(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】GLP-1受容体アンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
C07K 5/09 20060101AFI20230809BHJP
C07K 5/06 20060101ALI20230809BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230809BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20230809BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230809BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C07K5/09
C07K5/06
A61K38/16
A61P3/08
A61P3/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505826
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 GB2021051921
(87)【国際公開番号】W WO2022023723
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514120896
【氏名又は名称】ヘプタレス セラピューティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Heptares Therapeutics Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジャイルズ・アルバート
(72)【発明者】
【氏名】コングリーヴ,マイルズ・スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】スカリー,コナー
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA28
4C084CA59
4C084DB70
4C084NA14
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC411
4C084ZC412
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA11
4H045BA12
4H045EA25
4H045FA10
4H045FA33
4H045FA61
4H045GA21
(57)【要約】
本明細書における開示は、式(1):
[式中、R
1、AA
1、AA
2、LysR、X及びYは本明細書中に定義の通り]の新規内部環化ペプチド化合物及びそれらの塩、ならびにグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体と関連する障害の治療、予防、改善、制御又はリスク低減におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の配列:
【化1】
[式中、
R
1は、H、NHR
2又はCH
2R
2であり;ここで、R
2は、H、C
1-6アルキル、(CH
2)
nアリール及び(CH
2)
nヘテロアリールから選ばれ;ここで、nは1~6であり;
AA
1は、-Leu-又は-Nle-であり;
AA
2は、-NHCR
3aR
3bCO-であり;ここで、R
3aは、水素又はC
1-3アルキル基であるか、又はR
3bと結合して、N及びOから選ばれる一つ又は複数のヘテロ原子を含有していてもよい3~6員環を形成し;そしてR
3bは、C
1-6アルキル、(CH
2)
nアリール、(CH
2)
nOH又は(CH
2)
nOR
4であるか、又はR
3aと結合して、N及びOから選ばれる一つ又は複数のヘテロ原子を含有していてもよい3~6員環を形成し;ここで、R
4は、C
1-6アルキルであり、nは1~6であり;
LysRは、N-置換されていてもよい置換リシン残基であり;
Xは、配列-Gln-AA
3-Glu-AA
4-Glu-AA
5-Val-AA
6-Leu-Phe-AA
7-AA
8-Trp-Leu-Lys-AA
9-AA
10-であり;
上記式中、AA
3は、-Met-又は-Nle-であり;ここで、AA
3が-Met-の場合、LysRはN-置換リシン残基であり;
AA
4は、-Glu-又は-Gln-であり;
AA
5は、-Ser-又は-Ala-であり;
AA
6は、-Arg-又は-DArg-であり;
AA
7は、基-NHCHR
5CO-であり;ここで、R
5はC
1-6アルキル基であり;
AA
8は、ラクタム架橋を介してAA
9に結合している-Glu-であり;
AA
9は、ラクタム架橋を介してAA
8に結合している-Lys-であり;
AA
10は、-Gly-、-Ser-、-DAla-又は-βAla-であり;
Yは、存在しないか又は配列-AA
11-AA
12-AA
13-AA
14-AA
15-AA
16-AA
17-AA
18-AA
19-AA
20-AA
21-であり;
上記式中、AA
11は、-Gly-又は-Ser-であり;
AA
12は、-Pro-又は-Ser-であり;
AA
13は、-Ser-、-DSer-又は-Lys-であり;
AA
14は、-Ser-、-DSer-、-Lys-又は-Phe-であり;
AA
15は、存在しないか又は-Ser-、-DSer-、-Gly-、-Glu-もしくは-Lys-であり;
AA
16は、存在しないか又は-Ser-、-DSer-、-Ala-、-Lys-もしくは-Tyr-であり;
AA
17は、存在しないか又は-Ser-、-DSer-、-Pro-、-Glu-もしくは-Lys-であり;
AA
18は、存在しないか又は-Ser-、-DSer-、-Pro-、-Lys-もしくは-LysR-であり;
AA
19は、存在しないか又は-Pro-もしくは-Glu-であり;
AA
20は、存在しないか又は-Ser-もしくは-Tyr-であり;
AA
21は、存在しないか又は-Glu-であり;
ここで、X又はYのC末端は、カルボキシル基又はカルボキサミド基であるか、又は任意の天然もしくは非天然アミノ酸配列又は任意のその他の部分、官能基(一つ又は複数)に隣接している]を含む化合物、又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオン。
【請求項2】
R
1が、H、NH
2、NHBn及びCH
2Bnから選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1がNHBnである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式(1a):
【化2】
[式中、AA
1、AA
2、LysR、X及びYは、請求項1に定義の通り]の化合物、又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式(1b):
【化3】
[式中、AA
1、AA
2、LysR、X及びYは、請求項1に定義の通り]の化合物、又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式(1c):
【化4】
[式中、AA
1、AA
2、LysR、X及びYは、請求項1に定義の通り]の化合物、又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
AA
1が-Leu-である、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R
3aが水素又はメチルであり、R
3bが、メチル、エチル、イソブチル、n-ブチル、CH
2OH、CH
2CH
2OH、CH
2OCH
3、CH
2-シクロプロピル、Bn、CH
2Bn又はCH
2CH
2Bnから選ばれる、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R
3aとR
3bが、シクロブチル又はオキセタニル環を形成する、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
AA
2が、
【化5】
から選ばれる、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
AA
2が、
【化6】
から選ばれる、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
AA
2が、
【化7】
である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
