(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
E02D3/12 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561012
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 CN2022096738
(87)【国際公開番号】W WO2023000837
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202110829865.9
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518411338
【氏名又は名称】山東科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】張广超
(72)【発明者】
【氏名】陶广哲
(72)【発明者】
【氏名】李友
(72)【発明者】
【氏名】左昊
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB01
2D040AC01
2D040CA01
2D040CA02
2D040CA03
2D040CA10
2D040CB03
(57)【要約】
本発明は、深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法を開示し、まず、応力アーチ形成原理に従って、岩盤において安定する応力アーチを形成できる限界厚さを決定し、更に深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準を確立し、深部埋没層、厚い沖積層、岩盤の厚さが顕著に変化する地層条件での上層土構造のタイプ評価基準の面の空白を埋める。次に、上記基準に従って、極薄の岩盤及び薄い岩盤の地層条件に対して、増厚改造の設計領域の長さと厚さなどを含む岩盤の増厚改造の設計方法を提供し、最後に、薄い岩盤の増厚改造の設計方法を提供し、また、多水平傾斜頂部順方向グラウト方法を提供し、ボーリング孔の配置、グラウト材料などのパラメータを設定し、そのため、採掘場の災害事故への主動制御を実現し、従来の採掘場内の受動制御措置による災害事故を回避することができる。
【選択図】
図4a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法であって、以下のステップ1乃至ステップ3を含む。
深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準のステップ1であって、
岩盤の応力アーチの安定化を維持するアーチの限界厚さを決定するステップ1.1)であって、
岩盤において安定する応力アーチを形成する場合、応力アーチの限界厚さの式は、以下のとおりであり、
式中、D
archは応力アーチの厚さ、H
archは応力アーチの高さ、l
archは応力アーチのスパン、q(x)は岩盤における上層土の等分布荷重、θは任意の断面と岩盤アーチの標準断面との間の夾角、Rはアーチ脚にかかる垂直応力、Tはアーチ脚にかかる水平応力であり、ここで、R、Tの式は以下のとおりであり、
式中、応力アーチの高さH
archは、炭層からキー層までの高さであり、応力アーチのスパンl
archは、定期的な圧力の歩幅であり、岩盤における上層土の等分布荷重q(x)は、(1.2~2.0)xであり、xが(0.5~0.7)倍の定期的な圧力の歩幅であり、経験値に応じてθは5~10°であるステップ1.1)と、
応力アーチを形成できる岩盤の限界厚さを決定するステップ1.2)であって、
岩盤において安定する応力アーチを形成できる最小厚さは、限界厚さと呼ばれ、その式は、以下のとおりであり、
式中、ΣH
minは、応力アーチを形成できる岩盤の限界厚さ、D
archはアーチの限界厚さ、ΣH
cは落下帯の高さ、ΣH
Lは亀裂帯の高さであり、ここで、ΣH
cとΣH
Lは、調査研究中の上層土の強度に基づいて、経験式で算出した採掘場の落下帯の高さと亀裂帯の高さであるステップ1.2)と、
