(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】ガンを予防及び処置するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230810BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230810BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230810BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230810BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230810BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230810BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20230810BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230810BHJP
【FI】
G01N33/53 D
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/04
C12N15/115 Z ZNA
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505727
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2021071068
(87)【国際公開番号】W WO2022023379
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(71)【出願人】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】タルトゥール,エリク
(72)【発明者】
【氏名】ウダール,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】サム,イクアン
(72)【発明者】
【氏名】ベン・ハムーダ,ナディーヌ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA44
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085AA19
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
発明者らは、CD70及びCD27がccRCCにおいて高度に発現され、生存不良と相関することを示した。多重IFから、CD27+T細胞が腫瘍微小環境(TME)において、CD70+腫瘍細胞と相互作用することが実証された。CD27+T細胞は、ccRCCにおけるCD27-T細胞よりアポトーシス性が高い。血漿sCD27レベルの上昇が、ccRCC患者において観察され、in situにおいてCD27-CD70相互作用と相関する。本研究から、CD27-CD70相互作用がccRCCにおける末梢血中のsCD27の放出に寄与することが実証されている。これは、sCD27が潜在的なバイオマーカーであることを示している。CD27+T細胞のアポトーシスは、T細胞反応におけるCD27-CD70相互作用の有害作用を示唆している。したがって、CD27/CD70は、ccRCCにおける有望な治療ターゲットである。したがって、本発明は、生体サンプル中の可溶性CD27(sCD27)のレベルを決定することにより、CD27とCD70との間の相互作用を決定するための方法及びガン又は転移性ガンを処置するために、CD27/CD70相互作用をターゲットとする方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD27とCD70との間の相互作用を決定するための方法であって、
i)生体サンプル中の可溶性CD27(sCD27)のレベルを決定する工程と、
ii)工程i)で定量化されたsCD27のレベルを、その対応する所定の基準値と比較する工程と、
iii)sCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より高い場合、CD27とCD70との間に相互作用が存在すると結論付け、又はsCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より低い場合、CD27とCD70との間に相互作用が存在しないと結論付ける工程とを含む、
方法。
【請求項2】
腫瘍内Tリンパ球(LT)の機能障害を予測するのに適している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
対象が、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンに罹患するか又は罹患しやすいかどうかを予測するための方法であって、
i)生体サンプル中の可溶性CD27(sCD27)のレベルを決定する工程と、
ii)工程i)で定量化されたsCD27のレベルを、その対応する所定の基準値と比較する工程と、
iii)sCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より高い場合、対象が、CD70を発現するガン及び/もしくは転移性ガンに罹患するかもしくは罹患していると結論付け、又はsCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より低い場合、対象が、CD70を発現するガン及び/もしくは転移性ガンに罹患しないか又は罹患していないと結論付ける工程とを含む、
方法。
【請求項4】
生体試料が、血漿サンプルである、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
ガン及び/又は転移性ガンの処置を必要とする対象において、ガン及び/又は転移性ガンを処置するための方法であって、
治療上有効量のCD27/CD70相互作用の阻害剤を前記対象に投与する工程を含む、
方法。
【請求項6】
請求項1記載のCD27とCD70との間の相互作用を決定する工程を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記CD27/CD70相互作用の阻害剤が、CD27の阻害剤である、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記阻害剤が、CD27の中和モノクローナル抗体である、請求項4~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記CD27/CD70相互作用の阻害剤が、CD70の阻害剤である、請求項4~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記阻害剤が、CD70の中和モノクローナル抗体である、請求項4~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
ガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置を必要とする対象におけるガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置に使用するための、併用調製物として使用される、CD27/CD70相互作用の阻害剤及びii)古典的処置。
【請求項12】
古典的処置が、免疫チェックポイント阻害剤を指す、請求項11記載の併用調製物。
【請求項13】
免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗PD-L2抗体である、請求項12記載の併用調製物。
【請求項14】
生体サンプル中の可溶性CD27のレベルを決定するための手段を含む、
請求項1記載の方法を実施するためのキット又は装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、腫瘍学の分野のものである。とりわけ、本発明は、ガン又は転移性ガンを予防及び処置するための方法及び組成物に関する。
【0002】
発明の背景
腎細胞ガン(RCC)は、全てのガンの3~4%を占め、世界中で300,000超の新たな症例が診断され、毎年140,000人が死亡している(Capitanio et al., 2019)。淡明細胞腎細胞ガン(ccRCC)は、RCCの組織学的サブタイプの70~75%を表わし、フォン-ヒッペル-リンドウ(VHL)腫瘍サプレッサー遺伝子の不活性化を特徴とする。この不活性化により、低酸素誘導因子-2(HIF-2)の安定化及び蓄積がもたらされる。HIFターゲット遺伝子は、血管新生、解糖及びアポトーシスをレギュレーションする(Gossage et al., 2015)。
【0003】
したがって、HIFの制御されない活性化により、ccRCC腫瘍が脂質、グリコーゲンに富み、高度に血管性である理由が説明された。限局性RCCを腎部分切除術又は根治的腎切除術により処置することができる。しかしながら、限局性ccRCCを有する患者の約30%は、最終的には、転移を発症する(Hsieh et al., 2017)。RCCの性質を考慮すると、血管内皮成長因子(VEGF)シグナル伝達軸をターゲットとする抗血管新生療法(スニチニブ、ベバシズマブ、アキシチニブ)及びラパマイシン(mTOR)阻害剤のほ乳類ターゲット(エベロリムス、テムシロルムス)が、転移性RCCの処置について承認されている(Hsieh et al., 2017)。
【0004】
腫瘍壊死因子スーパーファミリー(TNFSF)のメンバーであるCD70は、典型的には、活性化されたメモリーBリンパ球及びTリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞並びに成熟DC上に存在する(Borst et al., 2005;Nolte et al., 2009)。CD70の発現は、有効な免疫応答、例えば、T細胞活性化及び増殖並びにメモリー細胞生成、B細胞活性化及び分化に必須である。CD70の発現は、有効な免疫応答、例えば、T細胞活性化及び増殖並びにメモリー細胞生成、B細胞活性化及び分化に必須である(Garcia et al., 2004)(Arens et al., 2004)。興味深いことに、CD70は、血液学的腫瘍及び固形腫瘍、特に、ccRCC(約80%)において異常に見出される(Law et al., 2006;Ruf et al., 2015)。さらに、ccRCCにおけるCD70の高発現は、生存の減少に関連する(Jilaveanu et al., 2012)。TMEにおける免疫細胞に対するこの相互作用の結果は、依然として不明である。
【0005】
CD70のリガンドであるCD27は、共刺激分子であり、TNFレセプターファミリーに属する(Buchan et al., 2018b;Camerini et al., 1991)。CD27は、ナイーブT細胞及びセントラルメモリーT細胞上で構成的に発現されるが、エフェクターT細胞上ではダウンレギュレーションされる(Mahnke et al., 2013)。CD27-CD70軸は、プライミング段階中でのT細胞活性化に重要である。CD27-CD70相互作用により、一連の追加の共刺激シグナルが誘発され、メモリーT細胞及びエフェクターT細胞の増殖及び分化がもたらされる(Nolte et al., 2009)。固形腫瘍におけるCD27-CD70相互作用を解明する研究は稀である。1件の研究により、RCC発現CD70が、RCC腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の最終分化を促進することが示唆された(Wang et al., 2012)。別の2つのin vitro研究により、CD27-CD70相互作用によりT細胞においてアポトーシスが誘導され、これがCD70発現神経膠芽腫及びccRCCの免疫回避機構として機能することが示唆された(Diegmann et al., 2006;Wischhusen et al., 2002)。最後に、可溶性CD27(sCD27)は、CD27-CD70相互作用後の活性化T細胞上の膜貫通分子のタンパク質分解性開裂に由来する(Nolte et al., 2009)。固形腫瘍におけるこの可溶性レセプターの役割及びその予後的価値は知られていない。
【0006】
したがって、固形腫瘍における可溶性CD27の役割及びCD70とのその相互作用を特定することにより、固形腫瘍を処置するための新たなツールを理解し、見出すことが可能となる。
【0007】
発明の概要
本発明は、CD27とCD70との間の相互作用を決定するための方法であって、i)生体サンプル中の可溶性CD27(sCD27)のレベルを決定する工程と、ii)工程i)で定量化されたsCD27のレベルを、その対応する所定の基準値と比較する工程と、iii)sCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より高い場合、CD27とCD70との間に相互作用が存在すると結論付け、又はsCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より低い場合、CD27とCD70との間に相互作用が存在しないと結論付ける工程とを含む、方法に関する。特に、本発明は、特許請求の範囲により定義される。
【0008】
発明の詳細な説明
発明者らは、CD70及びCD27がccRCCにおいて高度に発現され、転移性疾患と相関することを示した。多重IFから、CD27+T細胞が腫瘍微小環境(TME)において、CD70+腫瘍細胞と相互作用することが実証された。CD27+T細胞は、ccRCCにおけるCD27-T細胞よりアポトーシス性が高い。血漿sCD27レベルの上昇が、ccRCC患者において観察され、in situにおけるCD27-CD70相互作用と相関する。本研究から、CD27-CD70相互作用がccRCCにおける末梢血中のsCD27の放出に寄与することが実証されている。これは、sCD27が潜在的なバイオマーカーであることを示している。CD27+T細胞のアポトーシスは、T細胞反応におけるCD27-CD70相互作用の有害作用を示唆している。したがって、CD27/CD70は、ccRCCにおける有望な治療ターゲットである。
【0009】
CD27とCD70との間の相互作用を決定するための方法
したがって、第1の態様において、本発明は、CD27とCD70との間の相互作用を決定するための方法であって、i)生体サンプル中の可溶性CD27(sCD27)のレベルを決定する工程と、ii)工程i)で定量化されたsCD27のレベルを、その対応する所定の基準値と比較する工程と、iii)sCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より高い場合、CD27とCD70との間に相互作用が存在すると結論付け、又はsCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より低い場合、CD27とCD70との間に相互作用が存在しないと結論付ける工程とを含む、方法に関する。
【0010】
特定の実施態様では、本発明の方法は、腫瘍内Tリンパ球(LT)の機能障害を予測するのに適している。
【0011】
特定の実施態様では、本発明の方法は、対象がガン及び/又は転移性ガンに罹患するか又は罹患しやすいかどうかを予測するのに適している。
【0012】
本明細書で使用する場合、「CD70」という用語は、腫瘍壊死因子スーパーファミリー(TNFSF)のメンバーであり、典型的には、活性化されたメモリーBリンパ球及びTリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞並びに成熟DC上に存在する。CD70の発現は、有効な免疫応答、例えば、T細胞活性化及び増殖並びにメモリー細胞生成、B細胞活性化及び分化に必須である。
【0013】
ヒトCD70変異体1は、当技術分野における下記ヌクレオチド配列 配列番号:1:
【化1】
を有する。
【0014】
ヒトCD70変異体2は、当技術分野における下記ヌクレオチド配列 配列番号:2:
【化2】
を有する。
【0015】
ヒトCD70変異体1は、当技術分野における下記アミノ酸配列 配列番号:3:
【化3】
を有する。
【0016】
ヒトCD70変異体2は、当技術分野における下記アミノ酸配列 配列番号:4:
【化4】
を有する。
【0017】
本明細書で使用する場合、「CD27」という用語は、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーのメンバーである。これは、共刺激性免疫チェックポイント分子として、現在、免疫学者にとって興味深い。CD27は、リガンドCD70に結合し、B細胞活性化及び免疫グロブリン合成のレギュレーションにおいて重要な役割を果たしている。膜結合CD27の細胞外ドメインと同一の32kDタンパク質である可溶性形態のCD27(sCD27)は、レセプタータンパク質の差次的スプライシング又はプロテアーゼによる細胞表面からの脱離により、リンパ球活性化後に放出される場合がある。
【0018】
ヒトCD27は、当技術分野における下記ヌクレオチド配列 配列番号:5:
【化5】
を有する。
【0019】
ヒトCD27は、当技術分野における下記アミノ酸配列 配列番号:6:
【化6】
を有する。
【0020】
本明細書で使用する場合、「CD27とCD70との間の相互作用」という用語は、CD27とそのリガンドCD70との間の相互作用を指す。このような相互作用により、一連の追加の共刺激シグナルが誘発され、メモリーT細胞及びエフェクターT細胞の増殖及び分化がもたらされる。免疫応答の開始におけるCD27-CD70相互作用の重要性にもかかわらず、この連続的な相互作用は、免疫調節不全及び免疫病理を引き起こすおそれがある。固形腫瘍におけるCD27-CD70相互作用を解明する研究は稀である。
