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特表2023-535468末梢血管にビーズを送達するための血管塞栓術用マイクロカテーテル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】末梢血管にビーズを送達するための血管塞栓術用マイクロカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230809BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
A61M25/00 650
A61B17/00 500
A61M25/00 624
A61M25/00 610
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505801
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 IL2021050905
(87)【国際公開番号】W WO2022024118
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】276418
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517241628
【氏名又は名称】アキュレイト メディカル セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003926
【氏名又は名称】弁理士法人イノベンティア
(72)【発明者】
【氏名】ダガン、 トム
(72)【発明者】
【氏名】ジポリー、 ユーバル
(72)【発明者】
【氏名】ハーバター、 オスナット
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、 エラン
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160DD52
4C160MM33
4C267AA05
4C267BB08
4C267BB13
4C267BB15
4C267BB31
4C267BB63
4C267CC08
4C267CC30
4C267DD10
4C267GG05
4C267GG07
4C267GG21
4C267GG34
4C267HH04
(57)【要約】
末梢動脈の血管塞栓術のための血管塞栓術用マイクロカテーテルであって、長さが150~500mm、外径が0.8mm未満の遠位端を含む長尺状の管状部材であって、長尺状の管状部材は複数の区間を含み、その各々の長さは5mm~150mmであり、複数の区間の各々の壁は、編組、編組の周囲に形成されたポリマ、及びその内面を被覆する内側ライナを含み、複数の区間はそのポリマが異なる長尺状の管状部材と、長さが1mm~3mmであり、長尺状の管状部材の第一の放射線不透過性マーカの近位端と長尺状の管状部材の遠位端開口との間に延びる遠位チップであって、遠位チップの壁に編組が設けられない遠位チップと、を含む、血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢動脈の血管塞栓術のための血管塞栓術用マイクロカテーテルであって、
近位側マーカから遠位端開口へと延びる遠位端を含む長尺状の管状部材であって、前記遠位端は外径が約0.7mm以下であり、
前記長尺状の管状部材は複数の区間を含み、各々の長さは5mm~120mmであり、前記複数の区間の各々の壁は編組、前記編組の周囲に形成されたポリマ、及びその内面を被覆する内側ライナを含み、前記複数の区間のうちの少なくとも幾つかはそのポリマが異なり、前記壁の厚さは100マイクロメートル未満である長尺状の管状部材と、
長さが0.5mm~3mmであり、前記長尺状の管状部材の遠位側放射線不透過性マーカの近位端と前記長尺状の管状部材の遠位端開口との間に延びる遠位チップであって、前記遠位チップの前記壁には編組が設けられていない遠位チップと、
を含む血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項2】
前記遠位端のインナルーメンは0.3mm~0.7mmの範囲である、請求項1に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項3】
前記遠位端のインナルーメンは0.35mm~0.55mmの範囲である、請求項1に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項4】
前記遠位チップのインナルーメンは0.5mm未満である、請求項1~3の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項5】
前記その厚さは90マイクロメートル未満である、請求項1に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項6】
前記編組はタングステンワイヤで製作される、請求項1~5の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項7】
前記編組は直径が15~20マイクロメートルのワイヤで製作される、請求項1~6の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項8】
前記編組の打ち込み本数(PPI)は150~220である、請求項1~7の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項9】
前記複数の区間は少なくとも5つの区間を含む、請求項1~8の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項10】
前記複数の区間は少なくとも9つの区間を含む、請求項9に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項11】
前記複数の区間のうちの最も遠位側の前記区間の長さは5~15mmである、請求項1~10の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項12】
前記遠位側放射線不透過性マーカは金属製マーカバンドを含む、請求項1~11の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項13】
前記複数の区間のうちの最も遠位側の前記区間は、前記長尺状の管状部材の前記壁に形成されたフィルタを含み、前記フィルタは複数の側面開口を含み、前記複数の側面開口は、100マイクロメートル~200マイクロメートルだけ相互に離間された少なくとも5つの円周方向のリング上に分散される、請求項1~12の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項14】
前記複数の開口は軸方向のスリットの形態である、請求項13に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項15】
