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特表2023-535659スパースアウトカプラ構造を有するライトガイド付きのセキュリティドキュメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】スパースアウトカプラ構造を有するライトガイド付きのセキュリティドキュメント
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/351 20140101AFI20230814BHJP
   B42D 25/23 20140101ALI20230814BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20230814BHJP
   B42D 25/309 20140101ALI20230814BHJP
   B42D 25/324 20140101ALI20230814BHJP
   B42D 25/305 20140101ALI20230814BHJP
【FI】
B42D25/351
B42D25/23
B42D25/328 100
B42D25/309
B42D25/324
B42D25/305 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544364
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2021050907
(87)【国際公開番号】W WO2021151699
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/051878
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521208228
【氏名又は名称】オレル フュースリ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】マルティン アイヒェンベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム バセ
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA03
2C005HA04
2C005HB01
2C005HB10
2C005JB02
2C005JB09
2C005JB28
(57)【要約】
パスポートなどのセキュリティドキュメントは、インカプラ構造(14)およびアウトカプラ構造(16)を有するライトガイド(12)を備える。アウトカプラ構造(16)は、保護領域(18)内の任意の部分がアウトカプラ構造(16)の一部に近いという意味で、分散されている。ただし、限られた量のインカップリングされた光でもって大きな保護領域を守るために、アウトカプラ構造(16)は保護領域(18)の20%以下をカバーする。これにより、ライトガイド(12)を使用して、写真(30)または他のパーソナライズ情報(32~34)などのセキュリティドキュメントの広い領域を保護することが可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式ライトガイド(12)を有するセキュリティドキュメントであって、前記ライトガイド(12)は、
インカプラ構造(14)と、
アウトカプラ構造(16)と、
最大直径Dを有する保護領域(18)と、
備え、
前記アウトカプラ構造(16)が前記保護領域(18)の20%以下をカバーし、
前記保護領域(18)内の任意の点(P)について、前記アウトカプラ構造(16)までの最短距離(d)がD/3未満である、
セキュリティドキュメント。
【請求項2】
前記アウトカプラ構造(16)が前記保護領域(18)の10%未満をカバーする、請求項1に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項3】
前記保護領域(18)内の任意の点(P)について、前記アウトカプラ構造(16)までの最短距離(d)がD/4よりも小さく、特にD/10よりも小さい、請求項1又は2に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項4】
前記保護領域(18)が少なくとも1cm、特に少なくとも2cmの、少なくとも1つの連続領域にわたって延びている、請求項1から3までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項5】
前記保護領域(18)の最小直径D’および/または前記最大直径Dが少なくとも1cm、特に少なくとも2cmである、請求項1から4までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項6】
前記保護領域(18)内の任意の点について、前記最短距離dが0.5cm以下、特に0.25cm以下である、請求項1から5までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項7】
前記アウトカプラ構造(16)が、前記保護領域(18)内に少なくとも1つの線状アウトカプラ(20)、特に複数の線状アウトカプラ(20)を備え、前記線状アウトカプラ(20)は、少なくとも5mm、特に少なくとも10mmの長さ(L)を有し、1mm以下、特に0.5mm以下、特に0.2mm以下の幅(w)を有する、請求項1から6までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項8】
前記幅(w)が少なくとも0.05mmであり、特に0.1mm以下である、請求項7に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項9】
前記セキュリティドキュメントが、身分証明ドキュメントであって該身分証明ドキュメントの所有者のパーソナライズ情報(28)を備える身分証明ドキュメントであり、前記保護領域(18)が前記パーソナライズ情報(28)の少なくとも一部上に拡がっている、請求項1から8までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項10】
前記パーソナライズ情報(28)が写真(30)を備え、前記保護領域(18)が前記写真(30)の少なくとも50%、特に少なくとも90%と重なっており、かつ/または、