【0021】
本明細書で使用する場合、「生体サンプル」という用語は、対象から得られる任意のサンプル、例えば、血清サンプル、血漿サンプル、尿サンプル、血液サンプル、リンパサンプル、腫瘍サンプル又は組織生検を指す。特定の実施態様では、発現レベルを決定するための生体サンプルは、血液サンプル、リンパサンプル又は生検等のサンプルを含む。
【0022】
特定の実施態様では、生体サンプルは、血液サンプルである。別の実施態様では、生体サンプルは、血漿サンプルである。典型的には、ガン患者及び健常ドナーを、CD27(可溶性)ヒトインスタントELISAキット(ThermoFisher Scientific, Massachusetts, United States)により、製造業者の指示に従って、sCD27濃度を分析するのに使用した。データをMRX Revelationマイクロプレートリーダー(DYNEX Technologies, Virginia, United States)により取得した。
【0023】
更なる実施態様では、生体サンプルは、腫瘍サンプルである。
【0024】
典型的には、フローサイトメトリーを実施例に記載されるように、腫瘍サンプルに対して行う。特定の実施態様では、CD27とCD70との間の相互作用を免疫蛍光分析により分析する。とりわけ、相互作用多重免疫蛍光(mIF)多重染色スライドを、Vectra(登録商標)Polaris(商標)Automated Quantitative Pathology Imaging system version 2(Akoya)を使用して撮像する。各マーカーについての単一染色スライドから得られたマルチスペクトル画像を使用して、スペクトルピークを発するフルオロフォアを含有するスペクトルライブラリをinForm(バージョン2.4.6)画像分析ソフトウェア(PerkinElmer)により作成した。このようなソフトウェア分析により、強力なパターン認識アルゴリズムによる特定の組織の検出及びセグメント化が可能となり、機械学習アルゴリズムは、間質から腫瘍をセグメント化し、ラベルされた細胞を特定するように訓練される。
【0025】
本明細書で使用する場合、「可溶性CD27のレベル」という用語は、可溶性CD27の濃度を指す。典型的には、可溶性CD27遺伝子のレベル又は濃度を当業者に公知の任意の技術により決定することができる。特に、濃度をゲノム及び/又は核酸及び/又はタンパク質のレベルで測定することができる。更なる実施態様では、可溶性CD27は、Luminex、電気化学発光又は超高感度免疫アッセイ(Simoa...)により特徴決定される。典型的には、Tリンパ球のアポトーシス、疲弊、増殖及び細胞傷害性をフローサイトメトリー、単一細胞RNA-seq、in situ多重免疫蛍光及び/又は免疫組織化学により測定する。別の実施態様では、Tリンパ球によるサイトカイン及び/又はケモカインの産生をLuminexにより測定する。
【0026】
特定の実施態様では、遺伝子の発現レベルは、各遺伝子の核酸転写物の量を測定することにより決定される。別の実施態様では、この発現レベルは、各遺伝子に対応するタンパク質の量を測定することにより決定される。核酸転写物の量を当業者に公知の任意の技術により測定することができる。特に、この測定を抽出されたメッセンジャーRNA(mRNA)サンプルに又は当技術分野において周知の技術により、抽出されたmRNAから調製された、逆転写された相補的DNA(cDNA)に直接実施することができる。mRNA又はcDNAサンプルから、核酸転写物の量を、核酸マイクロアレイ、定量的PCR、マイクロ流体カード及びラベルされたプローブとのハイブリダイゼーションを含む、当業者に公知の任意の技術を使用して測定することができる。特定の実施態様では、この発現レベルは、定量的PCRを使用することにより決定される。定量的又はリアルタイムPCRは、当業者に周知かつ容易に利用可能な技術であり、正確な説明は必要ない。mRNAの量を決定するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、生体サンプル中に含有される核酸は、まず、標準的な方法に従って、例えば、溶解酵素もしくは化学溶液を使用して抽出されるか又は製造業者の指示に従って、核酸結合樹脂により抽出される。ついで、抽出されたmRNAは、ハイブリダイゼーション(例えば、ノーザンブロット分析)及び/又は増幅(例えば、RT-PCR)により検出される。好ましくは、定量的又は半定量的RT-PCRが好ましい。リアルタイム定量的又は半定量的RT-PCRが特に有利である。増幅の他の方法は、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写媒介増幅(TMA)、鎖置換増幅(SDA)及び核酸配列に基づく増幅(NASBA)を含む。少なくとも10個のヌクレオチドを有し、本明細書において目的のmRNAに対して配列相補性又は相同性を示す核酸に、ハイブリダイゼーションプローブ又は増幅プライマーとしての有用性が見出される。このような核酸は、同一である必要はないが、典型的には、同等のサイズの相同領域と少なくとも約80%同一であり、より好ましくは、85%同一であり、さらにより好ましくは90~95%同一であると理解される。特定の実施態様では、ハイブリダイゼーションを検出するために、適切な手段、例えば、検出可能なラベルと組み合わせて、核酸を使用するのが有利であろう。蛍光、放射性、酵素又は他のリガンド(例えば、アビジン/ビオチン)を含む、多種多様な適切なインジケーターが、当技術分野において公知である。プローブは、典型的には、10~1000ヌクレオチド長、例えば、10~800、より好ましくは、15~700、典型的には、20~500の一本鎖核酸を含む。プライマーは、典型的には、10~25ヌクレオチド長のより短い一本鎖核酸であり、増幅される目的の核酸と完全に又はほぼ完全に一致するように設計される。プローブ及びプライマーは、それらがハイブリダイゼーションする核酸に「特異的」である。すなわち、それらは、好ましくは、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件(最も高い融解温度Tm、例えば、50% ホルムアミド、5×又は6×SCCに相当。SCCは、0.15M NaCl、0.015M クエン酸Naである。)下でハイブリダイゼーションする。上記増幅及び検出方法に使用される核酸プライマー又はプローブを、キットとして組み立てることができる。このようなキットは、コンセンサスプライマー及び分子プローブを含む。また、キットは、増幅が起こったかどうかを決定するのに必要な成分も含む。また、キットは、例えば、PCRバッファー及び酵素、陽性対照配列、反応制御プライマー並びに特異的配列を増幅し、検出するための説明書を含むことができる。特定の実施態様では、本発明の方法は、生体サンプルから抽出された全RNAを提供する工程と、このRNAを増幅及び特異的プローブへのハイブリダイゼーションに供する工程、とりわけ、定量的又は半定量的RT-PCRによる、を含む。別の実施態様では、発現レベルは、DNAチップ分析により決定される。このようなDNAチップ又は核酸マイクロアレイは、基材に化学的に結合された種々の核酸プローブからなる。この基材は、マイクロチップ、スライドガラス、又はマイクロスフェアサイズのビーズであることができる。マイクロチップを、ポリマー、プラスチック、樹脂、多糖類、シリカ又はシリカ系材料、カーボン、金属、無機ガラス又はニトロセルロースから構成することができる。プローブは、核酸、例えば、cDNA又はオリゴヌクレオチドを含む。これは、約10~約60塩基対であることができる。発現レベルを決定するために、場合により最初に逆転写に供された試験対象からの生体サンプルがラベルされ、ハイブリダイゼーション条件でマイクロアレイと接触させる。これにより、マイクロアレイ表面に付着したプローブ配列に相補的なターゲット核酸間の複合体が形成される。ついで、ラベルされたハイブリダイゼーション複合体が検出され、定量化し又は半定量化することができる。ラベリングを種々の方法により、例えば、放射性ラベルもしくは蛍光ラベルを使用することにより達成することができる。マイクロアレイハイブリダイゼーション技術の多くの変形形態が、当業者に利用可能である(例えば、Hoheisel, Nature Reviews, Genetics, 2006, 7:200-210によるレビューを参照のこと)。
【0027】
一部の実施態様では、血漿サンプル中に存在するsCD27の量が、質量分光法により検出される。
【0028】
一部の実施態様では、可溶性CD27のレベルの複合体(composite)であるスコアが決定され、基準値と比較される。可溶性CD27が基準値より高濃度であると決定された場合、これは、CD27とCD70との間に相互作用が存在することを示す。可溶性CD27が基準値より低濃度であると決定された場合、これは、CD27とCD70との間に相互作用が存在しないことを示す。特定の実施態様では、所定の基準値は、48.2UI/mLである。更なる実施態様では、標準偏差値は、11.46±2である。前記所定の基準値は、健常な対象において決定される。典型的には、所定の基準値は、実験的、経験的又は理論的に決定することができる閾値又はカットオフ値である。また、閾値は、当業者に認識されるであろうように、既存の実験条件及び/又は臨床条件に基づいて、任意に選択することもできる。例えば、適切にバンク化された歴史的な血漿サンプル中の可溶性CD27のレベルの遡及的測定を、所定の基準値を確立するのに使用することができる。閾値は、試験の機能及び利益/リスクバランス(偽陽性及び偽陰性の臨床的結果)に従って最適な感度及び特異性を得るように決定されなければならない。典型的には、最適な感度及び特異性(したがって、閾値)を、実験データに基づく受信者動作特性(ROC)曲線を使用して決定することができる。例えば、参照群における可溶性CD27の発現レベルを決定した後、試験されるサンプルにおいて決定された発現レベルの統計的処理のために、アルゴリズム分析を使用することができ、このため、サンプル分類のための有意性を有する分類基準を得ることができる。ROC曲線のフルネームは、受信者動作(operation)特性曲線としても知られる受信者動作(operator)特性曲線である。これは、主に、臨床生化学的診断試験に使用される。ROC曲線は、真陽性率(感度)及び偽陽性率(1-特異性)の連続変数を反映する包括的インジケーターである。これにより、画像合成法による感度と特異性との間の関係が明らかになる。一連の感度及び特異性値を計算するために、一連の異なるカットオフ値(閾値又は臨界値、診断試験の正常結果と異常結果との間の境界値)が、連続変数として設定される。ついで、感度が、曲線を描くための垂直座標として使用され、特異性が、曲線を描くための水平座標として使用される。曲線下面積(AUC)が大きいほど、診断の精度が高くなる。ROC曲線上で、座標図の左上端に最も近い点は、高い感度及び高い特異性値の両方を有する臨界点である。ROC曲線のAUC値は、1.0~0.5である。AUCが、0.5超である場合、AUCが、1に近づくにつれて、診断結果は、ますます良くなる。AUCが、0.5~0.7である場合、精度は低い。AUCが、0.7~0.9である場合、精度は中程度である。AUCが、0.9超である場合、精度は高い。このアルゴリズム法は、好ましくは、コンピュータにより行われる。当技術分野における既存のソフトウェア又はシステム、例えば、MedCalc 9.2.0.1 医療統計ソフトウェア、SPSS 9.0、ROCPOWER.SAS、DESIGNROC.FOR、MULTIREADER POWER.SAS、CREATE-ROC.SAS、GB STAT VI0.0(Dynamic Microsystems, Inc. Silver Spring, Md., USA)等をROC曲線を描くのに使用することができる。
【0029】
特定の実施態様では、本発明の方法は、アルゴリズムにより対象を分類する工程と、CD27とCD70との間の相互作用を決定する工程とをさらに含む。
【0030】
典型的には、本発明の方法は、a)生体サンプル中の可溶性CD27のレベルを定量化することと、b)定量化されたsCD27レベルを含むデータに対して分類アルゴリズムを実行して、アルゴリズム出力を得ることと、c)工程b)のアルゴリズム出力から、CD27とCD70との相互作用の確率を決定することとを含む。
【0031】
一部の実施態様では、本発明の方法において、アルゴリズムは、線形判別分析(LDA)、位相データ分析(TDA)、ニューラルネットワーク、サポートベクトルマシン(SVM)アルゴリズム及びランダムフォレストアルゴリズム(RF)から選択され、線形判別分析(LDA)、位相データ分析(TDA)、ニューラルネットワーク、サポートベクトルマシン(SVM)アルゴリズム及びランダムフォレストアルゴリズム(RF)から選択される。
【0032】
一部の実施態様では、本発明の方法は、分類アルゴリズムを使用して、対象応答を決定する工程を含む。本明細書で使用する場合、「分類アルゴリズム」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、US第8,126,690号;WO第2008/156617号に記載されているような、当技術分野において周知の分類及び回帰ツリー法及び多変量分類を指す。本明細書で使用する場合、「サポートベクトルマシン(SVM)」という用語は、パターン認識に有用な汎用学習機械であり、その識別境界は、サポートベクトルのセット及び対応する重みのセットによりパラメータ化され、別個に処理せず、複数の変数を同時に処理する方法を指す。このため、サポートベクターマシンは、分類のための統計的ツールとして有用である。サポートベクトルマシンは、そのn次元入力空間を高次元特徴空間に非線形にマッピングし、特徴間の最適界面(最適分割面)を提示する。サポートベクトルマシンは、二段階:訓練段階及び試験段階を含む。訓練段階では、サポートベクトルが生成され、一方、推定は、試験段階で特定のルールに従って行われる。一般的には、SVMは、n名の対象それぞれを、対象ごとのバイオマーカー測定値の1つのk次元ベクトル(kタプルと呼ばれる)に基づいて、2つ以上の疾患カテゴリーに分類するのに使用するためのモデルを提供する。SVMは、まず、カーネル関数を使用して、kタプルを等しい又はより高い次元の空間に変換する。カーネル関数は、元のデータ空間で可能であるであろうより超平面を使用して、カテゴリーをより良く分離することができる空間にデータを投影する。カテゴリー間を区別するための超平面を決定するために、疾患カテゴリー間の境界に最も近いサポートベクトルのセットを選択することができる。ついで、サポートベクトルと超平面との間の距離が、誤った予測にペナルティを課すコスト関数の境界内で最大となるように、超平面が、公知のSVM技法により選択される。この超平面は、予測に関してデータを最適に分離するものである(Vapnik, 1998 Statistical Learning Theory. New York: Wiley)。ついで、任意の新しい観察が、観測が超平面に関連して存在する場合に基づいて、目的のカテゴリーのうちのいずれか1つに属するものとして分類される。3つ以上のカテゴリーが考慮される場合、このプロセスは、すべてのカテゴリーについて対で行われ、それらの結果は組み合わされて、全てのカテゴリー間を区別するためのルールを作成する。本明細書で使用する場合、「ランダムフォレストアルゴリズム」又は「RF」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、US第8,126,690号;WO第2008/156617号に記載されているような分類アルゴリズムを指す。ランダムフォレストは、Leo Breimanにより最初に開発されたアルゴリズムを使用して構築される決定木ベースの分類器である(Breiman L, 「Random forests,」 Machine Learning 2001, 45:5-32)。分類器は、大量の個々の決定木を使用し、個々の木により決定されるクラスのモードを選択することによりクラスを決定する。個々の木は、下記アルゴリズムを使用して構築される:(1)訓練セットにおけるケースの数が、Nであり、分類器における変数の数が、Mであると仮定する;(2)木のノードにおける決定を決定するのに使用されるであろう入力変数の数を選択する(この数mは、Mよりはるかに小さくあるべきである);(3)置換を伴う訓練セットからN個のサンプルを選択することにより訓練セットを選択する;(4)木の各ノードについて、そのノードにおける決定に基づいて、M個の変数のうちのm個をランダムに選択する;(5)訓練セットにおけるこれらのm個の変数に基づいて、最良の分割を計算する。一部の実施態様では、スコアは、コンピュータプログラムにより生成される。
【0033】
