(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】金属体における変形低減および抵抗のためのシステム、デバイス、ならびに方法
(51)【国際特許分類】
G21K 5/08 20060101AFI20230814BHJP
G21G 4/02 20060101ALI20230814BHJP
G21K 5/02 20060101ALI20230814BHJP
G21K 1/00 20060101ALI20230814BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
G21K5/08 N
G21G4/02
G21K5/02 N
G21K1/00 N
A61N5/10 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504025
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 US2021042717
(87)【国際公開番号】W WO2022020556
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515056990
【氏名又は名称】ティーエーイー テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タスカエフ, セルゲイ ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】マカロフ, アレクサンドル エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ソコロバ, エフゲニア オー.
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC07
4C082MA01
(57)【要約】
リチウム層と、金属基板とを有する、金属体が、提供される。金属体は、ブリスタリング等の放射線誘発変形に対する増加された抵抗を呈することができる。金属体をより耐ブリスタ性の構成に遷移させるための方法が、以前に形成されたブリスタを減少または排除するための本発明者らの方法とともに、提供される。金属体を利用するためのシステムおよび方法もまた、開示される。本明細書に説明される主題は、概して、金属体において変形形成の可能性を低減させる、および/または変形のサイズを減少させるためのシステム、デバイス、ならびに方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム層と、金属基板とを備える標的を有するビームシステムを動作させる方法であって、前記方法は、
(a)前記標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、前記標的において形成されるように、前記標的を荷電粒子放射線に曝すステップと、
(b)前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記荷電粒子放射線は、陽子ビームである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(b)前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、1平方センチメートルあたり(cm
-2)少なくとも0.5×10
19の陽子エネルギーフルエンスに前記標的を曝すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(b)前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、前記ブリスタの量が1桁低減されるまで、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
中性子は、ステップ(a)および(b)において1秒あたり少なくとも1×10
12個の中性子の第1のレートにおいて放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(a)前記標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、前記標的において形成されるように、前記標的を荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、前記放出された中性子をヒト患者に印加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(b)前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、前記放出された中性子をヒト患者に印加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記放出された中性子は、反応p+
7Li→n+
7Beに従って、前記リチウム層によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)手技の一部として(a)および(b)を実施するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記荷電粒子放射線は、ビームの形態であり、前記標的は、前記ビームの伝搬の方向を横断する方向において前記標的の表面を横断して前記ビームを移動させながら、ステップ(a)および(b)において前記荷電粒子放射線に曝される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(b)はさらに、前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、量およびサイズにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(b)はさらに、前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、サイズのみにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記金属基板は、銅である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記リチウム層は、前記銅基板と接触する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記リチウム層は、前記銅バルク基板上に直接形成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記リチウム層は、1ミクロン~300ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記荷電粒子放射線は、1.9MeV~3.0MeVの範囲内のエネルギーを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
リチウム層と、金属基板とを備える標的を有するビームシステムを動作させる方法であって、前記方法は、
(a)前記標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、前記標的において形成されるように、前記標的を荷電粒子放射線に曝すステップと、
(b)前記標的が、中性子を放出し、リチウム化合物層が、前記リチウム層と前記金属基板との間に、前記複数のブリスタを量および/またはサイズにおいて低減させるために十分なサイズまで形成されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップと
を含む、方法。
【請求項19】
前記荷電粒子放射線は、陽子ビームである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(b)前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、1平方センチメートルあたり(cm
-2)少なくとも0.5×10
19の陽子エネルギーフルエンスに前記標的を曝すステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
(b)前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、前記ブリスタの量が1桁低減されるまで、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
中性子は、ステップ(a)および(b)において1秒あたり少なくとも1×10
12個の中性子の第1のレートにおいて放出される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
(a)前記標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、前記標的において形成されるように、前記標的を荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、前記放出された中性子をヒト患者に印加するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
(b)前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、前記放出された中性子をヒト患者に印加するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記放出された中性子は、反応p+
7Li→n+
7Beに従って、前記リチウム層によって生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)手技の一部として(a)および(b)を実施するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記荷電粒子放射線は、ビームの形態であり、前記標的は、前記ビームの伝搬の方向を横断する方向において前記標的の表面を横断して前記ビームを移動させながら、ステップ(a)および(b)において前記荷電粒子放射線に曝される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
(b)はさらに、前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、量およびサイズにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
(b)はさらに、前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、サイズのみにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記金属基板は、銅であり、前記リチウム化合物層は、リチウム銅化合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記リチウム層は、1ミクロン~300ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前記荷電粒子放射線は、1.9MeV~3.0MeVの範囲内のエネルギーを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
リチウム層と、金属基板とを備える標的を有するビームシステムを動作させる方法であって、前記方法は、
(a)前記標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、前記標的において形成されるように、前記標的を荷電粒子放射線に曝すステップと、
(b)前記標的が、中性子を放出し、前記金属基板が、結晶質状態から、前記複数のブリスタを量および/またはサイズにおいて低減させるために十分な非晶質状態に遷移するように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップと
を含む、方法。
【請求項34】
前記荷電粒子放射線は、陽子ビームである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
(b)前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、1平方センチメートルあたり(cm
-2)少なくとも0.5×10
19の陽子エネルギーフルエンスに前記標的を曝すステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
(b)前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、前記ブリスタの量が1桁低減されるまで、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
中性子は、ステップ(a)および(b)において1秒あたり少なくとも1×10
12個の中性子の第1のレートにおいて放出される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
(a)前記標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、前記標的において形成されるように、前記標的を荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、前記放出された中性子をヒト患者に印加するステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
(b)前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、前記放出された中性子をヒト患者に印加するステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記放出された中性子は、反応p+
7Li→n+
7Beに従って、前記リチウム層によって生成される、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)手技の一部として(a)および(b)を実施するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記荷電粒子放射線は、ビームの形態であり、前記標的は、前記ビームの伝搬の方向を横断する方向において前記標的の表面を横断して前記ビームを移動させながら、ステップ(a)および(b)において前記荷電粒子放射線に曝される、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
(b)はさらに、前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、量およびサイズにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
(b)はさらに、前記標的が、中性子を放出し、前記複数のブリスタが、サイズのみにおいて低減されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
(b)前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、リチウム化合物層が、前記リチウム層と前記金属基板との間に形成されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記金属基板は、銅であり、前記リチウム化合物層は、リチウム銅化合物である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
(b)前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、リチウム化合物層が、前記リチウム層と前記金属基板との間に、前記複数のブリスタに到達するかまたはそれに隣接する深さまで形成されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記リチウム層は、1ミクロン~300ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項49】
前記荷電粒子放射線は、1.9MeV~3.0MeVの範囲内のエネルギーを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項50】