前記パーソナライズ情報(28)が所有者の名前(32)および/または署名(33)を備え、前記保護領域(18)が前記名前(32)および/または署名(33)の少なくとも50%、特に少なくとも90%と重なっており、かつ/または、
前記パーソナライズ情報(28)が電子RFIDメモリチップ(34)を備え、前記保護領域(18)が前記メモリチップ(34)および/または前記メモリチップ(34)に接続されたアンテナと重なっている、
請求項9に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項11】
前記アウトカプラ構造(16)が前記所有者のポートレートの少なくとも一部を表している、請求項9または10に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項12】
前記保護領域(18)が凸状であり、特に、前記保護領域(18)が前記アウトカプラ構造(16)の凸包である、請求項1から11までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項13】
前記インカプラ構造(14)の位置を特定する可視マーキング(24)をさらに備え、特に、前記マーキング(24)が前記インカプラ構造の最大直径の少なくとも2倍の延びを有する、請求項1から12までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項14】
前記保護領域(18)が、複数の、特に少なくとも10個の、相互接続されていない無アウトカプラ領域(40a、40b、40c、40d)であって、前記アウトカプラ構造(16)によって相互に分離された無アウトカプラ領域を備える、請求項1から13までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項15】
前記アウトカプラ構造(16)が、前記保護領域(18)内に、複数の、特に少なくとも10個の、相互接続されていないアウトカプラサブ構造(16a、16b、16c、16d)を備える、請求項1から14までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項16】
前記インカプラ構造およびアウトカプラ構造(14、16)に加えて、さらなるセキュリティ要素(50)をさらに備え、前記さらなるセキュリティ要素(50)は、反射または透過で見ることができ、特に、前記さらなるセキュリティ要素(50)は、回折構造などの光学的に可変のデバイスと、印刷されたマーキングなどの不変マーキングと、の少なくとも1つである、請求項1から15までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項17】
前記インカプラ構造(14)の位置に配置された少なくとも1つの窓(52)を備える、請求項1から16までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項18】
前記インカプラ構造(14)および前記アウトカプラ構造(16)が共通の構造(15)である、請求項1から17までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項19】
前記共通の構造の凸包が、前記セキュリティドキュメント(10)および/または前記ライトガイド(12)の表面の少なくとも75%をカバーする、請求項18に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項20】
前記保護領域(18)内の任意の点について、前記共通の構造(15)の一部までの最短距離が、5mm未満、特に4mm未満、特に3mm未満、である、請求項18または19に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項21】
前記保護領域(18)が細長い方向Xを有する細長状であり、前記インカプラ構造(14)および/または前記アウトカプラ構造(16)は、優先的に前記細長い方向Xに沿って、光をそれぞれ異方性的にライトガイド(12)にインカップリングしかつ/またはライトガイド12からアウトカップリングする、請求項1から20までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項22】
前記インカプラ構造(14)および/または前記アウトカプラ構造(16)が、複数のサブ構造(15a、15b)を備え、前記複数のサブ構造(15a、15b)は、前記保護領域(18)の中心(C)から離れるよう導かれる光についてのインカップリング効率よりも、前記保護領域(18)の前記中心(C)に向かって導かれる光についてのインカップリング効率が高く、かつ/または、前記保護領域(18)の前記中心(C)に向かって導かれる光についてのアウトカップリング効率よりも、前記保護領域(18)の前記中心(C)から離れるよう導かれる光についてのアウトカップリング効率が高い、請求項1から21までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメント。
【請求項23】
請求項1から22までのいずれか1つに記載のセキュリティドキュメントのためのライトガイドフォイルであって、前記ライトガイドフォイルはライトガイド(12)を形成しており、前記ライトガイド(12)は、
インカプラ構造(14)と、
アウトカプラ構造(16)と、
最大直径Dを有する保護領域(18)と、
を備え、
前記アウトカプラ構造(16)は、前記保護領域(18)の20%以下をカバーし、
前記保護領域(18)内の任意の点(P)について、前記アウトカプラ構造(16)までの最短距離(d)がD/3未満である、
ライトガイドフォイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、光学式ライトガイド(導光体)を有するセキュリティドキュメントであって、ライトガイドが、光をライトガイドにインカップリング(取り込み)するためのインカプラ構造と、光をライトガイドからアウトカップリング(取り出し)するためのアウトカプラ構造とを備える、セキュリティドキュメントに関する。本発明はまた、そのようなドキュメントのためのライトガイドフォイルに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
セキュリティ機能としてライトガイドを有するセキュリティドキュメントは、例えば特許文献1及び2から公知である。
【0003】
ドキュメントの信頼性を確認するのにライトガイドを使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/072405号
