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特表2023-535504生理学的pHにおいて可溶性のキレート基を含む多糖及びその使用
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  • 特表-生理学的pHにおいて可溶性のキレート基を含む多糖及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】生理学的pHにおいて可溶性のキレート基を含む多糖及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/08 20060101AFI20230809BHJP
   A61P 7/08 20060101ALI20230809BHJP
   A61K 31/722 20060101ALI20230809BHJP
   A61K 49/12 20060101ALI20230809BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C08B37/08 A
A61P7/08
A61K31/722
A61K49/12
A61K9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506049
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 FR2021051419
(87)【国際公開番号】W WO2022023677
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】2007997
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520223974
【氏名又は名称】メクスブレン
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】503161615
【氏名又は名称】ウニベルシテ クロード ベルナール リヨン 1
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ティルメン
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・ルクス
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・ロセッティ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ナツッジ
(72)【発明者】
【氏名】トマ・ブリシャル
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ポーラ・ヌネス・デ・オリヴェイラ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ・モンテンボー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4C090
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB11
4C076BB17
4C076BB32
4C076CC17
4C076FF70
4C085HH07
4C085KA09
4C085KB12
4C085KB56
4C085KB79
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA23
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA28
4C086NA14
4C086ZA81
4C090AA02
4C090AA04
4C090AA09
4C090AA10
4C090BA47
4C090BB02
4C090BB17
4C090BB18
4C090BB33
4C090BB36
4C090BB53
4C090BB67
4C090BB77
4C090BB99
4C090BD37
4C090CA06
4C090CA35
4C090CA39
4C090CA46
4C090DA09
4C090DA23
4C090DA25
4C090DA27
(57)【要約】
本発明は、100kDa~1000kDaの質量平均分子量を有する以下の式Iの統計的多糖に関する:
[化1]
ここで、各Rcは独立して、キレート剤を含む基を表し、各Zは独立して、単結合、又は1~12個の炭素原子を含む炭化水素ベースの鎖でもよい結合基を表し、前記鎖は直鎖状又は分枝状であることが可能であり、1つ又は複数の不飽和を含むことが可能であり、及び好ましくは窒素、酸素、硫黄及びハロゲン族の原子から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含むことが可能であり、xは0.005~0.7、好ましくは0.05~0.7、及び優先的には0.2~0.6であり、yは0.01~0.7、好ましくは0.05~0.2であり、y/x比は0.05以上、好ましくは0.15以上であり、x+yの合計は0.30以上、好ましくは0.35以上である。本発明はまた、少なくとも1つの金属を捕捉するための透析法、MRIイメージング法、小線源治療法、又は偽造を防止するために食品にマークを付ける方法における前記多糖の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100kDa~1000kDaの重量平均分子量を有する下記式Iの統計的多糖:
【化1】
[式中、
各Rcは独立に、キレート剤を含む基を表し、
各Zは独立に、単結合又は1~12個の炭素原子を含む炭化水素ベースの鎖であることができるリンカーを表し、前記鎖は直鎖状又は分枝状であることができ、かつ、1つ又は複数の不飽和を含んでいてもよく、かつ、1つ又は複数のヘテロ原子、好ましくは窒素、酸素、硫黄、及びハロゲン族の原子から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含むことができ、
xは0.005~0.7、好ましくは0.05~0.7、及び好ましくは0.2~0.6であり、
yは0.01~0.7、好ましくは0.05~0.2であり、
y/x比は0.05以上、好ましくは0.15以上であり、且つ
x+yの合計は0.30以上、好ましくは0.35以上である]。
【請求項2】
各Rc基が、DOTA、NOTA、NODAGA、DOTAGA、DOTAM、NOTAM、DOTP、NOTP、TETA、TETAM、DTPA、及びDFOからなる群から、好ましくはDOTAGA、DFO、DOTAM、及びDTPAからなる群から独立して選択され、より好ましくは、Rc基がDOTAGAである、請求項1に記載の多糖。
【請求項3】
下記式IIの多糖であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多糖:
【化2】
[式中、
RcとRcは異なり、且つキレート剤を含む基であり、
及びZは、同一であっても異なっていてもよく、単結合又は1~12個の炭素原子を含む炭化水素ベースの鎖であってよいリンカーであり、前記鎖は直鎖状又は分枝状であることができ、かつ、1つ又は複数の不飽和を含んでいてもよく、かつ、1つ又は複数のヘテロ原子、好ましくは窒素、酸素、硫黄、及びハロゲン族の原子から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含むことができ、
xは、0.005~0.7、好ましくは0.05~0.7、及び優先的には0.2~0.6であり、