基LysRが非置換リシン残基である、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
LysRがN-置換リシン残基であり、その場合のN-置換基が、-CO(CH
2)
qCH
3;-CO(CH
2)
qCO
2H;-CO(CH
2)
qCHCH
2;-COO(CH
2)
qCH
3;-COO(CH
2)
qCO
2H及び-COO(CH
2)
qCHCH
2から選ばれ;ここで、qは1~22である、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
LysRがN-置換リシン残基であり、その場合のN-置換基が基-L-Gであり;前記Lが、
【化8】
からなる群から選ばれ、そして前記Gが、
【化9】
からなる群から選ばれ、
上記式中、mは1~23であり;
pは1~3であり;
rは1~20であり;
sは0~3であり;
tは0~4であり;
そしてwは0~4である、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
基LysRが、
【化10】
である、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
基LysRが、
【化11】
から選ばれる、請求項14に記載の化合物。
【請求項18】
AA
8とAA
9がラクタム架橋を介して結合している、請求項1~17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
X又はYのC末端がカルボキサミド基である、請求項1~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
実施例1~33のいずれか一つから選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
実施例15:
【化12】
実施例30:
【化13】
実施例32:
【化14】
から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
GLP-1受容体アンタゴニスト活性を有する、請求項1~21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に定義の化合物と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項24】
説明のつかない症候性高インスリン血症状態及び/又は合併する低血糖状態の治療に使用するための、請求項1~23のいずれか1項に記載の化合物又は組成物。
【請求項25】
前記状態が、ロイシン感受性に伴う高インスリン血症による低血糖、非悪性インスリノーマ、手術不能な膵島アデノーマ又はカルシノーマ、又は膵外悪性腫瘍に伴う高インスリン血症による低血糖、多嚢胞性卵巣症候群における高インスリン血症と低血糖、T2DMにおけるスルホニルウレア誘発毒性、プラダー・ウィリ症候群、副腎機能障害及びアジソン病、ベックウィズ・ヴィーデマン症候群、ソトス症候群、コステロ症候群、ティモシー症候群、歌舞伎症候群、先天性グリコシル化障害、後期ダンピング症候群、糖尿病母の反応性低血糖児、トリソミー13、中枢性低換気症候群、妖精症(インスリン抵抗症候群)、モザイクターナー症候群、アッシャー症候群、非インスリノーマ膵臓由来低血糖、虚偽性低血糖、インスリン遺伝子受容体変異、インスリン自己免疫症候群、非膵島細胞腫瘍低血糖(NICTH)ならびにアルコール及びその他の常習性物質からの離脱症状などの状態の範囲の、説明のつかない症候性高インスリン血症及び/又は合併する低血糖から選ばれる、請求項24に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部ラクタム架橋を含有する新規ペプチド化合物のクラス、それらの塩、それらを含有する医薬組成物、及び人体の治療におけるそれらの使用に関する。特に、本発明は、グルカゴン様ペプチド(GLP)受容体のアンタゴニストである化合物のクラスに向けられる。さらに詳しくは、本発明は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアンタゴニストである化合物に向けられる。本発明はまた、GLP受容体が関与する疾患の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の製造及び使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
消化管ホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、腸のL細胞から食後に放出され、膵臓b細胞に対して直接的かつ強力なグルコース依存性インスリン分泌促進作用を発揮する。
【0003】
GLP-1は、腸内でプログルカゴンの翻訳後プロセシングによって合成される。腸のL細胞にしか発現していないプロホルモン転換酵素1/3によってプログルカゴンが切断されることにより、インクレチンペプチドのGLP-1及びGLP-2が放出される。分泌されたGLP-1はユビキタス酵素ジペプチジルペプチドIVによって迅速に分解されるため、GLP-1の半減期は約2分と極めて短い。
【0004】
GLP-1は、クラスBのGタンパク質共役型受容体ファミリーに属するグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1R)という特異的受容体を介して作用する。GLP-1受容体は、膵島、脳、心臓、腎臓及び消化管に広く分布している。GLP-1がその同源受容体(cognate receptor)に結合すると、刺激Gタンパク質Gasを介してアデニル酸シクラーゼが活性化され、細胞内cAMPレベルの形成、膜の脱分極、細胞内カルシウム濃度の上昇及び膵臓b細胞に存在するインスリン含有顆粒のエキソサイトーシス(開口放出)促進がもたらされる。GLP-1が媒介する持続的なcAMP濃度上昇も膵臓b細胞増殖を刺激し、膵管上皮の前駆細胞からの新しいベータ細胞の分化を促進する。
【0005】
GLP-1は、血漿グルコースの制御に重要な他のホルモンの分泌にも直接影響を与える。膵臓a細胞は、ソマトスタチンのパラクライン作用を通じてグルカゴン分泌を強力に抑制するGLP-1の持続性抑制制御(tonic inhibitory control)下にある。GLP-1活性を介してグルカゴンが抑制されると肝のグルコース産生が減少するので、食後血糖変動の制御に対する全体的なGLP-1効果に寄与する。
【0006】
要するに、GLP-1は、グルコース刺激による膵臓からのインスリン分泌増加と、その結果の末梢組織におけるグルコース取込み増加を通じて、強力な抗糖尿病効果を有することが示されている。GLP-1は、胃内容排出と幽門洞十二指腸(antroduodenal)運動の抑制、少量で満腹感創出及び食物摂取の減少ならびに体重減少にも主要な役割を果たしている。
【0007】
上述したGLP-1の顕著な効果から、GLP-1の過剰な血漿中濃度、GLP-1シグナリングの増大及び/又はGLP-1Rレベルの増加と関連する臨床徴候は、低血糖を招く高インスリン血症(過剰なグルコース依存性インスリン分泌)や胃腸障害の証拠をもたらすだろうという仮説が導かれた。従って、高インスリン血症及び低血糖症などの状態は、GLP-1Rの活性化を遮断/拮抗することによって治療できると思われる。
【0008】
特異的GLP-1受容体アンタゴニストであるエキセンジン(9-39)アミド[Ex(9-39)]は、当初アメリカドクトカゲ(Heloderma suspectum)の毒から単離され、GLP-1とある程度の配列相同性を共有している。Ex(9-39)は、GLP-1受容体の選択的競合的ペプチドアンタゴニストで、インビトロ及びインビボでGLP-1媒介性のインスリン分泌を遮断し、ヒト及び齧歯類モデルでGLP-1の内因性及び外因性投与に応答する耐糖能を障害する。Ex(9-39)はまた、GLP-1レベルの増加がなくてもインスリン分泌を抑制するので、Ex(9-39)はGLP-1受容体のインバースアゴニスト(逆作動薬)であることが示唆される。これらのデータから、GLP-1受容体の存在のみが膵臓β細胞のグルコース受容能力 (glucose-competent status)の維持に重要であることが示唆される。
【0009】
膵島β細胞に対するGLP-1の影響は大きい。GLP-1は、インスリン放出、プロインスリンの発現、インスリンの生合成及びmRNA安定性を促進する。GLP-1はまた、膵島δ細胞からのソマトスタチン分泌を引き起こし、膵島α細胞からのグルカゴン分泌を抑制する。グルカゴンの作用はインスリンのそれとは反対で、肝臓に直接働きかけてグリコーゲン分解とグルコース新生を増大させることにより、血流中のグルコース濃度を上昇させる。このことは、GLP-1系の遮断は、インスリン分泌に直接影響するだけでなく、肝臓によるグルコース産生の増加を促進するグルカゴン分泌に対する抑制も解除することを示唆している。
