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特表2023-535583疾病の治療に関する組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】疾病の治療に関する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/21 20060101AFI20230810BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230810BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20230810BHJP
   C07K 14/56 20060101ALI20230810BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
A61K38/21
A61P17/04 ZNA
A61P37/08
A61K35/74 Z
C07K14/56
C12P21/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504729
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 GB2021051978
(87)【国際公開番号】W WO2022023768
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】2011945.9
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520440065
【氏名又は名称】アイエルシー セラピューティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ILC THERAPEUTICS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム スティムソン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マッケンジー
【テーマコード(参考)】
4B064
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG09
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA04
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA04
4C084CA53
4C084DA22
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA57
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZC611
4C084ZC612
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC34
4C087CA12
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA57
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB13
4C087ZC61
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA16
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、イヌそう痒性疾患を予防または治療するための組成物および方法に関し、任意に、前記イヌそう痒性疾患は、一般に、イヌアトピー性皮膚炎(AD)であり、前記治療または予防に使用するための合成イヌインターフェロン(IFN)-アルファ(α)、並びに、これを含む組成物および方法、および合成イヌインターフェロン-アルファの製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌそう痒性疾患の治療または予防に使用するためのイヌインターフェロン-アルファであって、
前記イヌインターフェロン-アルファが、配列番号1のアミノ酸配列、もしくは、その機能的に活性のあるフラグメントもしくは変異体を含む、または、それからなり、
前記変異体は、配列番号1と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、または、それからなる、イヌインターフェロン-アルファ。
【請求項2】
イヌそう痒性疾患がイヌアトピー性皮膚炎である、請求項1に記載の使用ためのイヌインターフェロンアルファ。
【請求項3】
前記変異体は、H2、G8、G27、N34、E97、S153およびQ157からなる群より選択される1つ以上の位置で置換を有し、
前記位置の番号付けは、一次構造に基づいて整列された場合に配列番号1の位置と同じ位置に対応する位置として定義される、請求項1または2に記載の使用のためのイヌインターフェロンアルファ。
【請求項4】
前記変異体は、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列、または配列番号2もしくは配列番号3の機能的に活性のあるフラグメントを含む、または、それからなる、請求項1~3のいずれかに記載の使用のためのイヌインターフェロンアルファ。
【請求項5】
前記変異体は、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2の機能的に活性のあるフラグメントを含む、または、それからなる、請求項1~4のいずれかに記載の使用のためのイヌインターフェロンアルファ。
【請求項6】
前記イヌインターフェロンアルファが大腸菌で発現される、請求項1~5のいずれかに記載の使用のためのイヌインターフェロンアルファ。
【請求項7】
前記イヌインターフェロンアルファが、舌下、経口、または、皮下投与用に製剤化される、請求項1~6のいずれかに記載の使用のためのイヌインターフェロンアルファ。
【請求項8】
イヌそう痒性疾患の治療に使用するための医薬組成物であって、任意に、前記イヌそう痒性疾患がイヌアトピー性皮膚炎であり、
請求項1~7のいずれか一項に記載のイヌインターフェロンアルファと、
薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項9】
イヌそう痒性疾患の治療および/または予防のための方法であって、任意に、前記イヌそう痒性疾患はイヌアトピー性皮膚炎であり、
(i)それを必要とするイヌに、配列番号1のアミノ酸配列またはその機能的に活性のあるフラグメントもしくは変異体を含む、または、それからなる、イヌインターフェロンアルファの治療的に有効な量を投与する、
ステップを含む、方法。
【請求項10】
