(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】織物用途向けポリアミド
(51)【国際特許分類】
C08G 69/02 20060101AFI20230810BHJP
D01F 6/60 20060101ALI20230810BHJP
D03D 15/20 20210101ALI20230810BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20230810BHJP
【FI】
C08G69/02
D01F6/60 311A
D03D15/20 100
D03D15/283
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505941
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 FR2021051397
(87)【国際公開番号】W WO2022023661
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カッシアーノ ガスパー, ステファニア
(72)【発明者】
【氏名】ブリフォー, ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】フラット, ジャン-ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ダン, パトリック
【テーマコード(参考)】
4J001
4L035
4L048
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB01
4J001DB04
4J001EA08
4J001EB09
4J001EC09
4J001EE28C
4J001EE44C
4J001FA03
4J001FB03
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4J001JB50
4L035AA05
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4L048AA24
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4L048AC10
4L048AC12
4L048AC14
4L048CA06
4L048DA01
(57)【要約】
本発明は、C6~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸、C6~C12ラクタム及び(Ca-ジアミン).(Cb-二酸)単位(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは4から18の間である)から選択される少なくとも1つの直鎖脂肪族単位の重縮合によって得られる直鎖脂肪族ポリアミドに関し、ポリアミドは、絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差、及び厳密に35μeq/g未満である全塩基性度又は全酸性度を有する。本発明はまた、その調製方法及び織物分野におけるその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C6~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸、C6~C12ラクタム及び(Ca-ジアミン).(Cb-二酸)単位(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは4から18の間である)から選択される少なくとも1つの直鎖脂肪族単位の重縮合によって得られる直鎖脂肪族ポリアミドであって、
-絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差、及び
-厳密に35μeq/g未満である全塩基性度又は全酸性度
を有する、ポリアミド。
【請求項2】
0.70から1.70の間、有利には0.70から1.50の間、好ましくは0.80から1.20の間、さらにより詳細には0.85から1.15の間の固有粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
ホモポリアミドであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリアミド。
【請求項4】
C8~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸、C8~C12ラクタム及び(Ca-ジアミン).(Cb-二酸)単位(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは8から12の間である)から選択される直鎖脂肪族単位の重縮合によって得られることを特徴とする、請求項3に記載のポリアミド。
【請求項5】
PA11、PA12、PA1010、PA1012であることを特徴とする、請求項4に記載のポリアミド。
【請求項6】
全塩基性度が厳密に35μeq/g未満である場合、全酸性度が70から180μeq/gの間であるか、又は全酸性度が厳密に35μeq/g未満である場合、全塩基性度が60から180μeq/gの間であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項7】
直鎖脂肪族C2~C18モノカルボン酸、直鎖脂肪族C4~C18モノアミン、直鎖脂肪族C3~C36ジカルボン酸、及び/又は直鎖脂肪族C4~C18ジアミンによって限定されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のポリアミドを調製するための方法であって、
