(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】急性呼吸不全の入院前管理用の非侵襲ベンチレーションシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20230810BHJP
A61M 16/06 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
A61M16/00 305A
A61M16/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567271
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2021061722
(87)【国際公開番号】W WO2021224253
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】102020000009712
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517423431
【氏名又は名称】オスペダーレ・サン・ラッファエーレ・エッセエッレエッレ
(71)【出願人】
【識別番号】501193001
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO-Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・ランドニ
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト・ザングリッロ
(72)【発明者】
【氏名】フィリッポ・コンソロ
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト・レダエリ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンフランコ・ベニャミーノ・フィオーレ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・カイミ
(57)【要約】
患者の気道に持続的加圧空気を送達するフェースマスク(10)と、該フェースマスク(10)に直接剛性に接続可能なハウジング(22)を有して、制御圧力値で前記フェースマスク(10)へ空気を供給する電気機械デバイス(20)であり、フェースマスク(10)へ送達される空気を流動させるための空気経路(24)、および該空気経路(24)の内部の空気の圧力の値を自動管理するための制御ユニット(26)を含む、電気機械デバイス(20)とを含む、患者の呼吸不全に対処する独立型持続的気道陽圧(CPAP)装置(1)であって、該装置(1)は、大気を決定圧力レベル値まで加圧するために制御ユニット(26)に接続されておりかつ電気機械デバイス(20)のハウジング(22)内に配置されているタービンファン(28)を含み、空気経路(24)は、タービンファン(28)の上流に配置されており大気を受け入れる入口部分(241)、およびタービンファン(28)の下流に配置されており加圧空気を出口開口部(21)を通してフェースマスク(10)へ送達する出口部分(242)を含み、空気経路(24)は前記入口部分(241)から前記出口部分(242)まで長手方向に延在している、独立型持続的気道陽圧(CPAP)装置(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の気道に持続的加圧空気を送達するフェースマスク(10)と、
制御圧力値で前記フェースマスク(10)へ空気を供給するために前記フェースマスク(10)に直接且つ固く接続可能なハウジング(22)を有する電気機械デバイス(20)であって、前記フェースマスク(10)へ送達される空気を流動させるための空気経路(24)と、前記空気経路(24)の内部の空気圧力値を自動管理する制御ユニット(26)とを備えた電気機械デバイス(20)と、
を含んでなる、患者の呼吸不全に対処する独立型持続的気道陽圧(CPAP)装置(1)において、
当該装置(1)は、大気を決定圧力レベル値まで加圧するために、前記制御ユニット(26)に接続され、さらに前記電気機械デバイス(20)の前記ハウジング(22)内に配置されているタービンファン(28)を含み、
前記空気経路(24)は、前記タービンファン(28)の上流に配置されて大気を受け入れる入口部分(241)と、前記タービンファン(28)の下流に配置されて加圧空気を出口開口部(21)を通して前記フェースマスク(10)へ送達する出口部分(242)とを含み、
