(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】ポリペプチドの免疫原性を予測するための細胞ベースの方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230809BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230809BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230809BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20230809BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20230809BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20230809BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/53 Y
C07K16/00
C07K16/18
C12N5/0784
C12N5/0781
C12N5/0786
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501402
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(85)【翻訳文提出日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 US2021041422
(87)【国際公開番号】W WO2022015726
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カーメン, リン アン
(72)【発明者】
【氏名】メレンデス, レイチェル アン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, シャン
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BD39
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
本開示の主題は、ポリペプチド又はその断片、例えば抗体又はその断片が抗薬物抗体(ADA)の産生を誘発する傾向を決定する方法、及びそのような方法を実施するためのキットを提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド又はその断片が抗薬物抗体(ADA)の産生を誘発する傾向を、既知の基準に対して決定する方法であって、
(a)抗原提示細胞(APC)をポリペプチド又はその断片に接触させること;
(b)APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片の量を測定すること;
(c)APCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量を測定することであって、APCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量が、APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片の量と、APC内に存在するポリペプチド又はその断片の量とを含む、ポリペプチド又はその断片の総量を測定すること;
(d)(c)で測定したAPCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量から、(b)で測定したAPCの外面に結合したポリペプチド又はその断片の量を減算することにより、内部移行指標値を計算すること;ならびに
(e)(d)の内部移行指標を、基準内部移行指標と比較すること;
を含み、
(d)の内部移行指標値が基準内部移行指標よりも大きい場合、ポリペプチド又はその断片はADAを誘発する傾向が基準よりも高く、(d)の内部移行指標値が基準内部移行指標よりも小さい場合、ポリペプチド又はその断片はADAを誘発する傾向が基準よりも低い、方法。
【請求項2】
ポリペプチド又はその断片がペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリペプチド又はその断片が組換えタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ポリペプチド又はその断片が抗体又はその断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
抗体又はその断片がヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抗体又はその断片が単一ドメイン抗体である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
ポリペプチドが抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
APCが、樹状細胞、マクロファージ、単球、及びB細胞からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
APCが樹状細胞である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
樹状細胞が未成熟樹状細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
未成熟樹状細胞が、ドナーから単離された単球を分化させることによって生成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
単離した単球が、インターロイキン-4(IL-4)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)のうちの一又は複数の存在下で分化されて、未成熟樹状細胞が生成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
APCが、薬剤の存在下でポリペプチド又はその断片と接触させられる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
薬剤が、炎症性サイトカイン、プロスタグランジンE2(PGE2)、リポ多糖(LPS)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
炎症性サイトカインが、TNFα、IL-6、IL-1β、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
薬剤がLPSである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
(c)APCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量を測定することが、
(i)APCを透過化すること;
(ii)APCを、ポリペプチド又はその断片に結合する検出剤に接触させること;ならびに
(iii)APCの外面及びAPC内に存在する、ポリペプチド又はその断片に結合している検出剤の総量を決定して、APCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量を測定すること
を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
(b)APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片の量を測定することが、
(i)APCを、ポリペプチド又はその断片に結合する検出剤に接触させること;及び
(ii)APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片に結合している検出剤の量を決定して、APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片の量を測定すること
を含み、
APCが、APCを検出剤と接触させることの前に透過化されない、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
検出剤が抗体である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
検出剤がフルオロフォアにコンジュゲートした抗体である、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
抗体が抗IgG抗体である、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
ポリペプチド又はその断片に結合した検出剤の量を決定することが、フローサイトメトリーによって実施される、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキット。
【請求項24】
(a)APC;
(b)薬剤;
(c)検出剤;及び
(d)透過剤
のうちの一又は複数を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
薬剤が、炎症性サイトカイン、プロスタグランジンE2(PGE2)、リポ多糖(LPS)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
炎症性サイトカインが、TNFα、IL-6、IL-1β、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
薬剤がLPSである、請求項25に記載のキット。
【請求項28】
検出剤が抗体である、請求項24から27のいずれか一項に記載のキット。
【請求項29】
検出剤がフルオロフォアにコンジュゲートした抗体である、請求項24から28のいずれか一項に記載のキット。
【請求項30】
抗体が抗IgG抗体である、請求項28又は29に記載のキット。
【請求項31】
透過剤がサポニンである、請求項24から30のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年7月13日に出願された米国仮出願第63/051,157号及び2020年8月28日に出願された米国仮出願第63/071,535号の優先権を主張し、これらの各々の内容は、その全体が参照により援用され、各々の優先権が主張される。
【0002】
本開示は、ポリペプチドが抗薬物抗体(ADA)の産生を誘発する傾向を決定する方法、及びそのような方法を実施するためのキットに関する。
【背景技術】
【0003】
深刻で難治性の疾患の治療が、ポリペプチドベースの治療薬(例えば抗体)によって大幅に改善することが増えている。ところが、そのような治療薬は、患者に投与されると抗薬物抗体(ADA)の産生を誘発することがある。ADAは、治療薬に対して中和効果を有し得る。中和効果には、治療薬の活性の制限、治療薬のクリアランスの増加、及び、治療薬の投与による全体的な臨床反応の潜在的な減少が含まれ得る。いくつかの例では、場合によっては、ADAの産生により、過敏症反応やアナフィラキシー等、患者における重篤な有害事象の発生も伴うことがある。
【0004】
ポリペプチドベースの治療薬の免疫原性を医薬品開発の前臨床段階で理解することで、その後の臨床段階で治療薬が成功する可能性を高めることができる。免疫原性エピトープはin silicoツールを使用して予測されるのが一般的だが、前臨床治療薬候補の免疫原性を決定するためにいくつかの細胞ベースの技術が開発されている。そのような技術の1つに、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII関連ペプチドプロテオミクス(MAPP)と呼ばれるものがある。MAPPでは、抗原提示細胞(APC)、例えば樹状細胞の集団を、目的のポリペプチドベースの治療薬と共にインキュベートする。APCは、治療薬を取り込み短いペプチドへと加工する。ペプチドはMHCクラスII分子に載せられてAPCの表面で提示される。これらのMHCペプチド複合体を免疫沈降させて液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)で分析することで、ポリペプチドベースの治療薬における潜在的な免疫原性エピトープの同定が可能となる。前臨床治療薬候補の免疫原性を決定するためのもう1つの手法は、T細胞増殖アッセイである。T細胞増殖アッセイでは、目的のポリペプチドベースの治療薬とインキュベートした樹状細胞などのAPCと共培養した後、T細胞増殖を検出する。しかしながら、これらの技術は労力を要して時間がかかり、高価な設備を多く必要とする。したがって、ポリペプチドベースの治療薬のADA産生誘発傾向を決定するための、より時間効率と費用対効果の高い方法が当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、ポリペプチド又はその断片が抗薬物抗体(ADA)の産生を誘発する傾向を、既知の基準に対して決定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、(a)抗原提示細胞(APC)をポリペプチド又はその断片と接触させること;(b)APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片の量を測定すること;(c)APCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量を測定すること;(d)(c)で測定したAPCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量から、(b)で測定したAPCの外面に結合したポリペプチド又はその断片の量を減算することにより、内部移行指標値を計算すること;並びに、(d)の内部移行指標を、ADAの産生を誘発する既知の傾向を示す基準内部移行指標と比較することを含み得る。いくつかの実施形態では、APCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量が、APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片の量、及びAPC内に存在するポリペプチド又はその断片の量を含む。いくつかの実施形態では、(d)の内部移行指標値が基準内部移行指標よりも大きい場合、当該ポリペプチド又はその断片はADAを誘発する傾向が基準よりも高い。いくつかの実施形態では、(d)の内部移行指標値が基準内部移行指標よりも小さい場合、当該ポリペプチド又はその断片はADAを誘発する傾向が基準よりも低い。
