(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】結晶成長のためのレーザに基づく後加熱
(51)【国際特許分類】
C30B 13/22 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
C30B13/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505968
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2021070197
(87)【国際公開番号】W WO2022023108
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523029515
【氏名又は名称】サイドレ サイエンティフィック インストゥルメンツ ドレスデン ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】ScIDre Scientific Instruments Dresden GmbH
【住所又は居所原語表記】Gutzkowstrasse 30, 01069 Dresden, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト シェーンドゥーベ
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077CE03
4G077CE05
4G077EG20
4G077EJ04
(57)【要約】
溶融された供給材料(23)から結晶(21)を成長させるための結晶成長装置(10,10’,10’’)及び結晶成長方法が提示される。ここでは、溶融ゾーンヒータに加えて、少なくとも1つの後加熱レーザ(5)が、溶融ゾーン(230)に隣接する凝固ゾーン(210)と少なくとも部分的に重なる延長された後加熱ゾーン(50)を加熱するように配置されている。結晶成長装置(10,10’,10’’)及び結晶成長方法を、成長した結晶(21)におけるクラック形成又は熱応力を低減するための熱処理に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融された供給材料(23)から結晶(21)を成長させるための結晶成長装置(10,10’,10’’)であって、
- 溶融ゾーン(230)において前記供給材料を溶融させるための溶融ゾーンヒータと、
- 後加熱レーザビーム(51)を放射して、前記溶融ゾーン(230)に隣接する凝固ゾーン(210)と少なくとも部分的に重なる延長された後加熱ゾーン(50)を加熱するように配置された少なくとも1つの後加熱レーザ(5)と、
を備える結晶成長装置(10,10’,10’’)。
【請求項2】
前記後加熱レーザビーム(51)の照射領域を調整するための照射領域調整手段をさらに備える、請求項1に記載の結晶成長装置(10,10’,10’’)。
【請求項3】
前記照射領域調整手段が、少なくとも1つの調整可能なデフォーカス手段を備える、請求項2に記載の結晶成長装置(10,10’,10’’)。
【請求項4】
前記照射領域調整手段が、少なくとも1つの可動レンズを備える、請求項2又は3に記載の結晶成長装置(10,10’,10’’)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの後加熱レーザが、調整可能な出力電力を有する又は有しないダイオードレーザ(5)である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の結晶成長装置(10,10’,10’’)。
【請求項6】
前記結晶成長装置(10’’)が、奇数N個(ただし、N>1)の後加熱レーザ(5)を備え、前記後加熱レーザ(5)が、前記後加熱ゾーン(50)を周方向に取り囲んでいる、請求項1から5までのいずれか1項に記載の結晶成長装置(10’’)。
【請求項7】
前記結晶成長装置(10’)が、可変及び/又は重ね合わせ可能な照射領域を有するように配置された、及び/又は、前記後加熱ゾーン(50)の温度分布(4’)を調整するように配置された幾つかの後加熱レーザ(5)を備える、請求項1から6までのいずれか1項に記載の結晶成長装置(10’)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの後加熱レーザ(5)が、前記溶融ゾーン(230)に直接隣接し、及び/又は、前記溶融ゾーン(230)と少なくとも部分的に重なる後加熱ゾーン(50)を加熱するように配置されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の結晶成長装置(10,10’,10’’)。
