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特表2023-535421カオス物理真性乱数発生器および関連する方法
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  • 特表-カオス物理真性乱数発生器および関連する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】カオス物理真性乱数発生器および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 7/58 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
G06F7/58 680
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504398
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2021070299
(87)【国際公開番号】W WO2022018099
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】FR2007766
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】323002277
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】509265302
【氏名又は名称】アンスティテュ・ポリテクニック・ドゥ・グルノーブル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルシアル・ジョゼフ・デフール
(72)【発明者】
【氏名】スカンダール・バスルール
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ルネ・フェスケ
(57)【要約】
本発明は、特に、カオス物理真性乱数発生器および関連する生成方法に関する。発生器1は、共振器2と、共振器から発せられたアナログ信号102をデジタル信号104に変換するように構成されたアナログ-デジタルコンバータ12と、デジタル信号104に基づいて真性乱数のシーケンスを生成するように構成されたデジタル処理デバイス13と、共振器を励起するためのデバイス11とを備え、デバイスが、i. 決定された励起信号を用いて共振器を励起して共振器を動的多安定性モードに設定し、ii. 励起信号を変調し、それによって、共振物理コンポーネントがカオス挙動を有し、アナログ信号が、共振器のカオス挙動を表す、ように構成される。したがって、物理真性乱数発生器を製造するための実装の簡単さ、バルク、および/または製造コストに関する利点が実現される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振物理コンポーネント(2)用の励起システム(10)であって、
励起デバイス(11)を備え、前記励起デバイス(11)が、
決定された励起信号を用いて前記共振物理コンポーネント(2)を励起して(110)前記共振物理コンポーネント(2)を動的多安定性モードに設定し、
前記励起信号を変調し(120)、
それによって、前記共振物理コンポーネント(2)がカオス挙動を有し、前記共振物理コンポーネント(2)から発せられたアナログ信号(102)が前記共振物理コンポーネント(2)の前記カオス挙動を表す、ように構成され、前記励起システム(10)がフィードバックループを有しない、励起システム(10)。
【請求項2】
前記アナログ信号(102)に基づいて真性乱数のシーケンスの生成(150)に使用するために共振物理コンポーネント(2)を備えるマイクロ電気機械システム(1)に組み込まれるものである、請求項1に記載の励起システム(10)。
【請求項3】
前記共振物理コンポーネント(2)から発された前記アナログ信号(102)を、前記アナログ信号(102)を表すデジタル信号(104)に変換するように構成されたアナログ-デジタルコンバータ(12)と、
前記デジタル信号(104)に基づいて真性乱数のシーケンスを生成するように構成されたデジタル処理デバイス(13)と
をさらに備える、請求項1または2に記載の励起システム(10)。
【請求項4】
復調デバイス(14)をさらに備え、前記復調デバイス(14)が、
前記アナログ信号(102)を変換する(140)前に、前記励起信号の周波数fにおいて前記アナログ信号(102)を復調する(135)こと、および
前記アナログ信号(102)を変換した(140)後に、前記励起信号の周波数fにおいてデジタル信号を復調すること
のいずれか一方を実施するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の励起システム(10)。
【請求項5】
カオス物理真性乱数発生器(1)であって、
共振物理コンポーネント(2)と、
前記共振物理コンポーネント(2)から発されたアナログ信号(102)を、前記アナログ信号を表すデジタル信号(104)に変換するように構成されたアナログ-デジタルコンバータ(12)と、
前記デジタル信号(104)に基づいて真性乱数のシーケンスを生成するように構成されたデジタル処理デバイス(13)と
を備え、
前記発生器(1)が、前記共振物理コンポーネント(2)の励起デバイス(11)をさらに備え、前記励起デバイス(11)が、
決定された励起信号を用いて前記共振物理コンポーネント(2)を励起して(110)前記共振物理コンポーネント(2)を動的多安定性モードに設定し、
前記励起信号を変調し(120)、
それによって、前記共振物理コンポーネント(2)がカオス挙動を有し、変換される前記アナログ信号(102)が前記共振物理コンポーネント(2)の前記カオス挙動を表す、ように構成され、前記励起デバイス(11)がフィードバックループを有しない、発生器(1)。
【請求項6】
変換される前記アナログ信号(102)は、変調された前記励起信号(101)によって励起された前記共振物理コンポーネント(2)の振動の振幅および/または位相の変化を表す、請求項5に記載の発生器(1)。
【請求項7】
前記動的多安定性モードは、ダフィングモードと称される非線形動的双安定モードである、請求項5または6に記載の発生器(1)。
【請求項8】
前記励起信号は、ピーク電圧が0.01Vから10Vの間であり、周波数fが前記共振物理コンポーネント(2)の共振周波数f0に誤差20%以内で等しい、請求項5から7のいずれか一項に記載の発生器(1)。
【請求項9】
変調された前記励起信号(101)は、前記共振物理コンポーネント(2)の共振周波数f0の品質係数Qに対する比f0/Qよりも高い変調周波数δfを有する、請求項5から8のいずれか一項に記載の発生器(1)。
【請求項10】
前記共振物理コンポーネント(2)は、二重埋め込みマイクロ/ナノビームなどのマイクロ/ナノ共振器を備える、請求項5から9のいずれか一項に記載の発生器(1)。
【請求項11】
復調デバイス(14)をさらに備え、前記復調デバイス(14)が、
前記アナログ信号(102)を変換する(140)前に、前記励起信号の周波数fにおいて前記アナログ信号(102)を復調する(135)こと、および
前記アナログ信号(102)を変換した(140)後に、前記励起信号の周波数fにおいて前記デジタル信号を復調すること
のいずれか一方を実施するように構成される、請求項5から10のいずれか一項に記載の発生器(1)。
【請求項12】
真性乱数を生成する(100)方法であって、
決定された励起信号を用いて共振物理コンポーネント(2)を励起して(110)前記共振物理コンポーネント(2)を動的多安定性モードに設定するステップと、
前記励起信号を変調し(120)、それによって、前記共振物理コンポーネント(2)がカオス挙動を有する、ステップと
を含み、
前記励起(110)ステップおよび前記変調(120)ステップが、フィードバックループを有しない励起デバイス(11)によって実施され、前記方法が、
前記共振物理コンポーネント(2)から発せられ、前記共振物理コンポーネント(2)のカオス挙動を表すアナログ信号(102)を取得する(130)ステップと、
前記アナログ信号(102)を、取得された前記アナログ信号(102)を表すデジタル信号(104)に変換する(140)ステップと、
前記デジタル信号(104)に基づいて真性乱数のシーケンスを生成する(150)ステップと
をさらに含む方法(100)。
【請求項13】