前記変異体は、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、または、配列番号1の機能的に活性のあるフラグメントを含む、または、それからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記変異体は、H2、G8、G27、N34、E97、S153およびQ157からなる群より選択される1つ以上の位置で置換を有し、
前記位置の番号付けは、一次構造に基づいて整列された場合に配列番号1の位置と同じ位置に対応する位置として定義される、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記変異体は、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列、または配列番号2もしくは配列番号3の機能的に活性のあるフラグメントを含む、または、それからなる、請求項9~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記変異体は、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2の機能的に活性のあるフラグメントを含む、または、それからなる、請求項9~11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記イヌインターフェロンアルファが大腸菌で発現される、請求項9~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記イヌインターフェロンアルファが、経口的にまたは皮下投与によって投与される、請求項9~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
イヌインターフェロンアルファの製造方法であって、
(i)大腸菌細胞を提供するステップと、
(ii)プロモーター配列の制御下でイヌインターフェロンアルファをコードする異種ヌクレオチド配列で大腸菌細胞を形質転換させるステップであって、前記イヌインターフェロンアルファが配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する、または、配列番号1の機能的に活性のあるフラグメントを有する、ステップと、
(iii)前記イヌインターフェロンアルファを細胞内で発現させるステップと、
を含む、方法。
【請求項17】
イヌそう痒性疾患の治療または予防に使用するためのイヌインターフェロンアルファであって、
任意に、前記イヌそう痒性疾患がイヌアトピー性皮膚炎であり、
前記イヌインターフェロンアルファが請求項16に記載の方法によって産生される、イヌインターフェロンアルファ。
【請求項18】
イヌそう痒性疾患の治療および/または予防の方法であって、
任意に、前記イヌそう痒性疾患はイヌアトピー性皮膚炎であり、
(i)請求項16に記載の方法によって製造されたイヌインターフェロンアルファの治療有効量を、それを必要とするイヌに投与すること、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヌそう痒性疾患、特にイヌアトピー性皮膚炎(AD)を予防または治療するための組成物および方法に関する。イヌインターフェロン、特に、上記治療または予防に使用するための合成イヌインターフェロン(IFN)-アルファ(α)が提供され、さらに、合成イヌインターフェロン-アルファの組成物およびそれを含む方法、並びに、合成イヌインターフェロン-アルファの製造方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性そう痒性疾患はイヌでますます一般的になっている。これらは強いかゆみと炎症を伴う皮膚病を特徴とする。アトピー性皮膚炎(AD)は、アレルギー性皮膚疾患の主要な種類である。
イヌアトピー性皮膚炎(AD)は、イヌにおいて一般的な状態であり、一般的に頭皮、顔面、頸部、および四肢の屈曲面に乾燥した皮膚、紅斑および自己誘発性の表皮剥離を生じる。イヌADは、CD4Th2「表現型(フェノタイプ)」の過剰な免疫応答により生じる。これらは通常、遺伝的素因によるが、環境因子が決定因子である可能性がある。この免疫経路の活性化は、表皮におけるIgE産生とアレルギー様反応につながり、長期間の治療を必要とする。
【0003】
ケア治療の標準には、抗ヒスタミン処理、コルチコイド、および最近では低分子阻害剤、オクラシチニブの使用が含まれる-参照により本明細書に組み込まれる、T. Olivry et al. “Treatment of canine atopic dermatitis: 2015 updated guidelines from the International Committee on Allergic Diseases of Animals (ICADA)”, BMC Vet. Res. 11 (2015) 210を参照されたい。
【0004】
日本では、イヌインターフェロン‐ガンマがADの治療に使用されている。本療法の目標は、過剰なIgE反応につながるTh1/Th2免疫不平衡を回復させることである-参照により本明細書に組み込まれる、K. Yasukawa et al. “Low‐ dose recombinant canine interferon‐ γ for treatment of canine atopic dermatitis: An open randomized comparative trial of two doses”, Vet. Dermatol. 21 (2010) 42‐49.3,4]を参照されたい。
【0005】
組換えヒトインターフェロン-アルファ14(rhIFNα-14)はイヌのアレルギー性皮膚炎の治療にも使用されている-WO2019/229480および“Recombinant human interferon-α14 for the treatment of canine allergic pruritic disease in eight dogs” by Beirao et al., Vet Record Open, Vol. 8, Issue 1, May 2021を参照されたい。しかしながら、ヒトインターフェロン-α14の使用は、注射された場合に、イヌにおける炎症、皮膚発疹、発熱、嘔吐および悪心を導いた。さらに、一部のイヌは治療に反応せず、反応したイヌよりも抗組換えヒトIFNα14の力価が高かった。
【0006】
