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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】相安定化硝酸アンモニウム爆薬
(51)【国際特許分類】
   C06B 31/28 20060101AFI20230809BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230809BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20230809BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20230809BHJP
【FI】
C06B31/28
C08L101/00
C08K3/28
C08K3/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506215
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 AU2021050812
(87)【国際公開番号】W WO2022020884
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】2020902693
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523031297
【氏名又は名称】ダイノ・ノーベル・アジア・パシフィック・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Dyno Nobel Asia Pacific Pty Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ゴア,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】グレアム,ブライアン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AE031
4J002AE041
4J002AE051
4J002AG001
4J002DE057
4J002DE078
4J002DE227
4J002DF036
4J002DF037
4J002DG047
4J002DG048
4J002FD206
4J002FD207
4J002FD208
4J002GL00
4J002GT00
(57)【要約】
相安定化硝酸アンモニウム(PSAN)プリル及び燃料を含有するPSAN爆薬が提供される。PSANプリルは、硝酸アンモニウム、カリウム塩、及び無機多孔度増強剤を含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相安定化硝酸アンモニウム(PSAN)プリル及び燃料を含む、PSAN爆薬であって、前記PSANプリルが、
硝酸アンモニウムと、
カリウム塩であって、前記PSANプリルが、前記硝酸アンモニウムのアンモニウムイオンに基づいて、0.5モルパーセント(mol%)~5mol%の前記カリウム塩のカリウムイオンを含む、カリウム塩と、
無機多孔度増強剤と、
を含む、PSAN爆薬。
【請求項2】
前記アンモニウムイオンに基づく前記カリウムイオンのmol%が、2mol%~5mol%、2mol%~4mol%、2.1mol%~4mol%、又は約3mol%である、請求項0に記載のPSAN爆薬。
【請求項3】
前記燃料が、燃料油、ディーゼル油、蒸留物、ファーネス油、ケロシン、ガソリン、又はナフサを含む、液体燃料、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はスラックワックスを含む、ワックス、パラフィン油、ベンゼン、トルエン、若しくはキシレン油、アスファルト材料、ポリマー油、動物油、又は他の鉱物、炭化水素、若しくは脂肪油を含む、油、及びそれらの混合物を含む、請求項0又は0に記載のPSAN爆薬。
【請求項4】
前記PSANプリル対燃料の重量比が、80:20~97:3、85:15~96:4、90:10~95:5、又は94:6である、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項5】
前記燃料が、エマルジョンではない、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項6】
前記無機多孔度増強剤が、界面表面修飾剤、細孔形成剤、又は両方を含む、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項7】
前記無機多孔度増強剤が、硫酸アルミニウムを含む、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項8】
前記プリル中の前記無機多孔度増強剤の濃度が、400ppm~4,000ppm、400ppm~1,000ppm、500ppm~900ppm、600ppm~800ppm、約700ppm、2,000ppm~4,000ppm、2,500ppm~3,900ppm、3,000ppm~3,700ppm、又は約3,500ppmである、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項9】
前記カリウム塩が、水酸化カリウム、硝酸カリウム、又は硫酸カリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項10】
前記PSANプリルが、0.84kg/L未満を含む、0.9kg/L未満のかさ密度を有する、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項11】
前記PSANプリルが、爆薬グレードである、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項12】
前記PSANプリルが、少なくとも約5.7%の多孔度を有する、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項13】
