(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】高出力密度(HPD)変圧器用液体/流体冷却システム
(51)【国際特許分類】
H01F 27/16 20060101AFI20230814BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230814BHJP
H01F 27/12 20060101ALI20230814BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20230814BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20230814BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20230814BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
H01F27/16
H05K7/20 M
H01F27/12
H01F27/02 150
H01F27/28 176
H01F30/10 S
H01F30/10 M
H01F30/10 C
H02M3/28 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559298
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 US2020026026
(87)【国際公開番号】W WO2021201851
(87)【国際公開日】2021-10-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ツォ,ジィ
(72)【発明者】
【氏名】マンケヴィッチ,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーシェット,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,セカンド,アンソニー
【テーマコード(参考)】
5E043
5E050
5E059
5E322
5H730
【Fターム(参考)】
5E043DA04
5E043DA06
5E043DB06
5E043DB09
5E050CA03
5E050CA06
5E059BB03
5E059BB17
5E322AA05
5E322AA09
5E322AB01
5E322AB06
5E322DA01
5E322DA03
5E322DA04
5E322FA01
5E322FA04
5H730AA15
5H730ZZ07
5H730ZZ16
(57)【要約】
高出力密度電力変換器(500)は、その変圧器(120)を冷却するため液体冷却システム(200)を用いる。一実施形態では、変圧器(100)のコイル(135)は、熱伝導性固体(エポキシ又は樹脂)に埋設される。樹脂に埋設されたコイル(135)は、コイル(135)間に挟装される及び/又はコイル(135)の外表面と接触するコールドプレート(160)と物理的/熱的に接触する。併せて/或いは、コールドプレート(160)は変圧器コア(145)と物理的/熱的に接触していてもよい。冷却流体が、コールドプレート(160)内を流れるように送液される。別の実施形態では、変圧器は(120)、熱管理筐体(710)内で、油のような冷却流体(740)中に浸漬される。コールドプレート(160)は、筐体(710)と物理的/熱的に接触する。コールドプレート(160)内に送られる冷却液(240)は、油で囲まれた変圧器(700)から熱を伝導させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体冷却式変圧器(100)であって、当該液体冷却式変圧器(100)が、
各々電流を流すための複数のコイル部品(135)と、
前記複数のコイル部品(135)間で磁束を伝えるように構成されたコア(145)と、
前記コア(145)及び前記複数のコイル部品(135)の少なくとも一方と表面接触しかつ熱結合したコールドプレート(160)と
を備えており、前記コールドプレート(160)が、該コールドプレート(160)内で液体冷却剤(240)を運ぶように構成された冷却剤流路(260)を含む、液体冷却式変圧器(100)。
【請求項2】
前記コールドプレート(160)が非鉄金属を含む、請求項1に記載の液体冷却式変圧器(100)。
【請求項3】
前記コールドプレート(160)が、前記液体冷却剤(240)の流入及び流出のための2以上の冷却剤ポート(175)を備える、請求項1に記載の液体冷却式変圧器(100)。
【請求項4】
前記コイル部品(135)が、
連続的な導電材料(610)であって、電流が該導電材料(610)を流れるときに磁束を発生するように巻回、コイル巻回又は表面パターン化された連続的な導電材料(610)と、
前記導電性材料(610)を実質的に収容又は埋設するように構成され、かつ前記導電性材料(610)から熱伝達するように構成された熱伝導性非導電性非鉄コイル支持材料(620)と
を含む、請求項1に記載の液体冷却式変圧器(100)。
【請求項5】
前記コールドプレート(160)の第1の表面と、前記コールドプレートが熱結合される前記コア(145)及び前記コイル部品(135.1,135.2)の少なくとも一方の第2の表面とが、拡大された表面接触を促進し、もって前記コア(145)及び前記コイル部品(135.1,135.2)の少なくとも一方の第2の表面と前記コールドプレート(160)の第1の表面との間の効果的な熱伝達を促進するように、相互に成形される、請求項1に記載の液体冷却式変圧器(100)。
【請求項6】
第1の表面及び第2の表面が平坦な表面である、請求項5に記載の液体冷却式変圧器(160)。
【請求項7】
1枚のコールドプレート(160)が、第1の表面及び対向する第2の表面を有し、各表面が、前記コア(145)及び前記2つのコイル部品(135.1,135.2)から選択される複数の変圧器構成要素の異なるものと接触する、請求項1に記載の液体冷却式変圧器(100)。
【請求項8】
前記コールドプレート(160)が、
前記コア(145)と前記コイル部品(135.1,135.2)の一方、及び
前記コイル部品(135.1,135.2)の両方
の少なくともいずれかの間に物理的に位置し、かつ物理的に接触し、かつ熱結合している、請求項1に記載の液体冷却式変圧器(100)。
【請求項9】
2以上の別個のコールドプレート(160)をさらに備えており、前記2以上のコールドプレート(160)が、前記コア(145)、第1のコイル部品(135.1)及び第2のコイル部品(135.2)から選択される2以上の異なる非隣接変圧器構成要素と物理的に接触しかつ熱接触するように構成及び配置される、請求項1に記載の液体冷却型変圧器(100)。
【請求項10】
2以上の別個のコールドプレート(160)をさらに備えており、前記2以上のコールドプレート(160)が、前記コア(145)、第1のコイル部品(135.1)及び第2のコイル部品(135.2)から選択される3以上の異なる変圧器構成要素と物理的に接触しかつ熱接触するように構成及び配置される、請求項1に記載の液体冷却型変圧器(100)。
【請求項11】
流体浸漬型変圧器(FIT)(700)であって、当該流体浸漬型変圧器(700)が、
i)各々電流を流すための複数のコイル部品(135)、及び(ii)前記複数のコイル部品(135)間で磁束を伝えるように構成されたコア(145)を備える複数の変圧器部品(135,145)と、
前記変圧器部品(135,145)を収容するとともに、熱伝導性流体(740)を含むように構成された熱管理筐体(710)であって、前記熱伝導性流体(740)が、前記複数のコイル部品(135)及び前記コア(145)から前記熱管理筐体(710)の外壁(755)に熱を伝達するのに適している、熱管理筐体と、
前記熱管理筐体(710)の外壁(755)と面接触して熱結合しているか或いは前記熱管理筐体(710)の外壁(755)と一体化しているコールドプレート(160)と
を備えており、前記コールドプレート(160)が、該コールドプレート(160)内で該コールドプレート(160)を通して液体冷却剤(240)を運ぶように構成された冷却剤流路(260)を含んでおり、
前記変圧器部品(135,145)から前記外壁(755)に伝達された熱が、前記コールドプレートを通して流れる液体冷却剤(240)に伝達されることによりさらに除去される、流体浸漬型変圧器(700)。
【請求項12】
前記コールドプレート(160)が非鉄金属を含む、請求項11に記載の流体浸漬型変圧器(700)。
【請求項13】
前記コールドプレート(160)が、前記液体冷却剤(240)の流入及び流出のための2以上の冷却剤ポート(175)を備える、請求項11に記載の流体浸漬型変圧器(700)。
【請求項14】
前記コイル部品(135)が、
連続的な導電材料(610)であって、電流が該導電材料(610)を流れるときに磁束を発生するように巻回、コイル巻回又は表面パターン化された連続的な導電材料(610)と、
前記導電性材料(610)を実質的に収容又は埋設するように構成され、かつ前記導電性材料(610)から熱伝達するように構成された熱伝導性非導電性非鉄コイル支持材料(620)と
を含む、請求項11に記載の流体浸漬型変圧器(700)。
【請求項15】
前記熱伝導性流体(740)が非導電性油である、請求項11に記載の流体浸漬型変圧器(700)。
【請求項16】
前記液体冷却剤(240)が水性流体である、請求項11に記載の流体浸漬型変圧器(700)。
【請求項17】
前記複数の変圧器部品(135,145)が、該部品(135,145)の2以上の間に空間的ギャップ(730)を有するように構成しており、前記熱伝導性流体(740)が、熱対流の増加のために前記空間的ギャップ(730)を充填する、請求項11に記載の流体浸漬型変圧器(700)。
【請求項18】
3以上のコイル(135)を備える、請求項11に記載の流体浸漬型変圧器(700)。
【請求項19】
前記コア(145)の1以上及び前記コイル(135)の1つが、前記熱管理筐体(710)の内面と物理的及び熱的に直接接触している、請求項11に記載の流体浸漬型変圧器(700)。
【請求項20】
前記コイル(135)及び前記コア(145)のすべてが前記熱管理筐体(710)内にストラット(805)を介して懸架されており、かつ
前記コイル(135)及び前記コア(145)がすべて物理的かつ熱的に直接接触しているとともに前記熱伝導性流体(740)によってすべての側面が実質的に囲繞されている、請求項11に記載の流体浸漬型変圧器(700)。
【請求項21】
前記コイル(135)及び前記コア(145)のすべてが前記熱管理筐体(710)内にストラット(805)を介して懸架されており、
前記部品(135,145)の2以上の間に空間的ギャップ(730)が存在し、
前記熱伝導性流体(740)が、前記コイル(135)及び前記コア(145)のすべてを実質的に囲繞し、前記熱伝導性流体(740)がさらに対流増加のために前記空間的ギャップ(730)を充填する、請求項11に記載の流体浸漬型変圧器(700)。
【請求項22】
前記熱伝導性流体(740)を循環させるように構成されたポンプをさらに備える、請求項11に記載の流体浸漬型変圧器(700)。
【請求項23】
変圧器(120)を含む高出力変圧器システム(100,700)のための冷却システム(500)であって、当該冷却システム(500)が、
冷却液(240)を送液するように構成されたポンプシステム(210)と、
前記高出力変圧器システムの1以上の構成要素(135,145、710)と物理的に接触して熱伝達するコールドプレート(160)であって、該コールドプレート(160)の内部を通して前記冷却液(240)を流すことができるように構成された内部冷却剤流路(260)を有するコールドプレート(160)と
を備えており、前記コールドプレート(160)が、前記ポンプシステム(210)から前記コールドプレートに送られた前記冷却液(240)を介して、前記高出力変圧器システム(100)の変圧器(120)で発生した熱を除去するように構成している、冷却システム(500)。
