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特表2023-535389多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20230809BHJP
   B30B 13/00 20060101ALI20230809BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20230809BHJP
   B30B 15/30 20060101ALI20230809BHJP
   B30B 15/34 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B21D22/26 C
B30B13/00 B
B21D22/20 B
B30B15/30 107
B30B15/34
B21D22/20 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504042
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 KR2021008081
(87)【国際公開番号】W WO2022019506
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0092149
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ホン-ギ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ヒュン-ソン
【テーマコード(参考)】
4E090
4E137
【Fターム(参考)】
4E090DA01
4E090EC04
4E090HA01
4E090HA04
4E137AA11
4E137AA15
4E137BA01
4E137BC07
4E137CA09
4E137CA24
4E137CA26
4E137DA03
4E137DA10
4E137EA11
4E137EA22
4E137EA26
4E137EA27
4E137EA29
4E137FA10
4E137FA25
4E137FA26
4E137GB01
(57)【要約】
ストリップ素材を加熱する加熱段階;1つのプレスに切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型と、成形金型と、トリミング金型とを含む多数の金型が取り付けられた加工装置であって、加熱されたストリップ素材を移送する移送段階;上記切り欠き金型を用いて素材の一部を切断することで、ストリップにウェブ部に連結された形態の切り欠きされた素材を得る切り欠き段階、及び上記ブランキング金型を用いて素材の一部を切断することで、ストリップから分離された形態のブランク素材を得るブランキング段階のうち1つ以上の段階;上記切り欠き段階及び上記ブランキング段階のうち1つ以上の段階を経た素材を移送して上記成形金型の付近に位置させた後、上記成形金型を用いて上記素材を成形する成形段階;並びに、上記トリミング金型を用いて最終製品形状から不要の素材の周縁部を除去するトリミング段階;を含む、多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法及び装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリップ素材を加熱する加熱段階;
1つのプレスに切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型と、成形金型と、トリミング金型とを含む多数の金型が取り付けられた加工装置であって、加熱されたストリップ素材を移送する移送段階;
前記切り欠き金型を用いて素材の一部を切断することで、ストリップにウェブ部に連結された形態の切り欠きされた素材を得る切り欠き段階、及び前記ブランキング金型を用いて素材の一部を切断することで、ストリップから分離された形態のブランク素材を得るブランキング段階のうち1つ以上の段階;
前記切り欠き段階及び前記ブランキング段階のうち1つ以上の段階を経た素材を移送して前記成形金型の付近に位置させた後、前記成形金型を用いて前記素材を成形する成形段階;並びに
前記トリミング金型を用いて最終製品形状から不要な素材の周縁部を除去するトリミング段階;を含む、多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項2】
前記移送段階は、加熱されたストリップ素材が保温チャンバー内で行われ、前記保温チャンバーに供給されたストリップ素材の表面温度(Ts)を基準として、前記保温チャンバーはTs-200℃以上Ts+50℃以下の温度範囲内に維持される、請求項1に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項3】
前記1つのプレスにおいて、素材の移送方向に互いに隣接する2つの金型間に設計されたピッチ量の分だけ間隔を置いて各金型が配置され、
プレス運動によって1ストロークが行われる度に、前記設計されたピッチ量の分だけ素材の移送方向に素材が移送される、請求項1に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項4】
前記切り欠き金型の初期温度及び前記ブランキング金型の初期温度は400℃以上である、請求項1に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項5】
前記切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階;成形段階;並びにトリミング段階のうち1つ以上は、2段階以上に分けて多段工程で行われる、請求項1に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項6】
前記切り欠き段階及びブランキング段階において、加工装置に投入されたストリップ素材は、ストリップ素材の移送高さレベルから金型の上型と接触していない状態でプレス下死点まで下降しながら、切断工程でのみストリップ素材が金型の上型面及び下型面と接触するように制御される、請求項1に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項7】
前記加工装置のプレス運動は、1ストローク内の下死点の付近での維持時間の割合が4~30%であり、
前記下死点の付近での維持時間の割合は、プレス下死点から上部方向に1mmである地点までプレスが留まる時間の割合である、請求項1に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項8】
前記成形段階と前記トリミング段階との間に、成形された素材から不要な穴部を除去するピアシング段階及び成形された素材でフランジ部を形成するフランジング段階のうち1つ以上の段階をさらに含む、請求項1に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項9】
下記関係式1によって求められる最小工程数以上で多段工程を行う、請求項1に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
[関係式1]
N=ROUNDUP{T/[(60/SPM)×(f/100)]}
(前記関係式1において、Nは、切り欠き工程及びブランキング工程を除いた成形段階から最小必要工程数を示し、
SPMはプレスの毎分ストローク数(stroke per minute;SPM)を示し、
fは、1ストローク内の下死点の付近の維持時間割合(%)を示し、
Tは、0.8≦t<1.5の場合に下記関係式2から計算される値を示し、1.5≦tの場合に下記関係式3から計算される値を示し、
ROUNDUPは、{ }内の計算値に対して小数点以下の数を切り上げた値を示す。)
[関係式2]
T=t
[関係式3]
T=5×t-6
(前記関係式2及び3において、tは素材の厚さであり、単位はmmである。)
【請求項10】
前記fは、0.8≦t<1.5を満たす場合に下記関係式4を満たし、1.5≦tを満たす場合に下記関係式5を満たす、請求項9に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
[関係式4]
0.8×t+2.6≦f
[関係式5]
4.4×t-2.8≦f
(前記関係式4及び5において、tは素材の厚さであり、単位はmmである。)
【請求項11】
前記加工装置に素材が投入されると、プレススライドがプレス下死点まで下降して素材を加工した後、プレススライドの上昇中に素材はプレス下死点の付近で留まってから、プレススライドの位置情報を活用して、プレススライドが素材の移送に干渉しない地点まで到達すると、プレス下死点の付近に位置した素材を上昇させる、請求項1に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項12】
前記ブランキング金型を用いて前記加工装置に投入された加熱されたストリップ素材の一部を切断することで、ストリップから分離された形態のブランク素材を得るブランキング段階を含み、
前記1つのプレスにおいて素材の移送方向に互いに隣接する2つの金型を基準に、前の段階の金型から次の段階の金型の付近に素材を移送する際には、やっとこ状の移送手段を用いる、請求項1に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項13】
ストリップ素材を連続的に供給する供給部;
供給されたストリップ素材を加熱する加熱部;
1つのプレスに切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型と、成形金型と、トリミング金型とを含む多数の金型が取り付けられた加工装置を含む加工部;並びに
前記加熱部で加熱されたストリップ素材を前記加工部に移送する移送部;を含む、多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置。
【請求項14】
前記加工装置は、切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型の初期温度を400℃以上に制御する温度制御部をさらに含み、
前記温度制御部は、切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型とプレスとの間に備えられる、請求項13に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置。
【請求項15】
前記切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型の上型に対するストリップ素材と接する側の面上に突出した構造物であって、スプリングによって作動するプッシュバーを備える、請求項13に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置。
【請求項16】
前記1つのプレスは、プレススライド及びプレスボルスターを含み、
前記プレスボルスター上の金型が備えられる側の面上にシリンダ状の素材位置制御部が備えられる、請求項13に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置。
【請求項17】
請求項1に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法によって製造された熱間プレス成形部材であって、
アンダーカット形状を含み、引張強度が1300MPa以上である、熱間プレス成形部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性及び成形性のうち1つ以上の特性が改善された多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両軽量化及び安全性向上の要求に応じて、熱間プレス成形工法を活用した高強度鋼の適用が活発に進められている。一般的に、熱間プレス成形工法は、部品を成形するために設計された形状のブランクを用意し、これを高温に加熱した後、プレスに取り付けられた金型に投入する。この後、プレススライドを下死点まで下げてブランクを成形し、一定時間の間下死点で維持して成形された部品が金型内で急冷される。このように十分に冷却された後、スライドを上昇させて製品を取り出す工程から部品を製作する。また、このように製作された部品は一般的に、最終部品形状から一部不要なエッジ部位や内側に穴部位などを切断する工程がさらに行われて最終的な部品形状に製作される過程を経る。このような成形後の製品を切断する工程は、成形された製品が高強度を有するため、レーザートリミングを行うか、あるいはトリミング金型/プレスを活用した機械的トリミングによって行われる。
【0003】
上述した一般的な熱間プレス成形には、一度の成形で最終部品が製作される必要があるという制約事項があり、一度の成形で製作が難しい部品形状は製作できないという欠点がある。そこで、これを解決するために、常温で中間段階形状に成形した後、このように予備成形された部品を加熱してこれを、熱間プレス成形を介して最終部品形状に製作するインダイレクト(indirect)熱間プレス成形を活用する方法も一部適用されている。しかし、このようなインダイレクト熱間プレス成形には、中間段階形状に成形を行う工程がさらに必要であるという点、及び成形された部品への加熱が可能な特殊加熱炉が必要であるという点など、様々な生産費用が追加されるという欠点がある。
