXおよび3’BHQ1で標識される
【0254】
ドロップレットデジタルPCR QX200システム(Bio-Rad Laboratories)を使用して、ddPCRを、製造者により提供される指示に従い実施した。分析目的で、酵母株の5μlの精製gDNA(5ng/μl DNA濃度)を、プローブのための11μlの2x ddPCR Supermix(No.dUTP;Bio-Rad)、900nMの標的特異性PCRフォワードプライマー、900nMの標的特異性PCRリバースプライマー、250nMのS.セレビシエILV2アレル特異的プローブおよび250nMのS.ユーバヤヌスILV2アレル特異的プローブを含む17-μl PCR混合物に添加した。反応混合物をAutoDGドロップレット生成器(Bio-Rad Laboratories)上にロードし、ドロップレット生成を製造者のマニュアルに従い実施した。ドロップレットエマルジョンを、標準PCR条件を使用して熱サイクルさせた:95℃で10分間変性、94℃で30秒間および55℃で1分間の40サイクルのPCR、ならびに98℃で10分間の最終伸長、その後、8℃でのマイクロタイタープレートの保存。ドロップレットでのPCR増幅を、QX200ドロップレットリーダー(Bio-Rad Laboratories)を使用して確認し、データを、ソフトウェアQuantaSoft(バージョンv1.7、Bio-Rad Laboratories)を使用して分析した。
【0255】
総ILV2遺伝子コピー数の検出
第1ラウンドで、S.ユーバヤヌスとS.セレビシエILV2の間の比を各単一胞子クローン由来の精製ゲノムDNA上で直接分析した。同じ親酵母由来にもかかわらず、いくつかの胞子クローンは異なるILV2遺伝的構造を有した。いくつかの胞子クローンは、100%S.セレビシエILV2遺伝子胞子クローンのみを有すると考えられる。ほとんどの親ラガー酵母は、三または四倍体であるので(Wahlter et al, 2014)、100%S.セレビシエILV2胞子クローンはおよそ1-3コピーを有し得ると仮定することができる。両方の型のILV2、例えば50/50を有する胞子クローンについては、胞子クローンにおける各型の1コピー、または、親酵母における2+2が仮定されるであろう。67/33に近い比を有する株は、S.セレビシエの1コピーおよびS.ユーバヤヌスILV2の2コピーを意味するであろう。
【0256】
100%に近いS.セレビシエILV2を有する胞子クローンにおけるコピー数のより正確な推定を可能にするために、トライアルを純粋外部S.ユーバヤヌスDNAを試料に追加またはスパイクインすることにより繰り返し、スパイクイン後のS.セレビシエ/S.ユーバヤヌス分布を得た。スパイクイン後にS.ユーバヤヌスにむかって強くシフトした比ScILV2/SeILV2はS.セレビシエILV2の低コピーを示し、比がS.ユーバヤヌスDNAに向かってほとんどシフトせず、依然として、高S.セレビシエILV2に独占されている場合、元の胞子クローンは多くのS.セレビシエILV2コピーを有することが示されるであろう。
【0257】
スパイキングを、50ng/マイクロリットルDNAの各試料を同じ濃度50ng/マイクロリットルのS.ユーバヤヌスDNAと、50/50比(10マイクロリットル試料+10マイクロリットルS.ユーバヤヌスDNA)でブレンドするように実施した。
【0258】
ドロップレットQPCR推定法は、存在する総ILV2コピーを定量的に反映するが、特別なSNPまたはフレームシフト突然変異の存在のために、いくらかの不活化ILV2アレルが存在するかどうかを明らかにすることはできない。そのような突然変異は、最初にその後のゲノムDNAシークエンシングにより、Sangerシークエンシングまたは次世代シークエンシングにより検出することができる。
【0259】
綿状沈殿のためのスクリーニング
酵母胞子クローンの綿状沈殿能力を評価するために、それらを最初に、通常の麦汁中、室温で数日間増殖させた。各株について2mlの培養物を2ml反応管に移し、完全にボルテックスし、細胞を10分間沈降させた。カルシウム依存性綿状沈殿を決定するために、2mlの前に言及した培養物から細胞を収集し、2回50mM EDTA溶液で洗浄し、その後、2mlの50mM Tris、50mMコハク酸および100mM KOH、カルシウムなし(Stratford 1996)に再懸濁させた。pHをpH4.0に調整し、これは麦汁培養物の最終pH値に類似する。細胞懸濁液を再び完全にボルテックスし、細胞を5分間沈降させた。結果を写真で文書化した。
【0260】
磁気撹拌を有するシリンダーを使用した、麦汁発酵における胞子クローンの総ジアセチルの測定
胞子クローンおよび対照酵母を、3日間、2ml液体YPD中、Stuart SB2回転ユニット(www.stuart-equipment.com)上で前増殖させた。16プラートの25mlの低温殺菌標準ピルスナー麦汁のバッフルなしの振盪フラスコに、2mlの前培養物を接種させ、室温で、振盪テーブル上、5日間の中間振盪を用いて増殖させ、高密度固定相培養物に到達した。
【0261】
ビール発酵を前に記載されるようにガラスシリンダー内で実施した(Guiterrez et al., 2018)。発酵を、200mLのピルスナー麦汁を含み、逆ガラスビーカー(Duran)を用いてシリンダー上面で密閉され、二酸化炭素の漏出、および分析のための容易なサンプリングアクセスが可能にされた250mLトールガラスメスシリンダー(331×39×39mm;Duran)内で実施した。発酵を、マグネチックバーを撹拌Variomag撹拌プラットフォーム上で、冷蔵庫(タイプTS 606-G/4-iのインキュベーターキャビネット)内16℃で使用して150rpmで連続撹拌しながら実施した。酵母細胞数をセロメータ(https://www.nexcelom.com/applications/cellometer)を用いて推定し、1500万細胞/ml麦汁の率で播種(ピッチ)し、発酵成績を、代謝CO放出に起因する重量減少を測定することによりモニタした。10ml試料を発酵中、第2、3および4日に、ジアセチル分析のために収集した。試料を1900gで10分間遠心分離し、上清をフリーザー内-20℃で、さらなる使用まで保存した。発酵は、発酵シリンダーのさらなる重量減少が測定できなかった時に、完了したと考えた。我々は総ジアセチルを、ガスクロマトグラフィーにより、欧州醸造委員会方法EBC9.24.2に従い測定し、それは総ジアセチルを決定するための、試料の60℃で90分間のインキュベーション期間を含み、前駆体アセト乳酸および遊離ジアセチルの総合計を反映する。
【0262】
酵母株
Hybrid酵母7サッカロマイセス・パストリアヌスはラガー生産株であり、高綿状沈殿を有し、発酵の終わりに、追加の冷却なしで酵母の収集が可能である。Hybrid酵母7が現発明の酵母に対する基準として使用される。
【0263】
ZDA1は発明の酵母である。
【0264】
ZDA2は発明の酵母である。
【0265】
ZDA3は発明の酵母である。
【0266】
W-34/78サッカロマイセス・パストリアヌスは、Weihenstephan Hefebank(info@hefebank-weihenstephan.de)、ドイツからの市販のラガー酵母株である。この酵母はかなり効率的にジアセチルを低減させることが知られており、高綿状沈殿を示すが、上記麦汁中で発酵された場合、依然としてHybrid酵母7株よりも著しく少ない。それが現発明の酵母に対する基準として使用される。W-34/78はまた、本明細書ではWS34/78とも呼ばれる。
【0267】
実施例1-16および18℃での酵母株ZDA1および比較株Hybrid酵母7を用いた50Lトライアル
対照酵母株に対する、新規ハイブリッド酵母株の発酵中のジアセチルレベルの違いを試験するために、50Lビールを、材料および方法セクションで記載される、15~16の°プラートを有する麦汁から調製した。発酵前に、麦汁を4.9のpHに調整し、亜鉛を最終濃度0.30mg/Lまで添加した。麦汁に、12-1500万生酵母細胞/mLの麦汁を接種した。発酵を16℃または18℃で実施した。一般に、ラガーは12℃~16℃で発酵される。酵母が18℃に耐えるならば、これは、発酵プロセスを加速するように作用することができる。試料を第0日、および、下記表で示される発酵中の様々な時点で得た。結果を下記表3および4に示し、図1A~Cでプロットする。
【表5】
【表6】
【0268】
ビールは、ジアセチルレベルが50ppb未満であり、プラートが安定である(全ての発酵性糖が利用されている)場合、スペック内にあると言われる。対照酵母と比べて少なくとも同様の量のアルコールを生成しながら、スペック内にあるビールを可能な限り短い時間で得ることが利点である。
【0269】
18℃でのジアセチルレベル