【0010】
健常状態下では、GLP-1のインスリン分泌作用は通常、高度にグルコース依存性で、過剰なGLP-1分泌や感受性が低血糖を招くことはない。しかしながら、非グルコース依存性のインスリン分泌促進剤(例えば、KATPチャネルに作用するスルホニルウレア)の存在下でGLP-1の投与を用いたり又はさらには超生理学的レベルのGLP-1を正常被験者に直接注入する臨床研究は、低血糖のリスク増大と関連する。
【0011】
糖尿病と関連しない低血糖は稀な臨床障害である。それは、通常、静脈血漿中グルコースが<55mg/mlの場合に診断され、ウィップルの三徴の存在によって裏付けられる。本願の主題であるGLP-1Rアンタゴニストは、高インスリン血症及び/又は低血糖をもたらすGLP-1の過剰な血漿中濃度、GLP-1シグナリングの増大及び/又はGLP-1Rレベルの増加、及び/又は胃腸障害の証拠と関連する一連の状態を治療できる可能性を有している。これらの状態には、低血糖の対症療法が含まれるほか、細胞増殖及び分化に対するGLP-1の作用に基づいて、疾患進行過程に影響する可能性も含まれるであろう。
【0012】
規制当局の承認を得た高インスリン血性低血糖症(HH)治療用の新薬は20年以上なく、すべての現行治療には重大な欠陥がある。このため、希少疾患への適応を始めとして、新生児室への満期産児入院(term admission)のおよそ10%に必要とされる短期的要件から、胃バイパス手術を受ける成人の0.2~1%にまで及ぶ著しく満たされない医療ニーズが生じている。この機序を特異的に標的にすることの有効性が、最近、二つの異なる臨床集団でGLP-1受容体アンタゴニストペプチドEx9-39を用いて臨床的に検証された。
【0013】
先天性高インスリン血症(CHI)は、新生児及び小児における重症持続性HHの最も多い原因で、英国では出生児(live birth)のおよそ1/40,000に発生している。CHIにおけるGLP-1Rアンタゴニストの潜在的利益は、高インスリン血症の齧歯類モデルで実証されている。これらの知見を拡大して、KATPチャネルの不活化変異のためにCHIを有するヒト成人対象でEx9-39の試験が行われた。GLP-1受容体アンタゴニスト治療を導入すれば、多くのCHI患者が取り返しのつかない膵切除術実施のプレッシャーから解放されると予測される。これには、GLP-1の分泌過剰が不適切なインスリン放出の根本原因であるという証拠が集まりつつあるCHI患者も含まれる。GLP-1アンタゴニスト治療は、持続的な応答プロファイルを持ち、すべての患者に有効であり、そして用量調整(漸増・漸減)や他の薬理学的治療の導入に起因する薬物相互作用の調整をする必要なく成人で継続できると予測される。
【0014】
肥満治療手術後低血糖(PBHS)。胃バイパス手術は、病的肥満の2型糖尿病患者の治療にますます使用されており、GLP-1分泌レベルを大きく増加させることが実証されている。この治療は、比較的少数ではあるが臨床的に重要な数の患者に、術後出現しうる深刻な食後高インスリン血性低血糖状態を招くことがあり、グルコース濃度が、けいれん、精神状態の変化、意識喪失、認知機能障害、身体障害、及び死亡を引き起こすほど低くなる(20~40mg/dL)。重度の症状を呈するこれらの患者に対する有効な治療法はない。本発明は、彼らが肥満治療手術後高インスリン血症を患った場合に彼らを大きく保護できる治療介入機会を提供する。最近、Salehiと同僚は、胃バイパス患者におけるこの重度の食後低血糖は、GLP-1アンタゴニストEx(9-39)の注入によって補正できることを報告したが、これは、この機序におけるGLP-1とその受容体の基本的役割と整合性がとれている。
【0015】
低血糖の対症療法に対する満たされない医療ニーズは、CHI及びPBSH以外にも広がっている。高インスリン血性低血糖には、膵臓β細胞からのインスリン分泌の調節異常とその結果の低血糖を主な特徴とするいくつかの異種障害も包含され、GLP1-Rアンタゴニストで効果的に治療できる。これらに含まれるものとして、小児(例えば、新生児低血糖、胃瘻造設に続発する低血糖、病因不明の食後低血糖)及び成人(例えば、インスリノーマ、胃バイパス手術性低血糖)の低血糖の適応が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
説明のつかない一過性の低血糖は新生児学で遭遇する最も一般的で重要な医療問題の一つである。英国では、我々の治療センターの内部監査によれば、新生児室への満期産児入院のおよそ10%は単に原因不明の低血糖によるものであることが示唆されている。2012年の出生数が800,000人であるとすると、年間新たに約8,000例の発生数が示唆される。同様の数字は、極端な体重を有する新生児の新生児低血糖に関する米国ベースの研究からも導き出すことができる。本発明に記載されるような安全で有効な治療法は、この患者集団に治療的利益の可能性を提供する。
【0017】
高インスリン血症及び/又は低血糖は、一部の‘ダンピング症候群’患者にも観察され(例えば、胃バイパス手術や胃/食道手術などの外科的処置の合併症として)、非常に迅速な胃内容排出とインスリンの過剰放出を示す。現在の仮説は、急速な食後グルコースフラックス、GLP-1分泌及び高インスリン血症との間の関連性を示唆している。
【0018】
腫瘍性の低血糖(TH)は稀な臨床状態で、膵島b細胞腫瘍(インスリノーマ)による正所性インスリン分泌又は非膵島細胞腫瘍(例えば、これらに限定されないが、気管支カルチノイド及び消化管間質腫瘍など)による異所性腫瘍インスリン分泌の結果として発生しうる。インスリノーマは稀な腫瘍で、発生率は年間約0.4/100,000人で、通常、小さな散発性膵内良性腫瘍である。
【0019】
最後に、アンタゴニストEx(9-39)を用いた臨床データは、上昇したGLP-1レベル及びインスリンレベルの結果を遮断する能力を一貫して示している。本発明の他の態様は、説明のつかない症候性高インスリン血症及び/又は合併する低血糖の治療を含み、その病態の範囲は、ロイシン感受性に伴う高インスリン血症による低血糖、非悪性インスリノーマ、手術不能な膵島アデノーマ又はカルシノーマ、又は膵外悪性腫瘍に伴う高インスリン血症による低血糖、多嚢胞性卵巣症候群における高インスリン血症と低血糖、T2DMにおけるスルホニルウレア誘発毒性、プラダー・ウィリ(Prader-Willi)症候群、副腎機能障害及びアジソン病、ベックウィズ・ヴィーデマン(Beckwith-Wiedemann)症候群、ソトス(Soto’s)症候群、コステロ(Costello)症候群、ティモシー(Timothy)症候群、歌舞伎症候群、先天性グリコシル化障害、後期ダンピング症候群、糖尿病母の反応性低血糖児、トリソミー13、中枢性低換気症候群、妖精症(インスリン抵抗症候群)、モザイクターナー症候群、アッシャー(Usher)症候群、非インスリノーマ膵臓由来低血糖、虚偽性低血糖、インスリン遺伝子受容体変異、インスリン自己免疫症候群、非膵島細胞腫瘍低血糖(NICTH)ならびにアルコール及びその他の常習性物質からの離脱症状などである。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、GLP-1受容体においてアンタゴニスト活性を有する新規化合物、これらを含む医薬組成物、及び疾患の治療用医薬の製造のための該化合物の使用に関する。
【0021】
そこで、一態様において、本発明は、式(1)の化合物:
式(1)の配列:
【0022】
【化1】
[式中、
R
1は、H、NHR
2又はCH
2R
2であり;ここで、R
2は、H、C
1-6アルキル、(CH
2)
nアリール及び(CH
2)
nヘテロアリールから選ばれ;ここで、nは1~6であり;
AA
1は、-Leu-又は-Nle-であり;
AA
2は、-NHCR
3aR
3bCO-であり;ここで、R
3aは、水素又はC
1-3アルキル基であるか、又はR
3bと結合して、N及びOから選ばれる一つ又は複数のヘテロ原子を含有していてもよい3~6員環を形成し;そしてR
3bは、C
1-6アルキル、(CH
2)
nアリール、(CH
2)
nOH又は(CH
2)
nOR
4であるか、又はR
3aと結合して、N及びOから選ばれる一つ又は複数のヘテロ原子を含有していてもよい3~6員環を形成し;ここで、R
4は、C
1-6アルキルであり、nは1~6であり;
LysRは、N-置換されていてもよい置換リシン残基であり;
Xは、配列-Gln-AA
3-Glu-AA
4-Glu-AA
5-Val-AA
6-Leu-Phe-AA
7-AA
8-Trp-Leu-Lys-AA
9-AA
10であり;
上記式中、AA
3は、-Met-又は-Nle-であり;ここで、AA
3が-Met-の場合、LysRはN-置換リシン残基であり;
AA
4は、-Glu-又は-Gln-であり;
AA
5は、-Ser-又は-Ala-であり;
AA