本発明のアルゴリズムは、入力データ上で動作し、出力を生成することにより機能を実行するために、1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラマブルプロセッサにより実施することができる。また、このアルゴリズムは、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)により実施することができ、装置はこれらを実装することができる。コンュータプログラムの実行に適したプロセッサは、例として、汎用及び専用マイクロプロセッサの両方並びに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサを含む。一般的には、プロセッサは、読み出し専用メモリもしくはランダムアクセスメモリ又はその両方から命令及びデータを受信するであろう。コンピュータの必須要素は、命令を実行するためのプロセッサと、命令及びデータを記憶するための1つ以上のメモリデバイスである。一般的には、コンピュータは、データを記憶するための1つ以上の大容量メモリデバイス、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク又は光ディスクからデータを受信し、それにデータを転送し又は両方をするように、それらも含み又はそれらに動作可能に接続されているであろう。ただし、コンピュータは、このようなデバイスを有する必要はない。さらに、コンピュータを、別のデバイスに組み込むことができる。コンピュータプログラム命令及びデータを記憶するのに適したコンピュータ可読媒体は、例として、半導体メモリデバイス、例えば、EPROM、EEPROM及びフラッシュメモリデバイス;磁気ディスク、たとえば、内部ハードディスク又はリムーバブルディスク;光磁気ディスク並びにCD-ROM及びDVD-ROMディスクを含む、全ての形式の不揮発性メモリ、媒体及びメモリデバイスを含む。プロセッサ及びメモリは、専用論理回路により補足されるか又は専用論理回路に組み込まれる場合がある。ユーザとの対話を提供するために、本発明の実施態様を、ユーザに情報を表示するためのディスプレイデバイス、例えば、非限定的な例では、CRT(陰極線管)又はLCD(液晶ディスプレイ)モニタと、ユーザがコンピュータに入力を提供することができるキーボード及びポインティングデバイス、例えば、マウス又はトラックボールとを有するコンピュータ上で実施することができる。他の種類のデバイスも、ユーザとの対話を提供するのに使用することができ、例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、任意の形式の感覚フィードバック、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック又は触覚フィードバックであることができ、ユーザからの入力を、音響、音声又は触覚入力を含む任意の形式で受信することができる。したがって、一部の実施態様では、アルゴリズムを、バックエンドコンポーネント(例えば、データサーバ)を含む又はミドルウェアコンポーネントを含む(例えば、アプリケーションサーバ)又はフロントエンドコンポーネント(例えば、ユーザが本発明の実装と対話することができるグラフィカルユーザインターフェースもしくはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータ)を含む、又は1つ以上のこのようなバックエンド、ミドルウェアもしくはフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせを含む、コンピュータシステムに実装することができる。システムのコンポーネントを任意の形式又は媒体のデジタルデータ通信、例えば、通信ネットワークにより相互接続することができる。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)及びワイドエリアネットワーク(「WAN」)、例えば、インターネットを含む。コンピュータシステムは、クライアント及びサーバを含むことができる。クライアント及びサーバは、一般的には、互いに離れており、典型的には、通信ネットワークを介して対話する。クライアントとサーバとの関係は、各コンピュータ上で実行され、互いにクライアント-サーバ関係を有するコンピュータプログラムにより生じる。
【0034】
本発明の文脈において、本発明者らは、ccRCCにおけるCD70とCD27との相互作用によりTILアポトーシスが誘導され、患者の末梢血においてsCD27の上昇がもたらされることを示した。可溶性CD27の濃度が、基準値より低いと決定された場合、CD27とCD70との間には相互作用が存在しないことを示す。それは、一連の付加的かつ持続的な共刺激シグナルが生じず、T細胞機能不全のリスクが回避されることを意味する。
【0035】
したがって、本発明の方法は、腫瘍内Tリンパ球(LT)の機能不全を予測するのに適している。
【0036】
典型的には、本発明は、腫瘍内リンパ球(LT)の機能不全を予測するための方法であって、i)上記された方法に従って、CD27とCD70との間の相互作用を決定する工程と、ii)CD27とCD70との間の相互作用が存在する場合、腫瘍内Tリンパ球の機能不全が存在すると結論付け、又はCD27とCD70との間の相互作用が存在しない場合、腫瘍内Tリンパ球の機能不全が存在しないと結論付ける工程とを含む、方法に関する。
【0037】
典型的には、本発明は、腫瘍内リンパ球(LT)の機能不全を予測するための方法であって、i)生体サンプル中の可溶性CD27(sCD27)のレベルを決定する工程と、ii)工程i)で定量化されたsCD27のレベルを、その対応する所定の基準値と比較する工程と、iii)sCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より高い場合、腫瘍内リンパ球(LT)の機能不全が存在すると結論付け、又はsCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より低い場合、腫瘍内リンパ球(LT)の機能不全が存在しないと結論付ける工程とを含む、方法に関する。
【0038】
本明細書で使用する場合、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)とも呼ばれる「腫瘍内Tリンパ球」という用語は、血流を出て、腫瘍に移動した白血球を指す。それらは、単核免疫細胞であり、種々の割合で種々のタイプの細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ)の混合物を含むことができ、T細胞が、通常最も豊富である。特定の実施態様では、本発明の文脈において、TILは、Tリンパ球細胞である。
【0039】
本明細書で使用する場合、「腫瘍内Tリンパ球の機能不全」という用語は、増殖し、分化することができないリンパ球T細胞を指す。このようなリンパ球は、腫瘍内で疲弊していまい、このため、それらは、腫瘍細胞に対して防御することができない。
【0040】
特定の実施態様では、本発明の方法は、対象がCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンに罹患するか又は罹患しやすいかどうかを予測するのに適している。
【0041】
したがって、本発明は、対象がCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンに罹患するか又は罹患しやすいかどうかを予測するための方法であって、i)上記されたように、CD27とCD70との間の相互作用を決定する工程と、ii)CD27とCD70との間の相互作用が存在する場合、対象が、ガンに罹患するかもしくは罹患していると結論付け、又はCD27とCD70との間の相互作用が存在しない場合、対象が、ガンに罹患しないかもしくは罹患していないと結論付ける工程とを含む、方法に関する。
【0042】
典型的には、本発明は、対象がCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンに罹患するか又は罹患しやすいかどうかを予測するための方法であって、i)生体サンプル中の可溶性CD27(sCD27)のレベルを決定する工程と、ii)工程i)で定量化されたsCD27のレベルを、その対応する所定の基準値と比較する工程と、iii)sCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より高い場合、CD70を発現するガン及び/もしくは転移性ガンに罹患するかもしくは罹患していると結論付け、又はsCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より低い場合、対象が、CD70を発現するガン及び/もしくは転移性ガンに罹患しないかもしくは罹患していないと結論付ける工程とを含む、方法に関する。
【0043】
別の実施態様では、本発明は、ガンに罹患している対象が免疫療法処置に対する応答を達成するであろうかどうかを予測するための方法に適している。
【0044】
典型的には、本発明は、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンに罹患している対象が免疫療法処置に対する応答を達成するであろうかどうかを予測するための方法であって、i)上記されたように、CD27とCD70との間の相互作用を決定する工程と、ii)CD27とCD70との間の相互作用が存在しない場合、対象が、免疫療法処置に対する応答を達成するであろうと結論付け、又はCD27とCD70との間の相互作用が存在する場合、対象が、免疫療法処置に対する応答を達成しないであろうと結論付ける工程とを含む、方法に関する。
【0045】
更なる実施態様では、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンに罹患している対象が、免疫療法処置に対する応答を達成するであろうかどうかを予測するための本発明の方法は、i)生体サンプル中の可溶性CD27のレベルを定量化する工程と、ii)工程i)で定量化された可溶性CD27のレベルを、その対応する所定の基準値と比較する工程と、iii)可溶性CD27のレベルが、その対応する所定の基準値より高い場合、対象が、免疫療法処置に応答しないであろうと結論付け、又は可溶性CD27のレベルが、その対応する所定の基準値より低い場合、対象が、免疫療法処置に応答するであろうと結論付ける工程とを含む、方法に関する。
【0046】
本明細書で使用する場合、「予測する」という用語は、本発明の方法により分析される対象がガン及び/又は転移性ガンに罹患するかもしくは罹患しやすい対象群又は罹患しないか又は罹患していない対象群のいずれかに割り当てられることを意味する。
【0047】
本明細書で使用する場合、「ガン」という用語は、細胞の制御されない分裂に起因する悪性増殖又は腫瘍を指す。「ガン」という用語は、原発性腫瘍及び転移性腫瘍を含む。特定の実施態様では、ガンは、CD70を発現するガンである。加えて、ガンは、具体的には、下記組織タイプのもの:悪性新生物;ガン腫;未分化ガン;巨細胞及び紡錘細胞ガン;小細胞ガン;乳頭ガン;扁平上皮ガン;リンパ上皮ガン;基底細胞ガン;毛母ガン;移行上皮ガン;乳頭移行上皮ガン;腺ガン;悪性ガストリノーマ;胆管細胞ガン;肝細胞ガン;肝細胞ガンと胆管細胞ガンの併発;索状腺ガン;腺様嚢胞ガン;腺腫性ポリープにおける腺ガン;家族性結腸ポリポーシス腺ガン;固形ガン;悪性カルチノイド腫瘍;分枝肺胞腺ガン;乳頭腺ガン;色素嫌性ガン;好酸性ガン;好酸性腺ガン;好塩基性ガン;淡明細胞腺ガン;顆粒球ガン;濾胞腺ガン;乳頭及び濾胞腺ガン;非被包性硬化性ガン;副腎皮質ガン;子宮内膜ガン;皮膚付属器ガン;アポクリン腺ガン;皮脂腺ガン;耳垢腺ガン;粘表皮ガン;嚢胞腺ガン;乳頭嚢胞腺ガン;乳頭状漿液嚢胞腺ガン;粘液性嚢胞腺ガン;粘液性腺ガン;印環細胞ガン;浸潤性乳管ガン;髄様ガン;小葉ガン;炎症性ガン;乳房パジェット病;腺房細胞ガン;腺扁平上皮ガン;扁平上皮異形成腺ガン;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍;悪性卵胞膜細胞腫;悪性顆粒膜細胞腫瘍、悪性神経芽細胞腫;セルトリ細胞ガン;悪性ライディッヒ細胞腫瘍;悪性脂質細胞腫瘍;悪性パラガングリオーマ;悪性乳腺外パラガングリオーマ;クロム親和性細胞腫;血管球血管肉腫;悪性メラノーマ;無色素性メラノーマ;表在拡大型メラノーマ;巨大色素性母斑における悪性メラノーマ;類上皮細胞メラノーマ;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;肝芽腫;ガン肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胎児性ガン;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛ガン;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管外皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮歯牙肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅神経腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫瘍;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;びまん性大細胞型悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉腫;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;マスト細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫並びに有毛細胞白血病であることができるが、これらに限定されない。
【0048】
特定の実施態様では、ガンは、腎臓ガンである。本明細書で使用する場合、「腎臓ガン」、「腎ガン」又は「腎細胞ガン」という用語は、腎臓から生じたガンを指す。本明細書で使用する場合、「腎細胞ガン(cancer)」又は「腎細胞ガン(carcinoma)」(RCC)という用語は、近位尿細管の内層に由来するガンを指す。より具体的には、RCCは、幾つかの比較的一般的な組織学的サブタイプ:淡明細胞腎細胞ガン、乳頭状(好色素性)嫌色素性集合尿細管ガン及び髄様ガンを包含する。淡明細胞腎細胞ガン(ccRCC)は、RCCの最も一般的なサブタイプである。特定の実施態様では、ガンは、転移性腎細胞ガンである。
【0049】
別の実施態様では、ガンは、肺ガンである。本明細書で使用する場合、「肺ガン」という用語は、進行の全ての段階にある全てのタイプの肺ガン、例えば、肺ガン、転移性肺ガン、非小細胞肺ガン(NSCLC)、例えば、肺腺ガン、扁平上皮ガン又は小細胞肺ガン(SCLC)を含むが、これらに限定されない。一部の実施態様では、対象は、非小細胞肺ガン(NSCLC)に罹患する。
【0050】
本明細書で使用する場合、「転移性メラノーマ」という用語は、古典的な処置に応答しないガンを指す。ガンは、処置の開始時に、抵抗性である場合があり又は処置中に抵抗性になる場合がある。薬剤に対する抵抗性により、転移の急速な進行がもたらされる。薬剤に対するガンの抵抗性は、細胞の増殖、分裂又は分化に関与する種々の遺伝子における突然変異により生じる。
【0051】
本明細書で使用する場合、「古典的な処置」という用語は、ガン及び/又は転移性ガンの処置に使用される、天然又は合成の任意の化合物を指す。特定の実施態様では、古典的な処置は、放射線療法、免疫療法、抗体療法又は化学療法を指す。
【0052】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、ほ乳類、例えば、げっ歯類、ネコ、イヌ及び霊長類を意味する。特に、本発明の対象は、ヒトである。とりわけ、本発明の対象は、CD70を発現するガンを有するか又は有しやすい。特定の実施態様では、本発明の対象は、上記されたガンを有するか又は有しやすい。別の実施態様では、本発明の対象は、転移性ガンを有するか又は有しやすい。
【0053】
別の実施態様では、本発明の対象は、腎細胞ガンを有するか又は有しやすい。別の実施態様では、本発明の対象は、淡明細胞腎細胞ガン(ccRCC)を有するか又は有しやすい。別の実施態様では、本発明の対象は、肺ガンを有するか又は有しやすい。別の実施態様では、本発明の対象は、NSCLC又はSCLCを有するか又は有しやすい。別の実施態様では、本発明の対象は、メラノーマを有するか又は有しやすい。
【0054】
ガンを処置するための方法
第2の態様では、本発明は、ガン及び/又は転移性ガンの処置を必要とする対象において、ガン及び/又は転移性ガンを処置するための方法であって、治療上有効量のCD27/CD70相互作用の阻害剤を前記対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【0055】
特定の実施態様では、本発明は、本発明の方法に従って、CD27とCD70との間に相互作用を有さないと特定された対象におけるガン又は転移性ガンを処置するための方法に関する。
【0056】
特定の実施態様では、本発明の方法において、前記ガン及び/又は転移性ガンは、CD70を発現するガンである。
【0057】
したがって、本発明は、ガン又は転移性ガンの処置を必要とする対象において、ガン又は転移性ガンを処置するための方法であって、i)上記された方法に従って、CD27とCD70との間の相互作用を決定する工程と、ii)CD27とCD70との間の相互作用を有さない場合、治療上有効量のCD27/CD70相互作用の阻害剤で前記対象を処置する工程とを含む、方法に関する。
【0058】
典型的には、本発明は、ガン又は転移性ガンの処置を必要とする対象において、ガン又は転移性ガンを処置するための方法であって、i)生体サンプル中の可溶性CD27(sCD27)のレベルを決定する工程と、ii)工程i)で定量化されたsCD27のレベルを、その対応する所定の基準値と比較する工程と、iii)sCD27のレベルが、その対応する所定の基準値より低い場合、CD27とCD70との間には相互作用が存在しないと結論付ける工程と、iv)治療上有効量のCD27/CD70相互作用の阻害剤で前記対象を処置する工程とを含む、方法に関する。
【0059】