【請求項24】
前記コールドプレート(160)が、前記変圧器(120)のコイル(135)及び前記変圧器(120)の鉄コア(145)のうちの少なくとも1つと物理的に接触して熱伝達する、請求項23に記載の冷却システム(500)。
【請求項25】
複数のコールドプレートをさらに備えており、前記複数のコールドプレート(160)の各々が、前記変圧器(120)の各々の一次コイル(135.1)、前記変圧器(120)の各々の二次コイル(135.2)、又は前記変圧器(120)の各々の鉄コア(145)の少なくとも1つと物理的に接触して熱伝達する、請求項23に記載の冷却装置(500)。
【請求項26】
前記コールドプレート(160)が、前記変圧器(120)の一次コイル(135.1)、前記変圧器(120)の二次コイル(135.2)及び前記変圧器(120)の鉄コア(145)の2以上の間に位置して、物理的に接触しかつ熱伝達する、請求項23に記載の冷却装置(500)。
【請求項27】
前記冷却液(240)が、水、蒸留水、水道水、工業用水、冷水、脱イオン水、塩水、海水、及び不凍液で処理した水の1種以上を含む、請求項23に記載の冷却システム(500)。
【請求項28】
前記冷却液(240)が、油冷却剤、炭化水素系冷却剤、有機液体冷却剤及びシリコーン系冷却剤の1種以上を含む、請求項23に記載の冷却システム(500)。
【請求項29】
当該冷却システム(500)が、前記変圧器(120)を収容し包囲する熱管理筐体(710)をさらに備えており、
前記熱管理筐体(710)が、熱伝導性流体(740)を含むようにさらに構成しており、
前記熱管理筐体(710)が熱伝導性であり、
前記コールドプレート(160)が、前記熱管理筐体(710)と物理的に接触しかつ熱結合しており、
当該冷却システム(500)が、前記変圧器(120)で発生した熱を、順次、前記熱伝導性流体(740)、前記熱管理筐体(710)、前記コールドプレート(160)及び前記冷却液(240)に熱伝達するように構成及び配置されている、請求項23に記載の冷却システム(500)。
【請求項30】
前記熱伝導性流体(740)が油である、請求項23に記載の冷却システム(500)。
【請求項31】
前記変圧器(120)が、(i)前記変圧器(120)の一対のコイル(135)と(ii)前記変圧器のコイル(135)及び前記変圧器(120)のコア(145)との2以上の間に空間的ギャップ(730)を有するように構成しており、
当該冷却システム(500)が、前記空間的ギャップ(730)をさらに備えており、前記熱伝導性流体(740)が、空間的ギャップ(730)を充填して熱伝達性をもたらすように構成される、請求項23に記載の冷却システム(500)。
【請求項32】
前記熱伝導性流体(740)が前記変圧器(120)の実質的にすべての露出面と物理的及び熱的に接触するように、前記変圧器(120)が熱管理筐体(710)の内部に懸架されている、請求項23に記載の冷却システム(500)。
【請求項33】
電力変換器(500)のためのパワーエレクトロニクスビルディングブロック(PEBB)(510)であって、当該パワーエレクトロニクスビルディングブロック(510)が、
低電圧用の第1のブリッジ変換器(915.1)と、
高電圧用の第2のブリッジ変換器(915.2)と、
第1のブリッジ変換器(915.1)及び第2のブリッジ変換器(915.2)を電気的に結合する変圧器(120)と、
冷却液(240)を送液するように構成されたポンプシステム(210)と、
前記変圧器(120)と熱結合したコールドプレート(160)であって、該コールドプレート(160)を通して前記冷却液(240)を運ぶための冷却剤流路(260)を含む、コールドプレート(160)と
を備えており、
前記変圧器(120)で発生した熱が、前記変圧器(120)から前記コールドプレート(160)への熱伝達並びに前記冷却液(240)による環境ヒートシンク(295)への熱対流によって環境ヒートシンク(295)に熱伝達される、パワーエレクトロニクスビルディングブロック(510)。
【請求項34】
前記冷却液(240)が水性液体である、請求項33に記載のパワーエレクトロニクスビルディングブロック(510)。
【請求項35】
前記コールドプレート(160)が、前記変圧器(120)の1以上の発熱素子(135,145)と物理的に直接接触している、請求項33に記載のパワーエレクトロニクスビルディングブロック(510)。
【請求項36】
前記変圧器(120)を収容しかつ囲繞する熱管理筐体(710)をさらに備えており、
前記熱管理筐体(710)が、さらに熱伝導性流体(740)を収容するように構成しており、
前記熱管理筐体(710)が熱伝導性であり、
前記コールドプレート(160)が、前記熱管理筐体(710)と物理的に接触しかつ熱結合しており、
前記冷却システム(500)が、前記変圧器(120)で発生した熱を、順次、前記熱伝導性流体(740)、前記熱管理筐体(710)、前記コールドプレート(160)及び前記冷却液(240)に熱伝達するように構成及び配置されている、請求項33に記載のパワーエレクトロニクスビルディングブロック(510)。
【請求項37】
熱伝導性流体(740)が油である、請求項36に記載のパワーエレクトロニクスビルディングブロック(510)。
【請求項38】
変圧器(120)が高出力密度/高周波変圧器である、請求項36に記載のパワーエレクトロニクスビルディングブロック(510)。
【請求項39】
前記変圧器(120)が、K:Nの巻線比であって、N>Kである巻線比を用いており、かつK:Nの巻線比の変圧器(120)の発熱量が、1:1の巻線比の変圧器の発熱量よりも高い、請求項38に記載のパワーエレクトロニクスビルディングブロック(510)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、広義には冷却システム及び高出力電子電力システムに関し、特に高出力電力システムにおける高出力密度(HPD)変圧器に関する。本願は、さらに、HPD変圧器用の液体冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器の概要
変圧器は、ある電気回路(「電源」)と1以上の他の電気回路(「負荷」)との間で電流を転送することなく、電源から負荷に電気エネルギーを転送する受動的な電気デバイスである。エネルギーは専ら電界伝送によって伝達される。変圧器は、2以上の独立した線材コイルを有しており、各々通例1以上の鉄(磁性)金属コアの周りに巻回されている。変圧器のいずれか1つの電源コイルを流れる電流が変化すると、変化する磁界(磁束)が発生し、同じコアに巻回された他のあらゆる負荷コイルに変化する起電力を誘導する。負荷コイルが電気負荷に接続されていると、負荷コイルに電流が流れる。電源回路と負荷回路との間に導電性金属接続がなくても、電気エネルギーを(おそらくは多数の)コイル間で伝達することができる。こうして、電源電流と負荷電流とを物理的に完全に分離することができる。
【0003】
変圧器は、電力用途において、低電流で交流電圧を増加させる(昇圧変圧器)又は高電流で交流電圧を減少させる(降圧変圧器)ために使用される。
【0004】
高出力システムの概要
中乃至高出力システムは、大規模な産業プラント、工場、大型輸送機関(大型船舶及び航空機など)、オフィスビル、集合住宅又は都市全体に電力を供給し得る。電力変換システム又は電力変換器は、中乃至高出力電子分散型電力バス及びグリッドで電力を変換し、例えば、高電圧から低電圧への変換、低電圧から高電圧への変換、ある交流周波数から別の周波数への電流の変換、直流から交流への或いは交流から直流への変換などを行う。
【0005】
電力システムは概して、発電、送電、配電及び最終用途から構成される。電力は、1又は複数の発電機によって、或いは太陽光発電のような再生可能エネルギーシステムによって供給される。最終負荷(電力を使用する装置)に至るまでの経路において、電力は通例、1以上の電力変換器によって受電及び送電される。例えば、発電機側の変換器は、発電機から固定子バスを介して交流(AC)電力を受け取って、AC電力をグリッド周波数のような適切な出力周波数に変換することができる。交流電力は、ラインバスを介して電力グリッドに供給される。
【0006】
低電圧、中電圧、高電圧は一義的に定義されてはいないが、例えば、「低電圧」は1.5kV以下の電圧をいうことがあり、「中電圧」は1.5kV超100kV未満の電圧をいうことがあり、「高電圧」は100kV以上の電圧をいうことがある。
【0007】
高出力密度(HPD)電力システム-コンパクトな空間設計が要求される船舶その他の環境向けの電力変換器
軍用及び商用船舶並びに航空機のようなある種の環境では、スペースの有効活用が重視される。そのため、船舶では、陸上環境で使用されるものよりも小型の電力変換器が必要とされる。また、船舶用途向けの電力変換システムでは軽量化も望まれている。電力変換器の体積及び重量の削減は、電力密度の向上及び船舶の抗力の低減につながる。
【0008】
本システム及び方法は、限定されるものではないが、船舶及び航空機にみられるようなマイクログリッドに特に適している。(グリッド及びマイクログリッドは、本明細書では、一般に「電力システム」と呼ばれる)。船舶及び航空機の電力システム並びに他のコンパクトな物理空間に適した電力システムは、物理的にできるだけ小さくコンパクトであることの利点がある。所与の電力レベルでは、物理的サイズが小さいほど、電力システム全体の電力密度が高まる。ただし、電力密度が高いと、大量の熱が発生してしまい、熱を放散させる必要がある。
【0009】
高出力密度(HPD)システムの一例は、パワーエレクトロニクスビルディングブロック(PEBB)最小互換ユニット(LRU)であるが、これは電力変換器の構造及び機能素子であり、任意の入力電力を所望の電圧、電流及び周波数の出力へと変換する電力プロセッサであってもよい。PEBBは、通例複数の相互接続されたPEBBを用いるモジュール式で拡張性のある電力変換器アーキテクチャの一部としての使用が意図される。
【0010】
PEBBは、通例、パワーデバイス、ゲートドライブ、変圧器及びその他の部品が、設定可能で明確に定義された機能を有するビルディングブロックに組み込まれている。
【0011】
エネルギー効率及び船内空間の有効活用の観点から、小型素子を備え、高出力密度で、多量の熱を生じるPEBB LRUを提供することが望まれている。かかるPEBB LRU並びに他の小型高出力システムは、物理的にコンパクトで、低電圧を高電圧に昇圧する変圧器の使用を必要とすることがある。かかる高出力変圧器は、1:1の巻線比の使用を必要とすることもあれば、K:Nの巻線比(NはKと同一又はそれ以上の値)の使用を必要とすることもある。体積が小さいと特に熱放散を起こし易く、巻線比が高いと、さらに多量の熱が発生し、それに応じた熱放散が必要となる。
【0012】
熱放散の概要
電力変換器及び電力変換器用パワーエレクトロニクスビルディングブロック(PEBB)の電力処理の限界は、かかるシステムで用いられる高周波変圧器の熱管理によって大きく左右される。「熱管理」は、変圧器の熱放散能力を言い換える表記であり、変圧器の体積及び重量、ひいては電力変換器の電力密度及び比出力を大きく左右する。
【0013】
従来の電力変換器及びパワーエレクトロニクスビルディングブロック(PEBB)は、空冷式変圧器に依拠していた。電力変換器の動作中に変圧器から発生する熱は、一次コイル及び二次コイルのI2t損失(コイル損失)と、磁気コアの熱/電力損失(コア損失)からなる。
【0014】
コイル損失及びコア損失の熱損失分布は、特定の設計及び使用材料に応じて変化する。典型的な変圧器の冷却システムは空冷式であり、例えば、変圧器の周囲及び内部に空気を送り込むファンなどを含む。そのため、空気の流れのための十分なスペースと高い空気速度が必要とされるが、これらはいずれも電力変換器の全体積を低く保つという目標に反しかねない。
【0015】