-溶融段階のモノマーと、少なくとも1つの連鎖停止剤と、水とを混合する工程と、
-任意選択的に、前の工程で得られた混合物を濾過する工程と
を含む、方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載のポリアミドと、難燃剤、UV保護剤、UV安定剤、蛍光増白剤、熱安定剤、顔料、潤滑剤、酸化防止剤、流動向上剤、流動性向上剤、フィルム形成剤、充填剤、フィルム形成助剤、ガム、半結晶性ポリマー、防腐剤、抗菌剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤とを主に含む組成物。
【請求項10】
織物材料の製造のための、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリアミド又は請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載のポリアミド又は請求項9に記載の組成物からなるフィラメント。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載のポリアミド又は請求項9に記載の組成物を含むことを特徴とする、織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された織物特性を有するポリアミドに関する。本発明はまた、その調製方法及び織物材料の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドをベースとする合成織物繊維の使用は長年知られている。織物には、繊維マット(包帯、フィルタ、フェルト)、ロービング(包帯)、糸(縫製糸、編糸、織糸)、編物(平坦な、円形の、フルファッションの、又は成形された)、布地(伝統的な布地、ジャカード布地、多面布地、両面布地、多軸布地、2.5D布地、3D布地)などが含まれる。この分野の革新は、例えば、汗をより容易に除去することを可能にするスポーツウェアにおいて定期的に現れている。繊維の染色能力の革新も最近現れている。したがって、織物材料が、特定の色、形状、又は抗菌処理若しくは難燃処理などの特定の処理を付与するように処理される場合、織物材料は、いくつかの処理工程及び/又はより強力な処理を受ける場合があり、繊維がより脆くなる。
【0003】
さらに、現在の気候問題を考慮して、完全にリサイクルすることができる織物材料が求められている。
【0004】
したがって、熱的及び機械的の両方に強く、リサイクル可能であるという利点を有する新しい材料が求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、C6~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸、C6~C12ラクタム及び(Ca-ジアミン).(Cb-二酸)単位(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは4から18の間である)から選択される少なくとも1つの直鎖脂肪族単位の重縮合によって得られる直鎖脂肪族ポリアミドであって、ポリアミドは、
絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差、及び
厳密に35μeq/g未満である全塩基性度又は全酸性度
を有するポリアミドに関する。
【0006】
本発明はまた、このポリアミドを調製するための方法に関する。
【0007】
本発明はまた、前記ポリアミドを含む組成物に関する。
【0008】
最後に、本発明は、ポリアミド又はそれを含有する組成物から作製された織物材料に関する。
【0009】
本発明によるポリアミドは、優れた熱安定性特性及び優れた機械的特性を示すことが観察された。また、優れたレオロジー安定性を有する。これは、熱いときにほとんど変化しないことを意味する。換言すれば、フィラメントを作製するために溶融されるとき、その粘度はほとんど変化しない。この特性は、製造業者によって非常に求められている。実際、例えば、製造ラインの故障などの何らかの理由で製造ラインを停止しなければならない場合、製造プロセスにおいて材料を失うことなく再開することができる。溶融材料は、この中断中にほとんど又は全く変化せず、この停止中に製造されるフィラメントは、必要な特異性を有する。損失は記録されない。
【0010】
さらに、本発明によるポリアミドは、リサイクルできるという利点を有する。そのレオロジー安定性により、容易に再溶融し、新しいフィラメントを作製するために再使用することができる。再溶融ポリアミドの特性は、同一ではないにしても、最初に溶融したポリアミドの特性と非常に類似している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の他の特性、特徴、主題及び利点は、以下の説明を読めば、さらに明確になるであろう。
【0012】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、ISO規格1874-1:2011「Plastiques-Materiaux polyamides(PA)pour moulage et extrusion-Partie 1:Designation」、特に3頁(表1及び2)に記載されており、当業者に周知である。
【0013】
さらに、本明細書で使用される「...から...の間」及び「...から...」という表現は、示された限界のそれぞれを含むものとして理解されなければならないことが示されている。
【0014】
「ポリアミド」という用語は、ホモポリアミドとコポリアミドの両方を包含する。
【0015】