表3ならびに図1Bおよび1Cから見てわかるように、18℃で発酵されると、酵母株ZDA1は、3日以内に発酵麦汁(グリーン・ビール)を生成することができ、ジアセチルレベルは50ppbに近く、同時に、麦汁中に存在する全ての発酵性糖が利用された(これは、°プラートの降下が24時間にわたり0.50未満となったことにより明らかである)。対照的に、対照酵母株Hybrid酵母7は非常に高いジアセチルレベルで開始し(図1B)、ZDA1株が第3日に有したものと同様のレベルのジアセチルに到達するのに4日を必要とした。
【0270】
外観エキス含量が先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点は、両方の株について第4日であると考えられた。第4日にHybrid酵母7を用いて得られたグリーン・ビールはおよそ56ppbのジアセチルを含み、一方、ZDA1を用いて得られたグリーン・ビールは26ppbのみを含んだ。
【0271】
発酵を16℃で実施した場合(表4および図1A)、外観エキス含量が先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点は両方の株について第5日であった。その時、ZDA1株は、所望の50ppmジアセチルレベルに到達したが、一方、対照酵母Hybrid酵母7は、50ppm未満のジアセチルレベルに到達するにはさらに2日発酵しなければならなかった。
【0272】
16℃または18℃での発酵後のイソブタノール対プロパノールおよびSOレベル
16℃18℃
ジアセチルおよびプラートに加えて、プロパノールおよびイソブタノールレベルを50Lトライアルビールから製造した最終ビールにおいて測定した。最終ビールを5.0体積%のアルコール含量に、COを5.1g/Lに調整し、33cl緑色瓶に瓶詰めした。理論に縛られないが、プロパノールおよびイソブタノールは、分岐鎖アミノ酸経路内の制限された経路流、特に酵母の低ILV2活性の指標であると考えられ、そのため、酵母株が低ジアセチル生産者である可能性を有するかどうかを評価する早道となる。高いイソブタノール対プロパノール比は、低ジアセチル生産酵母を示す。結果を下記表5に示す:
【表7】
【0273】
表5から見てわかるように、16℃および18℃の両方で、ハイブリッド酵母株ZDA1を用いた発酵から得られたグリーン・ビールは、対照酵母株Hybrid酵母7を用いて得られたグリーン・ビールと比較して、より高いレベルのプロパノールを示した。ハイブリッド酵母株ZDA1とインキュベートした麦汁はまた、Hybrid酵母7と比較して、より低いレベルのイソブタノールを有し、イソブタノール対プロパノール比において少なくとも6.8倍差が得られた。
【0274】
酵母株ZDA1を用いて得られたグリーン・ビールにおけるSOレベルは、対照株由来のグリーン・ビールより高かったことも観察された。これにより、最終ビールの保存の観点から利点が得られ得る。
【0275】
図3は、本発明によるZDA2酵母株を用いて生成させた「対照ボトル89-84393ZDA2」ビールと比較した、市販ビールのプロパノール対イソブタノール比を示す。「対照ボトル89-84393ZDA2」を50Lトライアルで生成し、5%まで脱醸造させた(debrewed)。市販ビールは全てより低いプロパノール対イソブタノール比を有した。
【0276】
実施例2-16℃での酵母株ZDA2およびZDA3を用いた50Lトライアル
有利なジアセチルプロファイルを有する2つのさらなる酵母ハイブリッド株を同定し、実施例1のZDA1株と比較した。50Lビールを材料および方法セクションで記載される、16の°プラートを有する麦汁から調製した。発酵前に、麦汁を4.9のpHに調整し、亜鉛を0.30mg/Lの最終濃度まで添加した。麦汁に、1400万生酵母細胞/ml麦汁を接種した。接種のための酵母を50L第一発酵から得、酵母細胞を発酵の終わりに収集し、第二50L発酵トライアルに再ピッチするために使用した。これは大規模ビール生産が実施される方法に類似する。発酵を16℃で実施した。試料を第0日に、および発酵中、下記表で示されるように得た。結果を下記表6に示す。
【表8】
【0277】
表6に示されるように、3つの候補全て(ZDA1、ZDA2およびZDA3)が、第4日に50ppb未満のジアセチルレベルを示し、これは、外観エキス含量が、プラトーに到達した時間に対応する。さらに、ZDA3は、すでに第3日に50ppb未満のジアセチルレベルを有した。
【0278】
実施例3-味覚結果
実施例2で得られた発酵麦汁を、アルコール含量を5体積%に、COを5.1g/Lに調整することにより、さらに処理し最終ビールとし、標準Danish緑色33cl瓶に瓶詰めした。ビールを10テイスターからなる専門家ビール味覚パネルにより評価した。各味覚パネルメンバーは広く訓練され、特に各メンバーは、エステル、高級アルコール、硫黄成分の味覚特性およびビールのボディを評価するのに熟達していた。各味覚パネルメンバーは異なる香味ノートを評価した。特に、全体の味覚を1~9のスケールで評価し、下記表7で「主結果」として提供した。
【表9】
【0279】
表7に示されるように、酵母株全てにより生成されたビールの試料は少なくとも5.7(満足)と評価された。
【0280】
実施例4-16℃での、酵母株ZDA1および比較株Hybrid酵母7を用いた10HLビールトライアル
この実施例の目的は、ハイブリッド酵母株ZDA1が、実施例1において50Lスケールで観察されたのと同じ有利なジアセチルプロファイルを示すかどうかを調査することであった。10HLビールを材料および方法セクションで記載される、およそ16の°プラートを有する麦汁から調製した。発酵前に、麦汁を4.95のpHに調整し、亜鉛を0.8mg/Lの最終濃度まで添加した。麦汁に、少なくとも1500万生酵母細胞/mL麦汁のハイブリッド酵母株ZDA1または対照ラガー酵母株Hybrid酵母7を接種し、続いて、およそ16℃で発酵させた。接種のための酵母を実施例2で記載される第一醸造物から得た。試料を第0日、および、下記結果表8で示される日に得た。結果を表8に示し、図2AおよびBに図示する。
【表10】
【0281】
酵母株ZDA1は、かなり低い初期レベルのジアセチルを生成し、ハイブリッド酵母株ZDA1を用いて得られたグリーン・ビールは、第4日および第5日にジアセチルの味覚閾値(50ppb)に近くに達し、28ppbまで下降した。しかしながら、対照酵母株Hybrid酵母7を用いて得られたグリーン・ビールは、第7日に始めてこの閾値に達した(図2A)。図2Bにより、酵母ハイブリッドZDA1を用いて得られたグリーン・ビール中の総ジアセチルレベルは、発酵性糖がほぼ完全に発酵したのとおよそ同時に、すなわち第4日にほぼ50ppbになることが示される。
【0282】
実施例5-味覚結果
実施例4で得られた発酵麦汁をさらに処理し、アルコール含量を4.6体積%に、COを5.4g/Lに調整することにより最終ビールとし、33cl琥珀瓶に瓶詰めした。ビールを、10テイスターからなる、デンマークおよびフランスにおける専門家ビール味覚パネルボットにより評価した。各味覚パネルメンバーは広く訓練され、特に各メンバーは、エステル、高級アルコール、硫黄成分の味覚特性およびビールのボディを評価するのに熟達していた。各味覚パネルメンバーは異なる香味ノートを評価した。特に、全体の味覚を1~9のスケールで評価し、「主結果」として下記表9で提供した。
【表11】
【0283】
表9に示されるように、酵母株ZDA1により生成されたビールの試料を6.6(満足)に格付けしたが、これは対照株Hybrid酵母7を用いて生産させたビールをわずかに超える。
【0284】
実施例6-3つの対照ラガー酵母株を含む16℃でのトライアル
この実験を、実施例2からの3つの新規酵母株を、追加の市販の酵母株、ならびに実施例1、2および4で使用される対照と比較するために実施した。40Lのビールを材料および方法セクションで記載される麦汁から、52℃での最初の保持を30分としたという小さな変化を用いて調製した。発酵のために、°プラートを15~16とした。発酵前に、麦汁を4.9のpHに調整し、亜鉛を最終濃度0.30mg/Lまで添加した。麦汁に、750万生酵母細胞/mlのハイブリッド酵母株ZDA1、ZDA2およびZDA3、ならびに、対照ラガー酵母株Hybrid酵母7、および対照ラガー酵母株W-34/78(これは、Weihenstephan、ドイツから市販されている)を接種した。麦汁をおよそ16℃で発酵させた。試料を第1日および下記結果表において示される日に得た。結果を表10に示す。
【表12】
【0285】
