(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】官能化された熱可塑性ポリウレタン、その製造方法およびこれを用いた医療用高機能性複合材料の製造方法およびこれを含む医療装置
(51)【国際特許分類】
C08G 18/83 20060101AFI20230809BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20230809BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20230809BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20230809BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20230809BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20230809BHJP
C07C 43/178 20060101ALI20230809BHJP
C07C 323/12 20060101ALI20230809BHJP
C07C 247/04 20060101ALI20230809BHJP
A61L 29/06 20060101ALI20230809BHJP
A61L 31/06 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C08G18/83
C08G18/32 003
C08G18/38 019
C08G18/38 076
C08G18/65
C08G18/67 050
C08G18/67 090
C08G81/00
C07C43/178 D
C07C323/12
C07C247/04
A61L29/06
A61L31/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501034
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 KR2021008738
(87)【国際公開番号】W WO2022010288
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】10-2020-0084324
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510115030
【氏名又は名称】アイセンス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヒョンソ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ボナ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヨンジェ
(72)【発明者】
【氏名】カン,グンヒ
【テーマコード(参考)】
4C081
4H006
4J031
4J034
【Fターム(参考)】
4C081AB34
4C081AB35
4C081AC06
4C081CA21
4H006AA01
4H006AB48
4H006GP01
4H006GP10
4H006TA04
4J031AA14
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4J034QB14
4J034QB15
4J034QB19
4J034RA02
4J034RA14
(57)【要約】
本発明は、ポリオール(P)とジイソシアネート(R)を反応させて重合したプレポリマーに化学的結合の可能な官能性を有する新規な鎖延長剤(Chain extender)を含む官能化された熱可塑性ポリウレタン、これに陰イオン性作用基、双性作用基、ペルフルオロ化合物、ハイドロゲル、およびシリコーン高分子からなる群より選択される一つまたは二つ以上の単量体または高分子が導入された機能性複合材料、これらの製造方法、およびこれらを含む物品に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、官能化された熱可塑性ポリウレタン:
【化A】
上記式中、
Fnは、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のチオール基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキルアジド基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアジド基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキルシリル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のイソシアネート基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルコール基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルコキシ基、および置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキルハロゲン基からなる群より選択され;
Lは、O、C、S、N、P、Si、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のエチレンオキシド基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のヘテロアリール基、および置換もしくは非置換の炭素数5~20のシロキサン基からなる群より選択される1種であり;
Eは、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のエチレンオキシド基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のヘテロアリール基、および置換もしくは非置換の炭素数5~20のシロキサン基からなる群より選択される1種であり;
Pは、ポリオールであり;
Rは、ジイソシアネートであり;
xは、2~50の整数であり;
yは、2~100の整数であり、
前記ポリオール(P)の分子量は400g/mol~10,000g/molである。
【請求項2】
下記化学式2の鎖延長剤が導入されたものである、請求項1に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタン:
【化B】
上記式中、E、FnおよびLは化学式1で定義された通りである。
【請求項3】
前記官能化された熱可塑性ポリウレタンは、ポリオール(P)とジイソシアネート(R)のブロック共重合体であって熱可塑性ポリウレタン高分子である、請求項1に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
前記ポリオール(P)は、ポリエーテル系(Polyether)、ポリカーボネート系(Polycarboante)、ポリエステル系(Polyester)、およびシリコーン系(Silicone)からなる群より選択される1種以上のポリオールである、請求項1に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
前記ポリエーテル系(Polyether)のポリオールは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、およびポリテトラメチレングリコール(PTMG)からなる群より選択される1種以上であり、ポリカーボネート系(Polycarboante)のポリオールは、ポリ(1,6-ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(PHMCD)、ポリ(デカメチレンカーボネート)ジオール(PDMCD)、オリゴカーボネートジオール、およびポリヘキサメチレン-ペンタメチレンカーボネートジオール(PHMPMCD)からなる群より選択される1種以上であり、ポリエステル系(Polyester)のポリオールは、ポリラクチド(Polylactide:PLA)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactone:PCL)およびポリエチレングリコールアジペート(Polyethyleneglycol adipate:PEGA)からなる群より選択される1種以上であり、シリコーン系(Silicone)のポリオールは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリアリールシロキサン、およびポリアルキルシロキサンこれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上である、請求項4に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
前記ポリオール(P)それぞれの平均分子量は、400g/mol~10,000g/molである、請求項1に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
