(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-18
(54)【発明の名称】プロポフォールセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20230810BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20230810BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20230810BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
G01N27/416 336G
G01N27/327 353F
G01N27/327 353S
G01N33/483 F
G01N33/50 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516642
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2021063035
(87)【国際公開番号】W WO2021239495
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522465798
【氏名又は名称】ソムナス サイエンティフィック エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】SOMNUS SCIENTIFIC LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】フェリエ デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ イビダポ
(72)【発明者】
【氏名】キエリ ジャニス
(72)【発明者】
【氏名】ルクストン リチャード
(72)【発明者】
【氏名】オコネル マーク
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA37
2G045CA25
2G045DA73
2G045FB01
2G045FB05
(57)【要約】
血中プロポフォールの検出のための、酵素的電気化学センサが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血中プロポフォール濃度測定センサ。
【請求項2】
プロポフォールの離散的測定を提供する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
血液ガス分析装置の一部を形成する、請求項1又は2に記載のセンサ。
【請求項4】
プロポフォールの直接電気化学測定を提供する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
酵素的である、請求項1~4のいずれかに記載のセンサ。
【請求項6】
プロポフォールの検出のための、酵素ベースの電気化学センサ。
【請求項7】
シトクロムP450酵素群の1又は2以上の酵素をベースとする、請求項1~6のいずれかに記載のセンサ。
【請求項8】
酵素シトクロムP450 2B6をベースとする、請求項1~7のいずれかに記載のセンサ。
【請求項9】
酵素作用により、プロポフォールをキノン/キノール酸化還元対に変換する、請求項5~8のいずれかに記載のセンサ。
【請求項10】
固相酵素プロポフォール濃度測定センサを持つ血液ガス分析装置を備える、全身麻酔時の血中プロポフォール濃度をポイントオブケアで測定するためのプロポフォール検出システム。
【請求項11】
全身麻酔時の血中プロポフォール濃度のリアルタイムモニタリングのための固相プロポフォール検出システムであって、採血の必要なく連続的リアルタイムプロポフォールモニタリングが可能になる、リアルタイムポイントオブケア血中プロポフォール濃度測定センサ及び分析種回収システムを備える、システム。
【請求項12】
分析種回収システムが、分子交換手段を備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
分析種回収システムが、マイクロダイアリシスプローブを備える、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
プロポフォールバイオセンサ。
【請求項15】
作用電極、対極及び参照電極を備える、請求項1~14のいずれかに記載のセンサ又はシステム。
【請求項16】
還元の前に酸化が起こる、酸化還元ステップを有する電気化学反応を伴う、請求項1~15のいずれかに記載のセンサ又はシステム。
【請求項17】
酵素シトクロムP450 2B6をベースとする電気化学プロポフォールセンサ。
【請求項18】
酵素が、不活性化酵母細胞内で発現する、請求項17に記載のセンサ。
【請求項19】
酵母細胞が、スクリーン印刷電極表面上の、金ナノ粒子を含有するキトサンフィルム内に順次固定化される、請求項18に記載のセンサ。
【請求項20】
電気化学反応の順序において、酸化の前に還元が起こる、請求項17~19のいずれかに記載のセンサ。
【請求項21】
2,6-ジイソプロピルキノンの還元電流を測定する単一のセンサを備える、請求項17~20のいずれかに記載のセンサ。
【請求項22】
灌流液の流れに対して連続する2つのセンサであって、第1のセンサが2,6-ジイソプロピルキノンの還元電流を測定し、第2のセンサが2,6-ジイソプロピルキノールの酸化電流を測定する、2つのセンサを備える、請求項17~20のいずれかに記載のセンサ。
【請求項23】
連続式センサが、単一のデバイスに併設される、又は連続する2つの別のデバイスである、請求項22に記載のセンサ。
【請求項24】
CYP酵素を備える血中プロポフォール酵素バイオセンサであって、電極とCYP酵素との間の直接的な電子移動がない状態で、NADPHを介した間接的な方法を使用してセンシングが起こり、反応生成物を電気化学的に検出する、前記血中プロポフォール酵素バイオセンサ。
【請求項25】
TIVAベースの麻酔のための、リアルタイム血中プロポフォールモニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、溶液中の静脈麻酔薬プロポフォールを検出及び定量する方法、システム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロポフォール(2,6-ジイソプロピルフェノール)は、麻酔の導入及び維持に使用される静脈内投与薬物である。
【0003】
【0004】
プロポフォールは、急速な導入及び短い半減期を含む優れた特性を持つため、過去30年間、最も一般的に使用されている静脈麻酔薬である。
【0005】
全身麻酔の最も一般的な実施では、導入期にプロポフォールなどの静脈麻酔薬を使用し、維持期に揮発性麻酔薬を使用する。しかし、全静脈麻酔(TIVA,total intravenous anaesthesia)として知られるプロセスでは、導入期及び維持期の両方においてプロポフォールを使用することが可能である。TIVAが従来の揮発性ベースの麻酔よりも有利であることを示す証拠は増えてきており、短期的な副作用の軽減、認知機能への影響の軽減、がん患者の改善された長期生存の可能性、及び環境への影響の著しい軽減などが挙げられている。
【0006】
これらの多くの利点があるにもかかわらず、従来の揮発性ベースの麻酔は、依然として投与全身麻酔の大部分を占めている。TIVAがより広く普及することに対する主な障害は、麻酔を受ける患者における血中プロポフォール濃度の連続的リアルタイムモニタリングのための適切な方法を欠くことである。
【0007】
プロポフォールを検出及び定量するための確立された技術としては、高速液体クロマトグラフィー(HPLC,high performance liquid chromatography)が挙げられる。HPLCはさまざまな測定技術と組み合わせて使用されるが、最も一般的な測定技術は蛍光定量的検出である。HPLCはどこにでもある技術かもしれないが、かさばる高価な機器に依存するため、ポイントオブケア用途には適さない。さらに、HPLCは連続的測定ではなく、離散的測定のみ可能である。また、HPLCでは複雑で時間のかかる試料の前処理方法が要求される。
【0008】
質量分析は、ガスクロマトグラフィー又は液体クロマトグラフィーのいずれかと組み合わせて生体試料中のプロポフォールを検出及び定量するための、もう1つの一般的な技術である。HPLCに関しては、全血、血清又は血漿中のプロポフォールを分析する場合、プロポフォールは溶媒抽出又は固相抽出のいずれかによって試料から抽出される。HPLCと同様に、質量分析技術の主な欠点は、高価でかさばる機器が要求されること、及び連続的モニタリング能力を欠くことである。特に、分析及び試料作製プロセスに時間がかかるという欠点がある。
【0009】
呼気中のプロポフォールのモニタリングに関する研究が実施されてきた。しかし、血中プロポフォール濃度と呼気中濃度との間の関係は完全に理解されていないため、この手法が患者のモニタリングに適用できるかどうかは不明である。
【0010】
尿中のプロポフォールの検出に関する報告がある。しかし、薬物を投与してから薬物又はその代謝産物が尿中に出現するまでの間のタイムラグが大きいため、この手法は全身麻酔時のリアルタイムプロポフォールモニタリングには適用されないであろう。全血、血清又は血漿は、この用途のための最も実用的な生体液に相当する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、プロポフォールの検出及び/若しくは定量における、又はプロポフォールの検出及び/若しくは定量に関連する改善を提供しようとするものである。
【0012】
本発明の態様及び実施形態は、プロポフォールモニタリングに関する。
【0013】
いくつかの態様及び実施形態は、例えば血液ガス分析装置を使用したプロポフォールの離散的測定を提供するか、それに関するか、又はそれを含む。
【0014】
いくつかの態様及び実施形態は、プロポフォールの直接測定(例えば直接電気化学測定)を提供するか、それに関するか、又はそれを含む。
【0015】
いくつかの態様及び実施形態は、リアルタイムプロポフォールモニタリングを提供するか、それに関するか、又はそれを含む。
【0016】
いくつかの態様及び実施形態は、ポイントオブケア(point-of-care:治療現場での)プロポフォールモニタリングを提供するか、それに関するか、又はそれを含む。
