(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】白髪抑制用組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20230810BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230810BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230810BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20230810BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20230810BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230810BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230810BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230810BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20230810BHJP
A61K 31/4741 20060101ALI20230810BHJP
C07J 63/00 20060101ALN20230810BHJP
C07J 71/00 20060101ALN20230810BHJP
C07D 311/30 20060101ALN20230810BHJP
C07D 491/056 20060101ALN20230810BHJP
C07H 17/07 20060101ALN20230810BHJP
【FI】
A61K8/60
A61Q5/00
A61P17/00
A61Q5/06
A61K8/63
A61K31/704
A61K31/7048
A61K8/49
A61K31/353
A61K31/4741
C07J63/00
C07J71/00
C07D311/30
C07D491/056
C07H17/07
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572787
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 KR2020006903
(87)【国際公開番号】W WO2021241780
(87)【国際公開日】2021-12-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ユン-ホ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】サン-ファ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-ヨン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-ユン・キム
【テーマコード(参考)】
4C050
4C057
4C083
4C086
4C091
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050AA08
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4C050CC17
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4C091LL09
4C091MM03
4C091NN07
4C091PA02
4C091PA07
4C091QQ02
4C091QQ05
4C091QQ07
4C091QQ15
(57)【要約】
本発明は、白髪発生の抑制効果が優秀な白髪抑制用組成物及びその用途に関する。本発明の白髪抑制用組成物は、Wnt/β-カテニン信号伝達経路を活性化して毛髪でメラニン合成を促進することで、白髪(白毛症)の抑制、予防、改善、緩和、遅延または治療の効果が顕著に優秀である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスシン(Escin)、27-デオキシアクテイン(27-Deoxyactein)、リシオノチン(Lysionotin)、ニチジンクロリド(Nitidine chloride)、ラノステロール(Lanosterol)、エンゲレチン(Engeletin)、スペクヌエゼニド(Specnuezhenide)、プラエルプトリンB(Praeruptorin B)、ロツン酸(Rotunic acid)、セサモシド(Sesamoside)、ポリガラシンD(Polygalacin D)、モモルジンIc(Momordin Ic)、バレクロリン(Valechlorine)、ツシラゴン(Tussilagone)、ペリプロシン(Periplocin)、ポリフィリンVII(Polyphyllin VII)及びプラチコジンD2(Platycodin D2)からなる群より選択された一つ以上を含む、白髪抑制用組成物。
