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特表2023-535516バリア組成物、その使用および生成方法、その構造、使用および生成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】バリア組成物、その使用および生成方法、その構造、使用および生成方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 3/02 20060101AFI20230809BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20230809BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C08L3/02
C08L1/02
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506219
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 BR2021050319
(87)【国際公開番号】W WO2022020928
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】BR1020200155016
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521023425
【氏名又は名称】スザノ・エス.エー.
【氏名又は名称原語表記】SUZANO S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】523031345
【氏名又は名称】フンダサン・ウニベルシダーデ・フェデラル・デ・サン・カルロス-ユーエフエスシーエーアール
【氏名又は名称原語表記】FUNDACAO UNIVERSIDADE FEDERAL DE SAO CARLOS-UFSCAR
【住所又は居所原語表記】Rodovia Washington Luis,Km 235,13565-905 Sao Carlos-Sao Paulo,Brasil
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】シケイラ、ジェルマーノ・アンドラーデ
(72)【発明者】
【氏名】ビエイラ、リチェリ・テレス
(72)【発明者】
【氏名】デ・リマ、ビトール・ヒューゴ
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス、アレッサンドラ・デ・アルメイダ
(72)【発明者】
【氏名】モレイラ、フランシス・クレイ・ビエイラ
(72)【発明者】
【氏名】ウルエーニャ、グスタボ・アドルフォ・デュアルテ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AC03A
4F100AC03H
4F100AC04A
4F100AC04H
4F100AC05A
4F100AC05H
4F100AJ06A
4F100AJ06H
4F100AJ07A
4F100AJ07H
4F100AK04B
4F100AK05B
4F100AK06B
4F100AK42B
4F100AK46B
4F100AK63B
4F100AL05A
4F100AT00
4F100BA02
4F100CA04A
4F100CA04H
4F100CC102
4F100CC10A
4F100EH462
4F100EH46A
4F100JD02
4J002AB01X
4J002AB041
4J002BE02Y
4J002DJ007
4J002DJ037
4J002DM007
4J002EC056
4J002EG016
4J002EH146
4J002EN136
4J002EP016
4J002ET016
4J002FA04X
4J002FD01X
4J002FD026
4J002FD02Y
4J002FD207
4J002GF00
(57)【要約】
本発明は、加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCを含むバリア組成物、ならびにバリア組成物を生成する方法、およびたとえば、バリア組成物および担体層を含む多層構造におけるその使用に関する。バリア組成物を含む多層構造を製造する方法もまた開示され、これは、多層構造を含む物品を得るために適用されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のデンプン、デンプンの質量に関して10~30重量%の可塑剤、およびデンプンの質量に関して1.1~25.0重量%のMFCを含むことを特徴とする、バリア組成物。
【請求項2】
デンプンの質量に関して1.1~3.9重量%のMFCを含むことを特徴とする、請求項1に記載のバリア組成物。
【請求項3】
デンプンの質量に関して0.1~5.0重量%の、ベントナイト、ハロイサイト、バーミキュライト、カオリン、アルミノシリケートおよびモンモリロナイトから選択される粘土、好ましくはモンモリロナイトを含むことを特徴とする、請求項1に記載のバリア組成物。
【請求項4】
前記組成物の総質量に関して75~90重量%のデンプン、前記組成物の総質量に関して9~22.4重量%の可塑剤、および前記組成物の総質量に関して0.9~2.9重量%のMFCを含むことを特徴とする、請求項1に記載のバリア組成物。
【請求項5】
前記組成物の総質量に関して0.9~1.5重量%の、ベントナイト、ハロイサイト、バーミキュライト、カオリン、アルミノシリケートおよびモンモリロナイトから選択される粘土、好ましくはモンモリロナイトを含むことを特徴とする、請求項4に記載のバリア組成物。
【請求項6】
前記可塑剤が、グリセロール、1-エチル3-メチルイミダゾリウムアセテート、ソルビトール、トリエチレングリコール、グルコース、尿素、マテ抽出物、フタル酸ジエチル、n,nビス(2-ヒドロキシエチル)ホルムアミド、ポリ(ビニルアルコール)、キシリトールまたはそれらの混合物、好ましくはグリセロールから選択されることを特徴とする、請求項5に記載のバリア組成物。
【請求項7】
前記デンプンが、加工または未加工デンプンであることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載のバリア組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のバリア組成物の使用であって、バリア組成物が多層構造であることを特徴とする、使用。
【請求項9】
バリア組成物を生成する方法であって、
A)溶液の総質量に対して10~20重量%のデンプン、溶液の総質量に対して0.9~4.7重量%の可塑剤、および溶液の総質量に対して1.0~3.1重量%のMFCを含む、デンプン、可塑剤およびMFCの水性分散液を用意すること;
b1)撹拌することによって、デンプン、可塑剤およびMFCの前記水性分散液を均質化すること;
b2)デンプン、可塑剤およびMFCの前記水性分散液を、80~85℃に1時間加熱すること;
c)デンプン、可塑剤およびMFCの前記水性分散液を、撹拌下で室温に冷却すること;
d)任意に、水を添加して、加熱前に測定した通りの前記溶液の初期値に調整すること
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
工程b1)撹拌することによって、デンプン、可塑剤およびMFCの前記水性分散液を均質化すること、ならびにb2)デンプン、可塑剤およびMFCの前記水性分散液を、80~85℃に1時間加熱することが、同時に行われることを特徴とする、請求項6に記載のバリア組成物を生成する方法。
【請求項11】
添加されたMFCが、水中のMFCの事前分散液の形態であることを特徴とする、請求項6に記載のバリア組成物を生成する方法。
【請求項12】
工程a)が、0.1~5%の粘土、好ましくはモンモリロナイトをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載のバリア組成物を生成する方法。
【請求項13】
前記可塑剤が、グリセロール、1-エチル3-メチルイミダゾリウムアセテート、ソルビトール、トリエチレングリコール、グルコース、尿素、マテ抽出物、フタル酸ジエチル、n,nビス(2-ヒドロキシエチル)ホルムアミド、ポリ(ビニルアルコール)、キシリトールまたはそれらの混合物、好ましくはグリセロールから選択されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記デンプンが、加工または未加工デンプンであることを特徴とする、請求項9~13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
バリア組成物を含む多層構造であって、
a)ポリマー、複合体、金属、合金、ガラス、シリコン、セラミック、木材および紙からなる群から選択される担体層;ならびに
b)第1の層の少なくとも一部に堆積されたデンプン、可塑剤およびMFCベースのバリア組成物の層
を含み、前記バリア組成物が、
i. デンプン
ii. 可塑剤、および
iii. MFC
を含むことを特徴とする、多層構造。
【請求項16】
前記バリア組成物が、70~90重量%のデンプン、デンプンの質量に関して1~30重量%の可塑剤、およびデンプンの質量に関して0.1~10重量%のMFCを含むことを特徴とする、請求項15に記載のバリア組成物を含む多層構造。
【請求項17】
