(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】適応的脳深部刺激のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20230814BHJP
A61N 1/08 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503068
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 IB2021056435
(87)【国際公開番号】W WO2022013827
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520319141
【氏名又は名称】ニューロニカ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】Newronika S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100210701
【氏名又は名称】萩原 義則
(72)【発明者】
【氏名】アルロッティ,マッティア
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ,ロレンツォ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB12
4C053JJ18
4C053JJ21
4C053JJ40
(57)【要約】
本明細書で提供されるいくつかの変形例では、脳深部刺激のためのシステムは、神経活動信号記録を取得および格納し、電気刺激を印加する埋め込み型デバイスを含む。システムはさらに、埋込み型デバイスへの第1の無線接続を確立する個人用コントローラデバイスを含む。個人用コントローラデバイスは、埋め込み型デバイスに電力を送信し、埋め込み型デバイスは、第1の無線接続を介して神経活動信号記録を個人用コントローラデバイスに送信する。システムはさらに、第1の無線接続のアクティブ化に基づいて第2の無線接続を確立することによって埋め込み型デバイスから神経活動信号記録を受信する臨床医プログラマデバイスを含む。臨床医プログラマデバイスは、神経活動信号記録に基づいて1つまたは複数の刺激パラメータを設定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳深部刺激のためのシステム(100)であって、前記システムは、
神経活動信号記録を取得および格納し、電気刺激を印加するように構成された埋め込み型デバイス(101、400B)と、
前記埋め込み型デバイス(101、400B)への第1の無線接続を確立するように構成された個人用コントローラデバイス(111、800)であって、前記個人用コントローラデバイス(111、800)は、前記埋め込み型デバイス(101、400B)に電力を送信するように構成され、前記埋め込み型デバイス(101、400B)は、前記第1の無線接続を介して神経活動信号記録を前記個人用コントローラデバイス(111、800)に送信するように構成された、個人用コントローラデバイス(111、800)と、
前記第1の無線接続のアクティブ化に基づいて第2の無線接続を確立することにより、前記埋め込み型デバイス(101、400B)から神経活動信号記録を受信するように構成された臨床医プログラマデバイス(131、322、1000)と、を備え、
前記臨床医プログラマデバイス(131、322、1000)は、神経活動信号記録に基づいて複数の刺激パラメータを設定するように構成されている、
システム。
【請求項2】
前記システムは、ユーザ計算デバイス(121)をさらに含み、前記ユーザ計算デバイスは、
患者ログデータを受信し、
前記患者ログデータと前記神経活動信号記録との間の少なくとも時間相関に基づいて、前記患者ログデータと前記神経活動信号記録とを関連付け、
前記神経活動信号記録および前記患者ログデータに基づいて、複数の投薬オン時間間隔および複数の投薬オフ時間間隔を決定し、
前記複数の投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔中の前記神経活動信号記録に従って、前記複数の刺激パラメータを生成するように構成されている、
請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記ユーザ計算デバイス(121)はさらに、
複数の平均値および複数の分散値を含む神経活動信号記録の統計的分布を生成し、
ユーザインターフェースを介して、前記神経活動信号記録、前記複数の平均値、および前記複数の分散値のプロットを表示するように構成されている、
請求項2に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記ユーザ計算デバイス(121)はさらに、
所定の期間中に記録された前記神経活動信号記録の周波数帯域内の複数のスペクトル特徴を抽出し、
前記所定の期間中の複数の投薬オン時間間隔および複数の投薬オフ時間間隔を決定し、
前記周波数帯域の前記複数の投薬オン時間間隔内の前記複数のスペクトル特徴の第1の平均値と、前記周波数帯域の前記複数の投薬オフ時間間隔内の前記複数のスペクトル特徴の第2の平均値とを生成するように構成されている、
請求項2または3に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記ユーザ計算デバイス(121)は、前記第1の平均値および前記第2の平均値に基づいて、前記複数の刺激パラメータを生成するように構成されている、請求項4に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記ユーザ計算デバイス(121)はさらに、
前記神経活動信号記録を含まない履歴神経活動信号記録のセット、または前記複数の刺激パラメータを含まない履歴刺激パラメータのセットに基づいて、機械学習モデルを訓練し、
前記神経活動信号記録に基づいて前記機械学習モデルを実行し、前記複数の刺激パラメータを識別するように構成されている、
請求項2ないし5のうちいずれか1項に記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記ユーザ計算デバイス(121)はさらに、
前記神経活動信号記録および/または前記患者ログデータまたは前記複数の刺激パラメータをバイオバンクサーバに送信し、
前記神経活動信号記録および/または前記患者ログデータまたは前記複数の刺激パラメータを前記ユーザ計算デバイスのメモリから削除するように構成されている、
請求項2ないし6のうちいずれか1項に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記電力は、再充電のために誘導リンクを介して患者個人用コントローラデバイス(111、800)から前記埋め込み型デバイス(101、400B)に誘導される誘導電力であり、
前記神経活動信号記録および/または患者ログデータは、再充電中に前記埋め込み型デバイス(101、400B)によって個人用コントローラデバイス(111、800)に自動的に送信される、
請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記臨床医プログラマデバイス(131、322、1000)は、前記個人用コントローラデバイス(111、800)との認証された通信チャネルを確立するように構成され、前記臨床医プログラマデバイス(131、322、1000)はさらに、
前記個人用コントローラデバイスから患者ログデータを受信し、
前記患者ログデータと前記神経活動信号記録との間の少なくとも時間相関に基づいて、前記患者ログデータと前記神経活動信号記録とを関連付け、
前記神経活動信号記録および前記患者ログデータに基づいて、複数の投薬オン時間間隔および複数の投薬オフ時間間隔を決定し、
前記複数の投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔中の神経活動信号記録に従って、前記複数の刺激パラメータを生成するように構成されている、
請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記臨床医プログラマデバイス(131、322、1000)はさらに、
複数の平均値および複数の分散値を含む前記神経活動信号記録の統計的分布を生成し、
ユーザインターフェースを介して、前記神経活動信号記録、前記複数の平均値、および前記複数の分散値のプロットを表示するように構成されている、
請求項9に記載のシステム(100)。
【請求項11】
前記臨床医プログラマデバイス(131、322、1000)はさらに、
所定の期間中に記録された前記神経活動信号記録の周波数帯域内の複数のスペクトル特徴を抽出し、
前記所定の期間中の複数の投薬オン時間間隔および複数の投薬オフ時間間隔を決定し、
前記周波数帯域の前記複数の投薬オン時間間隔内の前記複数のスペクトル特徴の第1の平均値と、前記周波数帯域の前記複数の投薬オフ時間間隔内の前記複数のスペクトル特徴の第2の平均値とを生成するように構成されている、
請求項9または10に記載のシステム(100)。
【請求項12】
前記臨床医プログラマデバイス(121)はさらに、
前記神経活動信号記録および/または前記患者ログデータまたは前記複数の刺激パラメータをバイオバンクサーバに送信し、
前記神経活動信号記録および/または前記患者ログデータまたは前記複数の刺激パラメータを前記臨床医プログラマデバイスのメモリから削除するように構成されている、
請求項9ないし11のうちいずれか1項に記載のシステム(100)。
【請求項13】
脳深部刺激のためのシステム(100)であって、前記システムは、
神経活動信号記録を取得および格納し、電気刺激を印加するように構成された埋め込み型デバイス(101、400B)と、
前記埋め込み型デバイス(101、400B)への第1の無線接続を確立するように構成された個人用コントローラデバイス(111、800)であって、前記個人用コントローラデバイス(111、800)は、前記埋め込み型デバイス(101、400B)に電力を送信するように構成され、前記埋め込み型デバイス(101、400B)は、前記第1の無線接続を介して神経活動信号記録を前記個人用コントローラデバイス(111、800)に送信するように構成された、個人用コントローラデバイス(111、800)と、
臨床医プログラマデバイス(131、322、1000)と、を備え、前記臨床医プログラマデバイス(131、322、1000)は、
前記埋め込み型デバイスへの第2の無線接続を確立し、前記第2の無線接続は、前記第1の無線接続のアクティブ化に基づいており、
前記第2の無線接続を介して、前記埋め込み型デバイスから前記神経活動信号記録を受信し、
前記神経活動信号記録に従って複数の刺激パラメータを生成するように構成されている、
システム。
【請求項14】
前記システムは、前記個人用コントローラデバイス(111、800)への第3の無線接続を確立するように構成されたユーザ計算デバイスをさらに備え、前記ユーザ計算デバイス(111、800)は、
前記第3の無線接続を介して、前記個人用コントローラデバイス(111,800)から前記神経活動信号記録を受信し、
前記個人用コントローラデバイス(111,800)から患者ログデータを受信し、
前記神経活動信号記録および前記患者ログデータのうちの少なくとも1つに基づいて、複数の投薬オン時間間隔および複数の投薬オフ時間間隔を決定するように構成されている、
請求項13に記載のシステム(100)。
【請求項15】
ユーザ計算デバイス(121)および/または前記臨床医プログラマデバイス(131、322、1000)はさらに、
前記神経活動信号記録および/または患者ログデータまたは前記複数の刺激パラメータをバイオバンクサーバに直接またはユーザ計算デバイスを介して送信し、
前記神経活動信号記録および/または前記患者ログデータまたは前記複数の刺激パラメータを前記ユーザ計算デバイスのメモリから削除するように構成されている、
請求項13または14に記載のシステム(100)。
【請求項16】
前記電力は、再充電のための誘導リンクを介して患者個人用コントローラデバイス(111、800)から前記埋め込み型デバイス(101、400B)に誘導される誘導電力であり、
前記神経活動信号記録および/または患者ログデータは、再充電中に前記埋め込み型デバイス(101、400B)によって個人用コントローラデバイス(111、800)に自動的に送信される、
