(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】PD-L1/LAG-3二重特異性抗体製剤およびその調製方法ならびに使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230809BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230809BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230809BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230809BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230809BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230809BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230809BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230809BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230809BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230809BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230809BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K9/08 ZNA
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/12
A61P37/02
A61P35/00
C07K16/46
C07K16/18
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504418
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 CN2021107878
(87)【国際公開番号】W WO2022017468
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】202010720248.0
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519274183
【氏名又は名称】イノベント バイオロジクス(スーチョウ)カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ ティエンイー
(72)【発明者】
【氏名】マー イートン
(72)【発明者】
【氏名】ワン インチュエ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076DD01
4C076DD38
4C076DD42
4C076DD46
4C076DD51Z
4C076EE23
4C076FF36
4C076FF61
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、PD-L1/LAG-3二重抗体を含む製剤に関し、特にPD-L1/LAG-3二重抗体、緩衝剤、安定化剤、界面活性剤およびキレート剤を含む医薬製剤に関する。さらに、本発明は、疾患の治療または予防のためのこれらの製剤の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)PD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、
(ii)緩衝剤、
(iii)安定化剤、および
(iv)界面活性剤、
を含む液体抗体製剤であって、
式中、前記PD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質は、
(a)式(I)のポリペプチド鎖:
VH-CH1-Fc-X-VHH、および
(b)式(II)のポリペプチド鎖:
VL-CL、
を含むか、またはそれからなり、
式中、
前記VHは重鎖可変領域を示す、
前記CHは重鎖定常領域を示す、
前記FcはCH2、CH3および任意のCH4を含む、
前記CH1、前記CH2、前記CH3および前記CH4は、重鎖定常領域のドメイン1、2、3および4をそれぞれ示す、
前記Xは存在しなくてもよい、または存在する場合にリンカーを示す、
前記VHHは単一ドメイン抗原結合部位を示す、
前記VLは軽鎖可変領域を示す、
前記CLは軽鎖定常領域を示し、
場合により、前記CH1と前記Fcとの間にヒンジ領域が存在し、
ここで、前記VHHは、配列番号6に含まれる3つの相補性決定領域(VHH CDR)を含み、かつ/または、前記VHは、配列番号2に示される重鎖可変領域VHの3つの相補性決定領域HCDRを含み、かつ/または、前記VLは、配列番号8に示される軽鎖可変領域VLの3つの相補性決定領域LCDRを含み、
好ましくは、前記液体抗体製剤は、(v)キレート剤をさらに含み、
好ましくは、前記液体抗体製剤は、約5.8~6.4のpHを有し、例えば、6.0±0.2または6.2±0.2のpHを有し、好ましくは、約6.0のpHを有する、
液体抗体製剤。
【請求項2】
前記液体抗体製剤におけるPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質は、約10mg/mL~200mg/mLの濃度であり、好ましくは、約20mg/mL~100mg/mLの濃度であり、例えば、約20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90もしくは100mg/mLの濃度である、
請求項1に記載の液体抗体製剤。
【請求項3】
前記液体抗体製剤は、ヒスチジン-ヒスチジン塩酸塩緩衝系から選択される緩衝系を含み、
好ましくは、前記緩衝剤は、約5mM~50mMの濃度であり、好ましくは、約5mM~30mMの濃度であり、例えば、約5、10、15、20、25、30mMの濃度である、
請求項1または2に記載の液体抗体製剤。
【請求項4】
前記安定化剤は、ポリオール(例えば、ソルビトール、マンニトールおよびそれらの組み合わせ)、糖類(例えば、スクロース、トレハロース、マルトースおよびそれらの組み合わせ)、アミノ酸(例えば、アルギニン、アルギニン塩酸塩、メチオニン、グリシン、プロリンおよびそれらの組み合わせ)、およびそれらの任意の組み合わせから選択され、
例えば、前記安定化剤は、
-ソルビトール、マンニトール、およびそれらの組み合わせから選択されるポリオールと、
-スクロース、トレハロース、マルトース、およびそれらの組み合わせから選択される糖類と、
-アルギニン塩酸塩、メチオニン、グリシン、プロリンおよびそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸、から選択される1つまたは複数を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項5】
前記安定化剤は、
(i)約120mM~200mMのアルギニン、好ましくは、約150mM~180mM、例えば150、155、160、165、170、175、もしくは180mMのアルギニン、または
(ii)ソルビトールとアルギニンとの組み合わせであって、前記アルギニンが約60mM~100mM、好ましくは、約70mM~90mM、例えば70、75、80、85、90mMであり、前記ソルビトールが約10mg/mL~30mg/mL、好ましくは、約15mg/mL~25mg/mL、例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25mg/mLである組み合わせ、または
(iii)約60mg/mL~100mg/mLのスクロース、好ましくは、約70mg/mL~90mg/mL、例えば70、75、80、85、90mg/mLのスクロース、または
(iv)スクロースとアルギニンとの組み合わせであって、前記アルギニンが約60mM~100mM、好ましくは、約70mM~90mM、例えば70、75、80、85、もしくは90mMであって、かつ前記スクロースが約20mg/mL~60mg/mL、好ましくは、約35mg/mL~45mg/mL、例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、もしくは45mg/mLのである組み合わせ、を含み、
好ましくは、前記アルギニンはアルギニン塩酸塩である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項6】
前記液体抗体製剤における界面活性剤は、ポリソルベート系界面活性剤、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、およびそれらの組み合わせから選択され、好ましくはポリソルベート-80である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項7】
前記界面活性剤は、約0.1mg/mL~1mg/mLの濃度であり、好ましくは、約0.2mg/mL~0.8mg/mLの濃度であり、例えば、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、もしくは0.8mg/mLの濃度である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項8】
前記キレート剤は、カルボン酸型キレート剤であり、好ましくは、エデト酸二ナトリウムである、
請求項1~7のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項9】
前記キレート剤は、約0.008mg/mL~0.018mg/mLの濃度であり、例えば、約0.008、0.009、0.010、0.012、0.014、もしくは0.018mg/mLの濃度である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項10】
前記VHHは、相補性決定領域(CDR)VHH CDR1、VHH CDR2およびVHH CDR3を含み、ここで、前記VHH CDR1は、配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、前記VHH CDR2は、配列番号11のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、前記VHH CDR3は、配列番号12のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
かつ/または、前記VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、ここで、前記HCDR1は、配列番号13のアミノ酸配列を含むかそれからなり、前記HCDR2は、配列番号14のアミノ酸配列を含むかそれからなり、前記HCDR3は、配列番号15のアミノ酸配列を含むかそれからなり、
かつ/または、前記VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、ここで、前記LCDR1は、配列番号16のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、前記LCDR2は、配列番号17のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、前記LCDR3は、配列番号18のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、
請求項1~9のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項11】
前記VHHは、配列番号6に示される配列を含むかまたはそれからなり、かつ/または、前記VHは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、かつ/または、前記VLは、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、
請求項1~10のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項12】
前記式(I)におけるVH-CH1-Fcは、配列番号19のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、かつ/または、前記式(II)におけるVL-CLは、配列番号7のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、
好ましくは、
前記式(I)のポリペプチド鎖は、配列番号1に示される配列を含むかまたはそれからなり、かつ/または、前記式(II)のポリペプチド鎖は、配列番号7に示される配列を含むかまたはそれからなる、
