(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】眼科手術のためのエアロゾル軽減カラー
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
A61F9/007 200Z
A61F9/007 130B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501643
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 IB2021056138
(87)【国際公開番号】W WO2022013688
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】ポール アール.ハレン
(57)【要約】
眼科用手術機器システムは、シャフト及びシャフトを通して延びるルーメンを含む眼科用機器を含む。スリーブは、眼科用機器を受け入れ且つ取り囲む筒体部を有する。環状部は、眼科用機器とスリーブとの間に画定される。エアロゾル軽減カラーは、スリーブから延びる。エアロゾル軽減カラーは、管状区間及び管状区間から外側且つ遠位に延びるスカートを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用手術機器システムであって、
シャフト及び前記シャフトを通して延びるルーメンを有する眼科用機器と、
前記眼科用機器を受け入れ且つ取り囲む筒体部を有するスリーブと、
前記眼科用機器と前記スリーブとの間に画定された環状部と、
前記スリーブから延びるエアロゾル軽減カラーであって、管状区間及び前記管状区間から外側且つ遠位に延びるスカートを含むエアロゾル軽減カラーと
を含む眼科用手術機器システム。
【請求項2】
前記スカートに形成された複数のプリーツを含む、請求項1に記載の眼科用手術機器システム。
【請求項3】
前記複数のプリーツは、眼内の前記眼科用機器の移動に対応するように、前記スカートの圧縮及び拡張を容易にする、請求項2に記載の眼科用手術機器システム。
【請求項4】
前記エアロゾル軽減カラーは、前記スリーブと一体的に形成される、請求項1に記載の眼科用手術機器システム。
【請求項5】
前記管状区間は、前記スリーブの周囲にスライド可能に配置される、請求項1に記載の眼科用手術機器システム。
【請求項6】
前記スリーブに対する前記エアロゾル軽減カラーのスライド移動は、眼内の前記眼科用機器の移動に対応する、請求項5に記載の眼科用手術機器システム。
【請求項7】
前記エアロゾル軽減カラーは、眼からのエアロゾル化した流体の放出を防止する、請求項1に記載の眼科用手術機器システム。
【請求項8】
前記エアロゾル軽減カラーは、対称な縦方向断面を含む、請求項1に記載の眼科用手術機器システム。
【請求項9】
前記エアロゾル軽減カラーは、非対称な縦方向断面を含む、請求項1に記載の眼科用手術機器システム。
【請求項10】
前記エアロゾル軽減カラーは、非円形の径方向断面を含む、請求項1に記載の眼科用手術機器システム。
【請求項11】
エアロゾル軽減カラーであって、
スリーブの一部を受け入れる管状区間と、
前記管状区間から外側且つ遠位に延びるスカートと、
前記スカートの遠位端に配置された接触面と、
前記スカートに形成された複数のプリーツであって、前記エアロゾル軽減カラーの圧縮及び拡張を容易にする複数のプリーツと
を含むエアロゾル軽減カラー。
【請求項12】
眼からのエアロゾル化した流体の放出を防止する、請求項11に記載のエアロゾル軽減カラー。
【請求項13】
対称な縦方向断面を含む、請求項11に記載のエアロゾル軽減カラー。
【請求項14】
非対称な縦方向断面を含む、請求項11に記載のエアロゾル軽減カラー。
【請求項15】
前記接触面は、眼の外部構造との接触を容易にするように輪郭形成される、請求項14に記載のエアロゾル軽減カラー。
【請求項16】
非円形の径方向断面を含む、請求項11に記載のエアロゾル軽減カラー。
【請求項17】