前記励起信号は、前記共振物理コンポーネント(2)をダフィングモードと称される非線形動的双安定モードに設定するようにパラメータ化される、請求項12に記載の方法(100)。
【請求項14】
前記共振物理コンポーネント(2)の前記動的多安定性モードは、連続的で限定された周波数領域(111)に関連付けられ、前記励起信号の周波数fは、前記共振物理コンポーネント(2)を前記動的多安定性モードのサブモードに設定するように決定され、前記サブモードは、前記共振物理コンポーネント(2)の前記動的多安定性モードに関連付けられた周波数領域の最初の2分の1、場合によっては最初の3分の1に関連付けられる、請求項12または13に記載の方法(100)。
【請求項15】
前記共振物理コンポーネント(2)の前記励起(110)は、前記共振物理コンポーネント(2)の端子において、励起信号として、0.01Vから10Vの間であるピーク電圧、および前記共振物理コンポーネント(2)の共振周波数f0に誤差20%以内で等しい周波数fを印加することを含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項16】
前記動的多安定性モードである前記共振物理コンポーネント(2)のポテンシャル(112)は、2つの異なる井戸を有し、
前記励起信号の周波数(121)変調(120)は、前記動的多安定性モードである前記共振物理コンポーネント(2)の状態における前記2つのポテンシャル井戸の一方から他方への変化を生じさせ、かつ他方から一方への変化を生じさせるための決定された振幅δfを有し、ならびに/または
前記励起信号の振幅(122)変調(120)は、前記共振物理コンポーネント(2)の前記状態における前記共振物理コンポーネントの単安定モードから動的多安定性モードへの変化を生じさせ、かつ前記共振物理コンポーネントの動的多安定性モードから単安定モードへの変化を生じさせるための決定された振幅δfを有する、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項17】
前記励起信号は、前記共振物理コンポーネント(2)の共振周波数f0の品質係数Qに対する比f0/Qよりも高い変調周波数δfを用いて変調される(120)、請求項12から16のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項18】
前記アナログ信号(102)を変換する(140)前に、前記励起信号の周波数fにおいて前記アナログ信号(102)を復調する(135)ステップ、および
前記アナログ信号(102)を変換した(140)後に、前記励起信号の周波数fにおいて前記デジタル信号を復調するステップ
のいずれか一方をさらに含む、請求項12から17のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項19】
前記アナログ信号(102)は、前記共振物理コンポーネント(2)の振動の振幅および/または位相の変化を直接表す第1のアナログ信号であり、前記アナログ信号(102)を変換する(140)前の前記アナログ信号(102)の前記復調(135)は、前記第1のアナログ信号を前記励起信号と比較して、前記共振物理コンポーネント(2)の振動の振幅および/または位相の変化を間接的に表すアナログ信号として、前記第1のアナログ信号の振幅の変化および/または前記第1のアナログ信号と前記励起信号との間の位相の変化を表す第2のアナログ信号を推測することを含む、請求項18に記載の方法(100)。
【請求項20】
前記アナログ信号(102)の前記変換(140)は、前記励起信号の電圧および前記励起信号を変調する(120)ための変調周波数δfに従って選択されるサンプリング周波数またはステップにおける前記アナログ信号(102)のサンプリングを含む、請求項12から19のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項21】
前記共振物理コンポーネント(2)の振動の振幅の変化を表すアナログ信号(1021)および前記共振物理コンポーネント(2)の位相の変化を表すアナログ信号(1022)は、前記取得ステップ(130)の間に取得され、前記変換ステップ(140)は、前記2つのアナログ信号の各々をデジタル信号(1041,1042)に変換することを含む、請求項12から20のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項22】
前記アナログ信号(102)は、各値が、N個のビットにわたって符号化された一連の値(141)に変換され、真性乱数のバイナリシーケンスの生成(150)は、方形信号(1043)の形で示すことができる一連のビットを生成し、次いで、前記一連のビットを、ビットブロックのシーケンスに分割し、前記各ビットブロックに基づいて、前記シーケンスの真性乱数を生成する(150)ことを含む、請求項20または21に記載の方法(100)。
【請求項23】
前記一連のビットは、前記一連の値の各符号化済み値(141)の最低の重みを有するnビットのみに従って生成される、請求項22に記載の方法(100)。
【請求項24】
乱数の前記バイナリシーケンスの前記生成(150)は、取得された前記2つのアナログ信号(1021,1022)の各々について方形信号(1041,1042)の形で示すことのできる一連のビットを生成(154)し、次いで、生成された前記2連のビットの間で論理演算(156)を行って、分割される前記一連のビットブロック(1043)を得ることを含む、請求項22または23に記載の方法(100)。
【請求項25】
少なくとも1つのプロセッサによって実行されたときに、請求項12から24のいずれか一項に記載の方法(100)の少なくとも前記ステップを実行する命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項26】
共振物理コンポーネント(2)と、アナログ-デジタルコンバータ(12)と、デジタル処理デバイス(13)とを備えるマイクロ電気機械システム(1)であって、前記共振物理コンポーネント(2)を励起して、請求項5から11のいずれか一項に記載の発生器(1)を形成するように構成された励起デバイス(11)をさらに備える、マイクロ電気機械システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真性乱数を生成するためのデバイスおよび方法の分野に関する。より具体的には、本発明の態様のうちの2つによれば、本発明は、カオス物理真性乱数発生器およびそれに関連する生成方法に関する。たとえば、真性乱数の生成は、安全な通信を可能にする鍵を生成する現代の暗号技術に必須である。
【背景技術】
【0002】
真性乱数のシーケンスを取得するために、本質的にランダムな物理プロセスに依存することが知られている。関連する信号の振幅が低いことがあるので、信号を真性乱数のシーケンスに変換する前に増幅することが必要になる場合がある。このような、ランダムデジタルシーケンスをもたらす増幅された乱数性の発生源の探求は、依然として進行中の問題である。
【0003】
真性乱数の物理的な生成は、そのような本質的にランダムな物理プロセスに基づく。特に、
- 熱雑音[S. K. Mathew et al.,"2.4 Gbps, 7 mW All-Digital PVT-Variation Tolerant True Random Number Generator for 45 nm CMOS High-Performance Microprocessors",IEEE Journal of Solid-State Circuits,vol. 47,no. 11,2807~2821頁,2012年11月]、または
- クロックの周波数の変動[Fischer V. et al.,(2003),"True Random Number Generator Embedded in Reconfigurable Hardware. In: Kaliski B.S., Koc. K., Paar C. (eds) Cryptography Hardware and Embedded Systems - CHES 2002.",Lecture Notes in Computer Science,vol 2523,Springer, Berlin, Heidelberg]を含む様々な物理的現象を利用することが知られている。
【0004】
これらの現象は、電気回路の共振構成要素または共振器上で直接確認することができるが、他の分野に属するデバイスを構成する共振器上で直接確認することもできる。
【0005】
