(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】ミトコンドリア機能の向上およびミトコンドリア疾患の治療のための化合物の新規治療的用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7048 20060101AFI20230814BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230814BHJP
A61K 31/57 20060101ALI20230814BHJP
A61K 31/4422 20060101ALI20230814BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230814BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20230814BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230814BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20230814BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230814BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230814BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230814BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61P43/00 107
A61K31/57
A61K31/4422
A61K31/519
A61K31/444
A61P27/02
A61P27/16
A61P25/00
A61P9/10
A61P3/10
A61P21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504403
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 KR2021009824
(87)【国際公開番号】W WO2022025635
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521544539
【氏名又は名称】スタンダイム インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】STANDIGM INC.
(71)【出願人】
【識別番号】301040958
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
【氏名又は名称原語表記】THE CHILDREN’S HOSPITAL OF PHILADELPHIA
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ソ, ミンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジンハン
(72)【発明者】
【氏名】ソン, サン オク
(72)【発明者】
【氏名】ジン, サンヒュン
(72)【発明者】
【氏名】フォーク, マーニ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン, ヒヨン
(72)【発明者】
【氏名】シャー, ブーミ
(72)【発明者】
【氏名】オギソ, エイコ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC26
4C086CB22
4C086DA10
4C086EA11
4C086GA14
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA22
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA94
4C086ZB22
4C086ZC35
(57)【要約】
ミトコンドリア機能を向上させ、ミトコンドリア疾患を治療するための化合物の新規治療的用途は、人工知能(AI)-基盤のインシリコアプローチによって発見され、ミトコンドリア疾患モデルにおいてインビトロおよびインビボ動物モデルの研究によって検証された。ミトコンドリア機能を向上させ/させるか、ミトコンドリア疾患を治療する方法は、活性化合物をミトコンドリア機能の向上および/またはミトコンドリア疾患の治療を必要とする対象体に投与する段階を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミトコンドリア機能の向上を必要とする対象体において、ミトコンドリア機能を向上させる方法であって、
ジョサマイシン(josamycin)、シプロテロン(cyproterone)、シルニジピン(cilnidipine)、フェロジピン(felodipine)、トラピジル(trapidil)、メチラポン(metyrapone)、およびその薬学的に許容可能な塩からなる群から選択された1つ以上の化合物の有効量を前記対象体に投与する段階を含む、方法。
【請求項2】
シプロテロンの薬学的に許容可能な塩がアセテートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ミトコンドリア機能の向上が下記(i)~(vi)からなる群から選択された1つ以上のイベントである、請求項1に記載の方法。
前記1つの以上の化合物の投与前と比較して、
(i)細胞生存力の向上と、
(ii)細胞内ATP含有量の増加と、
(iii)ミトコンドリア膜電位の増加と、
(iv)ミトコンドリア反応性酸素種(ROS)の減少と、
(v)細胞内ROSの減少と、
(vi)ミトコンドリアストレスの減少。
【請求項4】
ミトコンドリア機能の向上が下記(i)~(iv)からなる群から選択された1つ以上のイベントである、請求項1に記載の方法。
前記1つの以上の化合物の投与前と比較して、
(i)寿命の増加と、
(ii)神経活動の向上と、
(iii)運動活動の向上と、
(iv)成長の向上。
【請求項5】
ミトコンドリア疾患の治療を必要とする対象体において、ミトコンドリア機能を向上することによってミトコンドリア疾患を治療する方法であって、
ジョサマイシン、シプロテロン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、メチラポン、およびその薬学的に許容可能な塩からなる群から選択された1つ以上の化合物の有効量を前記対象体に投与する段階を含むものである、方法。
【請求項6】
シプロテロンの薬学的に許容可能な塩がアセテートである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ミトコンドリア疾患がレーベル遺伝性視神経症(Leber hereditary optic neuropathy;LHON)、ミトコンドリアミオパチー、脳症、乳酸アシドーシス、および脳卒中-様エピソード(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes;MELAS)症候群、ミトコンドリア複合体I欠乏、ミトコンドリア複合体II欠乏、ミトコンドリア複合体III欠乏、ミトコンドリア複合体IV欠乏、ミトコンドリア複合体V欠乏、リー症候群(Leigh syndrome)、常染色体優性視神経萎縮症(autosomal dominant optic atrophy;ADOA)、脳幹および脊髄侵入および乳酸上昇を含む白質脳症(leukoencephalopathy with brain stem and spinal cord involvement and lactate elevation; LBSL)、ルフト疾患(Luft disease)、複合アシル-CoA脱水素酵素(multiple acyl-CoA dehydrogenase;MAD)欠乏、ミトコンドリアエノイルCoA還元酵素タンパク質-関連神経変性(mitochondrial enoyl CoA reductase protein-associated neurodegeneration;MEPAN)症候群、ミトコンドリアDNA枯渇症、ミトコンドリア脳症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠乏、ミトコンドリアミオパチー、フリードライヒ運動失調症(Friedreich’s ataxia)、バルト症候群(Barth syndrome)、致死性乳児心臓脳筋症(fatal infantile cardioencephalomyopathy)、シャルコー-マリー-トゥース疾患(Charcot-Marie-Tooth disease)、乳児乳酸アシドーシス、先天性乳酸アシドーシス(congenital lactic acidosis;CLA)、慢性乳酸アシドーシス、カーンズ-セイヤー症候群(Kearns-Sayre syndrome;KSS)、ミトコンドリア遺伝性糖尿病および難聴(mitochondrially inherited diabetes and deafness;MIDD)、アルパーズ-ハッテンロハー症候群(Alpers-Huttenlocher syndrome;AHS)、小児期筋大脳肝症スペクトラム(childhood myocerebrohepatopathy spectrum;MCHS)、運動失調ニューロパチースペクトラム(ataxia neuropathy spectrum;ANS:ミトコンドリア劣性運動失調症候群(mitochondrial recessive ataxia syndrome;MIRAS)および感覚性運動失調ニューロパチー構音障害および眼筋麻痺(sensory ataxia neuropathy dysarthria and ophthalmoplegia;SANDO)であって、以前に指称)、ミオクローヌスてんかんミオパチー感覚性運動失調(myoclonic epilepsy myopathy sensory ataxia;MEMSA:てんかんを伴う脊髄小脳性運動失調(spinocerebellar ataxia with epilepsy;SCAE)であって、以前に指称)、センジャーズ症候群(Sengers syndrome)、MEGDEL症候群(難聴、脳症、およびリー-様症候群を含む3-メチルグルタコン酸尿症(3-methylglutaconic aciduria with deafness, encephalopathy and Leigh-like syndrome)としても知られる)、ピアソン症候群(Pearson syndrome)、不規則な赤色ぼろ線維を有するミオクローヌスてんかん(myoclonic epilepsy with ragged red fibers;MERRF)、神経性筋肉の弱化、運動失調、および色素性網膜炎(neurogenic muscle weakness, ataxia and retinitis pigmentosa;NARP)、慢性進行性外眼筋麻痺(chronic progressive external ophthalmoplegia;CPEO)、ミトコンドリア神経胃腸管脳筋症(mitochondrial neurogastrointestinal encephalopathy;MNGIE)症候群、カルニチン欠乏、カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ(carnitine-acylcarnitine translocase;CACT)欠乏、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A(carnitine palmitoyl transferase 1a;CPT I)欠乏、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(carnitine palmitoyl transferase;CPT II)欠乏、クレアチン欠乏症候群、グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ(guanidinoacetate methyltransferase;GAMT)欠乏を含むクレアチン欠乏症候群、L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(L-arginine:glycine amidinotransferase;AGAT)欠乏、クレアチントランスポーター欠乏(SLC6A8-関連クレアチントランスポーター欠乏を含む)、チミジンキナーゼ2欠乏(thymidine kinase 2 deficiency;TK2D)、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠乏(pyruvate dehydrogenase complex deficiency;PDCD)、脂肪酸酸化障害(fatty acid oxidation disorders;FAOD)、アシル-CoA脱水素酵素9(acyl-CoA dehydrogenase;ACAD9)欠乏を含む脂肪酸酸化障害、複合アシル-CoA脱水素酵素欠乏(multiple acyl-CoA dehydrogenase deficiency;MADD)、長鎖アシル-CoA脱水素酵素(long-chain acyl-CoA dehydrogenase;LCAD)欠乏、長鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(long-chain 3-hydroxyacyl-CoA dehydrogenase;LCHAD)欠乏、中鎖アシル-CoA脱水素酵素(medium-chain acyl-CoA dehydrogenase;MCAD)欠乏、短鎖アシル-CoA脱水素酵素(short-chain acyl-CoA dehydrogenase;SCAD)欠乏、短鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(short-chain 3-hydroxyacyl-CoA dehydrogenase;SCHAD)欠乏、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(very long-chain acyl-CoA dehydrogenase;VLCAD)欠乏、コ-エンザイムQ10欠乏、および多発性ミトコンドリア機能障害症候群からなる群から選択された1つ以上を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ミトコンドリア機能の向上を必要とする対象体において、ミトコンドリア機能を向上させ/させるか、ミトコンドリア疾患の治療を必要とする対象体において、ミトコンドリア機能を向上させることによってミトコンドリア疾患を治療するための組成物であって、
前記組成物は、活性成分として、ジョサマイシン、シプロテロン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、メチラポン、およびその薬学的に許容可能な塩からなる群から選択された1つ以上の化合物を含み、ここで、前記組成物の有効量が対象体に投与される、組成物。
【請求項9】
前記活性成分がシプロテロンアセテートである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ミトコンドリア機能の向上が、下記(i)~(vi)からなる群から選択された1つ以上のイベントである、請求項8に記載の組成物。
前記1つ以上の化合物の投与前と比較して、
(i)細胞生存力の向上と、
(ii)細胞内ATP含有量の増加と、
(iii)ミトコンドリア膜電位の増加と、
(iv)ミトコンドリア反応性酸素種(ROS)の減少と、
(v)細胞内ROSの減少と、
(vi)ミトコンドリアストレスの減少。
【請求項11】
ミトコンドリア機能の向上が下記(i)~(iv)からなる群から選択された1つ以上のイベントである、請求項8に記載の組成物。
前記1つ以上の化合物の投与前と比較して、
(i)寿命の増加と、
(ii)神経活動の向上と、
(iii)自発運動活動の向上と、
(iv)成長の向上。
【請求項12】