【0006】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド又はその断片がペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチド又はその断片が組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド又はその断片が、抗体又はその断片、例えばヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド又はその断片、例えば抗体又はその断片が、単一ドメイン抗体である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド又はその断片、例えば抗体又はその断片が、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。
【0007】
いくつかの実施形態では、APCが、樹状細胞、マクロファージ、単球、及びB細胞からなる群から選択される。特定の実施形態において、APCは樹状細胞である。例えば、樹状細胞が未成熟な樹状細胞であるが、限定するものではない。いくつかの実施形態では、未成熟樹状細胞が、ドナー、例えばヒトドナーから単離された単球を分化させることによって生成される。いくつかの実施形態では、単離した単球が、インターロイキン-4(IL-4)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)のうちの一又は複数の存在下で分化されて、未成熟樹状細胞を生成する。
【0008】
いくつかの実施形態では、APCがポリペプチド又はその断片と、薬剤の存在下で接触させられる。薬剤は例えば、炎症性サイトカイン、プロスタグランジンE2(PGE2)、リポ多糖(LPS)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるが、限定するものではない。炎症性サイトカインの非限定的な例は、TNFα、IL-6、IL-1β、及びそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、薬剤はLPSである。
【0009】
いくつかの実施形態では、APCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量を測定することが、(i)APCを透過化すること、(ii)APCを、該ポリペプチド又はその断片に結合する検出剤と接触させること、及び(iii)APCの外面及びAPC内に存在する、該ポリペプチド又はその断片に結合している検出剤の量を決定して、APCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量を測定することを含み得る。いくつかの実施形態では、APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片の量を測定することが、(i)APCを、該ポリペプチド又はその断片に結合する検出剤と接触させること、及び(ii)APCの外面に存在する該ポリペプチド又はその断片に結合している検出剤の量を決定して、APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片の量を測定することを含み、APCを検出剤と接触させる前にAPCは透過化されない。いくつかの実施形態では、検出剤が抗体であり、例えばフルオロフォアにコンジュゲートした抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、抗IgG抗体である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド又はその断片に結合した検出剤の量を決定することが、フローサイトメトリーによって実施される。
【0010】
本開示はさらに、本開示の方法のいずれかを実施するためのキットを提供する。いくつかの実施形態で、キットは、APC、薬剤、検出剤、及び透過剤のうち一又は複数を含む。いくつかの実施形態では、薬剤が、炎症性サイトカイン、プロスタグランジンE2(PGE2)、リポ多糖(LPS)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、炎症性サイトカインが、TNFα、IL-6、IL-1β、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、薬剤はLPSである。いくつかの実施形態では、検出剤が抗体であり、例えばフルオロフォアにコンジュゲートした抗体である。いくつかの実施形態では、検出剤は抗IgG抗体である。いくつかの実施形態では、透過剤がサポニンである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ポリペプチドのADA産生誘発傾向を決定するための方法の非限定的な実施態様の概略図である。
【
図2】抗原提示細胞(APC)の表面に結合した抗体の量、及びAPCに関連づけられた抗体全体の量を検出する概略図である。
【
図3】APCの表面に結合した抗体の量、及びAPCに関連づけられた抗体全体の量を決定するためのフローサイトメトリーのゲーティング戦略を示す。
【
図4】抗体ボコシズマブ及びアバスチン(登録商標)についてAPCの外部染色と全染色の比較を示すグラフである。
【
図5】臨床環境において様々なレベルの免疫原性を有する種々の抗PCSK9抗体の内部移行指標値を示す。
【
図6】エンブレル(登録商標)(エタネルセプト)、ヒュミラ(登録商標)(アダリムマブ)、及びレミケード(登録商標)(インフリキシマブ)を含む、臨床環境において免疫原性が高い抗体及び免疫原性が低い抗体の内部移行指標値、ならびに抗体凝集体の内部移行指標値を示す。
【
図7A】抗体ボコシズマブ、アダリムマブ、及びベバシズマブの72時間にわたる内部移行指標値を示す。
【
図7B】未成熟樹状細胞(iDC)及びLPSで刺激した成熟樹状細胞(mDC)を用いた、抗体ボコシズマブ、アダリムマブ、及びベバシズマブの内部移行指標値を示す。
【
図8】サイトカラシン、Fc受容体ブロック、又は両者の組み合わせの存在下でのボコシズマブの内部移行率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
限定を行うものではなく明確化のために、本明細書にて開示する主題の詳細の説明を以下の小節に分ける:
I.定義
II.方法
III.ポリペプチド
IV.キット;及び
V.例示的な実施態様。
【0013】
I.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。以下の参考文献は、本発明において使用される多くの用語の一般的な定義を当業者に提供する: Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al.(eds.), Springer Verlag (1991); 及びHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段の指定がない限り、以下に記載される意味を有する。
【0014】
本明細書で使用する場合、特許請求の範囲、及び/又は明細書内で、用語「を含む」と共に用いられる場合、語句「a」又は「an」の使用は、「1つ」を意味し得るが、これは「1つ以上の」、「少なくとも1つの」、及び「1つ又は2つ以上」の意味とも一致する。さらに、用語「有する(having)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」、及び「含む(comprising)」は交換可能であり、オープン・エンドな記載であることが当業者には周知である。
【0015】
用語「約」又は「およそ」とは、本明細書で使用される場合、当業者によって決定される特定の値の許容できる誤差範囲を指し、これは、その値がどのように測定又は決定されるか、例えば、測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」とは、所与の値の1実施当たり1つ又は1つよりも多くの標準偏差以内を意味し得る。特定の値が本願及び本特許請求の範囲に記載されている場合、別段の記載がない限り、用語「約」は、特定の値の許容される誤差範囲、例えば用語「約」によって修正された値の±10%などを意味することができる。
【0016】
「抗体」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、限定されるものではないが、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含めた、様々な抗体構造を包含する。
【0017】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合し、インタクトな抗体の一部分から構成されるインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例として、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
目的とする抗原に「結合する」抗体は、その抗体が、アッセイ試薬、例えば検出抗体として有用であるように充分な親和性で抗原に結合するものである。典型的には、かかる抗体は、他のポリペプチドと有意に交差反応しない。標的分子へのポリペプチドの結合に関して、特定のポリペプチド標的上の特定のポリペプチド又はエピトープの「特異的結合」、又はそれに「特異的に結合する」、又はそれに「特異的な」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に結合活性を有しない同様の構造を有する分子である対照分子の結合と比較して標的分子の結合を決定することによって測定され得る。
【0019】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。別段の指定がない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。通常、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、解離定数(Kd)によって表される。親和性は、本明細書中に記載のものも含め、当該技術分野で既知の一般的な方法により測定することができる。結合親和性を測定するための特定の例示的な実施態様は、以下で説明される。
【0020】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の起源又は種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖の残りの部分が異なる起源又は種に由来する抗体を指す。
【0021】
抗体の「クラス」は、その重鎖が有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分けられてもよい。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0022】
