(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】マルチレベル双方向電気AC/DC変換器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230809BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20230809BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M3/155 H
H02M7/12 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506048
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 EP2021071398
(87)【国際公開番号】W WO2022023527
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521460608
【氏名又は名称】プロドライヴ・テクノロジーズ・イノヴェーション・サービシーズ・ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト・メンツィ
(72)【発明者】
【氏名】マフ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・アツルツァ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ヴァルター・コラール
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA02
5H006CB01
5H006CB08
5H006CC02
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
5H730AA18
5H730AS04
5H730AS05
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5H730BB15
5H730BB57
5H730BB86
5H730CC02
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5H730FD51
5H730FG05
5H770AA09
5H770BA01
5H770BA11
5H770CA01
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA31
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA03Y
(57)【要約】
本開示による電気変換器は、少なくとも3つのAC端子、第1および第2のDC端子、制御ユニット、ならびに少なくとも3つのAC端子のそれぞれ1つに結合された少なくとも3つの変換器モジュールを備える。少なくとも3つの変換器モジュールのそれぞれは、第1のスイッチノードを含む第1の変換器段、第2のスイッチノードを含む第2の変換器段、第1のインダクタ、および第1のキャパシタを備える。第1および第2のスイッチノードは、第1のインダクタの反対側の端子に接続される。少なくとも3つのAC端子のそれぞれ1つおよび第2のDC端子は、第1のキャパシタの反対側の端子に接続される。第2のDC端子は、少なくとも3つの変換器モジュールの第1のキャパシタのスターポイントを形成する。第1の変換器段および第2の変換器段はそれぞれ、それぞれの第1および第2のスイッチノードに動作可能に結合された少なくとも1つのフライングキャパシタを含むフライングキャパシタ回路を備える。第1の変換器段のフライングキャパシタ電圧(UfA)は、第1の電圧(Uan)がフライングキャパシタ電圧(UfA)を下回ると、第1のキャパシタにわたる第1の電圧(Uan)にクランプされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの相電圧を有するAC信号とDC信号との間で変換するための電気変換器(10、20)であって、
少なくとも3つのAC端子(a、b、c)、第1および第2のDC端子(P、N)と、
制御ユニット(15)と、
前記少なくとも3つのAC端子のそれぞれ1つに結合された少なくとも3つの変換器モジュール(11)であって、前記少なくとも3つの変換器モジュールのそれぞれが、
第1のスイッチノード(A)を含む第1の変換器段(12)と、
第2のスイッチノード(B)を含む第2の変換器段(13)と、
第1のインダクタ(L)であって、前記第1および第2のスイッチノードが前記第1のインダクタの反対側の端子に接続される、第1のインダクタ(L)と、
第1のキャパシタ(C
a)であって、前記少なくとも3つのAC端子の前記それぞれ1つおよび前記第2のDC端子が、前記第2のDC端子が前記少なくとも3つの変換器モジュールの前記第1のキャパシタ(C
a)のスターポイント(n)を形成するように、前記第1のキャパシタの反対側の端子に接続される、第1のキャパシタ(C
a)と、
を含む、少なくとも3つの変換器モジュール(11)と、
を備え、
前記第1の変換器段(12)および前記第2の変換器段(13)はそれぞれ、それぞれの前記第1および第2のスイッチノード(A、B)に動作可能に結合された少なくとも1つのフライングキャパシタ(C
fA、C
fB)を備えるフライングキャパシタ回路を備え、
前記制御ユニット(15)は、前記第1のキャパシタにわたる第1の電圧(u
an)が前記第1の変換器段の前記少なくとも1つのフライングキャパシタにわたるフライングキャパシタ電圧(u
fA)のフライングキャパシタ電圧レベルを下回ったとき、前記第1の電圧(u
an)が前記フライングキャパシタ電圧レベルに上昇するまで、前記フライングキャパシタ電圧(u
fA)が、前記第1の電圧(u
an)にクランプされるように、前記変換器モジュール(11)のそれぞれを動作させるように構成されている、
ことを特徴とする、電気変換器(10、20)。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記第1のキャパシタ(C
a)にわたる前記第1の電圧(u
an)が前記フライングキャパシタ電圧レベルよりも高い場合に、前記フライングキャパシタ電圧(u
fA)を前記フライングキャパシタ電圧レベルに維持するように構成されている、請求項1に記載の電気変換器。
【請求項3】
前記第1の変換器段(12)は、前記それぞれのAC端子と前記第2のDC端子との間に直列接続された第1の能動スイッチング装置(T
A1、T’
A1、T
A2、T’
A2)を含み、前記第1のスイッチノード(A)は、前記直列接続された第1の能動スイッチング装置の中点ノードであり、前記第1の能動スイッチング装置は、前記少なくとも1つのフライングキャパシタ(C
fA)の端子と、前記それぞれのAC端子と、前記第2のDC端子との間の接続を提供するように構成されたスイッチ対(T
A1、T’
A1)を備え、前記制御ユニットは、前記フライングキャパシタ電圧(u
fA)が前記第1の電圧(u
an)にクランプされたときに、前記フライングキャパシタ電圧を前記第1の電圧に能動的にクランプするように、前記スイッチ対の両方のスイッチを同時にオンに保つように構成されている、請求項1または2に記載の電気変換器。
【請求項4】
少なくとも3つの相電圧を有するAC信号とDC信号との間で変換するための電気変換器であって、
少なくとも3つのAC端子(a、b、c)、第1および第2のDC端子(P、N)と、
制御ユニット(15)と、
前記少なくとも3つのAC端子のそれぞれ1つに結合された少なくとも3つの変換器モジュール(11)であって、前記少なくとも3つの変換器モジュールのそれぞれが、
第1のスイッチノード(A)を含む第1の変換器段(12)と、
第2のスイッチノード(B)を含む第2の変換器段(13)と、
第1のインダクタ(L)であって、前記第1および第2のスイッチノードが前記第1のインダクタの反対側の端子に接続される、第1のインダクタ(L)と、
第1のキャパシタ(C
a)であって、前記少なくとも3つのAC端子の前記それぞれ1つおよび前記第2のDC端子は、前記第2のDC端子が前記少なくとも3つの変換器モジュールの前記第1のキャパシタ(C
a)のスターポイント(n)を形成するように、前記第1のキャパシタの反対側の端子に接続される、第1のキャパシタ(C
a)と、
を含む、少なくとも3つの変換器モジュール(11)と、
を備え、
前記第1の変換器段(12)および前記第2の変換器段(13)はそれぞれ、それぞれの前記第1および第2のスイッチノード(A、B)に動作可能に結合された少なくとも1つのフライングキャパシタ(C