本発明の本明細書では、以下が理解される。
-「織物材料」又は「織物」とは、繊維又はフィラメントから作製された任意の材料、及び少なくとも300の長さ対厚さ比を特徴とする多孔質膜を形成する任意の材料を意味する。
-「繊維」とは、少なくとも300の長さ/直径比を特徴とする、任意の合成又は天然材料を意味する。
-「フィラメント」は、無限長の任意の繊維を意味する。
【0016】
本発明は、以下の説明において、非限定的に、より詳細に説明される。
【0017】
ポリアミド
本発明によるポリアミドは、C6~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸、C6~C12ラクタム及び(Ca-ジアミン).(Cb-二酸)単位(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは4から18の間である)から選択される少なくとも1つの直鎖脂肪族単位の重縮合によって得られる。
【0018】
本発明によるポリアミドは、ピロリジノン、2-ピペリジノン、エナントラクタム、カプリロラクタム、ペラルゴラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム及びラウリルラクタムの中から選択される少なくとも1つのラクタムの重縮合によって得られてもよい。
【0019】
本発明によるポリアミドは、10-アミノデカン酸(10で示す)、11-アミノウンデカン酸(11で示す)、12-アミノドデカン酸(12で示す)から選択される少なくとも1つのアミノ酸の重縮合によっても得ることができる。
【0020】
ポリアミドは、式(Caジアミン).(Cb二酸)(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは4から18の間である)を満たす少なくとも1つの単位の重縮合によって得られてもよい。
【0021】
単位(Caジアミン)は、ブタンジアミン(a=4)、ペンタンジアミン(a=5)、ヘキサンジアミン(a=6)、ヘプタンジアミン(a=7)、オクタンジアミン(a=8)、ノナンジアミン(a=9)、デカンジアミン(a=10)、ウンデカンジアミン(a=11)、ドデカンジアミン(a=12)、トリデカンジアミン(a=13)、テトラデカンジアミン(a=14)、ヘキサデカンジアミン(a=16)及びオクタデカンジアミン(a=18)から選択されてもよい。
【0022】
単位(Cb二酸)は、コハク酸(b=4)、ペンタン二酸(b=5)、アジピン酸(b=6)、ヘプタン二酸(b=7)、オクタン二酸(b=8)、アゼライン酸(b=9)、セバシン酸(b=10)、ウンデカン二酸(b=11)、ドデカン二酸(b=12)、ブラシル酸(b=13)、テトラデカン二酸(b=14)、ヘキサデカン二酸(b=16)及びオクタデカン二酸(b=18)から選択されてもよい。
【0023】
好ましい実施形態によれば、本発明によるポリアミドはホモポリアミドである。このホモポリアミドは、ラクタム、アミノ酸又は単位(Caジアミン).(Cb二酸)(ここで、Ca及びCbは本明細書中上記で定義される通りである)の重縮合によって得ることができる。
【0024】
好ましくは、本発明によるポリアミドは、C6~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸、C6~C12ラクタム及び(Ca-ジアミン).(Cb-二酸)単位(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは4から18の間である)から選択される1つの直鎖脂肪族単位の重縮合によって得られる直鎖脂肪族ホモポリアミドであって、ポリアミドは、
-絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差、及び
-厳密に35μeq/g未満である全塩基性度又は全酸性度
を有するポリアミドである。
【0025】
さらにより好ましくは、本発明によるポリアミドは、C8~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸、C8~C12ラクタム及び(Ca-ジアミン).(Cb-二酸)単位(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは8から12の間である)から選択される1つの直鎖脂肪族単位の重縮合によって得られる直鎖脂肪族ホモポリアミドであって、ポリアミドは、
-絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差、及び
-厳密に35μeq/g未満である全塩基性度又は全酸性度
を有するポリアミドである。
【0026】
有利には、本発明によるホモポリアミドは、PA11、PA12、PA1010、PA1012、より詳細にはPA11から選択される。PA11は、11-アミノウンデカン酸の重縮合によって得られる。PA12は、ラウリルラクタムの重縮合によって得られる。PA1010は、デカンジアミンとデカン二酸との重縮合によって得られる。PA1012は、デカンジアミンとドデカン二酸との重縮合によって得られる。
【0027】
PA11は、植物起源の原料から作製されるという利点を有する。植物材料は、需要に応じて、地球の大部分で大量に成長させ、バイオベース化することができる。バイオベース原料は、動物であろうと植物であろうと、ヒトの規模で短期間にわたってストックを再構成することができる天然資源である。特に、このストックは、消費されるのと同じくらい迅速に更新することができなければならない。
【0028】
PA11の基本原料はヒマシ油であり、ヒマシ油植物(一般的なリシン)から抽出されたものであり、具体的にはヒマシ種子から抽出されたものである。PA11は、11-アミノウンデカン酸の重縮合によって得られる。
