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特表2023-535431フィルター材料を浄化する方法及び設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】フィルター材料を浄化する方法及び設備
(51)【国際特許分類】
   D06L 1/00 20170101AFI20230809BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
D06L1/00
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504413
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2021070214
(87)【国際公開番号】W WO2022018059
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】2007648
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】512082439
【氏名又は名称】アンスティテュ ポリテクニック ドゥ ボルドー
【氏名又は名称原語表記】Institut Polytechnique De Bordeaux
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シリル・エーモニエ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・オベール
(72)【発明者】
【氏名】アナイス・カリオ
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211CC00
(57)【要約】
少なくとも1種のフィルター材料、特に呼吸器保護マスク(M)の製造に使用されるフィルター材料を浄化する方法であって、このフィルター材料を超臨界流体、好ましくは0.3g/mL未満の密度を有する超臨界COに曝す工程を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のフィルター材料、特に呼吸器保護マスク(M)の製造に使用されるフィルター材料を浄化する方法であって、そのフィルター材料を0.3g/mL未満の単位体積当たり質量を有する超臨界流体に曝すことからなる工程を含む、方法。
【請求項2】
超臨界流体が超臨界COである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用される超臨界流体が、0.2g/mL以下の、より良好には0.16g/mL以下の単位体積当たり質量を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
使用される超臨界流体の温度が、130℃以下、特に両端を含む50℃~130℃の間、より良好には両端を含む70℃~100℃の間である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
使用される超臨界流体の圧力が、100bar以下、特に両端を含む75~100barの間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
フィルター材料が、超臨界流体と少なくとも1種の追加の殺生物化合物の混合物に曝される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
追加の殺生物化合物の総含有率が、混合物の総モル数に対して2モル%以下、より良好には1.5モル%以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
追加の殺生物化合物が、酸化剤、特に過酸化水素、酸、特にカルボン酸、特に酢酸、及びそれらの混合物から選ばれる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物が、水と、少なくとも1種の有機共溶媒、特に3個以下の炭素原子を有する炭素鎖アルコール、好ましくはエタノール、酸、特に3個以下の炭素原子を有するカルボン酸、好ましくは酢酸、ポリエーテルの溶液、好ましくは特に200g・mol-1未満の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)の溶液、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びそれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の有機共溶媒とを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
