(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】SARS-CoV-2及び他の病原性ウイルスの複製を遮断するためのWNT/β-カテニン経路阻害薬の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230809BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230809BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230809BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/421 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/341 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/426 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/502 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/473 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/336 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20230809BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20230809BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20230809BHJP
C07D 401/14 20060101ALN20230809BHJP
C07D 495/04 20060101ALN20230809BHJP
C07D 263/32 20060101ALN20230809BHJP
C07D 213/56 20060101ALN20230809BHJP
C07D 487/04 20060101ALN20230809BHJP
C07D 473/08 20060101ALN20230809BHJP
C07D 307/36 20060101ALN20230809BHJP
C07D 237/32 20060101ALN20230809BHJP
C07D 221/12 20060101ALN20230809BHJP
C07H 17/07 20060101ALN20230809BHJP
C07D 493/22 20060101ALN20230809BHJP
C07D 311/30 20060101ALN20230809BHJP
C07D 491/052 20060101ALN20230809BHJP
C07D 471/10 20060101ALN20230809BHJP
C07D 215/50 20060101ALN20230809BHJP
C07D 211/96 20060101ALN20230809BHJP
C07D 321/10 20060101ALN20230809BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P31/14
A61P43/00 121
A61K45/06
A61K31/444
A61K31/519
A61K31/421
A61K31/52
A61K31/341
A61K31/19
A61K31/192
A61K31/426
A61K31/502
A61K31/473
A61K31/12
A61K31/7048
A61K31/336
A61K31/353
A61K39/395 T
A61K31/517
A61K31/47
A61K31/4545
A61K31/357
C07D401/14
C07D495/04 105Z
C07D263/32
C07D213/56
C07D487/04 148
C07D473/08
C07D307/36
C07D237/32
C07D221/12
C07H17/07
C07D493/22
C07D311/30
C07D491/052
C07D471/10 101
C07D215/50
C07D211/96
C07D321/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506303
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 CA2021051077
(87)【国際公開番号】W WO2022020967
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507388960
【氏名又は名称】ザ・ガバナーズ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・アルバータ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ホブマン
(72)【発明者】
【氏名】ザイクン・シュ
(72)【発明者】
【氏名】チュン・パン・ウォン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C055
4C057
4C063
4C065
4C071
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB08
4C050CC08
4C050CC18
4C050EE02
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4C063DD12
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4C086ZC75
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4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZC75
(57)【要約】
SARS-CoV-2及び他の病原性ウイルスの複製を遮断するためのWnt/β-カテニン経路阻害薬の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のWnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬を投与する工程を含む又はその工程からなる、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療する方法。
【請求項2】
前記Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬が、IWP-O1、IWP-2、IWP-L6、iCRT3、LGK-974、WIK14、Wnt-C59、ICG-001、IWR-1-endo、シリビニン、NCB-0846、KYA1797K、Foxy-5(Wnt5a模倣ペプチド)、PRI-724、ETC-1922159、PNU-74654、カルノシン酸、ピルビニウム、iCRT-14、スリンダク、SM04755、ファモチジン、NSC668036、E7449、Dvl-PDZドメイン阻害薬II、オラパリブ、ニラパリブ、PJ34 HCl、カプマチニブ、クルクミン、又はゲニステイン、トリプトライドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬が、オウゴニン、Ant1.4Br/Ant1.4Cl、アイパフリセプト、APCDD1、FzM1、Fz7-21、OTSA101、OTSA101-DTPA-90Y、BNC101、ギガントール、サリノマイシン、IGFBP-4、DKN-01、化合物3289-8625、FJ9、NSC668036、ペプチドPen-N3、2X-121、AZ1366、AZ-6102、G007-LK、G244-LM、IWR-1、JW55、JW67、JW74、K-756、MN-64、MSC2504877、NVP-TNKS656、RK-287107、TC-E5001、WIKI4、XAV939、TCS 183、21H7、イソクエルシトリン、KY1220、MSAB、NRX-252114、BC21、BC2059、CCT031374、CCT036477、CGP049090、CWP232228、エタクリン酸、FH535、iCRT3、iCRT5、iCRT14、LF3、NLS-StAx-h、PKF115-584、PKF118-310、PKF118-744、PNU-74654、ケルセチン、ZTM000990、KY-05009、NCB-0846、IQ-1、ウィンドルフェン、YH249/250、C-82、ICG-001、PRI-724、レチノイド、ビタミンD3、SAH-BCL9、アダビビント(SM04690、ロレキビビント)、アーテスネート、カルダモニン、カルジオノジェン、CCT031374、ベンジルホスホン酸ジエチル、エキナコシド、KY02111、パミドロン酸、又はスペクヌエゼニドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
モルヌピラビル(MK-4482/EIDD-2801)又はレムデシビルを前記対象に投与する工程を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象がヒトである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
治療有効量のPARP阻害薬を投与する工程を含む又はその工程からなる、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療する方法。
【請求項7】
前記PPAR阻害薬が、E7449、PJ34 HCl、WIK14、オラパリブ及びニラパリブであり、PARP又はタンキラーゼ阻害薬である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記PARP阻害薬が、WIK14、E7449、PJ34 HCl、オラパリブ、タラゾパリブ、XAV-939、ベリパリブ、AZD5305、フルゾパリブ、ルカパリブ、RBN-2397、PJ34、パミパリブ、G007-LK、JW55、BGP-15、NMS-P118、RBN012759、EB-47二塩酸塩、AZ6102、RK-287107、GeA-69、MN-64、5,7,4'-トリメトキシフラボン、Oroxin A、NU0125、BYK204165、K-756、2-メチルキナゾリン-4-オール、AZ-9842、OUL35、メフパリブ塩酸塩、セナパリブ、タンキラーゼ-IN-2、PARP-2-IN-1、BR102375、EB-47、4'-メトキシカルコン、DR2313、3-メトキシベンズアミド、5,7-ジヒドロキシクロモン、BRCA1-IN-1、又はWD2000-012547である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
治療有効量の、対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物を投与する工程を含む又はその工程からなる、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療する方法。
【請求項10】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、IWP-O1、IWP-2、IWP-L6、iCRT3、LGK-974、WIK14、Wnt-C59、ICG-001、IWR-1-endo、シリビニン、NCB-0846、KYA1797K、Foxy-5(Wnt5a模倣ペプチド)、PRI-724、ETC-1922159、PNU-74654、カルノシン酸、ピルビニウム、iCRT-14、スリンダク、SM04755、ファモチジン、NSC668036、E7449、Dvl-PDZドメイン阻害薬II、オラパリブ、ニラパリブ、PJ34 HCl、カプマチニブ、クルクミン、又はゲニステイン、トリプトライドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、ピルビニウム、KYA1797K、Wnt-C59、ETC-1922159、iCRT-14、SM04755、E7449、IWP-O1、NCB0846、LGK-974、トリプトライド又はPJ354 HCLである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、オウゴニン、Ant1.4Br/Ant1.4Cl、アイパフリセプト、APCDD1、FzM1、Fz7-21、OTSA101、OTSA101-DTPA-90Y、BNC101、ギガントール、サリノマイシン、IGFBP-4、DKN-01、化合物3289-8625、FJ9、NSC668036、ペプチドPen-N3、2X-121、AZ1366、AZ-6102、G007-LK、G244-LM、IWR-1、JW55、JW67、JW74、K-756、MN-64、MSC2504877、NVP-TNKS656、RK-287107、TC-E5001、WIKI4、XAV939、TCS 183、21H7、イソクエルシトリン、KY1220、MSAB、NRX-252114、BC21、BC2059、CCT031374、CCT036477、CGP049090、CWP232228、エタクリン酸、FH535、iCRT3、iCRT5、iCRT14、LF3、NLS-StAx-h、PKF115-584、PKF118-310、PKF118-744、PNU-74654、ケルセチン、ZTM000990、KY-05009、NCB-0846、IQ-1、ウィンドルフェン、YH249/250、C-82、ICG-001、PRI-724、レチノイド、ビタミンD3、SAH-BCL9、アダビビント(SM04690、ロレキビビント)、アーテスネート、カルダモニン、カルジオノジェン、CCT031374、ベンジルホスホン酸ジエチル、エキナコシド、KY02111、パミドロン酸、又はスペクヌエゼニドである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、ポルクピンの阻害薬である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ポルクピン阻害薬が、CGX1321、GNF-6231、IWP-3、IWP-4、IWP-12、IWP-L6、又はRXC004である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、β-カテニンの阻害薬である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物がFrizzled受容体の阻害薬である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、SFRP1の阻害薬である、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記SFRP1阻害薬が、WAY-316606である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、LRP5/6の阻害薬である、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、PPARαアゴニスト又はPPARγアゴニストである、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記PPARαアゴニストが、フェノフィブレート、シプロフィブレート、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、ベザフィブレート、又はエラフィブラノールである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記PPARγアゴニストが、マレイン酸ロシグリタゾン、塩酸ピオグリタゾン、ロベグリタゾン、チグリタザール、KDT-501、ナバグリタザル、AVE-0897、ZY-H2、AMG-131、ムラグリタザル、アモルフルチン、フォルモネチン、ビキシン、ノルビキシン、コムミフェル酸、シトラル、メランジン、カルノシン酸、カルノソール、リノール酸、サウルフラン、イソシリビンA、ガロタンニン類、又はカルバクロールである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
