(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】医療用容器の遠隔識別のためのRFIDタグを含む、事前充填可能または事前充填シリンジなどの医療用容器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/00 20060101AFI20230810BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
A61M5/00 518
G06K19/077 220
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505355
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2021070879
(87)【国際公開番号】W WO2022023281
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セドリック リヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ウーヴラード
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066FF05
4C066GG20
(57)【要約】
医療用容器および医療用容器を製造する方法。この医療用容器(1)は、医療用製品を収容するためのリザーバを画定するバレルと、リザーバと針(4)との間の流体連通を確立するために、バレルの遠位端(20)に設けられたバレルチャネル(24)内に延びる、針(4)と、を備える。医療用容器(1)は、さらに、オンメタルRFID(ROM)タグ(8)を含み、オンメタルRFID(ROM)タグ(8)は、少なくとも部分的にバレルチャネル(24)内に配置され、針(4)に沿って延びるアンテナ(82)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用製品を収容するためのリザーバ(26)を画定するバレル(2)と、前記リザーバ(26)と針(4)との間の流体連通を確立するために、前記バレル(2)の遠位端(20)に設けられたバレルチャネル(24)内に延びる、前記針(4)と、を含む医療用容器(1)であって、前記医療用容器(1)は、さらに、オンメタルRFID(ROM)タグ(8)を含み、前記オンメタルRFID(ROM)タグ(8)は、前記バレルチャネル(24)内に少なくとも部分的に配置され、前記針(4)に沿って延びるアンテナ(82)を有することを特徴とする医療用容器(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用容器(1)であって、前記アンテナ(82)は、らせん形状であり、前記針(4)の周りにらせん状に巻かれることを特徴とする医療用容器(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療用容器(1)であって、前記オンメタルRFID(ROM)タグ(8)は、超高周波オンメタルRFID(UHF-ROM)タグ(8)であることを特徴とする医療用容器(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の医療用容器(1)であって、前記アンテナ(82)は、それぞれがチップ(80)に接続され、前記針(4)の周りに、2つの非接合コイルを形成する、2つの別個の脚(820)を備えることを特徴とする医療用容器(1)。
【請求項5】
請求項1-4のいずれか一項に記載の医療用容器(1)であって、前記医療用容器(1)は、前記針(4)を前記バレルチャネル(24)に固定するための接着剤(10)を含み、前記オンメタルRFID(ROM)タグ(8)は、前記接着剤(10)に埋め込まれることを特徴とする医療用容器(1)。
【請求項6】
請求項1-5のいずれか一項に記載の医療用容器(1)であって、前記アンテナ(82)は、所定の針部分(40)に沿って延び、前記所定の針部分(40)は、少なくとも2mmの長さを有し、前記所定の針部分(40)は、最大で、前記バレルチャネル(24)内に含まれる全針部分(42)に対応することを特徴とする医療用容器(1)。
【請求項7】
請求項1-6のいずれか一項に記載の医療用容器(1)であって、前記アンテナ(82)は、前記オンメタルRFID(ROM)タグ(8)のチップ(80)に近接して配置されることを特徴とする医療用容器(1)。