例えば、Gedon and Mueller Clinical Translational Allergy (2018) 8:41(参照により本明細書に組み込まれている)による「Atopic dermatitis in cats and dogs: a difficult disease for animals and owners」に記載されているように、ヒトおよびイヌのADの間にはいくつかの類似点も存在するが、相違点も存在する。いくつかの機能的および切断されたインターフェロン‐アルファ偽遺伝子がイヌゲノムに存在すると考えられており、しかしながら、イヌにおける発現されたインターフェロンのそれぞれの役割は明確には理解されていない。これらのイヌ配列のいくつかは、ヒトインターフェロン-アルファ配列に対して約52~55%の配列同一性を共有する。
【0007】
アレルギー性皮膚炎は、そう痒が次第に正常な行動を妨げるため、イヌの生活の質を妨げる。従って、イヌADの治療のための新しい有効な治療法が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、アレルギー性そう痒性疾患、特にイヌアトピー性皮膚炎の治療または予防に使用するためのイヌインターフェロン-アルファを提供し、ここで、イヌインターフェロン-アルファは、配列番号1のアミノ酸配列、またはその機能的に活性のあるフラグメントもしくは変異体を含むか、またはそれからなる。
【0009】
【化1】

【0010】
本発明者は、全イヌ血液で試験した場合、配列番号1のアミノ酸またはその機能的に活性のあるフラグメントもしくは変異体が、ヒトインターフェロン-α-14と比較してIL-17AおよびGM-CSFの抑制に対する改善された効果の機能的効果を生じることを決定した。
【0011】
特に、本発明のイヌインターフェロン-アルファは、IL-17の抑制に対する効果に関して、ヒトIFNα14よりも優れていることが見出された。
【0012】
配列番号1の機能的に活性のある変異体は、他のイヌインターフェロン-アルファ配列に基づくアミノ酸の置換突然変異を含み得ると考えられる。好適には、配列番号1が、イヌ由来のインターフェロン-アルファ配列のコンセンサスに基づく置換変異、例えば、いずれも参照により本明細書に組み込まれる、少なくともイヌ由来のインターフェロン-アルファ配列(IFNα1/2(Uniprot P81255)(配列番号4)、およびイヌ由来のインターフェロン-α3(097945)(配列番号3)を含む変異体が提供されてもよく、
【化2】


および/またはイヌ由来の少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のインターフェロン配列に基づくコンセンサス配列。好適には、変異体は、配列番号2および/または配列番号3に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、またはそれからなってもよい。
【0013】
例えば、好適には、変異体は、IFNα配列間の可変性が観察される配列番号1の配列の1つ以上の点における1つ以上の置換を含むことができる。例えば、好適には、変異体は、H2、G8、G27、N34、E97、S153、およびQ157からなる群から選択される1つ以上の位置での置換を含み得、位置番号は、一次構造に基づいて整列されたとき、配列番号1として本明細書に示されるインターフェロンの同じ位置に対応する位置として定義される。例えば、図10Bに示される配列番号1および配列番号3のアラインメントにおいて、配列番号1のナンバリングは、比較マトリックスBLOSUM62、GAP OPEN PENALTY:12およびGAP EXTENSION PENALTY:4を使用する場合、アラインメント-95.1%配列同一性上の位置31にG8を示すことになる。
【0014】
好適には、変異体は、配列番号1に対する少なくとも90%の同一性、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%の配列同一性、または配列番号1の機能的に活性のあるフラグメントを有するアミノ酸配列を含み、またはそれからなる。
【0015】
好適には、配列番号1の変異体を提供して、大腸菌生産システムにおけるアミノ酸配列の発現を増強することができる。適切には、イヌに投与される調製物または製剤中のアミノ酸配列の安定性を増強するために、配列番号1の変異体が提供され得る。適切には、イヌに投与される調製物または配合中のアミノ酸の溶解性を高めるために、配列番号1の変異体を提供することができる。
【0016】
好適には、配列番号1に記載された配列またはそのフラグメントの変異体を有するアミノ酸配列は、舌下調製物または製剤としてイヌに提供される。例えば、適切には、アミノ酸配列は、舌下経路によってイヌに投与するための生理食塩水溶液中に提供される。適切には、イヌの治療は、例えば、数週間毎(投与の間3~4週間)に、定期的な間隔で行うことができる。
【0017】
好適には、変異体は、配列番号2として示されるアミノ酸配列、または機能的に活性のある配列番号2のフラグメントを含み得るか、またはそれからなる。
【0018】
【化3】

【0019】
図10Aに示される配列番号1および2の配列同一性‐95.7%、比較マトリックスBLOSUM62、GAP OPEN PENALTY:12およびGAP EXTENSION PENALTY:4を使用した場合。
【0020】
好適には、イヌインターフェロン-アルファを大腸菌中で発現させることができる。原核細胞において真核生物タンパク質を発現させることの成功は(ここでの場合のように)非常に予測不可能であることが当業者には理解されるであろう。タンパク質の折りたたみ方や修飾の仕方、輸送タンパク質、発現タグ、細胞機構の違いなど、細胞の種類が異なるため、ミスフォールディング(偽折りたたみ)、劣化、封入体へのパッケージングがよくみられる。あるいは、原核細胞で真核生物タンパク質が正しく折りたたまれていても、原核細胞はタンパク質の表面にマーカー(翻訳後修飾など)を残していてもよい。これらは、その意図された生物学的活性を調節または改善する可能性がある。一般的な溶液は、配列修飾、精製タグ、タンパク質のリフォールディング(高価で、時間がかかり、確率的に成功する)など、当該技術分野で公知である。したがって、本発明者らは、驚くべきことに、大腸菌における本発明のイヌインターフェロン-アルファの発現が、所望の活性を有するイヌインターフェロン-アルファをもたらすことを見出した。
【0021】
好適には、本明細書中に記載されるイヌインターフェロン-アルファまたは変異体または断片は、経口、舌下または皮下投与のために製剤化され得る。
【0022】
別の態様では、本発明は、イヌのアレルギー性そう痒性疾患、特にイヌアトピー性皮膚炎の治療に使用するための医薬組成物に関し、組成物は、本発明のイヌインターフェロン-アルファと、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、イヌのアレルギー性そう痒性疾患、特にイヌアトピー性皮膚炎の治療および/または予防のための方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