前記軸方向のスリットの長さは約100~150マイクロメートルであり、その高さは約20~40マイクロメートルである、請求項14に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項16】
前記最も遠位側のフィルタ区間の前記円周方向のリングのうちの最も遠位側のものは前記遠位端開口から約2~6mm近位側に位置付けられる、請求項13~15の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項17】
前記複数の側面開口は少なくとも8つの円周方向のリング上に分散される、請求項13~16の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項18】
前記円周方向のリングの各々は4~8つの軸方向のスリットを含む、請求項13~17の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項19】
前記少なくとも5つの円周方向のリングのうちの最も近位側の円周方向のリングは、その遠位側のリングより少ない側面開口を含む、請求項13~18の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項20】
前記最も近位側の円周方向のリングは1~3つの側面開口を含む、請求項19に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項21】
前記最も近位側の円周方向の区間の前記側面開口は、その隣接する円周方向の区間の前記側面開口に関して円周方向にずれている、請求項19又は20に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項22】
末梢動脈の血管塞栓術のための血管塞栓術用マイクロカテーテルであって、
終端に遠位端開口を有する長尺状の管状部材であって、前記長尺状の管状部材の前記遠位端開口から近位端に向かって200~500mm延びる遠位端を含み、前記長尺状の管状部材の外径は0.8mm未満である長尺状の管状部材を含み、
前記長尺状の管状部材は複数の区間を含み、各々の長さが5mm~150mmであり、前記複数の区間の各々の壁は編組、前記編組の周囲に形成されたポリマ、及びその内面を被覆する内側ライナを含み、前記複数の区間の前記ポリマは異なり、前記壁の厚さは100マイクロメートル未満であり、前記編組は、直径15~18マイクロメートルのワイヤで製作され、その打ち込み本数(PPI)は200~350である血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項23】
前記遠位端のインナルーメンは0.35mm~0.6mmの範囲内である、請求項22に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項24】
前記長尺状の管状部材の前記遠位端の外径は0.75mm未満である、請求項22~23の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項25】
前記壁の前記厚さは90マイクロメートル未満である、請求項22~24の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項26】
前記編組はタングステンワイヤで製作される、請求項22~25の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項27】
前記複数の区間は少なくとも5つの区間を含む、請求項22~26の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項28】
前記複数の区間は少なくとも9つの区間を含む、請求項27に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項29】
前記複数の区間のうち最も遠位側の前記区間の長さは10~20mmである、請求項28に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項30】
放射線不透過性マーカをさらに含み、前記放射線不透過性マーカは金属製マーカバンドを含む、請求項22~29の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項31】
前記複数の区間のうちの前記最も遠位側の区間は、前記長尺状の管状部材の前記壁の中に形成されたフィルタを含み、前記フィルタは複数の側面開口を含み、前記複数の側面開口は、100マイクロメートル~200マイクロメートルだけ相互に離間された少なくとも5つの円周方向のリング上に分散される、請求項22~30の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項32】
前記複数の開口は軸方向のスリットの形態である、請求項31に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項33】
前記軸方向のスリットの長さは約100~150マイクロメートルであり、その高さは約20~40マイクロメートルである、請求項32に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項34】
前記最も遠位側のフィルタ区間の前記円周方向のリングのうちの最も遠位側のものは、前記遠位端開口から約2~6mm近位側に位置付けられる、請求項31~33の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項35】
前記複数の側面開口は、少なくとも8つの円周方向のリング上に分散される、請求項31~34の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項36】
前記円周方向のリングの各々は4~8つの軸方向のスリットを含む、請求項31~35の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項37】
前記少なくとも5つの円周方向のリングの最も近位側の円周方向のリングは、その遠位側のリングより少ない側面開口を含む、請求項31~36の何れか1項に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項38】
前記最も近位側の円周方向のリングは1~3つの側面開口を含む、請求項37に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【請求項39】
前記最も近位側の円周方向の区間の前記側面開口は、その隣接する円周方向の区間の前記側面開口に関して円周方向にずれている、請求項37又は38に記載の血管塞栓術用マイクロカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、血管塞栓術用マイクロカテーテルの分野に関し、特に末梢血管に血管塞栓ビーズを送達するのに適した血管塞栓術用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