前記バリア組成物が、0.1~5%の粘土、好ましくはモンモリロナイトをさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載のバリア組成物を含む多層構造。
【請求項18】
前記担体層が、LLDPE、PP、LDPE、LLDPE、HDPE、PA、PET、PLA、PBT、PBS、PBSA、PCL、PHB、PHBV、それらのブレンド、複合体およびナノ複合体を含むことを特徴とする、請求項15に記載のバリア組成物を含む多層構造。
【請求項19】
前記可塑剤が、グリセロール、1-エチル3-メチルイミダゾリウムアセテート、ソルビトール、トリエチレングリコール、グルコース、尿素、マテ抽出物、フタル酸ジエチル、n,nビス(2-ヒドロキシエチル)ホルムアミド、ポリ(ビニルアルコール)、キシリトールまたはそれらの混合物、好ましくはグリセロールから選択されることを特徴とする、請求項15に記載の構造。
【請求項20】
前記デンプンが、加工または未加工デンプンであることを特徴とする、請求項15~19の何れか1項に記載の構造。
【請求項21】
請求項15に記載の多層構造の使用であって、包装におけるものであることを特徴とする、使用。
【請求項22】
多層構造を生成する方法であって、
a)ポリマー、複合体、金属、合金、ガラス、シリコン、セラミック、木材および紙からなる群から選択される担体層を用意すること;ならびに
b)前記担体層の面に、第1の層の少なくとも一部に配置された、デンプン、可塑剤およびMFCをベースとするバリア組成物の層を堆積することであり、前記バリア組成物が、
i. デンプン
ii. 可塑剤、および
ii. MFC
を含む、堆積すること、
c)多層を乾燥させて、多層構造を得ること
を含むバリア組成物を含むことを特徴とする、方法。
【請求項23】
デンプン、可塑剤およびMFCベースのバリア組成物の前記層が、粘土、好ましくはモンモリロナイトをさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載の多層構造を生成する方法。
【請求項24】
前記バリア組成物が、前記組成物の総質量に関して75~90重量%のデンプン、前記組成物の総質量に関して9~22.4重量%の可塑剤、および前記組成物の総質量に関して0.9~2.0重量%のMFCを含むことを特徴とする、請求項22に記載の多層構造を生成する方法。
【請求項25】
前記バリア組成物が、前記組成物の総質量に関して、粘土、好ましくはモンモリロナイトをさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載の多層構造を生成する方法。
【請求項26】
前記担体層の前記面が、前記担体層のコロナ処理された前記面への、デンプン、可塑剤およびMFCベースのバリア組成物の堆積前にコロナ処理に供されることを特徴とする、請求項22に記載の多層構造を生成する方法。
【請求項27】
前記担体層への前記バリア組成物の堆積が、押出、共押出、積層、押出と組み合わせた積層、コーティング、および/または溶液もしくは液体媒体中の懸濁液(コーティング)からの層の堆積、輪転グラビア印刷、ならびにフレキソ印刷によって実施され、好ましくは、連続キャスティングコーティングが使用されることを特徴とする、請求項22に記載の多層構造を生成する方法。
【請求項28】
前記可塑剤が、グリセロール、1-エチル3-メチルイミダゾリウムアセテート、ソルビトール、トリエチレングリコール、グルコース、尿素、マテ抽出物、フタル酸ジエチル、n,nビス(2-ヒドロキシエチル)ホルムアミド、ポリ(ビニルアルコール)、キシリトールまたはそれらの混合物、好ましくはグリセロールから選択されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記デンプンが、加工または未加工デンプンであることを特徴とする、請求項22~28の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
2つ以上の層を含む低O透過性構造であって、前記層の少なくとも1つが、デンプン、可塑剤およびMFCを含むO透過バリア組成物を含む層であることを特徴とする、構造。
【請求項31】
前記層の少なくとも1つが、デンプン、可塑剤およびMFCを含むO透過バリア組成物を含み、粘土、好ましくはモンモリロナイトをさらに含むことを特徴とする、請求項30に記載の2つ以上の層を含む低O透過性構造。
【請求項32】
前記可塑剤が、グリセロール、1-エチル3-メチルイミダゾリウムアセテート、ソルビトール、トリエチレングリコール、グルコース、尿素、マテ抽出物、フタル酸ジエチル、n,nビス(2-ヒドロキシエチル)ホルムアミド、ポリ(ビニルアルコール)、キシリトールまたはそれらの混合物、好ましくはグリセロールから選択されることを特徴とする、請求項30および31に記載の構造。
【請求項33】
前記デンプンが、加工または未加工デンプンであることを特徴とする、請求項30~32の何れか1項に記載の構造。
【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、加工または未加工デンプン、可塑剤、MFC(ミクロフィブリル化セルロース)を含むバリア組成物、ならびにバリア組成物を生成する方法、およびたとえば、バリア組成物および担体層を含む多層構造におけるその適用に関する。バリア組成物を含む多層構造を生成する方法もまた開示され、これは、多層構造を含む物品を得るのに適用されうる。
【発明の背景】
【0002】
[0002]いくつかの種類の包装では、包装により、酸素の可能な透過が最低になることが望ましい。そのような目的のために、高いガスバリア材料、たとえば、ナイロン、エチレン/ビニルアルコール、またはポリ塩化ビニリデンフィルムまたはコーティンを使用することができる。
【0003】
[0003]そのような包装は、一般に、ポリマー材料の2つ以上のシートまたはフィルムの積層物を使用する。積層物を形成するシートまたはフィルムは、同じまたは様々な材料のものでありうる。本発明が対象とする包装材料としては、これらに限定されないが、加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCを含むバリア組成物が挙げられる。
【0004】
[0004]「Oxygen barrier film and laminate and methods of manufacturing the same」と題する特許文献WO2017163167は、酸素バリア特性を有する多層フィルムの生成を提示しており、その層の1つは、ミクロフィブリル化セルロースの懸濁液をポリマー基材上に直接堆積し、後続の乾燥処理を実施する、またはフィルム(ナノペーパー)を先に形成し、それを層として直接適用することによって形成されたフィルムである。この技術とは異なる方法で、本発明は、加工または未加工デンプンおよびグリセロールの溶液中のミクロフィブリル化セルロースの懸濁液の堆積を提示し、これは、モンモリロナイト粘土も含有してもよく、その利点は、加工または未加工デンプンおよび粘土のさらなるバリア特性にある。可撓性および接着がさらに改善され、最終的に形成される孔は、加工もしくは未加工デンプンおよびグリセロールによって、または加工もしくは未加工デンプン、グリセロールおよび粘土によって充填される。
【0005】
[0005]「Microfibrillated film」と題する文献US20190234020は、ミクロフィブリル化セルロースに基づくフィルム形成技術を提示しており、ここでは、より良好なフィルム形成を促進するために、MFCと一緒に形成剤(アニオン性ポリアクリルアミド)が添加される。引用文献とは異なり、本発明は、グリセロールおよび加工または未加工デンプンをミクロフィブリル化セルロースに基づくフィルム形成の促進剤として使用し、促進剤としてグリセロールおよび加工または未加工デンプンを使用する技術的利点を有し、これにより、ポリアクリルアミドを形成するアクリルアミドモノマーの毒性が有利に回避される。さらに、環境に夾雑する水へのその高い溶解度に起因して、ポリアクリルアミドの廃棄は管理しなくてはならない。加工または未加工デンプンおよびグリセロールは形成されたあらゆる孔を充填し、フィルムの機械特性を改善する。
【発明の簡単な説明】
【0006】
[0006]本発明は、加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCを含むバリア組成物、ならびにバリア組成物を生成する方法、およびたとえば、バリア組成物および担体層を含む多層構造におけるその適用に関する。バリア組成物を含む多層構造を生成する方法もまた開示され、これは、多層構造を含む物品を得るのに適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】[0007]図1は、パイロットTable Topp Tape Caster(TTC)積層ユニットの概観である。(1)プラスチック基材コイルを取付けるためのマンドレル。(2)積層デバイス。(3)積層ユニット乾燥ゾーン。(4)プラスチック基材を巻き取るためのマンドレル。(5)積層ユニット制御パネル。(6)温風吹き出しシステム。(7)排気ファン。
図2】[0008]図2は、TTCパイロットユニット積層デバイスの画像である。(A)溝、圧延ナイフおよび目盛り付きドラムを強調した、圧延デバイスの側面および正面図。(B)モバイルプラスチック基材(BOPPおよびLLDPE)への加工または未加工デンプン+MFC溶液の湿潤シートの形成の図。
図3】[0009]図3は、TTCパイロットユニットにおける加工または未加工デンプン溶液湿潤シートおよびMFCの乾燥の画像である。
図4】[0010]図4は、乾燥処理中に堆積した層の画像である。