【0004】
一方、一般冷間プレス成形では、複数段の成形工程を経て最終部品を成形するのが一般的な接近方法である。このような冷却プレス成形方法としては、いくつかのプレス及び金型を活用して数工程に分けて成形するか、1つのプレス内に複数段の金型を入れて成形する方法が活用されている。一方、1つのプレス内に複数段の金型を入れて成形する方法として、金型にそれぞれ分離されたブランクを投入して複数段に成形するトランスファー(transfer)方式の成形や、連続的に連結されているストリップ状の素材を供給して複数段に成形するプログレッシブ(progressive)方式の成形が一般的に活用されている。
【0005】
しかし、冷間プレス成形とは異なり、熱間プレス成形は高温の素材を急冷して高強度を確保する必要があるという特殊な制約事項があるため、上述した複数段を経た成形方法を適用することは容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開公報第2006-0054479号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面によると、生産性及び成形性のうち1つ以上の特性が改善された多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法及び装置を提供することができる。
【0008】
または、本発明の他の一側面によると、従来の単一工程の熱間プレス成形方法では得られなかった複雑な成形を有しながらも、強度特性に優れた成形部材を提供することができる。
【0009】
本発明の課題は、上述の内容に限定されない。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、誰でも本発明の明細書全体にわたる内容から本発明のさらなる課題を理解するのに何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、
ストリップ素材を加熱する加熱段階;
1つのプレスに切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型と、成形金型と、トリミング金型とを含む多数の金型が取り付けられた加工装置であって、加熱されたストリップ素材を移送する移送段階;
上記切り欠き金型を用いて素材の一部を切断することで、ストリップにウェブ部に連結された形態の切り欠きされた素材を得る切り欠き段階、及び上記ブランキング金型を用いて素材の一部を切断することで、ストリップから分離された形態のブランキング素材を得るブランキング段階のうち1つ以上の段階;
上記切り欠き段階及び上記ブランキング段階のうち1つ以上の段階を経た素材を移送して上記成形金型の付近に位置させた後、上記成形金型を用いて上記素材を成形する成形段階;及び
上記トリミング金型を用いて最終製品形状から不要な素材の周縁部を除去するトリミング段階;
を含む、多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の他の一側面は、
ストリップ素材を連続的に供給する供給部;
供給されたストリップ素材を加熱する加熱部;
1つのプレスに切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型と、成形金型と、トリミング金型とを含む多数の金型が取り付けられた加工装置を含む加工部;並びに
上記加熱部で加熱されたストリップ素材を上記加工部に移送する移送部;
を含む、多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置を提供する。
【0012】
本発明のまた他の一側面は、
上述した多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法により製造された熱間プレス成形部材であって、
アンダーカット形状を含み、引張強度が1300MPa以上である熱間プレス成形部材を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によると、ストリップ素材を速いサイクルタイムで安定して加熱供給することができ、生産性が向上した多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法及び装置を提供することができる。
【0014】
または、本発明の他の一側面によると、ストリップ素材を、多段工程を介して成形することにより、単一工程熱間プレス成形に比べて、複雑な形状も比較的容易に提供することができる。
【0015】
または、本発明のまた他の一側面によると、従来の単一工程の熱間プレス成形方法では得られなかった複雑な成形を有しながらも、強度特性に優れた成形部材を提供することができる。
【0016】
本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の例示的な多段工程用熱間プレス成形装置を示した図面である。
図2】(a)は、幅が一定した素材に対する通電加熱時の温度分布結果を示し、(b)は、幅が一定していない素材に対する通電加熱時の温度分布結果を示した図面である。
図3】本発明の例示的な機械式プレスの作動方式をクランク角に応じたストロークの関係で示したグラフである。
図4】本発明の例示的な切り欠き段階において、通常のプログレッシブ方式を適用した場合の経時による素材の温度変化を示したグラフである。
図5】本発明の例示的な切り欠き段階において、切断工程においてのみ切り欠き上型及び切り欠き下型をストリップ素材に接触させる場合の経時による素材の温度変化を示したグラフである。
図6】実施例14に対する経時による素材の温度変化をグラフで図式化した図面である。
図7】実施例15に対する経時による素材の温度変化をグラフで図式化した図面である。
図8】実施例16に対する経時による素材の温度変化をグラフで図式化した図面である。
図9】本発明の例示的な成形工程を単一工程で行った場合の厚さ減少率の変化を示した図面である。
図10】本発明の例示的な成形工程を2段階工程に分けて行った場合の厚さ減少率の変化を示した図面である。
図11】本発明の例示的な多段工程用熱間プレス成形方法を示した図面である。
図12】本発明の例示的な多段工程を行う間の素材の変化を示した図面である。
図13】本発明の例示的な切り欠きまたはブランキング方法を示した図面である。
図14】本発明の例示的なプッシュバーを用いた切り欠きまたはブランキング方法を示した図面である。
図15】本発明の例示的な金型の接触時間の増大方法を示した図面である。
図16】本発明の例示的な金型の接触時間の増大方法を示した図面である。
図17】本発明の例示的な金型の接触時間の増大方法を示した図面である。
図18】本発明の例示的な熱間プレス成形部材の構造を示したものとして、(a)は成形部材の斜視図を示し、(b)は成形部材の側面図を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
熱間プレス成形は、高温の素材を急冷して高強度を確保する必要があるため、複数段を経た成形方法を適用することは困難である。そこで、最近は亜鉛めっき熱間プレス成形用鋼材を活用して、ブランクを加熱した後、機械式サーボプレスに取り付けられた複数段階のための金型に投入して、ある程度低い温度に急冷する工程、ピアシングする工程、及び最終的にトリミングする工程を適用する方法が研究された。しかしながら、このような方式は、プレスで要求する速度で加熱されたブランクが供給できる十分な加熱炉の性能を確保することが必須に求められる。
【0019】
例えば、15SPM(毎分15ストローク)の速度でプレスが行われる場合、4秒ごとに加熱されたブランクを供給することができる加熱炉が必要であることを意味する。通常の熱間プレス成形のサイクルタイムも16秒レベルと、作業がかなり速く行われるものと考えることができるが、これは16秒ごとに加熱されたブランクを供給することができる性能をもつ加熱炉が必要であるという意味である。
【0020】
ところで、サイクルタイムを4秒とすると、上述のサイクルタイムが16秒である場合よりも4倍もの速い速度で加熱されたブランクを供給しなければならない。素材は加熱炉内に必要な時間だけ留まらなければ、所望の温度まで加熱されないため、4倍もの速い速度で加熱をするには、4倍もの多量のブランクが加熱炉内に入る必要があることになる。したがって、算術的に加熱炉の長さがさらに4倍長くないと実現できないと推定することができる。例えば、通常の加熱炉は30mレベルであるが、上述したように4倍もの速い速度で加熱するには、加熱炉の長さが120mレベルになるか、又は長さ30mの加熱炉を4つ並列に設ける必要がある。
【0021】
しかしながら、加熱炉の長さが長くなることは、空間及び費用の側面で大きな障害となるため、ブランクを上述した一般的な雰囲気の加熱炉ではなく、急速加熱できる設備を活用することもできる。
【0022】
これに対して、本発明者らが鋭意検討した結果、形状を有するブランクを急速且つ均一に加熱することは、技術的に容易ではないことを見出した。ここで、本発明者らは研究を続けて、短いサイクルタイムに対応可能な速い速度で高温の素材を安定して供給するとともに、成形性が改善された多段工程用熱間プレス成形装置及び方法を発明するに至った。
【0023】
また、一般的な熱間プレス成形は、成形後の一定時間の間にプレスを下死点で維持して、金型を閉じた状態に維持して冷却を行う工程がある。ところで、多段工程の場合には、複数段の工程を順に実施する必要があるため、1つの金型でのみ冷却が行われるのではなく、複数段の金型で冷却が行われる。したがって、本発明のような多段工程用熱間プレス成形方法は、プレス速度や工程数など、様々な工程因子が冷却に与える影響を考慮した工程の設計が必要である。よって、本発明者らは、様々な工程因子を考慮して最適の多段工程を設計した。
【0024】
[多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法]
本発明の一側面は、
ストリップ素材を加熱する加熱段階;
1つのプレスに切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型と、成形金型と、トリミング金型とを含む多数の金型が取り付けられた加工装置であって、加熱されたストリップ素材を移送する移送段階;
上記切り欠き金型を用いて素材の一部を切断することで、ストリップにウェブ部に連結された形態の切り欠きされた素材を得る切り欠き段階、及び上記ブランキング金型を用いて素材の一部を切断することで、ストリップから分離された形態のブランキング素材を得るブランキング段階のうち1つ以上の段階;
上記切り欠き段階及び上記ブランキング段階のうち1つ以上の段階を経た素材を移送して上記成形金型の付近に位置させた後、上記成形金型を用いて上記素材を成形する成形段階;及び
上記トリミング金型を用いて最終製品形状から不要な素材の周縁部を除去するトリミング段階;
を含む、多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法を提供する。
【0025】
本発明の一側面によると、ストリップ素材を加熱する加熱段階を含むことができ、850~960℃の温度範囲でストリップ素材を加熱することができる。本発明の一側面によると、上記加熱方法としては、急速加熱を適用することができ、加熱速度は12~200℃/sの範囲であることができる。一方、好ましくは上記加熱速度の下限は13℃/sであることができ、より好ましくは上記加熱速度の下限は30℃/sであることができる。また、上記加熱速度の上限は100℃/sであることができ、より好ましくは上記加熱速度の上限は80℃/sであることができる。また、上記加熱温度は、ストリップ素材の表面のいずれかの一地点を基準とした温度変化に基づいて測定された値であることができる。
【0026】
本発明の一側面によると、急速加熱の方法としては、高周波加熱(induction heating)、通電加熱(resistance heating)、赤外線加熱(infrared heating)などの様々な方式を用いることができる。上述した急速加熱方式を用いて均一な幅を有したストリップ素材を加熱することにより、形状を有するブランキング素材を加熱する従来方式に比べて、より均一な温度分布を確保することができ、これによって速いサイクルタイムで加熱されたストリップ素材を安定して供給することができる。
【0027】
一方、従来のブランク素材を加熱する方法は、均一な加熱が行われ難いため、雰囲気加熱炉を活用することがほとんどであった。ところで、多段工程の短いサイクルタイムで加熱されたブランクを供給するには、加熱炉の長さが過度に長くなるという問題がある。ここで、本発明では、幅が一定したストリップ素材自体に急速加熱方式を適用することで、上述した問題を解決することができることを見出した。
【0028】
例えば、サイクルタイムが4秒の場合(このとき、後述する多段工程で設計されたピッチ量は500mmを基準とした)、もし16秒で最終温度に急速加熱する方式を活用すると、加熱工程に関与されたストリップ素材の長さは2mレベルで計算される。したがって、先に例示した従来のブランクを加熱する方式での加熱炉の長さ120mまたは30m長さの加熱炉4つの並列配置方式に比べて加熱空間を大幅に減らすことができると予想される。
