(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】エンテロウイルスに対する広域スペクトル抗ウイルス薬及びその応用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/04 20060101AFI20230810BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20230810BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230810BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
A61K38/04
C07K7/08 ZNA
A61K38/16
A61P31/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504474
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 CN2021081723
(87)【国際公開番号】W WO2022021902
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】202010735992.8
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520266513
【氏名又は名称】中国科学院武漢病毒研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周 渓
(72)【発明者】
【氏名】方 媛
(72)【発明者】
【氏名】邱 洋
(72)【発明者】
【氏名】呉 迪
(72)【発明者】
【氏名】黄 ムハン
(72)【発明者】
【氏名】舒 テン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA09
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA59
4C084DC32
4C084NA14
4C084ZB331
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045DA55
4H045EA29
(57)【要約】
本発明で提供されるポリペプチド阻害剤の核心配列の1つは配列番号1に示され、膜透過ペプチドを含むポリペプチドの配列は配列番号2に示される。本発明で提供されるポリペプチドは、エンテロウイルス2Cタンパク質の多量体化を標的とし、エンテロウイルス2Cタンパク質を標的とする他の阻害剤と比較して、阻害効率が高く、安全性が良く、エンテロウイルスの予防と制御のための新しい戦略を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の配列を有する広域スペクトル抗エンテロウイルスのポリペプチド阻害剤。
(X1)E(X2)(X3)(X4)R(X5)(X6)(X7)(X8)(X9)(X10)(X11)EALFQで示される配列I、
(ただし、X1は、アルギニン(R)、アスパラギン(N)及びリジン(K)からなる群から選択され、
X2は、チロシン(Y)及びアルギニン(R)からなる群から選択され、
X3は、セリン(S)、アスパラギン(N)及びアルギニン(R)からなる群から選択され、
X4は、アスパラギン(N)、アルギニン(R)、スレオニン(T)及びヒスチジン(H)からなる群から選択され、
X5は、セリン(S)、アスパラギン(N)及びヒスチジン(H)からなる群から選択され、
X6は、アラニン(A)、アスパラギン(N)及びセリン(S)からなる群から選択され、
X7は、イソロイシン(I)、スレオニン(T)及びバリン(V)からなる群から選択され、
X8は、グリシン(G)及びグルタミン(Q)からなる群から選択され、
X9は、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)及びアラニン(A)からなる群から選択され、
X10は、スレオニン(T)、システイン(C)及びリジン(K)からなる群から選択され、
X11は、イソロイシン(I)及びロイシン(L)からなる群から選択される)或いは
配列Iに少なくとも1つのアミノ酸が欠失、付加又は置換された配列である配列II、或いは
配列I又は配列IIに記載されたアミノ酸配列と少なくとも50%相同性を有し、かつエンテロウイルス活性を阻害する配列である配列III、或いは
配列I又は配列II又は配列IIIの相補的配列である配列IV。
【請求項2】
配列番号1又は配列番号24に示される配列を有するか、或いはそれらのD立体配置のポリペプチドである、広域スペクトル抗エンテロウイルスのポリペプチド。
【請求項3】
配列番号1又は配列番号24に示される配列を含む、エンテロウイルスを阻害するポリペプチド。
【請求項4】
前記配列が配列番号2又は配列番号20に示される、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号21に示される配列のポリペプチドのN末端に1~5個のアミノ酸を付加したもの、或いは
配列番号21に示される配列のポリペプチドのN末端に1~13個のアミノ酸を削減するか又はC末端に修飾したもの、或いは
上記のいずれかのポリペプチドのD立体配置である、広域スペクトル抗エンテロウイルスのポリペプチド。
【請求項6】
膜透過ペプチドをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
配列番号3~20のいずれか1項に示される配列を有することを特徴とする、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
エンテロウイルス阻害剤の調製における、請求項1~3、5~7のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項9】
エンテロウイルス感染を治療又は予防するための医薬品の調製における、請求項1~3、5~7のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項10】
前記エンテロウイルスには、ヒトエンテロウイルス(Enterovirus、EV)、コクサッキーウイルスA群(Coxsackie A virus、CVA)、コクサッキーウイルスB群(Coxsackie B virus、CVB)、エコーウイルス(Echovirus)、ライノウイルス(Rhinovirus)、ポリオウイルス(Poliovirus)などが含まれるが、これらに限定されない、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
前記のエンテロウイルス感染による疾患には、手足口病、心筋炎、ヘルペス性アンギナ、無菌性髄膜炎、脳炎、ウイルス性風邪などが含まれる、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
ウイルス疾患を予防及び/又は治療するための医薬品の調製における、エンテロウイルス2Cタンパク質の多量体化を標的として阻害する製剤の、使用。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
この出願は、2020年07月28日に中国特許庁に出願され、出願番号202010735992.8、発明の名称「エンテロウイルス2Cタンパク質を標的とする広域スペクトル抗エンテロウイルスのポリペプチド阻害剤及びその応用」である中国特許出願の優先権を主張し、その全内容が援用により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、生物医学の技術分野に関し、より具体的には、エンテロウイルスに対する広域スペクトル抗ウイルス薬及びその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
エンテロウイルス(Enterovirus)は、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)のエンテロウイルス属に属するプラスセンスの一本鎖RNAウイルスであり、主にヒトエンテロウイルス(Enterovirus、EV)、コクサッキーウイルスA群(Coxsackie A virus、CVA)、コクサッキーウイルスB群(Coxsackie B virus、CVB)、エコーウイルス(Echovirus)、ライノウイルス(Rhinovirus)、ポリオウイルス(Poliovirus)などを包含する。エンテロウイルス感染は世界中に広く分布しており、臨床症状として軽度の微熱、疲労、気道疾患から、ヘルペス性アンギナ、手足口病、及び重度の無菌性髄膜炎、心筋炎、脳炎、ポリオ灰白髄炎などに至るまで、複雑で多様である。現在、エンテロウイルス感染を効果的に治療又は防御するための対症療法薬は不足している。
【0004】
ヘルペス性アンギナは、主にコクサッキーウイルスA群2型(CVA2)、CVA4、CVA6、CVA9、CVA16、CVA22型、及びB群1型(CVB1)、CVB2、CVB3、CVB4、CVB5型により引き起こされる。ヘルペス性アンギナには、しばしば急激に発熱し、熱が低度又は中等度である場合が多いが、たまに40℃以上に達し、痙攣を起こすことさえある。発熱期間は約2~4日である。年長の患児には、のどの痛みを訴えることがあり、嚥下を影響する可能性がある。乳幼児には、よだれ、拒食、イライラが現れることがある。頭痛、腹痛又は筋肉痛を伴うことがあり、5歳以下の小児の約25%に嘔吐が伴うことがある。典型的な症状は、咽頭に現れ、咽頭の充血として現れ、発症後2日以内に口腔粘膜に数個(少なければ1~2個、多くければ10個以上に達する)の小さな(直径1~2mm)灰白色のヘルペスが出現、周囲が赤くなる。2~3日後、紅潮が強まり拡大し、ヘルペスが破裂して黄色の潰瘍を形成する。この種の粘膜発疹は、扁桃腺の前柱でより一般的であり、軟口蓋、口蓋垂、扁桃腺にも位置する可能性があるが、歯茎や頬粘膜に影響を及ぼさない。病気の経過は通常4~6日で、場合によっては2週間に延長される。