請求項1~11のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項13】
前記PD-L1/LAG-3二重抗体は、HEK293細胞またはCHO細胞において組換え発現される、
請求項1~12のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項14】
前記液体製剤は注射剤であり、好ましくは皮下注射もしくは静脈内注射に使用され、または輸液剤であり、例えば静脈内注入に使用される、
請求項1~13のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の液体抗体製剤であって、前記液体抗体製剤は、
(i)約20mg/mL~100mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、
(ii)約5mM~30mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)約150mM~180mMのアルギニン、もしくは
ソルビトールとアルギニンとの組み合わせであって、前記アルギニンが約60mM~100mMであり、かつ前記ソルビトールが約10mg/mL~30mg/mLである組み合わせ、もしくは
約60mg/mL~100mg/mLのスクロース、もしくは
スクロースとアルギニンとの組み合わせであって、前記アルギニンが約60mg/mL~100mg/mLであって、かつ前記スクロースが約20mg/mL~60mg/mLである組み合わせ、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80、および
(v)約0.008mg/mL~0.018mg/mLのエデト酸二ナトリウム、を含み、
ここで、前記液体製剤は、約5.8~6.4のpHを有する液体抗体製剤、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約20mg/mL~60mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、
(ii)約5mM~15mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)約160mM~170mMのアルギニン、もしくは
ソルビトールとアルギニンとの組み合わせであって、前記アルギニンが約70mM~90mMであって、かつ前記ソルビトールが約15mg/mL~25mg/mLである組み合わせ、もしくは
約70mg/mL~90mg/mLのスクロース、もしくは
スクロースとアルギニンとの組み合わせであって、前記アルギニンが約70mM~90mMであって、前記スクロースが約35mg/mL~45mg/mLである組み合わせ、
(iv)約0.3mg/mL~0.6mg/mLのポリソルベート80、および
(v)約0.008mg/mL~0.018mg/mLのエデト酸二ナトリウム、を含み、
ここで、前記液体製剤は、約5.8~6.4のpHを有する液体抗体製剤、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約20mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、約10mMのヒスチジン緩衝剤、約165mMのアルギニン塩酸塩、約0.50mg/mLのポリソルベート80、および約0.01mg/mLのエデト酸二ナトリウムを、pH約6.0で、もしくは
(ii)約20mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、約10mMのヒスチジン緩衝剤、約80mMのアルギニン塩酸塩、約23.66mg/mLのソルビトール、約0.50mg/mLのポリソルベート80、および約0.01mg/mLのエデト酸二ナトリウムを、pH約6.0で、もしくは
(iii)約20mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、約10mMのヒスチジン緩衝剤、約80.00mg/mLのスクロース、約0.50mg/mLのポリソルベート80、および約0.01mg/mLのエデト酸二ナトリウムを、pH約6.0で、もしくは
(iv)約20mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、約10mMのヒスチジン緩衝剤、約80mMのアルギニン塩酸塩、約42.00mg/mLのスクロース、約0.50mg/mLのポリソルベート80、および約0.01mg/mLのエデト酸二ナトリウムを、pH約6.0で、含む、液体抗体製剤。
【請求項16】
前記製剤は、保存後、例えば25℃で少なくとも2ヶ月間、または40℃±2℃で1ヶ月間保存した後に安定であり、かつ好ましくは、以下:
(i)SEC-HPLC法により測定される場合、主ピークの変化値が1%よりも小さく、かつ/または製剤が96%よりも大きい純度、好ましくは97%、もしくは98%よりも大きい純度を有し、
(ii)非還元型CE-SDS法により測定される場合、主ピークの変化値が2%よりも小さく、かつ/または製剤が95%よりも大きい純度、好ましくは96%、もしくは97%よりも大きい純度を有し、
(iii)iCIEF法により測定される場合、保存0日目の初期値に対して、製剤におけるPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質の各成分(主成分、酸性成分および塩基性成分)の変化値の合計が40%を超えない、かつ/または主成分の変化値が20%を超えない、例えば40℃±2℃で1ヶ月間保存した後、変化値の合計が約40%を超えない(例えば、30%を超えない)、および/または主成分の変化値が約20%を超えない(例えば、15%を超えない)、または25℃で2ヶ月間保存した後、変化値の合計が約20%(例えば、約15%)を超えない、または主成分の変化値が約15%を超えない(例えば、約10%を超えない)、ならびに
(iv)ELISA法により測定される場合、保存0日目の初期値に対して、製剤におけるPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質の相対結合活性が70%~130%、例えば90%~110%である、という特徴の1つまたは複数を有し、
または、前記製剤は、5℃±3℃で少なくとも6ヶ月間保存した後に安定であり、かつ好ましくは、以下:
(i)純度に関して、SEC-HPLC法により測定される場合、主ピークは≧95.0%であり、
(ii)純度に関して、非還元型CE-SDS法により測定される場合、主ピークは≧90.0%であり、
(iii)電荷変異体に関して、iCIEF法により測定される場合、主成分は≧58.0%であり、
(iv)ルシフェラーゼレポーター遺伝子細胞測定法により測定される場合、製剤におけるPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質の相対結合活性が70%~130%であり、ならびに
(v)pH値が5.8~6.4である、という特徴の1つまたは複数を有する、
請求項1~15のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の液体抗体製剤を固化させることで得られ、例えば、注射用凍結乾燥粉末の形態である、
固体抗体製剤。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1項に記載の液体抗体製剤、または請求項17に記載の固体抗体製剤を含む、
送達装置。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか1項に記載の液体抗体製剤、または請求項17に記載の固体抗体製剤を含み、静脈内注射または筋肉内注射に使用される、
薬剤充填済み注射器。
【請求項20】
対象においてLAG-3および/またはPD-L1経路を阻害することで免疫抑制作用を低減または排除する送達装置、薬剤充填済み注射器もしくは薬物の製造における、
請求項1~16のいずれか1項に記載の液体抗体製剤または請求項17に記載の固体抗体製剤の使用。
【請求項21】
対象において、腫瘍を治療または予防する送達装置、薬剤充填済み注射器もしくは薬物の製造における、
請求項1~16のいずれか1項に記載の液体抗体製剤または請求項17に記載の固体抗体製剤の使用であって、前記腫瘍は、例えば胃腸管のがんである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、出願日が2020年7月23日の中国特許出願2020107202480の優先権を主張する。本願は、上記中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
技術分野
本発明は、抗体製剤の分野に関する。より具体的には、本発明は、PD-L1とLAG-3と同時に結合する二重特異性抗体を含む医薬製剤、特に安定な液体製剤、凍結乾燥製剤と再構成された安定な液体製剤、および前記医薬製剤を調製するための方法、ならびに前記医薬製剤の治療的かつ/または予防的使用に関する。
【背景技術】
【0003】
医薬品の安定性は、医薬品の有効性および安全性を確保する重要な指標の一つである。良好な製剤処方の取得は、貯蔵期間に医薬品の有効性および安全性を維持することを確保するための重要な条件である。しかし、抗体自体およびその分解経路の複雑さのため、現在、抗体安定性の最適化に必要な製剤条件を予測することがまだできない。特に、異なる抗体は通常、非常に異なるCDR配列、抗体構造を有し、これらの配列と構造の相違は、異なる抗体が溶液で異なる安定性特性を有することにつながると考えられる。したがって、ヒト用抗体への安全性および有効性における厳しい要求に基づき、それぞれの抗体に対して最適な製剤処方の最適化を個別に行う必要がある。
【0004】
LAG-3は、主に活性化されたT細胞およびNK細胞の細胞膜表面に発現し、免疫細胞による腫瘍細胞の殺傷活性を抑制する役割を果たす。PD-1/PD-L1シグナル経路は、免疫系による腫瘍除去を抑制する臨床的に広く実証された主要なメカニズムの一つである。LAG-3/MHC IIシグナル経路およびPD-1/PD-L1シグナル経路を同時に標的とすることは、臨床応用において一定の相乗効果を有することも証明されている。そのため、PD-1/PD-L1シグナル経路およびLAG-3/MHC IIを同時に阻害できる二重特異抗体の設計は、非常に大きな臨床応用価値を有する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、PD-L1とLAG-3に特異的に結合する二重特異性抗体を含む医薬製剤を提供することで、上記の要件を満たす。本発明の抗体製剤は、複数の安定性影響要因に対して、いずれも優れた安定性を示す。
【0006】
一態様において、そのため、本発明は、(i)PD-L1/LAG-3の二重特異性抗体、(ii)緩衝剤、(iii)安定化剤、および(iv)界面活性剤を含む液体抗体製剤を提供する。好ましくは、当該液体抗体製剤は、(v)キレート剤をさらに含む。
【0007】
一実施形態において、本発明のPD-L1/LAG-3の二重特異性抗体の構造は、
図1に示すように、ここで、抗原Aは、LAG-3であり、抗原Bは、PD-L1であり、その構造は、
(i)式(I)のポリペプチド鎖:
VH-CH1-Fc-X-VHH、および
(ii)式(II)のポリペプチド鎖:
VL-CL、
を含み、
式中、
VHは重鎖可変領域を示す、
CHは重鎖定常領域を示す、
FcはCH2、CH3および任意のCH4を含む、
CH1、CH2、CH3およびCH4は、重鎖定常領域のドメイン1、2、3および4をそれぞれ示す、
Xは存在しなくてもよく、または存在する場合にリンカーを示す、
VHHは単一ドメイン抗原結合部位を示す、
VLは軽鎖可変領域を示す、
CLは軽鎖定常領域を示す、
場合により、CH1とFcとの間にヒンジ領域が存在する。
【0008】
一実施例において、本発明のPD-L1/LAG-3二重特異性抗体は、次の表に示す配列を含む:
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【0009】
前記PD-L1/LAG-3二重特異性抗体は、PCT出願号PCT/CN2020/073964(国際出願日:2020年1月23日)に開示された二重特異性抗体IGN-LPである。
【0010】
一実施形態において、前記PD-L1/LAG-3二重特異性抗体は、HEK293細胞またはCHO細胞において組換えて発現される。
【0011】
一実施形態において、本発明の液体抗体製剤におけるPD-L1/LAG-3二重抗体は、約10mg/mL~200mg/mLの濃度である。別の実施形態において、本発明の液体抗体製剤におけるPD-L1/LAG-3二重抗体は、約20mg/mL~100mg/mLの濃度であり、例えば、約20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90もしくは100mg/mLの濃度であり、好ましくは、PD-L1/LAG-3二重抗体は、約20mg/mL~60mg/mLの濃度であり、より好ましくは、約20mg/mL~30mg/mLである。