【0017】
本発明の一態様は、リアルタイムポイントオブケア血中プロポフォール濃度測定センサ及び/又は測定システムを提供する。
【0018】
いくつかの態様及び実施形態は、全身麻酔患者のための、プロポフォール血中濃度のポイントオブケアモニタリングに関する。ポイントオブケアモニタリングは、血液ガス分析装置の使用を含むことができる。
【0019】
いくつかの態様及び実施形態は、固相検出技術を提供する、それに関する、又はそれを含む。
【0020】
いくつかの態様及び実施形態は、溶液相プロポフォール検出技術、及び該検出技術のリアルタイムプロポフォールモニタリングへの適用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】プロポフォール及びホスプロポフォールの代謝経路を示す図である。
【
図2】シトクロムP450 2B6によるプロポフォールのキノン/キノール酸化還元対の形成機構を示す図である。
【
図3】シトクロムP450 2B6によるプロポフォールのキノン/キノール酸化還元対への変換反応機構を示す図である。
【
図4】さまざまなプロポフォール濃度でのサイクリックボルタンメトリーを示す図である。
【
図5】
図5-A:プロポフォール溶液を連続注入した際の機能化電極のクロノアンペロメトリー応答を示す図である。
図5-B:プロポフォール濃度に対するプラトー電流の平均値を示す図である。
【
図6】
図6-A:NADP
+及びG6Pの非存在下でプロポフォール溶液を連続注入した際の電極のクロノアンペロメトリー応答を示す図である。
図6-B:プロポフォール濃度に対するプラトー電流の平均値を示す図である。
【
図7A】本発明に従って形成される、作用電極、対極及び参照電極を含むセンサを示す図である。
【
図7B】参照電極及び/又は対極は、流れの方向に対し整列して配置されてもよいことを示す図である。
【
図8】ナノコンポジットによる電極表面の機能化の説明図である。
【
図9】カーボンナノチューブの単一層と、単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムとで機能化した平板金電極を示す図である。
【
図10】金ナノ粒子機能化カーボンナノチューブと、銀ナノ粒子及びそれぞれ単一のCYP酵素を発現する2種類の酵母細胞を含有するフィルムとの複合層で機能化した平板白金電極を示す図である。
【
図11】異なるナノ材料の2つの層と、金ナノ粒子及び複数のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムとで機能化した平板炭素電極を示す図である。
【
図12】カーボンナノチューブの単一層と、酸化銅ナノ粒子及び単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムとで機能化した平板白金電極を示す図である。
【
図13】垂直配向したカーボンナノチューブを部分的にエポキシに封入し、ナノ電極アレイを形成して機能化した平板白金電極を示す図である。
【
図14】窒化ケイ素パッシベーション層を有し、白金ナノ粒子及び単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムを有するナノストリップ電極を示す図である。
【
図15】カーボンナノチューブの導電性ネットワーク及び窒化ケイ素パッシベーション層で被覆された金ナノストリップ電極を示す図である。
【
図16】金ナノ粒子及び単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムを有する平板炭素電極を示す図である。
【
図17】カーボンナノチューブの単一層と、金ナノ粒子及び単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムとで機能化した平板炭素電極を示す図である。
【
図18】
図18-A:CNT/GO(i)、CNT/GO/CuONP(ii)、及びCNT/GO/FeONP(iii)で機能化した電極について、プロポフォール濃度の増加に対するアンペロメトリー測定の結果を示す図である。
図18-B:平均プラトー電流対得られたプロポフォール濃度を示す図である。
【
図19】
図19-A:CNT/GO/FeONP機能化センサについての、血清様溶液(5wt% BSA、10mM PBS)中へのプロポフォール溶液の連続注入に対するアンペロメトリー応答を示す図である。
図19-B:得られたプロポフォール濃度に対するプラトー電流の平均値を示す図である。
【
図20】製造後1、2、5、7日目に試験したCNT/GO/FeONPセンサのプロポフォール濃度に対する電流応答を示す図である。
【
図21】さまざまな異なる薬物を一定時間ごとに注入し、アンペロメトリー測定を行った結果を示す図である。
図21-A:リドカイン溶液、イブプロフェン溶液、モルヒネ溶液、並びにプロポフォール溶液、
図21-B:ミダゾラム溶液、ベシル酸シサトラクリウム溶液、フェンタニル溶液、並びにプロポフォール溶液を連続注入した際のCNT/GO/FeO NP/酵素機能化電極のアンペロメトリー応答を示す図である。
【
図22】プロポフォール(黒)及びパラセタモール(赤)溶液を連続注入し、+0.25Vでアンペロメトリー測定した際の、CNT/GO/FeONP機能化電極(酵素フィルムなし)の電流応答を示す図である。
【
図23】
図23-A:ベースライン補正、
図23-B:移動平均フィルタによる平滑化の例を示す図である。挿入図は、63分~64分の部分の拡大を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
全身麻酔時の血中プロポフォール濃度のポイントオブケア及び/又はリアルタイムモニタリングを達成するという目的は、任意のあり得るプロポフォールセンシング技術に多くの必要条件を課す。例えば、任意の方法は、麻酔科医又は他の医療専門家に実用的な情報を提供するために、十分に短い時間内に結果を返すことが可能である必要がある。これは、HPLC及び質量分析などの、結果が出るまでに最短でも数十分オーダーの時間がかかる手法では、この用途への実用性が限られる主な理由である。簡単でない試料の前処理が必要な任意の方法も、同じ理由から不向きである可能性が高く、同様に、生理的条件下で機能することが可能なセンサは、そうでないもの(例えば、アルカリ環境が要求されるGibbs反応をベースとする光学的手法など)よりも適していると考えられる。
【0023】
外科手術中の患者モニタリングに有用であるためには、任意のセンサシステムは、外科手術の間、場合により8時間以上にわたって安定した結果を生じることが可能である必要がある。さらに、プロポフォールは時間の経過とともに細胞膜と血球膜との間でゆっくりと再分布することが示されており、試料の採取と測定との間の時間を厳密に制御する必要があることを意味する。同様に、任意のプロポフォールモニタリング(リアルタイムモニタリングを含む)技術は、最小限の試料処理で、自動化に適したものである必要がある。
【0024】
プロポフォールを、その酸化を介して電気化学的に検出することが可能である。電気化学的手法は、高感度である可能性があり、自動化が容易であるため魅力的であるが、特異性の点で大きな課題を有している。さらに、酸化反応によりラジカルが生成し、該ラジカルは、電極表面で電解重合と呼ばれるプロセスにおいてさらなる反応を受け、ポリマー分子を生成する可能性がある。これらのポリマーは不溶性かつ非導電性であり、したがって、著しい電極ファウリング(電極不動態化とも呼ばれる)につながる。したがって、プロポフォールの直接電気化学検出は、任意のプロポフォールセンサに最大数時間にわたって安定した電流を生成することが要求される、現実的な用途には、現在のところ実用的でない。
【0025】
全身麻酔時には、プロポフォールは他の薬物と同時投与される可能性が高く、そのため、任意のプロポフォールセンサは十分な特異性を有することが必要である。プロポフォールが電気化学的に酸化される電位窓は、多くの潜在的な妨害化合物の電気活性領域に対応するため、特異性は電気化学的手法に特有の課題である。
【0026】
センサは、酵素的であってもよい。
【0027】
本発明はまた、プロポフォールの検出のための、酵素ベースの電気化学センサを提供する。
【0028】
酵素ベースのプロポフォールセンサであって、例えば、プロポフォールを、単純な電気化学を介して検出することができるキノン/キノール酸化還元対に変換することにより電極ファウリングの問題を回避する、プロポフォールセンサが提供され得る。
【0029】
センサはセル、例えば電極セルを備えてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態は、例えば、電極に直接固定化された酵素を含んでもよい。
【0031】
いくつかの実施形態は、例えば、作用電極、対極、及び参照電極を備える。
【0032】
電極は、例えば、2電極セル(作用電極及び参照電極/対極の複合電極を有する)又は3電極セル(作用電極、対極、及び参照電極を有する)を備えてもよい。
【0033】
セルは、例えば、2種類又は3種類の電極(例:作用電極、参照電極及び対極の複合電極、参照電極又は対極のいずれか)を持つことができる。セル内には、各種類の電極が複数存在することができる。
【0034】
いくつかの実施形態は、単一のセル内に複数の作用電極を備えてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態は、センサデバイスに複数のセルを備えてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態は、2、3又は4以上の電極セルを備えてもよい。
【0037】
センサは、複数の電極セルを備えてもよい。セルは、「配線」又は他の方法で一緒に接続されてもよく、又はセルは独立していてもよい。
【0038】
対極は、炭素、金、白金、銀、又は銀/塩化銀を含むがこれらに限定されない材料でできていてもよい。
【0039】
参照電極は、銀及び銀/塩化銀を含むがこれらに限定されない材料でできていてもよい。
【0040】
作用電極は、炭素、金、白金、銀、銅、アルミニウム、酸化インジウムスズを含むがこれらに限定されない材料からできていてもよい。作用電極は、未処理のまま使用されるか、又は、例えば以下に記載されるようなやり方でナノ材料により機能化されるかのいずれかであり得る。
【0041】