請求項13ないし15のうちいずれか1項に記載のシステム(100)。
【請求項17】
脳深部刺激のためのシステムを制御するための方法であって、
所定の期間にわたって取得された神経活動信号記録を受信することと、
神経活動信号記録を投薬オンおよび投薬オフの時間間隔でマッピングすることと、
前記神経活動信号記録の周波数帯域内の複数のスペクトル特徴を抽出することと、
前記所定の期間にわたる前記周波数帯域の複数の投薬オン時間間隔内の複数のスペクトル特徴の第1の平均値と、前記所定の期間にわたる前記周波数帯域の複数の投薬オフ時間間隔内の複数のスペクトル特徴の第2の平均値とを生成することと、
前記第1の平均値および前記第2の平均値に基づいて、複数の刺激パラメータを生成することと、
を含む方法。
【請求項18】
前記方法は、
電極の第1のセットのインピーダンス値のセットを測定することと、
インピーダンス値の前記セットを許容インピーダンス範囲と比較して、前記許容インピーダンス範囲内のインピーダンス値を有する電極の第2のセットを識別することと、
電極の前記第2のセットを使用して、患者の神経活動信号記録のセットをスクリーニングすることと、
神経活動信号記録の前記セットから最高の神経活動信号記録を示す電極の第3のセットを選択することと、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
インピーダンス値の前記セットの測定は、投薬オフ期間に実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記複数のスペクトル特徴は、前記所定の期間内の複数の時間間隔にわたるベータ周波数帯域電力値を含み、前記方法は、
患者に検出可能な臨床的利益を引き出す最小刺激振幅A
MIN、および患者に副作用を誘発する前の最大刺激振幅A
MAXを定義すること、
をさらに含む、請求項17ないし19のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の刺激パラメータは、最小刺激振幅A
MIN、最大刺激振幅A
MAXを含み、第1の平均値は、最小ベータ周波数帯域電力値P
βMINであり、および/または第2の平均値は、最大ベータ周波数帯域電力値P
βMAXである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の刺激パラメータは、脳刺激(DBS)振幅V
DBSを集合的に定義し、DBS振幅は、次のように定義され、
【数4】
ここで、P
βは、神経活動信号記録のベータ周波数帯域の電力である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、
前記周波数帯域内の前記神経活動信号記録のピーク周波数を決定することと、
前記ピーク周波数に基づいて患者固有の周波数帯域を選択することと、
をさらに含む、請求項17ないし22のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、
前記神経活動信号記録の複数の平均値および複数の分散値を含む前記神経活動信号記録の統計的分布を生成することと、
ユーザインターフェースを介して、前記神経活動信号記録、前記複数の平均値、および前記神経活動信号記録の前記複数の分散値のプロットを表示することと、
をさらに含む、請求項17ないし23のうちいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、脳深部刺激の分野に関し、特に、適応的脳深部刺激システムのためのデータ通信およびデータ記憶を可能にする方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
脳深部刺激(DBS)システムは、多くの利点により、医療診断や医療を含む様々な業界で使用されている。例えば、脳深部刺激は、電気刺激を患者の中枢神経系の神経構造に送り、神経活動を調節できる。患者の神経活動は、脳深部刺激と併せて研究することもできる。しかしながら、生体組織に埋め込まれた脳深部刺激デバイスは、通常、安全上の理由と患者の快適さのためにコンパクトであり、したがって、操作のために自由に使える電力容量、データ処理、データ記憶、および通信インターフェース機能が制限されている。さらに、従来の脳深部刺激は、多くの場合、事前定義された刺激設定のために医師によってプログラムされる。しかしながら、各患者は、通常とは異なる症状、神経活動のピーク、および神経活動の周波数帯域を示すことがよくある。このような患者は、適応型の患者固有の較正から恩恵を受け得る。既知の脳深部刺激システムにおける電力容量、データ処理、データ記憶、および通信インターフェース機能の前述の制限により、効果的かつ効率的な適応的脳深部刺激を提供することが探求され続けている。したがって、脳深部刺激のための新しく改良されたシステムおよび方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
一般に、いくつかの変形例では、脳深部刺激のためのシステムは、神経活動信号記録を取得および格納し、電気刺激を適用する埋め込み型デバイスを含み得る。システムは、埋め込み型デバイスへの第1の無線接続(例えば、ブルートゥース(登録商標)通信)を確立する個人用コントローラデバイスをさらに含み得る。個人用コントローラデバイスは、埋め込み型デバイスに電力を送信し得、埋め込み型デバイスは、神経活動信号記録を、第1の無線接続を介して個人用コントローラデバイスに送信し得る。システムはさらに、第1の無線接続の起動に基づいて第2の無線接続を確立することによって埋め込み型デバイスから神経活動信号記録を受信する臨床医プログラマデバイスを含み得る。臨床医プログラマデバイスは、神経活動信号記録に基づいて刺激パラメータを設定する。臨床医プログラマデバイスはさらに、第1の無線接続の起動に基づいて(例えば、ユーザが入力した個人識別番号の認証時に)、埋め込み型デバイスへの第2の無線接続(例えば、産業、科学および医療(ISM)通信、短距離装置(SRD)通信など)を確立する。
【0004】
いくつかの実装形態では、電力は、埋め込み型デバイスに誘導される誘導電力であり得る。いくつかの実装形態では、神経活動信号記録は、再充電プロセス中および/またはオンデマンドで、埋め込み型デバイスによって個人用コントローラデバイスに自動的に送信され得る。
【0005】
個人用コントローラデバイスは、一般に、第1のユニットと第2のユニットとを含む。第1のユニットは、第2のユニットに取り外し可能に接続され、第2のユニットに接続されたときに第2のユニットに電力を供給し得る。第1のユニットは、神経活動信号記録を格納するメモリ(例えば、固体メモリ)を含み得る。個人用コントローラはさらに、埋め込み型デバイスの電力残量状態の表示または埋め込み型デバイスの治療モードの表示を表示するように構成され得る。いくつかの変形例では、個人用コントローラは、信号を受信して埋め込み型デバイスの治療モードを変更し得る。
【0006】
臨床医プログラマデバイスは、カスタム設計されたプログラム可能な電子デバイス、スマートフォン、タブレット、および/または個人用計算デバイスを含み得る。場合によっては、刺激パラメータは、第1の刺激パラメータであり、治療モードは、第1の治療モードである。臨床医プログラマデバイスは、第2の治療モードおよび第2の刺激パラメータを生成するように構成され得る。臨床医プログラマデバイスはさらに、第2の治療モードおよび第2の刺激パラメータを埋め込み型デバイスに送信し得る。
【0007】
システムは、アプリケーションを有するユーザ計算デバイスをさらに含み得る。ユーザ計算デバイスは、患者ログデータおよび神経活動信号記録を受信するように構成され得る。場合によっては、患者ログデータは、埋め込み型デバイスおよび/または個人用コントローラデバイスから記録および/または受信され得る。ユーザ計算デバイスは、少なくとも患者ログデータと神経活動信号記録との間の時間相関に基づいて、患者ログデータと神経活動信号記録とを関連付け得る。ユーザ計算デバイスはさらに、神経活動信号記録および患者ログデータに基づいて投薬オン時間間隔および/または投薬オフ時間間隔を決定し得る。ユーザ計算デバイスはさらに、投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔中の神経活動信号記録に従って刺激パラメータを生成し得る。場合によっては、投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔は、ユーザ計算デバイスのユーザ(例えば、医師、臨床医など)によって決定され得る。場合によっては、ユーザは、時間間隔を投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔に分類するための閾値を決定し得る。例えば、神経活動信号記録が閾値よりも大きい振幅を有する時間間隔は、投薬オフ時間間隔として分類され得る。
【0008】
いくつかの実装形態では、ユーザ計算デバイスは、スマートフォン、タブレット、個人用計算デバイスなどを含み得る。ユーザ計算デバイスおよび/または臨床医プログラマデバイスは、神経活動信号記録のプロットまたは神経活動信号記録の統計的分布を生成および表示し得る。
【0009】
ユーザ計算デバイスは、所定の期間中に記録された神経活動信号記録の周波数帯域内のスペクトル特徴を抽出するようにさらに構成され得る。ユーザ計算デバイスは、所定の期間中の投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔を決定し得る。ユーザ計算デバイスはさらに、周波数帯域の投薬オン時間間隔内のスペクトル特徴の第1の平均値と、周波数帯域の投薬オフ時間間隔内のスペクトル特徴の第2の平均値とを生成し得る。ユーザ計算デバイスは、第1の平均値および第2の平均値に基づいて刺激パラメータを生成し得る。周波数帯域は、低周波数帯域、アルファ周波数帯域、またはベータ周波数帯域およびガンマ周波数であり得る。
【0010】
いくつかの変形例では、刺激パラメータは、刺激周波数、刺激パルス幅、刺激振幅、上位神経活動信号閾値、および/または下位神経活動信号閾値のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0011】
いくつかの実装形態では、神経活動信号記録および患者ログデータを時間記録し得る。神経活動信号記録は、低周波数帯域、アルファ周波数帯域、ベータ周波数帯域、および/またはガンマ周波数における局所場ポテンシャル記録(例えば、両方の脳半球からの)を含み得る。局所場ポテンシャルは、電場ポテンシャル、電磁場ポテンシャル、磁場ポテンシャル、および/または他の適切な場ポテンシャルを含み得る。いくつかの変形例では、神経活動信号記録およびログデータは、埋め込み型デバイスによって継続的に記録および格納され得る。いくつかの変形例では、神経活動信号記録およびログデータは、埋め込み型デバイスによって離散的な時間間隔で記録および格納される。
【0012】
ユーザ計算デバイスおよび/または臨床医プログラマデバイスは、神経活動信号記録および/または患者ログデータまたは刺激パラメータをバイオバンクサーバに定期的に送信し得る。場合によっては、ユーザ計算デバイスおよび/または臨床医プログラマデバイスは、神経活動信号記録および/または患者ログデータまたは刺激パラメータを、ユーザ計算デバイスおよび/または臨床医プログラマデバイスのメモリから削除し得る。定期的にメモリをクリアすることは、ユーザ計算デバイスおよび/または臨床医プログラマデバイスのメモリ使用量を削減するのに有利であり得る。
【0013】
いくつかの変形例では、臨床医プログラマデバイスは、個人用コントローラデバイスとの認証通信チャネルを確立し得る。個人用コントローラデバイスは、(臨床医プログラマデバイスから受信した)刺激パラメータを埋め込み型デバイスに送信し得る。個人用コントローラデバイスはさらに、埋め込み型デバイスの電力残量状態の表示または埋め込み型デバイスの治療モードの表示を表示するように構成され得る。刺激パラメータは、刺激周波数、刺激パルス幅、刺激振幅、上位神経活動信号閾値、および/または下位神経活動信号閾値のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