fA、C
fB)を備えるフライングキャパシタ回路を備え、
前記第1の変換器段(12)の前記少なくとも1つのフライングキャパシタ(C
fA)は、能動双方向スイッチング装置を介して前記スターポイント(n)に接続されており、
前記制御ユニット(15)は、第1の電圧(u
an)が前記第1の変換器段の前記少なくとも1つのフライングキャパシタ(C
fA)にわたるフライングキャパシタ電圧(u
fA)を下回ると、前記能動双方向スイッチング装置をオフにするように構成されている、
電気変換器。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記第2の変換器段の前記少なくとも1つのフライングキャパシタ(C
fB)にわたるフライングキャパシタ電圧(u
fB)が、前記第1および第2のDC端子にわたるDC電圧(U
dc)に比例するように、各々の前記変換器モジュールを動作させるように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記少なくとも3つの変換器モジュール(11)のそれぞれ1つに結合され、前記少なくとも3つの変換器モジュールを独立して動作させるように構成された少なくとも3つの制御モジュール(16)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項7】
前記少なくとも3つの制御モジュール(16)は、前記それぞれの変換器モジュールの前記第1のキャパシタ(C
a)の電圧基準に基づいて、前記それぞれの変換器モジュールの前記第1および第2の変換器段を動作させるためのデューティサイクル(d
A、d
B)を決定するように構成されている、請求項6に記載の電気変換器。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記第1および第2のDC端子間のDC電圧(U
dc)が、前記それぞれの第1のキャパシタ(C
a)の前記第1の電圧(u
an)以下である第1の動作モードに従って、および、前記DC電圧(U
dc)が前記第1の電圧(u
an)より大きい第2の動作モードに従って、前記少なくとも3つの変換器モジュール(11)のそれぞれを動作させるように構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項9】
前記制御ユニットが、パルス幅変調を介して相互に排他的に前記第1および第2の変換器段の前記フライングキャパシタ回路を動作させるように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項10】
前記第1の変換器段は保護回路(17)を含み、前記保護回路は、前記第1の変換器段(12)の前記少なくとも1つのフライングキャパシタ(C
fA)を、少なくとも1つの第1の通常閉スイッチ(T
p)を介して、前記少なくとも3つのAC端子の前記それぞれ1つおよび/または前記第2のDC端子に接続する平衡キャパシタ(C
p)を備え、前記制御ユニット(15)は、前記少なくとも1つの第1の通常閉スイッチを無効にするように構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項11】
前記少なくとも3つの変換器モジュールのそれぞれは、前記第2のスイッチノード(B)と前記スターポイント(n)との間に接続された第2の通常閉スイッチ(T
p)を備え、前記制御ユニット(15)は、前記第2の通常閉スイッチを無効にするように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項12】
前記制御ユニット(15)は、起動動作中、前記第1および第2のDC端子の間のDC電圧(U
dc)がゼロのとき、前記第2の変換器段(13)が無効になり、前記第1のスイッチノード(A)が前記スターポイント(n)にクランプされるように、前記少なくとも3つの変換器モジュールのうちの1つの変換器モジュール(11)を動作させるように構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項13】
前記第1の変換器段の前記少なくとも1つのフライングキャパシタ(C
fA)にわたる電圧(u
fA)は、起動動作中に前記DC電圧(U
dc)がゼロであるとき、断続的に前記第1の電圧(u
an)にクランプされる、請求項12に記載の電気変換器。
【請求項14】
前記制御ユニットは、前記第2の変換器段(13)の前記少なくとも1つのフライングキャパシタ(C
fB)にわたる電圧(u
fB)が、前記DC電圧のランプアップ中に前記第1および第2のDC端子間のDC電圧(U
dc)にクランプされるように、前記少なくとも3つの変換器モジュールのうちの1つの変換器モジュールを動作させるように構成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項15】
前記第1の変換器段および前記第2の変換器段は、同数の前記少なくとも1つのフライングキャパシタ(C
fA、C
fB)を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項16】
前記第1の変換器段および前記第2の変換器段は、異なる数の前記少なくとも1つのフライングキャパシタ(C
fA、C
fB)を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の電気変換器。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の電気変換器(20)を備える電気モータ駆動システムであって、前記制御ユニットが、前記電気変換器をトラクションインバータとして動作させるように構成されている、電気モータ駆動システム。
【請求項18】
特に電気自動車駆動用バッテリーを充電するためのバッテリー充電システムであって、前記バッテリー充電システムが電源を備え、前記電源が請求項1から16のいずれか一項に記載の電気変換器(10)を備えている、バッテリー充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向AC/DC変換器、特に三相(または多相)双方向昇降圧AC/DC変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
三相双方向昇降圧AC/DC変換器は、任意の三相AC電圧とDC電圧との間の、両方向に電力の流れが可能であるインターフェースを表す。したがって、このシステムはさまざまな技術分野で使用できる。典型的な用途は、三相ACグリッドからDC出力電圧が生成される電気自動車のバッテリー充電器である。そこでは、DC出力電圧は広範囲に変化し、バッテリーの定格電圧または充電状態に基づいて適合され、バッテリーからグリッドに電力をフィードバックすることもできる。その他の(能動または受動)DCソースまたは負荷タイプも可能であり、例えば、太陽光発電インバータの場合、電力は大きく変化する入力DC電圧(温度と抽出電流の両方に依存)から三相ACグリッドに供給される。対照的に、バッテリー/燃料電池駆動の可変速モータドライブは、DC(バッテリーまたは燃料電池)電圧も大きな変動を受けながら広い電圧範囲と周波数範囲内でAC電圧を生成する必要がある。
【0003】
前述の用途では、DCとACの電圧範囲が重なり、昇降圧機能を備えた変換器システムの要件が生じる可能性があるが、一般的な単段整流器システムは降圧または昇圧動作に制限されている[非特許文献1]。例えば、三相整流器(降圧型電流源整流器(CSR: Current Source Rectifier)または昇圧型電圧源整流器(VSR: Voltage Source Rectifier)のいずれか)のカスケード配置および後続のDC/DC変換器は、昇降圧機能を有効にする標準的な解決策であり、そこでは、完全な出力電力を2回高周波変換する必要があるという事実によって性能限界が与えられる。
【0004】
よりコンパクトで効率的な変換器システムの実現を目指し、マルチレベル(ML: multilevel)フライングキャパシタ(FC: flying capacitor)ブリッジレッグにより、性能指数が改善された低電圧半導体の使用が可能になり、実効スイッチング周波数が高くなり、スイッチング電圧レベルが追加される[非特許文献2]。
【0005】