経動脈的血管塞栓療法、腫瘍塞栓術、又は経カテーテル的動脈塞栓術(TAE:transcatheter arterial embolization)は、マイクロカテーテルを介して塞栓物質を腫瘍(例えば、肝腫瘍)に直接投与することを含む。
【0003】
腫瘍の血管塞栓術は典型的にマイクロカテーテルを使って行われるが、これは腫瘍に選択的に影響を与えながら、他方で健康な組織へのダメージをできるかぎり防止するという要求事項による。血管塞栓術に関する主な問題は、「標的外塞栓」であり、この場合、塞栓物質が、標的の腫瘍又は腫瘍領域に直接栄養するもの以外の血管へと移動し、そのようにして健康な組織にダメージを与え、その結果として、不快感と、さらには重篤な状態を招く。
【0004】
血管塞栓術中、特に末梢血管の場合、血管塞栓術用カテーテルを細く、屈曲していることの多い血管の中を前進させなければならない。大径の、及び/又は硬いマイクロカテーテルを用いてこれらの血管にアクセスすることは、不可能とは言わずとも難しい。さらに、体内の血管は触れられると攣縮する傾向にあり、それによって塞栓物質を有効に送達されなくなり、そのため、柔軟なマイクロサイズのカテーテルが絶対的に必要である。
【0005】
経カテーテル血管塞栓術の主要な欠点は、典型的には目に見えない塞栓物質が逆流し、標的外組織に到達し、そこにダメージを与える可能性があることである。それに加えて、塞栓物質の逆流は標的組織への塞栓物質の送達に不利な影響を与え、それゆえ治療の有効性とその臨床転帰を害する効果を有し得る。
【0006】
塞栓ビーズを送達しながら、ビーズの逆流は防止する、フィルタ区間を有するマイクロカテーテルが本願の発明者らにより開示されている。しかしながら、塞栓ビーズを末梢血管に送達することのできるマイクロカテーテル、すなわち末梢血管にスムーズに進入できるようにその外径が十分に小さく、しかもマイクロカテーテルの詰まりやキンクを生じないマイクロカテーテルは依然として求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、末梢動脈内を通過させ、及び/又はそこに到達させるのに適し(典型的にはフレンチサイズ(Fr)1.7又は1.9)、それと同時に塞栓ビーズのスムーズな送達を容易にするような血管塞栓術用マイクロカテーテルに関する。
【0008】
これは、その外径が0.8mm未満でありながら、追跡可能で耐トルク性を有する血管塞栓術用マイクロカテーテルの壁の独自の構造により有利に実現される。壁の大部分は、編組、この編組の周囲に形成されたポリマ、及び壁の内面を被覆する内側ライナで製作される。マイクロカテーテルの遠位チップ(最後の約1mm~1.5mm)は、位置決めのための放射線不透過マーカを含む。遠位チップはさらに、その壁に編組が設けられないことを特徴とする。これは、幾つかの実施形態によれば、有利な点として、放射線不透過マーカによる壁厚の増大を補償し得る。
【0009】
本願で開示される血管塞栓術用マイクロカテーテルは、流体を流出させ、他方でビーズの流出は防止するように構成された複数の開口を有するフィルタ区間をさらに含み、このようにしてマイクロカテーテルの遠位端開口から集中的に塞栓ビーズが送達され、それと同時に逆流は確実に最小となる。有利な点として、開口の大きさ、形状、及び分布によって、マイクロメートルが小径であるにもかかわらず、ビーズの円滑な送達が可能になる。幾つかの実施形態によれば、複数の側面開口が相互に100マイクロメートルから200マイクロメートルだけ離間された少なくとも5つの円周方向のリング上に分散される。
【0010】
幾つかの実施形態によれば、管状部材の壁は複数の区間を含み、各々、長さが5mm~150mmであり、各々が異なるポリマで形成される。これは有利な点として、一方で押し込み可能性を提供し、他方で屈曲した血管の中で効率的に操作することが可能となり得る。
【0011】
幾つかの実施形態によれば、末梢動脈の血管塞栓術のための血管塞栓術用マイクロカテーテルが提供され、これは、近位側マーカから遠位端開口へと延びる遠位端を含む長尺状の管状部材であって、遠位端は外径が約0.7mm以下であり、複数の区間を含み、各々の長さは5mm~120mmであり、複数の区間の各々の壁は編組、編組の周囲に形成されたポリマ、及びその内面を被覆する内側ライナを含み、複数の区間のうちの少なくとも幾つかはそのポリマが異なり、壁の厚さは100マイクロメートル未満である長尺状の管状部材と、長さが0.5mm~3mmであり、長尺状の管状部材の遠位側放射線不透過性マーカの近位端と長尺状の管状部材の遠位端開口との間に延びる遠位チップであって、壁に編組が設けられていない遠位チップと、を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、遠位端のインナルーメンは0.3mm~0.7mmの範囲である。幾つかの実施形態によれば、遠位端のインナルーメンは0.35mm~0.55mmの範囲である。幾つかの実施形態によれば、遠位チップのインナルーメンは0.5mm未満である。
【0013】
幾つかの実施形態によれば、壁の厚さは90マイクロメートル未満である。
【0014】
幾つかの実施形態によれば、編組はタングステンワイヤで製作される。幾つかの実施形態によれば、編組は直径が15~20マイクロメートルのワイヤで製作される。幾つかの実施形態によれば、編組の打ち込み本数(PPI:picks per inch)は150~220である。
【0015】
幾つかの実施形態によれば、複数の区間は少なくとも5つの区間を含む。幾つかの実施形態によれば、複数の区間は少なくとも9つの区間を含む。幾つかの実施形態によれば、複数の区間のうちの最も遠位側の区間の長さは5~15mmである。
【0016】
幾つかの実施形態によれば、血管塞栓術用マイクロカテーテルは遠位側放射線不透過性マーカをさらに含み、遠位側放射線不透過性マーカは金属製マーカバンドを含む。
【0017】
幾つかの実施形態によれば、複数の区間のうちの最も遠位側の区間は、長尺状の管状部材の壁に形成されたフィルタを含み、フィルタは複数の側面開口を含み、複数の側面開口は、100マイクロメートル~200マイクロメートルだけ相互に離間された少なくとも5つの円周方向のリング上に分散される。
【0018】
幾つかの実施形態によれば、複数の開口は軸方向のスリットの形態である。幾つかの実施形態によれば、軸方向のスリットの長さは約100~150マイクロメートルであり、その高さは約20~40マイクロメートルである。
【0019】
幾つかの実施形態によれば、最も遠位側のフィルタ区間の円周方向のリングのうちの最も遠位側のものは遠位端開口から約2~6mm近位側に位置付けられる。
【0020】
幾つかの実施形態によれば、複数の側面開口は少なくとも8つの円周方向のリング上に分散される。幾つかの実施形態によれば、円周方向のリングの各々は4~8つの軸方向のスリットを含む。幾つかの実施形態によれば、少なくとも5つの円周方向のリングのうちの最も近位側の円周方向のリングは、その遠位側のリングより少ない側面開口を含む。幾つかの実施形態によれば、最も近位側の円周方向のリングは1~3つの側面開口を含む。幾つかの実施形態によれば、最も近位側の円周方向の区間の側面開口は、その隣接する円周方向の区間の側面開口に関して円周方向にずれている。