図5】[0011]図5は、TTCパイロットユニットでの多層フィルムの巻き取りの上面図である。
図6-8】[0012]図6~8は、(a)0.01mm、(b)0.02mmおよび(c)0.05mmの厚さの、LLDPE/0.02;AM10/GOH20およびAM10/GOH20/MFCでコーティングされたLLDPE/ポリ(塩化ビニリデン)(PVDC)/エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)/0.05フィルムの透過度、ヘーズ(不透明度)、および透明度特性の分布を示す。
図9-11】[0013]図9~11は、(a)0.01mm、(b)0.02mm、(c)0.05mmの厚さでAM10/GOH20およびAM10/GOH20/MFCでコーティングされたBOPP/0.02フィルムの透過度、ヘーズおよび透明度特性の分布を例示する。
図12】[0014]図12は、0.02mmの厚さでAM10/GOH20/MFC2/MMT1およびMMT2でコーティングされたLLDPE/0.02フィルムの透過度、ヘーズおよび透明度特性の分布を例示する。(a)LLDPE/0.02、(b)MMT1および(c)MMT2。
図13】[0015]図13は、0.02mmの厚さのAM10/GOH20/MFC2/MMT1およびMMT2でコーティングされたBOPP/0.02フィルムの透過度、ヘーズおよび透明度特性の分布を例示する。(a)BOPP/0.02、(b)MMT1および(c)MMT2。
図14】[0016]図14は、一軸引張試験中の試験片を例示する。
図15】[0017]図15は、LLDPE/0.02mmサンプルについての張力×変形曲線を例示する。
図16】[0018]図16は、BOPP/0.02mmサンプルについての応力×歪み曲線を例示する。
図17】[0019]図17は、倍率500×におけるBOPP/AM10/GOH20/MFCの顕微鏡写真を示し、(A)MFC1%、(B)MFC2%および(C)MFC3%である。
図18】[0020]図18は、倍率500×におけるLLDPE/AM10/GOH20/MFCの顕微鏡写真を示し、(A)MFC1%、(B)MFC2%および(C)MFC3%である。
【0008】
[0021]図17および18は、(A)、(B)および(C)において観察される通り、1~3%で変化するMFCパーセンテージの、それぞれ、AM10/GOH20/MFCでコーティングされたBOPPおよびLLDPEフィルムの表面を示す。
図19】[0022]図19は、倍率10,000×におけるLLDPE/AM10/GOH20/MFC破断の断面顕微鏡写真を示し、(A)MFC2%および(B)MFC3%である。
図20】[0023]図20は、倍率250×におけるLLDPE/AM10/GOH20/MFC2/MMT顕微鏡写真を示し、(A)MMT1%および(B)MMT2%である。
【0009】
[0024]図20は、AM/GOH/MFC/MMT懸濁液でコーティングされたサンプルについて得られた顕微鏡写真を示す。
図21】[0025]図21は、コーティング層中のMMTを定量するためのAM/GOH/MFC/MMTサンプルについてのエネルギー分散分光法、EDSの結果を提示する。
図22-23】[0026]図22~23は、2つの配合物の粘度の変動を示し、配合物は何れも、デンプンに関して25重量%のMFCを有するが、ゲル/溶媒比に従って、異なる量の溶媒に希釈されている。
【発明の詳細な説明】
【0010】
[0027]本発明は、加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCを含むバリア組成物、ならびにバリア組成物を生成する方法、およびたとえば、バリア組成物および担体層を含む多層構造におけるその適用に関する。バリア組成物を含む多層構造を作製する方法もまた開示され、これは、多層構造を含む物品を得るために適用されうる。
【0011】
[0028]加工または未加工デンプンは、低コスト成分であり、良好なOバリア特性を有する材料として文献において研究されているが、吸水に対してセルロースと同じ感受性を有する。
【0012】
[0029]加工または未加工デンプンは、2種の天然ポリマーであるアミロースおよびアミロペクチンを含む。アミロースは、α-(1→4)結合によって結合したD-グルコースユニットによって形成された本質的に直鎖状の構造を有するポリマーである。アミロペクチンは、α-(1→4)結合に加えて、分岐点においてα-(1→6)結合によって形成された分岐状構造を有するポリマーである。アミロースとアミロペクチンとの比は、加工または未加工デンプンの植物源(キャッサバ、トウモロコシ、ジャガイモ、コムギなど)に依存する。一般に、アミロペクチンは、加工または未加工デンプンの主構成成分である。好適な加工または未加工デンプン源の例は、中でも、リョクトウ、ヒシの実、サツマイモ、ワキシーコーン、キャッサバ、ジャガイモ、コムギおよびトウモロコシ、紅イモ、モロコシ、ソラマメ、コメ、アボカド種子、竹、ババスヤシである。
【0013】
[0030]加工または未加工デンプンは、やはり植物源に依存する様々なモルホロジーおよびサイズの半結晶微粒の粉末としてとして現れる。さらに、これらの粒子は、破壊されて、加工または未加工デンプンが生分解性配合物、たとえば、グルー、ゲルおよびフィルムに変換されうる。加工または未加工デンプンの破壊処理は、添加剤および水を機械的にかき混ぜながら加熱し、せん断し、または可塑化することによって実施される。
【0014】
[0031]本発明は、可塑剤を含む。好適な可塑剤は、グリセロール、1-エチル3-メチルイミダゾリウムアセテート、ソルビトール、トリエチレングリコール、グルコース、尿素、イェルバ・マテ抽出物、フタル酸ジエチル、n,nビス(2-ヒドロキシエチル)ホルムアミド、ポリ(ビニルアルコール)、キシリトールまたはそれらの混合物から選択されうる。好ましくは、可塑剤はグリセロールである。
【0015】
[0032]ナノフィブリル化セルロースとしても公知のミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、一次または二次植物細胞またはペリクル(バクテリアセルロースの場合)を含有する、壊れ、ほどけたセルロースから単離されうるセルロースミクロフィブリル(またはセルロースナノフィブリル)で構成された材料を記載するために使用される用語である。これらのセルロースミクロフィブリルは、典型的には、3~70ナノメートルの直径(数百ナノメートルに達しうる)および広範囲にわたって変動しうるが、通常、数マイクロメートルと測定される長さを有する。水性MFC懸濁液は擬塑性であり、ある特定のゲルまたは濃厚な(粘性)流体でも観察される特性を示し、すなわち、それらは、通常の条件下で濃厚(粘性)であるが、かき混ぜられ、かき混ぜられ、または応力を加えられた場合、経時的に流動する(希薄になり、それほど粘性でなくなる)。この特性は、チキソトロピーとして公知である。MFCは、均質化、ミリング、高圧および高温、高速衝撃微少溶液操作または精製によりセルロース含有源から得、単離することができる。
【0016】
[0033]任意の種類のミクロフィブリル化セルロース(MFC)を、本発明において使用することができる。したがって、セルロース、したがって、ミクロフィブリル化セルロースの由来に関して特定の制限はない。セルロースミクロフィブリルの原材料は、任意のセルロース材料、特に、木材、一年生植物、綿、亜麻、藁、ラミー、バガス(サトウキビからの)、好適な海藻、ジュート、テンサイ、柑橘類、食品加工産業もしくはエネルギー作物からの廃棄物、またはバクテリアもしくは動物、たとえば、被嚢類由来のセルロースでありうる。好ましくは、針葉樹、堅木の何れか、またはその両方(混合物中)由来の木材から得られたセルロースが原材料として使用される。さらに、好ましくは、堅木が、一種類の原材料、または多種類の軟木の混合物として使用される。
【0017】
[0034]セルロースミクロフィブリルの表面の化学変性もまた適用でき、セルロースミクロフィブリルの表面の官能基、より特には、ヒドロキシル官能基の様々な可能な反応によって、好ましくは、酸化、シリル化反応、エーテル化反応、イソシアネートとの縮合、アルキレンオキシドとのアルコキシル化反応、またはグリシジル誘導体との縮合もしくは置換反応によって達成されうる。化学変性は、脱フィブリル化工程の前または後に行われうる。
【0018】
[0035]本発明の第1の態様は、少なくとも1種の加工または未加工デンプン、加工または未加工デンプンの質量に対して10~30重量%の可塑剤、および加工または未加工デンプンの質量に対して1.1~25.0重量%のMFC、好ましくは1.1~3.9重量%のMFCを含むバリア組成物である。
【0019】
[0036]一側面では、バリア組成物は、加工または未加工デンプンの質量に対して0.1~5.0重量%の、ベントナイト、ハロイサイト、バーミキュライト、カオリン、アルミノシリケートおよびモンモリロナイトから選択される粘土、好ましくはモンモリロナイトを含みうる。
【0020】
[0037]本発明の第2の態様は、組成物の総質量に対して75~90重量%の加工または未加工デンプン、組成物の総質量に対して9~22.4重量%の可塑剤、および組成物の総質量に対して0.9~2.9重量%のMFCを含むバリア組成物である。
【0021】
[0038]また一側面では、本発明によるバリア組成物は、組成物の総質量に対して0.9~1.5重量%の、ベントナイト、ハロイサイト、バーミキュライト、カオリン、アルミノシリケートおよびモンモリロナイトから選択される粘土、好ましくはモンモリロナイトをさらに含みうる。