【0029】
すなわち、本発明の一側面によると、サイクル時間(S)に対する総加熱装置の有効長さ(L)の比(L/S)は0.25~4の範囲とすることができるが、特にこれに限定されるものではない。上述した範囲を満たすことにより、速いサイクルタイムで素材を安定して供給するとともに、成形性が改善された熱間プレス成形方法を提供することができる。
【0030】
このとき、上述した総加熱装置の有効長さ(L)は、素材の加熱に直接的に用いられる部分の長さを言い、その単位はmを用いる。一例として、加熱炉の場合には加熱炉の内部長さを意味し、高周波加熱の場合には加熱に用いられる高周波コイルの長さを意味することができる。すなわち、直列方式及び並列方式のうち1つ以上を含む場合にも全ての加熱装置の有効長さを意味し、具体的には加熱炉が並列方式で30mが4つ配置された場合には、総加熱装置の有効長さは120m[=30m×4]に該当する。なお、上述したサイクルタイムは、多段工程において1サイクルが行われる間の時間を意味し、その単位はsec(秒)を用いる。
【0031】
一方、本発明の一側面によると、上記ストリップ素材としては、素地鋼板;及び素地鋼板上に備えられるめっき層;を含むめっき鋼板を用いることができる。すなわち、ストリップ素材に急速加熱方式の適用時にめっき層の十分な合金化を図るとともに、めっき層の溶融及び揮発防止のためにアルミニウムめっき鋼板またはアルミニウム合金めっき鋼板を適用することができる。
【0032】
本発明の一側面によると、上記素地鋼板は重量%で、C:0.1~0.5%、Si:0.1~2%、Mn:0.5~3%、Cr:0.01~0.5%、Al:0.001~1.0%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、N:0.02%以下、B:0.002~0.005%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含む組成を有することができるが、素地鋼板はこのような組成に限定されない。また、上記めっき層は重量%で、Si:5~11%、Fe:4.5%以下、残部Al、その他の不可避不純物を含む組成を有するように、溶融めっき生産されためっき材を合金化して用いることができるが、めっき層はこのような組成に限定されない。すなわち、本発明の非制限的な一例として、上述した組成を満たすアルミニウムめっき鋼板またはアルミニウム合金めっき鋼板を用いることができる。
【0033】
本発明の一側面によると、上記ストリップ素材としては、めっき層表面部におけるFe含有量が5重量%以上、好ましくは5~60重量%(より好ましくは30~60重量%)であるアルミニウムめっき鋼板またはアルミニウム合金めっき鋼板を用いることができる。このとき、上記めっき層の表面部とは、めっき層の表面から2μm以内の領域を意味する。一方、上記ストリップ素材としてめっき層表面部におけるFe含有量が上述した範囲を満たすものを用いることで、急速加熱の適用時に十分な合金化時間を確保した状態で、高温加熱が行われることができる。
【0034】
本発明の一側面によると、上記加熱段階の前に、用意されたストリップ素材を加熱部に連続的に供給する段階をさらに含むことができる。上記ストリップ素材の供給は、コイル状に備えられた素材がアンコイラーによって幅が一定したストリップ素材の形態で加熱部に連続供給されることができる。このとき、上記幅が一定したストリップ素材とは、ストリップ素材の面を基準として、素材の移送方向と垂直した方向で測定されるストリップ素材の幅が一定したものをいう。
【0035】
本発明の一側面によると、上記「連続的に供給」は、後続工程を考慮してしばらく停止する瞬間を除いては、加熱部にストリップ素材が一定速度で供給されることを意味することができる。
【0036】
本発明の一側面によると、1つのプレスに切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型と、成形金型と、トリミング金型とを含む多数の金型が取り付けられた加工装置であって、上記加熱されたストリップ素材を移送するストリップ素材の移送段階を含む。
【0037】
本発明の一側面によると、加熱されたストリップ素材を上記加工装置に連続的に移送することができる。このとき、上記連続的に移送するという意味は、加熱されたストリップ素材を対象としてこれを加工装置に移送するという点を除いては、上述した「連続的に供給」に関する説明を同様に適用することができる。
【0038】
本発明の一側面によると、上述の移送段階で加熱されたストリップ素材の冷却は最小化することが好ましいため、上記ストリップ素材の移送段階は保温チャンバー内で行うことができる。すなわち、上述した保温チャンバー内でストリップ素材を移送することで、熱損失防止及び加工装置における容易な加工性を確保することができる。
【0039】
本発明の一側面によると、上記保温チャンバーに供給されたストリップ素材の表面温度(Ts)を基準として、上記保温チャンバーは、Ts-200℃以上Ts+50℃以下の温度範囲内に維持されることができる。このように、保温チャンバーの温度をTs-200℃以上に制御することで、移送過程中にストリップ素材の冷却を最小化するとともに加工装置での容易な加工性を確保することができ、保温チャンバーの温度をTs+50℃以下に制御することで、移送過程中にさらなる昇温が発生することを防止することができる。一方、上述した容易な加工性及び移送過程中にさらなる昇温発生防止の効果をより向上させようとする側面から、上記保温チャンバーの温度は、好ましくは900℃以上Ts+50℃以下であることができ、より好ましくは900~1,010℃の範囲であることができる。
【0040】
このとき、上記保温チャンバーに供給されたストリップ素材の表面温度(Ts)は、当該技術分野で一般的に用いられる素材の加熱温度範囲を同様に適用することができるため、本明細書においてその範囲を特に限定することはない。但し、非制限的な一例として、上記ストリップ素材の表面温度(Ts)は850~960℃の範囲であることができる。
【0041】
一方、本発明の一側面によると、上記1つのプレスにおいて、切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型と成形金型は、互いに設計されたピッチ量だけストリップ素材の移送方向に間隔を置いて取り付けられることができる。例えば、上記切り欠き金型のみが(またはブランキング金型のみが)含まれる場合、1つのプレスにおいてストリップ素材の移送方向に順に切り欠き金型(またはブランキング金型)が先に取り付けられ、続いて切り欠き金型(またはブランキング金型)から設計されたピッチ量だけ間隔を置いて成形金型が取り付けられることができる。または、上記切り欠き金型及びブランキング金型が全て含まれる場合、1つのプレスにおいてストリップ素材の移送方向に順に切り欠き金型、ブランキング金型及び成形金型が取り付けられることができ、このとき、上記移送方向に互いに隣接する2つの金型間には設計されたピッチ量だけ間隔を置くことができる。
【0042】
また、本発明の一側面によると、上記1つのプレスにおいて、上記成形金型とトリミング金型は、互いに設計されたピッチ量だけストリップ素材の移送方向に間隔を置いて取り付けられることができる。すなわち、上記1つのプレスにおいて、ストリップ素材の移送方向に順に切り欠き金型(及び/又はブランキング金型)及び成形金型が上述の方法と同様に取り付けられ、また上記成形金型から設計されたピッチ量だけ間隔を置いてトリミング金型が取り付けられることができる。
【0043】
または、後述するように、ピアシング段階及びフランジング段階のうち1つ以上の段階がさらに含まれる場合、1つのプレスにおいて、素材の移送方向で成形金型とトリミング金型との間にピアシング金型(及び/またはフランジング金型)をさらに取り付けることができる。例えば、ピアシング段階をさらに含む場合には、1つのプレスにおいて、素材の移送方向に順に切り欠き金型(及び/またはブランキング金型)、成形金型、ピアシング金型、及びトリミング金型が取り付けられることができる。
【0044】
また、本発明の一側面によると、上述したピアシング段階及びフランジング段階以外にも、本発明の目的に応じて、当技術分野で通常的に適用可能な追加の加工段階をさらに含むことができる。これによって、上述した追加の加工段階に相応するように、追加の加工金型が目的に合うように上記1つのプレスに取り付けられることができる。
【0045】
このとき、本発明の一側面によると、1つのプレスにおいて、ストリップ素材の移送方向に互いに隣接する2つの金型間には設計されたピッチ量だけ間隔を置いて、各金型が配置されることができる。例えば、ピアシング段階がさらに含まれる場合、1つのプレスにおいて、成形金型から設計されたピッチ量だけ間隔を置いてピアシング金型が取り付けられ、上記ピアシング金型から設計されたピッチ量だけ間隔を置いてトリミング金型が取り付けられることができる。
【0046】
または、本発明の一側面によると、後述するように、切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階と;成形段階と;ピアシング段階及びフランジング段階のうち1つ以上の段階と(但し、ピアシング段階及びフランジング段階は省略可能);トリミング段階とのうち1つ以上の段階が2段階以上の多段工程に分けられて行われる場合、上記多段工程に分けられて行われる段階のために備えられる多数の金型は、1つのプレスにおいてストリップ素材の移送方向に互いに設計されたピッチ量だけ間隔を置いて各金型が取り付けられることができる。このとき、1つのプレスにおいて、上記多段工程で行われる段階の1番目の金型は、直前の段階の金型とストリップ素材の移送方向に設計されたピッチ量の分だけ間隔を置いて取り付けられることができる。また、上記多段工程で行われる段階の最後の金型は、直後の段階の金型とストリップ素材の移送方向に設計されたピッチ量だけ間隔を置いて取り付けられることができる。
【0047】
例えば、上記成形段階が2段階の多段工程で行われる場合、1つのプレスにおいて、1次成形金型及び2次成形金型がストリップ素材の移送方向に設計されたピッチ量の分だけ間隔を置いて取り付けられることができる。このとき、1次成形金型は、直前の段階である切り欠き金型(切り欠き段階が含まれる場合)とストリップ素材の移送方向に設計されたピッチ量の分だけ間隔を置いて1つのプレスに取り付けられることができる。また、多段工程で行われる成形段階の最後の金型である2次成形金型は、直後の段階で用いられるピアシング金型(ピアシング段階が含まれる場合)とストリップ素材の移送方向に設計されたピッチ量の分だけ間隔を置いて1つのプレスに取り付けられることができる。
【0048】
本発明の一側面によると、多数の金型に対して、ストリップ素材の移送方向に互いに隣接する2つの金型間に設計された各ピッチ量はすべて同一であることができる。一方、図1にストリップ素材の移送方向Xを示し、上記移送方向Xに互いに隣接する2つの金型間の設計されたピッチ量50を示した。上記設計されたピッチ量は、互いに隣接する2つの金型について、各金型の中央(素材の移送方向に沿った1つの金型長さの1/2となる地点)を基準として測定した金型間の距離を意味することができる。
【0049】
本発明の一側面によると、1つのプレスに取り付けられた多数の金型は、1つのプレスによるプレス運動に全て連動して動くことができる。すなわち、1つのプレスに取り付けられた各金型に対する上型と下型との合型は、上述した1つのプレスによるプレス運動に連動して行われることができる。すなわち、プレススライドが下降しながら、プレス下死点に留まるときにプレスに取り付けられた各金型の合型が行われることができる。
【0050】
したがって、上述したように素材の移送方向に互いに隣接する2つの金型に対して設計されたピッチ量が全て同一になるように制御することで、本発明の一例に該当するプログレッシブ方式によって素材の加工が行われる際に、各金型間の素材の移送を一貫して制御することができる。これにより、生産性及び加工性の向上を確保するとともに、容易に多段工程を行うことができる。
【0051】
すなわち、本発明の一側面によると、上記1つのプレスのプレス運動によるプレス上部板(プレススライド)とプレス下部板(プレスボルスター)とのクロージングが1回行われた後の度に、上記設計されたピッチ量の分だけ素材の移送方向に素材が移送されることができる。
【0052】
本発明の一側面によると、上記切り欠き金型を用いて素材の一部を切断することで、ストリップにウェブ部に連結された形態の切り欠きされた素材を得る切り欠き段階;及び、上記ブランキング金型を用いて素材の一部を切断することで、ストリップから分離された形態のブランク素材を得るブランキング段階;のうち1つ以上の段階を含むことができる。
【0053】
上記切り欠き段階またはブランキング段階において、各金型の上型と下型が合型することにより、素材から不要な部位を予め除去して所望の形状に加工することができる。このとき、上記切り欠き段階によって得られる所望の形状に加工された素材は、ストリップにウェブ部で連結された形態の切り欠きされた素材であることができる。また、上記ブランキング段階によって得られる所望の形状に加工された素材は、ストリップから分離された形態のブランク(blank)素材であることができる。
