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特表2023-535542生物学的多硫化物を合成するための治療用カーボンナノ材料であるH2S酸化剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】生物学的多硫化物を合成するための治療用カーボンナノ材料であるH2S酸化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/04 20060101AFI20230810BHJP
   C01B 32/354 20170101ALI20230810BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
A61K33/04
C01B32/354
A61K9/14
A61P3/10
A61P29/00
A61P25/28
A61P19/02
A61P17/02
A61P39/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576419
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 US2021036232
(87)【国際公開番号】W WO2021252382
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】63/036,351
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510162539
【氏名又は名称】ザ テキサス エーアンドエム ユニバーシティ システム
【氏名又は名称原語表記】THE TEXAS A&M UNIVERSITY SYSTEM
【住所又は居所原語表記】3369 TAMU College Station, Texas 77843-3369, United States of America
(71)【出願人】
【識別番号】510166102
【氏名又は名称】ウィリアム マーシュ ライス ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM MARSH RICE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】6100 Main Street,Houston,TX 77005, United States of America
(71)【出願人】
【識別番号】520477485
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・インディアナ・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100086368
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 誠
(72)【発明者】
【氏名】トーマス エー. ケント
(72)【発明者】
【氏名】ポール ジェイ. デリー
(72)【発明者】
【氏名】デービッド ピー. ヒューストン
(72)【発明者】
【氏名】アントン ヴィ. リオポ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ エム. ツアー
(72)【発明者】
【氏名】エミリー エム. マクヒュー
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー メンドーサ
(72)【発明者】
【氏名】ケネス アール. オルソン
(72)【発明者】
【氏名】マンスール カーン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4G146
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC41
4C076DD21A
4C076DD34
4C076DD49
4C076DD52
4C076DD55
4C076DD59
4C076DD60
4C076EE06
4C076EE09
4C076EE23
4C076FF31
4C076FF34
4C076FF70
4C086AA10
4C086HA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA21
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA07
4C086NA12
4C086NA13
4C086ZA16
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZC35
4C086ZC37
4G146AA06
4G146AA15
4G146AB01
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AD11
4G146AD40
4G146BA01
4G146CB09
4G146CB14
4G146CB22
4G146CB35
(57)【要約】
内因的又は外因的に放出された硫化水素を用いてインビトロ及びインビボにおいて硫化水素から過硫化物及び/又は多硫化物を触媒的に形成するための治療方法が開示される。その方法は、酸化ストレス、外傷性脳損傷(TBI)及び低酸素の状態にある細胞、又は硫化水素が過剰であるかもしくはタンパク質の過硫化に欠陥がある細胞を含む、必要としている細胞を酸化カーボンナノ粒子材料と接触させることを含み、それらの粒子は、複数のカルボニル、ヒドロキシル及びカルボキシル置換基を含む。酸化カーボンナノ粒子(OCN)材料は、種々の供給源のいずれかから調製することができ、その中でも活性炭が好ましい。少なくとも7日間、約1~5mg/mLの濃度の分散性をもたらすために親水性ポリマーの添加を必要としない水分散性OCN材料が記載される。これらのOCN材料はまた、水中において約220nmのUV吸光度の最大値を有し、0.22μmポアのPES膜を通過する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外因的に供給された官能化可溶化剤を含まず、約1~約5mg/mLという濃度で非沈降性水分散液を形成する、酸化カーボンナノ粒子であって、前記分散液は、少なくとも7日間、周囲室温において沈降に対して安定であり、約220nmにおいて吸光度の最大値を示し、前記酸化カーボンナノ粒子は、X線光電子分光法(XPS)で約9~約15パーセントのカルボニル基を含み、0.22μmのポアサイズのポリエーテルスルホン(PES)フィルタ膜を通過する、酸化カーボンナノ粒子。
【請求項2】
概して円盤状の粒子である、請求項1に記載の酸化カーボンナノ粒子。
【請求項3】
前記粒子が、約5~約30nmの直径及び約0.3~約2nmの厚さを有する、請求項2に記載の酸化カーボンナノ粒子。
【請求項4】
サイクリックボルタンメトリー(CV)によって計測したとき、約0.05V超の開始電位及び約-2Vの還元電位最大値を含む還元電位を示す、請求項1に記載の酸化カーボンナノ粒子。
【請求項5】
硫化水素から過硫化物及び/又は多硫化物を形成する方法であって、硫化水素を含む細胞を、有効量の請求項1に記載の酸化カーボンナノ粒子と接触させることを含む、方法。
【請求項6】
前記酸化カーボンナノ粒子が、グラフェン、グラフェンナノリボン、酸化グラフェン、グラファイト、酸化グラファイトナノリボン、カーボンブラック、親水性炭素クラスター、石炭、活性化石炭及び活性炭からなる群より選択される1つ以上のナノ粒子材料から調製される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記過硫化物及び/又は多硫化物が、内因的又は外因的に放出された硫化水素から調製される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、インビトロ又はインビボにおいて接触される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化カーボンナノ粒子が、硫化水素放出部分、可溶化剤、生物学的障壁トランスポーター部分、組織標的化剤、アッセイ識別剤、キレート剤及び医薬品の群から選択される1つ以上の外因的に供給された特定の置換基で官能化されている、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化カーボンナノ粒子が、ポリ(エチレングリコール)[PEG]、ポリ(プロピレングリコール)[PPG]、ポリ(エチレンイミン)[PEI]、ポリ(ビニルアルコール)[PVA]、PPG-PEGブロック共重合体、C12-C18-ポリ(エチレンオキシド)エーテル及びポリ(アクリル酸)[PAA]からなる群のうちの1つ以上から選択される可溶化剤で官能化されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化カーボンナノ粒子が、チオリシス又は酵素性分解によって硫化水素を提供する、外因的に提供された硫化水素放出部分で官能化されている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記硫化水素放出部分が、N-ベンゾイルチオールベンズアミド、アシルペルチオール、アリールチオアミド、ジチオペルオキシ無水物、S-アロイルチオキサミン、ジェミナル-ジチオール及びトリメチルロックプロドラッグからなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化カーボンナノ粒子が、アダマンタニル、アマンタジニル、メマンチニル、リマンタジニル、ドパマンチニル、トロマンタジニル、ビルダグリプチニル及びカルマンタジニル基からなる群のうちの1つ以上から選択されるトランスポーター部分で官能化されている、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
酸化カーボンナノ粒子が、カンナビゲロール、カンナビゲロールモノメチルエーテル、カンナビネロール酸A、カンナビゲロバリン、カンナビゲロール酸A、カンナビゲロール酸Aモノメチルエーテル、カンナビゲロバリン酸A、カンナビクロメン、カンナビクロメン酸A、カンナビバリクロメン、カンナビクロメバリン、カンナビクロメバリン酸A、カンナビジオール、カンナビジオールコール、カンナビジオール酸、カンナビジバリン酸、カンナビノジオール、カンナビノジバリン、カンナビバリン、カンナビシトラン、HU-210及びデキサナビノールからなる群のうちの1つ以上から選択される医薬品で官能化されている、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記接触が、複数回繰り返される、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
薬学的に許容され得る希釈剤に溶解又は分散された状態で、過硫化物及び/又は多硫化物を生成するのに有効な量で存在する、請求項1に記載の酸化カーボンナノ粒子を含む薬学的組成物。
【請求項17】
前記薬学的に許容され得る希釈剤が、非経口投与に適合された水性組成物である、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容され得る希釈剤が、意図されるレシピエントの血液と等張性である浸透圧を有する、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記浸透圧が、約275~約295mOsm/kgである、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
請求項1に記載の酸化カーボンナノ粒子の水性組成物を調製する方法であって、前記方法は、
a)酸化有効量の、濃硝酸単独、又は発煙硝酸単独、又は濃硫酸もしくは発煙硫酸に溶解された濃硝酸、又は濃硫酸もしくは発煙硫酸に溶解された発煙硝酸のうちの1つ以上においてカーボンナノ粒子を混和して、酸性反応組成物を形成する工程、
b)X線光電子分光法(XPS)で約9~約15パーセントのカルボニル基を含む酸化カーボンナノ粒子を形成するのに十分な時間にわたって、約22℃の温度及び還流温度において大気圧で前記酸性反応組成物を撹拌する工程、