前記ジイソシアネート(R)は、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4-シクロヘキシルメタンジイソシアネート(CHDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-または2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、カルボジイミド-改質されたMDI、ポリメリックMDI、およびヘキサメチレンジイソシアネートからなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタン。
【請求項8】
前記官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体は、下記化学式3~14からなる群より選択される構造で表されるものである、請求項1に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタン:
【化C-1】
【化C-2】
上記化学式3~14中、
xおよびyは前記化学式1で定義した通りであり、
nは10~250の整数である。
【請求項9】
下記化学式2で表される鎖延長剤:
【化D】
上記式中、
Fnは、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のチオール基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキルアジド基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアジド基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキルシリル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のイソシアネート基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルコール基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルコキシ基、および置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキルハロゲン基からなる群より選択され;
Lは、O、C、S、N、P、Si、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のエチレンオキシド基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のヘテロアリール基、および置換もしくは非置換の炭素数5~20のシロキサン基からなる群より選択される1種であり;
Eは、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のエチレンオキシド基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のヘテロアリール基および置換もしくは非置換の炭素数5~20のシロキサン基からなる群より選択される1種である。
【請求項10】
前記化学式2で表される鎖延長剤は、下記化学式15~18からなる群より選択されるものである、請求項9に記載の鎖延長剤。
【化E】
【請求項11】
請求項1による化学式1の官能化された熱可塑性ポリウレタンに陰イオン性作用基、双性作用基、ペルフルオロ化合物、ハイドロゲル、およびシリコーン高分子からなる群より選択される一つあるいは二つ以上の単量体または高分子が導入された機能性熱可塑性ポリウレタンを含むものである、機能性複合材料。
【請求項12】
下記化学式19~23のうちのいずれか一つで表されるものである、請求項11に記載の機能性複合材料。
【化F】
【請求項13】
(a)ポリオール(P)とジイソシアネート(R)とを反応させてプレポリマーを重合させる段階;および
(b)前記段階(a)で重合されたプレポリマーを、作用基(Fn)を含む鎖延長剤と反応させて官能化された熱可塑性ポリウレタンを製造する段階を含む、請求項1による官能化された熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項14】
前記ポリオール(P)は、ポリエーテル系(Polyether)、ポリカーボネート系(Polycarboante)、ポリエステル系(Polyester)、およびシリコーン系(Silicone)からなる群より選択される1種以上のポリオールである、請求項13に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項15】
前記プレポリマー中のポリオール(P)それぞれの平均分子量は、400g/mol~10,000g/molである、請求項13に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項16】
前記ジイソシアネート(R)は、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4-シクロヘキシルメタンジイソシアネート(CHDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-または2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、カルボジイミド-改質されたMDI、ポリメリックMDI、およびヘキサメチレンジイソシアネートからなる群より選択された1種以上である、請求項13に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項17】
前記作用基(Fn)を含む鎖延長剤は、下記化学式2の鎖延長剤である、請求項13に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタンの製造方法:
【化G】
上記式中、
Fnは、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のチオール基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキルアジド基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアジド基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキルシリル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のイソシアネート基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルコール基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルコキシ基、および置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキルハロゲン基からなる群より選択され;
Lは、O、C、S、N、P、Si、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のエチレンオキシド基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のヘテロアリール基、および置換もしくは非置換の炭素数5~20のシロキサン基からなる群より選択される1種であり;
Eは、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のエチレンオキシド基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のヘテロアリール基、および置換もしくは非置換の炭素数5~20のシロキサン基からなる群より選択される1種である。
【請求項18】
前記化学式2の鎖延長剤は、下記化学式15~18からなる群より選択されるものである、請求項17に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタンの製造方法:
【化H】
【請求項19】
前記段階(a)でポリオール(P)とジイソシアネート(R)との当量比は、ポリオール:ジイソシアネートで0.5~1:1~5である、請求項13に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項20】
前記段階(b)でプレポリマーと官能基を含む鎖延長剤との当量比は、プレポリマー:官能基を含む鎖延長剤で0.5~1:1~4である、請求項13に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項21】
前記ポリオール(P)は、全体官能化された熱可塑性ポリウレタンの全体重量に対して30~97重量%で使用されるものである、請求項13に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項22】
前記ジイソシアネートは、全体官能化された熱可塑性ポリウレタンの全体重量に対して2~60重量%で使用されるものである、請求項13に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項23】
前記作用基を含む鎖延長剤は、官能化された熱可塑性ポリウレタンの全体重量に対して1~20重量%で使用されるものである、請求項13に記載の官能化された熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項24】
i)官能化された熱可塑性ポリウレタンを製造する段階;および
ii)陰イオン性作用基、双性作用基、ペルフルオロ化合物、ハイドロゲル、およびシリコーン高分子からなる群より選択される一つまたは二つ以上の単量体または高分子を導入する段階を含む、機能性複合材料の製造方法。
【請求項25】