前記複数のプリーツは、眼内の眼科用機器の移動に対応するように、前記スカートの圧縮及び拡張を容易にする、請求項11に記載のエアロゾル軽減カラー。
【請求項18】
眼科手術中にエアロゾル流体を封じ込める方法であって、
エアロゾル軽減カラーをスリーブに連結することと、
眼科手術中に前記エアロゾル軽減カラーの接触面を眼の外表面に接触させることと、
前記エアロゾル軽減カラーを介して、前記眼からのエアロゾル流体の放出を遮断することと、
前記接触面と前記眼との間の接触を維持しつつ、前記眼内の前記スリーブの深さを調節することと
を含む方法。
【請求項19】
前記接触面と前記眼との間の接触を維持することは、前記エアロゾル軽減カラーに形成された複数のプリーツを圧縮及び拡張することの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記接触面と前記眼との間の接触を維持することは、前記スリーブに沿って前記エアロゾル軽減カラーをスライドさせることを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、眼科手術を行うための方法及びシステムに関し、より詳細には、眼内液のエアロゾル飛散を防止するための、灌注スリーブと共に使用する可撓性カラーに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
このセクションでは、本開示の様々な態様のよりよい理解を促すための背景情報を提供する。本明細書のこのセクションの記述は、この観点から読まれるべきであり、先行技術の自認として読まれるべきではないことを理解されたい。
【0003】
いくつかの異なる眼科手術は、手術の全部又は一部を実行するために眼に挿入される、灌注スリーブを備えた器具の使用を伴う。例えば、眼科水晶体超音波乳化吸引術は、白内障の水晶体の除去に一般的に使用される手術である。手術は、通常、超音波ハンドピースの作業チップを眼に挿入することを含む。このようなハンドピースでは、超音波振動が作業チップを駆動し、医師が水晶体を分解又は乳化して取り外し且つ交換するために、白内障の水晶体に対して操作することができる。
【0004】
一般的に使用されている眼科水晶体超音波乳化吸引術ハンドピースは、通常、超音波作業チップを駆動するだけでなく、眼への灌注液の供給を容易にし、灌注液及び断片化又は乳化した水晶体を眼から吸引しやすくするなどの追加機能を実行するように設計されている。灌注機能を容易にするために、そのような超音波ハンドピースは、灌注液を導くために作業チップの周りに灌注スリーブを含み得る。ハンドピースは、1つ又は複数の電気ケーブル及びフレキシブルチューブによって制御コンソールに接続され得る。電気ケーブルは、作業チップの振動を駆動するための構成要素に電力を供給し、チューブは、眼に供給される灌注液及び眼から引き出される吸引液の導管として機能する。
【0005】
いくつかの異なる超音波ハンドピース及び作業チップが提案され、使用されている。
【0006】
超音波水晶体乳化吸引術に加えて、手術の全部又は一部を実行するために、灌注スリーブを備えた器具が眼に挿入される、他の眼科手術が実行され得る。灌注スリーブは、器具の作業チップの遠位端が灌注スリーブの端部の遠位開口部を通して延びるように、器具の作業チップの周りに配置することができる。灌注は、スリーブを通して灌注液を送達することによって発生し、灌注液は、灌注スリーブの遠位端に近接する比較的大きい円形の側面開口部を通して出る。
【0007】
現在の灌注スリーブは、手術部位からのエアロゾル形態の眼内液の漏出に影響されやすい場合がある。そのような流体は、感染病原体を運ぶ可能性があり、外科医及び手術チームを暴露及び感染の危険にさらすことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様は、眼科用手術機器システムに関する。眼科用手術機器システムは、シャフト及びシャフトを通して延びるルーメンを含む眼科用機器を含む。スリーブは、眼科用機器を受け入れ且つ取り囲む筒体部を有する。環状部は、眼科用機器とスリーブとの間に画定される。エアロゾル軽減カラーは、スリーブから延びる。エアロゾル軽減カラーは、管状区間及び管状区間から外側且つ遠位に延びるスカートを含む。