【請求項9】
前記後加熱レーザ(5)が、前記凝固ゾーン(210)及び前記溶融ゾーン(230)に隣接する前記供給材料のゾーン(220)と少なくとも部分的に重なる後加熱ゾーン(50)を加熱するように配置されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の結晶成長装置(10,10’,10’’)。
【請求項10】
溶融された供給材料(23)から結晶(21)を成長させるための結晶成長方法であって、
溶融ゾーン(230)を加熱することに加えて、前記溶融ゾーン(230)に隣接する凝固ゾーン(210)と部分的に重なる延長された後加熱ゾーン(50)を、少なくとも1つの後加熱レーザ(5)により放射される少なくとも1つの後加熱レーザビーム(51)により加熱する、結晶成長方法。
【請求項11】
前記後加熱レーザ(5)により放射される前記後加熱レーザビーム(51)の照射領域が、照射領域調整手段により調整可能である、請求項10に記載の結晶成長方法。
【請求項12】
前記後加熱ゾーン(50)の温度分布(4’)が調整可能である、請求項10又は11に記載の結晶成長方法。
【請求項13】
前記後加熱ゾーン(50)が、前記溶融ゾーン(230)に直接隣接する、又は、前記溶融ゾーン(230)と少なくとも部分的に重なる、請求項10から12までのいずれか1項に記載の結晶成長方法。
【請求項14】
前記後加熱ゾーン(50)が、前記凝固ゾーン(210)及び前記溶融ゾーン(230)に隣接する前記供給材料のゾーン(220)と少なくとも部分的に重なる、請求項10から13までのいずれか1項に記載の結晶成長方法。
【請求項15】
結晶(21)を成長させるためのゾーン溶融型又はチョクラルスキー型又はブリッジマン型の装置又は方法における、請求項1から9までのいずれか1項に記載の結晶成長装置(10,10’,10’’)又は請求項10から14までのいずれか1項に記載の結晶成長方法の使用。
【請求項16】
溶融された供給材料(23)から成長させた結晶(21)におけるクラック形成若しくは熱応力を低減し、及び/又は、前記供給材料(23)の溶融プロセスを容易にするための熱処理のための、請求項1から9までのいずれか1項に記載の結晶成長装置(10,10’,10’’)又は請求項10から14までのいずれか1項に記載の結晶成長方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融された供給材料から結晶を成長させるための結晶成長装置、溶融された供給材料から結晶を成長させるための結晶成長方法並びに前記装置及び前記方法の使用に関する。
【0002】
本発明の用途は、結晶化された形態の溶融された供給材料の凝固を含む単結晶成長技術への本発明の使用を含む。
【背景技術】
【0003】
このような技術に対する例は、配向された種結晶を溶融された供給材料に浸漬し、回転させながらゆっくり上方に引き上げるチョクラルスキー法である。
【0004】
他の例は、ゾーン溶融プロセスである。このプロセスでは、供給材料、例えば、単結晶又は多結晶のロッドの狭い領域が溶融され、このいわゆる溶融ゾーンが、ロッドに沿って移動し、2つの固体界面を形成する。ゾーンが移動するにつれて、例えば、ヒータ若しくは炉又はロッドを移動させることにより、一方の界面からの材料を溶融ゾーンにおいて溶解させ、他方の界面で再結晶化させ、液体中での溶解度が固体中での溶解度とは異なる不純物について精製が行われる。このようにして、不純物は、ロッドの一端に移動し、極めて純粋な結晶が後に残る。
【0005】
浮遊ゾーン(FZ)プロセスは、ゾーン溶融プロセスの重要な変形形態である。種結晶を使用することにより、るつぼを使用しない成長が可能となり、るつぼ材料に基づく汚染の可能性及び結晶と容器との間の膨張差による応力が排除される。FZプロセスは、底部又は頂部に、垂直に配置された成長中の結晶と、他方の側に、供給材料の溶融中のロッドとを有する。溶融ゾーンは、溶融ゾーンヒータと結晶ロッド配置との間の相対移動により浮遊する。
【0006】
溶融された供給材料の凝固による結晶の製造における主な問題は、新たに形成された結晶における熱応力によるクラックである。供給材料を融点より高く加熱するために、最高3000℃の極めて高い温度が多くの場合必要となる。これにより、溶融ゾーン内の加熱された溶融物プールと非加熱結晶化領域との間に大きな温度差が生じる。このため、溶融物からの凝固により、得られた結晶内に極めて高い温度勾配ももたらされる。これにより、膨大な熱応力が生じる。これらの応力により、多くの場合、結晶中のクラック又は結晶格子中の他の欠陥の形成がもたらされ、材料が無駄になり又はその品質が大幅に低下してしまう。