6は、-Arg-又は-DArg-であり;
AA
7は、基-NHCHR
5CO-であり;ここで、R
5はC
1-6アルキル基であり;
AA
8は、ラクタム架橋を介してAA
9に結合している-Glu-であり;
AA
9は、ラクタム架橋を介してAA
8に結合している-Lys-であり;
AA
10は、-Gly-、-Ser-、-DAla-又は-βAla-であり;
Yは、存在しないか又は配列-AA
11-AA
12-AA
13-AA
14-AA
15-AA
16-AA
17-AA
18-AA
19-AA
20-AA
21-であり;
上記式中、AA
11は、-Gly-又は-Ser-であり;
AA
12は、-Pro-又は-Ser-であり;
AA
13は、-Ser-、-DSer-又は-Lys-であり;
AA
14は、-Ser-、-DSer-、-Lys-又は-Phe-であり;
AA
15は、存在しないか又は-Ser-、-DSer-、-Gly-、-Glu-もしくは-Lys-であり;
AA
16は、存在しないか又は-Ser-、-DSer-、-Ala-、-Lys-もしくは-Tyr-であり;
AA
17は、存在しないか又は-Ser-、-DSer-、-Pro-、-Glu-もしくは-Lys-であり;
AA
18は、存在しないか又は-Ser-、-DSer-、-Pro-、-Lys-もしくは-LysR-であり;
AA
19は、存在しないか又は-Pro-もしくは-Glu-であり;
AA
20は、存在しないか又は-Ser-もしくは-Tyr-であり;
AA
21は、存在しないか又は-Glu-であり;
ここで、X又はYのC末端は、カルボキシル基又はカルボキサミド基であるか、又は任意の天然もしくは非天然アミノ酸配列又は任意のその他の部分、官能基(一つ又は複数)に隣接している]を含む化合物、又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンを提供する。
【0023】
特別な化合物は、式(1a):
【0024】
【化2】
[式中、AA
1、AA
2、LysR、X及びYは上記定義の通りである]の化合物又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンも含む。
【0025】
特別な化合物は、式(1b):
【0026】
【化3】
[式中、AA
1、AA
2、LysR、X及びYは上記定義の通りである]の化合物又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンも含む。
【0027】
特別な化合物は、式(1c):
【0028】
【化4】
[式中、AA
1、AA
2、LysR、X及びYは上記定義の通りである]の化合物又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンも含む。
【0029】
特別な化合物は、式(1d):
【0030】
【化5】
[式中、AA
1、AA
2、LysR、X及びYは上記定義の通りである]の化合物又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンも含む。
【0031】
本明細書中の化合物は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアンタゴニストとして使用できる。本化合物は医薬の製造に使用できる。本化合物又は医薬は、例えば、ロイシン感受性に伴う高インスリン血症による低血糖、非悪性インスリノーマ、手術不能な膵島アデノーマ又はカルシノーマ、又は膵外悪性腫瘍に伴う高インスリン血症による低血糖、多嚢胞性卵巣症候群における高インスリン血症と低血糖、T2DMにおけるスルホニルウレア誘発毒性、プラダー・ウィリ症候群、副腎機能障害及びアジソン病、ベックウィズ・ヴィーデマン症候群、ソトス症候群、コステロ症候群、ティモシー症候群、歌舞伎症候群、先天性グリコシル化障害、後期ダンピング症候群、糖尿病母の反応性低血糖児、トリソミー13、中枢性低換気症候群、妖精症(インスリン抵抗症候群)、モザイクターナー症候群、アッシャー症候群、非インスリノーマ膵臓由来低血糖、虚偽性低血糖、インスリン遺伝子受容体変異、インスリン自己免疫症候群、非膵島細胞腫瘍低血糖(NICTH)ならびにアルコール及びその他の常習性物質からの離脱症状などの病態の範囲の、説明のつかない症候性高インスリン血症及び/又は合併する低血糖を含むGLP-1受容体と関連する障害の治療、予防、改善、制御、又はリスクの低減に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は実施例12の結果を示す。グルコース投与後0~120分にわたるグルコースAUC。実施例の化合物は、Williams試験により、エキセンジン-4と比較して効果を示す。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【
図2】
図2は実施例12の結果を示す。グルコース投与後10分時点の血漿中インスリン(ng/ml)。実施例の化合物は、Williams試験により、エキセンジン-4と比較して効果を示す。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は新規化合物に関する。本発明はまた、GLP-1受容体のアンタゴニストとしての新規化合物の使用にも関する。本発明はさらに、GLP-1受容体アンタゴニストとして使用するため又はGLP-1受容体に関連する障害を治療するための医薬の製造における新規化合物の使用にも関する。本発明はさらに、他のGLP受容体サブタイプに対してGLP-1受容体の選択的アンタゴニストである化合物、組成物及び医薬にも関する。
【0034】
本発明はさらに、説明のつかない症候性高インスリン血症状態及び/又は合併する低血糖状態、例えば、ロイシン感受性に伴う高インスリン血症による低血糖、非悪性インスリノーマ、手術不能な膵島アデノーマ又はカルシノーマ、又は膵外悪性腫瘍に伴う高インスリン血症による低血糖、多嚢胞性卵巣症候群における高インスリン血症と低血糖、T2DMにおけるスルホニルウレア誘発毒性、プラダー・ウィリ症候群、副腎機能障害及びアジソン病、ベックウィズ・ヴィーデマン症候群、ソトス症候群、コステロ症候群、ティモシー症候群、歌舞伎症候群、先天性グリコシル化障害、後期ダンピング症候群、糖尿病母の反応性低血糖児、トリソミー13、中枢性低換気症候群、妖精症(インスリン抵抗症候群)、モザイクターナー症候群、アッシャー症候群、非インスリノーマ膵臓由来低血糖、虚偽性低血糖、インスリン遺伝子受容体変異、インスリン自己免疫症候群、非膵島細胞腫瘍低血糖(NICTH)ならびにアルコール及びその他の常習性物質からの離脱症状などの治療に有用な化合物、組成物及び医薬にも関する。
【0035】
そこで、一態様において、本発明は、式(1)の配列:
【0036】
【化6】
[式中、
R
1は、H、NHR
2又はCH
2R
2であり;ここで、R
2は、H、C
1-6アルキル、(CH
2)
nアリール及び(CH
2)
nヘテロアリールから選ばれ;ここで、nは1~6であり;
AA
1は、-Leu-又は-Nle-であり;
AA
2は、-NHCR
3aR
3bCO-であり;ここで、R
3aは、水素又はC
1-3アルキル基であるか、又はR
3bと結合して、N及びOから選ばれる一つ又は複数のヘテロ原子を含有していてもよい3~6員環を形成し;そしてR
3bは、C
1-6アルキル、(CH
2)
nアリール、(CH
2)
nOH又は(CH
2)
nOR
4であるか、又はR
3aと結合して、N及びOから選ばれる一つ又は複数のヘテロ原子を含有していてもよい3~6員環を形成し;ここで、R
4は、C
1-6アルキルであり、nは1~6であり;
LysRは、N-置換されていてもよい置換リシン残基であり;
Xは、配列-Gln-AA
3-Glu-AA
4-Glu-AA
5-Val-AA
6-Leu-Phe-AA
7-AA
8-Trp-Leu-Lys-AA
9-AA
10-であり;
上記式中、AA
3は、-Met-又は-Nle-であり;ここで、AA
3が-Met-の場合、LysRはN-置換リシン残基であり;
AA
4は、-Glu-又は-Gln-であり;
AA
5は、-Ser-又は-Ala-であり;
AA
6は、-Arg-又は-DArg-であり;
AA
7は、基-NHCHR
5CO-であり;ここで、R
5はC
1-6アルキル基であり;
AA
8は、ラクタム架橋を介してAA
9に結合している-Glu-であり;
AA
9は、ラクタム架橋を介してAA
8に結合している-Lys-であり;
AA
10は、-Gly-、-Ser-、-DAla-又は-βAla-であり;
Yは、存在しないか又は配列-AA
11-AA
12-AA
13-AA
14-AA
15-AA
16-AA
17-AA
18-AA
19-AA
20-AA
21-であり;
上記式中、AA
11は、-Gly-又は-Ser-であり;
AA