【0009】
本開示の態様は、エアロゾル軽減カラーに関する。管状区間は、スリーブの一部を受け入れる。スカートは、管状区間から外側且つ遠位に延びる。接触面は、スカートの遠位端に配置される。複数のプリーツがスカートに形成される。複数のプリーツは、エアロゾル軽減カラーの圧縮及び拡張を容易にする。
【0010】
本開示の態様は、眼科手術中にエアロゾル流体を封じ込める方法に関する。方法は、エアロゾル軽減カラーをスリーブに連結することを含む。エアロゾル軽減カラーの接触面は、眼科手術中に眼の外表面に接触される。エアロゾル軽減カラーは、眼からのエアロゾル流体の放出を遮断する。接触面と眼との間の接触を維持しつつ、眼内のスリーブの深さが調節される。
【0011】
この概要は、以下の詳細な説明で更に説明される、選抜された概念を紹介するために提供されている。この概要は、特許請求される主題の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲を限定するための補助として使用されることも意図していない。
【0012】
本開示は、添付の図と共に読むと、以下の詳細な説明から最もよく理解される。業界の標準的な慣行に従い、様々な特徴が縮尺通りに描かれていないことを強調しておく。実際に、議論を明確にするため、様々な特徴の寸法は、任意に増減され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、本開示の態様による、スリーブ内に挿入され、エアロゾル軽減カラーを有する眼科用機器の遠位斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の態様による、直線2-2に沿って取られた
図1Cの眼科用機器の側面断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の態様による、眼内に挿入された
図1Aの眼科用機器の概略図である。
【
図5A-5D】
図5A-5Dは、本開示の態様によるエアロゾル軽減カラーの様々な実施形態の図である。
【
図6】
図6は、本開示の態様による、眼科手術中にエアロゾル流体を封じ込めるプロセスのフロー図である。
【
図7A-7D】
図7A-7Dは、本開示の態様によるエアロゾル軽減カラーの様々な実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、添付の図面を参照して、様々な実施形態をより詳細に説明する。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0015】
現在の灌注スリーブは、手術部位からのエアロゾル形態の眼内液の漏出に影響されやすい場合がある。そのような流体は、感染病原体を運ぶ可能性があり、外科医及び手術チームを暴露及び感染の危険にさらすことがある。手術部位からのエアロゾル流体の放出を軽減するための様々な手法が調査されている。これらの手法は、吸引、手術部位に向けられた圧縮空気、切開寸法の縮小、角膜水分の維持及び外用ゲル剤の塗布を含む。これらの手法の大半は、眼科手術部位からのエアロゾル流体の漏出を防止するのに有効でないことが実証されている。外用ゲル剤の使用は、エアロゾル流体の漏出を防止するが、効果的な使用には、高い頻度での再塗布が必要である。
【0016】
図1Aは、エアロゾル軽減カラー160を有するスリーブ100内に挿入される眼科用機器110の遠位斜視図である。
図1Bは、エアロゾル軽減カラー160を有するスリーブ100内に挿入される眼科用機器110の近位斜視図である。
図1Cは、眼科用機器110の側面図である。
図2は、眼科用機器110の側面断面図である。議論のために、眼科用機器110は、水晶体乳化針を例として本明細書で説明及び例示され、スリーブ100は、同様に、水晶体乳化灌注スリーブを例として本明細書で説明及び例示される。しかしながら、当業者であれば、本開示の原理が、例えば、前嚢手術、後嚢手術、網膜手術又は手術部位の同時の灌注及び吸引を必要とする任意の他の眼科手術を含む、多数の他の眼科手術に拡張され得ることを認識するであろう。