【請求項2】
前記エスシン(Escin)、27-デオキシアクテイン(27-Deoxyactein)、リシオノチン(Lysionotin)、ニチジンクロリド(Nitidine chloride)、ラノステロール(Lanosterol)、エンゲレチン(Engeletin)、スペクヌエゼニド(Specnuezhenide)、プラエルプトリンB(Praeruptorin B)、ロツン酸(Rotunic acid)、セサモシド(Sesamoside)、ポリガラシンD(Polygalacin D)、モモルジンIc(Momordin Ic)、バレクロリン(Valechlorine)、ツシラゴン(Tussilagone)、ペリプロシン(Periplocin)、ポリフィリンVII(Polyphyllin VII)及びプラチコジンD2(Platycodin D2)からなる群より選択された一つ以上は、組成物の総重量に対して0.0001~50重量%で含まれる、請求項1に記載の白髪抑制用組成物。
【請求項3】
前記白髪抑制用組成物は、Wnt/β-カテニン信号伝達体系を活性化させる、請求項1に記載の白髪抑制用組成物。
【請求項4】
前記白髪抑制用組成物は、医薬組成物、医薬部外品組成物または化粧料組成物である、請求項1に記載の白髪抑制用組成物。
【請求項5】
請求項1項に記載の白髪抑制用組成物を含む、白髪抑制用ヘアーまたは頭皮用製品。
【請求項6】
請求項1に記載の白髪抑制用組成物を含む、白髪抑制用キット。
【請求項7】
請求項1に記載の白髪抑制用組成物を対象体に適用することを含む、白髪抑制方法。
【請求項8】
請求項1に記載の白髪抑制用組成物の白髪抑制のための用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白髪の発生抑制効果が優秀な白髪抑制用組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
白髪は頭皮の老化によって発生する。白髪は、白毛症(Canities) 及び毛髪灰色化(Hair Graying)を含む。白髪(白毛)は、その程度によって白髪の人の実際の年齢よりも老令に見えるようにする。毛髪色の変化は、老化の信号として認知されることがあり、年齢に相応しくない白髪の発生は、個人にとってストレスとして作用して自尊感情に否定的な影響を及ぼし得る。そこで、白髪を改善するために美容上の多様な研究開発が行われている。
【0003】
白髪を改善するための方法として髪を染めるとしても、毛髪の成長によって白髪が持続的に成長するため、髪染めはその効果が一時的である。これによって、前記方法は、周期的に髪を染めなければならないという短所がある。また、通常の酸化染毛剤は、頭皮及び皮膚を損傷させる恐れがある。また、黒豆またはツルドクダミエキスなどが白髪を改善するために使用されているが、効果を体感しにくいという短所がある。
【0004】
白髪の発生は、メラノサイト幹細胞(Melanocyte stem cell;MSC)の消失、またはメラノサイトの生理活性の低下が主な原因である。これによって、髪の毛、眉毛またはまつげなどの母毛に存在するメラノサイトで生成されるメラニンの量が減少し、これによって毛髪の白色化または灰白色化が進む。メラノサイトで生成されたメラニンがケラチノサイト(Keratinocyte)に伝達され、色素が沈着した毛髪(Head hair)または体毛(Body hair)を作るようになる。この際、メラニンがケラチノサイトへ移動できない場合、毛髪の色素が欠乏されて白髪が発生する。
【0005】
茶色及び黒色を示すユーメラニン(Eumelanin)及び黄色と赤色を 示すフェオメラニン(Pheomelanin)の量と相対的な割合は、毛髪及び体毛の色に大きい影響を及ぼす。そして、メラニンの生成には、チロシナーゼ(Tyrosinase)、DHICAオキシダーゼ(DHICA oxidase,TRP-1)及びドーパクロムトートメラーゼ(DOPAchrome tautomerase;TRP-2)の三つの酵素が関与し、前記酵素の活性度がメラニンの合成に影響を及ぼすと知られている。前記過程でチロシナーゼは、チロシン(Tyrosine)からドーパ(DOPA)への酸化、及びドーパからドーパキノン(dopaquinone)への酸化を触媒する。L-ドーパキノン(L-Dopaquinone)またはo-ドーパキノンと知られているこの物質は、メラニンの前駆体である。前記ドーパキノンは、システインが存在するときに自然に環化(cyclization)してドーパクロム(dopachrome)になり、これはドーパクロムトートメラーゼ(TRP-2)によって互変異性化してDHICAを形成するようになる。TRP-1は、前記DHICAを酸化させてキノン誘導体を形成する。
【0006】
前記酵素のうちでチロシナーゼ及びTRP-1は、毛嚢生長周期のうち成長期(anagen)に毛球(hair bulb)及び毛乳頭(Dermal papilla)の周辺のメラノサイトで発現され、退行期(catagen)及び休止期(telogen)には発現しない。
【0007】