【0007】
凝固材料を溶融ゾーンの近傍でさらに加熱することにより温度勾配を低減することができることが一般的に公知である。カーボンヒータの十分に確立された使用とは別に、多くの特許に、従来の抵抗後加熱及び誘導後加熱の技術が開示されている。例として、独国特許出願公開第102004058547号明細書には、浮遊ゾーンプロセスにおける後加熱のための無線周波数で動作する加熱コイルによる誘導入熱の適用が記載されている。誘導後加熱は、英国特許出願公告第1045526号明細書にも示されている。
【0008】
所望の加熱効果を達成するために、このような従来のヒータを金属サンプルに対して保護ガス雰囲気(通常、アルゴン)中で使用することができるが、酸化物材料の製造には、高い酸素含量を有する雰囲気が多くの場合必要である。特に、極めて多様な電子的特性及び磁気的特性を有するこのような酸化化合物、例えば、真性金属-絶縁体転移又は高温超伝導体を有する材料は、現在、研究の焦点である。しかしながら、多くの場合、熱応力を極めて受けやすいのは、正確にこれらの化合物である。極端に高い温度と組み合わせると、高い酸素分圧により、従来の後加熱の操作に深刻な制限がもたらされる。結果として、十分に高い温度に達することができるこのクラスの材料に利用可能な従来の後加熱は事実上存在しない。
【0009】
溶融ゾーンから離れるように熱を受動的に分配するための幾つかの代替アプローチが存在する。米国特許第4,248,645号明細書においては、熱の分配は、ヒートシンクに結合された高い熱伝導率を有する材料のバーにより達成される。米国特許出願公開第2010282160号明細書においては、熱交換器の形態のヒートシンクが同じ目的で使用されている。
【0010】
独国特許出願公開第2557186号明細書には、溶融ゾーンの周囲に放射線遮蔽体を使用した受動的な後加熱構成が開示されている。同様の構成が欧州特許出願公開第0725168号明細書に示されている。
【0011】
これらの受動的な構成には、調整性及び適応性が乏しいという欠点がある。
【0012】
小さな単結晶繊維の成長に関連する後加熱のための他のアプローチは、国際公開第2008/092097号に記載されている。CO2レーザビームを、材料を溶融するための第1の部分と、後加熱するための第2の部分とに分割するためのミラーの使用が開示されている。同心二重焦点ミラーを使用して、第1の部分は、溶融ゾーンに集束され、第2の部分は、後加熱ゾーンに集束される。
【0013】
国際公開第2008/092097号に記載されている主題には、追加の高感度光学部品の使用並びに後加熱ゾーンの長さ及び位置調整の点での低い汎用性を含む幾つかの欠点がある。さらに、後加熱ゾーンの温度分布を調整することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004058547号明細書
【特許文献2】英国特許出願公告第1045526号明細書
【特許文献3】米国特許第4,248,645号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2010282160号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第2557186号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0725168号明細書
【特許文献7】国際公開第2008/092097号
【特許文献8】国際公開第2008/092097号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、溶融された供給材料から成長した結晶を極めて高い温度にまで安定した状態で持続的に後加熱するための選択肢を提示する、周囲の雰囲気に左右されない装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、溶融された供給材料から結晶を成長させるための結晶成長装置であって、
- 溶融ゾーンにおいて供給材料を溶融させるための溶融ゾーンヒータと、
- 後加熱レーザビームを放射して、溶融ゾーンに隣接する凝固ゾーンと少なくとも部分的に重なる延長された後加熱ゾーンを加熱するように配置された少なくとも1つの後加熱レーザと、