(i)それを必要とするイヌに、配列番号1のアミノ酸配列またはその機能的に活性のあるフラグメントもしくは変異体を含むか、またはそれからなるイヌインターフェロン-アルファの治療的に有効な量を投与すること。
【0024】
好適には、変異体は、配列番号1に対する少なくとも90%の同一性、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%の配列同一性、または配列番号1の機能的に活性のあるフラグメントを有するアミノ酸配列を含み、またはそれからなる。
【0025】
好適には、変異体は、H2、G8、G27、N34、E97、S153、およびQ157からなる群より選択される1つ以上の位置で置換を有し得、ここで、位置番号は、一次(プライマリ)構造に基づいて整列されたとき、配列番号1のものと同じ位置に対応する位置として定義される。図10A参照。
【0026】
【化4】

【0027】
好適には、変異体は、配列番号2として示されるアミノ酸配列、または配列番号2の機能的に活性のあるフラグメント(太字で示される配列番号1からのアミノ酸置換)を含んでもよく、または、これからなることとしてもよい。
【0028】
【化5】

【0029】
好適には、イヌインターフェロン-アルファを大腸菌中で発現させることができる。
【0030】
適切には、イヌインターフェロン-アルファは、経口的に、または皮下投与によって投与することができる。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、以下の工程:
(i)大腸菌細胞を提供する、
(ii)イヌインターフェロン-アルファが配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するまたは配列番号1の機能的に活性のあるフラグメントを有する、プロモーター配列制御下でイヌインターフェロン-アルファをコードする異種ヌクレオチド配列で大腸菌細胞を形質転換する、
(iii)イヌインターフェロンアルファを細胞内で発現させる、
を含むイヌインターフェロン-アルファの製造方法を提供する。
【0032】
別の態様では、イヌのアレルギー性そう痒性疾患、特にイヌアトピー性皮膚炎の治療または予防に使用するためのイヌインターフェロン-アルファが提供され、イヌインターフェロン-アルファは、本発明のイヌインターフェロン-アルファの製造方法によって製造される。
【0033】
さらなる態様において、本発明は、イヌのアレルギー性そう痒性疾患、特にイヌアトピー性皮膚炎の治療および/または予防のための方法を提供し、該方法は以下の工程:
(i)本発明のイヌインターフェロン-アルファの製造方法によって製造されたイヌインターフェロン-アルファの治療有効量をそれを必要とするイヌに投与すること、
を含む。
【0034】
発明の詳細な説明
ヒトインターフェロン-アルファ14は、イヌアトピー性皮膚炎の治療に使用されている。しかし、このような使用は、一部のイヌに注射した場合に炎症を引き起こすと判断された。本発明者は驚くべきことに、代表的なイヌインターフェロン-アルファ1/2の断片を悪影響なしにイヌに投与することができ、配列番号1として示される断片がイヌIL-17aおよびGM-CSFに対して特に活性であることを発見した。配列番号1は、参照により本明細書に組み込まれている、受託番号P81255を有するUniprotデータベースに示されている代表的配列の23アミノ酸切断を有するイヌアルファ1/2の大腸菌組換え体である。
【0035】
【化6】

【0036】
特に、配列番号1は、シグナル配列と考えられる代表的な配列P81255の最初の23アミノ酸を省略する。
【0037】
好適には、同様の初期配列を配列番号3により提供することができ、適切には、この対応する配列を含まない配列番号3の断片を提供することができる。
【0038】
驚くべきことに、本発明はまた、配列番号1および配列番号4と90%以上の同一性を有する変異体が、試験されたすべてのサイトカインに対して同様の阻害作用を有することもできることを見出した。
【0039】
イヌのそう痒症は、しばしば免疫を介した過程-アレルギー性そう痒症-に由来するが、そう痒は神経学的または心理学的条件から生じることがある。
【0040】
好適には、本発明のインターフェロンの提供は、神経学的または心理学的条件から、かゆみを有するイヌに利益を与えない。
【0041】
イヌアトピー性皮膚炎の治療または予防に使用するイヌインターフェロン-アルファ
従って、第1の態様において、本発明は、イヌアトピー性皮膚炎の治療または予防に使用するためのイヌインターフェロン-アルファを提供し、ここで、イヌインターフェロン-アルファは、アミノ酸配列番号1またはその機能的に活性のあるフラグメントもしくは変異体を含むか、またはそれからなる。
【0042】
好適には、変異体は、H2、G8、G27、N34、E97、S153およびQ157からなる群より選択される1つ以上の位置で置換を有し得、ここで、位置の番号付けは、一次(プライマリ)構造に基づいて整列された場合に、配列番号1として本明細書に示されるアミノ酸配列の同じ位置に対応する位置として定義される。2つ以上のアミノ酸またはDNA配列を比較するためのツールとしての配列アラインメントは、当技術分野において、特にClustal Omega(登録商標)のようなツールで周知である。
【0043】
好適には、変異体は、H2、G8、G27、N34、E97、S153、およびQ157からなる群から、少なくとも2つ、または、少なくとも3つ、または、少なくとも4つ、または、少なくとも5つ、または、少なくとも6つの置換を有していてもよく、ここで、位置の番号付けは、一次構造に基づいて整列された場合に、配列番号1として本明細書に示されたアミノ酸配列の同じ位置に対応する位置として定義される。適切には、変異体は、7つの位置すべてで置換され得る。
【0044】
好適には、変異体がH2、G8、G27、N34、E97、S153およびQ157以外の位置に置換を有し、ここで、位置の番号付けは、一次構造に基づいて整列された場合に、配列番号1として本明細書に示されたアミノ酸配列の同じ位置に対応する位置として定義され、上記置換は保存的置換であり、変異体は配列番号1の機能的に活性のある変異体である。
【0045】
好適には、位置H2、G8、G27、N34、E97、S153およびQ157における少なくとも1つ以上の置換を以下から選択することができる:
i)H2Dまたは同等のアスパラギン酸またはヒスチジンについての保存的置換、
ii)G8Sまたは同等のグリシンまたはセリンについての保存的置換、
iii)G27Sまたは同等のグリシンまたはセリンについての保存的置換、
iv)N34Tまたは同等のアスパラギンまたはチロシンについての保存的置換、
v)E97Dまたは同等のアスパラギン酸またはグルタミン酸(glutamic acid of aspartic acid)についての保存的置換、
vi)S153Lまたは同等のリシンまたはセリン(serine of lysine)についての保存的置換、および