本明細書で使用する場合、「処置すること」又は「処置」という用語は、予防的(prophylactic)又は予防的(preventive)処置と、治癒的又は疾患修飾的処置との両方を指し、疾患にかかるリスクがあるか又は疾患にかかっていると疑われる対象及び疾患又は病状に罹患しているか又は罹患していると診断された対象の処置を含み、臨床的再発のサプレッションを含む。処置は、医学的障害を有するか又は障害を最終的に獲得するおそれがある対象に、障害又は再発性障害を予防し、治癒し、その発症を遅延させ、その重症度の低減し又はその1つ以上の症状を改善するためにあるいはこのような処置の非存在下で予想される生存を超えて対象の生存を延長するために投与することができる。「治療計画」は、疾患の処置パターン、例えば、治療中に使用される投与パターンを意味する。治療計画は、導入計画及び維持計画を含む場合がある。「導入計画」又は「導入期間」という語句は、疾患の初期処置に使用される治療計画(又は治療計画の一部)を指す。導入計画の一般的な目標は、処置計画の初期期間中に対象に高レベルの薬剤を提供することである。導入計画は、「負荷計画」を(部分的に又は全体的に)利用することができる。負荷計画は、医師が維持計画中に利用するであろうより多い用量の薬剤を投与すること、医師が維持計画中に薬剤を投与するであろうより高頻度に薬剤を投与すること又はその両方を含むことができる。「維持計画」又は「維持期間」という語句は、疾患の処置中に対象を維持するために、例えば、対象を長期間(数か月又は数年)寛解状態に保つために使用される治療計画(又は治療計画の一部)を指す。維持計画は、連続療法(例えば、規則的な間隔、例えば、毎週、毎月、毎年等で薬剤を投与すること)又は断続的療法(例えば、中断処置、断続的処置、再発時の処置又は特定の所定の基準[例えば、疼痛、疾患症状等]の到達時の処置)を利用することができる。
【0060】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、ほ乳類、例えば、げっ歯類、ネコ、イヌ及び霊長類を意味する。特に、本発明の対象は、ヒトである。とりわけ、本発明の対象は、ガンを有するか又は有しやすい。特定の実施態様では、本発明の対象は、転移性ガンを有するか又は有しやすい。特定の実施態様では、本発明の対象は、CD70を発現するガンを有するか又は有しやすい。特定の実施態様では、本発明の対象は、腎細胞ガン(RCC)を有するか又は有しやすい。特定の実施態様では、本発明の対象は、淡明細胞腎細胞ガン(ccRCC)を有するか又は有しやすい。特定の実施態様では、対象は、肺ガンを有するか又は有しやすい。特定の実施態様では、対象は、メラノーマガンを有するか又は有しやすい。
【0061】
本明細書で使用する場合、「ガン」という用語は、上記定義されたように、細胞の制御されない分裂に起因する悪性増殖又は腫瘍を指す。本明細書で使用する場合、「転移性ガン」という用語は、上記されたように、古典的な処置に応答しないガンを指す。特定の実施態様では、ガンは、CD70を発現するガンである。本発明のガンは上記されている。
【0062】
本明細書で使用する場合、「アンタゴニスト」とも呼ばれる「CD27/CD70相互作用の阻害剤」という用語は、CD27とCD70との相互作用を阻害する生物学的効果を有する天然又は合成化合物を指す。このような阻害剤は、CD27又はCD70のアンタゴニストである。このような阻害により、CD27とCD70との間の相互作用が遮断される。
【0063】
特定の実施態様では、CD27/CD7相互作用の阻害剤は、ペプチド、ペプチド模倣物、ポリペプチド、デコイ、有機小分子、抗体、アプタマー、siRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0064】
特定の実施態様では、CD27/CD70相互作用の阻害剤は、CD27の阻害剤である。
【0065】
特定の実施態様では、CD27/CD70相互作用の阻害剤は、CD70の阻害剤である。
【0066】
特定の実施態様では、CD27/CD70相互作用の阻害剤は、ポリペプチドである。「ポリペプチド」という用語は、少なくとも2つのアミノ酸残基及び最大10個のアミノ酸残基の長さを有する両方の短いペプチド、オリゴペプチド(11~100個のアミノ酸残基)並びにより長いペプチド(「ポリペプチド」の通常の解釈、すなわち、100個超のアミノ酸残基の長さ)並びにタンパク質(グリコシル化されるか、脂質化されるか又は補欠分子族を含むことにより化学的に修飾されていることができる少なくとも1つのペプチド、オリゴペプチド又はポリペプチドを含む機能的実体)を指す。
【0067】
特定の実施態様では、ポリペプチドは、CD27又はCD70に結合可能なデコイペプチド又はペプチド模倣物である。
【0068】
特定の実施態様では、CD27/CD70相互作用の阻害剤は、ペプチド模倣物である。「ペプチド模倣物」という用語は、ペプチドを模倣するように設計された小タンパク質様鎖を指す。
【0069】
特定の実施態様では、ペプチド模倣物は、本発明の文脈において、ペプチド、例えば、CD27又はCD70を模倣するように設計された小タンパク質様鎖である。本明細書で使用する場合、「ペプチド模倣物」又はPMという用語は、非ペプチド化学部分を意味する。ペプチドは、ペプチド(アミド)結合により連結されたアミノ酸モノマーの短鎖である。ペプチド(アミド)結合は、1つのアミノ酸のカルボキシル基が、別のアミノ酸のアミノ基と反応する時に形成される共有化学結合である。最も短いペプチドは、単一のペプチド結合により連結された2つのアミノ酸からなるジペプチドであり、続けて、トリペプチド、テトラペプチド等である。ペプチド模倣化学部分は、非アミノ酸化学部分を含む。また、ペプチド模倣化学部分は、1つ以上の非アミノ酸化学単位により分離された1つ以上のアミノ酸も含むことができる。ペプチド模倣化学部分は、その化学構造のいずれの部分にも、ペプチド結合により連結された2つ以上の隣接アミノ酸を含有しない。本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン又はシトルリンを意味する。
【0070】
特定の実施態様では、ペプチド模倣物は、CD27又はCD70の機能的に同等のフラグメントである。
【0071】
本明細書で使用する場合、「シンク」又は「トラップ」としてのデコイとしても知られる「機能的同等物」は、CD27又はCD70に結合し、それにより、それら同士の相互作用を妨害可能な化合物である。CD27又はCD70のこのようなペプチド模倣物は、不活性化形態である。
【0072】
本明細書で使用する場合、「シンク」又は「トラップ」としてのデコイ又は「デコイレセプター」としても知られる「機能的同等物」は、CD27又はCD70に結合し、それにより、それら同士の相互作用を妨害可能な化合物である。とりわけ、それは、リガンドに結合するが、シグナル伝達レセプター複合体にアゴニストをシグナル伝達し又は提示することが構造的に不可能な化合物である。デコイは、リガンドのための分子トラップとして機能し、それにより、リガンドがその機能的レセプターに結合するのを妨害する。デコイは、CD27もしくはCD70のペプチド模倣物又はそのフラグメントであることができる。このため、「機能的に同等のフラグメント」という用語は、タンパク質類似物が可溶性CD70に結合する能力を保持するように、アミノ酸配列を変更することにより、例えば、1つ以上のアミノ酸の欠失、置換又は付加により得られる、CD27又はCD70の任意の同等物を含む。アミノ酸置換は、例えば、アミノ酸配列をコードするDNAの点突然変異により行うことができる。機能的同等物は、CD27又はCD70に結合する分子を含む。
【0073】
「変異体」という用語は、ペプチドミ模倣物に関して、それが由来するペプチド模倣物と比較して、アミノ酸配列の1つ以上の変化により異なるペプチド模倣物として理解されたい。タンパク質変異体が由来するペプチド模倣物は、親ポリペプチドとしても知られる。典型的には、変異体は、人工的に、好ましくは、遺伝子技術的手段により構築される。典型的には、親ポリペプチドは、野生型タンパク質又は野生型タンパク質ドメインである。また、本発明に使用可能な変異体は、親ポリペプチドのホモログ、オルソログ又はパラログに由来する場合もある。アミノ酸配列における変化は、アミノ酸交換、挿入、欠失、N末端切断もしくはC末端切断又はこれらの変化の任意の組み合わせであることができ、これらは、1つ又は複数の部位で起こる場合がある。特定の実施態様では、本発明に使用可能な変異体は、アミノ酸配列において、総数最大200個(最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200個)の変化(すなわち、交換、挿入、欠失、N末端切断及び/又はC末端切断)を示す。アミノ酸交換は、保存的及び/又は非保存的である場合がある。好ましい実施態様では、本発明に使用可能な変異体は、それが由来するタンパク質又はドメインと、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100個のアミノ酸交換、好ましくは、保存的アミノ酸変化で異なる。代替的に又は付加的には、本明細書で使用する場合、「変異体」は、それが由来する親ポリペプチドに対するある程度の配列同一性を特徴とすることができる。より正確には、本発明の文脈におけるタンパク質変異体は、その親ポリペプチドに対して少なくとも80%の配列同一性を示す。特に、タンパク質変異体の配列同一性は、20、30、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、400、500、600個以上のアミノ酸の連続的なストレッチにわたって、より好ましくは、参照ポリペプチド(親ポリペプチド)の全長にわたってである。「少なくとも80%の配列同一性」という用語は、ポリペプチド配列比較に関して、本明細書全体を通して使用される。この表現は、特に、各参照ポリペプチドに対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を指す。特に、目的のポリペプチド及び参照ポリペプチドは、上記で特定されたような連続的なストレッチにわたって、示された配列同一性を示す。
【0074】
本発明の「変異体」ペプチド模倣物の配列同一性を、特定されたCD27又はCD70のデコイペプチド模倣物の全アミノ酸配列を参照して、CD27又はCD70のアミノ酸配列の特定された範囲にわたって決定することができる。変異体ペプチド模倣物の%配列同一性を決定する場合、配列アラインメントは、任意の具体的に除外されたアミノ酸残基を省くことができる。例えば、配列番号3;配列番号:4又は配列番号:6のアミノ酸に対して、少なくとも80%の配列同一性を示すCD27又はCD70のデコイペプチド模倣物の変異体ペプチド模倣物について、比較のための配列アラインメントを、アミノ酸のみにわたって行う場合があり又は全長CD27又はCD70のデコイペプチド模倣物内のアミノ酸配列の2つ以上の特定された範囲を考慮に入れる場合がある。
【0075】
特定の実施態様では、CD27/CD70相互作用の阻害剤は、アプタマーである。アプタマーは、分子認識の観点から抗体の代替物を表わす分子のクラスである。アプタマーは、高い親和性及び特異性で、実質的に任意のクラスのターゲット分子を認識する能力を有するオリゴヌクレオチド又はオリゴペプチド配列である。
【0076】
特定の実施態様では、CD27/CD70相互作用の阻害剤は、有機小分子である。「有機小分子」という用語は、医薬品において一般的に使用される有機分子に匹敵するサイズの分子を指す。この用語は、生体高分子(例えば、タンパク質、核酸等)を除外する。好ましい有機小分子は、最大約5000Da、より好ましくは、最大約2000Da、最も好ましくは、最大約1000Daのサイズの範囲である。
【0077】
特定の実施態様では、CD27/CD70相互作用の阻害剤は、抗体である。このような抗体は、CD27/CD70の相互作用を遮断する。特定の実施態様では、抗体は、CD70の中和モノクローナル抗体である。別の実施態様では、抗体は、CD27の中和モノクローナル抗体である。
【0078】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)及び抗体フラグメント(所望の生物学的活性を示す限り)を包含する。この用語は、抗原結合ドメインを含む抗体フラグメント、例えば、Fab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(DAB)、TandAbs二量体、Fv、scFv(一本鎖Fv)、dsFv、ds-scFv、Fd、線状抗体、ミニボディ、ディアボディ、二重特異性抗体フラグメント、バイボディ、トリボディ(scFv-Fab融合体、それぞれ二重特異性又は三重特異性);sc-ディアボディ;カッパ(ラムダ)抗体(scFv-CL融合体);BiTE(T細胞を誘導する二重特異性T細胞エンゲージャー、scFv-scFvタンデム);DVD-Ig(二重可変ドメイン抗体、二重特異性フォーマット);SIP(小型免疫タンパク質、ある種のミニボディ);SMIP(「小型モデュラー免疫医薬品」);scFv-Fc二量体;DART(ds安定化ディアボディ「二重親和性ReTargeting」);1つ以上のCDRを含む小型抗体模倣物等を含む。種々の抗体ベースの構築物及びフラグメントを調製し、使用するための技術は、当技術分野において周知である((Kabat et al., 1991)を参照のこと、この文献は、参照により本明細書に具体的に組み入れられる)。特に、ディアボディは、EP第404,097号及びWO第93/11161号にさらに記載されている。一方、線状抗体は、さらに(Zepata et al., 1995)に記載されている。抗体を、従来の技術を使用してフラグメント化することができる。例えば、F(ab’)2フラグメントを、抗体をペプシンで処理することにより生成することができる。得られたF(ab’)2フラグメントを、ジスルフィド架橋を還元するように処理して、Fab’フラグメントを産生することができる。パパイン消化により、Fabフラグメントの形成をもたらすことができる。また、Fab、Fab’及びF(ab’)2、scFv、Fv、dsFv、Fd、dAb、TandAb、ds-scFv、二量体、ミニボディ、ディアボディ、二重特異性抗体フラグメント及び他のフラグメントを、リコンビナント技術により合成することもでき又は化学的に合成することもできる。抗体フラグメントを産生するための技術は、当技術分野において周知であり、記載されている。例えば、(Beckman et al., 2007;Holliger & Hudson, 2005;Le Gall et al., 2004;Reff & Heard, 2001;Reiter et al., 1996;Young et al., 1995)のそれぞれには、有効な抗体フラグメントの産生がさらに記載されており、同産生が可能である。一部の実施態様では、抗体は、US第4,816,567号に記載されているような「キメラ」抗体である。一部の実施態様では、抗体は、ヒト化抗体、例えば、US第6,982,321号及び同第7,087,409号に記載されているものである。一部の実施態様では、抗体は、ヒト抗体である。例えば、US第6,075,181号及び同第6,150,584号に記載されている「ヒト抗体」。一部の実施態様では、抗体は、例えば、EP第0368684号、WO第06/030220号及び同第06/003388号に記載されている単一ドメイン抗体である。
【0079】
特定の実施態様では、CD27/CD70相互作用の阻害剤は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体を、培養中の連続細胞系統による抗体分子の産生を提供する任意の技術を使用して、調製し、単離することができる。産生及び単離のための技術は、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術及びEBVハイブリドーマ技術を含むが、これらに限定されない。
【0080】
特定の実施態様では、阻害剤は、CD27又はCD70に対して特異性を有するイントラボディである。本明細書で使用する場合、「イントラボディ」という用語は、一般的には、細胞内抗体又は抗体フラグメントを指す。抗体、特に、一本鎖可変抗体フラグメント(scFv)を細胞内局在化のために修飾することができる。このような修飾は、例えば、安定な細胞内タンパク質、例えば、マルトース結合タンパク質等への融合又は細胞内輸送/局在化ペプチド配列、例えば、小胞体保持の付加を伴う場合がある。一部の実施態様では、イントラボディは、単一ドメイン抗体である。一部の実施態様では、本発明の抗体は、単一ドメイン抗体である。「単一ドメイン抗体」(sdAb)又は「VHH」という用語は、本質的に軽鎖を欠いているラクダ科ほ乳類において見出すことができるタイプの抗体の単一重鎖可変ドメインを指す。このようなVHHは、「nanobody(登録商標)」とも呼ばれる。本発明によれば、sdAbは、特に、ラマsdAbであることができる。
【0081】
特定の実施態様では、CD27/CD70相互作用の阻害剤は、抗CD27抗体である。
【0082】
特定の実施態様では、CD27/Cd70相互作用の阻害剤は、抗Cd70抗体である。
【0083】
特定の実施態様では、CD27/Cd70相互作用の阻害剤は、抗CD27抗体であり、ここで、前記抗CD27抗体は、HPAB-0095-LSX;ヒト抗CD70リコンビナント抗体(クローン2H5);HPAB-469-WJ-F(E);ヒト抗CD70リコンビナント抗体(クローンAb2);HPAB-0095-LSX-F(E);ヒト抗CD70リコンビナント抗体(クローン2H5);HPAB-0468-WJ-F(E);ヒト抗CD70リコンビナント抗体(クローンAb1);HPAB-AP586-YC;ヒト抗CD70リコンビナント抗体(クローンh1F6-HHLA);HPAB-AP589-YC-F(E);ヒト抗CD70リコンビナント抗体(クローンh1F6-HMLA);TAB-336LC-F(E);抗ヒトCD70治療抗体Fabフラグメント(Mb VLVH)又はラット抗Cd70リコンビナント抗体(クローンFR70)からなる群において選択されるが、これらに限定されない。
【0084】
特定の実施態様では、CD27/CD70相互作用の阻害剤は、ARGX-110である。ARGX-110は、クサツズマブとも呼ばれ、Argenx BVBAにより開発され、WO第2012/123586号及びAftimos et al 2017に記載されている。
【0085】