臨床医プログラマデバイスは、ユーザ計算デバイスから患者ログデータを受信し、少なくとも患者ログデータと神経活動信号記録との間の時間相関に基づいて、患者ログデータと神経活動信号記録を関連付け得る。神経活動信号記録は、低周波数帯域、アルファ周波数帯域、ベータ周波数帯域、および/またはガンマ周波数における局所場ポテンシャル記録を含み得る。次いで、臨床医プログラマデバイスは、神経活動信号記録およびユーザ計算デバイスから受信した患者ログデータに基づいて、投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔を決定し得る。臨床医プログラマデバイスは、投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔中の神経活動信号記録に従って刺激パラメータをさらに生成するように構成され得る。
【0015】
場合によっては、刺激パラメータは、第1の刺激パラメータであり、治療モードは、第1の治療モードである。臨床医プログラマデバイスは、第2の治療モードおよび第2の刺激パラメータを生成し、第2の治療モードおよび第2の刺激パラメータを個人用コントローラデバイスに送信するように構成され得る。次いで、個人用コントローラデバイスは、第2の刺激パラメータおよび第2の治療を埋め込み型デバイスに送信し得る。
【0016】
臨床医プログラマデバイスは、所定の期間中に記録された神経活動信号記録の周波数帯域内のスペクトル特徴を抽出するようにさらに構成され得る。臨床医プログラマデバイスは、所定の期間中の投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔を決定し得る。臨床医プログラマデバイスは、周波数帯域の投薬オン時間間隔内のスペクトル特徴の第1の平均値と、周波数帯域の投薬オフ時間間隔内のスペクトル特徴の第2の平均値とをさらに生成し得る。臨床医プログラマデバイスは、第1の平均値および第2の平均値に基づいて刺激パラメータを生成し得る。
【0017】
いくつかの実装形態では、ユーザ計算デバイスおよび/または臨床医プログラマデバイスは、過去の神経活動信号記録または一連の過去の刺激パラメータに基づいて機械学習モデルを訓練するように構成され得る。機械学習モデルが訓練されると、ユーザ計算デバイスおよび/または臨床医プログラマデバイスは、神経活動信号記録に基づいて機械学習モデルを実行することにより、刺激パラメータを特定し得る。
【0018】
一般に、いくつかの変形例では、脳深部刺激のための方法は、所定の期間にわたって取得された神経活動信号記録を受信することを含み得る。神経活動信号記録は、埋め込み型デバイスによって取得され得、所定の期間は、1日、5日、10日などであり得る。この方法は、神経活動信号記録を、患者ログデータに基づいて決定された投薬オンおよび投薬オフの時間間隔でマッピングすることをさらに含み得る。この方法は、神経活動信号記録の周波数帯域内のスペクトル特徴を抽出することをさらに含み得る。周波数帯域内のスペクトル特徴は、所定の期間内の時間間隔に対するスペクトル特徴の値を含み得る。この方法は、所定の期間にわたる周波数帯域の投薬オン時間間隔内のスペクトル特徴の第1の平均値と、所定の期間にわたる周波数帯域の投薬オフ時間間隔内のスペクトル特徴の第2の平均値とを生成することをさらに含み得る。この方法は、第1の平均値および第2の平均値に基づいて刺激パラメータを生成することをさらに含み得る。
【0019】
脳深部刺激のための方法は、電極の第1のセットのインピーダンス値のセットを測定することを含み得る。例えば、インピーダンス値のセットの測定は、投薬オフ期間に実行される。この方法は、インピーダンス値のセットを許容インピーダンス範囲と比較して、許容インピーダンス範囲内のインピーダンス値を有する電極の第2のセットを識別することをさらに含み得る。この方法は、電極の第2のセットを使用して、患者の神経活動信号記録のセットをスクリーニングすることをさらに含み得る。この方法は、神経活動信号記録のセットから最高の神経活動信号記録を示す電極の第3のセットを選択することをさらに含み得る。
【0020】
いくつかの実装形態では、方法は、患者に検出可能な臨床的利益を引き出す最小刺激振幅AMIN、および患者に副作用を誘発する前の最大刺激振幅AMAXを定義することをさらに含み得る。刺激パラメータは、最小刺激振幅AMINおよび/または最大刺激振幅AMAXを含み得る。第1の平均値は、最小ベータ周波数帯域電力値PβMINを含み得、および/または第2の平均値は、最大ベータ周波数帯域電力値PβMAXを含み得る。
【0021】
いくつかの実装形態では、刺激パラメータは、脳刺激(DBS)振幅V
DBSを集合的に定義し得る。DBS振幅は、一般に次のように定義し得る。
【数1】
ここで、P
βは、神経活動信号記録のベータ周波数帯域の電力である。
【0022】
いくつかの実装形態では、方法は、周波数帯域内の神経活動信号記録のピーク周波数を決定すること、およびピーク周波数に基づいて患者固有の周波数帯域を選択することをさらに含み得る。この方法はさらに、埋め込み型デバイスを使用して神経組織を刺激するために、刺激パラメータに従って電気刺激を送達することを含み得る。
【0023】
いくつかの実装形態では、神経活動信号記録は、一般に埋め込み型デバイスによって取得され得る。所定の期間は、埋め込み型デバイスの測定された残りの電力の表示に基づいて決定され得、または埋め込み型デバイスの残りのメモリの表示に基づいて決定され得る。方法は、残りの電力の表示または残りのメモリの表示が、ユーザインターフェースを介して、個人用コントローラデバイスのユーザに表示されるように、埋め込み型デバイスの測定された残りの電力の表示または残りのメモリの表示を個人用コントローラデバイスに送信することをさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】例示的な脳深部刺激システムのブロック図である。
【
図2A】例示的な脳深部刺激システムの概略説明である。
【
図2B】例示的な脳深部刺激システムの概略説明である。
【
図3A】例示的な臨床医プログラマデバイスの概略説明である。
【
図3B】埋め込み型デバイスの例示的な埋め込みの概略説明である。
【
図4A】埋め込み型デバイスの外部ハウジングの一変形例の概略図である。
【
図4B】例示的な埋め込み型デバイスのブロック図である。
【
図5】例示的な臨床医外部デバイスのブロック図である。
【
図6A】例示的な患者個人用コントローラデバイスの概略説明である。
【
図6B】例示的な患者個人用コントローラデバイスの概略説明である。
【
図7】埋め込み型デバイスと患者個人用コントローラデバイスとの間の無線接続を確立するための例示的な方法の概略図である。
【
図8】例示的な患者個人用コントローラデバイスのブロック図である。
【
図9A】例示的な臨床医プログラマデバイスの概略説明である。
【
図9B】例示的な臨床医プログラマデバイスの概略説明である。
【
図10】例示的な臨床医プログラマデバイスのブロック図である。
【
図11】感知電極のセット、刺激電極のセット、および電力帯域を選択するための例示的な方法である。
【
図12】適応的脳深部刺激のための例示的な方法である。
【
図13】臨床医プログラマデバイスをプログラミングするための例示的な方法である。
【
図14】臨床医プログラマデバイスをプログラミングするための例示的な方法である。
【
図15A】脳深部刺激システムによって格納および解析された例示的な神経活動信号記録である。
【
図15B】脳深部刺激システムによって格納および解析された例示的な神経活動信号記録である。
【
図16】脳深部刺激システムの支持コンポーネント間の例示的な通信方法およびデータフローのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の様々な態様および変形の非限定的な例が、本明細書に記載され、添付の図面に示されている。
【0026】
本明細書では、信頼性が高く安全な脳深部刺激に適した例示的な脳深部刺激システムおよび方法について説明する。本明細書に記載の脳深部刺激システムおよび方法は、適応的脳深部刺激または従来の脳深部刺激のためのデータを通信および処理するために互いに通信可能に結合され得る埋め込み型デバイス、患者個人用コントローラデバイス、ユーザ計算デバイス、および/または臨床医プログラマデバイスを含む。
【0027】
本明細書に記載の1つまたは複数の脳深部刺激システムは、効果的かつ効率的な適応的脳深部刺激のために、患者の神経活動信号記録を記録、格納、通信、および解析し得る。さらに、1つまたは複数の脳深部刺激システムは、神経活動信号記録に基づいてリアルタイムで患者の刺激パラメータを変更することにより、適応的脳深部刺激(aDBS)を提供する。患者の神経活動信号記録およびaDBSのリアルタイムの記録、通信、および/または解析は、従来の脳深部刺激(cDBS)と比較して、本明細書に記載の1つまたは複数の脳深部刺激システムの臨床結果を大幅に改善し得る。本明細書に記載の1つまたは複数の脳深部刺激システムと共にaDBSを使用することにより、新しい治療方法および患者の状態に関する知見をもたらす可能性がある刺激パラメータのより時間指向の改善/最適化を可能にし得る。
脳深部刺激(DBS)システムおよびDBSシステムの様々なデバイス間のデータフロー
【0028】
図1は、例示的な脳深部刺激システム100のブロック図である。脳深部刺激システム100は、埋め込み型デバイス101(本明細書では「埋め込み型パルス発生器(IPG)デバイス」とも呼ばれる)、患者個人用コントローラデバイス111、ユーザ計算デバイス121(本明細書では「アプリ」とも呼ばれる)、および臨床医プログラマデバイス131(本明細書では「プログラマデバイス」とも呼ばれる)を含む。埋め込み型デバイス101は、患者個人用コントローラデバイス111および臨床医プログラマデバイスに動作可能に結合される。患者個人用コントローラデバイス111は、ユーザ計算デバイス121に動作可能に結合され、いくつかの実装形態では、臨床医プログラマデバイス131にさらに動作可能に結合され得る。いくつかの実装形態では、ユーザ計算デバイスは、プログラマデバイス131に動作可能に結合され得る。脳刺激システム100は、患者からデータを収集し、埋め込み型デバイス101、患者個人用コントローラデバイス111、ユーザ計算デバイス121、および/または臨床医プログラマデバイス131の間で/を使用してデータを通信/解析し、それぞれのストレージおよび処理能力を効果的に使用することによって、患者に脳深部刺激を与えるために使用され得る。ユーザ計算デバイス121は、ネットワーク150を介してバイオバンクサーバ160に接続されるか、または動作可能に結合される。代わりに、またはさらに、いくつかの実装形態では、臨床医プログラマデバイス131は、ネットワーク150を介してバイオバンクサーバ160に接続または動作可能に結合され得る。
【0029】
患者個人用コントローラデバイス111、ユーザ計算デバイス121、および/または臨床医プログラマデバイス131はそれぞれ、例えば、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、特注のコンピューティングデバイスなどのハードウェアベースの計算デバイスおよび/またはマルチメディアデバイスを含み得る。さらに、患者個人用コントローラデバイス111、ユーザ計算デバイス121、および/または臨床医プログラマデバイス131のそれぞれは、プラグインによって給電され、および/または再充電可能なバッテリを含み得る。埋め込み型デバイス101は、直接電気接続および/または誘導によって電力供給され得る再充電可能なバッテリによって電力供給され得る。
【0030】
本明細書に記載の埋め込み型デバイス101は、初期化のために患者個人用コントローラデバイス111に、および/またはプログラミングのために臨床医プログラマデバイス131に動作可能に結合され得る、埋め込み型および再充電可能な神経刺激装置である。埋め込み型デバイス101は、プロセッサ102、メモリ103、および通信インターフェース104を含み、神経活動信号記録のセットを記録、格納、および/または解析し、および/または刺激パラメータのセットに基づく刺激のセットを患者にさらに提供するために、患者に埋め込まれ得る。いくつかの変形例では、埋め込み型デバイスは、電力を蓄えるためのバッテリおよび/またはコネクタのセット(例えば、八極コネクタ)をさらに含み得る。埋め込み型デバイス101は、脳深部刺激(DBS)プローブ延長部に接続し得る。埋め込み型デバイス101は、プローブ延長部を介して、適応的DBS(aDBS)および/または従来のDBS(cDBS)を患者に提供し得る。