共溶媒の総含有率が、前記混合物の総モル数に対して1.5モル%以下である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
フィルター材料が、撹拌により、超音波により、又はフィルター材料に動きを与えることにより生じる機械的かき混ぜなしに超臨界流体に曝される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
フィルター材料が、両端を含む60bar/分から80bar/分の間の膨張速度での超臨界流体の膨張に、好ましくは少なくとも1つの減圧段階での膨張に曝される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
フィルター材料が受けた浄化サイクルの数を数える工程を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
フィルター材料、又はそれから製造されたマスクが、浄化サイクルが進むのにしたがって、色が薄れる目視インジケーターを有し、フィルター材料の再使用を可能する前にインジケーターが一定程度を超えて着色していることを検証する工程を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
FFP2又はFFP3型のマスク、特にポリプロピレン繊維に基づくメルトブロー型不織布を含むものの浄化に適用される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法の実施のための設備(1)であって、浄化されるフィルター材料又はマスクがその中に配置される囲い(10)と、0.3g/mL未満の、より良好には0.2g/mL以下の、更に良好には0.16g/mL以下の単位体積当たり質量を有する超臨界流体にフィルター材料又はマスクを曝すために、超臨界流体及び任意の他の化合物(1又は複数)を前記囲いのなかに注入するための手段とを含む、設備(1)。
【請求項17】
不織布、好ましくはメルトブロー型の不織布を含む、浄化後に再使用可能な呼吸器保護マスク、特にFFP2又はFFP3型のマスクであって、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法の使用の間に、超臨界流体、特に超臨界COを使用する浄化サイクルごとに次第に変色し、かつ、マスクがもはや適合しない場合には予め定めた変色の程度に達するように構成された着色インジケーター(20)を含む、呼吸器保護マスク。
【請求項18】
不織布、好ましくはメルトブロー型の不織布、及び請求項1から15のいずれか一項に記載の方法を使用する浄化を追跡することを可能にする識別子を含む、浄化後に再使用可能な呼吸器保護マスク、特にFFP2又はFFP3型のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター材料の浄化、より詳細には、しかしそれに限るものではないが、再使用を視野に入れた呼吸器保護マスクの浄化に関する。
【背景技術】
【0002】
COVID 19パンデミックは、呼吸器保護マスク、特にFFP2又はFFP3型のものを再使用することができる必要性を、これらのマスクの供給問題に直面して明らかにした。
【0003】
これらのマスクは、メルトブロー織物として公知の不織布に基づくフィルター材料を使用して製造され、その特別な特徴は帯電することである。それは、材料の繊維が最小の粒子、特にウィルスの捕捉を可能にする表面電荷の存在である。マスクの製造のために使用されるメルトブロー型不織布は、一般にポリプロピレン繊維に基づくが、それは特にこの材料の高度の摩擦電気的特性、すなわち、その表面に電荷を引きつけて、そうして静電気障壁を形成する、その高度な能力のためである。
【0004】
したがって、汚染されたマスクの浄化は、フィルター材料を機械的に保存し、殺生物効果を働かせ、微量の汚れを除去しなければならず、最小の粒子を保持するその能力を劣化させないように可能な限りフィルター材料の帯電性に影響を与えてはならない。
【0005】
更に、浄化が、糊付けすることによりマスクに固定された発泡体でできた結合部又は封止を剥がすことになってはならない。
【0006】
最終的に、浄化は、低コストで、無公害方式で大規模に使用できなければならない。
【0007】