本明細書で用いられる「細胞傷害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞死又は破壊を生ずる物質を指す。細胞傷害性剤としては、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体);化学療法剤又は化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、若しくは他の挿入剤);増殖阻害剤;核酸分解酵素等の酵素及びそれらの断片;抗生物質;細菌、真菌、植物、又は動物起源の小分子毒素又は酵素活性毒素(それらの断片及び/若しくは変異体を含む)等の毒素;及びに下に記載される様々な抗腫瘍剤又は抗がん剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で用いる用語「検出抗体」とは、試料中の標的分子に特異的に結合する抗体を指す。特定の条件下で、検出抗体は標的分子と複合体を形成する。検出抗体は、検出され得る標識を用いて直接的に、又は、例えば標識され、且つ検出抗体に結合する別の抗体を使用して間接的に、検出され得る。直接標識の場合、検出抗体は、典型的には、例えばフルオロフォアを含むがこれらに限定されないいくつかの手段によって検出可能な部分にコンジュゲートされる。
【0024】
用語「検出すること」とは、本明細書では、標的分子又はその処理形態の定性的測定と定量的測定との両方を含むように使用される。ある実施形態では、検出することは、単に標的分子の存在を同定することと、標的分子が検出可能なレベルで存在するかを決定することとを含む。
【0025】
「エフェクター機能」とは、抗体のアイソタイプにより変わる、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、以下のものが挙げられる:C1q結合及び補体依存性細胞毒性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC);貪食;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化。
【0026】
本明細書において用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然配列Fc領域とバリアントFc領域とを含む。ある特定の実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端に及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在してもしてなくてもよい。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載される、EUインデックスとも呼ばれる、EUナンバリングシステムに従う。
【0027】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(CDR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、FR1、FR2、FR3及びFR4の4つのFRドメインからなる。したがって、CDR及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)において次の配列において出現する:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0028】
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」とは、本明細書で、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、又は本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指すように同義に使用される。
【0029】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生された抗体の、又はヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列、あるいは他のヒト抗体をコードする配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0030】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般的に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからのものである。一般的には、配列のサブグループは、Kabat et al.,, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., NIH Publication 913242, Bethesda MD (1991),1~3巻にあるようなサブグループである。ある特定の実施形態では、VLの場合、サブグループは、Kabatら(上記参照)に見られるようなサブグループカッパIである。ある特定の実施形態では、VHの場合、サブグループは、Kabatら(上記参照)に見られるようなサブグループIIIである。
【0031】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトCDR由来のアミノ酸残基、及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むものであり、それにおいて、CDR(例えば、CDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに相当し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のものに相当する。ヒト化抗体は、場合によって、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含んでよい。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化形態」とは、ヒト化を受けた抗体を意味する。
【0032】
用語「超可変領域」又は「HVR」とは、本明細書で使用される場合、配列が超可変であり(「相補性決定領域」又は「HVR」)、かつ/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/又は抗原接触残基(「抗原接触体」)を含有する、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。別段の記載がない限り、CDR残基及び可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、上述のKabatらに準じて番号付けされている。一般的に、抗体は、6つのCDRを含み、VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)含む。本明細書における例示的なCDRには、以下が含まれる:
(a)アミノ酸残基26-32(L1),50-52(L2),91-96(L3),26-32(H1),53-55(H2)、及び96-101(H3)に生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J. Mol. Biol. 196:901-917(1987)); Biol. 196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24-34(L1),50-56(L2),89-97(L3),31-35b(H1),50-65(H2),及び95-102(H3)に生じるCDR(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991));Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991;
(c)アミノ酸残基27c-36(L1),46-55(L2),89-96(L3),30-35b(H1),47-58(H2),及び93-101(H3)に生じる抗原接触(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262:732-745(1996));及び
(d)CDRアミノ酸残基46-56(L2),47-56(L2),48-56(L2),49-56(L2),26-35(H1),26-35b(H1),49-65(H2),93-102(H3),及び94-102(H3)を含む、(a),(b)、及び/又は(c)の組み合わせ。
【0033】
「イムノコンジュゲート」とは、細胞傷害性剤を含むが、これに限定されない1つ以上の異種分子(一又は複数)にコンジュゲートされる抗体を指す。
【0034】
本書において「個体」「対象」又は「ドナー」は、ヒトや非ヒト動物、例えば哺乳動物などの脊椎動物である。哺乳動物には、ヒト、非ヒト霊長類、家畜、競技用動物、げっ歯類、ペットなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。非ヒト動物対象の非限定的な例には、マウス、ラット、ハムスター、及びモルモットなどのげっ歯類;ウサギ;イヌ;ネコ;ヒツジ;ブタ;ヤギ;ウシ;ウマ;ならびに類人猿及びサルなどの非ヒト霊長類が挙げられる。特定の実施態様において、個体、対象又はドナーはヒトである。
【0035】
本書で使用する用語「in vitro」は、人工環境、及び人工環境内で起こるプロセス又は反応をいう。in vitro環境は、試験管及び細胞培養を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本書で使用する用語「in vivo」は、自然環境(例えば、動物又は細胞)、及び、胚発生、細胞分化、神経管形成などの自然環境内で生じるプロセス又は反応をいう。
【0037】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から分離されたものである。ある特定の実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(isoelectric focusing:IEF)、キャピラリ電気泳動)、又はクロマトグラフ(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)によって決定される、95%超又は99%超の純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法の総説については、例えば、Flatmanら、「J.Chromatogr.。」、第848巻第79~87頁(2007年)を参照されたい。
【0038】
本明細書で使用される用語「標識」又は「検出可能な標識」は、検出又は定量化される物質に結合し得る任意の化学基又は部分、例えば、抗体を指す。標識は、物質の高感度検出又は定量化に適した検出可能な標識である。検出可能な標識の非限定的な例としては、発光標識、例えば、蛍光、リン光、化学発光、生物発光、及び電気化学発光標識、放射性標識、酵素、粒子、磁性物質、及び電気活性種等が挙げられるが、これらに限定されない。或いは、検出可能な標識は、特異的結合反応に関与することによってその存在をシグナル伝達し得る。このような標識の非限定的な例としては、ハプテン、抗体、ビオチン、ストレプトアビジン、Hisタグ、ニトリロ三酢酸、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、及びグルタチオン等が挙げられる。
【0039】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指す。すなわち、集合に含まれる個々の抗体が、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合するが、但し、例えば、天然に存在する変異又はモノクローナル抗体製剤の製造中に生じる変異を含む、可能なバリアント抗体は除く。このようなバリアントは、一般的に、少量存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本願で開示された主題に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない様々な技法によって作製することができ、かかる方法及び他の例示のモノクローナル抗体の作製方法は、本明細書に記載されている。
【0040】
「天然抗体」は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端にかけて各重鎖は、可変領域(VH)(可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる)、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端にかけて各軽鎖は、可変領域(VL)(可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる)、続いて定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの種類の1つに割り当てられてもよい。
【0041】