前記陰イオン性作用基、双性作用基、ペルフルオロ化合物、ハイドロゲル、およびシリコーン高分子からなる群より選択される一つまたは二つ以上の単量体または高分子は、チオール基、アルケニル基、アルキニル基、シラン基、アジド基、およびエポキシ基からなる群より選択された作用基をさらに含むものである、請求項24に記載の機能性複合材料の製造方法。
【請求項26】
前記単量体および高分子をチオール-エン反応、クリック反応、ヒドロシリル化反応またはチオール-エポキシ反応を用いて導入することを特徴とする、請求項24に記載の機能性複合材料の製造方法。
【請求項27】
前記陰イオン性作用基は、無水グルタル酸(glutaric anhydride)、酢酸(acetic acid)、2,7-オキセパンジオン(2,7-oxepanedione)、ジヒドロ-フラン-2,5-ジオン(Dihydro-furan-2,5-dione)、オキセパン-2,7-ジオン(Oxepane-2,7-dione)、コハク酸無水物(succinic anhydride)、マレイン酸無水物(maleic anhydride)、シトラコン酸無水物(citraconic anhydride)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸無水物(diethylenetriamine pentaacetic anhydride)、ヨードアセテート(iodoacetate)、クロロ酢酸(chloroacetic acid)、1,3-プロパンスルトン(1,3-Propane Sultone)、1,4-ブタンスルトン(1,4-Butane sultone)、1-プロペン-1,3-スルトン(1-Propene-1,3-sultone)、1,8-ナフタレンスルトン(1,8-naphthalene sultone)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである、請求項24に記載の機能性複合材料の製造方法。
【請求項28】
前記双性作用基は、ホスホリルコリン(phosphorylcholine)、ホスホリルエタノールアミン(phosphoryl ethanolamine)、ホスホリルセリン(phosphoryl-serine)、スルホベタイン(sulfobetaine)、カルボキシベタイン(carboxybetaine)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである、請求項24に記載の機能性複合材料の製造方法。
【請求項29】
前記ペルフルオロ化合物は、CF
3-(CF
2)
e-(CH
2)
t-Aの化学式で表される化合物であり、
この時、eは3~25であり、tは0~10であり、AはSH、アジド(azide)、アリル(allyl)、プロパルギル(propargyl)グループ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである、請求項24に記載の機能性複合材料の製造方法。
【請求項30】
前記ハイドロゲルは、プルロニックF-127(Pluronic F-127)、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide-polypropylene oxide-polyethylene oxide:PEO-PPO-PEO)、ポリ(スチレン-co-マレイン酸無水物)(polystyrene-co-maleic anhydride)、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸-ポリエチレングリコール(polyethylene glycol-poly L-lactic acid-polyethylene glycol:PEG-PLLA-PEG)、ポリN-イソプロピルアクリルアミド(poly N-isopropyl acrylamide:PNIPAAm)、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(copolymer of polyethylene oxide and polypropylene oxide)およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである、請求項24に記載の機能性複合材料の製造方法。
【請求項31】
前記シリコーン高分子は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリアリールシロキサンおよびポリアルキルシロキサン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項24に記載の機能性複合材料の製造方法。
【請求項32】
請求項1による官能化された熱可塑性ポリウレタンおよび/または請求項11による機能性複合材料を含む物品。
【請求項33】
前記物品は、医療用物品または装置である、請求項32に記載の物品。
【請求項34】
前記医療用物品は、人体または動物の身体に挿入可能なものである、請求項32に記載の物品。
【請求項35】
前記人体または動物の身体に挿入可能な医療用物品は、電気化学的センサーである、請求項32に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンの各繰り返し単位ごとに化学的結合の可能な官能性を有する新規な鎖延長剤(Chain extender)、前記鎖延長剤を含む新規な機能性熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic polyurethane、以下、“TPU”とも言う)に関するものであって、より詳しくは、官能基を有する新規な鎖延長剤を含むことによって、既存の熱可塑性ポリウレタンと類似の機械的性質を有しながらもクリック反応(click reaction)、チオール-エン反応(thiol-ene reaction)、ヒドロシリル化反応(hydrosilylation)などを通じて新たな機能性を容易に導入することができて多様な化学的性質を有するTPUを効率的に生産および製造することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は弾性;透明性;オイル、グリースおよび摩耗に対する耐性をはじめとする多くの特性を有するポリウレタンプラスチック種類である。技術的に、これらはハードセグメントとソフトセグメントから構成された線状セグメントブロック共重合体から構成された熱可塑性エラストマーである(
図1および2参照)。
【0003】
このようなTPUは非常に優れた機械的物性と化学的構造の特性による生体適合性物質であり、産業全般にわたって広範囲に使用されている。最近は前記のような特性に追加的な化学的特性を導入して多様なオーダーメード型特殊素材に用いるための研究が行われている。しかし、既存のTPUは、それぞれの用途によって製造された後には高分子内に反応基が存在せず、さらに使用者が必要な特性を示す単量体あるいは高分子などを化学的な結合の形態に製造することはほとんど不可能である。したがって、使用者の要求事項によって、既存のTPUにコーティングあるいは分散などの物理的な形態に追加的な特性を付与して使用していて、その使用に多くの制約を受けている。これだけでなく、前記のように物理的結合でTPUに付与された特性は、時間および使用環境によって摩耗、表面損傷および脱着などの現象で永久的でなくて一回性にとどまる場合が大部分である。
【0004】
このようなTPUに対する従来の問題点を解消するために、本発明者は、既存のTPUの製造方式であるポリオール、ジイソシアネート、鎖延長剤の組み合わせで官能基(例;アリル、プロパルギル、チオール基など)が連結された鎖延長剤を使用して、基本的な機械的物性が汎用TPUと類似するpre-TPU(官能化された熱可塑性ポリウレタン)を製造し、クリック反応、チオール-エン(thiol-ene)反応、ヒドロシリル化反応などの化学反応を通じて容易に多様な機能性を導入することができることを確認して、本発明を完成した。本発明によれば、導入された機能基によって製造されたTPUは、多様な化学的性質を有するようになるため、用途に合うように使用可能な高分子を開発することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような従来技術の問題を解消するために、本発明は、ポリウレタンの各繰り返し単位ごとに官能基を有する鎖延長剤を含む官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、前記官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、前記官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を含む医療用複合材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記熱可塑性ポリウレタンを含む医療用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するために、本発明は、下記化学式1のような構造で表される、官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を提供する。好ましくは、前記官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体は化学式2で表される鎖延長剤を含むものである。
【0010】
【0011】
[化学式1]
【0012】
【0013】