【0054】
本発明の一側面によると、上記切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階で加熱された金型を用いることができ、上記切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型の初期温度は50℃以上であることができるが、特に限定するものではない。一方、金型の温度が高いほど冷却抑制の効果に優れるため、上記金型の初期温度に対する上限は別途に限定しなくてよい。但し、好ましくは、上記金型の初期温度の上限は、ストリップ素材の加熱温度以下であることができる。すなわち、切り欠き段階で加熱された切り欠き金型、及び/またはブランキング段階で加熱されたブランキング金型を用いることができる。一般的に、切り欠き段階及びブランキング段階において、素材を加工するためには、金型の上型と下型とが互いに接触することが必須である。したがって、切り欠き段階及びブランキング段階で加熱された金型を用いることで、高温に加熱されたストリップ素材が冷たい金型と接触することを防止して、素材の急冷を抑制するとともに、後続工程での容易な成形性を確保することができる。
【0055】
本発明の一側面によると、ストリップ素材の冷却を抑制するために、上記切り欠き金型の初期温度及びブランキング金型のうち1つ以上の初期温度は400℃以上であることができ、より好ましくは500℃以上であることができる。上記金型の初期温度とは、素材が金型に投入される時点での金型の初期温度を意味する。一方、金型の温度が高いほど冷却抑制の効果に優れるため、上記金型の初期温度に対する上限は別途に限定しなくてよい。但し、好ましくは、上記金型の初期温度の上限は、ストリップ素材の加熱温度以下であることができる。このように、金型の初期温度を400℃以上に制御することで、後続工程である成形段階での容易な成形性を確保することができる。また、切り欠き及びブランキング金型の初期温度をストリップ素材の加熱温度以下に制御することで、切り欠き及びブランキング時の接触による追加昇温を防止することができる。
【0056】
本発明の一側面によると、上記切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階の直後の素材の表面温度は700℃以上に制御することができ、より好ましくは712℃以上に制御することができる。一方、上記表面温度の上限は別途に限定しないが、好ましくはストリップ素材の加熱温度以下であることができる。このとき、上記素材の表面温度は、切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階の直後に金型と素材との接触が終わる時点を基準として測定した値である。一方、上記素材の表面温度が上述した範囲を満たすことで、後続工程での優れた成形性及び追加昇温の防止を同時に図ることができる。
【0057】
一方、図11及び図13から分かるように、一般的にはプログレッシブ方式の場合、加工装置41に移送されたストリップ素材200は通常素材の移送高さレベル110aに維持され、切り欠き上型61aと接触が発生しながら、切り欠き上型61aと接触した状態で上型61aの動きに応じて下降する。このように、切り欠き上型61aと接触された状態でストリップ素材200が下降しながら、スライドの下死点の付近110bで切り欠き下型61bとも接触してストリップ素材200の一部が切断されることで切り欠きされる。次いで、再び切り欠きされた素材は、元の移送高さレベルまで切り欠き上型61aと接触しながら上昇する。
【0058】
このような事項を反映した例示的な実験結果である図4を見ると、切り欠き上型の接触が始まる区間で素材の温度が急激に低下することが確認できる。ここで、本発明者らは、ストリップ素材が切断される時点でのみ金型と接触するようになると、ストリップ素材が金型の上型と接触する時間を最小化して冷却を減少させることができることをさらに見出した。また、図面に別途示していないが、上述した切り欠き段階と同様の方法で、上記ブランキング段階においても、素材がブランキング金型の上型と接触する時間を最小化することで冷却を減少させることができる。
【0059】
すなわち、本発明の一側面によると、上記切り欠き段階及びブランキング段階において、加工装置に投入されたストリップ素材は、素材の移送高さレベルから金型の上型と接触していない状態でプレス下死点まで下降しながら、切断工程でのみストリップ素材が金型の上型(または上型面)及び下型(または下型面)と接触するように制御されることができる。
【0060】
例えば、上記切り欠き段階またはブランキング段階を含む場合、上記切り欠き段階(または、ブランキング段階)において、加工装置に投入されたストリップ素材は、素材の移送高さレベルから上記切り欠き上型(または、ブランキング上型)と接触していない状態でプレス下死点まで下降しながら、切断工程でのみストリップ素材が切り欠き上型及び切り欠き下型(または、ブランキング上型及びブランキング下型)と接触するように制御されることができる。
【0061】
または、上記切り欠き段階及びブランキング段階の全てを含む場合には、切り欠き段階は上述した方法と同様に行われ、続いて、ブランキング段階は切り欠きされた素材を前提とするという点を除いては、上述した方法と同様に行われることができる。
【0062】
また、本発明の一側面によると、上記切り欠き段階(またはブランキング段階)において、ストリップ素材の切断工程後の上昇時には、上述した下降時と同様に、切り欠き(またはブランキング)上型と接触していない状態で、ストリップ素材が切り欠き(またはブランキング)下型から分離して、ストリップ素材の移送高さレベルまで上昇されることができる。このように、切り欠き段階(またはブランキング段階)においてストリップ素材の切断時点でのみ切り欠き(またはブランキング)上型と切り欠き(またはブランキング)下型をストリップ素材に接触されるように制御することで、切り欠き段階(またはブランキング段階)での過度の冷却を抑制することができ、これによって後続する成形段階での容易な成形性を確保することができる。
【0063】
一方、本発明の例示的な多段工程用熱間プレス成形装置を示した図1において、切り欠き金型及びブランキング金型のうち、切り欠き金型のみを含む場合には、切り欠き上型61a及び切り欠き下型61bを示し、ブランキング金型のみを含む場合には、ブランキング上型61a及びブランキング下型61bを示す。但し、切り欠き金型及びブランキング金型の全てを含む場合の図面は省略した。
【0064】
上述した切り欠き段階及びブランキング段階において、切断工程においてのみストリップ素材が金型の上型及び下型と接触する方法としては、様々な方法があることができる。例えば、図14に示したように、切り欠き上型(またはブランキング上型)のストリップ素材と接する側の面上に突出した構造物としてスプリングによって作動するプッシュバー(push bar)11を備えることができる。このとき、上記プッシュバーは、後続工程中に素材から除去される部分に対応するように、切り欠き上型(またはブランキング上型)のストリップ素材と接する側の面上に配置することができる。
【0065】
すなわち、本発明の一側面によると、上記プッシュバー11は、素材200中に後続工程で除去される部分に接触するように素材200を押しながら、切り欠き上型(またはブランキング上型)を下降及び上昇することができる。これにより、プレスの下降及び上昇時に、切り欠き上型(またはブランキング上型)のストリップ素材と接する側の面のうち、上記プッシュバーが備えられる以外の領域ではストリップ素材と接触しないように制御されることができる。一例として、上記ストリップ素材について後続する工程中にストリップ素材から除去される部分は、ストリップを移送するためにストリップをガイドしているガイドバーまたはガイドピンなどが該当されることができる。
【0066】
一方、本発明の一側面によると、本発明者らは、加工装置のプレス運動時に、プレス下死点の付近に留まる時間(すなわち、プレスの下死点の付近での維持時間)が長くなるにつれて、金型の上型と下型がクロージング(closing)する時間が増加するようになり、これによって素材の冷却速度も速くなることができることをさらに発見した。
【0067】
図3には、本発明の例示的な機械式プレス運動の作動方式に関してクランク角(crank angle)に沿ったスライドのストローク(stroke)を示した。図3の(a)は、一般的なクランクモーション(crank motion)方式に該当し、図3の(b)は、リンク(link)、ナックル(knuckle)、サーボ(servo)などの他のモーション方式に該当する。上述した方式の違いによってスライドが下死点の付近での維持時間に差があることが確認でき、上記図3の(b)のモーション方式の場合、上記図3の(a)のモーション方式よりも下死点の付近での維持時間の割合がより高い。
【0068】
したがって、本発明の一側面によると、上記加工装置のプレス運動は、リンクモーション方式、ナックルモーション方式、及びサーボモーション方式からなる群から選択されたいずれかの方式で行われることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0069】
または、本発明の一側面によると、上記加工装置のプレス運動は、1ストローク内の下死点の付近で維持時間の割合が4~30%であることができ、より好ましくは10~30%であることができる。このとき、上記下死点の付近での維持時間の割合とは、プレス下死点から上部方向に1mmの地点までプレスが留まる時間の割合を意味する。
【0070】
本発明の一側面によると、上記維持時間の割合が4%以上の場合、冷却のための最小限の金型接触時間を確保することで、物性確保のための工程数の増加を防止することができる。また、これにより最終部品抽出時間の増加を防止して臨界冷却速度を確保して目的とする物性を容易に確保することができる。また、上記維持時間の割合が30%以下の場合、不要な下死点の付近での維持時間を減少させることで、プレススライドの上下運動及びストリップの移送のための工程時間を十分に確保して、安定した工程確保が可能となる。
【0071】
本発明の一側面によると、上記切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階は、1段階で行われることもでき、2段階以上に分けて多段工程で行われることもできる。
【0072】
また、本発明の一側面によると、上記切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階を経た素材を移送して上記成形金型の付近に位置させた後、上記成形金型を用いて(すなわち、成形金型の上型と下型を合型することで)上記素材を成形する成形段階を含むことができる。
【0073】
本発明の一側面によると、上記成形段階は1段階で行われることもでき、2段階以上に分けて多段工程で行われることもできる。
【0074】
本発明の一側面によると、特に限定されるものではないが、上述した成形段階において、アンダーカット形状に形成されるように成形段階が2段階以上の多段工程で行われることができる(アンダーカット形状については、後述する内容が同様に適用される)。
【0075】
本発明の一側面によると、上述した成形段階が2段階以上の多段工程で行われる場合であって、いずれか1つの成形段階での素材に対する成形方向と、また他の成形段階での素材に対する成形方向が互いに相違することができる。例えば、1次成形段階での素材に対する成形方向と、1次成形段階後のアンダーカット形状を形成する追加の成形段階での素材に対する成形方向が互いに相違することができる。このとき、互いに成形方向が相違するということは、平行でないことをいう。
【0076】
本発明の非制限的な一例としては、1次成形段階で素材の面を基準に垂直な成形方向にバーリング部を先に形成した後、1次後の成形段階(例えば、2次成形段階)で素材に対する曲げ加工を行うことができる。このとき、上記曲げ加工は、1次成形段階での上述した成形方向と90°以下になるように行われることで、1次成形段階での成形方向と2次後の成形段階での成形方向とが互いに相違することができる。
【0077】
このとき、本発明の一側面によると、一回のみの曲げ加工を行ってからは、バーリング部は追加の金型接触による冷却を行うことができないため、成形段階でのバーリング部形成時に十分に冷却を行った後、曲げ加工を行うように工程設計を行うことができる。
【0078】
すなわち、本発明の一側面によると、1次成形段階で素材に加工を行ってバーリング部などの成形部位を形成し、1次後の成形段階で素材に対する曲げ加工を行って、素材に後述する屈曲部(すなわち、平面部と側面部が連結されて形成される部分)を形成することができる。
【0079】
一方、本発明の非制限的なまた他の例としては、1次成形段階で成形金型を用いて素材の面を基準として、第1面方向Sを有する平面部A及び上記第1面方向と相違する第2面方向Pを有する側面部Bを含むように素材を成形することができる。続いて、1次後の成形段階(例えば、2次成形段階)において、上記側面部に圧力を加えて上記第1面方向Sと第2面方向Pがなす角度Dが90°以内である部位を含むように成形されることができる。
【0080】