「核酸分子」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのポリマーを含む、任意の化合物及び/又は物質を含む。各ヌクレオチドは、塩基で構成され、具体的には、プリン塩基又はピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)又はウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボース又はリボース)、及びリン酸基で構成される。しばしば、核酸分子は塩基の配列によって記述されることにより、これらの塩基は核酸分子の一次構造(線状構造)を表す。塩基の配列は、典型的には5’から3’へと表される。ここで、核酸分子という用語は、例えば相補的DNA(cDNA及びゲノムDNAを含むデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、特にメッセンジャーRNA(mRNA)、DNA又はRNAの合成形態、並びにこれらの2以上の分子を含む混合ポリマーを包含する。核酸分子は、線形又は環状であってもよい。更に、核酸分子という用語には、センス鎖及びアンチセンス鎖、並びに一本鎖形態及び二本鎖形態の双方が含まれる。更に、本明細書に記載の核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド又は天然に存在しないヌクレオチドを含み得る。誘導体化された糖又はホスフェート骨格結合又は化学修飾された残基を含む、天然に存在しないヌクレオチドの例として、修飾されたヌクレオチド塩基が挙げられる。核酸分子はまた、例えば、宿主又は患者において、in vitro及び/又はin vivoで本発明の抗体の直接的な発現のためのベクターとして好適なDNA分子及びRNA分子も包含する。このようなDNA(例えばcDNA)又はRNA(例えばmRNA)ベクターは、改変されていなくても、改変されていてもよい。例えば、mRNAは、in vivoで抗体を産生するために対象にmRNAを注入することができるように、RNAベクターの安定性及び/又はコードされた分子の発現を高めるように化学修飾されてもよい。(例えば、Stadler et al,Nature Medicine 2017,published online 12 June 2017,doi:10.1038/nm.4356又は欧州特許第2101823号を参照されたい)。
【0042】
「精製された」ポリペプチド(例えば、抗体)とは、本明細書で使用される場合、ポリペプチドがその天然環境下で存在するよりもさらに純粋な形態で存在するように、及び/又は実験室条件下で最初に合成及び/又は増幅されたときに、ポリペプチドの純度が増加することを指す。純度は相対用語であり、必ずしも絶対純度を意味するのではない。
【0043】
用語「添付文書」とは、本明細書で使用される場合、パッケージの構成要素の使用に関する情報を含有する、商用パッケージに習慣的に含まれる指示書を指す。
【0044】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした場合の、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当分野の技術の範囲内にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較する配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含めた、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作製され、ソースコードは米国著作権庁、ワシントンD.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2は、ジェネンテック社(カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)から一般に入手可能であり、又はそのソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIXのV4.0Dを含む、UNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされるべきである。すべての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されて変動しない。
【0045】
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bとの(又はこれに対する)アミノ酸配列同一性%(或いは、所与のアミノ酸配列Aは、所与のアミノ酸配列Bと(又はこれに対して)特定のアミノ酸配列同一性%を有するか又は含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は次のように計算される:
100 ×分数X/Y。
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2により、AとBのそのプログラムのアラインメントにおいて同一であるとして一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限り、本明細書で使用されるすべての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して、直前の段落で説明したように得られる。
【0046】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書で同義に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖状でも分岐状でもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。これらの用語はまた、自然に、又は介入、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、若しくは任意の他の操作又は修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションにより修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。例えば、アミノ酸の1種以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ならびに当技術分野で公知の他の修飾を含有するポリペプチドもまたこの定義に含まれる。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書において使用される場合、特に抗体を包含する。
【0047】
本書で使用する用語「組み換えタンパク質」一般に、遺伝的に操作されたペプチド及びタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、そのような組換えタンパク質は、「異種」、すなわち利用される細胞にとって異質である。
【0048】
「試料」とは、本明細書で使用される場合、より大量の材料のわずか一部を指す。ある特定の実施形態では、試料は、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生体体液(例えば、血液、血漿、血清、便、尿、リンパ液、腹水、管洗浄液、唾液、及び脳脊髄液)、及び組織試料を含むが、これらに限定されない。試料の供給源は、固形組織(例えば、新鮮、凍結、及び/又は保存臓器、組織試料、生検材料、若しくは吸引物)、血液若しくは任意の血液成分、体液(例えば、尿、リンパ液、脳脊髄液、羊水、腹腔液、若しくは間質液)、又は順肝細胞を含む個体由来の細胞であり得る。
【0049】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する、抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は、一般に類似の構造を有し、各ドメインが4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(CDR)を含む。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照されたい。)抗原結合特異性を付与するには、単一のVH又はVLドメインで十分である。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、その抗原に結合する抗体のVH又はVLドメインを用いて単離し、相補的なVLドメイン又はVHドメインそれぞれのライブラリをスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照されたい。
【0050】
II.方法
本開示の主題は、抗薬物抗体(ADA)の産生を誘発する治療薬、例えば、ポリペプチド又はその断片の傾向を決定するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、抗体若しくはその断片又は抗体-薬物コンジュゲート(ADC)がADAの産生を誘発する傾向を決定するために使用することができる。本開示は部分的に、抗原提示細胞(APC)による抗体の内部移行が、以前に報告されたその抗体の臨床ADA率と相関するというという発見に基づく。本開示は、本開示の方法を実施するためのキットも提供する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、ADA産生を誘発する傾向が親ポリペプチド、例えば、親抗体と比較して低減したポリペプチドバリアント、例えば、抗体バリアントを同定するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、新たに開発されたポリペプチド、例えば抗体を分析するために使用することができる。例えば、限定するものではないが、本開示の方法は、同じ抗原に特異的に結合するポリペプチドのより大きなレパートリーから、ADAを誘発する傾向がより低いポリペプチド、例えば、抗体を同定するのに使用することができる。これに代えて且つ/又は加えて、本開示の方法は、同じ抗原に特異的に結合する市販の又は臨床試験済みのポリペプチド、例えば抗体と比較して、ADAを誘発する傾向がより低いポリペプチド、例えば、抗体を同定するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、新たに開発されたポリペプチド、例えば抗体の免疫原性を臨床試験の前に決定するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、ポリペプチド、例えば抗体の凝集体の免疫原性を決定するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、抗体のアミノ酸配列バリアント、例えば、その抗体の製造及び/又は生産中に生じうるものの免疫原性を分析するのに使用することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、APCを、ポリペプチド又は該ポリペプチドを含む化合物と接触させることを含み得る。いくつかの実施形態では、APCが、該ポリペプチドの内部移行に十分な時間、該ポリペプチドとともに培養される。例えば、限定するものではないが、該APCが、該ポリペプチドの存在下で、例えば約1~約72時間培養され得る。いくつかの実施形態では、該APCが、該ポリペプチドの存在下、約12~約72時間、約12~約60時間、約12時間~約48時間、約12時間~約24時間、約24時間~約72時間、約24時間~約60時間、約24~約48時間、約48時間~約72時間、又は約48時間~約60時間培養され得る。いくつかの実施形態では、該APCが、該ポリペプチドの存在下で約24~約48時間培養され得る。いくつかの実施形態では、該APCが、該ポリペプチドの存在下で約72時間以下培養され得る。いくつかの実施形態では、該APCが、該ポリペプチドの存在下で約60時間以下培養され得る。いくつかの実施形態では、該APCが、該ポリペプチドの存在下で約48時間以下培養され得る。いくつかの実施形態では、該APCが、該ポリペプチドの存在下で約36時間以下培養され得る。いくつかの実施形態では、該APCが、該ポリペプチドの存在下で約24時間以下培養され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、本開示の方法で使用するAPCの数が、約1x105~約1x107細胞、例えば約1x106細胞であり得る。例えば、限定するものではないが、使用するAPCの数は、約2x105~約9x106細胞、約3x105~約8x106細胞、約3x105~約7x106細胞、約4x105~約6x106細胞、約5x105~約5x106細胞、約6x105~約4x106細胞、約7x105~約3x106細胞、約8x105~約2x106細胞、約9x105~約2x106細胞、又は約9x105~約1x106細胞であり得る。いくつかの実施形態では、約1x106細胞のAPCが用いられ得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは約25μg/ml~約200μg/ml、例えば約25μg/ml~約100μg/mlの濃度で使用され得る。例えば、限定するものではないが、ポリペプチは、約30μg/ml~約100μg/ml、約35μg/ml~約100μg/ml、約40μg/ml~約100μg/ml、約45μg/ml~約100μg/ml、約50μg/ml~約100μg/ml、約55μg/ml~約100μg/ml、約60μg/ml~約100μg/ml、約65μg/ml~約100μg/ml、約70μg/ml~約100μg/ml、約75μg/ml~約100μg/ml、約80μg/ml~約100μg/ml、約85μg/ml~約100μg/ml、約90μg/ml~約100μg/ml、約95μg/ml~約100μg/ml、約25μg/ml~約95μg/ml、約25μg/ml~約90μg/ml、約25μg/ml~約85μg/ml、約25μg/ml~約80μg/ml、約25μg/ml~約75μg/ml、約25μg/ml~約70μg/ml、約25μg/ml~約65μg/ml、約25μg/ml~約60μg/ml、約25μg/ml~約55μg/ml、約25μg/ml~約50μg/ml、約25μg/ml~約45μg/ml、約25μg/ml~約40μg/ml、約25μg/ml~約35μg/ml、約25μg/ml~約30μg/ml、約30μg/ml~約90μg/ml、約40μg/ml~約80μg/ml、又は約50μg/ml~約70μg/mlの濃度で使用され得る。