を備える結晶成長装置を提供する。
【0017】
本発明の文脈において、「後加熱ゾーン」は、後加熱レーザビームが直接照射される供給材料及び/又は成長した結晶の一部を特定する。後加熱レーザの直接放射は、レーザ源から前記後加熱ゾーンまでの可能な最短経路を移動する放射に対応する場合がある。後加熱ゾーンの外側の部分が、例えば、後加熱ゾーンからの熱伝導又は間接放射に起因して、後加熱なしの装置と比較して、温度上昇を受ける場合があることも排除されない。
【0018】
後加熱ゾーンは、その溶融された供給材料から成長した結晶の凝固ゾーンと少なくとも部分的に重なることができ、このことは、後加熱ゾーンが凝固ゾーンだけでなく、例えば、供給材料の更なる領域にも重なることも、本発明の範囲内にあることを理解されたい。
【0019】
「凝固ゾーン」という用語は、その温度が溶融温度を下回ったために、溶融された供給材料が所望の結晶構造に凝固したゾーンを特定するために使用される。
【0020】
「結晶」又は「結晶性」という用語は、溶融された供給材料から成長させることができる結晶性原子構造を有する任意のタイプの固体に関するのに使用される。結晶は、多結晶領域及び/又は単結晶領域を含むことができ、多結晶領域は、凝固ゾーンの開始及び境界において特に共通である。好ましくは、結晶は、大きな単結晶領域を有する。成長した結晶が結晶構造を破壊する結晶学的欠陥を示すことは、本発明の範囲内である。結晶は、空孔、格子間原子、転位、粒界及び/又は不純物を含む場合がある。
【0021】
後加熱ゾーンは、少なくとも凝固ゾーンの特定の領域にわたって延在し、後加熱ゾーンの延在長さは、凝固ゾーンに対する後加熱レーザビームの照射領域により決まる場合がある。好ましくは、後加熱ゾーンの延在長さは、溶融ゾーンの延在長さより大きい。
【0022】
後加熱ゾーンは、溶融ゾーンに隣接して位置している。これは、本発明の文脈において、後加熱ゾーンが溶融ゾーンに近接しており又は溶融ゾーンの近くにあるが、必ずしも溶融ゾーンに直接、すなわち、溶融ゾーンに継ぎ目なく隣接しているわけではないことに理解されたい。
【0023】
少なくとも1つの後加熱レーザは、調整可能な出力電力を有するものとしてもよいし、有しないものとしてもよい。好ましくは、少なくとも1つの後加熱レーザは、後加熱ゾーンを供給材料の溶融温度に等しい温度又は少なくともそれに近い温度に加熱するのに十分な大きさの最大出力電力を有することができる。最大総出力電力は、典型的には、特に、結晶のサイズ及び/又は材料に応じて、500W乃至10kW、好ましくは、750W乃至10kWの範囲であるものとしてよい。最大総出力電力を、幾つかの後加熱レーザの間で分割することができ、幾つかの後加熱レーザのそれぞれが、10W乃至1500Wの範囲の最大出力電力を有することができる。典型的なFZプロセスの例として、最大総出力電力を、それぞれ800Wの最大出力電力を有する3つの後加熱レーザ又はそれぞれ500Wの最大出力電力を有する5つの後加熱レーザ又はそれぞれ30Wの最大出力電力を有する27の後加熱レーザの間で分割することができる。
【0024】
後加熱レーザビームは、後加熱ゾーンの方向に後加熱レーザにより放射される全光であると理解することができる。好ましくは、後加熱レーザビームは、デフォーカスされる。好ましくは、溶融ゾーンヒータは、供給材料を最高数千℃の温度で溶融するのに使用することができる少なくとも1つのレーザを備える。
【0025】
本発明の実施形態によれば、結晶成長装置は、後加熱レーザビームの照射領域を調整するための照射領域調整手段をさらに備えることができる。
【0026】
好ましくは、照射領域調整手段は、後加熱レーザビームの照射領域のサイズ及び/又は位置を調整するように動作可能である。照射領域のサイズ及び/又は位置を、後加熱レーザが動作している間に変更することができ、その結果、凝固ゾーンのより小さい部分又はより大きい部分のいずれかを、後加熱レーザビームにより、十分規定して加熱することができる。
【0027】
好ましくは、照射領域調整手段は、少なくとも1つの調整可能なデフォーカス手段を備える。デフォーカス手段は、ビームエクスパンダとして作用することができる。それらは、伸縮可能な又はプリズムの性質を有するものであってよい。
【0028】
好ましくは、照射領域調整手段は、少なくとも1つの可動レンズを備える。可動レンズは、集束レンズ又は発散レンズであるものとしてよい。照射領域のサイズ及び/又は位置を、レンズ面からのレーザビーム源の可変距離とレンズの焦点距離との間の関係により決めることができる。
【0029】