さらに、共通のスターポイントに接続された3つのDC/DC変換器モジュールで本質的に構成される、三相Yインバータ[非特許文献3]などの位相モジュラー昇降圧トポロジーが知られている。各DC/DC変換器モジュールは、相互に排他的な方法でハーフブリッジを動作させることにより昇降圧機能を実現する2つの非絶縁型ハーフブリッジで構成されている。そうすることで、DC/DC変換器段を追加する必要がなく、単一段階の高周波エネルギー変換が得られ(つまり、各位相モジュールでは、ある時点で1つのハーフブリッジのみがパルス幅変調(PWM: pulse width modulation)で動作する)、効率および電力密度が大幅に向上する[非特許文献4]。
【0006】
単相降圧型力率改善用の6レベルフライングキャパシタ(FC)マルチレベル変換器が知られている[非特許文献5]。FC電圧基準は時変するため、安全で高性能な変換器動作を保証するためにFC電圧の平衡化が実行される。[非特許文献5]ではFCブリッジレッグが永続的に動作するため、FC電圧の平衡化を保証するには受動的な平衡化戦略で十分である。
【0007】
自己追従型フライングキャパシタを備えたフルデューティサイクル調整3レベルAC/AC変換器は、[非特許文献6]から知られている。[非特許文献6]のAC/AC変換器構造の時変FC電圧基準は、受動2:1変圧器によって与えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. W. KolarおよびT. Friedli。The essence of three-phase pfc rectifier systems-part i. IEEE Transactions on Power Electronics、28(1):176-198、January 2013。 ISSN 0885-8993. doi:10.1109/TPEL.2012. 2197867
【非特許文献2】TA MeynardおよびH Foch。Multilevel choppers for high voltage applications. European Power Elec- tronics (EPE) Journal、2(1):45-50、Mar. 1992
【非特許文献3】M. Antivachis、D. Bortis、L. Schrittwieser、およびJ. W. Kolar。 Three-Phase Buck-Boost Y-Inverter with Wide DC Input Voltage Range. In Proc. of the IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition (APEC)、1492-1499頁、Mar. 2018
【非特許文献4】M. Antivachis、D. Bortis、D. Menzi、およびJ. W. Kolar。Comparative evaluation of y-inverter against three-phase two-stage buck-boost dc-ac converter systems. In Proc. of the IEEE International Power Electronics Conference (IPEC - ECCE Asia)、181-189頁、May 2018
【非特許文献5】E. Candan、A. Stillwell、N. C. Brooks、R. A. Abramson、J. Strydom、およびR. C. N. Pilawa-Podgurski。A 6-level flying capacitor multi-level converter for single phase buck-type power factor correction. In Proc. of the IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition (APEC)、1180-1187頁、Mar. 2019
【非特許文献6】Y. Zhang、H. Jin、およびY. Zhang。Full-duty-cycle regulated three-level ac/ac converter with self- following flying capacitor. IEEE Access、6:48428-48437、Aug. 2018
【非特許文献7】Z. Ye、Y. Lei、Z. Liao、およびR. C. N. Pilawa-Podgurski。Investigation of capacitor voltage balancing in practical implementations of flying capacitor multilevel converters. In 2Proc. of the IEEE Workshop on Control and Modeling for Power Electronics (COMPEL)、1-7頁、July 2017
【非特許文献8】M. Khazraei、H. Sepahvand、K. A. Corzine、およびM. Ferdowsi。Active capacitor voltage balancing in single-phase flying-capacitor multilevel power converters. IEEE Transactions on Industrial Electron- ics, 59(2):769-778、Feb. 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本開示の目的は、2レベルブリッジレッグ変換器と比較して改善されたシステム性能を有する双方向三相(多相)電気AC/DC変換器を提供することである。本開示の目的は、受動部品数を減らした上記タイプの電気変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の第1の態様によれば、添付の特許請求の範囲に記載の電気変換器が提供される。本明細書に記載の電気変換器は、少なくとも3つの相電圧を有するAC信号とDC信号との間で変換するように動作可能であり、したがって、双方向電力の流れに使用することができる。
【0011】
本開示による電気変換器は、少なくとも3つのAC端子、第1および第2のDC端子、制御ユニット、ならびに少なくとも3つのAC端子のそれぞれ1つに結合された少なくとも3つの変換器モジュールを備える。少なくとも3つの変換器モジュールのそれぞれは、第1のスイッチノードを含む第1の変換器段、第2のスイッチノードを含む第2の変換器段、第1のインダクタ、および第1のキャパシタを備える。第1および第2のスイッチノードは、第1のインダクタの反対側の端子に接続される。少なくとも3つのAC端子のそれぞれ1つおよび第2のDC端子は、第1のキャパシタの反対側の端子に接続される。第2のDC端子は、少なくとも3つの変換器モジュールの第1のキャパシタのスターポイントを形成する。第1の変換器段は、有利には、第1のキャパシタと第1のスイッチノードとの間に結合される。第2の変換器段は、有利には、第2のスイッチノードと第1および第2のDC端子との間に結合される。
【0012】
第1の態様によれば、第1の変換器段および第2の変換器段はそれぞれ、それぞれの第1および第2のスイッチノードに動作可能に結合された少なくとも1つのフライングキャパシタ(フローティングキャパシタとも呼ばれる)を備えるフライングキャパシタ回路を備える。
【0013】
第1の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタは、有利には、第1の能動スイッチング装置を介してそれぞれのAC端子および第2のDC端子に接続された端子を備える(すなわち、少なくとも1つのフライングキャパシタが第1のキャパシタの両端に接続される)。第1の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタの端子は、有利には、第1の能動スイッチング装置を介して第1のスイッチノードに接続される。第1の能動スイッチング装置は、有利には、それぞれのAC端子と第2のDC端子との間に直列接続される。第1のスイッチノードは、直列接続された第1の能動スイッチング装置の中点ノードを有利に形成する。
【0014】
有利には、各変換器モジュールは、第1のDC端子に接続された第1の端子と、第2のDC端子に接続された第2の端子とを有する第2のキャパシタを備える。第2の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタは、有利には、第2の能動スイッチング装置を介して第1のDC端子および第2のDC端子に接続された端子を備える(すなわち、少なくとも1つのフライングキャパシタが第2のキャパシタの両端に接続される)。第2の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタの端子は、有利には、第2の能動スイッチング装置を介して第2のスイッチノードに接続される。第2の能動スイッチング装置は、有利には、第1のDC端子と第2のDC端子との間に直列接続される。第2のスイッチノードは、直列接続された第2の能動スイッチング装置の中点ノードを有利に形成する。