たとえば、特にレーザおよび光検出器を共振器として使用することによって光学構成要素のカオス挙動を利用できることが実証されている[Uchida, A., Amano, K., Inoue, M., Hirano, K., Naito, S., Someya, H., … およびYoshimura, K.,(2008),"Fast physical random bit generation with chaotic semiconductor lasers",Nature Photonics,2(12),728]。
【0006】
マイクロ/ナノ電気機械システム(M/NEMS)は共振バイアスの別の例である。マイクロ/ナノ電気機械システムの共振構成要素のうちのいくつかは、機械的特性を利用し、機械的運動を直接電気信号に変換するのを可能にする。これらの構成要素は、現代の技術において至る所に存在し、特に加速度計、ジャイロメータ、または磁力計の形でセンサーとして使用されている[Tanaka, M.,(2007),"An industrial and applied review of new MEMS devices features",Microelectronic engineering,84(5-8),1341~1344頁]。これらの共振器の様々な固有の特性のうちのいくつかは、乱数性の発生源であり、
- 熱機械雑音 [T. B. Gabrielson et al.,"Mechanical-thermal noise in micromachined acoustic and vibration sensors",IEEE Transactions on Electron Devices,vol. 40,no. 5,903~909頁,1993年5月,doi: 10.1109/16.210197]、および
- 共振器の共振周波数の1/fにおける雑音[M. Sansa et al.,Frequency fluctuations in Silicon nanoresonators,Nat. Nanotechnol. 11, 552-558,(2016)]が含まれる。
【0007】
これらの共振器の固有の非線形性に起因して、これらの共振器をカオスモードに設定することが可能である[Y. C. Wang et al.,"Chaos in MEMS, parameter estimation and its potential application",IEEE Transactions on Circuits and Systems I: Fundamental Theory and Applications,vol. 45,no. 10,1013~1020頁,1998年10月]。
【0008】
上述のように、真性乱数の物理的な発生器を作製するには、利用される共振器の固有の雑音を増幅する必要がある。電子回路の分野では、特に、共振器が最初に置かれる条件に対するカオスモードの感度を利用することによって、雑音を乱数性の発生源として増幅することが可能である[M. E. Yalcin et al.,"True random bit generation from a double-scroll attractor",IEEE Transactions on Circuits and Systems I: Regular Papers,vol. 51,no. 7,1395~1404頁,2004年7月]。
【0009】
さらに、発振デバイスがある。そのようなデバイスは、たとえば、"Generation & control of chaos in a single loop optoelectronic oscillator"という題名を有し、雑誌Optikに記載されたGhosh Diaらの論文に記載されている。これらのデバイスは、上記で紹介した共振デバイスとは比べものにならない。実際、発振デバイスは一般に、閉ループを備え、明確に定義された制約に応答し、その物理特性は共振デバイスの物理特性とは基本的に異なる。特に、発振器は、その回路が閉回路を形成する程度に「それ自体に影響を及ぼし」、一方、共振デバイスまたは共振器はフィードバックループを有しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】S. K. Mathew et al.,"2.4 Gbps, 7 mW All-Digital PVT-Variation Tolerant True Random Number Generator for 45 nm CMOS High-Performance Microprocessors",IEEE Journal of Solid-State Circuits,vol. 47,no. 11,2807~2821頁,2012年11月
【非特許文献2】Ficher V. et al.,(2003),"True Random Number Generator Embedded in Reconfigurable Hardware. In: Kaliski B.S., Koc. K., Paar C. (eds) Cryptography Hardware and Embedded Systems - CHES 2002.",Lecture Notes in Computer Science,vol 2523,Springer, Berlin, Heidelberg
【非特許文献3】Uchida, A., Amano, K., Inoue, M., Hirano, K., Naito, S., Someya, H., … およびYoshimura, K.,(2008),"Fast physical random bit generation with chaotic semiconductor lasers",Nature Photonics,2(12),728
【非特許文献4】Tanaka, M.,(2007),"An industrial and applied review of new MEMS devices features",Microelectronic engineering,84(5-8),1341~1344頁
【非特許文献5】T. B. Gabrielson et al.,"Mechanical-thermal noise in micromachined acoustic and vibration sensors",IEEE Transactions on Electron Devices,vol. 40,no. 5,903~909頁,1993年5月,doi: 10.1109/16.210197
【非特許文献6】M. Sansa et al.,Frequency fluctuations in Silicon nanoresonators,Nat. Nanotechnol. 11,552-558,(2016)
【非特許文献7】Y. C. Wang et al.,"Chaos in MEMS, parameter estimation and its potential application",IEEE Transactions on Circuits and Systems I: Fundamental Theory and Applications,vol. 45,no. 10,1013~1020頁,1998年10月
【非特許文献8】M. E. Yalcin et al.,"True random bit generation from a double-scroll attractor",IEEE Transactions on Circuits and Systems I: Regular Papers,vol. 51,no. 7,1395~1404頁,2004年7月
【非特許文献9】Ghosh Dia et al.,"Generation & control of chaos in a single loop optoelectronic oscillator",Optik
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、公知の物理真性乱数発生器の少なくとも1つの欠点を解消することである。
【0012】
