(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】シスタチオニン-ガンマ-リアーゼを使用するホモシスチン尿症及び高ホモシステイン血症の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 38/51 20060101AFI20230810BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230810BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20230810BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20230810BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20230810BHJP
C12N 9/88 20060101ALN20230810BHJP
【FI】
A61K38/51
A61P7/00
A61P13/02
A61P39/02
A61K47/60
C12N9/88 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573573
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 US2020035297
(87)【国際公開番号】W WO2021242258
(87)【国際公開日】2021-12-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522074534
【氏名又は名称】アエグリア バイオセラピューティクス, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ローリンソン, スコット ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】スローン, レスリー
(72)【発明者】
【氏名】デーグ, クリストファー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC14
4C076CC17
4C076DD09Q
4C076EE23Q
4C076EE59Q
4C076FF63
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA42
4C084CA18
4C084DC26
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZA811
4C084ZA812
(57)【要約】
本開示は、一般に、シスタチオニン-ガンマ-リアーゼ(CGL)酵素でホモシスチン尿症及び高ホモシステイン血症患者を治療するための方法に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホモシスチン尿症又は高ホモシステイン血症を有するか、又は発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、
治療上有効量の、天然ヒトCGLアミノ酸配列(配列番号1)に対して少なくとも以下の置換:位置59のイソロイシン、位置63のロイシン、位置91のメチオニン、位置119のアスパラギン酸、位置268のアルギニン、位置311のグリシン、位置339のバリン、及び位置353のセリン、を含む修飾されたヒトシスタチオニン-ガンマ-リアーゼ(CGL)酵素を含む製剤を投与することを含み、
前記製剤が、1日当たり1用量~1ヶ月当たり1用量の頻度で、約0.05mg/kg~約4mg/kgの酵素用量で投与される、方法。
【請求項2】
前記酵素が、1つ以上のPEG単位と結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記製剤が、薬学的に許容される担体を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記製剤が、5mLのバイアルに供給された2mLの液体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記製剤が、約1mg/mL~約50mg/mLの酵素濃度を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記製剤が、約1~約20mg/mLの酵素濃度を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記製剤が、静脈内に又は皮下に投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記製剤が、1週間当たり1用量投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記製剤が、4週間にわたり静脈内に投与され、その後、以降の週において、皮下投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記製剤が、約0.1mg/kg~約1mg/kgの用量で前記対象に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記製剤が、約0.1mg/kg~約1mg/kgの用量で週1回投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記製剤が、約0.15mg/kg、約0.45mg/kg、又は約1mg/kgの用量で対象に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記製剤が、前記対象に静脈内投与される前に、生理食塩水において希釈される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、ヒト患者である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、前記製剤を投与することによる療法を開始する前に、80μM超の総血漿ホモシステインレベルを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、少なくとも12歳である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、個別化された食に維持される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、メチオニン制限食に維持される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、総血漿ホモシステインレベルを低下させる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、約80μM以下に総血漿ホモシステインレベルを低下させる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、約50μM以下に総血漿ホモシステインレベルを低下させる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、約15μM以下に総血漿ホモシステインレベルを低下させる、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ホモシスチン尿症及び高ホモシステイン血症の患者を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホモシスチン尿症はメチオニン代謝の常染色体劣性遺伝性障害であり、血漿及び尿中のホモシステイン及びホモシステイン代謝産物(ホモシスチン、ホモシステインシステイン複合体など)の上昇により、不可逆的な病的状態及び平均余命の低下を伴う広範囲の重篤な結果をもたらす。ホモシスチン尿症は、硫黄転移経路(ホモシスチン尿症I)又はメチル化経路(ホモシスチン尿症II及びIII)における遺伝性欠損である。ホモシステイン及びホモシスチンの血漿レベルの増加に加えて、罹患する対象は、メチオニン及びS-アデノシルホモシステインの血漿レベルの上昇、並びに血漿シスタチオニン及びシステインのレベルの低下を有する。主な臨床的特徴としては、発達的に遅発する学習困難、及び知的障害、骨格異常(例えば、過度に高い身長、長く細い四肢[ドリコステノメリア]、脊柱側弯症、漏斗胸、マルファノイドの外観)、外眼筋水晶体(眼の水晶体のずれ)、緑内障、及び/又は重度の近視、早発性血栓塞栓性血管イベント、並びに脂肪肝が挙げられる。
【0003】
通常、ホモシステインは硫黄転移経路を介してシスタチオニンに代謝され、最終的にはシステイン又はホモシステインは再メチル化経路によってメチオニンに変換される(
図1)。ホモシスチン尿症は、シスタチオニンベータ-シンターゼ(CBS)、コバラミン(cbl)関連D(MMADHC)の代謝、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(MTHFR)、5-メチルテトラヒドロ葉酸ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(MTR)、又は5-メチルテトラヒドロ葉酸ホモシステインメチルトランスフェラーゼレダクターゼ(MTRR)などの、硫黄転移経路又は再メチル化経路に関連する遺伝子の1つの変異によって引き起こされる。
【0004】
ホモシスチン尿症患者は、タンパク質(アミノ酸)の一定の構成要素を適切に処理することができない。ホモシスチン尿症には複数の形態があり、それらの徴候及び症状並びに遺伝的原因によって区別される。古典的ホモシスチン尿症(OMIM 236200)としても知られるCBS遺伝子の変異によるホモシスチン尿症は、ホモシスチン尿症の最も一般的な形態である。CBS酵素の機能は、ホモシステインをシスタチオニンに変換することであるが(硫黄転移経路の第一段階)、CBSの欠損又は不全は、ホモシステインの蓄積をもたらし、これはまた、ホモシステインの再メチル化によるアミノ酸メチオニンの蓄積をもたらし得る。ホモシスチン尿症の一般的な形態を有する個体は、近視(myopia)、眼の前部における水晶体のずれ、異常な血液凝固のリスクの増加、及び骨折(骨粗鬆症)又は他の骨格異常を起こしやすい脆性骨を特徴とする。一部の罹患者はまた、発達遅延及び学習能力に関する問題を有する。
【0005】
よりまれに、ホモシスチン尿症は、MTHFR、MTR、MTRR、及びMMADHC遺伝子における変異によって引き起こされ得る。これらの遺伝子によってコードされた酵素は、ホモシステインをメチオニンに変換する際に役割を果たすが、変異は体内でホモシステインの蓄積をもたらす。個人は、知的障害、期待される速度での成長及び体重増加のなさ(成長不全)、発作、運動に係る問題、並びに巨赤芽球性貧血として知られる血液障害を示し得る。巨赤芽球性貧血は、赤血球細胞の数が少なく(貧血)、残りの赤血球が正常よりも大きい(巨赤芽球性)場合に起こる。ホモシスチン尿症の徴候及び症状は、典型的には生後1年以内に発症するが、一部の軽度の罹患者は、小児期又は成人期の後期まで特徴を発症しないことがある。
【0006】
CBS欠損によるホモシスチン尿症の十分な裏付けの結果、疾患の破壊的な合併症が血漿総ホモシステイン(tHcy)レベルの上昇への慢性曝露と強く関連していることが実証されている。従来の研究では、血漿tHcyの低下が疾患関連合併症を低減するための一貫した好ましい影響を与えることが実証されている。したがって、専門家が定義する治療ガイドラインでは、CBS欠損によるホモシスチン尿症を治療するための主要な目標は、血漿tHcyを低下させることであると強調されている。
【0007】
CBS欠損症によるホモシスチン尿症の患者は、患者及びその家族に深刻な影響を及ぼす認知、行動、及び精神疾患関連の症状を有することが知られている。CBS欠損症を有するホモシスチン尿症患者の多くは、精神障害及び慢性行動障害を有し、そのうちのいくつかは標準的な診断カテゴリーに適合しない場合がある。疾患管理によってホモシステインレベルを低下させることは、行動を改善し、知的能力さえも改善すると考えられている。したがって、適応行動の管理は、CBS欠損によるホモシスチン尿症の対象において臨床的に重要であると考えられ、血漿tHcyを低下させるための早期治療が適応行動の改善につながり得るという仮説を立てることは妥当である。
【0008】
CBS欠損によるホモシスチン尿症を有する対象に対する現在の疾患管理では、適切な栄養を維持しながら血漿tHcy濃度を推奨されるレベルまで低下させることを目的とした、食事によるタンパク質及びメチオニンの制限が行われる。食事に対する応答を評価するには、血漿アミノ酸分析による頻繁な代謝モニタリングが必要である。加えて、CBS欠損によるホモシスチン尿症を有する対象の食事におけるタンパク質制限の程度は、維持することが困難であり、コンプライアンスは不良である。更に、この程度の食事性タンパク質制限は、長期間の栄養不足及び社会的な受容性に関する課題を生じさせ得るものであり、これはコンプライアンス不良及び全体的な疾患負荷をもたらす。ゆえに厳格なアミノ酸制限食にこだわることは、ホモシスチン尿症を有する多くの対象にとって困難である。患者が食事制限を自由に行える治療的な選択肢は、生活の質における大きな進歩をもたらす。すなわち、患者は、血漿中の低いtHcyレベルを生化学的に制御し、維持することができる場合には、食事を自由に行いつつ、天然タンパク質摂取を増加させ、医療食品及びアミノ酸サプリメントを減少又は排除することができる。
【0009】
CBS欠損症によるホモシスチン尿症患者の満たされていない医学的ニーズは、主に次の3つの点である。第一に、tHcyレベルを所望の標的濃度未満に一貫して維持することができない、最適な標準的な疾患管理を受けている療法抵抗性の患者の存在である。第二に、低メチオニン食及び/又は補助療法(ピリドキシン及び/又はベタイン療法)の不遵守のリスクが高い患者であって、突然死を含む重度の合併症のリスクが高い患者(例えば、10代後半の者及び若年成人、又は行動上の問題若しくは知的障害を有する患者)の存在である。第三に、安全性の問題、又は所望の標的濃度を超えるtHcyレベルを有することによる他の副作用のいずれかのために、利用可能な補助療法に耐えられない患者の存在である。
【0010】