方法であって、
(a)複数の変形が、金属構造の領域内に形成されるように、前記金属構造の領域を荷電粒子放射線に曝すステップであって、前記金属構造は、リチウム層を備える、ステップと、
(b)前記複数の変形が、量および/またはサイズにおいて低減されるように、前記金属構造の領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップと
を含む、方法。
【請求項51】
前記荷電粒子放射線は、陽子ビームである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
(b)前記金属構造の領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、前記変形の量が1桁低減されるまで、前記領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記荷電粒子放射線は、ビームの形態であり、前記領域は、前記ビームの伝搬の方向を横断する方向において前記領域の表面を横断して前記ビームを移動させながら、ステップ(a)および(b)において前記荷電粒子放射線に曝される、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記金属基板は、銅である、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記リチウム層は、前記銅基板と接触する、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記金属構造は、プラズマ核融合反応炉の一部であり、前記荷電粒子放射線は、前記核融合反応から放出される、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
前記リチウム層は、1ミクロン~300ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記変形は、ブリスタである、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
(b)前記金属構造の領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、対流および/または毛管力が、前記複数の変形を量および/またはサイズにおいて低減させるように、前記領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
方法であって、
(a)複数の変形が、金属構造の領域内に形成されるように、前記金属構造の領域を荷電粒子放射線に曝すステップであって、前記金属構造は、リチウム層を備える、ステップと、
(b)リチウム化合物層が、前記リチウム層と前記金属基板との間に、前記複数の変形を量および/またはサイズにおいて低減させるために十分なサイズまで形成されるように、前記金属構造の領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップと
を含む、方法。
【請求項61】
前記荷電粒子放射線は、陽子ビームである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
(b)前記領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、前記ブリスタの量が1桁低減されるまで、前記領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記荷電粒子放射線は、ビームの形態であり、前記領域は、前記ビームの伝搬の方向を横断する方向において前記領域の表面を横断して前記ビームを移動させながら、ステップ(a)および(b)において前記荷電粒子放射線に曝される、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記金属基板は、銅であり、前記リチウム化合物層は、リチウム銅化合物である、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記リチウム層は、1ミクロン~300ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
前記変形は、ブリスタである、請求項60に記載の方法。
【請求項67】
方法であって、
(a)複数の変形が、金属構造の領域内に形成されるように、前記金属構造の領域を荷電粒子放射線に曝すステップであって、前記金属構造は、リチウム層を備える、ステップと、
(b)前記金属基板が、結晶質状態から、前記複数の変形を量および/またはサイズにおいて低減させるために十分な非晶質状態に遷移するように、前記金属構造の領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップと
を含む、方法。
【請求項68】
前記荷電粒子放射線は、陽子ビームである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
(b)前記領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、前記ブリスタの量が1桁低減されるまで、前記領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記荷電粒子放射線は、ビームの形態であり、前記領域は、前記ビームの伝搬の方向を横断する方向において前記領域の表面を横断して前記ビームを移動させながら、ステップ(a)および(b)において前記荷電粒子放射線に曝される、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記金属基板は、銅であり、前記リチウム化合物層は、リチウム銅化合物である、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記リチウム層は、1ミクロン~300ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
前記変形は、ブリスタである、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
(b)前記領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、リチウム化合物層が、前記リチウム層と前記金属基板との間に形成されるように、前記領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項75】
前記金属基板は、銅であり、前記リチウム化合物層は、リチウム銅化合物である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
(b)前記領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、リチウム化合物層が、前記リチウム層と前記金属基板との間に、前記複数の変形に到達するかまたはそれに隣接する深さまで形成されるように、前記標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
(b)前記金属構造の領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、対流および/または毛管力が、量および/またはサイズにおいて前記複数の変形を低減させるように、前記領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項78】
金属体であって、
金属基板と、
前記金属基板と結合されるリチウムを含む層と
を備え、
前記金属体は、少なくとも6.3±0.6×10
20陽子/平方センチメートル(p/cm
-2)の荷電粒子フルエンスに暴露されている、金属体。
【請求項79】
前記金属体は、前記暴露に先立って呈されるブリスタ形成に対する第1の抵抗を上回るブリスタ形成に対する第2の抵抗を呈する、請求項78に記載の金属体。
【請求項80】
前記金属基板は、銅を含む、請求項78に記載の金属体。
【請求項81】
前記リチウムを含む層と前記金属基板との間にリチウム化合物層をさらに備える、請求項78に記載の金属体。
【請求項82】
前記リチウムを含む層は、少なくとも90%のリチウム-7同位体を含む、請求項81に記載の金属体。
【請求項83】
前記リチウムを含む層は、少なくとも98%のリチウム-7同位体を含む、請求項81に記載の金属体。
【請求項84】
前記金属基板の第1の部分は、非晶質状態である、請求項78に記載の金属体。
【請求項85】
前記金属基板の第2の部分は、結晶質状態であり、前記第1の部分は、前記第2の部分よりも前記リチウムを含む層に比較的に近接する、請求項84に記載の金属体。
【請求項86】
プラズマ核融合反応炉における使用のために構成される、請求項78に記載の金属体。
【請求項87】
中性子発生標的としての使用のために構成される、請求項78に記載の金属体。
【請求項88】
金属体であって、
金属基板と、
前記金属基板上のリチウムを含む層と
を備え、
前記金属体は、1つまたはそれを上回るブリスタが、最初に、荷電粒子放射線によって前記金属体において形成され、次いで、前記1つまたはそれを上回るブリスタが、前記荷電粒子放射線によってサイズにおいて低減されるように、前記荷電粒子放射線に暴露されている、金属体。
【請求項89】
前記金属体は、前記暴露に先立って呈されるブリスタ形成に対する第1の抵抗を上回るブリスタ形成に対する第2の抵抗を呈する、請求項88に記載の金属体。
【請求項90】
前記金属基板は、銅を含む、請求項88に記載の金属体。
【請求項91】
前記リチウムを含む層と前記金属基板との間にリチウム化合物層をさらに備える、請求項88に記載の金属体。
【請求項92】
前記リチウムを含む層は、少なくとも90%のリチウム-7同位体を含む、請求項91に記載の金属体。
【請求項93】
前記リチウムを含む層は、少なくとも98%のリチウム-7同位体を含む、請求項91に記載の金属体。
【請求項94】
前記金属基板の第1の部分は、非晶質状態である、請求項88に記載の金属体。
【請求項95】
前記金属基板の第2の部分は、結晶質状態であり、前記第1の部分は、前記第2の部分よりも前記リチウムを含む層に比較的に近接する、請求項94に記載の金属体。
【請求項96】
プラズマ核融合反応炉における、または中性子発生標的としての使用のために構成される、請求項88に記載の金属体。
【請求項97】
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)における使用のための標的であって、
銅基板と、
前記銅基板上のリチウムを含む層と
を備え、
前記標的は、1つまたはそれを上回るブリスタが、最初に、荷電粒子放射線によって前記標的において形成され、次いで、前記1つまたはそれを上回るブリスタが、前記荷電粒子放射線によってサイズにおいて低減されるように、前記荷電粒子放射線に暴露されている、標的。
【請求項98】
前記標的は、前記暴露に先立って呈されるブリスタ形成に対する第1の抵抗を上回るブリスタ形成に対する第2の抵抗を呈する、請求項97に記載の標的。
【請求項99】
前記リチウムは、固体形態である、請求項97に記載の標的。
【請求項100】
前記リチウムは、液体形態である、請求項97に記載の標的。
【請求項101】
前記標的は、1平方センチメートルあたり(cm
-2)少なくとも0.5×10
19の陽子フルエンスが生じるまで、1.9~3.0メガ電子ボルト(MeV)の平均エネルギーおよび1~20ミリアンペア(mA)の範囲内の電流を有する陽子放射線に暴露されるとき、前記銅基板におけるブリスタの実質的な形成を伴わずに、中性子を発生させるように構成される、請求項97に記載の標的。
【請求項102】
反応p+
7Li→n+
7Beに従って中性子を発生させるように構成される、請求項101に記載の標的。
【請求項103】
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)における使用のための標的であって、
リチウムを含む第1の層と、
銅基板と、
前記第1の層と前記銅基板との間に位置するリチウム銅化合物を含む第2の層と
を備え、
前記標的は、陽子放射線に暴露されると、中性子を発生させるように構成される、標的。
【請求項104】
前記標的は、陽子放射線に暴露されるとき、前記銅基板におけるブリスタの実質的な形成を伴わずに、中性子を発生させるように構成される、請求項103に記載の標的。
【請求項105】
前記標的は、1.9MeV~3.0MeVの平均エネルギーおよび1~20mAの範囲内の電流を有する陽子放射線に暴露されるとき、前記銅基板におけるブリスタの実質的な形成を伴わずに、中性子を発生させるように構成される、請求項103に記載の標的。
【請求項106】
反応p+
7Li→n+
7Beに従って中性子を発生させるように構成される、請求項103に記載の標的。
【請求項107】
前記リチウム層は、1~300ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項103に記載の標的。
【請求項108】
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)における使用のための標的であって、
リチウムを含む第1の層と、
非晶質状態における第1の部分を有する銅基板と
を備え、
前記標的は、陽子放射線に暴露されるとき、中性子を発生させるように構成される、標的。
【請求項109】
前記標的は、陽子放射線に暴露されるとき、前記銅基板におけるブリスタの実質的な形成を伴わずに、中性子を発生させるように構成される、請求項108に記載の標的。
【請求項110】
前記標的は、1.9MeV~3.0MeVの平均エネルギーおよび1~20mAの範囲内の電流を有する陽子放射線に暴露されるとき、前記銅基板におけるブリスタの実質的な形成を伴わずに、中性子を発生させるように構成される、請求項108に記載の標的。
【請求項111】
反応p+
7Li→n+
7Beに従って中性子を発生させるように構成される、請求項108に記載の標的。
【請求項112】
前記第1の層は、1~300ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項108に記載の標的。
【請求項113】
前記銅基板の第2の部分は、結晶質状態であり、前記第1の部分は、前記第2の部分よりも前記リチウムを含む第1の層に比較的に近接する、請求項108に記載の標的。
【請求項114】
前記第1の層と前記銅基板との間にリチウム銅化合物層をさらに備える、請求項108に記載の標的。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その内容が、あらゆる目的のために参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、「SYSTEMS, DEVICES, AND METHODS FOR DEFORMATION REDUCTION AND RESISTANCE IN METALLIC BODIES」と題され、2020年7月23日に出願されたロシア特許出願第2020124384号の優先権を主張する。
【0002】
本明細書に説明される主題は、概して、金属体において変形形成の可能性を低減させる、および/または変形のサイズを減少させるためのシステム、デバイス、ならびに方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属体が、比較的に大量の荷電粒子放射線に曝される環境内に設置される、多くの用途が、存在する。これらの用途の実施例は、医療治療(例えば、癌)および診断、核融合、宇宙技術、同位体生産、有害物質検出、貴金属鉱物の試金、撮像、ならびにその他を含む。
【0004】