作用電極は、例えば、マクロスケール(100μm超)、マイクロスケール(1~100μm)又はナノスケール(1μm未満)のいずれかであってもよく、単一の電極又は複数の電極のアレイを備えてもよく、アレイのすべての部材が同じ対極を共有するか、又はアレイの各部材が、付随する個別の対極を持つかのいずれかである。
【0042】
電極は、スクリーン印刷、又はフォトリソグラフィー、エッチング技術、若しくは化学気相成長を含むがこれらに限定されない微細加工技術などの任意の適切な技術を使用して製造することができる。
【0043】
電極は、平板であってもよく、ナノストリップ電極の形態であってもよく、二酸化ケイ素、窒化ケイ素又はパリレンを含むがこれらに限定されない材料から製造することができるパッシベーション層を利用する。
【0044】
電極は、炭素質又は類似した材料などの多孔質フリット化材料を備えてもよい。これらの電極は、クーロメトリック電気化学セルとして機能してもよい。
【0045】
いくつかの態様及び実施形態は、より信頼性の高いセンサを提供するために「センサの冗長性」を使用する。独立した電極からの信号は、サンプリングされ、比較されてもよい。1つの電極の故障が結果に不当に影響しないことを確実にするため、異常値は破棄される。
【0046】
電極の機能化については、例えば、作用電極表面に直接フィルムを付着させることができる。あるいは、付着させる前に、表面をナノ材料で機能化し、センサの性能を改善することもできる。
【0047】
作用電極は、ナノ粒子(例として、酸化鉄ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、白金ナノ粒子、銅ナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ニッケルナノ粒子、酸化銅ナノ粒子、カーボンナノ粒子、銅ナノワイヤ、カーボンナノチューブ又はグラフェンナノシートを含むがこれらに限定されない)の単一層によって機能化することができる。
【0048】
作用電極は、異なるナノ粒子(例として、酸化鉄ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、白金ナノ粒子、銅ナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ニッケルナノ粒子、酸化銅ナノ粒子、カーボンナノ粒子、銅ナノワイヤ、カーボンナノチューブ又はグラフェンナノシートを含むがこれらに限定されない)の2又は3以上の層によって機能化することができる。
【0049】
作用電極は、ナノ材料複合体(例として、(金、銀、白金若しくはこれらの合金を含むがこれらに限定されない潜在的金属の)金属ナノ粒子で機能化されたカーボンナノチューブ、又は以下:カーボンナノチューブ、グラフェンナノシート、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、白金ナノ粒子、銅ナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ニッケルナノ粒子、酸化銅ナノ粒子、若しくは銅ナノワイヤのうち2若しくは3以上の任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない)の単一層によって機能化することができる。
【0050】
作用電極は、プラズマ励起化学気相成長により垂直配向したカーボンナノチューブで機能化することができる。これらのナノチューブを、次いでエポキシ又は二酸化ケイ素などの絶縁材料で封入し、ナノ電極アレイを生成することができる。
【0051】
センサは、シトクロムP450酵素群の1又は2以上のメンバー(酵素)をベースとしてもよい。
【0052】
シトクロムP450は、ヘム-チオレートモノオキシゲナーゼの群である。肝ミクロソームにおいて、この酵素は、NADPH依存性電子伝達経路に関与している。
【0053】
一実施形態において、酵素シトクロムP450 2B6をベースとする電気化学プロポフォールセンサが提供される。シトクロムP450 2B6は、肝臓の薬物代謝シトクロムの一群に属する。
【0054】
センサは、スクリーン印刷電極などの電極をベースとしてもよい。
【0055】
一実施形態において、酵素シトクロムP450 2B6を発現する不活性化酵母細胞が、金ナノ粒子とともに、スクリーン印刷電極表面上のキトサンフィルム内に固定化される。補因子NADP+の存在下で、酵素はプロポフォールを、単純な電気化学を使用して検出及び定量することができるキノン/キノール酸化還元対に変換する。この手法により、一般的に電気化学プロポフォールセンサを実用的でなくしている電極ファウリングの問題が回避される。
【0056】
現在、ヒトのCYPP450には18のスーパーファミリー、57の遺伝子及び59の偽遺伝子を含有する43のサブファミリーが存在することが知られている。これらの酵素は主に肝臓で発現し、異物代謝を担っている。プロポフォールの芳香族ヒドロキシル化の大半はCYP2C9及びCYP2B6によって媒介されるが、CYP2A6、CYP2C8、CYP2C18、CYP2C19、CYP1A2などのさらなるアイソフォームが示唆されている。プロポフォールの90%は肝臓で代謝される(Smits, A., Annaert, P. and Allegaert, K. (2017) Biomarkers of propofol metabolism in neonates: the quest beyond ontogeny. [online])。
【0057】
CYP2B6及びCYP2C9多型は、プロドラッグにおける著しい代謝及び個人差変数を示している。CYP2B6*6アレル及びCYP2C9*2アレル並びにUGT1A9及びUGT1A6である。
【0058】
1又は2以上の酵素アイソフォーム(例:CYP2C9及びCYP2B6)は、独立して又は一緒に、すなわち、ヒト肝臓内で起こり得るように使用することができる。そのような酵素成分の組み合わせにより、例えば、一種のサンドイッチ法を形成してもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、センサは、電気化学センシング、CYP P450、及びナノ材料を一緒に合わせる。
【0060】
CYP酵素の特異性の欠如は、潜在的に問題を引き起こす可能性がある。しかし、2B6は、比較的無差別でない酵素の1つである。さらに、いくつかの実施形態において、2B6の作用は直接測定されない。したがって、あり得る妨害化合物が酵素の基質であるだけでは十分ではなく、電気化学的に活性な分子に変換されることが必要である。さらに、任意のあり得る妨害物質が、測定される電位又はそれに近い電位において電気化学的に活性でなければ、いかなる問題も引き起こされない(適例として、ベンゼン環を含有するが2B6の基質ではなく、電気化学的に活性であるが、はるかに高い電位においてであるため問題のないイブプロフェンが挙げられる)。最後に、任意のあり得る妨害物質の十分多い量が存在しなければ、実際に問題は起こらない。例えば、モルヒネは、いくつかの実施形態において測定された電位において実際に電気化学的に活性であるが、プロポフォールに対するその相対濃度は、モルヒネが検出されないことを意味するため、問題ない。
【0061】
いくつかの態様及び実施形態は、電極とCYP酵素との間の直接的な電子移動を使用しないという原理に基づいている。これに対し、本発明は、間接的な方法(NADPH経由)を使用し、反応生成物を電気化学的に検出することにより、CYP酵素の非特異性によって引き起こされる潜在的な問題を回避することができる。
【0062】
いくつかの実施形態は、センサ変更因子を含んでもよい。例えば、pH及び温度などの変数が、センサ変更因子として使用されてもよい。プロポフォールは、ベンゼン環上でヒドロキシル置換(-OH)を受け、pHが酸性(6.5未満)である場合に解離し、溶液中で正に帯電することが報告されている。
【0063】
いくつかの実施形態において、不活性化し、透過処理した酵母細胞内で発現した組換えヒトCYP、P450を使用する。例えば、半透過性シェル内に封入された特異的非修飾組換えヒトCYP、P450オキシドレダクターゼ補因子、及び酸化防止剤で構成される製品であるCypExpress(商標)が挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態は、組換えヒト酵素を使用する。他の実施形態は、合成代替物を使用する。
【0065】
いくつかの実施形態は、酵母細胞及び/又は哺乳動物細胞及び/又は細菌細胞及び/又は合成細胞を使用する。
【0066】
シトクロムP450 2B6(CYP2B6)、CYP2C9、CYP2C19又はCYP2E1を含む酵素は、不活性化し、透過処理した酵母細胞内で発現させることができる。
【0067】
CYP酵素活性には、シトクロムP450レダクターゼなどの補酵素と、NADH又はNADPHなどの補因子が存在し、電子移動を補助することが要求される。このことは、プロトポルフィリン鉄IX(ヘム)含有酵素の活性部位に直接電子を供給する「メディエーターレス」又は直接バイオセンサが開発されるまで、CYP酵素バイオセンサの開発を阻んできた。酵素を電極表面に直接固定化することで、CYP活性の直接測定が可能になることが示されている。CYPバイオセンサの基材として、金、グラファイト、酸化インジウムスズを含む、幅広い電極表面材料が報告されている(Schneider, E and Clark, D, Cytochrome P450 (CYP) enzymes and the development of CYP biosensors. Biosens. Bioelectron., 2013 Jan 15; 39(1):1-13)。最近では、金ナノスフィア、カーボンナノチューブ及びグラフェンなどのナノ構造の適用が、電荷移動の増加を通じて酵素バイオセンサの感度を高めることが報告されている(Preethichandra, D et al. Performance enhancement of polypyrrole based nano-biosensors by different enzyme deposition techniques, Smart Sensors, Measurement and Instrumentation, 2019; 29: 213-229)。これまでの研究では、金属酸化物ナノ粒子の直接バイオセンサ開発における適用を検討したものはなく、CYP 2B6の使用もこの方法で評価されたことはなかった。