vii)Q157Rまたは同等のグルタミンまたはアルギニン(glutamine and arginine)ついての保存的置換であって、
ここで、位置の番号付けは、一次構造に基づいて整列された場合に、配列番号1として本明細書に示されたアミノ酸配列の同じ位置に対応する位置として定義される。
【0046】
好適には、変異体は、H2D、G8S、G27S、N34T、E97D、S153LおよびQ157Rの少なくとも1つ以上の以下の置換を有することができ、ここで、位置の番号付けは、一次構造に基づいて整列された場合に、配列番号1として本明細書に示されたアミノ酸配列の同じ位置に対応する位置として定義される。本発明者らは、配列番号1の機能的活性を保持しながら、これらの置換の全てを行うことができることを実証した。従って、当業者は、配列番号1の機能的活性を保持しながら、かかる置換の任意の組合せを行うことができることを認識するであろう。
【0047】
好適には、変異体は配列番号2のアミノ酸配列を有していてもよい。図5~9は、この変異体が配列番号1の機能的に活性のある変異体であることを示す。
【0048】
好適には、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるイヌインターフェロン-アルファの機能的に活性のある断片または変異体は、IL-17Aおよび/またはGM-CSFと同様の改善された活性を有する。本発明者は、配列番号1のアミノ酸配列を有するイヌインターフェロン-アルファまたは配列番号2のアミノ酸配列を有する合成イヌインターフェロン-アルファのような機能的に活性のある変異体が、全体ビーグル血液で試験した場合に、ヒトのインターフェロン-アルファ-14と比較してIL-17AおよびGM-CSFの抑制に対して向上効果を有するという驚くべき発見をした。ヒトのインターフェロン-アルファ-14および配列番号1と配列番号1との比較については図2および3を、配列番号2がIL-17AおよびGM-CSFに対して配列番号1と同様の活性を有することを示す図5および6を参照のこと。
【0049】
アトピー性皮膚炎はTh2関連疾患であり、IL‐17Aの増加が関与する。
また、顆粒球の増殖や誘引に関与するGM-CSFなどのケモカインの有意な増加も認められる。有利には、本発明者らは、配列番号1に示されるようなイヌインターフェロン-アルファまたは配列番号2に示されるような機能的に活性のある変異体を用いると、等価用量のヒトインターフェロン-アルファ-14よりもIL-17Aの増加がより効果的に減少することを示した。例えば、ビーグル全血中のヒトインターフェロン-アルファ-14のIC50投与量は1×104IUであり、配列番号1のイヌインターフェロン-アルファを用いたIC50は1×102 IUである。同様に、イヌインターフェロンアルファは、特に高用量でイヌの皮膚炎に関連するGM-CSFの増加を減少させるのにより効果的である。
【0050】
適切には、イヌインターフェロン-アルファを大腸菌中で発現させることができる。
適切には、イヌインターフェロン-アルファは、適切な送達のために処方され得る。例えば、経口または皮下投与による。適切な送達は、非経口的に、または局所的に、または当技術分野における任意の他の適切な手段であり得る。
【0051】
適切には、イヌインターフェロン-αは、50IU/ml、1×102IU/ml、1×103IU/ml、1×104IU/ml、1×105IU/mlまたは1×106IU/mlの用量で、投与のために処方され得る。適切には、イヌインターフェロン-アルファは、0.1mg~1mg、1mg~3mg、3mg~5mgまたは5mg~10mgの用量で投与するために処方され得る。例えば、イヌの舌下での使用は、例えば1mlのPBS中、104IU/Kgであってもよい。
【0052】
適切には、イヌインターフェロンアルファを1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回、局所投与することとしてもよい。典型的には、舌下投与では、1日1回投与する。
【0053】
別の態様では、本発明は、イヌのアレルギー性そう痒性疾患、好適にはイヌアトピー性皮膚炎の治療に使用するための医薬組成物に関し、ここで、当該組成物は、本発明のイヌインターフェロン-アルファおよび薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む。
【0054】
医薬組成物
本発明に係る医薬組成物、および本発明に従って使用するための医薬組成物は、活性成分に加えて、薬学的に受容可能な賦形剤、担体、緩衝安定剤または当業者に公知の他の材料を含み得る。そのような物質は毒性がなく、活性成分の有効性を妨げないものである。担体または他の物質の正確な性質は、投与経路に依存し、これは、例えば、経口、静脈内、鼻腔内、または経口または鼻腔吸入であり得る。製剤は、液体、例えば、pH 6.8~7.6の非リン酸緩衝液を含有する生理食塩溶液、または凍結乾燥もしくはフリーズドライ粉末であり得る。
【0055】
イヌアトピー性皮膚炎の治療および/または予防のための方法
さらなる態様において、本発明は、イヌのアレルギー性そう痒性疾患、好適にはイヌアトピー性皮膚炎の治療および/または予防のための方法に関し、該方法は以下の工程:
(i)それを必要とするイヌに、配列番号1のアミノ酸配列またはその機能的に活性のあるフラグメントもしくは変異体を含むか、またはそれからなるイヌインターフェロン-アルファの治療的に有効な量を投与する、
ことを含む。
【0056】
好適には、変異体は、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号1の機能的に活性のあるフラグメントを含む、または、これからなることとしてもよい。
【0057】
好適には、変異体は、本明細書に記載される任意の変異体であってもよい。
アレルギー性そう痒性疾患、特に上記アトピー性皮膚炎の治療に使用するために記載されているような変異体もまた、本方法の治療態様において使用され得る。
【0058】
適切には、イヌインターフェロン-アルファは、経口的に、または皮下投与によって投与することができる。好適には、本発明のインターフェロンは、治療されるイヌに舌下投与されることとしてももよい。
【0059】
イヌインターフェロンアルファの産生
さらなる態様では、本発明は、以下の工程:
(i)大腸菌細胞を提供する、
(ii)イヌインターフェロン-アルファが配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するまたは配列番号1の機能的に活性のあるフラグメントを有し、プロモーター配列の制御下でイヌインターフェロン-アルファをコードする異種ヌクレオチド配列で大腸菌細胞を形質転換する、
(iii)イヌインターフェロンアルファを細胞内で発現させる、
ことを含むイヌインターフェロン-アルファの製造方法を提供する。
【0060】