c)前記還流された酸性反応組成物を冷却し、必要に応じて塩基も含む水性媒質中でそれをクエンチして、水性反応組成物を形成する工程、
d)約1000Da未満の分子量の水溶性材料を除去して、酸化カーボンナノ粒子の水性組成物を形成するのに十分な時間にわたって、前記水性反応組成物を、約1000Daの分子量カットオフを有する膜によって水に対して透析する工程、及び
e)酸化カーボンナノ粒子の前記水性組成物を0.22μmのポアサイズのポリエーテルスルホン(PES)フィルタ膜で濾過して、前記SOD様酸化カーボンナノ粒子の水性組成物の濾液を得る工程
を含む、方法。
【請求項21】
前記水と酸化カーボンナノ粒子とを分離し、前記酸化カーボンナノ粒子を回収する工程を含む、請求項20に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究又は開発に関する記述
本発明は、米国国立衛生研究所が授与した助成金番号R01 439371-00001の下、政府支援によってなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、カーボンナノ材料の分野及びその治療用途に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
硫化水素(HS)は、酸化窒素及び一酸化炭素と類似したいくつかの内因性の作用を有するガス状の材料である。硫化水素は、優れた還元剤であり(酸化されやすい)、過去には、治療薬として採用する試みがなされた。しかしながら、HSガス又はその硫化物塩を扱うのには固有の難しさがあるため、これらの試みは阻まれてきた。前者の場合、HSは、可燃性であり、非常に有毒で毒性の可能性がある。塩としての硫化物塩は、直ちに分解することから、その治療的有用性は限定的である。
【0004】
これらの欠点を解決する試みとしては、HSを全身に循環及び放出させるHS供与体の使用が挙げられる。しかしながら、供与体は、気体又は塩としてのHSに固有の問題点を克服できるが、治療指数の狭さを解消せず、現在までに、HS供与体であるN-アセチルシステインという他の作用機序を有する作用物質を用いた臨床試験が1つだけ完了したことしか知られていない。
【0005】
Sは、細胞内で多硫化物に代謝される。多硫化物は、優秀な還元剤であり、酸化ストレスに関して潜在的に好ましい多くの作用を有する。硫化水素の酸化に由来する多硫化物(Na)は、インビトロにおいて効果的な抗酸化物質である。
【0006】
多硫化物は、末端のS-H結合が弱いため、優れた還元剤であり得る。多硫化物は、超酸化物及び過酸化水素を含む一電子酸化剤と二電子酸化剤の両方を標的とする(90、92)。二電子酸化剤の場合、多硫化物は、グルタチオンなどのチオールよりも速く反応するとみられるので、細胞の抗酸化ネットワークの重大な構成要素であり得る(90、92)。
【0007】
還元剤として作用する多硫化物の生成は、生物学的に重要な硫化水素代謝の唯一の結果ではない。タンパク質性過硫化物(R-S-S、ここで、Rは、タンパク質又はポリペプチドである)は、HSに基づくシグナル伝達の生成物であると最近特定され、そのため、多数の生物学的プロセス及び病状に対して意味を有する多数のタンパク質機能に影響を与える。
【0008】
自然には、多硫化物は、スーパーオキシドジスムターゼ(87)、カタラーゼ(91)、シスタチオニンB-シンターゼ(CBS)(89)及びシステイニル-tRNAシンテターゼ(CARS)(89、88)による硫化水素の触媒的な酸化などのいくつかの酵素的経路によって細胞内で生成され得る。さらに、多硫化物は、HS・を形成する、硫化水素のフリーラジカル酸化によって形成され得る。HS・は、その後、それ自体(HO+2HS・->HSS+H)又は内因性チオール(R-SH)と反応してR-SSH種を形成する(92)。
【0009】
ゆえに、HSから多硫化物を迅速に生成する手段が、HS自体を投与することの限界を克服する、治療法としての可能性を秘めている。
【0010】
多硫化物のもう1つの運命は、ヘムタンパク質を介した酵素的な酸化、又は単純な酸化による非酵素的な酸化[Vitvitsky et al.,J Biol Chem 2015;290(13):8310-8320]によってチオ硫酸(S 2-)に酸化されるというものである。チオ硫酸は、HS供与体として働くことができ、虚血再灌流傷害における保護特性を有する[Marutani et al.,J Am Heart Assoc 2015;4(11);Epub 2015/11/08]。それ以外の場合は、S 2-は、ミトコンドリアにおいてさらなる酵素的な酸化を起こして、亜硫酸(SO 2-)又は硫酸(SO 2-)を形成することもでき[Mishanina et al.,Nat Chem Biol 2015;11(7):457-464]、それらは、体外に排泄される。
【0011】
酸化炭素は、天然ガス及び他の石油原料から硫化水素を除去する手段として、それらの燃料製品中の硫化水素の酸化を触媒して、元素状硫黄ポリマー(多硫化物)を形成するために利用することができる。しかしながら、酸化グラフェン、すなわち別のカーボンナノ材料が、硫化水素の酸化を触媒的又は非触媒的に増強して生細胞内で多硫化物を形成できるかはこれまで不明であった。
【0012】
そのような作用は、酸化ストレスなどの急性傷害及び糖尿病などの慢性状態の条件下において有益であり得る。その作用は、硫化水素の有益な効果を、治療薬としてではあるが主たる治療薬ではなく基質として利用する手段を提供し得る。
【0013】
いくつかの疾患においてHSの欠乏が認められている。この欠乏とその結果として生じる十分な多硫化物が失われることは、おそらく十分な抗酸化力の喪失とタンパク質の過硫化の減少の両方を通じて病理に寄与し、ひいてはこれらのタンパク質の機能を損なう。
【0014】
フリーラジカルの消滅、及びタンパク質の適切な機能に必要な過硫化を含む多硫化物の他の潜在的に有益な効果のためにインビボで還元剤(抗酸化物質)を生成する安全且つ有効な手段を提供するために、インビボで安全に硫化水素の酸化を増強できる代替材料が医学分野で必要とされている。そのような材料は、特に糖尿病、炎症関連疾患、例えば、アルツハイマー病、関節炎、外傷性脳損傷(TBI)、虚血又は出血イベントに起因する組織損傷などの処置において、種々の用途を有し得る。
【0015】
本明細書以後に詳述する本発明は、インビトロ及びインビボにおいて硫化水素から多硫化物を触媒的及び非触媒的に形成することにより、有害なフリーラジカルを安全且つ効果的に除去する、及びHSから多硫化物への変換によってタンパク質の過硫化を回復させる、というニーズに応える1つの手段を提供する無毒性の材料、組成物及びそれらの材料を用いた治療方法を提供する。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、内因的又は外因的に放出された硫化水素を用いてインビトロ及びインビボにおいて硫化水素からの過硫化物及び/又は多硫化物の生成を増強するための治療方法を企図する。その方法は、有効量の酸化カーボンナノ粒子材料と、必要としている細胞を接触させることを含み、それらの粒子は、複数のカルボニル、ヒドロキシル及びカルボキシル置換基を含む。必要としている例証的な細胞としては、外傷性脳損傷(TBI)、低酸素、虚血、再灌流傷害などにおける酸化ストレス下にある細胞、並びにHS及び/又は多硫化物及び/又は過硫化物の減少に関連する多数の疾患プロセスにおいて必要とされるようなタンパク質の適切な機能を保証するのに十分なタンパク質過硫化を必要としている細胞が挙げられる。
【0017】
企図される酸化カーボンナノ粒子材料は、グラフェン、グラフェンナノリボン、酸化グラフェン、グラファイト、酸化グラファイトナノリボン、カーボンブラック、親水性炭素クラスター、酸化石炭、及び活性炭(これが好ましく、これは酸化活性炭/酸化石炭粒子(OAC)を形成する)をはじめとした種々の供給源のいずれかから調製することができる。これらの材料は、強い触媒的酸化還元活性を示し、これらの材料の製剤は、傷害の動物モデルにおいて有効性を実証している。
【0018】
内因的又は外因的に放出されたHSからの多硫化物の生成を増強する手段は、この作用物質が病理学的に関与している状態において有効性を高めることができる。酸化活性化炭素ナノ材料のいくつかの調製物と比べて、優良製造規範(GMP)に基づいて調製された活性炭から作製されたOACは、除去が必要な金属汚染をほとんど又は全く含まない。
【0019】
1つの態様において、酸化カーボンナノ粒子材料は、細胞培養及び/又は生組織環境内において硫化水素から過硫化物及び/又は多硫化物への酸化を触媒するための方法の一部として使用され得る。1つの実施形態において、酸化カーボンナノ粒子材料は、硫化水素放出部分、可溶化剤、生物学的障壁トランスポーター部分、組織標的化剤、アッセイ識別剤、キレート剤及び医薬品の群から選択される1つ以上の外因的に供給された特定の置換基で官能化されている。外因的に供給された特定の置換基は、酸化カーボンナノ粒子材料に非共有結合的に結合され得るか、又は共有結合的に連結され得る。
【0020】
この実施形態の別の態様において、酸化カーボンナノ粒子材料は、ポリ(エチレングリコール)[PEG]、ポリ(プロピレングリコール)[PPG]、ポリ(エチレンイミン)[PEI]、ポリ(ビニルアルコール)[PVA]、PPG-PEGブロック共重合体、C12-C18-ポリ(エチレンオキシド)-エーテル及びポリ(アクリル酸)[PAA]からなる群のうちの1つ以上から選択される可溶化剤で官能化されている。
【0021】
この実施形態の別の態様において、酸化カーボンナノ粒子材料は、硫化水素放出部分とコンジュゲートされており、放出された硫化水素は、カーボンナノ粒子によってインサイチュで酸化されて、抗酸化生成物が生成される。硫化水素放出部位は、好ましくは、ナノ材料の炭素コアに共有結合的に連結されており、チオリシス又は酵素性分解によって硫化水素を提供し得る。例証的には、そのような材料としては、N-ベンゾイルチオール-ベンズアミド、アシルペルチオール、アリールチオアミド、多硫化物、ジチオペルオキシ無水物、S-アロイルチオキサミン、ジェミナル-ジチオール及びトリメチルロックプロドラッグが挙げられる。
【0022】
別の態様において、酸化カーボンナノ材料は、内因性の硫化水素の触媒的酸化によってインビボの多硫化物及び/又は過硫化物の濃度を上昇させるための方法の一部として提供される。結果として生じる多硫化物及び過硫化物の濃度上昇は、治療用抗酸化物質が豊富なプール及びタンパク質過硫化の回復として現れる。
【0023】
別の態様において、多硫化物の形成速度は、適応症に応じて望ましい可能性がある追加の化学反応によって向上又は阻害され得る。例として、エチレンジアミンとの共有結合反応により、多硫化物の形成速度が向上する。
【0024】
なおもさらなる態様において、酸化カーボンナノ粒子材料は、アダマンタニル、アマンタジニル、メマンチニル、リマンタジニル、ドパマンチニル、トロマンタジニル、ビルダグリプチニル及びカルマンタジニル基からなる群のうちの1つ以上から選択されるトランスポーター部分で官能化されている。
【0025】
別の態様において、酸化カーボンナノ粒子は、鉄過剰症など全身的に、又は出血もしくは認知症などの病理過程の一部など局所的に、金属が過剰濃度である状態における、鉄などの有毒材料に結合することが意図されているキレート剤(例えば、デフェロキサミン及びデフェラシロクスなどであるがこれらに限定されない)で官能化されている。
【0026】
特定の態様において、上記方法は、被験体における炎症、虚血又は神経変性に関連する状態の処置などの治療用途における過硫化物及び多硫化物の使用を提供する。
【0027】