【0005】
手足口病は、主にエンテロウイルス71型(EV71)、CVA6、CVA8、CVA10、CVA16、CVB3及びCVB5により引き起こされる。手足口病の一般的な臨床症状は、急性の発熱、口の痛み、食欲不振、口腔粘膜の散在性ヘルペス又は潰瘍であり、舌、頬粘膜及び硬い額などに位置する場合が多く、軟口蓋、歯肉、扁桃腺及び咽頭にも影響を及ぼす可能性がある。手、足、臀部、腕、脚に斑状丘疹が現れ、後にヘルペスに変わり、ヘルペスの周囲に炎症性紅潮が見られる場合があり、ヘルペス内の液体は少ない。手足部に多く、手のひらの裏にもある。皮膚発疹の数は、数個から数十個までである。消失後に痕跡を残さず、色素沈着がない。一部の手足口病の患児には、最初の症状としてヘルペス性アンギナが現れ、その後、手のひら、足の裏、臀部などの部位に赤い皮膚発疹が現れることがある。病気の経過が急速に進むと、少数の患児には手足口病から重度の無菌性髄膜炎、脳炎などを発症することがある。発熱、頭痛、吐き気、嘔吐後の脳膜刺激症状として現れ、体温の変動が大きく、多数の症例には微熱であるが、40℃以上になることもあり、病気の経過で二峰性の発熱型がしばしば見られる。その他の症状として、のどの痛み、筋肉痛、皮膚発疹、羞明、下痢、リンパ節の腫れなどがあり、少数の症例には軽度の麻痺などが現れることがある。
【0006】
心筋炎は、主にCVB1-61及びEchovirusにより引き起こされる。ウイルス性心筋炎は、患者の臨床症状が病変の範囲と部位に依存し、軽症の場合は無症状で、重症の場合は心不全、心原性ショック及び突然死が現れることがある。多くの場合、発症の1~3週間前に上気道や腸の感染症の既往歴があり、発熱、体の痛み、のどの痛み、倦怠感、吐き気、嘔吐、下痢などの症状として発症し、その後、動悸、胸の圧迫感、胸の痛み又は前胸部の痛み、めまい、呼吸困難、浮腫が現れ、なお、アダムス・ストークス症候群などの症状が現れる恐れもある。少数の患者には心不全又は心原性ショックを発症する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エンテロウイルスは、プラスセンスの一本鎖RNAウイルスで、ゲノムサイズが約7.5kbで、ポリタンパク質をコードできる大きなORFを含む。ポリタンパク質は、4つの構造タンパク質(VP1-VP4)と7つの非構造タンパク質(2A-2C及び3A-3D)に加水分解される。2Cタンパク質は、エンテロウイルス(EV71、CVA、CVB及びEchovirusなどを含む)で保存性の高い非構造タンパク質であり、相同性多量体の形で存在する。エンテロウイルス2Cタンパク質はRNAヘリカーゼ活性を持ち、古典的なスーパーファミリー3(SF3)ヘリカーゼである。EV71とPVに関する多数の研究により、2Cのヘリカーゼ活性がウイルスの複製と増殖に必要であり、2Cタンパク質の多量体化がそのヘリカーゼ機能に不可欠であることが証明されている。そこで、本発明では、2Cの多量体化領域に対してポリペプチド薬物を設計し、その多量体化形成を阻害してヘリカーゼの機能を阻害し、最終的にウイルス複製を阻害するという目的を達成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明で提供されるポリペプチドは、高効率、広域スペクトルの抗ウイルス活性を有する。本発明によれば、EV71、CVA16、CVA4、CVA6、CVA10、CVB3、CVB5、Echo11などのエンテロウイルスの予防と制御のための新しい戦略を提供すると同時に、抗ヒトエンテロウイルスポリペプチド小分子薬の開発を加速するための新しい理論的基礎も提供する。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ウイルス疾患を予防及び/又は治療するための医薬品の調製における、エンテロウイルス2Cタンパク質の多量体化を標的として阻害する製剤の応用を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、広域スペクトル抗エンテロウイルスのポリペプチド阻害剤を提供することを別の目的とする。前記阻害剤の核心配列は配列番号21に示され、具体的には、配列番号1又は配列番号24に示されることがあり、また、それに膜透過ペプチドを付加した配列はそれぞれ配列番号2、配列番号20に示される。
【0011】
本発明は、エンテロウイルス阻害剤の調製における上記ポリペプチド阻害剤の使用を提供することを他の目的とする。
【0012】
上記発明の目的を達成するために、本発明は以下の技術案を提供する。
【0013】
下記の配列を有する広域スペクトル抗エンテロウイルスのポリペプチド阻害剤:
(X1)E(X2)(X3)(X4)R(X5)(X6)(X7)(X8)(X9)(X10)(X11)EALFQで示される配列I
(ただし、X1は、アルギニン(R)、アスパラギン(N)及びリジン(K)からなる群から選択され、
X2はチロシン(Y)およびアルギニン(R)からなる群から選択され、
X3は、セリン(S)、アスパラギン(N)及びアルギニン(R)からなる群から選択され、
X4は、アスパラギン(N)、アルギニン(R)、スレオニン(T)及びヒスチジン(H)からなる群から選択され、
X5は、セリン(S)、アスパラギン(N)及びヒスチジン(H)からなる群から選択され、
X6は、アラニン(A)、アスパラギン(N)及びセリン(S)からなる群から選択され、
X7は、イソロイシン(I)、スレオニン(T)及びバリン(V)からなる群から選択され、
X8はグリシン(G)及びグルタミン(Q)からなる群から選択され、
X9は、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)及びアラニン(A)からなる群から選択され、
X10は、スレオニン(T)、システイン(C)及びリジン(K)からなる群から選択され、
X11はイソロイシン(I)及びロイシン(L)からなる群から選択される)、或いは
配列番号21に示される配列、或いは
配列Iに少なくとも1つのアミノ酸が欠失、付加又は置換された配列である配列II、或いは 配列I又は配列IIに記載されたアミノ酸配列と少なくとも50%相同性を有し、かつエンテロウイルス活性を阻害する配列である配列III、或いは
配列I又は配列II又は配列IIIに記載された配列の相補的配列であるIV。
【0014】
本発明に記載された「アミノ酸」には、天然アミノ酸又は非天然アミノ酸が含まれる。当業者に知られているアミノ酸の種類はすべて本発明の保護範囲内である。
【0015】
上記の配列は、REYN(X4)R(X5)(X6)(X7)(X8)(X9)(X10)(X11)EALFQで示される配列、配列番号22に示される配列であることが好ましい。前記配列はREYN(X4)R(X5)(X6)(X7)G(X9)T(X11)EALFQで示される配列、配列番号23に示される配列であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明の具体的な実施形態では、配列は配列番号1又は配列番号24に示され、また、両者とも膜透過ペプチドを付加することができ、配列番号1に示される配列に膜透過ペプチドを付加した配列は配列番号2に示され、配列番号24に示される配列に膜透過ペプチドを付加した配列は配列番号20に示される。
【0017】
また、本発明の保護内容には、配列番号1又は配列番号24に示される配列を含有するエンテロウイルスを阻害するポリペプチド配列が含まれ、また、ポリペプチドRQ(配列番号2)又はB-RQ(配列番号20)に示されるように、異なる膜透過配列を置換したり、ポリペプチド修飾を行ったり、非天然アミノ酸の設計及び改造を行ったりした後にエンテロウイルス活性を阻害する阻害剤も含まれる。
【0018】
本発明においては、配列番号21~23のいずれかに示される配列のポリペプチドは、本発明の核心ポリペプチドであり、そのN末端にアミノ酸を付加又は欠失したポリペプチド、又はそのC末端に修飾したポリペプチド、又はこれらのポリペプチドのD立体配置は、エンテロウイルスの阻害剤の調製において、又はエンテロウイルス感染を治療又は予防するための医薬品の調製において応用することができる。
【0019】
好ましくは、核心ポリペプチドに対する上記の修飾改造は以下の通りである:
そのN末端に1~5個のアミノ酸を付加したもの、1~13個のアミノ酸を欠失したもの、C末端に修飾したもの、又はこれらのポリペプチドのD立体配置は、いずれも核心ポリペプチドと同じ阻害活性を有する。具体的には、アミノ酸を付加するには、そのN末端にS、E、L、Iなどのアミノ酸を付加させることがあり、例えばLIジペプチドやSELIテトラペプチドを付加する。アミノ酸を欠失するには、そのN末端に1~13個のアミノ酸(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個又は13個)を順次欠失させることができる。C末端に修飾するには、C末端にアミノ酸A(βA)、K、並びにPEG4(テトラポリエチレングリコール)、C16(パルミチン酸)及びChol(コレステロール)などを修飾することができる。本発明における具体的な修飾タイプとしては、まずC末端にAKジペプチドを修飾し、次にPEG4、C16及びCholなどを付加、欠失(PEG4、C16及びCholの間にA/Kを付加してもよい)することが普通であり、例えばAK-C16、AK-PEG4-K-C16、AK-Cholである。本発明の具体的な実施形態では、本発明は、配列番号1に示される配列を例として上記の修飾や改造を行ってなされたものであるが、同様に、配列番号24に示される配列に基づいて行うこともできる。
