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▶ ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2023-535590試薬の濃度をモニタリングする方法及び装置、電気デバイス、及びコンピュータ読み出し可能記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】試薬の濃度をモニタリングする方法及び装置、電気デバイス、及びコンピュータ読み出し可能記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
G01N35/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504825
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 CN2020106115
(87)【国際公開番号】W WO2022021289
(87)【国際公開日】2022-02-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500113648
【氏名又は名称】ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】イン、リー
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058GB05
2G058GB10
2G058GD03
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】試薬濃度をモニタリングする方法、装置、電気デバイス、コンピュータ読み出し可能記憶媒体を提供する。
【解決手段】本発明の方法は設定濃度を有する現在の試薬の充填の間に測定される現在の試薬の第1濃度を取得すること、以前の試薬の充填及び吸い出しのプロセスにおいて決定されるキャリーオーバの現在の体積を取得すること、現在の試薬の吸い出しの間に測定される現在の試薬の第2濃度を取得するとともに、設定濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、現在の試薬の第3濃度を決定すること、第1濃度、第2濃度及び試薬ボトルの容量に基づいてキャリーオーバの現在の体積をアップデートすること、及び第3濃度が設定制限濃度未満である場合に、現在の試薬の置き換えを通知すること及び/又はより高い濃度の試薬で現在の試薬をリフレッシュすることを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬ボトルから液体流路を介して容器内への予め設定された濃度を有する現在の試薬の充填の間に測定される現在の試薬の第1の濃度を取得すること、
容器内への以前の試薬の充填及び容器からの以前の試薬の吸い出しのプロセスにおいて決定される、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積を取得すること、
容器から液体流路を介して試薬ボトルへの現在の試薬の吸い出しの間に測定される現在の試薬の第2の濃度を取得するとともに、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、容器から試薬ボトルへ現在の試薬を吸い出した後の現在の試薬の第3の濃度を決定すること、
第1の濃度、第2の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいて容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積をアップデートすること、及び
第3の濃度が予め設定された制限濃度未満である場合に、現在の試薬の置き換えをユーザに対して通知すること及び/又はより高い濃度の試薬で現在の試薬をリフレッシュすること、
を含む、試薬の濃度をモニタリングするコンピュータにより実施される方法。
【請求項2】
予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、容器から試薬ボトルへ現在の試薬を吸い出した後の現在の試薬の第3の濃度を決定することが、
現在の試薬が容器内に充填された後に、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて容器内の現在の試薬の濃度を決定すること、
現在の試薬が容器から試薬ボトルへ吸い出された後に、予め設定された濃度を有する現在の試薬が補充される試薬ボトルを制御すること、及び
容器内の現在の試薬の濃度、試薬ボトルの容量、予め設定された濃度及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度を決定すること、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて容器内の現在の試薬の濃度を決定することが、
式:Vaf = (Vb - Vco)×Cbfを使用して容器内の現在の試薬の主要成分の体積を計算すること、及び
式:Caf = Vaf÷Vbを使用して、容器内の現在の試薬の濃度を計算すること、
を含み、
Vafは容器内の現在の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoはキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、そして、Cbfは予め設定された濃度を表し、Cafは容器内の現在の試薬の濃度を表す、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
容器内の現在の試薬の濃度、試薬ボトルの容量、予め設定された濃度及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度を決定することが、
式:Vad = (Vb - Vco) ×Caf + Vco×Cbfを使用して試薬ボトル内の現在の試薬の主要成分の体積を計算すること、及び
式:Cad = Vad÷Vbを使用して試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度を計算すること、
を含み、
Vadは試薬ボトル内の現在の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoはキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、Cbfは予め設定された濃度を表し、Cafは容器内の現在の試薬の濃度を表し、そしてCadは第3の濃度を表す、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第1の濃度、第2の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいて容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積をアップデートすることが、
式:Vco’ = (CDF - CDD)/CDF×Vbを使用してアップデートされたキャリーオーバの体積を計算すること、