前記ミトコンドリア疾患が、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、ミトコンドリアミオパチー、脳症、乳酸アシドーシス、および脳卒中-様エピソード(MELAS)症候群、ミトコンドリア複合体I欠乏、ミトコンドリア複合体II欠乏、ミトコンドリア複合体III欠乏、ミトコンドリア複合体IV欠乏、ミトコンドリア複合体V欠乏、リー症候群、常染色体優性視神経萎縮症(ADOA)、脳幹および脊髄侵入および乳酸上昇を含む白質脳症(LBSL)、ルフト疾患、複合アシル-CoA脱水素酵素(MAD)欠乏、ミトコンドリアエノイルCoA還元酵素タンパク質-関連神経変性(MEPAN)症候群、ミトコンドリアDNA枯渇症、ミトコンドリア脳症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠乏、ミトコンドリアミオパチー、フリードライヒ運動失調、バルト症候群、致死性乳児心臓脳筋症、シャルコー-マリー-トゥース疾患、乳児乳酸アシドーシス、先天性乳酸アシドーシス(CLA)、慢性乳酸アシドーシス、カーンズ-セイヤー症候群(KSS)、ミトコンドリア遺伝性糖尿病および難聴(MIDD)、アルパーズ-ハッテンロハー症候群(AHS)、小児期筋大脳肝症スペクトラム(MCHS)、運動失調ニューロパチースペクトラム(ANS;ミトコンドリア劣性運動失調症候群(MIRAS)および感覚性運動失調ニューロパチー構音障害および眼筋麻痺(SANDO)であって、以前に指称)、ミオクローヌスてんかんミオパチー感覚性運動失調(MEMSA:てんかんを伴う脊髄小脳性運動失調(SCAE)であって、以前に指称)、センジャーズ症候群、MEGDEL症候群(難聴、脳症、およびリー-様症候群を含む3-メチルグルタコン酸尿症としても知られる)、ピアソン症候群、不規則な赤色ぼろ線維を有するミオクローヌスてんかん(MERRF)、神経性筋肉の弱化、運動失調および色素性網膜炎(NARP)、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、ミトコンドリア神経胃腸管脳筋症(MNGIE)症候群、カルニチン欠乏、カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)欠乏、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A(CPT I)欠乏、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT II)欠乏、クレアチン欠乏症候群、グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ(GAMT)欠乏を含むクレアチン欠乏症候群、L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT)欠乏、クレアチントランスポーター欠乏(SLC6A8-関連クレアチントランスポーター欠乏を含む)、チミジンキナーゼ2欠乏(TK2D)、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠乏(PDCD)、脂肪酸酸化障害(FAOD)、アシル-CoA脱水素酵素9(ACAD9)欠乏を含む脂肪酸酸化障害、複合アシル-CoA脱水素酵素欠乏(MADD)、長鎖アシル-CoA脱水素酵素(LCAD)欠乏、長鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(LCHAD)欠乏、中鎖アシル-CoA脱水素酵素(MCAD)欠乏、短鎖アシル-CoA脱水素酵素(SCAD)欠乏、短鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(SCHAD)欠乏、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD)欠乏、コ-エンザイムQ10欠乏、および多発性ミトコンドリア機能障害症候群からなる群から選択された1つ以上を含む、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
【0002】
本出願は、2020年7月29日に出願された米国仮出願第63/057,992号に関する利益および優先権を主張し、その内容は、その全体が本願の参照として援用される。
【0003】
技術分野
【0004】
本技術は、一般的にミトコンドリア機能を向上させ、ミトコンドリア疾患を治療するための化合物の新規の治療的用途に関する。
【背景技術】
【0005】
ミトコンドリアは、大部分の真核細胞に存在する細胞小器官であり、その主な機能は、グルコースまたは脂肪酸の代謝に由来したエネルギーがアデノシン三リン酸(ATP)に変換される工程である酸化的リン酸化である。続いて、ATPは、多様なエネルギーを必要とする生合成反応およびその他の代謝活動を駆動することに使用される。細胞ATP生成のほかにも、ミトコンドリアは、他の細胞機能、例えば、細胞恒常性、シグナリング経路、およびステロイド合成にも関与する。
【0006】
ミトコンドリア機能障害によって発生する疾患は、例えば、非制限的にミトコンドリア膜電位の機能不全によるミトコンドリア膨張、酸化的ストレスによる、例えば、反応性酸素種(ROS)またはフリーラジカルの作用による機能的疾患、遺伝的突然変異による機能的疾患、およびエネルギー生産のための酸化的リン酸化メカニズムの機能的欠乏による疾患を含み得る。
【0007】
ミトコンドリアは、年を取ることによって悪化し、細胞呼吸能力を失い、ミトコンドリアDNA(mtDNA)に対する損傷が蓄積し、過剰な量のROSを生産する。
【0008】
ミトコンドリア疾患(またはミトコンドリア機能障害に関連する病理学的病態)のメカニズムは、今日まで明確に理解されなかった。最近の証拠は、複数の疾患、例えば、レーベル遺伝性視神経症(Leber hereditary optic neuropathy;LHON)、ミトコンドリアミオパチー、脳症、乳酸アシドーシス、および脳卒中様発作(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes;MELAS)症候群、ミトコンドリア複合体I欠乏、ミトコンドリア複合体II欠乏、ミトコンドリア複合体III欠乏、ミトコンドリア複合体IV欠乏、ミトコンドリア複合体V欠乏、リー症候群(Leigh syndrome)、常染色体優性視神経萎縮症(autosomal dominant optic atrophy;ADOA)、脳幹および脊髄侵入および乳酸上昇を含む白質脳症(leukoencephalopathy with brain stem and spinal cord involvement and lactate elevation; LBSL)、ルフト疾患(Luft disease)、複合アシル-CoA脱水素酵素(multiple acyl-CoA dehydrogenase;MAD)欠乏、ミトコンドリアエノイルCoA還元酵素タンパク質-関連神経変性(mitochondrial enoyl CoA reductase protein-associated neurodegeneration;MEPAN)症候群、ミトコンドリアDNA枯渇症、ミトコンドリア脳症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠乏、ミトコンドリアミオパチー、フリードライヒ運動失調症(Friedreich’s ataxia)、バルト症候群(Barth syndrome)、致死性乳児心臓脳筋症(fatal infantile cardioencephalomyopathy)、シャルコー-マリー-トゥース疾患(Charcot-Marie-Tooth disease)、乳児乳酸アシドーシス、先天性乳酸アシドーシス(congenital lactic acidosis;CLA)、慢性乳酸アシドーシス、カーンズ-セイヤー症候群(Kearns-Sayre syndrome;KSS)、ミトコンドリア遺伝性糖尿病および難聴(mitochondrially inherited diabetes and deafness;MIDD)、アルパーズ-ハッテンロハー症候群(Alpers-Huttenlocher syndrome;AHS)、小児期筋大脳肝症スペクトラム(childhood myocerebrohepatopathy spectrum;MCHS)、運動失調ニューロパチースペクトラム(ataxia neuropathy spectrum;ANS:ミトコンドリア劣性運動失調症候群(mitochondrial recessive ataxia syndrome;MIRAS)および感覚性運動失調ニューロパチー構音障害および眼筋麻痺(sensory ataxia neuropathy dysarthria and ophthalmoplegia;SANDO)であって、以前に指称)、ミオクローヌスてんかんミオパチー感覚性運動失調(myoclonic epilepsy myopathy sensory ataxia;MEMSA:てんかんを伴う脊髄小脳性運動失調(spinocerebellar ataxia with epilepsy;SCAE)であって、以前に指称)、センジャーズ症候群(Sengers syndrome)、MEGDEL症候群(難聴、脳症、およびリー-様症候群を含む3-メチルグルタコン酸尿症(3-methylglutaconic aciduria with deafness, encephalopathy and Leigh-like syndrome)としても知られる)、ピアソン症候群(Pearson syndrome)、不規則な赤色ぼろ線維を有するミオクローヌスてんかん(myoclonic epilepsy with ragged red fibers;MERRF)、神経性筋肉の弱化、運動失調、および色素性網膜炎(neurogenic muscle weakness,ataxia and retinitis pigmentosa;NARP)、慢性進行性外眼筋麻痺(chronic progressive external ophthalmoplegia;CPEO)、ミトコンドリア神経胃腸管脳筋症(mitochondrial neurogastrointestinal encephalopathy;MNGIE)症候群、カルニチン欠乏、カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ(carnitine-acylcarnitine translocase;CACT)欠乏、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A(carnitine palmitoyl transferase 1a;CPT I)欠乏、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(carnitine palmitoyl transferase;CPT II)欠乏、クレアチン欠乏症候群、グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ(guanidinoacetate methyltransferase;GAMT)欠乏を含むクレアチン欠乏症候群、L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(L-arginine:glycine amidinotransferase;AGAT)欠乏、クレアチントランスポーター欠乏(SLC6A8-関連クレアチントランスポーター欠乏を含む)、チミジンキナーゼ2欠乏(thymidine kinase 2 deficiency;TK2D)、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠乏(pyruvate dehydrogenase complex deficiency;PDCD)、脂肪酸酸化障害(fatty acid oxidation disorders;FAOD)、アシル-CoA脱水素酵素9(acyl-CoA dehydrogenase;ACAD9)欠乏を含む脂肪酸酸化障害、複合アシル-CoA脱水素酵素欠乏(multiple acyl-CoA dehydrogenase deficiency;MADD)、長鎖アシル-CoA脱水素酵素(long-chain acyl-CoA dehydrogenase;LCAD)欠乏、長鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(long-chain 3-hydroxyacyl-CoA dehydrogenase;LCHAD)欠乏、中鎖アシル-CoA脱水素酵素(medium-chain acyl-CoA dehydrogenase;MCAD)欠乏、短鎖アシル-CoA脱水素酵素(short-chain acyl-CoA dehydrogenase;SCAD)欠乏、短鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(short-chain 3-hydroxyacyl-CoA dehydrogenase;SCHAD)欠乏、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(very long-chain acyl-CoA dehydrogenase;VLCAD)欠乏、コ-エンザイムQ10欠乏、および多発性ミトコンドリア機能障害症候群においてミトコンドリア機能障害の関与を指摘する。
【0009】
ミトコンドリア疾患の治療は、緩和治療(Palliative care)が一般的であり、症状を管理し生活の質(QoL)を改善することを目的とする。緩和治療には、例えば、ビタミン投与、エネルギー保存、食事摂取制御、および身体ストレスの減少を含む。
【発明の概要】
【0010】
簡単な要約
【0011】
本説明は、ミトコンドリア疾患を治療することにおいて、化合物の新規治療的用途を提供することを目標とする。新たな用途は、人工知能(AI)-基盤のインシリコアプローチによって発見され得る。本説明によると、前記目的は、本開示内容の必須的な部分を形成するものとして理解される、後に続く請求範囲において具体的に詳記された主題によって達成される。本明細書を通じて収得された結果は、AI-予測化合物がミトコンドリア機能を増加させる能力を有することを示す。
【0012】
一部実施形態において、本説明は、ミトコンドリア機能の向上を必要とする対象体において、ミトコンドリア機能を改善させる方法を提供し、これは、次からなる群から選択された1つ以上の化合物の有効量を前記対象体に投与する段階を含む。ジョサマイシン(josamycin)、シプロテロン(cyproterone)、シルニジピン(cilnidipine)、フェロジピン(felodipine)、トラピジル(trapidil)、メチラポン(metyrapone)、およびその薬学的に許容可能な塩、異性体、水和物、および互変異性体。
【0013】
一部実施形態において、シプロテロンの薬学的に許容可能な塩はアセテートである。
【0014】
一部実施形態において、本説明は、ミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上は、下記(i)~(vi)からなる群から選択された1つ以上のイベントであるが、これに制限されない:本願に記載された活性化合物の投与前と比較して、(i)細胞生存力の向上;(ii)細胞内ATP含有量の増加;(iii)ミトコンドリア膜電位の増加;(iv)ミトコンドリアROSの減少;(v)細胞内ROSの減少;および(vi)ミトコンドリアストレスの減少。
【0015】
一部実施形態において、本説明は、有機体の健康および生存を向上させる方法を提供し、ここで、有機体の健康および生存の向上は、下記(i)~(iv)からなる群から選択された1つ以上のイベントであるが、これに制限されない:本願に記載された活性化合物の投与前と比較して、(i)寿命の増加;(ii)神経活動の向上;(iii)運動活動の向上;および(iv)成長の向上。
【0016】
ミトコンドリア疾患のメカニズムは、未だ完全に明らかになっていないが、ミトコンドリア機能障害が疾患に関与するものとして知られている。したがって、ミトコンドリアの機能を向上させることは、ミトコンドリア疾患の治療および軽減に効果的であり得る。また、本明細書において、ミトコンドリア疾患に対して知られた治療剤、例えば、ホスホクレアチンおよびRTA-408(オマベロキソロン)がミトコンドリア機能を向上させるということが確認された。
【0017】
一部実施形態において、本説明は、ミトコンドリア疾患の治療を必要とする対象体において、ミトコンドリア機能を向上させることによってミトコンドリア疾患を治療する方法を提供し、これは、次からなる群から選択された1つ以上の化合物の有効量を前記対象体に投与する段階を含む:ジョサマイシン、シプロテロン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、メチラポン、およびその薬学的に許容可能な塩、異性体、水和物、および互変異性体。
【0018】
一部実施形態において、シプロテロンの薬学的に許容可能な塩はアセテートである。
【0019】
一部実施形態において、本説明は、ミトコンドリア機能の向上を必要とする対象体において、ミトコンドリア機能を向上させ/させるか、ミトコンドリア疾患の治療を必要とする対象体において、ミトコンドリア機能を向上させることによってミトコンドリア疾患を治療するための組成物を提供し、ここで、前記組成物は活性成分として、ジョサマイシン、シプロテロン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、メチラポン、およびその薬学的に許容可能な塩からなる群から選択された1つ以上の化合物を含み、ここで、組成物の有効量が対象体に投与される。
【0020】
一部実施形態において、シプロテロンの薬学的に許容可能な塩はアセテートである。
【0021】
一部実施形態において、本説明は、ミトコンドリア機能を向上させるための組成物を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上は、下記(i)~(v)からなる群から選択された1つ以上のイベントであるが、これに制限されない:本願に記載された活性化合物の投与前と比較して、(i)細胞生存力の向上;(ii)細胞内ATP含有量の増加;(iii)ミトコンドリア膜電位の増加;(iv)ミトコンドリアROSの減少;およびミトコンドリアストレスの減少。
【0022】
一部実施形態において、本説明は、有機体の健康および生存を向上させるための組成物を提供し、ここで、有機体の健康および生存の向上は、下記(i)~(iv)からなる群から選択された1つ以上のイベントであるが、これに制限されない:本願に記載された活性化合物の投与前と比較して、(i)寿命の増加;(ii)神経活動の向上;(iii)運動活動の向上;および(iv)成長の向上。
【0023】