モルヌピラビル(MK-4482/EIDD-2801)又はレムデシビルを前記対象に投与する工程を更に含む、請求項9から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象がヒトである、請求項9から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療するための、Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬の使用。
【請求項26】
SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療するための医薬の製造のための、Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬の使用。
【請求項27】
前記Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬が、IWP-O1、IWP-2、IWP-L6、iCRT3、LGK-974、WIK14、Wnt-C59、ICG-001、IWR-1-endo、シリビニン、NCB-0846、KYA1797K、Foxy-5(Wnt5a模倣ペプチド)、PRI-724、ETC-1922159、PNU-74654、カルノシン酸、ピルビニウム、iCRT-14、スリンダク、SM04755、ファモチジン、NSC668036、E7449、Dvl-PDZドメイン阻害薬II、オラパリブ、ニラパリブ、PJ34 HCl、カプマチニブ、クルクミン、又はゲニステイン、トリプトライドである、請求項25又は26に記載の使用。
【請求項28】
前記Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬が、オウゴニン、Ant1.4Br/Ant1.4Cl、アイパフリセプト、APCDD1、FzM1、Fz7-21、OTSA101、OTSA101-DTPA-90Y、BNC101、ギガントール、サリノマイシン、IGFBP-4、DKN-01、化合物3289-8625、FJ9、NSC668036、ペプチドPen-N3、2X-121、AZ1366、AZ-6102、G007-LK、G244-LM、IWR-1、JW55、JW67、JW74、K-756、MN-64、MSC2504877、NVP-TNKS656、RK-287107、TC-E5001、WIKI4、XAV939、TCS 183、21H7、イソクエルシトリン、KY1220、MSAB、NRX-252114、BC21、BC2059、CCT031374、CCT036477、CGP049090、CWP232228、エタクリン酸、FH535、iCRT3、iCRT5、iCRT14、LF3、NLS-StAx-h、PKF115-584、PKF118-310、PKF118-744、PNU-74654、ケルセチン、ZTM000990、KY-05009、NCB-0846、IQ-1、ウィンドルフェン、YH249/250、C-82、ICG-001、PRI-724、レチノイド、ビタミンD3、SAH-BCL9、アダビビント(SM04690、ロレキビビント)、アーテスネート、カルダモニン、カルジオノジェン、CCT031374、ベンジルホスホン酸ジエチル、エキナコシド、KY02111、パミドロン酸、又はスペクヌエゼニドである、請求項25又は26に記載の使用。
【請求項29】
モルヌピラビル(MK-4482/EIDD-2801)又はレムデシビルの使用を更に含む、請求項25から28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
前記対象がヒトである、請求項25から29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療するための、治療有効量のPARP阻害薬の使用。
【請求項32】
SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療するための医薬の製造における治療有効量のPARP阻害薬の使用。
【請求項33】
前記PPAR阻害薬が、E7449、PJ34 HCl、WIK14、オラパリブ及びニラパリブであり、PARP又はタンキラーゼ阻害薬である、請求項31又は32に記載の使用。
【請求項34】
前記PARP阻害薬が、WIK14、E7449、PJ34 HCl、オラパリブ、タラゾパリブ、XAV-939、ベリパリブ、AZD5305、フルゾパリブ、ルカパリブ、RBN-2397、PJ34、パミパリブ、G007-LK、JW55、BGP-15、NMS-P118、RBN012759、EB-47二塩酸塩、AZ6102、RK-287107、GeA-69、MN-64、5,7,4'-トリメトキシフラボン、Oroxin A、NU0125、BYK204165、K-756、2-メチルキナゾリン-4-オール、AZ-9842、OUL35、メフパリブ塩酸塩、セナパリブ、タンキラーゼ-IN-2、PARP-2-IN-1、BR102375、EB-47、4'-メトキシカルコン、DR2313、3-メトキシベンズアミド、5,7-ジヒドロキシクロモン、BRCA1-IN-1、又はWD2000-012547である、請求項31又は32に記載の使用。
【請求項35】
SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療するための、対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物の使用。
【請求項36】
SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療するための医薬の製造における、対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物の使用。
【請求項37】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、IWP-O1、IWP-2、IWP-L6、iCRT3、LGK-974、WIK14、Wnt-C59、ICG-001、IWR-1-endo、シリビニン、NCB-0846、KYA1797K、Foxy-5(Wnt5a模倣ペプチド)、PRI-724、ETC-1922159、PNU-74654、カルノシン酸、ピルビニウム、iCRT-14、スリンダク、SM04755、ファモチジン、NSC668036、E7449、Dvl-PDZドメイン阻害薬II、オラパリブ、ニラパリブ、PJ34 HCl、カプマチニブ、クルクミン、又はゲニステイン、トリプトライドである、請求項35又は36に記載の使用。
【請求項38】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、ピルビニウム、KYA1797K、Wnt-C59、ETC-1922159、iCRT-14、SM04755、E7449、IWP-O1、NCB0846、LGK-974、トリプトライド又はPJ354 HCLである、請求項35又は36に記載の使用。
【請求項39】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、オウゴニン、Ant1.4Br/Ant1.4Cl、アイパフリセプト、APCDD1、FzM1、Fz7-21、OTSA101、OTSA101-DTPA-90Y、BNC101、ギガントール、サリノマイシン、IGFBP-4、DKN-01、化合物3289-8625、FJ9、NSC668036、ペプチドPen-N3、2X-121、AZ1366、AZ-6102、G007-LK、G244-LM、IWR-1、JW55、JW67、JW74、K-756、MN-64、MSC2504877、NVP-TNKS656、RK-287107、TC-E5001、WIKI4、XAV939、TCS 183、21H7、イソクエルシトリン、KY1220、MSAB、NRX-252114、BC21、BC2059、CCT031374、CCT036477、CGP049090、CWP232228、エタクリン酸、FH535、iCRT3、iCRT5、iCRT14、LF3、NLS-StAx-h、PKF115-584、PKF118-310、PKF118-744、PNU-74654、ケルセチン、ZTM000990、KY-05009、NCB-0846、IQ-1、ウィンドルフェン、YH249/250、C-82、ICG-001、PRI-724、レチノイド、ビタミンD3、SAH-BCL9、アダビビント(SM04690、ロレキビビント)、アーテスネート、カルダモニン、カルジオノジェン、CCT031374、ベンジルホスホン酸ジエチル、エキナコシド、KY02111、パミドロン酸、又はスペクヌエゼニドである、請求項35又は36に記載の使用。
【請求項40】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、ポルクピンの阻害薬である、請求項35又は36に記載の使用。
【請求項41】
前記ポルクピン阻害薬が、CGX1321、GNF-6231、IWP-3、IWP-4、IWP-12、IWP-L6、又はRXC004である、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、β-カテニンの阻害薬である、請求項35又は36に記載の使用。
【請求項43】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、Frizzled受容体の阻害薬である、請求項35又は36に記載の使用。
【請求項44】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、SFRP1の阻害薬である、請求項35又は36に記載の使用。
【請求項45】
前記SFRP1阻害薬がWAY-316606である、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、LRP5/6の阻害薬である、請求項35又は36に記載の使用。
【請求項47】
前記対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物が、PPARαアゴニスト又はPPARγアゴニストである、請求項35又は36に記載の使用。
【請求項48】
前記PPARαアゴニストが、フェノフィブレート、シプロフィブレート、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、ベザフィブレート、又はエラフィブラノールである、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
前記PPARγアゴニストが、マレイン酸ロシグリタゾン、塩酸ピオグリタゾン、ロベグリタゾン、チグリタザール、KDT-501、ナバグリタザル、AVE-0897、ZY-H2、AMG-131、ムラグリタザル、アモルフルチン、フォルモネチン、ビキシン、ノルビキシン、コムミフェル酸、シトラル、メランジン、カルノシン酸、カルノソール、リノール酸、サウルフラン、イソシリビンA、ガロタンニン類、又はカルバクロールである、請求項47に記載の使用。
【請求項50】
モルヌピラビル(MK-4482/EIDD-2801)又はレムデシビルの使用を更に含む、請求項35から49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項51】
前記対象がヒトである、請求項35から50のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月25日出願の米国特許仮出願第63/083,533号、及び2020年7月31日出願の第63/059,390号の優先権を主張し、両方の全体の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、一般に、SARS-CoV-2及び他の病原性ウイルスの複製を遮断するためのWnt/β-カテニン経路阻害薬及び他のペルオキシソーム誘発剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
国際ウイルス分類委員会(ICTV)は、2020年2月11日に新型ウイルスの名称として「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)」を発表した。世界保健機関(WHO)は、このウイルスと関連する疾患の名称として「COVID-19」を発表した。SARS-CoV-2は、COVID-19の大流行の原因である。
【0004】
今日まで、世界的に、1億9500万人超がSARS-CoV-2に感染しており、結果として400万人超が死亡している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SAR-CoV-2による感染を予防する薬物の緊急な必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、治療有効量のWnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬を投与する工程を含む又はその工程からなる、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療する方法が提供される。