前述したように、白髪はメルノサイト及びメラノサイト幹細胞によって共に影響を受ける。また、メラニン細胞が減少すると、それにつれてメラニンの生成が漸進的に減少し、メラニンの伝達が減少する。このようなメラニンの減少は、皮膚で色素性疾患として現われることもある。色素性疾患の代表的な例には、白斑症(vitiligo)があり、白斑症の原因の一つとしてメラノサイトの減少または破壊が挙げられる。そして、白斑症の治療のための方法としてWnt/β-カテニン経路の活性化が多数研究されている(Journal of Investigative Dermatology(2015) 135,2921~2923)。また、メラノサイト幹細胞のWnt信号伝達機転を活性化させると、毛髪と表皮メラノサイト(epidermal melanocyte)の色素の生成が増加することが報告された(Cell,Vol 145,Issue 6,10,(2011),941~955、Medical Research Review(2016),Vol37,issue4,907~945)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、白髪の発生を効果的に抑制可能な白髪抑制用組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、白髪の発生を抑制するのに使用するための前記組成物の用途を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記白毛症を含む白髪を効果的に抑制可能な物質について鋭意研究した結果、本発明のエスシン(Escin)、27-デオキシアクテイン(27-Deoxyactein)、リシオノチン(Lysionotin)、ニチジンクロリド(Nitidine chloride)、ラノステロール(Lanosterol)、エンゲレチン(Engeletin)、スペクヌエゼニド(Specnuezhenide)、プラエルプトリンB(Praeruptorin B)、ロツン酸(Rotunic acid)、セサモシド(Sesamoside)、ポリガラシンD(Polygalacin D)、モモルジンIc(Momordin Ic)、バレクロリン(Valechlorine)、ツシラゴン(Tussilagone)、ペリプロシン(Periplocin)、ポリフィリンVII(Polyphyllin VII)、またはプラチコジンD2(Platycodin D2)がWnt/β-カテニン経路を活性化させることを見出した。また、前記物質がB-16マウスメラノーマ細胞でメラニン合成を増加させる効果を奏することを見出した。本発明者は、Wnt/β-カテニン経路の活性化効果が優秀な前記物質のうち一つ以上を皮膚に適用(または塗布)する場合、白髪の抑制または改善の効果が顕著に優秀であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、エスシン(Escin)、27-デオキシアクテイン(27-Deoxyactein)、リシオノチン(Lysionotin)、ニチジンクロリド(Nitidine chloride)、ラノステロール(Lanosterol)、エンゲレチン(Engeletin)、スペクヌエゼニド(Specnuezhenide)、プラエルプトリンB(Praeruptorin B)、ロツン酸(Rotunic acid)、セサモシド(Sesamoside)、ポリガラシンD(Polygalacin D)、モモルジンIc(Momordin Ic)、バレクロリン(Valechlorine)、ツシラゴン(Tussilagone)、ペリプロシン(Periplocin)、ポリフィリンVII(Polyphyllin VII)及びプラチコジンD2(Platycodin D2)からなる群より選択された一つ以上を含む白髪抑制用組成物を提供する。前記白髪抑制用組成物は、前記一つ以上の物質を有効成分として含み得る。
【0011】
本発明において、白髪の「抑制」とは、白髪の発生量または発生頻度を抑制するか、または黒髪から白髪への変化または老化過程を抑制することを意味する。一実施例で、白髪の「抑制」は、Wnt/β-カテニン経路を活性化して毛髪でメラニン合成を促進することを意味し得る。一実施例で、本発明の白髪抑制用組成物は、白髪(白毛症)の抑制、予防、改善、緩和、遅延または治療などの用途に使用可能であり、白髪を改善するための美容的な目的であれば、いかなる用途にも制限なく使用可能である。前記「予防」とは、本発明の組成物を適用することで、白髪の発生、成長または増殖の進行を遅延させる全ての行為を意味し得る。前記「治療」とは、本発明の組成物を適用することで、白髪の成長及び増殖を抑制して白髪または白毛症を好転させるか、または利する全ての行為を意味し得る。
【0012】