【特許文献2】欧州特許第2732978号明細書
【発明の概要】
【0005】
発明の開示
本発明によって解決されるべき課題は、そのようなライトガイドによって提供される保護を改善することにある。
【0006】
この課題は、独立請求項のセキュリティドキュメントによって解決される。したがって、セキュリティドキュメントは光学式ライトガイドを有し、このライトガイドは少なくとも次の要素を備える:
インカプラ構造:これは、光をライトガイドにインカップリングするように適合されかつ構造化された構造である。
アウトカプラ構造:これは、ライトガイドからの誘導光をアウトカップリングするように適合されかつ構造化された構造である。
保護領域:ライトガイドの一部またはすべてを含むことができるこの領域を、セキュリティドキュメントの特定の領域を保護するために使用することができる。それは最大直径Dを有する。このコンテキストでは、「直径」は、領域の幾何学的中心を通って領域の一方の縁から反対側の縁まで延びる直線である。
【0007】
セキュリティドキュメントは、さらに次の条件を満たす:
アウトカプラ構造は、保護領域の20%以下をカバーする。
保護領域内の任意の点について、アウトカプラ構造の一部までの最短距離dがD/3未満である。
【0008】
最後の2つの条件は、アウトカプラ構造が、保護領域の比較的小さな部分をカバーするけれども、ある意味では、領域のいくつかの場所に分散された、本開示で「スパース」アウトカプラと呼ばれる組み合わせであることを保証する。このようなスパースアウトカプラにより、アウトカプラの小さなカバレッジでもって比較的広い領域を保護することが可能になる。従来の構成では、アウトカプラ構造は集中して密集している傾向があり、これはセキュリティドキュメントの小さな部分のみを保護する。この構成は、より広い領域を保護するのにあまり適していない。なぜなら、より広い領域をカバーするためにアウトカプラ構造がただ単に拡大されると、アウトカップリングされた光が、アウトカップリングされるときの問題である減衰により、空間的に不均質になり、すべてのアウトカプラを照らすために、大量の光と、不均質なアウトカップリング効率を備えた複雑なアウトカプラの構成とが必要になる、からである。また、従来の大きなアウトカプラ構造は、それがカバーするドキュメントの部分を隠す傾向があり、これは望ましくないおそれがある。
【0009】
しかし、スパースアウトカプラ構造を使用すれば、それをより広い領域に拡張するようにスケーリングして、効率的に保護することができる。
【0010】
したがって、ライトガイド、特にその保護領域は、セキュリティドキュメントのデータの少なくとも一部のための改ざん防止シールを形成してもよい。
【0011】
有利には、保護領域のアウトカプラ構造のカバレッジは小さく、特に10%未満である。このコンテキストでは、「カバレッジ」は、アウトカプラによってカバーされる保護領域の割合である。
【0012】
他方、アウトカプラ構造は、保護領域上の任意の点の距離がD/4未満、特にD/10未満であるという意味で、保護領域上に「均一に」分散されてもよい。
【0013】
保護領域は、有利には、セキュリティドキュメントの巨視的領域を保護するのに十分に大きい。すなわち、それは、少なくとも1cm、特に少なくとも2cmの少なくとも1つの連続領域上に拡がってもよい。有利には、この領域は凸状である。
【0014】
同じ理由で、保護領域の最小直径D’および/または最大直径Dは、少なくとも1cm、特に少なくとも2cmである。
【0015】
しかしながら、一実施形態では、保護領域はまた、実質的に一次元であってよく、すなわち、例えば最小直径D’が最大直径Dよりもはるかに小さい、例えばD’<D/10である、例えば細いストライプの形状であってよいことに留意すべきである。
【0016】
また、ライトガイドは、例えば幅が4から16mmの、例えばセキュリティスレッド(糸状体)であってもよい。
【0017】
有利には、保護領域にアウトカプラが欠けた巨視的領域が存在しないべきであり、すなわち、保護領域内の任意の点の、最も近いアウトカプラ構造の部分までの最短距離dが有利には、0.5cm以下、特に0.25cm以下である。これにより、保護領域の下にあるものへのアクセスであって、アウトカプラ構造の損傷部分により視認可能なアクセスなしに、保護領域の下にあるものに巨視的な変更を加えることが困難になる。
【0018】
有利には、アウトカプラ構造の少なくとも一部は線形状である。なぜなら、線構造は、大きな表面をカバーせずに、肉眼で容易に検出されるからである。すなわち、線は、スパースアウトカプラでの使用に、よく適している。したがって、アウトカプラ構造は、保護領域内に少なくとも1つの線状アウトカプラであって、長さが少なくとも5mm、特に少なくとも10mmであり幅が1mm以下、特に0.5mm以下、特に0.2mm以下である線状アウトカプラを備えてもよい。
【0019】
他方、そのような線状アウトカプラは有利には、肉眼で容易に検出されるのに十分に広く、すなわち、その幅は少なくとも0.05mm、特に0.1mm以下である。
【0020】
本発明は、身分証明ドキュメント上のパーソナライズ情報の少なくとも一部を保護するのに特によく適しており、それを改ざんすることをより困難にする。したがって、有利には、セキュリティドキュメントは、身分証明ドキュメントであって、身分証明ドキュメントの所有者(保有者)のパーソナライズ情報を含む身分証明ドキュメントであり、前記保護領域は、パーソナライズ情報の少なくとも一部の上に少なくとも片側に拡がっている。
【0021】
パーソナライズ情報が写真を含む場合、保護領域は有利には、写真の少なくとも50%、特に少なくとも90%、と重なり、それによってパーソナライズ情報を改ざんから保護する。
【0022】
パーソナライズ情報が所有者の名前および/または署名および/または誕生日を含む場合、保護領域は有利には、名前および/または署名の少なくとも50%、特に少なくとも90%、と重なり、この場合にも、これによりパーソナライズ情報を改ざんから保護する。
【0023】
パーソナライズ情報が所有者に関するデータを格納する電子メモリチップを含む場合、保護領域は有利には、前記メモリチップと重なり、特にメモリチップをカバーする。この場合にも、これによりチップの改ざんがより困難になる。
【0024】
また、保護領域は、メモリチップに接続されたアンテナと重なってもよい。
【0025】
また、アウトカプラ構造は、セキュリティドキュメントの所有者のポートレートの一部を表してもよい。つまり、それ自体をパーソナライズすることができる。これにより、その信頼性の検証がさらに簡素化され、偽造が困難になる。