【0029】
別の実施形態によれば、ポリアミドは、式A/Bの異なる構造の少なくとも2つのモノマーの重縮合によって得られる直鎖脂肪族コポリアミドであって、
単位Aは、C6~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸、C6~C12ラクタム及び(Ca-ジアミン).(Cb-二酸)単位(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは4から18の間である)から選択され、
単位Bは、C6~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸、C6~C12ラクタム及び(Ca-ジアミン).(Cb-二酸)単位(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは4から18の間である)から選択され、
A及びBは異なる構造であり、ポリアミドは、
-絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差、及び
-厳密に35μeq/g未満である全塩基性度又は全酸性度
を有するポリアミドである。
【0030】
好ましくは、単位Aは、C8~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸、C8~C12ラクタム及び(Ca-ジアミン).(Cb-二酸)単位(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは8から12の間である)から選択され、単位Bは、C8~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸、C8~C12ラクタム及び(Ca-ジアミン).(Cb-二酸)単位(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは8から12の間である)から選択される。
【0031】
好ましくは、ポリアミドは、PA11/1010、PA11/1012、PA11/1212、PA1010/1012、PA1010/1212、PA12/1010、PA12/1012、PA12/1212から選択される。
【0032】
全酸性度及び全塩基性度
本発明によるポリアミドは、絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差を有する。
【0033】
本発明の目的のために、絶対値として表される差は、符号を考慮せずに、全酸性度及び全塩基性度の値を減算した結果を意味する。
【0034】
好ましくは、絶対値として表される、全酸性度と全塩基性度との間の差は、40から110の間である。
【0035】
本発明によるポリアミドはまた、厳密に35μeq/g未満の全塩基性度又は全酸性度を有する。
【0036】
酸性度及び塩基性度は、電位差測定によって測定される。
【0037】
酸性度は、以下の方法に従って測定される。ポリアミドの試料をベンジルアルコールに溶解する。次に、この試料を、0.02Nテトラブチルアンモニウム水酸化物溶液を用いた電位差測定によって投入する。
【0038】
塩基性度は、以下の方法に従って測定される。ポリアミドの試料をメタクレゾールに溶解する。次に、この試料を0.02N過塩素酸溶液で電位差滴定する。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、ポリアミドは、厳密に35μeq/g未満の全塩基性度及び70から180μeq/gの間の全酸性度を有する。
【0040】
好ましくは、ポリアミドは、75から130μeq/gの間の全酸性度を有する。好ましくは、ポリアミドは、30μeq/g以下、より詳細には5から30μeq/gの間の全塩基性度を有する。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、ポリアミドは、厳密に35μeq/g未満の全酸性度及び60から180μeq/gの間、好ましくは60から130μeq/gの間の全塩基性度を有する。
【0042】
好ましくは、ポリアミドは、60から130μeq/gの間の全塩基性度を有する。好ましくは、ポリアミドは、30μeq/g以下、より詳細には5から25μeq/gの間の全酸性度を有する。
【0043】
好ましい実施形態によれば、本発明によるホモポリアミドは、75から130μeq/gの間の全酸性度及び5から30μeq/gの間の全塩基性度を有するPA11又はPA12である。
【0044】
固有粘度
好ましくは、本発明によるポリアミドは、0.70から1.70の間、有利には0.70から1.50の間、好ましくは0.80から1.20の間、さらにより詳細には0.85から1.15の間の固有粘度を有する。
【0045】
固有粘度は、マイクロ-ウベローデ型粘度計管を備えた粘度計を用いて、20℃で、溶液の総重量に対するメタクレゾール中の0.5重量%溶液のポリアミド濃度で測定される。
【0046】
結晶化度
好ましくは、ポリアミドは、規格11357-3、1999(規格ISO11357による20℃/分での第2のDSC加熱)によるDSC(示差走査熱量測定)によって測定して、20から40%の間、特に20から30%の間の結晶化度を有する。
結晶化度は、以下の式に従って計算される。
式中、
χは結晶化度であり、
ΔH
f*は、ポリアミドの融解エンタルピーであり、
ΔH
fは、100%結晶性ポリアミドの融解エンタルピーである。この値は、数学的モデルによって得られた理論値であってもよく、又は試料が利用可能である場合、その試料で測定された値であってもよい。
【0047】
連鎖停止剤