一実施例で、本発明の白髪抑制用組成物は、前記エスシン(Escin)、27-デオキシアクテイン(27-Deoxyactein)、リシオノチン(Lysionotin)、ニチジンクロリド(Nitidine chloride)、ラノステロール(Lanosterol)、エンゲレチン(Engeletin)、スペクヌエゼニド(Specnuezhenide)、プラエルプトリンB(Praeruptorin B)、ロツン酸(Rotunic acid)、セサモシド(Sesamoside)、ポリガラシンD(Polygalacin D)、モモルジンIc(Momordin Ic)、バレクロリン(Valechlorine)、ツシラゴン(Tussilagone)、ペリプロシン(Periplocin)、ポリフィリンVII(Polyphyllin VII)及びプラチコジンD2(Platycodin D2)からなる群より選択された一つ以上を組成物の総重量に対して0.0001~50重量%、望ましくは0.001~10重量%で含み得る。前記物質の含量が0.0001重量%未満の場合には白髪抑制効果が微々であり、50重量%超過の場合には剤形の安定性が劣り、望ましくない。
【0013】
一実施例で、本発明の白髪抑制用組成物は、医薬組成物、医薬部外品組成物または化粧料組成物に使用され得る。また、本発明の白髪抑制用組成物は、通常皮膚に適用可能な如何なる形態にも剤形化できる。望ましくは、本発明の白髪抑制用組成物は、皮膚外用剤の形態に剤形化し得る。例えば、前記皮膚外用剤の剤形としては、液状、クリーム状、ペースト状または固状など、皮膚に適用可能な剤形に製造できる。また、本発明の白髪抑制用組成物は、ヘアーまたは頭皮用組成物または製品として提供され得る。例えば、通常の添加剤を加えて、白髪抑制のためのシャンプー、トニック、ヘアコンディショナー、ヘアローション、ゲル、パック、クリーム、エッセンス、パウダー、スプレー、オイル、石けん、液状洗浄剤、液状染毛剤タイプまたはエアロゾールタイプなどの組成物に製造され得るが、これらに制限されない。下記の本発明の製造例1または2では、白髪抑制用組成物をヘアトニックまたはヘアローションの剤形に製造した。
【0014】
一実施例で、本発明の白髪抑制用組成物が液状である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤などが含まれ得る。前記担体成分としては、例えば、水、アルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルなどからなる群より選択された一つ以上を含み得る。前記アルコールは、通常使用されるアルコールを使用し得る。望ましくは、線状または分枝状のC2~C4モノアルコールが挙げられ、さらに望ましくは、エタノールまたはイソプロパノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
一実施例で、本発明の白髪抑制用組成物の剤形が、ペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、でん粉、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが使用され得る。また、前記担体成分としてアルコールが使用され得る。前記アルコールは、イソプロパノールが望ましいが、これに限定されない。
【0016】
一実施例で、本発明の白髪抑制用組成物の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーが含まれ得る。前記剤形がスプレーである場合には、クロロフルオロハイドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルなどのような推進剤をさらに含み得る。
【0017】
一実施例で、本発明の白髪抑制用組成物は、皮膚外用剤に通常使用可能な成分を含み得る。例えば、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、キレート剤、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤、色素及び香料などからなる群より選択される一つ以上の添加剤をさらに含み得る。
【0018】
一実施例で、本発明の白髪抑制用組成物は、皮膚に直接塗布または撒布するなどの経皮投与の方法で使用され得る。前記「投与」という用語は、本発明の白髪抑制用組成物を如何なる適切な方法で身体に導入することを意味する。本発明白髪抑制用組成物の投与経路は、投与経路は、目的とする組織に到達可能であれば、如何なる一般的な経路によっても投与可能である。望ましくは、本発明の白髪抑制用組成物は経皮投与可能であり、より望ましくは、局所塗布され得る。本発明の白髪抑制用組成物の適用回数は、処方、必要または目的によって決定され得る。
【0019】
一実施例で、本発明の白髪抑制用組成物の使用量は、年齢、病変の程度などの個人差や剤形によって適切に調節可能である。また、本発明の白髪抑制用組成物は、通常、1日1回~数回、適量を頭皮に塗布し、一週間~数ヶ月間使用することが望ましい。本発明の実験例3では、白髪抑制用組成物(ヘアトニック)を週7回ずつ6ヶ月間使用した。前記実験例3の結果から、比較例のプラシーボ対照群に比べて前記ヘアトニックの使用時、白髪の抑制効果が優秀であることを確認した。特に、エタノールを含ませた剤形でより高い脱毛防止及び毛髪成長の効果が確認された。
【0020】