【0026】
一実施形態では、保護領域は凸状である。
【0027】
特に、それは、アウトカプラ構造の凸包であってよく、すなわち、すべてのアウトカプラ構造を囲む最小の凸形状であってよい。その場合、すべてのアウトカプラ構造は、本開示で定義されるようにスパースアウトカプラを形成する。
【0028】
代替的には、アウトカプラ構造の一部は、少なくとも従来の、より局所化されたアウトカプラを形成してもよい。
【0029】
本発明は、先行請求項のいずれか1つに記載のドキュメントのためのライトガイドフォイルであって、
インカプラ構造と、
アウトカプラ構造と、
最大直径Dを有する保護領域と、
を備え、
前記アウトカプラ構造は、前記保護領域(18)の20%以下をカバーし、
前記保護領域(18)内の任意の点(P)について、前記アウトカプラ構造(16)までの最短距離(d)がD/3未満である、
ライトガイドフォイルにも関する。
【0030】
このフォイルをセキュリティドキュメントに適用して、上記のセキュリティドキュメントを作成することもできる。
【0031】
フォイルは、例えば、表面パッチであってもよく、または、ドキュメント内に埋め込まれていてもよく、例えば、ドキュメントの開口部または透明なセクションを介して視認可能であってよい。
【0032】
フォイルは、セキュリティドキュメントの構造と一致してもよいし、しなくてもよい。
【0033】
図面の簡単な説明
以下の詳細な説明を考慮すれば、本発明がさらによく理解され、上記以外の目的が明らかになるであろう。そのような説明は、以下の添付図面を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、セキュリティドキュメントの第1の実施形態を示す。
【0035】
図2図2は、アウトカプラ構造の拡大図を示す。
【0036】
図3図3は、線状のアウトカプラの詳細を示す。
【0037】
図4図4は、身分証明ドキュメントの第1の実施形態を示している。
【0038】
図5図5は、身分証明ドキュメントの第2の実施形態を示している。
【0039】
図6図6は、3つの照明構成A、B、およびCにおけるアウトカプラ構造の別の実施形態を示している。
【0040】
図7図7は、複数のアウトカプラ基板を備えた実施形態を示している。
【0041】
図8図8は、1つまたは複数の窓を備えたドキュメントのさらなる実施形態の頂面図を示す。
【0042】
図9図9は、図8の線IX-IXに沿った断面図(原寸に比例していない)を示している。
【0043】
図10図10は、セキュリティドキュメントのさらなる実施形態を示している。
【0044】
図11図11は、垂直線が回折格子を示している、異方性回折カップリング構造のサブ構造を示す。
【0045】
図12図12は、屈折または回折表面構造の第1の例を示す。
【0046】
図13図13は、屈折または回折表面構造の第2の例を示す。
【0047】
図14図14は、保護領域の中心に向かう優先的なインカップリング方向を示している。
【0048】
図15図15は、保護領域の中心からの優先的なアウトカップリング方向を示している。
【0049】
図16図16は、ストリップ状のライトガイドを備えたセキュリティドキュメントの実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0050】
発明を実施するための態様
ライトガイドの構成
図1は、セキュリティドキュメントの第1の実施形態を示している。セキュリティドキュメントは、キャリア10を備え、キャリア10は例えば紙および/またはプラスチック製であってよい。それは、柔軟性があってもよく、剛性があってもよい。
【0051】
キャリア10は、目に見えるマーキング、特に書き込みまたはグラフィック要素などの印刷されたマーキング、および、任意の適切なセキュリティ機能を担持してもよい。さらに、キャリア10は、少なくとも1つのライトガイド12を担持し、これは、例えば、透明なプラスチックのフィルムであってよい。一般に、ライトガイドは、薄い、実質的に2次元のフィルム、フィルムのパッチ、もしくは、フィルムのストライプであり、または、アスペクト比が低く2D形状が可変の材料の層である。ライトガイドの厚さは、好ましくは1mmよりも薄く、特に200μmよりも薄く、有利には50μmよりも薄い。
【0052】
一般に、ドキュメントは、可視または不可視の他のセキュリティ機能を担持してもよく、これらのような機能はおそらく、それらの小さい寸法、光学特性、電子特性、および触覚特性に依存している。それらのようなセキュリティ機能を、キャリア10に適用しもしくは統合してもよく、あるいは、それらのようなセキュリティ機能を、他の薄いフォイル、紙もしくはプラスチック基板、もしくはドキュメントの他の部分の一部としてもよく、または、他の薄いフォイル、紙もしくはプラスチック基板、もしくはドキュメントの他の部分によって形成してもよい。
【0053】
プラスチック材料には、プラスチック、強化プラスチック、複合プラスチック、添加剤を含むプラスチック、ナノ粒子、マイクロファイバ、タガントなどを充填したプラスチック、架橋ラッカなどの架橋有機材料、ハイブリッドポリマ/有機および有機/無機マトリックス材料など、および層状フィルムが含まれることが意図されており、プラスチック材料は、単一ポリマで作られたフィルムのみに限定されない。
【0054】
フィルムは、例えば、高屈折率を有するコアと、コアの片側または両側に低屈折率のコーティングとを有して、それにより、誘導光がアウトカップリングされまたは隣接する構造によって減衰されるのを防ぐようにしてもよい。
【0055】
低屈折率コーティングを、コアに対するクラッド層と見なすことができる。コア屈折率は、有利には、より低い屈折率に対して、0.05、より有利には少なくとも0.1だけ、さらにより好ましくは少なくとも0.15だけ高い。一例では、コアは、1.55の可視スペクトルの所与の部分で1.55の屈折率と、1.4のクラッドとを有してもよく、別の例では、コアは、1.6の屈折率と1.44のクラッドとを有する。
【0056】
ライトガイド12は、有利には、400nmと1000nmとの間のスペクトル範囲の少なくとも1つの波長のライトガイドである。
【0057】
ライトガイド12は、インカプラ構造14およびアウトカプラ構造16をさらに備える。
【0058】