[化学式2]
【0014】
【0015】
上記式中、
【0016】
Fnは、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のチオール基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキルアジド基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアジド基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキルシリル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のイソシアネート基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルコール基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルコキシ基、および置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキルハロゲン基からなる群より選択され;
【0017】
Lは、O、C、S、N、P、Si、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のエチレンオキシド基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数5~20のシロキサン基からなる群より選択される1種であり;
【0018】
Eは、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のエチレンオキシド基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のヘテロアリール基、および置換もしくは非置換の炭素数5~20のシロキサン基からなる群より選択される1種であり;
【0019】
Pは、ポリオールであり;
【0020】
Rは、ジイソシアネートであり;
【0021】
xは、2~50の整数であり;
【0022】
yは、2~100の整数である。
【発明の効果】
【0023】
本発明による官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体は、鎖延長剤に多様な官能基を導入して、熱可塑性ポリウレタンの加工および製造上の問題点を解消することができるだけでなく、同等な性能の製品を効率的に生産および製造することができるという点から卓越している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】熱可塑性ポリウレタンの構造を示す模式図である。
【0025】
【
図2】熱可塑性ポリウレタンの製造に使用されるハードセグメントであるイソシアネートの具体的な例を示した図である。
【0026】
【
図3】熱可塑性ポリウレタンの製造に使用されるソフトセグメントであるポリオールの具体的な例を示した図である。
【0027】
【
図4】官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を用いた高機能性複合材料の製造に対する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
【0030】
好ましくは、前記ポリオール(P)それぞれ分子量は400g/mol~10,000g/molであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0031】
本発明による前記官能化されたポリウレタンは、ポリオール(P)とジイソシアネート(R)のブロック共重合体であって熱可塑性ポリウレタン高分子共重合体である。
【0032】
前記ポリオール(P)は、開始剤およびモノマー構成単位に製造される高分子量材料であり、ポリウレタン系に結合される場合、そのポリマーの“ソフトセグメント”に該当し、通常は巻かれた形態で存在する。好ましい様態で、前記ポリオール(P)はポリエーテル系(Polyether)、ポリカーボネート系(Polycarboante)、ポリエステル系(Polyester)、およびシリコーン系(Silicone)からなる群より選択される1種以上のポリオールであってもよい。
【0033】
非制限的な例として、前記ポリエーテル系(Polyether)のポリオールは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、およびポリテトラメチレングリコール(PTMG)からなる群より選択される1種以上であり、ポリカーボネート系(Polycarboante)のポリオールは、ポリ(1,6-ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(PHMCD)、ポリ(デカメチレンカーボネート)ジオール(PDMCD)、オリゴカーボネートジオール、およびポリヘキサメチレン-ペンタメチレンカーボネートジオール(PHMPMCD)からなる群より選択される1種以上であり、ポリエステル系(Polyester)のポリオールは、ポリラクチド(Polylactide:PLA)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactone:PCL)、およびポリエチレングリコールアジペート(Polyethyleneglycol adipate:PEGA)からなる群より選択される1種以上であり、シリコーン系(Silicone)のポリオールは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリアリールシロキサン、およびポリアルキルシロキサンからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0034】
本発明で前記ジイソシアネートおよび鎖延長剤は硬質(ハード)セグメントを構成し、ハードセグメントは軟質(ソフト)セグメントと共有結合で結合される。好ましい様態で、前記ジイソシアネート(R)は、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4-シクロヘキシルメタンジイソシアネート(CHDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-または2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、カルボジイミド-改質されたMDI、ポリメリックMDI、およびヘキサメチレンジイソシアネートからなる群より選択された1種以上のものであってもよい。
【0035】
【0036】
本発明の官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体に含まれる鎖延長剤は、官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体に機能性(官能性)を付与するために多様な官能基(EおよびFn)を有することを特徴とする。このような官能基のうち、Fnは置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のチオール基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキルアジド基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアジド基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキルシリル基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のイソシアネート基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキルアミノ基、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルコール基、および置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキルハロゲン基からなる群より選択されるものであってもよい。
【0037】
また、Eは、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のエチレンオキシド基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のヘテロアリール基、および置換もしくは非置換の炭素数5~20のシロキサン基からなる群より選択される1種であり;
【0038】
好ましくは、前記非置換の炭素数2-10のアルケニル基は例えば、ビニル基(vinyl)、アリル基(allyl)、ブテニル(butenyl)、ペンテニル(penteyl)、またはヘキセニル基(hexenyl)であってもよいが、これに制限されるわけではなく、置換もしくは非置換の炭素数2~10のアルキニル基は例えば、プロパルギル(propargyl)、ブト-1-インイル(butynyl)、ペンチニル(pentynyl)またはヘキシニル(hexynyl)であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0039】