特定の実施態様では、CD27/CD70相互作用の阻害剤は、ボルセツズマブ マホドチン(SGN-75)である。SGN-75は、抗体-薬剤コンジュゲート(ADC)であり、ヒト化モノクローナル抗体であるボルセツズマブは、細胞傷害性剤である非開裂性モノメチルオーリスタチンF(MMAF)とコンジュゲーションしている。
【0086】
本明細書で使用する場合、「投与すること」又は「投与」という用語は、体外に存在する物質(例えば、CD27/CD70相互作用の阻害剤)を対象に注射するか又は他の物理的な送達を行う行為、例えば、経口、粘膜、皮内、静脈内、皮下、筋肉内送達及び/又は本明細書に記載されるもしくは当技術分野において公知の任意の他の物理的送達方法による、を指す。疾患又はその症状が処置される場合、物質の投与を典型的には、疾患又はその症状の発症後に行う。疾患又はその症状が予防される場合、物質の投与を典型的には、疾患又はその症状の発症前に行う。
【0087】
特定の実施態様では、CD27/CD70相互作用の阻害剤が経口投与される。
【0088】
別の態様では、本発明は、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置を必要とする対象におけるCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置に使用するための併用調製物としての、CD27/CD70相互作用の阻害剤及びii)古典的処置に関する。
【0089】
特定の実施態様では、本発明は、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置を必要とする対象におけるCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置において同時、別個又は連続投与により使用するための、i)CD27/CD70相互作用の阻害剤及びii)古典的処置に関する。
【0090】
本明細書で使用する場合、「併用処置」、「併用療法」又は「療法併用」という用語は、2つ以上の薬剤を使用する処置を指す。
【0091】
本明細書で使用する場合、「同時に投与」という用語は、同じ経路により、同時に又は実質的に同時に、2つの有効成分を投与することを指す。「別個に投与」という用語は、異なる経路により、同時に又は実質的に同時に、2つの有効成分を投与することを指す。「連続的に投与」という用語は、異なるタイミングで、2つの有効成分を投与することを指し、投与経路は、同一又は異なる。
【0092】
本明細書で使用する場合、「古典的処置」という用語は、当技術分野で周知であり、ガンを処置するのに使用される処置を指す。本発明の文脈において、古典的処置は、ターゲット療法、放射線療法、免疫療法又は化学療法を指す。
【0093】
特定の実施態様では、本発明は、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置を必要とする対象におけるCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置に使用するための併用調製物としての、1)本発明のCD27/CD70相互作用の阻害剤及びii)放射線療法に関する。
【0094】
本明細書で使用する場合、「放射線療法(radiation therapy)」又は「放射線療法(radiotherapy)」という用語は、当技術分野におけるそれらの一般的な意味を有し、電離放射線によるガンの処置を指す。電離放射線は、処置される領域(ターゲット組織)の細胞を、それらの遺伝物質に損傷を与えることにより傷害し又は破壊するエネルギーを与え、これらの細胞が増殖し続けることを不可能にする。一般的に使用される放射線療法の1つのタイプは、光子、例えば、X線を含む。それらが有するエネルギーの量に応じて、光線を、体の表面上又は体内のより深部のガン細胞を破壊するのに使用することができる。x線ビームのエネルギーが高いほど、x線を、より深いターゲット組織に届かせることができる。直線加速器及びベータトロンにより、ますます大きなエネルギーのx線が発せられる。放射線(例えば、x線)をガンの部位に集中させる機械の使用は、体外ビーム放射線療法と呼ばれる。ガンマ線は、放射線療法に使用される光子の別の形態である。ガンマ線は、特定の元素(例えば、ラジウム、ウラン及びコバルト60)が分解又は崩壊するのにつれて放射線を放出するため、自発的に発せられる。一部の実施態様では、放射線療法は、体外放射線療法である。体外放射線療法の例は、従来の体外ビーム放射線療法;異なる方向から腫瘍の形状に密接に適合するように成形ビームを送達する三次元コンフォーマル放射線療法(3D-CRT);強度モデュレーション放射線療法(IMRT)、例えば、腫瘍の形状に密接に適合するように放射線ビームを成形し、腫瘍の形状にも応じて放射線量も変化させるヘリカルトモセラピー;コンフォーマル陽子ビーム放射線療法;走査技術と放射線技術とを組み合わせて腫瘍のリアルタイム画像を提供して放射線処置を誘導する画像誘導放射線療法(IGRT);手術中に腫瘍に直接放射線を送達する術中放射線療法(IORT);単一セッションで大きな正確な放射線量を小さな腫瘍領域に送達する定位放射線手術;放射線療法の1日当たりに2回以上の処置(分割)が対象に与えられる多分割放射線療法、例えば、連続多分割加速放射線療法(CHART);及び分割当たりにより多くの線量の放射線療法が与えられるが、分割がより少ない低分割放射線療法を含むが、これらに限定されない。
【0095】
特定の実施態様では、本発明は、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置を必要とする対象におけるCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置に使用するための併用調製物として使用される、1)本発明のCD27/CD70相互作用の阻害剤及びii)化学療法に関する。
【0096】
本明細書で使用する場合、「化学療法」という用語は、対象を処置するための化学療法剤の使用を指す。本明細書で使用する場合、「化学療法剤」という用語は、腫瘍増殖を阻害するのに有効な化合物を指す。
【0097】
化学療法剤の例は、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド;アルキルスルホナート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ及びウレドパ;エチレンイミン並びにアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチローロメラミンを含むメチルアメルアミン;アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カルスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体であるKW-2189及びCBI-TMIを含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロルホスファミド、エストラルヌスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、エネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシン11及びカリケアマイシン211、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl. 33: 183-186 (1994)を参照のこと);ダインマイシンAを含むダインマイシン;エスペラマイシン並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カンニノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダンルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトマグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えば、カルステロン、ドロモスタノロンプロピオナート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗アドレナリン剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えば、フロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;マイタンシノイド、例えば、メイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲナニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリクロテセン(特に、T-2毒素、ベルラクリンA、ロリジンA及びアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロムトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.]).]及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えば、シスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン並びに上記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、酸又は誘導体を含む。また、この定義には、腫瘍におけるホルモン作用をレギュレーションし又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼを阻害する4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びトレミフェン(ファレストン)を含む抗エストロゲン並びに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド及びゴセレリン並びに上記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、酸又は誘導体も含まれる。
【0098】
特定の実施態様では、本発明は、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置を必要とする対象におけるCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置に使用するための併用調製物としての、1)本発明のCD27/CD70相互作用の阻害剤及びii)免疫チェックポイント阻害剤に関する。
【0099】
本明細書で使用する場合、「免疫チェックポイント阻害剤」という用語は、1種以上の免疫チェックポイントタンパク質を完全にもしくは部分的に低減し、阻害し、妨害し又は調節する分子を指す。
【0100】
本明細書で使用する場合、「免疫チェックポイントタンパク質」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、シグナル(刺激性チェックポイント分子)をターンアップするか又はシグナル(阻害性チェックポイント分子)をターンダウンするかのいずれかで、T細胞により発現される分子を指す。免疫チェックポイント分子は、CTLA-4及びPD-1依存性経路に類似する免疫チェックポイント経路を構成することが当技術分野において認識されている(例えば、Pardoll, 2012. Nature Rev Cancer 12:252-264;Mellman et al. 2011. Nature 480:480- 489を参照のこと)。刺激性チェックポイントの例は、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、OX40、GITR及びICOSを含む。阻害性チェックポイント分子の例は、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、CD277、IDO、KIR、PD-1、LAG-3、TIM-3及びVISTAを含む。アデノシンA2Aレセプター(A2AR)は、ガン治療における重要なチェックポイントとみなされている。A2aレセプターの活性化をもたらす免疫微小環境におけるアデノシンが、負の免疫フィードバックループであり、腫瘍微小環境が、比較的高濃度のアデノシンを有するためである。CD276とも呼ばれるB7-H3は、元は、共刺激分子であると理解されていたが、現在では、共阻害分子とみなされている。VTCN1とも呼ばれるB7-H4は、腫瘍細胞及び腫瘍関連マクロファージにより発現され、腫瘍回避において役割を果たす。Bリンパ球及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)は、CD272とも呼ばれ、そのリガンドとして、HVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエーター)を有する。BTLAの表面発現は、ナイーブ細胞の表現型からエフェクター細胞表現型へのヒトCD8+T細胞の分化中に徐々にダウンレギュレーションされるが、腫瘍特異的ヒトCD8+T細胞は、高レベルのBTLAを発現する。CTLA-4、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CD152とも呼ばれる)。Treg細胞上でのCTLA-4の発現は、T細胞増殖を制御するのに役立つ。IDO インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼは、トリプトファン異化酵素である。関連する免疫抑制酵素。別の重要な分子は、TDO トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼである。IDOは、T細胞及びNK細胞をサプレッションし、Treg及び骨髄由来のサプレッサー細胞を発生させ、活性化し、腫瘍血管新生を促進することが公知である。KIR キラー細胞免疫グロブリン様レセプターは、ナチュラルキラー細胞上のMHCクラスI分子のためのレセプターである。LAG3 リンパ球活性化遺伝子-3は、Tregに対する作用により免疫応答をサプレッションしかつCD8+T細胞に対する直接的な効果を与える。PD-1 プログラム死1(PD-1)レセプターは、2つのリガンド、PD-L1及びPD-L2を有する。このチェックポイントは、2014年9月にFDAの承認を得たMerck & Coのメラノーマ薬「Keytruda」のターゲットである。PD-1をターゲットとする利点は、それが腫瘍微小環境において免疫機能を回復することができる点である。TIM-3は、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3の略であり、活性化ヒトCD4+T細胞上で発現され、Th1及びTh17サイトカインをレギュレーションする。TIM-3は、そのリガンドであるガレクチン-9との相互作用の際に、細胞死を誘発することにより、Th1/Tc1機能の負のレギュレーターとして作用する。VISTAは、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサーの略であり、VISTAは、腫瘍内の白血球上でのVISTAの一貫した発現により、VISTA遮断が広範囲の固形腫瘍にわたって有効であることが可能となるように、造血細胞上で主に発現される。腫瘍細胞は、多くの場合、免疫系による検出を回避するために、これらのチェックポイントを利用する。このため、免疫系上のチェックポイントタンパク質を阻害することにより、抗腫瘍T細胞応答が増強される場合がある。
【0101】
一部の実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質の機能を阻害する任意の化合物を指す。阻害は、機能の低下及び完全な遮断を含む。一部の実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質及びそれらのリガンドに結合する抗体、合成又は天然配列ペプチド、小分子又はアプタマーであることができる。
【0102】
特定の実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体である。
【0103】
典型的には、抗体は、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、CD277、IDO、KIR、PD-1、LAG-3、TIM-3又はVISTAに対するものである。
【0104】
特定の実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、WO第2011082400号、同第2006121168号、同第2015035606号、同第2004056875号、同第2010036959号、同第2009114335号、同第2010089411号、同第2008156712号、同第2011110621号、同第2014055648号及び同第2014194302号に記載されている抗PD-1抗体である。市販されている抗PD-1抗体の例は、ニボルマブ(Opdivo(登録商標)、BMS)、ペンブロリズマブ(ランブロリズマブとも呼ばれる、KEYTRUDA(登録商標)又はMK-3475、MERCK)である。
【0105】
一部の実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、WO第2013079174号、同第2010077634号、同第2004004771号、同第2014195852号、同第2010036959号、同第2011066389号、同第2007005874号、同第2015048520号、US第8617546号及びWO第2014055897号に記載されている抗PD-L1抗体である。臨床試験中の抗PD-L1抗体の例:アテゾリズマブ(MPDL3280A、Genentech/Roche)、デュルバルマブ(AZD9291、AstraZeneca)、アベルマブ(MSB0010718Cとしても公知、Merck)及びBMS-936559(BMS)。