12は、-Pro-又は-Ser-であり;
AA
13は、-Ser-、-DSer-又は-Lys-であり;
AA
14は、-Ser-、-DSer-、-Lys-又は-Phe-であり;
AA
15は、存在しないか又は-Ser-、-DSer-、-Gly-、-Glu-もしくは-Lys-であり;
AA
16は、存在しないか又は-Ser-、-DSer-、-Ala-、-Lys-もしくは-Tyr-であり;
AA
17は、存在しないか又は-Ser-、-DSer-、-Pro-、-Glu-もしくは-Lys-であり;
AA
18は、存在しないか又は-Ser-、-DSer-、-Pro-、-Lys-もしくは-LysR-であり;
AA
19は、存在しないか又は-Pro-もしくは-Glu-であり;
AA
20は、存在しないか又は-Ser-もしくは-Tyr-であり;
AA
21は、存在しないか又は-Glu-であり;
ここで、X又はYのC末端は、カルボキシル基又はカルボキサミド基であるか、又は任意の天然もしくは非天然アミノ酸配列又は任意のその他の部分、官能基(一つ又は複数)に隣接している]を含む化合物、又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンを提供する。
【0037】
R1は、H、NH2、NHBn又はCH2Bnでありうる。R1はHでありうる。R1は水素でありうる。R1はNH2でありうる。R1はNHBnでありうる。R1はCH2Bnでありうる。R1はNH-ベンジルでありうる。R1はCH2-ベンジルでありうる。
【0038】
R2はHでありうる。R2は水素でありうる。R2はBnでありうる。R2はベンジルでありうる。
【0039】
AA1は、-Leu-でありうる。AA1は、-Nle-でありうる。
【0040】
AA2は、-NHCR3aR3bCO-であり得;ここで、R3aは、水素又はメチルであり、R3bは、メチル、エチル、イソブチル、n-ブチル、CH2OH、CH2CH2OH、CH2OCH3、CH2-シクロプロピル、Bn、CH2Bn又はCH2CH2Bnから選ばれる。
【0041】
R3aは、水素又はメチルでありうる。R3aは水素でありうる。R3aはメチルでありうる。
【0042】
R3bは、メチル、エチル、イソブチル、n-ブチル、CH2OH、CH2CH2OH、CH2OCH3、CH2-シクロプロピル、Bn、CH2Bn又はCH2CH2Bnから選ぶことができる。
【0043】
R3aとR3bは、結合して環を形成することができる。R3aとR3bは、結合してシクロブチル又はオキセタニル環を形成できる。
【0044】
AA2は、
【0045】
【0046】
AA2は、
【0047】
【0048】
LysRは、非置換リシン残基でありうる。
【0049】
LysRは、N-置換リシン残基であり得、その場合のN-置換基は、-CO(CH2)qCH3;-CO(CH2)qCO2H;-CO(CH2)qCHCH2;-COO(CH2)qCH3;-COO(CH2)qCO2H及び-COO(CH2)qCHCH2から選ばれ;ここで、qは1~22である。
【0050】
LysRは、N-置換リシン残基であり得、その場合のN-置換基は、-COO(CH2)qCHCH2であり;ここで、qは1~22である。
【0051】
LysRは、N-置換リシン残基であり得、その場合のN-置換基は、-COO(CH2)qCHCH2であり;ここで、qは1である。
【0052】
LysRは、N-置換リシン残基であり得、その場合のN-置換基は、-COOCH2CHCH2である。
【0053】
LysRは、
【0054】
【0055】
LysRは、N-置換リシン残基であり得、その場合のN-置換基は、基-L-Gであり;ここで、Lは、
【0056】
【0057】
【化11】
からなる群から選ばれる。
上記式中、mは1~23であり;
pは1~3であり;
rは1~20であり;
sは0~3であり;
tは0~4であり;
そしてwは0~4である。
【0058】
LysRは、
【0059】
【0060】
LysRは、
【0061】
【0062】
AA3は、-Met-でありうる。AA3は、-Nle-でありうる。AA3が-Met-の場合、LysRは置換リシン残基である。
【0063】
AA4は、-Glu-でありうる。AA4は、-Gln-でありうる。
【0064】
AA5は、-Ser-でありうる。AA5は、-Ala-でありうる。
【0065】
AA6は、-Arg-でありうる。AA6は、-DArgでありうる。
【0066】
AA7は、基-NHCHR5CO-であり得;ここで、R5は、イソプロピル、sec-ブチル及びネオペンチルから選ばれる。R5はイソプロピルでありうる。R5はsec-ブチルでありうる。R5はネオペンチルでありうる。
【0067】
AA7は、-Ile-でありうる。AA7は、-Val-でありうる。AA7は、tert-ブチルアラニン残基でありうる。
【0068】
AA10は、-Gly-でありうる。AA10は、-Ser-でありうる。AA10は、-DAla-でありうる。AA10は、-βAla-でありうる。
【0069】
AA8とAA9は、ラクタム架橋を介して結合できる。
【0070】
Yは、不在又は存在でありうる。Yは不在でありうる。Yは存在でありうる。
【0071】
AA11は、-Gly-でありうる。AA11は、-Ser-でありうる。
【0072】
AA12は、-Pro-でありうる。AA12は、-Ser-でありうる。
【0073】
AA13は、-Ser-でありうる。AA13は、-DSer-でありうる。AA13は、-Lys-でありうる。
【0074】
AA14は、-Ser-でありうる。AA14は、-DSer-でありうる。AA14は、-Lys-でありうる。AA14は、-Phe-でありうる。
【0075】
AA15は不在でありうる。AA15は、-Ser-でありうる。AA15は、-DSer-でありうる。AA15は、-Gly-でありうる。AA15は、-Glu-でありうる。AA15は、-Lys-でありうる。
【0076】
AA16は不在でありうる。AA16は、-Ser-でありうる。AA16は、-DSer-でありうる。AA16は、-Ala-でありうる。AA16は、-Lys-でありうる。AA16は、-Tyr-でありうる。
【0077】
AA17は不在でありうる。AA17は、-Ser-でありうる。AA17は、-DSer-でありうる。AA17は、-Pro-でありうる。AA17は、-Glu-でありうる。AA17は、-Lys-でありうる。
【0078】
AA18は不在でありうる。AA18は、-Ser-でありうる。AA18は、-DSer-でありうる。AA18は、-Pro-でありうる。AA18は、-Lys-でありうる。AA18は、-LysR-でありうる。
【0079】
AA19は不在でありうる。AA19は、-Pro-でありうる。AA19は、-Glu-でありうる。
【0080】
AA20は不在でありうる。AA20は、-Ser-でありうる。AA20は、-Tyr-でありうる。
【0081】
AA21は不在でありうる。AA21は、-Glu-でありうる。
【0082】
Yが存在しない場合、XのC末端はカルボキサミド基でありうる。Yが存在しない場合、XのC末端はカルボキシル基でありうる。Yが存在しない場合、XのC末端は、任意の天然もしくは非天然アミノ酸配列又は任意のその他の部分、官能基(一つ又は複数)に隣接できる。
【0083】
YのC末端はカルボキサミド基でありうる。YのC末端はカルボキシル基でありうる。YのC末端は、任意の天然もしくは非天然アミノ酸配列又は任意のその他の部分、官能基(一つ又は複数)に隣接できる。
【0084】
本化合物は、R1がNHBnであり、AA1が-Leu-であり、AA2が-D-HomoPhe-であり、LysRが-Lys-であり、AA3が-Nle-であり、AA4が-Glu-であり、AA5が-Ala-であり、AA6が-DArg-であり、AA7が-Ile-であり、そしてAA10が-Gly-である化合物でありうる。この場合、XのC-末端はカルボキサミド基である
本化合物は、R1がNHBnであり、AA1が-Nle-であり、AA2が-Aib-であり、LysRが-Lys-であり、AA3が-Nle-であり、AA4が-Glu-であり、AA5が-Ala-であり、AA6が-DArg-であり、AA7が-Ile-であり、そしてAA10が-Gly-である化合物でありうる。この場合、XのC-末端はカルボキサミド基である
本化合物は、R1がNHBnであり、AA1が-Leu-であり、AA2が-D-Ala-であり、LysRが-Lys-であり、AA3が-Nle-であり、AA4が-Glu-であり、AA5が-Ala-であり、AA6が-DArg-であり、AA7が-Ile-であり、AA10が-Gly-であり、AA11が-Gly-であり、AA12が-Pro-であり、AA13が-Ser-であり、AA14が-Ser-であり、AA15が-Ser-であり、AA16が-Ser-であり、AA17が-Ser-であり、そしてAA18が-Ser-である化合物でありうる。この場合、YのC-末端はカルボキサミド基である。