【0015】
上記の電気変換器は、(2レベル変換器段と比較して)マルチレベル変換器段を位相モジュール性と有利に組み合わせる。これにより、各モジュールを個別に制御できるため、制御がより簡単になる。さらに、このトポロジーにより、フライングキャパシタ回路の能動スイッチング装置の電圧を下げることができるため、耐用年数が延長されスイッチング効率が向上する。さらに、従来の2段昇降圧AC/DC変換器に比べて部品の数を削減できる。
【0016】
第2の態様によれば、上記の電気変換器の課題の1つは、それぞれのAC端子と第2のDC端子との間(つまり、第1のキャパシタのスターポイント)で変動する電圧を受ける第1の変換器段のフライングキャパシタにわたる電圧を調整することである。本開示は、この電圧を安全な方法で調整するためのさまざまな可能性を企図している。
【0017】
第1の実施形態によれば、制御ユニットは、第1の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタの両端間の電圧を調整するために、第1の変換器段および第2の変換器段を同時に動作させるように構成される。有利には、制御ユニットは、PWMを介して第1の能動スイッチング装置を永続的に(すなわち、降圧モードと昇圧モードの両方で)動作させるように構成される。有利には、制御ユニットは、PWMを介して第1の変換器段(第1の能動スイッチング装置)および第2の変換器段(第2の能動スイッチング装置)の両方を永続的に動作させるように構成される。これにより、第1の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタにわたる電圧を調整でき、これにより、特に昇圧モード中、より具体的には、第1のキャパシタにわたる電圧(それぞれのAC端子と第2のDC端子との間)が第1の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタにわたる電圧よりも小さい場合に、電圧の不均衡が防止される。
【0018】
有利な第2の実施形態によれば、制御ユニットは、第1のキャパシタにわたる第1の電圧が第1の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタにわたるフライングキャパシタ電圧を下回ると、フライングキャパシタ電圧が第1の電圧にクランプされるように、変換器モジュールのそれぞれを動作させるように構成される。これは、第1のスイッチング装置の適切な操作によって容易に得ることができる。
【0019】
第2の実施形態による電気変換器は、固有の電圧基準値を取得することを可能にし、それにより受動部品の数を減らしてシステム性能を改善する。説明したようにフライングキャパシタ電圧を適切にクランプすることにより、フライングキャパシタ電圧を安全な制限内に維持することができ、それによって電圧の不均衡を防ぎ、適切なフライングキャパシタ電圧分担を得て、電気変換器の高性能と安全な動作を維持することができる。第2の実施形態の別の利点は、第1および第2の変換器段が相互に排他的にPWM動作できることであり、したがって、例えば、三相AC-DC変換器の場合、任意の所与の時点で6つの段のうち3つだけが動作し、これにより、スイッチング損失が大幅に減少し、能動部品の耐用年数が延長される。
【0020】
第3の実施形態によれば、第1の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタは、能動双方向スイッチ(例えば、双方向電流遮断能力を有する)を介して第2のDC端子に接続される。有利なことに、第1の変換器段の最も内側のフライングキャパシタの端子(すなわち、第1のスイッチノードに最も近い)と第2のDC端子との間に配置されたすべての第1の能動スイッチング装置は能動双方向スイッチである。これにより、第1の変換器段のフライングキャパシタを第2のDC端子から効果的に切断し、昇圧モード動作中の第1の変換器段のフライングキャパシタの放電を防ぐことができる(第1のキャパシタにわたる電圧が、それぞれのフライングキャパシタにわたる電圧を下回った場合)。したがって、第1の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタにわたる電圧は、動作の昇圧モードで安定に維持することができる。単方向スイッチング装置を使用する場合、第1のキャパシタにわたる電圧が、それぞれのフライングキャパシタにわたる電圧を下回ったときに単方向能動スイッチング装置の内部逆並列ダイオードが導通し始め、これにより、フライングキャパシタを放電するため、これは不可能であることに留意することが好都合である。
【0021】
有利なことに、第3の態様によれば、電気変換器は、第1の通常閉スイッチを介して少なくとも1つのフライングキャパシタを少なくとも3つのAC端子のそれぞれ1つに接続する第1の平衡キャパシタを備える保護回路を備える。追加的にまたは代替的に、保護回路は、第2の通常閉スイッチを介して少なくとも1つのフライングキャパシタを第2のDC端子に接続する第2の平衡キャパシタを備える。追加的にまたは代替的に、保護回路は、第2のスイッチノードと第2のDC端子との間に接続された第3の通常閉スイッチを備える。制御ユニットは、通常動作中に通常閉スイッチを無効にするように有利に構成される。このような保護回路は、パワー半導体を能動に制御できない場合(例えば、障害モードまたはシステムの初期化中)でさえ安全を確保するために、フライングキャパシタ段間で安全な電圧分担を課すことを可能にする受動平衡回路として機能する。
【0022】
有利には、第4の態様によれば、制御ユニットは変換器モジュールを動作させるように構成されており、その結果、第2の変換器段が無効になり、起動動作中に第1および第2のDC端子間の電圧がゼロになると、第1のスイッチノードが第2のDC端子にクランプされる。代替的にまたは追加的に、制御ユニットは、第2の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタにわたる電圧が、DC電圧のランプアップ中に第1および第2のDC端子間のDC電圧にクランプされるように、変換器モジュールを動作させるように構成される。これらの手段を単独または組み合わせることで、フライングキャパシタ電圧を安全な範囲内に維持しながら、DC電圧のランプアップを制御できる。
【0023】
上記の第2から第4の態様は、単独で、または任意の適切な組み合わせで、第1の態様と組み合わせて有利な実施形態を生み出すことができる。
【0024】
本開示のさらなる態様によれば、添付の特許請求の範囲に記載の電気モータ駆動システムが提供される。
【0025】
本開示のさらに別の態様によれば、添付の特許請求の範囲に記載されているように、電池充電システムが提供される。
【0026】
本開示のさらなる態様によれば、少なくとも三相電圧を有するAC信号とDC信号との間で変換するための方法が本明細書に記載される。
【0027】
ここで、添付の図面を参照して、本発明の態様をより詳細に説明する。同じ参照番号は同じ特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】三相グリッドとDCソース(ソーラーパネルなど)または負荷(電気自動車のバッテリーや受動負荷など)に接続する3レベルフライングキャパシタAC/DC変換器の例示的なトポロジーを表す図である。
【
図2】
図1のAC/DC変換器の1つの変換器モジュールの例示的なトポロジーを表す図である。
【
図3】
図2の変換器モジュールを動作させるための電圧波形とPWM制御信号を表す図である。
【
図4】
図3の電圧波形に対応するデューティサイクルを表す図である。
【
図5】
図2の変換器モジュールを動作させるための制御ユニットの例示的な実施形態を表す図である。制御ユニットはカスケード制御構造を実装し、可能な測定が示される。
【
図6】
図6Aは、結果として得られる閉ループ回路のシミュレーション結果を表す図であり、デューティサイクルの波形を示している。
図6Bは、結果として得られる閉ループ回路のシミュレーション結果を表す図であり、電圧波形を示している。
図6Cは、結果として得られる閉ループ回路のシミュレーション結果を表す図であり、電圧波形を示している。
図6Dは、結果として得られる閉ループ回路のシミュレーション結果を表す図であり、電流波形を示している。