好適には、イヌインターフェロン-アルファは、配列番号1の機能的に活性のある変異体であり得る。
【0061】
好適には、イヌインターフェロン-アルファをコードする異種ヌクレオチド配列は、配列番号1と少なくとも91%もしくは少なくとも92%もしくは少なくとも94%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも96%もしくは少なくとも97%もしくは少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードし得る。
【0062】
好適には、イヌインターフェロン-アルファを符号化する異種ヌクレオチド配列は、配列番号1の機能的に活性のある変異体をコードし得、ここで、該変異体は本明細書に記載されるような任意の変異体である。好適には、イヌインターフェロン-アルファをコードする異種ヌクレオチド配列は、上記のイヌそう痒性疾患またはイヌアトピー性皮膚炎の治療に使用するために記載された任意の変異体をコードしていてもよい。
【0063】
別の態様では、イヌそう痒性疾患またはイヌアトピー性皮膚炎の治療または予防に使用するためのイヌインターフェロン-アルファが提供され、イヌインターフェロン-アルファは、本発明のイヌインターフェロン-アルファの製造方法によって製造される。
【0064】
さらなる態様において、本発明は、イヌそう痒性疾患またはイヌアトピー性皮膚炎の治療および/または予防のための方法を提供し、該方法は、以下の工程:
(i)本発明のイヌインターフェロン-アルファの製造方法によって製造されたイヌインターフェロン-アルファの治療有効量をそれを必要とするイヌに投与すること、
を含む。
【0065】
定義
フラグメント
フラグメントは、配列番号1の少なくとも100、少なくとも115、少なくとも120の隣接アミノ酸を含み得、それらは機能的に活性がある。好適には、フラグメントは、例えば、cDNAのC末端連続欠失を用いて決定することができる。次いで、欠失構築物を適切なプラスミドにクローン化することができる。次いで、これらの欠失突然変異体の活性を、本明細書に記載されるように生物学的活性について試験することができる。フラグメントは、当技術分野で公知の適切な分子生物学的方法を用いて生成することができる。
【0066】
機能的活性がある
機能的に活性がある配列番号1の断片または変異体は、以下のサイトカイン:IL-17A、GM-CSF、IL-13、IL-8およびIL-31の少なくとも1つで、配列番号1の活性と類似またはそれ以上の活性を有するものである。同様に、1×102 IU、1×103 IU、1×104 IU、1×105 IU、1×106 IUなどの規定された用量では、応答に統計的有意差がないことを意味する。好適には、配列番号1として示されるイヌインターフェロン-アルファとフラグメントまたは変異体との間の活性の比較は、ビーグル白血球を用いて行うことができる。好ましくは、変異体は、特定の用量で、サイトカインの少なくとも2つまたは少なくとも3つまたは少なくとも4つについて同様のまたは改善された活性を有する。より好ましくは、変異体は、特定の用量で、5つのサイトカインすべてに対して同様または改善された活性を有した。
【0067】
変異体(バリアント)
変異体とは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を意味する。好適には、本発明の変種は、配列番号1と少なくとも90%もしくは少なくとも91%もしくは少なくとも92%もしくは少なくとも94%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも96%もしくは少なくとも97%もしくは少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有することができる。変異体は、配列番号1のポリペプチド配列を包含し、これは、アミノ酸の置換、特に、タンパク質の生物学的活性または立体配置のいかなる有意な修飾、または折りたたみをもたらさない可能性が高いことが知られている置換を包含する。これらの置換は、典型的には保存置換として知られており、当技術分野において公知である。例えば、アルギニン、リジンおよびヒスチジンの基は、互換性のある塩基性アミノ酸であることが知られている。好適には、同一電荷のアミノ酸において、サイズまたは疎水性が互いに置換され得る。適切には、インターフェロン-アルファサブタイプのアミノ酸配列アラインメントの分析に基づいて任意の置換を選択して、配列がアラインメントされたときに、類似または同一の位置に他のアルファサブタイプ中に存在するアミノ酸へのアミノ酸置換を提供することができる。変異体は、当技術分野で公知の適切な分子生物学的方法を用いて作製することができる。好適には、変異体は、代替的なイヌインターフェロン-アルファ配列からの置換を導入することに基づくことができる。
【0068】
処置/治療
用語「処置」は、本明細書では、イヌに有益であり得る任意のレジメンを意味する。処置は、アレルギー性そう痒性疾患、特にアトピー性皮膚炎を考慮し、処置は予防的(予防的治療)でよい。処置には、治癒効果または緩和効果がある。本明細書における「治療的」および「予防的」処置への言及は、その最も広い文脈において考慮されるべきである。「治療的」という用語は、必ずしも、対象が完全に回復するまで治療されることを意味しない。同様に、「予防的」とは、必ずしも対象が最終的に条件に罹患しないことを意味しない。従って、治療的および/または予防的処置は、特定のそう痒状態の症状の改善、または特定のそう痒状態を発症するリスクの予防または減少を含む。「予防的」という用語は、特定の状態の重症度または発症を低下させるものとみなすことができる。「治療的」もまた、既存の状態の重症度を低下させるものであってよい。
【0069】
投与
本発明において使用される活性成分、特に、配列番号1として示されるイヌインターフェロン-α、または本明細書に記載される変異体もしくは断片は、同じ対象に別々に、任意に連続的に投与され得るか、または薬学的組成物もしくは免疫原性組成物として同時に同時投与され得る。医薬組成物は、一般に、意図される投与経路に応じて選択される適切な医薬賦形剤、希釈剤または担体を含む。
【0070】
活性成分は、任意の適切な経路を介して処置を必要とする患者に投与することができる。正確な用量は、以下でより詳細に議論されるように、多数の要因に依存する。
【0071】
1つの適切な投与経路は、局所的に、例えば、皮膚に直接適用される。
【0072】
1つの適切な経路は舌下である。
【0073】
用量