いくつかの実施形態において、被験体での使用に適した治療用調製物中に酸化カーボンナノ材料を含む組成物が提供される。ここで、酸化カーボンナノ粒子材料は、カンナビノイドである医薬品で官能化され得る。例証的なカンナビノイドとしては、カンナビゲロール、カンナビゲロールモノメチルエーテル、カンナビネロール酸A、カンナビゲロバリン、カンナビゲロール酸A、カンナビゲロール酸Aモノメチルエーテル、カンナビゲロバリン酸A、カンナビクロメン、カンナビクロメン酸A、カンナビバリクロメン、カンナビクロメバリン、カンナビクロメバリン酸A、カンナビジオール、カンナビジオールコール(cannabidiorcol)、カンナビジオール酸、カンナビジバリン酸、カンナビノジオール、カンナビノジバリン、カンナビバリン、カンナビシトラン、1,1-ジメチル-ヘプチル-11-ヒドロキシテトラヒドロカンナビノ)(HU-210)及びデキサナビノールが挙げられる。
【0028】
特定の実施形態において、修飾されたカーボンナノ材料、特に酸化カーボンナノ材料(ナノ粒子)の組成物は、カルボキシ官能化炭素系ナノ粒子を含む。これらの材料は、細胞による多硫化物の生成を増強するのに適した治療用調製物として提供される。例として、治療用調製物中のカーボンナノ材料としては、グラフェン、グラフェンナノリボン、酸化グラフェン、グラファイト、酸化グラファイトナノリボン、カーボンブラック、酸化カーボンブラック、親水性炭素クラスター(HCC)、酸化活性化石炭、酸化活性炭又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0029】
酸化カーボンナノ粒子(CNP)の好ましい一群は、その後ポリエチレングリコールで官能化される、硝酸で酸化された又は発煙硝酸で酸化された活性炭粒子(PEG-OAC)を用いて調製される。使用される活性炭は、好ましくは、医薬グレードの及び/又は優良製造規範(GMP)に基づいて調製された活性炭から作製される。酸化媒体として、硝酸又は発煙硝酸を硫酸又は発煙硫酸と混合したものを用いて酸化プロセスを行うこともできる。
【0030】
反応体が爆発性であり得るので、潜在的に危険な本明細書中で論じられる酸化反応は、硝酸静止浴内において実施されてきた。その反応プロセスは、危険の少ないフローデバイスにおいて行うこともできる。濃度及び温度を変化させることにより、好適な粒子特色を得ることができる。
【0031】
様々なクエンチ方法を利用することができる。有機塩基及び無機塩基の水溶液と同様に、水の添加が使用されているが、グリシンが緩衝剤として作用し、硝酸を速やかに除去するので、グリシンクエンチが好ましい。
【0032】
例として、カーボンナノ粒子の一部は、親水性炭素クラスター(HCC)又はポリエチレングリコールコンジュゲート化親水性炭素クラスター(PEG-HCC)を含む。それらの組成物は、迅速な抗酸化活性及び高い抗酸化活性を有し、インビトロ及びインビボにおいて無毒性であると説明されている。
【0033】
以前に報告された、本発明者らに既知の酸化カーボンナノ粒子は、水分散液を形成する。その水分散液は、約1時間以内にその分散液からの粒子の分離を示し、直径0.22μmのポアサイズのポリエーテルスルホン(PES)フィルタ膜を通過するのではなく、その膜の上に残り、約250nmのUV最大値を示し、X線光電子分光法(XPS)で約4~約7パーセントのカルボニル基を含む。PEG-OAC材料は、PEG-HCCと同様の抗酸化作用及びインビボ保護作用を有すると示されている。
【0034】
新しいタイプの酸化カーボンナノ粒子材料も企図される。これらの粒子は、円盤状の形状であり、約1~約5mg/mLの濃度の非分離性水分散液を形成する。この分散液は、周囲室温において少なくとも7日間、分離に対して安定である。この酸化カーボンナノ粒子水分散液は、約220nmにおいてUV吸光度の最大値を示す。この粒子は、X線光電子分光法(XPS)で約9~約15パーセントのカルボニル基を含み、0.22μmのポアサイズのポリエーテルスルホン(PES)フィルタ膜を通過する。
【0035】
酸化カーボンナノ粒子材料は、それ自体、細胞培養物に直接加えることもできるし、粉末としてスプレーにおいて使用することもできる。好ましくは、企図される酸化カーボンナノ粒子材料は、固体又は液体の薬学的組成物などの生理的に許容できる希釈剤又はキャリアに溶解又は分散した状態で利用される。
【0036】
そのように製剤化されたとき、企図される組成物は、丸剤もしくは錠剤として、嚥下される液体として、又は静脈内、筋肉内、皮下、皮内もしくは腹腔内注射によるような経皮的に注入されるものとして、又は皮膚及び/もしくは粘膜への外用処置として、又は鼻内スプレーもしくはミストとして、又は吸入剤として、被験体に提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本開示の一部を成す図面において、
【0038】
図1図1は、外傷性脳損傷のラットモデルでの脳血流の回復におけるPBS(実線)、PEG-OAC(点線)及びPEG-HCC(破線)の存在下における経時的な灌流を示しているグラフであり、PEG-OACを用いたときの結果が、PEG-HCCで見られた結果と同等であることがわかる。時間0において外傷性脳損傷が生じた後、瀉血による血圧低下が生じる。これは、脳損傷のせいで脳灌流を減少させる(y軸)。PH(入院前の段階)では、食塩水を注入して、一過性に脳灌流を増加させる。「入院段階」では、PBS(ビヒクル)、PEG-HCC又はPEG-OACの注射とともに、保存血液でラットを蘇生する。PBS群における灌流は、一過性に増加するが、その後、減少し続ける一方で、両方のナノ粒子(NP)が、この実験全体を通して灌流の増加を維持し、PEG-HCC群では2回目の注射を必要としたが、PEG-OAC群では不要であった。
図2図2は、0.25ng/Lで存在するPEG-OACのKO濃度(星印)に対する、電子常磁性共鳴(EPR)シグナルのプロットを示している。測定値を通る破線の適合線は、当該ナノ粒子の酵素様触媒活性を示すミカエリス・メンテン飽和曲線である。安定したラジカルが確認されたことを示すインサートが含められている。
図3図3は、PEG-OACの模式的な代替合成を示している。ここでは、GMP ACを、発煙硝酸を介して酸化した(このスキームでは、PEG-HCCに使用された発煙硫酸は使用しない)後、PEG化している。
図4図4は、透過型電子顕微鏡法で可視化された、合成されたままのOAC粒子を示している顕微鏡写真である。スケールバーは、5nmである。
図5図5は、硝酸による酸化活性炭(OAC)の合成スキームの模式的な描写である。左のパネルは、センサーを作製するために先行研究で使用された合成である(インビボ又は細胞におけるものではない)。右のパネルは、インビボ及び細胞内で使用するための酸化活性炭を調製するための合成スキームである。
図6図6は、70%HNOを介して酸化されたAC(左)と90%HNO(発煙硝酸;右)を介して酸化されたACの濾液の写真である。90%HNOを用いて酸化されたOACは、0.22μmのPESフィルタを通過できる水分散性の生成物をもたらすことに注意されたい。70%HNOを用いたOACの合成から生じた生成物は、水不溶性であり、フィルタ膜上に残るので、透明な溶液となる。
図7図7は、活性炭(AC)、70%HNOによって酸化されたOAC、及び90%HNOによって酸化されたOACの熱重量分析(TGA)を示しているグラフであり、それぞれ1.5%、19.5%及び45%の重量減少を示している。90%HNOを用いて合成されたOACは、最も大きな重量減少を示したことから、その材料がより十分に酸化されたことが示される。測定値は、N下、600℃まで10℃/分のランプ速度で取得した。
図8図8は、90%HNOを用いた酸化を介して合成されたOACの電気化学的活性を、70%HNOを用いた酸化を介して合成されたOACと比較して図示している、ボルトに対するミリアンペア(mA)を単位とする電流のプロットである。両方の材料が、>0V(およそ+0.2V)という開始電位から還元電位を示す。しかしながら、90%HNOで酸化された材料の還元電位は、様々な肩ピークを有するのに対して、70%HNOで酸化された材料の還元電位は、単一の幅広いピークである。
図9A図9Aは、異なるチオール分子を還元剤として用い、還元剤としてPEG-HCC(ペグ化親水性炭素クラスター)及びジチオトレイトールによるレザズリンの還元を示しているグラフであり、レザズリンの還元のための触媒として作用できることを実証している(コントロール、丸、-●-;4mg/L PEG-HCC、四角、-■-)。
図9B図9Bは、還元剤として2mMグルタチオンを用いたPEG-OACによるレザズリンからレゾルフィンへの触媒的還元を示しているグラフである。
図10A図10A及び10Bは、硫黄検知プローブ4(SSP4)[米国特許第10,520,509号において論じられており、Dojindo Molecular Technologies,Rockville,MDから入手可能]及びNaSの存在下における、NaS+PEG-OAC(図10A)、並びにPEG-HCC及びEN-PEG-HCC(図10B)の反応からの多硫化物の調製を示しているグラフである。ペグ化酸化活性炭(PEG-OAC、上の線)又はOACなし(ナノ材料なし、下の線)。PEG-OACは、HSの非常に効果的な触媒を提供すると示されている。PEG-OACは、活性炭のGMP医薬品グレードの供給源から合成された。このグラフは、SSP4蛍光によって計測された多硫化物[3’,6’-ジ(O-チオサリチル)-フルオレセイン;スルファン硫黄プローブ4;SSP4]の生成速度が、PEG-OAC材料の存在下において大幅に向上したことを実証している。
図10B図10A及び10Bは、硫黄検知プローブ4(SSP4)[米国特許第10,520,509号において論じられており、Dojindo Molecular Technologies,Rockville,MDから入手可能]及びNaSの存在下における、NaS+PEG-OAC(図10A)、並びにPEG-HCC及びEN-PEG-HCC(図10B)の反応からの多硫化物の調製を示しているグラフである。図10Bは、濃度(0.1、1、4、10mg/L)のPEG-HCC及びEN-PEG-HCCが、硫化ナトリウムを含む無細胞溶液中のSSP4蛍光にどのように影響を与えるかをさらに示している。EN-PEG-HCCは、等価な濃度でより迅速に反応する。
図11A図11A及び図11Bは、EN-PEG-HCC(図11A)及びPEG-HCC(図11B)を用いたときの、10mg/L NP、正常酸素と90分間の低酸素(t=0)とにおける培養b.End3細胞のSSP4蛍光を示しているグラフである。低酸素のサンプルを、最初の読み取り(t=0)の前に、NPを含む脱酸素緩衝液(30分間、Nをバブリングした)中で90分間インキュベートし、次いで、室内空気でさらに90分間読み取りを行った。正常酸素のサンプルを混合し、90分間読み取りを行った。EN-PEG-HCC=エチレンジアミンブロック化PEG-HCC。EN-PEG-HCCは、PEG-HCCと比較して、SSP4生成量が多いことを再び示した。正常酸素及び低酸素雰囲気に対するSSP4単独プロットが重なることから、酸化ナノ材料の非存在下ではSSP4蛍光が増加しないことが実証された。EN-PEG-HCCは、低酸素条件と正常酸素条件下の両方において、異なる動態でSSP4蛍光を誘導する。
図11B図11A及び図11Bは、EN-PEG-HCC(図11A)及びPEG-HCC(図11B)を用いたときの、10mg/L NP、正常酸素と90分間の低酸素(t=0)とにおける培養b.End3細胞のSSP4蛍光を示しているグラフである。低酸素のサンプルを、最初の読み取り(t=0)の前に、NPを含む脱酸素緩衝液(30分間、Nをバブリングした)中で90分間インキュベートし、次いで、室内空気でさらに90分間読み取りを行った。正常酸素のサンプルを混合し、90分間読み取りを行った。EN-PEG-HCC=エチレンジアミンブロック化PEG-HCC。EN-PEG-HCCは、PEG-HCCと比較して、SSP4生成量が多いことを再び示した。正常酸素及び低酸素雰囲気に対するSSP4単独プロットが重なることから、酸化ナノ材料の非存在下ではSSP4蛍光が増加しないことが実証された。EN-PEG-HCCは、低酸素条件と正常酸素条件下の両方において、異なる動態でSSP4蛍光を誘導する。
図12図12は、PEG-HCC又はPEG-OACの存在下におけるジチオトレイトールによるレゾルフィンの還元を示しているグラフである。PEG-HCC(丸)、PEG-OAC(四角)。PEG-OACを用いた還元は、PEG-HCCを用いた場合よりも速い。
