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特表2023-535380横加速度により作動するアクチュエータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】横加速度により作動するアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16D 59/00 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
F16D59/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023503200
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 SE2021050734
(87)【国際公開番号】W WO2022015233
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】2050909-7
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523017785
【氏名又は名称】ブリリアンゼ スウェーデン アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ザンダー ステン-トーレ
(72)【発明者】
【氏名】ザンダー パトリック
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA03
3J058AA07
3J058AA13
3J058AA17
3J058AA23
3J058AA24
3J058AA30
3J058AA37
3J058AB19
3J058AB30
3J058CA03
3J058CA08
3J058CC06
3J058FA50
(57)【要約】
回転可能な物体の回転加速度から生じる横加速度によって主に作動するアクチュエータが提示される。物体は、回転平面内で、その回転平面内の物体ピボット点を中心に回転可能である。アクチュエータは、回転平面内又は回転平面に平行に回転可能に適合され、各本体の本体ピボット点で物体に結合された少なくとも2つの本体を備える。本体ピボット点及び/又は本体は、前記本体ピボット点の周囲で本体の質量分布が不均一であるように配置される。アクチュエータは、前記少なくとも2つの本体のうちの少なくとも2つを動作可能に結合するように配置された少なくとも1つの結合配置を備える。本体ピボット点の周囲の前記不均一な質量分布により、アクチュエータは、物体の回転加速度に応答して、物体の前記回転加速度の方向とは反対の方向にそのそれぞれの本体ピボット点を中心に回転する前記少なくとも2つの本体によって作動状態に移行するように構成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な物体(10)の回転加速度から生じる横加速度によって主に作動するアクチュエータ(100)であって、前記物体(10)は、回転平面(P)内で、前記回転平面(P)内の物体ピボット点(12)を中心に回転可能であり、前記アクチュエータ(100)は、
前記回転平面(P)内又は前記回転平面(P)に平行に回転可能に適合された少なくとも2つの本体(110)であって、各本体(110)の本体ピボット点(120)で前記物体(10)に結合され、前記本体ピボット点(120)及び/又は前記本体(110)は、前記本体ピボット点(120)の周囲で前記本体(110)の質量分布が不均一であるように配置される、少なくとも2つの本体(110)と、
前記少なくとも2つの本体(110)のうちの少なくとも2つを動作可能に結合するように配置された少なくとも1つの結合配置(130)と、
を備え、
前記本体ピボット点(120)の周囲の前記不均一な質量分布により、前記アクチュエータ(100)は、前記物体(10)の回転加速度に応答して、前記物体(10)の前記回転加速度の方向とは反対の方向にそのそれぞれの本体ピボット点(120)を中心に回転する前記少なくとも2つの本体(110)によって作動状態に移行するように構成される、アクチュエータ(100)。
【請求項2】
前記結合配置(130)によって動作可能に結合された前記少なくとも2つの本体(110)は、前記物体(10)が、前記回転平面(P)内又は前記回転平面(P)に平行に向けられた、前記物体(10)の回転加速度を引き起こさない力を受けたときに、そのそれぞれの本体ピボット点(120)の周囲での前記不均一な質量分布が、前記結合配置(130)によって動作可能に結合された前記少なくとも2つの本体(110)に対して、そのそれぞれの本体ピボット点(120)について反対方向に、前記回転平面(P)内又は前記回転平面(P)に平行な回転移動を引き起こすように配置されている、請求項1に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの結合配置(130)によって動作可能に結合された前記少なくとも2つの本体(110)、及び前記少なくとも1つの結合配置(130)は、前記物体(10)の回転加速度を引き起こさない、前記回転平面(P)内又は前記回転平面(P)に平行に向けられた1つ以上の力から生じる、動作可能に結合された前記本体(110)のそのそれぞれの本体ピボット点(120)を中心とする回転動作を無効にするように配置されている、請求項2に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項4】
前記少なくとも2つの本体(110)のうちの2つだけを一緒に結合するように配置された1つの結合配置(130)を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項5】
前記アクチュエータ(100)は、少なくとも1つの結合機構(150)をさらに備え、前記アクチュエータ(100)は、前記作動状態に移行するとき、前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つを係合するようにさらに構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つは、物体(10)と直接的又は間接的に係合するように構成され、前記物体(10)の現在の回転速度が変更されるようになっている、請求項5に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つは、摩擦ブレーキである、請求項5~6のいずれか一項に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つは、クラッチである、請求項5~7のいずれか一項に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つは、電子結合機構である、請求項5~8のいずれか一項に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つは、前記アクチュエータ(100)を作動させるため、及び/又は前記アクチュエータ(100)の外部のデバイスを制御するための外部インターフェース(155)を備える、請求項5~9のいずれか一項に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項11】
前記アクチュエータ(100)は、前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つの係合をホールドオフ時間(T)だけ遅らせるように構成され、前記ホールドオフ時間(T)は、前記横加速度が前記アクチュエータ(100)の作動のための第一の閾値を超える量と、前記少なくとも1つの結合機構(150)の前記少なくとも1つが作動される前に前記本体(110)が移動しなければならない距離によって決められる、請求項5~10のいずれか一項に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項12】
前記物体(10)の前記回転加速度が事前定義された又は設定可能な第二の閾値以下である場合に、前記アクチュエータ(100)を前記作動状態から移行するように配置された少なくとも1つの戻りバイアス配置(160)をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの戻りバイアス配置(160)は、動作可能に結合された前記本体(110)及び/又は前記少なくとも1つの結合配置(130)の少なくとも1つに作用することによって、前記アクチュエータ(100)を前記作動状態から戻すように配置された少なくとも1つのバイアス部材(165)を備える、請求項12に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項14】
事前定義された又は構成可能な前記第一の閾値及び事前定義された又は構成可能な前記第二の閾値は、前記少なくとも1つの戻りバイアス配置(160)の構成によって部分的に決定される、請求項12又は13に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項15】
前記結合配置(130)による前記少なくとも2つの本体(110)の動作可能な結合は、機械的結合によるものである、請求項1~14のいずれか一項に記載のアクチュエータ(100)。
【請求項16】
前記機械的結合は、1つ以上の伝達部材(131)及び/又は1つ以上の結合部材(133)を備える、請求項15に記載のアクチュエータ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度作動型アクチュエータに関し、より具体的には、回転可能な物体の回転加速度から生じる横加速度によって作動する加速度作動型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