【0085】
本化合物は、式(1a):
【0086】
【化14】
[式中、AA
1、AA
2、LysR、X及びYは上記定義の通りである]の化合物又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンでありうる。
【0087】
本化合物は、式(1b):
【0088】
【化15】
[式中、AA
1、AA
2、LysR、X及びYは上記定義の通りである]の化合物又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンでありうる。
【0089】
本化合物は、式(1c):
【0090】
【化16】
[式中、AA
1、AA
2、LysR、X及びYは上記定義の通りである]の化合物又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンでありうる。
【0091】
本化合物は、式(1d):
【0092】
【化17】
[式中、AA
1、AA
2、LysR、X及びYは上記定義の通りである]の化合物又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンでありうる。
【0093】
本化合物は、
実施例15:
【0094】
【0095】
【0096】
【化20】
からなる群から選ばれる化合物又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンでありうる。
【0097】
本化合物は、表1に示されている実施例1~33のいずれか一つから選ぶことができる。
【0098】
【0099】
【表1-2】
適切な場合、表1には標準的なアミノ酸記号が使用されている。標準記号が利用できない場合、下記の表現が使用される。
【0100】
【表1-3】
化合物の具体例は、GLP-1受容体アンタゴニスト活性を有する化合物を含む。
【0101】
本発明の化合物は、本発明の化合物と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物に使用することができる。
【0102】
本発明の化合物は医薬に使用できる。
【0103】
本発明の化合物は、GLP-1受容体と関連する障害の治療に使用することができる。
【0104】
本発明の化合物は、説明のつかない症候性高インスリン血症状態及び/又は合併する低血糖状態、例えば、ロイシン感受性に伴う高インスリン血症による低血糖、非悪性インスリノーマ、手術不能な膵島アデノーマ又はカルシノーマ、又は膵外悪性腫瘍に伴う高インスリン血症による低血糖、多嚢胞性卵巣症候群における高インスリン血症と低血糖、T2DMにおけるスルホニルウレア誘発毒性、プラダー・ウィリ症候群、副腎機能障害及びアジソン病、ベックウィズ・ヴィーデマン症候群、ソトス症候群、コステロ症候群、ティモシー症候群、歌舞伎症候群、先天性グリコシル化障害、後期ダンピング症候群、糖尿病母の反応性低血糖児、トリソミー13、中枢性低換気症候群、妖精症(インスリン抵抗症候群)、モザイクターナー症候群、アッシャー症候群、非インスリノーマ膵臓由来低血糖、虚偽性低血糖、インスリン遺伝子受容体変異、インスリン自己免疫症候群、非膵島細胞腫瘍低血糖(NICTH)ならびにアルコール及びその他の常習性物質からの離脱症状などの治療に使用することができる。
【0105】
定義
本願においては、別段の指示がない限り、下記の定義が適用される。
【0106】
用語“アルキル”、“アリール”、及び“ヘテロアリール”は、別段の指示がない限り、それらの従来の意味で使用される(例えば、IUPAC Gold Bookに定義のような)。
【0107】
式(1)の化合物を含む本明細書中に記載の化合物のいずれかの使用に関連して、用語“治療”は、問題の疾患又は障害に罹患している、又は罹患するリスクがある、又は潜在的に罹患するリスクがある対象に化合物を投与する何らかの形態の介入を記載するために使用される。従って、用語“治療”は予防的(preventative,prophylactic)治療と、疾患又は障害の測定可能な又は検出可能な症状が呈示されている場合の治療の両方をカバーする。
【0108】
本明細書中で使用されている用語“有効治療量”(例えば、障害、疾患又は状態の治療法との関連で)は、所望の治療効果を生ずるために有効な化合物の量のことを言う。例えば、状態が疼痛の場合、有効治療量は、所望レベルの疼痛緩和を提供するのに足る量である。所望レベルの疼痛緩和は、例えば、疼痛の完全除去又は疼痛の重症度の軽減でありうる。
【0109】
記載されている任意の化合物がキラル中心を有する限り、本発明は、そのような化合物のすべての光学異性体にまで及び、それがラセミ化合物の形態であるか又は分割されたエナンチオマーの形態であるかを問わない。本明細書中に記載されている発明は、開示化合物のいずれかのすべての結晶形、溶媒和物及び水和物に関する(どのように製造されようとも)。本明細書中に開示された任意の化合物がカルボン酸又はアミノ基などの酸又は塩基中心を有する限り、前記化合物のすべての塩形は本発明に包含される。製薬学的用途の場合、その塩は薬学的に許容可能な塩と見なされるべきである。
【0110】
言及されうる塩又は薬学的に許容可能な塩は、酸付加塩及び塩基付加塩を含む。そのような塩は従来手段によって形成できる。例えば、化合物の遊離酸又は遊離塩基形を、1当量以上の適当な酸又は塩基と、任意に溶媒中、又は塩が不溶性の媒体中で反応させた後、前記溶媒又は前記媒体を標準技術を用いて(例えば、真空下で、凍結乾燥により、又はろ過により)除去することによる。塩は、塩の形態の化合物の対イオンを、例えば適切なイオン交換樹脂を用いて、別の対イオンと交換することによって製造することもできる。
【0111】
薬学的に許容可能な塩の例は、鉱酸及び有機酸から誘導される酸付加塩、及びナトリウム、マグネシウム、カリウム及びカルシウムなどの金属から誘導される塩を含む。
【0112】
酸付加塩の例は、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸)、アスコルビン酸(例えばL-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)樟脳酸、樟脳-スルホン酸、(+)-(1S)-樟脳-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸(例えばD-グルコン酸)、グルクロン酸(例えばD-グルクロン酸)、グルタミン酸(例えばL-グルタミン酸)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、乳酸(例えば(+)-L-乳酸及び(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸(例えば(-)-L-リンゴ酸)、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタリン酸、メタンスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸(例えば(+)-L-酒石酸)、チオシアン酸、ウンデシレン酸及び吉草酸と形成される酸付加塩を含む。
【0113】
化合物の任意の溶媒和物及びそれらの塩も包含される。好適な溶媒和物は、本発明の化合物の固体構造(例えば結晶構造)に、非毒性の薬学的に許容可能な溶媒(以下、溶媒和溶媒と呼ぶ)の分子を組み込むことによって形成される溶媒和物である。そのような溶媒の例は、水、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール及びブタノール)及びジメチルスルホキシドなどである。溶媒和物は、本発明の化合物を溶媒又は溶媒和溶媒を含有する溶媒の混合物で再結晶化することによって製造できる。溶媒和物が任意の所与の場合に形成されたかどうかは、化合物の結晶を、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)及びX線結晶構造解析などの周知の標準的な技術を用いて分析に付すことによって決定できる。
【0114】
溶媒和物は、化学量論的又は非化学量論的溶媒和物でありうる。特別な溶媒和物は水和物であり得、水和物の例は、半水和物、一水和物及び二水和物を含む。溶媒和物ならびにその製造及び特徴付けに使用される方法のより詳細な解説については、Brynら、Solid-State Chemistry of Drugs、第2版、出版SSCI,Inc,米国インディアナ州ウェストラファイエット、1999、ISBN 0-967-06710-3参照。
【0115】