現在の療法は、血漿中tHcyを制御する際のコンプライアンス不良及び限られた有効性によって著しく制限される。血漿中tHcyのより良好な制御を提供し、食事の自由化及びベタインの中止を可能にする代替療法に対する、明らかに満たされていないニーズが存在する。かかる治療は、毒性レベルの血漿中tHcyへの慢性的かつ生涯にわたる曝露を最小限に抑え、それにより、ホモシスチン尿症の重篤な結果及び患者及びその介護者への負担を軽減するものとなろう。
【発明の概要】
【0011】
本発明の一態様は、ホモシスチン尿症又は高ホモシステイン血症を有するか、又は発症するリスクを有する対象を治療する方法に関する。この態様の1つ以上の実施形態では、本方法は、治療上有効量の、天然ヒトCGLアミノ酸配列(配列番号1)に対して少なくとも以下の置換を含む修飾されたヒトシスタチオニン-ガンマ-リアーゼ(CGL)酵素を含む製剤を投与することを含む:位置59のイソロイシン、位置63のロイシン、位置91のメチオニン、位置119のアスパラギン酸、位置268のアルギニン、位置311のグリシン、位置339のバリン、及び位置353のセリン。1つ以上の実施形態では、製剤は、1日当たり1用量~1ヶ月当たり1用量の頻度で、約0.05mg/kg~約4mg/kgの酵素用量で投与される。
【0012】
1つ以上の実施形態では、酵素は、1つ以上のPEG単位と結合している。
【0013】
1つ以上の実施形態では、製剤は、薬学的に許容される担体を更に含む。
【0014】
1つ以上の実施形態では、製剤は、5mLのバイアルに供給された2mLの液体である。
【0015】
1つ以上の実施形態では、製剤は、約1mg/mL~約50mg/mLの酵素濃度を含む。1つ以上の実施形態では、製剤は、約1~約20mg/mLの酵素濃度を含む。
【0016】
1つ以上の実施形態では、製剤は、静脈内又は皮下に投与される。
【0017】
1つ以上の実施形態では、製剤は、1週間当たり1用量で投与される。
【0018】
1つ以上の実施形態では、製剤は、4週間にわたり静脈内に投与され、以降の週において、皮下投与される。
【0019】
1つ以上の実施形態では、製剤は、約0.1mg/kg~約1mg/kgの用量で対象に投与される。1つ以上の実施形態では、製剤は、約0.1mg/kg~約1mg/kgの用量で週1回投与される。1つ以上の実施形態では、製剤は、約0.15mg/kg、約0.45mg/kg、又は約1mg/kgの用量で対象に投与される。
【0020】
1つ以上の実施形態では、製剤は、対象に静脈内投与される前に、生理食塩水において希釈される。
【0021】
1つ以上の実施形態では、対象は、ヒト患者である。
【0022】
1つ以上の実施形態では、対象は、製剤を投与することによる療法を開始する前に、80μM超の総血漿ホモシステインレベルを有する。
【0023】
1つ以上の実施形態では、対象は、少なくとも12歳である。
【0024】
1つ以上の実施形態では、対象は、個別化された食に維持される。
【0025】
1つ以上の実施形態では、対象は、メチオニン制限食に維持される。
【0026】
1つ以上の実施形態では、方法は、総血漿ホモシステインレベルを低下させる。1つ以上の実施形態では、方法は、約80μM以下に総血漿ホモシステインレベルを低下させる。1つ以上の実施形態では、方法は、約50μM以下に総血漿ホモシステインレベルを低下させる。1つ以上の実施形態では、方法は、約15μM以下に総血漿ホモシステインレベルを低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の更なる特徴は、以下の書面による説明及び付随する図から明らかになるであろう。
【0028】
【
図1】ホモシステインが再メチル化経路によってメチオニンに戻され得るか、又はホモシステインが硫黄転移経路によってシスタチオニンに代謝され得る、メチオニン再メチル化経路を表す。
【
図2A】ヒトシスタチオニン-ガンマ-リアーゼ(CGL)(配列番号1)の一次アミノ酸配列を示し、
【
図2B】変異E59I、S63L、L91M、R119D、K268R、T311G、E339V、及びI353S(CGL-ILMDRGVS)(配列番号2)を有する、修飾ヒトシスタチオニン-ガンマ-リアーゼの一次アミノ酸配列を示し、
【
図2C】N末端メチオニンを欠き、変異E59I、S63L、L91M、R119D、K268R、T311G、E339V、及びI353S(CGL-ILMDRGVS-ΔM)(配列番号3)を有する、修飾ヒトシスタチオニン-ガンマ-リアーゼの一次アミノ酸配列を示す。
【
図3】2つのパート、すなわち、試験薬物の4QW用量を受けるパート1の4人の対象の単一IVコホートと、その後、試験薬物の4QW用量を受けるパート2の各4人の対象の3つの計画されたSCコホートと、から構成される、ヒトにおける最初の、非盲検、非無作為化第1/2相の、複数回漸増用量試験の試験スキームを表す。
【
図4】HIS-CGL-ILMDRGVS-PEGで処理したCBS欠損(CBS-/-)マウスの生存に関するKaplan Meier曲線を表す。
【
図5】CGL-ILMDRGVS-PEGで処理したCBS欠損(CBS-/-)マウスの生存に関するKaplan Meier曲線を表す。
【
図6】
図6A~6Eは、各肝臓からの肝臓サンプル及び代表的なH&E染色を表す。
図6Aは、野生型マウス由来の健康な肝臓を示す。
図6Bは、10日齢の未処理CBS-/-マウスを示す。
図6Cは、23日齢のPBS処理CBS-/-マウスを示す。
図6Dは、23日齢のHIS-CGL-ILMDRGVS-PEG処理CBS-/-マウスを示す。
図6Eは、60日齢のHIS-CGL-ILMDRGVS-PEG処理CBS-/-マウスを示す。
【
図7】
図7A~7Dは、H&E染色肝臓サンプルを表す。
図7Aは、10日齢の未処理CBS-/-マウスを示す。
図7Bは、21日齢のPBS処理CBS-/-マウスを示す。
図7Cは、21日齢の、6.25mg/kgのポリヒスチジンタグ付き及びPEG化CGL-ILMDRGVS(HIS-CGL-ILMDRGVS-PEG)でBIWで処理されたCBS-/-マウスを示す。
図7Dは、21日齢の、12.5mg/kgのHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGでBIWで処理されたCBS-/-マウスを示す。
【
図8】
図8A~8Dは、オイルレッド-O染色した肝臓サンプルを表す。
図8Aは、10日齢の未処理CBS-/-マウスを示す。
図8Bは、19~21日齢のPBS処理CBS-/-マウスを示す。
図8Cは、20日齢の、1.56mg/kgのポリヒスチジンタグ付き及びPEG化CGL-ILMDRGVS(HIS-CGL-ILMDRGVS-PEG)でTIWで処理されたCBS-/-マウスを示す。
図8Dは、21日齢の、12.5mg/kg HIS-CGL-ILMDRGVS-PEGでBIWで処理されたCBS-/-マウスを示す。
【
図9】
図9A及び9Bは、10mg/kgのCGL-ILMDRGVS-PEGで処理したCBS-/マウスをグラフで表すが、
図9Aは、170日目の脱毛(alopecia)の程度を示し、
図9Bは、169日目の骨粗鬆症をチェックするための骨塩密度(BMD)を、平均±平均の標準誤差(SEM)として測定した。*マン・ホイットニー検定によるp≦0.05。
【
図10】
図10A~10Cは、CGL-ILMDRGVS-PEGの複数の皮下(SC)BIW後のCBS-/マウスの血漿(
図10A)、肝臓(
図10B)、及び脳(
図10C)試料におけるtHcyレベルを表す。tHcyレベルは、平均±平均の標準誤差(SEM)として測定した。*マン・ホイットニー検定によるp≦0.05。
【
図11】12.5mg/kg又は6.25mg/kg用量のポリヒスチジンタグ化及びPEG化CGL-ILMDRGVS(HIS-CGL-ILMDRGVS-PEG)の単回皮下(SC)投与後の血漿総ホモシステイン(tHcy)レベルを経時的に測定した、CBS欠損(CBS-/-)マウスにおける単回用量薬力学試験を表す。
【
図12】12.5mg/kg又は6.25mg/kg用量のポリヒスチジンタグ化及びPEG化CGL-ILMDRGVS(HIS-CGL-ILMDRGVS-PEG)の単回皮下(SC)投与後の血漿総メチオニンレベルを経時的に測定した、CBS欠損(CBS-/-)マウスにおける単回用量薬力学試験を表す。1匹のマウスを12.5mg/kg群から除外した。
【
図13】CBS欠損(CBS-/-)マウスにおける複数回用量薬力学試験を表すが、ここでは、ポリヒスチジンタグ付き及びPEG化CGL-ILMDRGVS(HIS-CGL-ILMDRGVS-PEG)の複数回用量後のtHcy血漿レベルを経時的に測定した。
【
図14】
図14A及び14Bは、カニクイザルに静脈内投与されたPEG化CGL-ILMDRGVSの単回用量薬物動態を表す。
図14Aは線形グラフ表示であり、
図14Bは半対数グラフ表示である。
【
図15】
図15A及び15Bは、カニクイザルに8mg/kg(1日目に1回目投与)及び2mg/kg(15日目に2回目投与)で皮下投与されたPEG化CGL-ILMDRGVSの複数回用量薬物動態を表す。
図15Aは線形グラフ表示であり、
図15Bは半対数グラフ表示である。
【
図16】
図16A及び16Bは、PEG化CGL-ILMDRGVSの静脈内投与後の平均血漿tHcy濃度を経時的に測定したカニクイザルにおける単回用量薬力学試験を表す。
図16Aは線形グラフ表示であり、
図16Bは半対数グラフ表示である。
【
図17】
図17A及び17Bは、カニクイザルにおける複数回用量薬力学試験を表すが、ここで、8mg/kg(1日目に1st投与)及び2mg/kg(15日目に2nd投与)の皮下投与後の平均血漿tHcyを経時的に測定した。
図17Aは線形グラフ表示であり、
図17Bは半対数グラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
シスタチオニンベータ-シンターゼ(CBS)欠損症によるホモシスチン尿症及び高ホモシステイン血症を有する患者に対する満たされていない医学的ニーズが存在する。操作されたヒトシスタチオニンガンマ-リアーゼ(CGL)を設計して、ホモシステイン及びホモシスチンを分解した。CGL活性部位に導入されたCGL(例えば、PEG化及び/又はポリヒスチジンタグ)及び様々な変異(例えば、E59I、S63L、L91M、R119D、K268R、T311G、E339V、I353S)に対する修飾によって、ホモシステイン及びホモシスチンに対して高い基質特異性を有するが、天然基質であるシスタチオニンに対しては有しない分子がもたらされた。古典的ホモシスチン尿症患者の場合、操作された酵素は、高い血漿中総ホモシステインレベル(tHcy)の酵素分解のための代替経路を提供し、それによって、経硫黄化経路におけるCBS酵素欠損の悪影響が改善されると予想される。現在の療法は、血漿中tHcyを制御する際のコンプライアンス不良及び限られた有効性によって著しく制限される。血漿中tHcyのより良好な制御を提供し、食事の自由化及びベタインの中止を可能にする代替療法に対する、明らかに満たされていないニーズが存在する。操作された酵素は、毒性レベルの血漿中tHcyへの慢性的で生涯にわたる曝露を最小限に抑えるために有利であり、それによって、ホモシスチン尿症(例えば、骨粗鬆症、神経学的、及び心理学的合併症、並びに血栓塞栓性事象)の重篤な結果、並びに患者及びその介護者の負担が軽減されるであろう。
【0030】
変異E59I、S63L、L91M、R119D、K268R、T311G、E339V、I353Sを有する操作されたヒトシスタチオニンガンマ-リアーゼ(CGL-ILMDRGVS)を、ホモシスチン尿症及び高ホモシステイン血症の治療薬として開発した。CGL-ILMDRGVS(及びそのPEG化形態:CGL-ILMDRGVS-PEG)は、ホモシステイン及びホモシスチンの、アルファケトブチレート、チオ-ホモシステイン、硫化水素及びアンモニアへの変換を触媒するピリドキサールリン酸(PLP)依存性四量体である。CGL-ILMDRGVSは、メチオニン及びシステインも分解するが、好ましい基質であるホモシステイン及びホモシスチンよりも約20及び約10倍低い効力である。CGL-ILMDRGVSは、ヒト酵素シスタチオニンガンマ-リアーゼ(CGL、EC 4.4.1.1)のタンパク質操作によって開発された。CGL-ILMDRGVSのPEG化により、延長された血清中半減期を有するCGL-ILMDRGVS-PEG化合物が得られる。CGLと同様に、CGL-ILMDRGVS-PEG(及びCGL-ILMDRGVS)は、非共有結合によってホモ四量体を形成する。CGL-ILMDRGVS-PEGの活性部位における補因子ピリドキサールリン酸(PLP)の共有結合は、その触媒活性に必須である。血漿総ホモシステイン(tHcy)レベルを含む薬物動態(PK)及び薬力学(PD)に対するシスタチオニン-ガンマ-リアーゼ(CGL)バリアント酵素の効果を、ホモシスチン尿症及び高ホモシステイン血症を治療するための有効なヒト用量を見出すために決定した。CGL-ILMDRGVSの生化学的特性を表1にまとめ、一次アミノ酸配列(変異アミノ酸を含む)を
図2に示す。
【表1】
【0031】
したがって、本発明の様々な実施形態は、CGL-ILMDRGVS及びCGL-ILMDRGVS-PEGなどの修飾CGL酵素の投与に関する。
【0032】
定義
本明細書中で記載される場合、「酵素」及び「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して結合されたアミノ酸を含む化合物を指し、交換可能に使用される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」という用語は、非天然の様式で作動可能に連結されたタンパク質又はタンパク質断片を含むキメラタンパク質を指す。
【0034】
本明細書に記載される場合、「半減期」(1/2-寿命)という用語は、ポリペプチドの濃度が、インビトロ(例えば、細胞培養培地中で測定される)で、又はインビボ(例えば、血清中で測定される)で、例えば哺乳動物への注射剤後に、半減するのに必要とされる時間を指す。「半減期」を測定する方法は、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)フォーマットで使用されるCGL又はPEGに特異的な抗体の使用を含み、それにより、タンパク質の物理的量が時間の関数として測定される。半減期を測定するための他の方法は、ホモシスチン(ホモシステイン)のアルファ-ケトブチレート、メタンチオール、及び/又はアンモニアなどの生成物への変換から生じる任意の基質の生成を検出する任意のアッセイによって、時間の関数として酵素薬剤の触媒活性を決定することを含む。