体積電力密度の課題のような上述の短所に鑑みて、中乃至高電圧HPD変圧器のためのコンパクトな冷却システムが必要とされている。さらに、効率的な熱伝達のため液体冷却を用いる冷却システムも必要とされている。さらに、電力変圧器との構造的一体化をもたらす冷却システム、或いは1種以上の液体冷却剤と電力変圧器の電気的に活性な発熱素子との広い接触面積をもたらす冷却システムも必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0092108号明細書
【発明の概要】
【0017】
本システム及び方法は、空冷式変換器を、特に、例えば、限定されるものではないが、軍用又は商用船舶の船内或いは航空機の機内を始めとするスペースに制約のあるパルス負荷電力変換器用途などに向けた、向上した体積電力密度をもたらすための液体冷却式熱管理ソリューションで進歩させたものである。
【0018】
液体と流体
一般的/通常の用法では、「液体」という用語と「流体」という用語は概して又は略同義である。化学及び物理では、「流体」は(液体及び気体の両者を含めて)流れるものであり、一方、「液体」はその容器の形状に適合するが、圧力とは無関係に(略)一定体積を保つ略非圧縮性の流体である。本明細書では「液体」及び「流体」という用語はいずれも、流動性があって体積が略一定な略非圧縮性の物質をいう。(つまり、どちらの用語も広義には「液体であるが気体でない流体」を意味する)。ただし、本明細書では「液体」と「流体」にはさらに別々の意味が当てられる。
(A)「液体」は、コールドプレート160(
図1参照)に流される冷却液材料240(
図2参照)(幾つかの実施形態では、水である。)をいう。
(B)「流体」は、熱管理筐体710内の変圧器120と直接接触して使用するための熱伝導液体材料740(
図7参照)(幾つかの実施形態では、油である。)をいう。
【0019】
「液体」240(例えば水)の語義及び「流体」740(例えば油)の語義は、冷却を提供する及び/又は熱を伝達及び除去する種々の液体の異なる種類/用途を区別できるようにするため、理解を図るための便宜的なものにすぎない。
【0020】
本明細書において、文脈に応じて「冷却剤」と「熱伝達」とが一貫した用法で用いられているのも、理解を図るための便宜的なものである。関連する技術分野の他の文献では、「冷却剤」又は「熱伝達物質」のような用語が同義に用いられることもあれば、異なる意味で用いられることもある。
【0021】
本発明の実施形態の有利な設計は、独立請求項及び従属請求項、明細書及び図面から得られる。以下、本発明の実施形態の好ましい例について、添付の図面を用いて詳細に説明する。図面は、本明細書に組み込まれて本明細書の内容の一部をなし、本発明を例示し、発明の詳細な説明と併せて、当業者が本発明を実施することができるように本発明の原理を説明するのにも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本システム及び方法の一実施形態に係る一体型コールドプレートを備える例示的な変圧器を示す図である。
【
図2】本システム及び方法の一実施形態に係る例示的な液体冷却システムを示す図である。
【
図3A】本システム及び方法の一実施形態に係る一体型コールドプレートを備える例示的な変圧器を示す図である。
【
図3B】本システム及び方法の一実施形態に係る一体型コールドプレートを備える例示的な変圧器を示す図である。
【
図4】本システム及び方法の一実施形態に係る一体型コールドプレートを備える例示的な変圧器を示す図である。
【
図5】複数のパワーエレクトロニクスビルディングブロックを備える例示的な電力変換器であって、各パワーエレクトロニクスビルディングブロックが例示的な液体冷却システムを有する、例示的な電力変換器を示す図である。
【
図6A】本システム及び方法に係る例示的な変圧器コイルを示す図である。
【
図6B】本システム及び方法に係る例示的な変圧器コイルを示す図である。
【
図7】本システム及び方法の一実施形態に係る例示的な流体浸漬型変圧器の幾つかの構成要素を示す図である。
【
図8】本システム及び方法の実施形態に係る例示的な流体浸漬型変圧器の幾つかの構成要素を示す図である。
【
図9】電力変換器に使用し得るハイブリッドパワーエレクトロニクスビルディングブロックに一体化された液体又は流体冷却式変圧器の例示的用途を示す図である。
【0023】
図面の中の説明について
図面の中の説明は、ある構成要素の性状について言葉で思い出させるべく、理解をはかるための便宜的なものである。これらの説明は、限定的に解釈すべきではなく、本明細書で説明する通り、様々な構成要素は、追加の又は別の標記、命名又は別の実施形態によって知られていたり、理解されていることがある。図面に記載された構成要素に関するさらに詳しい説明については、図面に記載された符号、発明の詳細な説明におけるそれらの符号に関する説明、さらには発明の詳細な説明において符号が省略されている箇所の説明を参照されたい。
【0024】
図面に記載された特定の機能又は動作値(例えば、電圧値、電力値、構造寸法その他の数値)は、本明細書において限定的なものと記載されていない限り、例示にすぎず、限定的に解釈すべきではない
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書では、特定の用途のための例示的な実施形態で本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
以下の詳細な説明は、例示にすぎず、教示されたシステム、構成及び方法を限定するものでも、教示されたシステム、構成及び方法の構成要素又はステップを限定するものでも、本明細書に開示した本システム、方法及び構成の用途を限定するものでもない。さらに、上述の背景技術の欄及び発明の概要の欄並びに以下の詳細な説明で紹介した理論に束縛されないし、それらの理論によって技術的範囲が限定されるわけでもない。本明細書の教示内容に接した当業者には、その技術的範囲内での追加の修正、用途及び実施形態、並びに本発明が重要な有用性を有する追加の分野は明らかであろう。
【0027】
本願全体を通して、様々な実施形態に関する説明で、「含む」という表現を用いるが、これはシステム及び方法が、記載した特定の構成要素又はステップを含んでいることを意味し、システム及び方法は、その他の構成要素又はステップであって、記載されていないもの、他の実施形態に関して記載されたもの、図にしか記載されていないもの、或いは電力システムの機能に必要なものとして当技術分野で周知のものを含んでいてもよい。ただし、幾つかの特定の例では、実施形態を「から基本的になる」又は「からなる」という表現で記載できることは当業者には明らかであろう。
【0028】
本教示の範囲を限定するためのものではなく、本教示の理解を深めるために、単数形で記載したものであっても、別途明示しない限り、複数のものを含むことは、当業者には明らかであろう。したがって、単数形の冠詞と「少なくとも1つ」は、本願では互換的に用いられる。
【0029】
発明の詳細な説明で用いる見出しは、本明細書を読み易くするためのものにすぎず、定義又は限定的なものと解釈すべきではない。
【0030】
本システム及び方法は、以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、それらは例示にすぎない。システム及び方法の全範囲は、以下の特許請求の範囲に記載される。添付の特許請求の範囲はそれ自体が開示であり、システム及び方法の全範囲は、特許請求の範囲に記載された構成要素だけを含んでいればよい。
【0031】
変圧器用の例示的な液体冷却素子及び液体冷却システム
電気システムの効果的な動作には、変圧器の熱放散を始めとする熱放散が必要とされることは当業者には明らかであろう。従来型の電力変換器では空冷が用いられ、例えば冷却ファン、或いは周囲環境の空気の全般的な流れだけが用いられ、場合によってはベント及びヒートシンクで補完される。
【0032】
上述の通り、コンパクトな環境向けの新たな電力変換器は、(従来の電力変換器の電力密度/比出力と比較して)大幅に増加した高出力密度(HPD)及び比出力を有し得る。電力密度及び比出力の増加によって、従来の電力変換器よりも多量の体積熱又は重量熱(つまり単位体積又は単位重量当たりの熱)及び高温を生じる。さらに、かかるシステムでは、電流を高周波(HF)に変換するためHPD変圧器120が用いられることがあるが、それによって熱の発生量がさらに増加する。
【0033】
HPD変換器におけるHPD-HF変圧器で発生する熱を放散させるため、液体冷却システムを、空冷との組合せで、或いは変圧器120の空冷を実質的に置き換えるために、HPD変圧器120に使用することができる。
【0034】
特に、HPD電力変換器の高電圧と複数の変圧器巻線と圧縮されたサイズとの組合せは、全体として、HPD-HF変圧器120による激しい発熱をもたらしかねない。動作中のHPD-HF変圧器120から発生する熱は、一次及び二次コイルにおけるI2t損失(電流二乗(I2)時間損失)(コイル損失)と変圧器120の磁気コアにおける熱/電力損失(コア損失)からなる。
【0035】
幾つかの実施形態では、本システム及び方法は、HPD-HF変圧器120のための専用の液体冷却を導入する。
【0036】
例えば、幾つかの実施形態では、本システムは、空冷を、特にスペースに制約のあるパルス負荷変換器用途(例えば、軍用又は商用船舶の船内或いは航空機の機内)のための体積電力密度をさらに向上させるための液体冷却式熱管理ソリューションで進歩させたものである。コイル損失及びコア損失の熱損失分布は、特定の設計及び使用材料に応じて変化する。体積を減少させ、かつ電力密度を増加させるため、本システム及び方法の実施形態は、変圧器コイル部品135.2,135.1及び変圧器コア145の熱管理のための液体冷却ソリューションを備える液体冷却HPD-HF変圧器100を用いる。
【0037】
一体型コールドプレートを備える例示的なHPD-HF変圧器
図1は、本システム及び方法の一実施形態に係る、液体冷却システム200(
図2参照)の一体型コールドプレート160を備える例示的なHPD-HF変圧器120の概略図である(
図1中、一体型コールドプレート160を備える複合変圧器120自体(コイル+磁気コア)(以下「TICP」)には、符号100.1を付した)。一実施形態では、TICPは、構造的に一体化されたユニットを形成し、換言すると、HPD-HF変圧器120の構造内に液体冷却システム200の幾つかの構成要素160,165が埋設されている。
【0038】
コイル部品(コイル)及びコア
一実施形態では、HPD-HF変圧器120は、1又は2以上の一次(高電圧/HV)コイル部品135.1と、1又は2以上の二次(低電圧/LV)コイル部品135.2と、1又は2又は3以上の磁気(鉄)コア145(図には3個示してある)と電気接続185(図には1個しか示してない)とを含む。コア145の1以上は、コイル135のギャップ又は間隙及び/又はコールドプレート160の間隙を通り抜ける1以上の内部コア素子147を有していてもよい。1又は複数の内部コア素子147は、構造的支持をもたらすだけのものでもよいし、或いはコイル135間の追加の磁気結合/インダクタンスをもたらすための鉄材料製のものでもよい。
【0039】
一次コイル135.1及び二次コイル135.2の金属製導電素子610は、
図1には記載されておらず(代わりに
図6A及び
図6B参照)、図示されているのは固体コイル部品135.1,135.2の外面であり、これらは、例えばシリコン、樹脂、エポキシ、セラミック、ガラスその他の非導電性物質又は材料620.1,620.2から作ることができ(コイル135の断面図については
図6A及び
図6B参照)、その中に導電性(典型的には金属)コイル610が埋設されている。本明細書では、簡潔さのため、「コイル部品」135は典型的には単に「コイル」135と簡略化していう。ある例示的な実施形態では、コイル線610はリッツ線とすることができる。
【0040】
エポキシ、樹脂、ガラス、セラミック材料などの接着/筐体材料は概して「コイル支持材料」620.1,620.2と呼ばれ、効果的な熱伝達体である。コイル135の導電性素子(ワイヤ、フィラメント又は箔など)610で発生した熱は、コイル部品135.1,135.2の周囲のエポキシ、樹脂又はセラミック材料620.1,620.2に容易に伝達される。
【0041】