図1A~
図2を合わせて参照すると、スリーブ100は、細長い弾性の管状体部102を含み、管状体部102は、眼科用機器110の遠位端を除く全てを取り囲むように構成される。眼科用機器110の遠位先端は、スリーブ100の遠位端を越えて延びる。眼科用機器110は、眼科用機器110の遠位端に開口部122を画定する、その中に形成されたルーメン120を含む。スリーブ100は、管状体部102の近位端から延び、且つ眼科用機器110のハブ112及びフレア部116を取り囲むように構成される拡大区間104を含む。様々な実施形態では、スリーブ100は、例えば、シリコーン又は眼科手術での使用に適当な他の柔軟な弾性材料から形成され得る。様々な実施形態では、スリーブ100の寸法は、様々なサイズの眼科用機器との互換性を促進するために変化し得る。様々な実施形態では、スリーブ100は、概して、患者の眼の小さい切開を通した挿入に適当であり、患者の眼に接触する滑らかで鋭利でない面を提供する。様々な実施形態では、スリーブ100は、眼の組織から眼科用機器110を隔離し、例えば水晶体超音波乳化吸引手術中に切開を効果的に密封する役割を果たす。様々な実施形態では、スリーブ100は、管状体部102の遠位端に形成された開口部152を含む。開口部152は、開口部152を通して延びる眼科用機器110のシャフトの一部に対応するように適合され得る。
【0017】
使用中、眼科用機器110のハブ112は、ねじ114を用いて機器ハンドピース(図示せず)内にねじ込まれる。スリーブ100の拡大区間104も機器ハンドピースに取り付けられる。様々な実施形態では、スリーブ100は、例えば、スリーブ100の拡大区間104の内側に形成された内径ねじ(図示せず)を用いて、機器のハンドピースに取り付けられ得る。環状部118は、スリーブ100と眼科用機器110との間に画定される。使用中、灌注液は、矢印130によって示される方向に環状部118を通して患者の眼に提供される。したがって、灌注液は、環状部118を通してスリーブ100の遠位端に向かって流れ、様々な実施形態では、開口部152を通して、1つ若しくは複数の従来の灌注ポート(図示せず)を通して又はその両方を通して装置から眼内に出る。灌注液及び乳化レンズ組織は、機器ハンドピースを通して加えられる吸引力を用いて、眼科用機器110内のルーメン120を通して眼から吸引される。
【0018】
図1A~
図2をやはり参照すると、エアロゾル軽減カラー160は、スリーブ100に連結される。様々な実施形態では、エアロゾル軽減カラー160は、同じシリコーン又はスリーブ100を構築するために使用されるのに適当な他の柔軟な弾性材料から構築される。他の実施形態では、エアロゾル軽減カラー160は、スリーブ100の材料と互換性があり、眼科手術中に使用するのに適当な類似の材料から構築され得る。いくつかの実施形態では、エアロゾル軽減カラー160は、透明な可撓性の低摩擦材料から作られる。透明材料の使用により、外科医が手術部位をよりよく見えるようにすることが可能となる。眼科用機器110(又はこの場合には水晶体乳化針)の開口部122は、角膜の切開の中心に置かれるため、エアロゾル軽減カラー160の最大直径は、切開サイズよりわずかに大きくてもよい(例えば、約5mm未満~約3mm未満)。水晶体超音波乳化吸引手術のための大抵の外科的切開は、約2mm未満である。このような場合、エアロゾル軽減カラー160の最大直径は、約3mmである。
【0019】
エアロゾル軽減カラー160は、概して管形状であるスリーブ162を含む。一例では、スリーブ162の直径は、約1mmであるが、約0.5mm~約1.5mmであり得る。スカート164は、スカート164の遠位端がスカート164の近位端よりも大きい直径であるように、スリーブ162から外側且つ遠位に延びる。この例では、スカート164の遠位端は、約3mmの直径を有する。スカート164は、図では円錐として示されているが、放物面形状又は円筒形状を有し得る。スカート164の面は、アコーディオン状のプリーツ166を含み、それによりスカート164が遠位方向に引き延ばされること又はスリーブ162に対して近位方向に圧縮されることを可能にする。代替として、スカート164は、プリーツ166がなく、滑らかであり得る。