十分な量の荷電粒子放射線への暴露は、あるタイプの金属体に、放射線が本体内の変形の発生を誘発する、潜在的に劣化性の条件を受けさせ得る。これらの変形は、多くの場合、ブリスタの形態をとり、そのようなものを生じる条件は、一般的に、ブリスタリングと称される。ブリスタリングは、これらの金属体内での分子水素ガスの発生によって引き起こされ得る。水素ガスは、陽子放射線等の荷電粒子放射線が、金属電子と再結合し、分子水素ガスを形成する際に形成され得る。ガスは、金属体内のポケット(例えば、発生期の気泡)内に蓄積し得る。放射線への継続的暴露は、付加的水素を生成し得、これは、ガス状ポケットを成長させ、潜在的に、金属体の表面上またはその近傍にブリスタ(例えば、亀裂、突起、薄片、および/または他の変形)として現れる。本形態のブリスタリングは、水素を十分に分解する金属(例えば、アルカリ、アルカリ土類、チタン、タンタル、ニオブ、バナジウム、ニッケル、およびパラジウム)よりも水素を不良に分解する金属(例えば、銅、アルミニウム、モリブデン、鉄、銀、タングステン、白金、および金)により一般的に特徴的である。(例えば、Badrutdinov et al., In Situ Observations of Blistering of a Metal Irradiated with 2-MeV Protons, Metals 2017, 7, 558を参照されたい。)
【0005】
そのようなブリスタによって引き起こされる材料変形は、有意であり得、用途のタイプに応じて、問題につながり得る。したがって、ブリスタリングは、概して、荷電粒子放射線暴露の望ましくない効果と見なされる。
【0006】
故に、ブリスタ形成に抵抗する、ブリスタ形成の可能性を低減させる、および/または荷電粒子放射線に暴露された金属体においてすでに形成されているブリスタのサイズを減少させるもの等の変形防止特性を伴うシステム、デバイス、および方法の必要性が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に提供されるものは、荷電粒子放射線に曝されるときに変形防止特性を呈するシステムおよびデバイス、ならびにそれらの特性をシステムおよびデバイスに付与するための方法の例示的実施形態である。これらの変形防止特性は、放射線に曝されるときの変形形成に対する増加された抵抗または変形形成の低減された可能性を含むことができる。これらの方法はまた、放射線暴露からすでに形成されている変形のサイズを減少させ、すでに形成されている変形の数を減少させ得る実施形態を含む。これらの改良された変形防止特性を呈するシステムおよびデバイスを製造する方法もまた、それらがこれらの改良された特性を呈するように、製造されたシステムおよびデバイスを調整する本発明者らの方法とともに、提供される。変形の実施例は、限定ではないが、水素ガスの形成によって誘発されるブリスタを含むことができる。前述の実施形態からの利益の実施例は、変形形成の防止、すでに形成されている変形の効果の軽減(例えば、回復または緩和)、荷電粒子放射線に曝されるシステムおよびデバイスの動作寿命の延長、ならびにその他を含むことができる。
【0008】
本明細書に説明される主題の他のシステム、デバイス、方法、特徴、および利点は、以下の図および詳細な説明の検討に応じて、当業者に明白である、または明白となるであろう。全てのそのような付加的システム、方法、特徴、および利点が、本説明内に含まれ、本明細書に説明される主題の範囲内であり、付随の請求項によって保護されることを意図している。それらの特徴の明確な列挙が請求項内に不在であっても、いかようにも、例示的実施形態の特徴は、添付される請求項を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
その構造および動作の両方に関する、本明細書に記載される主題の詳細は、同様の参照番号が同様の部分を指す、付随の図の精査によって明白となり得る。図中の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、主題の原理を図示することに重点が置かれている。また、全ての図示は、概念を伝えることを意図しており、相対的サイズ、形状、および他の詳述される属性は、文字通りまたは精密にではなく、図式的に図示され得。
【0010】
【
図1A】
図1A、1B、1C、および1Dは、金属体の例示的実施形態を描写する、斜視図である。
【
図1B】
図1A、1B、1C、および1Dは、金属体の例示的実施形態を描写する、斜視図である。
【
図1C】
図1A、1B、1C、および1Dは、金属体の例示的実施形態を描写する、斜視図である。
【
図1D】
図1A、1B、1C、および1Dは、金属体の例示的実施形態を描写する、斜視図である。
【0011】
【
図1E】
図1Eは、
図1Dの線1E-1Eの断面に沿って得られる、金属体の例示的実施形態を描写する、断面図である。
【0012】
【
図2A】
図2Aは、第1の時間における荷電粒子放射線への暴露の間の金属体の例示的実施形態を描写する、斜視図である。
【0013】
【
図2B】
図2Bは、
図2Aの線2B-2Bを横断して得られる、例示的実施形態を描写する、断面図である。
【0014】
【
図2C】
図2Cは、第2の時間における荷電粒子放射線への暴露の間の金属体の例示的実施形態を描写する、斜視図である。
【0015】
【
図2D】
図2Dは、
図2Cの線2D-2Dを横断して得られる、例示的実施形態を描写する、断面図である。
【0016】
【
図2E】
図2Eは、第3の時間における荷電粒子放射線への暴露の間の金属体の例示的実施形態を描写する、斜視図である。
【0017】
【
図2F】
図2Fは、
図2Eの線2F-2Fを横断して得られる、例示的実施形態を描写する、断面図である。
【0018】
【
図2G】
図2Gおよび2Hは、それぞれ、イオンビームによって切断される前および後の粗銅の表面上のブリスタの実施例を描写する、画像である。
【
図2H】
図2Gおよび2Hは、それぞれ、イオンビームによって切断される前および後の粗銅の表面上のブリスタの実施例を描写する、画像である。
【0019】
【
図3】
図3は、金属体におけるブリスタを減少させる方法の例示的実施形態を描写する、フローチャートである。
【0020】
【
図4A】
図4Aは、第1の時間における荷電粒子放射線への暴露の間の金属体の例示的実施形態を描写する、斜視図である。
【0021】
【
図4B】
図4Bは、
図4Aの線4B-4Bを横断して得られる、例示的実施形態を描写する、断面図である。
【0022】
【
図4C】
図4Cは、第2の時間における荷電粒子放射線への暴露の間の金属体の例示的実施形態を描写する、斜視図である。
【0023】
【
図4D】
図4Dは、
図4Cの線4D-4Dを横断して得られる、例示的実施形態を描写する、断面図である。
【0024】
【
図4E】
図4Eは、部分的に形成される化合物層を伴う例示的実施形態を描写する、断面図である。
【0025】
【
図4F】
図4Fは、第3の時間における荷電粒子放射線への暴露の間の金属体の例示的実施形態を描写する、斜視図である。
【0026】
【
図4G】
図4Gは、
図4Fの線4G-4Gを横断して得られる、例示的実施形態を描写する、断面図である。
【0027】
【
図5】
図5は、金属体におけるブリスタを減少させる方法の例示的実施形態を描写する、フローチャートである。
【0028】
【
図6A】
図6Aは、部分的に形成される非晶質領域およびブリスタを伴う例示的実施形態を描写する、断面図である。
【0029】
【
図6B】
図6Bは、実質的に形成される非晶質領域を伴い、ブリスタリングを殆どまたは全く伴わない金属体の例示的実施形態を描写する、断面図である。
【0030】
【
図7】
図7は、金属体におけるブリスタを減少させる方法の例示的実施形態を描写する、フローチャートである。
【0031】
【
図8A】
図8Aは、加速器ベースの中性子ビームシステムの例示的実施形態を描写する、概略図である。
【0032】
【
図8B】
図8Bは、中性子を発生されるように構成される、標的の例示的実施形態を描写する、斜視図である。
【0033】
【0034】
【
図8D】
図8Dは、リチウム化合物層を有する、実施形態の別の断面図である。
【0035】
【
図8E】
図8Eは、非晶質領域を有する、実施形態の別の断面図である。
【0036】
【
図8F】
図8Fおよび8Gは、それぞれ、ビーム移動の段階的パターンおよび螺旋パターンを示す、標的の例示的実施形態の正面図である。
【
図8G】
図8Fおよび8Gは、それぞれ、ビーム移動の段階的パターンおよび螺旋パターンを示す、標的の例示的実施形態の正面図である。
【0037】
【
図9A】
図9A、9B、および9Cは、変形防止利益を伴う標的を用いて中性子ビームを生成する方法の例示的実施形態を描写する、フロー図である。
【
図9B】
図9A、9B、および9Cは、変形防止利益を伴う標的を用いて中性子ビームを生成する方法の例示的実施形態を描写する、フロー図である。
【
図9C】
図9A、9B、および9Cは、変形防止利益を伴う標的を用いて中性子ビームを生成する方法の例示的実施形態を描写する、フロー図である。
【0038】
【
図10A】
図10A、10B、および10Cは、本明細書に説明される実施形態の実験的検証の間に収集されるデータを描写する、グラフである。
【
図10B】
図10A、10B、および10Cは、本明細書に説明される実施形態の実験的検証の間に収集されるデータを描写する、グラフである。
【
図10C】
図10A、10B、および10Cは、本明細書に説明される実施形態の実験的検証の間に収集されるデータを描写する、グラフである。
【0039】
【
図11A】
図11A、11B、および11Cは、陽子ビームへの暴露後の標的の領域の画像である。
【
図11B】
図11A、11B、および11Cは、陽子ビームへの暴露後の標的の領域の画像である。
【
図11C】
図11A、11B、および11Cは、陽子ビームへの暴露後の標的の領域の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
本主題が詳細に説明される前に、本開示が、説明される特定の実施形態に限定されず、したがって、当然ながら、変動し得ることを理解されたい。また、本明細書に使用される専門用語が、特定の実施形態を説明する目的のみのためのものであり、本開示の範囲は、添付される請求項によってのみ限定されるであろうため、限定することを意図していないことを理解されたい。
【0041】
本明細書に開示される実施形態の主題である金属体は、広い範囲の用途(例えば、産業、商業、研究、またはその他)のうちのいずれかにおいて使用されることができ、故に、それらの用途の必要性に適した広い範囲の形状、サイズ、または構成のうちのいずれかを有することができる。本明細書に開示される金属体は、少なくとも、リチウム層と、金属基板とを含む。金属基板は、主として1つの金属元素(例えば、高純度を伴う銅基板)、2つまたはそれを上回る金属元素の合金、1つまたはそれを上回る金属元素と1つまたはそれを上回る非金属元素との化合物、またはその他から成ることができる。基板104のための金属の実施例は、限定ではないが、銅、アルミニウム、モリブデン、鉄、銀、パラジウム、タンタル、炭素(例えば、グラファイトおよびダイヤモンド相)、タングステン、白金、または金を含む。リチウム層は、同様に主としてリチウムから成ることができる、リチウム合金または化合物であり得る、もしくはその他である。リチウム層は、固体形態または液体形態のいずれかであり得る。本明細書に説明される実施形態では、リチウム層は、1つまたはそれを上回るリチウム同位体から成ることができる。例えば、本明細書に説明される実施形態では、リチウム層は、少なくとも90%のリチウム-7(7Li)、少なくとも92%のリチウム-7、少なくとも95%のリチウム-7、少なくとも98%のリチウム-7、少なくとも99%のリチウム-7、少なくとも99.9%のリチウム-7、および同等物から成ることができる。残りは、リチウム-6同位体(6Li)、別のリチウム同位体、不純物、または別の元素(例えば、リチウム化合物におけるように)であり得る。
【0042】
図1A-1Cは、リチウム層103と、金属基板104とを有する、金属体102の例示的実施形態を描写する、斜視図である。リチウム層103は、(例えば、これらの図の上部において)暴露表面を有するものとして示されるが、リチウム層103はまた、これが本体102の最外面を形成しないように、金属体102内に埋設されることができる。同様に、基板104は、(例えば、底部において)暴露表面を有するバルク基板として示されるが、基板104はまた、(例えば、本体102内への他の構造または材料の包含によって)これが最外面を形成しないように、本体102内に埋設されることができる。
【0043】
図1Aでは、金属体102は、平面または平坦形態を有する。
図1Bでは、金属体102は、Y-Z平面において曲率を呈する凹状形態を有し、
図1Cでは、金属体102は、Y-Z平面において曲率を呈する凸状形態を有する。凹状および凸状形態は、読者の視点から表される。
図1A-1Cは、金属体102を特徴付ける形状および表面輪郭のいくつかの基本的実施例を描写する。金属体102は、
図1A-1Cに描写される形状および表面輪郭のうちの2つまたはそれを上回るものを組み合わせるもの、もしくは異なる、および/またはより複雑であるものを含む、より複雑な形状および表面輪郭を有することができる。
図1A-1Cに示される本体102は、本体102の物理的範囲全体を表すことができる、またはさらに大きい金属体の部分もしくは区分を表すことができる。本体102に関する例示的3次元形状のリストは、限定ではないが、プレートまたはめっき、ディスク、支柱、立方体またはその部分、直方体またはその部分、円柱またはその部分、角柱またはその部分、円錐体またはその部分、角錐またはその部分、球体またはその部分、環状体またはその部分、中空チャンバまたはその部分、前述のうちの2つまたはそれを上回るものの任意の組み合わせ、およびその他を含む。
【0044】
図2A-2Fは、荷電粒子放射線への暴露の種々の段階の間の金属基板104上またはそれに隣接するリチウム層103を有する、金属体102の例示的実施形態を描写する。本体102は、ここでは、平面(平坦)であるように描写されるが、これらの図に関して説明される機構は、本明細書に議論または包含される本体102の全ての形状およびサイズ構成に等しく適用可能である。
【0045】
図2Aは、第1の時間における荷電粒子放射線への暴露の間の表面204の領域201を伴う金属体102を描写する、斜視図である。
図2Bは、
図2Aの線2B-2Bを横断して得られる、本体102を描写する、断面図である。荷電粒子放射線の入射方向は、本実施例では、表面204に対して法線である、ベクトル203によって示される。本実施形態では、フルエンス(経時的に積分される束であり、束は、ある瞬間における単位面積あたりの粒子である)は、領域201を横断して一定である(例えば、表面領域201全体が、荷電粒子放射線の均一な分布に同時に暴露される、または領域201のものよりも小さい断面積を有する荷電粒子放射線のビームが、本明細書に説明されるであろうような均一な様式で領域201を横断して移動される)。
図2Aおよび2Bの本第1の時間において、いかなるブリスタリングも、金属体102において起こっていない。
【0046】
図2Cは、本体102を描写する、別の斜視図であり、
図2Dは、
図2Cの線2D-2Dを横断して得られる、本体102を描写する、断面図である。付加的な長期の荷電粒子放射線への領域201の暴露は、本実施例ではブリスタである、変形208の形成をもたらした。ブリスタ208の形成の視覚的外観および機構は、変動し得る。本実施例では、基板104内のガス状ポケット209の形成は、周辺材料を変形させ、表面204の領域201において可視のブリスタ(例えば、表面輪郭の逸脱、隆起した表面形成、突起、亀裂等)として現れた。
【0047】
ブリスタリング閾値(例えば、ブリスタリングが始まる線量)は、金属基板のタイプ、照射の間のサンプル温度、放射線のタイプ(例えば、イオン、陽子)、放射線のエネルギー、およびその他等の種々の因子に依存する。Badrutdinov et al., 「In Situ Observations of Blistering of a Metal Irradiated with 2-MeV Protons」 Metals 2017, 7, 558等の以前の研究は、銅表面のブリスタリング閾値が銅純度に依存し、銅が純粋であるほど、閾値がより高くなると記述している。Batrutdinovは、2メガ電子ボルト(MeV)の陽子エネルギーに関して、銅の最大閾値が、3×10
19cm
-2であり、最小値が、7倍低くなり得ることを記述している。また、銅表面上のブリスタのサイズは、銅純度に依存し、銅が純粋であるほど、ブリスタは、より大きくなる。2MeV陽子放射線からもたらされる銅ブリスタサイズは、40±20ミクロン~160±50ミクロンに及び得る。