図に示す例示的な実施形態では、3枚のコールドプレート160(「熱交換プレート」160とも呼ばれる)が、コイル部品135.1,135.2及びコア145のすべての間に物理的に挿入又は挟装されて、それらと実質的に接触する。一実施形態では、コールドプレートは、非鉄(非磁性)金属で作られる。別の実施形態では、コールドプレート160は、熱伝達に適した他の非鉄非金属材料から製造し得る。
【0042】
各コールドプレート160を貫通しているのは、脱イオン水、冷水、石油化学系添加剤入り又は無しの処理水、その他の冷却液240のような、冷却液240(
図2参照)を導くのに適した1以上の内部液体輸送流路260(又は「冷却剤流路」260)(
図1には図示せず、
図2参照)である。
【0043】
2以上の冷却剤管165(又は「冷却剤導管」165)が、冷却剤ポート175でコールドプレート160に接続されるが、冷却ポート175は、コールドプレート160の外面に沿った流体入出力ポートである。冷却剤ポート175には、図に示していない弁その他の流体制御機構を有していてもよい。冷却剤管165は、コールドプレート160の内部冷却剤流路260に冷却液240を流入・流出させる。コールドプレート160の内部冷却剤流路260を介した冷却液240の輸送は、変圧器120から熱伝達により熱を奪い、電力変換中に変圧器120を安全な動作温度に維持するのに役立つ。
【0044】
別の実施形態では、外部冷却剤管165又は冷却剤導管165を、コールドプレート160と一体化し、冷却剤ポート175に接合はその他の方法で取り付け、及び/又は内部冷却剤流路260の一体化された延長部としてもよい。
【0045】
当業者には明らかであろうが、コイル135.2,135.1及びコア145の表面とコールドプレート160の表面との接合又は接着を促進するため、熱結合材料又は接着剤のような各種の追加の熱伝導材料(
図1には図示せず)の薄層を使用してもよい。かかる熱伝導材料は、効率的で均一な熱伝導を維持するのに役立つこともある。幾つかの実施形態では、かかる熱伝導材料は、1mm以下のオーダーの薄層で施工してもよく、別の実施形態では、もっと厚い層を使用してもよく、別の実施形態では、接着のための追加の熱伝導材料又は接着剤は使用しない。代わりに、ネジ(図示せず)、クランプ(図示せず)、ボルト(図示せず)のような機械的手段を介して、或いは周囲のコア145からの封込め及び圧力を介して、コイル135.2,135.1とコールドプレート160を一緒に結合して熱接触を維持してもよい。
【0046】
別の実施形態では、製造プロセスにおいて、(i)熱、圧縮、表面溶媒の施用などの手段を用いて、コイル135.2,135.1及び/又はコールドプレートの薄い表面層及び/又は縁部を溶融、部分溶融又は化学的に軟化せしめ、(ii)コイル135.2,135.1及び/又はコールドプレートを一緒に機械的にプレスし、(iii)こうして処理した表面/縁部を物理的に硬化し分子レベルで互いに結合させることによって、コイル135.2,135.1及びコールドプレート160の一部又は全部を一緒に結合して永続的な熱接触状態を維持してもよい。
【0047】
別の実施形態では、コイル135.2,135.1とコールドプレート160の間の接触、圧力及び所要の熱伝導度を維持するため、ネジ、クランプ、ボルト、コア145、熱伝導材料及び接着剤、及び化学/熱接合の2以上の組合せを用いてもよい。
【0048】
本明細書における以降の説明では、「コールドプレート」を大文字の「C」、二次/低電圧コイルを「S」、一次/高電圧コイルを「P」で略すことがある。本システム及び方法の様々な実施形態について、これらの構成要素の積層順序に準じて、簡略化して示すことがある。例えば、
図1の例示的な実施形態100.1における積層順序は「C-S-P-C-P-S-C」である。
【0049】
主(大)表面
図面から明らかな通り、幾つかの実施形態並びに幾つかの形状において、コールドプレート160、コイル135及び/又はコア145の幾つかの平坦な表面190又は実質的に平坦な表面190は、それらの構成要素の最大表面であってもよいし、或いは2つの対向する最大表面のうちの一方であってもよい。かかる最大表面190は、本明細書では「主表面」190と呼ばれ、かかる主表面190がコールドプレート160への熱伝達に特に適していることは明らかであろう。面積の小さい副表面195も同様に熱伝達を促進し得る。別の実施形態では、幾つかの変圧器部品135,145は略又は実質的に立方体であり、その場合、主表面190と副表面195と面積による区別は意味をなさなくなる。
【0050】
例示的な液体冷却システム(LCS)
当業者には明らかであろうが、変圧器120のための完全な又は機能的に完全な液体冷却システム200は、冷却システム100.1の液体冷却素子(LCS)160,165及び冷却液240だけでなく、様々な追加の構成要素を含んでおり、その一部又は全部は外部にあってもよく、場合によっては変圧器120から遠隔にあってもよい。
【0051】
図2は、本システム及び方法に係るHPD-HF変圧器120のための例示的な液体冷却システム(LCS)200を示す。特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する例示的なLCS200及び他のLCSシステムでは、数ある中でも、特に以下のものを用いることができる。
(i)
図1に関して上述した例示的な一体型コールドプレートを備える変圧器(TICP)100(
図3、
図4、
図5及び
図6も参照されたい);
(ii)例示的な流体浸漬型変圧器(FIT)700(詳細については
図7、
図8及び
図6も参照);
(iii)特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する任意の変圧器。
【0052】
LCS200は、上述の通り、1以上のコールドプレート160を含んでおり、それらは、HPD-HF変圧器120の構成要素に接着、その中に埋設又は他の方法で構造的に密着/熱結合される。
【0053】
コールドプレート
図面では、コールドプレート160は、6つの実質的に平坦で互いに直交する表面を有する実質的に立方体として示してあるが、その他の形状も可能である。本システム及び方法の幾つかの実施形態では、変圧器100の他の構成要素135.2,135.1,145との適合性を高め、表面接触を増加させ、或いは電流又は磁気相互作用を増加させるため、コールドプレートを非立方体に成形すること又は様々な拡張部を有する修正立方体に成形することが有利となることがある。本システム及び方法の幾つかの実施形態では、コールドプレート160を軽量化するため、追加の熱伝導性を与えるため、又はコールドプレート160に補助的な空冷を与えるため、コールドプレートが、例えば、限定されるものではないが、隆線、隆起、溝、他のテクスチャ又は表面高さの変動を始めとする、テクスチャ表面を有すること或いは非線形(湾曲)部分を有することが有利となることがある。
【0054】
幾つかの実施形態では、コールドプレート160は、1種類の金属、1種類の金属合金、1種類のセラミック材料、1種類のポリマー材料、炭素系材料その他の1種類の非鉄・非導電性・熱伝導材料から製造し得る。別の実施形態では、コールドプレート160は、2種以上の材料から製造してもよく、例えば、コールドプレートの第1の側面とコールドプレートの第2の側面に異なる種類の材料を用いてもよく、場合によっては内部流路260(後述)のライニングに第3の材料を用いてもよい。一実施形態では、空気に露出されるコールドプレートの表面は、熱漏れを防ぐため、火災又は火傷を防ぐため、及び/又は冷却剤流路260を通しての最大熱伝達を維持するため、その露出表面に取り付けられた絶縁材料を有していてもよい。
【0055】
冷却剤流路
コールドプレート160の内部には、コールドプレート160を通して冷却液240を導く1以上の冷却剤流路260がある。
図2に示す冷却剤流路260の数、幾何学的構成、(コールドプレートの寸法に対する)相対的な幅及び/又は直径、並びに配置は例示にすぎず、本システム及び方法の技術的範囲内で冷却剤流路260の数多くの代替構成を使用し得る。冷却剤流路260は、コールドプレート160の最短幅310(
図3A参照)と同程度の直径を有するバルク/マクロチャネルであってもよいし、或いはコールドプレート160の最短幅310よりも実質的に小さな直径を有するマイクロチャネルであってもよい。
【0056】
冷却剤流路260について、本明細書ではコールドプレート160の「内部」と記載しているが、「内部流路」とは、コールドプレート160の金属表面がコールドプレート160の平坦面、平滑面又は隆起面の上に部分的に延在又は突出し得る冷却流路、及び/又はコールドプレート160の平坦面、平滑面又は隆起面に結合された冷却液240を運ぶ冷却管(例えば金属管)を含むと解される。
【0057】
冷却剤管
液体冷却剤240をコールドプレート160内の冷却剤流路260に流入・流出させるのは、1以上の流入冷却剤管165.1及び1以上の流出冷却剤管165.2である。ここでも、
図2に示す1本の流入冷却剤管165.1及び1本の流出冷却剤管165.2は例示にすぎず、(
図1と同様に)さらに多くの冷却剤管165を用いてもよい。
図1及び
図2はいずれも、冷却剤管165を狭い側面185に沿ってコールドプレート160に流入/流出するものとして示しているが、これは例示にすぎない。別の実施形態では、1以上の冷却剤管165を、コールドプレート160の大きな平坦表面190に沿って取り付け、冷却剤の流入及び流出させてもよい。
【0058】
例示的な冷却システム200は、例えば、限定されるものではないが、枚数を増減させたコールドプレート160、磁気コア145(
図4参照)の外面に接合させた1以上の代替又は追加のコールドプレート160、他の代替幾何形状、及び添付の特許請求の範囲の技術的範囲に属する他の変形を含んでいてもよい。
【0059】
例示的な冷却システム200は、添付の特許請求の範囲では単に「ポンプシステム(210)」と呼ぶポンプ/熱交換サブシステム210を含んでいてもよく、これは、「調節システム」210、「濾過システム」210、「冷却剤前処理システム」210などの用語で呼ぶこともある。ポンプ/熱交換サブシステム210としては、例えば、限定されるものではないが、以下のものを挙げることができる。
(i)液体ポンプ215。一実施形態では、第1の冷却剤ポンプ215は、入力冷却剤管165.1を介してコールドプレート160に低温冷却剤240を流入させるための圧力を加え、第2の冷却剤ポンプ215は、使用済み冷却剤及び(バイパス/混合弁220からの)新鮮な冷却剤のいずれか又は両方を冷却剤前処理ユニット225に圧入する。図示した2つのポンプは例示にすぎない。他のポンプも使用することができ、例えば、新鮮な低温冷却液240を冷却剤管165に直接又は熱交換器235に引き込むための新鮮冷却剤入力ポンプ(図示せず)を使用してもよい。
(ii)高温冷却剤240から熱を除去して環境ヒートシンク295に伝達するため及び/又は環境冷熱源201を介して液体冷却剤240を冷却するための熱交換器235。
(iii)加熱された冷却液240の一部を新鮮な冷却液240と混合することによって、又は低温冷却液240とリサイクル高温冷却液240とを交互に使用することによって、加熱された冷却液240の一部をリサイクルすることができるバイパス/混合弁220。
(iv)金属又は非金属粒子、汚れ及び外来化学物質を除去するため冷却液240を清浄化又は濾過することができる、或いは冷却液240に化学添加剤(不凍剤など)を供給するこlとができる冷却剤前処理ユニット225。
(v)冷却液240のための短期的貯蔵又は冷却剤緩衝装置を提供する冷却剤貯蔵槽230。
【0060】
当業者には明らかであろうが、例示的な冷却システム200、特にポンプ/熱交換システム210は、
図2に記載されていない他の構成要素、例えば、弁;温度検知装置;圧力検知装置;追加の化学物質又は冷却剤貯蔵槽;ソフトウェア及びファームウェアを介して冷却システム220を制御する内部プロセッサ及びメモリ;ポンプ215、弁、プロセッサ及びメモリに電力を供給する内部電気システム、並びに冷却システム200の外部モニタリングのための入力及び出力制御/データポートなどを含んでいてもよい。かかる追加の構成要素は、幾つかの実施形態では、PEBB LRU及び/又は液体冷却素子100,700を備える1以上の変圧器を含む電力変換器の構造の一部をなす。