【0055】
本開示の方法で用いるAPCは、主要組織適合性複合体(MHC)と複合した抗原をその表面上に表示することができる任意の細胞を含む。例えば、限定するものではないが、APCは、樹状細胞、マクロファージ、単球、好中球、及びB細胞であり得る。ある特定の実施形態では、APCが樹状細胞である。いくつかの実施形態では、樹状細胞が未成熟樹状細胞であり得る。いくつかの実施形態では、未成熟樹状細胞は単球から分化され得る。単球の非限定的なソースとしては、単球細胞株及びドナーから単離された初代単球が含まれる。いくつかの実施形態では、単球はドナー試料、例えばドナーの血液試料から単離される。単球は、当技術分野で既知の方法、例えばFicoll密度勾配などの密度勾配によってドナー試料から単離され得る。いくつかの実施形態では、まず末梢血単核細胞(PBMC)がドナー試料から単離され、CD14+セレクションに供して単球を単離する。いくつかの実施形態では、単離した単球が、分化因子、例えばインターロイキン-4(IL-4)及び/又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の存在下で分化されて、本開示の方法で用いる未成熟樹状細胞を生成する。例えば、限定するものではないが、単離した単球は、約0.1ng/ml~約10ng/mlのIL-4、例えば約3ng/mlのIL-4の存在下、及び/又は約1ng/ml~約100ng/mlのGM-CSF、例えば約50ng/mlのGM-CSFの存在下で分化され得る。あるいは、本開示の方法で用いる樹状細胞、例えば、未成熟樹状細胞は、幹細胞又はiPSC細胞から分化され得る。例えば、参照によりその内容全体が本明細書に援用されるLi et al., World J. Stem Cells 6(1):1-10(2014)を参照されたい。
【0056】
いくつかの実施形態では、APCが、薬剤の存在下で該ポリペプチドと接触させられる。いくつかの実施形態では、APCが、未成熟APCを成熟APCへと誘導する薬剤の存在下で、該ポリペプチドと接触させられ得る。例えば、限定するものではないが、未成熟樹状細胞は、未成熟樹状細胞の成熟を成熟樹状細胞へと誘導する薬剤の存在下でポリペプチドと接触させられ得る。いくつかの実施形態では、該薬剤がサイトカイン、例えば炎症性サイトカインである。炎症性サイトカインの非限定的な例は、TNFα、IL-6、及びIL-1βを含む。炎症性サイトカインのさらなる非限定的な例は、Turner et al., Biochimica et Biophysica Acta 1843(11):2563-2582(2014)に記載されており、その内容全体が参照によりここに援用される。これに代えて又は加えて、該薬剤は、炎症性サイトカインによって誘導される例えばプロスタグランジンE2(PGE2)などのタンパク質及び/又は化合物、あるいは炎症性サイトカインの発現を誘導する例えばリポ多糖(LPS)などのタンパク質及び/又は化合物である。いくつかの実施形態では、該薬剤はリポ多糖である。いくつかの実施形態では、該薬剤が、約0.001ng/ml~約1,000ng/ml、例えば約0.01ng/ml~約1,000ng/ml、約0.1ng/ml~約1,000ng/ml、約1ng/ml~約1,000ng/ml、約10ng/ml~約1,000ng/ml、約100ng/ml~約1,000ng/ml、約0.001ng/ml~約100ng/ml、約0.001ng/ml~約10ng/ml、約0.001ng/ml~約1ng/ml、約0.001ng/ml~約0.1ng/ml、又は約0.001ng/ml~約0.01ng/mlの濃度で使用され得る。いくつかの実施形態では、該薬剤、例えばLPSが、約1μg/mlの濃度で使用され得る。いくつかの実施形態では、APCを、該ポリペプチドの存在下で、薬剤、例えばLPSに接触させない。いくつかの実施形態では、APCが、薬剤、例えばLPSの存在下で培養されていない未成熟な樹状細胞である。
【0057】
いくつかの実施形態では、方法が、APCの外面に存在するポリペプチドの量を測定することをさらに含み得る。例えば、限定するものではないが、方法は、例えばAPCの表面、例えば原形質膜に結合したポリペプチドの量を測定することを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、APCの表面上の主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)分子に関連づけられ、例えば、結合され得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、APCの表面上のMHCクラスII(MHCII)分子に関連づけられ、例えば、結合され得る。いくつかの実施形態では、APCの外面に存在するポリペプチドの量を測定することが、(i)APCを、該ポリペプチドに結合する検出剤と接触させることと、(ii)APCの外面に存在する、該ポリペプチドに結合している検出剤の量を決定することと、を含み得る。いくつかの実施形態では、APC内に存在する、例えば、APC内の細胞内構造物内に存在するポリペプチドの検出を防ぐため、APCを検出剤と接触させる前にAPCは透過処理されない。
【0058】
いくつかの実施形態では、方法が、APCに関連づけられたポリペプチドの総量を測定することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、APCに関連づけられたポリペプチドの総量が、APCの外面に存在するポリペプチドの量、及びAPC内に存在するポリペプチドの量を含む。いくつかの実施形態では、APCに関連づけられたポリペプチドの総量を測定することが、(i)APCを透過化すること、(ii)APCを、該ポリペプチドに結合する検出剤と接触させること、及び(iii)該ポリペプチドに結合している検出剤の量を決定することを含む。
.APCを透過化することにより、APC内に存在する、例えばAPCの細胞内構造内に存在するポリペプチドを検出することが可能となる。いくつかの実施形態では、透過化することにより、APCのエンドソーム及びリソソーム構造内に存在するポリペプチドを検出することが可能となる。いくつかの実施形態では、APCが、洗剤又は有機溶媒を含むがこれらに限定されない当分野で既知の任意の技術を用いて透過化され得る。透過化技術の非限定的な例は、非限定的な例は、Turner et al., Biochimica et Biophysica Acta 1843(588:63-66(2010)に記載されており、その内容全体が参照によりここに援用される。いくつかの実施形態では、APCが、APCを透過剤と接触させることで透過化される。例えば、限定するものではないが、透過剤は界面活性剤、例えばサポニンであり得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、APCの外面に存在するポリペプチドの量及び/又はAPCに関連づけられたポリペプチドの量が、APCのポリペプチドとの最初の接触の後、約4時間~約72時間、測定され得る。例えば、限定するものではないが、APCの外面に存在するポリペプチドの量及び/又はAPCに関連づけられたポリペプチドの量が、APCのポリペプチドとの最初の接触の後、約4時間~約48時間、約4時間~約24時間、約4時間~約12時間、又は約4時間~約8時間、測定され得る。いくつかの実施形態では、APCの外面に存在するポリペプチドの量及び/又はAPCに関連づけられたポリペプチドの量が、APCのポリペプチドとの最初の接触の約4時間後に測定され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示の方法で使用する検出剤が、抗体(本書では「検出抗体」ともいう)である。いくつかの実施形態では、検出剤が、本開示の方法で分析されるポリペプチドに特異的に結合する。例えば、検出剤が、ポリペプチド又はその断片上に存在するエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、検出剤が、特定のクラス又はサブクラスの抗体に結合する抗体である。例えば、限定するものではないが、本開示の方法でIgG抗体が検出されている場合、検出抗体は抗IgG抗体であり得る。いくつかの実施形態では、本開示のアッセイ方法で用いる検出剤が、約1μg/ml~約50μg/ml、約1μg/ml~約40μg/ml、約1μg/ml~約30μg/ml、約1μg/ml~約20μg/ml、又は約1μg/ml~約10μg/mlの濃度で使用され得る。いくつかの実施形態では、検出剤が、約1μg/ml~約10μg/ml、例えば約6μg/mlの濃度で使用される。
【0061】
いくつかの実施形態では、本開示の方法における使用のための検出剤、例えば検出抗体を標識することができる。標識には、直接検出される標識又は部分(蛍光、発色団、電子密度、化学発光、及び放射性標識など)、並びに、例えば酵素反応又は分子相互作用を介して間接的に検出される酵素又はリガンドなどの部分が含まれるが、これらに限定されない。標識の非限定的な例としては、放射性同位体32P、14C、125I、3H、及び131I、希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体などのフルオロフォア、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸塩デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化させる酵素、例えば、HRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はマイクロペルオキシダーゼとカップリングされたウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなどの複素環式オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、並びに安定した遊離ラジカルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、検出剤、例えば抗体がフルオロフォアで標識される。
【0062】
いくつかの実施形態では、該ポリペプチドに結合している検出剤の量を決定することが、検出剤を検出できる任意の方法で実施される。いくつかの実施形態では、検出剤が、検出剤の標識、例えば蛍光標識をモニターすることにより検出され得る。例えば、限定するものではないが、該ポリペプチド又はその断片に結合している検出剤の量は、検出剤の蛍光を検出することにより決定される。いくつかの実施形態では、該ポリペプチド又はその断片に結合している検出剤の量を決定することが、フローサイトメトリーによって実施される。
【0063】
いくつかの実施形態では、方法は、APCによって内部移行したポリペプチドの量を決定することをさらに含む。例えば、限定するものではないが、方法は、APCによって内部移行したポリペプチド又はその断片の量と相関する内部移行指標値(本書では「正規化MFI」ともいう)を算出することを含み得る。いくつかの実施形態では、内部移行指標値が、APCに関連づけられたポリペプチドの総量からAPCの外面に結合したポリペプチドの量を減算することで決定される。
【0064】
いくつかの実施形態では、方法が、ポリペプチドの内部移行指標を、例えば臨床環境においてADAの産生を誘発する既知の傾向を示す基準内部移行指標と比較することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの内部移行指標値が基準内部移行指標よりも大きい場合、該ポリペプチドは、例えば臨床環境において、ADAの産生を誘発する傾向が基準よりも高い。あるいは、ポリペプチドの内部移行指標値が基準内部移行指標よりも小さい場合、該ポリペプチドは、例えば臨床環境において、ADAの産生を誘発する傾向が基準よりも低い。
【0065】
いくつかの実施形態では、基準内部移行指標が、ADAの産生を誘発することを示したポリペプチド(例えば、参照ポリペプチド)の内部移行指標であり得る。例えば、限定するものではないが、参照ポリペプチドが、臨床環境においてADAの産生を誘発することを示した抗体であり得る。いくつかの実施形態では、内部移行指標値がより高い参照ポリペプチドが、臨床環境においてより高いレベルのADA/免疫原性を有する。いくつかの実施形態では、内部移行指標値がより低い参照ポリペプチドが、臨床環境においてより低いレベルのADA/免疫原性を有する。いくつかの実施形態では、参照ポリペプチドが、