より具体的には、本発明の目的は、既存のカオス物理真性乱数発生器と比較して実装の簡単さ、サイズ、および/または製造コストの点で利点をもたらすのを可能にするカオス物理真性乱数発生器を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、好ましくは追加のバルクまたは製造コストなしに多くの既存の技術、特にCMOS技術("Complementary Metal Oxide Semiconductor(相補型金属酸化膜半導体)の略語)に適合する物理真性乱数発生器を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の説明およびその添付の図面を読んだときに明らかになろう。本発明に他の利点を組み込み得ることを理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を実現するために、本発明の第1の態様によれば、共振物理コンポーネント用の励起システムであって、励起デバイスを備え、励起デバイスが、
- 決定された励起信号を用いて共振物理コンポーネントを励起して共振物理コンポーネントを少なくとも一時的に動的多安定性モードに設定し場合によっては維持し、
- 励起信号を変調し、
それによって、共振物理コンポーネントがカオス挙動を有し、共振物理コンポーネントから発せられたアナログ信号が、共振物理コンポーネントのカオス挙動を直接的または間接的に表す、ように構成されるシステムが提供される。
【0016】
さらに、励起システムはフィードバックループを有しない。
【0017】
励起信号の変調は、変調信号による位相および/または周波数および/または振幅変調を含み得ることに留意されたい。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、カオス物理真性乱数発生器であって、
- 共振物理コンポーネントと、
- 共振物理コンポーネントから発されたアナログ信号を、アナログ信号を表すデジタル信号に変換するように構成されたアナログ-デジタルコンバータと、
- 前記デジタル信号に基づいて真性乱数のシーケンスを生成するように構成されたデジタル処理デバイスとを備えるカオス物理真性乱数発生器が提供される。
【0019】
発生器は、共振物理コンポーネントを励起するためのデバイスをさらに備え、デバイスが、
- 決定された励起信号を用いて共振物理コンポーネントを励起して共振物理コンポーネントを少なくとも一時的に動的多安定性モードに設定し場合によっては維持し、
励起信号を変調するように構成される。
【0020】
励起デバイスは、フィードバックループを有しない。
【0021】
したがって、共振物理コンポーネントがカオス挙動を有し、変換されるアナログ信号が、共振物理コンポーネントのカオス挙動を直接的または間接的に表す。
【0022】
励起信号を印加することによって共振物理コンポーネントを動的多安定性モードに設定し、さらに励起信号を変調することによって、共振物理コンポーネントの挙動がカオスになることができる。次いで、共振物理コンポーネントに固有の雑音発生源が、たとえば指数関数的に増幅され、高振幅雑音が得られる。その場合、共振物理コンポーネントから発せられたアナログ信号は、共振物理コンポーネントのカオス挙動を表す。これによって、カオス挙動を使用して真性乱数のシーケンスを生成することが可能である。例外がなければ、任意のマイクロ電気機械システムが、本発明の第2の態様による発生器用の共振器として働くことができる物理コンポーネントを備えることを考慮すると、本発明の第1の態様による励起システムが、特に(フィードバックループを有する)発振デバイスに基づく発生器と比較して、実装の簡単さ、サイズ、および/またはカオス物理真性乱数発生器を製造するための製造コストの点で利点をもたらすのを可能にすることを理解されたい。本発明の第1の態様による励起システムが、場合によっては小さいサイズを用いるかまたは追加の製造コストを限定して、多数の既存の技術、特にCMOS技術に適合することをさらに理解されたい。
【0023】
本発明の第3の態様によれば、特に本明細書で紹介するカオス物理発生器を実装する真性乱数生成方法であって、
- 決定された励起信号を用いて共振物理コンポーネントを励起して共振物理コンポーネントを少なくとも一時的に動的多安定性モードに設定し場合によっては維持するステップと、
- 励起信号を変調し、それによって、共振物理コンポーネントがカオス挙動を有するステップとを含み、
励起ステップおよび変調ステップが、フィードバックループを有しない励起デバイスによって実施され、真性乱数生成方法が、
- 共振物理コンポーネントから発せられ、直接的または間接的に共振物理コンポーネントのカオス挙動を表すアナログ信号およびより具体的には電気信号を取得するステップと、
- アナログ信号を取得されたアナログ信号を表すデジタル信号に変換するステップと、
- 前記デジタル信号に基づいて真性乱数のシーケンスを生成するステップとをさらに含む真性乱数生成方法が提供される。
【0024】
本発明の第4の態様によれば、少なくとも1つのプロセッサによって実行されたときに、本明細書で紹介するような少なくとも真性乱数生成方法のステップを実行する命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0025】
本発明の第5の態様によれば、共振物理コンポーネントと、アナログ-デジタルコンバータと、デジタル処理デバイスとを備え、共振物理コンポーネントを励起して、本明細書で紹介するようなカオス物理真性乱数発生器を形成するように構成された励起デバイスをさらに備えるマイクロ電気機械システムが提供される。
【0026】
場合によっては、本発明の第1の態様による励起システムは、以下の特徴のうちの少なくともいずれか1つを有してもよい。
【0027】
たとえば、励起システムは、前記アナログ信号に基づいて真性乱数のシーケンスの生成に使用するために共振物理コンポーネントを備えるマイクロ電気機械システムに組み込まれるようになっている。
【0028】
たとえば、励起システムは、
- 共振物理コンポーネントから発されたアナログ信号をアナログ信号を表すデジタル信号に変換するように構成されたアナログ-デジタルコンバータと、
- 前記デジタル信号に基づいて真性乱数のシーケンスを生成するように構成されたデジタル処理デバイスとをさらに備える。
【0029】
たとえば、励起システムは、
- 復調デバイスをさらに備え、復調デバイスが、
i. アナログ信号を変換する前に、励起信号の周波数fにおいてアナログ信号を復調するステップ、および
ii. アナログ信号を変換した後に、励起信号の周波数fにおいてデジタル信号を復調するステップのいずれか一方を実施するように構成される。
【0030】
場合によっては、本発明の第2の態様によるカオス物理発生器は、以下の特徴のうちの少なくともいずれか1つをさらに有してもよい。
【0031】
たとえば、変換されるアナログ信号は、変調された励起信号によって励起された共振物理コンポーネントの振動の振幅および/または位相の変化を表す。
【0032】
好ましくは、発生器は、共振物理コンポーネントを座屈させるように構成された任意のタイプの励起デバイスを有しない。
【0033】
たとえば、前記動的多安定性モードは、ダフィングモードと称される非線形動的双安定モードである。
【0034】
たとえば、前記励起信号は、ピーク電圧が0.01Vから10Vの間であり、好ましくは0.1Vから5Vの間であり、周波数fが共振物理コンポーネントの共振周波数f0に誤差20%以内、好ましくは誤差10%以内で等しい。
【0035】
たとえば、前記変調された励起信号は、変調周波数δfが、好ましくは共振物理コンポーネントの共振周波数f0の品質係数Qに対する比f0/Qよりも高く、場合によっては実質的に等しい。
【0036】
たとえば、共振物理コンポーネントは、二重埋め込みマイクロ/ナノビームなどのマイクロ/ナノ共振器を備える。
【0037】
たとえば、発生器は、
復調デバイスをさらに備え、復調デバイスが、
アナログ信号を変換する前に、励起信号の周波数fにおいてアナログ信号を復調するステップ、および
アナログ信号を変換した後に、励起信号の周波数fにおいてデジタル信号を復調するステップのいずれか一方を実施するように構成される。
【0038】
場合によっては、本発明の第3の態様による生成方法は、以下の特徴のうちの少なくともいずれか1つをさらに有してもよい。
【0039】
たとえば、方法は、アナログ信号を取得するステップの後、アナログ信号を変換するステップの前に、取得されたアナログ信号を増幅するステップをさらに含み得る。
【0040】
たとえば、励起信号は、共振物理コンポーネントをダフィングモードと称される非線形動的双安定モードに設定し、場合によっては少なくとも一時的に維持するようにパラメータ化される。
【0041】
たとえば、共振物理コンポーネントの動的多安定性モードは、連続的で限定された周波数領域に関連付けられ、励起信号の周波数fは、共振物理コンポーネントを動的多安定性モードのサブモードに設定するように決定され、前記サブモードは、共振物理コンポーネントの動的多安定性モードに関連付けられた周波数領域の最初の2分の1、場合によっては最初の3分の1に関連付けられる。