本発明の更なる実施形態によれば、少なくとも1つの後加熱レーザは、ダイオードレーザである。ダイオードレーザは、調整可能な出力電力を有するものとしてもよいし、有しないものとしてもよい。ダイオードレーザは、約1μmの波長の赤外光を放射することができる。
【0030】
結晶成長装置は、2つ以上の後加熱レーザを備えることができる。結晶成長装置は、幾つか、好ましくは、2乃至50個、より好ましくは、3乃至40個、特に好ましくは、3乃至30個の後加熱レーザを備えることができる。これらの幾つかの後加熱レーザを、それらにより加熱される標本の周りに任意の実現可能な形態において配置することができる。例として、これらの幾つかの後加熱レーザを、標本の周方向に沿って標本を取り囲むように配置することができる。有利には、この構成により、後加熱ゾーンにおける半径方向に均一な温度分布が可能となる。他の例として、これらの幾つかの後加熱レーザを、溶融ゾーンの移動方向に沿って配置することができる。有利には、この構成により、溶融ゾーンの移動方向に沿って設定される、後加熱ゾーンに対する規定された温度分布が可能となる。
【0031】
本発明の更なる実施形態によれば、結晶成長装置は、奇数N個(ただし、N>1)の後加熱レーザを備え、後加熱レーザは、後加熱ゾーンを周方向に取り囲むことができる。好ましくは、Nは、3乃至15、より好ましくは、3乃至9の範囲である。有利には、奇数個の後加熱レーザをサンプル周りに周方向に配置することにより、後加熱ゾーンにおける半径方向に均一な温度分布が可能となり、透過したレーザビームのためのビームトラップを使用することが可能となる。
【0032】
本発明の更なる実施形態によれば、結晶成長装置は、可変及び/又は重ね合わせ可能な照射領域を有するように配置された、及び/又は、例えば、溶融ゾーンの移動方向において、後加熱ゾーンの温度分布を調整するように配置された幾つかの後加熱レーザを備える。幾つかの後加熱レーザを標本の周りに配置することができる。それらは、調整可能な入力電力を有することができる。幾つかの後加熱レーザのうちの少なくとも1つに割り当てられた照射領域調整手段を設けることができる。
【0033】
有利には、この実施形態においては、後加熱ゾーンを、それぞれ異なる温度に加熱することができる領域に分割することが可能となる。例として、これにより、臨界値を超える温度勾配、例えば、溶融ゾーンの移動方向に沿った温度勾配なしに、凝固ゾーンの制御された冷却が可能となる。
【0034】
本発明の他の実施形態によれば、後加熱レーザは、溶融ゾーンに直接、すなわち、継ぎ目なく隣接し、及び/又は、溶融ゾーンと少なくとも部分的に重なる後加熱ゾーンを加熱するように配置されている。このため、溶融ゾーンと直接隣接する凝固ゾーンとの間の温度勾配を最適に低減することができる。溶融ゾーンと部分的に重なる後加熱ゾーンにより、溶融ゾーン内での供給材料の溶融を容易にすることができる。本発明の他の実施形態によれば、後加熱レーザは、凝固ゾーン及び溶融ゾーンに隣接する供給材料のゾーンと少なくとも部分的に重なる後加熱ゾーンを加熱するように配置されている。また、後加熱レーザは、供給材料の前記ゾーンと凝固ゾーンとの間の溶融ゾーンも加熱することができる。
【0035】
本発明の他の態様は、溶融された供給材料から結晶を成長させるための結晶成長方法であって、溶融ゾーンを加熱することに加えて、溶融ゾーンに隣接する凝固ゾーンと部分的に重なる延長された後加熱ゾーンを、少なくとも1つの後加熱レーザにより放射される少なくとも1つの後加熱レーザビームにより加熱する、結晶成長方法を提供する。
【0036】
後加熱ゾーンは、少なくとも凝固ゾーンの特定の領域にわたって延在し、後加熱ゾーンの延在長さは、凝固ゾーンに対する後加熱レーザビームの照射領域により決まる場合がある。
【0037】
後加熱ゾーンは、溶融ゾーンに隣接して位置している。これは、本発明の文脈において、後加熱ゾーンが溶融ゾーンに近接しており又は溶融ゾーンの近くにあるが、必ずしも溶融ゾーンに直接、すなわち、溶融ゾーンに継ぎ目なく隣接しているわけではないことに理解されたい。
【0038】
本方法の実施形態によれば、後加熱レーザにより放射される後加熱レーザビームの照射領域は、照射領域調整手段により調整可能である。好ましくは、後加熱レーザにより放射される後加熱レーザビームは、照射領域調整手段によりサイズ調整可能及び/又は位置調整可能である。
【0039】
本方法の他の実施形態によれば、後加熱ゾーンの温度分布は調整可能である。有利には、これにより、十分に規定して、成長した結晶を冷却することが可能となり、熱応力をさらに低減することができる。