深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準を確立するステップ1.3)であって、
上層土の落下帯のΣH
c高さ、亀裂帯のΣH
L高さ、応力アーチの厚さD
arch、及び岩盤の厚さΣhの対応関係に基づいて、採掘場を極薄の岩盤、薄い岩盤及び正常の岩盤に分け、極薄の岩盤、薄い岩盤及び正常の岩盤の埋蔵条件での採掘場の岩圧発生程度に応じて、極薄の岩盤、薄い岩盤に対して増厚改造を行う必要があるステップ1.3)とを備えるステップ1と、
極薄の岩盤領域と薄い岩盤領域の増厚改造の設計方法のステップ2であって、
極薄の岩盤と薄い岩盤の増厚改造領域と設計寸法を決定するステップ2.1)であって、
地上に複数のボーリング孔を利用して地質調査を行い、異なる領域の岩層の柱状グラフを取得するステップ2.1.1)と、
岩盤の厚さの変化に基づいて、岩盤の厚さがΣH
minより低い領域を増厚改造の設計領域として決定するステップ2.1.2)と、
増厚改造領域の設計伸び方向の長さwと傾斜の長さlを決定するステップ2.1.3)であって、wは、薄い岩盤領域が炭層に沿う延在長さ、lは、作業面の傾斜の長さであるステップ2.1.3)と、
増厚改造の設計領域の厚さDを以下のように決定するステップ2.1.4)であって、
式中、Dは、増厚改造の設計領域の厚さ、ΣH
minは、応力アーチを形成できる岩盤の限界厚さ、ΣHは、実際の岩盤の厚さであるステップ2.1.4)とを備えるステップ2.1)と、
極薄の岩盤領域と薄い岩盤領域の増厚改造の工法のステップ2.2であって、
炭層の伸び方向に沿ってグラウト通路を掘るステップ2.2.1)と、
グラウト管路を配置するステップ2.2.2)であって、
多水平傾斜頂部順方向グラウト方法を使用し、実施過程において、油圧ドリルを使用してグラウト通路の底板から傾斜したボーリング孔を下向きに開け、第1グラウト孔は、増厚改造の設計領域の開始位置の直上に位置し、傾斜したボーリング孔によって下から上へ増厚改造の設計領域を複数の水平面に分け、
単一の水平面内に、傾斜したボーリング孔と該水平面との交差部を中心点として、その周りに垂直に発散する4つの水平のボーリング孔を配置し、そのうちの2つのボーリング孔は、作業面に沿って傾斜して配置され、他の2つのボーリング孔は、作業面の伸び方向に沿って配置されるステップ2.2.2)とを備える、ステップ2.2とを備える、ステップ2と、
極薄の岩盤領域と薄い岩盤領域の増厚改造のグラウト方法のステップ3であって、
高圧ポンプを使用して第1水平面内の水平のボーリング孔内にグラウトし、第1水平面内の水平グラウトが完了した後、一定の時間に静置し、傾斜したグラウト孔を第2水平面まで伸ばし続け、第1水平面内の水平グラウトプロセスに応じてグラウト作業を完了させ、上記ステップに応じて作業面全体の全てのボーリング孔のグラウト作業を完了させるステップ3とを含むことを特徴とする、深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法。
【請求項2】
ステップ1.2)における落下帯の高さΣH
c、亀裂帯の高さΣH
Lの計算式は、以下のとおりであり、
上層土の岩質が硬岩層、単軸圧縮強度が40~80MP
aである場合、
上層土の岩質が中硬岩層、単軸圧縮強度が20~40MP
aである場合、
上層土の岩質が軟岩層、単軸圧縮強度が10~20MP
aである場合、
上層土の岩質が極軟岩層、単軸圧縮強度が10MP
aより小さい場合、
以上の式中のMは、炭層の厚さであることを特徴とする、請求項1に記載の深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法。
【請求項3】
ステップ1.3)において、深部埋没採掘場における上層土の分類方法は以下のとおりであり、
(1)岩盤の厚さΣhが落下帯の高さΣH
cより小さい場合、極薄の岩盤として定義し、
(2)岩盤の厚さΣhが、落下帯の高さΣH
cより大きく、落下帯の高さΣHc、亀裂帯の高さΣH
L、及び応力アーチの厚さD
archの合計より小さい場合、薄い岩盤として定義し、