【0020】
本発明に係る阻害剤としては、これらの阻害活性を有するポリペプチドに基づいて膜透過ペプチドを付加すればなされる。膜透過ペプチドを構築する方法としては、例えば、膜透過ペプチド+リンカーペプチド+本発明で提供される活性ポリペプチドのような、膜透過ペプチドと本発明における阻害活性を有するポリペプチドをリンカーペプチドを介して連結する従来の手段である。なお、C末端に修飾されたものは、膜透過ペプチドを付加しなくてもよい。
【0021】
なお、当該分野における従来の手段で得られる上記の配列も、本発明に含まれる。前記の従来の手段には、人工合成、原核又は真核で上記タンパク質を含有する組換えタンパク質を発現することが含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
広域スペクトル抗エンテロウイルスのポリペプチド阻害剤の使用には、配列番号1に示される配列を含むポリペプチド、又は上述したそのN末端にアミノ酸を付加又は欠失したポリペプチド、又はそのC末端に修飾したポリペプチド、又はこれらのポリペプチドのD立体配置を利用し、エンテロウイルスの阻害剤として調製するための使用、又はエンテロウイルス感染を治療又は予防するための薬剤として調製するための使用が含まれる。
【0023】
好ましくは、上記の使用における前記エンテロウイルスには、ヒトエンテロウイルス(Enterovirus、EV)、コクサッキーウイルスA群(Coxsackie A virus、CVA)、コクサッキーウイルスB群(Coxsackie B virus、CVB)、エコーウイルス(Echovirus)、ライノウイルス(Rhinovirus)、ポリオウイルス(Poliovirus)などを含むピコルナウイルス科(Picornaviridae)エンテロウイルス属が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
上記の使用におけるエンテロウイルス感染による疾患には、手足口病、心筋炎、ヘルペス性アンギナ、無菌性髄膜炎、脳炎、ウイルス性風邪などが含まれる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、従来技術と比較して、以下の利点を有する:
【0026】
本発明に係るポリペプチド及びその誘導体は、エンテロウイルス2Cの多量体化を阻害することによりそのヘリカーゼ機能を阻害することができ、新しいタイプのエンテロウイルス治療薬であり、新しい標的を対するものであり、抗ウイルス薬耐性などに重要な意義を有する。
【0027】
本発明により選別されたRQポリペプチドは、高効率の抗ウイルス活性を有する。これは、エンテロウイルスの予防と制御のための新しい戦略を提供すると同時に、抗ヒトエンテロウイルスポリペプチド小分子薬の開発を加速するための新しい理論的基礎も提供する。また、RQシリーズのポリペプチドは、明確な抗ウイルスメカニズムを有するので、その応用の安全性と最適化アプローチの明確性が保証され、今後のさらなる開発に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、ポリペプチドSQ、LQ及びRQの細胞毒性測定の結果を示す。
【
図2】
図2は、ポリペプチドRQがRD、Vero、huh7、293T細胞においてEV71を阻害する効率の測定結果を示す。
【
図3】
図3は、ポリペプチドLQ、SQがVero細胞においてEV71を阻害する効率の測定結果を示す。
【
図4】
図4は、ポリペプチドRQがRD細胞においてCVA16を阻害する効率の測定結果を示す。
【
図5】
図5は、ポリペプチドRQがEV71の2Cヘリカーゼ活性を阻害する結果を示す。
【
図6】
図6は、ポリペプチドRQがEV71及びCVA16の2Cヘリカーゼ活性を阻害する結果を示す。
【
図7】
図7は、ポリペプチドRQがEV71の2Cタンパク質の多量体化を阻害する結果を示す。
【
図8】
図8は、ポリペプチドRQの膜透過効率の検出結果を示す。
【
図9】
図9は、様々な細胞におけるポリペプチドRQの毒性の測定結果を示す。
【
図10】
図10は、ポリペプチドRQがRD細胞においてCVB3を阻害する効率の測定結果を示す。
【
図11】
図11は、ポリペプチドRQがRD細胞においてEcho 11を阻害する効率の測定結果を示す。
【
図12】
図12は、ポリペプチドRQがマウス体内においてEV71に対して示した抗ウイルス活性の検出結果を示す。
【
図13】
図13は、ポリペプチドRQの改造体の抗ウイルス活性の検出結果を示す。
【
図14】
図14は、ポリペプチドRQの修飾体の抗ウイルス活性の検出結果を示す。
【
図15】
図15は、ポリペプチドRQ-DRIがRD細胞においてEV71を阻害する効率の測定結果を示す。
【
図16】
図16は、RD細胞でのポリペプチドB-RQの毒性の検出結果を示す。
【
図17】
図17は、ポリペプチドB-RQがRD細胞においてCVB3及びEcho 11を阻害する効率の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、エンテロウイルスに対する広域スペクトル抗ウイルス薬及びその応用(エンテロウイルス2Cタンパク質を標的とする広域スペクトル抗エンテロウイルスのポリペプチド阻害剤及びその応用)を開示し、当業者なら、本明細書の内容を参照して、プロセスパラメータを適切に改善して実現することができる。なお、すべての同様の置換や修正は当業者にとって明らかであり、本発明に含まれると見なされることに留意する必要がある。本発明に係るポリペプチド阻害剤、抗ウイルス薬及び応用は、好ましい実施形態を通じて説明したが、本発明の技術を実現して応用するためには、本発明の内容、精神及び範囲を逸脱することなく、本明細書に記載されたポリペプチド阻害剤、抗ウイルス薬及び応用に対して修正又は適切な変更及び組み合わせを行う可能性があることは当業者なら自明である。
【0030】
本発明では、EV71ウイルスを例として、それに対する本発明で提供されるポリペプチドの阻害効果を検証する。本発明に係る阻害剤は、特別に、エンテロウイルス2Cタンパク質を標的として設計されたものであり、エンテロウイルス2Cタンパク質を有するウイルスである限り、有効である。前記ウイルスの例としては、コクサッキーウイルスA群(Coxsackie A virus、CVA)、コクサッキーウイルスB群(Coxsackie B virus、CVB)、エコーウイルス(Echovirus)、ライノウイルス(Rhinovirus)、ポリオウイルス(Poliovirus)が挙げられる。スペースの都合で割愛する。
【0031】
本発明における、エンテロウイルス2Cタンパク質に対して設計された阻害タンパク質の配列の1つは、核心配列として配列番号1に示されるREYNNRSAIGNTIEALFQであり、また、それを生体内で機能させるためには、該核心タンパク質に膜透過ペプチドを連結する。このように得られた膜透過ペプチドが連結されたポリペプチドは、配列番号2に示されるYGRKKRRQRRRGSGREYNNRSAIGNTIEALFQであり、ポリペプチドRQと命名した。
【0032】
また、本出願人は、エンテロウイルス2Cタンパク質に対して膜透過ペプチドを含む、下記の配列を有する他の2つの阻害ポリペプチドを設計した。
【0033】
ポリペプチドLQと命名した配列番号3:YGRKKRRQRRRGSGLIREYNNRSAIGNTIEALFQ
【0034】
ポリペプチドSQと命名した配列番号4:YGRKKRRQRRRGSGSELIREYNNRSAIGNTIEALFQ
【0035】
EV71の2Cタンパク質は多量体化の能力があり、その多量体化は2Cがヘリカーゼ機能を正しく発揮することに重要な役割を果たす。本出願人は、2C多量体化ドメインの構造組成と配列特性に基づいて、2Cタンパク質の多量体化に必要な核心配列の1つであるREYNNRSAIGNTIEALFQ(配列番号1)に対して、一連のポリペプチド配列を設計した。本出願人は、スクリーニングにより、ポリペプチドRQがより高いウイルス阻害能を有することを見出した。試験により、RQが効率的に細胞に侵入することができ、そしてインビトロで2Cタンパク質の正しい多量体化を阻害し、2Cタンパク質のヘリカーゼ機能を阻害することができることが確認された。また、本出願人は、RQに基づいてその構造を改造し、一連の改造体を構築し、そしてこれらの改造体もより良い抗ウイルス能力を有することを見出した。
本発明に関するポリペプチドを表1に示す。
【0036】
【0037】
本発明においては、ポリペプチド配列におけるYGRKKRRQRRR(TAT)は膜透過ペプチドであり、GSGはリンカーペプチドであり、各ポリペプチドのアミノ酸配列から前記膜透過ペプチドとリンカーペプチドを除いた配列は核心ポリペプチド配列又はその部分配列である。配列番号3及び4に示される配列ポリペプチドは、膜透過ペプチド+リンカーペプチド+配列番号1に示される配列の核心ポリペプチドのN末端にLI及びSELIを付加したポリペプチドである。配列番号5~15に示される配列ポリペプチドは、膜透過ペプチド+リンカーペプチド+配列番号1に示される配列の核心ポリペプチドのN末端に1~12個のアミノ酸を順次に削減したポリペプチドである。配列番号16~18に示される配列ポリペプチドは、配列番号1に示される配列の核心ポリペプチドのC末端にアミノ酸A(βA)、K、及びPEG4(テトラポリエチレングリコール)、C16(パルミチン酸)及びChol(コレステロール)を修飾したポリペプチドである。配列番号19に示される配列ポリペプチドは、配列番号1に示される配列の核心ポリペプチドのD立体配置である。配列番号20に示される配列ポリペプチドは、膜透過ペプチド+リンカーペプチド+配列番号24に示される配列の核心ポリペプチドである。
