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特表2023-535714ウイルス感染を阻害するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】ウイルス感染を阻害するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/365 20060101AFI20230814BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230814BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20230814BHJP
   A61K 31/4162 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
A61K31/365
A61K45/00
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/22
A61P31/16
A61P31/18
A61P31/20
A61P43/00 121
A61K31/675
A61K31/4162
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504437
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 US2021042895
(87)【国際公開番号】W WO2022020676
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】63/055,619
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521007665
【氏名又は名称】アージル・バイオテック・ホールディング・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Arjil Biotech Holding Company Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 裕貢
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ウー,イェー ビー
(72)【発明者】
【氏名】ロ,ジャー-メン
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ホイ ジュー
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,チェン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086CA03
4C086CB05
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、エンテロウイルス、ロタウイルス、デングウイルス、ポックスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、アレナウイルス、麻疹ウイルス、レトロウイルスおよびノロウイルスを含むウイルス、特にSARS-COV-2の感染の予防または処置に使用するための化合物、特にオバトジオリドに関する。本発明ではまた、前記化合物および、前記化合物を含む医薬組成物または組成物を用いてウイルス感染を予防または処置する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスの感染を予防または処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(I):
【化1】
[式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、X1およびX2はそれぞれ、H、OH、C1-8アルキルNRx、SRx、ORx、ピラゾリン、システイン、グルタチオン、ハロゲン、COORx、またはCOO(CH2)n-CH3であり;nは、0~3の整数であり;Y1、Y2、Z1、Z2、W1およびW2はそれぞれ、H、OH、C1-8アルキルであるか、あるいはX1およびX2は一緒になって-O-を形成するか、あるいはY1およびY2、Z1およびZ2またはW1およびW2は一緒になってエポキシを形成する]
の構造を有する化合物を投与することを含む方法。
【請求項2】
化合物が、式:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
で示される化合物からなる群から選択される一つまたはそれ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物が、式:
【化6】
で示される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ウイルスが、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、エンテロウイルス、ロタウイルス、デングウイルス、ポックスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、アレナウイルス、麻疹ウイルス、レトロウイルスおよびノロウイルスからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
化合物が、ウイルスのシステインプロテアーゼの阻害に有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ウイルスが、肝炎ウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ウイルスが、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、またはD型肝炎ウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ウイルスが、B型肝炎ウイルス(HBV)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ウイルスが、単純ヘルペスウイルス(HSV)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
化合物が、ウイルス複製、ウイルス粒子の組み立てまたは放出の阻害に有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ウイルスが、コロナウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
