(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】SARS-CoV-2感染患者におけるアウトカムを改善するための吸入インターフェロン-ベータ
(51)【国際特許分類】
A61K 38/21 20060101AFI20230814BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230814BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230814BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230814BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20230814BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230814BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230814BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
A61K38/21
A61K9/08
A61K9/12
A61K9/72
A61K31/573
A61K45/00
A61P31/14
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504184
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 GB2021051853
(87)【国際公開番号】W WO2022018422
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523021841
【氏名又は名称】シナーゲン リサーチ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】マースデン,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】モンク,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン,トム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
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(57)【要約】
本発明は、急性呼吸窮迫症候群を引き起こす能力を有するコロナウイルスに感染した患者における下気道(LRT)疾患の重症度の予防又は軽減、例えば、SARS-CoV-2に感染したCOVID-19患者におけるLRT疾患の予防又はその重症度の軽減に使用するための、吸入インターフェロン-ベータの使用に関する。在宅環境と病院環境の両方に適用可能な簡便かつ迅速な息切れスコアリングに基づいて回復を促進するためのこのような治療の標的化が提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こす能力を有するコロナウイルス若しくは他のパンデミックを引き起こす可能性があるウイルスに感染した患者における下気道疾患の重症度の予防若しくは軽減、並びに/又はそのように感染した患者における1つ若しくはそれ以上の症状及び/若しくはアウトカムの改善に使用するためのインターフェロン-ベータ(IFN-β)であって、吸入によって投与される、インターフェロン-ベータ。
【請求項2】
前記患者がコロナウイルスに感染している、請求項1に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項3】
前記コロナウイルスが、重症急性呼吸器症候群を引き起こす能力を有するSARSウイルスである、請求項2に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項4】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項3に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項5】
前記IFN-βが組換えヒトIFN-β1aである、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項6】
前記IFN-βが、約pH6~7、例えばpH6.5の水溶液中に製剤化され、好ましくは、マンニトール、ヒト血清アルブミン及びアルギニンを除外している、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項7】
気道への投与が、前記IFN-βの液体製剤のエアロゾル化を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項8】
投与がネブライザの使用によるものである、請求項7に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項9】
前記IFN-βの投与が、1日1回の吸入用量としてである、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項10】
前記患者が、IFN-βの初回投与時に、WHO臨床改善のための順序尺度(Ordinal Scale for Clinical Improvement)で少なくとも3又は少なくとも4のスコアを有すると評価される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項11】
前記患者が、IFN-β投与後に同じ尺度でスコアを増加させない、請求項10に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項12】
前記患者が、IFN-β投与の期間内に、同じ尺度での1又はそれ以上のスコアの低下、好ましくは、14日又はそれ以下、例えば、7日未満、より好ましくは、6日未満、例えば5日、さらにより好ましくは、4日未満、例えば3日以内の1又はそれ以上のスコアの低下を示す、請求項11に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項13】
IFN-β投与開始後に、息切れ並びに/又は息切れ、咳及び痰スコア(Breathlessness, Cough and Sputum Score)(BCSS)の改善が認められる、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項14】
前記患者が、IFN-βによる最初の治療時に3~4の息切れスコアを有すると評価され、前記スコアが、以下の尺度:
0=なし-何ら困難に気づかない
1=軽度-激しい活動(例えば、ランニング)を行っているときに目立つ
2=中等度-軽い活動(例えば、ベッドメイキング又は食料品の運搬)を行っているときでも目立つ
3=顕著-洗濯又は身じたく時に目立つ
4=重度-ほぼ常に、安静時でも存在
での呼吸困難度に関する質問に対する前記患者の回答に基づいて決定される、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項15】
3~4の息切れスコアが、吸入IFN-βの投与のための決定因子として使用される、請求項14に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項16】
前記患者が、2以下のOSCIスコアと同等の在宅環境にあり、かつ、少なくとも3の息切れスコアが、吸入IFN-βの投与のための決定因子として使用される、請求項15に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項17】
前記IFN-βが、同じウイルス感染に起因する1つ又はそれ以上の症状の改善を補助するために、1つ又はそれ以上のさらなる治療剤の投与と組み合わせて吸入によって投与され、それぞれのさらなる剤が、同時に、別々に、又は逐次的に投与される、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のためのIFN-β。
【請求項18】
コルチコステロイドと組み合わせて投与される、請求項17に記載の使用のためのIFN-β。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば気道を介したネブライザ投与のために製剤化された吸入インターフェロン-ベータ(IFN-β)の使用であって、下気道(LRT)疾患を予防する若しくはその重症度を軽減すること、及び/又は、そのような感染(一般にCOVID-19と呼ばれる)に起因する疾患重症度を評価するために世界中で臨床診療において利用されている一般的に用いられている尺度に従って症状状態を改善することによって、SARS-CoV-2ウイルス感染患者におけるアウトカムを改善するための使用に関する。在宅環境にまで及ぶ試験に基づいて、SARS-CoV-2感染患者への吸入IFN-β投与の指標となる簡便なポイント・オブ・ケア基準として、息切れの重症度が提案されている。顕著な又は重度の息切れを有するSARS-CoV-2感染患者へのこのような投与は、回復を有意に加速し、悪化を防止することが見出されており、したがって入院の必要性を減らすのに役立つ可能性がある。本発明の根拠は、SARS-CoV-2感染患者に対する吸入IFN-βの臨床試験であったが、本発明は、重症急性呼吸器症候群を引き起こす能力を有し、したがって、ヒトにおいて重篤なLRT疾患を引き起こす、SARSウイルス及び他の公知の若しくは将来の新興コロナウイルス、又は他のパンデミックを引き起こす可能性があるウイルスとして分類される任意の将来の新興コロナウイルスに対する適用を有することが理解されるであろう。
【背景技術】
【0002】
IFN-β駆動性の抗ウイルス応答は、高齢者及び慢性気道疾患、より詳細には喘息及びCOPDを有する者において損なわれている/欠如していることが示されている(Agrawal et al. (2013) Gerontology 59, 421-426; Wark et al. (2005) J. Exp. Med. 937-47; Singanavagam et al. (2019) Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 317(6):L893-L903)。
これは、感冒を引き起こすライノウイルスによる喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)のウイルス誘導性増悪を治療するための吸入IFN-βの以前に提案された使用(サウサンプトン大学の名義であり、Synairgen plcに独占的にライセンスされている欧州特許第1734987号明細書を参照)及びライノウイルス感染に起因する高齢者のLRT疾患の重症度を軽減するための吸入IFN-βの以前に提案された使用(Synairgen Research Limitedの名義の米国特許第7,871,603号明細書を参照)と一致している。さらに、Synairgen Research Limitedの名義でもある欧州特許第2544705号明細書は、インフルエンザ感染に関連するLRT疾患の治療のための吸入IFN-βの使用を提案している。呼吸作動ネブライザを介して送達される噴霧のための吸入IFN-β1a製剤を使用した臨床試験は、特に感冒又はインフルエンザによるLRT疾患に罹患している喘息患者又はCOPD患者においてそのような投与をさらに行うために実施され、有望な結果をもたらした。これまでに行われたすべてのこのような臨床試験(喘息では3件、COPD患者では1件)において、吸入IFN-βは、投与後24時間にわたって痰中の肺抗ウイルスバイオマーカーをアップレギュレートし、生物学的に活性な薬物の肺への送達の成功が確認され、作用機序の検証(proof-of-mechanism)が実証され、用量選択が裏付けられた。しかしながら、そのような試験は、吸入IFN-βが、重症急性呼吸器症候群、例えばSARS-CoV-2を引き起こす能力を有する任意のコロナウイルスに関連する重度のLRT疾患の予防又は治療において何らかの有益な効果を有し得ると仮定する根拠を提供していない。