【実施例】
【0038】
本発明の各実施例におけるポリペプチドには、陰性対照を設置して、本発明で提供されるポリペプチドの核心配列が相対的抗ウイルス効果を有することを証明する。
【0039】
本発明で提供されるポリペプチド及びその応用に使用される原料及び試薬は、いずれも市販されている。
【0040】
以下、実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。
実施例1:Vero細胞におけるポリペプチドRQ、LQ及びSQの毒性
【0041】
1.実験材料
Vero E6細胞、DMEM培地(Thermo)、血清(Gibco)はInvitrogen Co.,Ltd.から購入した。CCK-8試薬(MCE)はプロモーター社から購入した。
【0042】
ポリペプチドSQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号4に示され、ポリペプチドLQは南京ジェンスクリプト公司(Gen Script (Nanjing) Co.,Ltd.)により合成され、その配列が配列番号3に示される。ポリペプチドRQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号2に示される。
【0043】
2.実験過程
抗ウイルスの過程で、ポリペプチドはウイルスを阻害するだけでなく、細胞に対して毒性を示さないことを保証する必要がある。そのため、細胞毒性試験によりこの指標を検出し、何も処理されていない細胞を対照群とした。
【0044】
手順は次の通りである:
(1)96ウェル細胞プレートにVero細胞を1ウェルあたり100μlずつ敷いた。
【0045】
(2)70%~80%のコンフルエンスまで増殖したら、10%血清を含むDMEM培地を2%血清を含むDMEM培地に交換し、ウェル中の最終のポリペプチド濃度がそれぞれ0.073242μM、0.146484μM、0.292969μM、0.585938μM、1.171875μM、2.34375μM、4.6875μM、9.375μM、18.75μM、37.5μM、75μM、150μMとなるように、一定濃度勾配のポリペプチドRQ又はLQ又はSQを加えた。
【0046】
(3)ポリペプチドを加えてから24時間後にサンプルを採取し、各ウェルに生細胞検出剤CCK-8を10μlずつ加え、均一に混合した。
【0047】
(4)37℃で2時間放置した。
【0048】
(5)マイクロプレートリーダーでOD450の吸光度値を検出した。
【0049】
結果を
図1、表2~4に示す。未処理細胞の細胞生存率を100%として、各ポリペプチドのCC50を算出した。RQのCC
50は>150μM(
図1A)、LQのCC
50は>150μM(
図1B)、SQのCC
50は134.3μM(
図1C)であった。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
実施例2:ポリペプチドRQがRD、Vero、huh7、293T細胞においてEV71を阻害する効率の測定
【0054】
1.実験材料
RD細胞、Vero E6細胞、huh7細胞、293T細胞、DMEM培地(Thermo)、血清(Gibco)はInvitrogen Co.,Ltd.から購入した。トータルRNA抽出キット(Omega)、One step qRT-PCRキット(Takara)はWuHan U-Me Biotech.Ltd.,Co.から購入した。RNA及びqRT-PCRを抽出する過程で使用された水はDEPC水である。実験全体はRNaseなしの環境で行われた。
【0055】
ポリペプチドRQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号2に示される。膜透過ペプチドYGRKKRRQRRR(TAT)は対照として南京ジェンスクリプト株式会社により合成された。
【0056】
2.実験過程
(1)24ウェルプレートにそれぞれ異なる細胞を敷いた。
【0057】
(2)70%~80%のコンフルエンスまで増殖したら、10%血清を含むDMEM培地を2%血清を含むDMEM培地(各ウェルの2%血清のDMEM培地の添加量を0.5mlとした。)に交換し、各ウェルに1×106PFU/mLのEV71ウイルスを5μl加えた。
【0058】
(3)1時間後、最終濃度0.3125μM、0.625μM、1.25μM、2.5μM、5μMの異なるポリペプチド(RQ又はTAT対照)をそれぞれ加え、ポリペプチド無添加群を対照とした。
【0059】
(4)EV71ウイルス感染24時間後にサンプルを採取し、トータルRNA抽出キットでRNAを抽出した。
【0060】
(5)上清を捨て、ウェルに350μlのTRK分解液を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0061】
(6)さらに、ウェルに350μlの70%エタノール(DEPC)を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0062】
(7)ウェル中の溶液を取り出してRNA抽出カラムに移し、12000gで1分間遠心した。
【0063】
(8)チューブから回収した溶液をカラムに再度供して、12000gで1分間遠心した。
【0064】
(9)RNA洗浄緩衝液1を加え、12000gで30秒間遠心した。
【0065】
(10)RNA洗浄緩衝液2を加え、12000gで1分間遠心した。
【0066】
(11)工程(10)を繰り返した。
【0067】
(12)空カラムを12000gで2分間遠心し、残留のRNA洗浄緩衝液を完全に除去した。
【0068】
(13)50μlのDEPC水を加え、12000gで2分間遠心した。
【0069】
(14)2μlのRNAサンプルを採取し、one step qRT-PCRキットで蛍光定量実験を行った。
【0070】
結果を
図2、表5~9に示す。異なる細胞におけるポリペプチドRQの抗EV71効果試験の結果は以下の通りであった。RD細胞におけるIC
50が1.35μM(
図2A)、Vero細胞におけるIC
50が0.66μM(
図2B)、huh7細胞におけるIC
50が0.41μM(
図2C)、293T細胞におけるIC
50が3μM(
図2D)であり、膜透過ペプチドTAT対照はVero細胞において抗EV71効果が見られなかった(
図2E)。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
実施例3:ポリペプチドLQ、SQがVero細胞においてEV71を阻害する効率の測定
【0077】
1.実験材料
Vero E6細胞、DMEM培地(Thermo)、血清(Gibco)はInvitrogen Co.,Ltd.から購入した。トータルRNA抽出キット(Omega)、One step qRT-PCRキット(Takara)はWuHan U-Me Biotech.Ltd.,Co.から購入した。RNA及びqRT-PCRを抽出する過程で使用された水がDEPC水であった。実験全体はRNaseなしの環境で行われた。
【0078】
ポリペプチドLQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号3に示される。ポリペプチドSQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号4に示される。
【0079】
2.実験過程
(1)24ウェルプレートにVero E6細胞を敷いた。
【0080】
(2)70%~80%のコンフルエンスまで増殖したら、10%血清を含むDMEM培地を2%血清を含むDMEM培地(各ウェルの2%血清のDMEM培地の添加量を0.5mlとした。)に交換し、各ウェルに1×106PFU/mLのEV71ウイルスを5μl加えた。
【0081】
(3)1時間後、最終濃度0.3125μM、0.625μM、1.25μM、2.5μM、5μMの異なるポリペプチド(LQ又はSQ)をそれぞれ加え、ポリペプチド無添加群を対照とした。
【0082】
(4)EV71ウイルス感染24時間後にサンプルを採取し、トータルRNA抽出キットでRNAを抽出した。
【0083】
(5)上清を捨て、ウェルに350μlのTRK分解液を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0084】
(6)さらに、ウェルに350μlの70%エタノール(DEPC)を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0085】
(7)ウェル中の溶液を取り出してRNA抽出カラムに移し、12000gで1分間遠心した。
【0086】
(8)チューブから回収した溶液をカラムに再度供して、12000gで1分間遠心した。
【0087】
(9)RNA洗浄緩衝液1を加え、12000gで30秒間遠心した。
【0088】
(10)RNA洗浄緩衝液2を加え、12000gで1分間遠心した。
【0089】
(11)工程(10)を繰り返した。
【0090】
(12)空カラムを12000gで2分間遠心し、残留のRNA洗浄緩衝液を完全に除去した。
【0091】
(13)50μlのDEPC水を加え、12000gで2分間遠心した。
【0092】
(14)2μlのRNAサンプルを採取し、one step qRT-PCRキットで蛍光定量実験を行った。
【0093】
結果を
図3、表10~11に示す。Vero細胞におけるLQポリペプチドのIC
50が2.26μM(
図3A)、Vero細胞におけるSQポリペプチドのIC
50が10.3μM(
図3B)であった。
【0094】
以上の結果、それらポリペプチドはいずれも2Cタンパク質に対して設計された阻害タンパク質であるが、ウイルスに対する阻害効率に有意差があり、ポリペプチドRQは、Vero細胞におけるIC50が0.66μMであり、阻害効率がLQポリペプチド及びSQポリペプチドよりも有意に高かった。
