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特表2023-535371免疫抑制シグナル伝達をリダイレクトするためのキメラMyD88受容体ならびに関連する組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】免疫抑制シグナル伝達をリダイレクトするためのキメラMyD88受容体ならびに関連する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230809BHJP
   C07K 14/715 20060101ALI20230809BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20230809BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230809BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20230809BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20230809BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230809BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230809BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230809BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230809BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230809BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/715 ZNA
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/24
C12N15/26
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12N5/071
C12N5/0783
C12N5/0781
C12N5/0786
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K35/12
A61K35/17
A61K39/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503160
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 US2021042091
(87)【国際公開番号】W WO2022016119
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】63/053,529
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523016962
【氏名又は名称】シミュレックス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514124573
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル ロサンゼルス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アスガルザデ シャハブ
(72)【発明者】
【氏名】モギミ ババク
(72)【発明者】
【氏名】ハジダニエル マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シリンバク ソヘイラ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C085BB01
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG06
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087MA17
4C087MA22
4C087MA23
4C087MA55
4C087MA56
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA04
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、いくつかの局面では、免疫抑制性サイトカインなどの分子に結合することが可能な細胞外ドメインと、免疫細胞を活性化するようにシグナル伝達経路を作動させることが可能なMyD88含有細胞内ドメインとを含有する、キメラシグナル伝達受容体に関する。いくつかの局面では、本開示はさらに、操作された細胞、例えばT細胞、および、前記キメラシグナル伝達受容体または操作された細胞を含む組成物、ならびにその方法および使用に関する。いくつかの態様では、前記細胞はさらに、抗原に対して指向される遺伝子操作された組換え抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)もしくは組換えT細胞受容体(TCR)を発現し得、かつ、いくつかの場合では、組換え分子、例えば二重特異性抗体を分泌し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)TGFβに結合する、TGFβ受容体(TGFβR)の細胞外ドメインまたはその一部分と;
(b)膜貫通ドメインと;
(c)完全長MyD88の完全長TIRドメインを欠いている第1の短縮MyD88ポリペプチドと;
(d)完全長MyD88の完全長TIRドメインを欠いている第2の短縮MyD88ドメインと
を含む、キメラシグナル伝達受容体。
【請求項2】
前記TGFβRがTGFβR2である、請求項1記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項3】
前記細胞外ドメインまたはその一部分が、
(i)SEQ ID NO:20に示されるアミノ酸の配列;
(ii)SEQ ID NO:20に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列;または
(iii)TGFβに結合する、(i)もしくは(ii)の一部分
を含む、請求項1または請求項2記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項4】
前記細胞外ドメインまたはその一部分がSEQ ID NO:20に示される、請求項1~3のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項5】
前記膜貫通ドメインがTGFβRのネイティブ膜貫通ドメインを含む、請求項1~4のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項6】
前記膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:22に示されるアミノ酸の配列、または、SEQ ID NO:22に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む、請求項1~5のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項7】
前記膜貫通ドメインがSEQ ID NO:22に示される、請求項1~6のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項8】
前記膜貫通ドメインが、TGFβR以外の膜貫通タンパク質由来の異種膜貫通ドメインである、請求項1~4のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項9】
前記膜貫通ドメインと前記第1の短縮MyD88ポリペプチドが直接的に連結されている、請求項1~8のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項10】
前記膜貫通ドメインと前記第1の短縮MyD88ポリペプチドがリンカーによって間接的に連結されている、請求項1~9のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項11】
前記リンカーがペプチドリンカーであるかまたはそれを含む、請求項10記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項12】
前記リンカーが、TGFβRの細胞質ドメインのN末端連続アミノ酸の部分配列であるかまたはそれを含み、前記部分配列が非機能的部分であり、前記非機能的部分が、阻害性シグナル伝達を媒介可能である機能的な阻害性シグナル伝達ドメインではない、請求項10記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項13】
前記細胞内ドメインが、阻害性アダプター分子、任意でSMADを動員することができない、請求項1~12のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項14】
前記リンカーが、SEQ ID NO:129に示されるTGFβR2細胞質ドメインのアミノ酸1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、1~15、1~16、1~17、1~18、1~19、1~20、1~21、1~22、1~23、1~24、または1~25であり、任意で前記リンカーがSEQ ID NO:24に示される、請求項10、12、または13記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項15】
(i)細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含む、TGFβ受容体(TGFβR)の一部分であって、完全長TGFβRより小さく、前記完全長TGFβRの機能的な阻害性シグナル伝達ドメインを欠いている、前記一部分と;(ii)完全長MyD88の完全長TIRドメインを欠いている第1の短縮MyD88ポリペプチド、および完全長MyD88の完全長TIRドメインを欠いている第2の短縮MyD88ドメインを含む、細胞内ドメインと
を含む、キメラシグナル伝達受容体。
【請求項16】
前記TGFβRがTGFβR2である、請求項15記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項17】
前記TGFβRの一部分が、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸の配列、または、SEQ ID NO:3に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む、請求項15または請求項16記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項18】
前記TGFβRの一部分がSEQ ID NO:3に示される、請求項15~17のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項19】
前記TGFβRの一部分と前記細胞内ドメインが直接的に連結されている、請求項15~18のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項20】
前記TGFβRの一部分と前記細胞内ドメインがペプチドリンカーによって間接的に連結されている、請求項15~18のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項21】
前記第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび前記第2のMyD88ポリペプチドが各々、MyD88の、デスドメイン(DD)と、中間ドメイン(ID)と、完全長TIRドメインの一部分とを含む、請求項1~20のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項22】
前記第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび前記第2のMyD88ポリペプチドが各々独立して、前記完全長MyD88のアミノ酸2~155、2~156、2~157、2~158、2~159、2~160、2~161、2~162、2~163、2~164、2~165、2~166、2~167、2~168、2~169、2~170、2~171、2~172、2~173、2~174、2~175、2~176、2~177、2~178、2~179、または2~180からなる群より選択されるアミノ酸の配列であり、任意でSEQ ID NO:128の配列である、請求項1~21のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項23】
前記第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび前記第2の短縮ポリペプチドが各々独立して、前記完全長MyD88のアミノ酸2~171または2~172の配列であり、任意でSEQ ID NO:128の配列である、請求項1~21のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項24】
前記第1の短縮MyD88ポリペプチドがSEQ ID NO:2に示される、請求項1~23のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項25】
前記第2の短縮MyD88ポリペプチドがSEQ ID NO:2に示される、請求項1~24のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項26】
前記第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび前記第2の短縮MyD88ポリペプチドが同じである、請求項1~25のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項27】
前記第1のMyD88ポリペプチドと前記第2のMyD88ポリペプチドがペプチドリンカーによって接続されている、請求項1~26のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項28】
前記ペプチドリンカーが(G4S)n(SEQ ID NO:47)であり、ここで、nが1~4(両端の値を含む)の整数である、請求項11、20、および27のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項29】
前記ペプチドリンカーがSEQ ID NO:47((GGGGS)n)に示され、ここで、nが1~4(両端の値を含む)の整数であり、任意で、前記ペプチドリンカーが、SEQ ID NO:48(GGGGS)、SEQ ID NO:85(GGGGSGGGGS)、SEQ ID NO:49(GGGGSGGGGSGGGGS)、およびSEQ ID NO:50(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)からなる群より選択される、請求項11、20、27、および28のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項30】
SEQ ID NO:93に示されるか、または、SEQ ID NO:93に示される配列に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、または少なくとも97%もしくは少なくとも約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列である、請求項1~29のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項31】
SEQ ID NO:93に示される、請求項1~30のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項32】
SEQ ID NO:94に示されるか、または、SEQ ID NO:94に示される配列に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、または少なくとも97%もしくは少なくとも約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列である、請求項1~29のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項33】
SEQ ID NO:94に示される、請求項1~32のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項34】
前記キメラシグナル伝達受容体が細胞から発現された場合に、前記細胞外ドメインへのTGFβの結合が、前記第1のMyD88ポリペプチドおよび第2のMyD88ポリペプチドの二量体化を誘導する、請求項1~33のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項35】
前記キメラシグナル伝達受容体が細胞から発現された場合に、前記細胞外ドメインへのTGFβの結合が、IRAK4を前記第1のMyD88ポリペプチドおよび前記第2のMyD88ポリペプチドに動員する、請求項1~34のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項36】
前記キメラシグナル伝達受容体が細胞から発現された場合に、前記細胞外ドメインへのTGFβの結合がIRAK4のリン酸化をもたらす、請求項1~35のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体。
【請求項37】
請求項1~36のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体をコードするヌクレオチドの配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項38】
ヌクレオチドの前記配列が第1のヌクレオチドの配列であり、前記ポリヌクレオチドが、別の組換え分子をコードする第2のヌクレオチドの配列をさらに含む、請求項37記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
前記組換え分子が組換え抗原受容体であり、任意で、前記組換え抗原受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項38記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
前記組換え抗原受容体がCARである、請求項38または39記載のポリヌクレオチド。
【請求項41】
前記組換え抗原受容体が腫瘍抗原に結合し、任意で、前記腫瘍抗原がCD19またはB7H3である、請求項38~40のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項42】
前記組換え分子が、サイトカイン、任意でインターロイキンまたはその機能的部分であり、任意で、前記インターロイキンが、IL-2、IL-12、もしくはIL-15、またはその機能的部分である、請求項41記載のポリヌクレオチド。
【請求項43】
前記組換え分子が二重特異性抗体であり、任意で、前記二重特異性抗体が二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である、請求項38記載のポリヌクレオチド。
【請求項44】
前記第1のヌクレオチドの配列と前記第2のヌクレオチドの配列が、バイシストロン性エレメントによって離隔されている、請求項38~43のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項45】
前記バイシストロン性エレメントがIRESであるかまたは切断可能ペプチドである、請求項44記載のポリヌクレオチド。
【請求項46】
前記切断可能ペプチドが、P2A、T2A、およびF2Aからなる群より選択される、請求項45記載のポリヌクレオチド。
【請求項47】
前記切断可能ペプチドがT2Aである、請求項45または請求項46記載のポリヌクレオチド。
【請求項48】
前記ヌクレオチドの配列がプロモーターに機能的に連結されている、請求項37~47のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項49】
前記第1のヌクレオチドの配列と前記第2のヌクレオチドの配列が各々、プロモーターに機能的に連結されている、請求項38~47のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項50】
前記プロモーターが同じプロモーターである、請求項49記載のポリヌクレオチド。
【請求項51】
前記プロモーターがEF1プロモーターである、請求項48~50のいずれか一項記載のポリヌクレオチド。
【請求項52】
請求項37、48、または51記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項53】
請求項37~51のいずれか一項記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項54】
ウイルスベクターである、請求項52または請求項53記載のベクター。
【請求項55】
前記ウイルスベクターがレトロウイルスベクターである、請求項54記載のベクター。
【請求項56】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項54または請求項55記載のベクター。
【請求項57】
請求項38~51のいずれか一項記載のポリヌクレオチドまたは請求項53~56のいずれか一項記載のベクターを、前記キメラシグナル伝達受容体および前記組換え分子の発現のための条件下で細胞に導入することを含む、操作された細胞を産生する方法。
【請求項58】
請求項37~51のいずれか一項記載のポリヌクレオチドまたは請求項52~56のいずれか一項記載のベクターを、細胞の表面での前記キメラシグナル伝達受容体の発現のための条件下で前記細胞に導入することを含む、操作された細胞を産生する方法。
【請求項59】
組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを、前記細胞の表面での前記組換え抗原受容体の発現のための条件下で前記細胞に導入することをさらに含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記組換え抗原受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項59記載の方法。
【請求項61】
前記組換え抗原受容体がCARである、請求項59または請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記組換え抗原受容体が腫瘍抗原に結合し、任意で、前記腫瘍抗原がCD19またはB7H3である、請求項60または請求項61記載の方法。
【請求項63】
サイトカインをコードするポリヌクレオチドを、前記サイトカインの発現および任意で分泌のための条件下で前記細胞に導入することをさらに含み、任意で、前記サイトカインがインターロイキンまたはその機能的部分であり、任意で、前記インターロイキンが、IL-2、IL-12、もしくはIL-15、またはその機能的部分である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを、前記二重特異性抗体の発現および任意で分泌のための条件下で前記細胞に導入することをさらに含み、任意で、前記二重特異性抗体がBiTEである、請求項58記載の方法。
【請求項65】
前記細胞が対象由来の初代細胞である、請求項57~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
前記細胞が、T細胞、腫瘍浸潤細胞(TIL)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、またはマクロファージである、請求項57~65のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
前記細胞が、T細胞、任意で、CD3+、CD4+、またはCD8+ T細胞である、請求項57~66のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
前記細胞がCD8+ T細胞である、請求項57~67のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
前記細胞がCD4+ T細胞である、請求項57~67のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
請求項57~69のいずれか一項記載の方法により産生される、操作された細胞。
【請求項71】
請求項1~36のいずれか一項記載のキメラシグナル伝達受容体を含む、操作された細胞。
【請求項72】
組換え分子をさらに含む、請求項71記載の操作された細胞。
【請求項73】
請求項37記載のポリヌクレオチドを含む、操作された細胞。
【請求項74】
組換え分子をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項73記載の操作された細胞。
【請求項75】
前記組換え分子が組換え抗原受容体であり、任意で、前記組換え抗原受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項72または請求項74記載の操作された細胞。
【請求項76】
前記組換え抗原受容体がCARである、請求項75記載の操作された細胞。
【請求項77】
前記組換え抗原受容体が腫瘍抗原に結合し、任意で、前記腫瘍抗原がCD19またはB7H3である、請求項75~76のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項78】
前記組換え分子が、前記細胞から分泌可能な分子である、請求項72または請求項74記載の操作された細胞。
【請求項79】
前記組換え分子が、サイトカイン、任意でインターロイキンまたはその機能的部分であり、任意で、前記インターロイキンが、IL-2、IL-12、もしくはIL-15、またはその機能的部分である、請求項72、請求項74、または請求項78記載の操作された細胞。
【請求項80】
前記組換え分子が二重特異性抗体であり、任意で、前記二重特異性抗体がBiTEである、請求項72、請求項74、または請求項78記載の操作された細胞。
【請求項81】
請求項38~51のいずれか一項記載のポリヌクレオチドを含む、操作された細胞。
【請求項82】
前記細胞が対象由来の初代細胞である、請求項70~81のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項83】
T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、またはマクロファージである、請求項70~82のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項84】
T細胞、任意で、CD3+、CD4+、および/またはCD8+ T細胞である、請求項70~83のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項85】
CD8+ T細胞である、請求項70~84のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項86】
CD4+ T細胞である、請求項70~85のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項87】
請求項70~86のいずれか一項記載の操作された細胞を含む、薬学的組成物。
【請求項88】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項87記載の薬学的組成物。
【請求項89】
無菌である、請求項87または請求項88記載の薬学的組成物。
【請求項90】
がんを有する対象に請求項70~86のいずれか一項記載の操作された細胞または請求項87~89のいずれか一項記載の薬学的組成物を投与することを含む、治療の方法。
【請求項91】
前記操作された細胞が、前記がんの抗原に対してターゲティングされた抗原受容体を含む、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記操作された細胞が、前記がんに関連する腫瘍抗原に結合する抗原結合ドメインを含む組換え抗原受容体を発現し、任意で、前記がんの細胞が前記腫瘍抗原を発現する、請求項90記載の方法。
【請求項93】
前記組換え抗原受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である、請求項92記載の方法。
【請求項94】
前記組換え抗原受容体がCARである、請求項92または請求項93記載の方法。
【請求項95】
前記がんが血液がんであるかまたは固形腫瘍である、請求項90~94のいずれか一項記載の方法。
【請求項96】
前記腫瘍抗原がB7H3である、請求項92~95のいずれか一項記載の方法。
【請求項97】
前記がんが、前立腺がん、黒色腫、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、尿路上皮がん、卵巣がん、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍であり、任意で、前記がんが卵巣がん腫または神経芽腫である、請求項92~96のいずれか一項記載の方法。
【請求項98】
前記腫瘍抗原がCD19である、請求項92~95のいずれか一項記載の方法。
【請求項99】
前記がんがB細胞がんである、請求項90~95および98のいずれか一項記載の方法。
【請求項100】
前記がんが、白血病またはリンパ腫、任意で転移性リンパ腫である、請求項90~95、98、および99のいずれか一項記載の方法。
【請求項101】
前記操作された細胞が、前記細胞から分泌される組換え分子を発現し、任意で、前記組換え分子が二重特異性抗体またはサイトカインである、請求項90~100のいずれか一項記載の方法。
【請求項102】
がんを有する対象を治療する際に使用するための医薬の製造のための、請求項87~89のいずれか一項記載の薬学的組成物の使用。
【請求項103】
がんを有する対象を治療する際に使用するための、請求項87~89のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項104】
前記薬学的組成物の前記操作された細胞が、前記がんの抗原に対してターゲティングされた抗原受容体を含む、請求項102記載の使用または請求項103記載の使用するための薬学的組成物。
【請求項105】
前記操作された細胞が、前記がんに関連する腫瘍抗原に結合する抗原結合ドメインを含む組換え抗原受容体を発現し、任意で、前記がんの細胞が前記腫瘍抗原を発現する、請求項104記載の使用または使用するための薬学的組成物。
【請求項106】
前記組換え抗原受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である、請求項105記載の使用または使用するための薬学的組成物。
【請求項107】
前記組換え抗原受容体がCARである、請求項105または請求項106記載の使用または使用するための薬学的組成物。
【請求項108】
前記がんが血液がんであるかまたは固形腫瘍である、請求項103~107のいずれか一項記載の使用または使用するための薬学的組成物。
【請求項109】
前記腫瘍抗原がB7H3である、請求項103~108のいずれか一項記載の使用または使用するための薬学的組成物。
【請求項110】
前記がんが、前立腺がん、黒色腫、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、尿路上皮がん、卵巣がん、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍であり、任意で、前記がんが卵巣がん腫または神経芽腫である、請求項103~109のいずれか一項記載の使用または使用するための薬学的組成物。
【請求項111】
前記腫瘍抗原がCD19である、請求項103~108のいずれか一項記載の使用または使用するための薬学的組成物。
【請求項112】
前記がんがB細胞がんである、請求項103~108および111のいずれか一項記載の使用または使用するための薬学的組成物。
【請求項113】
前記がんが、白血病またはリンパ腫、任意で転移性リンパ腫である、請求項103~108、111、および112のいずれか一項記載の使用または使用するための薬学的組成物。
【請求項114】
前記操作された細胞が、前記細胞から分泌される組換え分子を発現し、任意で、前記組換え分子が二重特異性抗体またはサイトカインである、請求項103~113のいずれか一項記載の使用または薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月17日に出願された「免疫抑制シグナル伝達をリダイレクトするためのキメラMyD88受容体ならびに関連する組成物および方法(CHIMERIC MYD88 RECEPTORS FOR REDIRECTING IMMUNOSUPPRESSIVESIGNALING AND RELATED COMPOSITIONS AND METHODS)」という名称の米国特許仮出願第63/053,529号の優先権を主張するものであり、その内容は、その全体が参照により組み入れられる。
【0002】
配列表の参照による組み入れ
本出願は、電子形式の配列表と共に提出されている。配列表は、2021年7月10日に作成された、165282000140SeqList.txtという名称のファイルとして提供されており、これはサイズが228,223バイトである。配列表の電子形式の情報は、その全体が参照により組み入れられる。
【0003】
分野
本開示は、いくつかの局面では、免疫抑制性サイトカインなどの分子に結合することが可能な細胞外ドメインと、免疫細胞を活性化するようにシグナル伝達経路を作動させることが可能なMyD88含有細胞内ドメインとを含有する、キメラシグナル伝達受容体に関する。いくつかの局面では、本開示はさらに、操作された細胞、例えばT細胞、および、キメラシグナル伝達受容体または操作された細胞を含む組成物、ならびにその方法および使用に関する。いくつかの態様では、前記細胞はさらに、抗原に対して指向される遺伝子操作された組換え抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)もしくは組換えT細胞受容体(TCR)を発現し得るか、または、いくつかの場合では、組換え分子、例えば二重特異性抗体を分泌し得る。
【背景技術】
【0004】
背景
がんまたは腫瘍などの疾患または病態の治療のための細胞療法戦略は、キメラ抗原受容体(CAR)または組換えT細胞受容体(TCR)などの遺伝子操作された組換え抗原受容体を発現するように免疫細胞を操作すること、およびそのような細胞を含有する組成物を対象に投与することを含む。例えば、腫瘍微小環境のサイトカインシグナル伝達の免疫抑制作用を阻止および/または減弱させ、操作された細胞の持続性、生存、および細胞傷害性を改善することによって、治療の有効性を高める改善された戦略が必要とされる。そのような必要性に応える組成物、細胞、および方法が提供される。
【発明の概要】
【0005】
概要
免疫抑制性サイトカインに応答して正のシグナルおよびT細胞活性化を誘導することにより免疫抑制シグナルをリダイレクトすることができるキメラシグナル伝達受容体構築物が本明細書に提供される。提供される局面では、免疫抑制性サイトカインはTGFβであり、キメラシグナル伝達受容体は、TGFβに結合する、TGFβ受容体(TGFβR)の細胞外ドメインまたはその一部分と、TGFβがキメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインに結合すると前記細胞において正のシグナルを媒介するためのMyD88シグナル伝達ドメインとを含有する。したがって、提供されるキメラシグナル伝達受容体は、細胞がTMEなどの免疫抑制環境に存在している場合であってもT細胞に正のシグナルを供給し、それにより、T細胞の活性、増殖、持続性または生存を改善することができる。
【0006】
いくつかの態様では、本明細書に提供されるキメラ受容体シグナル伝達受容体は、(a)TGFβに結合する、TGFβ受容体(TGFβR)の細胞外ドメインまたはその一部分と;(b)膜貫通ドメインと;(c)完全長MyD88の完全長TIRドメインを欠いている第1の短縮MyD88ポリペプチドと;(d)完全長MyD88の完全長TIRドメインを欠いている第2の短縮MyD88ドメインとを含有する。いくつかの態様では、TGFβRは、TGFβR2である。
【0007】
いくつかの態様では、細胞外ドメインまたはその一部分は、(i)SEQ ID NO:20に示されるアミノ酸の配列;(ii)SEQ ID NO:20に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列;または(iii)TGFβに結合する、(i)もしくは(ii)の一部分を含有する。いくつかの態様では、細胞外ドメインまたはその一部分は、SEQ ID NO:20に示される。
【0008】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、TGFβRのネイティブ膜貫通ドメインを含有する。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:22に示されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:22に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含有する。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:22に示される。
【0009】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、TGFβR以外の膜貫通タンパク質由来の異種膜貫通ドメインである。
【0010】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインと第1の短縮MyD88ポリペプチドは、直接的に連結される。いくつかの態様では、膜貫通ドメインと第1の短縮MyD88ポリペプチドは、リンカーによって間接的に連結される。いくつかの態様では、リンカーは、ペプチドリンカーであるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、リンカーは、TGFβRの細胞質ドメインのN末端連続アミノ酸の部分配列であるかまたはそれを含有し、前記部分配列が非機能的部分であり、ここで、非機能的部分は、阻害性シグナル伝達を媒介可能である機能的な阻害性シグナル伝達ドメインではない。いくつかの態様では、膜貫通ドメインと第1の短縮MyD88ポリペプチドとの間でリンカーとしての役目を果たす細胞内(または細胞質)ドメインは、阻害性アダプター分子を動員することができない。いくつかの態様では、膜貫通ドメインと第1の短縮MyD88ポリペプチドとの間でリンカーとしての役目を果たす細胞内(または細胞質)ドメインは、SMADを動員することができない。いくつかの態様では、リンカーは、SEQ ID NO:129に示されるTGFβR2細胞質ドメインのアミノ酸1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、1~15、1~16、1~17、1~18、1~19、1~20、1~21、1~22、1~23、1~24、または1~25である。いくつかの態様では、リンカーは、SEQ ID NO:24によって示される。
【0011】
(i)TGFβ受容体(TGFβR)の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含有する、TGFβRの一部分であって、完全長TGFβRより小さく、完全長TGFβRの機能的な阻害性シグナル伝達ドメインを欠いている、一部分と;(ii)完全長MyD88の完全長TIRドメインを欠いている第1の短縮MyD88ポリペプチド、および完全長MyD88の完全長TIRドメインを欠いている第2の短縮MyD88ドメインを含有する、細胞内ドメインとを含有する、キメラシグナル伝達受容体が本明細書に提供される。いくつかの態様では、TGFβRは、TGFβR2である。いくつかの態様では、TGFβRの一部分は、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:3に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含有する。いくつかの態様では、TGFβRの一部分は、SEQ ID NO:3に示される。いくつかの態様では、TGFβRの一部分と細胞内ドメインは、直接的に連結される。いくつかの態様では、TGFβRの一部分と細胞内ドメインは、ペプチドリンカーによって間接的に連結される。いくつかの態様では、第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび第2のMyD88ポリペプチドは各々、MyD88の、デスドメイン(DD)と、中間ドメイン(ID)と、完全長TIRドメインの一部分とを含有する。
【0012】
いくつかの態様では、第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび第2のMyD88ポリペプチドは各々独立して、完全長MyD88のアミノ酸2~155、2~156、2~157、2~158、2~159、2~160、2~161、2~162、2~163、2~164、2~165、2~166、2~167、2~168、2~169、2~170、2~171、2~172、2~173、2~174、2~175、2~176、2~177、2~178、2~179、または2~180からなる群より選択されるアミノ酸の配列である。いくつかの態様では、第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび第2のMyD88ポリペプチドは各々独立して、SEQ ID NO:128によって示される配列である。いくつかの態様では、第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび第2の短縮ポリペプチドは各々独立して、完全長MyD88のアミノ酸2~171または2~172の配列、任意でSEQ ID NO:128の配列である。いくつかの態様では、第1の短縮MyD88ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に示される。いくつかの態様では、第2の短縮MyD88ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に示される。いくつかの態様では、第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび第2の短縮MyD88ポリペプチドは、同じである。
【0013】
いくつかの態様では、第1のMyD88ポリペプチドと第2のMyD88ポリペプチドは、ペプチドリンカーによって接続される。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、(G4S)n(SEQ ID NO:47)であり、ここで、nは、1~4(両端の値を含む)の整数である。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、SEQ ID NO:47((GGGGS)n)に示され、ここで、nは、1~4(両端の値を含む)の整数であり、任意で、ペプチドリンカーは、SEQ ID NO:48(GGGGS)、SEQ ID NO:85(GGGGSGGGGS)、SEQ ID NO:49(GGGGSGGGGSGGGGS)、およびSEQ ID NO:50(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)からなる群より選択される。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、SEQ ID NO:48(GGGGS)、SEQ ID NO:85(GGGGSGGGGS)、SEQ ID NO:49(GGGGSGGGGSGGGGS)、およびSEQ ID NO:50(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)からなる群より選択される。
【0014】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:93に示されるか、または、SEQ ID NO:93に示される配列に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、または少なくとも97%もしくは少なくとも約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:93に示される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:94に示されるか、または、SEQ ID NO:94に示される配列に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、または少なくとも97%もしくは少なくとも約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:94に示される。
【0015】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体が細胞から発現された場合に、細胞外ドメインへのTGFβの結合が、第1および第2のMyD88ポリペプチドの二量体化を誘導する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体が細胞から発現された場合に、細胞外ドメインへのTGFβの結合が、IRAK4を第1のMyD88ポリペプチドおよび第2のMyD88ポリペプチドに動員する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体が細胞から発現された場合に、細胞外ドメインへのTGFβの結合が、IRAK4のリン酸化をもたらす。
【0016】
本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体をコードするヌクレオチドの配列を含有するポリヌクレオチドが本明細書に提供される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体をコードするヌクレオチドの配列は、第1のヌクレオチドの配列であり、ポリヌクレオチドは、組換え分子をコードする第2のヌクレオチドの配列をさらに含む。
【0017】
いくつかの態様では、組換え分子は、組換え抗原受容体である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体をコードするヌクレオチドの配列は、第1のヌクレオチドの配列であり、ポリヌクレオチドは、組換え抗原受容体をコードする第2のヌクレオチドの配列をさらに含む。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはキメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、CARである。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、腫瘍抗原に結合する。いくつかの態様では、腫瘍抗原は、CD19である。いくつかの態様では、腫瘍抗原は、B7H3である。
【0018】
いくつかの態様では、組換え分子は、分泌性分子、例えば二重特異性抗体(例えば、BiTE)またはサイトカインである。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体をコードするヌクレオチドの配列は、第1のヌクレオチドの配列であり、ポリヌクレオチドは、組換え分泌性分子をコードする第2のヌクレオチドの配列をさらに含む。いくつかの態様では、組換え分泌性分子は、二重特異性抗体、例えば二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である。いくつかの態様では、組換え分泌性分子は、組換えサイトカイン(例えば、IL-15またはIL-12)である。
【0019】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体をコードする第1のヌクレオチドの配列と第2のヌクレオチドの配列は、バイシストロン性エレメントによって離隔される。いくつかの態様では、バイシストロン性エレメントは、IRESであるか、または切断可能ペプチドである。いくつかの態様では、切断可能ペプチドは、P2A、T2A、およびF2Aからなる群より選択される。いくつかの態様では、切断可能ペプチドは、T2Aである。いくつかの態様では、ヌクレオチドの配列(例えば、第1および/または第2のヌクレオチドの配列)は、プロモーターに機能的に連結される。いくつかの態様では、第1のヌクレオチドの配列と第2のヌクレオチドの配列は各々、プロモーターに機能的に連結される。いくつかの態様では、プロモーターは、同じプロモーターである。いくつかの態様では、プロモーターは、EF1プロモーターである。