キャリーオーバの現在の体積をアップデートされたキャリーオーバの体積に置き換えること、
を含み、
Vco’はアップデートされたキャリーオーバの体積を表し、CDDは現在の試薬の第2の濃度を表し、CDFは現在の試薬の第1の濃度を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表す、
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
現在の試薬がエタノール及びキシレンを含む群から選択される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
予め設定された濃度を有する現在の試薬を試薬ボトルから液体流路を介して容器内へ充填する間に測定される現在の試薬の第1の濃度を取得するように構成される第1の取得モジュールと、
容器の中に以前の試薬を充填するとともに以前の試薬を容器から吸い出すプロセスにおいて決定される、容器及び液体流路内のキャリーオーバの現在の体積を取得するように構成される第2の取得モジュールと、
容器から液体流路を介した試薬ボトルへの現在の試薬の吸出しの間に測定される現在の試薬の第2の濃度を取得するとともに、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、現在の試薬を容器から試薬ボトルへ吸い出した後の現在の試薬の第3の濃度を決定するように構成される決定モジュールと、
第1の濃度、第2の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいて容器及び液体流路内のキャリーオーバの現在の体積をアップデートするように構成されるアップデートモジュールと、
第3の濃度が予め設定された制限濃度未満である場合に、現在の試薬の置き換えをユーザに対して通知するように構成される通知モジュール及び/又はより高い濃度の試薬で現在の試薬をリフレッシュするように構成されるリフレッシュモジュールと、
を含む試薬の濃度をモニタリングする装置。
【請求項8】
決定モジュールが、
現在の試薬が容器内に充填された後に、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて容器内の現在の試薬の濃度を決定するように構成される第1の決定ユニットと、
現在の試薬を容器から試薬ボトルへ吸い出した後に、容器から試薬ボトルへ吸い出されるべき現在の試薬を制御するとともに、予め設定された濃度を有する現在の試薬が補充されるように試薬ボトルを制御するように構成される制御ユニットと、
容器内の現在の試薬の濃度、試薬ボトルの容量、予め設定された濃度及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度を決定するように構成される第2の決定ユニットと、
を含む
請求項7に記載の装置
【請求項9】
第1の決定ユニットが、
式:Vaf = (Vb - Vco)×Cbfを使用して容器内の現在の試薬の主要成分の体積を計算するように構成される第1の計算サブモジュールと、
式:Caf = Vaf÷Vbを使用して、容器内の現在の試薬の濃度を計算するように構成される第2の計算サブモジュールと、
を含み、
Vafは容器内の現在の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoはキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、そして、Cbfは予め設定された濃度を表し、Cafは容器内の現在の試薬の濃度を表す、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
第2の決定ユニットが、
式:Vad = (Vb - Vco) ×Caf + Vco×Cbfを使用して試薬ボトル内の現在の試薬の主要成分の体積を計算するように構成される第3の計算サブモジュールと、
式:Cad = Vad÷Vbを使用して試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度を計算するように構成される第4の計算サブモジュールと、
を含み、
Vadは試薬ボトル内の現在の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoはキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、Cbfは予め設定された濃度を表し、Cafは容器内の現在の試薬の濃度を表し、そしてCadは第3の濃度を表す、
請求項8に記載の装置。
【請求項11】
アップデートモジュールが、
式:Vco’ = (CDF - CDD)/CDF×Vbを使用してアップデートされたキャリーオーバの体積を計算するように構成される第3の決定ユニットと、
キャリーオーバの現在の体積をアップデートされたキャリーオーバの体積に置き換えるように構成される置換ユニットと、
を含み、
Vco’はアップデートされたキャリーオーバの体積を表し、CDDは現在の試薬の第2の濃度を表し、CDFは現在の試薬の第1の濃度を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表す、
請求項7~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
現在の試薬がエタノール及びキシレンを含む群から選択される、請求項7~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
プロセッサと、
プロセッサによって実行可能な指示を記憶するように構成されるメモリと、
を含み、
プロセッサによって指示が実行される時に、プロセッサが請求項1~6のいずれか1項に記載の方法を実行する、
電気デバイス。
【請求項14】
濃度メータ、キャッシュ、コントローラ及びプロセッサを含み、
コントローラが、予め設定された濃度を有する現在の試薬を、試薬ボトルから液体流路を介して容器内へ充填されるように制御するとともに、現在の試薬を容器から液体流路を介して試薬ボトルへ吸い出すように構成され、
濃度メータが、充填の間に現在の試薬の第1の濃度を測定するとともに、吸い出しの間に現在の試薬の第2の濃度を測定するように構成され、
キャッシュが、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量、容器及び液体流路内のキャリーオーバの現在の体積及び予め設定された制限濃度を含むパラメータをキャッシュするように構成され、
プロセッサが、
充填の間に測定される現在の試薬の第1の濃度を取得し、
予め設定された濃度、水分濃度、試薬ボトルの容量、予め設定された制限濃度、及び容器内に残るキャリーオーバの現在の体積をキャッシュから取得し、
吸い出しの間に測定される現在の試薬の第2の濃度を取得し、
予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、現在の試薬を容器から試薬ボトルへ吸い出した後の現在の試薬の第3の濃度を決定し、
第1の濃度、第2の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいて容器及び液体流路内のアップデートされたキャリーオーバの現在の体積を決定するとともに、キャッシュにセーブされたキャリーオーバの現在の体積をアップデートされたキャリーオーバの現在の体積に置き換え、