【0012】
一実施形態において、本発明の液体抗体製剤における緩衝剤は、約5mM~50mMの濃度である。一実施形態において、本発明の液体抗体製剤における緩衝剤は、約5mM~30mMの濃度であり、例えば、約5、10、15、20、25、30mMの濃度である。一実施形態において、前記緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤であり、好ましくは、前記緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤である。一実施形態において、前記緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤であり、好ましくは、前記緩衝剤は、ヒスチジンとヒスチジン塩酸塩とからなる。好ましい一実施形態において、前記緩衝剤は、約5mM~30mMのヒスチジン緩衝剤、例えば5mM~15mM、例えば約10mMのヒスチジン緩衝剤である。別の実施形態において、本発明の製剤に使用されるヒスチジン緩衝剤は、例えば約0.85mg/mLのヒスチジンと約0.97mg/mLのヒスチジン塩酸塩とからなる。
【0013】
一実施形態において、本発明の液体抗体製剤における安定化剤は、ポリオール(例えば、ソルビトール、マンニトールおよびそれらの組み合わせ)、糖類(例えば、スクロース、トレハロース、マルトースおよびそれらの組み合わせ)、アミノ酸(例えば、アルギニン塩酸塩、メチオニン、グリシン、プロリンおよびそれらの組み合わせもしくはその塩)、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。一実施形態において、前記安定化剤は、約10mg/mL~80mg/mLのソルビトール、例えば10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80mg/mL、好ましくは、約15mg/mL~25mg/mLのソルビトールを含む。別の実施形態において、前記安定化剤は、約20mg/mL~100mg/mLのスクロース、例えば20、30、40、50、60、70、80、90、100mg/mLのスクロース、好ましくは、約40mg/mL~80mg/mLのスクロースを含む。一実施形態において、前記安定化剤は、例えば、約50mM~200mM、例えば60mM~180mM、好ましくは、約70mM~170mMのアルギニンを含む。好ましくは、前記アルギニンは、アルギニン塩酸塩である。
【0014】
一実施形態において、前記安定化剤は、アルギニンを単一成分として、前記アルギニンは、約120mM~200mM、好ましくは、約150mM~180mM、例えば150、155、160、165、170、175、180mM、より好ましくは、約160mM~170mMである。好ましくは、前記アルギニンは、アルギニン塩酸塩である。
【0015】
一実施形態において、前記安定化剤は、約10mg/mL~30mg/mL、好ましくは、約15mg/mL~25mg/mL、例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25mg/mLのソルビトールと、約60mM~100mM、好ましくは、約70mM~90mM、例えば70、75、80、85、90mMのアルギニンとの組み合わせを含む。好ましくは、前記アルギニンは、アルギニン塩酸塩である。
【0016】
一実施形態において、前記安定化剤は、スクロースを単一成分として、前記スクロースは、約60mg/mL~100mg/mL、好ましくは、約70mg/mL~90mg/mL、例えば70、75、80、85、90mg/mLである。
【0017】
一実施形態において、前記安定化剤は、約20mg/mL~60mg/mL、好ましくは、約35mg/mL~45mg/mL、例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45mg/mLのスクロースと、約60mM~100mM、好ましくは、約70mM~90mM、例えば70、75、80、85、90mMのアルギニンとの組み合わせを含む。好ましくは、前記アルギニンは、アルギニン塩酸塩である。
【0018】
一実施形態において、前記界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。一実施形態において、前記界面活性剤は、ポリソルベート系界面活性剤、ポロキサマー、ポリエチレングリコールから選択される。一実施形態において、前記界面活性剤はポリソルベート系界面活性剤から選択される。一具体的な実施形態において、本発明の液体抗体製剤における界面活性剤はポリソルベート-80である。
【0019】
一実施形態において、本発明の液体抗体製剤における界面活性剤は、約0.1mg/mL~1mg/mLの濃度である。一実施形態において、本発明の液体抗体製剤における界面活性剤は、約0.2mg/mL~0.8mg/mLの濃度であり、例えば、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、もしくは0.8mg/mLの濃度である。
【0020】
一実施形態において、本発明の液体製剤におけるキレートは、カルボン酸型キレート剤である。一実施形態において、前記キレート剤は、エデト酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシンから選択される。一実施形態において、前記キレート剤はエデト酸二ナトリウムから選択される。
【0021】
一実施形態において、本発明の液体抗体製剤におけるキレート剤は、約0.005mg/mL~0.05mg/mLの濃度である。一実施形態において、本発明の液体抗体製剤におけるキレート剤は、約0.008mg/mL~0.018mg/mLの濃度であり、例えば、約0.008、0.009、0.010、0.012、0.014、もしくは0.018mg/mLの濃度である。
【0022】
一実施形態において、前記液体製剤は、約5.5~6.5のpH値を有する。幾つかの実施形態において、前記液体製剤は、約5.5~6.5のうちの任意値のpH値を有し、例えば、約5.6、5.8、6.0、6.2、6.4である。好ましくは、前記製剤は、5.8~6.4のpHを有し、例えば、6.0±0.2または6.2±0.2のpHを有し、好ましくは6.0のpHを有する。
【0023】
一実施形態において、本発明の液体抗体製剤は、
(i)約20mg/mL~100mg/mL、例えば20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90もしくは100mg/mL、好ましくは、20mg/mL~60mg/mL、より好ましくは、20mg/mL~30mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、
(ii)約5mM~30mM、好ましくは、約5mM~15mM、より好ましくは、約10mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)約150mM~180mM、例えば150、155、160、165、170、175、180mM、好ましくは、約160mM~170mMのアルギニン、または約10mg/mL~30mg/mL、好ましくは、約15mg/mL~25mg/mL、例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25mg/mLのソルビトールと、約60mM~100mM、例えば60、65、70、75、80、85、90、100mM、好ましくは、約70mM~90mMのアルギニンとの組み合わせ、または約60mg/mL~100mg/mL、好ましくは、約70mg/mL~90mg/mL、例えば70、75、80、85、90mg/mLのスクロース、もしくは、約20mg/mL~60mg/mL、好ましくは、約35mg/mL~45mg/mL、例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45mg/mLのスクロースと、約60mM~100mM、例えば60、65、70、75、80、85、90、100mM、好ましくは、約70mM~90mMのアルギニンとの組み合わせ、もしくは
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mL、例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8mg/mL、例えば0.3mg/mL~0.6mg/mLのポリソルベート80、を含み
好ましくは、前記液体抗体製剤は、(v)約0.008mg/mL~0.018mg/mL、例えば、約0.008、0.009、0.010、0.012、0.014、もしくは0.018mg/mLのエデト酸二ナトリウムをさらに含み、
ここで、前記液体製剤は、約5.5~6.5のpHを有し、好ましくは、約5.8~6.4のpHを有し、例えば、6.0±0.2または6.2±0.2のpHを有し、例えば、約6.0である。
【0024】
好ましい一実施形態において、前記液体抗体製剤は、
(i)約20mg/mL~100mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、
(ii)約5mM~30mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)約150mM~180mMのアルギニン、もしくは
ソルビトールとアルギニンとの組み合わせであって、前記アルギニンが約60mM~100mMであり、かつ前記ソルビトールが約10mg/mL~30mg/mLである組み合わせ、もしくは
約60mg/mL~100mg/mLのスクロース、もしくは
スクロースとアルギニンとの組み合わせであって、前記アルギニンが約60mg/mL~100mg/mLであって、かつ前記スクロースが約20mg/mL~60mg/mLである組み合わせ、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80、および
(v)約0.008mg/mL~0.018mg/mLのエデト酸二ナトリウム、を含み、 ここで、前記液体製剤は、約5.8~6.4のpHを有する液体抗体製剤、
好ましい一実施形態において、前記液体抗体製剤は、
(i)約20mg/mL~60mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、
(ii)約5mM~15mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)約160mM~170mMのアルギニン、もしくは
ソルビトールとアルギニンとの組み合わせであって、前記アルギニンが約70mM~90mMであって、かつ前記ソルビトールが約15mg/mL~25mg/mLである組み合わせ、もしくは
約70mg/mL~90mg/mLのスクロース、もしくは
スクロースとアルギニンとの組み合わせであって、前記アルギニンが約70mM~90mMであって、前記スクロースが約35mg/mL~45mg/mLである組み合わせ、
(iv)約0.3mg/mL~0.6mg/mLのポリソルベート80、および
(v)約0.008mg/mL~0.018mg/mLのエデト酸二ナトリウム、を含み、 ここで、前記液体製剤は、約5.8~6.4のpHを有する液体抗体製剤、
好ましい一実施形態において、前記液体抗体製剤は、
(i)約20mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、約10mMのヒスチジン緩衝剤、約165mMのアルギニン塩酸塩、約0.50mg/mLのポリソルベート80、および約0.01mg/mLのエデト酸二ナトリウムを、pH約6.0で、もしくは
(ii)約20mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、約10mMのヒスチジン緩衝剤、約80mMのアルギニン塩酸塩、約23.66mg/mLのソルビトール、約0.50mg/mLのポリソルベート80、および約0.01mg/mLのエデト酸二ナトリウムを、pH約6.0で、もしくは
(iii)約20mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、約10mMのヒスチジン緩衝剤、約80.00mg/mLのスクロース、約0.50mg/mLのポリソルベート80、および約0.01mg/mLのエデト酸二ナトリウムを、pH約6.0で、もしくは
(iv)約20mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質、約10mMのヒスチジン緩衝剤、約80mMのアルギニン塩酸塩、約42.00mg/mLのスクロース、約0.50mg/mLのポリソルベート80、および約0.01mg/mLのエデト酸二ナトリウムを、pH約6.0で、含む。
【0025】