【0040】
本方法の他の実施形態によれば、後加熱ゾーンは、溶融ゾーンに直接隣接し、及び/又は、溶融ゾーンと少なくとも部分的に重なる。
【0041】
本方法の他の実施形態によれば、後加熱ゾーンは、凝固ゾーン及び溶融ゾーンに隣接する供給材料のゾーンと少なくとも部分的に重なる。
【0042】
本発明の更なる態様は、結晶を成長させるためのゾーン溶融型又はチョクラルスキー型又はブリッジマン型の装置又は方法における結晶成長装置又は結晶成長方法の使用に関する。
【0043】
ゾーン溶融型の方法は、供給材料、例えば、単結晶又は多結晶ロッドの狭い領域を溶融することと、この溶融ゾーンをロッドに沿って移動させることとを含むことができる。ゾーン溶融型の方法は、溶融ゾーンヒータと結晶ロッド配置との間の相対移動により浮遊する溶融ゾーンを含む浮遊ゾーン型の方法を含む。
【0044】
チョクラルスキー型の方法は、配向された種結晶を溶融された供給材料に浸漬することと、種結晶を回転させながら、ゆっくり上方に引き上げることとを含むことができる。
【0045】
ブリッジマン型の方法は、溶融された供給材料を炉の高温ゾーンから低温ゾーンに移動させることを含むことができる。
【0046】
本発明を、任意の断面形状のロッドと共に使用することができる。
【0047】
他の態様は、溶融された供給材料から成長させた結晶におけるクラック形成若しくは熱応力を低減し、及び/又は、供給材料の溶融プロセスを容易にするための熱処理のための、前述の特徴を有する本発明の使用に関する。
【0048】
この説明全体を通して、「少なくとも1つ」という用語は、簡潔さの目的で使用され、1つ、正確に1つ、幾つか(例えば、正確に2つ又は3つ以上)、多く(例えば、正確に3つ又は3つ以上)等を意味することができる。ただし、「幾つか」又は「多く」は、幾つか又は多くの同一の要素が存在するが、幾つか又は多くの本質的に機能的に同一の要素が存在することを必ずしも意味するものではない。
【0049】
明確にするために、別々の実施形態の文脈で記載される本発明の特定の特徴を、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載される本発明の種々の特徴を、別々に又は任意の適当な部分組合せにより提供することもできる。
【0050】
本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、当業者が1つ以上の特定の実現形態の文脈において、開示された主題を製造しかつ使用することが可能となるように提示される。開示された実現形態に対する種々の修正は、当業者には容易に明らかであろうし、本明細書で定義された一般的な原理を、本開示の範囲から逸脱することなく、他の実現形態及び用途に適用することができる。このため、本開示は、記載され又は図示された実現形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示された原理及び特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。
【0051】
本発明の実現形態を、添付の図面を参照して、単なる例として説明するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】先行技術に係る結晶成長装置と、溶融ゾーンの移動方向に沿った標本にわたる関連する温度分布とを模式的に示す図である。
【
図2】本発明に係る結晶成長装置と、溶融ゾーンの移動方向に沿った標本にわたる関連する温度分布とを模式的に示す図である。
【
図3】本発明に係る結晶成長装置を模式的に示す図である。この場合、後加熱ゾーンは、供給材料のゾーン並びに凝固ゾーン及び溶融ゾーンと部分的に重なる。
【
図4】本発明に係る結晶成長装置を模式的に示す図である。この場合、幾つかの後加熱レーザが、溶融ゾーンの移動方向に連続的に配置される。
【
図5】本発明に係る結晶成長装置を模式的に示す図である。この場合、幾つかの後加熱レーザが、標本を周方向に囲むように配置される。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1に、後加熱システムを使用しない、標本2に作用する先行技術に係る結晶成長装置、一般性を失わずに、浮遊ゾーン(FZ)装置1を示す。標本2は、凝固ゾーン210内に結晶性部分21を含む。結晶性材料21は、供給材料ゾーン220に位置する多結晶材料供給ロッド22を溶融し、矢印24に示される移動方向に標本2を移動させることにより、溶融物プール23をロッド22に沿って狭い溶融ゾーン230内で移動させることにより成長する。溶融領域230は、熱放射により、供給材料の溶融温度T