【請求項8】
請求項1-7のいずれか一項に記載の医療用容器(1)を製造する方法であって、(i)前記オンメタルRFID(ROM)タグ(8)を、前記針(4)上に配置する工程、(ii)前記針(4)を、前記バレルチャネル(24)内に配置する工程、(iii)前記針(4)を、前記バレルチャネル(24)内に固定する工程、(iv)前記医療用容器(1)の識別のために、前記ROMタグ(8)に、固有機器識別子(UDI)を記憶させる工程を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針に連結されたRFIDタグを含む、事前充填可能または事前充填シリンジなどの医療用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この出願において、構成要素、または、機器の遠位端は、使用者の手から最も遠い端を意味すると理解されるべきであり、近位端は、使用者の手に最も近い端を意味すると理解されるべきである。同様に、本出願において、「遠位方向」は、本発明の医療用容器に関して、注射の方向を意味すると理解されるべきであり、「近位方向」は、注射の方向と反対の方向、すなわち、注射操作に関して、容器を保持している使用者の手へ向かう方向を意味すると理解されるべきである。
【0003】
例えば、事前充填可能または事前充填シリンジなどの医療用注射機器は、通常、医療用製品の容器を形成する、中空本体またはバレルを備える。この本体は、任意に針を備えた遠位端と、通常はフランジを備えた近位端とを含む。
【0004】
医療用容器の製造工程から、最終的なラベル付け、最終的な使用、または、廃棄まで、医療用注射機器などの医療用容器の個別のトレーサビリティに対する必要性が増大している。
【0005】
例えば、特許文献1から、一連の、印刷された機械可読の一意の識別子コードによって囲まれた、円筒形の側面を有する容器が知られる。これらの印刷された一意の識別子コードは、サプライチェーンの途中で、各容器を追跡および追尾することを可能にする。しかしながら、これらの一意の識別子コードは、容器の外側に印刷され、その結果、例えば、容器の取り扱いまたは使用中に、除去され、または、傷つけられ得る。さらに、一意の識別子コードは、容器の一部を覆い、その結果、それらは、使用者の目視検査工程に影響を与え得る。最後に、インクジェットプリンタが、容器の外側に識別コードを印刷するために使用される。ただし、インクを使用するこの印刷方法は、容器の汚染のリスクにつながり得る。さらに、容器が、例えば、密封されたパッケージに置かれた場合、人は、これらの印刷された一意の識別子コードにアクセスし得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この文脈において、本発明の目的は、目視検査に影響を与えなく、除去され、または、傷つけられるリスクが、ほとんどまたは全くなく、製造工程への影響が限定された、医療用容器の効率的な個体識別を可能にすることによって、上述の欠点を軽減する機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、医療用製品を収容するリザーバを画定するバレルと、リザーバと針との間の流体連通を確立するためにバレルの遠位端に設けられた、バレルチャネル内に延びる針と、を備えた、医療用容器であり、医療用容器は、さらに、オンメタルRFID(ROM)タグを含み、オンメタルRFID(ROM)タグは、少なくとも部分的にバレルチャネルの内側に配置され、針に沿って延びるアンテナを有する。
【0009】
したがって、本発明は、医療用容器の製造工程から最終使用まで、各医療用容器の個別のトレーサビリティを可能にする。さらに、ROMタグは、医療用容器の包装、保管、流通、または、使用によって発生し得る、脱落または外部損傷から十分に保護される。さらに、ROMタグは、医療用容器内に含まれる医療用製品と接触しない。さらに、ROMタグは、末端使用者の目視検査を妨げない。また、ROMタグは、医療用容器に追加の厚みを提供しない。さらに、針に沿って延びるアンテナは、金属針がアンテナ送信機として使用されるため、読み取り/書き込み距離を増大させることを可能にする。
【0010】
一実施形態では、アンテナはらせん状であり、針の周りにらせん状に巻かれる。
【0011】