前記PSANプリルが、32℃結晶相変化を実質的に欠いている、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項14】
前記PSANプリルが、84℃結晶相変化を実質的に欠いている、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項15】
前記32℃結晶相変化又は前記84℃結晶相変化の存在が、熱分析又はX線回折測定によって決定される、請求項0又は0に記載のPSAN爆薬。
【請求項16】
前記熱分析が、示差走査熱量計及び熱重量分析計分析を含む、請求項0に記載のPSAN爆薬。
【請求項17】
前記PSAN爆薬を50回熱サイクルする際、1サイクルが、15℃で4時間、続いて45℃で4時間を含み、前記熱サイクルされたPSAN爆薬が、0.4kg~2.0kg、0.5kg~1.5kg、0.6kg~1.0kg、又は0.7kg~0.9kgを含む、0.4kgより大きい平均圧壊強度を有する、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項18】
前記PSAN爆薬を20回熱サイクルした際、1サイクルが、15℃で4時間、続いて45℃で4時間を含み、前記熱サイクルされたPSAN爆薬の平均圧壊強度が、熱サイクルされていない対照PSAN爆薬の平均圧壊強度よりも大きい、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項19】
前記熱サイクルされたPSAN爆薬の平均圧壊強度が、前記熱サイクルされていない対照PSAN爆薬の平均圧壊強度よりも5%~100%、10%~80%、20%~60%、又は25%~40%大きい、請求項0に記載のPSAN爆薬。
【請求項20】
前記PSAN爆薬の貯蔵寿命が、約30℃~約50℃の平均日中周囲温度及び約10℃~約30℃の平均夜間温度で少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、又は少なくとも6ヶ月である、請求項0~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬。
【請求項21】
相安定化硝酸アンモニウム(PSAN)爆薬の硬度を増加させる方法であって、
請求項1~0のいずれか一項に記載のPSAN爆薬を提供することと、前記PSAN爆薬を20回以上熱サイクルすることと、を含む、方法。
【請求項22】
前記熱サイクルされたPSAN爆薬の平均圧壊強度が、熱サイクルされていない対照PSAN爆薬の平均圧壊強度よりも5%~100%、10%~80%、20%~60%、又は25%~40%大きくを含む、熱サイクルされていない対照PSAN爆薬の平均圧壊強度よりも少なくとも5%大きく増加する、請求項0に記載の方法。
【請求項23】
相安定化硝酸アンモニウム(PSAN)プリルを調製する方法であって、
カリウム塩及び硝酸アンモニウムを含むPSAN溶液を形成することと、プリル塔内で前記PSAN溶液の液滴を滴下することによって前記PSAN溶液を結晶化してPSANプリルを形成することと、を含み、前記プリル塔の底部における前記PSANプリルの温度限界が、少なくとも85℃である、方法。
【請求項24】
前記プリル塔の底部における前記PSANプリルの前記温度限界が、少なくとも86℃、少なくとも87℃、少なくとも88℃、少なくとも89℃、又は少なくとも90℃である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記プリル塔の底部における前記PSANプリルの前記温度限界が、85℃~95℃又は85℃~90℃である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
多孔度増強剤を前記PSAN溶液と組み合わせることを更に含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記PSANプリルを冷却機構に移すことを更に含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記冷却機構が、流動床冷却器を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記冷却機構を出る前記PSANプリルの温度限界が、少なくとも35℃、少なくとも36℃、少なくとも37℃、少なくとも38℃、少なくとも39℃、又は少なくとも40℃である、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記冷却機構を出る前記PSANプリルの温度限界が、30℃~40℃、32℃~40℃、又は35℃~40℃である、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項31】
プリル化速度が、35T/時より大きい、36T/時より大きい、37T/時より大きい、38T/時より大きい、39T/時より大きい、又は40T/時より大きい、請求項23~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
プリル化速度が、35T/時~42T/時、又は38T/時~41T/時である、請求項23~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
プリル化速度が、従来のLDANプリル溶液で得られるプリル化速度よりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%高い、請求項23~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
プリル化速度が、従来のLDANプリル溶液で得られるプリル化速度よりも10%~60%高い、10%~50%高い、10%~40%高い、10%~30%高い、又は10%~20%高い、請求項23~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