【0068】
CYP2B6又は任意の他のCYP酵素をプロポフォールの検出に使用した報告もない。
【0069】
いくつかの実施形態は、電極表面に固定化されたCYP2B6酵素をベースとして、プロポフォールの高感度リアルタイム測定を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態は、CYP2B6酵素を発現する細胞を使用する。
【0071】
センサは、例えば、単一のCYP酵素を発現する酵母細胞、複数の異なる種類の酵母細胞-それぞれが異なるCYP酵素を発現する-の混合物、又は複数のCYP酵素を発現する酵母細胞を使用して作製することができる。
【0072】
酵母細胞は、作用電極表面上にポリマーフィルムで固定化することができる。このフィルムは、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリピロール、Nafion、又はPEDOTを含むがこれらに限定されないポリマーから製造することができる。
【0073】
キトサンは、豊富で生体適合性があり、高多孔質であるため、固定化の手段として選択することができる。
【0074】
酵素の安定性をさらに改善するために、金ナノ粒子添加を使用してもよい。
【0075】
フィルムのセンシング特性を改善するために、ナノ粒子を酵母細胞と一緒にフィルム内に組み込むこともできる。このようなナノ粒子の例は、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、白金ナノ粒子、銅ナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化ニッケルナノ粒子、酸化銅ナノ粒子、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、グラフェンナノシート、又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0076】
フィルムはまた、ポリマー膜材料の単一層又は複数層で被覆することができる。そのような材料の例は、ポリテン、Nafion、Teflon、及びセルロースを含むが、これらに限定されない。
【0077】
本発明に従って形成されたセンサは、以下のうち1又は2以上を実証することがある。
- 100ng/ml~1ng/ml、0.1ng/ml又は0.01ng/mlまで(例えば、49ng/ml)の検出限界
- 0~1.4μg/mlの線形範囲
- プロポフォール濃度の変化に対する1分以内の応答。
【0078】
さらなる態様は、電極ファウリングの問題を回避する酵素ベースの電気化学プロポフォールセンサを提供する。
【0079】
本発明はまた、全身麻酔時の血中プロポフォール濃度のリアルタイムモニタリングのための溶液相プロポフォール検出システムであって、採血の必要なく連続的リアルタイムプロポフォールモニタリングが可能になる、リアルタイムポイントオブケア血中プロポフォール濃度測定センサ及び分析種回収システムを備える、システムを提供する。
【0080】
分析種回収システムは、マイクロダイアリシスプローブなどの分子交換手段を備えてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、自動化することができ、連続的で、適切なセンサを用いればリアルタイムオンラインモニタリングが可能であることから、サンプリングの方法としてマイクロダイアリシスを利用する。さらに、所望の分析種(例:プロポフォール)が血液から薄い半透膜で分離された灌流液まで濃度勾配を下ることを伴うこの技術は、薬物の遊離画分のみがサンプリングされることを意味する。このため、薬理学的に関連した薬物濃度をモニターすることがより適用可能になる。したがって、一般に薬物総濃度の2%(遊離画分)しか測定に利用できないため、分析方法への要求が高くなる。したがって、マイクロダイアリシスを使用した薬物回収効率を100%と仮定すると、同等の分析範囲は、麻酔では0.04~0.1mg/L、鎮静では0.01~0.3mg/L、すなわち、0.01~0.1mg/L又は10~100μg/L(ng/mL)の範囲となる。しかし、モニタリングの対象がリアルタイムであるため、高いマイクロダイアリシス灌流量が必要となる。これは典型的に回収率が低く、1~10%であることも珍しくないことを意味し、対象範囲は0.1~1μg/L(ng/mL)の低さであり得ることを意味する。
【0082】
いくつかの実施形態は、マイクロダイアリシスベースのサンプリングシステムで使用することができる選択的プロポフォールバイオセンサを提供する、又はそれに関する。
【0083】
さらなる態様は、プロポフォールバイオセンサを提供する。そのようなバイオセンサを備える、ポイントオブケアリアルタイム血中プロポフォール濃度測定センサも提供される。
【0084】
センサは、自動化された連続的測定を可能にする技術に統合されてもよい。
【0085】
プロポフォールセンサは、例えば、2通りで:(既に論じたように)マイクロダイアリシスデバイスに接続されたオンラインセンサとして;又は血液ガス分析装置などの生化学分析装置に含むためのスタンドアローンセンサとして、使用することができる。
【0086】
第1の手法であるオンラインセンサでは、連続的な流れ方において使用する場合に性能を高めるように、セル内に電極を整列させることが有利であることがある。参照電極及び/又は対極は、流れの方向に対し整列して配置されてもよい。
【0087】
センサは、アンペロメトリー、サイクリックボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、矩形波ボルタンメトリー及びクーロメトリーを含むがこれらに限定されない任意の適切な電気化学測定技術を採用することによって分析種を検出してもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、酵素ベースのプロポフォールセンサであって、プロポフォールを、単純な電気化学を介して検出することができるキノン/キノール酸化還元対に変換することにより電極ファウリングの問題を回避する、プロポフォールセンサが提供される。
【0089】
該センサは、例えば、プロポフォール濃度の変化に対し約60秒以内に応答し、約49ng/mlの検出限界及び約0~1.4μg/mlの間で線形応答を持つことができる。
【0090】
本発明の原理に従って形成されたセンサ、方法及びシステムは、全身麻酔患者のための、プロポフォール血中濃度のポイントオブケアリアルタイムモニタリングの効果的な手段を提供する重要なステップを表すことができる。
【0091】
さらなる態様は、酵素シトクロムP450 2B6をベースとする電気化学プロポフォールセンサを提供する。
【0092】
酵素は、例えば、不活性化酵母細胞(又は本明細書に記載される他の細胞)内で発現させてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、酵母細胞は、例えば、スクリーン印刷電極表面上の、例えば、金ナノ粒子を含有する、例えば、キトサンフィルム内に順次固定化される。
【0094】
センサにおける電気化学反応の順序は、酸化の前に還元が起こるようにしてもよい。
【0095】
センサは、2,6-ジイソプロピルキノンの還元電流を測定する単一のセンサを備えてもよい。
【0096】
いくつかの実施形態は、灌流液の流れに対して連続する2つのセンサであって、第1のセンサは2,6-ジイソプロピルキノンの還元電流を測定し、第2のセンサは2,6-ジイソプロピルキノールの酸化電流を測定する、2つのセンサを使用する。
【0097】
連続式センサは、単一のデバイスに併設されてもよく、連続する2つの別のデバイスからなってもよい。
【0098】
本発明の一実施形態は、カーボンナノチューブ/酸化グラフェン/酸化鉄ナノ粒子ナノコンポジットで機能化したグラファイトスクリーン印刷電極上のキトサン膜内に固定化したシトクロムP450 2B6を発現する不活性化酵母細胞をベースとするプロポフォールセンサを提供する。関連した補因子の存在下で、酵素はプロポフォールをキノン/キノール酸化還元対に変換する触媒となり、結果として任意の電極ファウリングなしにプロポフォールの簡便な電気化学検出が可能になる。このセンサの検出限界は7ng/mlで、血清様溶液中のプロポフォールを検出することが可能であり、プロポフォールの治療域にわたって線形応答を実証する。該センサは、多くの一般的な手術中薬物に対して良好な選択性を実証し、少なくとも1週間の保管後に安定であることが示されている。
【0099】
さらなる態様及び実施形態は、例として、以下の番号付けされたパラグラフに列挙される。
【0100】
1.酵素ベースの電気化学プロポフォールセンサであって、前記センサが、酵素シトクロムP450 2B6をベースとする、センサ。
【0101】
2.電極をベースとする、パラグラフ1に記載のセンサ。
【0102】
3.スクリーン印刷電極をベースとする、パラグラフ2に記載のセンサ。
【0103】
4.シトクロムP450 2B6を発現する酵母を不活性化し、透過処理したものを備える、パラグラフ1~3のいずれかに記載のセンサ。
【0104】
5.金ナノ粒子とともに、スクリーン印刷電極表面上のキトサンフィルム内に固定化された、酵素シトクロムP450 2B6を発現する不活性化酵母細胞を備える、パラグラフ1~4のいずれかに記載のセンサ。
【0105】
6.自動化された連続的測定を可能にする技術に統合された、パラグラフ1~5のいずれかに記載のセンサ。
【0106】
7.パラグラフ1~5のいずれかに記載のセンサを備える、ポイントオブケアリアルタイム血中プロポフォール濃度測定センサ。
【0107】
8.全身麻酔時の血中プロポフォール濃度のリアルタイムモニタリングのための溶液相プロポフォール検出システムであって、採血の必要なく連続的リアルタイムプロポフォールモニタリングが可能になる、リアルタイムポイントオブケア血中プロポフォール濃度測定センサ及び分析種回収システムを備える、システム。
【0108】
9.分析種回収システムが、分子交換手段を備える、パラグラフ8に記載のシステム。
【0109】
10.分析種回収システムが、マイクロダイアリシスプローブを備える、パラグラフ8又は9に記載のシステム。
【0110】
11.血中プロポフォール濃度測定センサ。
【0111】
12.プロポフォールの離散的測定を提供する、パラグラフ1に記載のセンサ。
【0112】