本願に記載された方法または組成物に係る一部実施形態において、ミトコンドリア疾患は、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、ミトコンドリアミオパチー、脳症、乳酸アシドーシス、および脳卒中-様エピソード(MELAS)症候群、ミトコンドリア複合体I欠乏、ミトコンドリア複合体II欠乏、ミトコンドリア複合体III欠乏、ミトコンドリア複合体IV欠乏、ミトコンドリア複合体V欠乏、リー症候群、常染色体優性視神経萎縮症(ADOA)、脳幹および脊髄侵入および乳酸上昇を含む白質脳症(LBSL)、ルフト疾患、複合アシル-CoA脱水素酵素(MAD)欠乏、ミトコンドリアエノイルCoA還元酵素タンパク質-関連神経変性(MEPAN)症候群、ミトコンドリアDNA枯渇症、ミトコンドリア脳症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠乏、ミトコンドリアミオパチー、フリードライヒ運動失調、バルト症候群、致死性乳児心臓脳筋症、シャルコー-マリー-トゥース疾患、乳児乳酸アシドーシス、先天性乳酸アシドーシス(CLA)、慢性乳酸アシドーシス、カーンズ-セイヤー症候群(KSS)、ミトコンドリア遺伝性糖尿病および難聴(MIDD)、アルパーズ-ハッテンロハー症候群(AHS)、小児期筋大脳肝症スペクトラム(MCHS)、運動失調ニューロパチースペクトラム(ANS;ミトコンドリア劣性運動失調症候群(MIRAS)および感覚性運動失調ニューロパチー構音障害および眼筋麻痺(SANDO)であって、以前に指称)、ミオクローヌスてんかんミオパチー感覚性運動失調(MEMSA:てんかんを伴う脊髄小脳性運動失調(SCAE)であって、以前に指称)、センジャーズ症候群、MEGDEL症候群(難聴、脳症、およびリー-様症候群を含む3-メチルグルタコン酸尿症としても知られる)、ピアソン症候群、不規則な赤色ぼろ線維を有するミオクローヌスてんかん(MERRF)、神経性筋肉の弱化、運動失調および色素性網膜炎(NARP)、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、ミトコンドリア神経胃腸管脳筋症(MNGIE)症候群、カルニチン欠乏、カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)欠乏、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A(CPT I)欠乏、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT II)欠乏、クレアチン欠乏症候群、グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ(GAMT)欠乏を含むクレアチン欠乏症候群、L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT)欠乏、クレアチントランスポーター欠乏(SLC6A8-関連クレアチントランスポーター欠乏を含む)、チミジンキナーゼ2欠乏(TK2D)、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠乏(PDCD)、脂肪酸酸化障害(FAOD)、アシル-CoA脱水素酵素9(ACAD9)欠乏を含む脂肪酸酸化障害、複合アシル-CoA脱水素酵素欠乏(MADD)、長鎖アシル-CoA脱水素酵素(LCAD)欠乏、長鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(LCHAD)欠乏、中鎖アシル-CoA脱水素酵素(MCAD)欠乏、短鎖アシル-CoA脱水素酵素(SCAD)欠乏、短鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(SCHAD)欠乏、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD)欠乏、コ-エンザイムQ10欠乏、および多発性ミトコンドリア機能障害症候群からなる群から選択された1つ以上を含むが、これに制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】構造的類似性-基盤のアプローチを通じて導出されたジョサマイシン、シプロテロン、およびシルニジピンの3つの薬物化合物の保護効果を図示する。休止期SH-SY5Y細胞を20時間の1mM MPP
+(1-メチル-4-フェニルピリジニウム;ミトコンドリア複合体Iの阻害剤)処理の4時間前に示された濃度によってそれぞれの化合物で処理した。参照薬物であるホスホクレアチン(pCr)(1mM)も、20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に前処理した。
図1Aは細胞内ATP含有量を図示し、
図1Bはテトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)-媒介されたミトコンドリア膜電位を図示し、
図1Cはメチルチアゾールテトラゾリウム(MTT)アッセイによって測定された細胞生存力を図示する。すべての値は、対照群の百分率(%対照群)として報告される。データを測定値の平均±標準誤差としてフローティングした(n=6)(###p<0.001対DMSO-対照群、
*p<0.05、
**p<0.01、および
***p<0.001対MPP
+-処理された対照群。p値は、1元配置分散分析(one‐way ANOVA)後のTukeyのテストに由来)。
【
図1B】構造的類似性-基盤のアプローチを通じて導出されたジョサマイシン、シプロテロン、およびシルニジピンの3つの薬物化合物の保護効果を図示する。休止期SH-SY5Y細胞を20時間の1mM MPP
+(1-メチル-4-フェニルピリジニウム;ミトコンドリア複合体Iの阻害剤)処理の4時間前に示された濃度によってそれぞれの化合物で処理した。参照薬物であるホスホクレアチン(pCr)(1mM)も、20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に前処理した。
図1Aは細胞内ATP含有量を図示し、
図1Bはテトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)-媒介されたミトコンドリア膜電位を図示し、
図1Cはメチルチアゾールテトラゾリウム(MTT)アッセイによって測定された細胞生存力を図示する。すべての値は、対照群の百分率(%対照群)として報告される。データを測定値の平均±標準誤差としてフローティングした(n=6)(###p<0.001対DMSO-対照群、
*p<0.05、
**p<0.01、および
***p<0.001対MPP
+-処理された対照群。p値は、1元配置分散分析(one‐way ANOVA)後のTukeyのテストに由来)。
【
図1C】構造的類似性-基盤のアプローチを通じて導出されたジョサマイシン、シプロテロン、およびシルニジピンの3つの薬物化合物の保護効果を図示する。休止期SH-SY5Y細胞を20時間の1mM MPP
+(1-メチル-4-フェニルピリジニウム;ミトコンドリア複合体Iの阻害剤)処理の4時間前に示された濃度によってそれぞれの化合物で処理した。参照薬物であるホスホクレアチン(pCr)(1mM)も、20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に前処理した。
図1Aは細胞内ATP含有量を図示し、
図1Bはテトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)-媒介されたミトコンドリア膜電位を図示し、
図1Cはメチルチアゾールテトラゾリウム(MTT)アッセイによって測定された細胞生存力を図示する。すべての値は、対照群の百分率(%対照群)として報告される。データを測定値の平均±標準誤差としてフローティングした(n=6)(###p<0.001対DMSO-対照群、
*p<0.05、
**p<0.01、および
***p<0.001対MPP
+-処理された対照群。p値は、1元配置分散分析(one‐way ANOVA)後のTukeyのテストに由来)。
【
図2A】5つの薬物化合物である、ジョサマイシン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンの用量-依存的保護効果を図示する。休止期SH-SY5Y細胞を20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に表された濃度によってそれぞれの化合物で処理した。参照薬物であるホスホクレアチン(pCr)(1mM)およびRTA-408(10nM)も、20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に前処理した。
図2AはMTTアッセイによる細胞生存力を図示し、
図2Bは細胞内ATP含有量を図示し、
図2CはTMRE-媒介されたミトコンドリア膜電位を図示し、
図2DはミトコンドリアROS含有量を図示し、
図2Eは細胞内ROS含有量を図示する。
図2は、用量反応方式として図示され、すべての値は%対照群として報告される。データを測定値の平均±標準誤差としてフローティングした(n=4-6)(#p<0.05対DMSO-対照群;
*p<0.05対MPP
+-処理されたDMSO。統計分析は、スチューデント両側t-検定によって遂行)。
【
図2B】5つの薬物化合物である、ジョサマイシン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンの用量-依存的保護効果を図示する。休止期SH-SY5Y細胞を20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に表された濃度によってそれぞれの化合物で処理した。参照薬物であるホスホクレアチン(pCr)(1mM)およびRTA-408(10nM)も、20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に前処理した。
図2AはMTTアッセイによる細胞生存力を図示し、
図2Bは細胞内ATP含有量を図示し、
図2CはTMRE-媒介されたミトコンドリア膜電位を図示し、
図2DはミトコンドリアROS含有量を図示し、
図2Eは細胞内ROS含有量を図示する。
図2は、用量反応方式として図示され、すべての値は%対照群として報告される。データを測定値の平均±標準誤差としてフローティングした(n=4-6)(#p<0.05対DMSO-対照群;
*p<0.05対MPP
+-処理されたDMSO。統計分析は、スチューデント両側t-検定によって遂行)。
【
図2C】5つの薬物化合物である、ジョサマイシン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンの用量-依存的保護効果を図示する。休止期SH-SY5Y細胞を20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に表された濃度によってそれぞれの化合物で処理した。参照薬物であるホスホクレアチン(pCr)(1mM)およびRTA-408(10nM)も、20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に前処理した。
図2AはMTTアッセイによる細胞生存力を図示し、
図2Bは細胞内ATP含有量を図示し、
図2CはTMRE-媒介されたミトコンドリア膜電位を図示し、
図2DはミトコンドリアROS含有量を図示し、
図2Eは細胞内ROS含有量を図示する。
図2は、用量反応方式として図示され、すべての値は%対照群として報告される。データを測定値の平均±標準誤差としてフローティングした(n=4-6)(#p<0.05対DMSO-対照群;
*p<0.05対MPP
+-処理されたDMSO。統計分析は、スチューデント両側t-検定によって遂行)。
【
図2D】5つの薬物化合物である、ジョサマイシン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンの用量-依存的保護効果を図示する。休止期SH-SY5Y細胞を20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に表された濃度によってそれぞれの化合物で処理した。参照薬物であるホスホクレアチン(pCr)(1mM)およびRTA-408(10nM)も、20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に前処理した。
図2AはMTTアッセイによる細胞生存力を図示し、
図2Bは細胞内ATP含有量を図示し、
図2CはTMRE-媒介されたミトコンドリア膜電位を図示し、
図2DはミトコンドリアROS含有量を図示し、
図2Eは細胞内ROS含有量を図示する。
図2は、用量反応方式として図示され、すべての値は%対照群として報告される。データを測定値の平均±標準誤差としてフローティングした(n=4-6)(#p<0.05対DMSO-対照群;
*p<0.05対MPP
+-処理されたDMSO。統計分析は、スチューデント両側t-検定によって遂行)。
【
図2E】5つの薬物化合物である、ジョサマイシン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンの用量-依存的保護効果を図示する。休止期SH-SY5Y細胞を20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に表された濃度によってそれぞれの化合物で処理した。参照薬物であるホスホクレアチン(pCr)(1mM)およびRTA-408(10nM)も、20時間の1mM MPP
+処理の4時間前に前処理した。
図2AはMTTアッセイによる細胞生存力を図示し、
図2Bは細胞内ATP含有量を図示し、
図2CはTMRE-媒介されたミトコンドリア膜電位を図示し、
図2DはミトコンドリアROS含有量を図示し、
図2Eは細胞内ROS含有量を図示する。
図2は、用量反応方式として図示され、すべての値は%対照群として報告される。データを測定値の平均±標準誤差としてフローティングした(n=4-6)(#p<0.05対DMSO-対照群;
*p<0.05対MPP
+-処理されたDMSO。統計分析は、スチューデント両側t-検定によって遂行)。
【
図3A】寿命アッセイを通じたトラピジル(
図3A~3C)およびメチラポン(
図4A~4C)の救済効果を図示する。ミトコンドリア複合体Iの突然変異であるC.elegans(線虫)gas-1(fc21)を表された濃度においてトラピジルおよびメチラポンで処理した。
図3Aおよび4Aは活性を図示し、
図3Bおよび4Bは死亡率を図示し、
図3Cおよび4CはC.elegans野生型(N2)およびgas-1(fc21)線虫の胴体の長さを図示する。データを平均±標準偏差としてフローティングした(実験(A)および(B)に対してn=1-2つの処理条件当り30匹の線虫を用いた生物学的複製物、実験(C)に対してn=5または10匹の個別線虫)(
*p<0.05、
**p<0.01、および
***p<0.001対N2対照群)。
【
図3B】寿命アッセイを通じたトラピジル(
図3A~3C)およびメチラポン(
図4A~4C)の救済効果を図示する。ミトコンドリア複合体Iの突然変異であるC.elegans(線虫)gas-1(fc21)を表された濃度においてトラピジルおよびメチラポンで処理した。
図3Aおよび4Aは活性を図示し、
図3Bおよび4Bは死亡率を図示し、
図3Cおよび4CはC.elegans野生型(N2)およびgas-1(fc21)線虫の胴体の長さを図示する。データを平均±標準偏差としてフローティングした(実験(A)および(B)に対してn=1-2つの処理条件当り30匹の線虫を用いた生物学的複製物、実験(C)に対してn=5または10匹の個別線虫)(
*p<0.05、
**p<0.01、および
***p<0.001対N2対照群)。
【
図3C】寿命アッセイを通じたトラピジル(
図3A~3C)およびメチラポン(
図4A~4C)の救済効果を図示する。ミトコンドリア複合体Iの突然変異であるC.elegans(線虫)gas-1(fc21)を表された濃度においてトラピジルおよびメチラポンで処理した。
図3Aおよび4Aは活性を図示し、
図3Bおよび4Bは死亡率を図示し、
図3Cおよび4CはC.elegans野生型(N2)およびgas-1(fc21)線虫の胴体の長さを図示する。データを平均±標準偏差としてフローティングした(実験(A)および(B)に対してn=1-2つの処理条件当り30匹の線虫を用いた生物学的複製物、実験(C)に対してn=5または10匹の個別線虫)(
*p<0.05、
**p<0.01、および
***p<0.001対N2対照群)。
【
図4A】寿命アッセイを通じたトラピジル(
図3A~3C)およびメチラポン(
図4A~4C)の救済効果を図示する。ミトコンドリア複合体Iの突然変異であるC.elegans(線虫)gas-1(fc21)を表された濃度においてトラピジルおよびメチラポンで処理した。
図3Aおよび4Aは活性を図示し、
図3Bおよび4Bは死亡率を図示し、
図3Cおよび4CはC.elegans野生型(N2)およびgas-1(fc21)線虫の胴体の長さを図示する。データを平均±標準偏差としてフローティングした(実験(A)および(B)に対してn=1-2つの処理条件当り30匹の線虫を用いた生物学的複製物、実験(C)に対してn=5または10匹の個別線虫)(
*p<0.05、
**p<0.01、および
***p<0.001対N2対照群)。
【
図4B】寿命アッセイを通じたトラピジル(
図3A~3C)およびメチラポン(
図4A~4C)の救済効果を図示する。ミトコンドリア複合体Iの突然変異であるC.elegans(線虫)gas-1(fc21)を表された濃度においてトラピジルおよびメチラポンで処理した。
図3Aおよび4Aは活性を図示し、
図3Bおよび4Bは死亡率を図示し、
図3Cおよび4CはC.elegans野生型(N2)およびgas-1(fc21)線虫の胴体の長さを図示する。データを平均±標準偏差としてフローティングした(実験(A)および(B)に対してn=1-2つの処理条件当り30匹の線虫を用いた生物学的複製物、実験(C)に対してn=5または10匹の個別線虫)(
*p<0.05、
**p<0.01、および
***p<0.001対N2対照群)。
【
図4C】寿命アッセイを通じたトラピジル(
図3A~3C)およびメチラポン(
図4A~4C)の救済効果を図示する。ミトコンドリア複合体Iの突然変異であるC.elegans(線虫)gas-1(fc21)を表された濃度においてトラピジルおよびメチラポンで処理した。
図3Aおよび4Aは活性を図示し、
図3Bおよび4Bは死亡率を図示し、