【0003】
IFN-βは、細胞ベースのアッセイにおいて、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、SARS-CoV及びSARS-CoV-2を含む様々なコロナウイルスの複製を阻害することが示されている。例えば、感染に応答して1型インターフェロンを発現することができないVero細胞を使用したインビトロ研究では、IFN-β又はIFN-αのいずれかが、SARS-CoV及びMERSウイルスについての所見と同様に、SARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性を有することが実証された(Mantlo et al. Antiviral activities of type I interferons to SARS-CoV-2 infection. Antiviral Res. 2020; 179:104811)。中国特許出願公開第1535724号明細書(Beijing Jindike Biotech.Res.Institute)はまた、SARSウイルス増殖を阻害する能力を示す様々なI型インターフェロンを用いた細胞アッセイも報告しているが、どちらかと言えばIFN-α2bに対する焦点を支持している。これらの研究の拡張は、上気道におけるSARSウイルス感染に対する予防手段としての組換えヒトIFN-α2b鼻腔スプレーの使用を報告する中国特許出願公開第1927389号明細書に報告されている。しかしながら、吸入送達に適したI型インターフェロン製剤は教示されていない。言及される組換えヒトIFN-βの唯一の製剤(formuation)は、注射される市販製剤である。そのような研究に照らすと、吸入IFN-βが、任意のコロナウイルスに感染した患者におけるLRT疾患の予防又は治療においてどのようなベネフィットを有し得るか、特に、SARSウイルス感染に起因する疾患及び入院の必要性に関連するWHO承認の臨床改善のための順序尺度(Ordinal Scale for Clinical Improvement)における少なくとも3又は4のカテゴリー化を必要とする、LRT疾患を有するそのような患者における改善された症状状態/アウトカムをもたらすかは不明のままである。
【0004】
実際、SARS-CoV-2感染に起因するCOVID-19疾患が確認された患者においてIFN-βを使用した唯一の報告された臨床試験では、吸入投与にさえ適していない製剤中での、並びにロピナビル-リトナビル及びリバビリンの経口投与との併用でのIFN-β-1bの皮下注射のみが検討された(Hung et al. (2020) Lancet 395:1695-16704 entitled 「Triple combination of interferon beta-1b, lopinavir-ritonavir and ribavirin in the treatment of patients admitted to hospital with COVID-19: an open-label, randomised, phase 2 trial」; first published on-line 8 May 2020を参照)。同臨床試験チームは、IFN-β-1bによる2剤抗ウイルス療法が、試験された3剤併用療法に使用されるように正当化されることのみを示唆している。報告された試験の患者は、3剤併用療法群又はロピナビル-リトナビルのみを投与した群のいずれかに無作為に割り当てられた。3剤併用群では、患者は募集され、症状発症から7日未満でIFN-β-1bで治療された。患者は、薬物開始日に応じて1日おきに1~3用量のIFN-β-1bの投与を受けた。症状発症から1~2日目に開始された場合、患者は全3用量のIFN-βの投与を受けた。薬物投与が症状発症から3~4日目に開始された場合、患者は2用量のIFN-βの投与を受けた。薬物投与が症状発症から5~6日目に開始された場合、患者は1用量のIFN-βの投与を受けた。7~14日目の間に治療された患者については、IFN-βは全く投与されなかった。したがって、IFN-βは、せいぜい皮下注射によるCOVID-19疾患への早期介入のために示唆されており、このような注射が、初期ウイルス感染を超える炎症機序に関連する症状発症に関して望ましくない効果を有する可能性があるかどうかについての懸念が示されている。
【0005】
IFN-βを使用してMERS感染マウスを治療した先行研究では、ウイルス量がピークに達する前に、治療が感染の1日以内に与えられた場合にのみ有効であることが実証されたが、遅延したインターフェロン治療はウイルス複製を阻害することができず、炎症の増加及び炎症促進性サイトカイン発現の増強を引き起こし、遅延した治療はサイトカインストームを引き起こすことによって症状を悪化させ得るという示唆をもたらした(Channappanavar et al. IFN-I response timing relative to virus replication determines MERS coronavirus infection outcomes. J. Clin. Invest. 2019; 129(9):3625-39を参照)。これは、どちらかと言えば、上記のヒト臨床試験と一致する、COVID-19に対するIFN-βによる(及び注射による)早期治療を裏付けるものである。
【0006】
IFN-βの使用をこの臨床状況における早期介入(症状の発症から7日前)に限定する理論的根拠は、後の治療がCOVID-19患者に見られ、MERSウイルス感染の動物モデルで観察されるサイトカインストームを駆動する可能性があるという懸念と相まって、SARS-CoV-2ウイルス量が症状発症の数日以内にピークに達するという予想として見ることができる。実際、サイトカインストーム及びそれが引き起こす損傷は、疾患の後期段階におけるウイルス複製よりも重度の疾患のより重要なドライバーである可能性があり、インターフェロンの二次誘導がサイトカインストームを駆動する可能性があることが提案されている(Andreakos E. & Tsiodras S. COVID-19:lambda interferon against viral load and hyperinflammation. EMBO Mol. Med. 2020; 12(6):e12465; Jamilloux et al. Should we stimulate or suppress immune responses in COVID-19? Cytokine and anti-cytokine interventions. Autoimmun. Rev. 2020; 19(7):102567)。
【0007】
フランスのAmiens-Picarde University Hospitalのチームは、「Therapeutic Options for Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)-Modulation of Type I Interferon Response as a promising Strategy?」 (Mary et al(May 2020) Frontiers in Public Health, 8, Article 185)と題された総説において、最近、COVID-19疾患の治療への可能性のあるアプローチについてコメントした。その著者らは、SARS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERSウイルス)、及びより最近ではSARS-CoV-2に関連するLRT疾患を治療することを目的とした、IFN-アルファ-2b(下記のIFN-アルファに関するさらなる情報を参照)の噴霧投与の中国における周知の臨床使用に注目しているが、COVID-19疾患のどの段階においても有益な効果を有するIFN-βの同様の送達を裏付ける新たなデータを何ら提供していない。その著者らは、上記の3剤併用薬物試験に関する予備的情報に言及しているにすぎず、どちらかと言えば、検討のための興味深い代替戦略を示すアジスロマイシンを指摘している。その抗菌的役割とは別に、アジスロマイシンは、健常ドナー、喘息患者及びCOPD患者由来の気管支上皮細胞において、ライノウイルス誘導性のI型及びII型IFN応答を増加させることが報告されている。アジスロマイシンとヒドロキシクロロキンとの併用療法は、一部のフランス人COVID-19患者で試験されており(Gautret et al. Int. J. Antimicrob. Agents (2020) 105949)、Maryらは、「アジスロマイシンがh-CQ治療フランス人患者のこのサブグループにおけるウイルス保有の急速な減少の原因であり得る可能性を考慮しなければならない」とコメントしている。
【0008】
「Type I interferons as potential treatment against COVID-19」 (Antiviral Research, 178, 104791, on-line 7 April 2020)と題されたSallardらによる論文は、ウイルス誘導性ARDSに関連して、IFN-α及びIFN-βの両方のI型インターフェロンの使用のベネフィットを判定することに関連する様々な研究を概説している。吸入投与に関して、考察はここでもIFN-αの投与、及び併用療法の一部としての、例えばロピナビル/リトナビルとの併用でのIFN-αのそのような投与についての一般的な推奨に限定される(例えば、Lu, H. Drug treatment options for the 2019-new coronavirus(2019-nCoV)Bioscience Trends (2020) 14(1); 69-71; Dong et al. Discovering Drugs to treat coronavirus disease 2019 (COVID-19), Drug Discover. Therap. (2020) 14(1):58-60; Liu et al. Critical care response to a hospital outbreak of the 2019-nCoV infection in Shenzhen, China; Crit. Care (2020) 24-56参照)。吸入IFN-αの使用に関するそのような報告は、IFN-βのどのような使用についても推測していないことは注目すべきであり、I型インターフェロンに関する知識と一致している。
【0009】
I型インターフェロン、例えばIFN-α及びIFN-βは、同じ受容体に結合する抗ウイルスタンパク質であるが、それらは抗ウイルス特性及び免疫調節特性が異なる(Ng et al. Alpha and Beta Type 1 Interferon Signaling:Passage for Diverse Biologic Outcomes. Cell, 2016; 164(3):349-52; Gibbert et al. IFN-alpha subtypes:distinct biological activities in anti-viral therapy. Br. J. Pharmacol. 2013; 168(5):1048-58)。細胞は、ウイルス感染と戦うための自然免疫応答としてインターフェロンを産生する。適応免疫系が、ウイルス感染を排除し、長期免疫を提供することができる抗体及び細胞媒介性応答を生成するまでウイルスに対する防御の第一線を提供するのは、この自然免疫応答である。IFN-αは、形質細胞様樹状細胞と呼ばれる特殊化された白血球によって大量に産生され、一部の全身感染症、例えば肝炎における使用が承認されている。IFN-βは、上皮細胞及び線維芽細胞を含む多くの細胞型によって産生され、それらの細胞内で、ウイルス感染に対する即時局所応答として産生され、感染と戦うために組織を準備する抗ウイルスプログラムを誘発する。IFN-βは、細胞研究においてIFN-αよりもコロナウイルスの強力な阻害剤であることが報告されている(再びMantloらの上記の参考文献を参照されたい。Scagnolari et al. Increased sensitivity of SARS-coronavirus to a combination of human type I and type II interferons. Antiviral Ther. 2004; 9(6):1003-11及びStockman et al. SARS:systematic review of treatment effects. PLoS Med. 2006; 3(9):e343も参照のこと)。しかしながら、そのような細胞研究は、コロナウイルス感染によって誘導される急性下気道疾患の複雑な臨床像において、吸入IFN-βのベネフィットの予測を可能にするものではないことが理解されるであろう。