本体の回転は、多数のパラメータを用いて記述することができ、一般的に用いられるパラメータは角速度である。回転によって、回転本体の角速度に依存する遠心力が生じる。遠心力は、例えば、ブレーキやクラッチを工学的に設計する際に、一般的に利用される現象である。これらのデバイスは、ありふれたものであるが、少なくとも1つの固有の欠点がある。遠心力によって作動するデバイスは、通常、本体の回転がある角速度を超えると、作動する。これは一部の用途では便利であるが、多くの用途では、速度ではなく角加速度で作動するデバイスが必要とされている。これらのデバイスは、角速度の変化に応答して既に作動し、好ましくは角速度とは無関係である。
【0003】
そのようなデバイスの1つが、特許文献1に、角速度の変化率によって調節される回転摩擦ブレーキの形態で開示されている。回転摩擦ブレーキは、第一の本体と、第一の本体に回転可能に取り付けられた第二の本体とを備える。
【0004】
先行技術の欠点の一つは、設計のばらつきに敏感であり得ることである。公差の比較的に小さな広がりでさえ、例えば、作動レベルの変化に繋がり、回転本体に不均衡をもたらす可能性がある。
【0005】
以上から、改善の余地があることが理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/140734号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加速度によって作動するための新しいタイプのアクチュエータを提供し、これによって、先行技術を改善し、上述した欠点を解消するか、又は少なくとも緩和することである。より具体的には、本発明の目的は、角加速度から生じる横方向の力によって作動するアクチュエータを提供することである。これらの目的は、添付の独立請求項に記載された技術によって、それに関連する従属請求項に定義された好ましい実施形態とともに、達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の態様では、回転可能な物体の回転加速度から生じる横加速度によって主に作動するアクチュエータが提示される。物体は、回転平面内で、その回転平面内の物体ピボット点を中心に回転可能である。アクチュエータは、回転平面内又は回転平面に平行に回転可能に適合され、各本体の本体ピボット点で物体に結合された少なくとも2つの本体を備える。本体ピボット点及び/又は本体は、前記本体ピボット点の周囲で本体の質量分布が不均一であるように配置される。アクチュエータは、前記少なくとも2つの本体のうちの少なくとも2つを動作可能に結合するように配置された少なくとも1つの結合配置を備える。本体ピボット点の周囲の前記不均一な質量分布により、アクチュエータは、物体の回転加速度に応答して、物体の前記回転加速度の方向とは反対の方向にそのそれぞれの本体ピボット点を中心に回転する前記少なくとも2つの本体によって作動状態に移行するように構成される。
【0009】
アクチュエータの一実施形態において、結合配置によって動作可能に結合された少なくとも2つの本体は、物体が、回転平面内又は回転平面に平行に向けられた、物体の回転加速度を引き起こさない力を受けたときに、そのそれぞれの本体ピボット点の周囲での前記不均一な質量分布が、結合配置によって動作可能に結合された前記少なくとも2つの本体に対して、そのそれぞれの本体ピボット点について反対方向に、回転平面内に回転移動を引き起こすように配置されている。このことは、振動の影響を受けにくく、物体全体に質量をより均一に分散できる設計を可能にするので、有益である。
【0010】
アクチュエータの別の実施形態において、前記少なくとも1つの結合配置によって動作可能に結合された前記少なくとも2つの本体、及び前記少なくとも1つの結合配置は、物体の回転加速度を引き起こさない、回転平面内又は回転平面に平行に向けられた1つ以上の力から生じる動作可能に結合された前記本体のそのそれぞれの本体ピボット点を中心とする回転動作を無効にするように配置されている。これは、アクチュエータが重力等の外力の影響を受けにくくなるので、有益である。これは、物体の回転速度が比較的に低い場合に、アクチュエータに作用する遠心力が重力よりも小さくなり得るので、特に有益である。
【0011】
アクチュエータの更なる実施形態では、前記少なくとも2つの本体のうちの2つを一緒に結合するように配置された1つの結合配置を備える。2つの本体を一緒に結合させることは、軽量でコスト効率の良い設計を可能にするので、有益である。
【0012】
アクチュエータのさらに別の実施形態において、アクチュエータは、少なくとも1つの結合機構をさらに備える。アクチュエータは、作動状態に移行するとき、前記少なくとも1つの結合機構を係合するようにさらに構成される。結合機構によって、アクチュエータが作動したときに、多数のアクションを実行することが可能になる。
【0013】
アクチュエータの追加の一実施形態では、前記少なくとも1つの結合機構の少なくとも1つは、物体の現在の回転速度が変化するように、物体と直接的又は間接的に係合するように構成される。物体の加速度が第一の閾値を超えた場合、物体の回転速度を低下させることが有益な場合がある。これは、結合機構によって追加の制動力が加えられる可能性があるので、加速度が正の場合にも負の場合にも有益である。
【0014】
アクチュエータのさらに別の実施形態では、前記少なくとも1つの結合機構の少なくとも1つは、摩擦ブレーキである。摩擦ブレーキは、設計するのに比較的費用対効果が高い。
【0015】
アクチュエータの一実施形態では、前記少なくとも1つの結合機構の少なくとも1つは、クラッチである。結合機構がクラッチとして機能することは、例えば、物体又は他の任意の適切な本体に対する駆動の除去又は追加を可能にするので有益である。
【0016】
アクチュエータのこの実施形態では、前記少なくとも1つの結合機構の少なくとも1つは、電子結合機構である。これは、機械的なアクチュエータが、任意の適切な電子機器と統合して制御するために使用され得るので有益である。
【0017】
アクチュエータのさらに別の実施形態では、前記少なくとも1つの結合機構の少なくとも1つは、アクチュエータを作動させるための、及び/又はアクチュエータの外部のデバイスを制御するための外部インターフェースを備える。外部インターフェースによって、アクチュエータを別のアクチュエータ等の任意の適切な外部デバイスに接続することが可能になる。
【0018】
アクチュエータの一実施形態では、前記少なくとも1つの結合機構の少なくとも1つの係合をホールドオフ時間だけ遅らせるように構成される。ホールドオフ時間は、横加速度がアクチュエータの作動のための第一の閾値を超える量と、前記少なくとも1つの結合機構のうちの前記少なくとも1つが作動する前に本体が移動しなければならない距離とによって決定される。これによって、アクチュエータの不要な作動の除去又は低減が可能になり、すなわち、角ジャークに対する感度の構成及び不要な作動の抑制が可能になるので有益である。
【0019】
アクチュエータの更なる実施形態では、物体の回転加速度が事前定義された又は設定可能な第二の閾値以下である場合に、アクチュエータを作動状態から移行するように配置された少なくとも1つの戻りバイアス配置を備える。これによって、アクチュエータが制御された方法でその作動状態から/に移行することが可能になるので有益である。
【0020】
請求項のアクチュエータのさらに別の実施形態では、少なくとも1つの戻りバイアス配置は、動作可能に結合された前記本体及び/又は前記少なくとも1つの結合配置の少なくとも1つに作用することによって、アクチュエータを作動状態から戻るように配置された少なくとも1つのバイアス部材を備える。これによって、アクチュエータが制御された方法でその作動状態から/に移行することが可能になるので有益である。
【0021】
この実施形態では、事前定義された又は構成可能な第一の閾値及び事前定義された又は構成可能な第二の閾値は、前記少なくとも1つの戻りバイアス配置の構成によって部分的に決定される。これによって、アクチュエータが制御された方法でその作動状態から/に移行することが可能になるので有益である。
【0022】
アクチュエータの一実施形態では、結合配置による前記少なくとも2つの本体の動作可能な結合は、機械的結合によるものである。機械的結合は、信頼性が高く、設計の柔軟性が高い。
【0023】
アクチュエータの更なる実施形態では、機械的結合は、1つ以上の伝達部材及び/又は1つ以上の結合部材を備える。この機械的結合は、信頼性が高く、設計の柔軟性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の実施形態は、以下で説明する。添付の図面を参照していくが、それらの図面は、本発明の概念をどのように実践に還元できるかの非限定的な例を説明する。
【0025】
図1】回転可能な物体の概略図である。
図2a】本発明のいくつかの実施形態によるオイラー本体の概念図である。
図2b】本発明のいくつかの実施形態によるオイラー本体の概念図である。
図2c】本発明のいくつかの実施形態によるオイラー本体の概念図である。
図3】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータのブロック図である。
図4a】本発明のいくつかの実施形態による、異なる状態でのアクチュエータの概略図である。
図4b】本発明のいくつかの実施形態による、異なる状態でのアクチュエータの概略図である。
図5】横加速度の経時的なグラフである。
図6a】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略図である。
図6b】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略図である。
図6c】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略図である。
図6d】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略図である。
図7】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略図である。
図8a】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略図である。
図8b】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略図である。