【0020】
また、本明細書に提供されるポリヌクレオチドを含有するベクターも本明細書に提供される。いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0021】
本明細書に提供されるポリヌクレオチドまたは本明細書に提供されるベクターを、細胞の表面でのキメラシグナル伝達受容体の発現のための条件下で細胞に導入することを含む、操作された細胞を産生する方法が、本明細書に提供される。
【0022】
いくつかの態様では、前記方法は、組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを、細胞の表面での組換え抗原受容体の発現のための条件下で細胞に導入することをさらに含む。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはキメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、CARである。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、腫瘍抗原に結合する。いくつかの態様では、腫瘍抗原は、CD19である。いくつかの態様では、腫瘍抗原は、B7H3である。
【0023】
いくつかの態様では、前記方法は、分泌性である組換え分子、例えば二重特異性抗体(例えば、BiTE)またはサイトカインをコードするポリヌクレオチドを、組換え分子の発現および分泌のための条件下で細胞に導入することをさらに含む。いくつかの態様では、前記方法は、二重特異性抗体、例えばBiTEをコードするポリヌクレオチドを、細胞からの二重特異性抗体(例えば、BiTE)の発現、および、いくつかの場合では分泌のための条件下で細胞に導入することをさらに含む。いくつかの態様では、前記方法は、組換えサイトカインをコードするポリヌクレオチドを、細胞からのサイトカイン(例えば、IL-15またはIL-12)の発現、および、いくつかの場合では分泌のための条件下で細胞に導入することをさらに含む。いくつかの態様では、前記方法は、組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを、細胞の表面での組換え抗原受容体の発現のための条件下で細胞に導入することと、分泌性である組換え分子、例えばサイトカインまたは二重特異性抗体(例えば、BiTE)をコードするポリヌクレオチドを、細胞からのサイトカインまたは二重特異性抗体(例えば、BiTE)の発現、および、いくつかの場合では分泌のための条件下で細胞に導入することの両方を含む。BiTEなどの二重特異性抗体の例としては、本明細書に記載されるようないずれかが挙げられる。いくつかの態様では、二重特異性抗体は、CD3およびGD2に結合する(抗CD3および抗GD2)BiTEである。
【0024】
いくつかの態様では、細胞は、対象由来の初代細胞である。いくつかの態様では、細胞は、T細胞、腫瘍浸潤細胞(TIL)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、またはマクロファージである。いくつかの態様では、細胞は、T細胞、任意で、CD3+、CD4+、またはCD8+ T細胞である。いくつかの態様では、細胞は、CD3+ T細胞である。いくつかの態様では、細胞は、CD8+ T細胞である。いくつかの態様では、細胞は、CD4+ T細胞である。
【0025】
本明細書に提供される方法により産生される操作された細胞が本明細書に提供される。
【0026】
本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体を含有する操作された細胞が本明細書に提供される。いくつかの態様では、操作された細胞は、組換え抗原受容体をさらに含む。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはキメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、腫瘍抗原に結合する。いくつかの態様では、腫瘍抗原は、CD19である。いくつかの態様では、腫瘍抗原は、B7H3である。いくつかの態様では、操作された細胞は、分泌性である組換え分子、例えばサイトカイン(例えば、IL-15またはIL-12)または二重特異性抗体(例えば、BiTE)をさらに含む。いくつかの態様では、操作された細胞は、分泌性である組換え分子、例えばサイトカインまたは二重特異性抗体(例えば、BiTE)、および組換え抗原受容体をさらに含む。
【0027】
本明細書に提供されるポリヌクレオチドを含有する操作された細胞が本明細書に提供される。いくつかの態様では、細胞は、組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含有する。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはキメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、CARである。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、腫瘍抗原に結合する。いくつかの態様では、腫瘍抗原は、CD19である。いくつかの態様では、腫瘍抗原は、B7H3である。いくつかの態様では、操作された細胞は、分泌性である組換え分子、例えばサイトカイン(例えば、IL-15またはIL-12)または二重特異性抗体(例えば、BiTE)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの態様では、操作された細胞は、分泌性である組換え分子、例えばサイトカインまたは二重特異性抗体(例えば、BiTE)をコードするポリヌクレオチド、および組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。ポリヌクレオチドは、例えば、各々がバイシストロン性エレメントまたは切断可能リンカー(例えば、T2A、PTAまたはF2A)によって離隔された、単一の核酸分子として発現され得る。BiTEなどの二重特異性抗体の例としては、本明細書に記載されるようないずれかが挙げられる。いくつかの態様では、二重特異性抗体は、CD3およびGD2に結合する(抗CD3および抗GD2)BiTEである。
【0028】
いくつかの態様では、操作された細胞は、対象由来の初代細胞である。いくつかの態様では、操作された細胞は、T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、またはマクロファージである。いくつかの態様では、操作された細胞は、T細胞、任意で、CD3+、CD4+、および/またはCD8+ T細胞である。いくつかの態様では、操作された細胞は、CD3+ T細胞である。いくつかの態様では、操作された細胞は、CD8+ T細胞である。いくつかの態様では、操作された細胞は、CD4+ T細胞である。
【0029】
本明細書に提供される操作された細胞を含有する薬学的組成物が本明細書に提供される。例として、いくつかの態様では、薬学的組成物は、複数の操作された細胞を含有する。いくつかの態様では、薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、無菌である。
【0030】
本明細書に提供される操作された細胞または本明細書に提供される操作された細胞を含有する薬学的組成物を、がんを有する対象に投与することを含む治療の方法が本明細書に提供される。操作された細胞は、提供されるキメラシグナル伝達受容体を発現する。いくつかの態様では、操作された細胞は、がんの抗原に対してターゲティングされた抗原受容体を追加で含有する。いくつかの態様では、操作された細胞は、がんに関連する腫瘍抗原に結合する抗原結合ドメインを含有する組換え抗原受容体を発現する。いくつかの態様では、がんの細胞は、腫瘍抗原を発現する。いくつかの態様では、操作された細胞は、追加で、分泌性である組換え分子、例えばサイトカイン(例えば、IL-15またはIL-12)または二重特異性抗体(例えば、BiTE)を発現し、いくつかの場合では、分泌可能である。
【0031】
また、がんを有する対象を治療する際に使用するための医薬の製造のための、1つまたは複数の操作された細胞を含有する提供される薬学的組成物のいずれかの使用も本明細書に提供される。また、がんを有する対象を治療する際に使用するための、1つまたは複数の操作された細胞を含有する提供される薬学的組成物のいずれかが本明細書に提供される。操作された細胞は、提供されるキメラシグナル伝達受容体を発現する。任意の態様のいくつかでは、薬学的組成物の操作された細胞はまた、がんの抗原に対してターゲティングされた抗原受容体を含み得る。いくつかの態様では、操作された細胞は、がんに関連する腫瘍抗原に結合する抗原結合ドメインを含む組換え抗原受容体を発現する。いくつかの態様では、操作された細胞は、追加で、分泌性である組換え分子、例えばサイトカイン(例えば、IL-15またはIL-12)または二重特異性抗体(例えば、BiTE)を発現し、いくつかの場合では、分泌可能である。
【0032】
いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、CARである。
【0033】
いくつかの態様では、がんは、血液がんであるか、または固形腫瘍である。
【0034】
いくつかの態様では、腫瘍抗原は、B7H3である。いくつかの態様では、がんは、前立腺がん、黒色腫、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、尿路上皮がん、卵巣がん、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍である。いくつかの態様では、がんは、卵巣がん腫または神経芽腫である。
【0035】
いくつかの態様では、腫瘍抗原は、CD19である。いくつかの態様では、がんは、B細胞がんである。いくつかの態様では、がんは、白血病またはリンパ腫である。いくつかの態様では、がんは、転移性リンパ腫である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1A~1Cは、ネイティブTGFβシグナル伝達経路(図1A)、ネイティブToll様受容体シグナル伝達経路(図1B)、およびキメラTGFβシグナル伝達受容体経路(図1C)を描いた略図を示す。
図2】例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体構築物および例示的な対照キメラシグナル伝達受容体構築物を示す。
図3図3Aは、フローサイトメトリーを使用してmyc-タグを検出することにより判定した場合の、形質導入したジャーカット細胞と非形質導入(UT)ジャーカット細胞での、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体構築物の発現レベルを比較して示す。図3Bは、ジャーカット細胞での例示的なCARおよび例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2C(SEQ ID NO:30)のフローサイトメトリー解析を示す。図3Cおよび図3Dは、それぞれ、初代ヒトT細胞での例示的なCARおよび例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2Cの発現を示す。
図4図4Aおよび図4Bは、非形質導入(UT)ジャーカット細胞および例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体ヌル-MYD88、TGFBR2-DNRを形質導入したジャーカット細胞での、異なる量のTGFβと2時間インキュベーションした後の、ウェスタンブロット分析を用いたホスホ-IRAK4(pIRAK4)、ホスホ-SMAD2(pSMAD2)、SMAD2(総タンパク質)およびアクチン対照についてのタンパク質発現を示す。
図5図5Aは、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体(CTSR-2C;SEQ ID NO:30)および例示的なCAR(CTSR-2C+CAR)または例示的なCAR単独(CAR)で操作し、様々な濃度(1、5、10、および20ng/ml)のTGFβとインキュベートしたT細胞の、標的細胞へ曝露(エフェクター:標的比1:1)した6日後のCFDA増殖アッセイを示す。図5Bは、CFDA増殖アッセイによって判定した場合の、非形質導入細胞(UT)、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体(SEQ ID NO:30)とCARの両方(CTSR-2C+CAR)を発現する細胞、ならびにCAR単独(CAR)を発現する細胞の増殖活性を示す。
図6図6Aおよび図6Bは、それぞれ、10および50ng/mLのTGFβの存在下での、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体およびCARまたはCAR単独を形質導入した細胞ならびに非形質導入対照(UT)についての経時的なT細胞数の倍率変化を示す。
図7】異なるエフェクター対標的比(E:T)およびTGFβ濃度の培養条件下での、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体およびCARまたはCAR単独を形質導入したT細胞による細胞殺傷の動力学を示す。
図8】生細胞イメージングを使用した、異なるE:T比およびTGFβ濃度の培養条件下での、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体(SEQ ID NO:30)およびCARを形質導入したT細胞の細胞傷害性の動力学を示す。
図9図9A(CTSR-2C(SEQ ID NO:30)+CAR)および図9B(CARのみ)は、異なるE:T比およびTGFβ濃度での正規化した細胞数を示す。
図10図10Aおよび図10Bは、それぞれ、非形質導入細胞(UT)、CAR単独、CTSR-2C単独、またはCARとCTSR-2Cとの組み合わせ(CTSR-2C+CAR)による処置に応答した、ヒト神経芽腫腫瘍モデルおよび膵臓腫瘍モデルの8週間にわたる同所性増殖の生物発光を示す(左-CFPAC細胞株、右-CF10.05細胞株)。星は、安楽死した動物(n=3)を表す。
図11図11Aおよび図11Bは、それぞれ、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体(SEQ ID NO:30)およびCAR(CTSR-2C+CAR)、CAR単独を発現する細胞、または非形質導入細胞(UT)による処置を受けた腫瘍保有マウスおよび非腫瘍(NT)保有マウス(食塩水注射)についての、末梢血球数におけるCAR+およびCD3 T細胞の存在(計数/血液mm3)の中央値および箱ひげ図の要約データを示す。
図12図12A~12Cは、腫瘍接種後の異なる時点での転移性神経芽腫腫瘍成長の生物発光画像(上部プロット)、ならびに処置注射の7日後にマウスから得られた肝臓組織の神経芽腫特異的マーカーPHOX2b(褐色染色)およびヒトCD3(赤色染色)について染色した後の免疫組織化学的分析からの代表画像(下部プロット)を示す。
図13】例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体および例示的なCARを含む例示的なバイシストロン性ポリヌクレオチド構築物を示す。
図14】バイシストロン性ポリヌクレオチドを形質導入したT細胞のフローサイトメトリー解析からの代表的なドットプロットを示しており、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体は、myc-タグによって検出され、CARは、プロテインLによって検出された。
図15】バイシストロン性ポリヌクレオチドまたは対照ポリヌクレオチドを形質導入したジャーカット細胞での、0、1、5、10、および50ngのTGFβと2時間インキュベーションした後の、ウェスタンブロット分析を用いたホスホ-IRAK4(pIRAK4)、ホスホ-SMAD2(pSMAD2)、およびβアクチン(ローディング対照)についてのタンパク質発現を示す。
図16図16Aは、例示的なバイシストロン性ポリヌクレオチド、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体、またはCAR単独を形質導入したT細胞の、異なるエフェクター対標的比(20、10、5、および2のE:T)での、CD19+腫瘍細胞に対する細胞傷害効果の動力学を示す。図16Bは、例示的なバイシストロン性ポリヌクレオチド、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体、またはCAR単独を形質導入したT細胞の、TGFβ(10ng/mL)の存在下または非存在下での、CD19+腫瘍細胞に対する細胞傷害効果の動力学を示す。
図17】表示の処置群についての8週間にわたる腫瘍(リンパ腫)成長の生物発光画像を示す。
図18】フローサイトメトリーによって判定した場合の、TGFβ(10ng/mL)の存在下または非存在下での標的細胞へ曝露(エフェクター:標的比1:1)した72時間後の、CAR単独を形質導入したT細胞またはCARおよびTGFβR2-41bb構築物を形質導入したT細胞と比較した、形質導入T細胞中の例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体構築物およびCARの1、2、または3つの疲弊マーカー(PD1、TIM3、およびLAG3)を発現する細胞の割合を示す。
図19】例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体およびCAR、TGBFR2-DNR CAR、TGFBR2-41BB CAR、TGFBR2-DAP12 CAR、またはCAR単独を形質導入したT細胞についての、標的細胞へ7日間曝露(エフェクター:標的比1:1)し、続いて、10ngのTGFβ(48時間毎に添加)の存在下または非存在下で3週間にわたり毎日IL2処理(30U/ml)した経時的なT細胞数の倍率変化を示す。
図20図20Aおよび図20Bは、10ng/mlのTGFβ(48時間毎に添加)の存在下または非存在下で標的細胞と1週間培養(エフェクター:標的比1:1)した例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体およびCAR、TGBFR2-DNR CAR、TGFBR2-41BB CAR、TGFBR2-DAP12 CAR、またはCARを形質導入したT細胞による細胞殺傷の動力学を示す。図20Bは、図20Aの実験終了後に得られたT細胞の、新鮮な標的細胞とさらに一週間培養(エフェクター:標的比1:1)した殺傷活性を実証している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
細胞外環境に存在する免疫抑制分子(例えば、免疫抑制性サイトカイン)に結合することが可能な細胞外ドメインと、免疫細胞内のシグナル伝達に関与するMyD88含有細胞内ドメインとを含有するキメラシグナル伝達受容体が、本明細書に提供される。いくつかの場合では、免疫抑制分子は、腫瘍微小環境(TME)の細胞外環境に存在する可溶性分子である。提供されるキメラシグナル伝達受容体を発現する操作された細胞を、免疫抑制シグナルをリダイレクトするために養子細胞療法の方法において使用することができ、細胞療法の応答を改善することができる。
【0038】
TMEは、腫瘍成長および腫瘍血管新生を促進し得る数多くのシグナル伝達分子を含有する。TME中のいくつかのシグナル伝達分子はまた、免疫応答を抑制するように作用し、それにより腫瘍細胞の生存を促進する。免疫抑制性または抗炎症性サイトカインの非限定的な例としては、形質転換増殖因子β(TGFβ)、インターロイキン10(IL10)、インターロイキン4(IL4)、およびインターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL1Ra)が挙げられる。免疫抑制性または抗炎症性サイトカインは、TMEまたはその周囲の細胞によって分泌され得、そこで、これらは、例えば、疾患細胞またはがん性細胞に対する炎症反応を阻害するように作用し得る。
【0039】
例えば、TME中に見られる形質転換増殖因子β(TGFβ)は、がん細胞および周囲のストロマ細胞(例えば、線維芽細胞)によって分泌され、例えば、がん細胞の増殖および血管新生をもたらす。TGFβが、免疫細胞、例えば、T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ナチュラルキラー(NK)細胞上のその同族結合パートナーのTGFβ受容体(例えば、TGFβR2)に結合すると、細胞阻害、例えば、T細胞阻害をもたらすシグナル伝達経路(例えば、SMAD経路)が作動する。したがって、腫瘍TME中のTGFβは、免疫抑制的であり、これにより、がん細胞は、細胞傷害性の炎症反応を回避可能になる(図1A)。
【0040】
TME中のTGFβ、IL10、IL4、IL1Raなどのある特定の免疫抑制性サイトカインの免疫抑制作用を回避するために、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、免疫抑制性サイトカインを認識する細胞外結合ドメインとMyD88ドメインを有する細胞内ドメインとを含有するように操作される。キメラシグナル伝達受容体を発現する細胞において、免疫抑制性サイトカインがキメラシグナル伝達受容体に結合すると、免疫抑制性サイトカインのT細胞阻害活性を減弱させ、代わりにT細胞活性化を媒介する。したがって、提供されるキメラシグナル伝達受容体は、細胞がTMEなどの免疫抑制環境に存在している場合であってもT細胞に正のシグナルを供給し、それにより、T細胞の活性、増殖、持続性または生存を改善することができる。
【0041】
MyD88は、正の細胞シグナル伝達を供給して免疫細胞、例えば、T細胞の活性化を促進し、かつ、通常はToll様受容体(TLR)シグナル伝達経路を作動させる、アダプターシグナル伝達分子である(図1Bを参照のこと)。MyD88は、インターロイキン-1受容体(IL-1R)またはToll様受容体(TLR)にそのリガンドが結合した後に起こるNF-κBおよび分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼシグナル伝達カスケードの活性化の媒介に関与する。図1Bに描写しているように、通常は、IL-1RまたはTLR受容体にリガンドが結合すると、受容体のオリゴマー化を促進し、TIRドメインを介したMyD88の動員およびMyd88の二量体化をもたらす。MyD88は、その後、インターロイキン-1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)を動員し、IRAK4の二量体化およびトランス自己リン酸化をもたらして下流のシグナル伝達カスケードを始動させ、NF-κBなどの転写因子の活性化、炎症性サイトカインの産生およびTH1応答の生成を導く。
【0042】
MyD88(例えば、UniProt Accession No. Q99836;SEQ ID NO:128に示される)は、受容体TIRドメインとの相互作用およびIRAK4との相互作用に関与する、N末端のデスドメイン(DD、例えば、アミノ酸19~109)、中間ドメイン(ID;例えば、アミノ酸110~155)、およびCOOH末端のToll/IL-1受容体(TIR)ドメイン(例えば、アミノ酸159~296)を含有する。研究は、DDおよびID中の残基が、MyD88の二量体化およびIRAK4の動員に関与していることを示した(Burns et al. 2003, J. Exp. Med., 197:263-268)。TIRドメイン中の残基の一部分(例えば、最初の17アミノ酸以内またはそれを含む)も、IRAK4の動員に関与し得るが、完全なTIRドメインの存在が必要というわけではない(Burns et al. 2003)。ドメイン構成(例えば、MyD88ポリペプチドまたはそれを含有するキメラシグナル伝達受容体の)を説明するために使用されるSEQ ID NOとして示される特定の配列を含めたアミノ酸についての言及は、例証を目的としたものであり、提供される態様の範囲を限定することを意図していないことが理解される。ポリペプチドおよびそのドメインの説明は、類似分子との相同性分析およびアライメントに基づいて理論的に導出されることが理解される。したがって、正確な遺伝子座は、変化することができ、必ずしもタンパク質毎に同じとは限らない。よって、MyD88の特定のDDドメイン、IDドメイン、またはTIRドメインなどの特定のドメインは、アミノ酸数個(例えば、1個、2個、3個、または4個)より長くても、より短くてもよい。
【0043】
いくつかの態様では、提供されるキメラシグナル伝達受容体の細胞内ドメイン(本明細書において細胞質ドメインとも称される)は、1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチドを含有する。1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチドの各々は、例えばキメラシグナル伝達受容体が細胞から発現され、そこに免疫抑制性サイトカインが会合した場合に、二量体化すること、IRAK-4を動員すること、および/またはIRAK4のリン酸化(例えば、活性化)を促進することができる、完全長MyD88またはMyD88の短縮部分であることができる。よって、「短縮MyD88」もしくは「MyD88の短縮部分」またはその変形についての言及は、MyD88が、完全長ではなく、ドメインまたはドメインの一部を欠いていてもよいが、例えばキメラシグナル伝達受容体が細胞から発現され、そこにリガンド(例えば、免疫抑制性サイトカイン)が会合した場合に、二量体化し、IRAK-4を動員し、かつ/またはIRAK4のリン酸化(例えば、活性化)を促進する完全長MyD88の1つまたは複数の活性を保持しているまたは示すことを意味する。いくつかの態様では、MyD88の短縮部分は、例えばキメラシグナル伝達受容体が細胞から発現され、そこに免疫抑制性サイトカインが会合した場合に、二量体化するのに、IRAK4を動員するのに、および/またはIRAK4のリン酸化を促進するのに必要なMyD88ポリペプチドの最小部分である。いくつかの態様では、短縮部分は、DD、IDを含有し、いくつかの場合では、完全長TIRドメインを欠いている。いくつかの態様では、短縮部分は、DD、IDを含有し、TIRドメイン中の最大140の連続したC末端アミノ酸残基、例えば、TIRドメインの124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、または140個の連続したC末端アミノ酸残基を欠いているTIRドメインの一部分を含有する。本明細書において使用される場合のMyD88ポリペプチドという用語は、別途明示しない限り、記載しているとおりMyD88ポリペプチドの完全長および短縮部分を包含すると認識されるべきである。
【0044】
いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインに含まれる1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチドは、完全長MyD88ポリペプチドである。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインに含まれる1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチドは、例えばキメラシグナル伝達受容体が細胞から発現され、そこに免疫抑制性サイトカインが会合した場合に、二量体化するのに、IRAK-4を動員するのに、および/またはIRAK-4リン酸化を媒介するのに十分なMyD88の短縮部分である。キメラシグナル伝達受容体を発現する細胞において、免疫抑制性サイトカインがキメラシグナル伝達受容体に結合すると、MyD88の二量体化および/またはIRAK-4の動員を促進し、IRAK-4リン酸化および下流のシグナル伝達カスケードをもたらすことができる(図1C)。IRAK4リン酸化を媒介または促進するMyD88ポリペプチドの能力は、IRAK4活性化を誘発して、免疫細胞、例えば、T細胞の活性化をもたらすシグナル伝達カスケードを始動させる。
【0045】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞内ドメインは、MyD88ポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの場合では、細胞内ドメインは、少なくとも1つの、典型的には2つのMyD88ポリペプチドを含有する。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、少なくとも1つのMyD88ポリペプチドを含有する。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、2つのMyD88ポリペプチドを含有する。特定の態様では、細胞内ドメインに存在する2つのMyD88ポリペプチドは、同一である。いくつかの態様では、2つのMyD88ポリペプチドの各々は、完全長MyD88である。いくつかの態様では、2つのMyD88ポリペプチドの各々は、例えばキメラシグナル伝達受容体が細胞から発現され、そこに免疫抑制性サイトカインが会合した場合に、二量体化すること、IRAK-4を動員すること、および/またはIRAK-4リン酸化を媒介することができるMyD88短縮部分である。いくつかの態様では、例えば、2つのMyD88ポリペプチドが存在する場合、MyD88ポリペプチドは、直接的に連結されるか、または、例えばリンカーを介して間接的に連結される。いくつかの態様では、2つのMyD88ポリペプチドが存在する場合、MyD88ポリペプチドは、リンカーを介して連結される。いくつかの態様では、リンカーは、(GGGGS)n(SEQ ID NO:47)であり、ここで、nは、1~4(両端の値を含む)の整数である。いくつかの態様では、リンカーは、GGGGS(SEQ ID NO:48)である。
【0046】
提供されるキメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、TME中によく見られ、免疫抑制を引き起こすことが知られているサイトカインなどの分子に結合し、膜貫通ドメインを介して1つまたは複数の、例えば2つのMyD88含有細胞内ドメインに連結される(直接的にまたはリンカーを介して間接的に)。細胞外ドメインはまた、本明細書において代替的に細胞外ドメインと称され得る。いくつかの態様では、細胞外ドメインが結合するサイトカインは、免疫抑制性または抗炎症性サイトカインである。いくつかの態様では、サイトカインは、免疫抑制因子である。いくつかの態様では、サイトカインは、免疫細胞を抑制する。いくつかの態様では、サイトカインは、形質転換増殖因子β(TGFβ)である。TGFβは、TMEにおいてがん細胞および線維芽細胞によって分泌され、免疫抑制および血管新生をもたらし得る。いくつかの態様では、サイトカイン受容体は、TGFβに結合する。提供されるキメラシグナル伝達受容体が標的とする免疫抑制性サイトカインの他の例としては、IL10、IL4、またはIL1Raが挙げられるが、それらに限定されない。
【0047】
本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、TME中の免疫抑制性サイトカイン、例えばTGFβ、IL10、IL4、IL1Raが免疫細胞に及ぼす免疫抑制作用を減弱させ、免疫細胞が腫瘍細胞に対して有効な応答を開始するのを可能にする。例えば、本明細書の実施例に示しているように、キメラシグナル伝達受容体は、免疫細胞を活性化するシグナル伝達経路を作動させると同時に、ネイティブの、例えば、抑制的な経路を通じたシグナル伝達を低減もする。本明細書に示しているように、2つのMyD88ポリペプチドを含有する細胞内ドメインを有するキメラシグナル伝達受容体を発現する細胞は、特に、インビトロとインビボの両アッセイでの腫瘍細胞殺傷を低減するのではなく促進する能力を含め、TGFβの存在下で例示されるような驚くほど効果的な免疫抑制シグナル伝達のリダイレクトを示す。本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体を発現するように操作された細胞は、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体を欠いている組換え抗原受容体(例えば、CAR、TCR)を発現するように操作されたものを含めた細胞と比較して、例示的な免疫抑制性サイトカインTGFβを含有する周囲環境の存在下で改善された持続性、生存、増殖、および細胞傷害性を実証する。本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体を使用して、免疫抑制TMEを活性化環境へと変えることができる。いくつかの態様では、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体を使用して、組換え抗原受容体(例えば、CAR)を発現しかつ/または分泌性タンパク質(例えば、BiTEまたはサイトカインなど)を産生する細胞の持続性、生存、増殖、および細胞傷害性を増強することができる。
【0048】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体は、腫瘍/がん細胞を殺傷可能なT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)およびナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫細胞において発現される。
【0049】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、所望の抗原(例えば、腫瘍抗原)に対する特異性を与えるリガンド結合ドメイン(例えば、抗体または抗体断片)と一次活性化シグナルを供給するT細胞活性化ドメインなどの活性化細胞内ドメイン部分とを合わせ持つCARまたは組換えTCRなどの組換え抗原受容体をコードする細胞内に提供される。代替的にまたは追加的に、いくつかの局面では、キメラシグナル伝達受容体は、分泌性組換え分子、例えばサイトカインまたは二重特異性抗体(例えば、BiTE)をコードする細胞内に提供される。いくつかの態様では、提供されるキメラシグナル伝達受容体は、免疫細胞内で遺伝子操作される場合、免疫細胞、例えば、T細胞の刺激および/または活性化をモジュレートし、それにより、例えば養子細胞療法の方法において使用するための、改善されたインビボ寿命、生存および/または持続性を有する遺伝子操作された細胞をもたらすことができる。いくつかの局面では、操作された細胞は、標的抗原を発現しない細胞の殺傷と比較して、標的分子を発現する標的細胞の殺傷増加を達成する。
【0050】
いくつかの場合では、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体を、T細胞において発現させることで、対象に投与された場合に、キメラシグナル伝達受容体を発現しない参照細胞組成物と比較して改善された1つまたは複数の特性を示す遺伝子操作されたT細胞を産生させることができる。代替的にまたは追加的に、いくつかの局面では、キメラシグナル伝達受容体は、分泌性組換え分子、例えばサイトカインまたは二重特異性抗体(例えば、BiTE)をコードするT細胞において発現させることができる。いくつかの例では、増加した持続性、活性、結合、および/または殺傷は、キメラシグナル伝達受容体を発現しない操作された細胞を含む参照組成物によって達成されるよりも大きい。したがって、いくつかの場合では、投与された参照組成物の細胞と比較して改善され得るまたは増加し得るまたはより大きくなり得る、投与された遺伝子操作された細胞の1つまたは複数の特性には、増加した活性化、ならびに増加した生存および/または持続性が含まれる。
【0051】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体を含有する操作された細胞は、操作されていない類似細胞と比較してまたは組換え抗原受容体を含むがキメラシグナル伝達受容体を含まない類似細胞と比較して増加した持続性および/または生存を示す。いくつかの態様では、増加した持続性を有する遺伝子操作された細胞は、それが投与された対象においてより良好な効力を示す。
【0052】
また、キメラシグナル伝達受容体、キメラシグナル伝達受容体を含有する操作された細胞、およびキメラシグナル伝達受容体と組換え分子、例えば組換え抗原受容体、例えば、CAR、TCR、またはサイトカインもしくは二重特異性抗体、例えば、BiTEなどの分泌される組換え分子とを含有する操作された細胞の方法、使用、および組成物も本明細書に提供される。また、細胞を操作するための核酸を含む、キメラシグナル伝達受容体およびキメラシグナル伝達受容体を含有する操作された細胞を操作、調製および産生する方法も提供される。さらに、キットおよび製造物が提供される。
【0053】
本出願において言及される特許文書、科学論文、およびデータベースを含むすべての刊行物は、あたかも各々個々の刊行物が個別に参照により組み入れられるのと同じ程度まで、すべての目的でその全体が参照により組み入れられる。本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開出願および他の刊行物において示される定義と相反するか、または別の形で一致しない場合は、本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義よりも優先される。
【0054】
本明細書において用いられるセクションの見出しは、構成を目的としたものにすぎず、記載されている主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0055】
I. キメラシグナル伝達受容体
本明細書において、例えば腫瘍微小環境(TME)内の、標的分子、例えば、免疫抑制性または抗炎症性サイトカインなどのサイトカインが結合した際に免疫細胞活性化を誘導する細胞内シグナル伝達経路を作動させることが可能なキメラシグナル伝達受容体が提供される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、細胞内シグナル伝達ドメインにつながれた細胞外ドメインを含有するように操作され、ここで、細胞外ドメインは、抗原結合ドメイン、例えば、TGFβ、IL10、IL4、またはIL1Raなどの免疫抑制性または抗炎症性サイトカインに結合するサイトカイン受容体などの受容体に由来する抗原結合ドメインを含有し、細胞内ドメインは、1つまたは複数の、例えば2つのMyD88アダプター分子ポリペプチドを含有する。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、2つのMyD88ポリペプチドを含有する。いくつかの態様では、1つまたは複数のMyD88ポリペプチド、例えば2つのMyD88ポリペプチドは、完全長MyD88であり得る。いくつかの態様では、1つまたは複数のMyD88ポリペプチド、例えば2つのMyD88ポリペプチドは、例えばキメラシグナル伝達受容体が細胞から発現され、そこにリガンド(例えば、免疫抑制性サイトカイン)が会合した場合に、二量体化すること、IRAK-4を動員すること、および/もしくはIRAK4のリン酸化(例えば、活性化)を促進することができるまたは二量体化するのに、IRAK-4を動員するのに、および/もしくはIRAK4のリン酸化(例えば、活性化)を促進するのに十分な短縮部分である。いくつかの態様では、1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に示される配列を有する。いくつかの態様では、キメラ受容体ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に示される配列を各々有する2つのMyD88ポリペプチドを含有する細胞内ドメインを有する。
【0056】
いくつかの態様では、細胞外ドメインは、TGFβ、IL10、IL4、またはIL1Raなどの免疫抑制性または抗炎症性サイトカインに結合する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、免疫抑制性サイトカインに結合することができる、例えば特異的に結合することができる任意の分子である。いくつかの態様では、細胞外ドメインは、受容体の免疫抑制性サイトカインのネイティブ受容体の一部分、例えば、TMEに存在するサイトカインに結合するネイティブサイトカイン受容体の一部分であるか、またはそれを含有する。例として、提供されるキメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、免疫抑制性サイトカインに結合することができる、例えば特異的に結合することができる天然に存在するサイトカイン受容体またはそのサイトカイン結合断片の細胞外ドメインであるか、またはそれを含有する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、免疫抑制性サイトカインに結合することができる、例えば特異的に結合することができる抗体または抗原結合断片である。抗原結合分子の非限定的な例としては、抗体、抗体断片、例えば、(Fab)2'断片および二価単鎖Fv(scFv)断片などの二価抗体断片、ならびにFab断片、Fv断片およびscFv断片などの一価抗体断片を含めた抗体断片、さらには前述のいずれかの抗原結合断片が挙げられる。
【0057】
いくつかの態様では、サイトカインは、TGFβであり、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、TGFβに結合し、例えば特異的に結合する。いくつかの態様では、細胞外ドメインは、TGFβに結合しTGFβ受容体であり得るネイティブサイトカイン受容体の一部分であるか、またはそれを含有する。いくつかの態様では、提供されるキメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、TGFβ受容体(TGFβR)の、例えばTGFβR2もしくはTGFβR1の細胞外ドメインまたはその結合断片であるか、または、それを含有する。いくつかの態様では、細胞外ドメインは、TGFβR2の細胞外ドメインである。
【0058】
いくつかの態様では、サイトカインは、IL10であり、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、IL-10に結合する、例えば特異的に結合する。いくつかの態様では、細胞外ドメインは、IL10に結合しIL10Rであり得るネイティブサイトカイン受容体の一部分であるか、またはそれを含有する。いくつかの態様では、提供されるキメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、IL-10Rの細胞外ドメインまたはその結合断片であるか、またはそれを含有する。
【0059】
いくつかの態様では、サイトカインは、IL4であり、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、IL-4に結合する、例えば特異的に結合する。いくつかの態様では、細胞外ドメインは、IL4に結合しIL4Rであり得るネイティブサイトカイン受容体の一部分であるか、またはそれを含有する。いくつかの態様では、提供されるキメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、IL4Rの細胞外ドメインまたはその結合断片であるか、またはそれを含有する。
【0060】
いくつかの態様では、サイトカインは、IL1Raであり、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、IL-1Raに結合する、例えば特異的に結合する。いくつかの態様では、提供されるキメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、IL-1Raに対して指向される抗体または抗原結合断片、例えば、scFvであるか、またはそれを含有する。
【0061】
本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、キメラシグナル伝達受容体およびその構成成分の機能を維持するために、かつ/または細胞表面、例えば、操作された細胞表面のキメラシグナル伝達受容体の発現を可能にするために、膜貫通ドメインおよび/またはリンカーなどの追加のドメインを含み得る。
【0062】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)を含有する細胞内ドメインは、膜貫通ドメインを通じて細胞外ドメインにつながれる。いくつかの態様では、提供されるキメラシグナル伝達受容体の膜貫通ドメインは、細胞外ドメインと1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)を含有する細胞内ドメインの一方または両方に直接的に連結される。いくつかの態様では、提供されるキメラシグナル伝達受容体の膜貫通ドメインは、リンカーを介して、細胞外ドメインと1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)を含有する細胞内ドメインの一方または両方に間接的に連結される。いくつかの態様では、提供されるキメラシグナル伝達受容体の膜貫通ドメインは、細胞外ドメインに直接的に連結され、かつ、リンカーを介して、1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)を含有する細胞内ドメインに間接的に連結される。いくつかの態様では、提供されるキメラシグナル伝達受容体の膜貫通ドメインは、リンカーを介して、細胞外ドメインに間接的に連結され、かつ、1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)を含有する細胞内ドメインに直接的に連結される。いくつかの態様では、リンカーは、細胞外ドメインまたは膜貫通ドメインが由来するサイトカイン受容体の天然に存在する配列であり得る。いくつかの態様では、リンカーは、合成リンカーであり得る。いくつかの態様では、リンカーは、ペプチドリンカーである。例として、いくつかの態様では、リンカーは、(GGGGS)n(SEQ ID:47)であり、ここで、nは、1~4(両端の値を含む)の整数である。いくつかの態様では、リンカーは、(GGGGS)2(SEQ ID NO:85)である。
【0063】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、ネイティブサイトカイン受容体に対して異種であるかまたはネイティブサイトカイン受容体の天然部分ではない。異種膜貫通ドメインは、記載されているようないずれかであり得る。
【0064】
いくつかの態様では、細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインは共に、免疫抑制性サイトカイン、例えばTGFβ、IL10またはIL4に結合するネイティブサイトカイン受容体由来のものである。例として、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインは、同じサイトカイン受容体由来のものであることができ、膜貫通ドメインは、サイトカイン受容体の天然に存在する膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、細胞外ドメインは、TGFβR、例えば、TGFβR2またはTGFβR1の細胞外ドメインであり、膜貫通ドメインは、それぞれのTGFβR細胞外ドメインに直接的に連結された、TGFβR膜貫通ドメイン、例えば、TGFβR2またはTGFβR1膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、TGFβR2細胞外ドメインに直接的に連結されたTGFβR2である。いくつかの態様では、細胞外ドメインは、IL10Rの細胞外ドメインであり、膜貫通ドメインは、IL10R細胞外ドメインに直接的に連結されたIL10R膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、細胞外ドメインは、IL4Rの細胞外ドメインであり、膜貫通ドメインは、IL4R細胞外ドメインに直接的に連結されたIL4R膜貫通ドメインである。
【0065】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞内ドメインの1つまたは複数のMyD88ポリペプチドは、リンカーを通じて膜貫通ドメインにつながれる。いくつかの態様では、リンカーは、細胞外ドメインまたは膜貫通ドメインが由来するサイトカイン受容体の細胞内ドメインの部分配列であるかまたはそれを含む、天然に存在する配列であり得る。いくつかの態様では、リンカーは、合成リンカーであり得る。いくつかの態様では、リンカーは、ペプチドリンカーである。例として、いくつかの態様では、リンカーは、(GGGGS)nであり、ここで、nは、1~4(両端の値を含む)の整数である(SEQ ID NO:47)。いくつかの態様では、リンカーは、(GGGGS)2(SEQ ID NO:85)である。
【0066】
