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特表2023-535589脳性葉酸欠乏症の発症率又はリスクを低減する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】脳性葉酸欠乏症の発症率又はリスクを低減する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20230810BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20230810BHJP
   A61K 31/714 20060101ALI20230810BHJP
   A61K 31/593 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230810BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230810BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K31/455
A61K31/714
A61K31/593
A61P25/00
A61P3/00
A61P25/18
A61P25/24
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504792
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 IB2021056815
(87)【国際公開番号】W WO2022023977
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】63/056,829
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523025702
【氏名又は名称】ラム、ドミニク マン - キット
(71)【出願人】
【識別番号】523025713
【氏名又は名称】アユブ、ジョージ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラム、ドミニク マン - キット
(72)【発明者】
【氏名】アユブ、ジョージ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE06
4B018MD09
4B018MD18
4B018MD23
4B018ME14
4C086AA01
4C086BC19
4C086CB09
4C086DA14
4C086DA39
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA44
4C086MA52
4C086MA59
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA12
4C086ZA18
4C086ZC21
(57)【要約】
還元型葉酸化合物を投与することを含む、脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連疾患の発症率又は発症リスクを低減する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害の発症率を低減する又は発症リスクを低減する治療において使用するための組成物であって、前記方法は、有効量の還元型葉酸化合物を含む組成物を妊娠可能な年齢の女性に投与するステップを含み、ここで
(a)女性又は女性の性的パートナーが、CFD関連障害の家族歴を有する、
(b)女性又は女性の性的パートナーからの液体サンプル中に1つ又は複数のFRα自己抗体が検出されている、及び/又は
(c)女性又は女性の性的パートナーが、(i)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異がある、又は(ii)MTHFR遺伝子に変異がある近親家族を有する、
上記組成物。
【請求項2】
CFD関連障害の発症率を低減する又は発症リスクを低減する、脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害の発症率を低減する治療において使用するための組成物であって、前記方法は、有効量の還元型葉酸化合物を含む組成物を妊娠可能な年齢の女性に投与するステップを含み、ここで
(a)女性が妊娠していると判定されていない;及び
(b)(i)女性又は女性の性的パートナーが、CFD関連疾患の家族歴を有する;
(ii)女性又は女性の性的パートナーからの液体サンプルにおいて、1つ又は複数のFRα自己抗体が検出されている;又は
(iii)女性又は女性の性的パートナーが
(1)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異がある、又は
(2)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有する、
上記組成物。
【請求項3】
CFD関連障害の発症率を低減する又は発症リスクを低減する、胎児が脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害を発症するリスクを低減する治療において使用するための組成物であって、前記方法は、胎児を産む妊婦に、有効量の還元型葉酸化合物を含む組成物を投与するステップを含み、ここで、該妊婦、該胎児、又は該胎児の生物学的父親が、CFD関連障害の家族歴を有する、上記組成物。
【請求項4】
妊婦、胎児、又は胎児の生物学的父親からの液体サンプルにおいて、1つ又は複数のFRα自己抗体が検出されている、請求項3記載のCFD関連疾患の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項5】
胎児又は妊婦が(i)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異を有する、又は(ii)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有する、請求項3又は4のCFD関連疾患の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項6】
CFD関連障害の発症率を低減する又は発症リスクを低減する、子供が脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害を発症するリスクを低減する治療において使用するための組成物であって、前記方法は、有効量の還元型葉酸化合物を含む組成物を、子供に授乳している女性に投与するステップを含む、上記組成物。
上記組成物。
【請求項7】
子供又は子供の生物学的親がCFD関連障害の家族歴を有する、請求項6に記載のCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項8】
子供又は子供の生物学的親からの液体サンプルにおいて、1つ又は複数のFRα自己抗体が検出されている、請求項6又は7のCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項9】