【0106】
一部の実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、US第7709214号、同第7432059号及び同第8552154号に記載されている抗PD-L2抗体である。
【0107】
本発明の文脈において、免疫チェックポイント阻害剤は、Tim-3又はそのリガンドを阻害する。
【0108】
特定の実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、WO第03063792号、同第2011155607号、同第2015117002号、同第2010117057号及び同第2013006490号に記載されている抗Tim-3抗体である。
【0109】
一部の実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、有機小分子である。
【0110】
本明細書で使用する場合、「有機小分子」という用語は、医薬品において一般的に使用される有機分子に匹敵するサイズの分子を指す。この用語は、生体高分子(例えば、タンパク質、核酸等)を除外する。典型的には、有機小分子は、最大約5000Da、より好ましくは、最大約2000Da、最も好ましくは、最大約1000Daのサイズの範囲である。
【0111】
典型的には、有機小分子は、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、CD277、IDO、KIR、PD-1、LAG-3、TIM-3又はVISTAのトランスダクション経路を妨害する。
【0112】
特定の実施態様では、有機小分子は、PD-1及びTim-3のトランスダクション経路を妨害する。例えば、それらは、PD-1及びTim-3経路に関与する分子、レセプター又は酵素を妨害することができる。
【0113】
特定の実施態様では、有機小分子は、インドールアミン-ピロール 2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤を妨害する。IDOは、トリプトファン異化に関与している(Liu et al 2010、Vacchelli et al 2014、Zhai et al 2015)。IDO阻害剤の例は、WO第2014150677号に記載されている。IDO阻害剤の例としは、1-メチル-トリプトファン(IMT)、β-(3-ベンゾフラニル)-アラニン、β-(3-ベンゾ(b)チエニル)-アラニン、6-ニトロ-トリプトファン、6-フルオロ-トリプトファン、4-メチル-トリプトファン、5-メチル-トリプトファン、6-メチル-トリプトファン、5-メトキシ-トリプトファン、5-ヒドロキシ-トリプトファン、インドール 3-カルビノール、3,3’-ジインドリルメタン、エピガロカテキンガレート、5-Br-4-Cl-インドキシル 1,3-ジアセタート、9-ビニルカルバゾール、アセメタシン、5-ブロモ-トリプトファン、5-ブロモインドキシルジアセタート、3-アミノ-ナフトエ酸、ピロリジンジチオカルバマート、4-フェニルイミダゾール、ブラシニン誘導体、チオヒダントイン誘導体、β-カルボリン誘導体又はブラシレキシン誘導体を含むが、これらに限定されない。特定の実施態様では、IDO阻害剤は、1-メチル-トリプトファン、β-(3-ベンゾフラニル)-アラニン、6-ニトロ-L-トリプトファン、3-アミノ-ナフトエ酸及びβ-[3-ベンゾ(b)チエニル]-アラニン又はそれら誘導体もしくはプロドラッグから選択される。
【0114】
特定の実施態様では、IDOの阻害剤は、当技術分野において、下記化学式:
【化7】
を有し、-N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシ-4-{[2-(スルファモイルアミノ)-エチル]アミノ}-1,2,5-オキサジアゾール-3カルボキシミドアミドを指す、エパカドスタット(INCB24360、INCB024360)である。
【0115】
特定の実施態様では、阻害剤は、例えば、WO第2009054864号に記載されている、R428とも呼ばれるBGB324であり、1H-1,2,4-トリアゾール-3,5-ジアミン,1-(6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[6,7]シクロヘプタ[1,2-c]ピリダジン-3-イル)-N3-[(7S)-6,7,8,9-テトラヒドロ-7-(1-ピロリジニル)-5H-ベンゾシクロヘプテン-2-イル]-を指し、当技術分野において、下記式:
【化8】
を有する。
【0116】
特定の実施態様では、阻害剤は、CA-170(又はAUPM-170):プログラム死リガンド-1(PD-L1)及びT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)をターゲットとする経口小分子免疫チェックポイントアンタゴニストである(Liu et al 2015)。CA-170の前臨床データは、Curis Collaborator and Aurigene on November ACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeuticsにより提示されている。
【0117】
一部の実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、アプタマーである。
【0118】
典型的には、アプタマーは、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、CD277、IDO、KIR、PD-1、LAG-3、TIM-3又はVISTAに対するものである。
【0119】
特定の実施態様では、アプタマーは、例えば、Prodeus et al 2015に記載されているDNAアプタマーである。治療実体としてのアプタマーの主な欠点は、これらの短いDNA鎖が腎臓ろ過のために循環から急速に除去されるため、それらの乏しい薬剤動態学的プロファイルである。このため、本発明のアプタマーは、高分子量ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲーションされる。特定の実施態様では、アプタマーは、抗PD-1アプタマーである。特に、抗PD-1アプタマーは、Prodeus et al 2015に記載されているようにMP7ペグ化されている。
【0120】
特定の実施態様では、本発明は、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置を必要とする対象におけるCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置に使用するための併用調製物としての、i)本発明のCD27/CD70相互作用の阻害剤及びii)抗PD1抗体に関する。
【0121】
特定の実施態様では、本発明は、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置を必要とする対象におけるCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置に使用するための併用調製物としての、i)本発明のCD27/CD70相互作用の阻害剤及びii)抗PDL1抗体に関する。
【0122】
特定の実施態様では、本発明は、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置を必要とする対象におけるCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置に使用するための併用調製物としての、i)本発明のCD27/CD70相互作用の阻害剤及びii)抗PD2抗体に関する。
【0123】
特定の実施態様では、本発明は、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置を必要とする対象におけるCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置に使用するための併用調製物としての、i)本発明のCD27/CD70相互作用の阻害剤及びii)抗CTLA4抗体に関する。
【0124】
特定の実施態様では、本発明は、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置を必要とする対象におけるCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置に使用するための併用調製物としての、i)本発明のCD27/CD70相互作用の阻害剤及びii)抗血管新生化合物に関する。
【0125】
本明細書で使用する場合、「血管新生」という用語は、既存の血管からの新たな血管の成長に関与する生理学的プロセスを指す。血管新生は、血管新生促進分子と抗血管新生分子との間のバランスによりレギュレーションされるコンビナトリアルプロセスである。血管新生刺激(例えば、低酸素又は炎症性サイトカイン)により、血管新生増殖因子、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)又は線維芽細胞増殖因子(FGF)の誘導された発現及び放出がもたらされる。
【0126】
本明細書で使用する場合、「抗血管新生」という用語は、新たな血管の形成を阻害する(抗血管新生)ことができる任意の分子を指す。典型的には、抗血管新生化合物は、当技術分野において周知であり、下記化合物:ベバシズマブ(アバスチン、抗VEGF)、イトラコナゾール(抗VGFR)、カルボキシアミドトリアゾール、TNP-470(フマギリンの類似体)、CM101、IFN-α、IL-12、血小板因子-4、スラミン、SU5416、トロンボスポンジン、VEGFRアンタゴニスト、抗血管新生ステロイド+ヘパリン、軟骨由来血管新生阻害因子、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、アンギオスタチン、エンドスタチン、2-メトキシエストラジオール、テコガラン、テトラチオモリブダート、サリドマイド、トロンボスポンジン、プロラクチン、αVβ3阻害剤、リノマイド、ラムシルマブ、タスキニモド、ラニビズマブ、ソラフェニブ(Nexavar)、スニチニブ(Sutent)、パゾパニブ(Votrient)、エベロリムス(Afinitor)、カボザンチニブを指すが、これらに限定されない。
【0127】
「治療上有効量」は、任意の医学的処置に適用可能で妥当な利益/リスク比で、ガンを処置するための方法に使用するのに十分な量のCD27/CD70相互作用の阻害剤を意味する。本発明の化合物及び組成物の1日の総使用量は、適切な医学的判断の範囲内で主治医により決定されるであろうと理解されたい。任意の特定の対象のための特定の治療上有効な用量レベルは、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食事;投与のタイミング、投与経路及び利用される特定の化合物の排泄速度;処置の期間;利用される特定のポリペプチドと組み合わせて又は同時に使用される薬剤;並びに医学分野において周知の同様の要因を含む各種の要因により決まるであろう。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要とされるレベルより低いレベルで、化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで、用量を徐々に増加させることは、当業者に周知である。ただし、製品の1日用量を1日当たり成人当たりに0.01~1,000mgの広範囲にわたって変動させることができる。典型的には、組成物は、処置される対象への用量の兆候的調整のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mgの有効成分を含有する。薬剤は、典型的には、約0.01mg~約500mgの有効成分、典型的には、1mg~約100mgの有効成分を含有する。薬剤の有効量は、通常、0.0002mg/kg体重/日~約20mg/kg体重/日、特に、約0.001mg/kg体重/日~7mg/kg体重/日の用量レベルで供給される。
【0128】
医薬組成物
CD27/CD70相互作用の阻害剤は、単独で又は上記された古典的な処置と組み合わせて、薬学的に許容され得る賦形剤及び場合により、徐放性マトリックス、例えば、生分解性ポリマーと組み合わせて、医薬組成物を形成することができる。
【0129】
したがって、別の態様では、本発明は、CD27/CD70相互作用の阻害剤と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0130】
特定の実施態様では、本発明の医薬組成物は、CD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置を必要とする対象におけるCD70を発現するガン及び/又は転移性ガンの予防及び/又は処置における同時、別個又は連続投与により使用するための、i)CD27/CD70相互作用の阻害剤と、ii)古典的処置とを含む。
【0131】
本明細書で使用する場合、「薬学的に」又は「薬学的に許容され得る」という用語は、必要に応じて、ほ乳類、特に、ヒトに投与された場合、有害な、アレルギー性の又は他の都合の悪い反応を生じない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容され得る担体又は賦形剤は、任意のタイプの非毒性の固体、半固体又は液体充填剤、希釈剤、封入材料又は製剤補助剤を指す。経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所又は直腸投与のための本発明の医薬組成物を、有効成分を単独で又は別の有効成分と組み合わせて、従来の医薬支持体との混合物として、単位投与形態で、動物及びヒトに投与することができる。適切な単位投与形態は、経口経路形態、例えば、錠剤、ゲルカプセル剤、散剤、顆粒剤及び経口懸濁液剤又は溶剤、舌下及び頬側投与形態、エアロゾル剤、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、髄腔内及び鼻腔内投与形態並びに直腸投与形態を含む。典型的には、医薬組成物は、注射可能な製剤のために薬学的に許容され得る媒体を含有する。これらは、特に、等張性で無菌の生理食塩水溶液(リン酸一ナトリウムもしくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウム等又はこのような塩の混合物)又は乾燥、特に、凍結乾燥された組成物であることができる。これは、場合に応じて、滅菌水又は生理食塩水の添加により、注射用溶液の構成が可能となる。注射用途に適切な薬学的形態は、滅菌水溶液又は分散液;ゴマ油、ピーナツ油又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び無菌の注射可能な溶液又は懸濁液の即時調製のための無菌粉末を含む。全ての場合に、形態は、滅菌され、容易に注入できる程度に流動性でなければならない。形態は、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、微生物、例えば、細菌及び真菌の汚染作用に対して保持されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容され得る塩としての本発明の化合物を含む溶液を界面活性剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースと適切に混合された水中で調製することができる。また、分散液をグリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれら混合物中及び油中で調製することもできる。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために保存料を含有する。ポリペプチド(又はそれをコードする核酸)を中性形態又は塩形態の組成物に製剤化することができる。薬学的に許容され得る塩は、(タンパク質の遊離アミノ基とで形成される)酸付加塩を含む。酸付加塩は、無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸等又は有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等と形成される。また、遊離カルボキシル基と形成される塩は、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄及び有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等から得ることができる。また、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であることができる。適切な流動性を例えば、被覆、例えば、レシチンの使用により、懸濁液の場合には必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止を種々の抗細菌剤及び抗菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によりもたらすことができる。多くの場合、等張化剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むのが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収を、吸収を遅延させる作用剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中での使用によりもたらすことができる。滅菌注射用液は、必要な量の活性ポリペプチドを適切な溶媒に、必要に応じて上記列記された他の成分の幾つかと共に包含させ、続けて、ろ過滅菌することにより調製される。一般的には、分散液は、基本的な分散媒及び上記列記されたものからの必要とされる他の成分を含有する無菌媒体に種々の滅菌された有効成分を包含させることにより調製される。滅菌注射用液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌ろ過されたその溶液から任意の追加の所望の成分を加えた有効成分の粉末を生じる真空乾燥及び凍結乾燥技術である。処方に際して、溶液は、投与製剤に適合した様式でかつ治療上効果的であるような量で投与されるであろう。製剤は、各種の投与形態、例えば、上記された注射用液のタイプで容易に投与されるが、薬剤放出カプセル剤等も利用することができる。水溶液での非経口投与のために、例えば、この溶液は、必要に応じて、適切に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤が、先ず十分な生理食塩液又はグルコースにより等張にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に特に適している。この関係で、利用することができる滅菌水性媒体は、本開示に照らして、当業者に公知であろう。例えば、ある用量を等張NaCl溶液 1mlに溶解させ、皮下注入液 1000mlに加えることができるか又は提案された注入部位に注射することができる。処置される対象の状態に応じて、ある程度の用量のばらつきが必然的に生じるであろう。いずれにしても、投与責任者が、個々の対象に適した用量を決定するであろう。