図8c】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略図である。
図8d】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略図である。
図9a】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略図である。
図9b】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略図である。
図9c】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略図である。
図10】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータの概略透視図である。
図11】本発明のいくつかの実施形態によるアクチュエータを備える歩行器の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、添付の図面を参照して、特定の実施形態をより完全に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように、例として提供されている。
【0027】
「結合された」という用語は、必ずしも直接でなくとも、また必ずしも機械的にではなくとも、接続されていると定義される。「1つの」という用語は、本開示が明示的に他に要求しない限り、1つ以上として定義される。「実質的に」、「およそ」及び「約」という用語は、当業者によって理解されるように、指定されたものが大部分であるが、必ずしも全体でなくてもよいと定義される。「備える」、「有する」、「含む」、「含有する」及びそれらの各形態は、オープンエンドの連結動詞である。その結果、1つ以上の特定のステップを「備える」、「有する」、「含む」又は「含有する」デバイスは、それらの1つ以上のステップを保有するが、それらの特定の1つ以上のステップのみを保有することに限定されない。
【0028】
加速度という用語は、本開示全体を通して使用される場合、加速度及び/又は減速度として定義される。言い換えれば、加速度は、正でも負でもよく、本開示の教示は、いずれの場合にも適用される。これに加えて、回転加速度という用語は、本開示において、角加速度に等しいと定義され、上述したように、正及び負の両方であり得る。
【0029】
図1を参照して、回転可能な物体10の回転加速度から生じる横方向の力Fによって作動するアクチュエータ100の概念的な考えを説明する。回転本体の物理学に関してはあまり詳細に説明しないが、当業者は、この開示を咀嚼した後、本発明を可能にする基礎的な物理学を理解することになる。物体10は、回転平面Pにおいて物体ピボット点12を中心に回転可能である。これ以降、特に明記しない限り、全ての回転は、同じ回転平面Pにあると仮定するが、何か他のことが明示的に指定されている場合は除く。平面P内であると参照される回転は、平行な、又は実質的に平行な平面Pである可能性が非常に高いことに留意されたい。すなわち、平面Pは、回転が同じ又は平行な平面P内にあることを示す参照と見なされる。物体10が平面P内で回転可能であり、他の本体が平面Pに関して角度のある平面内で回転可能であることがあり得る。この回転が、本明細書で教示される方法で物体10の回転に結合される場合、そのような方向付けもまた、本明細書に開示されると見なされる。物体ピボット点12を中心とする回転Rは、図1において、回転Rが時計回り又は反時計回りのいずれでもよいことを示す点線で描かれている。回転可能な物体10にある、その上にある、又はその中にある現実又は仮想の点11は、物体ピボット点12を中心に物体10とともに回転する。物体10の回転角速度は、点11の角速度と同じになる。しかしながら、よく知られているように、接線方向の回転速度、すなわち、接線速度は、接線速度を決定する物体ピボット点12から点11までの距離に依存することになる。物体10が一定の角速度で回転している場合、すなわち、物体10の角加速度がゼロの場合、回転によって点11に径方向の遠心力が生じるが、一定の角速度での回転からは接線方向の力Fは生じない。しかしながら、角速度が変化した場合、すなわち、物体10の角加速度の絶対値が0より大きい場合、その加速度によって、接線力Fが生じることになり、これは、オイラー加速度から生じる一般にオイラー力として知られる。また、オイラー加速度は、方位加速度又は横加速度としても知られている。これらの名称、オイラー加速度、横加速度及び方位加速度は、本開示を通じて互換的に使用されてもよく、当業者には、同じ力又は加速度として解釈されることが理解される。オイラー力Fは、物体10の回転中心12からの位置rで質量mを有する本体に作用する架空の接線力として当技術分野から知られている。オイラー力Fは、以下の式1に詳述するように、角速度ωの横加速度aから計算されてもよい。
【数1】
【0030】
本開示において、物体ピボット点12を中心に回転平面Pで回転するものとして参照される回転物体10は、オイラー力F及び横加速度aを説明する際に、物理学で一般的に用いられる回転基準フレームと同一視されてもよい。
【0031】
横力Fは、メリーゴーランドに乗っている乗客が、メリーゴーランドの進行方向を向いている場合を例示することができる。メリーゴーランドが発進すると、加速し、乗客はメリーゴーランドの回転方向と反対方向に後方に押される力を感じる。メリーゴーランドが所定の速度に達すると、加速が止まり、乗客はもはや後方に押されることはない。メリーゴーランドが停止すると、減速、又は負の加速度となり、乗客はメリーゴーランドの回転方向に前方へ押す力を経験することになる。これらの力は、式(1)で示されるように、乗客が座っているメリーゴーランドの中心から離れているほど、また乗客が重いほど大きくなる。横加速度は、角加速度とは反対方向である。
【0032】
この横加速度aとオイラー力Fという概念は、本開示の背後にいる発明者が、多大な発明過程を経て、物体10の角加速度によって作動するアクチュエータ100を設計する際に利用され得ることに気付いたものである。すなわち、主にオイラー力Fによって作動するアクチュエータ100である。
【0033】
図1に簡単に留まると、アクチュエータ100は、物体ピボット点12からオフセットして配置されているように描かれているが、これはアクチュエータ100の単なる1つの例示的配置であり、本開示を読んだ後に、当業者が容易に理解するように、アクチュエータは、物体10と共に回転することが許されるように任意の場所に配置、取り付け、構成されてもよい。I多くの場合、少なくとも物体10が物体ピボット点12について均一な質量分布を有する場合、回転する物体10に不均衡を導入しないために、アクチュエータ100を物体ピボット点12について均一に配置するのが望ましいことがある。さらに、図1において、物体10は、物体ピボット点12を包含するように図示されているが、これも例示的な一実施形態に過ぎない。物体10は、物体ピボット点12から離れた位置で、物体ピボット点12を中心に回転するように配置されても全くよい。物体10がヨーヨーの円形ロールであり、物体ピボット点12がヨーヨーの紐を持って回転している人であると想像してみる。ヨーヨーは、物体ピボット点12を中心に、紐の長さで決まる距離で回転することになる。
【0034】
上記の導入部から、どんな回転本体でも角加速度を受けるとオイラー力Fが発生することは明らかである。しかしながら、本発明者らが実現したのは、任意の回転本体で、その本体ピボット点の周囲で不均一な質量分布を有するものは、オイラー力Fによってアクチュエータ100を作動させるために使用され得るということである。説明を明確で容易なものにするために、このような本体で、その本体ピボット点の周囲で不均一な質量分布を有するものは、本開示において、オイラー本体と呼ばれる場合がある。この本体ピボット点の周囲での不均一な質量分布は、例えば、オイラー本体の柔軟性により、固定的であっても動的であってもよい。質量分布が、例えば、遠心力によって変化するように、オイラー本体の内部に液体が存在する場合がある。さらに、オイラー本体の設計に、弾性がある場合もある。オイラー本体を参照する際には、この定義の全ての適切な特殊性と派生性が考慮される。
【0035】
図2a~図2cに、オイラー本体110がどのように形成され得るかの非限定的な例示的な実施形態を示す。図2aから始めて、実質的に長方形のオイラー本体110が、オイラー本体110の一方の短端に向かってオフセットして位置する本体ピボット点120を伴って示されている。図2aの直方体が、例えば、材料及び厚さに関して均一であると仮定すると、本体ピボット点120をオフセットさせることは、その本体ピボット点120の周囲で不均一な質量分布をもたらすことになる。素人の例として、本体ピボット点120にロッドを通し、そのロッドを点線の回転円Rに沿うように物体ピボット点12を中心に動かすことを考える。回転速度が増加すると、オイラー本体120は物体ピボット点12に対して半径方向に向き、オフセットした本体ピボット点120を有する端部を物体ピボット点12に最も近い位置に置く。これは、遠心力の結果である。物体ピボット点12を中心にした理論上のロッドの回転が停止すると、オイラー本体110は、その本体ピボット点120、すなわち理論上のロッドの周囲で、ロッドが物体ピボット点12を中心にして移動したのと同じ方向、すなわち時計回り又は反時計回りに回転し続ける。これは、一部には、オイラー力Fによるものである。
【0036】
同じ理屈は、図2bのオイラー本体110にも当てはまり、ここでは、本体ピボット点120が実質的に円形の均質的に形成された形状の幾何学的中心に配置されている。この例では、不均一な質量分布は、円形本体上にアンバランス要素115を形成することによって達成される。アンバランス要素115は、例えば、本体を貫通する穴を開けるか、本体に重りを追加することによって実現されてもよい。
【0037】
図2cには、オイラー本体120の実際の形状が本開示の教示にほとんど関連しないことをさらに強調するために、より雲状のランダムに形成されたオイラー本体120及びその関連するピボット点12を示す。
【0038】