有利には、本発明によるポリアミドは、直鎖脂肪族C2~C18モノカルボン酸、直鎖脂肪族C4~C18モノアミン、直鎖脂肪族C3~C36ジカルボン酸及び/又は直鎖脂肪族C4~C18ジアミンによって限定される。
【0048】
連鎖停止剤として使用される酸は、酢酸、プロピオン酸、乳酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバル酸、イソ酪酸、コハク酸、ペンタン二酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、オクタデセン二酸、エイコサン二酸、及びドコサン二酸から選択されてもよい。
【0049】
好ましくは、本発明によるポリアミドは、直鎖脂肪族C6~C12モノカルボン酸及び/又は直鎖脂肪族C6~C12ジカルボン酸によって、特に好ましくは直鎖脂肪族C6~C12ジカルボン酸によって限定される。好ましい酸は、アジピン酸、セバシン酸及びラウリン酸である。
【0050】
連鎖停止剤として使用されるアミンは、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミンから選択されてもよい。
【0051】
好ましくは、本発明によるポリアミドは、C6~C12モノアミン及び/又はC6~C12ジアミンによって限定される。好ましくは、デカンジアミン及びラウリルアミンが使用される。
【0052】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、ポリアミドは、C6~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸、C6~C12ラクタム及び(Ca-ジアミン).(Cb-二酸)単位(ここで、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二酸の炭素数を表し、a及びbは4から18の間である)から選択される少なくとも1つの直鎖脂肪族単位の重縮合によって得られ、ポリアミドは、
-絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差、
-厳密に35μeq/g未満である全塩基性度、及び
-70から180μeq/gの間の全酸性度
を有し、ポリアミドは、一酸又は二酸によって限定される。
【0053】
好ましくは、ポリアミドは、C6~C12アルファ、オメガ-アミノカルボン酸及びC6~C12ラクタムから選択される直鎖脂肪族単位の重縮合によって得られるホモポリアミドであり、ポリアミドは、
-絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差、
-厳密に35μeq/g未満である全塩基性度、及び
-70から180μeq/gの間の全酸性度
を有し、ポリアミドは、一酸又は二酸によって限定される。
【0054】
調製方法
本発明によるポリアミドの調製方法は、溶融段階でモノマーと、少なくとも1つの連鎖停止剤と、水と、場合により他の添加剤とを混合する工程を含む。この工程は、一般に、100から300℃の間の温度及び3から35バールの間の圧力下で行われる。この工程は、バッチモード又は連続モードで実施することができる。
【0055】
次いで、水蒸気を脱気によって除去し、大気圧に達するまで圧力を下げる。
【0056】
最後に、所望の分子量が得られるまで、重縮合を窒素又は減圧下で継続する。
【0057】
この方法はまた、不純物中のポリアミドが少ないことを確実にするための後続の濾過工程を含んでもよい。例えば、濾過工程は、追加の配合工程で実施されてもよい。
【0058】
添加剤の添加は、モノマーの重合中又は追加の配合工程で行うことができる。
【0059】
組成物
本発明はまた、本明細書中上記で定義されるようなポリアミドを含む組成物に関する。
【0060】
組成物は、難燃剤、UV保護剤、UV安定剤、蛍光増白剤、熱安定剤、顔料、潤滑剤、酸化防止剤、流動向上剤、流動性向上剤、フィルム形成剤、充填剤、フィルム形成助剤、ガム、半結晶性ポリマー、防腐剤、抗菌剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。
【0061】
好ましくは、組成物は、主に、すなわちポリアミド組成物の総重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは70から90%の間を含む。
【0062】
好ましい一実施形態によれば、本発明による組成物は、本発明によるポリアミドと、組成物の総重量に対して最大で10重量%の少なくとも1つの添加剤とを含む。
【0063】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、ポリアミドとしてのPA11又はPA12であって、
-絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差、
-厳密に35μeq/g未満である全塩基性度、及び
-70から180μeq/gの間の全酸性度
を有し、直鎖脂肪族C6~C12ジカルボン酸、好ましくはアジピン酸によって限定されるポリアミドと、
組成物の総重量に対して最大10重量%の少なくとも1つの添加剤と
を含む。
【0064】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、ポリアミドとしてのPA11又はPA12であって、
-絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差、
-厳密に35μeq/g未満である全酸性度、及び
-60から180μeq/gの間の全塩基性度
を有し、直鎖脂肪族C6~C12アミン、好ましくはデカンジアミン及びラウリルアミンによって限定されるポリアミドと、