図13図13は、300μM NaS及び10μM蛍光硫黄プローブ(SSP4)を含む無細胞PBS水溶液への4mg/L PEG-OACの添加あり(破線)及び添加なし(実線)における多硫化物の形成速度を示しているグラフである。540nmで10分間、蛍光を計測した。その時点において、多硫化物の形成速度は、蛍光によって示されたように、PEG-OACの存在に起因して30倍上昇した。
図14図14は、300μM NaSを含む無細胞PBS水溶液にPEG-OACを加えた、チオ硫酸のPEG-OAC用量依存的(0、1、3及び9mg/L)生成を示しているグラフである。チオ硫酸の生成を、Dong et al.,ACS Sens.2017;2(8):1152-1159の方法によって測定した。チオ硫酸は、多硫化物の酸化生成物であり、多硫化物の生成を示唆するものである。
図15図15は、100℃で6時間、発煙硝酸(90%HNO)を用いてOAC粒子を調製したときの粒子分布を図示しているグラフである。その混合物の粒子は、平均直径が2.8nmである。
図16図16は、レース状カーボン上のOACナノ粒子の透過型電子顕微鏡像である。これらのナノ粒子は、黒っぽい円として現れ、平均直径が2.8nmである。
図17図17は、PEG-OACが、さらなる硫化物供与体なしに、HEK293細胞における多硫化物の生成速度を上昇させることを図示しているグラフである。HEK293細胞における多硫化物の生成は、ssp4(y軸、任意単位)によって計測され、PEG-OACによって用量依存的様式で(0、1、3、9mg/L)触媒される。
図18】PEG-OACは、ミトコンドリアのHS供与体である10-オキソ-10-(4-(3-チオキソ-3H-1,2-ジチオール-5イル)フェノキシ)デシル)トリフェニルホスホニウムブロミド(AP39)[Szczesny et al.,Nitric Oxide 2014;14:120-130]の増殖作用と有毒作用の両方を低減させる。見られるように、PEG-OACは、bEnd.3細胞において10nM AP39によって誘導される増殖を減少させ、それらの細胞において1000nM AP39によって誘導される毒性を減少させる。
図19図19は、添加物なし[AP39(-)/PEG-OAC(-)]、AP39単独[AP39(+)/PEG-OAC(-)]、PEG-OAC単独[AP39(-)/PEG-OAC(+)]又はその両方[AP39(+)/PEG-OAC(+)]で処置されたbEnd.3細胞の蛍光顕微鏡写真を示している。4mg/L PEG-OACをbEnd.3細胞と共存させると、AP39の非存在下のコントロール[AP39(-)/PEG-OAC(+)]と比べて、多硫化物感受性の硫黄検知プローブ4(SSP4)の蛍光が増大する。AP39を加えると、蛍光シグナルは増大するが、PEG-OACを加えると、この効果は増幅される[AP39(+)/PEG-OAC(+)]。
【発明を実施するための形態】
【0039】
定義
以下の説明では、以下の定義を使用する。
【0040】
本明細書中に記載される本発明の態様及び実施形態は、態様及び実施形態から「なる」及び/又は「本質的になる」を含むと理解される。
【0041】
冠詞「a」及び「an」は、その冠詞の文法上の対象が1つ又は1つより多い(すなわち、少なくとも1つ)ことを指すために本明細書中で使用される。例としては、「エレメント(an element)」は、1つのエレメント又は1つより多いエレメントを意味する。
【0042】
本明細書中の「約」ある値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータそれ自体に関するばらつきを含む(及び説明する)。例えば、「約X」に言及している説明は、「X」の説明を含む。
【0043】
本明細書中で使用されるとき、用語「抗癌剤」とは、メラノーマ、神経膠腫及び腺癌、膀胱癌、骨癌、骨髄の癌、脳癌、脊髄癌、乳癌、子宮頸癌、胆嚢癌、神経節の癌、消化管の癌、胃癌、結腸癌、心臓癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、筋肉癌(muscle cancer)、卵巣癌、膵癌、副甲状腺癌、陰茎癌、前立腺癌、唾液腺癌、皮膚癌、脾臓癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌又は子宮癌からなる群より選択される癌を阻害することができる薬理学的に活性な作用物質のことを指す。
好ましい実施形態の詳細な説明
【0044】
本発明は、内因的又は外因的に放出された硫化水素を用いて、インビトロ及びインビボにおいて硫化水素から過硫化物及び/又は多硫化物を触媒的に形成するための治療方法を企図する。その方法は、有効量の酸化カーボンナノ粒子材料と、必要としている細胞を接触させることを含み、それらの粒子は、複数のカルボニル、ヒドロキシル及びカルボキシル置換基を含む。
【0045】
必要としている例示的な細胞は、身体が、外傷性脳損傷(TBI)、炎症、敗血症、及びてんかん発作、脳卒中又は血栓症、ショックによって生じ得るような低酸素(これらに限定されない)に起因する酸化ストレス下にある哺乳動物被験体、移植又は植え込みの準備が整った臓器に存在する細胞である。例示的な細胞は、身体が、十分な過硫化タンパク質を生成するHSが不十分であるか、又は加齢、癌、炎症、糖尿病、脳卒中、外傷(これらに限定されない)における適切な機能にとって十分な過硫化タンパク質を生成する生得の能力及び過剰なHSに起因する潜在的な毒性を低減する生得の能力が不十分である、哺乳動物被験体内の必要としている細胞である。
【0046】
企図される酸化カーボンナノ粒子材料は、グラフェン、グラフェンナノリボン、酸化グラフェン、グラファイト、酸化グラファイトナノリボン、カーボンブラック、親水性炭素クラスター(HCC)、酸化石炭、活性化石炭、及び活性炭(これが好ましく、酸化活性炭粒子(OAC)を形成する)をはじめとした種々の供給源のいずれかから調製され得る。
【0047】
OACは、強い触媒的酸化還元活性を示し、これらの材料の製剤は、図1に示されるインビボげっ歯類外傷性脳損傷モデルにおいて有効性を実証した。酸化活性炭ナノ材料のいくつかの調製物と比べて、優良製造規範(GMP)に基づいて調製された活性炭から作製されたOACは、除去が必要な金属汚染をほとんど又は全く含まない。
【0048】
内因的又は外因的に放出されたHSからの多硫化物の生成を増強する手段は、この作用物質が病理学的に関与する状態における有効性を高めることができる。
【0049】
1つの実施形態において、酸化カーボンナノ粒子材料は、細胞培養及び/又は生組織環境内において硫化水素から過硫化物及び/又は多硫化物への酸化を触媒するための方法の一部として使用され得る。1つの態様において、酸化カーボンナノ粒子材料は、硫化水素放出部分、可溶化剤、生物学的障壁トランスポーター部分、組織標的化剤、アッセイ識別剤、キレート剤及び医薬品の群から選択される1つ以上の外因的に供給された特定の置換基で官能化されている。外因的に供給された特定の置換基は、酸化カーボンナノ粒子材料に非共有結合的に結合され得るか、又は共有結合的に連結され得る。
【0050】
いくつかの態様において、活性な作用物質が、共有結合的又は非共有結合的にカーボンナノ材料と会合され得る。例えば、カーボンナノ材料は、1つ以上の分子、キレート剤、例えば、デフェロキサミン、ポリマー、化学的部分で官能化され得、ナノ粒子は、官能基又は可溶化基、例えば、ケトン、アルコール、エポキシド、カルボン酸、1,2-ジオン、1,4-ジオン、1,2-キノン、1,4-キノン及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0051】
より詳細には、酸化カーボンナノ材料は、任意の数の可溶化ポリマーで官能化され得る。例示的な可溶化ポリマーとしては、ポリ(エチレングリコール)[PEG]、ポリ(プロピレングリコール)[PPG]、ポリ-(エチレンイミン)[PEI]、ポリ(ビニルアルコール)[PVA]及びポリ(アクリル酸)[PAA]又はこれらのポリマーの任意の組み合わせのうちの1つ以上が挙げられる。周知であるように、これらの可溶化ポリマーは、多くの長さ(分子量)で利用可能であり、本明細書中では、ある数のものが使用され、図に例証されている。例えば、酸化カーボンナノ材料が、PEG、PPG、又はPEGとPPGとのブロック共重合体、例えば、Pluronic(登録商標)ポリオール(PEG-PPG-PEG)などの複数の可溶化基で非共有結合的に包まれ得るように、可溶化ポリマー又は官能化基が、酸化カーボンナノ材料と共有結合的又は非共有結合的に会合され得る。いくつかの実施形態において、可溶化基は、粒子に共有結合的に結合される。
【0052】
治療用組成物の一部としての酸化カーボンナノ材料(ナノ粒子)は、そのナノ粒子に共有結合的に付着又は非共有結合的に接着され得る標的化剤も含み得る。例として、そのような標的化剤は、抗体、RNA、DNA、アプタマー、小分子、デンドリマー、タンパク質もしくはペプチド、サッカライド、多糖、又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0053】
標的化剤は、酸化ストレスの緩和などの、接触した細胞の満たされるべき必要性に関連したマーカーに対して認識活性を示す。例えば、例示的なマーカーは、酸化ストレスに応答してアップレギュレートされる細胞表面タンパク質、又は炭水化物認識エレメントであり得る。特定の標的化剤は、必要としている細胞の標的部位内又は標的部位における特異的な細胞型又は特定の細胞内小器官に対する特定の標的化剤の親和性及び/又は特異性に基づいて選択される。
【0054】
本発明の治療用組成物は、その作用物質のレベルの低下が有益である病理過程の一部として、過剰な金属又は他の作用物質を除去する能力を増強するために、キレート剤とも会合され得る。例として、キレート剤は、デフェロキサミン、ジエチレントリアミン五酢酸(ペンテト酸又はDTPA)、デフェラシロクス、デフェリプロン、エアロバクチン、トリアピン(triapine)、サリチルアルデヒドイソニコチノイルヒドラゾン、(E)-N9-[1-(2-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)-エチリデン]イソニコチノイルヒドラゾン、ジ-ピリジルケトンイソニコチノイルヒドラゾン、D-ペニシラミン、又はナノ粒子へのコンジュゲーションを可能にするそれらの構造誘導体であり得る。
【0055】
本発明の治療用組成物は、生物学的障壁、すなわち、血液脳関門(BBB)及び血液脊髄関門(BSCB)を通る酸化カーボンナノ材料の輸送をより容易にするために、トランスポーター部分とも会合され得る。例として、これらのトランスポーター部分は、アダマンチン分子又はアダマンチン誘導体を含み得る。例証的なアダマンチン誘導体としては、アマンタジン、メマンチン、リマンタジン、ドパマンチン、トロマンタジン、ビルダグリプチン、カルマンタジン及びそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。これらの化合物は、置換基として、アダマンタニル、アマンタジニル、メマンチニル、リマンタジニル、ドパマンチニル、トロマンタジニル、ビルダグリプチニル及びカルマンタジニル基と称される。
【0056】
酸化カーボンナノ材料とともに使用され得るトランスポーター部分は、カンナビノイド分子又はカンナビノイド誘導体を含むことができ、それらとしては、例えば、カンナビゲロール、カンナビゲロールモノメチルエーテル、カンナビネロール酸A、カンナビゲロバリン、カンナビゲロール酸A、カンナビゲロール酸Aモノメチルエーテル、カンナビゲロバリン酸A、カンナビクロメン、カンナビクロメン酸A、カンナビバリクロメン、カンナビクロメバリン、カンナビクロメバリン酸A、カンナビジオール、カンナビジオールコール、カンナビジオール酸、カンナビジバリン酸、カンナビノジオール、カンナビノジバリン、カンナビバリン、カンナビシトラン、HU-210(1,1-ジメチル-ヘプチル-11-ヒドロキシテトラヒドロカンナビノール)又はデキサナビノール(HU-211)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