コロナウイルスが、SARS-CoV-2である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ウイルスのシステインプロテアーゼを阻害することによってウイルス感染を予防または処置するための医薬を製造するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物、その薬学的に許容できる塩、またはその混合物の使用。
【請求項14】
ウイルスが、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、エンテロウイルス、ロタウイルス、デングウイルス、ポックスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、アレナウイルス、麻疹ウイルス、レトロウイルスおよびノロウイルスからなる群から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
ウイルスが、肝炎ウイルスである、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
肝炎ウイルスが、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、またはD型肝炎ウイルスである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
肝炎ウイルスが、B型肝炎ウイルス(HBV)である、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
ウイルスが、単純ヘルペスウイルス(HSV)である、請求項13に記載の使用。
【請求項19】
ウイルスが、コロナウイルスである、請求項13に記載の使用。
【請求項20】
コロナウイルスが、SARS-CoV-2である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩、またはその混合物を、ウイルスのステインプロテアーゼを阻害する有効量で、薬学的に許容できる担体とともに含む、対象においてウイルス感染の処置または予防に使用するための医薬組成物/組成物。
【請求項22】
ウイルスが、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、エンテロウイルス、ロタウイルス、デングウイルス、ポックスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、アレナウイルス、麻疹ウイルス、レトロウイルスおよびノロウイルスからなる群から選択される、請求項21に記載の使用のための医薬組成物/組成物。
【請求項23】
ウイルスが、肝炎ウイルスである、請求項21に記載の使用のための医薬組成物/組成物。
【請求項24】
肝炎ウイルスが、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、またはD型肝炎ウイルスである、請求項23に記載の使用のための医薬組成物/組成物。
【請求項25】
肝炎ウイルスが、B型肝炎ウイルス(HBV)である、請求項23に記載の使用のための医薬組成物/組成物。
【請求項26】
ウイルスが、単純ヘルペスウイルス(HSV)である、請求項21に記載の使用のための医薬組成物/組成物。
【請求項27】
ウイルスが、コロナウイルスである、請求項21に記載の使用のための医薬組成物/組成物。
【請求項28】
コロナウイルスが、SARS-CoV-2である、請求項27に記載の使用のための医薬組成物/組成物。
【請求項29】
少なくとも一つの追加の抗ウイルス治療物質をさらに含む、請求項28に記載の医薬組成物/組成物。
【請求項30】
少なくとも一つの追加の抗ウイルス治療物質が、レムデシビルである、請求項29に記載の医薬組成物/組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物を用いてウイルス感染を阻害する方法および組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質被覆層内が遺伝物質から構成されているウイルスは、正常な生細胞に侵入し、それらの細胞を用いて自身と同じような他のウイルスを複製し生成し、インフルエンザや疣贅(いぼ)などの身近な感染症を引き起こし、あるいは天然痘や後天性免疫不全症候群(AIDS)などの重篤な病気の原因となることがある。
【0003】
例えば、肝炎ウイルスは、A型、B型、C型、D型およびE型の五つの異なる型とともに、X型およびG型がある。A型およびE型ウイルス肝炎は、有害な水や食品を摂取することで誘発される。しかし、B型、C型およびD型ウイルス肝炎は、感染した体液との非経口的な接触によって引き起こされる。また、C型およびD型ウイルス肝炎感染症も増加しており、有効な処置が求められている。
【0004】
B型肝炎ウイルス(HBV)は、ヒトに急性および慢性のウイルス肝炎を引き起こす。HBV感染は、肝硬変や肝細胞癌(HCC)を含む重度の肝臓疾患を伴うことが多い[1]。世界におけるHBV感染の罹患率は非常に高い。25年以上に亙り効果的なワクチンが入手できているにもかかわらず、約3億5000万人が慢性的に感染している。HBV保有者におけるHCCの相対リスクは、非保有者と比較して約100倍増加する[2]。
【0005】
インターフェロンアルファまたはウイルスの逆転写酵素を阻害するヌクレオシド(ヌクレオチド)類似体などの、現在承認されている抗HBV薬は、副作用や薬物耐性が出現するため、増大しつつあるHBV感染患者は使用できない[3]。
【0006】
そのため、治療効果を改善するためには、ウイルスのライフサイクルにおける他の段階を妨害することを目的とする、有効かつ安全であり、価格が許容できる抗HBV薬の探索が必要である。
【0007】
HBVは、3.2kbのウイルスゲノムを保護するヌクレオカプシドからなる小型DNAウイルスである[4]。HBVのヌクレオカプシドは、B型肝炎表面抗原(HBsAg)からなるエンベロープに包まれている。HBsAgは、三つの同相の開始コドン(in-phase start codons)を有する一つの読み取り枠内にコードされている。MHBsAgは、Sドメインからの55アミノ酸(aa)伸長を有し、それはpre-S2ドメインと称される。LHBsAgは、pre-S2ドメインから伸長するさらなる108-aa領域を有し、pre-S1ドメインを構成する。最近、タウロコール酸ナトリウム共輸送ポリペプチド(NTCP)が、HBV受容体として同定された[5, 6]。感染されていない肝細胞へのHBVの侵入は、長い間、抗ウイルス介入の潜在的な標的として提案されてきた[7]。他方で、HepG2.2.15細胞はHBVの全ゲノムを包含しており、それは、HBVの複製、組み立ておよび分泌の研究に広く用いられてきた。
【0008】
感染期におけるHBVの肝細胞への付着は、長い間、抗ウイルス介入の潜在的な標的として提案されてきた。HBV粒子に特異的に結合する分子は、ウイルスの付着を妨害し、その結果、その後の感染を減少または阻止すると考えられている[8]。
【0009】