【0007】
一例では、前記Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬は、IWP-O1、IWP-2、IWP-L6、iCRT3、LGK-974、WIK14、Wnt-C59、ICG-001、IWR-1-endo、シリビニン、NCB-0846、KYA1797K、Foxy-5(Wnt5a模倣ペプチド)、PRI-724、ETC-1922159、PNU-74654、カルノシン酸、ピルビニウム、iCRT-14、スリンダク、SM04755、ファモチジン、NSC668036、E7449、Dvl-PDZドメイン阻害薬II、オラパリブ、ニラパリブ、PJ34 HCl、カプマチニブ、クルクミン、又はゲニステイン、トリプトライドである。
【0008】
一例では、前記Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬は、オウゴニン(Wogonin)、Ant1.4Br/Ant1.4Cl、アイパフリセプト(Ipafricept)、APCDD1、FzM1、Fz7-21、OTSA101、OTSA101-DTPA-90Y、BNC101、ギガントール(Gigantol)、サリノマイシン、IGFBP-4、DKN-01、化合物3289-8625、FJ9、NSC668036、ペプチドPen-N3、2X-121、AZ1366、AZ-6102、G007-LK、G244-LM、IWR-1、JW55、JW67、JW74、K-756、MN-64、MSC2504877、NVP-TNKS656、RK-287107、TC-E5001、WIKI4、XAV939、TCS 183、21H7、イソクエルシトリン、KY1220、MSAB、NRX-252114、BC21、BC2059、CCT031374、CCT036477、CGP049090、CWP232228、エタクリン酸、FH535、iCRT3、iCRT5、iCRT14、LF3、NLS-StAx-h、PKF115-584、PKF118-310、PKF118-744、PNU-74654、ケルセチン、ZTM000990、KY-05009、NCB-0846、IQ-1、ウィンドルフェン(windorphen)、YH249/250、C-82、ICG-001、PRI-724、レチノイド、ビタミンD3、SAH-BCL9、アダビビント(Adavivint)(SM04690、ロレキビビント)、アーテスネート、カルダモニン、カルジオノジェン(cardionogen)、CCT031374、ベンジルホスホン酸ジエチル、エキナコシド、KY02111、パミドロン酸、又はスペクヌエゼニド(specnuezhenide)である。
【0009】
一例では、モルヌピラビル(MK-4482/EIDD-2801)又はレムデシビルを前記対象に投与する工程を更に含む。
【0010】
一例では、前記対象はヒトである。
【0011】
一態様では、治療有効量のPARP阻害薬を投与する工程を含む又はその工程からなる、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療する方法が提供される。
【0012】
一例では、PPAR阻害薬は、E7449、PJ34 HCl、WIK14、オラパリブ及びニラパリブであり、PARP又はタンキラーゼ阻害薬である。
【0013】
一例では、PARP阻害薬は、WIK14、E7449、PJ34 HCl、オラパリブ、タラゾパリブ(Talazparib)、XAV-939、ベリパリブ、AZD5305、フルゾパリブ(Fluzoparib)、ルカパリブ、RBN-2397、PJ34、パミパリブ(Pamiparib)、G007-LK、JW55、BGP-15、NMS-P118、RBN012759、EB-47二塩酸塩、AZ6102、RK-287107、GeA-69、MN-64、5,7,4'-トリメトキシフラボン(Trimthoxyflavone)、Oroxin A、NU0125、BYK204165、K-756、2-メチルキナゾリン-4-オール、AZ-9842、OUL35、メフパリブ塩酸塩、セナパリブ(Senaparib)、タンキラーゼ-IN-2、PARP-2-IN-1、BR102375、EB-47、4'-メトキシカルコン、DR2313、3-メトキシベンズアミド、5,7-ジヒドロキシクロモン、BRCA1-IN-1、又はWD2000-012547である。
【0014】
一態様では、対象における複数の細胞中の治療有効量のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物を投与する工程を含む又はその工程からなる、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療する方法が提供される。
【0015】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、IWP-O1、IWP-2、IWP-L6、iCRT3、LGK-974、WIK14、Wnt-C59、ICG-001、IWR-1-endo、シリビニン、NCB-0846、KYA1797K、Foxy-5(Wnt5a模倣ペプチド)、PRI-724、ETC-1922159、PNU-74654、カルノシン酸、ピルビニウム、iCRT-14、スリンダク、SM04755、ファモチジン、NSC668036、E7449、Dvl-PDZドメイン阻害薬II、オラパリブ、ニラパリブ、PJ34 HCl、カプマチニブ、クルクミン、又はゲニステイン、トリプトライドである。
【0016】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、ピルビニウム、KYA1797K、Wnt-C59、ETC-1922159、iCRT-14、SM04755、E7449、IWP-O1、NCB0846、LGK-974、トリプトライド又はPJ354 HCLである。
【0017】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、オウゴニン、Ant1.4Br/Ant1.4Cl、アイパフリセプト、APCDD1、FzM1、Fz7-21、OTSA101、OTSA101-DTPA-90Y、BNC101、ギガントール、サリノマイシン、IGFBP-4、DKN-01、化合物3289-8625、FJ9、NSC668036、ペプチドPen-N3、2X-121、AZ1366、AZ-6102、G007-LK、G244-LM、IWR-1、JW55、JW67、JW74、K-756、MN-64、MSC2504877、NVP-TNKS656、RK-287107、TC-E5001、WIKI4、XAV939、TCS 183、21H7、イソクエルシトリン、KY1220、MSAB、NRX-252114、BC21、BC2059、CCT031374、CCT036477、CGP049090、CWP232228、エタクリン酸、FH535、iCRT3、iCRT5、iCRT14、LF3、NLS-StAx-h、PKF115-584、PKF118-310、PKF118-744、PNU-74654、ケルセチン、ZTM000990、KY-05009、NCB-0846、IQ-1、ウィンドルフェン、YH249/250、C-82、ICG-001、PRI-724、レチノイド、ビタミンD3、SAH-BCL9、アダビビント(SM04690、ロレキビビント)、アーテスネート、カルダモニン、カルジオノジェン、CCT031374、ベンジルホスホン酸ジエチル、エキナコシド、KY02111、パミドロン酸、又はスペクヌエゼニドである。
【0018】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、ポルクピン(Porcupine)の阻害薬である。
【0019】
一例では、ポルクピン阻害薬は、CGX1321、GNF-6231、IWP-3、IWP-4、IWP-12、IWP-L6、又はRXC004である。
【0020】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、β-カテニンの阻害薬である。
【0021】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、Frizzled受容体の阻害薬である。
【0022】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、SFRP1の阻害薬である。
【0023】
一例では、SFRP1阻害薬はWAY-316606である。
【0024】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、LRP5/6の阻害薬である。
【0025】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、PPARαアゴニスト又はPPARγアゴニストである。
【0026】
一例では、前記PPARαアゴニストは、フェノフィブレート、シプロフィブレート、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、ベザフィブレート、又はエラフィブラノールである。
【0027】
一例では、前記PPARγアゴニストは、マレイン酸ロシグリタゾン、塩酸ピオグリタゾン、ロベグリタゾン、チグリタザール(chiglitazar)、KDT-501、ナバグリタザル(Navaglitazar)、AVE-0897、ZY-H2、AMG-131、ムラグリタザル、アモルフルチン、フォルモネチン(Formonetin)、ビキシン、ノルビキシン、コムミフェル酸(Commipheric acid)、シトラル、メランジン(Meranzin)、カルノシン酸、カルノソール、リノール酸、サウルフラン(Saurufuran)、イソシリビンA、ガロタンニン類、又はカルバクロールである。
【0028】
一例では、モルヌピラビル(MK-4482/EIDD-2801)又はレムデシビルを前記対象に投与する工程を更に含む。
【0029】
一例では、前記対象はヒトである。
【0030】
一態様では、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療するためのWnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬の使用が提供される。
【0031】
一態様では、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療するための医薬の製造におけるWnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬の使用が提供される。
【0032】
一例では、前記Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬は、IWP-O1、IWP-2、IWP-L6、iCRT3、LGK-974、WIK14、Wnt-C59、ICG-001、IWR-1-endo、シリビニン、NCB-0846、KYA1797K、Foxy-5(Wnt5a模倣ペプチド)、PRI-724、ETC-1922159、PNU-74654、カルノシン酸、ピルビニウム、iCRT-14、スリンダク、SM04755、ファモチジン、NSC668036、E7449、Dvl-PDZドメイン阻害薬II、オラパリブ、ニラパリブ、PJ34 HCl、カプマチニブ、クルクミン、又はゲニステイン、トリプトライドである。
【0033】
一例では、前記Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬は、オウゴニン、Ant1.4Br/Ant1.4Cl、アイパフリセプト、APCDD1、FzM1、Fz7-21、OTSA101、OTSA101-DTPA-90Y、BNC101、ギガントール、サリノマイシン、IGFBP-4、DKN-01、化合物3289-8625、FJ9、NSC668036、ペプチドPen-N3、2X-121、AZ1366、AZ-6102、G007-LK、G244-LM、IWR-1、JW55、JW67、JW74、K-756、MN-64、MSC2504877、NVP-TNKS656、RK-287107、TC-E5001、WIKI4、XAV939、TCS 183、21H7、イソクエルシトリン、KY1220、MSAB、NRX-252114、BC21、BC2059、CCT031374、CCT036477、CGP049090、CWP232228、エタクリン酸、FH535、iCRT3、iCRT5、iCRT14、LF3、NLS-StAx-h、PKF115-584、PKF118-310、PKF118-744、PNU-74654、ケルセチン、ZTM000990、KY-05009、NCB-0846、IQ-1、ウィンドルフェン、YH249/250、C-82、ICG-001、PRI-724、レチノイド、ビタミンD3、SAH-BCL9、アダビビント(SM04690、ロレキビビント)、アーテスネート、カルダモニン、カルジオノジェン、CCT031374、ベンジルホスホン酸ジエチル、エキナコシド、KY02111、パミドロン酸、又はスペクヌエゼニドである。
【0034】
一例では、モルヌピラビル(MK-4482/EIDD-2801)又はレムデシビルの使用を更に含む。
【0035】
一例では、前記対象はヒトである。
【0036】
一態様では、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療するための、治療有効量のPARP阻害薬の使用が提供される。
【0037】
一態様では、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療するための医薬の製造における治療有効量のPARP阻害薬の使用が提供される。
【0038】
一例では、PPAR阻害薬は、E7449、PJ34 HCl、WIK14、オラパリブ及びニラパリブであり、PARP又はタンキラーゼ阻害薬である。
【0039】
一例では、PARP阻害薬は、WIK14、E7449、PJ34 HCl、オラパリブ、タラゾパリブ、XAV-939、ベリパリブ、AZD5305、フルゾパリブ、ルカパリブ、RBN-2397、PJ34、パミパリブ、G007-LK、JW55、BGP-15、NMS-P118、RBN012759、EB-47二塩酸塩、AZ6102、RK-287107、GeA-69、MN-64、5,7,4'-トリメトキシフラボン、Oroxin A、NU0125、BYK204165、K-756、2-メチルキナゾリン-4-オール、AZ-9842、OUL35、メフパリブ塩酸塩、セナパリブ、タンキラーゼ-IN-2、PARP-2-IN-1、BR102375、EB-47、4'-メトキシカルコン、DR2313、3-メトキシベンズアミド、5,7-ジヒドロキシクロモン、BRCA1-IN-1、又はWD2000-012547である。