前記非置換の炭素数1-10のアルキル基は例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、へプチル基、オクチル基またはデカン基であってもよいが、これに制限されたものではなく、置換もしくは非置換の炭素数2~20のエチレンオキシド基は例えば、(-OCH2CH2-)nでnの数1-10のエチレンオキシド基からなる群より選択される1種以上であってもよいが、これに制限されたものではなく、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルコキシ基は例えば、即ち、メトキシ(methoxy)、エトキシ(ethoxy)、プロポキシ基(propoxy)、イソプロポキシ(isopropoxy)、ブトキシ基(butoxy)、tert-ブトキシ(tert-butoxy)、ペンタノキシ基(pentanoxy)、ヘキサノキシ基(hexanoxy)、ヘプタノキシ(heptanoxy)、オクタノキシ(octanoxy)、デカノキシ(decanoxy)、アルキル-デカノキシ(2-hexyl-1-decanoxy、6-ethyl-3-decanoxyなど)、ドデカノキシ(dodecanoxy)、アルキル-ドデカノキシ、ウンデカノキシ(undecanoxy)、アルキル-ウンデカノキシ基、アリルオキシ基(allyloxy)、シクロアルキルオキシ、またはシクロヘキシルオキシ(cyclohexyloxy)であってもよいが、これに制限されたものではなく、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基は例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロへプチルであってもよいが、これに制限されたものではない。
【0040】
置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリール基あるいはアリルオキシ基は例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフタレン基、フェナントレニル基、その他、アルキルフェニル基、およびフェニルオキシ基、ベンジルオキシ基、トリルオキシ基、ナフタレンオキシ基、フェナントレンオキシ基、またはその他、アルコキシフェニル基であってもよいが、これに制限されたものではなく、置換もしくは非置換の炭素数3~15のヘテロアリール基あるいはヘテロアリールオキシ基は例えば、フリル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニルなどの単環ヘテロアリール、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾリル、フェナントリジニル、ベンゾジオキソリルなどの多環式ヘテロアリール、これらの相応するN-オキシド(例えば、ピリジルN-オキシド、キノリルN-オキシド)またはこれらの4次塩などであってもよいが、これに制限されたものではなく、置換もしくは非置換の炭素数5~20のシロキサン基は例えば(-(Me)2SiO-)nでnの数2-10のシロキサン基であってもよいが、これに制限されたものではない。
【0041】
【0042】
本願で別に明示されない限り、用語“置換された”は、一つ以上の水素原子がハロゲン原子(例えば、F、Cl、BrまたはI)、シアノ基、ヒドロキシ基、チオール基、ニトロ基、アミノ基、イミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、オキソ基、カルボニル基、カルバモイル基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸またはその塩、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のハロアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、炭素数2~6のハロアルキニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のハロアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数3~20のカルボシクル基(例えば、炭素数3~9のシクロアルキル基、炭素数3~9のハロシクロアルキル基、炭素数3~9のハロシクロアルキル基、炭素数3~9のシクロアルケニル基、炭素数3~9のハロシクロアルケニル基、炭素数1~9のヘテロシクロアルキル基、炭素数1~9のヘテロシクロアルキル基、炭素数2~9のヘテロシクロアルケニル基、炭素数2~9のヘテロシクロアルケニル基)、および炭素数1~20のヘテロシクル基(例えば、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリルオキシ基、炭素数6~30のアリルチオ基、炭素数2~20のヘテロアリール基、炭素数2~20のヘテロアリールオキシ基、炭素数2~20のヘテロアリルチオ基)からなる群より選択される1~3つの置換基で置換されることを意味する。
【0043】
具体的な様態で、本発明による官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体は、1,000~3,500,000g/molの重量平均分子量を有することができる。好ましくは、5,000~100,000、50,000~1,000,000、または250,000~2,000,000g/molであってもよい。
【0044】
具体的に、本発明による官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体は、下記化学式3~14からなる群より選択される構造で表されるものであってもよい。
【0045】
[化学式3]
【0046】
【0047】
[化学式4]
【0048】
【0049】
[化学式5]
【0050】
【0051】
[化学式6]
【0052】
【0053】
[化学式7]
【0054】
【0055】
[化学式8]
【0056】
【0057】
[化学式9]
【0058】
【0059】
[化学式10]
【0060】
【0061】
[化学式11]
【0062】
【0063】
[化学式12]
【0064】
【0065】
[化学式13]
【0066】
【0067】
[化学式14]
【0068】
【0069】
【0070】
上記化学式3~14中、
【0071】
xおよびyは前記化学式1で定義した通りであり、
【0072】
nは10~250の整数である。
【0073】
【0074】
また他の様態として、本発明は、下記化学式2で表される鎖延長剤に関するものである。
【0075】
[化学式2]
【0076】
【0077】
上記式中、
【0078】
E、FnおよびLはそれぞれ前記化学式1で定義した通りである。
【0079】
好ましくは、前記化学式2の鎖延長剤は、下記化学式15~18からなる群より選択されるものであってもよい。
【0080】
[化学式15]
【0081】
【0082】
[化学式16]
【0083】
【0084】
[化学式17]
【0085】
【0086】
[化学式18]
【0087】
【0088】
追加的な様態として、本発明は、官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体に多様な作用基(または官能基とも言う)を有する単量体または高分子を導入した機能性複合材料に関するものである。好ましくは、前記機能性複合材料は、医療用複合材料であってもよい。前記多様な作用基を有する単量体または高分子の例としては、陰イオン性作用基、双性作用基、ペルフルオロ化合物、ハイドロゲル高分子、およびシリコーン高分子からなる群より選択される1種または2種以上であってもよいが、これに制限されたものではなく、熱可塑性ポリウレタンに所望の機能性を付与することができる公知の作用基を含む単量体または高分子であれば制限なく使用することができる。前記陰イオン性作用基、双性作用基、ペルフルオロ化合物、ハイドロゲル高分子、およびシリコーン高分子に関しては以下詳しく説明する。
【0089】
【0090】
具体的な本発明の一例として、双性作用基が導入された機能化された医療用複合材料は、下記の化学式19で表されるものであってもよい。
【0091】
[化学式19]
【0092】
【0093】
上記化学式19中、
【0094】
x、yおよびnは前記化学式3~14で定義した通りであり、
【0095】
qは10~100の整数である。
【0096】
【0097】
また他の一例として、ハイドロゲル高分子が導入された機能化された医療用複合材料は、下記の化学式20または21で表されるものであってもよい。
【0098】
[化学式20]
【0099】
【0100】
[化学式21]
【0101】
【0102】
上記化学式20~21中、
【0103】
x、yおよびnは前記化学式3~14で定義した通りであり、
【0104】
a、b、c、dはそれぞれ10~100の整数である。
【0105】
【0106】
また他の一例として、ペルフルオロ化合物が導入された機能化された医療用複合材料は、下記の化学式22で表されるものであってもよい。
【0107】
【0108】
[化学式22]
【0109】
【0110】
上記化学式22中、
【0111】
x、yおよびnは前記化学式3~14で定義した通りであり、
【0112】
eはそれぞれ3~25の整数である。
【0113】
【0114】
また他の一例として、シリコーン高分子が導入された機能化された医療用複合材料は、下記の化学式23で表されるものであってもよい。
【0115】
[化学式23]
【0116】
【0117】
上記化学式23中、
【0118】
x、yおよびnは前記化学式3~14で定義した通りであり、
【0119】
gはそれぞれ5~100の整数である。
【0120】
【0121】