【0031】
プロセッサ102は、例えば、ハードウェアベースの集積回路(IC)、または命令のセットまたはコードのセットを実行または実行するように構成された任意の他の適切な処理デバイスを含み得る。例えば、プロセッサ102は、汎用プロセッサ、中央処理ユニット(CPU)、加速処理ユニット(APU)、特定用途向け集積回路(ASIC)などを含み得る。プロセッサ102は、システムバス(例えば、アドレスバス、データバス、および/または制御バス、図示せず)を介してメモリ103に動作可能に結合される。プロセッサ102は、システムバス(例えば、アドレスバス、データバス、および/または制御バス、図示せず)を介してメモリ103に動作可能に結合される。いくつかの変形例では、プロセッサ102は、Vstim発生器、診断デバイス、電流コントローラ、波形発生器、インピーダンス測定デバイス、信号処理コントローラなどを含む、および/またはそれらに動作可能に結合される。
【0032】
埋め込み型デバイス101のメモリ103は、例えば、メモリバッファ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、フラッシュドライブ、セキュアデジタル(SD)メモリカード、埋め込み型マルチタイムプログラマブル(MTP)メモリ、組み込みマルチメディアカード(eMMC)、ユニバーサルフラッシュストレージ(UFS)デバイスなどであり得る。メモリ103は、例えば、プロセッサ102に1つまたは複数のプロセスまたは機能(例えば、神経活動信号記録のセットを記録すること、パルス信号のセットを生成することなど)を実行させるための命令を含む1つまたは複数のコードを格納し得る。
【0033】
埋め込み型デバイス101の通信インターフェース104は、プロセッサ102および/またはメモリ103に動作可能に結合された第1の計算デバイス101のハードウェアコンポーネントであり得る。通信インターフェース104は、プロセッサ102に動作可能に結合され、プロセッサ102によって使用され得る。通信インターフェース104は、例えば、ネットワークインターフェースカード(NIC)、Wi-Fi(登録商標)モジュール、ブルートゥース(登録商標)モジュール、光通信モジュール、および/または任意の他の適切な有線および/または無線通信インターフェース(すなわち、無線医療テレメトリサービス(WMTS)、医療機器無線通信サービス(MedRadio)、医療インプラント通信サービス(MICS)、医療マイクロパワーネットワーク(MNN)、医療ボディエリアネットワーク(MBAN)など)であり得る。通信インターフェース104は、本明細書でさらに詳細に説明するように、埋め込み型デバイス101を患者個人用コントローラデバイス111、ユーザ計算デバイス121、および/または臨床医プログラマデバイス131に接続するように構成され得る。場合によっては、通信インターフェース104は、埋め込み型デバイス101に通信可能に結合された各患者個人用コントローラデバイス111、ユーザ計算デバイス121、および/または臨床医プログラマデバイス131との間で神経活動信号記録のセットおよび/または刺激パラメータのセットの受信および/または送信を容易にし得る。場合によっては、本明細書でさらに詳細に説明するように、通信インターフェース104を介して受信したデータをプロセッサ102によって処理するか、メモリ103に格納し得る。
【0034】
本明細書に記載の患者個人用コントローラデバイス111は、埋め込み型デバイス101への第1の無線接続(RF無線接続)を確立し、および/または動作のために埋め込み型デバイス101に電力(誘導電力、無線周波数(RF)パワーハーベスティングなど)を提供し得る。患者個人用コントローラデバイス111は、データ(例えば、神経活動信号記録、刺激パラメータのセットなど)を第1の無線接続を介して埋め込み型デバイス101に受信/送信し得る。患者個人用コントローラデバイス111は、プロセッサ112、メモリ113、および通信インターフェース114を含み、これらは、プロセッサ102、メモリ103、および通信インターフェース104とそれぞれ構造的および/または機能的に類似し得る。いくつかの例では、患者個人用コントローラデバイス111は、通信インターフェース114を介して、埋め込み型デバイス101から神経活動信号記録のセットを受信し、神経活動信号記録のセットをメモリ113に格納し得る。いくつかの変形例では、患者個人用コントローラデバイス111は、プロセッサ102、メモリ103、および通信インターフェース104と構造的および/または機能的に類似するプロセッサ、メモリ、および通信インターフェースを有する第1のコンポーネントおよび第2のコンポーネントをそれぞれ含み得る。第1のコンポーネントは、埋め込み型デバイス101を再充電するために使用され、第2のコンポーネントは、第1のコンポーネントに接続して電力を供給するために使用され得る。
【0035】
ユーザ計算デバイス121は、プロセッサ122、メモリ123、および通信インターフェース124を含み、これらは、プロセッサ102、メモリ103、および通信インターフェース104とそれぞれ構造的および/または機能的に類似し得る。場合によっては、ユーザ計算デバイス121は、携帯電話、タブレット、計算デバイス、腕時計、仮想現実デバイスなどの個人用デバイスであり得る。ユーザ計算デバイス121は、通信インターフェース124から受信され、メモリ123に格納され、プロセッサ122によって実行されるソフトウェアとしてアプリケーション(図示せず)を含み得る。例えば、コードは、神経活動データ記録のセットをプロセッサに解析させる。あるいは、アプリケーションは、ユーザ計算デバイス121に取り付けられ得るハードウェアベースのデバイスであり得る。例えば、ユーザ計算デバイス121に神経活動データ記録のセットを解析させ得る集積回路(IC)。
【0036】
本明細書に記載のユーザ計算デバイス121は、神経活動信号記録を含むデータを受信および/または送信するために、患者個人用コントローラデバイス111に接続および/または動作可能に結合し得る。場合によっては、ユーザ計算デバイス121は、患者ログデータを受信して格納し得る。患者ログデータは、患者個人用コントローラデバイス111および/またはユーザ計算デバイス121のユーザ(例えば、患者、患者の保護者、患者の人工知能パーソナルアシスタントなど)から受信され得、例えば、イベントの逐次的/時系列記述(例えば、毎時、毎日、毎週など)、薬剤消費履歴などを含み得る。
【0037】
ユーザ計算デバイス121のアプリケーションは、患者ログデータと神経活動信号記録との間の少なくとも時間相関に基づいて、患者ログデータと神経活動信号記録とを関連付け得る。ユーザ計算デバイス121はさらに、神経活動信号記録および患者ログデータに基づいて、投薬オン時間間隔のセットおよび投薬オフ時間間隔のセットを決定し得る。アプリケーションは、投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔のセット中の神経活動信号記録に基づいて、刺激パラメータをさらに生成し得る。
【0038】
いくつかの変形例では、アプリケーションは、患者個人用コントローラデバイス111および/または臨床医プログラマデバイス131に含まれる/実装され得る。例えば、患者個人用コントローラ111は、埋め込み型デバイス101からの神経活動データ記録のセットを含むデータ、および患者個人用コントローラデバイス111のユーザからの患者ログデータを受信し得る。次いで、患者個人用コントローラ111は、神経活動データ記録のセットおよび患者ログデータに基づいて、投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔のセットを決定し得る。いくつかの変形例では、アプリケーションは、ウェブサービスプロバイダに実装され、ユーザデバイス121、患者個人用コントローラデバイス111、および/または臨床医プログラマデバイス131にダウンロードおよび/またはインストールされたアプリケーションプログラミングインターフェース(API)を介してアクセスされ得る。
【0039】
臨床医プログラマデバイス131は、プロセッサ132、メモリ133、および通信インターフェース134を含み、これらは、プロセッサ102、メモリ103、および通信インターフェース104とそれぞれ構造的および/または機能的に類似し得る。臨床医プログラマデバイス131は、第1の無線接続の起動に基づいて、埋め込み型デバイス101への第2の無線接続(RF無線接続)を確立し得る。臨床医プログラマデバイス131は、刺激/治療モード(すなわち、cDBS治療計画モード、aDBS治療モード)を埋め込み型デバイス101に提供するために、神経活動信号記録のセットを格納および解析し得る。臨床医プログラマデバイスは、埋め込み型デバイス101をプログラムするために使用され得る。臨床医プログラマブルデバイス131は、埋め込み型デバイス101に接続または動作可能に結合して(例えば、2.5GHzの無線周波数(RF)通信プロトコルを介して)、埋め込み型デバイス101から神経活動信号記録のセットを受信し、および/または刺激パラメータのセットを埋め込み型デバイス101に送信し得る。
【0040】
一例では、埋め込み型デバイス101は、最初に刺激パラメータの第1のセットおよび第1の治療モードを含み、神経活動信号記録のセット(例えば、局所場ポテンシャル(LFP))を記録し得る。第1の治療モードは、例えば、第1の刺激パラメータに基づいて刺激を提供するためのタイムテーブルを含み得る。埋め込み型デバイス101は、神経活動信号記録のセットを臨床医プログラマデバイス131に送信し得る。次いで、臨床医プログラマデバイス131を使用する臨床医(例えば、医師、看護師など)は、埋め込み型デバイス101から受信した神経活動信号記録のセットに基づいて、刺激パラメータの第2のセットおよび/または第2の治療モードを決定および/または提供し得る。臨床医プログラマデバイス131は、第2の治療モードおよび/または刺激パラメータの第2のセットを埋め込み型デバイス101に送信し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、第2の無線接続は、認証された無線接続であり得る。例えば、第2の無線接続は、臨床医プログラマデバイス131のユーザが個人識別番号(PIN)を入力した後にのみ確立され得る。場合によっては、第2の無線接続の認証は、埋め込み型デバイス101と臨床医プログラマデバイス131が鍵を交換した後に行われる。
【0042】
いくつかの変形例では、臨床医プログラマデバイス131は、埋め込み型デバイス101との第2の無線接続を確立することなく、第1の無線接続のアクティブ化に基づいて、埋め込み型デバイス101から神経活動信号記録を受信し得る。そのような変形例では、臨床医プログラマデバイス131は、患者個人用コントローラデバイス111を介して埋め込み型デバイス101に治療モードを提供し得る。
【0043】
いくつかの変形例では、臨床医プログラマデバイス131は、手術室で外部化されたプローブ延長部のインピーダンス測定のために臨床医外部デバイスに接続および/または動作可能に結合され得る。インピーダンス測定は、電気抵抗、静電容量、インダクタンスなどを測定することを含み得る。臨床医プログラマデバイス131はさらに、インピーダンス値を共通/標準化されたスケールに正規化することによってインピーダンス値をフォーマットし、インピーダンス値を解析し、および/またはインピーダンス値を臨床医プログラマデバイス131のユーザに表示し得る。
【0044】
ネットワーク150は、サーバおよび/または計算デバイスのデジタル電気通信ネットワークであり得る。ネットワークのサーバおよび/または計算デバイスは、1つまたは複数の有線または無線通信ネットワーク(図示せず)を介して接続され、例えば、データストレージ、接続サービス、および/またはコンピューティングパワーなどのリソースを共有し得る。ネットワーク150のサーバおよび/または計算デバイス間の有線または無線通信ネットワークは、1つまたは複数の通信チャネル、例えば、無線周波数(RF)通信チャネル、極低周波数(ELF)通信チャネル、超低周波(ULF)通信チャネル、低周波数(LF)通信チャネル、中周波数(MF)通信チャネル、超高周波数(UHF)通信チャネル、極高周波数(EHF)通信チャネル、光ファイバ通信チャネル、電子通信チャネル、衛星通信チャネルなどを含み得る。ネットワーク150は、例えば、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、マイクロ波アクセスネットワークの世界的な相互運用性(WiMAX(登録商標))、仮想ネットワーク、任意の他の適切な通信システム、および/またはそのようなネットワークの組み合わせを含み得る。