【0061】
本システム及び方法の実施形態では、ポンプ/熱交換サブシステム210の複数の構成要素は、共通のサブシステム筐体280に収容し、構造的に統合してもよく、便利な装着及びモジュール化をもたらす。本システム及び方法の実施形態では、筐体280内のポンプシステム210構成要素は、複数の変圧器100(
図2に示す単一の変圧器100は例示にすぎず、限定的なものではない)に圧力、前処理冷却水、及び加熱冷却水の除去をもたらしてもよい。
【0062】
無空冷又は限定的空冷
上述の説明及び図面並びに以降の説明及び図面から明らかな通り、本システム及び方法の液体式変圧器冷却は、変圧器の固体材料成分とコールドプレート160と液体冷却剤240との熱伝達を介して変圧器120で発生する熱のすべて又は実質的に大半を除去する。幾つかの実施形態では、変圧器120のすぐ周囲にある周囲空気を介しての熱伝達は、本質的に無視できる程度であってもよい。
【0063】
別の実施形態では、変圧器120からその周囲の空気を介しての熱伝達は、ある程度の実質的又は有益な追加冷却をもたらし得るが、熱除去の支配的モードは、依然として、主に、(i)変圧器コイル135及びコア145からコールドプレート160への熱の流れ、次いで(ii)コールドプレート160内を流れる液体冷却剤240を介してのコールドプレート160から外部環境ヒートシンク295への熱の流れによるものである。
【0064】
冷熱源及び環境ヒートシンク
図2に示す例示的な環境冷熱源201及び例示的な環境ヒートシンク295は、例示的な冷却システム200とは別に多大な環境要素であると理解される。例えば、船舶向け電力変換器用途の場合、環境冷熱源201及び環境ヒートシンク295はいずれも、全般的な船舶処理水又は冷水供給システム、船舶が航行する海、海洋又は河川の水とし得る。別の例として、航空機向け電力変換器用途の場合、環境冷熱源201及び環境ヒートシンク295はいずれも、航空機の外部の空気とし得る。
【0065】
図3Aは、液体冷却システム200(
図2参照)の一体型コールドプレート(TICP)を備える例示的なHPD-HF変圧器120を示す。(
図3A中、一体型コールドプレート(TICP)を備える結合型変圧器120には、符号100.2を付した)。例示的なTICP100.2の幾つかの構成要素は、
図1の例示的なTICP100.1及び/又は
図2の冷却システム200の構成要素と同一又は実質的に同様であり、冗長さを避けるため、
図1及び/又は
図2で既に説明したそれらの構成要素の詳細について繰り返し説明することは避ける。
【0066】
図3Aでは、一体型コールドプレートを備える変圧器(TIPC)100.2を断面図で示しており、
図1の実施形態100.1と比べると、幾つかの構成要素が省略されている。
図3Aの断面図では、内部コア素子147は存在しない。
【0067】
TICP100.2では、一次コイル135.1は1個しか用いられておらず、2つの二次コイル135.2の間に挟装されている。二次コイル135.2の外周面には、2枚のコールドプレート160が用いられる。コールドプレート160は、磁気コア145とも熱的に接触している。コールドプレート160(又は熱交換プレート160)を貫く内部流路260を有する冷却剤導管160も示してある。TLCS100.2の積層順序は「C-S-P-S-C」である。
【0068】
図3Bは、液体冷却システム200の一体型コールドプレート(TICP)100.3を備える別の例示的なHPD-HF変圧器120を示す。(
図3B中、一体型コールドプレート(160)を備える複合変圧器120自体(TICP)には、符号100.3を付した)。
【0069】
図3Bでは、一体型コールドプレートを備える変圧器(TIPC)100.3を断面図で示しており、
図1の実施形態100.1と比べると、幾つかの構成要素が省略されている。
図3Bの断面図において、内部コア素子147は存在しない。
【0070】
例示的なTICP100.3の幾つかの構成要素は、
図1の例示的なTICP100.1及び/又は
図2の冷却システム200の構成要素と同一又は実質的に同様であり、
図1及び/又は
図2で既に説明したそれらの構成要素の詳細について繰り返し説明することは避ける。
【0071】
図3Bでは、TICP100.3を断面図で示しており、
図1の実施形態100.1と比べると、幾つかの構成要素が省略されている。TICP100.3では、1個の一次コイル135.1と1個の二次コイル135.2だけが使用され、それらの間に1枚のコールドプレート/熱交換プレートが熱結合される。コールドプレート160は、磁気コア145とも限定的に熱接触している。TICP100.3の積層順序は「S-C-P」である。
【0072】
図4は、液体冷却システム200の一体型コールドプレート(TICP)100.4を備える別の例示的なHPD-HF変圧器120を示す。例示的なTICP100.4の幾つかの構成要素は、
図1の例示的なTICP100.1及び/又は
図2の冷却システム200の構成要素と同一又は実質的に同様であり、
図1及び/又は
図2で既に説明したそれらの構成要素の詳細について繰り返し説明することは避ける。
図4の断面図では、内部コア素子147が存在する(そのため、2枚のコールドプレート160’及び160”の各々並びに各々1個づつのコイル135が2つの部分に分割されているように見える)。
【0073】
図4に示すTICP100.4は、
図1の実施形態100.1と比べると、幾つかの構成要素が省略されている。TICP100.4では、1個の一次コイル135.1及び2個の二次コイル135.2だけが使用される。4枚のコールドプレート/熱交換器160が使用されており、(i)2枚のコールドプレート160’、160”は、2個の二次コイル135.2の各々の表面と物理的かつ熱的に結合され、磁気コア145とも物理的/熱的に内部接触し、(ii)2枚のコールドプレート160が鉄コア145の外部表面に取り付けられて熱結合している。TICP100.4の積層順序は「C-F-C-S-P-S-C-F-C」である。
【0074】
以上の実施形態で例示及び説明した一次コイル135.1、二次コイル135.2、コールドプレート160及び鉄コア部材145、147の構成要素の配置及び順序は、例示にすぎず、限定的なものでない。以下でさらに説明するように、添付の特許請求の範囲の技術的範囲内で他の配置も容易に想定できる。
【0075】
一般化された変圧器部品の配置
当業者には明らかであろうが、また、上記の説明及び関連する図面に基づいて、液体冷却式変圧器(100)の様々な実施形態は、例えば、限定されるものではないが、以下の(i)~(ix)を、単独で又は場合によっては組合せて含むことができる。
(i)コールドプレート160の第1の主表面190(最大面又は2つの最大面のうちの一方)が、(i)コア145及び(ii)コイル部品135.1,135.2のうちの少なくとも1つの第2の主表面190と接触し、かつ熱結合しているもの。第1及び第2の主表面190は、拡大された表面接触を促進し、もって第1の主表面190と第2の主表面190との間の効果的な熱伝達を促進するように相互に成形されている。(例えば
図1、
図3A/
図3B、
図4、
図5参照)。(なお、
図1中、コア145とコイル部品135の接触主表面は、直接見えていないので、符号は付していない。)。
(ii)上記(i)に記載の液体冷却式変圧器160であって、第1の主表面190及び第2の主表面190が平坦な表面であるもの。(例えば
図1、
図3A/
図3B、
図4、
図5参照)。
(iii)1枚のコールドプレート160が第1の主表面190と対向する第2の主表面190とを有し、対向する2つの主表面190の各々が、コア145及び2個のコイル部品(135.1,135.2)から選択される複数の変圧器構成要素の異なるものの主表面190と接触しているもの。(例えば
図1、
図3A/
図3B、
図4、
図5参照)。
(iv)1枚のコールドプレート160が、(a)コア145とコイル部品135.1,135.2の一方(
図1、
図3参照)又は(b)2個のコイル部品135.1(
図1、
図4、
図5参照)の少なくともいずれかの間に物理的に位置し、その主表面190に沿って物理的に接触し、かつその主表面190に沿って熱結合しているもの。
(v)2以上の別個のコールドプレート160であって、2以上のコールドプレート160が、コア145、第1のコイル部品135.1及び第2のコイル部品135.2から選択される2以上の異なる非隣接変圧器構成要素と物理的に接触しかつ熱的に接触するように構成及び配置されているもの(
図3A参照)。
(vi)2以上の別個のコールドプレート160であって、2以上のコールドプレート160が、コア145、第1のコイル部品135.1及び第2のコイル部品135.2から選択される3以上の異なる変圧器構成要素に物理的に接触しかつ熱接触するように構成及び配置されているもの。(
図1、
図3、
図5参照)。
(vii)2以上の一次コイル135.1及び/又は2以上の二次コイル135.2(
図1、
図3及び
図5参照)を使用してもよい。かかる実施形態では、必須ではないが、通例、様々なコイル135間に挟装される2以上の別個のコールドプレート160が用いられる。
(viii)一次コイル135.1及び二次コイル135.2を物理的及び熱的に直接接触するように配置し、両者から熱を除去するため、物理的に直接結合したコイル135に1又は2枚のコールドプレート160を取り付けてもよい。
(ix)1枚のコールドプレート160を、コイル135及びコアの両者からの熱除去のため、2つの異なるコイル135(135.1/135.1、135.1/135.2又は135.2/135.2)と物理的及び熱的に直接接触し、かつ1以上のコア145とも物理的及び熱的に直接接触するように構成してもよい。幾つかの実施形態では、これは、コールドプレート160の副表面195の少なくとも一方をコア145と接触させ、コールドプレート160の向かい合った主表面190を2つの異なるコイル135と接触しさせることによって達成される。
【0076】
一般に、コイル135、コア145及びコールドプレート160の他の幾何学的配置並びに形状及び相対的寸法も想定され、添付の特許請求の範囲の技術的範囲に属することがある。例えば、図示していない実施形態では、コア145を、2つのコイル135.1,135.2の間に層として固定してブロック構造を形成し、得られたブロックの2面、3面又は最大6面に複数のコールドプレート160を配置してもよい。また、図に示す一次及び二次コイル135の最大の数は各々2つであるが、適切に電気的に結合すれば、あるタイプ(低電圧及び/又は高電圧)の2以上のコイル135を用いてもよい。必要に応じて追加のコールドプレート160を使用してもよい。
【0077】
例示的な用途、電力変換器
図5は、本システム及び方法に従って、液体冷却システム200又は液体浸漬変圧器700(
図7及び以下の関連する説明参照)を用いる例示的な電力変換器500を示す。例示的な電力変換器500は、例えば、限定されるものではないが、以下の(i)~(iv)を含んでいてもよい。
(i)2以上のパワーエレクトロニクスビルディングブロック最小互換ユニット(PEBB)510。各PEBB510.1,510.2は、それ自身のTICP100、さらにパワースイッチを有するブリッジ変換器のような他のパワー要素515(
図5では詳細には図示せず)を有する。例示的なPEBB510、特にハイブリッドPEBB(HPEBB)のさらに詳しい説明については、以下の
図9を参照されたい。2つのPEBB510.1,510.2は、1以上の電力カップリング530によって電気的/電流的にリンクされる。電力変換器500は、少なくとも電源(又は入力)電力接続及び1以上の負荷(又は出力)電力接続を有するが、図示していない。
(ii)1以上のポンプ/熱交換サブシステム210。図示した実施形態では、1個のポンプ/熱交換サブシステム210で、電力変換器500のすべてのコールドプレートに冷却剤を供給してもよい。図示しない別の実施形態では、2以上のポンプ/熱交換サブシステム210を使用してもよい。