図2Gおよび2Hは、イオンビームによって切断される前および後の99.99996%の粗銅の表面上のブリスタの実施例を描写する、画像である。ガス状ポケットは、
図2Hの切断されたブリスタの内側で可視である。
【0048】
図2Eは、金属体102を描写する、別の斜視図であり、
図2Fは、
図2Eの線2F-2Fを横断して得られる、本体102を描写する、断面図である。ブリスタ208の形成後、なおもさらなる荷電粒子放射線への領域201の暴露は、ブリスタ208のサイズを減少または低減させた。
図2Fは、ガス状ポケット209の体積が
図2Dと比較して減少され、これが、ひいては、ブリスタ208の高さ(
図2Dと比較した
図2F)およびブリスタ208の隆起部分の表面積(
図2Cと比較した
図2E)を減少させたことを示す。
【0049】
少なくともブリスタ低減が始まる点までの本実施例における荷電粒子放射線の印加は、ブリスタ形成に対する強化された抵抗性を伴う金属体102をもたらす。放射線が、この点を過ぎて印加される際、ブリスタ208は、減少し続け、ブリスタ形成に対する抵抗性は、なおもさらに増加される。したがって、
図2A-2Fに関して説明されるプロセスに曝される金属体102は、さらなるブリスタ形成に対するその抵抗を強化する材料調整の形態を受ける。
【0050】
図3は、
図2A-2Fに関して説明されるプロセスによる、方法300の例示的実施形態を描写する、フローチャートである。ステップ302において、荷電粒子放射線が、(例えば、
図2A-2Bに関して説明されるようなリチウムを有する)金属体102の領域に印加される。ステップ304において、付加的荷電粒子放射線が、(例えば、
図2C-2Dに関して説明されるように)1つまたはそれを上回るブリスタが、形成され、領域内でサイズにおいて成長するように印加された。ステップ306において、なおもさらなる荷電粒子放射線が、1つまたはそれを上回るブリスタが、サイズにおいて減少されるように印加される。ステップ306は、用途に応じて、ブリスタサイズ低減が実質的に停止するまで、一部または全てのブリスタが排除されるまで、またはブリスタの排除後に連続的に、継続することができる。ステップ304と306との間の間隔は、いくつかの実施形態では、領域におけるブリスタ形成が停止する、または実質的に停止する(もしくは領域におけるブリスタサイズ成長が停止する、または実質的に停止する)が、ブリスタサイズ低減がまだ起こっていない段階を含んでもよい。荷電粒子放射線が、さらに印加される。
【0051】
リチウム層103は、
図1A-1Cに描写されるように、金属基板104と直接接触することができる。本明細書に説明されるある実施形態では、化合物が、リチウム層103と金属基板104との間に形成される、または位置することができる。
図1Dは、リチウム層103、金属基板104、および103と104との間に位置するリチウム-金属化合物層105を伴う平面金属体102を描写する、斜視図である。その化合物は、リチウム(層103から)と、金属基板104の1つまたはそれを上回る金属とを含むことができる。例えば、基板104が、銅であるとき、層104は、リチウム-銅化合物(例えば、LiCu)であり得る。本化合物層104の形成は、本体102と荷電粒子放射線自体との相互作用によって、荷電粒子放射線から生成される熱によって(または放射線によって誘発される核反応によって)、もしくは他の機構によって誘発されてもよい。金属基板104自体が層状構造である実施形態では、リチウム化合物層105は、リチウム層103と金属基板104の最も隣接する層との間に形成されることができる。
【0052】
図1Eは、
図1Dの線1E-1Eの断面に沿って得られる、本例示的実施形態を描写する、断面図である。
図1Eに標識化されるように、リチウム層103は、厚さ110を有し、リチウム化合物層105は、厚さ112を有し、基板104は、厚さ114を有する。相対的厚さは、ここでは、実施例にすぎない。基板104は、概して、殆どの実施形態において最も厚い層であろうが、そのようなものは、要求されない。リチウム層103とリチウム化合物層105との間の遷移120は、リチウム化合物層105と基板104との間の遷移130と同様に、即時または漸進的であり得る。
【0053】
図4A-4Gは、荷電粒子放射線暴露の種々の段階における金属体102の別の例示的実施形態を描写する。
図2A-2Fの実施形態のように、本体102は、ここでは、平面(平坦)であるように描写されるが、これらの図に関して説明される主題は、本明細書に議論または包含される本体102の全ての形状およびサイズ構成に等しく適用可能である。リチウム化合物層105は、
図4A-4Gに描写される動作のシーケンスの間に形成される。これらの実施形態(ならびに
図5および9Bのもの等)では、それによってブリスタサイズ低減および排除が起こる機構は、リチウム化合物層の形成であるが、しかしながら、本明細書に説明される実施形態は、(例えば、
図3、7、9A、および9Cの実施形態によって実証されるように)そのようなものに限定されず、本明細書に記載される主題の範囲は、他の機構も同様に網羅する。
【0054】
図4Aは、表面204の領域201が第1の時間において荷電粒子放射線に暴露される、金属体102を描写する、斜視図である。
図4Bは、
図4Aの線4B-4Bを横断して得られる、本体102を描写する、断面図である。
図4A-4Bは、それぞれ、
図2A-2Bに類似する。荷電粒子放射線の入射方向は、本実施例では、表面204に対して法線である、ベクトル203によって示される。本実施形態では、フルエンスは、領域201を横断して一定である(例えば、表面領域201全体が、荷電粒子放射線の均一な分布に同時に暴露される、または領域201のものよりも小さい断面積を有する荷電粒子放射線のビームが、本明細書に説明されるであろうような均一な様式で領域201を横断して移動される)。
図4Aおよび4Bの本第1の時間において、いかなるブリスタリングも、金属体102において起こっていない。
【0055】
図4Cは、金属体102を描写する、別の斜視図であり、
図4Dは、
図4Cの線4D-4Dを横断して得られる、金属体102を描写する、断面図である。付加的な長期の荷電粒子放射線への領域201の暴露は、ブリスタ208の形成をもたらした。ブリスタ208の形成の視覚的外観および機構は、変動し得る。本実施例では、基板104内のガス状ポケット209の形成は、周辺材料を変形させ、表面204の領域201において可視の変形(例えば、表面輪郭の逸脱、隆起した表面形成、突起、亀裂等)として現れた。
図4A-4Dに描写される段階において、いかなるリチウム化合物層も、まだ形成されていないか、または形成されたいずれのリチウム化合物層も、
図4Eに描写されるように、ブリスタ形成を防止する、もしくはブリスタ形成を防止するために十分な厚さではないかのいずれかである。
【0056】
図4Fは、金属体102を描写する、別の斜視図であり、
図4Gは、
図4Fの線4G-4Gを横断して得られる、本体102を描写する、断面図である。ここでは、ブリスタ208の形成後、なおもさらなる荷電粒子放射線への領域201の暴露は、ブリスタ208のサイズを低減または減少させるために領域201内に十分なサイズ(例えば、
図4Gの深さ402)のリチウム化合物層105の形成をもたらした。ある実装では、十分なサイズが、本体102の関連する部分を横断して均一性を伴って存在するように(例えば、領域201の全体を横断する存在)、化合物層105を形成することが、望ましい。
図4Gは、本実施例では、ポケット209内のガスが層105および103を通して本体102から外に拡散することを可能にするように、リチウム化合物層105の深さが、ガス状ポケット209に到達している、またはガス状ポケット209に近接近していることを示す。リチウム-銅化合物層105は、銅のみと比較して、水素ガスに対する増加された拡散性を有し、したがって、ポケット209の体積内の水素ガスが外向きに拡散し、逃散することを可能にする。結果として、ポケット209のサイズは、
図4Dと比較して減少し、これは、ひいては、ブリスタ208の隆起部分の高さ(
図4Dと比較した
図4G)およびブリスタ208の隆起部分の表面積(
図4Cと比較した
図4F)を減少させた。
【0057】
ブリスタ208の形成の視覚的外観および機構は、変動し得るため、ブリスタが減少される様式もまた、変動し得る。サイズにおいて減少されるブリスタ208の実施例は、表面204上のブリスタ208の暴露表面積における低減、(隣接するブリスタなし表面の高さに対して、またはブリスタリングに先立つ表面の高さに対して測定されるような)ブリスタ208の高さにおける低減、ガス状ポケット209の高さまたは体積における低減、表面204内の亀裂のサイズ(幅または長さ)における低減、表面204から偏向される材料の薄片の高さにおける低減、およびその他を含む。隆起した突起の形態におけるブリスタ208(例えば、
図2C-2Dおよび
図4C-4D)もまた、ブリスタの減少が、本体102の特定の領域におけるブリスタ208の全体的カウントの低減をもたらすように、実質的に排除されることができる。
【0058】
少なくともブリスタ低減を可能にするために十分なサイズのリチウム化合物層105が生成される点までの
図4A-4Gの実施形態における荷電粒子放射線の印加は、ブリスタ形成に対する強化された抵抗性を伴う金属体102をもたらす。放射線が、この点を過ぎて印加される際、ブリスタ208は、減少し続け、ブリスタ形成に対する抵抗性は、なおもさらに増加される。したがって、
図4A-4Gに関して説明されるプロセスに曝される金属体102は、ブリスタの形成に対するその抵抗を強化する材料調整の形態を受ける。
【0059】
ブリスタは、概して、入射粒子が停止する材料のバルクにおいて形成される。同一のエネルギーの粒子に関して、進行の範囲は、概して、確率分布(例えば、ガウス)に従い、エネルギーに伴って増加するであろう。投影飛程は、主に、材料ならびに入射粒子のエネルギーおよびタイプに依存する。例えば、異なる材料に入射する2MeVのエネルギーを有する陽子は、表1による近似投影飛程を有するであろう。
【表1】
【0060】
非リチウムバルク基板の上方へのリチウム層103の追加は、入射粒子を若干減速させ、表1の停止距離を減らすであろう。表1は、ブリスタがバルク材料において生じる厚さの相対的差異を実証する際に有用であり、粒子投影飛程に到達するために化合物層105が相対的にあるべき厚さの程度を示唆する。
【0061】
図5は、
図4A-4Gに関して説明されるプロセスによる、方法500の例示的実施形態を描写する、フローチャートである。ステップ502において、荷電粒子放射線が、(例えば、
図4A-4Bに関して説明されるように)金属体102の領域に印加される。ステップ504において、付加的荷電粒子放射線が、(例えば、
図4C-4Dに関して説明されるように)1つまたはそれを上回るブリスタが、形成され、領域内でサイズにおいて成長するように印加された。ステップ506において、なおもさらなる荷電粒子放射線が、リチウム化合物層が、1つまたはそれを上回るブリスタに到達する、またはそれに隣接した状態になる(ほぼ到達する)ために十分なサイズ(例えば、厚さ)を有して形成されるように印加される。1つまたはそれを上回るブリスタに到達する、またはほぼ到達することは、1つまたはそれを上回るブリスタが、さらなる放射線を用いてサイズにおいて減少する、または排除されることを可能にすることができる。ステップ506は、用途に応じて、ブリスタサイズ低減が実質的に停止するまで、全てのブリスタが排除されるまで、所望のサイズまたは厚さのリチウム化合物層が形成されるまで、またはさらに長く、継続することができる。ステップ504と506との間の間隔は、いくつかの実施形態では、領域におけるブリスタ形成が停止する、または実質的に停止する(もしくは領域におけるブリスタサイズ成長が停止する、または実質的に停止する)が、ブリスタサイズ低減がまだ起こっていない段階を含んでもよい。
【0062】
ある実施形態では、荷電粒子放射線は、結晶結合の破壊によって、結晶質(結晶質および多結晶質を包含する)状態から非晶質状態への基板材料の部分的または完全な遷移を引き起こすことができる。
図6A-6Bは、非晶質バルク材料の形成を描写する、
図4E-4Gに類似する断面図である。これらの実施形態では、非晶質材料への遷移は、リチウム化合物の形成の間および後に起こるが、非晶質材料の形成は、化合物形成から独立して起こることができる。
図6Aでは、荷電粒子放射線203は、ガス状ポケット209を伴うブリスタ208の形成をもたらす。リチウム化合物層の形成は、矢印602の方向において起こる。結晶質状態から非晶質状態への基板材料(例えば、銅)の遷移は、部分的に、パターン604によって示されるように起こり得る。放射線203への継続的暴露は、化合物層105を表面204から離れるように厚くさせ、化合物層105および基板領域104の両方において、特に、ガス状ポケット209とリチウム層103との間のブリスタシェル領域において、非晶質状態604への付加的材料遷移を引き起こす。これらの領域における非晶質状態への遷移は、完全または部分的(例えば、50%を上回る、75%を上回る、または90%を上回る)であり得る。ある実施形態では、非晶質状態への本遷移は、ブリスタ低減または排除に関する原因のうちの1つ、もしくは主要な原因であり得る。非晶質遷移は、化合物層105の形成と協働し、ブリスタ低減を引き起こすことができる。他の機構も、同様に寄与することができる。
【0063】
図7は、
図6A-6Bに関して説明されるプロセスによる、方法700の例示的実施形態を描写する、フローチャートである。ステップ702において、荷電粒子放射線が、(例えば、
図4A-4Bと同様に)金属体102の領域に印加される。ステップ704において、付加的荷電粒子放射線が、(例えば、
図6Aに関して説明されるように)1つまたはそれを上回るブリスタが、形成され、サイズにおいて成長し、金属体102の基板領域が、部分的に、結晶質状態から非晶質状態に遷移し得るように印加された。これは、リチウム化合物層の成長および結晶質状態から非晶質状態へのその化合物の部分的遷移を伴うことができる。ステップ706において、なおもさらなる荷電粒子放射線が、結晶質状態から非晶質状態への遷移が、ブリスタ208が低減されるために十分な程度(例えば、50%、75%、90%、またはそれを上回る非晶質状態への遷移)まで継続するように印加される。本遷移は、金属体102全体を通して起こり得るが、ブリスタ低減の目的のために、遷移は、少なくとも、ブリスタと上面204との間の基板(および存在する場合、化合物)の領域において起こる(リチウム層は、遷移する必要はない)。いくつかの実施形態では、ブリスタ低減はまた、1つまたはそれを上回るブリスタに到達する、またはそれに隣接した状態になる(ほぼ到達する)深さまでの化合物層の拡大を条件とし得る。ステップ706は、用途に応じて、ブリスタサイズ低減が実質的に停止するまで、全てのブリスタが排除されるまで、所望のサイズまたは厚さのリチウム化合物層が形成されるまで、またはより長く、継続することができる。ステップ704と706との間の間隔は、いくつかの実施形態では、領域におけるブリスタ形成が停止する、または実質的に停止する(もしくは領域におけるブリスタサイズ成長が停止する、または実質的に停止する)が、ブリスタサイズ低減がまだ起こっていない段階を含んでもよい。
【0064】
本明細書に説明される金属体102の実施形態は、本体102が構成要素または要素である装置の動作の間に方法300、500、または700を受けることができ、したがって、動作自体の間にブリスタ抵抗調整を受けることができる。代替として(または加えて)、金属体102の実施形態は、製造または調整の方法として、動作に先立って方法300、500、または700を受けることができ、その調整された材料は、次いで、より大きいシステムまたは装置の一部として組み立てられる、もしくは配設される、または別様に、最初に、増加されたブリスタ抵抗を伴う所望の用途において動作されることができる。
【0065】
本明細書に説明される本および他の実施形態では、荷電粒子放射線は、ブリスタ低減および/または抵抗を達成するために、連続的または断続的に印加されることができる。例えば、放射線印加手順の間、放射線は、連続的またはパルス化様式(例えば、一定または可変周波数において断続的)で(例えば、ビームまたは反応によって)印加されることができる。本放射線印加手順は、実質的な時間周期にわたって(例えば、本システムが、例えば、システム保守またはその他のために、電源を切られる、または別様にオフラインにされるとき等)停止され、次いで、再開されることができ、ブリスタ防止の利益は、依然として、システム全体の本断続的な循環を伴っても達成されることができる。