【0021】
幾つかの実施形態によれば、終端に遠位端開口を有する長尺状の管状部材が提供され、長尺状の管状部材は、長尺状の管状部材の遠位端開口から近位端に向かって200~500mm延びる遠位端であって、長尺状の管状部材の外径は0.8mm未満であり、長尺状の管状部材は複数の区間を含み、各々の長さが5mm~150mmであり、複数の区間の各々の壁は編組、編組の周囲に形成されたポリマ、及びその内面を被覆する内側ライナを含み、複数の区間のポリマは異なり、壁の厚さは100マイクロメートル未満であり、編組は、直径15~18マイクロメートルのワイヤで製作され、その打ち込み本数(PPI)は200~350である。
【0022】
幾つかの実施形態によれば、遠位端のインナルーメンは0.35mm~0.6mmの範囲である。幾つかの実施形態によれば、長尺状の管状部材の遠位端の外径は0.75mm未満である。
【0023】
幾つかの実施形態によれば、壁の厚さは90マイクロメートル未満である。
【0024】
幾つかの実施形態によれば、編組はタングステンワイヤで製作される。
【0025】
幾つかの実施形態によれば、複数の区間は少なくとも5つの区間を含む。幾つかの実施形態によれば、複数の区間は少なくとも9つの区間を含む。幾つかの実施形態によれば、複数の区間のうち最も遠位側の区間の長さは10~20mmである。
【0026】
幾つかの実施形態によれば、血管塞栓術用マイクロカテーテルは、放射線不透過性マーカをさらに含む。幾つかの実施形態によれば、放射線不透過性マーカは金属製マーカバンドを含む。
【0027】
幾つかの実施形態によれば、複数の区間のうちの最も遠位側の区間は、長尺状の管状部材の壁の中に形成されたフィルタを含み、フィルタは複数の側面開口を含み、複数の側面開口は、100マイクロメートル~200マイクロメートルだけ相互に離間された少なくとも5つの円周方向のリング上に分散される。
【0028】
幾つかの実施形態によれば、複数の開口は軸方向のスリットの形態である。幾つかの実施形態によれば、軸方向のスリットの長さは約100~150マイクロメートルであり、その高さは約20~40マイクロメートルである。
【0029】
幾つかの実施形態によれば、最も遠位側のフィルタ区間の円周方向のリングのうちの最も遠位側のものは、遠位端開口から約2~6mm近位側に位置付けられる。
【0030】
幾つかの実施形態によれば、複数の側面開口は、少なくとも8つの円周方向のリング上に分散される。幾つかの実施形態によれば、円周方向のリングの各々は4~8つの軸方向のスリットを含む。
【0031】
幾つかの実施形態によれば、少なくとも5つの円周方向のリングの最も近位側の円周方向のリングは、その遠位側のリングより少ない側面開口を含む。幾つかの実施形態によれば、最も近位側の円周方向のリングは1~3つの側面開口を含む。幾つかの実施形態によれば、最も近位側の円周方向の区間の側面開口は、その隣接する円周方向の区間の側面開口に関して円周方向にずれている。
【0032】
本開示の特定の実施形態は、上記の特徴の幾つか又は全部を含んでいても、又は一切含んでいなくてもよい。当業者にとって、1つ又は複数の技術的利点は本出願書類に含まれる図面、説明、及び特許請求の範囲から容易に明らかとなるかもしれない。さらに、具体的な特徴を上に列挙したが、各種の実施形態は、列挙された特徴の全部又は幾つかを含んでいても、一切含んでいなくてもよい。
【0033】
上述の例示的な態様と実施形態に加えて、その他の態様と実施形態も図面及び以下の詳細な説明の中でさらに拡張される。
【0034】
本開示の特徴、性質、及び利点は、以下の詳細な説明を図面に照らして読めば明らかとなるが、図中、参照符号は全体を通じて対応的に特定する。複数の図面に示される同じ構造、要素、又は部品は概して、それらが示されている全ての図面において同じ番号で表示される。代替的に、複数の図面に示される要素又は部品は、それらが示されている異なる図面において異なる番号で表示されるかもしれない。図中のコンポーネント及び特徴の寸法は、説明上の便宜と明瞭さのために選択されており、必ずしも正確な縮尺で示されているとはかぎらない。図面を以下に列記する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A】幾つかの実施形態による、複数の区間を含み、複数の区間が異なるポリマ材料で製作される外層を含むマイクロカテーテルを概略的に示す。
図1B図1Aのマイクロカテーテルの遠位端の一部切欠き斜視図を概略的に示しており、外層、ストライク層、内層、内層と外層との間に配置された編組スケルトンを示す。
図2A】幾つかの実施形態による、流体バリア形成区間を有する血管塞栓術用マイクロカテーテルを示す。
図2B】幾つかの実施形態による、図2Aのマイクロカテーテルの遠位端の拡大一部露出図を概略的に示す。
図2C】幾つかの実施形態による、図2Aのマイクロカテーテルの遠位チップの拡大一部露出図を概略的に示す。
図2D】幾つかの実施形態による流体バリア形成区間、例えば図2Aの血管塞栓術用マイクロカテーテルの流体バリア形成区間の壁を先端的に切り取ることにより形成されるスリットを概略的に示す。
図3】幾つかの実施形態による血管塞栓術用マイクロカテーテル、例えば図2Aの血管塞栓術用マイクロカテーテルのための任意選択的なスリットパターンを概略的に示す。
図4】幾つかの実施形態による血管塞栓術用マイクロカテーテル、例えば図2Aの血管塞栓術用マイクロカテーテルのための他の任意選択的スリットパターンを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
添付の図面に関連する以下の詳細な説明は、各種の構成の説明であることが意図され、本明細書に記載のコンセプトを実施し得る唯一の構成を示そうとしているのではない。詳細な説明には、各種のコンセプトを十分に理解できるようにするために具体的な詳細事項が含まれている。しかしながら、当業者にとっては、これらのコンセプトが本明細書中に示される具体的な詳細事項がなくても実施され得ることも明らかであろう。幾つかの例では、よく知られている特徴については、本開示を曖昧にしないように省略又は簡略化されているかもしれない。
【0037】
血管塞栓術用マイクロカテーテルの主な課題の1つは、末梢血管に進入させやすいように外径を確実に十分に小さくするのと同時に、塞栓ビーズのスムーズな送達(マイクロカテーテル内でのスムーズな流れを含む)のほか、強靭で追跡可能で耐キンク性を有するカテーテル壁も確実に実現することである。
【0038】
有利な点として、これらの要求事項は本願で開示するマイクロカテーテル及びその管状の壁の構造的特徴により満たされ得る。
【0039】
ここで図1A及び図1Bを参照するが、これらは血管塞栓術用マイクロカテーテル100及びその遠位端の拡大/分解図を概略的に示している。
【0040】