一実施例で、本発明の前記白髪抑制用組成物を含む白髪抑制用キットを提供する。さらに他の様態で、前記キットとは、白髪の予防または治療のために必要な組成物及び付属品を含むセットを意味する。さらに他の様態で、前記キットに含まれる付属品は、白髪の予防または治療のために本発明が属する技術分野において通常使用される道具または装置などである。さらに他の様態で、前記キットは、前記成分の投与量、投与経路、投与回数及び適応症(白毛症)などからなる群より選択されたいずれか一つ以上を開示した与薬指示書をさらに含み得る。
【0021】
一実施例で、本発明は、白髪抑制用組成物を対象体に適用することを含む白髪抑制方法を提供する。さらに他の様態で、前記対象体は、白髪の抑制を要するヒトであり得る。望ましくは、前記方法で前記白髪抑制用組成物は、有効量で対象体に適用され得る。前記「有効量」とは、白髪を抑制、遅延、改善または緩和させるか、または白髪の治療または管理において治療上または美容上の利点を提供するのに十分な有効成分の量を意味する。また、前記「有効量」は、生体外(in vitro)または生体内(in vivo)のいずれの場合にも白髪の発生を抑制または減少させるのに十分な量を意味する。前記白髪の抑制方法は、Wnt/β-カテニン信号伝達経路を活性化して毛髪でメラニン合成を促進することで白髪の抑制または改善効果を奏し得る。
【0022】
一実施例で、本発明は、前記白髪抑制用組成物を用いることを特徴とする白髪の抑制のための用途を提供する。一実施例で、前記用途は、白髪の抑制または改善のための全ての用途を含み得る。例えば、医薬用途、化粧学的用途または美容学的用途などを含み得る。他の様態で、前記白髪の抑制のための用途は、Wnt/β-カテニン信号伝達経路を活性化して毛髪でメラニン合成を促進することで白髪の抑制または改善効果を奏し得る。
【0023】
一実施例で、本発明は、エスシン(Escin)、27-デオキシアクテイン(27-Deoxyactein)、リシオノチン(Lysionotin)、ニチジンクロリド(Nitidine chloride)、ラノステロール(Lanosterol)、エンゲレチン(Engeletin)、スペクヌエゼニド(Specnuezhenide)、プラエルプトリンB(Praeruptorin B)、ロツン酸(Rotunic acid)、セサモシド(Sesamoside)、ポリガラシンD(Polygalacin D)、モモルジンIc(Momordin Ic)、バレクロリン(Valechlorine)、ツシラゴン(Tussilagone)、ペリプロシン(Periplocin)、ポリフィリンVII(Polyphyllin VII)及びプラチコジンD2(Platycodin D2)からなる群より選択された一つ以上を含む白髪抑制用組成物の製造方法を提供する。前記製造方法において、白髪抑制用組成物は、通常使用される化粧品、医薬部外品または医薬品などの製造方法によって製造され得る。
【0024】
一実施例で、本発明の白髪抑制用組成物は、エスシン(Escin)、27-デオキシアクテイン(27-Deoxyactein)、リシオノチン(Lysionotin)、ニチジンクロリド(Nitidine chloride)、ラノステロール(Lanosterol)、エンゲレチン(Engeletin)、スペクヌエゼニド(Specnuezhenide)、プラエルプトリンB(Praeruptorin B)、ロツン酸(Rotunic acid)、セサモシド(Sesamoside)、ポリガラシンD(Polygalacin D)、モモルジンIc(Momordin Ic)、バレクロリン(Valechlorine)、ツシラゴン(Tussilagone)、ペリプロシン(Periplocin)、ポリフィリンVII(Polyphyllin VII)及びプラチコジンD2(Platycodin D2)からなる群より選択された二つ以上を含み得る。
【0025】
一実施例で、本発明の白髪抑制用組成物は、開示された全ての成分を、望ましくは、化粧品/食品/医薬品/医薬部外品関連の各種規範で規定した最大の使用値を超過して含まない。
【発明の効果】
【0026】
本発明の白髪抑制用組成物は、白髪の発生を効果的に抑制することができる。本発明の白髪抑制用組成物は、Wnt/β-カテニン信号伝達経路を活性化して毛髪でメラニンの合成を促進することで、白髪(白毛症)の抑制、予防、改善、緩和、遅延または治療の効果が顕著に優秀である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】B-16メラノーマ細胞において、エスシンによってメラニンの合成が増加したことを確認した実験結果である。
【
図2】エスシン及びその含量によるメラニン合成量の増加を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳しく説明する。 しかし、本発明による実施例は様々な他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0029】
実験例1:Wnt/β-カテニン信号伝達増加効果