【0066】
(上記の
図2A-7および続く他の実施形態に関して)本明細書に説明されるプロセス内で動作する、またはそれに従って調整される金属体102は、多数の用途において使用されることができる。例えば、金属体102は、核融合反応炉の閉じ込めチャンバのためのプラズマ対向壁等のプラズマ核融合デバイスにおいて使用されることができる。金属体102はまた、粒子加速器、イオン注入デバイス、衛星および宇宙船、同位体生産のためのデバイス、有害物質検出のためのデバイス、貴金属鉱物の試金のためのデバイス、撮像デバイス、およびその他において使用されることができる。
【0067】
注目すべき一例示的用途は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)であり、金属体102は、中性子ビームシステムにおいて中性子を発生させるための標的装置としての使用のために構成されることができる。中性子ビームシステム800の実施例が、本明細書の
図8Aに関してより詳細に説明される。
【0068】
BNCTは、癌治療のための放射線療法の形態である。BNCTでは、患者は、ホウ素を含有する薬物を投与され、薬物は、ホウ素を、患者の身体内の任意の腫瘍部位内の癌細胞によって選択的に吸収させる性質を有する。患者は、次いで、中性子放射線、特に、1キロ電子ボルト(keV)~10keVの範囲内、ある場合には、30keVと同程度に高いエネルギーを伴う熱外中性子に暴露される。これらの熱外中性子は、核反応によってホウ素と相互作用し、これは、非常に短い範囲、例えば、1つの細胞の厚さ程度を有するアルファ粒子を生成する。したがって、熱外中性子へのホウ素含有癌細胞の暴露は、周辺組織への重大な副作用を伴わずに腫瘍細胞を死滅させるために十分な線量におけるアルファ放射線を発生させる。
【0069】
熱外中性子の十分な束を発生させるために、陽子(または正の水素イオン(H+))ビーム等の荷電粒子ビームが、7Li標的に指向され、続く核反応p+7Li→n+7Beは、中性子ビームを発生させる。7Liは、一般的に、2つの理由から、最適な中性子生成標的材料と見なされる。第1に、これは、陽子から中性子への最も高い変換比のうちの1つを提供する。第2に、p+7Liは、吸熱反応であり、中性子発生が起こるために、陽子エネルギーが約1.9MeVのある閾値を上回ることを要求する。本閾値またはそれを上回って(例えば、1.9MeV~約3.0MeV)発生された中性子は、概して、1MeVを下回る中性子エネルギーを有し、約1keV~30keVの熱外範囲まで比較的に容易に減速されることができる。
【0070】
中性子は、減速体を使用して減速されることができる。減速体原子核を介した減速は、弾性および非弾性散乱に起因して起こり、これは、中性子運動がブラウン粒子運動に類似するため、確率的特性を有する。結果として、一次中性子エネルギーが低くなるほど、中性子エネルギースペクトルは、より狭くなる。本文脈では、中性子発生閾値付近の断面の急速な成長によって特徴付けられる、7Li(p,n)7Be反応は、ソフト(例えば、<1keV)およびハード(>30keV)エネルギー範囲内で生成される中性子の量が、最小限にされることができるため、理想的であると考えられる。臨床医は、概して、それらがより高い患者毒性およびより重大な副作用をもたらすため、ソフトおよびハード中性子の量が最小限にされることを所望する。したがって、7Li反応のエネルギー閾値を上回って本範囲内で動作する中性子ビームシステムは、中性子収率と結果として生じる中性子エネルギースペクトルの品質との間で最適な均衡をとるように構成されることができる。
【0071】
中性子発生反応は、吸熱性であるため、有意な量の熱が、発生され、7Li標的(多くの場合、単にリチウム標的と称される)は、これを考慮する必要がある。以前の解決策は、リチウムが蒸発しない(例えば、ビームライン内に放射能汚染を形成しない)ように十分に低い標的または標的アセンブリの温度を保つために、水冷と組み合わせて、高熱伝導率を伴う金属基板(例えば、銅)上にリチウム層を設置する。しかしながら、これらの以前の解決策は、高エネルギー陽子ビームの印加の結果としてブリスタリングの影響を受けやすく、多くの努力が、リチウム標的におけるブリスタの形成を防止することに費やされてきた。
【0072】
ブリスタ防止技法は、多くの場合、リチウムと下層銅基板との間のブリスタリング防止材料の設置を伴う。高い水素拡散係数を伴う材料(例えば、タンタル、ニオブ、バナジウム、およびパラジウム)が、使用されているが、しかしながら、これらの材料は、銅よりもはるかに低い熱伝導率を有する傾向があり、したがって、標的を冷却することをより困難にし得る。
【0073】
概して、リチウムは、高い化学活性、低い融点(例えば、182℃)、および低い熱伝導率(例えば、固体状態において71W/(m K)および液体状態において43W/(m K))によって特徴付けられるため、リチウム中性子発生標的を設計することは、困難な技術的タスクであり得る。他の考慮事項もまた、考慮されるべきである。例えば、熱を生成することに加えて、中性子発生は、ガンマ線束を伴う。リチウム表面上のガンマ線束および温度を有意に低減させるために、リチウム層は、陽子がその中で中性子発生の閾値まで減速されるように十分に薄くあるべきである。また、比較的に高い純度を有するリチウムを使用し、中性子収率を最大限にすることが、望ましい。例えば、比較的に純粋なリチウムは、水素化リチウムを約1.43倍上回り、酸化リチウムを約2倍上回り、フッ化リチウムを約3.3倍上回る中性子収率を提供する。放射性のBe7(リチウムの内側に捕捉される)によってビームシステムおよび設備を汚染し得る、リチウム蒸発を防止するために、標的は、集中的に冷却されるべきである。薄い下層基板が、ビーム成形アセンブリの中性子減速体が、リチウム層に可能な限り近接して位置付けられることを可能にするために使用されるべきである。ある場合には、標的が、陽子の合計投影飛程を下回る全体的厚さを有することが望ましい。さらに、基板が、放射線損傷に耐性があり、製造が容易であり、廃棄を促進するために本システムからの除去が容易であることが望ましい。
【0074】
図8Aは、加速器ベースの中性子ビームシステム800の例示的実施形態を描写する、概略図である。中性子ビームシステムの構成は、変動するが、本実施形態では、システム800は、イオンビーム注入器としての役割を果たす、低エネルギービームライン820と、イオンビーム注入器820に結合される、高電圧(HV)タンデム加速器840と、タンデム加速器840からリチウム標的802(
図8B参照)を格納し得る、リチウム標的アセンブリ801まで延在する、高エネルギービームライン850とを含む。イオンビーム注入器820は、イオン源822と、イオン源822から延在する、イオン源真空ボックス824と、イオン源真空ボックス824に結合される、前段加速器管826と、前段加速器管826とタンデム加速器840との間に結合される、圧送チャンバ(例えば、内蔵ファラデーカップを伴う)828とを含むことができる。イオン源822は、荷電粒子(例示的実施形態では、負の水素イオンである)の源としての役割を果たし、これは、加速され、調整され、最終的に、リチウム標的802に送達されると、中性子を生成するために使用されることができる。
【0075】
負のイオンの発生の機構と異なる、2つのタイプの負のイオン源822は、表面タイプおよび体積タイプである。表面タイプは、具体的内部表面上にセシウム(Cs)の存在を要求する。表面タイプの負のイオン源の議論が、公開済みPCT出願第WO2014039579A2号(あらゆる目的のために参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に提供されている。体積タイプは、高電流放電プラズマの体積内の負のイオンの形成に依拠する。両方のタイプのイオン源が、十分な負のイオン電流を送達することができる。
【0076】
イオン源真空ボックス824、前段加速器管826、および圧送チャンバ828は、イオンビームをイオン源822からタンデム加速器840の入力に移送するように構成される。本低エネルギービームライン820は、ビームを集束および操向し、ビームをビームライン軸およびタンデム加速器840の受光角に合致させるための1つまたはそれを上回る磁気要素を有してもよい。
【0077】
前段加速器管826は、イオン源822から注入された負のイオンビームの加速を提供する。前段加速器管826は、高電圧タンデム加速器840の入口における開口面積に合致するように全体的収束を達成するためのビーム集束の重要な機能を果たす。
【0078】
それに結合される、高電圧電力供給源842によって給電される、タンデム加速器840は、タンデム加速器840内に位置付けられる加速電極に印加される電圧の2倍に等しいエネルギーを伴う、陽子ビームを生成することができる。陽子ビームのエネルギーレベルは、負の水素イオンのビームをタンデム加速器840の入力から最内側高電位電極まで加速させ、2個の電子を各イオンから奪取し、次いで、結果として生じる陽子(H+イオン)を同一の印加される電圧によって下流に加速させることによって達成される。
【0079】
高エネルギービームライン850は、陽子ビームを、タンデム加速器840の出力から、患者治療室の中に延在する、ビームラインの分岐870の端部に位置付けられる、標的アセンブリ801内の標的802に移送する。
図8Aに示される例示的実施形態では、高エネルギービームライン850は、3つの異なる患者治療室の中に延在するための3つの分岐870、880、および890を含む。高エネルギービームライン850は、ポンプチャンバ851と、ビームの外集束を防止するための四重極磁石852および872と、ビームを治療室の中に操向するための双極子または屈曲磁石856および858と、ビーム補正器853と、電流モニタ854および876等の診断器と、高速ビーム位置モニタ855区分と、走査磁石874とを含むことができる。
【0080】
高エネルギービームライン850の設計は、治療設備の構成に依存する。
図8Aの構成は、2階建構成の治療設備に関する。標的アセンブリ801により近接する、治療室のうちの1つが、より下の階上に位置する。ビームは、屈曲磁石856の使用を用いて、標的アセンブリ801に送達される。その後、四重極磁石872は、ビームを標的802においてあるサイズに集束させる。ビームは、磁石874によって標的802の表面を横断して移動(例えば、ラスタ、走査、または発振)されることができる。ビーム移動は、リチウム標的802上で陽子ビームの平滑かつ均一な時間平均分布を達成し、過熱を防止し、中性子発生を標的802のリチウム層内でより均一にすることに役立ち得る。
【0081】
走査磁石874を横断した後、ビームは、電流モニタ876の中に送達され、これは、ビーム電流を測定し、安全インターロックとして作用することができる。標的アセンブリ801は、ゲート弁877を用いて、高エネルギービームライン体積から物理的に分離されることができる。ゲート弁の機能は、標的交換/装填の間のビームラインの真空体積の標的からの分離である。ビームラインの水平配向(分岐880および890から離れる第2および可能性として第3の治療室)も、
図8Aに同様に(部分的に)示される。この場合では、ビームは、屈曲磁石856によって、90度屈曲されず、むしろ、右に直線に進み、次いで、これは、水平ビームライン内に位置する、四重極磁石852を通過する。その後、ビームは、別の屈曲磁石858によって、部屋構成に応じて、必要とされる角度まで、屈曲され得る。そうでなければ、屈曲磁石858は、同一階上に位置する2つの異なる治療室のために、ビームラインを2つの方向に分裂させるために、Y形状磁石と置換され得る。標的802に対するビームの衝突は、中性子ビームを生成し、これは、次いで、中性子ビーム成形アセンブリ(図示せず)によって成形および修正されることができ、これは、中性子ビームを患者に直接出力することができる。
【0082】
図9Aは、
図3に関して説明されるプロセスに類似する、中性子ビームを生成する方法900の例示的実施形態を描写する、フロー図である。ステップ902において、陽子ビームが、(例えば、
図2A-2Bに関して説明されるように)標的802の領域に印加される。陽子ビームは、好ましくは、1.9MeV~3.0MeVの範囲内のエネルギーを有するが、これは、そのようなものに限定されない。陽子ビームは、連続的またはパルス化様式で印加されることができる、静的位置に保持されることができる、もしくは任意の所望のパターンにおいて標的802の表面を横断して移動されることができる(例えば、それぞれ、段階的および螺旋パターンを示す、
図8Eおよび8F参照)。ステップ904において、陽子ビームが、(例えば、
図2C-2Dに関して説明されるように)1つまたはそれを上回るブリスタが、形成され、領域内でサイズを成長させるように印加される。これは、
図10B-10Cに関して説明されるであろうように、中性子収率における有意な低下を伴わずに行われることができる。ステップ906において、陽子ビームが、1つまたはそれを上回るブリスタが、サイズにおいて減少されるように、なおもさらに印加される。ステップ906は、ブリスタサイズ低減が実質的に停止するまで、全てのブリスタが排除されるまで、またはBNCTのための中性子生成を継続するためにそれ以降、継続することができる。再び、陽子照射は、例えば、リチウム層が過度に薄い状態にならない限り、中性子収率における有意な低下を伴わずに継続することができる。ステップ904と906との間の間隔は、いくつかの実施形態では、領域におけるブリスタ形成が停止する、または実質的に停止する(もしくは領域におけるブリスタサイズ成長が停止する、または実質的に停止する)が、ブリスタサイズ低減がまだ起こっていない段階を含んでもよい。
【0083】
図9Bは、
図5に関して説明されるプロセスに類似する、中性子ビームを生成する方法950の例示的実施形態を描写する、フロー図である。ステップ952において、陽子ビームが、(例えば、
図4A-4Bに関して説明されるように)標的802の領域に印加される。先述の実施形態のように、陽子ビームは、好ましくは、1.9MeV~3.0MeVの範囲内のエネルギーを有するが、これは、そのようなものに限定されない。陽子ビームは、再び、連続的またはパルス化様式で印加されることができる、静的位置に保持されることができる、もしくは任意の所望のパターンにおいて標的802の表面を横断して移動されることができる。ステップ954において、陽子ビームが、(例えば、
図4C-4Dに関して説明されるように)1つまたはそれを上回るブリスタが、形成され、領域内でサイズを成長させるように印加される。これは、
図10B-10Cに関して説明されるであろうように、中性子収率における有意な低下を伴わずに行われることができる。ステップ956において、陽子ビームが、リチウム化合物層が、1つまたはそれを上回るブリスタに到達する、またはそれに隣接した状態になる(ほぼ到達する)ために十分なサイズ(例えば、厚さ)を有して形成され、1つまたはそれを上回るブリスタが、さらなる放射線を用いてサイズにおいて減少することを可能にするように、なおもさらに印加される。ステップ956は、ブリスタサイズ低減が実質的に停止するまで、全てのブリスタが排除されるまで、所望のサイズまたは厚さのリチウム化合物層が形成されるまで、またはBNCTのための中性子生成を継続するためにそれ以降、継続することができる。再び、陽子照射は、例えば、リチウム層が化合物層の形成を通して過度に薄い状態にならない限り、中性子収率における有意な低下を伴わずに継続することができる。ステップ954と956との間の間隔は、いくつかの実施形態では、領域におけるブリスタ形成が停止する、または実質的に停止する(もしくは領域におけるブリスタサイズ成長が停止する、または実質的に停止する)が、ブリスタサイズ低減がまだ起こっていない段階を含んでもよい。
【0084】
図9Cは、
図7に関して説明されるプロセスに類似する、中性子ビームを生成する方法980の例示的実施形態を描写する、フロー図である。ステップ982において、陽子ビームが、標的802の領域に印加される。陽子ビームは、好ましくは、1.9MeV~3.0MeVの範囲内のエネルギーを有するが、これは、そのようなものに限定されない。陽子ビームは、再び、連続的またはパルス化様式で印加されることができる、静的位置に保持されることができる、もしくは任意の所望のパターンにおいて標的802の表面を横断して移動されることができる。ステップ984において、陽子ビームが、(例えば、