組成物は、好ましくは、「治療有効量」または「所望の量」で個々に投与され、これは、個々に利益を示すのに十分である。本明細書に定義されるように、「有効量」という用語は、少なくとも部分的に所望の応答を得るために、または治療される特定の状態の、発症を遅延させる、または進行を阻害する、または発症もしくは進行を完全に停止するために必要な量を意味する。その量は、治療されるイヌの健康および身体状態、治療されるイヌの分類学的グループ、所望の保護の程度、組成物の配合、医学的状態の評価および他の関連要因に依存して変化する。その量は比較的広い範囲で減少することが予想され、これはルーチンの試験によって決定される。治療の処方(例えば、用量等の決定)は、最終的には、一般開業医、獣医師、医師または他のメディカルドクターの責任の所在および裁量の範囲内であり、そして典型的には、治療されるべき障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、および医師に知られている他の因子を考慮する。最適な用量は、例えば、年齢、性別、体重、治療される状態の重症度、投与される活性成分および投与経路を含む多くのパラメータに基づいて、獣医によって決定され得る。最適な治療反応をもたらし、副作用を減らすために、投与方法を調節することができる。例えば、数回の分割投与は、毎日、毎週、毎月、または他の適切な時間間隔で投与することができ、または、状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に減少させることができる。
【0074】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明の分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0075】
明細書全体を通して、文脈が別途要求する上記を除き、「含む(comprise)」または「備える(include)」または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」または「備える(includes)」もしくは「備えている(including)」のような変形の用語は、記載された整数または整数のグループを有することを意味すると理解されるが、他の整数または整数のグループを除外することは意味しない。
【0076】
ここで、本発明は、以下の非限定的な図および実施例を参照して例示されるが、これらは図示の目的のために提供され、本発明を限定するものと解釈されることは意図されていない。本発明の他の実施形態は、この説明に照らして当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1図1は、本明細書中で配列番号1と称されるUniprot リファレンスP81255を有する代表的なイヌインターフェロン-アルファ1/2の特定の断片のアミノ酸配列を示す。
図2図2は、合成イヌインターフェロン-アルファである配列番号2のアミノ酸配列を示す。
図3図3は、ヒトインターフェロン-アルファ-14と、PHAを用いた刺激の有無によるビーグル全血からのIL-17Aの抑制に関する配列番号1として示されるイヌインターフェロン-アルファとの比較を示す。イヌIC50はヒトのものよりも約100倍良好であると考えられた。
図4図4は、IC50が同じであると考えられるビーグル全血アッセイを用いたGM-CSF産生の抑制に関して、配列番号1として示されるイヌインターフェロン-アルファとヒトインターフェロン-アルファ-14との比較を示す。
図5図5は、配列番号1として示されるイヌインターフェロン-アルファと、ビーグル白血球からのIL-17Aの抑制(PHAで刺激)に関する配列番号2として示される合成インターフェロン-アルファとの比較を示す。
図6図6は、配列番号1として示されるイヌインターフェロン-アルファと、ビーグル白血球によるGM-CSFの抑制に関する配列番号2として示される合成インターフェロン-アルファとの比較を示す(いかなるマイトジェン(分裂促進因子)でも刺激しないアッセイ)。
図7図7は、配列番号1として示されるイヌインターフェロン-アルファと、ビーグル白血球からのIL-13の抑制(PHAで刺激)に関する配列番号2として示される合成インターフェロン-アルファとの比較を示す。
図8図8は、配列番号1として示されるイヌインターフェロン-アルファと、ビーグル白血球からのIL-8の産生の抑制に関する配列番号2として示される合成インターフェロン-アルファとの比較を示す。
図9図9は、0刺激、4μg/mlのCon A+5μg/mlのPWR、および10μg/mlのPHA-Pによるビーグル白血球からのIL-31産生の阻害について、配列番号1として示されるイヌインターフェロン-アルファと配列番号2として示される合成インターフェロン-アルファとの比較を示す。
図10図10は、配列番号1および配列番号2(A)の配列アラインメントおよび配列番号1および配列番号3の配列アラインメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
実験データ
実験1:ビーグルイヌの全血中のIL-17AおよびGM‐CSFに対する、配列番号1として示されるイヌインターフェロン-アルファとヒトのインターフェロン-アルファ14との比較
生存率の判定:
新鮮なイヌ(ビーグル)全血(ソース:Tissue Solutions Ltd.)を、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび1% L‐グルタミンを含有する新鮮なRPMI1640培地で1:100に希釈し、10μlを0.4%トリパンブルー溶液10μlに加え、混合した。さらに10μlをLuna(商標)細胞計数スライド上に置いた。次いで、スライドをLuna‐II(商標)自動細胞カウンター(Logos Biosystems)に入れ、トリパンブルー排除によって細胞の生存率を決定した。
【0079】
全血アッセイプロトコル
クラスIIフード内で、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび1% L‐グルタミンを含むRPMI1640培地で1/10に希釈したヘパリンナトリウム180 U/mlを含むイヌ全血を、無刺激、10μg/mlフィトヘマグルチニン‐P(PHA)または4μg/mlコンカナバリンA(Canavalia ensiformis(タチナタマメ)(ConA)由来)および5μg/ml レクチン(Phytolacca americana(ヨウシュヤマゴボウ)(PWM)由来)とともに、加湿インキュベーターにおける、5% CO2大気の雰囲気で、ヒトrIFN‐アルファ14またはイヌrIFN‐アルファ(配列番号1)のいずれかの濃度範囲の存在下、37℃で72時間インキュベートした。IFN濃度は0、1、5、10、50、100、1,000、10,000、100,000および1,000,000IU/mlであった。各培養濃度は24ウェルプレート中で1mlであった。
【0080】
72時間インキュベーション後、試料を10,000gで5分間遠心分離して細胞を除去し、上清を細胞のペレットを乱さずに注意深く除去し、次の分析のために-20℃で保存する。次いで、上清を、当該技術分野で利用可能な以下のELISA方法論、例えば、R&D Systems、MN、USAから入手可能なELISAアッセイを用いて、GM-CSFおよび/またはIL-17aに関してアッセイする。