【0020】
図3Aは、スリーブ100及びエアロゾル軽減カラー160を示す眼科用機器110の分解遠位斜視図である。
図3Bは、スリーブ100及びエアロゾル軽減カラー160を示す眼科用機器110の分解近位斜視図である。
図3A及び
図3Bを合わせて参照すると、様々な実施形態では、スリーブ162とスリーブ100との間に摩擦係合が形成されるように、スリーブ100がスリーブ162内に受け入れられる。スリーブ162とスリーブ100との間の係合は、使用中のエアロゾル軽減カラー160の不用意な移動を防止し、エアロゾル軽減カラー160の内部からの流体の漏洩を防止する。エアロゾル軽減カラー160は、スリーブ100から除去可能であると本明細書に示されているが、他の実施形態では、エアロゾル軽減カラー160は、スリーブ100と一体的に形成され得る。
図3Aに示されるように、接触面302は、スカート164の遠位端上に形成される。
【0021】
図4は、眼402内に挿入される眼科用機器110の概略図である。使用中、眼科用機器110及びスリーブ100は、眼402の切開内に挿入される。水晶体超音波乳化吸引術の特定の場合、眼科用機器110及びスリーブ100が眼402の前眼房内に挿入される。スカート164の接触面302が患者の眼402に接触する。スカート164と眼402との間の接触圧により、スカート164と患者の眼402との接触が維持される。動作中、眼科用機器110及びスリーブ100の深さは、何度も調節され得る。眼科用機器110が眼402内により深く挿入されると、プリーツ166によってスカート164が圧縮可能となる。加えて、眼科用機器110が眼402から引っ込められると、プリーツ166は、スカート164の拡張を容易にする。このように、プリーツ166は、スカート164のばね状運動を容易にする。他の実施形態では、スリーブ162は、スリーブ100上のエアロゾル軽減カラー160の軸方向移動を可能にし得る。したがって、眼科用機器110及びスリーブ100が眼402内に挿入され、且つ眼402から引っ込められると、スリーブ162は、眼402内の眼科用機器110の深さの変更に対応するために、スリーブ100に対してスライドすることが可能である。そのような実施形態では、エアロゾル軽減カラー160は、(
図2~
図3Bに示される)近位限界168と遠位限界170との間でスライドし得る。様々な実施形態では、近位限界168及び遠位限界170は、例えば、スリーブ100の外表面上に形成された隆起、畝又は溝として形成され得る。動作中、例えば外科医が前嚢の後面を処置している場合など、近位限界168は、眼内へのスリーブ100の最も深い挿入点に対応する。遠位限界170は、例えば、前嚢の前面の処置中などに眼内へのスリーブ100の最も浅い挿入点に対応する。一例では、近位限界168と遠位限界170との間の距離は、人間の眼の前眼房の円周と均等である(10mm~20mm)。
【0022】
眼科用機器110の開口部122は、(水晶体超音波乳化吸引術又は白内障除去手術の場合)角膜の切開を通して眼内に挿入される。エアロゾル軽減カラー160の接触面302は、眼の表面上にある。開口部122は、前眼房において移動されるが、エアロゾル軽減カラー160の接触面302は、眼の表面上にある。したがって、開口部122が眼内で移動すると、エアロゾル軽減カラー160が変形する。やはり