本発明の一側面によると、上述した互いに成形方向が相違する2段階以上の工程で行われる成形段階を含むことで、後述するアンダーカット形状を有する熱間プレス成形部材を提供することができる。
【0081】
すなわち、本発明の一側面による2段階以上の多段工程で行われる成形段階を含むことで、成形段階が単一工程で行われる従来技術としては製造できなかったアンダーカット形状を容易に形成することができる。したがって、本発明によると、最終製品として上述したアンダーカット形状を含むとしても、熱間プレス成形法を適用して全体の引張強度が1,300MPa以上である成形部材を容易に製造することができる。
【0082】
本発明の一側面によると、上記切り欠き段階またはブランキング段階を含む場合、切り欠き金型またはブランキング金型から成形金型の付近に移送する際に、切り欠き金型(またはブランキング金型)から成形金型の間に設計されたピッチ量に相応するように切り欠きされた素材(またはブランキング素材)を設計されたピッチ量の分だけを移送して成形金型の付近に位置させることができる。このとき、上記成形金型の付近とは、成形上型と成形下型との間で成形が行われる空間を意味することができる。
【0083】
本発明の一側面によると、上記成形段階後に、成形された素材から穴部などの不要な部位を除去するピアシング段階及び成形された素材からフランジ部を形成するフランジング段階のうち1つ以上の段階をさらに含むことができる。すなわち、上記ピアシング段階及びフランジング段階のうち1つ以上の段階は、上述した成形段階と後述するトリミング段階との間に備えることができる。
【0084】
すなわち、本発明の一側面によると、上記ピアシング段階において、上記成形された素材を移送して上記ピアシング金型の付近に位置させた後、上記ピアシング金型を用いて(すなわち、ピアシング金型の上型と下型を合型することで)成形された素材から穴部などの不要な部位を除去することができる。このとき、上記ピアシング金型の付近とは、ピアシング上型とピアシング下型との間でピアシングが行われる空間を意味することができる。
【0085】
また、上記フランジング段階において、上記成形された素材を(または、ピアシング段階及びフランジング段階の全てを含む場合として、ピアシング段階-フランジング段階が順に行われる場合には「ピアシングされた素材」を意味する)移送して上記フランジング金型の付近に位置させた後、上記フランジング金型を用いて(すなわち、フランジング金型の上型と下型を合型することで)ピアシングされた素材でフランジ部を形成するように加工することができる。このとき、上記フランジング金型の付近とは、フランジング上型とフランジング下型との間でフランジングが行われる空間を意味することができる。
【0086】
一方、本発明の一側面によると、上述したピアシング段階及びフランジング段階の全てが含まれる場合には、ピアシング段階及びフランジング段階の順は別途に限定されない。すなわち、成形段階とトリミング段階との間で行われればよく、ピアシング-フランジングが順に行われるか、またはフランジング-ピアシングが行われることもできる。
【0087】
本発明の一側面によると、成形金型の付近からピアシング金型(またはフランジング金型)の付近に素材を移送する際に、成形金型とピアシング金型(またはフランジング金型)との間に設計されたピッチ量と相応するように、上記成形された素材を設計されたピッチ量の分だけ移送して、上記ピアシング金型(またはフランジング金型)の付近に配置させることができる。一方、ピアシング段階及びフランジング段階の全てが含まれる場合として、ピアシング金型からフランジング金型に素材を移送する際にも、上述した方法と同様の方法で素材を移送させることができる。
【0088】
本発明の一側面によると、上記ピアシング段階及びフランジング段階のうち1つ以上の段階は、1段階で行われることもでき、2段階以上に分けて多段工程で行われることもできる。あるいは、必要に応じて、ピアシング段階及びフランジング段階のうち1つ以上の段階を省略することもできる。
【0089】
また、本発明の一側面によると、上記トリミング金型を用いて最終製品形状から不要な素材の周縁部を除去するトリミング段階を含むことができる。このようなトリミング段階によって最終的に所望の製品形状を有する素材を得ることができる。
【0090】
本発明の一側面によると、上記トリミング段階において、成形された素材(但し、上述したピアシング段階及びフランジング段階のうち1つ以上の段階をさらに含む場合には、ピアシング段階及びフランジング段階のうち1つ以上の段階を経た素材を意味する)を移送して上記トリミング金型の付近に位置させた後、トリミング金型を用いて上記素材から不要な周縁部を除去することで、最終製品形状の素材を製造することができる。このとき、上記トリミング段階は、トリミング金型の付近(トリミング上型とトリミング下型との間でトリミングが行われる空間)に移送された素材に対して、トリミング金型の上型と下型とを合型することで行われることができる。
【0091】
本発明の一側面によると、成形段階からトリミング段階まで素材の移送時には、素材の移送方向に互いに隣接する2つの金型に対して設計されたピッチ量に相応するように、素材を設計されたピッチ量の分だけ移送する前の段階(前段階)の金型から移送した後の段階(後段階)の金型の付近に移送させることができる。
【0092】
本発明の一側面によると、上記トリミング段階は1段階で行われることもでき、2段階以上に分けて多段工程で行われることもできる。
【0093】
本発明の一側面によると、上記切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階;成形段階;並びにトリミング段階(上述したピアシング段階及びフランジング段階のうち1つ以上の段階をさらに含む場合には、上記段階も含む);のうち1つ以上は、2段階以上に分けて多段工程で行われることもできる。このように、各工程を多段工程で行うことで、各工程を単一工程で行う場合よりも成形性がより改善されることができるだけでなく、各工程での厚さ減少率を減少させることで、最終製品でのクラック発生防止の効果がより向上されることができる。
【0094】
本発明の一側面によると、上記トリミングされた最終形状の製品を常温まで冷却する段階をさらに含むことができる。
【0095】
さらに、本発明の一側面によると、上記切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階;成形段階;並びにトリミング段階(上述したピアシング段階及びフランジング段階のうち1つ以上の段階をさらに含む場合には、上記段階も含む);のうち1つ以上は、金型の冷却段階をさらに含むことができる。例えば、成形段階が2段階以上に分けて多段工程で行われる場合、2次成形段階で2次成形金型を冷却する段階をさらに含むことができる。
【0096】
一方、通常的な熱間プレス成形方法は、一回の工程で成形が完了し、成形の直後に同一金型内で一定時間維持されながら、素材が急冷されて強度を確保するようになる。一方、本発明の技術は、切り欠き、ブランキング、成形、ピアシング、フランジング、及び/またはトリミングなどの複数段の工程を経て冷却が行われる。
【0097】
ここで、本発明の一側面によると、上述した多段工程を介して素材の物性確保可能有無について鋭意検討した結果、本発明者らは素材の物性確保可能有無を判断することができる素材の冷却速度はプレス速度であるSPM、最終製品が取り出されるまでの工程数、1工程内で上型及び下型をクロージングするために下死点の付近に留まる維持時間及びスライドストロークの関係式などが左右できることをさらに発見した。
【0098】
すなわち、本発明の一側面によると、下記関係式1によって求められる最小工程数以上で多段工程を行うことができる。これにより、所望の物性を有する製品を得ることができる。
[関係式1]
N=ROUNDUP{T/[(60/SPM)×(f/100)]}
(上記関係式1において、Nは、切り欠き工程及びブランキング工程を除いた成形段階から最小必要工程数を示し、
SPMはプレスの毎分ストローク数(stroke per minute;SPM)を示し、
fは、1ストローク内の下死点の付近の維持時間割合(%)を示し、
Tは、0.8≦t<1.5の場合に下記関係式2から計算される値を示し、1.5≦tの場合に下記関係式3から計算される値を示し、
ROUNDUPは、{ }内の計算値に対して小数点以下の数を切り上げた値を示す。)
[関係式2]
T=t
[関係式3]
T=5×t-6
(上記関係式2及び3において、tは素材の厚さであり、単位はmmである。)
【0099】
また、本発明の一側面によると、上記fは、0.8≦t<1.5を満たす場合に下記関係式4を満たし、1.5≦tを満たす場合に下記関係式5を満たすことができる。
[関係式4]
0.8×t+2.6≦f
[関係式5]
4.4×t-2.8≦f
(上記関係式4及び5において、tは素材の厚さであり、単位はmmである。)
【0100】
本発明の一側面によると、素材の厚さが厚くなるほど、冷却が容易でなくなるため、金型との接触時間がさらに長くなる必要がある。したがって、素材の厚さが大きくなるほど下死点での維持割合が大きいプレスモーションを選択することができる。
【0101】
または、本発明の一側面によると、金型との接触時間は工程数を増やす方案で接近可能であるが、一工程内で金型接触が少ない状態での多すぎる工程数は、空冷時間が増加するにつれて異なる相が生じる可能性が増える。したがって、最も好ましくは、プレススライドが一工程内で下死点の付近に留まる維持時間割合が増加することが必要である。また、金型との接触時間は、スライドが下死点の付近に留まる維持時間割合だけでなく、一工程の所要時間、すなわち、プレス運動速度(SPM)も影響を及ぼす。
【0102】
したがって、本発明の一側面によると、上記関係式1から計算された最小工程数以上で多段工程を行い、上記関係式4及び5で表された素材厚さに応じた最小f値を確保することで、所望の強度が確保された最終製品が得られる。
【0103】
本発明の一側面によると、切り欠き段階及びブランキング段階では素材の冷却を抑制する一方、切り欠き段階及びブランキング段階後の多段工程(すなわち、成形段階から)では冷却を促進して最終製品においてMs以下の温度を確保することが必要である。したがって、速い冷却のために金型との接触時間を増やす必要があり、このためには次のような方式を活用することができる。
【0104】
通常的なプログレッシブ方式では、プレス上型の上昇に連動してストリップ素材の位置が上昇し、次の段階への移送のために待機するようになる。しかし、このような場合には、プレススライドが下死点の付近に留まる間のみに成形品(または素材)が金型の上型及び下型と接触して冷却され、プレススライドが上昇するにつれて成形品も上昇して、金型の上型及び下型と離れるようになるため、空冷レベルにのみ冷却される。
【0105】
ここで、本発明者らは多段工程の好ましい実施形態について鋭意検討した結果、スライド上部板(プレススライド)が上昇する間は、ストリップ素材が移送されないため、図15~17のように、プレススライドがプレス下死点から一定高さレベルまで上昇して、ストリップ素材が移送段階になる前までは素材(または成形品)をプレス下死点の付近に留まらせることができる。このようにプレススライドが上昇する際には、素材をプレス下死点の付近に留まらせた後、プレススライドの位置情報を活用して、ストリップの移送段階になる時点の直前に素材を上昇させる方法を適用する場合、より速い冷却を確保することができることをさらに発見した。
【0106】
図15~17に本発明の例示的な加工装置41のプレス運動を示した。すなわち、本発明の一側面によると、図15に示したように、プレススライド6aは、加工装置41に素材が投入されると、プレス下死点120bまで下降して素材を加工する。次に、図16に示したように、プレススライド6aの上昇中の素材は、プレス下死点の付近120bに留まっている。最後に、図17に示したように、プレススライドの位置情報を活用することで、プレススライドが上昇して素材の移送に干渉しない地点120aまで到達すると、プレス下死点の付近120bに位置した素材を上昇させる方法を適用することができる。
【0107】
本発明の一側面によると、上述した素材を上昇させる方法は図17に示されており、具体的にはプレススライド6aが上昇した後に素材の移送に干渉しない地点120aまで到達すると、各段階で用いられる金型の下型61b、62b、63b、64bと素材が離れるように制御するシリンダ状の素材位置制御部600によって、素材をプレス下死点の付近から移送地点120aまで上昇させることができる。
【0108】
このとき、本発明の一側面によると、上記素材位置制御部600は、プレス下部板(すなわち、プレスボルスター)上の金型を備える側の面上に備えることができる。より具体的には、上記素材位置制御部600は、1つの金型(すなわち、下型61b、62b、63b、64bのいずれか)に対して素材の移送方向に両端に備えることができる。または、図17に示したように、互いに隣接する2つの金型間には、1つの素材位置制御部600を備えることもできる。
【0109】
また、本発明の一側面によると、成形段階が2以上の多段工程で行われる場合、成形される部位が過度に冷却されてクラックが発生することを防止するために、上記成形段階は、1次成形段階で用いられる1次成形金型以外の追加の成形金型に対して1つ以上の成形金型を加熱する段階をさらに含むことができる。