本明細書で使用されるかぎり、「血管塞栓術」、「経カテーテル的血管塞栓術」、「経カテーテル的動脈塞栓術」、及び「TAE」という用語は互換的に使用されていることがあり、治療目的のため、例えば出血の止血治療又は血管を計画的に閉塞させて腫瘍細胞への栄養を遮断することによる何れかの種類のがんの治療のために血流内に塞栓物を通し、定着させることを意味する。
【0041】
血管塞栓術用マイクロカテーテル100は、長尺状の管状部材110を含む。マイクロカテーテル100の近位端130はハブ102を含み、これはマイクロカテーテル100の長尺状の管状部材110の上に成型され、又はそれ以外の方法でそこに取り付けられる。
【0042】
ハブ102は、流体や薬剤の注入又はガイドワイヤの導入等、様々な機能のために長尺状の管状部材110のルーメンにアクセスできるように構成される。ハブ102は、任意選択的にストレインリリーフ112を含み、これは好ましくはハブ102に機械的に連結される。ストレインリリーフ112は、ポリマ材料で製作され得て、図のように、その遠位端において先細であり得る。ストレインリリーフ112は、長尺状の管状部材110を構造的に支持し、そのキンクを防止するように構成され得る。
【0043】
幾つかの実施形態によれば、長尺状の管状部材110の壁は複数の区間を含み得て、各区間は使用されるポリマにより特徴付けられる。幾つかの実施形態によれば、複数の区間は3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、又はそれより多い区間を含み得る。各選択肢は別々の実施形態である。
【0044】
幾つかの実施形態によれば、異なるポリマ層はその層/区間の、したがって長尺状の管状部材110の異なる特徴に寄与し得る。例えば、異なるポリマ層は、その層の、したがってマイクロカテーテルの弾性、柔軟性、伸縮性、強度、硬さ、剛性、引張強度、伸長性、又は他の何れかの特徴に寄与し得る。各選択肢は別々の実施形態である。
【0045】
長尺状の管状部材110の、ストレインリリーフ112に取り付けられた近位130端は第一の区間132を含む。区間132の外層は、比較的高い硬さのポリマ材料、例えばショア硬さ約70D及び/又は曲げ弾性率約74,000psiのポリエーテルブロックアミドで製作され得る。幾つかの実施形態によれば、近位端132の長さは600~1300mm(例えば、約1000mm)であり得る。
【0046】
任意選択により、区間132の一部はヒートシュリンク材料134を含み得て、これはストレインリリーフ112と長尺状の管状部材110の間の接合部を被覆する。
【0047】
区間132に隣接して、わずかにより柔らかい区間136がある。区間132の外層は、ショア硬さ約60D~70D及び/又は曲げ弾性率41,000psi~74,000psiのポリマ材料で製作され得る。区間136の長さは10~40mm、又は20~30mm、例えば25mmであり得る。区間136に、わずかにより柔らかい区間である区間138が続き得て、これはショア硬さ約60~65D及び/又は曲げ弾性率約41,000psiのポリマ材料で製作され得る。区間138の長さは60~80mm、例えば70mmであり得る。
【0048】
幾つかの実施形態によれば、区間138のポリマ材料は、区間136のそれより柔らかい。幾つかの実施形態によれば、区間136のポリマ材料は区間132のそれより柔らかい。
【0049】
長尺状の管状部材110の中間部140は、ショア硬さ約55D及び/又は曲げ弾性率約25,000psiのポリエーテルブロックアミド又はその他の適当なポリマで製作され得る外層を有する区間142、ショア硬さ約55Dのポリマ材料、例えばショア硬さ約50Dのポリカーボネート系熱可塑性ウレタンで製作される外層を有する区間144、ショア硬さ55D~95Aの1つ又は複数のポリカーボネート系熱可塑性ウレタンで製作される外層を有する区間146、及びショア硬さ95Aの1つ又は複数のポリカーボネート系熱可塑性ウレタンで製作される外層を有する区間148を含む。区間142の長さは50~90mm、例えば70mmであり得る。区間144の長さは80~1100mm(例えば、約90mm)であり得る。区間146の長さは50~70mm(例えば、約65mm)であり得る。区間148の長さは5~30mm(例えば、約15mm)であり得る。
【0050】
幾つかの実施形態によれば、区間148のポリマ材料は区間146のそれより柔らかい。幾つかの実施形態によれば、区間146のポリマ材料は区間144のそれより柔らかい。幾つかの実施形態によれば、区間144のポリマ材料は区間142のそれより柔らかい。
【0051】
長尺状の管状部材110の遠位端150は、ショア硬さ約95Dのポリマ材料、例えばショア硬さ95Aのポリカーボネート系熱可塑性ウレタンで製作される外層を有し、その長さが10~40mm(例えば、約25mm)の区間152と、ショア硬さ約85Aのポリマ材料、例えば硬さ約85Aのポリカーボネート系熱可塑性ウレタンで製作される外層を有し、その長さが約3~10mm(例えば、約6mm)の区間154を含む。区間154のポリマは、タンタル粉末等の、ただしこれに限定されないポリママーカと、ショア硬さ約80Aのポリマ材料、例えばショア硬さ約85Aのポリカーボネート系熱可塑性ウレタンで製作される外層を有し、その長さが約5~15mm(例えば、約9.5mm)の区間156をさらに含む。
【0052】
幾つかの実施形態によれば、長尺状の管状部材110の外径は0.5mm~1.5mmの範囲又は0.55mm~1.0mmの範囲であり得る。幾つかの実施形態によれば、管状部材110の外径は、その近位端からその遠位端へと変化し得る。幾つかの実施形態によれば、管状部材110の外径は、その近位端からその遠位端へと徐々に減少し得る。
【0053】
幾つかの実施形態によれば、管状部材110の、区間132を含む近位端の外径は0.8~1.0mmの範囲、例えば約0.95mmであり得るが、これに限定されない。幾つかの実施形態によれば、管状部材110の中間区間の外径は0.7~0.9mmの範囲であり得る。幾つかの実施形態によれば、管状部材の外径は、約0.9mmから約0.7mmへと遠位端に向かって減少し得る。幾つかの実施形態によれば、管状部材110の遠位端の外径は0.5~0.75mmの範囲であり得る。幾つかの実施形態によれば、管状部材の外径は、約0.75mmから約0.55mmへと遠位端開口に向かって減少し得る。幾つかの実施形態によれば、遠位チップ170の外径は0.55~0.65mmの範囲であり得る。幾つかの実施形態によれば、遠位先端170の外径は、その全長に沿って約0.56mmであり得るが、マーカバンド162部分は例外であり、その部分の外径は約0.6~0.65mmであり得る。
【0054】
幾つかの実施形態によれば、区間156の外径は区間154の外径より小さい。幾つかの実施形態によれば、区間154の外径は区間152の外径より小さい。幾つかの実施形態によれば、区間152の外径は区間148の外径より小さい。幾つかの実施形態によれば、区間148及び146の外径は区間144の外径より小さい。幾つかの実施形態によれば、区間144の外径は区間142の外径より小さい。幾つかの実施形態によれば、区間142の外径は区間136及び132の外径より小さい。
【0055】
幾つかの実施形態によれば、外径は同じ区間に沿って基本的に一定である。