13.血液ガス分析装置の一部を形成する、パラグラフ1又は2に記載のセンサ。
【0113】
14.プロポフォールの直接電気化学測定を提供する、パラグラフ1に記載のセンサ。
【0114】
15.酵素的である、パラグラフ1~14のいずれかに記載のセンサ。
【0115】
16.プロポフォールの検出のための、酵素ベースの電気化学センサ。
【0116】
17.酵素群シトクロムP450の1又は2以上のメンバーをベースとする、パラグラフ1~16のいずれかに記載のセンサ。
【0117】
18.酵素シトクロムP450 2B6をベースとする、パラグラフ1~17のいずれかに記載のセンサ。
【0118】
19.酵素的作用により、プロポフォールをキノン/キノール酸化還元対に変換する、パラグラフ15~18のいずれかに記載のセンサ。
【0119】
20.固相酵素プロポフォール濃度測定センサを持つ血液ガス分析装置を備える、全身麻酔時の血中プロポフォール濃度をポイントオブケアで測定するためのプロポフォール検出システム。
【0120】
21.全身麻酔時の血中プロポフォール濃度のリアルタイムモニタリングのための固相プロポフォール検出システムであって、採血の必要なく連続的リアルタイムプロポフォールモニタリングが可能になる、リアルタイムポイントオブケア血中プロポフォール濃度測定センサ及び分析種回収システムを備える、システム。
【0121】
22.分析種回収システムが、分子交換手段を備える、パラグラフ11に記載のシステム。
【0122】
23.分析種回収システムが、マイクロダイアリシスプローブを備える、パラグラフ21又は22に記載のシステム。
【0123】
24.プロポフォールバイオセンサ。
【0124】
25.作用電極、対極及び参照電極を備える、パラグラフ1~24のいずれかに記載のセンサ又はシステム。
【0125】
26.酸化還元ステップを有する電気化学反応を伴い、酸化が還元の前に起こる、パラグラフ1~25のいずれかに記載のセンサ又はシステム。
【0126】
27.酵素シトクロムP450 2B6をベースとする電気化学プロポフォールセンサ。
【0127】
28.酵素が、不活性化酵母細胞内で発現する、パラグラフ27に記載のセンサ。
【0128】
29.酵母細胞が、スクリーン印刷電極表面上の、金ナノ粒子を含有するキトサンフィルム内に順次固定化される、パラグラフ28に記載のセンサ。
【0129】
30.電気化学反応の順序において、酸化の前に還元が起こる、パラグラフ27~29のいずれかに記載のセンサ。
【0130】
31.2,6-ジイソプロピルキノンの還元電流を測定する単一のセンサを備える、パラグラフ27~30のいずれかに記載のセンサ。
【0131】
32.灌流液の流れに対して連続する2つのセンサであって、第1のセンサが2,6-ジイソプロピルキノンの還元電流を測定し、第2のセンサが2,6-ジイソプロピルキノールの酸化電流を測定する、2つのセンサを備える、パラグラフ27~30のいずれかに記載のセンサ。
【0132】
33.連続式センサが、単一のデバイスに併設される、又は連続する2つの別のデバイスである、パラグラフ32に記載のセンサ。
【0133】
34.CYP酵素を備える血中プロポフォール酵素バイオセンサであって、電極とCYP酵素との間の直接的な電子移動がない状態で、NADPHを介した間接的な方法を使用してセンシングが起こり、反応生成物を電気化学的に検出する、血中プロポフォール酵素バイオセンサ。
【0134】
35.TIVAベースの麻酔のための、リアルタイム血中プロポフォールモニタリングシステム。
【0135】
36.TIVAベースの麻酔のための、血中プロポフォールモニタリングシステム。
【0136】
37.臨床環境用のリアルタイム連続的プロポフォール検出器。
【0137】
本発明の異なる態様及び実施形態は、別々に又は一緒に使用してもよい。
【0138】
本発明のさらなる特定の態様及び好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に提示されている。従属請求項の特徴は、適宜、独立請求項の特徴と組み合わせてもよく、請求項に明示的に提示されている以外の組み合わせで組み合わせてもよい。
【0139】
本発明の態様及び実施形態の例は、添付の図面に示されている。
【0140】
以下の記載において、上部、下部、前部、後部、半径方向及び軸方向などの、すべての方向性の用語は、図面との関連で使用され、本発明又はその開示への関係について限定的に解釈されるべきではない。
【0141】
例示的な実施形態は、当業者が本明細書に記載されたシステム及びプロセスを具現化し、実施することを可能にするために、十分詳細に以下に記載される。実施形態は、多くの代替形態で提供することができ、本明細書に明記される例に限定されると解釈されるべきではないことを理解することが重要である。
【0142】
したがって、実施形態は、さまざまな形で修正され、さまざまな代替形態をとることができるが、その特定の実施形態は、図面に示され、実施例として以下に詳細に記載される。開示された特定の形態に限定する意図はない。逆に、添付の特許請求の範囲に当てはまるすべての修正、均等物、及び代替物が含まれるべきである。例示的実施形態の要素は、適切な場合には、図面及び発明を実施するための形態を通じて、一貫して同じ符号で表される。
【0143】
実施形態を記載するために本明細書で使用される専門用語は、範囲を限定することを意図するものではない。冠詞「a」、「an」、及び「the」は、単一の指示対象を持つという点で単数形であるが、本文書における単数形の使用は、1つより多い指示対象の存在を排除すべきではない。言い換えれば、単数形で言及される要素は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、1又は2以上の数を数えることができる。本明細書で使用される場合、用語「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、及び/又は「含む(including)」は、述べられた特徴、項目、ステップ、操作、要素、及び/又は成分の存在を規定するが、1又は2以上の他の特徴、項目、ステップ、操作、要素、成分、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことがさらに理解されるであろう。
【0144】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、当技術分野で慣用されているように解釈されるものとする。一般的に使用される用語も、本明細書で明示的に定義されない限り、関連技術分野において慣習的に解釈されるべきであり、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないこともさらに理解されよう。
【0145】
図1は、プロポフォール及びホスプロポフォールの代謝経路を示す。破線の矢印はマイナーな経路を表し、両代謝産物はグルクロン酸抱合及び硫酸抱合を受けることができる。SULT:スルホトランスフェラーゼ、UGT:UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ、ALDH:アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ALP:アルカリホスファターゼ、NQO1:ジアホラーゼ、CYP:シトクロムP450。
【0146】
酵素シトクロムP450 2B6をベースとする電気化学プロポフォールセンサについて記載する。
【0147】
いくつかの実施形態は、電極表面にCYP2B6酵素を固定化し、プロポフォールの高感度リアルタイム測定を提供する。酸素の存在下で、プロポフォールは酵素の活性部位で触媒され、2つの単一電子還元ステップを通じてヒドロキシル化反応を受け、2,6-ジイソプロピル-1,4-キノン及び2,6-ジイソプロピル-1,4-キノールの酸化還元対を形成する(
図2-出典:Shioya, N., et al., Green urine discoloration due to propofol infusion: A case report. Case Rep. Emerg. Med., 2011:242514)。酵素活性により電極から電子が引き出され、結果としてプロポフォール濃度に比例した電流が測定される。その結果、補因子は要求されない。
【0148】
このやり方でシトクロムP450 2B6を固定化しようと試みると、酵素に起因する任意の電気化学的信号がノイズフロアから識別できなくなる点まで急速に減少した電極が得られた。これは、シトクロムP450 2B6固有の不安定性による酵素の変性の結果であると最終的に結論づけられた。酵素の安定性を改善するために、NHS/EDC結合、ジアゾニウム結合、多層フィルム、導電性ポリマーフィルム、キトサンフィルムを含む多くの異なる固定化技術が試みられたが、やや不首尾であった。そのため、直接的な方法よりも間接的な検出が好まれることがある。そのような間接的な方法の1つは、CypExpressを利用する。CypExpressは、組換えヒトCYP2B6を含有する不活性化酵母細胞であり、スクリーン印刷電極表面上の、金ナノ粒子を含有するキトサンフィルム内に順次固定化される。補因子NADP+の存在下で、酵素はプロポフォールをキノン/キノール酸化還元対に変換する。この酸化還元対は、結果として電極ファウリングを生じることなく電気化学的に検出できるため、プロポフォール濃度を簡便、直接的及び迅速に測定することを可能にする。キトサンは、豊富で生体適合性があり、高多孔質であるため、固定化の手段として選択された。酵素の安定性をさらに改善するために、金ナノ粒子添加を使用してもよい(Zhao, S et al., A gold nanoparticle-mediated enzyme bioreactor for inhibitor screening by capillary electrophoresis. Anal. Biochem., 2011 Apr; 411(1): 88-93)。
【0149】
いくつかの実施形態において、該酵素は不活性化酵母細胞内で発現し、該酵母は、スクリーン印刷電極表面上の、金ナノ粒子を含有するキトサンフィルム内に順次固定化される。シトクロムP450 2B6は、人体内でプロポフォール代謝を担う主要な酵素の1つである。補因子NADP
+の存在下で、該酵素はプロポフォールをキノン/キノール酸化還元対に変換する(
図3-シトクロムP450 2B6によるプロポフォールのキノン/キノール酸化還元対への変換反応機構。NADP