図3~8のいずれかに記載の抗体であり得る。いくつかの実施形態では、参照ポリペプチドが、臨床環境において低いレベルのADA産生誘発を示した抗体、例えばエボロクマブ、RG7652、及びアバスチン(登録商標)であり得る。いくつかの実施形態では、参照ポリペプチドが、臨床環境において高いレベルのADA産生誘発を示した抗体、例えばボコシズマブであり得る。これに代えて又は加えて、抗体バリアントの文脈においては、基準内部移行指標が親抗体の内部移行指標であり得る。いくつかの実施形態では、凝集体の文脈においては、基準内部移行指標が、凝集していない同じ抗体の内部移行指標であり得る。いくつかの実施形態では、基準内部移行指標が、本開示の方法を用いて分析されている抗体と同じ抗原に結合する抗体の内部移行指標であり得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、方法は、一よりも多いドナーから得られた樹状細胞でポリペプチドを分析することを含み得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、個体ドナーに由来する樹状細胞、例えば、未成熟な樹状細胞を、対象のポリペプチドとともに別々に培養し、各個体ドナーの樹状細胞の内部移行指標を分析することによって、ポリペプチドのADA産生誘発傾向を分析することを含み得る。いくつかの実施形態では、個体ドナーそれぞれについての内部移行指標値を決定し分析して、ポリペプチドがADA産生を誘発する傾向を決定する。いくつかの実施形態では、内部移行指標値が、各ドナーすべての内部移行指標値の平均であり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも2又はそれ以上、少なくとも3又はそれ以上、少なくとも4又はそれ以上、少なくとも5又はそれ以上、少なくとも6又はそれ以上、少なくとも7又はそれ以上、少なくとも8又はそれ以上、少なくとも9又はそれ以上、少なくとも10又はそれ以上、少なくとも15又はそれ以上、少なくとも20又はそれ以上、少なくとも25又はそれ以上、少なくとも30又はそれ以上、少なくとも35又はそれ以上、あるいは少なくとも40又はそれ以上の個体ドナーに由来する樹状細胞が別個に、対象のポリペプチドと共に培養され得る。いくつかの実施形態では、約10~約50の個体ドナーからの樹状細胞が別個に、対象のポリペプチドと共に培養され得る。例えば、限定するものではないが、約15~約45の個体ドナー、約20~約40の個体ドナー、約25~約35の個体ドナー、又は約30の個体ドナーからの樹状細胞別個に、対象のポリペプチドと共に培養され得る。
【0067】
III.ポリペプチド
本開示は、ポリペプチドのADA産生誘発傾向を決定する方法を提供する。本開示の方法により分析できるポリペプチドの非限定的な例は下記の通りである。例えば、限定するものではないが、本開示の方法のいずれかを用いて分析できるポリペプチドは、ポリペプチドの断片、例えばペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドが組換えタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドが抗体又はその断片、例えばヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体が抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であり得る。いくつかの実施形態では、抗体が単一ドメイン抗体であり得る。
【0068】
1.抗体又はその断片
いくつかの実施形態では、本開示の方法で分析されるポリペプチドが、抗体又はその断片、例えばモノクローナル抗体及びその断片である。例えば、限定するものではないが、本開示の方法は、新たに開発された及び/又は同定された抗体又はその断片の免疫原性を決定するのに使用することができる。
【0069】
抗体断片としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、及びscFv断片、及び以下に記載する他の断片が挙げられるがこれらに限定されない。特定の抗体断片の総説としては、Hudson et al.Nat.Med. 9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の総説としては、例えば、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp. 269315 (1994)のPluckthunを参照されたい。また、国際公開第93/16185号及び米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivoでの半減期が延長されたFab及びF(ab’)2断片の説明については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。抗体断片は、本明細書に記載されているように、インタクトな抗体のタンパク質分解消化、及び組換え宿主細胞(例えば大腸菌又はファージ)による産生を含むがこれらに限定されない、種々の技術で作製することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示の方法で分析されるポリペプチドがダイアボディであり得る。ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば欧州特許第404097号;国際公開第1993/01161号;Hudson et al., Nat Med 。9, 129-134(2003);及びHollinger et al., Proc. Natl . Acad. Sci. USA 90, 6444-6448 (1993)を参照のこと。トリアボディ及びテトラボディもHudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
【0071】
いくつかの実施形態では、本開示の方法で分析される抗体が単一ドメイン抗体であり得る。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全て若しくは一部を含む抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、マサチューセッツ州ウォルサム;例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照のこと)。単一ドメイン抗体のさらなる非限定的な例はIezzi et al., Front Immunol. 9:273(2018)に記載されており、その内容全体が参照によりここに援用される。いくつかの実施形態では、抗体がハイブリボディ(hybribody)(Hybrigenics Services、マサチューセッツ州ケンブリッジ)であり得る。
【0072】
2.キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体
いくつかの実施形態では、本開示の方法で分析されるポリペプチドがキメラ抗体、例えばヒト化抗体である。例えば、限定するものではないが、本開示の方法は、ADA産生誘発の傾向が低いか、あるいは親抗体又は該抗体の他のキメラバージョンなどと比較してより低い抗体のキメラバージョンを同定するのに使用することができる。これに代えて又は加えて、本開示の方法は、ADAの産生を誘発する傾向が低いキメラ抗体を同定するのに使用することができる。
【0073】
ある種のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)に開示されている。一つの実施形態では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)とヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のクラス又はサブクラスから変化した「クラススイッチ」抗体であり得る。キメラ抗体には、その抗原結合断片も含まれる。
【0074】
特定の実施態様では、キメラ抗体はヒト化抗体であり得る。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減するようにヒト化される一方、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持する。一般に、ヒト化抗体は、CDRなどのHVR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する、一又は複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、場合によってヒト定常領域の少なくとも一部を含むであろう。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を復元又は改善するように、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0075】
いくつかの実施形態では、本開示の方法で分析されるポリペプチドがヒト抗体であり得る。例えば、限定するものではないが、本開示の方法は、ADA産生誘発傾向が低いヒト抗体の産生を誘発する傾向が低いかあるいはより低い、抗体のキメラバージョンを同定するのに使用することができる。
【0076】
3.ライブラリ由来の抗体
いくつかの実施形態では、本開示の方法で分析されるポリペプチドが、抗体所望の活性(一又は複数)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離された抗体又はその断片であり得る。例えば、限定するものではないが、本開示の方法は、例えば、所望の特性を有しかつ/又は同じ抗原へ結合する他のライブラリ由来の抗体と比較して、ADA産生誘発の傾向が低いかより低い、ライブラリ由来の抗体を同定するのに使用することができる。
【0077】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体又は抗体断片は、本明細書においてヒト抗体又はヒト抗体の断片とみなされる。
【0078】
4.多重特異性抗体
いくつかの実施形態では、本開示の方法で分析されるポリペプチドが多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体であり得る。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製され得る。例えば、限定するものではないが、本開示の方法は、ADA産生誘発が低いか、あるいは例えば同じエピトープに結合する他の多重特異性抗体と比較してより低い、多重特異性抗体を同定するのに使用することができる。これに代えて又は加えて、本開示の方法は、ADAの産生を誘発する傾向が低い多重特異性抗体を同定するのに使用することができる。
【0079】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能性抗原結合部位を有する設計された抗体もまた、本開示の方法により分析され得る。(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号を参照されたい)
【0080】
5.イムノコンジュゲート
いくつかの実施形態では、本開示の方法で分析されるポリペプチドが、イムノコンジュゲート、例えば、化学療法剤もしくは薬、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク毒素、細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素的に活性の毒素、若しくはその断片)、又は放射性同位体といった一又は複数の細胞傷害性剤にコンジュゲートする抗体を含む、イムノコンジュゲートであり得る。例えば、開示された抗体又は抗原結合部分は、別の抗体、抗体断片、ペプチド、又は結合模倣物等の1つ以上の他の結合分子に機能的に結合され得る(例えば、化学的カップリング、遺伝的融合、非共有結合、又は他の方法による)。
【0081】