子供が(i)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異を有する、又は(ii)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有する、請求項6~8のいずれか一項に記載のCFD関連疾患の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項10】
CFD関連障害の発症率を低減する又は発症リスクを低減する、対象が脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害を発症するリスクを低減する治療において使用するための組成物であって、前記方法は、有効量の還元型葉酸化合物を含む組成物を対象に投与するステップを含み、ここで該対象は、CFD関連障害の家族歴を有する、上記組成物。
【請求項11】
対象、対象の生物学的母親又は対象の生物学的父親からの液体サンプルにおいて、1つ又は複数のFRα自己抗体が検出されている、請求項10に記載のCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項12】
対象が(i)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異を有する、又は(ii)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有する、請求項10又は11のCFD関連疾患の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項13】
対象が子供である、請求項10、11又は12のCFD関連疾患の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項14】
子供が3歳未満、2.5歳未満、2歳未満、1.5歳未満、1歳未満、又は6ヶ月未満である、請求項13のCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項15】
前記方法が、有効量の、ビタミンB3、ビタミンB12(メチルコバラミン)、ビタミンD3、及びFRαのサブユニットから選択される1つ又は複数の追加の薬剤を含む組成物を共投与することをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療において使用するための組成物。
【請求項16】
前記方法が、有効量のビタミンB12及び有効量のビタミンD3を含む組成物を共投与することをさらに含む、請求項15に記載のCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項17】
CFD関連障害が、自閉症スペクトラム障害、強迫性障害、注意欠陥/多動性障害、及びうつ病からなる群から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載のCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項18】
液体サンプルが血液サンプルを含む、請求項1、2、4、8、又は11のいずれか一項に記載のCFD関連障害の発症率を低減する又は発症リスクを低減する治療において使用するための組成物。
【請求項19】
血液サンプルが血漿又は血清サンプルである、請求項18に記載のCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療において使用するための組成物。
【請求項20】
血液サンプルが全血サンプル又は全血サンプルの細胞画分である、請求項18のCFD関連疾患の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項21】
液体サンプルが羊水、腹水、脳脊髄液、リンパ液、汗、尿、涙、唾液、胸膜液、心嚢液、腔洗浄液、又は臓器洗浄液サンプルを含む、請求項1、2、4、8、11、又は18~20のいずれか一項に記載のCFD関連疾患の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項22】
還元型葉酸化合物が、フォリン酸、メチルテトラヒドロ葉酸(MTHF)、フォリン酸カルシウム塩、ロイコボリン、レボロイコボリンカルシウム、デクストラロイコボリンとレボロイコボリンの混合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~21のいずれか一項に記載のCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項23】
還元型葉酸化合物がフォリン酸又はMTHFである、請求項22に記載のCFD関連疾患の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項24】
投与するステップが経口投与を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療において使用するための組成物。
【請求項25】
還元型葉酸化合物が食品添加物又は錠剤として投与される、請求項24に記載のCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療における使用のための組成物。
【請求項26】
錠剤が、凍結乾燥形態の還元型葉酸化合物を含む、請求項25に記載のCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物。
【請求項27】
投与するステップが、還元型葉酸化合物を経鼻的に投与することを含む、請求項1~26のいずれか1項に記載のCFD関連疾患の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療において使用するための組成物。
【請求項28】
1つ又は複数の薬学的に許容される剤形を含むCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物であって、少なくとも1つの薬学的に許容される剤形が還元型葉酸化合物を含む組成物、及び請求項1~27のいずれか1項に記載の使用説明書を含む、キット。
【請求項29】
1つ又は複数の薬学的剤形を含むCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物が、ビタミンB12(メチルコバラミン)及びビタミンD3からなる群から選択される1つ又は複数の追加の薬剤を集合的に含む、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
1つ又は複数の薬学的剤形を含むCFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための組成物が、ビタミンB12及びビタミンD3をまとめて含む、請求項29に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ビタミンB‐9(葉酸、フォラート、folate)は、胎児の脳の発達に重要である。ビタミンB‐9の濃度が低いと、特定の人にうつ病を誘発することが知られている。胎児の脳の発達を守るため、アメリカでは1990年代からビタミンB‐9を葉酸(folic acid)の形で食品に添加するようになり、血中のこのビタミンの量が不足することはまれになっている。