いくつかの態様では、提供されるキメラシグナル伝達受容体中の、細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチドを膜貫通ドメインに連結する細胞内ドメインの部分配列とが、免疫抑制性サイトカイン、例えばTGFβ、IL10、またはIL4に結合するネイティブサイトカイン受容体由来の連続したアミノ酸配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、TGFβに結合し、TGFβRの、例えばTGFβR2またはTGFβR1の細胞外ドメインである細胞外ドメインと、それぞれのTGFβR、例えば、TGFβR2またはTGFβR1の膜貫通ドメインである膜貫通ドメインと、1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)に連結されたそれぞれのTGFβR、例えば、TGFβR2またはTGFβR1の細胞内ドメインの少なくとも連続したN末端部分を含有する細胞内ドメインとを含有する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、IL10に結合し、IL10Rの細胞外ドメインである細胞外ドメインと、それぞれのIL10Rの膜貫通ドメインである膜貫通ドメインと、1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)に連結されたIL10Rの細胞内ドメインの少なくとも連続したN末端部分を含有する細胞内ドメインとを含有する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、IL4に結合し、IL4Rの細胞外ドメインである細胞外ドメインと、IL4Rの膜貫通ドメインである膜貫通ドメインと、1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:2)に連結されたIL4Rの細胞内ドメインの少なくとも連続したN末端部分を含有する細胞内ドメインとを含有する。
【0067】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、免疫抑制性サイトカイン、例えばTGFβ、IL10、またはIL4に結合するネイティブサイトカイン受容体の連続したアミノ酸部分を含有し、連続したアミノ酸部分は、少なくともネイティブサイトカイン受容体の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含み、ネイティブサイトカイン受容体の細胞内シグナル伝達ドメインの一部分は、1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチド(SEQ ID NO:2)に置き換えられる。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくともネイティブサイトカイン受容体の細胞内シグナル伝達ドメインの部分配列を保持する。いくつかの態様では、部分配列は、ネイティブサイトカイン受容体の細胞内シグナル伝達ドメインのN末端部分の1~50個のアミノ酸残基である。いくつかの態様では、部分配列は、ネイティブサイトカイン受容体の細胞内シグナル伝達ドメインのN末端部分の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50個のアミノ酸残基である。典型的には、ネイティブサイトカイン受容体の細胞内シグナル伝達ドメインの部分配列は、阻害性シグナル伝達活性を付与しない非機能的部分である。例として、ネイティブサイトカイン受容体の細胞内シグナル伝達ドメインの部分配列は、機能的な阻害性シグナル伝達ドメインではなく、その結果、キメラシグナル伝達受容体へのリガンド結合に応答してリン酸化(活性化)されることができず、かつ/またはSMAD(例えば、SMAD2またはSMAD3)などの阻害性アダプター分子を動員することができない。
【0068】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体は、N末端からC末端へ、免疫抑制性サイトカインに結合する細胞外ドメインと;膜貫通ドメインと;リンカー配列、例えば本明細書に記載されるようなリンカー配列と;例えば本明細書に記載されるようなリンカーを通じて、タンデムに連結された2つのMyD88ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含有する。本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、細胞外ドメインにサイトカイン、例えば、TGFβ、IL10、IL4、IL1Raが結合するとMyD88ポリペプチドの二量体化が誘導されるように、操作される。例として、免疫抑制性サイトカイン、例えばTGFβ、IL10、IL4、IL1Raが結合すると、2つのキメラ受容体シグナル伝達受容体は、MyD88ドメイン間の相互作用を介して細胞の表面で二量体を形成することができる(例えば、図1Cを参照のこと)。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドの二量体化は、MyD88ポリペプチドおよびMyD88アダプターに動員されたIRAK4を含むオリゴマー複合体を産生する。したがって、いくつかの態様では、細胞外ドメインに免疫抑制性または抗炎症性サイトカインが結合すると、MyD88媒介シグナル伝達(例えば、細胞内シグナル伝達)が誘導される。いくつかの態様では、MyD88媒介シグナル伝達は、免疫細胞、例えば、T細胞の活性化を誘導する。
【0069】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の発現の検出または定量を支援する目的で、キメラシグナル伝達受容体は、検出可能な部分またはマーカーを含むことができる。いくつかの態様では、検出可能なマーカーは、myc-タグ(SEQ ID NO:101)である。いくつかの態様では、検出可能なマーカーは、ポリヒスチジンタグ(SEQ ID NO:103)である。いくつかの態様では、検出可能なマーカーは、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインのN末端に位置する。
【0070】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、細胞表面での発現のために細胞膜への局在化を容易にするシグナルペプチドを含む。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、前駆キメラシグナル伝達受容体タンパク質に存在し、切断されて成熟キメラシグナル伝達受容体を形成する。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、CD8αシグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、SEQ ID NO:102によって示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0071】
以下のサブセクションにおいて、提供されるキメラシグナル伝達受容体の例示的なドメインおよび配列を記載する。
【0072】
A. 細胞外ドメイン
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、免疫抑制性または抗炎症性サイトカインに結合する、例えば特異的に結合する、細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、免疫抑制性または抗炎症性サイトカインは、TGFβ、IL10、IL4、またはIL1Raのいずれか1つである。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、それぞれの免疫抑制性または抗炎症性サイトカインに結合する、同族受容体の細胞外部分または結合部分、例えばTGFβ、IL10、IL4、またはIL1Raの1つに結合する同族受容体の細胞外部分であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、免疫抑制性または抗炎症性サイトカインに結合する、例えばTGFβ、IL10、IL4、またはIL1Raの1つに結合する、抗体またはその抗原結合断片、例えば単鎖可変断片(scFv)または単一ドメイン抗体(sdAb)であるか、またはそれを含む。
【0073】
いくつかの態様では、免疫抑制性または抗炎症性サイトカインは、TGFβである。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、TGFβに結合する、例えば特異的に結合する、細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、TGFβに結合する細胞外ドメインは、TGFβに結合する、TGFβ受容体(TGFβR)の細胞外ドメインまたはその一部分である。いくつかの態様では、TGFβに結合するTGFβ受容体(TGFβR)またはその一部分は、TGFβ受容体1(TGFβR1)である。いくつかの態様では、TGFβに結合するTGFβRまたはその一部分は、TGFβ受容体2(TGFβR2)である。
【0074】
いくつかの態様では、細胞外ドメインは、TGFβに結合する、TGFβR2の細胞外ドメインまたはその一部分を含有する。TGFβR2は、UniProt P37173に記載されるような構造構成および配列を有する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:20によって示される配列を含むか、または前記配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、TGFβに結合するSEQ ID NO:20に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性であるまたは前記配列同一性を示すアミノ酸の配列を含むか、または前記アミノ酸の配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、TGFβに結合するSEQ ID NO:20のアミノ酸配列の一部分であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:20に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示しかつTGFβに結合するアミノ酸配列の一部分であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:21によって示される配列、またはSEQ ID NO:21に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列によってコードされ、コードされる配列がTGFβに結合する。
【0075】
いくつかの態様では、TGFβに結合する細胞外ドメインは、TGFβに結合する、TGFβR1の細胞外ドメインまたはその一部分である。TGFβR1は、UniProt P36897に記載されるような構造構成および配列を有する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:4によって示される配列を含むか、または前記配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:4に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性であるまたは前記配列同一性を示すアミノ酸の配列を含むか、または前記アミノ酸の配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、TGFβに結合するSEQ ID NO:4のアミノ酸配列の一部分であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:4に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示しかつTGFβに結合するアミノ酸配列の一部分であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:5によって示される配列によってコードされるタンパク質である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:5に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示す核酸配列によってコードされるタンパク質であり、コードされる配列がTGFβに結合する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:5の核酸配列の一部分によってコードされるタンパク質であり、そのコードされる部分がTGFβに結合する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:5に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示す核酸配列の一部分によってコードされるタンパク質であり、コードされる配列がTGFβに結合する。
【0076】
いくつかの態様では、免疫抑制性または抗炎症性サイトカインは、IL10である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、IL10に結合する、例えば特異的に結合する、細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、IL10に結合する細胞外ドメインは、IL10に結合する、IL10受容体(IL10R)の細胞外ドメインまたはその一部分である。IL10受容体は、II型サイトカイン受容体であり、2つのIL10Raサブユニットと2つのIL10Rbサブユニットの四量体である。IL-10への結合は、高親和性受容体IL10Ra(IL-10R1とも呼ばれる)によって媒介されるが、この中間複合体は、通常は、その後、細胞シグナル伝達が起こり得る前に低親和性IL10Rb(IL-10R2とも呼ばれる)鎖を動員するはずである。
【0077】
提供される態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、IL10に結合する、例えば特異的に結合する、細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、IL10に結合する細胞外ドメインは、IL10に結合する、IL-10Raの細胞外ドメインまたはその一部分である。IL10Raは、UniProt Q13651に記載されるような構造構成および配列を有する。IL-10Raは、細胞外ドメイン(例えば、SEQ ID NO:119)、膜貫通ドメイン(例えば、SEQ ID NO:120)および細胞内細胞質ドメイン(例えば、SEQ ID NO:121)を含有する配列を有する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:119によって示される配列を含むか、または前記配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:119に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性であるまたは前記配列同一性を示すアミノ酸の配列を含むか、または前記アミノ酸の配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、IL10に結合するSEQ ID NO:119のアミノ酸配列の一部分であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:119に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示しかつIL10に結合するアミノ酸配列の一部分であるか、またはそれを含む。
【0078】
いくつかの態様では、IL10に結合する細胞外ドメインは、IL10に結合する、IL-10Rbの細胞外ドメインまたはその一部分である。いくつかの態様では、IL10に結合する細胞外ドメインは、IL10に結合するIL-10Rbまたはその一部分を追加で動員することができる細胞外ドメインである。IL10Rbは、UniProt Q08334に記載されるような構造構成および配列を有する。IL-10Rbは、細胞外ドメイン(例えば、SEQ ID NO:122)、膜貫通ドメイン(例えば、SEQ ID NO:123)および細胞内細胞質ドメイン(例えば、SEQ ID NO:124)を含有する配列を有する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:122によって示される配列を含むか、または前記配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:122に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性であるまたは前記配列同一性を示すアミノ酸の配列を含むか、または前記アミノ酸の配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、IL10に結合するSEQ ID NO:122のアミノ酸配列の一部分であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:122に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示しかつIL10に結合するアミノ酸配列の一部分であるか、またはそれを含む。
【0079】
いくつかの態様では、免疫抑制性または抗炎症性サイトカインは、IL4である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、IL4に結合する、例えば特異的に結合する、細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、IL4に結合する細胞外ドメインは、IL4に結合する、IL4受容体(IL4R)の細胞外ドメインまたはその一部分である。いくつかの態様では、細胞外ドメインは、IL4に結合する、IL4Rの細胞外ドメインまたはその一部分を含有する。IL4Rは、UniProt P24394に記載されるような構造構成および配列を有する。IL-4Rは、細胞外ドメイン(例えば、SEQ ID NO:125)、膜貫通ドメイン(例えば、SEQ ID NO:126)および細胞内細胞質ドメイン(例えば、SEQ ID NO:127)を含有する配列を有する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:125によって示される配列を含むか、または前記配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:125に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性であるまたは前記配列同一性を示すアミノ酸の配列を含むか、または前記アミノ酸の配列である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、IL4に結合するSEQ ID NO:125のアミノ酸配列の一部分であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:125に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示しかつIL4に結合するアミノ酸配列の一部分であるか、またはそれを含む。
【0080】
いくつかの態様では、免疫抑制性または抗炎症性サイトカインは、IL1Raである。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、IL1Raに結合する、例えば特異的に結合する、細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、IL1Raに結合する抗体または抗原結合断片である細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞外ドメインは、IL1Raに対して指向されるscFvである。いくつかの態様では、細胞外ドメインは、IL1Raに対して指向されるsdAbである。
【0081】
B. 膜貫通ドメイン
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、細胞外ドメインと1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチドを含有する細胞内シグナル伝達ドメインとの間に膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、細胞上の細胞表面発現のためのコードタンパク質をもたらす。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、細胞外ドメイン(例えば、細胞外ドメインのC末端)に直接的に連結される。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、1つまたは複数のリンカーまたはスペーサーを介して細胞外ドメイン(例えば、細胞外ドメインのC末端)に間接的に連結される。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、細胞内シグナル伝達ドメインのN末端)に直接的に連結される。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、1つまたは複数のリンカーまたはスペーサーを介して細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、細胞内シグナル伝達ドメインのN末端)に間接的に連結される。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、主に疎水性のアミノ酸残基、例えばロイシンおよびバリンを含有する。
【0082】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、天然源に由来する。例えば、天然の膜貫通ドメインは、任意の膜結合または膜貫通タンパク質に由来し得る。いくつかの態様では、膜貫通アンカードメインを使用して、操作されたT細胞などの操作された細胞の表面にキメラシグナル伝達受容体が発現されるようにすることが確実にできる。好都合なことに、これは、キメラ受容体シグナル伝達受容体の細胞外ドメインが由来する特定のネイティブサイトカイン受容体由来のものであることもできる。細胞外ドメインが上述したような免疫抑制性サイトカインに結合するネイティブサイトカイン受容体の細胞外ドメインであるいくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の膜貫通ドメインは、ネイティブサイトカイン受容体由来の膜貫通ドメインであるか、または細胞の脂質二重層を貫通するのにもしくは細胞の表面でのキメラシグナル伝達受容体の発現を媒介するのに十分なその一部分である。本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体中の膜貫通ドメインの一部分についての言及は、細胞の脂質二重層においてキメラ受容体の発現を媒介するように膜貫通ドメインの活性を付与する機能的部分であると理解される。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、ネイティブサイトカイン受容体の完全な膜貫通ドメインである。他の態様では、膜貫通ドメインは、細胞外ドメインに対して異種であるか、またはそれに天然に関連しない。
【0083】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、TGFβRであるかまたはそれに由来する膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、TGFβR2膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、TGFβR2膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:22のアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:22に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、TGFβR2膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:23に示されるヌクレオチドの配列によってコードされる。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの細胞外ドメインは、上述したようなTGFβR2由来の細胞外ドメインである。
【0084】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、TGFβR1膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、TGFβR1膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:6のアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:6に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、TGFβR1膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:7に示されるヌクレオチドの配列によってコードされる。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの細胞外ドメインは、上述したようなTGFβR1由来の細胞外ドメインである。
【0085】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、IL10Ra膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、IL10Ra膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:120によって示される配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:120に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの細胞外ドメインは、上述したようなIL10Ra由来の細胞外ドメインである。
【0086】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、IL10Rb膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、IL10Rb膜貫通は、SEQ ID NO:123によって示される配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:123に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの細胞外ドメインは、上述したようなIL10Rb由来の細胞外ドメインである。
【0087】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、IL4R膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、IL4R膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:126によって示される配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:126に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの細胞外ドメインは、上述したようなIL4R由来の細胞外ドメインである。
【0088】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、異種膜貫通ドメイン、例えば、ネイティブ細胞表面受容体由来の多数の公知の膜貫通ドメインのいずれかである。細胞外ドメインが上述したような免疫抑制性サイトカインに結合するネイティブサイトカイン受容体の細胞外ドメインであるいくつかの態様では、膜貫通ドメインは、サイトカイン受容体の膜貫通ドメインではない非ネイティブ膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、膜結合または膜貫通タンパク質である別の受容体ポリペプチド由来の膜貫通ドメインに由来する。いくつかの態様では、T細胞上の別のタンパク質由来の膜貫通アンカードメインを使用することができる。天然源に由来する膜貫通ドメインの非限定的な例としては、T細胞受容体のα、β、もしくはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154に由来するもの(例えば、少なくとも膜貫通ドメインまたはその一部分を含む)が挙げられる。
【0089】
いくつかの態様では、膜貫通は、合成源に由来する。例えば、合成の膜貫通ドメインは、主に疎水性の残基、例えばロイシンおよびバリンを含むように操作され得る。いくつかの態様では、合成の膜貫通ドメインは、合成の膜貫通ドメインの一端または両端にフェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンの三つ組を含むように操作され得る。
【0090】
C. 細胞内シグナル伝達ドメイン、例えばMyD88細胞内シグナル伝達ドメイン
提供されるキメラシグナル伝達受容体は、免疫細胞活性化経路を作動させる1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチドを含有する細胞内シグナル伝達ドメインを有する。いくつかの態様では、免疫抑制性サイトカインに結合するキメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインは、例えば1つまたは複数の膜貫通ドメインを介して、細胞内シグナル伝達ドメインに連結される。したがって、いくつかの態様では、ネイティブサイトカイン受容体において通常は免疫抑制経路を作動させ得る細胞外ドメインは、1つまたは複数の、例えば2つのMyD88ポリペプチドに連結されることで、代わりに免疫細胞活性化経路を作動させる。
【0091】
いくつかの態様では、インターロイキン-1受容体関連キナーゼシグナル伝達を誘導可能であり、かつ/またはIRAK、例えば、IRAK4の結合もしくは動員もしくはリン酸化が可能である、1つまたは複数のMyD88ポリペプチドを含む細胞内ドメイン。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、2つのMyD88ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、2つのMyD88ポリペプチドをタンデムに含む細胞内ドメイン。
【0092】
上述したように、MyD88は、正の細胞シグナル伝達を供給してT細胞活性化を促進し、Toll様受容体(TLR)シグナル伝達経路の一部である、アダプターシグナル伝達分子である(図1Bを参照のこと)。TLR経路では、MyD88依存的応答が、TLRの二量体化によって起こり、これが、MyD88アダプタータンパク質を動員する。次に、MyD88が、IRAK4を含むタンパク質キナーゼIRAKを動員し、それらのリン酸化を導く。リン酸化IRAKは、TRAF-6シグナル伝達を誘導し、したがって、T細胞活性化をもたらし得る。
【0093】
いくつかの場合では、細胞内ドメインは、(1)デスドメイン(DD)またはその一部分(例えば、アミノ酸19~109、例えばSEQ ID NO:128の54~109部分);(2)中間ドメイン(ID)またはその一部分(例えば、SEQ ID NO:128のアミノ酸110~155);および(3)終端近接ドメイン(termination immediate domain)(TIR)またはその一部分(例えば、SEQ ID NO:128のアミノ酸159~213)を各々含む1つまたは複数のMyD88ポリペプチド、例えば2つのMyD88ポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、1つまたは複数のMyD88ポリペプチド配列の各々は、N末端メチオニンを含有する。例として、N末端メチオニンは、翻訳の開始に必要とされ得る。そのようなN末端メチオニンは、一般的に翻訳と同時にまたは翻訳の後に切断されるので、本明細書に開示される成熟タンパク質配列はまた、N末端メチオニンを欠いていると想定される。いくつかの態様では、1つまたは複数のMyD88ポリペプチド配列の各々は、N末端メチオニンを欠いている。
【0094】
提供される態様のいずれかでは、細胞内ドメインは、同じMyD88ポリペプチド配列を各々有する2つのMyD88ポリペプチドを含有する。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチド配列の各々は、完全長MyD88であるか、またはその機能的バリアント(例えば、SEQ ID NO:128に示される)である。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドの各々は、MyD88の短縮部分である。
【0095】
いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、SEQ ID NO:128に示されるアミノ酸の配列を有する。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、例えばキメラシグナル伝達受容体が細胞から発現され、そこにリガンド(例えば、免疫抑制性サイトカイン)が会合した場合に、二量体化するのに、IRAK-4を動員するのに、および/またはIRAK4のリン酸化(例えば、活性化)を促進するのに十分な、SEQ ID NO:128に示される配列の機能的バリアントである。いくつかの態様では、機能的バリアントは、SEQ ID NO:128に示されるアミノ酸の配列に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、または少なくとも98%もしくは少なくとも約98%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を有する。
【0096】
いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、MyD88の短縮部分である。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、SEQ ID NO:128に示される配列の短縮部分である。いくつかの態様では、短縮部分は、例えばキメラシグナル伝達受容体が細胞から発現され、そこにリガンド(例えば、免疫抑制性サイトカイン)が会合した場合に、二量体化するのに、IRAK-4を動員するのに、および/またはIRAK4のリン酸化(例えば、活性化)を促進するのに十分な、MyD88の連続したアミノ酸配列である。いくつかの態様では、短縮部分は、DDと、IDと、TIRドメインの一部分とを含む、MyD88の連続したアミノ酸配列である。いくつかの態様では、短縮部分は、100アミノ酸~194アミノ酸長である、例えば、150~180アミノ酸長である、MyD88の連続したアミノ酸配列である。いくつかの態様では、短縮部分は、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、178、179、または180アミノ酸長である、MyD88の連続したアミノ酸配列である。いくつかの態様では、MyD88の短縮部分は、完全なTIRドメインを欠いている。いくつかの態様では、MyD88の短縮部分は、完全長TIRドメインの連続したC末端アミノ酸の120~138を欠いている。いくつかの態様では、MyD88の短縮部分は、完全長TIRドメインの連続したC末端アミノ酸の120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、または138を欠いている。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列の少なくとも一部分であるかまたはそれを含むTIRドメインの一部分を含有する。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、SEQ ID NO:14に示されるTIRドメインの一部分を含有する。
【0097】
いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、例えばSEQ ID NO:128に示される、完全長MyD88のアミノ酸1~155として示される配列を含む、MyD88の短縮部分である。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、例えばSEQ ID NO:128に示される、完全長MyD88のアミノ酸1~155、1~156、1~157、1~158、1~159、1~160、1~161、1~162、1~163、1~164、1~165、1~166、1~167、1~168、1~169、1~170、1~171、1~172、1~173、1~174、1~175、1~176、1~177、1~178、1~179、または1~180として示されるMyD88の短縮部分である。いくつかの態様では、例えばSEQ ID NO:128に示される、完全長MyD88のアミノ酸1~171として示されるMyD88の短縮部分。いくつかの態様では、例えばSEQ ID NO:128に示される、完全長MyD88のアミノ酸1~172として示されるMyD88の短縮部分。いくつかの態様では、前記配列は、前述のいずれかのアミノ酸の配列に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、または少なくとも98%もしくは少なくとも約98%の配列同一性を示し、かつ、例えばキメラシグナル伝達受容体が細胞から発現され、そこにリガンド(例えば、免疫抑制性サイトカイン)が会合した場合に、二量体化するのに、IRAK-4を動員するのに、および/またはIRAK4のリン酸化(例えば、活性化)を促進するのに十分な、機能的バリアントであり得る。
【0098】
いくつかの態様では、MyD88の短縮部分は、例えばSEQ ID NO:128に示される、完全長MyD88のアミノ酸2~155として示される配列を含む。いくつかの態様では、MyD88の短縮部分は、例えばSEQ ID NO:128に示される、完全長MyD88のアミノ酸2~155、2~156、2~157、2~158、2~159、2~160、2~161、2~162、2~163、2~164、2~165、2~166、2~167、2~168、2~169、2~170、2~171、2~172、2~173、2~174、2~175、2~176、2~177、2~178、2~179または2~180として示される。いくつかの態様では、MyD88の短縮部分は、例えばSEQ ID NO:128に示される、完全長MyD88のアミノ酸2~171として示される。いくつかの態様では、MyD88の短縮部分は、完全長MyD88のアミノ酸2~172として示される、例えばSEQ ID NO:128 に示される。いくつかの態様では、前記配列は、前述のいずれかのアミノ酸の配列に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、または少なくとも98%もしくは少なくとも約98%の配列同一性を示し、かつ、例えばキメラシグナル伝達受容体が細胞から発現され、そこにリガンド(例えば、免疫抑制性サイトカイン)が会合した場合に、二量体化するのに、IRAK-4を動員するのに、および/またはIRAK4のリン酸化(例えば、活性化)を促進するのに十分な、機能的バリアントであり得る。
【0099】
いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、DDと、IDと、TIRドメインの一部分とを含む。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、DD、ID、および短縮TIRドメインを含む。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、DD、ID、および完全長TIRドメインを含む。いくつかの態様では、DDは、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、DDは、SEQ ID NO:11に示されるヌクレオチドの配列によってコードされる。いくつかの態様では、IDは、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、IDは、SEQ ID NO:13に示されるヌクレオチドの配列によってコードされる。いくつかの態様では、TIRは、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列の少なくとも一部分であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、アミノ酸配列の少なくとも一部分は、SEQ ID NO:15に示されるヌクレオチドの配列の連続した一部分によってコードされる。いくつかの態様では、TIRは、SEQ ID NO:14に対して少なくとも85%、90%、92%、95%もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸配列の少なくとも一部分であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、TIRは、SEQ ID NO:14に示されるTIRドメインの一部分である。いくつかの態様では、TIRドメインのT部分は、SEQ ID NO:15に示されるヌクレオチドの配列によってコードされる。
【0100】
いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列からなるか、またはそれから本質的になる。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示す配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示す配列からなるか、またはそれから本質的になる。
【0101】
いくつかの場合では、例えば、細胞内ドメインが2つのMyD88ポリペプチドを含む場合、MyD88ポリペプチドは、タンデムに配置される。例えば、いくつかの態様では、細胞内ドメインは、本明細書に記載されるような第1のMyD88ポリペプチド、および本明細書に記載されるような第2のMyD88ポリペプチドを含有し、この場合、第1のMyD88ポリペプチドと第2のMyD88ポリペプチドは、直接的にまたは間接的に連結される。いくつかの態様では、第1および第2のMyD88ポリペプチドは、直接的に連結される。例えば、いくつかの態様では、第2のMyD88ポリペプチドのN末端は、第1のMyD88ポリペプチドのC末端に直接的に連結される。代替的に、いくつかの態様では、第1および第2のMyD88ポリペプチドは、リンカーを通じて接続される。例えば、いくつかの態様では、第2のMyD88ポリペプチドのN末端は、リンカーによって、第1のポリペプチドのC末端に連結される。いくつかの態様では、リンカーは、グリシン/セリンリンカーである。いくつかの態様では、リンカー配列は、SEQ ID NO:47((GGGGS)n)によって示されるアミノ酸配列である。いくつかの態様では、リンカー配列は、SEQ ID NO:47((GGGGS)n)によって示されるアミノ酸配列であり、ここで、nは、1~4(両端の値を含む)の整数である。いくつかの態様では、リンカー配列は、SEQ ID NO:47((GGGGS)n)によって示されるアミノ酸配列であり、ここで、nは、1~4(両端の値を含む)の整数である。いくつかの態様では、リンカー配列は、SEQ ID NO:48(GGGGS)に示されるアミノ酸配列である。いくつかの態様では、リンカー配列は、SEQ ID NO:85(GGGGSGGGGS)によって示されるアミノ酸配列である。いくつかの態様では、リンカー配列は、SEQ ID NO:49(GGGGSGGGGSGGGGS)によって示されるアミノ酸配列である。いくつかの態様では、リンカー配列は、SEQ ID NO:50(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)によって示されるアミノ酸配列である。
【0102】
いくつかの態様では、第1および第2のMyD88ポリペプチドは、同一である。第1および第2のMyD88ポリペプチドの配列は、本明細書に記載されるようなMyD88ポリペプチドの任意の配列を含むことができる。いくつかの態様では、第1および第2のMyD88ポリペプチドの各々は、MyD88の同じ短縮部分である。いくつかの態様では、第1および第2のMyD88ポリペプチドは各々、SEQ ID NO:2によって示されるアミノ酸の配列を含む。いくつかの態様では、第1および第2のMyD88ポリペプチドは各々、SEQ ID NO:2によって示されるアミノ酸の配列からなるか、またはそれから本質的になる。いくつかの態様では、第1および第2のMyD88ポリペプチドは各々、SEQ ID NO:2の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示す配列である同じ配列を含む。いくつかの態様では、第1および第2のMyD88ポリペプチドは各々、SEQ ID NO:2の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示す配列である同じ配列からなるか、またはそれから本質的になる。
【0103】
いくつかの態様では、第1および第2のMyD88ポリペプチドは異なる。第1および第2のMyD88ポリペプチドの配列は、独立して、本明細書に記載されるようなMyD88ポリペプチドの任意の配列を含むことができる。いくつかの態様では、第1および第2のMyD88ポリペプチドの各々は、MyD88の短縮部分である。いくつかの態様では、第1または第2のMyD88ポリペプチドの一方は、SEQ ID NO:2によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含み、第1または第2のMyD88ポリペプチドの他方は、SEQ ID NO:2の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示す配列であるか、またはそれを含む。
【0104】
いくつかの態様では、1つまたは複数のMyD88ポリペプチド、例えば2つのMyD88ポリペプチドは、キメラシグナル伝達受容体の膜貫通ドメインに連結される。いくつかの態様では、1つまたは複数のMyD88ポリペプチドは、膜貫通ドメインに間接的に連結される。例えば、いくつかの場合では、MyD88ポリペプチドのN末端は、膜貫通ドメインのC末端に直接的に連結される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞内ドメインの1つまたは複数のMyD88ポリペプチドは、リンカーを通じて膜貫通ドメインにつながれる。したがって、いくつかの態様では、MyD88ポリペプチドは、リンカーを通じて膜貫通ドメインに間接的に連結される。例えば、1つまたは複数のMyD88ポリペプチドの1つ、例えば第1のMyD88ポリペプチドのN末端は、リンカー配列によって膜貫通ドメインのC末端に連結される。
【0105】
いくつかの態様では、1つまたは複数のMyD88ポリペプチド、例えば2つのMyD88ポリペプチドを膜貫通ドメインにつなぐリンカーは、ペプチドリンカーである。リンカーは、2~25アミノ酸長、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸であり得る。いくつかの態様では、リンカー配列は、SEQ ID NO:47((GGGGS)n)によって示されるアミノ酸配列であり、ここで、nは、1~4(両端の値を含む)の整数である。いくつかの態様では、リンカー配列は、SEQ ID NO:48(GGGGS)に示されるアミノ酸配列である。いくつかの態様では、リンカー配列は、SEQ ID NO:85(GGGGSGGGGS)によって示されるアミノ酸配列である。いくつかの態様では、リンカー配列は、SEQ ID NO:49(GGGGSGGGGSGGGGS)によって示されるアミノ酸配列である。いくつかの態様では、リンカー配列は、SEQ ID NO:50(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)によって示されるアミノ酸配列である。
【0106】
いくつかの態様では、1つまたは複数のMyD88、例えば2つのMyD88ポリペプチドを膜貫通ドメインにつなぐリンカーは、細胞外ドメインまたは膜貫通ドメインが由来するサイトカイン受容体の細胞内ドメインの部分配列であるかまたはそれを含む、天然に存在する配列であり得る。いくつかの態様では、サイトカイン受容体の細胞内ドメインの部分配列は、細胞質ドメインの一部分、例えば、阻害性シグナル伝達活性を付与しない細胞質ドメインの非機能的部分である。例として、ネイティブサイトカイン受容体の細胞内シグナル伝達ドメインの部分配列は、阻害性シグナル伝達を媒介可能である機能的な阻害性シグナル伝達ドメインではなく、その結果、キメラシグナル伝達受容体へのリガンド結合に応答してリン酸化(活性化)されることができず、かつ/またはSMAD(例えば、SMAD2またはSMAD3)などの阻害性アダプター分子を動員することができない。いくつかの態様では、前記部分配列は、サイトカイン受容体の細胞質ドメインのN末端アミノ酸の2~50、例えば2~25を含む。