【0010】
上記のSallardらのレビューにおけるIFN-β投与への唯一の言及は注射による投与であり、ここでも、Channappanavarらの上記の2019年の報告を参照して、抗ウイルス療法を最適化し、有害事象を回避するために、I型インターフェロンを可能な限り早期に投与する必要性が示されている。実際、著者らは、重度のLRT疾患に関連するCOVID-19進行の後期段階では、抗インターフェロン薬を投与することがより有益である可能性があることまで示唆している。
【0011】
ウイルス感染は、抗ウイルス遺伝子を誘導し、炎症応答を調節するI型及びII型インターフェロンの産生が関与する自然免疫応答を自然に誘導する。しかしながら、高度に相同なSARS-CoVと同様に、SARS-CoV-2は、I型インターフェロンの宿主発現及びI型インターフェロン受容体からの下流シグナル伝達の両方を妨げることができる一連の非構造タンパク質を有する(Kindler et al. Interaction of SARS and MERS Coronaviruses with the Antiviral Interferon Response. Adv. Virus Res. 2016; 96:219-43; Yuen et al. SARS-CoV-2 nsp13, nsp14, nsp15 and orf6 function as potent interferon antagonists. Emerging Microbes Infect. 2020; 9(1):1418-28)。これと一致して、重度のCOVID-19患者は、I型インターフェロン活性及び炎症応答の障害を示すことが報告されている(Hadjadj et al. Impaired type I interferon activity and inflammatory responses in severe COVID-19 patients. Science (2020) 369, 718-724)。
【0012】
上記で考察したように、ウイルス複製のピークを減少させるためのインターフェロンの早期投与にかなりの重点が置かれてきたが、高いウイルス量及び長いウイルス排出期間を有する患者は、重度のLRT疾患を伴う重度のCOVID-19のリスクが高いことが報告されている(Liu et al. Viral dynamics in mild and severe cases of COVID-19. Lancet Infect. Dis. 2020; 20(6):656-7)。さらに、吸入IFN-βをどの時点で介入のために使用することは示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第1734987号明細書
【特許文献2】米国特許第7,871,603号明細書
【特許文献3】欧州特許第2544705号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第1535724号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第1927389号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Agrawal et al.(2013) Gerontology 59, 421-426
【非特許文献2】Wark et al. (2005) J. Exp. Med. 937-47
【非特許文献3】Singanavagam et al. (2019) Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 317 (6): L893-L903
【非特許文献4】Mantlo et al. Antiviral activities of type I interferons to SARS-CoV-2 infection. Antiviral Res. 2020;179:104811
【非特許文献5】Hung et al.(2020) Lancet 395: 1695-16704 entitled 「Triple combination of interferon beta-1b, lopinavir-ritonavir and ribavirin in the treatment of patients admitted to hospital with COVID-19:an open-label, randomised, phase 2 trial」; first published on-line 8 May 2020
【非特許文献6】Channappanavar et al. IFN-I response timing relative to virus replication determines MERS coronavirus infection outcomes. J. Clin. Invest. 2019;129(9):3625-39
【非特許文献7】Andreakos E. & Tsiodras S. COVID-19: lambda interferon against viral load and hyperinflammation. EMBO Mol. Med. 2020;12(6):e12465
【非特許文献8】Jamilloux et al. Should we stimulate or suppress immune responses in COVID-19? Cytokine and anti-cytokine interventions. Autoimmun. Rev. 2020;19(7):102567
【非特許文献9】「Therapeutic Options for Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) - Modulation of Type I Interferon Response as a promising Strategy?」 (Mary et al (May 2020) Frontiers in Public Health, 8, Article 185)
【非特許文献10】Gautret et al. Int. J. Antimicrob. Agents (2020) 105949
【非特許文献11】Sallard et al. 「Type I interferons as potential treatment against COVID-19」 (Antiviral Research, 178, 104791, on-line 7 April 2020)
【非特許文献12】Lu, H. Drug treatment options for the 2019-new coronavirus (2019-nCoV) Bioscience Trends (2020) 14 (1); 69-71
【非特許文献13】Dong et al. Discovering Drugs to treat coronavirus disease 2019 (COVID-19), Drug Discover. Therap. (2020) 14 (1): 58-60
【非特許文献14】Liu et al. Critical care response to a hospital outbreak of the 2019-nCoV infection in Shenzhen, China; Crit. Care (2020) 24-56
【非特許文献15】Ng et al. Alpha and Beta Type 1 Interferon Signaling: Passage for Diverse Biologic Outcomes. Cell, 2016;164(3):349-52
【非特許文献16】Gibbert et al. IFN-alpha subtypes: distinct biological activities in anti-viral therapy. Br. J. Pharmacol. 2013;168(5):1048-58
【非特許文献17】Scagnolari et al. Increased sensitivity of SARS-coronavirus to a combination of human type I and type II interferons. Antiviral Ther. 2004;9(6):1003-11
【非特許文献18】Stockman et al. SARS: systematic review of treatment effects. PLoS Med. 2006;3(9):e343
【非特許文献19】Kindler et al. Interaction of SARS and MERS Coronaviruses with the Antiviral Interferon Response. Adv. Virus Res. 2016;96:219-43
【非特許文献20】Yuen et al. SARS-CoV-2 nsp13, nsp14, nsp15 and orf6 function as potent interferon antagonists. Emerging Microbes Infect. 2020;9(1):1418-28
【非特許文献21】Hadjadj et al. Impaired type I interferon activity and inflammatory responses in severe COVID-19 patients. Science (2020) 369, 718-724
【非特許文献22】Liu et al. Viral dynamics in mild and severe cases of COVID-19. Lancet Infect. Dis. 2020; 20(6): 656-7
【発明の概要】
【0015】
SAR2-CoV-2感染に関連するCOVID-19疾患について、下記で示されるようなWHO承認の臨床改善のための順序尺度(Ordinal Scale for Clinical Improvement)で少なくとも3又は少なくとも4のスコアを示す場合でさえ、SARS-CoV-2感染に関連するLRT疾患を予防するための、若しくはその重症度を軽減するための、かつ/又は、患者についての症状状態/治療アウトカムを改善するための吸入IFN-βの使用を裏付けるデータがここで初めて提示される(WHO R&D Blueprint novel Coronavirus COVID-19 Therapeutic Trial Synopsis. February 18th 2020も参照のこと)。
【表1】
【0016】
臨床改善のための順序尺度(Ordinal Scale of Clinical Improvement)(OSCI)が以下で言及される場合、上記のスコアリングシステムを指すと理解されるであろう。
【0017】
ここで、在宅環境におけるSARS-CoV-2感染患者への吸入IFN-βの投与からのデータがさらに報告され、そのようなIFN-β投与が、IFN-β治療の開始時に顕著な又は重度の息切れを示しているそのような患者において、上記の順序尺度のレベル1又は0として定義される回復を加速させることができることが示されている。息切れは、以下の質問に対する患者の回答に基づいて、承認されたスコアリングシステムを使用してスコア化された:今日は呼吸困難の程度はどのくらいでしたか?