周囲温度が、35℃~45℃である、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月31日に出願された、PHASE-STABILIZED AMMONIUM NITRATE EXPLOSIVESという名称の、オーストラリア仮特許出願第2020/902693号に対する優先権を主張し、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般に爆薬に関する。より具体的には、本開示は、相安定化硝酸アンモニウム(PSAN)爆薬に関する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本明細書に開示される実施形態は、添付の図面と併せて、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。
【0004】
図1】従来の硝酸アンモニウム(AN)プリルで作製された硝酸アンモニウム燃料油(ANFO)及び例示的なPSANプリルで作製されたANFOの圧壊強度対熱サイクルを示すグラフである。
図2】オーブンにおいてサイクルされるときの従来のLDANプリルと比較したPSANプリルの温度を示すグラフである。
図3】従来のLDANプリルと比較してPSANプリルを50℃まで加熱するのにかかる時間を示すグラフである。
図4】従来のLDANプリルと比較してPSANプリルを50℃から冷却するのにかかる時間を示すグラフである。
図5】従来のLDANプリルのDSCを示すグラフである。
図6】PSANプリルのDSCを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
相安定化硝酸アンモニウム(PSAN)爆薬は、関連する方法とともに、本明細書に開示される。硫酸アルミニウムなどの無機多孔度増強剤を含むPSANプリルは、燃料の存在下でも、熱安定性を有することが発見された。
【0006】
約32℃上下での硝酸アンモニウム(AN)の熱サイクリングは、結晶相変化をもたらす。ANプリルの熱サイクリングは、各関連結晶相変化を伴うANプリルの膨張及び収縮をもたらす。表1に示されるように、ANの結晶相変化は、他の温度でも発生する。
【表1】
【0007】
ANプリルの膨張及び収縮のメカニズムは、ANプリルの完全性及び/又は安定性に悪影響を及ぼし得る。例えば、膨張及び収縮は、i)ANプリルの弱体化、ii)AN微粉形成の増加(例えば、ANプリルが崩壊し得る)、iii)ANプリルの破砕性の増加、及び/又はiv)ANプリルへの湿気侵入の増加をもたらし得る。これらの特性又は効果は、ANプリルのケーキングに寄与し得、これは、加工及び取り扱いの問題、自由流動挙動の喪失、並びに/又は規格外の製品をもたらし得る。これは、2号燃料油などの、液体燃料と混合されたANプリルにも当てはまる。
【0008】
本明細書で開示される任意の方法は、記載された方法を実施するための1つ以上のステップ又はアクションを含む。方法ステップ及び/又はアクションは、互いに交換され得る。換言すれば、ステップ又はアクションの特定の順序が実施形態の適切な操作に必要とされない限り、特定のステップ及び/又はアクションの順序及び/又は使用は、修飾され得る。また、サブルーチン又は本明細書に記載される方法の一部分のみは、本開示の範囲内の別個の方法であり得る。別の言い方をすれば、いくつかの方法は、より詳細な方法で記載されるステップの一部分のみを含み得る。
【0009】
本明細書全体を通して「ある実施形態」又は「その実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。よって、本明細書全体を通して列挙される、引用句又はその変形は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではない。
【0010】
以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の態様は、前述の開示された任意の単一の実施形態の全ての特徴よりも少ない組み合わせにある。よって、この詳細な説明に続く特許請求の範囲は、この詳細な説明に明確に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態として独立している。本開示は、独立項のそれらの従属項との全ての順列を含む。
【0011】
特許請求の範囲における特徴又は要素に関する「第1の」という用語の列挙は、第2又は追加のそのような特徴又は要素の存在を必ずしも意味するものではない。本開示の根底にある原理から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態の詳細が変更され得ることは、当業者には明らかであろう。
【0012】
本明細書で提供されるPSAN爆薬は、例えば、温度が32℃上下を頻繁にサイクルし得る夏季の間、従来の又は標準的な低密度硝酸アンモニウム(LDAN)プリルベースの爆薬と比較して、著しく増加した貯蔵寿命を示し得る。したがって、PSAN爆薬は、熱帯地域に送られるか、又は熱帯地域で使用され得、従来のLDAN ANFOと比較して増加した貯蔵寿命を有し得る。PSAN爆薬は、ケーキ化及び/又はブロック状ANFOに関連する健康、安全、及び/又は環境上のリスクを著しく低減し得る。PSAN爆薬は、温度管理された貯蔵インフラストラクチャー(例えば、空調されたANFO貯蔵庫)の必要性を否定し得る。PSAN爆薬は、顧客へのANFO供給計画の柔軟性を増加させ得る。PSAN爆薬は、製品出荷のボトルネックを低減又は解消し得る。更に、PSAN爆薬は、複数の市場(例えば、アジア太平洋及び北米)で使用され得る。
【0013】
PSAN爆薬、並びにPSANプリル及び爆薬を調製する方法が、本明細書に開示される。以下で一般的に記載される実施形態の成分は、多種多様な異なる構成で配置及び設計され得ることが容易に理解されるであろう。よって、以下で記載され、図で記載される様々な実施形態の以下のより詳細な説明は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、単に様々な実施形態を代表するものである。
【0014】