インカプラ構造14は、例えば、回折格子および/またはマイクロレンズであってよい。一次インカプラ14は、ライトガイド12の専用表面層などのライトガイド12の表面にエンボス加工されてもよく、かつ/または、ライトガイド12内に埋め込まれてもよい。あるいは、それはまた、ライトガイド12の散乱および/または蛍光領域、および/またはマイクロリフレクタによって形成されてもよい。
【0059】
同様に、アウトカプラ構造16は、ライトガイド12の表面にエンボス加工されてもよく、かつ/または、ライトガイド12内に埋め込まれてもよい。あるいは、アウトカプラ構造16はまた、ライトガイド12の散乱、拡散、もしくは蛍光領域によって、形成されてもよい。このようなアウトカプラ構造は、アディティブプロセス、サブトラクティブプロセス、レーザ照射などの材料改質プロセス、または、導波光を散乱する材料もしくは導波光によって蛍光に励起される蛍光材料をライトガイド上に印刷することによって実現されてもよい。
【0060】
インカプラ構造14およびアウトカプラ構造16の両方は、ライトガイド12の2つの側部の一方または両方からの光をインカップリングする/これらへの光をアウトカップリングするのに適していてもよい。アウトカップリングされた光が照明側または照明側とは反対側で観測されるように構成してもよい。
【0061】
アウトカプラ構造16の構成は、図2から最もよくわかる。図示される実施形態では、それは、いくつかの線状のアウトカプラ16a、16b、および16cを備える。そのような各アウトカプラ16a、16b、16cは、曲線によって形成されている。各アウトカプラはまた、英数字16d又はその他の記号などの、さらなる要素を備えていてもよい。
【0062】
アウトカプラ構造16の少なくとも一部は、保護領域18内に配置されている。図示される実施形態では、すべてのアウトカプラ構造16が保護領域18内に配置され、保護領域18はアウトカプラ構造16の凸包を形成する。
【0063】
アウトカプラ構造16は、少なくとも保護領域18内において、上で定義した「スパース」になっている。言い換えれば、アウトカプラ構造16は、保護領域18の20%以下、特に10%以下をカバーする。
【0064】
さらに、保護領域内の任意の点Pは、アウトカプラ構造16の少なくとも一部に近接している。Dが保護領域18の最大直径であると仮定すると、このことは、任意の点Pが、アウトカプラ構造16の最も近い部分から、D/3未満、特にD/4未満、特にD/5未満、特にD/10未満の距離dを有することを意味する。
【0065】
この構成は、保護領域18上の点Pがアウトカプラ構造16から遠く離れていないことを保証する。したがって、例えば、ライトガイド12を局所的に除去すること、ライトガイド12をドキュメントから分離すること、ドキュメントに小さな穴を設けること、保護領域でドキュメントを局所的に研磨すること、または他の攻撃手法による、セキュリティドキュメントの巨視的領域を偽造または模造するあらゆる試みは、アウトカプラ構造16の少なくとも一部を破壊する可能性が高い。インカプラ構造14によりライトガイド12に光を送りアウトカプラ構造16を光学的に検証することによって、これを容易に検出することができる。
【0066】
上述したように、保護領域18は、有利には、セキュリティドキュメントの巨視的領域をカバーするのに十分に大きい。したがって、有利には、その最小直径D’およびその最大直径Dは、少なくとも1cmである。
【0067】
これも上述したように、アウトカプラ構造16は、少なくとも1つの線状のアウトカプラ20を備えてもよい。この文脈において、「線状」は、アウトカプラ20が、例えば、直線または図3に示すように曲線に沿って延びることを意味する。
【0068】
例えば、アウトカプラ(1または複数)は、ギロシェパターンを形成してもよい。
【0069】
線状のアウトカプラ20は、(その長手方向に沿う)その長さLよりもはるかに小さい、(その長手方向に垂直な)幅wを有する。有利には、長さLは少なくとも5mm、特に少なくとも10mmであり、および/または幅wは1mm以下、特に0.5mm以下、特に0.2mm以下である。
【0070】
しかしながら、他方では、アウトカプラを肉眼でよく見えるようにするために、幅wは、有利には少なくとも0.05mm、特に少なくとも0.1mmである。
【0071】
有利には、そのような線状アウトカプラが複数、特に少なくとも5つ、特に少なくとも10存在し、これにより、よりよい保護および視覚的検出のためにそれらが保護領域全体に分散することが可能になる。
【0072】
図3はまた、例えば、ライトガイド12からの光をアウトカップリングする回折格子22からなる、スパースアウトカプラの一部を拡大して示している。
【0073】
ユーザは、セキュリティドキュメントの信頼性を検証するために、ライトガイドにインカップリングされるのに適切な波長および方向を有する光をインカプラ構造14に当ててもよい。
【0074】
インカプラ構造14は、アウトカプラ構造16が入射光によって十分に照らされるように、光を偏向させてアウトカプラ構造16の方向に伝播するように構成されている。次いで、アウトカプラ構造16は、ライトガイド12の外に光を偏向させ、それにより、ライトガイド12が点灯して見えるようになる。
【0075】
次いで、ユーザは、アウトカプラ構造16が完全でありかつ損傷を受けていないことを確認することによって、ドキュメントの信頼性をチェックしてもよい。
【0076】
機械によって検証することもできる。
【0077】
光源をインカプラ構造14上に適切に配置することを単純化するために、セキュリティドキュメントは、肉眼で見える適切なマーキング24、例えば、インカプラ構造14よりも大きくインカプラ構造14の位置を識別する、印刷されたマーキングを備えてもよい。図1の実施形態では、これらの印刷されたマーキングは、インカプラ構造14を中心とする十字線として構成されている。これは、スマートフォンなどのかさばる光源を適切に位置合わせするのに特に便利である。
【0078】
また、マーキング24は、例えば、1つの円、または同心円のセット、または1つのウィンドウを備えてもよい。
【0079】
有利には、マーキング24は、インカプラ構造14の最大直径の少なくとも2倍の延長を有する。
【0080】
身分証明ドキュメント
本技術の特に有利な実施形態を図4に示す。ここで、セキュリティドキュメントは、パスポート、IDカード、またはパーソナライズアクセスカードなどの身分証明ドキュメントである。
【0081】