0=なし-何ら困難に気づかない
1=軽度-激しい活動(例えば、ランニング)を行っているときに目立つ
2=中等度-軽い活動(例えば、ベッドメイキング又は食料品の運搬)を行っているときでも目立つ
3=顕著-洗濯又は身じたく時に目立つ
4=重度-ほぼ常に、安静時でも存在
【0018】
このような息切れスコアリングは、COPD患者の呼吸器疾患の重症度を評価するために以前に考案されたBCSSスコアリングシステムの要素を形成している(Leidy et al. (2003) Chest, 124, 2182-2191: 「The Breathlessness, Cough and Sputum Scale. The Development of Empirically Based Guidelines for Interpretation」)。息切れスコアが以下で言及される場合、この承認された様式での息切れのスコアリングを指すと理解されるであろう。
【0019】
回復を加速させる能力は、この尺度で3以上の息切れを示す、すなわち顕著な又は重度の息切れを示すSARS-CoV-2感染者において最も顕著であった。病院コホート及び在宅コホートの両方において、顕著な又は重度の息切れを有する患者は、息切れ尺度で0~2のスコアを有する患者よりも回復が顕著に遅かった。在宅コホート研究及び病院コホート研究の両方において、顕著な又は重度の息切れを有する患者において、吸入IFN-β治療は回復を加速させた。
【0020】
したがって、本発明は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、例えば、SARSウイルスとしてのカテゴリー化に相応する重症急性呼吸器症候群を引き起こす能力を有するコロナウイルスに感染した患者における下気道疾患の重症度の予防若しくは軽減、並びに/又はそのように感染した患者における1つ若しくはそれ以上の症状及び/若しくはアウトカムの改善に使用するためのIFN-βであって、吸入によって投与されるIFN-βを提供する。
【0021】
上記のように、SARS-CoV-2感染患者の場合、息切れは、入院に至る疾患の重症度の一因となり得るが、在宅環境において、すなわち、例えばWHO順序尺度のスコア2(通常の活動に対する制限の影響が目立つ)においてでさえ、SARS-CoV-2感染者において目立つ問題にもなり得る症状である。顕著な又は重度の息切れ、すなわち上記の尺度で3~4の息切れスコアを有することが、悪化を防止するだけでなく回復を促進する目的で、本明細書の記述のタイプのウイルス感染を有する患者を標的とするための好ましい基準としてここで提案される。したがって、COVID-19疾患(又は、同様のウイルス性疾患)に関連する効果的な吸入IFN-β治療を標的とするための手段が、このような治療を回復の促進及び入院の必要性の防止の目的で在宅環境においてでさえ選択肢とする簡便なポイント・オブ・ケア息切れスコアリングに基づいて提案される。
【0022】
以下、本発明を、SARS-CoV-2及び本明細書に提示されるCOVID-19患者に関する関連する臨床試験情報を参照して主に説明するが、本発明は、急性呼吸窮迫症候群を引き起こす能力を有する任意の公知の又は将来の新興コロナウイルス(又は他のおそらくパンデミックを引き起こすウイルス)、及びヒトにおいて重篤なLRT疾患を引き起こす他の公知の又は将来の新興コロナウイルス、例えば、他の公知のSARSウイルス、MERSウイルス、及び例えば人獣共通感染伝播によって生じるヒトにおいてLRT疾患を引き起こす能力を有する、可能性のある将来の新興コロナウイルス又は他のパンデミックウイルスへの適用を有するものであると合理的な外挿によってみなされる。
【0023】
したがって、その最も広い態様において、本発明は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こす能力を有するウイルスに感染した患者における下気道疾患の重症度の予防若しくは軽減、並びに/又はそのように感染した患者における1つ若しくはそれ以上の症状及び/若しくはアウトカムの改善に使用するためのIFN-βであって、吸入によって投与されるIFN-βを提供するものであるとみなされてもよい。ウイルスは、コロナウイルス、例えばヒトにおいてCOVID-19疾患を引き起こすSARS-CoV-2(任意の公知の又は将来の新興SARS-Cov-2変異体、例えば2021年5月31日のWHO通知に従ってギリシャ文字命名によって命名された任意の変異体を含むとみなされるべきである)であってもよい。これは、例えば、人獣共通感染伝播によって生じ、ヒトにおいて同様のARDSを引き起こす能力を有する可能性がある将来の新興ウイルスであってもよい。
【0024】
例えば、代替では急性呼吸窮迫症候群と呼ばれる場合がある、重篤なLRT疾患を引き起こす能力を有するウイルスとは、少なくとも他の点では健康な人又は非ウイルス関連の健康状態を基礎に有する人のサブグループにおいて、WHO臨床改善のための順序尺度(Ordinal Scale for Clinical Improvement)に従って入院の必要性及びマスク又は鼻プロングによる酸素療法を必要とする進行の可能性を示すLRT疾患を引き起こす能力を有するウイルスであると理解されるであろう。SARSに分類されるコロナウイルスの場合、そのようなLRT疾患は、一般に、同じ尺度によるさらに高い可能性があるスコアと同等の重症急性呼吸器症候群と呼ばれる可能性があることが理解されるであろう。
【0025】
本発明による吸入IFN-βの投与の目的は、軽度疾患に関連するスコアから重度疾患に関連するスコアに進行する、若しくは1レベルの重度疾患からさらにより高いレベルの重症度まで、例えば機械的換気を必要とするまで進行する、SARS感染、又は相応のLRT疾患を引き起こす能力を有するSARS型ウイルス感染を有する患者を予防することであり得る。ここで提供されるデータは、そのような投与が、プラセボ対照の投与を受けている患者と比較したLRT疾患の重症度の進行の増加の防止、及びそのような患者が退院する可能性がより高く、おそらくより早くなるという点でのアウトカムの改善とどのように関連している可能性があるかを示している。実際に、上述のように、息切れスコアに基づく吸入IFN-β治療の投与は、SARS-CoV-2感染を有する入院患者及び非入院患者の両方において有意に加速された回復(OSCI尺度で0又は1まで低下)を示した様式でこのような治療を標的とする簡便な手段としてここに提示される。
【0026】
吸入IFN-βの有効性は、1つ又はそれ以上の症状、例えば息切れの改善の観点から追加的又は代替的にモニターされてもよい。例えば、改善は、上記の息切れ、咳及び痰スコアリング(BCSS)システム、又はこの息切れスコアリング要素によって公知の様式で評価されてもよい。さらなる詳細は、以下の例示で提供される。
【0027】
本発明は、例示で提供され、以下に記載される図面によって示される臨床試験データを参照することによって以下にさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】患者の病院コホートの回復を示す。SNG001の投与を受けた患者(n=48)は、プラセボの投与を受けた患者(n=49)の2倍超COVID-19から回復する(「活動に対する制限なし」又は「感染の臨床的又はウイルス学的証拠なし」、すなわちOSCI尺度でレベル1又は0と定義される)可能性が高かった(HR2.19[95%CI1.03~4.69]、p=0.043)。
【0029】
【
図2】入院時により重度の疾患を有する(酸素補給による治療を必要とする)患者の回復を示す。SNG001で治療された患者(n=36)は、プラセボ群(n=28)よりも治療期間の終わりまでに回復した可能性が2倍超であり(HR2.60[95%CI0.95~7.07]、p=0.062)、28日目の回復のオッズが高かった(OR3.86[95%CI1.27~11.75]、p=0.017)。回復は、「活動に対する制限なし」又は「感染の臨床的又はウイルス学的証拠なし」と定義される。
【0030】
【
図3】入院時により重度の疾患を有する(酸素補給による治療を必要とする)患者における退院を示す。SNG001(n=36)治療は、プラセボ(n=28)と比較して退院の可能性を増加させた(HR1.72[95%CI0.91~3.25]、p=0.096)。退院までの期間の中央値は、SNG001で治療された患者については6日であり、プラセボの投与を受けた患者については9日であった。
【0031】
【
図4】患者の病院コホートのベースラインからの息切れの変化を示す。治療期間にわたって、息切れ(患者によって5点式息切れスコア尺度で評価)は、プラセボの投与を受けた患者(n=49)と比較して、SNG001の投与を受けた患者(n=46)で顕著に減少した(差-0.6[95%CI-1.0~-0.2]、p=0.007)。
【0032】
【
図5】吸入IFN-β(SNG001製剤)又はプラセボによる治療開始時の息切れ≧3(11%)を有するSARS-CoV-2感染患者の在宅コホートの回復を示す。回復は、「活動に対する制限なし」又は「感染の臨床的又はウイルス学的証拠なし」と定義される。(プラセボ=6、SNG001治療n=6)。
【0033】
【
図6】治療開始時に顕著な/重度の息切れを示したSARS-CoV-2感染患者の在宅コホートの中での息切れ状態の変化を示す(a)プラセボの提供(n=6)(b)吸入IFN-βによる治療(n=6)。
【0034】
【
図7】吸入IFN-β(SNG001製剤)又はプラセボによる治療開始時の顕著な/重度の息切れの有無にかかわらず、病院及び在宅の併合コホートの回復を示す。回復は、「活動に対する制限なし」又は「感染の臨床的又はウイルス学的証拠なし」として定義される(a)3未満の息切れスコアで治療を開始した患者の回復(プラセボn=51、SNG001 n=47)。(b)少なくとも3の息切れスコアで治療を開始した患者の回復(プラセボn=36、SNG001 n=33、HR3.41、95%CI1.47~7.94、p=0.004)。
【0035】
【
図8】SNG001及びプラセボで治療された入院及び在宅患者コホートのサブグループの回復を示す。回復は、「活動に対する制限なし」又は「感染の臨床的又はウイルス学的証拠なし」と定義される。(a)息切れスコアが少なくとも3又はOSCIスコアが少なくとも3のサブグループの回復。(プラセボn=55、SNG001 n=54、HR2.49、95%CI1.26~4.93、p=0.009)(b)息切れスコアが少なくとも3又はOSCIスコアが少なくとも4のサブグループの回復(プラセボn=43、SNG001 n=48、HR2.68、95%CI1.25~5.75、p=0.011)。
【0036】
【