【0056】
幾つかの実施形態によれば、長尺状の管状部材110の内径は0.35~0.65又は0.4~0.60mmの範囲であり得る。幾つかの実施形態によれば、内径は近位端において遠位端より大きいことがあり得る。幾つかの実施形態によれば、長尺状の管状部材110の内径は長尺状の管状部材110の全長に沿って約0.55mmであり得るが、遠位チップ170(マイクロカテーテルの最後の約5~15mm、例えば最後の10mmを取り囲む)は例外であり、その内径は約0.35~0.50mm(例えば、約)0.42mmであり得る。幾つかの実施形態によれば、遠位チップ170から約60~90mm(例えば、約70mm)近位側に延びる区間は先細であり得る。
【0057】
本明細書で使用されるかぎり、「近位端開口」というら用語は、マイクロカテーテルの、そのルーメンへと続く端部開口を指す。幾つかの実施形態によれば、遠位端開口180はマイクロカテーテルの終端を画定する。幾つかの実施形態によれば、遠位端開口180の内径は、マイクロカテーテルのルーメンの内径と基本的に等しい内径を有し得る。幾つかの実施形態によれば、遠位端開口180はマイクロカテーテルルーメンの内径より小さい内径を有し得て、ルーメンはその端に向かって細くなる。
【0058】
長尺状の管状部材110の遠位端150は、近位側マーカ160と遠位側マーカ162を含み得る(図1Bも参照)。幾つかの実施形態によれば、近位側マーカ160は、本明細書中、区間154に関して前述したように、外層に埋め込まれた放射線不透過性粉末であり得る。幾つかの実施形態によれば、近位側マーカ160は、遠位端開口180から約5~20又は10~15mmに位置付けられ得る。幾つかの実施形態によれば、遠位側マーカ162は遠位チップ170の外層に埋められた放射線不透過性合金であり得る。幾つかの実施形態によれば、遠位側マーカ162は遠位端開口180~約0.25~1mm近位側に位置付けられ得る。
【0059】
次に図1Bを参照するが、これは図1Aに示されるマイクロカテーテル100の遠位端150の、近位側マーカ160から遠位端開口180まで延びる遠位部分の一部切欠き斜視図を概略的に示す。分解図からわかるように、外層155の下に編組190がある。
【0060】
幾つかの実施形態によれば、編組190は長尺状の管状部材110のシャフトの全長に沿って延びる。代替的に、編組190は、遠位先端170を除く長尺状の管状部材110の全長に沿って延びる。幾つかの実施形態によれば、編組190は、管状部材110の近位端から遠位側マーカ162まで延び得る。幾つかの実施形態によれば、管状部材110の、遠位側マーカ162から遠位端開口180まで延びる部分には編組がないことがあり得る。
【0061】
好ましくは、編組190は、低いデュロメータ硬さのポリマとの組合せによって柔軟な遠位端が確実に得られるような打ち込み本数(PPI)を有し、より高いデュロメータ硬さを有するポリマとの組合せにより、比較的剛直な近位端が提供される。
【0062】
幾つかの実施形態によれば、編組190は複数のワイヤで製作され得る。
【0063】
本明細書で使用されるかぎり、「編組」及び「編組スケルトン」という用語は構造的要素、例えば編み込まれた複数のワイヤで形成される管状要素を意味し得る。幾つかの実施形態によれば、編組は少なくとも編み込まれて管を形成する3本のワイヤで形成され得る。幾つかの実施形態によれば、編組は8~48のワイ又は12~32のワイヤを含み得る。各選択肢は別々の実施形態である。非限定的な例として、編組は16のワイを含み得る。
【0064】
幾つかの実施形態によれば、編組を形成するワイヤは10~40マイクロメートル若しくは12~20マイクロメートル若しくは15~18マイクロメートルの直径、又は10~60マイクロメートルの範囲内の他の何れの適当な直径も有し得る。各選択肢は別々の実施形態である。非限定的な例として、編組を形成するワイヤの直径は18マイクロメートルであり得る。
【0065】
幾つかの実施形態によれば、編組はタングステン、ステンレススチール、ニッケルチタン(Nitinolとも呼ばれる)、ニチノール、コバルトクロム、プラチナインジウム、ナイロン、又はこれらのあらゆる組合せで製作され得る。各選択肢は別々の実施形態である。非限定的な例として、ワイヤはタングステンワイヤであり得る。
【0066】
幾つかの実施形態によれば、編組スケルトンを形成するワイヤの少なくとも幾つかは、同じ又は反対の方向、すなわち左/右巻きに編み組まれる。有利な態様として、編組構造により、高い耐トルク性(コイルスケルトンより高い)、低い曲げ剛性(すなわち、高い柔軟性)、高い押し込み性(コイルスケルトンより高い)、及び優れた耐キンク性を得ることができる。
【0067】
幾つかの実施形態によれば、編組スケルトンを形成するワイヤの少なくとも幾つかは、非円形/丸形であり得る。
【0068】
幾つかの実施形態によれば、編組スケルトンは、打ち込み本数100~400(PPI)、150~375PPI、又は200~350PPIのワイヤ配置を有し得る。各選択肢は別々の実施形態である。非限定的な例として、編組スケルトンは約250PPIのワイヤ配置を有し得る。他の非限定的な例として、編組スケルトンは約275PPIのワイヤ配置を有し得る。他の非限定的な例として、編組スケルトンは約300PPIのワイヤ配置を有し得る。他の非限定的な例として、編組スケルトンは約325PPIのワイヤ配置を有し得る。他の非限定的な例として、編組スケルトンは約350PPIのワイヤ配置を有し得る。当業者であればわかるように、打ち込み本数(PP)という用語は編組ワイヤの密度の尺度であり、編組1インチあたりの打ち込み(横糸となるワイヤ)の数を表す。
【0069】
幾つかの実施形態によれば、編組のPPIは管状部材110の長さに沿って異なり得る。幾つかの実施形態によれば、遠位チップのPPIはその遠位側の区間より高い。非限定的な例として、編組190の遠位チップにおけるPPIは約200PPIであり得、その近位側の区間のPPIは約160PPIであり得る。幾つかの実施形態によれば、編組190は移行ゾーンを含み、そこでは編組のPPIの移行は200PPIから160PPIであり得る。
【0070】
編組190の下に内側ライナ192があり、これはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で製作され得る。幾つかの実施形態によれば、内側ライナ192の厚さは約5~25マイクロメートル又は5~15マイクロメートルであり得る。各選択肢は別々の実施形態である。幾つかの実施形態によれば、ライナはラム押出成形によるライナであり得る。
【0071】
幾つかの実施形態によれば、長尺状の管状部材の遠位端の壁の全体の厚さは約100マイクロメートルを超えない。幾つかの実施形態によれば、長尺状の管状部材の遠位端の壁の全体の厚さは約90マイクロメートルを超えない。幾つかの実施形態によれば、長尺状の管状部材の遠位端の壁の全体の厚さは約80マイクロメートルを超えない。
【0072】
次に図2A図2Dを参照するが、これらは血管塞栓術用マイクロカテーテル200とその部品の拡大/露出図を概略的に示す。血管塞栓術用マイクロカテーテル200は、血管塞栓術用マイクロカテーテル200がフィルタ220も含むこと以外、血管塞栓術用マイクロカテーテル100と同様であり得る。