そのようなドキュメントは、典型的には、写真30などのパーソナライズ情報28、(所有者の名前などの)個別化された印刷情報32、所有者の署名33、ならびに/または、名前データ、経歴データ、および/もしくは生体認証データなどの、所有者に関連する個別データを格納するメモリチップ34を含む。そのようなメモリチップを適切な無線または有線のインターフェースに接続してもよい。チップ34は例えばRFIDチップであってよい。アンテナ付きのチップをパスポートのデータページまたは表紙に統合してもよい。
【0082】
追加的に又は代替的に、パーソナライズ情報28はまた、一意のID番号および/またはパーソナライズ機械可読ゾーン(MRZ)を含んでもよい。機械可読ゾーンは、例えば、プレーンテキストおよび/または機械固有の(つまり、機械可読のみの)エンコーディング(たとえば、QRコード(登録商標)などのバーコードまたはデータマトリックス)でエンコードされてもよい。
【0083】
この場合、保護領域18は、前記パーソナライズ情報28の少なくとも一部と重なってもよい。
【0084】
有利には、保護領域18は、ドキュメントの前側もしくは裏側のいずれかからまたは両側から、パーソナライズ情報28の少なくとも一部上に拡がる。
【0085】
このようにして、パーソナライズ情報28へのアクセスを困難にすることにより、パーソナライズ情報28を改ざんから保護することができる。
【0086】
しかしながら、アウトカプラ構造16は少なくとも保護領域18内ではスパースアウトカプラであるので、パーソナライズ情報は見えやすいままになっている。
【0087】
図4は、本発明の別の有利な態様を示している。すなわち、保護領域18は、インカプラ14と横方向アウトカプラ36との間に配置されている。この場合、保護領域16を通過する光の少なくとも一部は、横方向アウトカプラ36によってアウトカップリングされることになる。ライトガイド12がインカプラ14と横方向アウトカプラ36との間のどこかで損傷すると、横方向アウトカプラ36の一部が、照明中、暗いままである可能性が高い。これにより、ライトガイド12の完全性をチェックするためのさらなる手段が提供される。
【0088】
有利には、横方向アウトカプラ36は、インカプラ構造14の中心点に対して同心の円周方向Xに、少なくとも1cm、特に少なくとも2cmの延長を有する。これにより、ライトガイド12の巨視的領域を保護することが可能になる。横方向アウトカプラ36は有利には、上述のように定義されたスパースアウトカプラでなく、上述のように定義された保護領域18の一部でもない(ただし、保護機能を有していてもよい。)。
【0089】
言い換えれば、ドキュメントは、保護領域18の外側に、スパースアウトカプラ構造16に加えて、さらなるアウトカプラを備えてもよい。
【0090】
横方向アウトカプラ36は、スパースアウトカプラである必要はない。
【0091】
図5は、身分証明ドキュメントのさらなる実施形態を示している。ここで、アウトカプラ構造16は、身分証明ドキュメントの所有者のポートレートの少なくとも一部を表している。
【0092】
言い換えれば、アウトカプラ構造16は、ユーザに合わせてパーソナライズされており、これにより、セキュリティ機能の偽造が困難になり、検証が容易になる。
【0093】
窓(複数)
図8および9は、インカプラ構造14および/または横方向アウトカプラ36が、この場合は紙幣であるドキュメントの窓52、54に配置されている実施形態を示す。
【0094】
これらの窓52、54は、インカプラ構造14およびアウトカプラ16構造によってそれぞれインカップリング/アウトカップリングされる少なくとも1つの波長に対して透明であるように構成されている。この文脈において、「透明」は、有利には、前記波長の光の少なくとも25%、特に少なくとも50%、特に少なくとも75%が、窓の位置において、有利には、散乱することなく、キャリア10を透過することを意味する。
【0095】
これには、インカプラ構造14および/または横方向アウトカプラ36において、光がドキュメントの頂部または底部からインカップリングされてもよいという利点がある(この文脈において、「頂」はドキュメントの、ライトガイド12が位置する側を示し、「底」はドキュメントの、反対側を示す。)。
【0096】
図8の実施形態では、2つのそのような窓52、54が提供され、第1の窓52はインカプラ構造14に配置され、第2の窓54は横方向アウトカプラ36に配置される。
【0097】
ただし、そのような窓が、例えばインカプラ14構造の位置において、ただ1つであってもよく、このことにより、ドキュメントを光源上に置いてドキュメントを下から照らし、光が第1の窓52を通過し、インカプラ構造14においてインカップリングされ、次いでアウトカプラ構造16および/または横方向アウトカプラ36において上方から視認される、ということが可能になる。
【0098】
図8および9の実施形態を、横方向アウトカプラ36なしで、および/または第2の窓54なしで、実施してもよい。
【0099】
紙幣の場合、保護領域18は、例えば、シリアル番号56など、紙幣の別のセキュリティ機能の少なくとも一部をカバーしてもよい。
【0100】
インカプラおよびアウトカプラ構造
上記の実施形態では、インカプラ構造14およびアウトカプラ構造16として別個の専用要素が使用されてきた。ただし、光をライトガイド12にインカップリングするためと、ライトガイド12から光をアウトカップリングするためとで、同じ構造を使用できることに留意されたい。
【0101】
そのような実施形態の例を図10に示す。
【0102】
この実施形態では、インカプラ構造14およびアウトカプラ構造16として機能することができる構造15が、保護領域18(これは、図示の実施形態では、構造15がライトガイド12全体に分散しているので、基本的にライトガイド12によって覆われる領域に等しい)上に拡がるように設けられている。
【0103】
構造15は、複数のサブ構造15a、15b、15c…を備えてもよく、それらのそれぞれは、光をライトガイド12にインカップリングしまたはライトガイド12からアウトカップリングすることができる。サブ構造15a、15b、15cは、相互接続されていなくてもよく、または、相互接続されていてもよい。
【0104】
構造15は、有利には、本開示に記載されるようなアウトカプラ構造16の特性を有する。特に、構造15は、有利には、保護領域18の10%未満をカバーする。
【0105】
保護領域18内の任意の点について、構造15までの最短距離は、有利には、D/3未満、特にD/4、特にD/10未満であり、Dは保護領域18の最長直径である。
【0106】
有利には、構造15の凸包は、セキュリティドキュメント10および/またはライトガイド12の表面の少なくとも75%をカバーする。
【0107】