【0095】
【0096】
【0097】
実施例4:ポリペプチドRQがRD細胞においてCVA16を阻害する効率の測定
【0098】
1.実験材料
RD細胞。DMEM培地(Thermo)、血清(Gibco)はInvitrogen Co.,Ltd.から購入した。トータル RNA抽出キット(Omega)、One step qRT-PCRキット(Takara)はWuHan U-Me Biotech.Ltd.,Co.から購入した。RNA及びqRT-PCRを抽出する過程で使用された水がDEPC水であった。実験全体はRNaseなしの環境で行われた。
【0099】
ポリペプチドRQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号2に示される。
【0100】
2.実験過程
(1)24ウェルプレートにRD細胞を敷いた。
【0101】
(2)70%~80%のコンフルエンスまで増殖したら、10%血清を含むDMEM培地を2%血清を含むDMEM培地(各ウェルの2%血清のDMEM培地の添加量を0.5mlとした。)に交換し、各ウェルに1×106PFU/mLのCVA16ウイルスを5μl加えた。
【0102】
(3)1時間後、最終濃度0.3125μM、0.625μM、1.25μM、2.5μM、5μMの異なるポリペプチドをそれぞれ加えた。ポリペプチド無添加群を対照とした。
【0103】
(4)CVA16ウイルス感染24時間後にサンプルを採取し、トータルRNA抽出キットでRNAを抽出した。
【0104】
(5)上清を捨て、ウェルに350μlのTRK分解液を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0105】
(6)さらに、ウェルに350μlの70%エタノール(DEPC)を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0106】
(7)ウェル中の溶液を取り出してRNA抽出カラムに移し、12000gで1分間遠心した。
【0107】
(8)チューブから回収した溶液をカラムに再度供して、12000gで1分間遠心した。
【0108】
(9)RNA洗浄緩衝液1を加え、12000gで30秒間遠心した。
【0109】
(10)RNA洗浄緩衝液2を加え、12000gで1分間遠心した。
【0110】
(11)工程(10)を繰り返した。
【0111】
(12)空カラムを12000gで2分間遠心し、残留のRNA洗浄緩衝液を完全に除去した。
【0112】
(13)50μlのDEPC水を加え、12000gで2分間遠心した。
【0113】
(14)2μlのRNAサンプルを採取し、one step qRT-PCRキットで蛍光定量実験を行った。
【0114】
RD細胞におけるポリペプチドRQの抗CVA16効果試験の結果を表12、
図4に示す。IC
50が2.16μMであった。
【0115】
【0116】
実施例5:RQがEV71 2Cヘリカーゼ活性を阻害すること
【0117】
1.実験材料
MBP-EV71 2Cタンパク質を融合発現するバキュロウイルス。ツマジロクサヨトウ細胞(Sf9)はChina Center for Type Culture Collection(CCTCC)から入手した。培地(SF-HM)は倍進社から購入した。マルトース結合タンパク質(MBP)フィラーはNEBから購入した。Amicon Μltra-30KDa(限外ろ過チューブ)はMilliporeから購入した。結合緩衝液(pH7.4):20mMのTris-HCl(pH7.4)、0.5MのEDTA、200mMのNaCl、10mMのβ-メルカプトエタノール、体積比5%の無水エタノール、体積比10%のグリセリン。溶出緩衝液:10mMのマルトース溶液。pH7.5の50mMのHEPES溶液を使用した。
【0118】
HEX蛍光標識された長さ42ntのRNA一本鎖、HEX標識RNA鎖に相補的な長さ54ntのRNA一本鎖。
【0119】
ポリペプチドRQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号2に示される。
【0120】
2.実験過程
2.1 EV71 2Cタンパク質のインビトロでの発現と精製
(1)MBP-EV71 2Cタンパク質を発現するバキュロウイルスを密度80~90%のSf9細胞(T75)6本に1mlずつ加えた。27.5℃に放置して3日間感染させた。細胞がウイルス感染の明らかな症状を示すまで置いた(細胞が大きく丸くなり、大量に懸濁した。)。元の培地でSf9細胞を吹き飛ばし、1000gで5分間遠心した。上清を捨て、精製されたMBP融合タンパク質の結合緩衝液15mlで細胞を再懸濁した。
【0121】
(2)Sf9細胞を透明になるまで超音波破砕(250W、15~20min)し、1.5mlの遠心チューブに分注し、12000g、15min、4℃で遠心分離し、上清を15mlの遠心チューブに入れ、氷上に置いた。
【0122】
(3)2~3mlのアミロースレジンをクロマトカラムに加え、まず30mlのddH2Oで洗浄し、次に30mlの結合緩衝液でフィラーのバランスをとれた。洗浄過程でフィラー間に気泡が入らないように注意した。
【0123】
(4)目的タンパク質を含む上清をフィラーのバランスのとれたカラムにゆっくりと加え、タンパク質サンプルの流速が7~8秒/滴になるように、定常流量ポンプの流速を50又は60に設置した。15mlの上清をカラムに3回供した。
【0124】
(5)結合後、100mlの結合緩衝液でフィラーを洗浄し、定常流量ポンプの流速を130にし、不純物のタンパク質を洗い流した。
【0125】
(6)洗浄後、10mMのマルトース溶離液でフィラーを溶出し、定常流量ポンプの流速を10にし、収集した溶離液(目的タンパク質を含む)を30KD限外ろ過チューブに加え、7200g、4℃で遠心分離し、限外ろ過して目的タンパク質を濃縮させた(約200~300μl、濃度は約1mg/mlであった)。
【0126】
(7)限外ろ過終了後、50mM、pH7.5のHEPESで目的タンパク質の緩衝系を交換した(HEPES-KOHで3~4回限外ろ過した)。
【0127】
(8)2μlの精製後のタンパク質サンプルを採取してSDS-PAGE電気泳動を行い、残りのタンパク質を-80℃に保存しておいた。
【0128】
MBPタグを持つEV71 2Cタンパク質の精製ができた。
【0129】
2.2 RQがインビトロでEV71 2Cタンパク質のヘリカーゼ活性を阻害すること
(1)濃度0.2pmol/μlのHEX標識鎖を使用し、同濃度の相補鎖RNAを加え、アニールによりHEX標識を有する二本鎖dsRNA基質を調製した。
【0130】
(2)アニール過程:反応系を75℃で3分間保持し、1分間に1℃低下する速度で反応系温度を25℃まで低下させ、25℃で2分間保持した。
【0131】
(3)標準的な巻き戻し実験反応系に従って、目的タンパク質と二本鎖基質をよく配合した。5μgのRQポリペプチドとTAT対照をそれぞれ加え、単一及び二本鎖の対照を設置した。一本鎖の場合、サンプルを75℃で3分間煮沸し、氷上に2分間置く必要があった。
【0132】
(4)配合した体系を均一に混合した後、37℃に置き、50分間反応させた。
【0133】
(5)反応後の混合物を電気泳動した。
【0134】
(6)最後にTyphoon 9500を使用して直接スキャンし、HEX信号を得た。
【0135】
電気泳動中、一本鎖は二本鎖よりも電気泳動速度が速かった。従って、MBP-2Cタンパク質が二本鎖dsRNA基質を開いて一本鎖RNAを放出するヘリカーゼ活性を有する場合、このレーンには2つの上下バンドとして表示する。75℃で煮沸して作製した一本鎖RNA(レーン2)は陽性対照とした。タンパク質無添加反応(レーン1)は陰性対照とした。
図5のレーン3に示すように、EV71 2Cはヘリカーゼ活性を有し、二本鎖dsRNA基質を巻き戻すことができたが、RQの添加は2Cのヘリカーゼ活性を阻害し(レーン5)、TAT対照は2Cのヘリカーゼ活性に影響しなかった(レーン4)。以上の結果は、RQがEV71 2Cのヘリカーゼ機能を確実に阻害できたことを示した。
実施例6:RQがEV71及びCVA16 2Cヘリカーゼ活性を阻害すること
【0136】
1.実験材料
精製されたMBP-EV71 2Cタンパク質。MBP-CVA16 2Cタンパク質を融合発現するバキュロウイルス、ツマジロクサヨトウ細胞(Sf9)はChina Center for Type Culture Collection(CCTCC)から入手した。培地(SF-HM)は倍進社から購入した。マルトース結合タンパク質(MBP)フィラーはNEBから購入した。Amicon Μltra-30KDa(限外ろ過チューブ)はMilliporeから購入した。結合緩衝液(pH7.4)として、20mMのTris-HCl(pH7.4)、0.5MのEDTA、200mMのNaCl、10mMのβ-メルカプトエタノール、体積比5%の無水エタノール、体積比10%のグリセリンを使用した。溶出緩衝液として10mMのマルトース溶液を使用した。pH7.5の50mMのHEPES溶液。
【0137】
HEX蛍光標識された長さ42ntのRNA一本鎖、HEX標識RNA鎖に相補的な長さ54ntのRNA一本鎖。
【0138】
ポリペプチドRQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号2に示される。
【0139】
2.実験過程
2.1 CVA16 2Cタンパク質のインビトロでの発現と精製