【0035】
「リンカー」という用語は、2つの異なる分子を作動可能に連結する分子架橋として作用する化合物又は部分を意味し、リンカーの1つの部分は、第1の分子に作動可能に連結され、リンカーの別の部分は、第2の分子に作動可能に連結される。
【0036】
本明細書に記載される場合、「PEG化」という用語は、高度の生体適合性及び修飾の容易さを考慮して、薬物担体として広く使用されているポリエチレングリコール(PEG)とのコンジュゲートを指す。PEGは、PEG鎖の末端のヒドロキシ基を介して、化学的方法によって活性剤に結合(例えば、共有結合)することができるが、しかしながら、PEG自体は、1分子当たり最大で2つの活性剤に限定される。異なるアプローチでは、PEGとアミノ酸のコポリマーは、PEGの生体適合性特性を保持するが、分子当たりの多数の結合点(それにより、より多い薬物充填量をもたらす)の追加された利点を有し、様々な用途に適合するように合成的に設計することができる新規の生体材料として研究されている。
【0037】
本明細書に記載される場合、「遺伝子」という用語は、ポリペプチド又はその前駆体の産生に必要な制御及びコード配列を含む、DNA配列を指す。ポリペプチドは、所望の酵素活性が保持されるよう、全長コード配列によって、又はコード配列のいずれかの部分によってコードされ得る。
【0038】
本明細書に記載される場合、「天然」という用語は、天然に存在する供給源から単離されたときの、遺伝子、遺伝子産物、又はその遺伝子若しくは遺伝子産物の特性の典型的又は野生型の形態を指す。対照的に、「修飾された」、「バリアント」、「ムテイン」、又は「変異体」という用語は、天然の遺伝子又は遺伝子産物と比較した場合に、配列及び機能的特性(すなわち、25の変化した特性)の修飾を示す遺伝子又は遺伝子産物を指し、修飾された遺伝子又は遺伝子産物は、遺伝子操作されており、天然に存在しないか、又は生じないものである。
【0039】
「ベクター」という用語は、その中に核酸配列が挿入されて、細胞へ導入されて、そこで細胞がそれを複製することを可能にする、担体核酸分子を指すのに用いられる。核酸配列は「外因性」であり得、これは、ベクターが導入される細胞に対して外来性であること、又は配列が細胞中の配列と相同ではあるが、配列が通常存在しない宿主細胞核酸内の位置に存在することを意味する。ベクターとしては、プラスミド、コスミド、ウィルス(バクテリオファージ、動物ウィルス、植物ウィルス)及び人工染色体(例えば、YAC)が挙げられる。当業者は、標準的な組換え技術によってベクターを構築するための十分な知識を有するであろう(例えば、いずれも参照により本明細書に組み込まれるManiatis et al.,1988及びAusubel et al.,1994を参照されたい)。
【0040】
「発現ベクター」という用語は、RNAに転写され得る核酸コーディングを含む任意のタイプの遺伝子構築物を指す。いくつかの場合において、RNA分子は次に、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドに翻訳される。他の場合において、これらの配列は、例えば、アンチセンス分子又はリボザイムの産生においては、翻訳されない。発現ベクターは、様々な「制御配列」を含有することができ、それはすなわち、特定の宿主細胞における作動可能に連結されたコード配列の転写及びおそらく翻訳作業に必要な核酸配列を指す。転写及び翻訳を制御する制御配列に加えて、ベクター及び発現ベクターは、他の機能を果たす核酸配列(例えば、抗生物質耐性、マルチクローニングサイトなど)をも含み得る。
【0041】
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、治療効果を達成するための方法、すなわち、患者の循環中のホモシスチン(ホモシステイン)を正常な基準値以下のレベルまで枯渇させることに使用される、治療用組成物又は製剤(例えば、修飾CGL酵素又はかかる酵素をコードする核酸)の量を指す。
【0042】
本明細書に記載される場合、「シスタチオニン-ガンマ-リアーゼ」(CGL又はシスタチオナーゼ)という用語は、シスタチオニンのシステインへの加水分解を触媒する任意の酵素を指す。本明細書で使用される場合、この用語はまた、ヒトのシスタチオニン-ガンマ-リアーゼの形態を含む、霊長類のシスタチオニン-ガンマ-リアーゼ(又はシスタチオニン-ガンマ-リアーゼ)の形態を企図する。
【0043】
本明細書に記載される場合、「治療」及び「治療すること」という用語は、疾患又は健康関連の状態において治療的利益を得る目的で、対象への治療薬の投与若しくは適用、又は対象に対する手順若しくはモダリティの実施を指す。例えば、治療は、治療有効量のホモシステイナーゼ(ホモシスチナーゼ)の投与を含み得る。
【0044】
本明細書に記載される場合、「対象」及び「患者」という用語は、ヒト又は非ヒト、例えば霊長類、哺乳動物、及び脊椎動物のいずれかを指す。対象はヒトであり得る。
【0045】
非臨床用量範囲探索(DRF)試験
E59I、S63L、L91M、R119D、K268R、T311G、E339V、I353S変異を有するPEG化シスタチオニン-ガンマ-リアーゼ(CGL-ILMDRGVS-PEG)を用いて非臨床実験を実施し、化合物の薬理学、PK、PD、安全性、及び毒性を特徴付けた。これらの試験は、CBS欠損症によるホモシスチン尿症を有する対象における第1/2相ヒト初回臨床試験における、PEG化CGL-ILMDRGVS(CGL-ILMDRGVS-PEG)の使用を裏付け、可能にするものである。
【0046】
シスタチオニンベータ-シンターゼ(CBS)の欠損は、ホモシステイン及びホモシステインの類縁体(ホモシスチン及びホモシステイン化ペプチドなど)の血漿中レベルの上昇を引き起こし、これらを組み合わせたものが、血漿中総ホモシステイン(tHcy)を表す。インビボ動物試験では、古典的ホモシスチン尿症の臨床的に関連するノックアウトマウスモデルにおいて、ポリヒスチジン標識CGL-ILMDRGVS-PEG(HIS-CGL-ILMDRGVS-PEG)の血漿中tHcyレベルに対する薬学的効果を評価するため、腹腔内(IP)及び皮下(SC)投与経路を利用している。
【0047】
カニクイザルにおけるインビボ動物試験を実施し、CGL-ILMDRGVS-PEG薬物動態(PK)、薬力学(PD、tHcy枯渇)、並びに静脈内(IV)及び皮下(SC)投与経路の両方を利用するバイオアベイラビリティを特徴付けた。これらのデータを用いて、正常なスピローグ=ドーリーラット及びカニクイザルにおけるCGL-ILMDRGVS-PEGの非臨床安全性及び毒性(毒性、トキシコキネティクス、及び免疫原性)をデザインした。正常なラット及びサルは、血漿tHcyレベルが低いため、CGL-ILMDRGVS-PEG毒性の感受性評価に使用できると考えられる。この低い血漿tHcyは、ホモシスチン尿症患者において予想されるよりも、それらの血中tHcyレベルのより顕著な枯渇を表す。
【0048】
臨床開発計画をサポートするために使用したCGL-ILMDRGVS-PEGの非臨床安全性プロファイルは、ラット及びカニクイザルにおける複数のIV又はSC CGL-ILMDRGVS-PEG投与後の用量範囲設定(DRF)試験、並びに同じ種における計画された4週間の医薬品安全性試験実施基準(GLP)毒性試験もサポートした。ラットは、出生後22日目から開始して、週1回、4週間、静脈内又は皮下投与を受け、カニクイザル(約36ヶ月齢)は、週1回、4週間、静脈内又は皮下投与を受けた。4週間の毒性試験により、12歳以上の対象における臨床投与の開始及び試験期間を裏付けるために必要な無毒性量(NOAEL)が確立されるであろう。
【0049】
12歳未満(2歳以上~11歳以下)の小児患者におけるCGL-ILMDRGVS-PEGの臨床使用を可能にするために、幼若ラットにおいて毒性を評価した。CBS-/-マウス疾患モデルにおけるCGL-ILMDRGVS-PEGを用いた非臨床試験では、HIS-CGL-ILMDRGVS-PEGの投与が新生児の致死をレスキューできることが示された。HIS-CGL-ILMDRGVS-PEG及びCGL-ILMDRGVS-PEGの非臨床試験から得られたデータは、CBS欠損によるホモシスチン尿症患者を対象とした初めてのヒト初回第1/2相臨床試験を裏付ける情報を提供する。
【0050】
INDを裏付ける計画及び実施中の非臨床試験並びに非臨床開発計画の全体を表2にまとめる。
【表2】
【0051】
DRFのための非臨床薬理及び薬物動態
ホモシステイン及びホモシスチンを分解する操作されたヒトCGL酵素が、血漿中のtHcyの毒性レベルを低下させ得ることを示すために、酵素分子CGL-ILMDRGVSのポリヒスチジンタグ化及び/又はPEG化バージョン(例えば、HIS-CGL-ILMDRGVS-PEG又はCGL-ILMDRGVS-PEG)を用いて、インビボPD及び有効性試験を行った。追加的に、カニクイザル及びPDにおける確認的PK/PD試験にはCGL-ILMDRGVS-PEGを用い、CBS欠損(CBS-/-)マウスモデルにおける有効性試験にはHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGを用いた。
【0052】
CBS-/-マウスモデル
CBS欠損(CBS-/-)マウスモデルは、古典的ホモシスチン尿症(CBS欠損によるホモシスチン尿症)の臨床的に関連するマウスモデルである。CBS-/-マウスモデルを用いて、上昇した血漿tHcyレベル及び下流の疾患の発現を評価した。CBS-/-マウスモデルは、高ホモシステイン血症、骨粗鬆症、及び発達障害を含む、ヒト疾患の特性の多くを有する古典的ホモシスチン尿症(CBS欠損によるホモシスチン尿症)の臨床的に関連するマウスモデルである。ホモ接合CBS-/-マウスは、それらの遺伝的欠陥のために新生児致死性をもたらすが、平均余命は、早い年齢でホモシステインをメチオニンに再メチル化するベタインを与えることで延長され得る。しかしながら、ベタインは、離乳の年齢まで母乳を介して与えられた場合、CBS-/-マウスの50%において生存を改善するだけであり、より効果的な療法の必要性を示唆するものである。
【0053】
試験におけるCBS-/-マウスを、3.125~25mg/kgの範囲の用量レベルのHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGで、1週間に2回(BIW)皮下(SC)投与し、CBS-/-マウスにおける血漿tHcyレベルの低下が生存を改善するか否かを決定した。追加的に、25mg/kg BIWで腹腔内(IP)投与及び12.5mg/kgで週1回(QW)SC投与を試験した。この試験では、生存率を高めるために、全ての動物が出生から離乳まで母乳を介してベタインを摂取することができた。HIS-CGL-ILMDRGVS-PEGの投与は10日齢で開始し、動物が完全に成熟し、生存障害の危険性がもはや観察されなくなる少なくとも12週齢になるまで継続した。PBS対照(約15%の生存)と比較して、統計的に有意な生存の改善が、動物の死亡が報告されなかった3.125mg/kg SCまでの全ての用量レベルで観察された。加えて、肝臓病態の明らかな改善が観察され(
図5、6)、HIS-CGL-ILMDRGVS-PEGがCBS欠損動物においてベタインよりも優れた療法であることが示された。CBS-/-マウスにおけるHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGの観察された生存効果を用いて、予備的なPD分析を行った。
【0054】
サルを用いた薬物動態及び薬力学試験
CGL-ILMDRGVS-PEGの静脈内又は皮下用量を雄のカニクイザルに投与した。試験により、2及び8mg/kgでのIV又はSC投与後のCGL-ILMDRGVS-PEGのPK及びPDの特徴付けを行った。3週間の週1回SC投与後の注射部位の評価を、試験の第2相において行った。
【0055】
合計(遊離型及び結合型)ホモシステイン及びその酸化型ホモシスチン(総ホモシステイン(tHCY)と称する)を薬力学的マーカーとして使用した。平均クリアランス(CL)は低用量ではわずかに低かったが、その範囲(平均±SD)はIV投与後に重複していた。観察された分布体積(Vss)は、サル血清体積(45mL/kg)とほとんど同等であったが、平均推定値はわずかに低い傾向にあった。得られた平均IV半減期(T1/2)は、88.4~93.6時間(約3.7~3.9日)の範囲であった。
静脈内曝露(Cmax、AUC0-∞)の増加は、用量にほぼ比例し、用量の4倍の変化について、平均Cmax及びAUC0-∞の約3.6倍及び約3.4倍の増加が見られた。投与後0.5時間でTmaxメジアンが観察された。
【0056】
皮下曝露(Cmax、AUC0-∞)は8mg/kgにおいて、2mg/kgに対して高かった。Tmaxのメジアンは、2mg/kgでの投与後24時間に対して、48時間では8mg/kgであった。8mg/kgでの平均バイオアベイラビリティ推定値は、中程度(75.8%)であった。バイオアベイラビリティは、2mg/kg用量では評価しなかった。
【0057】
CGL-ILMDRGVS-PEGのIV投与後、血漿tHCYレベルの最大の低下が投与後4~8時間で観察され、更なる平均の低下が8mg/kgの高いIV投与レベルで観察された。投与の5分後(それぞれ2及び8mg/kg)に、血漿tHCYレベルの最初の約39%及び約72%の低下があり、その後、観察された最大の抑制にまで徐々に低下した。投与後8時間の平均tHCYレベルは、平均ベースラインレベルの47.8%及び18.1%(52.2%及び81.9%の低下に相当)であった。これは、それぞれ58.6及び194μg/mL以上の平均CGL-ILMDRGVS-PEG濃度に相当するものであった。ベースラインtHCYレベルへの回復は、2mg/kg静脈内投与群では240時間までにほとんど完了し、8mg/kg静脈内投与群では~84%が336時間(2週間)までに完了した。
【0058】