【0022】
[0039]本発明の一態様は、バリア組成物を生成する方法であって、
a)溶液の総質量に対して10~20重量%の加工または未加工デンプン、溶液の総質量に対して0.9~4.7重量%の可塑剤、および溶液の総質量に対して1.0~3.1重量%のMFCを含む、加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCの水性分散液を用意すること;
b1)撹拌することによって、加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCの水性分散液を均質化すること;
b2)加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCの水性分散液を、80~85℃に1時間加熱すること;
c)加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCの水性分散液を、撹拌下で室温に冷却すること;
d)任意に、水を添加して、加熱前に測定した通りの溶液の初期値に調整すること
を含む、方法である。
【0023】
[0040]工程b1)撹拌することによって、加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCの水性分散液を均質化すること、ならびにb2)加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCの水性分散液を、1時間で80~85℃に加熱することは、別々にまたは同時に行われうることに留意すべきである。同時の場合、均質化は加熱と同時に行うことができ、均質化は、より短い場合があり、さらには、加熱時間全体を通して断続的に生じる場合がある。
【0024】
[0041]例として、加工または未加工デンプンの水性分散液が用意され、続いて、可塑剤が添加される。次いで、混合物は80~85℃で約1時間撹拌および加熱される。均質化後、溶液は冷却され、任意に、水の量が初期値に調整されて、組成物の総質量に対して75~90の加工または未加工デンプン、9.0~22.4%の可塑剤、および0.9~2.9%のMFCの割合が維持される。
【0025】
[0042]さらに、分散という用語が一般に使用され、これは、水不溶性物質の分散と水溶性物質の溶解の両方を包含することが認識される。このように、MFCは、加工または未加工デンプンおよび可塑剤の水性分散液に導入された場合、事前分散液の形態でありうる。この場合、事前分散液を生成するのに使用される水は、組成物中の全水から差し引かれる。例として、全組成物中で使用される水を100%とすると、45%の水が事前分散液を形成するのに使用される場合があり、これが、加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCの水性分散液の水の最終量の55%を既に含む加工または未加工デンプンおよび可塑剤の水性分散組成物に添加される。
【0026】
[0043]したがって、本発明のバリア組成物は、多層構造の製造または生成に使用することができる。これに関して、本発明はまた、多層構造のバリア組成物を使用する。一側面では、多層構造は、酸素感受性生成物であってもよい生成物を保持するための可撓性の包装を形成するように積層されたフィルムである。
【0027】
[0044]したがって、本発明によるバリア組成物を生成する方法は、工程a)において、さらに0.1~5%の粘土、好ましくはモンモリロナイトを含んでもよい。
【0028】
[0045]本発明の第4の態様は、バリア組成物を含む多層構造であって、
[0046]a)ポリマー、複合体、金属、合金、ガラス、シリコン、セラミック、木材および紙からなる群から選択される担体層、ならびに
[0047]b)第1の層の少なくとも一部に堆積された可塑剤およびMFCベースのバリア組成物の層
を含み、バリア組成物が、
i. 加工または未加工デンプン、
ii. 可塑剤、および
iii. MFC
を含むことを特徴とする、多層構造である。
【0029】
[0048]バリア組成物を含む多層構造のバリア組成物は、70~90重量%の加工または未加工デンプン、加工または未加工デンプンの質量に対して10~30重量%の可塑剤、および加工または未加工デンプンの質量に対して0.1~10重量%のMFCを含有してもよい。さらに、バリア組成物は、加工または未加工デンプンに対して0.1~5重量%の粘土、好ましくはモンモリロナイトを含んでもよい。
【0030】
[0049]多層構造の担体層がポリマーを含む場合、これは、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリマー(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテトラフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-バレレート)(PHBV)、それらのブレンド、複合体およびナノ複合体、または多層もしくは混合物であるそれらの組合せから選択されてもよい。
【0031】
[0050]したがって、本発明の多層構造は、包装の製造または生成に使用することができる。これに関して、本発明はまた、包装において多層構造を使用する。一側面では、包装に使用される場合、多層構造により、酸素感受性生成物であってもよい生成物の包装が可能になる。
【0032】
[0051]本発明の第5の態様は、バリア組成物を含む多層構造を生成する方法であって、
a)ポリマー、複合体、金属、合金、ガラス、シリコン、セラミック、木材および紙からなる群から選択される担体層を用意すること;ならびに
b)担体層の面に、第1の層の少なくとも一部に配置された、加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCをベースとするバリア組成物の層を堆積することであり、バリア組成物が、
i. 加工または未加工デンプン、
ii. 可塑剤、および
ii. MFC
を含む、堆積すること、
c)多層を乾燥させて、多層構造を得ること
を含むことを特徴とする、方法である。
【0033】
[0052]任意に、加工または未加工デンプン、可塑剤、およびMFCをベースとするバリア層の組成物はまた、粘土、好ましくはモンモリロナイトを含有してもよい。
【0034】
[0053]したがって、本発明の目的である、多層構造を生成する方法のバリア組成物は、全組成物の質量に対して75~90重量%の加工または未加工デンプン、組成物の総質量に対して9~22.4重量%の可塑剤、および組成物の総質量に対して0.9~2.0重量%のMFCを含む。さらに、バリア組成物は、0.9~1.5重量%の粘土、好ましくはモンモリロナイトを含んでもよい。
【0035】
[0054]好ましくは、担体層の面は、加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCをベースとするバリア組成物層の堆積前にコロナ処理に供される。
【0036】
[0055]バリア組成物を担体層に堆積する方法はいくつか存在する。多層フィルムの生成、および後に多層包装の生成は、異なる処理を含み、これらは、多くの場合組み合わせられて、所望の特性に関する包装の最終構造に達する様々な材料の組合せが可能になりうる。たとえば、好適な多層フィルムを得るための生成法は、押出、共押出、積層、押出と組み合わせた積層、溶液もしくは液体媒体中の懸濁液(コーティング)からの層のコーティングおよび/もしくは堆積、フレキソ印刷、ならびに輪転グラビア印刷である。
【0037】
[0056]たとえば、押出法は、特定の機器においてプラスチック材料を加熱および溶融することを含み、この機器は、溶融プラスチックを、冷却した後、所望のプロファイル、たとえば、フィルム、シート、チューブなどが得られるマトリックスに方向付ける。多層構造を得るために、押出を介して他の材料を組み合わせる必要がある。この場合、処理は共押出として公知であり、これは、別々に加熱および溶融される2種以上の異なるプラスチックの同時処理からなる。キャスティングは、特定の生成物としてマトリックス中で組み合わせられ、多層プラスチックフィルムが得られる。多層フィルムを押出するための2つの方法は、フラットフィルム押出および管状フィルム押出(吹込み)である。
【0038】
[0057]フラットフィルム押出の場合、多層キャスティングは、スリットダイを通過し、その後冷却され、巻き取られた後、フィルム形状を取る。
【0039】
[0058]このプロセスにおいて、異なるプラスチック粒を処理してフィルムまたはシートを生成する3つの押出機が存在する。たとえば、「A」、「B」および「C」プラスチックが使用される場合、フィルムまたはシートは、ACBCA構造を有してもよい。たとえば、「A」はLDPE、「C」は接着層、および「B」はEVOHでありうる。たとえば、キャスティング「A」および「C」は、最初に分割され(その結果、各々2つの別の層を形成しうる)、次いで、組合せアダプターまたは動力ブロックにおいてキャスティング「B」と一緒に結合されうる。
【0040】
[0059]別のフラットフィルム押出構成は、キャスティングが押出機を出、材料が吹込みを介して冷却され、フィルムが得られるように材料を成形する一組のローラーに向かった後に得ることができる。
【0041】