(1)MBP-CVA16 2Cタンパク質を発現するバキュロウイルスを密度80~90%のSf9細胞(T75)6本に1mlずつ加えた。27.5℃に放置して3日間感染させた。細胞がウイルス感染の明らかな症状を示すまで待った(細胞が大きく丸くなり、大量に懸濁した。)。元の培地でSf9細胞を吹き飛ばし、1000gで5分間遠心した。上清を捨て、精製されたMBP融合タンパク質の結合緩衝液15mlで細胞を再懸濁した。
【0140】
(2)Sf9細胞を透明になるまで超音波破砕(250W、15-20min)し、1.5mlの遠心チューブに分注し、12000g、15min、4℃で遠心分離し、上清を15mlの遠心チューブに入れ、氷上に置いた。
【0141】
(3)2~3mlのアミロースレジンをクロマトカラムに加え、まず30mlのddH2Oで洗浄し、次に30mlの結合緩衝液でフィラーのバランスをとれた。洗浄過程でフィラー間に気泡が入らないように注意した。
【0142】
(4)目的タンパク質を含む上清をフィラーのバランスのとれたカラムにゆっくりと加え、タンパク質サンプルの流速が7~8秒/滴になるように、定常流量ポンプの流速を50又は60に設置した。15mlの上清をカラムに3回供した。
【0143】
(5)結合後、100mlの結合緩衝液でフィラーを洗浄し、定常流量ポンプの流速を130にし、不純物のタンパク質を洗い流した。
【0144】
(6)洗浄後、10mMのマルトース溶離液でフィラーを溶出し、定常流量ポンプの流速を10にし、収集した溶離液(目的タンパク質を含む)を30KD限外ろ過チューブに加え、7200g、4℃で遠心分離し、限外ろ過して目的タンパク質を濃縮させた(約200~300μl、濃度は約1mg/mlであった)。
【0145】
(7)限外ろ過終了後、50mM、pH7.5のHEPESで目的タンパク質の緩衝系を交換した(HEPES-KOHで3~4回限外ろ過した)。
【0146】
(8)2μlの精製後のタンパク質サンプルを採取してSDS-PAGE電気泳動を行い、残りのタンパク質を-80℃に保存しておいた。
【0147】
MBPタグを持つEV71 2Cタンパク質の精製ができた。
【0148】
2.2 RQがインビトロでEV71及びCVA16 2Cタンパク質のヘリカーゼ活性を阻害すること
(1)濃度0.2pmol/μlのHEX標識鎖を使用し、同濃度の相補鎖RNAを加え、アニールによりHEX標識を有する二本鎖dsRNA基質を調製した。
【0149】
(2)アニール過程:反応系を75℃で3分間保持し、1分間に1℃低下する速度で反応系温度を25℃まで低下させ、25℃で2分間保持した。
【0150】
(3)標準的な巻き戻し実験反応系に従って、目的タンパク質と二本鎖基質をよく配合した。5μgのRQポリペプチドとTAT対照をそれぞれ加え、単一及び二本鎖対照を設置した。一本鎖の場合、サンプルを75℃で3分間煮沸し、氷上に2分間置く必要があった。
【0151】
(4)配合した系を均一に混合した後、37℃に置き、50分間反応させた。
【0152】
(5)反応後の混合物を電気泳動した。
【0153】
(6)最後にTyphoon 9500を使用して直接スキャンし、HEX信号を得た。
【0154】
図6Aに示すように、RQは用量依存的にEV71 2Cのヘリカーゼ活性を阻害することが分かった。
図6Bに示すように、RQは用量依存的にCVA16 2Cのヘリカーゼ活性を阻害することが分かった。
実施例7:RQがEV71 2Cタンパク質の多量体化を阻害すること
【0155】
1.実験材料
精製されたMBP-EV71 2Cタンパク質。Superdex 200 Increase 10/300 GLクロマトカラムはGE Healthcare社から購入した。アミコンウルトラ遠心式フィルターはMerck社から購入した。BioLogic DuoFlow systemはBio-Rad社から購入した。50mMのHEPES-KOH(pH8.5)。
【0156】
ポリペプチドRQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号2に示される。
【0157】
2.実験過程
(1)精製されたMBP-EV71 2Cをアミコンウルトラ遠心式フィルターで1mg/mLに濃縮した。
【0158】
(2)濃縮後の2Cタンパク質と20μMのRQポリペプチドを混合して氷上で1hインキュベートし、対照として2Cと同等体積のddH2Oを混合してインキュベートしたものを用いた。
【0159】
(3)上記サンプルを50mMのHEPES-KOH(pH8.5)で平衡化した後、Superdex 200 Increase 10/300 GLクロマトカラムにロードし、BioLogic DuoFlow systemで流速を1mL/minに制御した。
【0160】
(4)紫外線(UV)信号によりタンパク質がクロマトカラムを通過する時間を記録し、タンパク質の分子量の変化を分析した。
【0161】
図7に示すように、2Cタンパク質のみをddH
2Oと共培養した場合、2Cは多量体を形成してシステムから迅速に溶出し(薄い色の線)、溶出時間のピークは8minであった(左側の薄い色のピーク)。RQを2Cと共培養した場合(濃い色の線)、2C多量体の溶出時間のピークは大幅に変化し(左側の濃い色のピーク)、右側の濃い色のピークは遊離のRQポリペプチドであった。以上の結果は、RQと2Cの共培養が2C多量体の形成を阻害したことを示した。
実施例8:ポリペプチドRQの膜透過効率の検出
【0162】
1.材料
MEM培地(Thermo)、血清(Gibco)はInvitrogen Co.,Ltd.から購入した。免疫蛍光プレート(NEST)はプロモーター社から購入した。PBS、DAPI、パラホルムアルデヒドは迪躍創新株式会社から購入した。
【0163】
ポリペプチドRQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号2に示される。
【0164】
2.実験過程
実験は2つのグループに分けられ、EV71ウイルスの添加がポリペプチドの細胞への侵入に与える影響を避けるため、一組の実験にはEV71ウイルスを添加してからポリペプチドRQを添加した。もう一組の実験にはウイルスを添加せずにポリペプチドのみを添加した。また、各群には陰性対照を設置した。
【0165】
免疫蛍光の手順は次の通りである。
(1)免疫蛍光専用ディッシュにRD細胞1mlを敷き、30%のコンフルエンスまで増殖した時点でサンプルを採取した。
【0166】
(2)培地を吸引して廃置し、1mlの0.01mol/L、pH7.4のPBSで残留培地を洗い流し、5minずつ3回洗浄した。
【0167】
(3)4%パラホルムアルデヒド溶液を調製し、4gのパラホルムアルデヒドを100mlのPBSに溶解した。配合した4%パラホルムアルデヒド1mlを各ディッシュに加え、細胞を固定するために5分間反応させた。
【0168】
(4)4%パラホルムアルデヒドを吸引し廃置し、さらに1mlの0.01mol/L、pH7.4のPBSを加えて残留パラホルムアルデヒドを洗い流し、5minずつ3回洗浄した。
【0169】
(5)1mg/mlのDAPI溶液をPBSで100ng/mlに希釈し、ディッシュに加え、15分間反応させた。
【0170】
(6)反応液を吸引し、1mlの0.01mol/L、pH7.4のPBSを再度加えて残留反応液を洗い流し、5minずつ3回洗浄した。
【0171】
(7)ディッシュを蛍光顕微鏡下に置いて観察した。
【0172】
蛍光標識(FITC)を有するポリペプチドを利用し、RD細胞における膜透過効率を検出した。2群の実験を設置した。第1群はFITC-RQをそれぞれ加えた未処理の対照群であり、第2群はEV71感染後にFITC-RQをさらに加えた感染EV71群であった。2群の実験を同時に行い、ウイルスMOI=0.1、ポリペプチドの添加濃度を1μMとした。ポリペプチドを添加してから12時間後にサンプルを採取し、細胞を固定して免疫蛍光実験を行った。結果は、感染又は非感染の条件下でポリペプチドが細胞に入ることができ、良好な膜透過能を有することを示した。
【0173】
図8に示すように、ウイルス無添加及びウイルス添加細胞でポリペプチドの細胞への侵入が観察され、ポリペプチドRQが良好な膜透過能を有することが証明された。
実施例9:様々な細胞におけるポリペプチドRQの毒性測定
【0174】
1.実験材料
RD細胞、Huh7細胞、293T細胞。DMEM培地(Thermo)、血清(Gibco)はInvitrogen Co.,Ltd.から購入した。CCK-8試薬(MCE)はプロモーター社から購入した。
【0175】
ポリペプチドRQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号2に示される。
【0176】
2.実験過程
(1)96ウェル細胞プレートに異なる細胞を1ウェルあたり100μlずつ敷いた。
【0177】
(2)70%~80%のコンフルエンスまで増殖したら、10%血清を含むDMEM培地を2%血清を含むDMEM培地に交換し、ウェル中の最終ポリペプチド濃度がそれぞれ0.073242μM、0.146484μM、0.292969μM、0.585938μM、1.171875μM、2.34375μM、4.6875μM、9.375μM、18.75μM、37.5μM、75μM、150μM、300μMとなるように、一定濃度勾配のポリペプチドRQを加えた。
【0178】
(3)ポリペプチドを加えてから24時間後にサンプルを採取し、各ウェルに生細胞検出剤CCK-8を10μlずつ加え、均一に混合した。
【0179】
(4)37度で2時間放置した。
【0180】
(5)マイクロプレートリーダーでOD450の吸光度値を検出した。
【0181】
結果を
図9、表13~15に示す。未処理細胞の細胞生存率を100%として、異なる細胞における各RQのCC
50を算出した。RD細胞におけるCC
50は>150μM(
図9A)、Huh細胞におけるCC
50は>300μM(
図9B)、293T細胞におけるCC
50>300μM(
図1C)であった。