図6Aに関して説明されるように)1つまたはそれを上回るブリスタが、形成され、サイズを成長させ、標的802の基板領域が、部分的に、結晶質状態から非晶質状態に遷移するように印加される。これは、リチウム化合物層の成長および結晶質状態から非晶質状態へのその化合物の部分的遷移を伴うことができる。これは、
図10B-10Cに関して説明されるであろうように、中性子収率における有意な低下を伴わずに行われることができる。ステップ986において、なおもさらなる荷電粒子放射線が、非晶質状態への遷移が、ブリスタリングが低減されることを可能にするために十分な程度(例えば、50%、75%、90%、またはそれを上回る非晶質状態への遷移)まで継続するように印加される。本遷移は、標的802全体を通して起こり得るが、ブリスタ低減の目的のために、遷移は、少なくとも、ブリスタと上面204との間の標的802の領域において起こる(リチウム層は、遷移する必要はない)。ステップ986は、ブリスタサイズ低減が実質的に停止するまで、全てのブリスタが排除されるまで、所望のサイズまたは厚さのリチウム化合物層が形成されるまで、またはBNCTのための中性子生成を継続するためにそれ以降、継続することができる。いくつかの実施形態では、ブリスタ低減はまた、1つまたはそれを上回るブリスタに到達する、またはそれに隣接した状態になる(ほぼ到達する)深さまでの化合物層の拡大を条件とし得る。ステップ986は、用途に応じて、ブリスタサイズ低減が実質的に停止するまで、全てのブリスタが排除されるまで、所望のサイズまたは厚さのリチウム化合物層が形成されるまで、またはより長く、継続することができる。再び、陽子照射は、例えば、リチウム層が化合物層の形成を通して過度に薄い状態にならない限り、中性子収率における有意な低下を伴わずに継続することができる。ステップ984と986との間の間隔は、いくつかの実施形態では、領域におけるブリスタ形成が停止する、または実質的に停止する(もしくは領域におけるブリスタサイズ成長が停止する、または実質的に停止する)が、ブリスタサイズ低減がまだ起こっていない段階を含んでもよい。
【0085】
本明細書に説明される標的802の実施形態は、中性子ビームシステム800の動作の間に方法900、950、または980を受けることができる。本システム動作は、患者に対して使用されるとき、そのブリスタ抵抗を強化するために、標的802を調整する目的のためのものであり得る。代替として、本システム動作は、患者が治療される間、ブリスタが、治療目的のために患者に中性子を直接印加する1つまたはそれを上回る手技の間に形成され、サイズにおいて低減されるようなものであり得る。方法900、950、または980の実装はまた、非患者使用および患者使用の両方の組み合わせの間にシステム800の動作によって行われることができる。別の実施形態では、方法900、950、および/または980は、ヒト患者に対する使用のために設計されたもの以外の荷電粒子放射線システムによって生成される放射線を使用して、標的802の製造の間に(例えば、BNCT患者センターへの標的802の分配に先立って)実装されることができる。
【0086】
再び
図8Bを参照すると、本図は、ブリスタリングを誘発するために十分な粒子放射線に曝されることに先立つ標的802の例示的実施形態を描写する、斜視図である。本実施形態では、標的802は、ディスク形であり、これがリチウム層103と、金属基板104とを含む点において、金属体102に類似する。銅が、基板104のための材料として特に有利であるように示されているが、本明細書の実施形態は、そのようなものに限定されない。
図8Cは、
図8Bの線8C-8Cに沿って得られる、標的802の断面図である。
図8Cは、基板104の裏側における冷却チャネル804の存在を描写する。チャネル804は、吸熱中性子発生反応によって生成される熱を放散するために、システム800の動作の間に基板104の裏側を横断して冷却剤を循環させるために使用されることができる。
図8Dは、リチウム化合物層105を形成するために十分な粒子放射線に曝された後の標的802の断面図である。基板104が銅である実施形態では、リチウム化合物層105は、リチウム銅化合物である。
図8Eは、基板104内に非晶質領域604を形成するために十分な粒子放射線に曝された後の標的802の断面図である。
【0087】
図8Fおよび8Gは、それぞれ、ビーム移動の段階的パターン860および螺旋パターン862を示す、標的802の正面図である。ビームは、両方の方向(1つの方向が図に示される)においてこれらのパターンに沿って前後に絶えず移動されることができる。ビームスポットサイズに応じて、パターンは、標的802の表面全体を横断して送達される均一なフルエンスをもたらす場合とそうではない場合がある。本明細書に説明される変形防止の利益は、ここで描写される標的802の表面を横断する均一なフルエンスおよび不均一なフルエンスの両方で実現されることができる。これらの実施形態では、リチウム層は、ここで示される表面全体を横断して存在するが、しかしながら、標的802の他の実施形態では、リチウム層は、ここで示される表面の内側領域のみに限定されてもよい。
【0088】
リチウム層103は、固体形態または液体形態のいずれかであり得る。液体形態である場合、リチウム層103は、固体基板が入射ビーム軸に対して所望の角度(例えば、0~90度)で配向され得るように、固体形態における基板104にわたって設置されることができる。液体リチウムは、有意な量のリチウムが蒸発する(それによって、潜在的に、本システムまたは設備を汚染させる)ことを可能にしない様式で基板にわたって形成されるべきである。液体リチウム層は、陽子ビームの実質的により高い電力密度の利用を可能にし、これは、ひいては、比較的により小さい標的直径または幅の使用を可能にする。
【0089】
リチウム層103は、基板の中へのリチウムの拡散が、リチウム層103を薄くさせるであろうため、好ましくは、一定の中性子収率を維持しながら、リチウム化合物層の成長を可能にするために十分である厚さを有することができる。表2は、天然の豊富なリチウム(例えば、約10%の6Liを含有する7Li)における異なる陽子エネルギーに関する例示的リチウム特性を列挙する。リチウムにおける投影飛程は、各エネルギーにおける陽子が運動を停止するまでの範囲である。閾値までの深さは、陽子が中性子発生を停止する閾値である約1.88MeVに到達するリチウム内の深さである。純粋な7Liに関して、閾値までの深さは、わずかにより高くなる(例えば、2.00MeVに関して17.7ミクロン、2.50MeVに関して92.5ミクロン)。
【表2】
【0090】
中性子発生標的において使用されるリチウム層は、好ましくは、少なくとも閾値までの深さの厚さを有し、したがって、リチウム層の所望の厚さは、入射陽子の予期されるエネルギーに依存する。概して、BNCT用途に関するリチウム層厚は、1.88~3.0MeV範囲内の陽子エネルギーを適応させるために、1~300ミクロンの範囲内であり得る。
【0091】
図10A-10Cは、本明細書に説明される実施形態の実験的検証の間に収集されるデータを描写する、グラフである。本実験データは、
図8A-8Cに関して説明されるものに類似する中性子ビームシステム800の実施形態によって発生されるビームの形態における陽子放射線を用いて標的802の実施形態を暴露した後に収集された結果を反映する。研究対象の標的は、基板104上に蒸発された84μm(ミクロン)の厚さを有するリチウム層103を伴う99.996%の微粒状銅の基板104を含んでいた。標的は、約10mmの直径および500±10μAの電流を有する陽子ビームによって、15日間を通して11日間(1日あたり4時間(h))にわたって照射された。サンプル上の電流の積分は、21.08mAhであった。標的は、主に、ビームが、中性子発生閾値を下回る1.8MeVの陽子エネルギーを有する間に照射され、中性子収率を判定するために、短い時間にわたって、1.92~2.04MeVのより大きいエネルギーにおいて照射された(
図10B-10C参照)。
【0092】
図10Aは、ブリスタの相対数(y軸)(ビームの中心における相対数)対ビームが標的602に印加された時間である照射時間(x軸)を描写する、グラフである。照射時間全体の間、研究されるサンプルの表面は、Basler Ace acA4112-30uc CMOSカメラおよびHikvisionビデオカメラを伴うKX InfiniMax
TM長距離顕微鏡によって監視され、ビデオ信号が、記録された。ブリスタの出現および消失が、標的表面の異なる部分において明確に観察された。
図11Aは、リチウム表面の巨視的画像であり、
図11B-11Cは、照射の6日目に長距離顕微鏡によって撮影された画像である。
図11Aは、陽子ビームの主出力の位置と一致する、約1mmの帯域幅および約13mmの内径を伴う暗帯1102を示す。領域1104は、標的802の中心に対応する。領域1106は、陽子放射線にさらに暴露された主要ビーム面積1102の外側の周辺領域に対応する。領域1108は、陽子によって照射されない標的表面を示す。
図11Bは、陽子ビームの中心による入射に対応するリチウム標的表面の領域1102を示す、接近図であり、
図11Cは、ビームの周辺上のリチウム標的表面の領域1106の接近図を示す。リチウム表面が、陽子ビームの中心において均質であり、ブリスタが、不在である一方、ブリスタが、ビームの周辺において明確であることがわかる。
【0093】
ブリスタによるリチウム表面改質は、画像の選定された部分における高輝度領域として定量的に判定された。ビデオ信号ファイルの720フレーム毎に、コンピュータを用いた処理が行われた(約30秒毎)。処理は、ブリスタに対応する高輝度領域を区別し、画像の2つの部分において、すなわち、ビームの中心内およびその周辺上でこれらの領域の面積を判定した。顕微鏡ビデオ信号の処理の結果が、
図10Aに図示され、曲線1001は、ビームの中心によって衝突される標的表面の領域に対応し、曲線1002は、ビームの周辺によって衝突される標的表面の領域に対応する。ここでは、Y軸は、画像の選定された部分(ビームの中心内および周辺上)の高輝度面積の相対量であり、X軸は、15日間のうちの11の異なる日にわたる照射日によって群化される処理された画像フレームのシーケンスを示す。時間ゼロからピーク値1010までのブリスタの上昇を示す曲線1001の部分の大部分は、省略される。結果を可視にするために、1つの照射日を別のものから分離する垂直線が、プロットに描かれる。ビームの出力は、動作時に変動されなかったため、x軸はまた、概して、標的802に対する陽子フルエンスに対応する。1020によって示される合計時間は、約42時間である。
【0094】
ブリスタカウントデータ1001は、時間1003において、ブリスタ形成が標的802において起こり、ピークレベル1010に到達したことを実証する。時間1003から時間1004まで、標的802におけるブリスタカウントは、急速に減少した。
図4A-5の実施形態に関して説明されるように、時間1003において、リチウム層103と基板104との間に形成されたリチウム化合物層が、水素がブリスタから本体102の外に拡散することを可能にするために十分な深さに到達した可能性がある。代替として、
図6A-7の実施形態に関して説明されるように、結晶質構造から非晶質構造への遷移が、ブリスタシェル等のブリスタを形成する材料において起こり、次いで、本シェルは、貫通されたリチウムとともに、基板の中に全体として除去された可能性がある。代替として、両方の組み合わせが、起こった可能性がある。
【0095】
以下の実施形態は、ブリスタサイズおよび/または量の低減に全体的または部分的に寄与した可能性がある、なおもさらなる機構を説明する。例えば、陽子ビーム暴露は、リチウムを固体から局所化された液体形態(例えば、ホットスポット)にすることによって等、ブリスタを低減させるための対流力を引き起こしてもよく、これは、水素が逃散することを可能にする、および/またはブリスタシェルを基板の中に除去させることができる。別の実施例として、陽子ビーム暴露は、リチウムを基板材料における亀裂、裂け目、または他の変形の中に貫通させることによって等、ブリスタを低減させるための毛管力の毛管システムを引き起こし、それによって、水素が逃散することを可能にする、および/またはブリスタシェルを基板の中に除去させてもよい。対流および毛管作用の組み合わせもまた、機構であってもよい。
【0096】
実験では、時間1004において、ビーム印加が、ある時間周期にわたって停止され、次いで、続けて再開された。本停止の結果として、再開に応じて、時間1004から時間1005までの短い周期のブリスタ形成が、存在し、その時点で、ブリスタ低減が、再び始まり、ブリスタの合計数は、時間1004において存在していたものよりもさらに低いレベルまで減少した。類似するサイクルが、時間1006、1007、1008、および1009において行われた。しかしながら、標的602は、全体的傾向が、経時的にブリスタ低減およびブリスタ形成に対する増加された抵抗を呈するように、各サイクルの開始時にブリスタ形成に対する増加された抵抗を呈した。ブリスタの合計数は、実験の終了時にほぼゼロのカウントまで減少し、これは、ピークの99%を上回る低減である。他の実施形態では、低減は、若干より少なく、例えば、75%を上回る、90%を上回る、または95%を上回ってもよい。
【0097】
図10Bおよび10Cは、y軸上の標的602からの中性子収率対x軸上のミリアンペア時間(mAh)単位の陽子電流積分Φを描写する、グラフである。
図10Bのデータは、線量計によって測定され、y軸上に中性子線量率Dを表示する。
図10Cのデータは、中性子検出器によって測定され、y軸上に毎秒単位のカウント率Yを示す。これらのグラフでは、x軸上の点21は、6.3±0.6×10
20陽子/平方センチメートル(p/cm
-2)の陽子フルエンスに対応する。両方のグラフは、陽子フルエンスが増加するにつれて、中性子収率が、略一定のままであり、中性子収率が、概して、
図10Bの線量計に関して95~108および
図10Cの検出器に関して1,617~1,915の範囲内であったことを示す。点21はまた、概して、
図10Aの点1020に対応する。したがって、ブリスタが、形成されていたとき、ならびにブリスタが、低減および排除されていたとき、中性子収率は、それらの時間周期を横断して略一定のままであった。したがって、中性子収率は、概して、ブリスタの存在によって影響を受けなかった。中性子収率における低下の欠如はまた、リチウム層103を通して基板104から拡散する水素が、リチウムまたはリチウム銅との水素化物もしくは水酸化物を形成しなかった(またはブリスタが形成および排除されている間に中性子収率を実質的に低下させないように、少量または無視できる量のみ形成した)ことを示す。点21の陽子フルエンスは、患者治療の観点から表されることができる。そのフルエンスが、例えば、直径において約10cmの暴露領域を有する標的にスケーリングされ、2.3MeVのエネルギーおよび10ミリアンペア(mA)の電流を有する陽子ビームと併用される場合、点21のフルエンスは、約340人の患者(患者あたり40分を仮定する)に対するBNCT療法に対応するであろう。
【0098】
先述の実施形態のうちのいくつかでは、金属体への荷電粒子放射線の印加が、その本体にブリスタ形成の第1の段階を受けさせ、リチウム化合物層の形成を要求することなく、ブリスタがサイズにおいて減少される、または完全に排除される、第2の段階が続く技法が、説明される。また、本明細書に説明されるものは、ブリスタ形成の第1の段階があり、リチウム化合物層の形成を用いたブリスタ低減または排除の第2の段階が続く実施形態である。なおもさらに、ブリスタ形成の第1の段階があり、結晶質状態からほぼ非晶質状態への、単独での、またはリチウム化合物層と組み合わせた基板材料の遷移を用いたブリスタ低減または排除の第2の段階が続く実施形態が、本明細書に説明される。これらの前述の実施形態に加えて、リチウム化合物層および/または非晶質材料が、典型的には、ブリスタ形成をもたらすであろう放射線暴露に先立って形成される、付加的実施形態が、ここで説明されるであろう。既存のリチウム化合物層および/または非晶質構造を伴うこれらの実施形態は、ブリスタ形成に対する増加された抵抗を有し、ある条件下でブリスタ形成を完全に防止し、したがって、ブリスタが低減および/または排除された後であっても持続し得る、いずれの残留する、潜在的には望ましくない、構造変形も回避することができる。