本発明の液体製剤は、例えば、少なくとも24ヶ月またはそれ以上の期間など、長期間にわたり安定に保存することができる。一実施形態において、本発明の液体製剤は、約-80℃~約45℃、例えば、-80℃、約-30℃、約-20℃、約0℃、約5℃、約25℃、約35℃、約38℃、約40℃、約42℃もしくは約45℃の条件下で、少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも7ヶ月間、少なくとも8ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、少なくとも10ヶ月間、少なくとも11ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも36ヶ月間もしくはそれ以上の期間で安定して保存することができる。
【0026】
一実施形態において、本発明の液体製剤は、少なくとも24ヶ月間安定に保存することができる。さらに別の実施形態において、本発明の液体製剤は、少なくとも40℃で安定である。さらに別の実施形態において、本発明の液体製剤は、約2℃~8℃で少なくとも3ヶ月間、好ましくは少なくとも12ヶ月間、より好ましくは24ヶ月間安定している。一実施形態において、本発明の液体製剤は、室温または例えば約25℃で、少なくとも2ヶ月間、好ましくは少なくとも3ヶ月間、より好ましくは6ヶ月間安定している。さらに別の実施形態において、本発明の液体製剤は、約40℃で少なくとも2週間、好ましくは少なくとも1ヶ月間安定している。
【0027】
一実施形態において、製剤の外観、可視異物、タンパク質含有量、濁度、純度、界面活性剤含有量、相対結合活性、かつ/または電荷変異体の変化を検出することにより、製剤の安定性を示すことができる。一実施形態において、高温ストレスの強制実験において、例えば40℃±2℃で少なくとも1週間、2週間もしくは好ましくは1ヶ月間保存した後、または加速実験において、例えば25℃±2℃で少なくとも1ヶ月間または2ヶ月間保存した後、または長期実験において、例えば5℃±3℃で少なくとも2ヶ月間または3ヶ月間保存した後、または振とう実験において(例えば室温、遮光、650r/minの条件下で5日間振とうする)、かつ/または凍結融解実験において(例えば、-30℃/室温で凍結融解を6回繰り返す)、本発明の液体製剤の安定性を検出することができる。一実施形態において、初期値、例えば保存0日目の初期値、または振とうや凍結融解実験前の初期値に対して、本発明の液体製剤の安定性を検出する。
【0028】
一実施形態において、保存後、または振とう実験後、または凍結融解実験後、目視で本発明の液体製剤の安定性を検査し、ここで、本発明の液体製剤は外観で澄明から薄い乳白光まで保持しており、無色から薄い黄色の液体であり、かつ異物がない。一実施形態において、透明度測定器により目視で検査すると、製剤には可視異物がない。一実施形態において、保存後、または振とう実験後、または凍結融解実験後、タンパク質含有量の変化を測定することにより、本発明の液体製剤の安定性を検査し、ここで、例えば、紫外線分光光度(UV)法による場合、初期値に対して、タンパク質含有量の変化率は20%を超えない、好ましくは10%を超えない、例えば7%~8%であり、より好ましくは5%、2%もしくは1%を超えない。一実施形態において、保存後、または振とう実験後、または凍結融解実験後、本発明の液体製剤の濁度変化を測定することにより、本発明の液体製剤の安定性を検査し、ここで、例えばOD350nm法により検出される場合、初期値に対して、変化値は0.06を超えない、好ましくは0.05を超えない、より好ましくは0.04を超えない、0.02を超えない。一実施形態において、保存後、または振とう実験後、または凍結融解実験後、本発明の液体製剤の純度変化を測定することにより、本発明の液体製剤の安定性を検査し、ここで、サイズ排除-高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)による場合、初期値に対して、モノマーの純度の変化値(または主ピークの変化値)は10%を超えない、例えば5%、4%または3%を超えない、例えば変化値は2%を超えない、好ましくは1%を超えない。一実施形態において、保存後、または振とう実験後、または凍結融解実験後、本発明の液体製剤の純度変化を測定することにより、本発明の液体製剤の安定性を検査し、ここで、非還元型ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動(CE-SDS)法による場合、初期値に対して、モノマーの純度の変化値(または主ピークの変化値)の低下は10%を超えない、例えば5%、4%、3%、2%もしくは1%を超えない。一実施形態において、保存後、または振とう実験後、または凍結融解実験後、イメージングキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)により、本発明の液体製剤の安定性を検出し、ここで、初期値に対して、抗体の電荷変異体(主成分、酸性成分および塩基性成分)の変化値の合計は50%を超えない、例えば40%、30%、20%、10%もしくは5%を超えない、および/もしくは主成分の変化値は20%、15%、10%、8%もしくは5%を超えない。一実施形態において、保存後、または振とう実験後、または凍結融解実験後、直接ELISA法により、本発明の液体製剤の安定性を検出し、ここで、初期値に対して、抗体の相対結合活性は70%~130%、例えば70、80、90、93、95、98、100、103、105、108、110、115、120、125、130%、好ましくは90%~110%である。一実施形態において、保存後、または振とう実験後、または凍結融解実験後、高速液体クロマトグラフィー-蛍光検出法(HPLC-FLD法)により、ポリソルベート80の含有量を検出し、ポリソルベート80の含有量は、0.2mg/mL~0.8mg/mL、好ましくは、0.3mg/mL~0.7mg/mLである。
【0029】
一実施形態において、本発明の液体製剤は、保存後、例えば25℃で少なくとも2ヶ月間、または40℃±2℃で1ヶ月間保存した後に安定であり、かつ好ましくは以下の特徴の1つまたは複数を有する:保存0日目の初期値に対して、
(i)SEC-HPLC法により測定される場合、主ピークの変化値が1%よりも小さく、かつ/または製剤が96%よりも大きい純度、好ましくは97%、もしくは98%よりも大きい純度を有し、
(ii)非還元型CE-SDS法により測定される場合、主ピークの変化値が2%よりも小さく、及び/又は96%よりも大きい純度、好ましくは97%、もしくは98%よりも大きい純度を有し、
(iii)iCIEF法により測定される場合、製剤におけるPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質の各成分(主成分、酸性成分および塩基性成分)の変化値の合計が40%を超えない、かつ/または主成分の変化値が20%を超えない、
例えば、40℃±2℃で1ヶ月間保存した後、変化値の合計が約40%を超えない(例えば、35%、30%、25%、20%、15%、10%を超えない)、および/または主成分の変化値が20%を超えない(例えば、15%、12%、10%、8%を超えない)、または
例えば、25℃で2ヶ月間保存した後、変化値の合計が約20%を超えない(例えば、15%、14%、13%、12%を超えない)、または主成分の変化値が約15%を超えない(例えば、10%、8%、7%、6%、5%を超えない)、ならびに
(iv)ELISA法により測定される場合、製剤におけるPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質の相対結合活性が70%~130%、例えば、90、93、95、98、100、103、105、108、110、115、120%であり、
一実施形態において、本発明の液体製剤は、保存後、例えば5℃±3℃で少なくとも6ヶ月間保存した後に安定であり、かつ好ましくは、以下の特徴の1つまたは複数を有する:
(i)純度に関して、SEC-HPLC法により測定される場合、主ピークは≧95.0%であり、
(ii)純度に関して、非還元型CE-SDS法により測定される場合、主ピークは≧90.0%であり、
(iii)電荷変異体に関して、iCIEF法により測定される場合、主成分は≧58.0%であり、
(iv)ルシフェラーゼレポーター遺伝子細胞測定法により測定される場合、製剤におけるPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質の生物学的活性が70%~130%であり、
(v)pH値が5.8~6.4である。
【0030】
一態様において、本発明の液体製剤は医薬製剤であり、好ましくは注射剤であり、より好ましくは皮下注射剤もしくは静脈内注射剤である。一実施形態において、前記液体製剤は静脈内輸液剤である。
【0031】
別の態様において、本発明は、本発明の液体抗体製剤に対して固化処理を行うことで得られる固体抗体製剤を提供する。前記固化処理は、例えば、結晶法、噴霧乾燥法または冷凍乾燥法により実施される。好ましい一実施形態において、前記固体抗体製剤は、例えば、注射用凍結乾燥粉末の形態である。固体抗体製剤は、使用前に適切な溶媒に再構成されることにより、本発明の再構成製剤を形成することができる。前記再構成製剤も、本発明の液体抗体製剤である。一実施形態において、前記適切な溶媒は、注射用水、注射用有機溶媒から選択され、注射用油、エタノール、プロピレングリコールなど、もしくはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0032】
一態様において、本発明は、本発明の液体抗体製剤または固体抗体製剤を含む送達装置を提供する。一実施形態において、本発明の送達装置は、本発明の液体抗体製剤または固体抗体製剤を含む薬剤充填済み注射器の形態で提供され、例えば、静脈内、皮下、皮内もしくは筋肉内注射、静脈内注入に用いられる。
【0033】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の液体抗体製剤または固体抗体製剤を対象に投与するステップを含むPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質を、例えば哺乳類などの対象に送達する方法を提供し、前記送達は、例えば、薬剤充填済み注射器を利用する送達装置により実施される。
【0034】
さらに別の態様において、本発明は、LAG-3とPD-L1シグナル経路を同時に標的として、腫瘍を治療または予防する送達装置、薬剤充填済み注射器もしくは医薬を製造するための、本発明の液体抗体製剤または固体抗体製剤の使用を提供し、前記腫瘍は、例えば結腸がん、結腸直腸がんもしくは直腸がんなどの胃腸管のがんを含むが、これに限定されない。
【0035】
本発明は、対象に本発明の液体抗体製剤または固体抗体製剤または当該液体抗体製剤もしくは固体抗体製剤を含む送達装置(例えば、薬剤充填済み注射器)または医薬を投与することにより、対象においてLAG-3かつ/またはPD-L1シグナル経路を阻害してLAG-3かつ/またはPD-L1の免疫抑制作用を低減または排除する方法をさらに提供する。
【0036】
本発明は、対象に本発明の液体抗体製剤または固体抗体製剤または当該液体抗体製剤もしくは固体抗体製剤を含む送達装置(例えば、薬剤充填済み注射器)または医薬を投与することにより、対象の疾患、例えば上記腫瘍を治療する方法をさらに提供する。
【0037】
本発明の他の実施形態は、後述する詳細な説明を参照することにより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下の図面と合わせて読めば、次に詳細に記載される本発明の好ましい実施形態がより良く理解される。本発明を説明するために、図面には現在の好ましい実施形態が示されている。しかしながら、本発明は、図面に示される実施形態の精確な配置と手段に限定されないと理解すべきである。
【
図1】本発明のPD-L1/LAG-3の二重特異性抗体構造である。
【
図2】処方スクリーニング実験純度(SEC-HPLC法)の変化トレンド図(40℃±2℃)である。
【
図3】処方スクリーニング実験濁度(OD350nm法)の変化トレンド図(40℃±2℃)である。
【
図4】処方スクリーニング実験電荷変異体-酸性成分(iCIEF法)の変化傾向図(40℃±2℃)である。
【
図5】処方スクリーニング実験電荷変異体-主成分(iCIEF法)の変化トレンド図(40℃±2℃)である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明を詳しく説明するに先立ち、前記方法および条件は変更可能であるため、本発明は、本明細書における特定の方法および実験条件に限定されないと理解しておくべきである。なお、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、限定する意図はない。
【0040】
定義
別に定義しない限り、本明細書に用いられるすべての技術と科学用語はいずれも、当業者に通常に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の目的のために、以下、下記用語を定義する。
【0041】
「約」という用語は、数字または数値とともに使用される場合、下限として指定された数字または数値より5%小さく、上限として指定された数字または数値より5%大きい範囲内の数字または数値をカバーすることを意味する。