第3の濃度が予め設定された制限濃度未満である場合に、現在の試薬の置き換えをユーザに対して通知する及び/又はより高い濃度の試薬で現在の試薬をリフレッシュする、
ように構成される、
試薬の濃度をモニタニングする機器。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法の処理をプロセッサに実施させるための指示を格納した非一時的なコンピュータ読み出し可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織処理技術の分野に関連し、そしてより具体的には試薬の濃度をモニタリングする方法、試薬の濃度をモニタリングするための装置、電気デバイス及びコンピュータ読み出し可能記憶媒体に関連する。
【背景技術】
【0002】
組織処理のために使用される時に試薬はある濃度レベルに適合する必要があり、試薬の濃度をモニタすることは重要な作業である。しかしながら、組織処理の間に、試薬は容器内へ充填されるか又は容器から吸い出されて、容器内に残るキャリーオーバが生じるため、濃度は変化し、正確な試薬の濃度を取得することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の実施形態(複数)は、リアルタイムで試薬純度をモニタして適切な時期に(in time)試薬の置き換えをユーザに対して通知(remind)することができ、それによって組織処理の品質を改善する、試薬の濃度をモニタリングする方法、試薬の濃度をモニタリングするための装置、試薬の濃度をモニタリングするための電気デバイス及びコンピュータ読み出し可能記憶媒体を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示の実施形態(複数)の第1の視点において、試薬の濃度をモニタリングするコンピュータにより実施される方法が提供される。該方法は、試薬ボトルから液体流路を介して容器内への予め設定された濃度を有する現在の試薬(current reagent)の充填の間に測定される現在の試薬の第1の濃度を取得すること;容器内への以前の試薬(previous reagent)の充填及び容器からの以前の試薬の吸い出しのプロセス(過程)において決定される、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバ(繰り越し残量)の現在の体積を取得すること;容器から液体流路を介して試薬ボトルへの現在の試薬の吸い出しの間に測定される現在の試薬の第2の濃度を取得するとともに、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、容器から試薬ボトルへ現在の試薬を吸い出した後の現在の試薬の第3の濃度を決定すること;第1の濃度、第2の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいて容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積をアップデートすること;及び第3の濃度が予め設定された制限濃度未満である場合に、現在の試薬の置き換えをユーザに対して通知すること及び/又はより高い濃度の試薬で現在の試薬をリフレッシュすること;を含む。
【0006】
一実施形態において、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、現在の試薬が容器から試薬ボトルへ吸い出された後の現在の試薬の第3の濃度を決定することは、下記のステップを含む。すなわち、現在の試薬が容器内に充填された後に、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて容器内の現在の試薬の濃度を決定すること;現在の試薬が容器から試薬ボトルへ吸い出された後に、予め設定された濃度を有する現在の試薬が補充されるように試薬ボトルを制御すること;及び容器内の現在の試薬の濃度、試薬ボトルの容量、予め設定された濃度及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度を決定すること;を含む。
【0007】
一実施形態において、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて容器内の現在の試薬の濃度を決定することが、式:Vaf = (Vb - Vco)×Cbfを使用して容器内の現在の試薬の主要成分の体積を計算すること;及び式:Caf = Vaf÷Vbを使用して、容器内の現在の試薬の濃度を計算すること;を含み、ここで、Vafは容器内の現在の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoはキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、そしてCbfは予め設定された濃度を表し、Cafは容器内の現在の試薬の濃度を表す。
【0008】
一実施形態において、容器内の現在の試薬の濃度、試薬ボトルの容量、予め設定された濃度及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度を決定することが、式:Vad = (Vb - Vco) ×Caf + Vco×Cbfを使用して試薬ボトル内の現在の試薬の主要成分の体積を計算すること;及び式:Cad = Vad÷Vbを使用して試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度を計算すること;を含み、ここで、Vadは試薬ボトル内の現在の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoはキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、及びCbfは予め設定された濃度を表し、Cafは容器内の現在の試薬の濃度を表し、そしてCadは第3の濃度を表す。
【0009】
一実施形態において、第1の濃度、第2の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいて容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積をアップデートすることは、式:Vco’ = (CDF - CDD)/CDF×Vbを使用してアップデートされたキャリーオーバの体積を計算すること;及びキャリーオーバの現在の体積をアップデートされたキャリーオーバの体積に置き換えること;を含み、ここでVco’はアップデートされたキャリーオーバの体積を表し、CDDは現在の試薬の第2の濃度を表し、CDFは現在の試薬の第1の濃度を表し、そしてVbは試薬ボトルの容量を表す。
【0010】
一実施形態において、現在の試薬がエタノール及びキシレンを含む群から選択される。
【0011】