また他の一つの様態として、本発明は、下記段階を含む官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を製造する方法に関するものである:
【0122】
(a)ポリオール(P)とジイソシアネート(R)とを反応させてプレポリマーを重合させる段階;および
【0123】
(b)前記段階(a)で構成されたプレポリマーを作用基(Fn)を含む鎖延長剤と反応させて前記化学式1の官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を製造する段階。
【0124】
好ましくは、前記官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体は、前記化学式1の構造を有する。したがって、前記ポリオール(P)は、ポリエーテル系(Polyether)、ポリカーボネート系(Polycarboante)、ポリエステル系(Polyester)、およびシリコーン系(Silicone)からなる群より選択される1種以上のポリオールであってもよいが、これに制限されるわけではない。前記ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、およびシリコーン系ポリオールの例は、前記化学式2に関して記載された通りである。また、前記プレポリマーを構成するポリオール(P)それぞれの平均分子量は、400g/mol~10,000g/molである。
【0125】
また、前記ジイソシアネートの例も前記化学式1で記載された通りである。
【0126】
前記段階(b)で、プレポリマーは作用基(官能基)を含む鎖延長剤と反応するようになり、この時、鎖延長剤は前記で言及された化学式2の構造で表されるのが好ましい。鎖延長剤に関する詳細な事項は前記化学式2で言及された通りである。
【0127】
好ましい様態で、前記段階(a)でポリオール(P)とジイソシアネート(R)との当量比は、ポリオール:ジイソシアネートで0.5~1:1~5であってもよい。
【0128】
また、前記段階(b)でプレポリマーと官能基を含む鎖延長剤の当量比は、プレポリマー:官能基を含む鎖延長剤で0.5~1:1~4であってもよい。
【0129】
また、前記ポリオール(P)は、全体官能化された熱可塑性ポリウレタンの全体重量に対して30~97重量%で使用することができ、前記ジイソシアネートは、全体官能化された熱可塑性ポリウレタンの全体重量に対して2~60重量%で使用することができ、前記官能基を含む鎖延長剤は、官能化された熱可塑性ポリウレタンの全体重量に対して1~20重量%で使用することができる。
【0130】
また他の様態として、本発明は、下記の段階を含む機能性複合材料の製造方法に関するものである。好ましくは、前記機能性複合材料は医療用複合材料である:
【0131】
i)官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を製造する段階;および
【0132】
ii)陰イオン性作用基、双性作用基、ペルフルオロ化合物、ハイドロゲル、およびシリコーン高分子からなる群より選択される一つまたは二つ以上の単量体または高分子を導入する段階。
【0133】
前記段階i)は、具体的に、前記官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を製造する方法によって行うことができる。
【0134】
前記段階ii)で、陰イオン性作用基、双性作用基、ペルフルオロ化合物、ハイドロゲル、およびシリコーン高分子からなる群より選択される一つまたは二つ以上の単量体または高分子は、化学反応、例えばチオール-エン反応、クリック反応、ヒドロシリル化反応、チオール-エポキシ反応などを用いて導入することができる。このような化学反応が行われるように、前記単量体または高分子はチオール基、アルケニル基、アルキニル基、シラン基、アジド基、およびエポキシ基からなる群より選択された作用基を含むことができる。前記官能化された熱可塑性ポリウレタンおよび陰イオン性作用基、双性作用基、ペルフルオロ化合物、ハイドロゲルおよびシリコーン高分子からなる群より選択される一つまたは二つ以上の単量体または高分子外に、チオール-エン反応、クリック反応、ヒドロシリル化反応またはチオール-エポキシ反応に使用される物質、反応条件などは公知の方法で適切に選択して使用することができる。
【0135】
好ましくは、前記段階ii)で官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を陰イオン性作用基または双性作用基を有する化合物と反応させる場合、熱可塑性ポリウレタンブロック共重合体の側鎖または末端に陰イオン性作用基または双性作用基が導入された機能性複合材料を製造することができる。
【0136】
また、前記段階ii)で官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体をペルフルオロ化合物(Poly- and Perfluorinated Compounds:PFCS)と反応させる場合、熱可塑性ポリウレタンブロック共重合体の側鎖または末端にPFCが導入された機能性複合材料を製造することができる。
【0137】
また、前記段階ii)で官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を、ハイドロゲル特性を有する化合物と反応させる場合、熱可塑性ポリウレタンブロック共重合体の側鎖または末端にハイドロゲル作用基が導入された機能性複合材料を製造することができる。
【0138】
また、前記段階ii)で官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を、シリコーン(silicone)作用基を有する化合物と反応させる場合、熱可塑性ポリウレタンブロック共重合体の側鎖または末端にシリコーン基が導入された機能性複合材料を製造することができる。
【0139】
具体的に、前記陰イオン性作用基は、無水グルタル酸(glutaric anhydride)、酢酸(acetic acid)、2,7-オキセパンジオン(2,7-oxepanedione)、ジヒドロ-フラン-2,5-ジオン(Dihydro-furan-2,5-dione)、オキセパン-2,7-ジオン(Oxepane-2,7-dione)、コハク酸無水物(succinic anhydride)、マレイン酸無水物(maleic anhydride)、シトラコン酸無水物(citraconic anhydride)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸無水物(diethylenetriamine pentaacetic anhydride)、ヨードアセテート(iodoacetate)、クロロ酢酸(chloroacetic acid)、1,3-プロパンスルトン(1,3-Propane Sultone)、1,4-ブタンスルトン(1,4-Butane sultone)、1-プロペン-1,3-スルトン(1-Propene-1,3-sultone)、1,8-ナフタレンスルトン(1,8-naphthalene sultone)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択することができるが、これに制限されたものではない。
【0140】
前記双性作用基は、ホスホリルコリン(phosphorylcholine)、ホスホリルエタノールアミン(phosphoryl ethanolamine)、ホスホリルセリン(phosphoryl-serine)、スルホベタイン(sulfobetaine)、カルボキシベタイン(carboxybetaine)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択することができ、これに制限されたものではない。
【0141】
前記ペルフルオロ化合物は、CF3-(CF2)e-(CH2)t-Aの化学式で表される化合物であり、
【0142】
この時、eは3~25であり、tは0~10であり、AはSH、アジド(azide)、アリル(allyl)、プロパルギル(propargyl)グループ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択することができ、これに制限されたものではない。
【0143】
前記ハイドロゲルは、プルロニックF-127(Pluronic F-127)、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide-polypropylene oxide-polyethylene oxide:PEO-PPO-PEO)、ポリ(スチレン-co-マレイン酸無水物)(polystyrene-co-maleic anhydride)、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸-ポリエチレングリコール(polyethylene glycol-poly L-lactic acid-polyethylene glycol:PEG-PLLA-PEG)、ポリN-イソプロピルアクリルアミド(poly N-isopropyl acrylamide:PNIPAAm)、あるいはポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(copolymer of polyethylene oxide and polypropylene oxide)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択することができ、これに制限されたものではない。