図9】吸入使用によって達成可能な濃度で、SNG100製剤中に存在するIFN-β1aが、「武漢様」(ドイツ/BavPat1/2020)と命名されたSAR2-CoV-2並びに認識されている関心対象の変異体、アルファ変異体(B.1.17)及びベータ変異体(B.1.351)を阻害する能力を示す結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明による吸入IFN-βの使用は、現在のところ、主に、コロナウイルスSARS-CoV-2に感染した患者における下気道疾患の重症度の予防若しくは軽減、並びに/又はそのように感染した患者における1つ若しくはそれ以上の症状及び/若しくはアウトカムの改善に関連して提案された適用である。しかしながら、SARS-CoV-2は、一般にウイルス誘導性急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と呼ばれる重度の呼吸器疾患の原因病原体として近年出現したコロナウイルスの一例にすぎない。このカテゴリーにおける他の以前から公知のコロナウイルスには、別の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV-1としても知られているSARS-CoV)及び中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERSウイルス)が含まれる。上記のように、本発明は、公知であるか、又は将来出現する可能性があるかにかかわらず、任意のそのようなコロナウイルスに等しく適用可能である。コロナウイルス誘導性ARDSに関する呼吸器ウイルス分野で周知の情報は、例えば、Luyt et al. Virus-induced acute respiratory distress syndrome: epidemiology, management and outcome. Presse Med. 2011; 40(12 Pt 2):e561-8及びHorie et al. Emerging pharmacological therapies for ARDS:COVID-19 and beyond. Intensive Care Med. 2020; 46(12)2265-2283を参照することによって見出すことができる。
【0038】
そのようなコロナウイルスによって引き起こされる呼吸器疾患の重症度の理由は、それらの人獣共通感染起源(ヒト以外の動物宿主からヒト宿主に、時には中間宿主を介してジャンプする)に関連している可能性が高いと考えられている(Heeney et al. (2006) J. Intern. Med. 260, 399-408)。ワクチンが存在しない場合、ヒト宿主は、新しい病原体に対する特異的免疫を欠き、ウイルスに対して感染し、感受性細胞内で複製し、組織傷害を引き起こす機会を高める。しかしながら、全体的なリスクは、ウイルスが集団内で拡散する能力によって均衡が保たれる。残念なことに、SARS CoV-2の場合、ウイルスはヒトからヒトへの伝播によく適合しており、人から人へ急速に拡散する(Chan et al. A familial cluster of pneumonia associated with the 2019 novel coronavirus indicating person-to-person transmission:a study of a family cluster. Lancet. 2020; 395(10223):514-23)。その結果、2020年7月までに、COVID-19のパンデミックは世界中で約1400万の症例、約60万の死亡例をもたらし(https://covid19.who.int/)、影響を受けた患者の多くについて、肺及び他の臓器の損傷による長期的な健康上の結果のリスクが依然として存在する(George et al. Pulmonary fibrosis and COVID-19:the potential role for antifibrotic therapy. Lancet Respir. Med. (2020) 8, 807-815)。さらに、世界中のウイルスの拡散を制御するためにとられたロックダウン措置は、莫大な経済的結果をもたらした(https://www.ons.gov.uk/economy/grossdomesticproductgdp/articles/coronavirusandtheimpactonoutputintheukeconomy/may2020)。複数の標的化介入及び非標的化介入が報告され、そのうちのいくつかは上記で考察されているにもかかわらず、COVID-19の新しい治療は依然として優先順位の高い要件である。
【0039】
SARS-CoV-2に感染している多くの人々は無症候性であるが、感受性個体の肺へのウイルスの拡散は、びまん性肺胞損傷を引き起こし、毛細血管から肺胞腔への液体の漏出を可能にし、そこで液体が集まって酸素及び二酸化炭素の正常な交換が制限され、呼吸不全に至る(Buja et al. The emerging spectrum of cardiopulmonary pathology of the coronavirus disease 2019 (COVID-19): Report of 3 autopsies from Houston, Texas, and review of autopsy findings from other United States cities. Cardiovasc Pathol. 2020; 48:107233)。SARS-CoV-2に感染すると、潜伏期間の中央値は症状発症前約4~5日であり、症候性患者の97.5%が11.5日以内に症状を発症する(Guan et al. Clinical Characteristics of Coronavirus Disease 2019 in China. N. Engl. J. Med. (2020) 382(18):1708-20; Lauer et al. The Incubation Period of Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)From Publicly Reported Confirmed Cases:Estimation and Application. Ann. Intern. Med. 2020; 172(9):577-82; Pung et al. Investigation of three clusters of COVID-19 in Singapore:implications for surveillance and response measures. Lancet. 2020; 395(10229):1039-46及びLi et al. Early Transmission Dynamics in Wuhan, China, of Novel Coronavirus-Infected Pneumonia. N. Engl. J. Med. 2020; 382(13):1199-207を参照)。
【0040】
COVID-19患者は、通常、発熱、乾性咳、息切れ、頭痛及び倦怠感を呈する。肺炎への進行は、通常、症状の開始から1~2週間後に起こり、酸素飽和度の低下、血液ガスの悪化、多巣性すりガラス状陰影、又は胸部X線若しくはCTにおける斑状/分節状の硬化を伴う。重度のCOVID-19症例は、症状発症後平均で約8~9日で急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に進行する(Huang et al. Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China. Lancet. 2020; 395(10223):497-506; Wang et al. Clinical Characteristics of 138 Hospitalized Patients With 2019 Novel Coronavirus-Infected Pneumonia in Wuhan, China. JAMA. 2020, 323(11):1061-1069)。肺におけるSARS-CoV-2感染は、「サイトカインストーム」として知られる深刻な下流サイトカインカスケードを伴い、これは、その調節不全が肺損傷、ARDS、敗血症、臓器不全に寄与し、最も重度の症例では致死的となり得る過剰活性免疫応答を示唆する(Rageb et al. The COVID-19 Cytokine Storm; What We Know So Far. Front Immunol. 2020; 11:1446)。本発明は、ARDS(又は代替では重症急性呼吸器症候群とも呼ばれる)の発症に関連する同様の臨床像を呈する、任意のコロナウイルスに適用可能である。
【0041】
コロナウイルスは、ほとんどが鳥類及び哺乳動物に感染するエンベロープRNAウイルスの大きなファミリーである。SARS-CoV-2は、SARS-CoVと79%の遺伝的相同性を有し、かつ、コウモリコロナウイルスRaTG13と98%の相同性を有するベータコロナウイルスである(Zhou et al. A pneumonia outbreak associated with a new coronavirus of probable bat origin, Nature, 2020; 579(7798):270-3)。
これは、呼吸器液滴中に拡散し、その細胞受容体であるACE2へのウイルススパイクタンパク質の結合によって鼻、気管支及び肺胞上皮細胞に感染する(Walls et al. Structure, Function, and Antigenicity of the SARS-CoV-2 Spike Glycoprotein. Cell. (2020) 180, 281-292)。
【0042】
ウイルス複製過程のエラーを起こしやすい性質のために、RNAウイルス、例えばSARS-CoV-2は変異を蓄積し、ある程度の配列多様性をもたらす。それにもかかわらず、配列決定及び配列系統樹によって、SARS-CoV-2の異なる株を認識することができる。分離株の迅速な配列決定を用いたこのような系統樹解析の例示は、例えば、Meredith et al. Rapid Implementation of SARS-CoV-2 sequencing to investigate cases of health-care associated COVID-19:a prospective genomic surveillance study in The Lancet, published on-line 14th July 2020によって報告されている。増幅されたSARSウイルスゲノムの配列は、SARS-CoV-2分離株武漢-Hu-1全ゲノムに対応するSARS-CoV-2について、NCBI参照配列NC_045512.2又は同等のGenBank参照MN908947.3と比較することができる(Wu et al. Nature 579, 265-269)。したがって、SARS2-CoV-2変異株を認識することができ、参照ゲノムに対して高い相同性、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%を有すると予想することができる。このような配列決定サーベイランスは、ヒトに感染する任意の新しいSARSウイルスを同様に同定することを可能にし得る。吸入IFN-βの使用は、任意のSARS-CoVウイルス、特に任意のSARS-CoV-2ウイルス株に感染したヒトにおける下気道疾患の重症度の予防又は軽減において好ましいと考えられる。