本開示の実施形態(複数)の第2の視点において、試薬の濃度をモニタリングするための装置が提供される。該装置は、試薬ボトルから液体流路を介して容器内への予め設定された濃度を有する現在の試薬の充填の間に測定される現在の試薬の第1の濃度を取得するように構成される第1の取得モジュール;容器内への以前の試薬の充填及び容器からの以前の試薬の吸い出しのプロセスにおいて決定される、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積を取得するように構成される第2の取得モジュール;容器から液体流路を介して試薬ボトルへの現在の試薬の吸い出しの間に測定される現在の試薬の第2の濃度を取得するとともに、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、容器から試薬ボトルへ現在の試薬を吸い出した後の現在の試薬の第3の濃度を決定するように構成される決定モジュール;第1の濃度、第2の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいて容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積をアップデートするように構成されるアップデートモジュール;及び第3の濃度が予め設定された制限濃度未満である場合に現在の試薬の置き換えをユーザに対して通知するように構成される通知モジュール及び/又はより高い濃度の試薬で現在の試薬をリフレッシュするように構成されるリフレッシュモジュールを含む。
【0012】
一実施形態において、決定モジュールは、現在の試薬が容器内に充填された後に、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて容器内の現在の試薬の濃度を決定するように構成される第1の決定ユニット;現在の試薬が容器から試薬ボトルへ吸い出された後に、予め設定された濃度を有する現在の試薬が補充されるように試薬ボトルを制御するように構成されるコントロールユニット;及び容器内の現在の試薬の濃度、試薬ボトルの容量、予め設定された濃度及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度を決定するように構成される第2の決定ユニットを含む。
【0013】
一実施形態において、第1の決定ユニットは、式:Vaf = (Vb - Vco)×Cbfを使用して容器内の現在の試薬の主要成分の体積を計算するように構成される第1の計算サブモジュールと、式:Caf = Vaf÷Vbを使用して、容器内の現在の試薬の濃度を計算するように構成される第2の計算サブモジュールと、を含み、Vafは容器内の現在の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoはキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、そして、Cbfは予め設定された濃度を表し、Cafは容器内の現在の試薬の濃度を表す。
【0014】
一実施形態において、第2の決定ユニットは、式:Vad = (Vb - Vco) ×Caf + Vco×Cbfを使用して試薬ボトル内の現在の試薬の主要成分の体積を計算するように構成される第3の計算サブモジュールと、式:Cad = Vad÷Vbを使用して試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度を計算するように構成される第4の計算サブモジュールとを含み、Vadは試薬ボトル内の現在の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoはキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、Cbfは予め設定された濃度を表し、Cafは容器内の現在の試薬の濃度を表し、そしてCadは第3の濃度を表す。
【0015】
一実施形態において、アップデートモジュールは、式:Vco’ = (CDF - CDD)/CDF×Vbを使用してアップデートされたキャリーオーバの体積を計算するように構成される第3の決定ユニットと、キャリーオーバの現在の体積をアップデートされたキャリーオーバの体積に置き換えるように構成される置換ユニットとを含み、Vco’はアップデートされたキャリーオーバの体積を表し、CDDは現在の試薬の第2の濃度を表し、CDFは現在の試薬の第1の濃度を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表す。
【0016】
一実施形態において、現在の試薬がエタノール及びキシレンを含む群から選択される。
【0017】
本開示の実施形態の第3の視点において、電気デバイスが提供される。電気デバイスは、プロセッサと、プロセッサによって実行可能な指示を記憶するように構成されるメモリと、を含む。プロセッサによって指示が実行される時に、プロセッサは、本開示のいずれかの実施形態の上記方法を実行する。
【0018】
本開示の実施形態の第4の視点において、非一時的なコンピュータ読み出し可能媒体が提供される。コンピュータ読み出し可能媒体は、その中に格納されるプロセッサによって実行可能な指示を含む。指示がプロセッサによって実行される時に、プロセッサは本開示のいずれかの実施形態の上記方法を実行する。
【0019】
試薬の濃度をモニタリングするための方法及び装置を用いて、試薬ボトルから液体流路を介して容器内への予め設定された濃度を有する現在の試薬の充填の間に測定される現在の試薬の第1の濃度を取得することができ、容器内への以前の試薬の充填及び容器からの以前の試薬の吸い出しのプロセスにおいて決定される容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積を取得することができ、次に、容器から液体流路を介して試薬ボトルへの現在の試薬の吸い出しの間に測定される現在の試薬の第2の濃度を取得することができ、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて試薬が容器から試薬ボトルへ吸い出された後の現在の試薬の第3の濃度を決定することができ、そして第1の濃度 、第2の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいて容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積をアップデートすることができ、第3の濃度が予め設定された制限濃度未満である場合に現在の試薬の置き換えをユーザに対して通知する。この仕方において、試薬の濃度を正確にリアルタイムで決定して適切な時期(in time)に試薬の置き換えをユーザに対して通知することができるように、容器内に残るキャリーオーバの体積は動的にアップデートすることが可能であり、そのため組織処理の品質が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示の実施形態の技術的解決策を明確に説明するために、実施形態において使用される図面の簡単な説明を以下に記す。明らかに、以下の記載における図面は本開示の実施形態の一部分に過ぎず、当業者にとってはこれらの図面に従って創造的な労力無しに他の図面が取得され得る。
図1図1は、本開示のいくつかの実施形態の試薬の濃度をモニタリングする方法のフローチャートである。
図2図2は、本開示のいくつかの実施形態の試薬の濃度を取得するプロセス(過程)を示すフローチャートである。