ヒトHBVの初期感染事象については、完全な複製サイクルを支持する細胞培養システムがないため、その知見は限られている。現在までに、2種類の細胞型がHBVに感染しやすいことが示されている。1つはヒト肝癌細胞株HepaRGであり、これは、ジメチルスルホキシド(DMSO)によって誘導される分化の後に感染可能となり[7,9]、もう1つの細胞型は正常ヒト初代肝細胞であり、これは、HBVに容易に感染されるが[10,11]、インビトロでの細胞の寿命が限られていることや、安定した供給源がないことから、今後の応用には大きな制限があると考えられる。
【0010】
さらに、単純ヘルペスウイルス(HSV)もまた、タンパク質被覆層内に包まれているDNAゲノムを含む。1型および2型単純ヘルペスウイルス(HSV-1およびHSV-2)は、歯肉口内炎、咽頭炎、口唇ヘルペス、脳炎、眼や性器の感染など、ヒトの疾患の原因物質である[12]。ヘルペスウイルス感染は、一般に、軽度または無症状の初期段階があり、その後、ウイルスは非複製の潜伏状態または臨床的に検出不可能なレベルでの複製で持続する[13]。HSV-1の初感染は、口および/または喉に最も関連しており、歯肉口内炎および咽頭炎を引き起こす。口咽頭の初感染から回復した後も、三叉神経節にHSVのDNAを生涯にわたって保持し、口唇ヘルペスの発作を繰り返すことがある。また、研究では、ヘルペスウイルスファミリーのいくつかのメンバーと歯周病との間に関連性がある可能性も明らかにされている[14]。ヒトヘルペスウイルスは、歯周炎の病巣に比較的高い確率で存在する可能性がある[15]。HSVは、臨床上の付着喪失(アタッチメントロス)の観点から、歯周病の重症度と関連している[16]。ウイルス性歯肉感染は、宿主の防御機構を損い、それによって病原性口腔細菌の異常増殖の段階に到達させる可能性がある[15, 17]。
【0011】
HSVは、一般に、粘膜、皮膚、眼および神経系を攻撃し、幅広い種類の細胞に感染することができる[18]。ヒト歯肉粘膜の器官培養物は、HSV-1およびHSV-2に感染することができる[19]。さらに、インビトロで培養されたヒト歯肉ケラチン生成細胞や歯肉線維芽細胞はHSVの増殖をサポートする[20,21]。HSV-1はウイルスチミジンキナーゼをコードしており、これは、アシクロビルをHSV DNAポリメラーゼの鎖状ターミネーター基質であるアシクロビルトリホスフェートに間接的に代謝し、ウイルスのDNA複製を停止させる[22]。しかし、5~30%の症例でアシクロビルに対するHSVの耐性が報告されている[23])。アシクロビル耐性のHSV-1株は、免疫不全の患者で頻繁に発生し、重篤な合併症を引き起こすことがある[24]。ワクチンがないため、局所殺菌剤はHSVの伝染を予防するための重要な戦略であると考えられる。
【0012】
世界保健機関(WHO)によると、2002年11月1日から2003年6月18日までの重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生により、29か国以上で801人の死亡、世界中で8465の可能性のある症例をもたらした[25]。SARSは、ポジティブセンスの一本鎖RNAを含むエンベロープ型βコロナウイルスで、約30kbのゲノムサイズを有し、ここで、読み取り枠(ORF)1aおよび1bは、pp1aおよびpp1abといった二つのそれぞれのポリタンパク質(pps)をコードしている[26, 27]。そのライフサイクルを完成させるためには、複製とタンパク質分解の成功が必要となる[28]。実際、これらのウイルスにコードされたタンパク質分解タンパク質のコンセンサス機能は、すべてのコロナウイルスに見出され、特にパップリン様プロテアーゼ(papline-like protease, PLpro)とキモトリプシン様プロテアーゼ(chymotrypsin-like protease, 3CLpro)がある[28]。pp1aとpp1abのタンパク質分解処理において、PLproと3CLproはそれぞれ最初の3個の部位と残りの11個の位置を切断し、合計16個の非構造タンパク質(nsp1-16)を得る[26, 27]。したがって、3CLproの阻害は、抗SARS薬の発見と開発における分子的アプローチとみなされている[25, 29]。
【0013】
SARS-COV-2は、中国武漢の重症肺炎患者において確認されて以来、急速に拡散した新型コロナウイルス(COVID-19と命名)であり、2020年2月17日現在、世界25カ国で報告され、研究室レベルで確認された患者は約72000人、死者は1775人に達している[30]。悲惨なことに、ヒトコロナウイルスの治療薬やワクチンはまだ承認されていない[31]。SARS-CoV-2の現在の発生と、SARSとMERS(別のβコロナウイルス)の治療経験に関して、多くの研究が、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスおよびインフルエンザ感染に使われている既存の抗ウイルス剤を、SARS-COV-2の処置または介入に使う可能性を広く調査した[31, 32]。一方、SARS-CoV-2は、SARSやMERSと同様にエンベロープ型、ポジティブセンス、一本鎖RNAβコロナウイルスであることが特徴となっている[31]。コロナウイルスの特徴と一致して、SARS-CoV-2ゲノムは、構造タンパク質(スパイク糖タンパク質など)、非構造タンパク質(例えば3CLpro、PLpro、ヘリカーゼ、RNA依存性RNAポリメラーゼ)、およびアクセサリータンパク質をコードする。
SARS-COV-2、SARSおよびMERSの利用可能なゲノム配列に関して、タンパク質分解部位およびタンパク質分解酵素の高レベルの保存が見出されたため、SARS-COV-2の処置のためにSARSおよびMERSプロテアーゼ阻害物質を転用することは検討する価値がある[33]。3CLproはSARSで極めて重要な役割を果たしているため、PLproの代わりにSARS-COV-2の3CLproを標的にしてそのライフサイクルを遮断することにより、プロテアーゼ阻害にアプローチすることは合理的である[25, 29, 33]。
【0014】
現在、アルコール依存を処置する薬物として承認されているジスルフィラムは、細胞培養においてMERSやSARSのPLproを阻害することが報告されているが、まだ臨床的な評価はされていない[31]。さらに、SARS-CoV-2患者におけるHIVプロテアーゼ阻害物質(ロピナビルおよびリトナビル)の臨床試験も開始されたが、HIVおよびβコロナウイルスはそれぞれアスパラギンプロテアーゼファミリーおよびシステインプロテアーゼファミリーに属すため、SARS-CoV-2を効果的に阻害できるかどうかは不明である[31, 34]。他方で、HIV治療に承認されたRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害物質のヌクレオチド類似体であるレムデシビル(RDV)は、現在、SARS-CoV-2患者において臨床試験が行われており、2020年4月に完了予定であり;HCV治療の初期段階の臨床研究におけるRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害物質の別のヌクレオチド類似体であるガリデシビルは、前臨床研究において、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)に対する広域スペクトルの抗ウイルス活性を示している[34, 35]。しかし、ヌクレオシド類似体は、まだ私たちの知識を超えている毒性を誘発する可能性があると予想される[36]。