トランスポーター部分は、カーボンナノ材料の端部又は面に共有結合的に連結されることなどによる様々な様式でカーボンナノ材料と会合され得る。共有結合は、部分と粒子との間で直接生じ得るかもしくはリンカー分子を介して生じ得、可溶化鎖の末端と会合され得るか、又は1つ以上のトランスポーター部分が、酸化カーボンナノ材料に非共有結合的に連結され得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、治療用組成物は、抗炎症薬、抗癌薬、抗糖尿病薬及びこれらの作用物質の組み合わせを含み得る。
【0059】
本明細書中に開示されるカーボンナノ材料は、被験体に投与された治療用組成物のリアルタイムの追跡、分布及び送達を可能にするMRIトレーサーとして使用することができる。この場合、ガドリニウムなどの他の元素が、コントラストを高めるために有益であり得、これらは、共役キレート剤を介して付加されることが多い。
【0060】
処置方法及び薬学的組成物
硫化水素から過硫化物及び/又は多硫化物を形成する方法が企図される。その方法は、有効量の酸化カーボンナノ粒子材料と、必要としている細胞を接触させることを含み、その粒子は、複数のカルボニル、ヒドロキシル及びカルボキシル置換基を含む。
【0061】
処置を必要としている被験体及びその細胞を処置するための方法の一部として、企図される方法は、フリーラジカル種を減少させ、それゆえ、被験体内又は被験体上の損傷部位に通常伴うフリーラジカル病理を減少させる。例として、処置方法は、被験体の標的部位における活性酸素種のレベルを約5%~約50%減少させると説明され得る。
【0062】
別の企図される方法は、タンパク質の適切な作用にとって必要なそのタンパク質の過硫化を増加させて、機能を回復させる。
【0063】
また、酸化カーボンナノ材料は、処置される被験体に対して最小限の毒性しか提供しない。
【0064】
いくつかの実施形態において、酸化カーボンナノ材料は、親水性、疎水性又は両親媒性(薬物又は診断用ラベルなどの疎水性分子の非共有結合性の結合とともに水溶解性を可能にする、両親媒性)と説明され得、例として、これらに限定されないが、ミセル又はリポソームに類似することができる。さらに、カーボンナノ材料は、部位に送達するためにさらなる活性な作用物質を捕捉することができるので、活性な作用物質の有効性及び抗酸化特性を捕捉することができる。
【0065】
なおも他の実施形態において、酸化カーボンナノ材料は、硫化水素供与体部分を含むように修飾され得る。生物学的活性が既知である化合物に基づくHS供与体骨格を、Powell et al.,Biochem Pharmacol 149:110-123(2018)において論じられているように、HS放出機構によって分類して下記に示す。これらの材料は、本明細書以後の実施例4において論じられている。
【0066】
チオールによってトリガーされるHS供与体は、チオールと反応し、多種多様なたくさんの反応性部分を有し、N-ベンゾイルチオールベンズアミド、アシルペルチオール、多硫化物、ジチオペルオキシ無水物及びS-アロイルチオキサミンが、このカテゴリーに含まれる。また、ジェミナル-ジチオール及びトリメチルロックプロドラッグという、酵素によってトリガーされる2つの構造モチーフが存在する。これらの骨格はすべて、当該分野で周知であるように、リンカー分子又はナノ粒子への直接のコンジュゲーションを容易にすることができるユニークなR及びR’基で修飾され得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、酸化カーボンナノ材料は、活性な作用物質を含むことができ、その活性な作用物質は、共有結合的又は非共有結合的に酸化カーボンナノ材料と会合される。例えば、活性な作用物質には、抗癌薬、化学療法剤、抗酸化物質、抗炎症薬が含まれ得るか、又はこれらの活性な作用物質の任意の組み合わせは、小分子、タンパク質、アプタマー、DNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、miRNA、siRNA及びそれらの組み合わせであり得る。
【0068】
例として、活性な作用物質のいずれか1つ以上が、切断可能な部分(すなわち、エステル結合/アミド結合)、光切断可能な部分又はpH感受性の切断可能な部分を通じて酸化カーボンナノ材料と共有結合的に会合され得る。カーボンナノ材料と会合するさらなる様式も想定できる。
【0069】
なおも別の実施形態において、酸化ストレスを処置するための方法が提供され、ここで、被験体内の活性酸素種レベルは、その被験体に酸化カーボンナノ粒子の調製物を投与することによって低下される。特定の用途において、その調製物は、被験体内及び/又は被験体上の部位に、局在的な処置調製物として提供され得る(図1)。活性酸素種(ROS)、活性硫黄種(RSS)又は他のラジカルストレッサー及びまだ特徴付けられていないもののレベルを、恒常レベル又はストレスを受ける前のレベルまで低下させるための方法も提供され、その方法は、酸化カーボンナノ粒子の調製物を投与することを含む。
【0070】
上記処置調製物及び処置方法は、活性種の生成を弱めること、及び/又は活性種によって誘導される、内因性抗酸化酵素の消費を緩和することなどによる、任意の数の機構によってROS及びRSSを減少させるように機能し得る。治療的処置の一部として、その調製物の投与によってもたらされるROSの減少は、例えば、1つ以上の活性酸素種に特異的な色素又はマーカーの強度の変化を測定することによって達成できると企図される。
【0071】
なおも別の実施形態において、タンパク質の過硫化を回復させる方法が提供される。その処置調製物及びそれらの使用方法は、酸化カーボンナノ粒子を被験体に投与することによってHSからの過硫化物及び/又は多硫化物の生成を増強することによって機能すると考えられる。不十分な過硫化は、過硫化物及び/又は多硫化物の生成の増強が望ましい可能性がある一連の疾患の一因となる。タンパク質の過硫化の程度は、処置効果の指標として、質量分析などによって計測することができる。
【0072】
細胞内で硫化水素を代謝して治療用生成物にするという上記材料の使用法は、硫化水素供与体と組み合わされて、有益な多硫化物を被験体の標的部位に挿入する。
【0073】
企図される酸化カーボンナノ粒子材料は、少なくとも、硫化水素から過硫化物及び/又は多硫化物を形成するのに有用な薬(薬学的組成物)の製造において使用され得る。企図される酸化カーボンナノ粒子材料、それを含む薬又は薬学的組成物は、インビトロにおいて又はそれを必要とする被験体におけるようなインビボにおいて細胞と接触させることによって、過硫化物及び/又は多硫化物を形成する。そのように使用される場合、薬学的使用が意図されていない組成物中に存在し得るものに対し、薬学的に許容され得る希釈剤と総称される薬学的に許容され得る塩、緩衝液などが、通常存在する。
【0074】
企図される酸化カーボンナノ粒子材料は、カルボン酸及び/又はカルボン酸アニオンとしてしばしば存在する。カルボキシレート基の電荷を釣り合わせるために、一価のリチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムイオン、又はマグネシウム又はカルシウムなどの二価イオンなどのカチオンが存在し得る。
【0075】
アミン含有化合物も、企図される粒子と会合され得るか、共有結合的もしくは非共有結合的に連結され得るか、又は単に疎水性もしくは親水性もしくは他の力によって結合され得る。PEIなどの可溶化剤が、それらの粒子と会合している場合、そのポリマーのプロトン化アミン基からの正電荷の数は、通常中性付近である企図されるほとんどの体液又は細胞培養液のpH値において、それらの粒子のカルボキシレートの負電荷の数に勝る可能性がある。ゆえに、正電荷と釣り合わせるために、アニオン基が存在し得る。
【0076】
例証的な有用なアニオンとしては、以下のもの、硫酸、塩酸、臭化水素酸、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、クエン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、重硫酸、酪酸、ショウノウ酸、ショウノウスルホン酸、ジグルコン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸、ヘミ硫酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、フマル酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、ニコチン酸、2-ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、パルモ酸(palmoate)、ペクチン酸、過硫酸、3-フェニル-プロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、プロピオン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、トシル酸、メシル酸及びウンデカン酸が挙げられるがこれらに限定されない。
【0077】
薬学的化合物と薬学的に許容され得る塩を形成する、通常使用される薬学的に許容され得る酸及び塩基のリストは、Berge,J.Pharm.Sci.1977 68(1):1-19に掲載されている。
【0078】
企図される薬学的組成物は、過硫化物及び/又は多硫化物を形成する量の、生理学的に(薬学的に)許容され得るキャリアに溶解又は分散された企図される酸化カーボンナノ粒子材料又はその薬学的に許容され得る塩を含む。そのような組成物は、細胞培養物におけるようなインビトロで哺乳動物細胞に投与されることにより、それらの細胞と接触させることができるか、又は必要としている生存している宿主哺乳動物におけるようなインビボでそれらの細胞を接触させることができる。
【0079】
図のデータは、約0.1~約10mg/L及び2mg/kgの濃度が本研究における有効量を提供することを示している。当業者は、それらの量を利用して、特定の処置される被験体又は処置される細胞に対する有効量を容易に見出すことができる。
【0080】
企図される組成物は、通常、それを必要とする被験体に1ヶ月以内に複数回、例えば毎週、インビボ投与され、数ヶ月から数年間にわたって投与され得る。より通常は、企図される組成物は、処置の経過にわたって複数回投与される。
【0081】
企図される薬学的組成物は、所望であれば、従来の無毒性の薬学的に許容され得るキャリア、アジュバント及びビヒクルを含む製剤として経口的(orally)(経口的(perorally))又は非経口的(これが好ましい)に投与することができる。本明細書中で使用される非経口という用語は、皮下注射、静脈内注射(これが最も好ましい)、筋肉内注射、胸骨内注射又は注入手法を含む。薬物の製剤化は、例えば、Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania;1975及びLiberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980において論じられている。
【0082】
経口投与用の固形剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤が含まれ得る。固形剤形における企図される化合物の量は、先に論じたような有効量である。また、固形剤形は、1週間の間に複数回投与することができる。
【0083】
そのような固形剤形において、本発明の化合物は、通常、示された投与経路にとって適切な1つ以上のアジュバントと組み合わされる。それらの化合物は、経口投与される場合、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸及び硫酸のナトリウム塩及びカルシウム塩、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン並びに/又はポリビニルアルコールと混和され得、次いで、好都合な投与に向けて打錠又はカプセル化され得る。
【0084】