【
図7】ACモータの駆動に使用される3レベルフライングキャパシタYインバータの例示的なトポロジーを表す図である。
【
図8】
図7の3レベルフライングキャパシタYインバータのカスケード速度制御方式を表す図である。
【
図9】受動保護回路を備えた
図2の変換器モジュールトポロジーを表す図である。
【
図10】受動負荷の場合の、本明細書に記載の変換器の例示的な起動手順のステップを表す図である。
【
図11】
図10の変換器起動手順のステップ2で使用できるDC電圧制御方式を表す図である。
【
図12】
図10による起動手順中の
図2の変換器の閉ループ回路シミュレーション波形を表す図である。上のグラフはデューティサイクルを表し、中央のグラフは電圧を表し、下のグラフは電流を表す。
【
図13】(2N-1、2M-1)電圧レベルを有する本開示の態様によるハイブリッドフライングキャパシタ変換器の変換器モジュールのトポロジーを表す図である。
【
図14】本開示の態様による5レベルフライングキャパシタ変換器のAC側(fA)およびDC側(fB)フライングキャパシタ波形を表す図である。
【
図15】本明細書に記載の電気変換器を備えるバッテリー充電システムを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、三相双方向マルチレベル(ML)フライングキャパシタ(FC)昇降圧AC/DC変換器(さらにFC Y整流器(FC-YR: FC Y-rectifier)と示される)について説明し、これは上述の応用分野のいずれにも適用可能である。FC-YRは、FC変換器ブリッジレッグ(つまり、2レベルブリッジレッグと比較してシステム性能が向上)とYインバータ(つまり、単一段階のエネルギー変換と受動部品数の削減)の利点を兼ね備えている。
【0030】
一実施形態では、FC-YRは、固有の時変基準値を示すFC電圧を特徴としており、それぞれのパワー半導体は一度に2つのブリッジレッグの1つだけで高周波スイッチングされるため、受動的なFC電圧平衡化だけに頼ることは不可能である。この場合、回路構造には、高性能と安全な動作を保証するための専用の変調および制御戦略が必要であり、これについては、以下でさらに詳しく説明する。追加的にまたは代替的に、すべてのFC電圧を安全な範囲内に維持しながら、DC電圧の制御されたランプアップを可能にするために、以下でさらに説明するように、システムの起動のための専用の変調戦略と制御構造を含めることができる。追加的にまたは代替的に、パワー半導体を能動的に制御できない場合でも安全を確保するために(例えば、障害モードまたはシステムの初期化中)、以下でさらに説明するように、FC段間で安全な電圧分担を課す受動平衡回路を含めることができる。
【0031】
図1を参照すると、三相双方向3レベルフライングキャパシタAC/DC変換器10は、AC端子a、b、cにおいて印加されるグリッドAC電圧u
a、u
b、u
cと、動作中に、能動または受動DCソースまたは負荷9に接続され得るDC端子P、N間のDC電圧U
dcを接続する主電源回路を備えている。変換器10は、3つの同一のフライングキャパシタDC-DC昇降圧変換器モジュール11を含み、そのうちの1つのモジュールは灰色で陰影付けされている。当技術分野で知られているように、AC端子に誘導性入力フィルタL
gを設けることができる。
【0032】
変換器モジュール11のそれぞれは、三相ACグリッドのそれぞれの位相に接続するためのAC端子a、b、またはcを備え、また、AC端子を負のDCリンク端子nに接続するAC側キャパシタCaを備えているため、3つの位相の間で共通のスターYポイントを形成する。各AC端子a、b、cの電位は、nに関して厳密に定義され、残りの2つの位相とは無関係である。その結果、各変換器モジュールは、同等の単相変換器として自律的に動作できる。
【0033】
AC端子と負のDCリンク端子nとの間の電圧、つまりuanで表されるキャパシタCaにわたる電圧(および他の2つの位相b、c:ubn、およびucnの場合)は厳密に正であり、変換器モジュールをDC/DC変換器として動作させることができる。同相オフセットuCM=1/3(uan+ubn+ucn)には対応する電流経路がないため、正弦波グリッド電流ia、ib、icを調整できる。uCMは厳密に正の端子電圧の要件によってのみ制約され、例えば不連続パルス幅変調(DPWM: Discontinuous Pulse Width Modulation)を有効にするために使用できる。
【0034】
したがって、変換器10の3つの変換器モジュール11は、独立して動作し、したがって、トポロジーおよび動作は、
図2に示されるAC端子aに接続された変換器モジュール11についてのみ詳細に説明される。以下では、整流器の動作について説明するが、同様の方法でインバータ動作が得られ得ることは当業者には明らかである。
【0035】
変換器モジュール11は、2つの段12および13を含む。各段12、13は、有利には、j=1、2、…、M-1個のフライングキャパシタとして、したがってM+1個の電圧レベル(M≧1)を達成するCfjを有するフライングキャパシタ変換器回路で形成される。
【0036】
図2の例示的な実施形態では、段12は、一方の側でAC側キャパシタC
aの両端に接続され、他方の側にスイッチノードAを含み、その間に少なくとも1つのフライングキャパシタC
fAを含むフライングキャパシタ回路が配置される。能動スイッチT
A1、T
A2、T’
A1、T’
A2は、C
aの端子(つまり、AC端子と負のDCリンクn)とスイッチノードAとの間のフライングキャパシタC
fAの端子を接続する。
【0037】
段13は、一方の側にスイッチノードBを備え、他方の側で、DC端子Pおよび負のDCリンク端子n(DC端子Nを形成する)に接続される。有利なことに、DC側キャパシタCdcが設けられ、その端子はそれぞれPおよびNに接続される。少なくとも1つのフライングキャパシタCfBを含むフライングキャパシタ回路は、スイッチノードBとDC端子PおよびN(n)との間に配置される。能動スイッチTB1、TB2、T’B1、T’B2は、フライングキャパシタCfBの端子をスイッチノードBとDC端子P、N(有利にはCdcの端子)との間に接続する。
【0038】
スイッチノードAおよびBは、物理インダクタLの反対側の端子に接続されている。
【0039】
上記のトポロジーにより、3つの位相a、b、cのそれぞれについて昇降圧AC/DC変換を個別に取得できる。以下で詳細に説明するように、段12は降圧変換器動作が必要なときに動作し、段13は昇圧変換器動作が必要なときに動作する。降圧段と昇圧段は、相互に排他的な方法で有利に動作し、このことは、2つの段12、13のうちの1つだけがある時点でパルス幅変調され、他方の段はそのスイッチノードA、BをそれぞれのAC端子、例えばa、および正のDC端子Pにそれぞれクランプされることを意味する。そうすることで、単一段階の高周波エネルギー変換を得ることができ、性能の向上につながる。
【0040】
図3を参照すると、単一段階の高周波エネルギー変換を実現するために、変換器モジュール11は、昇圧動作および降圧動作の2つの可能な動作モードのうちの1つで、瞬時変調深度m(t)=u
an(t)/U
dc(すなわち、入出力電圧比)に応じて動作している。
【0041】
各位相入力電圧uanがUdcよりも低い場合、(AC端子aに接続された変換器モジュール11の)昇圧動作モードが選択される。降圧ブリッジの上部スイッチTA1およびTA2は永続的にオンになり、段12のスイッチノードAはAC端子電圧にクランプされる。昇圧段13は、スイッチノードBの電圧がAC端子電圧に等しい局所平均値(すなわち、1パルス周期にわたって平均される)を有するように、パルス幅変調(PWM)によって制御される。この動作モードでは、二次入力フィルタは、位相インダクタLおよびAC側キャパシタCaによって有利に形成される。
【0042】
uanがUdcを超えると降圧動作モードが選択される。昇圧ブリッジの上部スイッチTB1とTB2は永続的にオンになり、昇圧段13のスイッチノードBは正のDCリンクレール(端子P)にクランプされる。ここで段12は、スイッチノードAの電圧がDC電圧Udcに等しい局所平均値を有するように、AC端子電圧を下げるためにPWM動作される。この動作モードでは、AC側キャパシタCaのみが入力フィルタとして機能し、インダクタ電流iLaは上昇した基本(局所平均)電流(iLa)≧iaを示す。
【0043】
降圧段12の能動スイッチTA1、TA2、T’A1、T’A2および昇圧段13のTB1、TB2、T’B1、T’B2は、有利には半導体スイッチング装置、例えば電界効果トランジスタ(FET: Field Effect Transistor)、特にMOSFET装置である。