【0015】
ヒトコロナウイルス感染を予防または処置する抗ウイルス薬はまだ見出されていない。特にSARS-COV-2に対する安全な抗コロナウイルス療法の探索と開発が急務である。
【0016】
依然として、新しい抗ウイルス療法や医薬を開発することが望まれる。
【発明の概要】
【0017】
予想外にも、いくつかの化合物がウイルス感染、特にB型肝炎ウイルス(HBV)感染および/または単純ヘルペスウイルス(HSV)感染および/またはコロナウイルス感染の阻害に有効であることが、本発明において見出された。
【0018】
一態様において、本発明は、ウイルス感染を予防または処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(I):
【化1】
[式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、X1およびX2はそれぞれ、H、OH、C1-8アルキル、NRx、SRx、ORx、ピラゾリン、システイン、グルタチオン、ハロゲン、COORx、またはCOO(CH2)n-CH3であり;nは、0~3の整数であり;Y1、Y2、Z1、Z2、W1およびW2はそれぞれ、H、OH、C1-8アルキルであるか、あるいはX1およびX2は一緒になって-O-を形成するか、あるいはY1およびY2、Z1およびZ2またはW1およびW2は一緒になってエポキシを形成する]
の構造を有する化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0019】
本発明の実施例において、化合物は、ウイルス複製、ウイルス粒子の組み立てまたは放出を阻害することができることが確認された。
【0020】
本発明の実施例において、ハイスループットでのタンパク質分解プロセシング阻害に対する探索薬物の影響を評価するために、以前の研究で使用されたように、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)対で標識された合成ペプチドが利用され、ここで、FRET標識ペプチドが切断されると消光した蛍光体が放出され、リアルタイムでモニターできる蛍光シグナルを生成する[25, 29, 37]。本発明において、本明細書に開示される化合物のいずれかまたはその混合物が、システインプロテアーゼ、特にSARS-CoV-2の3CLproの阻害に有効であることが確認される。
【0021】
本発明によれば、ウイルスは、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、エンテロウイルス、ロタウイルス、デングウイルス、ポックスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、アレナウイルス、麻疹ウイルス、 レトロウイルスおよびノロウイルスからなる群から選択される。
【0022】
一実施例において、本発明は、HBV感染を予防または処置する方法であって、それを必要とする対象に式(I)で示される化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0023】
別の実施例において、本発明は、HSV感染を予防または処置する方法であって、それを必要とする対象に式(I)で示される化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0024】
別の実施例において、本発明は、コロナウイルス感染を予防または処置する方法であって、それを必要とする対象に式(I)で示される化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0025】
実際には、ウイルスの複製、ウイルス粒子の組み立て、放出、およびウイルスの侵入を阻害することにより肝炎ウイルス感染を阻害するといった発見から、広域スペクトル抗ウイルス物質を開発することができ、それは、該化合物がウイルスの進展を阻害したためである。
【0026】
別の態様において、本発明は、ウイルス感染を予防または処置するための組成物/医薬組成物であって、治療有効量の式(I)で示される化合物、および薬学的に許容できる担体を含む組成物/医薬組成物を提供する。
【0027】
さらなる一態様において、本発明は、ウイルス感染を処置または予防するための医薬を製造するための式(I)で示される化合物の使用を提供する。
【0028】
さらなる一態様において、本発明は、治療有効量の本明細書に開示されている化合物またはその薬学的に許容できる塩、またはその混合物を薬学的に許容できる担体と組み合わせて含む、コロナウイルス、特にSARS-COV-2を予防または処置するための組成物/医薬組成物を提供する。
【0029】
場合により、本発明による組成物/医薬組成物は、少なくとも一つの追加の抗ウイルス治療物質を含んでいてもよい。
【0030】
さらなる一態様において、本発明は、コロナウイルス、特にSARS-COV-2の感染を予防または処置するための医薬を製造するための本明細書に開示されているいずれかの化合物またはその薬学的に許容できる塩、またはこれらの混合物の使用。
【0031】
本発明のいくつかの実施例において、化合物は、
式:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
からなる群から選択される化合物の一つまたはそれ以上であり得る。
【0032】
本発明の特定の一実施例において、式(I)で示される化合物は、本明細書でAR100-DS1と称される
【化6】
である。
【0033】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方が、例示的かつ説明的なものに過ぎず、本発明を限定するものではないことを理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
前述の要約、および以下の発明の詳細な説明は、添付の図面と合わせて読むと、よりよく理解されるであろう。本発明を説明する目的で、図面には、現在好ましいとされる実施形態が示されている。
【0035】
図面において
【0036】
図1A図1Aは、HepG2.2.15細胞のHBsAg分泌に対する0μg/ml、10μg/mlおよび20μg/mlのAR100-DS1の影響を示す。(*, P<0.05; **, P<0.01; ***, P<0.001)
【0037】
図1B図1Bは、HepG2.2.15細胞のHBsAg分泌に対する0μg/ml、20μg/mlおよび50μg/mlのAR100-DS1の影響を示す。(*, P<0.05; **, P<0.01; ***, P<0.001)