【0110】
または、本発明の一側面によると、上述したピアシング段階及びフランジング段階のうち1つ以上の段階及び/またはトリミング段階は、加工部位の過度の冷却によるクラック発生を防止するために、各段階において1つ以上の金型を加熱する段階をさらに含むことができる。
【0111】
本発明の例示的なプログレッシブ方式による多段工程を通過した後の素材の3次元的立体構造を図12の(a)に示した。具体的には、第1工程として切り欠き段階を通過した後の切り欠きされた素材210は、ストリップにウェブ部300で連結された形状を有する。次に、第2工程として成形段階を通過した後の成形された素材220は、3次元的な立体構造を形成する。このとき、3次元的立体構造の側面図を図12の(b)に示した。また、第3工程としてピアシング段階を通過した後のピアシングされた素材230の形状を示し、素材から不要な穴部が除去される。また、第4工程としてトリミング段階を通過した後のトリミングされた素材240の形状を示し、トリミング段階を行うことで不要な周縁部400が除去される。上述した全ての工程が行われることで、加工装置から取り出された最終製品(図11の250)が得られる。
【0112】
また、図面に別途表示してはいないが、後述するトランスファー方式によるストリップから分離されたブランキング素材を得るブランキング段階を含む場合には、上述した図12において、ストリップウェブ部を含まないようにストリップから分離された形態のブランク(blank)を形成した後、後続工程を経るという点を除いては、同様の方式で素材が加工されることができる。このとき、素材の形状は、当技術分野で通常的な方法を用いた場合と同様に形成されることができる。
【0113】
一方、本発明の一側面によると、プログレッシブ方式の場合、上述したウェブ(web)部300に素材ガイド部を形成してこれを作動させることで素材を移送するようになる。ストリップウェブ部300は、実際成形されない部位として、トリミング段階で最終製品形状から除去される部位である。したがって、上記ウェブ部300は、加工過程で低い温度に加熱するか、切り欠き段階で加工される素材の部位よりも速く冷却して円滑な素材の移送を図ることができる。
【0114】
すなわち、本発明の一側面によると、上記切り欠き段階において、素材のウェブ部に対する冷却を素材の成形部位よりも速く行うことができる。
【0115】
または、本発明の一側面によると、上記切り欠き段階において、素材のウェブ部は、製品が素材の成形部位よりも低い温度に制御されることができる。このように、素材のウェブ部を他の部位に比べて低い温度に制御するために、切り欠き金型において素材のウェブ部に対応する金型の一部のみを他の部位に比べて低い温度に制御することができる。
【0116】
また、本発明の一側面による多段工程用熱間プレス成形方法は、ストリップ素材を急速加熱して均一な加熱を図るとともに、高温のストリップ素材に対する切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階では、金型との接触時間を最小限に抑えて温度降下を最小化することが求められる。一方、切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階後の成形段階、ピアシング段階、フランジング段階、トリミング段階などでは(但し、ピアシング段階及びフランジング段階のうち1つ以上の段階は省略可能)素材の金型との接触時間を最大化させて速い冷却を確保することが求められる。このように、相反される要求事項は、プログレッシブ方式で最終段階まで実施される場合、切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階と、成形段階、ピアシング段階、フランジング段階、トリミング段階において全て同一の移送時点で行われるため、互いに異なる目標を達成するのは容易でない。
【0117】
ここで、本発明者らは鋭意検討した結果、各段階において上述した相反される要求事項を満たすためには、加熱段階、切り欠き段階、及びブランキング段階では、プログレッシブ方式を用いると有利な点が多いという側面と、成形段階、ピアシング段階、フランジング段階、及びトリミング段階では、トランスファー方式を用いると、金型との接触をより長く制御することができるという側面をさらに発見した。
【0118】
本発明の一側面によると、上記加熱段階、切り欠き段階、ブランキング段階は、プログレッシブ方式で実施され、成形段階、ピアシング段階、フランジング段階、及びトリミング段階は、トランスファー方式で実施される複合方式を適用することで、物性確保により有利であることを確認した。
【0119】
すなわち、本発明の一側面によると、上記多段工程用熱間プレス成形方法は、上記ブランキング金型を用いて上記加工装置に投入された加熱されたストリップ素材の一部を切断することで、ストリップから分離された形態のブランク素材を得るブランキング段階を含み、1つのプレスにおいて、素材の移送方向に互いに隣接する2つの金型を基準に、移送する前の段階(前段階)の金型から移送した後の段階(後段階)の金型の付近に素材を移送する際には、やっとこ状の移送手段を用いるトランスファー方式を適用することができる。
【0120】
例えば、ブランキング段階から成形段階に素材を移送する際、及び成形段階から次の段階(ピアシング段階、フランジング段階又はトリミング段階)に素材を移送する際には、やっとこ状の移送手段を用いて前段階の金型の付近に位置した素材を次の段階の金型の付近に移送することができる。
【0121】
[多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置]
本発明のまた他の一側面は、
ストリップ素材を連続的に供給する供給部;
供給されたストリップ素材を加熱する加熱部;
1つのプレスに切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型と、成形金型と、トリミング金型とを含む多数の金型が取り付けられた加工装置を含む加工部;並びに
上記加熱部で加熱されたストリップ素材を上記加工部に移送する移送部;
を含む、多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置を提供する。
【0122】
なお、上記多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置については、上述した多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法に対する説明が同様に適用されることができる。
【0123】
具体的には、本発明の例示的な多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置に対する構造を図1に示し、多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置100は、供給部1;加熱部2;移送部3;及び加工部4を含む。
【0124】
本発明の一側面によると、上記供給部1は、ストリップ素材200を連続的に供給する。このとき、供給部1は、コイル状に備えられた素材10がアンコイラーにより幅が一定したストリップ素材の形態で加熱部2に連続的に供給することができる。
【0125】
本発明の一側面によると、上記加熱部2は、上述した供給部から供給されたストリップ素材を、加熱装置21を用いて加熱することができる。このとき、上述した急速加熱方式を適用することができ、例えば、高周波加熱、通電加熱、赤外線加熱などの様々な急速加熱装置を用いることができる。
【0126】
本発明の一側面によると、上記移送部3は上記加熱部2で加熱されたストリップ素材200を加工部4に移送することができる。このとき、ストリップ素材200の移送は、保温チャンバー31内で行われることができる。一方、保温チャンバーについては、上述した説明を同様に適用することができる。
【0127】
本発明の一側面によると、上記加工部4は1つのプレス6;6a、6bに切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型61a、61b、成形金型62a、62b及びトリミング金型64a、64bが取り付けられた加工装置41を含むことができる。一方、成形方法で上述したように、上記成形金型とトリミング金型との間に、ピアシング金型及びフランジング金型のうち1つ以上の金型がさらに取り付けられることができる。
【0128】
本発明の一側面によると、上記1つのプレス6は、プレスの上部板6aに該当するプレススライド(press slide)と、プレスの下部板6bに該当するプレスボルスター(press bolster)とを含むことができる。このとき、上記プレスの下部板6bは、上記プレスの上部板6aに対応するように備えることができる。
【0129】
本発明の一側面によると、上記加工装置41は上述した各金型の温度を制御するための別途の金型の温度制御部5a、5bをさらに含むことができ、上記金型の温度制御部は、金型とプレスとの間に備えることができる。すなわち、金型の温度制御部は、各金型と接するプレス側に備えることができる。
【0130】
本発明の一側面によると、切り欠き金型及び/またはブランキング金型に加熱された金型を用いる場合には、金型の温度を制御するための別途の切り欠き金型及び/またはブランキング金型の温度制御部51a、51bを含むことができる。このとき、上記温度制御部51a、51bは、金型61a、61bとプレス6a、6bとの間に備えることができる。
【0131】
また、本発明の一側面によると、各金型とプレスとの間には、上述した方法と同様に、各金型の温度制御部を別途備えることができる(例えば、成形金型の温度制御部52a、52b、ピアシング金型またはフランジング金型の温度制御部53a、53b、トリミング金型の温度制御部54a、54b、図1の(b)参照)。
【0132】
本発明の一側面によると、上述のように、上記切り欠き上型またはブランキング上型のストリップ素材と接する側の面上に突出した構造として、スプリングによって作動するプッシュバー(push bar)11を備えることができる(図14参照)。一方、プッシュバーについては、上述した説明を同様に適用することができる。
【0133】
本発明の一側面によると、上述したように、プレス下部板(すなわち、プレスボルスター)上の金型が備えられる側の面上にシリンダ状の素材位置制御部600を備えることができる。上記素材位置制御部600については、上述した説明を同様に適用することができる。
【0134】
また、本発明の一側面によると、上記加工装置は、多数の金型としてブランキング金型を含み、1つのプレスにおいて素材の移送方向に互いに隣接する2つの金型を基準として、前段階の金型から後段階の金型の付近に素材を移送するやっとこ状の移送手段をさらに含むことができる。このとき、やっとこ状の移送手段は、トランスファー方式を適用した例を示したものとして、上述した説明を同様に適用することができる。
【0135】
また、本発明の一側面による多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置は、上述した成形部材の製造方法に対する内容を同様に適用することができるため、一例として上述した関係式1から計算された最小工程数以上の多段工程を行うことができる加工装置を用いることができる。例えば、上述した加工装置において、1つのプレスに取り付けられた多数の金型の個数は、上述した関係式1から計算される最小工程数以上であることができる。あるいは、加工装置に投入される素材の厚さ(関係式4及び5のtに該当)情報を活用して、上述した関係式4及び5を満たす加工装置を用いることができる。
【0136】
[熱間プレス成形部材]
本発明のまた他の一側面は、
上述した多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法によって製造された熱間プレス成形部材として、
アンダーカット形状を含み、引張強度が1300MPa以上である熱間プレス成形部材を提供する。
【0137】
本発明の一側面によると、上記アンダーカット形状とは、当技術分野で用いられる用語と同様の意味を有する。したがって、上記アンダーカット形状としては、当技術分野で通常的に解釈される様々な形状を含むことができる。例えば、熱間プレス成形部材の成形形状として、側面部に凸部や凹部を含むか、側面部にバーリング部などが形成されており、金型の垂直移動だけでは成形品を成形するか、取り出せない形状を含むことができる。
【0138】
本発明の非制限的な一例として、熱間プレス成形部材の様々な形態を図18に示した。本発明の一側面による熱間プレス成形部材は、第1面方向Sを有する平面部A、及び上記第1面方向と相違する第2面方向Pを有する側面部Bを含むことができる。このとき、上記熱間プレス成形部材は、1つ以上の平面部を有するか、及び/または1つ以上の側面部を有することもできる。一方、上記熱間プレス成形部材は、いずれかの平面部Aといずれかの側面部Bが連結されることができ、上述した平面部Aと側面部Bは互いに相違した面の方向を有するため、平面部Aと側面部Bが連結されることで屈曲部を備えることができる。
【0139】