【背景技術】
【0002】
人によっては、葉酸(フォラート)が血中に存在するにもかかわらず、適切なレベルで脳に吸収されない場合がある。この状態は脳内葉酸欠乏症(CFD)と呼ばれ、正常な脳の発達と正常な脳機能を妨げ、自閉症スペクトラム障害(ASD)やうつ病などの精神疾患と関連があるとされている。
【0003】
多くの場合、CFDは、血液脳関門(BBB)を通過する血液中の葉酸のレベルが不足することに起因している。葉酸を脳で利用できるようにするため、体内で葉酸は酸化型(葉酸、folic acid)から還元型(メチル葉酸、メチルフォラート)へと変換される。食品に添加されている葉酸は酸化型であるが、脳に吸収される葉酸は還元型である。葉酸(folic acid)からメチル葉酸への変換は、通常、消化器官で行われる。
【0004】
人によっては、MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)と呼ばれる遺伝子の変異体及び/又は消化管内微生物の変異体によって、葉酸が十分に還元されず、血液脳関門を通過することが困難になる場合がある。
【0005】
血液脳関門を通過する葉酸の輸送に影響を与える別の問題として、血液脳関門を通過する葉酸を運ぶ葉酸受容体に対する抗体が、一部の人の血液中に存在することが挙げられる。この抗体は、より効率的な葉酸トランスポーター(「高親和性トランスポーター」)をブロックし、効率の悪い葉酸トランスポーター(「低親和性トランスポーター」)だけを残してしまうのである。低親和性トランスポーターが脳に十分な量の葉酸を輸送するためには、血液中に余分に葉酸を必要とする。したがって、葉酸受容体抗体を持つ人は、この低親和性トランスポーターを動かすために、血中の還元葉酸濃度を高くする必要があり、本願の特許請求の範囲に記載されているように、メチル葉酸又はL‐フォリン酸を補充する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CFD関連障害の治療、発症率の低減、及び/又は発症リスクの低減のための改善された方法に対する必要性が残されている。この問題は、請求項1に定義されるような組成物によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項の対象となる。開示される方法に従って、問題は解決される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本開示は、脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害の発症率を低減する、又は発症リスクを低減するための方法及びキットに関する。
【0008】
一態様において、本発明は、脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害の発症率を低減する又は発症リスクを低減する方法に関し、該方法は、妊娠可能年齢の女性に有効量の還元型葉酸化合物(reduced folate compound)を投与するステップを含み、ここで(a)女性又は女性の性的パートナーがCFD関連障害の家族歴を有する、(b)女性又は女性の性的パートナーからの液体サンプルにおいて1つ又は複数のFRα自己抗体が検出されている、及び/又は(c)女性又は女性の性的パートナーが(i)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異を有する、又は(ii)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有する。
【0009】
一態様では、脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害の発症率を低減する方法が提供され、該方法は、妊娠可能年齢の女性に有効量の還元型葉酸化合物を投与するステップを含み、ここで、(a)女性が妊娠していると判定されていない、(b)(i)女性又は女性の性的パートナーがCFD関連障害の家族歴を有する、(ii)女性又は女性の性的パートナーからの液体サンプルに1つ又は複数のFRα自己抗体が検出されている、又は女性又は女性の性的パートナーが(1)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異を有する、又は(2)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有する。
【0010】
一態様では、胎児が脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害を発症するリスクを低減する方法が提供され、この方法は胎児を産む妊婦に有効量の還元型葉酸化合物を投与するステップを含み、ここで、妊婦、胎児、又は胎児の生物学的父親がCFD関連障害の家族歴を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のFRα自己抗体が、妊婦、胎児、又は胎児の生物学的父親からの液体サンプルにおいて検出されている。いくつかの実施形態では、胎児又は妊婦は、(i)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異を有するか、又は(ii)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有している。
【0011】
一態様では、子供が脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害を発症するリスクを低減する方法が提供され、この方法は、子供に授乳している女性に、有効量の還元型葉酸化合物を投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、子供又は子供の生物学的親は、CFD関連障害の家族歴がある。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のFRα自己抗体が、子供又は子供の生物学的親からの液体サンプルにおいて検出されている。いくつかの実施形態では、子供は、(i)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異を有するか、又は(ii)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有する。
【0012】