【0073】
マイクロカテーテル200の近位端はハブ202を含み、これはマイクロカテーテル200上に成型され、又はそれ以外の方法でそこに取り付けられる。ハブ202は、流体や薬剤の注入又はガイドワイヤの導入等、様々な機能のために長尺状のマイクロカテーテル100のルーメンにアクセスできるように構成される。ハブ202はストレインリリーフ212を含み、これは好ましくはハブ202に機械的に連結される。ストレインリリーフ212は、ポリマ材料で製作され得て、図のように、その遠位端において先細であり得る。ストレインリリーフ212は、マイクロカテーテル200を構造的に支持し、それによってマイクロカテーテル200のキンクを防止/最小化するように構成され得る。
【0074】
次に、図2Bを参照すると、これは図のマイクロカテーテル200の遠位端250の一部露出図を概略的に示している(遠位端250のうち、近位側マーカ260と遠位側マーカ262との間に延びる部分が露出している)。長尺状の管状部材110と同様に、外層の下に編組290があり、これは基本的に編組190と同じである。
【0075】
長尺状の管状部材210の壁に形成された複数の貫通側面開口を有するフィルタ220が図2Bに概略的に示されている。
【0076】
本明細書で使用されるかぎり、側面開口に関する「複数の」という用語は2以上、3以上、5以上、10以上、15以上、20以上、又は25以上の軸方向のスリットを意味する。各選択肢は別々の実施形態である。
【0077】
幾つかの実施形態によれば、フィルタ220は長尺状の管状部材110の一体部分であり得、また、0.3mm~20mmの長さ、例えば1mm~10mm、1mm~5mm、1.5mm~5mm、2mm~5mm、又はそれらの間の他のあらゆる適当な長さであり得る。各選択肢は別々の実施形態である。
【0078】
幾つかの実施形態によれば、フィルタ220の側面開口により形成される全開口面積は0.2~1mm、0.2~0.6mm、0.3~1mm、0.3~0.5mm、0.4~0.6mm、0.5~1.5mm、1.0~3.5mm、1.5~4mm、2.0~3.5mm、又は0.1~4mmの範囲内の他のあらゆる適当な面積であり得る。各選択肢は別々の実施形態である。幾つかの実施形態によれば、フィルタ220の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%が側面開口により形成される開口面積である。幾つかの実施形態によれば、フィルタ220の5%~30%、少なくとも7%~25%、7%~20%、5%~15%が側面開口により形成される開口面積である。各選択肢は別々の実施形態である。
【0079】
幾つかの実施形態によれば、側面開口225は選択的な切り取り(例えば、選択的なレーザカット)により、すなわち図2Dに示されるように編組290を形成するワイヤを切らないことにより形成され得る。幾つかの実施形態によれば、ライナのうちワイヤの下の部分はそのままの状態に残される。幾つかの実施形態によれば、編組290のワイヤ間に位置付けられるポリマ層と内側ライナはどちらも、スリット形成時に貫通される。有利な態様として、ポリマ層の選択的な切り取り(編組290は基本的にそのままの状態に残す)により、側面開口の少なくとも幾つかが、編組によっては分離されるがポリマ外層によっては分離されない2つ又はそれ以上の細分側面開口に分割され得る。
【0080】
フィルタ220の1つの任意選択的構造が図3に示されている。幾つかの実施形態によれば、この構造は1.9Frの血管塞栓術用マイクロカテーテルに適している。図3からわかるように、フィルタ220は3つのフィルタ区間を含み得て、各フィルタ区間は複数の側面開口225を含み、これらは長尺状フィルタ220の周囲の円周方向のリング上に分散される。
【0081】
幾つかの実施形態によれば、フィルタ区間1は側面開口のリングを1~10又は2~8又は4~7含み得る(ここでは7つのリングが示されている)。幾つかの実施形態によれば、リングの各々は1~8の側面開口又は2~6の側面開口、例えば、ただしこれに限定されないが6つの側面開口を含み得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ区間221は合計20~50又は25~60の側面開口、例えば、ただしこれに限定されないが42の側面開口を含み得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ区間1のリングのうち最も遠位側のものは、遠位端開口180から約3~10mm又は4~8mm、例えば、ただしこれに限定されないが約5mmに位置付けられ得る。
【0082】
幾つかの実施形態によれば、フィルタ区間2は側面開口のリングを1~5又は2~4、例えば、ただしこれに限定されないが側面開口のリング3つを含み得る。幾つかの実施形態によれば、リングの各々は1~6の側面開口又は2~4の側面開口、例えば、ただしこれに限定されないがリング当たり4つの側面開口を有し得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ区間2は合計5~20、6~16の側面開口、例えば、ただしこれに限定されないが12の側面開口を含み得る。
【0083】
幾つかの実施形態によれば、フィルタ区間2の側面開口はフィルタ区間1の側面開口に関して円周方向にずらされ得る。
【0084】
幾つかの実施形態によれば、フィルタ区間3は側面開口のリング1~5又は2~4、例えば、ただしこれに限定されないが側面開口のリング2つを含み得る。幾つかの実施形態によれば、リングの各々はリング当たり1~4の側面開口又は1~3の側面開口、例えば、ただしこれに限定されないが、リング当たり2つの側面開口を含み得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ区間3は合計2~6又は2~4の側面開口、例えば、ただしこれに限定されないが4つの側面開口を含み得る。
【0085】
幾つかの実施形態によれば、区間3の第一のリングの側面開口は、区間3の第二のリングの側面開口に関して円周方向にずらされ得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ区間3の側面開口は、フィルタ区間1の側面開口に関して円周方向にずらされ得る。
【0086】
幾つかの実施形態によれば、側面開口225の直径は約150×25マイクロメートル、約150×30マイクロメートル、約125×30マイクロメートル、又は約100×30マイクロメートルであり得る。
【0087】
幾つかの実施形態によれば、フィルタ区間1~3の側面開口の各リングは、その隣接するリングから100~200マイクロメートルだけ、又は120~180マイクロメートルだけ、例えば、これに限定されないが150マイクロメートル離間され得る。
【0088】
有利な態様として、フィルタ220は、ポリマ層を選択的に切り取ることにより(編組290は基本的にそのままの状態に残す)形成され得る。幾つかの実施形態によれば、側面開口225の少なくとも幾つかは、編組290によって分離されるが、ポリマの外層によっては分離されない細分側面開口(例えば、図2Dの細分側面開口225a及び225b)を含み得る。