CGL-ILMDRGVS-PEGのSC投与後、8mg/kg用量レベルでは、投与後24~48時間で、2mg/kg用量では8~24時間で、血漿tHCYレベルの最大の低下が観察された。最大の低下が得られるまで、tHCYレベルは着実に低下した。最大の低下時の平均tHCYレベルは、2及び8mg/kg用量で、それぞれ平均ベースラインレベルの75.5%及び42.0%(24.5%及び58.0%減少に相当)であった。これは、それぞれ34.9及び98.7μg/mLまでの平均CGL-ILMDRGVS-PEG濃度に相当し、2mg/kgで顕著な動物間の変動があったことに留意されたい。ベースラインtHCYレベルへの回復は、8mg/kg/1日目用量について、336時間又は投与の15日目(2週間)までに完了した。15日目の2mg/kg投与後、回復は投与後168時間までに完了したようであった。
【0059】
用法及び用量
したがって、本発明の1つ以上の実施形態は、CGL-ILMDRGVS又はCGL-ILMDRGVS-PEGなどの修飾CGL酵素のための投薬レジメンを提供する。様々な実施形態では、酵素は、約0.05mg/kg~約4mg/kg、例えば約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.15mg/kg、約0.2mg/kg、約0.25mg/kg、約0.3mg/kg、約0.35mg/kg、約0.4mg/kg、約0.45mg/kg、約0.5mg/kg、約0.5mg/kg、約0.55mg/kg、約0.6mg/kg、約0.65mg/kg、約0.7mg/kg、約0.75mg/kg、約0.8mg/kg、約0.85mg/kg、約0.9mg/kg、約0.95mg/kg、約1mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約3.5mg/kg又は約4mg/kgの用量で投与される。PEG化酵素(例えば、CGL-ILMDRGVS-PEG)について、酵素用量は、酵素の非PEG化形態(例えば、CGL-ILMDRGVS)に基づいて計算される。
【0060】
1つ以上の実施形態では、修飾CGL酵素(例えば、CGL-ILMDRGVS又はCGL-ILMDRGVS-PEG)(又はかかる酵素を含む組成物)は、複数回用量で投与される。.様々な実施形態では、酵素は、1日1回~1ヶ月に1回、例えば、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、週1回、隔週1回、3週間に1回、又は1ヶ月に1回投与される。
【0061】
例示的な投薬レジメンは、1日1回~1ヶ月1回の頻度で投与される約0.05mg/kg~約4mg/kgを含む。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.1mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.15mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.2mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.25mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.3mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.35mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.4mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.45mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.5mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.6mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.7mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.8mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、0.9mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、1mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、1.5mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、2mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、2.5mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、3mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、3.5mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、酵素は、4mg/kgの用量で、1週間に1回の頻度で投与される。
【0062】
本明細書に記載の修飾CGL酵素(又はそのような酵素を含む組成物)は、静脈内、髄腔内、皮下、筋肉内、腫瘍内、及び/又は腹腔内を含む任意の適切な経路を介して投与することができる。1つ以上の実施形態では、修飾CGL酵素(又はかかる酵素を含む組成物)は、静脈内(IV)又は皮下(SC)に投与される。
【0063】
シスタチオニン-ガンマ-リアーゼ
リアーゼは、多くの場合、新しい二重結合又は新しい環構造を形成する、様々な化学結合の切断を触媒する酵素である。例えば、この反応を触媒する酵素は、以下のようなリアーゼであろう:ATP-----+cAMP+PPi。リアーゼは、一方向の反応のために1つの基質のみを必要とするが、逆反応のために2つの基質を必要とする点で、他の酵素とは異なる。
【0064】
多くのピリオキサール-5’-リン酸(PLP)依存性酵素がシステイン、ホモシステイン、及びメチオニンの代謝に関与し、これらの酵素は、Cys/Met代謝PLP依存性酵素と呼ばれる、進化的に関連したファミリーを形成する。これらの酵素は、約400アミノ酸のタンパク質であり、PLP基は、ポリペプチドの中心位置に位置するリジン残基に結合している。このファミリーのメンバーには、シスタチオニン-ガンマ-リアーゼ(CGL)、シスタチオニン-ガンマ-シンターゼ(CGS)、シスタチオニン-ベータ-リアーゼ(CBL)、メチオニン-ガンマ-リアーゼ(MGL)、及びO-アセチルホモセリン(OAH)/O-アセチルセリン(OAS)スルフヒドリラーゼ(OSHS)が含まれる。これら全てに共通するのは、外部基質アルジミンをもたらすミカエリス複合体の形成である。反応の更なる過程は、特定の酵素の基質特異性によって決定される。
【0065】
例えば、特異的な変異をPLP依存性リアーゼファミリーメンバー、例えばヒトシスタチオニン-ガンマ-リアーゼに導入して、その基質特異性を変化させた。このようにして、hGGL-NLVよりも高い触媒活性を有する、基質としてホモシスチン(ホモシステイン)を分解するデノバ(de nova)能力を有する新規なバリアントを作製した。新規なホモシスチン(ホモシステイン)の分解活性を生成するための他のPLP依存性酵素の修飾もまた、企図され得る。
【0066】
CGLは、哺乳動物の硫黄転移経路における最後の段階を触媒する四量体である(Ra et al.,1990)。CGLは、L-シスタチオニンのL-システイン、アルファ-ケトブチレート、及びアンモニアへの変換を触媒する。ピリドキサールリン酸は、この酵素の補欠分子族である。タンパク質操作を用いて、ホモシステイン及びホモシスチンの分解に対して弱い活性のみ有するシスタチオナーゼが、ホモシステイン及びホモシスチンを高速で分解することができる酵素に変換された(米国特許第9,481,877号、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0067】
ホモシスチン(ホモシステイン)操作
ヒトはホモシスチナーゼ(ホモシステイナーゼ)を産生しないため、生理的条件下でホモシスチン(ホモシステイン)を分解するための高い活性及び特異性、並びに血清などの生理学的液体中での高い安定性を有する、ヒト療法のためのホモシスチナーゼ(ホモシステイナーゼ)を操作する必要があり、またそれらは通常免疫寛容を誘発する天然タンパク質であるため非免疫原性でもある。
【0068】
pMGL(P.putida由来のMGL)を用いた動物試験で見られる望ましくない免疫原性効果のために、ヒト酵素においてホモシスチン(ホモシステイン)分解活性を操作することが望ましい。ヒトタンパク質に対する免疫寛容は、かかる酵素が非免疫原性であるか又は最小限の免疫原性を有するものであり、したがって十分に寛容されるようになることを可能にする。
【0069】
哺乳動物は、ホモシスチナーゼ(ホモシステイナーゼ)を有しないが、シスタチオニン-ガンマ-リアーゼ(CGL)を有する。CGLは、哺乳動物の硫黄転移経路における最後の段階を触媒する四量体である(Rao et al.,1990)。CGLは、L-シスタチオニンのL-システイン、アルファ-ケトブチレート、及びアンモニアへの変換を触媒する。ヒトCGL(hCGL)のcDNAは過去にクローニングされ、発現されたが、比較的低収率(約5mg/L培養物)であった(Lu et al.,1992;Steegbom et al.,1999)。
【0070】
したがって、霊長類(特にヒト)のシスタチオニン-ガンマ-リアーゼ(CGL又はシスタチオナーゼ)を変異誘発を介して修飾して、高効率でホモシスチン(ホモシステイン)を加水分解することに関連する方法及び組成物が提供される。
【0071】
未修飾CGL酵素に匹敵する少なくとも1つの機能的活性を示す修飾CGL酵素が記載される。修飾されたCGL酵素は、血清安定性を増加させるために更に修飾され得る。修飾されたCGL酵素としては、例えば、非修飾CGL酵素と比較して、ホモシスチナーゼ(ホモシステイナーゼ)酵素活性などの更なる利点を有するタンパク質が挙げられる。非修飾タンパク質又はポリペプチドは、ヒトシスタチオニン-ガンマ-リアーゼなどの天然シスタチオニン-ガンマ-リアーゼであり得る。
【0072】
活性の測定は、特に酵素の活性に関しては、当業者に周知のアッセイを使用して実施することができ、比較の目的で、例えば、修飾又は非修飾酵素のいずれかの天然及び/又は組換え型の使用を含めることができる。例えば、ホモシスチナーゼ(ホモシステイナーゼ)活性は、アルファ-ケトブチレート、メタンチオール、及び/又はアンモニアなどのホモシスチン(ホモシステイン)の変換から生じる任意の基質の産生を検出するための任意のアッセイによって決定され得る。
【0073】
修飾CGL酵素は、ホモシスチン(ホモシステイン)分解活性の増加に基づいて同定し得る。例えば、未修飾ポリペプチドの基質認識部位を同定し得る。この同定は、構造解析又は相同性解析に基づき行い得る。かかる基質認識部位の修飾を含む変異体の集団を作製し得る。ホモシスチン(ホモシステイン)分解活性が増加した変異体を、変異体集団から選抜し得る。所望の変異体の選抜は、ホモシスチン(ホモシステイン)分解からの副生成物又は生成物の検出などの方法を含み得る。
【0074】
修飾されたCGL酵素は、アミノ酸の欠失及び/又は置換を有し得、言い換えると、欠失を有する酵素、置換を有する酵素、並びに欠失及び置換を有する酵素は、修飾されたCGL酵素である。これらの修飾されたCGL酵素は、挿入又は付加されたアミノ酸を更に含み得、例えば、融合タンパク質又はリンカーを有するタンパク質などとし得る。「修飾された欠失CGL酵素」は、天然酵素の1つ以上の残基を欠くが、天然酵素の特異性及び/又は活性を有し得る。修飾された欠失CGL酵素はまた、低下した免疫原性又は抗原性を有し得る。修飾された欠失CGL酵素の例は、少なくとも1つの抗原領域、すなわち、修飾されたCGL酵素を投与することができる生物のタイプなどの特定の生物において抗原性を有すると決定された酵素領域において、アミノ酸残基が欠失したものである。
【0075】
置換又は置換バリアントは、タンパク質内の1つ以上の部位での1つのアミノ酸の別のものへの置換を含み得、またポリペプチドの1つ又は複数の特性、特にそのエフェクター機能及び/又はバイオアベイラビリティを調節するように設計され得る。置換は保存的であってもそうでなくてもよく、すなわち、1つのアミノ酸が類似の形状及び電荷の1つを有するもので置換される。保存的置換は、当該技術分野において周知であり、例えば、アラニンからセリン、アルギニンからリジン、アスパラギン酸又はヒスチジン、グルタミン酸、システインからグルタミン、グルタミンからアスパラギン酸、グルタミン酸からアスパラギン酸、グリジンからプロリン、ヒスチジンからアスパラギン酸又はグルタミン、イソロイシンからロイシン、ロイシン又はイソロイシン、リジンからアルギニン、メチオニン又はイソロイシン、フェニルアラニンからチロシン、セリンからトレオニン、スレオニンへ、トレオニンからセリン、トリプトファンからチロシン、チロシンからトリプトファン又はフェニルアラニン、及びバリンからイソロイシン又はロイシンへの置換が挙げられる。
【0076】
欠失又は置換に加えて、修飾されたCGL酵素は、典型的には、酵素中の少なくとも1つの残基の付加を含む残基の挿入を有し得る。これは、ターゲティングペプチド若しくはポリペプチドの、又は単に単一残基の挿入を含み得る。融合タンパク質と呼ばれる末端付加については、以下に記載する。
【0077】
「生物学的機能的等価体」という用語は、当該分野で十分に理解されており、本明細書中において更に詳細に定義する。したがって、配列番号1に対して約90%以上の配列同一性を有するCGL酵素配列、又は本明細書に開示される10の修飾CGL酵素のアミノ酸に対して約91%~約99%(92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、及び99%を含む)のアミノ酸同一又はそのような保存的置換を有するアミノ酸配列を有するもの、が含まれるが、但し、その酵素の生物学的活性は、15の測定可能な生物学的活性パラメータ(例えば、ホモシスチン(ホモシステイン)のアルファケトブチレート、メタンチオール、及びアンモニアへの変換)が、本明細書に開示された修飾CGL酵素の約20%、約15%、約10%、又は約5%である。修飾CGL酵素は、その非修飾対応物と生物学的に機能的に等価であり得る。