(iii)他の変換器要素520。例えば、限定されるものではないが、追加又は補足の冷却システム(ファン式空冷システムなど)、制御システム及び回路、監視システム、並びに入力及び出力電力ポートなどが挙げられる。
(iv)変圧器100に一体化されたコールドプレート160.1に加えて、追加のシステム冷却のため追加のコールドプレート160.2を設けてもよい。
図5には、例えばPEBB510の外部に取り付けることができる4つの例示的な追加のコールドプレート160.2が示してあるが、他のコールドプレート160も想定し得る。
図5には、電力変換器500の外部に取り付けられた1つの例示的なコールドプレート160.3も示してあるが、追加の外部コールドプレート160.3を使用してもよい。
【0078】
なお、
図5に示す2つのPEBB510.1,510.2の変圧器100は、「C-S-P-S-C」積層配置を用いているが、これは例示にすぎず、他の積層配置も本システム及び添付の特許請求の範囲の技術的範囲に属する。
【0079】
例示的なTICP100’、100”の幾つかの構成要素は、
図1の例示的なTICP100.1及び/又は
図2の冷却システム200の構成要素と同一又は実質的に同様であり、
図1及び/又は
図2で既に説明したそれらの構成要素の詳細について繰り返し説明することは避ける。
【0080】
コイル部品(コイル)
図6Aは、例示的な変圧器100の例示的な固体コイル部品135(単に「コイル135」ともいう)の実施形態の断面図であり、固体コイル部品135は低電圧/二次コイル135.2又は高電圧一次コイル135.1のいずれであってもよい。導電性ワイヤ/金属フィルム610は、外部電気接続部640を除いてワイヤ/金属フィルム610がコイル支持材料620中に完全に埋設されるように、コイル支持材料620の平坦な内面上で様々な平坦化されたらせん表面配置の列のいずれで配置すればよい。本システム及び方法に則して、外部電気接続部640を除いて導電性フィラメント610がコイル支持材料620内に完全に埋設されたまま残る導電性ワイヤ/金属フィルム610に対して、他のコイル巻回又は巻線状表面パターン(図示せず)を同様に行ってもよい。
図6Bは、例示的な変圧器100の固体コイル部品135(単に「コイル135」ともいう)の別の例示的実施形態の2つの断面図(I、II)であり、固体コイル部品135は低電圧/二次コイル135.2又は高電圧一次コイル135.1のいずれであってもよい。図示した断面の実施形態では、コイル135の導電性ワイヤ610又は金属フィルム610を、コイル支持材料620の平坦化セクション620.1の周りに巻回してもよく、ワイヤ610及び平坦化セクションは、コイル支持材料620の封入ブロック620.2内にさらに埋設される。
【0081】
別の実施形態(図示せず)では、導電性ワイヤ/金属フィルム610は、コイル支持材料620の狭い内面又はマイクロチャネル内面上の様々な平坦化されたらせん表面配置、他の平坦化巻線表面パターン(電流による磁気誘導に好適)のいずれで配置してもよく、外部の電気接続640を除いて依然としてコイル支持材料620内に完全に埋設される。本システム及び方法に則して、外部電気接続部640を除いてフィラメントがコイル支持材料620内に完全に埋設されたまま残る導電性ワイヤ/金属フィルム610に対して、他の幾何学的なコイル状又は巻線配置(図示せず)を同様に行ってもよい。
【0082】
別の実施形態(図示せず)では、コイル135は、ワイヤ/フィラメント610の一部が、コイル支持材料620の内部に埋設され、巻回及び/又はコイル巻回されるように構成してもよく、ワイヤ/フィラメント610の一部は、場合によっては適切な電気絶縁と共に、固体コイル135の1以上の外面に近接していても、或いは部分的に又は全体的に露出していてもよい。
【0083】
当業者には明らかであろうが、ワイヤ/フィラメント610は、コイル支持材610に関連して、(i)コイル支持材料620が、ワイヤ/フィラメント610で発生する熱を実質的にすべて吸収するように、かつ(ii)固体コイル部品135が、熱結合した隣接材料(コールドプレート160又は別の固体コイル135のいずれかであってもよいし、或いは油740のような周囲の熱伝導性流体740であってもよい)に熱を放散するのに適した1以上の露出外表面を有するように、配置又は構成することができる。
【0084】
コイル材料
本システム及び方法の実施形態では、コイル支持材料620は、シリコンであってもよい。別の実施形態では、1以上のコイル支持材料620は、例えば、限定されるものではないが、樹脂、エポキシ、セラミック、ガラスその他の非導電性であるが熱伝導性の物質又は材料を含んでいてもよい。コイル135は、他の材料を含んでいてもよく、例えば、限定されるものではないが、(i)ポリマー又はポリマー複合材料(絶縁用)、例えば、エポキシ又はビスフェノールA型エポキシに60wt%の石英充填材を添加したもの、及び/又は(ii)ポリマー又はポリマー複合材料の代替物として絶縁に使用されるセラミック(例えばアルミナ)が挙げられる。
【0085】
一実施形態では、コイル支持材料620は、その内部に埋設された導電性(典型的には金属性)コイル610で発生しかねない最大200℃の温度でも(溶融、破壊、燃焼その他の崩壊を起こさずに)容易に維持できるように選択される。
【0086】
導電性材料
例示的な実施形態では、コイル135は、リッツ線のような金属又は金属合金或いは他の金属又は金属合金から製造し得る。
【0087】
例示的なHPD-HF型流体浸漬型変圧器
本システム及び方法の一実施形態では、本明細書で上述した実施形態の代替又は追加として、HF変圧器120全体を、実質的に密閉された容器710内に構造的に固定及び/又は懸架してもよい。容器全体に、鉱油(「油」)のような非導電性であるが熱伝導性の流体740を満たして、変圧器120が油740その他の熱伝導性流体740中に浸漬されるようにしてもよい。
【0088】
一実施形態では、選択される油740は、変圧器120からの熱伝達の媒体である。油740は、非常に優れた熱伝達体であると同時に優れた電気絶縁体である。さらに、流体740を熱伝達媒体として使用すると、油であれ他の熱伝達流体であれ、熱伝達媒体が最適な熱除去のため変圧器120のすべての露出面と完全に接触するのを担保できる。
【0089】
潜在的な冷却媒体としての空気と比較すると、油740は高い熱容量と良好な熱伝導率を有する。表1に、水、空気及び油(本システム及び方法に適用できる動作温度及び圧力の範囲に対して選択される)の近似的な相対的熱容量及び熱伝導率を示す。簡単のため、空気に正規化された熱容量の1を割り当てた。なお、(1)相対熱容量及び熱伝導率は、使用し得る油の種類によって変化し、(2)水は、油に比べて格段に優れた熱容量/熱伝導率を有するが、水の電気伝導率のため変圧器120の直接浸漬用の液体740としては使用できない。ただし、水は、コールドプレート160の冷却流路260での使用には適している。
【0090】
【0091】
図7は、本システム及び方法の一実施形態に係る熱伝達流体(HTF)740(油740であってもよい)中に浸漬された例示的なHPD-HF変圧器120を示し、これはすべて、表面にコールドプレート160が取付け又は一体化された熱管理筐体(HME)710内に収容されている。
【0092】
図7において、HTF740、HME710及びコールドプレート160との複合変圧器120自体(以下「流体浸漬型変圧器」(FIT))には、符号700.1を付した。FIT700.1は、例えば、パルス負荷電力変換用途に使用し得る高出力密度/高周波(HPD-HF)変圧器120を含んでいてもよい。
【0093】
一実施形態では、例示的なFIT700.1は、構造的に一体化されたユニットを形成し、換言すると、液体冷却システム200の幾つかの構成要素160,165,710,740と共にHPD-HF変圧器120の構造と物理的及び/又は熱的に結合される。FIT700.1は、2つの一次(高電圧/HV)コイル135.1及び2つの二次(低電圧/LV)コイル135.2と共にS-P-P-S構成で構成/組み立てられる。
【0094】
冷却流体用の空間的ギャップ
図に示す実施形態では、2つの高電圧コイル135.1の大きい平面間に空間的ギャップ730が存在する。この空間的ギャップ730は、熱伝達流体(HTF)740が空間的ギャップ730を充填して、高電圧コイル135.1とHTF740の間の熱伝達の速度を増加できるようにする。別の実施形態では、ギャップ730は存在しないか、或いは非導電性材料で充填される。
【0095】
熱管理筐体
変圧器120は、筐体710の1以上の内表面755に取り付けてもよいし、或いはストラット、ブラケットなどの取り付け具805を介して筐体710に機械的に結合して筐体内に懸架してもよい(
図8参照)。
図7に見られるように、変圧器120は、変圧器の複数の側面及び/又は複数の表面でHTF740によって実質的に囲繞されるように、筐体710内に配置してもよい。
【0096】
熱管理筐体(HME)710は流体の漏れを防ぐために密閉され、変圧器120との電気接続のための適切な流体封止ポート(図示せず)を備える。HME710の1以上の外壁/表面755には1以上のコールドプレート160が設けられ、HME710とコールドプレート160との間の効果的な熱伝達のために好適には接着される。
図7には2枚のコールドプレート160が示してあるが、追加のコールドプレート160をHME710の別の外面755に配置してもよい。一実施形態では、コールドプレート160は、筐体の壁/外装面と実質的に同じ形状(例えば長方形)である。
【0097】
別の実施形態では、別の形状(例えば円形又は楕円形)をコールドプレート160に用いてもよい。別の実施形態では、HME710は、立方体以外の形状(例えば球形、卵形又は6以上の平坦な外面755を有する)を有していてもよく、コールドプレート160とHME710の間の効果的な熱接触を確保するため、コールドプレート160の取付けに適した形状を有する。
【0098】
HME710は、高温流体740を収容するとともに流体740からコールドプレート160へと熱を伝えるのに適した材料で作ることができる。かかる材料としては、例えば、限定されるものではないが、変圧器120と適切に電気的絶縁された金属又は金属合金(好ましくは非鉄金属)、セラミック材料、ポリマー材料、ガラス材料又は炭素複合材料などが挙げられる。
【0099】
別の実施形態では、HME710とコールドプレートは、単一の一体化構造ユニットを形成するように、成形、鋳造又は金属接合してもよい。かかる実施形態では、コールドプレート160は、HME710の厚肉化した壁内を冷却剤流路260が貫通する熱管理筐体710の1以上の厚肉化された壁755として視認することができる。
【0100】
変圧器の動作中、巻線コイル135.2,135.1及び磁性コア本体145で発生した熱は、HTF740を介してHME外装/壁755に伝達/輸送される。
【0101】
冷却液/液体
2種類の異なる冷却流体/液体を、例示的な流体浸漬型変圧器700.1に関して使用し得る。例えば、熱伝導性流体(HTF)740は、熱伝達に有効であるが有効な電気絶縁体でもある油その他の複雑な炭化水素液体であってもよいし、コールドプレート160の冷却流路260を流れる液体冷却剤240は、例えば、限定されるものではないが、水道水、産業用水、冷水、脱イオン水、海水、又は不凍液のような適切な調整液で処理した水、並びに場合により油性冷却剤、有機液体冷却剤又はシリコーン系冷却剤であってもよい。他の冷却液も、添付の特許請求の範囲に則して使用することができる。
【0102】
潜在的に腐食性である冷却液240(例えば、船舶向け電力変換器で使用される塩分を含む海水又は海洋水)を用いるように構成された実施形態では、冷却剤流路260の内表面に適切な防食材料又はライニングを用いてもよい。別の実施形態では、潜在的に腐食性の物質を濾別するためにフィルタエレメント(図示せず)を使用してもよい。
【0103】
例示的なコールドプレート160及び冷却剤流路260のその他の詳細については、本明細書で既に説明しており、ここで詳細を繰り返すことは避ける。
【0104】
ポンプシステム