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
実施例10:ポリペプチドRQがRD細胞においてCVB3を阻害する効率の測定
1.実験材料
RD細胞。DMEM培地(Thermo)、血清(Gibco)はInvitrogen Co.,Ltd.から購入した。トータル RNA抽出キット(Omega)、One step qRT-PCRキット(Takara)はWuHan U-Me Biotech.Ltd.,Co.から購入した。RNA及びqRT-PCRを抽出する過程で使用された水がDEPC水であった。実験全体はRNaseなしの環境で行われた。
【0186】
ポリペプチドRQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号2に示される。
【0187】
2.実験過程
(1)24ウェルプレートにRD細胞を敷いた。
【0188】
(2)70%~80%のコンフルエンスまで増殖したら、10%血清を含むDMEM培地を2%血清を含むDMEM培地(各ウェルの2%血清のDMEM培地の添加量を0.5mlとした。)に交換し、各ウェルに1×106PFU/mLのCVB3ウイルスを5μl加えた。
【0189】
(3)1時間後、最終濃度0.3125μM、0.625μM、1.25μM、2.5μM、5μMのポリペプチドをそれぞれ加えた。ポリペプチド無添加群を対照とした。
【0190】
(4)CVB3ウイルス感染24時間後にサンプルを採取し、トータル RNA抽出キットでRNAを抽出した。
【0191】
(5)上清を捨て、ウェルに350μlのTRK分解液を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0192】
(6)さらに、ウェルに350μlの70%エタノール(DEPC)を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0193】
(7)ウェル中の溶液を取り出してRNA抽出カラムに移し、12000gで1分間遠心した。
【0194】
(8)チューブから回収した溶液をカラムに再度供して、12000gで1分間遠心した。
【0195】
(9)RNA洗浄緩衝液1を加え、12000gで30秒間遠心した。
【0196】
(10)RNA洗浄緩衝液2を加え、12000gで1分間遠心した。
【0197】
(11)工程(10)を繰り返した。
【0198】
(12)空カラムを12000gで2分間遠心し、残留のRNA洗浄緩衝液を完全に除去した。
【0199】
(13)50μlのDEPC水を加え、12000gで2分間遠心した。
【0200】
(14)2μlのRNAサンプルを採取し、one step qRT-PCRキットで蛍光定量実験を行った。
【0201】
RD細胞におけるポリペプチドRQの抗CVB3効果試験の結果を表16、
図10に示す。IC
50が2.31μMであった。
【0202】
【0203】
実施例11:ポリペプチドRQがRD細胞においてEcho 11を阻害する効率の測定
【0204】
1.実験材料
RD細胞。DMEM培地(Thermo)、血清(Gibco)はInvitrogen Co.,Ltd.から購入した。トータル RNA抽出キット(Omega)、One step qRT-PCRキット(Takara)はWuHan U-Me Biotech.Ltd.,Co.から購入した。RNA及びqRT-PCRを抽出する過程で使用された水がDEPC水であった。実験全体はRNaseなしの環境で行われた。
【0205】
ポリペプチドRQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号2に示される。
【0206】
2.実験過程
(1)24ウェルプレートにRD細胞を敷いた。
【0207】
(2)70%~80%のコンフルエンスまで増殖したら、10%血清を含むDMEM培地を2%血清を含むDMEM培地(各ウェルの2%血清のDMEM培地の添加量を0.5mlとした。)に交換し、各ウェルに1×106PFU/mLのEcho 11ウイルスを5μl加えた。
【0208】
(3)1時間後、最終濃度0.3125μM、0.625μM、1.25μM、2.5μM、5μMのポリペプチドをそれぞれ加えた。ポリペプチド無添加群を対照とした。
【0209】
(4)Echo 11ウイルス感染24時間後にサンプルを採取し、トータル RNA抽出キットでRNAを抽出した。
【0210】
(5)上清を捨て、ウェルに350μlのTRK分解液を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0211】
(6)さらに、ウェルに350μlの70%エタノール(DEPC)を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0212】
(7)ウェル中の溶液を取り出してRNA抽出カラムに移し、12000gで1分間遠心した。
【0213】
(8)チューブから回収した溶液をカラムに再度供して、12000gで1分間遠心した。
【0214】
(9)RNA洗浄緩衝液1を加え、12000gで30秒間遠心した。
【0215】
(10)RNA洗浄緩衝液2を加え、12000gで1分間遠心した。
【0216】
(11)工程(10)を繰り返した。
【0217】
(12)空カラムを12000gで2分間遠心し、残留のRNA洗浄緩衝液を完全に除去した。
【0218】
(13)50μlのDEPC水を加え、12000gで2分間遠心した。
【0219】
(14)2μlのRNAサンプルを採取し、one step qRT-PCRキットで蛍光定量実験を行った。
【0220】
RD細胞におけるポリペプチドRQの抗Echo 11効果試験の結果を表17、
図11に示す。IC
50が0.37μMであった。
【0221】
【0222】
実施例12:ポリペプチドRQがマウス体内においてEV71に対して示した抗ウイルス活性の検出
【0223】
1.実験材料
生まれたばかりの1日齢のICR哺乳マウス。ポリペプチドRQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号2に示される。
【0224】
2.実験過程
(1)27匹の1日齢のICR哺乳マウスを無作為に3つのグループに分けた。1群の10匹の哺乳マウスにウイルス攻撃を加え同量のPBS(vehicle)を注射して陽性対照とし、1群の9匹の哺乳マウスの群にウイルス攻撃を加えてからRQを注射し、1群の8匹の哺乳マウスの群にウイルス攻撃も投薬もせずに陰性対照とした。これらの19匹の哺乳マウスに腹腔注射により107PFUの用量でEV71によるウイルス攻撃を加えた。
【0225】
(2)ウイルス攻撃と同時に、一つの群には治療群として20mg/kgのRQポリペプチドを腹腔注射し、もう一つの群には対照群として同量のPBSを注射した。
【0226】
(3)ポリペプチド及びPBSをウイルス攻撃後7日目まで12時間ごとに連続して注射した。
【0227】
(4)哺乳マウスの臨床症状と死亡情况を21日目まで観察した。
【0228】
(5)臨床症状を臨床採点システムにより判断した。0点は健康、1点はゆっくりとした猫背の動き、2点は片肢の衰弱、3点は片肢の麻痺、4点は両肢の麻痺、5点は死亡である。
【0229】
結果として、
図12Aに示すように、陰性対照群(Mock)の哺乳マウスはすべて生存し、ウイルス攻撃のみした非投薬群の哺乳マウスは10日目に5匹死亡し、死亡率が50%であったのに対し、RQ投与群の哺乳マウスはすべて生存した。
図12Bに示すように、ウイルス攻撃のみした非投薬群は攻撃後投与群よりも臨床スコアが有意に高かった。以上の結果から、RQが致死量のEV71に感染した哺乳マウスを効果的に治療し、その死亡を防ぐことができたことが示された。
実施例13:ポリペプチドRQの改造体の抗ウイルス活性の検出
【0230】
1.実験材料
ポリペプチドEQ(配列番号5に示される)、YQ(配列番号6に示される)、NQ(配列番号7に示される)、RSQ(配列番号8に示される)、SAQ(配列番号9に示される)、AQ(配列番号10に示される)、IQ(配列番号11に示される)、GQ(配列番号12に示される)、NTQ(配列番号13に示される)、TQ(配列番号14に示される)、IEQ(配列番号15に示される)。前記配列はすべて商業的に合成された。CCK-8試薬(MCE)はプロモーター社から購入した。
【0231】
2.実験過程
(1)96ウェル細胞プレートにRD細胞を1ウェルあたり100μlずつ敷いた。
【0232】
(2)70%~80%のコンフルエンスまで増殖したら、10%血清を含むDMEM培地を2%血清を含むDMEM培地に交換した。
【0233】
(3)2%FBSを含むDMEMを使用してポリペプチド薬物を2倍比勾配で希釈し、希釈濃度を0.15625μM、0.3125μM、0.625μM、1.25μM、2.5μM、5μMとし、1ウェルあたり100μlで新しい96ウェルプレートに加え、濃度ごとに3つの複製ウェルを設置した。
【0234】
(4)希釈したウイルスを上記ウェルに1ウェルあたり100μLずつ加え、無薬物・無ウイルスウェルと、無薬物・ウイルス添加ウェルとをそれぞれ対照として設置し、ウイルスの最終濃度を0.1MOIとした。
【0235】
(4)細胞を敷いた96ウェルプレートに混合物を移し、24時間培養を続けた後、CCK8キットを用いてウイルスに対するポリペプチドの阻害活性を測定した。
【0236】
(5)ウイルス感染に対する異なる濃度のポリペプチドの阻害率を算出した。計算式は、ポリペプチド阻害率=(薬物ウェル-ウイルスウェル)×100%/(無薬物ウェル-ウイルスウェル)であった。
【0237】
表18~21、
図13に示すように、CCK8法によりポリペプチドのウイルス阻害活性を測定したところ、EQのIC
50が1.83μM、YQのIC
50が1.96μM、NQのIC