【0107】
いくつかの態様では、1つまたは複数のMyD88ポリペプチド、例えば2つのMyD88を膜貫通ドメインにつなぐリンカーは、TGFβR2の細胞内ドメインの部分配列であり、前記部分配列が、TGFβR2の細胞質ドメインの非機能的部分である。いくつかの態様では、TGFβR2細胞質ドメインの部分配列は、TGFβR2細胞質ドメインの2~25のN末端酸、例えばSEQ ID NO:129に示されるTGFβR2細胞質ドメインのN末端アミノ酸の2~25を含む。いくつかの態様では、TGFβR2細胞質ドメインの部分配列は、例えばSEQ ID NO:129に示される、TGFβR2細胞質ドメインのアミノ酸1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、1~15、1~16、1~17、1~18、1~19、1~20、1~21、1~22、1~23、1~24、または1~25である。いくつかの態様では、TGFβR2細胞質ドメインの部分配列は、SEQ ID NO:24のアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、TGFβR2細胞質ドメインの部分配列は、SEQ ID NO:24に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、TGFβR2細胞質ドメインの部分配列は、SEQ ID NO:24に示される。いくつかの態様では、TGFβR2細胞質ドメインの部分配列は、SEQ ID NO:25に示されるヌクレオチドの配列によってコードされる。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの細胞外ドメインは、上述したようなTGFβR2由来の細胞外ドメインである。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの膜貫通ドメインは、上述したようなTGFβR2由来の細胞外ドメインである。
【0108】
いくつかの態様では、1つまたは複数のMyD88ポリペプチド、例えば2つのMyD88を膜貫通ドメインにつなぐリンカーは、TGFβR1の細胞内ドメインの部分配列、例えば、細胞質ドメインの一部分であり、前記一部分がTGFβR1の非機能的部分である。いくつかの態様では、TGFβR1細胞質ドメインの部分配列は、TGFβR1細胞質ドメイン、例えばSEQ ID NO:130に示されるTGFβR1細胞質ドメインのN末端連続アミノ酸の2~25を含む。いくつかの態様では、TGFβR1細胞質ドメインの部分配列は、例えばSEQ ID NO:130に完全に示される、TGFβR1細胞質ドメインのアミノ酸1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、1~15、1~16、1~17、1~18、1~19、1~20、1~21、1~22、1~23、1~24、または1~25である。いくつかの態様では、TGFβR1細胞質(細胞内)ドメインの部分配列は、SEQ ID NO:8のアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、TGFβR1細胞質ドメインの部分配列は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、TGFβR1細胞質ドメインの部分配列は、SEQ ID NO:8に示される。いくつかの態様では、TGFβR1細胞質ドメインの部分配列は、SEQ ID NO:9に示されるヌクレオチドの配列によってコードされる。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの細胞外ドメインは、上述したようなTGFβR1由来の細胞外ドメインである。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの膜貫通ドメインは、上述したようなTGFβR1由来の細胞外ドメインである。
【0109】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞内ドメインは、1つまたは複数のMyD88ポリペプチドを、例えば2つのMyD88を膜貫通ドメインにつなぐ、IL10Raの細胞内ドメインの部分配列、例えば、細胞質ドメインの一部分を含み、前記一部分がIL10Raの非機能的部分である。いくつかの態様では、IL10Ra細胞質ドメインの部分配列は、完全なIL10Ra細胞質ドメイン、例えばSEQ ID NO:121に示される完全なIL10Ra細胞質ドメインの2~25のN末端連続アミノ酸を含む細胞質ドメインの一部分である。いくつかの態様では、IL10Ra細胞質ドメインの部分配列は、例えばSEQ ID NO:121に完全に示される、完全なIL10Ra細胞質ドメインの2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のN末端連続アミノ酸である。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの細胞外ドメインは、上述したようなIL10Ra由来の細胞外ドメインである。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの膜貫通ドメインは、上述したようなIL10Ra由来の細胞外ドメインである。
【0110】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞内ドメインは、1つまたは複数のMyD88ポリペプチドを、例えば2つのMyD88を膜貫通ドメインにつなぐ、IL10Rbの細胞内ドメインの部分配列、例えば、細胞質ドメインの一部分を含み、前記一部分が、IL10Rbの非機能的部分である。いくつかの態様では、IL10Rb細胞質ドメインの部分配列は、完全なIL10Rb細胞質ドメイン、例えばSEQ ID NO:124に示される完全なIL10Rb細胞質ドメインの2~25のN末端連続アミノ酸を含む細胞質ドメインの一部分である。いくつかの態様では、IL10Rb細胞質ドメインの部分配列は、例えばSEQ ID NO:124に完全に示される、完全なIL10Ra細胞質ドメインの2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のN末端連続アミノ酸である。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの細胞外ドメインは、上述したようなIL10Rb由来の細胞外ドメインである。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの膜貫通ドメインは、上述したようなIL10Rb由来の細胞外ドメインである。
【0111】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の細胞内ドメインは、1つまたは複数のMyD88ポリペプチドを、例えば2つのMyD88を膜貫通ドメインにつなぐ、IL4Rの細胞内ドメインの部分配列、例えば、細胞質ドメインの一部分を含み、前記一部分がIL4Rの非機能的部分である。いくつかの態様では、IL4R細胞質ドメインの部分配列は、完全なIL4R細胞質ドメイン、例えばSEQ ID NO:127に示される完全なIL4R細胞質ドメインの2~25のN末端連続アミノ酸を含む細胞質ドメインの一部分である。いくつかの態様では、IL4R細胞質ドメインの部分配列は、例えばSEQ ID NO:127に完全に示される、完全なIL10Ra細胞質ドメインの2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のN末端連続アミノ酸である。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの細胞外ドメインは、上述したようなIL4R由来の細胞外ドメインである。いくつかのそのような態様では、キメラ受容体シグナル伝達ドメインの膜貫通ドメインは、上述したようなIL4R由来の細胞外ドメインである。
【0112】
いくつかの態様では、リンカー配列は、本明細書に記載されるような細胞質ドメインおよび本明細書に記載されるようなグリシン/セリンリンカー配列を含有する。
【0113】
D. 例示的なキメラシグナル伝達受容体ポリペプチド
キメラシグナル伝達受容体は、本明細書に、例えばセクションIA~ICに記載されるような、細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、1つまたは複数のMyD88ポリペプチドを含有する細胞内ドメインとを含む。いくつかの態様では、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、N末端からC末端へ、セクションI-Aに記載されるような免疫抑制性または抗炎症性サイトカインに結合することが可能な細胞外ドメインと、セクションI-Bに記載されるような膜貫通ドメインと、セクションI-Cに記載されるような細胞内ドメインとを含む。これらのドメインのどれかが、記載されるようなリンカーを介してつながれていてもよい。いくつかの態様では、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、N末端からC末端へ、セクションI-Aに記載されるような免疫抑制性または抗炎症性サイトカインに結合することが可能な細胞外ドメインと、セクションI-Bに記載されるような膜貫通ドメインと、本明細書に記載されるようなリンカー配列と、セクションI-Cに記載されるような細胞内ドメインとを含む。
【0114】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、免疫抑制性サイトカイン、例えばTGFβ、IL10またはIL4のネイティブサイトカイン受容体の連続した配列を含有し、連続した配列は、免疫抑制性サイトカインに結合するための細胞外ドメインおよびサイトカイン受容体の膜貫通ドメインを含有し、少なくともサイトカイン受容体の細胞内シグナル伝達ドメインの機能的な阻害性シグナル伝達ドメインは、1つまたは複数のMyD88ポリペプチド、例えば2つのMyD88ポリペプチドをタンデムに含有する細胞内シグナル伝達ドメインに置き換えられる。いくつかの態様では、ネイティブサイトカイン受容体の細胞内シグナル伝達ドメインの部分配列が、機能的な阻害性シグナル伝達ドメインではなく、その結果、キメラシグナル伝達受容体へのリガンド結合に応答してリン酸化(活性化)されることができず、かつ/またはSMAD(例えば、SMAD2またはSMAD3)などの阻害性アダプター分子を動員することができないという条件で、キメラシグナル伝達受容体の細胞内ドメインは、その部分配列を、例えば膜貫通ドメインと1つまたは複数のMyD88ポリペプチドとの間のリンカー配列として含有することができる。いくつかの態様では、サイトカイン受容体は、TGFβR1であり、機能的な阻害性シグナル伝達ドメインを欠いているサイトカイン受容体の連続したアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示される。いくつかの態様では、サイトカイン受容体は、TGFβR2であり、機能的な阻害性シグナル伝達ドメインを欠いているサイトカイン受容体の連続したアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3に示される。
【0115】
いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインの1つまたは複数のMyD88ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に示される配列を有する少なくとも1つのMyD88ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内ドメインの1つまたは複数のMyD88ポリペプチドは、タンデムにつながれた2つのMyD88ドメインである。いくつかの態様では、2つのMyD88ドメインは、直接的に連結される。いくつかの態様では、2つのMyD88ドメインは、本明細書に記載されるようなリンカーを通じて連結される。いくつかの態様では、タンデムに連結された2つのMyD88ドメインは、各々個別に、SEQ ID NO:2に示される配列を有する。各MyD88ドメイン間のリンカーは、記載されるようないずれかであり得る。
【0116】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、TGFβに結合する。いくつかの態様では、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、N末端からC末端へ、セクションI-Aに記載されるようなTGFβに結合することが可能な細胞外ドメインと、セクションI-Bに記載されるような膜貫通ドメインと、セクションI-Cに記載されるような細胞内ドメインとを含む。いくつかの態様では、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、N末端からC末端へ、セクションI-Aに記載されるようなTGFβに結合することが可能な細胞外ドメインと、セクションI-Bに記載されるような膜貫通ドメインと、本明細書に記載されるようなリンカー配列と、セクションI-Cに記載されるような細胞内ドメインとを含む。
【0117】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、細胞表面での発現のために細胞膜への局在化を容易にするシグナルペプチドを含む。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、前駆キメラシグナル伝達受容体タンパク質に存在し、切断されて成熟キメラシグナル伝達受容体を形成する。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、CD8αシグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、SEQ ID NO:102によって示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0118】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体は、TGFβに結合する、TGFβRの細胞外ドメインまたはその一部分である、細胞外ドメインと;TGFβR膜貫通ドメインまたはその一部分である膜貫通ドメインと;本明細書に記載されるようなリンカー配列と;例えば記載されるようないずれかの少なくとも1つのMyD88ドメインを含有する細胞内シグナル伝達ドメインとを、N末端からC末端へと含有する。いくつかの態様では、MyD88ドメインは、SEQ ID NO:2に示される配列の通りである。いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体は、TGFβに結合する、TGFβRの細胞外ドメインまたはその一部分である細胞外ドメインと;TGFβR膜貫通ドメインまたはその一部分である膜貫通ドメインと;本明細書に記載されるようなリンカー配列と;各々個別に記載されるようないずれかである2つのMyD88ドメインをタンデムに含む細胞内シグナル伝達ドメインとを、N末端からC末端へと含有する。いくつかの態様では、2つのMyD88ドメインは、直接的に連結される。いくつかの態様では、2つのMyD88ドメインは、本明細書に記載されるようなリンカーを通じて連結される。いくつかの態様では、タンデムに連結された2つのMyD88ドメインは、各々個別に、SEQ ID NO:2に示される配列を有する。各MyD88ドメイン間のリンカーは、記載されるようないずれかであり得る。
【0119】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、TGFβに結合する、TGFβR1の細胞外ドメインまたはその一部分である、膜貫通ドメインと;TGFβR1膜貫通ドメインまたはその一部分である膜貫通ドメインと;本明細書に記載されるようなリンカー配列と;例えば記載されるようないずれかの少なくとも1つのMyD88ドメインを含有する細胞内シグナル伝達ドメインとを、N末端からC末端へと含む。いくつかの態様では、MyD88ドメインは、SEQ ID NO:2に示される配列の通りである。
【0120】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸の配列につながれたSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸の配列を含有する。いくつかの態様では、SEQ ID NO:1に示される配列とSEQ ID NO:2に示される配列は、直接的に連結される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:90によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:90の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、シグナルペプチド(例えば、SEQ ID NO:102)を含み、これは、いくつかの場合では、細胞から発現された際に切断され得る。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:16によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:16の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:17によって示されるヌクレオチドの配列によってコードされる。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:17の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列によってコードされる。
【0121】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:91によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:91の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、シグナルペプチド(例えば、SEQ ID NO:102)を含み、これは、いくつかの場合では、細胞から発現された際に切断され得る。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:18によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:18の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:19によって示されるヌクレオチドの配列によってコードされる。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:19の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列によってコードされる。
【0122】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、TGFβに結合する、TGFβR1の細胞外ドメインまたはその一部分である、膜貫通ドメインと;TGFβR1膜貫通ドメインまたはその一部分である膜貫通ドメインと;本明細書に記載されるようなリンカー配列と;各々個別に記載されるようないずれかである2つのMyD88ドメインをタンデムに含有する細胞内シグナル伝達ドメインとを、N末端からC末端へと含む。いくつかの態様では、2つのMyD88ドメインは、直接的に連結される。いくつかの態様では、2つのMyD88ドメインは、本明細書に記載されるようなリンカーを通じて連結される。いくつかの態様では、タンデムに連結された2つのMyD88ドメインは、各々個別に、SEQ ID NO:2に示される配列を有する。各MyD88ドメイン間のリンカーは、記載されるようないずれかであり得る。
【0123】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、TGFβに結合する、TGFβR2の細胞外ドメインまたはその一部分である、膜貫通ドメインと;TGFβR2膜貫通ドメインまたはその一部分である膜貫通ドメインと;本明細書に記載されるようなリンカー配列と;例えば記載されるようないずれかの少なくとも1つのMyD88ドメインを含有する細胞内シグナル伝達ドメインとを、N末端からC末端へと含む。いくつかの態様では、MyD88ドメインは、SEQ ID NO:2に示される配列の通りである。
【0124】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸の配列につながれたSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸の配列を含有する。いくつかの態様では、SEQ ID NO:3に示される配列とSEQ ID NO:2に示される配列は、直接的に連結される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:92によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:92の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、シグナルペプチド(例えば、SEQ ID NO:102)を含み、これは、いくつかの場合では、細胞から発現された際に切断され得る。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:26によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:26の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:27によって示されるヌクレオチドの配列によってコードされる。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:27の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列によってコードされる。
【0125】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、TGFβに結合する、TGFβR2の細胞外ドメインまたはその一部分である、膜貫通ドメインと;TGFβR2膜貫通ドメインまたはその一部分である膜貫通ドメインと;本明細書に記載されるようなリンカー配列と;各々個別に記載されるようないずれかである2つのMyD88ドメインをタンデムに含有する細胞内シグナル伝達ドメインとを、N末端からC末端へと含む。いくつかの態様では、2つのMyD88ドメインは、直接的に連結される。いくつかの態様では、2つのMyD88ドメインは、本明細書に記載されるようなリンカーを通じて連結される。いくつかの態様では、タンデムに連結された2つのMyD88ドメインは、各々個別に、SEQ ID NO:2に示される配列を有する。各MyD88ドメイン間のリンカーは、記載されるようないずれかであり得る。
【0126】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:93によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:93の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、シグナルペプチド(例えば、SEQ ID NO:102)を含み、これは、いくつかの場合では、細胞から発現された際に切断され得る。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:28によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:28の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:29によって示されるヌクレオチドの配列によってコードされる。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:29の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列によってコードされる。
【0127】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:94によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:94の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、シグナルペプチド(例えば、SEQ ID NO:102)を含み、これは、いくつかの場合では、細胞から発現された際に切断され得る。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:30によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:30の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:31によって示されるヌクレオチドの配列によってコードされる。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:31の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列によってコードされる。
【0128】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の発現の検出または定量を支援する目的で、キメラシグナル伝達受容体は、検出可能な部分またはマーカーをさらに含む。いくつかの態様では、検出可能なマーカーは、myc-タグ(SEQ ID NO:101)である。いくつかの態様では、検出可能なマーカーは、ポリヒスチジンタグ(SEQ ID NO:103)である。いくつかの態様では、検出可能なマーカーは、キメラシグナル伝達受容体の細胞外ドメインのN末端に位置する。
【0129】
いくつかの場合では、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、キメラシグナル伝達受容体ポリペプチドのN末端またはC末端に、切断可能ペプチドまたはリボソームスキップエレメント、例えばIRESまたはT2Aを含有する。いくつかの態様では、切断可能ペプチドまたはリボソームスキップエレメントの包含は、単一のポリペプチドからの2つまたはそれ以上のポリペプチドの発現を可能にする。例えば、以下のセクションIIを参照されたい。いくつかの態様では、切断可能ペプチドは、T2Aである。いくつかの態様では、T2Aは、SEQ ID NO:61によって示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、T2Aは、SEQ ID NO:62によって示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、T2Aは、SEQ ID NO:113によって示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、T2Aは、SEQ ID NO:114によって示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0130】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:98によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:98の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。
【0131】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:99によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:99の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。
【0132】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:39によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:39の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。
【0133】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:41によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:41の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。
【0134】
II. 核酸およびベクター
また、キメラシグナル伝達受容体をコードするポリヌクレオチド(核酸分子)、ならびにそのようなポリペプチドおよび受容体を発現させるために細胞を遺伝子操作するためのベクターも提供される。
【0135】
A. ポリヌクレオチド
いくつかの態様では、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体のいずれかをコードするポリヌクレオチドが提供される。いくつかの局面では、ポリヌクレオチドは、単一の核酸配列、例えばキメラシグナル伝達受容体をコードする核酸配列を含有する。上で、例えばセクションI-Dで記載したように、いくつかの場合では、ポリヌクレオチドは、シグナルペプチドをコードするシグナル配列を含有する。例えば、シグナル配列は、CD8に由来するシグナルペプチド、例えばCD8αシグナル配列をコードし得る。いくつかの態様では、CD8αシグナルペプチドは、SEQ ID NO:102に示される配列、またはそのような配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列であるか、またはそれを含む。
【0136】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、キメラシグナル伝達受容体をコードする第1の核酸配列と、別の組換え分子、例えば分泌性組換え分子、例えばサイトカイン(例えば、IL-15またはIL-12)または二重特異性抗体(例えば、BiTE)をコードする第2の核酸配列とを含有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、キメラシグナル伝達受容体をコードする第1の核酸配列と組換え抗原受容体をコードする第2の核酸配列とを含有する。いくつかの局面では、組換え抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であるか、またはそれを含有する。いくつかの局面では、組換え抗原受容体は、T細胞受容体(TCR)、例えば、トランスジェニックTCRであるか、またはそれを含有する。例示的な組換え抗原受容体は、セクションIIIに記載される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、キメラシグナル伝達受容体をコードする第1の核酸配列と、分泌性である別の組換え分子、例えば二重特異性抗体またはサイトカインをコードする第2の核酸配列とを含有する。いくつかの局面では、二重特異性抗体は、BiTEである。サイトカインおよびBiTEを含む例示的な組換え分泌性分子は、セクションIVに記載される。
【0137】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体をコードするポリヌクレオチドは、キメラシグナル伝達受容体の発現を制御するために機能的に連結された少なくとも1つのプロモーターを含有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、キメラシグナル伝達受容体の発現を制御するために機能的に連結された2つ、3つ、またはそれ以上のプロモーターを含有する。
【0138】
いくつかの態様では、例えば、ポリヌクレオチドが、2つまたはそれ以上の核酸コード配列、例えば、キメラシグナル伝達受容体をコードする配列と、別の組換え分子、例えば組換え抗原受容体、例えば、CARもしくは組換えTCR、サイトカイン、または二重特異性抗体、例えば、BiTEをコードする配列とを含有する場合、少なくとも1つのプロモーターは、2つまたはそれ以上の核酸配列の発現を制御するために機能的に連結される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、キメラシグナル伝達受容体および/または組換え抗原受容体の発現を制御するために機能的に連結された2つ、3つ、またはそれ以上のプロモーターを含有する。
【0139】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の発現は、誘導性または条件付きである。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体の発現は、誘導性または条件付きである。したがって、いくつかの局面では、キメラシグナル伝達受容体および/または組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドは、条件付きプロモーター、エンハンサー、またはトランス活性化因子を含有する。いくつかのそのような局面では、条件付きプロモーター、エンハンサー、またはトランス活性化因子は、誘導性プロモーター、エンハンサー、もしくはトランス活性化因子、または抑制性プロモーター、エンハンサー、もしくはトランス活性化因子である。例えば、いくつかの態様では、誘導性または条件付きプロモーターを使用して、キメラシグナル伝達受容体および/または組換え抗原受容体の発現を特定の微小環境、例えば腫瘍微小環境に制限することができる。いくつかの態様では、誘導性または条件付きプロモーターは、低酸素、低グルコース、酸性pHおよび/または酸化ストレスなどの腫瘍微小環境の1つまたは複数の条件の存在下で活性である。他の態様では、誘導性または条件付きプロモーターによって駆動される発現は、熱、照射、または薬物などの外因性の要因への曝露によって調節される。
【0140】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体をコードするポリヌクレオチドは、EF1αプロモーターに機能的に連結される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドは、単一のEF1αプロモーターに機能的に連結される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体および分泌性組換え分子、例えばサイトカインまたは二重特異性抗体(例えば、BiTE)をコードするポリヌクレオチドは、単一のEF1αプロモーターに機能的に連結される。いくつかの態様では、EF1αプロモーターは、SEQ ID NO:112によって示される核酸配列であるか、またはそれを含む。
【0141】
ポリヌクレオチドが、タンパク質をコードする2つ以上の核酸配列、例えば、キメラシグナル伝達受容体をコードする第1の核酸配列と、別の組換え分子、例えば組換え抗原受容体(例えば、CAR、TCR)または二重特異性抗体(例えば、BiTE)をコードする第2の核酸配列とを含有する場合またはその逆である場合、ポリヌクレオチドは、第1の核酸配列と第2の核酸配列との間にペプチドをコードする核酸配列をさらに含み得る。いくつかの場合では、第1の核酸配列と第2の核酸配列との間に位置付けられる核酸は、翻訳中または翻訳後に第1および第2の核酸配列の翻訳産物を離隔するペプチドをコードする。いくつかの態様では、前記ペプチドは、配列内リボソーム進入部位(IRES)、自己切断ペプチド、またはT2Aペプチドなどのリボソームスキッピングを引き起こすペプチドを含有する。いくつかの態様では、切断可能ペプチドまたはリボソームスキップエレメントの包含は、単一のポリペプチドからの2つまたはそれ以上のポリペプチドの発現を可能にする。いくつかの態様では、前記ペプチドは、T2Aペプチドである自己切断ペプチドである。いくつかの態様では、T2Aは、SEQ ID NO:61によって示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、T2Aは、SEQ ID NO:62によって示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、T2Aは、SEQ ID NO:113によって示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、T2Aは、SEQ ID NO:114によって示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0142】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、キメラシグナル伝達受容体と抗原(例えば、CD19またはB7H3などの腫瘍抗原)に対して指向されるまたはそれに特異的なCARとをコードし、キメラシグナル伝達受容体をコードする核酸とCARをコードする核酸は、T2A自己切断ペプチドによって離隔される。
【0143】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:104によって示される配列をコードするヌクレオチドの配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:104の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示す配列をコードするヌクレオチドの配列であるか、またはそれを含む。
【0144】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:105によって示される配列をコードするヌクレオチドの配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:105の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示す配列をコードするヌクレオチドの配列であるか、またはそれを含む。
【0145】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:106によって示される配列をコードするヌクレオチドの配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:106の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示す配列をコードするヌクレオチドの配列であるか、またはそれを含む。
【0146】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:107によって示される配列をコードするヌクレオチドの配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:107の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示す配列をコードするヌクレオチドの配列であるか、またはそれを含む。
【0147】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体をコードするポリヌクレオチドは、培養細胞を含有する組成物に、レトロウイルス形質導入、トランスフェクションまたは形質転換などによって導入される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドは、培養細胞を含有する組成物に、レトロウイルス形質導入、トランスフェクションまたは形質転換などによって導入される。
【0148】
いくつかの態様では、本明細書に提供されるポリヌクレオチド(核酸分子)は、本明細書に記載されるようなキメラシグナル伝達受容体をコードする。いくつかの態様では、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体、例えば、CAR、TCRをコードする。加えて、いくつかの態様では、組換え抗原受容体、例えば、CARまたはTCRをコードするポリヌクレオチドは、本明細書に提供される。
【0149】
B. ベクター
また、本明細書に記載されるような核酸分子などのポリヌクレオチドを含有するベクターまたは構築物も提供される。いくつかの態様では、ベクターまたは構築物は、その発現を駆動するためにキメラシグナル伝達受容体をコードする核酸分子に機能的に連結された1つまたは複数のプロモーターを含有する。いくつかの態様では、プロモーターは、1つまたは2つ以上の核酸分子、例えば、キメラシグナル伝達受容体をコードする核酸分子および後述するような組換え抗原受容体、例えば、CAR、組換えTCRをコードする核酸分子に機能的に連結される。
【0150】
いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターである。いくつかの態様では、レトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの態様では、レトロウイルスベクターは、γレトロウイルスベクターである。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達をコードするポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターは、培養細胞を含有する組成物に、レトロウイルス形質導入(例えば、レンチウイルス形質導入)などによって導入される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体と別の組換え分子、例えば組換え抗原受容体および/または分泌性組換え分子(例えば、二重特異性抗体またはサイトカイン)とをコードするポリヌクレオチドは、培養細胞を含有する組成物に、レトロウイルス形質導入(例えば、レンチウイルス形質導入)などによって導入される。
【0151】
いくつかの態様では、ベクターまたは構築物は、ポリヌクレオチドの1つまたは複数の核酸分子の発現を駆動する単一のプロモーターを含む。いくつかの態様では、そのようなプロモーターは、マルチシストロン性(バイシストロン性またはトリシストロン性、例えば、米国特許第6,060,273号を参照のこと)であることができる。例えば、いくつかの態様では、転写単位を、IRES(配列内リボソーム進入部位)を含有するバイシストロン性単位として操作することができ、それにより、単一のプロモーターからのメッセージによって遺伝子産物(例えば、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体をコードする)の共発現が可能になる。いくつかの態様では、本明細書に提供されるベクターは、バイシストロン性であり、このことで、ベクターは、2つの核酸配列を含有しかつ発現することが可能になる。いくつかの場合では、バイシストロン性ベクターの2つの核酸配列は、キメラシグナル伝達受容体およびCARである。いくつかの態様では、本明細書に提供されるベクターは、トリシストロン性であり、このことで、ベクターは、3つの核酸配列を含有しかつ発現することが可能になる。いくつかの場合では、トリシストロン性ベクターの3つの核酸配列は、キメラシグナル伝達受容体ならびに組換えTCRのα鎖およびβ鎖をコードする核酸分子である。
【0152】
いくつかの態様では、単一のプロモーターは、自己切断ペプチドをコードする配列(例えば、2A配列)またはプロテアーゼ認識部位(例えば、フーリン)をコードする配列によって互いに離隔された2つまたは3つの遺伝子(例えば、キメラシグナル伝達受容体をコードするおよび組換え抗原受容体をコードする)を単一のオープンリーディングフレーム(ORF)に含有するRNAの発現を指令する。したがって、ORFは、翻訳中(2Aの場合)または翻訳後のいずれかに個々のタンパク質にプロセシングされる、単一のポリペプチドをコードする。いくつかの場合では、T2Aなどのペプチドは、リボソームに、2AエレメントのC末端でのペプチド結合の合成をスキップさせることができ(リボソームスキッピング)、それにより、2A配列の端と次のペプチド下流との間の離隔を導くことができる(例えば、de Felipe. Genetic Vaccines and Ther. 2:13 (2004)およびdeFelipe et al. Traffic 5:616-626 (2004)を参照のこと)。多くの2Aエレメントが当技術分野において公知である。本明細書に開示される方法および核酸において使用できる2A配列の例としては、非限定的に、米国特許公開番号20070116690に記載されているような、口蹄疫ウイルス由来の2A配列(F2A、例えば、SEQ ID NO:66)、ウマ鼻炎Aウイルス由来の2A配列(E2A、例えば、SEQ ID NO:65)、ゾセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス由来の2A配列(T2A、例えば、SEQ ID NO:61、62、113、または114)、およびブタテッショウウイルス-1由来の2A配列(P2A、例えば、SEQ ID NO:63または64)が挙げられる。
【0153】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体が導入された操作された細胞(例えば、T細胞)は、キメラシグナル伝達受容体の表面発現が陽性である細胞について選択される。いくつかの態様では、表面発現は、キメラシグナル伝達受容体の細胞外結合ドメインに特異的な試薬(例えば、抗体または他の免疫親和性試薬)を使用して細胞を検出または選択することによって評価することができる。例として、表面発現は、TGFβRに特異的な細胞を検出または選択することによって評価することができる。
【0154】
細胞に組換え抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)をコードする核酸も導入されるいくつかの態様では、細胞は、組換え抗原受容体の表面発現が陽性である細胞について選択されてもよい。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体と組換え抗原受容体の両方について陽性である細胞が選択され得る。いくつかの態様では、表面発現は、組換え抗原受容体の細胞外ドメインに特異的な試薬(例えば、抗体または他の免疫親和性試薬)を使用して細胞を検出または選択することによって評価することができる。例として、そのような試薬としては、例えば、CARに特異的な標的抗原、CARの抗原結合ドメインに特異的な抗イディオタイプ抗体、または免疫グロブリンの一部分に結合する試薬、例えばプロテインLもしくは他の抗免疫グロブリン抗体が挙げられる。他の局面では、組換えまたは操作されたT細胞受容体(TCR)の検出は、MHC四量体または抗TCRαもしくはβ鎖抗体で染色することによるものであってもよい。
【0155】
表面マーカーまたはタンパク質の発現レベルを評価するための多数の周知の方法、例えば、親和性に基づく方法、例えば、免疫親和性に基づく方法、例えば、表面マーカーの状況では、フローサイトメトリーなどによる検出が使用され得る。いくつかの態様では、標識は、フルオロフォアであり、表面マーカー(例えば、キメラシグナル伝達受容体または組換え抗原受容体)の検出または特定のための方法は、フローサイトメトリーによるものである。いくつかの態様では、マルチカラーフローサイトメトリーによって異なるマーカー毎に異なる標識が使用される。
【0156】
いくつかの態様では、複数の細胞がキメラシグナル伝達受容体を発現する操作された細胞、例えば操作されたT細胞を含有する組成物が産生される。いくつかの態様では、組成物中の細胞の少なくとも50%もしくは少なくとも約50%、少なくとも60%もしくは少なくとも約60%、少なくとも70%もしくは少なくとも約70%、少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%が、キメラシグナル伝達受容体を発現する。いくつかの態様では、複数の細胞がキメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)を発現する操作された細胞、例えば操作されたT細胞を含有する組成物が産生される。いくつかの態様では、組成物中の細胞の少なくとも50%もしくは少なくとも約50%、少なくとも60%もしくは少なくとも約60%、少なくとも70%もしくは少なくとも約70%、少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%が、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)を発現する。特定の態様では、組成物中の細胞の少なくとも80%または少なくとも約80%が、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)を発現する。いくつかの態様では、細胞は、T細胞である。任意の態様のいくつかでは、操作された細胞はまた、別の組換え分子、例えばサイトカイン(例えば、IL-12またはIL-15)または二重特異性抗体(例えば、BiTE)も産生、例えば、分泌し得る。