【0132】
本発明のキット又は装置
別の態様では、本発明は、生体サンプル中の可溶性CD27のレベルを決定するための手段を含む、本発明の方法を実施するためのキット又は装置に関する。
【0133】
一部の実施態様では、キット又は装置は、可溶性CD27(上記されたように固体支持体上に固定化されているか又は固定されていない)に特異的な少なくとも1種の結合パートナー(例えば、抗体又はアプタマー)を含む。一部の実施態様では、キット又は装置は、検出可能なシグナルを発生させる本発明の第2の結合パートナー(例えば、抗体又はアプタマー)を含むことができる。キットの例は、ELISAアッセイキット並びに試験ストリップ及びディップスティックを含むキットを含むが、これらに限定されない。
【0134】
一部の実施態様では、本発明のキット又は装置は、免疫チェックポイント阻害剤に応答する確率を決定するために、サンプル中の可溶性CD27のレベルを含むデータに対してアルゴリズムを実行するためのマイクロプロセッサをさらに含む。一部の実施態様では、本発明のキット又は装置は、マイクロプロセッサにより決定された確率を示す視覚表示及び/又は可聴信号をさらに含む。
【0135】
一部の実施態様では、本発明のキット又は装置は、
-質量分光計と、
-生体サンプルが入れられ、質量分光計がサンプル中の可溶性CD27のレベルを定量化することができるように、質量分光計に接続可能な容器と、
-免疫チェックポイント阻害剤に応答する確率を決定するために、サンプル中の可溶性CD27のレベルを含むデータに対してアルゴリズムを実行するためのマイクロプロセッサと、
-マイクロプロセッサにより決定された確率を示す視覚表示及び/又は可聴信号と
を含む。
【0136】
スクリーニング方法
本発明の更なる目的は、ガン及び/又は転移性ガンの処置に適した薬剤をスクリーニングする方法であって、i)試験化合物を提供することと、ii)前記試験化合物がCD27/CD70相互作用を阻害する能力を決定することとを含む、方法に関する。
【0137】
当技術分野において周知の任意の生物学的アッセイは、試験化合物がCD27/CD70相互作用を阻害する能力を決定するのに適していることができる。一部の実施態様では、アッセイは、まず、試験化合物がCD27又はCD70に結合する能力を決定することを含む。一部の実施態様では、ついで、試験化合物がCD27/CD70相互作用を阻害する能力を決定するために、細胞の集団を接触させ、活性化させる。特に、試験化合物により誘発される効果は、試験化合物の非存在下又は対照作用剤の存在下(これらのうちのいずれかは、陰性対照条件に類似している)で並行してインキュベーションされた免疫細胞の集団の効果と比較して決定される。本明細書で使用する場合、「対照物質」、「対照作用剤」又は「対照化合物」という用語は、不活性であるか又は生体活性もしくは発現をモデュレーションする能力に関連する活性を有さない分子を指す。CD27/CD70相互作用を阻害可能な試験化合物は、本明細書に記載されたin vitro法を使用して決定されるように、in vivoでの適用において同様のモデュラトリー能力を示す可能性が高いと理解されたい。典型的には、試験化合物は、ペプチド、ペプチド模倣物、有機小分子、抗体、デコイ、アプタマー又は核酸からなる群より選択される。例えば、本発明の試験化合物を以前に合成された化合物のライブラリ、又は構造がデータベースにおいて決定された化合物のライブラリから、又は新規に合成された化合物のライブラリから選択することができる。
【0138】
一部の実施態様では、試験化合物を有機低分子、デコイ又は抗体から選択することができる。
【0139】
本発明は、下記図面及び実施例によりさらに例証されるであろう。ただし、これらの実施例及び図面は、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【
図1A-B】
図1:ccRCCにおけるCD27及びCD70遺伝子発現の過剰発現。CD27(A)及びCD70(B)のmRNA発現を非ガン個体(n=28)からの正常な腎臓組織、ccRCC患者からの腫瘍組織(n=530)及び腫瘍に隣接する正常組織(NAT)(n=72)において比較した。データを、SDを伴う平均として提示した。対応のないt検定を、有意性を決定するのに使用した。(C)ccRCCにおけるCD27とCD70との間のmRNA発現の相関分析(n=530)。ピアソン相関係数(r)及び有意水準(P値)を示した。(D~F)ccRCC患者の全生存のカプラン-マイヤープロット(n=376)。患者を、CD27(8.12)及びCD70(10.265)のmRNA発現の中央値に基づいて、2群(高及び低)に分けた。「CD27高CD70高」群(n=124)は、CD27及びCD70の高発現を有する患者を指し、一方、「CD27低及びCD70低」群(n=124)は、CD27及びCD70の低発現を有する患者を指す。有意性を、ログランクMantel-Cox検定を使用して決定した。明確性のために、mRNAデータの値をlog2スケールで示した。P<0.05の値を統計的に有意とみなした。
*P<0.05、
****P<0.0001。
【
図1C】
図1:ccRCCにおけるCD27及びCD70遺伝子発現の過剰発現。CD27(A)及びCD70(B)のmRNA発現を非ガン個体(n=28)からの正常な腎臓組織、ccRCC患者からの腫瘍組織(n=530)及び腫瘍に隣接する正常組織(NAT)(n=72)において比較した。データを、SDを伴う平均として提示した。対応のないt検定を、有意性を決定するのに使用した。(C)ccRCCにおけるCD27とCD70との間のmRNA発現の相関分析(n=530)。ピアソン相関係数(r)及び有意水準(P値)を示した。(D~F)ccRCC患者の全生存のカプラン-マイヤープロット(n=376)。患者を、CD27(8.12)及びCD70(10.265)のmRNA発現の中央値に基づいて、2群(高及び低)に分けた。「CD27高CD70高」群(n=124)は、CD27及びCD70の高発現を有する患者を指し、一方、「CD27低及びCD70低」群(n=124)は、CD27及びCD70の低発現を有する患者を指す。有意性を、ログランクMantel-Cox検定を使用して決定した。明確性のために、mRNAデータの値をlog2スケールで示した。P<0.05の値を統計的に有意とみなした。
*P<0.05、
****P<0.0001。
【
図1D-F】
図1:ccRCCにおけるCD27及びCD70遺伝子発現の過剰発現。CD27(A)及びCD70(B)のmRNA発現を非ガン個体(n=28)からの正常な腎臓組織、ccRCC患者からの腫瘍組織(n=530)及び腫瘍に隣接する正常組織(NAT)(n=72)において比較した。データを、SDを伴う平均として提示した。対応のないt検定を、有意性を決定するのに使用した。(C)ccRCCにおけるCD27とCD70との間のmRNA発現の相関分析(n=530)。ピアソン相関係数(r)及び有意水準(P値)を示した。(D~F)ccRCC患者の全生存のカプラン-マイヤープロット(n=376)。患者を、CD27(8.12)及びCD70(10.265)のmRNA発現の中央値に基づいて、2群(高及び低)に分けた。「CD27高CD70高」群(n=124)は、CD27及びCD70の高発現を有する患者を指し、一方、「CD27低及びCD70低」群(n=124)は、CD27及びCD70の低発現を有する患者を指す。有意性を、ログランクMantel-Cox検定を使用して決定した。明確性のために、mRNAデータの値をlog2スケールで示した。P<0.05の値を統計的に有意とみなした。
*P<0.05、
****P<0.0001。
【
図2】
図2:ccRCCにおけるCD27-CD70相互作用を多重IHCにより例証した。ccRCCにおける相互作用したCD27及び相互作用したCD70の定量化(n=25)。データをドット及びSDを伴う平均で提示した。
【
図3】
図3:腫瘍におけるCD27+T細胞は開裂型カスパーゼ3を発現する。CD27+/-T細胞における%開裂型カスパーゼ3(n=2)。
【
図4】
図4:血漿中のsCD27は腫瘍内CD27の発現及びCD27とCD70との相互作用のレベルと相関する。(A)ccRCC患者(n=44)及び健常ドナー(n=15)からの血漿sCD27の濃度をELISAにより決定した。有意性を対応のないt検定により決定した。データをドット及びSDを伴う平均で提示する。sCD27を腫瘍(n=25)における、視野当たりのCD27+細胞数(B)及び視野当たりの相互作用したCD27+細胞数(CD70の30μm以内のCD27)(C)に対してプロットした。ピアソン相関係数(r)及び有意水準(P値)を提示した。P<0.05の値を統計的に有意とみなした。
**P<0.01、
***P<0.001。
【0141】
実施例
材料及び方法
患者及びサンプル
【0142】
前向き研究からの2つのコホートをthe Hopital Europeen Georges Pompidou(HEGP)(Paris, France)に登録した。コホートColcheckpoint(CPP Ile-de-France 2015-08-04 MS2)からの患者は、転移性ccRCCを有すると診断され、抗PD-1/PD-L1で処置された。コホートExhauCRF(CPP Ile-de-France 2016-07-08)からの患者は、限局性ccRCCと診断された。ELISAのために、抗PD-1/PD-L1処置前のColcheckpointからの26個の血漿サンプル及び診断時のExhauCRFからの18個の血漿サンプルを収集した。Etablissement Francais du Sangからの15名の健常ドナーの血漿を対照として選択した。多重免疫蛍光法(mIF)のために、免疫療法前に収集されたColcheckpointからの7つのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織及びExhauCRFコホートからの18個を選択した。フローサイトメトリーのために、2つの新鮮な腫瘍を、手術日にccRCCを有すると確認された患者から収集した。各患者についての臨床的特徴、例えば、病理組織学、パフォーマンスステータススケール(ECOG)、TNMステージ及び生存データを前向きに収集した。
【0143】
多重免疫蛍光(mIF)染色
本発明者らは、CD4パネル(CD4-CD27-CD70-PAX8)及びCD8パネル(CD8-CD27-CD70-PAX8)である2つのmIFパネルを開発した。Pax8は、ヒト原発性又は転移性RCCの全ての組織タイプにおける、ほとんどの新生物細胞中で強力な核発現を有する転写因子である。これらの種々のマーカーから構成されるmIFパネルを手作業で開発し、ついで、同じプロトコールでLEICA Bond RX上の全てのFFPE腫瘍組織に自動的に適用した。FFPE組織からのスライドを染色前に57℃で2時間加熱した。残留パラフィンを、3回の連続するBioclear New脱ロウ液(Biognost, Zagreb, Croatia)中でそれぞれ3分間除去した。3つの連続希釈エタノール(100%、75%、50%)、蒸留水を使用して、組織をそれぞれ2分間再水和した後、ついで、組織をホルムアルデヒド固定中性バッファー(NB)(Biognost)中で15分間固定し、蒸留水で洗浄した。続けて、抗原回収を、pH9 Target Retrieval(Agilent, California, United States)を使用して行い、1000ワットで45秒間、続けて、100ワットで30分間マイクロ波処理した。ブロッキングを動物由来タンパク質を含まないブロッキングバッファー(Cell Signaling Technology(CST), Massachusetts, United States)で15分間行い、ついで、スライドをSignalStain(登録商標)Antibody Diluent(CST)中で希釈した一次抗体と共に30分間インキュベーションした。トリス緩衝生理食塩水、0.1% Tween(登録商標)20洗浄剤(TBST)(Agilent)で洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(ImmunoReagents, North Carolina, United States)と結合した二次抗体とのインキュベーションを15分間行った。スライドをTBSTで洗浄し、CF(登録商標)Dye Tyramide(Biotium, California, United States)を10分間適用した。ついで、スライドをマイクロ波処理して、一次抗体及び二次抗体をストリップし、洗浄し、ブロッキング溶液を使用して、再度ブロッキングした。このプロセスを、第4のマーカーをラベルするまで繰り返した(
図1)。最後の工程で、DAPI(PerkinElmer, Massachusetts, United States)での染色を適用し、ついで、蒸留水で洗浄した。スライドを、EverBrite Mounting Medium(Biotium)を使用してマウントした。最後に、スライドをVectra Polaris蛍光顕微鏡(Akoya Biosciences, California, United States)で読み取った。mIFパネルで使用された抗体を表1に列記する。
【0144】
【0145】
マルチスペクトル撮像、表現型分析及び空間分析
多重染色スライドを、Vectra(登録商標)Polaris(商標)Automated Quantitative Pathology Imaging system version 2(Akoya)を使用して撮像した。目的領域を選択し、患者当たりに10個の代表的な画像を分析に使用した。各マーカーについて単一染色スライドから得られたマルチスペクトル画像を使用して、スペクトルピークを発するフルオロフォアを含有するスペクトルライブラリをinForm(バージョン2.4.6)画像分析ソフトウェア(PerkinElmer)により作成した。ついで、このスペクトルライブラリを使用して、各マルチスペクトル画像をその個々の成分に分離した。これにより、inFormソフトウェアを使用して、単一画像中の5つ全てのマーカーの色ベースの識別が可能となる。
【0146】
選択された画像を、HALOソフトウェア(Indica labs, New Mexico, United States)における表現型分析及び空間分析のために、inFormによる成分データとしてエクスポートした。HALOにおけるHighplex FLモジュールを細胞表現型決定に使用した。細胞をDAPI(核)染色に従ってセグメント化した。表現型決定を蛍光強度に応じて、各マーカーに適切な閾値を設定することにより実現し、同じアルゴリズムを均一性のために全ての画像に適用した。細胞相互作用を決定するために、空間分析をHALOによる細胞表現型に基づいて実現した。細胞の距離を各細胞の中心から計算する。CD70陽性細胞の30μm内のCD27陽性細胞を「相互作用したCD70」と名付け、相互作用したCD27を有する中心CD70陽性細胞を「相互作用したCD70」と名付けた。相互作用したCD27及び相互作用したCD70を計算した。
【0147】
ccRCCにおけるTILの特徴決定のための新鮮な腫瘍に対するフローサイトメトリー
ccRCC患者の2つの新鮮な腫瘍を採取した。消化のために、まず、新鮮な腫瘍を小片に切断し、ついで、カルシウム及びマグネシウム(Lonza, Basel, Switzerland)、1mg/mlの最終濃度のコラゲナーゼ(Roche, Basel, Switzerland)及び15mg/ml DNAase(Roche)を含むハンクス平衡塩類溶液(HBSS) 25mLと共に37℃で1時間インキュベーションした。腫瘍組織をろ過し、EDTA(Sigma-Aldrich, Missouri, United States) 200μl及びHBSSで、1000rにおいて10分間洗浄した。上清を除去した後、残存細胞をHBSSで再懸濁させた。細胞数をトリパンブルーで計数した。
【0148】
チューブ当たり100万個の細胞を染色に使用した。まず、細胞をZombie Nir(Biolegend, California, United States)で30分間染色して、生細胞を死細胞と区別した。細胞染色バッファー(Biolegend)で洗浄した後、ついで、細胞を蛍光体で直接ラベルされた下記モノクローナル抗体(表2)で、暗所において30分間染色した。染色後、細胞を再度洗浄し、細胞染色バッファー 200μlで再懸濁させた。サンプルをサイトメーター(Navios 10 colors, Beckman Coulter)で取得し、データをソフトウェアKaluza(バージョン1.2)で分析した。