オイラー本体110の重要な特徴は、その質量がそのそれぞれのピボット点12について不均一に分布していることである。オイラー本体110は、その質量中心がその本体ピボット点120からオフセットされるように形成されることであると言ってもよい。あるいは、言い換えれば、オイラー本体110は、オイラー本体110の質量分布が本体ピボット点120の周囲で不均一になるように、本体ピボット点120が配置されて形成される任意の本体であってもよい。開示された発明が特定の形態又は形状を有する本体に限定されず、その本体ピボット点120の周囲で質量の不均一な分布を有する任意の適切な本体がこの説明によってカバーされることは、この開示をその実体において読み、消化した後に、当業者には明らかであるだろう。
【0039】
オイラー本体110は、本体ピボット点120で物体10に結合されてもよい。このような結合は、物体10に固定され、本体ピボット点120の穴又は隙間に挿入されるピンによって達成されてもよい。摩擦を減らすために、例えば、ベアリングを利用した結合であっても全くよい。オイラー本体110は、代替的に、本体ピボット点120において、プレート又はハウジングに結合されてもよく、その後、前記プレート又はハウジングが物体10に取り付けられる。当業者は、本開示を読んだ後、この結合を達成する多数の適切な方法があることを理解し、明示的に言及されていないものの、全てのそのような結合は、本開示の一部とみなされる。本開示を通じて、明示的に別段の記載がない限り、議論された全てのオイラー本体110は、物体10に回転可能に結合されていると見なされるものとする。
【0040】
上記の例から、オイラー本体110は、オイラー力F以外の他の力によってその本体ピボット点120を中心に回転し得ることを学んだ。そのような力は、重力、遠心力、又は物体ピボット点12に向かって、又は物体ピボット点12から回転平面Pでオイラー本体110に作用する事実上あらゆる力であってよい。他の方向に向けられた回転平面P内の力は、物体10の回転、又は回転の変化、ひいてはオイラー本体110の横加速度aを引き起こす成分を有することになる。物体ピボット点12に向かう、又は物体ピボット点12から離れる回転平面Pにおいてオイラー本体110に作用するこれらの力の影響を低減するために、オイラー本体110を横方向の力FTEによってのみ実質的に移行される位置にロックするための配置が導入されてもよい。このようなロック配置は、多くの異なる方法で達成されてもよく、以下の例は、単に概念を説明するために提示されたものであり、決して本発明を限定するものと見なさない。再び図2aのオイラー本体110に戻ると、オイラー本体110は、物体10とオイラー本体110との間に、例えば、摩擦要素、バイアス要素、磁気要素、電磁要素等を配置してもよい。配置は、この要素がオイラー本体110を第一の位置にロックするが、オイラー本体110が横方向の力F及び/又は加速度aを受けると、この力又は加速度が、要素がオイラー本体110を第一の位置にロックする力に打ち勝つようなものであってもよく、オイラー本体110は、その本体ピボット点120の周囲で少なくとも部分的に回転することが許容される第二のモードへ移行できる。オイラー本体110を第二の位置に移行させるために必要な物体10の角加速度の量を、第一の閾値として定義してもよい。この第一の閾値は、例えば、前記要素の電磁力を制御することによって構成可能であってもよく、及び/又は事前定義されていてもよい。
【0041】
アクチュエータ100に構成される場合、オイラー本体110の第二のモードは、アクチュエータ100を作動状態に移行させるために使用されてもよい。アクチュエータ100の設計、使用及び特定の目的に応じて、作動状態は、多数の異なる特徴を備えてもよい。以下は、アクチュエータ100の作動状態が構成し得るものの例示的な実施形態に過ぎず、決して本発明を限定するものと見なすべきではない。アクチュエータ100が、その作動状態への移行を聴覚的にマークするように構成されてもよく、これは、例えば、導入されたロック要素が、オイラー本体110をもはやロックしないときに音を出すように構成されることによって、移動オイラー本体110が音の生じるように要素と相互作用することによって等で達成されてもよい。作動状態は、代替的又は付加的に、オイラー本体110の移動によって電気回路を閉じたり開いたりすることから構成されてもよい。そのような働きは、作動状態への移行時又は作動状態からの移行時に閉位置に、又は閉位置から移行することによって、実質的に電気スイッチの働きである。作動状態におけるオイラー本体110の動きによって、オイラー本体110が作動状態をマークするための配置と相互作用することが可能になり得ることに留意されたい。また、本体ピボット点120は、作動状態への移行又は作動状態からの移行をマークするために使用されてもよい。ピボット120は、例えば、オイラー本体110と比較して同じ平面又は異なる平面において遠位又は近位の配置が作動状態への移行又は作動状態からの移行をマークするために使用され得るように、オイラー本体110の動きを伝達するのに適した回転部材を備えて配置されてもよい。追加又は代替として、本体ピボット点120は、本体ピボット点120の周囲でオイラー本体110によって移動した回転距離を推定するように配置されたセンサを備えてもよい。推定された回転距離をオイラー本体110が回転するのに要する時間を推定することによって、物体ピボット点12からの半径r及びオイラー本体110の質量mが既知であると仮定して、式(1)から横加速度a及びオイラー力Fを推定することが可能である。同様に、本体ピボット点120のセンサは、物体10に対するオイラー本体110の移動距離を推定するように配置された距離センサで拡張してもよいし、それに置き換えてもよい。
【0042】
アクチュエータ100は、いくつかの実施形態において、1つ以上の結合機構150を備えてもよく、これは、図3に概略的に描かれており、アクチュエータ100が作動状態に移行するときに、少なくとも1つの結合機構150が係合するように配置されてもよい。結合機構150は、例えば、上記に開示されたようなスイッチング機能等のオイラー本体110の外部の要素として定義されてもよいし、オイラー本体110の一体化した部分として定義されてもよい。結合機構150は、多数の異なる機能を備えてもよく、又はそれらを実行するように構成されてもよく、以下は、結合機構150の機能の単なる例示的な実施形態である。アクチュエータ100には、複数の結合機構150を設けてもよく、各結合機構150は、異なる特徴を有するように構成されてもよいことに留意されたい。各結合機構150の配置から、アクチュエータ100は、例えば、横加速度aの量及び/又は横加速度aの方向に応じて、異なる特徴を実行するように構成されてもよい。結合機構150は、物体10及び/又はアクチュエータ100の外部のデバイス、本体、及び機器と係合するように配置されてもよい。
【0043】
一実施形態では、結合機構150は、アクチュエータ100がその作動状態に移行するときに、作動する電子スイッチを備える。一実施形態では、結合機構150は、1つ以上のクラッチを備えるか、又は係合する。更なる実施形態では、結合機構150は、物体10と係合し、物体10に動作可能に結合された1つ以上のクラッチと係合するように構成される。このような実施形態は、例えば、アクチュエータ100がその作動状態に移行するときに、クラッチ機能によって、アクチュエータ100が物体10の駆動を切り離すことが可能になるので、特に有益である。一実施形態では、結合機構150は、物体10と係合するように構成されている。一実施形態では、結合機構150は、1つ以上のブレーキを備えるか、又は係合する。更なる実施形態では、結合機構150は、物体10と係合し、物体10に動作可能に結合された1つ以上のブレーキと係合するように構成される。ブレーキは、摩擦ブレーキ、回転禁止要素(rotation barring element)、ディスクブレーキ、ドラムブレーキ等の任意の適切なブレーキであってもよい。このような実施形態は、例えば、アクチュエータ100がその作動状態に移行するときに、ブレーキ機能によって、アクチュエータ10が物体10の回転を減少させることを可能にするので、特に有益である。
【0044】
結合配置150は、物体10以外の他の本体と係合するように配置されても全くよく、これらの本体は、回転平面Pの一部であってもなくてもよく、あるいは回転平面Pと交差してもよい任意の適切な方向に配置及び配向されてもよいことに留意すべきである。例えば、一実施形態では、アクチュエータ100は、エレベータの過速度ガバナで構成されており、エレベータを支持するワイヤの駆動輪に取り付けられる。この例では、駆動輪は、物体10である。アクチュエータ100の結合機構150は、作動すると、駆動輪とワイヤとの間の摩擦が通常低すぎてエレベータを効率的に制動できないため、駆動輪ではなくエレベータを支持するワイヤに作用するクランプブレーキとして係合する。
【0045】
例示の目的で、摩擦ブレーキの形態の結合機構150を配置したアクチュエータ100の例示的な実施形態の断面図を図4a~図4bに示す。図4aは、断面二次元上面図であり、物体10及び外部配置20の一部のみを示している。アクチュエータ100は、実質的に円形のオイラー本体110からなり、オイラー本体110の不均一な質量分布は、本体ピボット点120が実質的に円形のオイラー本体110の中心から外れることによって少なくとも部分的に達成される。図4aのアクチュエータ100は、オイラー本体110がその第一の位置にあることを示し、すなわち、アクチュエータがその作動状態になく、図4bのアクチュエータは、オイラー本体110がその第二の位置にあることを示し、すなわち、アクチュエータがその作動状態にある。先に説明したように、本体ピボット点120は、物体10に回転可能に結合されている。外部配置20は、回転平面Pに垂直な平面内に延在すると仮定される。この延在は、物体ピボット点12に面し、アクチュエータ100がその作動状態(図4b)に移行するときに結合機構150が接触し得る表面を形成する。アクチュエータ100は、オイラー本体110がその第一の位置にあるとき(図4a)、結合機構150が、回転の平面Pにおいて、物体10と本体ピボット点120との間に位置するように配置される。この非作動状態では、結合機構は、物体ピボット点12に面する外部配置20の表面と係合しない。物体10が回転の変化を経験すると、アクチュエータ100は、オイラー本体110が本体ピボット点120を中心に少なくとも部分的に回転して、結合機構150が外部配置20の前記表面に係合するように、その作動状態に移行する(図4b)。オイラー本体110がその本体ピボット点120を中心に回転する量、すなわち、物体10が受ける角加速度の量に応じて、結合機構150は、外部配置20の表面をより強く押すことになる。この例示的な実施形態は、物体10が正の加速度、すなわち回転速度の増加と、負の加速度、すなわち回転速度の減少との両方を受けた場合に、実質的に同じように係合する。当業者は、本開示を読んだ後、結合機構150は、物体10の角加速度の方向に応じて、異なる量の制動力が適用されるように非常によく形成され得ることを理解するであろう。