【0157】
III. 組換え抗原受容体
本明細書に記載されるように、いくつかの場合では、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、細胞、例えばT細胞において、組換え抗原受容体と共発現される。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、T細胞受容体である。
【0158】
A. キメラ抗原受容体
いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体およびCARは、例えば、本明細書に記載されるポリヌクレオチドまたはベクターを用いて、細胞表面でキメラシグナル伝達受容体およびCARを発現するように操作された細胞において発現される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体およびCARは、例えばセクションII-Aに記載されるように、2つの別々のポリヌクレオチドに含有される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体およびCARは、例えばセクションII-Aに記載されるように、単一のポリヌクレオチドに含有される。
【0159】
本明細書に提供されるCARは、キメラ抗原受容体がTCR複合体などの抗原受容体複合体を通じて活性化を模倣するように、細胞外抗原結合ドメインおよび1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含む遺伝子操作された受容体である。いくつかの態様では、CARは、膜貫通ドメインおよび/または細胞内ドメインをさらに含有し、いくつかの態様では、細胞外ドメインは、膜貫通ドメインおよび/または細胞内ドメインを通じて細胞内シグナル伝達ドメインに連結される。CARは、典型的には、ドメイン、例えば、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインが、天然に存在する抗原受容体、例えば共刺激性受容体などを介して受信するシグナルと同様のシグナルを発生する働きをするように操作される。
【0160】
いくつかの態様では、CARは、CARに含有される細胞外抗原結合ドメインを介して抗原に結合する、例えば、特異的に結合するように操作される。抗原は、本明細書において標的抗原と称され得る。
【0161】
例示的な標的抗原としては、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H6、B7H3、炭酸脱水酵素9(CA9、またCAIXまたはG250としても知られている)、がん-精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、またNY-ESO-1およびLAGE-2としても知られている)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD138、CD171、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;またFc受容体ホモログ5またはFCRH5としても知られている)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体α、胎児アセチルコリン受容体、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerbB2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-AI)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体α(IL-22Ra)、IL-13受容体α2(IL-13Ra2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、κ軽鎖、L1細胞接着分子(L1CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、メソテリン、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、がん胎児抗原、黒色腫の優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG、また5T4としても知られている)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子が挙げられるが、それらに限定されない。
【0162】
いくつかの態様では、標的抗原は、CD3、NKp46、CD5、CD19;CD123;CD22;CD30;CD171;CS-1(またCD2サブセット1、CRACC、SLAMF7、CD319、および19A24とも称される);C型レクチン様分子-1(CLL-1またはCLECL1);CD33;上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRviii);ガングリオシドG2(GD2);ガングリオシドGD3(aNeu5Ac(2-8)aNeu5Ac(2-3)bDGalp(l-4)bDGlcp(l-l)Cer);TNF受容体ファミリーメンバーB細胞成熟(BCMA);Tn抗原((Tn Ag)または(GalNAca-Ser/Thr));前立腺特異膜抗原(PSMA);受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1);Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3);腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72);CD38;CD44v6;造血前駆細胞上ではなく急性白血病またはリンパ腫上に発現されるグリコシル化CD43エピトープ、非造血がん上に発現されるグリコシル化CD43エピトープ、がん胎児性抗原(CEA);上皮細胞接着分子(EPCAM);B7H3(CD276);KIT(CD117);インターロイキン-13受容体サブユニットα-2(IL-13Ra2またはCD213A2);メソテリン;インターロイキン11受容体α(IL-llRa);前立腺幹細胞抗原(PSCA);プロテアーゼセリン21(TestisinまたはPRSS21);血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2);ルイス(Y)抗原;CD24;血小板由来成長因子受容体β(PDGFR-β);ステージ特異的胚抗原-4(SSEA-4);CD20;葉酸受容体α;受容体チロシン-タンパク質キナーゼERBB2(Her2/neu);ムチン1、細胞表面関連(MUC1);上皮成長因子受容体(EGFR);神経細胞接着分子(NCAM);プロスターゼ;前立腺酸性フォスファターゼ(PAP);伸長因子2変異型(ELF2M);エフリンB2;線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP);インスリン様成長因子1受容体(IGF-I受容体)、炭酸脱水酵素IX(CAlX);プロテアソーム(Prosome、Macropain)サブユニット、β型、9(LMP2);糖タンパク質100(gpl00);切断点クラスター領域(BCR)およびエーベルソンマウス白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ1(Abl)からなるがん遺伝子融合タンパク質(bcr-abl);チロシナーゼ;エフリンA型受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルルイス接着分子(sLe);ガングリオシドGM3(aNeu5Ac(2-3)bDClalp(l-4)bDGlcp(l-1)Cer);トランスグルタミナーゼ5(TGS5);高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);o-アセチル-GD2ガングリオシド(OAcGD2);腫瘍内皮マーカー1;(TEM1/CD248);腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R);クローディン6(CLDN6);甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);Gタンパク質結合受容体クラスCグループ5、メンバーD(GPRC5D);X染色体オープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異1(PLAC1);globoH糖セラミド(GloboH)の六糖部分;乳腺分化抗原(NY-BR-1);ウロプラキン2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体β3(ADRB3);パネキシン3(PANX3);Gタンパク質結合受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K 9(LY6K);嗅覚受容体51E2(OR51E2);TCRγ代替リーディングフレームタンパク質(TARP);ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1);がん/精巣抗原1(NY-ES0-1);がん/精巣抗原2(LAGE-1a);黒色腫関連抗原1(MAGE-A1);ETS転座-バリアント遺伝子6、染色体12pに位置(ETV6-AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリー、メンバーlA(XAGEl);アンジオポエチン結合細胞表面受容体2(Tie 2);黒色腫がん精巣抗原-1(MAD-CT-1);黒色腫がん精巣抗原-2(MAD-CT-2);Fos関連抗原1;腫瘍タンパク質p53(p53);p53変異体;プロステイン;サバイビン(surviving);テロメラーゼ;前立腺がん腫瘍抗原-1(PCT A-1またはガレクチン8)、T細胞によって認識される黒色腫抗原1(メランAまたはMARTI);ラット肉腫(Ras)変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座切断点;アポトーシスの黒色腫阻害因子(ML-IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N-アセチルグルコサミニル-転移酵素V(NA17);ペアボックスタンパク質Pax-3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンBl;v-mycトリ骨髄球腫症ウイルスがん遺伝子神経芽腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2);シトクロムP450 lB 1(CYPlB 1);CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様(BORISまたはBrother of the Regulator of lmprinted Site)、T細胞によって認識される扁平上皮がん抗原3(SART3);ペアボックスタンパク質Pax-5(PAX5);プロアクロシン結合タンパク質sp32(OY-TESl);リンパ球特異タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP-4);滑膜肉腫、X切断点2(SSX2);終末糖化産物受容体(RAGE-1);腎臓ユビキタス1(RUl);腎臓ユビキタス2(RU2);レグマイン;ヒトパピローマウイルスE6(HPV E6);ヒトパピローマウイルスE7(HPV E7);腸カルボキシルエステラーゼ;ヒートショックタンパク質70-2変異型(mut hsp70-2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIRl);IgA受容体のFc断片(FCARまたはCD89);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C-型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン-3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);および免疫グロブリンラムダ様ポリペプチド1(IGLLl)、MPL、ビオチン、c-MYCエピトープタグ、CD34、LAMP1 TROP2、GFRα4、CDH17、CDH6、NYBR1、CDH19、CD200R、Slea(CA19.9;シアリルルイス抗原)フコシル-GM1、PTK7、gpNMB、CDH1-CD324、DLL3、CD276/B7H3、IL11Ra、IL13Ra2、CD179b-IGLl1、ALK TCRγ-δ、NKG2D、CD32(FCGR2A)、CSPG4-HMW-MAA、Tim1-/HVCR1、CSF2RA(GM-CSFR-α)、TGFβR2、VEGFR2/KDR、Lews Ag、TCR-β1鎖、TCR-β2鎖、TCR-γ鎖、TCR-δ鎖、黄体形成ホルモン受容体(LHR)、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、絨毛性ゴナドトロピンホルモン受容体(CGHR)、CCR4、SLAMF6、SLAMF4、HIV1エンベロープ糖タンパク質、HTLV1-Tax、CMV pp65、EBV-EBNA3c、A型インフルエンザヘマグルチニン(HA)、GAD、PDL1、グアニリルシクラーゼC(GCC)、KSHV-K8.1タンパク質、KSHV-gHタンパク質、デスモグレイン3(Dsg3)に対する自己抗体、デスモグレイン1(Dsg1)に対する自己抗体、HLA、HLA-A、HLA-A2、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、HLA-G、IGE、CD99、RAS G12V、組織因子1(TF1)、AFP、GPRC5D、クローディン18.2(CLD18A2またはCLDN18A.2))、P-糖タンパク質、STEAP1、LIV1、NECTIN-4、CRIPTO、GPA33、BST1/CD157、および低伝導性塩素チャネルおよびインテグリンB7からなる群より選択される。
【0163】
いくつかの態様では、標的抗原は、CD33、CD123、MPL、CD19、CD22、CD20、BCMA、CS1、FLT3、CSF2RA、IL6R、LAMP1、TSLRP、CD4、CXCR4、GPC3、CD45、CD44v、CD43、CD32、CD38、CD79b、CD138、CD179b、CD70、葉酸受容体β、WT1、NY-ESO1、CLL1、IL1Ra、CLEC5A、PR1、TGFβ、ROR1、TnAg、CD200R、κ軽鎖、TCRb1定常鎖、TCRb2定常鎖、TCRa定常鎖、TCRg、TCRd、CD5、CD52、CD7、CD3e、IL1RAP、Lym1、Lym2、および/またはBST1/CD157である。
【0164】
標的抗原の非限定的な例は、Jurgens et al. (2019)、または国際特許出願公開番号WO2012/079000、WO2015/157386、WO2015/075468、WO2013/176916、WO2011/119979、WO2012/079000、WO2014/031687、WO2011/059836、WO2014/153270、WO2015142675、WO2016049459、US20160355590において確認でき、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0165】
一態様では、LYM1に対する抗原結合物質は、この抗原を標的とするVLおよびVH断片の、または抗体、例えば、US20160355590A1に記載されている抗体の、抗原結合部分、例えば、CDRである。一態様では、LYM1に対する抗原結合物質は、例えば、US20160355590A1に記載されている、抗体、抗体断片または抗体様部分である。
【0166】
いくつかの態様では、受容体が標的とする抗原としては、B細胞悪性腫瘍、神経芽腫、および/または卵巣がん腫に関連する抗原が挙げられる。
【0167】
いくつかの態様では、標的抗原は、細胞表面に発現される。いくつかの態様では、標的抗原は、細胞表面リガンド、細胞表面受容体、または細胞表面マーカーである。いくつかの態様では、標的抗原は、ポリペプチドまたはその断片である。いくつかの態様では、標的抗原は、例えばMHC複合体によって提示された、プロセシングされたペプチド抗原である。いくつかの態様では、標的抗原は、炭水化物である。いくつかの態様では、標的抗原は、CARに含有される細胞外抗原結合ドメインが標的とし得る細胞によって発現される任意の分子である。
【0168】
いくつかの態様では、標的抗原は、細胞上に選択的に、排他的に発現されるか、または過剰発現される。いくつかの態様では、例えば、標的抗原は、疾患または病態に関連する細胞上に発現される。疾患または病態に関連する細胞の非限定的な例としては、腫瘍細胞、がん細胞、ウイルス感染細胞、またはそれ以外の健康な細胞もしくは組織から分化可能な細胞が挙げられる。いくつかの態様では、標的抗原は、腫瘍細胞上に発現される。いくつかの態様では、標的抗原は、がん細胞上に発現される。
【0169】
いくつかの態様では、CARに含有される細胞外抗原結合ドメインとしては、抗体分子の1つまたは複数の抗原結合部分、例えば、モノクローナル抗体(mAb)の可変重(VH)および可変軽(VL)鎖に由来する単鎖抗体断片(scFv)、または単一ドメイン抗体(sdAb)、例えば、sdFv、ナノボディ、VHHおよびVNARが挙げられる。
【0170】
いくつかの態様では、細胞外抗原結合ドメインは、scFvである。いくつかの態様では、scFvは、重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域をつなぐ1つまたは複数の可動性リンカーを含む。リンカーは、典型的には、ペプチドリンカー、例えば、可動性および/または可溶性のペプチドリンカーである。中でも、リンカーは、グリシンおよびセリンが豊富なもの、および/またはいくつかの場合ではトレオニンが豊富なものである。いくつかの態様では、リンカーは、溶解性を向上させることができる、リシンおよび/またはグルタミン酸などの荷電残基をさらに含む。いくつかの態様では、リンカーは、1つまたは複数のプロリンをさらに含む。リンカーの非限定的な例としては、様々な数の配列GGGGS(4GS;SEQ ID NO:48)の繰り返しを有するリンカー、nが1~4の整数である(GGGGS)n(SEQ ID NO:47)、配列GGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO:49)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(SEQ ID NO:115)、SRGGGGSGGGGSGGGGSLEMA(SEQ ID NO:116)が挙げられる。
【0171】
いくつかの態様では、CARは、膜貫通ドメインを含有する。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、スペーサー配列を介して細胞外抗原結合ドメインに接続される。スペース配列としては、ヒンジ領域などの、免疫グロブリン定常領域の完全長または一部分が挙げられ得るが、それらに限定されない。いくつかの態様では、スペーサーは、IgG4ヒンジ領域、CH1/CL(例えば、IgG1、IgG4定常領域)、Fc領域である。スペーサーの非限定的な例は、Hudecek et al. (2013) Clin. Cancer Res., 19:3153または国際特許出願公開番号WO2014/031687において確認でき、これらは参照により本明細書に組み入れられる。代替的に、いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、細胞外抗原結合ドメインに直接的に連結される。
【0172】
膜貫通ドメインは、天然に存在する膜ドメイン、または選択もしくは改変された膜貫通ドメインであり得る。いくつかの態様では、選択または改変された膜貫通ドメインは、ネイティブまたは内因性の細胞タンパク質との相互作用を抑止または最小化するのに有用である。
【0173】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、任意の天然に存在する膜結合または膜貫通タンパク質に由来し得る。天然に存在する膜貫通ドメインの例は、T細胞受容体のα、β、もしくはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137またはCD154に由来し得る。
【0174】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、合成の膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、合成の膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含む。いくつかの局面では、合成の膜貫通ドメインの各端にフェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンの三つ組が見いだされる。
【0175】
いくつかの態様では、短いオリゴまたはポリペプチドリンカー、例えば、2~10アミノ酸長のリンカー、例えば、グリシンおよびセリン、例えば、グリシン-セリン二重項を含有するものが存在し、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間で連結を形成する。
【0176】
いくつかの態様では、CARは、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインまたは成分を含有する。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインまたは成分は、TCR複合体の細胞内成分である。いくつかの態様では、TCR複合体の細胞内成分は、CD3鎖、例えばCD3-ζ鎖である。いくつかの態様では、CARは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または他のCD膜貫通ドメインをさらに含む。
【0177】
本明細書に提供されるCARは、1つまたは複数の追加の分子、例えば、Fc受容体γ、CD8、CD4、CD25、またはCD16の一部分をさらに含有し得る。いくつかの態様では、CARは、CD3-ζ(CD3-ζ)鎖またはFc受容体γの一部分とCD8、CD4、CD25、またはCD16から構成される分子を含み得る。
【0178】
いくつかの態様では、CARの細胞外抗原結合ドメインが標的抗原に結合すると、受容体の細胞内シグナル伝達ドメインが、免疫細胞、例えば、操作されたT細胞の正常なエフェクター機能または応答を活性化する。いくつかの態様では、細胞外抗原結合ドメインが標的抗原に結合すると、細胞溶解活性またはT-ヘルパー活性を誘導する。いくつかの態様では、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体(TCR)の細胞質配列を含み、いくつかの局面では、自然状況下でそのような受容体と協調して作用することで標的抗原結合に続くシグナル伝達を開始する共受容体の細胞質配列、および/またはそのような分子の任意の誘導体もしくはバリアント、および/または同じ機能的能力を有する任意の合成配列も含む。
【0179】
いくつかの態様では、CARは、二次または共刺激性のシグナル伝達が可能なドメインをさらに含む。
【0180】
いくつかの態様では、CARは、TCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。したがって、いくつかの態様では、CARは、例えば、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD8、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものを含む一次細胞質シグナル伝達配列に含有されるような、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有する。いくつかの態様では、CARは、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達分子またはその一部分を含有する。
【0181】
いくつかの態様では、CARは、CD28、4-1BB、OX40、CD27、DAP10およびICOSなどの共刺激性受容体のシグナル伝達ドメインおよび/または膜貫通部分を含む。いくつかの局面では、同じCARは、活性化成分と共刺激性成分の両方を含む。
【0182】
いくつかの態様では、CARは、細胞質部分に、1つまたは複数の、例えば、2つまたはそれ以上の共刺激性ドメインおよび活性化ドメイン、例えば、一次活性化ドメインを包含する。例示的なCARとしては、CD3-ζ、CD28および4-1BBの細胞内成分が挙げられる。
【0183】
いくつかの態様では、CARは、第一世代、第二世代または第三世代のCARである。
【0184】
いくつかの態様では、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、例えばsdAbまたはscFv;スペーサー、例えばIg-ヒンジ含有スペーサーのいずれか;CD28またはそのバリアントの一部分である膜貫通ドメイン;4-1BBまたはその機能的バリアントのシグナル伝達部分を含有する細胞内シグナル伝達ドメイン;およびCD3ζシグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアントのシグナル伝達部分を含む。いくつかの態様では、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、例えばsdAbまたはscFv;スペーサー、例えばIg-ヒンジ含有スペーサーのいずれか;CD8aまたはそのバリアントの一部分である膜貫通ドメイン;4-1BBまたはその機能的バリアントのシグナル伝達部分を含有する細胞内シグナル伝達ドメイン;およびCD3ζシグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアントのシグナル伝達部分を含む。いくつかの態様では、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、例えばsdAbまたはscFv;CD8aまたはそのバリアントの一部分である膜貫通ドメイン;4-1BBまたはその機能的バリアントのシグナル伝達部分を含有する細胞内シグナル伝達ドメイン;およびCD3ζシグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアントのシグナル伝達部分を含む。
【0185】
いくつかの態様では、CARは、標的抗原に特異的に結合する細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびCD3-ζ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。いくつかの態様では、CARは、標的抗原に特異的に結合する細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびにCD3-ζ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインおよびT細胞共刺激性分子の細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。いくつかの態様では、T細胞共刺激性分子は、41BBである。そのような態様のいずれかでは、抗原結合ドメインは、単鎖可変断片(scFv)である。抗原結合ドメインは、本明細書に記載される任意の標的抗原に結合する抗原結合ドメインであり得る。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、CD19、例えばヒトCD19に結合する。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、B7H3、例えばヒトB7H3に結合する。そのような態様のいずれかでは、膜貫通ドメインは、CD8の膜貫通部分を含む。
【0186】
いくつかの態様では、CARは、B細胞悪性腫瘍に存在するB細胞の表面に存在する標的抗原に結合することが可能な細胞外抗原結合ドメインを含む。いくつかの態様では、B細胞悪性腫瘍は、B細胞リンパ腫である。いくつかの態様では、標的抗原は、非ホジキンリンパ腫(NHL)およびホジキンリンパ腫の細胞の表面に存在する。いくつかの態様では、標的抗原は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、または慢性リンパ性白血病(CLL)、またはバーキットリンパ腫の細胞上に存在する。いくつかの態様では、標的抗原は、CD19である。いくつかの態様では、CARは、SEQ ID NO:83によって示される配列を有する細胞外抗原結合ドメイン;SEQ ID NO:52によって示される配列を有する膜貫通ドメイン;SEQ ID NO:56によって示される4-1BBのシグナル伝達部分を含有する細胞内シグナル伝達ドメイン;およびSEQ ID NO:55によって示されるCD3ζシグナル伝達ドメインのシグナル伝達部分を含む。いくつかの態様では、CARは、SEQ ID NO:117によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:117の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。
【0187】
いくつかの態様では、CARは、腫瘍またはがん細胞の表面に存在する標的抗原、例えば、腫瘍抗原または固形腫瘍抗原に結合することが可能な細胞外抗原結合ドメインを含む。いくつかの態様では、標的抗原は、神経芽腫、卵巣がん腫、前立腺がん、非小細胞肺がん、膵臓がん、乳がん、および/または結腸直腸がんの細胞の表面に存在する。いくつかの態様では、標的抗原は、神経芽腫がん細胞の表面に存在する。いくつかの態様では、標的抗原は、卵巣腫瘍細胞の表面に存在する。いくつかの態様では、標的抗原は、B7H3である。いくつかの態様では、CARは、SEQ ID NO:84によって示される配列を有する細胞外抗原結合ドメイン;SEQ ID NO:52によって示される配列を有する膜貫通ドメイン;SEQ ID NO:56によって示される4-1BBのシグナル伝達部分を含有する細胞内シグナル伝達ドメイン;およびSEQ ID NO:55によって示されるCD3ζシグナル伝達ドメインのシグナル伝達部分を含む。いくつかの態様では、CARは、SEQ ID NO:118によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:118の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。
【0188】
いくつかの態様では、本明細書に提供されるCARは、細胞表面での発現のために細胞膜への局在化を容易にするシグナルペプチドを含む。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、前駆CARタンパク質に存在し、切断されて成熟CARを形成する。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、CARの細胞外抗原結合ドメインとして役立つscFvの重鎖のN末端に位置する。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、CD8αシグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、SEQ ID NO:102によって示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0189】
いくつかの態様では、CARは、SEQ ID NO:38によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:38の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。
【0190】
いくつかの態様では、CARは、SEQ ID NO:45によって示されるアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、SEQ ID NO:45の配列に対して少なくとも85%、90%、92%、95%、もしくは97%、または約85%、90%、92%、95%、もしくは97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列であるか、またはそれを含む。
【0191】
本明細書に提供されるCARは、検出、例えば、発現、好結果の形質導入、および/または定量を目的として、マーカーまたはタグ、例えば、myc-タグをさらに含み得る。
【0192】
B. 組換えT細胞受容体
本明細書に記載されるように、いくつかの場合では、セクションIに記載されるようなキメラシグナル伝達受容体は、組換えT細胞受容体(TCR)などの組換え抗原受容体と共発現される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体および組換えTCRは、例えば、本明細書に記載されるポリヌクレオチドまたはベクターを用いて、細胞表面でキメラシグナル伝達受容体およびTCRを発現するように操作された細胞において発現される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体および組換えTCRは、2つの別々のポリヌクレオチドに含有される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体および組換えTCRは、例えばセクションII-Aに記載されるように、単一のポリヌクレオチドに含有される。
【0193】
いくつかの態様では、組換えTCRは、標的抗原とも称される抗原に特異的である。いくつかの態様では、標的抗原は、細胞表面に発現される。いくつかの態様では、標的抗原は、細胞表面リガンド、細胞表面受容体、または細胞表面マーカーである。いくつかの態様では、標的抗原は、ポリペプチドまたはその断片である。いくつかの態様では、標的抗原は、例えばMHC複合体によって提示された、プロセシングされたペプチド抗原である。いくつかの態様では、標的抗原は、組換えT細胞受容体結合ドメインが標的とし得る細胞によって発現される任意の分子である。
【0194】
いくつかの態様では、標的抗原は、細胞上に選択的に、排他的に発現されるか、または過剰発現される。いくつかの態様では、例えば、標的抗原は、疾患または病態に関連する細胞上に発現される。疾患または病態に関連する細胞の非限定的な例としては、腫瘍細胞、がん細胞、ウイルス感染細胞、またはそれ以外の健康な細胞もしくは組織から分化可能な細胞が挙げられる。いくつかの態様では、標的抗原は、腫瘍細胞上に発現される。いくつかの態様では、標的抗原は、がん細胞上に発現される。
【0195】
いくつかの態様では、TCRは、天然に存在するT細胞からクローン化される。いくつかの態様では、T細胞クローンは、患者から特定および単離される。いくつかの態様では、トランスジェニックマウスから生成および単離されたTCRは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、またはHLA)で操作される。例えば、腫瘍抗原を参照されたい(例えば、Parkhurst et al. (2009) Clin Cancer Res. 15:169-180およびCohen et al. (2005) J Immunol. 175:5799-5808を参照のこと)。いくつかの態様では、標的抗原に対するTCRを単離するためにファージディスプレイが使用される(例えば、Varela-Rohena et al. (2008) Nat Med. 14:1390-1395およびLi (2005) Nat Biotechnol. 23:349-354を参照のこと)。
【0196】
いくつかの態様では、T細胞クローンを得た後、TCRαおよびβ鎖を単離し、遺伝子発現ベクターにクローニングする。いくつかの態様では、クローニングされたTCRからαおよびβ鎖を単離して、遺伝子発現ベクターにクローニングしてもよい。いくつかの態様では、αおよびβ遺伝子を、セクションII-Aに記載されるようなピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドを介して連結することで、両鎖を共発現させることができる。本明細書に提供される組換えTCRは、検出、例えば、発現、好結果の形質導入、および/または定量を目的として、マーカーまたはタグをさらに含み得る。
【0197】
IV. 組換え分泌性分子
いくつかの態様では、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、細胞、例えばT細胞において、分泌性分子と共発現される。いくつかの態様では、分泌性分子は、二重特異性抗体、例えば二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である。いくつかの態様では、分泌性分子は、サイトカインである。
【0198】
いくつかの態様では、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、細胞、例えばT細胞において、二重特異性ターゲティング分子、例えば二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)と共発現される。いくつかの態様では、細胞はまた、上のセクションIIIに記載のいずれかのような組換え抗原受容体を発現するように操作される。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの態様では、組換え抗原受容体は、T細胞受容体である。
【0199】
いくつかの態様では、二重特異性ターゲティング分子は、二重特異性抗体である。いくつかの態様では、二重特異性抗体は、2つの異なる結合特異性を含み、したがって、2つの異なる抗原に結合する。一態様では、二重特異性抗体は、第1の抗原に結合する第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原に結合する第2の抗原結合ドメインを含む。別の態様では、二重特異性抗体は、第1および第2の単鎖可変断片(scFv)分子を含む抗原結合ドメインを含む。一態様では、第1および第2の抗原結合ドメインは、標的細胞上の抗原および活性化T細胞上の抗原に結合する。
【0200】
一態様では、二重特異性抗体は、活性化T細胞上の少なくとも1つの抗原に対する特異性を含む。活性化T細胞抗原には、別の細胞を活性化することができるT細胞の表面に見いだされる抗原が含まれる。活性化T細胞抗原は、共刺激性分子に結合し得る。共刺激性分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要とされる、抗原受容体またはそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。活性化T細胞抗原の例としては、CD3、CD4、CD8、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、またはその任意の断片を挙げることができるが、それらに限定されない。いくつかの態様では、T細胞抗原は、CD3である。これらの例では、二重特異性抗体は、T細胞抗原を認識し、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)と称される。
【0201】
二重特異性抗体またはBiTE分子はまた、少なくとも1つの標的細胞関連抗原に対して特異性を有する可溶性タンパク質としても発現され得る。提供される態様では、標的細胞抗原は、T細胞受容体が結合する同じ抗原であり得るか、または異なる抗原であり得る。標的細胞抗原には、任意の腫瘍関連抗原(TAA)またはウイルス、細菌および寄生虫抗原、またはその任意の断片が含まれる。標的細胞抗原は、標的細胞を規定する任意のタイプのリガンドを含み得る。例えば、標的細胞抗原は、特定の疾患状態に関連する標的細胞上の細胞マーカーとして作用するリガンドを認識するように選択され得る。したがって、細胞マーカーは、ウイルス、細菌および寄生虫感染、自己免疫疾患およびがん細胞に関連するものを含め、二重特異性抗体中の抗原結合ドメインに対するリガンドとして作用し得る。
【0202】
いくつかの態様では、腫瘍抗原は、CD2、CD19、CD20、CD22、CD27、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD47、CD52、CD56、CD70、CD79、およびCD137からなる群より選択される。いくつかの態様では、腫瘍抗原は、4-1BB、5T4、AGS-5、AGS-16、アンジオポエチン2、B7.1、B7.2、B7DC、B7H1、B7H2、B7H3、BT-062、BTLA、CAIX、がん胎児性抗原、CTLA4、Cripto、ED-B、ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EGFL7、EpCAM、EphA2、EphA3、EphB2、FAP、フィブロネクチン、葉酸受容体、ガングリオシドGM3、GD2、糖質コルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)、gp100、gpA33、GPNMB、ICOS、IGF1R、インテグリンαν、インテグリンανβ、KIR、LAG-3、ルイスY、メソテリン、c-MET、MN炭酸脱水酵素IX、MUC1、MUC16、ネクチン-4、NKGD2、NOTCH、OX40、OX40L、PD-1、PDL1、PSCA、PSMA、RANKL、ROR1、ROR2、SLC44A4、シンデカン-1、TACI、TAG-72、テネイシン、TIM3、TRAILR1、TRAILR2、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、およびそれらのバリアントからなる群より選択される。
【0203】
いくつかの態様では、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)は、CD19/CD3、CD20/CD3、CD22/CD3、CD38/CD3、BCMA/CD3、FAP/CD3、PD-L1/CD3、PD-L2/CD3、またはGD2/CD3に対してターゲティングされた二重特異性抗体である。例として、二重特異性抗体は、抗CD3×抗GD2二重特異性抗体であり得る。いくつかの態様では、二重特異性抗体の各抗体は、scFvである。いくつかの態様では、BiTEは、CD19およびCD3、CD20およびCD3、CD22およびcD3、CD38およびCD3、BCMAおよびCD3、FAPおよびCD3、PD-L1およびCD3、PD-L2およびCD3、またはGD2およびCD3に結合するscFvを含む。
【0204】
一態様では、二重特異性抗体は、2つ以上の抗原結合ドメインを含む。この態様では、少なくとも1つの抗原結合ドメインは、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単鎖可変断片、単一ドメイン抗体、その抗原結合断片、およびそれらの任意の組み合わせを含む。ヒト抗体およびヒト化抗体を作製するための技術は、本明細書の他の箇所に記載される。
【0205】
いくつかの態様では、提供される細胞は、標的細胞上の抗原および活性化T細胞上の抗原に対する二重特異性を含む二重特異性抗体をコードする核酸で操作され、ここで、T細胞は、二重特異性抗体を一過性に分泌する。二重特異性抗体を操作および発現させるための技術としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、WO 93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991)を参照のこと)、および「ノブ・イン・ホール(knob-in-hole)」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照のこと)が挙げられるが、それらに限定されない。また、抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果を操作すること(WO 2009/089004A1);2つまたはそれ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、およびBrennan et al., Science 229:81 (1985)を参照のこと);二重特異性抗体を産生させるためにロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)を参照のこと);二重特異性抗体断片を作製するために「ダイアボディー」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照のこと);および単鎖Fv(scFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照のこと);および、例えばTutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)に記載されているように三重特異性抗体を調製することによって、多重特異性抗体を作製してもよい。「オクトパス抗体」を含め、3つまたはそれ以上の機能的な抗原結合部位を有する操作された抗体も本明細書に含まれる(例えば、US 2006/0025576A1を参照のこと)。二重特異性抗体は、2つの異なる抗体、またはその一部分を連結することによって構築することができる。例えば、二重特異性抗体は、2つの異なる抗体からのFab、F(ab')2、Fab'、scFv、およびsdAbを含むことができる。
【0206】
いくつかの態様では、組換え分子は、サイトカイン、例えば、インターロイキンである。インターロイキンは、広範な免疫応答を媒介する広く分泌されるタンパク質およびシグナル分子である、サイトカインの一群である。いくつかの態様では、インターロイキンもしくはその機能的部分、またはそれをコードするポリヌクレオチドが、キメラシグナル伝達受容体でまた操作されている細胞に導入される。いくつかの態様では、インターロイキンまたはその機能的部分は、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、IL-18、またはIL-21の1つまたは複数の部分ペプチドまたは完全ペプチドである。いくつかの態様では、サイトカインは、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、Flt3-L、SCF、またはIL-7である。いくつかの態様では、サイトカインは、IL-2またはその機能的部分である。いくつかの態様では、サイトカインは、IL-12またはその機能的部分である。いくつかの態様では、サイトカインは、IL-15またはその機能的部分である。いくつかの態様では、サイトカインは、IL-21またはその機能的部分である。いくつかの態様では、サイトカインは、サイトカインに対するそれぞれの受容体と共に導入され得る。サイトカイン(例えば、IL-2、IL-12、IL-15、またはIL-21)のアミノ酸配列は、成熟サイトカインの任意の機能的部分、例えば、成熟IL-2、成熟IL-12、成熟IL-15または成熟IL-21の任意の機能的部分を含み得る。機能的部分は、機能的部分がそれぞれのインターロイキン受容体に特異的に結合するという条件で、それが一部であるインターロイキンの連続したアミノ酸を含む任意の一部分であることができる。「機能的部分」という用語は、インターロイキンに関して使用される場合、インターロイキンの任意の部分または断片のことを指し、その部分または断片は、それが一部であるインターロイキン(親インターロイキン)の生物学的活性を保持する。機能的部分は、例えば、それぞれのインターロイキン受容体に特異的に結合する能力、インターロイキンの下流標的を活性化する能力、ならびに/または、免疫細胞、例えば、T細胞の分化、増殖(または死)および活性の1つまたは複数を親インターロイキンと似た程度、同じ程度またはより高い程度まで誘導する能力を保持するインターロイキンの一部を包含する。インターロイキンの機能的部分の生物学的活性は、当技術分野において公知のアッセイを使用して測定され得る。親インターロイキンに関して、機能的部分は、例として、親成熟インターロイキンのアミノ酸配列の約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上を含むことができる。
【0207】
V. 細胞療法