(3)岩盤の厚さΣhが、落下帯の高さΣH
c、亀裂帯の高さΣH
L、及び応力アーチの厚さD
archの合計より大きい場合、正常の岩盤として定義することを特徴とする、請求項1に記載の深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法。
【請求項4】
ステップ2.2.1)において、岩盤から1.5D離れる高さ、増厚改造の設計領域の傾斜の長さlのl/2の位置、炭層の伸び方向に沿ってグラウト通路を掘り、通路の断面寸法が高さ3m×幅4mであることを特徴とする、請求項1に記載の深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法。
【請求項5】
ステップ2.2.2)において、傾斜したボーリング孔と水平面との夾角φは、20°~40°であり、垂直高さは1.5Dであり、作業面の伸び方向に沿って隣接する傾斜したボーリング孔の距離は、50~80mであり、傾斜したボーリング孔の直径は、56~80mmであり、隣接する水平面の垂直距離dは、4m≦d≦6mであり、作業面の寸法に基づいて水平ボーリング孔の長さをl/4、ボーリング孔の直径を56~80mmとして決定することを特徴とする、請求項1に記載の深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法。
【請求項6】
ステップ2.2.2)において、グラウト材料の選択と配合比は、亀裂率のタイプ及び空隙率によって決められ、
亀裂率が高く、空隙率が75%~100%の場合、グラウト材料は、通常のセメントスラリの単一スラリであり、
亀裂率が中程度、空隙率が50%~75%の場合、グラウト材料は、材料Aと材料Bの混合で製造され、ここで、材料Aの成分は、硫酸塩セメントであり、材料Bの成分は、石灰と石膏であり、それらの比は、1.3:1であり、
亀裂率が低く、空隙率が30%~50%の場合、グラウト材料は、セメント-水ガラスの二重スラリであり、
亀裂率が非常に低く、空隙率が30未満の場合、グラウト材料は、水ガラス-塩化カルシウムのスラリを選択することを特徴とする、請求項1に記載の深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法。
【請求項7】
ステップ3において、水平グラウト後、それぞれ5~7時間静置することを特徴とする、請求項1に記載の深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱山圧力と岩層制御の分野に関し、特に深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年の大規模な採掘により、中国の東部(山東、安徽、河南、河北)の浅層石炭資源はほとんど枯渇しており、鉱山の第四系厚い沖積層、薄い岩盤条件での深部埋没の石炭資源を採掘している。中国の東部地区の現地地質調査から分かるように、深部埋没の上層土の岩盤の厚さが大きく変化し、一部の領域の岩盤の厚さが十数メートルだけであるが、一部の領域の岩盤の厚さが約100メートルであり、異なる岩盤の厚さの条件で、岩層の断層運動特性及びそれによる採掘場の鉱圧規律も異なり、採掘場周辺の岩盤安定性の制御の影響の差が顕著である。しかし、文献検索から分かるように、該タイプの地層条件での採掘場の上層土の分類及びその運動災害制御は、以下の2つの欠点がある。
【0003】
(1)現在、該タイプの地層(深部埋没層、厚い沖積層、岩盤の厚さが顕著に変化する)条件で採掘場における上層土のタイプ評価基準に関する研究は行わない。既存の採掘場上層土の分類評価体系は、浅い地層条件(深さ≦200m)を主として、採掘場の3つの帯を指標として分類し、評価方法において、上層土の運動による応力アーチの形成及びその安定性の維持のための力学的条件を考慮しない。
【0004】