ポンプ/熱交換サブシステム210(添付の特許請求の範囲では「ポンプシステム210」と記載)は、所要の流量、圧力及び液体質(濾過等)をもたらし、変圧器120で発生する廃熱の大半を除去し、周囲環境に放出される熱を最小限にするために必要とされることがある。かかるポンプシステムは、例えば、限定されるものではないが、ポンプ、弁、熱交換器、冷却剤前処理部品(例えば濾過、脱ガス、脱鉄など)及び冷却剤240貯蔵槽を含んでいてもよい。
図2の例示的なポンプ/熱交換サブシステム210と同一又は実質的に同様のポンプシステム210をここでも用いることができるので、詳細について繰り返し説明することは避ける。
【0105】
熱伝導性流体の循環
図示していない別の実施形態では、HME710内でHTF740を循環させることが熱伝導に有利となることがある。この目的のために、内部ファン又はポンプシステム(
図7には図示せず)を、HME710内に内在させてもよい。別の実施形態では、別個のHTFポンプシステムを筐体710の外部に配置してもよく、適切な管を設けてHTF740の内部空間内でHTF740を循環させる。
【0106】
流体浸漬型変圧器の追加の実施形態
図8は、本システム及び方法の別の実施形態に係る例示的な流体浸漬変流器(FIT)700の別の幾つかの実施形態の断面図を示し、本システム及び方法の代替の実施形態に従って、変圧器120を熱伝達流体(HTF)740中に浸漬することができ、全体が、コールドプレート160が取り付けられた熱管理筐体(HME)710内に収容される。
【0107】
図8において、FIT740には、それぞれ740.2~740.5を付した。FIT740.2~740.5は、概して、
図7の例示的なFIT740.1と同様の方法並びに同様の配置及び構成で構成及び配置される。
図7並びに他の図面に関して既に説明した幾つかの詳細については、繰り返して説明することは避ける。
【0108】
図8において、本システム及び方法の一実施形態では、FIT700.2は、1つの一次(高電圧/HV)コイル135.1と1つの二次(低電圧/LV)コイル135.2とをそれらの間に流体ギャップ730を挟んでS-G-P配置で含んでいる。コールドプレート160の冷却流路260は、断面図の平面に対して直交している。
【0109】
別の実施形態では、FIT700.3で示すように、変圧器120は、互いに物理的及び熱的に直接接触する1つの一次(高電圧/HV)コイル135.1及び1つの二次(低電圧/LV)コイル135.2(P-S構成)を有する。変圧器120をHME710の内壁に固定するために、ストラット805その他の機械的接続を用いてもよい。熱は、変圧器120の側面、上面及び底面上のHTF740を介して運び去られる。コールドプレート160は、断面図の平面と直交する多数のマイクロチャネル冷却剤流路260を有する。FIT700.3は、例示的な変圧器電気接続部185を示すが、これらは図示されていなくても変圧器120に必ず存在する。
【0110】
別の実施形態では、FIT700.4で示すように、変圧器120は、2つの一次(高電圧/HV)コイル135.1及び1つの二次(低電圧/LV)コイル135.2を有し、3つのコイル135の間にHTF740で満たされた2つのギャップ780があり、P-G-S-G-P構成をなしている。変圧器120の入力側及び出力側の筐体710の内部空間にも、冷却流体が存在する。熱は、変圧器120の側面、上面及び底面上のHTF740を介して運び去られる。コールドプレート160は、断面図の平面と平行な多数のマイクロチャネル冷却剤流路260を有する。 d
【0111】
別の実施形態では、FIT700.5で示すように、変圧器120は、すべて互いに物理的及び熱的に接触する2つの一次(高電圧/HV)コイル135.1及び1つの二次(低電圧/LV)コイル135.2を備えており、P-S-P構成をなす。変圧器120は、ストラット805その他の機械的接続を介して熱管理筐体(HME)710内に懸架される。熱は、変圧器120の側面、上面及び底面上のHTF740を介して運び去られる。
【0112】
変圧器120の入力側及び出力側の筐体710の内部空間にも、冷却流体が存在する。熱は、変圧器120の側面、上面及び底面上のHTF740を介して運び去られる。コールドプレート160は、断面図の平面と平行な多数のマイクロチャネル冷却剤流路260を有する。
【0113】
当業者には明らかであろうが、
図7及び
図8のFITS700の実施形態は例示にすぎず、異なる例示的な実施形態の構成要素を種々組合せることができる。本システム及び方法の技術的範囲内で他の構成/実施形態も可能であり、例えば、限定されるものではないが、コイル135を、S-P-S、S-G-P-S、S-P-G-S、S-G-P-G-S、S-P-P-S、S-G-P-S、S-G-P-Sその他の構成で配置などの構成で配置してもよい。
【0114】
熱伝達
FIT700では、変圧器本体120は、油のようなHTF740中に浸漬される。変圧器120で発生した熱は、油740を介して、HME710の外装/筐体壁755に熱輸送される。この熱は、次いで、筐体外装/壁755と物理的及び熱的に接触するコールドプレート160の冷却剤流路を流れる冷却液240によって除去される。
【0115】
追加のFITの実施形態
FIT700に関する本システム及び方法の幾つかの例示的な実施形態では、コールドプレート160(「熱交換器プレート」160ともいう)は、図面に示すように、コイル135の平面と平行に構成される。代替的な実施形態では、コールドプレート160は、コイル135の平面と直交する平面に沿って筐体壁755の外面に取り付けてもよい。代替的な実施形態では、2以上のコールドプレート160をHME710の755の異なる外面に沿って取り付けてもよく、その結果、幾つかのコールドプレート160をコイル135の平面に平行に取り付け、他のコールドプレート160をコイル135の平面に直交するように取り付けてもよい。別の実施形態では、1枚のコールドプレート160を筐体710の1つの壁755に取り付ければ、変圧器120を冷却するのに十分であることもある。
【0116】
別の実施形態では、1以上のコールドプレート160をHME710の内部に配置し、コールドプレートを通して冷却液240を流すための適切な冷却剤管165を取り付けてもよい。
【0117】
別の実施形態では、油740をHME710の内部で循環させるために、油ポンプシステムを使用してもよい。
【0118】
別の実施形態では、2以上の変圧器120を1個の熱管理筐体710内に収容し、1個のHME710にコールドプレート160を取り付けて、すべての変圧器で発生する熱を除去してもよい。
【0119】
当業者には明らかであろうが、ある最終設計の多くの詳細は、変圧器で生成すべき電力及び所期の電力変換器用途のための空間的制約を始めとする、用途の仕様に応じて変わることがある。したがって、コイル135の数、コア145の数及び寸法、コールドプレート160の寸法/重量/材料/配置、冷却剤流路260の数及び断面形状、使用すべき冷却剤流体240,740の種類、その他の多くの特定の設計要因などの詳細は、特定の用途に応じて決定及び最適化される。特定のTICP100又はFIT700について、至適又は近至適な、特定の構造、材料及び構成の選択を特定するために、提案された設計選択の実験室及び実環境試験が必要とされることがある。
【0120】
以上で詳しく説明した変圧器部品135,145に加えて、変圧器120は、電流/電気コネクタ185、並びに様々なネジ、ナット、ボルト、クランプ、ブレースその他の物理的部品など、熱を発生するもの(例えば電流/電気コネクタ(185))、或いはコイル135及び/又はコア145から熱を受け取るものなど、様々な追加部品を含むことがある。熱伝達性流体740は、これらの追加の変圧器構成要素の露出部分とも物理的に接触して熱伝達してもよく、追加の物理的部品の露出表面から熱を除去する。
【0121】
冷却液/流体
様々な実施形態では、本システム及び方法は、直接的な物理的接触によって促進される熱伝達及び熱対流の幾つかの進行段階を用いて、変圧器部品/構成要素135,145から以下の(i)~(ii)のいずれかへ熱を移動させる。
(i)伝導によって、さらにはコールドプレート160内を流れる冷却液240による熱対流によって、コールドプレート160へ、又は
(ii)熱伝導性流体740中の対流によって、変圧器120及び熱伝導性流体740を収容する熱管理筐体710の壁755へ、次いで熱伝導によって、さらにはコールドプレート160内を流れる冷却液240による熱対流によって、壁755に取り付けられたコールドプレート160へ。
【0122】
上述の実施形態では、用いられる冷却液240及び熱伝導性流体740は、一般に、室温で通常液体状態である液体/流体(水又は水性液体、又はほとんどの油など)として特徴付けられ、さらに一般的には水の氷点超の温度範囲で液体状態である。かかる流体は、容易に貯蔵でき、管及び導管を介して輸送することができる。以下、便宜上、これらの冷却剤を「室温冷却剤」と呼ぶ。
【0123】
かかる室温冷却剤は、(i)膨大で便利な供給(例えば、船舶向け電力変換器では海水、河川水又は海水から、コンパクト陸用電力変換器では河川からも、大量に吸水できる)、及び/又は(ii)市販品として入手可能(各種油など)、及び/又は(iii)比較的軽量の貯蔵槽に容易かつ簡便に貯蔵できるなどの利点を有し得る。かかる冷却剤は、特別な圧縮機を必要としないこともある。
【0124】
別の実施形態では、通常室温で気体である液体/流体240,740を(全体として又は「室温」流体に補助的に)使用することができ、そのため液体として使用するには圧縮機冷却又は過冷却しなければならない。かかる過冷却流体としては、例えば、限定されるものではないが、液体窒素、液体ヘリウム、液体酸素、液体二酸化炭素並びに各種の市販冷却剤が挙げられる。当業者には明らかであろうが、これらの液体のユーザーは、圧縮機、特別な貯蔵槽、及び本願に記載されていない他の構成要素を必要とすることがある。そのため、かかる圧縮機/過冷却流体を有する本システム及び方法の実施形態は、室温流体を用いる実施形態よりも重く、冷却のため多くの電力が必要とする。ただし、かかる実施形態は、超密/コンパクト電力変換器並びに非常にコンパクトな空間で一段と高レベルの電力発生(例えば一段と高い電圧電力スイッチ及び高い変圧器の巻線比)に設計される将来の電力変換器に有用である可能性がある。
【0125】
空冷式変圧器との比較
空冷式変圧器と比べると、本システム及び方法(典型的には、必須ではないが室温冷却剤/流体240,740を用いる)は、幾つかの利点をもたらす。利点として、例えば、限定されるものではないが、以下のものを挙げることができる。
(i)空冷式HFソリッドステート変圧器に比して、体積の減少(約35%)、
(ii)空冷HFソリッドステート変圧器に比して、電力密度の向上(~1.5倍)、
(iii)周囲環境への熱放出の減少(すなわち、電力変換器を収容する室又は施設の人間の活動及び呼吸のための空気の加熱の減少)、さらに人間環境のための空調/冷却の需要の減少に役立つこと、及び
(iv)一体型コールドプレートを備える変圧器(TICP)100及び流体浸漬型変圧器(FIT)700は、いずれも(空冷式変圧器に比して)軍用及び商用船舶の狭い/制約されたスペースへの適合性に優れ、減少したスペースは、他の目的のための「省スペース」の有益な利用法をもたらす。
【0126】
例示的用途:HPEBB
図9は、本システム及び方法に係る液体/流体冷却システム200,700(
図2、
図5及び
図7並びに上述の関連する説明参照)を用いる例示的なパワーエレクトロニクスビルディングブロック(PEBB)510を示す。具体的には、
図9は、例示的なハイブリッドパワーエレクトロニクスビルディングブロック(HPEBB)510を示す。なお、PEBBは、「[ハイブリッド]パワーエレクトロニクスビルディングブロック最小互換ユニット」(PEBB LRU又はHPEBB LRU)510/510.1とも呼ぶことができる。
【0127】
従来型PEBB510は、典型的には、PEBB510全体で等しい電圧定格(例えば1000Vの公称動作で1700V)の電力スイッチ915を用いる。従来型PEBBは、典型的には巻線比1対1の高出力変圧器120を用いる。