図3Cおよび4CはC.elegans野生型(N2)およびgas-1(fc21)線虫の胴体の長さを図示する。データを平均±標準偏差としてフローティングした(実験(A)および(B)に対してn=1-2つの処理条件当り30匹の線虫を用いた生物学的複製物、実験(C)に対してn=5または10匹の個別線虫)(
*p<0.05、
**p<0.01、および
***p<0.001対N2対照群)。
【
図5A】ミトコンドリアストレスアッセイを通じたジョサマイシンおよびシルニジピンの保護効果を図示する。L4440、未処理の空ベクトルを対照群として使用し、オマベロキソロンを参照薬物として使用した。
図5Aはジョサマイシンの効果を図示し、
図5Bはシルニジピンの効果を図示する。統計的有意性閾値をp<0.05に設定し、統計的分析をGraphpad Prism V8(San Diego,CA:GraphPad Software Inc.)においてスチューデントt-検定によって遂行した。
【
図5B】ミトコンドリアストレスアッセイを通じたジョサマイシンおよびシルニジピンの保護効果を図示する。L4440、未処理の空ベクトルを対照群として使用し、オマベロキソロンを参照薬物として使用した。
図5Aはジョサマイシンの効果を図示し、
図5Bはシルニジピンの効果を図示する。統計的有意性閾値をp<0.05に設定し、統計的分析をGraphpad Prism V8(San Diego,CA:GraphPad Software Inc.)においてスチューデントt-検定によって遂行した。
【
図6】TMRE-媒介されたミトコンドリア膜電位を通じたシルニジピンの救済効果を図示する。参照材料として、25μMのオマベロキソロンを使用した。日付を測定値の平均±標準誤差としてフローティングした(n=最小35匹の線虫/条件)。統計的有意性閾値をp<0.05に設定し、統計的分析をGraphpad Prismで遂行した。統計的分析をスチューデントt-検定によって遂行した
*p<0.05、
**p<0.01、および
***p<0.001。
【
図7A】ミトコンドリア複合体IV疾患モデルにおいて、効能テストを通じたジョサマイシン、シプロテロン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンの有益な効果を示す。野生型、ABゼブラフィッシュ、またはミトコンドリア複合体IVの突然変異であるSurf1
-/-ゼブラフィッシュを5日目に薬物化合物で前処理し、6日目に薬物化合物およびミトコンドリア複合体IVの阻害剤であるアジ化ナトリウムで共同-処理した。幼虫脳死、神経筋反応、および心臓拍動の存在を7日目にテストした。結果は、それぞれジョサマイシン(
図7A)、シプロテロン(
図7B)、フェロジピン(
図7C)、トラピジル(
図7D)、およびメチラポン(
図7E)に対して表示される。データを平均±標準偏差としてフローティングした(n=処理条件当たり10匹の魚類を用いた3つの生物学的複製物)。
【
図7B】ミトコンドリア複合体IV疾患モデルにおいて、効能テストを通じたジョサマイシン、シプロテロン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンの有益な効果を示す。野生型、ABゼブラフィッシュ、またはミトコンドリア複合体IVの突然変異であるSurf1
-/-ゼブラフィッシュを5日目に薬物化合物で前処理し、6日目に薬物化合物およびミトコンドリア複合体IVの阻害剤であるアジ化ナトリウムで共同-処理した。幼虫脳死、神経筋反応、および心臓拍動の存在を7日目にテストした。結果は、それぞれジョサマイシン(
図7A)、シプロテロン(
図7B)、フェロジピン(
図7C)、トラピジル(
図7D)、およびメチラポン(
図7E)に対して表示される。データを平均±標準偏差としてフローティングした(n=処理条件当たり10匹の魚類を用いた3つの生物学的複製物)。
【
図7C】ミトコンドリア複合体IV疾患モデルにおいて、効能テストを通じたジョサマイシン、シプロテロン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンの有益な効果を示す。野生型、ABゼブラフィッシュ、またはミトコンドリア複合体IVの突然変異であるSurf1
-/-ゼブラフィッシュを5日目に薬物化合物で前処理し、6日目に薬物化合物およびミトコンドリア複合体IVの阻害剤であるアジ化ナトリウムで共同-処理した。幼虫脳死、神経筋反応、および心臓拍動の存在を7日目にテストした。結果は、それぞれジョサマイシン(
図7A)、シプロテロン(
図7B)、フェロジピン(
図7C)、トラピジル(
図7D)、およびメチラポン(
図7E)に対して表示される。データを平均±標準偏差としてフローティングした(n=処理条件当たり10匹の魚類を用いた3つの生物学的複製物)。
【
図7D】ミトコンドリア複合体IV疾患モデルにおいて、効能テストを通じたジョサマイシン、シプロテロン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンの有益な効果を示す。野生型、ABゼブラフィッシュ、またはミトコンドリア複合体IVの突然変異であるSurf1
-/-ゼブラフィッシュを5日目に薬物化合物で前処理し、6日目に薬物化合物およびミトコンドリア複合体IVの阻害剤であるアジ化ナトリウムで共同-処理した。幼虫脳死、神経筋反応、および心臓拍動の存在を7日目にテストした。結果は、それぞれジョサマイシン(
図7A)、シプロテロン(
図7B)、フェロジピン(
図7C)、トラピジル(
図7D)、およびメチラポン(
図7E)に対して表示される。データを平均±標準偏差としてフローティングした(n=処理条件当たり10匹の魚類を用いた3つの生物学的複製物)。
【
図7E】ミトコンドリア複合体IV疾患モデルにおいて、効能テストを通じたジョサマイシン、シプロテロン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンの有益な効果を示す。野生型、ABゼブラフィッシュ、またはミトコンドリア複合体IVの突然変異であるSurf1
-/-ゼブラフィッシュを5日目に薬物化合物で前処理し、6日目に薬物化合物およびミトコンドリア複合体IVの阻害剤であるアジ化ナトリウムで共同-処理した。幼虫脳死、神経筋反応、および心臓拍動の存在を7日目にテストした。結果は、それぞれジョサマイシン(
図7A)、シプロテロン(
図7B)、フェロジピン(
図7C)、トラピジル(
図7D)、およびメチラポン(
図7E)に対して表示される。データを平均±標準偏差としてフローティングした(n=処理条件当たり10匹の魚類を用いた3つの生物学的複製物)。
【
図8A】水泳活動分析を通じたシプロテロン(
図8A)およびフェロジピン(
図8B)の保護効果を図示する。データを平均±標準偏差としてフローティングした(n=8匹の個別の魚類)。統計的分析をスチューデントt-検定によって遂行した(
*p<0.05対ABゼブラフィッシュ)。
【
図8B】水泳活動分析を通じたシプロテロン(
図8A)およびフェロジピン(
図8B)の保護効果を図示する。データを平均±標準偏差としてフローティングした(n=8匹の個別の魚類)。統計的分析をスチューデントt-検定によって遂行した(
*p<0.05対ABゼブラフィッシュ)。
【
図9A】1次ミトコンドリア疾患患者のATP含有量-基盤の細胞生存力アッセイを通じたシプロテロンおよびトラピジルの有益な効果を図示する。ミトコンドリア複合体IまたはIVの欠乏障害を有する患者の線維芽細胞の細胞株(Q1687FまたはQ1775F)および健康な対照群からの細胞(Q1881p1)を使用した。結果は、それぞれトラピジル(
図9A)およびシプロテロン(
図9B)に対して表される。統計的分析をGraphpad Prismにおいてスチューデントt-検定によって遂行した(#p<0.05および
**p<0.01)。
【
図9B】1次ミトコンドリア疾患患者のATP含有量-基盤の細胞生存力アッセイを通じたシプロテロンおよびトラピジルの有益な効果を図示する。ミトコンドリア複合体IまたはIVの欠乏障害を有する患者の線維芽細胞の細胞株(Q1687FまたはQ1775F)および健康な対照群からの細胞(Q1881p1)を使用した。結果は、それぞれトラピジル(
図9A)およびシプロテロン(
図9B)に対して表される。統計的分析をGraphpad Prismにおいてスチューデントt-検定によって遂行した(#p<0.05および
**p<0.01)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ミトコンドリア疾患に対する既存薬物の新規治療用途を発見するために、4百万個の既存化合物に異なるAI-基盤のインシリコアプローチを適用した。化合物グループは、3つの異なるシードグループの転写および構造的類似性に基づいて2つの異なるアプローチを使用することによって、ミトコンドリア機能障害を治療または好転させるための薬物化合物として選択された。ミトコンドリア生合成の増加、1次ミトコンドリア疾患の治療、およびミトコンドリアメカニズムにおける非正常の改善の能力を含むシードグループの属性は、AI-抽出化合物から発見された。ミトコンドリア欠陥またはミトコンドリア機能障害に対する選択された化合物の保護能力は、ヒト神経芽細胞腫の細胞における実験によって立証された。すべての化合物がミトコンドリア膜電位、酸化的ストレス、およびATP生産だけでなく細胞生存力を好転させ、大部分の化合物は、インビトロ検証研究において参照薬物であるホスホクレアチンよりも優れた回復効果を示した。
【0026】
次の説明において、実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な細部事項が提供される。実施形態は、1つ以上の具体的な細部事項なしに、または他の方法、構成要素、材料などを含めて実施され得る。他の形態において、よく知られた構造、材料、または作動は、実施形態の形態を曖昧にすることを避けるために、詳細に図示または説明されない。
【0027】
本明細書全般にわたって「一実施形態」または「実施形態」に関する参照は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特質が1つ以上の実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全般にわたる多様な場所において、語句「一実施形態において」または「実施形態において」の出現は、必ずしもすべて同一の実施形態を指称するものではない。さらに、特定の特徴、構造、または特質は、1つ以上の実施形態において任意の適合した方式として組み合わされ得る。本願に提供された題名は、単に便宜のためのものであり、実施形態の範疇または意味を解釈しない。
【0028】
一部実施形態において、本説明は、ミトコンドリア機能の向上を必要とする対象体において、ミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、これは、次からなる群から選択された1つ以上の化合物の有効量を前記対象体に投与する段階を含む:ジョサマイシン、シプロテロン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、メチラポン、およびその薬学的に許容可能な塩、異性体、水和物、および互変異性体。
【0029】
薬学的に許容可能な塩は、ヒトおよび/または動物に薬物または医薬として投与され得、投与時に遊離化合物(中性化合物または非-塩化合物)の生物学的活性の少なくとも一部を維持する塩である。羅列された化合物の所望する塩は、化合物を酸で処理することによって、当業者に知られた方法によって製造され得る。無機酸の形態は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸を含むが、これに制限されない。有機酸の形態は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、スルホン酸、およびサリチル酸を含むが、これに制限されない。アミノ酸と塩基性ペプチドの塩、例えば、アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩も製造され得る。酸性ペプチドの所望する塩は、化合物を塩基で処理することによって当業者に知られた方法により製造され得る。酸性ペプチドの無機塩の形態は、アルカリ金属およびアルカリ土類塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩;アンモニウム塩;およびアルミニウム塩を含むが、これに制限されない。酸性ペプチドの有機塩の形態は、プロカイン、ジベンジルアミン、N-エチルピペリジン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、およびトリエチルアミン塩を含むが、これに制限されない。アミノ酸と酸性ペプチドの塩、例えば、リシン塩も製造され得る。
【0030】
一部実施形態において、シプロテロンの薬学的に許容可能な塩はアセテートである。
【0031】
一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上は細胞生存性の向上である。一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上は細胞内ATP含有量の増加である。一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上はミトコンドリア膜電位(ΔΨm)の増加である。一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上はミトコンドリアROSの減少である。一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上は細胞内ROSの減少である。一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上はミトコンドリアストレスの減少である。一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上は寿命の増加である。一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上は神経活動の向上である。一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上は運動活動の向上である。一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上は成長の向上である。
【0032】
一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上は、下記(i)~(vi)からなる群から選択された1つ以上のイベントであるが、これに制限されない:活性化合物(ら)の投与前と比較して、(i)細胞生存力の向上;(ii)細胞内ATP含有量の増加;(iii)ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)の増加;(iv)ミトコンドリアROSの減少;(v)細胞内ROSの減少;および(vi)ミトコンドリアストレスの減少。
【0033】
一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、ミトコンドリア機能の向上は、下記(i)~(iv)からなる群から選択された1つ以上のイベントであるが、これに制限されない:活性化合物(ら)の投与前と比較して、(i)寿命の増加;(ii)神経活動の向上;(iii)運動活動の向上;および(iv)成長の向上。
【0034】
一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させる方法を提供し、ここで、対象体は1つ以上のミトコンドリア疾患を有する。特に、ミトコンドリア疾患は、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、ミトコンドリアミオパチー、脳症、乳酸アシドーシス、および脳卒中-様エピソード(MELAS)症候群、ミトコンドリア複合体I欠乏、ミトコンドリア複合体II欠乏、ミトコンドリア複合体III欠乏、ミトコンドリア複合体IV欠乏、ミトコンドリア複合体V欠乏、リー症候群、常染色体優性視神経萎縮症(ADOA)、脳幹および脊髄侵入および乳酸上昇を含む白質脳症(LBSL)、ルフト疾患、複合アシル-CoA脱水素酵素(MAD)欠乏、ミトコンドリアエノイルCoA還元酵素タンパク質-関連神経変性(MEPAN)症候群、ミトコンドリアDNA枯渇症、ミトコンドリア脳症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠乏、ミトコンドリアミオパチー、フリードライヒ運動失調、バルト症候群、致死性乳児心臓脳筋症、シャルコー-マリー-トゥース疾患、乳児乳酸アシドーシス、先天性乳酸アシドーシス(CLA)、慢性乳酸アシドーシス、カーンズ-セイヤー症候群(KSS)、ミトコンドリア遺伝性糖尿病および難聴(MIDD)、アルパーズ-ハッテンロハー症候群(AHS)、小児期筋大脳肝症スペクトラム(MCHS)、運動失調ニューロパチースペクトラム(ANS;ミトコンドリア劣性運動失調症候群(MIRAS)および感覚性運動失調ニューロパチー構音障害および眼筋麻痺(SANDO)であって、以前に指称)、ミオクローヌスてんかんミオパチー感覚性運動失調(MEMSA:てんかんを伴う脊髄小脳性運動失調(SCAE)であって、以前に指称)、センジャーズ症候群、MEGDEL症候群(難聴、脳症、およびリー-様症候群を含む3-メチルグルタコン酸尿症としても知られる)、ピアソン症候群、不規則な赤色ぼろ線維を有するミオクローヌスてんかん(MERRF)、神経性筋肉の弱化、運動失調および色素性網膜炎(NARP)、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、ミトコンドリア神経胃腸管脳筋症(MNGIE)症候群、カルニチン欠乏、カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)欠乏、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A(CPT I)欠乏、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT II)欠乏、クレアチン欠乏症候群、グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ(GAMT)欠乏を含むクレアチン欠乏症候群、L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT)欠乏、クレアチントランスポーター欠乏(SLC6A8-関連クレアチントランスポーター欠乏を含む)、チミジンキナーゼ2欠乏(TK2D)、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠乏(PDCD)、脂肪酸酸化障害(FAOD)、アシル-CoA脱水素酵素9(ACAD9)欠乏を含む脂肪酸酸化障害、複合アシル-CoA脱水素酵素欠乏(MADD)、長鎖アシル-CoA脱水素酵素(LCAD)欠乏、長鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(LCHAD)欠乏、中鎖アシル-CoA脱水素酵素(MCAD)欠乏、短鎖アシル-CoA脱水素酵素(SCAD)欠乏、短鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(SCHAD)欠乏、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD)欠乏、コ-エンザイムQ10欠乏、および多発性ミトコンドリア機能障害症候群からなる群から選択された1つ以上を含むが、これに制限されない。