前記空気経路(24)は、前記ハウジング(22)内に前記入口部分(241)から前記出口部分(242)まで長手方向に延在していることを特徴とする、独立型持続的気道陽圧(CPAP)装置(1)。
【請求項2】
前記フェースマスク(10)は、前記ハウジング(22)から取り外されることを可能にするために、前記フェースマスク(10)と前記電気機械デバイス(20)の前記ハウジング(22)との間に配置されている接続手段(14)をさらに含み、前記接続手段(14)は、スナップ式締結機構または螺合機構を含むことが好ましい、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記タービンファン(28)は、前記加圧空気を前記フェースマスク(10)へ、次に患者へ送達する前記空気経路(24)の外側に配置されている、請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記空気経路(24)は、前記出口開口部(21)を通過する中心長手方向軸(CA)を有し、前記タービンファン(28)は、前記中心長手方向軸(CA)から所定の距離の所に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記タービンファン(28)は、前記空気経路(24)の前記中心長手方向軸(CA)に平行な回転軸(RA)を有し、前記回転軸(RA)は、前記中心長手方向軸(CA)からシフトされている、請求項4に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記ハウジング(22)は、前記出口部分(242)に、先細の形状を有する端部領域(23)を有する、請求項4に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記フェースマスク(10)は、前記空気経路(24)内の圧力レベル値が事前設定閾値圧力値を超過した場合に大気への空気接続を自動的に開くための機械排気弁(12)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記電気機械デバイス(20)は、前記タービンファン(28)の上流に配置されて前記タービンファン(28)を外部汚染から保護する第1のフィルタ(243)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記電気機械デバイス(20)は、前記タービンファンの下流に配置されて前記フェースマスク(10)へ送達される前記加圧空気を浄化する第2のフィルタ(244)を含み、前記第2のフィルタ(244)は、高性能微粒子エア(HEPA)フィルタであることが好ましい、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記電気機械デバイス(20)は、大気への空気接続を開くための制御排気弁(245)を含み、前記制御排気弁(245)は、前記空気経路(24)の出口部分(242)に配置され、前記制御ユニット(26)に接続されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記電気機械デバイス(20)は、第1の圧力センサ(246)と、前記第1の圧力センサ(246)から独立している第2の圧力センサ(247)とを含み、両圧力センサ(246、247)は、前記空気経路(24)の出口部分(242)に配置されており、さらに、前記空気経路(24)内の圧力値を測定するために前記制御ユニット(26)に接続されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記制御ユニット(26)はファン速度制御ユニット(261)を含み、前記第1の圧力センサ(246)により測定された圧力値に基づいて前記タービンファン(28)の速度を修正することにより、前記空気経路(24)の内部の前記圧力値を調節する、請求項11に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記制御ユニット(26)は、前記制御排気弁(245)を作動させ、かつ前記第2の圧力センサ(247)により測定された圧力値に基づいて前記タービンファン(28)の動作を停止させる過圧検出器(262)を含む、請求項10および11に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