このトライアルでは、3つの低ジアセチル株全て(ZDA1、ZDA2およびZDA3)が第5日に50ppb未満のジアセチルレベルを示し、これは、試験した全ての酵母株について、外観エキス含量が、プラトーに到達した時間に対応し、一方、同じ日に、対照株のいずれも110ppb未満のジアセチルレベルを示さなかった。外観エキス含量が先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点は、これらのトライアルの全てについて第6日であると考えられる。第6日に、低ジアセチル株全て(ZDA1、ZDA2およびZDA3)が45ppb未満のジアセチルレベル(それぞれ、24ppb、25ppbおよび18ppb)を有し、一方対照株(Hybrid酵母7、W-34/70およびW-34/78)はより高いジアセチルレベルを有した(それぞれ、115ppb、62ppbおよび62ppb)。
【0286】
これらの結果は、Weihenstephan酵母はHybrid酵母7株および発明の株より綿状沈殿しないことを考慮すると、かなり注目に値する。発酵の終わりでの液体中の細胞数(酵母ペレット上方)は綿状沈殿の良好な尺度となる。これらのデータが上記表10に液体中の細胞として示される(値が低いほど酵母はより多くの綿状となる)。高綿状沈殿は、酵母が、ビール生産のために次の麦汁に接種するために、生産タンクから収集されることになっている場合利点となる。酵母の綿状沈殿が低い場合、このプロセスはグリーン・ビールの最大24時間までの冷却を必要とする。他方、高綿状沈殿により、発酵中、酵母と麦汁の間の接触が少なくなる可能性があり、それは、酵母がジアセチルを消費できる速度を低減させ、発酵時間を長くする可能性がある。
【0287】
そのため、本明細書で記載される実施例は、ジアセチルを50ppb未満まで、発酵性糖が消費されたのとおよそ同時に(またはさらには、それより前に)低減させることができ、同時に、16℃でのそれらの高綿状沈殿のために、次のビール生産のために酵母を収集するのにグリーン・ビールの追加の冷却を必要としない、酵母株を提供する。
【0288】
さらに、低ジアセチル酵母株は容易に、イソブタノール対プロパノール比により同定することができることがわかり、というのも、それらは全て、6超であり、一方対照株は全て、1.4未満であるからである。
【0289】
実施例7-酵母株の遺伝子型判定
ゲノムの構築
5つのゲノムからの4つ(Hybrid酵母7、ZDA1、ZDA2およびW34-78)について、IlluminaおよびPacbioプラットフォームからのNGSデータを使用するタンデム分析アプローチを開発した。品質管理、濾過および構築を社内デザインによるパイプラインに従い実施した。ゲノムは全て、Pacbioプラットフォームにより生成されたデータを使用するCanu1.9ソフトウェアを使用してデノボ構築した。その後、Illuminaプラットフォームにより生成されたリードをCanu1.9により生成されたアセンブリに対してマッピングし(Pilon1.22)、ドラフトアセンブリのコンセンサス正確さを改善した。ゲノムZDA3について、Illuminaデータがないために、Canu1.9のみをさらなる構築改善なしで使用した。
【0290】
得られた構築ゲノムをBLASTクエリーにおいて使用した。
【0291】
ヒットのBlastおよび配列比較
遺伝子(ILV2、ILV3、ILV5、ILV6、BAT1、BAT2)の各々について、S.セレビシエ遺伝子の対応するアミノ酸配列を、TBLAStNアルゴリズムを使用して、5つのゲノムの各々に対する問い合わせ配列として使用した。最後に、ヒットを、問い合わせ配列の少なくとも65-80%配列同一性を有する、またはその長さの少なくとも40%を占めるものを保持することにより、フィルタにかけた。WS34-78、cer(サッカロマイセス・セレビシエ)、eub(サッカロマイセス・ユーバヤヌス)、Hybrid7(Hybrid酵母7)、ZDA1およびZDA2の間のILV2、ILV3、ILV5、ILV6、BAT1、BAT2のアミノ酸配列アライメントを、図4-9に示す。BLAST分析はS.ユーバヤヌス対応遺伝子に対し繰り返さなかった。というのも、フィルタリングの最終工程で、ヒットは65%という低い配列同一性を有することができたからであり、よって、このセットアップで、S.セレビシエおよびS.ユーバヤヌスの両方由来のヒットは全て、それらの間の高い類似性のために、捕らえられているだろう。MUSCLE(3.8)多重配列アライメントツールを使用してBLAST分析により同定されたヒットを全て整列させた。
【0292】
倍数性同定分析
倍数性同定分析を、sppIDerアルゴリズムの改良バージョンを展開することにより実施した。5つのゲノムのうち4つのIlluminaプラットフォームの短いリードを、S.セレビシエおよびS.ユーバヤヌスの組み合わせ基準ゲノムに対してマッピングし、マッピング品質(MQ)>3を有するリードを保持し、組み合わせ基準ゲノムオーダーに分類し;次いで、組み合わせ基準ゲノムにわたるカバー度を計算した。次いで、カスタムスクリプトは各種の平均カバー度を計算し、組み合わせ基準ゲノムはウィンドウに分割された。
【0293】
BLAST分析の技術欠点
株の表現型についてのゲノム上の差の効果を研究するためのBLASTの使用は、様々な欠点に苦しみ、最も重要なのは下記である:
i)遺伝子および/または染色体レベルでの重複を評価することができないこと
ii)アセンブリにおけるエラーまたはアンビギュイティへの感受性
【0294】
全てのゲノムアセンブリ方法が、倍数性の存在下、意味あるアセンブリの作製に問題を有している。これは、異なる染色体コピー由来の複数の領域が、単一足場に崩壊するという結果になる。原則として、状況は、遺伝子重複イベントが起こる場合、それほどひどくない。というのも、それらは、特定のアセンブリ方法および適正な実験セットアップを使用して同定されるからである。しかしながら、依然として、遺伝子重複は、とりわけ、異なるコピーにおいてゲノム上の差が全く存在しない、または制限されて存在する場合、アセンブリ段階で適正に検出できない可能性がかなり高い。第2の点に関しては、BLASTは原則として、異なるバリアント、例えば機能性SNPおよび非機能性ORFに関するより詳細な情報を同定することができるであろう。しかしながら、アセンブリにおけるエラーまたはアンビギュイティは、多数の誤った要求-例えば偽SNPおよび不明瞭な遺伝子アーキテクチャを生成させる可能性がある。
【0295】
そのため、我々は、バリアントの単純BLAST同定と並行して、染色体倍数性、および遺伝子重複または欠失に起因する、シークエンシングデータにおける各ゲノム領域の観察された倍数性の推定を実施することを決定した。
【0296】
全体で、ハプロタイプ分解(haplotype-resolved)デノボアセンブリの生成は、今日、大きな課題のままである。NGS技術(PacbioおよびIllumina)は大量のデータを生成させるが、エラーと真の配列バリアントの間の区別は依然として技術的に困難である。その上に、試料が倍数体化されている場合、真のバリアントを異なるゲノムコピーに割り当てる必要がある。これらの分析におけるアセンブリはハプロタイプ非対応アルゴリズムを使用して実施されており、よって、最終的に得られたアセンブリは、崩壊したハプロタイプゲノムを表した
【0297】
結果
結果を下記表11に示す。
【表13】
【0298】
括弧内の数は染色体のモード倍数性である。括弧のない数字は、その染色体上での遺伝子座決定の倍数性である。
【0299】
実施例8-酵母株ZDA2および比較株Hybrid酵母7を用いた商業規模醸造トライアル
この実施例の目的は、ハイブリッド酵母株ZDA2が、商業規模醸造(およそ1800HL)で適用された場合、前の実施例で観察されたのと同じ有利なジアセチルプロファイルを示すかどうかを調査することであり、ここで、酵母は収集され、再ピッチされる。
【0300】
1800HLビールを、従来の注入マッシングにより得られたモルトおよびアジャンクトを含みおよそ16の°プラートを有する麦汁から、調製した。発酵前に麦汁を4.9-5.0のpHに調整した。麦汁をZDA2および対照ラガー酵母株Hybrid酵母7の両方の世代8を用いて再ピッチし、およそ16℃で発酵させた。試料を第0日および下記結果表12で示され、図10で示される日に取得した。
【表14】
【0301】
酵母株ZDA2は発酵を通してかなり低レベルのジアセチルを生成し、ハイブリッド酵母株ZDA2を用いて得られたグリーン・ビールは第6日にすでにジアセチル(50ppb)の味覚閾値に到達した。その時、プラートは最後の24時間0.5超減少しなかった。対照酵母株Hybrid酵母7を用いて得られたグリーン・ビールは、第7日、プラートが24時間にわたり0.5超減少しなかった後2日にジアセチルについての味覚閾値に到達しなかった(図10)。その結果として、グリーン・ビールについての仕様は、ジアセチルおよびプラートの観点から、ZDA2酵母を使用すると基準酵母Hybrid酵母7と比較して、少なくとも2日早く到達した。
【0302】