従来技術において、布地を浄化するために超臨界二酸化炭素COを使用することが提案されている。Aymonier, Cyrilら「Materials Processing and Recycling with Near-and Supercritical CO2-based Solvents」, Supercritical and Other High-pressure Solvent Systems. 2018. 304~339頁によって刊行物において教示されているように、超臨界COは、それに高密度を与える条件下で使用され、汚染物質の溶解性は超臨界COの密度とともに大きくなる。
【0008】
Perrut, Michel「Sterilization and virus inactivation by supercritical fluids (a review)」, The Journal of Supercritical Fluids 66 (2012): 359~371頁による刊行物もあり、製品に応じて様々である圧力で非常に多様な製品を消毒するために、ある時には過酸化水素又は過酢酸等の酸化剤の添加とともに、超臨界COを使用することが知られていることを思い起こさせる。
【0009】
本発明者らが組織内で行なった最初の試験では、先行技術によって開示されている上記の条件下での超臨界COの使用が、特にその繊維質の構造に対する損傷及びそれらの帯電性の損失のために、FFP2マスクの濾過性の低下を引き起こすことを示した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Aymonier, Cyrilら「Materials Processing and Recycling with Near-and Supercritical CO2-based Solvents」, Supercritical and Other High-pressure Solvent Systems. 2018. 304~339頁
【非特許文献2】Perrut, Michel「Sterilization and virus inactivation by supercritical fluids (a review)」, The Journal of Supercritical Fluids 66 (2012): 359~371頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、少なくとも2度の再使用を可能にするようなやり方において、マスク、特にFFP2型のマスクを浄化するために使用するのが比較的簡単で、かつ経済的な新規な方法を見つけることを意図している。
【0012】
したがって、本発明は、目的として、フィルター材料、特に呼吸器保護マスクの製造に使用されるフィルター材料を浄化する方法を有し、その方法は、フィルター材料に超臨界流体、好ましくは0.3g/mL未満の単位体積当たり質量を有する超臨界COを施すことからなる工程を含む。好ましくは、この超臨界流体は、以後詳細に記載するように、少なくとも1種の追加の化合物、特に殺生物化合物及び/又は有機極性共溶媒と混合されて使用される。あるいはそれに代えて、超臨界流体は純粋なままで使用される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、0.3g/mLと等しいか又はそれを超える単位体積当たり質量を有する超臨界COを使用すると、微粒子用のフィルター材料の濾過特性を非常に著しく低下させるが、単位体積当たりそれより少ない質量を有する超臨界COを使用すると、詳細には以下に記載するように、それがその帯電性に過度に影響を与えることなく浄化され、もし存在するならば微量の汚れを除き、かつ、殺生物効果を有する1種又は複数の他の化合物と混合された場合には殺生物作用を及ぼすことが可能になる。
【0014】
使用される超臨界流体、特に使用される超臨界COは、好ましくは0.25g/mL以下の、なお良好には0.2g/mL以下の、更に良好には0.19、0.18、0.17、又は0.16g/mL以下の単位体積当たり質量を有し、単位体積当たり質量は好ましくは0.14~0.16g/mLの間(両端を含む)であり、更により好ましくは0.15g/mLに等しい。
【0015】
使用される超臨界流体の、特に超臨界COの温度は、好ましくは130℃以下、特にCOの臨界温度より高く、かつ130℃以下、より良好には50℃~130℃の間(両端を含む)、更に良好には70℃~100℃の間(両端を含む)である。
【0016】
使用される超臨界流体の、特に超臨界COの圧力は、好ましくは100bar以下、特に、COの臨界圧をより高く、かつ100bar以下、好ましくは75~100barの間(両端を含む)である。
【0017】
フィルター材料は、好ましくは超臨界流体、特に超臨界COと少なくとも1種の追加の殺生物化合物との混合物に曝される。