【0040】
一態様では、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療するための、対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物の使用が提供される。
【0041】
一態様では、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療するための医薬の製造における、対象における複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物の使用が提供される。
【0042】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、IWP-O1、IWP-2、IWP-L6、iCRT3、LGK-974、WIK14、Wnt-C59、ICG-001、IWR-1-endo、シリビニン、NCB-0846、KYA1797K、Foxy-5(Wnt5a模倣ペプチド)、PRI-724、ETC-1922159、PNU-74654、カルノシン酸、ピルビニウム、iCRT-14、スリンダク、SM04755、ファモチジン、NSC668036、E7449、Dvl-PDZドメイン阻害薬II、オラパリブ、ニラパリブ、PJ34 HCl、カプマチニブ、クルクミン、又はゲニステイン、トリプトライドである。
【0043】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、ピルビニウム、KYA1797K、Wnt-C59、ETC-1922159、iCRT-14、SM04755、E7449、IWP-O1、NCB0846、LGK-974、トリプトライド又はPJ354 HCLである。
【0044】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、オウゴニン、Ant1.4Br/Ant1.4Cl、アイパフリセプト、APCDD1、FzM1、Fz7-21、OTSA101、OTSA101-DTPA-90Y、BNC101、ギガントール、サリノマイシン、IGFBP-4、DKN-01、化合物3289-8625、FJ9、NSC668036、ペプチドPen-N3、2X-121、AZ1366、AZ-6102、G007-LK、G244-LM、IWR-1、JW55、JW67、JW74、K-756、MN-64、MSC2504877、NVP-TNKS656、RK-287107、TC-E5001、WIKI4、XAV939、TCS 183、21H7、イソクエルシトリン、KY1220、MSAB、NRX-252114、BC21、BC2059、CCT031374、CCT036477、CGP049090、CWP232228、エタクリン酸、FH535、iCRT3、iCRT5、iCRT14、LF3、NLS-StAx-h、PKF115-584、PKF118-310、PKF118-744、PNU-74654、ケルセチン、ZTM000990、KY-05009、NCB-0846、IQ-1、ウィンドルフェン、YH249/250、C-82、ICG-001、PRI-724、レチノイド、ビタミンD3、SAH-BCL9、アダビビント(SM04690、ロレキビビント)、アーテスネート、カルダモニン、カルジオノジェン、CCT031374、ベンジルホスホン酸ジエチル、エキナコシド、KY02111、パミドロン酸、又はスペクヌエゼニドである。
【0045】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、ポルクピンの阻害薬である。
【0046】
一例では、ポルクピン阻害薬は、CGX1321、GNF-6231、IWP-3、IWP-4、IWP-12、IWP-L6、又はRXC004である。
【0047】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、β-カテニンの阻害薬である。
【0048】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、Frizzled受容体の阻害薬である。
【0049】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、SFRP1の阻害薬である。
【0050】
一例では、SFRP1阻害薬はWAY-316606である。
【0051】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、LRP5/6の阻害薬である。
【0052】
一例では、対象における前記複数の細胞中のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物は、PPARαアゴニスト又はPPARγアゴニストである。
【0053】
一例では、前記PPARαアゴニストは、フェノフィブレート、シプロフィブレート、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、ベザフィブレート、又はエラフィブラノールである。
【0054】
一例では、前記PPARγアゴニストは、マレイン酸ロシグリタゾン、塩酸ピオグリタゾン、ロベグリタゾン、チグリタザール、KDT-501、ナバグリタザル、AVE-0897、ZY-H2、AMG-131、ムラグリタザル、アモルフルチン、フォルモネチン、ビキシン、ノルビキシン、コムミフェル酸、シトラル、メランジン、カルノシン酸、カルノソール、リノール酸、サウルフラン、イソシリビンA、ガロタンニン類、又はカルバクロールである。
【0055】
一例では、モルヌピラビル(MK-4482/EIDD-2801)又はレムデシビルの使用を更に含む。
【0056】
一例では、前記対象はヒトである。
【0057】
本開示の実施形態は、添付した図面と関連して、例としてのみここに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】細胞生存率に対するWnt/β-カテニン阻害薬の効果を示す図である。Calu-3(A)、正常なヒト気管支上皮(NHBE)(B)及びA549(C)細胞を、表示濃度のWnt/β-カテニン阻害薬又はDMSO単独で72時間処理し、その後、相対細胞生存率をCellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイキットを使用して判定した。3つの独立した実験から得られた相対平均細胞生存率(DMSOに正規化した)を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001 N.S.(有意でない)
【
図2】Wnt阻害薬が、Calu3細胞中でSARS-COV2ウイルス力価及び複製を有意に減少させることを示す図である。Calu3細胞を、指示されたWnt阻害薬(1μM)又はピルビニウム(100nM)で24時間前処置し、次いで、MOI0.5を使用してSARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株)に感染させた。24時間後、培地を収集し、プラークアッセイにかけてウイルス力価(A)を判定した。示したデータを、3つの独立した実験から平均する。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す、*p<0.05。B.感染の24時間後に感染細胞から抽出した全RNAをqRT-PCR分析にかけた。3つの独立した実験から得られたアクチンmRNAに対するSARS-CoV-2ウイルスRNAの平均レベルを示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す、*p<0.05。C.感染の24時間後に採取した細胞ライセートを、SARS-COV2スパイクタンパク質及びアクチンに対する抗体を用いた免疫ブロット分析用に処理した。
【
図3】Wnt/b-カテニン阻害薬が、SARS-CoV-2感染を減少させることを示す図である。100nMで使用したピルビニウムを除き、カバーガラス上で成長したCalu3細胞を1μM濃度のWnt阻害薬で24時間前処置し、次いで、MOI0.5を使用してSARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株)に感染させた。24時間、細胞を、スパイクタンパク質に対するマウスモノクローナル抗体及びAlexa Fluor 488に結合したロバ抗-マウスIgGを使用して間接蛍光抗体法及び共焦点顕微鏡用に処理した。DAPIを使用して核を染色した。
【
図4】Wnt/b-カテニン阻害薬IWP01、KYA1797K及びピルビニウムを感染の6時間後に加えた場合に、SARS-CoV-2複製を減少させることを示す図である。Calu3細胞を、SARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株、MOI0.5)に6時間感染させ、その後、IWP01(1μM)、KYA1797K(1μM)又はピルビニウム(100nM)を加えた。24(A)及び48(B)時間後、ウイルス-含有培地を、プラークアッセイにかけ(左パネル)、細胞から抽出した全RNAをqRT-PCRにかけてウイルスRNAの相対レベルを判定した(右パネル)。3つの独立した実験から得られた薬物処理した細胞による平均ウイルス力価及びゲノムRNAレベルを示す(左パネル、A及びB)。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す、*p<0.05。
【
図5】Wnt/b-カテニン阻害薬IWP01、KYA1797K及びピルビニウムは、感染の12時間後に加えた場合、SARS-CoV-2複製を減少させることを示す図である。Calu3細胞を、SARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株、MOI0.5)に12時間感染させ、その後、IWP01(1μM)、KYA1797K(1μM)又はピルビニウム(100nM)を加えた。24(A)及び48(B)時間後、ウイルス-含有培地を、プラークアッセイにかけ(左パネル)、細胞から抽出した全RNAをqRT-PCRにかけてウイルスRNAの相対レベルを判定した(右パネル)。3つの独立した実験から得られた薬物処理した細胞による平均ウイルス力価及びゲノムRNAレベルを示す(左パネル、A及びB)。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す、*p<0.05。
【
図6】Wnt阻害薬が、正常な気管支上皮(NHBE)肺細胞中でSARS-COV2ウイルス力価を有意に減少させることを示す図である。初代ヒトNHBE細胞を、表示濃度のWnt阻害薬で24時間前処置し、次いで、MOI0.5を使用してSARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株)に24時間感染させた。次いで、ウイルス-含有培地をプラークアッセイにかけてウイルス力価を判定した。3つの独立した実験から得られた平均力価を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す、*p<0.05。
【
図7】Wnt阻害薬が、懸念されるSARS-CoV-2変異体の複製を阻害することを示す図である。Calu3細胞を、表示濃度のWnt阻害薬IWP01、KYA1797K及びピルビニウム(0.01nM~1mM)で24時間前処置し、次いで、MOI0.5を使用してSARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株)に感染させた。24時間後、細胞培地及びライセートを収集し、プラーク及び細胞毒性アッセイにかけてウイルス力価及び細胞生存率をそれぞれ判定した。A.3つの独立した実験から得られた相対平均ウイルス力価を、感染の非存在下でWnt阻害薬で48時間処理した細胞の相対細胞生存率であるものとして示す。EC50及びCC50値を判定し、次いで、薬物毎に選択性指数(CC50/EC50)を算出するために使用した。(B~E)Calu3細胞を、表示濃度のIWP01、KYA1797K及びピルビニウムで24時間前処置し、次いで、MOI0.5を使用してSARS-CoV-2変異体((B)D614G、(C)UK B.1.1.7、(D)SA B.1.351及び(E)ブラジルP.1)に感染させた。24時間後、細胞培地をプラークアッセイにかけた。3つの独立した実験から得られたウイルス力価を判定し平均した。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す、*p<0.05。
【
図8】ペルオキシソームに対するWnt/β-カテニン阻害薬の効果を示す図である。A549細胞を指示薬物(ピルビニウム(100nm)を除き、すべて1mM)又はDMSO単独で(A)24時間又は(B)48時間処置した後、共焦点顕微鏡用に処理した。ペルオキシソームを、PEX14に対するウサギポリクローナル抗体及びAlexa Fluor 546に結合したロバ抗-ウサギIgGにより検出した。顕微鏡標本を作製する前に、試料をCellMask Deep Redでインキュベートした。画像をスピニングディスク共焦点顕微鏡を使用して取得した。
【
図9】Wnt/β-カテニン経路の阻害薬が、ヒト細胞中のペルオキシソームの密度を高めることを示す図である。A549細胞をDMSO単独又はWnt/β-カテニンシグナル伝達を遮断する10種の異なる市販の薬物(ピルビニウム(100nm)を除き、すべて1μM)で処理した。細胞を、薬物治療の24時間及び48時間後に固定し、ペルオキシソームを標識するPEX14に対する抗体及び細胞膜を標識するCellMask(商標)を使用して共焦点顕微鏡用に処理した。Volocityソフトウェアを使用して細胞中のペルオキシソームの数を判定した。ペルオキシソーム密度(#/mm3)を、ペルオキシソームの数を推定細胞容積により割ることにより算出した。試料毎に、少なくとも10種の細胞中のペルオキシソーム密度を判定した。3つの独立した実験から得られたデータを示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。
【
図10】Wnt/β-カテニン経路阻害薬が、ウイルス感染に応答してI型及びII型インターフェロンの産生を促進する図である。A549細胞をDMSO単独又はWnt/β-カテニンシグナル伝達を遮断する10種の異なる市販の薬物(ピルビニウム(100nm)を除き、すべて1mM)で処理した。24時間後、細胞を、センダイウイルス(どのくらいの量)に8時間又は16時間感染させ、その後、総細胞RNAを、収穫し、qRT-PCRにかけて、I型インターフェロン(IFNβ)及びIII型インターフェロン(IFNλ2)をコードするmRNAの相対レベルを判定した。3つの独立した実験から得られた値を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。