この構成により、スマートフォンのフラッシュLEDライトまたは小さなポケットランプなどの小さな光源を構造15の凸包のあらゆる場所に配置して、ライトガイドにインカップリングする光とセキュリティ機能の照明とを獲得することと、光源がライトガイド12の近くにある場合でも正確な配置が必要となるのを妨げることとが可能になる。
【0108】
これが、ライトガイド12の近くに配置されたLEDなどの小さな光源でうまく機能するために、有利には以下の条件が満足される:保護領域18内の任意の点について、構造15の一部までの最短距離が有利には、5mm未満、特に4mm未満、特に3mm未満である。
【0109】
図10の実施形態では、保護領域18は細長く、細長い方向Xに沿うその直径は、方向Xに直交する方向Yに沿うその直径の少なくとも50%、特に少なくとも100%大きい。その場合、インカプラ構造14および/もしくはアウトカプラ構造16、または包括的に構造15は、有利には、方向Xに沿う優先方向に、光をそれぞれ異方性的にライトガイド12にインカップリングしライトガイド12からアウトカップリングするように構成される。図11には、このことがサブ構造15aについて示されており、図11は、サブ構造15aの屈折、反射、または回折格子がYに沿って延在し、それによって主にXに沿って光を一次的にインカップリング/アウトカップリングすることを示している。
【0110】
この文脈において、細長い方向Xに沿って異方性的に光をライトガイド12にインカップリングすることとライトガイド12からアウトカップリングすることとをそれぞれ行う構造は、方向Xに沿って誘導される光についてのカップリング効率Exが、方向Eyに沿って誘導される光についてのカップリング効率Eyよりも高い、有利には、Ex>2Eyである、構造である。
【0111】
カプラ構造14、15、16で使用されるべき屈折、反射、または回折構造は、例えば、図12および13に示されるようなライトガイド12内の表面構造23であってよく、ナノ構造およびマイクロ構造であってよい。
【0112】
図12の例では、表面構造23は、方向Xに沿って対称であり、したがって、それらは、Xの両ベクトル方向に沿った、すなわち+Xに沿ったおよび-Xに沿った、互いに等しいカップリング効率を有する。
【0113】
図13の例では、表面構造23は、方向Xに沿って非対称であり、したがって、それらは、Xのベクトル方向に沿って異なるカップリング効率を有し、すなわち、+Xに沿ったカップリング効率は、-Xに沿ったカップリング効率と同じではない。
【0114】
有利には、インカプラおよび/またはアウトカプラ14、15、16のサブ構造15a、15b、15cの少なくともいくつかは、保護領域18の中心から離れるよう導かれる光についてのインカップリング効率よりも、保護領域18の中心に向かって導かれる光についてのインカップリング効率が高く、かつ/または、保護領域18の中心に向かって導かれる光についてのアウトカップリング効率よりも、保護領域18の中心から離れるよう導かれる光についてのアウトカップリング効率が高い。これにより、光源によって提供される光のより大きなインカップリングされた部分でもって、保護領域のより大きな部分を照らすことが可能となる。
【0115】
そのようなサブ構造を、ライトガイドの中心の1つまたはいくつかの側に配置してもよい。
【0116】
これを図14および15に示す。図14および15の両方には、保護領域18の中心Cから反対側にある(多くの)カプラサブ構造のうちの2つ、すなわちサブ構造15a、15bのみが示される。
【0117】
図14は、優先的なインカップリング方向I1、I2を示しており、すなわち、サブ構造15a、15bが、保護領域18の中心Cに向かう方向I1、I2に、反対方向に向かうよりも多くの誘導光をインカップリングすることを示している。図15は、優先的なアウトカップリング方向O1、O2を示しており、すなわち、サブ構造15a、15bが、保護領域18の中心Cから到る方向I1、I2に、反対方向からよりも多くの誘導光をアウトカップリングすることを示している。インカップリングI1、I2とアウトカップリングO1、O2は互いに時間反転し、したがって、非対称カプラを使用してこれらのより高い効率を同時に最適化することができる。
【0118】
この構成は、インカップリングの場合、保護領域18の縁に向けて光を導くよりも、よりも多くのアウトカップリングサブ構造が存在する保護領域18の中心Cに向けて光を導くことのほうが、より理にかなっているという理解に基づいている。また、一方で、保護領域18の縁から来る光のためよりも、保護領域18の中心Cから来る光のためにアウトカプラを最適化するほうが理にかなっている。というのは、ユーザが中心Cから来てサブ構造に到達する光をインカップリングする可能性が高いからである。このことは、スマートフォンのフラッシュLEDを囲むスマートフォンのようなかさばる光源を使用する場合にも好ましく、したがって、光源は、光源によって照らされた領域の近くの保護領域の一部をカバーする。
【0119】
備考
上記のように、スパースアウトカプラ構造16は、有利には、ライトガイド12内に導かれる光の一部をアウトカップリングするように適合された回折格子を備える。
【0120】
当業者に知られているように、そのような回折格子を、特定の方向から来る光および/または特定の波長を有する光をアウトカップリングするように最適化することができる。たとえば、特定の方向からの光のみをアウトカップリングするように適合された選択的アウトカプラを生成するのに、これを使用することができる。
【0121】
図6は、この技術を使用する実施形態を示している。ここで、アウトカプラ構造16は、3つのオーバーレイされた(重ねられた)アウトカプラ16a、16b、および16cを備える。他方、インカプラ構造14は、4つの離間したインカプラ14a、14b、および14cを備える。これらのインカプラのそれぞれは、アウトカプラ構造16を異なる方向から照明するように構成されており、各インカプラ14a、14b、および14cは、アウトカプラ16a、16b、および16cのうちの1つのための光を生成する。例えば、インカプラ14aからの光はアウトカプラ16aによってアウトカップリングされ、インカプラ14bからの光はアウトカプラ16bによってアウトカップリングされ、インカプラ14cからの光はアウトカプラ16cによってアウトカップリングされる。
【0122】