yは、0.01~0.7、好ましくは0.05~0.2であり、
y/x比は、0.05以上、好ましくは0.15以上であり、
x+yの合計は、0.30以上、好ましくは0.35以上であり、且つ
zは、0.5~1である]。
【請求項4】
Rc及び各Rcが、DOTA、NOTA、NODAGA、DOTAGA、DOTAM、NOTAM、DOTP、NOTP、TETA、TETAM、DTPA、及びDFOからなる群から、好ましくはDOTAGA、DFO、DOTAM、及びDTPAからなる群から独立に選択されることを特徴とする、請求項3に記載の多糖。
【請求項5】
xが0.25~0.4であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の多糖。
【請求項6】
yが0.05~0.2であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多糖。
【請求項7】
ヒドロゲル形態の組成物中に配合されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の多糖。
【請求項8】
少なくとも1つの金属を捕捉するための透析法、好ましくは、前記金属が好ましくは銅、鉄、鉛、亜鉛、アルミニウム、ガドリニウム、及びマンガンからなる群に属するMARS透析又はCSFの透析において使用するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の多糖。
【請求項9】
前記多糖が少なくとも1つの金属をキレート化していることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の多糖。
【請求項10】
MRIイメージング法における使用のための、請求項9に記載の多糖。
【請求項11】
小線源治療法におけるその使用のための、請求項9に記載の多糖。
【請求項12】
偽造を防止するために食品にマーキングをする方法における、請求項9に記載の多糖の使用。
【請求項13】
少なくとも以下の3つの順次の工程:
・工程1:4~5のpHにおいて酸溶液中でキトサンを可溶化する工程、
・工程2:工程1において可溶化したキトサンのアミン官能基を部分的にアセチル化する工程(単位Aの形成)、
・工程3:工程2においてアセチル化されなかったアミン官能基の少なくとも一部を官能化する工程(C型の単位の形成)
を含む、キトサンから請求項1~7のいずれか一項に記載の多糖を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キレート基を有する化合物の分野に属する。特に、本発明はキレート化された、又は1つ又は複数の金属をキレート化できる多糖、及び恒常性のための透析、MRIイメージング、小線源治療、又は偽造を防止するための食品のマーキング等の様々な技術におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多糖は、植物、菌類、動物、又は細菌のバイオマスに由来するポリマーである。これらのポリマーは非常に多様な物理化学的特性を有し、幅広い生物学的応用のために形成することができる。多糖の化学修飾により、それらの特性、特に中性に近いpH値での水性媒質中へのそれらの溶解度を調整することが可能になる。高度に特異的なキレート剤を使用したその機能により、生物医学分野での応用も可能になる。実際、これらの物質(entities)を多糖の構造にグラフトした後、そのポリマーは、恒常性の維持との関連等、病原性金属に関して生体を除染するための解毒剤として使用できる。
【0003】
生体の内部環境、すなわち、全ての生物学的液体及び生体の体液の恒常性の維持は、生体が正しく機能するために必要である。多くの病理学的状態において、金属及び/又はペプチド、或いはタンパク質の恒常性の全身的又は局所的な調節不全が実証されている。
【0004】
金属に関しては、金属イオンの濃度を下げることを目的としたキレート療法が、急性中毒の場合に、既に長年に亘って使用されてきた。したがって、一定数のキレート剤が既に人間に受け入れられており、それぞれが特定の金属のグループに関連付けられている(G. Crisponiら, Coordination Chemistry Reviews, 2015)。
【0005】
ますます増大する科学的研究は、金属、特に鉄だけでなく、銅、亜鉛、マンガン、更にはアルミニウムや鉛が、多くの神経疾患において重要な役割を果たしている可能性があることを前面に押し出している(E.J. McAllumら, J. Mol. Neurosci., 2016)。これは特に、脳の特定の領域における鉄の蓄積に関連した遺伝的異常に関連するまれな疾患であり、現時点では緩和治療しかない、鉄過剰症を伴う神経変性の症例である(S. Wiethoffら, Handb. Clin. Neurol., 2017)。更に、鉄は年齢とともに脳に蓄積する傾向があることが多くの研究で示されている(J. Acosta-Cabroneroら, Journal of Neuroscience, 2016)。ウィルソン病は遺伝病でもあり、生体内に銅の蓄積を引き起こして様々な問題、特に肝臓及び/又は神経の問題を引き起こす(Anna Czlonkowskalら, Nature Rev., 2018)。
【0006】
アルツハイマー病、パーキンソン病、及びハンチントン病等の幾つかの神経疾患も、特定の領域における鉄の量の増加を伴い、細胞の損傷や、また酸化ストレスを引き起こす(A.A. Belaidiら, Journal of Neurochemistry, 2016)。例として、ハンチントン病は神経変性疾患であり、運動障害、認知機能低下、及び精神医学的問題を引き起こす。この病的状態では、多数の酸化ストレスマーカーが脳内で観察され、鉄の恒常性の調節不全に関連している可能性がある(S.J.A. van den Bogaardら, International Review of Neurobiology, 2013)。このように、脳の幾つかの領域(被殻、尾状核、及び淡蒼球)における鉄レベルの増加は、Bartzorkisの研究を含む幾つかのMRI研究によって検証されている(G. Bartzorkisら, Archives of Neurology, 1999)。
【0007】
特にアルツハイマー病では、特定の金属イオン、特に亜鉛、鉄、又は銅等の金属由来のイオンと、タンパク質凝集の増加をもたらし得るAβペプチドとの間の相互作用が実証されている(Touguら, Metallomics, 2010)。
【0008】
このように、多くのタンパク質異常症において、金属カチオンが特定タンパク質の異常な構成の形成に重要な役割を果たしていることが認められている。特に、幾つかは凝集体、フィブリル、又はその他の固体沈着物の形成を促進する。したがって、タンパク質異常症では、局所的に恒常性の二重の調節不全、すなわち、特定の金属の恒常性の調節不全と、凝集及びその他の固体沈着物の原因となるタンパク質タイプの標的分子の恒常性の調節不全が存在するようである。
【0009】
特許出願WO2019/122790は、治療目的で金属恒常性を維持するために生体内に導入できる医療デバイスを開示しており、前記デバイスは、金属を抽出するためのキレート剤を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2019/122790号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】G. Crisponiら, Coordination Chemistry Reviews, 2015