【
図11】Wnt/β-カテニン経路阻害薬が、ウイルス感染の非存在下でインターフェロンの発現を誘導しないことを示す図である。A549細胞を、Wnt/β-カテニン阻害薬(ピルビニウム(100nm)を除き、すべて1mM)又はDMSO単独で32又は40時間処理し、その後、全RNAを細胞から抽出した。IFNβ及びIFNλ2の相対レベルをRT-qPCRにより判定した。3つの独立した実験から得られたIFNβ及びIFNλ2転写物(アクチンmRNAに正規化した)の発現の平均レベルを示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。N.S.(有意でない)
【
図12】Wnt/β-カテニン経路の阻害が、ベロ(Vero)細胞中のペルオキシソーム密度を高めることを示す図である。ベロ細胞を、DMSO単独又は1μM IWP0O1、KYA17978K、若しくは100nMピルビニウムで48時間処理した後、共焦点顕微鏡用に処理した。ペルオキシソームを、PEX14に対するウサギポリクローナル抗体及びAlexa Fluor 546に結合したロバ抗-ウサギIgGにより検出した。顕微鏡標本の作製前に、試料をCellMask Deep Redでインキュベートした。スピニングディスク共焦点顕微鏡を使用して画像を取得した。ベロ細胞中のペルオキシソーム密度の箱ひげ表示を右に示す。ペルオキシソーム密度を、細胞全体のZ-スタック共焦点画像から得られたPEX14点構造の数を定量化すること及び細胞容積により割ることにより算出した。箱は、25、50、及び75パーセンタイルを示す。点は、最低60個の細胞を示し、これらを3つの独立した実験において分析した。*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001
【
図13】Wnt/β-カテニン阻害薬が、ベロ細胞中のSARS-CoV-2複製を減少しないことを示す図である。ベロE6細胞を、表示濃度のWnt阻害薬により24時間前処置し、次いで、SARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株、MOI0.5)に感染させた。24時間後、ウイルス-含有培地をプラークアッセイにかけ、細胞から抽出した全RNAをqRT-PCRにかけて、ウイルスRNAの相対レベルを判定した。3つの独立した実験から得られた薬物処理した細胞による平均ウイルス力価(A)及びゲノムRNAレベル(B)を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す、*p<0.05。
【
図14】β-カテニンが枯渇した細胞が、SARS-CoV-2感染に対して抵抗性であることを示す図である。Calu-3細胞を、β-カテニン-特異的siRNA又はノンターゲティング対照siRNAで48時間トランスフェクトした。次いで、細胞を、間接蛍光抗体法及び共焦点顕微鏡用に処理した。ペルオキシソームを、β-カテニンに対するウサギポリクローナル抗体、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対するマウスポリクローナル抗体、Alexa Fluor 546に結合したロバ抗-ウサギIgG、及びAlexa Fluor 488に結合したロバマウスIgGで検出した。スピニングディスク共焦点顕微鏡を使用して画像を取得した。
【
図15】β-カテニン発現を減少させることによって、ペルオキシソーム密度が増加し、SARS-CoV-2の複製が阻害されることを示す図である。Calu-3細胞を、β-カテニンに対するsiRNA又は対照ノンターゲティングsiRNAで48時間トランスフェクトし、その後、細胞ライセートを、β-カテニン及びアクチンに対する抗体を使用した免疫ブロット分析(A)又はアクチンmRNAに対するウイルスゲノムRNAのレベルを判定するためのqRT-PCR(B)用に処理した。細胞培地をプラークアッセイにかけてウイルス力価を判定した(C)。3つの独立した実験から得られた発現(アクチンに正規化した)の平均レベルを判定した。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。D.A549細胞を、β-カテニンに対するsiRNA又は対照ノンターゲティングsiRNAで48時間トランスフェクトした。次いで、細胞を固定し、間接蛍光抗体法及び共焦点顕微鏡用に処理した。ペルオキシソームを、PEX14に対するウサギポリクローナル抗体及びAlexa Fluor 546に結合したロバ抗-ウサギIgGにより検出した。顕微鏡標本の作製前に、試料をCellMask Deep Redでインキュベートした。スピニングディスク共焦点顕微鏡を使用して画像を取得した。E.その中の細胞のペルオキシソーム密度の箱ひげ表示。ペルオキシソーム密度を、細胞全体のZ-スタック共焦点画像から得られたPEX14点構造の数を定量化すること及び細胞容積により割ることにより算出した。箱は、25、50、及び75パーセンタイルを示す。点は、最低60個の細胞を示し、これらを3つの独立した実験において分析した。*、P<0.05
【
図16】他のヒトコロナウイルス(HCOVs)に対するWnt/β-カテニン阻害薬の効果を示す図である。Calu3細胞を、表示濃度のWnt/β-カテニン阻害薬で24時間処理し、次いで、HCOVs NL63又は229E(MOI0.5)に感染させた。24時間後、培地を収集し、プラークアッセイにかけてウイルス力価を判定した。3つ(there)の独立した実験から得られた平均力価を示す。
【
図17】Wnt/β-カテニン阻害薬が、他のRNAウイルスの複製を減少させることを示す図である。A549細胞を、Wnt/β-カテニン阻害薬(1μM)又はDMSO単独で24時間処理し、その後、細胞を、0.1MOIのジカウイルス(ZIKV)又はマヤロウイルス(MAYV)に感染させた。48時間後、ウイルス-含有培地をプラークアッセイにかけ、細胞から抽出した全RNAを、qRT-PCRにかけて、ウイルスRNAの相対レベルを判定した。3つの独立した実験から得られた薬物処理した細胞による平均ウイルス力価(A,C)及びゲノムRNAレベル(B、D)を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。*、P<0.05;**、P<0.01;N.S.(有意でない)。
【
図18】Calu-3細胞を、表示濃度の薬物又はDMSOで24時間処理した後、SARS-CoV-2(MOI=0.5)で感染させたことを示す図である。培地を24時間後に収穫し、ウイルス力価をプラークアッセイにより判定した。
【
図19】Calu-3細胞を、表示濃度の薬物又はDMSOで24時間処理した後、SARS-CoV-2(MOI=0.5)で感染させたことを示す図である。培地を24時間後に収穫し、ウイルス力価をプラークアッセイにより判定した。
【
図20】Calu-3細胞を、表示濃度の薬物又はDMSOで24時間処理した後、SARS-CoV-2(MOI=0.5)で感染させたことを示す図である。培地を24時間後に収穫し、ウイルス力価をプラークアッセイにより判定した。
【
図21】Calu-3細胞を、表示濃度の薬物又はDMSOで24時間処理した後、SARS-CoV-2(MOI=0.5)で感染させたことを示す図である。培地を24時間後に収穫し、ウイルス力価をプラークアッセイにより判定した。
【
図22】Wnt阻害薬によるCalu-3細胞の前処置が用量依存的な方式でSARS-CoV-2を減少させることを示す図である。
【
図23】Wnt阻害薬によるCalu-3細胞の前処置が、用量依存的な方式でSARS-CoV-2を減少させることを示す図である。
【
図24】Wnt阻害薬によるCalu-3細胞の前処置が、用量依存的な方式でSARS-CoV-2を減少させることを示す図である。
【
図25】Wnt阻害薬が、感染後Calu-3細胞に加えた場合、用量依存的な方式でSARS-CoV-2の複製を減少させることを示す図である。
【
図26】Wnt阻害薬が、ペルオキシソーム密度を高めることを示す図である。
【
図27】Wnt阻害薬が、センダイウイルス感染に応答してIFNβ発現を促進することを示す図である。
【
図28】一部のWnt阻害薬が、センダイウイルス感染に応答してIFNλ発現を促進することを示す図である。
【
図29】Wnt阻害薬によるベロ細胞の前処置が、SARS-CoV-2複製を有意に減少させないことを示す図である。
【
図30】Wnt阻害薬による正常なヒト気管支上皮細胞の前処置が、SARS-CoV-2の複製を減少させることを示す図である。
【
図31】ペルオキシソーム増殖因子-活性化受容体-γアゴニストが、SARS-CoV-2複製を阻害することを示す図である。Calu-3細胞は、DMSO単独又は表示濃度のペルオキシソーム増殖因子-活性化受容体-γアゴニストで24時間前処置し、その後、SARS-CoV-2(MOI=0.5)で24時間感染させた。細胞培地をプラークアッセイ用に採取し、相対ウイルス力価が示される。
【
図32】Wnt阻害薬/PPARアゴニストで処理したA549細胞中のセンダイウイルス感染の16時間後のIFNβの倍率誘導(fold induction)を示す図である。A549細胞を、DMSO単独、1マイクロモルでのWnt阻害薬(IWP-O1、LGK-974、Wnt-C59、NCB-0846、KYA1979K、又はETC-1922159)又は10マイクロモルでのPPARγアゴニスト(塩酸ピオグリタゾン及びチグリタザール)で処理した。24時間後、細胞をセンダイ100HAU/mlで16時間チャレンジ感染させ、その後、総細胞RNAを収穫し、qRT-PCRにかけて、IFNβをコードするmRNAの相対レベルを判定した。2つの独立した実験から得られた値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
全体として、本開示は、SARS-CoV-2、及び他の病原性ウイルスによる感染を治療する方法を提供する。
【0060】
コロナウイルスは、動物及びヒトにおいて疾病を引き起こすウイルスの大きなファミリーである。ヒトにおいて、いくつかのコロナウイルスは、感冒からより重症の疾患、例えば、中東呼吸器症候群(MERS)及び重症急性呼吸器症候群(SARS)に及ぶ呼吸器感染症を引き起こすことが知られている。
【0061】
ごく最近同定されたのは、2019新型コロナウイルス(SARS-CoV-2(SCoV2)/COVID-19)である。
【0062】
2020年3月に世界保健機関(WHO)により感染爆発として特徴付けられたCOVID-19の病原体である、重症急性呼吸器コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、国際的な公衆衛生上の緊急事態を招いている。
【0063】
用語「SARS CoV-2」、「SCoV2」、及び「COVID-19」は、同義的に使用することができる。
【0064】
WHOは、2021年7月23日の時点で、COVID-19が確認された症例が、死者4,136,518名を含めて、192,284,207件であったことを報告している。
【0065】
SARS-CoV-2の多数の変異株が同定されている。変異株は、変化した又は突然変異したウイルスである。変異株は、コロナウイルスでよく見られる。異型は、祖先の形態に対して進化上の利点又は不利点を与えることも中立であることもある。
【0066】
数件の例では、参照単離株と比較して、そのゲノムに、確立された又は疑いがある表現型の関連を有する突然変異があり、地域感染/複数のCOVID-19症例/クラスターを引き起こすことが同定されている、又は複数の国で検出されている;又は他の方法で、(例えば)WHO SARS-CoV-2ウイルス進化作業部会(WHO SARS-CoV-2 Virus Evolution Working Group)と協議してWHOにより関心のある変異株(VOI)であると評価された場合、SARS-CoV-2単離株は、VOIである。
【0067】
【0068】
数件の例では、懸念されるSARS-CoV-2変異株(VOC)はVOIの定義を満たす変異株であり、比較評価を通して、世界的な公衆衛生の重要性の程度で次の変化、すなわち、感染力の増加若しくはCOVID-19疫学の有害な変化;又はビルレンスの増加若しくは臨床疾患の症状の変化;又は公衆衛生及び社会政策の実効性の減少又は利用可能な診断法、ワクチン、治療薬のうちの1つ又は複数と関連することが実証されている。
【0069】
【0070】
他の命名システムは、SARS-CoV-2の変異株のために開発されている。
【0071】
数件の例では、治療有効量のWnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬を投与する工程を含む又はその工程からなる、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療する方法が提供される。
【0072】
数件の例では、対象における複数の細胞中の治療有効量のペルオキシソームの密度を高める化合物又は組成物を投与する工程を含む又はその工程からなる、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療する方法が提供される。
【0073】
数件の例では、治療有効量のPARP阻害薬を投与する工程を含む又はその工程からなる、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療する方法が提供される。
【0074】
数件の例では、Wnt経路において次の標的を阻害する化合物又は組成物は、それだけには限らないが、ポルクピン、β-カテニン、TCF/LEF、Frizzled受容体、SFRP1又はLRP5/6を含む、対象において細胞中のペルオキシソームの密度を増加することができる。数件の例では、ピルビニウム、KYA1797K、Wnt-C59、ETC-1922159、iCRT-14、SM04755、E7449、IWP-O1、NCB0846、LGK-974、トリプトライド又はPJ354 HCLを使用してもよい。
【0075】
数件の例では、ポルクピン阻害薬は、それだけには限らないが、CGX1321、GNF-6231、IWP-3、IWP-4、IWP-12、IWP-L6、又はRXC004を含む。
【0076】
数件の例では、SFRP1阻害薬は、それだけには限らないが、WAY-316606を含む。
【0077】