【0089】
幾つかの実施形態によれば、スリットは同じ又は異なる長さ方向位置に位置付けられ得る。各選択肢は別々の実施形態である。幾つかの実施形態によれば、スリットの分布は互い違い、ジグザグ、又は均等若しくは不均等の他の何れの適当な分布でもあり得る。
【0090】
有利な態様として、フィルタ220はその壁に形成された複数の側面開口にかかわらず、キンクを起こさずに折り曲げられるように構成され得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ220の柔軟性は側面開口の数、それらの最小断面直径、それらの幅、長さ間隔、形状、遠位出口からの距離等により特定され、基本的に本明細書に記載されているように、キンクを起こさずにそれを折り曲げることが可能となる。
【0091】
本明細書で使用されるかぎり、「キンクを起こさない折り曲げ」という用語は、その中の流れを妨害するようなフィルタ220の折れ曲がりを指し得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ220は約180度の角度にキンクを起こさずに折り曲げられるように構成され得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ220は、約0.5~1.5mm、例えば0.5~1.2、0.5~1mmの最小曲げ半径、又はこれらの間の何れかの半径でキンクを起こさずに折り曲げられるように構成され得る。
【0092】
有利な態様として、フィルタ220を含むマイクロカテーテル200は、比較的高密度の側面開口が必要となる有効な逆流防止を提供する一方で、小さいキンクなし半径(例えば、0.5~1.5mmの範囲)及び少なくとも5Nの引張強度も依然として確保する。
【0093】
幾つかの実施形態によれば、マイクロカテーテル200の長さは少なくとも50cm、少なくとも60cm、少なくとも75cm、又は少なくとも1mであり得る。各選択肢は別々の実施形態である。各選択肢は別々の実施形態である。
【0094】
フィルタ220の他の任意選択的構造が図4に示されている。幾つかの実施形態によれば、この構造は1.7Frの血管塞栓術用マイクロカテーテルに適している。図4からわかるように、フィルタ220は複数の側面開口225を含み得て、これらは長尺状フィルタ220の周囲の円周方向のリング上に分散される。
【0095】
幾つかの実施形態によれば、フィルタ220は側面開口のリングを2~20又は5~15又は6~10(例えば、9つのリング)を含み得る。幾つかの実施形態によれば、リングの各々は2~10の側面開口又は4~8の側面開口、例えば、ただしこれに限定されないが、リング当たり6つの側面開口を含み得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ220は合計で30~80又は40~60の側面開口、例えば、ただしこれに限定されないが54の側面開口を含み得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ区間1のリングのうちの最も遠位側のものは、遠位端開口180から約2~10mm又は3~6mm、例えば、ただしこれに限定されないが約4mmに位置付けられ得る。
【0096】
幾つかの実施形態によれば、側面開口225の直径は約150×25マイクロメートル、約150×30マイクロメートル、約125×30マイクロメートル、又は約100×30マイクロメートルであり得る。
【0097】
幾つかの実施形態によれば、側面開口の各リングはその隣接するリングから500~200マイクロメートルだけ、又は120~180マイクロメートルだけ、例えば、ただしこれに限定されないが150マイクロメートル離間され得る。
【0098】
有利な態様として、フィルタ220はポリマ層の選択的切り取り(編組290は基本的にそのままの状態に残す)により形成され得る。幾つかの実施形態によれば、側面開口225の少なくとも幾つかは、編組290によって分離されるが、ポリマの外層によっては分離されない細分側面開口(例えば、図2Dの細分側面開口225a及び225b)を含み得る。
【0099】
幾つかの実施形態によれば、スリットは同じ又は異なる長さ方向位置に位置付けられ得る。各選択肢は別々の実施形態である。幾つかの実施形態によれば、スリットの分布は互い違い、ジグザグ、又は均等若しくは不均等の他の何れかの適当な分布とし得る。
【0100】
有利な態様として、フィルタ220はその壁に形成された複数の側面開口にかかわらず、キンクを起こさずに折り曲げられるように構成され得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ220の柔軟性は側面開口の数、それらの最小断面直径、それらの幅、長さ間隔、形状、遠位出口からの距離等により特定され、基本的に本明細書に記載されているように、キンクを起こさずにそれを折り曲げることが可能となる。
【0101】
本明細書で使用されるかぎり、「キンクを起こさない折り曲げ」という用語は、その中の流れを妨害するようなフィルタ220の折れ曲がりを指し得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ220は約180度の角度にキンクを起こさずに折り曲げられるように構成され得る。幾つかの実施形態によれば、フィルタ220は、約0.5~1.5mm、例えば0.5~1.2、0.5~1mmの最小曲げ半径、又はこれらの間の何れかの半径でキンクを起こさずに折り曲げられるように構成され得る。
【0102】
有利な態様として、フィルタ220を含むマイクロカテーテル200は、比較的高密度の側面開口が必要となる有効な逆流防止を提供する一方で、小さいキンクなし半径(例えば、0.5~1.5mmの範囲)及び少なくとも5Nの引張強度も依然として確保する。
【0103】
幾つかの実施形態によれば、マイクロカテーテル200の長さは少なくとも50cm、少なくとも60cm、少なくとも75cm、又は少なくとも1mであり得る。各選択肢は別々の実施形態である。各選択肢は別々の実施形態である。
【0104】
本明細書で使用されるかぎり、「約(approximately,about)」という用語はそれがさす範囲に関して+/-10%又は+/-5%又は+-2%を意味し得る。各選択肢は別々の実施形態である。
【0105】
以上、複数の例示的な態様と実施形態を説明したが、当業者であればその特定の改良、追加、及び部分的組合せを想像するであろう。したがって、以下の付属の特許請求項及び今後導入される請求項は、かかる改良、追加、及び部分的組合せの全てを、その実際の主旨と範囲内にあるものとして含むと解釈されるものとする。
【符号の説明】
【0106】
Section 1:区間1
Section 2:区間2
Section 3:区間3
図1A-1B】
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
【国際調査報告】