本開示の一態様は、相安定化硝酸アンモニウム(PSAN)爆薬を対象とする。PSAN爆薬は、PSANプリル及び燃料を含むことができる。いくつかの実施形態では、PSANプリルは、硝酸アンモニウムのアンモニウムイオンに基づいて、0.5モルパーセント(mol%)~5mol%のカリウム塩のカリウムイオンを含み得る。様々な実施形態では、アンモニウムイオンに基づくカリウムイオンのmol%は、2mol%~5mol%、2mol%~4mol%、2.1mol%~4.0mol%、又は約3mol%であり得る。対照的に、従来又は標準的な低密度硝酸アンモニウム(LDAN)プリル又はLDANプリルベースの爆薬は、カリウム塩又はイオンを欠いているLDANプリル又はLDANプリルベースの爆薬を指すことができる。PSANプリルは、爆薬グレードであり得る。特定の実施形態では、PSANプリルは、低密度であり得る(「低密度」プリルは、0.84kg/L以下のかさ密度を有する)。
【0015】
「爆薬グレード」ANプリルは、少なくとも5.7FOR%の最小多孔度を有する。爆薬グレード、低密度AN(LDAN)プリルは、一般に、プリル化前の好適な多孔度形成剤の濃縮硝酸アンモニウム溶液への組み込みなどによって、利用可能な多孔度及び利用不可能な多孔度を含むように製造される。爆薬グレードプリルは、一般に、材料が効果的に爆発され得るように十分な燃料油の吸収を可能にする利用可能な及び利用不可能な多孔度を含むように製造される。多孔度が爆破剤を製造するために好適であるかを決定するためには、ディーゼル燃料油を吸収するプリルの能力が使用される。多孔度の機能的決定は、計測された量のANプリルが計測された量の燃料油に添加され、特定の時間混合される、燃料油保持試験を用いて行われ得る。吸収紙ティッシュを使用して過剰な燃料油が除去され、形成されたANFO製品の総質量が記録され、質量の増加パーセントが計算される。燃料油保持パーセント(FOR%)によって決定されるPSANプリルの多孔度は、6FOR%~15FOR%、6FOR%~12FOR%、又は5.5FOR%~9FOR%であり得る。多くの場合、多孔度は、燃料油吸収レベルが少なくとも5.7FOR%であることが好ましいので、ANFOを製造するために十分な燃料油がPSANプリルに添加されると、許容可能な酸素バランスが達成される。利用不可能な多孔度を含む、全多孔度の計算は、好適な流体媒体において決定することができる。
【0016】
プリル化硝酸アンモニウムの多孔度に相関する、FOR%を測定するために、以下の方法が使用され得る。方法は、ディーゼル燃料油(DFO)中での完全浸漬及びペーパータオルを使用した過剰なDFOの除去後、プリルの選択された試料の質量における増加を測定する。方法は、製品原材料評価で使用される品質チェックであり得る。まず、ANプリル(微粉を除去したもの)の40g(±0.05g)試料を計測し、ラベルを付けて計量した250mLのスクリュートップ試料瓶に入れる。これは、「初期重量」として記録される。次いで、6.5mLのDFOを添加し、試料にわたって均一に分布させることができる。蓋は、堅く締めて密閉され、30秒間激しく振盪することができる。次いで、試料瓶をボトルローラー上に置き、装置を40rpmで20分間操作することができる。20分後、瓶をベンチの上で軽くたたき、蓋についたプリルを除去することができる。吸取紙の2つのストリップを配置することができる:1つは瓶の側面に沿ってゆるく巻きつけられ、2つ目はしっかりと巻き付けられ、吸取紙の1つ目のストリップの中央に挿入される。蓋は交換することができ、瓶は次いで手動で3分間振盪させる。プリルは、瓶の中で自由に転がるはずである。試料瓶をボトルローラー上に置き、装置を40rpmで15分間操作することができる。プリルは、瓶の長さに沿って均一に広がる必要があり、これを達成するためにローラーを調整することができる。次いで、瓶からプリルが除去されないようにして、吸収紙ストリップを慎重に取り除くことができる。プリルは、計量された100mLビーカーに移し、0.05g単位で計量することができる。これは「最終重量」として記録される。燃料油保持(FOR)%は、以下のとおり計算することができる:
FOR(%)=((最終重量-初期重量)/最終重量)x100
【0017】
PSANプリルは、無機多孔度増強剤も含む。無機多孔度増強剤は、界面表面修飾剤及び/又は細孔形成剤を含み得る。界面表面修飾剤はまた、晶癖修飾剤であり得る。無機多孔度増強剤の例としては、無水若しくはその水和物形態のいずれかの、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、酸化マグネシウム、又は任意の多価硫酸塩が挙げられる。無機多孔度増強剤はまた、添加剤を含み得る。特定の実施形態では、無機多孔度増強剤は、硫酸鉄、酸化マグネシウム、又はいずれかの化合物を含まない。特定の実施形態では、無機多孔度増強剤は、硫酸アルミニウムを含む。
【0018】
特定の実施形態では、無機多孔性増強剤の濃度は、400ppm~4,000ppm、例えば、400ppm~1,000ppm、500ppm~900ppm、600ppm~800ppmなど、又は700ppm、又は例えば、2,000ppm~4,000ppm、2,500ppm~3,900ppm、3,000ppm~3,700ppmなど、又は約3,500ppmであり得る。
【0019】
カリウム塩は、水酸化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、炭酸カリウム、及び炭酸水素カリウムのうちの少なくとも1つから選択されるような、任意のカリウム塩であり得る。いくつかの実施形態では、カリウムは、水酸化カリウム、硝酸カリウム、及び硫酸カリウムのうちの少なくとも1つから選択され得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、PSANプリルは、硝酸アンモニウムのアンモニウムイオンに基づいて、0.5mol%~5mol%の水酸化カリウムのカリウムイオンを含み得る(これは、硝酸アンモニウムに基づく0.4wt%~4wt%の水酸化カリウムの重量パーセント(wt%)に対応する)。様々な実施形態では、アンモニウムイオンに基づくカリウムイオンのmol%は、2mol%~5mol%(約1.5wt%~4wt%の水酸化カリウム)、2mol%~4mol%(約1.5wt%~3wt%の水酸化カリウム)、2.1mol%~4.0mol%(約1.5wt%~3wt%の水酸化カリウム)、又は約3mol%(約2wt%の水酸化カリウム)であり得る。