【0042】
たとえば、共振物理コンポーネントの励起は、共振物理コンポーネントの端子において、励起信号として、0.01Vから10Vの間であり、好ましくは0.1Vから5Vの間であるピーク電圧、および共振物理コンポーネントの共振周波数f0に誤差20%以内、好ましくは誤差10%以内で等しい周波数fを印加することを含む。
【0043】
たとえば、動的多安定性モードである共振物理コンポーネントのポテンシャルは、2つの異なる井戸を有する。
- 励起信号の周波数変調は、動的多安定性モードである共振物理コンポーネントの状態における2つのポテンシャル井戸の一方から他方への変化を生じさせ、かつ他方から一方への変化を生じさせるための決定された振幅δfを有し、ならびに/または
- 励起信号の振幅変調は、共振物理コンポーネントの状態における共振物理コンポーネントの単安定モードから動的多安定性モードへの変化を生じさせ、かつ共振物理コンポーネントの動的多安定性モードから単安定モードへの変化を生じさせるための決定された振幅δfを有する。
【0044】
たとえば、励起信号は、好ましくは共振物理コンポーネントの共振周波数f0の品質係数Qに対する比f0/Qよりも高く、場合によっては実質的に等しい変調周波数δfを用いて変調される。
【0045】
たとえば、この方法は、
- アナログ信号を変換する前に、励起信号の周波数fにおいてアナログ信号を復調するステップ、および
- アナログ信号を変換した後に、励起信号の周波数fにおいてデジタル信号を復調するステップのいずれか一方をさらに含む。
【0046】
たとえば、アナログ信号は、共振物理コンポーネントの振動の振幅および/または位相の変化を直接表す第1のアナログ信号であり、アナログ信号を変換する前のアナログ信号の復調は、第1のアナログ信号を励起信号と比較して、共振物理コンポーネントの振動の振幅および/または位相の変化を間接的に表すアナログ信号として、第1のアナログ信号の振幅の変化および/または第1のアナログ信号と励起信号との間の位相の変化を表す第2のアナログ信号を推測することを含む。
【0047】
たとえば、アナログ信号の変換は、励起信号の電圧および励起信号を変調するための変調周波数δfに従って選択されるサンプリング周波数またはステップにおけるアナログ信号のサンプリングを含む。好ましくは、サンプリング周波数は、変調周波数δfよりも少なくとも10倍高い。
【0048】
たとえば、共振物理コンポーネントの振動の振幅の変化を表すアナログ信号および共振物理コンポーネントの位相の変化を表すアナログ信号は、取得ステップの間に取得され、変換ステップは、この2つのアナログ信号の各々をデジタル信号に変換することを含む。
【0049】
たとえば、アナログ信号は、各値が、たとえば、厳密に3よりも大きく、一般に8に等しいN個のビットにわたって符号化された一連の値に変換され、真性乱数のバイナリシーケンスの生成は、方形信号の形で示すことができる一連のビットを生成し、次いでこの一連のビットをビットブロックのシーケンスに分割し、各ビットブロックに基づいて、シーケンスの真性乱数を生成することを含む。
【0050】
たとえば、前記一連のビットは、一連の値の各符号化済み値の最低の重みを有するnビットのみに従って生成される。
【0051】
たとえば、乱数のバイナリシーケンスの生成は、取得された2つのアナログ信号の各々について方形信号の形で示すことのできる一連のビットを生成し、次いで、たとえば、生成された2連のビットの間で「排他的OR」演算子をによる論理演算を行って、分割される一連のビットブロックを得ることを含む。
【0052】
所与の値に「実質的に等しい」パラメータによって、このパラメータが、所与の値から誤差10%、場合によっては誤差5%でこの値に等しいことを理解されたい。
【0053】
本発明のねらい、目的、特徴、および利点は、本発明の一実施形態の詳細な説明を読んだときによりよく理解されよう。一実施形態は、以下の添付の図面によって図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の第2および第5の態様の実施形態の電子回路図であり、本発明の第1の態様の実施形態の電子回路図を含む図である。
図2】ダフィングモードと称される動的双安定モード(上部曲線)における単安定モード(下部曲線)からの切り替えを表すグラフである。
図3A】共振物理コンポーネントに印加される励起周波数の関数としての共振物理コンポーネントの振動の振幅のグラフによっていわゆるダフィング動的双安定モードを表す図である。矢印は、ヒステリシス内の高振幅から低振幅への切り替えを表す概略的な案内を示す。
図3B】共振物理コンポーネントの振動の振幅に従った共振物理コンポーネントの2井戸ポテンシャルを表す図である。矢印は、ヒステリシス内の高振幅から低振幅への切り替えを表す概略的な案内を示す。
図4】共振物理コンポーネントが変調された励起信号によって励起されたときの共振物理コンポーネントの考えられる挙動を示すグラフである。
図5】考えられる共振物理コンポーネントの振幅および位相を表す2つのアナログ信号の各々を、真性乱数のシーケンスを生成する際の基準となるデジタル信号に変換するステップの実施形態を示すグラフである。
図6】本発明の第3の態様による生成方法の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図面は、一例として与えられており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。図面は、本発明の理解を容易にすることを意図した概略図を構成し、必ずしも実際の適用例の正確な縮尺であるとは限らない。特に、図1図4、および図5は必ずしも実際のものを表しているとは限らない。
【0056】
真性乱数の生成は、現代の暗号技術に必須である。特に、真性乱数を生成すると、通信の安全を確保する鍵を生成することが可能になる。真性乱数のシーケンスを取得するために、本発明は、本質的にランダムな物理プロセスに依存することを提案する。以下に、本発明の様々な態様について、添付の図を参照して説明する。これらの図は、共振物理コンポーネント2の励起システム10、マイクロ電気機械システムの少なくとも一部を形成することができるカオス物理真性乱数発生器1、および発生器1に関連する真性乱数生成方法100を含む。
【0057】
次に、場合によっては、「共振器」という用語を使用して上述の共振物理コンポーネント2を参照する。
【0058】
より具体的には、本発明は、たいていの共振物理構成要素が有する、場当たり的に励起されたときにカオス挙動を示す必要がある機能を利用することを提案する。そのような共振物理構成要素はすでに多くの技術に存在しており、本発明は、第1の技術的利点として、このような構成要素をその主要な用途から転用することによって真性乱数を生成するために、すでに多くの装置、特に電子装置に実装されている共振器の前述の機能をどのように使用できるかを示す。したがって、当業者には、以下のことを読んだときに、本発明のいくつかの態様による発明は、共振器2を備える既存の装置、特に電子装置に、いくつかの搭載構成要素、特に共振器2を励起するためのデバイス11を追加して、共振器2をその主要な用途から転用して真性乱数のシーケンスを生成する(150)可能性をもたらすことが理解されよう。したがって、提案される解決策は、たいていの既存の装置、特に電子装置に、このような同じ装置および/またはその装置に接続された他の装置が直接使用できる追加の機能を付与することを可能にし、特にこれらの装置が安全に通信するのを可能にする。当業者は、以下のことを読んだときに、この追加の機能化がまた、
- 顕著なバルク問題、特に、ますます小型化することが意図される装置についてのバルク問題、および/または
- 顕著な追加の製造コストを生じさせずに可能になることが認識されよう。
【0059】
すでに製造されている装置、特に電子装置に、真性乱数発生器1の追加の機能を付与するのを可能にするデバイスを埋め込むように装置をより低いコストで修正することも急速に可能である。図1は、既存のマイクロ電気機械システムを構成する共振器2の端子に追加された励起システム10を含む電子回路図を示すものと見なすことができる。その場合、本明細書ではスイッチの形で表された切り替え手段を設けることができ、切り替え手段は、機能的に励起システム10を共振器2の端子に接続し、これらの汎用入力および出力から共振器2の端子を切り離すように構成される。図1に示すような励起システム10は、以下で説明するように、入力データが共振器2の励起およびこの励起の変調のパラメータを含む励起デバイス11と、復調デバイス14と、アナログ-デジタルコンバータ12と、デジタル処理デバイス13とを備える。しかし、以下の説明から明らかになるように、励起システム10は、その最も汎用的なバージョンにおいてのみ、励起デバイス11と、既存のマイクロ電気機械システム1に属し得る図1に示すような励起システム10の他の構成要素とを備える。