【0045】
バイオバンクサーバ160は、ネットワーク150を介して、ユーザ計算デバイス121および/またはプログラマデバイス131に動作可能に結合し得るサーバおよび/または計算デバイスを含み得る。バイオバンクサーバ160は、ユーザ計算デバイス121および/またはプログラマデバイス131にデータストレージを提供し得る。いくつかの実施形態では、バイオバンクサーバ160は、データストレージに加えて、接続性、および/またはコンピューティングサービスをユーザ計算デバイス121および/またはプログラマデバイス131に提供し得る。いくつかの変形例では、バイオバンクサーバ160は、例えば、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)、サービスとしてのプラットフォーム(PaaS)、サービスとしてのインフラストラクチャ(IaaS)などのクラウドベースのサービスを含み、および/または実行し得る。場合によっては、バイオバンクサーバ160は、神経活動データ記録、患者ログデータ、および/または刺激パラメータを受信し、処理し、格納する。いくつかの実装形態では、バイオバンクサーバ160は、データベース(例えば、構造化照会言語(SQL)データベース)に格納する前に、神経活動データ記録のセット、患者ログデータ、および/または刺激パラメータのセットのそれぞれのタイムスタンプ付きのバージョンを生成する。
【0046】
図1に示されるように、脳深部刺激システム100は、神経活動信号記録を取得および格納し、電気刺激を適用する埋め込み型デバイス101を含み得る。脳深部刺激システム100は、埋め込み型デバイス101への無線接続を確立して、神経活動信号記録を受信し、埋め込み型デバイス101のバッテリを再充電する患者個人用コントローラデバイス111をさらに含む。患者個人用コントローラデバイスは、埋め込み型デバイスに電力を送信し、埋め込み型デバイスは、無線接続を介して神経活動信号記録を患者個人用コントローラデバイスに送信する。患者個人用コントローラデバイス111は、神経活動信号記録および/または患者ログデータをユーザ計算デバイス121に動作可能に結合し(例えば、ブルートゥース(登録商標)接続、WiFi接続など)、送信し得る。ユーザ計算デバイス121は、神経活動信号記録および/または患者ログデータを解析して、神経活動信号記録に基づいて投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔を決定し、刺激パラメータのセットを生成する。脳深部刺激システム100は、第1の無線接続のアクティブ化に基づいて埋め込み型デバイス101への第2の無線接続を確立し、神経活動信号記録を受信し、神経活動信号記録に基づいて刺激パラメータを設定する臨床医プログラマデバイス131をさらに含む。ユーザ計算デバイス121は、ネットワーク接続(例えば、WiFi接続、第5世代(5G)ネットワーク接続など)を介してネットワーク150に接続し、ネットワーク150を介して神経活動信号記録、患者ログデータ、および/または刺激パラメータを、バイオバンクサーバ160に送信するようにさらに構成し得る。
【0047】
場合によっては、ユーザ計算デバイス121は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を含み、ユーザ計算デバイス121のGUIを介して、神経活動信号記録のプロットまたは神経活動信号記録の統計的分布を表示する。神経活動記録の統計的分布は、例えば、移動平均、毎日の平均値、毎週の平均値、神経活動記録の分布の分散、局所最大値、局所最小値、全体最大値、全体最小値などを含み得る。
【0048】
場合によっては、投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔を決定するために、ユーザ計算デバイス121は、所定の期間中に記録される神経活動信号記録の周波数帯域内のスペクトル特徴のセットを処理(例えば、抽出、表示など)する。周波数帯域は、低周波数帯域、アルファ周波数帯域、またはベータ周波数帯域、ガンマ周波数などを含み得る。ユーザ計算デバイス121はさらに、周波数帯域の投薬オン時間間隔内のスペクトル特徴のセットの第1の平均値と、周波数帯域の投薬オフ時間間隔内のスペクトル特徴のセットの第2の平均値とを生成し得る。ユーザ計算デバイス121は、第1の平均値および第2の平均値に基づいて刺激パラメータを生成し得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、脳深部刺激システム100のユーザに患者識別カードが提供される。患者識別カードは、脳深部刺激システム100のデバイスのセットのモデル、デバイスのセットの名前のセット、デバイスのセットのシリアル番号のセット、患者の識別情報、埋め込み型デバイス101のユーザへの埋め込み日、治療する臨床医に関する情報(名前、電話番号、資格、許可など)、製造業者に関する情報、患者が埋め込み型デバイス101またはその他の埋め込み型デバイスを有するか否かのメモ、患者がジアテルミーを受けて良いか否かのメモ、磁気共鳴画像法(MRI)が禁忌であるか否かのメモ、一般的な安全性情報、患者固有の安全性情報、患者の病歴などを含むユーザに関する情報を含み得る。場合によっては、患者識別カードは、埋め込み型デバイス101、患者コントローラデバイス111、および/またはユーザ計算デバイス121のアプリケーションに格納され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、臨床医プログラマデバイス131は、埋め込み型デバイス101に動作可能に結合されず、患者個人用コントローラデバイス111は、神経活動信号記録および/または患者ログデータを臨床医プログラマデバイス131に動作可能に結合(例えば、ブルートゥース(登録商標)接続、WiFi接続など)して送信し得る。そのような実施形態では、臨床医プログラマデバイス131は、神経活動信号記録および/または患者ログデータを解析して、神経活動信号記録に基づいて投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔を決定し、刺激パラメータのセットを生成する。臨床医プログラマデバイス131は、ネットワーク接続(例えば、WiFi接続など)を介してネットワーク150に接続し、神経活動信号記録、患者ログデータ、および/または刺激パラメータをネットワーク150を介してバイオバンクサーバ160に送信するようにさらに構成され得る。
【0051】
いくつかの変形例では、aDBS治療モードに加えてcDBS治療モードを使用し得る。例えば、神経活動データ記録(例えば、数値時系列として格納された局所場ポテンシャル活動)の1ヶ月の監視/観察は、患者コントローラおよび/または埋め込み型デバイス101に格納され、その後、解析のためにユーザ計算デバイス121および/または臨床医プログラマデバイス131に送信され得る。次いで、ユーザ計算デバイス121および/または臨床医プログラマデバイス131は、刺激パラメータのセットおよびaDBS治療モードを生成し、使用のために患者コントローラおよび/または埋め込み型デバイス101に送信し得る。
【0052】
図2Aおよび
図2Bは、いくつかの変形例に係る、例示的な脳深部刺激システムの概略説明である。
図2Aに示されるように、脳深部刺激システムは、埋め込み型デバイス(IPGとも呼ばれる)、患者個人用コントローラデバイス(個人用コントローラとも呼ばれる)、ユーザ計算デバイス、および臨床医プログラマデバイス(「臨床プログラマ」とも呼ばれる)を含み得る。IPGは、患者の神経活動信号記録を取得して格納し、患者に電気刺激を加え得る。個人用コントローラは、IPGへの無線接続を確立し、神経活動信号記録を受信し、IPGのバッテリを再充電する。個人用コントローラは、(例えば、誘導コイルを介して)電力をIPGに送信し、IPGは、無線接続を介して神経活動信号記録を個人用コントローラに送信する。個人用コントローラは、神経活動信号記録および/または患者ログデータをユーザ計算デバイスに動作可能に結合し(例えば、ブルートゥース(登録商標)接続、WiFi接続など)、送信し得る。ユーザ計算デバイスは、神経活動信号記録および/または患者ログデータを解析して、神経活動信号記録に基づいて投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔を決定し、刺激パラメータのセットを生成する。ユーザ計算デバイスは、ネットワークに接続し、神経活動信号記録、患者ログデータ、および/または刺激パラメータをバイオバンクサーバに送信するようにさらに構成され得る。臨床医プログラマは、第1の無線接続のアクティブ化に基づいてIPGへの第2の無線接続を確立し、神経活動信号記録を受信し、神経活動信号記録に基づいて刺激パラメータを設定する。
【0053】
図2Bに示されるように、脳深部刺激システムは、IPG、個人用コントローラ、および臨床医用プログラマを含み得る。IPGは、患者の神経活動信号記録を取得して格納し、患者に電気刺激を加え得る。個人用コントローラは、IPGへの無線接続を確立し、神経活動信号記録を受信し、IPGのバッテリを再充電する。個人用コントローラは、神経活動信号記録および/または患者ログデータを臨床医プログラマデバイスに動作可能に結合し(例えば、ブルートゥース(登録商標)接続、WiFi接続など)、送信し得る。臨床医プログラマデバイスは、神経活動信号記録および/または患者ログデータを解析して、神経活動信号記録に基づいて投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔を決定し、刺激パラメータのセットを生成し得る。臨床医プログラマデバイスは、ネットワークに接続し、神経活動信号記録、患者ログデータ、および/または刺激パラメータをバイオバンクサーバに送信し得る。
【0054】
図3Aは、脳深部刺激システムの一変形例の概略説明である。脳深部刺激システムは、IPG314、患者コントローラデバイス321、および臨床医プログラマデバイス322を含み得る。IPG314は、神経活動信号を記録し、患者301に刺激を提供するために、埋め込み型プローブ302、バーホールキャップ303、およびプローブ延長部304を介して患者301に動作可能に接続し得る。IPG314は、患者301の神経活動信号を記録および格納し、患者コントローラデバイス321および臨床医プログラマデバイス322に動作可能に結合し得る。場合によっては、患者は、データ通信および電力誘導のために患者コントローラデバイス321をIPG314と位置合わせするのに役立つTシャツを着ている。患者コントローラデバイス321は、IPG314からの神経活動信号記録を格納し、IPG314に電力を供給し得る。場合によっては、神経活動信号記録は、患者コントローラデバイス321に送信されると、IPGのメモリから削除される。臨床医プログラマ322はまた、IPG314から神経活動信号記録を受信し、神経活動信号記録に基づいて刺激パラメータをIPG314に設定し得る。
【0055】
図3Bは、患者に1つまたは複数のプローブを埋め込むために使用され得る脳深部刺激システムの1つの変形例の概略説明である。脳深部刺激システムは、開放刺激セッション(例えば、病院、診療所など)のために臨床医によって使用され得る。開放刺激セッション中、脳深部刺激システムは、プローブアダプタ305を介してプローブ延長部304に接続された臨床医外部デバイス323を含むように構成され得る。臨床医外部デバイス323は、患者301に送信される刺激のセットを生成し、神経活動信号記録を臨床医外部デバイス323のメモリ(図示せず)に格納し得る。臨床医外部デバイス323は、神経活動信号記録を臨床医プログラマデバイス322に動作可能に結合して送信し得る。
【0056】
図4Aは、埋め込み型デバイスの外部ハウジングの一変形例の概略図である。埋め込み型デバイス(本明細書では「埋め込み型パルス発生器(IPG)デバイス」とも呼ばれる)は、患者に埋め込むことができるので、コンパクトであり、体積(例えば、10cc、20cc、30ccなど)および/または重量(20グラム、30グラムなど)が小さい。