本発明の文脈において、用語“医薬組成物”は、活性薬を含み、追加的に一つ又は複数の薬学的に許容可能な担体も含む組成物を意味する。前記組成物はさらに、投与様式及び剤形の性質に応じて、例えば、希釈剤、アジュバント、賦形剤、ビヒクル、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、フレーバー剤、芳香剤、抗菌剤、抗真菌剤、滑沢剤及び分散剤から選ばれる成分も含有しうる。前記組成物は、例えば、錠剤、糖衣錠、散剤、エリキシル剤、シロップ剤、懸濁液を含む液体製剤、スプレー剤、吸入剤、錠剤、トローチ剤、エマルション剤、溶液剤、カシェ剤、顆粒剤、カプセル剤及び坐剤、ならびにリポソーム製剤を含む注射用液体製剤の形態をとりうる。
【0116】
本発明の化合物は一つ又は複数の同位体置換を含有していてもよく、特定の元素への言及は、その元素のすべての同位体をその範囲内に含む。例えば、水素への言及は、1H、2H(D)、及び3H(T)をその範囲内に含む。同様に、炭素及び酸素への言及は、それぞれ12C、13C及び14Cならびに16O及び18Oをそれらの範囲内に含む。同様に、特定の官能基への言及も、文脈上別の指示がない限り、同位体変化をその範囲内に含む。例えば、エチル基などのアルキル基又はメトキシ基などのアルコキシ基への言及も、例えば、全5個の水素原子がジュウテリウム同位体形であるエチル基(ペルジュウテロエチル基)又は全3個の水素原子がジュウテリウム同位体形であるメトキシ基(トリジュウテロメトキシ基)のように、基内の1個又は複数個の水素原子がジュウテリウム又はトリチウム同位体の形態である変化をカバーする。同位体は放射性でも又は非放射性でもよい。
【0117】
治療用量は、患者の要件、治療される状態の重症度、及び使用される化合物に応じて変動しうる。特定の状況に対する適正な用量は当該技術分野の技能の範囲内である。一般的に、治療は、化合物の最適用量より少ない用量で開始される。その後、用量は、状況下での最適効果に到達するまで少しずつ増量される。便宜上、総日用量は、所望であれば、その一日の中で分割し、分割量で投与されてもよい。
【0118】
化合物の有効量の大きさは、当然ながら、治療される状態の重症度の性質、ならびに特定の化合物及びその投与経路に応じて変動する。適切な投与量の選択は、過度の負担なく当業者の能力の範囲内である。一般に、日用量範囲は、ヒト及びヒト以外の動物の体重1kgあたり約10μg~約30mg、好ましくはヒト及びヒト以外の動物の体重1kgあたり約50μg~約30mg、例えばヒト及びヒト以外の動物の体重1kgあたり約50μg~約10mg、例えばヒト及びヒト以外の動物の体重1kgあたり約100μg~約30mg、例えばヒト及びヒト以外の動物の体重1kgあたり約100μg~約10mg、最も好ましくはヒト及びヒト以外の動物の体重1kgあたり約100μg~約1mgでありうる。
【0119】
医薬製剤
活性化合物は、単独で投与することも可能であるが、医薬組成物(例えば製剤)として提供するのが好ましい。
【0120】
そこで、本発明の別の態様において、上記定義の式(1)の少なくとも一つの化合物と共に少なくとも一つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0121】
本組成物は、注射に適切な組成物でありうる。注射は、静脈内(IV)又は皮下でありうる。本組成物は、無菌緩衝液に入れて供給されても又は注射用の無菌緩衝液中に懸濁又は溶解できる固体として供給されてもよい。
【0122】
薬学的に許容可能な賦形剤(一つ又は複数)は、例えば、担体(例えば、固体、液体又は半固体の担体)、アジュバント、希釈剤(例えば、充填剤又は増量剤などの固体希釈剤;溶媒及び共溶媒などの液体希釈剤)、造粒剤、バインダ、流動助剤、コーティング剤、放出制御剤(例えば、放出遅延(retarding又はdelaying)ポリマー又はワックス)、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、滑沢剤、保存剤、抗真菌剤及び抗菌剤、抗酸化剤、緩衝剤、張度調整剤、増粘剤、フレーバー剤、甘味剤、色素、可塑剤、味マスキング剤、安定剤、又は医薬組成物に従来使用される任意のその他の賦形剤から選ぶことができる。
【0123】
本明細書中で使用されている用語“薬学的に許容可能な”とは、健全な医学的判断の範囲内で、過剰の毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題もしくは合併症なしに対象(例えばヒト対象)の組織と接触させて使用するのに適切な、合理的な利益/リスク比に見合う化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を意味する。各賦形剤は、製剤のその他の成分とも適合性があるという意味においても“許容可能”でなければならない。
【0124】
式(1)の化合物を含有する医薬組成物は公知技術に従って製剤化できる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company(米国ペンシルベニア州イーストン)参照。
【0125】
適切な製剤は、典型的には、0~20%(w/w)の緩衝液、0~50%(w/w)の共溶媒、及び/又は0~99%(w/w)の注射用水(WFI)を含有する(用量に応じて、及び凍結乾燥されている場合)。筋肉内デポ製剤は0~99%(w/w)のオイルも含有しうる。
【0126】
式(1)の化合物は、一般的に単一剤形中に提供され、従って典型的には所望の生物活性レベルを提供するのに足る化合物を含有する。例えば、製剤は、1ナノグラム~2グラムの活性成分、例えば1ナノグラム~2ミリグラムの活性成分を含有しうる。これらの範囲内で化合物の特定の部分範囲は、0.1ミリグラム~2グラムの活性成分(より通常的には10ミリグラム~1グラム、例えば50ミリグラム~500ミリグラム)、又は1マイクログラム~20ミリグラム(例えば1マイクログラム~10ミリグラム、例えば0.1ミリグラム~2ミリグラムの活性成分)である。
【0127】
活性化合物は、それを必要とする患者(例えばヒト又は動物患者)に、所望の治療効果を達成するのに足る量(有効量)で投与される。投与される化合物の正確な量は、標準的な手順に従って監督医師が決定できる。
【実施例】
【0128】
次に、本発明を、以下の実施例に記載された特定の態様を参照することにより、非限定的に説明する。
【0129】
実施例1~33
上記表1に示されている実施例1~33の化合物を調製した。それらのLCMS特性及びそれらの調製に使用された方法を表2に示す。各実施例の出発物質は、別段の指示がない限り市販品である。
【0130】
一般的手順
調製経路が含まれていない場合、当該中間体は市販品である。市販試薬は更なる精製をせずに利用した。室温(rt)はおよそ20~27℃を指す。
【0131】
分析法
化合物のLCMS分析はエレクトロスプレー条件下で実施した。
【0132】
分析法A
MSイオンは、エレクトロスプレー条件下で下記のLCMS法を用いて決定し、HPLCのリテンションタイム(RT)は、下記のHPLC法を用いて決定し、純度は、特に明記されない限りHPLCにより>95%。
【0133】
LCMS:Agilent 1200 HPLC&6410B トリプル四重極、カラム:Xbridge C18 3.5um 2.1*30mm。グラジエント[時間(分)/溶媒B(%)]:0.0/10、0.9/80、1.5/90、8.5/5、1.51/10。(溶媒A=1000mLの水中1mLのTFA;溶媒B=1000mLのMeCN中1mLのTFA);注入量5μL(変動あり);UV検出 220nm 254nm 210nm;カラム温度25℃;1.0mL/分。
【0134】
HPLC:Agilent Technologies 1200、カラム:Gemini-NX C18 5um 110A 150*4.6mm。グラジエント[時間(分)/溶媒B(%)]:0.0/30、20/60、20.1/90、23/90。(溶媒A=1000mLの水中1mLのTFA;溶媒B=1000mLのMeCN中1mLのTFA);注入量5μL(変動あり);UV検出 220nm 254nm;カラム温度25℃;1.0mL/分。
【0135】
分析法B
機器:Thermo Scientific Orbitrap Fusion;カラム:Phenomenex Kinetex Biphenyl 100Å、2.6μm、2.1×50mm;グラジエント[時間(分)/溶媒A中B(%)]:0.00/10、0.30/10、0.40/60、1.10/90、1.70/90、1.75/10、1.99/10、2.00/10;溶媒:溶媒A=0.1%ギ酸水溶液;溶媒B=アセトニトリル中0.1%ギ酸;注入量5μL;カラム温度25℃;流速0.8mL/分。
【0136】
中間体及び化合物の合成
下記実施例は、本発明の好適な側面を例示するために提供されるのであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。すべてのFmoc-アミノ酸は市販品である。
【0137】
実施例1~33の合成