記電気機械デバイス(20)は、少なくとも前記制御ユニット(26)および前記タービンファン(28)に供給する充電バッテリパック(27)をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の装置(1)と、前記装置(1)のバッテリユニットに電流を供給するために前記装置(1)に接続されている診断電源ユニット(2)であって、前記装置の構成要素の現状について情報を表示するために前記装置(1)に接続されている診断電源ユニット(2)とを含んでなる、非侵襲ベンチレーションシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療システムに関し、詳細には、独立型持続的気道陽圧(CPAP)装置に関する。また、本発明は非侵襲ベンチレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸不全は、毎年人口の>10%を襲い、かつ高い死亡率(>20%)を特徴とする、深刻な、命に関わる医療的緊急事態である。その普及は絶え間なく増加しており、イタリア国立衛生研究所(Istituto Superiore di Sanita)による最近の調査が、2020年までに、呼吸不全が死亡原因の第3位になるであろうと推定した。それは、高度な高額の治療のために集中治療室(ICU)における長期入院(1年当たり>100万日の在院日数)を伴う、1年当たり>100,000件の入院により、医療制度への重い負担を示している。呼吸不全に関する医療費の75%が高度専門ICUにおける入院に関連することを考慮して、治療介入の予測および予後の改善が、結果的に、入院の必要および/または長期入院の低減、すなわち病気の治療に関連するコストの低下をもたらすであろう。
【0003】
呼吸不全に対処するために、持続的に弱い気道陽圧を与える持続的気道陽圧法(CPAP)を使用する技術が用いられる。該技術は、自身で自発呼吸することができるが自身の気道が閉塞されないように維持する助けを必要とする人々に関して、気道を持続的に開いて維持する。
【0004】
今まで、CPAPは、病棟内に、好ましくはICU内に制限された。ICU-CPAPシステムは、非医療従事者によるそれらの使用を阻む固有の技術特徴に因り、院外使用を対象としていない。
【0005】
入院前CPAPが、能動的ベンチレーション(active ventilation)がない場合にも患者生存の可能性の増大および長期の合併症の大幅な減少と合致する救命手段であることを、異なるEU諸国における以前の経験が実証した。
【0006】
唯一の市販された外部CPAPシステムは、閉塞性睡眠時無呼吸の在宅治療に限定されている。したがって、これらのシステムは、ICU内で使用されるシステムと比較して、様々な目的を対象としている。さらに、これらは高価であり、非医療従事者には設定が難しい。実際、該設定は呼吸器科医の専門知識を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、上述の問題を解決するシステムを提供すること、詳細には、使い易い、すなわち非医療従事者により動作させられ得る、高価でない、かつ市販の外部CPAPシステムと比較して拡張機能を有する、独立型CPAP装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本目的は、独立クレームによる独立型CPAP装置および非侵襲ベンチレーションシステムにより達成される。さらに有利な組合せおよび設計がそれらの従属請求項において与えられている。
【0009】
本発明による独立型CPAP装置は、患者の呼吸不全に対処するのに役立つ。該装置は、持続的加圧空気を患者の気道へ送達するフェースマスクと、該フェースマスクに直接剛性に接続可能であり、制御圧力値で前記フェースマスクに空気を供給するハウジングを有する、電気機械デバイスとを含む。該電気機械デバイスは、フェースマスクへ送達される空気を流動させるための空気経路と、該空気経路の内部の空気の圧力の値を自動管理するための制御ユニットとを含む。
【0010】