(2)周知のように、岩盤が一定の厚さに達する場合、沈下の過程において、岩盤がアーチ構造を形成し、下部の採掘場を保護し、岩盤の厚さが小さい場合、このアーチ構造を形成できず、その結果、作業面において、切り羽の落盤、側面落下などの事故をもたらす。岩盤が薄いことによってアーチを形成できない場合で、災害事故が発生することを低減するために、現在の措置は主に、端面の石炭岩を補強し、グラウトするものであり、しかし、これらの措置はいずれも、岩盤が被覆する作業面の採掘場で行われ、受動制御措置に属する。実は、採掘場の上層土構造及びその運動は、採掘場事故の根本の原因である。現在、上層土構造の改造の面から出発する主動制御措置はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭層の上部にキー層を形成できないという地層条件に応じて、本願は、深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法を提供する。まず、応力アーチ形成原理に従って、岩盤において安定する応力アーチを形成できる限界厚さを決定し、更に深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準を確立し、次に、確立した評価基準に従って、極薄の岩盤及び薄い岩盤の地層条件に対して、増厚改造の設計領域の長さと厚さなどを含む岩盤の増厚改造の設計方法を提供し、最後に、ボーリング孔の配置方法及びパラメータ、グラウト材料、グラウト圧力、グラウト時間、プロセス及び労働組合などを含む薄い岩盤の増厚改造の設計方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準及び薄い岩盤の増厚改造の設計方法は、以下のステップ1乃至ステップ3からなり、
深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準のステップ1であって、
岩盤の応力アーチの安定化を維持するアーチの限界厚さを決定するステップ1.1)であって、
岩盤において安定する応力アーチを形成する場合、応力アーチの限界厚さの式は、以下のとおりであり、
式中、D
archは応力アーチの厚さ、H
archは応力アーチの高さ、l
archは応力アーチのスパン、q(x)は岩盤における上層土の等分布荷重、θは任意の断面と岩盤アーチの標準断面との間の夾角、Rはアーチ脚にかかる垂直応力、Tはアーチ脚にかかる水平応力であり、ここで、R、Tの式は以下のとおりであり、
ここで、応力アーチの高さH
archは、炭層からキー層までの高さであり、応力アーチのスパンl
archは、定期的な圧力の歩幅であり、岩盤における上層土の等分布荷重q(x)は、(1.2~2.0)xであり、xが(0.5~0.7)倍の定期的な圧力の歩幅であり、経験値に応じてθは5~10°であるステップ1.1)と、
応力アーチを形成できる岩盤の限界厚さを決定するステップ1.2)であって、
岩盤において安定する応力アーチを形成できる最小厚さは、限界厚さと呼ばれ、その式は、以下のとおりであり、
式中、ΣH
minは、応力アーチを形成できる岩盤の限界厚さ、D
archはアーチの限界厚さ、ΣH
cは落下帯の高さ、ΣH
Lは亀裂帯の高さであり、ここで、ΣH
cとΣH
Lは、調査研究中の上層土の強度に基づいて、表1における経験式で算出した採掘場の落下帯の高さと亀裂帯の高さであり、表1の式中のMは、炭層の厚さであるステップ1.2)と、
【表1】
深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準を確立するステップ1.3)であって、
上層土の落下帯のΣH
c高さ、亀裂帯のΣH
L高さ、応力アーチの厚さD
arch、及び岩盤の厚さΣhの対応関係に基づいて、採掘場を極薄の岩盤、薄い岩盤及び正常の岩盤に分け、極薄の岩盤、薄い岩盤及び正常の岩盤の埋蔵条件での採掘場の岩圧発生程度に応じて、極薄の岩盤、薄い岩盤に対して増厚改造を行う必要があるステップ1.3)とを備えるステップ1。
【0007】
極薄の岩盤領域と薄い岩盤領域の増厚改造の設計方法のステップ2であって、
極薄の岩盤と薄い岩盤の増厚改造領域と設計寸法を決定するステップ2.1)であって、
地上に複数のボーリング孔を利用して地質調査を行い、異なる領域の岩層の柱状グラフを取得するステップ2.1.1)と、
岩盤の厚さの変化に基づいて、岩盤の厚さがΣH