標準的なFmoc固相ペプチド合成(SPPS)を用いて直鎖ペプチドを合成した後、樹脂から切断し、精製した。
【0138】
一般的なペプチド合成法:
方法a-実施例25の合成により例示
ペプチド合成
1)DCMをRink Amide MBHA樹脂(sub:0.35mmol/g、0.3mmol、0.86g)入り容器に加え、2時間膨潤。
【0139】
2)排水後、DMFで洗浄(5回、洗浄ごとに排水)。
【0140】
3)DMF中20%ピペリジン溶液を加え、N2通気しながら30分間撹拌。
【0141】
4)排水し、DMFで洗浄(5回、洗浄ごとに排水)。
【0142】
5)Fmoc-アミノ酸溶液(DMF中3.0当量)を加え、30秒間混合後、活性化緩衝液(DMF中HBTU(2.85当量)及びDIEA(6当量))を加え、N2通気しながら1時間撹拌。
【0143】
6)カップリング反応をニンヒドリン試験によってモニター。
【0144】
7)効率の悪いカップリングが発生した場合、必要であれば、同じアミノ酸カップリングについて工程4~6を反復。
【0145】
8)次のアミノ酸カップリングについて工程2~6を反復。
【0146】
注:以下の表中の酸については異なる保護基及び/又はカップリング剤が使用された。
【表A】
【0147】
ペプチド側鎖脱保護環化:
1)DCMを樹脂に加え、N2通気しながら撹拌した後、PhSiH3(10当量)、Pd(PPh3)4(0.2当量)を加え、N2と共に15分間3回撹拌。
【0148】
2)樹脂をDCMで3回洗浄した後、DMFで3回洗浄。
【0149】
3)樹脂を0.5%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物DMF及びDMF中0.5%DIEAで10回洗浄。
【0150】
4)HATU(2当量)及びDIEA(4当量)をDMF中の樹脂に加え、N2通気しながら1時間撹拌。
【0151】
5)樹脂をMeOHで3回洗浄し、真空下で乾燥。
【0152】
ペプチドの切断と精製:
1)切断緩衝液(92.5%TFA/2.5%EDT/2.5%TIS/2.5%H2O)を、樹脂上の側鎖保護ペプチド入りフラスコに室温で加え、3時間撹拌。
【0153】
2)ペプチド溶液をろ過し、回収。
【0154】
3)ペプチドを冷tert-ブチルメチルエーテルで沈殿させ、遠心分離(3000rpmで3分間)。
【0155】
4)残渣をtert-ブチルメチルエーテルで洗浄(2回)。
【0156】
5)粗ペプチドを真空下で2時間乾燥。
【0157】
6)粗ペプチドを分取HPLCで精製。分取HPLC条件:機器:Gilson 281。溶媒:A-H2O中0.1%TFA、B-アセトニトリル、カラム:Luna C18(200×25mm;10μm)及びGemini C18(150*30mm;5μm)を直列配置。グラジエント[時間(分)/溶媒B(%)]:20mL/分で、0.0/15、60.0/55、60.1/90、70/90、70.1/10、UV検出(波長=215/254nm)後、凍結乾燥し、実施例25(32.1mg、収率4.06%)を得た。
【0158】
表2 - 実施例1~33によって示される精製ペプチドのHRMS及びLCMS特性
【0159】
【0160】
【表2-2】
生物活性
下記実施例は、本発明の好適な側面を例示するために提供されるのであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0161】
実施例A.GLP-1ペプチドのインビトロ薬理学的特徴付け - ヒトGLP1受容体の機能的アンタゴニズム、cAMP蓄積アッセイ
GLP-1Rをアゴニストリガンド(GLP-1(7-36)アミドペプチド、Tocris)で刺激した時のcAMP産生のアンタゴニスト阻害を、HiRange cAMPキット(Cisbio)を用いて評価した。方法は、キットに提供されている2段階プロトコルに従った。簡潔に述べると、1%v/v GLP-1R Bacmamに24時間感染させたHEK細胞を、細胞剥離液(Gibco)を用いて収穫し、遠心分離してアッセイ緩衝液(0.5mMのIBMX(Tocris)を補給したHBSS(Lonza))中に再懸濁した。試験化合物のDMSOストックをアッセイ緩衝液中に段階希釈し、96ウェルハーフエリア白色プレート(Costar)に加えた。アッセイにおける最終DMSO濃度は0.3%であった。プレートにウェルあたり20K個の細胞を加えた後、30分間インキュベーションした(加湿空気(5%CO2)、37℃)。次に、EC80濃度に等しいGLP-1(7-36)ペプチドを添加することにより、細胞をさらに30分間刺激した(加湿空気(5%CO2)、37℃)。cAMPの細胞内蓄積を、キットに提供されている溶解緩衝液中HTRF検出試薬の添加により停止させた。室温で1時間のインキュベーション後、プレートをPherastar FS(BMG Labtech,Inc.)で読み取った。Dotmatics Studiesソフトウェアを用い、データを4パラメーター濃度反応曲線にあてはめた。算出されたIC50値は、Cheng-Prusoff式を適応してアゴニスト濃度について補正され、機能的pKb値:
【0162】
【0163】
実施例B.GLP-1ペプチドのインビトロ薬理学的特徴付け - マウスGLP1受容体の機能的アンタゴニズム、cAMP蓄積アッセイ
GLP-1Rをアゴニストリガンドで刺激した時のcAMP産生のアンタゴニスト阻害を、HitHunter cAMPアッセイ(DiscoverX)を用いて評価した。方法は、キットに提供されているアンタゴニスト手順工程に従った。簡潔に述べると、マウスGLP-1Rを安定的に発現しているCHO-K1細胞を解凍し、ウェルあたり10K個の細胞を、総容量20μlのCP05試薬入りの白色ウォール384ウェルプレートにプレーティイングし、Cytomat中37℃で一晩インキュベートした。アッセイ当日、培地を15μlのHBSS/10mM HEPESと交換した。試験化合物のDMSOストックをDMSO中に段階希釈した後、さらにHBSS/10mM HEPES中に希釈し、各濃度5μlをプレートに加え、続いて37℃で30分間インキュベートした。アッセイにおける最終DMSO濃度は1%であった。EC80濃度に等しいエキセンジン-4の添加により、細胞を37℃でさらに30分間刺激した。cAMPの細胞内蓄積を、キットに提供されている溶解緩衝液中HitHunter検出試薬の添加により停止させた。室温で1時間、暗所でインキュベーション後、プレートをEnvision(Perkin Elmer)で読み取った。Dotmatics Studiesソフトウェアを用い、データを4パラメーター濃度反応曲線にあてはめた。算出されたIC50値は、Cheng-Prusoff式を適応してアゴニスト濃度について補正され、機能的pKb値:
【0164】
【0165】
実施例C.正常マウスにおけるIPGTT試験
本研究の目的は、エキセンジン-4(GLP-1受容体アゴニスト)による痩せ型雄C57BL/6Jマウスの耐糖能の改善を遮断/縮小/拮抗することに対するリードGLP1アンタゴニストペプチドの静脈内投与の効果を評価することである。グルコースは腹腔内経路で投与された。
【0166】
材料及び方法
痩せ型雄C57BL/6J JAXマウスを、到着後すぐ、そして研究期間中、ポリプロピレン製ケージに入れ、正常の12時間明暗サイクル(07:00に点灯)で単独飼育した。相対湿度は典型的には55±15%で、40%RHを下回る又は70%RHを上回る期間が長期化しないようにした。動物は研究期間中、特に明記しない限り、標準的な維持食と水道水を自由に摂取できた。
【0167】
実験手順
動物を動物ユニットと食餌に約2週間馴化させ、研究開始前5日間は投与プロトコルに動物を慣れさせるために毎日ハンドリングした。動物を体重に基づいて無作為化し、平均体重についてグループ間のバランスがなるべく均衡するようにした。
【0168】
ipGTTの前日、全動物を確実に絶食させた(水の自由な摂取は維持)。実験当日、動物を別の部屋に移した。処置1の前にベースラインの血液サンプルを全動物から採取した(グルコース投与20分前)。5分後、マウスに処置1を静脈内経路により投与した(グルコース投与15分前)。処置2(エキセンジン-4又はビヒクル)をグルコース負荷10分前に投与した(全群)。処置2の投与10分後、動物に腹腔内経路によりD-グルコースによるグルコース負荷を投与した(2.0g/kg、400mg/mlの濃度のものを5ml/kgの容量で)。血液サンプルをグルコース投与3分前ならびにグルコース投与10、30、60、90及び120分後に採取した。その後、血漿サンプルを10分時点でグルコースとインスリンについて1連で(as single replicate)アッセイし、データをロバスト回帰によって分析し、AUC0~120分をグルコースデータについて(全AUC及びベースラインからのAUC)台形公式により計算し、同じ方法論によって分析した。
【国際調査報告】