【0078】
アミノ酸及び核酸配列は、更なるN末端若しくはC末端のアミノ酸又は5’若しくは3’配列などの更なる残基を含み得、それでもなお、配列が、タンパク質発現が関与する生物学的タンパク質活性の維持などの上記の基準を満たす限り、本明細書に開示される配列のうちの1つに本質的に記載される通りであることが理解される。末端配列の付加は特に、例えば、コード領域の5’又は3’部分のいずれかに隣接する様々な非コード配列、又は遺伝子内に存在することが知られている様々な内部配列、すなわちイントロン、を、核酸配列に適用することで行われる。
【0079】
コンジュゲート
提供される組成物及び方法は、例えば、異種ペプチドセグメント又はポリエチレングリコールなどのポリマーとのコンジュゲートを形成することによる、改良のための、修飾されたCGL酵素の更なる修飾を含む。修飾されたCGL酵素は、酵素の流体力学的半径を増加させ、したがって、血清中の持続性を増加させるために、PEGに連結され得る。開示されるポリペプチドは、腫瘍細胞上の外部受容体又は結合部位に特異的かつ安定に結合する能力を有するリガンドなどの、任意の標的化剤にコンジュゲートされ得る(米国特許公開第2009/0304666号)。PEGは、約3,000~20,000ダルトンのサイズであり得、例示的なサイズは約5,000ダルトンである。
【0080】
融合タンパク質
修飾CGL酵素がN末端又はC末端で異種ドメインに連結され得る融合タンパク質が提供される。例えば、融合体ではまた、異種宿主におけるタンパク質の組換え発現を可能にするための、他の種由来のリーダー配列を採用し得る。別の有用な融合体は、融合タンパク質の精製を容易にするための、血清アルブミンアフィニティータグ若しくは6つのヒスチジン残基などのタンパク質親和性タグ、又は好ましくは切断可能な抗体エピトープなどの免疫学的に活性なドメインの付加を含む。非限定的な親和性タグとしては、ポリヒスチジン、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)が挙げられる。
【0081】
修飾されたCGL酵素は、XTENポリペプチド(Schellenberger et al.,2009)、IgG Feドメイン、アルブミン、又はアルブミン結合ペプチドなどの、インビボ半減期を増加させるペプチドに連結され得る。
【0082】
融合タンパク質を生成する方法は、当業者に周知である。かかるタンパク質は、例えば、完全な融合タンパク質のデノバ合成によって、又は異種ドメインをコードするDNA配列の結合、その後のインタクトな融合タンパク質の発現によって産生することができる。
【0083】
親タンパク質の機能的活性を回復する融合タンパク質の産生は、タンデムに連結されたポリペプチド間でスプライシングされるペプチドリンカーをコードする架橋DNAセグメントと遺伝子を連結することによって促進され得る。リンカーは、得られる融合タンパク質の適切なフォールディングを可能にするのに十分な長さである。
【0084】
リンカー
修飾されたCGL酵素は、二官能性架橋試薬を使用して化学的にコンジュゲートされてもよく、又はペプチドリンカーとタンパク質レベルで融合されてもよい。二官能性架橋試薬は、親和性マトリックスの調製、多様な構造の修飾及び安定化、リガンド及び受容体結合部位の同定、並びに構造に関する試験を含む、様々な目的のために広く使用されている。好適なペプチドリンカー、例えばGly-Serリンカーを使用して、修飾されたCGL酵素を連結することもできる。
【0085】
2つの同一の官能基を有するホモ二官能性試薬は、高分子の同一及び異なる高分子又はサブユニット間の架橋を誘導し、ポリペプチドリガンドをそれらの特異的結合部位に連結し得る。ヘテロ二官能性試薬は、2つの異なる官能基を含む。2つの各官能基の各反応性を利用することによって、架橋を選択性及び連続性の両方で制御することができる。二官能性架橋試薬は、それらの官能基の特異性、例えば、アミノ-、スルフヒドリル、グアニジン-、インドール-、カルボキシル-特異的な基などに従って分けることができる。これらのうち、遊離アミノ基を対象とする試薬は、それらの市販入手可能性、合成の容易さ、及びそれらを適用することができる穏やかな反応条件のために、一般的になっている。
【0086】
いくつかのヘテロ二官能性架橋試薬は、一級アミン反応性基及びチオール反応性基を含む。別の例では、ヘテロ二官能性架橋試薬及び架橋試薬を使用する方法は、文献に記載されている(米国特許第5,889,155号、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)。架橋試薬は、求核ヒドラジド残基を求電子マレイミド残基と組み合わせ、一例では、アルデヒドの遊離チオールへのカップリングを可能にする。架橋試薬は、様々な官能基を架橋するよう修飾することができる。
【0087】
追加的に、当業者に公知の任意の他の連結/カップリング剤及び/又は機構、例えば、抗体抗原相互作用、アビジンビオチン結合、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ホスホエステル結合、ホスホアミド結合、無水物結合、ジスルフィド結合、イオン性及び疎水性相互作用、二重特異性抗体及び抗体断片、又はそれらの組み合わせを、修飾されたCGLを組み合わせるために使用し得る。
【0088】
血液中で妥当な安定性を有する架橋剤を使用することが好ましい。標的化剤及び治療/予防剤をコンジュゲートするために首尾よく使用することができる多数のタイプのジスルフィド結合含有リンカーが知られている。立体障害されたジスルフィド結合を含有するリンカーは、インビボでより高い安定性を与えることが証明され得る。したがって、これらのリンカーは、連結剤の一つの基である。
【0089】
ヒンダード架橋剤に加えて、非ヒンダードリンカーもまた、本明細書に従って使用することができる。保護されたジスルフィドを含有又は生成しないと考えられる他の有用な架橋剤としては、SATA、SPDP、及び2-イミノチオランが挙げられる(Wawrzynczak and Thorpe,1987)。かかる架橋剤の使用は、当技術分野で十分理解されている。フレキシブルリンカーも使用し得る。
【0090】
化学的にコンジュゲートされると、ペプチドは一般に、コンジュゲートされていない薬剤や他の混入物からコンジュゲートを分離するために、精製される。
多数の精製技術が利用可能であり、それを使用することにより、臨床的な有用性を有するのに十分な純度のコンジュゲートが得られる。
【0091】
ゲル濾過、ゲル浸透、又は高速液体クロマトグラフィーなどのサイズ分離に基づく精製方法が、一般に、最も有用である。Blue-Sepharose分離などの他のクロマトグラフィー技術も使用し得る。N-ラウロイルサルコシンナトリウム(SLS)などの弱洗浄剤を使用するなど、封入体から融合タンパク質を精製するための従来の方法が有用であり得る。
【0092】
PEG化
修飾されたCGL酵素のPEG化に関連する方法及び組成物が開示される。例えば、修飾されたCGL酵素は、本願明細書において開示される方法に従いPEG化され得る。
【0093】
PEG化は、ポリ(エチレングリコール)ポリマー鎖を別の分子、通常は薬物又は治療用タンパク質に共有結合させるプロセスである。「PEG化」は、通常、PEGの反応性誘導体を標的高分子とインキュベートすることによって実施される。薬物又は治療用タンパク質へのPEGの共有結合は、宿主の免疫系から薬剤を「マスキング」し(免疫原性及び抗原性の低下)、腎クリアランスを減少させることによってその循環時間を延長するよう、薬剤の流体力学的サイズ(溶液中のサイズ)を増加させることができる。PEG化はまた、疎水性薬物及びタンパク質に水溶性を与えることもできる。
【0094】
PEG化の第1のステップは、一方又は両方の末端におけるPEGポリマーの好適な官能化である。同じ反応性部分を有する各末端で活性化されるPEGは「ホモ二官能性」として知られているが、存在する官能基が異なる場合、PEG誘導体は「ヘテロ二官能性」又は「ヘテロ官能性」と称される。PEGポリマーの化学的に活性な又は活性化された誘導体を調製して、PEGを所望の分子に結合させる。
【0095】
PEG誘導体のための好適な官能基の選択は、PEGに結合されるであろう分子上の利用可能な反応基のタイプに基づく。タンパク質について、典型的な反応性アミノ酸としては、リジン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、及びチロシンが挙げられる。N末端アミノ基及びC末端カルボン酸を使用することもできる。
【0096】
第一世代PEG誘導体を形成するために使用される技術は、一般にPEGポリマーを、ヒドロキシル基、典型的には無水物、酸塩化物、クロロホルメート、及びカルボナートと反応する基と反応させることである。第二世代のPEG化化学作用では、アルデヒド、エステル、アミドなどのより効率的な官能基が、コンジュゲートために利用可能である。
【0097】
PEG化の用途がますます発展及び複雑化するにつれて、コンジュゲートのためのヘテロ二官能性PEGに対するニーズが増加している。ヘテロ二官能性PEGは、親水性、柔軟性、及び生体適合性のスペーサーが必要とされる場合に、2つの実体を連結するのに非常に有用である。ヘテロ二官能性PEGの好ましい末端基は、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミン、カルボン酸、及びNHSエステルである。
【0098】
最も一般的な修飾剤又はリンカーは、メトキシPEG(mPEG)分子に基づく。これらの活性は、アルコール末端にタンパク質修飾基を付加することに依存している。いくつかの例では、ポリエチレングリコール(PEGジオール)が前駆体分子として使用される。ジオールは、両端でその後修飾されて、ヘテロ二量体又はホモ二量体PEG結合分子を生成させる。
【0099】
タンパク質は一般に、プロトン化されていないチオール(システイニル残基)又はアミノ基のような、求核部位でPEG化される。システイニル特異的修飾試薬の例として、PEGマレイミド、PEGヨード酢酸、PEGチオール、及びPEGビニルスルホンが挙げられる。4つは全て、温和な条件下及び中性~弱アルカリ性のpH下において強いシステイニル特異性を示すが、それぞれいくつかの欠点がある。マレイミドで形成されたチオエーテルは、アルカリ性条件下では幾分不安定であり得るため、このリンカーを用いた製剤オプションにはいくつかの制限があり得る。ヨードPEGで形成されたカルバモチオエート結合はより安定であるが、遊離ヨウ素は、いくつかの条件下においてチロシン残基を修飾できる。PEGチオールはタンパク質チオールとジスルフィド結合を形成するが、この結合もまた、アルカリ条件下で不安定であり得る。PEG-ビニルスルホン反応性は、マレイミド及びヨードPEGと比べて比較的遅いが、しかしながら、形成されたチオエーテル結合は極めて安定である。反応速度が遅いとまた、PEG-ビニルスルホン反応の制御も容易になる。
【0100】
天然のシステイニル残基での部位特異的PEG化は、これらの残基が通常ジスルフィド結合の形態であるか、又は生物活性に必要であるため、ほとんど行われない。一方で、部位特異的変異誘発法は、チオール特異的リンカーのシステイニルPEG化部位を取り込むために使用できる。システイン変異は、それがPEG化試薬に利用可能であり、かつPEG化後もなお生物学的に活性であるように設計されなければならない。
【0101】
アミン特異的修飾剤には、PEG NHSエステル、PEGトレシレート、PEGアルデヒド、PEGイソチオシアネート、及びいくつかの他のものが含まれる。全て穏やかな条件下で反応し、アミノ基に非常に特異的である。PEG NHSエステルは、おそらくより反応性の高い薬剤の1つであるが、しかしながら、その高い反応性は、大規模なPEG化反応の制御を困難にする可能性がある。PEGアルデヒドは、アミノ基とイミンを形成し、次いで、シアノ水素化ホウ素ナトリウムで二級アミンに還元される。水素化ホウ素ナトリウムとは異なり、シアノ水素化ホウ素ナトリウムはジスルフィド結合を還元しない。しかしながら、この化学物質は毒性が高く、特にpHの低下で揮発性になり、慎重に取り扱わなければならない。
【0102】
ほとんどのタンパク質には複数のリシン残基があるため、部位特異的なPEG化は困難となり得る。幸いなことに、これらの試薬はプロトン化されていないアミノ基と反応するので、より低いpHで反応を行うことによって、より低いpKアミノ基にPEG化をさせることが可能である。一般に、アルファ-アミノ基のpKは、リシン残基のε-アミノ基より1~2pH単位低い。pH7以下で分子をPEG化することによって、N末端に対する高い選択性をしばしば達成することができる。しかしながら、これはタンパク質のN末端部分が生物活性に必要でない場合にのみ可能である。それでもなお、PEG化による薬物動態学的利益はしばしば、インビトロ生物活性の有意な損失を上回るため、結果として、PEG化の化学的性質にかかわらず、はるかに大きなインビボ生物活性を有する生成物が得られる。
【0103】
PEG化手順を開発する場合、考慮すべきいくつかのパラメータがある。幸いなことに、通常、4つ又は5つ以下のパラメータがある。PEG化条件を最適化するための「実験の設計」アプローチは、非常に有用であり得る。チオール特異的PEG化反応の場合、考慮すべきパラメータには、タンパク質濃度、PEG対タンパク質比(モル基準)、温度、pH、反応時間、及び場合によっては酸素の排除が含まれる。(酸素は、タンパク質による分子間ジスルフィド形成の原因になり得、PEG化生成物の収率を低下させるであろう。)アミン特異的修飾については、特にN末端アミノ基を標的とする場合に、pHが更により決定的になり得ることを除いて、同じ因子(酸素についてを除く)を考慮すべきである。
【0104】
アミン特異的修飾及びチオール特異的修飾の両方について、反応条件は、タンパク質の安定性に影響を及ぼし得る。これにより、温度、タンパク質濃度、及びpHが限定され得る。加えて、PEGリンカーの反応性は、PEG化反応を開始する前に知るべきである。例えば、PEG化剤の活性が70%のみである場合、使用されるPEGの量は、活性なPEG分子のみがタンパク質対PEG反応の化学量論において計数されることを保証すべきである。
【0105】