興味深いことに、ZDA2酵母は真性発酵度合いに到達し(RDF)、これはHybrid酵母7より2%低かったが、一方、アルコールパーセンテージは2つのグリーンビールにおいてほとんど同様である。その結果として、ZDA酵母は同じ量のアルコールをより低い真性発酵度合いで生成することができ、これにより、より良好な食感を有するビールが得られる。ZDA2酵母についての、同じアルコールレベルで1.5-2.5%低いRDFのこの傾向は、この実施例における第8世代に先行する発酵世代の全てにわたって観察された(表13を参照されたい)。
【表15】
【0303】
実施例9-ハイブリッドNanopore-関連遺伝子のコピー数を計算するための醸造株のIlluminaシークエンシングおよびバイオインフォマティクス評価
株を、前に記載されるようにIlluminaプラットフォームを使用して配列決定した。Nanoporeシークエンシングについては、超高分子量DNAをDenisらにより概説される方法を使用して調製した。
【0304】
シークエンシングのためにHMW gDNAを調製するために、試料をZymo Genomic Clean and Concentratorカラムを使用して処理し、その後、品質および量についてdeNovix dsDNA Broad Range蛍光定量アッセイを使用してチェックした。
【0305】
全ての試料を多重化し、ライブラリをSQK-LSK109化学、および、Oxford Nanopore Technologies製のNative Barcode ExtensionパックEXP-NBD104およびEXP-NBD114を使用して作成した。全ての必要な清浄化工程を、NGSのためにClean NA磁気ビーズを使用して実施した。ゲノムシークエンシングがMinIOn FlowCells FLO-MIN106D上で48-72時間にわたって起きた。
【0306】
生シークエンシングデータをbonito(https://github.com/nanoporetech/bonito)を使用してベースコールし、guppy(https://nanoporetech.com/nanopore-sequencing-data-analysis)を使用してデマルチプレクスした。ハイブリッド-ゲノムアセンブリをMarsurca(https://github.com/alekseyzimin/masurca)をNanopore and Illumina fastqファイルと組合わせて使用して実施し、構築したゲノムをprokka.(https://github.com/tseemann/prokka)を用いてアノテートした。対象となる遺伝子の配列包括度およびコピー数をqualimap(http://qualimap.conesalab.org/)を用いて計算し、Integrative Genomics Viewer(https://software.broadinstitute.org/software/igv/)を使用して可視化した。
【0307】
リードマッピングおよびSNP検出をCLC Genomics work Bench(バージョン11)において実施した。簡単に言うと、トリミングしたリードを「インシリコ」酵母ハイブリッドゲノム(S.ユーバヤヌス(受入番号:GCA_0012986.25.1)およびS.セレビシエ(GCA_000146045.2)ゲノムの連結を含んだ)に対してマッピングした。基礎バリアント検出ツールを使用して、一塩基多型(SNP)および挿入/欠失(indel)を検出した。ここで、ILV2遺伝子の機能コピー数は、ZDA酵母内の単一アレル上に存在する診断SNPに基づき推定することができるであろう。
【0308】
S.セレビシエILV2遺伝子では、C’フレームシフトが存在し、これは、結果として生じるタンパク質(Leu575fs)を、このコドン内のTヌクレオチド挿入のために、不活性化する。この度数でマッピングしたIlluminaリードの%は大体33%であり、3つのILV2scコピーのうちの1つが不活化されたことが示唆された。さらに、ユーバヤヌスILV2アレルでは、Tヌクレオチド欠失がトランケーションの不活性化という結果になるフレームシフトという結果になることが観察された(Leu304fs)。ILV2セレビシエ遺伝子のコピー数(CN)がわかると、前に記載されたリードマッピングに基づいて、他の遺伝子のコピー数の計算が可能になった。WS34/78 CNの推定もまた、ILV2コピー数は、高い類似性の株(WS34/70)は、等しいS.セレビシエおよびS.ユーバヤヌスゲノム含量を有する四倍体酵母であるという前の証拠に基づくというリードマッピングベースの推定に基づいた(Walther et al.2014)。さらに、実施例10では、ILV2ユーバヤヌスアレルを除去すると、WS34/78は実際に、ILV2ユーバヤヌス(euybanus)アレルの2つのコピーを有したことが観察された(合計4のILV2アレル、セレビシエアレルを含む)。これらの結果を表14にまとめて示す。
【表16】
【0309】
基準WS3478株はILV2遺伝子の4つの機能コピーを有し、一方、ZDA1およびZDA2は各々、この遺伝子の2つの機能コピーのみを有する。加えて、WS3478は、ILV3の4つの機能コピーおよびILV5の3つの機能コピーを有し、一方、この数字は、それぞれ、ZDA1およびZDA2株については、6および5となる。
【0310】
実施例10-モデルブルーワー酵母W-34/78における遺伝子コピー数適合
この実験の全体的な目的は、ZDA1およびZDA2の遺伝子型を反映するように、モデル酵母株(サッカロマイセス・パストリアヌス亜種カールスベルゲンシス株(WS34/78)において関連遺伝子のコピー数を調整することであった。WS34/78はWeihenstephan、ドイツから市販されており、本明細書ではW-34/78とも呼ばれる。そうするために、株WS34/78における遺伝子は、表15により、不活化されるか、または、加えて発現されなければならなかった。
【表17】
【0311】
不活性化を、対象となる遺伝子(すなわちILV2)のコード配列を標的にする抵抗性付与抗生物質-カセットの助けにより実施した。ここで、コードDNA配列(cds)を、相同組換えを介して、遺伝子のN末端領域の99bpのみ、およびC末端領域の107bpが残るやり方でループにした。遺伝子(すなわちILV3およびILV5)の過剰発現を真のゲノム前後関係を無傷のままとする方法で実施した、すなわち、cdsの大体上流1kbp、cds、およびcdsの下流0,5kbpを含むカセットをクローニングした。よって、カセットは天然プロモーターおよびターミネーター配列を含み、追加の遺伝子コピーの発現はおそらく自然制御下にある。さらに、酵母単一コピープラスミドを、コピー数が制御下にあるように使用した。
【0312】
WS34/78細胞のトランスフォーメーション
サッカロマイセス・パストリアヌス亜種カールスベルゲンシス株WS34/78の細胞を、Gietz and Schiestel (DOI: 10.1038/nprot.2007.17)により記載される方法に従いDNA取込みについてコンピテントにした。ルーチン的に、細胞を1μgのプラスミドDNAまたはPCR-アンプリコンで形質転換させた。熱ショック処理の期間を、温度を42℃で維持しながら、15分に低減した。
【0313】
発現カセットの生成
実施例9からの株WS34/78のDNA-配列情報に基づき、発現カセットを、cdsの上流大体1000bpおよびcdsの下流500bpを含み、よって天然プロモーターおよびターミネーター配列を含む天然WS34/78DNA-配列のPCR-増幅により作製した。アンプリコンの正確な長さは実施例で与えられる個々のプライマー配列から推定することができる。1000bp、または500bpのcds-隣接領域は対象となる遺伝子の真正/自然制御を可能にするはずである。クローン化PCR-アンプリコン(プラスミド内/染色体に組み込まれる)をSanger-DNAシークエンシングにより、単離プラスミドDNAをシークエンシング反応のための鋳型として用いて、制御した。
【0314】
発現カセットの染色体組込み
第1の工程において、発現カセットを、遺伝子発現モジュールを、組込みイベントのポジティブ選択を可能にする抗生物質耐性モジュールと融合することにより構築した。カセットを、WS34/78の染色体との相同組換えのためのDNA-ストレッチをコードするPCR-アンプリコンに融合した。組込みのための部位はWS34/78のPAD1座位であった。というのも、この遺伝子はこの酵母において非機能性であり、よって、この遺伝子の置換は、香味プロファイルに何の影響も有さないからである。相同組換えのために使用される隣接領域は大体500bpの長さを有した。抗生物質の存在下で増殖した酵母クローンをPCR(すなわちコロニーPCR)により分析し、カセットの挿入を確認した。陽性クローンを、発現モジュールにおける突然変異についてさらに分析した。発現モジュールを包含するアンプリコンをSanger-DNAシークエンシングにより制御した。