【0042】
「かつ/または」という用語は、2つまたは複数のオプションの接続に使用される場合、オプションのうちのいずれか1項またはオプションのうちのいずれか2項もしくは複数項を指すと理解すべきである。
【0043】
本明細書に使用されるように、「包含する」または「含む」という用語は、記載される要素、整数またはステップを含むが、任意の他の要素、整数またはステップを排除しないことを意味する。本明細書において、「包含する」または「含む」という用語を用いる場合、特記しない限り、言及される要素、整数またはステップからなる場合も含まれる。例えば、ある具体的な配列の抗体可変領域を「含む」ことが言及される場合、当該具体的な配列からなる抗体可変領域を含むことも意図する。
【0044】
本明細書において、「抗体」という用語は、抗原結合部位を含むタンパク質を指すように最も広い意味で使用され、様々な構造の天然抗体および人工抗体を包含し、無傷抗体および抗体の抗原結合断片を含むが、これらに限定されない。
【0045】
「全抗体」、「全長抗体」、「完全抗体」および「無傷抗体」という用語は、ジスルフィド結合を介して互いに接続された少なくとも2本の重鎖(H)と2本の軽鎖(L)とを含む天然に存在する糖タンパク質を指す。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と重鎖定常領域とからなる。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインからなる。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)と軽鎖定常領域とからなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。VH領域およびVL領域は、間に保存的な領域(フレームワーク領域(FR))が介在している超可変領域(相補性決定領域(CDR)にさらに分けることができる。それぞれのVHおよびVLは、3つのCDRと4つのFRとからなり、アミノ末端からカルボキシル末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列されている。定常領域は、抗体と抗原の結合に直接関与しないが、種々のエフェクター機能を示している。
【0046】
「抗体製剤」という用語は、活性成分としての抗体の生物活性が効果的に発揮できる形態であるとともに、当該製剤が投与される対象にとって許容できない毒性を有する他の成分を含まない調製物を指す。このような抗体製剤は通常、滅菌のものである。通常、抗体製剤には、薬学的に許容可能な賦形剤が含まれる。「薬学的に許容可能な」賦形剤は、製剤に使用される活性成分の有効投与量が対象に送達できるように、被験哺乳動物に適当に投与可能な試薬である。賦形剤の濃度は、投与方式に対応し、例えば、注射に許容可能な濃度であってもよい。
【0047】
「PD-L1/LAG-3二重抗体製剤」という用語は、本明細書で「本発明の抗体製剤」とも略称され、活性成分とするPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質と薬学的に受容可能な賦形剤とを含む調製物を指す。PD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質と薬学的に受容可能な賦形剤を組合せた後、活性成分とするPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質はヒトまたは非ヒト動物に対する治療用または予防用投与に適する。本発明の抗体製剤は、例えば、すぐに使用できる薬剤充填済み注射器のような水性形態の液体製剤に調製されてもよく、または、使用直前に生理的に許容可能な溶液に溶解かつ/または懸濁させることで再構成(すなわち、再溶解)される凍結乾燥製剤に調製されてもよい。幾つかの実施形態において、PD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質製剤は液体製剤形態である。
【0048】
「安定な」抗体製剤は、製剤における抗体が特定条件下で保存された後、または振とうされた後、または繰り返し凍結融解された後に許容可能な程度の物理的安定性かつ/または化学的安定性を保持しているものを指す。抗体製剤に含まれる抗体は保存、振とうまたは繰り返し凍結融解の後にその化学構造を100%維持できない可能性があるが、通常、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%もしくは約99%の抗体の構造または機能が維持されると、抗体製剤が「安定」であると考えられる。幾つかの具体的な実施形態において、本発明のPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質製剤は、製造、調製、輸送と長期保存中に検出されないほど低い抗体の凝集または分解または化学的修飾を示すため、PD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質の生物活性の損失が非常に少なく、またはなく、高い安定性を示している。幾つかの実施形態において、本発明のPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質は保存、振とうかつ/または繰り返し凍結融解の後に、その物理的または化学的安定性を実質的に保持している。好ましくは、本発明の液体製剤は、室温または40℃で少なくとも2週間安定し、かつ/または25℃で少なくとも2ヶ月間安定し、かつ/または2℃~8℃で少なくとも6ヶ月間安定することができる。
【0049】
この分野では、タンパク質の安定性の測定に使用できる解析技術が複数知られており、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs(1991)and Jones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)を参照する。選定された温度および選定された保存時間で安定性を測定することができる。例えば、予期される製剤の貯蔵期間に基づいて保存時間を選択することができる。場合により、加速安定性試験を使用することができる。幾つかの実施形態において、抗体製剤に対して種々のストレス試験を実施することで安定性試験が行われる。これらの試験は、製造、保存または輸送期間に調製された抗体製剤の遭遇可能な苛酷条件を表してもよく、非製造、保存または輸送期間に抗体製剤における抗体の不安定性を加速可能な条件を表してもよい。例えば、高温苛酷における抗体安定性を測定するために、調製されたPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質製剤をガラス瓶に充填することができる。
【0050】
一定期間の保存後、または一定期間の振とう後または複数回の繰り返し凍結融解後に、製剤は、凝集、沈殿、混濁かつ/または変性を示さず、または非常に少ない凝集、沈殿、混濁かつ/または変性を示していると、抗体が製剤において「その物理的安定性を保持している」と考えることができる。製剤における抗体の凝集により、患者の免疫反応を潜在的に増加させ、安全性の問題を引き起こすがあり得る。したがって、製剤における抗体の凝集を最小化するか、または凝集を防止する必要がある。光散乱法は、製剤における可視凝集物の測定に用いることができる。SEC-HPLCは、製剤における可溶性凝集物の測定に用いることができる。また、目視で製剤の外観、色かつ/または清澄度を検査し、OD350nm法により製剤の濁度を検出し、あるいは非還元型CE-SDS法により製剤の純度を測定することで、製剤の安定性を示すことができる。一実施形態において、特定の温度で特定の期間保存した後、または振とうした後または繰り返し凍結融解した後の製剤における抗体モノマーの百分率を測定することにより、製剤の安定性を測定し、ここで、製剤における抗体モノマーの百分率が大きいほど、製剤の安定性が高くなる。
【0051】
「許容可能な程度の」物理的安定性は、特定の温度で特定の時間保存した後、振とうした後または繰り返し凍結融解した後に、製剤において少なくとも約90%のPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質モノマーが検出されることを示すことができる。幾つかの実施形態において、特定の温度で少なくとも2週間、少なくとも28日、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも24ヶ月もしくはそれ以上の期間保存した後、許容可能な程度の物理的安定性は、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質モノマーを示す。物理的安定性を評価する場合に、医薬製剤を保存する特定の温度は、約-80℃~約45℃のいずれか1つの温度であってもよく、例えば、約-80℃、約-30℃、約-20℃、約0℃、約4℃~8℃、約5℃、約25℃、約35℃、約37℃、約40℃、約42℃もしくは約45℃で保存する。例えば、約40℃±2℃で1ヶ月間または4週間保存した後、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質モノマーが検出されると、医薬製剤は、安定であると見なされる。約25℃で2ヶ月保存した後に、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質モノマーが検出されると、医薬製剤が安定的であると考えられる。約5℃で6ヶ月間保存した後、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質モノマーが検出されると、医薬製剤は、安定であると見なされる。
【0052】
一定期間の保存後、または一定期間の振とう後または複数回の繰り返し凍結融解後に、製剤における抗体が顕著な化学的変化を示さないと、抗体が製剤において「その化学的安定性を保持している」と考えることができる。化学的不安定性のほとんどは、抗体の共有結合修飾形態(例えば、抗体の電荷変異体)が形成されたことに由来する。例えば、アスパラギン酸異性化、NおよびC末端修飾により塩基性変異体を形成することができ、脱アミド化、シアル酸化および糖化により酸性変異体を形成することができる。化学的安定性は、抗体の化学的変化形態を検出かつ/または定量することで評価することができる。例えば、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)またはイメージングキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)により、製剤における抗体の電荷変異体を検出することができる。一実施形態において、特定の温度で特定の時間保存した後、または振とう後または複数回の繰り返し凍結融解後に、製剤における抗体の電荷変異体の百分率の変化値を測定することにより、製剤の安定性を測定し、ここで、当該変化値が小さいほど、製剤の安定性が高くなる。
【0053】
「許容可能な程度」の化学的安定性は、特定の温度で特定の時間保存した後、または一定時間の振とう後または複数回の繰り返し凍結融解後に、製剤における電荷変異体(例えば、主成分または酸性成分または塩基性成分)の百分率の変化値が40%を超えない、例えば30%を超えない、20%を超えない、または電荷変異体(主成分、酸性成分および塩基性成分)の百分率変化値の合計が60%を超えない、例えば50%を超えない、30%を超えない、または主成分含有量が50%以上、例えば60%以上、70%以上であることを示すことができる。幾つかの実施形態において、特定の温度で少なくとも2週間、少なくとも28日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも7ヶ月間、少なくとも8ヶ月間、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月間、少なくとも11ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間もしくはそれ以上の期間保存した後、許容可能な程度の化学的安定性は、主成分である電荷変異体の百分率の変化値が約50%、40%、30%、20%もしくは15%以下、または電荷変異体の百分率変化値の合計が約60%、50%もしくは30%以下であることを示すことができる。化学的安定性を評価する場合に、医薬製剤を保存する温度は、約-80℃~約45℃のいずれか1つの温度であってもよく、例えば、約-80℃、約-30℃、約-20℃、約0℃、約4℃~8℃、約5℃、約25℃もしくは約45℃で保存する。例えば、5℃で24ヶ月間保存した後、主成分である電荷変異体の百分率の変化値が約25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%もしくは0.1%未満であると、医薬製剤は、安定的であると見なすことができる。25℃で2ヶ月間保存した後、主成分である電荷変異体の百分率の変化値が約20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%もしくは0.1%未満であると、医薬製剤は、安定的であると見なすこともできる。40℃で1ヶ月間保存した後、主成分である電荷変異体の百分率の変化値が約50%、40%、30%、20%、16%、15%、14%、13%、12%、10%、5%もしくは4%未満であると、医薬製剤は、安定的であると見なすこともできる。