【0046】
オイラー本体110及び物体10に対する本体ピボット点120の位置と対になった結合機構150の形態は、結合機構150が物体10のどの加速度で係合するのかを決定することに留意されたい。言い換えれば、アクチュエータ100が作動される物体10の加速度は、これらのパラメータによって少なくとも部分的に決定される。
【0047】
アクチュエータ100は、上に挙げた実施形態に従って、クラッチ、ブレーキ及び/又はスイッチの両方を行うように構成された1つ以上の結合機構150を備えるように構成されてもよい。クラッチ機能及びブレーキ機能を組み合わせたアクチュエータ100の実施形態は、物体10が、例えば、ブレーキをかけられる可能性と、かつ関連駆動装置から係合解除される可能性との両方があるので、特に有益である。
【0048】
一実施形態では、結合機構150は、オイラー本体110がその本体ピボット点120を中心に回転するときに回転平面Pに対して実質的に垂直な方向に移動するように、本体ピボット点120にネジ山を設けることによって実現されてもよい。本体ピボット点120は物体10に取り付けられているので、結合機構150のこの動きは、物体10を制動モード又はクラッチモードに移行させるために使用されてもよい。クラッチ機能又はブレーキ機能は、オイラー本体110が、その本体ピボット点120を中心に一方向に回転するときにブレーキをかけ、その本体ピボット点120を中心に他方向に回転するときにクラッチをかけるように、オイラー本体110の回転によって決定されてもよい。
【0049】
アクチュエータ100に2つ以上の結合機構150が含まれる場合、アクチュエータは、必ずしも全ての結合機構150が同時に作動されるとは限らないように構成することができる。これは、例えば、本体ピボット点120を中心とするオイラー本体110の異なる回転度で結合機構150を係合させること、アクチュエータ100に含まれるオイラー本体110を複数にすること、及び/又は柔軟な結合配置150を利用することによって達成されてもよい。柔軟な結合配置150は、例えば、結合配置150を有することによって達成され、その結合配置150が、例えば、遠心力によって係合位置へ、又は係合位置からバイアスされてもよい。結合機構150は、さらに、1つ以上の結合配置150が、その本体ピボット点120を中心にオイラー本体110の一方向の回転時に作動し、他のものが、その本体ピボット点120を中心にオイラー本体110の別の方向の回転時に作動するように配置されてもよい。
【0050】
図4aに示すような結合機構150は、オイラー本体110がその第一の位置にあるとき、物体10から距離を置いて示されている。これは、アクチュエータ100がその作動状態に移行するとき、すなわち、物体10の回転加速度が第一の閾値を超えることによりオイラー本体110がその本体ピボット点120を中心に動くとき(図4b)、結合機構が物体10に係合する前に、オイラー本体110がある量回転することを意味する。これにより、結合機構150が物体10と係合するまでの時間に実質的に遅れが生じることになる。オイラー本体110が結合機構150と係合するのに十分回転する前に角加速度が第一の閾値を下回ると、結合機構150は作動していないことになる。この遅延は、ホールドオフ時間又はジャーク制御と呼ばれることがある。これは、図5に紹介するグラフにおいて時系列プロットとして示されている。図5では、時間tが横軸で、横加速度aが縦軸にとっている。グラフでは、時変横加速度a(t)を実線で示し、第一の閾値を破線で示している。第一の時間Tにおいて、横加速度a(t)は第一の閾値を超え、オイラー本体110はその本体ピボット点120を中心に回転を開始することになる。オイラー本体110が結合機構を作動させるように回転する前に生じる第二の時間Tにおいて、横加速度a(t)は、第一の閾値未満に低下する。オイラー本体110は、結合機構150を作動させることなく、その第一の位置に戻される。第三の時間Tにおいて、横加速度a(t)は、再び第一の閾値を超え、オイラー本体110は、オイラー力Fによってその第一の位置から移動させられる。第四の時間Tにおいて、オイラー本体は、結合配置150を作動させるのに十分なほど回転し、アクチュエータ100は、実質的に作動する。オイラー本体110の回転速度は物体10の角加速度の量に依存するので、実際には、オイラー本体110が結合配置150を作動させるために十分に回転する時間を有するかどうかを決定するのは、第一の閾値を超える横加速度a(t)の積分A、Aである。これは、物体10の回転加速度が、アクチュエータ100が作動する前に、ホールドオフ時間Tにわたって第一の閾値を超えなければならないことを意味する。ホールドオフ時間Tは、横加速度a(t)が第一の閾値を超える量と、結合配置150が作動する前にオイラー本体110が移動しなければならない距離とによって決定される。ホールドオフ時間Tを制御すれば、短時間の間、第一の閾値を超える物体10の加速を許容するアクチュエータ100の設計が可能になるので、有益になり得る。言い換えれば、物体10は、望ましくない作動をすることなく、例えば、ジャーク等を受けることができる。これらのシナリオが起こり得るのは、物体10が車両の車輪である場合に、例えば、道路のバンプによって物体10が短時間ではあるが自然な加速を経験したとき、又はアクチュエータがエレベータの過速度ガバナとして用いられ、例えば、人がエレベータのかごの中に飛び込んだことによってエレベータが短時間の間に加速を経験したときである。
【0051】
多くの用途において、物体10の回転に実質的に不均衡をもたらさないように、オイラー本体110を配置することが望ましい場合がある。言い換えれば、物体10がその質量を物体ピボット点12について均質に分布していると仮定すると、物体ピボット点12についての全質量分布をシフトさせることなくオイラー本体110を物体10に回転可能に結合することは、困難であるだろう。オイラー本体は、これを補償するように設計され、物体ピボット点12を横切るように配置されてもよいが、そのような適用は、設計に柔軟性を欠き、オイラー本体110に設計上の制約を与える。一つの解決策は、この不均衡の少なくとも一部を補償するために、2つ以上のオイラー本体110を使用することである。しかしながら、2つ以上のオイラー本体110を使用する場合、例えば、物体10の振動、不均衡等を引き起こさないように、オイラー本体110がそのそれぞれの動きにおいて実質的に同期していることが重要である。これは、設計において厳しい公差を有することによって達成され得るが、厳しい公差によって、典型的には、例えば、コストが増加し、生産歩留まりが低下する。
【0052】
上記の理由に加えて、異なる特徴又は同じ特徴を実行する2つ以上の結合機構150と係合するために、2つ以上のオイラー本体110が望まれる場合がある。物体10の異なる場所で制動特徴を適用する必要がある場合があり、そのような場合、物体10の異なる場所に配置された制動特徴に係合する、又はそれを構成する結合機構150に係合するために、2つ以上のオイラー本体110が利用されることがある。本開示の背後にいる発明者らは、その独創的なプロセスで、オイラー本体110は、そのそれぞれの本体ピボット点120に関するそれらの相互運動を制御するように、互いに動作可能に結合され得ることをさらに実現した。
【0053】
ここで図6aに目を向けると、そこでは、説明のために、アクチュエータ100の1つの非限定的な実施形態を紹介する。この実施形態は、2つのオイラー本体110で示され、そのそれぞれが図2aのオイラー本体110と同様であるが、これらの教示を実施する際に、任意の適切な形態のオイラー本体110を使用することができ、異なる形状、サイズ及び/又は形態のオイラー本体110の組み合わせも目下の発明によって可能となることに留意されたい。図6aのアクチュエータ100は、2つのオイラー本体110を備え、そのそれぞれは、前述のように、それぞれの本体ピボット点120を中心に回転可能である。オイラー本体110の先の定義の通り、各オイラー本体110は、そのそれぞれのピボット点120の周囲で不均一に分布する質量分布を有し、ピボット点120は、物体10に回転可能に結合される。これまでの節から理解されるように、オイラー本体110は、物体10が横加速度aを受けると、そのそれぞれの本体ピボット点120を中心に、横加速度aと反対方向に、同じ時計回り又は反時計回りに回転することになる。図6aのオイラー本体110は、物体ピボット点12を挟んで実質的にミラーリングされたものとして示されているが、物体ピボット点12の位置は、本開示の発明概念にほとんど、あるいは全く関係ない。より重要なことは、図6aのオイラー本体110は、互いに対してミラーリングされており、そのそれぞれの質量分布がミラーリングされていることを意味することである。オイラー本体110のミラーリングは、横加速度aによって引き起こされる回転に実質的に影響を与えないが、物体10が重力、振動及び/又は衝撃等の、物体の横加速度aを引き起こさない力を受けると、オイラー本体は反対方向へ回転することになる。図6aにおいて、下向きの重力gを想定した場合、左端のオイラー本体110は時計回りに回転して重力gに整合し、右端のオイラー本体110は反時計回りに回転して重力gに整合する。図6bに簡単に目を向けると、一実施形態が示され、ここでは、図6aのものと同様のオイラー本体110が図示されているが、図6aのように相互にミラーリングされていない。図10の物体が重力gを受けると、両方のオイラー本体110は、重力gに整合するように、同じ時計回り方向に回転することになる。