【0060】
本発明の実装形態に適合する既存の技術のうちで、特にCMOS技術がこの実装形態に直接適合することに留意されたい。
【0061】
マイクロ/ナノ電気機械システムは、機械的プロセスを電気領域に変換し、かつ電気領域を機械的プロセスに変換するマイクロ/ナノサイズのデバイスとして定義することができる。少なくとも1つの共振物理コンポーネント2を備えるマイクロ/ナノ電気機械システムは、その共振物理コンポーネントを通じて、機械エネルギーを電気エネルギーに変換するか、または電気エネルギーを機械エネルギーに変換するのを可能にして、たとえば、選択された形状に応じてエネルギー回復装置または力センサーを得る振動質量を有する特殊性を有する。
【0062】
共振マイクロ/ナノ電気機械システムは主として、その共振周波数f0およびその品質係数Qを特徴とする。
【0063】
本発明の文脈で使用できる形状の1つは、たとえば、二重埋め込みマイクロ/ナノビームからなる。実際、共振器2としてのビームの平衡位置は、特にビームが動的多安定性モードに設定されたときにそれぞれに異なる注目すべき状態間で切り替わることができる。そのようなモードに達することは、十分に高い往復力をビームに印加することによって可能になる。すべての場合に、そのような力を印加することは、共振器2の励起信号を印加することからなると見なすことができる。このことは、本発明による、励起デバイス11が果たすことのできる第1の役割である。その場合、検討中の例によれば、そのような励起信号を受けるビームの位置は、前記注目すべき状態に近い状態および/またはこれらの注目すべき状態の周りの状態間で共振することができる。
【0064】
共振器2の特質に応じて、励起信号は、共振器2の端子に印加される交流電圧からなってもよい。その場合、励起信号は、以下では「励起電圧」とも称される励起信号のピーク電圧および「励起周波数」とも称される励起信号の周波数fなどの前記交流電圧のパラメータに従って特徴付けすることができる。たとえば、励起信号は、ピーク電圧が0.01Vから10Vの間、好ましくは0.1Vから5Vの間であり、周波数fが誤差20%、好ましくは誤差10%で共振器2の共振周波数f0に等しい。励起信号が、電気信号に限定されず、たとえば、共振器2が本質的に感知できる機械信号にも拡大適用されることに留意されたい。
【0065】
より一般的には、任意の共振物理コンポーネント2を決定された励起信号を用いて励起し(110)、共振物理コンポーネント2を動的多安定性モードに設定し、場合によっては少なくとも一時的に維持することができる。デジタルシミュレーションから導出されたいくつかの曲線を含むグラフを示す図2を参照すると、低励起信号の周波数(下部曲線)の関数としての共振器2の変動の振幅R(mV)に関する応答が、低励起力を受けたときの共振器2の線形挙動を示すローレンツ関数の形態であることがわかる。共振器2に印加される励起力を増大させることによって、共振器2の応答は徐々に変形され非対称的になる(上部曲線を参照されたい)。共振器2の応答は非線形になり、それによって、共振器2の共振周波数f0が修正される。次いで、図示の場合、動的双安定モードを表し、より具体的には、ダフィングモードと称される非線形動的双安定モードを表す周波数ヒステリシスが確認される。
【0066】
図2のグラフに示す上部曲線は、図3Aのグラフにも示されている。図3Aでは、所与の励起周波数の場合に共振器2が実質的になり得るそれぞれに異なる注目すべき状態を大雑把に指し示す参照符号「1」および「2」が追加されている。これに応じて、参照符号「1」および「2」は、前記所与の励起周波数について、共振器2のポテンシャルの変化を共振器2の変動の振幅R(mV)の関数として示す図3Bにも示されている。したがって、図3Bのグラフ上に示された曲線は、「1」および「2」として参照される注目すべき状態の各々が最低ポテンシャルの状態、すなわち、ポテンシャル井戸に相当することを示す。したがって、前述の注目すべき状態は、好ましい安定状態に相当し、共振器2は、前記所与の励起周波数の場合に、これらの安定状態の各々の周りの状態になる確率がより高い。したがって、図3Aおよび図3Bのグラフは、ヒステリシスの2つの安定状態間の分岐を示す。したがって、励起信号の高振幅において、ヒステリシスは、周波数領域において開き、高振幅変動の状態「1」または低振幅変動の状態「2」になる傾向がある。この2つの状態は、座屈させた共振器の場合と直接比較可能であり、違いは、座屈させた共振器の状態が静的であり(たとえば、これらの状態は、座屈させたビームの高い位置および低い位置に相当する)、一方、本発明に従って動的多安定性モードに設定された共振器2の2つの状態は動的である(これらの状態は、共振器2の振動の高振幅または低振幅に相当する)ことである。座屈させた共振器の場合と同様に、共振器2に印加される励起力を変調することによって、本発明に従って動的多安定性モードに設定された共振器2にカオス挙動を課すことが可能である。
【0067】
本明細書では、本発明による励起信号が共振器2を座屈させることを意図したものではないことに留意されたい。好ましくは、本発明の第1の態様による励起システム10および/または本発明第2の態様によるカオス物理発生器1は、共振器2を座屈させるように構成されたいずれのタイプの励起デバイスも有しない。したがって、本発明の実装形態は、座屈させた構造の作製を必要としておらず、そのような作製は製造の点で複雑であり、一般に動作するのに高エネルギー消費を必要とする。それに対して、本発明の実装形態では、ほぼあらゆるマイクロ/ナノ共振器2が、その形状、使用材料、または共振器2が実施する変換技法に関する特定の条件なしに高励起振幅において非線形挙動を示すことが有利に働く。特に、本発明の実装形態は、マイクロ/ナノ共振器2が存在するときにたいていのマイクロ/ナノ共振器2上で実施することができ、したがって、共振器の製造プロセスを変更する必要なしに実施することができる。
【0068】
図4に示すように励起信号を周波数121および/または振幅122においてさらに変調する(120)場合、共振器2は、複雑な非周期的カオス動特性を採用することができる。このようにして発生するカオス挙動は、特に、共振器2の中期的および長期的な状態を予測することが繰り返し不能でありかつ不可能であることを特徴とする。実際、あらゆるカオスモードは決定論的であり、すなわち、共振器2の挙動を支配する数式が完全に知られている場合には共振器2の応答を予測することができるが、たとえば共振器2が置かれた周囲温度または圧力の初期条件の非常にわずかな変動が、バタフライ効果のように挙動のかなりの変化を急速に生じさせる。したがって、あらゆる共振器2の挙動は常に、雑音がどれだけ弱いかにかかわらず、雑音の有無の影響を受け、変調された励起信号101に対する共振器2の応答について、特に同じ変調された励起信号101を新たに印加するたびに、上述のような急激な変化を確認することがあり、中期的および長期的な共振器2の動的挙動の予測は不可能になる。このため、少なくとも1つの共振器2が、動的多安定性モードに設定され、共振器がカオス挙動を採用するようにさらに阻害されたマイクロ/ナノ電気機械システム1は、共振器2の出力において、ランダムな高振幅アナログ信号102を生成するのを可能にする。本明細書では、共振器2の挙動における前述の変化をアナログ信号の位相のみ、アナログ信号102の振幅のみ、アナログ信号102の位相および振幅の各々、またはアナログ信号102のこれらの2つのパラメータの任意の組合せ上で確認することができる。これらの異なる可能性は、以下で使用される表現「共振器2の振動の振幅および/または位相における変化」によって包含される。
【0069】
本明細書では、上記ですでに暗黙的に紹介したように、共振器2のカオス挙動が出現するには、変調された励起信号101の印加の開始時からのある時間が必要になる場合があることに留意されたい。より具体的には、この時間は、共振器2が経験する初期条件の関数として変調された励起信号101に対する共振器2の応答の変化を確認するために必要になることがある。当業者は、たとえば、生成された数150のシーケンスの乱数性を検査し、特に、reference NIST 800-22またはAIS 31の名称で知られている標準試験を実施することによって、この時間を先験的にまたは発見的に評価することができる。共振器2を少なくとも一時的に動的多安定性モードに維持することは、特に、共振器2から導出されるアナログ信号102による共振器2のカオス挙動の表現に必要なこの時間を踏まえて検討することができる。