【0054】
「凍結乾燥製剤」という用語は、液体製剤の冷凍乾燥処理により得られ、または取得可能な組成物を指す。好ましくは、それは5%よりも少ない、好ましくは3%よりも少ない水含有量を有する固体組成物である。
【0055】
「再構成製剤」という用語は、固体製剤(例えば、凍結乾燥製剤)を生理的に許容可能な溶液に溶解かつ/または懸濁させることで得られた液体製剤を指す。
【0056】
本明細書で使用される「室温」という用語は、15℃~30℃、好ましくは20℃~27℃、より好ましくは25℃の温度を指す。
【0057】
「ストレス条件」とは、例えば、高温、振とうおよび凍結融解など、許容できない抗体タンパク質の不安定化をもたらす、化学的かつ/または物理的に抗体タンパク質に不利な環境を指す。「高温ストレス」は、抗体製剤を室温またはそれ以上の温度(例えば40℃±2℃)で置いて一定期間保存することを指す。高温ストレス加速試験によって、抗体製剤の安定性を検査することができる。
【0058】
本明細書に使用されるように、「非経口投与」という用語は、経腸および局所投与以外の投与方法を指し、通常、注射もしくは注入によるものであり、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下(subcuticular)、関節内、嚢下、クモ膜下、脊椎内、硬膜外と胸骨内の注射および注入を含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、本発明の安定的なPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質製剤が対象に非経口投与される。一実施形態において、本発明のPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質製剤が皮下、皮内、筋肉内もしくは静脈内注射方法により対象に投与される。
【0059】
I.抗体製剤
本発明は、(i)PD-L1/LAG-3二重抗体と、(ii)緩衝剤と、(iii)安定化剤と、(iv)界面活性剤とを含む安定な液体抗体製剤を提供する。前記抗体製剤は、約5.5~6.5のpHを有する。好ましくは、当該液体抗体製剤は、(v)キレート剤をさらに含む。好ましい一実施形態において、本発明の液体抗体製剤は注射製剤形態である。
(i)PD-L1/LAG-3二重抗体
本発明の抗体製剤におけるPD-L1/LAG-3二重抗体は、PCT出願号PCT/CN2020/073964(国際出願日:2020年1月23日)に開示された二重特異性抗体IGN-LPである。一実施形態において、当該PD-L1/LAG-3二重抗体は、CHO細胞またはHEK293細胞の組換え発現により産生される。好ましくは、本発明の液体製剤における前記抗体は、顕著な抗腫瘍活性を示している。例えば、MC38-huPD-L1 KI担がんマウスモデルにおいて、本発明の抗体製剤を投与することにより、顕著な腫瘍抑制効果を生成することができる。
本発明の抗体製剤に含まれる抗体またはその抗原結合断片の量は、製剤の特定の目的特性、特定の環境、および製剤が使用される特定の目的によって変化することができる。幾つかの実施形態において、抗体製剤は、約10mg/mL~200mg/mL、好ましくは約20mg/mL~100mg/mL、例えば約20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90もしくは100mg/mLのPD-L1/LAG-3二重抗体を含むことができる液体製剤であり、好ましくは、PD-L1/LAG-3二重抗体は、20mg/mL~60mg/mLの濃度であり、より好ましくは、約20mg/mL~30mg/mLの濃度である。
【0060】
(ii)緩衝剤
緩衝剤は、溶液のpHを許容可能な範囲に維持することができる試薬である。幾つかの実施形態において、本発明の製剤に用いられる緩衝剤は、本発明の製剤を約5.5~6.5のpH範囲に制御することができる。
幾つかの実施形態において、本発明の製剤は、ヒスチジン-ヒスチジン塩酸塩緩衝系、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝系、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝系、リン酸塩緩衝系から選択される緩衝系を含み、好ましくはヒスチジン-ヒスチジン塩酸塩緩衝系である。
幾つかの実施形態において、本発明の製剤に使用される緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤であり、特にヒスチジンとヒスチジン塩酸塩とからなる緩衝系である。
【0061】
(iii)安定化剤
本発明に使用される適切な安定化剤は、糖類、ポリオール、アミノ酸およびそれらの組み合わせから選択されてもよい。安定化剤としての糖類は、スクロース、トレハロース、マルトースおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。安定化剤としてのポリオールは、ソルビトール、マンニトールおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。安定化剤としてのアミノ酸は、アルギニン、アルギニン塩酸塩、メチオニン、グリシン、プロリンおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
一実施形態において、本発明の液体製剤はアルギニンを安定化剤として含む。
一実施形態において、本発明の液体製剤はアルギニンとソルビトールとの組み合わせを安定化剤として含む。
一実施形態において、本発明の液体製剤は、スクロースを安定化剤として含む。
一実施形態において、本発明の液体製剤は、スクロースとアルギニンとの組み合わせを安定化剤として含む。
一実施形態において、前記アルギニンはアルギニン塩酸塩である。
【0062】
(iv)界面活性剤
本明細書に使用されるように、「界面活性剤」という用語は、両親媒性構造を有する有機物質を指し、すなわち、それらは、反対の溶解性傾向を持つ基からなり、通常、油溶性の炭化水素鎖および水溶性のイオン基からなる。
一実施形態において、本発明の液体製剤における界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えば、アルキルポリ(オキシレン)である。本発明の製剤に包含可能な特定の非イオン性界面活性剤は、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリソルベート60、もしくはポリソルベート40のようなポリソルベート、およびポロキサマーなどを含む。好ましい一実施形態において、本発明の液体製剤は、ポリソルベート-80を界面活性剤として含む。
幾つかの実施形態において、本発明の液体製剤に使用可能な界面活性剤は、ポリソルベート系界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20)、ポロキサマーおよびポリエチレングリコールを含むが、これらに限定されない。
本発明の抗体製剤に含まれる界面活性剤の量は、製剤の特定の目的特性、特定の環境、および製剤が使用される特定の目的によって変化することができる。
【0063】
(v)他の賦形剤
本発明の抗体液体製剤には、場合により他の賦形剤が含まれる。前記他の賦形剤は、例えば、抗微生物剤、静電防止剤、酸化防止剤、キレート剤、ゼラチンなどを含む。これらの賦形剤、その他の既知の医薬賦形剤、かつ/または本発明の製剤に適用される添加剤は、この分野で公知されているものであり、例えば、「The Handbook of Pharmaceutical Excipients、第4版、Roweら編、American Pharmaceuticals Association (2003)、およびRemington:the Science and Practice of Pharmacy、第21版、Gennaro編、Lippincott Williams & Wilkins (2005)」に挙げられたものである。
本明細書で用いられるように、「キレート剤」という用語は、中心原子とキレートを形成できることを意味し、キレートの生成により錯体の安定性が大幅に向上する。
一実施形態において、本発明の液体製剤におけるキレートは、カルボン酸型キレート剤である。一実施形態において、前記キレート剤は、エデト酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシンから選択される。一実施形態において、前記キレート剤はエデト酸二ナトリウムから選択される。
【0064】
II.製剤の調製
本発明は、PD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質を含む安定な製剤を提供する。本発明の製剤に使用されるPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質は、抗体を生産するための当該分野で既知の技術により調製されてもよい。例えば、抗体を組換えによって調製することができる。好ましい一実施形態において、本発明の抗体は、293細胞またはCHO細胞において組換えによって調製される。
現在、抗体は、医薬の活性成分として幅広く適用されている。治療用抗体を薬用レベルまで精製するための技術は、この分野で公知されているものである。例えば、Tugcuら(Maximizing productivity of chromatography steps for purification of monoclonal antibodies,Biotechnology and Bioengineering 99(2008)599-613.)により、タンパク質A捕捉ステップの後にイオン交換クロマトグラフィー(アニオンIEXかつ/またはカチオンCEXクロマトグラフィー)を利用するモノクローナル抗体の3カラム精製方法が記載されている。Kelleyら(Weak partitioning chromatography for anion exchange purification of monoclonal antibodies,Biotechnology and Bioengineering 101(2008)553-566)により、タンパク質A親和性クロマトグラフィーの後に弱分配性アニオン交換樹脂を利用する2カラム精製方法が記載されている。
【0065】
一般的に、組換えにより産生されたモノクローナル抗体は、抗体製剤調製用の十分な繰り返し性および適切な純度を有する医薬物質を提供するために、通常の精製方法により精製することができる。例えば、抗体が組換え発現細胞から培地に分泌された後、商業的に入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amiconの限外ろ過装置により、当該発現系からの上清液を濃縮することができる。その後、例えば、クロマトグラフィー、透析と親和性精製などの方法により抗体の精製を行うことができる。タンパク質Aは、親和性リガンドとしてIgG1、IgG2およびIgG4型抗体の精製に適用される。例えば、イオン交換クロマトグラフィーなど、他の抗体精製方法を使用してもよい。十分な純度の抗体を得た後に、当該分野で既知の方法により、抗体が含まれる製剤を調製することができる。
例えば、(1)発酵終了後、上清が得られるように発酵液を遠心分離して清澄化させて細胞などの不純物を除去するステップと、(2)親和性クロマトグラフィー(例えば、IgG1、IgG2およびIgG4型抗体に対して特異的な親和性を有するタンパク質Aカラム)により抗体を捕捉するステップと、(3)ウィルスの不活化を行うステップと、(4)(一般的にCEXカチオン交換クロマトグラフィーを採用することができる)精製することにより、タンパク質における不純物を除去するステップと、(5)(ウイルス力価を例えば4log10以上低減させるように)ウィルスをろ過するステップと、(6)(タンパク質をその安定性に寄与する製剤緩衝液に置換して注射用に適切な濃度に濃縮するために用いることができる)限外ろ過/浸透ろ過するステップと、により調製することができる。例えば、B.Minow、P.Rogge、K.Thompson、BioProcess International、Vol.10、No.6、2012、pp.48~57を参照する。
【0066】
III.製剤の解析方法
バイオ製品の安定性研究は、一般的に、実際の保存条件下でのリアルタイム安定性研究(長期安定性研究)、加速安定性研究および強制条件試験研究を含む。安定性研究は、研究目的および製品自身の特性に基づいて研究条件を模索し最適化し、様々な影響因子(例えば、温度、繰り返し凍結融解、振動など)に対して、長期、加速かつ/または強制条件試験などの安定性研究計画を策定すべきである。加速および強制条件試験は、保存条件から短期的に逸脱された場合および極端な場合での製品の安定性状況を把握すると共に、有効期間および保存条件の決定のために裏付けデータを提供することに役立つ。