[0060]管状フィルム共押出技術において、2種以上の樹脂が、マトリックスを通して押出され、キャスティングは、環形状マトリックスを出る直前に一緒にされる。溶融塊は、送風によって内部膨張され、数メートルの高さに引き上げられ、2つのローラーを使用して成形される。ローラー間の距離によりシステムは閉じられ、その結果、気圧が内部に加えることができ、材料を巨大な気泡に吹き込む。同時に、気泡は、気泡または「管」の外側に送風することによって冷却される。フィルム厚は、膨張比、すなわち、マトリックス直径に比較した気泡幅によって、およびローラーの引抜速度によって制御される。ローラーが細くなると気泡が割れ、次いで、同じ方法で単層フィルムとして処理される。製造業者により、吹込みによる管状フィルム押出技術を使用して、最大11層のフィルムが作製されうることが公知である。樹脂は、マトリックスを出る直前まで分離したままであるため、樹脂のレオロジーを組み合わせることはフラットフィルム押出法におけるほどには重要ではない。
積層物
[0061]共押出は、プラスチックの2つ以上の層を、それらの粒状形態で開始して、組み合わせることができる。積層処理は、2種以上の材料の一方がフィルムとして既に予備形成されている場合に、それらを組み合わせるために必要であり、次いでそれは、非プラスチック材料、たとえばアルミニウムを含む可能性のある基材として役立つ。積層物の2つの例として、押出および接着が、多層を得るために挙げられる。
【0042】
[0062]押出積層において、溶融ポリマーは、組み合わせられることになる2つの基材間でフラットフィルム形式に押出される。次いで、3つの層は、冷却ローラーでプレスされ、フィルムの形態の押出ポリマーは硬化し、すべての層が一緒に結合する。端部をトリミングした後、積層物は圧延される。
【0043】
[0063]より迅速な生成時間およびプラスチックフィルムベースの構造(アルミニウム積層物を含む)のために、多くの場合、接着積層が使用される。この種類の積層において、溶媒または水ベースの接着コーティングが第1の基材に適用され、次いで、このコーティングされた基材は、オーブンに通され、そこで温風が吹き込まれて溶媒または水が乾燥する。
【0044】
[0064]オーブンを出る際、接着剤が溶媒の除去に起因して乾燥するように、加熱プレスローラーが使用されて、二次ネットワークに結合される。得られた積層物は冷却ローラー(roll)で冷却されて、接着剤粘度が増加し、このため、「乾燥結合積層」と呼ばれ、次いでこれは、圧力下で圧延されてウェブ分離の機会は最小になる。
連続キャスティング
[0065]特定の機能特性を提供するために様々なコーティングが多層包装で使用される。多くは、水性分散液から適用され、これは、乾燥および融合されて薄膜が形成される。これらのコーティングは明らかに異なる機能、たとえば中でも、包装構造の機械的保護、堆積された材料およびその特性によるバリア剤、異なる接着特性を有する二層間の相互作用を促進する接着剤を有しうる。この処理は、連続キャスティングと呼ばれる、初期プロトタイプを製造するためのプロジェクトにおいて本発明者らが使用したものに最も近い。
【0045】
[0066]好ましくは、連続キャスティングコーティングが、本発明の目的である、多層構造を生成する方法において使用される。
【0046】
[0067]本発明の第6の態様は、本発明によるバリア組成物からなる多層構造を含むことを特徴とする物品であって、フィルム、シート、コーティング、成形もしくは造形(shaped)物品、多層積層物中の層、フィラメント、繊維、ヤーン、布、衣類または不織布であり、バリア組成物を含む多層構造が、製品にO透過バリアを設けることを特徴とする、物品である。
【0047】
[0068]本発明の第6の態様は、2つ以上の層を含むO不透過性構造であり、層の少なくとも1つは、加工または未加工デンプン、可塑剤およびMFCを含むO透過バリア組成物を含む層である。
実験による試験
[0069]プラスチックフィルムコーティングを、加工または未加工デンプン、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)およびモンモリロナイト粘土(MMT)の層を用いて調製した。
【0048】
[0070]工程の具体的な目的:加工または未加工デンプン/MFCおよび加工または未加工デンプン/MFC/MMTの層間の、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のプラスチックフィルムへの理想的な接着条件を評価すること。
材料
[0071](i)ミクロフィブリル化セルロース懸濁液(MFC);(ii)キャッサバデンプン1型(加工または未加工デンプンの供給源);(iii)モンモリロナイト粘土鉱物(MMT)、(iv)純度99.5%の可塑剤;(v)何れも厚さ20μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)および二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムを使用した。
実験手順
加工または未加工デンプン溶液の調製
[0072]加工または未加工キャッサバデンプンの水溶液を、溶液の総質量に関する質量基準(m/m)で10%の濃度で調製した。300gの脱イオン水を500mLビーカーに添加した。30gの加工または未加工デンプン(事前に乾燥させていない)を、この量の水に添加し、セットを室温で5分間、一定撹拌下に置いて均質化させた。混合物を80~85℃に加熱し、強く撹拌しながら加熱下で1時間維持して、加工または未加工デンプンの可溶化を行った。可塑剤を含む水浴を、処理全体を通して使用した。1時間後、溶液を穏やかに撹拌しながら室温に冷却した。セットを秤量し、ある量の脱イオン水を添加して、加熱前に測定した通りの溶液の初期値に調整した。
【0049】
[0073]加工または未加工キャッサバデンプン溶液を10%(m/m)の濃度で調製した後、可塑剤を、加工または未加工デンプンの質量に関する質量基準で20%の濃度で添加した。可塑剤の濃度は加工または未加工キャッサバデンプンの量に関し、たとえば、10%加工または未加工キャッサバデンプン溶液(30g)に、溶液を冷却した後に、20%可塑剤である6gの量の可塑剤を添加した。可塑剤を添加した後、すべての溶液を5分間均質化させた。グルーの外見を有する透明溶液が得られ、これを、AM10/GOH20(AM10=溶液中の加工または未加工キャッサバデンプンの質量の最終濃度(10%m/m)、GOH20=加工または未加工デンプンの初期質量に関する溶液中の可塑剤の最終濃度(20%m/m))と識別した。
【0050】
[0074]加工または未加工デンプン溶液+ミクロフィブリル化セルロース(MFC)の調製
[0075]配合物の総質量に関して質量基準(m/m)で1、2および3%の濃度でMFCを組み込んだ加工または未加工キャッサバデンプンの3つの配合物を調製した。MFC懸濁液の水質量は配合物の総水質量(300g)から差し引いた。たとえば、1%の場合、175gの脱イオン水を、30gの加工または未加工デンプン(事前に乾燥させていない)、および72gは水、3gはミクロフィブリル化セルロースに対応する75gのMFC懸濁液と共に500mLビーカーに添加した。セットを室温で5分間、一定撹拌下に置いて均質化させた。混合物を80~85℃に加熱し、強く撹拌しながら加熱下で1時間維持して、加工または未加工デンプンの可溶化を行った。可塑剤を含む水浴を、処理全体を通して使用した。1時間後、溶液を穏やかに撹拌しながら室温に冷却した。セットを秤量し、ある量の脱イオン水を添加して、濃度の初期値に調整した。次いで、6gの可塑剤を添加し、混合物を5分間撹拌して均質化させた。
【0051】
[0076]溶液は、AM10/GOH20/MFC1(AM10=溶液中の加工または未加工キャッサバデンプンの最終質量濃度(10%m/m);GOH20=加工または未加工キャッサバデンプンの質量に関する溶液中の可塑剤の最終濃度(20%m/m);MFC1、MCF2およびMCF3=溶液の総質量に関するMFC濃度(それぞれ1%m/m、2%m/mおよび3%m/m))と識別した。表1は、この実験段階で生成されたMFCを含有するすべての配合物の組成をまとめている。
【0052】
【表1】
【0053】
加工または未加工デンプン溶液+ミクロフィブリル化セルロース(MFC)+モンモリロナイト(MMT)の調製。
【0054】
[0077]MFCを含む加工または未加工キャッサバデンプンの2つ配合物を調製し、MMTの量を、配合物中の加工または未加工デンプンの総質量に関して質量基準(m/m)で1および2%の濃度で添加し、1%溶液中の加工または未加工デンプン10g毎に0.1gおよび2%MMTを含有する溶液については0.2gを添加した。
【0055】
[0078]最初に、この量のMMTを、ビーカー中、50mlの蒸留水に添加し、超音波チップで、機器の総出力の60%で15分間維持した。
【0056】
[0079]次いで、加工または未加工デンプン(10%)、MFC(2%)およびMMTを含有するセットを、室温で5分間、一定撹拌下に置いて均質化させた。混合物を80~85℃に加熱し、強く撹拌しながら加熱下で1時間維持し、加熱することなく穏やかな撹拌下で、セットが室温に冷却されるまで維持し、可塑剤を添加し、次いで、混合物を5分間撹拌して均質化させた。
【0057】
[0080]溶液を、AM10/GOH20/MFC2/MMT1およびAM10/GOH20/MFC2/MMT2、図22(MMT1およびMMT2は、サンプル中1および2%のMMTの量に対応する)と識別し、表2に提示する。
【0058】
【表2】
【0059】
[0081]MFCを含む加工または未加工デンプン配合物の別の2つの例を調製した。図22によると、第1の配合物は4.0gの加工または未加工デンプン、1.0gのMFC、0.4gのグリセロールおよび94.6gの水、つまり、加工または未加工デンプンの質量に関して25重量%のMFCを含有した。
【0060】