【0315】
プラスミドpYESVIIIにおけるILV-遺伝子のクローニング
プラスミドpYESVIII(BRAIN;)は、大腸菌において高コピー数で複製され、複製のCEN6複製起点のために、酵母細胞において単一コピープラスミドとして維持される大腸菌-酵母シャトルベクターである。発現カセットを、マルチクローニング部位にギブソン・アセンブリを使用してルーチン的に挿入した。
【0316】
同じアレルの2つのコピーが挿入されなければならなかった場合、好ましくは対象となる遺伝子(GOI)の1つのコピーは、真正DNA-配列を有し、一方、第2のコピーのcdsは、天然プロテイン配列を未変化のままとするやり方で変化させた。これは、酵母細胞における遺伝子発現を最適化するアルゴリズムを採用する化学遺伝子合成により達成された(コドン使用最適化)。これは酵母細胞へのプラスミドトランスフォーメーションでの組換えイベントの変更を低減させるために実施された。
【0317】
プラスミドからのILV3の遺伝子の発現のために、タンデムコンストラクトが構築される(バイシストロニック発現)。ここで、単一プロモーターが、2つのILV3コード配列の発現を支配する(1つは天然、1つは合成cds)。2つのコード配列は、リボソームスキッピングを可能にする2A-ペプチドリンカーにより接合され、そのため、両方のcdsが天然ILV3プロモーターの制御下で翻訳される。2A-ペプチド技術は、3アミノ酸タグ(NPG)を付加することにより第1のタンパク質のC末端を変化させ、一方、その後のタンパク質のN末端はプロリンから開始する(Liu, Z. et al., 2017; DOI: 10.1038/s41598-017-02460-2)。
【0318】
大腸菌をインビトロ構築プラスミドで形質転換させ、プラスミドを形質転換体から単離し、制限消化およびDNA-シークエンシングにより制御し、続いてコンピテントWS34/78細胞のトランスフォーメーションを実施した。
【表18】
【0319】
実施例/S.パストリアヌスWS34/78の突然変異バリアント
組換え株
株#2の生成
PCRのための鋳型:
プラスミドpYES5-Cen6-Sh.ble(sc)2.0(BRAIN)、Sh.bleカセットをコードする
gDNAS.パストリアヌスWS34/78、株#1(表16)

使用したプライマー
CPA43:SEQ ID NO:44
CPA44:SEQ ID NO:45
CPA49:SEQ ID NO:46
CPA50:SEQ ID NO:47
CPA51:SEQ ID NO:48
CPA52:SEQ ID NO:49

sh.ble-カセット(フラグメント1)を、プラスミドpYES5-Cen6-Sh.ble(サッカロマイセス・セレビシエ(sc))2.0(BRAIN Biotech AG)から、プライマーCPA43/44を使用して増幅させた。ホモロジーアームを、gDNA株#1由来のILV2(サッカロマイセス・ユーバヤヌス(se))隣接領域の、アレル-特異的プライマーCPA49/51(5’-隣接領域;フラグメント2)およびCPA50/52(3’-隣接領域;フラグメント3)を用いた増幅により生成させた。HR鋳型をオーバーラップエクステンションPCRの助けにより、プライマーCPA49/50、およびフラグメント1+2+3を鋳型として使用して生成させた。相同組換えによるILV2(se)のアレル-特異的ノックアウトをBRAIN専売NUCLEASE技術により補助した。これにより多くの株が得られ、これはILV2(se)座位で単一または二重組込みを有し、アガロースゲル上で視認可能であった。ILV2(se)の二重欠失を有する株を下流分析のために選択した。
ILV2(se)ノックアウトカセットの配列:SEQ ID NO:50
【0320】
株#3の生成
PCRのための鋳型:
gDNA S.パストリアヌスWS34/78、株#1(表16)
NTC-DNAカセット(Nourseothricin);BRAIN Biotech AG
使用したプライマー:
CPA70:SEQ ID NO:51
CPA71:SEQ ID NO:52
CPA91:SEQ ID NO:53
CPA96:SEQ ID NO:54
CPA111:SEQ ID NO:55
CPA112:SEQ ID NO:56
CPA113:SEQ ID NO:57
CPA114:SEQ ID NO:58
CPA128:SEQ ID NO:59
CPA129:SEQ ID NO:60
ILV3(se)発現カセット(生成物1)をgDNA株#1から、アレル-特異的プライマーCPA70/71を用いて増幅させた。次いで、生成物1を、プライマーCPA70/129を用いてさらに増幅させ、生成物2を得た。NTC-発現カセット(生成物3)の増幅を、プライマーCPA91/96、およびNTC-DNA-Stringを鋳型として用いて実施した。生成物4を生成物3のプライマーCPA91/128を用いた増幅により生成させた。生成物3および生成物4をNEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assemblyキットを介して構築し、プライマーCPA70/91を用いて増幅させ、フラグメント1を作製した。ホモロジーアームを、プライマーCPA111/112(5’-隣接領域;フラグメント2)およびCPA113/114(3’-隣接領域;フラグメント3)を用いて、gDNA株#1由来のPAD1隣接領域の増幅により、生成させた。最終ILV3-NTC組込みカセットをフラグメント1+2+3の構築、続いて、プライマーCPA111/114を用いた増幅により生成させた。株#3を生成させるために、株#2を最終ILV3-NTC組込みカセットで形質転換させた。
ILV3(se)の配列-NTC組込みカセット:SEQ ID NO:61
【0321】
組換えプラスミド
プラスミド#1の構成
ベクター調製
プラスミド#0(pYESVIII、BRAIN Biotech AG)をマルチクローニング部位に存在するPmeIを使用して直線化した。精製前に、加水分解ベクターを脱リン酸化した。
【0322】
ベクターインサートの生成
PCRのための鋳型:
gDNA S.パストリアヌスWS34/78、株#1(表16)
使用したプライマー:
CPA74:SEQ ID NO:62
CPA75:SEQ ID NO:63
CPA86:SEQ ID NO:64
CPA87:SEQ ID NO:65
天然ILV5-発現カセット(sc)をWS34/78gDNAから、アレル-特異的プライマーCPA74/75を使用して増幅させた。次いで、ベクターインサートを得られたPCR産物のプライマーCPA86/87を用いた増幅により生成させた。
【0323】
ILV5-発現ベクター(プラスミド#1)をNEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assemblyを介して構築し、大腸菌DH10βを反応生成物で形質転換させた。プラスミド調製後、発現カセットをSanger-DNAシークエンシングにより分析した。
ILV5(sc)発現カセットの配列:SEQ ID NO:66
【0324】
実施例11-モデルブルーワーの酵母WS34/78におけるさらなる遺伝子コピー数適合
この実験の目的は実施例10と同様であり、すなわち、ZDA1およびZDA2の遺伝子型を反映するように関連遺伝子のコピー数を調整するためにさらに遺伝子改変されたWS34/78酵母株を生成させることであった。
【0325】
天然サッカロマイセス・セレビシエ遺伝子のPCR
S.セレビシエ遺伝子ILV3、BAT1、BAT2、およびILV6を、それらの天然プロモーターおよびターミネーター領域と共に、Weihenstephan34/78(W34/78)ラガー酵母から、プライマーSEQ ID no67~SEQ ID no74およびPhusion(登録商標) High-Fidelity DNAポリメラーゼ(New England BioLabs)を使用して増幅させた。天然プロモーターおよびターミネーターを標的にする領域を、前の文献(Mumberg et al, 1995)に従い、開始コドンの上流およそ1000塩基対(プロモーター)および終止コドンの下流400塩基対(ターミネーター)選択した。PCR反応のために鋳型として使用したゲノムDNAをW34/78酵母から、Lucigen製のMasterPure Yeast DNA精製キットfact NoMPY80200を使用し抽出した。
所望のS.セレビシエ遺伝子の上流および下流で増幅するために使用したプライマー:
ScILV3_F:SEQ ID NO:67
ScILV3_R:SEQ ID NO:68
ScBAT1_F:SEQ ID NO:69
ScBAT1_R:SEQ ID NO:70
ScBAT2_F:SEQ ID NO:71
ScBAT2_R:SEQ ID NO:72
ScILV6_F:SEQ ID NO:73