詳細には、装置は、制御ユニットに接続されておりかつ大気を決定圧力レベル値まで加圧するための、電気機械デバイスのハウジング内に配置されているタービンファンを含み、空気経路は、タービンファンの上流に配置されており大気を受け入れる入口部分と、タービンファンの下流に配置されており加圧空気を出口開口部を通してフェースマスクへ送達する出口部分とを含む。該空気経路はハウジング内に入口部分から出口部分まで長手方向に延在している。タービンファンは、5~10cmH2O(490~980Pa)の圧力範囲内で動作することが有利である。本発明の目的のために、同様のファンおよび/または装置内の不要な過圧を回避するように構成されている任意の他のタイプのファンが使用され得る。例えば、非包括的リストにおいて、タービンファンはラジアル/遠心ファン、クロスフローファン、横流ファン、オージェファン(auger fan)、および軸流ファンとすることができる。
【0011】
先行技術のCPAPシステムに対して、本発明による装置はより小型で、容易に操作可能である。実際、電気機械デバイスのハウジングがそれによりフェースマスクに剛性に直接接続可能である特定の構造は、本発明による装置を、任意の緊急事態において、例えば病院への患者の輸送中に救急車内で、または公共の場所(地下鉄、スーパーマーケット、学校、路上)においてもしくは患者の個人宅内でなどの院外使用のために、人の顔に容易に適用され得る独立型デバイスにする。また、本発明による装置は、特別な医療知識を有さない任意の人により使用されることが可能である。実際、追加/外部コンソールまたは電力または制御ユニットは必要とされない。そのような発明は、医療補助スタッフもしくは医療スタッフの介入を待つ間、人の呼吸不全の間の貴重な時間を無駄にすることを回避するために極めて有用であり得ることは明白である。換言すれば、本発明による装置は、院外環境内での、または自宅での、または公共アクセス領域内での、非侵襲ベンチレーションによる、急性呼吸不全の早期の入院前管理用に着想されている。装置は、無酸素の持続的気道陽圧を患者の気道に加える。本発明は、医療的緊急事態の場合に非医療従事者により行われる入院前介入が実行可能でありかつ極めて効果的であることの証拠を提供した自動体外式除細動器(AED)と同様に使用されることが可能である。基本構造では、フェースマスクは、単に片手を使って電気機械デバイスのハウジングを保持することにより、(患者自身によりまたは別の医療従事者もしくは非医療従事者により)患者の気道に適用される。装置全体の硬い構造は、患者の顔上でのマスクの正しい配置を保証する。しかし、マスクを患者の気道によりよく固定するために、マスクは、例えば患者の頭部の周囲に適用される弾性ストリップなどの、接続要素を含み得る。このように、動作中、装置のハウジングを手で保持する必要がない。
【0012】
タービンファンの作動は手動でまたは自動的に起こり得る。第1の場合、ユーザはファンの機能を作動させることができ、それにより、ハウジングの外面上に存在する専用アクチュエータ(スイッチ)を使用することにより、装置の内部に過圧空気を生成する。あるいは、または組み合わせて、タービンファンは、装置が専用ケースから取り去られると、自動的に作動させられ得る。例えば、装置は、運転停止状態の間、送電線により継続的に供給され得ると考えられるガラスケース内に配置され得る。緊急事態において、ユーザは、単にケースから装置を取り出し、装置のスイッチをオンにすることを心配せずに、呼吸不全を有する人の顔にマスクを直接当てることができる。実際、装置がケースから取り去られると、タービンファンは自動的に作動される。
【0013】
装置は、二相性気道陽圧(BiPAP: biphasic/bi-level positive air pressure)モードで加圧空気を送達し得ることが有利である。
【0014】
さらに、装置は、ユーザに酸素を送達するように構成され得る。
【0015】
そのレイアウトの過度な単純化に関わらず、本発明による装置は、ICU-CPAPユニットの救命「動作原理」すなわち持続的気道陽圧の送達を再生する。さらに、本発明は、急性呼吸不全の現在の治療の束縛(therapeutic chain)を大きく革新する。実際、領域に亘る本装置の展開は、急性呼吸不全の現在の治療介入を予測して、病院環境外での非医療従事者による迅速な介入を増進することを可能にするであろう。本装置の目的は、救急センターの到着および/または患者の入院前に、多数の脆弱な人の予後を改善することである。重大なことに、それがより迅速な臨床的回復および通常の生命活動への復帰を促進し、長期の身体障害のリスクおよび有病率を低下させる。このことを考慮して、本発明による装置は、呼吸不全を患う個人が社会的、経済的に機能している状態を継続するように助けることに寄与するであろう。さらに、本発明の独立型CPAP装置は、疾病の経済的影響を大幅に低減し、医療制度の持続可能性を高めるであろう。
【0016】