タンパク質及びペプチド
少なくとも1つのタンパク質又はペプチド(例えば修飾されたCGL酵素)を含む組成物が提供される。これらのペプチドは、上記のように、融合タンパク質中に含まれ得るか、又は作用剤にコンジュゲートされ得る。
【0106】
本明細書中で使用される場合、タンパク質又はペプチドとは、一般に、限定されるものではないが、遺伝子から翻訳された全長配列までの約200を超えるアミノ酸のタンパク質、約100以上のアミノ酸のポリペプチド、及び/又は約3~約100のアミノ酸のペプチドを指す。便宜上、「タンパク質」、「ポリペプチド」、及び「ペプチド」という用語は、本明細書中では交換可能に使用される。
【0107】
したがって、「タンパク質又はペプチド」という用語は、天然に存在するタンパク質に見られる20個の一般的なアミノ酸の少なくとも1つ、又は少なくとも1つの非天然のアミノ酸を含むアミノ酸配列を包含する。
【0108】
タンパク質又はペプチドは、当業者に公知の任意の技術、例えば、標準的な分子生物学的技術によるタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチドの発現、天然源からのタンパク質若しくはペプチドの単離、又はタンパク質若しくはペプチドの化学合成などによって作製され得る。既知の遺伝子のコード領域は、本明細書に開示される技術を使用して、又は当業者に知られているように増幅及び/又は発現され得る。代替的に、タンパク質、ポリペプチド及びペプチドの様々な市販の調製物が当業者に公知である。
【0109】
核酸及びベクター
修飾されたCGL酵素をコードする核酸配列又は修飾されたCGL酵素を含む融合タンパク質が、開示される。使用される発現系に応じて、核酸配列は、従来の方法に基づいて選択することができる。例えば、修飾されたCGL酵素がヒトシスタチオナーゼから誘導され、E. coliにおいてまず利用されない複数のコドンを含む場合、それは発現を妨げられ得る。したがって、それぞれの遺伝子又はそのバリアントは、コーディング配列がまれなコドンを有しないようデザインするフリーソフトウェア(Hoover及びLubkowski(2002)を参照)を用いて、E. coli発現のためにコドン最適化を行い得る。種々のベクターを用いて、修飾されたCGLなどの目的のタンパク質を発現させ得る。例示的なベクターとしては、限定されないが、プラスミドベクター、ウィルスベクター、トランスポゾン、又はリポソームベースのベクターが挙げられる。
【0110】
宿主細胞
宿主細胞は、修飾されたCGL酵素及びそのコンジュゲートの発現及び分泌を可能にするために形質転換され得る。宿主細胞は、細菌、哺乳動物細胞、酵母、又は糸状菌であり得る。種々の細菌には、Escherichia及びBacillusが含まれる。Saccharomyces、Kiuyveromyces、Hansenula、又はPichiaに属する酵母は、適切な宿主細胞として使用できる。以下の属を含む様々な種類の糸状菌を発現宿主として使用し得る:Aspergillus、Trichoderma、Neurospora、Penicillium、Cephalosporium、Achlya、Podospora、Endothia、Mucor、Cochliobolus、及びPyricularia。
【0111】
使用可能な宿主生物の例としては、細菌、例えば、Escherichia coli MC1061、Bacillus subtilis BRB1の誘導体(Sibakov et al.,1984)、Staphylococcus aureus SAI123(Lordanescu,1975)又はStreptococcus lividans(Hopwood et al.,1985)、酵母、例えば、Saccharomyces cerevisiae AH 22(Mellor et al.,1983)又はSchizosaccharomyces pombe、及び糸状菌、例えば、Aspergillus nidulans、Aspergillus awamori(Ward,1989)、又はTrichoderma reesei(Penttila et al.,1987;Harkki et al,1989)、が挙げられる。
【0112】
哺乳動物宿主細胞の例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO-Kl、ATCC(ATCC)番号CCL61)、ラット下垂体細胞(GHl、ATCC番号CCL82)、ヒト頸部細胞(HeLa S3、ATCC番号CCL2.2)、ラット肝細胞癌細胞(H-4-11-E、ATCC番号CRL-1548)、SV40形質転換されたMK細胞(COS-1、ATCC番号CRL-1650)、及びマウス胎生期繊維芽細胞(NIH-3T3、ATCC番号CRL-1658)が挙げられる。上記は、当技術分野で知られている多くの可能な宿主生物を例示するものを意味するが、限定するものではない。原則として、原核生物であろうと真核生物であろうと、分泌することができる全ての宿主を使用することができる。
【0113】
CGL酵素及び/又はそれらの融合タンパク質を発現する哺乳動物宿主細胞は、親細胞株を培養するために典型的に使用される条件下で培養される。一般に、細胞は、典型的にはウシ胎児血清などの5~10%の血清が補充された、標準RPMI、MEM、IMEM又はDMEMなどの、生理学的塩及び栄養素を含有する標準培養培地中で培養される。培養条件もまた標準的であり、例えば、タンパク質の所望のレベルが得られるまで、培養物を定置又はローラー培養容器中において37℃でインキュベートする。
【0114】
タンパク質精製
タンパク質精製技術は、当業者に周知である。これらの技術は、1つのレベルで、細胞、組織又は器官のポリペプチド画分及び非ポリペプチド画分への均質化及び粗分画を必要とする。目的のタンパク質又はポリペプチドは、特に明記しない限り、部分的又は完全な精製(又は、均一にするための精製)を達成するために、クロマトグラフィー技術及び電気泳動技術を用いて更に精製することができる。純粋なペプチドの調製に特に適した分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、及び等電点電気泳動である。ペプチドを精製する特に効率的な方法は、高速液体クロマトグラフィー(fast performance liquid chromatography、FPLC)、又は更には、高性能液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography、HPLC)である。
【0115】
精製されたタンパク質又はペプチドとは、他の成分から単離可能な組成物を指すことを意図し、ここで、タンパク質又はペプチドは、その天然に入手可能な状態に対してあらゆる程度まで精製される。したがって、単離又は精製されたタンパク質又はペプチドはまた、それが天然に存在し得る環境から遊離したタンパク質又はペプチドも指す。一般的に、「精製された(purified)」とは、種々の他の成分を除去するために分画に供され、その発現された生物活性を実質的に保持する、タンパク質又はペプチド組成物を指す。「実質的に精製された」という用語が使用される場合、この呼称は、タンパク質又はペプチドが組成物の主要成分を形成する組成物、例えばタンパク質が組成物の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、又はそれ以上を構成する組成物を指す。
【0116】
タンパク質精製での使用に好適な様々な技術は、当業者に周知である。これらには、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、及び抗体などを用いた、又は熱変性による沈殿、その後の遠心分離、イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイト及びアフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーステップ、等電点電気泳動、ゲル電気泳動、及びにこれらの技術と他の技術との組み合わせが含まれる。当技術分野で一般的に知られているように、様々な精製工程を行う順序を変更してもよく、又は特定の工程を省略してもよく、それでも結果として、実質的に精製されたタンパク質又はペプチドの調製に好適な方法になる、と考えられる。
【0117】
タンパク質又はペプチドの精製度を定量するための様々な方法は当業者に公知である。これらには、例えば、活性画分の比活性を決定すること、又はラウリル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS/PAGE)解析によって画分内のポリペプチドの量を評価することが含まれる。画分の純度を評価するための好ましい方法は、画分の比活性を計算し、それを初期抽出物の比活性と比較し、したがって「倍精製値」によって評価されるその中の純度を計算することである。活性の量を表すために使用される実際の単位は、もちろん、精製後に選択される特定のアッセイ技術、及び発現されたタンパク質又はペプチドが検出可能な活性を示すか否かに依存する。
【0118】
タンパク質又はペプチドが常にその最も精製された状態で提供されるべきだという要件は通常ではない。実際、実質的にあまり精製されていない生成物が有用であり得ると考えられる。部分精製は、組み合わせてより少ない精製工程を使用することによって、又は同じ一般的な精製スキームの異なる形態を利用することによって達成され得る。例えば、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)装置を利用して行われるカチオン交換カラムクロマトグラフィーは、一般に、低圧クロマトグラフィーシステムを利用する同じ技術よりも大きな「倍数」の精製をもたらすことが理解される。より低い相対精製度を示す方法は、タンパク質産物の全回収において、又は発現されたタンパク質の活性の維持において利点を有し得る。
【0119】
タンパク質又はペプチドは、例えば、修飾されたCGL酵素、修飾されたCGL酵素を含む融合タンパク質、又はPEG化後の修飾されたCGL酵素などとして、単離又は精製されてもよい。例えば、精製を容易にするために、そのような修飾されたCGL酵素にHisタグ又は親和性エピトープを含めることができる。アフィニティークロマトグラフィーは、単離されるべき物質とそれが特異的に結合することができる分子との間の特異的親和性に依存するクロマトグラフィー手順である。これは、受容体-リガンド型相互作用である。カラム材料は、結合パートナーの1つを不溶性マトリックスに共有結合させることによって合成される。次いで、カラム材料は、溶液から物質を特異的に吸着することができる。溶出は、条件を結合が起こらないものに変更することによって起こる(例えば、pH、イオン強度、温度などの変更)。マトリックスは、分子を顕著な程度で吸着せず、広範囲の化学的、物理的及び熱的安定性を有する物質でなければならない。リガンドは、その結合特性に影響を及ぼさないように結合されるべきである。リガンドはまた、比較的強固な結合を提供すべきである。サンプル又はリガンドを破壊することなく物質を溶出することが可能でなければならない。
【0120】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、溶液中の分子がそれらのサイズ、又はより技術的な用語ではそれらの流体力学的体積に基づいて分離されるクロマトグラフィー法である。それは通常、タンパク質及び工業用ポリマーなどの大きな分子又は高分子複合体に適用される。典型的には、水溶液を使用してサンプルをカラムを通して輸送する場合、この技術は、有機溶媒を移動相として使用する場合に使用されるゲル浸透クロマトグラフィーという名称に対して、ゲル濾過クロマトグラフィーとして知られている。
【0121】
SECの基本原理は、異なるサイズの粒子が異なる速度で固定相を通って溶出(フィルタにかける)することである。これにより、サイズに基づいて粒子の溶液が分離される。全ての粒子が同時に又はほぼ同時に装填されるならば、同じサイズの粒子は一緒に溶出するはずである。各サイズ排除カラムは、分離することができる分子量の範囲を有する。排除限界は、この範囲の上端の分子量を定義する、分子が大きすぎて固定相に捕捉されない箇所である。透過限界は、分離範囲の下端の分子量を定義し、十分に小さいサイズの分子が固定相の細孔に完全に浸透することができ、この分子質量未満の全ての分子が非常に小さいため、単一のバンドとして溶出する箇所である。
【0122】
高速液体クロマトグラフィー(又は高圧液体クロマトグラフィー、HPLC)は、化合物を分離、同定、及び定量するために生化学及び分析化学で頻繁に使用されるカラムクロマトグラフィーの一形態である。HPLCは、クロマトグラフィー用充填剤(固定相)を保持するカラム、移動相をカラム内で移動させるポンプ、及び分子の保持時間を示す検出器を利用する。保持時間は、固定相、分析される分子、及び使用される溶媒の間の相互作用に応じて変化する。
【0123】
本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本開示が、以下に記載される構成又はプロセスステップの詳細に限定されないことを理解すべきである。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践又は実施することができる。
【実施例】
【0124】
以下の実施例は、本発明の好ましい具体例を示すために含めるものである。以下の実施例において開示される手法は、本発明の実施において十分に機能することが発明者らによって見出された技術を代表するものであり、そのため、本発明の実施において十分に機能することが当業者にも理解されるはずである。しかしながら、当業者であれば、本発明の開示を考慮して、開示されかつ同様の結果を得られる特定の実施例において、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの変更が可能であることを理解できるであろう。
【0125】
実施例1:操作されたヒトシスタチオニン-ガンマ-リアーゼによるCBS-/-マウスのレスキュー