一態様では、対象(被験者)が脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害を発症するリスクを低減する方法が提供され、この方法は、有効量の還元型葉酸化合物を対象に投与するステップを含み、ここで、対象はCFD関連障害の家族歴を有する。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のFRα自己抗体が、対象、対象の生物学的母親、又は対象の生物学的父親からの液体サンプルにおいて検出されている。一部の実施形態では、対象は、(i)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異を有するか、又は(ii)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有している。いくつかの実施形態では、対象は子供であり、例えば、3歳未満、2.5歳未満、2歳未満、1.5歳未満、1歳未満、又は6ヶ月未満の子供である。
【0013】
いくつかの実施形態では、提供される方法は、ビタミンB3、ビタミンB12(メチルコバラミン)、ビタミンD3、及びFRαのサブユニットから選択される1つ又は複数の追加の薬剤の有効量を共投与することを更に含む。例えば、いくつかの実施形態では、有効量のビタミンB12及び有効量のビタミンD3を還元型葉酸化合物の有効量と共投与される。
【0014】
いくつかの実施形態では、CFD関連障害は、自閉症スペクトラム障害、強迫性障害、注意欠陥/多動性障害、及びうつ病からなる群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態では、液体サンプルは、血液サンプル、例えば、血漿又は血清サンプル、全血サンプル、又は全血サンプルの細胞画分を含む。いくつかの実施形態では、液体サンプルは、羊水、腹水、脳脊髄液、リンパ液、汗、尿、涙、唾液、胸膜液、心嚢液、腔洗浄液、又は臓器洗浄液サンプルを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、還元型葉酸化合物は、フォリン酸、メチルテトラヒドロ葉酸(MTHF)、フォリン酸カルシウム塩、ロイコボリン、レボロイコボリンカルシウム、デクストラロイコボリン及びレボロイコボリンの混合物、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、還元型葉酸化合物は、フォリン酸又はMTHFである。
【0017】
いくつかの実施形態では、投与するステップは、経口投与を含む。例えば、還元型葉酸化合物は、食品添加物又は錠剤として投与されてもよい。いくつかの実施形態では、錠剤は、凍結乾燥形態の還元型葉酸化合物を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、投与するステップは、還元型葉酸化合物を経鼻的に投与することを含む。
【0019】
一態様では、1つ又は複数の薬学的に許容される剤形を含むキットであって、少なくとも1つの薬学的に許容される剤形が、還元型葉酸化合物、及び本明細書に提供される方法に従って使用するための説明書を含む、上記キットが提供される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の薬学的剤形は、ビタミンB12(メチルコバラミン)及びビタミンD3からなる群から選択される1つ又は複数の追加の薬剤をまとめて含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の薬学的剤形は、ビタミンB12及びビタミンD3を集合的に含む。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本発明は、いくつかの脳性葉酸欠乏症(CFD)関連障害が、治療介入のための臨界期が既に過ぎた後にのみ診断され、治療されるという認識を包含する。例えば、自閉症スペクトラム障害(ASD)の行動症状は、最初に約3~4歳で現れ、ASDの逆転や十分な治療を防ぐには遅すぎる場合がある。さらに、ASDを診断するための行動検査は時間と費用がかかり、早期に導入すれば成功したかもしれない治療介入をさらに遅らせる可能性がある。
【0021】
さらに、既存の葉酸欠乏症への治療介入は、脳性葉酸欠乏症に特有の問題に対処するには不十分である。例えば、妊婦は葉酸(folic acid)のサプリメントを摂取することが推奨されている。しかし、葉酸(folic acid)は血液脳関門を通過して運ばれることはない。他の既存の介入は、十分に早期に介入しないか、潜在的にリスクのある特定のグループの対象を見逃している可能性がある。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、化学的に還元された葉酸化合物(これは、葉酸とは対照的に、血液脳関門を通過して輸送される)を様々な対象(例えば、妊娠可能な女性、妊婦、授乳中の女性、又は子供)に投与することによって、胎児の発達及び幼児期などの早期発達期におけるCFD関連障害の発症又はリスクを低減することにより、これら及び他の問題を克服する。本明細書に開示される方法は、いくつかの実施形態において、脳への葉酸輸送を妨害する葉酸受容体α抗体(FRAA)の影響を回避することができる。
【0023】
定義
本明細書において、「脳性葉酸欠乏症」(CFD)という用語は、一般に、血中葉酸濃度が正常又は不定であるにもかかわらず、脳脊髄液中の5‐メチルテトラヒドロ葉酸(MTHF)の濃度が低いことを特徴とする病態を指している。CFDは、例えば、葉酸輸送及び/又は葉酸代謝(例えば、葉酸還元)に関与する遺伝子産物の特定の変異体及び/又は欠損で生じるような、血液中の葉酸が血液脳関門(BBB)を通過する能力の欠如に起因している。例えば、葉酸受容体α(FRα)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)、及び/又はメテニルテトラヒドロ葉酸合成酵素(MTHFS)の欠損及び/又は変異は、CFDの原因として知られている。その他、血中葉酸受容体α抗体(FRAA)、ミトコンドリア障害、セリン欠乏症、ジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)欠乏症、及び芳香族l‐アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠乏症などがCFDの原因として知られている。
【0024】
本明細書では、「脳性葉酸欠乏症関連疾患」又は「CFD関連疾患」という用語は互換的に用いられ、CFDに関連する様々な状態のいずれかを指す。いくつかの実施形態では、CFD関連障害は、運動失調、自閉症的特徴、ジスキネジア、難聴、低血圧、発作、痙性、視力低下、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数の症状によって特徴付けられる。CFDに関連する障害は、一般に「CFD症候群」と呼ばれることがある。CFDに関連する可能性のある障害の例としては、注意欠陥/多動性障害、自閉症スペクトラム障害(ASD)、双極性障害、てんかん、うつ病、強迫性障害、二分脊椎などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書において、「有効量」という用語は、必要な用量と期間での、所望の結果、例えばCFD関連障害の発症率及び/又は発症リスクの低減を達成するために十分な量を意味する。「有効量」は、適用される状況や、発症率やリスクを低減する特定の障害に依存する場合がある。「有効量」は、単回投与又は複数回(例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回)投与される場合がある。いくつかの実施形態では、「有効量」は、定期的な投与(例えば、1日3回、1日2回、毎日、2日おき、3日おき、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回など)を介して投与される。