一実施形態では、装置は、フェースマスクが前記ハウジングから取り外されることを可能にするために、フェースマスクと電気機械デバイスのハウジングとの間に配置されている接続手段を含み得る。該接続手段は、スナップ式締結機構、螺合機構、または任意の他の適切な接続機構を含むことが好ましい。電気機械デバイスのハウジングからフェースマスクを取り外すことの可能性は、コスト削減および汚染低減の観点から極めて有用であり得ることが留意される。実際、フェースマスクは、患者の気道と接触している、装置の唯一の部分である。他方、電気機械デバイスは、患者の顔にも他の部分、例えば頭部、にも接触していない。ユーザとの唯一の接触は、ユーザが装置を保持する場合、原理上、その手とのものであろう。このようにして、既に利用したフェースマスクを新しいマスクまたは殺菌済みマスクと交換した後、同電気機械デバイスは、汚染のリスクなく、別の患者に使用され得る。換言すれば、装置は、単にフェースマスクを交換することにより、非常に短い時間内に様々な患者に使用され得る。交換される唯一の構成要素は、電気機械デバイスと比較して非常に低い製造コストを有するフェースマスクである。
【0017】
ある実施形態によれば、タービンファンは、加圧空気を前記フェースマスクへかつ次いで患者へ送達する空気経路の外側に配置され得る。タービンファンばかりでなく対応するモータもまた空気経路の外側に配置され得ることが有利である。このようにして、(例えば、軸受の潤滑剤の蒸発および/または内部部品の摩擦に因り)ファンの回転および/またはそのモータの動作の間に発生させる可能性があるかもしれない有毒ガスを吸い込むリスクは最小限にされる。また、本構造は、ファンの回転および/またはそのモータの動作の間に加圧空気の加熱が起こる可能性があるかもしれないので、熱風を吸い込むリスクを最小限にする。
【0018】
前述されている通り、空気経路は、入口部分と出口部分との間に長手方向に延在している。したがって、空気経路は、出口開口部を通過する中心長手方向軸を有する。詳細には、タービンファンは、前記中心長手方向軸から所定の距離の所に配置され得る。タービンファンの中心軸からの距離またはシフトは、前段で説明されているように、タービンファンから出口部分への有毒ガスもしくは熱風の直接通流(direct conduction)を回避するように決定される。
【0019】
特定の例では、タービンファンは、空気経路の中心長手方向軸に平行な回転軸を有することができ、該回転軸は前記中心長手方向軸からシフトされている。換言すれば、タービンファンと空気経路とは同軸でない。あるいは、タービンファンの回転軸は、空気経路の中心軸と比較して異なる方向に配向され得る。これは、タービンファンから出口部分への有毒ガスまたは熱風の直接通流をより効果的な方法で回避し得ると考えられる。
【0020】
あるいはタービンファンは空気経路の内部に配置され得ることが留意される。このようにして、全体構造はより対称で小型という結果になる。ある実施形態では、タービンファンは空気経路の内部に配置されることが可能であり、一方、タービンファンの回転軸は、空気経路の中心軸と比較して異なる方向に配向され得る。
【0021】
さらなる実施形態では、ハウジングは、出口部分に、先細形状を有する端部領域を有し得る。これは、タービンファンから出口部分への有毒ガスまたは熱風の直接通流の回避をさらに助けることができる。実際、タービンファンにより生成される加圧空気は、出口部分から出る前に、最初にハウジングの端部領域の先細壁に衝突する。
【0022】
本発明の実施形態によれば、フェースマスクは、空気経路内のかつ次いでフェースマスク内の圧力レベル値が事前設定閾値圧力値を超過した場合に、大気への空気接続を自動的に開くための機械排気弁を含む。該事前設定閾値は15~20cmH2O(1471~1961Pa)で構成され得る。フェースマスクは、患者の顔への接着面からの空気逃しまたは漏出をしないかまたは最小限にすることを確実にするように構成されることが留意される。また、本装置は、例えば5cmH2O、7cmH2O、もしくは10cmH2Oなどの、異なるレベルのCPAPおよび/または呼気終末陽圧(PEEP: positive end-expiratory pressure)を供給することができることが留意される。
【0023】
本発明の別の実施形態では、フェースマスクは、患者の呼気中に加圧空気を放出する少なくとも1つの通気口を含む。該通気口は、呼気が勢いよく流されることを確実にする。したがって、それは、マスク内に含まれる風量からの二酸化炭素(CO2)の除去を可能にし、CO2再呼吸を防止する。
【0024】