【0144】
シリコーン系(Silicone)は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリアリールシロキサンおよびポリアルキルシロキサンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択することができるが、これに制限されるわけではない。
【0145】
前記のような方法によって製造された本発明による官能化された熱可塑性ポリウレタンは、官能基を含む鎖延長剤を含むことによって、比較的に容易な化学的方法で使用者の必要による多様な機能性の導入が可能であって物理的な方法(例えば、コーティングまたは分散)で機能性を導入した既存方式(一回性)とは異なり、長期間機能性が維持できる。
【0146】
具体的に、本発明による官能化された熱可塑性ポリウレタンは、一般的な熱可塑性ポリウレタンと同一な性能(例えば、水吸収率、疎水性あるいは親水性、高い機械的性質)を維持しながらも、必要による追加的な機能性を導入することができるという長所を有する。これに制限されるわけではないが、例えば、優れた機械的性質を有する熱可塑性ポリウレタンにペルフルオロ化合物を導入して化学的耐性および疎水性を増加させるか、疎水性性質の熱可塑性ポリウレタンに双性イオンを導入して親水性性質を向上させタンパク質吸着を阻害することができる熱可塑性ポリウレタンを作るなど使用者の便宜によって多様な機能性を比較的に容易な化学的方法で製造することができるように設計されたものである。
【0147】
さらに、ポリオールあるいはジイソシアネートに官能基を導入する方法は、再現性、生産性および精製などの困難で商用化が難しい反面、鎖延長剤の官能基導入は合成および精製も比較的に容易であって大量生産にも有利であるという長所を有する。
【0148】
また他の様態で、本発明は、前記官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体および/または前記官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を含む機能性複合材料を含む物品を提供する。このような物品は、本発明による熱可塑性ポリウレタン共重合体および/または機能性複合材料をカレンダリング(calendering)、キャスティング(casting)、コーティング(coating)、コンパウンディング(compounding)、押出(extrusion)、フォーミング(foaming)、ラミネーティング(laminating)、ブロー成形(blow molding)、圧縮成形(compression molding)、射出成型(injection molding)、熱成形(thermoforming)、移送成形(transfer molding)、キャスト成形(cast molding)、回転成形(rotational molding)、スパン(spun)または溶融接合(melt bonding)、またはこれらの組み合わせによる方法によって製造することができる。
【0149】
本発明の物品は、前記熱可塑性ポリウレタン共重合体および/または機能性複合材料と共に、一つ以上の着色剤、抗酸化剤(フェノール樹脂類、ホスファート、チオエステル、および/またはアミンを含む)、オゾン分解防止剤、安定化剤、潤滑剤、抑制剤、加水分解安定化剤、光安定化剤、ベンゾトリアゾールUV吸収剤、熱安定化剤、変色を防止するための安定化剤、染料、顔料、補強剤、またはこれらの任意の組み合わせを追加的に含むことができる。
【0150】
好ましくは、本発明による物品は医療装置または部品であって、例えば人体または動物の身体に挿入可能であるか可能でないものであってもよく、例えば、電気化学的バイオセンサー、ペースメーカーリード、人工臓器、人工心臓、心臓弁膜、人工筋、動脈または静脈、インプラント、医療用バック、医療用バルブ、医療用チューブ、薬物伝達装置、生体吸収性インプラント、医療用プロトタイプ、医療用モデル、矯正器具、髄、歯科用品および手術道具からなる群より選択される1種以上またはこれらの部品であってもよい。さらに好ましくは、本発明による物品は、連続的な血糖モニタリングセンサーのような電気化学的バイオセンサーに使用される保護膜であってもよい。
【0151】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳しく説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【0152】
【実施例】
【0153】
実施例1:本発明による官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体の製造
【0154】
(1)鎖延長剤の合成
【0155】
1-1)(5-エチル-2,2-ジメチル-1,3ジオキサン-5-ニル)メタノールの合成
【0156】
【0157】
1Lの二口丸底フラスコにトリメチロールプロパン100g(0.75mol)とアセトン200mLを入れ石油エーテル300mLに溶かした。この混合物にp-トルエンスルホン酸(0.13g、0.75mmol)を入れ50℃で加熱して21時間攪拌する。反応終結後に常温に冷却し、反応溶媒は減圧濃縮して除去した。フラスコに残っている反応混合物は真空蒸留(0.1torr、90℃)で精製して透明な無色の液体を得た。(93.0g、72%)
【0158】
1-2)5-((アリルオキシ)メチル)-5-エチル-2,2ジメチル-1,3-ジオキサンの合成
【0159】
【0160】
250mLの二口丸底フラスコに(5-エチル-2,2-ジメチル-1,3ジオキサン-5-ニル)メタノール10.0g(57.4mmol)をアルゴン下で無水テトラヒドロフラン(100mL)に溶かした後、水素化ソジウム2.8g(68.9mmol)を加えた。この混合物は常温で一時間攪拌後に、アリルブロミド8.3g(68.9mmol)を入れアルゴン下で70℃で加熱して6時間攪拌した。反応終結後に、反応混合物は常温に冷却し、溶媒であるテトラヒドロフランは減圧濃縮して除去した後に水(30mL)とエチルアセテート(60mLX3)と共に抽出した。抽出した有機層は集めて硫酸マグネシウムで乾燥し減圧濃縮して溶媒を除去した。黄色液体の5-エチル-5-(((2-ヘキシルデキル)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサンを得た。(11.7g、95%)
【0161】
【0162】
1-3)2-((アリルオキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジオールの合成
【0163】
【0164】
【0165】
500mLの二口丸底フラスコに5-((アリルオキシ)メチル)-5-エチル-2,2ジメチル-1,3-ジオキサン13.0g(60mmol)と触媒量のp-トルエンスルホン酸を入れ、蒸留水200mlと混合して90℃で24時間攪拌した。反応終結後に、反応混合物は常温に冷却しエチルアセテート(100mLX3)と共に抽出した。有機層は集めて硫酸マグネシウムで乾燥し減圧濃縮して溶媒を除去した。非精製の反応物はエチルアセテートとヘキサンを展開溶媒にしてカラムクロマトグラフィーで精製した。(ヘキサン:エチルアセテート=2:1)最終的に透明な液体の2-((アリルオキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジオール(CE-allyl)を得た(8.6g、88%)。
【0166】
【0167】
(2)ポリオールおよびジイソシアネートから構成されるプレポリマーの製造および官能化された鎖延長剤を用いたポリウレタン共重合体の合成
【0168】
実施例1で製造された鎖延長剤を下記のような方法で反応させて本発明による官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体を製造した。
【0169】
【0170】
2-1)ポリエーテル系官能化された熱可塑性ポリウレタンの合成
【0171】
2-1-1)PEG-PU-CE-allylの合成
【0172】
下記反応式1によってPEG-PU-CE-allylを合成した。
【0173】
[反応式1]
【0174】
【0175】
【0176】
反応前ポリエチレングリコールは真空オーブンで70℃で24時間乾燥後に使用した。その他の液状の試薬は4Å分子篩(4Å Molecular sieve)を用いて水分を除去した後に使用した。1L二重ジャケット反応槽にオーバーヘッドスターラー、冷却器、ガス流入管、およびゴムセプタムを設置し、ポリエチレングリコール(Mn=1,000g/mol)10.0g(10mmol)と20mLの無水テトラヒドロフランを入れて15分間アルゴン脱気(degassing)した。前記反応槽に触媒であるジブチル錫ジラウレート(dibutyltin dilaurate)0.6gとシクロヘキシルメチレンジイソシアネート5.2g(20mmol)をガスサンプル投入用シリンジ(gas tight syringe)を用いて順次に入れて80℃で3時間加熱した。反応後合成されたポリウレタンプレポリマー(pre-polymer)のNCO(%)含量を逆滴定方法を用いて確認した。1L二重ジャケット反応槽にオーバーヘッドスターラー、冷却器、ガス流入管、およびゴムセプタムを設置し、前記製造されたプレポリマーを入れた後、合成された鎖延長剤CE-allyl(10mmol)をシリンジポンプを用いて徐々に加えて80℃で12時間加熱する。反応終結後合成された高い粘度のポリウレタンは、THFに溶かした後、ジエチルエーテルの入ったビーカーに徐々に落として沈殿させた。沈殿した白い固体は真空オーブンに入れて常温で24時間乾燥した。最終的に下記のような白い固体の熱可塑性ポリウレタン共重合体PEG-PU-CE-allylを製造した。(15g)