【0026】
本明細書で使用する「葉酸受容体α」(略称「FRα」)は、葉酸の活性型である5‐メチルテトラヒドロ葉酸(5‐MTHF)の結合及び輸送に高い親和性を有する葉酸受容体、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)‐アンカー型膜タンパク質のαアイソフォームのことである。FRαは、FOLR1又は葉酸結合タンパク質とも呼ばれる。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「葉酸受容体α抗体」(FRAAと略され、「葉酸受容体α自己抗体」とも呼ばれる)は、FRαに結合することができる抗体を指す。いくつかの実施形態において、FRAAは、脳への葉酸輸送を損なう。例えば、「ブロッキングFRAA」は、葉酸のFRαへの結合を直接妨害する。例えば、「結合FRAA」は、FRαに結合すると、抗体媒介免疫反応を誘発する。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「葉酸結合フラグメント」は、葉酸結合分子(例えば、FRαなどの葉酸受容体)のフラグメントを指し、そのフラグメントは葉酸と結合することができる。
【0029】
CFD又はCFD関連障害の発症率又はリスクを低減する方法
提供される方法は、一般に、1つ又は複数の状況(本明細書においてさらに詳述する)が当てはまる場合に、有効量の還元型葉酸化合物を対象に投与するステップを含む。
【0030】
例えば、妊娠可能な年齢の女性に有効量の還元型葉酸化合物を投与することにより、CFD又はCFD関連障害の発症率を低減する方法が提供され、ここで、女性又は女性の性的パートナーに関する1つ又は複数の状況が適用される。いくつかの実施形態では、女性は、妊娠していると判定されない。いくつかのそのような実施形態では、女性は、妊娠することを計画している。
【0031】
また、妊婦、胎児、及び/又は胎児の生物学的父親に関する1つ又は複数の状況が当てはまる場合、妊婦に還元型葉酸化合物を投与することにより、胎児がCFD又はCFD関連障害を発症するリスクを低減する方法が提供される。
【0032】
また、子供、子供の生物学的母親、又は子供の生物学的父親に関する1つ又は複数の状況が当てはまる場合、(1)子供に授乳している女性、又は(2)子供に、還元型葉酸化合物を投与することにより、子供がCFD又はCFD関連障害を発症するリスクを低減する方法も提供される。
【0033】
本明細書に開示される様々な方法において、以下の状況の1つ又は複数は、対象が本明細書に記載の方法に従って還元型葉酸化合物を投与されるべきことを示す場合がある:(1)CFD関連疾患の家族歴;(2)液体サンプルにおけるFRα自己抗体の検出;及び/又は(3)CFD関連疾患の発症リスク上昇と関連する遺伝子マーカーの存在。
【0034】
家族歴
本開示のいくつかの方法に従って、関連する個人(例えば、対象、対象の性的パートナー、胎児、子供、又は胎児若しくは子供の任意の生物学的親)がCFD関連障害の家族歴を有する場合、CFD関連障害の発症率を低減するために、又は胎児若しくは子供がCFD関連障害を発症するリスクを低減するために、対象に還元型葉酸化合物が投与される場合がある。
【0035】
一般に、CFD関連障害の家族歴は、その個人の近親家族(すなわち、生物学的親、生物学的祖父母、生物学的子、少なくとも一人の生物学的親を共有する兄弟姉妹、生物学的親の兄弟姉妹、又はいとこ)がCFD関連障害であると診断された場合に、その個人はCFD関連障害の家族歴を有することになる。近親家族は、本明細書に開示される方法によって発症率が低減する、又は発症リスクが低減するCFD関連疾患と同一又は異なるCFD関連疾患と診断される場合がある。例えば、いくつかの実施形態において、提供される方法は、関係する個人がASDの家族歴を有する自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症率又は発症リスクを低減する。別の例として、いくつかの実施形態において、提供される方法は、関係する個人が異なるCFD関連障害(例えば、注意欠陥/多動性障害、双極性障害、てんかん、うつ病、強迫性障害、及び二分脊椎)の家族歴を有するASDの発症率又は発症リスクを低減する。
【0036】
FRα自己抗体の検出
本開示のいくつかの方法に従って、関連する個人(例えば、対象、対象の性的パートナー、胎児、子供、又は胎児若しくは子供の任意の生物学的親)からの液体サンプルにおいて1つ又は複数のFRα自己抗体が検出された場合、CFD関連障害の発症率を低減するために、又は胎児若しくは子供がCFD関連障害を発症するリスクを低減するために、対象に還元型葉酸化合物が投与され得る。20 液体サンプルは、血液、羊水、腹水、脳脊髄液、リンパ液、汗、尿、涙、唾液、胸膜液、心嚢液、腔洗浄液、又は臓器洗浄液サンプル、又は前述のいずれかの混合物を含み得る。適切な血液サンプルの例には、血漿サンプル、血清サンプル、全血サンプル、全血サンプルの細胞画分、及び前述のいずれかの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
FRα自己抗体(FRA)を検出する方法には、当技術分野で既知の方法及び本明細書に記載される方法が含まれる。いくつかの実施形態では、方法は、定量的又は半定量的方法である。
【0038】
いくつかの実施形態では、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(例えば、直接ELISA、間接ELISA、又はサンドイッチELISA)が、FRα自己抗体を検出するために使用される。
30 例えば、好適な間接的ELISA形式の1つのバージョンでは、1)FRα(又はその葉酸結合フラグメント)を容器(例えば、ウェル)の表面に固定化し、2)サンプルを容器に添加してインキュベートし(サンプル中のFRAは固定化FRα(又はその葉酸結合フラグメント)に結合しうる)、3)FRAに対する標識抗体を添加してサンプルとインキュベートし、4)標識が測定される。測定されたラベルが多いほど、サンプル中のFRAが多いことを示す。
【0039】
上記の間接ELSAの競合バージョンでは、ステップ3)のFRAに対する標識抗体の代わりに標識葉酸(labeled folic acid)を用い、測定された標識が多いほどサンプル中のFRAが少ないことを示す。
【0040】