いくつかの局面では、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体は、がんなどの疾患または病態を治療するために細胞療法において使用される。いくつかの態様では、セクションI-Aに記載されるようなキメラシグナル伝達受容体は、細胞療法のための操作された細胞において、組換え抗原受容体、例えば、セクションIIIに記載されるようなCARまたは組換えTCRと共発現される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体の存在は、腫瘍微小環境(TME)における免疫細胞の抑制を阻止する。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、TMEにおいて免疫細胞を活性化する。例えば、TMEがTGFβを含有する場合、操作された細胞の表面に発現されるキメラシグナル伝達受容体は、TGFβに結合して、免疫細胞を活性化することができるMyD88依存的シグナル伝達経路の誘導をもたらすことができる。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体はまた、そのネイティブな免疫細胞阻害経路を通じて、TGFβシグナル伝達を減少または最小化する。したがって、いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体は、免疫抑制TMEの存在下であっても、細胞療法の活性、有効性および/または持続性を増加させることができる。TMEにおける免疫細胞の抑制を減弱および/または阻止することによって、免疫細胞は、腫瘍細胞に対して有効な応答を開始することができる。
【0208】
また、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体を発現するように操作された細胞の集団、そのような細胞を含有しかつ/またはそのような細胞が濃縮された組成物も提供される。中でも、組成物は、投与のための、例えば養子細胞療法のための薬学的組成物および製剤である。また、対象、例えば、患者に前記細胞および組成物を投与するための治療的方法も提供される。
【0209】
いくつかの態様では、細胞療法の細胞は、遺伝子操作を介して、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体をコードする1つまたは複数の核酸を、例えば形質導入またはエレクトロポレーションによって、細胞に導入することによって操作され、それにより、細胞に両受容体を共発現させる。いくつかの態様では、遺伝子移入は、最初に、例えばサイトカインまたは活性化マーカーの発現によって測定される場合に例えば増殖、生存、および/または活性化などの応答を誘発する刺激と細胞を組み合わせることによって細胞を刺激し、続いて、活性化した細胞の形質導入を行い、臨床用途に十分な数まで培養で増大させることによって、成し遂げられる。
【0210】
A. 遺伝子操作のための細胞
本明細書に記載される方法(例えば、セクションIIおよび下記を参照)に従う遺伝子操作のための好適な細胞は、免疫細胞を含む。いくつかの態様では、免疫細胞は、健康な対象から得られる。いくつかの態様では、免疫細胞は、疾患または病態を有する対象から得られる。いくつかの態様では、免疫細胞は、初代細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は、自家である。いくつかの態様では、免疫細胞は、同種異系である。
【0211】
いくつかの態様では、遺伝子操作のための細胞は、がん細胞または腫瘍を標的することおよび/またはそれに浸潤すること可能な免疫細胞である。例えば、いくつかの場合では、免疫細胞は、がん細胞および/または腫瘍を標的にしてかつ/またはそれに浸潤して細胞殺傷に作用する細胞である。いくつかの態様では、操作のための免疫細胞は、リンパ球、例えばT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。
【0212】
いくつかの局面では、遺伝子操作のための免疫細胞は、T細胞である。いくつかの態様では、細胞療法のための操作される細胞は、T細胞である。T細胞は、細胞表面マーカー発現、例えば、CD3、CD4および/またはCD8発現に基づいて分類することができる。したがって、いくつかの態様では、T細胞は、CD3+ T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、CD4+ T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、CD8+ T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、細胞傷害性T細胞である。例えば、細胞傷害性T細胞は、がん細胞、損傷を受けている細胞、および/または感染細胞、例えばウイルス感染細胞などの細胞を殺傷可能である。いくつかの態様では、細胞傷害性T細胞は、CD8+ 細胞傷害性T細胞である。
【0213】
いくつかの場合では、操作のためのT細胞は、CD4+またはCD8+ T細胞のサブタイプである。例えば、いくつかの態様では、操作のためのCD4+またはCD8+ T細胞は、CD4+またはCD8+ナイーブT細胞、CD4+またはCD8+セントラルメモリーT細胞、CD4+またはCD8+エフェクターT細胞、あるいはCD4+またはCD8+エフェクターメモリーT細胞である。いくつかの態様では、T細胞サブタイプは、ナイーブT細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそのサブタイプ、例えば幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、TEMRA細胞または高分化型エフェクターメモリーT細胞である。いくつかの態様では、例えば本明細書に記載されるような、T細胞サブタイプのいずれか、すべて、またはサブセットが、遺伝子操作に使用され得る。
【0214】
いくつかの局面では、遺伝子操作のための免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの態様では、細胞療法のための操作される細胞は、NK細胞である。NK細胞は、自然免疫系の細胞傷害性リンパ球である。いくつかの態様では、操作のためのNK細胞は、CD3-、CD56+、CD94+、CD122/IL-2 Rβ+、CD127/IL-7α-、FcγRIII/CD16+、FcγRIII/CD16-、KIRファミリー受容体+、NKG2A+、NKG2D+、NKp30+、NKp44+、NKp46+、および/またはNKp80+である。いくつかの態様では、NK細胞は、CD56+/CD3-である。いくつかの態様では、NK細胞は、CD56+である。いくつかの態様では、CD56+/CD3- NK細胞は、CD7+/CD127-/NKp46+/T-bet+/Eomes+である。いくつかの態様では、NK細胞は、CD16+/CD56+である。いくつかの態様では、NK細胞は、CD16-/CD56+である。いくつかの態様では、NK細胞は、CD3-/CD16+/CD56+である。いくつかの態様では、NK細胞は、CD3-/CD16-/CD56+である。いくつかの態様では、例えば本明細書に記載されるような、NK細胞サブタイプのいずれか、すべて、またはサブセットが、遺伝子操作に使用され得る。
【0215】
いくつかの局面では、遺伝子操作のための免疫細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。いくつかの態様では、細胞療法のための操作される細胞は、TILである。TILは、血流から腫瘍の場所まで遊走するT細胞およびB細胞などの白血球を含む。いくつかの態様では、TILは、腫瘍間質に見いだされる。いくつかの態様では、TILは、腫瘍そのものに見いだされる。いくつかの態様では、TILは、腫瘍細胞殺傷に作用する。いくつかの態様では、TILは、CD3+である。いくつかの態様では、例えば本明細書に記載されるような、TILサブタイプのいずれか、すべて、またはサブセットが、遺伝子操作に使用され得る。
【0216】
B. 細胞の遺伝子操作のための方法
いくつかの態様では、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養工程および/または調製工程を含む。キメラシグナル伝達受容体の導入のための細胞は、試料、例えば生体試料、例えば、対象から得られたまたは由来するものから単離され得る。いくつかの態様では、細胞は、疾患もしくは病態を有する対象、または細胞療法を必要とする対象、または細胞療法が投与される対象から単離される。いくつかの態様では、対象は、特定の治療的介入、例えば、そのために細胞が単離、処理および/または操作されている養子細胞療法を必要とする、ヒトである。したがって、いくつかの態様では、細胞は、初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。いくつかの態様では、細胞は、組換え抗原受容体、例えば、CARまたはTCRを発現するようにさらに操作される。
【0217】
操作のための細胞は、試料、例えば限定されないが、対象から直接採取された組織、流体および他の試料だけでなく、分離、遠心分離、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターによる形質導入)、洗浄および/またはインキュベーションなどの1つまたは複数の処理工程から生じる試料に由来しても、単離されても、または何らかの方法で得られてもよい。いくつかの態様では、生体試料は、生物学的供給源から直接得られた試料である。いくつかの態様では、生体試料は、処理されている試料である。生体試料の非限定的な例としては、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗などの体液、組織および臓器の試料が、これらに由来する処理された試料を含め挙げられる。
【0218】
いくつかの態様では、細胞は、血液または血液由来試料、例えばアフェレーシスまたは白血球アフェレーシス産物に由来するか、またはそれから単離される。例示的な試料としては、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃腺、もしくは他の臓器、および/またはそれらに由来する細胞が挙げられる。いくつかの態様では、試料は、自家源から得られる。いくつかの態様では、試料は、同種異系源から得られる。いくつかの態様では、操作のための細胞は、細胞株から得られるかまたはそれに由来する。
【0219】
いくつかの態様では、試料から得られた細胞は、例えば、不要な成分を除去する、所望の成分を濃縮する、特定の試薬に感受性の細胞を溶解または除去するために、洗浄、遠心分離、および/または1つもしくは複数の試薬の存在下でインキュベートされる。いくつかの態様では、細胞は、密度、付着特性、サイズ、感受性および/または特定の成分に対する耐性などの1つまたは複数の特性に基づいて分離される。
【0220】
いくつかの態様では、前記方法は、密度に基づく細胞分離方法、例えば赤血球を溶解することによる末梢血からの白血球の調製、およびパーコールまたはフィコール勾配による遠心分離を含む。
【0221】
いくつかの態様では、細胞型は、表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカーまたは核酸などの1つまたは複数の特定の分子の、細胞における発現または存在に基づいて互いに単離され得る。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく任意の公知の分離方法が使用され得る。いくつかの態様では、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。
【0222】
本明細書において想定される分離技術は、試薬に結合した細胞をさらなる使用のために保持する陽性選択、抗体もしくは結合パートナーに結合しなかった細胞を保持する陰性選択、または陽性選択と陰性選択の両方に基づくことができる。いくつかの場合では、陰性選択は、特定のマーカー、例えば、表面分子の分離に利用可能である抗体がない場合に有用である。
【0223】
いくつかの態様では、細胞の分離は、特定の型の細胞の濃縮をもたらす。いくつかの態様では、濃縮は、特定の細胞型の65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、もしくはそれ以上、またはそれらの間の任意の割合である。
【0224】
いくつかの態様では、細胞の特定の亜集団が濃縮される。いくつかの態様では、濃縮された細胞は、セクションIII-Aに記載されるものである。いくつかの態様では、セクションIII-Aに記載されるようなT細胞、およびそのサブタイプが濃縮される。いくつかの態様では、NK細胞が濃縮される。一部の態様では、TILが濃縮される。
【0225】
分離および/または他の工程は、操作しようとする細胞の好適な単離方法に従って行われ得る。いくつかの態様では、分離は、例えば、閉鎖系および無菌系における臨床規模レベルでの細胞の自動分離のために、CliniMACSシステム(Miltenyi Biotic)を使用して行われる。構成要素は、統合マイクロコンピューター、磁気分離ユニット、蠕動ポンプ、および様々なピンチバルブを含むことができる。統合コンピューターは、いくつかの局面では、機器のすべての構成要素を制御し、標準化された順序で反復手順を実行するようにシステムに指示する。磁気分離ユニットは、いくつかの局面では、可動永久磁石と選択カラム用のホルダーとを含む。蠕動ポンプは、チューブセット全体の流速を制御し、ピンチバルブと共に、システムを通る緩衝液の制御された流れおよび細胞の継続的な懸濁を確実にする。
【0226】
CliniMACSシステムは、いくつかの局面では、滅菌非発熱性溶液中で供給される抗体結合磁化可能粒子を使用する。いくつかの態様では、細胞を磁性粒子で標識した後、細胞を洗浄して過剰の粒子を除去する。続いて、細胞調製バッグをチューブセットに接続し、次にこれを、緩衝剤を含有するバッグおよび細胞収集バッグに接続する。チューブセットは、プレカラムと分離カラムを含む予め組み立てられた滅菌チューブからなり、使い捨て専用である。分離プログラムの開始後、システムは、自動的に細胞試料を分離カラムに適用する。標識された細胞は、カラム内に保持される一方、標識されていない細胞は、一連の洗浄工程によって除去される。いくつかの態様では、本明細書に記載される方法と共に使用するための細胞集団は、標識されておらず、カラム内に保持されない。いくつかの態様では、本明細書に記載される方法と共に使用するための細胞集団は、標識されており、カラム内に保持される。いくつかの態様では、本明細書に記載される方法と共に使用するための細胞集団は、磁場の除去後にカラムから溶出され、細胞収集バッグ内に収集される。
【0227】
ある特定の態様では、分離は、CliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を使用して行われる。CliniMACS Prodigyシステムは、いくつかの局面では、遠心分離による細胞の自動洗浄および分画を可能にする細胞処理ユニットを備える。CliniMACS Prodigyシステムはまた、搭載カメラと、ソース細胞産物の巨視的層を識別することによって最適な細胞分画エンドポイントを決定する画像認識ソフトウェアとを含むこともできる。例えば、末梢血は、赤血球、白血球および血漿の層に自動的に分離され得る。CliniMACS Prodigyシステムはまた、例えば、細胞分化および増大、抗原負荷ならびに長期細胞培養などの細胞培養プロトコルを達成する統合細胞培養チャンバーを含むこともできる。入力ポートは、培地の無菌除去および補充を可能にし、細胞は、統合顕微鏡を使用してモニタリングすることができる。例えば、Klebanoff et al. (2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakuraet al. (2012) Blood.1:72-82、およびWang et al. (2012) J Immunother.35(9):689-701を参照されたい。
【0228】
いくつかの態様では、本明細書に記載される細胞集団は、フローサイトメトリーを介して収集および濃縮(または枯渇)され、フローサイトメトリーでは、複数の細胞表面マーカーについて染色された細胞が流体流中で運ばれる。いくつかの態様では、本明細書に記載される細胞集団は、分取規模(FACS)選別を介して収集および濃縮(または枯渇)される。ある特定の態様では、本明細書に記載される細胞集団は、FACSに基づく検出システムと組み合わせた微小電気機械システム(MEMS)チップの使用によって収集および濃縮(または枯渇)される(例えば、WO 2010/033140、Cho et al. (2010) Lab Chip 10, 1567-1573;およびGodin et al. (2008) J Biophoton. 1(5):355-376を参照のこと)。どちらの場合も、細胞を複数のマーカーで標識することができ、これにより、明確に規定されたT細胞サブセットを高純度で単離可能となる。
【0229】
いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、陽性選択および/または陰性選択のための分離を容易にするために、1つまたは複数の検出可能なマーカーで標識される。例えば、分離は、蛍光標識抗体への結合に基づき得る。いくつかの例では、1つまたは複数の細胞表面マーカーに特異的な抗体または他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離は、例えばフローサイトメトリー検出システムと組み合わせた、分取規模(FACS)および/または微小電気機械システム(MEMS)チップを含む蛍光活性化細胞選別(FACS)などによって流体流中で行われる。そのような方法は、同時に複数のマーカーに基づく陽性選択および陰性選択を可能にする。
【0230】
いくつかの態様では、調製方法は、単離、インキュベーションおよび/または操作の前または後のいずれかに、細胞を凍結する、例えば凍結保存するための工程を含む。いくつかの態様では、凍結およびその後の解凍工程は、細胞集団中の顆粒球を除去し、単球をある程度まで除去する。いくつかの態様では、細胞は、例えば血漿および血小板を除去するための洗浄工程の後に、凍結溶液中に懸濁される。いくつかの局面では、様々な公知の凍結溶液およびパラメーターのいずれを使用してもよい。
【0231】
いくつかの態様では、提供される方法は、カルチベーション、インキュベーション、培養、および/または遺伝子操作の工程を含む。例えば、いくつかの態様では、枯渇細胞集団および培養開始組成物をインキュベートおよび/または操作するための方法が提供される。
【0232】
したがって、いくつかの態様では、細胞集団は、培養開始組成物中でインキュベートされる。インキュベーションおよび/または操作は、ユニット、チャンバー、ウェル、カラム、チューブ、チューブセット、バルブ、バイアル、培養皿、バッグ、または細胞を培養またはカルチベートするための他の容器などの培養容器中で行われ得る。
【0233】
いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作の前またはそれに関連してインキュベートおよび/または培養される。インキュベーション工程は、培養、カルチベーション、刺激、活性化、および/または増幅を含むことができる。いくつかの態様では、組成物または細胞は、刺激条件または刺激物質の存在下でインキュベートされる。そのような条件には、集団中の細胞の増殖、増大、活性化、および/もしくは生存を誘導する、抗原曝露を模倣する、ならびに/または、本明細書に記載されるような、遺伝子操作のため、例えばキメラシグナル伝達受容体および/もしくは組換え抗原受容体の導入のために細胞をプライミングするように設計されたものが含まれる。
【0234】
前記条件は、特定の培地、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、作用物質、例えば栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された他の任意の作用物質の1つまたは複数を含むことができる。
【0235】
いくつかの局面では、インキュベーションは、Riddellらの米国特許第6,040,177号、Klebanoff et al. (2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakuraet al. (2012) Blood.1:72-82、および/またはWang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701に記載されているような技術に従って行われる。
【0236】
遺伝子操作された成分、例えば、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体、例えば、CARまたはTCRの導入のための様々な方法が周知であり、提供される方法および組成物と共に使用され得る。例示的な方法としては、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスもしくはレンチウイルス、非ウイルスベクターまたはトランスポゾン、例えばスリーピングビューティートランスポゾン系によるものを含む、キメラシグナル伝達受容体をコードする核酸の移入のための方法が挙げられる。遺伝子移入の方法は、形質導入、エレクトロポレーション、または細胞への遺伝子移入をもたらす他の方法を含むことができる。本明細書に記載される方法はまた、免疫細胞への組換え抗原受容体、例えば、CAR、TCRをコードする核酸の導入にも適用可能である(そのような核酸が、キメラシグナル伝達受容体を含むバイシストロン性、トリシストロン性、またはマルチシストロン性ポリヌクレオチドの一部である場合を含む)。
【0237】
いくつかの態様では、遺伝子移入は、最初に、細胞を、例えば増殖、生存および/または活性化などの応答(例えば、サイトカインまたは活性化マーカーの発現によって測定されるような)を誘発する刺激と合わせることによって刺激し、続いて、活性化した細胞の形質導入を行い、臨床用途に十分な数まで培養で増大させることによって成し遂げられる。いくつかの態様では、操作しようとする細胞は、形質導入、トランスフェクション、または本明細書に記載されるもしくは当技術分野において利用可能な他の手段の前に、例えばCD28/CD3、例えば、Dynabeads(登録商標)またはMACS(登録商標)を使用して活性化される。
【0238】
いくつかの態様では、核酸またはポリヌクレオチドは、例えば、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターなどの組換え感染性ウイルス粒子を使用して、細胞に移入される。いくつかの態様では、組換え核酸は、組換えレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター、例えばγ-レトロウイルスベクターを使用して免疫細胞に移入される(例えば、Koste et al. (2014) Gene Therapy 2014 Apr 3. doi: 10.1038/gt.2014.25;Carlens et al. (2000) Exp Hematol 28(10): 1137-46;Alonso-Camino et al. (2013) Mol Ther Nucl Acids 2, e93;Park et al., Trends Biotechnol. 2011 November 29(11): 550-557を参照のこと)。
【0239】
いくつかの態様では、レトロウイルスベクター、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するレトロウイルスベクターは、長い末端反復配列(LTR)を有する。ほとんどのレトロウイルスベクターがマウスレトロウイルスに由来する。いくつかの態様では、レトロウイルスには、任意の鳥類または哺乳動物の細胞供給源に由来するレトロウイルスが含まれる。レトロウイルスは、典型的には、両向性であり、このことは、レトロウイルスが、ヒトを含めた数種の宿主細胞に感染可能であることを意味している。一態様では、発現されることになる遺伝子が、レトロウイルスのgag配列、pol配列および/またはenv配列に置き代わる。多数の例示的なレトロウイルス系が記載されている(例えば、米国特許第5,219,740号;第6,207,453号;第5,219,740号;Miller and Rosman (1989) BioTechniques 7:980-990;Miller, A. D. (1990) Human Gene Therapy 1:5-14;Scarpa et al. (1991) Virology 180:849-852;Burns et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8033-8037;およびBoris-Lawrie and Temin (1993) Cur. Opin. Genet. Develop. 3:102-109)。
【0240】
レンチウイルス形質導入の方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701;Cooper et al. (2003) Blood. 101:1637-1644;Verhoeyen et al. (2009) Methods Mol Biol. 506: 97-114;およびCavalieri et al. (2003) Blood. 102(2): 497-505に記載されている。
【0241】
いくつかの態様では、組換え核酸は、エレクトロポレーションを介して免疫細胞に移入される(例えば、Chicaybam et al, (2013) PLoS ONE 8(3): e60298およびVan Tedeloo et al. (2000) Gene Therapy 7(16): 1431-1437を参照のこと)。いくつかの態様では、組換え核酸は、転位を介して免疫細胞に移入される(例えば、Manuri et al. (2010) Hum Gene Ther 21(4): 427-437;Sharma et al. (2013) Molec Ther Nucl Acids 2, e74;およびHuang et al. (2009) Methods Mol Biol 506: 115-126を参照のこと)。遺伝物質を免疫細胞に導入して発現させる他の方法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York. N.Y.に記載されているような)、プロトプラスト融合、カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション;タングステン粒子によって促進される微小粒子照射(Johnston, Nature, 346: 776-777 (1990));およびリン酸ストロンチウムDNA共沈殿(Brash et al., Mol. Cell Biol., 7: 2031-2034 (1987))が挙げられる。
【0242】
キメラシグナル伝達受容体をコードする核酸を移入するための他のアプローチおよびベクターは、例えば、国際特許出願公開番号WO2014055668、および米国特許第7,446,190号に記載されているものである。
【0243】
いくつかの態様では、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、TILに、増大中または増大後のいずれかに、例えばキメラシグナル伝達受容体が、トランスフェクトまたは形質導入され得る。いくつかの態様では、免疫細胞、例えば、T細胞に、増大中または増大後のいずれかに、例えばキメラシグナル伝達受容体が、トランスフェクトまたは形質導入される。このトランスフェクションまたは形質導入は、例えば、任意の好適なレトロウイルスベクターを用いて行うことができる。遺伝子改変された細胞集団は、その後、初期刺激(例えば、CD3/CD28刺激)から解放し、続いて、第2のタイプの刺激により、例えば、新たに導入された受容体を介して刺激することができる。この第2のタイプの刺激は、ペプチド/MHC分子の形態の抗原性刺激を含み得る。細胞で組換え抗原受容体も発現させる場合は、遺伝子導入された受容体の同族(架橋)リガンド(例えば、CARの天然のリガンド)、または(例えば、受容体内の定常領域を認識することによって)新たな受容体のフレームワーク内に直接結合する任意のリガンド(抗体など)。例えば、Cheadle et al, “Chimeric antigen receptors for T-cell based therapy” Methods Mol Biol. 2012;907:645-66またはBarrett et al., Chimeric Antigen Receptor Therapy for Cancer Annual Review of Medicine Vol. 65: 333-347 (2014)を参照されたい。
【0244】
いくつかの態様では、トランスフェクトまたは形質導入された細胞は増大される。いくつかの態様では、操作された細胞は、所望の閾値に達するまで増大される。
【0245】
C. 操作された細胞の例示的な特性
いくつかの局面では、本明細書に記載されるようなキメラシグナル伝達受容体の操作された細胞における発現は、操作された細胞の持続性、曝露、増殖、および/または細胞傷害活性を増加させる。例えば、キメラ抗原受容体の発現は、操作された細胞、例えば、免疫細胞の抑制を阻止し得るので、前記操作された細胞が、持続する、増殖する、および/または標的細胞を殺傷することが可能なる。
【0246】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体を発現するように操作された細胞は、例えばキメラシグナル伝達受容体を発現するように操作されていない細胞と比較して、免疫抑制環境、例えば、TMEの存在下で、増加した持続性、曝露、増殖、および/または細胞傷害活性を有する。いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体を発現するように操作された細胞は、例えばキメラシグナル伝達受容体を発現するように操作されていない細胞と比較して、TMEの存在下で増加した持続性、曝露、増殖、および/または細胞傷害活性を有する。いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体を発現するように操作された細胞は、キメラシグナル伝達受容体を発現するように操作されていない細胞と比較して、免疫活性を抑制可能なサイトカインなどの分子の存在下で、増加した持続性、曝露、増殖、および/または細胞傷害活性を有する。いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体を発現するように操作された細胞は、キメラシグナル伝達受容体を発現するように操作されていない細胞と比較して、TGFβの存在下で増加した持続性、曝露、増殖、および/または細胞傷害活性を有する。したがって、いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体を発現するように操作された細胞は、それ自体または本明細書に記載されるような組換え抗原受容体、例えば、CAR、TCRとの組み合わせのいずれかで、キメラシグナル伝達受容体を発現するように操作されていない細胞または組換え抗原受容体のみを発現するように操作された細胞と比較して、増加した持続性、曝露、増殖、および/または細胞傷害活性を有する。
【0247】
1. 操作された細胞の持続性、曝露、および増殖
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体を発現するように操作された細胞の曝露、持続性、および増殖は、操作された細胞のインビトロ、エクスビボまたはインビボでの特性を評価することによって測定することができる。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体を発現するように操作された細胞は、組換え抗原受容体、例えば、CAR、TCRを発現するようにさらに操作される。また、本明細書に記載されるようなキメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体、例えば、CAR、TCRを共発現するように操作された細胞の持続性および増殖も、本明細書に記載されるようなインビトロ、エクスビボまたはインビボアッセイで評価することができる。
【0248】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体を発現する細胞(例えば、細胞療法のために投与されるキメラシグナル伝達受容体発現細胞、任意で組換え抗原受容体をさらに含有する)の投与後の対象において、操作された細胞の存在および/または量が評価される。いくつかの局面では、定量PCR(qPCR)を使用して、対象の血液もしくは血清または臓器もしくは組織試料(例えば、疾患部位、例えば、腫瘍試料)中のキメラシグナル伝達受容体を発現する細胞の量が評価される。いくつかの局面では、DNA 1マイクログラム当たりのキメラシグナル伝達受容体をコードするDNAまたはプラスミドのコピーとして、あるいは、試料、例えば、血液もしくは血清1マイクロリットル当たりの、または試料1マイクロリットル当たりの末梢血単核細胞(PBMC)もしくは白血球もしくはT細胞の総数当たりのキメラシグナル伝達受容体発現細胞の数として、持続性が定量される。細胞が、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体(例えば、CAR、TCR)を共発現するように操作されている場合、本明細書に記載される方法は、組換え抗原受容体を評価または定量するためにも使用され得る。
【0249】
増大および/または持続性の指標となる、例えば細胞療法のために投与される、キメラシグナル伝達受容体発現細胞の曝露、例えば、数は、対象が曝露されるキメラシグナル伝達受容体発現細胞の最大数、検出可能なキメラシグナル伝達受容体発現細胞または一定の数もしくは割合を上回るキメラシグナル伝達受容体発現細胞の持続期間、経時的なキメラシグナル伝達受容体発現細胞の数についての曲線下面積、ならびに/あるいはそれらの組み合わせおよびそれらの指標という観点で定められ得る。曝露は、公知の方法、例えば、キメラシグナル伝達受容体をコードする核酸のコピー数を、特定の試料、例えば、血液、血清、血漿もしくは組織、例えば腫瘍試料中の核酸もしくはDNAの総量と比較して検出するためのqPCR、および/またはキメラシグナル伝達受容体に特異的な抗体を一般に使用してキメラシグナル伝達受容体を発現する細胞を検出するフローサイトメトリーアッセイを使用して評価され得る。細胞が、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体(例えば、CAR、TCR)を共発現するように操作されている場合、本明細書に記載される方法は、組換え抗原受容体を評価または定量するためにも使用され得る。
【0250】
また、細胞ベースのアッセイを使用して、機能的な細胞の数または割合、例えば、細胞がキメラシグナル伝達受容体と組換え抗原受容体を共発現するように操作される場合には、疾患もしくは病態の細胞および/または組換え抗原受容体によって認識される抗原を発現する細胞に結合可能な、および/または前記細胞を中和可能な、および/または前記細胞に対する応答、例えば、細胞傷害性応答を誘導可能なキメラシグナル伝達受容体発現細胞の数または割合を検出してもよい。
【0251】
いくつかの局面では、キメラシグナル伝達受容体発現細胞は、例えば、フローサイトメトリーによって測定された場合に、高いインビボ増殖を実証する。いくつかの局面では、細胞の高いピーク比率が検出される。例えば、いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体発現細胞の投与後のピークまたは最大レベルでは、対象の血液もしくは疾患部位またはその白血球画分、例えば、PBMC画分中で、細胞の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%が、キメラシグナル伝達受容体を発現する。
【0252】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体を発現する細胞は、対象の血清、血漿、血液または組織、例えば、腫瘍試料中で、例えば、qPCRまたはフローサイトメトリーに基づく検出法などの特定の方法によって、キメラシグナル伝達受容体を発現する操作された細胞の投与後、少なくとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、もしくは60日またはそれ以降、検出可能である。細胞数は、フローサイトメトリーに基づくまたは定量PCRに基づく方法および公知の方法を使用した総細胞数への外挿によって検出される通りであり得る。例えば、Brentjens et al., Sci Transl Med. 2013 5 (177)、Park et al, Molecular Therapy 15(4):825-833 (2007)、Savoldo et al., JCI 121(5):1822-1826 (2011)、Davila et al., (2013) PLoS ONE 8(4):e61338、Davila et al., Oncoimmunology 1(9):1577-1583 (2012)、Lamers, Blood 2011 117:72-82、Jensen et al., Biol Blood Marrow Transplant 2010 September; 16(9): 1245-1256、Brentjens et al., Blood 2011 118(18):4817-4828を参照されたい。
【0253】
いくつかの態様では、操作された細胞の投与後の経時的な、対象の流体、血漿、血清、血液、組織、臓器、および/または疾患部位、例えば腫瘍部位中のキメラシグナル伝達受容体発現細胞の濃度についての曲線下面積(AUC)は、キメラシグナル伝達受容体を欠いている細胞を投与することによって達成される場合と比較してより大きい。
【0254】
いくつかの局面では、対象における操作された細胞の増加したまたは延長された増大および/または持続性は、対象における腫瘍関連成果に関する有益性に関連する。いくつかの態様では、腫瘍関連成果は、対象における腫瘍量の減少を含む。いくつかの態様では、腫瘍量は、前記方法の投与後に、10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100パーセント、または少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100パーセントまたは少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100パーセント減少する。いくつかの態様では、疾患負担、腫瘍サイズ、腫瘍体積、腫瘍質量、および/または腫瘍負荷もしくはバルクは、キメラシグナル伝達受容体を含有する操作された細胞の投薬後に、キメラシグナル伝達受容体を欠いている細胞が投与されている対象と比較して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、もしくはそれ以上、または少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、もしくはそれ以上低減される。
【0255】
2. 操作された細胞の機能的活性
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体を発現するように操作された細胞の機能的活性は、操作された細胞のインビトロ、エクスビボまたはインビボでの特性を評価することによって測定することができる。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体を発現するように操作された細胞は、組換え抗原受容体、例えば、CAR、TCRを発現するようにさらに操作される。また、本明細書に記載されるようなキメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体、例えば、CAR、TCRを共発現するように操作された細胞の機能的活性も、インビトロ、エクスビボまたはインビボで評価することができる。
【0256】
いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体を含有する細胞の活性、例えば、細胞傷害活性または細胞溶解活性を評価するための当技術分野における公知のアッセイのいずれも使用することができる。いくつかの態様では、標的抗原へのキメラシグナル伝達受容体発現細胞の特異的結合は、インビボで、例えば、イメージングによって、またはエクスビボで、例えば、ELISAもしくはフローサイトメトリーによって評価することができる。ある特定の態様では、標的細胞を破壊するキメラシグナル伝達受容体発現細胞の能力は、例えば、Kochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7): 689-702 (2009)、およびHerman et al., J. Immunological Methods, 285(1): 25-40 (2004)に記載されている細胞傷害性アッセイなどの当技術分野において公知の任意の好適な方法を使用して測定することができる。ある特定の態様では、キメラシグナル伝達受容体発現細胞の生物学的活性は、1つまたは複数のサイトカイン、例えばCD107a、IFNγ、IL-2、GM-CSF、およびTNFαの発現および/もしくは分泌をアッセイすることによって、ならびに/または細胞溶解活性もしくは細胞傷害活性を評価することによって測定される。
【0257】
いくつかの態様では、操作されたキメラシグナル伝達受容体発現細胞の活性、増殖および/または機能についてのアッセイとしては、ELISPOT、ELISA、細胞増殖、細胞傷害性リンパ球(CTL)アッセイ、抗原への結合、または細胞内サイトカイン染色、増殖アッセイ、リンホカイン分泌アッセイ、直接細胞傷害性アッセイ、および限界希釈アッセイが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの態様では、操作された細胞の増殖応答は、例えば、それらの細胞のDNAへの3H-チミジン、BrdU(5-ブロモ-2'-デオキシウリジン)もしくは2'-デオキシ-5-エチニルウリジン(EdU)の組み込みによって、またはカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンγセクレターゼ阻害性エステル(CFSE)、CellTrace Violetもしくは膜色素PKH26などの色素を使用した色素希釈アッセイによって測定することができる。
【0258】
いくつかの態様では、操作されたキメラシグナル伝達受容体発現細胞の活性、増殖および/または機能を評価することは、操作された細胞からのサイトカイン産生を測定すること、ならびに/または、対象由来の生体試料、例えば、血漿、血清、血液および/もしくは組織試料、例えば、腫瘍試料中のサイトカイン産生を測定することを含む。いくつかの場合では、そのような測定されるサイトカインとしては、非限定的に、インターロイキン-2(IL-2)、インターフェロン-γ(IFNγ)、インターロイキン-4(IL-4)、TNF-α(TNFα)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-12(IL-12)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、CD107a、および/またはTGF-β(TGFβ)を挙げることができる。サイトカインを測定するためのアッセイは、当技術分野において周知であり、ELISA、細胞内サイトカイン染色、サイトメトリビーズアレイ、RT-PCR、ELISPOT、フローサイトメトリー、および関連サイトカインに応答性の細胞を試験試料の存在下で応答性(例えば、増殖)について試験するバイオアッセイが挙げられるが、それらに限定されない。
【0259】
いくつかの態様では、操作されたキメラシグナル伝達受容体発現細胞の活性、増殖および/または機能を評価することは、細胞表面マーカーの発現、例えば、表現型を評価することを含む。いくつかの態様では、操作された細胞は、細胞活性化マーカー、細胞疲弊マーカー、および/または分化のマーカーの発現について評価される。いくつかの態様では、細胞表現型は、投与の前に評価される。いくつかの態様では、細胞表現型は、対象への投与後に評価される。評価のための例示的な免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、TIL細胞の活性化マーカー、疲弊マーカー、および/または分化マーカーには、免疫細胞の特定のサブセットについての当技術分野において公知の任意のマーカー、例えば、CD25、CD38、ヒト白血球抗原-DR(HLA-DR)、CD69、CD44、CD137、KLRG1、CD62Llow、CCR7low、CD71、CD2、CD54、CD58、CD244、CD160、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG-3)、T-細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメインタンパク質3(TIM-3)、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、バンドTリンパ球アテニュエーター(BTLA)ならびに/またはT-細胞免疫グロブリンおよび免疫受容体チロシンベースの阻害性モチーフドメイン(TIGIT)が含まれる(例えば、Liu et al., Cell Death and Disease (2015) 6, e1792を参照のこと)。
【0260】
いくつかの局面では、発現レベルを検出することは、インビトロアッセイを実施することを含む。いくつかの態様では、インビトロアッセイは、イムノアッセイ、アプタマーベースのアッセイ、組織学的もしくは細胞学的アッセイ、またはmRNA発現レベルアッセイである。いくつかの態様では、1つまたは複数の因子、エフェクター、酵素および/または表面マーカーの各々の1つまたは複数についての1つまたは複数のパラメーターは、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫ブロット、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫染色、フローサイトメトリーアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、化学発光アッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、阻害アッセイまたはアビディティアッセイによって検出される。いくつかの態様では、サイトカインおよび/または表面マーカーの検出は、少なくとも1つのマーカーに特異的に結合する結合試薬を使用して判定される。いくつかの場合では、結合試薬は、抗体もしくはその抗原結合断片、アプタマーまたは核酸プローブである。
【0261】
VI. 組成物、製剤、および投与の方法
また、本明細書に記載されるようなキメラシグナル伝達受容体を含有する組成物も提供される。いくつかの態様では、本明細書に提供される組成物は、キメラシグナル伝達受容体および任意で組換え抗原受容体、例えば、CAR、TCRを発現するように操作された細胞を含有する。いくつかの態様では、本明細書に提供される組成物は、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体、例えば、CAR、TCRを発現するように操作された細胞を含有する。薬学的組成物および製剤を含む、操作された細胞を含有する組成物がさらに提供される。また、例えば、がんなどの疾患、病態、および障害の治療における、組成物の使用法および使用も提供される。
【0262】
いくつかの態様では、組成物は、キメラシグナル伝達受容体で操作された複数の細胞を含む。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも50%または少なくとも約50%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体を含む。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも50%または少なくとも約50%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体で操作されるまたはそれを発現する。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも60%または少なくとも約60%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体で操作されるまたはそれを発現する。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも70%または少なくとも約70%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体で操作されるまたはそれを発現する。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも80%または少なくとも約80%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体で操作されるまたはそれを発現する。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも90%または少なくとも約90%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体で操作されるまたはそれを発現する。いくつかの態様では、細胞は、T細胞である。
【0263】