本実験においては、Wnt/β-カテニン経路の活性化を確認するために、TCF/LEF Responsive Luciferase Reporter HEK293A 安定細胞株(Wnt Reporter HEK293A cell;WRHEK293A)を使用した。前記安定細胞株は、MEM(Corning,USA)とウシ胎児血清(Gibco BRL,Gaithersburg,MD,USA)を使用して継代培養して保持した。転写活性化試験法のために96ウェルプレートにウェル当たり3万個の細胞を播種した後、37℃で24時間、インキュベーターで培養した。そして、本発明のエスシン、27-デオキシアクテイン、リシオノチン、ニチジンクロリド、ラノステロール、エンゲレチン、スペクヌエゼニド、プラエルプトリンB、ロツン酸、セサモシド、ポリガラシンD、モモルジンIc、バレクロリン、ツシラゴン、ペリプロシン、ポリフィリンVII及びプラチコジンD2を各々表1のように処理した。その後、24時間培養した後、ルシフェラーゼアッセイシステム(Luciferase assay system,Promega)を使用してレポーターアッセイを行った。製造会社の実験方法に従って行い、ウィクトールウォールプレートリーダー(Victor multiwall plate reader)(PerkinElmer,USA)を用いて発光(Luminescence)を測定した。物質処理による細胞毒性を確認するために、内部対照群(internal control)としてGFPの蛍光(Fluorescence)発現を並行して測定した。発光酵素の反応による発光値をGFP蛍光値で割った後、無処理対照群の値を100%にし、それに対する処理群の値を求めてパーセント(%)で表した(表1)。
【0030】
【0031】
実験例2:メラニン生成効果確認
本実験では、Wnt信号伝達増加効果を示す実験例1の化合物をB-16マウスメラノーマ細胞(B-16 mouse melanoma cell)の培養液に添加し、細胞水準におけるメラニン生成効果を実験した(Lotan R.,Lotan D.Cancer Res.40:3345-3350,1980)。実験前に、B-16モラノーマ細胞の毒性を評価し、毒性のない濃度を選定してメラニン生成評価を行った。B-16モラノーマ細胞は、10%FBSが含まれたDMEM(Gibco BRL,Gaithersburg,MD,USA)に継代培養をした。その後、メラニン合成及び抽出のために、100mmの細胞培養ディッシュに播種した後、密集度(conflucency)が70%であるときに化合物を処理した。前記化合物は、培養液に10μg/mLの濃度で処理された。α-メラノサイト刺激ホルモン(α-melanocyte stimulating hormone,α-MSH)は対照群として使用されており、これは10nMになるように培養液に添加した後、各々B-16モラノーマ細胞に処理して48時間培養した。その後、細胞をトリプシン処理して培養容器から取り外した後、遠心分離してメラニンを抽出した。取り外した細胞は、水酸化ナトリウム溶液(1N濃度)1mLを加えて10分間沸かしてメラニンを溶かした。分光光度計を用いて400nMで吸光度を測定し、生成されたメラニンの量を測定した。前記メラニンの量は、メラニンの濃度による吸光度標準曲線(standard curve)を用いてμg/mL単位に定量化した。無処理対照群を100%にし、それに対する処理群の値を求めてパーセント(%)で表した(表2)。
【0032】
【0033】
前記化合物のうちエスシンのメラニン合成結果を
図1及び
図2に示した。
【0034】
実験例3:白髪抑制用組成物1(ヘアトニック)の白髪発生抑制効果の確認試験
本発明の化合物のうちエスシン及び27-デオキシアクテインを含む白髪抑制用組成物1(ヘアトニック)を製造した。前記組成物を用いて人体毛髪の白髪減少効果を実験した。元気な白髪の成人60人を対象にして12人ずつ5個のグループに分け、比較例1、実施例1、実施例1-2、実施例2または実施例2-2を週7回ずつ6ヶ月間頭皮に使用した。使用後、フォリスコープフォトトリコグラム(Folliscope phototrichogram)を用いて組成物の塗布前と比較して白髪の発生程度を評価した。実験結果は、塗布前を100%にし、それに対する値を表3に示した。
【0035】
【0036】
製造例1:白髪抑制用組成物1(ヘアトニック)
本発明のエスシン、27-デオキシアクテイン、リシオノチン、ニチジンクロリド、ラノステロール、エンゲレチン、スペクヌエゼニド、プラエルプトリンB、ロツン酸、セサモシド、ポリガラシンD、モモルジンIc、バレクロリン、ツシラゴン、ペリプロシン、ポリフィリンVIIまたはプラチコジンD2を下記表4に示した処方に従って通常の方法によってヘアトニックを製造した。
【0037】
【0038】
製造例2:白髪抑制用組成物2(ヘアローション)
本発明のエスシン、27-デオキシアクテイン、リシオノチン、ニチジンクロリド、ラノステロール、エンゲレチン、スペクヌエゼニド、プラエルプトリンB、ロツン酸、セサモシド、ポリガラシンD、モモルジンIc、バレクロリン、ツシラゴン、ペリプロシン、ポリフィリンVIIまたはプラチコジンD2を下記表5に示した処方に従って通常の方法によってヘアローションを製造した。
【0039】
【国際調査報告】