適切なサンドイッチELISA法の1つのバージョンでは、1)FRAに対する抗体を容器(例えば、ウェル)の表面に固定化する、2)サンプルを容器に加え、インキュベートする(サンプル中のFRAはFRAに対する固定化された抗体に結合し得る)、3)FRAに対する標識抗体を添加し、サンプルとインキュベートする(これにより、FRAに対する固定化された抗体、サンプルからのFRA、及びFRAに対する標識された抗体のサンドイッチを形成する可能性がある)、及び4)標識を測定する。測定された標識が多いほど、サンプル中のFRAが多いことを示す。このようなサンドイッチELISAアッセイの競合バージョン(測定されたラベル15が少ないほどサンプル中のFRAが多いことを示す)も使用することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、FRα自己抗体を検出するために競合的ラジオイムノアッセイ(RIA)が使用され得る。例えば、FRAを検出する競合RIAの1つのバージョンでは、FRα(又はその葉酸結合フラグメント)でコーティングされた表面を有する容器(例えば、ウェル)に液体サンプルが加えられる。放射性標識された葉酸受容体抗体(FRA)を添加し、その後インキュベートし、次いで容器を洗浄する。放射性標識FRAは、サンプル中のあらゆるFRAと競合し、容器表面にコートされたFRα(又はその葉酸結合性フラグメント)に結合する。放射能が測定され、放射能の減少はサンプル中のFRAが多いことを示す。FRα(又はその葉酸結合フラグメント)の代わりにFRAに対する抗体を用いて血管表面を被覆した競合型RIAも同様に使用することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ラテラルフローイムノアッセイが、FRα自己抗体を検出するために使用される。例えば、そのようなアッセイの1つのバージョンでは、吸収性ストリップは、以下の順序で、(1)金タグ付きFRα(又はその葉酸結合フラグメント)及び金タグ付き対照抗原を含むコンジュゲートパッド;(2)FRAに対する抗体が固定化されている第1のストリップ;及び(3)対照抗体が固定化されている第2のストリップ、を含む。アッセイ中、サンプルはコンジュゲートパッドに流され、サンプル中のFRAは金タグ付きFRα(又はその葉酸結合フラグメント)に結合し、これによりサンプル中のFRAと金タグ付きFRα(又はその葉酸結合フラグメント)の複合体を形成し、一方、コンジュゲートパッドからの対照抗原は流れる際にキャッチアップされる。サンプルは最初のストリップを通過し、そこで形成される複合体はFRAに対する固定化された抗体によって捕捉される。サンプル中に十分なFRAが存在する場合、第1のストリップは着色される。このサンプルは次に第2のストリップに流され、コンジュゲートパッドに元々あった金タグ付き対照抗原が固定化された対照抗体に結合する可能性がある。アッセイに成功すると、第2のストリップが着色する。
【0043】
ラテラルフローアッセイの他のバージョンもまた好適であり得る。例えば、(i)コンジュゲートパッドにおいて、金タグ付きFRα(又はその葉酸結合フラグメント)の代わりに、FRAに対する金タグ付き抗体を用いてもよく、(ii)第1のストリップにおいて、FRAに対する抗体の代わりに、FRα(又はその葉酸結合フラグメント)を用いてもよい。
【0044】
遺伝子マーカー
本開示のいくつかの方法に従い、関連する個体(例えば、対象、対象の性的パートナー、胎児、子供、又は胎児若しくは子供の任意の生物学的親)が(i)CFD関連障害の発症リスク上昇に関連する遺伝子マーカーを有する、又は(ii)CFD関連障害の発症リスク上昇20に関連する遺伝子マーカーを有する近親家族を有する場合に、対象はCFD関連障害の発症率を低減するため又は胎児若しくは子供がCFD関連障害を発症するリスクを低減するために還元型葉酸化合物を投与され得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、遺伝子マーカーは、葉酸還元、葉酸輸送、及び/又は葉酸代謝に関与する遺伝子産物の機能に影響を与える変異又はバリアントと関連しており、例えば、以下のものが挙げられる。葉酸受容体α(FRα)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)、メテニルテトラヒドロ葉酸合成酵素(MTHFS)、ジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)、及び芳香族l‐アミノ酸デカルボキシラート(AADC)。いくつかの実施形態では、遺伝子マーカーは、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子における変異に関連する。
【0046】
還元型葉酸化合物
本明細書で使用されるように、用語「還元型葉酸化合物」は、一般に、還元された葉酸(folateの酸化型)である葉酸化合物(folate compound)を指す。そのような還元型の葉酸は、一般に、葉酸(folic acid)よりも代謝活性が高い。例えば、フォリン酸は、葉酸(folic acid)よりも代謝活性が高く、5,10‐メチレンテトラヒドロ葉酸の即時前駆体となり、これが速やかに代謝されて活性葉酸(5‐メチルテトラヒドロ葉酸(5‐MTHF))が生成される。5‐MTHFは、血液脳関門を通過することができる。
【0047】
好適な還元型葉酸化合物には、これらに限定されないが、フォリン酸(例えば、L‐フォリン酸)、5‐MTHF、及びそれらのアナログ、誘導体、混合物、又は組み合わせが挙げられる。例えば、ロイコボリン(5‐ホルミル誘導体テトラヒドロ葉酸のジアステレオ異性体のラセミ混合物)、レボロイコボリン(ロイコボリンの薬理活性異性体)、及び/又はデクストラロイコボリンとレボロイコボリンの混合物は、還元型葉酸化合物として使用されてもよい。前述のいずれかの誘導体、代謝物、プロドラッグ、立体異性体、多形体、類似体、及び/又は薬学的に許容される塩もまた、好適に使用され得る。例えば、フォリン酸カルシウム、ロイコボリンカルシウム、及びレボロイコボリンカルシウムが使用され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、フォリン酸又はそのアナログ若しくは誘導体を投与することは、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)活性の必要性を回避させる。いくつかの実施形態では、5‐MTHF又はそのアナログ若しくは誘導体を投与することは、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)又はDHFRの必要性を回避させる。
【0049】
追加の薬剤
追加の薬剤もまた、還元型葉酸化合物と共投与することができる。「共投与される」(「と組み合わせて」と互換的に使用され得る用語)は、還元型葉酸化合物及び追加の薬剤が、対象が還元型葉酸化合物と追加の薬剤の両方に同時に曝露されるように、同じ組成物又は別々の組成物で(例えば、同時、順次、又は重複する投与レジメンで)投与してもよいことを意味する。