【0099】
図1D-1Eに関して説明される金属体102の実施形態は、ブリスタが形成されるような荷電粒子放射線への暴露に先立って加工されることができる。例えば、リチウム化合物層105が、最初に、金属基板104上またはその中に形成される、その上に堆積される、もしくはそれに結合されることができ、次いで、リチウム層103が、続けて、リチウム化合物層105上またはその中に形成される、その上に堆積される、もしくはそれに結合されることができる。逆に、リチウム化合物層105が、最初に、リチウム層103上またはその中に形成される、その上に堆積される、もしくはそれに結合されることができ、次いで、金属基板104が、続けて、リチウム化合物層105上に形成される、その上に堆積される、またはそれに結合されることができる。
【0100】
別の実施形態では、金属体102は、最初に、基板104と直接接触するリチウム層103を用いて加工される。金属体102は、次いで、層103のリチウムが、基板104の中に拡散し、以前にリチウム層のみ、金属基板のみ、または両方によって占有されていた領域内に化合物層105を形成するように、特定の時間にわたって1つまたはそれを上回る刺激、例えば、熱、電気、および/または圧力に曝されることができる。1つまたはそれを上回る刺激が印加される条件および時間は、結果として生じる化合物層105の厚さ112を判定することができる。
【0101】
非晶質構造を有する基板104は、その上にリチウム層103を具備することができる、またはリチウム層103の追加後に非晶質構造に遷移されることができる。同様に、非晶質構造を有するリチウム化合物層105もまた、上記に説明される技法に従って提供されることができる、または結晶質状態において提供され、次いで、非晶質状態に遷移されることができる。金属体102は、次いで、既存の非晶質構造を伴って所望の用途において使用されることができる。
【0102】
化合物層105および/または本体102の非晶質部分の厚さ112は、それに本体102が暴露されるであろう放射線の予期される条件および性質に基づいて、ブリスタ形成を軽減するように選択されてもよい。例えば、ブリスタ形成が、そうでなければ予期される放射線条件下で起こるであろう場所に到達する表面204からの深さまで化合物層105を形成することが、望ましくあり得る。ブリスタ形成の深さは、放射線のタイプ(例えば、陽子、イオン)、放射線のエネルギー、基板104の純度、基板金属のタイプ、およびその他等の因子に依存し得る。
【0103】
既存のリチウム化合物層および/または既存のほぼ非晶質構造を伴う金属体102の実施形態は、次いで、ブリスタの形成を伴わずに、または実質的にブリスタの形成を伴わずに、所望の用途において使用されることができる。例えば、リチウム標的602が既存のリチウム化合物層(
図8Dに類似する)および/または既存の非晶質構造(
図8Eに類似する)を有するBNCT用途では、1.9MeV~3.0MeVの範囲内(より好ましくは、2.3MeV~2.6MeVの範囲内)のエネルギーおよび1~20mAの範囲内(より好ましくは、8~15mAの範囲内)の電流を有する陽子ビームが、ブリスタリングを伴わずに、または実質的なブリスタリングを伴わずに、長い時間周期にわたって標的602に印加されることができる。長い時間周期は、例えば、少なくとも6.3±0.6×10
20p/cm
-2の陽子フルエンスであり得る。
【0104】
そのようなものに限定されないが、多くの例示的実施形態では、リチウム層は、1~300ミクロンの厚さ、いくつかの実施形態では、10~250ミクロンの厚さであり得る。そのようなものに限定されないが、多くの例示的実施形態では、存在する場合、リチウム化合物層は、1~500ミクロンの厚さ、いくつかの実施形態では、10~300ミクロンの厚さ、いくつかの実施形態では、15~100ミクロンの厚さであり得る。そのようなものに限定されないが、多くの例示的実施形態では、存在する場合、基板の非晶質部分は、1~500ミクロンの厚さ、いくつかの実施形態では、10~300ミクロンの厚さ、いくつかの実施形態では、15~100ミクロンの厚さであり得る。そのようなものに限定されないが、多くの例示的実施形態では、基板は、少なくとも100ミクロンの厚さであり得、最大厚さは、用途に依存する。いくつかの実施形態では、基板は、100ミクロン~50センチメートルの厚さである。
【0105】
本主題の種々の側面は、これまで説明された実施形態の復習として、および/またはその補完として、下記に記載され、以下の実施形態の相互関係および相互交換可能性がここで強調される。言い換えると、実施形態の各特徴は、別様に明示的に記載されない、または論理的にあり得なくない限り、あらゆる他の特徴と組み合わせられ得るという事実が強調される。
【0106】
実施形態の第1のセットでは、リチウム層と、金属基板とを含む、標的を有する、ビームシステムを動作させる方法が、提供され、本方法は、(a)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、標的において形成されるように、標的を荷電粒子放射線に曝すステップと、(b)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップとを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、陽子ビームである。
【0108】
いくつかの実施形態では、(b)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、1平方センチメートルあたり(cm-2)少なくとも0.5×1019の陽子エネルギーフルエンスに標的を曝すステップを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、(b)標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、ブリスタの量が1桁低減されるまで、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、中性子は、ステップ(a)および(b)において1秒あたり少なくとも1×1012個の中性子の第1のレートにおいて放出される。
【0111】
いくつかの実施形態では、(a)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、標的において形成されるように、標的を荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、放出された中性子をヒト患者に印加するステップを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、(b)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、放出された中性子をヒト患者に印加するステップを含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、放出された中性子は、反応p+7Li→n+7Beに従って、リチウム層によって生成される。
【0114】
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)手技の一部として(a)および(b)を実施するステップを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、ビームの形態であり、標的は、ビームの伝搬の方向を横断する方向において標的の表面を横断してビームを移動させながら、ステップ(a)および(b)において荷電粒子放射線に曝される。
【0116】
いくつかの実施形態では、(b)はさらに、標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、量およびサイズにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、(b)はさらに、標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、サイズのみにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、金属基板は、銅である。リチウム層は、銅基板と接触することができる。リチウム層は、銅バルク基板上に直接形成されることができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、リチウム層は、1ミクロン~300ミクロンの範囲内の厚さを有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、1.9MeV~3.0MeVの範囲内のエネルギーを有する。
【0121】
実施形態の第2のセットでは、リチウム層と、金属基板とを含む、標的を有する、ビームシステムを動作させる方法が、提供され、本方法は、(a)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、標的において形成されるように、標的を荷電粒子放射線に曝すステップと、(b)標的が、中性子を放出し、リチウム化合物層が、リチウム層と金属基板との間に、複数のブリスタを量および/またはサイズにおいて低減させるために十分なサイズまで形成されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップとを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、陽子ビームである。
【0123】
いくつかの実施形態では、(b)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、1平方センチメートルあたり(cm-2)少なくとも0.5×1019の陽子エネルギーフルエンスに標的を曝すステップを含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、(b)標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、ブリスタの量が1桁低減されるまで、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、中性子は、ステップ(a)および(b)において1秒あたり少なくとも1×1012個の中性子の第1のレートにおいて放出される。
【0126】
いくつかの実施形態では、(a)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、標的において形成されるように、標的を荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、放出された中性子をヒト患者に印加するステップを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、(b)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、放出された中性子をヒト患者に印加するステップを含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、放出された中性子は、反応p+7Li→n+7Beに従って、リチウム層によって生成される。
【0129】
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)手技の一部として(a)および(b)を実施するステップを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、ビームの形態であり、標的は、ビームの伝搬の方向を横断する方向において標的の表面を横断してビームを移動させながら、ステップ(a)および(b)において荷電粒子放射線に曝される。
【0131】
いくつかの実施形態では、(b)はさらに、標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、量およびサイズにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、(b)はさらに、標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、サイズのみにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、金属基板は、銅であり、リチウム化合物層は、リチウム銅化合物である。
【0134】
いくつかの実施形態では、リチウム層は、1ミクロン~300ミクロンの範囲内の厚さを有する。
【0135】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、1.9MeV~3.0MeVの範囲内のエネルギーを有する。
【0136】
実施形態の第3のセットでは、リチウム層と、金属基板とを含む、標的を有する、ビームシステムを動作させる方法が、提供され、本方法は、(a)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、標的において形成されるように、標的を荷電粒子放射線に曝すステップと、(b)標的が、中性子を放出し、金属基板が、結晶質状態から、複数のブリスタを量および/またはサイズにおいて低減させるために十分な非晶質状態に遷移するように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップとを含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、陽子ビームである。
【0138】
いくつかの実施形態では、(b)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、1平方センチメートルあたり(cm-2)少なくとも0.5×1019の陽子エネルギーフルエンスに標的を曝すステップを含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、(b)標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、ブリスタの量が1桁低減されるまで、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、中性子は、ステップ(a)および(b)において1秒あたり少なくとも1×1012個の中性子の第1のレートにおいて放出される。
【0141】
いくつかの実施形態では、(a)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、標的において形成されるように、標的を荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、放出された中性子をヒト患者に印加するステップを含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、(b)標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、量および/またはサイズにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、放出された中性子をヒト患者に印加するステップを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、放出された中性子は、反応p+7Li→n+7Beに従って、リチウム層によって生成される。
【0144】
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)手技の一部として(a)および(b)を実施するステップを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、ビームの形態であり、標的は、ビームの伝搬の方向を横断する方向において標的の表面を横断してビームを移動させながら、ステップ(a)および(b)において荷電粒子放射線に曝される。
【0146】