【0043】
投与のためのインターフェロンベータの性質
IFN-ベータ又はIFN-βという用語は、本明細書で使用される場合、天然のIFN-βの生物学的活性を保持し、好ましくは、ウイルス感染、例えばインフルエンザ又はライノウイルス感染によって誘導された場合に肺、特に肺上皮に存在するIFN-βの活性を保持するIFN-βの任意の形態又は類似体を指すと理解されるであろう。
【0044】
IFN-βは、ヒトIFN-β1a又はヒトIFNβ-1bの配列と同一であってもよいか、又は該配列を含んでもよい。しかしながら、IFN-βはまた、そのような天然の配列に対する変異体、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95~99%の同一性を有する変異体であってもよい。これは、所望の生物学的活性が保持される限り、1つ又はそれ以上の化学修飾を有してもよい。
【0045】
IFN-βは、好ましくは、例えば、組換え発現ベクターからのポリペプチドの発現によってインビトロで細胞において産生され、そのような培養物から精製される組換えIFN-βであろう。
【0046】
例えば、Rentschler Biopharma SE又はAkron Biotechnology,LLC(Akron Biotech)から入手可能なヒト組換えIFN-β1aが好ましい。
【0047】
製剤及び投与様式
吸入による投与のためのIFN-βは、一般に、好ましくは中性pH又はほぼ中性pH、例えば約pH6~7、好ましくは例えばpH6.5の水溶液として製剤化されるであろう。水溶液中で気道送達のためにIFN-βを製剤化する方法は周知であり、例えば、米国特許第6,030.609号明細書及び欧州特許第2544705号明細書を参照のこと。好ましくは、注射用IFN-β製剤中に存在するマンニトール、ヒト血清アルブミン(HSA)及びアルギニンを含有しないそのような水性製剤が使用されるであろう。組成物は、好ましくは酸化防止剤、例えばメチオニン、例えばDL-メチオニンを含有してもよい。IFN-β1aのこのようなすぐに使用可能な製剤はまた、商業的に入手することができ、例えば、IFN-βの適切な希釈度でシリンジ中に調製することができ、例えば、Vetter Pharmaから入手することができる。それは、喘息又はCOPDのウイルス増悪を示す患者において上記で言及された臨床試験で以前に使用されたSNG001として本明細書で指定された製剤(正確なIFN-β1a濃度の変動の可能性がある)に適合する可能性がある。この製剤のさらなる詳細は、欧州特許第2544705号明細書及び本明細書の以下の例示において入手可能である。IFN-β1aの濃度は、下記で考察するように調整されてもよい。IFN-β、又はより詳細にはIFN-β1aの正確な好ましい濃度は、正確な送達様式によって異なる場合がある。
【0048】
SNG001は、細胞ベースのアッセイにおいて広範囲のウイルスを阻害することが示されている。特に関連性があることとして、SNG001は、文献で報告されているもの及び他のウイルス型に対して同様の効力で、細胞ベースのアッセイにおいて、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染後のウイルス排出を阻害することが示されている。吸入送達に適用可能な濃度で様々なSARS-CoV-2変異体に対して活性を有するSNG001の能力を確認する、例示で報告されている細胞ベースのアッセイも参照されたい。これは、ここで提案された治療的使用を支える一般的に提案されている機序を反映している。
【0049】
より低いpHの製剤ではなく、pH中性又はほぼ中性のpHのIFN-β製剤、例えばpH6.5が特に好ましい。低pHは咳を誘発することが知られている。喘息患者を対象としたSNG001の第II相試験では、咳が患者の10%未満で発生し、発生率はプラセボで見られたものと異ならなかった。
【0050】
送達は、IFN-β活性を保持する液体製剤のエアロゾル化のための任意のデバイス、例えばネブライザを使用して行われてもよい。薬物送達のための様々なネブライザが市販されており、例えば、それぞれPhilips Respironics及びAerogen製のI-neb又はUltraネブライザを使用してもよい。両デバイスは、エアロゾル化後にIFN-β活性を保持しつつIFN-β1aの簡便な吸入送達を可能にすることが示されている。
【0051】
投与量
任意の吸入送達様式のための好適なIFN-β用量は、肺における誘導された抗ウイルス応答の評価を行う用量漸増研究によって確立されてもよく、一般に、用量投与後24時間以内に頑健な抗ウイルス応答を確実にする用量であり、好ましくは、1日1回の投与レジメンを裏付けるための用量である。これは、適切なバイオマーカーを参照することによって評価されてもよい。
【0052】
IFN-β1aを含有する水性製剤のネブライザ送達のために、約11~13MIU/ml IFN-β1a(例えば、11~12MIU/ml)を含有する上記で考察されるような水性製剤が好適であることが見出される場合がある。
【0053】
好適な1日1回の投与スケジュールは、約11~12MIU/mlのIFN-β1a、好ましくは12MIU/ml IFN-β1aを含有する水性製剤0.5ml又は約0.5mlをI-nebネブライザ(Phillips Respronics)から送達することによって達成されており、気道送達の同様の効率を提供する他のネブライザに好適である場合がある。代替ネブライザを使用する場合、肺への薬物送達の効率の差を考慮に入れるために用量を調整する必要がある場合がある。1日1回の送達を行うことが好ましい場合がある。送達は、LRT疾患を軽減し、好ましくはスコアの改善をより低いスコアに戻すために、例えば少なくともOSCIスコア1まで回復させるために、数日間にわたって、例えば3日間以上、5日間以上又は7日間以上、例えば最大14~15日間以上であってもよい。
【0054】
投与時期
上述のように、これまでの指示は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、例えばSARS-CoV-2による感染後にCOVID-19患者で観察されるような重症急性呼吸器症候群を引き起こす能力を有するコロナウイルス感染に関連する患者におけるLRT疾患を軽減することを少しでも考慮する場合、IFN-βの投与は、症状の発症からの早期介入、より詳細には7日前までに限定されることが推奨され、どちらかと言えばその時点より前に投与量を段階的に下げるべきであるということであった(再びHung et al. (2020) Lancet 395:1695-16704 entitled 「Triple combination of interferon beta-1b, lopinavir-ritonavir and ribavirin in the treatment of patients admitted to hospital with covid-19:an open-label, randomised, phase 2 trial」; first published on-line 8 May 2020を参照されたい)。対照的に、ここで提示されるデータは、吸入によるIFN-βの投与がSAR2-CoV-2感染に起因するLRT疾患の軽減に有益であり得ることを初めて立証するだけでなく、このような介入は、少なくとも3又はさらには少なくとも4の臨床スコアを臨床改善のための順序尺度(Ordinal Scale for Clinical Improvement)に割り当てなければならないようなLRT疾患と同等の症状を呈する患者であっても有益であり得ることを初めて立証するものである。そのような患者は、一般に入院を必要とする確立されたLRT疾患を有し、一般に活動に影響を及ぼすSARS-CoV-2感染の症状を経験しているであろう。そのような患者は、一般に、少なくとも7日間、そのような感染の症状を有していたであろう。本明細書中に報告される研究における患者については、症状の開始から吸入IFN-βによる治療の開始までの期間の中央値が9日超であった。
【0055】
したがって、本発明によれば、IFN-β、例えば組換えIFN-β1aは、重度のLRT疾患、例えばSARS-CoV-2を引き起こす能力を有するウイルス感染、より詳細には、例えばコロナウイルス感染を有する患者に、WHO臨床改善のための順序尺度(Ordinal Scale for Clinical Improvement)で少なくとも3又は少なくとも4のスコアに対応する段階で、吸入によって投与されてもよい。使用は、ウイルス感染の症状の発症後7日以上、例えばウイルス感染の症状の発症後9日以上の患者を包含してもよい。一般に、そのような投与は、患者がスコア5に達する前又は患者がスコア6に達する前に行われるであろう。好ましくは、投与は任意の機械的換気の前に行われるであろう。そのような投与は、プラセボと比較して、患者がより高いスコア、例えば集中治療及び/又は非侵襲的換気又は場合によっては機械的換気を必要とするまで進行するのを防ぐより高い可能性を提供し、むしろより低いスコアに戻ることを促進することが示されている。吸入IFN-βの投与は、スコアの増加を伴わないことが望ましいであろう。
【0056】
有効性は、息切れを評価すること又はBCSSスコアを得ることによって毎日評価されてもよい。一般に、投与は、息切れ又はBCSSスコアの改善を伴って継続されるであろう。望ましくは、それは、例えば、14日又はそれ以下、7日未満、より好ましくは、6日未満、例えば5日、さらにより好ましくは、4日未満、例えば3日以内の、WHO臨床改善のための順序尺度(Ordinal Scale for Clinical Improvement)での1又はそれ以上の段階の低下、好ましくは1段階又はそれ以上のスコアの低下を達成することに伴うものであろう。望ましくは、吸入IFN-βの投与は、例えば、IFN-β投与の14日以内に、活動に対する制限なし、又は感染の臨床的若しくはウイルス学的証拠なしという達成を伴うであろう。全体的に望ましいアウトカムは、マスク又は鼻プロングによる酸素補給供給を超える治療がない場合に予想されるよりも早く退院することであろう。
【0057】
上記のように、吸入IFN-β治療の好ましい標的化は、息切れスコア、より詳細には、3又は4(顕著な又は重度の息切れと同等)の息切れスコアに基づく場合があることが見出されている。これは、在宅環境、及び2(活動の制限と同等)のOSCIスコアから入院を必要としない1又は0のOSCIスコアまでの急速な改善が望まれるOSCIスコアを有するSARS-Cov-2感染者に転換される。