【0050】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、葉酸の補因子若しくは補酵素又はその代謝物である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、葉酸又は還元型葉酸化合物の吸収及び/又は輸送を改善することが可能である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、葉酸代謝とは無関係な経路で作用するが、対象における欠乏を補うことができ、及び/又はその他の方法で対象に利益を提供することができる。例えば、追加の薬剤は、還元型葉酸化合物を投与されている対象において最適レベルよりも低いレベルで典型的に見出される薬剤であり得る。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、その欠乏がより高いレベルの葉酸(フォラート)(例えば、ビタミンB9)の存在下で覆い隠され得る薬剤である。例えば、ビタミンB12の欠乏は、高いビタミンB9レベルの存在下で覆い隠される可能性がある。
【0051】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤はビタミンである。例えば、追加の薬剤は、ビタミンB3、ビタミンB12(メチルコバラミン)、ビタミンC、ビタミンD3、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、葉酸受容体(例えば、FRα)又はその葉酸結合フラグメントである。
【0053】
2つ以上の追加の薬剤の組み合わせも、本開示の方法に従って投与され得る。例えば、2つ以上の追加の薬剤は、ビタミンB12及びビタミンD3を含んでいてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、2つ以上の追加の薬剤は、ビタミンB12、ビタミンC、及びビタミンD3を含む。
【0055】
組成物
【0056】
以下、CFD関連障害の発症率の低減又は発症リスクの低減の治療に使用するための例示的な組成物が開示される。
【0057】
組成物は、0.2mg~1.5mgの量で、成分として葉酸(フォラート)、例えばL‐5‐メチル‐テトラヒドロ葉酸のカルシウム塩を、及び任意に1つ又は複数の以下の成分を含む:40mg~250mgの量のN‐アセチルシステイン又はその塩、0.005mg~0.04mgの量のL‐セレノメチオニン、0.009mg~0.06mgの量のコレカルシフェロール、1mg~8mgの量のD‐パントテン酸カルシウム、0.003mg~0.8mgの量のメチルコバラミン、1mg~4mgの量のピリドキサール‐5’‐リン酸、2mg~14mgの量のリボフラビン、0.2mg~2mgの量のチアミンモノニトラート、1mg~3mgの量のゼアキサンチン、4mg~15mgの量のルテイン、1mg~8mgの量のD‐α‐トコフェロール、20mg~65mgの量のアスコルビン酸カルシウム、0.1mg~1mgの量のグルコン酸銅、2mg~33mgの量の酢酸亜鉛。
【0058】
好ましい実施形態では、成分は、以下の量で存在する:0.5mg~1.1mgの量の葉酸(フォラート)、例えばL‐5‐メチル‐テトラヒドロ葉酸のカルシウム塩、及び任意に1つ又は複数の以下の成分、90mg~190mgの量のN‐アセチルシステイン、0.01mg~0.03mgの量のL‐セレノメチオニン、0.015mg~0.045mgの量のコレカルシフェロール、2mg~6mgの量のD‐パントテン酸カルシウム、0.005mg~0.6mgの量のメチルコバラミン、1.6mg~3.5mgの量のピリドキサール‐5’‐リン酸、3.7mg~10.5mgの量のリボフラビン、0.45mg~1.6mgの量のチアミンモノニトラート、1.9mg~2.1mgの量のゼアキサンチン、9mg~11mgの量のルテイン、2mg~6mgの量のD‐α‐トコフェロール、35mg~50mgの量のアスコルビン酸カルシウム、0.2mg~0.8mgの量のグルコン酸銅、4mg~26mgの量の酸化亜鉛。
【0059】
別の実施形態では、組成物は、以下の量の成分を含む:0.9mgの量の葉酸(フォラート)、例えばL‐5‐メチル‐テトラヒドロ葉酸のカルシウム塩、及び任意に1つ又は複数の以下の成分、180mgの量のN‐アセチルシステイン、0.02mgの量のL‐セレノメチオニン、0.0375mgの量のコレカルシフェロール、5mgの量のD‐パントテン酸カルシウム、0.5mgの量のメチルコバラミン、3mgの量のピリドキサール5’‐リン酸、10mgの量のリボフラビン、1.5mgの量のチアミンモノニトラート、2mgの量のゼアキサンチン、10mgの量のルテイン、5mgの量のD‐α‐トコフェロール、45mgの量のアスコルビン酸カルシウム、0.667mgの量のグルコン酸銅、25mgの量の酸化亜鉛。
【0060】
別の好ましい実施形態では、組成物は、以下の量の成分を含む:0.6mgの量の葉酸(フォラート)、例えばL‐5‐メチル‐テトラヒドロ葉酸のカルシウム塩、及び任意に1つ又は複数の以下の成分、100mgの量のN‐アセチルシステイン、0.02mgの量のL‐セレノメチオニン、0.02mgの量のコレカルシフェロール、3mgの量のD‐パントテン酸カルシウム、0.009mgの量のメチルコバラミン、2.1mgの量のピリドキサール5’‐リン酸、4.2mgの量のリボフラビン、0.55mgの量のチアミンモノニトラート、2mgの量のゼアキサンチン、10mgの量のルテイン、3mgの量のD‐α‐トコフェロール、40mgの量のアスコルビン酸カルシウム、0.1mgの量のグルコン酸銅、5mgの量の酸化亜鉛。
【0061】
組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。
【0062】
さらに、記載された組成物の成分として、他の葉酸塩を使用することもできる。このような他の塩は、例えば、葉酸のマグネシウム塩、葉酸のナトリウム塩、及び葉酸の亜鉛塩である。これらの塩の混合物も考えられるので、組成物は、2つ以上の異なる葉酸塩、例えば葉酸カルシウム塩と葉酸マグネシウム塩を含む。
【0063】
投与
本明細書に記載される還元型葉酸化合物及び/又は追加の薬剤は、意図する対象への投与に適した様々な剤形に製剤化することができる。多くの実施形態では、還元型葉酸化合物及び/又は追加の薬剤は、全身経路、例えば、経口又は経鼻により投与される。例えば、還元型葉酸化合物及び/又は追加の薬剤は、食品添加物として、又は経口摂取のための錠剤として製剤化されてもよい。いくつかの実施形態では、錠剤は、還元型葉酸化合物及び/又は追加の薬剤を凍結乾燥形態で含む。別の例として、還元型葉酸化合物及び/又は追加の薬剤は、エアロゾルとして(例えば、エアロゾル化粒子として)製剤化されてよく、これは、鼻内送達を達成するために対象によって吸入され得る。
【0064】
キット
提供されるキットは、一般に、(1)還元型葉酸化合物を含む1つ又は複数の薬学的に許容される剤形;及び(2)本明細書に開示される方法に従って使用するための説明書を含む。このような説明書は、例えば、以下のうちの1つ又は複数に関する情報を含み得る:1つ又は複数の薬学的に許容される形態を投与されることが意図される対象及び/又は推奨される投与レジメン。
【0065】