【0044】
したがって、変換器モジュール11の段12、13は、以下によって定義され得る降圧段12の時変デューティサイクルdAおよび昇圧段13のdBで動作する。
【0045】
【0046】
デューティサイクルは、
図4にグラフで表されている。これらのデューティサイクルは、それぞれ降圧段12および昇圧段13の相互に排他的な高周波動作を保証する。また、
図4からわかるように、デューティサイクルd
Aとd
Bの両方が有利に連続的であるため、単純な制御構造が可能になり、変調領域の切り替え中の過渡的な振動が回避される。
【0047】
デューティサイクルd
Aおよびd
Bは、段12および13の両方のハーフブリッジにそれぞれ供給される。段12および13のいずれかのPWM動作中、ブリッジの反対側の位置に配置された能動スイッチは、逆同期モードで動作し、例えば、T
A1がオンの場合、T’
A1はオフになり、その逆も同様である。スイッチ対T
A2とT’
A2、T
B1とT’
B1、およびT
B2とT’
B2についても同様である。能動スイッチのPWM制御信号は、各ハーフブリッジに2つのスイッチ対がある場合、各段の外側(つまり、段12のT
A1とT’
A1)および内側(つまり、段12のT
A2とT’
A2)ハーフブリッジの180°位相シフトされたPWMキャリアを使用して、既知の方法で生成され得る(
図3)。より一般的には、段がj=1、2、…、M-1のM-1個のフライングキャパシタC
fjで構成されている場合、2つの連続するスイッチ対を駆動するためのPWM制御信号は、360°/Mだけ位相シフトできる。そうすることで、インダクタ電流i
Laは1つのスイッチング期間中にフライングキャパシタを均等に充電および放電し、フライングキャパシタ電圧の自然な平衡を得ることができる。その結果、スイッチノードでM+1の異なる電圧レベルを得ることができる。
【0048】
しかし、本発明者らは、それぞれの段が高周波で動作する場合にのみ自然な平衡が保たれることを観察した。変換器モジュール11が例えば降圧動作で動作している場合(すなわちm>1)、段13のスイッチノードBは正のDCリンクレール(DC端子P)にクランプされ、C
fBはバイパスされ、したがって定電圧のままである。理想的に一定のFC電圧U
fB=U
dc/2(
図3を参照)が与えられると、昇圧段13の動作は問題なく、マルチレベルフライングキャパシタ電圧源整流器に非常に似ていることが見出される。
【0049】
対照的に、段12のFC電圧をu
fA=u
an/2に維持することは、降圧動作中にのみ可能であり、C
fAの電圧調整の主要な時間インスタンスが
図3に強調表示されている。位置(1)位置で昇圧動作を開始すると、C
fAはバイパスされ、その電圧はu
fA=U
dc/2で一定のままになる。さらに重要なのは位置(2)で、入力電圧u
anがu
fAを下回ると、T’
A1の逆並列ダイオードが導通し始め、C
aとC
fAが並列接続される。したがって、C
fAは位置(3)まで完全に放電している。そこで、電圧u
anが再び上昇し始め、T’
A1が電圧を上昇させるが、それ以上の対策が講じられなければ、C
fAは完全に放電されたままになり、後続のAC期間で降圧動作を開始するとき、段12のハーフブリッジ間に大きな遮断電圧の不均衡が生じる。
【0050】
本開示の一態様によれば、したがって、変換器モジュール11(および特に段12)の変調方式は、ufA<Udc/2の場合、TA1およびT’A1の同時ターンオンを含み、uanが位置(3)で再び上昇し始めたときに、CfAが能動的にCaにクランプされることが可能となり、位置(4)で所望のFC電圧レベルに達したときにのみ解放される。そうすることによって、段12のスイッチの均等な電圧分担が、後続のAC期間で再び降圧動作に入るときに得られ得る。
【0051】
実際の実現では、クランプロジックのヒステリシスブロックを有利に使用して、T’A1のターンオンインスタンスでT’A1の逆並列ダイオードが既に導通していることを確認し、したがって、ゼロ電圧スイッチングを保証し、CaとCfAを並列接続する際の過渡振動を回避する。
【0052】
図5を参照すると、変換器10は、上記の変調戦略を実施するための制御ユニット15を備える。制御ユニットは、異なる変換器モジュール11を自律的に操作するための個々の制御モジュールを備えることができる。1つの変換器モジュール11、例えばAC端子aに接続された変換器モジュールを動作させるための1つのそのような制御モジュール16が、
図5に概略的に示されている。
【0053】
制御ユニット15は、当技術分野で知られているカスケード制御構造を用いて力率補正(PFC: power factor correction)整流器制御を実行するように有利に構成される。ACグリッド電圧ua、ub、ucおよびグリッド電流ia、ib、ic、ならびにインダクタ電流iLaを測定するための測定手段が有利に提供される。DC側では、有利には、DC端子電圧Udcを測定するための、および有利にはDC端子電流Idcを測定するための測定手段が、設けられる。これらの測定値は、制御ユニット15に有利には入力される。
【0054】
正弦波グリッド電流基準
【0055】
【0056】
は、DC電圧誤差と測定されたAC電圧ua、ub、ucに基づいて導出される。次に、必要なグリッド電流を強制するために、AC端子電圧基準
【0057】
【0058】
が設定される。これらのAC端子電圧基準は、各変換器モジュールを個別に動作させるためにそれぞれの制御モジュール16に供給される。
【0059】
制御モジュール16は、AC電圧制御ブロック161、インダクタ電流制御ブロック162、および変調器163を備える。インダクタ電流制御ブロック162の出力信号は、変調器163に供給され、降圧段12および昇圧段13の相互に排他的な動作のためのデューティサイクルを生成する。
【0060】
能動スイッチTA1、TA2などの制御信号は、次いでPWMブロック164および165を使用して生成される。本開示で説明した降圧段12のクランプ論理は、PWM制御ブロック164で有利に実施される。
【0061】
C
fA(
図3参照)の所望の時変電圧波形を強制するために、追加のフライングキャパシタ電圧制御ブロック166が有利に追加されて、段12のフライングキャパシタ間の電圧u
fAを調整する。これは、[非特許文献8]でさらに説明されているように、段12のデューティサイクルd
Aに課せられる補正デューティサイクルd
corを使用して、冗長フライングキャパシタの充電および放電間隔の持続期間をわずかに変更することによって、既知の方法で行うことができる。そうすることによって、段12の可能な不十分な自然FC電圧平衡化性能は、キャパシタC
aが電圧源にどれだけよく似ているかに依存する可能性があり、例えば、C
aの動的キャパシタンス制限に起因して生じることが回避される。
【0062】
【0063】
、U
dc=400V、出力電力P=9kWの閉ループ回路シミュレーションのデューティサイクル、電流、および電圧波形の結果を
図6A~
図6Cに示す。観察できるように、正弦波のグリッド電流を実現でき、
図5に表示されている選択された制御構造を検証でき、この場合、降圧から昇圧動作(およびその逆)への移行は完全にシームレスである。FC電圧は、かなりの高周波電圧変動にもかかわらず、
図3に示す所望の電圧プロファイルに厳密に従う。
【0064】
ここで
図7を参照すると、変換器モジュール、特に段12および13が双方向電力の流れを可能にするので、変換器10と同じ変換器構造をインバータ20として使用することもでき、例えば、三相ACモータ29がDCソースから電力を供給される場合である。上述の整流器の用途と同様に、インバータ20は、自律的に動作する変換器モジュール21を有する3レベルのフライングキャパシタYインバータとして形成される(そのような変換器モジュールの1つはグレーで陰影付けされている)。
【0065】
特に可変速度ドライブとして動作するための、インバータ20の閉ループ制御構造が、
図8に概説されている。角速度指令ω*と測定値ωに基づく速度制御は、dq座標系(回転子角度εを座標変換に使用)で実行され、ディファレンシャルモード変換器の端子電圧指令
【0066】
【0067】
が得られる。所望の同相電圧リファレンスを追加すると、負のDCリンク端子
【0068】
【0069】
に関する端子電圧リファレンスの結果と、後続の位相モジュール制御構造は、
図5に示すY整流器の制御戦略と同じである。
【0070】
特定の動作条件(例えば、障害モードまたはシステムの初期化中)では、段12および13のスイッチング装置が無効になり(または無効にする必要があり)、積極的に制御することはできない。それでも、グリッド線間電圧はAC端子に印加される。段12半導体スイッチング装置の逆並列ダイオードが負電圧uanおよびufAを防止するため、最小定数オフセット