したがって、光源をインカプラ14aからインカプラ14b、インカプラ14cに移動させることにより、3つのアウトカプラ16a、16c、16cを順次作動させることができる。3つのアウトカプラは異なる形状を持っており、これにより、異なる形状の3つのアウトカップリングされた画像を順次生成することが可能となる。本実施形態では、3つの異なる画像は、飛行中の鳥の3つの異なる位置に対応する。
【0123】
上で述べたように、本技術により、セキュリティドキュメントの広い領域を保護することが可能になる。
【0124】
有利には、インカプラおよびアウトカプラは、400~1000nmの間の少なくとも1つの波長の可視光をライトガイド12にインカップリングしライトガイド12からアウトカップリングするのに最適化されている。ただし、たとえば、セキュリティ機能が機械によって検出されるべきときには、これらを赤外線に最適化してもよい。
【0125】
任意のタイプのセキュリティドキュメントを保護するために保護領域16を用いることができる。
【0126】
例えば、紙幣、小切手、またはバウチャーなどの金銭的価値を表すドキュメントを保護するために保護領域18を使用してもよい。ただし、保護領域18は、上記のように、パスポート、IDカード、パーソナライズアクセスカード(身分証明バッジ)などの身分証明ドキュメント、特にその中のパーソナライズ情報も保護してもよい。
【0127】
保護領域18はまた、保護されるべきアイテムに適用されるセキュリティフォイルまたはセキュリティパッチを保護してもよい。
【0128】
保護領域18は、セキュリティドキュメントの全体またはその一部のみをカバーしてもよい。
【0129】
上記の実施形態では、アウトカプラ構造16は、保護領域18内に、少なくとも1つの線状のアウトカプラを備える。ただし、アウトカプラ構造16は、点状のアウトカプラなど、さまざまな形状のアウトカプラを備えてもよい。
【0130】
上記には、アウトカプラがギロシェパターンを形成してもよいことが述べられている。しかしながら、代替的にまたは追加的に、それはまた、直線(複数)のパターン、特に図4の実施形態に示されるように直線の規則的なパターン、などの別のパターンを形成してもよく、これは完全性の視覚的な検証がより容易である可能性がある。
【0131】
図2の実施形態では、例えば、アウトカプラ構造は、例えば位置40a、40b、40c、40dにおいて、複数の、特に少なくとも10個の、特に少なくとも100個の、相互接続されていない無アウトカプラ領域であって、アウトカプラ構造16によって相互に分離された無アウトカプラ領域を備える。言い換えれば、アウトカプラ構造16は、保護領域を複数の無アウトカプラ領域に「破壊」し、それらの透明性に影響を与えることなくそれらを保護する。
【0132】
別の実施形態では、図7に示すように、アウトカプラ構造16は、保護領域18内に、複数の、特に少なくとも10個の、特に少なくとも100個の、相互接続されていないアウトカプラサブ構造16a、16b、16c、16dを備える。この場合でも、これにより、アウトカプラ構造を保護領域18にわたりスパースに分散させることが可能となる。
【0133】
有利には、複数のアウトカプラサブ構造16a、16b、16c、16dは、規則的なパターンで配置される。規則的な(つまり反復的な)パターンには、ユーザがその中の欠陥を簡単に検出できるという利点がある。
【0134】
アウトカプラサブ構造16a、16b、16c、16dの形状を変更してもよい。図7では、サブ構造は短い線である。図4では、サブ構造は長い線である。ただし、サブ構造は異なる幾何学的形状を有してもよく、たとえばドット、記号、文字などを形成してもよい。
【0135】
インカプラ構造14および/またはアウトカプラ構造16はそれぞれ、インカプラ構造および/またはアウトカプラ構造が配置されている領域においてキャリア10が少なくとも部分的に透明であることを条件として、ドキュメントの下からインカップリングしドキュメントの下へアウトカプラするように適合されてもよい。身分証明ドキュメントに関する照明側または照明側の反対側で行われるように、アウトカップリングされた光の観察を構成することもできる。
【0136】
図8および9の例に示されるように、ライトガイド12は、(任意の実施形態について、)その幅よりもはるかに長い、特に少なくとも5倍大きい長さを有し、有利にはその全長に沿って一定の幅を有する、ストリップ形状であってよい。それは、ドキュメント全体を横切って、つまり一方の端から反対側の端まで、延在してもよい。
【0137】
保護領域18は、アウトカプラ構造に加えて、少なくとも1つのさらなる視覚的セキュリティ要素を備えてもよい。そのようなセキュリティ要素50は、例として、図5に点線の十字として示されている。このさらなるセキュリティドキュメントは、反射で、すなわち光がライトガイド内にインカップリングすることなくライトガイドに光を当てることによって、見ることができる。これにより、例えば偽の写真または別の偽造要素を、検出されることなく、ライトガイドの上に配置するのが困難になる。あるいは、そのようなさらなるセキュリティ要素を、透過で制御してもよい。そのようなさらなる視覚的セキュリティ要素は、例えば、回折構造などの光学的に可変のデバイスと、印刷されたマーキングなどの不変マーキングと、の少なくとも1つであってよい。
【0138】
ライトガイド10は、キャリア10とは別に製造され、次にそれにラミネートされたフォイルであってもよく、またはキャリア10上にその場で形成されてもよい。
【0139】
本開示で言及される任意のインカプラおよび/またはアウトカプラは、例えば、回折インカプラ/アウトカプラ、蛍光/リン光、赤外線アップコンバートインカプラ/アウトカプラ、微視的表面構造(すなわち、マイクロレンズまたはマイクロミラーまたは横方向の繰り返し周期(すなわち、ライトガイドの平面内での繰り返し周期)が例えば少なくとも10μmの表面構造などの、回折効果のない表面構造)に基づくインカプラ/アウトカプラであって構造または材料を拡散または散乱させるインカプラ/アウトカプラ、でもよい。
【0140】
また、インカプラ構造を、たとえばドキュメントの互いに異なる、特に互いに対向する側の2つの保護領域とともに、たとえば、ライトガイドの2つの端の間に配置してもよい。
【0141】
ライトガイド12はまた、例えば、図16に示すように、セキュリティドキュメント全体を横切って延びるストリップまたは糸の形状であってよい。
【0142】
本発明の現時点で好ましい実施形態が示され説明されているけれども、本発明がそれに限定されず、他の方法で以下の特許請求の範囲内で様々に具現化され実施されてもよいことが明確に理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】