そのようなカプセル剤又は錠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中の活性な化合物の分散物として提供できるような制御放出型製剤を含み得る。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、それらの剤形は、クエン酸ナトリウム、炭酸マグネシウムもしくは炭酸カルシウム又は炭酸水素マグネシウムもしくは炭酸水素カルシウムなどの緩衝剤も含み得る。錠剤及び丸剤は、さらに腸溶コーティングを用いて調製され得る。
【0085】
企図される薬学的組成物は、好ましくは、非経口投与に適合される。したがって、薬学的組成物は、投与されるとき、好ましくは液体の形態であり、最も好ましくは、その液体は、水性液体であるが、下記で論じられるように他の液体も企図され、現在最も好ましい組成物は、注射可能な調製物である。
【0086】
したがって、注射可能な調製物、例えば、滅菌された注射可能な水性又は油性の溶液又は懸濁液が、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて、公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌された注射可能な調製物は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、無毒性の非経口的に許容され得る希釈剤又は溶媒中の滅菌された注射可能な溶液又は懸濁液でもあり得る。
【0087】
使用することができる許容され得るビヒクル及び溶媒には、水、リンガー溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液、リン酸緩衝食塩水が含まれる。活性な成分を所望の溶媒系に溶解し、次いで、得られた溶液をメンブレンフィルタに通して滅菌すること、或いは、滅菌された化合物を事前に滅菌しておいた溶媒に滅菌条件下において溶解することによって、滅菌された溶液が調製され得る。
【0088】
他の液体の薬学的組成物としては、例えば、非経口投与に適した溶液が挙げられる。酸化カーボンナノ粒子の活性な成分の滅菌水溶液、又は水、エタノールもしくはプロピレングリコールを含む溶媒中の活性な成分の滅菌された溶液が、非経口投与に適した液体組成物の例である。いくつかの態様において、企図される酸化カーボンナノ粒子材料は、使用前に、注射用の塩化ナトリウムなどの適切な液体媒質に溶解(分散)される乾燥粉末として提供される。
【0089】
別の実施形態において、企図される組成物は、外用で使用されるようにデザインされる。したがって、その組成物の粘度は、飲料水の粘度より高いことが好ましい。粘度は、室温においてヘビークリーム又はモーターオイルが示す粘度とマヨネーズが示す粘度との間であることが好ましい。そうでない場合は、これらの粘度は、軟膏と比べれば、ハンドクリーム又はハンドローションの粘度と同等である。したがって、1つの好ましい組成物は、室温で容易に注液することができる。ゲルなどの他の好ましい組成物は、たとえ室温であったとしても注液することが非常に困難である傾向があり、容器からすくい上げ、別の容器に盛った後、数秒間尖った形状を維持する。
【0090】
企図される外用投与される薬学的組成物は、例えば、手又はスパチュラで塗布される必要はなく、処置される皮膚又は粘膜に付着する経皮パッチを介して適用され得る。そのようなパッチでは、薬学的組成物は、通常、柔軟な平面上に配列された組成物透過性レザバー内に保持され、そのレザバーは、接着剤によってその柔軟な表面上に囲まれている。そのレザバー及び粘着性の柔軟な表面は、一体である必要はなく、別個の実体であってもよい。
【0091】
望ましい粘度範囲は、通常、1つ以上のポリマー増粘剤の助けを借りて達成される。例証的なポリマー増粘剤としては、デンプン誘導体であるZeina B862ヒドロキシプロピルデンプンリン酸及びZeina B860ヒドロキシプロピルデンプンが挙げられる。多糖類ガムは、企図される組成物中に存在し得る別の有用な増粘剤である。
【0092】
好適な代表的なガムは、ガラクトマンナンガムのカテゴリーに属するものである。ガラクトマンナンガムは、D-ガラクトース単位及びD-マンノース単位を含む炭水化物ポリマー又はそのようなポリマーの他の誘導体である。ガラクトマンナンは、比較的多数存在し、その組成は起源によって様々である。ガラクトマンナンガムは、β-D-マンノピラノシル単位が連結(1→6)した鎖状構造を特徴とする。主鎖と連結(1→6)した1員環のα-D-マノピラノシル単位が側枝として存在する。ガラクトマンナンガムには、2つのマメ科植物(Cyamposis tetragonalobus及びpsoraloids)のいずれかの種子の微粉砕胚乳であるグアーガム、及びイナゴマメ(Ceratonia siliqua)の種子の胚乳に見られるローカストビーンガムが含まれる。
【0093】
他の好適な代表的なガムとしては、寒天ガム、カラギナンガム、ガッティガム、カラヤガム、ラムザンガム(rhamsan gum)及びキサンタンガムが挙げられる。本発明の組成物は、様々なガムの混合物、又はガムと酸性ポリマーとの混合物を含み得る。
【0094】
ガム、特にガラクトマンナンガムは、周知の材料である。例えば、Industrial Gums:Polysaccharides & Their Derivatives,Whistler R.L.and BeMiller J.N.(eds.),3rd Ed.Academic Press(1992)及びDavidson R.L.,Handbook of Water-Soluble Gums & Resins,McGraw-Hill,Inc.,New York(1980)を参照のこと。ほとんどのガムは、様々な形態、一般的には粉末で商業的に入手可能であり、食品及び外用組成物として使用できる状態である。例えば、粉末状のローカストビーンガムは、Tic Gums Inc.(Belcam,Md.)から入手可能である。
【0095】
多糖類ガムは、使用されるとき、組成物の総重量に基づいて、通常、約0.5パーセント~約5パーセントで存在し、好ましい量は、約0.5パーセント~約2パーセントである。
【0096】
多糖類ガムの代替物又は添加物は、ポリアクリル酸ポリマーである。ポリアクリル酸ポリマーの一般的な種類は、ポリアルケニルポリエーテルでゆるく架橋されたポリアクリル酸ポリマーである「カルボマー」として一般に知られている。これらの材料は、B.F.Goodrich Company(Akron,Ohio)から「CARBOPOL(登録商標)」という名称で商業的に入手可能である。特に好ましいカルボマーの種類は、「CARBOPOL(登録商標)940」及び「CARBOPOL(登録商標)934」と命名されたものである。
【0097】
本発明の実施において使用するのに適した他のポリアクリル酸ポリマーは、「Pemulen(登録商標)」(B.F.Goodrich Company)及び「POLYCARBOPHIL(登録商標)」(A.H.Robbins,Richmond,Va.)という名称で商業的に入手可能なものである。Pemulen(登録商標)ポリマーは、スクロースのアリルエーテル又はペンタエリトリトールのアリルエーテルで架橋された、C10~C30アクリル酸アルキルと、アクリル酸、メタクリル酸、又はそれらの単純エステルのうちの1つの1つ以上のモノマーとの共重合体である。POLYCARBOPHIL(登録商標)は、ジビニルグリコールで架橋されたポリアクリル酸である。
【0098】
ポリマー増粘剤のレベル及び上記製剤への組み込みは、確立された製薬の原則に基づく。浸透剤、着色剤、酸化防止剤、軟化剤、滑剤及び抗菌剤などの他の製剤成分を加えることもできる。
【0099】
治療用製剤において、活性な酸化カーボンナノ粒子材料の分散、溶解、乳化、懸濁、凍結乾燥、カプセル化、微粒子化、ナノ粒子化などを行うことができることも理解される。さらに、製剤は、溶媒、例えば、アルコール、ポリオール、エステル、水、増粘剤及び粘稠性調節剤、例えば、ガラクトマンナンガム、炭水化物ポリマー、例えば、デンプン、セルロース誘導体、アルギン酸及びアルギン酸誘導体、アクリル酸アルキルポリマー及びアクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール誘導体、フィルム形成剤、例えば、セルロースエーテル、カルボマー、キレート剤、乳化剤、例えば、長鎖脂肪酸、通常のアルコール又は脂肪アルコール及び又はエステル、アミノ酸、並びに緩衝剤を含み得る。
【0100】
なおもさらなる実施形態において、企図される酸化カーボンナノ粒子材料組成物は、活性な酸化カーボンナノ粒子材料を肺に又は篩板を介して脳に投与するための鼻腔用スプレー又は吸入剤として製剤化される。そのような用途のための組成物は、一般に外用用途の組成物よりも粘稠性が低く、哺乳動物被験体の体温において水のような粘度を有する。
【0101】
鼻腔用スプレーによる投与では、酸化カーボンナノ粒子材料は、吸入により送達される。例えば、PEGもしくはキレート剤又はその両方で誘導体化された酸化ナノ粒子材料又は酸化カーボンナノ粒子材料は、例えば、米国特許第6,509,006号、同第6,592,904号、同第7,097,827号及び同第6,358,530号に記載されているような方法を用いて、乾燥分散用に、例えば、コンジュゲートを含む溶液の凍結乾燥又は噴霧乾燥によって調製され得る。例示的な乾燥粉末賦形剤としては、分散を助けるために酸化カーボンナノ粒子材料と混合される低分子量の炭水化物又はポリペプチドが挙げられる。
【0102】
通常、組成物は、液体の溶液又は懸濁液として注射剤として調製される。注射前に液体ビヒクルに溶解又は懸濁するのに適した固体の形態も調製され得る。注射可能な調製物が好まれるが、外用、鼻腔用スプレー又は粉末状の組成物を、ポリラクチド、ポリグリコリド又は共重合体などのリポソーム又は微粒子に分散、乳化又はカプセル化することもできる[Langer,(1990)Science 249(4976):1527-1533]。
【0103】
酸化カーボンナノ粒子材料に加えて、企図されるリポソームは、ステロール、炭素数12~18の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノール-アミン、炭素数12~18の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンのうちの1つ以上を含み得る。より詳細には、リポソームの成分は、ホスファチジルセリン、ホスファチジル-イノシトール、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、ジパルミトイル-ホスファチジルグリセロール、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシル-アミン、パルミチン酸アセチル、リシノール酸グリセリン、ステアリン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸イソプロピル、両性アクリルポリマー、脂肪酸、脂肪酸アミド、ジアシルグリセロール、ジアシルグリセロールスクシネート、DMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)又はDMPG(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-[1-グリセロール])を含み得る。
【0104】
代替の実施形態において、乾燥粉末分散用のキャリアとして有用な薬学的賦形剤のタイプとしては、有用な分散剤でもあるヒト血清アルブミン(HSA)などの安定剤、炭水化物、アミノ酸及びポリペプチドなどの増量剤、pH値調整剤又は緩衝剤、塩化ナトリウムなどの塩などが挙げられる。これらのキャリアは、結晶性もしくは非晶質の形態であり得るか、又はそれら2つの混合物であり得る。粉末又はエアロゾル製剤を送達するために使用され得るデバイスとしては、例えば、米国特許第5,605,674号及び同第7,097,827号に記載されているようなデバイスが挙げられ、例えば、それらのデバイスは、ネブライザーであり得る。
【0105】