組成物の総重量に対して最大10重量%の少なくとも1つの添加剤と
を含む。
【0065】
使用
本発明によるポリアミドは、糸、繊維、フィラメント、フィルム、膜、多孔質膜、織布又は不織布織物などの織物材料の製造に使用することができる。本発明はまた、溶融ポリアミド粒子を織物材料の表面に耐久性のある様式(耐洗浄性)で付着させるための溶融ポリアミド粒子の製造及び使用に関する。
【0066】
本明細書中上記で定義されるような組成物はまた、糸、繊維、フィラメント、フィルム、膜、多孔質膜、織布又は不織布織物などの織物材料の製造のために使用することができる。
【0067】
ポリアミド又はポリアミド系組成物は、中間固化及び再溶融工程なしに、重合直後に織物材料に成形することができる。ポリアミド又はこれらの組成物はまた、例えば成形された織物物品の製造のために、又は糸、繊維及び/若しくはフィラメントの製造のために、その後の最終成形のために再溶融される顆粒として成形されてもよい。
【0068】
すべての溶融紡糸プロセスは、特に、本発明のポリアミド又は組成物を、1つ以上のオリフィスを含む紡糸口金に通すことによって使用することができる。マルチフィラメント糸の製造のために、紡糸速度にかかわらず、紡糸又は紡糸延伸又は紡糸延伸テクスチャ加工プロセスが、統合されているかどうかにかかわらず可能である。糸は、3000m/分以上、好ましくは4000m/分以上の紡糸速度で高速紡糸することによって製造することができる。そのようなプロセスは、多くの場合、以下の用語で呼ばれる:POY(半延伸糸)、FOY(延伸糸)、ISD(統合紡糸延伸)、HOY(5500m/分を超える速度での高延伸糸)。これらの糸はまた、それらの意図される使用に応じてテクスチャ加工することができる。これらのプロセスによって得られた糸は、織物、織布又は編物表面の製造に特に適している。本発明によれば、本発明によるポリアミド製の熱可塑性ポリマーマトリックスは、モノフィラメント糸又はモノフィラメント、マルチフィラメント糸又はマルチフィラメント、連続(スプール)及び/又は不連続(ステープル)繊維の製造に使用することができる。ホモポリアミド不連続繊維は、天然繊維とのブレンドに特に適している。
【0069】
単繊維又はモノフィラメントの場合、力価は1.5dtex~100dtex/フィラメントの範囲であり得、より高い力価は工業用途に特に適している。マルチフィラメント糸は、6dtex/フィラメント以下の力価を有することが好ましい。繊維の製造のために、フィラメントは、例えば、紡糸直後又は再紡糸プロセスにおいてストランド又はラップの形態で組み合わせ、延伸、テクスチャ加工又はクリンプして切断することができる。得られた繊維は、不織布又は繊維糸の製造に使用することができる。ポリアミド又は組成物は、フロックの製造にも使用することができる。本発明の糸、繊維及び/又はフィラメントは、例えば、連続又は再延伸工程での延伸、サイジング、塗油、交絡、テクスチャ加工、クリンピング、延伸、固定又は弛緩熱処理、フライス加工、ねじり及び/又は染色などの様々な処理を受けてもよい。染色については、浴又は液流染色プロセスが特に言及される。好ましい染料は、酸、金属及び非金属染料である。
【0070】
一実施形態では、本発明のポリアミドのフィラメントの靭性は、3.5cN/dTex超、特に4cN/dTex超であり、特に4から10cN/dTexである。
【0071】
本発明はまた、本明細書中上記で定義されるようなポリアミドからなるか、又は本明細書中上記で定義されるような組成物からなるフィラメントに関する。
【0072】
織物
本発明はまた、本明細書中上記で定義されるポリアミド又は組成物から作製された織物に関する。
【0073】
本発明はまた、先に定義されたポリアミドから少なくとも部分的に得られた、先に定義されたような糸、繊維及び/又はフィラメントの形態の織物(又は織物物品若しくは織物材料)に関する。これらの織物材料又は物品は、織布、編物、不織布又はカーペット表面などの布地又は織物表面であってもよい。そのような物品は、例えば、カーペット、ラグ、室内装飾、ソファーカバーなどの表面カバー、カーテン、寝具、マットレス及び枕、衣類並びに医療用織物材料であってもよい。
【0074】
本発明による織物は、有利には、フェルト、フィルタ、フィルム、ガーゼ、布、包帯、層、布地、編物、衣類の物品、衣服、寝具の物品、家具の物品、カーテン、内装、機能性工業用織物、ジオテキスタイル及び/又はアグロテキスタイルを構成する。
【0075】
前記織物は、医学、衛生、手荷物、衣類、家庭用又は在宅用機器、家具、カーペット、自動車、産業、特に工業用濾過、農業及び/又は建設の分野で有利に使用される。
【0076】
本発明はまた、押出プロセス、特に溶融押出、特にシート、フィルム及びフィラメントの押出によって、本発明によるポリアミドを含むポリアミドマトリックス又は熱可塑性組成物を成形することによって得られる織物物品に関する。したがって、平坦なダイを使用する上記のプロセスによってフィルムを得ることができる。得られたフィルムは、一次元又は二次元延伸、熱安定化処理、帯電防止処理及び/又はサイジングなどの1つ以上の処理工程を受けてもよい。
【0077】
本発明による織物が主に本発明によるPA11(少なくとも50重量%のPA11を含む)に基づいて製造される場合、これらの織物はさらなる有利な特性を示す。それらは、軽量で、可撓性があり、手触りが柔らかく、引裂き、切断、摩耗、及びピリングに耐性があり、最初に触れるときに冷たい。
【0078】
有利には、前記織物は、綿、ウール及び/又は絹などの天然繊維、天然原料から作製された人工繊維、本発明によるポリアミド繊維以外の金属繊維及び/又は合成繊維をさらに含む。
【0079】