【非特許文献2】E.J. McAllumら, J. Mol. Neurosci., 2016
【非特許文献3】S. Wiethoffら, Handb. Clin. Neurol., 2017
【非特許文献4】J. Acosta-Cabroneroら, Journal of Neuroscience, 2016
【非特許文献5】Anna Czlonkowskalら, Nature Rev., 2018
【非特許文献6】A.A. Belaidiら, Journal of Neurochemistry, 2016
【非特許文献7】S.J.A. van den Bogaardら, International Review of Neurobiology, 2013
【非特許文献8】G. Bartzorkisら, Archives of Neurology, 1999
【非特許文献9】Touguら, Metallomics, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように満足のいく医療機器が存在する一方、現在までに得られた最終結果を改善することは依然として有益である。更に、生体内で金属を捕捉するために使用できるキレート剤を含むデバイスは、既にキレート化された形態で生体内に導入できる可能性がある。後者の構成では、磁気共鳴イメージング(MRI)、小線源治療、又は偽造を防ぐための食品のマーキング等、他の非常に多様な用途が想定される。
【0013】
したがって、本発明の目的は、様々な用途に使用するための、キレート化された形態又はキレート化されていない形態で生体内に導入することができるキレート剤を含む多糖を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、100kDa~1000kDaの質量平均分子量を有する下記式Iの統計的多糖に関する:
【0015】
【化1】
【0016】
[式中、
各Rcは独立に、キレート剤を含む基を表し、
各Zは独立に、単結合、又は1~12個の炭素原子を含む炭化水素ベースの鎖でもよいリンカー(linker)を表し、前記鎖は直鎖状又は分枝状であってよく、1つ又は複数の不飽和を含んでいてもよく、好ましくは窒素、酸素、硫黄、及びハロゲン族の原子から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよく、
xは0.005~0.7、好ましくは0.05~0.7、及び優先的には0.2~0.6であり、
yは0.01~0.7、好ましくは0.05~0.2であり、
y/x比は0.05以上、好ましくは0.15以上であり、且つ
x+yの合計は0.30以上、好ましくは0.35以上である]。
【0017】
本発明はまた、少なくとも1つの金属を捕捉するための透析法における前記多糖の使用にも関する。
【0018】
本発明はまた、MRIイメージング法における前記多糖の使用にも関する。
【0019】
本発明はまた、小線源治療法における前記多糖の使用にも向けられている。
【0020】
本発明はまた、偽造を防止するための食品のマーキング法における前記多糖の使用にも関する。
【0021】
他の特徴、詳細、及び利点は、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を分析することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、Phenomenex GFC-P4000SECカラムを使用して得られた、本発明による多糖のHPLC-UVクロマトグラムである。
図2図2は、本発明による多糖のH NMRスペクトルである。
図3図3は、本発明による多糖を含む溶液に添加されたユウロピウムの量の関数として、594nmにおける発光強度を表すグラフである。
図4図4は、0.5%のアセチル化度を有する重量平均分子量600kDaのキトサン及びDOTAGAでグラフトされた本発明による多糖の熱質量分析のグラフ(グラフA)、及び微分曲線(グラフB)を表すグラフを示している。
図5図5は、2つのフーリエ変換赤外スペクトルのデコンボリューション処理画像(deconvolution)を示している。
図6図6は、超純水で透析された溶液(グラフA)及びDOTAGAをグラフトされた本発明による多糖を含む透析液(グラフB)中の、時間の関数としての金属の量の変化の2つのグラフを示している。
図7図7は、DOTAGAでグラフトされた本発明による多糖を含む透析液中における、時間の関数としての金属の量の変化を示す3つのグラフを示している。
図8図8は、Phenomenex GFC-P4000SECカラムを使用して得られた、本発明による多糖(実施例8)のHPLC-UVクロマトグラムである。
図9図9は、本発明による多糖(実施例8)を含む溶液に添加された鉄の量の関数としての、425nmにおける吸光度を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
先に述べたように、本発明は、100kDa~1000kDaの重量平均分子量を有する下記式Iの統計的多糖(statistical polysaccharide)に関する:
【0024】
【化2】
【0025】
[式中、
各Rcは独立に、キレート剤を含む基を表し、
各Zは独立に、単結合又は1~12個の炭素原子を含む炭化水素ベースの鎖であることができるリンカーを表し、前記鎖は直鎖状又は分枝状であってよく、1つ又は複数の不飽和を含んでいてもよく、1つ又は複数のヘテロ原子、好ましくは窒素、酸素、硫黄及びハロゲン族の原子から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含むことが可能であり、
xは0.005~0.7、好ましくは0.05~0.7、優先的には0.2~0.6、及びより優先的には0.25~0.4であり、
yは0.01~0.7、好ましくは0.05~0.2であり、
y/x比は0.05以上、好ましくは0.15以上であり、且つ
x+yの合計は0.30以上、好ましくは0.35以上である]。
【0026】
上の式Iにおいて、幾つかのRc基が多糖中に存在し得ることが理解される。これらのRc基は互いに同一であっても異なっていてもよい。それらは全て、キレート剤を有する基から独立に選択される。リンカーZについても同様である。幾つかのリンカーZが存在していてよく、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
一実施形態によれば、式Iにおいて、xは、0.005~0.6であり、
yは、0.1~0.9であり、
y/x比は、0.16よりも大きく、且つ
x+yの合計は、0.4よりも大きい。
【0028】
好ましくは、本発明による多糖は、遷移元素d又はfについて少なくとも1015の錯形成定数を有する。
【0029】
一実施形態によれば、式Iの多糖は下記の式IIの多糖である:
【0030】
【化3】
【0031】
[式中、
RcとRcは異なり、且つキレート剤を含む基であり、
及びZは、同一であっても異なっていてもよく、単結合又は1~12個の炭素原子を含む炭化水素ベースの鎖であってよいリンカーであり、前記鎖は直鎖状又は分枝状であってよく、1つ又は複数の不飽和を含んでいてもよく、1つ又は複数のヘテロ原子、好ましくは窒素、酸素、硫黄及びハロゲン族の原子から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよく、
xは、0.005~0.7、好ましくは0.05~0.7、優先的には0.2~0.6、及びより優先的には0.25~0.4であり、
yは、0.01~0.7、好ましくは0.05~0.2であり、
y/x比は、0.05以上、好ましくは0.15以上であり、