【0035】
一部実施形態において、本説明は、対象体におけるミトコンドリア機能を向上させることによって、ミトコンドリア疾患を治療する方法を提供し、これは、次からなる群から選択された1つ以上の化合物の有効量を前記対象体に投与する段階を含む:ジョサマイシン、シプロテロン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、メチラポン、およびその薬学的に許容可能な塩、異性体、水和物、および互変異性体。
【0036】
一部実施形態において、シプロテロンの薬学的に許容可能な塩はアセテートである。
【0037】
一部実施形態において、ミトコンドリア疾患は、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、ミトコンドリアミオパチー、脳症、乳酸アシドーシス、および脳卒中-様エピソード(MELAS)症候群、ミトコンドリア複合体I欠乏、ミトコンドリア複合体II欠乏、ミトコンドリア複合体III欠乏、ミトコンドリア複合体IV欠乏、ミトコンドリア複合体V欠乏、リー症候群、常染色体優性視神経萎縮症(ADOA)、脳幹および脊髄侵入および乳酸上昇を含む白質脳症(LBSL)、ルフト疾患、複合アシル-CoA脱水素酵素(MAD)欠乏、ミトコンドリアエノイルCoA還元酵素タンパク質-関連神経変性(MEPAN)症候群、ミトコンドリアDNA枯渇症、ミトコンドリア脳症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠乏、ミトコンドリアミオパチー、フリードライヒ運動失調、バルト症候群、致死性乳児心臓脳筋症、シャルコー-マリー-トゥース疾患、乳児乳酸アシドーシス、先天性乳酸アシドーシス(CLA)、慢性乳酸アシドーシス、カーンズ-セイヤー症候群(KSS)、ミトコンドリア遺伝性糖尿病および難聴(MIDD)、アルパーズ-ハッテンロハー症候群(AHS)、小児期筋大脳肝症スペクトラム(MCHS)、運動失調ニューロパチースペクトラム(ANS;ミトコンドリア劣性運動失調症候群(MIRAS)および感覚性運動失調ニューロパチー構音障害および眼筋麻痺(SANDO)であって、以前に指称)、ミオクローヌスてんかんミオパチー感覚性運動失調(MEMSA:てんかんを伴う脊髄小脳性運動失調(SCAE)であって、以前に指称)、センジャーズ症候群、MEGDEL症候群(難聴、脳症、およびリー-様症候群を含む3-メチルグルタコン酸尿症としても知られる)、ピアソン症候群、不規則な赤色ぼろ線維を有するミオクローヌスてんかん(MERRF)、神経性筋肉の弱化、運動失調および色素性網膜炎(NARP)、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、ミトコンドリア神経胃腸管脳筋症(MNGIE)症候群、カルニチン欠乏、カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)欠乏、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A(CPT I)欠乏、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT II)欠乏、クレアチン欠乏症候群、グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ(GAMT)欠乏を含むクレアチン欠乏症候群、L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT)欠乏、クレアチントランスポーター欠乏(SLC6A8-関連クレアチントランスポーター欠乏を含む)、チミジンキナーゼ2欠乏(TK2D)、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠乏(PDCD)、脂肪酸酸化障害(FAOD)、アシル-CoA脱水素酵素9(ACAD9)欠乏を含む脂肪酸酸化障害、複合アシル-CoA脱水素酵素欠乏(MADD)、長鎖アシル-CoA脱水素酵素(LCAD)欠乏、長鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(LCHAD)欠乏、中鎖アシル-CoA脱水素酵素(MCAD)欠乏、短鎖アシル-CoA脱水素酵素(SCAD)欠乏、短鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(SCHAD)欠乏、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD)欠乏、コ-エンザイムQ10欠乏、および多発性ミトコンドリア機能障害症候群からなる群から選択された1つ以上を含むが、これに制限されない。
【0038】
定義
【0039】
本明細書において使用されるような特定用語の定義は、下記に提供される。他に定義されない限り、本願に使用されたすべての技術および科学用語は、一般的に本技術が属する技術分野の当業者が一般的に理解するものと同一の意味を有する。
【0040】
具体的に言及されるか、文脈上明らかでない限り、本願に使用されるように、用語「約」は当業界の正常な許容誤差範囲内であって、例えば、平均の2標準偏差以内として理解される。約は、明示された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内として理解され得る。文脈上明らかでない限り、本願に提供されたすべての数値は、用語約に変形され得る。
【0041】
本願に使用されるような用語「生物学的サンプル」は、対象体からのサンプルを指称し、任意の体液、滲出物、組織、または細胞を含む。非-制限的な形態は、血液、血漿、血清、尿、涙、痰、便、唾液、鼻腔綿棒、細胞、例えば、非制限的に末梢血単核球細胞(PBMC)、白血球、および組織サンプル(例えば、生検サンプル)を含む。サンプルは、新鮮であるか、冷凍されるか、別に処理されるか、本願に開示された方法による評価のために保存され得る。
【0042】
本願に使用されるように、用語「向上させる」(または「向上させた」または「向上」)は、臨床結果を含めて有益であるか、所望する結果を収得するためのアプローチである。例えば、向上は、ミトコンドリア生理学のバイオマーカーを正常化することが、対象体に対する最適な結果を達成できないことがあるという点において、ミトコンドリア機能障害として特徴付けられる疾患または病態に苦しむ対象体において有益な効果であり得;このような場合、ミトコンドリア生理学の1つ以上のバイオマーカーの向上、例えば、正常よりも高い水準のATPが有益であり得るか、正常よりも低い水準の乳酸(ラクテート)がこのような対象体に対して有益であり得る。
【0043】
本願に使用されるように、用語「治療する」(または「治療した」または「治療」)は、臨床結果を含めて有益であるか、所望する結果を収得するためのアプローチである。本説明の目的のために、有益であるか、所望する臨床結果は、疾患、例えば、ミトコンドリア疾患の1つ以上の症状の緩和、疾患、例えば、ミトコンドリア疾患の1つ以上の症状の減少、疾患、例えば、ミトコンドリア疾患の1つ以上の症状の予防、疾患、例えばミトコンドリア疾患の1つ以上の症状の治療、疾患、例えば、ミトコンドリア疾患の1つ以上の症状の好転、疾患の1つ以上の症状の発症、例えば、ミトコンドリア疾患の発症の遅延、疾患の1つ以上の症状の程度、例えば、ミトコンドリア疾患の程度の減少、疾患、例えば、ミトコンドリア疾患の安定化、疾患の進行、例えば、ミトコンドリア疾患の進行の遅延または減速、疾患によって苦しむ対象体の生活の質、例えば、ミトコンドリア疾患によって苦しむ対象体の生活の質の増加、および/または対象体の生存の延長を含むが、これに制限されない。一部実施形態において、例えば、対象体が本願に記載された方法によって活性剤の治療的量を受けた後、ミトコンドリアの酸化的リン酸化の崩壊において観察可能なおよび/または測定可能な減少を示す場合、対象体はミトコンドリア機能障害として特徴付けられる疾患または障害に対して成功的に「治療される」。また、記載されたような医学的疾患および病態の多様な治療または予防モードは、全体的治療または予防を含むが、また、全体的治療または予防未満を含む「実質的」を意味するものと意図され、ここで、一部生物学的または医学的に関連した結果が達成されることを理解しなければならない。
【0044】
本願に使用されるように、用語「有効量」または「治療的有効量」は、明示された機能を向上させるか、例えば、所望するおよび/または有益な機能を向上または増加させ、所望しない機能を減少または低下させるか;症状のうち1つ以上を好転、一時的緩和、弱化および/または遅延させるように明示された疾患、病態、または疾患を治療するために十分な化合物、組成物、または薬物の量を指称する。例えば、ミトコンドリア疾患に関連して、有効量は、ミトコンドリア疾患またはこの潜在的な多重-システム臨床の特徴の一部の発達を遅らせることに十分な量を含む。一部実施形態において、有効量は、再発または進行を予防または遅延させるために十分な量である。有効量は、1つ以上の投与によって投与され得る。例えば、ミトコンドリア疾患の場合、化合物、組成物、または薬物の有効量は、(i)筋肉機能障害をある程度に抑制、遅滞、減速、好ましくは停止させ/させるか;(ii)神経機能障害をある程度に抑制、遅滞、減速、好ましくは停止させ/させるか;(iii)呼吸機能障害をある程度に抑制、遅滞、減速させ/させるか;(iv)罹患率をある程度に抑制、遅滞、減速させ/させるか;(v)ミトコンドリア疾患の発生および/または再発を予防または遅延させ/させるか;(vi)ミトコンドリア疾患を有することに関連した症状のうち1つ以上をある程度に軽減させることができる。
【0045】
本願に使用されたように、薬剤、薬物、または化合物の対象体に対する「投与」は、この意図された機能を遂行するために、薬剤、薬物、または化合物を対象体に導入または伝達する任意の経路を含む。本説明の目的のために、投与は、非制限的に静脈内、門脈内、動脈内、腹腔内、肝臓内、肝臓動脈注入により、小胞内、皮下、脊髄腔内、肺内、筋肉内、気管内、眼球内、経皮的、皮内、局部的、経口的、または吸入によって遂行される。投与は、自己-投与および他人による投与を含む。本願に使用されたように、用語「対象体」(または「対象体ら」)は、ヒトまたは非-ヒト対象体、例えば、非制限的に非-ヒト霊長類、犬、猫、馬、齧歯類、ウサギなどであり得る。
【0046】
本願に記載された本説明の形態および実施形態は、形態および実施形態から「なる」および/または「本質的にこれからなる」を含むものとして理解される。
【0047】
本願および添付された請求の範囲に使用されたように、単数形態「(単数形)」は、文脈が別途明白に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0048】
活性成分化合物および組成物
【0049】
実施形態において、ジョサマイシン、シプロテロン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、メチラポン、およびその薬学的に許容可能な塩、異性体、水和物、および互変異性体からなる群から選択された1つ以上が活性成分として使用される。
【0050】
薬学的に許容可能な塩は、ヒトおよび/または動物に薬物または医薬として投与され得、投与時に遊離化合物(中性化合物または非-塩化合物)の生物学的活性の少なくとも一部を維持する塩である。羅列された化合物の所望する塩は、化合物を酸で処理することによって当業者に知られた方法により製造され得る。無機酸の形態は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸を含むが、これに制限されない。有機酸の形態は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、スルホン酸、およびサリチル酸を含むが、これに制限されない。アミノ酸と塩基性ペプチドの塩、例えば、アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩も製造され得る。酸性ペプチドの所望する塩は、化合物を塩基で処理することによって当業者に知られた方法により製造され得る。酸性ペプチドの無機塩の形態は、アルカリ金属およびアルカリ土類塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、銅塩、第2鉄塩、およびカルシウム塩;アンモニウム塩;およびアルミニウム塩を含むが、これに制限されない。酸性ペプチドの有機塩の形態は、プロカイン、ジベンジルアミン、N-エチルピペリジン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、およびトリエチルアミン塩を含むが、これに制限されない。アミノ酸と酸性ペプチドの塩、例えば、リシン塩も製造され得る。
【0051】
一部実施形態において、シプロテロンの薬学的に許容可能な塩はアセテートである。
【0052】
2つ以上の活性成分が使用される場合、活性成分は、個別的に、順次的または同時に存在し得る。本願に使用されたように、用語「個別的に」は、異なる経路によって同一の時間または実質的に同一の時間に2つ以上の活性成分の投与を指称する。本願に使用されるように、用語「順次的に」は、投与経路が同一または相違、相違する時間に2つ以上の活性成分の投与を指称する。特に、順次的使用は、他の活性成分または他の活性成分の投与が始まる前に活性成分のうち1つの全体投与を指称する。したがって、他の活性成分または成分を投与する前に、活性成分のうち1つを数分、数時間、または数日にわたって投与することが可能である。本願に使用されるように、用語「同時に」は、同一の経路によって、および同一の時間に、または実質的に同一の時間に2つ以上の活性成分の投与を指称する。
【0053】
本願に記載された活性剤は、本願に記載された医学的疾患または病態、例えば、ミトコンドリア機能障害に関連した病態および症状の治療または予防のために、対象体に単独または併用して投与するための薬学組成物に混入され得る。このような組成物は、典型的には活性剤(例えば、ジョサマイシン、シプロテロン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、メチラポン、およびその薬学的に許容可能な塩、異性体、水和物、および互変異性体)および薬学的に許容可能な担体を含む。本願に使用されるように、用語「薬学的に許容可能な担体」は、薬学的投与に常用可能な塩水、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗バクテリア剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。補充活性化合物も組成物に混入され得る。
【0054】
薬学組成物は、典型的にその意図された投与経路に常用可能なように製剤化される。投与経路の形態は、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内、または皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼内、イオン泳動、および経粘膜投与を含む。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、次の構成要素を含むことができる:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶媒;抗バクテリア剤、例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベン;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸またはバイサルファイトナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば、アセテート、クエン酸塩、またはリン酸塩、および緊張性調整剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸またはナトリウムヒドロキシドで調整され得る。非経口製剤は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスまたはプラスチックで作られた多重用量バイアルに同封され得る。患者または治療する医師の便宜のために、投薬剤形は、治療過程(例えば、1週間の治療)に必要なすべての装備(例えば、薬物バイアル、希釈剤バイアル、シリンジ、および針)を含むキットで提供され得る。