【0018】
追加の殺生物化合物(1種又は複数)は、混合物の総モル数に対して2%以下の、特に1.5%、より良好には1.25%、更に良好には1.1%、又は更に良好には1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、又は0.5%の追加の殺生物化合物の総モル含有率で存在することが好ましい。
【0019】
混合物は、少なくとも0.05%、より良好には少なくとも0.1%、更に良好には少なくとも0.2%、0.3%、0.5%、又は1%の総モル分率の殺生物化合物、特にHを含んでもよい。
【0020】
殺生物化合物が30質量%のH水溶液である場合、混合物は、好ましくは、1~2モル%の間、より良好には1.3~1.7モル%の間、例えばおよそ1.4モル%の殺生物化合物を含む。
【0021】
追加の殺生物化合物は、フリーラジカルを生成する化合物、特に過酸化水素H等の酸化剤、酸、特にカルボン酸、例えば酢酸、及びそれらの混合物から選ばれてもよい。
【0022】
特に、超臨界流体が超臨界COであり且つ殺生物化合物(1又は複数)が水溶液中にある場合、水が超臨界CO中で十分な溶解性を有しないとすると、水を超臨界COに溶解可能にするために、水及びCOと親和性を有する有機共溶媒を混合物に添加してもよい。
【0023】
共溶媒は、3個以下の炭素原子を有するアルコール、好ましくは、エタノール、酸、特に3個以下の炭素原子を有するカルボン酸、好ましくは酢酸、ポリエーテル溶液、好ましくは、特に200g.mol-1未満の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)のポリエーテル溶液、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びそれらの混合物から選ばれてもよい。
【0024】
さらに、汚染物質及び汚れの安定化、したがって浄化の能力を改善するようなやり方でCO又は他の超臨界流体の極性を高めることを可能にするために、共溶媒を混合物に添加してもよい。
【0025】
有機溶媒(1又は複数)の総モル含有率は、混合物の総モル数に対して1.5%以下、より良好には1.25%以下の、更になお良好には1.1%、1%、又は0.9%、例えばおよそ0.8モル%のエタノールであってよい。
【0026】
有機共溶媒(1又は複数)の総含有率は、混合物の総モル数に対して少なくとも0.1モル%、より良好には少なくとも0.3%、更に良好には少なくとも0.5%であってよい。
【0027】
フィルター材料は、撹拌により、超音波により、又はフィルター材料に動きを与えることによって生み出される機械的かき混ぜなしで、好ましくは超臨界流体、特に超臨界COに曝される。
【0028】
本発明者らは、驚くべきことに、フィルター材料中に拡散した超臨界流体が離脱するので、制御された膨張が繊維質構造を損傷することなしにフィルター材料から汚れを引き抜く動きを作り出すことを可能にすることを発見した。したがって、その膨張速度は、有利には10bar/分~90bar/分の間(両端を含む)、より良好には20bar/分~80bar/分の間(両端を含む)、更に良好には60bar/分~80bar/分の間(両端を含む)、好ましくは70bar/分程度である。この膨張は、少なくとも1つの減圧段階、例えばP/2の値で行われてもよく、ここでPは処理中の最大超臨界流体圧力を指す。したがって、この膨張は、各々の段階間で25~50barの間(両端を含む)の圧力変化に対応してもよい。この膨張は、例えば背圧調節器(back pressure regulator, BPR)システムによって自動化されていてもよい。
【0029】
超臨界流体は、再使用されるためにその膨張後に好ましくはリサイクルされる。
【0030】
前述の殺生物化合物等の追加の化合物は、超臨界流体が気体状態に戻ったら、液体/ガス分離器によって回収されてもよい。
【0031】
ガス状超臨界流体は、再使用のために貯蔵される前にフィルター中に供給されてもよい。
【0032】
処理は、フィルター材料、例えばマスクを囲い(enclosure)内に配置し、次いで超臨界流体を、単独で、あるいは1種又は複数の追加の化合物と混合して注入するためにポンプを使用することにより実施されてもよい。後者は、超臨界流体より前に処理囲い中へ導入されてもよい。更に、専用ポンプを使用して、他の追加の化合物又は化合物をその囲いの中へ注入することが可能である。
【0033】
フィルター材料の超臨界流体への曝露の継続時間は、必要な効果を得ることを可能にするために十分な時間であり;この継続時間は、好ましくは1分~2時間の間(両端を含む)、例えば1時間の程度である。
【0034】