x+yの合計は、0.30以上、好ましくは0.35以上であり、且つ
zは、0.5~1である]。
【0032】
この特定の実施形態において、式IIの多糖は、
- z=1の場合、キレート剤Rcを含む単一型の基、又は
- 0.5≦z<1の場合、キレート剤Rc及びRcを含む2種類の基
を含み得る。
【0033】
一実施形態によれば、zは0.8~0.99であり、したがって、Rc基が主に優勢である。
【0034】
別の実施形態によれば、式IIにおいて、xは0.005~0.6であり、
yは、0.1~0.9であり、
y/x比は、0.16よりも大きく、
x+yの合計は、0.4よりも大きく、且つ
zは、0.5~1である。
【0035】
<Rc型の基(Rc、Rc及びRc)>
「Rc型の基」という用語は、式Iの多糖中のRc基、及びRc基が存在する場合には式IIの多糖中のRc及びRc基を意味することを意図している。
【0036】
本発明によれば、Rc、Rc、及びRc基はキレート剤である。換言すれば、Rc、Rc、及びRc基は、錯体を形成する際に1つ又は複数の金属をキレート化することを可能にする。
【0037】
Rc、Rc、及びRc基の各々は、1つ又は複数の配位部位を含むことができる。好ましくは、配位部位は窒素又は酸素原子である。有利には、Rc、Rc、及びRc基の各々は、4~8個の配位部位を含み、より有利には6~8個の配位部位を含み、更により有利には、Rc、Rc、及びRc基の各々は8個の配位部位を含む。
【0038】
「配位部位」という用語は、金属をキレート化できる単一の機能を意味することを意図している。例えば、アミン官能基は、窒素原子と金属との間の供与結合の形成による配位の部位を表し、ヒドロキサム酸官能基もまた、カルボニル体の酸素間の供与結合の形成、及びN-オキシド体の酸素との共有結合を介した配位の部位を表し、かくして当該配位部位は5員環を形成する。
【0039】
本発明の一実施形態では、式Iの多糖について、各Rc基は、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸)、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)、NODAGA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7二酢酸)、DOTAGA(2-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ペンタン二酸)、DOTAM(1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)、NOTAM(1,4,7-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン)、DOTP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン1,4,7,10-テトラキス(メチレンホスホネート)、NOTP(1,4,7-テトラキス(メチレンホスホネート)-1,4,7-トリアザシクロノナン)、TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N’,N’’,N’’’-テトラ酢酸)、TETAM(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N’,N’’,N’’’-テトラキス(カルバモイルメチル)、DTPA(ジエチレントリアミノ五酢酸)及びDFO(デフェロキサミン)からなる群から、及び好ましくはDOTAGA、DFO、DOTAM、及びDTPAからなる群から独立して選択され、及びより好ましくは、Rc基はDOTAGAである。
【0040】
本発明の一実施形態では、式IIの多糖について、Rc及びRcは、DOTA、NOTA、NODAGA、DOTAGA、DOTAM、NOTAM、DOTP、NOTP、TETA、TETAM、DTPA、及びDFOからなる群、好ましくはDOTAGA、DFO、DOTAM、及びDTPAからなる群から独立して選択される。
【0041】
一実施形態によれば、式IIの多糖について、Rc基はDOTAGAであり、好ましくはz=1である。
【0042】
一実施形態によれば、式IIの多糖について、Rc基はDOTAGAであり、Rc基はDFOである。
【0043】
<Z型のリンカー(Z、Z、及びZ)>
「Z型のリンカー」という用語は、式Iの多糖中のリンカーZを意味し、またリンカーZが存在するときには、式IIの多糖中のリンカーZ及びZを意味することを意図している。
【0044】
式I及びIIにおけるリンカーZ、Z及びZの選択は、本質的にRc、Rc、及びRc基、並びにキレート化される金属に左右される。これは、特に立体的な理由で、Rc、Rc、及びRc基が、グルコサミン単位の窒素6員環に多かれ少なかれ近接している可能性があるためである。
【0045】
好ましくは、式Iにおいて、各Zは独立に単結合又は1~12個の炭素原子を含む炭化水素ベースの鎖であり、前記鎖は直鎖状又は分枝鎖状であってよく、1つ又は複数の不飽和を含んでいてもよく、1つ又は複数のヘテロ原子、好ましくは窒素、酸素、硫黄及びハロゲン族の原子から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0046】
一実施形態によれば、式Iにおいて、各Zは、結合、1~12個の炭素原子を含む直鎖又は分枝アルキル鎖、及び2~12個の炭素原子を含む直鎖又は分枝アルケニル鎖からなる群から独立に選択され、
前記アルキル鎖及びアルケニル鎖は、1つ又は複数のC~C10アリール基、及び/又は-O-、-S-、-C(O)-、-NR’-、-C(O)NR’-、-NR’-C(O)-、-NR’-C(O)-NR’-、-NR’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’、-C(S)NR’-、-NR’-C(S)-、-NR’-C(S)-NR’からなる群から選択される1つ若しくは複数のヘテロ原子又は基で中断されることが可能であり、
前記アルキル鎖及びアルケニル鎖は、ハロゲン、-OR’、-COOR’、-SR’、-NR’からなる群から選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよく、
各R’は独立に、H又はC~Cアルキルである。
【0047】
有利には、式Iにおいて、各Zは、結合、及び1~12個の炭素原子を含む直鎖又は分枝アルキル鎖からなる群から独立に選択され、
前記アルキル鎖は、1つ又は複数のC~C10アリール基、及び/又は-O-、-S-、-C(O)-、-NR’-、-C(O)NR’-、-NR’-C(O)-、-C(S)NR’-、-NR’-C(S)-、-NR’-C(S)-NR’からなる群から選択される1つ若しくは複数のヘテロ原子又は基で中断されていてもよく、
各R’は独立してH又はC~Cアルキルである。
【0048】
1つの特定の実施形態において、各Zは、1~12個の炭素原子を含むアルキル鎖である。
【0049】
別の特定の実施形態において、各Zはポリエチレングリコール(PEG)である。
【0050】
好ましくは、式IIにおいて、Z及びZは、独立に単結合又は1~12個の炭素原子を含む炭化水素ベースの鎖であり、前記鎖は直鎖状又は分枝鎖状であってよく、1つ又は複数の不飽和を含んでいてもよく、好ましくは窒素、酸素、硫黄及びハロゲン族の原子から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0051】