【0038】
図1C図1Cは、HepG2.2.15 細胞のHBsAg分泌に対する0μg/ml、20μg/mlおよび40μg/mlのAR100-DS1の影響を示す。(*, P<0.05; **, P<0.01; ***, P<0.001)
【0039】
図1D図1Dは、HepG2.2.15細胞の培養基中のHBV DNAレベルに対する0μg/ml、20μg/mlおよび40μg/mlのAR100-DS1の影響を示す。(*, P<0.05; **, P<0.01; ***, P<0.001)
【0040】
図2A図2Aは、HuS-E/2細胞のHBsAg分泌に対する0μg/ml、5μg/mlおよび10μg/mlのAR100-DS1の影響を示す。(*, P<0.05; **, P<0.01; ***, P<0.001)
【0041】
図2B図2Bは、HuS-E/2細胞のHBV mRNA発現レベルに対する0μg/ml、5μg/mlおよび10μg/mlのAR100-DS1の影響を示す。
【0042】
図2C図2Cは、細胞生存率に対するAR100-DS1の影響を示すものであり、ここで、HuS-E/2を0~1000μg/mlのAR100-DS1で48h処理し、次にMTTアッセイを行い、細胞生存率を検出した(*, P<0.05; **, P<0.01; ***, P<0.001)。
【0043】
図2D図2Dは、HepG2.2.15細胞の生存率に対するAR100-DS1の影響を示す。(*, P<0.05; **, P<0.01; ***, P<0.001)
【0044】
図3A図3Aは、20μMの濃度のAR100-DS1の阻害性プロファイルを示す。*, P<0.05; **, P<0.01; ***, P<0.001。
【0045】
図3B図3Bは、AR100-DS1(0.125p/1.25FP)の相対3CLpro活性(%)を示すものであり、IC50=21.31μMである。
【0046】
本発明の詳細な説明
以上のような本発明の概要を、以下の実施例の実施形態を参照しながらさらに説明する。ただし、本発明の内容は、以下の実施態様にのみ限定されるものと理解すべきではなく、上述した本発明の内容に基づく全ての発明が本発明の範囲に属する。
【0047】
本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、他に定義されない限り、この発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0048】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに指示しない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「試料」への言及は、当業者に知られている複数のそのような試料およびその等価物を含む。
【0049】
本発明は、ウイルス感染を予防および/または処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(I):
【化7】
[式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、X1およびX2はそれぞれ、H、OH、C1-8アルキル、NRx、SRx、ORx、ピラゾリン、システイン、グルタチオン、ハロゲン、COORx、またはCOO(CH2)n-CH3であり;nは、0~3の整数であり;Y1、Y2、Z1、Z2、W1およびW2はそれぞれ、H、OH、C1-8アルキルであるか、あるいはX1およびX2は一緒になって-O-を形成するか、あるいはY1およびY2、Z1およびZ2またはW1およびW2は一緒になってエポキシを形成する]
の構造を有する化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0050】
本発明は、ウイルス感染を阻害する方法であって、化合物は式(I)で示される化合物である方法を提供する。
【0051】
本発明は、ウイルス感染を予防および/または処置するための組成物/医薬組成物であって、治療有効量の式(I)で示される化合物、および薬学的に許容できる担体を含む組成物/医薬組成物を提供する。
【0052】
本発明はまた、ウイルス感染を処置または予防するための医薬を製造するための、式(I)で示される化合物を提供する。
【0053】
本明細書で使用する用語「ウイルス」は、生物の生きている細胞内でのみ複製する小さな感染性物質であり、動物や植物から細菌や古細菌を含む微生物に至るまで、全ての種類の生命体に感染し得る、あらゆるウイルスを意味する。例示的なウイルスには、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エンテロウイルス、ロタウイルス、デングウイルス、ポックスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、麻疹ウイルス、レトロウイルス、コロナウイルスまたはノロウイルスが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用する用語「肝炎ウイルス」とは、肝炎、特定のB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)を引き起こすウイルスを意味する。
【0055】
本明細書で使用する用語「コロナウイルス」とは、オルトコロナウイルス亜科(subfamily Orthocoronavirinae)、コロナウイルス科(family Coronaviridae)、ニドウイルス目(order Nidovirales)、リボウイルス域(realm Riboviria)のコロナウイルスで、ポジティブセンス一本鎖RNAゲノムおよびらせん対称のヌクレオカプシドを有するエンベロープウイルスである。それらは、表面から突き出た特徴的な棍棒状のスパイクを有し
、電子顕微鏡写真において作成された画像は太陽のコロナを連想させるものであり、それが名前の由来となった。コロナウイルスは、ヒトを含む哺乳動物や鳥類に疾患を引き起こすものである。ヒトにおいて、コロナウイルスは、一般的な風邪、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、およびSARS-COV-2を含む気道感染を引き起こすものである。
【0056】
本明細書で使用する用語「システインプロテアーゼ」とは、チオールプロテアーゼを意味するもので、タンパク質を分解する酵素であり、触媒三残基または二残基(duad)に求核性システインチオールを含む共通の触媒メカニズムを持つ。ウイルスのシステインプロテアーゼの一例として、SARS-COV-2の3CLproがある。
【0057】
本明細書で使用する用語「予防する」または「予防」とは、対象が疾患、疾患の症状または状態に苦しむ前に、疾患、疾患の症状または状態から予防する、または疾患の進行を抑制する目的で、一つまたはそれ以上の活性物質を含む組成物を該対象に適用または投与することを意味する。