例えば、図18のように帽子形状を有する場合には、1つの平面部の両端にそれぞれ第1側面部及び第2側面部が連結されることができる(すなわち、上記1つの平面部の両端のいずれか1つの端部に第1側面部が連結され、他の1つの端部に第2側面部が連結されることができる)。また、上記第1側面部の上記平面部と連結される側以外の端部に追加の第1平面部が連結され、上記第2側面部の上記平面部と連結される側以外の端部に追加の第2平面部が連結されることができる(但し、これに限定されるものではなく、追加の平面部及び/または側面部をさらに含むこともできる)。したがって、本発明の非制限的な一例として、熱間プレス成形部材は、図18のように、3つの平面部Aと2つの側面部Bから構成されることができる。
【0140】
一方、本発明の非制限的なアンダーカット形状の例としては、図18の(b)の成形部材の側面図に示したように、いずれかの平面部Aの第1面方向Sといずれかの側面部Bの第2面方向Pがなす狭い側の角度Dが90°以内である部位を含む場合がある。
【0141】
または、本発明のさらに他の非制限的なアンダーカット形状の例として、図18の(a)の成形部材の斜視図に示したように、いずれかの平面部A及びいずれかの側面部Bのうち1つ以上に追加の成形部位C(例えば、バーリング部などを含む)を含むことができる。このとき、上記成形部材は、いずれかの平面部Aといずれかの側面部Bが連結されて形成された屈曲部を含むことができる。したがって、上記成形部位Cは、上記側面部の第2面方向の面上に備えることもできる。
【0142】
本発明の一側面によると、上記アンダーカット形状は、上述した成形段階が2段階以上の多段工程で行われる場合であって、いずれかの成形段階における素材に対する成形方向と、また他の成形段階における素材に対する成形方向が互いに相違した製造方法によって製造されることができる。具体的には、アンダーカット形状とは、互いに成形方向が相違する2以上の部位を含むことを意味することができ、このとき、成形方向とは上述した説明を同様に適用することができる。
【0143】
例えば、上述したように、1次成形段階でバーリング部を形成した後、2次成形段階で曲げ加工を行う場合、1次成形段階と2次成形段階での成形方向が互いに相違するため、成形段階が単一工程で行われる場合には、形成できないアンダーカット形状を形成することができる。
【0144】
または、他の例として、1次成形段階で平面部及び側面部を含むように素材を加工した後、2次成形段階で上記側面部の面に垂直な方向に素材に圧力を加えて平面部と側面部がなす角度が90°以内となるアンダーカット形状が形成されることもできる。
【0145】
一方、本発明の一側面によると、上記熱間成形部材は、アンダーカット形状を含むとしても全体の引張強度が1,300MPa以上であることができ、その上限は強度特性が高いほど特性に優れるため、特に限定しないことができる。但し、非制限的な一例として、その上限は2,000MPaであることができる。
【発明の実施のための形態】
【0146】
(実施例)
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示して、より詳細に説明するためのものにすぎず、本発明の権利範囲を限定するためのものではない点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項と、それから合理的に類推される事項によって決定されるものであるためである。
【0147】
(実験例1)
幅が一定したストリップ素材と、幅が一定しないブランク素材をそれぞれ用意し、各素材について50℃/sの加熱速度で通電加熱を行った。このとき、素材としては重量%で、C:0.22%、Si:0.3%、Mn:1.2%、Cr:0.2%、Al:0.03%、P:0.01%、S:0.001%、N:0.003%、B:0.003%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含む組成を有する素地鋼板に対してめっき浴Al-Si9%-Fe3%に浸漬して形成されためっき鋼板を合金化して、めっき層表面部(めっき層表面から2μm以内)でのFe含有量が30重量%である合金化めっき鋼板を用いた。
【0148】
上記幅が一定したストリップ素材に対する通電加熱時の温度分布結果を実施例1として図2の(a)に示し、上記幅が一定しない素材に対する通電加熱時の温度分布結果を比較例1として図2の(b)に示した。
【0149】
上記図2の温度分布結果を比較することで分かるように、比較例1では、図2の(b)のように素材の幅が狭い領域と広い領域で図2の(a)に比べてより多い温度差が発生した。したがって、図2の(a)の幅が一定したストリップ素材を用いた実施例1の場合、幅が一定しないブランクを用いた比較例1に比べて、急速加熱を適用してより均一な加熱を容易に行うことができることが確認された。
【0150】
(実験例2)
厚さ1.4mmの用意されたストリップ素材に対して、加熱装置の有効長さが2mであり、サイクルタイムが4秒である通電加熱の方式を用いて50℃/sの加熱速度で920℃まで急速加熱した。このとき、ストリップ素材は、上記実験例1で用いられた合金化めっき鋼板を同様に用いた。次いで、加熱されたストリップ素材を900℃の加熱チャンバーに通過させて加工装置に移送した。移送されたストリップ素材に対して、図3の(a)のクランクモーション方式のプレス運動を用いて15SPMで作業した。初期温度が25℃である冷たい状態の切り欠き金型を用いて切り欠きした場合を実施例2とし、初期温度が500℃である加熱された状態の切り欠き金型を用いて切り欠きした場合を実施例3とした。実施例2及び3について、切り欠き段階において経時による素材の温度変化グラフを下記図4に示した。
【0151】
実施例2の場合、冷たい状態の切り欠き金型を用いることで、切り欠き上型が下降して接触したときから素材の冷却が非常に速く行われた。一方、実施例3の場合、初期金型の温度が50℃以上である加熱された切り欠き金型を用いることで、切り欠き上型が下降して素材と接触する際に過度の冷却が抑制されることができた。すなわち、実施例3は、実施例2に比べて過度の冷却を抑制することで、切り欠き段階の終了後に素材の温度を700℃以上に制御することができた。これにより、切り欠き段階を経た素材の伸び率が50%以上であり、後続工程で成形工程を行うことができる程度のレベルで確保することができ、後続工程での成形性により優れることが確認できた。
【0152】
(実験例3)
厚さ1mmであるストリップ素材を用い、初期切り欠き金型の温度を下記表1のように変更した以外には、上述した実験例2と同様の方法でストリップ素材を加工した。このとき、切り欠き段階において切り欠き金型の素材との接触が終わる時点を基準として素材の表面温度を測定し、表1に示した。
【0153】
一方、切り欠き金型の温度による追加成形可能有無の効果を確認するために、切り欠き段階後に得られる素材の伸び率を測定し、下記基準で追加成形可能有無を評価した。
×:伸び率50%未満
○:伸び率50%以上
【0154】
このとき、比較例2では、ストリップ素材ではなく、ブランク自体を急速加熱したとき、素材の表面温度を測定して下記表1に示し、追加成形可能有無は上述した方法と同様に測定した。
【0155】
また、素材に対する温度の均一性の有無を上述した実験例1と同様の方法で測定し、下記の基準で評価した。
×:素材から発生された温度差が50℃以上の場合
○:素材から発生された温度差が50℃未満の場合
【0156】
【表1】
【0157】
上記表1のように、比較例2はブランク自体を加熱することで、高い素材の表面温度は確保したが、ブランキング素材の幅が一定しない形状による不均一な温度分布によりブランキング段階後の素材の温度が低すぎる部分が発生して、さらなる成形が不可能なレベルとなった。
【0158】
一方、ストリップ素材を急速加熱した実施例4~11の場合、上記比較例2に比べて素材の温度の均一性により優れることが確認できた。
【0159】
一方、切り欠き金型の初期温度が400℃以上である実施例8~11は、切り欠き金型の初期温度が400℃未満である実施例4~7に比べて、切り欠き後の素材の温度が高くて、目的とするレベルの伸び率を確保することができ、これによりさらなる成形が可能であった。
【0160】
(実験例4)
図3の(b)のリンク(link)方式のプレス運動を用いて作業し、切り欠き段階で切断工程でのみ切り欠き上型及び切り欠き下型がストリップ素材と接触するように、切り欠き上型のストリップ素材と接する側の面上にプッシュバーを備えてスプリングによって作動するように制御した以外には、実験例2と同様の方法でストリップ素材を切り欠きした。このとき、切り欠き金型の初期温度が25℃である場合を実施例12とし、切り欠き金型の初期温度が500℃である場合を実施例13として、切り欠き段階で経時による素材の温度変化グラフを図5に示した。
【0161】
一方、上述した図4図5の比較により、実施例12及び13は、実施例2及び3に比べて、切り欠き上型との接触時間が減少するにつれて素材の冷却が顕著に減少することを確認した。このように、プレスの下降及び上昇時に、切り欠き上型がストリップ素材と接触していない状態で下降及び上昇し、切断工程でのみ切り欠き上/下型とストリップ素材を接触させることで、切り欠き段階後の素材の表面温度をより高く制御することができた。これにより、50%以上である素材の高い伸び率を確保することができることを確認し、後続工程においてより優れる成形性が確認された。
【0162】
(実験例5)
厚さ1.4mmの用意されたストリップ素材として、上述の実験例1で用いられたものと同一の組成を有する鋼板を通電加熱方式を用いて50℃/sの加熱速度で920℃まで急速加熱した。次いで、加熱されたストリップ素材を900℃の保温チャンバー内で加工装置に移送した。移送されたストリップ素材について、下記表2に記載されたモーション方式と1ストローク内の下死点の付近での維持割合を満たすプレス運動を用いて15SPMで作業し、HAT形状部品の切り欠き工程、成形工程、ピアシング工程、及びトリミング工程を行った。このとき、上記切り欠き工程では、切り欠き金型の初期温度が下記表2を満たすものを用い、プッシュバーを用いて切断工程でのみ切り欠き上型及び切り欠き下型がストリップ素材と接触するように制御した。
【0163】
下記表2の実験条件を満たす実施例14~16について、成形性、マルテンサイト(Ms)相の確保有無及び強度特性を評価して下記表2に示した。
【0164】
このとき、成形性は上述した実験例3と同一基準で評価し、製品の強度特性は素材の相変態を考慮した成形及び冷却解析方法を基準として、最終製品からマルテンサイト相の分率が99%以上確保されることで、引張強度1300MPa以上である場合を「○」で示し、最終製品で確保されたマルテンサイト相の分率が90%以下である場合を「×」で示した。
【0165】
【表2】
【0166】
上記表2の実施例14~16について、多段工程中の経時による素材の温度変化をそれぞれ図6~8に示した。このとき、上記素材の温度変化は、最終部品において図6~8の丸で表示された部分となる地点を基準として、表面での温度変化を示した。
【0167】
従来のブランク素材を急速加熱する方式を適用したことを除いては、実施例14~16と同様の条件で多段工程を行った比較例3の場合、ブランク素材の幅が一定しない形状による不均一な温度分布によってブランキング段階後の素材の温度が低すぎる部分が形成されて、さらなる成形が不可能なレベルとなった。
【0168】
一方、実施例14の場合、比較例3に比べて成形性により優れることが確認できた。但し、金型との接触時間が多少短くて、図6から分かるように、冷却速度が低くて、99%以上の十分なマルテンサイトは確保されなかった。
【0169】
一方、実施例15の場合、図7から分かるように、切り欠き段階に該当する0~4秒区間で温度の下降が多少減り、実施例14に比べて成形性に優れる。但し、金型と成形品との接触時間が多少短くて、99%以上の十分なマルテンサイトは確保されなかった。
【0170】
また、実施例16の場合、図8から分かるように、切り欠き段階での温度降下が少なくて成形性に優れるだけでなく、製品の強度特性にもより優れる。
【0171】
具体的に、実施例16は、実施例14及び15に比べて、プレス下死点で金型の上型と下型がクロージングした状態で留まる維持時間の割合が高くて、全体工程において素材の速い冷却速度を確保することができた。したがって、総16秒の多段工程が行われた後に、素材の温度がMs温度である400℃以下に確保され、臨界冷却速度を確保することができ、これによって多段工程後にマルテンサイトの相を十分に確保することで、所望の所定強度特性を有する製品が得られた。
【0172】
(実験例6)
上記実験例2の方法で製造された切り欠きされた素材を製造する際に、図9の(a)のように切り欠き段階を単一工程で行った場合を実施例17とし、このときの厚さ減少率を図9の(b)に示した。同様に、図10の(a)のように切り欠き段階を2段階工程に分けて行った場合を実施例18とし、このときの厚さ減少率を図10の(b)に示した。
【0173】
実施例18の場合、切り欠き段階を2段階に分けて行うことで、切り欠き段階を単一工程で行う実施例17に比べて、最終部品において厚さ減少率がより減少することを確認し、これによりクラック発生防止の効果により優れる。
【0174】
(実験例7)
上述の実験例2と同一の組成を有する素材のいくつかの厚さについて、プレス運動速度SPMとスライドが一工程内の下死点の付近で留まる維持時間割合、切り欠きを除いた成形段階からの最小要求工程数の変動に応じて取り出される素材がMs温度以下に確保されるか否か、安定したマルテンサイト相の確保有無、及び製品の物性に対した評価結果を下記表3に示した。