図3図3は、本開示のいくつかの実施形態の試薬の濃度をモニタリングするための装置のブロック図である。
図4図4は、本開示のいくつかの実施形態の電気デバイスのブロック図である。
【0021】
[実施形態]
以下では実施形態(複数)について詳細に説明がなされ、その例が添付図面において表される。以下の記載では添付図面が参照され、他に示されない限り異なる図面における同一の数値は同一の又は類似の要素を表す。実施形態(複数)についての以下の記載の実施例は、本開示と一貫する全ての実施例を表すものではない。むしろ、それらは添付の特許請求の範囲において引用される本開示に関連する視点と一貫する装置及び方法の例示に過ぎない。
【0022】
本開示の実施形態は、試薬の濃度をモニタリングする方法を提供する。 試薬は組織処理のために使用され、エタノール及びキシレンであり得る。図1に示すように、本発明の方法は、ステップ101~105を含む。
【0023】
ステップS101において、試薬ボトルから液体流路を介して容器内への予め設定された濃度を有する現在の試薬の充填の間に測定される現在の試薬の第1の濃度が取得される。
【0024】
この実施形態において、試薬ボトルから液体流路を介して容器内へ試薬を充填する間に、試薬の濃度は濃度メータによって測定することができる。
【0025】
ステップS102において、容器内への以前の試薬の充填及び容器からの以前の試薬の吸い出しのプロセス(過程)において決定される、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積が取得される。
【0026】
典型的には、液体流路を介した容器内への試薬の充填及び容器からの試薬の吸い出しの間に、容器及び液体流路中に残るキャリーオーバが存在する。容器がその中に残るキャリーオーバを有するケースでは、液体流路を介して試薬が容器内へ充填される時及び容器から吸い出される時に、試薬の濃度が変化し得る。試薬の濃度をモニタするために、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積が取得される。容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積は、液体流路を介した容器内への以前の試薬の充填及び容器からの吸い出しによって生じる(caused)ので、容器内への以前の試薬の充填及び容器からの以前の試薬の吸い出しのプロセスにおいてキャリーオーバの現在の体積を決定することができる。
【0027】
ステップS103において、容器から液体流路を介して試薬ボトルへの現在の試薬の吸い出しの間に測定される現在の試薬の第2の濃度が取得されるとともに、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、容器から試薬ボトルへ現在の試薬を吸い出した後の現在の試薬の第3の濃度が決定される。
【0028】
試薬が容器内へ充填された後に、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積に起因して、充填の間の試薬の濃度に対して容器内の試薬の濃度が変化する。更に、試薬を容器から液体流路を介して試薬ボトルへ吸い出した後の容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積に起因して、試薬ボトル内の現在の試薬の濃度は試薬ボトル内の最初の試薬の濃度と同一ではない。
【0029】
いくつかの実施形態において、現在の試薬が容器から試薬ボトルへ吸い出された後の現在の試薬の第3の濃度を以下のように決定することができる。現在の試薬が容器内に充填された後に、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及び容器内に残るキャリーオーバの現在の体積に基づいて容器内の現在の試薬の濃度が決定される。現在の試薬が容器から試薬ボトルへ吸い出された後に、試薬ボトルには予め設定された濃度を有する現在の試薬が補充される。容器内の現在の試薬の濃度、試薬ボトルの容量、予め設定された濃度及び容器内に残るキャリーオーバの現在の体積に基づいて、試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度が決定される。
【0030】
いくつかの実施形態において、試薬が容器内へ充填された後に、容器内の試薬の主要成分(major component)の体積を、
式:Vaf = (Vb - Vco)×Cbf
に従って決定することができる。ここで、Vafは容器内の現在の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoは容器内に残るキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、そして、Cbfは予め設定された濃度を表す。
【0031】
主要成分の体積及び試薬ボトルの容量に基づいて、
式:Caf = Vaf÷Vb
を使用して容器内の試薬の濃度を計算することができる。ここで、Cafは容器内の現在の試薬の濃度を表す。
【0032】
容器内では、組織処理のために試薬が使用され得る。組織処理の後に、容器から試薬ボトルへ戻すように試薬を吸い出すことができ、そして、試薬ボトルが現在の試薬で充填されること、すなわち、試薬ボトルの容量の現在の試薬が存在することを保証するように試薬ボトルは予め設定された濃度を有する現在の試薬が補充される。その際に試薬ボトル内の試薬の濃度は以下のように決定される。
【0033】
試薬ボトル内の試薬の主要成分の体積は
式:Vad = (Vb - Vco) ×Caf + Vco×Cbf
を使用して計算される。ここで、Vadは試薬ボトル内の現在の試薬の主要成分の体積を表す。
【0034】
試薬ボトル内の試薬の濃度は、
式:Cad = Vad÷Vb
を使用して計算される。ここでCadは試薬ボトル内の試薬の濃度を表す。
【0035】
ステップS104において、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積が、第1の濃度、第2の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいてアップデートされる。
【0036】
容器内への試薬の充填及び容器からの液体流路を介した試薬の吸い出しのプロセスにおいて、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの体積は変化し得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、1ラウンドの容器内への試薬の充填及び容器からの液体流路を介した試薬の吸い出しの後に、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積が、以下のように決定されるアップデートされたキャリーオーバの体積に置き換えられる。続いて、次のラウンドの液体流路を介した容器内への試薬の充填及び容器からの試薬の吸い出しの後に間に、アップデートされたキャリーオーバの体積に基づいて試薬の濃度をリアルタイムでモニタすることができる。
【0038】