本発明の別の実施形態では、電気機械デバイスは、タービンファンの上流に配置されて外部汚染からタービンファンを保護する第1のフィルタを含む。例えば、該第1のフィルタは、ファンを、例えば環境からの大きい気中微粒子、液滴、または他の肉眼的汚染に起因する損傷から保護する粗フィルタとすることができる。詳細には、該フィルタはEPA(Efficiency Particulate Air)フィルタとすることができる。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態では、電気機械デバイスは、タービンファンの下流に配置されており、フェースマスクへ送達される加圧空気を浄化する第2のフィルタを含む。詳細には、該第2のフィルタは高性能微粒子エア(HEPA: high efficiency particulate air)フィルタまたは同様のフィルタとすることができる。
【0026】
さらなる実施形態では、電気機械デバイスは、大気への空気接続を開くための制御排気弁を含み、該制御排気弁は空気経路の出口部分に配置されており、制御ユニットに接続されている。制御排気弁は、機械排気弁に加えて、過圧防止のための冗長安全要素としての機能を果たし得る。
【0027】
他の実施形態では、電気機械デバイスは、第1の圧力センサと、該第1の圧力センサから独立している第2の圧力センサとを含み、両圧力センサは、空気経路の出口部分に配置されておりかつ制御ユニットに接続されており、空気経路内の圧力値を測定する。
【0028】
制御ユニットは装置の正常なまたは異常な空気状態を自動的に管理する。この場合、正常な空気状態および異常な空気状態は、閾値、例えば前述の事前設定閾値、未満のまたは超のそれぞれの、空気経路の内部で測定される圧力値として意図されている。正常な動作状態では、ファン速度制御ユニットによって制御ユニットは、圧力センサ、例えば第1の圧力センサ、により測定された圧力値に基づいて、タービンファンの速度を修正することにより、空気経路の内部の圧力値を調節するように構成されている。異常な過圧が起った場合、過圧検出器によって制御ユニットは、制御排気弁を作動させて、別の圧力センサ、例えば第2の圧力センサ、により測定された圧力値に基づいて、タービン弁の動作を停止させるように構成されている。
【0029】
本発明の実施形態によれば、電気機械デバイスは、少なくとも制御ユニットおよびタービンファンに供給する充電バッテリパックをさらに含む。詳細には、制御ユニットは、短時間独立型ニーズ用の小バッテリパックにより支援されている低電圧供給線(すなわち、24V-DC)により供給され得る。代替的にまたは追加的に、装置は送電網により直接供給されるように構成され得る。
【0030】
フェースマスクは、香料入り材料で作製されることが可能であるかまたは香り拡散手段を設けられることが可能であり、呼吸支援動作中、患者の快適さを向上させることが有利である。
【0031】
本発明による非侵襲ベンチレーションシステムは、先行する実施形態のいずれか1つに記載の装置と、前記装置に接続されている診断電源ユニットとを含む。該診断電源ユニットは、装置のバッテリユニット、例えば充電バッテリパック、へ電流を供給するために、かつ装置の構成要素の現状に関する情報を表示するために構成されている。このようにして、タービンファンのバッテリ充電状態または故障などの、装置の構成要素の状態を継続的に監視することが可能である。
【0032】
本発明による独立型CPAP装置の好適な実施形態および非侵襲ベンチレーションシステムを、添付図面を参照して、本明細書の下記により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】フェースマスクが組み立てられた構成の、本発明による独立型CPAP装置の斜視図である。
【
図1B】フェースマスクが取り外された構成の、本発明による独立型CPAP装置の斜視図である。
【
図1C】フェースマスクを有さない断面形態の、本発明による独立型CPAP装置の斜視図である。
【
図3A】装置のハウジング内での空気経路に対するタービンファンの位置の概略図である。
【
図3B】装置のハウジング内での空気経路に対するタービンファンの位置の概略図である。
【