一実施形態によれば、式IIにおいて、Z及びZは、結合、1~12個の炭素原子を含む直鎖又は分枝アルキル鎖、及び2~12個の炭素原子を含む直鎖又は分枝アルケニル鎖からなる群から独立に選択され、
前記アルキル鎖及びアルケニル鎖は、1つ又は複数のC~C10アリール基、及び/又は-O-、-S-、-C(O)-、-NR’-、-C(O)NR’-、-NR’-C(O)-、-NR’-C(O)-NR’-、-NR’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’、-C(S)NR’-、-NR’-C(S)-、-NR’-C(S)-NR’からなる群から選択される1つ若しくは複数のヘテロ原子又は基で中断されていてもよく、
前記アルキル鎖及びアルケニル鎖は、ハロゲン、-OR’、-COOR’、-SR’及び-NR’からなる群から選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよく、
各R’は、独立してH又はC~Cアルキルである。
【0052】
有利には、式IIにおいて、Z及びZは、結合、及び1~12個の炭素原子を含む直鎖又は分枝アルキル鎖からなる群から独立に選択され、
前記アルキル鎖は、1つ又は複数のC~C10アリール基、及び/又は-O-、-S-、-C(O)-、-NR’-、-C(O)NR’-、-NR’-C(O)-、-C(S)NR’-、-NR’-C(S)-、-NR’-C(S)-NR’からなる群から選択される1つ若しくは複数のヘテロ原子又は基で中断されていてもよく、
各R’は独立に、H又はC~Cアルキルである。
【0053】
1つの特定の実施形態において、Z及び/又はZは、1~12個の炭素原子を含むアルキル鎖である。
【0054】
別の特定の実施形態では、Z及び/又はZはポリエチレングリコール(PEG)である。
【0055】
<本発明による多糖のモノマー単位>
本発明による多糖は、3つの単量体単位、すなわち、N-アセチルグルコサミン型の単位A、グルコサミン型の単位B、及びリンカー(Z型)によりグルコサミンの窒素に結合された(Rc型の)キレート剤で官能化されたグルコサミン型のC型の単位から構成される。
【0056】
本発明による多糖はランダムポリマーである。換言すれば、様々なモノマー単位A型、B型、及びC型の連結はランダムである。
【0057】
式I及びIIにおいて、xは単位Aの比率を表し、かつ、xは0.05~0.7であることができ、好ましくは、xは0.2~0.6であり、より好ましくは、xは0.25~0.4である。
【0058】
式I及びIIにおいて、yはC型の単位の割合を表し、yは0.01~0.7であることができる。
【0059】
式I及びIIのモノマー単位の残りは単位Bである。したがって、式I及びIIにおいて、単位Bの割合は1-x-yに等しい。
【0060】
本発明によれば、式I及びIIにおいて、y/x比は0.05以上、好ましくは0.15以上であることができる。実際には、生成物の有効性は、例えば画像による検出に必要な金属の数に直接関係するキレート化部位の数によって決まる。
【0061】
生体内に液状で導入でき、同時に所望の効果を生じるためには、本発明による多糖は生理的pHにおいて可溶性でなければならない。そうであるために、x+yの合計は0.30以上、好ましくは0.35以上であることができる。
【0062】
単位Aの数とC型の単位の数との間の特定の比、及び単位Aの割合とC型の単位の割合の合計との組み合わせにより、少なくとも1つの金属を捕捉するための透析、MRIイメージング、小線源治療、及び偽造を防止するための食品のマーキング等の様々な分野において本発明による多糖を使用できるようにするのに適した、キレート化及び溶解度を達成することが可能になる。
【0063】
有利には、xは0.2~0.6であり、より好ましくは、xは0.25~0.4である。
【0064】
有利には、yは0.01~0.7であり、好ましくは0.05~0.2である。
【0065】
本発明によれば、zは0.5~1である。換言すれば、C型の単位はリンカーとしてZを、及びキレート剤を有する基としてRcを含む単位だけであってもよい。
【0066】
本発明による多糖は、100kDa~1000kDaの重量平均分子量を有し、有利には、本発明による多糖の質量平均分子量は、250kDa~750kDa、より有利には400kDa~600kDa、及び更により有利には450kDa~550kDaである。
【0067】
一実施形態によれば、多糖は、以下の多糖から選択される:
- z=1であり、RcがDOTAGAであり、Zが結合である式IIの多糖、
- z=1であり、RcがDTPAであり、Zが結合である式IIの多糖、及び
- 0.5≦z<1、RcがDOTAGAであり、Zが結合であり、RcがDFOであり、Zが結合及び1~12個の炭素原子を含む直鎖又は分枝アルキル鎖からなる群から選択される式IIの多糖であって、前記アルキル鎖は、1つ又は複数のC~C10アリール基、及び/又は-O-、-S-、-C(O)-、-NR’-、-C(O)NR’-、-NR’-C(O)-、-C(S)NR’-、-NR’-C(S)-、-NR’-C(S)-NR’からなる群から選択される1つ若しくは複数のヘテロ原子又は基で中断されていてもよく、
各R’は、独立にH又はC~Cアルキルである。
【0068】
<本発明による多糖を得るための方法>
本発明による式I又はIIの多糖はキトサンから得ることができ、これは特にアミン官能基の一部のアセチル化と、当該アセチル化後に未だ存在するアミン官能基の少なくとも一部の官能基化によって、任意選択により部分的にアセチル化されていてもよい。
【0069】
1つの特定の実施形態において、本発明による多糖を得るための方法は、少なくとも以下の連続する3つの工程を含む:
・工程1:4~5のpHにおいて酸溶液中でのキトサンの可溶化;
・工程2:工程1で可溶化したキトサンのアミン官能基の部分的アセチル化(単位Aの形成);
・工程3:工程2の終点において未だ存在するアミン官能基の少なくとも一部の官能化(C型の単位の形成)。
【0070】
多糖がRc型の幾つかの異なる基を含む場合、上記の方法の工程3を数回繰り返すことができる。例えば、式IIの多糖がRc基及びRc基を含む場合、この方法は、アミン官能基の少なくとも一部を官能基化する2つの工程3、すなわち、最初はRc基を導入する工程、2番目はRc基を導入する工程、を含むことができる。
【0071】
工程3は幾つかのサブ工程に細分することができ、特にリンカーZが上で定義した炭化水素ベースの鎖(炭化水素に基づく鎖)である場合にはそうである。
【0072】
Z型のリンカーが上で定義した炭化水素ベースの鎖である実施形態では、工程3は、工程2の終点においてなお存在するアミン官能基の少なくとも一部に前記炭化水素ベースの鎖をグラフトすることで構成されるサブ工程3-1と、次いで前記炭化水素ベースの鎖にRc型の基をグラフトすることで構成されるサブ工程3-2を含むことができる。或いは、工程3はサブ工程を含まない。この代替法では、工程3の前に、前記の炭化水素ベースの鎖をRc型の基とカップリングさせ、次に、Rc型の基と前記炭化水素ベースの鎖とを含む分子を用いて前記の工程3を実施する。
【0073】
或いは、本発明による多糖は、所望する程度のアセチル化を有するキトサンから得ることができ、したがって、この実施形態では、単位Aは既に存在しており、形成する必要はない。この実施形態では、本発明による多糖を得るための方法は、少なくとも以下の2つの順次の工程を含む:
・工程1b:4~5のpHにおいて、酸溶液中での部分的にアセチル化されたキトサン(単位A)の可溶化;
・工程2b:工程1bにおいて可溶化された前記の部分的にアセチル化されたキトサンのアミン官能基の少なくとも一部の官能化(C型の単位の形成)。
【0074】