【0058】
本明細書で使用する用語「処置する」または「処置」とは、疾患、疾患の症状もしくは状態、または疾患の進行に苦しんでいる対象に、疾患、疾患の症状もしくは状態、疾患により誘発される身体障害、または疾患の進行を治療、治癒、軽減、緩和、変更、回復、改善、または影響を与える目的で、一つまたはそれ以上の活性物質を含む組成物を適用または投与することを意味する。
【0059】
本明細書で使用する用語「対象」とは、ヒトまたは非ヒト動物、例えば伴侶動物(例えばイヌ、ネコなど)、家畜(例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、または実験動物(例えばラット、マウス、モルモットなど)を含む。
【0060】
本明細書で使用する用語「治療有効量」とは、そのような量の医薬品を投与されていない対応する対象と比較して、疾患、障害または副作用の処置、治癒、予防または改善の効果、または疾患もしくは障害の進行速度の減少をもたらす医薬品の量を意味する。また、この用語は、正常な生理学的機能を向上させるのに有効な量もその範囲に含む。
【0061】
治療に使用するために、治療有効量の化合物は、投与のための医薬組成物として製剤化される。したがって、本発明はさらに、治療有効量のベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)の調製物またはベニクスノキタケから単離された活性化合物、および一つまたはそれ以上の薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物を提供する。
【0062】
送達および吸収の目的のために、本発明による治療有効量の活性成分は、薬学的に許容できる担体とともに適当な形態で医薬組成物に配合され得る。投与経路に基づいて、本発明の医薬組成物は、好ましくは、総重量に対して0.1重量%~100重量%の活性成分を含む。
【0063】
本明細書で使用する用語「薬学的に許容できる担体」とは、製剤の他の成分と適合し、医薬組成物を投与される対象に対して劇的に変化しないという意味で許容できる担体(複数可)、希釈剤(複数可)または賦形剤(複数可)を意味する。本発明において、医薬製剤の要件に応じて、当該分野で一般的に知られているか、または使用されているいずれかの担体、希釈剤または賦形剤を使用することができる。
本発明によれば、医薬組成物は、経口、直腸、経鼻、局所、膣、または非経腸の経路を含むがこれらに限定されない、いずれかの適切な経路による投与に適合させてもよい。本発明の特定の一例において、医薬組成物は経口投与のために製剤化される。そのような製剤は、薬学の技術分野で知られているいずれかの方法によって調製されてもよい。
【0064】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容できる」とは、担体が組成物中の活性成分と適合し、好ましくは前記活性成分を安定化でき、処置を受ける個人にとって安全であることを意味する。前記担体は、活性成分に対する希釈剤、ビヒクル、賦形剤、またはマトリックスであってもよい。本発明の組成物は、患者への投与後、活性成分の急速放出、継続放出、または遅延放出の効果を提供できる。
【0065】
本発明によれば、前記組成物の形態は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ、パケット(packet)、口内錠、エリクサー(elixer)、懸濁液、ローション、溶液、シロップ、軟・硬ゼラチンカプセル、坐薬、無菌注射液、および包装散剤であり得る。
【0066】
本発明の組成物は、経口、非経腸(筋肉内、静脈内、皮下、および腹腔内など)、経皮、坐薬、および鼻腔内の方法など、生理学的に許容できるいずれかの経路で送達され得る。非経腸投与に関しては、好ましくは無菌水溶液の形態で使用され、該無菌水溶液はその水溶液が血液に対して等張となるのに十分な塩類またはグルコースなどの他の物質を含んでいてもよい。水溶液は、必要に応じて適切に緩衝化(好ましくはpH値3~9)されていてもよい。無菌条件下での適切な非経腸組成物の調製は、当業者によく知られた標準的な薬学的技術で達成され得る。
【0067】
応答性のある例示的ウイルスには、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、エンテロウイルス、ロタウイルス、デングウイルス、ポックスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス感染、アレナウイルス感染、麻疹ウイルス、コロナウイルスまたはノロウイルスが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、ウイルスには、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルスが含まれる。
【0068】
好ましい一例において、ウイルスはB型肝炎ウイルス(HBV)である。
【0069】
好ましい一例において、ウイルスは単純ヘルペスウイルス(HSV)である。
【0070】
好ましい一例において、ウイルスはSARS-CoV-2である。
【0071】
さらなる一態様において、本発明は、ウイルスのシステインプロテアーゼを阻害することによりウイルス感染を処置または予防するための組成物/医薬組成物であって、本明細書に開示されるいずれかの化合物、その薬学的に許容できる塩、またはその混合物を含む組成物/医薬組成物を提供する。場合により、組成物/医薬組成物は、少なくとも一つの追加の抗ウイルス治療物質を含み得る。
【0072】
さらなる一態様において、本発明は、ウイルスのシステインプロテアーゼを阻害することによりウイルス感染を処置または予防するための医薬を製造するための、本明細書に開示されるいずれかの化合物の使用を提供する。
【0073】
本発明において、式(I)で示される化合物が、ウイルス複製、ウイルス粒子の組み立てまたは放出の阻害に有効であることを見出した。
【0074】
本発明によれば、式(I)で示される化合物は、
式:
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
であり得る。
【0075】
本発明によれば、式(I)で示される化合物はまた、
式:
【化12】
で示される化合物からなる群から選択される、その誘導体の一つであり得る。
【0076】
本発明の特定の一例において、式(I)で示される化合物は、本明細書でAR100-DS1と称される
【化13】
である。
【0077】
本発明は、限定ではなく実証の目的で提供される以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例
【0078】
1. 材料および方法
【0079】
1.1 HepG2.2.15細胞
【0080】