【0054】
ここで図6cに目を向けると、図6aのアクチュエータ100の更なる実施形態が示され、2つのオイラー本体110は、結合配置130によって動作可能に結合されている。結合配置130は、結合された各オイラー本体110の少なくとも1つの結合点135で、結合された各オイラー本体110に回転可能に結合される。結合配置130は、物体10の回転加速度から生じる横力Fに応答してオイラー本体110が動くことを可能にするように構成されている。これは、オイラー本体110が結合配置130によって回転可能に結合され、結合配置130が、接続されたオイラー本体110のそのそれぞれの本体ピボット点120を中心とする同じ時計回り方向又は反時計回り方向に少なくとも回転を許容することを意味する。本開示から教示されるように、結合配置130の形状及び形態は、多数の異なる結合配置130を構成するために変化させられ、組み合わされることができる。さらに、3つ以上のオイラー本体110が1つの結合配置130によって結合されてもよく、アクチュエータ100が2つ以上の結合配置130を備えてもよい。これらの組み合わせの全てを列挙しようとするのではなく、結合配置130及び結合されたオイラー本体110の働き及び要件を、いくつかの例示的な実施形態を通して説明する。結合配置130の1つの効果は、結合配置130によって結合されたオイラー本体110が、物体10の横加速度aに応答して、そのそれぞれのピボット点120を中心に全て一緒に動くことを保証することである。これにより、例えば、製造精度の要求が低減され、より費用対効果の高いアクチュエータ100が提供され得る。さらに、結合配置130は、横加速度aの総和が、例えば、結合機構150によって利用され得るように、各オイラー本体110の横加速度aを効果的に加算するように構成されてもよい。同様に、図6dは、図6bのアクチュエータ100の更なる実施形態を示し、図6bの2つのオイラー本体110が結合配置130によって動作可能に結合されている。
【0055】
結合配置130の特徴をさらに説明するために、図6c及び図6dのオイラー本体110が均一な質量分布を有し、そのそれぞれのピボット点120の位置が、そのそれぞれのピボット点120の周りに不均一な質量分布を提供するものであると仮定する。これは、本体ピボット点120がシフトされる方のオイラー本体110の側が、2つの側のうち質量分布がより低い側であることを意味する。同じ理屈が、任意の均一な形状の本体、例えば、実質的に円形の本体にも当てはまるが、表現を調整する必要がある。図6cにおいて、結合配置130は、その結合点135の1つを介して、一方のオイラー本体110の低い質量分布側に結合され、その結合点135の別のものを介して、他方のオイラー本体110の高い質量分布側に結合されている。この理由は、図6cのオイラー本体110の特定の相互配置にある。オイラー本体110は、そのそれぞれの質量分布が互いに対してミラーリングされている。言い換えれば、その第一の位置において、オイラー本体110は、互いに対して、それらのピボット点120を中心に実質的に180°回転させられている。次に図6dに目を向けると、図6dのオイラー本体110は、そのそれぞれの質量分布がそのそれぞれのピボット点120の周囲で実質的に同じ向きになるように配向されている。結合配置130が図6dのオイラー本体110を回転可能に結合するために、結合点135は、好ましくは、質量分布の観点から、それぞれのオイラー本体110の同じ側に配置される。
【0056】
次に、図6c及び図6dのアクチュエータ100におけるオイラー本体110の配置における相互回転差を用いて、本発明の更なる発明的実施形態を説明する。オイラー本体110が、物体10の回転加速度の方向とは反対の方向に、そのそれぞれのピボット点120を中心に回転してもよいことは、これまで説明され、今では容易に理解される。物体10は、物体10の角速度の変化を引き起こしていない加速度及び力を受けてもよい。これらの力は、力及びアクチュエータ100の配置によっては、アクチュエータ100を作動状態に移行させることがある。図6c及び図6dで参照される回転平面Pは、実質的に垂直であると仮定する。これは、オイラー本体110が、上記の図6a及び図6bを参照して説明したように、重力gの影響を受けやすく、その結果、その重力gがそのそれぞれのピボット点120を中心とした回転を生じさせるようになることを意味する。図6dに示すオイラー本体110は、そのそれぞれのピボット点120に対して実質的に同じ方向にそのそれぞれの質量分布を有するように配置される。この実施形態では、結合配置130によって、アクチュエータ100が横方向の加速度及び重力gを受ける両方のとき、各オイラー本体110のそれぞれの本体ピボット点120を中心とする回転が可能になる。ここで、図6cのアクチュエータ100が重力gを受けるようにすると、オイラー本体110は、互いに関して、そのそれぞれのピボット点120を中心として反対となる時計方向又は反時計方向に回転しようとする力を受けるであろう。しかしながら、結合配置は、そのそれぞれのピボット点120を中心とするそれぞれの反対方向へのオイラー本体110の回転が妨げられるように配置されている。図6cのオイラー本体110は、重力gを受けると、反対方向に回転するように配置されているので、アクチュエータ100に対する重力の影響を効率的に打ち消すことができる。オイラー本体110が複数存在する場合、当業者は、これらのオイラー本体110のうちの1つだけが、例えば、重力から他のオイラー本体と反対方向に回転するように配置されていれば十分であることを理解する。そのような回転が結合配置130によって確実に打ち消されるようにするために、例えば、重力から各方向に回転するオイラー本体110によって実質的に同じ合計トルクが確実に提供されることが必要な場合がある。
【0057】
これに加えて、図6cの実施形態は、遠心力の影響を実質的に受けないように構成してもよい。物体点12に対する結合配置130及びオイラー本体110は、結合配置が、遠心力から生じるオイラー本体110の回転に対抗するように配置される。遠心力は、オイラー本体110を、その質量中心が本体ピボット点120から遠位に位置し、本体ピボット点120及び物体ピボット点12と整列するように回転させるように促すことになる。結合配置130が弾力性のある結合配置130である場合、結合配置130は、伸縮し、遠心力、又はそのための半径方向の他の力によって、オイラー本体110の少なくともいくらかの回転を可能にするように構成してもよい。しかしながら、結合配置130は、遠心力による作動、すなわち回転を緩和し、横方向の加速度による作動を可能にするように配置される。当業者は、本開示を読んだ後、所望の効果を達成するために、結合配置130及びオイラー本体110をどのように配置するかを理解するだろう。
【0058】
結合配置130は、オイラー本体110が反対方向に回転することを効率的に禁止することが理解される。これは、アクチュエータ100に作用する重力gによって例示されたが、これは、アクチュエータ100に作用する他の力又は力の成分にも適用される。実際、この理由は、物体ピボット点12に向けられた、又は物体ピボット点12から離れた、回転平面P内の、又は回転平面Pに平行な任意の力に適用される。すなわち、物体10の角速度の変化を引き起こさない回転の平面P内の任意の力である。
【0059】
当業者は、本開示の教示を消化した後、結合配置130によって結合されたオイラー本体110によって、そのそれぞれのピボット点120を中心に同じ時計回り方向又は反時計回り方向に回転できるように、結合配置130を配置する方法を理解することができる。これは、この配置を有するアクチュエータ100を、物体10の回転加速度によって作動させることができるようにするために重要である。これを実現するための結合配置130の配置は、結合されたオイラー本体110の質量分布の相互配置に依存する。図6cでは、オイラー本体110は鏡面であり、その結果、結合配置は、オイラー本体110のピボット点120の鏡面側に位置する結合点135で結合される。同様に、図6dでは、オイラー本体110は鏡面加工されておらず、その結果、結合配置は、オイラー本体110のピボット点120の対応する側に位置する結合点135で結合される。
【0060】
図6cに図示されるように配置されたオイラー本体110及び結合配置130を有するように構成されたアクチュエータ100は、更なる利点を有する。説明したように、オイラー本体110は、結合配置130によって反対方向に回転することが効率的に抑制され、オイラー本体110は、物体10の角速度の変化を引き起こさない回転平面P内の力から反対方向に回転するように配置されている。このようなアクチュエータ100の構成により、オイラー本体110を第一の位置にロックするために設けられた先に説明した要素がないアクチュエータ100を設計することが可能になる。ピボット点120とともに結合配置が摩擦のない理想的なものであると仮定すれば、このようなアクチュエータ100は、物体10が回転加速度を受けるとすぐに、その作動状態に移行することになる。理想的なデバイスは少ないので、アクチュエータ100を作動させるのに必要な回転加速度は、少なくとも部分的には、アクチュエータ100に固有の摩擦によって決定されることになる。
【0061】
オイラー本体110と結合配置130との上述の相互配置は、アクチュエータ100の任意の実施形態であることを理解されたい。与えられた例は、決して本発明を限定するものとして解釈されるものではなく、単に、特定の効果を達成するために、オイラー本体110と結合配置130とをどのように配置するかという概念的な考えを説明するために与えられたものである。結合配置130は、オイラー本体110がそのそれぞれのピボット点120を中心に同じ時計回り方向又は反時計回り方向に回転することを可能にするように配置される。結合配置130は、さらに、そのそれぞれのピボット点120を中心とする反対の時計回り又は反時計回りの方向への回転を抑制するように配置されてもよい。すなわち、例えば、重力gのように、物体10の角速度の変化を引き起こさない回転平面P内の任意の力、又は回転平面Pに平行な任意の力によって引き起こされるオイラー本体110に対する回転効果を打ち消すためである。