ScILV6_R:SEQ ID NO:74
【0326】
大腸菌細胞へのGibson Assembly and Transformationによる、PCRフラグメントのプラスミドベクターへのクローニング
純粋PCRフラグメントを、kanMXG418抵抗性マーカーを含むセントロメア単一コピーベクターにクローン化した。場合によっては、遺伝子を組合わせて、1を超える遺伝子を含むプラスミドを作製した。Euroscarf(http://www.euroscarf.de/plasmid_details.php?accno=P30673)からのpSH67を、PvuII-HF(New England BioLabs)を用いて37℃で60分間直線化し、Cre-発現コンストラクトを除去した。次いで、直線化プラスミドをT7 DNAリガーゼ(New England BioLabs)と25℃で一晩連結させた。連結プラスミドをNEB5α大腸菌コンピテント細胞(New England BioLabs)に形質転換させ、アンピシリン(100μg/mL)を含むLysogenyブロス(LB)寒天プレート上に蒔いた。次いで、このプラスミドを、対象となる遺伝子の挿入のためのバックボーンとして使用した。
【0327】
PvuII-HFはベクターを消化し、PCR-増幅されたインサートをNEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assembly(New England BioLabs)を使用して構築した。3:1比のインサート対ベクターを使用し、反応物を50℃で60分間インキュベートした。次いで、反応物を、NEB 5α大腸菌コンピテント細胞(New England BioLabs)に形質転換させ、アンピシリン(100μg/mL)を含むLB寒天プレート上に蒔いた。クローンをLB液体培地上で、アンピシリン(100μg/mL)と共に増殖させ、プラスミドをMonarch Plasmid MiniPrepキット(New England BioLabs)を使用して抽出した。
【0328】
この研究において作製した単一コピープラスミドは下記であった:
1.pSH67-ScILV3
2.pSH67-ScILV3-ScBAT1
3.pSH67-ScILV3-ScBAT2
4.pSH67-ScILV6
5.pSH67-ScBAT2
【0329】
ベクターによる酵母トランスフォーメーション、および、構成された酵母
Weihenstephan34/78および実施例10からの株#2(2つの欠失S.ユーバヤヌスILV2遺伝子コピーを有するWeihenstephan34/78、WS34/78[2xILV2eu]::ZeoRとも呼ばれる)酵母を、Benatuil et al. 2010により概説されるプロトコルに従い、プラスミドで電気穿孔により形質転換させた。いくつかの若干の変更がなされた:酵母を25℃で増殖させ、電気穿孔後2-3時間に回収し、細胞をジェネテシンG418(200μg/mL)を含むYPD寒天プレート上に蒔いた。
【0330】
この研究で生成させた酵母は下記表17で示される。
【表19】
【0331】
実施例12-改変WS34/78株の発酵特性の評価
株を円筒形容器内で前に記載されるように発酵させた。細胞を25μg/mlのゲンタマイシン(G418)を含む10mlの液体YPD中で一晩増殖させ、その後、100μg/mlのG418を含む、20mlの前に記載したピルスナー麦汁に移した。細胞ピッチングを前に記載されるように、100μg/mlのG418を含むピルスナー麦汁中で実施した。プラート、ジアセチルおよび揮発性測定を発酵の第3、4および5日に実施した。第5日に、炭水化物プロファイルおよびエステルプロファイル試料を取得した。
【0332】
試験した酵母株の遺伝子型が下記表18で示される。
【表20】
【0333】
各酵母株を用いた発酵の結果を下記表19および20にまとめて示す。
【表21】
【表22】
【0334】
この実施例の遺伝子操作された株を抗生物質の存在下で発酵させ、そのため、上記結果は、株を工業的に、抗生物質の存在なしで発酵させる場合わずかに異なる可能性があることに注目すべきである。特に、株はより速い増殖速度を有する可能性があり、よって、発酵はより速く進行するであろう。同様に、最初に生成されたジアセチルの低減もまた、より速く進行すると予測される。
【0335】
第5日に試験液中で最低量の総ジアセチルを有する株は、単一コピープラスミド(FGMO0094)由来の、ILV2遺伝子の2コピーが欠失し、ILV3の余分なコピーがゲノム的に組み入れられ、ILV5の余分のコピーが発現された株であった。
【表23】
【0336】
参考文献
Lorenzo Benatuil, Jennifer M. Perez, Jonathan Belk, Chung-Ming Hsieh, An improved yeast transformation method for the generation of very large human antibody libraries, Protein Engineering, Design and Selection, Volume 23, Issue 4, April 2010, Pages 155-159, https://doi.org/10.1093/protein/gzq002
Briggs, D. E. et al. Malting and Brewing science. 1981.
Denis E, Sanchez S, Mairey B et al. Extracting high molecular weight genomic DNA from Saccharomyces cerevisiae, Protocol Exchange DOI 10.1038/protex.2018.076
Hough, J. S. et al. Malting and Brewing science: Hopped Wort and Beer, Volume 2. 1982.
Gutierrez A, Boekhout T, Gojkovic Z, Katz M. Evaluation of non‐Saccharomyces yeasts in the fermentation of wine, beer and cider for the development of new beverages J Inst Brew 2018 DOI 10.1002/jib.512
Mumberg D, Muller R, Funk M
Yeast vectors for the controlled expression of heterologous proteins in different genetic backgrounds Gene 1995:156:119-22.
doi: 10.1016/0378-1119(95)00037-7
Walther A, Hesselbart A, Wendland J. Genome Sequence of Saccharomyces Carlsbergensis, the World’s First Pure Culture Lager Yeast G3 (Bethesda) 2014:4:783-93.
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
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図7A
図7B
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図8A
図8B
図8C
図8D
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図9A
図9B
図9C
図9D
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-04-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのゲノム内で、
a.ILV2をコードする最大で2の機能遺伝子であって、ILV2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:32のScILV2またはSEQ ID NO:38のSeILV2、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする、機能遺伝子;ならびに
b.ILV3をコードする少なくとも5の機能遺伝子、例えば少なくとも6の機能遺伝子であって、ILV3をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:35のScILV3またはSEQ ID NO:41のSeILV3、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする、機能遺伝子