アップデートされたキャリーオーバの体積は、吸い出しの間に測定される試薬の濃度、充填の間に測定される試薬の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいて決定される。例えば、アップデートされたキャリーオーバの体積は、
式:Vco’ = (CDF - CDD)/CDF×Vb
を使用して計算することができる。ここで、Vco’はアップデートされたキャリーオーバの体積を表し、CDDは吸い出しの間に測定される試薬の濃度を表し、CDFは充填の間に測定される試薬の濃度を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表す。
【0039】
上記式は、
式:CDD = ((Vco×CW) + CDF×(Vb-Vco)) ÷Vb
を使用することに由来し得る。ここで、CWは水分濃度を表す。CW=0とした場合にはCDD = (CDF×(Vb-Vco)) ÷Vbであり、そこから上記式が導き出される。
【0040】
ステップS105において、第3の濃度が予め設定された制限濃度未満である場合に、現在の試薬の置き換えがユーザに対して通知され、及び/又はより高い濃度の試薬で現在の試薬がリフレッシュされる。
【0041】
組織処理のために使用される試薬は、ある濃度レベルに対して適合させる必要があり、例えば、試薬の濃度は、予め設定された制限濃度より高いものであるべきである。さもなくば組織処理を正しく実現することができない。
【0042】
組織処理の効果を確かにするために、試薬がある濃度レベルに対して適合しない場合に、ユーザに対して予め設定された制限濃度よりも高い濃度を有する試薬での試薬の置き換えが通知され得るか、又はより高い濃度の試薬で試薬がリフレッシュされ得る。
【0043】
ユーザには種々の仕方で、例えばオーディオシグナル、ビデオシグナル、振動シグナル又は他のシグナルを介して通知され得る。
【0044】
試薬の濃度をモニタリングする方法はいくつかのシナリオに適用することができ、例えば当該方法は組織処理に適用することができる。組織処理の間に、組織脱水機が組織の脱水を実現するための重要な機器である一方で、試薬は組織の脱水の間に必要とされる。試薬の濃度をモニタリングする方法によれば、適切な時期に試薬を置き換えることをユーザに対して通知して、つまり、一方で試薬の濃度が組織の脱水の必要条件を満たすことをが保証し、他方で試薬の浪費を避けるように、組織脱水機は、組織の脱水のために使用される試薬の濃度をリアルタイムでモニタすることができる。
【0045】
試薬の濃度をモニタリングする方法によれば、試薬ボトルから液体流路を介して容器内への予め設定された濃度を有する現在の試薬の充填の間に測定される現在の試薬の第1の濃度を取得することができ、容器内への以前の試薬の充填及び容器からの以前の試薬の吸い出しのプロセスにおいて決定される容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積を取得することができ、次に容器から液体流路を介して試薬ボトルへの現在の試薬の吸い出しの間に測定される現在の試薬の第2の濃度を取得することができ、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、試薬を容器から試薬ボトルへ吸い出した後の現在の試薬の第3の濃度を決定することができ、第1の濃度 、第2の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいて容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積をアップデートすることができ、そして第3の濃度が予め設定された制限濃度未満である場合に、ユーザに対して現在の試薬の置き換えが通知される。この仕方において、試薬の濃度を正確にリアルタイムで決定することができ、適切な時期にユーザに対して試薬の置き換えを通知することができるように、容器内に残るキャリーオーバの体積は動的にアップデートすることができ、そのため組織処理の品質が改善される。
【0046】
図2は、いくつかの本開示の実施形態に従った試薬の濃度を取得するプロセスを示すフローチャートである。
【0047】
ステップS201において、各々予め決定された濃度を有する全ての必要とされる試薬が調製される。
【0048】
ステップS202において、プロトコルが走るように選択される。
【0049】
プロトコルは、組織処理において試薬をどのように使用するか、例えば、液体流路を介して試薬ボトルから容器内へ試薬を充填する時に及び容器から試薬ボトルへ試薬を吸い出す時に、容器内への試薬の充填及び容器からの試薬の吸い出しの順番、又は同様の事項、を示す。
【0050】
ステップS203において、アルゴリズムパラメータ(複数)が初期化される
【0051】
例えば、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積が0(ゼロ)に初期化され、試薬ボトルの容量が実際のシチュエーションに従って割り当てられる。アルゴリズムパラメータは、キャッシュ内に保存され得る。
【0052】
ステップS204において、選択されたプロトコルに従って、試薬が液体流路を介して容器内へ充填される。
【0053】
ステップS205において、試薬の充填の間に、濃度メータによって充填の間の試薬の濃度が測定される。
【0054】
ステップS206において、試薬が容器内へ充填されたか否かが決定される。
【0055】
ステップS207において、容器内の試薬の濃度が計算される。
【0056】
容器内の試薬の濃度は、
式:Vaf = (Vb - Vco)×Cbf;
式:Caf = Vaf÷Vb;
を使用することによって計算される。
ここで、Vafは容器内の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoはキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、そしてCbfは予め決定された濃度を表し、Cafは容器内の試薬の濃度を表す。
【0057】
プロトコルの1ラウンド目においてキャリーオーバの現在の体積は初期値を有するが、プロトコルのその後のラウンドではキャリーオーバの現在の体積は現在の周回目の直前の周回目において決定された値を有する。例えば、プロトコルの1ラウンド目においてキャリーオーバの体積の値が決定され、そしてプロトコルの2ラウンド目では1ラウンド目において決定されたキャリーオーバの体積の値が試薬の濃度を計算するために使用される。
【0058】
ステップS208において、組織処理が実行される。
【0059】
ステップS209において、試薬は容器から液体流路を介して試薬ボトルへ吸い出される。
【0060】
ステップS210において、試薬の吸い出しの間に、濃度メータによって吸い出しの間の試薬の濃度が測定される。
【0061】
ステップS211において、試薬が容器から吸い出されたか否かが決定される。
【0062】
容器から試薬ボトルへ試薬を吸い出した後には、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバが存在するため試薬ボトルは(満杯には)充填されず、その際に、試薬の量が試薬ボトルの容量に到達するように、試薬ボトルには予め決定された濃度を有する試薬が補充される。
【0063】