有利には、前記織物は、バイオベース原料から得られた合成繊維を含む。好ましくは、本発明による織物は、バイオベース原料のみから製造される。
【0080】
再生可能な原料又はバイオベース原料は、バイオベース炭素又は再生可能な資源からの炭素を含む材料である。実際、化石燃料から作製された材料とは異なり、再生可能な原料から作製された材料は14Cを含有する。「再生可能な炭素含有量」又は「バイオベース炭素含有量」は、ASTM D6866(ASTM D6866-06)及び必要に応じて、ASTM D7026(ASTM D7026-04)に従って決定される。最初の規格は、試料の14C/12C比を測定する試験を記載しており、それを100%バイオベース起源の基準試料の14C/12C比と比較して、試料中のバイオベースCの相対的割合を得る。この規格は、14C年代測定と同じ概念に基づいているが、年代測定式の適用はない。このようにして計算された比は、「pMC」(パーセントモダンカーボン)と呼ばれる。分析される材料が(放射性同位体を含まない)生体材料と化石材料の混合物である場合、得られたpMC値は試料中に存在する生体材料の量と直接相関する。ASTM D6866-06規格は、LSC(液体シンチレーションカウンティング)又はAMS/IRMS(同位体放射性質量分析と組み合わせた加速質量分析)のいずれかに基づいて14C同位体含有量を測定するためのいくつかの技術を提案している。本発明の場合に使用される好ましい測定方法は、ASTM D6866-06(「加速器質量分析」)に記載されている質量分析である。
【0081】
本発明によるポリアミド11を含有する本発明の織物は、バイオベース原料に少なくとも部分的に由来し、したがって少なくとも1%のバイオベース炭素含有量を有し、これは少なくとも1.2×10-14の12C/14C同位体比に相当する。好ましくは、本発明による織物は、炭素の総質量に対して少なくとも50質量%のバイオベース炭素を含み、これは少なくとも0.6.10-12の12C/14C同位体比に相当する。この含有量は、有利にはより高く、特に最大100%であり、これは1.2×10-12の12C/14C同位体比に相当する。したがって、本発明による織物は、100%のバイオベース炭素を含むことができるか、あるいは化石起源との混合物から生じることができる。
【0082】
好ましい実施形態によれば、本発明による織物は、PA11又はPA12から作製され、ポリアミドは、
-絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差、
-厳密に35μeq/g未満である全塩基性度、及び
-70から180μeq/gの間の全酸性度
を有し、ポリアミドは、直鎖脂肪族C6~C12ジカルボン酸、好ましくはアジピン酸によって限定される。
【0083】
別の好ましい実施形態によれば、本発明による織物は、PA11又はPA12であって、
-絶対値として表される、その全酸性度とその全塩基性度との間の35から180の間の差、及び
-厳密に35μeq/g未満である全酸性度、及び
-60から180μeq/gの間の全塩基性度
を有し、脂肪族直鎖アミンによって限定されるポリアミドと、
組成物の総重量に対して最大10重量%の少なくとも1つの添加剤と
を含む組成物から作製される。
【0084】
本発明の他の目的及び利点は、限定することを意図しない以下の実施例から明らかになるであろう。
【実施例】
【0085】
実施例1:試料調製
Aで示される本発明によるポリアミドは、投入された11-アミノウンデカン酸の量に対して0.67重量%の割合のアジピン酸(C6二酸)によって限定されるPA11である。
【0086】
このポリアミドは、以下のプロセスに従って調製される。11-アミノウンデカン酸、水及びアジピン酸を反応器に投入し、次いで不活性雰囲気に入れる。次いで、撹拌を維持しながら、反応媒体を235℃に加熱した。反応媒体を20バールの圧力下で235℃に1.5時間保持した。次いで、温度を235℃に保ちながら、圧力を12バールに下げた。次いで、材料を235℃の窒素フラッシング下で重合器に移した。温度を窒素フラッシング下で1.5時間維持した。次いで、材料を顆粒の形態で押し出した。このプロセスをすべての実施例ポリアミドに使用した。
【0087】
Bで示される本発明によるポリアミドは、投入された11-アミノウンデカン酸の量に対して1.10重量%の割合のラウリン酸(C12一酸)によって限定されるPA11である。
【0088】
Cで示される本発明によるポリアミドは、投入された11-アミノウンデカン酸の量に対して0.83重量%の割合のラウリルアミン(C12モノアミン)によって限定されるPA11である。
【0089】
Dで示される本発明によるポリアミドは、投入された11-アミノウンデカン酸の量に対して0.80重量%の割合のデカンジアミン(C10ジアミン)によって限定されるPA11である。
【0090】
Eで示されるポリアミドは、化学量論的にデカンジアミン及びデカン二酸の重量の合計に対して0.90重量%の割合まで添加された過剰のデカン二酸によって限定されるPA1010である。
【0091】
Fで示される比較ポリアミドは、Arkema FranceからRilsan(登録商標)BMNOの商品名で販売されているPA11である。
【0092】
Gで示される比較ポリアミドは、Arkema FranceからRilsan(登録商標)KNOの商品名で販売されているPA11である。
【0093】
Hで示されるポリアミドは、Arkema FranceからRilsamid(登録商標)AECNOの商品名で販売されているPA12である。
【0094】
固有粘度の測定
固有粘度は、マイクロ-ウベローデ型粘度計管を備えた粘度計を用いて、20℃で、溶液の総重量に対するメタクレゾール中の0.5重量%溶液のポリアミド濃度で測定した。