いくつかの態様では、組成物は、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)で操作された複数の細胞を含む。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも50%または少なくとも約50%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)を含む。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも50%または少なくとも約50%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)で操作されるまたはそれらを発現する。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも60%または少なくとも約60%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)で操作されるまたはそれらを発現する。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも70%または少なくとも約70%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)で操作されるまたはそれらを発現する。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも80%または少なくとも約80%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)で操作されるまたはそれらを発現する。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも90%または少なくとも約90%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)で操作されるまたはそれらを発現する。いくつかの態様では、細胞は、T細胞である。
【0264】
いくつかの態様では、組成物は、キメラシグナル伝達受容体および組換え分泌性分子(例えば、二重特異性抗体、例えばBiTE、またはサイトカイン)をコードするポリヌクレオチドで操作された複数の細胞を含む。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも50%または少なくとも約50%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体および組換え分泌性分子(例えば、二重特異性抗体、例えばBiTE、またはサイトカイン)をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも50%または少なくとも約50%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体および組換え分泌性分子(例えば、二重特異性抗体、例えばBiTE、またはサイトカイン)をコードするポリヌクレオチドで操作されるまたはそれらを発現する。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも60%または少なくとも約60%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体および組換え分泌性分子(例えば、二重特異性抗体、例えばBiTE、またはサイトカイン)をコードするポリヌクレオチドで操作されるまたはそれらを発現する。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも70%または少なくとも約70%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体および組換え分泌性分子(例えば、二重特異性抗体、例えばBiTE、またはサイトカイン)をコードするポリヌクレオチドで操作されるまたはそれらを発現する。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも80%または少なくとも約80%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体および組換え分泌性分子(例えば、二重特異性抗体、例えばBiTE、またはサイトカイン)をコードするポリヌクレオチドで操作されるまたはそれらを発現する。いくつかの態様では、組成物中の少なくとも90%または少なくとも約90%の細胞(例えば、T細胞)が、キメラシグナル伝達受容体および組換え分泌性分子(例えば、二重特異性抗体、例えばBiTE、またはサイトカイン)をコードするポリヌクレオチドで操作されるまたはそれらを発現する。いくつかの態様では、細胞は、T細胞である。
【0265】
A. 組成物/製剤
本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体を発現する操作された細胞のいずれかを含有する組成物が本明細書に提供される。薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。例えば、薬学的組成物は、例えば、組成物のpH、容積モル浸透圧濃度、粘度、透明性、色素、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸着、または浸透を改良、維持または保存するため1つまたは複数の賦形剤を含有することができる。いくつかの局面では、当業者は、細胞を含有する薬学的組成物が、タンパク質を含有する薬学的組成物と異なる場合があることを理解する。
【0266】
「薬学的製剤」という用語は、調製物であって、その中に含有される有効成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であり、かつ、製剤が投与されるであろう対象に対して許容できないほど有毒な追加成分を全く含有しない、調製物のことを指す。
【0267】
「薬学的に許容される担体」は、対象にとって非毒性である、有効成分以外の薬学的製剤中の成分のことを指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【0268】
いくつかの局面では、担体の選定は、一部には特定の細胞によっておよび/または投与の方法によってなされる。したがって、種々の好適な製剤がある。例えば、薬学的組成物は、保存剤を含有することができる。好適な保存剤は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムを含み得る。いくつかの局面では、2つまたはそれ以上の保存剤の混合物が使用される。保存剤またはその混合物は、典型的には、全組成物の約0.0001%~約2%(重量)の量で存在する。担体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に記載されている。薬学的に許容される担体は、一般に、用いられる投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤。
【0269】
緩衝化剤がいくつかの局面では組成物に含まれる。好適な緩衝化剤には、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに他の様々な酸および塩が含まれる。いくつかの局面では、2つまたはそれ以上の緩衝化剤の混合物が使用される。緩衝化剤またはその混合物は、典型的には、全組成物の約0.001%~約4%(重量)の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins;21st ed. (May 1, 2005)により詳しく記載されている。
【0270】
前記製剤または組成物はまた、それぞれの活性が互いに悪影響を及ぼさない場合、キメラシグナル伝達受容体発現細胞で治療される特定の適応症、疾患または病態に有用な2つ以上の有効成分、好ましくは細胞に対して補完的な活性を有するものを含有し得る。そのような有効成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。したがって、いくつかの態様では、薬学的組成物は、化学療法剤、例えばアスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどの他の薬学的に活性な作用物質または薬物をさらに含む。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体発現細胞は、塩、例えば、薬学的に許容される塩の形態で投与される。好適な薬学的に許容される酸付加塩には、鉱酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸、ならびに、有機酸、例えば酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸およびアリールスルホン酸、例えば、p-トルエンスルホン酸に由来するものが含まれる。
【0271】
前記薬学的組成物は、いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなキメラシグナル伝達受容体を発現する操作された細胞を、疾患または病態を治療または予防するのに有効な量、例えば治療有効量または予防有効量で含有する。いくつかの態様では、薬学的組成物は、本明細書に記載されるようなキメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体、例えば、CAR、TCRを発現する操作された細胞を、疾患または病態を治療または予防するのに有効な量、例えば治療有効量または予防有効量で含有する。治療または予防の有効性は、いくつかの態様では、治療される対象の定期的な評価によってモニタリングされる。数日またはより長い期間にわたる反復投与については、病態に応じて、疾患症状の所望の抑制が起こるまで、治療が繰り返される。しかしながら、他の投与レジメンも有用であり得、決定され得る。所望の投与量は、組成物の単回ボーラス投与によって、組成物の複数回ボーラス投与によって、または組成物の持続注入投与によって送達することができる。
【0272】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなキメラシグナル伝達受容体を発現する操作された細胞は、標準的な投与技術、製剤、および/または装置を用いて投与される。いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなキメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体、例えば、CAR、TCRを発現する操作された細胞は、標準的な投与技術、製剤、および/または装置を用いて投与される。組成物の保存および投与のための、シリンジおよびバイアルなどの製剤および装置が提供される。操作された細胞の投与は、自家投与または異種投与であることができる。例えば、免疫応答性細胞または前駆体を、一対象から得ることができ、同じ対象または異なる適合性の対象に投与することができる。末梢血由来の免疫応答性細胞またはそれらの子孫(例えば、インビボ、エクスビボまたはインビトロ由来)を、カテーテル投与、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を含む局所注射によって投与することができる。治療用組成物(例えば、遺伝子改変された免疫応答性細胞を含有する薬学的組成物)を投与する場合、治療用組成物は、一般に単位投与注射形態(溶液、懸濁液、エマルジョン)に製剤化される。
【0273】
製剤には、静脈内投与、腹腔内投与または皮下投与用のものが含まれる。いくつかの態様では、細胞集団は、非経口に投与される。「非経口」という用語は、本明細書において使用される場合、静脈内、筋肉内、皮下、直腸内、膣内および腹腔内の投与を含む。いくつかの態様では、細胞集団は、静脈内、腹腔内または皮下注射による末梢全身送達を用いて対象に投与される。
【0274】
いくつかの態様では、組成物は、滅菌液体調製物、例えば等張水溶液、懸濁液、エマルジョンまたは分散液として提供され、これらは、いくつかの局面では、選択されたpHに緩衝化され得る。液体組成物は、とりわけ注射によって投与するのにいくぶんより便利である。液体組成物は、例えば水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒体であることができる、担体を含むことができる。
【0275】
滅菌注射溶液は、好適な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどとの混合物などの溶媒中に細胞を組み込むことによって調製することができる。組成物は、凍結乾燥することもできる。組成物は、所望される投与経路および調製物に依存して、湿潤剤、分散剤または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝化剤、ゲル化または増粘添加剤、保存剤、香味剤、着色剤などの補助物質を含有することができる。いくつかの局面では、標準的なテキストを参考にして好適な調製物を調製してもよい。
【0276】
抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝剤を含む、組成物の安定性および無菌性を高める様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にすることができる。注射用医薬形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0277】
インビボ投与に使用される製剤は、一般に無菌である。無菌性は、例えば滅菌濾過膜を通して濾過することによって容易に達成され得る。
【0278】
B. 投与の方法
提供されるキメラシグナル伝達受容体を発現する操作された細胞、およびそのような操作された細胞の組成物の、がんを含む疾患、病態および障害を治療または予防するためなどの種々の治療用途における、方法および使用が提供される。特定の態様では、疾患、病態または障害は、がんであり、標的細胞は、腫瘍細胞である。いくつかの態様では、操作された細胞は、疾患、病態または障害の標的細胞に対して治療活性を示し、それにより、疾患、病態または障害を治療する。いくつかの態様では、操作された細胞は、提供されるキメラシグナル伝達受容体を発現し、疾患、病態または障害に関連するまたはその標的細胞上に発現される標的抗原に対して指向されるCARまたはTCRなどの組換え抗原受容体も発現する。いくつかの態様では、操作された細胞は、疾患、障害または病態の標的細胞に対して細胞傷害性を示し、例えば、腫瘍細胞に対して細胞傷害性を示す。いくつかの態様では、疾患、病態または障害は、固形腫瘍である。
【0279】
そのような方法および使用は、治療的方法および使用、例えば、操作された細胞、またはそれを含有する組成物を、疾患、病態または障害を有する対象に投与することを伴う治療的方法および使用を含む。いくつかの場合では、記載されるように、疾患または障害は、腫瘍またはがんである。いくつかの態様では、操作された細胞は、疾患または障害の治療を達成するための有効量で投与される。使用は、そのような方法および治療における、ならびにそのような治療的方法を行うための医薬の調製における、操作された細胞の使用を含む。いくつかの態様では、前記方法は、操作された細胞、またはそれを含む組成物を、疾患または病態を有するかまたはそれを有すると疑われる対象に投与することによって行われる。いくつかの態様では、前記方法は、それにより、対象における疾患または病態または障害を治療する。
【0280】
いくつかの態様では、操作された細胞、例えば、キメラシグナル伝達受容体またはキメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体を発現する操作された細胞、ならびにその組成物は、例えば養子細胞療法を介して、治療しようとする特定の疾患または病態を有する対象または患者に投与される。いくつかの態様では、養子細胞療法は、T細胞療法である。いくつかの態様では、養子細胞療法は、NK細胞療法である。いくつかの態様では、養子細胞療法は、TIL細胞療法である。いくつかの態様では、提供される操作された細胞、例えば、キメラシグナル伝達受容体またはキメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体を発現する操作された細胞、ならびにその組成物は、対象、例えば疾患または病態を有するかまたはそのリスクがある対象に投与される。いくつかの局面では、前記方法は、それにより、疾患または病態を治療する、例えば、その1つまたは複数の症状を改善する。
【0281】
養子細胞療法のための操作された細胞の投与のための方法は、公知であり、提供される方法および組成物との関連で使用され得る。例えば、養子T細胞療法の方法は、例えば、Gruenbergらの米国特許出願公開番号2003/0170238;Rosenbergの米国特許第4,690,915号;Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577-85)に記載されている。例えば、Themeli et al. (2013) Nat Biotechnol. 31(10): 928-933;Tsukahara et al. (2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338を参照されたい。
【0282】
本明細書において使用される場合、「対象」は、哺乳動物、例えば、ヒトまたは他の動物であり、典型的にはヒトである。いくつかの態様では、細胞、細胞集団または組成物が投与される対象、例えば、患者は、哺乳動物であり、典型的には、霊長類、例えばヒトである。いくつかの態様では、霊長類は、猿または類人猿である。対象は、雄性または雌性であることが可能であり、乳幼児期、若年期、青年期、成体期および老齢期の対象を含めて任意の好適な年齢であること可能である。いくつかの態様では、対象は、霊長類以外の哺乳動物、例えば齧歯類である。
【0283】
本明細書において使用される場合、「治療」(およびその文法上の変形、例えば、「治療する」または「治療すること」)は、疾患もしくは病態もしくは障害、あるいはそれに伴う症状、有害な効果もしくは結果、または表現型の完全または部分的な改善または軽減のことを指す。治療の望ましい効果としては、疾患の発生または再発を防止すること、症状の軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的結果を軽減すること、転移を防止すること、疾患進行の速度を低下させること、疾患状態の改善または緩和、ならびに寛解または改善された予後が挙げられるが、それらに限定されない。これらの用語は、疾患を完全に治癒させること、あるいは、任意の症状、またはすべての症状もしくは結果に対する効果を完全に排除することを暗示していない。
【0284】
本明細書において使用される場合、「疾患の発症を遅らせる」は、疾患(がんなど)の発症を先延ばしすること、妨げること、遅くすること、遅延させること、安定させること、抑制すること、および/または延期させることを意味する。この遅れは、疾患歴および/または治療されている個体に依存して、様々な長さの期間であることが可能である。当業者には明白であるように、十分な遅れまたは著しい遅れは、個体が疾患を発症しないという点で、実際には予防を包含することができる。例えば、転移の発生などの後期段階のがんが遅らされる場合がある。
【0285】
「予防する」は、本明細書において使用される場合、疾患に対する素因を有し得るが未だ疾患と診断されていない対象における疾患の発生または再発に関して予防を提供することを含む。いくつかの態様では、提供される細胞および組成物は、疾患の発症を遅らせるために、または疾患の進行を遅くするために使用される。
【0286】
本明細書において使用される場合、機能または活性を「抑制する」ことは、関心対象の条件またはパラメーターを除いて他の点では同じ条件と比較した場合、あるいは代替的に別の条件と比較して、この機能または活性を低下させることである。例えば、腫瘍成長を抑制する細胞は、前記細胞の非存在下での腫瘍の成長速度と比較して腫瘍の成長速度を低下させる。
【0287】
作用物質、例えば、薬学的製剤、細胞、または組成物の「有効量」は、投与との関連において、所望の結果、例えば治療結果または予防結果を達成するために必要な投与量/量でかつ必要な期間にわたって有効な量のことを指す。
【0288】
作用物質、例えば、薬学的製剤または細胞の「治療有効量」は、所望の治療結果、例えば、疾患、病態もしくは障害の治療について所望の治療結果、および/または治療の薬物動態学的もしくは薬力学的な効果を達成するために必要な投与量でかつ必要な期間にわたって有効な量のことを指す。治療有効量は、対象の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに投与される細胞の集団などの要因に応じて、変動する場合がある。いくつかの態様では、提供される方法は、細胞および/または組成物を有効量、例えば、治療有効量で投与することを伴う。
【0289】
「予防有効量」は、所望の予防的結果を達成するために必要な投与量でかつ必要な期間にわたって有効な量のことを指す。典型的には、しかし、必ずしもそうであるとは限らないが、予防的用量が、疾患に先立って、または疾患のより初期の段階で対象において使用されるので、予防有効量は治療有効量より少ないであろう。
【0290】
治療される疾患または病態は、抗原の発現が疾患、病態または障害に関連するおよび/またはその病因に関与する、例えば、そのような疾患、病態または障害を引き起こす、悪化させる、あるいはその他の点でそれらに関与する、いずれであることもできる。いくつかの態様では、疾患、病態または障害に関連するおよび/またはその病因に関与する、例えば、そのような疾患、病態または障害を引き起こす、悪化させる、あるいはその他の点でそれらに関与する抗原は、標的抗原である。疾患、病態または障害に関連するおよび/またはその病因に関与する、例えば、そのような疾患、病態または障害を引き起こす、悪化させる、あるいはその他の点でそれらに関与する抗原は、本明細書において代替的に標的抗原と称される場合がある。いくつかの態様では、標的抗原は、腫瘍抗原である。例示的な疾患および病態は、悪性腫瘍もしくは細胞の形質転換に関連する疾患または病態(例えば、がん)、自己免疫もしくは炎症性疾患、または感染性疾患(例えば、細菌、ウイルスまたは他の病原体によって引き起こされる)を含むことができる。例示的な抗原、例えば、治療することができる様々な疾患および病態に関連する抗原を含む標的抗原は、上述している、例えばセクションII-B-1に記載される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体発現細胞は、標的抗原に天然に結合するTILである。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体発現細胞は、細胞傷害活性を天然に有するNK細胞である。いくつかの態様では、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体を発現するように操作された細胞はまた、本明細書に記載されるような組換え抗原受容体、例えば、CARまたはTCRを発現するように操作される。いくつかの態様では、キメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体を発現する操作された細胞は、T細胞またはNK細胞である。いくつかの態様では、CARまたは組換えTCRは、疾患または病態に関連する抗原に特異的に結合し、キメラシグナル伝達受容体は、例えば、腫瘍微小環境中に存在する、免疫抑制性または抗炎症性サイトカイン、例えば、TGFβ、IL10、IL4、IL1Raに結合する。
【0291】
いくつかの態様では、治療しようとする疾患または病態は、例えば細胞表面に、B7H3を発現する細胞を含む。いくつかの態様では、CAR、組換えTCR、またはTILが結合する標的抗原は、B7H3である。いくつかの態様では、治療しようとするB7H3発現細胞を含有する疾患または病態は、神経芽腫、卵巣がん腫、前立腺がん、非小細胞肺がん、膵臓がん、乳がん、および/または結腸直腸がんである。いくつかの態様では、治療しようとする疾患または病態は、神経芽腫である。いくつかの態様では、治療しようとする疾患または病態は、卵巣がん腫である。
【0292】
いくつかの態様では、治療しようとする疾患または病態は、例えば細胞表面に、CD19を発現する細胞を含む。いくつかの態様では、CAR、組換えTCR、またはTILが結合する標的抗原は、CD19である。いくつかの態様では、治療しようとするCD19発現細胞を含有する疾患または病態は、B細胞悪性腫瘍である。いくつかの態様では、B細胞悪性腫瘍は、B細胞リンパ腫である。いくつかの態様では、治療しようとする疾患または病態は、非ホジキンリンパ腫(NHL)およびホジキンリンパ腫である。いくつかの態様では、治療しようとする疾患または病態は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、または慢性リンパ性白血病(CLL)、またはバーキットリンパ腫である。
【0293】
したがって、提供される方法および使用は、養子細胞療法のための方法および使用を含む。いくつかの態様では、前記方法は、操作された細胞または操作された細胞を含有する組成物を、対象、組織または細胞、例えば、疾患、病態または障害を有するか、そのリスクがあるか、またはそれを有すると疑われるものに投与することを含む。いくつかの態様では、細胞、集団および組成物は、例えば、養子細胞療法、例えば養子T細胞療法を介して、治療しようとする特定の疾患または病態を有する対象に投与される。いくつかの態様では、細胞または組成物は、対象、例えば疾患または病態を有するかまたはそのリスクがある対象に、前記疾患または病態の1つまたは複数の症状を改善するために投与される。
【0294】
いくつかの態様では、細胞療法、例えば、養子細胞療法は、細胞が、細胞療法を受ける予定の対象からまたはそのような対象に由来する試料から単離されるおよび/または別の方法で調製される、自家移植によって行われる。したがって、いくつかの局面では、細胞は、治療を必要とする対象、例えば、患者に由来し、細胞は、単離および処理後に同じ対象に投与される。
【0295】
いくつかの態様では、細胞療法、例えば、養子細胞療法は、細胞が、細胞療法を受ける予定の対象または最終的に細胞療法を受ける対象、例えば、第1の対象以外の対象から単離されるおよび/または別の方法で調製される、同種異系移植によって行われる。そのような態様では、細胞は、次いで、同じ種の異なる対象、例えば、第2の対象に投与される。いくつかの態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に同一である。いくつかの態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に類似する。いくつかの態様では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。細胞は、任意の好適な手段によって投与することができる。投薬および投与は、一部には、投与が短時間であるかまたは長期間であるかに依存し得る。様々な投薬計画には、様々な時点にわたる単回投与または複数回投与、ボーラス投与、およびパルス注入が含まれるが、それらに限定されない。
【0296】
投与量は、疾患もしくは障害および/または患者および/または他の治療に固有の属性に応じて、変動する場合がある。いくつかの態様では、細胞は、併用治療の一部として、例えば、別の治療的介入、例えば抗体または操作された細胞または受容体または作用物質、例えば細胞傷害剤または治療剤と同時にまたは任意の順序で逐次的に投与される。細胞は、いくつかの態様では、1つまたは複数の追加の治療剤とまたは別の治療的介入との関連で、同時かまたは任意の順序で逐次的かのいずれかで共投与される。いくつかの状況では、細胞は、細胞集団が1つまたは複数の追加の治療剤の効果を増強するように時間的に十分に近接して別の療法と共投与されるか、または逆の様式で共投与される。いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数の追加の治療剤の前に投与される。いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数の追加の治療剤の後に投与される。いくつかの態様では、前記方法は、化学療法剤の投与を含む。
【0297】
操作された細胞の投与に続いて、いくつかの態様では、操作された細胞集団の生物学的活性が、例えば、多数の公知の方法のいずれか、例えばセクションIII-Cに記載されるような方法によって測定される。評価するためのパラメーターには、インビボで、例えば、イメージングによる、またはエクスビボで、例えば、ELISAもしくはフローサイトメトリーによる、抗原への操作されたまたは天然の細胞の特異的結合が含まれる。ある特定の態様では、操作された細胞の標的細胞を破壊する能力は、例えば、Kochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7): 689-702 (2009)、およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1): 25-40 (2004)に記載されている細胞傷害性アッセイなどの、当技術分野において公知の任意の好適な方法を使用して測定することができる。ある特定の態様では、操作された細胞の生物学的活性は、1つまたは複数のサイトカイン、例えばCD107a、IFNγ、IL-2およびTNFの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。いくつかの局面では、生物学的活性は、臨床成果、例えば腫瘍量または負荷の低下を評価することによって測定される。
【0298】
VII. キットおよび製造物
また、提供されるキメラシグナル伝達受容体、組換え抗原受容体(例えば、CAR、TCR)、遺伝子操作された細胞、例えば本明細書に記載されるような、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体を発現するように操作された細胞もしくは本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体と組換え抗原受容体を共発現するように操作された細胞を含む遺伝子操作された細胞、ならびに/または前記操作された細胞を含む組成物を含有する、製造物またはキットも提供される。製造物は、容器と、容器表面のまたは容器に付随するラベルまたは添付文書とを含み得る。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、試験管、IV液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成されてもよい。いくつかの態様では、容器は、無菌アクセスポートを有する。例示的な容器には、注射用ニードルによって突き刺すことができる栓を有するものを含む、静注液バッグ、バイアルが含まれる。製造物またはキットは、本明細書に記載される病態などの特定の病態を治療するために組成物が使用できることを示す添付文書をさらに含み得る。代替的に、または追加的に、製造物またはキットは、薬学的に許容される緩衝液を含む別のまたは同じ容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、ニードルおよび/またはシリンジなどの他の材料をさらに含み得る。
【0299】
ラベルまたは添付文書は、組成物が、個体における特定の疾患、障害または病態、例えば本明細書に記載されるような疾患を治療するために使用されることを示し得る。容器表面のまたは容器に付随するラベルまたは添付文書は、製剤の再構成および/または使用の指示を示し得る。ラベルまたは添付文書は、製剤が、個体における疾患、障害または病態を治療または予防するために皮下、静脈内または他の投与様式に有用であるまたはそれに意図されることをさらに示し得る。いくつかの局面では、ラベルまたは添付文書は、使用説明書、例えば、いくつかの局面では本明細書に記載される方法または使用のいずれかに従う、操作された細胞を投与するための、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体を発現するように細胞を操作するための、本明細書に記載されるキメラシグナル伝達受容体と組換え抗原受容体を共発現するように細胞を操作するための説明書を含むことができる。
【0300】
容器は、いくつかの態様では、疾患または病態、例えば、がんを治療および/または予防するのに有効な組成物を保持する。製造物またはキットは、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体を発現する操作された細胞を含む組成物が中に含有された容器を含む場合があり、その物品またはキットは、ラベルまたは添付文書上に、操作された細胞の治療有効量で対象を治療するための説明書をさらに含む。製造物またはキットは、本明細書に提供されるキメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体、例えば、CARまたはTCRを発現する操作された細胞を含む組成物が中に含有された容器を含む場合があり、その物品またはキットは、ラベルまたは添付文書上に、操作された細胞の治療有効量で対象を治療するための説明書をさらに含む。
【0301】
VIII. 定義
別途定義される場合を除き、本明細書において使用されるすべての専門用語、表記法、ならびに他の技術用語および科学用語または用語法は、請求項に記載された主題が関係する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有することが意図される。いくつかの場合では、一般的に理解されている意味を有する用語が、明快さのために、かつ/または即座の参照のために本明細書において定義され、そして、そのような定義が本明細書に含まれることは、当技術分野において一般に理解されていることを超える実質的な違いを表すものと必ずしも解釈されるべきではない。
【0302】
本明細書において使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそうではないことを明確に示す場合を除き、複数形の指示対象を包含する。例えば、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味する。本明細書において記載される様々な局面および変形は、様々な局面および変形「からなる」こと、ならびに/あるいは様々な局面および変形「から本質的になる」ことを包含することが理解される。
【0303】
本開示の全体を通して、請求項に記載されている主題の様々な局面が範囲形式で示される。範囲形式での記載は、単に便宜および簡潔性のためであり、請求項に記載されている主題の範囲に関して柔軟性のない限定として解釈してはならないことを理解しなければならない。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲だけでなく、その範囲に含まれる個々の数値もすべて具体的に開示していると見なされなければならない。例えば、値の範囲が与えられる場合、その範囲の上限と下限との間のそれぞれの中間の値、およびその指定された範囲における任意の他の指定された値または中間の値が、請求項に記載されている主題の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限がこれらのより小さい範囲に独立して含まれてもよく、これらはまた、指定された範囲における任意の具体的に除外された限界点に従うことを条件にして、請求項に記載されている主題の範囲内に包含される。指定された範囲が限界点の一方または両方を含む場合、そのような含まれた限界点のどちらかまたは両方を除外する範囲もまた、請求項に記載されている主題の範囲内に含まれる。このことは、範囲の広さにかかわらず、当てはまる。
【0304】
「約」という用語は、本明細書において使用される場合、この技術分野における当業者には容易に理解されるそれぞれの値についての通常の誤差範囲のことを指す。本明細書における「約」の付記された値またはパラメーターについての言及は、その値またはパラメーターそのものに向けられる態様を包含する(記載する)。例えば、「約X」に言及している記載は、「X」の記載を包含する。
【0305】
本明細書において使用される場合、ドメイン(典型的には、3個またはそれ以上の、一般に5個もしくは7個またはそれ以上のアミノ酸、例えば、10~200個のアミノ酸残基の配列)は、タンパク質またはコード核酸などの分子の、分子の他の一部分と構造的および/または機能的に異なりかつ識別可能である一部分のことを指す。例えば、ドメインは、1つまたは複数の構造モチーフで構成されているタンパク質内で独立して折り畳まれた構造を形成することができ、かつ/または結合活性などの機能的活性によって認識される、ポリペプチド鎖の一部分を含む。タンパク質は、1つまたは2つ以上の別個のドメインを有することができる。例えば、ドメインは、関連ファミリーメンバーに対する一次配列または構造の相同性、例えばモチーフに対する相同性によって、特定するか、定義するか、または識別することができる。別の例では、ドメインは、その機能、例えば生体分子と相互作用する能力、例えばMyD88アダプターのドメインとIRAK4シグナル伝達キナーゼとの間の相互作用によって識別することができる。ドメインが独立してまたは別の分子に融合して活性(例えば、結合など)を遂行できるように、ドメインは、独立して、生物学的機能または活性を示すことができる。ドメインは、線形のアミノ酸配列または非線形のアミノ酸配列であることができる。多くのポリペプチドは、複数のドメインを含有する。そのようなドメインは、公知であり、当業者が特定することができる。本明細書における例示のため、定義が提供されるが、名称によって特定のドメインを認識することは十分に当技術分野の技能の範囲内であると理解される。必要であれば、ドメインを特定するために適切なソフトウェアを用いることができる。
【0306】
互換的に使用できる「細胞外ドメイン」または「エクトドメイン」という用語は、本明細書において使用される場合、膜タンパク質、例えば膜貫通タンパク質の、小胞膜の外側にある領域のことを指す。エクトドメインは、しばしば、リガンドまたは細胞表面受容体に特異的に結合する複数の結合ドメインを、例えば、リガンドまたは細胞表面受容体に特異的に結合する1つの結合ドメインを介して含む。
【0307】
互換的に使用できる「エンドドメイン」または「細胞内ドメイン」または「細胞質ドメイン」という用語は、本明細書において使用される場合、いくつかの膜タンパク質、例えば膜貫通タンパク質中に見られる、細胞表面膜によって画定される内部空間内に延びる領域のことを指す。哺乳動物細胞では、エンドドメインは、膜タンパク質の細胞質領域である。細胞内において、エンドドメインは、細胞内構成成分と相互作用し、シグナル伝達においてある役割を果たすことができ、したがって、いくつかの場合では、細胞内シグナル伝達ドメインであることができる。細胞膜貫通タンパク質のエンドドメインは、代替的に細胞質ドメインと称され、これは、いくつかの場合では、細胞質シグナル伝達ドメインであることができる。
【0308】
「膜貫通ドメイン」という用語は、本明細書において使用される場合、脂質二重層、例えば、哺乳動物細胞などの生体膜中にまたはリポソームなどの人工構築物中に見られる脂質二重層を実質的にまたは完全に貫通する、膜タンパク質中に見られるドメインのことを意味する。膜貫通ドメインは、一般に、その疎水性が水性環境(例えば、細胞質ゾル、細胞外流体)と相互作用するタンパク質領域と比較して高いことに基づき、いくつもの市販の生命情報科学ソフトウェアアプリケーションにより、膜貫通ドメインのアミノ酸配列から予測可能である。膜貫通ドメインは、しばしば、膜を貫通する疎水性のαヘリックスである。膜貫通タンパク質は、脂質二重層の両層を1回または複数回貫通していてもよい。
【0309】
「特異的に結合する」という用語は、本明細書において使用される場合、特異的結合条件下で、標的タンパク質に、その親和性またはアビディティが、十分な統計的サイズのランダムペプチドまたはポリペプチドの集合体に対する同じタンパク質の平均親和性またはアビディティの少なくとも5倍大きく、しかし任意で少なくとも10、20、30、40、50、100、250、または500倍大きく、またはさらに少なくとも1000倍大きくなるように結合する、タンパク質の能力のことを意味する。特異的に結合するタンパク質は、単一の標的分子にのみ結合する必要はなく、標的と非標的(例えば、パラログまたはオーソログ)との間の立体配置の類似性に起因して非標的分子に特異的に結合する場合がある。当業者は、異なる動物種において同じ機能を有する分子(すなわち、オーソログ)または標的分子と実質的に類似のエピトープを有する非標的分子(例えば、パラログ)への特異的結合が、可能であり、かつ、固有の非標的(例えば、ランダムポリペプチド)の統計的に有効な集合体に対して決定される結合の特異性を損なわないことを認識するだろう。したがって、ポリペプチドは、交差反応性に起因して、2つ以上の別個の標的分子種に特異的に結合し得る。固相ELISAイムノアッセイまたはBiacore測定を用いて、2つのタンパク質間の特異的結合を判定することができる。一般に、2つの結合タンパク質間の相互作用は、1×10-5 M未満、しばしば1×10-12 Mほどの低さの解離定数(Kd)を有する。本開示のある特定の態様では、2つの結合タンパク質間の相互作用は、1×10-6 M、1×10-7 M、1×10-8 M、1×10-9 M、1×10-10 M、または1×10-11 Mの解離定数を有する。
【0310】
本明細書において使用される場合、組成物は、細胞を含む、2つまたはそれ以上の生成物、物質または化合物の任意の混合物のことを指す。組成物は、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0311】
本明細書において使用される場合、「濃縮すること」は、1つまたは複数の特定の細胞型または細胞集団に言及する場合、その細胞型または集団の数または割合を、例えば、組成物中の細胞の総数もしくはその体積と比較して、または他の細胞型と比べて、例えば、集団もしくは細胞によって発現されるマーカーに基づく陽性選択によって、または枯渇させるべき細胞集団もしくは細胞上に存在しないマーカーに基づく陰性選択によって増加させることを指す。この用語は、組成物からの他の細胞、細胞型または集団の完全な除去を必要とするものではなく、そのように濃縮された細胞が、濃縮された組成物中に100%またはさらにはほぼ100%で存在することを必要とするものではない。
【0312】
本明細書において使用される場合、細胞または細胞の集団が特定のマーカーについて「陽性」であるとの記述は、特定のマーカー、典型的には表面マーカーが、細胞上または細胞中に検出可能に存在していることを指す。表面マーカーに言及する場合、この用語は、フローサイトメトリーにより、例えば、前記マーカーに特異的に結合する抗体で染色して前記抗体を検出することにより検出されるような表面発現が存在することを指し、この場合、染色は、フローサイトメトリーにより、アイソタイプの一致する対照をそれ以外の点では同一の条件下で用いる同じ手順を行って検出される染色を実質的に超えるレベルで検出可能であり、かつ/または、前記マーカーについて陽性であることが知られている細胞についてのレベルと実質的に類似するレベルにあり、かつ/または、前記マーカーについて陰性であることが知られている細胞についてのレベルよりも実質的に高いレベルにある。
【0313】
本明細書において使用される場合、細胞または細胞の集団が特定のマーカーについて「陰性」であるとの記述は、特定のマーカー、典型的には表面マーカーが、細胞上または細胞中に実質的に検出可能に存在していないことを指す。表面マーカーに言及する場合、この用語は、フローサイトメトリーにより、例えば、前記マーカーに特異的に結合する抗体で染色して前記抗体を検出することにより検出されるような表面発現が存在しないことを示し、この場合、染色は、フローサイトメトリーにより、アイソタイプの一致する対照をそれ以外の点では同一の条件下で用いる同じ手順を行って検出される染色を実質的に超えるレベルで検出されず、かつ/または、前記マーカーについて陽性であることが知られている細胞についてのレベルより実質的に低いレベルにあり、かつ/または、前記マーカーについて陰性であることが知られている細胞についてのレベルと比較して実質的に類似するレベルにある。
【0314】
「発現」という用語は、本明細書において使用される場合、ポリペプチドが遺伝子などの核酸分子のコード配列に基づいて産生されるプロセスのことを指す。このプロセスは、転写、転写後制御、転写後修飾、翻訳、翻訳後制御、翻訳後修飾、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0315】
本明細書において使用される場合、対象は、任意の生きている生物、例えば、ヒトおよび他の哺乳動物を含む。哺乳動物としては、ヒト、ならびに飼育動物、競技用動物、齧歯類およびペットを含むヒト以外の動物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0316】
本明細書において使用される場合、対照は、試験パラメーターで処理されない以外は試験試料と実質的に同一である試料のことを指し、または、血漿試料である場合は、対照は、関心対象の病態を患っていない正常なボランティアに由来し得る。対照はまた、内部対照であることもできる。
【0317】
本明細書において使用される場合、「機能的に連結される(operably linked)」または「機能的に連結される(operatively linked)」は、適切な分子(例えば、転写活性化因子タンパク質)が調節配列に結合している場合に遺伝子発現を可能にするような、DNA配列(例えば、異種核酸)などの成分と調節配列との会合のことを指す。よって、このことは、記載される成分が、意図される様式で機能することを可能にする関係性にあることを意味する。
【0318】
本明細書において使用される場合、「配列同一性パーセント(%)」および「同一性パーセント」は、ヌクレオチド配列(参照ヌクレオチド配列)またはアミノ酸配列(参照アミノ酸配列)に関して使用される場合、それぞれ、最大の配列同一性パーセントを達成するように配列をアライメントし、必要ならば、ギャップを導入した後の、参照配列中の残基と同一である候補配列中のヌクレオチド残基またはアミノ酸残基の割合として定義される。配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当技術分野における技量の範囲内にある様々な方法で、例として、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、最大のアライメントを比較されている配列の全長にわたって達成するために必要な任意のアルゴリズムを含め、配列をアライメントするための適切なパラメーターを決定することができる。
【0319】
「ベクター」という用語は、本明細書において使用される場合、それが連結されている別の核酸を増幅可能な核酸分子のことを指す。この用語は、自己複製する核酸構造物としてのベクターだけでなく、導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターも含む。ある種のベクターは、機能的に連結されている核酸の発現を指令可能である。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。中でも、ベクターは、ウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターである。
【0320】
IX. 例示的な態様
中でも、提供される態様は以下である。
1. (a)TGFβに結合する、TGFβ受容体(TGFβR)の細胞外ドメインまたはその一部分と;
(b)膜貫通ドメインと;
(c)完全長MyD88の完全長TIRドメインを欠いている第1の短縮MyD88ポリペプチドと;
(d)完全長MyD88の完全長TIRドメインを欠いている第2の短縮MyD88ドメインと
を含む、キメラシグナル伝達受容体。
2. TGFβRがTGFβR2である、態様1のキメラシグナル伝達受容体。
3. 細胞外ドメインまたはその一部分が、
(i)SEQ ID NO:20に示されるアミノ酸の配列;
(ii)SEQ ID NO:20に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列;または
(iii)TGFβに結合する、(i)もしくは(ii)の一部分
を含む、態様1または態様2のキメラシグナル伝達受容体。
4. 細胞外ドメインまたはその一部分がSEQ ID NO:20に示される、態様1~3のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
5. 膜貫通ドメインがTGFβRのネイティブ膜貫通ドメインを含む、態様1~4のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
6. 膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:22に示されるアミノ酸の配列、または、SEQ ID NO:22に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む、態様1~5のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
7. 膜貫通ドメインがSEQ ID NO:22に示される、態様1~6のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