一実施形態では、オンメタルRFID(ROM)タグは、超高周波オンメタルRFID(UHF-ROM)タグである。好ましくは、アンテナは、それぞれがチップに接続され、針の周りに2つの非接合コイルを形成する、2つの別個の脚を備える。上記特徴は、読み取り/書き込み距離を増大させることを可能にする。
【0012】
一実施形態では、医療用容器は、針をバレルチャネルに固定するための接着剤を含み、オンメタルRFID(ROM)タグは、接着剤に埋め込まれる。これは、ROMタグを外部環境から保護し、さらに、注射操作中に、末端使用者の皮膚とのいかなる接触をも防止することを可能にする。
【0013】
一実施形態では、アンテナは、所定の針部分に沿って延在し、所定の針部分は、少なくとも2mmの長さを有し、所定の針部分は、最大で、バレルチャネル内に含まれる全体の針部分に対応する。
【0014】
一実施形態では、アンテナは、オンメタルRFID(ROM)タグのチップに近接して配置される。
【0015】
本発明の別の態様は、上記の特徴を含む医療用容器を製造する方法であり、
(i)オンメタルRFID(ROM)タグを針に取り付ける工程、
(ii)針をバレルチャネル内に配置する工程、
(iii)針をバレルチャネル内に固定する工程、
(iv)医療用容器の識別のために、ROMタグに、一意の機器識別子 (UDI)を格納する工程を含む。
【0016】
上記工程(i)および(ii)は、任意の適切な順序で起こり得ると考えられる。一実施形態では、工程(i)は、工程(ii)の前に起こり得る。別の実施形態では、工程(ii)は、工程(i)の前に起こり得る。
【0017】
好ましくは、工程(iii)は、工程(i)および(ii)の後に起こる。
【0018】
本発明、および、それから生じる利点は、添付の図面を参照して以下に示される詳細な説明から、はっきりと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】本発明の一実施形態による医療用容器の半透明図である。
【
図4】本発明による医療用容器の針上に配置されたROMタグの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照すると、事前充填可能または事前充填されたシリンジなどの医療用容器1が示される。医療用容器1は、医療用組成物などの医療用製品を収容するためのリザーバ26を画定する円筒形バレル2を備える。バレル2は、長手方向軸Aに沿って延在し、長手方向遠位先端20の形態であり得る、遠位端を有する。先端は、バレル2の遠位肩部22から遠位に延在し得る。遠位先端20は、リザーバ26と針との間の流体連通を確立するために、針4を受け入れるように構成された、バレルチャネル24を画定する。医療用容器1は、また、リザーバ26に含まれる医療用製品を、針を通して放出するために、その遠位端にプランジャ60を有する、プランジャロッド6を含む。バレル2は、ガラスまたはプラスチック材料で製造され得る。別の実施形態(不図示)では、針4は、バレル2の遠位端20に接続された針ハブに固定され得、針ハブは、バレル2の遠位端20に取り付けられたアダプタにねじ込まれ得る。
【0021】
図2から
図3を参照すると、本発明の医療用容器1は、針4に取り付けられ、バレルチャネル24内に、完全に、または、少なくとも部分的に配置された、ROM(オンメタルRFID)タグ8を含み、その結果、ROMタグ8は、大部分は末端使用者には見えず、外部環境から保護される。オンメタルRFID(ROM)タグ8は、金属物体の近くに取り付けられたときに、所定の機能を実行するように構成された、無線周波数識別(RFID)タグ8である。より具体的には、ROMタグ8は、針4の外面とバレルチャネル24の内面との間に画定された、隙間240に配置される。
ROMタグ8は、接着剤10によって針4に取り付けられる。好ましい実施形態では、針4は、最初にバレルチャネル24に挿入される。次いで、ROMタグ8が、バレルチャネル24に挿入されて、針4の近くに配置され、ROMタグ8は、また、針4をバレル2に固定する接着材料によって、針4に固定され、接着材料は、針4とバレルチャネル24の内壁との間に形成された隙間240を満たす。
【0022】
別の実施形態では、ROMタグ8は、針4をバレルチャネル24内に挿入する前に、針4に固定される。ROMタグ8は、接着剤層を有する、セラミックまたはプラスチック基板などの、基板上に配置され得、基板は、接着剤層によって、針4の外面に固定される。次に、針4は、隙間240を満たす接着材料によって、バレルチャネル24内で、バレル2に固定される。
【0023】