本明細書中に提供されるような用途及び方法を実施するために使用される酸化カーボンナノ粒子材料及びそれらの製剤は、凍結乾燥させることもできる。したがって、本明細書中に提供されるような安定な凍結乾燥された薬学的組成物は、酸化カーボンナノ粒子材料を単独で含む溶液、又は増量剤、例えば、マンニトール、トレハロース、ラフィノース及びスクロース又はそれらの混合物と混和された溶液を凍結乾燥することによって作製され得る。他にも多くの従来の凍結乾燥剤がある。糖の中でも、ラクトースが最も一般的である。クエン酸、炭酸ナトリウム、EDTA、ベンジルアルコール、グリシン、塩化ナトリウムなども使用される[例えば、Baheti et al.,(2010)J Excip Food Chem 1(1):41-54を参照のこと]。
【0106】
さらに、滅菌された固定油が、溶媒又は懸濁媒として従来法で使用される。この目的で、合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドをはじめとした任意の無刺激性の固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能な組成物の調製において使用される。ジメチルアセトアミド、イオン性及び非イオン性の洗浄剤を含む界面活性剤、ポリエチレングリコールを使用することができる。上で論じられたものなど、溶媒と湿潤剤との混合物も有用である。
【0107】
企図される化合物を含む薬学的組成物が投与される、処置を必要とする哺乳動物(被験体)は、ヒトなどの霊長類、チンパンジーもしくはゴリラなどの類人猿、カニクイザルもしくはマカクなどのサル、ラット、マウスもしくはウサギなどの実験動物、イヌ、ネコ、ウマなどの伴侶動物、又は乳牛もしくは雄の子牛、ヒツジ、子ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラマなどの食用動物などであり得る。
【0108】
インビトロアッセイが企図される場合、細胞及び組織などのアッセイされるサンプルを使用することができる。周知であるように、これらのインビトロ組成物は、通常、水、塩化ナトリウム又は塩化カリウム、並びに酢酸塩及びリン酸塩、Hepesなどのような1つ以上の緩衝塩、行われるアッセイに応じてpH4.0~8.5、好ましくは、約pH7.2~7.4などの所望のpH値に緩衝されるEDTAなどの金属イオンキレート剤を含む。
【0109】
好ましくは、薬学的組成物は、単位剤形で存在する。そのような形態では、組成物は、適切な量の活性な化合物を含む単位用量に分割されている。単位剤形は、包装された調製物であり得、そのパッケージは、例えば、バイアル又はアンプルに入った別々の量の調製物を含んでいる。
【0110】
化学療法剤
企図される組成物は、酸化カーボンナノ粒子とともに化学療法剤を含み得る。これらの化学療法剤には、アルカロイド、共有結合性のDNA結合剤、非共有結合性のDNA結合剤、代謝拮抗物質、酵素、ホルモン、白金化合物、抗癌薬、トキシン及び/もしくは放射性核種にコンジュゲートされたモノクローナル抗体、生物学的応答変更因子、造血成長因子、血管新生の阻害剤、DNA架橋剤、トポイソメラーゼI阻害剤、又は微小管阻害剤が含まれ得る。なおもさらなる例として、化学療法剤は、2-クロロデオキシアデノシン、2’-デオキシコホルマイシン、2’-デオキシコホルマイシン、5-フルオロウラシル、5-フルオロデオキシウリジン、4-ジメトキシダウノマイシン、11-デオキシ-ダウノルビシン、13-デオキシダウノルビシン、アドリアマイシン-14-ベンゾエート、アドリアマイシン-14-オクタノエート、アドリアマイシン-14-ナフタレンアセテート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アシクロビル、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、アザチオプリン、ブスルファン、カンプトテシン、カンブシル(canbusil)、カルボプラチン、カルミノマイシン(carminomycin)、カルムスチン、クロラムブシル、クロロデオキシアデノシン、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダクチノマイシン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルタミド、ヒドロキシメチルメラミン、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、ロバスタチン、メクロレタミン、メルファラン、メトトレキサート、ミトキサントロン、マイトマイシン、オキサリプラチン、セムスチン、チオテパ、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びビンデシンであり得る。
【0111】
実施例
以下の実施例は、意図される発明の様々な特定の態様の説明を提示するものであって、決して意図される発明を限定するために提示されるものではない。
【0112】
実施例1-材料及び方法
別段述べられない限り、すべての化学物質は、Sigma-Aldrichから購入し、別段述べられない限り、さらに精製することなく使用した。単層カーボンナノチューブ(SWCNT;Batch HPR187.4)は、Rice UniversityのHiPco Laboratoryから入手した。GMP ACは、EnviroSupply & Serviceから入手した。発煙(90%)硝酸は、Alfa Aesarから入手した。
【0113】
他の好適なPEG化又は官能化カーボンナノ材料を使用することができ、それらとしては、PEG化酸化グラファイトナノリボン(PEG-GONR)、PEG化酸化カーボンブラック(PEG-OCB)及びPEG化カーボンブラック(PEG-CB)が挙げられるがこれらに限定されず、これらも企図される。
【0114】
上記ナノ材料は、様々な商業的に入手可能な炭素質出発物質から、確立された合成方法を用いて製造することができる。PEG-HCCの合成及び特徴付けは、Berlin et al.(2010)ACS Nano.4(8):4621-4636に見られ、この開示は、参照により本明細書中に援用される。PEG-OACの合成及び特徴付けは、実施例3に列挙される。
【0115】
実施例2:ナノザイム(Nanozyme)材料
触媒的ナノ粒子であるナノザイムは、非化学量論的様式で様々な化学反応を行うことができる。この実施例において、ナノザイムは、PEG-HCCと同等の酸化カーボンナノ材料(40nm以下のサイズ、高度に共役した平面グラフェンドメイン及び最適なバランスの酸素含有部分)に由来する。酸化カーボンナノ材料に由来する既存のナノザイムは、超酸化物(SO)を効果的に不均化すると示されており、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド:シトクロムcオキシドレダクターゼなどのミトコンドリア基質の反応を触媒する。
【0116】
酸素含有部分で装飾されたsp混成炭素に富むカーボンナノ粒子(CNP)は、ミトコンドリアにおいて超酸化物の不均化及び電子の伝達のためのナノザイム触媒として機能する。PEG-HCCは、SO単独の自発的な不均化よりも総活性化エネルギーが低い2段階反応を介して超酸化物を触媒的に不均化する。このプロセスは、SOからOへの酸化及びそれと同時のPEG-HCCの還元によって起こる。第2段階では、PEG-HCCによって、SOがHに還元される。このプロセスは、PEG-HCCが電子の受容及び供与を行うことが比較的容易であるため起こる(6、16)。
【0117】
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、高価であることに加えて、毒性であるとみなされているため、出発材料として単層カーボンナノチューブへの依存をなくすことが、代替炭素源を推進する力となる。厳しい酸化によって、かなり小さい非管状のHCCになった後でも、毒性は見られなかった。前のサイクルの瀝青炭から、有効なCNPが開発されたが、原料物質のばらつきが臨床へのトランスレーションを複雑にする可能性がある。
【0118】
本願では、HCCと特性が似ているCNP及び異なるCNPを、優良製造規範(GMP)活性炭を用いて作製された材料から出発し、その粒子の酸化を調整して、抗酸化活性及びミトコンドリア活性の改善のために酸素含有部分の最適なバランスを達成することによって、合成する。ナノザイム候補は、SWCNTの懸念に応えるものである。
【0119】
しかしながら、GMPに基づいて調達された活性炭(AC)は、引き続き、酸化活性炭(OAC)を形成するための安全且つ安価な候補である。NSF/ANSI認証の加工された瀝青炭に由来する低灰含有量の活性炭は、活性化材料である活性化石炭の代替供給源として働き得る。
【0120】
HCC又はPEG-HCCアナログのようなOACは、(1)高度に共役した炭素コア、(2)酸素含有官能基のバランス、特に、好ましい電気化学的活性のための端部の1,2-キノン、及びPEG化などの容易な付加的付着のためのカルボン酸のバランス、(3)実施例3の粒子などのおよそ100nm以下のサイズ範囲から、図15及び16に示されているような2.8nmという平均直径に至るまでの生物学的に適合するサイズ、並びに(4)超酸化物を触媒的に不均化する能力(図2)を含む。HCCに存在しない好ましいOACのさらなる特性は、本明細書以後で論じられ、図6に示されているように、OACが安定に水分散性であることである。
【0121】
これまで、本発明者らは、瀝青炭由来グラフェン由来の量子ドット(GQD)及びOACから、有望なPEG-HCC代用品を開発してきた。本発明者らは、石炭由来のGQD(27、28)、並びに酸化及びPEG化による、抗酸化物質(17)及び神経保護薬(7)としてのPEG-GQDの生成に関するいくつかの論文を発表した。キノンは、HCCの酸化還元活性の中心として特定された(8)ので、キノン基と他の酸素含有官能基とのバランスを維持しなければならない。ACの酸化を、キノン及びカルボン酸に対して最適化することができる。最終的には、PEG-HCCの電気化学的特色を模倣した粒子を調製することが最も望ましい結果である。
【0122】
PEG化反応は、通常、米国特許第9,572,834号に記載及びBerlin et al.,ASC Nano 2010;4:4621-4636に詳細に記載されているように実施される。大まかには、5000MWのメトキシ-(ポリエチレングリコール)アミンを、OAC粒子のカルボキシ基に結合させて、ジメチルホルムアミド(DMF)中でN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、4-ジメチルアミノ-ピリジン(DMAP)を用いてアミドを形成した。同様の材料を、他のカップリング化学を用いて、及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムなどのような還元剤の存在下において当該粒子のケトン官能基を同じアミンと反応させることによって、調製する。
【0123】
酸化条件及び時間を変えながら、ACを90%HNOと約100~約140℃において1~24時間反応させることによって、PEG-OACを合成する(図3)。これらの粒子は、調製されたまま使用した。その反応は、フローリアクター装置において1時間以下の時間で起こると企図される。また、活性炭粒子は、より均一なサイズのOAC粒子を得るために反応前に激しく振盪することによって、平均して約20nmであるより均一なサイズにされることも企図される。
【0124】
各バッチは、品質管理に供され、サイクリックボルタンメトリー(CV)によって電気化学的活性、X線光電子分光法及びフーリエ変換赤外分光法(XPS及びFTIR)によって酸素含有官能基、熱重量分析(TGA)によってPEG化効率、高分解能透過型電子顕微鏡法(HRTEM)によってサイズ、原子間力顕微鏡法(AFM)によって粒子高さのプロファイル、動的光散乱(DLS)又はナノ粒子トラッキング解析(NTA)によって流体力学的体積、並びに誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって許容され得る微量金属レベルを測定するために特徴付ける。