本発明による方法は、特に、所定の浄化サイクル数の終わりにフィルター特性が適合し終わる場合は、フィルター材料に施された浄化サイクル数を数える工程を含んでいてもよい。
【0035】
このモニタリングを容易にするために、フィルター材料又はマスクは、浄化サイクルが進むにつれて色褪せる目に見えるインジケーターを有してもよい。この場合、本方法は、フィルター材料の再使用を許容する前に、インジケーターがなお一定程度を超えて着色していることを検証する工程を含んでいてもよい。
【0036】
フィルター材料又はマスクは更に、インジケーター、例えばバーコード、QRコード(登録商標)を特徴としてもよく、また、本方法は、フィルター材料又はマスクに施された浄化サイクル数に関して、データベース情報中に蓄える工程からなる工程を含んでいてもよい。本方法は、浄化操作の前及び/又は後にこのデータベース(base)を更新し、浄化サイクル数が所定の値未満に留まり、マスクが適合することを保証することを検証する工程を含んでいてもよい。
【0037】
予め規定した浄化サイクルの数に、好適な場合には、その浄化方法に、フィルター材料の帯電特性を再生成することを目的とする処理を続いて行ってもよい。
【0038】
本発明はまた、目的として、本発明による浄化方法を実施するための設備を有する。
【0039】
その設備は、浄化されるフィルター材料、より特にマスク(1又は複数)がそのなかに配置される囲いと、超臨界流体、特に0.3g/mL未満の単位体積当たり質量を有する超臨界COにフィルター材料を曝すために、超臨界流体及び他の化合物、特に共溶媒及び過酸化水素をその囲いの中へ注入するための手段とを含んでいてもよい。
【0040】
本発明は、目的として、本発明による浄化方法によって浄化された再使用可能なマスクを更に有する。そのマスクは、必要であるなら、個々に又は他のものと一緒に再包装されてもよい。
【0041】
浄化されたマスクは、他の情報と共に浄化サイクル数が保管されたデータベースにアクセスすることを可能にする識別子を有していてもよい。マスクは、例えばそれに印刷された、又はそれに固着されたラベルの形態の、マスクが浄化を受けたという指標、更にそれに施された浄化サイクル数を示す指標を更に有していてもよい。
【0042】
本発明はさらに、目的として、再使用可能な呼吸器保護マスク、特に不織布を含むマスク、好ましくはメルトブロー型の、特にFFP2又はFFP3型のマスクを有し、それらは超臨界流体を使用する浄化サイクルごとに次第に変色するように、及びマスクがもはや適合しない場合は、あらかじめ規定する程度の変色に達するように構成された着色されたインジケーターを含む。このインジケーターは、フィルター材料がもはや適合しなくなったら色褪せるように作られていてもよい。それに代えて、インジケーターは、マスクがもはや適合しなくなったその時にその色を少し保持するが、しかし、基準尺度と比較して、マスクがなお適合するかどうかを判断することが可能である。
【0043】
本発明は目的として、再使用可能な呼吸器保護マスク、特に不織布を含むマスク、好ましくはメルトブロー型の、特にFFP2又はFFP3型のマスクを更に有し、本発明による浄化方法によってその浄化の追跡可能性の保証を可能にする識別子を含む。
【0044】
本出願において、「FFP2又はFFP3型のマスク」とは、FFP2及びFFP3のマスクに関連する規格NF EN 149:2001+A1:2009に適合するいわゆる「Covid」マスク、それに加えてそれらの外国の等価物、すなわち米国規格NIOSH 42 CFR 84/N95並びにP95及びR95、中国規格GB2626-2006/KN95及びKP95、GB/T 32610-2016/クラスA、オーストラリア及びニュージーランド規格AS/NZS 1716:2012/P2、韓国規格KMOEL-2017-64/第1級、日本規格Japan JMHL W通達214、2018/DS2、及びDL2、ブラジル規格ABNT/NBR 13698:2011/PFF2、メキシコ規格NOM-116-2009/N95及びP95、R85、米国規格NIOSH 42 CFR 84/N99及びN100、P99、P100、R99、R100、中国規格GB2626-2006/KN100及びKP100、オーストラリア及びニュージーランド規格AS/NZS 1716:2012/P3、日本規格Japan JMHLW通達214、2018/DS3及びDL3、ブラジル規格ABNT/NBR 13698:2011/PFF3、及びメキシコ規格NOM-116-2009/N99及びN100、P99、P100、R99及びR100に適合するものを意味する。
【0045】