【0055】
注射用に適合した薬学組成物は、滅菌注射用溶液または分散液の即時製造のための滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌粉末を含むことができる。静脈内投与の場合、適格な担体は、生理食塩水、静菌水、クレモフォール(Cremophor)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。すべての場合、非経口投与用組成物は、滅菌でなければならず、容易な注入可能性(syringability)が存在する程度に流動的でなければならない。製造および保管条件のもとにおいて安定的でなければならず、微生物、例えば、バクテリアおよび真菌の汚染作用に対して保存されなければならない。
【0056】
組成物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る担体を含むことができる。
【0057】
組成物は、多様な抗バクテリア剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチオメラソルなどを含むことができる。酸化を防止するためにグルタチオンおよびその他の抗酸化剤を含むことができる。組成物は、また、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物に含むことができる。注射可能な組成物は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含み、吸収を延長させることができる。
【0058】
組成物は、必要な量の活性成分化合物を必要に応じて、前記に列挙した成分のうち1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒に混入した後、濾過滅菌することによって製造され得る滅菌注射溶液であり得る。例えば、分散液は、活性化合物を、基本分散媒および前記列挙したものから必要な他の成分を含む滅菌ビークルに混入することによって製造される。滅菌注射溶液の製造のための滅菌粉末の場合、典型的な製造方法は、真空乾燥および凍結乾燥を含み、これは活性成分に加えて、事前に濾過-滅菌溶液から任意の追加的に所望する成分の粉末を生産することができる。
【0059】
経口組成物は、一般的に不活性希釈剤または食用担体を含む。経口治療的投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤と混入され得、錠剤、トローチ、またはカプセル、例えば、ゼラチンカプセルの形態として使用され得る。経口組成物は、また、口腔洗浄剤として使用するための流体担体を使用して製造することができる。薬学的に相溶性である結合剤および/またはアジュバント材料が組成物の一部として含められ得る。錠剤、丸剤、カプセル、およびトローチなどは、次の成分または類似した性質の化合物のうち任意のものを含むことができる:バインダー、例えば、微晶質セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンまたはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル、またはトウモロコシデンプン;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス;滑沢剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロース、トレハロース、またはサッカリン;または、香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはシトラス(オレンジ)、またはその他の果物(グレープフルーツ、ブドウ、リンゴ、およびパイナップルなど)の香味剤。
【0060】
吸入による投与の場合、本技術の活性剤、例えば、芳香族-陽イオン性ペプチドは、適切な推進剤、例えば、気体、例えば、二酸化炭素を含む加圧容器またはディスペンサーからのエアロゾールスプレーまたは噴霧器形態で伝達され得る。
【0061】
本願に記載されたような本技術の活性剤、例えば、芳香族-陽イオン性ペプチドの全身投与も、経粘膜または経皮手段によるものであり得る。経粘膜または経皮投与の場合、浸透する障壁に対する適切な浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は、一般的に当業界で知られており、例えば、経粘膜投与の場合、洗浄剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔スプレーの使用を通じて遂行され得る。経皮投与の場合、活性化合物は、当業界で一般的に知らたように、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームとして製剤化される。一実施形態において、経皮投与は、イオン泳動法によって遂行され得る。
【0062】
活性化合物は、担体システムとして製剤化され得る。担体は、コロイドシステムであり得る。コロイドシステムは、リン脂質二重層ビークルであるリポソームであり得る。一実施形態において、治療剤、例えば、芳香族-陽イオン性ペプチドは、ペプチドの完全性を維持しつつリポソームにカプセル化される。当業者は、リポソームを製造する多様な方法があることを理解するであろう。リポソーム製剤は、クリアランスを遅延させ、細胞性摂取を増加させ得る。例えば、Reddy,Ann.Pharmacother.,34(7-8):915-923(2000))を参考にする。活性化合物は、また、非制限的に可溶性、不溶性、透過性、不透過性、生分解性、または胃滞留ポリマーまたはリポソームを含む薬学的に許容可能な成分から製造された粒子にローディングされ得る。このような粒子には、ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、マイクロ粒子、生分解性マイクロ粒子、ナノ球体、生分解性ナノ球体、マイクロスフェア、生分解性マイクロスフェア、カプセル、エマルジョン、リポソーム、ミシェル、およびウイルスベクトルシステムを含むが、これに制限されない。
【0063】
ポリマーマイクロスフェアの持続放出剤型の形態は、例えば、PCT公開公報WO99/15154号(Tracyなど)、米国特許第5,674,534号および第5,716,644号(両方ともZaleなど)に記載されている。
【0064】
一部実施形態において、活性化合物は、移植体およびマイクロカプセル化された送達システムを含み、身体からの迅速な除去に対して活性化合物を保護する担体、例えば、制御放出製剤と共に製造され得る。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することができる。このような剤型は、知られた技術を使用して製造され得る。
【0065】
典型的には、治療的または予防的効果を達成するために十分な活性化合物の有効量は、1日当たり体重1キログラム当たり約0.000001mgないし1日当たり体重1キログラム当たり約10,000mgの範囲である。適切には、投与量の範囲は、1日当たり体重1キログラム当たり約0.0001mgないし1日当たり体重1キログラム当たり約100mgである。一実施形態において、活性化合物の単一投与量は、体重1kg当たり0.001-10,000マイクログラムの範囲である。
【0066】
本発明のこれらおよび他の形態および利点は、後続する詳細な説明および添付された請求の範囲から明らかになるだろう。本願に記載された多様な実施形態の特性のうち1つまたはすべては、本説明の他の実施形態を形成するために組み合わされ得ることを理解しなければならない。
【0067】
実施形態
【0068】
現在開示される主題は、制限ではなく、現在開示される主題の例示として提供される次の実施形態を参照してより確かに理解されるであろう。
【0069】
実施形態1:AI技術を用いたミトコンドリア疾患に対する用途変更された薬物化合物の発見
【0070】
方法
【0071】
ミトコンドリア機能の向上および/またはミトコンドリア疾患(ら)の治療に適切な化合物をスクリーニングするために、4百万個の既存化合物にAI-基盤のインシリコアプローチを適用した。知られた化合物に適用されたミトコンドリア疾患に対する活性化合物をスクリーニングするためのインシリコアプローチは、以下の通りである。
【0072】
モジュール1-グラフィック知識データベース
【0073】
モジュール2-遺伝子の薬物-摂動された転写発現パターンに基づく薬物用途変更モデル
【0074】
モジュール3-モジュール2の病態生理的特性-具現された潜在空間のクラスタリングモデル
【0075】
モジュール4-構造的および薬物-様類似性に基づく薬物用途変更モデル
【0076】
モジュール5-薬物-中心情報検索モデル
【0077】
第1シードグループ
【0078】
AI-基盤の薬物用途変更モデルにシード化合物として適用するために、ミトコンドリア生合成(biogenesis)を増加させるものとして知られたベザフィブラート、クルクミン、およびレスベラトロールの3つの治療的化合物を文献(Hirano M et al.,Emerging therapies for mitochondrial diseases.Essays Biochem.2018;62(3):467-481;EL-Hattab AW et al.,Therapies for mitochondrial diseases and current clinical trials.Mol Genet Metab.2017;122(3):1-9;Nightingale H.et al.,Emerging therapies for mitochondrial diseases.Brain.2016;139(6):1633-1648)から選択した。
【0079】
追加として、追加の4つの薬物であるアシピモックス、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、およびバレニクリンをモジュールIによって選択し、第1シードグループにおいてミトコンドリア生合成に対する特性を向上させるために第1シードグループに添加した。モジュール1において提案された4つの薬物は、薬物-標的、薬物-経路、および疾患-経路の側面において前記3つの薬物(ベザフィブラート、クルクミン、およびレスベラトロール)と類似した連結特性を有している。
【0080】
ミトコンドリア病態生理学に関するこのような化合物の関連性は、文献によって証明され;アシピモックスは、臨床研究におけるNAD+前駆体として筋肉ミトコンドリア機能に有益な効果を示し(van de Weijer T et al.,Evidence for a direct effect of the NAD+ precursor acipimox on muscle mitochondrial function in humans.Diabetes.2015;64(4):1193-1201)、高齢男性の筋肉性能に関する以前の臨床研究(NCT02792621)の肯定的な結果以降、阻害されたミトコンドリア機能を有する筋肉性能に関する新たな臨床研究(NCT03325491)に進入した。ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンは、脂肪組織、およびフリードライヒ運動失調およびダウン症候群を有する患者細胞においてペルオキシソーム増殖因子-活性化された受容体(PPAR)ガンマアゴニストとしてミトコンドリア生合成を誘導するものとして報告された(Bogacka I.et al.,Pioglitazone Induces Mitochondrial Biogenesis in Human Subcutaneous Adipose Tissue In Vivo.Diabetes.2005;54(5):1392-1399;Aranca TV.et al.,Emerging therapies in Friedreich’s ataxia.Neurodegener Dis Manag.2016;6(1):49-65;Mollo N.et al.,Pioglitazone Improves Mitochondrial Organization and Bioenergetics in Down Syndrome Cells.Front Genet.2019;10)。バレニクリンは、ニコチン性アセチルコリン受容体のアルファ4/ベータ2下位類型の部分アゴニストである。バレニクリン(NCT00803868)およびピオグリタゾン(NCT00811681)の臨床試験をコーディングしたタンパク質が、ミトコンドリア呼吸複合体に必須の役割を果たすFXNの遺伝的欠陥がある神経退行性運動疾患であるフリードライヒ運動失調症に対して遂行した。したがって、この4つの治療化合物(アシピモックス、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、およびバレニクリン)を前述した3つの知られた治療化合物(ベザフィブラート、クルクミン、およびレスベラトロール)と共にミトコンドリア生合成シードグループに指定した。
【0081】
第2シードグループおよび第3シードグループ
【0082】
報告されたミトコンドリア疾患に対する臨床試験において発見された治療的分子を収集し、13個の分子を第2シードグループとして選択した(表1)。
【0083】
【0084】
報告された臨床試験薬物の本シードグループは、抗酸化剤、ミトコンドリア生合成促進剤、およびNAD+調整因子からなり、抗酸化および酸化的ストレス-調整化合物が最も多かった。
【0085】
ミトコンドリア生物学の最近の病理学的、生理学的、および薬学的発展を補完するために、第3シードグループを追加的に準備した。神経退行性疾患、酸化的ストレス-誘導された疾患、または代謝疾患に関して報告された前臨床および臨床試験の薬物化合物をモジュール1に適用して、ミトコンドリア作用メカニズム(MOA)を有する化合物を識別した。モジュール1に使用された疾患は、非制限的にパーキンソン疾患、アルツハイマー疾患、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、虚血再灌流傷害、NASH、心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎疾患、および糖尿病を含むものである。また、最近報告されたミトコンドリア疾患の標的のために設計された治療的分子をモジュール1において調査した。ミトコンドリア疾患の療法に関して注目される最近生じた標的は、DRP1阻害剤、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、SIRT1活性化剤、PARP-1阻害剤、およびNRF2活性化剤を含むが、これに制限されない。その結果、モジュール1により提案された治療的分子のうち、インビボモデルにおいてミトコンドリアMOAが立証された10個の化合物をミトコンドリアMOAシードグループ(第3シードグループ)として選定した。これらはイメグリミン(Vial G.et al.,Imeglimin Normalizes Glucose Tolerance and Insulin Sensitivity and Improves Mitochondrial Function in Liver of a High-Fat,High-Sucrose Diet Mice Model.Diabetes.2015;64(6):2254-2264)、ブラカメシン(Missling CU,ANAVEX 2-73,a Clinical Candidate for Neurodevelopmental Disorders:New data Including AnC-Seizure data in Angelman Syndrome.:24)、イスラジピン(Guzman JN,et al.,Systemic isradipine treatment diminishes calcium-dependent mitochondrial oxidant stress. J Clin Invest.2018;128(6):2266-2280)、ラトレピルジン(Eckert SH,et al.,Mitochondrial Pharmacology of Dimebon(Latrepirdine)Calls for a New Look at its Possible Therapeutic Potential in Alzheimer’s Disease.Aging Dis.2018;9(4):729-744)、レスベラトロール(Decui L,et al.,Micronized resveratrol shows promising effects in a seizure model in zebrafish and signalizes an important advance in epilepsy treatment.Epilepsy Res.2020;159:106243)、ニコチンアミド(Bayrakdar ET,et al.,Ex vivo protective effects of nicotinamide and 3-aminobenzamide on rat synaptosomes treated with Aβ(1-42).Cell Biochem Funct.2014;32(7):557-564)、Mdivi-1(Bido S, et al.,Mitochondrial division inhibitor-1 is neuroprotective in the A53T-α-synuclein rat model of Parkinson’s disease.Sci Rep.2017;7)、CNB-001(Jayaraj RL,et al.,CNB-001 a novel curcumin derivative,guards dopamine neurons in MPTP model of Parkinson’s disease.Biomed Res Int.2014;2014:236182)、CPUY192018(Lu M-C,et al.,CPUY192018,a potent inhibitor of the Keap1-Nrf2 protein-protein interaction,alleviates renal inflammation in mice by restricting oxidative stress and NF-κB activation.Redox Biol.2019;26;Lu M-C,et al.,An inhibitor of the Keap1-Nrf2 protein-protein interaction protects NCM460 colonic cells and alleviates experimental colitis.Sci Rep.2016;6))、および化合物14(Ma b,et al.,Design,synthesis and identification of novel,orally bioavailable non-covalent Nrf2 activators.Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters.Published online December 2,2019:126852)である。