数件の例では、Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬は、IWP-O1、IWP-2、IWP-L6、iCRT3、LGK-974、WIK14、Wnt-C59、ICG-001、IWR-1-endo、シリビニン、NCB-0846、KYA1797K、Foxy-5(Wnt5a模倣ペプチド)、PRI-724、ETC-1922159、PNU-74654、カルノシン酸、ピルビニウム、iCRT-14、スリンダク、SM04755、ファモチジン、NSC668036、E7449、Dvl-PDZドメイン阻害薬II、オラパリブ、ニラパリブ、PJ34 HCl、カプマチニブ、クルクミン、又はゲニステイン、トリプトライドである。
【0078】
数件の例では、Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬は、それだけには限らないが、オウゴニン、Ant1.4Br/Ant1.4Cl、アイパフリセプト、APCDD1、FzM1、Fz7-21、OTSA101、OTSA101-DTPA-90Y、BNC101、ギガントール、サリノマイシン、IGFBP-4、DKN-01、化合物3289-8625、FJ9、NSC668036、ペプチドPen-N3、2X-121、AZ1366、AZ-6102、G007-LK、G244-LM、IWR-1、JW55、JW67、JW74、K-756、MN-64、MSC2504877、NVP-TNKS656、RK-287107、TC-E5001、WIKI4、XAV939、TCS 183、21H7、イソクエルシトリン、KY1220、MSAB、NRX-252114、BC21、BC2059、CCT031374、CCT036477、CGP049090、CWP232228、エタクリン酸、FH535、iCRT3、iCRT5、iCRT14、LF3、NLS-StAx-h、PKF115-584、PKF118-310、PKF118-744、PNU-74654、ケルセチン、ZTM000990、KY-05009、NCB-0846、IQ-1、ウィンドルフェン、YH249/250、C-82、ICG-001、PRI-724、レチノイド、ビタミンD3、SAH-BCL9、アダビビント(SM04690、ロレキビビント)、アーテスネート、カルダモニン、カルジオノジェン、CCT031374、ベンジルホスホン酸ジエチル、エキナコシド、KY02111、パミドロン酸、又はスペクヌエゼニドを含む。
【0079】
数件の例では、治療有効量のPARP阻害薬を投与する工程を含む又はその工程からなる、SARS-CoV-2に感染した対象、SARS-CoV-2に感染している疑いがある対象、又はSARS-CoV-2に感染するリスクがある対象を治療する方法が提供される。
【0080】
数件の例では、PPAR阻害薬は、それだけには限らないが、E7449、PJ34 HCl、WIK14、オラパリブ及びニラパリブを含み、PARP及び/又はタンキラーゼ阻害薬である。
【0081】
いくつかの例では、PARP阻害薬は、それだけには限らないが、WIK14、E7449、PJ34 HCl、オラパリブ、タラゾパリブ、XAV-939、ベリパリブ、AZD5305、フルゾパリブ、ルカパリブ、RBN-2397、PJ34、パミパリブ、G007-LK、JW55、BGP-15、NMS-P118、RBN012759、EB-47二塩酸塩、AZ6102、RK-287107、GeA-69、MN-64、5,7,4'-トリメトキシフラボン、Oroxin A、NU0125、BYK204165、K-756、2-メチルキナゾリン-4-オール、AZ-9842、OUL35、メフパリブ塩酸塩、セナパリブ、タンキラーゼ-IN-2、PARP-2-IN-1、BR102375、EB-47、4'-メトキシカルコン、DR2313、3-メトキシベンズアミド、5,7-ジヒドロキシクロモン、BRCA1-IN-1、又はWD2000-012547を含む。
【0082】
数件の例では、ペルオキシソーム密度を高める化合物/組成物は、IWP-O1、IWP-2、IWP-L6、iCRT3、LGK-974、WIK14、Wnt-C59、ICG-001、IWR-1-endo、シリビニン、NCB-0846、KYA1797K、Foxy-5(Wnt5a模倣ペプチド)、PRI-724、ETC-1922159、PNU-74654、カルノシン酸、ピルビニウム、iCRT-14、スリンダク、SM04755、ファモチジン、NSC668036、E7449、Dvl-PDZドメイン阻害薬II、オラパリブ、ニラパリブ、PJ34 HCl、カプマチニブ、クルクミン、又はゲニステイン、トリプトライドを含む。
【0083】
他の例では、ペルオキシソーム密度を高める化合物/組成物は、それだけには限らないが、ピルビニウム、KYA1797K、Wnt-C59、ETC-1922159、iCRT-14、SM04755、E7449、IWP-O1、NCB0846、LGK-974、トリプトライド又はPJ354 HCLを含む。
【0084】
数件の例では、ペルオキシソーム密度を高めることができる他の化合物/組成物は、それだけには限らないが、オウゴニン、Ant1.4Br/Ant1.4Cl、アイパフリセプト、APCDD1、FzM1、Fz7-21、OTSA101、OTSA101-DTPA-90Y、BNC101、ギガントール、サリノマイシン、IGFBP-4、DKN-01、化合物3289-8625、FJ9、NSC668036、ペプチドPen-N3、2X-121、AZ1366、AZ-6102、G007-LK、G244-LM、IWR-1、JW55、JW67、JW74、K-756、MN-64、MSC2504877、NVP-TNKS656、RK-287107、TC-E5001、WIKI4、XAV939、TCS 183、21H7、イソクエルシトリン、KY1220、MSAB、NRX-252114、BC21、BC2059、CCT031374、CCT036477、CGP049090、CWP232228、エタクリン酸、FH535、iCRT3、iCRT5、iCRT14、LF3、NLS-StAx-h、PKF115-584、PKF118-310、PKF118-744、PNU-74654、ケルセチン、ZTM000990、KY-05009、NCB-0846、IQ-1、ウィンドルフェン、YH249/250、C-82、ICG-001、PRI-724、レチノイド、ビタミンD3、SAH-BCL9、アダビビント(SM04690、ロレキビビント)、アーテスネート、カルダモニン、カルジオノジェン、CCT031374、ベンジルホスホン酸ジエチル、エキナコシド、KY02111、パミドロン酸、又はスペクヌエゼニドを含む。
【0085】
数件の例では、PPARα及びγアゴニストは、細胞中でペルオキシソーム密度を高めるために使用することができる。
【0086】
数件の例では、PPARγアゴニスト(マレイン酸ロシグリタゾン及び塩酸ピオグリタゾン)は、SARS-CoV-2複製を阻害する。
【0087】
数件の例では、他のPPARγアゴニストは、それだけには限らないが、ロベグリタゾン、チグリタザール、KDT-501、ナバグリタザル、AVE-0897、ZY-H2、AMG-131、ムラグリタザル、アモルフルチン、フォルモネチン、ビキシン、ノルビキシン、コムミフェル酸、シトラル、メランジン、カルノシン酸、カルノソール、リノール酸、サウルフラン、イソシリビンA、ガロタンニン類、又はカルバクロールを含む。
【0088】
本明細書中に示される通り、塩酸ピオグリタゾン及びチグリタザールは、I型インターフェロンをアップレギュレートする。
【0089】
数件の例では、PPARαアゴニストは、それだけには限らないが、フェノフィブレート、シプロフィブレート、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、ベザフィブレート、又はエラフィブラノールを含む。
【0090】
数件の例では、本化合物は、互変異性体、又は薬学的に許容されるその塩、又は溶媒和物、又はその機能性誘導体である。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「機能性誘導体」とは、元の化合物の生物活性と実質的に類似である生物活性(機能又は構造上)を保持する分子を指す。機能性誘導体又は均等物は、天然の誘導体であり得るか又は合成により調製される。
【0092】
プロドラッグ又は「生理的機能性誘導体」としてやはり包含される。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「生理的機能性誘導体」とは、それ自体薬学的に有効なものでなく、in vivoで、すなわち、化合物が投与される対象においてそれらの薬学的に有効な形態に転換される化合物を指す。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「プロドラッグ」とは、投与に続いて、例えば、加水分解によって又は酵素によって処理して、活性代謝物にすることによってin vivoで代謝される物質の誘導体を指す。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「対象」とは、個体を指す。対象の限定されない例は、例えば、飼い慣らされた動物、例えば、ネコ、イヌ等、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット等)、哺乳動物、非-ヒト哺乳動物、霊長類、非-ヒト霊長類、げっ歯類、鳥類、爬虫類、両生類、魚、及び任意の他の動物を含むことができる。対象は、哺乳動物、例えば、霊長類又はヒトであり得る。
【0096】
特定の例では、対象はヒトである。
【0097】
本明細書で使用される場合、用語「感染」又は「感染した」とは、宿主内で複製する外来性の有機体又は病原体の宿主中の存在に起因し得る疾患又は状態を指す。感染には、通常、感染性生物又は病原体により正常な粘膜の又は他の組織障壁の突破が関与する。数件の例では、感染は、SARS CoV-2による感染である。
【0098】
感染を有する対象は、対象の体内に存在する客観的に測定可能な感染性生物又は病原体を有する対象である。
【0099】
感染を有するリスクがある対象は、感染を発症する素因がある対象である。そのような対象は、例えば、感染性生物又は病原体への公知の又は疑いがある曝露を伴う対象を含むことができる。感染を有するリスクがある対象はまた、感染性生物又は病原体への免疫応答を高める能力の障害と関連する状態を伴う対象を含むことができる。
【0100】
数件の例では、SARS CoV-2を有すると同定された対象は治療することができる。
【0101】
本明細書で使用される場合、用語「治療」、「治療する」、又は「治療すること」とは、臨床結果を含めた有益な又は所望の結果を得ることを指す。有益な又は所望の臨床結果は、検出可能であろうと検出不可能であろうと、1種若しくは複数の症状又は状態の軽減又は寛解、疾患の程度の減弱、疾患の安定化した(すなわち悪化でない)状態、疾患の伝播の予防、疾患の進行の遅延又は緩徐化、疾患の状態の寛解又は緩和、(部分的であろうと全体的であろうと)疾患の再発の減弱、及び軽快を含むことができるが、それだけに限らない。「治療すること」及び「治療」はまた、治療を受けない場合の予想される生存時間と比べて、生存時間を延長することも意味することができる。
【0102】
本明細書で使用される場合、用語「寛解」又は「寛解する」とは、異常又は症状を含む、状態、疾患、障害、又は表現型の減少、軽減又は除去を指す。
【0103】
疾患又は障害の「症状」という用語は、対象により経験される及び疾患を示す、任意の病的現象又は構造、機能、若しくは感覚機能における正常からの逸脱である。
【0104】
本明細書で使用される場合、「治療レジメン」とは、第2の医薬品を加える又は加えない投与量、投与の回数、又は治療の期間の組合せを指す。
【0105】
例えば、SARS-CoV-2に感染した対象は、進行を防ぐために治療することができる、或いは、軽快した状態の対象は、本明細書に記載される化合物又は組成物で治療して再発を防止することができる。
【0106】
数件の例では、本明細書中に記載される化合物、及び薬学的に許容される担体、賦形剤、又はビヒクルを含む組成物が記載される。
【0107】
化合物又は組成物は、治療されようとする状態に依存して、単独で又は他の治療と組み合わせて同時に又は順次、投与することができる。
【0108】
対象を治療することにおいて、治療有効量は、対象に投与することができる。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」とは、疾患若しくは障害を予防する、寛解させる、又は治療するために有効である量を指す。
【0110】
配合物は、好都合には、単位剤形で提示することができ、薬学の分野で周知の任意の方法により調製することができる。かかる方法は、1種又は複数の補助成分を構成することができる担体に付随して活性化合物をもたらす工程を含む。一般に、本配合物は、液体担体又は微粉砕した固体担体又はその両方と活性化合物を均一かつ密接に会合させ、次いで、必要な場合には、生成物を成形することにより調製される。
【0111】
本化合物及び組成物は、全身的に/末梢的に又は、それだけに限らないが、経口(例えば、摂取による);局所(例えば、経皮、鼻腔内、眼球、口腔、及び舌下を含む);肺(例えば、口又は鼻を通して、例えば、エアロゾルを用いた、例えば、吸入又はガス注入療法による);直腸;腟内;非経口、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、くも膜下腔内、脊髄内、関節内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下、及び胸骨内を含めた、注射により;デポーの植え込みにより/例えば、皮下又は筋肉内を含めた所望の作用部位で、任意の好都合な投与の経路により、対象に投与することができる。
【0112】
本明細書中に開示された化合物を含む化合物及び/又は組成物は、熟練した作業者に公知である、標準的な治療レジメンと組み合わせて本明細書中に記載された方法に使用することができる。
【0113】
数件の例では、対象は、ヌクレオシドアナログのモルヌピラビル(MK-4482/EIDD-2801)若しくはレムデシビルで又は治療用モノクローナル抗体と共に治療することもできる。
【0114】