【0071】
【0072】
が確立される。この場合、
図3に関連して本明細書で説明した変調戦略によるフライングキャパシタクランプは不可能である。このような不都合を回避するために、受動保護回路が有利に提供される。受動保護回路は、段12の半導体スイッチ間で安全な電圧分担を課すように構成されている。受動保護回路の可能な一実施形態では、フライングキャパシタの電圧を平衡化するために平衡抵抗器が使用される。しかし、この手法ではかなりの損失を被る可能性がある。
【0073】
図9を参照すると、本開示の一態様による受動保護回路17の有利な実施形態は、平衡キャパシタC
pを半導体スイッチT
A1およびT’
A1と並列の通常閉(ノーマルオン)スイッチT
pに接続することである。換言すれば、通常閉(空乏モード)半導体スイッチT
pは、平衡キャパシタC
pをフライングキャパシタC
fAと直列接続し、段12の半導体間で均等な電圧分担を保証し、段Bは負のDCリンクレールにクランプされ、DCリンクの制御されない充電を回避する。C
pのキャパシタンス値は、段12の半導体スイッチ間で等しいAC電圧分担が得られるように有利に選択され、逆並列ダイオードもまた等しいDCバイアス電圧分担を確立する。
【0074】
追加的にまたは代替的に、Udcの制御されない上昇を防止するために、段13のスイッチノードBを負のDCリンクレールに接続する通常閉半導体スイッチTpが有利に提供され、変換器の入力フィルタを三相グリッドに接続する際に、バイパススイッチで突入電流を制限する抵抗Rprをプリチャージする。
【0075】
通常の動作では、プリチャージ抵抗はスイッチTprでバイパスされ、通常閉半導体スイッチTpは無効になる。次いで、本明細書で説明するクランプ変調により、すべてのFC電圧が安全な境界内にとどまることを保証できる。通常閉半導体スイッチの出力キャパシタンスはTA1およびT’A1と並列であるため、段12のスイッチング損失が増加する。ただし、受動平衡動作では電流ストレスが低いため、オン状態抵抗が高い(したがって寄生キャパシタンスが低い)ノーマルクローズ半導体装置を選択できる。
【0076】
図9に示す受動保護回路は、重大な過電圧から半導体を有利に保護し、入力フィルタの突入電流を制限し、三相グリッドに接続する際のシステムの初期化中にDC出力電圧の制御されないプリチャージを回避する。
【0077】
コントローラが初期化されるとすぐに、保護回路の通常閉半導体スイッチTpが無効になる。ただし、受動負荷の場合(最初はDCリンク電圧がゼロ)、Udc≦Udc,minの場合、正弦波グリッド電流でのPFC整流器の動作は不可能である。
【0078】
本開示の有利な態様によれば、制御された方法でDCリンク電圧をランプアップさせながら過度の半導体電圧ストレスを回避するために、専用の起動手順が提供される。
【0079】
起動手順は、有利には、
図10に関連して説明される4つのステップを含む。第1のステップは、DCリンク電圧U
dc=0Vの場合の変換器動作に関するものである。T’
A1とT’
A2は永続的にオンになり、T
A2は永続的に無効になり、段12のスイッチノードAを負のDCリンクレールにクランプして、DCリンクの充電電流を防止する。さらに、段12の半導体遮断電圧の最大値を制限するために、能動クランプ戦略が有利に使用される。パワー半導体がまだPWM動作していないため、負のDCリンクレールに対するAC側キャパシタ電圧u
anの特定の条件が満たされている場合、特に
【0080】
【0081】
の場合、段12で同等の最大半導体遮断電圧分担を達成するため、CfAが入力キャパシタにクランプされる(つまり、TA1とT’A1がオン)。段13の半導体スイッチは、この初期状態では永久に無効のままである。
【0082】
引き続き
図10を参照すると、第2のステップは、DCリンク電圧が所定の閾値U
dc,minまで上昇するときの変換器動作に関係し、有利にはDCリンク電圧基準
【0083】
【0084】
である。U
dcが0Vを超えるとすぐに、C
fBはT
B1とT’
B1を永続的にオンにすることによってDCリンクキャパシタC
dcにクランプされるが、段13の内部ハーフブリッジ(T
B2とT’
B2)は無効のままである。この場合、T
B2とT’
B2の逆並列ダイオードは、ダイオード整流器を表し得る。段12のスイッチノードAに接続されたインダクタ端子にPWMパルスを印加する(つまり、グリッドのライン間電圧によって印加されるAC側キャパシタ電圧u
anを下げる)ことにより、DCリンク電圧をランプアップすることができる。これは、不連続伝導モードで有利に実行される。ステップ2に対応する制御方式の例示的な実施形態が
図11に示されている。
【0085】
本明細書で説明する段12のフライングキャパシタCfAのクランプ変調は最小負荷電流を必要とするので、ステップ1からの修正されたクランプ変調戦略はステップ2で維持される。したがって、
【0086】
【0087】
の場合、TA2とT’A2のみがPWM動作する。次に、uan>1/2uan,maxの場合、段12は準2レベルブリッジレッグとして動作し、TA1とTA2は同一のPWM信号を受信し、FC電圧ufAは一定のままである。
【0088】
U
dc≧U
dc,min(ステップ3)になるとすぐに、
図5による正弦波グリッド電流制御による標準PFC動作が可能になるが、DCリンク電圧は公称値に向かってさらにランプアップする。U
dcが
【0089】
【0090】
の公称値に達すると、ステップ4で定常状態の動作が達成される。
【0091】
閉ループ回路シミュレーションから得られた変換器波形を
図12に示す。
図12では、半導体の遮断電圧ストレスは平衡が保たれているが、DCリンク電圧U
dcは400Vmまで直線的にランプアップし、したがって、本発明による変換器の提示された起動戦略を確認する。
【0092】
対照的に、例えば、
図7に関連して説明したFC Yインバータ可変速ドライブに関しては、DC電圧源が付属しているため、特別な起動戦略は必要なく、また、端子電圧は、
図8に示す制御構造を使用して、モータ速度の増加に伴って徐々にランプアップさせることができる。
【0093】
本発明の開示では、変調戦略、制御構造、受動保護回路、および起動制御方式が、3レベルY整流器について詳細に説明されている。ただし、調査結果は一般的な性質のものであり、より高いレベルの数のFC Y整流器やインバータ用途にも適用できる。特に、本開示で説明される概念は、3レベルフライングキャパシタ変換器に限定されず、任意の数の電圧レベルに適用できることに留意することが好都合である。
図13は、段12のフライングキャパシタC
fAj、j=1~N-1、および段13のフライングキャパシタC
fBi、I=1~M-1を備えた(N+1、M+1)レベルFC変換器を備えた変換器モジュールの回路構造を示す。NとMは同一である必要はない。つまり、段12と13の電圧レベルが異なるハイブリッド変換器が可能である。
【0094】
図14を参照すると、3レベルフライングキャパシタ回路(1つのフライングキャパシタC
fAを含む)に関して上述したフライングキャパシタクランプ変調戦略は、4つ以上の電圧レベルを有するフライングキャパシタ回路に容易に適用することができる。クランプ変調は、5レベルのフライングキャパシタ回路に関連して
図14に示されている。降圧および昇圧動作のAC側フライングキャパシタ電圧波形が示されている。降圧動作が終了し、変換器が昇圧モードに移行すると(つまり、u
an<U
dcの位置(1))、すべてのAC側FCがバイパスされ、それぞれのFC電圧が一定のままになる。u
anがFCごとに異なるそれぞれのFC電圧値を下回ると、各FCはAC側キャパシタC
aにクランプされる。時間インスタンス(2.1)、(2.2)、(2.3)は、それぞれのFCのクランプ期間の開始を示し、(4.1)、(4.2)、(4.3)はそれぞれの終了を示す。
【0095】
上記のトポロジーおよび制御戦略の代替実施形態では、スイッチT’
A1を双方向スイッチに置き換えることによって、
図2のトポロジーを変更することができる。再び
図3を参照すると、時間位置(2)と(4)の間で双方向スイッチをオフにすることができるため、C
fAの放電を防ぐことができる。これにより、昇圧動作においてu
fAを一定に保つことができる。ただし、この実施形態は、構成要素数を増加させ、前の場合と比較して伝導損失の増加につながる可能性がある。
【0096】