ある特定の実施形態では、イムノコンジュゲートは抗体薬剤コンジュゲート(ADC)であり、抗体が、これらに限定されるわけではないが、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許第0425235号を参照のこと);モノメチルオーリスタチン薬剤部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)などのオーリスタチン(米国特許第5,635,483号、同第5,780,588号、及び同第7,498,298号を参照のこと);ドラスタチン;カリケアマイシン又はその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号;Cancer Res. 53:3336-3342 (1993);並びにLode et al., Cancer Res. 58:2925-2928 (1998))を参照のこと);ダウノマイシン及びドキソルビシン等のアントラサイクリン(Kratz et al., Current Med. Chem. 13:477-523 (2006);Jeffrey et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006);Torgov et al., Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005);Nagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834 (2000);Dubowchik et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532 (2002);King et al., J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002);及び米国特許第6,630,579号を参照のこと);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセル等のタキサン;トリコテセン;並びにCC1065を含む1つ以上の薬剤に結合している。
【0082】
ある特定の実施形態では、イムノコンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、並びにトリコテセン(tricothecene)を含むがこれらに限定されない酵素活性毒素又はその断片にコンジュゲートされた抗体を含む。
【0083】
ある特定の実施態様では、イムノコンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートして放射性コンジュゲートを形成する抗体を含む。放射性コンジュゲートの生産のために種々の放射性同位体が利用可能である。非限定的な例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性コンジュゲートが検出のために使用される場合、それは、シンチグラフィ研究のための放射性原子、例えば、tc99m若しくはI123、又は核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、mri)のためのスピン標識、例えば、この場合もやはりヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、若しくは鉄を含むことができる。
【0084】
抗体及び細胞傷害性剤のコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの多様な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製することができる。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta et al., Science 238:1098(1987)に記載されるように調製することができる。炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照。リンカーは、細胞内において細胞毒性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であることができる。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al,Cancer Res.52:127-131(1992);米国特許第5,208,020号)を使用することができる。
【0085】
ある特定の実施形態で、イムノコンジュゲートは、市販の(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.製、米国イリノイ州ロックフォード)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、並びにSVSB(サクシニミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)を含むがこれらに限定されない架橋剤試薬で調製されるコンジュゲートを明示的に企図するが、これらに限定されない。
【0086】
6.抗体バリアント
いくつかの実施形態では、本開示の方法で分析されるポリペプチドが、以前に開示された抗体の抗体バリアントであり得る。例えば、本開示の方法は、以前に開示された抗体のバリアントである抗体であって、ADA産生誘発傾向が例えば親抗体よりも低い抗体を同定するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、目的の抗体にアミノ酸置換を導入してもよく、該抗体バリアントの免疫原性を本開示の方法を用いてスクリーニングすることができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗体バリアントが抗体のアミノ酸配列バリアントであり、例えば該抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を組み込むことで、又はペプチド合成によって調製することができる。かかる改変としては、本抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はそれへの挿入、及び/又はその置換が挙げられるが、これらに限定されない。このような変異のための目的とする部位は、CDR及びFRを含むが、これらに限定されない。最終コンストラクトに到達するために欠失、挿入、及び置換を任意に組合せることができるが、但し、その最終抗体改変、すなわち改変された抗体が、所望の特性、例えば抗原結合を保有することを条件とする。
【0088】
特定の実施態様で、抗体バリアントは、抗体がグリコシル化される程度を高める又は減じるために改変された抗体であり得る。例えば、限定するものではないが、抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製又は除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって達成され得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、本開示の方法で分析される抗体がFc領域バリアントである。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0090】
ある特定の実施形態では、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作された抗体、例えば、「thioMAb」であり得る。ある特定の実施態様では、置換残基が抗体の接近可能な部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基が抗体の接近可能部位に配置され、それは、本明細書でさらに説明するように、例えば薬物部分又はリンカー-薬物部分などの他の部分に抗体をコンジュゲートさせてイムノコンジュゲートを作製するために使用され得る。特定の実施態様では、以下の残基のうちのいずれかの一又は複数がシステインで置換され得る:軽鎖のV205(Kabatの番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0091】
IV.キット
本願で開示される主題は、本開示の方法を実施するために有用な材料を含むキットをさらに提供する。いくつかの実施形態では、本開示のキットは、APCもしくは単球を含む容器、及び/又は、一又は複数の検出剤を含む容器を含む。適切な容器の非限定的な例としては、ボトル、試験管、バイアル、及びマイクロタイタプレートが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成することができる。
【0092】
一部の実施形態では、キットは、1つ以上のAPC又は単球を含有する1つ以上の容器を含むことができる。APCの非限定的な例は、樹状細胞、マクロファージ、単球、及びB細胞を含む。いくつかの実施形態では、キットが、樹状細胞を含む少なくとも1つの容器を含み得る。例えば、限定するものではないが、キットが、未成熟樹状細胞を含む少なくとも1つの容器を含み得る。いくつかの実施形態では、本開示のキットは、一又は複数の容器中の、一又は複数のドナーに由来するAPCを含む。例えば、限定するものではないが、各個体ドナーからのAPCが別個の容器で提供される。いくつかの実施形態では、本開示のキットが、約10~約40の個体ドナーからのAPCを含み得る。いくつかの実施形態では、本開示のキットが、一又は複数の検出剤をさらに含み得る。例えば、限定するものではないが、検出剤が、分析されているポリペプチドに特異的に結合する抗体、例えばIgG抗体が分析されている場合は、抗IgG抗体であり得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、本開示のキットが、一又は複数の容器中に、未成熟樹状細胞の成熟化を誘導するための一又は複数の薬剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、一又は複数の薬剤が、炎症性サイトカイン、PGE2、及びリポ多糖を含み得る。
【0094】
ある特定の実施形態では、キットが、キットで提供されている成分を使用するための指示を提示する添付文書をさらに含む。例えば、本開示のキットは、本開示の方法のAPC、単球、及び/又は検出剤を使用するための指示を提供する添付文書を含み得る。
【0095】
或いは又は加えて、キットは、他の緩衝液、希釈液、及びフィルタを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、キットが、例えば血液試料からPBMC及び/又は単球を単離するために血液試料を収集及び/又は処理するための材料を含み得る。いくつかの実施形態では、キットが、単球を未成熟樹状細胞に分化させるための試薬を含み得る。いくつかの実施形態では、単球を未成熟樹状細胞に分化させるための一又は複数の薬剤は、IL-4及び/又はGM-CSFであり得る。いくつかの実施形態では、キットが、APCを透過化できる薬剤、例えばサポニンをさらに含み得る。
【0096】
V.例示的な実施形態
A.ある特定の非限定的実施態様において、本開示の主題は、ポリペプチド又はその断片が抗薬物抗体(ADA)の産生を誘発する傾向を、既知の基準に対して決定する方法を提供する。該方法は、
(a)抗原提示細胞(APC)をポリペプチド又はその断片に接触させること;
(b)APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片の量を測定すること;
(c)APCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量を測定することであって、APCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量が、APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片の量と、APC中に存在するポリペプチド又はその断片の量とを含む、ポリペプチド又はその断片の総量を測定すること;
(d)(c)で測定したAPCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量から、(b)で測定したAPCの外面に結合したポリペプチド又はその断片の量を減算することにより、内部移行指標値を計算すること;ならびに
(e)(d)の内部移行指標を、基準内部移行指標と比較すること;を含み、
(d)の内部移行指標値が基準内部移行指標よりも大きい場合、ポリペプチド又はその断片はADAを誘発する傾向が基準よりも高く、(d)の内部移行指標値が基準内部移行指標よりも小さい場合、ポリペプチド又はその断片はADAを誘発する傾向が基準よりも低い。
【0097】
A1.ポリペプチド又はその断片がペプチドである、Aに記載の方法。
【0098】
A2.ポリペプチド又はその断片が組換えタンパク質である、Aに記載の方法。
【0099】
A3.ポリペプチド又はその断片が抗体又はその断片である、Aに記載の方法。
【0100】
A4.抗体又はその断片がヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体である、A3に記載の方法。
【0101】
A5.抗体又はその断片が単一ドメイン抗体である、A3又はA4に記載の方法。
【0102】
A6.ポリペプチドが抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である、Aに記載の方法。
【0103】
A7.APCが、樹状細胞、マクロファージ、単球、及びB細胞からなる群から選択される、AからA6のいずれか一項に記載の方法。
【0104】
A8.APCが樹状細胞である、A7に記載の方法。
【0105】
A9.樹状細胞が未成熟樹状細胞である、A8に記載の方法。
【0106】