本発明は、それらの非限定的な実施形態の以下の詳細な記載を読み、添付された図面を調べることでよりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、0.15g/mLの単位体積当たり質量を用いる本発明による方法の使用に適している、温度及び圧力の条件を図示するT/P状態ダイヤグラムである。
図2図2は、超臨界COの単位体積当たり異なる質量を使用する比較試験の結果を表わすグラフである。
図3図3は、本発明による処理設備を単純化した模式的方式において表わす図である。
図4図4は、着色されたインジケーターを有する再使用可能なマスクの例を表わす図である。
図5図5は、識別子を有する再使用可能なマスクの例を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明によれば、超臨界流体による浄化は、0.3g/mL未満、好ましくは0.15g/mL近くのその単位体積当たり質量を保証する条件下で実施される。超臨界流体は好ましくは超臨界COである。
【0048】
図1には、0.15g/mLに等しい単位体積当たり質量を有する超臨界COを得るためのT/P対の発生を示すダイヤグラムが表わされている。
【0049】
0.15g/mLの単位体積当たりのこの質量を得るために、異なる温度及び圧力の対(ペア)、例えば75barと70℃、又は80barと95℃が使用されてもよいことがわかる。
【0050】
これらの条件下では、FFP2又はFFP3型のマスクの濾過特性(フィルター特性)、特にポリプロピレン繊維メルトブロー型不織布を含むマスクの特性が保存される。
【0051】
図2には、0.35g/mLと等しいか又はそれより大きな単位体積当たり質量については、これがもはや当てはまらないことを示す比較試験の結果が表わされている。曲線は、ナノメートル単位での電子移動度直径の関数としての濾過有効性を表わしている。これらの試験において、マスクは超臨界COで1時間処理され、かつ、処理の最後の膨張速度は70bar/分である。これらの試験の素材であるマスクはKolmi OpAirPro Oxyge FFP2型マスクである。
【0052】
濾過有効性は、0.15g/mLと等しい単位体積当たり質量を有する超臨界COでの処理を受けたマスクについて、実質上元のマスクのそれと同じままであることが図2でわかるが、これは、マスクが、0.35、0.45又は0.65g/mLの単位体積当たり質量を受けた試験の場合ではない。
【0053】
実際、所定の温度に対して、試験は、圧力及びしたがって単位体積当たり質量が大きいほど、濾過有効性が低下すること、並びに圧力が、0.15g/mLと等しい単位体積当たり質量を有する超臨界COを得るように選ばれる場合、濾過特性(フィルター特性)が保存されることを示している(70℃と75/140/200barの試験、及び95℃と80/150barの試験を参照されたい)。
【0054】
したがって、本発明は、FFP2又はFFP3型の処理されたマスクの再使用を可能にする。実際、本発明は、それらの濾過特性を保存し、すなわち、それらの機械的障壁、すなわち繊維構造、及びそれらの静電気障壁、すなわち表面電荷の存在の両方を保存しながら、マスクを浄化することを可能にする。
【0055】
処理の殺生物特性を強化するために、少なくとも1種の殺生物化合物、例えば酸素化水(oxygenated water)が有利には、超臨界COに添加される。
【0056】
水が超臨界COにあまり可溶性でないとすると、有機共溶媒、例えば、水及びCOに対する親和性を有するエタノールが添加される。
【0057】
したがって、本発明の実施形態において、超臨界COは、アルコール及び水中の30質量%の酸素化水と以下の比率で混合される:
超臨界CO:300mL
水中の30質量%の酸素化水:0.25mL
エタノール:0.25mL
【0058】
試験は、この種の混合物を使用しての処理が、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)の胞子等の高耐性細菌に抗することを含めて、殺生物活性を有することを示した。
【0059】
同様に、マスク上の動物起源の血液のしみを用いる試験は、この方法が、この種の汚れに対する良好な浄化作用を有することを示している。
【0060】
本発明者らは、低すぎず、高すぎない、特定の速度で膨張(expansion)を行うことが、以下の表1から明らかとなるように、汚れの除去に関係がある場合、機械的かき混ぜの使用を回避しつつ、最良の結果をもたらすことを発見した。
【0061】
【表1】
【0062】