をコードする酵母株。
【請求項2】
前記酵母株はそのゲノム内でILV5をコードする少なくとも4の機能遺伝子、例えばILV5をコードする少なくとも5の機能遺伝子をコードし、ILV5をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:34のScILV5またはSEQ ID NO:40のSeILV5、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する機能的相同体をコードする、請求項1に記載の酵母株。
【請求項3】
ILV2、ILV3および/またはILV5をコードする前記遺伝子は、それらの天然プロモーターから発現される、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項4】
ILV2、ILV3、ILV5、ILV6、BAT1および/またはBAT2をコードする前記遺伝子は、それらの天然プロモーターから発現される、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項5】
前記酵母株は異種DNAを含まない、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項6】
前記酵母株は遺伝子操作の工程を受けていない、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項7】
前記酵母株はILV3をコードする最大で15の機能遺伝子、例えばILV3をコードする5~10の機能遺伝子、例えばILV3をコードする5~6の機能遺伝子を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項8】
前記酵母株は、ILV5をコードする、最大で15の機能遺伝子、例えばILV5をコードする4~10の機能遺伝子、例えばILV5をコードする4~5の機能遺伝子を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項9】
前記酵母株は、ILV6をコードする最大で4の機能遺伝子を有し、ILV6をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:33のScILV6またはSEQ ID NO:39のSeILV6、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項10】
前記酵母株はBAT1をコードする少なくとも3の機能遺伝子、例えば少なくとも4の機能遺伝子を有し、BAT1をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:36のScBAT1またはSEQ ID NO:42のSeBAT1、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項11】
前記酵母株は、BAT2をコードする少なくとも4の機能遺伝子、例えば少なくとも5の機能遺伝子を有し、BAT2をコードする各遺伝子はSEQ ID NO:37のScBAT2またはSEQ ID NO:43のSeBAT2、またはこれと少なくとも80%配列同一性を共有する相同体をコードする、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項12】
ILV2およびILV6をコードする前記酵母株における機能遺伝子の合計は、ILV5およびILV3をコードする機能遺伝子の合計より低い、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項13】
ILV2対ILV5およびILV3の前記酵母株における機能遺伝子比は少なくとも1、例えば少なくとも1.5、例えば少なくとも2、例えば少なくとも2.5、または例えば少なくとも3である、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項14】
ILV2およびILV6対ILV5およびILV3の前記酵母株における機能遺伝子比は、少なくとも1、例えば少なくとも1.2、例えば少なくとも1.4、例えば少なくとも1.6、例えば少なくとも1.8または例えば少なくとも2である、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項15】
前記酵母株は、1つ以上のILV2遺伝子における突然変異またはその欠失を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項16】
前記酵母株は、1つ以上のILV2遺伝子におけるフレームシフト突然変異を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項17】
前記酵母株は、1つ以上のILV2遺伝子の発現低下または発現なしという結果になる突然変異を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項18】
前記酵母株は、1つ以上のILV6遺伝子における突然変異またはその欠失を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項19】
前記酵母株は、1つ以上のILV6遺伝子におけるフレームシフト突然変異を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項20】
前記酵母株は、1つ以上のILV6遺伝子の発現低下または発現なしという結果になる突然変異を保有する、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項21】
前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、前記試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記発酵試験液は、前記試験液の外観エキス含量が、先行する24時間で0.50°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項22】
前記時点は、前記試験液の外観エキス含量が、先行する24時間で、0.40°プラート、例えば0.30°プラート、例えば0.20°プラート超減少しなかった最早時点である、請求項21に記載の酵母株。
【請求項23】
前記試験液は、前記最早時点で、最大で55ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチル、例えば最大で45ppbのジアセチルを含む、請求項21~22のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項24】
前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、前記試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は、前記試験液の外観エキス含量が先行する12時間で0.25°プラート超減少しなかった最早時点で、最大で60ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項25】
前記時点は、前記試験液の外観エキス含量が先行する12時間で0.20°プラート、例えば0.15°プラート、例えば0.10°プラート超減少しなかった最早時点である、請求項24に記載の酵母株。
【請求項26】
前記試験液は、前記最早時点で、最大で55ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチル、例えば最大で45ppbのジアセチルを含む、請求項24~25のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項27】
前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、前記試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は、次の24時間で前記試験液の外観エキス含量が0.50°プラート超減少しない最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で60ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項28】
前記時点は、次の24時間で、前記試験液の外観エキス含量が、0.40°プラート、例えば0.30°プラート、例えば0.20°プラート超減少しない最早時点である、請求項27に記載の酵母株。
【請求項29】