+が酵素反応の電子源として働き、反応生成物を検出するために電極が使用される。出典:Shioya, N., et al., Green urine discoloration due to propofol infusion: A case report. Case Rep. Emerg. Med., 2011:242514)。NADP
+が電子源として働くことで、酵素がプロポフォールの変換を触媒することが可能になる。直接的な電気化学的酸化とは異なり、このやり方によるプロポフォールの変換は重合につながらないため、電極ファウリングを引き起こすことはない。また、得られた酸化還元対を電気化学的に検出できるため、プロポフォール濃度を簡便かつ迅速に測定することを可能にする。キトサンは、豊富で生体適合性があり、高多孔質であるため、固定化の手段として選択された。金ナノ粒子の添加は、電極と不活性化酵母細胞との間の電子移動を補助するためである。本実施形態において、センサは、約0~1.4μg/mlの範囲にわたる非限定的な線形応答、及び約49ng/mlの検出限界を持つ。
【0150】
一実施形態において、CypExpress/金ナノ粒子/キトサンフィルムは、CypExpress懸濁液(pH7、リン酸緩衝液中25mg/ml)、金ナノ粒子懸濁液及び1%キトサン溶液(1%酢酸)を体積比1:1:2で混合し、電極表面に1μlドロップキャストし、乾燥させることにより作製された。使用する電極は、直径1mmのグラファイト作用電極、グラファイト対極、銀/塩化銀擬参照電極からなるスクリーン印刷3電極セルである。
【0151】
いくつかの実施形態において、電気化学反応の順序(すなわち、負の前に正のピーク)がセンサにとって重要であること、すなわち、酸化の前に還元が起こる必要があることが見出された。デバイスは、2,6-ジイソプロピルキノンの還元電流を測定する単一のセンサ、又は灌流液の流れに対して連続する2つのセンサであって、第1のセンサが2,6-ジイソプロピルキノンの還元電流を測定し、第2のセンサが2,6-ジイソプロピルキノールの酸化電流を測定する、2つのセンサのいずれかを備えてもよい。これらの連続式センサは、単一のデバイスに併設されるか、又は連続する2つの別のデバイスからなるかのいずれかであってもよい。他の化合物が2つの電圧(正又は負)のうちの1つで電気活性を示すことがあるが、両方で電気活性を示す可能性は低いため、連続的測定は妨害化合物からの優れた識別をもたらし得る。さらに、一般的に、酸化ピークの負電圧付近では妨害化合物が少ない。
【0152】
材料及び方法
材料
すべての材料はSigma-Aldrich社から供給され、供給されたものをそのまま使用した。β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸ナトリウム水和物(NADP+)及びD-グルコース-6-リン酸二ナトリウム水和物(G6P)をpH 7.4の10mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解させ、それぞれの濃度が50μg/mlである溶液を生成した。特に明記しない限り、これはセクション2.4において記載した電気化学測定の試験溶液である。2,6-ジイソプロピルフェノール(97%)をジメチルスルホキシド(99%)で希釈し、10mMの予製液を調製した。この予製液をさらにNADP+/G6P溶液で希釈し、本明細書に記載した試験に要求される、さまざまな濃度のプロポフォール溶液を生成した。
【0153】
装置
これらの実験に使用したスクリーン印刷電極は、BVT Technologies社から購入した。これらの電極は、直径1mmのグラファイト作用電極、グラファイト対極、銀/塩化銀(Ag/AgCl)擬参照電極からなる3電極セルを構成する。すべての測定は、PalmSens社製EmStat3ポテンショスタットを使用して行われた。
【0154】
電極の作製
電極は、10mM K3[Fe(CN)6]、1M KNO3溶液に浸漬して前処理し、-0.6~+0.8Vの間で、掃引速度100mV/sにおいて合計10サイクルのサイクリックボルタンメトリーを行った。
【0155】
金ナノ粒子は、標準的なクエン酸ナトリウム還元技術を使用して生成した。要約すると、塩化金水和物(HAuCl4)(99.995%)10mgを脱イオン水20mlに溶解させ、磁気撹拌下で沸点に至らせた。クエン酸三ナトリウム二水和物(99%)を脱イオン水に溶解させて2.5%(w/v)溶液を生成し、この溶液1mlをHAuCl4溶液に添加し、深紅に変色するまで混合物を5~10分間沸点で保持し、室温まで冷却させた。
【0156】
CypExpress 2B6(シトクロムP450 2B6を発現する、不活性化し、透過処理した酵母)をリン酸緩衝液(pH7)に25mg/mlの濃度で懸濁させた。この懸濁液を、金ナノ粒子溶液及び1%(w/v)キトサン溶液(1%酢酸)と体積比1:1:2で混合した。この混合物1μlをスクリーン印刷電極の作用電極にドロップキャストし、4℃で放置して乾燥させた。乾燥後、電極を10mM PBSに室温で30分間浸漬した後、再乾燥させ、使用まで4℃で保管した。
【0157】
電気化学測定
サイクリックボルタンメトリー測定は、さまざまな濃度のプロポフォール溶液50μlを機能化電極に付着させ、100mV/sの速度において-0.8~+1.0Vの間で電位を循環させることによって行われた。
【0158】
クロノアンペロメトリー測定は、50μg/mlのNADP+及びG6P溶液(10mM PBS)20mlに機能化電極を浸漬し、+0.5Vで電流を測定することによって行われた。該溶液をマグネチックスターラーで撹拌し、該溶液に、一定時間ごとに1mMプロポフォール溶液60μlを注入した。
【0159】
対照測定は、NADP+又はG6Pを含まないPBS溶液で上記と同様にクロノアンペロメトリーを行い、一定時間ごとに1mMプロポフォール溶液20μlを注入することにより実施した。これらの実験を、同じ電極を使用して3回実施した。各実行の間に電極を10mM PBSですすぎ、乾燥させ、4℃で一晩保管した。
【0160】
結果及び考察
さまざまなプロポフォール濃度でのサイクリックボルタンメトリー(
図4-プロポフォール濃度:a)0.18、b)0.89、c)1.78、d)2.67、e)3.57及びf)4.47μg/mlの溶液(すべての溶液は50μg/ml NADP
+及びG6P、10mM PBSを含有する)、掃引速度100mV/s、電位はvs.Ag/AgClのサイクリックボルタモグラム)は、約+0.6V及び-0.25Vに濃度依存性のピークを示している。この挙動は、キノン/キノール酸化還元対において予想されるものであり(Pinky, A et al., Review on the progress in electrochemical detection of morphine based on different modified electrodes. J. Electrochem. Soc., 2020 Feb; 167: 037559)、ピークはそれぞれ2,6-ジイソプロピルキノンの還元及び2,6-ジイソプロピルキノールの酸化に対応するものであった。このことから、酵母細胞内の酵素が予想通りにプロポフォールをその生成物に変換していることがわかる。
【0161】
キノールの酸化は、キノンの還元後にのみ起こることが見出された。-0.2Vのみのモニタリングでは、信号は提供されない。
【0162】
センサの性能は、50μg/mlのNADP+及びグルコース-6-リン酸を含有する10mM PBS溶液に浸漬し、+0.6Vでアンペロメトリーを行うことにより評価された。該溶液に、一定時間ごとに1mMプロポフォール溶液(10mM PBS、10%ジメチルスルホキシド)を加えた。
【0163】
図5-A:プロポフォール溶液を連続注入した際の機能化電極のクロノアンペロメトリー応答。電位は+0.5V(vs.Ag/AgCl)。溶液は50μg/ml NADP
+及び50μg/ml G6Pを含有する10mM PBS。
図5-B:プロポフォール濃度に対するプラトー電流の平均値。エラーバーは3つの標準偏差を表す。ベースライン補正が適用されている。
【0164】
クロノアンペロメトリー測定では、プロポフォール溶液を添加するごとに、電流が明らかに増加することが示された(
図5-A)。応答は速く、約60秒でプラトーに達し、実験中を通して安定している。プロポフォール濃度に対する平均プラトー電流のプロット(
図5-B)は、0.25~4μg/mlの治療域(Langmaier et al., 2011)にわたって、センサがさまざまなプロポフォール濃度に明確な応答を生じることを示す。応答は0~1.4μg/mlの間において線形で、感度は4.2nA/μg/ml/mm
2、検出限界は49ng/mlであり、治療域の下限を大きく下回っている。
【0165】
検出限界(LoD)は、以下の式を使用して計算した。LoD=(3.3×σlow)/gradient(式中、σlowは低濃度のプロポフォールにおける標準偏差である)。
【0166】
図6-A:NADP
+及びG6Pの非存在下でプロポフォール溶液を連続注入した際の電極のクロノアンペロメトリー応答(同じ電極で連日1、2、3回繰り返したもの)。電位は+0.5V(vs.Ag/AgCl)、溶液は10mM PBS。
図6-B:プロポフォール濃度に対するプラトー電流の平均値。エラーバーは3つの標準偏差を表す。
【0167】
図6-Aは、NADP
+及びG6Pの非存在下でのクロノアンペロメトリー測定結果を示す。プロポフォール添加後の電流の増加は、プロポフォールが直接電気化学的に酸化された結果であり、NADP
+及びG6Pの非存在下において、酵素によって変換されることはなかったであろう。1回目の実行では、4回目のプロポフォール注入後(約0.7μg/mlの濃度に相当)、時間とともに電流が減少する明確な傾向が見られ、電極ファウリングが示唆されている。
【0168】
これは、
図6-Bにおいてさらに明白で、電流応答がプロポフォール約1μg/mlでプラトーになることがわかるが、この値は、上述のようにセンサの線形範囲内に問題なく収まっている。同じ電極を使用して、連日繰り返し測定を行ったところ、同様の応答が示されたが、感度は著しく低下していた。この電極を用いた3回目の実行では、感度は1回目の実行の22%であった。これらの結果は、プロポフォールの酸化による電極ファウリングの明確な証拠である。NADP
+及びG6Pの存在下では、酵素によってプロポフォールが変換されるためファウリングは起こらない。NADP