【0081】
典型的なELISA手順を用いた。
アッセイ開始の少なくとも16時間前に、1平底96ウェルマイクロプレートを、キャリアタンパク質を含まないリン酸緩衝生理食塩水中の100μlの対応する希釈捕獲抗体でコーティングした。次に、プレートを密封し、室温で一晩インキュベートした。
【0082】
ELISA試薬および上澄みを室温まで加温し、予めコーティングしたELISAプレートを400μlの洗浄バッファー(1xリン酸緩衝生理食塩水+0.05% Tween20)で3回洗浄し、非特異的抗体結合を防止するために300μlの試薬希釈液を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。
【0083】
プレートを再び3回洗浄し、希釈した標準試料100μlを適当なウェルに加えた。次いで、プレートを密封し、振盪(300~500 RPM)して室温で2時間インキュベートした。
【0084】
さらに3回の洗浄サイクルの後、100μlの検出抗体を各ウェルに添加し、次いで、さらに2時間室温で振盪しながらインキュベーションする。
【0085】
プレートをさらに3回洗浄し、希釈した100μlのストレプトアビジン-HRP溶液を各ウェルに加え、次いで暗所で室温で20分間インキュベートした。
【0086】
次いで、プレートをさらに3回洗浄した後、100μlの基質溶液を暗所で20分間加えた。
【0087】
20分後、または標準ウェルが所望の色に達したとき、50μlの停止溶液1M硫酸を加え、典型的には波長450および570nmで、分光光度計を介してプレートを読み取った。
【0088】
図3および4に示されるように、配列番号1として示される特定のイヌインターフェロン-アルファは、ビーグル白血球におけるサイトカインIL-17A GM‐CSF応答の阻害においてヒトアルファ-14よりも優れていた。
【0089】
実験2:配列番号1として示されるイヌインターフェロン-アルファと配列番号2に示される合成イヌアルファとの比較
生存率の判定:
新鮮なイヌ(ビーグル)全血(由来: Tissue Solutions Ltd.)を、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび1% L‐グルタミンを含有する新鮮なRPMI 1640培地で1:100に希釈し、10μlを0.4%トリパンブルー溶液10μlに加え、混合した。さらに10μlをLunaTM細胞計数スライド上に置いた。次いで、スライドをLuna‐IITM自動細胞カウンター(Logos Biosystems)に入れ、トリパンブルー排除によって細胞の生存率を測定した。
【0090】
全血アッセイプロトコル:
クラスIIフード内で作業し、180U/mlヘパリンナトリウムを含むイヌの全血を、1% ペニシリン/ストレプトマイシンおよび1%L‐グルタミンを含むRPMI1640培地で1/10に希釈し、15μg/ml フィトヘマグルチニン‐L(PHA)、100μg/ml PHAまたはサルモネラ・エンテリカ血清型abortus equi(流産胎児に等しい)からの10μg/mlリポ多糖(LPS)のいずれかとともに、イヌrIFN(配列番号1)またはイヌrIFN‐アルファ(配列番号2)のいずれかの所定の濃度範囲の存在下で加湿インキュベーター内の空気中5% CO2 の雰囲気で、37℃で48時間インキュベートした。IFN濃度は0、1、5 10、50、100、1,000、10,000、100,000および1,000,000 IU/mlであった。各培養濃度は24ウェルプレート中で1mlであった。
【0091】
48時間のインキュベーションの後、試料を10,000gで5分間遠心分離して細胞を除去し、上清を細胞のペレットを乱さずに注意深く除去し、そして将来の分析のために-20℃で保存する。次いで、上清を以下のELISA法を用いてアッセイする(製造業者の指示に従う):
GM-CSF‐R&D Systems, MN, USA
IL-13‐Cloud‐Clone Corp, TX, USA
‐ DLdevelop, Jiangsu, China
IL-22‐BlueGene, Shanghai, China
IL-31‐BlueGene, Shanghai, China
IL-17a‐R&D Systems, MN, USA
典型的なELISA手順を用いた。
【0092】
ELISA試薬および上澄みを室温まで加熱し、予めコーティングしたELISAプレートを洗浄バッファー(1×リン酸緩衝液+0.05% Tween 20)で4回洗浄し、非特異的抗体結合を防止するために200μlのアッセイ希釈液を各ウェルに加え、振盪しながら室温で1時間インキュベートした(プロトコルに応じて300~500rpm)。
【0093】
プレートを4回洗浄し、希釈した標準物質100μlおよび試料を適切なウェルに加えた。次いで、プレートを密封し、室温で2時間振盪しながらインキュベートした。
【0094】
さらに4回の洗浄サイクルの後、各ウェルに100μlの検出抗体を添加し、次いで、さらに1時間、室温で振盪しながらインキュベーションする。
【0095】
プレートをさらに4回洗浄し、希釈したアビジン-HRP溶液を各ウェルに加え、次いで30分間室温で振盪しながらインキュベーションする。
【0096】
次いで、プレートを5回洗浄し、30秒~1分間、洗浄の間に浸漬させた後、100μlの基質溶液を加えて暗所で15分経過させた。
【0097】
15分後、または標準ウェルが所望の色に達したとき、100μlの停止溶液1M硫酸を添加し、プレートを典型的には波長450および570nmで、分光光度計を介して読み取った。
【0098】
図5~9に示される結果は、配列番号2として示される合成イヌインターフェロン‐αが配列番号1の機能的に活性のある変異体であることを示す。配列番号1および配列番号2はいずれも、試験したすべてのサイトカインに対して同様の有意な阻害作用を示した。これらのサイトカインIL‐17A、GM‐CSF、IL‐13,IL‐8およびIL‐31はいずれもイヌアトピー性皮膚炎における重要なマーカーとして示されている。
【0099】
本発明の記載された実施形態に対する種々の修正および変形は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態との関連において説明してきたが、請求項に記載した本発明はそのような特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。実際、当業者には自明である、本発明を実施するための説明されたモードの種々の変形は、本発明によってカバーされることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10
【国際調査報告】