ステップS212において、試薬ボトル内の現在の試薬の濃度が計算される。
【0064】
試薬ボトル内の現在の試薬の濃度は、
式:Vad = (Vb - Vco) ×Caf + Vco×Cbf;
式:Cad = Vad÷Vb;
を使用することによって計算される。
ここで、Vadは試薬ボトル内の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoはキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、Cbfは予め決定された濃度を表し、Cafは容器内の試薬の濃度を表し、そしてCadは試薬ボトル内の現在の試薬の濃度を表す。
【0065】
ステップS213において、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積がアップデートされる。
【0066】
容器内に残るキャリーオーバの現在の体積は、
式:Vco’ = (CDF - CDD)/CDF×Vb;
を使用してアップデートされる。
ここで、CDDは吸い出しの間の試薬の濃度を表し、CDFは充填の間の試薬の濃度を表し、そしてVbは試薬ボトルの容量を表し、Vco’はアップデートされたキャリーオーバの体積を表す。
【0067】
ステップS214において、プロトコルが完全に実行されたか否かが決定され、もしYesならばプロセスが終了され、さもなくばステップS215が実行される。
【0068】
ステップS215において、次の試薬が組織処理のために選択される。
【0069】
試薬の濃度を取得するプロセスにおいて、より正確な試薬の濃度が取得できるように、容器内に残るキャリーオーバの体積は、各ラウンドに動的に調節される。
【0070】
本開示の実施形態(複数)は、試薬の濃度をモニタリングするための装置を更に提供する。図3に示すように、該装置は、第1の取得モジュール301、第2の取得モジュール302、決定モジュール303、アップデートモジュール304、及び通知モジュール305及び/又はリフレッシュモジュール306を含む。
【0071】
第1の取得モジュール301は、試薬ボトルから液体流路を介して容器内への予め設定された濃度を有する現在の試薬の充填の間に測定される現在の試薬の第1の濃度を取得するように構成される。
【0072】
第2の取得モジュール302は、容器内への以前の試薬の充填及び容器からの以前の試薬の吸い出しのプロセスにおいて決定される、容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積を取得するように構成される。
【0073】
決定モジュール303は、容器から液体流路を介して試薬ボトルへの現在の試薬の吸い出しの間に測定される現在の試薬の第2の濃度を取得するとともに、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、容器から試薬ボトルへ現在の試薬を吸い出した後の現在の試薬の第3の濃度を決定するように構成される。
【0074】
アップデートモジュール304は、第1の濃度、第2の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいて容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積をアップデートするように構成される。
【0075】
通知モジュール305は、第3の濃度が予め設定された制限濃度未満である場合に現在の試薬の置き換えをユーザに対して通知するように構成される。
【0076】
リフレッシュモジュール306は、より高い濃度の試薬で現在の試薬をリフレッシュするように構成される。
【0077】
試薬の濃度をモニタリングするための装置を用いて、試薬ボトルから液体流路を介して容器内への予め設定された濃度を有する現在の試薬の充填の間に測定される現在の試薬の第1の濃度を取得することが可能であるとともに、容器内への以前の試薬の充填及び容器からの以前の試薬の吸い出しのプロセスにおいて決定される容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積を取得することが可能であり、次に、容器から液体流路を介して試薬ボトルへの現在の試薬の吸い出しの間に測定される現在の試薬の第2の濃度を取得することが可能であるとともに、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて試薬が容器から試薬ボトルへ吸い出された後の現在の試薬の第3の濃度を決定することが可能であり、そして第1の濃度 、第2の濃度及び試薬ボトルの容量に基づいて容器及び液体流路の中に残るキャリーオーバの現在の体積をアップデートすることができ、第3の濃度が予め設定された制限濃度未満である場合に現在の試薬の置き換えをユーザに対して通知する。この仕方において、試薬の濃度を正確にリアルタイムで決定して適切な時期に試薬の置き換えをユーザに対して通知することができるように、容器内に残るキャリーオーバの体積は動的にアップデートすることが可能であり、そのため組織処理の品質が改善される。
【0078】
いくつかの実施形態において、決定モジュール303は、第1の決定ユニット、コントロールユニット及び第2の決定ユニットを含む。第1の決定ユニットは、現在の試薬が容器内に充填された後に、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて容器内の現在の試薬の濃度を決定するように構成される。コントロールユニットは、現在の試薬が容器から試薬ボトルへ吸い出された後に、予め設定された濃度を有する現在の試薬が補充されるように試薬ボトルを制御するように構成される。第2の決定ユニットは、容器内の現在の試薬の濃度、試薬ボトルの容量、予め設定された濃度及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて、試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度を決定するように構成される。
【0079】
いくつかの実施形態において、第1の決定ユニットは、第1の計算サブモジュール及び第2の計算サブモジュールを含む。第1の計算サブモジュールは、式:Vaf = (Vb - Vco)×Cbfを使用して容器内の現在の試薬の主要成分の体積を計算するように構成される。第2の計算サブモジュールは、式:Caf = Vaf÷Vbを使用して、容器内の現在の試薬の濃度を計算するように構成され、ここでVafは容器内の現在の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoはキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、及びCbfは予め設定された濃度を表し、Cafは容器内の現在の試薬の濃度を表す。
【0080】
いくつかの実施形態において、第2の決定ユニットは、第3の計算サブモジュール及び第4の計算サブモジュールを含む。第3の計算サブモジュールは、式:Vad = (Vb - Vco) ×Caf + Vco×Cbfを使用して試薬ボトル内の現在の試薬の主要成分の体積を計算するように構成される。第4の 計算サブモジュールは、式:Cad = Vad÷Vbを使用して試薬ボトル内の現在の試薬の第3の濃度を計算するように構成され、ここでVadは試薬ボトル内の現在の試薬の主要成分の体積を表し、Vcoはキャリーオーバの現在の体積を表し、Vbは試薬ボトルの容量を表し、及びCbfは予め設定された濃度を表し、Cafは容器内の現在の試薬の濃度を表し、そしてCadは第3の濃度を表す。