minより低い領域を増厚改造の設計領域として決定するステップ2.1.2)と、
増厚改造領域の設計伸び方向の長さwと傾斜の長さlを決定するステップ2.1.3)であって、wは、薄い岩盤領域が炭層に沿う延在長さ、lは、作業面の傾斜の長さであるステップ2.1.3)と、
増厚改造の設計領域の厚さDを以下のように決定するステップ2.1.4)であって、
式中、Dは、増厚改造の設計領域の厚さ、ΣH
minは、応力アーチを形成できる岩盤の限界厚さ、ΣHは、実際の岩盤の厚さであるステップ2.1.4)とを備えるステップ2.1)と、
極薄の岩盤領域と薄い岩盤領域の増厚改造の工法のステップ2.2)であって、
炭層の伸び方向に沿ってグラウト通路を掘るステップ2.2.1)であって、
岩盤から1.5D離れる高さ、増厚改造の設計領域の傾斜の長さlのl/2の位置、炭層の伸び方向に沿ってグラウト通路を掘り、通路の断面寸法が高さ3m×幅4mであるステップ2.2.1)と、
グラウト管路を配置するステップ2.2.2)であって、
多水平傾斜頂部順方向グラウト方法を使用し、実施過程において、油圧ドリルを使用してグラウト通路の底板から傾斜したボーリング孔を下向きに開け、傾斜したボーリング孔と水平面との夾角φは、20°~40°であり、垂直高さは1.5Dであり、作業面の伸び方向に沿って隣接する傾斜したボーリング孔の距離は、50~80mであり、傾斜したボーリング孔の直径は、56~80mmであり、第1グラウト孔は、増厚改造の設計領域の開始位置の直上に位置し、傾斜したボーリング孔によって下から上へ増厚改造の設計領域を複数の水平面に分け、隣接する水平面の垂直距離dは、4m≦d≦6mであり、
単一の水平面内に、傾斜したボーリング孔と該水平面との交差部を中心点として、その周りに垂直に発散する4つの水平のボーリング孔を配置し、そのうちの2つのボーリング孔は、作業面に沿って傾斜して配置され、他の2つのボーリング孔は、作業面の伸び方向に沿って配置され、作業面の寸法に基づいて水平ボーリング孔の長さをl/4、ボーリング孔の直径を56~80mmとして決定するステップ2.2.2)と、
グラウト材料とグラウト量を決定するステップ2.2.3)であって、
沖積層の亀裂率に基づいて、異なるグラウト材料と配合比を選択し、グラウト材料の選択は以下の表2に示され、
【表2】
ステップ2.1)において決定された増厚改造の設計領域寸法に基づいて、岩層の亀裂程度とスラリ充填率を考慮すると、グラウト量Qの計算式は以下のとおりであり、
式中、λはグラウト損失係数、Vはグラウト体積、ηは亀裂率、εはスラリ充填率、mはスラリの結石率であり、ここで、グラウト体積Vの式は以下のとおりであり、
式中、lは増厚改造の設計領域の傾斜の長さ、wは増厚改造の設計領域の伸び方向の長さ、Dは薄い岩盤の増厚改造の設計領域の厚さであり、
グラウト時間Tの計算式は以下のとおりであり、
式中、Tはグラウト時間、Qはグラウト総量、cは1時間あたりのグラウト量、nはグラウト水平個数であるステップ2.2.3)とを備える、ステップ2.2とを備える、ステップ2。
【0008】
極薄の岩盤領域と薄い岩盤領域の増厚改造のグラウト方法のステップ3であって、
高圧パンプを使用し、第1水平面内の水平ボーリング孔にグラウトし、グラウト時間Tは式(9)で決定され、
第1水平面内の水平グラウトが完了した後、5~7時間静置し、傾斜したグラウト孔を第2水平面まで伸ばし続け、第1水平面内の水平グラウトプロセスに応じてグラウト作業を完了させ、上記ステップに応じて作業面全体の全てのボーリング孔のグラウト作業を完了させるステップ3とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)本発明は、応力アーチ形成の力学的原理に従って、岩盤内の応力アーチの安定化を維持する限界厚さの式を提供し、岩盤において安定する応力アーチを形成できる岩盤の限界厚さの式を決定し、深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準を形成し、深部埋没層、厚い沖積層、岩盤の厚さが顕著に変化するという地層条件での上層土構造のタイプ評価基準の面の空白を埋める。