8. 膜貫通ドメインが、TGFβR以外の膜貫通タンパク質由来の異種膜貫通ドメインである、態様1~4のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
9. 膜貫通ドメインと第1の短縮MyD88ポリペプチドが直接的に連結されている、態様1~8のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
10. 膜貫通ドメインと第1の短縮MyD88ポリペプチドがリンカーによって間接的に連結されている、態様1~9のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
11. リンカーがペプチドリンカーであるかまたはそれを含む、態様10のキメラシグナル伝達受容体。
12. リンカーが、TGFβRの細胞質ドメインのN末端連続アミノ酸の部分配列であるかまたはそれを含み、部分配列が非機能的部分であり、非機能的部分が、阻害性シグナル伝達を媒介可能である機能的な阻害性シグナル伝達ドメインではない、態様10のキメラシグナル伝達受容体。
13. 細胞内ドメインが、阻害性アダプター分子、任意でSMADを動員することができない、態様1~12のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
14. リンカーが、SEQ ID NO:129に示されるTGFβR2細胞質ドメインのアミノ酸1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、1~15、1~16、1~17、1~18、1~19、1~20、1~21、1~22、1~23、1~24、または1~25であり、任意でリンカーがSEQ ID NO:24に示される、態様10、12、または13のキメラシグナル伝達受容体。
15. (i)細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含む、TGFβ受容体(TGFβR)の一部分であって、完全長TGFβRより小さく、完全長TGFβRの機能的な阻害性シグナル伝達ドメインを欠いている、一部分と;(ii)完全長MyD88の完全長TIRドメインを欠いている第1の短縮MyD88ポリペプチド、および完全長MyD88の完全長TIRドメインを欠いている第2の短縮MyD88ドメインを含む、細胞内ドメインと
を含む、キメラシグナル伝達受容体。
16. TGFβRがTGFβR2である、態様15のキメラシグナル伝達受容体。
17. TGFβRの一部分が、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸の配列、または、SEQ ID NO:3に示される配列に対して少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも92%もしくは約92%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも97%もしくは約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む、態様15または態様16のキメラシグナル伝達受容体。
18. TGFβRの一部分がSEQ ID NO:3に示される、態様15~17のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
19. TGFβRの一部分と細胞内ドメインが直接的に連結されている、態様15~18のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
20. TGFβRの一部分と細胞内ドメインがペプチドリンカーによって間接的に連結されている、態様15~18のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
21. 第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび第2のMyD88ポリペプチドが各々、MyD88の、デスドメイン(DD)と、中間ドメイン(ID)と、完全長TIRドメインの一部分とを含む、態様1~20のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
22. 第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび第2のMyD88ポリペプチドが各々独立して、完全長MyD88のアミノ酸2~155、2~156、2~157、2~158、2~159、2~160、2~161、2~162、2~163、2~164、2~165、2~166、2~167、2~168、2~169、2~170、2~171、2~172、2~173、2~174、2~175、2~176、2~177、2~178、2~179、または2~180からなる群より選択されるアミノ酸の配列であり、任意でSEQ ID NO:128の配列である、態様1~21のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
23. 第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび第2の短縮ポリペプチドが各々独立して、完全長MyD88のアミノ酸2~171または2~172の配列であり、任意でSEQ ID NO:128の配列である、態様1~21のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
24. 第1の短縮MyD88ポリペプチドがSEQ ID NO:2に示される、態様1~23のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
25. 第2の短縮MyD88ポリペプチドがSEQ ID NO:2に示される、態様1~24のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
26. 第1の短縮MyD88ポリペプチドおよび第2の短縮MyD88ポリペプチドが同じである、態様1~25のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
27. 第1のMyD88ポリペプチドと第2のMyD88ポリペプチドがペプチドリンカーによって接続されている、態様1~26のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
28. ペプチドリンカーが(G4S)n(SEQ ID NO:47)であり、ここで、nが1~4(両端の値を含む)の整数である、態様11、20、および27のキメラシグナル伝達受容体。
29. ペプチドリンカーがSEQ ID NO:47((GGGGS)n)に示され、ここで、nが1~4(両端の値を含む)の整数であり、任意で、ペプチドリンカーが、SEQ ID NO:48(GGGGS)、SEQ ID NO:85(GGGGSGGGGS)、SEQ ID NO:49(GGGGSGGGGSGGGGS)、およびSEQ ID NO:50(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)からなる群より選択される、態様11、20、27、および28のキメラシグナル伝達受容体。
30. SEQ ID NO:93に示されるか、または、SEQ ID NO:93に示される配列に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、または少なくとも97%もしくは少なくとも約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列である、態様1~29のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
31. SEQ ID NO:93に示される、態様1~30のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
32. SEQ ID NO:94に示されるか、または、SEQ ID NO:94に示される配列に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、または少なくとも97%もしくは少なくとも約97%の配列同一性を示すアミノ酸の配列である、態様1~29のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
33. SEQ ID NO:94に示される、態様1~32のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
34. キメラシグナル伝達受容体が細胞から発現された場合に、細胞外ドメインへのTGFβの結合が、第1のMyD88ポリペプチドおよび第2のMyD88ポリペプチドの二量体化を誘導する、態様1~33のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
35. キメラシグナル伝達受容体が細胞から発現された場合に、細胞外ドメインへのTGFβの結合が、IRAK4を第1のMyD88ポリペプチドおよび第2のMyD88ポリペプチドに動員する、態様1~34のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
36. キメラシグナル伝達受容体が細胞から発現された場合に、細胞外ドメインへのTGFβの結合がIRAK4のリン酸化をもたらす、態様1~35のいずれかのキメラシグナル伝達受容体。
37. 態様1~36のいずれかのキメラシグナル伝達受容体をコードするヌクレオチドの配列を含む、ポリヌクレオチド。
38. ヌクレオチドの配列が第1のヌクレオチドの配列であり、ポリヌクレオチドが、組換え抗原受容体をコードする第2のヌクレオチドの配列をさらに含む、態様37のポリヌクレオチド。
39. 組換え抗原受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはキメラ抗原受容体(CAR)である、態様38のポリヌクレオチド。
40. 組換え抗原受容体がCARである、態様38または39のポリヌクレオチド。
41. 組換え抗原受容体が腫瘍抗原に結合する、態様38~40のいずれかのポリヌクレオチド。
42. 腫瘍抗原がCD19である、態様41のポリヌクレオチド。
43. 腫瘍抗原がB7H3である、態様41のポリヌクレオチド。
44. 第1のヌクレオチドの配列と第2のヌクレオチドの配列が、バイシストロン性エレメントによって離隔されている、態様38~43のいずれかのポリヌクレオチド。
45. バイシストロン性エレメントがIRESであるかまたは切断可能ペプチドである、態様44のポリヌクレオチド。
46. 切断可能ペプチドが、P2A、T2A、およびF2Aからなる群より選択される、態様45のポリヌクレオチド。
47. 切断可能ペプチドがT2Aである、態様45または態様46のポリヌクレオチド。
48. ヌクレオチドの配列がプロモーターに機能的に連結されている、態様37~47のいずれかのポリヌクレオチド。
49. 第1のヌクレオチドの配列と第2のヌクレオチドの配列が各々、プロモーターに機能的に連結されている、態様38~47のいずれかのポリヌクレオチド。
50. プロモーターが同じプロモーターである、態様49のポリヌクレオチド。
51. プロモーターがEF1プロモーターである、態様48~50のいずれかのポリヌクレオチド。
52. 態様37、48、または51のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
53. 態様37~51のいずれかのポリヌクレオチドを含む、ベクター。
54. ウイルスベクターである、態様52または態様53のベクター。
55. ウイルスベクターがレトロウイルスベクターである、態様54のベクター。
56. ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、態様54または態様55のベクター。
57. 態様38~51のいずれかのポリヌクレオチドまたは態様53~56のいずれかのベクターを、細胞の表面でのキメラシグナル伝達受容体および組換え抗原受容体の発現のための条件下で細胞に導入することを含む、操作された細胞を産生する方法。
58. 態様37~51のポリヌクレオチドまたは態様52~56のいずれかのベクターを、細胞の表面でのキメラシグナル伝達受容体の発現のための条件下で細胞に導入することを含む、操作された細胞を産生する方法。
59. 組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを、細胞の表面での組換え抗原受容体の発現のための条件下で細胞に導入することをさらに含む、態様58の方法。
60. 組換え抗原受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはキメラ抗原受容体(CAR)である、態様59の方法。
61. 組換え抗原受容体がCARである、態様59または態様60の方法。
62. 組換え抗原受容体が腫瘍抗原に結合する、態様60または態様61の方法。
63. 腫瘍抗原がCD19である、態様62の方法。
64. 腫瘍抗原がB7H3である、態様62の方法。
65. 細胞が対象由来の初代細胞である、態様57~64のいずれかの方法。
66. 細胞が、T細胞、腫瘍浸潤細胞(TIL)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、またはマクロファージである、態様57~65のいずれかの方法。
67. 細胞が、T細胞、任意で、CD3+、CD4+、またはCD8+ T細胞である、態様57~66のいずれかの方法。
68. 細胞がCD8+ T細胞である、態様57~67のいずれかの方法。
69. 細胞がCD4+ T細胞である、態様57~67のいずれかの方法。
70. 態様57~69のいずれかの方法により産生される、操作された細胞。
71. 態様1~36のいずれかのキメラシグナル伝達受容体を含む、操作された細胞。
72. 組換え抗原受容体をさらに含む、態様71の操作された細胞。
73. 組換え抗原受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはキメラ抗原受容体(CAR)である、態様72の操作された細胞。
74. 態様37のポリヌクレオチドを含む、操作された細胞。
75. 組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、態様74の操作された細胞。
76. 組換え抗原受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはキメラ抗原受容体(CAR)である、態様75の操作された細胞。
77. 組換え抗原受容体がCARである、態様72~73および75~76のいずれかの操作された細胞。
78. 組換え抗原受容体が腫瘍抗原に結合する、態様72~72および75~77のいずれかの操作された細胞。
79. 腫瘍抗原がCD19である、態様78の操作された細胞。
80. 腫瘍抗原がB7H3である、態様78の操作された細胞。
81. 態様38~51のいずれかのポリヌクレオチドを含む、操作された細胞。
82. 細胞が対象由来の初代細胞である、態様70~81のいずれかの操作された細胞。
83. T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、またはマクロファージである、態様70~82のいずれかの操作された細胞。
84. T細胞、任意で、CD3+、CD4+、および/またはCD8+ T細胞である、態様70~83のいずれかの操作された細胞。
85. CD8+ T細胞である、態様70~84のいずれかの操作された細胞。
86. CD4+ T細胞である、態様70~85のいずれかの操作された細胞。
87. 態様70~86のいずれかの操作された細胞を含む、薬学的組成物。
88. 薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、態様87の薬学的組成物。
89. 無菌である、態様87または態様88の薬学的組成物。
90. がんを有する対象に態様70~86のいずれかの操作された細胞または態様87~89のいずれかの薬学的組成物を投与することを含む、治療の方法。
91. 操作された細胞が、がんの抗原に対してターゲティングされた抗原受容体を含む、態様90の方法。
92. 操作された細胞が、がんに関連する腫瘍抗原に結合する抗原結合ドメインを含む組換え抗原受容体を発現し、任意で、がんの細胞が腫瘍抗原を発現する、態様90の方法。
93. 組換え抗原受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である、態様92の方法。
94. 組換え抗原受容体がCARである、態様92または態様93の方法。
95. がんが血液がんであるかまたは固形腫瘍である、態様90~94のいずれかの方法。
96. 腫瘍抗原がB7H3である、態様92~95のいずれかの方法。
97. がんが、前立腺がん、黒色腫、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、尿路上皮がん、卵巣がん、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍であり、任意で、がんが卵巣がん腫または神経芽腫である、態様92~96のいずれかの方法。
98. 腫瘍抗原がCD19である、態様92~95のいずれかの方法。
99. がんがB細胞がんである、態様90~95および98のいずれかの方法。
100. がんが、白血病またはリンパ腫、任意で転移性リンパ腫である、態様90~95、98、および99のいずれかの方法。
【実施例
【0321】
X. 実施例
以下の実施例は、例証を目的としてのみ含まれるものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0322】
実施例1 キメラTGFβシグナル伝達受容体の作製
骨髄分化一次応答88(MyD88)ポリペプチドに接続されたヒトTGFβR細胞外ドメインを含むキメラTGFβシグナル伝達受容体をコードするポリヌクレオチドを作製した。MyD88は、正の細胞シグナル伝達を供給してT細胞活性化を促進し、通常はToll様受容体(TLR)の一部である、アダプターシグナル伝達分子である(図1を参照のこと)。3つのドメイン:(1)デスドメイン(DD;SEQ ID NO:10);(2)中間ドメイン(ID;SEQ ID NO:12);および(3)終端近接ドメイン(TIR;SEQ ID NO:14)を含有するSEQ ID NO:2に示される例示的なMyD88配列を含有するように、構築物が作製された。MyD88がTLRとは無関係にMyD88の活性化を通じてTGFβ阻害性シグナル伝達を減弱できるかを評価するために、構築物が作製された。
【0323】
A. ポリヌクレオチド構築物
例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体をコードするポリヌクレオチド構築物は、N末端からC末端へ、TGFβR2(例えば、SEQ ID NO:20)またはTGFβR1(SEQ ID NO:4)のいずれか由来のヒトTGFβR細胞外ドメイン、TGFβR2(例えば、SEQ ID NO:22)またはTGFβR1(SEQ ID NO:6)のいずれか由来のTGFβR膜貫通ドメイン、および少なくとも1つのMyD88ポリペプチド(SEQ ID NO:2)を含む細胞内ドメインをコードするように設計した。いくつかの場合では、細胞内ドメインは、各々SEQ ID NO:2に示される2つのMyD88ポリペプチド、第1のMyD88ポリペプチドおよび第2のMyD88ポリペプチドをタンデムに含んだ。構築物において、それぞれのTGFβRの細胞内ドメインの連続した非シグナル伝達部分を含有するリンカー配列(L1)または異種の可動性ペプチドリンカー配列を、膜貫通ドメインとMyD88ポリペプチドとの間に配置した。加えて、いくつかの場合では、可動性ペプチドリンカー配列(L2)により、MyD88をタンデムに含有する構築物において第1のMyD88ポリペプチドと第2のMyD88ポリペプチドを離隔した。例示的な可動性ペプチドリンカー配列には、SEQ ID NO:48、50または85に示しているような単一または反復のGGGGSモチーフが含まれる。また、MyD88アダプターポリペプチド配列を有する細胞内ドメインを含まないまたはTGFβR細胞外ドメインを含まない対照構築物も作製した。構築物はすべて、精製および検出を支援するためにポリヒスチジンタグ(HHHHHH、SEQ ID NO:103)またはmyc-タグ(EQKLISEEDL、SEQ ID NO:101)も含んだ。コードポリヌクレオチドはまた、CD8αシグナルペプチドをコードするシグナル配列
も含んだ。
【0324】
ポリヌクレオチド構築物によってコードされる例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体ポリペプチドを表E1に示す。ポリヌクレオチド構築物によってコードされる例示的な対照シグナル伝達受容体ポリペプチドを表E2に示す。図2はまた、作製された構築物も描写する。
【0325】
(表E1)ポリヌクレオチド構築物によってコードされる例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体
ECD:細胞外ドメイン;TM:膜貫通ドメイン
【0326】
(表E2)ポリヌクレオチド構築物によってコードされる例示的な対照キメラシグナル伝達受容体
ECD:細胞外ドメイン;TM:膜貫通ドメイン
【0327】
B. 細胞発現アッセイ
キメラTGFβシグナル伝達受容体の発現を評価するために、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体および対照をコードするポリヌクレオチド構築物を第3世代レンチウイルスベクターにクローニングした。キメラTGFβシグナル伝達受容体をコードする配列を、ヒト伸長因子1α(EF1α)プロモーター(SEQ ID NO:112に示される配列)の機能的制御下に置いた。
【0328】
ジャーカット細胞または初代ヒトT細胞に、例示的なTGFβシグナル伝達受容体CTSR-1A、CTSR-2AもしくはCTSR-2Cをコードするベクター、または対照TGFβシグナル伝達受容体CTSR-2INをコードするベクターを形質導入した。いくつかの場合で、初代ヒトT細胞に、単鎖可変断片(scFv)を含有する細胞外抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)(この場合、B7H3またはCD19を標的とする)をコードするポリヌクレオチドを共形質導入した。
【0329】
図3Aは、フローサイトメトリーによって判定した、非形質導入(UT)および形質導入したジャーカット細胞でのmyc-タグの発現レベルを示す。これらのデータは、myc-タグを含む例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体および対照が、ジャーカット細胞において発現されたことを示す。
【0330】
図3Bに示しているように、フローサイトメトリー解析は、ジャーカット細胞でのCARと例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2Cの両方の高い発現効率を明らかにした。
【0331】
図3Cおよび図3Dは、それぞれ、初代ヒトT細胞でのCARおよび例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2Cの発現効率を示す。
【0332】
これらの結果は、CARを共形質導入した場合を含め、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体がT細胞において発現可能であることを実証している。
【0333】
実施例2 TGFβシグナル伝達経路に対するキメラTGFβシグナル伝達受容体の評価
例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体の、そのネイティブ阻害経路を介してTGFβRシグナル伝達を遮断する能力、およびT細胞活性化のためにMyD88経路を作動させる能力を評価した。
【0334】
ジャーカット細胞に、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2AまたはCTSR-2Cをコードするベクターを形質導入した。タンパク質抽出の前に、形質導入細胞を0、1、5、または10ng/mLのTGFβと6時間インキュベートした。ウェスタンブロット分析を用いて、リン酸化SMAD2(pSMAD2)、リン酸化IRAK4(pIRAK4)の量およびSMAD2タンパク質レベルを判定した。
【0335】
図4に示しているように、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体を形質導入した細胞は、TGFβR2-DNR、ヌル-MYD88を形質導入したもの、または非形質導入(UT)ジャーカット細胞と比較して、pSMAD2のレベル低下を示した。これらの結果は、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体が、ネイティブTGFβRシグナル伝達経路を通じてシグナル伝達を低減させることを示している。図4はまた、非形質導入対照細胞と比較した、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体、特に、2つのMyD88ドメインをタンデムに含有するキメラ構築物CTSR-2Cを形質導入した細胞でのpIRAK4のレベル上昇も示している。これらの結果は、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体が、活性化MyD88経路を作動させることを示している。
【0336】
実施例3 T細胞増殖に対するキメラTGFβシグナル伝達受容体シグナル伝達の評価
例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体がT細胞増殖を誘導可能かを評価するために、CFDA-SE(5[6]-カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル)増殖アッセイを実施した。
【0337】
ヒトT細胞を、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFDA-SE)で標識し、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2Cをコードするベクター、例示的なCAR(抗B7H3 CAR;SEQ ID NO:45)をコードするベクター、または2つのベクター(一方は例示的なTGFβシグナル伝達受容体をコードし、もう一方は例示的なCARをコードする)を形質導入した。
【0338】
形質導入細胞を、1、5、10または20ng/mLのTGFβおよびヒト神経芽腫細胞株CHLA255標的細胞とエフェクター対標的比1:1でインキュベートした。標的細胞を48時間毎に補充した。曝露の6日後、CFDA強度を測定した。
【0339】
図5Aは、TGFβの存在下で標的細胞へ曝露した6日後のCFDA強度を示す。これらのデータは、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体の存在が、T細胞増殖を誘導することを示している。
【0340】
また、2日目および5日目に、20ng/mLのTGFβおよび標的細胞(E:T 1:1、48時間毎に補充した)の存在下でもCFDA強度を評価した。図5Bに示しているように、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体とCARの両方を発現する細胞は、CAR単独または非形質導入(UT)対照細胞と比較して増殖の増加を示した。
【0341】
また、TGFβとのインキュベーションの間にT細胞数の変化を判定することによってT細胞増殖を直接評価した。ヒトT細胞に、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2AまたはCTSR-2Cをコードするベクターと例示的なCAR(抗B7H3 CAR;SEQ ID NO:45)をコードするベクター、または例示的なCAR単独をコードするベクターを形質導入した。形質導入細胞を、0、10または50ng/mLのTGFβおよびヒト神経芽腫細胞株CHLA255標的がん細胞(E:T 1:1、48時間毎に補充した)と3週間培養した。培養期間にわたってT細胞数を判定した。
【0342】
図6Aおよび図6Bは、それぞれ、10および50ng/mLのTGFβの存在下での、形質導入細胞および非形質導入対照についての経時的なT細胞数の倍率変化を示す。これらのデータは、2つのMyD88ドメインをタンデムに含有する例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2Cの存在が、TGFβの存在下でCAR発現T細胞のT細胞増殖を改善することを示している。対照的に、キメラTGFβシグナル伝達受容体を共発現しないCAR発現T細胞では、T細胞増殖は、TGFβの存在下で実質的に低減された。
【0343】
実施例4 インビトロにおける神経芽腫に対するキメラTGFβシグナル伝達受容体の細胞傷害作用の評価
神経芽腫腫瘍細胞に対する、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体およびCARを発現するヒトT細胞の細胞傷害作用をインビトロで評価した。
【0344】
ヒトT細胞に、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2AまたはCTSR-2Cをコードするベクターと例示的なCAR(SEQ ID NO:45)をコードするベクター、または例示的なCAR単独をコードするベクターを形質導入した。
【0345】
形質導入細胞を、TGFβ(50ng/mL)の存在下または非存在下、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する神経芽腫がん細胞と異なるエフェクター対標的比(E:T)で培養した。生細胞イメージングを使用して、培養条件において54時間にわたりGFP強度を評価し、細胞死をモニタリングした。図7は、異なる培養条件下での細胞殺傷の動力学を示す。示しているように、細胞傷害性殺傷は、CAR発現T細胞においてTGFβの非存在下でロバストであり(実線)、5:1のより高いE:T比でより大きな細胞傷害活性が一般に観察された。CARのみ発現する細胞では、T細胞による細胞傷害性殺傷は、TGFβの存在下で実質的に低減された(CAR条件、破線)。対照的に、CARと2つのMyD88ドメインをタンデムに含有する例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2Cを共発現するT細胞では、TGFβの存在下での細胞傷害活性(CTSR-2C+CAR、破線)は、TGFβの非存在下で観察されたもの(CTSR-2C+CAR、実線)と実質的に類似していた。単一のMyD88ドメインのみを含有するCTSR-2AキメラTGFβシグナル伝達受容体を共発現するCAR-T細胞では、キメラTGFβシグナル伝達受容体の活性の改善は観察されなかった。
【0346】
例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2CおよびCARを形質導入した細胞の細胞傷害作用をまた、より低いE:T比およびより低いTGFβ濃度(10ng/mL)で培養288時間にわたって評価した。図8に示しているように、TGFβの非存在と比較して、TGFβの存在下で殺傷の改善が観察され、より低いE:T比で最高の改善が観察された。これらの結果は、操作されたT細胞においてTGFβが2つのMyD88ドメインをタンデムに含有するキメラTGFβシグナル伝達受容体を介して正の刺激シグナルを誘導するという知見と一致する。
【0347】
実施例5 インビトロにおける卵巣がん腫に対するキメラTGFβシグナル伝達受容体の細胞傷害作用の評価
卵巣腫瘍細胞に対する、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体およびCARを発現するヒトT細胞の細胞傷害作用をインビトロで評価した。
【0348】
ヒトT細胞に、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2Cをコードするベクターと例示的なB7H3標的CAR(SEQ ID NO:45)をコードするベクターまたは例示的なCAR単独をコードするベクターを形質導入した。形質導入細胞を、TGFβ(10ng/mL)の存在下または非存在下、卵巣がん腫622細胞株と20:1~1:10の異なるエフェクター対標的比(E:T)で8日間培養した。腫瘍細胞数を判定し、最大細胞数に対して正規化した。
【0349】
図9A(CTSR-2C+CAR)および図9B(CARのみ)は、異なるE:T比およびTGFβ濃度での正規化した卵巣腫瘍(SW 626)細胞数を示す。B7H3 CARと2つのMyD88ドメインをタンデムに含有するキメラTGFβシグナル伝達受容体を共形質導入したT細胞では、すべての条件下で経時的に卵巣腫瘍細胞殺傷の増加が観察され、TGFβで刺激した細胞において細胞数のより大きな減少が観察されたが、このことは、キメラTGFβシグナル伝達受容体がT細胞活性をモジュレートする際に正の刺激作用を持つことを裏付けている(図9A)。対照的に、B7H3 CARのみを発現するT細胞では、TGFβの存在下、特に、より低いE:T比でより大きな腫瘍細胞数が観察され、このことは、TGFβがCAR媒介細胞傷害性殺傷を阻害するという観察と一致する(図9B)。これらのデータは、2つのMyD88ドメインを含有する例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体の組み入れが、CAR媒介細胞殺傷活性を、特に、TGFβの存在下で改善することを示している。
【0350】
実施例6 神経芽腫のインビボマウスモデルにおけるキメラTGFβシグナル伝達受容体の細胞傷害作用の評価
キメラTGFβシグナル伝達受容体のインビボ効果を評価するために、同所性神経芽腫マウス腫瘍モデルを使用した。
【0351】
免疫不全NSGマウスに、1×106個のヒト神経芽腫細胞(細胞株CHLA255)の腎内注射を行った。腫瘍接種後14日目に、動物に、1×107個の非形質導入T細胞(UT)、B7H3標的CAR-T細胞(SEQ ID NO:45)、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2Cをコードするベクターを形質導入したT細胞、またはCTSR-2Cおよび抗B7H3 CAR(SEQ ID NO:45)をコードする別々のベクターを形質導入したT細胞の静脈内(i.v.)注射を行った。生物発光イメージングを使用して、各処置群における腫瘍成長をモニタリングした。
【0352】
図10Aは、各処置群の8週間にわたる神経芽腫腫瘍成長の生物発光画像を示す。これらの結果は、CARとキメラTGFβシグナル伝達受容体の両方を発現するT細胞で処置した動物において実質的に低減された腫瘍成長および改善された生存を実証した。共形質導入したT細胞群の3匹の動物は、マウスHLAを認識可能な異種ヒトT細胞を移植したNSGマウスでは公知の現象である移植片対宿主病(GVHD)と見なし安楽死させた。活性の改善は、キメラTGFβシグナル伝達受容体のみを発現する操作された細胞(操作されたCARなし)を投与したマウスでも観察された。
【0353】
図10Bは、各処置群の8週間にわたる2つの膵臓腫瘍モデル(CFPACおよびCF10.05細胞株を使用)の成長の生物発光画像を示す。これらの結果は、CARおよびキメラTGFβシグナル伝達受容体を発現するT細胞で処置した動物において実質的に低減された腫瘍成長および改善された生存を実証した。
【0354】
上述したような処置を受けた腫瘍保有マウスおよび非腫瘍(NT)保有マウス(食塩水注射)についての、末梢血球数におけるCAR+およびCD3 T細胞の存在(計数/血液mm3)を示している中央値および箱ひげ図の要約データを、図11Aおよび図11Bに示す。図11Aおよび図11Bから明らかなように、CARとキメラTGFβシグナル伝達受容体の両方を発現するT細胞で処置した動物は、T細胞(非形質導入(UT))のみを投与したマウス、CAR単独を発現するT細胞を投与したマウス、および処置非腫瘍対照(NT)群と比較して、腫瘍接種後21日目(d21)、d35またはd49の各々でCAR+およびCD3+ T細胞の数が増加していた。
【0355】
高腫瘍量下での細胞傷害活性を評価するために、同じ神経芽腫腫瘍モデルを使用し、接種後28日目に上記の通りマウスを処置した。図12A~12Cの上のパネルは、腫瘍接種後の異なる時点での転移性神経芽腫腫瘍成長の生物発光画像を示し、一方、図の下のパネルは、神経芽腫特異的マーカーPHOX2b(褐色染色)およびヒトCD3(赤色染色)について染色した後の処置注射の7日後にマウスから得られた肝臓組織の免疫組織化学的分析からの代表画像を提供する。CARのみを発現するT細胞で処置したマウス(図12B)と比較して、CARとキメラTGFβシグナル伝達受容体の両方を発現するT細胞で処置したマウス(図12C)で高腫瘍量のいくらかの低下が観察された。さらに、組織学的分析は、CARのみを発現するT細胞で処置したマウスと比較して、CARとキメラTGFβシグナル伝達受容体の両方を発現するT細胞で処置したマウスで転移性神経芽腫腫瘍細胞を有する肝臓組織へのT細胞のより大きな浸潤を明らかにした(図12Bおよび図12Cを比較)。
【0356】
実施例7 キメラTGFβシグナル伝達受容体およびキメラ抗原受容体をコードするバイシストロン性ポリヌクレオチド構築物の作製
実施例1に記載したような例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体と例示的なキメラ抗原受容体(CAR)の両方をコードするように、ポリヌクレオチド構築物を作製した。T2A(SEQ ID NO:61)切断可能ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列により、受容体をコードする核酸を離隔した。
【0357】
例示的な構築物を表E3および図13に示す。例示的な対照構築物を表E4に示す。
【0358】
(表E3)単一ポリヌクレオチド構築物によってコードされる例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体およびCAR
【0359】
(表E4)単一ポリヌクレオチド構築物によってコードされる例示的な対照TGFβシグナル伝達受容体およびCAR
【0360】
TGFβシグナル伝達受容体とCARの両方をコードするバイシストロン性ポリヌクレオチド構築物の細胞内発現を評価するために、例示的なTGFβシグナル伝達受容体および例示的なCARをコードするポリヌクレオチドを第3世代レンチウイルスベクターにクローニングした。バイシストロン性ポリペプチドキメラTGFβシグナル伝達受容体/CAR構築物をコードする配列を、ヒト伸長因子1α(EF1α)プロモーター(SEQ ID NO:112に示される配列)の機能的制御下に置いた。
【0361】
ヒトT細胞に、バイシストロン性構築物CTSR-2A-T2A-CAR-BもしくはCTSR-2C-T2A-CAR-B、または比較のためにキメラTGFβシグナル伝達受容体(CTSR-2AまたはCTSR-2C)のみ、またはCAR-B(抗CD19 CAR;SEQ ID NO:38)のみをコードするベクターを形質導入した。細胞発現をフローサイトメトリーによって判定した。プロテインLおよびmyc-タグを、それぞれ、CARおよびTGFβシグナル伝達受容体発現の代理マーカーとして使用した。
【0362】
図14は、フローサイトメトリー解析からの代表的なドットプロットを示す。これらのデータは、バイシストロン性構築物がヒトT細胞において発現可能であることを実証している。
【0363】
実施例8 TGFβシグナル伝達経路に対するキメラTGFβシグナル伝達受容体およびCARの共発現の評価
ジャーカット細胞に、実施例7に記載されるバイシストロン性構築物、またはCAR(抗CD19 CAR;SEQ ID NO:38)のみもしくはキメラTGFβシグナル伝達受容体のみをコードする対照構築物を形質導入した。タンパク質抽出の前に、形質導入細胞を0、1、5または10ng/mLのTGFβと2時間インキュベートした。ウェスタンブロット分析を用いて、リン酸化SMAD2(pSMAD2)およびリン酸化IRAK4(pIRAK4)の量を判定した。
【0364】
図15に示しているように、単一コード構築物(CTSR-2C)またはCARもコードするバイシストロン性構築物(CTSR-2C-T2A-CAR-B)のいずれかとして、MyD88をタンデムに含有する例示的なTGFβRシグナル伝達受容体を形質導入した細胞は、CAR単独を形質導入した細胞または非形質導入細胞(UT)と比較して、pSMAD2のレベル低下およびpIRAK4のレベル上昇を示した。これらの結果は、2つのMyD88ドメインをタンデムに含有する例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体が、単一のバイシストロン性構築物からCARと共発現させた場合であっても、ネイティブTGFβRシグナル伝達経路を通じてシグナル伝達を低減させることが可能であることを示している。
【0365】
実施例9 インビトロにおけるCD19+腫瘍細胞に対するCARと共発現されるキメラTGFβシグナル伝達受容体の細胞傷害作用の評価
実施例7に記載されるバイシストロン性構築物をヒトT細胞に形質導入し、CD19+腫瘍細胞に対する細胞傷害作用を評価した。
【0366】
ヒトT細胞に、バイシストロン性構築物CTSR-2A-T2A-CAR-BもしくはCTSR-2C-T2A-CAR-Bをコードするベクター、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2Cをコードするベクター、またはCARのみをコードするベクターを形質導入した。形質導入細胞を、GFPを発現するCD19+腫瘍細胞と異なるエフェクター対標的細胞比(E:T)で21時間にわたって培養した。経時的なGFP強度によって腫瘍細胞死をモニタリングした。
【0367】
図16Aは、異なる培養条件下での細胞殺傷の動力学を示す。これらの結果は、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体とCARの両方を発現する細胞が、CAR単独を発現する細胞と類似した殺傷活性を有することを示している。
【0368】
また、形質導入細胞の細胞傷害作用を10ng/mLのTGFβの存在下でも評価した。図16Bに示しているように、TGFβの存在下、CARを発現しない細胞(CTSR-2C)または1つだけMyD88ドメインを含有するキメラTGFβシグナル伝達受容体を発現する細胞において細胞傷害活性の低下が観察され、これは、上記結果と一致する(実線および破線を比較)。2つのMyD88ドメインをタンデムに含有するキメラTGFβシグナル伝達受容体が抗CD19 CARとのバイシストロン性構築物として発現されたT細胞は、TGFβの存在下であってもロバストな殺傷を示し、これは、CARのみを発現するT細胞で観察されたものよりも大きく、TGFβの非存在下での殺傷と比較して改善され得る。
【0369】
実施例10 インビボにおける転移性リンパ腫に対するCARと共発現されるキメラTGFβシグナル伝達受容体の細胞傷害作用の評価
抗CD19 CARとのバイシストロン性構築物としてキメラTGFβシグナル伝達受容体を発現するT細胞のインビボ抗腫瘍活性を評価するために、転移性リンパ腫のマウスモデルを使用した。
【0370】
免疫不全NSGマウスに、1×106個のRaji細胞の尾静脈注射を行った。腫瘍接種後3日目に、動物に、1×107個の非形質導入T細胞(UT)、抗CD19 CAR-T細胞、CTSR-2A-T2A-CAR-BもしくはCTSR-2C-T2A-CAR-Bをコードするベクターを形質導入したT細胞、または例示的なTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2Cをコードするベクターを形質導入したT細胞の静脈内(i.v.)注射を行った。生物発光イメージングを使用して、各処置群における腫瘍成長をモニタリングした。
【0371】
図17は、各処置群の8週間にわたる腫瘍成長の生物発光画像を示す。これらの結果は、例示的な抗CD19 CARとのバイシストロン性構築物から発現される2つのMyD88ドメインを含有する例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体を形質導入したT細胞で処置した動物において、低減された腫瘍成長および改善された生存を実証している。
【0372】
実施例11 他のキメラTGFβシグナル伝達構築物と比較した、CARと共発現される例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体の疲弊マーカー、増大、および細胞傷害作用の評価
例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体およびCARを発現するヒトT細胞の疲弊プロファイル、増大能、および細胞傷害作用を、CARおよび他のキメラTGFβシグナル伝達構築物(TGFβR2-DNR、ヌル-MYD88、TGFβR2-41bb、TGFβR2-DAP12)を形質導入したT細胞と一緒にインビトロで評価した。
【0373】
ヒトT細胞に、例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2A、CTSR-2C、TGFβR2-DNR、ヌル-MYD88、TGFβR2-41bbもしくはTGFβR2-DAP12をコードするベクターと例示的なCAR(抗B7H3 CAR;SEQ ID NO:45)をコードするベクター、または例示的なCAR単独をコードするベクターを形質導入した。
【0374】
形質導入細胞を、TGFβ(10ng/mL)の存在下または非存在下、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する神経芽腫がん細胞と1:1の標的比(E:T)で培養した。腫瘍細胞と72時間培養した後、フローサイトメトリーを使用して、PD1、Tim3およびLAG3疲弊マーカーの発現を有する細胞の頻度を評価した。図18は、TGFβの存在下または非存在下での、1つ、2つまたは3つすべての疲弊マーカーを発現する細胞の割合を示す。示しているように、1つ、2つまたは3つの疲弊マーカーを有する細胞の割合は、CARと2つのMyD88ドメインをタンデムに含有する例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2Cを共発現するT細胞でのみ減少した。1つ、2つまたは3つの疲弊マーカーを有する細胞の数の減少は、1つだけMyD88ドメインを含有するCTSR-2AキメラTGFβシグナル伝達受容体を共発現するCAR-T細胞でも観察されたが、程度はより低かった。対照的に、CARを単独でまたはCARをTGFβR2-41bbベクターと共に発現する細胞は、TGFβの存在下で3つの疲弊マーカーを有するT細胞をより高い割合で有していた。
【0375】
例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2CおよびCTSR-2Aの増殖能を他のキメラTGFβRシグナル伝達構築物と4週間にわたって比較評価し、第1週は腫瘍細胞の存在下で、その後は、TGFβ(10ng/mL)ありまたはなしで毎日IL2処理した。図19は、CARとキメラTGFβシグナル伝達受容体TGFβR2-DNR、TGFβR2-41bb、TGFβR2-DAP12を共発現するT細胞、またはCAR単独を発現する細胞と比較して、CARと例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2CおよびCTSR-2Aを共発現するT細胞について、経時的なT細胞数の倍率変化が有意に高いことを示す。
【0376】
CARおよびキメラTGFβシグナル伝達受容体を形質導入した細胞の細胞傷害作用は、最初にTGFβ(10ng/mL)の存在下または非存在下でT細胞を腫瘍細胞と1:1の標的比(E:T)で1週間共培養し、次いで、培養物からT細胞を回収してそれらをTGFβ(10ng/mL)の存在下または非存在下で新鮮な腫瘍細胞と1:1の標的比(E:T)でさらに1週間再培養することによって比較した。図20Aに示しているように、キメラTGFβシグナル伝達を示したすべてのCAR T細胞は、腫瘍細胞に対してある程度の細胞傷害性を実証した。しかしながら、図20Bに示しているように、CARと例示的なキメラTGFβシグナル伝達受容体CTSR-2CおよびCTSR-2Aを形質導入したT細胞だけが、細胞傷害作用を保持しており、CTSR-2Cを形質導入したT細胞は、TGFβの存在下で殺傷の改善を示した。
【0377】
本発明は、例えば、本発明の様々な局面を例証するために提供される特定の開示された態様に範囲が限定されることを意図していない。記載された組成物および方法に対する様々な改変は、本明細書における説明および教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および趣旨から逸脱することなく実践されることができ、本開示の範囲内に含まれるものと意図される。
【0378】
配列表
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
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【配列表】
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【国際調査報告】