【0086】
薬物-摂動された転写類似性を使用することによるミトコンドリア疾患の治療効能に対する候補薬物化合物の判定
【0087】
ミトコンドリア生合成シードグループ(第1シードグループ)をモジュール2およびモジュール3に適用した。モジュール2は、Broad Institute LINCSプロジェクトから収得した薬物-摂動された遺伝子発現データセットを訓練することによって、転写類似性に基づく薬物使用変更モデルである(Subramanian A.,et al.,A Next Generation Connectivity Map:L1000 Platform And The First 1,000,000 Profiles.bioRxiv.Published online May 10,2017:136168;Musa A.,et al.,L1000 Viewer:A Search Engine and Web Interface for the LINCS Data Repository.Front Genet.2019;10)。LINCSライブラリーにおいて、11,000個超過の薬物の新たな用途を予測する。ミトコンドリア疾患がモジュール2の薬物適応症システムに分類されなかったため、モジュール3を生成した。モジュール3において、最適化されたハイパー-パラメータ下のモジュール2の潜在空間における薬物摂動された遺伝子発現データのそれぞれに与えられたベクトルを訓練およびクラスタリングした。クラスター内の薬物の遺伝子発現データの分布パターンおよび頻度をスコアリングシステムに反映した。結果として、シード化合物の薬物-摂動された転写類似性を使用することによって、モジュール3からいわゆる隣接化合物を抽出した。実際には、シード化合物および隣接化合物間の薬物-標的類似性は、抗癌薬物と知られたターゲットからなる癌検証セットをモジュール3に適用してインシリコにおいて検証した。
【0088】
構造的および薬物-様類似性を使用することによるミトコンドリア疾患の治療効能に対する候補薬物化合物の判定
【0089】
モジュール4を、公開データベースから物理的活動を含む約4百万個のSMILESストリングのデータセットを使用することによって構成した。モジュール4のディープラーニングアルゴリズムは、化合物の構造的および薬物―様類似性を具現する潜在化学空間を生成し、これを通じてシード化合物から所望する特性を有する隣接化合物を発見することができる。
【0090】
臨床試験シードグループ(第2シードグループ)およびミトコンドリアMOAシードグループ(第3シードグループ)をモジュール4に適用した。臨床試験シードグループからの薬物化合物をコサイン距離の計算によって選択し、ミトコンドリアMOAシードグループからの薬物化合物リストをコサイン距離およびユークリッド距離両方をコンピューティングすることによって抽出した。それぞれのシードの隣接化合物を、これらのSMILESをCAS登録番号とマッピングすることによって識別した。CAS登録番号のない化合物をリストから除いた。
【0091】
フィルタリング
【0092】
すべての隣接化合物をモジュール5に適用して、これを通じて研究者が科学文献および特許から薬物-中心情報を検索できるようになった。モジュール5においては、ミトコンドリア呼吸連鎖反応の機能障害による1次ミトコンドリア疾患に対する治療剤として報告されたか、毒性試験によってミトコンドリア毒性を有するものとして立証されたか、ミトコンドリア疾患を有する患者または非制限的に細胞性イベント、例えば、アポトーシス、ROS生産、およびミトコンドリア呼吸複合体の阻害を含むミトコンドリア機能および/またはミトコンドリア恒常性に毒性があるものとして報告された化合物を除いた。追加的には、毒性が報告された薬物や薬物開発に脆弱点を有する薬物、例えば、前臨床段階の薬物、非経口投与の薬物、購入可能ではない薬物、および深刻な副作用を有する薬物を除いた。
【0093】
結果
【0094】
隣接化合物リストを、ミトコンドリア疾患またはミトコンドリア-関連疾患に対する治療的および/または起電的活性に関して27個のシード化合物を使用してSTANDIGM AI-基盤の薬物用途変更工程を通じて抽出した。
【0095】
濾過工程後、3つの薬物化合物(即ち、ジョサマイシン、シプロテロン、およびシルニジピン)を臨床試験シードグループとの構造的類似性を使用するアプローチを通じて選択し、3つの薬物化合物(即ち、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポン)をミトコンドリアMOAシードグループとの構造的類似性を使用するアプローチを通じて選択した。
【0096】
表2は、それぞれのアプローチから選択された6つの化合物をIUPAC名称および化学的構造と共に図示する。以下の実施形態2において、シプロテロンを塩形態として試験し、この塩形態も表2に記載した。しかし、6つの化合物の薬学的に許容可能な塩は、表2に記載された塩形態に制限されない。
【0097】
【0098】
実施形態2:ミトコンドリア疾患の治療効能に対するAI-発見薬物化合物のインビトロ検証
【0099】
方法
【0100】
細胞培養および化学的処理
【0101】
SH-SY5Yヒト神経芽細胞腫の細胞を37℃/5%のCO2において、10%のウシ胎児血清(FBS)、100U/mlのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンで補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)/F12(完全培地、CM)において培養した。5×104個の細胞/ウェルにシーディングされた細胞を96-ウェルプレートにおいて24時間培養した後、血清-欠乏培地(SDM、0.5%のFBSを含むDMEM/F12)において16時間恒温処理した。SDM中の細胞をそれぞれの化学物質で4時間前-処理した後、1mMのミトコンドリア複合体Iの阻害剤(MPP+)またはジメチルスルホキシド(DMSO)ビークルと20時間恒温処理した。
【0102】
細胞生存力アッセイ-メチルチアゾールテトラゾリウム(MTT)アッセイ
【0103】
MTTアッセイは、生きている細胞においてMTTをホルマザンに還元させるミトコンドリアNAD(P)H-依存的酸化還元酵素活性の尺度である。したがって、MTTアッセイは、ミトコンドリア代謝率を測定することによって、生存可能な細胞の量を検査し(Rai Y.et al.,Mitochondrial biogenesis and metabolic hyperactivation limits the application of MTT assay in the estimation of radiation induced growth inhibition,Scientific Reports.2018;8(1):1531)、これは細胞の代謝生存力を示す。96-ウェルプレートのSDM中のSH-SY5Y細胞(2.5×104個の細胞/ウェル)を前段落に示すように化学物質によって処理し、4時間3-(4,5ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル-テトラゾリウムブロミド(MTT、Sigma)溶液(PBS中0.2mg/ml MTT)によって追加で恒温処理した。生きている細胞によって形成されたMTTホルマザン沈殿物を0.04N HCl/イソプロパノール100μlに溶解させた。540nmにおける吸光度をELISAマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)で測定した。
【0104】
細胞内ATPアッセイ-ルシフェラーゼ-基盤のアッセイ
【0105】
細胞内ATP含有量は、製造会社の指針によってCell Titer ルシフェラーゼキット(Promega)を用いたルシフェリン-ルシフェラーゼ反応で測定した。20μlの細胞溶解物を20μlのルシフェリン-ルシフェラーゼ反応緩衝液と混合し、20℃において10分間恒温処理した。発光信号をLB 9501 LUMAT(登録商標)発光計(Berthold,German)を用いて測定した。細胞のない培地を含む対照群ウェルの背景発光値を信号から減算(即ち、補正)した。ATP含有量の量をタンパク質濃度に正規化した。すべてのデータを計算後、対照群の百分率として表示した。
【0106】
ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)アッセイおよび反応性酸素種(ROS)アッセイ
【0107】
ミトコンドリア膜電位をテトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE,Molecular Probe)を使用して測定した。黒色96-ウェル培養プレートの細胞をフェノールレッドのないSDMにおいて37℃で30分間、200nMのTMREおよびHOECHST(登録商標)33342(0.5μM)と共に恒温処理した。
【0108】
同様に、総およびミトコンドリアROS生成をそれぞれCM-H2DCFDAおよびMitoSoxを使用して測定した。細胞を37℃において1時間、1μMのCM-H2DCFDAまたは5μMのMitoSox、および0.5μMのHoechst 33342と共に恒温処理した。
【0109】
TMREの場合は550nm/580nm、MitoSoxの場合は510nm/580nm、CM-H2DCFDAの場合は494nm/522nmにおける蛍光の強さを355nm/480nmにおけるHOECHST(登録商標)の強さによって正規化した(Spectramax Gemini EM, Molecular Devices, Sunnyvale, CA, USA)。
【0110】
結果
【0111】
3つの薬物化合物(ジョサマイシン、シプロテロン、およびシルニジピン)は保護効果を示す
【0112】
休止期ヒト神経芽細胞腫の細胞(SH-SY5Y)を20時間1mMのMPP+処理前に多様な濃度(即ち、1nM、1μM)のそれぞれの薬物化合物で4時間処理した。
【0113】
図1A~1Cに図示されるように、ヒト神経芽細胞腫の細胞(SH-SY5Y)において、MPP
+誘導された細胞性およびミトコンドリア損傷は、ジョサマイシン、シプロテロンアセテート、およびシルニジピンの3つの化合物のすべてによって緩和された。具体的には、
図1Aおよび1Bに図示されるように、3つの化合物すべては、細胞内ATP含有量およびTMRE-媒介されたミトコンドリア膜電位において、MPP
+に対する保護効果を示した。特に、大部分の化合物は、臨床試験においてミトコンドリア疾患に対する参照および治療的化合物であるホスホクレアチンと類似またはより優れた保護能力を示した。
【0114】
図1Cに図示されるように、3つの薬物すべては、MPP
+-誘導された死滅に対する代謝細胞の生存力を増加させた。特に、3つの化合物すべてが、1nMにおいて生存力の増加効果が統計的に有意であった。
【0115】
5つの薬物化合物(ジョサマイシン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポン)は用量-依存的方式によって保護効果を示す
【0116】
5つの薬物化合物であるジョサマイシン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンを用量-依存的方式によって保護効果を検証するためにテストした(即ち、ジョサマイシンおよびシルニジピンの場合は0.001ないし10μM、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンの場合は0.01ないし100nM)。
【0117】
図2Aおよび
図2Bに図示されるように、すべての薬物化合物は、テストされたすべての濃度範囲にわたってそれぞれの細胞生存力および細胞内ATP含有量において、MPP
+に対する保護効果を示した。興味深いことに、ジョサマイシンおよびシルニジピンは、臨床試験においてミトコンドリア疾患に対する参照薬物であるホスホクレアチンよりも優れた回復能力を示した。フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンは、臨床試験においてミトコンドリア疾患に対する他の参照薬物であるRTA408に類似した効果を示した。
図2Cに図示されるように、MPP
+によって減少したTMRE-媒介されたミトコンドリア膜電位は、5つの薬物化合物がすべてのテストされた濃度範囲にわたって処理されるときに緩和された。
【0118】
図2Dおよび
図2Eに図示されるように、ジョサマイシン、シルニジピン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポンの5つの薬物化合物すべては、テストされた濃度範囲においてMPP
+-病変細胞と比較して減少したROS生産を示した。減少水準は、2つの参照試験薬物であるホスホクレアチンおよびRTA408の水準と類似またはこれよりも優れていた。興味深いことに、シルニジピンは、0.001ないし1μMの濃度においてミトコンドリアおよび細胞性ROS生産の両方の有意な減少を示したが、ROS生産は10μMにおいて顕著に増加した。
【0119】
実施形態3:ミトコンドリア疾患治療のためのAI-発見薬物化合物のミトコンドリア疾患動物モデル、即ち、C.elegansおよびD.rerio(ゼブラフィッシュ)を用いたインビボ検証
【0120】
方法
【0121】
C.elegansの寿命アッセイ-活動、死亡率、および胴体の長さ
【0122】
寿命アッセイは、ミトコンドリア複合体Iの突然変異、C.elegans gas-1(fc21)およびC.elegans野生型(ブリストルN2)において遂行した。ブリストルN2およびgas-1(fc21)集団を漂白によって同期化させ、線虫飼育培地(NGM)プレートにおいてL4幼虫段階に成長させた。30-35個のL4雌雄同体をCOPAS BIOSORTERTMによって24-ウェルプレートからそれぞれのウェルに分類した。24-ウェルプレートは、NGM、C.elegansの餌であるE.Coli(大腸菌)OP50、C.elegansの子孫発達を防ぐために50μMのフルオロデオキシウリジン(FUDR)、および適切な濃度の薬物化合物で構成した。
【0123】
その次に、動物の寿命にわたり連続する2つのイメージを使用する24-ウェルプレートを、EPSON PERFECTIONTMV700フラットベッドスキャナーで毎日イメージングした。スキャナからの光は、C.elegansに物理的刺激を誘発し、C.elegansが生きているかを決定した。それぞれのウェルのC.elegansの動く領域を反映したそれぞれの対のイメージセットから差等イメージを計算した後、収得したイメージをヒステリシス閾値化を通じてバイナリモノクロイメージに変換した。ピクセルの違いに基づいて生成されたWormScan点数は、測定された寿命および活動値の統合測定指標である。C.elegansは、動きが10%未満の場合は死滅したものとしてスコアリングした。C.elegansの胴体の長さまたは死亡率をImage Jにおいて遂行した。統計分析をGraphpad Prism V8において遂行した。
【0124】
ミトコンドリアストレスアッセイ-ARM-6およびHSP-6蛍光法
【0125】
Hsp-6::GFP誘導をCell Insight CX5高含有量スクリーニング(HCS)プラットフォーム(Thermo Scientific)を使用して生きているC.elegans arm-6;hsp-6;gas-1(fc32)(AGH)動物に定量化して、ミトコンドリアストレスを評価した。hsp-6::GFP誘導を定量化するために、C.elegans AGH群集を同期化し、固体NGMプレートにおいて出生からL1段階まで成長させた。その次に、C.elegansを384-ウェルプレートに移し、25μMの薬物化合物と共に50μLのE.Coli OP50培地において成長させた。後続的に、C.elegansをL1からL4の幼虫段階までを384-ウェルプレートにおいて成長させた。L4段階において、C.elegansを40μLの2.4mg/mLレバミゾールで麻痺させた。生きているC.elegans AGHをイメージ化するために、高含有量イメージング分析を使用した。Arm-6を胴体の大きさのマーカーとして使用し、青色蛍光誘導を386nmの励起波長で定量化した。Hsp-6-::GFP誘導は、ミトコンドリアストレスの緑色蛍光マーカーであり、485nmの励起波長で定量化した。Hsp-6::GFP誘導からの蛍光の強さをC.elegansAGHストレイン(strain)の胴体の大きさに正規化して、薬物治療(ら)の有効性を分析した。統計的分析をGraphpad Prism V8において遂行した。