【0149】
【0150】
血漿中のsCD27の測定
ccRCC患者及び健常ドナーからの血漿 10μLを、CD27(可溶性)ヒトインスタントELISAキット(ThermoFisher Scientific, Massachusetts, United States)により、製造業者の指示に従って、sCD27濃度を分析するのに使用した。データをMRX Revelationマイクロプレートリーダー(DYNEX Technologies, Virginia, United States)により取得した。
【0151】
TCGAデータベースからの遺伝子発現分析
遺伝子発現分析を、UC Santa Cruz Cancer Genomics Browser(http://xena.ucsc.edu/)を使用して行った。31種類のヒト固形腫瘍にわたって、CD27及びCD70の遺伝子発現を比較するために、TCGA PanCan研究を、The Cancer Genome Atlas(TCGA)及びPan-Cancer Atlasデータベースからダウンロードした正規化遺伝子レベルRNA配列データ(n=9575)を使用して作成した。腫瘍及び正常組織におけるCD27とCD70との遺伝子発現を比較するために、ccRCC腫瘍組織(n=530)、正常腎臓組織(n=28)及び腫瘍に隣接する正常組織(NAT)(n=72)からの正規化mRNAデータをTCGA-PanCan研究及びGTEX研究からダウンロードした。腫瘍組織及びNAT組織は、ccRCC患者に由来し、正常腎臓組織は、ガンを有さない個体に由来した。対応する臨床データ(n=376)、例えば、全生存率も、カプラン-マイヤー生存分析のためにダウンロードした。
【0152】
統計的分析
種々のタイプの固形腫瘍にわたるCD27とCD70との遺伝子発現の比較のために、一元配置Anovaを、UCSC Xenaツールを使用して行った。他の統計的分析を、GraphPad Prismソフトウェアバージョン8を使用して行った。適宜、両側対応のないt検定を、2つの群間の定量を評価するのに使用した。相関分析のために、ピアソン相関係数(r)及びP値を計算した。生存分析のために、カプラン-マイヤープロットを示した。統計的差異を、ログランクMantel-Cox検定を使用して評価した。P値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0153】
組織プロセシングRNA抽出、単一細胞RNA配列決定
新鮮な腫瘍を上記されたように収集した。腫瘍解離後、細胞選別中に分析からナチュラルキラー細胞を除去するために、細胞を固定可能な生存染色FVS 520(eBioscience)、APCフルオロフォアでラベルされた抗CD8a(Biolegend)及びBV421でラベルされた抗NKP46(Biolegend)で染色した。FACS富化T細胞を10×Chromium(10×Genomics)にロードし、ライブラリを、Single Cell 5’ Reagent Kit(V1 chemistry, 10×Genomics)を使用して、製造業者のプロトコールに従って調製し、サンプル当たりに3000個の回収細胞をターゲットとした。単一細胞を固有のバーコード、分子識別子(UMI)及びテンプレートスイッチオリゴ(TSO)配列を有するオリゴで被覆されたゲルビーズと共に液滴に分割し、バーコード化し、続けて、液滴中で逆転写して、バーコード化全長cDNAを生成した。続けて、cDNAを液滴から回収し、ついで、DynaBeads MyOne Silane Beads(Thermo Fisher Scientific)で浄化し、ついで、下記プロトコールで増幅した:98℃-45秒;12×(98℃-20秒、67℃-30秒、72℃-1分)、72℃-1分;4℃で保持。増幅されたcDNA産物を、SPRI select Reagent Kit(Beckman Coulter)を使用して浄化した。遺伝子発現ライブラリを、これらのステップに従って構築した:(1)フラグメント化、末端修復及びA-テーリング;(2)SPRI select Beadsによるサイズ選択;(3)アダプターライゲーション;(4)SPRI select Beadsによるライゲーション後の浄化;(5)下記プロトコールによるサンプルインデックスPCR:98℃-45秒;12×(98℃-20秒、54℃-30秒、72℃-20秒)、72℃-1分;4℃で保持及びSPRI select Beadsによる最終浄化。ライブラリの品質を、dsDNA High Sensitivity Assay Kit及びBioanalyzer Agilent 2100 Systemを使用して評価した。ライブラリをdsDNA HS Kit及びQubit 2.0で定量化した。インデックス化されたライブラリをプールし、配列決定モードとしてペアエンド150bpを使用するIllumina HiSeqX上で配列決定し、細胞当たりに少なくとも50000個のリードをターゲットとした。
【0154】
scRNA-seqデータ分析
全てのscRNA-seqデータをCellrangerパイプライン(バージョン2.1.1)で処理した。この工程は、未加工の塩基コール(BCL)ファイルのFASTQファイルへの逆多重化、STARを使用したヒトゲノム集合体GRCh38-3.0.0上でのリードアラインメント及び固有の分子識別子(UMI)の計数を含んだ。Seurat(v3.1.1)ワークフローを、R(3.6.1)における未加工データを読み取るのに使用した。各ドナーの未加工カウントを、デフォルトパラメータを使用するSeurat SCTransform関数で正規化し、Seurat CCA統合アルゴリズムを使用して、単一オブジェクトに統合した。品質管理工程として、まず、低品質の細胞:検出された遺伝子が200個未満及び検出された遺伝子が5,000個超の細胞をフィルタリングした。5,000超のミトコンドリアリードを有する細胞及びミトコンドリアリードに対するリードの比が6.5を超える細胞を除去した。ミトコンドリア遺伝子又はリボソームタンパク質に対してアライメントしたリードを分析から除去した。これらの品質管理基準後、13,389個のT CD8(患者P1=2,006個 細胞;患者P2=7,002個 細胞;患者P3=1,654個 細胞;患者P4=2,727個 細胞)を最終的に保存した。各患者について、単一細胞を「CD27陽性」(CD27遺伝子>0に対応するnUMI)又は「CD27陰性」として選択した。CD27陽性細胞とCD27陰性細胞との間で差次的に発現された遺伝子を、Student t検定及びBenjamini-Hochberg p値を使用して特定した。補正されたp値が≦0.05であり、log FC≧0.4であった場合、遺伝子は、差次的に発現されるとみなされた。CD27陰性細胞では、412個の遺伝子がアップレギュレーションされ、CD27陽性細胞では、330個の遺伝子がアップレギュレートされた。Morpheusツール(https://software.broadinstitute.org/morpheus/)をヒートマップ可視化に使用した。腎細胞ガンサンプルから選別したscRNA-seqデータをNCBIのGene Expression Omnibus(GEO)アーカイブプラットフォーム(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)において、アクセッション番号GSE160243で利用可能である。
【0155】
結果
ccRCCにおけるCD70とCD27との異なる発現パターンが患者の生存と相関する。
ccRCCにおけるCD70の高頻度の発現を検証するために(Adam et al., 2006;Jilaveanu et al., 2012)、コホートTCGA及びPan-Can Atlas(n=9575)からの31種類のヒト固形腫瘍にわたって、mRNAレベルでのCD70の発現及びそのリガンドCD27の発現を比較した。結果として、CD70は、腎臓淡明細胞ガン(KIRC)において最も高頻度に発現される(データ示さず)。同様に、KIRCにおけるCD27の発現も、他の固形腫瘍と比較して高い(データを示さず)。ccRCCに焦点を当てると、CD27及びCD70の発現は、正常な腎臓組織及び腫瘍に隣接する正常組織(NAT)より、腫瘍において有意に高いことが見出された(
図1A、
図1B)。さらに、CD27は、腫瘍におけるCD70と有意に相関している(
図1C)。CD27及びCD70のこの異なる発現パターンが臨床アウトカムに及ぼす影響を研究するために、全生存分析を、TCGA-PanCan研究(n=530)からのデータを使用して行った。患者を、log2スケールでのmRNAデータの中央値に基づいて、2群(高及び低)に分けた。中央値閾値は、CD27について8.12であり、CD70について10.265である。CD27又はCD70は単独で、患者の全生存に影響を及ぼさなかった(
図1D、
図1E)。腫瘍におけるCD27及びCD70の相関を考慮して、2つのマーカーを組み合わせ、患者を、それぞれ「CD27高CD70高」(n=124)及び「CD27低CD70低」(n=124)の2群に分けた。興味深いことに、「CD27高CD70高」群において、有意に不良なOSが観察された(
図1F)。これは、CD27とCD70との相乗的役割が、ccRCC患者の予後に負の影響を有することを示唆している。
【0156】
ccRCCにおけるCD70+腫瘍細胞とCD27+T細胞との相互作用
ccRCC腫瘍微小環境(TME)におけるCD27とCD70との相乗的役割をより良く理解するために、25名の患者からのFFPE腫瘍組織に対して、5色のmIFを行った。2つの染色パネル:CD4パネル(CD4、赤色;CD27、黄色;CD70、緑色;PAX8、オレンジ色;DAPI(核染色)、青色)及びCD8パネル(CD8、赤色;CD27、黄色;CD70、緑色;PAX8、オレンジ色;DAPI、白色)を設計した。PAX8を、腫瘍細胞を識別するのに使用した。マルチスペクトル撮像後の5つのマーカーを有する複合画像及び対応する単一染色画像を提示した(データを示さず)。核、細胞質及び膜の細胞セグメント化並びに各区画の蛍光強度の測定の後、細胞を表現型決定し、HALOソフトウェアにより計数した(データを示さず)。各マーカーの適切な強度閾値から構成されるアルゴリズムを均質性のために、全ての患者に適用した。フローサイトメトリーにより、細胞の正確な表現型決定が可能となるが、細胞相互作用をよりよく反映することができる空間的関係を捕捉することができない。これを調べるために、表現型決定後、各細胞に、細胞内距離を決定するのに使用することができる座標を割り当てた。別の細胞集団のある距離内の細胞数も計算することができる。
【0157】
結果として、CD27が、CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞に発現し、一方、CD70が、腫瘍細胞(PAX8)に発現するのが観察された。より重要なことに、CD27
+T細胞とCD70
+腫瘍細胞との相互作用をTMEにおいて見ることができる(データを示さず)。表現型決定後、CD27
+細胞は、65%のCD4
+CD27
+T細胞、19%のCD8
+CD27
+T細胞及び16%の他の細胞(7つのサンプルに基づくデータ)から構成される(データを示さず)。これは、CD27はほとんどがT細胞上に発現されることを示唆している。CD27-CD70細胞内相互作用をより良好に測定するために、HALOソフトウェアによる空間分析を行った(データを示さず)。CD70
+細胞の30μm内のCD27
+細胞を「相互作用したCD27」と定義し、半径30μmの周囲にあるCD27
+細胞を伴うCD70
+細胞を、「相互作用したCD70」と定義した(データを示さず)。相互作用したCD27及び相互作用したCD70の定量的結果を
図2に提示した。これらの結果は、CD27陽性細胞とCD70陽性細胞との間に顕著な相互作用が存在することを示唆している。CD27
+細胞がCD70
+細胞と相互作用するのよりも多くCD70
+細胞はCD27
+細胞と相互作用すると考えられる。CD70
+は、腫瘍細胞により発現され、CD27は、主に、T細胞により発現されるため、T細胞と比較して腫瘍細胞により占められるより大きな表面積から、この結果を説明することができる。
【0158】
ccRCCにおけるCD27
+T細胞のアポトーシス
ccRCCにおけるCD27-CD70相互作用の役割は不明であるため、次に、腫瘍におけるCD27
+T細胞の表現型特徴を検討した。以前の報告により、CD27誘導アポトーシスがin vitroでのccRCCにおけるCD70への曝露により媒介されることが示された(Diegmann et al., 2006)。ついで、CD70を高度に発現するccRCCにより、ヒトにおいてCD27
+T細胞のアポトーシスを誘導されるかどうかを調べた。この仮説を確認するために、2名のccRCC患者からの新鮮な腫瘍について、フローサイトメトリー分析を行った。CD27は、CD4
+T細胞上及びCD8
+T細胞上で発現される(データを示さず)。カスパーゼ3は、細胞アポトーシスに関連する。開裂型カスパーゼ3は、アポトーシス中にインタクトなままであり、基質を使用して検出することができる。本発明者らの研究では、開裂型カスパーゼ3は、TILにおいて観察される(データを示さず)。より重要なことに、CD27
-T細胞と比較して、CD27
+T細胞において、より高い割合の開裂型カスパーゼ3が見出された:CD4
+CD27
+T細胞(28%)対CD4
+CD27
-T細胞(13%);CD8
+CD27
+T細胞(15.5%)対CD8
+CD27
-T細胞(9%)(
図3)。限られたサンプルではあるが、このことは、CD27
+T細胞がCD27
-T細胞よりアポトーシス性であることを依然として示唆しており、これは、腫瘍におけるCD27-CD70相互作用に起因する場合がある。ただし、この結果は、より大規模な患者シリーズにおいて確認する必要がある。
【0159】
in situでのCD27-CD70相互作用はccRCC患者の末梢血中におけるsCD27濃度の上昇と相関する。
CD27が、プロテアーゼにより、CD27-CD70相互作用の際に活性化T細胞上でその可溶型sCD27に開裂されることは公知である(Hintzen et al., 1991;Loenen et al., 1992a)。以前の研究から、CD70発現神経膠腫及びRCC細胞系統は、PBMCからのsCD27の放出を誘導するおそれがあることが示された(Ruf et al., 2015;Wischhusen et al., 2002))。CD27-CD70相互作用がin situでsCD27の放出を誘導するかどうかを調べるために、まず、ccRCC患者からの血漿sCD27を測定するために、ELISAを行った。健常ドナー(n=15)と比較して、ccRCC患者(n=44)において、sCD27レベルの上昇が観察された(
図4A)。ついで、in situでのsCD27とCD27細胞数との相関分析を行った。末梢血におけるsCD27は、in situでCD27
+細胞と有意に相関した(
図4B)。より重要なことに、有意な相関が、in situで相互作用したCD27
+細胞と、末梢血におけるsCD27とで観察された(
図4C)。これは、末梢血におけるsCD27レベルの上昇は、ccRCCにおけるCD27-CD70相互作用に由来する可能性があることを示唆している。
【0160】
RCCにおけるアポトーシス及びCD27+T細胞の機能不全
CD27+T細胞の表現型を確認するために、4つの腎腫瘍サンプルから、CD27+及びCD27-CD8+T細胞を選別し、単一細胞RNA配列決定(scRNA-seq)分析を行った。CD8+CD27+TILは、BAX、FASLG、BCL2L11、CYCS、FBXO32、LGALS1、PIK3R1、TERF1、TXNIP、CDKN2Aから構成される遺伝子オントロジーデータベースからのアポトーシスに関連する富化遺伝子の発現プロファイルを有した。加えて、CD27+CD8+T細胞のTRM表現型を確認した。CD27+CD8+T細胞は、TRM表現型に関連するITGAE遺伝子(CD103)及び他の転写因子(PRDM1、RBPJ、ZNF683)をより高頻度に発現するためである。さらに、単一細胞RNAseq分析により、CD27+CD8+T細胞が、疲弊マーカー(PDCD1、CTLA4、HAVCR2、LAG3、TIGIT、TNFRSF9、SIRPG、ICOS、LAYN、CXCL13、CD38、TOX)を発現することも確認した(データを示さず)。細胞傷害性関連転写物(GZMA、GZMB、GZMH、CTSC)の増加も、CD27+CD8+T細胞において観察された。最後に、CD27-CD8+T細胞が、ナイーブな中心メモリー表現型に関連するIL-2及びIL-7Rをより高頻度に発現することが示された。
【0161】
まとめると、TCGAデータを使用することにより、ccRCCにおけるCD27とCD70との頻繁な発現パターンが、患者の生存と相関することが見出された。本発明者らは、ccRCCにおけるCD27及びCD70の役割を理解しようとする。研究コホートにおいて、CD27+T細胞とCD70+腫瘍細胞との相互作用が、in situで観察された。CD27-CD70相互作用のアウトカムにより、CD27+T細胞のアポトーシスをもたらされる可能性がある。これは、フローサイトメトリーによるTILの分析において示唆される。加えて、sCD27の血漿レベルは、ccRCCにおいて上昇し、in situでのCD27-CD70相互作用と相関する。本研究から、CD27-CD70相互作用により、T細胞の機能不全及びsCD27の放出がもたらされることが実証される。
【0162】
参考文献
本出願全体を通して、種々の参考文献で、本発明が属する技術分野の現状が記載されている。これらの参考文献の開示は、参照により本開示に組み入れられる。
【0163】
【配列表】
【国際調査報告】