上と同様に、Rc型の幾つかの異なる基が存在する場合、上記の方法の工程2bを数回繰り返すことができる。
【0075】
上の工程3と同様に、前記の工程2bは、幾つかのサブ工程に細分化することができ、特にZ型のリンカーが上で定義した炭化水素ベースの鎖である場合にそうである。
【0076】
Z型のリンカーが上で定義した炭化水素ベースの鎖である実施形態において、工程2bは、前記の炭化水素ベースの鎖をアミン官能基の少なくとも一部にグラフト化することで構成されるサブ工程2b-1と、次にRc型の基を前記の炭化水素ベースの鎖にグラフト化することで構成されるサブ工程2b-2を含むことができる。或いは、工程2bはサブ工程を含まない。この代替法では、工程2bの前に炭化水素ベースの鎖をRc型の基とカップリングさせ、その後に、Rc型の基及び炭化水素ベースの鎖を含む分子を用いて前記の工程2bを実施する。
【0077】
本発明による多糖がキレート化された形態である場合、前記の方法は、多糖を少なくとも1つの金属でキレート化する工程4を含むことができる。
【0078】
<本発明による多糖の使用>
本発明による多糖は、生理学的pHにおけるその溶解性によって、様々な用途に使用することができる。Rc型の基は、金属のキレート化を可能にし、その結果、前記の多糖は、(i)キレート化された形態、すなわち多糖が少なくとも1つの金属をキレート化する形態、又は(ii)遊離形態、すなわち多糖が金属をキレート化していない形態の2つの異なる形態で、生体内に導入することを想定することができる。多糖が遊離形態である場合、これは、Rc型のキレート基の5%未満しか錯体化されていない、特に、Rc型のキレート基の5%未満しか目的とするイオンをキレート化していないことを意味する。多糖がキレート化された形態である場合、これは、Rc型のキレート基の少なくとも80%が目的の金属と錯体を形成していることを意味する。
【0079】
上で示したとおり、本発明はまた、少なくとも1つの金属を捕捉するための透析法、MRIイメージング法、小線源治療法、又は偽造を防止するための食品のマーキング法における前記の多糖の使用にも関する。
【0080】
多糖が少なくとも1つの金属を捕捉するための透析法で使用される場合、前記の多糖は、少なくとも1つの金属の捕捉を可能にするために遊離形態である。
【0081】
多糖が、MRIイメージング法、小線源治療法、又は偽造を防止するための食品のマーキング法で使用される場合、前記の多糖は少なくとも1つの金属をキレート化する。
【0082】
本発明による多糖は、そのままで使用することができ、又は組成物中に配合することができる。多糖が組成物中に配合される場合、前記の多糖は有利にはヒドロゲル形態である。
【0083】
<少なくとも1つの金属を捕捉するための透析法における使用>
1つの特定の実施形態において、透析は、MARS透析又はCSFの透析である。
【0084】
少なくとも1つの金属を捕捉するための透析法において多糖が使用される場合、金属は、好ましくは、銅、鉄、鉛、亜鉛、アルミニウム、ガドリニウム、及びマンガンからなる群に属し、より好ましくは、銅、鉄、及び鉛からなる群に属する。
【0085】
少なくとも1つの金属を捕捉するために透析法において多糖を使用する場合、Rc型の基は、好ましくは、DOTAGA、DFO、DOTAM、及びDTPAからなる群から選択される。
【0086】
多糖が、少なくとも1つの金属を捕捉するために透析法において使用される場合、xは好ましくは0.25~0.4である。
【0087】
多糖が、少なくとも1つの金属を捕捉するために透析法において使用される場合、yは好ましくは0.05~0.2である。
【0088】
多糖が、少なくとも1つの金属を捕捉するために透析法において使用される場合、y/x比は、好ましくは0.15~1.5である。
【0089】
多糖が少なくとも1つの金属を捕捉するために透析法において使用される場合、x+yの合計は、好ましくは0.35~0.8である。
【0090】
<MRIイメージング法における使用>
多糖がMRIイメージング法において使用される場合、前記の多糖は少なくとも1つの金属をキレート化する。金属は、好ましくは、ガドリニウム、鉄、マンガン、及びジスプロシウムからなる群に属し、及びより好ましくは、金属はガドリニウムである。
【0091】
多糖がMRIイメージング法において使用される場合、zは好ましくは1に等しく、Rc基は好ましくはDOTAGAである。
【0092】
多糖がMRIイメージング法において使用される場合、xは好ましくは0.05~0.35である。
【0093】
多糖がMRIイメージング法において使用される場合、yは好ましくは0.1~0.7である。
【0094】
<小線源治療法における使用>
多糖が小線源治療法において使用される場合、前記の多糖は少なくとも1つの金属をキレート化する。この金属は放射性同位体である。
【0095】
したがって、多糖が小線源治療法において使用される場合、その金属は、好ましくは、177Lu、166Ho、212Bi、213Bi、90Y、及び225Atからなる放射性同位元素の群に属する。
【0096】
多糖が小線源治療法で使用される場合、zは好ましくは1に等しく、かつ、Rc基は好ましくはDOTAGAからなる群から選択される。
【0097】
<偽造を防止するための食品のマーキング法における使用>
偽造を防止するための食品のマーキング法において多糖を使用する場合、前記の多糖は少なくとも1つの金属をキレート化する。金属は、ランタニド及びビスマスからなる群に属することが好ましい。
【0098】
偽造を防止するための食品のマーキング法において多糖を使用する場合、Rc型の基は、好ましくは、DOTA、NOTA、NODAGA、DOTAGA、DOTAM、NOTAM、DOTP、NOTP、TETA、及びTETAMからなる群から独立して選択される。偽造を防止するための食品のマーキング法において本発明による多糖を使用する場合、環状キレート剤は、実際にトランスメタライゼーションを回避するために有利である。
【実施例
【0099】
<材料及び方法>
無水酢酸(>99%)及び1,2-プロパンジオールは、Sigma-Aldrich社(France)によって供給され、DOTAGA無水物、DTPA-二無水物、及びp-NCS-Bz-DFO(N1-ヒドロキシ-N1-(5-(4-(ヒドロキシ(5-(3-(4-イソチオシアナトフェニル)チオウレイド)ペンチル)アミノ)-4-オキソブタンアミド)ペンチル)-N4-(5-(N-ヒドロキシアセトアミド)ペンチル)スクシンアミド)はCheMatech社(France)によって供給され、DMSOはFischer-Chemicals社によって供給され、超純水(Milli-Q水)は、Eolia社濾過システムによって得られた。キトサンはMahtani社から、GdClはSanofi社から、KBr及び実施例4で使用した全ての金属塩(Al、Mn、Cu、Pb、及びZnの硝酸塩)はSigma-Aldrich社(France)から提供された。
【0100】
接線流濾過は、カットオフ閾値が100kDaのSartocon Slice200ポリエーテルスルホン膜を備えたSartoflow Smart接線流濾過機によって実施される。
【0101】
HPLC-UVは、DAD検出器を備えたAgilent1200装置で実施される。使用したサイズ排除カラムは、溶離液として0.1M酢酸/酢酸アンモニウム緩衝液を使用したPolysep-GFC-P-4000である。検出は、295nmの波長におけるUV検出器を使用して実施される。分析される物質は、およそ10g/lの濃度で注入される。
【0102】
UV-可視分光測光法による研究は、Varian社のCary50UV-VIS装置で実施した。
【0103】