adw2亜型のHBVゲノムで安定にトランスフェクトされたHepG2.2.15細胞(RRID:CVCL_L855)において、継続的なHBV増殖を達成することができる。HepG2.2.15細胞は、無制限の供給と一定の品質のために使用され、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS; Thermo)と100単位のペニシリンおよび1mlあたり100 X gのストレプトマイシン(両方ともInvitrogenから)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Invitrogen)中で保持した。
【0081】
1.2 HuS-E/2細胞
【0082】
HBV感染には、長期間の培養後も初代肝細胞の特徴を保持するHuS-E/2細胞を利用する。HBV感染について、HuS-E/2細胞を2%DMSOで7日間分化させ、ウイルス粒子を採取してHuS-E/2細胞に感染して複製させることは、我々の以前の研究[38]で述べたとおりである。この細胞は、HBV株の感染性のアッセイや、抗HBV物質のスクリーニングに有用である。
【0083】
1.3 HBV粒子の採取
【0084】
薬物処理したHepG2.2.15細胞の培養基を1,000 X gで、4℃で10分間遠心分離することによって清澄化し、次に上清を20%スクロースクッション(20%スクロース、20mM HEPES、pH7.4、0.1%ウシ血清アルブミン[BSA])に重ね、197,000 X gで、4℃で3時間遠心してHBV粒子をペレットし、次に、100倍濃縮してHBV DNAを検出する。
【0085】
1.4 DNAおよびRNAの分離、逆転写およびリアルタイムPCR
【0086】
全DNAをゲノムDNA分離キット(Nexttec Biotechnologie, Germany)で抽出する。TRIzol(登録商標)試薬(Invitrogen)を用いて培養細胞から全RNAを分離する。逆転写は、RNAテンプレート、AMV逆転写酵素(Roche)、およびoligo-dTプライマーを用いて実行する。生成物を、特定の遺伝子のプライマーセットおよびSYBR Green PCR Master Mix(Bio-Rad)を用いてリアルタイムPCRにかける。HBVコア、HBsAg、cccDNAおよびGAPDHに使用されるプライマーセットについては、説明されている[3]。結果は、iCycler iQ リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad)で分析する。プラスミドp1.3HBclを10倍希釈(2*104~2*109コビー/ml)で調製し、並行PCR反応中で標準曲線が産生する。
【0087】
1.5 酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
【0088】
HBsAg ELISAキット(General Biologicals Corp.)を使用して、提案されたプロトコルでB型肝炎表面抗原(HBsAg)を検出する。
【0089】
1.6 統計分析
すべての値は、平均値±SEで示す。各値は、各薬物のインビトロ実験における少なくとも3回の実験の平均値である。統計的比較にはスチューデントのt検定を使用する。*は、値が対照と有意に異なることを示す(*, p < 0.05; **, P < 0.01; ***, P < 0.001)。
【0090】
1.7 SARS-CoV-2 3CLproを用いたFRETプロテアーゼアッセイ
【0091】
ED-FRETプラットフォームの確立は、Joら(2020)[29]によって与えられたプロトコルに従う。簡単に説明すると、DABCYLおよびEDANSを末端に持つカスタムタンパク質分解の蛍光性ペプチドであるDABCYL-TSAVLQSGFRKMG-EDANS(Genomics, Taiwan)は、SARS-CoV-2の3CLproによって認識できるnsp4/nsp5切断コンセンサス配列を含む。このペプチドを蒸留水に溶解し、SARS-CoV-2の3CLproとインキュベートする。スペクトルベースの蛍光の測定は、TECAN提供のSPARK(登録商標)マルチモードマイクロプレートリーダーで決定する。タンパク質分解活性は、37℃で、ペプチド加水分解時のEDANSの蛍光強度を時間の関数として求めた(λ励起=340nm、λ放出=490nm、バンド幅=9、15nm)。アッセイ前、試験薬物の発光波長340nm。励起を検査して、EDANSの発光スペクトルと重ならないように確保する。
【0092】
アッセイは、黒の96ウェルマイクロプレート(Greiner)で、SARS-CoV-2の3CLproおよびカスタマイズペプチドを含む100μLのアッセイ緩衝液を用いて三回行う。SARS 3CLproアッセイでは、50mM Tris pH6.5を含む1μM SARS-CoV-2 3CLproを5μM蛍光性基質とともに37℃で3時間インキュベートした後相対蛍光単位(RFU)を測定する。
【0093】
1.8 AR100-DS1の存在下での阻害アッセイ
【0094】
まず、SARS-CoV-2の3CLproおよび、本発明による化合物であるAR100-DS1またはAR100-DS1とレムデシビル(RDV)との組み合わせを混合して37℃で1時間プレインキュベーションした。SARS-CoV-2の3CLproに対して阻害活性を示すものをさらに異なる濃度で調べ、GraphPad Prism 7.03(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いてそのIC50値を特徴付けた。
【0095】
SARS-CoV-2の3CLproに関する知識と配列に基づき、AR100-DS1を阻害する3CLproの効果をインビトロで評価し、SARS-CoV-2処置における治療可能性を検討した。ヒトSARS-CoV-2感染を処置する薬物やワクチンがまだ承認されていないことに関して、SARS-CoV-2と戦うための広域スペクトルの抗ウイルス物質を開発することは、最も重要かつ緊急である。ED-FRET技術とそのワークフローの制定により、実験室において堅牢でハイスループットでの薬物の発見を提供する。一方、AR100-DS1は、臨床評価における可能な治療用量のガイドラインとして機能し、将来の特許出願を促し、抗ウイルスライブラリーの構築に貢献するものである。
【0096】
1.9 プラーク減少アッセイ
【0097】
プラーク減少アッセイは、24ウェル組織培養プレートで3回実施した。Vero E6細胞(ATCC(登録商標)CRL-1586TM)を、感染前日に10%FCSおよび抗生物質を含むDMEM中で2x105細胞/ウェルで播種した。SARS-CoV-2(NTU13, GISAID: EPI_ISL_422415)(50-100プラーク形成単位(PFU)/ウェル)を細胞単層に37℃で1時間添加した。その後、ウイルスを除去し、細胞単層をPBSで1回洗浄した後、メチルセルロースおよび試験物質を指定濃度で含む培地で5~7日間被覆した。細胞を一晩ホルムアルデヒドで固定した。オーバーレイ培地を除去した後、細胞をクリスタルバイオレットで染色し、プラークをカウントした。阻害率は、[1-(VD/VC)]×100%(ここで、VDおよびVCは、それぞれ試験物質の存在下および非存在下でのウイルス力価を意味する)として計算した。50%有効濃度(EC50)は、プラークアッセイから産生された用量反応曲線の回帰分析により計算した。