【0070】
共振器2の初期適用、たとえば、加速度計またはエネルギー回復装置としての適用にもかかわらず、本発明によれば、共振器2を使用して、動的多安定性モードに設定された共振器2のカオス挙動を直接的または間接的に表すアナログ信号102を生成し、追加の製造コストなしに、顕著な追加のバルクなしに、および/またはエネルギー消費量が比較的低くなるように第2の機能を付与することもできる。
【0071】
図4に示すように、励起信号は、従来の周波数121変調および/または振幅122変調を含む多くの方法で変調することができる。より具体的には、励起信号の周波数121変調120を決定された変調周波数δfで実行して、「周波数変調」を表す頭文字FMによって図4の上に記載されたポテンシャル曲線112によって示すように、共振器2の動的多安定性モードである共振器2の状態におけるポテンシャルの2つの井戸の一方から他方への変化および他方から一方への変化を生じさせることができる。代替的にまたは補足的に、励起信号の振幅122変調120を決定された変調周波数δfで実行して、「振幅変調」を表す頭文字AMによって図4の上に記載されたポテンシャル曲線112によって示されるように、共振器2の単安定モードから共振器2の動的多安定性モードへの共振器2の状態の変化および動的多安定性モードから単安定モードへの共振器2の状態の変化を生じさせることができる。共振器2を少なくとも一時的に動的多安定性モードに維持することは、特に、共振器が、特に変調120が振幅変調122を含むときに共振器の単安定モードになることが必要になるこの可能性を踏まえて検討できることに留意されたい。
【0072】
上記のことを代替的および/または補足的に表現するには、共振器2の励起デバイス11が、
- 共振器2が前記動的双安定モードであるときに、決定された変調周波数δfを用いて励起信号を周波数121変調して(120)共振物理コンポーネントを共振器2の最低ポテンシャルの2つの状態に近い2つの状態のうちの一方の状態から別の状態に交互に設定し、ならびに/または
- 共振器2が前記動的双安定モードであるときに、決定された変調周波数δfを用いて励起信号を振幅122変調して(120)共振器2を共振器2の単安定状態に近い状態から共振器2のより低いポテンシャルの2つの状態に近い2つの状態のうちのいずれか一方に交互に設定するように構成されることを考慮することが可能である。
【0073】
好ましくは、上述のそれぞれに異なる状態間の共振器2のこれらの推移は、共振器2がより低いポテンシャルの同じ状態に近い状態に長時間留まらないのに十分な程度に急速である。前記長時間は、励起信号、たとえばその電圧および/またはその周波数に依存する。上述のそれぞれに異なる状態間の共振器2の十分に急速な遷移は、好ましくは共振器2の共振周波数f0の品質係数Qに対する比f0/Qよりも高いが、場合によっては実質的に等しい変調周波数δfを有する変調された励起信号101を共振器2に印加することによって確実に生じる。前記長時間のパラメータ化は、アナログ信号102のサンプリングパラメータに従って適合することもできる。サンプリングパラメータのうちで、当業者に知られているように使用されるサンプリング方法に応じてサンプリング周波数またはサンプリングステップに言及してもよい。
【0074】
特に図4において、共振器2の図示の例による動的多安定性モードまたは動的双安定モードは、連続的で限定された周波数領域111に関連付けられることが認識されよう。なお、この例において、励起信号の周波数fとしては好ましくは、共振器2を動的双安定モードのサブモードに設定する周波数が決定され、このサブモードは、共振器2の動的双安定モードに関連付けられた周波数領域の最初の2分の1、場合によっては最初の3分の1に関連付けられる。
【0075】
真性乱数生成方法100のステップ110および120は特に図6に示されている。これらのステップは、連続するステップとして図6に示され上記に記載されているが、必ずしも連続するとは限らないことに留意されたい。これらのステップは、組み合わせて考えると、変調された励起信号101を共振器2上に印加することからなる。
【0076】
この可能な組合せは、ステップ110およびステップ120が図6において同じボックスに表されていることによって象徴されている。
【0077】
前述のビームなどの共振器2の能力をこのように利用して、共振器2の振動の振幅および/または位相の変化を表すアナログ信号102を共振器2の出力において生成することによって、このアナログ信号102を真性乱数のシーケンスに変換することが可能である。この変換に関する方法100のステップについて以下に、特に図5および図6を参照しながら説明する。
【0078】
共振器2から発せられたアナログ信号102を真性乱数のシーケンスに変換するために、アナログ-デジタルコンバータ12を使用してアナログ信号102をデジタル信号104に変換する(140)ようになっている。好ましくは、この変換140は、デジタル信号104がアナログ信号102のランダム態様および高振幅態様を表すように行われる。この目的のために、当業者は、変換140のパラメータを場当たり的に選択し、特にアナログ信号102のサンプリングのパラメータを選択するだけでよい。アナログ信号102のサンプリングは、決定されたサンプリング周波数fsに従って行われてもよく、または選択されたサンプリングステップにより、特に励起信号のピーク電圧および励起信号を変調する(120)ための変調周波数δfに従って行われてもよい。
【0079】
たいていのマイクロ/ナノ電気機械システムでは、その共振器から発せられたアナログ信号のデジタルバイナリバージョンでの変換をアナログ-デジタルコンバータがすでに確実に行うようになっていることに留意されたい。本発明の方法による変換140は、
- 検討中のマイクロ/ナノ電気機械システム1にすでに設けられているコンバータ12によって行われてもよく、または
- マイクロ/ナノ電気機械システム1がすでに存在するかそれとも設計中であるかにかかわらず、マイクロ/ナノ電気機械システム1のアーキテクチャに追加される本発明の第1の態様による励起システム10に固有のコンバータ12によって行われてもよい。
【0080】
アナログ信号102が、同じく共振器2のカオス挙動を表すデジタル信号104に変換された後、プロセッサなどのデジタル処理デバイス13が、このデジタル信号104に基づいて真性乱数のシーケンスを生成する(150)ように構成されるようになっている。
【0081】
たいていのマイクロ/ナノ電気機械システムはすでにそのようなデジタル処理デバイス13を備えていることに留意されたい。したがって、本発明の方法100によるデジタル処理150は、
- 検討中のマイクロ/ナノ電気機械システム1をすでに構成する処理デバイス13によって行われてもよく、または
- マイクロ/ナノ電気機械システム1がすでに存在するかそれとも設計中であるかにかかわらず、マイクロ/ナノ電気機械システム1のアーキテクチャに追加される本発明の第1の態様による励起システム10に固有の処理デバイス13によって行われてもよい。
【0082】
図6に示すように、本発明の第3の態様による方法100は、アナログ信号102を励起信号の周波数fにおいて復調する(135)ことからなるステップをさらに含んでもよい。このステップは、励起信号の変調120の効果に関する情報のみを復調済み信号に有するのを可能にする。言い換えれば、このように復調された信号は、共振器2の振動の振幅および/または位相の変化を表す情報のみを搬送する。任意ではあるが、この復調ステップが、真性乱数のシーケンスを生成する(150)以後のステップを簡略化しならびに/またはこのステップの効率を向上させるのを可能にする点で明らかに興味深く、それによって、このステップが実際に、このステップに最も有用な情報のみに基づいて実行されることを理解されたい。
【0083】
特に図6に示す実施形態による方法100のステップ135を実施するのを可能にする復調デバイス14が、
- 検討中のマイクロ/ナノ電気機械システム1をすでに構成するデバイスからなってもよく、または
- マイクロ/ナノ電気機械システム1がすでに存在するかそれとも設計中であるかにかかわらず、マイクロ/ナノ電気機械システム1のアーキテクチャに追加される本発明の第1の態様による励起システム10に固有のデバイスであってもよいことに留意されたい。