図4Bは、埋め込み型デバイスの一変形例のブロック図である。埋め込み型デバイス400Bは、メモリ401、RFチップ402、バッテリ充電器403、V
stim発生器404、およびメインコントローラ430を含む。埋め込み型デバイス400Bは、診断デバイス405、電流コントローラ411、波形発生器412、インピーダンス測定デバイス413、プローブ421、REC電極セレクタ、信号処理コントローラ423、感知デバイス電力レギュレータ424、および局所場ポテンシャル(LFP)検知デバイス425をさらに含み得る。
【0057】
メモリ401は、神経活動記録のセット、刺激パラメータのセットなどを含むデータを格納し得る。RFチップ402は、入ってくる電磁波を処理し、および/またはメインコントローラ430から受信した電気信号のセットを処理して、出て行く電磁波を生成し得る。バッテリ充電器403は、電力を供給し、埋め込み型デバイス400Bのバッテリを充電するための電気回路のセットを含み得る。Vstim発生器404は、刺激電圧ダイナミックを生成し得る。メインコントローラ430は、例えば、ハードウェアベースの集積回路(IC)、または命令/コードのセットを実行または実行するように構成された任意の他の適切な処理デバイスを含み得る。例えば、メインコントローラ430は、汎用プロセッサ、中央処理装置(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラなどを含み得る。メインコントローラ430は、メモリ401、RFチップ402、バッテリ充電器403、Vstim発生器404、診断デバイス405、電流コントローラ411、波形発生器412、インピーダンス測定デバイス413、プローブ421、REC電極セレクタ、信号処理コントローラ423、感知デバイス電力レギュレータ424、LFP検知デバイス425に動作可能に結合して命令のセットを(例えば、電気回路のセットを介して)送信し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイス400Bは、患者個人用コントローラデバイスによって初期化され得る。患者個人用コントローラデバイスは、埋め込み型デバイス400Bに動作可能に結合して、パラメータの初期セット(例えば、初期治療および/または神経活動信号記録データ収集のためのcDBSパラメータのセット)を設定して、埋め込み型デバイス400Bを開始し得る。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは、臨床医のプログラマデバイスによってプログラムされ得る。臨床医プログラマデバイスは、埋め込み型デバイス400Bに動作可能に結合して、埋め込み型デバイス400Bを刺激パラメータのセット(例えば、患者固有の適応的治療および/または神経活動信号記録データ収集のためのaDBSパラメータのセット)でプログラムし得る。
【0059】
図5は、いくつかの変形例に係る、例示的な臨床医外部デバイス500のブロック図である。臨床医外部デバイス500(
図3Bに関して示され、説明されている臨床医外部デバイスなど)は、外部化されたプローブ延長部からの手術室におけるインピーダンス測定のための外部デバイスであり、電極が適切に配置されていることを確認するために移植の日に臨床医(例えば、医師、看護師など)によって使用され得る。臨床医外部デバイス500は、RFアンテナ501、メモリ502、RFチップ503、電源デバイス504、ディスプレイ511(例えば、LCDモニタ)、ブザー512、インピーダンス測定部521、マルチプレクサ522、刺激デバイス523、診断デバイス531、フィルタリングおよび増幅デバイス533、および制御デバイス540を含み得る。
【0060】
図6Aおよび
図6Bは、例示的な患者個人用コントローラデバイスのサブコンポーネントの概略図である。患者個人用コントローラデバイス(
図1に関して示され、説明される患者コントローラデバイス111など)は、埋め込み型デバイスを再充電するための再充電器ユニット(
図6B)と、ケーブルを介して再充電器ユニットに接続し、電力を供給し得るパワーバンク(
図6A)という2つのサブコンポーネントを含み得る。いくつかの実施形態では、再充電器ユニットおよびパワーバンクのそれぞれは、
図1に関して示され説明されるように、プロセッサ102、メモリ103、および通信インターフェース104とそれぞれ構造的および/または機能的に類似するプロセッサ、メモリ、および通信インターフェースを含み得る。再充電器ユニットは、2つの間の通信チャネルを介して埋め込み型デバイスから神経活動信号記録のセットを受信し、受信した神経活動信号記録のセットを再充電器ユニットのメモリに格納し得る。再充電器ユニットは、パワーバンクのメモリ内の神経活動信号記録のセットを送信し得る。
【0061】
再充電器ユニットは、埋め込み型デバイスをオンまたはオフに切り替え、および/または埋め込み型デバイスの残りのバッテリレベルをチェックするために、埋め込み型デバイスとの通信チャネルを(例えば、無線周波数(RF)通信チャネルを介して)確立し得る。パワーバンクは、患者個人用コントローラデバイスのユーザに情報を表示するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)および/またはユーザからコマンドを受信するためのボタンのセットを含むユーザインターフェースを含み得る。埋め込み型デバイス、再充電器ユニット、および/またはパワーバンクの充電残量(残りのバッテリレベル)のステータス更新は、パワーバンクのGUIに表示され得る。また、治療状況のステータス更新や誤動作のお知らせなどをGUIに表示し得る。場合によっては、パワーバンクおよび/または再充電器ユニットは、誤動作および/または低バッテリレベルを通知するための警告サインを生成し得る。場合によっては、再充電器ユニットを使用して埋め込み型デバイスを初期化/アクティブ化し得る。初期化/アクティブ化は、刺激パラメータの初期セットの設定および/または埋め込み型デバイスの充電電力を含み得る。同様に、再充電器ユニットを使用して、埋め込み型デバイスを非アクティブ化/遮断し得る。
【0062】
図7は、埋め込み型デバイス(本明細書では「埋め込み型パルス発生器(IPG)デバイス」とも呼ばれる)と患者個人用コントローラデバイスとの間の無線接続を確立するための例示的な方法の概略図である。患者個人用コントローラデバイスは、無線接続を介して電力を送信して、IPGを充電し得る。代替的に、または追加的に、IPGデバイスは、神経活動信号記録および/または刺激パラメータを患者個人用コントローラデバイスに/から送信/受信し得る。例えば、IPGは、無線接続を介して神経活動信号記録を患者個人用コントローラデバイスに送信し得、個人用コントローラデバイスは、無線接続を介して刺激パラメータまたは命令をIPGに送信し得る。場合によっては、埋め込み型デバイスと患者個人用コントローラデバイス(例えば、患者個人用コントローラデバイスの再充電器ユニット)との間の無線接続は、患者個人用コントローラデバイスと埋め込み型デバイスが所定の距離範囲(例えば、2センチメートル~10センチメートル、1ミリメートル~1メートルなど)および方向範囲にあるときに確立され得る。方向範囲は、例えば、5回転度の誤差マージン、10回転度の誤差マージンなど内で患者個人用コントローラデバイスの垂直向きを埋め込み型デバイスの垂直向きに位置合わせすることを含み得る。
【0063】
図8は、患者個人用コントローラデバイス800(
図1に関して図示および説明した患者個人用コントローラデバイスなど)の1つの変形例のブロック図である。患者個人用コントローラデバイス800は、埋め込み型デバイスを充電し、および/または埋め込み型デバイスによって記録された神経活動信号データをダウンロードするために患者によって使用され得る(
図6および
図7に関して示され、説明されるように)。患者個人用コントローラデバイス800は、アンテナ801(例えば、2.4GHzRFアンテナ)、メモリ802(例えば、セキュアデジタル(SD)カードメモリ)、RFチップ803、誘導コイル811、押しボタン812、電力調整器813、メインコントローラ820、およびブルートゥース(登録商標)コントローラ814を含む。
【0064】
アンテナは、神経活動記録のセット、刺激パラメータのセットなどを含み得るデータを表す入力電磁波を送信および受信し得る。RFチップ803は、アンテナによって受信された入力電磁波を処理し、および/またはメインコントローラ820から受信された電気信号のセットを処理して、出力電磁波を生成し得る。メモリ802は、神経活動記録のセット、刺激パラメータのセットなどを含むデータを格納し得る。誘導コイル811は、磁束を生成して、電力を埋め込み型デバイス(図示せず)に誘導し得る。押しボタン812は、埋め込み型デバイスとの通信を開始、アクティブ化/非アクティブ化、および/または確立するために、患者個人用コントローラデバイス800のユーザによってアクティブ化され得る。電力調整器813は、誘導コイル811を介して埋め込み型デバイスに誘導される電力の特性を調整するための電気および/または電子回路のセットを含み得る。ブルートゥース(登録商標)コントローラ814は、ブルートゥース(登録商標)信号のセットを処理および/または生成するための電気、電子、および/またはRF回路のセットを含み得る。メインコントローラ820は、例えば、ハードウェアベースの集積回路(IC)、または命令/コードのセットを実行または実行するように構成された任意の他の適切な処理デバイスを含み得る。例えば、メインコントローラ820は、汎用プロセッサ、中央処理装置(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラなどを含み得る。メインコントローラ820は、メモリ802、RFチップ803、誘導コイル811、押しボタン812、電力調整器813、および/またはブルートゥース(登録商標)コントローラ814に動作可能に結合し、命令のセットを生成し得る。
【0065】
図9Aおよび
図9Bは、例示的な臨床医プログラマデバイス(
図1に関して図示および説明した臨床医プログラマデバイス131など)の概略説明である。
図9Aに示されるように、臨床医プログラマデバイスは、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を含み得る。場合によっては、GUIは、臨床医プログラマデバイスのユーザ(例えば、臨床医、医師、看護師など)がGUIを介して臨床医プログラマデバイスと対話し得るようにタッチスクリーンパネルであり得る。
【0066】
臨床医プログラマデバイスは、他のデバイスとの接続状態をチェックするための接続アプリケーション、患者に刺激を与えるための刺激アプリケーション、および/または埋め込み型デバイスおよび/または患者個人用コントローラデバイスから受信した神経活動記録を記録するための記録アプリケーションを含む、様々なソフトウェアアプリケーションを含み/実施し得る。臨床医プログラマデバイスは、臨床医プログラマデバイスのユーザによって治療モードを設定するための治療アプリケーション、臨床医プログラマデバイスに動作可能に結合された電極のインピーダンスのセットを測定および設定するためのインピーダンスアプリケーション、および/または臨床医プログラマデバイスに適したその他のアプリケーション(例えば、患者情報カードアプリケーション、オペレーティングシステムのバージョン情報、日付/時刻アプリケーション、メモリアプリケーション、プロセッサアプリケーションなど)をさらに含み/実施し得る。
【0067】
図9Bに示されるように、臨床医プログラマデバイスは、パネルインターフェース(例えば、バックパネルインターフェース、トップパネルインターフェースなど)を含み得る。場合によっては、パネルインターフェースは、臨床医プログラマデバイスをオン/オフするための電源ボタン、および/または埋め込み型デバイス、患者個人用コントローラデバイス、ネットワーク(例えば、インターネット)などから/へデータを表す電磁波を受信および/または送信するためのアンテナを含み得る。パネルインターフェースは、交流(AC)および/または直流(DC)電源から電力を受信し、臨床医プログラマデバイスのバッテリを充電するための電源プラグポートをさらに含み得る。パネルインターフェースは、外部ホストに接続するためのユニバーサルシリアルバス(USB)タイプのポートを提供し得る。