【0062】
図7を参照すると、アクチュエータ100の非限定的な実施形態が描かれ、3つ以上のオイラー本体110を有するアクチュエータ100がどのように配置され得るかの一例を示している。この実施形態では、アクチュエータ100は、物体ピボット点12を中心に120°離れて配置された3つの実質的に長方形のオイラー本体110を備える。各オイラー本体110は、アクチュエータ100がその作動状態に移行するときに、外部配置20と係合するように配置された結合機構150を備えて構成されている。結合配置130は、3つのオイラー本体110を一緒に回転可能に結合する。この実施形態では、各オイラー本体110における結合点135は、オイラー本体110の移動にある程度の許容度を持たせるために、柔軟であるように構成されているが、これは、オプションの特徴である。
【0063】
図8a~図8dを参照すると、アクチュエータ100のいくつかの更なる非限定的な実施形態が示されている。図8aに、2つの実質的に円形のオイラー本体110を備えるアクチュエータ100を示す。オイラー本体110のそのそれぞれの質量分布は、互いに比較して、そのそれぞれのピボット点120を中心に180°回転している。質量がより集中しているオイラー本体110の領域は、図8a及び図8cにおいて点線の円によって示されている。図8aの結合配置130は、2つの結合部材133によって各オイラー本体110に結合された伝達部材131の形態の伝達部材を備える。結合部材133は、伝達部材131に回転可能に結合され、伝達部材131は、結合配置ピボット点132を中心に回転可能である。結合配置ピボット点132は、物体ピボット点12であってもよい。
【0064】
図8bに目を向けると、2つの実質的に長方形のオイラー本体110を備えるアクチュエータ100を示す。この特定の実施形態の結合配置130は、2つの結合部材133を備える。各結合部材133は、一方のオイラー部材110における質量分布がより高い側に結合し、他方のオイラー部材110における質量分布がより低い側に結合する。この実施形態によって、安定かつ確実な結合が可能になる。
【0065】
アクチュエータ100の代替的な実施形態が図8cに示されており、結合配置130は、ベルトの形態の結合部材133を備える。オイラー本体110は、実質的に円形で、図8cで破線の円によって示される質量分布を有する。結合部材133は、各オイラー本体110の本体ピボット点120に回転中心を有する結合点135で、各オイラー本体110に動作可能に結合される。結合点135は、結合点135とベルトとの間の摩擦によって各オイラー本体110の回転を結合するように配置されている。あるいは、ベルトは、結合点135に係合する歯を設けてもよいし、チェーンに置き換えてもよく、その場合、結合点135は、歯車に置き換えられてもよい。
【0066】
図8dでは、2つの実質的に円形のオイラー本体110を備えるアクチュエータ100を示す。オイラー本体110には、歯車が設けられ、結合配置130は、歯車の形態の伝達部材131を備える。この特定の実施形態は、いわゆる結合点135を有していないが、オイラー本体110の歯車が伝達部材131の歯と係合する領域は、結合点と等価であってよい。伝達部材131はもっと多くてもよく、これらを結合部材133と組み合わせてもよく、これらの教示を任意の適切な方法で組み合わせてもよい。図8dの歯車は、任意の好適な伝達物であってもよく、例えば、車輪、チェーン、ベルト、歯車付きベルト及び/又はリボンである可能性が非常に高い。
【0067】
上記の説明から、結合配置130及びオイラー本体110は、多数の異なる形状及び形態で提供され、組み合わされてもよいことが明らかである。手元の開示から、アクチュエータ100を作動状態に移行させるために、1つのオイラー本体110が使用されてもよいことが明らかである。2つ以上のオイラー本体110がアクチュエータ100に含まれる場合、これらのオイラー本体110の2つ以上(必ずしも全てではない)が結合配置130によって一緒に結合されてもよい。さらに、当業者は、物体10が角速度の変化をもたらさない力を受けたときに、異なる方向に回転するよう促されるように、オイラー本体110が相互に配置されてもよいことを教示されている。結合配置130は、これらの力によるアクチュエータの望ましくない作動のリスクが減少するように、これらの反対回転を禁止するために使用されてもよい。
【0068】
ここで、アクチュエータ100の1つの代替的な特徴を、図9a~図9cの非限定的な例示的な実施形態を参照して説明する。アクチュエータ100は、物体10の角加速度があるレベル以下である場合に、アクチュエータ100をその作動状態から移行させるように配置された1つ以上の戻りバイアス配置160をさらに備えてもよい。このレベルは、構成可能な又は事前定義された第二の閾値によって定義されてもよい。第二の閾値は、第一の閾値と同じであってもよいし、異なっていてもよい。戻りバイアス配置160は、物体10の角加速度が第二の閾値以下であるときに、オイラー本体110がその第一の位置に戻されるように、任意の数の適切な構成で配置されてもよい。戻りバイアス配置160は、物体10の角加速度が第二の閾値以下であるときに、オイラー本体110及び/又は結合配置130のうちの1つ以上を係合するように配置されてもよい。戻りバイアス配置160によって、物体10の角加速度に応じて、アクチュエータ100が制御された方法で、その作動状態へ、及び作動状態から移行することが可能になる。
【0069】
図9aを参照すると、戻りバイアス配置160の1つの例示的な実施形態が示されている。図9aのオイラー本体110は、切断部を有する円として形成され、図9aの破線の円によって示されるように、その質量がその本体ピボット点120を中心に偏在している。この切断部は、バイアス表面117を形成するように構成されている。この実施形態では、戻りバイアス配置160は、バイアス部材165を備え、バイアス部材165は、オイラー本体110がその本体ピボット点120を中心に回転すると、バイアス表面117と接触するように配置されている。バイアス部材165は、固定点167で物体10に取り付けられる。戻りバイアス効果は、多数の異なる特徴によって達成されてもよい。バイアス部材165は、バイアス部材165に張力が導入されるようにバイアス表面117と係合する際に、バイアス部材165が撓むことを許容するような柔軟な特性を有する材料から形成されてもよい。バイアス表面117がバイアス部材165に及ぼす張力の量は、オイラー本体110が受けるオイラー力Fの量によって決定されることになる。バイアス部材165の柔軟性は、第二の閾値がバイアス部材165の柔軟性によって少なくとも部分的に決定されるように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、バイアス配置160のバイアス機能を固定点167で構成させることが好ましい場合がある。これは、バイアス部材165を、その関連する固定点167を中心に回転し得るように配置させ、バイアス部材165が固定点167を中心に回転する際に固定点167でバネに張力を付加させることによって達成され得る。
【0070】
図9bでは、戻りバイアス配置160の一実施形態を示し、バイアス表面117は、実質的に円形のオイラー本体110の本体ピボット点120の周りに形成されている。これは、例えば、結合機構150が設けられている場合、オイラー本体110の周辺エッジを係合することが不適当である場合に有益である。図9bの戻りバイアス配置160は、図9aのものと同様であるが、バネ163を備えて示されている。バネ163によって、バイアス部材165がその固定点167を中心に回転することが可能になるが、この回転の間、バネ163に張力が付加される。オイラー力Fが第二の閾値を下回ると、バネ163の張力がバイアス部材165に作用し、次いで、それがバイアス表面117に作用してオイラー本体110をその第一の位置に戻す。
【0071】
図9a及び図9bの戻りバイアス配置160は、いずれも、オイラー力Fの方向に関係なく、オイラー力Fが第二の閾値を下回ると、オイラー本体110を戻すように配置されている。図9cには、戻りバイアス配置160の一実施形態が示され、ここでは、バイアス部材165は、2つの部分165a、165bに形成されており、その結果、オイラー本体110の回転がその本体ピボット点120を中心とする一方向への回転時に部分165a、165bの一方に係合し、他方向への回転時に部分165a、165bの他方に係合するようになる。これを有効に利用して、オイラー本体110の回転方向に応じて、異なる第二の閾値を有するようにしてもよい。
【0072】
図9cのアクチュエータ100には、1つの追加オプション機能である1つ以上の移動リミッタ170がさらに設けられている。移動リミッタ170は、オイラー本体110がその本体ピボット点120を中心に過度に回転するのを止めるために配置される。移動リミッタ170は、図9cのように、物体10に取り付けられたバーによって実現されてもよい。移動リミッタ170の機能は、戻りバイアス配置160、結合機構150及び/又はオイラー本体110を第一の位置にロックする先に開示した要素等、アクチュエータ100の他の部分によって実現されてもよい。移動リミッタ170は、アクチュエータ100の任意の好適な実施形態に構成されてもよい。
【0073】
図9a~図9cの実施形態は、いくつかの異なる特徴を紹介しているが、これらの特徴は、任意の適切な方法で自由に組み合わせることができることに留意されたい。これらの実施形態は、結合配置130なしで示されているが、結合配置130は、バイアス配置を決して限定するものではないことを理解されたい。結合配置130によって、結合配置130によって結合された他のオイラー本体110が、結合されたオイラー本体110のうちのただ1つ以上に作用する戻りバイアス配置160から恩恵を受けることが可能になる。これに加えて、アクチュエータ100に2つ以上の戻りバイアス配置160があってもよく、それらの戻りバイアス配置160は、任意の適切な構成で配置されてもよく、同じ又は異なるオイラー本体110又は結合配置130に係合してもよい。完全を期すために、戻りバイアス配置160は、追加又は代替として、結合配置130と係合するように構成されてもよい。これは、例えば、結合配置130でバイアス表面117を係合させること、結合配置ピボット点132にバネ負荷をかけることによって達成されてもよく、例えば、図8a、図8d等を参照されたい。