抗体製剤の保存、振とうまたは繰り返し凍結融解の過程において、抗体は凝集、分解または化学的修飾が生じることで、抗体不均一性(サイズ不均一性および電荷不均一性を含む)および凝集物と断片などにつながり、抗体製剤の品質に影響を与える恐れがある。したがって、抗体製剤の安定性を監視する必要がある。
この分野では、抗体製剤の安定性の検出に利用可能な方法が複数知られている。例えば、還元型CE-SDS、非還元型CE-SDSとSEC-HPLCなどの方法により、抗体製剤の純度を解析して抗体の凝集レベルを評価することができ、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)、イメージングキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)とイオン交換クロマトグラフィー(IEX)などにより、抗体製剤における電荷変異体を解析することができる。なお、製剤の外観を目視で検出することにより、製剤の安定性を迅速に判断することができる。OD350nm法により製剤の濁度変化を測定することもできるが、当該方法は可溶性および不溶性凝集物の量に関する情報を示すことができる。なお、紫外線分光光度法(UV法)により、製剤におけるタンパク質含有量の変化を検出することができる。
【0067】
IV.製剤の使用
PD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質を含む本発明の抗体製剤は、自己免疫疾患、炎症性疾患、感染症、腫瘍などの疾患を予防または治療するために用いられる。例えば、前記疾患は腫瘍(例えばがん)または感染である。幾つかの実施形態において、腫瘍は腫瘍の免疫回避である。好ましくは、腫瘍は、例えば、結腸がん、結腸直腸がん、または直腸がんである。
本発明は、哺乳動物にPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質を送達するための医薬の調製における本発明の製剤の使用も提供する。本発明は、本発明の製剤を1つまたは複数の上記疾患および障害の治療または予防に使用する方法をさらに提供する。好ましくは、哺乳類はヒトである。
様々な経路で本発明の抗体製剤を対象または患者に投与することができる。例えば、投与は、注入もしくは注射器により行われてもよい。したがって、一態様において、本発明は、本発明の抗体製剤(例えば、薬剤充填済み注射器)を含む送達装置(例えば、注射器)を提供する。患者は、主な活性成分としてPD-L1/LAG-3二重抗体タンパク質を、有効量、すなわち疾病または病的状態を治療、改善または予防するのに十分な量で受ける。
本発明の理解を補助するために、以下の実施例を説明する。如何なる方法によって、実施例を、本発明の請求範囲を制限するものと解釈する意図もなく、そうすべきでもない。
【0068】
【0069】
当該完全ヒト化抗体の長期安定保存に適用され、かつ簡単で使いやすい注射剤の製剤処方を開発するために、40℃強制および25℃加速安定性実験により、当該抗体の品質に対する異なる製剤処方の影響を考察した結果、その安定に有利な製剤処方をスクリーニングした。パイロット規模で長期安定性研究(5℃±3℃)により処方の有効性を証明する。研究全体で使用される材料および方法は、以下の通りである。
【0070】
【0071】
1.3.製剤安定性の検出項目および検出方法
研究全体において、検出項目は、主に、(1)外観および可視異物の存在の有無を検出すること、(2)紫外線(UV法)により製剤におけるタンパク質含有量を測定すること、(3)OD350nm法により製剤の濁度を検出すること、(4)サイズ排除-高速液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)により抗体製剤の純度を測定し、全てのピークの面積の和に対する主ピークの面積の百分率で示すこと、(5)非還元型ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動(非還元型CE-SDS)により抗体製剤の純度を測定し、全てのピークの面積の和に対する主ピークの面積の百分率で示すこと、(6)iCIEF法により抗体製剤における電荷変異体を測定し、主成分、酸性成分および塩基性成分の百分率で示すこと、(7)直接ELISA測定法により抗体製剤におけるPD-L1とLAG-3抗原に対するPD-L1とLAG-3二重抗体の相対結合活性を測定するか、またはルシフェラーゼレポーター遺伝子細胞測定法により抗体製剤におけるPD-L1とLAG-3抗原に対するPD-L1とLAG-3二重抗体の生物学的活性を測定すること、(8)HPLC-FLD法によりポリソルベート80含有量を検出すること、を含む。
【0072】
可視異物の検出
国家薬典委員会、中華人民共和国薬典(2015年版、四部通則0904「可視異物検査法」、北京:中国医薬科技出版社、2015)に記載される方法に従い、透明度測定器(天津天大天発製、型番YB-2)および不溶性微粒子検出器(天津天大発製、型番GWJ-8により、試料における可視異物を検査した。
【0073】
タンパク質含有量の測定
紫外線分光光度計(日本島津製、型番UVー1800)またはマルチチャンネル微量分光光度計(アメリカThermo製、型番Nanodrop 8000)により、試料におけるタンパク質含有量を測定した。
【0074】
濁度の測定
紫外線分光光度計(日本島津製、型番UV-1800)により、350nmにおける試料の吸光度を測定し、試料の濁度を決定した。
【0075】
純度(SEC-HPLC法)
サイズ排除-クロマトグラフィカラムにより分離し、流動相がリン酸塩緩衝液(3.12gのリン酸二水素ナトリウム二水和物、8.77gの塩化ナトリウムと34.84gのアルギニンを秤量し、超純水で溶解した後に塩酸でpHを6.8に調節して1000mLに定容した)であり、クロマトグラフィーカラム保護液が0.05%(w/v)のNaN3であり、注入量が50μLであり、流速が0.5mL/分であり、採取時間が30分間であり、カラム温度が25℃であり、検出波長が280nmである。測定試料を試料希釈剤(0.85mg/mLのヒスチジン、0.97mg/mLのヒスチジン塩酸塩、35.11mg/mLのアルギニン塩酸塩、0.01mg/mLのエデト酸二ナトリウム、0.10mg/mLのポリソルベート80)で2mg/mLに希釈し、供試品溶液とする。製剤緩衝液を取って上記と同様に希釈した後、ブランク溶液とした。ブランク溶液、供試品溶液をそれぞれ50μL取って液体クロマトグラフに注入し、検出を開始した。
【0076】
純度(非還元型CE-SDS法)
キャピラリーゲル電気泳動法により検出した。キャピラリーはコーティングのないキャピラリーであり、内径が50μmであり、全長が30.2cmであり、有効長が20.2cmである。電気泳動前にそれぞれ0.1mol/Lの水酸化ナトリウム、0.1mol/Lの塩酸、超純水、電気泳動ゲルにより70psiでキャピラリーカラムを洗浄した。測定試料をpH6.5の希釈剤(pH6.5のクエン酸-リン酸塩緩衝液を200μL吸引して400μLの10%のドデシル硫酸ナトリウムに加え、水を加えて1mLに定容する)で0.6mg/mLに希釈する。希釈した後の試料95μLを取り、ここで、還元型試料にβ-メルカプトエタノール5μLを加え、非還元型試料に250mmol/LのNEM(N-エチルマレイミド)を5μL加え、十分に混合した後に70℃条件で10分間加熱し、冷却した後に試料管に移した。サンプリング電圧は、いずれも-5kVであり、サンプリング時間は、いずれも20秒であり、分離電圧は、いずれも-12kVであり、解析時間は、いずれも25分間である。
【0077】
電荷変異体(iCIEF法)
イメージングキャピラリー等電点電気泳動法(iCIEF法)により検出した。キャピラリーは、内径が100μmで、全長が5cmである。試料を3mol/Lの尿素-0.5%のMC(ヒドロキシメチルセルロース)溶液で1.0mg/mLに希釈し、3mol/Lの尿素-0.5%のMC溶液が70μLで、両性電解質(pH3~10)3μL、pI5.85、9.46Maker(等電点マーカー)がそれぞれ0.3μLで、5mol/LのNDSB(3-[(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアミン]プロパン-1-スルホン酸塩)が5μLで、0.5mol/LのTaurine(タウリン)が2μLで、試料の最終濃度が0.2mg/mLであり、フォーカス電圧が3kVであり、フォーカス時間が5分間である。製剤緩衝液と同様に操作してブランク溶液を得た。
【0078】
相対結合活性(直接ELISA法)
抗LAG-3末端の結合活性
PBS(リン酸緩衝塩溶液)でSAタンパク質を1.0μg/mLに希釈し、100μL/ウェル、37℃で2時間インキュベートし、タンパク質を96ウェルマイクロプレート上にコーティングした。プレートを洗浄した後に、ブロッキング溶液(2%のBSA-PBST、300μL/ウェル)を加え、37℃で2時間ブロッキングした。プレートを洗浄し、Biotin LAG-3を2%のBSA-PBST(PBST:リン酸塩緩衝液+トウェイン20、BSA:ウシ血清アルブミン)で0.5μg/mLに希釈し、100μL/ウェルでマイクロプレートに入れて、37℃で30分間インキュベートした後にプレートを洗浄した。2%のBSA-PBSTで測定すべき試料を40μg/mLまで希釈し、4倍の勾配で12番目の濃度まで希釈した。勾配希釈された供試品を洗浄されたマイクロプレートに100μL/ウェルで入れて、陰性ウェルを設置して希釈液のみを加え、37℃の恒温インキュベーターで1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後に、2%のBSA-PBSTを加えてHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)標識の二次抗体を希釈し(130000倍希釈、100μL/ウェル)、37℃で30分間反応させた。プレートを洗浄した後に、100μLのTMB発色液を入れ、15分間発色させてから、1ウェル当たり100μLの1mol/LのH2SO4を入れて反応を終了させた。620nmを参照波長として、450nmにおけるOD値を測定した。各濃度勾配試料の濃度値を横軸として、各勾配試料のOD450nm~OD620nm値を縦軸として、GraphPad Prismソフトウェア四つのパラメータフィッティング曲線を利用してEC50と試料EC50との比を算出し、測定試料とLAG-3の相対結合活性を反映した。
【0079】
抗PD-L1末端の結合活性
PBSでSAタンパク質を1.0μg/mLに希釈し、100μL/ウェル、37℃で2時間インキュベートし、タンパク質を96ウェルマイクロプレート上にコーティングした。プレートを洗浄した後に、ブロッキング溶液(2%のBSA-PBST、300μL/ウェル)を加え、37℃で2時間ブロッキングした。プレートを洗浄し、Biotin PD-L1を2%のBSA-PBSTで0.5μg/mLに希釈し、100μL/ウェルでマイクロプレートに入れて、37℃で30分間インキュベートした後にプレートを洗浄した。2%のBSA-PBSTで測定試料を60μg/mLまで希釈し、4倍の勾配で12番目の濃度まで希釈した。勾配希釈された供試品を洗浄されたマイクロプレートに100μL/ウェルで入れて、陰性ウェルを設置して希釈液のみを加え、37℃の恒温インキュベーターで1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後に2%のBSA-PBSTを加えてHRP標識の二次抗体を希釈し(100000倍希釈、100μL/ウェル)、37℃で30分間反応させた。プレートを洗浄した後に、100μLのTMB発色液を入れ、15分間発色させてから、1ウェル当たり100μLの1mol/LのH2SO4を入れて反応を終了させた。620nmを参照波長として、450nmにおけるOD値を測定した。各濃度勾配試料の濃度値を横軸として、各勾配試料のOD450nm~OD620nm値を縦軸として、GraphPad Prismソフトウェア四つのパラメータフィッティング曲線を利用してEC50と試料EC50との比を算出し、測定試料とPD-L1の相対結合活性を反映した。
【0080】
HPLC-FLD法
HPLC-FLD法(蛍光法)により測定試料のポリソルベート80含有量を測定した。クロマトグラフカラムは、SUPELCOメーカーKnitted Reactor coilクロマトグラフカラム(5m×0.5mm ID)、移動相:0.15mol/Lの塩化ナトリウム、0.05mol/LのTris、pH8.0、5%のアセトニトリル、5.0μmol/LのNPN(N-フェニル-1-ナフチルアミン)、15ppmのBrij溶液(ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル溶液)。検出条件:流速1.5mL/min、励起波長350nm、発光波長420nm、カラム温度30℃、溶出時間3分間、注入体積10μL。運行が完了した後に検量線法により完成品におけるポリソルベート80の含有量を計算する。