いくつかの実施形態では、(b)はさらに、標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、量およびサイズにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、(b)はさらに、標的が、中性子を放出し、複数のブリスタが、サイズのみにおいて低減されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、(b)標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、リチウム化合物層が、リチウム層と金属基板との間に形成されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。金属基板は、銅であり得、リチウム化合物層は、リチウム銅化合物であり得る。(b)標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、リチウム化合物層が、リチウム層と金属基板との間に、複数のブリスタに到達する、またはそれに隣接する深さまで形成されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含むことができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、リチウム層は、1ミクロン~300ミクロンの範囲内の厚さを有する。
【0150】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、1.9MeV~3.0MeVの範囲内のエネルギーを有する。
【0151】
実施形態の第4のセットでは、(a)複数の変形が、金属構造の領域内に形成されるように、金属構造の領域を荷電粒子放射線に曝すステップであって、金属構造は、リチウム層を含む、ステップと、(b)複数の変形が、量および/またはサイズにおいて低減されるように、金属構造の領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップとを含む、方法が、提供される。
【0152】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、陽子ビームである。
【0153】
いくつかの実施形態では、(b)金属構造の領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、変形の量が1桁低減されるまで、領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、ビームの形態であり、領域は、ビームの伝搬の方向を横断する方向において領域の表面を横断してビームを移動させながら、ステップ(a)および(b)において荷電粒子放射線に曝される。
【0155】
いくつかの実施形態では、金属基板は、銅である。
【0156】
いくつかの実施形態では、リチウム層は、銅基板と接触する。
【0157】
いくつかの実施形態では、金属構造は、プラズマ核融合反応炉の一部であり、荷電粒子放射線は、核融合反応から放出される。
【0158】
いくつかの実施形態では、リチウム層は、1ミクロン~300ミクロンの範囲内の厚さを有する。
【0159】
いくつかの実施形態では、変形は、ブリスタである。
【0160】
いくつかの実施形態では、(b)金属構造の領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、対流および/または毛管力が、複数の変形を量および/またはサイズにおいて低減させるように、領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0161】
実施形態の第5のセットでは、(a)複数の変形が、金属構造の領域内に形成されるように、金属構造の領域を荷電粒子放射線に曝すステップであって、金属構造は、リチウム層を含む、ステップと、(b)リチウム化合物層が、リチウム層と金属基板との間に、複数の変形を量および/またはサイズにおいて低減させるために十分なサイズまで形成されるように、金属構造の領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップとを含む、方法が、提供される。
【0162】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、陽子ビームである。
【0163】
いくつかの実施形態では、(b)領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、ブリスタの量が1桁低減されるまで、領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、ビームの形態であり、領域は、ビームの伝搬の方向を横断する方向において領域の表面を横断してビームを移動させながら、ステップ(a)および(b)において荷電粒子放射線に曝される。
【0165】
いくつかの実施形態では、金属基板は、銅であり、リチウム化合物層は、リチウム銅化合物である。
【0166】
いくつかの実施形態では、リチウム層は、1ミクロン~300ミクロンの範囲内の厚さを有する。
【0167】
いくつかの実施形態では、変形は、ブリスタである。
【0168】
実施形態の第6のセットでは、(a)複数の変形が、金属構造の領域内に形成されるように、金属構造の領域を荷電粒子放射線に曝すステップであって、金属構造は、リチウム層を含む、ステップと、(b)金属基板が、結晶質状態から、複数の変形を量および/またはサイズにおいて低減させるために十分な非晶質状態に遷移するように、金属構造の領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップとを含む、方法が、提供される。
【0169】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、陽子ビームである。
【0170】
いくつかの実施形態では、(b)領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップは、ブリスタの量が1桁低減されるまで、領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、荷電粒子放射線は、ビームの形態であり、領域は、ビームの伝搬の方向を横断する方向において領域の表面を横断してビームを移動させながら、ステップ(a)および(b)において荷電粒子放射線に曝される。
【0172】
いくつかの実施形態では、金属基板は、銅であり、リチウム化合物層は、リチウム銅化合物である。
【0173】
いくつかの実施形態では、リチウム層は、1ミクロン~300ミクロンの範囲内の厚さを有する。
【0174】
いくつかの実施形態では、変形は、ブリスタである。
【0175】
いくつかの実施形態では、(b)領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、リチウム化合物層が、リチウム層と金属基板との間に形成されるように、領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、金属基板は、銅であり、リチウム化合物層は、リチウム銅化合物である。
【0177】
いくつかの実施形態では、(b)領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、リチウム化合物層が、リチウム層と金属基板との間に、複数の変形に到達する、またはそれに隣接する深さまで形成されるように、標的をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、(b)金属構造の領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップはさらに、対流および/または毛管力が、量および/またはサイズにおいて複数の変形を低減させるように、領域をさらなる荷電粒子放射線に曝すステップを含む。
【0179】
実施形態の第7のセットでは、金属基板と、金属基板と結合される、リチウムを含む層とを含み、金属体は、少なくとも6.3±0.6×1020陽子/平方センチメートル(p/cm-2)の荷電粒子フルエンスに暴露されている、金属体が、提供される。
【0180】
いくつかの実施形態では、金属体は、暴露に先立って呈されるブリスタ形成に対する抵抗を上回るブリスタ形成に対する抵抗を呈する。
【0181】
いくつかの実施形態では、金属基板は、銅を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、金属体はさらに、リチウムを含む層と金属基板との間にリチウム化合物層を含む。リチウムを含む層は、少なくとも90%のリチウム-7同位体を含むことができる。リチウムを含む層は、少なくとも98%のリチウム-7同位体を含むことができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、金属基板の第1の部分は、非晶質状態である。金属基板の第2の部分は、結晶質状態であり得、第1の部分は、第2の部分よりもリチウムを含む層に比較的に近接する。
【0184】
いくつかの実施形態では、金属体は、プラズマ核融合反応炉における使用のために構成される。
【0185】
いくつかの実施形態では、金属体は、中性子発生標的としての使用のために構成される。
【0186】
実施形態の第8のセットでは、金属基板と、金属基板上のリチウムを含む層とを含み、金属体は、1つまたはそれを上回るブリスタが、最初に、荷電粒子放射線によって金属体において形成され、次いで、1つまたはそれを上回るブリスタが、荷電粒子放射線によってサイズにおいて低減されるように、荷電粒子放射線に暴露されている、金属体が、提供される。
【0187】
いくつかの実施形態では、金属体は、暴露に先立って呈されるブリスタ形成に対する抵抗を上回るブリスタ形成に対する抵抗を呈する。
【0188】
いくつかの実施形態では、金属基板は、銅を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、金属体はさらに、リチウムを含む層と金属基板との間にリチウム化合物層を含む。リチウムを含む層は、少なくとも90%のリチウム-7同位体を含むことができる。リチウムを含む層は、少なくとも98%のリチウム-7同位体を含むことができる。
【0190】
いくつかの実施形態では、金属基板の第1の部分は、非晶質状態である。金属基板の第2の部分は、結晶質状態であり得、第1の部分は、第2の部分よりもリチウムを含む層に比較的に近接する。
【0191】
いくつかの実施形態では、金属体は、プラズマ核融合反応炉における、または中性子発生標的としての使用のために構成される。
【0192】
実施形態の第9のセットでは、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)における使用のための標的が、提供され、標的は、銅基板と、銅基板上のリチウムを含む層とを含み、標的は、1つまたはそれを上回るブリスタが、最初に、荷電粒子放射線によって標的において形成され、次いで、1つまたはそれを上回るブリスタが、荷電粒子放射線によってサイズにおいて低減されるように、荷電粒子放射線に暴露されている。
【0193】
いくつかの実施形態では、標的は、暴露に先立って呈されるブリスタ形成に対する抵抗を上回るブリスタ形成に対する抵抗を呈する。
【0194】
いくつかの実施形態では、リチウムは、固体形態である。
【0195】
いくつかの実施形態では、リチウムは、液体形態である。
【0196】
いくつかの実施形態では、標的は、1平方センチメートルあたり(cm-2)少なくとも0.5×1019の陽子フルエンスが生じるまで、1.9~3.0メガ電子ボルト(MeV)の平均エネルギーおよび1~20ミリアンペア(mA)の範囲内の電流を有する陽子放射線に暴露されるとき、銅基板におけるブリスタの実質的な形成を伴わずに、中性子を発生させるように構成される。標的は、反応p+7Li→n+7Beに従って中性子を発生させるように構成されることができる。
【0197】
実施形態の第10のセットでは、リチウムを含む、第1の層と、銅基板と、第1の層と銅基板との間に位置する、リチウム銅化合物を含む、第2の層とを含み、標的は、陽子放射線に暴露されると、中性子を発生させるように構成される、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)における使用のための標的が、提供される。
【0198】
いくつかの実施形態では、標的は、陽子放射線に暴露されるとき、銅基板におけるブリスタの実質的な形成を伴わずに、中性子を発生させるように構成される。
【0199】
いくつかの実施形態では、標的は、1.9MeV~3.0MeVの平均エネルギーおよび1~20mAの範囲内の電流を有する陽子放射線に暴露されるとき、銅基板におけるブリスタの実質的な形成を伴わずに、中性子を発生させるように構成される。
【0200】
いくつかの実施形態では、標的は、反応p+7Li→n+7Beに従って中性子を発生させるように構成される。
【0201】
いくつかの実施形態では、リチウム層は、1~300ミクロンの範囲内の厚さを有する。
【0202】
実施形態の第11のセットでは、リチウムを含む、第1の層と、非晶質状態における第1の部分を有する、銅基板とを含み、標的は、陽子放射線に暴露されるとき、中性子を発生させるように構成される、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)における使用のための標的が、提供される。
【0203】
いくつかの実施形態では、標的は、陽子放射線に暴露されるとき、銅基板におけるブリスタの実質的な形成を伴わずに、中性子を発生させるように構成される。
【0204】
いくつかの実施形態では、標的は、1.9MeV~3.0MeVの平均エネルギーおよび1~20mAの範囲内の電流を有する陽子放射線に暴露されるとき、銅基板におけるブリスタの実質的な形成を伴わずに、中性子を発生させるように構成される。
【0205】
いくつかの実施形態では、標的は、反応p+7Li→n+7Beに従って中性子を発生させるように構成される。
【0206】
いくつかの実施形態では、第1の層は、1~300ミクロンの範囲内の厚さを有する。
【0207】
いくつかの実施形態では、銅基板の第2の部分は、結晶質状態であり、第1の部分は、第2の部分よりもリチウムを含む第1の層に比較的に近接する。
【0208】
いくつかの実施形態では、標的はさらに、第1の層と銅基板との間にリチウム銅化合物層を含む。
【0209】
本明細書に提供される任意の実施形態に関して説明される、全ての特徴、要素、構成要素、機能、およびステップが、自由に組み合わせ可能であり、任意の他の実施形態からのものと代用可能であることを意図していることに留意されたい。ある特徴、要素、構成要素、機能、またはステップが、1つのみの実施形態に関して説明される場合、その特徴、要素、構成要素、機能、またはステップが、別様に明示的に記載されない限り、本明細書に説明される全ての他の実施形態と併用され得ることを理解されたい。本段落は、したがって、随時、異なる実施形態からの特徴、要素、構成要素、機能、およびステップを組み合わせる、または一実施形態からの特徴、要素、構成要素、機能、およびステップを別の実施形態からのもので代用することの請求項の導入の前提および記述支援としての役割を果たし、以下の説明が、特定の事例において、そのような組み合わせまたは代用が可能であることを明示的に記載しない場合でも該当する。特に、あらゆるそのような組み合わせおよび代用の許容性は、当業者によって容易に認識されるであろうことを前提として、あらゆる可能性として考えられる組み合わせおよび代用の明確な列挙が、過度に負担であることが明示的に認識される。
【0210】
本明細書および添付される請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別様に明確に決定付けない限り、複数指示物を含む。
【0211】
実施形態は、種々の修正および代替形態を被るが、その具体的実施例が、図面に示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、これらの実施形態が、開示される特定の形態に限定されず、対照的に、これらの実施形態が、本開示の精神内に該当する、全ての修正、均等物、および代替を網羅するものであることを理解されたい。さらに、実施形態の任意の特徴、機能、ステップ、または要素が、その範囲内に該当しない、特徴、機能、ステップ、または要素によって、請求項の発明的範囲を定義する、負の限定とともに、請求項内に列挙される、もしくはそれに追加され得る。
【国際調査報告】