また、1つ又は複数の薬学的に許容される剤形は、本明細書に開示される1つ又は複数の追加の薬剤、例えばビタミンB12(メチルコバラミン);ビタミンD3;ビタミンC;ビタミンB12とビタミンD3の組み合わせ;又はビタミンB12、ビタミンC、及びビタミンD3の組み合わせなどを含むことができる。
【0066】
一実施形態では、脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害の発症率を低減するか、又は発症リスクを低減する方法が開示され、該方法は
妊娠可能な年齢の女性に、有効量の還元型葉酸化合物を投与するステップを含み、ここで、
(a)女性又は女性の性的パートナーが、CFD関連障害の家族歴を有する、
(b)女性又は女性の性的パートナーからの液体サンプル中に1つ又は複数のFRα自己抗体が検出される、及び/又は
(c)女性又は女性の性的パートナーが、(i)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異を有する、又は(ii)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有する。
【0067】
別の実施形態では、脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害の発症率を低減する方法が開示され、該方法は
有効量の還元型葉酸化合物を妊娠可能な年齢の女性に投与するステップを含み、ここで、
(d)女性が妊娠していると決定されていない;及び
(e)(i)女性又は女性の性的パートナーがCFD関連疾患の家族歴を有する;
(ii)女性又は女性の性的パートナーからの液体サンプルにおいて、1つ又は複数のFRα自己抗体が検出されている;又は
(iii)女性又は女性の性的パートナーが
(1)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異がある、又は(2)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有する。
【0068】
さらなる実施形態では、胎児が脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害を発症するリスクを低減する前記方法が記載され、該方法は、胎児を宿す妊婦に有効量の還元型葉酸化合物を投与するステップを含み、ここで、妊婦、胎児、又は胎児の生物学的父親がCFD関連障害の家族歴を有する。
【0069】
別の実施形態では、1つ又は複数のFRα自己抗体が、妊婦、胎児、又は胎児の生物学的父親からの液体サンプルにおいて検出されている。
【0070】
この方法のさらなる実施形態では、胎児又は妊婦は、(i)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異を有する、又は(ii)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有している。
【0071】
別の実施形態では、子供が脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害を発症するリスクを低減する方法であって、子供に授乳している女性に有効量の還元型葉酸化合物を投与するステップを含む方法が開示される。
【0072】
別の実施形態では、子供又は子供の生物学的親は、CFD関連障害の家族歴がある。
【0073】
さらに別の実施形態では、1つ又は複数のFRα自己抗体が、子供又は子供の生物学的親からの液体サンプルで検出されている。
【0074】
さらなる実施形態では、子供は、(i)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異を有するか、又は(ii)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有している。
【0075】
さらなる実施形態では、対象が脳性葉酸欠乏症(CFD)又はCFD関連障害を発症するリスクを低減する方法であって、対象に有効量の還元型葉酸化合物を投与するステップであって、対象がCFD関連障害の家族歴を有する、ステップを含む方法が開示される。
【0076】
別の実施形態では、1つ又は複数のFRα自己抗体が、対象、対象の生物学的母親、又は対象の生物学的父親からの液体サンプルにおいて検出されている。
【0077】
さらなる実施形態では、対象は、(i)メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に変異を有するか、又は(ii)MTHFR遺伝子に変異を有する近親家族を有している。
【0078】
別の実施形態では、対象は子供である。
【0079】
さらなる実施形態では、子供は、3歳未満、2.5歳未満、2歳未満、1.5歳未満、1歳未満、又は6か月未満である。
【0080】
別の実施形態では、方法は、ビタミンB3、ビタミンB12(メチルコバラミン)、ビタミンD3、及びFRαのサブユニットから選択される1つ又は複数の追加の薬剤の有効量を共投与することをさらに含む。
【0081】
さらなる実施形態では、方法は、有効量のビタミンB12と有効量のビタミンD3とを共投与することをさらに含む。
【0082】
別の実施形態では、CFD関連障害は、自閉症スペクトラム障害、強迫性障害、注意欠陥/多動性障害、及びうつ病からなる群から選択される。
【0083】
さらに別の実施形態では、液体サンプルは、血液サンプルを含む。
【0084】
さらなる実施形態では、血液サンプルは、血漿又は血清サンプルである。
【0085】
別の実施形態では、血液サンプルは、全血サンプル又は全血サンプルの細胞画分である。
【0086】
さらに別の実施形態では、液体サンプルは、羊水、腹水、脳脊髄液、リンパ液、汗、尿、涙、唾液、胸膜液、心嚢液、腔洗浄液、又は臓器洗浄液サンプルを含む。
【0087】
別の実施形態では、還元型葉酸化合物は、フォリン酸、メチルテトラヒドロ葉酸(MTHF)、フォリン酸カルシウム塩、ロイコボリン、レボロイコボリンカルシウム、デクストラロイコボリン及びレボロイコボリンの混合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0088】
さらなる実施形態において、還元型葉酸化合物は、フォリン酸又はMTHFである。
【0089】
別の実施形態では、投与するステップは、経口投与を含む。
【0090】
さらなる実施形態では、還元型葉酸化合物は、食品添加物又は錠剤として投与される。
【0091】
さらなる実施形態において、錠剤は、凍結乾燥形態の還元型葉酸化合物を含む。
【0092】
別の実施形態では、投与するステップは、還元型葉酸化合物を経鼻的に投与することを含む。
【0093】
他の実施形態
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、本発明はさらなる変更が可能であり、本願は、一般的に、本発明の原理に従う本発明の任意の変形、使用、又は適応を対象とすることが意図され、本発明が属する技術分野において既知又は慣用の範囲内にあり本明細書で前に示した本質的な特徴に適用され得る本開示からの展開を含むことが理解されよう。
【国際調査報告】