前記酵母株は、試験液中でのインキュベーションで発酵試験液を生成することができ、前記試験液は少なくとも10°プラートの外観エキス含量を有するモルトおよび/または穀類の抽出物であり、前記試験液は前記試験液の外観エキス含量が次の12時間で0.25°プラート超減少しない最早時点で、最大で120ppbのジアセチル、例えば最大で65ppbのジアセチルを含み、前記発酵は最大で18℃の温度で起こる、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項30】
前記時点は前記試験液の外観エキス含量が、次の12時間で、0.20°プラート、例えば0.15°プラート、例えば0.10°プラート超減少しない最早時点である、請求項29に記載の酵母株。
【請求項31】
前記試験液は前記最早時点で最大で115ppbのジアセチルを含む、請求項27~30のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項32】
前記酵母株は発酵試験液を生成することができ、前記試験液は、インキュベーションの開始後5日以内の任意の時点で、最大で265ppbのジアセチルを含み、7~800万の酵母細胞/mlの範囲が前記試験液に添加される、請求項21~31のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項33】
前記酵母株は、前記試験液における、最大で6日、例えば最大で5日、例えば最大で4日間のインキュベーション後に、最大で50ppbのジアセチルを含む発酵試験液を生成することができる、請求項21~32のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項34】
前記酵母株は、前記試験液において、最大で16℃の温度で、最大で5日、例えば最大で4日間のインキュベーション後に、最大で50ppbのジアセチルを含む発酵試験液を生成することができる、請求項21~33のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項35】
前記酵母株は、前記試験液における所定の時間の間のインキュベーション後に、最大で60ppbのジアセチルを含む第1の発酵試験液を生成することができ、前記所定の時間は、同じ条件下でインキュベートされるW-34/78酵母株が、前記試験液におけるインキュベーション後に最大で60ppbのジアセチルを含む第2の発酵試験液を生成するのに必要とされる時間よりも少なくとも12時間、例えば少なくとも24時間少ない、請求項21~34のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項36】
前記酵母株は、前記酵母株を前記試験液中でインキュベートした場合、少なくとも4.0mL/Lエタノール/°プラートを生成させることができる、請求項21~35のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項37】
前記酵母株は、前記酵母株を前記試験液中で、4~6日の範囲の間、例えば、およそ4日間インキュベートした場合、少なくとも4.0mL/Lエタノール/°プラートを生成させることができる請求項21~36のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項38】
前記酵母株は、メリビオースを唯一の炭素源として有する培地上で増殖することができる、前記請求項のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項39】
前記試験液は、前記最早時点での溶液において、最大で1000万細胞/ミリリットル、例えば最大で950万細胞/ミリリットル、例えば最大で900万細胞/ミリリットル、例えば最大で850万細胞/ミリリットルを含む、請求項21~31のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項40】
前記試験液はおよそ16°プラートの外観エキス含量を有する麦汁である、請求項21~39のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項41】
前記試験液は少なくとも40g/kgのマルトースを含む、請求項21~40のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項42】
前記発酵は12℃~18℃の範囲の温度で起こる、請求項21~41のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項43】
前記発酵は最大で16℃の温度で起こる、請求項21~42のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項44】
前記発酵は、7,000,000~20,000,000生酵母細胞/mL試験液の範囲での接種後に起こる、請求項21~43のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項45】
前記水性抽出物は最大で6日、例えば最大で5日、例えば最大で4日間、前記酵母株により発酵される、請求項21~44のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項46】
前記水性抽出物は少なくとも12°プラート、例えば少なくとも15°プラートの外観エキス含量を有する、請求項21~45のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項47】
前記水性抽出物は麦汁である、請求項21~46のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項48】
前記水性抽出物は最大で3500mg/L、例えば最大で3000mg/L、例えば最大で2500mg/Lのアミノ酸を含む、請求項21~47のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項49】
前記発酵水性抽出物は最大で60ppbのジアセチル、例えば最大で55ppbのジアセチル、例えば最大で50ppbのジアセチル、例えば最大で45ppbのジアセチル、例えば最大で40ppbのジアセチルを含む、請求項21~48のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項50】
前記発酵水性抽出物は、前記最早時点での溶液において、最大で1000万細胞/ミリリットル、例えば最大で950万細胞/ミリリットル、例えば最大で900万細胞/ミリリットル、例えば最大で850万細胞/ミリリットルを含む、請求項21~49のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項51】
前記発酵水性抽出物は少なくとも4%ABV、例えば少なくとも5%ABVのアルコール含量を有する、請求項21~50のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項52】
前記発酵水性抽出物は少なくとも25mg/Lのプロパノール、例えば少なくとも30mg/Lのプロパノールを含む、請求項21~51のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項53】
前記発酵水性抽出物は最大で8mg/Lのイソブタノール、例えば最大で6mg/Lのイソブタノールを含む、請求項21~52のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項54】
前記発酵水性抽出物は少なくとも2.0、例えば少なくとも2.5.例えば少なくとも3.0、例えば少なくとも4.0、例えば少なくとも5.0、例えば少なくとも5.5のイソブタノール対プロパノール:比を含む、請求項21~53のいずれか一項に記載の酵母株。
【請求項55】
発酵水性抽出物を生成する方法であって、
i)モルトおよび/または穀類の水性抽出物を提供する工程;
ii)サッカロマイセス・パストリアヌス種の酵母株を提供する工程であって、前記酵母株は請求項1~54のいずれか一項に記載される、工程;ならびに
iii)工程i)で提供される水性抽出物を工程ii)の前記酵母株により発酵させ、よって、発酵水性抽出物を得る工程
を含む方法。
【請求項56】
飲料を生成するための方法であって、
i.請求項55に記載の発酵水性抽出物を調製する工程、ならびに
ii.前記発酵水性抽出物を加工処理して飲料にする工程
を含む、方法。
【請求項57】
加工処理の前記工程は、下記の1つ以上を含む、請求項56に記載の方法:
i.濾過、
ii.炭酸化、
iii.熟成、または
iv.瓶詰め。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023535281000001.app
【国際調査報告】