【0010】
(2)確立した岩盤の限界厚さの式及び深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準に基づいて、本考案は、工程実践において伸び方向の長さ、傾斜の長さ、厚さなどの薄い岩盤改造の設計領域寸法の定量化と精密化を実現し、岩盤改造方法の実施可能性を向上させる。
【0011】
(3)上層土構造の改造の面から出発すると、多水平傾斜頂部順方向グラウト方法を提供し、ボーリング孔の配置、グラウト材料などのパラメータを設定し、該方法は、設計が合理的で、操作しやすいため、採掘場の災害事故への主動制御を実現し、従来の採掘場内の受動制御措置による災害事故を回避することができる。
【0012】
(4)岩盤の応力アーチの限界厚さの計算、上層土の判別基準、上層土の改造方法、現地施工プロセスを集める深部埋没採掘場における上層土構造のタイプ評価及び改造体系を提供し、理論設計から現地応用まで、段階的に深く掘り下げ、前後につながっており、構造が合理的であり、思考は明確であり、研究方法は実行可能である。
【0013】
(5)該グラウト改造技術は、極薄の岩盤及び薄い岩盤の地層条件での採掘場の端面の石炭岩の落盤、側面落下などの事故を効果的に回避でき、採掘場周辺の岩盤安定性を向上させ、事故処置のコストを削減し、石炭の正常の採掘を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2a】薄い岩盤の増厚領域の位置の正面図である。
【
図3a】実施例1のある坑道3301の作業面の傾斜の地質断面図である。
【
図3b】実施例1のある坑道3301の作業面ABCD領域のボーリング孔の柱状グラフである。
【
図4a】実施例1の多水平傾斜頂部順方向グラウト方法の分解図である。
【
図4b】実施例1の単一のグラウト管路の分解図である。
【
図4c】実施例1の単一のグラウト管路の正面図である。
【
図4d】実施例1の単一のグラウト管路の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、実施例を参照して本発明を更に説明する。
【実施例1】
【0016】
現地で東部炭鉱3301の作業面の主な採掘3#炭層を調査し、炭層の上層土は、軟岩層に属し、平均厚さが6mであり、定期的な圧力の歩幅が37mであり、即ち、応力アーチのスパンl
arch=37mであり、岩盤アーチの高さH
arch=8mであり、q(x)が1.5xであり、xが25mであり、経験値θが5~10°であり、岩盤アーチの垂直断面と標準断面との間の夾角θ=5°であり、グラウト損失係数λが1.1であり、スラリ充填率εが0.75であり、スラリの結石率mが0.85であり、1時間あたりのグラウト量cが1500m
3/hであり、応力アーチ構造は
図1に示される。
【0017】
ステップ1 深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準
ステップ1.1) 岩盤の応力アーチの安定化を保持する限界厚さの決定
上記パラメータを式(1)、(2)、(3)に代入し、応力アーチの限界厚さを決定する。
ステップ1.2) 応力アーチを形成できる岩盤の限界厚さの決定
3301作業面の炭層の上層土は、軟岩層に属し、表1の経験式をクエリすることによって落下帯の高さ、亀裂帯の高さ及び応力アーチを形成する限界厚さを得る。
ステップ1.3) 深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準
上層土の2つの帯の高さ、応力アーチの限界厚さ及び岩盤の厚さの対応関係を使用し、3301作業面の上層土を分類し、
(1)岩盤の厚さが10.78mより小さい場合、極薄の岩盤として定義し、
(2)岩盤の厚さが10.78mより大きく、47.2mより小さい場合、薄い岩盤として定義し、
(3)岩盤の厚さが47.2mより大きい場合、正常の岩盤として定義する。
【0018】
ステップ2 薄い岩盤領域の増厚改造の設計方法
ステップ2.1) 極薄の岩盤と薄い岩盤の増厚改造領域と設計寸法の決定
ステップ2.1.1) 地質調査によって得られた3301作業面において採掘坑道から採掘停止線までの傾斜地質断面図は、