【0098】
2. 実験結果
【0099】
2.1 HepG2.2.15細胞におけるHBV分泌に対するAR100-DS1の影響
【0100】
AR100-DS1がHBVゲノムの複製、組み立て、分泌に影響を及ぼすかどうかを調べるため、HBVゲノムを安定的にトランスフェクトしたHepG2.2.15細胞を、AR100-DS1と48時間インキュベートし、次に、培地から採取したHBsAgおよびHBV DNAをELISAおよびリアルタイムPCRにより測定した。その結果を図1に示した。
【0101】
HepG2.2.15細胞のHBsAg分泌に対するAR100-DS1の影響を図1A(0μg/ml、10μg/ml、20μg/mlのAR100-DS1)、1B(0μg/ml、20μg/mlおよび50μg/mlのAR100-DS1)および1C(0μg/ml、20μg/mlおよび40μg/mlのAR100-DS1)に示した。HBsAgの分泌は、10μg/mlのAR100-DS1の処理後には75.25%に、20μg/mlのAR100-DS1の処理後には69.77%、63.00%に、50μg/mlのAR100-DS1の処理後には56.78%に阻害・低下したことが見出された(図1A、1Bを参照のこと)。HBsAgの分泌は、AR100-DS1の処理によって有意に阻害された(図1Cを参照のこと)。
【0102】
培地中のHBV DNAレベルに対するAR100-DS1の影響を図1Dに示した(0μg/ml、20μg/mlおよび40μg/mlのAR100-DS1)。20μg/mlのAR100-DS1または40μg/mlのAR100-DS1のいずれかで処理した後、DNAレベルが有意に減少したことが見出された。これらの結果では、AR100-DS1はHepG2.2.15細胞におけるHBVの分泌を抑制することが示された。
【0103】
2.2 HBV感染性ならびにHepG2.2.15細胞およびHuS-E/2細胞の生存率に対するAR100-DS1の影響
【0104】
HBVの感染性および複製に対するAR100-DS1の影響を評価するため、HuS-E/2細胞にHepG2.2.15細胞由来の任意の亜型HBVを感染させた。HBVの感染中にAR100-DS1を培地に添加して18時間培養し、次に、感染された細胞を洗浄し、新鮮な培地で48時間培養し、培地中のHBsAgをELISAで検出し、HBV mRNAをリアルタイムPCRで検出し、それをHuS-E/2細胞のHBV感染効率の指標とした。その結果を図2Aおよび図2Bに示した。
【0105】
HuS-E/2細胞へのHBVの侵入に対するAR100-DS1の影響を、図2A(0、5および10のAR100-DS1)および2B(0、5および10のAR100-DS1)に示した。培地中のHBsAgの分泌およびHBV mRNAの発現レベルはいずれも用量依存的に減少を示さなかったことが見出された。したがって、AR100-DS1はHuS-E/2細胞へのHBVの侵入を阻止することはできなかった。
【0106】
本研究では、HBVゲノムを安定的に発現させたHepG2.2.15細胞を用いて、HBVの形態形成に対するAR100-DS1の影響を検出した。これらの結果では、AR100-DS1が、HBVの複製、ウイルス粒子の組み立てまたは放出を有意に阻害したことが示された。図2C(HuS-E/2)および図2D(HepG2.2.15)では、細胞生存率の顕著な用量依存的減少が示された。
【0107】
HBsAg分泌、HuS-E/2細胞およびHepG2.2.15細胞の細胞生存率に対するAR100-DS1の阻害効果を示す結果を考えると、AR100-DS1はHBV感染を阻害することができ、ウイルス感染症、特にHBVを処置および/または予防するための薬物を開発する可能性がある。
【0108】
以上の説明は、単に本発明における好ましい実施態様に関するものであり、当業者にとっては、本発明の原理から逸脱しないことを前提に、いくつかの改良および修正も可能であり、これらの改良および修正も本発明の保護範囲内であると考えられることを指摘されるべきである。
【0109】
2.3 SARS-CoV-2感染の阻害に対するAR100-DS1の影響
【0110】
20μMの濃度のAR100-DS1の阻害プロファイルを決定し、その結果を図3Aに示した。図3Aに示すように、SARS-CoV-2 3CLproに対する半最大阻害濃度(IC)は、0μM~200μMの範囲の指定濃度で化合物を処理することによって特徴付けた。AR100-DS1のIC50値は、図3Bに示した。AR100-DS1は、0.125μM SARS-CoV-2 3CLproおよび1.25μM IQFペプチド基質の存在下で、21.31μMのIC50値を有した。
【0111】
コロナウイルスに対するAR100-DS1の抗ウイルス活性を確認するため、Vero E6細胞におけるSARS-CoV-2に対するAR100-DS1およびAR100-DS1+RDV()の抗ウイルス活性を、プラーク減少アッセイにより評価した。SARS-CoV-2に対するAR100-DS1+RDVの抗ウイルス活性を確認するために、AR100-DS1およびRDVを個別に調製し、次に、実験中に一緒に添加した。AR100-DS1およびRDVを個別に調製し、一緒に添加したところ、以下の表1に示すような結果が得られた。10μM、5μM、1μMのAR100-DS1と1μMのRDVの組み合わせの効果の中で、1μMのRDVとAR100-DS1の組み合わせで予想外の改善効果が観察された。RDVのみの効果と比較して、RDVと1μMのAR100-DS1との組み合わせで処理後のプラーク阻害パーセンテージは、82%から98%に増加した。
【表1】

【0112】
本発明の好ましい実施形態が本明細書で示され、説明されてきたが、そのような実施態様は例示としてのみ提供され、組み合わせて実施できることは、当業者には明らかであろう。多数の変形、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者には今や起こるであろう。本発明の実施形態に対する様々な代替案が、本開示を実施する際に採用され得ると理解すべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの等価物がそれによってカバーされることが意図される。
【0113】
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図1B
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図2A
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図3A
図3B
【国際調査報告】