ROMタグ8は、好ましくは、針4と接触しないこと、すなわち、ROMタグ8は、基板および/または接着剤10によって、針4から分離されることが考えられる。
【0024】
さらに別の実施形態では、ROMタグ8は、アンテナ82の一部を針4に溶接することによって、最初に、針4に固定される。次に、針4は、バレルチャネル24の内側に挿入され、隙間240を満たす接着材料によってバレル2に固定される。
【0025】
針4をバレル2に固定する接着材料は、好ましくは、ROMタグ8を完全に埋め込むことが考えられ、それにより、ROMタグ8と外部環境との間のいかなる接触をも防止する。
【0026】
図2から
図4に見られるように、ROMタグ8は、チップ80およびアンテナ82を含む。チップ80は、一意の機器識別子(UDI)を記憶するように構成される。UDIは、医療用容器1の製造工程から、最終的なラベル付け、最終的な使用、または、廃棄まで、医療用容器1の遠隔識別を可能にする。
【0027】
アンテナ82は、針4がアンテナ82の延長部となるように、針4に沿って長手方向に延在し、それにより、ROMタグ8の読み取り範囲を改善する。あるいは、アンテナ82は、チップ80から近位方向に延在する。例えば、
図3を参照すると、アンテナ82は、らせん形状を有し得、読み取り範囲を拡大するために、針4の周りに巻き付けられ得る。好ましくは、アンテナ82は、所定の針部分40にわたって延在し、所定の針部分40は、少なくとも2mmの長さを有する。最大で、アンテナ82は、バレルチャネル24の内側に配置される全針部分42に沿って延在する。
【0028】
ROMタグ8は、低周波数(約30-300kHz)ROM(LF-ROM)タグ8、高周波数(約3-30MHz)ROM(HF-ROM)タグ8、または、好ましくは、超高周波数(約400-1000MHz)ROM(UHF-ROM)タグ8であり得る。RFIDリーダは、例えば、LF-ROMタグ8を、約10cmまでの距離で、HF-ROMタグ8を、約1メートルの距離で、UHF-ROMタグ8を、約15メートルの距離で読み取り得る。
【0029】
図4を参照すると、ROMタグ8が超高周波ROMタグ8である場合、アンテナ82は、それぞれがチップ80に接続され、針の周りに、2つの非接合コイルを形成する、2つの別個の脚820を含み得る。両方の脚820は、好ましくは、チップ80から近位方向に延在する。
【0030】
ROMタグ8の寸法は、ROMタグ8が非常にコンパクトであり、医療用容器1に厚みを加えないようなものであり得る。例えば、アンテナ82の直径は、0.4mm以下、例えば、約0.2mmであり得る。チップ80の寸法は、約1mm×0.5mm×0.1mm(長さ×幅×厚さ)であり得る。
【0031】
本発明は、また、上述の医療用容器1を製造する方法に関する。
【0032】
この方法は、ROMタグ8を針上に配置する、工程(i)を含む。
【0033】
この工程(i)は、針4をバレルチャネル24に挿入した後に起こり得、次いで、ROMタグ8を針4に固定し、針4をバレル2に固定するために、接着材料が、隙間240を満たす。
【0034】
あるいは、工程(i)は、針4のバレルチャネル24への挿入前に起こり得る。例えば、ROMタグ8は、管状のプラスチックまたはセラミック基板上に配置される。この基板は、針の周りに配置される。一実施形態では、基板は、針に直接固定されるように、接着剤層を有する。別の実施形態では、基板は、どの接着剤層も有さず、針4をバレル2に固定するためにバレルチャネル24を満たす、接着材料によって、後で、針4に固定され得る。さらに別の例では、針4がバレルチャネル24に挿入される前に、アンテナ82の一部が、針4に溶接される。
【0035】
方法は、さらに、針4をバレルチャネル24内に配置する工程(ii)を含む。上記で説明されるように、この工程(ii)は、ROMタグ8を針4上に配置する工程(i)の前または後に起こり得る。
【0036】
方法は、さらに、針4がバレル2にしっかりと固定されるように、バレルチャネル24の内側に針4を固定する工程(iii)を含む。そのために、バレルチャネル24の内壁と針4の外壁との間の隙間240は、接着材料で満たされる。針をバレルチャネル内に固定するために通常使用される任意の接着材料が使用され得る。この工程は、ROMタグ8を接着材料内に埋め込むことを含み得る。
【0037】
方法は、さらに、医療用容器1の識別のために、一意の機器識別子(UDI)をROMタグ8に書き込む工程を含む。
【国際調査報告】