【0021】
特定の実施形態では、PSANプリルは、ANのアンモニウムイオンに基づいて、0.5mol%~5mol%の硝酸カリウムのカリウムイオン(ANに基づいて、1wt%~6wt%の硝酸カリウム)を含み得る。様々な実施形態では、アンモニウムイオンに基づくカリウムイオンのmol%は、2mol%~5mol%(約3wt%~6wt%の硝酸カリウム)、2mol%~4mol%(約3wt%~5wt%の硝酸カリウム)、2.1mol%~4.0mol%(約3wt%~5wt%の硝酸カリウム)、又は約3mol%(約4wt%の硝酸カリウム)であり得る。
【0022】
様々な実施形態では、PSANプリルは、硝酸アンモニウムのアンモニウムイオンに基づいて、0.5mol%~5mol%の硫酸カリウムのカリウムイオン(硝酸アンモニウムに基づいて、1wt%~10wt%の硫酸カリウム)を含み得る。様々な実施形態では、アンモニウムイオンに基づくカリウムイオンのmol%は、2mol%~5mol%(約5wt%~10wt%の硫酸カリウム)、2mol%~4mol%(約5wt%~8wt%の硫酸カリウム)、2.1mol%~4.0mol%(約5wt%~8wt%の硫酸カリウム)、又は約3mol%(約6wt%の硫酸カリウム)であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、PSANプリルのかさ密度は、0.9kg/L未満であり得る。更に、PSANプリルは、32℃結晶相変化を欠いているか、又は実質的に欠いている場合がある。あるいは、32℃結晶相変化は、50℃よりも高い温度にシフトされ得る。PSANプリルは、84℃結晶相変化を欠いているか、又は実質的に欠いている場合がある。あるいは、84℃結晶相変化は、90℃又は95℃よりも高い温度にシフトされ得る。特定の実施形態では、32℃結晶相変化及び/又は84℃結晶相変化の存在は、熱分析及び/又はX線回折測定によって決定され得る。例えば、熱分析は、示差走査熱量計(DSC)及び/又は熱重量分析計分析(TGA)分析を含み得る。32℃相変化の「実質的な欠如」は、PSANプリルが50回熱サイクルされ、表2に列挙される仕様などの、顧客仕様内に留まることができる相変化の十分な除去に対応し得る。
【0024】
様々な実施形態では、PSAN爆薬を50回熱サイクルする際、熱サイクルされたPSAN爆薬は、0.4kg~2.0kg、0.5kg~1.5kg、0.6kg~1.0kg、又は0.7kg~0.9kgなどの、0.4kgを超える平均圧壊強度を有し得る。1サイクルは、PSAN爆薬を15℃に4時間、続いて45℃に4時間曝露することを含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、PSAN爆薬を20回熱サイクルする際(「試験PSAN爆薬」)、熱サイクルされたPSAN爆薬の平均圧壊強度は、熱サイクルされていない対照PSAN爆薬の平均圧壊強度よりも大きい場合がある。1サイクルは、PSAN爆薬を15℃に4時間、続いて45℃に4時間曝露することを含む。試験PSAN爆薬及び対照PSAN爆薬は、同じ成分を含むが、試験PSAN爆薬は、熱サイクリングに供され、対照PSAN爆薬は、熱サイクリングに供されない。
【0026】
熱サイクルされたPSAN爆薬の平均圧壊強度は、熱サイクルされていない対照PSAN爆薬の平均圧壊強度よりも5~100%大きい場合がある。他の実施形態では、熱サイクルされたPSAN爆薬の平均圧壊強度は、熱サイクルされていない対照PSAN爆薬の平均圧壊強度よりも25~100%大きい場合がある。特定の実施形態では、熱サイクルされたPSAN爆薬の平均圧壊強度は、熱サイクルされていない対照PSAN爆薬の平均圧壊強度よりも10%~80%、20%~60%、又は25%~40%大きい場合がある。他の実施形態では、熱サイクルされたPSAN爆薬の平均圧壊強度は、熱サイクルされていない対照PSAN爆薬の平均圧壊強度よりも35%~90%、45%~80%、又は55%~70%大きい場合がある。よって、熱サイクリングを使用して、PSAN爆薬の硬度を増加させることができる。
【0027】
圧壊強度は、以下の方法によって決定され得る。手袋を含む全ての装備は乾燥し、試料は貯蔵されるとき気密容器に密封される必要がある。試料は、まず250gのANFO最終製品試料の重量を計測し、2.36mmふるい、2.00mmふるい、及び収集パンからなるふるいスタックの上部に移すことによって調製される。試料及びふるいスタックをふるい振盪機に10分間、60の振幅設定で入れる。受けパン中の微粉及び2.36mmふるい中のオーバーサイズを廃棄する。2.00mmふるいから試料の一画分を採取して、圧壊試験に使用する。圧壊試験について、2.00mmふるいから20個の個々のANFO粒子(ANプリル+燃料油)をランダムに選択する。フォースゲージメーター(モデルM5-5など)及び試験スタンドステージ(電動試験スタンドESM301Lなど)を含む圧壊試験装置を使用して、KgF単位を記録する。試験スタンドステージの中央に粒子を置く。フォースゲージメーターをゼロにする。フォースゲージピストンを下げて試験粒子を圧壊する。フォースゲージが完全に伸びた後、加えられた力を圧壊抵抗として記録する。このプロセスは、20個の粒子の各々について行う。圧壊抵抗は、20個の粒子の平均圧壊抵抗として計算する。
【0028】
本明細書で提供されるPSAN爆薬の貯蔵寿命は、少なくとも6ヶ月であり得る。例えば、PSAN爆薬は、30℃~50℃の平均日中周囲温度及び10℃~30℃の平均夜間温度を有する高温の夏期中に貯蔵されている間、最大6ヶ月以上(少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、又は少なくとも6ヶ月など)の貯蔵寿命を有し得る。対照的に、従来のLDAN ANFOの貯蔵寿命は、温度管理された貯蔵の補助なしでは、はるかに短いであろう。
【0029】