図4】本発明による非侵襲ベンチレーションシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1Aは、本願による独立型CPAP装置1の概略図を描写している。該装置1は、フェースマスク10と、該フェースマスク10に接続されている電気機械デバイス20とを含む。該電気機械デバイス20は、フェースマスク10に剛性に直接接続されていることが留意される。換言すれば、マスク10と電気機械デバイス20との間に、電気ケーブルまたは可撓性の管もしくは導管などのいかなる種類の可撓性要素も間置されていない。このように、装置1は、片手でも容易に取り扱われ得る独立型装置である。また、
図1Aは、過圧の場合に安全手段としての機能を果たす、フェースマスク10の側面上に配置されている機械排気弁12の存在を示す。
【0035】
フェースマスク10は、
図1Bに示されているように、電気機械デバイス20により、またはむしろ前記デバイス20のハウジング22により、容易に取り外され得る。この目的で、接続手段14がフェースマスク10とデバイス20との間に配置されている。フェースマスク10は、例えばスナップ式締結機構により、電気機械デバイス20のハウジング22から取り外されかつ再度取付けられ得る。この接続領域からの空気逃しを回避するために、封止要素が接続手段の所に設けられる。
【0036】
図1Cは、
図1Aおよび
図1Bの電気機械デバイス20の縦断面を描写している。電気機械デバイス20は、フェースマスク10に直接接続されるハウジング22を含む。詳細には、電気機械デバイス20は、外部環境からフェースマスク10までの空気の流動を可能にするように構成されている空気経路24を含み、該空気経路24は、外側からの大気(
図1Cの底部上の2つの黒い矢印)を受け入れるための入口部分241と、加圧空気を出口開口部21を通してフェースマスク10へ送達する(
図1Cの最上部上の単一の白い矢印)ための出口部分242とを有する。ハウジング22はボトルの形状を有することが留意され、ハウジング22は、出口部分242に、先細形状を有する端部領域23を有する。ハウジング22内に、外側から受け入れられる大気を所定の圧力値で加圧するタービンファン28が配置されている。該タービンファン28の上流に、粗フィルタ243が配置されており、肉眼的汚染に起因するファン28の損傷を回避する。他方、タービンファン28の下流に、フェースマスク10へ送達される加圧空気を浄化するHEPAフィルタ244が配置されている。
【0037】
電気機械デバイス20は、第1の圧力センサ246と第2の圧力センサ247とをさらに含む。両センサは、空気経路24の内部の圧力値を測定するのに使用され、タービンファン28の下流の空気経路の出口部分242に配置されている。さらに、電気機械デバイス20は、大気への空気接続(
図1Cの横矢印)を開くための制御排気弁245を含む。該制御排気弁245は空気経路24の出口部分242に配置されている。
【0038】
空気経路24の横に、電気機械デバイス20は制御ユニット26をさらに含む。該制御ユニット26は、装置の正常空気状態および異常空気状態を自動管理する。このために、2つの圧力センサ246、247、制御排気弁245、およびタービンファン28は制御ユニット26に接続されている。
【0039】
図1Cに示されている通り、制御ユニット26は、短時間独立型ニーズ用のバッテリパック27により支援されている低電圧供給線29により供給される。
【0040】
図2は、フェースマスク10に接続されている電気機械デバイス20の機能概略図を示す。大気(
図2の左側の水平矢印)が装置1内へ導入され、粗フィルタ243により濾過される。タービンファン28を通過した後、加圧空気は、HEPAフィルタ244によりさらに濾過される。
【0041】
正常動作モードにおいて、制御ユニット26は、第1の圧力センサ246により測定された圧力値に基づいてタービンファン28の速度を修正することにより、空気経路24の内部の圧力値を調節するように構成されている。このために、制御ユニット26は、タービンファン28および第1の圧力センサ246に接続されているファン速度制御ユニット261を含む。第1の圧力センサ246により受信された情報(すなわち、測定圧力値)に基づいて、ファン速度制御ユニット261は、例えば空気経路24の内部の制御圧力値に到達するまでその機能を減速させることにより、タービンファン28の速度に作用する。この時点で、加圧空気は最初にフェースマスク10へ、かつ次いで患者Pへ送達される。
【0042】