meltよりわずかに高い温度に加熱される。熱放射は、例えば、少なくとも1つのCO
2若しくはYAGレーザにより放射される集束レーザ光3又は少なくとも1つの多色アークランプ若しくはハロゲンランプ(明確性の目的で図示せず)の集束光であるものとしてよい。標本2の移動方向24における標本2の寸法である標本2の長さにわたって進行する温度分布4は、溶融ゾーン230において狭いピーク41を示し、供給材料ゾーン220及び凝固ゾーン210において大きな温度勾配を有する。特に、凝固ゾーン210におけるこの急激な温度低下により、単結晶性材料21に著しい熱応力がもたらされる場合がある。
【0054】
図2に、本発明に係る結晶成長装置、一般性を失わずに、浮遊ゾーン(FZ)装置10を示す。溶融ゾーンヒータ(図示せず)に加えて、FZ装置10は、凝固ゾーン210と部分的に重なる後加熱ゾーン50を加熱する少なくとも1つのダイオードレーザ5を備える。調整可能なデフォーカス手段(図示せず)は、ダイオードレーザ5に作用する。このため、ダイオードレーザ5は、溶融ゾーンヒータにより放出される集束レーザ光3と異なり、デフォーカスレーザ光51を放射する。標本2の長さにわたる温度分布4’は、
図1に示されたものと同様に、溶融ゾーン230において狭いピーク41’を示す。
図1の温度分布4と異なり、温度分布4’は、供給材料ゾーン220における肩部42と、ダイオードレーザ5による後加熱ゾーン50への追加の入熱により生じる凝固ゾーン210における顕著な肩部43とを特徴とする。凝固ゾーン210の少なくとも一部を含む後加熱ゾーン50には、ダイオードレーザ5により直接照射が行われるが、供給材料ゾーン220における肩部42は、主に、凝固ゾーン210から供給材料ゾーン220への熱の伝導により生じる。肩部43により、凝固ゾーン210における温度勾配が顕著に低減され、このため、単結晶性材料21における熱応力及びクラック形成に対する傾向が低減される。
【0055】
図3に、
図2と同様のFZ装置10を示す。この場合、ダイオードレーザ5に作用するデフォーカス手段(図示せず)は、デフォーカスされたレーザ光51の照射領域ひいては後加熱ゾーン50が
図2より大きくなるように調整される。後加熱ゾーン50は、凝固ゾーン210の少なくとも一部と重なるだけでなく、溶融ゾーン230及び供給材料ゾーン220の少なくとも一部とも重なる。
【0056】
溶融物プール23に作用する集束レーザ光は、明確性の目的で省略されている。
【0057】
図4に、3つのダイオードレーザ5を有する
図2と同様のFZ装置10’を示す。ダイオードレーザ5は、それらの照射領域が重なるように配置され、及び/又は、それらの各デフォーカス手段(図示せず)が調整される。これにより、温度勾配が、後加熱ゾーン50の全長にわたって小さいままであることが保証される。後加熱ゾーン50は、凝固ゾーン210全体、溶融ゾーン230及び供給材料ゾーン220全体にわたって延在することができる。装置10’により、凝固ゾーン210における結晶性材料21の制御された冷却が可能となる、すなわち、標本2の長さにわたる温度分布を、熱応力を大幅に低減するように調整することができる。
【0058】
溶融物プール23に作用する集束レーザ光は、明確性の目的で省略されている。
【0059】
図5に、標本2の周方向に配置された5つのダイオードレーザ5を有するFZ装置10’’の底面図を示す。ダイオードレーザ5により、標本2の断面に対して均一な温度分布が保証される。ダイオードレーザ5は、プロセスチャンバ6の外側に配置される。プロセスチャンバは、特定のタイプの結晶を成長させるのに必要な環境、例えば、高い酸素分圧を提供することができる。奇数個のダイオードレーザ5を配置することにより、ビームトラップ52を使用して、標本2を透過したデフォーカスレーザ光51を吸収することが可能となり、1つのビームトラップ52が、各ダイオードレーザ5に割り当てられる。
【符号の説明】
【0060】
1 先行技術に係るFZ装置
10,10’,10’’ 本発明に係るFZ装置
2 標本
21 結晶性材料
210 凝固ゾーン
22 多結晶材料供給ロッド
220 供給材料ゾーン
23 溶融物プール
230 溶融ゾーン
24 標本の移動方向
3 集束レーザ光
4,4’ 温度分布
41,41’ 温度ピーク
42 温度分布における肩部
43 温度分布における肩部
5 ダイオードレーザ
50 後加熱ゾーン
51 デフォーカスレーザ光
52 ビームトラップ
6 プロセスチャンバ
【国際調査報告】