[0082]図23によると、第2の配合物は、2.0gの加工または未加工デンプン、0.5gのMFC、0.2gのグリセロールおよび97.3gの水、つまり、加工または未加工デンプンの質量に関して25重量%のMFCを含有した。
連続キャスティングによるプラスチックフィルムのコーティング
[0083]BOPPおよびLLDPEプラスチックフィルムを、図1に示されるパイロットTable Topp Tape Caster(TTC)積層ユニットを使用して、加工または未加工デンプン/MFCおよび加工または未加工デンプン/MFC/MMT配合物でコーティングした。TTCユニットの動作の基本原理は、モバイル基材上への溶媒配合物の積層であり、これは、加熱金属ベースおよび温風対流で構成される乾燥ゾーンを通して所定の速度で駆動される。
LLDPEおよびBOPPプラスチックフィルムを加工または未加工デンプンおよびMFC溶液でコーティングするための工程を以下に記載する。
【0061】
[0084]図2は、TTCパイロットユニットの積層デバイスを例示しており、以下の図が示される:(A)溝、積層ナイフおよび目盛り付きドラムを強調した、積層デバイスの側面および正面図、ならびに(B)モバイルプラスチック基材(BOPPおよびLLDPE)への加工または未加工デンプン+MFC溶液の湿潤シートの形成の図。
LLDPEおよびBOPPプラスチックフィルムを加工または未加工デンプンおよびMFC溶液でコーティングするための工程を以下に記載する。
【0062】
[0085]第1の工程 - 加工または未加工デンプン+MFC配合物の積層:TTCユニットに、加工または未加工デンプン+MFC配合物を、積層デバイスの溝に供給し、積層ナイフを使用してBOPPまたはLLDPEフィルムにわたって拡げた(図2)。フィルムコーティング処理について、フィルムの幅およそ25cm×長さおよそ140cmを被覆するのに十分な量の配合物を、ナイフの溝に添加した。コーティング堆積速度を3mm/秒(12cm/分)で、最初は厚さ0.05mm、続いて厚さ0.02mmおよび0.01mmで設定した。湿潤シートは、溝に含有された溶液を、プラスチックフィルム(基材)の移動により引くことによって形成する。コーティング試験を、2mm/秒(7.2m/時)の速度で標準化することによって実施した。湿潤シートは、すべての堆積厚に関してLLDPEおよびBOPPフィルムに対して良好な展延を示し、乾燥処理前に不良は示さなかった。
【0063】
[0086]第2の段階 - 加工または未加工デンプン/MFC配合物の湿潤シートの連続乾燥:湿潤シートを、電気抵抗および温風対流システムによって加熱した金属ベースで構成される乾燥ゾーン(図3)を通して輸送した。すべての場合に、金属ベースおよび気流温度は、40℃(非MFC配合物)および50℃(MFC配合物)に調節した。この場合、金属ベースと接触した湿潤シートを加熱し、温風を強制対流させることによって、水を排除し、プラスチックフィルム上に加工または未加工デンプン+MFCの薄層を形成した。乾燥ゾーンにおける湿潤シートの滞留時間は、プラスチックフィルムの引抜速度によって定義される。
【0064】
[0087]図3は、TTCパイロットユニット中の加工または未加工デンプン溶液およびMFCの湿潤シートの乾燥画像を例示する。
【0065】
[0088]MFCを含有する配合物に関して、コーティング処理は効率的であり、湿潤シートにおける堆積欠陥または不良を引き起こさなかった(図4)。乾燥処理は、AM10/GOH20を有するサンプルについて示される通り、BOPPおよびLLDPEフィルムの収縮を引き起こさなかった。
【0066】
[0089]第3の段階 - 加工または未加工デンプン/MFCでコーティングしたプラスチックフィルムの巻き取り:湿潤シートの乾燥が完了した後、コーティングされたプラスチックフィルム(多層フィルム)を、TTCユニットの最終マンドレルで巻き取った(図5)。乾燥後、フィルムをプラスチック包装中に保存し、制御温度および湿度(25℃および54%相対湿度)下でコンディショニングして、機械特性の特徴決定試験を実施した。光学特性を、コンディショニングしていないサンプルから決定した。サンプルは、表1に記載される通りに識別した。
【0067】
[0090]上記の処理に基づいて、表4に記載される通り、4つの異なる群に分けた12セットのサンプルを、調製した。
【0068】
【表3-1】
【0069】
【表3-2】
【0070】
【表3-3】
【0071】
光学特性の決定
[0091]光学特性を決定するために、フィルムを、ASTM D 1003-07に従って、表面欠陥のない各辺50mmの正方形試験片に切断した。試験は、較正後、室温で、BYK Gardner機器、モデルHaze-Gard Plusを使用して、2つの独立した試験片で4回の測定からの8回反復で実施した。透過度(T、%)、ヘーズ(H、%)および透明度(C、%)値を決定した。Tパラメーターは、入射光線に関してサンプルを直接通過した光の総パーセンテージであり、これは、サンプルの完全透過性に関連する。Hパラメーターは、2.5°超の偏向でサンプルを通過する光のパーセンテージとして定義され、これは、コントラストの損失に関連する。Cパラメーターは、2.5°未満の偏向でサンプルを通過する光のパーセンテージであり、これは、サンプルを通して詳細を見ることができる程度と関連する。
一軸引張試験
[0092]得られたフィルムで一軸引張試験を実施するために、Instronブランド製一軸試験機、モデル5569を、引張、圧縮、曲げおよびクリープ試験のために使用した。試験片を、ロータリーナイフカッターで、幅24mm、長さ100mmおよびポリマー基材に堆積された層に従って変動する厚さの寸法を有するテープ型の試験片として作製した。すべての試験片は、試験を開始する前に少なくとも48時間、相対湿度および制御温度(50%RHおよび25℃)の環境でコンディショニングした。試験は、ASTM D882規格に記載される条件下、10mm/分の延伸速度を使用して実施した。フィルムの以下の機械特性;弾性率、降伏時の張力、破断時の極限強度、ならびに降伏および破壊時の変形を決定することが可能であった。
走査型電子顕微鏡法
[0093]コーティングされたフィルムサンプルのモルホロジーを、電子顕微鏡FEIモデルS50を使用して、走査型電子顕微鏡法によって分析した。顕微鏡写真の倍率は、250~10,000倍の範囲であり、サンプルの表面を分析して、堆積された層のMFCおよびMMTの分布、ならびに接着を評価した。
に対するパリア特性
酸素透過率
[0094]酸素透過率 - TPOを、透過ガスとして純酸素を用いて動作する、MOCON製OXTRAN機器、モデル2/22において、ASTM D 3985(2017)規格に記載される手順に従って、電量的方法によって決定した。試験を23℃乾燥で実施し、試験片のコンディショニングを、23℃および乾燥で(シリカゲルによる除湿環境)で、最短で48時間実施した。各試験片の有効浸透面積は5cmであった。結果を、2つのフィルム表面間での1atm酸素分圧勾配に関して修正した。この勾配は、フィルムを通した酸素透過の推進力に対応する。
【0072】
[0095]TPOが決定されたら、酸素透過係数(PO)を、以下の通り透過率から計算した:
PO=TPO.e/p
(式中、
PO=酸素透過係数(mL(CNTP).mm/m.日.atm)、
TPO=酸素透過率(mL(CNTP)/m.日)、
e=平均試験片厚(mm)
p=担体ガスチャンバー(N+H)中Oの分圧はゼロと考えられるため、拡散セルの透過ガスチャンバー中の酸素の分圧)。
得られた結果
光学特性
[0096]様々な厚さおよびMFC濃度を有する加工または未加工デンプン/可塑剤/MFC層の堆積後に得られたすべてのフィルムの光学特性を評価した。評価した特性は、透過度、ヘーズ、および透明度であった。それらを、厚さ50μmの純粋なLLDPEおよびBOPPフィルム、ならびに多層高バリアLLDPE/PVDC/EVOHフィルムの特性と比較した。
【0073】
[0097]異なる湿潤シート厚さ(0.01、0.02および0.05mm)およびMFCの濃度でのAM10/GOH20、AM10/GOH20/MFCおよびAM10/GOH20/MFC/MMT配合物でコーティングされたLLDPEフィルムの視覚的外見が、図28~30に例示されている。一般に、何れの配合物もLLDPEフィルムを不透明にしなかった。フィルムは、LLDPEフィルムに適用されたMFC濃度および湿潤シート厚の増加に伴って、高透明からわずかに半透明の範囲であった。
【0074】
[0098]異なる湿潤シート厚さ(0.01、0.02および0.05mm)およびMFCの濃度でのAM10/GOH20およびAM10/GOH20/MFC配合物でコーティングされたBOPPフィルムの視覚的外見を評価した。LLDPEに関して観察される傾向と同様に、何れの配合物もBOPPフィルムを不透明にはしなかった。透明度の損失はごくわずかであり、MFC濃度は増加し、フィルムに適用された湿潤シートの厚さは増加した。
【0075】
[0099]一般に、LLDPEベースの多層フィルムは、LLDPEフィルムに適用されたコロナ処理に依存して、良好な均質性、および加工または未加工デンプン/MFC層との接着を示す。図6~8は、LLDPEフィルムの透過度(T)、ヘーズ(H)および透明度(C)に対する、異なる濃度のMFCを有する加工または未加工デンプン/MFC配合物の湿潤シート厚の効果を示す。LLDPE/PVDC/EVOHフィルムの光学パラメーターもまた、比較目的に含まれた。すべてのデータを表5にまとめる。
【0076】