数件の例では、本明細書中に記載される化合物又は組成物を含む治療用配合物は、所望の程度の純度を有する化合物又は組成物を、水溶液、凍結乾燥配合物又は他の乾燥配合物の形態で任意選択の生理的に許容される担体、添加剤又は安定剤と混合することにより調製することができる。許容される担体、添加剤、又は安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒性であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、ヒスチジン及び他の有機酸等;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベン又はプロピルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン等;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含めた他の糖質;キレート化剤、例えば、EDTA等;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム等;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体等);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0115】
治療用配合物は、治療される特定の適応に必要な2種以上の活性化合物、通常、互いに悪影響を与えない相補的活性を有する活性化合物を含有してもよい。かかる分子は、所期の目的のために有効である量と組み合わせて適切に存在する。
【0116】
本発明の方法は、キットの形態でかかる方法において使用される化合物及び/又は組成物を提供することにより、好都合に実行される。かかるキットは、好ましくは、本組成物を含有する。そのようなキットは、好ましくは、その使用のための説明書を含む。
【0117】
本明細書中に記載される本発明のより良い理解を得るために、次の例を示す。これらの例は、例示的な目的のためにすぎないということが理解されるべきである。したがって、これらの例は、いずれにおいても本発明の範囲を限定するべきではない。
【実施例】
【0118】
(実施例1)
要約
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、過去100年の間で最も壊滅的な世界的な感染爆発の原因である。新たに承認されたワクチンが、重篤な疾病及びウイルスの伝播を抑えるのに大いに有効であることが証明されている一方、SARS-CoV-2に対する抗ウイルス薬の必要性が依然としてある。SARS-CoV-2がどのように感染中に細胞経路に影響を与えるのかを理解することは、広域の抗ウイルス活性を用いた宿主細胞を標的とした治療薬の開発を容易にし得る。インターフェロン系は、SARS-CoV-2を含む多くのウイルスの複製及び病原性を減らすために重要である。ミトコンドリアは、インターフェロン応答の誘導期に機能することが長い間知られており、より最近には、ペルオキシソームが、抗ウイルス防御において類似の役割を行うことが明らかになっている。ウイルス複製を制御する上でのペルオキシソームの重要性は、ウイルスの数の増加がペルオキシソーム形成をダウンレギュレートすることが知られているという事実及びペルオキシソームバイオジェネシスを遺伝学的に誘導することによってウイルス複製を阻害するという事実により裏付けられている。本明細書で、本発明者らは、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を遮断する複数の薬物がSARS-CoV-2に対する強力な抗ウイルス活性を有することを示す。同時に、本発明者らのデータから、こうした薬物クラスが、SARS-CoV-2及び潜在的に他の新生のウイルス病原体の治療のための予防的及び/又は治療的価値を有することが示唆される。
【0119】
結果
Wnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬は、SARS-CoV-2力価及び複製を減少させる
ペルオキシソームは、抗ウイルスシグナル伝達において重要な役割をやはり有する代謝性小器官である
1~3。本発明者らは、Wnt/β-カテニン経路を遮断する薬物が、ペルオキシソーム増殖を誘導し、細胞の抗ウイルス応答を増強すると仮定した。この仮説に取り組むために、Calu-3細胞を、一連の市販のWnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬(0.1~1μM)又はDMSO単独で処理し、次いで、SARS-CoV-2(CANADA/ON-VIDO-01/2020単離株)に感染させた。どの薬もこれらの濃度でいかなる著しい細胞毒性をも示さなかった(
図1)。培地並びに細胞から抽出したRNA及びタンパク質を、感染の24時間及び48時間後に収集した。ウイルス力価をプラークアッセイにより判定し、ウイルスゲノムRNA及びウイルススパイクタンパク質レベルを、それぞれ、qRT-PCR及びイムノブロッティングにより評価した。
【0120】
最も強力な抗ウイルス活性を有する10種のWnt/β-カテニン阻害薬から得られた結果を
図2に示す。すべての阻害薬は、使用した条件下で少なくとも80%及び98%程度までウイルス力価を低下させた(
図2A)。同様に、これらの薬物はすべて、ウイルスゲノムRNAレベルのレベルを低下させ(48~87%)、ウイルス複製が薬物治療により損なわれた(
図2B)ことを示唆する。ウイルススパイクタンパク質は、薬物によって治療された試料中で減少した又は検出不能であった(
図2C)。間接蛍光抗体分析では、Wnt/β-カテニン阻害薬によって、SARS-CoV-2に感染したCalu-3細胞の割合が劇的に減少したことが明らかになった(
図3)。一部のWnt/β-カテニン阻害薬は、感染の6及び12時間後にCalu-3細胞に加えた場合、SARS-CoV-2複製を減少させるのにやはり有効であった(
図4及び
図5)。特に、ウイルス力価及びゲノムRNAレベルは、IWP-O1-、KYA1797K及びピルビニウムによって治療した試料において、それぞれ77~94%及び65~91%まで減少した。
【0121】
Wnt/β-カテニン阻害薬が初代細胞中でSARS-CoV-2の複製を遮断するのに有効であったかどうか決定するために、気管支鏡検査を行った患者から得られた正常なヒト気管支上皮(NHBE)肺細胞を、薬物の存在又は非存在下で又はDMSO単独で感染させた。
図6中のプラークアッセイデータによって、Wnt/β-カテニン阻害薬が、NHBE細胞中でSARS-CoV-2の複製を減少させるのにより一層強力であったことが示される。特に、感染性ウイルスは、KYA1797K又はピルビニウムで前処置した感染細胞の培地中で検出されなかった。
【0122】
前述の実験を、D614G株及び懸念される変異株に先行して出現したSARS-CoV-2(CANADA/ON-VIDO-01/2020)の初期の分離株で行った。Wnt/β-カテニン阻害薬が、より新型の変異株に対して有効かどうかを決定するために、SARS-CoV-2のD614G、α、β及びγ変異株に感染させたCalu-3細胞に対するIWP-O1、KYA1797K及びピルビニウムの抗ウイルス活性を試験した。EC50値(<5nM)が低く、選択性指数が57~13,324と高いため、上記で試験した10種のWnt/β-カテニン阻害薬の中でもとりわけ、IWP-O1、KYA1797K及びピルビニウムを選択した(
図7A)。更に、上記に示す通り、3種の薬物はすべて、感染前又は感染後に加えた場合、ウイルス複製を阻害する。Calu-3細胞を、表示濃度のIWP01、KYA1797K及びピルビニウムで24時間前処置し、次いで、SARS-CoV-2のD614G、α、β及びγ変異株(MOI0.5)に24時間感染させ、その後、プラークアッセイ用に培地を収集した。
図3B~
図3E中の結果では、IWP01(1μM)、KYA1797K(1μM)及びピルビニウム(100nM)は、それぞれ84~87%、85~96%及び77~96%までSARS-CoV-2変異株の力価を減少させることが示される。
【0123】
Wnt/β-カテニン阻害薬は、ペルオキシソーム密度を高め、インターフェロン応答を増強する
理論により縛られることを望むものではないが、本発明者らのこれらの研究についての基礎をなす仮説は、Wnt/β-カテニン阻害薬が、ペルオキシソームバイオジェネシスのアップレギュレート及びその後のインターフェロン産生によりウイルス複製を阻害するはずであるというものであった。この仮説に取り組むことに関する最初の工程として、A549細胞を、SARS-CoV-2に対する頑強な抗ウイルス活性を有した10種のWnt/β-カテニン阻害薬又はDMSO単独で24及び/又は48時間処理した。次いで、どのようにしてペルオキシソームの密度がWnt/β-カテニン経路阻害薬によって影響されたのか/どの位ペルオキシソームの密度がWnt/β-カテニン経路阻害薬によって影響されたのかを決定するために、試料を定量的共焦点顕微鏡用に処理した。小器官の定量分析により適している形態を有するため、これらの実験用にA549細胞を選択した。ドッキングカーゴ-受容体複合体に関与するペルオキシソーム膜タンパク質であるPEX14に対する抗体を用いて、ペルオキシソームを同定した(
6にその総説がある)。細胞容積を推定するために細胞全体を染色する蛍光色素で試料をやはりインキュベートした(
図8)。DMSOでなく、薬物の1つ1つは、治療の24時間及び48時間後にペルオキシソームの密度を有意に増加させ(
図9);そのうちの5つ(IWP-01、NCB-0846、KYA1979K、iCRT-14、及びSM04755)が、50%超までペルオキシソーム密度を増加させた。
【0124】
次に、本発明者らは、Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路を阻害することによるペルオキシソームの薬理学的誘導がIFN産生を増強させるかどうかを評価した。A549細胞を、DMSO単独又はWnt/β-カテニン阻害薬で24時間処理し、次いで、IFN応答の強力な誘導因子であるセンダイウイルスに感染させた。全RNAを、感染8及び16時間後に細胞から採取し、IFNβ及びIFNλ2転写物の相対レベルを、qRT-PCRにより決定した。
図10中のデータでは、LGK-974、NCB-0846、KYA1797K、ETC-1922159、ピルビニウム及びiCRT-14で治療すると、ウイルス感染に応答してIFNβの産生が有意に増加したことが示される。I型及びIII型IFNを増強させる薬物間でいくつかの重複があり、いくつかの薬物(NCB-0846、ピルビニウム、iCRT-14及びSM04755)の効果が、III型IFNの誘導に対してより一層劇的な効果があった(
図10)。Wnt/β-カテニン経路阻害薬は、ウイルス感染の非存在下でIFNβ又はIFNλ2の発現をアップレギュレートしなかった(
図11)。
【0125】
同時に、上記で提示したデータは、ペルオキシソーム密度を高める自然免疫応答を高めるため、Wnt/β-カテニン阻害薬が、SARS-CoV-2複製を減少させるシナリオと整合する。ペルオキシソームバイオジェネシス及びIFN産生に対するWnt/β-カテニン阻害薬の抗ウイルス活性がリンクしないことがあり得るかどうかを識別するために、本発明者らは、I型IFNを産生しない、ベロ細胞中のSARS-CoV-2複製を阻害するその能力を試験した
7。A549細胞中で観察されたものと類似して、3種の異なるWnt/β-カテニン阻害薬によるベロ細胞の処理は、ペルオキシソームの密度を有意に増加した(
図12)。しかしながら、これらの薬物又は7種の他のWnt/β-カテニン阻害薬のいずれも、ベロ細胞中のSARS-CoV-2の複製を減少させることはできなかった(
図13)。これらの結果から、Wnt/β-カテニン阻害薬の抗ウイルス効果が、治療された細胞がIFNを産生する能力に依存することを示唆している。
【0126】
β-カテニンレベルを減少させることによって、ペルオキシソーム増殖を誘導し、SARS-CoV-2感染を減少させる
古典的なWnt/β-カテニンシグナル伝達経路の活性化によって、β-カテニンの細胞質プールを安定化させ、その後、T細胞因子/リンパ系エンハンサー因子転写制御因子と共に機能して細胞周期進行及び分化を促進する標的遺伝子の発現を促進する核にそれを移動させる(
8にその総説がある)。β-カテニンのレベルを減少させることが、SARS-CoV-2複製に対してWnt/β-カテニンシグナル伝達阻害薬と同様の効果があるかどうかを決定するために、Calu-3細胞を、β-カテニン又はノンターゲティングsiRNAに対してsiRNAで48時間トランスフェクトした。次いで、細胞をSARS-CoV-2に24時間感染させ、その後、培地及び総細胞RNAをそれぞれプラークアッセイ及びqRT-PCR用に採取した。β-カテニンの発現が減少した細胞(
図14)は、SARS-CoV-2による感染に影響されず、結果として、これらの細胞中のウイルスゲノムRNAのレベル及び培地中のウイルス力価は、有意に低かった(
図15B及び
図15C)。β-カテニンレベルの低下はまた、ペルオキシソームプールにおける増加と相関した(
図15D及び
図7E)。同時に、これらのデータから、β-カテニンが、ペルオキシソームバイオジェネシスを抑制することにより抗ウイルスシグナル伝達をダウンレギュレートすることができるということが示唆される。
【0127】
Wnt/β-カテニン阻害薬は、広域の抗ウイルス活性を有する
Wnt/β-カテニン阻害薬がIFN応答を強化するため、本発明者らは、これらの薬物が、他のヒトコロナウイルス並びに潜在的には他の病原性RNAウイルス、例えば、フラビウイルス及びαウイルス等に対して有効であると仮定した。この理論を検証するために、Wnt/β-カテニン阻害薬又はDMSOで24時間処理したCalu-3細胞及びA549細胞を、異なる2種の季節性ヒトコロナウイルスHCOV-NL63及びHCOV-229Eに24時間感染させ、又はジカウイルス若しくはマヤロウイルスにそれぞれ48及び24時間感染させた。
図16中のデータは、ほとんどの薬物は有意な効果が全くないが、KYA1797K及び程度が比較的小さいものの、ピルビニウムは、HCOV-NL63及びHCOV-229Eの力価を有意に減少したことを示す。同様に、KYA1797Kは、ジカウイルス及びマヤロウイルスに対して最も強力であったが、重要なことには、多くの薬物は、これらのアルボウイルスの複製を有意に減少した(
図17)。
【0128】
図18~
図21において、Calu-3細胞を、表示濃度の薬物又はDMSOで24時間処理した後、SARS-CoV-2(MOI=0.5)で感染させた。培地を24時間後に収穫し、ウイルス力価をプラークアッセイにより判定した。
【0129】
(参照文献)
1.Dixit E、Boulant S、Zhang Yら、Peroxisomes are signaling platforms for antiviral innate immunity.Cell.2010年;141巻(4号):668~681頁。
【0130】
2.Odendall C、Dixit E、Stavru Fら、Diverse intracellular pathogens activate type III interferon expression from peroxisomes.Nat Immunol.2014年;15巻(8号):717~726頁.