PSAN爆薬のPSANプリルは、カリウムを含まない爆薬グレード硝酸アンモニウムプリルの結晶ドメインよりも密集したより均一な結晶ドメインを有し得る。理論によって縛られることを望むことなく、PSANプリルのより密集した結晶ドメインは、従来のLDANプリルと比較して、PSANプリルの改善した硬度に寄与し得る。理論によって縛られることを望むことなく、カリウム及び多孔度増強剤の組み合わせは、PSANプリルのより密集したより均一な結晶ドメインに寄与し得ると考えられる。よって、カリウム及び多孔度増強剤の組み合わせは、プリルの多孔度及び低密度を全て維持しながら、PSANプリルの驚くほど増加した圧壊強度に寄与し得る。結晶ドメインは、走査型電子顕微鏡とエネルギー分散分光法(SEM-EDS)によって決定され得る。
【0030】
PSANプリルは、プリル全体を通して均一に分布されたカリウムを有し得る。PSANプリルがアルキル基(ポリマーの一部など)を含有する界面表面修飾剤を含む場合、PSANプリルは、プリル全体を通して均一に分布された炭素を有し得る。
【0031】
PSANプリルと使用することができる燃料の例としては、これらに限定されないが、燃料油、ディーゼル油、蒸留物、ファーネス油、ケロシン、ガソリン、及びナフサなどの液体燃料、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びスラックワックスなどのワックス、パラフィン油、ベンゼン、トルエン、及びキシレン油、アスファルト材料、ポリマー油、例えば、オレフィンの低分子量ポリマー、動物油、例えば、魚油、並びに他の鉱物、炭化水素、及び脂肪油などの油、並びにそれらの混合物が挙げられる。ANFOのために、又はANFOとともに典型的に使用される任意の燃料が使用され得る。
【0032】
PSANプリル対燃料の重量比は、80:20~97:3、85:15~96:4、90:10~95:5、又は94:6である。特定の実施形態では、燃料は、硝酸アンモニウムエマルジョンではなく、従来のANFOと共通の燃料である。
【0033】
上記に提供されるPSANプリル又はPSAN爆薬を参照して記載される成分及びその量又は濃度の任意の組み合わせも、PSANプリル又はPSAN爆薬を調製する方法に組み込まれ得る。更に、上記に提供されるPSANプリル又はPSAN爆薬の特性又は測定値(例えば、かさ密度、平均圧壊強度、及び貯蔵寿命)のいずれも、開示された方法によって調製されたPSANプリル又はPSAN爆薬に適用可能であり得る。
【0034】
本開示の別の態様は、PSAN爆薬の硬度(例えば、平均圧壊強度)を増加させる方法を対象とする。更に、上記に提供されるPSAN爆薬の特性又は測定値のいずれも、PSAN爆薬の硬度を増加させる方法によって調製されたPSAN爆薬に適用可能であり得る。方法は、上記に論じられるPSANプリルを提供することと、PSANプリルを複数回(例えば、少なくとも10回又は少なくとも20回)熱サイクルさせることと、を含み得る。サイクリング後、熱サイクルされたPSAN爆薬の平均圧壊強度は、熱サイクルされていない対照PSAN爆薬の平均圧壊強度よりも大きい場合がある。1サイクルは、PSAN爆薬を15℃に4時間、続いて45℃に4時間曝露することを含み得る。
【0035】
本開示の別の態様は、PSANプリル及び/又はPSAN爆薬を調製する方法を対象とする。方法は、カリウム塩及び硝酸アンモニウムを含むPSAN溶液を形成することと、PSAN溶液を結晶化してPSANプリルを形成することと、を含み得る。PSANプリルは、爆薬グレード及び低密度であり得る。方法は、多孔度増強剤(例えば、硫酸アルミニウム)をPSAN溶液と組み合わせることを更に含み得る。PSAN溶液を形成することは、カリウム塩(溶液)を水(又はプロセス凝縮物)と混合することと、混合物を、例えば、中和剤中で、硝酸及びアンモニアと反応させてPSAN溶液を形成することと、を含み得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、カリウム塩及び硝酸アンモニウムを含むPSAN溶液の使用は、カリウム塩を欠く従来のLDANプリルを形成する際に使用される従来のAN溶液と比較して、PSANプリルの形成において製造上の利点を提供する。これらの製造上の利点は、プラント製造プロセスにおけるボトルネック解消の機会を提供することができる。例えば、従来のLDANプリル製造は、多くの場合、i)プリル塔の底部において観測されるプリル温度及び/又はii)冷却機構(例えば、流動床冷却器)を出る際に観測されるプリル温度のために、適切な仕様内でのプリルの形成を確保するために、より高温及びより多湿の月にはプリル化速度を低減する必要がある。本明細書に開示されたPSAN溶液では、プリル化速度のそのような低減は必要とされない。
【0037】
PSAN溶液を結晶化してPSANプリルを形成する際、プリル溶液の液滴は、プリル塔内に滴下される。液滴が落下すると、それらは冷却され、固化して、個々のプリルを形成する。プレドライヤー乾燥機及び乾燥ドラムでの更なる乾燥、並びにオーバーサイズ及びアンダーサイズの材料を除去するスクリーニング後、プリルは次いで更なる冷却のために冷却機構(例えば、流動床冷却器)に移され、その後プリルは更に加工(例えば、コーティング)、貯蔵、及び/又は包装され得る。典型的には、プリル塔の底部に到達するときの従来のLDANプリルの温度限界は、78℃~82℃である。この温度限界は、従来のLDANプリルが、プリル化塔の底部に到達する前に、約84℃で第II相から第III相への結晶相変化を完了したことを確認する。プリル化塔の底部におけるこの温度限界を超える従来のLDANプリルは、依然として相変化を受けている場合があり、製造プロセスにおいて下流でクランピング/ケーキング及び/又は他の問題を引き起こす。更に、プリル化塔の底部においてこの温度限界を超える従来のLDANプリルを有することは、特に高温及び多湿環境(例えば、35℃~45℃の周囲温度を有する環境)で、プリル製造中によくある問題である。
【0038】