【0068】
図10は、例示的な臨床医プログラマデバイス1000のブロック図である。臨床医プログラマデバイス1000は、メモリ1001(例えば、電気的に消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)メモリ)、RFチップ1002、アンテナ1003(例えば、RFアンテナ)、タッチスクリーン1011、バッテリ充電器1012、メインコントローラ1030、およびUSB-UARTコンバータ1021を含み、外部ホスト1022に接続し得る。
【0069】
アンテナ1003は、神経活動記録のセット、刺激パラメータのセットなどを含み得るデータを表す入力電磁波を送信および受信し得る。RFチップ1002は、アンテナによって受信された入力電磁波を処理し、および/またはメインコントローラ1030から受信した電気信号のセットを処理して、出力電磁波を生成し得る。メモリ1001は、神経活動記録のセット、刺激パラメータのセットなどを含むデータを格納し得る。バッテリ充電器1012は、電力を供給し、臨床医プログラマデバイス1000のバッテリを充電するための電気回路のセットを含み得る。タッチスクリーン1011は、画像のセットを臨床医プログラマデバイス1000のユーザに表示し、タッチスクリーン1011に触れることによってユーザからコマンドのセットを受信し得る。USB-UARTコンバータ1021は、外部ホスト1022(例えば、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータなど)とインターフェースするために、ユニバーサル非同期受信機-送信機(UART)ポート通信をユニバーサルシリアルバス(USB)ポート通信に変換し得る。メインコントローラ1030は、例えば、ハードウェアベースの集積回路(IC)、または命令/コードのセットを実行または実行するように構成された任意の他の適切な処理デバイスを含み得る。例えば、メインコントローラ1030は、汎用プロセッサ、中央処理ユニット(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラなどを含み得る。メインコントローラ1030は、メモリ1001、RFチップ1002、アンテナ1003、タッチスクリーン1011、バッテリ充電器1012、メインコントローラ1030、USB-UARTコンバータ1021、および/または外部ホスト1022に動作可能に結合し、命令のセットを生成し得る。
適応的脳深部刺激(aDBS)プログラミングの方法
【0070】
本明細書に記載されるのは、適応的脳深部刺激(aDBS)および/または従来の脳深部刺激(cDBS)を提供し得る埋め込み型デバイス(本明細書では「埋め込み型パルス発生器(IPG)デバイス」とも呼ばれる)である。aDBSモードでは、制御変数のセットおよび患者の神経活動に基づいて、刺激パラメータのセットをリアルタイムで変更し得る。より具体的には、DBSモードでは、IPGデバイスは、脳深部刺激(DBS)プローブの1つまたは複数の電極からの神経活動信号(例えば、局所場ポテンシャル(LFP))を記録する。次いで、IPGデバイスは、神経活動のサンプル/デジタル化された表現として神経活動信号記録を格納し得る。IPGデバイスは、特定の周波数帯域(例えば、アルファ帯域、ベータ帯域、12Hz~35Hzなど)で神経活動信号記録を抽出し、線形関係に基づいて刺激パラメータのセット(例えば、刺激振幅、刺激パルス幅など)を適応させるようにさらに構成され得る。ベータ振動の電力は、患者の臨床状態と直線的に相関し得る。言い換えれば、より高いベータ電力値を有する神経活動信号記録は、より悪い臨床状態を意味し得るため、より高い刺激振幅が必要になり得る。しかしながら、IPGデバイスにおいて定量的に実施される場合、そのような線形関係は、患者固有の方法で較正されることを必要とし得る。したがって、患者固有の症状を制御する深部脳刺激デバイスは、有益であり得る。
【0071】
IPGデバイスでaDBSモードがアクティブ化されると、脳深部刺激(DBS)の振幅は、DBS電極によって記録された神経活動信号に従って、脳深部刺激システム(
図1に関して示され、説明される脳深部刺激システム100など)によって自動的に決定/設定される。より具体的には、aDBSモードは、例えば、ベータ帯域(10~35Hz)などの特定の帯域における局所場ポテンシャル(LFP)振動の電力に従って刺激振幅を修正する。特定の患者は、ベータ帯域の異なる中心周波数と異なるベータ電力値を有し得る。また、特定の患者は、DBSに対して異なる反応を示し、特定の患者の患者固有の症状を制御するために特定の刺激強度を必要とし得る。したがって、aDBSモードを正しく設定するために、治療を行う臨床医は、以下を含むパラメータのセットを定義し得る。
・ P
βMIN:特定の患者(これは通常、オン投薬状態に関連している)のベータ帯域振動によって到達される平均最小電力(本明細書では第1の平均値とも呼ばれる)
・ P
βMAX:特定の患者(これは通常、オフ投薬状態に関連している)のベータ帯域振動によって到達される平均最大電力(本明細書では第2の平均値とも呼ばれる)
・ A
min:特定の患者で検出可能な臨床効果を引き出す最小DBS振幅
・ A
max:特定の患者で副作用を誘発する前の最大DBS振幅
・ V
DBS:DBS振幅出力
パラメータのセットにより、aDBSモードを較正できる。
【数2】
ここで、P
βは、埋め込まれたプローブの電極によって測定され得るベータ周波数帯域の神経活動信号の電力(または振幅)である。
【0072】
図11は、感知電極のセット、刺激電極のセット、および電力帯域を選択するための方法1100である。方法1100は、1101で、電極対のセットのインピーダンスをチェックし、異常なインピーダンス値を有する電極対のセットから電極対のサブセットを除外することを含む。方法1100は、1102で、残りの電極対における神経活動(例えば、局所場ポテンシャル(LFP)活動)のセットの電力スペクトルをスクリーニングすることをさらに含む。方法1100は、1103で、治療ウィンドウを滴定し、A
maxおよびA
minを定義することをさらに含む。A
maxおよびA
minは、患者が薬を服用していないときに測定され得る。方法1100は、1104で、刺激電極を除いて最高のベータ活動を感知し示すための電極対を選択することをさらに含む。場合によっては、患者が投薬を受けているときにA
maxおよびA
minを決定し得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、方法1100は、臨床医プログラマデバイス(
図1に関して示され説明されるプログラマデバイス131など)を使用して、および/またはユーザ計算デバイス(
図1に関して示され説明されるユーザ計算デバイス121など)を使用して実施され得る。臨床医プログラマデバイスは、利用可能なすべての電極対のインピーダンスをチェックするように構成され得る。代替的または追加的に、電極インピーダンスチェックは、プローブが埋め込まれた時点で臨床医の外部デバイスを使用して実行することもされ得る。例えば、500~2000オームの許容インピーダンス範囲などの許容インピーダンス範囲外のインピーダンスを有する各電極は、臨床医プログラマデバイスのメモリに格納される(
図1に関して示され説明されるプログラマデバイス131のメモリ133に格納される)。許容インピーダンス範囲外のインピーダンスを有するこのような電極は、刺激および/または記録から除外される。臨床医プログラマデバイスは、患者が投薬を受けていない状態にあるときに、利用可能な各電極対(異常なインピーダンス値を有するものを除外)について神経活動のセット(例えば、LFP活動)の短期(例えば、10~30秒など)記録を実行する。適切な記録条件を確保するために、パーキンソン病の症状が優勢な患者が薬を飲んでいない状態にあるとき(例えば、一晩の刺激と薬理学的離脱後)に、神経活動のセットの短期記録を実行することが推奨される。臨床医プログラマデバイスは、治療ウィンドウ(例えば、所定の周波数領域)における神経活動のセットの短期記録の特性を検討するように構成され得る。治療ウィンドウは、一般に、神経活動のセットの短期記録を特徴付ける振動活動を示す。場合によっては、振動活動は、神経活動のセットの短期記録の治療ウィンドウにおけるピークによって識別される。ピークは、強度(本明細書では「スペクトル電力」とも呼ばれる)によって特徴付けられ得、臨床医プログラマデバイスで報告/表示され得る。臨床医プログラマデバイスはさらに、ピーク周波数(すなわち、電力スペクトルが最高値を有する周波数)および神経活動のセットの短期記録に関連する電力スペクトルを格納する。臨床医プログラマデバイスは、利用可能な各電極対(両側)に対して上記の手順を実行する。
【0074】
臨床医プログラマデバイスは、最も低い副作用(すなわち、臨床結果)および患者の組織に送達される低いエネルギで最良の患者固有の症状制御を可能にする1つまたは複数の埋め込まれたプローブ上の電極のセットを選択するように構成され得る。各電極は、広帯域スペクトル特性を含み得、広いスペクトル範囲で神経活動信号を記録し得る。選択された電極が神経活動のセットの短期記録のために既に識別されていたとしても、臨床医プログラマデバイスは、選択された電極を使用し得る。臨床医プログラマデバイスは、選択された電極に関連するAmin(患者にとって臨床的利益を引き出す最小振幅)およびAmax(副作用を誘発する前の最大振幅)をさらに定義し得る。臨床医プログラマデバイスは、臨床医プログラマデバイスのメモリにAminおよび/またはAmaxを格納し得る。臨床医プログラマデバイスは、ベータ周波数帯域(例えば、10Hz~35Hzの間)において最高の電力を有する最強のベータ周波数帯域成分(刺激用に選択された電極対と異常なインピーダンスを有する電極を除外する)を有する電極対を識別するようにさらに構成され得る。ベータ周波数帯域は、一般に、10~30Hzの範囲であると理解されているが、患者固有のベータ周波数帯域は、患者によって異なり得、患者のaDBSモードをパーソナライズするために脳深部刺激システムによって決定され得る。これは、患者ごとに、神経活動信号の電力のピーク(「患者固有の電力」とも呼ばれる)が異なる周波数で発生し得るためである。例えば、患者Aは、25Hzよりも15Hzで活動が多く、患者Bは、20Hzで活動のピークがあり、ベータ帯域の他の周波数では活動がはるかに低く、患者Cは、10Hzよりも30Hzで活動が多い、などである。臨床医プログラマデバイスは、患者固有の周波数帯域の範囲/境界(+/-2Hz、+/-3Hzなど)を決定および/または選択するように構成され得る。例えば、患者固有のベータ周波数帯域は、患者について測定されたベータピークの周囲で+/-2Hzであり得る。
【0075】
埋め込み型パルス発生器(IPG)デバイスは、例えば、所定の期間の局所場ポテンシャル(LFP)などの神経活動信号記録を取得および/または格納する。所定の期間は、臨床医によって決定され得、いくつかの変形例では、約1週間、2週間、20週間、1日、10日、15日、30日、45日、60日などであり得る。IPGデバイスは、神経活動信号記録としてIPGデバイスのメモリに記憶され得る、所定の期間にわたる神経活動信号を取得する。IPGおよび/または本明細書に記載の外部デバイスのいずれか(例えば、患者コントローラデバイス、プログラマデバイスなど)は、IPGからの神経活動信号記録に基づいて、第1の平均値P
βMINおよび第2の平均値P
βMAXを計算し得る。神経活動信号記録は、選択された最高のベータ活動を感知し、示すために、上記のように選択された電極対からの少なくとも1つの電極から記録される。特に、IPGデバイスは、不揮発性メモリ(