【0126】
TMREアッセイ-ミトコンドリア膜電位
【0127】
C.elegansのミトコンドリア膜電位および質量の高-処理量の定量化を、COPAS Biosorterを使用してC.elegans Cox-4::GFP(緑色蛍光タンパク質)線虫で定量化した。ミトコンドリア膜電位を赤色蛍光染料であるTMREによって測定した。C.elegans Cox-4::GFPを出生から空ベクトルおよびgas-1 RNAiプレートにおいて同期化および成長させた。L4段階において、C.elegansを薬物化合物およびTMREを含むプレートに移し、薬物化合物およびTMREに24時間同時-露出させた。次いで、C.elegansのL4段階の線虫を6mLのS.バサルで洗浄した後、S.バサルにおいて30分間恒温処理して、胃腸管から残留蛍光染料を除去した。COPAS Biosorterを線虫細胞におけるTMRE蛍光の相対の強さを測定するために、励起波長561nmおよび放出フィルター615nmを使用した。C.elegans Cox-4::GFPからのGFP蛍光を、励起波長488nmおよび放出フィルター510nmを活用して定量化した。膜電位の強さをミトコンドリア質量の強さに正規化するために、赤色蛍光を励起波長561nmおよび放出フィルター625nmにおいて測定した。
【0128】
ミトコンドリア複合体IV疾患のゼブラフィッシュモデルのインビボ効能テスト-幼虫脳死、神経筋タップ/接触反応および心拍数測定
【0129】
効能テストは、野生型(AB)およびSurf1-/-ゼブラフィッシュに対して遂行し、ここで、SURF1は、複合体IV組立因子である。ABおよびSurf1-/-ゼブラフィッシュ胚を収集し、0日目にウェルあたり10匹のゼブラフィッシュに分類した。次いで、ABおよびSurf1-/-ゼブラフィッシュを漂白によって同期化し、修正後、1日(dpf)にプロナーゼで処理した。5dpfにABおよびSurf1-/-ゼブラフィッシュに薬物化合物(1nM-10μM)を前処理した。この前処理の後、6dpfにミトコンドリア複合体IVの活性阻害のためのアジ化ナトリウム(75μM)と薬物化合物をABゼブラフィッシュに共同処理した。Surf1-/-ゼブラフィッシュの場合には、6dpfにアジ化ナトリウム(32.5μM)と薬物化合物を同時処理した。7dpfにこれらの表現型を評価した。特に、ABおよびSurf1-/-ゼブラフィッシュを生理学的パラメータ、例えば、脳死の発達、神経筋タップおよび接触反応、ならびに心臓拍動に対するアジド-単独処置された対照群と比較して、薬物化合物およびアジドの共同-処理効果についてスコアリングした。疾患状態を示す脳細胞死滅を健康なゼブラフィッシュ幼虫においては発生しない脳領域において灰色の変色を示すゼブラフィッシュとして記録した。神経筋反応を接触反応(幼虫をプローブを用いて手動で接触させたとき)および驚愕反応(培養容器をプローブを用いて軽くタッピングしたとき)によって評価した。心臓拍動を顕微鏡の可視化によって存在または不在として記録した。
【0130】
ミトコンドリア複合体IV疾患モデルにおける効能試験-水泳活動分析
【0131】
水泳活動分析をABゼブラフィッシュにおいて遂行した。胚および幼虫を28℃に維持させた。ウェル当たり10匹のゼブラフィッシュ胚を収集し、分類するために成体ゼブラフィッシュを分割されていない交配タンクに対で準備した。ABゼブラフィッシュを5dpfに薬物化合物で前処理した後、6dpfにアジ化ナトリウム(75μM)および薬物化合物で共同処理した。ABゼブラフィッシュを7dpfに96-ウェルプレートに移し、水泳活動アッセイのために条件当たり8匹のゼブラフィッシュを用いた。薬物治療を自動化されたイメージングシステムZebra Box(ViewPoint Life Sciences)を使用して評価し、データをZebraLabソフトウェア(ViewPoint Life Sciences)を使用して収集した。ゼブラフィッシュを10分間60%を光に適応させて安定した活動水準を達成した後、10分間暗黒(0%光)に露出させ、最初の5分間の運動量(locomotion)が最大に増加した後、漸進的に安定した水準に低下する驚愕反応を生産した。化合物の駆除を観察するために、10分間点灯および消灯の光のサイクルを分析当たり連続3回反復した。暗黒サイクルの最初の5分間、ゼブラフィッシュの最大動きの平均値をGraphpad Prism 7.04において分析した。
【0132】
結果
【0133】
C.elegansの寿命、活動、およびインビボ成長アッセイ-トラピジルおよびメチラポン
【0134】
2つの薬物化合物であるトラピジルおよびメチラポンを、減少したミトコンドリア複合体Iの活性を誘発するミトコンドリア複合体Iサブユニット(ndufs2-/-)同型接合のミスセンス突然変異を有するC.elegans gas-1(fc21)ストレイン(strain)のインビボ研究を通じてテストし、インビトロにおいて観察された容量-依存的な(即ち、1nM、10nM、100nM、および1μM)救済効果を検証した。
【0135】
図3Aに図示されるように、C.elegans gas-1の活動は、野生型(N2ブリストル)対照群に比べて有意に減少した一方、トラピジルは、1nM、10nM、100nM、および1μMの濃度においてミトコンドリア複合体Iの突然変異であるgas-1(fc21)から有益な効果を示した。
図3Bに図示されるように、トラピジル処理されたgas-1(fc21)線虫の生存数は、10nM、100nM、および1μMの濃度において10日目、および1nM、100nM、および1μMの濃度において15日目に未処理のgas-1(fc21)線虫の数に比べて増加した。追加として、
図3Cに図示されるように、未処理のgas-1(fc21)線虫の胴体の長さは、野生型(N2ブリストル)対照群に比べて有意に低下した一方、トラピジルの濃度が1nMから1μMに増加することによって漸進的に有意に回復した。
【0136】
図4Aに図示されるように、メチラポンは、活動で1nM、10nM、100nM、および1μMの濃度において、ミトコンドリア複合体Iの突然変異gas-1(fc21)線虫から有益な効果を示した。
図4Bに図示されるように、メチラポン処理したgas-1(fc21)線虫の生存数は、1nM、10nM、100nM、および1μMの濃度において10日および15日目に未処理のgas-1(fc21)線虫の数に比べて増加した。追加として、
図4Cに図示されるように、gas-1(fc21)線虫の胴体の長さは、野生型(N2ブリストル)対照群に比べて有意に低下した一方、1nM、100nM、および1μMの濃度において統計的に有意な改善によって回復した。
【0137】
インビボミトコンドリアストレスアッセイ-ジョサマイシンおよびシルニジピン
【0138】
ジョサマイシンおよびシルニジピンは、ミトコンドリア複合体Iの突然変異C.elegans gas-1(fc21)ストレインにおいて、高いミトコンドリアストレスに対して統計的に有意に改善された救済効果を示した。具体的には、hsp-6
p::GFP緑色蛍光レポーターを有するC.elegans gas-1(fc21)線虫をL1段階からL4段階まで25μMの緩衝液または薬物(ジョサマイシンおよびシルニジピン)で処理した。ジョサマイシン処理したC.elegans gas-1(fc21)線虫は、hsp-6p緑色蛍光の強さが未処理のgas-1(fc21)線虫に比べて12.48%低下したものとして示され、シルニジピン処理されたgas-1(fc21)線虫は、hsp-6p緑色蛍光の強さが未処理のgas-1(fc21)線虫に比べて12.06%低下したものと示された。このようなインビボ結果は、ジョサマイシンおよびシルニジピンが遺伝子-基盤の複合体I疾患動物モデルにおいて、ミトコンドリアストレスを成功的に改善させたことを立証する(
図5Aおよび5B参照)。
【0139】
【0140】
インビボミトコンドリア膜電位TMREアッセイ-シルニジピン
【0141】
インビボミトコンドリア膜電位TMREアッセイに使用されたC.elegans線虫を24時間、25μMの緩衝液または薬物化合物に露出させた。
図6に図示されるように、C.elegans gas-1線虫をgas-1にコーディングするK09A9.5遺伝子をノックダウンするために、摂食RNA干渉(RNAi)を使用して研究した。実際には、gas-1 RNAi線虫は、正常なgas-1の発現を有する空ベクトルの対照群であるL4440に比べて、58.5%程度を有意に減少したミトコンドリア膜電位を示し、これは、gas-1において発生するミトコンドリア膜電位の有意な減少を示す。25μMのシルニジピン処理したgas-1 RNAi線虫のミトコンドリア膜電位は、未処理のgas-1 RNAi線虫に比べて42.3%程度を統計的に有意に増加した(p<0.0001)。
【0142】
ミトコンドリア複合体IV疾患のゼブラフィッシュモデルにおけるインビボ効能テスト-ジョサマイシン、シプロテロン、フェロジピン、トラピジル、およびメチラポン
【0143】
ジョサマイシンをABゼブラフィッシュまたはSurf1
-/-ゼブラフィッシュにおいて6dpfにアジ化ナトリウムと共に共同-処理し、ここで、SURF1は、ミトコンドリア複合体IV組立因子であり、SURF1の欠乏は、ヒトにおけるミトコンドリア疾患と関連している。
図7Aに図示されるように、ジョサマイシン処理されたABゼブラフィッシュは、1nMないし100nMの濃度において75μMのアジ化ナトリウム-誘導された動物機能障害(幼虫脳死、神経筋タップおよび接触反応の低下、および心臓拍動の不在)の予防を示した。追加として、ジョサマイシン処理されたSurf1
-/-ゼブラフィッシュは、1nMないし1μMの濃度を通じて32.5μMのアジ化ナトリウム-誘導された機能障害(幼虫脳死、神経筋タップおよび接触反応の低下、および心臓拍動の不在)の回復を示した。
【0144】
図7Bに図示されるように、10μMのシプロテロンアセテートは、75μMのアジ化ナトリウムで処理されたABゼブラフィッシュにおいてアジ化ナトリウム-誘導された動物機能障害および死滅(幼虫脳死、神経筋反応の低下、および心臓拍動の不在)を完全に予防した。追加として、10μMのシプロテロンアセテートは、32.5μMのアジ化ナトリウムで処理されたSurf1
-/-ゼブラフィッシュにおいて、アジ化ナトリウム-誘導された機能障害(幼虫脳死、神経筋タップおよび接触反応の低下、および心臓拍動の不在)を予防した。
【0145】
フェロジピン処理されたABゼブラフィッシュは、(
図7Cに図示されるように)100nMないし1μMの濃度においてアジ化ナトリウム-誘導された動物機能障害および死滅(幼虫脳死、神経筋タップおよび接触反応の低下、および心臓拍動の不在)を予防した。
【0146】
Surf1
-/-ゼブラフィッシュを、1nMないし10μMの濃度範囲にわたってトラピジルで処理した。
図7Dに図示されるように、トラピジルは、1nMないし100nMの濃度においてアジ化ナトリウム-誘導された動物機能障害および死滅(幼虫脳死、神経筋タップおよび接触反応の低下、および心臓拍動の不在)を予防する有益な効果を生産した。
【0147】
メチラポン処理されたABゼブラフィッシュは、(
図7Eに図示されるように)1μMの濃度においてアジ化ナトリウム-誘導された動物機能障害(幼虫脳死、神経筋応答の低下、および心臓拍動の不在)を予防した。
【0148】
ミトコンドリア複合体IV疾患のゼブラフィッシュモデルのインビボ水泳活動分析-シプロテロンとフェロジピン
【0149】
アジ化ナトリウム処理されたABゼブラフィッシュは、未処理のABゼブラフィッシュに比べて50%程度低下した水泳活動を示した。
図8Aおよび
図8Bに図示されるように、シプロテロンアセテートおよびフェロジピン処理されたABゼブラフィッシュは、それぞれ10μMおよび500nMの濃度においてアジ化ナトリウム処理されたABゼブラフィッシュと比較して水泳活動を有意に救済した(p<0.05)。
【0150】
実施形態4:AI-発見薬物化合物を検証するための1次ミトコンドリア疾患のヒト対象体の線維芽細胞の細胞株のATP含有量-基盤細胞生存力アッセイ
【0151】
方法
【0152】
ヒトミトコンドリア疾患対象体の線維芽細胞の細胞株のインビトロ生存率アッセイ
【0153】
線維芽細胞の細胞株(FCL)をフィラデルフィア児童病院のミトコンドリア医学クリニックにおいて遂行されたヒト対象体の皮膚生検から収得した。FCLは、マイコプラズマがないものとして確認された。研究された特異的細胞株は、健康な対照群に対するQ1881p1、ミトコンドリア複合体I欠乏疾患に対するQ1687F(NUBPL-/-)、ミトコンドリア複合体IV欠乏疾患に対するQ1775F(Surf1-/-)を含んだ。FCLを1g/L(5.5mM)のグルコースを含み、10%のFBSおよび50μg/mLのユリジンで補充したDMEMにおいて24時間成長させた。培養培地をミトコンドリア欠乏細胞にストレスを加える手段として、グルコースを含まない10%のFBSおよび50μg/mLのユリジンが補充された10mMのガラクトース培地に交換した後、薬物化合物と72時間共同処理した。線維芽細胞の細胞生存力を1つの96-ウェルプレート(n=4個のウェル/条件)において、CellTiter-Glo 2.0細胞生存力アッセイキット(Promega)を使用して評価した。統計的分析は、Graphpad Prismのスチューデントt-テストによって遂行した。
【0154】
結果
【0155】
それぞれのミトコンドリア複合体IまたはIVの欠乏障害を有するヒト対象体のFCL(Q1687FまたはQ1775F)は、グルコースなしで10mMのガラクトースをエネルギー源として使用したときに、減少したミトコンドリアの酸化的リン酸化力量を反映する細胞内ATP含有量で表されるような減少した細胞生存力を有したが、これは、ATP-生成機能がガラクトースのみに存在するときに、嫌気性解糖作用の寄与なくミトコンドリアの酸化的リン酸化機能にのみに依存するためである。
【0156】
図9AおよびBに図示されるように、ミトコンドリア複合体IV欠乏を有するヒト対象体からのFCL(Q1775F)は、それぞれ100nMのトラピジルおよびシプロテロンアセテートで処理時に、細胞生存力(総ATP水準に基づく)において11.6%(p=0.004)および13.2%(p=0.001)の統計的に有意な改善を有した。さらに、100nMのトラピジルは、重症のミトコンドリア複合体Iの欠乏障害を有するヒト対象体からのFCL(Q1687F)の細胞生存力において6.5%(p=0.058)改善され、統計的にわずかではあるが有意な効力を有した。
【0157】
要約
【0158】
本発明者は、MPP+-露出されたSH-SY5Yヒト細胞モデルを使用して、薬理学的毒素によって阻害されたミトコンドリア機能を好転させるためにスタンダイムのAI技術を通じて選択された6つの薬物化合物の効能を検証した。ナノモル範囲の処理において、6つの薬物化合物は、増加した生存能力および好転したミトコンドリア活性、例えば、向上した細胞代謝生存力、増加した細胞内ATP含有量、増加したミトコンドリア膜電位、および減少したミトコンドリア内ROSまたは細胞内ROSを示した。ミトコンドリア疾患に対する予想効能も、薬理学的ストレス源(例えば、アジ化ナトリウム)および遺伝的モデル、例えば、C.elegans gas-1(fc21)およびD.rerio Surf1-/-とヒトミトコンドリア疾患対象体の1次線維芽細胞の細胞株を使用したインビボ動物研究を使用して検証した。ジョサマイシン、シルニジピン、トラピジル、およびメチラポンは、C.elegans gas-1(fc21)およびgas-1 RNA干渉ノックダウンミトコンドリア複合体I疾患モデルに対して、寿命、水泳活動、成長、およびミトコンドリア膜電位およびミトコンドリアストレスを含むインビボミトコンドリア機能の多様な形態の水準において有意かつ有益な効果を示した。アジ化ナトリウムが阻害されたミトコンドリア複合体IVゼブラフィッシュモデルまたはSurf1-/-遺伝子突然変異ゼブラフィッシュモデルにおいては、ジョサマイシン、シプロテロン、フェロジピン、トラピジル、またはメチラポンで処理したときに、有意に改善された水泳活動、脳死予防、神経筋機能、および心臓拍動の維持を示した。驚くことに、シプロテロンおよびトラピジルは、ヒトミトコンドリア複合体IV疾患対象体の1次線維芽細胞の細胞株の長期間の代謝ストレス下において、生存に統計的に有意かつ有益な効果を示し、ミトコンドリア疾患を有する患者に有望な治療効果を示す。総体的かつ進化的に区別される2つ以上の異なる種のミトコンドリア疾患モデルにおいて、効能が交差検証されたこの6つの市販される薬物化合物は、現在、FDAに承認された効果的な治療療法が存在しないヒトミトコンドリア疾患に有益なものである。このような結果は、本願において論じた活性化合物がヒトミトコンドリア疾患の患者を治療し/するか、ミトコンドリア疾患の患者の細胞および組織において、インビボミトコンドリア機能を向上させることに有用なものであることを示す。
【0159】
現在、開示された主題およびこの利点が詳細に記載されたが、本発明の思想および範疇を逸れずに多様な変化、対峙、および変更が本願においてなされ得ることを理解しなければならない。さらに、本出願の範疇は、本明細書に記載された工程、機械、製造、および物質の組成、手段、方法、および段階の特定実施形態に制限されるものとして意図されない。当業者は、現在開示された主題、工程、機械、製造、物質の組成、手段、方法、または段階の発明から容易に認識できるように、本願に記載された相応の実施形態と実質的に同一の機能を遂行するか、実質的に同一の結果を達成する、現在存在するか、今後開発されることが現在開示された主題によって活用され得る。したがって、添付された請求の範囲は、このような工程、機械、製造、物質の組成、手段、方法、または段階のような範疇内に含まれるものとして意図される。
【0160】
多様な特許、特許出願、公開物、製品説明、プロトコル、および序列受託番号が本出願全体に引用され、これらの発明は、すべての目的のためにその全体が参照として本願に援用される。
【国際調査報告】