CBS欠損(CBS-/-)マウスを、CBS欠損によるヒトホモシスチン尿症の動物モデルとして使用する。マウスにおける上昇したレベルの血漿tHcyを示す意味で、生理学的提示がヒト疾患に類似している。HIS-CGL-ILMDRGVS-PEGの腹腔内(IP)及び皮下(SC)投与を、CBS-/-マウスの生存性を増強する能力などの様々な特性について評価した。マウスは、通常の(メチオニン含有)餌料を与えられ、したがって、ヒト患者間の食自由摂取のためのモデルも提供した。
【0126】
身体的な健康状態が悪化した場合(例えば、罹病のため)、マウスを安楽死させ、これを生存時間として記録した。CBS-/-マウスを、3.125~25mg/kgの範囲の用量のHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGで、SC投与を週2回(BIW)行い、CBS-/-マウスにおける血漿tHcyレベルの低下が生存を改善するかどうかを決定した(表3及び
図4)。
【表3】
【0127】
ヒト相当用量がマウス用量の約1/12であると仮定すると、この試験における用量は、約0.13mg/kg~約2mg/kgのヒト相当用量の範囲である。
【0128】
試験に応じて、新生CBS-/-マウスを、出生から離乳まで母乳を介してベタインを摂取させ、生存を増強し、それによって、実験への動物の十分な動員を確実に行った。HIS-CGL-ILMDRGVS-PEG又はCGL-ILMDRGVS-PEGによる投与は、10日齢で開始し、動物が完全に成熟し、生存障害の危険性もはや観察されなくなったときである、動物が少なくとも10~12週齢になるまで継続した。PBS対照(約15%の生存)と比較して、統計的に有意な生存の改善が、動物死亡が報告されていない3.125mg/kg SCまでの全ての用量レベルで観察された(
図4)。加えて、肝臓病態の明らかな改善が観察され(
図6~8)、修飾されたCGL酵素(HIS-CGL-ILMDRGVS-PEG及びCGL-ILMDRGVS-PEG)が、CBS欠損症の動物においてベタインよりも優れた療法であることが示唆された。
【0129】
16週間にわたって、1.56mg/kgのHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGのTIW又はPBSのBIWを投与したところ、それぞれ40%及び12%の生存率が得られたが、HIS-CGL-ILMDRGVS-PEGをBIW又はQWで投与した場合、試験した全用量レベルで50%を超える生存率が得られた(
図4)。12.5又は3.125mg/kgのBIWを投与したマウスの生存率は100%であり、6.25mg/kgのBIWを投与したマウスの生存率は83%であった。生存期間のメジアンはPBS投与で3週間、TIW 1.56mg/kg HIS-CGL-ILMDRGVS-PEGで6.75週間であった。
【0130】
病態が進行するにつれて、CBS-/-マウスの器官及び組織において病理を観察することができる。健康な野生型マウス(
図6A)又は未処理のCBS-/-マウスからの肝臓サンプルを採取し、ヘモトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。10日齢の未処理マウスでは、微小血管脂肪症及び脂肪滴の存在が見られる(
図6B及び
図7A)。23日齢(
図6C)及び21日齢(
図7B)のPBS処理マウスから採取され、H&Eで染色された肝臓サンプルは、10日齢の未処理マウスからのサンプル、並びに23日齢(
図6D)処理マウス又は6.25又は12.5mg/kgのHIS-CGL-ILMDRGVS-PEG BIWのいずれかで処理された21日齢マウスからのサンプルと比較して、高い微小血管脂肪症、壊死、脂肪滴及び大血管脂肪症を示した(
図7C、D)。HIS-CGL-ILMDRGVS-PEGで処理された60日齢マウスから採取された肝臓サンプルは、疾患の逆転を示した(
図6E)。
【0131】
肝臓サンプルをまたオイルレッド(Oil-red)-Oで染色した。オイルレッド-O染色は、凍結切片上の中性トリグリセライド及び脂質並びにパラフィン切片上のいくつかのリポタンパク質の染色に使用されるリソクローム(脂溶性染料)ジアゾ染料である。組織学においては、イソプロパノール中のオイルレッド-Oの過飽和溶液を使用して、組織中の脂肪を染色することができる。
【0132】
10日齢の未処理マウス、19~21日齢のPBS処理マウス、及び1.56mg/kgのHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGでTIW処理した20日齢マウスから採取した肝臓試料を、オイルレッド-Oで染色した。これらのマウスは全て、12.5mg/kgのHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGでBIW処理した21日齢のマウスから採取した試料と比較し、オイルレッドO染色が大きく増加し、すなわち12.5mg/kgのHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGをBIWで投与したマウスの肝臓においては中性トリグリセライド、脂質、及び/又はリポタンパク質の低下が示唆された(
図8A、B、C、及びD)。
【0133】
脱毛及び骨粗鬆症に対する効果を、10mg/kgのCGL-ILMDRGVS-PEGでBIWでSC処理したCBS-/-マウスにおいて測定した。脱毛の程度は、170日目に、ビヒクル対照群と比較して、CGL-ILMDRGVS-PEG処理CBS-/-マウスにおいて有意に減少した(
図9A)。骨塩密度(BMD)のレベルは、169日目に、ビヒクル対照群と比較して、CGL-ILMDRGVS-PEG処理CBS-/マウスにおいて有意に高かった(
図9B)。
【0134】
総ホモシステイン(tHcy)を、ビヒクル投与野生型及びCBS-/-マウス並びにCGL-ILMDRGVS-PEG投与CBS-/-マウスの血漿、肝臓及び脳サンプルにおいて測定した(
図10A、B、及びC)。全てのマウスを、BIWで3回皮下処理した。ビヒクル投与CBS-/-マウスは、野生型群と比較して、血漿、肝臓及び脳のtHcyレベルの有意な増加を示した。10mg/kgのCGL-ILMDRGVS-PEGを用いたCBS-/-マウスにおける処理は、ビヒクル処理群と比較して、血漿、肝臓及び脳サンプルにおけるtHcyレベルを有意に低下させ、ホモシスチン尿症のための潜在的な療法として操作されたCGLを使用することの有効な効果を示唆した。
【0135】
CBS-/-マウスにおいて観察されたHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGの生存効果を用いて、薬力学的分析を行った。次のセクションで述べるCBS-/-試験では、動物の「維持」投与は5~10週間の範囲であった。
【0136】
実施例2:CBS-/-マウスにおける単回用量薬力学試験
HIS-CGL-ILMDRGVS-PEGの薬力学的(PD)効果を、CBS-/-マウスへの投与によって評価した。CBS-/-マウスは、高い血漿tHcyレベルを示すCBS欠損症によるヒトホモシスチン尿症の動物モデルである。12週間にわたる生存を実証した(したがって、もはや新生児致死性のリスクがない)CBS-/-マウスを、HIS-CGL-ILMDRGVS-PEG投与(複数回用量レベル)から取り出し、25日間の休薬期間を与えて、残存薬物を除去し、血漿tHcyレベルが異常に高いベースラインレベルに戻した。この間、動物を、循環tHcyの増加に起因する悪化する臨床徴候について綿密にモニターした。次いで、マウスを2群に無作為化し、12.5又は6.25mg/kgのHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGを皮下(SC)に単回投与した。2週間にわたって複数の時点で血液を採取した。血漿tHcyの初期濃度は約250μMであり、投与後24時間の最初の採取時点で、両群について最大の阻害(約100μMへの低下)が観察された。投与後72時間までに、6.25mg/kg投与群の血漿tHcyレベルは、ベースラインレベルに戻り、残りの試験の間、それらは維持された。12.5mg/kg投与群の血漿tHcyレベルは、72時間まで約100μMのままであり、168時間までにベースライン値に戻った(
図11)。
【0137】
(CBS-/マウス)PDの更なる分析は、平均257μMの投与前の血漿tHcyレベルを示し、12.5又は6.25mg/kgのHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGの投与のそれぞれ72時間後に平均107.3μM及び132.4μMの単回用量の24時間後に低下し、血漿tHcyは、6.25mg/kgのHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGで投与された動物においてはベースラインに戻ったが、12.5mg/kgで投与された群では153.7μMに維持された(
図11)。投与の168時間後、両群ともtHcyはベースラインに戻っていた。
【0138】
投与前、CBS-/-マウスのメチオニン血漿レベルは(平均で)102μMであった。6.25mg/kgの投与は、336時間の時間経過を通してメチオニンレベルを低下させなかった(
図12)。12.5mg/kgのHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGの投与の72時間後、血漿メチオニンレベルは平均78μMに減少した(24%減少)。168時間までにメチオニンレベルは82μMとなり、240時間までにそれらはベースラインに戻った(
図12)。12.5mg/kg又は6.25mg/kgのHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGの単回SC投与後の血漿総メチオニンレベル。
【0139】
実施例3:CBS-/-マウスにおける複数回用量薬力学試験
12週間にわたる生存を実証したCBS-/-マウスを、HIS-CGL-ILMDRGVS-PEG投与(複数回用量レベル)から取り出し、15日間の休薬期間を与えて、残留薬物を除去し、それらのtHcyレベルが異常に高いベースラインレベルに戻した。ウォッシュアウト期間後、マウスを3群に無作為化し、HIS-CGL-ILMDRGVS-PEGを12.5又は6.25mg/kg SCで週2回(BIW)、又は12.5mg/kgで週1回(QW)2週間、投与した。血液量の制約のために、動物は、薬物の複数回用量後の連続した時点での採血を行わなかった。代わりに、全ての動物に、最低4回の合計用量のHIS-CGL-ILMDRGVS-PEGを投与し、BIW基についてはそれぞれ8、6、4、又は8回、QW基についてそれぞれ5、4、3、又は2回の投与後、24、48、72、又は96時間後に、血液を採取した。tHcyのウォッシュアウト後の開始レベルは約220μMであり、投与後24時間で両群について最大の低下が観察された(約50μMへの低下)。反復投与群は全てtHcyレベルを48時間まで100μM未満に維持し、12.5mg/kg BIW投与群では72時間まで100μM未満に維持した(
図13)。
【0140】
実施例4:サルにおけるCGL-ILMDRGVS-PEGの静脈内(IV)薬物動態
CGL-ILMDRGVS-PEGのPKを、未処理の雄カニクイザルにおいて決定した。PK試験は、第1相(単回静脈内(IV)投与)及び第2相(反復皮下(SC)投与)の2つのパートを有する形で行った。第1相では、サルに対し、1日目に静脈内(IV)又は皮下(SC)注射によってCGL-ILMDRGVS-PEGを投与した。初回SC注射を受けた同じ動物について、各相の投与の間に最低14日間の休薬期間を置いて、第2相に進めた。第1相の投与後の約14日間のウォッシュアウト期間に続いて、第3群の各動物には、CGL-ILMDRGVS-PEGを、3週間連続して適切な用量レベルで、週1回(QW)でSC投与した(表4)。加えて、各動物は、被験物質とは別の場所で、かつ同じ体積及び頻度でビヒクル対照のSC投与を受けた。試験デザインを表4に要約する。
【表4】
【0141】
群1及び2の動物は、CGL-ILMDRGVS-PEGの単回IV用量を受けた。群3(第1相)の動物は、CGL-ILMDRGVS-PEGの単回SC用量を受けた。群1及び群2の雄サルに、2及び8mg/kgでCGL-ILMDRGVS-PEGの単回IV用量を投与した。
【0142】
IV曝露(C
max、AUC
0-∞)の増加は用量にほぼ比例した。平均(±SD)C
maxは、2mg/kgで72.3±8.03μg/mL、8mg/kgで257±18.7μg/mLであった。平均(±SD)AUC
0-∞は、それぞれ7050±419及び24100±4090 hr*μg/mLであった。したがって、用量の4倍の変化に対して、平均C
max及びAUC0-∞の、約3.6倍及び約3.4倍の増加であった。T
maxのメジアンは、投与後0.5時間で観察された(表5及び
図14A、B)。
【表5】
【0143】
CGL-ILMDRGVS-PEGの循環濃度は、2mg/kgでの循環濃度と比較して、8mg/kgでより高く、より長い時間測定可能であった(
図14)。平均クリアランス(CL)は低用量ではわずかに低かったが、その範囲(平均±SD)は重複していた(表5)。平均(±SD)CLは、2mg/kgで0.285±0.0165mL/hr/kg、8mg/kgで0.339±0.0629mL/hr/kgであった。観察された分布体積(V
ss)は、サル血清体積(45mL/kg)とほとんど同等であったが、平均推定値はわずかに低い傾向にあった。平均V
ss(±SD)は2mg/kgで36.3±4.40mL/kg、8mg/kgで41.6±9.85mL/kgであった。得られた平均半減期(T
1/2)は、88.4~93.6時間(約3.7~3.9日)の範囲であった。
【0144】
IV曝露(Cmax、AUC0-∞)の増加は用量にほぼ比例した(表5)。平均(±SD)Cmaxは、2mg/kgで72.3±8.03μg/mL、8mg/kgで257±18.7μg/mLであった。平均(±SD)AUC0-∞は、それぞれ7050±419及び24100±4090 hr*μg/mLであった。したがって、用量の4倍の変化に対して、平均Cmax及びAUC0-∞の、約3.6倍及び約3.4倍の増加であった。投与後0.5時間でTmaxメジアンが観察された。
【0145】
実施例5:サルにおける皮下(SC)CGL-ILMDRGVS-PEGの薬物動態
1日目及び15日目のCGL-ILMDRGVS-PEGの反復SC用量後の、雄サルにおける平均PKパラメータを表6にまとめる。平均血清中濃度対時間のプロファイルを