【0084】
上述のように、変調された励起信号101によって励起された共振器2から発せられたアナログ信号102は、共振器2のカオス挙動を直接的に表してもまたは間接的に表してもよい。それによって、アナログ信号102は、共振器2の振動の振幅および/または位相の変化を直接表す第1のアナログ信号であってもよい。この場合、上記で紹介したようなアナログ信号102の復調135は、たとえば、第1のアナログ信号を励起信号と比較して、共振器2の振動の振幅および/または位相の変化を間接的に表すアナログ信号として、第1のアナログ信号の振幅の変化および/または第1のアナログ信号と励起信号との間の位相の変化を表す第2のアナログ信号を推測することを含む。
【0085】
図5を参照すると、共振物理コンポーネント2の振動の振幅の変化を表すアナログ信号1021および共振器2の位相の変化を表すアナログ信号1022は、共振器2から発せられたアナログ信号102の取得ステップ130、特に上述の復調ステップ135から得ることができる。その場合、変換ステップ140は、この2つのアナログ信号の各々を対応するデジタル信号1041、1042に変換することを含む。
【0086】
より具体的には、各アナログ信号1021、1022は、各値が、図5によって示される例では8に等しいN個のビットにわたって符号化された一連の値141に変換され、真性乱数のバイナリシーケンスの生成150は、各アナログ信号1021、1022について、方形信号の形で示すことのできる一連のビット1041、1042を生成することを含んでもよい。
【0087】
図5を参照すると、各々の一連のビット1041、1042は、各値141の低い重みを有するnビットのみに従って生成する(154)ことができる。図5において、各値141の低い重みを有する3ビットのみを使用して一連のビット1041および1042が生成される。この上記の特徴による方法は、共振器2のカオス挙動が、各値141のすべてのビットがカオス挙動を表すように雑音を顕著に増幅するのに十分ではないときに特に有利である。
【0088】
依然として図5を参照すると、2つのアナログ信号1021、1022について2連のビット1041および1042が取得され、真性乱数のバイナリシーケンスの生成150は、たとえば、2連のビット間の「排他的OR」演算子による論理演算156によって、ランダム特性がより優位になり得る一連のビットブロックを取得することをさらに含んでもよい。
【0089】
その場合、真性乱数のバイナリシーケンスの生成150は、この一連のビットブロック1043をビットブロックのシーケンスに分割する(表されていない)ことを含んでもよく、各ビットブロックに基づいて真性乱数を生成することができる(150)。
【0090】
直径がミリメートル未満であり、厚さが実質的に10ミクロンに等しく、変換が圧電式に実行されるディスクの形をした共振器2を備えたマイクロ電気機械システムを使用して、それぞれに異なる態様による本発明の実現可能性を実証した。マイクロ電気機械システムを真空下、より具体的には1ミリバールよりも低い圧力下に置いた。マイクロ電気機械システムの共振周波数f0は、実質的に71.5kHzに等しく、品質係数Qが1100に等しく、非線形係数αが40kHz/V2に等しい。このタイプの共振器2は一般的に、音響波の発生器および検出器として使用される。共振器2に印加される励起信号のピーク電圧V0は、0.1Vから10Vの間であり、5Vに等しいピーク電圧が主として使用される。励起信号の励起周波数fは実質的に共振器2の共振周波数f0に等しい。そのような励起信号を使用することによって、本明細書で検討する共振器2は、いわゆるダフィングモードに設定される。その場合、範囲が実質的にα.V0 2に等しい周波数領域111にわたってヒステリシスが生成される。共振器2にカオス挙動を付与するために、励起信号の変調周波数δfが周波数領域111の範囲および共振器2の帯域幅f0/Qの両方によって決定される。変調周波数δfの値は、特に周波数領域111の範囲および共振器2の帯域幅f0/Qに対する変調周波数δfの依存性に起因して、ピーク電圧V0、励起周波数f、および/または共振周波数f0が変調される(120)かどうかに応じて変動することができる。使用される変調周波数δfの値は、数値的に決定するか、またはすでに知られている共振器2を正規化することによって共振器2から推定することができる。このように取得されたアナログ信号102は、励起周波数fにおいて復調される。この復調済み信号に対して、変調周波数δfに依存するサンプリング周波数においてサンプリングが実行される。好ましくは、サンプリング周波数は、変調周波数δfよりも少なくとも10倍高い。たとえば、変調周波数は、50Hz~5kHzの範囲とすることができ、サンプリング周波数は、毎秒500個~毎秒50000個の範囲とすることができる。変換140は、64ビットの精度で実行され、64ビットの精度は、共振器2の出力における8ビットアナログ-デジタルコンバータをシミュレートするために8ビットの精度に低下させた。したがって、デジタル信号104の各値は、8ビットにわたって符号化され、8ビットのうちで最低の重みを有するnビット、一般的には最低の重みを有する3ビットのみを保持した。このようにして、"reference NIST 800-22"の名称で知られている15個の標準試験のうちの13個に準拠するランダムバイナリシーケンスが生成された(150)。サンプリングレートは約10kビット/秒に等しい。
【0091】
本発明は、前述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の対象とされるすべての実施形態を含む。
【0092】
たとえば、復調ステップ135は、アナログ信号102の変換140後に、変換140から導出されたデジタル信号に対して実行されてもよい。
【0093】
たとえば、アナログ信号1021およびアナログ信号1022のうちの一方のみで十分に真性乱数のシーケンスを生成する(150)ことができる。この場合、論理演算156は実行されず、分割ステップ(表されていない)は、2連のビット1041および1042のうちの対応する一方を分割することからなる。
【0094】
たとえば、前記アナログ信号102に基づいて真性乱数のシーケンスの生成150に使用するために共振器2を備えるマイクロ電気機械システム1に組み込まれるようになっている励起システム10の励起デバイス11は、励起信号の変調手段120としてのみ働くことができ、励起信号は、すでにマイクロ電気機械システム1を構成している1つまたは複数の構成要素によって生成される。
【0095】
たとえば、共振周波数f0および上記で与えられた品質係数Qの値の各々は、実質的に一組の利用可能な値の範囲内、すなわち、共振周波数f0については約200Hz~10GHz内でかつ品質係数Qについては約10~106内で変調することができ、それにもかかわらず本発明の実施可能性を変更せずに変調することができる。共振器2に印加される励起力およびこの励起力によって生じる共振器2の挙動の非線形性を上記に示された値に対して変更し、検討されたシステムと同等のシステムを見出して本発明の実現可能性を実証することができる。同様に、共振器2が置かれる初期条件を変更することができ、たとえば、共振器2は1バールに等しい圧力下に置かれてもよい。さらに、サンプリングレートは、検討された共振器2のパラメータに依存し、共振周波数f0、品質係数Q、および周波数領域111の範囲に応じて1ビット/秒から1Mビット/秒の間で容易に変更することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 カオス物理真性乱数発生器、マイクロ電気機械システム
2 共振物理コンポーネント、共振器、マイクロ/ナノ共振器
10 励起システム
11 励起デバイス
12 アナログ-デジタルコンバータ
13 デジタル処理デバイス
14 復調デバイス
100 真性乱数生成方法
101 変調された励起信号
102 ランダムな高振幅アナログ信号
104 アナログ信号
110 励起
111 周波数領域
112 ポテンシャル曲線
120 変調
121 周波数
122 振幅
130 取得
135 復調
140 変換
141 値
150 デジタル処理、生成
154 生成
156 論理演算
1021 アナログ信号
1022 アナログ信号
1041,1042 デジタル信号、ビット
1043 ビットブロック
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
【国際調査報告】