【0095】
全酸性度の測定
酸性度は、以下の方法に従って測定した。ポリアミド1gをベンジルアルコール80mLに加熱下で溶解させた。次いで、試料を冷却した。次いで、複合pH電極を備えたメトローム滴定装置(888又は716)を使用して、0.02Nテトラブチルアンモニウム水酸化物溶液によって電位差滴定した。電位対体積曲線は、等価体積を有するジャンプを与え、そこから以下の式を使用して全酸性度が計算される。
式中、
Veqは、電位差滴定によって得られた等価体積であり、
[TBAOH]は、テトラブチルアンモニウム水酸化物溶液の濃度、すなわち0.02Nであり、
mは、試料の質量、すなわち1gである。
【0096】
全塩基性度の測定
塩基性度は、以下の方法に従って測定した。ポリアミド1gを熱メタクレゾール80mLに溶解させた。次いで、試料を冷却した。次いで、複合pH電極を備えたメトローム滴定装置(888又は716)を使用して、酢酸中の0.02N過塩素酸溶液によって電位差滴定した。電位対体積曲線は、等価体積を有するジャンプを与え、そこから以下の式を使用して全塩基性度が計算される。
式中、
Veqは、電位差滴定によって得られた等価体積であり、
[HClO4]は、過塩素酸溶液の濃度、すなわち0.02Nであり、
mは、試料の質量、すなわち1gである。
【0097】
全酸性度と塩基性度との差の計算
差は、絶対値で、すなわち符号を考慮せずに、全酸性度と全塩基性度とを互いに減算することによって得られる。
【0098】
例えば、PA11Aの場合:
Δ=|103-18|=85
試験したポリアミドの全塩基性度及び酸性度の値は、以下の通りである。
【0099】
実施例2:熱安定性分析
加熱時の本発明によるポリアミド及び比較ポリアミドの熱安定性を分析した。
【0100】
溶融粘度は、以下の条件で評価した。
装置:PHYSICA MCR301
形状:直径25mmの平行平面
温度:220℃及び240℃
周波数:10rad.s-1
変形:5%
時間:30分
雰囲気:窒素フラッシュ。
【0101】
これらの条件は、規格ISO6721-10:1999のものである。
【0102】
220℃での粘度に関する結果を以下の表2に報告する。
【0103】
240℃での粘度に関する結果を以下の表3に報告する。
【0104】
これらの結果は、本発明によるポリアミドが加熱されたときにほとんど変化しないことを示している。その粘度は経時的に実質的に一定であり、粘度が220℃及び240℃で経時的に有意に増加することが分かる比較ポリアミドとは異なる。
【0105】
これらの結果は、本発明によるポリアミドが完全にリサイクル可能であることを示している。
【0106】
実施例3:耐熱性の分析
本発明によるポリアミド及び比較ポリアミドの耐熱性を分析した。
【0107】
以下の条件で耐熱性を評価した。測定は、Netzsch TG209F1装置で、25から550℃まで10℃/分で、空気下及び窒素下で行った。
【0108】
【0109】
これらの結果は、本発明によるポリアミドが、空気下及び窒素下の両方でより良好な耐熱性を有することを示している。
【0110】
これらの結果は、本発明によるポリアミドから作製されたフィラメントが、温度に対する感受性がはるかに低いので、より良好な機械的特性を有することを示している。
【0111】
実施例4:伸び特性の分析
ダンベル形状の試験片を、ポリアミド顆粒から規格ISO527 1Aに従って作製した。
【0112】
ISO規格527 1A:2012に従った23℃での引張試験を実施した。試験は、ダンベル形状の試験片に機械的応力を加えることからなる。ダンベル形状の試験片の最大伸び率は、第2の閾値の前に測定される。
【0113】
【0114】
これらの結果は、本発明によるポリアミドが、全塩基性度及び酸性度特性を満たさない比較ポリアミドを用いて得られたものよりも室温で良好な機械的特性を有することを示している。これらの結果から、本発明によるポリアミドから得られたフィラメントは、より良好な伸縮性及び靭性を有すると結論づけることができる。
【0115】
実施例5:本発明によるポリアミドフィラメントの靭性の特徴づけ
フィラメントは、本発明によるポリアミドPA11Aから調製される。フィラメントの靭性は、規格ISO2062に従って、250mm/分の速度及び2つのジョー間の250mmの距離で測定される。
【0116】
22%の伸びに対して4.4cN/dtexの値が得られる。
【0117】
したがって、本発明によるポリアミドで作製された布地は、スポーツの分野で使用することができる。
【0118】
実施例6:紡糸プロセス
本発明によるPA11A及び比較PA11Fをマルチフィラメント押出で評価した。使用したシステムは、以下を特徴とした。
押出機:19mm(3/4”)30:1L/D
ポンプ:0.6cc/rev
紡糸口金パック:L/D=4の36穴;L=1.4mm及びD=0.35mm
以下の℃での温度プロファイル:
【0119】
本発明によるPA11Aは、その流動性及びそのレオロジー安定性のおかげで、困難なくマルチフィラメントを得ることを可能にする。このプロセスは安定しており、フィラメントの破断はなく、優れた収率である。
【0120】
しかし、比較PA11Fでは、プロセスは不安定である。紡糸口金の出口でより粘性の高い材料の形成が観察され、マルチフィラメントが破断する。実際、溶融段階におけるその反応性のために、比較PA11Fの粘度は紡糸プロセス中に変化し、したがって、この問題を克服するために押出パラメータの連続的な調整を必要とする。しかしながら、これは工業的観点からは実行可能ではない。
【0121】
したがって、比較PA11Fは、マルチフィラメントの製造には適していないが、本発明によるPA11Aの配合物は、このタイプの変換プロセスに特に適している。
【国際調査報告】