図4を参照すると、エアロゾル軽減カラー160は、エアロゾル化した灌注液、乳化レンズ組織及び眼内液の漏出に対する物理的バリアを提供する。そのようなバリアは、外科医及び他の医療技師がエアロゾル化した流体に接触することを防止し、起こり得る感染病原体への暴露を防止する。エアロゾル軽減カラー160の長さは、開口部122が眼内の所望の任意の位置に置かれることを可能にするような長さであり、この場合、エアロゾル軽減カラー160は、10mm~30mmの長さである。このような長さにより、エアロゾル軽減カラー160が変形されつつ、開口部122が眼内で移動することが可能となる。この例では、手術中の眼の可視化を可能にするために、エアロゾル軽減カラー160は、透明材料から作られている。この例では、エアロゾル軽減カラー160の適切な変形を可能にするために、エアロゾル軽減カラー160は、容易に変形される可撓性材料(シリコーンなど)で作られている。加えて、接触面302は、エアロゾル軽減カラー160が変形されると、眼の表面に沿ってそれが移動することを可能にするような低摩擦材料である。一例では、エアロゾル軽減カラー160は、親水性材料で作られる。代替として又は加えて、スリーブ162への接続において、エアロゾル軽減カラー160の近位端は、スリーブ100に沿って移動する。
【0023】
図5A~
図5Dは、エアロゾル軽減カラー500の様々な実施形態の図である。エアロゾル軽減カラー500は、非対称の接触面502を含む。
図5Aに示されるように、接触面502は、輪部、結膜、角膜及び眼402の他の外部構造との接触に対応するように輪郭形成される。様々な実施形態では、接触面502は、滑らかで曲線のある形状を表し得る。他の実施形態では、
図5B~
図5Cに示されるように、接触面502は、1つの側から対向する側に角度が付けられ得る。したがって、
図5A及び
図5Bに示されるように、エアロゾル軽減カラー500は、非対称な縦方向断面を含む。様々な実施形態では、スカート164の軸方向断面形状は、概して円形であり得る。他の実施形態では、
図5Dに示されるように、スカート164の軸方向断面形状は、例えば、楕円形状、長円形状又は涙滴形状であり得る。
【0024】
図6は、眼科手術中にエアロゾル流体を封じ込めるためのプロセス600を示すフロー図である。プロセス600は、ステップ602において開始する。ステップ604において、エアロゾル軽減カラー160がスリーブ100に連結される。ステップ606において、スリーブが患者の眼の切開内に挿入される。ステップ608において、エアロゾル軽減カラー160の接触面302が患者の眼に接触する。様々な実施形態では、接触面302は、例えば、輪部、結膜及び角膜を含む様々な外部眼科構造に接触し得る。ステップ610において、エアロゾル軽減カラー160は、切開からのエアロゾル化した体液の放出を遮断する。ステップ612において、エアロゾル軽減カラー160は、スリーブ100の深さの変化に対応するように調節される。様々な実施形態では、エアロゾル軽減カラー160は、例えば、エアロゾル軽減カラー160のスカート164に形成されたアコーディオン状のプリーツ166の拡張及び圧縮を通して調節され得る。そのような実施形態では、スリーブ100が切開内に深く挿入されると、プリーツ166が圧縮され、スリーブ100が切開から引き出されると、プリーツ166が拡張される。他の実施形態では、エアロゾル軽減カラー160は、スリーブ100上にスライド可能に配置され、それにより、スリーブ100が切開内に深く挿入されると、エアロゾル軽減カラー160がスリーブ100上で近位にスライドする。同様に、スリーブ100が切開から引き出されると、エアロゾル軽減カラーは、スリーブ100上で遠位にスライドする。プロセスは、ステップ614において終了する。
【0025】
図7A~
図7Dは、エアロゾル軽減カラー160の様々な実施形態を示す。
図7Aにおいて、エアロゾル軽減カラー160は、円筒形の形状である。スカート164は、スリーブ162から水晶体乳化針の遠位端の開口部152に向かって延びる。スカート164は、機器110に平行な側壁を有する。スカート164は、長さが10mm~30mmであり得る。この例では、エアロゾル軽減カラー160は、シリコーンなど、透明な可撓性の低摩擦材料から作られている。開口部152が眼に位置するとき、エアロゾル軽減カラー160は、眼の外側面を密閉し、機器110の開口部152が眼内で移動すると、弾性変形し得る。