【0177】
[化学式3]
【0178】
【0179】
2-2)ポリカーボネート系官能化された熱可塑性ポリウレタンの合成
【0180】
2-2-1)PC-PU-CE-allylの合成
【0181】
下記反応式2によってPC-PU-CE-allylを合成した。
【0182】
[反応式2]
【0183】
【0184】
反応前ポリヘキサメチレンカーボネートは真空オーブンで70℃で24時間乾燥後に使用した。その他の液状の試薬は4Å分子篩(4Å Molecular sieve)を用いて水分を除去した後に使用した。1L二重ジャケット反応槽にオーバーヘッドスターラー、冷却器、ガス流入管、およびゴムセプタムを設置し、ポリヘキサメチレンカーボネート(Mn=2,000g/mol)20.0g(10mmol)と40mLの無水テトラヒドロフランを入れて15分間アルゴン脱気(degassing)する。前記反応槽に触媒であるジブチル錫ジラウレート(dibutyltin dilaurate)0.6gとシクロヘキシルメチレンジイソシアネート5.2g(20mmol)をガスサンプル投入用シリンジ(gas tight syringe)を用いて順次に入れて80℃で3時間加熱した。反応後合成されたポリウレタンプレポリマー(pre-polymer)のNCO(%)含量を逆滴定方法を用いて確認する。1L二重ジャケット反応槽にオーバーヘッドスターラー、冷却器、ガス流入管、およびゴムセプタムを設置し、前記製造されたプレポリマーを入れた後、合成された鎖延長剤CE-allyl(10mmol)をシリンジポンプを用いて徐々に加えて80℃で12時間加熱した。反応終結後、合成された高い粘度のポリウレタンはTHFに溶かした後、ジエチルエーテルの入ったビーカーに徐々に落として沈殿させた。沈殿した白い固体は真空オーブンに入れて常温で24時間乾燥する。最終的に下記のような白い固体の熱可塑性ポリウレタン共重合体PC-PU-CE-allylを製造した。(20.0g)
【0185】
[化学式7]
【0186】
【0187】
2-3)ポリジメチルシロキサン系官能化された熱可塑性ポリウレタンの合成
【0188】
2-3-1)PDMS-PU-CE-allylの合成
【0189】
下記反応式3によってPDMS-PU-CE-allylを合成した。
【0190】
[反応式3]
【0191】
【0192】
反応前ポリジメチルシロキサンは真空オーブンで70℃で24時間乾燥後に使用した。その他の液状の試薬は4Å分子篩(4Å Molecular sieve)を用いて水分を除去した後に使用した。1L二重ジャケット反応槽にオーバーヘッドスターラー、冷却器、ガス流入管、およびゴムセプタムを設置し、ポリジメチルシロキサン(Mn=900g/mol)9.0g(10mmol)と10mLの無水テトラヒドロフランを入れて15分間アルゴン脱気(degassing)する。前記反応槽に触媒であるジブチル錫ジラウレート(dibutyltin dilaurate)0.6gとシクロヘキシルメチレンジイソシアネート5.2g(20mmol)をガスサンプル投入用シリンジ(gas tight syringe)を用いて順次に入れて80℃で3時間加熱した。反応後合成されたポリウレタンプレポリマー(pre-polymer)のNCO(%)含量を逆滴定方法を用いて確認した。1L二重ジャケット反応槽にオーバーヘッドスターラー、冷却器、ガス流入管、およびゴムセプタムを設置し、前記製造されたプレポリマーを入れた後、合成された鎖延長剤CE-allyl(10mmol)をシリンジポンプを用いて徐々に加えて80℃で12時間加熱した。反応終結後合成された高い粘度のポリウレタンは、THFに溶かした後、ジエチルエーテルの入ったビーカーに徐々に落として沈殿させた。沈殿した白い固体は真空オーブンに入れて常温で24時間乾燥した。最終的に下記のような白い固体の熱可塑性ポリウレタン共重合体PDMS-PU-CE-allylを製造した。(11.0g)
【0193】
[化学式11]
【0194】
【0195】
実施例2:本発明による官能化された熱可塑性ポリウレタン共重合体に多様な作用基を有する単量体および高分子が導入された機能性熱可塑性ポリウレタンの製造
【0196】
(1)双性イオンが導入された機能性熱可塑性ポリウレタンの合成
【0197】
[化学式19]
【0198】
【0199】
250mLの丸底フラスコにPEG-PU-CE-allyl3.0g(0.2mmol/allyl基)、末端モノチオール(メチルアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)高分子(分子量:~6,000g/mol)1.2g(~0.2mmol)とDMPA(13mg、0.05mmol)をアルゴン雰囲気で50mLのテトラヒドロフランと25mLエタノールに溶かした後、15分間アルゴン脱気(degassing)した。この反応混合物はUV反応器に入れて5時間315~400nmの光を照射した。反応終結後合成されたポリウレタンは、ジエチルエーテルの入ったビーカーに徐々に落として沈殿させた。沈殿した白い固体は真空オーブンに入れて常温で24時間乾燥した。最終的に[化学式19]のような白い固体の機能性熱可塑性ポリウレタン共重合体を製造した(3.7g、88%)。
【0200】
(2)ハイドロゲル高分子が導入された機能性熱可塑性ポリウレタンの合成
【0201】
[化学式20]
【0202】
【0203】
250mL丸底フラスコにPEG-PU-CE-allyl3.0g(0.2mmol/allyl基)、末端モノチオールポリ(プロピレングリコール-エチレングリコール-プロピレングリコール)(分子量:~2,000g/mol)0.4g(0.2mmol)とDMPA(14mg、0.05mmol)をアルゴン雰囲気で50mLのテトラヒドロフランと25mLエタノールに溶かした後、15分間アルゴン脱気(degassing)した。この反応混合物はUV反応器に入れて5時間315~400nmの光を照射した。反応終結後合成されたポリウレタンはジエチルエーテルの入ったビーカーに徐々に落として沈殿させた。沈殿した白い固体は真空オーブンに入れて常温で24時間乾燥した。最終的に[化学式20]のような白い固体の機能性熱可塑性ポリウレタン共重合体を製造した(3.2g、94%)。
【0204】
[化学式21]
【0205】
【0206】
250mL丸底フラスコにPEG-PU-CE-allyl3.0g(0.2mmol/allyl基)、末端モノチオールポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(分子量:~4,000g/mol)0.8g(0.2mmol)とDMPA(14mg、0.05mmol)をアルゴン雰囲気で50mLのテトラヒドロフランと25mLエタノールに溶かした後、15分間アルゴン脱気(degassing)した。この反応混合物はUV反応器に入れて5時間315~400nmの光を照射した。反応終結後合成されたポリウレタンはジエチルエーテルの入ったビーカーに徐々に落として沈殿させた。沈殿した白い固体は真空オーブンに入れて常温で24時間乾燥した。最終的に[化学式21]のような白い固体の機能性熱可塑性ポリウレタン共重合体を製造した(3.5g、92%)。
【0207】
【0208】
(3)ペルフルオロ化合物が導入された機能性熱可塑性ポリウレタンの合成
【0209】
[化学式22]
【0210】
【0211】
250mL丸底フラスコにPEG-PU-CE-allyl6.0g(0.4mmol/allyl基)、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカンチオール(1H,1H,2H,2H-perfluorodecanethiol)0.24g(0.5mmol)とDMPA(28mg、0.1mmol)をアルゴン雰囲気で100mLのテトラヒドロフランに溶かした後、15分間アルゴン脱気(degassing)した。この反応混合物はUV反応器に入れて2時間315~400nmの光を照射した。反応終結後合成されたポリウレタンはジエチルエーテルの入ったビーカーに徐々に落として沈殿させた。沈殿した白い固体は真空オーブンに入れて常温で24時間乾燥した。最終的に[化学式22]のような白い固体の機能性熱可塑性ポリウレタン共重合体を製造した(5.5g、88%)。
【0212】
(4)シリコーン高分子が導入された機能性熱可塑性ポリウレタンの合成
【0213】
[化学式23]
【0214】
【0215】
100mL丸底フラスコにPEG-PU-CE-allyl3.0g(0.2mmol/allyl基)、モノヒドロポリ(ジメチルシロキサン)(分子量:800g/mol)0.24g(0.3mmol)を入れて25mLのテトラヒドロフランに溶かした後、15分間アルゴン脱気(degassing)した。この反応混合物に白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体溶液を10μL添加した後に80℃で加熱して24時間攪拌する。反応終結後に反応混合物は常温に冷却し過量のテトラヒドロフラン(200mL)を加えて十分に希釈した後にCelite/Charcolにろ過して白金触媒を除去する。真空濃縮機を用いて溶媒は100mLのみ残して除去する。フラスコに残っている反応混合物をジエチルエーテルの入ったビーカーに徐々に落として沈殿させた。沈殿した白い固体は真空オーブンに入れて常温で24時間乾燥した。最終的に[化学式23]のような白い固体の機能性熱可塑性ポリウレタン共重合体を製造した(2.5g、77%)。
【国際調査報告】