【0081】
いくつかの実施形態において、アップデートモジュールは、第3の決定ユニット、第4の決定ユニット及び置き換えユニットを含む。第3の決定ユニットは、式:Vco’ = (CDF - CDD)/CDF×Vbを使用してアップデートされたキャリーオーバの体積を決定するように構成され、ここで、Vco’はアップデートされたキャリーオーバの体積を表し、CDDは現在の試薬の第2の濃度を表し、CDFは現在の試薬の第1の濃度を表し、及びVbは試薬ボトルの容量を表す。置き換えユニットは、キャリーオーバの現在の体積をアップデートされたキャリーオーバの体積に置き換えるように構成される。
【0082】
いくつかの実施形態において、現在の試薬がエタノール及びキシレンから選択される。
【0083】
各モジュールが処理を実行する具体的な様式(複数)は本発明の方法の実施形態において詳細に記載されており、上記の実施形態のデバイスに関してここでは詳細に記載されない。
【0084】
本開示は試薬の濃度をモニタリングするための機器(equipment)も提供する。当該機器は、コントローラ、キャッシュ、プロセッサ及び濃度メータを含むことができる。濃度メータは、充填の間の試薬の濃度を測定するとともに、吸い出しの間の第2の試薬の濃度を測定するように構成される。コントローラは、試薬が試薬ボトルから液体流路を介して容器内へ充填されるように制御するとともに、試薬が容器から液体流路を介して試薬ボトルへ吸い出されるように制御するように構成される。いくつかの実施形態において、コントローラは、予め設定された濃度を有する試薬が補充されるように試薬ボトルを制御するように更に構成することができる。キャッシュは、予め設定された濃度、水分濃度、試薬ボトルの容量、容器内に残るキャリーオーバの現在の体積を含むパラメータをキャッシュするように構成することができる。プロセッサは、試薬ボトルから容器内への試薬の充填の間に、濃度メータによって測定された試薬の濃度を取得するとともに、容器内に残るキャリーオーバの現在の体積、試薬ボトルの容量、水分濃度、予め設定された濃度を含む取得されたパラメータをキャッシュから取得し、吸い出しの間に測定された試薬の濃度を取得し、予め設定された濃度、試薬ボトルの容量及びキャリーオーバの現在の体積に基づいて容器から試薬ボトルへ試薬が吸い出された後の試薬の濃度を決定し、充填の間に測定された濃度、吸い出しの間に測定された濃度及び試薬ボトルの容量に基づいてアップデートされたキャリーオーバの現在の体積を決定し、そしてキャッシュにセーブされたキャリーオーバの現在の体積をアップデートされたキャリーオーバの現在の体積に置き換える、ように構成することができる。更に、プロセッサは、試薬の濃度が予め設定された制限濃度未満である場合に、試薬の置き換えをユーザに通知する及び/又はより高い濃度の試薬で現在の試薬をリフレッシュするように構成される。
【0085】
図4は、本開示の実施形態に従った電気デバイスの内部構造の模式図である。図4に示すように、電気デバイスは、システムバスによって接続されるプロセッサ及びメモリを含む。プロセッサは、演算処理(コンピューティング)を提供するとともに、電気デバイス全体の処理をサポートする能力を制御するために使用される。メモリは、不揮発性の記憶媒体及び内部メモリを含み得る。不揮発性の記憶媒体は、オペレーションシステム及びコンピュータプログラムを記憶する。コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されて本開示の実施形態の試薬の濃度をモニタリングする方法を実行する。内部メモリは、不揮発性の記憶媒体内の処理システム及びコンピュータプログラムのためのキャッシュされた処理環境を提供する。電気デバイスは、携帯電話、タブレットコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント又はウェアラブルデバイスであり得る。
【0086】
本開示の実施形態の試薬の濃度をモニタリングするための装置における各モジュールは、コンピュータプログラムの形態で実施され得る。コンピュータプログラムがプロセッサによって実行される時に、本開示の実施形態の方法のステップ(複数)が実施される。
【0087】
本開示の実施形態は、コンピュータが実行可能な指示が1以上のプロセッサによって実行される時に、コンピュータが実行可能な指示を含むコンピュータ読み出し可能記憶媒体も提供し、1以上のプロセッサは、本開示の実施形態の試薬の濃度をモニタリングする方法のステップ(複数)を実行する。
【0088】
指示を含むコンピュータプログラム製品が提供される。コンピュータ上で指示が走る時に、コンピュータは本開示の実施形態の試薬の濃度をモニタリングする方法を実行する。
【0089】
メモリ、ストレージ、データベース、又は本出願で使用される他の媒体に関する言及は不揮発性の及び/又は揮発性のメモリを含む。適切な不揮発性メモリは、リードオンリーメモリ(ROM)、プログラマブルロム(PROM)、エレクトリカリプログラマブルロム(EPROM)、エレクトリカリイレーサブルプログラマブルロム(EEPROM)又はフラッシュメモリを含み得る。揮発性メモリは、外部キャッシュメモリとして使用されるランダムアクセスメモリ(RAM)を含むことができる。一例でありそれらに限定されないが、RAMはスタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、シンクロナスDRAM(SDRAM)、デュアルデータレートSDRAM(DDR SDRAM)、エンハンスドSDRAM(ESDRAM)、シンクロナスリンク(Synchlink) DRAM (SLDRAM)、メモリバス(Rambus)ダイレクトRAM(RDRAM)、ダイレクトメモリバスダイナミックRAM(DRDRAM)、及びメモリバスダイナミックRAM(RDRAM)などの種々の形態で利用可能である。
【0090】
好ましい本開示の実施形態が添付図面と組み合せて詳細に上述されているが、本開示は上記実施形態の特定の詳細事項に限定されない。本開示の技術的コンセプトの範疇内において、種々の簡単な変更が本開示の技術的解決手段に対してなされ得る。これらの簡単な変更は全て本開示の保護範囲に属する。
【0091】
更に、上述の特定の実施形態において記載した具体的技術的特徴が任意の適切な様式に矛盾することなく組み合わせられ得ることに留意すべきである。種々の可能な組み合わせについては、不必要な繰り返しを回避するために、本開示では更に説明されない。
【0092】
更に、本開示のアイデアに相反しない限り、種々の本開示の実施形態を意図的に組み合わせることも可能であり、本開示において開示される内容ともみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-05-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第111141564号
【国際調査報告】