+及びG6Pを添加して同様の実験を行った結果、3回目の実行において、センサの感度は1回目の実行における感度の約95%を示した(図示せず)。
【0169】
センサの性能を改善するために、電極表面をナノコンポジットで機能化してもよい。さまざまな材料が検討されているが、最も有望なのは、金属酸化物ナノ粒子、特に酸化銅ナノ粒子(CuONP)及び酸化鉄ナノ粒子(FeONP)で修飾した、カーボンナノチューブ(CNT)と酸化グラフェン(GO)とを組み合わせたナノコンポジットである。
【0170】
図7Aは、本発明に従って形成され、作用電極、対極及び参照電極を含むセンサを示す。
【0171】
参照電極及び/又は対極は、
図7Bに図示されるように、流れの方向に対し整列して配置されてもよい。
【0172】
【0173】
図8は、ナノコンポジットによる電極表面の機能化の説明図である。
【0174】
金ナノ粒子及び単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムを有する平板炭素電極。マクロスケールの作用電極を有する3電極セル。
【0175】
図9-カーボンナノチューブの単一層と、単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムとで機能化した平板金電極。マイクロアレイからなる作用電極を有する3電極セル。
【0176】
図10-金ナノ粒子機能化カーボンナノチューブと、銀ナノ粒子及びそれぞれ単一のCYP酵素を発現する2種類の酵母細胞を含有するフィルムとの複合層で機能化した平板白金電極。マクロスケールの作用電極及び対極/参照電極の複合電極を有する2電極セル。
【0177】
図11-異なるナノ材料の2つの層と、金ナノ粒子及び複数のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムとで機能化した平板炭素電極。マクロスケールの作用電極を有する3電極セル。
【0178】
図12-カーボンナノチューブの単一層と、酸化銅ナノ粒子及び単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムとで機能化した平板白金電極。それぞれ異なるCYP酵素を発現する酵母を有し、それぞれ付随する対極を有し、共通参照電極を共有する、複数のマイクロスケール作用電極を有する多電極デバイス(3電極セル)。
【0179】
図13-垂直配向したカーボンナノチューブを部分的にエポキシに封入し、ナノ電極アレイを形成して機能化した平板白金電極。金ナノ粒子及び単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルム。ナノ電極アレイからなる作用電極を有する3電極セル。
【0180】
図14-窒化ケイ素パッシベーション層を有し、白金ナノ粒子及び単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムを有するナノストリップ電極。ナノストリップ作用電極を有する3電極セル。
【0181】
図15-カーボンナノチューブの導電性ネットワーク及び窒化ケイ素パッシベーション層で被覆された金ナノストリップ電極。金ナノ粒子及び単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルム。ナノストリップ作用電極を有する3電極セル。
【0182】
図16-金ナノ粒子及び単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムを有する平板炭素電極。フィルムはセルロース膜で被覆されている。マクロスケールの作用電極を有する3電極セル。
【0183】
図17-カーボンナノチューブの単一層と、金ナノ粒子及び単一のCYP酵素を発現する単一種類の酵母細胞を含有するフィルムとで機能化した平板炭素電極。フィルムは、ポリテンの層及びNafionの層からなる二層膜で被覆されている。マクロスケールの作用電極を有する3電極セル。
【0184】
ナノコンポジット機能化センサの性能は、先に記載されたのと同じアンペロメトリー測定を使用して評価された。
【0185】
ナノコンポジットの各バリアントの感度及び検出限界を表1に示す。
【0186】
表1は、CNT/GO、CNT/GO/CuONP及びCNT/GO/FeONP電極の複数の複製における平均感度及び検出限界(LoD)を示す(それぞれの一例はError! Reference source not found.に示されている)。既に論じたように、金属酸化物ナノ粒子修飾酸化グラフェンを使用して作製した電極では、非修飾酸化グラフェンを使用して作製した電極と比較して著しく増加した感度を示し、結果としてFeOナノ粒子により最も大きく改善された。しかし、CNT/GO/CuONPのLoDはCNT/GOのLoDよりも高い。この事実はノイズの増加に起因する可能性がある。しかし、CNT/GO/FeONP電極のLoDは7.0±1.2で、CNT/GO電極の約半分であり、著しく改善されている。先の公表文献[REF]において、本発明者らは、ベアカーボンスクリーン印刷電極上の本明細書に記載された種類の酵素フィルムからなるセンサのLoDが49ng/mlであることを示した。したがって、これらのカーボンナノコンポジット機能化電極により、プロポフォール検出の感度が著しく改善され、カーボンナノチューブと酸化鉄ナノ粒子修飾酸化グラフェンとのコンポジットにより最も大きく改善されたことがわかる。
【0187】
【0188】
【0189】
ナノコンポジット機能化電極は、機能化されていない電極と比較して著しい改善を呈し、CNT/GO/FeONPコンポジットにより最も大きく改善された。この性能の改善は、表面積の増加、電子移動の改善、及びナノコンポジットによる触媒効果の組み合わせの結果である。ノイズ除去の手段として移動平均フィルタ(10秒ビン)が電流応答に適用され、検出限界にさらなる改善を提供している。
【0190】
図18:A)i)CNT/GO、ii)CNT/GO/CuONP及びiii)CNT/GO/FeONP機能化センサについての、プロポフォール溶液の連続注入に対するセンサのアンペロメトリー応答、B)得られたプロポフォール濃度に対するプラトー電流の平均値。電位は+0.5V(vs.スクリーン印刷Ag/AgCl)。溶液は50μg/ml NADP
+及び50μg/ml G6Pを含有する10mM PBS。エラーバーは3つの標準偏差を表す。ベースライン補正及び移動平均フィルタが適用されている。
【0191】
図18-Aは、CNT/GO(i)、CNT/GO/CuONP(ii)、及びCNT/GO/FeONP(iii)で機能化した電極について、プロポフォール濃度の増加に対するアンペロメトリー測定の結果を示す(プロポフォール溶液は5分ごとに注入されている)。平均プラトー電流対得られたプロポフォール濃度を
図18-Bに示す。3つのセンサすべてにおいて、プロポフォール濃度の増加とともに電流の明確な増加が生じることがわかる。これらの応答は1分以内と速く起こり、実験中を通して安定している。すべての場合において、電流応答は、検討された範囲にわたって、プロポフォール濃度に対して線形である。
CNT-カーボンナノチューブ
CuONP-酸化銅ナノ粒子
FeONP-酸化鉄ナノ粒子
GO-酸化グラフェン
【0192】
金属酸化物修飾酸化グラフェンを使用して作製した電極の感度は、非修飾酸化グラフェンを使用して作製したセンサの感度よりもはるかに高いようである。先に論じたように、サイクリックボルタンメトリーの結果からは、金属酸化物ナノ粒子の包含を通じて表面積又は電子移動の点で改善が達成されることは示唆されておらず、感度の改善は金属酸化物ナノ粒子の触媒特性の結果であることが示唆される。
【0193】
ナノコンポジット機能化電極は、機能化されていない電極と比較して著しい改善を呈し、CNT/GO/FeONPコンポジットにより最も大きく改善されたことは明らかである。この性能の改善は、表面積の増加、電子移動の改善、及びナノコンポジットによる触媒効果の組み合わせの結果である。ノイズ除去の手段として移動平均フィルタ(10秒ビン)が電流応答に適用され、検出限界にさらなる改善を提供している。
【0194】
図19:A)CNT/GO/FeONP機能化センサについての、血清様溶液(5wt% BSA、10mM PBS)中へのプロポフォール溶液の連続注入に対するアンペロメトリー応答、B)得られたプロポフォール濃度に対するプラトー電流の平均値。電位は+0.5V(vs.スクリーン印刷Ag/AgCl)。溶液は50μg/ml NADP
+及び50μg/ml G6Pを含有する10mM PBS。エラーバーは3つの標準偏差を表す。ベースライン補正が適用されている。
【0195】
より生理的条件に近い条件でのセンサの性能を評価するために、50μg/ml NADP
+及びグルコース-6-リン酸に加え、5wt%のウシ血清アルブミン(BSA)、137mM NaCl、2.7mM KCl及び10mMリン酸緩衝液(pH7.4)を含有する溶液も作製された。これらの溶液は、生理的塩分濃度(Opoku-Okrah, C et al., Changes in potassium and sodium concentrations in stored blood., Pan African Medical J., 2015 Mar; 20: 236)、pH(Brors, O and Jacobsen, S, pH lablility in serum during equilibriam dialysis. Br. J. Clin. Pharmac., 1985 Jul; 20: 85-88)及びアルブミン濃度(Kim, J W et al., Serum albumin and beta-amyloid deposition in the human brain. Neurology, 2020 Jul; 95: e815-e826)を持つことから、「血清様」と考えられている。これらの溶液中において、センサはプロポフォールの治療域(1~10μg/ml)(Rengenthal, 1999)にわたって線形電流応答を生じる。感度は3.1±0.2nA/μg/ml/mm
2であり、検出限界は143±27ng/mlである(
図20)。この感度はPBSで得られたものより低く、検出限界は高い。これは、先に論じたように、プロポフォールの大部分がアルブミンに結合し、したがって、センサは遊離画分のみを検出しているため、予想されることである。しかし、この検出限界は依然として治療域の下限を問題なく下回っている。