【0175】
このとき、成形性は上述した実験例2と同一の基準で評価し、上記安定したマルテンサイト相の確保有無は、上述した実験例5と同一の基準で、マルテンサイト相が99%以上確保された場合を「OK」とし、90%以下確保された場合を「NOK」とした。なお、製品強度の評価は上述した「OK」に該当され、引張強度が1300MPa以上の場合を「○」とし、それ以外の場合を「×」とした。
【0176】
【表3】
【0177】
上記表3に示したように、従来のブランク素材を急速加熱する方式を適用した比較例4の場合、加熱段階で発生された素材の温度不均一により、実施例20から分かるように物性確保ができる条件にも関わらず、加熱段階で発生された素材の温度不均一によって成形性が良好でなく、最終製品の物性が確保されなかった。
【0178】
一方、実施例19、21~23、26、29、32及び33は、比較例4に比べて成形性には優れているが、上述した関係式4及び5による素材厚さから求められる最小f値よりも小さくて、他の相が生じてしまい物性が確保できなかった。また、実施例25、28及び34は、上述した関係式4及び5による素材厚さから求められる最小f値は満たすが、関係式1から計算される最小工程数(N)よりも小さかった。これにより、取り出す際にMs温度未満に到達できず、Ms以上の温度を有する条件により取り出し後の空冷工程でマルテンサイト以外の他の相が生じる余地があった。したがって、上述した関係式4及び5を満たさないか、関係式1を満たさない場合には、冷却工程を追加するなどの方法で最小要求工程(N)より多い工程を実施した後、製品を取り出す方案で解決する必要があった。
【0179】
一方、実施例20、24、27、30、31、35及び36は、上述した関係式4及び5による素材厚さから求められる最小f値を満たし、また上述した関係式1から計算される最小工程数(N)以上の多段工程を行った場合である。これにより、多段工程の取り出し際にMs温度以下を確保するとともに、マルテンサイト以外の相が生成されず、十分なマルテンサイト相を確保した製品が得られ、最終製品の物性が確保された。
【0180】
(実験例8)
実施例37及び38において、切り欠き段階の代わりにストリップから分離された形態のブランク素材を製造するブランキング段階を含むことを除いては、上述した実験例2と同様の方法でブランキング段階を実施し、次いで成形、ピアシング、及びトリミング段階を行った。このとき、素材の移送方向に隣接する2つの金型間の移送時には、やっとこ状の移送手段を用いた。
【0181】
実施例37の場合、初期温度が25℃である冷たい状態のブランキング金型を用いることで素材の冷却が非常に速く進行したのに対し、初期温度が500℃である実施例38の場合、加熱されたブランキング金型を用いることで、ブランキング上型が下降して素材と接触したとき、過度の冷却が抑制された。
【0182】
すなわち、実施例38は、実施例37に比べて過度の冷却を抑制することで、ブランキング段階の終了後にブランク素材の温度が700℃以上であるとともに、伸び率が50%以上である素材を確保することができ、ブランキング段階後の後続工程においてより優れる成形性が確認できた。
【符号の説明】
【0183】
100 多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置
1 供給部
10 コイル状に備えられた素材
11 プッシュバー
2 加熱部
21 ストリップ素材の加熱装置
3 移送部
31 保温チャンバー
4 加工部
41 加工装置
5a、5b 金型の温度制御部
50 設計されたピッチ量
X ストリップ素材の移送方向
51a、51b 切り欠き金型またはブランキング金型の温度制御部
52a、52b 成形金型の温度制御部
53a、53b ピアシング金型またはフランジング金型の温度制御部
54a、54b トリミング金型の温度制御部
6 プレス
6a プレス上部板(プレススライド)
6b プレス下部板(プレスボルスター)
61a、61b 切り欠き金型またはブランキング金型
62a、62b 成形金型
63a、63b ピアシング金型またはフランジング金型
64a、64b トリミング金型
110a ストリップ素材の移送高さレベル
110b プレススライドの下死点の付近
120a 素材の移送に干渉しない地点
120b プレス下死点の付近
200 素材
210 切り欠きされた素材
220 成形された素材
230 ピアシングされた素材
240 トリミングされた素材
250 取り出された最終製品
300 ウェブ部
400 不要な周縁部
600 素材位置制御部
A 平面部
B 側面部
C 成形部位(バーリング部など)
S 第1面方向
P 第2面方向
D 第1面方向と第2面方向がなす狭い側の角度
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12(a)】
図12(b)】
図13
図14
図15
図16
図17
図18(a)】
図18(b)】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリップ素材を加熱する加熱段階;
1つのプレスに切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型と、成形金型と、トリミング金型とを含む多数の金型が取り付けられた加工装置であって、加熱されたストリップ素材を移送する移送段階;
前記切り欠き金型を用いて素材の一部を切断することで、ストリップにウェブ部に連結された形態の切り欠きされた素材を得る切り欠き段階、及び前記ブランキング金型を用いて素材の一部を切断することで、ストリップから分離された形態のブランク素材を得るブランキング段階のうち1つ以上の段階;
前記切り欠き段階及び前記ブランキング段階のうち1つ以上の段階を経た素材を移送して前記成形金型の付近に位置させた後、前記成形金型を用いて前記素材を成形する成形段階;並びに
前記トリミング金型を用いて最終製品形状から不要な素材の周縁部を除去するトリミング段階;を含む、多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項2】
前記移送段階は、加熱されたストリップ素材が保温チャンバー内で行われ、前記保温チャンバーに供給されたストリップ素材の表面温度(Ts)を基準として、前記保温チャンバーはTs-200℃以上Ts+50℃以下の温度範囲内に維持される、請求項1に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項3】
前記1つのプレスにおいて、素材の移送方向に互いに隣接する2つの金型間に設計されたピッチ量の分だけ間隔を置いて各金型が配置され、
プレス運動によって1ストロークが行われる度に、前記設計されたピッチ量の分だけ素材の移送方向に素材が移送される、請求項1又は2に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項4】
前記切り欠き金型の初期温度及び前記ブランキング金型の初期温度は400℃以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項5】
前記切り欠き段階及びブランキング段階のうち1つ以上の段階;成形段階;並びにトリミング段階のうち1つ以上は、2段階以上に分けて多段工程で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項6】
前記切り欠き段階及びブランキング段階において、加工装置に投入されたストリップ素材は、ストリップ素材の移送高さレベルから金型の上型と接触していない状態でプレス下死点まで下降しながら、切断工程でのみストリップ素材が金型の上型面及び下型面と接触するように制御される、請求項1から5のいずれか一項に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項7】
前記加工装置のプレス運動は、1ストローク内の下死点の付近での維持時間の割合が4~30%であり、
前記下死点の付近での維持時間の割合は、プレス下死点から上部方向に1mmである地点までプレスが留まる時間の割合である、請求項1から6のいずれか一項に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項8】
前記成形段階と前記トリミング段階との間に、成形された素材から不要な穴部を除去するピアシング段階及び成形された素材でフランジ部を形成するフランジング段階のうち1つ以上の段階をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項9】
下記関係式1によって求められる最小工程数以上で多段工程を行う、請求項1から8のいずれか一項に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
[関係式1]
N=ROUNDUP{T/[(60/SPM)×(f/100)]}
(前記関係式1において、Nは、切り欠き工程及びブランキング工程を除いた成形段階から最小必要工程数を示し、
SPMはプレスの毎分ストローク数(stroke per minute;SPM)を示し、
fは、1ストローク内の下死点の付近の維持時間割合(%)を示し、
Tは、0.8≦t<1.5の場合に下記関係式2から計算される値を示し、1.5≦tの場合に下記関係式3から計算される値を示し、
ROUNDUPは、{ }内の計算値に対して小数点以下の数を切り上げた値を示す。)
[関係式2]
T=t
[関係式3]
T=5×t-6
(前記関係式2及び3において、tは素材の厚さであり、単位はmmである。)
【請求項10】
前記fは、0.8≦t<1.5を満たす場合に下記関係式4を満たし、1.5≦tを満たす場合に下記関係式5を満たす、請求項9に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
[関係式4]
0.8×t+2.6≦f
[関係式5]
4.4×t-2.8≦f
(前記関係式4及び5において、tは素材の厚さであり、単位はmmである。)
【請求項11】
前記加工装置に素材が投入されると、プレススライドがプレス下死点まで下降して素材を加工した後、プレススライドの上昇中に素材はプレス下死点の付近で留まってから、プレススライドの位置情報を活用して、プレススライドが素材の移送に干渉しない地点まで到達すると、プレス下死点の付近に位置した素材を上昇させる、請求項1から10のいずれか一項に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項12】
前記ブランキング金型を用いて前記加工装置に投入された加熱されたストリップ素材の一部を切断することで、ストリップから分離された形態のブランク素材を得るブランキング段階を含み、
前記1つのプレスにおいて素材の移送方向に互いに隣接する2つの金型を基準に、前の段階の金型から次の段階の金型の付近に素材を移送する際には、やっとこ状の移送手段を用いる、請求項1から11のいずれか一項に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法。
【請求項13】
ストリップ素材を連続的に供給する供給部;
供給されたストリップ素材を加熱する加熱部;
1つのプレスに切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型と、成形金型と、トリミング金型とを含む多数の金型が取り付けられた加工装置を含む加工部;並びに
前記加熱部で加熱されたストリップ素材を前記加工部に移送する移送部;を含む、多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置。
【請求項14】
前記加工装置は、切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型の初期温度を400℃以上に制御する温度制御部をさらに含み、
前記温度制御部は、切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型とプレスとの間に備えられる、請求項13に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置。
【請求項15】
前記切り欠き金型及びブランキング金型のうち1つ以上の金型の上型に対するストリップ素材と接する側の面上に突出した構造物であって、スプリングによって作動するプッシュバーを備える、請求項13又は14に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置。
【請求項16】
前記1つのプレスは、プレススライド及びプレスボルスターを含み、
前記プレスボルスター上の金型が備えられる側の面上にシリンダ状の素材位置制御部が備えられる、請求項13から15のいずれか一項に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造装置。
【請求項17】
請求項1から12のいずれか一項に記載の多段工程用熱間プレス成形部材の製造方法によって製造された熱間プレス成形部材であって、
アンダーカット形状を含み、引張強度が1300MPa以上である、熱間プレス成形部材。
【国際調査報告】