図15に示す。
【表6】
【0146】
雄サルに、CGL-ILMDRGVS-PEGを8(第1用量)及び2(第2用量)mg/kgで2回反復SC注射し、投与間で2週間のウォッシュアウトを行った。CGL-ILMDRGVS-PEGの平均循環濃度は、2mg/kgでの循環濃度と比較して、8mg/kgでより高く、より長い時間測定可能であった(
図15)。したがって、皮下曝露(C
max、AUC
0-∞)は、2mg/kgに対して8mg/kgでより高かった(表6)。平均(±SD)C
maxは8mg/kgで106±17.7μg/mL、2mg/kgで34.9(N=2)μg/mLであった。平均(±SD)AUC
0-∞は、それぞれ18,300±1520及び4710(N=1)hr*μg/mLであった。
【0147】
Tmaxのメジアンは、高い8mg/kg用量で48時間と遅かったのに対して、2mg/kgでは24時間であった(表6)。8mg/kgでの平均バイオアベイラビリティの推定値は、75.8%で中程度であった。平均血管外CL(CL/F)推定値は、8mg/kgでIV CL推定値よりわずかに高く(例えば、それぞれ、0.440±0.0384対0.339±0.0629mL/kg/kg;表5及び表6)、一貫して不完全吸収であった。
【0148】
実施例6:IV及びSCの薬力学の比較
CGL-ILMDRGVS-PEGのIV及びSC投与後の血漿中tHcyレベルの平均濃度対時間のプロファイルを、それぞれ
図16及び
図17に示す。
【0149】
CGL-ILMDRGVS-PEGのIV投与後、血漿tHcyレベルの最大の低下が投与後4~8時間で観察され、更なる平均の低下が8mg/kgの高いIV投与レベルで観察された(
図16)。投与の5分後(それぞれ2及び8mg/kg)に、血漿tHcyレベルの最初の約39%及び約72%の低下があり、その後、観察された最大の低下にまで徐々に低下した。投与後8時間において、平均tHcyレベルは、2及び8mg/kg投与群で、それぞれ平均ベースラインレベルの47.8%及び18.1%(52.2%及び81.9%減少に相当)であった。これは、それぞれ58.6及び194μg/mL以上の平均CGL-ILMDRGVS-PEG濃度に相当するものであった。ベースラインtHcyレベルへの回復は、2mg/kg静脈内投与群では240時間までにほとんど完了し(約91%)、8mg/kg静脈内投与群では約84%が336時間(2週間)までに完了した。
【0150】
CGL-ILMDRGVS-PEGのSC投与後、8mg/kg用量レベルでは、投与後24~48時間で、2mg/kg用量では8~24時間で、血漿tHcyレベルの最大の低下が観察された(
図17)。IV投与とは対照的に、投与後、最大の低下が達成されるまで、tHcyレベルの安定した低下が見られた。最大の低下では、平均tHcyレベルが、2及び8mg/kg用量レベルについてそれぞれ平均ベースラインレベルの75.5%及び42.0%(24.5%及び58.0%減少に相当)であり、なお、2mg/kgのCGL-ILMDRGVS-PEGが8mg/kgのCGL-ILMDRGVS-PEGの2週間後に(同じ動物において)投与されたことに注目されたい。これは、それぞれ34.9及び98.7μg/mLまでの平均CGL-ILMDRGVS-PEG濃度に相当し、2mg/kgで顕著な動物間のPK変動があったことに留意されたい。ベースラインtHcyレベルへの回復は、8mg/kg/1日目用量について、336時間又は投与の15日目(2週間)までに完了した(102%)。15日目の2mg/kg投与後、回復は投与後168時間までに完了したようであった(102%)。
【0151】
実施例7:臨床開発計画:ヒト初回第1/2相複数回漸増用量試験
第1/2相複数回漸増用量試験の目的は、シスタチオニンベータ-シンターゼ(CBS)欠乏によるホモシスチン尿症患者における、CGL-ILMDRGVS-PEGの安全性、薬物動態及び薬力学を検討することである。ヒトでの初回試験では、無作為化又は盲検化は行わず、試験は非盲検試験である。一次目標、二次目標、及び探索目標を、対応するエンドポイントとともに表7に示す。
【表7】
【0152】
対象は、以下の基準の全てが適用される場合、試験に組み入れることができる:(i)CBS欠乏によるホモシスチン尿症の診断、(ii)インフォームドコンセントフォーム(ICF)に列挙された要件及び制限の遵守を含む、署名されたインフォームドコンセント/アセントを提供することができること、及びこのプロトコルにおいて、(iii)インフォームドコンセント/アセントに署名した時点で12歳超であること、(iv)少なくとも1回のスクリーニング来院時に血漿中tHcyが80μM超であること、(v)妊娠可能性の女性対象は、試験薬の初回投与前のスクリーニング期間中に血清妊娠検査が陰性であること、及び治療初日の投薬前に尿妊娠検査が陰性であること、(vi)対象(男性又は女性)が性的活動を行っている場合、完全なプロトコルに規定されているように、妊娠を引き起こすことができないか、又は非常に効果的な避妊法を使用することに同意しなければならない、(vii)ピリドキシン及び/又はベタインを投与されている対象は治験薬の初回投与前に少なくとも6週間、安定用量の薬剤を投与し、治験期間中、継続する意思があり、安定用量を維持することができる。
【0153】
対象は、以下の基準のいずれかが適用される場合、試験から除外される:(i)試験責任医師の意見により、試験のコンプライアンス又はデータの解釈(例えば、必要な試験評価の完了を妨げる重度の知的障害)、(ii)現在別の試験に参加しているか、又は試験薬を30日以内若しくは5回の半減期のいずれか長い方の期間内に、本試験における試験薬の初回用量前に試験薬を用量された場合、(iii)試験薬剤の第1の投与より前の8週以内に全身麻酔を必要とする手術をしている、(iv)本試験の試験薬剤の初回用量の2週間前未満に抗感染症療法を必要とする感染症に罹患している(試験薬剤の初回用量前2週間超に抗感染症療法が完了している場合は、許容)、(v)妊娠又は育児、(vi)試験の間、エストロゲンを含む避妊を使用しているか又は使用予定の出産可能性の女性、及び(vii)試験者の判断において、対象を有害事象(AE)として容認できない危険に置く程の、ポリエチレングリコール(PEG)に対する過敏症の履歴。
【0154】
コホート登録のために、各コホートは、センチネル対象の投与から開始する。センチネル対象の投与後モニタリングの少なくとも48時間後に、CGL-ILMDRGVS-PEGが安全であり、許容可能な忍容性プロファイルを有すると考えられる場合、その後の対象に投与することができる。
【0155】
パート1:IV投与
コホート1における4人の対象は、約30分間にわたって静脈内(IV)注入による0.15mg/kgの用量のCGL-ILMDRGVS-PEGの投与を受ける。全コホートにおいて、週1回(QW)で最大4回の用量を対象に投与する。CGL-ILMDRGVS-PEGの4回の用量をパート1の最初の2人の対象のそれぞれに投与した後、安全性データ、加えて全ての利用可能なPK及びPDデータをレビューする。停止ルールが満たされない場合、パート2への移行が行われる。
【0156】
パート2:SC投与
コホート2の対象は、皮下(SC)注射による0.15mg/kgの用量のCGL-ILMDRGVS-PEGの投与を受ける。停止ルールが満たされないと仮定される場合、第2のコホートの対象は、0.45mg/kgの用量を受け、第3のコホートの対象は、1.0mg/kgの用量を受ける。全コホートにおいて、QWで投与された合計4回までの用量が対象に投与される。追加コホートが追加された場合、用量は、以前の3コホートからのデータに基づいて決定され、全ての計画されたコホートからの全ての安全性、PK、及びPDデータのレビュー後に、用量は試験された最高用量の2倍以下であり得、以下の全てが適用される:(i)用量漸増及び試験終了のための安全停止ルールが満たされない、及び(ii)SCコホート3(最高計画用量)における1人以上の対象における用量4の168時間後に採取された血漿tHcy(最高計画用量)が4μM超(正常[LLN]の下限値)。
【0157】
試験の停止ルール及び例外を表8に記載する。
【表8】
【0158】
CGL-ILMDRGVS-PEGを試験するためのヒト初回第1/2相複数回漸増用量試験の概略図を
図3に示す。
【0159】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「様々な実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所における「1つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「様々な実施形態において」、「1つの実施形態において」、又は「ある実施形態において」などの語句の出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態を指すものではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0160】
本明細書の開示は特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は本開示の原理及び用途の単なる例示であることを理解されたい。その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正及び変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内にある修正及び変形を含むことが意図されている。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾されたヒトシスタチオニン-ガンマ-リアーゼ(CGL)酵素を含む、ホモシスチン尿症又は高ホモシステイン血症を有するか、又は発症するリスクを有する対象を治療する
ための薬学的組成物であって、
修飾されたヒトシスタチオニン-ガンマ-リアーゼ(CGL)酵素が、天然ヒトCGLアミノ酸配列(配列番号1)に対して少なくとも以下の置換:位置59のイソロイシン、位置63のロイシン、位置91のメチオニン、位置119のアスパラギン酸、位置268のアルギニン、位置311のグリシン、位置339のバリン、及び位置353のセリ
ンを含み、
前記
薬学的組成物が、1日当たり1用量~1ヶ月当たり1用量の頻度で、約0.05mg/kg~約4mg/kgの酵素用量で投与される、
薬学的組成物。
【請求項2】
前記酵素が、1つ以上のPEG単位と結合している、請求項1に記載の
薬学的組成物。
【請求項3】
薬学的に許容される担体を更に含む、請求項1又は2に記載の
薬学的組成物。
【請求項4】
5mLのバイアルに供給された2mLの液体である、請求項1~3のいずれか一項に記載
薬学的組成物。
【請求項5】
約1mg/mL~約50mg/mLの酵素濃度を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項6】
約1~約20mg/mLの酵素濃度を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項7】
静脈内に又は皮下に投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項8】
1週間当たり1用量投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項9】
4週間にわたり静脈内に投与され、その後、以降の週において、皮下投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項10】
約0.1mg/kg~約1mg/kgの用量で前記対象に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項11】
約0.1mg/kg~約1mg/kgの用量で週1回投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項12】
約0.15mg/kg、約0.45mg/kg、又は約1mg/kgの用量で対象に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項13】
前記対象に静脈内投与される前に、生理食塩水において希釈される、請求項1~12のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項14】
前記対象が、ヒト患者である、請求項1~13のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項15】
前記対象が、前記
薬学的組成物を投与することによる療法を開始する前に、80μM超の総血漿ホモシステインレベルを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項16】
前記対象が、少なくとも12歳である、請求項1~15のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項17】
前記対象が、個別化された食に維持される、請求項1~16のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項18】
前記対象が、メチオニン制限食に維持される、請求項1~17のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項19】
総血漿ホモシステインレベルを低下させる、請求項1~18のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項20】
約80μM以下に総血漿ホモシステインレベルを低下させる、請求項1~19のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項21】
約50μM以下に総血漿ホモシステインレベルを低下させる、請求項1~20のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項22】
約15μM以下に総血漿ホモシステインレベルを低下させる、請求項1~21のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【国際調査報告】