プロトンNMR分光法は、室温において、Brucker Avance III 400MHzで実施した。全てのサンプルは、5μLの12NのHClを含む重水(DO)に8mg/mlで溶解し、5mmのNMRチューブに入れた。TMPSAを内部基準として使用する。
【0104】
元素分析は、分析科学研究所(Institut des Sciences Analytiques UMR5280,Pole Isotopes & Organique,5rue de la Doua 69100 Villeurbanne)で実施された。
【0105】
Agilent社のCary Eclipse型の装置を使用して、時間分解発光研究を実施した。
【0106】
1.5Tでの緩和率は、Brucker社(Karlsruhe、Germany)が提供するMinispec mq-60型の装置を用いて行った。
【0107】
<実施例1:250kDaの平均質量をもつキトサンから出発した、アセチル化度40%(x=0.4)及びDOTAGAグラフト化度10%(y=0.1)を有する本発明による多糖の調製>
工程1では、キトサン60g、超純水4L、及び氷酢酸45mlを10Lの反応器中に導入し、pH4.5±0.5において16時間撹拌する。淡黄色の溶液が得られる。
【0108】
工程2では、工程1で得られた淡黄色の溶液に1.2Lの1,2-プロパンジオールを添加し、撹拌を1時間維持する。次に、ポリマー鎖に沿って均一なアセチル化を得るために、1,2-プロパンジオール600ml中に溶解した無水酢酸14mlからなる溶液を、10分間かけて徐々に加え、反応媒質を4時間撹拌し続ける。
【0109】
アセチル化の程度は元素分析によって決定することができる。多糖の非アセチル化単位(単位B)のモル質量は161.2g・mol-1(CNO11)であるのに対して、アセチル化単位(単位A)のモル質量は203.2g・mol-1(CNO13)である。アセチル化工程2の最後で得られた多糖の元素分析は次のとおりである。C:39.22%、H:7.55%、及びN:6.77%、これは40%(x=0.4)のアセチル化単位(単位A)の程度に相当する。
【0110】
工程3では、アセチル化工程2で得られた溶液2Lを撹拌しながら反応器に入れる。次いで、DOTAGA無水物120gを添加し、撹拌を16時間維持する。この反応の最後に、溶液を超純水で10倍に希釈し、100kDaの膜を使用した接線流濾過によって精製する。16Lにまで再濃縮する最初のステップの後、一定体積(16L)の0.1M酢酸溶液480Lを使用して溶液を濾過し、続いて320Lの超純水を使用し、8Lにまで再濃縮する別のステップを行う。HPLC-UVにより、DOTAGAが実際に除去されたことを確認できる(図1)。約7分のピークはポリマーに対応し、約11分のピークはグラフト化されていないDOTAGAに対応する。10g/Lの多糖濃度の溶液を、凍結乾燥の前にナイロン膜(0.4μm)を通して濾過する。
【0111】
アセチル化度xが分かっていれば、プロトンNMRによって、多糖のDOTAGAによる官能化度yを決定することが可能になる。非グラフト及び非アセチル化単位(単位B)は、炭素原子に共有結合し、2.9ppm~4.3ppmの化学シフトを有する7個のプロトンで構成されている。アセチル化された単位(単位A)は、これらの同じ7個のプロトンとアセチルに存在する炭素原子に共有結合した3個のプロトンを有し、2ppm~2.2ppmの化学シフトを特徴とする。最後に、DOTAGAでグラフト化された単位(単位C)は、炭素原子に共有結合した34個のプロトンを含み、そのうち32個は2.9ppm~4.3ppmに積算され、またそのうちの2個は2ppm~2.2ppmに積算される。図2に示されているNMRスペクトルは、様々なピークの積分によって、次の式によりyの値を決定することを可能にする。
【0112】
【数1】
【0113】
グラフト化された単位(単位C)の程度はおよそ0.1である。
【0114】
したがって、得られた多糖は、およそ0.4度数(x=0.4)の単位A、およそ0.5度数(1-x-y=0.5)の単位B、及びおよそ0.1度数(y=0.1)の単位Cを有する。
【0115】
グラフト化された単位(単位C)の度数(degree)は、ユウロピウムによる蛍光によっても決定することができる。実際、ユウロピウムは主に約590nm()及び615nm()を中心に発光する。この発光は、ユウロピウムイオンが水分子のみに配位していると消滅する。グラフト化された単位の度数(程度)を決定する方法の原理は、ユウロピウムをキレート化するために増加する量のユウロピウムを添加することであり、次いで発光が増大し、全てのキレート化部位が満たされると発光はプラトー(安定状態)に達する。実際に、工程3の最後で得られた多糖をpH5において酢酸緩衝液に入れ、酢酸緩衝液に溶解した塩化ユーロピウム塩を次に添加した。次に、396nmで励起し、590nmでの発光を記録することによって、定量分析の曲線をトレースする(図3)。この定量分析によって、ポリマー1mg当り0.4μmolのキレートの量、つまりおよそ10%(y=0.1)の度数(程度)に戻ることが可能になる。
【0116】
<実施例2:平均質量600kDa及びアセチル化度0.5%のキトサンから出発した、0.5%(x=0.005)のアセチル化度及び60%(y=0.6)のDOTAGAグラフト化度を有する本発明による多糖の調製>
工程1bでは、平均質量600kDa及びアセチル化度0.5%のキトサン3g、超純水150ml、及び氷酢酸2.1mlを1Lの反応器に導入し、4.5±0.5のpHにおいて16時間撹拌する。淡黄色の溶液が得られる。
【0117】
可溶化工程1bに続いて、150mlの1,2-プロパンジオールを先の溶液に添加し、撹拌を1時間維持する。次に、DOTAGA無水物11gを添加し、撹拌を16時間維持する。この反応の最後に、薄茶色の溶液を超純水で10倍に希釈し、100kDaの膜を使用した接線流濾過によって精製する。この第1の精製サイクルの次に、超純水を使用して50倍の精製を行う第2の精製サイクルを続ける。その後の濾過は、最終精製係数1250のために0.01MのHCl中で行われる。
【0118】
DOTAGAによるグラフト化(単位C)は、TA Instruments社のTGA-Q500装置を使用し、不活性雰囲気下で、30℃から700℃まで10℃/分で加熱する熱質量分析によって示された。DOTAGAのグラフト化は、グラフト化の程度に比例して分解温度の低下を引き起こす。したがって、出発キトサン及び本発明による多糖の熱質量分析(図4のグラフ(A))と微分曲線(図4のグラフ(B))との比較によって、官能化工程は確かに効果的であったと推論することができる。
【0119】
IRスペクトルは、極大吸収(1072cm-1)を有するバンドを使用して正規化されている(図5)。アミド結合の形成を検証し、スペクトルのデコンボリューション(deconolution)と1590cm-1のバンドの面積(アミンNH結合伸縮バンド)を調べることにより、それらを定量化することができる。その計算は、1590cm-1付近に位置するスペクトルバンドの面積を比較することによって実施される。次の式の係数z=100×(1-x-y)を決定するためには、キトサン/DOTAGA生成物の官能化の程度を他の手法で決定することが必要である。この例では、キトサン+DOTAGA(6.0%)のIRスペクトルを参照スペクトル(スペクトル(A))として使用した。
【0120】
【数2】
【0121】