異常過圧動作モードにおいて、制御ユニット26は、制御排気弁245を作動させるように、かつ第2の圧力センサ247により測定された圧力値に基づいて、タービンファン28の動作を停止させるように構成されている。このために、制御ユニット26は、タービンファン28に接続されている過圧検出器262と、制御排気弁245と、第2の圧力センサ247とを含む。該第2の圧力センサ247により受信される情報(すなわち、測定圧力値)に基づいて、過圧検出器262は制御排気弁245を作動させ、タービンファン28の速度に作用する、例えばその機能を停止させる。この場合、該過圧空気は、制御排気弁245により放出される(制御排気弁245の所の垂直矢印)。
【0043】
追加安全制御要素として、加圧空気が患者Pに送達される前、フェースマスク10は機械排気弁12を設けられている。マスクの内側の空気の圧力値が事前設定閾値より高い場合、過圧空気は機械排気弁12により放出される(制御排気弁12の所の垂直矢印)。
【0044】
図3Aおよび
図3Bは、電気機械デバイス20のハウジング22、および詳細には空気経路24に対するタービンファン28の相対位置の概略図を示す。図から、空気経路24は、ハウジング22の入口部分を出口部分に接続している導管により示され得ることが明らかである。本特定の場合には、経路24は、基本的にハウジング22の中心内部内で延在している長手方向経路である。図に示されている2つの構造によれば、円として概略的に示されているタービンファン28は、空気経路24の外側に配置されている。
図3Aおよび
図3Bは、タービンファン28が空気経路24の左側にまたは右側に配置される、2つの可能性を示す。しかし、タービンファン28が、経路24の外側であるハウジング22の内部の任意の領域内に配置され得ることが明らかである。詳細には、空気経路24は、ハウジング22の出口開口部21を通過する中心長手方向軸CAを有する。したがって、タービンファン28は該中心長手方向軸CAから所定の距離dの所に配置される。該距離の値は、タービンファン28から出口開口部21への有毒ガスまたは熱風の直接通流を回避するように決定される。
【0045】
タービンファン28の回転軸RAは、空気経路24の中心長手方向軸CAに平行であり、かつ回転軸RAは中心長手方向軸CAからシフトされていることが留意される。詳細には、2つの平行軸間の距離dは、タービンファン28から出口開口部21への有毒ガスまたは熱風の直接通流を回避するように決定される。図に示されていないが、タービンファン28の回転軸RAは、空気経路24の中心軸CAと比較して別の方向に配向され得る。この構造は、同様に、タービンファン28から出口開口部21への有毒ガスまたは熱風の直接通流を回避し得る。
【0046】
図4は、急性呼吸不全の入院前管理用の非侵襲ベンチレーションシステム100の概略図を示す。本システムは、地下鉄、学校、大学等の、病院建造物の外の公共の場所に配置され得る。該システム100は、
図1A、
図1Bおよび
図1Cに描写されている装置1と、接続手段3、例えば電気ケーブル、により該装置に接続されている診断電源ユニット2とを含む。該診断電源ユニット2は、装置1のバッテリユニットに電流を供給するように構成されている。また、このユニット2は、装置の構成要素の現状に関する情報を表示するために構成されている。このために、診断電源ユニット2は、装置1の内部のバッテリ27の充電状態について、または制御ユニット26、タービンファン28、バッテリ27、センサ246、247、弁245等の、装置1のいくつかの構成要素の可能性のある機能不良について、ユーザに知らせるためにディスプレー4と制御光5とを含む。
【0047】
上記説明の組合せで特徴を示したが、これは、もっぱら有利な組合せを目的としている。上記説明は特徴の必要な組合せを示すことを目的としておらず、むしろそれは本開示の態様の各々を示している。したがって、任意の記載された特徴の特定の組合せが独立型CPAP装置または非侵襲ベンチレーションシステムの機能に必要であることを意図していない。
【符号の説明】
【0048】
1 独立型CPAP装置
2 診断電源ユニット
3、14 接続手段
4 ディスプレー
5 制御光
10 フェースマスク
12 機械排気弁
20 電気機械デバイス
21 (ハウジングの)出口開口部
22 (デバイスの)ハウジング
23 (ハウジングの)端部領域
24 空気経路
26 制御ユニット
27 バッテリパック
28 タービンファン
29 低電圧供給線
100 非侵襲ベンチレーションシステム
241 (空気経路)入口部分
242 (空気経路)出口部分
243 粗フィルタ
244 HEPAフィルタ
245 制御排気弁
246 第1の圧力センサ
247 第2の圧力センサ
261 ファン速度制御ユニット
262 過圧検出器
CA 中心長手方向軸
d 距離
P 患者
RA 回転軸
【国際調査報告】