[0100]標準LLDPE(非コーティング)の光学パラメーターは、T=91.0±0.1%、H=7.2±0.3%およびC=94.7±0.1%であった。LLDPE/EVOH/PVDC高バリアフィルムのパラメーターは、T=90.0±0.1%、H=19.0±0.1%およびC=70.2±0.5%であった。図18に見られる通り、AM10/GOH配合物でコーティングした後、パラメーターは、最低湿潤シート厚(0.01mm)についてT=91.1±0.1%、H=10.0±0.4%およびC=77.4±1.8%、ならびに最高湿潤シート厚(0.05mm)についてT=90.3±0.4%、H=14.7±0.7%およびC=60.6±0.6%に変化した。したがって、観察された唯一の効果は、標準LLDPEフィルムと比較した透明度の損失である。他方、最高湿潤シート厚値から得られた多層フィルムについての透明度パラメーターは、LLDPE/EVOH/PVDC高バリアフィルムの透明度パラメーターとほぼ同様であった。これは、透明度の損失が、より良好なOバリアフィルムを必要とする適用の障害ではないことを示す。
【0077】
[0101]図6~8はまた、LLDPEフィルムの光学パラメーターに対するAM10/GOH/MFC配合物によるコーティングの効果も示す。最低濃度のMFC(1%)を含有する配合物および最低湿潤シート厚(0.01mm)でのコーティングを考察すると、パラメーターは、T=89.9±0.1%、H=40.1±0.5%およびC=62.7±1.2%であった。これと比較して、最高濃度のMFC(3%)および最高湿潤シート厚(0.05mm)の場合、パラメーターは、T=85.9±0.1%、H=80.8±0.9%およびC=12.7±0.3%であった。最高濃度のMFCを使用した場合、ほぼ70%のヘーズパラメーターの相当な増加がある。結果は、ヘーズのこの増加が、適用された湿潤シート厚とは無関係であったことを示す。1%および2%MFC濃度についてのヘーズ値は、すべての場合に40および80%であった。
【0078】
[0102]したがって、MFCでコーティングされたLLDPEフィルムの光学品質の損失があったということができる。他方、高濃度のMFC(3%)中加工または未加工デンプン/MFCでコーティングされたフィルムのヘーズパラメーターのみは、LLDPE/EVOH/PVDC高バリアフィルムのヘーズパラメーターよりも低かった。これは、1および2%MFCでコーティングされたフィルムが、LLDPE/EVOH/PVDCフィルムのバリア特性に近いバリア特性を示す場合、光学品質の点で、この実験段階で開発された多層フィルムの適用への障害はないことを示す。
【0079】
【表4-1】
【0080】
【表4-2】
【0081】
【表4-3】
【0082】
[0103]図9~11は、標準BOPPフィルムおよび加工または未加工デンプン/MFC配合物でコーティングした後についての透過度(T)、ヘーズ(H)および透明度(C)のデータを示す。標準BOPP(非コーティング)の光学パラメーターは、T=92.0±0.1%、H=3.6±0.2%およびC=97.6±0.1%であった。AM10/GOH20/MFC1配合物でコーティングした後、0.01mmの湿潤シート厚について、パラメーターは、T=88.0±0.1%、H=57.3±0.4%およびC=40.4±0.1%であった。最高厚(0.05mm)についてのパラメーターは、T=87.3±0.2%、H=65.9±0.8%およびC=21.8±0.6%であった。
【0083】
[0104]AM10/GOH20/MFC3配合物による、つまり、最高濃度のMFC(3%)を含有するBOPPフィルムのコーティングは、0.01mmの湿潤シート厚についてパラメーターT=86.3±0.2%、H=78.8±0,2%およびC=24.0±0.8%となった。最高厚(0.05mm)についてのパラメーターは、T=81.9±0.1%、H=83.0±0.8%およびC=13.0±0.5%であった。
【0084】
[0105]特に標準BOPPと比較して、湿潤シート厚の増加に伴うTのわずかな変動を観察することができる。他方、湿潤シート厚およびコーティング配合物中のMFC濃度の増加に伴って、Hの段階的な増加およびCの減少がある。これは、MFCでのBOPPのコーティングにより、コントラストおよび鮮明さの損失につながることを意味する。
【0085】
[0106]図9~11は、(a)0.01mm、(b)0.02mm、(c)0.05mmの厚さでAM10/GOH20およびAM10/GOH20/MFCでコーティングされたBOPP/0.02フィルムの透過度、ヘーズおよび透明度特性の分布を例示する。
【0086】
[0107]図12は、0.02mmの厚さでAM10/GOH20/MFC2/MMT1およびMMT2でコーティングされたLLDPE/0.02フィルムの透過度、ヘーズおよび透明度特性の分布を示す。(a)LLDPE/0.02、(b)MMT1および(c)MMT2。
【0087】
[0108]図13は、0.02mmの厚さでAM10/GOH20/MFC2/MMT1およびMMT2でコーティングされたBOPP/0.02フィルムの透過率、ヘーズおよび透明度特性の分布を例示する。(a)BOPP/0.02、(b)MMT1および(c)MMT2。
【0088】
[0109]MMT配合物でコーティングされたフィルムは、MFCのみを含有するフィルムと同様の光学特性を示した。透過度(T)について得られた値は、何れもポリオレフィンでコーティングされたMMTを含むサンプルでより高く、これらの後者の2つ場合、より低い値を示すMMTでコーティングされたフィルムでのヘーズ(H)および透明度(C)の値の急な減少はなかった。
機械特性
[0110]一軸引張試験を、ASTM D882規格に記載される条件下で実施した。すべての試験片は、試験を開始する前に少なくとも48時間、相対湿度および制御温度(50%RHおよび25℃)の環境でコンディショニングした。
【0089】
[0111]図14は、一軸引張試験中の試験片を例示する。
【0090】
[0112]図15は、LLDPE/0.02mmサンプルについての張力×変形曲線を例示し、引張試験中の異なる試験片を示し、プラスチックフィルムに堆積されたMFC層が良好な接着および試験中の均一な変形を示す理想的な挙動が、(A)および(B)において観察できる。(C)および(D)では、堆積層は、引張張力に供された場合、フィルム表面から剥がれた。この挙動を示したフィルムは破棄し、それらのデータは試験の統計研究に使用しなかった。
【0091】
【表5-1】
【0092】
【表5-2】
【0093】
【表5-3】
【0094】
[0113]図16は、BOPP/0.02mmサンプルについての張力×変形曲線を例示する。
【0095】
【表6-1】
【0096】
【表6-2】
【0097】
[0114]コーティング層に加工または未加工デンプン溶液のみを添加することにより、純粋なLLDPEと比較した場合、弾性率が効果的に増加した。この挙動はまた、MFCサンプルにおいて観察でき、LLDPEコーティングされたフィルムについてMFC3/0.05サンプルにおいて、ならびにBOPPについてMFC2/0.05mmおよびMFC3/0.01mmにおいてより明らかである。MMTの適用は、濃度と基材の両方について、大幅な増加を示さなかった。
【0098】
[0115]流動応力は、MFC1/0.05mm、MFC2/0.02mmサンプルにおいて純粋なLLDPEで観察されるレベルに近いレベルを示し、MFC2/0.01mm、MFC2/0.05mmおよびMFC3/0.01mmサンプルについてより高かった。MMTを含有するサンプルの場合、MMT2/0.02mmのみが、純粋なLLDPEの値に近い値を示した。BOPPフィルムの場合、MFC2/0.02mm~MFC3/0.05mmのサンプルはすべて、純粋な基材よりも高い降伏張力の値を示し、MFC1、MFC/0.01mmおよびMMTのサンプルにおいて得られた値は、純粋なBOPPのものよりも低かった。
【0099】
[0116]少数のサンプルが、流動伸びについて、純粋な基材よりも高い値を示した。配合物中にMFCを含有するサンプルの場合、MFC1/0.01mmおよびMFC1/0.02mmサンプルのみが、LLDPE/0.02mmについての2.36±0.44の値よりも高い結果を示し、MFC1/0.01mmについて3.72±0.45およびMFC1/0.02mmについて2.50±0.50であった。BOPP/0.02mmに関して、MFC1/0.01mm、MFC2/0.02mmおよびMFC2/0.05mmのみが純粋な基材と同様の値を示した。他のサンプルは、流動伸びについてより低い値を示した。
【0100】
[0117]LLDPEにおいてMMTサンプルで得られた値は、MMT1およびMMT2についてLLDPE/0.02mmに関して、それぞれ7.3および8.1倍高く、また、BOPPコーティングされたサンプルにおいて純粋な基材よりも2.5倍優れた結果も示した。これは、プラスチックフィルムのコーティングにおけるMMTの適用が、この特性の増加に強く寄与しうることを示唆している。
【0101】
[0118]すべてのサンプルは、破断時の張力に関連して純粋な基材よりも低い値を示し、LLDPEについてMFC2/0.01mmおよびBOPPについてMFC3/0.01mmは、コーティングされたフィルムにおいてこの特性について最高の値を示した。
【0102】
[0119]MFCを含有するサンプルは、LLDPEフィルムにおいて、破壊時の伸びについてより高い値を示した。MFC1/0.01のみが、純粋な基材において観察された値よりも低い値を示した。コーティングされたBOPPフィルムの場合、すべてのサンプルがBOPP/0.02mmよりも高い値を示し、0.05mmの厚さのコーティング層を有するフィルムが最高値を示し、これは、この特性を得るためにコーティング層およびMFCのパーセンテージがより大きく寄与しうることを示唆している。