図15を参照すると、バッテリー充電システム700は、電源ユニット704を備えている。電源ユニット704は、一方の側で端子a、b、cを介してACグリッドに結合され、他方の側(端子P’、N’)で、例えば、電源ユニット704をバッテリー703に接続することを可能にするスイッチ装置を備えたインターフェース702に結合される。電源ユニット704は、上述のように、例えば変換器10などの電気変換器のいずれか1つを含み、本システムではDC-DC変換器であるさらなる変換器段701を含むことができる。電源ユニット704、例えば変換器段701は、無線電力伝送の場合のように、空気(図示せず)を介して誘導結合される一対のコイルを備えることができる。代替的に、DC-DC変換器段701は、1つまたは複数の場合によっては絶縁されたDC-DC変換器を備えるか、またはそれらから構成することができる。場合によっては、インターフェース702は、例えば有線電力伝送において、プラグおよびソケットを備えることができる。代替的に、プラグとソケットを入力(例えば、ノードa、b、c)に提供することもできる。
【0097】
本明細書に記載されている態様は、以下の番号付きの条項に記載されている。
1.少なくとも3つの相電圧を有するAC信号とDC信号との間で変換するための電気変換器(10、20)であって、
少なくとも3つのAC端子(a、b、c)、第1および第2のDC端子(P、N)と、
制御ユニット(15)と、
少なくとも3つのAC端子のそれぞれ1つに結合された少なくとも3つの変換器モジュール(11)であって、少なくとも3つの変換器モジュールのそれぞれが、
第1のスイッチノード(A)を含む第1の変換器段(12)と、
第2のスイッチノード(B)を含む第2の変換器段(13)と、
第1のインダクタ(L)であって、第1および第2のスイッチノードが第1のインダクタの反対側の端子に接続される、第1のインダクタ(L)と、
第1のキャパシタ(Ca)であって、少なくとも3つのAC端子のそれぞれ1つおよび第2のDC端子が、第2のDC端子が少なくとも3つの変換器モジュールの第1のキャパシタ(Ca)のスターポイント(n)を形成するように、第1のキャパシタの反対側の端子に接続される、第1のキャパシタ(Ca)と、
を含む、少なくとも3つの変換器モジュール(11)と、
を備え、
第1の変換器段(12)および第2の変換器段(13)はそれぞれ、それぞれの第1および第2のスイッチノード(A、B)に動作可能に結合された少なくとも1つのフライングキャパシタ(CfA、CfB)を備えるフライングキャパシタ回路を備える、ことを特徴とする、
電気変換器(10、20)。
2.制御ユニット(15)は、第1のキャパシタにわたる第1の電圧(uan)が第1の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタにわたるフライングキャパシタ電圧(ufA)を下回ったとき、フライングキャパシタ電圧(ufA)が、第1の電圧(uan)にクランプされるように、変換器モジュール(11)のそれぞれを動作させるように構成される、条項1に記載の電気変換器。
3.第1の変換器段(12)の少なくとも1つのフライングキャパシタ(CfA)が、能動双方向スイッチング装置を介してスターポイント(n)に接続されている、条項1に記載の電気変換器。
4.制御ユニット(15)は、第1の電圧(uan)が第1の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタ(CfA)にわたるフライングキャパシタ電圧(ufA)を下回ると、能動双方向スイッチング装置をオフにするように構成される、条項3に記載の電気変換器。
5.制御ユニットは、第2の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタ(CfB)にわたるフライングキャパシタ電圧(ufB)が、第1および第2のDC端子にわたるDC電圧(Udc)に比例するように、各々の変換器モジュールを動作させるように構成されている、条項1から4のいずれか1つに記載の電気変換器。
6.制御ユニットが、少なくとも3つの変換器モジュール(11)のそれぞれ1つに結合され、少なくとも3つの変換器モジュールを独立して動作させるように構成された少なくとも3つの制御モジュール(16)を備える、条項1から5のいずれか1つに記載の電気変換器。
7.少なくとも3つの制御モジュール(16)は、それぞれの変換器モジュールの第1のキャパシタ(Ca)の電圧基準に基づいて、それぞれの変換器モジュールの第1および第2の変換器段を動作させるためのデューティサイクル(dA、dB)を決定するように構成される、条項6に記載の電気変換器。
8.制御ユニットは、第1および第2のDC端子間のDC電圧(Udc)が、それぞれの第1のキャパシタ(Ca)の第1の電圧(uan)以下である第1の動作モードに従って、および、DC電圧(Udc)が第1の電圧(uan)より大きい第2の動作モードに従って、少なくとも3つの変換器モジュール(11)のそれぞれを動作させるように構成される、条項1から7のいずれか1つに記載の電気変換器。
9.制御ユニットが、パルス幅変調を介して相互に排他的に第1および第2の変換器段のフライングキャパシタ回路を動作させるように構成されている、条項1から8のいずれか1つに記載の電気変換器。
10.第1の変換器段は保護回路(17)を含み、保護回路は、第1の変換器段(12)の少なくとも1つのフライングキャパシタ(CfA)を、少なくとも1つの第1の通常閉スイッチ(Tp)を介して、少なくとも3つのAC端子のそれぞれ1つ、および/または第2のDC端子に接続する平衡キャパシタ(Cp)を備え、制御ユニット(15)は、少なくとも1つの第1の通常閉スイッチを無効にするように構成されている、条項1から9のいずれか1つに記載の電気変換器。
11.少なくとも3つの変換器モジュールのそれぞれは、第2のスイッチノード(B)とスターポイント(n)との間に接続された第2の通常閉スイッチ(Tp)を備え、制御ユニット(15)は、第2の通常閉スイッチを無効にするように構成されている、条項1から10のいずれか1つに記載の電気変換器。
12.制御ユニット(15)は、起動動作中、第1および第2のDC端子の間のDC電圧(Udc)がゼロのとき、第2の変換器段(13)が無効になり、第1のスイッチノード(A)がスターポイント(n)にクランプされるように、少なくとも3つの変換器モジュールのうちの1つの変換器モジュール(11)を動作させるように構成される、条項1から11のいずれか1つに記載の電気変換器。
13.第1の変換器段の少なくとも1つのフライングキャパシタ(CfA)にわたる電圧(ufA)は、起動動作中にDC電圧(Udc)がゼロであるとき、断続的に第1の電圧(uan)にクランプされる、条項12に記載の電気変換器。
14.制御ユニットは、第2の変換器段(13)の少なくとも1つのフライングキャパシタ(CfB)にわたる電圧(ufB)が、DC電圧のランプアップ中に第1および第2のDC端子間のDC電圧(Udc)にクランプされるように、少なくとも3つの変換器モジュールのうちの1つの変換器モジュールを動作させるように構成されている、条項1から13のいずれか1つに記載の電気変換器。
15.第1の変換器段および第2の変換器段が、同数の少なくとも1つのフライングキャパシタ(CfA、CfB)を含む、条項1から14のいずれか1つに記載の電気変換器。
16.第1の変換器段および第2の変換器段が、異なる数の少なくとも1つのフライングキャパシタ(CfA、CfB)を備える、条項1から14のいずれか1つに記載の電気変換器。
17.条項1から16のいずれか1つに記載の電気変換器(20)を備え、制御ユニットは、電気変換器をトラクションインバータとして動作させるように構成された、電気モータ駆動システム。
18.特に電気自動車駆動用バッテリーを充電するためのバッテリー充電システムであって、バッテリー充電システムが電源を備え、電源が条項1から16のいずれか1つに記載の電気変換器(10)を備える、バッテリー充電システム。
【符号の説明】
【0098】
9 負荷
10 三相双方向3レベルフライングキャパシタAC/DC変換器、変換器
11 フライングキャパシタDC-DC昇降圧変換器モジュール
12 段、降圧段
13 段、昇圧段
15 制御ユニット
17 受動保護回路
20 インバータ
21 変換器モジュール
A、B スイッチノード
L 物理インダクタ
Ca キャパシタ、AC側キャパシタ
Cdc DC側キャパシタ
CfA、CfB フライングキャパシタ
Cp 平衡キャパシタ
ua、ub、uc グリッドAC電圧
uCM 同相オフセット
Udc DC電圧
Lg 誘導性入力フィルタ
ia、ib、ic 正弦波グリッド電流
N、P DC端子
TA1、T’A1、TA2、T’A2 能動スイッチ
TB1、TB2、T’B1、T’B2 能動スイッチ
【国際調査報告】