図1に関して示され、説明される埋め込み型デバイス101のメモリ103など)に、所定の期間のセットの神経活動信号記録のスペクトル特徴を格納する。場合によっては、各所定の期間Tの長さは、メモリのメモリ空間(例えば、100MB、1GB、4GB、8GB、128GBなど)に基づいて決定され得る。そのような場合、データの時間分解能を向上させるために、より大きなメモリ空間に短い所定の期間Tが割り当てられる。場合によっては、神経活動信号記録のスペクトル特徴に加えて、IPGデバイスは、上記のように選択された患者固有の周波数帯域から患者固有の電力を格納し得る。患者固有の周波数帯域からの患者固有の電力の値は、患者固有の所定の期間T’ごとに格納する必要がある。場合によっては、患者固有の所定の期間T’は、医師によって設定され、神経活動信号記録のスペクトル特徴に基づいて決定され、および/または(例えば、総データ記憶容量および/または残りのデータ記憶容量、合計および/または残りのバッテリ、バッテリ電力消費とデータの時間分解能との間のトレードオフ、データ記憶容量とデータの時間分解能との間のトレードオフなどに基づいて)予め決定され得る。例えば、神経活動信号記録は、平均して、時間T1ごとにスペクトルピークまたはスペクトルディップを示し得る。したがって、患者固有の所定の期間T’をT1の係数に設定し得る(例えば、0.5、2、3を掛けるなど)。場合によっては、患者固有の所定の期間T’は、所定の期間Tに等しい。したがって、神経活動信号記録は、IPGによってX日間(例えば、X≧1)記録され、処理される。神経活動信号記録は、脳深部刺激療法(DBS)の投薬オン時間間隔(例えば、DBS投薬がオンに設定されている場合)および/または投薬オフ時間間隔(例えば、DBS投薬がオフに設定されている場合)の両方で記録され得る。投薬オン時間間隔および/または投薬オフ時間間隔は、患者固有の病状に基づいて決定され得る。
【0076】
一例では、IPGデバイスが古いIPGデバイスを交換するために埋め込まれる場合(例えば、古いIPGデバイスのバッテリの枯渇により)、パーキンソン病患者は、パーキンソン症候群疾患の進行状態にある患者であり得、IPGデバイスの刺激装置の投薬オフ時間間隔に潜在的に耐え得ない。他の例では、IPGデバイスが初めて患者に埋め込まれた場合、通常は調整期間があり、この期間では、投薬オフ時間間隔により、刺激の刺激パラメータのセットを設定する前に電極のインピーダンスを調整できる。プローブの埋め込みは、電極の周りの浮腫を含む「驚異的な効果」を生み出し得、最終的には、刺激の臨床効果の評価に偏りを引き起こし得る。したがって、調整期間の終了を待って、投薬オフ時間間隔でDBSをオンにするのが一般的な臨床診療である。このような調整期間は、多くの場合、データの収集に適している。好ましくは、データを収集するための方法は、神経活動信号記録(電力スペクトル)および/または神経活動信号記録の患者固有の電力(例えば、少なくとも1つの電極から)をデータとして取得および/または格納し得るように、DBSがスイッチオンされる第1の日数X(例えば、X≧1)を含む。次いで、IPGデバイスに格納されたデータは、例えば、無線周波数通信チャネルを介して、患者個人用コントローラデバイス(
図1に関して示され、説明される患者個人用コントローラデバイス111など)の再充電のサイクルごとにダウンロードされ得る。再充電のサイクルは、例えば、1日1回、1日おき、3日ごと、4日ごと、5日ごと、毎週などで行われ得る。データが患者個人用コントローラデバイスにダウンロードされると、データは、IPGデバイスのメモリから削除され、より大きなメモリサイズを有し得る患者個人用コントローラデバイスのメモリ(
図1に関して示され、説明されるメモリ113など)に連続して格納される。場合によっては、データをIPGデバイスから患者個人用コントローラデバイスに移動させることにより、IPGデバイスが長期間(例えば、1か月、2か月、3か月、6か月、12か月など)データを取集することができる。
【0077】
本明細書では、埋め込み型パルス発生器(IPG)デバイスに適応的脳深部刺激(aDBS)を提供するために、刺激パラメータのセット(本明細書では「適応ルールのセット」とも呼ぶことができる)を決定する方法について説明する。刺激パラメータのセットは、最小刺激振幅A
MIN、最大刺激振幅A
MAX、P
βMINによって表される第1の平均値、またはP
βMAXによって表される第2の平均値を含み得る。刺激パラメータのセットは、以下によって脳刺激(DBS)振幅V
DBSを集合的に定義し得る。
【数3】
ここで、P
βは、第1の平均値P
βMINと第2の平均値P
βMAXとの間の値を有する神経活動信号記録の電力を表す。
【0078】
場合によっては、最小刺激振幅A
MINおよび/または最大刺激振幅A
MAXは、
図11に関して上述したように、特定の患者の治療ウィンドウに関して決定され得る。場合によっては、最小刺激振幅A
MINおよび/または最大刺激振幅A
MAXは、刺激振幅の漸進的増加(例えば、ゼロ値から開始して臨床医が決定した刺激値まで)および漸進的増加の臨床結果を記録することによって経験的に決定され得る。
【0079】
図12は、適応的脳深部刺激のための例示的な方法1200である。方法1200は、例えば、臨床医プログラマデバイス(
図1に関して示され、説明される臨床医プログラマデバイス131など)によって、および/またはユーザ計算デバイス(
図1に関して示され説明されるユーザ計算デバイス121など)を使用して実行され得る。方法1200は、所定の日数の間の神経活動信号記録のセットのスペクトル特徴のセットを抽出すること1201と、スペクトル特徴のセットの周波数帯域内のスペクトル特徴のセットを選択すること1202と、所定の日数の間の投薬オン時間間隔のセットおよび投薬オフ時間間隔のセットを選択すること1204と、周波数帯域内および投薬オン時間間隔のセット内の選択されたスペクトル特徴のセットの最小平均を生成すること1205と、周波数帯域内および投薬オフ時間間隔のセット内の選択されたスペクトル特徴のセットの最大平均を生成すること1206と、を含み得る。任意選択で、方法1200は、周波数帯域内および所定の日数にわたる選択されたスペクトル特徴のセットの平均を生成すること1203を含み得る。
【0080】
図13および
図14は、適応的脳深部刺激のために臨床医プログラマデバイスをプログラミングするための例示的な方法である。方法は、
図11に関して説明したように、第1の平均値P
βMINおよび第2の平均値P
βMAXを取得することを説明する。方法は、数日間(例えば、1日、2日、10日など)の局所場スペクトル特徴を収集することを含む。方法はさらに、低周波数帯域、アルファ周波数帯域、ベータ周波数帯域、またはガンマ周波数から局所場ポテンシャルの周波数帯域を選択することを含む。方法はさらに、選択された周波数帯域にわたる局所場スペクトル特徴の電力を平均化することを含む。場合によっては、選択された周波数帯域にわたる局所場スペクトル特徴の電力の移動平均値のセットが、期間のセット(例えば、10分、1時間、6時間、1日、2日など)について計算され得る。したがって、移動平均値のセットの中から投薬オン時間のセットおよび投薬オフ時間のセットを選択し得る。場合によっては、閾値は、ユーザ(例えば、患者、臨床医、医師など)によって決定され、移動平均値が閾値を上回る/下回る期間は、投薬オフ時間/投薬オン時間として分類され得る。最後に、第1の平均値P
βMINは、選択された帯域の電力を投薬オン時間にわたって平均することによって計算され得、第2の平均値P
βMAXは、選択された帯域の電力を投薬オフ時間にわたって平均することによって計算され得る。
【0081】
上述のように、脳深部刺激システムは、神経活動信号記録のセットを格納および解析して、従来の脳深部刺激(cDBS)治療計画モードおよび/または適応的脳深部刺激(aDBS)治療モードを含む刺激/治療モードを提供し得る。場合によっては、ユーザデバイス(
図1に関して示され、説明されるユーザ計算デバイスなど)のユーザは、cDBS治療モードを使用することを選択し得る。cDBS治療計画モードは、刺激の周波数、パルス幅および/または振幅を含む刺激パラメータのセットを設定することを含み得る。場合によっては、ユーザデバイスのユーザは、aDBS治療モードを使用することを選択し得る。aDBS治療計画モードは、最大電力、最小電力、帯域長、最小刺激振幅、最大刺激振幅、周波数、パルス幅などを含む刺激パラメータのセットを設定することを含み得る。刺激/治療モードのさらなる変形例は、米国特許第10,596,379号に提供されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0082】
いくつかの実施形態では、臨床医プログラミングデバイスおよび/またはユーザ計算デバイスのユーザは、開放刺激モード(「開放刺激セッション」とも呼ばれる)を使用するために(臨床医プログラミングデバイスのGUI経由)を選択し得る。開放刺激モード中、ユーザは、開放刺激モードの刺激パラメータを決定するために、プローブ(例えば、それぞれが一対の電極を含む)のパラメータを設定/割り当て得る。パラメータは、例えば、各電極の刺激振幅、周波数、パルス幅などを含み得る。いくつかの実施形態では、ユーザは、臨床医プログラミングデバイスおよび/またはユーザ計算デバイスを神経信号記録モードで操作して、神経活動信号(例えば、局所場ポテンシャル)を一定時間(例えば、30秒間)記録し、神経活動信号記録の電力スペクトルを表および/またはグラフで視覚化することを選択し得る。場合によっては、グラフは、例えば、移動平均、偏差、全体平均、ミディアムなどの神経活動信号記録の統計的分布を含み得る。
【0083】
図15Aおよび
図15Bは、脳深部刺激システムによって格納および解析された例示的な神経活動信号記録である。上述のように、脳深部刺激システムは、例えば、所定の期間(例えば、1日、10日など)の局所場ポテンシャル(LFP)などの神経活動信号記録を取得および/または格納し得る。例えば、
図15Aに示されるように、場合によっては、1日の間(例えば、通常の日常活動中)の神経活動信号記録を、左視床下核(STN)と右STNについて別々に、5Hz~35Hzの間の周波数範囲で取得して記録し得る。脳深部刺激システムは、低周波数帯域、アルファ周波数帯域、ベータ周波数帯域、および/またはガンマ周波数から、神経活動信号記録の周波数帯域を選択し得る。例えば、
図15Aに示されるように、場合によっては、解析のために12Hz~20Hzの間の周波数帯域を選択し得る。脳深部刺激システムは、選択された周波数帯域全体の神経活動信号記録の電力をさらに平均化し得る。例えば、
図15Bに示されるように、平均化された神経活動信号記録は、上述の脳深部刺激システムおよび方法によってさらに解析され、投薬オン時間間隔および投薬オフ時間間隔を決定し得る。
【0084】
図16は、いくつかの変形例における、脳深部刺激システム(
図1に関して示され説明される脳深部刺激システム100など)の支持コンポーネント(「支持システム」とも呼ばれる)1620間の例示的な通信方法およびデータフロー1610のフローチャートである。脳深部刺激は、支持コンポーネント1620を使用してデータフロー1610を実施し得る。支持コンポーネントは、IPG1621(
図1の埋め込み型デバイス101)、患者コントローラ1622(
図1の患者個人用コントローラデバイス111)、アプリケーション1623(
図1のユーザ計算デバイス121または臨床医プログラマデバイス131に実装される)、クラウドサービス(
図1のバイオバンクサーバ)1624を含み得る。データフローは、IPGデバイスでの毎日のデータの収集1610を含む。毎日のデータは、神経活動信号記録のセットおよび/または患者ログデータを含み得る。データフローは、長期的なデータ保存のために患者コントローラ1622に毎日日次データをダウンロードすること1612を含む。データフローは、アプリケーション1623での長期的なデータをダウンロードすることを含む。データフローは、クラウドサービス1624への/クラウドサービス内への長期的なデータの送信および格納する1614ことを含む。
【0085】
前述の説明は、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために特定の命名法を使用した。しかしながら、本発明を実施するために特定の詳細が必要とされないことは、当業者には明らかであろう。このように、本発明の特定の変形例に関する前述の説明は、例示および説明の目的で提示されたものである。それらは網羅的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図していない。明らかに、上記の教示を考慮して、多くの修正および変形が可能である。変形例は、本発明の原理およびその実際の応用を説明するために選択され、説明されたものであり、それにより、他の当業者が本発明および意図される特定の用途に適した様々な変更を加えた様々な変形例を利用できるようにする。以下の請求の範囲およびそれらの均等物が本発明の範囲を定義することが意図されている。
【国際調査報告】