図5及び例示を参照されたい。
【0058】
したがって、ここで、ウイルス感染、より詳細には、例えばSARS-CoV-2感染の結果としての疾患に罹患している本発明による患者の治療に使用するための吸入IFN-βであって、3~4の息切れスコアが、病院環境又は在宅環境のいずれかでの吸入IFN-βの投与のための決定因子として使用される、吸入IFN-βが提案される。
【0059】
したがって、単一症状スコアリング(息切れ)に基づく、吸入IFN-β治療のSARS-CoV2感染患者へのこのような簡便なポイント・オブ・ケア標的化は、このような患者の臨床管理に対する重要な貢献としてここで示されており、このことは、インターフェロンI型作用の以前のどのような知識からも予測されなかった。
【0060】
併用療法
ここで提示されるデータは、上記で考察したように、コロナウイルス感染患者におけるLRT疾患の重症度を予防又は軽減するための唯一の治療剤としての吸入IFN-βの使用を裏付けるものであるが、IFN-βのそのような投与は、ウイルス感染に起因する患者の1つ又はそれ以上の症状の改善を補助する可能性がある1つ又はそれ以上の他の治療剤によって排除されないことが理解されるであろう。吸入IFN-βの使用は、例えば、コルチコステロイド、例えばデキサメタゾン、又はARDSを呈する傾向があるコロナウイルス感染者におけるLRT疾患の重症度を予防又は軽減するために以前に提案された任意の他の剤、例えばロピナビル-リトナビル及び/又はリバビリン又は静脈内レムデシビル(COVID-19患者の退院までの時間を短縮することが示されているが、気道ウイルス量を減少させないRNAポリメラーゼ阻害剤)の投与と組み合わせてもよい。そのような併用療法は、必要に応じて、IFN-β及び別の治療剤の同時の、逐次的な又は別々の投与を含んでもよい。特に興味深いのは、吸入IFN-βとデキサメタゾンとの組合せである可能性がある(The RECOVERY Collaborative Group, Dexamethosone in Hospitalised Patients with Covid-19-Preliminary Report, N. England J. Med. 17 July 2020)。特に興味深いのは、吸入コルチコステロイドの追加投与である可能性がある。そのようなコルチコステロイド及びIFN-βの、例えば、気道へのエアロゾル送達のための単一の医薬組成物としての併用が、喘息又はCOPDのウイルス増悪の軽減に使用するために以前に提案されている(欧州特許第1734987号明細書を参照)。
【0061】
治療方法
別の態様において、本発明は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こす能力を有するコロナウイルス若しくは他のパンデミックを引き起こす可能性があるウイルスに感染した患者における下気道疾患の重症度を予防若しくは軽減し、かつ/又はそのように感染した患者における1つ若しくはそれ以上の症状及び/若しくはアウトカムを改善する方法であって、吸入によってIFN-βを投与する工程を含む方法を提供する。IFN-βは、上記で考察したように、同じウイルス感染に起因する1つ又はそれ以上の症状の改善を補助するために、唯一の治療剤として、又は1つ若しくはそれ以上のさらなる治療剤と組み合わせて投与されてもよい。上記のように、そのような投与の前に、好ましくは、顕著な又は重度と同等の息切れスコアを決定してもよく、そのような投与は、好ましくはOSCIで少なくとも1までの回復を促進する目的で、在宅環境又は病院環境で行われてもよい。
【0062】
本発明はまた、本明細書に開示される下気道疾患の重症度を予防又は軽減する方法に使用するための組成物を製造するためのIFN-βの使用であって、組成物が吸入によって投与される使用を提供する。上記のように、そのような投与は、一般に、IFN-β活性を保持する液体製剤のエアロゾル化のための任意のデバイス、例えばネブライザを使用するであろう。
【実施例】
【0063】
SARS-CoV-2によって引き起こされたCOVID-19で入院した患者に投与されたプラセボとの吸入インターフェロン-ベータの有効性及び安全性の比較。
【0064】
プロトコルの概要
これは、SARS-CoV-2感染が確認された患者への噴霧による送達のための中性pHで水性製剤として製剤化された吸入組換えIFN-β1aの無作為化二重盲検並行群間プラセボ対照試験であった。SARS-CoV-2感染が確認された98例の入院患者(2020年3月30日~2020年5月27日の期間に英国の9つの専門病院施設から募集)を、吸入IFN-β(n=48)又はプラセボ(n=50)による14日間の治療に無作為化した。最初の治療に対する陽性検査結果から24時間以内に患者を無作為化した(陽性検査結果が入院前に生じた場合を除く)。選択基準には、COVID-19疾患の重症度のために入院しており、18歳以上であり、SARS-CoV-2感染を有する(強い臨床的疑いの存在下で、RT-PCR検査結果陽性又はポイント・オブ・ケア検査陽性のいずれかによって判定)患者が含まれた。
【0065】
患者群は、平均年齢(プラセボについては56.5歳及びSNG001については57.8歳)、併存症及び登録前のCOVID-19症状の平均持続期間(プラセボについては9.8日及びSNG001については9.6日)に関して均一に一致させた。
【0066】
患者は、携帯型メッシュ式ネブライザ(I-neb、Philips Respironics、英国チチェスターから供給)から吸入IFN-β又はプラセボ(IFN-βを含まない製剤緩衝液)の投与を受けた。主要評価項目は、9点式の臨床改善のための順序尺度(Ordinal Scale for Clinical Improvement)内の段階的移動によって決定される重度の下気道疾患の予防であった。
【0067】
組換えIFN-β1a製剤
製剤(SNG001と称される)は、pH6.5で緩衝化された水溶液として製剤化された組換えIFN-β1a(Rentschler Biopharma SE又はAkron Biotechnology,LLC製)を提供する。組成を以下の表に示す。いくつかの他の市販の調製物とは異なり、マンニトール、ヒト血清アルブミン又はアルギニンを含有しない。製剤は、Vetter Pharmaによってすぐに使用可能なシリンジで提供された。
【表2】
【0068】
上記のように、SNG001は、細胞ベースのアッセイにおいて広範囲のウイルスを阻害することが示されている。特に関連性があることとして、SNG001は、文献で報告されているもの及び他のウイルス型に対して同様の効力で、細胞ベースのアッセイにおいて、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染後のウイルス排出を阻害することが示されている(Scagnolari et al. Increased sensitivity of SARS-coronavirus to a combination of human type I and type II interferons. Antivir. Ther. 2004 Dec; 9(6):1003-11; Sheahan et al. Comparative therapeutic efficacy of remdesivir and combination lopinavir, ritonavir, and interferon beta against MERS-CoV. Nat. Commun. 2020 Jan 10; 11(1):222; Spiegel et al. The antiviral effect of interferon-beta against SARS-coronavirus is not mediated by MxA protein. J. Clin. Virol. 2004 Jul; 30(3):211-3)。
【0069】
吸入SNG001のこれまでに行われたすべての臨床試験(喘息では3件、慢性閉塞性肺疾患[COPD]では1件)において、投与後24時間にわたって痰中の肺抗ウイルスバイオマーカーをアップレギュレートすることが示され、生物学的に活性な薬物の肺への送達の成功が確認され、作用機序の検証(proof-of-mechanism)が実証され、用量選択が裏付けられた。
【0070】
選択されたネブライザを用いた用量漸増試験により、用量投与の24時間後に存在した肺における抗ウイルス応答を誘導した標的肺用量が確立された。
投与プロトコル
SNG001ネブライザ溶液を、IFN-β1a濃度が12MIU/mlである0.65mlのIFN-β1a水溶液を含有するガラスシリンジに入れた。0.53mlチャンバを取り付けたI-nebネブライザに1シリンジの内容物を充填した。患者は、1日1用量又はプラセボ溶液を吸入した。ネブライザは、その安静呼吸(tidal breathing)モードで使用した。このモードでは、I-nebはエアロゾルの短いパルスを各吸入に送達し、患者に安静呼吸(tidal breathing)を使用することを要求する。
【0071】
呼吸及び他の評価
臨床改善のための順序尺度(Ordinal Scale for Clinical Improvement)を参照した1日1回の評価に加えて、試験における患者はまた、BCSS評価及び肺炎についての評価を受けた。
【0072】
BCSS評価
BCSSは、患者が3つの症状:息切れ、咳及び痰の重症度を記録するように求められる毎日の日誌としてデザインされた患者報告式アウトカム尺度である。
【0073】
各症状は、0~4の範囲の5点式尺度で評価される単一の項目によって表され、より高いスコアはより重度の症状を示す。総スコアは、0~12の範囲で、3項目スコアの合計として表される。BCSSの総尺度で1点の平均低下は、症状の重症度の大幅な軽減を意味する。
【0074】
この評価は、毎日同じ時間(+/-3時間)に1日1回実施した。
可能であれば、患者によって記入された。しかしながら、必要に応じて、現場スタッフは、対面で又は電話/ビデオリンクを介してのいずれかで患者に質問を読み上げた。
【0075】
BCSSの質問及び考えられる回答は以下の通りである。
1.今日は呼吸困難の程度はどのくらいでしたか?
0=なし-何ら困難に気づかない
1=軽度-激しい活動(例えば、ランニング)を行っているときに目立つ
2=中等度-軽い活動(例えば、ベッドメイキング又は食料品の運搬)を行っているときでも目立つ
3=顕著-洗濯又は身じたく時に目立つ
4=重度-ほぼ常に、安静時でも存在
2.今日は咳はどうでしたか?
0=咳なし-咳に気づかない
1=稀-咳が時々生じる
2=時折-1時間に1回未満
3=頻繁-1時間に1回又はそれ以上
4=ほぼ常に-咳が絶えないか、又は咳をせざるを得ない
3.今日は痰によるトラブルはどのくらいありましたか?