【0125】
金属汚染(酸化グラフェン(GO)で以前に見られたようなもの(31、32))の懸念を軽減するために、すべての材料を、以前に説明した濾過方法(17)に供する。ICP-MSによる微量金属分析を、報告(32)のとおり行う。公表されているガイドラインに従うことにより、エンドトキシンを最小限に抑える(33)。MIRIBEL基準に従うことにより、生物学的妥当性と再現性の両方を確保する(34)。
【0126】
OACが、高度に共役した炭素コア、開始電位が高い広範な還元電位をもたらす酸素含有官能基、及び約1~約40nm又は約3~約30nmなどの100nm以下のサイズ(直径)範囲の適合サイズを有する場合、0.22μmフィルタを通過するそれらの粒子は、溶液中、細胞内及びインビボにおいて、抗酸化、過硫化物及び/又は多硫化物の生成増強並びに電子伝達シャトル特性の両方を示す。
【0127】
酸化カーボンナノ粒子(CNP)は、不均一であり得る。ばらつきを最小限に抑えるために、各合成を3つ組で行うことにより、上に列挙された目標因子の期待平均値及び標準偏差値を確立する。
【0128】
OACは、通常、円盤状であり、反応条件に応じて変化し得る約1~約30nmの直径を有する。円盤のように、粒子は丸くなり得る。しかしながら、すべての粒子が丸いわけではなく、むしろ扁平な長円形の形をしている。後者の粒子の最長寸法を、本明細書中ではそれらの粒子の直径とみなす。
【0129】
OACのより幅広い円盤様の形状は、より薄いリボン様のHCCに比べて細胞取り込みを妨げる可能性がある(2)ので、形状効果によって、当該ナノ物質が細胞膜を透過する能力が変化することがあり、さらなる調査が必要となる。しかしながら、PEG部分が、ナノ材料の疎水性共役炭素コアの周りにミセル様構造を形成するので、PEG化後は、起こり得る形状効果はそれほど重要でなくなり得る。直径は、細胞取り込み、及び一例としてミトコンドリアへの細胞内分布にも影響し得、理想的なサイズ及び形状は、標的化される病理に依存する。また、グラフェン量子ドット(GQD)も使用され得る。グラフェン量子ドットは、多彩な原料物質から調製されたが、調べたTBIモデルにおいて効果的である。
【0130】
用いた分析技術は、この目的のために参照により本明細書中に明確に援用される引用文献(16、35)に報告されているとおりである。報告(16)のとおりCVを収集する。XPSを使用し、炭素の1s電子軌道からのX線放出を用いて、炭素含有官能基の元素分析のための高分解能スペクトルを取得する。酸素含有官能基の解析のためにFTIRを取得する。粒子高さのプロファイルを計測するためにAFMを用い、横方向の形状測定のために、説明されているようにHRTEMを用いる(図4)(27)。
【0131】
CNPを、試験された各細胞株に対する毒性について評価し、細胞傷害性は、10%以上の細胞損失を伴わない10倍高い最低濃度に基づく。インビトロで毒性を示さない反復だけが、インビボに進む。
【0132】
実施例3-硝酸による活性炭の酸化の生物学的プロセスの独自性
本実施例は、可溶化ポリマーなどの置換基が付加されていない生物学的に活性な酸化カーボンナノ粒子生成物を提供する酸化カーボンナノ材料を生成するための新しい合成方法を実証する。他の手法を用いた合成では、酸化炭素材料の生物学的に活性でない調製物がもたらされたので、これらの材料は、活性酸素種をインビボで還元するため、又はこれらの状態に関連する疾患/病理を処置するための組成物において使用するのに有用でなくなった。
【0133】
本実施例において、使用された酸化炭素材料は、GMP活性炭(AC)であった。しかしながら、他の任意の炭素材料を用いても、同様の結果が期待できる。
【0134】
ACを、HNOを介して酸化して、酸化活性炭(OAC)を合成した。通常、酸化グラフェン様材料を用いた非生物学的炭化水素の研究に関する既存の文献では、非発煙硝酸(70%HNO)を用いて酸化が行われる。生物学的環境における本研究では、かなり高濃度、この場合、発煙(90%)硝酸が必要となる。本研究では、これが生物学的応用と非生物学的応用との重要な差異であることを示す。
【0135】
酸化剤の強さが、生成物の特色に影響するかを判定するために、ACを70%HNO又は90%HNOによる酸化に供した(図5)。得られたOAC生成物を、TGA、XPS及びCVによって解析して、材料間の差異を明確にした。
【0136】
酸化剤の強さを変化させて合成されたOACの特徴付け
70%HNOを用いて合成されたOACと90%HNOを用いて合成されたOACとの間の最も顕著な差異は、得られた酸化活性炭ナノ粒子材料の水分散性である(図6)。90%HNOで酸化されたAC生成物は、完全に水分散性であり、0.22μmPESフィルタを通過できるのに対して、70%HNOで酸化されたAC生成物は、水不溶性であり、そのフィルタを通過しない(図6)。この結果は、おそらく酸素含有量がより高くより小さな粒子をもたらすより厳しい酸化条件に起因する。
【0137】
TGAによる分析は、90%HNOで酸化されたOACが、活性炭母材及び70%HNOOACと比べて、190℃~210℃付近(酸素官能基が分解する温度範囲)でのより大きな重量減少に起因して、より効果的に酸化されたことを示した(図7)。XPS分析は、それら2つのOAC材料の酸素含有官能基の間に有意差を示さないが、90%HNOで酸化された生成物は、70%HNOで酸化された生成物のほぼ2倍のカルボニル含有量を有する(下記の表1)。
【0138】
カルボニル部分のうち、1,2-キノン基は、芳香族キノン型の部分が、ヒドロキシル又はカルボキシル官能基よりも高い開始電位で還元電位を示すので、最も興味深い。ゆえに、キノン基が存在することは、OAC材料の電気化学的活性にとって重要である。90%HNOOACは、より高いカルボニル原子パーセントを示すが、両方のOAC生成物の開始電位から還元電位までは、同等である(およそ+0.2V)(図8)。
【0139】
【表1】
【0140】
また、1,2-キノン基の存在により、酸化カーボンナノ粒子材料のエチレンジアミン誘導体を調製する手段も提供される。例示的なエチレンジアミンブロック化PEG-HCC[EN-PEG-HCC]又は非ペグ化OACは、下記に模式的に示されるように調製され得る。
【0141】
【化1】
【0142】
例証的な合成では、PEG-HCCの水溶液(5.0mL,1.2mg/mL,6mg)をエチレンジアミン(5.0mL,4.5g,75mmol)に加えた。ロトバップによって水を除去して、エチレンジアミン中にPEG-HCCを沈殿させた。モレキュラーシーブとともにMeOH(6mL)を加えることにより、PEG-HCCを分散させた。
【0143】
上記反応物を室温で5日間撹拌した後、DI HOで希釈し、0.22μmのポリエーテルスルホン(PES)膜で濾過した。上記材料を、50kDa mPES透析カラム(約1atmの膜間圧)を用いたクロスフロー濾過(Spectrum(登録商標)Labs Krosflo(登録商標),Research IIi TFF System)によって精製することにより、400mg/Lという炭素コア濃度を有する15mLのEN-PEG-HCCを得た。
【0144】
実施例4-硫化物の酸化
本実施例は、細胞が種々の傷害状態を処置することが内因的に可能であるのを超える様式での多硫化物の細胞内合成におけるカーボンナノ材料の利用を例証し、その処置のための治療用途を証明し得る。それらの傷害状態としては、炎症、敗血症、脳卒中、及びフリーラジカルの生成が複数の原因として関与する他の疾患が挙げられるがこれらに限定されない。
【0145】
多硫化物は、部分的にスーパーオキシドジスムターゼによって抗酸化物質として内因的に生成され(84)、低酸素下で形成される(83)。これらの活性硫黄種(RSS)は、インビトロと、ゴムなどの材料中との両方において、フリーラジカルをクエンチすることができる(81、84)。多硫化物の触媒的形成は、スーパーオキシドジスムターゼ及びカタラーゼを用いて示されている(87、91)が、本発明者らの知る限り、外因的に供給された触媒を用いて示されたことはない。
【0146】
本炭素系ナノザイム(PEG-HCC、PEG-OAC)は、チオールを容易に酸化することが見出されており(図9A、9B)、過硫化及びHSに対する潜在的な活性が示唆されている。上述のナノザイムは、硫化ナトリウムをHS供与体とする無細胞環境において、多硫化物の形成速度を劇的に上昇させる(図10A及びB)。同様に、いくつかの調製物では、細胞内の多硫化物形成速度が大幅に向上することも示されている(図11A及びB)。多硫化物生成の何倍もの増加は、粒子の調製法に依存する。図11Aに示されている例では、エチレンジアミンで処理されたPEG-HCC[EN-PEG-HCC]が、図11BのPEG-HCCと比べて最も効果的であることが証明された。
【0147】
【数1】
【0148】
考えられる作用機序を、上記の式1~3に示す。電子がHSアニオンからOAC粒子へ移動できる(E=+0.46V)ので、HSS/HS及びOAC・/OAC-半電池の還元電位が好ましい。この反応の正確な機序は、現在のところ不明である。得られた生成物である、SSP4の研究によって示された多硫化物(図10A)は、HSSであると推定される。
【0149】
Kleinjan et al.,Water Res 2005;39(17):4093-4100で述べられているように、正常酸素条件下において多硫化物は、酸素に攻撃されてS 2-を形成することができるか、
【0150】
【数2】
【0151】
又はVivitsky et al.,J Biol Chem.2015;290(13):8310-8320で論じられているように、ヘモグロビン(Hb)などのヘムタンパク質によって酸化され得る。
【0152】
【数3】
【0153】
正常酸素条件下において、PEG-HCCとEN-PEG-HCCの両方が、多硫化物の形成を触媒すると示された(図11A及び図11B)。しかしながら、低酸素条件下において、EN-PEG-HCCとPEG-HCCの両方が、多硫化物の収量をかなり速く増加させたことから、酸素欠乏が関与する急性状態ではそれらが有用となる(図11A及び図11B)。
【0154】
さらに、これらのナノ粒子が、抗酸化物質として機能することも見出された。詳細には、HS供与体分子を直接粒子に付着させることにより、HS供給源としてのそれらの粒子の抗酸化特性及び過硫化特性がさらに増強され得る。
【0155】
本実施例は、ユニークなR基を有する修飾体の作製において硫化水素供与体の骨格構造として使用できる、及びその後、その修飾された生物学的に活性な化合物をリンカー分子又はナノ粒子にコンジュゲートするのを容易にするために使用できる、種々の公知の生物学的に活性な化合物の範囲を例証する。例証的な骨格群を下記に図示する。
【0156】
炭素系材料による硫化物酸化の現行の方法は、Powell et al.,Biochem.Pharmacol(2018),110-123に記載されている研究において実証されている。詳細には、HS供与体は、HSの放出機構によって分類される。チオールによってトリガーされるHS供与体は、チオールと反応し、多種多様なたくさんの反応性部分を有し、N-ベンゾイルチオールベンズアミド、アシルペルチオール、多硫化物、ジチオペルオキシ無水物及びS-アロイルチオキサミンが、このカテゴリーに含まれる。また、ジェミナル-ジチオール及びトリメチルロックプロドラッグという、酵素によってトリガーされる2つの構造モチーフが存在する。
【0157】
【化2】
【0158】
これらの骨格のすべてが、リンカー分子又はナノ粒子とのコンジュゲーションを容易にし得るユニークなR基で修飾され得る。重要なことには、高PEG化にもかかわらず、ジチオトレイトール(図9A及び12)及びグルタチオン(図9B)などの小分子が、これらの粒子表面に到達でき、これは、チオリシス性HS供与体の使用に必要な特性である。
【0159】
文献目録
以下の刊行物は、その全体が参照により本明細書中に明確に援用される。本願における任意の文書の引用又は特定は、そのような文書が本発明の先行技術として利用可能であることを自認するものではない。
【0160】
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【国際調査報告】