50が1.90μM、RSQのIC
50が2.60μM、SAQのIC
50が2.90μM、AQのIC
50が2.99μM、IQのIC
50が1.64μM、GQのIC
50が1.78μM、NTGのIC
50が2.28μM、TQのIC
50が1.76μM、IEQのIC
50が2.48μMであった。TAT対照は抗ウイルス活性を示さなかった。
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
実施例14:ポリペプチドRQの修飾体の抗ウイルス活性の検出
【0243】
1.実験材料
ポリペプチドRQ-PA(配列番号16に示される)、RQ-PEG4-PA(配列番号17に示される)、RQ-CHOL(配列番号18に示される)。前記配列はすべて商業的に合成された。CCK-8試薬(MCE)はプロモーター社から購入した。
【0244】
2.実験過程
(1)96ウェル細胞プレートにRD細胞を1ウェルあたり100μlずつ敷いた。
【0245】
(2)70%~80%のコンフルエンスまで増殖したら、10%血清を含むDMEM培地を2%血清を含むDMEM培地に交換した。
【0246】
(3)2%FBSを含むDMEMを使用してポリペプチド薬物を2倍比勾配で希釈し、希釈濃度を0.15625μM、0.3125μM、0.625μM、1.25μM、2.5μM、5μM、1ウェルあたり100μlとし、新しい96ウェルプレートに加え、濃度ごとに3つの複製ウェルを設置した。
【0247】
(4)希釈したウイルスを上記ウェルに1ウェルあたり100μLずつ加え、無薬物・無ウイルスウェルと、無薬物・ウイルス添加ウェルとをそれぞれ対照として設置し、ウイルスの最終濃度が0.1MOIであった。
【0248】
(4)細胞を敷いた96ウェルプレートに混合物を移し、24時間培養を続けた後、CCK8キットを用いてウイルスに対するポリペプチドの阻害活性を測定した。
【0249】
(5)ウイルス感染に対する異なる濃度のポリペプチドの阻害率を算出した。計算式はポリペプチド阻害率=(薬物ウェル-ウイルスウェル)×100%/(無薬物ウェル-ウイルスウェル)であった。
【0250】
表22、
図14に示すように、CCK8法によりポリペプチドのウイルス阻害活性を測定したところ、RQ-PAのIC
50が3.58μM、RQ-PEG4-PAのIC
50が3.47μM、RQ-CHOLのIC
50が4.25μMであった。
【0251】
【0252】
実施例15:RQ-DRIがRD細胞においてEV71を阻害する効率の測定
1.実験材料
RD細胞。DMEM培地(Thermo)、血清(Gibco)はInvitrogen Co.,Ltd.から購入した。トータル RNA抽出キット(Omega)、One step qRT-PCRキット(Takara)はWuHan U-Me Biotech.Ltd.,Co.から購入した。RNA及びqRT-PCRを抽出する過程で使用された水がDEPC水であった。実験全体はRNaseなしの環境で行われた。
【0253】
ポリペプチドRQ-DRIは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号19に示される。
【0254】
2.実験過程
(1)24ウェルプレートにそれぞれ異なる細胞を敷いた。
【0255】
(2)70%~80%のコンフルエンスまで増殖したら、10%血清を含むDMEM培地を2%血清を含むDMEM培地(各ウェルの2%血清のDMEM培地の添加量を0.5mlとした。)に交換し、各ウェルに1×106PFU/mLのEV71ウイルスを5μl加えた。
【0256】
(3)1時間後、最終濃度0.3125μM、0.625μM、1.25μM、2.5μM、5μMの異なるポリペプチド(RQ又はTAT対照)をそれぞれ加え、ポリペプチド無添加群を対照とした。
【0257】
(4)EV71ウイルス感染24時間後にサンプルを採取し、トータルRNA抽出キットでRNAを抽出した。
【0258】
(5)上清を捨て、ウェルに350μlのTRK分解液を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0259】
(6)さらに、ウェルに350μlの70%エタノール(DEPC)を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0260】
(7)ウェル中の溶液を取り出してRNA抽出カラムに移し、12000gで1分間遠心した。
【0261】
(8)チューブから回収した溶液をカラムに再度供して、12000gで1分間遠心した。
【0262】
(9)RNA洗浄緩衝液1を加え、12000gで30秒間遠心した。
【0263】
(10)RNA洗浄緩衝液2を加え、12000gで1分間遠心した。
【0264】
(11)工程(10)を繰り返した。
【0265】
(12)空カラムを12000gで2分間遠心し、残留のRNA洗浄緩衝液を完全に除去した。
【0266】
(13)50μlのDEPC水を加え、12000gで2分間遠心した。
【0267】
(14)2μlのRNAサンプルを採取し、one step qRT-PCRキットで蛍光定量実験を行った。
【0268】
結果を
図15、表23に示す。RD細胞におけるポリペプチドRQ-DRIのIC
50が2.05μMであった。
【0269】
【0270】
実施例16:RD細胞でのB-RQの毒性の検出
1.実験材料
CCK-8試薬(MCE)はプロモーター社から購入した。ポリペプチドB-RQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号20に示される。
【0271】
2.実験過程
(1)96ウェル細胞プレートにRD細胞を1ウェルあたり100μlずつ敷いた。
【0272】
(2)70%~80%のコンフルエンスまで増殖したら、10%血清を含むDMEM培地を2%血清を含むDMEM培地に交換し、ウェル中の最終濃度がそれぞれ0.46μM、2.34μM、4.68μM、9.37μM、18.75μM、37.5μM、75μM、150μMとなるように、B-RQを加えた。
【0273】
(3)ポリペプチドを加えてから24時間後にサンプルを採取し、各ウェルに生細胞検出剤CCK-8を10μlずつ加え、均一に混合した。
【0274】
(4)37度で2時間放置した。
【0275】
(5)マイクロプレートリーダーでOD450の吸光度値を検出した。
【0276】
結果を
図16及び表24に示す。未処理細胞の細胞生存率を100%とした場合、B-RQのCC
50は>75μMであった。
【0277】
【0278】
実施例17:B-RQがRD細胞においてCVB3及びEcho 11を阻害する効率の測定
【0279】
1.実験材料
RD細胞。DMEM培地(Thermo)、血清(Gibco)はInvitrogen Co.,Ltd.から購入した。トータル RNA抽出キット(Omega)、One step qRT-PCRキット(Takara)はWuHan U-Me Biotech.Ltd.,Co.から購入した。RNA及びqRT-PCRを抽出する過程で使用された水がDEPC水であった。実験全体はRNaseなしの環境で行われた。
【0280】
ポリペプチドB-RQは南京ジェンスクリプト公司により合成され、その配列が配列番号20に示される。
【0281】
2.実験過程
(1)24ウェルプレートにそれぞれ異なる細胞を敷いた。
【0282】
(2)70%~80%のコンフルエンスまで増殖したら、10%血清を含むDMEM培地を2%血清を含むDMEM培地(各ウェルの2%血清のDMEM培地の添加量を0.5mlとした。)に交換し、各ウェルに1×106PFU/mLのEV71ウイルスを5μl加えた。
【0283】
(3)1時間後、最終濃度0.3125μM、0.625μM、1.25μM、2.5μM、5μMのポリペプチドをそれぞれ加え、ポリペプチド無添加群を対照とした。
【0284】
(4)EV71ウイルス感染24時間後にサンプルを採取し、トータルRNA抽出キットでRNAを抽出した。
【0285】
(5)上清を捨て、ウェルに350μlのTRK分解液を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0286】
(6)さらに、ウェルに350μlの70%エタノール(DEPC)を加え、シェーカーに5分間置いた。
【0287】
(7)ウェル中の溶液を取り出してRNA抽出カラムに移し、12000gで1分間遠心した。
【0288】
(8)チューブから回収した溶液をカラムに再度供して、12000gで1分間遠心した。
【0289】
(9)RNA洗浄緩衝液1を加え、12000gで30秒間遠心した。
【0290】
(10)RNA洗浄緩衝液2を加え、12000gで1分間遠心した。
【0291】
(11)工程(10)を繰り返した。
【0292】
(12)空カラムを12000gで2分間遠心し、残留のRNA洗浄緩衝液を完全に除去した。
【0293】
(13)50μlのDEPC水を加え、12000gで2分間遠心した。
【0294】
(14)2μlのRNAサンプルと採取し、one step qRT-PCRキットで蛍光定量実験を行った。
【0295】
結果を
図17、表25~26に示す。RD細胞におけるポリペプチドB-RQによるCVB3阻害(
図17A)のIC
50が2.29μM、RD細胞におけるEcho 11阻害(
図17B)のIC
50が0.38μMであった。
【0296】
【0297】
【0298】
上記は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者であれば、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び修正を行う可能性があり、これらの改良及び修正も本発明の範囲と見なされるべきであることに留意する必要がある。
【配列表】
【国際調査報告】