【0131】
3.Wong CP、Xu Z、Power C、Hobman TC.Targeted Elimination of Peroxisomes During Viral Infection:Lessons from HIV and Other Viruses.DNA Cell Biol.2018年;37巻(5号):417~421頁.
【0132】
4.Wong CP、Xu Z、Hou Sら、Interplay between Zika Virus and Peroxisomes during Infection.Cells.2019年;8巻(7号).
【0133】
5.Xu Z、Lodge R、Power C、Cohen EA、Hobman TC.The HIV-1 Accessory Protein Vpu Downregulates Peroxisome Biogenesis.mBio.2020年;11巻(2号).
【0134】
6.Fujiki Y、Abe Y、Imoto Yら、Recent insights into peroxisome biogenesis and associated diseases.J Cell Sci.2020年;133巻(9号).
【0135】
7.Desmyter J、Melnick JL、Rawls WE.Defectiveness of interferon production and of rubella virus interference in a line of African green monkey kidney cells(Vero).J Virol.1968年;2巻(10号):955~961頁.
【0136】
8.Albrecht LV、Tejeda-Munoz N、De Robertis EM.Cell Biology of Canonical Wnt Signaling.Annu Rev Cell Dev Biol.2021年.
【0137】
(実施例2)
Wntシグナル伝達経路の異なる成分を阻害する薬物は、(持続性及び初代起源の)ヒト肺上皮細胞のSARS-CoV-2の複製を強力に減少させる。
【0138】
図22は、Wnt阻害薬によるCalu-3細胞の前処置が、用量依存的な方式でSARS-CoV-2を減少させることを示す。
【0139】
Calu3細胞を、表示濃度のWnt阻害薬IWP01又はKYA1797K(10nM~20μM)で24時間前処置し、次いで、MOI0.5を使用してSARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株)に感染させた。24時間後、細胞培地を収集し、プラークアッセイにかけてウイルス力価を判定した。3つの独立した実験から得られた相対平均ウイルス力価を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す、*p<0.05。
【0140】
図23は、Wnt阻害薬によるCalu-3細胞の前処置が、用量依存的な方式でSARS-CoV-2を減少させることを示す。
【0141】
Calu3細胞を、表示濃度のWnt阻害薬LGK-974、Wnt-C59、NCB-0846又はETC-1922159(10nM~10μM)で24時間前処置し、次いで、MOI0.5を使用してSARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株)に感染させた。24時間後、細胞培地を収集し、プラークアッセイにかけてウイルス力価を判定した。3つの独立した実験から得られた相対平均ウイルス力価を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す、*p<0.05。
【0142】
図24は、Wnt阻害薬によるCalu-3細胞の前処置が、用量依存的な方式でSARS-CoV-2を減少させることを示す。
【0143】
Calu3細胞を、表示濃度のWnt阻害薬ピルビニウム、iCRT-14、SM04755又はE7449(10nM~1μM)で24時間前処置し、次いで、MOI0.5を使用してSARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株)に感染させた。24時間後、細胞培地を収集し、プラークアッセイにかけてウイルス力価を判定した。3つの独立した実験から得られた相対平均ウイルス力価を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す、*p<0.05。
【0144】
図25は、感染後Calu-3細胞に加えた場合、Wnt阻害薬がSARS-CoV-2の複製を減少させることを示す。
【0145】
Calu3細胞を、SARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株、MOI0.5)に6時間感染させ、その後、IWP01、LGK-974、Wnt-C59、NCB-0846、ETC-1922159、ピルビニウム、iCRT-14、SM04755、又はE7449を細胞に24時間加えた。薬物を加えてから24時間後に、細胞培地を収穫し、ウイルス力価をプラークアッセイにより判定した。相対ウイルス力価を示す。
【0146】
図26は、Wnt阻害薬が、ペルオキシソーム密度を高めることを示す。
【0147】
A549細胞を、DMSO単独、表示濃度のIWP-01、LGK-974、Wnt-C59、NCB-0846又はKYA1797Kで処理した。細胞を、薬物治療の24時間及び48時間後に固定し、ペルオキシソームを標識するPEX14に対する抗体及び細胞膜を標識するCellMask(商標)を使用して共焦点顕微鏡用に処理した。Volocityソフトウェアを使用して細胞中のペルオキシソームの数を判定した。ペルオキシソーム密度(#/μm3)を、細胞全体のZ-スタック共焦点画像から得られたPEX14点構造の数を定量化すること及び細胞容積により割ることにより算出した。A549細胞中のペルオキシソーム密度の箱ひげ表示を示す。箱は、25、50、及び75パーセンタイルを示す。点は、最低60個の細胞を示し、これらを3つの独立した実験において分析した。*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001
【0148】
図27は、一部のWnt阻害薬が、センダイウイルス感染に応答してIFNβ発現を促進することを示す。
【0149】
A549細胞を、DMSO単独、IWP-O1、LGK-974、Wnt-C59、KYA1979K、又はETC-1922159(各1μM)で処理した。24時間後、細胞をセンダイ100HAU/mlで8時間又は16時間チャレンジ感染させ、その後、総細胞RNAを収穫し、qRT-PCRにかけて、3つの独立した実験から得られたIFNβをコードするmRNA値の相対レベルを決定した。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。*、P<0.05;**、P<0.01;N.S.(有意でない)
【0150】
図28は、一部のWnt阻害薬が、センダイウイルス感染に応答してIFNλ発現を促進することを示す。
【0151】
A549細胞を、DMSO単独、IWP-O1、LGK-974、Wnt-C59、KYA1979K、又はETC-1922159(各1μM)で処理した。24時間後、細胞をセンダイ100HAU/mlで8時間又は16時間チャレンジ感染させ、その後、総細胞RNAを収穫し、qRT-PCRにかけて、3つの独立した実験から得られたIFN2をコードするmRNA値の相対レベルを決定した。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。*、P<0.05;N.S.(有意でない)
【0152】
図29は、Wnt阻害薬によるベロ細胞の前処置が、SARS-CoV-2複製を有意に減少させないことを示す。
【0153】
ベロE6細胞を、表示濃度のWnt阻害薬により24時間前処置し、次いで、SARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株、MOI0.5)に感染させた。24時間後、ウイルス-含有培地をプラークアッセイにかけた。3つの独立した実験から得られた平均ウイルス力価を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。
【0154】
図30は、Wnt阻害薬による正常なヒト気管支上皮細胞の前処置が、SARS-CoV-2の複製を減少させることを示す。
【0155】
初代ヒトNHBE細胞を、表示濃度のWnt阻害薬で24時間前処置し、次いで、MOI0.5を使用してSARS-CoV-2(CANADA/VIDO01/2020株)に24時間感染させた。次いで、ウイルス-含有培地をプラークアッセイにかけてウイルス力価を判定した、相対ウイルス力価を示す。
【0156】
Wnt阻害薬は、感染が始まる前に細胞に加えた場合に最も良く働くが、ピルビニウム、IWP-01、LGK-974及びKYA1797Kは、感染の6時間後に加えた場合SARS-CoV-2複製を効果的に遮断する。
【0157】
Wnt阻害薬は、ウイルス感染に応答してペルオキシソーム増殖及びインターフェロン産生を誘導する。
【0158】
Wnt阻害薬は、ベロ細胞で有効でない。
【0159】
抗ウイルスの作用機序は、I型インターフェロンを要することが示唆される。
【0160】
これらの結果から、COVID-19患者の予防及び/又は早期治療におけるWnt阻害薬の使用が示唆される。
【0161】
最も期待できる候補:ピルビニウム、KYA1797K、IWP-01、LGK-974、Wnt-C59、iCRT-14、SM04755、E7449、ETC-1922159、NCB-0846。
【0162】
(実施例3)
図31は、PPARγアゴニスト(マレイン酸ロシグリタゾン及び塩酸ピオグリタゾン)が、SARS-CoV-2複製を阻害することを示す。
【0163】
方法:Calu-3細胞は、DMSO単独又は表示濃度のペルオキシソーム増殖因子-活性化受容体-γアゴニストで24時間前処置し、その後、SARS-CoV-2(MOI=0.5)で24時間感染させた。細胞培地をプラークアッセイ用に採取し、相対ウイルス力価が示される。
【0164】
他の例では、PPARγアゴニストは、ロベグリタゾン、チグリタザール、KDT-501、ナバグリタザル、AVE-0897、ZY-H2、AMG-131、ムラグリタザル、アモルフルチン、フォルモネチン、ビキシン、ノルビキシン、コムミフェル酸、シトラル、メランジン、カルノシン酸、カルノソール、リノール酸、サウルフラン、イソシリビンA、ガロタンニン類、又はカルバクロールを含むことができる。
【0165】
図31は、ペルオキシソーム増殖因子-活性化受容体-γアゴニストが、SARS-CoV-2複製を阻害することを示す。Calu-3細胞は、DMSO単独又は表示濃度のペルオキシソーム増殖因子-活性化受容体-γアゴニストで24時間前処置し、その後、SARS-CoV-2(MOI=0.5)で24時間感染させた。細胞培地をプラークアッセイ用に採取し、相対ウイルス力価が示される。
【0166】
図32は、Wnt阻害薬/PPARアゴニストで処理したA549細胞中のセンダイウイルス感染の16時間後のIFNβの倍率誘導を示す。A549細胞を、DMSO単独、1マイクロモルのWnt阻害薬(IWP-O1、LGK-974、Wnt-C59、NCB-0846、KYA1979K、又はETC-1922159)又は10マイクロモルのPPARγアゴニスト(塩酸ピオグリタゾン及びチグリタザール)で処理した。24時間後、細胞をセンダイ100HAU/mlで16時間チャレンジ感染させ、その後、総細胞RNAを収穫し、qRT-PCRにかけて、IFNβをコードするmRNAの相対レベルを判定した。2つの独立した実験から得られた値を示す。
【0167】
他の例では、PPARαアゴニストは、フェノフィブレート、シプロフィブレート、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、ベザフィブレート、又はエラフィブラノールを含むことができる。
【0168】
本明細書中に記載される実施形態は、例であることを意図しているにすぎない。変更、修正及び変形は、当業者により特定の実施形態に対して行うことができる。特許請求の範囲は、本明細書に記載される特定の実施形態により制限されるべきでないが、全体として本明細書と整合する方式で解釈されるべきである。
【0169】
本明細書中で挙げられるすべての刊行物、特許及び特許出願は、本発明が関係する当業者の技能のレベルを示し、それぞれの個々の刊行物、特許又は特許出願が、参照により組み入れられていると具体的かつ個々に示されているかの如く、同程度まで、参照により本明細書に組み入れられる。
【0170】
このように本発明を説明しているが、それが多くのやり方で変わり得るということは明らかである。かかる変形は、本発明の精神及び範囲から逸脱するものとみなされず、当業者に明らかであるすべてのかかる修正は、次の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【国際調査報告】