【0074】
図9a~図9cの実施形態は、主に機械的なものとして説明されているが、対応する機能は、電子的、電磁的及び/又は磁気的手段によって実施され得ることが理解されるべきである。
【0075】
例示を目的とし、説明を容易にするために、アクチュエータ100は、物体10の片側に位置するものとして説明されてきた。これは1つの選択肢に過ぎないことを理解されたい。図10において、アクチュエータ100の一実施形態の透視図が示されている。物体10は、図10では、透明なものとして図示されており、2つのオイラー本体110が、回転平面Pに平行な別々の平面で物体10を挟むように配置されており、オイラー本体110は、実質的に同様に形成されているが、その質量分布が互いに対して180°回転させられた状態で配置されている。オイラー本体110は、伝達部材131を備える結合配置130によって動作可能に結合される。本実施形態では、各オイラー本体のピボット点120及び結合点135は、同じそれぞれの位置にある。また、結合配置ピボット点132と物体ピボット点12も同じ位置にある。
【0076】
図3を参照して紹介した結合機構150は、先に開示したように、外部デバイスと動作可能に結合するように配置されてもよい。そのような一実施形態について、図11を参照して説明する。図11は、4つの車輪210を備える歩行器200の透視図である。車輪210の全てに、本発明の実施形態によるアクチュエータ100が設けられている。他の実施形態では、車輪210のサブセットのみに、アクチュエータが設けられる。歩行器200を使用する人がつまずき、転び始める場合、アクチュエータ100は、適切なブレーキの形態の結合機構150を作動させるように配置されてもよい。これにより、歩行器は停止することができ、その人は転ぶことなくバランスを回復することができる。アクチュエータ100の結合配置150のうちの1つ以上には、外部インターフェース155がさらに設けられてもよい。外部インターフェースは、例えば、1つが作動した場合にアクチュエータ100の全部又は一部が同時にブレーキをかけることができるように、1つ以上のアクチュエータ100を一緒に作動的に結合するために使用されてもよい。これは、例えば、1つの車輪のみが第一の閾値を超える角加速度を経験するようにその人が横方向につまずく場合、歩行器200が旋回又は回転するリスクが減少するので有益である。
【0077】
歩行器200の実施形態では、アクチュエータ100を制御されたホールドオフ時間Tで設計することが有益である。アクチュエータ100が高い感度、すなわち、比較的に低い第一の閾値で設定される場合、ホールドオフ時間Tは、例えば、歩道の閾又はエッジを横断するときにアクチュエータ100が作動するリスクを低減させるだろう。例示すると、閾を横断することは、高いが比較的に短い角加速度を引き起こす可能性のあるジャークを生じさせるが、ホールドオフ時間Tは、このようなシナリオにおいて望ましくない作動のリスクを低減する。結合配置130は、角加速度を引き起こさない類似のシナリオから生じる不要な作動を回避するように配置されてもよいことに言及されたい。これは、例えば、歩行器200の車輪10が地面の穴に落ち、車輪10が地面にぶつかると、実質的に垂直な力でバンプ又はジャークを引き起こす場合であり得る。
【0078】
外部インターフェース155は、例えば、結合配置150又はオイラー本体110の動きによって引っ張られるワイヤによって実現されてもよい。代替又は追加として、外部インターフェース155は、外部デバイス(例えば、サーバ、モバイル端末、他のアクチュエータ100等)と通信するように配置された無線又は有線通信インターフェースであってもよい。
【0079】
(条項)
以下では、本発明のいくつかの更なる実施形態について説明する。
【0080】
(条項1)
主に回転可能な物体(10)の回転加速度から生じる横加速度によって作動するアクチュエータ(100)であって、前記物体(10)は、回転平面(P)内で、前記回転平面(P)内の物体ピボット点(12)を中心に回転可能であり、前記アクチュエータ(100)は、
前記回転平面(P)内又は前記回転平面(P)に平行に回転可能に適合された少なくとも2つの本体(110)であって、各本体(110)の本体ピボット点(120)で前記物体(10)に結合され、前記本体ピボット点(120)及び/又は前記本体(110)は、前記本体ピボット点(120)の周囲で前記本体(110)の質量分布が不均一であるように配置される、少なくとも2つの本体(110)と、
前記少なくとも2つの本体(110)のうちの少なくとも2つを動作可能に結合するように配置された少なくとも1つの結合配置(130)と、
を備え、
前記アクチュエータ(10)は、事前定義された又は構成可能な前記第一の閾値を超える前記物体(10)の回転加速度に応答して作動状態に移行するように構成される、アクチュエータ(100)。
【0081】
(条項2)
前記結合配置(130)によって動作可能に結合された前記少なくとも2つの本体(110)は、前記物体(10)が、前記回転平面(P)内又は前記回転平面(P)に平行に向けられた、前記物体(10)の回転加速度を引き起こさない力を受けたときに、そのそれぞれの本体ピボット点(120)の周囲での前記不均一な質量分布が、前記結合配置(130)によって動作可能に結合された前記少なくとも2つの本体(110)に対して、そのそれぞれの本体ピボット点(120)について反対方向に、前記回転平面(P)内又は前記回転平面(P)に平行な回転移動を引き起こすように配置されている、条項1に記載のアクチュエータ(100)。
【0082】
(条項3)
前記少なくとも1つの結合配置(130)によって動作可能に結合された前記少なくとも2つの本体(110)、及び前記少なくとも1つの結合配置(130)は、前記物体(10)の回転加速度を引き起こさない、前記回転平面(P)内又は前記回転平面(P)に平行に向けられた1つ以上の力から生じる、動作可能に結合された前記本体(110)のそのそれぞれの本体ピボット点(120)を中心とする回転動作を無効にするように配置されている、条項2に記載のアクチュエータ(100)。
【0083】
(条項4)
前記少なくとも2つの本体(110)のうちの2つだけを一緒に結合するように配置された1つの結合配置(130)を備える、条項1~3のいずれかに記載のアクチュエータ(100)。
【0084】
(条項5)
前記アクチュエータ(100)は、少なくとも1つの結合機構(150)をさらに備え、前記アクチュエータ(100)は、前記作動状態に移行するとき、前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つを係合するようにさらに構成される、条項1~4のいずれかに記載のアクチュエータ(100)。
【0085】
(条項6)
前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つは、物体(10)と直接的又は間接的に係合するように構成され、前記物体(10)の現在の回転速度が変更されるようになっている、条項5に記載のアクチュエータ(100)。
【0086】
(条項7)
前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つは、摩擦ブレーキである、条項5~6のいずれかに記載のアクチュエータ(100)。
【0087】
(条項8)
前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つは、クラッチである、条項5~7のいずれかに記載のアクチュエータ(100)。
【0088】
(条項9)
前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つは、電子結合機構である、条項5~8のいずれかに記載のアクチュエータ(100)。
【0089】
(条項10)
前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つは、外部インターフェース(155)を備える、条項5~9のいずれかに記載のアクチュエータ(100)。
【0090】
(条項11)
前記アクチュエータ(100)は、前記少なくとも1つの結合機構(150)の少なくとも1つの係合をホールドオフ時間(T)だけ遅らせるように構成される、条項5~9のいずれかに記載のアクチュエータ(100)。
【0091】
(条項12)
前記物体(10)の前記回転加速度が事前定義された又は設定可能な第二の閾値以下である場合に、前記アクチュエータ(100)を前記作動状態から移行するように配置された少なくとも1つの戻りバイアス配置(160)をさらに備える、条項1~11のいずれかに記載のアクチュエータ(100)。
【0092】
(条項13)
前記少なくとも1つの戻りバイアス配置(160)は、動作可能に結合された前記本体(110)及び/又は前記少なくとも1つの結合配置(130)の少なくとも1つに作用することによって、前記アクチュエータ(100)を前記作動状態から戻すように配置された少なくとも1つのバイアス部材(165)を備える、条項12に記載のアクチュエータ(100)。
【0093】
(条項14)
事前定義された又は構成可能な前記第一の閾値及び事前定義された又は構成可能な前記第二の閾値は、前記少なくとも1つの戻りバイアス配置(160)の構成によって部分的に決定される、条項12又は13に記載のアクチュエータ(100)。
【0094】
(条項15)
前記結合配置(130)による前記少なくとも2つの本体(110)の動作可能な結合は、機械的結合によるものである、条項1~14のいずれかに記載のアクチュエータ(100)。
【0095】
(条項16)
前記機械的結合は、1つ以上の伝達部材(131)及び/又は1つ以上の結合部材(133)を備える、条項15に記載のアクチュエータ(100)。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図9a
図9b
図9c
図10
図11
【国際調査報告】