【0081】
ルシフェラーゼレポーター遺伝子細胞測定法
抗LAG-3末端の生物学的活性
MHCII APC cells Assay Buffer(1%のFBS(ウシ胎児血清、製品番号:10099-141)、99%のDMEM-高糖培地(製品番号:11995-040))でMHCII APC細胞を0.4×106個/mLに調整し、HA-peptide(製品番号:PP-1901-13)を40μg/mLに希釈し、両者を1:1等体積で混合し、実験レイアウトで100μL/ウェルを96ウェル細胞培養プレートに播種し、(18h~22h)一晩培養した。LAG-3 Effector cells Assay Buffer(1%のFBS(ウシ胎児血清、製品番号:10099-141)、99%のDMEM-高糖培地(製品番号:11995-040)でJurkat-LAG-3-NFAT-Luc2(製品番号CS194812)を3.0×106個/mLに調整し、試料を80.00μg/mLに希釈し、そして4倍勾配希釈し、合計10の濃度点(0.3ng/mL~80000ng/mL)であった。96ウェルプレートにおける培地を吸引し、処理された試料とJurkat-LAG-3-NFAT-Luc2細胞(それぞれ40μL/ウェル)を加え、7h培養し続ける。細胞培養プレートを室温に平衡させた後、ウェルあたり80μLのBio-Glo(商標) Luciferase Assay System発色液(室温に平衡させておく)を加え、10min反応させた。Max i3型マイクロプレートリーダーの自作ソフトウェアにより、既定のレイアウトに基づき、読み取りプログラムを設定して全波長の化学発光値を読み取った。試料の濃度を横軸として、Fold値を縦軸として、GraphPad Prismソフトウェア四つのパラメータフィッティング曲線を利用してEC50と試料EC50との比を算出し、測定試料と抗LAG-3末端の生物学的活性を反映した。
【0082】
抗PD-L1末端の結合活性
Assay Buffer(10%ウシ胎児血清、90% RPMI1640培地(製品番号:SH30809.01))でCHOK1-PDL1(製品番号CS187108)細胞を0.3×106個/mLに調整し、実験レイアウトで100μL/ウェルを96ウェル培養プレートに播種し、16h~20h単層培養した。Assay BufferでJurkat-NFAT-Luc2/PD1(製品番号CS187102)細胞を0.6×106個/mLに調整し、試料を12.00μg/mLに希釈し、2.6倍勾配希釈し、合計10の濃度点(2.2ng/mL~12000ng/mL)であった。96ウェルプレートにおける培地を吸引し、処理された試料とJurkat-NFAT-Luc2/PD1細胞(それぞれ40μL/ウェル)を加え、6h培養し続ける。細胞培養プレートを室温に平衡させた後、ウェルあたり80μLのBio-Glo(商標) Luciferase Assay System発色液(室温に平衡させておく)を加え、10min反応させた。Max i3型マイクロプレートリーダーの自作ソフトウェアにより、既定のレイアウトに基づき、読み取りプログラムを設定して全波長の化学発光値を読み取った。試料の濃度を横軸として、Fold値を縦軸として、GraphPad Prismソフトウェア四つのパラメータフィッティング曲線を利用してEC50と試料EC50との比を算出し、測定試料と抗PD-L1末端の生物学的活性を反映した。
【実施例】
【0083】
実施例1.PD-L1/LAG-3二重抗体の調製と精製
PCT出願番号PCT/CN2020/073964の記載に基づき、PD-L1とLAG-3と同時に結合する二重特異性抗体IGN-LPを取得する。PCT出願番号PCT/CN2020/073964は、ここで、全体で本明細書に参照として組み込まれた。
簡単に説明すると、抗体は、HEK293細胞に組換え発現され、そしてろ過、クロマトグラフィー、ウイルスの不活化、ろ過などのプロセスによって精製された。
【0084】
実施例2.処方スクリーニング試験
2.1 実験手順
合計4つの処方を設計したが、詳しい処方情報は表1に示されている。各処方の緩衝液を調製し、実施例1の精製された本発明の二重特異性抗体タンパク質を限外ろ過によってそれぞれの処方溶液に置換した。置換完了後、各処方のタンパク質濃度を約20mg/mLまで希釈し、ポリソルベート80を入れた。濾過した後にバイアル瓶に分注し、プラグで蓋をしてから、安定性を考察した。検出項目は、外観、可視異物、タンパク質含有量(UV法)、濁度(OD350nm法)、ポリソルベート80含有量(HPLC-FLD法)、純度(SEC-HPLC法および非還元型CE-SDS法)、電荷変異体(iCIEF法)、相対結合活性(直接ELISA法)である。
【表6】
【0085】
具体的な実験条件およびサンプリング計画は表2を参照する。
【表7】
【0086】
2.2 判断基準
処方スクリーニング実験は、表3に示された基準で品質判断を行う
【表8】
【0087】
2.3 実験結果
処方スクリーニング実験の40℃安定性考察結果は表4に示され、処方スクリーニング実験純度(SEC-HPLC法)の変化傾向は
図2に示され、濁度(OD350nm法)の変化傾向は
図3に示され、電荷変異体(iCIEF法)の変化傾向は
図4~5に示される。40℃±2℃の条件で1ケ月放置し、各処方の外観、可視異物は、いずれも合格した。タンパク質含有量(UV法)、ポリソルベート80含有量(HPLC-FLD法)、純度(非還元型CE-SDS法)と相対結合活性(直接ELISA法)は、いずれも明らかな変化がなかった。処方4の純度(SEC-HPLC法)は低下し、主に重合体と断片の増加として示され、残りの処方の純度(SEC-HPLC法)は、明らかな変化がなかった。各処方の濁度(OD350nm法)は、いずれも上昇したが、処方1の上昇幅は、比較的に小さかった。各処方の電荷変異体-酸性成分(iCIEF法)は上昇し、主成分は低下し、塩基性成分は、いずれも明らかな変化がなく、ここで、処方1の電荷変異体-酸性成分、主成分の変化幅は、比較的に小さかった。
【0088】
【0089】
処方スクリーニング実験の25℃安定性考察結果の詳細は、表5に示されている。25℃±2℃の条件で2ケ月放置し、各処方の外観、可視異物は、いずれも合格した。タンパク質含有量(UV法)、濁度(OD350nm法)、ポリソルベート80含有量(HPLC-FLD法)、純度と相対結合活性(直接ELISA法)は、いずれも明らかな変化がなかった。各処方の電荷変異体-酸性成分(iCIEF法)は上昇し、主成分は低下し、塩基性成分は、いずれも明らかな変化がなく、ここで、処方4の電荷変異体-酸性成分、主成分の変化幅は、比較的に大きかった。
【表10-1】
【表10-2】
【0090】
実施例3.長期安定性考察試験
実施例2の実験結果を総合し、処方1を選択してパイロット長期安定性考察を行った。パイロットで処方1(20.0mg/mLの組換え抗リンパ球活性化遺伝子ー3(LAG-3)と抗プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)二重特異性抗体、0.85mg/mLのヒスチジン、0.97mg/mLのヒスチジン塩酸塩、35.11mg/mLのアルギニン塩酸塩、0.01mg/mLのエデト酸二ナトリウム、0.50mg/mLのポリソルベート80、pH5.8~6.4)に従って3ロットの製剤完成品を生産し、5℃±3℃で長期安定性考察を行い、それぞれ0、3、6ヶ月にサンプリング検出を行った。結果は表6に示されている。結果によると、当該処方におけるタンパク質の安定性が良好であり、各バッチ間で有意差がなく、実際の生産プロセスの品質基準を満たすことが示されている。
【表11-1】
【表11-2】
【0091】
実施例4.本発明の抗LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の抗腫瘍活性
MC38-huPD-L1 KI(MJ-1)結腸がん細胞が接種されているPD-L1遺伝子組換えマウス(MC38-huPD-L1 KI担腫瘍マウスモデル、MC38/PD-L1モデルと略称)を利用して、本発明の抗LAG-3/PD-L1二重特異性抗体IGNLP(すなわち、実施例1で調製されたIGN-LP)の抗腫瘍作用を測定した。
皮下接種でMC38-huPD-L1 KI担腫瘍マウスモデルを構築した。腫瘍が出現すると群分けをし、異なる抗体を投与して治療し、投与期間に各群マウスの腫瘍体積と体重の変化を監視した。投与頻度は週に2回で、2週間にわたり、合計で5回投与した。監視頻度はいずれも週に2回であり、4週間にわたり連続的に監視し、投与量と投与方法は下記の通りである。投与終了後に、相対腫瘍抑制率(TGI%)を算出し、計算式は、下記の通りである。TGI%=100%×(h-IgG対照群の腫瘍体積-治療群の腫瘍体積)/(h-IgG対照群の腫瘍体積-h-IgG対照群の投与前の腫瘍体積)。ここで、h-IgG対照群の投与前の腫瘍体積の平均値は80mm3である。
【0092】
マウス:PD-L1遺伝子組換えマウス、雌性、7~8週齢(腫瘍細胞接種時のマウス週齢)、体重18g~20g、上海南方模式生物科技股分有限公司より購入された。マウスを受け入れた後、実験開始前に7日間馴化した。
細胞:上海和元生物より購入されたマウス結腸がん細胞MC38(上海和元生物、HYC0116)にヒトPD-L1遺伝子(南京銀河生物医薬有限公司)を組み込み、ヒトPD-L1を含むMC38細胞が得られ、RPMI 1640培地(Gibco、22400-071)で培養し、後続のインビボ実験に備えるために、MC38培養要求を厳格に遵守して通常の継代培養を行った。遠心分離(400g/分、5分間)により細胞を収集し、滅菌RPMI 1640基本培地において細胞を再懸濁し、細胞密度を5×106個/mLに調整した。PD-L1遺伝子組換えマウスの右背部を剃毛し、0.2mL/匹でMC38-huPD-L1 KI細胞を皮下注射した。腫瘍細胞接種後から5日目に、各マウスの腫瘍体積を検出し、腫瘍の平均体積が76mm3~80mm3の範囲にあるマウスを選択し、腫瘍体積によってランダムに群分けした。下記の投与方法により、抗LAG-3/PD-L1抗体を単独で使用する場合の抗腫瘍活性を検出した。
【0093】
抗PD-L1抗体(ヒト化抗PD-L1抗体Nb-Fc)は、特許ZL201710657665.3の方法で取得される。
抗LAG-3抗体(ADI-31853)は、特許出願WO2019/129137の方法で取得される。
【0094】
投与:マウスを11群に分け(1群あたり6匹マウス)、各群に対して下記の投与量でそれぞれ抗体を皮下注射した。
(1)ヒトIgG(equitech-Bio)、15mg/kg、
(2)抗PD-L1抗体(ヒト化抗PD-L1抗体Nb-Fc)、1.25mg/kg、
(3)抗PD-L1抗体(ヒト化抗PD-L1抗体Nb-Fc)、2.5mg/kg、
(4)抗PD-L1抗体(ヒト化抗PD-L1抗体Nb-Fc)、5mg/kg、
(5)LAG-3(ADI-31853)、10mg/kg、
(6)LAG-3(ADI-31853)、10mg/kg+抗PD-L1抗体(ヒト化抗PD-L1抗体Nb-Fc)、1.25mg/kg、
(7)LAG-3(ADI-31853)、10mg/kg+抗PD-L1抗体(ヒト化抗PD-L1抗体Nb-Fc)、2.5mg/kg、
(8)LAG-3(ADI-31853)、10mg/kg+抗PD-L1抗体(ヒト化抗PD-L1抗体Nb-Fc)、5mg/kg、
(9)抗LAG-3/PD-L1抗体(IGNLP)、3mg/kg、
(10)抗LAG-3/PD-L1抗体(IGNLP)、6mg/kg、
(11)抗LAG-3/PD-L1抗体(IGNLP)、12mg/kg。
【0095】
ヒトIgGはEquitech-Bioにより得られたヒトIgG調製物である。
腫瘍細胞接種後から5日目、9日目、12日目、15日目および18日目に、各群のマウスに上記投与量で上記の抗体をそれぞれ投与した。
【0096】
分析:実験期間にわたり、腫瘍、体重を週に2回計測した。腫瘍が端点まで成長すると(腫瘍体積が3000mm3を上回る)、またはマウスに20%以上の体重減少が認められると、マウスに安楽死を実施する。ノギスを用いて腫瘍の長径(L)と短径(W)を測定し、V=L*W2/2により腫瘍体積を算出する。各群のマウスに対し腫瘍サイズと時間のグラフを作成する。分散分析(ANOVA)により統計的有意性を判定する。P値<0.05である場合は、全ての分析に統計的有意性がある。
【0097】
実験結果は下記表に示され、IgG対照(equitech-Bio)、抗LAG-3または抗PD-L1抗体の単独もしくは組合せ投与と比較すれば、本願の抗LAG-3/PD-L1抗体IGNLPの単独投与は、腫瘍の成長が明らかに抑制されることが示されている。
【表12】
【0098】
以上では本発明の具体的な実施形態を説明したが、当業者であれば理解できるように、これらは、単なる例示に過ぎず、本発明の原理と実質から逸脱することなく、これらの実施形態に対する複数の変更または修正を行うことができる。そのため、本発明の保護範囲は、添付される特許請求の範囲によって限定される。
【配列表】
【国際調査報告】