【0128】
例示的なHPEBB LRU510.1は、低電圧スイッチ及び高電圧スイッチ915の両方を使用し(そのため「ハイブリッド」という用語が当てられる)、これらは、幾つかの実施形態では炭化ケイ素(SiC)スイッチであってもよい。例えば、例示的な実施形態では、低電圧スイッチ915.1は、1000Vの公称動作のための1700V定格スイッチであってもよく、高電圧スイッチ915.2は、6000Vの公称動作のための10000V定格スイッチであってもよい。一般に、動作電圧をA及びB(ただしB>A)で表すと、Aは例えば限定されるものではないが1000V又は2000V或いはその他の電圧とすることができ、Bは例えば限定されるものではないが2000V、3000V、6000V或いはその他の電圧とすることができる。液体冷却のための本システム及び方法は、部分的には本願出願時に開発中の(ちょうど出現しつつある)高電力スイッチ115.2が活用されるHPEBB LRU510及び電力変換器500のための冷却のために設計される。
【0129】
例示的なHPEBB LRU510は、巻線比K:N(N>K、K=1、2…、N=2、3…)の高出力高周波変圧器120も用いる。
【0130】
様々な実施形態では、本システム及び方法に係るHPEBB式の変換器500は、従来型システムで必要とされる従来型PEBB LRU(従来型PEBBは、「PEBB1000LRU」と呼ばれ、通例公称1000V動作のための定格パワースイッチしか用いられない)の数よりも小数のHPEBB LRU510しか必要としない。そのため、本システム及び方法に係る電力変換器500は、電力変換器500の総体積及び重量が低減し、電力変換器500の電力密度及び比出力を増大させることができる。本システム及び方法の一実施形態では、電力スイッチ915は、
図9に示すように、ダイオードと並列のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)として実装される。別の実施形態では、パワースイッチ915は、
図9に図示されるように、ダイオードと並列にIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)として実装される。当業者には明らかであろうが、パワースイッチ915は、本システム及び方法の技術的範囲内で、GaN(窒化ガリウム)ワイドバンドギャップデバイス、JFET、IGCT(集積化ゲート転流型サイリスタ)及びダイオードなどの1以上のパワートランジスタ及び他の部品の他の組合せとして実装し得る。
【0131】
図9の510の例示的なHPEBB LRUでは、合計4つのブリッジ変換器910が用いられる。別の実施形態では、合計2又は3個以上のブリッジ変換器910を使用してもよい。なお、当技術分野において、ブリッジ変換器910は、例えば、限定されるものではないが、パワーステージ、パワーブリッジ、Hブリッジ変換器及びフルブリッジ変換器を始めとする別の用語で呼ばれることもある。
【0132】
例示的なHPEBB LRU510は、低電圧素子905.1と高電圧素子905.2とを連結するように構成されたK:N(N=2、3…)高周波(HF)変圧器120も例示している。すなわち、例示的なHPEBB510は、例えば、限定されるものではないが、1:3比又は1:6比などのK:Nのように、1(1:1)よりも高い巻線比の高周波(HF)変圧器120を介して、低電圧素子905.1と高電圧素子905.2を結合させる。
【0133】
本システムの幾つかの実施形態では、例示的な高出力スイッチングデバイス915.2は、本願の出願時にCree社(米国ノースカロライナ州ダーラム、シリコンドライブ4600)によって開発中の10kV SiC MOSFETからなる又は含むことができる。例示的な実施形態では、低電圧側905.1のブリッジ変換器910.1は、1.7kVのSiCMOSFET/IGBTデバイスを使用することができ、高電圧側905.2のブリッジ変換器910.2は、10kVのSiC MOSFET/IGBTデバイスを使用することができる。巻線/巻数比1:3(低電圧側で1、高電圧側で3)のHFソリッドステート変圧器120を備える例示的な実施形態では、複数のそうしたHPEBB510は、スペース及び電力密度効率の良い1kVdc-13.8kVAC電力変換のための単一の電力変換器として構成することができる。
【0134】
別の実施形態では、高出力スイッチ115.2は、限定されるものではないが、高出力MOSFET及び/又は高出力IGBTを始めとする、公知又は開発中の他の高出力スイッチを介して実装してもよい。HF変圧器120の高い巻数比(例えば1:3)は電圧ブーストをもたらし、ハイブリッドPEBB(1000/6000)が高い中電圧(MV)(>12kV)用途でも電圧制限されないようにする。
【0135】
HPEBB熱管理
低電圧側部品905.1と高電圧側部品905.2との間のガルバニ絶縁をもたらすK:N高出力密度/高周波変圧器120は、本明細書全体に記載された例示的冷却システム100,200,700の恩恵を受けるのに十分なレベルの熱(及び熱生成の速度)を発生する可能性がある。その結果、HPEBB LRU510は、例えば、限定されるものではないが、本願明細書全体に記載された冷却流体/液体240,740を始めとする、冷却要素を含んでいてもよい。
【0136】
電力変換器の体積及び重量
ハイブリッドPEBB LRU変換器510の体積及び重量は、一次側すなわち高電圧側905.2でのPEBB6000部品910.2,915.2の使用に伴って若干増加し、追加の冷却要件によってはさらに増加するおそれがある。しかし、必要とされるHPEBB LRU510の総数が(従来型電力変換器に比べて)減少するため、様々な実施形態では、例示的な1kVdc-13.8kV1MWハイブリッドPEBB電力変換器510の総体積及び重量は(電圧/電力容量が同じ従来型PEBB1000LRU型電力変換器の重量/体積に比べて)格段に減少する。
【0137】
このことに対応して、様々な実施形態では、本システムは、本願の冷却システム及び方法を用いたHPEBB LRU510の使用によって電力密度及び比出力が(同じ総電力容量を有する従来型PEBB1000LRU式の電力変換器の電力密度/比出力に比べて)格段に増加したHPEBB電力変換器500.1を提供する。
【0138】
例示的なHPEBB電力変換器500は、通例、キャビネット又はハウジング525(
図5参照)内に収容され、かかるキャビネット又はハウジング525には、上述の構成要素及び図示していないが当技術分野で公知の他の構成要素のすべてが収容される。キャビネット525には、例えば、限定されるものではないが、様々な内部構造支持要素(図示せず)、システムバス、電力バス、外部素子との接続用及び外部システムへの接続用のポート、空気流のための通気口、冷却システム525に関連する冷却剤のための配管又はダクト、外部状態表示ディスプレイ、フィードバック及び制御システム用の電子機器(プロセッサ及びメモリを含む)、並びに
図2に記載されていない他の構成要素などが収容又は取り付けられていてもよい。
【0139】
キャビネット又はハウジング525は、本明細書で詳細に説明した通り、1以上の冷却システム210の構成要素を収容していてもよい。
【0140】
制御システム
様々な例示的実施形態では、本システム及び方法は、スイッチ、コンデンサ、冷却システム、弁、ポンプ、フィルタその他のリアルタイム制御を必要とする因子の調節のための制御システムの使用又は統合を必要とすることがある。かかる制御システムは、当技術分野で公知の又は将来的に開発されるマイクロプロセッサ、デジタル入力/出力素子、メモリ(ランダムアクセスメモリ(RAM)及び様々な形態の不揮発性メモリなど)、ディスプレイシステム、音声入力及び/又は音声信号システム、及び/又はアナログ制御素子の使用を要することがある。かかる制御システムは、システム動作の様々な態様を制御するために、メモリに格納された適切なコード化されたソフトウェアを用いることができる。
【0141】
マイクロプロセッサ上で動作する制御システムのように、本システム及び方法にコンピュータコードが必要とされる場合、コンピュータ可読コードは、半導体、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、DVD-ROMなど)を始めとする公知のコンピュータ可用媒体、並びにコンピュータ可用(例えば可読)伝送媒体(搬送波その他デジタル、光学、アナログ媒体を始めとする媒体など)に具現されたコンピュータデータ信号として配設することができる。このように、コードは、インターネット及びイントラネットを含む通信ネットワークで伝送することができる。
【0142】
なお、上述のシステム及び技術に関連して達成すべき制御機能又は監視機能は、プログラムコードで具現化されるコア(CPUコアなど)で表すことができ、適切な回路、無線通信及び/又は光メッセージングを介してハードウェアに変換できる。
【0143】
結論
米海軍電力システム及びエネルギーシステム(NPES)技術のような海軍用途を始めとする船舶用途では、HPEBBブリッジ変換器910、HPEBB LRU510及び電力変換器500は、多機能エネルギー貯蔵モジュール(MFESM)の取り組みの一環として開発されている。特に、新興ハイブリッドPEBB LRU510では、コンパクトなスペースで大量の熱が発生する可能性のある高出力変圧器を用いる。本システム及び方法のHPD-HF変圧器用液体/流体冷却システム200は、かかるシステムで発生する熱を管理する上で多大な利点をもたらす。
【0144】
当業者は、特に上述の教示内容に照らして、本開示に依然として包含される代替的な実施形態、例及び修正をなすことができるであろう。さらに、本開示の説明に用いた用語は、限定ではなく、説明を言語的本質とするものである。
【0145】
本開示の技術的範囲から逸脱することなく、上述の好ましい実施形態及び代替的な実施形態の様々な適合及び修正を構成できることは当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲の技術的範囲内で、本明細書に具体的に記載された以外の形態で本開示を実施することができる。
【0146】
以上、特定の機能の具体例及びそれらの関係を例示する機能構成ブロックを用いて本発明を説明してきた。これらの機能構成ブロックの境界は、説明の便宜上、本明細書では任意に定義される。所定の機能及びそれらの関係が適切に実施できる限り、代替的な境界を定義することができる。
【0147】
本発明の様々な実施形態のシミュレーション、合成及び/又は製造は、部分的には、当技術分野で公知であると未開発であるとを問わず、金属、非金属、樹脂、エポキシ、半導体、ガラス、ポリマー、鉄材料、非鉄材料、導体、絶縁体、及び冷却用の水又は水性液体、冷却用の油その他の炭化水素系液体を始めとする、様々な材料の使用によって達成できる。
【0148】
発明を実施するための形態の欄(発明の概要の欄でも要約書でもなく)は、特許請求の範囲の解釈に用いられることを主目的とする。発明の概要の欄及び要約書は、発明者が想到した実施形態の1以上を記載したものであるが、すべてを記載したものとは限らず、本発明及び添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0149】
添付の特許請求の範囲において、符号は請求項の理解を図るためのものであり、請求項の保護範囲を限定するものではなく、それらの唯一の機能は、明細書及び図面における各構成要素への明確な参照を提供することである。
【符号の説明】
【0150】
100 液体冷却式変圧器
120 変圧器
135 コイル部品
145 変圧器コア
160 コールドプレート
165 冷却剤管
175 冷却剤ポート
185 電気接続
190 主表面
195 副表面
200 液体冷却システム
201 環境冷熱源
220 バイパス/混合弁
225 冷却剤前処理ユニット
230 冷却剤貯蔵槽
235 熱交換器
240 冷却液
260 冷却剤流路
280 筐体
295 環境ヒートシンク
525 キャビネット又はハウジング
610 導電性材料
700 流体浸漬型変圧器
710 熱管理筐体
【国際調査報告】