冷却機構(例えば、流動床冷却器)を出る従来のLDANプリルの温度は、典型的には、30℃未満であることが必要とされる。この温度は、従来のLDANプリルが、コーティング(例えば、ケーキング防止コーティング)の適用前に、約32℃で第III相から第IV相への結晶相変化を完了したことを確認する。この温度を超えて冷却機構(例えば、流動床冷却器)を出る従来のLDANプリルは、依然として相変化を受けている場合があり、サイロ又はコーティング後のドラムにおけるクランピング/ケーキング及び/又はそうでなければプリルの自由流動の喪失を引き起こす。これは更に、プリルをサイロ又はコーティング後のドラムから取り出して、輸送コンテナ、バルクダンプ車などに入れようとする際に問題を引き起こし得る。この温度を上回って冷却機構(例えば、流動床冷却器)を出る従来のLDANプリルを有することは、特に高温及び多湿環境(例えば、35℃~45℃の周囲温度を有する環境)で、プリル製造中によくある問題である。これらの問題に対処するために、従来の製造技法は、特に高温及び多湿環境(例えば、35℃~45℃の周囲温度を有する環境)で、プリル化速度を、約40T/時(トン/時間)の最大から、35T/時未満、33T/時未満、30T/時未満、又は27T/時未満に低減する。別の言い方をすれば、従来の製造技法は、特に高温及び多湿環境(例えば、35℃~45℃の周囲温度を有する環境)で、プリル化速度を25T/時~35T/時、又は25T/時~30T/時に低減する。更に別の言い方をすれば、従来の製造技法は、特に高温及び多湿環境(例えば、35℃~45℃の周囲温度を有する環境)で、プリル化速度を、100%の設計された最大速度から、設計された最大速度の90%未満、80%未満、若しくは70%未満の速度、又は設計された最大速度の60%~90%、60%~80%、若しくは60%~70%の速度まで低減する。
【0039】
より高いプリル化速度は、本明細書に開示されるPSAN溶液で高温及び多湿環境において達成することができる。以前に言及されるように、32℃相変化は、最小化及び/又は排除され、84℃相変化は、本明細書で開示されるPSAN溶液でより高温にシフトされる。例えば、84℃相変化は、約5℃~約25℃、又は約10℃~約20℃シフト(又は増加)することができる。特定の実施形態では、84℃相は、95℃~105℃にシフトされる。
【0040】
84℃相変化温度が増加したため、製造上の問題を引き起こすことなく、プリル化塔の底部における温度限界も増加させることができる。例えば、プリル化塔の底部におけるPSANプリルの温度限界は、高温及び多湿環境(例えば、35℃~45℃の周囲温度を有する環境)でも、少なくとも85℃、少なくとも86℃、少なくとも87℃、少なくとも88℃、少なくとも89℃、又は少なくとも90℃に増加させることができる。別の言い方をすれば、プリル化塔の底部におけるPSANプリルの温度上限は、高温及び多湿環境(例えば、35℃~45℃の周囲温度を有する環境)でも、85℃~95℃、又は85℃~90℃に増加させることができる。
【0041】
32℃相変化が最小化及び/又は排除されると、冷却機構(流動床冷却器)を出た後及び/又はコーティングプロセス中に、32℃相変化を経験するPSANプリルもほとんど又は全くない。結果として、冷却機構(例えば、流動床冷却器)を出るPSANプリルの温度限界を増加させることができる。いくつかの実施形態では、温度限界は、高温及び多湿環境(例えば、35℃~45℃の周囲温度を有する環境)でも、少なくとも35℃、少なくとも36℃、少なくとも37℃、少なくとも38℃、少なくとも39℃、又は少なくとも40℃に増加させる。別の言い方をすれば、温度限界は、高温及び多湿環境(例えば、35℃~45℃の周囲温度を有する環境)でも、30℃~40℃、32℃~40℃、又は35℃~40℃に増加させる。更に、32℃相変化が最小化及び/又は排除されると、相変化の欠如のためにより少ない熱エネルギーがPSANプリルによって放出されるため、PSANプリルはまた、従来のLDANよりも低温で冷却機構(例えば、流動床冷却器)を出る。例えば、いくつかの実施形態では、PSANプリルは、高温及び多湿環境(例えば、35℃~45℃の周囲温度を有する環境)でも、同じ製造条件で従来のLDANよりも2℃~5℃、又は3℃~4℃低い温度で冷却機構(例えば、流動床冷却器)を出る。
【0042】
i)プリル化塔の底部におけるPSANプリルの増加した温度限界、及びii)最小化された32℃相変化温度のうちの1つ以上はまた、高温及び多湿環境(35℃~45℃の周囲温度を有する環境)でも、製造プロセスがプラント設計最大プリル化速度、又はより高いプリル化速度、例えば、35T/時超、36T/時超、37T/時超、38T/時超、39T/時超、又は40T/時超を維持することを可能にする。別の言い方をすれば、本明細書に開示されるPSANプリル溶液のプリル化速度は、高温及び多湿環境(例えば、35℃~45℃の周囲温度を有する環境)でも、35T/時~42T/時、又は38T/時~41T/時であり得る。更に別の言い方をすれば、高温及び多湿環境(例えば、35℃~45℃の周囲温度を有する環境)でも、本明細書に開示されるPSANプリル溶液の最大プリル化速度は、従来のLDANプリル溶液で得られる最大プリル化速度よりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、若しくは少なくとも50%高い場合があり得るか、又は本明細書に開示されるPSANプリル溶液の最大プリル化速度は、従来のLDANプリル溶液で得られる最大プリル化速度よりも10%~60%高い、10%~50%高い、10%~40%高い、10%~30%高い、若しくは10%~20%高い場合があり得る。
【実施例
【0043】
以下の実施例は、開示された方法及び組成物を例示するものである。本開示に照らして、当業者は、開示された方法及び組成物のこれらの例及び他の例の変形が、過度の実験なしに可能であることを認識するであろう。
【0044】
実施例1-分析のためのプリロイドの生成
プリロイドを生成するために、以下の方法を使用した。直径2.8mmの穴を5mm厚のTEFLON(商標)プレートの上部に約3mmの深さまでドリルで開けた。それらの穴に直径0.9mmの排水穴を開けた。次いで、プレートにAN溶液を加えて2.8mmの穴を埋めた。プリロイドが冷却すると、それらは排水穴を介してTEFLON(商標)プレートにおける2.8mmの穴から押し出しされた。