【0196】
図20:製造後1、2、5、7日目に試験したCNT/GO/FeONPセンサのプロポフォール濃度に対する電流応答。
【0197】
ナノコンポジットセンサは、製造後最大7日間保管しても一貫した結果を生じることが示されている(
図20)。観察された感度及び検出限界のわずかな変動は、デバイス間の差異によって説明可能である。センサは、製造から試験までの間、4℃で保管した。現在、より長期の(数カ月間にわたる)貯蔵寿命試験が実施されている。
【0198】
あり得る妨害手術中薬物に対するセンサの特異性を評価するため、先と同じく、さまざまな異なる薬物を一定時間ごとに注入し、アンペロメトリー測定を行った(
図21)。センサは、一般的な手術中薬物であるリドカイン(Altermatt, F R et al., Evaluation of the effect of intravenous lidocaine on propofol requirements during total intravenous anaesthesia as measured by bispectral index. Br. J. Anaesth., 2012 Jun; 108(6): 979-983)、イブプロフェン(Rainsford K D, Ibuprofen:pharmacology, efficacy and safety. Inflammopharmacol., 2009 Dec; 17: 275-342)、モルヒネ(Pinky, A et al., Review on the progress in electrochemical detection of morphine based on different modified electrodes. J. Electrochem. Soc., 2020 Feb; 167: 037559)、ミダゾラム(Wong, H Y et al., Dose-finding study of intramuscular Midazolam preanesthetic medication in the elderly. Anesthesiol., 1991 Apr; 74: 675-679)、ベシル酸シサトラクリウム(Guo, J et al., Pharmacokinetics and pharamcodynamics of cisatracurium in patients undergoing surgery with two henodilution methods. J. Clin. Anesth., 2017 May; 38: 75-80)及びフェンタニル(Quan, M et al., Voltammetry of quinones in unbuffered aqueous solution: reassessing the roles of proton transfer and hydrogen bonding in the aqueous electrochemistry of quinones. J. Am. Chem. Soc., 2007 Oct; 129(42): 12847-12856)に対して識別できる応答を生じない。各薬物は、予想される治療域(Regenthal, R et al., Drug levels: therapeutic and toxic serum/plasma concentrations of common drugs. J. Clin. Monit. Comput. 1999 Dec; 15: 529-544)として最終プロポフォール濃度とほぼ同じ比例関係を共有する最終濃度を生成するために適切な濃度で注入される。
【0199】
図22:A:リドカイン溶液(i~iii;各々0.23、0.47及び0.70μg/ml)、イブプロフェン溶液(iv~vi;各々0.21、0.41及び0.62μg/ml)、モルヒネ溶液(vii~ix;各々0.0028、0.0057及び0.0085μg/ml)並びにプロポフォール溶液(x~xii;各々0.18、0.35及び0.53μg/ml)、B:ミダゾラム溶液(i~iii;各々0.0033、0.0065及び0.0097μg/ml)、ベシル酸シサトラクリウム溶液(iv~vi;各々0.12、0.25及び0.37μg/ml)、フェンタニル溶液(vii~ix;各々0.0018、0.0035及び0.0053μg/ml)、並びにプロポフォール溶液(x~xii;各々0.18、0.35及び0.53μg/ml)を連続注入した際のCNT/GO/FeO NP/酵素機能化電極のアンペロメトリー応答。電位は+0.5V(vs.スクリーン印刷Ag/AgCl)。溶液は50μg/ml NADP
+及び50μg/ml G6Pを含有する10mM PBS。
【0200】
結果として妨害を生じる1つのあり得る手術中薬物は、一般的に使用される抗炎症薬パラセタモール(Colsoul, M-L et al., Long-term stability of an infusion containing paracetamol, alizapride, ketorolac and tramadol in glass bottles at 5±3°C. Eur. J. Hosp. Pharm., 2019 Jun; 27: e74-e78)であり、該妨害はパラセタモールとプロポフォールとの間における化学構造の類似性の結果である。このあり得る妨害要因を緩和するために、Nafion膜及び分子鋳型ポリマーを含むさまざまな試みが検討された。1つは、パラセタモールがプロポフォール又は酵素的反応生成物よりも低電位で酸化され得るという事実に関する。これは、CNT/GO/FeONPナノコンポジットで機能化した電極(ただし酵素フィルムなし)について、プロポフォール及びパラセタモール両方の溶液の連続注入を行った、+0.25Vでのアンペロメトリー測定を示す
図22に見ることができる。この電位では、電極はパラセタモールには応答を生じるが、プロポフォールには反応を生じないことが明らかである。このため、パラセタモール濃度を選択的に測定し、次いで最終信号から差し引くことができる、より低電位の第2の電極の可能性が与えられる。パラセタモールによるあり得る妨害を説明するため、双対ポテンシャル方法論を使用してもよい。
【0201】
図22:プロポフォール(黒)及びパラセタモール(赤)溶液を連続注入し、+0.25Vでアンペロメトリー測定した際の、CNT/GO/FeONP機能化電極(酵素フィルムなし)の電流応答。
【0202】
ナノ粒子合成
金属酸化物ナノ粒子は、Jamzad et al.から引用した方法を使用して合成した。
【0203】
ベイリーフ抽出物は、乾燥したベイリーフ20gを乳鉢及び乳棒を使用して粉砕し、粉末にすることによって作製した。次いで、粉末化したベイリーフを脱イオン水200mlに添加し、90℃で10分間撹拌した。得られた溶液を濾過し、次いで遠心分離して任意の残存する植物材料を除去した。このベイリーフ抽出液は、必要時まで4℃で保管し、4週間以内に使用した。
【0204】
酸化銅及び酸化鉄修飾酸化グラフェン(GO)については、0.1M金属塩溶液(FeCl3又はCuCl2のいずれか)にGOを1mg/mlの濃度で添加し、30分間超音波処理を行い、GOを分散させた。この分散体をベイリーフ抽出液に1:1の割合で添加し、室温で一晩放置し、金属酸化物ナノ粒子を形成させた。
【0205】
次いで、5000rpmで15分間遠心分離して、金属酸化物ナノ粒子修飾酸化グラフェンを溶液から抽出し、脱イオン水に再懸濁させ、3回再遠心分離することにより洗浄した。次いで、金属酸化物ナノ粒子修飾酸化グラフェンを脱イオン水に再懸濁させ、MWCNTに添加し、混合物を1時間超音波処理して、2mg/ml MWCNT及び1mg/ml GOを有する分散体を生成した。次いで、該分散体を脱イオン水で希釈し、0.1mg/ml MWCNT及び0.05mg/ml GOの濃度にする。
【0206】
電極の機能化
記載されたMWCNT/GO/MONP分散体を1時間超音波処理し、最大限の分散を確実にする。次いで、分散体1μlをSPEの作用電極にドロップキャストし、蒸発させた後、1μl(2回目)をドロップキャストし、同様のやり方で乾燥させた。次いで、電極を脱イオン水ですすぎ、結合していないナノ材料を除去する。
【0207】
酵素フィルムの作製は、先に記載されている。要約すると、CypExpress 2B6をリン酸緩衝液(pH7)に25mg/mlの濃度で懸濁させ、この懸濁液を、金ナノ粒子溶液及び1%キトサン溶液(1%酢酸)と体積比1:1:2で混合する。この混合物1μlをSPEのWEに付着させ、4℃で放置して乾燥させる。乾燥後、電極を10mM PBSに30分間浸漬し、次いで室温の空気中で乾燥させる。機能化電極は、使用するまで4℃で保管される。
【0208】
結果
図23- A:ベースライン補正、B:移動平均フィルタによる平滑化の例。挿入図-63分~64分の部分の拡大。
【0209】
この種のセンサにおいて一般的であるドリフト及びノイズの影響を弱めるために、いくつかの単純な信号処理が適用された。第1に、プロポフォール溶液を最初に注入する5分前からの電流応答に対してライナーフィット(liner fit)を行い、このベースラインに対して測定されるようにすべてのデータを補正することによって、ベースライン補正が適用された。この一例は
図23-Aに示されており、生データは実線で、計算されたベースラインは点線で描かれている。センサドリフトは、ベースラインのわずかな下降傾向によって証明される。
【0210】
第2に、電流データに10秒ビンで移動平均フィルタを適用して平滑化を行った。該ビンサイズは、平滑化の程度と誘発されるタイムラグとの間の妥当な妥協点として決定されたものである。この一例は
図23-Bに示されており、生データ(黒い線で描かれる)が平滑化されたデータ(青い線で描かれる)とともにプロットされている。フィルタによるノイズの低減が明確に見て取れる。
【0211】
本発明の例示的な実施形態が、添付の図面を参照して、本明細書において詳細に開示されたが、本発明は、示された正確な実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく、当業者によってさまざまな変更及び修正がなされ得ることが理解される。
【0212】
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【国際調査報告】