図7Bにおいて、エアロゾル軽減カラー160は、ベル状形状である。スカート164は、スリーブ162から水晶体乳化針の遠位端の開口部152に向かって延びる。スカート164は、図示されるように機器110から外側に湾曲した側壁を有する。スカート164の遠位端は、眼を密封する密封面を提供するようにわずかに外側に広がっている。スカート164は、長さが10mm~30mmであり得る。この例では、エアロゾル軽減カラー160は、シリコーンなど、透明な可撓性の低摩擦材料から作られている。開口部152が眼に位置するとき、エアロゾル軽減カラー160は、眼の外側面を密閉し、機器110の開口部152が眼内で移動すると、弾性変形し得る。
図7Cにおいて、エアロゾル軽減カラー160は、ベル状形状である。スカート164は、スリーブ162から水晶体乳化針の遠位端の開口部152に向かって延びる。スカート164は、図示されるように機器110から外側に湾曲した側壁を有する。スカート164の遠位端は、眼を密封する密封面を提供するようにわずかに内側に広がっている。スカート164は、長さが10mm~30mmであり得る。この例では、エアロゾル軽減カラー160は、シリコーンなど、透明な可撓性の低摩擦材料から作られている。開口部152が眼に位置するとき、エアロゾル軽減カラー160は、眼の外側面を密閉し、機器110の開口部152が眼内で移動すると、弾性変形し得る。
図7Dにおいて、エアロゾル軽減カラー160は、ベル状形状である。スカート164は、スリーブ162から水晶体乳化針の遠位端の開口部152に向かって延びる。スカート164は、図示されるように機器110から外側にわずかに湾曲した側壁を有する。その最も幅広い点のスカート164の直径は、約3mmである。スカート164は、長さが10mm~30mmであり得る。この例では、エアロゾル軽減カラー160は、シリコーンなど、透明な可撓性の低摩擦材料から作られている。開口部152が眼に位置するとき、エアロゾル軽減カラー160は、眼の外側面を密閉し、機器110の開口部152が眼内で移動すると、弾性変形し得る。
図7A~7Dにおいて、プリーツ166は、任意選択的であり、エアロゾル軽減カラー160の最も幅広い直径は、約3mm~5mmである。
【0026】
「実質的に」という用語は、当業者であれば理解するように、ほぼ明記されたものであり、必ずしも完全に明記されたものである必要はない(且つ明記されているものを含み、例えば、実質的に90度は、90度を含み、実質的に平行は、平行を含む)と定義される。任意の開示された実施形態では、「実質的に」、「およそ」、「ほぼ」及び「約」という用語は、明記されているものの「[数パーセント]以内」に置き換えることができる。
【0027】
とりわけ、「~することができる」、「~である可能性がある」、「~し得る」、「例えば」など、本明細書で使用される条件付き言語は、具体的に述べられていない限り又は使用されている文脈内で理解されない限り、一般に、他の実施形態では特定の特徴、要素及び/又は状態を含まないが、特定の実施形態ではそれらを含むことを伝えることを意図している。したがって、そのような条件付き言語は、一般に、特徴、要素及び/若しくは状態が1つ以上の実施形態に必ず必要であること、又は1つ以上の実施形態が、考案者の入力若しくは促しの有無を問わず、これらの特徴、要素及び/若しくは状態が特定の実施形態に含まれるか若しくは特定の実施形態で実行されるかどうかを決定するための論理を必然的に含むことを含意することを意図していない。
【0028】
上述の詳細な説明は、様々な実施形態に適用される新規な特徴を示し、説明し、指摘しているが、本開示の趣旨から逸脱することなく、示されたデバイスの形態及び詳細における様々な省略形態、置換形態及び変更形態がなされ得ることを理解されたい。認識されるように、本明細書に記載されているプロセスは、いくつかの特徴を他の特徴とは別に使用又は実施できるため、本明細書に示されている全ての特徴及び利点を提供しない形態内でも具体化することができる。保護の範囲は、前述の記載によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される。特許請求の範囲と均等な意味及び範囲内にある全ての変更形態は、その範囲内に包含されるべきである。
【国際調査報告】