0=なし-何らトラブルに気づかない
1=軽度-トラブルはほとんどなかった
2=中等度-トラブルが目立つ
3=顕著-大きなトラブルが生じた
4=重度-ほぼ常にトラブルがあった
【0076】
COVID-19患者へのIFN-β投与のベネフィットを裏付ける所見
治療期間中に重度の疾患を発症する患者のオッズは、プラセボ群と比較してSNG001で治療された患者において72%低下した。より詳細には、治療期間中に重度の疾患(例えば、換気を必要とするか、又は死に至る)を発症する患者のオッズは、プラセボの投与を受けた患者と比較して、SNG001の投与を受けた患者では72%顕著に低下した(OR0.28[95%CI0.07~1.08]、p=0.064)
【0077】
試験結果は、SNG001が、酸素を必要とする状態(WHO臨床改善のための順序尺度(Ordinal Scale for Clinical Improvement)でのスコア4)から換気を必要とする状態(スコア5以上)に進行した入院COVID-19患者の数を大幅に減少させたことを示した。
【0078】
SNG001の投与を受けた患者は、プラセボの投与を受けた患者の2倍超COVID-19から回復する(「活動に対する制限なし」又は「感染の臨床的又はウイルス学的証拠なし」と定義される)可能性が高かった(HR2.19[95%CI1.03~4.69]、p=0.043)。
図1を参照されたい。
【0079】
入院時により重度の疾患を有する(すなわち、酸素補給による治療を必要とする)患者の場合、SNG001で治療された患者(n=28)は、プラセボ群(n=36)よりも治療期間の終わりまでに回復した可能性が2倍超であり、28日目の回復のオッズが高かった。
図2を参照されたい。ここでも回復は、「活動に対する制限なし」又は「感染の臨床的又はウイルス学的証拠なし」と定義された。
【0080】
入院時により重度の疾患を有する(すなわち、酸素補給による治療を必要とする)患者では、SNG001による治療は退院の可能性を増加させた。退院までの期間の中央値は、SNG001で治療された患者については6日であり、プラセボの投与を受けて治療された患者については9日であった。
図3を参照されたい。
【0081】
治療期間にわたって、重度COVID-19の主な症状の1つである息切れは、プラセボの投与を受けた患者と比較して、SNG001の投与を受けた患者で顕著に減少した(p=0.007)。
図4を参照されたい。
【0082】
プラセボに無作為化された後、3例の被験者が死亡した。SNG001で治療された被験者の中に死亡は見られなかった。
【0083】
上記のように、28日目までに、SNG001治療を受けた入院時により重度の疾患を有する(すなわち、酸素補給による治療を必要とする)患者は、回復のオッズが有意に良好であった(OR3.86[95%CI1.27~11.75]、p=0.017)。
【0084】
興味深いことに、有効性分析は、吸入SNG001治療効果と以前のCOVID-19症状の持続期間との間の関連性の証拠がないことを示している。これは、IFN-βの使用が、症状の発症から7日未満の早期介入に限定されるべきであるという以前の示唆とは反対のものである。
【0085】
在宅環境におけるSARS-CoV-2感染者への吸入IFN-βの投与
入院患者を対象とした上記で考察した試験が、在宅環境における120例のSARS-CoV-2感染患者のコホートに拡大された。すべての患者は、入院を必要とする進行のリスクがある患者(65歳超、又はリスク因子を有する50歳超)とみなされた。試験の全参加者は、治療開始時にWHO順序尺度でスコア1(活動の制限なし)又はスコア2(活動の制限があるが入院を必要としない)のいずれかであった。ここでも、SNG001又はプラセボをメッシュ式ネブライザによって1日1回吸入させた。遠隔装置訓練を参加者に提供し、ビデオ通話を使用して試験を実施した。
【0086】
参加者を、悪化、及び最初はスコア2であった場合、リバウンドのないスコア1又は0への回復について評価した。2例の患者のみがスコア3以上に悪化し、両例ともプラセボの投与を受けていた。これは、リスクのあるSARS-CoV-2感染者に対する予想に一致するものであった。
【0087】
毎日評価されるWHO順序尺度での全体的な疾患スコアに加えて、試験の参加者はまた、上記に示され、以下に繰り返し示される息切れスコアリング尺度で息切れについて毎日スコア化された。
質問に応じた息切れスコアリング:今日は呼吸困難の程度はどのくらいでしたか?
0=なし-何ら困難に気づかない
1=軽度-激しい活動(例えば、ランニング)を行っているときに目立つ
2=中等度-軽い活動(例えば、ベッドメイキング又は食料品の運搬)を行っているときでも目立つ
3=顕著-洗濯又は身じたく時に目立つ
4=重度-ほぼ常に、安静時でも存在。
【0088】
特に興味深いのは、
図5に示すように、治療開始時に少なくとも3の息切れスコアを有する患者の11%について、プラセボと比較して、回復の促進に対するSNG001の効果が明らかであったという予測不可能な所見であった。プラセボと比較して、治療開始時に顕著な又は重度の息切れを有する患者の息切れ状態の改善を有意に促進するSNG001の能力も、
図6a及び
図6bによって示されている。
【0089】
したがって、吸入IFN-βは、回復を加速させ、かつ、入院を必要とするまでに進行するリスクを低下させる目的で、顕著から重度の息切れを在宅で経験しているSARS-CoV-2患者のための有用なポイント・オブ・ケア治療として指摘される。
さらに、病院及び在宅の研究コホートからのデータを組み合わせることによって、同じ息切れスコアリング(顕著な又は重度の息切れと同等である3~4のスコア)が、回復を加速させる目的での吸入IFN-βによる治療のために、病院環境であろうと在宅であろうと、COVID-19患者を標的とすることにおいて有用に用いられる可能性がある簡便かつ迅速な基準であることがここで示される。息切れスコアが0、1又は2の患者では、SNG001とプラセボ治療との間で回復率に有意差は見られなかったが、SNG001の投与を受けた息切れに関するスコアが3又は4の患者は、プラセボの投与を受けたそのような患者と比較して有意に加速された回復を示すことが分かった。
図7a及び
図7bを参照されたい。
【0090】
息切れについて3又は4のスコアを付け、SNG001を投与した患者は、プラセボを摂取した患者よりも回復する可能性が3倍を超えることが分かった[HR3.41(95%CI、1.47、7.94)p=0.004]。
【0091】
回復を促進するための吸入IFN-βによる治療についてCOVID-19患者をカテゴリー化するための簡便な息切れスコアリングの有用性が、
図8a及び
図8bによってさらに裏付けられ、それらの図は、WHO順序スコアリング尺度(Ordinal Scoring Scale)での全体的な疾患重症度スコア又は少なくとも3の息切れスコアに基づく入院患者及び在宅患者のサブグループ:グループ1:息切れスコア少なくとも3又は順序スコア少なくとも3、グループ2:息切れスコア少なくとも3又は順序スコア少なくとも4、についての治療(SNG001又はプラセボ)による回復パーセンテージを示す。顕著な息切れ又は3若しくは4のOSCIスコアを示す患者は、SNG001の非常に有意な効果を示した。
【0092】
したがって、簡便な息切れスコアリングに基づく、吸入IFN-β治療のSARS-CoV2感染患者への標的化は、このような患者の臨床管理に対する重要な貢献としてここで示されており、このことは、このようなインターフェロンのどのような作用についての以前の知識によっても予示されなかった。顕著な/重度の息切れに基づく入院COVID-19患者における吸入IFN-β治療の標的化は、回復を促進するための手段として示されており、これは、息切れの問題を有するが、病院のベッドの必要性を正当化する全体的な疾患症状の重症度をまだ示していない在宅のCOVID-19患者に転換することができる。
【0093】
吸入製剤中に存在するIFN-β1aがSARS-CoV-2変異体を阻害する能力を確認するインビトロ研究
上記で考察した試験を補足するために、吸入送達によって達成可能な濃度のSNG001がSAR2-CoV-2のアルファ及びベータ変異体(そのような変異体に対するWHOギリシャ文字ラベリングスキームによって現在命名されている)、並びに「武漢様」SAR2-CoV-2(ドイツ/BavPat1/2020)の両方に対して活性を有することを確認するためにインビトロ実験を行った。アルファ及びベータ変異体は、以前はそれぞれB.1.1.7及びB1.351と呼ばれていたか、又は一般にそれぞれ英国Kent変異体及び南アフリカ変異体と呼ばれていた。WHOのウェブサイト及び2021年5月31日に発行されたSAR2-CoV-2変異体の命名に関する通知を参照されたい。
【0094】
Vero E6細胞を、上記のようにSARS-CoV-2による感染の前後に様々な濃度でSNG001製剤で処理した。感染の16~24時間後、SAR2-CoV-2ウイルスタンパク質の存在を免疫染色法を用いて決定した。SNG001は、「武漢様」ウイルス又は上記変異体のいずれかに感染した細胞において、ウイルスを検出不能なレベルまで強力に減少させた。90%阻害(IC
90)を与えることが見出されたIFN-βの吸入送達後に容易に達成可能な濃度は、
図9に示されるように、3.2、3.4及び4.0IU/mlであった。
【0095】
このデータはさらに、吸入広域スペクトル抗ウイルス製品としての一般的な機序を介して、公知の変異体及び可能性のある将来の新興変異体にまで及ぶ、SARS-CoV-2ウイルスに関連する下気道疾患の重症度の予防又は軽減において特許請求される吸入IFN-βの使用を裏付けている。
【国際調査報告】