A10.未成熟樹状細胞が、ドナーから単離された単球を分化させることによって生成される、A9に記載の方法。
【0107】
A11.単離した単球が、インターロイキン-4(IL-4)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)のうちの一又は複数の存在下で分化されて未成熟樹状細胞が生成される、A10に記載の方法。
【0108】
A12.APCが、薬剤の存在下でポリペプチド又はその断片と接触させられる、AからA11のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
A13.薬剤が、炎症性サイトカイン、プロスタグランジンE2(PGE2)、リポ多糖(LPS)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、A12に記載の方法。
【0110】
A14.炎症性サイトカインが、TNFα、IL-6、IL-1β、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、A13に記載の方法。
【0111】
A15.薬剤がLPSである、A13に記載の方法。
【0112】
A16.(c)APCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量を測定することが、
(i)APCを透過化すること;
(ii)APCを、ポリペプチド又はその断片に結合する検出剤に接触させること;ならびに
(iii)APCの外面及びAPC内に存在する、ポリペプチド又はその断片に結合している検出剤の総量を決定して、APCに関連づけられたポリペプチド又はその断片の総量を測定すること
を含む、AからA15のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
A17.(b)APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片の量を測定することが、
(i)APCを、ポリペプチド又はその断片に結合する検出剤に接触させること;及び
(ii)APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片に結合している検出剤の量を決定して、APCの外面に存在するポリペプチド又はその断片の量を測定することを含み、
APCが、APCを検出剤と接触させることの前に透過化されない、AからA16のいずれか一項に記載の方法。
【0114】
A18.検出剤が抗体である、請求項20又は21に記載の方法。
【0115】
A19.検出剤がフルオロフォアにコンジュゲートした抗体である、A16からA18のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
A20.抗体が抗IgG抗体である、A18又はA19に記載の方法。
【0117】
A21.ポリペプチド又はその断片に結合した検出剤の量を決定することが、フローサイトメトリーによって実施される、A16からA20のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
B.ある特定の非限定的実施態様において、本開示の主題は、AからA21のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキットを提供する。
【0119】
B1.以下のうちの一又は複数を含む、Bに記載のキット。
(a)APC;
(b)薬剤;
(c)検出剤;及び
(d)透過剤。
【0120】
B2.薬剤が、炎症性サイトカイン、プロスタグランジンE2(PGE2)、リポ多糖(LPS)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、B1に記載のキット。
【0121】
B3.炎症性サイトカインが、TNFα、IL-6、IL-1β、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、B1に記載のキット。
【0122】
B4.薬剤がLPSである、B1又はB2に記載のキット。
【0123】
B5.検出剤が抗体である、B1からB4のいずれか一項に記載のキット。
【0124】
B6.検出剤がフルオロフォアにコンジュゲートした抗体である、B1からB5のいずれか一項に記載のキット。
【0125】
B7.抗体が抗IgG抗体yである、B5又はB6に記載のキット。
【0126】
B8.透過剤がサポニンである、B1からB7のいずれか一項に記載のキット。
【0127】
以下の実施例は、本明細書にて開示する主題を単に示すものであり、いかなる方法においても、限定するものとみなされるべきではない。
【0128】
実施例1:抗原提示細胞ベースのアッセイ
ポリペプチドベースの治療薬は、ADAの産生を誘発する免疫原性を有する。特に、このようなポリペプチドベースの治療薬は、樹状細胞のような抗原提示細胞によって取り込まれ処理されて、クラスII MHC分子と複合したポリペプチドベースの治療薬の断片がその表面に提示され得る。その後、抗原提示細胞の表面に提示された断片とT細胞が相互作用して免疫反応を誘発し、B細胞によるADAの産生がもたらされる。
【0129】
ここでは、抗体がADAの産生を誘発する傾向を決定する方法が開発された。このような方法は、新たに開発された薬の免疫原性を前臨床段階において予測するのに用いることができるため、医薬開発において非常に価値のあるツールである。
図1は、本方法の実験内容の概略を示す。
図1に示すように、Ficoll勾配を用いてドナーの血液からPBMCが単離された。CD14+ビーズ(Miltenyi Biotec、製造者の指示に従う)を介してPBMCから単球を単離した後、3ng/mLのIL-4及び50ng/mLのGM-CSF(R&D Systems)とインキュベートして未成熟樹状細胞へ分化させた。単離した単球の最初のプレーティングとその後の単球の分化の後の5日目、1μg/mLのリポ多糖(LPS)の存在下で、未成熟樹状細胞を対象の抗体100μg/mLと接触させて、未成熟樹状細胞の成熟を促した。6日目、成熟樹状細胞は
図2~4に示す内容にしたがい染色及び分析された。
図2は、APCの表面に結合した抗体の量、及びAPCに関連づけられた抗体全体の量を決定する技術を示す。APCの表面に結合した抗体の量を決定するために、AlexaFluor 647にコンジュゲートしている6μg/mLの抗ヒトIgG抗体で、APCが染色された(
図2)。APCに関連づけられた抗体全体の量を決定するために、AlexaFluor 647にコンジュゲートしている抗ヒトIgG抗体で染色する前に、APCを固定し透過化した(Becton Dickinson、固定・透過化バッファー、製造者の指示に従う)(
図2)。APCの透過化により、フルオロフォアにコンジュゲートした抗体が細胞内に入り、エンドソームなどの細胞内構造物内に存在する抗体と結合する。APCに関連づけられた抗体全体の量と比較して、APCの表面に結合した抗体の量がフローサイトメトリーにより決定された。
図3は、フローサイトメトリーで用いるゲーティング戦略を示す。内部移行指標(本書では「正規化MFI」ともいう)を決定するために、APCに関連づけられた対象の抗体の総量から、APCに結合した対象の抗体の量が減算された(
図4)。臨床ADA率が高いことが示されている抗体ボコシズマブは、臨床ADA率が低いことが示されているアバスチン(登録商標)と比較して、APCに関連づけられた抗体の総量が多くなった。これらの結果から、ボコシズマブはアバスチン(登録商標)よりも高い内部移行指標を有するであろう。
【0130】
いくつかの抗PCSK9抗体の分析により、内部移行指標が臨床ADA率と相関することが確認された(
図5)。上記の方法によって、抗PCSK9抗体であるアリロクマブ、ボコシズマブ、エボロクマブ、及びRG7652が分析された。これら4つの異なる抗PCSK9抗体は、臨床において異なるレベルの免疫原性を示した。具体的には、ボコシズマブの臨床ADA率は46%、エボロクマブの臨床ADA率は0.1%、アリロクマブの臨床ADA率は5.1%、及びRG7652の臨床ADA率は3.3%であった。
図5に示すように、ボコシズマブの内部移行指標は他のどの抗PCSK9抗体よりも有意に高く、これは異なる抗体で観察された臨床ADA率に関連している。
【0131】
いくつかの抗TNF抗体の分析でも類似の結果が示された(
図6)。抗TNF抗体である、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト)、ヒュミラ(登録商標)(アダリムマブ)、及びレミケード(登録商標)(インフリキシマブ)を分析した。エンブレル(登録商標)、ヒュミラ(登録商標)、及びレミケード(登録商標)の臨床ADA率それぞれ8.7%、26%、及び10%である。
図6に示すように、最も高い臨床ADAを有するヒュミラ(登録商標)が、エンブレル(登録商標)やレミケード(登録商標)と比較して、内部移行指標(すなわち、正規化MFI)も最も高かった。
【0132】
さらにいくつかの抗体Fを分析したところ、この方法で、免疫原性の高い抗体と免疫原性のより低い抗体とを区することができることが示された。
図6に示すように、ADA率の高いボコシズマブ、HA33、及びブリアキヌマブは、内部移行指標が低いハーセプチン(登録商標)と比較して、内部移行指標が高い結果となった。ロンタリズマブ及びハーセプチン(登録商標)のADA率はそれぞれ0.6%及び10~15%である。ともにIL-17aを標的とするセクキヌマブ及びイキセキズマブも分析した。臨床において、セクキヌマブの免疫原性率は低く(1%未満)、イキセキズマブの率は5~22%と高い。
図6に示すように、イキセキズマブはセクキヌマブよりも高度に内部移行している。これらのデータから、臨床において高い免疫原性(すなわち、より高い臨床ADA率)を示す分子は内部移行指標が高く、臨床において低い免疫原性(すなわち、より低い臨床ADA率)を示す分子は内部移行指標が低いことがわかる。さらに、抗体の免疫原性に影響することが知られている抗体凝集体を本開示の方法で測定できる。
図6に示すように、抗体ロンタリズマブの凝集体(「ロンタリズマブ…」及び「ロンタリズマブ凝集体」と記載)ロンタリズマブよりも高い内部移行指標を有した。
【0133】
ボコシズマブ、アダリムマブ、及びベバシズマブの内部移行指標が時間とともにどう変化するかを決定するために、さらに実験を実施した。ボコシズマブ及びアダリムマブのADA率は上記に記載したとおりであり、ベバシズマブのADA率は0.6%である。
図7Aに示すように、未成熟樹状細胞を抗体と接触させてから4時間後、最大量の抗体が内部移行した。48又は72時間後は、抗体の内部移行のさらなる増大は観察されなかった(
図7A)。内部移行した抗体の量が樹状細胞が未成熟であるか成熟であるかに依存するかを決定するために、さらに分析を実施した。
図7Bに示すように、未成熟樹状細胞(iDC)において、LPSで刺激して成熟させた樹状細胞(mDC)と比較して、ごく小さな差の抗体の内部移行が観察された。
【0134】
サイトカラシン、抗FcγRIA、抗FcγRIIa、及び抗FcγRIIIAで構成された、FcγRのすべてをブロックする抗体カクテル(Fc受容体ブロックともいう)、又はそれらの両方の存在下で、ボコシズマブの内部移行指標を分析することで、樹状細胞による抗体の内部移行のメカニズムが決定された。
図8に示すように、サイトカラシンのみの使用又はサイトカラシンとFc受容体ブロックとの併用において、対照又はFc受容体ブロックのみの使用と比較して、ボコシズマブの内部移行が阻害された。これらのデータにより、樹状細胞による抗体の内部移行が、Fc受容体を介した内部移行ではなくマクロピノサイトーシスにより促されることが示されている。
【0135】
このデータは、本開示の方法が、臨床における免疫原性が高い抗体と臨床における免疫原性が低い抗体とを再現性よく区別でき、抗体の免疫原性の決定に利用できることを示している。本開示の方法は費用対効果も高く、実施にも多くの設備を必要としない。
【0136】
図示及び特許請求された様々な実施形態に加えて、本開示の主題はまた、本明細書に開示され、特許請求された特徴の他の組合せを有する他の実施形態も対象とする。したがって、本明細書に提示される特定の特徴は、本開示の主題が本明細書に開示される特徴の任意の好適な組合せを含むように、本開示の主題の範囲内において他の様式で互いに組合せられても良い。本開示の主題の特定の実施形態の前述の説明は、例証及び説明目的のために提示されている。網羅的であること、又は本開示の主題を開示されたそれらの実施形態に限定することを意図するものではない。
【0137】
本開示の主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本開示の主題の組成物及び方法に様々な修正及び変形を加えることができることは、当業者には明らかである。したがって、本開示の主題が添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内の修正及び変形を含むよう意図されている。
【0138】
様々な刊行物、特許、及び特許出願が本明細書に引用されており、それらの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】