走査型電子顕微鏡法 - SEM
[0120]図17~21は、AM/MFCおよびMMTでコーティングされたBOPPおよびLLDPEのサンプルについて得られた顕微鏡写真を示す。
【0103】
[0121]図17は、BOPP/AM10/GOH20/MFCの顕微鏡写真を示し、(A)MFC1%、(B)MFC2%および(C)MFC3%である。
【0104】
[0122]図18は、LLDPE/AM10/GOH20/MFCの顕微鏡写真を示し、(A)MFC1%、(B)MFC2%および(C)MFC3%である。
【0105】
[0123]図17および18は、(A)、(B)および(C)において観察される通り、1~3%で変化するMFCパーセンテージの、それぞれ、AM10/GOH20/MFCでコーティングされたBOPPおよびLLDPEフィルムの表面を示す。
【0106】
[0124]図19は、LLDPE/AM10/GOH20/MFC破断の断面顕微鏡写真を示し、(A)MFC2%および(B)MFC3%である。
【0107】
[0125]図20は、LLDPE/AM10/GOH20/MFC2/MMT顕微鏡写真を示し、(A)MMT1%および(B)2%である。
【0108】
[0126]図20は、AM/GOH/MFC/MMT懸濁液でコーティングされたサンプルについて得られた顕微鏡写真を示す。すべての配合物は、図17、18および20に示される通り、MFCの良好な分散、ならびに図19に示される通り、基材への良好な接着を示し、表面欠陥、たとえば、MFCおよびMMTのコーティングの欠陥または凝集は起こらなかったことが分かり、配合物へのMMTの添加は、基材へのコーティングの接着を損なわなかったことが観察でき、また、その添加なしに先に試験した配合物同様に、それは効果的に堆積され、サンプルに沿って不良は示されなかった。強調される点は、コーティングの表面でのMMTの存在を詳述する。これらの粒子を、図21に示されるエネルギー分散分光法 - EDS技術および走査型電子顕微鏡法を使用して特定および定量した。
【0109】
[0127]図21は、コーティング層中のMMTの定量のためのAM/GOH/MFC/MMTサンプルについてのエネルギー分散分光法、EDSの結果を提示する。
バリア特性
【0110】
【表7】
【0111】
【表8】
【0112】
[0128]MFCでコーティングされたサンプルは、純粋なLLDPEについて得られた値よりもおよそ1750倍、およびBOPPサンプルについて960倍低いTPO結果を示した。MMT粘土の添加により、これらの値は、さらにいっそう低下する。TPOはサンプルの厚さではなく、サンプルを通って透過するOの量のみを考慮するため、透過係数-POが、純粋な基材と比較したMFCバリア特性の有効性をより正確に比較するために使用されるべきである。示された値は、これらのフィルムをこの特性において、優れた結果を考察することができるメタライズBOPPおよびBOPETのサンプルと競争性のありうるものにすることが観察される。
【0113】
[0129]このように、加工または未加工デンプン溶液の層の堆積およびその後の堆積層の乾燥によるPPおよびPEのポリマー基材間の接着が実証され、ただし、堆積は、コロナ処理を受けた表面で行われることが有利である。しかしながら、加工または未加工デンプン溶液中の可塑剤の存在は、15~20%の濃度の層の分散および接着に好ましいことが認められた。
【0114】
[0130]MFCおよびMMTを加工または未加工デンプン溶液と一緒に使用することにより、基材への溶液の分散は損なわれなかった。しかしながら、加工または未加工デンプンおよびMFCを含有するサンプルにおいて、乾燥処理中に不良が生じ、層の均一性および基材への接着が影響を受けた。
【0115】
[0131]群(III)からのサンプルに関して、MFCを含有する新しい層の堆積は、群(II)からのサンプルに関して分散および均一性のより良好な条件を示し、それは、MMTを含有する同じ群からのサンプルについて変化しなかったが、しかしながら、加工または未加工デンプン(群(I))の層を乾燥させた後には、基材の接着の点で悪化した。
【0116】
[0132]乾燥温度は、後に堆積された層の均一性および接着に影響しなかった。
【0117】
[0133]様々な量のミクロフィブリル化セルロースを含有する混合物中でのキャッサバデンプンの可溶化は効果的であり、すべての混合物は、ミクロフィブリルの良好な分散に加えて、溶解していない塊を示すことなく加工または未加工デンプンの良好な均質化を示した。
【0118】
[0134]ナイフの補助による基材への混合物の堆積処理の場合、それらはすべて、満足のいく分散条件を示し、その結果、それらは、湿潤シートの表面欠陥を示さなかった。配合物へのMMTの添加は、基材に堆積された材料の接着処理を損なわなかった。
【0119】
[0135]乾燥処理に関して、サンプルAM10/GOH20およびAM10/GOH20/MFC1は、処理中に一貫した挙動を示さず、40℃の温度でのセットの収縮に起因して、サンプルAM10/GOH20は、乾燥後にいくらかの表面欠陥を示した、サンプルAM10/GOH20/MFC1は、40℃において許容される挙動を示したが、しかしながら、50℃において、セットは、その組成にミクロフィブリル化セルロースを含まないセットと同じように挙動する傾向があった。しかしながら、それは、乾燥処理後に表面欠陥を示さなかった。
【0120】
[0136]他のサンプルは、50℃において許容される挙動を示し、これは、混合物中のより大量のミクロフィブリル化セルロースが、40℃超の温度で乾燥するのにより効果的であってもよいことを示唆している。
【0121】
[0137]ミクロフィブリル化セルロースを含有するサンプル、ならびにMFCおよびMMTを含有するサンプルの光学特性は、材料のレベルと比較した場合に満足のいく透過度レベルを示した。しかしながら、ヘーズおよび透明度のレベルについては、サンプル中のミクロフィブリルのレベルは、ヘーズの増加、および結果として、透明度レベルの減少に直接影響することが観察でき、MMTの添加量は、これらの特性の何れも損なわなかった。
【0122】
[0138]コーティングされたLLDPEサンプルの場合、引張試験は、コーティング層中のMFCの適用の大きな影響を示した。弾性域での変形に対するフィルムの抵抗の増加を観察することができた、つまり、弾性率またはヤング率の増加が観察された。このフィルムの機械特性の獲得は、コーティング層中のMFCのパーセンテージの増加に比例して増加し、LLDPE/AM10/GOH20/MFC3/0.05サンプルが、LLDPE/0.02に関して弾性率の最高値を有した。MFCを含有するフィルムについて流動張力の増加も観察することができ、この機械特性について、LLDPE/AM10/GOH20/MFC2/0.01サンプルが最高値を有した。破断時の引張強度限界に関して、MFCおよびMMTを含有するすべてのサンプルは、0.01mmの厚さを有するサンプルでの、LLDPE/0.02よりも低い値を示し、これは、コーティングされたサンプルについて、より高い張力値を示した。伸びに関して、0.02mmおよび0.05mmの厚さを有するMFC3サンプルは、それぞれ降伏伸びおよび破断伸びについて最高値を示した。
【0123】
[0139]BOPPサンプルはまた、コーティングされた場合の機械特性に関してMFCの影響を示した。破断時の引張強度値について、サンプルは、平均で、純粋なBOPPサンプルについて得られた値の22.3%の減少を示した。最高値を有するサンプルを、すべてのMFC適用条件、たとえば、MFC1、MFC2およびMFC3について0.01mmの厚さでコーティングした。
【0124】
[0140]得られた弾性率は、純粋なBOPPサンプルの弾性率に関して最大80.6%の大幅な増加を達成した。最高値を有するサンプルは、0.01mmの厚さを有するMFC3であった。得られた最低値は、0.01mmのMFC1に関して、元々のサンプルの値と比較して5.83%の減少であった。
【0125】
[0141]降伏および破断伸びのレベルについて、得られたデータは、両方の場合について元々のサンプルに関して優れており、MFC2/0.02mmおよびMFC1/0.05mmのサンプルは、それぞれ降伏および破断伸びについて最高値を示した。
【0126】
[0142]配合物へのMMTの添加は、2%MMTを含有するすべてのLLDPEおよびBOPPサンプルにおいて弾性率についてのみ、良好な機械特性を示した。1%を含むサンプルは、純粋なポリオレフィンサンプルについて得られた弾性率値よりも低い弾性率値を示した。しかしながら、両方の配合物(1および2%)について、破断時の強度の値は、非コーティングLLDPEおよびBOPPにおいて得られた値よりも低かった。
【0127】
[0143]得られた顕微鏡写真は、すべての提案された配合物についてコーティングの優れた接着を証明し、すべてが、サンプル全体にわたるMFCおよびMMTの良好な分散を示し、コーティングの不良も配合物の成分の凝集も示さなかった。
【0128】
[0144]MFCまたはMFC+MMTを含有するコーティングは、優れたOバリア性能を示した。結果は、メタライズBOPPおよびBOPETフィルムに関するこのコーティングの競争性を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14(A)】
図14(B)】
図14(C)】
図14(D)】
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】