[式中、Dは分析したキトサンの置換度であり、A’(1590)は分析したキトサンのIRスペクトルの1590cm-1におけるバンドの面積であり、A’は分析するキトサンのIRスペクトルの総面積であり、Aref(1590)は参照キトサンのIRスペクトルの1590cm-1におけるバンドIVの面積であり、ATrefは参照キトサンスペクトルの全面積であり、かつ、zは参照として使用されるキトサン(x=0.02、y=0.06)の遊離アミン基のパーセント割合(z=92)である]。こうして、60%に近いDOTAGAグラフト化度が得られる(スペクトル(B))。
【0122】
<実施例3:平均質量250kDaのキトサンから出発して、60%のアセチル化度(x=0.6)及び5%に近いDTPAグラフト化度(y≒0.05)を有する本発明による多糖の調製>
工程1では、0.25gのキトサン、25mlの超純水、及び0.18mlの氷酢酸を250mlの反応器中に導入し、pH4.5±0.5において16時間撹拌する。淡黄色の溶液が得られる。
【0123】
工程2では、工程1で得られた淡黄色の溶液に、5mlの1,2-プロパンジオールを添加し、撹拌を1時間維持する。次に、ポリマー鎖に沿って均一なアセチル化を得るために、5mlの1,2-プロパンジオール中に溶解した0.045mlの無水酢酸からなる溶液を10分かけて徐々に添加する。反応媒質を4時間撹拌し続ける。
【0124】
工程3では、1,2-プロパンジオール15ml中に溶解したDTPA-二無水物0.346g及び超純水16.58μlから構成される溶液を1.5時間撹拌し続ける。次いで、この溶液を工程2で得られた溶液に添加し、撹拌を16時間維持する。この反応の最後で、溶液に超純水を加えて10倍に希釈し、100kDaの膜を使用した接線流濾過により精製する。続く濾過は、6250の最終精製係数のために超純水中で実施される。次いで、この5g/Lの濃度の溶液を凍結乾燥する。
【0125】
<実施例4:金属を捕捉するための実施例1のポリマーの使用>
実施例1で合成された多糖が、従来の血液透析との関連で金属抽出を行う能力を実証する目的で、血液透析液に組み込まれるように処方した。試験の要件として、Dialife社のDIAPH06高流量血液透析装置、Cole-Parmer社のMasterflex7555-05蠕動ポンプ、及びMasterflex L/SのPharMedBPTチューブL/S#16を使用した。ここで使用される金属溶液は、5Lの水中におよそ50ppbのCu、Zn、Pb、Al、及びMnの含有量を有するように調製した。流量は200ml/分、及び温度は37℃である。水のみを含む透析液を、実施例1で合成された多糖1.6g/Lに相当する0.001mol/LのDOTAGAを含む透析液と比較した。アルミニウム以外の全ての金属について、ICP/MS分析(図6)による透析の開始後25分で、官能化されたポリマーを含む透析液について、より大きな捕捉が観察される。実施例1の多糖の溶液を用いた透析後に、透析された溶液中に存在する金属の量は、本発明による多糖を含まない水溶液を用いて実施した透析と比較して、実際には、マンガンについては30対42ppb、亜鉛については18対46ppb、銅については7対46ppb、及び、鉛については8対55ppbである。
【0126】
<実施例5:金属を捕捉するためにブタ血液を透析する方法における、実施例1のポリマーの使用>
生物学的媒質中での捕捉能力を実証するために、実施例4に記載した金属水溶液の代わりにブタ血液を用いて、実施例4に記載した試験と同様の試験を実施した。試験の要件として、Dialife20HP高流量血液透析装置、3つのCole-Parmer社のMasterflex蠕動ポンプ(7555-05、7523-80、及び7523-90)、Masterflex L/S PharMedBPTチューブL/S#16、及びIsmatecSC0328 PharMedBPTチューブを使用した。ブタの血液10lを異なる流速で透析した:それぞれ200ml/分(0~10分及び70~80分)、100ml/分(10~30分)、及び50ml/分(30~70分)。透析液は、実施例1で合成した多糖を0.001mol/Lの濃度で配合した。ICP/MS分析後の研究結果を図7に示す。実施例1で合成した多糖を含む透析液では、実施例1で合成された多糖なしで行われた透析と比較して、Zn、Fe、及びPbの含有量の大幅な増加が観察される。したがって、透析溶液中に存在する金属の量は、亜鉛では83対20ppb、銅では257対55ppb、及び鉄では2604対62ppbである。
【0127】
<実施例6:MRIイメージングが可能なポリマーを得るためのガドリニウムの添加>
実施例2の精製後、4.9gの塩化ガドリニウム六水和物をその溶液に添加し、次にpHを5に調整し、その溶液を80℃において48時間撹拌する。pHが安定になるまで(これはDOTAGAが全てのGd3+イオンを錯化したことを示す)、0.5Mの水酸化ナトリウムでpHを5に調整し続ける。
【0128】
<実施例7:ガドリニウムと錯化した多糖の使用>
実施例6においてガドリニウムと錯化した本発明による多糖を、MRIイメージング法において使用した。
【0129】
MRIのためのガドリニウムとのポリマー錯体の効率は、1.5Tの磁場中、37℃において、その縦緩和度(r=ガドリニウムによる15.2mM-1.s-1)及びその横緩和度(ガドリニウムによるr=21.5mM-1.s-1)を測定することによって評価した。r/r比は1.4であり、これは陽性造影剤の典型である。縦緩和は、市販の造影剤の4倍弱(約4mM-1.s-1)である。
【0130】
<実施例8:250kDaの平均質量のキトサンから出発した全てにおいて40%のアセチル化度(x=0.4)並びに11%のDOTAGA及びDFOのグラフト化度(y=0.11)を有する本発明による多糖の調製>
キトサン-DOTAGAは、実施例1に記載されているようにして予め合成した。
【0131】
7g/Lの濃度の720mlの体積の精製されたキトサン-DOTAGAを2Lの丸底フラスコに入れる。この溶液(pH6~6.5)を超純水で全量900mlにする。並行して、143.1mgのp-NCS-Bz-DFOを量り取り、100mlのDMSO中に溶かす。次に、この溶液を、キトサン-DOTAGA溶液に滴下により添加する。溶液を撹拌し続け、40℃において夜通し加熱する。次に、545の精製度が得られるまで、100kDaのカットオフ閾値を有するPES膜を備えたSartoflow Smart精製機を使用して、その溶液を超純水で精製する。次いで、5.1g/Lの濃度の溶液を凍結乾燥する。
【0132】
生成物のHPLC-UV分析により、DFOのグラフト化、及び残留p-NCS-Bz-DFOの除去を確認することが可能になる。実際、キトサン-DOTAGAのHPLC-UV分析とキトサン-DOTAGA-DFOのHPLC-UV分析の比較は、p-NCS-Bz-DFOがグラフトされている場合、ポリマーピークの吸収の増加(約7分)を示している(図8)。
【0133】
グラフト化されたp-NCS-Bz-DFOの量は、DFO-鉄錯体の極大吸収波長(425nm)における紫外可視分光測光法定量分析によって決定できる。pH4.5において酢酸緩衝液(0.1M酢酸アンモニウム及び0.1M酢酸)中の0.1g/Lのキトサン-DOTAGA-DFOの溶液に、増加する濃度の鉄(III)を添加する。次に、425nmにおいて測定された吸収を鉄濃度の関数としてプロットし、35μMの鉄で勾配の切れ目が観察される(図9)。1分子のDFOは1個の鉄原子と錯体を形成できるので、1グラムのポリマーはしたがって35μmolのDFOを含んでいる。したがって、グラフト化されたキレート基は、90%のDOTAGAと10%のDFO(z=0.9)を含んでいる。
図1
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【国際調査報告】