図3aに示され、ABCD領域のボーリング孔の柱状グラフは、
図3bに示される。
ステップ2.1.2) 岩層の柱状グラフに示す岩盤の厚さの変化に基づいて、ABCD領域の岩盤の平均厚さが35mであり、ΣH
min=47.2mより小さく、ΣH
c=10.78mより大きく、深部埋没採掘場における上層土のタイプ評価基準に基づいて、薄い岩盤領域に属し、増厚改造の設計を行う必要があり、薄い岩盤の増厚領域の構造図は、
図2a~2cに示される。
ステップ2.1.3) ABCD領域の寸法に基づいて、増厚改造領域の伸び方向の長さw=150m、傾斜の長さl=100mを決定する。
ステップ2.1.4) 増厚改造の設計領域の厚さの決定
データを式(6)に代入し、増厚改造領域の設計厚さDを得て、
ステップ2.2) 薄い岩盤領域の増厚改造の設計工法
ステップ2.2.1) グラウト通路の掘り
岩盤から18.3m離れる高さ、薄い岩盤の増厚設計改造領域の傾斜の長さの50mの位置、炭層の伸び方向に沿ってグラウト通路を掘り、通路の断面寸法が高さ3m×幅4mであり、
ステップ2.2.2) グラウト管路の配置(
図4a、4、4c、4dに示される)
多水平傾斜頂部順方向グラウト方法を使用し、グラウト通路の底板内に傾斜したボーリング孔を増設し、傾斜したボーリング孔と水平面との夾角は30°であり、垂直高さは18.3mであり、作業面の伸び方向に沿って隣接するボーリング孔の伸び方向の距離は60mであり、傾斜したボーリング孔の直径は65mmであり、傾斜したボーリング孔によって下から上へ薄い岩盤の増厚改造の設計領域を2つの水平面に分け、隣接する水平面の垂直距離dは5mである。
単一の水平面内に、傾斜したボーリング孔の周りに垂直に発散する4つの水平のボーリング孔(A
11、A
12、A
13、A
14)を配置し、そのうちの2つのボーリング孔は、作業面に沿って傾斜して配置され、他の2つのボーリング孔は、作業面の伸び方向に沿って配置され、作業面の寸法に基づいて水平ボーリング孔の長さを25m、ボーリング孔の直径を65mmとして決定する。
ステップ2.2.3) グラウト材料とグラウト量の決定
現地調査の結果に基づいて、3301作業面の沖積層の亀裂率は、60%で、中程度の亀裂率の岩層に属し、グラウト材料表に基づいて、グラウト材料は、材料Aと材料Bの混合で製造され、ここで、材料Aの成分は、硫酸塩セメントであり、材料Bの成分は、石灰と石膏であり、それらの比は、1.3:1である。
ステップ2.1)に基づいて、薄い岩盤改造の設計領域の寸法を算出し、データを式(7)、(8)、(9)に代入すると、以下が得られる。
【0019】
ステップ3 薄い岩盤領域の増厚改造のグラウト方法
薄い岩盤の増厚改造の設計作業は、本領域の炭層を採掘する前に完了し、第1グラウト孔は、薄い岩盤の増厚改造の設計領域の開始位置の直上に位置し、実施過程において、油圧ドリルを使用し、グラウト通路の底板から傾斜したボーリング孔を上向きに開け、第1水平面A1点に達した後、A1点を中心点として、その周りの水平の円周方向にボーリング孔A11、A12、A13、A14を均一に配置し、高圧ポンプを使用し、第1水平面の水平ボーリング孔内にグラウトし、そのグラウト時間は23.6時間である。
第1水平面内の水平グラウトが完了した後、5~7時間静置し、傾斜したグラウト孔を第2水平面まで伸ばし続け、次に、第2水平面内のA2点を中心点として、その周りの水平の円周方向にボーリング孔A21、A22、A23、A24を均一に配置し、第1水平面の水平グラウトプロセスに応じて、そのグラウト時間は23.6時間であり、5~7時間静置し、上記ステップに応じて作業面全体の全てのボーリング孔のグラウト作業を完了させる。
【符号の説明】
【0020】
1-炭層、2-薄い岩盤の増厚領域、3-薄い岩盤、4-厚い沖積層、5-作業面の採掘坑道、6-グラウト通路、l-増厚改造領域の設計の傾斜の長さ、w-増厚改造領域の設計幅、ΣHmin-応力アーチ形成用の岩盤の限界厚さ、ΣH-薄い岩盤の厚さ、D-増厚改造領域の設計厚さ、φ-傾斜したボーリング孔と水平面との夾角
【国際調査報告】