表1において、膨張速度は、したがって、好ましくは60~80bar/分の間(両端を含む)であることがわかる。この種の膨張速度は、かき混ぜを生じさせ、したがって汚れの除去を著しく改善することを可能にする。したがって、かき混ぜを生じさせるのは膨張であるので、例えば処理囲いの回転による機械的なかき混ぜを使用しないことが可能である。
【0063】
膨張は、好ましくは、実質上P/2において少なくとも1つの段階で達成され、ここでPは処理中の圧力を指す。P/2の段階は、それ自体、比較的短くても、例えば数秒の程度でもよい。
【0064】
本方法は、図3に概略的に表わされている設備1において実施されてもよい。
【0065】
設備1は、処理囲い(treatment enclosure)10、例えばオートクレーブ型の処理囲い10を含み、その中に処理されるマスクMが配置される。
【0066】
超臨界COは、COを貯蔵する貯槽(リザーバ)12に連結されたポンプ11によって注入されてもよい。
【0067】
少なくとも1つの貯槽(リザーバ)18中に含まれる追加の化合物は、任意の好適な手段によって、例えばポンプ13によって、処理囲い10の中へ導入されてもよい。
【0068】
設備は、有利には、所定の温度及び圧力サイクルが追跡されることを可能にするプログラム可能な圧力及び温度調整器を含む。
【0069】
超臨界COは分離器14によって膨張されて、混入している可能性がありかつ16において任意の好適な回収手段へと抜き出されうる追加の化合物を含まないCOの回収を可能にする。
【0070】
分離器14の出口におけるガス状COは、フィルター15、例えば活性炭フィルター中へ供給されてもよく、その後、それに続く再使用のために貯槽(リザーバ)12中に貯蔵される。
【0071】
上記の囲い10には機械的かき混ぜ機がなくてもよく、マスクMは処理中、その内側に不動のままであってもよい。
【0072】
その同じマスクが受けた浄化サイクル数の追跡が、好ましくは行われる。
【0073】
この追跡をもたらす1つの方法は、浄化サイクルごとにその色の一部のみを失うように作られた図4に図示されるような着色インジケーター20をマスクに設けることである。したがって、超臨界CO中での溶解性が知られており、かつ浄化サイクルごとに少し持ちこたえるインクを使用してこのマークを作るように選択がなされてもよい。
【0074】
このマークは、その消去が、そのマスクに対して認可される洗浄サイクルの最大数と実質的に一致するように作られてもよい。
【0075】
図5に図示されているように、マスクに施された浄化サイクル数に関する情報をデータベースに供給するために、したがって所定のマスクが多すぎる浄化回数を受けていないことを確かめるために、マスクには、同様に識別子21、例えばバーコード又はQRコード、又はRFIDチップを備えていてもよい。
【0076】
識別子の存在は、好適な場合には、浄化されたマスクが同じ使用者へと再分配されることを可能にする。
【0077】
複数のマスクが一緒に再包装される場合は、その再包装されたマスクは好ましくは同じ浄化サイクル数を受けている。
【0078】
当然のことながら、本発明は、記載されている例のみに限定されない。
【0079】
例えば、本発明は特にFFP2又はFFP3型のマスクに適用されるが、本発明は、メルトブロー型不織布を含めた外科型のマスク、特にポリプロピレン繊維に基づくもの、例えばスパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)外科用マスクにも同じく適用しうる。
【0080】
処理されたマスクは、弁(バルブ)が装備されていても、されていなくてもよい。
【0081】
本発明は、また、ディスク形態のフィルター材料、例えば、プラスチック材料マスクのシェルの上の対応するハウジング内に取り外し可能に取り付けられることが意図されたものを浄化することに適用される。
【0082】
超臨界流体は、超臨界CO以外、例えば同様の特性を有する亜酸化窒素NO、又はCOとNOの混合物であってもよい。
【0083】
必要であれば、マスク又はフィルター材料には、浄化の後に、そのフィルター特性の強化を目的とする任意の追加の処理が施されてもよい。
【0084】
必要であれば、他の化合物、特に殺生物剤は、超臨界流体に添加されてもよい。
【0085】
浄化されたマスクは再包装、特にプラスチック材料サシェ(sachet)又はダンボール箱の中に再包装されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 設備
10 囲い(処理囲い)
11 ポンプ
12 リザーバ
13 ポンプ
14 分離器
15 フィルター
16 減圧
M マスク
20 インジケーター
21 識別子
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】