【0045】
実施例2-カリウム塩の分析
初期溶液中のAN及びカリウム塩に加えて、硫酸アルミニウム(Ixom Chemicalsからの硫酸アルミニウム溶液又はMerck BDHからの硫酸アルミニウムのいずれか)を含むプリロイドを製造した。次の試料を分析のために調製した:1)ANFOのみ(94:6)、2)染料を含む燃料油と組み合わせた0.07%のAI2SO4(700ppm)及び3.5mol%のKNO3を含むAN(94:6)、3)染料を含む燃料油と組み合わせた0.07%のAI2SO4及び2.5mol%のKNO3を含むAN(94:6)、並びに4)染料を含む燃料油と組み合わせた3,500ppmのAI2SO4及び2.5mol%のKNO3を含むAN(94:6)。
【0046】
試料をサイクリングオーブン(PANASONIC(商標)MIR-254 Cooled Incubator)に入れた。サイクリングオーブンは、フィールドで発生する熱サイクリングを模倣するように設計された。オーブンは、1サイクルが15℃で4時間の期間、続いて45℃で4時間の期間を含むように設定された。試料は、合計140回サイクルさせた(表2及び図1)。
【表2】
【0047】
サイクリングプロセス全体を通して、試料の状態及び劣化の可能性を視覚的に観察した。また、圧壊試験を様々な点で実施して、サイクリングプロセス全体を通した試料の硬度の変化の可能性を実証した(Mark-10 ESM303 Motorized Test Stand及びMark-10 Digital Force Gauge M5-20を使用した)。
【0048】
試料は、熱サイクリングのプロセス全体を通して圧壊強度(硬度)について試験した。圧壊試験は、図1に示される点で実施した。これらのデータは、相安定化ANで実証された延長された貯蔵寿命が、内部添加剤として硫酸アルミニウムを使用してPSANで製造されたANFOで再現され得ることを示す。
【0049】
実施例3-プラントにおけるPSANプリルの生成及びLDANプリルとの比較
次の試料は、Kaltenbach Thuringプロセスを介して製造した:PSAN試料1-AN及び2.5mol%KOH(49%KOH溶液)を含有するPSANプリル、及びPSAN試料2-AN及び3.5mol%KOH(49%KOH溶液)を含有するPSANプリル。
【0050】
熱電対及びデータロガーを使用して、従来のLDAN及びPSAN試料1及び2の温度を8つの熱サイクルにわたって測定した。各熱サイクルについて、試料を45℃で4時間、続いて15℃で4時間に供した。これらの条件下で、PSAN試料1及び2は、オーブンにおいて高温及び低温に容易に到達したが、従来のLDANは、実際には4時間以内に45℃に到達しなかった。これは図2に示される。図2に示される温度プロファイルはまた、従来のLDANの吸熱及び発熱挙動を示す(既知の32℃相変化に関連する)。PSAN試料1及び2は32℃での相変化を有さないため、これはそれらの温度プロファイルでは観察されなかった。
【0051】
次いで、PSANプリルの加熱及び冷却時間を従来のLDANプリルと比較した。その際、従来のLDAN及びPSANプリルの試料は、50℃のオーブンに入れ、熱電対及びデータロガーは、各試料が50℃に達するまでにかかる時間の長さを決定した(図3)。試料をオーブンに一晩放置し、次いで周囲条件に移して、試料を周囲温度に冷却するまでにかかる時間を決定した(図4)。ブランク対照試料(空の瓶)も使用した。図3及び4に示されるように、PSANプリルは、従来のLDANプリルよりも急速に加熱及び冷却する。これは、PSANプリルにおける32℃相変化の欠如による。
【0052】
実施例4-プラントにおけるPSANプリルの生成及びLDANプリルとの比較
次の試料は、Kaltenbach Thuringプロセスを介して製造した:AN及び2.5mol%KOH(49%KOH溶液)を含有するPSANプリル。PSANプリルはまた、700ppmのGALORYL(登録商標)ATH 626Mでコーティングした。図5及び6は、従来のLDANプリル(図5)及びPSANプリル(図6)からのDSCデータを示す。そこに示されるように、PSANプリルにおける84℃相変化は約95℃~105℃にシフトし、32℃は最小化された。
【0053】
プリル化速度は、40T/時に設定され、6つのプリルヘッドがオンラインであった。環境の平均周囲温度は、約38℃であった。84℃相変化がより高い温度にシフトした結果、塔の底部における温度限界は、90℃に設定された。塔の底部におけるPSANプリル温度も測定され、以下の表3に示される:
【表3】
【0054】
表3に示されるように、塔の底部におけるPSANプリルの温度(82℃~86℃)は、従来のLDANプリル製造で達成することができる温度範囲(78℃~82℃)を超えた。
【0055】
32℃相変化が最小限に抑えられた結果、冷却機構(例えば、流動床冷却器)を出るPSANプリルの温度は、35℃に設定された。PSANプリルの温度はまた、冷却機構(例えば、流動床冷却器(FBC))を出たときに観測された。この温度を以下の表4に示す:
【表4】
【0056】
典型的には、従来のLDANプリルについて観測される温度は、周囲環境温度が35℃を超える場合、29℃~30℃の範囲であり、プリル化速度を低減する必要があるであろう。しかしながら、PSANプリルは、32℃相変化の不在のため、より低い温度(24℃~27℃)で冷却機構(例えば、流動床冷却器)を出た。
【0057】
比較として、以下の製造パラメータは、PSANプリル対従来のLDANプリルで達成された:
【表5】
【表6】
【0058】
更なる詳述なしに、当業者は前述の説明を使用して、本開示をその最大限に利用することができると考えられる。本明細書に開示される例及び実施形態は、単に説明及び例示として解釈されるべきであり、決して本開示の範囲を限定するものではない。本明細書における開示の根底にある原理から逸脱することなく、上述の実施形態の詳細が変更され得ることは、当業者であり、本開示の利益を有する者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】